(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】キャビン部とリアボディ部との封止構造
(51)【国際特許分類】
B62D 33/06 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
B62D33/06 D
(21)【出願番号】P 2021066949
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】西田 孝秀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀明
(72)【発明者】
【氏名】小武海 重三郎
(72)【発明者】
【氏名】宮原 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩平
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177731(JP,A)
【文献】特開2003-231464(JP,A)
【文献】米国特許第05004293(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/06
B61D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その後端に開口したキャビン開口部を有するキャビン部と、
その前端に開口したリアボディ開口部を有し、前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部とを介して前記キャビン部の内部とその内部とが連通するリアボディ部と、
前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部との間を封止しつつ、前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部とを繋ぐ幌部材と、
を備え、
前記幌部材は、
前記キャビン開口部では、前記キャビン開口部の内周面に配置されたキャビンシール部材と、前記キャビンシール部材よりも前記キャビン開口部の内周面から離れた位置に配置されたキャビンリテーナ部材との間で、前記キャビンシール部材により前記キャビン開口部の内周面と前記幌部材との間を封止されつつ固定され、
前記リアボディ開口部では、前記リアボディ開口部の内周面に配置されたリアボディシール部材と、前記リアボディシール部材よりも前記リアボディ開口部の内周面から離れた位置に配置されたリアボディリテーナ部材との間で、前記リアボディシール部材により前記リアボディ開口部の内周面と前記幌部材との間を封止されつつ固定され
、
前記幌部材、前記キャビンシール部材及び前記リアボディシール部材はシール部として互いに一体化されている、キャビン部とリアボディ部との封止構造。
【請求項2】
前記シール部は、前記キャビン開口部及び前記リアボディ開口部の上部及び両方の側部に配置される上方シール部と、前記キャビン開口部及び前記リアボディ開口部の下部に配置される下方シール部と、前記上方シール部と前記下方シール部との間に架け渡される繋ぎシール部とに分割されている、請求項
1に記載のキャビン部とリアボディ部との封止構造。
【請求項3】
その後端に開口したキャビン開口部を有するキャビン部と、
その前端に開口したリアボディ開口部を有し、前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部とを介して前記キャビン部の内部とその内部とが連通するリアボディ部と、
前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部との間を封止しつつ、前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部とを繋ぐ幌部材と、
を備え、
前記幌部材は、
前記キャビン開口部では、前記キャビン開口部の内周面に配置されたキャビンシール部材と、前記キャビンシール部材よりも前記キャビン開口部の内周面から離れた位置に配置されたキャビンリテーナ部材との間で、前記キャビンシール部材により前記キャビン開口部の内周面と前記幌部材との間を封止されつつ固定され、
前記リアボディ開口部では、前記リアボディ開口部の内周面に配置されたリアボディシール部材と、前記リアボディシール部材よりも前記リアボディ開口部の内周面から離れた位置に配置されたリアボディリテーナ部材との間で、前記リアボディシール部材により前記リアボディ開口部の内周面と前記幌部材との間を封止されつつ固定され、
前記キャビンリテーナ部材は、前記キャビン開口部の上部に配置される上方キャビンリテーナ部材と、前記キャビン開口部の下部に配置される下方キャビンリテーナ部材と、前記キャビン開口部の側部に配置され、前記上方キャビンリテーナ部材と前記下方キャビンリテーナ部材との間に架け渡される一対の側方キャビンリテーナ部材とに分割されている
、キャビン部とリアボディ部との封止構造。
【請求項4】
その後端に開口したキャビン開口部を有するキャビン部と、
その前端に開口したリアボディ開口部を有し、前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部とを介して前記キャビン部の内部とその内部とが連通するリアボディ部と、
前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部との間を封止しつつ、前記キャビン開口部と前記リアボディ開口部とを繋ぐ幌部材と、
を備え、
前記幌部材は、
前記キャビン開口部では、前記キャビン開口部の内周面に配置されたキャビンシール部材と、前記キャビンシール部材よりも前記キャビン開口部の内周面から離れた位置に配置されたキャビンリテーナ部材との間で、前記キャビンシール部材により前記キャビン開口部の内周面と前記幌部材との間を封止されつつ固定され、
前記リアボディ開口部では、前記リアボディ開口部の内周面に配置されたリアボディシール部材と、前記リアボディシール部材よりも前記リアボディ開口部の内周面から離れた位置に配置されたリアボディリテーナ部材との間で、前記リアボディシール部材により前記リアボディ開口部の内周面と前記幌部材との間を封止されつつ固定され、
前記リアボディリテーナ部材は、前記リアボディ開口部の上部に配置される上方リアボディリテーナ部材と、前記リアボディ開口部の下部に配置される下方リアボディリテーナ部材と、前記リアボディ開口部の側部に配置され、前記上方リアボディリテーナ部材と前記下方リアボディリテーナ部材との間に架け渡される一対の側方リアボディリテーナ部材とに分割されている
、キャビン部とリアボディ部との封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビン部とリアボディ部との封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車等において、運転席及び助手席を有するキャビン部の内部と荷室を有するリアボディ部の内部とが互いに連通するキャビン部とリアボディ部との連結構造(ウォークスルー)が知られている。例えば、特許文献1には、キャビン部とリアボディ部との間を覆う幌部材が、キャビン部に取り付けられたブラケットと、リアボディ部に取り付けられたブラケットとを介して固定されている構造が開示されている。
【0003】
特許文献1の構造では、キャビン部に取り付けられ、リアボディ部から離間した囲み部材によって幌部材は覆われている。リアボディ部から離間した囲み部材とリアボディ部との間から通過した雨水は、リアボディ部に取り付けられたブラケットにより受け止められて、自動車の側端側に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キャビン部とリアボディ部との間を自動車の外部の雨水等から封止する封止構造では、単純な構造によりキャビン部とリアボディ部との間を封止できる構造が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、単純な構造によりキャビン部とリアボディ部との間を封止できるキャビン部とリアボディ部との封止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その後端に開口したキャビン開口部を有するキャビン部と、その前端に開口したリアボディ開口部を有し、キャビン開口部とリアボディ開口部とを介してキャビン部の内部とその内部とが連通するリアボディ部と、キャビン開口部とリアボディ開口部との間を封止しつつ、キャビン開口部とリアボディ開口部とを繋ぐ幌部材とを備え、幌部材は、キャビン開口部では、キャビン開口部の内周面に配置されたキャビンシール部材と、キャビンシール部材よりもキャビン開口部の内周面から離れた位置に配置されたキャビンリテーナ部材との間で、キャビンシール部材によりキャビン開口部の内周面と幌部材との間を封止されつつ固定され、リアボディ開口部では、リアボディ開口部の内周面に配置されたリアボディシール部材と、リアボディシール部材よりもリアボディ開口部の内周面から離れた位置に配置されたリアボディリテーナ部材との間で、リアボディシール部材によりリアボディ開口部の内周面と幌部材との間を封止されつつ固定されているキャビン部とリアボディ部との封止構造である。
【0008】
この構成によれば、キャビン部のキャビン開口部とリアボディ部のリアボディ開口部との間を封止しつつキャビン開口部とリアボディ開口部とを繋ぐ幌部材を備えたキャビン部とリアボディ部との封止構造において、幌部材は、キャビン開口部では、キャビン開口部の内周面に配置されたキャビンシール部材と、キャビンシール部材よりもキャビン開口部の内周面から離れた位置に配置されたキャビンリテーナ部材との間で、キャビンシール部材によりキャビン開口部の内周面と幌部材との間を封止されつつ固定され、リアボディ開口部では、リアボディ開口部の内周面に配置されたリアボディシール部材と、リアボディシール部材よりもリアボディ開口部の内周面から離れた位置に配置されたリアボディリテーナ部材との間で、リアボディシール部材によりリアボディ開口部の内周面と幌部材との間を封止されつつ固定されているため、単純な構造によりキャビン部とリアボディ部との間を封止できる。
【0009】
この場合、幌部材、キャビンシール部材及びリアボディシール部材はシール部として互いに一体化されていることが好適である。
【0010】
この構成によれば、幌部材、キャビンシール部材及びリアボディシール部材はシール部として互いに一体化されているため、シール部のキャビン開口部及びリアボディ開口部への組付けが容易である。
【0011】
また、シール部は、キャビン開口部及びリアボディ開口部の上部及び両方の側部に配置される上方シール部と、キャビン開口部及びリアボディ開口部の下部に配置される下方シール部と、上方シール部と下方シール部との間に架け渡される繋ぎシール部とに分割されていることが好適である。
【0012】
この構成によれば、キャビン開口部とリアボディ開口部との間を自動車の外部の雨水等から確実に封止するために重要なキャビン開口部及びリアボディ開口部の上部及び両方の側部に配置される上方シール部を一体に形成することによって、キャビン開口部とリアボディ開口部との間を自動車の外部の雨水等から確実に封止できる。また、シール部を、上方シール部と、下方シール部と、上方シール部と下方シール部との間に架け渡される繋ぎシール部とに分割することによって、シール部のキャビン開口部及びリアボディ開口部への組付け時に、キャビン開口部及びリアボディ開口部の形状のバラツキに対応し易い。
【0013】
また、キャビンリテーナ部材は、キャビン開口部の上部に配置される上方キャビンリテーナ部材と、キャビン開口部の下部に配置される下方キャビンリテーナ部材と、キャビン開口部の側部に配置され、上方キャビンリテーナ部材と下方キャビンリテーナ部材との間に架け渡される一対の側方キャビンリテーナ部材とに分割されていることが好適である。
【0014】
この構成によれば、最も長い範囲を固定する側方キャビンリテーナ部材は、上方キャビンリテーナ部材と下方キャビンリテーナ部材との間に架け渡されるため、幌部材、キャビンシール部材及びキャビンリテーナ部材のキャビン開口部への組付け時に、キャビン開口部の形状のバラツキに対応し易い。
【0015】
また、リアボディリテーナ部材は、リアボディ開口部の上部に配置される上方リアボディリテーナ部材と、リアボディ開口部の下部に配置される下方リアボディリテーナ部材と、リアボディ開口部の側部に配置され、上方リアボディリテーナ部材と下方リアボディリテーナ部材との間に架け渡される一対の側方リアボディリテーナ部材とに分割されていることが好適である。
【0016】
この構成によれば、最も長い範囲を固定する側方リアボディリテーナ部材は、上方リアボディリテーナ部材と下方リアボディリテーナ部材との間に架け渡されるため、幌部材、リアボディシール部材及びリアボディリテーナ部材のリアボディ開口部への組付け時に、リアボディ開口部の形状のバラツキに対応し易い。
【発明の効果】
【0017】
本発明のキャビン部とリアボディ部との封止構造によれば、単純な構造によりキャビン部とリアボディ部との間を封止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るキャビン部とリアボディ部との封止構造を自動車の外部から視た斜視図である。
【
図2】実施形態に係るキャビン部とリアボディ部との封止構造を自動車の内部から視た斜視図である。
【
図3】シール部、キャビンリテーナ部材及びリアボディリテーナ部材を示す斜視図である。
【
図4】幌部材、キャビンシール部材、キャビンリテーナ部材、リアボディシール部材及びリアボディリテーナ部材の基本的な配置を示す縦断面図である。
【
図5】上方シール部材、上方キャビンリテーナ部材及び上方リアボディリテーナ部材を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るキャビン部とリアボディ部との封止構造について、図面を用いて詳細に説明する。本実施形態のキャビン部とリアボディ部との封止構造は、例えば、貨物自動車等に適用される。
図1に示されるように、本実施形態のキャビン部とリアボディ部との封止構造1は、運転席及び助手席を有するキャビン部2と荷室を有するリアボディ部3とを備える。キャビン部2とリアボディ部3とは、それぞれ別体として製造され、自動車の車台に別々に搭載されてから、互いに連結される。リアボディ部3は、その前端に前門枠4を有する。キャビン部2とリアボディ部3とは、前門枠4を介して連結されている。
【0020】
図2に示されるように、キャビン部2は、その後端に開口したキャビン開口部6を有する。キャビン開口部6は、上部15、側部17及び下部19を有する。リアボディ部3は、その前端に開口したリアボディ開口部7を有する。リアボディ開口部7は、上部16、側部18及び下部20を有する。リアボディ部3は、キャビン開口部6とリアボディ開口部7とを介してキャビン部2の内部とその内部とが連通している(ウォークスルー)。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、封止構造1は、キャビン開口部6とリアボディ開口部7との間を封止しつつ、キャビン開口部6とリアボディ開口部7とを繋ぐ幌部材5を備える。幌部材5は、例えば、塩化ビニル等の合成樹脂で被覆された防水性を有する布である。幌部材5は、柔軟性を有し、屈曲自在である。
【0022】
図2、
図3、
図4及び
図5、特に
図4に示されるように、 キャビン開口部6とリアボディ開口部7とは、互いに対向しつつ離隔している。キャビン開口部6の内周面8と、リアボディ開口部7の内周面11とは、互いに対応した形状であって、互いにキャビン部2及びリアボディ部3の前後方向に平行に延在している。
【0023】
幌部材5は、キャビン開口部6では、キャビン開口部6の内周面8に配置されたキャビンシール部材9と、キャビンシール部材9よりもキャビン開口部6の内周面8から離れた位置に配置されたキャビンリテーナ部材10との間で、キャビンシール部材9によりキャビン開口部6の内周面8と幌部材5との間を封止されつつ固定されている。幌部材5は、リアボディ開口部7では、リアボディ開口部7の内周面11に配置されたリアボディシール部材12と、リアボディシール部材12よりもリアボディ開口部7の内周面11から離れた位置に配置されたリアボディリテーナ部材13との間で、リアボディシール部材12によりリアボディ開口部7の内周面11と幌部材5との間を封止されつつ固定されている。
【0024】
幌部材5は、キャビン開口部6とリアボディ開口部7との距離よりもキャビン部2及びリアボディ部3の前後方向の長さが長く、弛んだ状態で配置されている。幌部材5、キャビンシール部材9、キャビンリテーナ部材10、リアボディシール部材12及びリアボディリテーナ部材13は、キャビン開口部6の内周面8及びリアボディ開口部7の内周面11の全周に亘って配置されている。
【0025】
キャビンシール部材9及びリアボディシール部材12は、例えば、厚さ数mm程度のゴムの板材である。キャビンリテーナ部材10及びリアボディリテーナ部材13は、例えば、厚さ数mm程度の金属の板材である。
図3に示されるように、幌部材5、キャビンシール部材9及びリアボディシール部材12はシール部14として互いに一体化されている。さらに具体的には、
図2及び
図3に示されるように、シール部14は、キャビン開口部6及びリアボディ開口部7の上部15,16及び両方の側部17,18に配置される上方シール部21と、キャビン開口部6及びリアボディ開口部7の下部19,20に配置される下方シール部22と、上方シール部21と下方シール部22との間に架け渡される繋ぎシール部23とに分割されている。
【0026】
キャビンリテーナ部材10は、キャビン開口部6の上部15に配置される上方キャビンリテーナ部材24と、キャビン開口部の下部19に配置される下方キャビンリテーナ部材25と、キャビン開口部6の側部17に配置され、上方キャビンリテーナ部材24と下方キャビンリテーナ部材25との間に架け渡される一対の側方キャビンリテーナ部材26とに分割されている。
【0027】
本実施形態では、側方キャビンリテーナ部材26のみが上方シール部21、下方シール部22及び繋ぎシール部23と別体である。上方キャビンリテーナ部材24は、上方シール部21の上部と互いに一体化されている。下方キャビンリテーナ部材25は、上方シール部21の下部、下方シール部22及び繋ぎシール部23と互いに一体化されている。上方シール部21の上部の上方キャビンリテーナ部材24と、上方シール部21の下部の下方キャビンリテーナ部材25とは、後に取り付けられる側方キャビンリテーナ部材26のための間隔が空けられている。
【0028】
リアボディリテーナ部材13は、リアボディ開口部7の上部16に配置される上方リアボディリテーナ部材27と、リアボディ開口部7の下部20に配置される下方リアボディリテーナ部材28と、リアボディ開口部7の側部18に配置され、上方リアボディリテーナ部材27と下方リアボディリテーナ部材28との間に架け渡される一対の側方リアボディリテーナ部材29とに分割されている。
【0029】
本実施形態では、側方リアボディリテーナ部材29のみが上方シール部21、下方シール部22及び繋ぎシール部23と別体である。上方リアボディリテーナ部材27は、上方シール部21の上部と互いに一体化されている。下方リアボディリテーナ部材28は、上方シール部21の下部、下方シール部22及び繋ぎシール部23と互いに一体化されている。上方シール部21の上部の上方リアボディリテーナ部材27と、上方シール部21の下部の下方リアボディリテーナ部材28とは、後に取り付けられる側方リアボディリテーナ部材29のための間隔が空けられている。
【0030】
上方シール部21のキャビンシール部材9と、繋ぎシール部23のキャビンシール部材9とが内周面8を覆う範囲は互いに重複している。上方シール部21のリアボディシール部材12と、繋ぎシール部23のリアボディシール部材12とが内周面11を覆う範囲は互いに重複している。下方シール部22のキャビンシール部材9と、繋ぎシール部23のキャビンシール部材9とが内周面8を覆う範囲は互いに重複している。下方シール部22のリアボディシール部材12と、繋ぎシール部23のリアボディシール部材12とが内周面11を覆う範囲は互いに重複している。
【0031】
一方、上方シール部21の下部の下方キャビンリテーナ部材25と、繋ぎシール部23の下方キャビンリテーナ部材25とが内周面8を覆う範囲は互いに重複していてもよく、全く重複していなくてもよい。上方シール部21の下部の下方リアボディリテーナ部材28と、繋ぎシール部23の下方リアボディリテーナ部材28とが内周面11を覆う範囲は互いに重複していてもよく、全く重複していなくてもよい。
【0032】
下方シール部22の下方キャビンリテーナ部材25と、繋ぎシール部23の下方キャビンリテーナ部材25とが内周面8を覆う範囲は互いに重複していてもよく、全く重複していなくてもよい。下方シール部22の下方リアボディリテーナ部材28と、繋ぎシール部23の下方リアボディリテーナ部材28とが内周面11を覆う範囲は互いに重複していてもよく、全く重複していなくてもよい。
【0033】
上方シール部21の上部の上方キャビンリテーナ部材24と、側方キャビンリテーナ部材26とが内周面8を覆う範囲は互いに重複していてもよく、全く重複していなくてもよい。上方シール部21の上部の上方リアボディリテーナ部材27と、側方リアボディリテーナ部材29とが内周面11を覆う範囲は互いに重複していてもよく、全く重複していなくてもよい。
【0034】
上方シール部21の下部の下方キャビンリテーナ部材25と、側方キャビンリテーナ部材26とが内周面8を覆う範囲は互いに重複していてもよく、全く重複していなくてもよい。上方シール部21の下部の下方リアボディリテーナ部材28と、側方リアボディリテーナ部材29とが内周面11を覆う範囲は互いに重複していてもよく、全く重複していなくてもよい。
【0035】
図5及び
図6に、
図3の部位Aを代表としてさらに詳細に示されるように、キャビン部2は、上方にルーフ30を有する。幌部材5は、キャビン開口部6では、キャビン開口部6の内周面8に配置されたキャビンシール部材9と、キャビンシール部材9よりもキャビン開口部6の内周面8から離れた位置に配置された上方キャビンリテーナ部材24との間で、キャビンシール部材9によりキャビン開口部6の内周面8と幌部材5との間を封止されつつ、上方キャビンリテーナ部材24、幌部材5、キャビンシール部材9及びキャビン部2の上部15のボルト孔部を挿通されたボルト31とナット32とにより固定されている。
【0036】
幌部材5は、リアボディ開口部7では、リアボディ開口部7の内周面11に配置されたリアボディシール部材12と、リアボディシール部材12よりもリアボディ開口部7の内周面11から離れた位置に配置された上方リアボディリテーナ部材27との間で、リアボディシール部材12によりリアボディ開口部7の内周面11と幌部材5との間を封止されつつ、上方リアボディリテーナ部材27、幌部材5、リアボディシール部材12及びリアボディ部3の上部16のボルト孔部を挿通されたボルト31とナット32とにより固定されている。
【0037】
貨物自動車の製造の際には、キャビン部2が貨物自動車の車台に搭載され、次いでリアボディ部3が車台に搭載される。このときに、キャビン部2及びリアボディ部3が車台に搭載される位置に、前後方向に10mm程度、横方向及び上下方向に数mm程度のバラツキが生じる。また、キャビン開口部6及びリアボディ開口部7の形状も数mm程度のバラツキを有する。キャビン部2及びリアボディ部3が車台に搭載された後に、幌部材5、キャビンシール部材9、キャビンリテーナ部材10、リアボディシール部材12及びリアボディリテーナ部材13がキャビン開口部6及びリアボディ開口部7に組付けられ、幌部材5によりキャビン部2とリアボディ部3とが連結される。
【0038】
幌部材5等のキャビン開口部6及びリアボディ開口部7への組付けは、例えば、以下のようにして実行される。上方キャビンリテーナ部材24、上方リアボディリテーナ部材27、下方キャビンリテーナ部材25及び下方リアボディリテーナ部材28が一体化された上方シール部21が、ボルト31により、キャビン開口部6の上部15及びリアボディ開口部7の上部16に取り付けられる。下方キャビンリテーナ部材25及び下方リアボディリテーナ部材28が一体化された下方シール部22が、ボルト31により、キャビン開口部6の下部19及びリアボディ開口部7の下部20に組付けられる。
【0039】
上方シール部21及び下方シール部22のキャビン開口部6及びリアボディ開口部7への組付け後に、上方シール部21と下方シール部22との間に架け渡されるように、下方キャビンリテーナ部材25及び下方リアボディリテーナ部材28が一体化された繋ぎシール部23が、ボルト31により、キャビン開口部6及びリアボディ開口部7に組付けられる。上方シール部21と、繋ぎシール部23との重複部分は、適宜、接着剤等により互いに接着される。また、下方シール部22と、繋ぎシール部23との重複部分は、適宜、接着剤等により互いに接着される。これにより、キャビン開口部6及びリアボディ開口部7の形状及び位置のバラツキに対応できる。なお、繋ぎシール部23の組付け後に、上方シール部21及び下方シール部22が組付けられてもよい。
【0040】
上方シール部21、下方シール部22及び繋ぎシール部23のキャビン開口部6及びリアボディ開口部7への組付け後に、上方シール部21において、キャビン開口部6及びリアボディ開口部7の内周面8,11の最も長い範囲である側部17,18を覆う部位の余分な長さの部位、つまり、上方シール部21の上部の上方キャビンリテーナ部材24と上方シール部21の下部の下方キャビンリテーナ部材25との間の部位及び上方シール部21の上部の上方リアボディリテーナ部材27と上方シール部21の下部の下方リアボディリテーナ部材28との間の部位は、適宜畳み込まれる等により調整される。
【0041】
上方シール部21における側部17,18を覆う部位の余分な長さの部位が調整された後に、側方キャビンリテーナ部材26及び側方リアボディリテーナ部材29が、ボルト31により、上方シール部21を介して、側部17,18、つまり、上方シール部21の上部の上方キャビンリテーナ部材24と上方シール部21の下部の下方キャビンリテーナ部材25との間の部位及び上方シール部21の上部の上方リアボディリテーナ部材27と上方シール部21の下部の下方リアボディリテーナ部材28との間の部位に取り付けられる。これにより、キャビン開口部6及びリアボディ開口部7の内周面8,11の最も長い範囲である側部17,18の形状及び位置のバラツキに対応できる。
【0042】
以下、本実施形態のキャビン部2とリアボディ部3との封止構造1の作用及び効果について説明する。キャビン部の内部とリアボディ部の内部とが互いに連通する構造では、キャビン部とリアボディ部とを一体で作る場合、多くの投資と専用設計が必要になる為、既存のキャビン部を一部使い、リアボディ部は箱型の汎用性の高いものを別体で作る構造が、少量生産の場合は採用される。一方、キャビン部とリアボディ部とを別体で作る構造では、キャビン部とリアボディ部とを隙間無く繋ぎ、キャビン部とリアボディ部との間を自動車の外部の雨水等から封止する封止構造が必要となる。しかし、上述のように、キャビン部及びリアボディ部が車台に搭載される位置にはバラツキが生じるため、当該バラツキを考慮した構造が必要である。
【0043】
例えば、当該バラツキを吸収するために、幌部材を強固な剛体の前後の鉄製フレームで保持する構造が考えられる。しかし、この構造では、鉄道車両の連結部と同様に、重量が多大となり、組付けに多くの時間が必要なため、改造等の少量生産車でしか対応が困難となる。また、この構造では、車室内のスペースを前後両側の鉄製フレームが占め、車室内のスペースを有効活用できない。
【0044】
一方、本実施形態によれば、キャビン部2のキャビン開口部6とリアボディ部3のリアボディ開口部7との間を封止しつつキャビン開口部6とリアボディ開口部7とを繋ぐ幌部材5を備えたキャビン部2とリアボディ部3との封止構造1において、幌部材5は、キャビン開口部6では、キャビン開口部6の内周面8に配置されたキャビンシール部材9と、キャビンシール部材9よりもキャビン開口部6の内周面8から離れた位置に配置されたキャビンリテーナ部材10との間で、キャビンシール部材9によりキャビン開口部6の内周面8と幌部材5との間を封止されつつ固定される。
【0045】
一方、幌部材5は、リアボディ開口部7では、リアボディ開口部7の内周面11に配置されたリアボディシール部材12と、リアボディシール部材12よりもリアボディ開口部7の内周面11から離れた位置に配置されたリアボディリテーナ部材13との間で、リアボディシール部材12によりリアボディ開口部7の内周面11と幌部材5との間を封止されつつ固定されている。このため、単純な構造によりキャビン部2とリアボディ部3との間を封止できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、幌部材5、キャビンシール部材9及びリアボディシール部材12はシール部14として互いに一体化されているため、シール部14のキャビン開口部6及びリアボディ開口部7への組付けが容易である。
【0047】
また、本実施形態によれば、キャビン開口部6とリアボディ開口部7との間を自動車の外部の雨水等から確実に封止するために重要なキャビン開口部6及びリアボディ開口部7の上部15,16及び両方の側部17,18に配置される上方シール部21を一体に形成することによって、キャビン開口部6とリアボディ開口部7との間を自動車の外部の雨水等から確実に封止できる。また、シール部14を、上方シール部21と、下方シール部22と、上方シール部21と下方シール部22との間に架け渡される繋ぎシール部23とに分割することによって、シール部14のキャビン開口部6及びリアボディ開口部7への組付け時に、キャビン開口部6及びリアボディ開口部7の形状及び位置のバラツキに対応し易い。
【0048】
また、本実施形態によれば、最も長い範囲を固定する側方キャビンリテーナ部材26は、上方キャビンリテーナ部材24と下方キャビンリテーナ部材25との間に架け渡されるため、幌部材5、キャビンシール部材9及びキャビンリテーナ部材10のキャビン開口部6への組付け時に、キャビン開口部6の形状及び位置のバラツキに対応し易い。
【0049】
また、本実施形態によれば、最も長い範囲を固定する側方リアボディリテーナ部材29は、上方リアボディリテーナ部材27と下方リアボディリテーナ部材28との間に架け渡されるため、幌部材、リアボディシール部材12及びリアボディリテーナ部材13のリアボディ開口部7への組付け時に、リアボディ開口部7の形状及び位置のバラツキに対応し易い。
【0050】
つまり、本実施形態では、キャビン部2とリアボディ部3とを、幌部材5と幌部材5を保持するキャビンリテーナ部材10及びリアボディリテーナ部材13とで、車室内側から外側に向けて締結し、全周隙間なく繋ぐことにより、車室内と車室外とを確実に遮断し、且つキャビン開口部6及びリアボディ開口部7の形状及び位置のバラツキを吸収できる。必要なバラツキの吸収分に対応した最小限の幌部材5と幌部材5を保持するキャビンリテーナ部材10及びリアボディリテーナ部材13とによってキャビン部2とリアボディ部3とを全周繋ぐ単純な封止構造1により、封止構造1を軽量で安価にできる。また、本実施形態の封止構造1は、組付け易く、少量生産ベースにおける量産性を確保できる。本実施形態の封止構造1は、車室内のスペースで占める割合を低減できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【符号の説明】
【0052】
1…封止構造、2…キャビン部、3…リアボディ部、4…前門枠、5…幌部材、6…キャビン開口部、7…リアボディ開口部、8…内周面、9…キャビンシール部材、10…キャビンリテーナ部材、11…内周面、12…リアボディシール部材、13…リアボディリテーナ部材、14…シール部、15,16…上部、17,18…側部、19,20…下部、21…上方シール部、22…下方シール部、23…繋ぎシール部、24…上方キャビンリテーナ部材、25…下方キャビンリテーナ部材、26…側方キャビンリテーナ部材、27…上方リアボディリテーナ部材、28…下方リアボディリテーナ部材、29…側方リアボディリテーナ部材、30…ルーフ、31…ボルト、32…ナット。