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特許7643877プレキャストコンクリート構造体、及びプレキャストコンクリート工法
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  • 特許-プレキャストコンクリート構造体、及びプレキャストコンクリート工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート構造体、及びプレキャストコンクリート工法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/34 20060101AFI20250304BHJP
   E04C 3/22 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
E04C3/34
E04C3/22
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021010116
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114025
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077589(JP,A)
【文献】特開2016-204861(JP,A)
【文献】特開2015-158055(JP,A)
【文献】特開2016-069924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/34
E04C 3/22
E04B 1/20
E04B 1/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリートにより形成された複数のプレキャスト部材と、
鉛直方向に積層された複数の前記プレキャスト部材において鉛直方向に配筋された第1鉄筋と、
複数の前記プレキャスト部材のうち基部に配置されたプレキャスト部材において鉛直方向に配筋された第2鉄筋と、を備え、
前記第2鉄筋は、前記第1鉄筋よりも強度が高く形成されており、
前記第2鉄筋の強度が前記第1鉄筋の強度と同じ場合より、前記プレキャスト部材に用いられる前記プレキャストコンクリートの量が少なく設定されていることを特徴とする、
プレキャストコンクリート構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャスト部材を用いてコンクリート構造体を構築するプレキャストコンクリート工法であって、
第1鉄筋よりも強度が高い第2鉄筋が鉛直方向に配筋されたプレキャスト部材を基部に固定する工程と、
前記第1鉄筋が鉛直方向に配筋された他のプレキャスト部材を前記プレキャスト部材の上方に固定する工程と、
前記他のプレキャスト部材の上方に更に前記他のプレキャスト部材を固定する工程と、
を備えることを特徴とする、
プレキャストコンクリート工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリートにより形成された部材を用いたプレキャスト構造体、及びプレキャストコンクリート工法に関する。
【背景技術】
【0002】
予めコンクリートにより形成されたプレキャスト部材を現場において接合して構造物を構築するプレキャスト工法は、工期を短縮することができる工法として普及しつつある。これに関連してプレキャスト部材を積層して柱状の構造体を形成する工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この工法によれば、プレキャストコンクリートにより形成されたプレキャスト部材に鉄筋(PC鋼材)を貫通させて固定する。次に、鉄筋を連結部材により延長し、延長した鉄筋に他のプレキャスト部材を貫通させて既設のプレキャスト部材の上方に積層し、既設のプレキャスト部材に固定するという工程を順次繰り返して柱状の構造体を形成する。
【0004】
このようなプレキャスト構造においては、軸方向の鉄筋の強度は、各プレキャスト部材において同一強度のものが用いられている。プレキャスト構造においては、基部の断面力により、断面形状が決定され、各プレキャスト部材は柱状の構造体において同じものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-19664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
柱状の構造体を構成するプレキャスト部材の数が多い場合、プレキャスト部材を製造する工程及び、継手を製造する工程が増加すると共に、設置する工程も増加する。また、グラウトを用いてプレキャスト部材を接合する際に閉塞や漏れなどが発生する虞がある。従って、プレキャスト部材を用いる工法においては、なるべく設置にかかる工程が省略されると共に部材を低減することが望ましい。特許文献1に記載された技術によれば、部材の低減や設置にかかる工程を省略する余地がある。
【0007】
本発明は、設置にかかる工程を短縮すると共にコンクリートの使用量を削減できるプレキャストコンクリート構造体、及びプレキャストコンクリート工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、本発明は、プレキャストコンクリートにより形成された複数のプレキャスト部材と、鉛直方向に積層された複数の前記プレキャスト部材において鉛直方向に配筋された第1鉄筋と、複数の前記プレキャスト部材のうち基部に配置されたプレキャスト部材において鉛直方向に配筋された第2鉄筋と、を備え、前記第2鉄筋は、前記第1鉄筋よりも強度が高く形成されていることを特徴とする、プレキャストコンクリート構造体である。
【0009】
本発明によれば、基部の上部に配置されたプレキャスト部材に第1鉄筋よりも強度が高い第2鉄筋を配筋することで、プレキャスト部材を小型化することができ、プレキャストコンクリート構造体の全長に渡ってコンクリートの使用量を削減することができる。
【0010】
上記の目的を達するために、本発明は、第1鉄筋よりも強度が高い第2鉄筋が鉛直方向に配筋されたプレキャスト部材を基部に固定する工程と、前記第1鉄筋が鉛直方向に配筋された他のプレキャスト部材を前記プレキャスト部材の上方に固定する工程と、前記他のプレキャスト部材の上方に更に前記他のプレキャスト部材を固定する工程と、を備えることを特徴とする、プレキャストコンクリート工法である。
【0011】
本発明によれば、基部に固定されるプレキャスト部材に第1鉄筋よりも強度が高い第2鉄筋を配筋することにより、基部に配置されたプレキャスト部材の強度を上方に設置された他のプレキャスト部材の強度よりも高くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設置にかかる工程を短縮すると共にコンクリートの使用量を削減できることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るプレキャストコンクリート構造体の構成を示す図である。
図2】プレキャストコンクリート構造体と従来のプレキャストコンクリート構造体との比較図である。
図3】プレキャストコンクリート構造体を構築するプレキャスト工法の工程の一部を示す図である。
図4】プレキャストコンクリート構造体を構築するプレキャスト工法の工程の一部を示す図である。
図5】プレキャストコンクリート構造体を構築するプレキャスト工法の工程の一部を示す図である。
図6】プレキャストコンクリート構造体を構築するプレキャスト工法の工程の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るプレキャストコンクリート構造体、及びプレキャストコンクリート工法の実施形態について説明する。
【0015】
図1に示されるように、プレキャストコンクリート構造体1は、基部Mに設けられた柱状の構造体に形成されている。プレキャストコンクリート構造体1は、例えば、鉛直方向に積層された複数のプレキャスト部材2,2Aと、複数のプレキャスト部材2に配筋された第1鉄筋6、及び第2鉄筋4を備える。
【0016】
基部Mは、床面等に設けられ、プレキャストコンクリート構造体1を支持する台座である。基部Mは、第2鉄筋4により形成された埋め込み用の複数の鉄筋3が埋め込まれており、上面からその上端部が突出している。鉄筋3の下端部は、フック状に曲げ加工されており、抜けが防止される。鉄筋3の上端部は、プレキャスト部材2の下部に設けられた継手8に挿入される。
【0017】
プレキャスト部材2の下部において継手8は、円形の孔に形成されている。鉄筋3の上端部は、継手8に挿入され、グラウト等の充填材によって固定される。
【0018】
第2鉄筋4は、基部Mの上面に配置されたプレキャスト部材2において鉛直方向に配筋される。第2鉄筋4の上端部は、プレキャスト部材2の上面から突出している。第2鉄筋4は、第1鉄筋6よりも強度が高く形成されている。第2鉄筋4は、例えば、第1鉄筋よりも強度が高いSD490やUSD685等の高強度鉄筋である。基部Mに固定されるプレキャスト部材2は、複数の第2鉄筋4の上端部がプレキャスト部材2の上面から起立した状態で形成される。
【0019】
第2鉄筋4の上端部は、他のプレキャスト部材2Aの下部に形成された継手8に挿入される。第2鉄筋4の上端部は、グラウト等の充填材によって他のプレキャスト部材2Aに固定される。
【0020】
第1鉄筋6は、基部Mに固定されたプレキャスト部材2より上方の鉛直方向に積層される複数のプレキャスト部材2Aにおいて鉛直方向に配筋される。第1鉄筋6は、例えば、SD345等の通常用いられる強度の鉄筋である。
【0021】
第1鉄筋6の上端部は、上方に載置されるプレキャスト部材2Aの下部に形成された継手8に挿入される。第1鉄筋6の上端部は、グラウト等の充填材によって上方に載置されるプレキャスト部材2Aに固定される。第1鉄筋6が配筋されたプレキャスト部材2Aは、基部Mに固定されたプレキャスト部材2より上方に固定される。
【0022】
プレキャスト部材2,2Aは、例えば、工場において予めプレキャストコンクリートにより形成されたブロック状の部材である。プレキャスト部材2Aは、第1鉄筋6又が配筋され、プレキャスト部材2は、第2鉄筋4が配筋されている。
【0023】
図2に示されるように、比較例に係るプレキャストコンクリート構造体100は、プレキャストコンクリート構造体1と同じ高さに形成されている。プレキャストコンクリート構造体100は、従来の構造体に適用されている。
【0024】
プレキャストコンクリート構造体100は、基部MA上にプレキャスト部材2よりも多い数の複数のプレキャスト部材2Bが積層されて形成されている。複数のプレキャスト部材2Bには、第1鉄筋6が配筋されている。プレキャストコンクリート構造体100は、基部MAが基部Mよりも断面積が大きく形成されている。プレキャスト部材2Bは、第1鉄筋6が配筋されるため、プレキャスト部材2よりも断面積が大きく、高さ方向が低くなるように形成されている。プレキャストコンクリート構造体100は、複数のプレキャスト部材2Bが積層されて形成されている。
【0025】
プレキャストコンクリート構造体1のプレキャスト部材2,2Aは、全てのプレキャスト部材2Bに第1鉄筋6が配筋された従来のプレキャストコンクリート構造体100に比して断面形状が小さく薄肉化されて形成されていると共に、高さ方向が長く形成されている。
【0026】
プレキャストコンクリート構造体1は、従来のプレキャスト部材2Bに比して薄肉化されたプレキャスト部材2,2Aを用いることにより、コンクリートの使用量を大幅に削減できる。プレキャストコンクリート構造体1は、従来のプレキャスト部材2Bに比して高く形成されたプレキャスト部材2,2Aにより、積層するブロック数が削減され、建設における工程を削減できる。
【0027】
次に、プレキャストコンクリート構造体1を構築するプレキャストコンクリート工法の各工程について説明する。
【0028】
図3に示されるように、床面上に複数の鉄筋3を配筋し、型枠を組んでコンクリートを打設し、基部Mを形成する。基部Mの上面には、鉄筋3の上端部が露出している。
【0029】
図4に示されるように、第2鉄筋4が配筋されているプレキャスト部材2の下部の継手8及びプレキャスト部材2の下面にグラウトを充填する。鉄筋3の上端部をプレキャスト部材2の継手8に挿入し、プレキャスト部材2を基部Mに固定する。基部M上のプレキャスト部材2には、継手8が設けられていなくてもよい。この場合、基部M上のプレキャスト部材2には、第2鉄筋4の代わりに基部Mの鉄筋3が一体に用いられる。
【0030】
図5に示されるように、第1鉄筋6が配筋されているプレキャスト部材2Aの下部の継手8及びプレキャスト部材2の下面にグラウトを充填する。第2鉄筋4の上端部をプレキャスト部材2Aの継手8に挿入し、プレキャスト部材2Aをプレキャスト部材2の上面に固定する。
【0031】
図6に示されるように、第1鉄筋6が配筋されている他のプレキャスト部材2Aの下部の継手8及びプレキャスト部材2の下面にグラウトを充填する。第1鉄筋6の上端部を他のプレキャスト部材2Aの継手8に挿入し、他のプレキャスト部材2Aを既設のプレキャスト部材2Aの上面に固定する。
【0032】
上記のように既設のプレキャスト部材2Aの上面に、他のプレキャスト部材2Aを固定するという工程を複数回繰り返すことで、プレキャストコンクリート構造体1が構築される。
【0033】
上述したように、プレキャストコンクリート構造体1によれば、基部Mの上面に固定されるプレキャスト部材2に第1鉄筋6よりも強度が高い第2鉄筋4を配筋することにより、従来工法に比してプレキャスト部材2を薄肉化することができ、基部Mの断面を小さく形成することができる。プレキャストコンクリート構造体1によれば、プレキャスト部材2を薄肉化することにより、プレキャスト部材2を形成する型枠を低減することができる。
【0034】
プレキャストコンクリート構造体1によれば、プレキャスト部材2を薄肉化することにより、プレキャストコンクリート構造体1の軸方向の全長に渡ってコンクリートの使用量を大幅に低減できる。プレキャストコンクリート構造体1によれば、プレキャスト部材2の高さが従来工法に比して高く形成されているため、設置にかかる工程数を低減でき、工期を大幅に短縮できる。プレキャストコンクリート構造体1によれば、プレキャスト部材2の高さが従来工法に比して高く形成されているため、鉄筋の継手の数を削減でき、建設コストを低減できる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、プレキャストコンクリート構造体は、柱状の構造体に適用することを例示したが、梁部材に適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 プレキャストコンクリート構造体
2 プレキャスト部材
3 鉄筋
4 第2鉄筋
6 第1鉄筋
8 継手
M 基部
図1
図2
図3
図4
図5
図6