(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】揮散容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/16 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
B65D51/16 210
(21)【出願番号】P 2021194874
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2024-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-136584(JP,A)
【文献】中国実用新案第211168090(CN,U)
【文献】特開平04-057762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0023541(US,A1)
【文献】特開2002-186519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/16
B65D 83/00
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頸部(6)を起立する容器体(2)と、
この容器体(2)の上側へ装着され、外周壁(22)の上端に前記口頸部(6)の上方を覆う頂壁(30)を連設してなり、前記外周壁(22)に主揮散口(A1)を、前記頂壁(30)に副揮散口(A2)を開口したキャップ(20)と、
このキャップ(20)に内蔵され、かつ前記口頸部(6)の上に配置された揮散体(18)と、
前記揮散体(18)に当接させて、前記口頸部(6)の内部から垂下された含浸棒(16)と、
前記頂壁(30)の上に前記副揮散口(A2)を覆うように弾性を有するドーム状の天板(52)を配置するとともに、当該天板(52)の天頂部(54)を当該天頂部(54)の昇降可能に前記頂壁(30)に連係する連係手段(J)を設けて、前記天頂部(54)の下降により前記天板(52)がドーム状から逆ドーム状に反転するように形成した補助カバー(50)と、を具備することを特徴とする揮散容器。
【請求項2】
前記天頂部(54)を下限位置に仮止めする位置決め手段(P)を設け、
前記頂壁(30)の上側に、前記逆ドーム状への反転状態の前記天板(52
)の下面を受持する受部(42)を形成しており、
前記天板(52)の下面が前記受部(42)で受持された状態で前記天頂部(54)が下限位置に仮止めされるように設けたことを特徴とする、請求項1に記載の揮散容器。
【請求項3】
前記天頂部(54)を下限位置に仮止めする位置決め手段(P)を設け、
前記連係手段(J)は、前記天頂部(54)から垂設させた連係棒(62)を、前記頂壁(30)に穿設した挿通孔(44)内へ昇降可能に挿入させてなり、
前記位置決め手段(P)として、前記連係棒(62)の外周面に前記天頂部(54)寄りに位置させて、前記挿通孔(44)の回りの周縁部(46)を乗り越え可能な大きさの係止突起(64)を設けており、
前記連係棒(62)のうち前記係止突起(64)より下側の部分として形成された直棒部(63)が前記挿通孔(44)内を昇降することにより、前記天板(52)が上下方向へ扇動されるように設け、
かつ前記係止突起(64)と前記天頂部(54)との間に前記挿通孔(44)の周縁部(46)が配置されることで前記天頂部(54)が下限位置に仮止めされるように設けたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の揮散容器。
【請求項4】
前記頂壁(30)は、前記天頂部(54)の下降に伴いその天頂部の回りで前記天板(52)を相対的に押し上げる押圧手段(D)を有することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の揮散容器。
【請求項5】
前記頂壁(30)は、前記天頂部(54)の下降に伴いその天頂部の回りで前記天板(52)を相対的に押し上げる押圧手段(D)を有しており、
前記頂壁(30)の中央部は、有頂筒状へ隆起させた隆起部分(34)に形成され、かつ当該隆起部分を、前記連係手段(J)を介して前記天頂部(54)へ連係させるとともに、
前記天板(52)の周端である先端部(58)は、前記隆起部分(34)の外側に位置する前記頂壁(30)の周辺部(32)に当接させており、
前記隆起部分(34)の上面は、前記受部(42)として、凹曲面に形成されており、
この凹曲面(42)の一部に前記連係手段(J)を設置するとともに、
前記凹曲面(42)の周縁に形成する稜線部(38)が、前記押圧手段(D)として、前記天頂部(54)の周辺で前記天板(52)の下面に当接されていることを特徴とする、請求項
2に記載の揮散容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の揮散容器として、容器体の口頸部に嵌合させたキャップの裏面側から、相互に向かい合う一対の挟持板からなる芯材保持枠を垂設し、前記挟持板の間に、帯状の芯材の一半部である縦長の揮散部を挟持させ、かつ、芯材の他半部である吸い上げ部を、容器体内の底部内に重畳させて収納してなるものが知られている(特許文献1)。
前記口頸部の内部には、前記一対の挟持板の外側に圧接する一対の突起部を設けており、挟持板と突起部との摩擦力により、引き上げられた芯材保持枠を所要の高さに保持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の揮散容器は、芯材保持材が引き出された高さにより、前記揮散部の露出面積を増減し、揮散量を調整することができる。
しかしながら、例えば芳香剤を収納した場合に、芯材保持材をより高く引き出しても芳香が強くなったと利用者が実感できる迄にはある程度の時間がかかる。
一時的に揮散量を増やしたいときには、キャップを閉じて容器を振るなどの操作が必要であるが、操作が煩わしい。
【0005】
本発明の第1の目的は、容易に揮散量を調整できる揮散容器を提供することである。
本発明の第2の目的は、当該容器において比較的速やかに揮散量を増加できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、口頸部6を起立する容器体2と、
この容器体2の上側へ装着され、外周壁22の上端に前記口頸部6の上方を覆う頂壁30を連設してなり、前記外周壁22に主揮散口A1を、前記頂壁30に副揮散口A2を開口したキャップ20と、
このキャップ20に内蔵され、かつ前記口頸部6の上に配置された揮散体18と、
前記揮散体18に当接させて、前記口頸部6の内部から垂下された含浸棒16と、
前記頂壁30の上に前記副揮散口A2を覆うように弾性を有するドーム状の天板52を配置するとともに、当該天板52の天頂部54を当該天頂部54の昇降可能に前記頂壁30に連係する連係手段Jを設けて、前記天頂部54の下降により前記天板52がドーム状から逆ドーム状に反転するように形成した補助カバー50と、を具備する。
【0007】
本手段では、
図1に示す如く、キャップ20の外周壁22に主揮散口A1を、その頂壁30に副揮散口A2を開口し、かつ、当該頂壁30の上に副揮散口A2を覆うように弾性を有するドーム状の天板52を配置している。
そして、当該天板52の天頂部54を当該天頂部54の昇降可能に前記頂壁30に連係する連係手段Jを設けて、
図3(B)に示す如く、前記天頂部54の下降により前記天板52がドーム状から逆ドーム状に反転するように形成した。
この構造によれば、前記天頂部54を昇降させる簡単な操作により、
図3(A)に示す主揮散口A1のみから揮散する第1モードと、
図3(B)に示す主揮散口A1及び副揮散口A2から揮散する第2モードとを切り替えることができ、揮散量を容易に調整することができる。
また前記第1モードから第2モードへ切り替える際には、既にドーム状の天板52の内部に溜まった揮発成分が副揮散口から放出されるから、特に揮散量を比較的速やかに増加させることができる。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ前記天頂部54を下限位置に仮止めする位置決め手段Pを設け、
前記頂壁30の上側に、前記逆ドーム状への反転状態の前記天板52の下面を受持する受部42を形成しており、
前記天板52の下面が前記受部42で受持された状態で前記天頂部54が下限位置に仮止めされるように設けた。
【0009】
本手段では、
図3(B)に示す如く、前記天頂部54を下限位置に仮止めする位置決め手段Pを設けている。
また
図2に示す如く、前記頂壁30の上側に、前記逆ドーム状への反転状態の前記天板52の下面を受持する受部42を形成しており、前記天板52の下面が前記受部42で受持された状態で前記天頂部54が下限位置に仮止めされるように設けている。
この構造によれば、逆ドーム状の天板52の反転状態(高速揮散状態)を確実に保持でき、例えば他物が天板52に当たるなどして不意にドーム状に戻るリスクを低減できるので、使い勝手がよい。
【0010】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ前記天頂部54を下限位置に仮止めする位置決め手段Pを設け、
前記連係手段Jは、前記天頂部54から垂設させた連係棒62を、前記頂壁30に穿設した挿通孔44内へ昇降可能に挿入させてなり、
前記位置決め手段Pとして、前記連係棒62の外周面に前記天頂部54寄りに位置させて、前記挿通孔44の回りの周縁部46を乗り越え可能な大きさの係止突起64を設けており、
前記連係棒62のうち前記係止突起64より下側の部分として形成された直棒部63が前記挿通孔44内を昇降することにより、前記天板52が上下方向へ扇動されるように設け、
かつ前記係止突起64と前記天頂部54との間に前記挿通孔44の周縁部46が配置されることで前記天頂部54が下限位置に仮止めされるように設けた。
【0011】
本手段では、
図2に示す如く、前記連係手段Jとして、前記天頂部54から連係棒62を垂設させるとともに、当該連係棒62を、前記頂壁30に穿設した挿通孔44内へ昇降可能に挿入させている。
また、前記天頂部54を
図3(B)に示す下限位置に仮止めする位置決め手段Pとして、前記連係棒62の外周面に前記天頂部54寄りに位置させて、前記挿通孔44の回りの周縁部46を乗り越え可能な大きさの係止突起64を設けている。
また
図3(C)に示す如く、前記連係棒62のうち前記係止突起64より下側の部分として形成された直棒部63が挿通孔44内を昇降することにより、前記天板52が上下方向へ扇動されるように設け、かつ前記係止突起64と前記天頂部54との間に前記挿通孔44の周縁部46が配置されることで前記天頂部54が下限位置に仮止めされるように設けた。
この構造によれば、天板52の扇動により揮散速度を高めることができる。
【0012】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれかを有し、かつ前記頂壁30は、前記天頂部54の下降に伴いその天頂部の回りで前記天板52を相対的に押し上げる押圧手段Dを有する。
【0013】
本手段では、前記頂壁30は、
図3(B)に示す前記天頂部54の押下げ操作に伴い、その天頂部の回りで前記天板52を相対的に押し上げる押圧手段Dを有する。
この構造によれば、前記天頂部54の押下げ操作により、前記天板52をドーム状から逆ドーム状へ反転する動作を確実に実現させることができる。
この段落の記載は第5の手段に援用する。
【0014】
第5の手段は、第2の手段を有し、かつ前記頂壁30は、前記天頂部54の下降に伴いその天頂部の回りで前記天板52を相対的に押し上げる押圧手段Dを有しており、
前記頂壁30の中央部は、有頂筒状へ隆起させた隆起部分34に形成され、かつ当該隆起部分を、前記連係手段Jを介して前記天頂部54へ連係させるとともに、
前記天板52の周端である先端部58は、前記隆起部分34の外側に位置する前記頂壁30の周辺部32に当接されており、
前記隆起部分34の上面は、前記受部42として、凹曲面に形成されており、
この凹曲面42の一部に前記連係手段Jを設置するとともに、
前記凹曲面42の周縁に形成する稜線部38が、前記押圧手段Dとして、前記天頂部54の周辺で前記天板52の下面に当接されている。
【0015】
本手段では、前記頂壁30は、図3(B)に示す前記天頂部54の押下げ操作に伴い、その天頂部の回りで前記天板52を相対的に押し上げる押圧手段Dを有する。
また本手段では、
図2に示す如く、前記頂壁30の中央部が、有頂筒状に隆起させた隆起部分34に形成されており、当該隆起部分34を前記天頂部54に連係させている。
また前記天板52の先端部58は、前記隆起部分34の外側に位置する前記頂壁30の周辺部32に当接されている。
前記隆起部分34の上面は、前記受部42として凹曲面に形成されており、この凹曲面42の一部に前記連係手段Jが設置されている。
また前記凹曲面42の周縁に形成される稜線部38が、前記押圧手段Dとして、前記天板52の周辺で前記天板52の下面に当接されている。
この構造によれば、
図3(A)及び
図3(B)に示す如く、当該稜線部38を支点として、前記天頂部54を押し下げることにより、天板52をドーム状から逆ドーム状へ反転させること、並びに、前記天板52の先端部58を押し下げることにより、前記天板52を原形へ復元させることが容易に可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容易に揮散量を調整できる。また、比較的速やかに揮散量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る揮散容器の断面図である。
【
図3】
図1の容器の作用の態様の説明図であり、同図(A)は、ドーム状の天板で副揮散口を塞いで主揮散口のみから揮散する態様(第1モード)を、同図(B)は、天板を逆ドーム状に反転させて主揮散口及び副揮散口から揮散する態様(第2モード)を、同図(C)は、天板を扇動させることにより揮発成分を拡散させる態様(第3モード)をそれぞれ示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から
図3は、本発明の実施形態に係る揮散容器を示している。
この揮散容器は、容器体2と、中栓10と、含浸棒16及び揮散体18と、キャップ20と、補助カバー50とで構成されている。
ここで、容器体2、中栓10、キャップ20、及び補助カバー50は、例えば合成樹脂で形成することができる。
【0019】
容器体2は、胴部4から肩部5を介して口頸部6を起立している。
前記口頸部6には、図示しない蓋体を螺合させるためのオネジ部7が形成されており、またこのオネジ部7の下側に位置させて、フランジ状の環状リブ9が周設されている。
図示例の胴部4は、ほぼ円筒状であり、その筒壁の上部が上向き段部4aを介して縮径する小径に形成されている。なお、図示しない蓋体は、揮散容器を使用する際に、容器体2から取り外す捨てキャップである。
【0020】
中栓10は、前記口頸部6から含浸棒16を垂下させるための部材であり、前記口頸部6内に嵌着させた嵌合筒部12の上端側から、下端小径のテーパ状壁部13を介して、含浸棒16を保持するための保持筒15が垂下されている。
なお、図示例では、前記テーパ状壁部13を上下方向に貫通する通気孔14が穿設されている。
【0021】
含浸棒16及び揮散体18は、内容液を浸透させるのに適した材料(例えば、不織布、合成繊維束、天然繊維束、発泡合成樹脂など)で形成されている。
前記含浸棒16は、前記保持筒15に挿通されて前記容器体2の底部側へ延びている。また前記含浸棒16の上端は中栓10の上面より上方へ突出している。
前記揮散体18は、前記含浸棒16の上端に当接させて、前記キャップ20の内側で、前記口頸部6の上方に配備されている。
【0022】
キャップ20は、前記容器体2の上側へ装着されている。
前記キャップ20は、前記胴部4の上部に嵌合された外周壁22と、この外周壁22の上端に連設され、前記口頸部6の上方を覆う頂壁30とを有している。そして、前記外周壁22に主揮散孔A1を、また前記頂壁30に副揮散孔A2を、それぞれ揮散口として開口している。
なお、本明細書において、「揮散口」とは、「揮散孔」の上位概念であり、孔の形以外で揮発成分の放出口の役割を果たす形態(例えば後述のキャップ本体20aと上蓋20bとの間隙)を含むものとする。
図示例では、前記キャップ20は、前記外周壁22の下半部である下方周壁部22aを含むキャップ本体20aと、このキャップ本体20aの上に着脱自在に載置され、前記外周壁22の上半部である上方周壁部22b及び前記頂壁30を含む上蓋20bとで形成している。
もっとも、この構造は適宜変更することができ、前記キャップ20全体を一体に形成しても構わない。
前記図示例において、前記外周壁22の下端部は前記上向き段部4aに載置されており、当該上向き段部4aの下方の胴部分の外面と前記外周壁22の外面とは面一に形成されている。
前記キャップ本体20aは、前記下方周壁部22aから内方へ突出された複数の支持腕23Aで支承される内周壁24を有する。この内周壁24は前記口頸部6を囲んでいる。また前記環状リブ9の外周端が前記内周壁24の内面に当接されている。
【0023】
本実施形態では、前記キャップ本体20a及び上蓋20bの間には、この上蓋20bを、前記キャップ本体20aの上面から引き上げた状態で支える保持機構Hを備える。
この保持機構Hは、図示例において、
図1に示す如く、前記下方周壁部22aに支持片23Bを介してチャネル溝27付きの縦向きのガイドレール26を連設させるとともに、前記チャネル溝27内に、前記頂壁30から垂設された脚板33を昇降可能に嵌挿させてなる。この脚板33には、縦方向に等間隔に配置された複数の横リブ状の係合リブ(図示せず)が、前記チャネル溝内には、係合リブが着脱可能に嵌合する凹状受部(図示せず)がそれぞれ形成されており、これら係合リブ及び凹状受部により、上蓋20bの高さを調整できるように設けている。
もっとも、これらの構造は適宜変更することができ、保持機構は省略しても構わない。
なお、前記保持機構Hを設けた理由は、前記上蓋20bをキャップ本体20aから引き上げることにより、これらキャップ本体20aと上蓋20bとの間隙(図示せず)を揮散口として揮発成分を放出してもよいという意味である。
当該間隙は公知であるために図示はしないが、
図3(B)の状態から、前記上蓋20bを引き上げてキャップ本体20aとの間隙からも揮発成分を放出できるようにしてもよい。
また孔形態である主揮散孔の代わりに、前記間隙を主揮散口として採用した構造も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0024】
前記頂壁30は、その中央部を有頂筒状へ隆起させて隆起部分34としているとともに、その周辺部32を、上面が平坦である水平壁部としている。
なお、「周辺部」とは、前記隆起部分の回り(水平方向外側)に位置するリング状の部分という意味であり、前記頂壁の周端付近の部分に限定されない。
前記隆起部分34は、
図2に示す如く、筒壁部36の上端に当該筒壁部の上面を閉塞する上壁部40を連設してなり、この上壁部40の中心部に、後述の連係棒62を挿入するための挿通孔44を開口している。
もっとも、この挿通孔44の配置は適宜変更することができ、後述の天板52の動作(天頂部54の昇降など)に差支えない範囲で、前記上壁部40の中心からずれた位置(偏心位置)に配置しても構わない。
また前記連通孔44及び後述の連係棒62の数は適宜変更できる。例えば一対の連通孔を設け、各連通孔内へ天板52の天頂部54から垂下する2本の連係棒をそれぞれ挿入する構造としてもよい。この構造では、一対の挿通孔44は、上壁部40の中心からずれた対称位置(180°対称位置)に配置するとよい。
本実施形態では、図示例では、前記上壁部40の上面を、下側へ凹む凹曲面42としている。
この凹曲面42は、部分球面(球面の一部を切り取った面をいう)の形状に形成されている。
この凹曲面42は、
図3(B)に示すように逆ドーム状に反転した後述の天板52の下面を受持する受部としての役割を有する。なお、「受持」とは、本明細書において、下側から受け、支え止めるという意味である。
逆ドーム状の天板52を安定的に支持するために、前記受部42は、逆ドーム状の天板52の下端部に対して前記連係棒62の周囲で囲むように支持する構造としてもよい。
図示はしないが、前記上壁部40の上面を凹曲面に形成する代わりに、水平な上面から同じ高さ(上端が後述の仮想水平面Eに達する高さ)で起立する複数の受持片を、上方から見て、図示の挿通孔を中心とする仮想円の上に配置した構造としてもよい。
【0025】
前記凹曲面42と前記筒壁部36の外周面37との間には、上方から見て環状の稜線部38が形成されている。
この稜線部38は、
図2に示すように、前記頂壁30の周辺部32と平行な仮想の水平面Eの上に在るように形成されている。
前記稜線部38は、後述のドーム状の天板52の下面へ当接させる当接部であり、当該天板52の天頂部54の押下げ操作に伴い(
図3(A)参照)、受動的に前記天板52の当接箇所に押上げ力f(押下げ力Fの反作用)を作用させる押圧手段Dとしての役割を有する。この役割については、後述する。
なお、前記天板52が前記稜線部38からの押上げ力で反転する構造の代わりに、前記天板52が僅かな力で反転するように、その反転部位(頂板部54以外の部分)の厚み及び素材を設計し、前記天頂部54を下方へ押し込む勢いのみで逆ドーム状に反転するように形成してもよい。
【0026】
また本実施形態では、前記隆起部分34の筒壁部36に適数(図示例では2個)の副揮散孔A2を開口している。
もっとも副揮散孔A2の配置は適宜変更することができ、前記頂壁30のうちで前記補助カバー50によって覆われる範囲にあればよい。図示例では、例えば前記周辺部32の内周部であって前記脚板33が設けられていない箇所に配置してもよい。
また図示例では、前記筒壁部36は上端小径のテーパ状に形成しているが、その形状は適宜変更することができる。
【0027】
補助カバー50は、前記副揮散孔A2からの揮発成分の放出を停止又は促進するという役割を有する。
前記補助カバー50は、
図2に示す如く、天板52と、連係棒62とで形成されている。
【0028】
前記天板52は、弾性を有するドーム状の部位であり、前記副揮散孔A2を覆うように前記頂壁30の上に配置されている。
なお、本明細書において、「ドーム状」とは、天頂部54から下向きに拡開して頂壁30の上面を覆うことが可能な形状であり、副揮散口A2と天板52の外側との連通を遮断できればどのような形態でも構わない。この「ドーム状」の概念には、例えば椀状、帽状、テーパ筒状、円錐状又は円錐台状、角錐状又は角錐台状などが含まれる。
また、「逆ドーム状」とは、「ドーム状」と上下対称な形状をいう。
本実施形態において、前記天板52は前記隆起部分34を覆うように配置されている。
前記天板52の周端である先端部58は、前記頂壁30の周辺部32の上面に、揮発成分を透さない密接状態で隙間なく載置されている。例えば
図1の状態で、前記天板52の先端部58が前記周辺部32に弾性的に圧接させるように、天板52の寸法を設計してもよい。
前記天板52の天頂部54は、当該天頂部54に連設した連係棒62を介して前記頂壁30に対して昇降可能に連係されている。
なお、「天頂部」とは、ドーム形態での天板52の最も高い部位であり、押下げ操作をする際の押釦の役割も有している。
また前記天板52は、前記天頂部54と先端部58との間の箇所(中間部60)で前記稜線部38に当接されている。
前記天板52は、
図3(A)に示すドーム状から
図3(B)に示す逆ドーム状への弾性反転、及び、逆ドーム状からドーム状への原形復元が可能な程度の弾性を有する。
図示例において、前記ドーム状と逆ドーム状とは上下対称に描かれている。もっとも天板52の形状は適宜変更することができる。
逆ドーム状に反転した状態での天板52の下面形状は、
図3(B)に示すように前記隆起部分34の凹曲面42と合致している。
【0029】
前記連係棒62は、本実施形態において、前記天頂部54から垂設されるとともに前記挿通孔44内へ挿入されている。
好適な図示例では、
図2に示す如く、前記連係棒62の下端部に、前記上壁部40の下面への係止可能な抜止め用突部66を付設している。
この抜止め用突部66の上側には、係止面である水平面部66bが形成されている。
なお、好適な図示例では、環状の水平面部66bが
図2の状態で前記挿通孔44の周縁部46の下面に密接するように設けている。
前記抜止め用突部66は、前記連係棒62を前記挿通孔44に挿通させる際に、この挿通孔44の回りの周縁部46を乗り越えることが可能な大きさに形成されている。
前記抜止め用突部66の下側には、前記周縁部46の乗り越えを容易とするための傾斜面部66aが形成されている。
【0030】
前記の連係棒62を前記挿通孔44内に挿入させた本実施形態の構造は、特許請求の範囲に記載された連係手段J、すなわち、前記天頂部54の昇降可能に当該天頂部54を前記頂壁30へ連係する手段の一例であり、この連係手段の機能が実現される限り、適宜変更しても構わない。
例えば連係棒に代えて、前記天頂部54から中空の連係筒を垂下してもよい。
また前記挿通孔44に代えて、前記頂壁30から垂設される嵌合筒部を凹設して、この嵌合筒部内へ連係棒を嵌挿させてもよい。
なお、本明細書において、「連係」とは、相対的な動き(上下動)の余地を残して連結することをいう。
【0031】
また本実施形態では、前記連係棒62に、前記天頂部54を下限位置に仮止めする位置決め手段Pが設けられている。
具体的には、前記連係棒62の外周面に前記天頂部54寄りに位置させて、係止突起64を設けており、
図3(B)に示す如く、この係止突起64と前記天頂部54との間の連係棒部分に、前記挿通孔44の周縁部46がかみ合う凹み部nを形成している。
図示例では、前記係止突起64を環状の係止リブに形成しているが、その構造は適宜変更することができる。
前記係止突起64は、前記抜止め用突部66と同様に、前記挿通孔44の回りの周縁部46を乗り越え可能な大きさに形成されている。
なお、本明細書において、「仮止め」とは、天頂部を下限位置に停止させるという意味である。故に天頂部自体を隆起部分に留めることを意味しない。
【0032】
また本実施形態では、前記係止突起64と前記抜止め用突部66との間の連係棒部分(直棒部63)を、前記挿通孔44内を昇降する可能な長さ及び形態に設けている。
好適な図示例では、前記直棒部63の長さL1を、前記天頂部54の上面と前記稜線部38との高低差L2とほぼ等しくしている。この構成では、係止突起64と抜止め用突部66との間に形成された直棒部63が挿通孔44内を昇降している限り、前記天板52は前記仮想水平面Eを超えることがなく、逆ドーム状へ不意に反転しない。
【0033】
前述の構成において、本発明の揮散容器の使用のモード(態様)を解説する。
まず第1の使用モードについて説明する。
図1の状態では、前記副揮散孔A2は、前記補助カバー50により覆われているため、揮散体18から放出される揮発成分のうちでドーム状の天板52の内部へ入った分は、外部へ放出されずに、その天板52の内部に留まる。
従って、揮散容器から放出される揮発成分は、
図3(A)に示すように、もっぱら主揮散孔A1を通過する。
故に、揮発成分の放出のペースは比較的緩やかである。
【0034】
次に、第2の使用モードを説明する。
前記天頂部54を指で大きく(下限位置まで)押し下げると、
図3(A)に白矢印で示すように、天頂部54に押下げ力Fが加わり、その結果として、前記稜線部38から前記中間部60へ太い黒矢印で示す押上げ力fが反力として作用する。
そして、前記稜線部38を支点とするシーソー作用により、
図3(B)に示す如く、前記天板52の天頂部54が下降するとともに前記先端部58が上昇する。
これにより、前記天板52がドーム状から逆ドーム状へ反転する。
この反転状態で、前記揮散体18から放出される揮発成分は、前記主揮散孔A1及び副揮散孔A2を通過する。
故に、揮発成分の放出のペースが比較的速やかである。
特に天板52がドーム状から逆ドーム状へ反転した直後には、前記天板52内に留まった揮発成分が外部へ流出するために、一時的に放出量がより増加する。
また逆ドーム状の天板52の下面は前記凹曲面42に沿って密接しており、この状態で前記位置決め手段Pにより前記天頂部54が下限位置に仮止めされているから、天板52の反転状態が安定的に保持されている。
なお、前記天板52をドーム状に戻したいときには、
図3(B)に示す状態から、前記天板52の先端部58を、適当な複数箇所(例えば天板52の直径方向の両側)で、指などにより押し下げればよい。
【0035】
さらに第3の使用モードについて説明する。
図3(A)の状態から、少なくとも前述の仮想水平面Eを超えない範囲で前記天頂部54を小さく押し下げると、前記天板52の外周部分を扇動させることができる。なお、本明細書において、「扇動」とは、扇のように揺動させることをいうものとする。
従って前記天頂部54の繰り返し小さく上下動させることにより、前記扇動動作を継続して、空気とともに揮発成分を撹拌し、外部への放出を促進することができる。
【0036】
前記構成及び作用によれば、キャップ20の外周壁22に主揮散孔A1を、その頂壁30に副揮散孔A2を開口し、当該頂壁30の上に副揮散孔A2を覆うように弾性を有するドーム状の天板52を配置するとともに、当該天板52の天頂部54を当該天頂部54の昇降可能に前記頂壁30に連係する連係手段Jを設けて、前記天頂部54の下降により前記天板52がドーム状から逆ドーム状に反転するように形成したから、前記天頂部54を昇降させる簡単な操作により、揮散量を容易に調整することができ、特に揮散量を比較的速やかに増加できる。
また前記天頂部54を下限位置に仮止めする位置決め手段Pを設け、前記天板52の下面が前記頂壁30の上側に形成された受部42で受持された状態で前記天頂部54を仮止めするから、天板52の反転状態を確実に保持できるので、使い勝手がよい。
また前記連係手段Jは、前記天頂部54から垂設させた連係棒62を、前記頂壁30に設けた挿通孔44内へ昇降可能に挿入させてなり、この連係棒62の昇降により、前記天板52が上下方向へ扇動されるから、さらに揮散速度を高めることができる。
また、前記天頂部54の下降に伴い相対的に天板52を押し上げる押圧手段Dを設けたから、前記天板52のドーム状から逆ドーム状への反転を確実とすることができる。
また前記頂壁30の中央部を有頂筒状に隆起させた隆起部分34に形成し、この隆起部分34の上面である凹曲面42の周縁に形成される稜線部38を、前記押圧手段Dとして、前記天板52の下面に当接させたから、当該稜線部38を支点として、前記天板52のドーム状から逆ドーム状への反転及び原形復元を容易に実現できる。
【符号の説明】
【0037】
2…容器体 4…胴部 4a…上向き段差部 5…肩部 6…口頸部
7…オネジ部 9…環状リブ
10…中栓 12…嵌合筒部 13…テーパ状壁部 14…通気孔 15…保持筒
16…含浸棒 18…揮散体
20…キャップ 20a…キャップ本体 20b…上蓋 22…外周壁
22a…下方周壁部 22b…上方周壁部 23A…支持腕
23B…支持片 24…内周壁 26…ガイドレール 27…チャンネル溝
30…頂壁 32…周辺部 33…脚板
34…隆起部分 36…筒壁部(テーパ状筒部) 37…外周面 38…稜線部
40…上壁部 42…受部(凹曲面) 44…挿通孔 46…周縁部
50…補助カバー 52…天板 54…天頂部(押釦) 58…先端部
60…中間部 62…連係棒 63…直棒部
64…係止突起 66…抜止め用突部 66a…傾斜面部 66b…水平面部
A1…主揮散口(主揮散孔) A2…副揮散口(副揮散孔) b…係止突部
D…押圧手段
E…仮想水平面 F…押下げ力 f…反力 H…保持機構 J…連係手段
L1…直棒部の長さ L2…天頂部と稜線部との高低差 n…凹み部
P…位置決め手段