(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞の非ウイルス性改変
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20250304BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250304BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20250304BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250304BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20250304BHJP
【FI】
C12N15/87 Z
C12N5/10
C12N5/0775
A61P35/00
A61K35/28
(21)【出願番号】P 2021552647
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 IB2020051983
(87)【国際公開番号】W WO2020178800
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】10201902002S
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘン-フォン・トゥー
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ケイ・ホ
(72)【発明者】
【氏名】シュエ・エン・ジェラルディーン・トゥ
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-503290(JP,A)
【文献】HO, Yonn Khei et al.,Nucleic Acids Research,2017年04月07日,Vol. 45, No. 6, Article No. e38,pp. 1-11,DOI: 10.1093/nar/gkw1143
【文献】YOU, Mi-Hyeon et al.,Journal of Gastroenterology and Hepatology,2009年08月,Vol. 24, Issue 8,pp. 1393-1400,DOI: 10.1111/j.1440-1746.2009.05862.x
【文献】KUCEROVA, Lucia et al.,Cancer Research,2007年07月01日,Vol. 67, Issue 13,pp. 6304-6313,DOI: 10.1158/0008-5472.CAN-06-4024
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
A61P 1/00-43/00
A61K 35/00-51/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法であって、
MSCを、カチオンポリマーと複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物に曝露する工程、
MSCを、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤に曝露する工程、並びに
MSCをインキュベートする工程、
それにより、核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する工程
を含み、
MSCが、トランスフェクション混合物に曝露する間、第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する間、インキュベーションの間、又はそれらの組合せの間、遠心分離され
ず、
第1の薬剤が融合性脂質を含み、融合性脂質が、DOPE、CHEMS、DPPC、DOPC、及びそれらの組合せからなる群から選択され、第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)から選択される、
方法。
【請求項2】
MSCをインキュベートする工程が、MSC
を2時間
~48時間インキュベートする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、トランスフェクション混合物を、第1の薬剤及び第2の薬剤を補足した細胞培養培地で置換する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1つ又は複数の機能遺伝子が自殺遺伝子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)又は両方ともを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
トランスフェクトされたMSCが各々、平均して、少なくと
も1000コピー、少なくと
も2000コピー、少なくと
も3000コピー、少なくと
も4000コピー、少なくと
も5000コピー、少なくと
も6000コピー、少なくと
も7000コピー、少なくと
も8000コピー、少なくと
も9000コピー、又は少なくと
も10000コピーのコピー数の核酸構築物でトランスフェクトされている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
トランスフェクトされたMSCの多能性表現型が、トランスフェクションにより実質的に不変である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
多能性表現型が、MSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
多能性表現型が、トランスフェクション後にCD表面マーカーの発現が実質的に不変である免疫表現型を含み、トランスフェクトされたMSCが、プラスチック付着性であり、CD105、CD73及びCD90を発現し(>95%)、CD45、CD34、CD14及びHLA-DR表面分子の発現を欠き(<2%)、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞へと分化でき、国際細胞治療学会(ISCT)により定義される免疫表現型基準を満たす、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCから増殖培地を除去せずにトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程を含み、遠心分離は、曝露する工程及びインキュベートする工程の間行われない、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、第1の薬剤及び第2の薬剤を、トランスフェクション混合物と同時に、
トランスフェクション混合物と連続的に、又はトランスフェクション混合物と併用してMSCに添加する工程を含む、請求項1、2、及び4から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
トランスフェクション混合物へのMSCの曝露期間が、第1の薬剤及び第2の薬剤へのMSCの曝露期間と重複しており、トランスフェクション混合物が、第1の薬剤及び第2の薬剤をMSCに添加する前に除去されない、請求項1、2、及び4から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法であって、
増殖培地中でMSCを培養する工程、
MSCから増殖培地を除去せずに、カチオンポリマーと複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程、
エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤をMSCに添加する工程、並びに
MSCを、インキュベーション期間にわたりトランスフェクション混合物、第1の薬剤及び第2の薬剤のすべてと接触させながら、インキュベートする工程
、
それにより、核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する工程
を含み、
第1の薬剤及び第2の薬剤
は、トランスフェクション混合物の添加と同時に、トランスフェクション混合物の添加
と連続的に、又はトランスフェクション混合物と併用してMSCに添加
され、
トランスフェクション混合物の添加とインキュベーション期間の終了との間、MSC
は遠心分離
されず、
第1の薬剤が融合性脂質を含み、融合性脂質が、DOPE、CHEMS、DPPC、DOPC、及びそれらの組合せからなる群から選択され、第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)から選択される、
方法。
【請求項14】
MSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物でトランスフェクトされ、MSCは、核酸構築物のトランスフェクションにより実質的に不変である多能性表現型を有し、MSCは、ウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まない、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
トランスフェクトされたMSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくと
も7日間、少なくと
も8日間、少なくと
も9日間、少なくと
も10日間、少なくと
も11日間、少なくと
も12日間、少なくと
も13日間、少なくと
も14日間、少なくと
も15日間、少なくと
も16日間、又は少なくと
も17日間、一過性に発現する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
トランスフェクトされたMSCが、癌の治療において使用するためのものであり、癌が、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
MSCが、5-フルオロシトシン(5FC)、5-フルオロウラシル(5FU)、ガンシクロビル(GCV)、又はそれらの組合せと併用で使用するためのものである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して間葉系幹細胞の非ウイルス性改変に関する。特に、本発明は、治療用途用、例えば癌治療用の間葉系幹細胞(MSC)の非ウイルス性改変(non-viral modification)に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、国立衛生研究所臨床試験データベースに登録された、間葉系幹細胞(MSC)を使用する>700の臨床試験が存在する。MSCベースの治療は安全であると見なされる一方[2]、前臨床データ及び臨床データは、よくても中程度の効果を示し、多くの場合無効性を示した[3~5]。この難局を克服するための最新動向はMSCの遺伝子改変である。英国だけで、治験の37%が遺伝子改変細胞を使用し、そのうちの90%がMSCへの遺伝子送達用にウイルス性キャリアを使用する[6]。遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法(GDEPT)用のシトシンデアミナーゼ(CD)を産生する改変MSCを用いた臨床試験が進行中である[7]。ウイルスを用いる際の固有安全性及び産生上の問題を考慮すると[7、8]、非ウイルス性方法を使用する非常に効率良いMSCの改変が望ましいが、相当な難問を提起する。
【0003】
多数の前臨床研究及び臨床試験[28~31]が、ウイルスベクターを、MSCの改変における効率良い遺伝子送達媒介物として利用した。ウイルス性遺伝子送達は非常に効率良い一方、宿主ゲノムへのウイルスベクターのランダム組込みを含み得る欠点が存在し、本質的な遺伝子発現及び細胞プロセスを妨げることがある。非組込み型ウイルスベクターを用いてさえも、移植に続いてin vivoでの免疫応答を潜在的に活性化する可能性がある、形質導入細胞上で起こり得るウイルス抗原の提示に起因して、ウイルス性形質導入の安全性に関するリスクが生じ得る。ウイルスベクターの産生は、多大な労力を要すると同様に技術的に多くを要求もするため、導入遺伝子の数を増やすスケールアップのための難問を提起する。更に、ウイルスベクターで感染させた細胞は、典型的に低コピー数(<10コピー/細胞)を有することが特筆に値する。ウイルスは、導入遺伝子の持続発現を可能にしたが[32]、ウイルスで感染させた細胞は、典型的に低コピー数(<10コピー/細胞)を有する[33、34]。他方、上昇したDNAコピー数を、非ウイルス性方法により個別細胞内に送達可能であることが示され[35、36]、従って治療薬の送達においてペイロードが増大するが、それらの方法は、典型的にはトランスフェクション効率が低い(しばしば約0~35%)。臨床グレードウイルスの産生は、困難であり、典型的には安定産生株のマスターセルバンクの生成同様に認可を含むため、遺伝子細胞治療学において高コストを招く[37~39]。
【0004】
非ウイルス性方法は頻繁に、臨床用途を妨げる欠点に悩まされる。非ウイルス性方法、例えば、カチオンポリマー、リポソーム、エレクトロポレーション等は、典型的に臨床治療に関するスケールでMSCを改変する際の低効率に悩まされる。更に、非ウイルス性方法、例えばエレクトロポレーションは、ラージスケールでの使用を妨げる低い細胞生存率を有し得る。
【0005】
一過性トランスフェクションは、細胞当たりの高ペイロードを迅速に得るための手法であり、細胞老化を引き起こし得て[17]、腫瘍指向性を低下させ得る[18]抗生物質選択及び何週間にも及ぶ工程作業、並びにウイルス誘導性MSC形質転換に関する安全面の懸念[19]を回避する。特定の非ウイルス性方法は、産生の容易さ、低コスト及び安全性プロファイルに関してウイルスベクターに勝る利点を有するものの[20]、MSC改変に向けた幅広い採用の欠如は主に、トランスフェクションの低効率(0~35%)による[21、22]。DNAの高コピー数を細胞内に送達することは可能であるが、導入遺伝子の発現は、しばしば低いままである。特定の非ウイルス性方法による導入遺伝子の低い発現は、遺伝子転写用プラスミドの低い利用性をもたらす、非生産的な細胞内区画内でのプラスミドDNAの蓄積に起因し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第4版)、2012年、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【文献】「Genes VII」、B. Lewin、Oxford University Press (2000)
【文献】「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrook等、Cold Spring Harbor Laboratory、第3版(2001)
【文献】Cold Spring Harb Protoc.、2016年7月1日、2016(7)、doi:10.1101/pdb.prot087163
【文献】Oncotarget.、2017年10月6日、8(46):80156~80166頁
【文献】Swiech等、BMC Biotechnology、11(114)、2011年
【文献】McCall等、Frontiers in Moleuclar Neuroscience、5、(2012)
【文献】Ho等、Bioscience Reports、38、2018年
【文献】Madeira等、Journal of Biotechnology、151、130~136頁、2011年
【文献】Clin Cancer Res.、2017年6月15日、23(12):2951~2960頁
【文献】Kucerova等、J Gene Med、10、1071~1082頁、2008年
【文献】Kucerova等、Stem Cell Research、8、247~258頁、2012年
【文献】Kwon等、Clinical and Experimental Otorhinolaryngology、6、176~183頁、2013年
【文献】Nouri等、Journal of Controlled Release:Official Journal of the Controlled Release Society、200、179~187頁、2015年
【文献】You等、Journal of Gastroenterology and Hepatology、24、1393~1400頁、2009年
【文献】Mohr等、Cancer Letters、414、239~249頁、2018年
【文献】Aboody等、Sci Transl Med、5、184ra159、2013年
【文献】von Elnem等、Int J cancer、2019年
【文献】Portnow、Clinical Cancer Research:An Official Journal of the Americal Association for Cancer Research、23、2951~2960頁、2017年
【文献】Ho等、Nucleic Acids Research、45(e38)、2017年
【文献】Boussif等、Gene Ther、3、1074~1080頁、1996年
【文献】Ho等、Enhanced transfection of a macromolecular lignin-based DNA complex with low cellular toxicity、Biosci. Rep.(2018)38:1~9頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MSCをトランスフェクションするための、付加的、代替的及び/又は改善された方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
多数の異なる治療用途及び非治療用途に向けて、治療用遺伝子又は興味の対象となる別の遺伝子を発現するように改変した幹細胞が望ましい。伝統的に、プロドラッグ遺伝子療法の分野では、ウイルスベースの遺伝子改変手法が、前臨床研究及び臨床研究において幹細胞、例えばMSCを改変するための好ましい手法であった。なぜなら、非ウイルス性手法は、概して低いトランスフェクション効率を提供したからである。しかしながら、そのような用途におけるウイルスベースの遺伝子改変は、固有安全性リスクを有し、臨床グレードウイルスの産生は困難な場合があり、ウイルス性方法により細胞当たり導入され得る遺伝子コピーの数は概して低い(しばしば細胞当たり<10コピー)。更に、ウイルス性又は非ウイルス性のいずれか一方により、得られた細胞の表現型(即ち、多分化能、免疫表現型、指向性等)への望ましくない変化を引き起こさずに、幹細胞、例えばMSCの遺伝子改変を達成することが、分野が面する別の難問である。
【0009】
本明細書に詳細に記載されるように、本発明者は、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物を用いた、非ウイルス性であり、特定の実施形態では、高いトランスフェクション効率、細胞当たりの高コピー数、高い細胞生存率、長期間の一過性発現、及び/又は実質的に不変の多能性表現型を提供し得る、間葉系幹細胞をトランスフェクションする方法を開発した。特定の実施形態では、そのような方法が、改変間葉系幹細胞のラージスケール臨床産生用に拡張可能及び/又は適切であり得る。更に、トランスフェクトされた間葉系幹細胞及び間葉系幹細胞集団、それらの使用、そのようなトランスフェクトされた幹細胞を使用する、疾患又は障害、例えば癌の治療方法、並びにそれらに関するキット及び組成物も本明細書に詳細に記載される。
【0010】
一実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物でトランスフェクトされた間葉系幹細胞(MSC)であって、MSCは、核酸構築物のトランスフェクションにより実質的に不変である多能性表現型を有し、MSCはウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料(vehicle material)を含まない、MSCが本明細書において提供される。
【0011】
別の実施形態では、複数の間葉系幹細胞(MSC)であって、MSCの少なくとも約60%が、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物でトランスフェクトされており、トランスフェクトされたMSCは、核酸構築物のトランスフェクションにより実質的に不変である多能性表現型を有し、MSCはウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まない、MSCが本明細書において提供される。
【0012】
複数のMSCの別の実施形態では、MSCの少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、核酸構築物でトランスフェクトされており、1つ又は複数の機能遺伝子を発現してもよい。更なる実施形態では、複数のMSCの細胞生存率が、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%であり得る。
【0013】
本明細書のトランスフェクトされたMSCのいずれかの別の実施形態では、MSCが各々、平均して、少なくとも約1000コピー、少なくとも約2000コピー、少なくとも約3000コピー、少なくとも約4000コピー、少なくとも約5000コピー、少なくとも約6000コピー、少なくとも約7000コピー、少なくとも約8000コピー、少なくとも約9000コピー、又は少なくとも約10000コピーのコピー数の核酸構築物でトランスフェクトされてもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、トランスフェクトされたMSC細胞中で一過性に発現されてもよい。別の実施形態では、MSCが、臍帯血、新生児出生関連組織(neonatal birth-associated tissue)、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜(cord lining)、胎盤、又は別のMSC細胞源由来であり得る。別の実施形態では、MSCが、脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)であり得る。別の実施形態では、MSCが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ又は別の種に由来してもよい。別の実施形態では、核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくは別のCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含んでもよい。
【0014】
本明細書のトランスフェクトされたMSCのいずれかの別の実施形態では、MSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現してもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が自殺遺伝子を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子がシトシンデアミナーゼ(CDy)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy及びUPRTの両方を含んでもよい。別の実施形態では、CDy及びUPRTが、融合構築物として発現されてもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含んでもよい。別の実施形態では、蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy、UPRT及びGFPを含んでもよい。別の実施形態では、CDy、UPRT及びGFPが、融合構築物として発現されてもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)又は別のチミジンキナーゼを含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、1つ若しくは複数の癌治療用遺伝子、又は癌治療とは関連しない1つ若しくは複数の機能遺伝子を含んでもよい。
【0015】
本明細書のトランスフェクトされたMSCのいずれかの別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、カチオンポリマー、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤、及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤を使用して核酸構築物でトランスフェクトされてもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが、直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アミドアミン)PAMAM、又は別のカチオンポリマー、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)を含んでもよい。別の実施形態では、第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、又は別の融合性脂質(fusogenic lipid)又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。別の実施形態では、第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤(HDAC6i)を含んでもよい。別の実施形態では、第2の薬剤がSAHA(ボリノスタット)を含んでもよい。
【0016】
本明細書のMSCのいずれかの別の実施形態では、表現型が、MSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性を含んでもよい。別の実施形態では、本明細書に記載される任意の実施形態の、遺伝子操作されたMSCが、5-フルオロシトシン(5FC)又はガンシクロビル(GCV)での処理に対して感受性であり得る。MSCの1つ又は複数の実施形態は、a)5FCを5-フルオロウラシル(5FU)、5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)若しくは両方へと、b)ガンシクロビルをガンシクロビル一リン酸へと変換し得るか、又はc)a)とb)との組合せであってもよい。別の実施形態では、表現型が、トランスフェクション後にCD表面マーカーの発現が実質的に不変であり得る免疫表現型を含んでもよい。
【0017】
本明細書に記載されるMSCのいずれかの別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、プラスチック付着性であってもよく、CD105、CD73及びCD90を発現してもよく(>95%)、CD45、CD34、CD14及びHLA-DR表面分子の発現を欠いてもよく(<2%)、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞へと分化し得てもよく、国際細胞治療学会(ISCT)により定義される免疫表現型基準を満たす。別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが未分化であってもよい。
【0018】
本明細書に記載されるMSCのいずれかの別の実施形態では、MSCが、凍結保存状態であってもよい。
【0019】
別の実施形態では、MSCが、癌治療での使用向けであってもよい。特定の実施形態では、癌が、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成(cancer ulceration)、鼻腫瘍、又は胃腸癌、又はそれらの任意の組合せを含み得る。別の実施形態では、MSCが、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けであってもよい。
【0020】
別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法であって、MSCを、カチオンポリマーと複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物に曝露する工程、MSCを、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤に曝露する工程、並びにMSCをインキュベートする工程、それにより、核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する工程を含む、方法が本明細書において提供される。
【0021】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、MSCは、トランスフェクション混合物に曝露する間、第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する間、インキュベーションの間、又はそれらの任意の組合せの間、遠心分離されなくてもよい。別の実施形態では、MSCをインキュベートする工程が、遠心分離を伴わずに静かに混合する工程を含んでもよい。別の実施形態では、MSCをインキュベートする工程が、MSCを少なくとも約2時間インキュベートする工程を含んでもよい。別の実施形態では、MSCをインキュベートする工程が、MSCを約2時間~約48時間インキュベートする工程を含んでもよい。別の実施形態では、MSCをインキュベートする工程が、MSCを約3時間~約24時間、又は約4時間~約18時間インキュベートする工程を含んでもよい。
【0022】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、カチオンポリマーが、MSCに対して低い細胞傷害性を有すると同定されたカチオンポリマーを含んでもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが、約5kDa~約200kDaのサイズを有してもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが、直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アミドアミン)PAMAM、又は別のカチオンポリマー、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)を含んでもよい。
【0023】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、又は別の融合性脂質、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。別の実施形態では、第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤(HDAC6i)を含んでもよい。別の実施形態では、第2の薬剤がSAHA(ボリノスタット)を含んでもよい。
【0024】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物を供給するために核酸構築物をカチオンポリマーと複合体形成させる工程、及びそのトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程を含んでもよい。別の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、トランスフェクション混合物をMSCに添加する工程、及びMSCをトランスフェクション混合物と共にインキュベートする工程を含んでもよい。別の実施形態では、MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、トランスフェクション混合物を、第1の薬剤及び第2の薬剤を補足した細胞培養培地で置換する工程を含んでもよい。別の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCから培養培地を除去する工程、及び培養培地をトランスフェクション混合物で置換する工程を含んでもよい。別の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCを、穏やかな遠心分離下にトランスフェクション混合物とインキュベートする工程を含んでもよい。別の実施形態では、穏やかな遠心分離が、約5分間の約200gを含んでもよい。
【0025】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、細胞培養培地が完全培地を含んでもよい。別の実施形態では、MSCが約60%のコンフルエント状態(confluency)であってもよく、MSCを、トランスフェクション混合物に曝露する約24時間前に播いてもよい。別の実施形態では、トランスフェクション混合物が、複合体形成した核酸を無血清DMEM中又は新鮮な培養培地中に含んでもよい。
【0026】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約200ng~約500ngの間であり得る。別の実施形態では、MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約250ng~約400ngの間であり得る。別の実施形態では、MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約300ng~約350ngの間であり得る。別の実施形態では、カチオンポリマーの核酸構築物に対する比が、トランスフェクション混合物中の核酸構築物1μg当たり、カチオンポリマー約1μg~約30μgであり得る。別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが各々、平均して、少なくとも約1000コピー、少なくとも約2000コピー、少なくとも約3000コピー、少なくとも約4000コピー、少なくとも約5000コピー、少なくとも約6000コピー、少なくとも約7000コピー、少なくとも約8000コピー、少なくとも約9000コピー、又は少なくとも約10000コピーのコピー数の核酸構築物でトランスフェクトされてもよい。別の実施形態では、核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくはCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含んでもよい。
【0027】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が自殺遺伝子を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)及び/又はチミジンキナーゼ(TK)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy及びUPRTの両方を含んでもよい。別の実施形態では、CDy及びUPRTが、融合構築物として発現されてもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含んでもよい。別の実施形態では、蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy、UPRT及びGFPを含んでもよい。別の実施形態では、CDy、UPRT及びGFPが、融合構築物として発現されてもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)又は別のチミジンキナーゼを含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、1つ若しくは複数の癌治療用遺伝子、又は癌治療とは関連しない1つ若しくは複数の機能遺伝子を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、トランスフェクトされたMSC中で一過性に発現されてもよい。別の実施形態では、MSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現してもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含んでもよく、方法が更に、セルソーティング又はFACSを使用して、トランスフェクトされたMSCを単離する工程、選択する工程、又は精製する工程を含んでもよい。
【0028】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCの多能性表現型が、トランスフェクションにより実質的に不変であり得る。例えば、限定的であることは望まないが、多能性表現型は、改変細胞が、天然MSCに匹敵する骨形成系列、脂肪生成(adipogenic)系列、及び/又は軟骨形成系列へと分化可能であるような分化能を含み得る。別の実施形態では、多能性表現型が、MSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性を含んでもよい。別の実施形態では、多能性表現型が、トランスフェクション後にCD表面マーカーの発現が実質的に不変である免疫表現型を含んでもよい。別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが未分化であってもよい。
【0029】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、プラスチック付着性であってもよく、CD105、CD73及びCD90を発現してもよく(>95%)、CD45、CD34、CD14及びHLA-DR表面分子の発現を欠いてもよく(<2%)、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞へと分化し得てもよく、国際細胞治療学会(ISCT)により定義される免疫表現型基準を満たす。
【0030】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、MSCの少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、核酸構築物でトランスフェクトされており、1つ又は複数の機能遺伝子を発現してもよい。別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCの細胞生存率が、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%であり得る。
【0031】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、方法が、ウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まなくてもよい。
【0032】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、MSCが、臍帯血、新生児出生関連組織、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜、胎盤、又は別のMSC細胞源由来であり得る。別の実施形態では、MSCが、脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)であり得る。別の実施形態では、MSCが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ又は別の種に由来してもよい。
【0033】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、得られたMSCが、5-フルオロシトシン(5FC)又はガンシクロビル(GCV)又は両方ともでの処理に対して感受性であり得る。別の実施形態では、得られたMSCが、a)5FCを5-フルオロウリジン(5FU)、5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)若しくは両方へと、b)ガンシクロビルをガンシクロビル一リン酸へと変換し得るか、又はc)a)とb)との組合せであってもよい。
【0034】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、方法が、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程の前に、増殖培地、例えば新鮮な増殖培地中でMSCを培養する工程を含んでもよい。別の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCから増殖培地を除去せずにトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程を含んでもよく、遠心分離は、曝露する工程及びインキュベートする工程の間行われない。別の実施形態では、MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、第1の薬剤及び第2の薬剤を、トランスフェクション混合物と同時に、連続的に、又はトランスフェクション混合物と併用してMSCに添加する工程を含んでもよい。別の実施形態では、第1の薬剤及び第2の薬剤は、MSCへのトランスフェクション混合物の添加と同時にMSCに添加されてもよく、又は第1の薬剤及び第2の薬剤は、トランスフェクション混合物と混合され、MSCに添加されてもよい。別の実施形態では、第1の薬剤及び第2の薬剤は、トランスフェクション混合物をMSCに添加してから間もなく、MSCに添加されてもよい。別の実施形態では、トランスフェクション混合物は、第1の薬剤及び第2の薬剤をMSCに添加する前に除去されなくてもよい。別の実施形態では、トランスフェクション混合物へのMSCの曝露期間が、第1の薬剤及び第2の薬剤へのMSCの曝露期間と重複してもよい。別の実施形態では、トランスフェクション混合物は、第1の薬剤及び第2の薬剤をMSCに添加する前に除去されなくてもよい。
【0035】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、方法が更に、貯蔵のために、トランスフェクトされた間葉系幹細胞(MSC)を凍結保存する工程を含んでもよい。別の実施形態では、方法が更に、凍結保存したトランスフェクトされた間葉系幹細胞を、その使用に向けた調製において、解凍する工程を含んでもよい。
【0036】
本明細書に記載される方法のいずれかの別の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、本明細書に記載されるMSCの実施形態のいずれかにより定義されてもよい。別の実施形態では、MSC又は複数のMSCの1つ又は複数の実施形態が、本明細書に記載される方法のいずれかによって産生されてもよい。
【0037】
別の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかによって産生される、MSC又は複数のMSCが本明細書において提供される。
【0038】
別の実施形態では、本明細書に定義されるMSCのいずれかの、必要とする患者において癌を治療するための使用が本明細書において提供される。特定の実施形態では、非限定的な例として、癌が、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌を含み得る。別の実施形態では、MSCが、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けであってもよい。別の実施形態では、MSCが、癌の治療用の医薬品の製造における使用向けであってもよい。別の実施形態では、MSCが、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けであってもよい。
【0039】
別の実施形態では、必要とする患者において癌を治療するための方法であって、本明細書に定義されるMSCのいずれかを、患者の癌細胞近傍の領域に投与する工程を含んでもよく、但し、MSC中の1つ又は複数の機能遺伝子が、癌細胞に対する抗癌効果に寄与してもよい、方法が本明細書において提供される。
【0040】
本明細書に記載される、癌を治療するための方法のいずれかの特定の実施形態では、癌が、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌を含み得る。
【0041】
本明細書に記載される、癌を治療するための方法のいずれかの別の実施形態では、MSCを、5FC、5FU、GCV若しくはそれらの任意の組合せと同時に、連続的に、又は5FC、5FU、GCV若しくはそれらの任意の組合せと併用して投与してもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)、チミジンキナーゼ(TK)又は両方ともを含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy及びUPRTの両方を含んでもよい。別の実施形態では、CDy及びUPRTが、MSC中で融合構築物として発現されてもよい。別の実施形態では、MSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現してもよい。
【0042】
別の実施形態では、本明細書に記載される、癌を治療するための方法のいずれかが更に、MSCが5FC、5FU、ガンシクロビル、又はそれらの任意の組合せに曝露されるように、5FC、5FU、ガンシクロビル、又はそれらの任意の組合せを患者に投与する工程を含んでもよい。
【0043】
別の実施形態では、本明細書に記載される、癌を治療するための方法のいずれかが更に、MSCを投与する工程の前に、本明細書に記載される任意の実施形態において定義される方法のいずれかによりMSCを産生する工程を含んでもよい。
【0044】
別の実施形態では、本明細書に記載される任意の実施形態の操作されたMSC、及び薬学上許容される担体、希釈剤、賦形剤、細胞培地又は緩衝液の少なくとも1つを含む組成物が本明細書において提供される。
【0045】
別の実施形態では、本明細書に記載される任意の実施形態のMSCのいずれかを含むセラノスティック剤が本明細書において提供される。
【0046】
別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を一過性に発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするためのキットが本明細書において提供される。一実施形態では、キットが、MSC、1つ若しくは複数の機能遺伝子の一過性発現用に設計された核酸構築物、細胞培養培地、カチオンポリマー、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤、MSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤、本明細書の任意の実施形態に記載される方法を行うための説明書、5FC、GCV、及び/又は5FUの1つ又は複数を含んでもよい。特定の実施形態では、キットが、凍結保存用の緩衝液若しくは薬剤、解凍用の緩衝液若しくは薬剤、又は両方ともを含んでもよい。特定の非限定的な実施形態では、凍結保存用の緩衝液又は溶液、例えばcryostor10(Biolife Solutions社、米国)を使用してもよい。更なる例示的な実施形態では、解凍した操作MSCを、低温液(hypothermic solution)、例えばHypothermosol(Biolife Solutions社、米国)中で保存してもよい。当業者には明らかであるように、別の例も使用可能である。
【0047】
本明細書のキットのいずれかの別の実施形態では、MSCが、臍帯血、新生児出生関連組織、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜、胎盤、又は別のMSC細胞源由来であり得る。別の実施形態では、MSCが、脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)であり得る。別の実施形態では、MSCが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ又は別の種に由来してもよい。別の実施形態では、核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくは別のCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含んでもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが、直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アミドアミン)PAMAM、又は別のカチオンポリマー、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)を含んでもよい。別の実施形態では、第1の薬剤が、DOPC、DPPC、又は別の融合性脂質の1つ又は複数を含んでもよい。別の実施形態では、第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、又は別の融合性脂質、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。別の実施形態では、第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤(HDAC6i)を含んでもよい。別の実施形態では、第2の薬剤がSAHA(ボリノスタット)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が自殺遺伝子を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)又はチミジンキナーゼ(TK)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy及びUPRTの両方を含んでもよい。別の実施形態では、CDy及びUPRTが、融合構築物として発現されてもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含んでもよい。別の実施形態では、蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy、UPRT及びGFPを含んでもよい。別の実施形態では、CDy、UPRT及びGFPが、融合構築物として発現されてもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)又は別のチミジンキナーゼを含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、1つ若しくは複数の癌治療用遺伝子、又は癌治療とは関連しない1つ若しくは複数の機能遺伝子を含んでもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが、MSCに対して低い細胞傷害性を有すると同定されたカチオンポリマーを含んでもよい。別の実施形態では、カチオンポリマーが、約5kDa~約200kDaのサイズを有してもよい。別の実施形態では、キットの1つ又は複数の実施形態におけるカチオンポリマーの核酸構築物に対する比が、核酸構築物1μg当たり、カチオンポリマー約1μg~約30μgであり得る。
【0048】
本明細書のキットのいずれかの別の実施形態では、キットが、MSCベースの抗癌剤の調製用であってもよい。本明細書のキットのいずれかの別の実施形態では、キットが、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに定義される方法のいずれかを行うための説明書及び/又は装置を含んでもよい。
【0049】
別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を一過性に発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするためのキットであって、MSC、1つ若しくは複数の機能遺伝子の一過性発現用に設計された核酸構築物、細胞培養培地、カチオンポリマー、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤、MSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤、本明細書に記載される方法のいずれかを行うための説明書、5FC、GCV、及び/又は5FUの1つ又は複数を含んでもよい、キットが本明細書において提供される。特定の実施形態では、キットが、前記のように、凍結保存用の緩衝液若しくは薬剤、解凍用の緩衝液若しくは薬剤、又は両方ともを含んでもよい。
【0050】
別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法であって、増殖培地中でMSCを培養する工程、MSCから増殖培地を除去せずに、カチオンポリマーと複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤をMSCに添加する工程、並びにMSCを、トランスフェクション混合物、第1の薬剤及び第2の薬剤のすべてと接触させながら、インキュベーション期間にわたりインキュベートする工程を含み、但し、第1の薬剤及び第2の薬剤を、トランスフェクション混合物の添加と同時に、トランスフェクション混合物の添加に連続的に、又はトランスフェクション混合物と併用してMSCに添加し、トランスフェクション混合物の添加とインキュベーション期間の終了との間、MSCを遠心分離しないことにより、核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する、方法が本明細書において提供される。
【0051】
本明細書に記載される、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法の別の実施形態では、インキュベーション期間が、少なくとも約2時間であり得る。別の実施形態では、インキュベーション期間が、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、又は約36時間、又はそれ以上であり得る。
【0052】
別の実施形態では、本明細書に記載される、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法のいずれかにより産生される、MSC細胞又は複数のMSC細胞が本明細書において提供される。別の実施形態では、本明細書に記載される、MSC細胞又は複数のMSC細胞のいずれかの、必要とする患者において癌を治療するため、又は癌の治療用の医薬品を製造するための使用が本明細書において提供される。
【0053】
必要とする患者において癌を治療するための方法が本明細書に記載される。そのような方法の特定の実施形態では、本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態に定義されるMSCのいずれかを、患者の癌細胞近傍の領域に投与する工程を含んでもよく、但し、MSC中の1つ又は複数の機能遺伝子が、癌細胞に対する抗癌効果に寄与する。
【0054】
特定の実施形態では、癌が、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌を含み得る。
【0055】
別の実施形態では、本明細書に記載されるMSCのいずれか、及び薬学上許容される担体、希釈剤、賦形剤、細胞培地又は緩衝液の少なくとも1つを含む、組成物が本明細書において提供される。別の実施形態では、本明細書に記載される任意の実施形態のMSCのいずれかを含む、セラノスティック剤及び/又はキットが本明細書において提供される。
【0056】
これら及び他の特徴が、添付の図面を参照する以下の記載から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】LPEIベースのトランスフェクション法の一実施形態によるCDy::UPRT_AT-MSCの生成を示す。エンハンサーが、AT-MSC中でのCDy::UPRTの高発現を可能にする。
図1Aは、6ウェル培養容器中のAT-MSCを、LPEIと複合体形成させたCDy::UPRT::GFP pDNA 1μg(DNA 1μg対LPEI 5μL)でトランスフェクトしたことを示す。遠心分離後に、トランスフェクション混合物を新鮮培地(TrafEnを含む又は含まない)で置換した。1日後、代表的な画像が得られ、細胞をFACS解析のためにトリプシン処理した。結果を平均値±SD(n=4)で示す。トランスフェクトされていないAT-MSCを陰性対照として利用した。トランスフェクション条件間での著しい差異を、スチューデントの両側t検定を使用して計算した。
**P<0.01。
図1Bは、24ウェル容器中で培養したAT-MSC(LOT00088)を、LPEI又はリポフェクタミン(Lipofectamine)3000を用いて、それぞれ、遠心分離又はメーカのプロトコールを使用して様々な量のCDy::UPRT発現プラスミドでトランスフェクトしたことを示す。24時間のインキュベーション後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、CDy(緑色)及び核(Hoechst染色、青色)を染色した。代表的な画像を示す。バーは400μmを表す。
図1Cは、AT-MSCを、TrafEnの存在下にLPEI/CDy::UPRTポリプレックスでトランスフェクトした。改変から1日又は7日後、CDyを標的とする抗体を用いた免疫ブロッティング解析用に細胞を溶解した。サンプルローディングの内在性対照としてアクチンを使用した。
【
図2】改変AT-MSCを5FC及び5FUに対して感受性にさせるCDy::UPRT発現を示す棒グラフである。
図2Aは、CDy::UPRT_AT-MSCを、指定の時間にわたり5FC 150μg/mLで処理したことを示す。各時点での細胞生存率を、標準MTSアッセイにより測定した。異なる時点では、5FC処理なしのサンプルを対照として利用した。
図2Bは、5FUに対する感受性を、5FU 100μg/mLの存在下での培養5日後に非改変AT-MSCと改変AT-MSCとの間で比較したことを示す。MTSアッセイを、処理後の細胞生存率を測定するために使用した。5FU処理なしの条件を100%とした。結果を平均値±SD(n=4)で示す。AT-MSCとCDy::UPRT_AT-MSCとの間での細胞生存率の著しい差異を、スチューデントの両側t検定を使用して計算した。
**、p<0.005。
【
図3】CDy::UPRT発現が、標準的免疫表現型プロファイル及び分化能に影響を及ぼさないことを示す。
図3Aは、メーカ説明書に従って、蛍光物質コンジュゲート抗体で標識してフローサイトメトリーにより解析したAT-MSC及びCDy::UPRT_AT-MSCを示す。アイソタイプ抗体を各対照として利用した。ヒストグラムは、アイソタイプを統合したプロファイル(赤色)、非改変AT-MSC(緑色)及びCDy::UPRT_AT-MSC(青色)を示す。
図3Bは、メーカの推奨に従って、骨分化用に補足した培地中で14日間培養した両方の細胞型を示す。インキュベーション終了時に、細胞をアリザリンレッドSで染色した。アリザリンレッドSで染色されるカルシウム沈着は、AT-MSCの分化を示唆する表現型の1つである。
図3Cは、非改変AT-MSC及びCDy::UPRT発現AT-MSCを、脂肪細胞分化用の成分を含有する培地中で培養したことを示す。14日後、細胞をオイルレッドOで染色した。この色素は、細胞内に見られる油滴を染色し、脂肪細胞分化を示唆する。画像は、倍率20×で獲得した。
【
図4】CDy::UPRT発現が、AT-MSCの遊走能に影響を及ぼさないことを示す。
図4Aは、細胞浸潤アッセイを使用してMSCの遊走特性を評価したことを示す。まず、24ウェル容器中の10%FBS補足DMEM中に200000個又は400000個の標的細胞をプレーティングした。6時間後、細胞培養を1×PBSで1回洗浄し、無血清DMEMで置換した。CDy::UPRT_AT-MSC(実験の1日前に改変)及び非改変AT-MSCを、マトリゲルコートした細胞インサート上にロードした。インサートをそれぞれ、標的細胞培養へと移した。24時間後、顕微鏡下、Hoechst 33342で染色した細胞の蛍光画像の撮影により、細胞浸潤を評価した。遊走AT-MSCの数を計算した。グラフは、フレーム当たりの遊走細胞の平均値(n=3)を示す。HEK293Tを陰性対照として使用した。200,000標的細胞と400,000標的細胞との間の著しい差異を、スチューデントの両側t検定を使用して計算した。
**、P<0.01。
図4Bは、Hoechst 33342で染色した遊走CDy::UPRT_AT-MSCの画像を、倍率10×で撮影したことを示す。スケールバーは400μmを表す。
【
図5】CDy::UPRT_AT-MSC/5FCが仲介する、癌細胞に対するin vitroでの選択的細胞傷害性抗癌効果を示す。
図5Aは、CDy::UPRT_AT-MSCを、5FC 150μg/mLの存在下又は不在下に2%FBS補足DMEM中でU251-MG、MB-MDA231又はMKN1と共培養したことを示す。治療用細胞と癌細胞株とを、1 CDy::UPRT_AT-MSC対5、10、50、100癌細胞の比で混合した。5日後、標準MTSアッセイにより、増殖阻害を分光測定で評価した。増殖阻害の効率は、100%-(サンプル/対照×100%)と定義する。5FC処理なしの条件を対照として利用した。グラフの棒は、平均値(n=4)、+SDを表す。
図5Bは、実験終了時に撮影した混合培養(1 MSC対10癌細胞)の明視野を示す。スケールバーは400μmを表す。
図5Cは、CDy::UPRT_AT-MSC又はAT-MSCの、MB-MDA231に対する細胞傷害性抗癌効果を、間接共培養(indirect coculture)により評価したことを示す。同数の治療用細胞及びMB-MDA231を、トランスウェル及び24ウェルプレートにそれぞれ播いた。2%FBS及び5FC 100μg/mLを補足したDMEM中で細胞を4日間共培養した。その後、トランスウェルを取り外し、培養プレート上の残存細胞をHoechst 3222で染色した。蛍光リードアウトを、マイクロプレートリーダーで獲得した。増殖阻害の効率(%)は、100%-(5FCを含む条件/それぞれの5FCを含まない条件×100%)と定義した。生物学的三つ組の9領域から収集した相対蛍光単位を平均値±SEMとして示した。グラフは、各ウェルの9領域から収集した結果、平均値+SEMを表す。24ウェルプレート上の残存癌細胞の各画像を示す。スケールバーは400μmを表す。
【
図6】異なるトランスフェクション法を用いて生成したCDy::UPRT_AT-MSC/5FCが仲介する様々な細胞傷害性抗癌効果を示す。AT-MSC(250,000細胞)を、LPEI(TrafEnを使用又は使用せず)及びリポフェクタミン3000に仲介させてCpGフリーCDy::UPRT発現プラスミド1μgでトランスフェクトした。トランスフェクションから1日後、CDy::UPRT_AT-MSCを、5FC 150μg/mLの存在下又は不在下に2%FBS補足DMEM中でU251-MG、MB-MDA231又はMKN1と共培養した。治療用細胞と癌細胞株とを、1 CDy::UPRT_AT-MSC対1癌細胞(
図6A)、5癌細胞(
図6B)、10癌細胞(
図6C)の比で混合した。5日後、標準MTSアッセイにより、増殖阻害を分光測定で評価した。5FC処理なしの条件を対照として利用した。増殖阻害の効率は、100%-(サンプル/対照×100%)と定義する。グラフの棒は、平均値(n=4)、±SDを表す。LPEI+TrafEnを用いた条件と別の方法との間の著しい差異を、スチューデントの両側t検定を使用して計算した。
**、P<0.01。
【
図7】長期発現がCDy::UPRT_AT-MSCの持続可能な抗癌効率を可能にすることを示す。AT-MSC(250,000細胞)を、LPEIに仲介させてTrafEnの存在下にCpGフリーCDy::UPRT発現プラスミド1μgでトランスフェクトした。1日後(
図7A)及び7日後(
図7B)、改変AT-MSCを収集し、1 MSC対5癌細胞又は10癌細胞の比で、5FC 150μg/mLの存在下又は不在下にMKN1細胞株及びMKN28細胞株と共培養した。増殖阻害は、インキュベーション5日後、標準MTSアッセイにより分光測定で評価した。5FC処理なしの条件を対照として利用した。増殖阻害の効率は、100%-(サンプル/対照×100%)と定義する。グラフの棒は、平均値(n=4)、±SDを表す。
図7Cは、改変から1日及び7日後に、CDyを標的とする抗体を用いた免疫ブロッティング解析用に細胞を溶解したことを示す。サンプルローディングの内在性対照としてアクチンを使用した。AT-MSCの細胞溶解液を、トランスフェクションから1日後及び7日後に収集した。CDy::UPRTの発現を、ウエスタンブロット解析を使用して入手した。並行実験では、トランスフェクションから1日後(A)又は7日後(B)、改変AT-MSCを収集した。
【
図8】TrafEnが、AT-MSC中での効率良いLPEIベースのトランスフェクションを可能にしたことを示す。
図8Aは、LPEI/pCMV-GFPポリプレックス又はリポフェクタミン3000/pCMV-GFPリポプレックスを様々な量のpDNAで調製したことを示す。AT-MSCを、LPEI(pDNA 1μg対LPEI 10μL)又はリポフェクタミン3000により、それぞれ遠心分離プロトコール又はメーカ説明書に従ってトランスフェクトした。GFP発現の蛍光強度(RFU)を、各生物学的レプリケート(n=3)の9領域で分光光度的に測定した(Ex475/Em509)。グラフは、RFUの平均値+SEMを表す。DNA量の増大と共に細胞数の低下が認められた。
図8Bは、AT-MSCを、pCMV-GFP 200ngと複合体形成させたLPEIで、TrafEnの存在下又は不在下にトランスフェクトしたことを示す。24時間後、細胞をトリプシン処理し、ペレットにし、フローサイトメトリー解析用に1×PBSに再懸濁した。トランスフェクション効率は、FACSにより定量した総細胞数に対して正規化した、GFP陽性細胞の百分率として計算した。棒グラフは、平均値±SD、n=3を表す。明視野画像及び蛍光画像を獲得した。代表的な画像を示す。
【
図9】異なるドナーから単離したAT-MSC中での高いトランスフェクション効率を示す。AT-MSCを、31~45歳の女性ドナー(LOT00061、Roosterbio社)から単離した。LPEI/pCMV-GFPポリプレックスを、pDNA 1μg対LPEI 5μLの比の様々なpDNA量で調製した。1日(24時間)後、代表的な画像を獲得してから、細胞をトリプシン処理し、ペレットにし、フローサイトメトリー解析用に1×PBSに再懸濁した。トランスフェクション効率は、FACSにより定量した総細胞数に対して正規化した、GFP陽性細胞の百分率として計算した。棒グラフは、平均値±SD、n=3を表す。蛍光画像を獲得した。代表的な画像を示す。
【
図10】AT-MSC中でのCDy::UPRT::GFPの長期発現を示す。AT-MSCを、融合型(fused)CDy::UPRT::GFP発現pDNA 1.25μgのPEIポリプレックスで、TrafEnの存在下にトランスフェクトした。トランスフェクション後1日目、2日目、3日目、5日目、8日目、蛍光画像及び明視野画像を獲得した。GFP発現の蛍光強度(RFU)を、細胞培養の9領域で分光光度的に測定した(Ex475/Em509)。グラフは、2つの生物学的レプリケートのRFU平均値+SDを表す。トランスフェクション後の異なる日数でのGFP発現間の著しい差異を、スチューデントの両側t検定を使用して計算した。
**P<0.01。
【
図11】CDy::UPRT::GFP発現AT-MSCの脂肪細胞分化を示す。AT-MSCを、融合型CDy::UPRT::GFP発現pDNA 1.25μgのPEIポリプレックスで、TrafEnの存在下にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、培地を脂肪細胞分化培地で置換した。14日後、細胞をオイルレッドOで染色した。GFP発現で示される改変AT-MSCは、明らかな油滴を示し、AT-MSCの多分化能が、トランスフェクション後に不変のままであることを示唆する。
【
図12】CDy::UPRT_AT-MSC/5FC、及び5FUの匹敵する抗癌効率を示す。抗癌効果は、U251-MG(
図12A)、MDA-MB-231(
図12B)、及びMKN1(
図12C)中で評価した。5FCと併用したCDy::UPRT_AT-MSCの治療効果(抗癌効果)を、同数のCDy::UPRT_AT-MSCと癌細胞株(2000細胞のU251-MG、5000細胞のMDA-MB-231及びMKN1)との共培養により解析した。1日後、培養培地を、2%FBS及び様々な濃度の5FC(5、10、50、100μg/mL)で補足したDMEMで置換した。他方、5FU処理の24時間前に4000細胞のU251-MG、10000細胞のMDA-MB-231及びMKN1を播いた。細胞株を、2%FBS補足DMEM中、5FU 5、10、50、100μg/mLで処理した。インキュベーション5日後、細胞傷害性効果を、標準MTSアッセイにより定性的に評価した。5FC及び5FUの処理なしの、100%と設定した条件を陰性対照として利用した。グラフは、平均値±SD、n=4を表す。
【
図13】癌細胞株に対するCDy::UPRT_AT-MSC/5FCの選択的増殖阻害効果を示す。CDy::UPRT_AT-MSC/5FCを、HS738T(ATCC、CRL-7869)、AGS、MKN28、HS746T、NUGC3及びMKN45(Yong Wei Peng博士、National University Cancer Institute、シンガポールによる快い提供)と共培養した。
図13Aは、混合培養を、5FC 150μg/mLの存在下又は不在下に2%FBS補足DMEM中でインキュベートしたことを示す。治療用細胞と癌細胞株とを、1 CDy::UPRT_AT-MSC対10癌細胞の比で混合した。5日後、増殖阻害を、標準MTSアッセイにより分光測定で評価した。5FC処理なしの条件を対照として利用した。増殖阻害の効率は、100%-(サンプル/対照×100%)と定義する。グラフの棒は、平均値(n=4)、±SDを表す。
図13Bは、実験終了時に撮影した混合培養の明視野画像を示す。スケールバーは400μmを表す。
【
図14】異なる起源に由来する幹細胞中での匹敵するトランスフェクション効率及び抗癌効率を示す。脂肪組織由来MSC(AT、Roosterbio社)、骨髄由来MSC(BM、Roosterbio社)、及びUC由来MSC(臍帯、ATCC)を、遠心分離プロトコールにより、TrafEnの存在下にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、ウエスタンブロット解析用に、細胞をトリプシン処理して収集した(
図14A)。CDy及びアクチンを標的とする抗体を用いた免疫ブロッティング解析用に細胞を溶解した。
図14Bは、同じ実験において、細胞を、様々な癌細胞株との、1 MSC対50癌細胞の比での共培養試験用に収穫したことを示す。細胞を、5FC 100μg/mLを含有する培地中で5日間共培養した。インキュベーション終了時に、残存細胞数を、Hoechst 33342で染色した細胞のRFUの波長Ex340/Em488での測定により分光光度的に評価した。非改変MSCを用いた条件を対照として利用する。増殖阻害の百分率を、適宜、計算した。グラフは、四つ組から収集したデータ、平均値±SEMを表す。
【
図15】HSV-TKを発現するように改変された様々な幹細胞中での匹敵するトランスフェクション効率及び抗癌効率を示す。AT-MSC、BM-MSC及びUC-MSCを、遠心分離プロトコールにより、TrafEnの存在下にトランスフェクトした。250,000細胞のMSCをトランスフェクトするためにpSELECT-zeo-HSV1tk(InvivoGen社)1μgを使用した。トランスフェクションから24時間後、様々な癌細胞株との、1 MSC対50癌細胞の比での共培養試験用にMSCを収穫した。細胞を、プロドラッグであるガンシクロビル(InvivoGen社)100μg/mLを含有する培地中で5日間共培養した。インキュベーション終了時に、残存細胞数を、Hoechst 33342で染色した細胞のRFUの波長Ex340/Em488での測定により分光光度的に評価した。非改変MSCを用いた条件を対照として利用する。増殖阻害の百分率を、適宜、計算した。グラフは、四つ組から収集したデータ、平均値±SEMを表す。
【
図16】CpGアイランドを含有する発現ベクターによるCDy::UPRT発現の経時的な低下を示す。AT-MSC(250,000細胞)を、遠心分離プロトコールにより、TrafEnの存在下にpSELECT-zeo-FcyFur(InvivoGen社)1μgでトランスフェクトした。トランスフェクションから1日後、3日後及び7日後、ウエスタンブロット解析(
図16A)及び共培養実験(
図16B)用に細胞を収穫した。共培養実験には、CDy::UPRT改変AT-MSCを、U251-MG細胞及びMDA-MB-231細胞と共に、1 MSC対1癌細胞、5癌細胞又は10癌細胞の比で、2%FBS及び5FC 100μg/mLを補足したDMEM中で培養した。5日後、増殖阻害を、標準MTSアッセイにより分光測定で評価した。5FC処理なしの条件を対照として利用する。増殖阻害の百分率を、適宜、計算した。グラフは、四つ組から収集したデータ、平均値+SEMを表す。
【
図17】MSCトランスフェクション用のプロトコールの例示的な一実施形態のイラストを示す。
【
図18】様々なDNA量での細胞生存率及びトランスフェクション効率を示す。AT-MSCを、遠心分離なしにトランスフェクトした。遺伝子改変効率及び細胞生存率は、フローサイトメトリー解析で測定した。
【
図19】非遠心分離プロトコールによりトランスフェクトしたAT-MSC中でのCDy::UPRTの長期発現を示す。遺伝子改変効率は、フローサイトメトリー解析で測定した。
【
図20】異なる型のMSC、つまりUC-MSC(
図20A)及びBM-MSC(
図20B)に対するポリマーの適合性を示す。MSCを、トランスフェクション混合物と、遠心分離なしに24時間インキュベートした。
【
図21】DNA及びポリマーの量の増大と共に低下する細胞生存率を示す。AT-MSCを、様々なポリマーにより、遠心分離なしにトランスフェクトした。直鎖状PEI(<200kDa)の濃度は、1μg/μLである。
【
図22】DNA及びポリマーの量の増大と共に低下する細胞生存率を示す。UC-MSCを、様々なポリマーにより、遠心分離なしにトランスフェクトした。直鎖状PEI(<5kDa)の濃度は、10μg/μLである。
【
図23】TrafEn法による、細胞当たり高発現レベルを示す。U2OS細胞(
図23A)又はAT-MSC細胞(
図23B)を、レンチウイルスで感染させ、5日間インキュベートした(
図23Bの左図)。同じ実験一式では、別個の培養からの細胞を、4日目に、TrafEnの存在下、PEIでトランスフェクトした(
図23Bの右図)。5日目に、感染細胞及びトランスフェクトされた細胞の蛍光画像を撮影した。AT-MSCについて、レンチウイルス及びTrafEn法の遺伝子改変効率を、更にフローサイトメトリー解析で測定した。TrafEn法でトランスフェクトしたAT-MSC中では、より多数の細胞が高レベルのGFPを発現した(
図23Bの右図)。
【
図24】異なるサイズの細胞容器中で得られた、トランスフェクトされたMSC数のグラフ(
図24A)及びMSC数と容器サイズとの良好な相関性(
図24B)を示す。
【
図25】非ウイルス性トランスフェクション法を使用して多数のトランスフェクトされたMSCを産生するための統合プロセスの開発の図解を示す。目的を達成するために考慮及び/又は最適化する要素を示す。細胞の多様性ゆえ、高いトランスフェクション効率、低い細胞傷害性、長期発現、及び産生の拡張性にとって最適な調合を得るためには、TrafEn適合性ポリマーのパネル(例えばPEI)を選別してもよい。
【
図26】様々なDNA量での細胞生存率及びトランスフェクション効率を示す。遺伝子改変効率及び細胞生存率は、フローサイトメトリー解析で測定した。
【
図27】CDy::UPRT発現が、標準的免疫表現型プロファイル及び分化能に影響しないことを示す。
図27Aは、CDy::UPRT_AT-MSCを、蛍光物質コンジュゲート抗体で標識してフローサイトメトリーにより解析したことを示す。アイソタイプを陰性対照として利用する。
図27Bは、両方の細胞型を、脂肪細胞分化用及び骨分化用に補足した培地中でそれぞれ14日間及び21日間培養したことを示す。インキュベーション終了時に、細胞を、オイルレッドO(脂肪生成)又はアリザリンレッドS(骨形成)で染色した。オイルレッドOは、細胞内に見られる油滴を染色し、脂肪細胞分化を示唆する。アリザリンレッドSで染色されるカルシウム沈着は、AT-MSCの分化を示唆する表現型の1つである。
【
図28】前記の
図8Aに関連する。次いで、接着細胞をトリプシン処理し、ヨウ化プロピジウム(PI)及びHoechst 33342(H33342)で染色した。細胞生存率及び総接着細胞数を、メーカのプロトコールに従って、NC-3000細胞カウンタで測定した。トランスフェクトされていない集団を対照として利用する。細胞生存率(%)は、PI陰性細胞の百分率を表す。総接着細胞数の百分率は、100%と設定した対照に対して計算した。データは、生物学的三つ組で行った実験の平均値+SDで表す。対照とトランスフェクトサンプルとの間での著しい差異を、スチューデントの両側t検定を使用して計算した。
**、p<0.05。
【
図29】前記の
図8Bに示す結果に関連する。同じ実験において、各条件の総接着細胞数(左側)及び細胞生存率(右側)を、NC-3000細胞カウンタで測定した。トランスフェクトされていない集団を対照として利用する。結果を平均値±SD、n=3で示す。
【
図30】前記の
図1に関連する。同じ実験において、各条件の総細胞数及び細胞生存率を、NC-3000細胞カウンタで測定した。トランスフェクトされた集団中での総接着細胞数の、対照(トランスフェクトされていない)に対する百分率を計算した。データは、平均値±SD、n=3を表す。
【
図31】CD::UPRT及びCD::UPRT::GFPで改変したMSCの匹敵する抗癌効率を示す。MSC(200,000細胞)を、エンハンサーの存在下、CDy::UPRT又はCD::UPRT::GFP 1μgでトランスフェクトした。トランスフェクションから1日後、U251-MG細胞を、CD::UPRT_MSCと共に、1:1、1:5又は1:10(MSC:癌細胞)の比で、5FC 100μg/mLを含む又は含まない2%FBS補足DMEM中で共培養した。5日後、処理条件下での増殖阻害を、標準MTSアッセイにより分光測定で評価した。5FC処理なしの条件を、0%と設定した対照として利用する。増殖阻害(%)は、対照に対して計算した。四つ組から収集したデータを、平均値+SDで表す。
【
図32】5-フルオロウラシル(5-FU)の存在下、in vivoでのCD::UPRT_AT-MSCの抗腫瘍効果を示す。皮下腫瘍を確立するために、5x10
6個のテモゾロミド耐性U-251MG細胞を、背側側面領域(dorsal flank region)に皮下注射した。腫瘍が目標サイズに達したら、1x10
6個のCD::UPRT_AT-MSC又はMSCを、皮下腫瘍に直接注射した。1日後、5FC 500mg/kg/日を毎日、4日続けて投与した。MSC投与から7日目、11日目、15日目に、デジタルノギスを用いて皮下腫瘍のサイズを測定した。プロドラッグのみの群を対照群として利用する。腫瘍容積(mm
3)は、標準式V=(W(2)×L)/2に従って計算した。(A)箱ひげ図は、各群のn=5から測定した腫瘍容積の分布を示す。処理群(CD::UPRT_AT-MSC/5-FU)の腫瘍容積は、7日目、11日目、15日目に統計的に有意な差異(P<0.05)を示した。(B)実験終了時に、マウスを安楽死処分した。腫瘍を抽出して4%PFAで固定した。画像は、各群から抽出した腫瘍(n=5)を示す。
【
図33】トランスフェクション効率に基づく、発現期間及び殺滅効率比較を示す。24ウェル培養容器中のAD-MSCを、PEI誘導体(ポリマー)を使用して、TrafEnを添加して、又は添加せずに様々なDNA量(200ng~400ng)でトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、FACS解析用に細胞をトリプシン処理した。(A)CDUPRTGFP+(%)及び(B)細胞生存率(%)、PI-(%)の両方を示した。結果を平均値±SD(n=3)で示す。トランスフェクトされていないAT-MSCを陰性対照として利用した。(C)様々なトランスフェクション条件下での収穫後のCD:UPRT:GFP陽性細胞(%)、解析はFACSを用いて行う。(D)異なるトランスフェクション条件でトランスフェクトしたMSCとのU251-MGの共培養の細胞生存率(%)。結果を平均値±SD(n=6)で示す。
【
図34】トランスフェクション後のMSCの表現型を示す。(A)天然MSC(左側)及びCD:UPRT:GFP MSC(右側)でのCDマーカー(CD90、CD74、CD105、CD14、CD20、CD34及びCD45)の発現、アイソタイプ対照をFACS解析用の陰性対照として使用した。(B)CD:UPRT:GFP MSCの、骨分化に対するアリザリンレッドS染色(上図)及び脂肪細胞分化に対するオイルレッドO染色(中央図)の代表的な画像を示し、脂肪細胞分化についてはGFP画像とオイルレッドO染色とのオーバーレイ(下図)も示した。白色矢印は、分化から14日後のCD:UPRT:GFP発現細胞のオイルレッドO染色を指し示す。(C)線維芽細胞を上回りU251-MGに向かって遊走した天然AD-MSC数及び改変AD-MSC数の倍率変化(fold change)。2群間の著しい差異を、スチューデントの独立両側t検定を使用して計算した。n.s.は、p値>0.05ゆえ、有意ではないことを表す。
【
図35】CDUPRTGFP_MSC/5-FCの、TMZR神経膠腫に対する細胞傷害性を示す。トランスフェクトAD-MSCを、神経膠腫細胞株(A)U251-MG及びU251-MGTMZR40、(B)U87-MG及びU87-MGTMZR40、(C)HGCC細胞株、並びに(D)線維芽細胞と共培養した。共培養の細胞生存率を、異なるMSC:癌細胞又は線維芽細胞比で、5-FC 100μg/mLとの7日間のインキュベーション後に測定した。結果を平均値±SD(n=6)で示す。
【
図36】CDUPRTGFP_MSC/5-FCの、U251-MG
TMZR40に対するin vivoでの細胞傷害性を示す。(A)腫瘍容積を、処理前及び処理後15日まで測定した(B)腫瘍量を、処理後15日の収穫後に測定した(C)マウスの体重の%変化を、処理前及び処理後15日まで測定した。結果を平均値±SEMで示す(マウスの数は少なくとも6匹)。天然MSCからの腫瘍容積及び体重と、異なる数のCD:UPRT:GFP_MSC処理からの腫瘍容積及び体重との間の著しい差異を、スチューデントの独立両側t検定を使用して計算した。p値<0.05は
*で表し、p値<0.01は
**で表し、p値<0.005は
***で表す。n.s.は、p値>0.05ゆえ、有意ではないことを表す。
【
図37】TMZ耐性膠芽腫(U251-MG
TMZR40)に対する治療法としての、5FCと併用したCD::UPRT::GFP_MSCの投与を示す。治療計画には、1x10
6個の治療用細胞又は天然細胞を腫瘍内注射した(0日目)。1日後、毎日1回、4日間、マウスに500mg 5FC/kg/日の腹腔内注射をした。5FCの最後の投与から3日目に、マウスに再び、操作幹細胞を注射し、このサイクルを実験期間にわたり繰り返した。3サイクル後(腫瘍誘発から50日後又は最初のMSC注入から36日後)、実験を終了した。(A)MSCの注射後の指定日での腫瘍容積の測定(B)画像は、最初のMSC注射から36日後の腫瘍サイズを示す。(C)実験の経過にわたるマウスの体重。
【
図38】肛門周囲癌の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2020年1月):生存、再発の報告なし。
【
図39】口腔黒色腫の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2020年1月):生存。
【
図40】甲状腺癌の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2019年6月):生存。
【
図41】軟部組織癌(癌潰瘍形成)の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2018年11月):生存、再発の報告なし。2018年11月14日の超音波報告:左側肛門領域に4×3×2cmの寸法の輪郭の明らかな低エコー性円形腫瘤が存在。周辺又は深部の器官との接着なし。特に腰下リンパ節への転移は見当たらない。膀胱にごく少数の1.5mmの非常に小さい尿路結石、尿道前立腺部にごく少数。その他の器官は正常。現在まで完全寛解。
【
図42】鼻腫瘍の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2020年1月):生存。
【
図43】胃腸癌の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの静脈内注入であった。最新の更新(2019年7月):生存。超音波報告からは、第2の増殖があるという事実にもかかわらず、最初の増殖は顕著に低下した。
【
図44】異なる市販/共同研究からのMSC型を、GFP導入遺伝子を含有するベクターで改変したことを示す。グラフの棒は、フローサイトメトリーにより測定したGFP+集団の%を示す。
【
図45】異なる起源のMSCを、CD::UPRT::GFPを発現するように改変したことを示す。
【
図46】平底表面上でのAD-MSC及びUC-MSCのスケールアップの直線性を示す。(A)トランスフェクトされた生細胞の数を、容器表面積に対してプロットした。(B)AD-MSC及びUC-MSCの両方に関するFACS解析からのGFP+(%)の代表的画像。(C)異なる培養容器中でのトランスフェクションの百分率。
【
図47】AD-MSC中において異なるマイクロキャリアを検査した結果を示す。(A)使用したマイクロキャリアの説明(B)異なるマイクロキャリア上で増殖させた生細胞の数を異なる日に対してプロットした。
【
図48】マイクロキャリア上でのトランスフェクションの拡張を示す。MSCを1.9cm
2でマイクロキャリア上に播き、異なるDNA量により、エンハンサーを添加してトランスフェクトした。(A)トランスフェクション効率、GFP+(%)及びPI-(%)をプロットし、(B)代表的画像を倍率4×で撮影した。
【
図49】マイクロキャリアスケールアップに影響を及ぼす異なる速度を示す。(A)トランスフェクション効率(%)であるGFP+(%)及び細胞生存率であるPI-(%)を示す。結果を平均値±SD(n=3)で示す。トランスフェクトされていないAD-MSCを陰性対照として利用した。(B)トランスフェクトされた細胞の代表的画像を倍率4×で撮影した。
【
図50】レンチウイルス又はTrafEn仲介性トランスフェクション法により改変したAT-MSCのCD::UPRT::GFP発現及び抗癌効率を比較した結果を示す。(A)感染から3日後、MSCを、ピューロマイシン1μg/mLの選択に2週間さらした。CD::UPRT::GFPを安定に発現するMSCを確立後、TrafEn仲介性トランスフェクションによりCD::UPRT::GFP_MSCを生成するために、別の実験一式を設定した。トランスフェクションから2日後、改変MSCの蛍光画像を獲得した。(B)その後、両方の培養を収穫し、(B)FACS解析及び(C、D)共培養試験を行った。グラフの棒は、1 MSC対1癌細胞、5癌細胞、50癌細胞、100癌細胞の異なる比での、MTSアッセイにより得られた癌殺滅効率を表す。レンチウイルスにより生成したCD::UPRT::GFP_MSCに対するTrafEn法により生成したCD::UPRT::GFP_MSCの癌殺滅効果の著しい差異を、スチューデントの両側t検定で評価した。
**、p値<0.005、
*、p値<0.05。共培養実験の終了時に明視野画像を撮影した。
【
図51】再発明細胞癌を有する46歳の患者に対して行ったコンパッショネートユース治療の結果を示す。患者を、本明細書に記載されるCD::UPRT::GFP発現MSCの腫瘍内注射により治療した。
【
図52】非遠心分離/スピントランスフェクション法の例(下図)と比べた、典型的な遠心分離/スピンベースのトランスフェクション法の図解(上図)を示す。そのような手法に従い処理した細胞について収集したデータも提供する(実施例11を参照)。
【
図53】長期貯蔵を可能にするために、改変MSC(TrafEnを使用して調製)を凍結保存するワークフローの図解を示す。図示するように、改変MSCを、凍結保存貯蔵してもよい。必要な時に、細胞を貯蔵から取り出して、低温液中での解凍により使用に向けて調製してもよい。
【
図54】
図53に示すように凍結保存してから解凍した改変MSCの細胞生存率(A)、発現レベル(B)及び機能活性(C)の結果を示す。図示するように、改変MSCは、凍結保存及び低温液中での72時間までの保存後、高い細胞生存率及び発現レベルを維持した。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書に記載されるのは、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞をトランスフェクトするための方法である。更に、トランスフェクトされた間葉系幹細胞及び間葉系幹細胞集団、それらの使用、そのようなトランスフェクトされた幹細胞を使用する、疾患又は障害、例えば癌の治療方法、並びにそれらに関するキット及び組成物も本明細書に記載される。実施形態及び実施例は、当業者を対象とした説明の目的で提供され、何らかの形で限定的であるとは意図されないと理解される。
【0059】
多数の異なる治療用途及び非治療用途に向けて、治療用遺伝子又は興味の対象となる別の遺伝子を発現するように改変した幹細胞が望ましい。一例は、プロドラッグ遺伝子療法の分野において、改変幹細胞が被験者又は患者に導入される部位で、不活性プロドラッグを活性治療型に変換できる外因性酵素を発現する改変幹細胞の提供を目指す。伝統的に、プロドラッグ遺伝子療法の分野では、ウイルスベースの遺伝子改変手法が、前臨床研究及び臨床研究において幹細胞、例えばMSCを改変するための好ましい手法であった。なぜなら、非ウイルス性手法は、概して低いトランスフェクション効率を提供したからである。実に、多数の前臨床研究及び臨床試験が、ウイルスベクターを、幹細胞の改変用の遺伝子送達媒介物として利用した。ウイルスは、導入遺伝子の持続発現を可能にし得るが、ウイルスで感染させた細胞は、典型的には、細胞当たりの導入遺伝子の低ペイロードを有する(<10コピー/細胞)。転写単位のより高いコピー数がしばしば望ましい。なぜなら、それは、より高い導入遺伝子発現をもたらすことができ、治療薬の送達における細胞媒介物(cell vehicle)のペイロードを改善できるからである。臨床グレードウイルスの産生は、困難な場合があり、しばしば安定産生株のマスターセルバンクの生成同様に認可を含むため、遺伝子細胞治療学において高コストを招く。ウイルス性キャリアの製造におけるネックが、細胞・遺伝子治療の開発及び事業化に悪影響を与えた。
【0060】
一過性トランスフェクションは、細胞当たりの高ペイロードに関して利点を有し、細胞老化を引き起こし得て[40]、及び/又は腫瘍指向性を低下させ得る[41]、抗生物質選択(及び何週間にも及ぶ工程作業)、並びにウイルス誘導性MSC形質転換に関する安全面の懸念[42]を回避するが、当該分野での非ウイルス性トランスフェクションの効率は概して低かった。実に、非ウイルス性方法は、産生の容易さ、及び/又は低コスト及び安全性プロファイルに関してウイルスベクターに勝る利点を有するものの[43]、非ウイルス性MSC改変の分野での幅広い採用の欠如は、当該分野で頻繁に観察されたトランスフェクションの低効率(0~35%)による可能性がある[44、45]。例えば、特定の化学物質ベースのトランスフェクション法のパフォーマンスの低さゆえ(<5%の効率)[46]、ヒト脂肪組織由来MSC(AT-MSC)は、CD::UPRTを発現するために、レトロウイルス形質導入により操作された[47、48]。
【0061】
そのような用途におけるウイルスベースの遺伝子改変は、固有安全性リスクを有し、臨床グレードウイルスの産生は困難な場合があり、ウイルス方法により細胞当たり導入され得る遺伝子コピーの数は概して低い(しばしば細胞当たり<10コピー)。更に、ウイルス性又は非ウイルス性のいずれか一方により、得られた細胞の表現型(即ち、多分化能、免疫表現型、指向性等)への望ましくない変化を引き起こさずに、高いトランスフェクション効率を得つつ幹細胞、例えばMSCの遺伝子改変を達成することが、分野が面する別の難問である。
【0062】
本明細書に詳細に記載されるように、本発明者は、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物を用いた、非ウイルス性であり、特定の実施形態では、高いトランスフェクション効率、細胞当たりの高コピー数、高い細胞生存率、長期間の一過性発現、及び/又は実質的に不変の多能性表現型を提供し得る、間葉系幹細胞をトランスフェクションする方法を開発した。特定の実施形態では、そのような方法が、改変間葉系幹細胞のラージスケール臨床産生用に拡張可能及び/又は適切であり得る。更に、トランスフェクトされた間葉系幹細胞及び間葉系幹細胞集団、それらの使用、そのようなトランスフェクトされた間葉系幹細胞を使用する、疾患又は障害、例えば癌の治療方法、並びにそれらに関するキット及び組成物も本明細書に詳細に記載される。
【0063】
本発明の態様は、以下の例示的な実施形態を含むがそれらに限定されない、様々な実施形態を含む。
【0064】
実施形態1. 1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物でトランスフェクトされた間葉系幹細胞(MSC)であって、核酸構築物のトランスフェクションにより、多分化能(例えば分化能)、免疫表現型、及び/又は癌指向性の表現型特性のいずれか1つ又は複数が実質的に不変である表現型を有し、ウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まない、MSC。
【0065】
実施形態2. 複数の間葉系幹細胞(MSC)であって、MSCの少なくとも約60%が、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物でトランスフェクトされており、トランスフェクトされたMSCが、核酸構築物のトランスフェクションにより、多分化能(例えば分化能)、免疫表現型、及び/又は癌指向性の表現型特性のいずれか1つ又は複数が実質的に不変である表現型を有し、ウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まない複数の間葉系幹細胞(MSC)。
【0066】
実施形態3. MSCの少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、核酸構築物でトランスフェクトされており、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する、実施形態2に記載の複数のMSC。
【0067】
実施形態4. 複数のMSCの細胞生存率が、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%である、実施形態2又は3に記載の複数のMSC。
【0068】
実施形態5. トランスフェクトされたMSCが各々、平均して、少なくとも約1000コピー、少なくとも約2000コピー、少なくとも約3000コピー、少なくとも約4000コピー、少なくとも約5000コピー、少なくとも約6000コピー、少なくとも約7000コピー、少なくとも約8000コピー、少なくとも約9000コピー、又は少なくとも約10000コピーのコピー数の核酸構築物でトランスフェクトされている、実施形態1~4のいずれか1つに記載のMSC。
【0069】
実施形態6. 1つ又は複数の機能遺伝子が、トランスフェクトされたMSC細胞中で一過性に発現される、実施形態1~5のいずれか1つに記載のMSC。
【0070】
実施形態7. 臍帯血、新生児出生関連組織、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜、胎盤、又は別のMSC細胞源由来である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のMSC。
【0071】
実施形態8. 脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のMSC。
【0072】
実施形態9. 核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくは別のCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のMSC。
【0073】
実施形態10. トランスフェクトされたMSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現する、実施形態1~9のいずれか1つに記載のMSC。
【0074】
実施形態11. トランスフェクトされたMSCが、カチオンポリマー、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤、及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤を使用して核酸構築物でトランスフェクトされている、実施形態1~10のいずれか1つに記載のMSC。
【0075】
実施形態12. カチオンポリマーが、直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アミドアミン)PAMAM、又は別のカチオンポリマー、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態11に記載のMSC。
【0076】
実施形態13. カチオンポリマーが直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)を含む、実施形態12に記載のMSC。
【0077】
実施形態14. 第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、又は別の融合性脂質、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態11~13のいずれか1つに記載のMSC。
【0078】
実施形態15. 第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤(HDAC6i)を含む、実施形態11~14のいずれか1つに記載のMSC。
【0079】
実施形態16. 第2の薬剤がSAHA(ボリノスタット)を含む、実施形態11~15のいずれか1つに記載のMSC。
【0080】
実施形態17. 1つ又は複数の機能遺伝子が自殺遺伝子を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載のMSC。
【0081】
実施形態18. 1つ又は複数の機能遺伝子がシトシンデアミナーゼ(CDy)を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載のMSC。
【0082】
実施形態19. 1つ又は複数の機能遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載のMSC。
【0083】
実施形態20. 1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy及びUPRTの両方を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のMSC。
【0084】
実施形態21. CDy及びUPRTが、融合構築物として発現される、実施形態20に記載のMSC。
【0085】
実施形態22. 1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載のMSC。
【0086】
実施形態23. 蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む、実施形態22に記載のMSC。
【0087】
実施形態24. 1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy、UPRT及びGFPを含む、実施形態20に記載のMSC。
【0088】
実施形態25. CDy、UPRT及びGFPが、融合構築物として発現される、実施形態24に記載のMSC。
【0089】
実施形態26. 1つ又は複数の機能遺伝子が、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)又は別のチミジンキナーゼを含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載のMSC。
【0090】
実施形態27. 表現型が、MSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載のMSC。
【0091】
実施形態28. 5-フルオロシトシン(5FC)又はガンシクロビル(GCV)での処理に対して感受性である、実施形態1~27のいずれか1つに記載のMSC。
【0092】
実施形態29. a)5FCを5-フルオロウリジン(5FU)、5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)若しくは両方へと、b)ガンシクロビルをガンシクロビル一リン酸へと変換するか、又はc)a)とb)との組合せである、実施形態1~28のいずれか1つに記載のMSC。
【0093】
実施形態30. 癌、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌の治療での使用向けである、実施形態1~29のいずれか1つに記載のMSC。
【0094】
実施形態31. 5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けである、実施形態30に記載の使用向けMSC。
【0095】
実施形態32. 表現型が、トランスフェクション後にCD表面マーカーの発現が実質的に不変である免疫表現型を含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載のMSC。
【0096】
実施形態33. トランスフェクトされたMSCが、プラスチック付着性であり、CD105、CD73及びCD90を発現し(>95%)、CD45、CD34、CD14及びHLA-DR表面分子の発現を欠き(<2%)、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞へと分化でき、国際細胞治療学会(ISCT)により定義される免疫表現型基準を満たす、実施形態32に記載のMSC。
【0097】
実施形態34. トランスフェクトされたMSCが未分化である、実施形態1~33のいずれか1つに記載のMSC。
【0098】
実施形態35. 1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法であって、
MSCを、カチオンポリマーと複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物に曝露する工程、
MSCを、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤に曝露する工程、並びに
MSCをインキュベートする工程、
それにより、核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する工程
を含む、方法。
【0099】
実施形態36. MSCが、トランスフェクション混合物に曝露する間、第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する間、インキュベーションの間、又はそれらの任意の組合せの間、遠心分離されない、実施形態35に記載の方法。
【0100】
実施形態37. MSCをインキュベートする工程が、遠心分離を伴わずに静かに混合する工程を含む、実施形態35又は36に記載の方法。
【0101】
実施形態38. MSCをインキュベートする工程が、MSCを少なくとも約2時間インキュベートする工程を含む、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態39. MSCをインキュベートする工程が、MSCを約2時間~約48時間、又は約3時間~約24時間インキュベートする工程を含む、実施形態38に記載の方法。
【0103】
実施形態40. MSCをインキュベートする工程が、MSCを約4時間~約18時間インキュベートする工程を含む、実施形態39に記載の方法。
【0104】
実施形態41. カチオンポリマーが、MSCに対して低い細胞傷害性を有すると同定されたカチオンポリマーを含む、実施形態35~40のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
実施形態42. MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物を供給するために核酸構築物をカチオンポリマーと複合体形成させる工程、及びそのトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程を含む、実施形態35~41のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態43. MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、トランスフェクション混合物をMSCに添加する工程、及びMSCをトランスフェクション混合物と共にインキュベートする工程を含む、実施形態35~42のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態44. MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、トランスフェクション混合物を、第1の薬剤及び第2の薬剤を補足した細胞培養培地で置換する工程を含む、実施形態35~43のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態45. 細胞培養培地が完全培地を含む、実施形態44に記載の方法。
【0109】
実施形態46. MSCが約60%のコンフルエント状態であり、MSCを、トランスフェクション混合物に曝露する約24時間前に播く、実施形態35~45のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態47. カチオンポリマーが、約5kDa~約200kDaのサイズを有する、実施形態35~46のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態48. カチオンポリマーが、直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アミドアミン)PAMAM、又は別のカチオンポリマー、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態35~47のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態49. カチオンポリマーが直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)を含む、実施形態35~48のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態50. 第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、又は別の融合性脂質、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態35~49のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態51. 第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤(HDAC6i)を含む、実施形態35~50のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態52. 第2の薬剤がSAHA(ボリノスタット)を含む、実施形態51に記載の方法。
【0116】
実施形態53. トランスフェクション混合物が、複合体形成した核酸構築物を無血清DMEM中又は新鮮培養培地中に含む、実施形態35~52のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態54. MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCから培養培地を除去する工程、及び培養培地をトランスフェクション混合物で置換する工程を含む、実施形態35~53のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態55. MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCを、穏やかな遠心分離下にトランスフェクション混合物とインキュベートする工程を含む、実施形態35に記載の方法。
【0119】
実施形態56. 穏やかな遠心分離が、約5分間の約200gを含む、実施形態55に記載の方法。
【0120】
実施形態57. MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約200ng~約500ngの間である、実施形態35~56のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
実施形態58. MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約250ng~約400ngの間である、実施形態57に記載の方法。
【0122】
実施形態59. MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約300ng~約350ngの間である、実施形態58に記載の方法。
【0123】
実施形態60. カチオンポリマーの核酸構築物に対する比が、トランスフェクション混合物中の核酸構築物1μg当たり、カチオンポリマー約1μg~約30μgである、実施形態35~59のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
実施形態61. 1つ又は複数の機能遺伝子が自殺遺伝子を含む、実施形態35~60のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態62. 1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)及び/又はチミジンキナーゼ(TK)を含む、実施形態35~61のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態63. 1つ又は複数の機能遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を含む、実施形態35~63のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態64. 1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy及びUPRTの両方を含む、実施形態35~64のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態65. CDy及びUPRTが、融合構築物として発現される、実施形態64に記載の方法。
【0129】
実施形態66. 1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含む、実施形態35~66のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態67. 蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む、実施形態66に記載の方法。
【0131】
実施形態68. 1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy、UPRT及びGFPを含む、実施形態64に記載の方法。
【0132】
実施形態69. CDy、UPRT及びGFPが、融合構築物として発現される、実施形態68に記載の方法。
【0133】
実施形態70. 1つ又は複数の機能遺伝子が、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)を含む、実施形態35~69のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態71. 1つ又は複数の機能遺伝子が、トランスフェクトされたMSC細胞中で一過性に発現される、実施形態35~70のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態72. トランスフェクトされたMSCが各々、平均して、少なくとも約1000コピー、少なくとも約2000コピー、少なくとも約3000コピー、少なくとも約4000コピー、少なくとも約5000コピー、少なくとも約6000コピー、少なくとも約7000コピー、少なくとも約8000コピー、少なくとも約9000コピー、又は少なくとも約10000コピーのコピー数の核酸構築物でトランスフェクトされている、実施形態35~71のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態73. トランスフェクトされたMSCの表現型、例えば、多分化能、免疫表現型、及び/又は癌指向性の表現型特性のいずれか1つ又は複数を含む表現型が、トランスフェクションにより、実質的に不変である、実施形態35~72のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
実施形態74. 表現型が、MSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性を含む、実施形態73に記載の方法。
【0138】
実施形態75. 表現型が、トランスフェクション後にCD表面マーカーの発現が実質的に不変である免疫表現型を含む、実施形態73又は74に記載の方法。
【0139】
実施形態76. トランスフェクトされたMSCが、プラスチック付着性であり、CD105、CD73及びCD90を発現し(>95%)、CD45、CD34、CD14及びHLA-DR表面分子の発現を欠き(<2%)、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞へと分化でき、国際細胞治療学会(ISCT)により定義される免疫表現型基準を満たす、実施形態75に記載の方法。
【0140】
実施形態77. MSCの少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、核酸構築物でトランスフェクトされており、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する、実施形態35~76のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
実施形態78. トランスフェクトされたMSCの細胞生存率が、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%である、実施形態35~77のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
実施形態79. トランスフェクトされたMSCが未分化である、実施形態35~78のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
実施形態80. ウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まない、実施形態35~79のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
実施形態81. MSCが、臍帯血、新生児出生関連組織、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜、胎盤、又は別のMSC細胞源由来である、実施形態35~80のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態82. MSCが、脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)である、実施形態35~81のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
実施形態83. 核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくは別のCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含む、実施形態35~82のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態84. MSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現する、実施形態35~83のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
実施形態85. 得られたMSCが、5-フルオロシトシン(5FC)又はガンシクロビル(GCV)又は両方ともでの処理に対して感受性である、実施形態35~84のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態86. 得られたMSCが、a)5FCを5-フルオロウラシル(5FU)、5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)若しくは両方へと、b)ガンシクロビルをガンシクロビル一リン酸へと変換するか、又はc)a)とb)との組合せである、実施形態35~84のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態87. 1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含み、方法が更に、セルソーティング又はFACSを使用して、トランスフェクトされたMSCを単離する工程、選択する工程、又は精製する工程を含む、実施形態35~86のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態88. トランスフェクトされたMSCが、実施形態1~34のいずれか1つに定義されるMSCである、実施形態35~87のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施形態89. 実施形態35~88のいずれか1つに記載の方法により産生される、MSC又は複数のMSC。
【0153】
実施形態90. 必要とする患者において癌、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌を治療するための、実施形態1~34又は89のいずれか1つに定義されるMSCの使用。
【0154】
実施形態91. MSCが、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けである、実施形態90に記載の使用。
【0155】
実施形態92. 癌、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌の治療用の医薬品の製造における、実施形態1~34又は89のいずれか1つに定義されるMSCの使用。
【0156】
実施形態93. MSCが、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けである、実施形態92に記載の使用。
【0157】
実施形態94. 必要とする患者において癌、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌を治療するための方法であって、
実施形態1~34又は89のいずれか1つに定義されるMSCを、患者の癌細胞近傍の領域に投与する工程を含み、
但し、MSC中の1つ又は複数の機能遺伝子が、癌細胞に対する抗癌効果に寄与する方法。
【0158】
実施形態95. MSCを、5FC、5FU、GCV若しくはそれらの任意の組合せと同時に、連続的に、又は5FC、5FU、GCV若しくはそれらの任意の組合せと併用して投与する、実施形態94に記載の方法。
【0159】
実施形態96. 1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)、チミジンキナーゼ(TK)又は両方ともを含む、実施形態94又は95に記載の方法。
【0160】
実施形態97. 1つ又は複数の機能遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を含む、実施形態94~96のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
実施形態98. 1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy及びUPRTの両方を含む、実施形態94~97のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
実施形態99. CDy及びUPRTが、MSC中で融合構築物として発現される、実施形態98に記載の方法。
【0163】
実施形態100. MSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現する、実施形態94~99のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
実施形態101. 更に、MSCが5FC、5FU、ガンシクロビル、又はそれらの任意の組合せに曝露されるように、5FC、5FU、ガンシクロビル、又はそれらの任意の組合せを患者に投与する工程を含む、実施形態94~100のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
実施形態102. MSCを投与する工程の前に、更に、実施形態35~88のいずれか1つに定義される方法による、MSCを産生する工程を含む、実施形態94~101のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
実施形態103. 実施形態1~34又は89のいずれか1つに記載のMSC、及び薬学上許容される担体、希釈剤、賦形剤、細胞培地又は緩衝液の少なくとも1つを含む組成物。
【0167】
実施形態104. 実施形態1から34又は89のいずれか1つに記載のMSCを含むセラノスティック剤。
【0168】
実施形態105. 1つ又は複数の機能遺伝子を一過性に発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするためのキットであって、
MSC、
1つ若しくは複数の機能遺伝子の一過性発現用に設計された核酸構築物、
細胞培養培地、
カチオンポリマー、
エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤、
MSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤、
実施形態35~88のいずれか1つに定義される方法を行うための説明書、
5FC、
GCV及び/又は
5FU
の1つ又は複数を含む、キット。
【0169】
実施形態106. MSCが、臍帯血、新生児出生関連組織、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜、胎盤、又は別のMSC細胞源由来である、実施形態105に記載のキット。
【0170】
実施形態107. MSCが、脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)である、実施形態105又は106に記載のキット。
【0171】
実施形態108. 核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくは別のCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含む、実施形態105又は106に記載のキット。
【0172】
実施形態109. カチオンポリマーが、直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アミドアミン)PAMAM、又は別のカチオンポリマー、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態105~108のいずれか1つに記載のキット。
【0173】
実施形態110. カチオンポリマーが直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)を含む、実施形態105~180のいずれか1つに記載のキット。
【0174】
実施形態111. 第1の薬剤が、DOPC、DPPC、又は別の融合性脂質の1つ又は複数を含む、実施形態105~110のいずれか1つに記載のキット。
【0175】
実施形態112. 第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、又は別の融合性脂質、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態105~111のいずれか1つに記載のキット。
【0176】
実施形態113. 第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤(HDAC6i)を含む、実施形態105~112のいずれか1つに記載のキット。
【0177】
実施形態114. 第2の薬剤がSAHA(ボリノスタット)を含む、実施形態113に記載のキット。
【0178】
実施形態115. 1つ又は複数の機能遺伝子が自殺遺伝子を含む、実施形態105~114のいずれか1つに記載のキット。
【0179】
実施形態116. 1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)又はチミジンキナーゼ(TK)を含む、実施形態105~115のいずれか1つに記載のキット。
【0180】
実施形態117. 1つ又は複数の機能遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を含む、実施形態105~116のいずれか1つに記載のキット。
【0181】
実施形態118. 1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy及びUPRTの両方を含む、実施形態105~116のいずれか1つに記載のキット。
【0182】
実施形態119. CDy及びUPRTが、融合構築物として発現される、実施形態118に記載のキット。
【0183】
実施形態120. 1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含む、実施形態105~119のいずれか1つに記載のキット。
【0184】
実施形態121. 蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む、実施形態120に記載のキット。
【0185】
実施形態122. 1つ又は複数の機能遺伝子が、CDy、UPRT及びGFPを含む、実施形態118に記載のキット。
【0186】
実施形態123. CDy、UPRT及びGFPが、融合構築物として発現される、実施形態122に記載のキット。
【0187】
実施形態124. 1つ又は複数の機能遺伝子が、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)を含む、実施形態105~123のいずれか1つに記載のキット。
【0188】
実施形態125. カチオンポリマーが、MSCに対して低い細胞傷害性を有すると同定されたカチオンポリマーを含む、実施形態105~124のいずれか1つに記載のキット。
【0189】
実施形態126. カチオンポリマーが、約5kDa~約200kDaのサイズを有する、実施形態105~125のいずれか1つに記載のキット。
【0190】
実施形態127. キット中でのカチオンポリマーの核酸構築物に対する比が、核酸構築物1μg当たり、カチオンポリマー約1μg~約30μgである、実施形態105~126のいずれか1つに記載のキット。
【0191】
実施形態128. MSCベースの抗癌剤の調製用である、実施形態105~124のいずれか1つに記載のキット。
【0192】
実施形態129. 更に、実施形態94~102のいずれか1つに定義される方法を行うための説明書及び/又は装置を含む、実施形態128に記載のキット。
【0193】
実施形態130. MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程の前に、増殖培地、例えば新鮮増殖培地中でMSCを培養する工程を含む、実施形態35~43、46~53又は57~88のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態131. MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCから増殖培地を除去せずにトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程を含み、遠心分離は、曝露する工程及びインキュベートする工程の間行われない、実施形態130に記載の方法。
【0195】
実施形態132. MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、第1の薬剤及び第2の薬剤を、トランスフェクション混合物と同時に、連続的に、又はトランスフェクション混合物と併用してMSCに添加する工程を含む、実施形態130又は131に記載の方法。
【0196】
実施形態133. 第1の薬剤及び第2の薬剤が、MSCへのトランスフェクション混合物の添加と同時にMSCに添加されるか、又は第1の薬剤及び第2の薬剤が、トランスフェクション混合物と混合され、MSCに添加される、実施形態132に記載の方法。
【0197】
実施形態134. 第1の薬剤及び第2の薬剤が、トランスフェクション混合物をMSCに添加してから間もなく、MSCに添加される、実施形態132に記載の方法。
【0198】
実施形態135. トランスフェクション混合物が、第1の薬剤及び第2の薬剤をMSCに添加する前に除去されない、実施形態132~134のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
実施形態136. トランスフェクション混合物へのMSCの曝露期間が、第1の薬剤及び第2の薬剤へのMSCの曝露期間と重複する、実施形態130~135のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
実施形態137. トランスフェクション混合物が、第1の薬剤及び第2の薬剤をMSCに添加する前に除去されない、実施形態136に記載の方法。
【0201】
実施形態138. 1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法であって、
増殖培地中でMSCを培養する工程、
MSCから増殖培地を除去せずに、カチオンポリマーと複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程、
エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤をMSCに添加する工程、並びに
MSCを、トランスフェクション混合物、第1の薬剤及び第2の薬剤のすべてと接触させながら、インキュベーション期間にわたりインキュベートする工程を含み、
但し、第1の薬剤及び第2の薬剤を、トランスフェクション混合物の添加と同時に、トランスフェクション混合物の添加に連続的に、又はトランスフェクション混合物と併用してMSCに添加し、
トランスフェクション混合物の添加とインキュベーション期間の終了との間、MSCを遠心分離しないことにより、
核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する、方法。
【0202】
実施形態139. インキュベーション期間が、少なくとも約2時間である、実施形態138に記載の方法。
【0203】
実施形態140. インキュベーション期間が、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、又は約36時間、又はそれ以上である、実施形態138に記載の方法。
【0204】
実施形態141. 実施形態130~140のいずれか1つに記載の方法により産生される、MSC細胞又は複数のMSC細胞。
【0205】
実施形態142. 必要とする患者において癌、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌を治療するための、実施形態141に定義されるMSCの使用。
【0206】
実施形態143. 癌、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌の治療用の医薬品の製造における、実施形態141に定義されるMSCの使用。
【0207】
実施形態144. 必要とする患者において癌、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌を治療するための方法であって、
実施形態141に定義されるMSCを、患者の癌細胞近傍の領域に投与する工程を含み、
但し、MSC中の1つ又は複数の機能遺伝子が、癌細胞に対する抗癌効果に寄与する、癌を治療するための方法。
【0208】
実施形態145. 実施形態141に記載のMSC、及び薬学上許容される担体、希釈剤、賦形剤、細胞培地又は緩衝液の少なくとも1つを含む、組成物。
【0209】
実施形態146. 実施形態141に記載のMSCを含むセラノスティック剤。
【0210】
実施形態147. 1つ又は複数の機能遺伝子を一過性に発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするためのキットであって、
MSC、
1つ若しくは複数の機能遺伝子の一過性発現用に設計された核酸構築物、
細胞培養培地、
カチオンポリマー、
エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤、
MSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤、
実施形態130~140のいずれか1つに定義される方法を行うための説明書、
5FC、
GCV及び/又は
5FU
の1つ又は複数を含む、キット。
【0211】
トランスフェクトされた間葉系幹細胞、並びにその産生用の方法及びキット
一実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物でトランスフェクトされた間葉系幹細胞(MSC)であって、核酸構築物のトランスフェクションにより実質的に不変である多能性表現型を有し、MSCはウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まない、MSCが本明細書において提供される。
【0212】
別の実施形態では、複数の間葉系幹細胞(MSC)であって、MSCの少なくとも約60%が、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物でトランスフェクトされており、トランスフェクトされたMSCは、核酸構築物のトランスフェクションにより実質的に不変である多能性表現型を有し、MSCはウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まない、MSCが本明細書において提供される。
【0213】
当然のことながら、MSCは、任意の適切なMSC、例えば、臍帯血、新生児出生関連組織、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜、胎盤、又は別のMSC細胞源由来のMSCを含み得る。MSC源は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ及びその他を含み得る。特定の実施形態では、MSCが、例えば、脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)の1つ又は複数であり得る。
【0214】
機能遺伝子を発現する改変(トランスフェクト)MSCを患者の治療に使用する特定の実施形態では、トランスフェクトされるMSCが、治療対象の患者、又は別の起源若しくは患者に由来するMSCを含むことが意図される。特定の実施形態では、(例えばアレルギー反応を回避するために)MSCを、治療対象の患者との適合性に関して選択してもよく、MSCは、元来、治療対象の患者に由来しても由来しなくてもよい。特定の実施形態では、自己MSC又は同種異系MSCを使用してもよい。
【0215】
特定の実施形態では、MSCを核酸構築物でトランスフェクトしてもよい。当然のことながら、特定の実施形態では、MSCが、核酸構築物で一過性にトランスフェクトされてもよく(即ち、核酸構築物は、コードする1つ又は複数の機能遺伝子がその細胞内で発現され得る細胞の部位に導入されてもよいが、核酸構築物は細胞ゲノム内には組み込まれない)、又は核酸構築物で安定にトランスフェクトされてもよく(即ち、核酸構築物は、コードする1つ又は複数の機能遺伝子がその細胞内で発現され得る細胞ゲノム内に組み込まれてもよい)、選択工程を行うか、又は行わない(例えば、そのような遺伝子が、核酸構築物と共に含まれる抗生物質耐性)。
【0216】
特定の実施形態では、MSCが、本明細書の以下で詳細に記載される試薬及び/又は方法を使用してトランスフェクトされてもよい。
【0217】
当然のことながら、核酸構築物は、特定用途に適切であり、興味の対象となる1つ又は複数の機能遺伝子をコードするために適切な任意の適切な核酸配列を含み得る。特定の実施形態では、核酸構築物が概して、細胞内への導入に続いて、核酸構築物がコードする1つ又は複数の機能遺伝子/ポリペプチドの産生をもたらし得る任意の適切なプラスミド、発現ベクター、又は別の発現可能な核酸配列を含んでもよい。長期発現が望ましい実施形態では、長期発現用及び/又は細胞性サイレンシングを妨げるように設計された核酸構築物を使用してもよい。
【0218】
特定の実施形態では、コード領域(即ち、興味の対象となる1つ又は複数の機能遺伝子をコードする領域)が、興味の対象となる特定生物での発現用に最適化されたコドンを使用するように、核酸構築物が設計されていてもよい(例えば、コドンは、ヒトMSCを使用すると、ヒト細胞中での発現用に最適化され得る)。特定の実施形態では、核酸構築物が、発現可能な核酸であってもよい(即ち、核酸構築物が、任意の細胞に導入される、又は任意の細胞中に存在すると、ポリペプチドの発現をもたらすように設計されていてもよい)。特定の実施形態では、核酸構築物が、DNA又はRNAであり得る。特定の実施形態では、核酸構築物が、適切な上流配列及び/若しくは下流配列を有するプラスミド、発現ベクター、mRNA(特定の実施形態では、興味の対象となる細胞中での翻訳に適切な配列、例えば、開始コドン、ポリA尾部、RBS配列、及び/又はその他を含み得る)、ミニサークルDNA、一本鎖DNA若しくは二本鎖DNAの断片、又はその他であり得るため、核酸構築物が細胞に導入されると、核酸構築物の翻訳、又は転写及び翻訳が起こる可能性があり、1つ又は複数の機能遺伝子のポリペプチドを供給することになる。
【0219】
特定の機能遺伝子/ポリペプチドを過剰発現させる、又は細胞内に導入するために適切な発現ベクター技術は、技術分野では公知である(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第4版)、2012年、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照)。当業者には公知であるように、特定のポリペプチドを発現させるためのヌクレオチド配列は、「Genes VII」、B. Lewin、Oxford University Press (2000)又は「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrook等、Cold Spring Harbor Laboratory、第3版(2001)に記載されるような特徴をコード又は含み得る。興味の対象となる特定の機能遺伝子/ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適切なベクター、例えば市販のベクターに組み込まれてもよい。ベクターは、例えばSambrook等(Cold Spring Harbor Laboratory、第3版(2001))に概説される標準的な分子生物学的手法を使用して個別に構築しても改変してもよい。当業者は、ベクターが、機能遺伝子/ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る望ましいエレメントをコードするヌクレオチド配列を含んでもよいことを認識する。そのような、望ましいエレメントをコードするヌクレオチド配列は、転写プロモーター(例えば、構成的プロモーター若しくは誘導性プロモーター)、転写エンハンサー、転写ターミネータ、及び/又は複製開始点を含み得る。適切なベクターの選択は、いくつかの要素に依存する場合があり、そのような要素としては、ベクターに組み込まれるべき核酸のサイズ、望ましい転写・翻訳調節因子の種類、望ましい発現レベル、望ましいコピー数、染色体組込みが望ましいかどうか、望ましい選択プロセスの種類(もしあれば)、又は形質転換される予定の宿主細胞若しくは宿主範囲を含むがこれらに限定されない。
【0220】
当然のことながら、核酸構築物は、1つ又は複数の機能遺伝子をコードしてもよい。1つ又は複数の機能遺伝子は、概して、興味の対象となる1つ又は複数の機能性のRNA、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質をコードする任意の適切な機能遺伝子を含み得る。当然のことながら、1つ又は複数の機能遺伝子は、典型的には、改変間葉系幹細胞が適用される特定用途に適するように選択される。改変MSCが、プロドラッグ遺伝子療法アプローチにおいて使用される例として、1つ又は複数の機能遺伝子は、改変MSCをプロドラッグに曝露すると活性ドラッグが形成され周辺の細胞及び/又は組織を治療できるように、不活性又は低活性のプロドラッグを活性型に変換できる酵素を含んでもよい。特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、例えば、プロドラッグを、改変MSC及び周辺疾患細胞の両方を害する活性型に変換し得る自殺遺伝子を含んでもよい。別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、1つ若しくは複数の癌治療用遺伝子、又は癌治療とは関連せず、例えば、別の治療機能若しくは非治療機能を有し得る1つ若しくは複数の機能遺伝子を含んでもよい。
【0221】
本明細書の教示を考慮すると、適切なプロドラッグ及び対応する機能遺伝子/自殺遺伝子の両方を含むプロドラッグ遺伝子療法システムの多数の例が当業者には公知である。使用可能な機能遺伝子、及びその対応するプロドラッグ(使用先)のいくつかの例を以下のTable1(表1)に提示する。
【0222】
【0223】
使用可能な機能遺伝子の更なる例は、興味の対象となる疾患又は障害の治療において有用であり得る核酸産物又はポリペプチド産物を産生する任意の適切な機能遺伝子を含んでもよい。当然のことながら、治療活性を有する多種の核酸、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質が、技術分野の当業者には公知であり、本明細書に記載される核酸構築物に含まれ得る。例として、分野での癌治療用にMSCに導入された遺伝子であり、本明細書に記載される構築物及び方法に組み込まれ得る遺伝子は、以下を含み得る。
【0224】
【0225】
使用可能な機能遺伝子の更なる例は、癌治療(Table3(表3))用の遺伝子及び/又は更に別の治療適用に使用する遺伝子(Table4(表4))を含み得る。
【0226】
【0227】
【0228】
MSCの固有腫瘍指向性[9、10]は、特に腫瘍及びその転位部位へと抗癌剤を送達するための細胞媒介物としてMSCを利用できることを示唆する。多数の、MSCによるGDEPT臨床試験が、第II相臨床試験への更なる開発を是認し得る期待できる結果を示した[7~11]。そのような手法は、標的細胞の近傍での非毒性プロドラッグの酵素的な限局性及び/又は制御性の変換を容易にし得る。「バイスタンダー効果」が、標的細胞に対する細胞傷害性を高め得る[7]。特定CD産生MSCの抗癌潜在能が、胃癌[12~14]、乳癌[15、16]、及び膠芽腫[17~19]を含む広範囲の固形癌において検証された。前臨床研究は、シトシンデアミナーゼ/5-フルオロシトシン(CD/5FC)が非常に堅牢であり、腫瘤中の4%と低いCD陽性細胞が腫瘍の根絶に十分であることを示した[20~22]。CD/5FCシステムでの進歩は、5FUを5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)に直接変換するため、律速酵素であるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)及びオロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)を迂回するピリミジンサルベージ酵素(salvage enzyme)であるウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)の包含であった[23~26]。CD::UPRT/5FCは、5FCからその活性代謝物への変換を、CD/5FC、及び5FUと比べて30~1500倍高め得る[24、27]。
【0229】
特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が自殺遺伝子を含んでもよい。例として、特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)又は両方ともを含んでもよい。特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)、又は別のチミジンキナーゼ、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を、各々別個に発現させてもよく、又は融合構築物として発現させてもよい。特定の実施形態では、核酸構築物が2つ以上の機能遺伝子を含んでもよく、又は核酸構築物が、例えば、その各々が、興味の対象となる異なる機能遺伝子を発現する2つ以上の別個の核酸構築物の混合物として供給されてもよい。
【0230】
特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、蛍光タンパク質又は別のマーカー若しくはタグを含んでもよい。特定の実施形態では、蛍光タンパク質が、トランスフェクションに成功したMSCの同定及び/又は評価における使用向けであってもよい。特定の実施形態では、蛍光タンパク質が、トランスフェクトされたMSCの、トランスフェクトされていないMSC又は別の細胞からの分離、単離、選択又は精製における使用向けであってもよい。特定の実施形態では、蛍光タンパク質が、例えば、トランスフェクトされたMSCを定量、精製、又は単離するためのFACSベースのセルソーティングを可能にしてもよい。特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)を含んでもよい。
【0231】
特定の実施形態では、核酸構築物の1つ又は複数の機能遺伝子が、融合構築物として発現させてもそうしなくてもよいCDy及びUPRTを含み得る。特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が更に、融合構築物として発現させてもそうしなくてもよい蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)を含み得る。
【0232】
特定の実施形態では、核酸構築物の1つ又は複数の機能遺伝子が、トランスフェクトされたMSCを選択するため、又は安定してトランスフェクトされたMSCを選択するために、選択遺伝子、例えば抗生物質耐性遺伝子を含んでもよい。
【0233】
任意のトランスフェクトされたMSC中での正確なコピー数は多少変わり得るが、特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが各々、平均して、少なくとも約1000コピー、少なくとも約2000コピー、少なくとも約3000コピー、少なくとも約4000コピー、少なくとも約5000コピー、少なくとも約6000コピー、少なくとも約7000コピー、少なくとも約8000コピー、少なくとも約9000コピー、又は少なくとも約10000コピーのコピー数の核酸構築物でトランスフェクトされ得ることが意図される。
【0234】
複数又は集団のMSCがトランスフェクトされている場合、特定の実施形態では、MSCの少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、核酸構築物でトランスフェクトされてもよく、トランスフェクトに続いて1つ又は複数の機能遺伝子を発現し得ることが意図される。それ故、複数又は集団のMSCがトランスフェクトされている特定の実施形態では、トランスフェクション効率が、約60%~約100%の間の任意の値であってもよく、その間の小数第1位に丸めた任意の値又はその間の任意の部分範囲を含み得る。特定の実施形態では、トランスフェクション効率が、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%であり得る。特定の実施形態では、トランスフェクション効率を、興味の対象となる1つ又は複数の機能遺伝子を発現する細胞の%として計算してもよい。
【0235】
更なる実施形態では、MSCの細胞生存率が、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%であり得ることが意図される。特定の実施形態では、細胞生存率を、本明細書の教示を考慮すると当業者には公知である概して任意の適切な手法、例えば、Cold Spring Harb Protoc.、2016年7月1日、2016(7)、doi:10.1101/pdb.prot087163に記載されるヨウ化プロピジウムアッセイを使用して測定してもよい。
【0236】
特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、核酸構築物でのトランスフェクションにより実質的に不変である多能性表現型を有し得る。当然のことながら、トランスフェクトされたMSCは、核酸構築物でトランスフェクトされてもよく、核酸構築物によりコードされる1つ又は複数の機能遺伝子が、トランスフェクトされたMSC中で発現してもよい。しかしながら、多くの用途では、トランスフェクトされたMSCの表現型が、トランスフェクション前のMSCと比べてその他の点では実質的に不変であることが望ましい。例として、MSCは、トランスフェクトされたMSCの特定用途には望ましい場合がある多能性表現型を有する。それ故、特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCの表現型が多能性であり、トランスフェクション前のMSCと比べて更に分化していない。
【0237】
特定の実施形態では、トランスフェクション前のMSCの多能性表現型と比べて実質的に不変であり得る、トランスフェクトされたMSCの多能性表現型が、トランスフェクション後にMSCによるCD表面マーカーの発現が実質的に不変である免疫表現型を含んでもよい。例として、特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、プラスチック付着性であってもよく、CD105、CD73及びCD90を発現してもよく(>95%)、CD45、CD34、CD14及びHLA-DR表面分子の発現を欠いてもよく(<2%)、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞へと分化し得てもよく、それに関して、国際細胞治療学会(ISCT)により定義される免疫表現型基準を満たす(参照により本明細書にその全体が組み込まれている、Cytotherapy、2006、8(4):315~7頁、及びhttps://www.celltherapysociety.org/news/390154/FDA-Grand-Rounds-cites-ISCTs-minimal-criteria-for-defining-MSCs.htmを参照)。この目的で、特定の実施形態では、陽性マーカーの同定(即ち、CDマーカーが発現されたと見なすため)に許容される%は、トランスフェクション後に、集団の細胞の少なくとも約95%がマーカーを発現することであり、陰性マーカーの発現(即ち、CDマーカーが発現されなかったと見なすため)に許容される%は、トランスフェクション後に、集団が、集団の細胞の少なくとも98%における特異的マーカーの発現を欠いていることと見なされる。例えば、特定の実施形態では、細胞が、ちょうど非改変MSCがHLA-DRマーカーの発現を欠くようにトランスフェクション後にHLA-DRマーカーの発現を欠いてもよく、表現型がトランスフェクションにより実質的には変化していないこと、並びにMSC品質及び表現型がトランスフェクションにより不利には変化していないことを示唆する。
【0238】
概して、特定の実施形態では、トランスフェクトされた細胞の関連マーカーの発現プロファイルが、同細胞のトランスフェクション前、又は天然細胞(即ち、非改変/非処理の対照細胞)、又はトランスフェクトされなかった同等若しくは匹敵する細胞の発現プロファイルと比べて、実質的に不変(即ち、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満の変化)である場合に、免疫表現型マーカー又は別の表現型マーカーがトランスフェクションにより不変であると見なされ得る。特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSC細胞の関連マーカーの発現プロファイルが、天然MSC細胞(即ち、非改変/非処理のMSC細胞)の発現プロファイルと比べて、実質的に不変(即ち、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満の変化)である場合に、免疫表現型マーカー又は別の表現型マーカーがトランスフェクションにより不変であると見なされ得る。
【0239】
当然のことながら、本明細書に記載されるトランスフェクトされたMSCは、トランスフェクションに続いて1つ又は複数の機能遺伝子を発現してもよい。それ故、そのような実施形態では、トランスフェクトされた細胞が、トランスフェクション後に1つ又は複数の機能遺伝子を発現中でもよく、その点で、同等のトランスフェクトされていないMSCと異なり得る。そういうものとして、本明細書中での、トランスフェクションにより実質的に不変である多能性表現型への言及は、機能遺伝子の発現以外の1つ又は複数の表現型特性(多分化能特性を含むがそれらに限定されない)が、トランスフェクション後にMSC中で実質的に不変であり得ることを反映し得る。トランスフェクション後に実質的に不変である表現型特性の例が、本明細書に詳細に記載され、例えば、多分化能特性、免疫表現型特性、癌指向性特性、及び/又は別の表現型特性のいずれか1つ又は複数を含み得る。
【0240】
特定の実施形態では、特にトランスフェクトされたMSCを癌の治療に使用する場合、トランスフェクションにより実質的に不変であるMSCの多能性表現型が、MSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性を含んでもよい。特定の実施形態では、MSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性を、以下の実施例1で更に詳細に記載する細胞浸潤アッセイにより測定してもよい。特定の実施形態では、トランスフェクション後に腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性の実質的な損失がない場合(即ち、腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性が、トランスフェクション後に実質的に同じであるか、又は高まってもよい)、トランスフェクトされたMSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性が不変であると見なされ得る。
【0241】
特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、ウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まなくてもよい。当然のことながら、本明細書に記載されるトランスフェクトされたMSC調製用のウイルスフリートランスフェクション法を、以下で詳細に提供する。それ故、特定の実施形態では、本明細書に記載されるトランスフェクトされたMSCが、典型的にはウイルスベースの遺伝子又は核酸送達手法において見出される、例えば、ファージのタンパク質及び/又は核酸、ウイルス膜成分、ウイルス核酸、及び/又はウイルスタンパク質を含み得る、ウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まなくてもよい(即ち、含有しなくてもよい)。
【0242】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるトランスフェクトされたMSCが、核酸構築物でトランスフェクトされてもよく、トランスフェクトされたMSCで治療される患者が利益を得るために適切な期間にわたり、1つ又は複数の機能遺伝子を発現してもよいことが意図される。本明細書では、目下開発された方法が、1つ又は複数の機能遺伝子を長期間発現する、一過性にトランスフェクトされたMSCを含むトランスフェクトされたMSCを提供することが見出された。それ故、特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現してもよい。
【0243】
特定の実施形態では、MSC細胞の集団、又は複数のMSC細胞を含む組成物であって、約90%若しくはそれ以上の細胞でのMSCマーカーの発現、標準的な生存率試験で測定して約80%若しくはそれ以上の細胞の生存率、フローサイトメトリーで試験して導入遺伝子に関して陽性である約70%若しくはそれ以上のMSC、又はそれらの任意の組合せが存在する、組成物が本明細書において提供される。好ましくは、MSC細胞の集団、又は複数のMSC細胞を含む組成物に関して、約90%又はそれ以上の細胞でのMSCマーカーの発現、標準的な生存率試験で測定して約80%又はそれ以上の細胞の生存率、及びフローサイトメトリーで試験して導入遺伝子に関して陽性である約70%又はそれ以上のMSCが存在する。
【0244】
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法を、トランスフェクションが一過性であっても1つ又は複数の機能遺伝子を長期間発現するトランスフェクトされたMSCを供給するために使用し得ることが意図される。特定の実施形態では、長期発現が望ましい場合には、核酸構築物を、1つ又は複数の機能遺伝子の長期一過性発現を供給するために設計し得ることが意図される。例として、特定の実施形態では、核酸構築物がCpGフリー発現プラスミドを含む場合に1つ又は複数の機能遺伝子の長期発現が達成可能であることが本明細書で見出された。この発見に基づき、当業者は、本明細書の教示を考慮して、一過性発現の期間を長くするための様々な選択肢を認識するであろう。特定の実施形態では、核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくは別のCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含んでもよいことが意図される。長期発現に関する特徴の例は更に、参照により本明細書にその各々の全体が組み込まれている、Molecular Therapy、2006年、14(5):613~626頁;J Biol Chem、2000年、275(39):30408~16頁;Nucleic acids research、2014年、42(7):e53~e53頁;及びDOI:https://doi.org/10.1016/j.ymthe.2006.03.026に見出される。特定の実施形態では、それらの特徴のいくつか又はすべてが、本明細書に記載される核酸構築物の設計において実施されていてもよい。特定の実施形態では、それらの特徴のいくつか又はすべてが、本明細書に記載される核酸構築物に添加可能なモジュールとして実施されていてもよい。例えば、本明細書に記載され使用される特定のCD::UPRP:GFP構築物中では、CpGフリー及びS/MARの特徴/モジュールを核酸構築物中で使用した。
【0245】
特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCを、本明細書に記載される方法のいずれかにより産生してもよい。例として、特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、カチオンポリマー、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤、及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤を使用して核酸構築物でトランスフェクトされてもよい。そのような方法及び成分の更なる記載を、以下に提供する。例として、特定の実施形態では、カチオンポリマーが直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)を、第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)、及び/又は第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばSAHA(ボリノスタット)を含んでもよい。
【0246】
機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy)、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)、又は単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)の1つ又は複数を含むような特定の実施形態では、MSCが、5-フルオロシトシン(5FC)又はガンシクロビル(GCV)での処理に対して感受性であり得る。特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、a)5FCを5-フルオロウリジン(5FU)、5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)若しくは両方へと、b)ガンシクロビルをガンシクロビル一リン酸へと変換し得るか、又はc)a)とb)との組合せであってもよい。特定の実施形態では、MSCが、癌治療での使用向けであってもよい。特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けであってもよい。
【0247】
特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが実質的に未分化であってもよい。
【0248】
更に別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法であって、
MSCを、カチオンポリマーと複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物に曝露する工程、
MSCを、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤に曝露する工程、並びに
MSCをインキュベートする工程、
それにより、核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する工程
を含む、方法が本明細書において提供される。
【0249】
適切なMSC、核酸構築物、及び機能遺伝子の例は、本明細書にすでに詳細に記載してある。例として、特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、自殺遺伝子;シトシンデアミナーゼ(CDy)及び/又はチミジンキナーゼ(TK);ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT);融合構築物として供給してもそうしなくてもよいCDy及びUPRTの両方;蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP);融合構築物として供給してもそうしなくてもよいCDy、UPRT及びGFP;単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK);又はそれらの任意の組合せを含み得る。
【0250】
特定の実施形態では、MSCが、臍帯血、新生児出生関連組織、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜、胎盤、又は別のMSC細胞源由来であり得る。特定の実施形態では、MSCが、脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)であり得る。別の実施形態では、MSCが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ又は別の種に由来してもよい。
【0251】
特定の実施形態では、核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくは別のCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含んでもよい。
【0252】
特定の実施形態では、カチオンポリマーが、核酸構築物と複合体形成し、MSCに曝露すると核酸構築物をMSC中に送達できる任意の適切なカチオンポリマー又はポリカチオンポリマー又は部分カチオンポリマーを含み得る。特定の実施形態では、カチオンポリマーを、ポリエチレンイミン、ポリカチオン両親媒性物質、DEAEデキストラン、カチオンポリマー、それらの誘導体、又はそれらの任意の組合せから選択してもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、デンドリマー、分岐状ポリエチレンイミン(BPEI)、直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、XtremeGENE HP(登録商標)のようなカチオンポリマー、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーがLPEIを含んでもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、例えば、ホモポリマー、コポリマー、又はブロックコポリマーであってもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、約5kDa~約200kDaのサイズを有してもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、約5kDa以下のサイズを有してもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、約200kDa以上のサイズを有してもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アミドアミン)PAMAM、又は別のカチオンポリマー、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)を含んでもよい。
【0253】
特定の実施形態では、MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約200ng~約500ngの間であり得る。特定の実施形態では、MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約250ng~約400ngの間であり得る。特定の実施形態では、MSCを曝露するトランスフェクション混合物中の核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約300ng~約350ngの間であり得る。特定の実施形態では、MSCを曝露する核酸構築物の量が、表面積1.9cm2当たり約200ng~約500ngの間の小数第1位に丸めた任意の値又はその間の任意の部分範囲であり得る。
【0254】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、カチオンポリマーの核酸構築物に対する比が、トランスフェクション混合物中の核酸構築物1μg当たり、カチオンポリマー約1μg~約30μg、又はその間の小数第1位に丸めた任意の値又はその間の任意の部分範囲であり得る。
【0255】
特定の実施形態では、カチオンポリマー及び核酸のN/Pが、約5~約100の範囲であってもよく、例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99又は100、又はその間の小数第1位に丸めた任意の値又はその間の任意の部分範囲であってもよい。
【0256】
特定の実施形態では、トランスフェクション混合物が、複合体形成用緩衝液、細胞培地又は細胞緩衝液、又はそれらの任意の組合せを含み得る。
【0257】
特定の実施形態では、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤が、遺伝物質を細胞の非生産的酸性区画から離れるよう導くことができる任意の適切な薬剤を含み得る。別の実施形態では、第1の薬剤が、脂質、ペプチド融合剤、又はそれらの組合せを含み得る。特定の実施形態では、第1に薬剤が、DOPE、CHEMS、DPPC又はDOPC、又はそれらの任意の組合せを含み得る。特定の実施形態では、第1の薬剤が、赤血球凝集素(HA2ペプチド)、インフルエンザ由来融合性ペプチドdiINF-7、ジフテリア毒素のTドメイン、ポリカチオンペプチド、例えば、ポリリジン及び/若しくはポリアルギニン、又はそれらの任意の組合せを含み得る。特定の実施形態では、第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)を含み得る。DOPE:CHEMSの様々な比が使用可能であり、例えば、特定の実施形態では、約9:1~約1:9の間の比、例えば、約9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6の比を使用してもよい。特定の実施形態では、融合性脂質とヘルパー脂質との混合物、例えば、DOPEとCHEMSとの混合物を使用し得る。特定の実施形態では、3つの脂質を使用してもよい。例えば、特定の実施形態では、DPPC:DOPE:CHEMSの混合物を様々な比で使用してもよい。
【0258】
特定の実施形態では、MSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤が、微小管又はそのネットワークを安定化させる任意の適切な薬剤を含み得る。特定の実施形態では、第2の薬剤が、チューブリンアセチル化を高めることができてもよい。特定の実施形態では、第2の薬剤を、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤(HDAC6i)、チューブリン結合剤(TBA)、及び微小管ネットワークの安定性に直接的又は間接的に影響を及ぼせるsiRNAから選択してもよい。特定の実施形態では、HDACiが、ツバスタチンA、ベリノスタット、ブフェキサマク、パノビノスタット、PCI-24781、SAHA(ボリノスタット)、スクリプテイド、トリコスタチンA、バルプロ酸、B2、サレルミド、シルチノール、又はそれらの任意の組合せを含み得る。特定の実施形態では、第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばSAHA(ボリノスタット)を含んでもよい。
【0259】
特定の実施形態では、第1の薬剤と第2の薬剤とが共に、効率良いトランスフェクションのための生産経路へと、遺伝物質又は遺伝物質を含有する複合体を導く、トラフィッキングエンハンサーの略語であるTrafEn(商標)を形成してもよい。
【0260】
エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる適切な第1の薬剤、及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる適切な第2の薬剤、及びTrafEN(商標)の例は、その両方とも、参照により本明細書にその全体が組み込まれている、A Novel Reagent for Gene-Drug Therapeuticsというタイトルの国際公開第2014/070111号、及びHo Y. K.等、Enhanced Non-Viral Gene Delivery by Coordinated Endosomal Release and Inhibition of β-Tubulin Deactylase、Nucleic Acids Research、2017、45(6):e38に詳細に記載される。
【0261】
前記の方法の特定の実施形態では、MSCは、トランスフェクション混合物に曝露する間、第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する間、インキュベーションの間、又はそれらの任意の組合せの間、遠心分離されない。前記の方法の特定の実施形態では、MSCをインキュベートする工程が、場合により、遠心分離を伴わずに静かに混合する工程を含んでもよい。
【0262】
特定の実施形態では、細胞へのポリマー複合化DNAの素早い付着を促すために遠心分離を使用してもよい。その場合、細胞に対する、(遠心分離により実質的にはスピンダウンされない)遊離カチオンポリマーの毒性を最小限に抑えるために、トランスフェクション混合物を、遠心分離した後すぐに又は間もなく除去してもよい。それ故、特定の実施形態では、特に難なく遠心分離できるより小さいスケールを使用する場合、細胞のトランスフェクションに遠心分離を使用してもよい。例として、遠心分離法は、例えば、細胞にトランスフェクション混合物を添加する工程、細胞上に核酸複合体を付着させるために遠心分離する工程、細胞との接触から遊離ポリマーを除去するためにトランスフェクション混合物を除去する工程、及びTrafEnを含み得る又はTrafEnを添加してもよい新鮮培地で置換する工程を含んでもよい。
【0263】
特定の実施形態では、より大きいスケールで操作することが、例えば家畜及び/又はヒトの治療適応症において望ましい場合がある。そのようなより大きいスケールでは遠心分離が望ましくない場合がある。遠心分離は、別の場合にも望ましくない場合があり、例えば、遠心分離装備が利用できない、不便である、及び/又は高費用である用途である。本明細書に詳細に記載されるように、特定の実施形態では、遠心分離を省略できることが見出された。遠心分離を省略する場合、特定の実施形態では、細胞を、ポリマー複合化DNAと十分に接触させるために、インキュベーション時間を、例えば、約2時間~約24時間に延長してもよい。このインキュベーション時間中の遊離ポリマーの存在は、使用する細胞及びポリマーに応じて、毒性であり得る。それ故、特定の実施形態では、本明細書に詳細に記載されるように、細胞に対する毒性を軽減又は回避するために、カチオンポリマーの選択を、特定の細胞型及びインキュベーション時間に対して適切に調整してもよい。
【0264】
本明細書に詳細に記載されるように、遠心分離を使用しても使用しなくてもよい、本明細書に記載される方法は、高いトランスフェクション効率を提供し得る(例えば、>約70%)。
【0265】
遠心分離を省略する実施形態では、方法が、例えば、前臨床及び/又は臨床の試験用の大規模な産生スケールに適応させるために、より容易に拡張可能であり得る。しかしながら、本発明者は、トランスフェクション中の遠心分離を省略する場合、高いトランスフェクション効率を達成するためには、トランスフェクション中のインキュベーション時間が延長可能であることを見出した。それ故、遠心分離を省略するような特定の実施形態では、MSCをインキュベートする工程が、MSCを少なくとも約2時間インキュベートする工程を含んでもよい。特定の実施形態では、MSCをインキュベートする工程が、MSCを約2時間~約24時間、又は約4時間~約18時間、又は2時間~24時間の間の、小数第1位に丸めた任意の値、又はその間の任意の部分範囲にわたりインキュベートする工程を含んでもよい。
【0266】
本発明者は更に、遠心分離を省略する及び/又はインキュベーション時間を延長する実施形態では、カチオンポリマーの選択を適切に調整し得ると確認した。なぜなら、特定のカチオンポリマーは毒性を引き起こす可能性があり、それは、特にインキュベーション時間を延長した場合に望ましくないことがあるからである。更に、異なる型のMSC(即ち、様々な型、起源、細胞株、及び増殖条件)は、カチオンポリマー及び/又はインキュベーション期間の延長に対する異なる耐性を示し得る。それ故、特定の実施形態では、トランスフェクション方法を、使用する個々のMSCに対して適合させてもよい。以下の実施例2は、特定のMSCのトランスフェクション中に毒性を回避して高いトランスフェクション効率を得るために、DNA量/条件及びカチオンポリマーの選択を行ったいくつかの例を提示する。それ故、本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、カチオンポリマーが、特定用途のMSCに対して低い細胞傷害性を有すると同定されたカチオンポリマーを含んでもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーを、例えば、サイズ及び/又は電荷数により選別してもよい。特定の実施形態では、より大きい特定のカチオンポリマーが、例えば、いくつかの細胞には好ましい場合があるが、別の細胞には幾分毒性であり得る。いくつかの場合、より小さいカチオンポリマー及び/又はより低電荷のカチオンポリマーが、典型的には毒性が低い可能性があるものの、特定の細胞株中で、低いトランスフェクション効率及び/又はトランスフェクション速度を示し得る。特定の実施形態では、トランスフェクション効率を高めるために、例えば、TrafEnを使用してもよい。
【0267】
特定の実施形態では、カチオンポリマー及び/又はポリマー-DNA複合体を選択する際に、細胞型間で異なり得る、培地の浮遊密度を考慮してもよい。なぜなら、この浮遊密度は、細胞上でのポリマー-DNA複合体の付着率に影響を有し得るからである。特定の実施形態では、細胞上での良好な付着を促進するために、複合体及び/若しくは培地を選択してもよく、並びに/又は、遊離カチオンポリマーが、特定細胞に対して非毒性である若しくは低毒性を有するようにカチオンポリマーを選択してもよい。
【0268】
特定の実施形態では、興味の対象となる特定のMSCに関して適切なトランスフェクション効率及び/又は細胞生存率を提供するようなカチオンポリマーを同定するために、カチオンポリマーを選別してもよいことが意図される。なぜなら、トランスフェクション効率及び/又は細胞生存率が、遠心分離を伴わない効率良いトランスフェクションの提供に向けて、カチオンポリマーと特定MSC型/ドナーとの適合性のレベルを測定するための、本明細書で同定された2つの注目に値する特徴であるからである。特定の実施形態では、例えば、少なくとも約2時間又は少なくとも約4時間のインキュベーション期間中、明らかな又は有害なレベルの細胞傷害性を引き起こさないようにカチオンポリマーを選択してもよい。カチオンポリマーが、細胞に対して非毒性であれば、インキュベーション期間をより長期間続行してもよい。特定の実施形態では、毒性を、任意の適切な方法、例えばヨウ化プロピジウムアッセイにより評価し得る。特定の実施形態では、細胞生存率(又は細胞生存ターゲット)が、トランスフェクション後に約70%以上であってもよい。
【0269】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物を供給するために核酸構築物をカチオンポリマーと複合体形成させる工程、及びそのトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程を含んでもよい。言い換えると、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程は、好ましくは、MSCを添加する前に、核酸構築物とカチオンポリマーとを予め複合体形成させる工程又は混合する工程を含む。
【0270】
前記の方法のいずれかの別の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、トランスフェクション混合物をMSCに添加する工程及びMSCをトランスフェクション混合物と共にインキュベートする工程を含んでもよい。
【0271】
前記の方法のいずれかの別の実施形態では、MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、MSCをトランスフェクション混合物に添加若しくは曝露すると同時に、又はその後すぐに、第1の薬剤及び第2の薬剤を添加する工程を含んでもよい。特定の実施形態では、その工程を、遠心分離を省略する場合に行ってもよい。
【0272】
前記の方法のいずれかの別の実施形態では、MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程において、第1の薬剤及び第2の薬剤をトランスフェクション混合物と同時に添加する工程を含んでもよく、又はすでにトランスフェクション混合物と接触させてあるMSCに第1の薬剤及び第2の薬剤を添加する工程を含んでもよい(即ち、トランスフェクション混合物は、第1の薬剤及び第2の薬剤を添加する前に除去しなくてもよい)。特定の実施形態では、その工程を、遠心分離を省略する場合に行ってもよい。
【0273】
前記の方法のいずれかの更に別の実施形態では、MSCを第1の薬剤及び第2の薬剤に曝露する工程が、トランスフェクション混合物を、第1の薬剤及び第2の薬剤を補足した細胞培養培地で置換する工程を含んでもよい。特定の実施形態では、その工程を、細胞に対する遊離ポリマーの毒性を軽減するようにポリマー複合化DNAの細胞への素早い付着を促すために遠心分離を使用する場合に行ってもよい。特定の実施形態では、細胞培養培地が完全培地を含んでもよい。
【0274】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、MSCが約60%のコンフルエント状態であってもよく、MSCを、トランスフェクション混合物に曝露する約24時間前に播いてもよい。
【0275】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、トランスフェクション混合物が、複合体形成した核酸を無血清DMEM中又は新鮮培養培地中に含んでもよい。
【0276】
前記の方法のいずれかの更なる実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、トランスフェクション混合物を添加する前に細胞から培養/増殖培地を除去せずに(更に新鮮培養培地を含んでも含まなくてもよい)トランスフェクション混合物を細胞に添加する工程を含んでもよい。特定の実施形態では、その工程を、遠心分離を省略する場合に行ってもよい。
【0277】
前記の方法の特定の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、
場合により、その中で細胞を培養している培養/増殖培地を新鮮な培養/増殖培地で置換する工程、及び
トランスフェクション混合物を添加する前に細胞から培養/増殖培地を除去せずに(存在する場合)、(更に新鮮培養培地を含んでも含まなくてもよく、又は新鮮培養培地と同時に若しくは連続的に添加してもよい)トランスフェクション混合物を細胞に添加する工程
を含んでもよい。
【0278】
それ故、特定の実施形態では、トランスフェクションを行う前に新鮮培養培地を供給するために、複合体形成させた核酸構築物を細胞に添加する前に細胞培養/増殖培地を置換する又は新鮮にしてもよいことが意図される。特定の実施形態では、その工程を、遠心分離を省略する場合に行ってもよい。
【0279】
前記の方法のいずれかの更なる実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCから培養培地を除去する工程、及び培養培地をトランスフェクション混合物で置換する工程を含んでもよい。特定の実施形態では、その工程を、細胞へのポリマー複合化DNAの素早い付着を促すために遠心分離を使用する場合に行ってもよい。
【0280】
特定の実施形態では、MSCをトランスフェクション混合物に曝露する工程が、MSCを、穏やかな遠心分離下にトランスフェクション混合物とインキュベートする工程を含んでもよいことが意図される。例えば、方法を小スケールで行う場合及び/又は適切な遠心分離装置を利用できる場合に、特定の実施形態では遠心分離を行い得ることが意図される。穏やかな遠心分離は、ポリマー-核酸構築物を添加後の遊離ポリマーの毒性を回避するために行ってもよい。特定の実施形態では、方法が、トランスフェクション混合物を細胞培養に添加する工程、細胞にポリマー-核酸構築物の複合体を付着させるために穏やかな遠心分離(例えば、約5分間)を行う工程、及び(比較的小さく、遠心分離により実質的にはスピンダウンされない遊離ポリマーを含有する)トランスフェクション混合物を除去する工程を含んでもよい。特定の実施形態では、穏やかな遠心分離が、約5分間の約200gを含んでもよい。
【0281】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、例えば、その中では試薬の量が増大し、その増大した量に細胞密度が調和し、DNAの量が、細胞培養容器の表面積に従って増大する平底容器中でトランスフェクションを行ってもよい。
【0282】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、MSCをマイクロキャリア(例えばマイクロビーズ)上で培養してもよく、従って、トランスフェクション中、場合により振とう又は別の撹拌をしながら懸濁してもよい。特定の実施形態では、マイクロキャリアがマイクロビーズを含んでもよい。特定の実施形態では、マイクロキャリアが、1型ブタコラーゲンコートマイクロキャリアを含んでもよい。特定の実施形態では、マイクロキャリアがCytodex(登録商標)3を含んでもよい。マイクロキャリアを使用する特定の実施形態では、振とう下の高めた細胞密度でトランスフェクションを行ってもよく、それは、ラージスケール産生を可能にし得る。更に、振とう中のrpmは、容器の型、及び使用するマイクロキャリアの密度/数に応じて調整可能である。
【0283】
平底容器及びマイクロキャリアを用いた別の手法は、類似の工程に従う、例えば:工程1→カチオンポリマーと複合体形成させた核酸構築物を含むトランスフェクション混合物にMSCを曝露する、工程2→MSCを、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤に曝露する、並びに工程3→MSCをインキュベートすることにより、核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する工程。表面積cm2当たり添加する細胞数及び使用する細胞培養容積は、各容器に合わせる。マイクロキャリアの適用では、マイクロキャリアが凝集しないように振とう速度を調整してもよい。
【0284】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、トランスフェクション中にMSCをインキュベートする工程が、インキュベーション時間の少なくとも一部にわたり、回転バイオリアクター型撹拌(例えば回転三角フラスコ)、ウェーブバイオリアクター、回転壁バイオリアクター、撹拌槽バイオリアクター、又はシェーカー型撹拌を含んでもよい(更なる例は
図52を参照)。
【0285】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクトされたMSC中で一過性に発現させてもよく、トランスフェクトされたMSC中で安定に発現させても、又はそれらの組合せであってもよい。
【0286】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが各々、平均して、少なくとも約1000コピー、少なくとも約2000コピー、少なくとも約3000コピー、少なくとも約4000コピー、少なくとも約5000コピー、少なくとも約6000コピー、少なくとも約7000コピー、少なくとも約8000コピー、少なくとも約9000コピー、又は少なくとも約10000コピーのコピー数の核酸構築物でトランスフェクトされてもよい。
【0287】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCの多能性表現型が、トランスフェクションにより実質的に不変であり得る。特定の実施形態では、多能性表現型が、MSCの腫瘍指向性及び/又は癌指向性の特性を含んでもよい。特定の実施形態では、多能性表現型が、トランスフェクション後にCD表面マーカーの発現が実質的に不変であり得る免疫表現型を含んでもよい。特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが、プラスチック付着性であってもよく、CD105、CD73及びCD90を発現してもよく(>95%)、CD45、CD34、CD14及びHLA-DR表面分子の発現を欠いてもよく(<2%)、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞へと分化し得てもよく、国際細胞治療学会(ISCT)により定義される免疫表現型基準を満たす。トランスフェクトされた細胞の表現型は、本明細書の前記ですでに詳細に、及び以下の実施例に記載される。
【0288】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、MSCの少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が、核酸構築物でトランスフェクトされており、1つ又は複数の機能遺伝子を発現してもよい。
【0289】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCの細胞生存率が、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%であり得る。
【0290】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、トランスフェクトされたMSCが未分化であってもよい。
【0291】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、方法が、ウイルスベースのトランスフェクション媒介物材料を含まなくてもよい。
【0292】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、MSCが、1つ又は複数の機能遺伝子を、トランスフェクションに続いて少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現してもよい。
【0293】
特定の実施形態では、得られたMSCが、5-フルオロシトシン(5FC)又はガンシクロビル(GCV)又は両方ともでの処理に対して感受性であり得る。特定の実施形態では、得られたMSCが、a)5FCを5-フルオロウリジン(5FU)、5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)若しくは両方へと、b)ガンシクロビルをガンシクロビル一リン酸へと変換し得るか、又はc)a)とb)との組合せであってもよい。
【0294】
特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が蛍光タンパク質を含んでもよく、方法が更に、セルソーティング又はFACSを使用して、トランスフェクトされたMSCを単離する工程、選択する工程、又は精製する工程を含んでもよい。この工程は、例えば、特に高純度が望ましい場合に行ってもよい。当然のことながら、そのような単離、選択又は精製は任意であり得る。なぜなら、例えば臨床応用では、治療用遺伝子に関して約≧70%陽性である集団が、許容され得る上に本明細書に記載されるように特定の実施形態では、単離、選択又は精製の更なる工程なしに入手可能であることが意図されるからである。
【0295】
前記の方法の更に別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするための方法であって、
増殖培地中でMSCを培養する工程、
MSCから増殖培地を除去せずに、カチオンポリマーと複合体形成した核酸構築物を含むトランスフェクション混合物をMSCに添加する工程、
エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤をMSCに添加する工程、並びに
MSCを、トランスフェクション混合物、第1の薬剤及び第2の薬剤のすべてと接触させながら、インキュベーション期間にわたりインキュベートする工程を含み、
但し、第1の薬剤及び第2の薬剤を、トランスフェクション混合物の添加と同時に、トランスフェクション混合物の添加に連続的に、又はトランスフェクション混合物と併用してMSCに添加し、
トランスフェクション混合物の添加とインキュベーション期間の終了との間、MSCを遠心分離しないことにより、核酸構築物でトランスフェクトされたMSCを供給する、方法が本明細書において提供される。
【0296】
特定の実施形態では、増殖培地中でMSCを培養する工程が、細胞に新鮮増殖培地を供給する工程(即ち、消費した又は部分的に消費した増殖培地を新鮮増殖培地で置換する工程)、又は新鮮増殖培地を、消費した又は部分的に消費した増殖培地に添加する工程を含んでもよい。
【0297】
特定の実施形態では、インキュベーション期間が、少なくとも約2時間であり得る。
【0298】
特定の実施形態では、インキュベーション期間が、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、又は約36時間であり得る。
【0299】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、方法が、本明細書に記載されるトランスフェクトされたMSCのいずれかを産生してもよい。
【0300】
更に別の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかによって産生されるMSC又は複数のMSCが本明細書において提供される。
【0301】
別の実施形態では、本明細書に記載されるMSCのいずれか、及び薬学上許容される担体、希釈剤、賦形剤、細胞培地又は緩衝液の少なくとも1つを含む組成物が本明細書において提供される。
【0302】
特定の実施形態では、薬学上許容される担体、希釈剤、賦形剤、細胞培地又は緩衝液が、例えば、任意の適切なPBS緩衝液、凍結保存培地、マトリゲル又はハイドロゲルを含んでもよい。特定の実施形態では、本明細書に記載されるMSCの、PBS又は別の緩衝液又は細胞培地中の懸濁液を含む組成物が本明細書において提供される。別の実施形態では、凍結保存培地と共に凍結させた本明細書に記載されるMSCを含む組成物が本明細書において提供される。
【0303】
更に別の実施形態では、本明細書に記載されるMSCのいずれかを含むセラノスティック剤が本明細書において提供される。例として、特定の実施形態では、セラノスティック剤が、治療用遺伝子又は自殺遺伝子と蛍光タンパク質との両方を発現するMSCを含んでもよい。MSCは、癌指向性及び/又は腫瘍指向性の特性を有してもよく、蛍光を利用して癌細胞又は腫瘍細胞の部位を示すために使用してもよく、(自殺遺伝子を使用する場所である)その蛍光の個所に、例えば、抗癌効果又は抗腫瘍効果をもたらすためにプロドラッグを添加してもよい。
【0304】
更に別の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子を一過性に発現する核酸構築物で間葉系幹細胞(MSC)をトランスフェクトするためのキットであって、
MSC、
1つ若しくは複数の機能遺伝子の一過性発現用に設計された核酸構築物、
細胞培養培地、
カチオンポリマー、
エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤、
MSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤、
本明細書に記載される方法を行うための説明書、
5FC、
GCV及び/又は
5FU
の1つ又は複数を含む、キットが本明細書において提供される。
【0305】
特定の実施形態では、MSCが、本明細書に記載される任意のMSCであり得る。特定の実施形態では、MSCが、臍帯血、新生児出生関連組織、ウォートンジェリー、臍帯、臍帯内膜、胎盤、又は別のMSC細胞源由来であり得る。特定の実施形態では、MSCが、脂肪組織由来MSC(AT-MSC)、骨髄由来MSC(BM-MSC)、又は臍帯由来MSC(UC-MSC)であり得る。別の実施形態では、MSCが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ又は別の種に由来してもよい。
【0306】
特定の実施形態では、核酸構築物が、本明細書に記載される任意の核酸構築物であってもよく、1つ又は複数の機能遺伝子が、本明細書に記載される任意の1つ又は複数の機能遺伝子であり得る。特定の実施形態では、核酸構築物が、CpGフリー発現プラスミド若しくは別のCpGフリー発現構築物、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、又はEBNA-1含有構築物を含んでもよい。
【0307】
特定の実施形態では、カチオンポリマーが、本明細書に記載される任意のカチオンポリマーを含み得る。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、直鎖状若しくは分岐状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アミドアミン)PAMAM、又は別のカチオンポリマーを含んでもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)を含んでもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、MSCに対して低い細胞傷害性を有すると同定されたカチオンポリマーを含んでもよい。特定の実施形態では、カチオンポリマーが、約5kDa~約200kDaのサイズを有してもよい。
【0308】
特定の実施形態では、第1の薬剤が、本明細書に記載される任意の適切な第1の薬剤を含み得る。特定の実施形態では、第1の薬剤が、DOPC、DPPC、又は別の融合性脂質の1つ又は複数を含んでもよい。特定の実施形態では、第1の薬剤が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)/コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)(DOPE/CHEMS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、又は別の融合性脂質、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0309】
特定の実施形態では、第2の薬剤が、本明細書に記載される任意の適切な第2の薬剤を含み得る。特定の実施形態では、第2の薬剤が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、例えばSAHA(ボリノスタット)を含んでもよい。
【0310】
特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、自殺遺伝子;シトシンデアミナーゼ(CDy);チミジンキナーゼ(TK);ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT);融合構築物として供給してもそうしなくてもよいCDy及びUPRTの両方;蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP);融合構築物として供給してもそうしなくてもよいCDy、UPRT及びGFP;単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK);又はそれらの任意の組合せを含み得る。
【0311】
特定の実施形態では、キット中のカチオンポリマーの核酸構築物に対する比が、核酸構築物1μg当たり、カチオンポリマー約1μg~約30μgであり得る。
【0312】
特定の実施形態では、キットが、MSCベースの抗癌剤の調製用であってもよい。特定の実施形態では、キットが更に、本明細書に記載される、癌を治療するための方法を行うための説明書及び/又は装置を含んでもよい。特定の実施形態では、MSCの腫瘍内又は静脈内又は皮下の注射又は注入用にシリンジ又は別の適切な注射装置が提供されてもよい。特定の実施形態では、投与のために、MSCを生体材料、例えばゼルフォームで包埋してもよい。
【0313】
特定の実施形態では、癌治療用の、間葉系幹細胞(MSC)の拡張可能な非ウイルス性遺伝子改変用の方法が本明細書において提供される。特定の実施形態では、本明細書に記載される方法が、トランスフェクションエンハンサー(TrafEn)の調合の存在下、1つ又は複数の自殺遺伝子でMSCをトランスフェクトする工程を含んでもよい。特定の実施形態では、そのような方法が、エンドサイトーシスされた核酸を細胞内酸性区画からリダイレクトできる第1の薬剤及びMSCの微小管ネットワークを安定化できる第2の薬剤を使用する工程を含み得る。特定の実施形態では、改変細胞の数及び発現の点で高効率の改変が、治療用遺伝子、例えば自殺遺伝子であるシトシンデアミナーゼ(CD)を発現する高有効性MSCの生成を提供し得る。特定の実施形態では、改変MSCを、腫瘍又は癌を有する患者に投与してもよい。特定の実施形態では、MSCが発現する治療用遺伝子が、プロドラッグを、腫瘍塊を縮小又は排除する毒性薬剤に変換してもよい。特定の実施形態では、本明細書に記載される方法を、癌及び/又は別の適応症を治療するための医薬品の製造において使用してもよい。更に、遺伝物質を細胞内に送達するための方法及びそのためのキットも本明細書に記載される。特定の実施形態では、MSCを、概して任意の適切な癌標的治療用遺伝子、並びに/又は概して任意の別の適切な疾患及び/若しくは障害を治療するための概して任意の別の適切な治療用遺伝子で改変してもよい。
【0314】
トランスフェクトされた間葉系幹細胞を使用して疾患又は障害、例えば癌を治療する使用及び方法
本明細書に詳細に記載されるように、1つ又は複数の機能遺伝子を発現してもよいトランスフェクトされたMSC、並びにトランスフェクトされたMSCを調製するための方法及びキットを提供する。特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、例えば1つ又は複数の治療活性のRNA、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を産生する1つ又は複数の治療活性遺伝子を含み得る。従って、本明細書に記載されるMSCは、当然のことながら、概して、1つ又は複数の機能遺伝子がそれらに対して治療活性である任意の疾患又は障害の治療、予防又は改善における使用向けであり得る。以下の考察は、主に癌の治療に関連するが、当業者は、本明細書の教示を考慮して、様々な別の疾患又は障害も本明細書では意図されることを認識する。
【0315】
一実施形態では、本明細書に記載されるMSCのいずれかの、癌細胞を殺滅するための使用が本明細書において提供される。
【0316】
一実施形態では、本明細書に記載されるMSCのいずれかの、必要とする患者において癌を治療するための使用が本明細書において提供される。
【0317】
特定の実施形態では、癌が、様々な型の固形腫瘍(例えば、甲状腺癌、肉腫、リンパ腫、扁平上皮癌、その他)のいずれか1つ又は複数を含み得る。MSCは、著しい指向性を示し得るため、癌の部位は概してどこであってもよく、部位は重要な問題を提示しないことが意図される。更に、特定の実施形態では、本明細書に記載されるMSC及び治療を、個々の癌に対して適合させてもよいこと、並びに本明細書に記載されるMSCプロドラッグ戦略は概して癌型に依存しないことが意図される。
【0318】
特定の実施形態では、癌が、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌、又はそれらの任意の組合せを含み得る。
【0319】
特定の実施形態では、患者が、脊椎動物、哺乳動物、又はヒトを含み得る。
【0320】
特定の実施形態では、MSCが、治療対象の疾患又は障害に対して活性である1つ又は複数の追加薬又は治療薬、例えば、疾患又は障害が癌である場合には1つ又は複数の抗癌剤と(同時、連続的、又は混合してのいずれかで)併用した使用向けであってもよい。
【0321】
特定の実施形態では、特に、トランスフェクトされたMSCによって発現させる1つ又は複数の機能遺伝子が、自殺遺伝子を含むか又はプロドラッグを活性型に変換する酵素を発現する場合、MSCが、1つ又は複数の対応するプロドラッグと(同時、連続的、又は混合してのいずれかで)併用した使用向けであってもよい。例として、特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy);チミジンキナーゼ(TK);ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT);融合構築物として供給してもそうしなくてもよいCDy及びUPRTの両方;単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK);又はそれらの任意の組合せを含んでもよく、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けであってもよい。
【0322】
別の実施形態では、本明細書に記載されるMSCのいずれかの、癌の治療用の医薬品の製造における使用が本明細書において提供される。特定の実施形態では、MSCが、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けであってもよい。
【0323】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるMSCが、治療対象の患者及び/又は疾患向けに適切である概して任意の適切な手法を介した患者への投与用であってもよい。例として、特定の実施形態では、MSCを患者に全身投与(例えば、静脈内注射)又は局所投与(例えば、局所注射若しくは局所移植)してもよいことが意図される。特定の実施形態では、MSCを、例えばOncotarget.、2017年10月6日、8(46):80156~80166頁に記載されるように静脈内投与してもよく、又は例えばClin Cancer Res.、2017年6月15日、23(12):2951~2960頁に記載されるように頭蓋内投与してもよく、参照により本明細書にその各々の全体が組み込まれている。特定の実施形態では、本明細書に記載されるMSCが、門脈内、腹腔内、静脈内、腫瘍内、皮下、頭蓋内の注射若しくは注入による患者への投与向け、又は患者への投与若しくは移植用のハイドロゲル若しくはゼルフォームに包埋した投与向けであってもよい。
【0324】
更に別の実施形態では、必要とする患者において癌を治療するための方法であって、
本明細書に記載されるMSCを、患者の癌細胞近傍の領域に投与する工程を含み、
但し、MSC中の1つ又は複数の機能遺伝子が、癌細胞に対する抗癌効果に寄与する方法が本明細書において提供される。
【0325】
特定の実施形態では、患者が、脊椎動物、哺乳動物、又はヒトを含み得る。
【0326】
特定の実施形態では、癌が、例えば、リンパ腫、明細胞癌、膠芽腫、テモゾロミド耐性膠芽腫、肛門周囲癌、口腔黒色腫、甲状腺癌、軟部組織癌、癌潰瘍形成、鼻腫瘍、又は胃腸癌、又はそれらの任意の組合せを含み得る。
【0327】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるMSCが、治療対象の患者及び/又は疾患向けに適切である概して任意の適切な手法を介して患者に投与されてもよい。例として、特定の実施形態では、MSCを患者に全身投与(例えば、静脈内注射)又は局所投与(例えば、局所注射、腫瘍内注射、皮下注射、若しくは移植、若しくは注入)してもよいことが意図される。特定の実施形態では、MSCを、例えばOncotarget.、2017年10月6日、8(46):80156~80166頁に記載されるように静脈内投与してもよく、又は例えばClin Cancer Res.、2017年6月15日、23(12):2951~2960頁に記載されるように頭蓋内投与してもよく、参照により本明細書にその各々の全体が組み込まれている。特定の実施形態では、本明細書に記載されるMSCが、静脈内、腫瘍内、皮下、頭蓋内の注射若しくは注入による患者への投与向け、又は患者への投与若しくは移植用のハイドロゲル若しくはゼルフォームに包埋した投与向けであってもよい。
【0328】
当然のことながら、特定の実施形態では、MSCを、疾患又は障害と関連する細胞(例えば、癌細胞又は腫瘍細胞)がMSCと接触するか又はMSCの適切な近傍に存在するように患者に投与してもよく、その結果、MSCによって発現させる1つ又は複数の機能遺伝子が疾患又は障害と関連する細胞に対して(直接的、又は(例えば)プロドラッグ変換を介して間接的に)治療効果を発揮し得ることになる。特定の実施形態では、MSCが、疾患又は障害と関連する細胞の適切な近傍へのMSCの配置を援助する、疾患又は障害と関連する細胞に対する指向性特性を有してもよい。特定の実施形態では、MSCを、疾患若しくは障害と関連する細胞と直接に接触した状態で投与してもよく、又は疾患若しくは障害と関連する細胞から約1~3cmの近傍範囲内で投与してもよい。特定の実施形態では、プロドラッグ療法がバイスタンダー効果をもたらし得るため、疾患細胞(disease cell)、例えば癌細胞とのMSCの直接接触は不必要であり得る。
【0329】
特定の実施形態では、特に、トランスフェクトされたMSCによって発現させる1つ又は複数の機能遺伝子が、自殺遺伝子を含むか又はプロドラッグを活性型に変換する酵素を発現する場合、MSCを、1つ又は複数の対応するプロドラッグと(同時、連続的、又は混合してのいずれかで)併用して投与してもよい。例として、特定の実施形態では、1つ又は複数の機能遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDy);チミジンキナーゼ(TK);ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT);融合構築物として供給してもそうしなくてもよいCDy及びUPRTの両方;単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK);又はそれらの任意の組合せを含んでもよく、5FC、5FU、GCV、又はそれらの任意の組合せとの併用での使用向けであってもよい。
【0330】
特定の実施形態では、MSCの1つ又は複数の機能遺伝子、及びプロドラッグが、プロドラッグから活性型への変換が疾患又は障害と関連する周辺細胞(例えば、癌細胞又は腫瘍細胞)に加えてMSCを攻撃目標に又は殺滅し得るように設計してもよい。それ故、MSCを別の薬剤、例えばプロドラッグと併用して使用する予定の特定の実施形態では、MSCが治療効果を提供できる前に殺滅又は不活性化されないように、MSCをまず患者の適切な細胞に接触させるまで、MSCとプロドラッグとを互いに隔てて維持することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、MSCが指向性により腫瘍に向かって移動するために少なくともある程度時間がかかり得るため、特定の実施形態では、例えば、MSCが腫瘍に接近するまでプロドラッグの投与を遅延させることが意図される。
【0331】
特定の実施形態では、MSCが、トランスフェクションに続いて、患者への投与に続いて、又は両方ともに続いて、1つ又は複数の機能遺伝子を少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、又は少なくとも約17日間、一過性に発現してもよい。
【0332】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、方法が更に、MSCがプロドラッグ、例えば、5FC、5FU、ガンシクロビル、又はそれらの組合せに曝露され、プロドラッグを活性型に変換し得るように、プロドラッグ、例えば、5FC、5FU、ガンシクロビル、又はそれらの任意の組合せを患者に投与する工程を含んでもよい。
【0333】
前記の方法のいずれかの特定の実施形態では、方法が更に、MSCを投与する工程の前に、本明細書に記載される産生方法のいずれを使用してトランスフェクトされたMSCを産生する工程を含んでもよい。
【0334】
特定の実施形態では、トランスフェクション前にMSCの増殖及び/又は培養を行ってもよい。例として、ラージスケールのMSC改変には、特定の実施形態では、そのような増殖が望ましい場合がある。
【実施例】
【0335】
(実施例1)
癌治療用の間葉系幹細胞の非ウイルス性改変。遺伝子指向性酵素プロドラッグ癌療法用に間葉系幹細胞を操作する効率良い非ウイルス性プロセス
プロドラッグ遺伝子療法用の間葉系幹細胞(MSC)の改変を、ウイルス性及び非ウイルス性の遺伝子送達システムにより行った。従来のトランスフェクション法の低効率(0~50%)ゆえ、前臨床研究及び臨床研究ではウイルス性方法が広く使用された。本明細書に記載される実施形態は、第1の薬剤、例えば融合性脂質、及び第2の薬剤、例えばヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤(HDAC6i)の1つ又は複数の存在下、ヒト脂肪組織由来MSC(AT-MSC)の、ポリエチレンイミン(PEI)ベースの改変を>90%の効率で示す。MSCの細胞表現型は、改変後に不変のままであり、MSCの臨床応用には望ましい特徴である。この方法で装備して、融合型酵母シトシンデアミナーゼ::ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(CDy::UPRT)を産生する改変MSCの抗癌効果を、神経膠腫細胞株、乳癌細胞株及び胃癌細胞株において調べた。5-フルオロシトシンの効率良い変換により、CDy::UPRT_AT-MSCは、ヒトの胃癌、乳癌及び膠芽腫に対してin vitroで著しい細胞傷害性効果を示した。1%の治療用CDy::UPRT_AT-MSC/5FCと直接共培養すると、胃MKN1細胞株において80%超の阻害が観察された。CpGフリー発現プラスミドを用いて、トランスフェクション後7日までの長期発現が可能であった。トランスフェクションから7日後に収集したCDy::UPRT_AT-MSCは、胃MKN1細胞株及び胃MKN28細胞株においてそれぞれ85%及び95%の効率良い阻害を示した。この結果は、ここで記載した方法が、MSCベースのプロドラッグ療法の、ウイルスベクターを使用しない代替的プロセスを提供し得ることを示唆する。
【0336】
MSCの固有腫瘍指向性に関する重複証拠は、MSCを、特に腫瘍及びその転位部位へと抗癌剤を送達する細胞媒介物として利用するために、新興プラットフォームを開拓した[9、10]。最近、多数の、MSCによるGDEPT臨床試験が、第II相臨床試験への更なる開発を是認する期待できる結果を示した[7~11]。その治療手法は、標的細胞の近傍での非毒性プロドラッグの酵素的な限局性及び制御性の変換を可能にする。「バイスタンダー効果」が、標的細胞に対する細胞傷害性を高める[7]。CD産生MSCの抗癌潜在能が、胃癌[12~14]、乳癌[15、16]及び膠芽腫[17~19]を含む広範囲の固形癌において検証された。前臨床研究は、シトシンデアミナーゼ/5-フルオロシトシン(CD/5FC)が非常に堅牢であり、腫瘤中の4%と低いCD陽性細胞が腫瘍の完全な根絶に十分であることを示した[20~22]。CD/5FCシステムでの著しい進歩は、5FUを5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)に直接変換するため、律速酵素であるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)及びオロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)を迂回するピリミジンサルベージ酵素であるウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)の包含であった[23~26]。CD::UPRT/5FCは、5FCからその活性代謝物への変換を、CD/5FC、及び5FUと比べて30~1500倍高める[24、27]。
【0337】
一過性トランスフェクションは、細胞当たりの高ペイロードを有していてもよく、細胞老化を引き起こし得て[40]、腫瘍指向性を低下させ得る[41]、抗生物質選択及び何週間にも及ぶ工程作業、並びにウイルス誘導性MSC形質転換に関する安全面の懸念[42]を回避する。非ウイルス性方法は、産生の容易さ、低コスト及び安全性プロファイルに関してウイルスベクターに勝る利点を有するものの[43]、MSC改変に向けた幅広い採用の欠如は主に、典型的に直面する低効率のトランスフェクション(0~35%)による[44、45]。例えば、化学物質ベースのトランスフェクション法のパフォーマンスの低さゆえ(<5%の効率)[46]、ヒト脂肪組織由来MSC(AT-MSC)は、CD::UPRTを発現するために、レトロウイルス形質導入により操作された[47、48]。
【0338】
本研究では、TrafEnと組み合わせてカチオンポリマーを使用してAT-MSC及び別のMSC源を高効率で改変することが可能であり、ウイルスを使用する必要又は安定細胞株の確立なしにCDy::UPRTを産生する治療用MSCの開発を可能にした。
【0339】
結果
AT-MSC改変用の効率良い非ウイルス性LPEIベーストランスフェクション法
LPEI及びリポフェクタミン3000(L3K)のトランスフェクション効率を評価するために、AT-MSC(年齢層18~30歳)を、24ウェル組織培養容器中、GFPレポーター遺伝子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。LPEIを使用するとトランスフェクトされた細胞の数は多かったが、接着細胞の数は、L3Kを使用した場合よりも少なかった(
図8A)。トランスフェクション後の細胞生存率は高いままだったが、トランスフェクトされていない対照と比べると、LPEI仲介性トランスフェクション後の接着細胞数は著しく低下した。増大するpDNAの量の使用により接着細胞の数は更に低下し(
図28)、以前の観察と一致した(Swiech等、BMC Biotechnology、11(114)、2011年;McCall等、Frontiers in Moleuclar Neuroscience、5、(2012);Ho等、Bioscience Reports、38、2018年;Madeira等、Journal of Biotechnology、151、130~136頁、2011年)。より少量のポリマーを用いつつpDNA 200ngでAT-MSCをトランスフェクトして接着細胞数の増大を達成する試みは、トランスフェクション効率の著しい低下をもたらしただけであった(
図8B)。
【0340】
次いで、少量のpDNA(200ng)を用い、様々なDNA:ポリマーの比で、トランスフェクションの上昇に関してエンハンサー()35の使用を調べた(
図8b及び
図29)。80%超のAT-MSC細胞が、トランスフェクトされていない対照に匹敵する接着細胞数及び生存率で(
図29)トランスフェクトされた(
図8B及び
図29)。次に、研究を拡張して、別のドナー(年齢層31~45歳)から単離した別のAT-MSCを含めた。同じプロトコールを使用して、トランスフェクション効率は、トランスフェクトされた細胞の90%と同等の高さだった(
図9)。
【0341】
AT-MSCの遺伝子改変用の確実なプロトコールを確立するために、LPEI及びリポフェクタミン3000のトランスフェクションを、様々なDNA量で試験し比較した。様々なパラメータの効率をチェックするために、AT-MSC(年齢層18~30歳)を、24ウェル組織培養容器中、GFPレポーター遺伝子をコードするプラスミドでトランスフェクトした(
図8A)。明らかに、AT-MSCは、リポフェクタミン3000でトランスフェクションされにくかった。LPEIは、トランスフェクション効率の点でリポフェクタミン3000に勝った一方、細胞数の著しい低下が認められ、潜在的な細胞負荷を示唆した。
【0342】
しかしながら、細胞負荷を軽減するために少量のpDNA及びポリマーでAT-MSCをトランスフェクトする試みは、トランスフェクション効率を実質的に低下させた(
図8B)。ポリプレックスの細胞内トラフィッキング経路の解明に従事した我々の以前の研究は、TrafEnベースの方法の開発に導いた[54]。TrafEnは、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)及び融合性脂質を含み得る。本明細書中の研究では、少量のpDNA及びポリマーでの効率良いトランスフェクションを可能にする点でのこの試薬の潜在性を調べた。80%超のAT-MSC細胞が、細胞の負荷なしにトランスフェクトされた(
図8B)。次に、研究を拡張して、別のドナー(年齢31~45歳)から単離した別のAT-MSCを含めた。同じプロトコールを使用して、90%近くのトランスフェクション効率を達成した(
図9)。
【0343】
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(AT-MSC、RoosterBio社)を、女性ドナー(LOT00088、年齢18~30歳)から単離した。AT-MSCを、hMSCハイパフォーマンス基本培地(Roosterbio社)中に維持した。乳癌細胞株MDA-MB-231(HTB-26、ATCC)及び原発ヒト皮膚線維芽細胞(ATCC、PCS-201-012)を、メーカ説明書に従って、培養して維持した。神経膠腫細胞株U-251MGは、Paula Lam(Duke NUS Medical School)が快く提供してくれた。U-251MG細胞株は、10%ウシ胎児血清(FBS、Biowest社)を補足したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)中で培養した。胃癌細胞株MKN1及びMKN28は、Yong Wei Peng博士(National University Cancer Institute、シンガポール)が快く提供してくれた。胃癌細胞株は、10%FBS補足RPMI(Roswell Park Memorial Institute medium、Thermo Scientific社)中で培養した。細胞を、加湿雰囲気及び5%CO2中、37℃に維持した。
【0344】
セラノスティックCDy::UPRT_AT-MSCの特徴づけ及びCDy::UPRT_AT-MSCの機能性の特定
融合させたシトシンデアミナーゼとウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(CDy::UPRT_AT-MSC)を発現するAT-MSCを生成するために、AT-MSCを、遠心分離プロトコールに従ってLPEIでトランスフェクトした。TrafEnの存在下、CDy::UPRT::GFPでトランスフェクトしたAT-MSCのGFP解析に基づくと、80±2.3%近くのトランスフェクション効率が達成可能であった(
図1A)。フローサイトメトリー解析が示すように、トランスフェクトされた細胞の大部分は、TrafEnの存在下に高レベルのGFPを発現した。DNA量の増大は、LPEI及びリポフェクタミン3000のトランスフェクション効率を改善したものの、そのパフォーマンスは依然として不十分である(
図1B)。これらのデータは、ポリプレックスの、AT-MSC中での細胞内トラフィッキングを促進するためにはTrafEnが必要であることを示唆する[49]。CDy::UPRT発現の持続は、トランスフェクション後少なくとも7日間は維持されると確認された(
図1C、
図10)。
【0345】
免疫細胞染色解析に基づき、トランスフェクション効率は、エンハンサーの存在下、少量のpDNA(200ng)において著しく改善した。エンハンサーの不在下、pDNA量の増大は、LPEI及びリポフェクタミン3000のトランスフェクション効率を若干上昇させた(
図1)。本観察を拡張し、直接可視化及び定量化用の、シトシンデアミナーゼ、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ及び緑色蛍光タンパク質をコードする融合遺伝子(CDy::UPRT:GFP)を構築した。エンハンサーの存在下、トランスフェクション効率は、LPEI単独の使用(約40%、
図1)と比べて著しく上昇し(約80%)、生存率の著しい変化はなかった(
図30)。特に、CDy::UPRT:GFP又はCDy::UPRTで改変されたAT-MSCの抗癌効率において著しい差異はなかった(
図31)。まとめると、この結果は、エンハンサーによる、AT-MSCのトランスフェクションの著しい改善を示し、それは、おそらくBM-MSC中でのpDNAの細胞内トラフィッキングの促進と類似の機構を共有する(Ho等、Nucleic Acids Research、45(38)、2017年)。
【0346】
興味の対象となる導入遺伝子を、継代数3~5でAT-MSCに導入した。各ウェル(6ウェルプレート型式)用に、LPEI(PEI MAX、Polyscience社)5mg/mLを、無血清DMEM中のpDNAに、pDNAのPEIMAXに対する異なる比で添加した。混合物を、100μLの総容積で、室温で15分間インキュベートした。pDNA:LPEI比を、pDNA量(μg):LPEI 1mg/mLの容積(μl)に従って計算した。次いで、トランスフェクション混合物を調製するために、LPEI/pDNA複合体を、無血清DMEM培地に(1:20)添加した。培養培地を除去し、トランスフェクション混合物で置換した後に、5分間、200gで穏やかに遠心分離した。遠心分離後にトランスフェクション混合物を除去し、TrafEnを補足した又は補足しない完全培地で置換した。TrafEnは、DOPE/CHEMS(Polar Avanti Lipid社)とボリノスタット(SAHA、Bio Vision社)とからなる。解析前に細胞を24時間インキュベートした。
【0347】
フローサイトメトリー、ウエスタンブロット及び免疫細胞染色を前記のように行った[49]。簡単に言うと、フローサイトメトリー:蛍光陽性細胞の百分率をAttune NxTフローサイトメータシステム(ThermoFisher Scientific社)により定量し、Invitrogen Attune NxTソフトウェア(ThermoFisher Scientific社)を使用して生データを解析した。イメージング:細胞画像は、DAPI(Ex357/Em447)、GFP(Ex470/Em510)蛍光を検査するための3つの蛍光キューブを搭載したEVOS FLセルイメージングシステム(ThermoFisher Scientific社)で撮影した。ウエスタンブロット:サンプルは、それぞれ、ヒツジ抗CDy(PA185365、ThermoFisher Scientific社)及びモノクローナル抗β-アクチン(A2228、Sigma-aldrich社)を用いて免疫ブロッティング法により解析した。免疫細胞染色:サンプルは、ヒツジ抗CDy及びAlexa Fluor 488ロバ抗ヒツジ蛍光二次抗体(A11015、ThermoFisher Scientific社)で標識した。画像獲得は、EVOS FLセルイメージングシステムを使用して行った。全画像は、同一の光学設定で撮影した。
【0348】
CDy::UPRTの発現は、AT-MSCを、プロドラッグ5FCに対して感受性にさせ(5FCへのCDy::UPRT改変AT-MSCの曝露は、細胞生存率を経時的に低下させた)(
図2A)、CDy導入遺伝子のホスホリボシルトランスフェラーゼドメインの機能性を示す。更に、CDy::UPRT_AT-MSCは、活性の細胞傷害性薬剤5FUの存在下、自殺効果の感受性の上昇を示した(
図2B)。この効果は、おそらく、5-FUから5-フルオロウリジン一リン酸への変換を触媒するUPRT導入遺伝子の活性に起因した[25]。これは、別の研究における観察と一致する[19、55]。
【0349】
AT-MSCの表現型特性は、LPEIベースのトランスフェクション法により影響を受けない。
将来的な臨床用途には、遺伝子改変後にAT-MSCの品質が不変のままであることの確保が望ましい。AT-MSC中での高トランスフェクション効率はAT-MSCの品質を犠牲にして達成されたという可能性を除外するために、その特性を、国際細胞治療学会(ISCT)により定義される主要基準に従って評価した[51]。実際、高トランスフェクションは、AT-MSCの表現型を改変し得るという可能性を調べるために、国際細胞治療学会(ISCT)により定義されたマーカーを使用して、標準的FACS解析により、CDy::UPRT_AT-MSCの免疫表現型検査を行った[51]。非改変AT-MSCを基準として、CDy::UPRT_AT-MSCの免疫表現型を、表面マーカーの発現における潜在的変化に関して、標準的FACS解析により解析した。CDy::UPRT_AT-MSCは、非改変AT-MSCと比べて同一のプロファイルを示した。両方の細胞型とも、CD90、CD73及びCD105に関して陽性であり、CD14、CD20、CD34、CD45及びHLA-DRに関しては陰性であることが分かった(
図3A、
図27B)。CDy::UPRTの発現は、骨形成系列(
図3B、
図27A)及び脂肪生成系列(
図3C、
図27A)への、AT-MSCの分化能に影響を及ぼさなかった。明らかに、CDy::UPRT::GFP発現AT-MSC中での油滴の存在は、トランスフェクション後のAT-MSCの分化能に関する直接的証拠を与える(
図11)。油滴は、脂肪生成系列へと分化する潜在能が、トランスフェクション及び導入遺伝子発現により影響を受けなかったことを示唆した(
図11)。別個の研究では、本方法を使用したトランスフェクション後に、軟骨形成分化も同じく影響を受けなかった(図示せず)。
【0350】
CDy::UPRT産生AT-MSCの表現型を調べるために、CD73、CD90、CD105、CD14、CD20、CD34、CD45及びHLA-DR抗体からなるMSCフェノタイピングキット(Miltenyi Biotech社)を用いて、メーカ説明書に従って、細胞を標識した。その後、マーカーの発現をFACSで解析した。高品質のMSC集団は、>95%のCD90、CD105及びCD73陽性細胞からなる。CD14、CD20、CD34、CD45及びHLA-DRを発現する集団は、1%未満であり得る[51]。AT-MSCの多分化能は、骨形成系列及び脂肪生成系列への分化能により確認された[52、53]。AT-MSCの分化は、StemPro(商標)骨形成分化キット及びStemPro(商標)脂肪細胞分化キット(ThermoFisher Scientific社)により誘導した。非改変AT-MSCを対照として使用した。CDy::UPRT産生AT-MSCの表現型及び分化能は、非改変AT-MSCと著しくは異ならない。
【0351】
CDy::UPRT_AT-MSCはin vitroで癌細胞株への指向性を維持する
癌細胞が放出するサイトカインに向かうAT-MSCの走化性反応は、腫瘍細胞の効果的なターゲティングにとって望ましい[10]。従って、遺伝子改変は、癌細胞に対するAT-MSCの指向性を変化させないことが望ましい。ここでは、AT-MSCの腫瘍指向性に及ぼすLPEIベーストランスフェクションの潜在的な影響を調べるために、浸潤アッセイを使用した。癌細胞の存在下、細胞外マトリックスを通過するAT-MSCの方向性遊走を調べた。細胞外マトリックスを通過するAT-MSCの方向性遊走は、癌細胞に対するAT-MSCの指向性を示す。細胞外マトリックスを通過するAT-MSCの浸潤は、MDA-231-MB、U251-MG及びMKN1により著しく誘導されたが、HEK293Tによっては誘導されなかった(
図4A)。この観察は、HEK293Tを非癌細胞株対照として利用した別の研究と一致する[56、57]。AT-MSC及びCDy::UPRT_AT-MSCの匹敵する遊走数は、LPEI仲介性トランスフェクション及びAT-MSC中でのCDy::UPRT発現により、腫瘍ホーミング能が影響を受けなかったことを示唆する。AT-MSCの遊走が、癌細胞によって分泌される特定ケモカインに依存することを更に確認するために、より多数の癌細胞は、遊走AT-MSCの上昇をもたらすと仮定した。実に、著しく多数のCDy::UPRT_AT-MSCが、U-251MG及びMKN1に向かって遊走した。他方、MDA-MB-231細胞株を用いた条件では、遊走したAT-MSCの中程度の増加が見出された(
図4)。細胞外マトリックスを通過して浸潤したCDy::UPRT_AT-MSCの数は、癌細胞の数に依存し、より多数の細胞がU-251MG及びMKN1に向かって遊走し、より少ない細胞がMDA-MB-231細胞株に向かって遊走した(
図4)。
【0352】
各処理ごとに、AT-MSC、MKN1、MKN45、MDA-MB-231(ウェル当たり10,000細胞)及びU-251MG(ウェル当たり4000細胞)の四つ組を96ウェルプレートにプレーティングした。24時間後、培養培地を、様々な濃度の5-フルオロシトシン(5-FC、InvivoGen社)又は5-フルオロウラシル(5FC、InvivoGen社)を含有する培地に代えた。1~5日後、プレートを、CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega社)の対象とした。比色リードアウトを、490nmで分光光度測定した。結果は、5-FC又は5-FUを含まない条件における細胞(100%に設定)に対する、細胞生存率の百分率として表した。
【0353】
細胞浸潤アッセイの例示的な方法は以下のとおりである。AT-MSCの腫瘍指向性は、BD Biocoat(商標)マトリゲル浸潤チャンバー(BD Biosciences社)を使用して測定した。癌細胞株又はHEK293T細胞を、24ウェルプレートの下のウェルにロードした。24時間後、無血清DMEM中の非改変AT-MSC及びCDy::UPRT産生AT-MSCを、浸潤チャンバー上に添加した。下のウェルを1×PBSで洗浄して、無血清DMEMを注ぎ、浸潤アッセイ用に組み立てた。24時間インキュベーション後、非浸潤細胞及びマトリゲルを、インサートの内側から除去した。浸潤細胞を、Hoechst 33342(ThermoFisher Scientific社)で染色し、イメージングシステムにより撮影した。3フレーム中の細胞の数を数えた。
【0354】
CDy::UPRT_AT-MSC/5FCが仲介するin vitroでの細胞傷害性
CDy::UPRT_AT-MSCが標的細胞に及ぼす細胞傷害性効果の証明は、プロドラッグ癌療法用のセラノスティックMSCの生成においてLPEIベーストランスフェクション/TrafEnを採用する際の鍵である。増殖阻害におけるシトシンデアミナーゼ/5FCの作用は、一般的にはMTSアッセイにより評価される。まず、CDy::UPRT_AT-MSC/5FC、及び5FUの抗癌効率を、神経膠腫細胞株、乳癌細胞株及び胃癌細胞株において比較した(
図12)。CDy::UPRT_AT-MSC/5FCと5FUとの匹敵する抗癌効果は、5FCを細胞傷害性薬剤に変換する高効率を示唆する。CDy::UPRT_AT-MSCの癌細胞に対する1:1の比では、抗癌効果は、5FUの直接的薬理効果に匹敵した。CDy::UPRT_AT-MSC/5FCの治療可能性を更に調べるために、細胞を、MSCの癌細胞に対する様々な比で、標的癌細胞と共培養した(
図5A)。CDy::UPRT_AT-MSC/5FCのU251-MG、MDA-MB-231及びMKN1に対する1:50の共培養比においてさえも、それぞれ、ほぼ57%、69%及び89%の増殖阻害が観察され得る。混合培養のこの比率は、癌細胞内での2%の治療用細胞を表す。10%の治療用細胞を使用した場合、すべての癌細胞において86%超の増殖阻害が得られた。MKN1集団においてはたった1%の治療用細胞で85%の増殖阻害が認められたことが特筆に値する。5FCを含まない共培養中では増殖阻害が観察されず、AT-MSCの抗癌特性の欠如を示唆する(
図5B)。
【0355】
直接共培養法の例示的な方法は以下のとおりである。胃癌細胞株及び乳癌細胞株(5000細胞)並びにU-251MG(2000細胞)の四つ組を96ウェルプレートにプレーティングした。5時間後、非改変AT-MSC又はCDy::UPRT産生AT-MSCのいずれか一方の増加数を、1 AT-MSC対1、5、10、50及び100癌細胞の比で、癌細胞培養に添加した。1日後、培養培地を、5-FC(0~150μg/mL)を含む又は含まない2%FBS補足DMEMで置換した。5日後、細胞生存率を、増殖アッセイにより測定した。5-FCを含まない条件を100%に設定した。
【0356】
治療用細胞がin vivoで癌細胞と直接接触しない場合の状況を考慮して、間接共培養実験を使用してCDy::UPRT_AT-MSC/5FCの細胞傷害性効果を入手した。MDA-MB-231をCDy::UPRT_AT-MSC/5FCに曝露してから4日後、90%近くの増殖阻害が認められた(
図5C)。細胞間接着の不在下、CDy::UPRT_AT-MSC/5FCの抗癌効率は、直接共培養モデルと良好に匹敵する。まとめると、これらのデータは、潜在的な細胞傷害性抗癌効果は、治療用細胞が標的細胞と接触状態であるか、又は近傍にある場合に発揮され得ることを示唆する。次に、正常混合胃部細胞(Hs738-非形質転換ヒト胎児消化管細胞)の感受性を、5つの胃癌細胞株と比較するために研究を拡張した。CDy::UPRT_AT-MSC/5FCは、細胞傷害性抗癌効果を胃癌細胞株に対して選択的に発揮し(
図13)、治療用細胞/5FCの、正常細胞ではなく、癌細胞への特異的ターゲティングを示唆する。
【0357】
間接共培養法の例示的な方法は以下のとおりである。MB-MDA-231細胞を、24ウェルプレート中にプレーティングした(ウェル当たり5×104細胞)。AT-MSC又はCDy::UPRT_AT-MSC(ウェル当たり5×104細胞)を、トランスウェル(Corning社、C05/3422)上にプレーティングした。培養から6時間後、治療用細胞を含むインサートを、MB-MDA-231を含むウェル内に、5FCと共に又は伴わずに移した。細胞傷害性効果は、インキュベーションから4日後の評価であった。トランスウェルを除去し、培養培地を、Hoechst 3222 1μg/mLを含有する1×PBSで置換した。染色された細胞を、Synergy H1マイクロプレートリーダーを使用して、それぞれ358nm及び461nmの励起波長及び発光波長で解析した。ゲイン設定80により、細胞培養の9領域でRFUを記録した。
【0358】
LPEI/TrafEnエンハンサーは非常に強力なCDy::UPRT_AT-MSCを生成する
自殺遺伝子の高発現は、治療用AT-MSCを生成するプロセスにおいて重要であり得ると仮定した。次に、pCMV-GFP(
図8)、又はCDy::UPRTをコードするCpGフリープラスミド(
図1)を用いてAT-MSCをトランスフェクトすることにより試験した異なるプロトコールを用いて処理した治療用細胞の有効性を比較した。予想どおり、異なるプロトコールを用いて調製した治療用細胞の抗癌効率は、各プロトコールのトランスフェクション効率に著しく依存した(
図6)。TrafEn(エンハンサー)の存在下に生成したCDy::UPRT_AT-MSCの抗癌効率は、特にMB-MDA-231及びU251-MGにおいて、別の方法を著しく上回る。この2つの細胞株は、5FUの毒性に対するより低い感受性を示し(
図12)、その増殖阻害には、より高濃度の5FUが必要とされた。1 MSC対10癌細胞の比において、TrafEnの存在下に生成したCDy::UPRT_AT-MSCと共培養したすべての癌細胞株中では、完全な増殖阻害が認められた。本明細書に記載される本方法は、様々な起源から得られたMSCに対して(
図14)、及び別の自殺遺伝子、例えば単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)に対して(
図15)適用できることが特筆に値する。エンハンサーを使用するトランスフェクションプロトコールは、細胞源にかかわらず、類似の有効性を有する改変MSCを生成した(脂肪細胞由来、骨髄由来又は臍帯由来のMSC、
図14)。更に、別の自殺遺伝子、例えば単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)により、MSCのトランスフェクションに成功した(
図15)。
【0359】
一過性トランスフェクションによるAT-MSC中でのCDy::UPRTの長期発現
MSCのin vivoでの体内分布に関する証拠に基づき、残存腫瘍の間で広まり、腫瘍の遠位病巣へと帰巣するために、投与経路及び腫瘍の部位に応じて、MSCは1~4日を要することが予想される[29、58、59]。自殺遺伝子の連続発現を確保するために、ウイルス性形質導入及びそれに続く抗生物質選択が、プロドラッグ療法用の改変MSCの調製において採用された[19、29、60]。トランスフェクション後7日までのCDy::UPRTの連続発現が示された(
図1C)。改変AT-MSCが、実質的な抗癌効果に適切な期間内において機能性であり続けることを検証するために、トランスフェクション後1日目及び7日目から収集した改変MSCの癌殺滅効率を並行研究で測定した。トランスフェクション後1日目及び7日目に収穫したCDy::UPRT_AT-MSCにより、匹敵する増殖阻害が得られた(
図7)。
【0360】
本研究では意図的にCpGフリープラスミドを選択した。なぜなら、CpGを含まないプラスミドにより、発現の増強及び延長が認められたからである[61、62]。更に、本研究で使用したプラスミド骨格は、遺伝子発現の安定性を改善するためにマトリックス付着領域(MAR)を含有する[63]。実に、これら2つの特徴を有さない発現プラスミドを用いると、CDy::UPRTの発現は、トランスフェクション後3日目に激しく低下した。予想どおり、トランスフェクション後7日目に収集した改変AT-MSCの抗癌効率は、トランスフェクション後1日目に収集したそのカウンターパートよりも400倍低かった(
図16)。TrafEnの存在下に改変されたAT-MSCは、別の方法と比べて著しい抗癌有効性を示したが、増殖阻害の効率は経時的に低下し、ネックは、遺伝子送達の成功に続く出来事にあることを示唆する。TrafEnは、改変AT-MSCの機能性の経時的な低下にもかかわらず、優れた抗癌効果を可能にしたことが特筆に値する。
【0361】
実に、一過性トランスフェクションにより、AT-MSC中でのCDy::UPRTの長期発現が可能であった。改変AT-MSC中での導入遺伝子の発現及び機能の持続を調査するために、トランスフェクション後1日目及び7日目から収集した改変MSCの抗癌効率を調べた。明らかに、導入遺伝子CDy::UPRTの発現は、トランスフェクション後7日の期間にわたって著しく(
図7C)、CD::UPRT::GFPを使用した観察と一致した(
図10)。トランスフェクション後1日目(
図7A)又は7日目(
図7B)に収穫したCDy::UPRT_AT-MSCにより、癌細胞の匹敵する増殖阻害が認められた。
【0362】
MSCの投与
MSCの投与方法は、癌の型及び/又は特定用途に依存し得る。自殺プロドラッグ療法用の治療用MSCを生成するための上流工程の開発が、本明細書に記載される。改変MSCを、例えば、腺癌治療では静脈内投与してもよい(TREAT-ME第1相試験、Oncotarget.、2017年10月6日、8(46):80156~80166頁)。特定の実施形態では、頭蓋内投与を行ってもよく、例えば、再発高悪性度神経膠腫の患者において、腫瘍切除又は生検中にCD-NSCの頭蓋内投与を行った(Clin Cancer Res.、2017年6月15日、23(12):2951~2960頁)。
【0363】
プロドラッグ/遺伝子の組合せ。
本研究は更に、シトシンデアミナーゼ/ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼの融合遺伝子と5-フルシトシンとのシステムに関する。チミジンキナーゼ/ガンシクロビルのシステムも試験した。同じく、TrafEn法は、抗癌効率において、別の非ウイルス性方法に勝った(
図14B)。ここで記載される方法は、例えば、参照により本明細書にその全体が組み込まれているJ Clin Invest.、2000年5月1日、105(9):1161~1167頁の表3で列挙されるような、技術分野で公知の自殺遺伝子/プロドラッグシステム用の様々なMSC型の非ウイルス性改変用プラットフォームとして利用可能である。
【0364】
非ウイルス性トランスフェクションのウイルス性トランスフェクションとの比較
試薬の調合であるTrafEn(PCT/SG2013/000464に記載)は、本明細書に記載される研究において、細胞内プラスミドDNAの高コピーによる、導入遺伝子の生産的発現を可能にし、本研究における治療用高ペイロードを有するMSCの生成をもたらす。ウイルス性方法に勝る、TrafEnシステムの顕著な利点は、導入遺伝子の早発性の発現(
図23A)及び細胞当たり著しく高い発現である(
図23B)。この特徴は、細胞調製工程の短縮、及び細胞当たりの自殺遺伝子のより高いペイロードを可能にし、潜在的に、産生費用、及び治療に使用すべきMSCの数を低下させ得る。
【0365】
安定細胞株の生成。
安定細胞株の生成は、多数のトランスフェクトされた細胞の獲得に努める。抗生物質選択は、非常に多大な労力を要し(2~3週間)、潜在的に、MSC品質を妥協させ[88]、細胞老化を引き起こし得て[88]、腫瘍指向性を低下させ得て[89]、並びにウイルス誘導性MSC形質転換に関する安全面の懸念を起こし得る[90]。抗生物質選択なしでは、低いトランスフェクション効率が、臨床応用には十分でない場合がある。本明細書中で開発され記載される工程を使用した効果的な高トランスフェクションを考慮すると、安定細胞株を生成する必要がもはや存在しない。cpgフリーベクターにサブクローンした治療用遺伝子を用いると、7日の期間にわたるCDUPRTの高発現が、癌細胞の排除において、トランスフェクションから1日後の発現と同程度に効果的であった(
図7A、
図7B)。選択は、本明細書に記載されるトランスフェクション法と両立可能であることが意図される一方、本明細書のトランスフェクトされたMSCは、効率が>80%であったため選択されなかった。特定の実施形態では、安定細胞株の生成は療法に不必要であることが意図される。
【0366】
CD::UPRT_AT-MSCが仲介するIn Vivoでの腫瘍増殖阻害
この手法をin vivoで調べるために、CD::UPRT_AT-MSCを、皮下(s.c.)腫瘍内に直接注射した。実験的癌治療を対象とした非改変MSCの使用に関して、むしろ矛盾する結果を伴うかなりの研究が注目された(Christodoulou等、Stem Cell Res Ther、9(336)、2018年)。抗癌効果は、CD::UPRTの発現に起因したことを確保するために、プロドラッグ対照群(5FC)に加えて、細胞対照群(MSC+5FC)を使用した。本研究では、MSC+5FCは、顕著な腫瘍促進効果又は抗腫瘍効果を発揮しなかった。腫瘍増殖の著しい阻害が、処理群では認められた(
図32)。1サイクルの処理により、処理群では、最後の5FC投与から3日後に腫瘍サイズの平均45%の縮小が認められた(
図32Aの7日目)。処理群での全体的な腫瘍サイズは、プロドラッグ群及び細胞対照群よりも著しく小さい(
図32B)。
【0367】
この結果は、皮下マウスモデル-膠芽腫細胞株U251MGにおいて、GDEPT効果のin vivoでの証拠を提供する。
【0368】
考察
MSC仲介性GDEPTの治療効果が、様々な前臨床試験[9、20、21]及び臨床試験[7、9]において証明された。代替的な非ウイルスベースの方法での効果の欠如ゆえ、MSCの遺伝子改変にはウイルスが使用される。本研究は、プロドラッグ癌療法用の高ペイロードを有する治療用AT-MSCを生成するための、ウイルスを必要としない調合及びプロトコールの使用を示す。効率良いトランスフェクション法の有益な結果が、CDy::UPRT産生AT-MSCの抗癌有効性の点での実質的な機能の改善において確立された。本明細書に記載される方法は、AT-MSCの品質及び特性を変化させず、様々な型のMSC及び治療用遺伝子に対して適用可能である。
【0369】
MSCによるプロドラッグ遺伝子療法の開発工程においては、遺伝子送達法が、重大な役割を担う。GDEPTに向けてMSCを改変するために、前臨床研究及び臨床試験[28~31]では、ウイルスベクターが日常的に使用される。CDy発現AT-MSCの生成においては、レトロウイルスが頻繁に使用される[19、47、48、60、64]。簡単に言うと、AT-MSCを3日連続して3度、レトロウイルス含有培地で形質導入した。抗生物質G418の存在下、使用前に10日間、細胞を更に増殖させる。代替的な方法は、レンチウイルス遺伝子送達システムである。150のMOIにおけるAT-MSCでの単一形質導入により、最高で80%の効率が報告された[65、66]。あいにく、ポリブレンは、MSC増殖を潜在的に阻害し得る[67]。
【0370】
ウイルス性遺伝子送達システムと比べて、迅速、簡単、経済的であり、抗生物質選択又は多重トランスフェクションを必要としない、容易なPEIベースのトランスフェクション法を報告する。各細胞が数千コピーのDNAでトランスフェクトされ得るため[35、36]、大部分の細胞が、高レベルの、興味の対象となる遺伝子を発現することが見出された(
図1、
図8B)。それが、CDy::UPRT_AT-MSCの高い有効性を説明する可能性がある。実に、PEI+エンハンサーにより生成されたCDy::UPRT_AT-MSCは、5FUに匹敵する抗癌効率を示し、プロドラッグ5FCから毒性薬剤への効率良い変換を示唆する(
図13)。トランスフェクション後の更なる精製又は抗生物質選択を伴わずに、TrafEnの存在下にPEIベースのトランスフェクションにより生成した、10%の治療用AT-MSCを用いて、MD-MBA-231、U251-MG、MKN45及びMKN1細胞株の完全な阻害を達成できた(
図6C)。他方、AT-MSC中でのPEI単独及びリポフェクタミン3000の低いトランスフェクション効率(
図1)は、特にMD-MBA-231及びU251-MG細胞株中での低い抗癌効率をもたらした(
図6)。
【0371】
本明細書に報告される方法で調製した治療用AT-MSCの表現型及び特性は、プロドラッグ癌療法用にCDy又はCDy::UPRTを発現させるためにAT-MSCをレトロウイルスで改変した別の研究で示されたデータと比較しても劣らない[19、47、48、60、64]。CD::UPRT_AT-MSCの表現型マーカー、分化能、及び腫瘍指向性を、非改変AT-MSCに対して評価し、我々の方法がAT-MSCの品質に影響を及ぼさないことを確認した(
図3、
図4)。それが、改変AT-MSCのセラノスティック応用にとって望ましい特徴である[51]。別の報告と一致して[60、68、69]、CDy::UPRT_AT-MSCは、間接共培養実験において細胞傷害性を発揮し(
図5C)、バイスタンダー効果には細胞間接着が必要とされないことを更に確認した。同じく、治療用MSCはCDy::UPRT/5FCシステムに対して感受性であることが特筆に値し(
図2)、従って、治療用細胞の長期生存を妨げ、細胞媒介物としての要件を満たす[69]。1治療用MSC対10癌細胞の比率において、Kucerova等は、レトロウイルス形質導入により生成したCDy_AT-MSCの存在下、著しい40%の、MDA-MB-231の増殖阻害を示した[47]。興味深いことに、CDy::UPRTによるAT-MSCの改変は抗癌効果を改善せず[16]、CDy::UPRT/5FC及びHSV-TK/GCVの組合せプロドラッグ治療への取組みにつながる。驚くべきことに、10%の治療用細胞において、MDA-MB-231の91%近くの増殖阻害を観察し(
図5A)、細胞当たりの自殺遺伝子のより高い発現レベルに起因し得る。
【0372】
CD発現神経幹細胞の臨床試験において、再発神経膠腫患者に11日の治療計画を与えた[70]。in vivo動物試験において、処理の持続期間は、癌型に依存して6日[28、29、47]から23日[29]の範囲である。しばしば、改変MSCを、3週間の期間にわたり毎週与えた。本研究では、PEI+TrafEnでトランスフェクトしたAT-MSC中、抗生物質選択なしに、7日までのCDy::UPRTの長期発現の証明に成功した(
図1、
図7)。一過性トランスフェクトAT-MSC中での自殺遺伝子の発現は、治療計画の必要とされる期間中ずっと持続できた[70]。これは、幹細胞によるプロドラッグ療法の開発における非ウイルス性遺伝子送達システムの採用を是認する。明らかに、CD::UPRT::GFPで改変されたAT-MSCは、CD::UPRTに匹敵する抗癌効率を示した(データ示さず)。MSC品質に潜在的に影響を及ぼし得る抗生物質選択の代わりに[40]、GFPタグを、CD::UPRT陽性AT-MSCのフローサイトメトリー単離に利用してもよく、セラノスティック細胞生成のワークフローを更に合理化する。
【0373】
遺伝子治療・細胞治療の臨床試験の加速的な数は、以前は治療選択肢を欠いた疾患に対する治療パラダイムの出現を約束するスリリングな時代を示唆する。この傾向は、臨床グレードのウイルス製造能力への多大な需要をもたらした。ウイルス産生の不足が、細胞治療・遺伝子治療の進歩及び事業化に関するネックであった[71]。本研究は、高度に拡張可能であり経済的であり得る、ポリマーベースのex vivoでのMSC改変に関する有用なツールを記載する。提案されたワークフローは、ウイルスベクター供給における制限を迂回し、セラノスティックMSCの品質及び抗癌効果を妥協することなくMSC改変を促進する。効率良い、非ウイルスベースの遺伝子改変ワークフローを有することで、本方法は、多重抗癌遺伝子の快適な共トランスフェクションを介して、更なる治療効果の達成において有用であり得ることが目につき、それは、癌治療の治療方針の展望を著しく広め得る。
【0374】
腫瘍の阻害及び増殖におけるMSCの役割に関する矛盾する報告が最近明らかになった。この矛盾は、主として技術上の相違及び固有の生物学的不均一性に起因すると思われた。それにもかかわらず、遺伝子改変MSCは、癌治療用のより適切な戦略を提供すると考えられる。なぜなら、遺伝子改変MSCは、典型的に、不安定で不均一な天然MSCよりも安全で効率的であるからである。
【0375】
本研究は、プロドラッグ癌治療用のセラノスティックAT-MSCの生成に関して、ウイルスの使用なく、高効率にAT-MSCの効果的な改変を達成した。細胞集団の約半分が市販入手可能なポリマー(PEI-max)でトランスフェクトされ、その効率は、エンハンサーの存在下、低い毒性で著しく改善された(
図1a)。この改変工程は、CD発現MSC細胞の>70%の高発現のために精製も抗生物質選択も必要とせず、ヒト臨床試験のリリース試験と一致する。MSCを改変するための新規のカチオンポリマー及び脂質を開発する試みは、以前に、トランスフェクションの低効率又は高い細胞傷害性ゆえ、限られた成功を手にした。最近、ポリ(β-アミノ-エステル)(PBAE)ポリマー構造が、MSCを高効率及び低毒性でトランスフェクトすると報告された。その細胞は都合よく改変されたものの、遊走能が著しく影響を受けた。
【0376】
AT-MSCを治療用の標的化ドラッグデリバリー媒介物として使用するためには、AT-MSCの改変に使用する工程が、その多分化能及び遊走能及び浸潤能を含めたその表現型特性及び挙動を著しくは変化させないことが望ましい。改変AT-MSC及び天然AT-MSCの表現型マーカーの発現及び分化能において著しい相違がないことが(
図3)、改変AT-MSCのセラノスティック応用のための重要基準である。固有腫瘍指向性が、治療薬を送達するための細胞媒介物としてのMSCのホーミング/遊走特性に関する重要な特徴である。導入遺伝子の高度の過剰発現にもかかわらず、改変細胞の遊走能は、in vitroで癌細胞の存在下、天然MSCに匹敵した(
図4)。
【0377】
従来の癌化学療法の効果及び安全性を改善するために、多数のGDEPTシステムが、癌治療に利用されている。最近の研究で試験された酵素/プロドラッグシステムのうち、CD::UPRTが、最も効果的であり、臨床試験において幹細胞と共に使用された。本研究では、CD::UPRT改変細胞が、MD-MBA-231、U251-MG、MKN45及びMKN1細胞株の増殖を、わずか10%程度の治療用AT-MSCにより効率良く阻害した。MDA-MB-231増殖が、1治療用MSC対10癌細胞の比で約90%だけ阻害されたことが注目に値する(
図5A)。類似の比率で、Kucerova等は、レトロウイルス形質導入により改変したAT-MSCを使用した場合に同じ細胞型のたった40%の増殖阻害を証明した(Kucerova等、J Gene Med、10、1071~1082頁、2008年)。しかしながら、別の研究は、ウイルス性形質導入したCDy::UPRT_MSCとの、1 MSC対4癌細胞の比でのMDA-MB-231の共培養において、細胞数の約60%の減少を報告した(Kucerova等、Stem Cell Research、8、247~258頁、2012年)。CD::UPRT_AT-MSCs/5FCの腫瘍内投与は、非ウイルス性方法で改変されたMSCが、かなり高度の抗癌効果を発揮できることを示した(
図32)。匹敵する研究デザインにおいて、Kwon等(Kwon等、Clinical and Experimental Otorhinolaryngology、6、176~183頁、2013年)及びNouri等(Nouri等、Journal of Controlled Release:Official Journal of the Controlled Release Society、200、179~187頁、2015年)は、それぞれ、1用量及び6用量のCD_MSC/5FC治療サイクルにより、退縮ではないが、腫瘍増殖の阻害を報告した。理論に拘束されることは望まないが、本明細書で開発された工程を使用した改変は、ペイロードの増大をもたらすことができ、癌細胞の更に有効な殺滅をもたらしたと考えられる。
【0378】
MSC仲介性CD/5FC治療は、5-FUの全身毒性を克服するための戦略として提案された(You等、Journal of Gastroenterology and Hepatology、24、1393~1400頁、2009年;Kwon等、Clinical and Experimental Otorhinolaryngology、6、176~183頁)。本明細書のin vivo試験を通じて、患者の体重の著しい変化又は別の直接的副作用は認められず(データは示さず)、別の研究で示されたとおりである(You等、Journal of Gastroenterology and Hepatology、24、1393~1400頁、2009年;Kwon等、Clinical and Experimental Otorhinolaryngology、6、176~183頁)。全身毒性の緩和ゆえ、抗癌活性を高めるためにCD-MSCの反復注射が可能であり得る。更に、治療用MSCがCDy::UPRT/5FCシステムに対して感受性であることが特筆に値し(
図2)、従って、治療用細胞の生存を限定し、「ヒットエンドラン」戦略の重要要件を満たし、細胞媒介物の痕跡を残さない(Mohr等、Cancer Letters、414、239~249頁、2018年)。
【0379】
投与経路及び腫瘍の部位に応じて、MSCが、残存腫瘍へと体内分布し、腫瘍の遠位病巣へと帰巣するには1~4日が適切であると考えられる(Aboody等、Sci Transl Med、5、184ra159、2013年)。進行胃腸癌に関する最近の臨床試験において、患者に、改変MSCによる3治療サイクルに続いて、48~72時間後にプロドラッグを投与した(von Elnem等、Int J cancer、2019年)。並行して、改変神経幹細胞の投与から4日後にプロドラッグ(5FC)を投与し、改変細胞は、5-FCの全7日間コース中ずっと機能性だった(Portnow、Clinical Cancer Research:An Official Journal of the Americal Association for Cancer Research、23、2951~2960頁、2017年)。従って、本明細書のCD::UPRTの長期発現を有する一過性にトランスフェクトされたAT-MSC(
図7を参照)は、治療計画の持続期間にわたり効果的であると考えられる。
【0380】
ポリプレックスへの長期曝露による毒性を低下させるために、低速スピン工程が使用された(Ho等、Nucleic Acids Research、45(e38)、2017年;Boussif等、Gene Ther、3、1074~1080頁、1996年)。本研究では、GDEPT用のセラノスティックAT-MSCを操作するための、カチオンポリマーを使用した高い効果及び高い細胞生存率を伴う、in vitroでの非ウイルス性工程を記載する。導入遺伝子の高い過剰発現にもかかわらず、改変細胞の表現型特性及び遊走能が天然MSCに匹敵することを示した。これらの細胞は、in vitroでの癌細胞の増殖の阻害において非常に効率が良かった。従って、AT-MSCを改変するための本工程は、幹細胞ベースの癌治療用に、ウイルス性形質導入に代わる効果的でより安全な代案を提供でき、広範囲の適用に向けて有用であり得る。
【0381】
間葉系幹細胞(MSC)は、遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法(GDEPT)用の期待できる媒介物として現れた。治療有効性は、例えば、サイトカイン及び/若しくは成長因子、非生物的条件、医薬品で前条件付けされた、並びに/又は遺伝子改変された、並びに/又はリプログラミングされた増強MSCを使用して改善され得る。MSCの腫瘍指向性特性は、この媒介物が、腫瘍及び転移性疾患に対する効果的な標的治療をもたらすことを示唆する。MSCの改変における重要工程は、高効率及び低細胞傷害性での遺伝子の送達である。従来のトランスフェクション法の低効率ゆえ、前臨床研究及び臨床研究においてMSCに形質導入するためにウイルス性方法が使用された。本明細書の結果は、融合性脂質及びヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤の存在下に経済的なポリエチレンイミンを使用した、ヒト脂肪組織由来MSC(AT-MSC)の効率良いトランスフェクション(>80%)を示す。特に、MSCの細胞表現型は、改変後に不変のままであった。融合導入遺伝子である酵母シトシンデアミナーゼ::ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(CDy::UPRT)で改変されたAT-MSCは、in vitroで神経膠腫細胞、乳癌細胞及び胃癌細胞に対して強力な細胞傷害性効果を示した。胃細胞株の排除の効率は、トランスフェクト7日後のAT-MSCを使用した場合でさえも効果的であり、治療用遺伝子の持続的な発現及び機能を示唆する。更に、単一用量の治療用MSCの直接注射により、s.c.腫瘍の著しい退縮が達成された。MSCベースのプロドラッグ療法用の効率良い改変工程が、ウイルスベクターの使用の代案として本明細書において提供される。
【0382】
本研究では、エンハンサーと併用してカチオンポリマーを使用する、AT-MSCを高効率で改変する工程が開発及び記載され、ウイルスを使用する必要も安定細胞株を確立する必要もなしにCDy::UPRT産生セラノスティックMSCを可能にする。更に、このMSC改変工程は、ドナーに依存せず、広範囲の適用において使用され得る。
【0383】
方法及び材料
細胞培養
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(AT-MSC、RoosterBio社)を、女性ドナー(LOT00088、年齢18~30歳)から単離した。AT-MSCを、hMSCハイパフォーマンス基本培地(Roosterbio社)中に維持した。乳癌細胞株MDA-MB-231(HTB-26、ATCC)及び原発ヒト皮膚線維芽細胞(ATCC、PCS-201-012)を、メーカ説明書に従って、培養して維持した。神経膠腫細胞株U-251MGは、Paula Lam(Duke NUS Medical School)が快く提供してくれた。U-251MG細胞株は、10%ウシ胎児血清(FBS、Biowest社)を補足したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)中で培養した。胃癌細胞株MKN1及びMKN28は、Yong Wei Peng博士(National University Cancer Institute、シンガポール)が快く提供してくれた。胃癌細胞株は、10%FBS補足RPMI(Roswell Park Memorial Institute medium、Thermo Scientific社)中で培養した。細胞を、加湿雰囲気及び5%CO2中、37℃に維持した。
【0384】
CD::UPRT含有cpgフリー発現プラスミドの構築
融合させたシトシンデアミナーゼとウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼを発現するプラスミドDNA(pDNA)(4265bp pSELECT-zeo-FcyFur(https://www.invivogen.com/pselect-zeo-fcyfur))をInvivoGen社から購入した。CD::UPRTのCpGフリー発現プラスミドの構築は、交差ラッピングインビトロアセンブリ(CLIVA)クローニング技術により行った[50]。簡単に言うと、pCpGfree-Luciaプラスミド(InvivoGen社)中のLuciaを、pSELECT-zeo-FcyFurをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)での鋳型とし使用して、CD::UPRTで置換した(https://www.invivogen.com/pcpgfree)。すべてのpDNAを、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)DH5αのGT115株(InvivoGen社)中で、指示どおり、抗生物質ゼオシンの選択下に増殖させた。プラスミドを、E.Z.N.A. endo-free plasmid maxiキットを用いて、メーカ説明書に従って精製した(Omega Bio-tek社)。
【0385】
トランスフェクション手順
一般的な遠心分離法:
興味の対象となる導入遺伝子を、継代数3~5でAT-MSCに導入する。各ウェル(6ウェルプレート型式)用に、LPEI(PEI MAX、Polyscience社)5mg/mLを、無血清DMEM中のpDNAに、pDNAのPEIMAXに対する異なる比で添加した。特定の実施形態では、選択したポリマーに応じて、N/P比が5~100の範囲であってもよい。混合物を、100μLの総容積で、室温で15分間インキュベートした。pDNA:LPEI比を、pDNA量(μg):LPEI 1mg/mLの容積(μl)に従って計算した。次いで、トランスフェクション混合物を調製するために、LPEI/pDNA複合体を、無血清DMEM培地に(1:20)添加した。培養培地を除去し、トランスフェクション混合物で置換した後に、5分間、200gで穏やかに遠心分離した。遠心分離後にトランスフェクション混合物を除去し、TrafEnを補足した又は補足しない完全培地で置換した。TrafEnは、DOPE/CHEMS(Polar Avanti Lipid社)とボリノスタット(SAHA、Bio Vision社)とからなる。その比は9:2であり、SAHAを1.25μMで使用する。解析前に細胞を24時間インキュベートした。
【0386】
前記のプロトコールは、概して、
図1~
図16、
図20及び
図23に示す実験に使用した方法の例示/代表であり、特定の実験に応じて変形及び改変が可能である。
【0387】
一般的な非遠心分離法:
細胞調製:細胞増殖- 培養培地を冷蔵庫から取り出し、室温で温めた。MSCバイアル(50万細胞/バイアル)を、液体窒素デュワーから取り出し、直ちに37℃の水浴中で激しい撹拌により解凍した。注釈:特定の実施形態では、MSCを、異なる起源/種/ドナーから得てもよい。安全キャビネットに移す前に、バイアルのウェルに70%アルコールを吹きかけた。細胞を、15mL遠心管に無菌的に移した。培養培地4mLをゆっくりと(滴下で)細胞に添加した。200×gの遠心分離を5分間行った。細胞ペレットを乱さずに、上清を慎重に除去した。細胞を、培養培地10mL中に再懸濁した。良く混合し、1×T75容器に細胞を播く。顕微鏡を使用して細胞増殖を観察し、収穫前に、培養の>80%コンフルエント状態の達成を確保した。2日後、細胞は使用可能であった。
【0388】
細胞調製:細胞増殖- 細胞を収穫するために、容器を安全キャビネット内に移し、廃培地を除去した。培地を除去し、1×PBS 3mlで1回すすいだ。洗浄液を吸引した。フラスコにアキュターゼ2mLを添加し、37℃で(3~5分間)インキュベートした。残存細胞をフラスコの表面から除去するために、優しく軽くたたいた。新鮮培養培地4mLを添加して、アキュターゼ活性をクエンチした。細胞懸濁液を、15mL遠心管に移した。200×gでの5分間の遠心分離を行った。上清を吸引し、細胞を新鮮培地10mLで再懸濁した。良く混合し、細胞計数のために、細胞0.1mLをマイクロ遠心チューブに移す。細胞数は、0.1~1×106細胞/mLの範囲にあること。細胞懸濁液は、継代培養、凍結、又はCD::UPRT発現MSCの生成用に使用してもよい。継代培養には、5000~7000細胞/cm2(細胞培養表面)を播く。適宜、新鮮培地を補充する。細胞は、6代まで継代培養してもよい。凍結保存には、細胞を200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引し、細胞をKBM Banker 2に100万細胞/mLで再懸濁する。各バイアルに懸濁細胞500μLを分取する。
【0389】
CD::UPRT発現MSCの生成:細胞播種- MSCの最適なコンフルエント状態は約60%である。トランスフェクションの24時間前に細胞を播いた。注釈:TrafEn(商標)試薬は、血清及び抗生物質の存在下に安定である。実験全体の間中、標準培養培地が使用可能である。1000万細胞を調製するために、トランスフェクションの24時間前に少なくとも2×T175に播くべき推奨細胞数:
【0390】
【0391】
*細胞数は、MSCの異なる増殖速度により異なり得る。
【0392】
CD::UPRT発現MSCの生成:DNAトランスフェクションプロトコール
試薬の調製:
融合性脂質、第1の薬剤:1×ワーキングストックとして供給。HDACi、第2の薬剤:HDACiをDMSO中に溶解する。一定分量に分取し希釈溶液を-20℃で保存する。
【0393】
工程1:複合体形成
DNA 9~50μgを、複合体形成用緩衝液1500μL中に希釈する。5秒ボルテックスして混合する。カチオンポリマーを希釈DNAに添加する。5秒ボルテックスして混合する。*ポリマー1.5~30μg対DNA 1μg。トランスフェクション混合物を室温で15分間インキュベートする。
【0394】
工程2:TrafEn混合物の調製
トランスフェクション混合物のインキュベーション中に第1の薬剤及び第2の薬剤0.2~1mgを混合する。ピペッティングにより直ちに混合する。ボルテックスはしない。室温で10~20分間インキュベートする。
【0395】
工程3:トランスフェクション
新鮮培養培地2500μLをトランスフェクション試薬/DNA混合物に添加する。トランスフェクション試薬/DNA混合物4200μLを培養容器に滴下する。トランスフェクション試薬/DNAを添加する前に細胞から増殖培地を除去しない。
【0396】
TrafEn混合物を培養容器に滴下して添加する。
【0397】
培養容器を前後左右に静かに揺り動かして混合する。
【0398】
培養容器をインキュベーターに戻す。
【0399】
トランスフェクションから24時間後に細胞を使用した。
【0400】
CD::UPRT発現MSCの生成:細胞収穫-
細胞を収穫するために、容器を安全キャビネット内に移し、廃培地を除去する。培地を除去し、1×PBS 10mLで1回すすぐ。洗浄液を吸引する。フラスコにアキュターゼ5mLを添加し、37℃で(3~5分間)インキュベートする。残存細胞をフラスコの表面から除去するために、優しく軽くたたく。新鮮培養培地10mLを添加して、アキュターゼ活性をクエンチする。細胞懸濁液を15mL遠心管に移す。良く混合し、細胞計数のために、細胞0.1mLをマイクロ遠心チューブに移す- 各フラスコの総細胞数は約500万であり得る。200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引し、細胞を1×PBS 10mLで再懸濁する。200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引し、細胞を1×PBS 10mLで再懸濁する。200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引する。細胞を、残余のPBSに再懸濁する。細胞は使用可能である。
【0401】
前記のプロトコールは、概して、
図17~
図19、
図21~
図22、
図24及び
図26~
図27に示す実験に使用した方法の例示/代表であり、特定の実験に応じて変形及び改変が可能である。識別された図に示す実験は、典型的には、約1.9~約75cm
2の培養容器中で行った。
【0402】
特定の実施形態では、例えば前記のような非遠心分離法が、ラージスケールMSC改変には適切であり得る。例えば、表面積約175cm2のラージスケール操作が、そのような非遠心分離法に従い得る。
【0403】
発現解析
フローサイトメトリー、ウエスタンブロット及び免疫細胞染色は、前記のように行った[49]。
【0404】
フローサイトメトリー:蛍光陽性細胞の百分率をAttune NxTフローサイトメータシステム(ThermoFisher Scientific社)により定量し、Invitrogen Attune NxTソフトウェア(ThermoFisher Scientific社)を使用して生データを解析した。
【0405】
イメージング:細胞画像は、DAPI(Ex357/Em447)、GFP(Ex470/Em510)蛍光を検査するための3つの蛍光キューブを搭載したEVOS FLセルイメージングシステム(ThermoFisher Scientific社)で撮影した。
【0406】
ウエスタンブロット:サンプルは、それぞれ、ヒツジ抗CDy(PA185365、ThermoFisher Scientific社)及びモノクローナル抗β-アクチン(A2228、Sigma-aldrich社)を用いて免疫ブロッティング法により解析した。
【0407】
免疫細胞染色:サンプルは、ヒツジ抗CDy及びAlexa Fluor 488ロバ抗ヒツジ蛍光二次抗体(A11015、ThermoFisher Scientific社)で標識した。画像獲得は、EVOS FLセルイメージングシステムを使用して行った。全画像は、同一の光学設定で撮影した。
【0408】
CDy::UPRT産生AT-MSCの特徴づけ及び分化能
CDy::UPRT産生AT-MSCの表現型を調べるために、CD73、CD90、CD105、CD14、CD20、CD34、CD45及びHLA-DR抗体からなるMSCフェノタイピングキット(Miltenyi Biotech社)を用いて、メーカ説明書に従って、細胞を標識した。その後、マーカーの発現をFACSで解析した。高品質のMSC集団は、>95%のCD90、CD105及びCD73陽性細胞からなる。CD14、CD20、CD34、CD45及びHLA-DRを発現する集団は、1%未満であり得る[51]。AT-MSCの多分化能は、骨形成系列及び脂肪生成系列への分化能により確認された[52、53]。AT-MSCの分化は、StemPro(商標)骨形成分化キット及びStemPro(商標)脂肪細胞分化キット(ThermoFisher Scientific社)により誘導した。非改変AT-MSCを対照として使用した。CDy::UPRT産生AT-MSCの表現型及び分化能は、非改変AT-MSCと著しく異なるべきではない。
【0409】
細胞生存率アッセイ
各処理ごとに、AT-MSC、MKN1、MKN45、MDA-MB-231(ウェル当たり10,000細胞)及びU-251MG(ウェル当たり4000細胞)の四つ組を96ウェルプレートにプレーティングした。24時間後、培養培地を、様々な濃度の5-フルオロシトシン(5-FC、InvivoGen社)又は5-フルオロウラシル(5FC、InvivoGen社)を含有する培地に代えた。1~5日後、プレートを、CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega社)の対象とした。比色リードアウトを、490nmで分光光度測定した。結果は、5-FC又は5-FUを含まない条件における細胞(100%に設定)に対する、細胞生存率の百分率として表した。
【0410】
In vitro薬剤感受性
各処理ごとに、AT-MSC、MKN1、MKN45、MDA-MB-231(ウェル当たり10,000細胞)及びU-251MG(ウェル当たり5000細胞)の四つ組を96ウェルプレートにプレーティングした。24時間後、培養培地を、様々な濃度の5-フルオロシトシン(5-FC、InvivoGen社)又は5-フルオロウラシル(5FC、InvivoGen社)を含有する培地に代えた。1~5日後、プレートを、CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega社)の対象とした。比色リードアウトを、490nmで分光光度測定した。結果は、5-FC又は5-FUを含まない条件における細胞(100%に設定)に対する、細胞生存率の百分率として表した。
【0411】
CDy::UPRT産生AT-MSCのin vitroでの抗癌効果
直接共培養:胃癌細胞株及び乳癌細胞株(5000細胞)並びにU-251MG(2000細胞)の四つ組を96ウェルプレートにプレーティングした。5時間後、非改変AT-MSC又はCDy::UPRT産生AT-MSCのいずれか一方の増加数を、1 AT-MSC対1、5、10、50及び100癌細胞の比で、癌細胞培養に添加した。1日後、培養培地を、5FC(0~150μg/mL)を含む又は含まない2%FBS補足DMEMで置換した。5日後、細胞生存率を、増殖アッセイ(市販アッセイ-https://www.promega.sg/products/cell-health-assays/cell-viability-and-cytotoxicity-assays/celltiter-96-non_radioactive-cell-proliferation-assay-_mtt_/?catNum=G4000)により測定した。5-FCを含まない条件を100%に設定した。
【0412】
間接共培養:MB-MDA-231細胞を、24ウェルプレート中にプレーティングした(ウェル当たり5×104細胞)。AT-MSC又はCDy::UPRT_AT-MSC(ウェル当たり5×104細胞)を、トランスウェル(Corning社、C05/3422)上にプレーティングした。培養から6時間後、治療用細胞を含むインサートを、MB-MDA-231細胞株を含むウェル内に、5FCと共に又は伴わずに移した。細胞傷害性効果は、インキュベーションから4日後の評価であった。トランスウェルを除去し、培養培地を、Hoechst 3222 1μg/mLを含有する1×PBSで置換した。染色された細胞を、Synergy H1マイクロプレートリーダーを使用して、それぞれ358nm及び461nmの励起波長及び発光波長で解析した。ゲイン設定80により、細胞培養の9領域でRFUを記録した。処理後の増殖阻害を、対照(トランスフェクトされていないAT-MSC細胞とMB-MDA-231細胞との共培養)に対して計算する。
【0413】
CDy::UPRT産生AT-MSCのin vivoでの抗癌効果
5~6週齢の雌性ヌードマウスをInVivos社から購入し、IACUC認可プロトコール(R18-1383)に従うin vivo試験に使用した。イソフルラン吸入によりマウスを麻酔し、DMEM(50%マトリゲル)100μl中に懸濁した5×106個のテモゾロミド耐性U-251MG細胞を、背側側面領域にs.c.注射した(マウス1匹当たり1腫瘍)。腫瘍の増殖を、デジタルノギスでチェックした。腫瘍が平均容積80~200mm3の寸法であったら、処理を開始した。全マウスを無作為に、各5匹のマウスを含有する3群に分配した。プロドラッグ対照群には、プロドラッグを毎日注射した。細胞対照群には、1×106個のMSCの腫瘍内注射に加えてプロドラッグを毎日注射した。処理群には、1×106個のCD::UPRT_AT-MSCの腫瘍内注射に加えてプロドラッグを毎日注射した。改変MSC又は非改変MSCは、0日目に腫瘍内投与した(単一用量)。1日後、マウスに、5FC 500mg/kgを4日続けてi.p.投与した。細胞注射前(0日目)並びにMSC投与後7日目、11日目及び15日目に腫瘍サイズ及び体重を測定した。
【0414】
細胞浸潤アッセイ
AT-MSCの腫瘍指向性は、BD Biocoat(商標)マトリゲル浸潤チャンバー(BD Biosciences社)を使用して測定した。癌細胞株又はHEK293T細胞を、24ウェルプレートの下のウェルにロードした。24時間後、無血清DMEM中の非改変AT-MSC及びCDy::UPRT産生AT-MSCを、浸潤チャンバー上に添加した。下のウェルを1×PBSで洗浄して、無血清DMEMを注ぎ、浸潤アッセイ用に組み立てた。24時間インキュベーション後、非浸潤細胞及びマトリゲルを、インサートの内側から除去した。浸潤細胞を、Hoechst 33342(ThermoFisher Scientific社)で染色し、イメージングシステムにより撮影した。3フレーム中の細胞の数を数えた。
【0415】
統計解析
スチューデントのt検定を使用した場合、独立両側検定を使用し、リードアウトにおける変化は正規分布に従うと仮定した。
【0416】
略語
MSC:間葉系幹細胞、PEI:ポリエチレンイミン、HDAC6i:ヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤、CD::UPRT:融合型酵母シトシンデアミナーゼ::ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ、CD:シトシンデアミナーゼ、GDEPT:遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法、UPRT:ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ、FUMP:5-フルオロウリジン一リン酸、5FC:5フルオロシトシン、5FU:5フルオロウラシル、DPD:ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ、OPRT:オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ、GFP:緑色蛍光タンパク質、AT-MSC:ヒト脂肪組織由来MSC、DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地、FBS:ウシ胎児血清、pDNA:プラスミドDNA、MOI:感染多重度、HSV-TK:単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ。
【0417】
(実施例2)
MSCの高効率トランスフェクションの拡張可能な方法
遠心分離を省略する方法は、拡張性を改善し得る。しかしながら、それは、インキュベーション時間の延長をもたらす可能性があり、カチオンポリマーが適切に選択されていない場合には難問であり得る。各MSCドナー/型用にプロトコールを最適化する工程開発が望ましい場合がある。本研究では、治療目的用の臨床に有用な改変MSCの生成を可能にする重要工程を同定した(
図17)。そのプロトコールの望ましい特徴の例をTable5(表6)に列挙する。
【0418】
【0419】
拡張性
MSCプロドラッグ遺伝子送達の臨床応用にとって重要な側面は、遺伝子送達法の産生拡張性である。遠心分離ベースのポリマートランスフェクションを高めるためのTrafEnに関する以前の報告は、限定的な拡張性を有した。本研究は、遠心分離の必要ない、任意の培養容器への直接的なポリプレックス及びTrafEnの添加を記載する。本開発による特別な相違は、ポリマー及びTrafEnへの曝露持続期間である。本研究では、ポリマー及びTrafEnの適切な調合が、遠心分離する必要なしに細胞とインキュベートされ得る。それは、産生を拡張する手段を提供し得る。なぜなら、大型コンテナを遠心分離する必要性が必然的でなく都合良くもないからである(
図24A~
図24B)。細胞培養の表面積に関係なくトランスフェクション効率が不変のままであったことが特筆に値し、TrafEnの上昇効果を前臨床・臨床スケールへと移す実現可能性を示唆する。
【0420】
この高度トランスフェクトされたMSCの産生を拡張するためには、カチオンポリマーとTrafEnとの適合性を成し遂げ、それが望ましい。例示的な工程開発では(
図17)、遠心分離の必要のない高トランスフェクション効率及び低細胞傷害性に関して、分子量(MW)が<4kDa~200kDaの範囲の様々な直鎖状(LPEI)及び分岐状(BPEI)を評価した。MSC型、ドナー及び培養条件に応じて、最も適切な組成物が選択可能であり、次いで、TrafEnを使用して増強させた(例えば
図20)。従って、重要工程は、TrafEnで増強可能なその適合性ポリマーの同定である。
【0421】
特定の実施形態では、ポリマー型、ポリマー構造(直鎖状、分岐状)、及び/又はポリマーサイズを、個々の細胞型に対して選択しても適合させてもよい。例として、
図20の結果は、
図20AのMSCは大きいポリマーを好み、
図20BのMSCは小さいポリマーを好むことを示唆する。特定の実施形態では、MSCがUC-MSCを含んでもよく、ポリマーが約50kDa超、約50kDa~約200kDaの間、又は約200kDa超のポリマーを含んでもよい。特定の実施形態では、MSCがBM-MSCを含んでもよく、ポリマーが約50kDa未満、約50kDa~約5kDaの間、又は約5kDa未満のポリマーを含んでもよい。特定の実施形態では、ポリマーがLPEIを含んでもよい。
【0422】
低毒性及び高効率
図26に関し、プロドラッグ療法におけるMSCの使用の成功には、処理中のMSCの機能性を確保するために細胞の健全性が望ましい。350ng未満のDNA量では、ヨウ化プロピジウム排除アッセイが示すように細胞生存率の著しい低下なしに、最大限のトランスフェクション効率(>90%)が達成された(
図26)。このデータは、MSC培養に著しい細胞傷害性を導入することなしに高効率にMSCを改変するワークフローの実施形態の堅牢性を示唆する。
【0423】
DNA最適化(
図17の1)
DNA量
多量のDNAは、細胞傷害性をもたらし得る。MSCトランスフェクションに使用したDNAの範囲は、1.9cm
2の表面積に対して100~500ngに及ぶと示される。
図18に示すように、DNA量の増大は、高い細胞傷害性ゆえ有益ではなかった。
【0424】
DNAベクター設計
適切なDNAベクター設計の使用は、導入遺伝子の発現を延長し得る。安定細胞株の生成の目的は、多数のトランスフェクトされた細胞の獲得である。抗生物質選択は、非常に多大な労力を要し(2~3週間)、潜在的に、MSC品質を妥協させ[17]、細胞老化を引き起こし得て[17]、腫瘍指向性を低下させ得て[18]、並びにウイルス誘導性MSC形質転換に関する安全面の懸念を起こし得る[19]。抗生物質選択を使用しないと、従来の手法では、低いトランスフェクション効率が、臨床応用には十分でない可能性がある。
【0425】
本明細書中で開発され記載される工程を使用した効果的な高トランスフェクションを考慮すると、安定細胞株の生成は必要ない可能性がある。CpGフリーベクターにサブクローンした治療用遺伝子によると、7日の期間にわたるCDy::UPRTの高発現が、癌細胞の排除において、トランスフェクションから1日後の発現と比較的に有効であった(
図7)。遠心分離を含まないトランスフェクションプロトコールを使用して、長期発現が認められた(
図19)。CDy::UPRTの発現は、経時的に著しく低下し、改変MSCの抗癌効果の低下をもたらした(
図16)。
【0426】
プラスミド構築物からの1つ又は複数のCpGアイランドの除去に加えて、本方法は、技術分野で公知の別のプラスミド、例えば、参照により本明細書にその全体が組み込まれているJackson DA等、Designing Nonviral Vectors for Efficient Gene Transfer and Long-Term Gene Expression、Molecular Therapy、14:613~26頁中に列挙されるベクターの使用と適合性であった。適切なベクターは、長期発現をもたらすことが示されたようなベクター、例えば、足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、エピソームベクター、及びEBNA-1含有ベクターを含み得る。
【0427】
ポリマー最適化(
図17の2)
本発明の実施形態では、適切なポリマーが、遠心分離する必要なしに細胞とインキュベートされ得る。それは、産生を拡張する手段を提供し得る。なぜなら、大型コンテナを遠心分離する必要性が必然的でなく都合良くもないからである。細胞及びトランスフェクション混合物の曝露及びインキュベーション時間の20分超の延長は、細胞傷害性を導入し得る。特定のポリマーは、特定の条件下に細胞傷害性を示し得る。例えば、Ho等、Enhanced transfection of a macromolecular lignin-based DNA complex with low cellular toxicity、Biosci. Rep.(2018)38:1~9頁は、リグニン-PGEA-PEGMAによる毒性に直面した。
【0428】
より高い品質及びより高いトランスフェクション効率を確保するためには、細胞型との適合性ポリマーの選択が望ましい場合がある。分子量(MW)が2kDa~200kDaの範囲の様々な直鎖状(LPEI)及び分岐状(BPEI)を、遠心分離の必要ない高トランスフェクション効率及び低細胞傷害性に関して評価した。MSC型、ドナー及び培養条件に応じて、最も適切な組成物を選択し、次いで、TrafEnを使用して増強させた。例えば、
図19は、<200kDa及び<5kDaのLPEIが、それぞれ、臍帯MSC(UC-MSC)及びBM-MSCと適合性であったことを示す。
【0429】
ポリマーの適合性に加えて、ポリマーの量の最適化が細胞生存率を高め得る。細胞傷害性はポリマー及びDNAの量と非常に関連し、量の増大は、毒性の上昇をもたらし、ヨウ化プロピジウム(PI)陰性細胞のより低い%によって示される。市販ポリマーの含有量及び濃度が不明の場合(例えば、Turbofect、Polyfect及びTransficientのような試薬)、ポリマー量の増大と共に細胞生存率の低下が認められた。PEIベースのポリマーに関して、DNA 1μgに対する1μg~30μgの範囲の量のポリマーを試験した(
図20、
図21)。
【0430】
この試験は、以下の工程を含み得る、MSCの高効率トランスフェクションの例示的方法をもたらした。
【0431】
細胞調製
細胞増殖:培養培地を冷蔵庫から取り出し、室温で温める。MSCバイアル(50万細胞/バイアル)を、液体窒素デュワーから取り出し、直ちに37℃の水浴中で激しい撹拌により解凍する。MSCは、異なる起源/種/ドナーから得られ得る。安全キャビネットに移す前に、バイアルのウェルに70%アルコールを吹きかける。無菌的に細胞を15mL遠心管に移す。培養培地4mLをゆっくりと(滴下で)細胞に添加する。200×gで5分間、遠心分離する。細胞ペレットを乱さずに、上清を慎重に除去する。細胞を、培養培地10mL中に再懸濁する。良く混合し、1×T75容器に細胞を播く。顕微鏡を使用して細胞増殖を観察し、収穫前に、培養の>80%コンフルエント状態の達成を確保する。2日後、細胞は使用可能である。
【0432】
細胞増殖:細胞を収穫するために、容器を安全キャビネット内に移し、廃培地を除去する。培地を除去し、1×PBS 3mLで1回すすぐ。洗浄液を吸引する。フラスコにアキュターゼ2mLを添加し、37℃で(3~5分間)インキュベートする。残存細胞をフラスコの表面から除去するために、優しく軽くたたく。新鮮培養培地4mLを添加して、アキュターゼ活性をクエンチする。細胞懸濁液を15mL遠心管に移す。200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引し、細胞を新鮮培地10mLで再懸濁する。良く混合し、細胞計数のために、細胞0.1mLをマイクロ遠心チューブに移す。細胞数は、0.1~1×106細胞/mLの範囲にあること。細胞懸濁液は、継代培養、凍結、又はCD::UPRT発現MSCの生成用に使用できる。継代培養には、5000~7000細胞/cm2(細胞培養表面)を播く。適宜、新鮮培地を補充する。細胞は、6代まで継代培養できる。凍結保存には、細胞を200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引し、細胞をKBM Banker 2に100万細胞/mLで再懸濁する。各バイアルに懸濁細胞500μLを分取する。
【0433】
CD::UPRT発現MSCの生成
細胞播種:MSCの最適なコンフルエント状態は約60%である。トランスフェクションの24時間前に細胞を播く。注釈:TrafEn(商標)試薬は、血清及び抗生物質の存在下に安定である。実験全体の間中、標準培養培地が使用可能である。
【0434】
DNAトランスフェクションプロトコール
試薬の調製:融合性脂質、第1の薬剤:1×ワーキングストックとして供給。HDACi、第2の薬剤:HDACiをDMSO中に溶解する。一定分量に分取し希釈溶液を-20℃で保存する。
【0435】
工程1:複合体形成
DNA 9~50μgを、複合体形成用緩衝液1500μL中に希釈する。5秒ボルテックスして混合する。カチオンポリマーを希釈DNAに添加する。5秒ボルテックスして混合する。*ポリマー1.5~30μg対DNA 1μg。トランスフェクション混合物を室温で15分間インキュベートする。
【0436】
工程2:TrafEn混合物の調製
トランスフェクション混合物のインキュベーション中に第1の薬剤及び第2の薬剤0.2~1mgを混合する。ピペッティングにより直ちに混合する。ボルテックスはしない!室温で10~20分間インキュベートする。
【0437】
工程3:トランスフェクション
新鮮培養培地2500μLをトランスフェクション試薬/DNA混合物に添加する。トランスフェクション試薬/DNA混合物4200μLを培養容器に滴下して添加する。トランスフェクション試薬/DNAを添加する前に細胞から増殖培地を除去しない。TrafEn混合物を培養容器に滴下して添加する。培養容器を前後左右に静かに揺り動かして混合する。培養容器をインキュベーターに戻す。トランスフェクションから24時間後、細胞は使用可能である。
【0438】
細胞収穫:細胞を収穫するために、容器を安全キャビネット内に移し、廃培地を除去する。培地を除去し、1×PBS 10mLで1回すすぐ。洗浄液を吸引する。フラスコにアキュターゼ5mLを添加し、37℃で(3~5分間)インキュベートする。残存細胞をフラスコの表面から除去するために、優しく軽くたたく。新鮮培養培地10mLを添加して、アキュターゼ活性をクエンチする。細胞懸濁液を15mL遠心管に移す。良く混合し、細胞計数のために、細胞0.1mLをマイクロ遠心チューブに移す- 各フラスコの総細胞数は約500万であること。200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引し、細胞を1×PBS 10mLで再懸濁する。200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引し、細胞を1×PBS 10mLで再懸濁する。200×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引する。細胞を、残余のPBSに再懸濁する。細胞は使用可能である。
【0439】
(実施例3)
様々なMSC細胞型のいずれか用のトランスフェクション法及び工程の開発
図17に示すように、MSCトランスフェクションを高めるためのTrafEn用の条件を経験的に同定するためには、1つ又は複数の工程の工程最適化が望ましいものとなり得る。我々は、方法が、>70%の効率で改変されたMSCの発現期間、拡張性、及び改変後のMSCの品質の上昇を提供することを見出した。
【0440】
異なるMSC型は、効率良くトランスフェクトされ得る。様々な型のMSCが、癌治療用に使用された(Table2(表2))。本方法を、プロドラッグ遺伝子療法用の様々なMSC型(骨髄、脂肪由来、臍帯)において検証した(
図14B)。本明細書に記載される方法の実施形態は、MSC型のいずれか、例えば、脂肪MSC、BM MSC(例えばRoosterbio社)、UC MSC(例えば、ATCC、cell applications社)、臍帯内膜MSC(例えばcell research corporation社)に対して使用され得る。
【0441】
様々なMSCのいずれか用の工程開発(
図25)
細胞多様性
図14Bに関し、異なる起源に由来する幹細胞における匹敵するトランスフェクション効率及び抗癌効率を示す。脂肪組織由来MSC(AT、Roosterbio社)、骨髄由来MSC(BM、Roosterbio社)、及びUC由来MSC(臍帯、ATCC)を、遠心分離プロトコールにより、TrafEnの存在下にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、ウエスタンブロット解析用に、細胞をトリプシン処理して収集した(
図14A)。CDy及びアクチンを標的とする抗体を用いた免疫ブロッティング解析用に細胞を溶解した。同じ実験において、様々な癌細胞株との、1 MSC対50癌細胞の比での共培養試験用に細胞を収穫した(
図14B)。細胞を、5FC 100μg/mLを含有する培地中で5日間共培養した。インキュベーション終了時に、残存細胞数を、Hoechst 33342で染色した細胞のRFUの波長Ex340/Em488での測定により分光光度的に評価した。非改変MSCを用いた条件を対照として利用した。増殖阻害の百分率を、適宜、計算した。グラフは、四つ組から収集したデータ、平均値+SEMを表す。
【0442】
TrafEnの選択
特定の実施形態では、TrafEnの選択が、[1]トランスフェクション効率、[2]細胞生存率、又は両方ともに基づき得る。
【0443】
特定の実施形態では、市販入手可能なポリマー、例えば、Turbofect(ThermoScientific社)、Jetprime(Poplyplus transfection社)を含み得る、ポリマーのライブラリーのスクリーニングによって、TrafEn適合性トランスフェクション試薬を選択/最適化してもよい。PEIは、本明細書中で同定されたポリマーの一例である。
【0444】
核酸構築物の選択
DNAの設計及び量は、特定用途に基づいて選択及び最適化してもよい。特定の実施形態では、DNA設計が、[1]発現の持続期間、[2]トランスフェクション効率、又は両方ともに基づき得る。DNA量は、[1]トランスフェクション効率、細胞生存率、又は両方ともに基づいて最適化してもよい。
【0445】
カチオンポリマーの選択
カチオンポリマーは、特定用途に基づいて選択及び最適化してもよい。特定の実施形態では、約4kDa~約200kDaの範囲のサイズの入手可能なポリマーのライブラリーのスクリーニングによって、カチオンポリマーを選択及び最適化してもよい。
【0446】
ポリマー比は、特定用途に基づいて選択及び最適化してもよい。特定の実施形態では、ポリマー比を、N/Pの約5~100の範囲内で試験して選択及び最適化してもよい。
【0447】
特定の実施形態では、ポリマーの型及び比を、トランスフェクション効率及び細胞生存率の均衡に基づいて選択してもよい。
【0448】
特定の実施形態では、特定の遺伝子ベース用途のために、選択及び/又は最適化が行われてもよく、ポリマースクリーニング、DNA量のスクリーニング、及びポリマー/DNA比のスクリーニングを含んでもよい。スクリーニングの結果は、[1]トランスフェクション効率>70%、[2]細胞生存率>70%の結果に基づいてプロトコール/ワークフローを決定してもよい。
【0449】
最適化
培養条件
細胞増殖(播種):MSCの最適なコンフルエント状態は約60%であり得る。トランスフェクションの24時間前にMSCを播き得る。注釈:TrafEn(商標)試薬は、血清及び抗生物質の存在下に安定である。実験全体の間中、標準培養培地が使用可能である。
【0450】
細胞健全性:トランスフェクション後、細胞生存率は、ヨウ化プロピジウムアッセイにより定義して、好ましくは>70%である。細胞の量は、分化能及び表現型マーカーの点で、著しくは犠牲にならないことが好ましい。
【0451】
細胞密度:細胞密度は、特定の実施形態では、典型的には約60~90%の範囲にわたり得る。例えば、約60%、約70%、約80%、又は約90%の密度でトランスフェクションを調べて最適化してもよい。
【0452】
継代数:特定の実施形態では、MSCが老化していない限り、効率が、1~25代目のMSCに関して一貫し得る。
【0453】
DNAトランスフェクションの最適化:
複合体形成:例として、DNA 9~50μgを、複合体形成用緩衝液1500μL中に希釈する。5秒ボルテックスして混合する。カチオンポリマーを希釈DNAに添加する。5秒ボルテックスして混合する。*ポリマー1.5~30μg対DNA 1μg。トランスフェクション混合物を室温で15分間インキュベートする。最適化は、DNA量に基づき得る。約1.9cm2の表面積の場合、DNA量は、約100~約500ngを変動し得る。約500ng超のDNA量は、特定の実施形態では、特定の実施例の幹細胞に対して毒性であり得る。
【0454】
TrafEn混合物の調製:トランスフェクション混合物のインキュベーション中に、例えば、第1の薬剤及び第2の薬剤0.2~1mgを混合する。当然のことながら、特定の実施形態では、第1の薬剤及び第2の薬剤の量及び/又は比を、使用する細胞型に基づいて変化させてもよい。例えば、特定の実施形態では、融合性脂質とヘルパー脂質との比を変化させてもよい。第2の薬剤は、例えば、HDAC6を標的とするHDACiを含んでもよい。第1の薬剤及び第2の薬剤は、参照により本明細書にその全体が組み込まれている国際公開第2014/070111号に記載されるようなものを含んでもよい。
【0455】
トランスフェクション培地:例として、新鮮培養培地2500μLをトランスフェクション試薬/DNA混合物に添加する。トランスフェクション培地は、DNA-ポリマー複合体の調製に使用してもよい。例えば、DNAとポリマーとをトランスフェクション培地に添加して、約10~約45分間インキュベートしてもよい。インキュベーション後、トランスフェクション混合物を、細胞培養に直接添加してもよい。
【0456】
導入遺伝子ベクター設計:導入遺伝子ベクターは異なり得る。概して、導入遺伝子ベクターは、プロモーター及び導入遺伝子を含み得る。長期発現には、CpGアイランドを除去するコドン最適化、S/MARのようなモジュールの添加、及び/又はプロモーター最適化を使用してもよい。
【0457】
インキュベーション期間:特定の実施形態では、摂氏約37度において、例えば、約2~約48時間、又は約2~約24時間インキュベートしてもよい。
【0458】
DNA量、ポリマー、細胞密度及びTrafEn調合を含む様々な条件の範囲は、適宜決定してよく、MSC源に適合させてもよい。工程の最適化後、製品は、具体的なワークフロー/プロトコール、及び特定の実施形態ではキット形態に調合可能な最適化された試薬(プラスミドDNA、ポリマー、TrafEn)を含み得る。このような手法は、工程の堅牢性を提供し、及び/又は別の実験室及び設定でのトランスフェクション結果の優れた再現性を容易にする。
【0459】
(実施例4)
非スピンプロトコールの追加結果
テモゾロミド耐性膠芽腫モデルを用いたCD::UPRT_MSCの抗癌効率に関する試験(in vitro及びin vivoのデータ)を行った。MSC源は、Roosterbio社の脂肪組織由来MSC(AT-MSC)であった。
【0460】
癌治療用のウイルス性改変MSCの使用に関するリリース基準(EU臨床試験登録番号:2012-003741-15)と一致して、任意の非ウイルス性遺伝子送達戦略による、匹敵するレベルの細胞改変(>75%)及び細胞生存率(>80%)が非常に望ましい。TrafEn仲介性トランスフェクションを使用して、プロトコールは、80%超の細胞生存率を有する、90%超のトランスフェクション効率を示した(
図33A及び
図33B、改変MSCは、前記の非遠心分離プロトコールに従って調製したことに留意。但し、遠心分離プロトコール及び非遠心分離プロトコールの両方とも使用可能)。これは、臨床試験で最近使用されたTREATME-1プロトコールに基づく細胞生存率80%の指定閾値を上回った(Niess、2015年;von Elnem、2019年)。それは、抗生物質選択の必要なしに、トランスフェクションから2日後に達成された。更に、結果は、トランスフェクション効率の、改変MSCの癌細胞殺滅能との相関性を示した(
図33C及び
図33D)。TrafEnを、経済的な、オフザシェルフスタイルの同種異系MSC-GDEPTを生成するために使用できることが確証された。
【0461】
多数のCD:UPRT:GFP_MSCを獲得した後、幹細胞の改変後の特性を評価した。ISCTによって定義された特性に従うと(Dominici、Cytotherapy 8、315~317頁、2006年)、改変MSCは、CDマーカー発現及び分化能を維持するべきである。CDマーカーの特徴づけに関して、天然MSCと同様に、CD:UPRT:GFP_MSCの95%超がCD73、CD90及びCD105を発現し、細胞の2%未満がCD14、CD20、CD34及びCD45を発現した(
図34A)。CD:UPRT:GFP発現細胞は、誘発後、骨形成系列及び脂肪生成系列の両方に分化可能であり(
図34B)、天然MSCと類似の特性であった。AT-MSCの改変後、天然AT-MSCとトランスフェクトAT-MSCとの間で、腫瘍指向性の著しい相違は認められなかった(
図34C)。AT-MSCは、非癌細胞、即ち線維芽細胞に優先して癌細胞株に対して特異的に遊走することが見出された。このデータは、TrafEn仲介性トランスフェクションが、腫瘍ターゲティング用の細胞媒介物としてのMSC表現型に影響を及ぼさないことを示唆する。
【0462】
多型膠芽腫(GBM)の治療は、大きな難題であり、テモゾロミド(TMZ)耐性を伴う再発GBMの高い確率ゆえ、満たされていない需要である。GDEPTは、潜在的に、TMZ非応答者に対する第2選択療法として提供され得る。本明細書では、非ウイルス性CD:UPRT:GFP_MSC/5-FCシステムが、テモゾロミド(TMZ)耐性神経膠腫細胞株に対して効果的であるかを確かめた。親細胞株もTMZ耐性U251-MG細胞株も、5-FCを加えたその改変MSCに対して感受性であった(
図35A)。共培養の細胞生存率は、MSC用量依存性に上昇した。MSC対癌比を低下させると、殺滅の低下を示唆するより高い細胞生存率が認められた。U87-MG及びU87-MGTMZR40において、類似の観察が認められた(
図35B)。次に、それが、TMZ耐性であると以前に報告された、HGCC患者由来の神経膠腫細胞株に対して当てはまるかを確かめる。同様に、HGCC神経膠腫細胞株の効率良い殺滅が認められる(
図35C)。このシステムの非癌細胞に対する毒性を確かめるために、線維芽細胞培養におけるCD:UPRT:GFP_MSC/5-FCの細胞傷害性を調べる。興味深いことに、線維芽細胞は、MSCの線維芽細胞に対する1:1の比でさえも47.78±2.93%とあまり感受性でなかった(
図35D)。
【0463】
次に、TMZ耐性細胞であるU251-MG
TMZR40を使用した皮下マウスモデルにおいてプロドラッグ療法のin vivoでの細胞傷害性効果を調べた。マウスのCD:UPRT:GFP/MSC群は、細胞の単回腫瘍内投与により、腫瘍容積の著しい低下を示した。改変細胞処理群と天然細胞対照群との間の差異は、早くも処理後7日から著しく、15日の期間にわたり維持された(
図36A)。処理後15日目に腫瘍を収穫し、天然MSCと改変MSCとの間では腫瘍量の著しい差異が認められた(
図36B)。興味深いことに、改変細胞を使用した場合の用量の増大(0.5×10
6対1×10
6)は、腫瘍容積の点で類似の変化を示した(
図36A、灰色丸及び水色丸、並びに
図36B)。この試験の重要な発見は、マウスの体重の変化によって測定されたように、著しい全身毒性がないように見えたことである(
図36C)。3サイクルの処理の完了後、長期の腫瘍抑制が認められた(
図37)。
【0464】
(実施例5)
大型動物試験- 複数場所臨床試験(Multi-Site Investigational Study)
大型動物試験を行った。本試験の達成された主要目標は、次のとおりである:
1)著しい副作用なし
2)腫瘍サイズの縮小
3)生活の質の改善
4)延命。
【0465】
前記の非遠心分離プロトコールに従って、500cm2培養容器中での2000~3000万細胞へと拡張して改変MSCを調製した。
【0466】
動物の参加は、腫瘍型又はイヌの年齢には関係なかった。算入基準は、生検データのある動物を含んだ。除外基準は、サンプリングできない腫瘍、又は全身疾患(例えば、著しい熱、免疫抑制、臓器不全)を有する患者を含んだ。GDEPTの抗癌効果を、リンパ腫(リンパ節腫脹)、甲状腺癌、黒色腫、肛門周囲癌、軟部組織癌、鼻の癌、胃腸癌、リンパ腫(血液由来)を含む様々な癌を呈示するイヌ及びネコにおいて示した。すべての場合、各サイクル前及び各サイクル終了後に血液検査を行い、BUN及びALKPの値に著しい変化はなかった。概して、臨床像は、本明細書に記載されるCD::UPRT_MSC/5FCの臨床的有用性及び優れた安全プロファイルを示唆する。
【0467】
本明細書において提供されるデータは、各癌型の代表症例である。
図38は肛門周囲癌データを示し、
図39は口腔黒色腫データを示し、
図40は甲状腺癌データを示し、
図41は軟部組織肉腫(癌潰瘍形成)データを示し、
図42は鼻腫瘍データを示し、
図43は胃腸癌データを示す。
【0468】
図38は、肛門周囲癌の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2020年1月):生存、再発の報告なし。
図39は、口腔黒色腫の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2020年1月):生存。
図40は、甲状腺癌の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2019年6月):生存。
図41は、軟部組織肉腫(癌潰瘍形成)の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2018年11月):生存、再発の報告なし。2018年11月14日の超音波報告は、左側肛門領域に4×3×2cmの寸法の輪郭の明らかな低エコー性円形腫瘤の存在を示した。周辺又は深部の器官との接着なし。特に腰下リンパ節への転移は見当たらなかった。ほんの少数の1.5mmのごく小さい尿路結石が膀胱内に、ほんの少数が尿道前立腺部内に存在。その他の器官は正常。現在まで完全寛解。
図42は、鼻腫瘍の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの腫瘍内注射であった。最新の更新(2020年1月):生存。
図43は、胃腸癌の治療データを示す。投与経路は、イヌCD::UPRT::GFP_MSCの静脈内注入であった。最新の更新(2019年7月):生存。超音波報告からは、第2の増殖があるという事実にもかかわらず、最初の増殖は顕著に低下した。この試験の詳細は、以下に提示される次の治療計画にあり、ネコ患者には改変ヒトMSCを使用したことが異なる。すべてのイヌ患者は、イヌドナーから抽出した臍帯内膜MSC又は脂肪組織由来MSCで治療した。
【0469】
1.1 CD::UPRT::GFP_MSCの投与の用量、計画及び経路の根拠
動物試験で検査した用量は、10×106~40×106個の間の改変MSCの範囲であり、すべての用量で良好に忍容された。体表腫瘍には、5~20×106個の用量の治療用細胞を、直接腫瘍内注射により安全に投与した。内部腫瘤には、30x106個の用量を、直接静脈内注射により安全に投与した。体表腫瘍及び内部腫瘤の両方が見つかった患者は、最大限10×106個(腫瘍内投与)及び20x106個の治療用MSC(静脈内投与)を組み合わせて治療した。最大耐量は、現在までの調査研究では同定されていなかった。
【0470】
本試験は、腫瘍内投与及び静脈内投与に際して、それぞれ最高で1mL及び10mLの容積を使用する。
【0471】
1.2 5FCの投与の用量、計画及び経路の根拠
検査した5FC用量は、20mg/kg/日~50mg/kg/日の範囲であり、すべての用量で良好に忍容された。本試験は、経口5FCの4日間コースにわたり、35~50mg/kg/日の用量を使用する。治療の各サイクルごとにそれを繰り返した。経口5FCの調合に関する情報は、患者の飼い主向けに記載した。
【0472】
1.3 試験期間及びフォローアップ
治療を受けた患者を随行する試みがなされた。試験に登録された全患者は、生存について追跡された。
【0473】
1.4 試験終了の基準
臨床試験依頼者及び患者の飼い主が、いつでも試験を終える権利を保持する。
【0474】
1.5 治療スケジュール及びフォローアップ計画
各治療の3サイクルの持続期間は21日である。
【0475】
1.6 治療ガイド
患者は様々な部位(内部又は表面)に様々なサイズの固形腫瘍を有し得るため、調査者は、Table1(表7)中にある改変MSCの用量のいずれかを選択してよい。治療を選択する際、調査者は、腫瘍のサイズ及び部位に関する患者のカルテを考慮するべきである。
【0476】
【0477】
1.7 手順:腫瘍内注射
1. 体表を消毒剤で10秒間慎重にふき、空気乾燥する。
【0478】
2. 医師により治療用細胞約0.5mLをシリンジで引き出す。Ultra-fine II ショートニードル(30Gインスリン注射器)を使用する。注釈:多量の膿を含有する腫瘍塊の場合、治療用細胞の注射を開始する前に膿をできるだけ除去する。
【0479】
3. エッペンドルフチューブから内容物を完全にシリンジ内に吸引する。
【0480】
4. 体表腫瘍には、頻回注射を行って腫瘍内に治療用細胞を投与する。できる限り、腫瘍塊に対して直角に0.8cmの深さで注射する。チューブの全内容物を次のように注射する:約100μLを最高で5回注射する(合計0.5mL)。ベクターの適切な容積を約10秒間にわたりゆっくりと注射し、針を抜く前に20~25秒間そのままにする。針をゆっくりと抜き、注射を腫瘍塊全体に分配するように注意しながら注射を繰り返す。
【0481】
1.8 手順:静脈内投与
静脈内投与は、30分に10mLの流速で行う。治療用細胞は、5~10mLの総容積で調製する。
【0482】
1.9 5FCの経口投与
5FCを、カプセルの形態で、毎日2回経口投与する。
【0483】
試験中の手順及び評価
2.2. 身体検査
身体検査は、心臓及び肺の聴診、腹部の検査、並びにリンパ節の触診を含む。別の系の検査は、臨床的に必要であれば行う。
【0484】
2.3. バイタルサイン
体温及び体重を訪問のたびに記録する。
【0485】
2.4 日常的な実験室評価
分画及び血小板数を含むCBC(全血算)並びに化学パネル(chemistry panel)(電解質、BUN、クレアチニン、推算糸球体濾過量[スクリーニング時]、総ビリルビン量、アルカリホスファターゼ、ALT及びAST、LDH、及び尿酸)を行う。
【0486】
2.5. 潜在的な有害作用のモニタリング
各検査の間中、有害作用のサインに関する質問票を、飼い主に送るべきである。例えば、患者を、脱毛、発疹、吐き気、嘔吐、下痢、及び食欲不振に関して監視する。
【0487】
(実施例6)
TrafEnトランスフェクション法はMSC源に依存しない
この実施例では、TrafEnがトランスフェクションの上昇に及ぼす効果を、次のMSC源:ヒト:臍帯由来、臍帯内膜由来、脂肪組織由来及び骨髄由来のMSCにおいて示す。結果を
図44に示す。異なる市販のMSC型を、GFP導入遺伝子を含有するベクターで改変した。グラフの棒は、フローサイトメトリーにより測定したGFP+集団の%を示す。
図45には、イヌ臍帯内膜由来MSC及び脂肪組織由来MSCの結果を示す。CD::UPRT::GFPを発現するために、異なる起源のMSCが効果的に改変された。
【0488】
本研究は、前記の非遠心分離プロトコールを使用して行った。
【0489】
図44に示すように、TrafEnの効果を様々なMSC型において測定した。(A)UC-MSC(Cell Applications社)、AD-MSC及びBM-MSC(Roosterbio社)を、非遠心分離プロトコールを使用して、TrafEnの存在下又は不在下にpMAXGFPでトランスフェクトした。トランスフェクションから1日後、蛍光画像を獲得した。代表的な画像を示す。(B)臍帯内膜(Cell Research Corp社)、胎児組織(BTI collaborator社)、臍帯(Cell Applications社)、イヌ脂肪(iVET Animal Hospital社)、ヒトの脂肪及び骨髄(Roosterbio社)を、非遠心分離プロトコールを使用して、TrafEnの存在下にpMAXGFPでトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、FACS解析用に細胞を収穫した。グラフは、GFPを発現した細胞の百分率を示す。
【0490】
図45は、ヒト臍帯内膜(Cell Research Corp社)及びヒト脂肪組織由来(Hayandra)による結果を示す。MSCを、非遠心分離プロトコールを使用して、TrafEnの存在下にCD::UPRT::GFP発現ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後、明視野画像及び蛍光画像を獲得した。その後、FACS解析用に細胞を収穫した。FACSプロファイルは、この2つの型において異なる発現レベルを示す。
【0491】
(実施例7)
改変MSC細胞のスケールアップした生成- 平底システム及びマイクロビーズ培養システム
本実施例では、改変MSC細胞を生成するためのスケールアップオプションを試験した。2つの手法を開発し、第1の手法は平底システムであり、第2の手法はマイクロビーズ培養システムであった。
【0492】
平底トランスフェクションシステムでは、MSCを効率良くトランスフェクトするために、適合性カチオンポリマー及びエンハンサー(例えば、TrafEn)を使用するトランスフェクション用の方法を開発した。改変細胞の産生における本方法の拡張性を、フラスコの表面積の増大により検討した。T175フラスコ(面積175cm
2)までのスケールアップの直線性が、1に近い決定係数R2により、AD-MSC及びUC-MSCの数に対して高度に相関すると見出された(
図46A)。得られた結果によると、T175フラスコを用いて300万に近いGFP+細胞が得られる。更に、トランスフェクション効率は、培養容器のサイズが大きくなると、90%超で不変のままであった(
図46B)。直線性が確立され、Corning(登録商標)CellSTACK(登録商標)10スタックチャンバー(6,360cm
2)のサイズは、一人のヒト患者の治療に十分である約1.1×10
8細胞を産生することになる。これらの発見を検証するために、Corning(登録商標)CellSTACK(登録商標)1チャンバー中でトランスフェクションを行った(
図46C)。明らかに、例えば、前臨床研究又は臨床研究用に十分な改変細胞を生成するためにトランスフェクションのアップスケールが実現可能である。
【0493】
本研究は、前記の非遠心分離プロトコールを使用して行った。
【0494】
図46は、平底表面上でのAD-MSC及びUC-MSCのスケールアップの直線性を示す。AD-MSC及びUC-MSCを、非遠心分離法を使用して、TrafEnの存在下にCD::UPRT::GFP発現ベクターでトランスフェクトした。培地交換なしに、トランスフェクションから2日後に細胞を収穫した。(A)トランスフェクトされた生細胞の数を、容器表面積に対してプロットした。(B)AD-MSC及びUC-MSCの両方に関するFACS解析からのGFP+(%)の代表的画像。(C)イヌ臍帯内膜MSC(Cell Research Corp社)を、異なる容器中、15000~20000細胞/cm2でプレーティングした。1日後、細胞を、TrafEnの存在下にCD:UPRT::GFPポリプレックスでトランスフェクトした。24時間のインキュベーション後、細胞を収穫した。収集した総細胞数を、NC-3000自動細胞カウンタで測定した。GFP発現をフローサイトメトリーで解析した。グラフは、培養容器から収集した異なる細胞数におけるGFP陽性細胞の%を示す。
【0495】
MSCは表面に対して接着性であるため、バイオリアクター/シェーカーフラスコ中での増殖は、付着にマイクロキャリアを利用し得る。本実施例に記載されるマイクロキャリアベース(例えばマイクロビーズベース)トランスフェクションシステムでは、MSCの増殖に対する適合性を特定するためにいくつかのマイクロキャリアを調べた。それらのマイクロキャリアは、要約される異なる特性、例えば、その直径、密度、コーティング及び電荷を示した(
図47A)。MSC増殖に関する異なるマイクロキャリアの適合性を同定するために、細胞生存率の測定により試験を行った。非コートマイクロキャリアCytodex(登録商標)1及びP PLUS 102-L上での増殖は、最少の細胞数をもたらし(
図47B)、Cytodex(登録商標)1を用いると、マイクロキャリアのない対照サンプルと同様に生存MSCは存在しなかった。MSCは、1型ブタコラーゲンコートマイクロキャリアであるCytodex(登録商標)3上で良好に増殖し、5日目に最高の細胞数をもたらした。従って、Cytodex(登録商標)3を、更なる試験用に選択した。トランスフェクトされた細胞の数は、マイクロキャリアの総表面積に線形相関した(
図48)。興味深いことに、MSCを懸濁に順応させると、細胞数の上昇と共にGFP+発現(%)が低下した。フラスコの振とう速度が、ポリプレックスへの曝露を物理的に妨害し得る、細胞の凝集に影響を及ぼし得るため、播種後に、細胞の分散が改善するようにMSCの撹拌速度を上げた。振とう速度を70rpmに上げると、より多くの細胞がトランスフェクトされた(>90%の細胞がGFPを発現した)。興味深いことに、速度の上昇は、細胞数がより少ない条件(1×10
6~3×10
6)では細胞生存率を低下させ、せん断応力の上昇に起因した可能性がある。それは、播種時の細胞数の上昇により軽減された(4×10
6細胞)(
図49)。本研究では、約4×10
6個のGFP+細胞が、125mL三角フラスコ中の、約150cm
2のマイクロキャリア上の50mLの容積から得られた。この結果は、1.25Lの容積中に約3750cm
2の面積を含む4L三角フラスコを使用すると、細胞の密度が約1×10
8細胞に上がる可能性を示した。
【0496】
本研究は、前記の非遠心分離プロトコールを使用して、追加の振とう手順を用いて行った。このプロトコールの更なる詳細は後記する。
【0497】
マイクロキャリア培養のプロトコール
AD-MSC(RoosterBio社)を、様々なマイクロキャリア、つまり、C-GEN 102、Pro-F 102、P Plus 102-L(Thermofisher社)、Cytodex(登録商標)1マイクロキャリアビーズ、Cytodex(登録商標)3マイクロキャリアビーズ(GE Healthcare's Life Sciences社)及びSynthemax(登録商標)IIマイクロキャリア(Corning社)中、メーカ説明書に従って培養した。簡単に言うと、マイクロキャリアをPBS(20mg/mL)中で水和させてから、121℃、30分間のオートクレーブを使用して滅菌した。1.9cm2のマイクロキャリア表面積を、24ウェルプレートに使用した。AD-MSCの培養前にマイクロキャリアを、使用に先立ち、完全培地中、37℃で1時間、平衡化した。次いで、増殖及びトランスフェクション試験用に、50rpm又は70rpmの撹拌速度で、AD-MSCを、マイクロキャリア上で培養及び播種した。
【0498】
図47は、AD-MSC中で異なるマイクロキャリアを用いた結果を示す。(A)使用したマイクロキャリアの説明(B)異なるマイクロキャリア上で増殖させた生細胞の数を異なる日に対してプロットした。
【0499】
図48は、プレート上のマイクロキャリアからフラスコへの拡張の結果を示す。ヒトAD-MSCを、総表面積に従って、マイクロキャリア上にプレーティングした。培養中のマイクロキャリアの数の上昇と共により大きい表面積が得られる。細胞を、cm
3当たり20~40×10
3細胞で、マイクロキャリア上にプレーティングした。1日後、細胞を、TrafEnの存在下にpMAXGFPポリプレックスでトランスフェクトした。トランスフェクションから1日後、細胞計数及びFACS解析用に細胞を収穫した。(A)トランスフェクトされた生細胞の数を、容器表面積に対してプロットした。(B)トランスフェクトされた細胞の代表的画像を倍率4×で撮影した。
【0500】
マイクロキャリアトランスフェクションには、AD-MSCを、24ウェル非接着性プレート中のCytodex(登録商標)3マイクロキャリア1.9cm2上に異なる播種密度で、トランスフェクション24時間前の撹拌速度50rpmで播いた。平底トランスフェクションと同様に、ポリマーとDNAとの複合体を、インキュベーション15分後に滴下式に細胞培養に添加した。同様に、ポリプレックスの添加前に、トランスフェクションエンハンサーを完全培地に補足した。マイクロキャリア(ラージスケール)トランスフェクションには、AD-MSCを、Cytodex(登録商標)3上に、様々な表面積に関する適宜最適化した細胞密度(20,000~40,000/cm2)で、125mL三角フラスコ中、トランスフェクション用の撹拌速度50rpm又は70rpmで播いた。撹拌速度は、インキュベーション及び改変MSCの産生中ずっと一定である。
【0501】
(実施例8)
非ウイルス性方法による改変MSCはレンチウイルスによる改変MSCよりも高い抗癌有効性を示す
本実施例は、レンチウイルス及びTrafEn仲介性トランスフェクションにより生成したCD::UPRT::GFP_MSCの癌殺滅効率の比較を目的とする。そのために、CD::UPRT::GFP安定発現MSCを、レンチウイルス感染後の抗生物質選択により生成した。蛍光画像及びフローサイトメトリー解析(
図50A、
図50B)は、導入遺伝子の全体的発現レベルが、形質導入MSC(安定発現CD::UPRT::GFP)中では著しく低いことを示唆する。明らかに、TrafEn改変集団の19%及び25.7%が、それぞれ、中レベル(青色)及び高レベル(オレンジ色)のCD::UPRT::GFPを発現した(
図50B)。形質導入したMSC集団では、集団の<20%が、中レベルのCD::UPRT::GFPを発現した。従って、形質導入MSCは、特に1 MSC対50及び100癌細胞の比では、より低い癌殺滅効率を発揮した。
【0502】
図50は、レンチウイルス又はTrafEn仲介性トランスフェクション法により改変したAT-MSCのCD::UPRT::GFP発現及び抗癌効率を比較した結果を示す。(A)感染から3日後、MSCを、ピューロマイシン1μg/mLの選択に2週間さらした。CD::UPRT::GFPを安定に発現するMSCを確立後、TrafEn仲介性トランスフェクションによりCD::UPRT::GFP_MSCを生成するために、別の実験一式を設定した。トランスフェクションから2日後、改変MSCの蛍光画像を獲得した。(B)その後、両方の培養を収穫し、(B)FACS解析及び(C、D)共培養試験の対象とした。グラフの棒は、MTSアッセイにより得られた、1 MSC対1癌細胞、5癌細胞、50癌細胞、100癌細胞の異なる比での癌殺滅効率を表す。レンチウイルスにより生成したCD::UPRT::GFP_MSCに対するTrafEn法により生成したCD::UPRT::GFP_MSCの癌殺滅効果の著しい差異を、スチューデントの両側t検定で評価した。
**、p値<0.005;
*、p値<0.05。共培養実験の終了時に明視野画像を撮影した。
【0503】
方法:
非ウイルス性MSC:前記の非遠心分離プロトコールを使用して調製。
【0504】
レンチウイルス:CD::UPRT::GFPを有するレンチウイルスベクターでMSCを感染させた。レンチウイルスにより、ポリブレン8μg/mLの存在下にMOI5でMSCに形質導入した。感染から1日後、ピューロマイシン1μg/mLを含有する新鮮培地で1週間、培養培地を置換した。FACS解析及び共培養試験用に細胞を収穫した。
【0505】
発現プロファイル。
フローサイトメトリー解析を使用すると、CD::UPRT::GFP_レンチウイルス及びCD::UPRT::GFP_TrafEnにより改変したMSCの発現プロファイルは異なる。FACSプロファイルの3つのマーカーは、高レベル(オレンジ色)、中レベル(青色)、低レベル(カラント色)の発現を示す。より高い発現は、CD::UPRT::GFPのより高いペイロードを示唆する。TrafEn法(非遠心分離)により改変したMSCは、CD::UPRT::GFPの高発現(19%)を有する集団の生成をもたらすが、レンチウイルス改変MSCはそうではない。より高いペイロードは、より高い癌殺滅効率をもたらし得る。
【0506】
癌殺滅効率
TrafEn法で改変したMSCによる細胞の処理では、レンチウイルスで改変したMSCと比べて著しく高い癌殺滅効率が認められた。
【0507】
(実施例9)
症例研究:ネコリンパ腫、CD::UPRT::GFP発現ヒト脂肪組織由来MSCの静脈内注射
治療用細胞の調製は次のように行った:ヒト脂肪組織由来MSCをトランスフェクトし、凍結保存した。投与日に凍結CD::UPRT::GFP_MSCを解凍し、静脈内投与用に低温液中で調合した。リンパ腫に関する、測定できる明らかな腫瘤を伴わずに潜在的に骨髄が関与するという理解を基に、改善の適切な徴候はPCV(Packed Cell Value(血球容積))であろうと決定した。治療期間中、患者に必要とされる輸液の回数は、毎週3回から毎週0回又は1回に低下した。PCV値の上昇は、貧血があまり重症でないことを示唆する。更に、飼い主によって次の観察が報告された。
1)より活動的
2)飼い主を戸口で迎える及び飼い主との交流のような以前の習慣の回復
3)食欲改善。
【0508】
【0509】
本試験の治療計画は、前記で概説したイヌ治療プロトコールに記載のとおりである。MSCは、前記のように、非遠心分離法を使用して、TrafEnの存在下に改変する。
【0510】
(実施例10)
コンパッショネートユース:46歳の患者の再発明細胞癌におけるCD::UPRT::GFP発現MSCの腫瘍内注射
再発明細胞癌を有する46歳の患者に対してコンパッショネートユース治療を行った。患者を、本明細書に記載されるCD::UPRT::GFP発現MSCの腫瘍内注射により治療した。結果を
図51に示す。
【0511】
脂肪吸引法により得られた患者組織から脂肪組織MSCを抽出した。MSCの増殖後、Hayandra PeduliのGMP施設において細胞バンクを作成する。トランスフェクションプロトコールを最適化した。TrafEnの存在下にT225フラスコ中で600万のMSCをトランスフェクトし、最高で75%のトランスフェクション効率が達成可能である。コンパッショネートユース用のCD::UPRT::GFP_MSCを生成するために、TrafEnプロトコール及び試薬をGMP施設に移す。
【0512】
改変MSCを治療日に収穫し、プラズマライト2mL中で調製した。2000万~5000万細胞を、腫瘍塊の周辺部の20箇所に腫瘍内注射した。MSC投与から1日後、5FCを、経口投与により、合計5FC 2000mg/日(1日当たり4×5FC丸薬500mg)で患者に投与した。5FCを4日間投与した。
【0513】
MSC及び5FCの投与サイクルを毎週繰り返した。各治療サイクルから1週間後の腫瘍塊の写真及び疼痛レベルのデータを示す。
【0514】
(実施例11)
遠心分離法に対する非遠心分離法
図52は、非遠心分離/スピントランスフェクション法の実施例(下図)と比べた、典型的な遠心分離/スピンベースのトランスフェクション法の図解(上図)を提供する。
【0515】
遠心分離/スピンベースのトランスフェクションでは、細胞を容器に播き、DNA/ポリマー複合体を添加する。描写される実施例では、示すようにスピン工程を約5~10分間行う。次いで培地を除去し、エンハンサー(即ちTrafEn)を添加する。そのように処理した脂肪組織由来MSCから収集したデータも提供する。
【0516】
比較に、非遠心分離/スピントランスフェクション法を、
図52の下図に示す。この手法用の複数のオプションを描写する。一実施形態では、細胞を容器に播き、DNA/ポリマー複合体を添加し、更にエンハンサー(例えばTrafEn)も添加してから、少なくとも約24時間インキュベーションを行う(ここでは非スピン/遠心分離を行う)。次いで、培地を除去し、トランスフェクトされたMSCを供給する。そのような処理を受けた脂肪組織由来MSCのデータを示す。
【0517】
非遠心分離/スピントランスフェクション法の別の実施形態を
図52に示す(下図)。本実施形態では、細胞を播き(上側のグラフ/画像- 平底上;下側の画像- マイクロビーズ上)、DNA/ポリマー複合体と同じくエンハンサー(例えばTrafEn)も添加する。振とうさせながら(例えば、回転フラスコ、ウェーブバイオリアクターシステム、回転壁バイオリアクター設計、及び撹拌槽バイオリアクター設計を含むバイオリアクター型のような別のオプションも描写する)、少なくとも約24時間インキュベーションを行う。次いで、収集により収穫してから、スピンを行い(描写する例では例えば、約300g、3分間)、1×PBSを添加し、再度スピンを行い(描写する例では例えば、約300g、3分間)、トリプシンを添加し、100rpmで振とうし、培地を加えてクエンチする。洗浄(描写する例では1×PBS)と共にろ過を行う。スピンを行い(描写する例では例えば、約300g、3分間)、従って、下流解析用に細胞ペレットが得られる。そのように処理した細胞に関してデータを示し、ポリマーのみ対ポリマー+TrafEnの比較を提供する。
【0518】
(実施例12)
凍結保存した改変MSC(TrafEnを使用して生成)は生存可能であり、機能性である
図53は、長期貯蔵を可能にするために、改変MSC(TrafEnを使用して調製)を凍結保存するワークフローの図解を提供する。図示するように、改変MSCを、凍結保存貯蔵してもよい。必要な時に、細胞を貯蔵から取り出して、低温液中での解凍により使用に向けて調製し得る。
【0519】
図54は、前記の
図53に示すように凍結保存してから解凍した改変MSCの細胞生存率、発現レベル及び機能活性の結果を示す。図示するように、改変MSCは、凍結保存、解凍、及び低温液中での72時間までの保存後、高い細胞生存率及び発現レベルを維持した。
【0520】
細胞を、低温液(Hypothermosol)中で解凍し、4℃で最長3日間保存した。細胞生存率及びCD::UPRT::GFP+細胞(%)を、毎日測定した。
【0521】
1つ又は複数の例示的実施形態を例として記載した。当業者は、クレームで定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変形及び改変を行い得ると理解する。
【0522】
【0523】
本明細書、及び記載の他の場所で引用されるすべての参考文献は、参照により本明細書にその各々の全体が組み込まれている。