(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】リリーフ圧制御装置
(51)【国際特許分類】
F15B 11/028 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
F15B11/028 A
(21)【出願番号】P 2024507948
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2022025378
(87)【国際公開番号】W WO2023020715
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2021133218
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】酒向 志乃
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-330001(JP,A)
【文献】特開2010-151191(JP,A)
【文献】特開平03-055323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧回路のリリーフ圧を制御するリリーフ圧制御装置であって、
通電量が大きいほどセット圧が大きく設定される電磁リリーフ弁と、
この電磁リリーフ弁の通電量を制御することで流体圧回路のリリーフ圧を少なくとも一つ設定するコントローラと、を備え、
コントローラは、ポンプ圧が無通電状態での電磁リリーフ弁のセット圧よりも低い
第1の所定の閾値圧を超えたとき、電磁リリーフ弁
の通電量を第1の所定値とし、ポンプ圧が第1の所定の閾値圧より小さく無通電状態での電磁リリーフ弁で前漏れが生じる圧力に応じて設定された第2の所定の閾値圧を超えたとき、電磁リリーフ弁の通電量を第1の所定値より大きい第2の所定値とする
ことを特徴とするリリーフ圧制御装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧回路のリリーフ圧を制御するリリーフ圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械等に用いられる流体圧回路である油圧回路システムにおいては、コントロールバルブにメインリリーフ弁が設けられており、システムの過度な圧力上昇を制限することが一般的である。
【0003】
油圧システムのリリーフ圧は、用途に応じて複数設定できると有効な場合がある。例えば走行と作業機の動作とで、あるいは、通常モードと吊り作業モード(ヘビーリフトモード)とで、異なるリリーフ圧に設定できると有効である。
【0004】
この点、セット圧を2段階に切り替え可能なリリーフ弁を用いることが考えられる。一般的には、2段可調式のメインリリーフ弁、あるいはオンオフ弁が用いられる。
【0005】
しかしながら、これらの弁を用いる場合、複数回に亘り調圧作業が必要になる等、調整が煩雑になるとともに、部品構成およびシステム構成も複雑になるという課題がある。
【0006】
この点、通電量に応じてセット圧を設定可能な電磁リリーフ弁を用い、コントローラからの信号に応じて電磁リリーフ弁のセット圧を調整可能とすることで、リリーフ圧を複数に切り替え可能としたものが知られている(例えば、特許文献1乃至4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第2732922号公報
【文献】特許第4458083号公報
【文献】特許第6347936号公報
【文献】特開平7-36548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような電磁リリーフ弁を用いる油圧回路システムにおいて、消費電力を抑制することが望まれる。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、リリーフ圧を容易に設定可能であるとともに、消費電力を抑制したリリーフ圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、流体圧回路のリリーフ圧を制御するリリーフ圧制御装置であって、通電量が大きいほどセット圧が大きく設定される電磁リリーフ弁と、この電磁リリーフ弁の通電量を制御することで流体圧回路のリリーフ圧を少なくとも一つ設定するコントローラと、を備え、コントローラは、ポンプ圧が無通電状態での電磁リリーフ弁のセット圧よりも低い第1の所定の閾値圧を超えたとき、電磁リリーフ弁の通電量を第1の所定値とし、ポンプ圧が第1の所定の閾値圧より小さく無通電状態での電磁リリーフ弁で前漏れが生じる圧力に応じて設定された第2の所定の閾値圧を超えたとき、電磁リリーフ弁の通電量を第1の所定値より大きい第2の所定値とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、コントローラからの通電量に応じてリリーフ圧を容易に設定可能であるとともに、平常時には電磁リリーフ弁を無通電とし、ポンプ圧が高圧になったときにのみコントローラから電磁リリーフ弁に通電して、消費電力を抑制でき、かつ、ポンプ圧が第1の所定の閾値圧となる直前までセット圧を高く設定して前漏れを防止しつつ、最小限の通電量でリリーフ圧を容易に設定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るリリーフ圧制御装置の
関連技術を示す回路図である。
【
図2】同上リリーフ圧制御装置の電磁リリーフ弁の通電量-セット圧特性の一例を示すグラフである。
【
図3】同上リリーフ圧制御装置の電磁リリーフ弁の通電量のキャリブレーション方法を説明するグラフである。
【
図4】(a)は同上リリーフ圧制御装置の動作時のポンプ圧の時間変化の一例を示すグラフ、(b)は(a)に応じた電磁リリーフ弁の通電量の制御の一例を示すグラフである。
【
図5】本発明に係るリリーフ圧制御装置の
一実施の形態の電磁リリーフ弁の特性の一例を示すグラフである。
【
図6】同上リリーフ圧制御装置の電磁リリーフ弁の通電量のキャリブレーション方法を説明するグラフである。
【
図7】(a)は同上リリーフ圧制御装置の動作時のポンプ圧の時間変化の一例を示すグラフ、(b)は(a)に応じた電磁リリーフ弁の通電量の制御の一例を示すグラフ、(c)は(b)による電磁リリーフ弁の流量の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、
図1乃至
図4に示された
関連技術、および、
図5乃至
図7に示された
一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0014】
まず、関連技術について説明する。
【0015】
図1において、1は流体圧回路である。流体圧回路1は、ポンプ2を備える。ポンプ2は、エンジンやモータ等の原動機により動作され、作動流体を流体圧回路1に供給する。すなわち、ポンプ2は、機械的動力を流体圧動力に変換する。ポンプ2により変換された流体圧動力は、流体圧アクチュエータ3により機械的動力に変換される。流体圧アクチュエータ3は、任意のものを任意の数用いてよい。
図1において、流体圧アクチュエータ3は、1つの流体圧シリンダを例に挙げて示している。また、ポンプ2により流体圧回路1中に供給される作動流体は、タンク4に貯留される。タンク4は、流体圧回路1の戻り流体を受け取る。
【0016】
そして、流体圧回路1は、原動機により作動されるポンプ2から、流体圧アクチュエータ3に供給される作動流体の流量および方向をオペレータのレバー操作等に応じて図示されないコントロールバルブにより制御することで、流体圧アクチュエータ3を動作させて動力を得るように構成されている。
【0017】
本関連技術において、流体圧回路1は、例えば油圧ショベル等の作業機械に用いられる油圧回路である。この場合、流体圧アクチュエータ3は、作業機械の走行用、旋回用、あるいはブーム、アーム、バケット等からなる作業機の動作用等に用いられる。
【0018】
流体圧回路1の回路圧であるポンプ圧の上限すなわちリリーフ圧が、リリーフ弁5によって設定される。リリーフ弁5は、ポンプ2の吐出路に接続され、作動流体の一部をタンク4に逃がすように設定されている。本
関連技術において、リリーフ弁5は、通電量に応じてセット圧が可変される電磁リリーフ弁、すなわち電磁可変式リリーフ弁である。リリーフ弁5は、通電量が大きいほどセット圧が大きくなるように構成されている。本
関連技術において、リリーフ弁5は、ソレノイドへの通電量(入力電流)に比例してセット圧が変化する比例電磁式リリーフ弁である。リリーフ弁5の通電量(入力電流)-セット圧特性の一例を
図2に示す。図示される例では、リリーフ弁5(
図1)のセット圧は、無通電状態でのセット圧P0から、通電量の増加に応じて最大セット圧P1までリニアまたは略リニアに増加する。
【0019】
また、
図1に示されるように、このリリーフ弁5の通電量は、ポンプ圧を検出する圧力センサ6の出力に応じて、コントローラ(ECM)7により電子制御される。コントローラ7は、圧力センサ6およびリリーフ弁5のソレノイドとそれぞれ電気的に接続されている。そして、コントローラ7は、リリーフ弁5への通電量を制御する制御信号を出力することにより、この通電量に応じて設定されるリリーフ弁5のセット圧を利用して、流体圧回路1のリリーフ圧である回路圧の上限(システム圧)を少なくとも一つ設定する。コントローラ7とリリーフ弁5とにより、リリーフ圧制御装置8が構成される。
【0020】
なお、流体圧回路1のその他のバルブ、フィルタ、センサ等の詳細な構成については、説明を明確にするために省略している。
【0021】
次に、図示された関連技術の作用を説明する。
【0022】
本関連技術では、無通電状態においてもある程度のセット圧を有するリリーフ弁5を利用することで、平常時には無通電状態とし、ポンプ圧が上昇したときにのみコントローラ7からリリーフ弁5へと通電してポンプ圧を逃がす。
【0023】
流体圧回路1の回路圧の上限(システム圧)であるリリーフ圧をリリーフ弁5の通電量に応じて設定する場合、必要となるリリーフ弁5の通電量は、実際のリリーフ弁5の性能および作業機械等の個体差に応じて異なるため、予めキャリブレーションをする。
【0024】
このキャリブレーションの際には、エンジン馬力を最大出力に設定するとともに、レバーにより流体圧アクチュエータ3を最大負荷状態とし、コントローラ7によるリリーフ弁5のソレノイドの通電量を所定の通電量に設定する。例えば、流体圧アクチュエータ3としては、ブームシリンダを利用し、ブームを動作限界まで最大に上げた位置すなわちブームシリンダを最大に伸長させた位置でレバーを維持した状態、すなわちブーム上げストール状態とする。
【0025】
この状態で、
図3に一例が示されるように、コントローラ7(
図1)からリリーフ弁5(
図1)の通電量iを所定の通電量i0から徐々に増加させ(スイープさせ)、リリーフ弁5(
図1)の所定のセット流量Qにおいて圧力センサ6(
図1)により検出するポンプ圧が目的の圧力PRとなった際の通電量iを記録する。所定の通電量i0は、任意の小さい通電量としてよいが、例えば0とする。また、所定のセット流量Qは、ポンプ2が圧力PRで吐出できる最大の流量であり、作業機械等の馬力曲線に応じて決まる値であるとともに、機体毎にばらつきがある値である。
【0026】
この後、再度コントローラ7からリリーフ弁5の通電量iを所定の通電量i0とし、コントローラ7からリリーフ弁5の通電量iを徐々に増加させ、リリーフ弁5の所定のセット流量Qにおいて圧力センサ6により検出するポンプ圧が目的の圧力PRとなった際の通電量iを記録する。この作業を所定回数繰り返し、それぞれ記録した通電量iの平均値を、リリーフ圧に応じた所定値iaとしてコントローラ7に登録する。
【0027】
上記のキャリブレーションを作業機械等の出荷前に実施しておくことで、予め機体毎のばらつきに応じた通電量の設定が可能になる。
【0028】
そして、例えば
図4(a)に示されるようにポンプ圧が時間変化する場合、コントローラ7は基本的にリリーフ弁5に通電しておらず、ポンプ圧が所定の閾値圧PTHを超えている間のみ、リリーフ弁5の通電量を
図4(b)に示されるように所定値iaに設定して通電する。これにより、リリーフ弁5が開いて作動流体の一部をタンク4に逃がし、流体圧回路1のシステム圧を所定の圧力PRに制限して、システム圧の過度な上昇を抑制する。
【0029】
このように、関連技術によれば、コントローラ7が、ポンプ圧が無通電状態でのリリーフ弁5のセット圧よりも低い所定の閾値圧を超えたとき、リリーフ弁5に通電することで、リリーフ圧を容易に設定可能である。つまり、一般的なリリーフ弁によって機械的にリリーフ圧を設定する場合、作業機械等の機種(馬力)により異なるセット圧-流量特性(PQ曲線)に応じて、調圧によってセット圧が上昇するとセット流量が減少していくとともに、セット圧-流量特性は機体によってもばらつきが大きいため、マニュアルの調整が煩雑となる。それに対し、本関連技術では、キャリブレーションによって容易に機体毎に設定できる通電量でコントローラ7からリリーフ弁5へ通電することにより、調圧作業が不要で、機体によるばらつきを生じることなく、リリーフ圧を容易かつ高精度に設定可能となる。
【0030】
さらに、平常時にはリリーフ弁5を無通電とし、ポンプ圧が高圧になったときにのみリリーフ弁5に通電することが可能であるため、消費電力を抑制できる。
【0031】
特に、作業機械等の稼働時において、リリーフ圧程度の圧力が必要になることは少ないため、所定の閾値圧を適切に設定することによって、リリーフ弁5の実際の通電時間を大幅に抑制できる。
【0032】
また、リリーフ弁5は、通電/無通電の切り替えによってセット圧を設定できるので、リリーフ弁5のセット圧の調圧作業に人手を必要とせず、キャリブレーションによって機体毎のリリーフ弁5のセット流量の違いやばらつきを考慮する必要もない。さらに、異なる作業モードを備える作業機械等の仕様の相違に応じて構成を変えることなくリリーフ弁5の選択およびリリーフ弁5への通電量の設定によって異なる作業モードに応じたリリーフ圧を設定可能となるので、仕様に応じた回路構成物が不要で回路構成物を減らすことができ、安価に構成できるとともに、作業機械等の使用の相違による構成の違いも解消でき、かつ、作動流体漏れのリスクも低減できる。
【0033】
なお、関連技術では、所定の閾値圧を一つ設定したが、これに限らず、互いに異なる複数の所定の閾値圧を設定してもよい。その場合にも、関連技術と同様にそれぞれの閾値圧についてキャリブレーションを実施することで、複数の所定の閾値圧にそれぞれ応じたリリーフ弁5の通電量を設定することが可能になる。
【0034】
例えば、
図5乃至
図7に示される
一実施の形態のように、所定の閾値圧を、無通電状態でのリリーフ弁5で前漏れが生じる圧力に応じて設定してもよい。
【0035】
この実施の形態では、関連技術と同様に、ポンプ圧が上昇したときにコントローラ7からリリーフ弁5へと通電してポンプ圧を逃がすように構成されていることに加えて、このリリーフ弁5の通電直前のポンプ圧で前漏れが生じないように、コントローラ7からリリーフ弁5に通電することでリリーフ弁5のセット圧を設定する。
【0036】
すなわち、
図5に示されるように、一般的に、リリーフ弁5は、流体圧回路1の回路圧(システム圧)が所定のセット圧となる直前の圧から徐々に作動流体の流出が始まる(前漏れ)。本実施の形態では、このような前漏れによるエネルギー損失が生じないように、リリーフ弁5のセット圧を設定するための通電量を設定するものである。
【0037】
なお、このときのリリーフ弁5のセット圧は、前漏れが生じない圧以上であれば任意に設定してよいが、リリーフ弁5の通電量(入力電流)-セット圧特性が例えば
図2に示される例のような場合には、最大セット圧P1よりも低いセット圧となるようにする。
【0038】
セット圧のキャリブレーションの際には、関連技術と同様に、エンジン馬力を最大出力に設定するとともに、レバーにより流体圧アクチュエータ3を最大負荷状態とし、コントローラ7によるリリーフ弁5のソレノイドの通電量を所定の第1の通電量に設定する。例えば、流体圧アクチュエータ3としては、ブームシリンダを利用し、ブームを動作限界まで最大に上げた位置すなわちブームシリンダを最大に伸長させた位置でレバーを維持した状態、すなわちブーム上げストール状態とする。
【0039】
この状態で、
図6に一例が示されるように、コントローラ7からリリーフ弁5の通電量i1を所定の第1の通電量i01から徐々に増加させ、リリーフ弁5の所定の第1のセット流量Q1において圧力センサ6により検出するポンプ圧が目的の第1の圧力PR1となった際の通電量i1を記録する。所定の第1の通電量i01は、任意の小さい通電量としてよいが、例えば0とする。
【0040】
この後、再度コントローラ7からリリーフ弁5の通電量i1を所定の第1の通電量i01とし、コントローラ7からリリーフ弁5の通電量i1を徐々に増加させ、リリーフ弁5の所定の第1のセット流量Q1において圧力センサ6により検出するポンプ圧が目的の第1の圧力PR1となった際の通電量i1を記録する。この作業を所定回数繰り返し、それぞれ記録した通電量i1の平均値を、リリーフ圧に応じた第1の所定値ia1(
図7(b))としてコントローラ7に登録する。
【0041】
所定の第1のセット流量Q1は、ポンプ2が第1の圧力PR1で吐出できる最大の流量であり、作業機械等の馬力曲線に応じて決まる値であるとともに、機体毎にばらつきがある値である。
【0042】
同様に、
図6に一例が示されるように、コントローラ7からリリーフ弁5の通電量i2を所定の第2の通電量i02から徐々に増加させ、リリーフ弁5の所定の第2のセット流量Q2において圧力センサ6により検出するポンプ圧が目的の第2の圧力PR2となった際の通電量i2を記録する。所定の第2の通電量i02は、所定の第1の通電量i0と同一でもよいし、異なっていてもよいが、本実施の形態では、第2の圧力PR2が第1の圧力PR1よりも大きいことから、第2の圧力PR2となった際の通電量i2は、第1の圧力PR1となった際の通電量i1より大きい(i1<i2)と想定されるため、所定の第2の通電量i02を、所定の第1の通電量i01あるいは第1の所定値ia1(
図7(b))よりも大きく設定することで、キャリブレーションに要する時間を短縮することが可能になる。
【0043】
この後、再度コントローラ7からリリーフ弁5の通電量i2を所定の第2の通電量i02とし、コントローラ7からリリーフ弁5の通電量i2を徐々に増加させ、リリーフ弁5の所定の第2のセット流量Q2において圧力センサ6により検出するポンプ圧が目的の第2の圧力PR2となった際の通電量i2を記録する。この作業を所定回数繰り返し、それぞれ記録した通電量i2の平均値を第2の所定値ia2(
図7(b))としてコントローラ7に登録する。
【0044】
本実施の形態では、第2の所定値ia2が第1の所定値ia1より大きく設定される。第1の所定値ia1の登録と第2の所定値ia2の登録とは、いずれが先でもよい。
【0045】
上記のキャリブレーションを作業機械等の出荷前に実施しておく。
【0046】
そして、例えば
図7(a)に示されるようにポンプ圧が時間変化する場合、コントローラ7は基本的にリリーフ弁5に通電しておらず、ポンプ圧が所定の閾値圧PTH2を超えている間、リリーフ弁5の通電量を
図7(b)に示されるように第2の所定値ia2に設定する。これにより、リリーフ弁5が開いて作動流体の一部をタンク4に逃がして流体圧回路1を保護する前に
図7(c)の二点鎖線に示される前漏れが生じることを防止する。
【0047】
さらにポンプ圧が上昇し、
図7(a)に示されるように第1の所定の閾値圧PTH1を超えたとき、リリーフ弁5の通電量を
図7(b)に示されるように第1の所定値ia1に設定する。これにより、リリーフ弁5が開いて作動流体の一部をタンク4に逃がし、流体圧回路1のシステム圧を所定の第1の圧力PR1に制限して、システム圧の過度な上昇を抑制する。
【0048】
このように、本実施の形態では、ポンプ圧が無通電状態でのリリーフ弁5のセット圧よりも低い所定の閾値圧を超えたとき、リリーフ弁5に通電することで、リリーフ圧を容易に設定可能であるとともに、さらに、平常時にはリリーフ弁5を無通電とし、ポンプ圧が高圧になったときにのみリリーフ弁5に通電することが可能であるため、消費電力を抑制できるなど、関連技術と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
また、所定の閾値圧を、無通電状態でのリリーフ弁5で前漏れが生じる圧力に応じて設定することで、前漏れに起因するエネルギー損失を抑制できるとともに、前漏れによってリリーフ圧が所望よりも低くなることを防止できる。
【0050】
本実施の形態では、コントローラ7が、ポンプ圧が無通電状態でのリリーフ弁5のセット圧よりも低い第1の所定の閾値圧を超えたとき、リリーフ弁5の通電量を第1の所定値とし、ポンプ圧が第1の所定の閾値圧より小さく無通電状態でのリリーフ弁5で前漏れが生じる圧力に応じて設定された第2の所定の閾値圧を超えたとき、リリーフ弁5の通電量を第1の所定値より大きい第2の所定値とすることで、ポンプ圧が第1の所定の閾値圧となる直前までセット圧を高く設定して前漏れを防止しつつ、最小限の通電量でリリーフ圧を容易に設定可能となる。
【0051】
特に、2段調整式のリリーフ弁を用いて機械的にセット圧を設定する場合には、調整が煩雑であるとともに、構成も複雑であり、かつ、複数回に亘る調圧作業が必要になるのに対し、本実施の形態では、煩雑な調整が不要であるとともに、構成が簡素であるため、安価で、かつ、作動流体の漏れも生じにくい構成となる。
【0052】
なお、関連技術および一実施の形態において、無通電状態でのリリーフ弁5のセット圧の設定は、機械的に行ってもよい。
【0053】
また、コントローラ7からリリーフ弁5に通電するためのポンプ圧の所定の閾値圧は、3つ以上設定してもよい。複数の閾値圧を設定する場合でも、コントローラ7からリリーフ弁5への通電量を制御するだけでよく、作業機械等の動作やモードに応じて異なるリリーフ圧に容易に設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、流体圧回路、および、それを備える作業機械等の製造業、販売業等に携わる事業者にとって産業上の利用可能性がある。