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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】静電容量型センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20250304BHJP
   G01L 9/12 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
G01L9/00 E
G01L9/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021026014
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127820
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】市原 純
(72)【発明者】
【氏名】吉川 康秀
(72)【発明者】
【氏名】小原 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公洋
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-278968(JP,A)
【文献】特開2021-015051(JP,A)
【文献】特開2019-060667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象の物理量に応じて静電容量が変化するように構成されたセンサ部と、
前記静電容量を前記物理量の計測値に変換するように構成されたプロセッサと、
前記プロセッサから出力された第1の周期信号を制御入力として、前記プロセッサ用の第1の電源電圧とは別の第2の電源電圧をスイッチングすることによって生成した第2の周期信号を出力するように構成されたアナログスイッチと、
前記第2の周期信号から抽出した特定周波数の信号を前記センサ部への駆動信号として出力するように構成されたフィルタとを備えることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項2】
請求項記載の静電容量型センサにおいて、
前記フィルタは、バンドパスフィルタであることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項3】
請求項記載の静電容量型センサにおいて、
前記フィルタは、ローパスフィルタとハイパスフィルタを組み合わせたものであることを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の静電容量型センサにおいて、
前記駆動信号によって駆動される前記センサ部の出力から静電容量信号を検出するように構成された回路部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記静電容量信号を前記物理量の計測値に変換することを特徴とする静電容量型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサ等に利用される静電容量型センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、物理量に応じて静電容量が変動する静電容量型センサが例えば圧力センサとして利用されている(特許文献1参照)。静電容量型センサの回路を図8に示す。静電容量型センサでは、計測対象の物理量(例えば圧力)に応じて静電容量CXが変化するセンサ部100に信号発生器101から正弦波を印加する。容量CFとオペアンプA1とからなる電荷増幅回路102は、センサ部100から出力される電流を電圧に変換して増幅する。
【0003】
検波回路103は、電荷増幅回路102によって増幅された信号を全波整流する。ローパスフィルタ(LPF)104は、検波回路103の出力を平滑化する。こうして、静電容量CXに基づいた静電容量信号が得られる。この静電容量信号は、AD変換器105(例えばΔΣ型AD変換器)によってデジタル信号に変換される。マイクロプロセッサ106は、デジタル信号を圧力計測値に変換する。
【0004】
上記の信号発生器101としては様々な構成があり、例えば以下の(I)、(II)のような例がある。
(I)オペアンプを用いたアナログ発振回路。
(II)デジタル正弦波生成IC(デジタル信号をDA変換して出力するIC)。
【0005】
上記の(I)の構成では、抵抗やコンデンサといった受動素子の定数が個体差や温度特性によって変動するため、出力波形の振幅や周波数の誤差が大きく、圧力計測誤差への影響が大きいという課題があった。
また、(II)の構成では、出力波形の振幅や周波数を制御するのが容易であるものの、回路の実装面積とコストが増大するという課題があった。
【0006】
近年、主に半導体製造工程において、製造装置の効率的な加熱を目的とし、装置の縮小化が進められている。これにより、製造装置に取り付けられる圧力センサなどの周辺機器も小型化が必要とされるようになってきており、回路の実装面積を小さく抑えることが求められるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-331328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、回路の実装面積とコストを削減可能な静電容量型センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の静電容量型センサは、計測対象の物理量に応じて静電容量が変化するように構成されたセンサ部と、前記静電容量を前記物理量の計測値に変換するように構成されたプロセッサと、前記プロセッサから出力された第1の周期信号を制御入力として、前記プロセッサ用の第1の電源電圧とは別の第2の電源電圧をスイッチングすることによって生成した第2の周期信号を出力するように構成されたアナログスイッチと、前記第2の周期信号から抽出した特定周波数の信号を前記センサ部への駆動信号として出力するように構成されたフィルタとを備えることを特徴とするものである
【0010】
また、本発明の静電容量型センサの1構成例において、前記フィルタは、バンドパスフィルタである。
また、本発明の静電容量型センサの1構成例において、前記フィルタは、ローパスフィルタとハイパスフィルタを組み合わせたものである。
また、本発明の静電容量型センサの1構成例は、前記駆動信号によって駆動される前記センサ部の出力から静電容量信号を検出するように構成された回路部をさらに備え、前記プロセッサは、前記静電容量信号を前記物理量の計測値に変換することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来より静電容量型センサに備えられているマイクロプロセッサを利用して信号発生器を実現するので、静電容量型センサの回路の実装面積とコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る静電容量型センサの信号発生器の構成を示すブロック図である。
図2図2は、矩形波信号の1例を示す波形図である。
図3図3は、矩形波信号の周波数成分を示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係る信号発生器のフィルタの1例を示す回路図である。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係る静電容量型センサのセンサ部の要部の構成を示す断面図である。
図6図6は、本発明の第2の実施例に係る信号発生器のフィルタの1例を示す回路図である。
図7図7は、本発明の第3の実施例に係る静電容量型センサの信号発生器の構成を示すブロック図である。
図8図8は、静電容量型センサの回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の原理]
センサ部の静電容量を圧力計測値に変換するマイクロプロセッサには、出力ポートが多数ある。この出力ポートの1つから周期信号(例えば矩形波)を出力させ、周期信号をフィルタリング処理して正弦波のみを取り出してセンサ部に印加する。これにより、正弦波生成のためのICが不要となるので、静電容量型センサの回路の実装面積とコストを削減することができる。
【0014】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る静電容量型センサの信号発生器の構成を示すブロック図であり、図8と同一の構成には同一の符号を付してある。なお、図1では、図8の電荷増幅回路102と検波回路103とローパスフィルタ104とAD変換器105とを回路部110として記載している。
【0015】
本実施例の信号発生器101aは、矩形波信号(第1の周期信号)を出力するマイクロプロセッサ106と、マイクロプロセッサ106のポートPOから出力された矩形波信号から抽出した特定周波数の信号をセンサ部100への駆動信号として出力するフィルタ107とから構成される。
【0016】
上記のとおり、回路部110のAD変換器によってデジタル信号に変換された静電容量信号は、マイクロプロセッサ106によって圧力計測値に変換される。マイクロプロセッサ106は、内部のメモリ(不図示)に格納されたプログラムに従って処理を実行する。本実施例では、マイクロプロセッサ106の機能として、基本周波数f0の矩形波信号を出力する機能が追加されるようにプログラムを設定しておく。図2は矩形波信号の1例を示す波形図である。図2の例では、基本周波数f0=10kHzの矩形波信号としている。
【0017】
図2に示した基本周波数f0=10kHzの矩形波信号をフーリエ級数展開すると、図3に示すようにf0の整数倍の周波数成分を有していることが分かる。基本周波数f0の信号と共にf0以外の周波数成分をセンサ部100に印加すると、静電容量信号にノイズが含まれてしまうため、圧力計測誤差の要因となる。そこで、フィルタ107によって基本周波数成分(図3の30で示す成分)のみを抽出させ、基本周波数f0の正弦波信号をセンサ部100に印加する。
【0018】
本実施例では、フィルタ107として、図4に示すようなバンドパスフィルタを用いる。このフィルタ107は、オペアンプU1と、抵抗R1~R3と、容量C1,C2とから構成される。
【0019】
図5は静電容量型センサのセンサ部100の要部の構成を示す断面図である。センサ部100の台座200の中央部には凹部が形成されている。この凹部が形成された台座200の面には、被測定媒体の圧力Pに応じて変形可能に構成されたダイアフラム201が接合されている。台座200の凹部は、ダイアフラム201と共に基準真空室202を形成する。
【0020】
台座200の基準真空室202側の面には固定電極203が形成され、ダイアフラム201の基準真空室202側の面には固定電極203と対向するように可動電極204が形成されている。こうして、固定電極203と可動電極204とがギャップを隔てて対向するように配置されている。ダイアフラム201が被測定媒体の圧力Pを受けて撓むと、可動電極204と固定電極203との間の間隔が変化し、可動電極204と固定電極203との間の静電容量CXが変化する。ダイアフラム201と台座200とは、例えばサファイアなどの絶縁体から構成されている。
【0021】
信号発生器101aから出力された正弦波信号は、センサ部100の第1の電極(例えば固定電極203)に印加される。センサ部100の第2の電極(例えば可動電極204)は、回路部110の電荷増幅回路に接続される。静電容量型センサの電荷増幅回路以降の構成は図8で説明したとおりである。
【0022】
以上のように、本実施例では、従来より静電容量型センサに備えられているマイクロプロセッサ106を利用して信号発生器を実現するので、静電容量型センサの回路の実装面積とコストを削減することができる。
【0023】
[第2の実施例]
第1の実施例では、信号発生器101aのフィルタ107としてバンドパスフィルタを用いているが、図6に示すようにローパスフィルタとハイパスフィルタを組み合わせた回路を用いてもよい。図6の例では、抵抗R4と容量C3がローパスフィルタを構成し、容量C4と抵抗R5がハイパスフィルタを構成している。
【0024】
[第3の実施例]
第1、第2の実施例では、マイクロプロセッサ106の出力にフィルタ107を直接接続している。しかしながら、マイクロプロセッサ106に供給される電源電圧VCCには他のデジタルICに起因するノイズが重畳しているため、マイクロプロセッサ106から出力される矩形波信号もノイズの多い信号となる。そこで、本実施例では、マイクロプロセッサ106とフィルタ107との間にアナログスイッチを挿入することにより、ノイズの小さい矩形波信号を生成する。
【0025】
図7は本実施例に係る静電容量型センサの信号発生器の構成を示すブロック図である。本実施例の信号発生器101bは、マイクロプロセッサ106と、フィルタ107と、マイクロプロセッサ106から出力された矩形波信号を制御入力として、デジタル回路用の電源電圧VCCとは別のアナログ回路用の電源電圧Vanをスイッチングすることによって生成した矩形波信号(第2の周期信号)をフィルタ107に出力するアナログスイッチ108とから構成される。
【0026】
アナログスイッチ108は、例えばマイクロプロセッサ106からの矩形波信号がHighのときオンし、マイクロプロセッサ106からの矩形波信号がLowのときオフする。こうして、アナログスイッチ108は、マイクロプロセッサ106から出力された矩形波信号を制御入力として、アナログ回路用の電源電圧Vanをスイッチング(オン/オフ)して矩形波信号に変換する。デジタル回路用の電源電圧VCCとは別のアナログ回路用の電源電圧Vanを用いることにより、ノイズの小さい矩形波信号をフィルタ107に供給することができる。
フィルタ107としては、第1の実施例、第2の実施例のいずれの構成を用いてもよい。
【0027】
こうして、本実施例では、フィルタ107からノイズの小さい正弦波信号をセンサ部100に供給することができ、圧力計測誤差を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、圧力センサ等の静電容量型センサに適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…センサ部、101a,101b…信号発生器、102…電荷増幅回路、103…検波回路、104…ローパスフィルタ、105…AD変換器、106…マイクロプロセッサ、107…フィルタ、108…アナログスイッチ、110…回路部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8