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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/08 20060101AFI20250304BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20250304BHJP
   F25D 11/02 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
F25D17/08 310
F25D11/00 101B
F25D11/02 L
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021146295
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039235
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】川本 修平
(72)【発明者】
【氏名】元井 啓順
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072336(JP,A)
【文献】特開2010-025532(JP,A)
【文献】特開2018-013267(JP,A)
【文献】登録実用新案第3111716(JP,U)
【文献】特開2013-050229(JP,A)
【文献】特開2002-235976(JP,A)
【文献】特開2018-179469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0163290(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の容器が内部に設けられている貯蔵室と、
複数段の前記容器のうち最も小さい容器よりも大きい容器である急冷対象容器と、
前記急冷対象容器の上方において前記急冷対象容器内の温度を検知可能な状態で配置されている急冷用温度検知部と、
前記急冷用温度検知部が検知する温度が所定条件を満たした場合に、前記急冷対象容器に対する冷却強度を標準時における冷却強度よりも高くする急冷制御部と、
を備え、
前記急冷対象容器内の一部が急冷対象領域として設定されているとともに、前記急冷対象容器内のうち前記急冷対象領域とは異なる領域が非急冷対象領域として設定されており
前記急冷対象領域、熱伝導率の高い冷却促進部材が備えられ、前記非急冷対象領域よりも冷却が促進される領域であり、
前記急冷対象領域および前記非急冷対象領域の何れにも貯蔵物を収容可能であり、
前記冷却促進部材は、前記急冷対象容器の底面のうち前記急冷対象領域として設定されている部分を覆う大きさであり、
前記急冷対象容器は、前記急冷対象容器の底面のうち前記非急冷対象領域に前記冷却促進部材が配置されることを抑制する構造物を備えており、
前記急冷対象領域は、前記非急冷対象領域よりも大きく、
前記構造物は、前記急冷対象領域と前記非急冷対象領域との間に設けられている冷蔵庫。
【請求項2】
複数段の容器が内部に設けられている貯蔵室と、
複数段の前記容器のうち最も小さい容器よりも大きい容器である急冷対象容器と、
前記急冷対象容器の上方において前記急冷対象容器内の温度を検知可能な状態で配置されている急冷用温度検知部と、
前記急冷用温度検知部が検知する温度が所定条件を満たした場合に、前記急冷対象容器に対する冷却強度を標準時における冷却強度よりも高くする急冷制御部と、
を備え、
前記急冷対象容器内の一部が急冷対象領域として設定されているとともに、前記急冷対象容器内のうち前記急冷対象領域とは異なる領域が非急冷対象領域として設定されており
前記急冷対象領域、熱伝導率の高い冷却促進部材が備えられ、前記非急冷対象領域よりも冷却が促進される領域であり、
前記急冷対象領域および前記非急冷対象領域の何れにも貯蔵物を収容可能であり、
前記冷却促進部材は、前記急冷対象容器の底面のうち前記急冷対象領域として設定されている部分を覆う大きさであり、
前記急冷対象容器は、前記急冷対象容器の底面のうち前記非急冷対象領域に前記冷却促進部材が配置されることを抑制する構造物を備えており、
前記急冷対象領域は、前記非急冷対象領域よりも小さく、
前記構造物として、
前記急冷対象領域と前記非急冷対象領域との間に設けられている第1構造物と、
前記非急冷対象領域に設けられている第2構造物と、
を備えている冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵室の上壁部に断熱材を備えている請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記急冷制御部は、前記急冷用温度検知部が検知する温度が所定条件を満たした場合に、前記急冷対象領域に対する冷却強度を標準時における冷却強度よりも高くする請求項1から3の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記急冷対象領域に冷気を案内する冷気案内部を備えている請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記急冷対象容器は、複数段の前記容器のうち最上段の容器である請求項1からの何れか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記急冷用温度検知部は、前記貯蔵室の上壁部の下面に設けられている請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記急冷用温度検知部は、前記急冷対象容器の前後方向および左右方向における中央部の上方に配置されている請求項またはに記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記急冷用温度検知部は、前記急冷対象領域の前後方向および左右方向における中央部の上方に配置されている請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記急冷対象領域に向けられた第1冷気吹出口と、
前記急冷対象領域以外の領域に向けられた第2冷気吹出口と、
前記第1冷気吹出口からの冷気の吹き出し量、および、前記第2冷気吹出口からの冷気の吹き出し量を調整する吹出量調整部と、
を備え、
前記吹出量調整部は、前記急冷制御部が前記急冷対象領域に対する冷却強度を標準時における冷却強度よりも高くする場合には、前記第1冷気吹出口からの冷気の吹き出し量を維持しつつ、前記第2冷気吹出口からの冷気の吹き出し量を抑制する請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記急冷用温度検知部とは異なる温度検知部であって、前記貯蔵室内全体の温度を検知する全体用温度検知部を備えている請求項1から10の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、貯蔵室の一例である冷凍室内を標準時よりも急速に冷却する急速冷凍機能を備えた冷蔵庫が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-19482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷蔵庫においては、冷凍室の内部に複数段の引き出し式の容器が備えられている。また、これら複数段の容器は、それぞれ大きさが異なっている。ここで、複数段の容器のうち比較的小さめの容器内を急速冷凍したい場合には、その容器の内容積が比較的小さいことから、迅速に冷却を行うことが可能である。しかしながら、複数段の容器のうち比較的大きめの容器内を急速冷凍したい場合には、その容器の内容積が比較的大きいことから、迅速に冷却を行うことが困難となる懸念がある。
【0005】
そこで、本実施形態は、貯蔵室内に設けられている複数段の容器のうち比較的大きめの容器を急冷対象容器とする場合であっても、その急冷対象容器内を迅速に冷却できるようにした冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る冷蔵庫は、複数段の容器が内部に設けられている貯蔵室と、複数段の前記容器のうち最も小さい容器よりも大きい容器である急冷対象容器と、前記急冷対象容器の上方において前記急冷対象容器内の温度を検知可能な状態で配置されている急冷用温度検知部と、前記急冷用温度検知部が検知する温度が所定条件を満たした場合に、前記急冷対象容器に対する冷却強度を標準時における冷却強度よりも高くする急冷制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る冷蔵庫の構成例を概略的に示す正面図
図2】第1実施形態に係る大冷凍室およびその周辺部分の構成例を概略的に示す縦断側面図
図3】第1実施形態に係る冷気ダクトの構成例を概略的に示す斜視図
図4】第1実施形態に係る冷蔵庫の制御系の構成例を概略的に示すブロック図
図5】第2実施形態に係る冷却板を備える上段容器の構成例を概略的に示す平面図
図6】第3実施形態に係る上段容器の構成例を概略的に示す平面図
図7】第4実施形態に係る冷却板を備える上段容器の構成例を概略的に示す平面図
図8】第4実施形態の変形例に係る冷却板を備える上段容器の構成例を概略的に示す平面図
図9】第4実施形態の変形例に係る上段容器の構成例を概略的に示す平面図
図10】第5実施形態に係る冷気ダクトの構成例を概略的に示す斜視図
図11】第6実施形態に係る冷気ダクトの構成例を概略的に示す斜視図
図12】変形実施形態に係る冷気ダクトの構成例を概略的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、冷蔵庫に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1に例示する冷蔵庫10は、その外郭を構成する矩形箱状の断熱箱体11の内部に複数の貯蔵室12,13,14,15,16を備えている。貯蔵室12,13,14,15,16の内部には、例えば食品類などといった各種の貯蔵物を貯蔵することが可能である。詳しい図示は省略するが、断熱箱体11は、内箱と外箱との間に断熱材を備えた構成である。断熱箱体11を構成する断熱材としては、例えば、真空断熱パネル、発泡ウレタン、断熱性材料を成形した断熱成形体など、種々の断熱材を適用することができる。
【0010】
貯蔵室12は、この場合、冷蔵温度帯に維持される冷蔵室である。以下、貯蔵室12を「冷蔵室12」と称する場合がある。貯蔵室13は、この場合、冷蔵温度帯に維持される野菜室である。以下、貯蔵室13を「野菜室13」と称する場合がある。貯蔵室14は、この場合、冷凍温度帯に維持される製氷室である。以下、貯蔵室14を「製氷室14」と称する場合がある。貯蔵室15は、この場合、冷凍温度帯に維持される小冷凍室である。以下、貯蔵室15を「小冷凍室15」と称する場合がある。貯蔵室16は、この場合、冷凍温度帯に維持される大冷凍室である。以下、貯蔵室16を「大冷凍室16」と称する場合がある。
【0011】
冷蔵室12は、冷蔵庫10が備える複数の貯蔵室12,13,14,15,16のうち最も上部に設けられた貯蔵室となっている。そして、野菜室13は、この冷蔵室12の下側に設けられており、且つ、断熱箱体11の上下方向における中央部に位置して設けられている。そして、製氷室14と小冷凍室15は、この野菜室13の下側に設けられており、且つ、断熱箱体11内において冷蔵庫10の横方向に沿って並んでいる。また、大冷凍室16は、断熱箱体11内において製氷室14および小冷凍室15の下側に設けられている。また、大冷凍室16は、冷蔵庫10が備える複数の貯蔵室12,13,14,15,16のうち最も下部に設けられた貯蔵室となっている。本実施形態において、大冷凍室16は、製氷室14および小冷凍室15との間に他の貯蔵室を介在することなく、これら製氷室14および小冷凍室15の直下に位置して設けられている。
【0012】
冷蔵室12の前面開口部は、左右方向に回動可能である、いわゆる観音開き式の2つの冷蔵室扉12D[L],12D[R]によって開閉されるようになっている。また、野菜室13の前面開口部は、前後方向に移動可能である引き出し式の野菜室扉13Dによって開閉されるようになっている。また、製氷室14の前面開口部は、前後方向に移動可能である引き出し式の製氷室扉14Dによって開閉されるようになっている。また、小冷凍室15の前面開口部は、前後方向に移動可能である引き出し式の小冷凍室扉15Dによって開閉されるようになっている。また、大冷凍室16の前面開口部は、前後方向に移動可能である引き出し式の大冷凍室扉16Dによって開閉されるようになっている。
【0013】
また、冷蔵庫10は、断熱箱体11の内部に上下仕切り部材21を備えている。上下仕切り部材21は、断熱箱体11内において、製氷室14と小冷凍室15との間を断熱箱体11の上下方向、換言すれば、断熱箱体11の縦方向あるいは高さ方向に沿って仕切っている。また、冷蔵庫10は、断熱箱体11の内部に横仕切り部材22を備えている。横仕切り部材22は、製氷室14および小冷凍室15と大冷凍室16との間を断熱箱体11の横方向、換言すれば、断熱箱体11の幅方向あるいは左右方向に沿って仕切っている。このように配置される横仕切り部材22は、製氷室14および小冷凍室15の下壁部を構成しているとともに、大冷凍室16の上壁部を構成している。
【0014】
次に、冷蔵庫10のうち大冷凍室16およびその周辺部分の構成例について詳細に説明する。図2に例示するように、大冷凍室16は、その前面が開放したほぼ矩形状の貯蔵室となっている。大冷凍室16の内部には、大型容器100が設けられている。大型容器100は、上面が開放したほぼ矩形の箱状をなしている。大型容器100は、大冷凍室扉16Dの裏面に取り付けられており、大冷凍室扉16Dとともに前後方向に引き出し可能に構成されている。
【0015】
また、大冷凍室16の内部には、複数段、この場合、3段の小型容器101,102,103が設けられている。小型容器101,102,103は、大型容器100の上方において、上下方向に沿って重ねられている。以下、最下段の小型容器101を「下段容器101」、中段の小型容器102を「中段容器102」、最上段の小型容器103を「上段容器103」と称する場合がある。
【0016】
下段容器101は、大型容器100の上部に単に載置されており、中段容器102は、下段容器101の上部に単に載置されており、上段容器103は、中段容器102の上部に単に載置されている構成となっている。よって、下段容器101は、大冷凍室扉16Dとともに大型容器100が前後方向に引き出されるときの勢いによって、あるいは、使用者による手動によって、前後方向に引き出し可能に構成されている。また、中段容器102は、下段容器101が前後方向に引き出されるときの勢いによって、あるいは、使用者による手動によって、前後方向に引き出し可能に構成されている。また、上段容器103は、中段容器102が前後方向に引き出されるときの勢いによって、あるいは、使用者による手動によって、前後方向に引き出し可能に構成されている。
【0017】
また、複数段の小型容器101,102,103について、それぞれの前後方向における底面の長さL1,L2,L3を比較すると、下段容器101は、複数段の小型容器101,102,103のうち前後方向における底面の長さL1が最も小さい容器となっている。よって、下段容器101は、最小容器の一例として定義することができる。
【0018】
また、上段容器103は、複数段の小型容器101,102,103のうち前後方向における底面の長さL3が最も大きい容器となっている。よって、上段容器103は、最大容器の一例として定義することができる。
【0019】
また、中段容器102は、複数段の小型容器101,102,103のうち前後方向における底面の長さL2が、下段容器101の長さL1と上段容器103の長さL3との中間の長さとなっている。よって、中段容器102は、中間容器の一例として定義することができる。
【0020】
また、上段容器103は、急冷対象容器の一例として備えられている。急冷対象容器の一例として備えられている上段容器103は、その前後方向における底面の長さL3が、複数段の小型容器101,102,103のうちで最も小さい容器である下段容器101の底面の長さL1よりも大きい容器となっている。
【0021】
以上の通り、複数段の小型容器101,102,103は、前後方向における底面の長さが上段の小型容器ほど大きい構成となっている。即ち、冷蔵庫10は、大冷凍室16の後方下部に位置して機械室128が設けられている構成となっている。そのため、大冷凍室16内においては、下段の小型容器ほど、機械室128の影響を受けやすく、従って、前後方向における底面の長さを大きくしにくい構成となっている。一方、大冷凍室16内においては、上段の小型容器ほど、機械室128の影響を受けにくく、従って、前後方向における底面の長さを大きくしやすい構成となっている。
【0022】
なお、複数段の小型容器101,102,103について、それぞれの上下方向における長さM1,M2,M3を比較すると、下段容器101は、複数段の小型容器101,102,103のうち上下方向における長さM1が最も大きい容器となっている。また、中段容器102は、複数段の小型容器101,102,103のうち上下方向における長さM2が最も小さい容器となっている。また、上段容器103は、複数段の小型容器101,102,103のうち上下方向における長さM3が下段容器101の長さM1と上段容器103の長さM3との中間の長さとなっている。また、複数段の小型容器101,102,103について、それぞれの左右方向における底面の長さは、ほぼ或いは完全に同等の長さとなっている。なお、複数段の小型容器101,102,103は、それぞれの左右方向における底面の長さが異なる構成であってもよい。
【0023】
また、大冷凍室16の内部には、急冷用温度センサー110が備えられている。急冷用温度センサー110は、急冷用温度検知部の一例であり、急冷対象容器の一例である上段容器103の上方において、少なくとも急冷対象容器以外の容器である下段容器101や中段容器102を介在しない状態で、且つ、上段容器103内の温度を検知可能な状態で配置されている。換言すれば、急冷用温度センサー110は、上段容器103内の温度検知以外の目的で設けられている他の物理的な構成要素を介在させることなく上段容器103に直接的に対向している。従って、急冷用温度センサー110は、上段容器103内の空気の温度を、他の物理的な構成要素に阻害されることなく直接的に検知可能となっている。
【0024】
なお、急冷用温度センサー110は、上段容器103内の温度検知以外の目的で設けられている他の物理的な構成要素を介在させることなく上段容器103に直接的に対向する構成であればよく、従って、急冷用温度センサー110と上段容器103との間には、温度検知の目的で設けられている構成要素や、温度検知に関連して設けられている構成要素、例えば、急冷用温度センサー110を覆うカバー部材、急冷用温度センサー110を取り付けるためのセンサー取付部などは介在していてもよい。また、例えば、大冷凍室16の上壁部を構成している横仕切り部材22の内部に急冷用温度センサー110を設ける場合には、急冷用温度センサー110と上段容器103との間に横仕切り部材22の少なくとも一部が介在することは許容される。
【0025】
以上の通り、本開示における「介在させることなく」は、急冷用温度センサー110と上段容器103との間に他の構成要素が全く存在しない構成のみを意図するものではなく、急冷用温度センサー110と上段容器103との間に介在する他の構成要素を極力少なくすることを意図するものである。そして、急冷用温度センサー110と上段容器103との間に介在する他の構成要素を皆無あるいは極力少なくすることよって、急冷用温度センサー110は、他の構成要素の影響を完全にあるいは極力受けることなく上段容器103内の温度を直接的に検知することが可能となる。これにより、上段容器103内の温度を急冷用温度センサー110によって精度良く検知することが可能となる。
【0026】
また、本開示においては、急冷用温度センサー110は、大冷凍室16の上壁部を構成している横仕切り部材22の下面に設けられている。また、急冷用温度センサー110は、大冷凍室16内における所定の収容位置に収容された収容状態にある上段容器103の前後方向および左右方向における中央部の上方に位置するように配置されている。
【0027】
また、横仕切り部材22の内部には、断熱材22aが備えられている。断熱材22aとしては、例えば、真空断熱パネル、発泡ウレタン、断熱性材料を成形した断熱成形体など、種々の断熱材を適用することができる。この場合、断熱材22aは、少なくとも、横仕切り部材22のうち小冷凍室15の下壁部を構成する部分の内部に設けられている。なお、断熱材22aは、横仕切り部材22のうち小冷凍室15の下壁部を構成する部分の内部だけでなく、横仕切り部材22のうち小冷凍室15の下壁部を構成する部分以外の部分の内部にも設けられていてもよい。
【0028】
また、大冷凍室16内の後部には、冷気ダクト120が設けられている。図3に例示するように、冷気ダクト120には、冷気吹出口121,122,123および冷気戻り口124,125が設けられている。冷気吹出口121,122,123は、冷気ダクト120の上下方向におけるほぼ中央部に設けられている。また、冷気吹出口121,122,123は、大冷凍室16内に備えられている上段容器103の上端よりも高い位置に設けられている。換言すれば、冷気吹出口121,122,123は、大冷凍室16内に備えられている全ての容器、この場合、大型容器100、下段容器101、中段容器102、上段容器103の何れの容器よりも高い位置に設けられている。
【0029】
冷気吹出口121は、冷気ダクト120の左右方向におけるほぼ中央部において、左右方向に長い矩形の長尺な開口を形成している。また、冷気吹出口121は、大冷凍室16内に備えられている上段容器103の左右方向におけるほぼ中央部に向かって開口している。
【0030】
冷気吹出口122は、冷気ダクト120の左右方向における一端側、この場合、冷蔵庫10の正面側から見て右側に設けられている。冷気吹出口122は、左右方向に長い矩形の長尺な開口を形成している。また、冷気吹出口122は、大冷凍室16内に備えられている上段容器103の左右方向における一端側、この場合、冷蔵庫10の正面側から見て右側の部分に向かって開口している。
【0031】
冷気吹出口123は、冷気ダクト120の左右方向における一端側、この場合、冷蔵庫10の正面側から見て左側に設けられている。冷気吹出口123は、左右方向に長い矩形の長尺な開口を形成している。また、冷気吹出口123は、大冷凍室16内に備えられている上段容器103の左右方向における他端側、この場合、冷蔵庫10の正面側から見て左側の部分に向かって開口している。
【0032】
なお、複数の冷気吹出口121,122,123の大きさや形状は、全て同じとしてもよいし、異ならせてもよい。また、複数の冷気吹出口121,122,123が設けられる高さ位置は、全て同じ高さとしてもよいし、異なる高さとしてもよい。また、複数の冷気吹出口121,122,123は、少なくとも1つが、大冷凍室16内に備えられている上段容器103よりも高い位置に設けられていればよい。
【0033】
冷気戻り口124,125は、冷気ダクト120の左右方向における両端部にそれぞれ設けられている。冷気戻り口124,125は、その全体が複数の冷気吹出口121,122,123よりも低い位置に設けられている。また、冷気戻り口124,125は、前方下部から後方上部に向かって徐々に上昇するように傾斜している。
【0034】
図2に例示するように、冷気ダクト120の裏面側には冷却空間126が設けられている。そして、冷気吹出口121,122,123は、何れも冷却空間126内に連通している。また、冷気戻り口124,125も、何れも冷却空間126内に連通している。
【0035】
また、図2に例示するように、冷却空間126の内部には冷却器127が設けられている。冷却器127は、機械室128内に設けられている圧縮機129、および、図示しない凝縮器や絞り器などとともに周知の冷凍サイクルを構成している。
【0036】
図4に例示するように、圧縮機129は、冷蔵庫10が備える制御装置140に接続されている。制御装置140は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、制御プログラムや各種の設定情報に基づいて冷蔵庫10の動作全般を制御可能に構成されている。制御装置140には、上述した急冷用温度センサー110が接続されている。また、制御装置140には、送風ファン130も接続されている。送風ファン130は、冷却空間126の内部に設けられており、冷却器127が発生する冷気を送風する。
【0037】
制御装置140が圧縮機129を駆動することにより、図示しない冷凍サイクルにおいて冷媒が循環するようになり、これにより、冷却器127において冷気が発生するようになる。そして、制御装置140が送風ファン130を駆動することにより、冷却器127が発生する冷気は、送風ファン130による送風作用を受けて冷気吹出口121,122,123から大冷凍室16内に流入する。そして、大冷凍室16内に流入した冷気は、冷気戻り口124,125から冷却空間126内に戻る。このような冷気の循環が行われることにより、大冷凍室16の内部は、所定の冷凍温度帯の温度、例えば、マイナス20度からマイナス23度ほどの温度に冷却される。なお、大冷凍室16の直上に設けられている小冷凍室15は、この大冷凍室16の冷却温度よりも高温である例えばマイナス7度ほどに冷却されるように設定されている。
【0038】
ここで、大冷凍室16内に冷気を吹き出す冷気吹出口121,122,123は、大冷凍室16内において最上段に位置する上段容器103よりも高い位置に設けられている。そのため、冷気吹出口121,122,123から吹き出す冷気は、上段容器103内に直接的に供給される。そのため、上段容器103は、貯蔵物を急速冷凍したい場合に好適な容器となっている。
【0039】
制御装置140は、急冷用温度センサー110が検知する温度が所定の急冷開始条件を満たした場合に、上段容器103に対する冷却強度を標準時における冷却強度よりも高くする急速冷凍制御を実行可能に構成されている。具体的に説明すると、上段容器103内に貯蔵物、例えば、凍結していない貯蔵物や温かい貯蔵物が収容されると、急冷用温度センサー110が検知する温度が上昇する。そして、制御装置140は、急冷用温度センサー110が検知する温度が所定の上限温度に上昇すると、急速冷凍制御を自動的に開始するように構成されている。
【0040】
なお、所定の上限温度は、適宜変更して設定することができる。また、制御装置140は、急冷用温度センサー110が検知する温度が急上昇した場合、つまり、所定の短時間の間に所定の基準温度以上上昇した場合に、急速冷凍制御を自動的に開始するように構成されていてもよい。所定の短時間としては、適宜変更して設定することができるが、例えば数秒から数十秒といった比較的短い時間を設定するとよい。また、所定の基準温度は、適宜変更して設定することができる。このように、制御装置140は、急冷用温度センサー110が検知する温度の所定時間あたりにおける上昇量に基づいて、急速冷凍制御を自動的に開始するように構成してもよい。
【0041】
また、所定の急冷開始条件は、上述した条件に限られず、適宜変更して設定することができる。例えば、制御装置140は、所定時間内において急冷用温度センサー110が検知した温度の範囲が、所定の温度範囲内に入っていたり、あるいは、所定の基準温度範囲と一部重複していたりする場合に、急速冷凍制御を自動的に開始するように構成してもよい。なお、所定の基準温度範囲は、適宜変更して設定することができる。
【0042】
また、制御装置140は、急冷用温度センサー110が検知する温度が所定の温度条件を満たし、且つ、所定の事象が発生した場合に、急速冷凍制御を自動的に開始するように構成してもよい。なお、所定の温度条件は、適宜変更して設定することができる。また、所定の事象は、例えば、大冷凍室扉16Dが開閉された場合など、適宜の事象を設定することができる。大冷凍室扉16Dの開閉は、例えば、大冷凍室16の前面に設けられている図示しない周知の開扉センサーなどによって検知することができる。
【0043】
急速冷凍制御は、大冷凍室16内の貯蔵物、この場合、特に上段容器103内の貯蔵物に対する冷却強度を、標準時における冷却強度つまり急速冷凍制御を実行していないときにおける冷却強度よりも高くする制御である。具体的には、制御装置140は、急速冷凍制御を開始すると、例えば、圧縮機129の駆動周波数を標準時つまり急速冷凍制御を実行していないときにおける駆動周波数よりも高くしたり、送風ファン130の回転速度を標準時つまり急速冷凍制御を実行していないときにおける回転速度よりも高くしたり、圧縮機129および送風ファン130を駆動させる駆動時間を標準時つまり急速冷凍制御を実行していないときにおける駆動時間よりも長くしたりすることによって、冷却強度を高くする。
【0044】
このような急速冷凍制御が実行されることにより、上段容器103内の貯蔵物を、より一層迅速に冷凍することが可能となる。また、このような急速冷凍制御を実行可能に構成されている制御装置140は、急冷制御部の一例として定義することができる。なお、急速冷凍制御を終了するタイミングは、適宜変更して実施することができ、例えば、急冷用温度センサー110が検知する温度が所定の下限温度に低下したときに急速冷凍制御を終了してもよいし、急速冷凍制御を開始してから所定時間が経過したときに急速冷凍制御を終了してもよい。なお、所定の下限温度や所定時間は、適宜変更して設定することができる。
【0045】
以上に例示した冷蔵庫10によれば、制御装置140は、急冷用温度センサー110が検知する温度つまり上段容器103内の温度が所定の急冷開始条件を満たした場合、この場合、所定の上限温度に上昇した場合に、急速冷凍制御を自動的に実行することにより、上段容器103に対する冷却強度を標準時における冷却強度よりも高くする。この構成例によれば、大冷凍室16内に設けられている複数段の容器101,102,103のうち比較的大きめの容器である上段容器103を急冷対象容器とする場合であっても、その急冷対象容器内を迅速に冷却することができる。
【0046】
また、冷蔵庫10は、大冷凍室16の上壁部を構成する横仕切り部材22の内部に断熱材22aを備えている。この構成例によれば、大冷凍室16と当該大冷凍室16の上部の貯蔵室、この場合、特に小冷凍室15との間の断熱性能を向上することができる。これにより、急速冷凍制御によって上段容器103に対する冷却強度を高めたとしても、その冷熱が小冷凍室15に伝達してしまうことを抑制することができ、小冷凍室15内が過剰に冷却されてしまうことや、小冷凍室15内に霜が発生することを回避することができる。
【0047】
また、冷蔵庫10によれば、複数段の小型容器101,102,103のうち最上段の容器である上段容器103を急冷対象容器としている。そして、急冷用温度センサー110は、大冷凍室16の上壁部を構成する横仕切り部材22の下面に設けられている。この構成例によれば、急冷対象容器である上段容器103内の温度を急冷用温度センサー110によって直接的に検知することができ、上段容器103内の温度を一層精度良く検知することができる。
【0048】
また、冷蔵庫10によれば、急冷対象容器である上段容器103が大冷凍室16内において最上段に設けられているので、使用者は、急速冷凍したい貯蔵物を上段容器103内に収容しやすく、また、急速冷凍された貯蔵物を上段容器103内から取り出しやすい。
【0049】
また、冷蔵庫10によれば、急冷用温度センサー110は、収容状態にある上段容器103の前後方向および左右方向における中央部の上方に位置するように配置されている。この構成例によれば、上段容器103内の全体としての温度を偏りなく検知することができる。
【0050】
なお、本開示における「中央部」は、厳密な中央部に限定される概念ではなく、厳密な中央部から多少ずれていてもよいし、厳密な中央部を含むある程度の範囲を有する概念であってもよい。即ち、上段容器103全体において、各部の温度にはばらつきが生じる可能性がある。つまり、上段容器103内の温度は、その全体において均一な温度であるとは限らない。そのため、急冷用温度センサー110は、上段容器103内の全体としての温度が反映されやすい中央部あるいは中央部付近の温度を検知可能に配置されていればよく、従って、本開示における「中央部」は、ある程度の範囲を有することが許容される概念である。
【0051】
よって、具体的には、中央部は、上段容器103の前後方向あるいは左右方向における全長の例えば1/3ほどの長さを有する範囲であってもよいし、より好ましくは、上段容器103の前後方向あるいは左右方向における全長の例えば1/5ほどの長さを有する範囲であってもよいし、さらに好ましくは、上段容器103の前後方向あるいは左右方向における全長の例えば1/10ほどの長さを有する範囲であってもよい。即ち、本開示における「中央部」は、ある程度の範囲を有することが許容される概念であるものの、その範囲は、極力小さく設定することが好ましい。
【0052】
(第2実施形態)
図5に例示するように、冷蔵庫10は、急冷対象容器である上段容器103の内部に冷却板150を備えている。冷却板150は、冷却促進部材の一例であり、例えばアルミニウムなどといった熱伝導率が比較的高い素材によって構成されている。この場合、冷却板150は、当該冷却板150とは異なる他の構成要素、例えば、大型容器100、小型容器101,102,103、冷気ダクト120、大冷凍室16の内壁面などよりも熱伝導率が高くなっている。また、冷却板150は、上段容器103の底面のほぼ全体を覆う矩形の薄板状に形成されている。
【0053】
この構成例によれば、上段容器103内に収容された貯蔵物の熱を冷却板150によって奪うことができ、貯蔵物の冷却を一層促進することができる。これにより、上段容器103内の貯蔵物を一層迅速に冷却することができる。
【0054】
(第3実施形態)
図6に例示するように、第3実施形態においては、上段容器103の内部の全体が急冷対象領域として設定されているのではなく、その一部、この場合、左右方向における中央部および当該中央部よりも右側部分にわたる領域が急冷対象領域R1として設定されている。この構成例によれば、上段容器103の内部の全体ではなく、その一部である急冷対象領域R1に冷気を集中的に供給することにより、急冷対象領域R1内の貯蔵物を一層迅速に冷却することが可能となる。
【0055】
(第4実施形態)
図7に例示するように、冷蔵庫10は、急冷対象容器である上段容器103の内部に冷却板160を備えている。冷却板160は、冷却促進部材の一例であり、例えばアルミニウムなどといった熱伝導率が比較的高い素材によって構成されている。この場合、冷却板160は、当該冷却板160とは異なる他の構成要素、例えば、大型容器100、小型容器101,102,103、冷気ダクト120、大冷凍室16の内壁面などよりも熱伝導率が高くなっている。また、冷却板160は、上段容器103の底面のうち左右方向における中央部および当該中央部よりも右側部分を覆う矩形の薄板状に形成されている。
【0056】
即ち、第4実施形態においては、上段容器103の内部の全体が急冷対象領域として設定されているのではなく、その一部、この場合、左右方向における中央部および当該中央部よりも右側部分にわたる領域が急冷対象領域R1として設定されている。そのため、冷却板160は、上段容器103の底面のうちの一部、この場合、急冷対象領域R1として設定されている部分を覆う構成となっている。
【0057】
この構成例によれば、上段容器103の底面のうち急冷対象領域R1として設定されている領域においては、当該領域内に収容された貯蔵物の熱を冷却板160によって奪うことができ、貯蔵物の冷却を一層促進することができる。これにより、上段容器103内の急冷対象領域R1内に収容されている貯蔵物を一層迅速に冷却することができる。
【0058】
また、上段容器103内の底面の全体を冷却板によって覆う構成に比べ、冷却板160の大きさを最小限に抑えることができる。これにより、例えばアルミニウムなどといった熱伝導率の高い素材の使用量を抑制することができる。
【0059】
なお、図8に例示するように、上段容器103は、急冷対象領域R1と急冷対象領域ではない非急冷対象領域R2との間を仕切る例えばリブや突起などといった構造物P1を備える構成としてもよい。この構成例によれば、例えば冷却板160が急冷対象領域R1からずれている場合あるいは非急冷対象領域R2側に配置されている場合には、その冷却板160が、構造物P1と干渉することによって上段容器103の底面から浮いた状態あるいは傾斜した状態となる。そのため、冷却板160が適切な位置つまり急冷対象領域R1内に配置されていないことを、使用者に認識しやすくすることができる。また、使用者は、冷却板160が上段容器103の底面から浮いていたり傾斜していたりする場合には、その冷却板160を適切な位置つまり急冷対象領域R1内に配置し直すことができる。
【0060】
なお、このようなリブや突起などといった構造物P1は、急冷対象領域R1と非急冷対象領域R2との境界部分に少なくとも1つ設けられていればよい。
【0061】
また、図8には、急冷対象領域R1が非急冷対象領域R2よりも大きい場合の構成例を示したが、図9に例示するように、急冷対象領域R1が非急冷対象領域R2よりも小さい場合には、急冷対象領域R1と非急冷対象領域R2との間に構造物P1を設けるとともに、あるいは、構造物P1を設けることに代えて、非急冷対象領域R2内に例えばリブや突起などといった構造物P2を設けた構成とするとよい。この構成例によれば、仮に、非急冷対象領域R2内に冷却板160が配置された場合には、その冷却板160が、構造物P2と干渉することによって上段容器103の底面から浮いた状態あるいは傾斜した状態となる。これにより、冷却板160が、適切な位置つまり急冷対象領域R1内に配置されていないことを、使用者に認識しやすくすることができる。この構成例は、急冷対象領域R1が非急冷対象領域R2よりも小さい場合、つまり、急冷対象領域R1内に配置されるべき冷却板160を非急冷対象領域R2内にも配置できてしまう場合において、使用者が、冷却板160を急冷対象領域R1内ではなく非急冷対象領域R2内に誤って配置してしまった場合に特に効果的である。なお、このような構造物P2は、非急冷対象領域R2の底面の中央部に設けてもよいし、非急冷対象領域R2の底面の中央部からずれた位置に設けてもよい。
【0062】
また、上段容器103内において、急冷対象領域R1と非急冷対象領域R2は、左右に分けて設けてもよいし、前後に分けて設けてもよい。急冷対象領域R1と非急冷対象領域R2を左右に分けて設けた場合、冷蔵庫10の前方に存在する使用者は、急冷対象領域R1内および非急冷対象領域R2内の何れにも貯蔵物を収容しやすい。また、急冷対象領域R1を後側、非急冷対象領域R2を前側に設けた場合、急冷対象領域R1を冷気吹出口121,122,123に近づけることができるから、急冷対象領域R1内の貯蔵物を一層迅速に冷却することができる。
【0063】
また、急冷対象領域R1を前側、非急冷対象領域R2を後側に設けた場合、冷蔵庫10の前方に存在する使用者は、急冷対象領域R1内に貯蔵物を収容しやすい。この場合、急冷対象領域R1は冷気吹出口121,122,123から遠ざかることになるが、冷気吹出口121,122,123から吹き出される冷気は上段容器103の前部にも十分に到達するため、急冷対象領域R1内の貯蔵物を十分迅速に冷却することができる。
【0064】
また、急冷対象領域R1を前側、非急冷対象領域R2を後側に設けた場合においては、例えば、冷却空間126内で発生する冷気を大冷凍室16内の前側に導くダクトを設けた構成としてもよい。この構成例によれば、そのダクトを介して前側の急冷対象領域R1に十分に冷気を供給することができ、急冷対象領域R1内の貯蔵物を十分迅速に冷却することができる。なお、このようなダクトは、例えば、大冷凍室16の上壁部や左右の側壁部に沿わせるようにして設けることで、大冷凍室16内の大型容器100や小型容器101,102,103との干渉を回避することができる。
【0065】
また、上段容器103内の一部を急冷対象領域R1とする場合には、急冷用温度センサー110は、その急冷対象領域R1の前後方向および左右方向における中央部の上方に位置するように配置するとよい。この構成例によれば、その急冷対象領域R1内の温度を偏りなく検知することができる。なお、この場合も、「中央部」は、厳密な中央部に限定される概念ではなく、厳密な中央部から多少ずれていたり、あるいは、ある程度の範囲を有したりすることが許容される概念である。
【0066】
(第5実施形態)
図10に例示するように、冷蔵庫10は、冷気案内部材170を備えている。冷気案内部材170は、冷気案内部の一例であり、この場合、冷気吹出口121および冷気吹出口122の前部に取り付けられている。第5実施形態においても、上段容器103内の一部の領域、この場合、第4実施形態と同様に左右方向における中央部および当該中央部よりも右側部分にわたる領域が急冷対象領域として設定されている。そして、冷気吹出口121,122は、その急冷対象領域に向かって開口している。即ち、冷気案内部材170は、急冷対象領域に向かって開口している冷気吹出口121,122に対応して設けられている。
【0067】
冷気案内部材170は、冷気吹出口121,122の上端部に沿う左右方向に長い上板部171と、この上板部171の左右の両端部から下方に延びて冷気吹出口121の左端部および冷気吹出口122の右端部に沿う側板部172と、を一体的に備えた構成である。なお、冷気案内部材170は、上板部171および側板部172を別部品として備えた構成であってもよい。
【0068】
以上に例示した構成例によれば、冷気吹出口121,122から吹き出される冷気を、冷気案内部材170によって、上段容器103の内部に設定されている急冷対象領域に向けて案内することができる。これにより、上段容器103内の急冷対象領域に効率良く且つ集中的に冷気を供給することができ、急冷対象領域における貯蔵物の冷却を一層迅速に行うことができる。なお、冷気案内部材170の前方への突出長さは、大冷凍室16内における所定の収容位置に収容されている上段容器103および他の容器100,101,102に接触しない範囲において、適宜変更して設定することができる。
【0069】
(第6実施形態)
図11に例示するように、冷蔵庫10は、全体用温度検知センサー180を備えている。全体用温度検知センサー180は、大冷凍室16内全体の温度を検知するための全体用温度検知部の一例であり、急冷用温度センサー110とは異なる別個の温度センサーとして備えられている。この場合、全体用温度検知センサー180は、冷気戻り口124、つまり、複数の冷気戻り口124,125のうち、冷蔵庫10の正面側から見て右側に設けられている冷気戻り口124の入口部に備えられている。
【0070】
全体用温度検知センサー180は、制御装置140に接続されている。制御装置140は、この全体用温度検知センサー180から得られる検知信号に基づいて、大冷凍室16内全体の温度を特定することが可能である。
【0071】
以上に例示した構成例によれば、例えば、急速冷凍制御の実行に伴い大冷凍室16内全体が過剰に冷却されていないか否かを、全体用温度検知センサー180が検知する温度に基づいて監視することができる。これにより、急速冷凍制御の実行に伴い大冷凍室16内全体が過剰に冷却されている場合には急速冷凍制御を終了することができ、大冷凍室16内全体が必要以上に冷却されてしまうことを抑制することができる。
【0072】
なお、全体用温度検知センサー180は、冷気戻り口125、つまり、複数の冷気戻り口124,125のうち、冷蔵庫10の正面側から見て左側に設けられている冷気戻り口125の入口部に備えられていてもよい。また、全体用温度検知センサー180は、冷気戻り口124,125の双方に備えられていてもよい。また、全体用温度検知センサー180は、大冷凍室16内の温度を検知可能な位置であれば、冷気戻り口124,125以外の部分に備えられていてもよい。
【0073】
(その他の実施形態)
以上、冷蔵庫10に係る複数の実施形態を例示したが、本実施形態は、上述した複数の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や拡張を行うことができる。例えば、冷蔵庫10は、上述した複数の実施形態を適宜選択して組み合わせた構成としてもよい。また、本実施形態は、複数段の容器が内部に設けられている貯蔵室であれば、大冷凍室16以外の貯蔵室にも適用することができる。また、小型容器の数、換言すれば、段数は、適宜変更して実施することができ、例えば、2段であってもよいし、4段以上の複数段であってもよい。そして、そのうちの最も小さい容器よりも大きい少なくとも1つの容器を急冷対象容器として設定することができる。
【0074】
また、冷蔵庫10は、例えば、大冷凍室16の左右の側面や後面、あるいは、大冷凍室扉16の裏面から上段容器103の上方に延出する延出部材を備え、この延出部材の先端部に急冷用温度センサー110を設けた構成としてもよい。
【0075】
また、冷蔵庫10は、最上段の上段容器103ではなく、上段容器103以外の容器、例えば、中段容器102などを急冷対象容器としてもよい。例えば中段容器102を急冷対象容器とする場合には、その直上に配置されている上段容器103の下面に急冷用温度センサー110を設けた構成とするとよい。なお、上段容器103は、可動可能な構成要素である。そのため、このような可動可能な構成要素に急冷用温度センサー110を設ける場合には、急冷用温度センサー110を制御装置140に接続する接続線を保護するための構成、例えば、接続線を保護する保護カバーや保護レールなどを設けるようにするとよい。また、急冷用温度センサー110を制御装置140に無線により接続する構成としてもよい。
【0076】
また、冷蔵庫10は、上下方向における長さが比較的大きい小型容器、この場合、下段容器101を急冷対象容器としてもよい。この構成例によれば、上下方向に長い貯蔵物を急速冷凍したい場合に好適である。
【0077】
また、急冷対象容器としては、貯蔵室内に設けられる複数段の容器のうち最も小さい容器よりも大きい容器であればよく、その場合の大小関係は、例えば、前後方向における容器の底面の長さを比較してもよいし、左右方向における容器の底面の長さを比較してもよいし、容器の底面の面積を比較してもよいし、容器の底面における対角線の長さを比較してもよいし、前後方向における容器全体の長さを比較してもよいし、左右方向における容器全体の長さを比較してもよいし、上下方向における容器全体の長さを比較してもよいし、容器の内容量を比較してもよいし、容器全体における対角線の長さを比較してもよい。
【0078】
また、冷蔵庫10は、冷却板を、上段容器103内のうち左右方向における中央部よりも左側部分または右側部分に備えた構成としてもよいし、上段容器103内のうち左右方向における中央部よりも左側部分および右側部分に備えた構成としてもよい。また、冷蔵庫10は、冷却板を、上段容器103内のうち前後方向における中央部よりも前側部分または後側部分に備えた構成としてもよいし、上段容器103内のうち前後方向における中央部よりも前側部分および後側部分に備えた構成としてもよい。
【0079】
また、冷蔵庫10は、急冷対象容器である上段容器103を、例えばアルミニウムなどといった熱伝導率が比較的高い素材によって構成し、急冷対象容器ではない下段容器101や中段容器102を、例えば樹脂材料などといった熱伝導率が比較的低い素材によって構成してもよい。この構成例によれば、小型容器101,102,103を構成する素材の材質の違い、換言すれば、視覚的あるいは触覚的な性質の違いによって、急冷対象容器であるのか否かを使用者に認識しやすくすることができる。
【0080】
また、冷蔵庫10は、急冷対象容器である小型容器には冷却板150や冷却板160を設け、急冷対象容器ではない小型容器には冷却板150や冷却板160を設けないようにするとよい。これにより、使用者は、冷却板150や冷却板160の有無に基づいて、どの小型容器が急冷対象容器であるのかを視覚的に容易に判別することができる。
【0081】
また、冷蔵庫10は、急冷対象容器である小型容器には、急冷対象容器であることを示す文字やマークなどを付すようにしてもよい。この構成例によっても、使用者は、どの小型容器が急冷対象容器であるのかを視覚的に容易に判別することができる。
【0082】
また、急冷用温度センサー110は、その一部あるいは全体が大冷凍室16の上壁部の下面から下方に突出していてもよい。また、急冷用温度センサー110は、その全体が大冷凍室16の上壁部の下面よりも高い位置に配置された構成、つまり、大冷凍室16の上壁部の下面から下方に突出していない構成であってもよい。
【0083】
また、急冷用温度センサー110は、大冷凍室16の上壁部の下面のうち平坦な部分に設けられた構成であってもよい。この構成例によれば、急冷用温度センサー110を大冷凍室16の上壁部の下面から下方に突出させることができる。これにより、急冷用温度センサー110を上段容器103に近づけることができ、上段容器103内の温度を一層精度良く検知することができる。
【0084】
また、急冷用温度センサー110は、大冷凍室16の上壁部の下面において上方に窪むように形成された凹部内に設けられた構成であってもよい。この構成例によれば、大冷凍室16の上壁部の下面から急冷用温度センサー110が突出する突出量を抑制することができる。これにより、大冷凍室16内の空間が急冷用温度センサー110によって減少してしまうことを回避することができる。
【0085】
また、急冷用温度センサー110は、大冷凍室16の上壁部の下面に一体的に形成されたセンサー取付部に設けられた構成であってもよい。センサー取付部は、例えば、急冷用温度センサー110を囲むように形成された枠状の構成要素あるいは挟むように形成された構成要素である。この構成例によれば、大冷凍室16の上壁部の下面にセンサー取付部を介して急冷用温度センサー110を安定的に保持することができる。また、急冷用温度センサー110をセンサー取付部によって保護することができる。また、このようなセンサー取付部を大冷凍室16の上壁部の下面に一体的に形成することにより、部品点数の増加を抑制することができ、製造コストの上昇や組み立て工数の増加を回避することができる。
【0086】
また、急冷用温度センサー110は、大冷凍室16の上壁部の下面に別部品として取り付けられたセンサー取付部に設けられた構成であってもよい。センサー取付部は、例えば、急冷用温度センサー110を囲むように形成された枠状の構成要素あるいは挟むように形成された構成要素である。この構成例によれば、大冷凍室16の上壁部の下面にセンサー取付部を介して急冷用温度センサー110を安定的に保持することができる。また、急冷用温度センサー110をセンサー取付部によって保護することができる。また、このようなセンサー取付部を別部品として備えることにより、当該センサー取付部の形状などの設計を行いやすくすることができ、急冷用温度センサー110の形状や大きさに応じた最適なセンサー取付部を実現することができる。また、急冷用温度センサー110を設ける機種と設けない機種とで、大冷凍室16の上壁部を構成する部品、この場合、横仕切り部材22を製造するための金型を共用することができる。
【0087】
また、冷蔵庫10は、大冷凍室16の直上に、当該大冷凍室16とは異なる温度帯に冷却される小冷凍室15が設けられている。そのため、急冷用温度センサー110を、大冷凍室16の上壁部の下面に別部品として取り付けられたセンサー取付部に設ける構成例によれば、大冷凍室16の上壁部内に設けられている断熱材22aを例えば削ったり凹ませたりして変形させる必要がない。よって、急冷用温度センサー110の設置に伴い断熱材22aの断熱性能が損なわれてしまうことを回避することができる。そして、断熱材22aの断熱性能を低下させないようにすることで、急速冷凍制御の実行に伴い大冷凍室16直上の小冷凍室15内が過剰に冷却されてしまうことを回避することができる。
【0088】
なお、大冷凍室16の直上に設けられる貯蔵室は、冷凍温度帯に冷却される貯蔵室に限られず、冷蔵温度帯に冷却される貯蔵室であってもよい。この場合、冷凍温度帯に冷却される大冷凍室16内の温度と当該大冷凍室16の直上に設けられる冷蔵温度帯に冷却される貯蔵室内の温度との差は、大冷凍室16の直上に設けられる貯蔵室が冷凍温度帯に冷却される貯蔵室である場合に比べ大きくなる。そのため、急冷用温度センサー110を、大冷凍室16の上壁部の下面に別部品として取り付けられたセンサー取付部に設けることにより、断熱材22aの断熱性能を低下させないようにすることで、急速冷凍制御の実行に伴い大冷凍室16直上の冷蔵温度帯の貯蔵室内が過剰に冷却されてしまうことを回避することができる。
【0089】
また、断熱材22aの配置位置や大きさは、適宜変更して実施することができる。この場合、断熱材22aは、大冷凍室16内に設定されている急冷対象領域に対向する位置において当該急冷対象領域に対応する大きさ、つまり、ほぼ同等の大きさとすることにより、断熱材22aの使用量を最小限に抑えながらも、急速冷凍制御の実行時における大冷凍室16内の冷熱が他の貯蔵室に伝達してしまうことを十分に抑制することができる。また、断熱材22aは、大冷凍室16の上壁部の全体にわたる大きさとすることにより、急速冷凍制御の実行時における大冷凍室16内の冷熱が他の貯蔵室に伝達してしまうことを一層確実に抑制することができる。
【0090】
また、冷気吹出口は、少なくとも、急冷対象容器の中央部に冷気を供給可能な位置に設けるようにするとよい。これにより、急冷対象容器の中央部に効率良く冷気を供給できるととともに、その中央部の周辺部分にも偏りなく冷気を供給しやすくできる。また、冷気吹出口は、急冷対象容器以外の部分に冷気を供給可能な位置にも設けるようにするとよい。これにより、急速冷凍制御の非実行時においても、大冷凍室16内の広い範囲に効率良く冷気を供給することができる。
【0091】
また、急冷対象容器の一部に急冷対象領域を設定する場合には、冷気吹出口は、少なくとも、その急冷対象領域の中央部に冷気を供給可能な位置に設けるようにするとよい。これにより、急冷対象領域の中央部に効率良く冷気を供給できるととともに、その中央部の周辺部分にも偏りなく冷気を供給しやすくできる。また、急冷対象領域を集中的に冷却することができる。
【0092】
また、図12に例示するように、冷蔵庫10は、例えば、冷気吹出口121,122,123を開閉するダンパー121D,122D,123Dを備える構成としてもよい。ダンパー121D,122D,123Dは、吹出量調整部の一例である。この構成例によれば、冷気吹出口121,122,123の開閉状態を適宜切り換えることにより、冷気を供給する部位を調整することができる。即ち、急冷対象容器の一部に急冷対象領域を設定する場合には、その急冷対象領域に対応する冷気吹出口、つまり、その急冷対象領域に向けられている冷気吹出口のダンパーの開度を大きくし、または、全開とし、、それ以外の冷気吹出口のダンパーの開度を小さくし、または、全閉とすることによって、急冷対象領域に集中的に冷気を供給することができる。
【0093】
制御装置140は、急冷対象領域に対する冷却強度を標準時における冷却強度よりも高くする場合には、つまり、急速冷凍制御を実行する場合には、急冷対象領域に向けられている冷気吹出口からの冷気の吹き出し量を維持しつつ、急冷対象領域以外の領域に向けられている冷気吹出口からの冷気の吹き出し量を抑制するようにダンパー121D,122D,123Dの開閉をそれぞれ制御するように構成するとよい。これにより、急冷対象領域に集中的に冷気を供給することができ、急冷対象領域内の貯蔵物を一層迅速に冷却することができる。
【0094】
また、冷蔵庫10は、冷却器127を冷凍用の冷却器として備えるとともに、この冷却器127とは別個に冷蔵用の冷却器を備える構成としてもよい。そして、制御装置140は、急速冷凍制御の実行時には、冷凍用の冷却器127への冷媒の供給量を冷蔵用の冷却器への冷媒の供給量よりも多くする制御を行うようにするとよい。この制御例によっても、冷却強度を十分に高めることができる。なお、冷凍用の冷却器127への冷媒の供給量と冷蔵用の冷却器への冷媒の供給量の調整は、例えば、図示しない冷凍サイクルに設けられている流路切換弁の切り換えを制御することにより行うことができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、あくまでも例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
図面において、10は冷蔵庫、16は大冷凍室(貯蔵室)、22aは断熱材、101,102,103は小型容器(容器)、103は上段容器(急冷対象容器)、110は急冷用温度センサー(急冷用温度検知部)、121D,122D,123Dはダンパー(吹出量調整部)、140は制御装置(急冷制御部)、150,160は冷却板(冷却促進部材)、170は冷気案内部材(冷気案内部)、180は全体用温度検知センサー(全体用温度検知部)、を示す。
図1
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図10
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図12