(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】水性ポリマー膜の性質を改良するための低VOC多機能添加剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250304BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250304BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20250304BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20250304BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250304BHJP
C09D 125/08 20060101ALI20250304BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20250304BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20250304BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20250304BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C08L101/00
C09D201/00
C08L25/08
C08L33/00
C09D7/63
C09D125/08
C09D133/00
C09D5/00 Z
C09D11/00
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2021560216
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 US2020026635
(87)【国際公開番号】W WO2020206296
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-29
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512116941
【氏名又は名称】エメラルド・カラマ・ケミカル・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Emerald Kalama Chemical,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・フィンリー・フォスター
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー・レス・ファレル
(72)【発明者】
【氏名】エミリー・マクブライド
(72)【発明者】
【氏名】カイル・ジェフリー・ポッセルト
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・オー・ヴォーン-ビージュ
(72)【発明者】
【氏名】サラ・エル・ストローザー
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-079148(JP,A)
【文献】特開平03-131674(JP,A)
【文献】特表2012-502138(JP,A)
【文献】特表2010-508420(JP,A)
【文献】特表2014-506283(JP,A)
【文献】特開平08-073776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00、301/00
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性又は溶媒性ポリマー成膜性組成物において使用するための、低VOC多機能添加剤ブレンド物であって、
a.少なくとも1種の低揮発性成分であって、ジベンゾエート、ジベンゾエートのブレンド物、モノベンゾエートエステル、フタレート、テレフタレート、1,2-シクロヘキサンジカルボキシレートエステル、サイトレート、アジペート、トリエチレングリコールジオクタノエート、トリエチレングリコールビス(エチルヘキサノエート-2)、並びにアジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸の精製ジイソブチルエステルの混合物から選択される低揮発性成分
を
b.少なくとも1種の高揮発性成分であって、ベンジルアミン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、ベンジルアルコール、3-フェニルプロパノール、2-メチル-3-フェニルプロパノール、β-メチルシンナミルアルコール、及びバニリンから選択される高揮発性成分
とブレンドしたものを含
み、
前記低VOC多機能添加剤ブレンド物中の前記高揮発性成分と前記低揮発性成分の重量比率が、10:1~1:10である、低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項2】
少なくとも1つの高揮発性成分が、ベンジルアルコール、3-フェニルプロパノール、2-メチル-3-フェニルプロパノール、β-メチルシンナミルアルコール、及びバニリンからなる群から選択される、請求項1に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項3】
前記ジベンゾエートが、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、1,2-プロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記モノベンゾエートエステルが、2-エチルヘキシルベンゾエート、イソデシルベンゾエート、イソノニルベンゾエート、3-フェニルプロピルベンゾエート、2-メチル-3-フェニルプロピルベンゾエート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記テレフタレートが、ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート、ジブチルテレフタレート、ジイソペンチルテレフタレート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記1,2-シクロヘキサンジカルボキシレートエステルが、ジイソノニル-1、2-シクロヘキサンジカルボキシレートであり、
前記フタレートが、ジ-n-ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、及び
前記サイトレートが、アセチルトリブチルサイトレート、トリ-n-ブチルサイトレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項4】
前記低揮発性成分が、ジベンゾエート又はジベンゾエートのブレンド物である、請求項1に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項5】
前記ジベンゾエート又はジベンゾエートのブレンド物がプロピレングリコールジベンゾエートを含んでなる、請求項4に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項6】
前記低揮発性成分が、トリエチレングリコールジオクタノエート又はトリエチレングリコールビス(エチルヘキサノエート-2)である、請求項1に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項7】
前記高揮発性成分がベンジルアルコールである、請求項1~6のいずれか一項に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項8】
安息香酸又はその塩をさらに含む、請求項7に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項9】
着色剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項10】
ベンジルアルコール及びトリエチレングリコールジオクタノエートを含んでなり、ここで、ベンジルアルコール対トリエチレングリコールジオクタノエートの
重量比率が、1:1である、請求項1に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項11】
ベンジルアルコール及びジベンゾエートブレンド物(ここで、ベンジルアルコール対ジベンゾエートブレンド物の
重量比率は、1:1~1:3である);又は
ベンジルアルコール及びトリエチレングリコールビス(エチルヘキサノエート-2)(ここで、ベンジルアルコール対トリエチレングリコールビス(エチルヘキサノエート-2)の
重量比率は、1:1である)
を含んでなり、
前記ジベンゾエートブレンド物が、ジエチレングリコールジベンゾエート及びジプロピレングリコールジベンゾエートの混合物、又はジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、及び1,2-プロピレングリコールジベンゾエートの混合物を含む、請求項1に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、水性又は溶媒性ポリマー成膜性組成物。
【請求項13】
スチレン-アクリルバインダー、ビニルアクリルバインダー、アクリルバインダー、ビニルアセテート-エチレンバインダー、又はアルキドバインダーを含む、請求項12に記載の水性又は溶媒性ポリマー成膜性組成物。
【請求項14】
ビニルポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルフィド、ニトロセルロース及びその他のセルロース系ポリマー、ポリ酢酸ビニル及びそれらのコポリマー、ポリアクリレート及びそれらのコポリマー、アクリル樹脂及びそれらのコポリマー、エポキシ、フェノール-ホルムアルデヒドポリマー、メラミン樹脂、アルキド樹脂、並びにバーサチック酸のビニルエステル樹脂から選択されるバインダー、
顔料、
界面活性剤、及び
レオロジー調節剤
をさらに含み、
前記
低VOC多機能添加剤ブレンド物が、100グラムのバインダーを基準にして、バインダーに対して0.1~15重量%の量で存在する、
請求項12に記載の水性又は溶媒性ポリマー成膜性組成物。
【請求項15】
顔料、
分散剤、及び
水又は溶媒
をさらに含む、請求項12に記載の水性又は溶媒性ポリマー成膜性組成物。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の
低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、金属への直接ポリマー成膜性組成物。
【請求項17】
水性ポリマー成膜性組成物の性質を改良する方法であって、
ジベンゾエート、ジベンゾエートのブレンド物、モノベンゾエートエステル、フタレート、テレフタレート、1,2-シクロヘキサンジカルボキシレートエステル、サイトレート、アジペート、トリエチレングリコールジオクタノエート、トリエチレングリコールビス(エチルヘキサノエート-2)、並びにアジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸の精製ジイソブチルエステルの混合物から選択される少なくとも1種の低揮発性成分を、
ベンジルアミン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、ベンジルアルコール、3-フェニルプロパノール、2-メチル-3-フェニルプロパノール、β-メチルシンナミルアルコール、及びバニリンから選択される少なくとも1種の高揮発性成分に添加して、低VOC多機能添加剤ブレンド物を形成するステップ、及び
前記低VOC多機能添加剤ブレンド物を水性ポリマー成膜性組成物に添加するステップ、を含み、
前記低VOC多機能添加剤ブレンド物中の前記高揮発性成分と前記低揮発性成分の重量比率が、10:1~1:10であり、
改良される性質が、バインダーとの相容性、湿時接着性、硬度、スクラブ抵抗性、ブロック抵抗性、冷凍-解凍性、吸塵抵抗性、腐食(フラッシュ錆)抵抗性、抗菌性、及び総VOC含量から選択される1つ以上の性質である、方法。
【請求項18】
水性ポリマー成膜性組成物に添加される前に前記低VOC多機能添加剤ブレンド物の中に着色剤を分散させるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記低VOC多機能添加剤ブレンド物がジベンゾエートを含む請求項17に記載の方法であって、
反応において、1%~30%の範囲の安息香酸のパーセントモル過剰でジベンゾエートを合成して、酸過剰のジベンゾエートを形成させるステップをさらに含む、方法。
【請求項20】
前記低VOC多機能添加剤ブレンド物がジベンゾエート又はジベンゾエートのブレンド物を含む請求項17に記載の方法であって、ジベンゾエート又はジベンゾエートのブレンド物の中に安息香酸又はその塩を溶解させるステップをさらに含む方法。
【請求項21】
前記低VOC多機能添加剤ブレンド物の前記少なくとも1種の高揮発性成分がベンジルアルコールである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種の高揮発性成分が、ベンジルアルコール、3-フェニルプロパノール、2-メチル-3-フェニルプロパノール、β-メチルシンナミルアルコール、及びバニリンからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
建築用コーティング、産業用コーティング、OEMコーティング、内装用及び外装用ペイント、金属のコーティング、金属への直接コーティング、海洋用コーティング、フィルムコーティング、ビニルフィルム組成物、木材用コーティング、木材処理、紙用コーティング、布用コーティング、織物用コーティング、壁紙用コーティング、装飾コーティング、構造物用コーティング、セメントコーティング、コンクリートコーティング、フロアコーティング、ワニス、インキ、グラフィックインキ、水性着色剤、溶媒性着色剤、接着剤組成物、にかわ、シーラント、又はコーキング剤のための、水性又は溶媒性ポリマー成膜性組成物における請求項1~11のいずれか一項に記載の低VOC多機能添加剤ブレンド物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリマー成膜性組成物のための、揮発性有機化合物(VOC)が低い多機能添加剤を目的としており、それらは、コアレセント機能に加えて、それらから形成される膜に、改良された性質、たとえば各種の性質の中でも、硬度、スクラブ抵抗性、ブロック抵抗性、及びフラッシュ錆抵抗性を与える。本発明はさらに、本発明の多機能添加剤ブレンド物を使用することによる、水性ポリマー成膜性組成物、非限定的に挙げれば、たとえばコーティングの各種の性質の中でも、硬度及びスクラブ抵抗性を増大し及び改良するための方法も目的としている。ブレンド物には、高揮発性の成分と組み合わせて、従来からの低揮発性コアレセント剤が含まれるが、それらの内のいくつかは、コアレセント剤として公知でもなく、これまでに使用されたこともないものである。高揮発性成分と、従来からの低揮発性成分とのある種の組合せが相乗的に作用して、水性ポリマー膜の性質を改良しながらも、その一方で、VOC含量を大幅に最小化することが見出された。本発明はさらに、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を使用する、水性コーティングの性質を改良するための方法も目的とする。
【背景技術】
【0002】
各種のコーティング用途では、コーティングによって形成される膜の重要な特性として、良好な表面硬度が要求される可能性がある。コーティング硬度は、工具部品の摩耗抵抗性コーティング及び耐摩耗加工(hardfacing)のための、さらには熱バリヤー及び水バリヤーコーティングのための、重要な性質である。水性コーティングにおける硬度の発現は、当業者には公知の各種の理由の中でも、ブロック抵抗性及び吸塵性に関しては極めて重要であり、摩耗を防止し、押込み及び引掻きに抵抗を与え、及びバリヤー性を改良する。スクラブ抵抗性もまた、コーティング、特に、繰り返して洗浄が要求されるコーティング表面においては高度に望ましい。本発明のブレンド物のいくつかでは、本明細書に記載しているように、幾つかの塗装系においては、大いに改良されたスクラブ抵抗性が得られた。
【0003】
硬度を上げるためのいくつかの方法が公知である。一例を挙げれば、コーティングの硬度は、各種の充填剤、たとえば鉱物質の添加剤、クレー、及びその他の増粘剤を使用することによって、上げることができる。いくつかのポリマー組成物には、「ハイソリッド」な内容物が含まれ、それも硬度に寄与していると考えられる。ある程度の硬度又は粒径を有するバインダーを選択することも可能である。コーティングの性質は、複数のバインダーのブレンド物を使用したり、バインダーの中のある種のポリマーの存在を変更したりすることによっても変化させることができる。コーティングの厚みを変化させても、改良された硬度が得られる可能性がある。硬度を、他の性質と共に改良するその他の方法としては、コア/シェルの使用や、組成物の中で、組成を段階的に変えたり、架橋基を含ませたりすることも挙げられる。さらに他の方法も当業者には公知である。硬度及び他の性質を改良するためのこれらの方法が成功したとはいえ、部分的には性質をさらに改良し、コーティングにさらなる機能を追加する方法及び添加剤を開発する努力が続けられている。
【0004】
硬度及び改良されたスクラブ抵抗性に加えて、いくつかのコーティング及びその他の水性ポリマー組成物では、腐食抵抗性が要求される。例を挙げれば、ラテックスの金属への直接コーティングにおいては、腐食防止、具体的にはフラッシュ錆抵抗性が、コーティングが水性の系であるという性格から、とりわけ必要とされている。金属表面に対して塗布したときに、水性コーティング配合物には、イオン性の電解質、水、及び酸素が含まれているが、それらはすべて、腐食を起こさせるのに必要なものである。その結果、金属表面上にはフラッシュ錆が形成される可能性がある。有機酸及び塩、たとえば安息香酸及び安息香酸ナトリウムが、金属イオンを吸着し、水性環境の中で溶け込むことを防止することによるアノード防食を介して、腐食防止作用があることは公知である。一般的に、これらの有機酸及び塩は、配合プロセス全体を通して、別途に添加されるが、しかしながら、その水溶解度が低いために、水性ポリマー系の中に安息香酸を取り込むことは、極めて困難であることが認められている。
【0005】
コーティングの性質を改良することには、絶え間なく努力が重ねられてはいるが、消費者及び環境規制当局は、コーティング中での揮発性有機化合物(「VOC」)含量を、より低くするよう圧力をかけ続けている。VOCとは、容易に揮発するか、又は大気中に揮発して他の元素又は化合物を反応する可能性を有する、炭素含有化合物である。VOCは、ペイント及びコーティング産業においては、VOCを含む製品の製造、さらには使用に関して、特に高い関心が寄せられている。ペイント及びコーティングの製造においてVOCを使用すると、ある種の環境下においては、プラントでの大気品質の劣化と、有害な化学物質への作業者の曝露が起きる可能性がある。同様にして、有害なVOC蒸気に定常的に曝露されるVOC含有ペイント及びコーティングの塗装作業者及びその他の使用者の、健康上の問題に直面する可能性がある。VOCに曝露された人は、数多くの健康上の問題、非限定的に挙げれば、たとえばいくつかのタイプの頭痛、がん、脳機能の損傷、腎臓及び肝臓の機能不全、呼吸困難、その他の健康上の問題に直面する可能性がある。
【0006】
高VOC含量を有するペイント及びコーティングは、環境に対して危険であるとも考えられる。それらは、自動車に次ぐ、第二位の大気へのVOC排出源であり、毎年ざっと110億ポンドを排出している。製造作業者及び末端使用者を保護するための規制が施行された。消費者もまた、より安全な代替物を要求している。配合業者らが、コーティングの中で使用されている、最も揮発性が高い成分を減らしたり、置き換えたりすることは可能であり、それによってVOCの懸案事項をある程度は下げることはできるが、性能が損なわれる結果となりかねない。望ましくは、低VOC含量のペイント又はコーティングが、より高いVOC含量のペイント又はコーティングと同等の性能を有しているべきである。この目標に向けて、原料供給業者には、ペイント及びコーティングで使用するための、VOC含量をより低く保つが、性能が損なわれることがない、新規で、より低いVOCの製品を開発することが絶え間なく求められている。
【0007】
コーティング組成物において歴史的に使用されてきた、揮発性ではあるものの通常は極めて必須である成分は、成膜助剤、すなわちコアレセント剤である。コーティングの配合業者は、コアレセント剤によって慣用される周知のラテックスエマルションを使用することが可能となるが、それは低コストであり、且つ、コアレセント剤を必要としない低Tgのポリマーをベースとするコーティングにひけをとらない、優れた性能を達成することが可能となる。コアレセント剤は、分散させたポリマーを軟化させ、それらを融合させるか又は連続膜を形成させることにより、膜を容易に形成させる。次いでコアレセント剤は、膜から、部分的又は全面的に蒸発離脱して、膜がその元々の物理的性質を再取得できるようにする。コアレセント剤は、ペイント/コーティング膜の性質、たとえば硬度、光沢、スクラブ抵抗性、及びブロック抵抗性を改良できるように選択される。コアレセント剤はさらに、各種の性能、非限定的にではあるがたとえば、揮発度、混和性、安定性、相容性、使用の容易さ、及びコストを基準にしても、選択される。従来からのコアレセント剤は高度に揮発性であり、ペイント又はコーティングのVOC含量に大きく影響する可能性がある。
【0008】
成膜助剤は、当業者には公知である。業界標準の、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(TXMB)(Eastman ChemicalからEastman Texanol(商標)として市販)は、EPA 24 ASTM D2369の試験法に従えば、100%の揮発性であるという事実にも関わらず、広く使用されている。その他の成膜助剤としては、グリコールエーテル、たとえばジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGME)、ブチルセルソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)、butyl Carbitol(商標)(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、及びジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(DPnB)が挙げられるが、それらもやはり、コアレセント剤又はコアレシング溶媒として使用される高揮発性成分である。高度に揮発性のコアレセント剤は、コアレシング相から始まって、それ以降も長期間続けてVOCの原因となる。このことは、ひいては、不快臭として現れ、膜の周辺の空気にも影響する可能性がある。
【0009】
これらの問題が理由で、コーティング及びその他の成膜性組成物のための、揮発性がより低くより恒久的な成膜助剤の開発及び使用への動向がある。たとえば、Optifilm(商標)Enhancer 400(すなわちOE-400)(Eastman Chemicalから市販)は、より新規な、VOCのより低いコアレセント剤であって、VOC含量のより低いコアレセント剤のための業界のベンチマークとなったが、Safety Data Sheetにおいて、多くの供給業者から市販されているトリエチレングリコールビス(エチルヘキサノエート-2)(トリエチレングリコールジオクタノエート(TEGDO)とも呼ばれる)と特定された。また別の有用な低VOCのコアレセント剤は、COASOL(商標)(Dow)であり、これは精製された、アジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸のジ-イソブチルエステルの特定比率の混合物であって、低い臭気と低い蒸気圧を特徴とするとされている。さらに他の有用な低VOCのコアレセント剤としては、サイトレート及びその他のアジペートが挙げられる。
【0010】
それに加えて、可塑剤が、従来からのコアレセント剤よりは揮発度が顕著に低い、ラテックス塗料及びその他のコーティングのための優れたコアレセント剤として知られている。いくつかのコーティング用途においては、可塑剤が、コーティングにおいて、より硬いベースポリマーを軟化させて可撓性を与え脆性を低下させる、可塑化機能のためにも使用されている。可塑剤は、ペイントの他の性能特性、たとえばマッドクラッキング、ウェットエッジ、及びオープンタイムなどを改良することでも知られている。
【0011】
フタレート系可塑剤、たとえば、ジ-n-ブチルフタレート(DBP)、ジイソブチルフタレート(DIBP)、又はブチルベンジルフタレート(BBP)は、高いTg(ガラス転移温度)を有するポリマーを、1つの用途又は他の用途で採用するような場合のように、真の可塑剤が必要となったときに、従来からコーティング産業において使用されてきた。DBP及びDIBPは、従来からのコアレセント剤よりは低いVOC含量を有しているものの、それでもなおいくぶんかは揮発性であるが、それに対してBBPは、極めて低いVOC含量を有している。しかしながら、VOC含量とは別の面で、フタレートエステルを使用することは、いくらかの欠点を有しており、その理由は、DBP及びBBPの使用が、特に規制との関連で制限を受けているからである。
【0012】
ジベンゾエートは非フタレートであるので、フタレートの場合のような制限や健康上の問題点は有していない。コアレセント剤として使用される、従来からのジベンゾエートとしては、1,2-プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)、及びジエチレングリコールジベンゾエート(DEGDB)とDPGDB及び/又はPGDBとのブレンド物が挙げられる。ベンゾエートの市販されている例としては、とりわけ以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:K-FLEX(登録商標)DP(DPGDB)、K-FLEX(登録商標)500(DEGDB/DPGDBブレンド物)、K-FLEX(登録商標)850S(新規なグレードのDEGDB/DPGDBブレンド物)、及びK-FLEX(登録商標)975P(DEGDB/DPGDB/1,2-PGDBを含む、新規な3種ブレンド物)。
【0013】
ジベンゾエートグリコールエステルは、長年にわたって、可塑剤及びコアレセント「成膜性」助剤として大々的に使用されてきた。コーティングにおいてある種のジベンゾエートを使用することのメリットは公知であり、次の点が挙げられる:低い蒸気圧(10-6~10-8mmHgの範囲、その結果VOC含量が低い)、極性のポリマーたとえばポリ塩化ビニル(PVC)及びアクリレートを用いた用途での適切な溶解パラメーター、生分解性、並びに接着剤及びコーティングにおける食品が接触する用途での安全性。成膜助剤としてのジベンゾエートの有用性は、屋内及び屋外両方の用途での建築用のコーティングで、すでに確立されている。建築用コーティングにおけるそれらの性能的利点としては、固体容積の増大、光沢、及びスクラブ抵抗性が挙げられる。
【0014】
コアレセント剤として有用であることが知られているモノベンゾエートエステルとしては、イソデシルベンゾエート(IDB)、イソノニルベンゾエート(INB)、及び2-エチルヘキシルベンゾエート(EHB)が挙げられる。たとえば、イソデシルベンゾエートは、(特許文献1)(Arendt)において、ペイント組成物のための有用なコアレセント剤として記載されている。DEGDB及びジエチレングリコールモノベンゾエートとのブレンド物における2-エチルヘキシルベンゾエートの使用が、(特許文献2)(Arendt et.al.)に記載されている。エマルション、モルタル、セッコウ、接着剤、及びワニスのような組成物における成膜剤として、安息香酸のイソノニルエステルを使用することが、(特許文献3)(Grass et.al.)に記載されている。フェニルプロピルベンゾエートもまた、各種のコーティングで使用するための優れた成膜剤であることが、見出されている。
【0015】
コーティングにおいて、選択されたポリマー系において適切な膜の形成を可能とし、膜の性質を改良するのに有用なその他の可塑剤としては、以下のものが挙げられる:非フタレート系の1,2-シクロヘキサンジカルボキシレートエステル、たとえば、ジイソノニル-1、2-シクロヘキサンジカルボキシレート(BASFから、Hexamoll(登録商標)DINCH(登録商標)として市販)。
【0016】
可塑剤は、一般的には、低VOCへの寄与をベースとする水性の系のための、有用なコアレセント剤であるが、この同じ「低VOCへの寄与」は、それらが、他の従来からの、より高いVOCのコアレセント剤よりも、長い保留性を有している、すなわち、それらの揮発性がより低く、そのためその膜から抜け出すのが、より遅いということも意味している。場合によっては、可塑剤の保留性は、有害ともなりうる。配合業者らが強く懸念していることは、保留性が、ある種の性質、たとえば吸塵性、粘着性、及び膜の硬度に悪影響を与えかねないということである。可塑剤をコアレセント剤として使用するのに際しては、保留性が高い(したがって、VOCがより低い)ことと、膜の良好な最終的な性質との間でバランスを取らなければならない。望ましくは、VOC含量が低いペイント又はコーティングが、より高いVOC含量のペイント又はコーティングと同等の性能を有しているべきである。この目的を目指して、原料供給業者らは、性能への妥協を最低限にし、ポリマー膜の性質が改良される、ペイント及びコーティング並びにその他の成膜性組成物で使用するための、新規な、より低いVOCの製品の開発を続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第5,236,987号明細書
【文献】米国特許第6,989,830号明細書
【文献】米国特許第7,638,568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
VOC含量がより低く、その一方で、重要なコーティングの性質、たとえば、硬度、スクラブ抵抗性、ブロック抵抗性、硬度の発現性、及び吸塵抵抗性に適合していたり、従来からの高揮発性のコアレセント剤で達成されたものを超えて改良するという、コアレセント剤への要求が、未だに達成されずに残っている。それに加えて、特に水性ポリマー系において、ある種の使用用途では、腐食(フラッシュ錆)抵抗性の改良が必要とされている。
【0019】
コーティング及びその他の成膜性組成物に対して、より低いVOC含量、並びに良好なコアレセンス性を与え、その一方で、従来からの、高VOC又は低VOCのコアレセント剤を単独で使用するのに比較して、他の重要な実施性能を実際に向上させる、VOCが低い多機能添加剤ブレンド物が開発された。それら本発明の低VOC多機能添加剤は、高揮発性化合物と低揮発性化合物との両方をブレンドすることによって、コアレセンス性に加えて、水性ポリマー系の各種の性質の中でも、改良された硬度及びスクラブ抵抗性を達成する。具体的には、ある種の低揮発性コアレセント剤、たとえばジベンゾエート、フタレート、テレフタレート、サイトレート、及びアジペート可塑剤(これらに限定されない)及び他の低VOC含量又はゼロVOC含量の成膜助剤を、ある種の高揮発性成分とブレンドすることによって、各種のコーティングにおいて予想もされなかったような改良された硬度、ブロック抵抗性、吸塵抵抗性、及びスクラブ抵抗性が達成されるということが見出された。本発明の多機能添加剤では、公知の高VOCのコアレセント剤と、さらには他の、これまで知られていない、及びコアレセント剤としては使用されたことがない高揮発性化合物とを使用している。いくつかの態様においては、本発明の低VOC多機能添加剤には、添加剤によって得られる機能を向上させるための耐食性化合物がさらに含まれていてもよい。
【0020】
有機酸、たとえば、安息香酸を、本発明の新規な多機能添加剤と組み合わせて水性ポリマー系の中に組み入れて、他の性質の改良を達成することに加えて、抗腐蝕性(フラッシュ錆抵抗性)を向上させることが可能であるということもさらに見出された。安息香酸は水には不溶性であって、水性ポリマー系の中に組み入れることが困難であることが知られている。しかしながら、本発明の低VOC多機能添加剤においては、安息香酸がある程度まで可溶性であり、そのため、有機酸たとえば安息香酸を水性ポリマー系の中に組み入れる新規な方法が得られるということが見出された。有機塩、たとえば、安息香酸ナトリウムは、水の中に最高で約30%まで溶解させることができ、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む水性コーティングに添加して、コーティングのフラッシュ錆抵抗性を向上させることができる。
【0021】
低揮発性成分を高揮発性成分とブレンドして、より低いVOC含量のコーティングを得ることによって、ポリマー膜の実施性能を向上させながらも、コーティング(これだけに限定されない)を含む水性ポリマー成膜性組成物の中で使用するためのコアレセント剤を提供することが、本発明の目的である。
【0022】
高揮発性成分を低揮発性成分とブレンドすることによって、従来からの、高揮発性コアレセント剤又は低揮発性コアレセント剤を単独で使用して、これまで達成されていたものよりも、各種の性質の中でも改良された硬度及びスクラブ抵抗性を有する水性コーティングを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0023】
本発明のまた別の目的は、低揮発性成分と高揮発性成分とのブレンド物を含む低VOC多機能添加剤を使用することにより、従来からの高揮発性及び低揮発性コアレセント剤を用いて達成されたものより優れた、水性ポリマー系の各種の性質の中でも硬度及びスクラブ抵抗性を改良するための方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらにまた別の目的は、硬度、硬度の発現性、スクラブ抵抗性、腐食(フラッシュ錆)抵抗性、吸塵抵抗性、及びブロック抵抗性(これらに限定されない)を改良する目的で、本発明の多機能添加剤ブレンド物を添加することによって、水性ポリマー成膜性組成物の実施性能を向上させることである。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、水性ポリマー成膜性組成物に添加するための、顔料及び着色剤(染色剤、染料)の溶液/分散液のための展色剤又はキャリヤーを提供することであり、ここでその展色剤には、本発明の低VOC多機能添加剤が含まれる。
【0026】
本発明のさらに他の目的は、本明細書における開示に基づいて、当業者に公知であろう。
【0027】
本発明は、水性コーティング及びその他の水性ポリマー成膜性組成物において使用するための低VOC多機能添加剤組成物を目的としているが、それらは、従来からの高揮発性又は低揮発性のコアレセント剤単独で達成されるのと比較して、コアレセンス性に加えて、各種の性質の中でも、改良された硬度及びスクラブ抵抗性、硬度の発現性、吸塵抵抗性、ブロック抵抗性、腐食(フラッシュ錆)抵抗性を与える。本発明はさらに、本発明の低VOC多機能添加剤組成物を加えることによって、従来からのコアレセント剤を用いて達成されるものに優る、水性コーティング及びその他の水性ポリマー成膜性組成物の硬度及びスクラブ抵抗性及びその他の性質を改良するための方法も目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
第一の実施態様においては、本発明は、水性コーティング及びその他の水性ポリマー成膜用途において使用するための低VOC多機能添加剤ブレンド物であって、グリコールエーテル、TXMB、ベンジルアミン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、3-フェニルプロパノール、2-メチル-3-フェニルプロパノール、バニリン、又はβ-メチルシンナミルアルコール(シプリオール)を含む高揮発性成分とブレンドされた、低揮発性コアレセント剤(成膜助剤)を含んでいる。
【0029】
第二の実施態様においては、本発明は、水性コーティングにおいて使用するための低VOC多機能添加剤であって、ここでその添加剤には、ベンゾエートエステル、フタレート、テレフタレート、1,2-シクロヘキサノエートジカルボキシレートエステル、サイトレート、アジペート、Optifilm(商標)Enhancer 400、TEGDO、又はアジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸の精製されたジ-イソブチルエステルの混合物(Coasol(商標))を含む公知の低揮発性コアレセント剤と、高揮発性成分とのブレンド物が含まれる。
【0030】
第三の実施態様においては、本発明は、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、水性コーティングである。
【0031】
第四の実施態様においては、本発明は、スチレン-アクリルバインダー及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む水性コーティングである。
【0032】
第五の実施態様においては、本発明は、ビニルアクリルバインダー及び本発明の多機能添加剤ブレンド物を含む水性コーティングである。
【0033】
第六の実施態様においては、本発明は、100%アクリルバインダー及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む水性コーティングである。
【0034】
第七の実施態様においては、本発明は、酢酸ビニル-エチレンバインダー及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む水性コーティングである。
【0035】
第八の実施態様においては、本発明は、VeoVa(商標)バインダー、バーサチック酸のビニルエステル(Hexionから入手可能)、及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、水性コーティングである。
【0036】
第九の実施態様においては、本発明は、水性コーティング及びその他の水性ポリマー成膜性組成物の硬度、硬度の発現性、ブロック抵抗性、吸塵抵抗性、スクラブ抵抗性、湿時接着性、腐食(フラッシュ錆)抵抗性を向上させる方法であって、水性コーティング又は水性ポリマー成膜性組成物の配合の途中で、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を添加する工程を含んでいる。
【0037】
第十の実施態様において、本発明は、低VOC多機能添加剤ブレンド物の中で使用されるジベンゾエートコアレセント剤の合成の際に、安息香酸をモル的に過剰に使用して安息香酸を組みこみ、金属への直接コーティング物の、先に挙げた各種の性質の中でも腐食抵抗性及び湿時接着性を向上させる方法である。
【0038】
第十一の実施態様においては、本発明は、高揮発性成分との組合せにおいて、低揮発性成分として酸過剰のジベンゾエートを含む低VOC多機能添加剤である。
【0039】
第十二の実施態様においては、本発明は、金属への直接コーティング物における、湿時接着性、硬度の改良、腐食抵抗性、ブロック抵抗性、吸塵抵抗性、及びスクラブ抵抗性の多機能向上作用を有する低VOCの耐食コアレセント剤を作製するための、過剰の酸-ジベンゾエートとベンジルアルコールとを組み合わせる方法である。
【0040】
第十三の実施態様においては、本発明は、金属への直接コーティング物における、湿時接着性、硬度の改良、腐食抵抗性、ブロック抵抗性、吸塵抵抗性、及びスクラブ抵抗性の多機能向上作用を有する低VOCの耐食コアレセント剤を作製するための、安息香酸、ジベンゾエート、及びベンジルアルコールを、互いに1つの混合物として溶解させる方法である。
【0041】
第十四の実施態様においては、本発明は、金属への直接コーティング物における、湿時接着性、硬度の改良、腐食(フラッシュ錆)抵抗性、ブロック抵抗性、吸塵抵抗性、及びスクラブ抵抗性の多機能向上作用を与えるための、水性コーティングの中に組み入れた、安息香酸ナトリウム、ジベンゾエート、及びベンジルアルコールの混合物を目的としている。
【0042】
第十五の実施態様においては、本発明は、本発明の低VOC多機能添加剤を含む、本発明の水性成膜性組成物へ添加される着色剤のための、キャリヤー又は分散剤を目的としている。
【0043】
その他の実施態様も、本明細書における開示に基づいて、当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】TXMB単独、K-FLEX(登録商標)975P単独、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(TXMB:K-FLEX(登録商標)975Pの70:30ブレンド物を含む)の使用を比較した、硬質のスチレン-アクリル樹脂(Encor 471)で達成された、向上されたスクラブ抵抗性の性能(スクラブサイクル)を示す図である。
【
図2】TXMB単独、K-FLEX(登録商標)975P単独、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(TXMB対K-FLEX(登録商標)975Pの70:30ブレンド物を含む)の使用を比較した、スチレン-アクリル樹脂(EPS 2533)で達成された、向上されたスクラブ抵抗性の性能を示す図である。
【
図3】TXMB単独、K-FLEX(登録商標)975P単独、及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(TXMB:K-FLEX(登録商標)975Pの10:90ブレンド物を含む)の使用を比較した、スチレンアクリル樹脂(Acronal 296D)で達成された、向上されたスクラブ抵抗性の性能を示す図である。
【
図4】TXMB単独、K-FLEX(登録商標)850S単独、及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(10:90のTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを含む)の使用を比較した、100%アクリル樹脂(Encor 626)で達成された、向上されたスクラブ抵抗性の性能を示す図である。
【
図5】TXMB単独、K-FLEX(登録商標)850S単独、及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(10:90のTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを含む)の使用を比較した、100%アクリル樹脂(VSR 1050)で達成された、向上されたスクラブ抵抗性の性能を示す図である。
【
図6】TXMB単独、K-FLEX(登録商標)850S単独、及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(80:20のTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを含む)の使用を比較した、ビニルアクリル樹脂(Encor 379G)で達成された、向上されたスクラブ抵抗性の性能を示す図である。
【
図7a】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含む3種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含むサンプルを比較した、Encor 471フラット、Encor 471セミグロス、Encor 626フラット、Encor 626セミグロスのサンプルで達成された、流動性及びレベリング性の結果(等級)を示す図である。
【
図7b】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1)のブレンド物)を比較した、Encor 471フラット、Encor 471セミグロス、Encor 626フラット、及びEncor 626セミグロスのサンプルで達成された、流動性及びレベリング性の結果(等級)を示す図である。
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図8】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、及び3種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(X-3411、X-3412、及びX-3413)を含むサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラットのサンプルで達成された、磨き抵抗性の結果(85゜光沢における増加パーセント)を示す図である。
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図9a-9b】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含む、3種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含むサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラットサンプルを用いて達成された、Koenig硬度試験の結果を示す図である。
【
図9c-9d】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1)比率のもの)のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のセミグロスサンプルを用いて達成された、Koenig硬度の結果を示す図である。
【
図9e】シプリオール:K-FLEX(登録商標)850S、3-フェニルプロパノール:K-FLEX(登録商標)850S、及び2-メチル-3-フェニルプロパノール:K-FLEX(登録商標)850S、いずれも1:1の比率の、3種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、Encor 471セミグロスのサンプルを用いて達成された、Koenig硬度の結果を示す図である。
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図10】(周囲温度)未コアレス化サンプル、並びにTXMB、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1)のブレンド物)のサンプルを比較した、Encor 471のフラット及びセミグロスのサンプル並びにEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについての、ブロック抵抗性の結果の等級を示す図である。
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図11】(50℃)未コアレス化サンプル、並びにTXMB、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1)のブレンド物)のサンプルを比較した、Encor 471のフラット及びセミグロスのサンプル並びにEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについての、ブロック抵抗性の結果の等級を示す図である。
【
図12a】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含む、3種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含むサンプルを比較した、Encor 471フラット(10ミル)についての低温コアレセンスの結果を示す写真画像である。
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図12b】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された低温コアレセンスの結果(等級)を示す図である。
【
図13a-13e】ダイズブロス中、A.ブラジリエンシス(A.Brasiliensis)(糸状菌)、P.エルジノーサ(P.aeruginosa)(グラム陰性菌)、E・コリ(E.coli)(グラム陰性菌)、S.アウレウス(S.aureus)(グラム陽性菌)、及びC.アルビカンス(C.albicans)(酵母)の微生物での、0.25重量%~2.5重量%の範囲の3-フェニルプロパノールの濃度の場合の、経時(日)対数減少率を示す等高線図である。
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図14】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成されたStormer粘度(KU)の結果を示す図である。
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図15】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、並びにベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された明度比の結果を示す図である。
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図16-18】それぞれEncor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについての、未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、20゜、60゜及び85゜の角度で達成された光沢の結果を示す図である。
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図19】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された吸塵抵抗性の結果(反射率のパーセント差)を示す図である。
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図20】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された印刷抵抗性の結果(等級付け)を示す図である。
【
図21a-21b】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1)のブレンド物)のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについての、それぞれ、初期及び最終のスクラブ抵抗性の結果(サイクル数)を示す図である。
【
図22】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された乾燥接着性の結果(等級付け)を示す図である。
【
図23】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された乾燥時間の結果(時間:分)を示す図である。
【
図24-25】未コアレス化サンプル、並びに、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された、周囲温度及び40゜Fでの、14~60ミルからのマッドクラッキングの結果(w/oクラッキング、最大ミル)を示す図である。
【
図26】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成されたオープンタイムの結果(時間:分)を示す図である。
【
図27】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成されたウェットエッジの結果(時間:分)を示す図である。
【
図28】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1)のサンプルを比較した、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成されたサグ抵抗性の結果(等級付け)を示す図である。
【
図29a-h】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、各種の水性汚れ及び油性汚れに対する、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された洗濯性(washability)の結果(ΔE
*)を示す図である。
【
図30】未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、TXMB:OE-400(1:1)のブレンド物、並びに4種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物(ベンジルアルコール及びK-FLEX(登録商標)850Sを異なった比率で含むもの、及びベンジルアルコール:OE-400(1:1))のサンプルを比較した、油性マーカー(permanent marker)に対する、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて達成された洗濯性の結果(ΔE
*)を示す図である。
【
図31】TXMB、K-FLEX(登録商標)850S、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB及びK-FLEX(登録商標)850S又は975Pを含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物でのバインダーあたりで計算したVOCを比較した、各種のペイントバインダー(Encor 471、EPS2533、Acronal 296D、Encor 626、VSR-1050、及びEncor379G)でのVOC寄与計算値(g/L)を示す図である(バインダーに依存)(実施例21参照)。
【
図32】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(70:30)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、スチレンアクリルバインダー(Encor 471)で達成される初期及び最終のスクラブ抵抗性の結果(スクラブサイクル数)を示す図である。
【
図33】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(55:45)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、また別のスチレンアクリルバインダー(EPS 2533)で達成される初期及び最終のスクラブ抵抗性の結果(スクラブサイクル数)を示す図である。
【
図34】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(90:10)及び(10:90)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、さらにまた別のスチレンアクリルバインダー(Acronal 296D)で達成される初期及び最終のスクラブ抵抗性の結果(スクラブサイクル数)を示す図である。
【
図35】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(90:10)及び(10:90)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、100%アクリルバインダー(Encor 626)で達成される初期及び最終のスクラブ抵抗性の結果(スクラブサイクル数)を示す図である。
【
図36】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(90:10)及び(40:60)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、また別の100%アクリルバインダー(VSR-1050)で達成される初期及び最終のスクラブ抵抗性の結果(スクラブサイクル数)を示す図である。
【
図37】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(80:20)及び(50:50)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、ビニルアクリルバインダー(Encor 379G)で達成される初期及び最終のスクラブ抵抗性の結果(スクラブサイクル数)を示す図である。
【
図38】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(70:30)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 471によって達成される1日及び7日のブロック抵抗性の結果を、横に並べて比較して示した図である。
【
図39】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(30:70)及び(55:45)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、EPS 2533で達成される1日及び7日のブロック抵抗性の結果(等級)を、横に並べて比較して示した図である。
【
図40】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(10:90)及び(90:10)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Acronal 296Dで達成される1日及び7日のブロック抵抗性の結果を、横に並べて比較して示した図である。
【
図41】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(10:90)及び(90:10)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 626で達成される1日及び7日のブロック抵抗性の結果を、横に並べて比較して示した図である。
【
図42】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(10:90)及び(40:60)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、VSR-1050よって達成される1日及び7日のブロック抵抗性の結果を、横に並べて比較して示した図である。
【
図43】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(50:50)及び(80:20)の比率で含む、2種の本発明の低VOCの機官能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 379Gでの、1日及び7日のブロック抵抗性の結果を、横に並べて比較して示した図である。
【
図44】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(70:30)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 471で達成される光沢の結果(単位)を示す図である。
【
図45】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(55:45)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、EPS 2533で達成された光沢の結果を示す図である。
【
図46】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(90:10)及び(10:90)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Acronal 296Dで達成された光沢の結果を示す図である。
【
図47】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(10:90)及び(90:10)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 626で達成された光沢の結果を示す図である。
【
図48】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(90:10)及び(40:60)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、VSR-1050で達成された光沢の結果を示す図である。
【
図49】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(50:50)及び(80:20)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 379Gで達成された光沢の結果を示す図である。
【
図50】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(70:30)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 471で達成される吸塵抵抗性の結果(Δ%Y)を示す図である。
【
図51】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(55:45)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、EPS 2533で達成された吸塵抵抗性の結果を示す図である。
【
図52】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(90:10)の比率で含む、1種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Acronal 296Dで達成された吸塵抵抗性の結果を示す図である。
【
図53】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(90:10)及び(40:60)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、VSR-1050で達成された吸塵抵抗性の結果を示す図である。
【
図54】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(10:90)及び(90:10)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 626で達成された吸塵抵抗性の結果を示す図である。
【
図55】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(50:50)及び(80:20)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 379Gで達成された吸塵抵抗性の結果を示す図である。
【
図56】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(70:30)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 471で達成された低温コアレセンスの結果(等級)を示す図である。
【
図57】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(55:45)及び(30:70)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、EPS 2533で達成された低温コアレセンスの結果を示す図である。
【
図58】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)975P、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを(90:10)及び(10:90)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Acronal 296Dで達成された低温コアレセンスの結果を示す図である。
【
図59】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(10:90)及び(90:10)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 626で達成された低温コアレセンスの結果を示す図である。
【
図60】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(90:10)及び(40:60)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、VSR-1050で達成された低温コアレセンスの結果を示す図である。
【
図61】TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びにTXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを(50:50)及び(80:20)の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、Encor 379Gで達成された低温コアレセンスの結果を示す図である。
【
図62】プロピレングリコールジベンゾエート及びジプロピレングリコールn-ブチルエーテルのブレンド物の使用(左画像)、並びにプロピレングリコールジベンゾエート及びベンジルアルコールを含む本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物の使用(右画像)を比較した、スチールパネルへ塗布した金属への水性直接コーティング(表5)で達成された、湿時接着性の結果を示す写真画像であり、ここでは、本発明の多機能添加剤ブレンド物によって、湿時接着性が大幅に改良されている。
【
図63】プロピレングリコールジベンゾエート及びジプロピレングリコールn-ブチルエーテルのブレンド物、並びにブチルベンジルフタレート及びジプロピレングリコールn-ブチルエーテルのブレンド物、並びにプロピレングリコールジベンゾエート及びベンジルアルコールを含む本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、水性の金属への直接コーティング(表5)で経時的に達成されるKoenig硬度の結果を示す図である。
【
図64】PGDB:DPnBの1:1ブレンド物、BBP:DPnBの1:1ブレンド物、並びにPGDB:ベンジルアルコール(1:1)及びK-FLEX(登録商標)850S:ベンジルアルコール(1:1)の、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、金属への直接コーティングで達成される、経時的なKoenig硬度の結果を示す図である。
【
図65】PGDB:DPnBの1:1ブレンド物、BBP:DPnBの1:1ブレンド物、並びにPGDB:ベンジルアルコール(1:1)及びK-FLEX(登録商標)850S:ベンジルアルコール(1:1)の、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、金属への直接コーティングで達成される、ブロック抵抗性の結果(23℃)を示す図である。
【
図66】PGDB:DPnBの1:1ブレンド物、BBP:DPnBの1:1ブレンド物、並びにPGDB:ベンジルアルコール(1:1)及びK-FLEX(登録商標)850S:ベンジルアルコール(1:1)の、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、金属への直接コーティングで達成される、ブロック抵抗性の結果(50℃)を示す図である。
【
図67】PGDB:DPnBの1:1ブレンド物、BBP:DPnBの1:1ブレンド物、並びにPGDB:ベンジルアルコール(1:1)及びK-FLEX(登録商標)850S:ベンジルアルコール(1:1)の、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、金属への直接コーティングで達成される、乾時及び湿時の接着性の結果を示す図である。
【
図68】TXMB、TEGDO、K-FLEX(登録商標)850S、並びにベンジルアルコール及びジベンゾエートを各種の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、スチレンアクリルバインダーで達成される、冷凍-解凍の結果を示す図である。(TXMBについては、サンプルがゲル化したため、データなし)。
【
図69】TXMB、TEGDO、K-FLEX(登録商標)850S、並びにベンジルアルコール及びジベンゾエートを各種の比率で含む、2種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を比較した、全アクリルバインダーで達成される、冷凍-解凍の結果を示す図である。
【
図70】バインダーに対して2.5重量%の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物のX-3411を用いてブレンドしたEncor 626の写真画像であって、低VOC多機能添加剤ブレンド物を組み入れた安定されたポリマーエマルションを示している。
【
図71】バインダーに対して1.1重量%のベンジルアルコールを用いてブレンドしたEncor 626の写真画像であり、ジャーの底にアグリゲート/フロキュラントが認められ、ベンジルアルコール単独では、ポリマー(バインダー)を不安定化させることを示している。
【
図72】バインダーに対して3.95重量%でベンジルアルコールを後添加した、完全配合のEncore 471セミグロスの写真画像であるが、アグリゲート及びフロキュラントが生成したことが認められ、ベンジルアルコール単独では、ポリマー(バインダー)を不安定化させることを示している。
【
図73】バインダーに対して7.9重量%のX-3411(3.95重量%のベンジルアルコールに相当する)を使用した、完全配合のセミグロスEncor 471の写真画像であるが、ベンジルアルコールと本発明によるジベンゾエートとのブレンド物によって、安定なコーティングが得られたことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、水性コーティング及びその他の水性ポリマー成膜性組成物において使用するための、低VOC多機能添加剤ブレンド物を目的としているが、そこでは、コアレセンスに加えて、各種の性質の中でも、従来からの高揮発性又は低揮発性のコアレセント剤を単独で使用した場合に達せられるよりは、改良された、硬度及びスクラブ抵抗性、硬度の発現性、ブロック抵抗性、吸塵抵抗性、湿時接着性、及び耐食性(フラッシュ錆抵抗性)を与える。本発明はさらに、本発明のコアレセント組成物を添加することによって、従来からの高揮発性又は低揮発性のコアレセント剤を単独で使用した場合に達せられるよりは優る、水性ポリマー成膜性組成物の実施性能を改良するための方法も目的としている。本発明はさらに、水性成膜性組成物のフラッシュ錆抵抗性を向上させるための、ある種の有機酸を取り込むことによる、ある種の低VOC多機能添加剤組成物及び/又は水性ポリマー系を調製するための方法も目的としている。
【0046】
以下のように、用語を定義する。
「バインダー」は、ペイント又はコーティング配合物又はその他の水性ポリマー成膜性組成物のベースを構成する、ポリマー及び樹脂を意味し、及び含むものとする。「バインダー」、「ポリマー」、及び「樹脂」は、特に断らない限り、本明細書においては、相互に言い換え可能として使用される。
【0047】
「高揮発度(high volatility)」、「高揮発性(high volatile)」、及び「高VOC」は、本発明の多機能添加剤ブレンド物のある種の成分に関連して使用される場合、本明細書においては、相互に言い換え可能として使用される。理解されるように、「VOC」は、「揮発性有機化合物(volatile organic compound)」を意味している。
【0048】
「低揮発度(low volatility)」、「低揮発性(low volatile)」、及び「低VOC」は、本発明の多機能添加剤ブレンド物のある種の成分に関連して使用される場合、本明細書においては、相互に言い換え可能として使用される。
【0049】
「配合物」は、バインダー(ポリマー)、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物、及び組成物の中で従来から使用されていた他の成分を含む、ペイント又はコーティング組成物又は他の水性ポリマー成膜性組成物(以下で定義する)を意味し、及び含むものとする。
【0050】
「水性ポリマー成膜性組成物」は、公知の「成膜剤」である組成物を意味し、及び含むものとするが、それには、以下のものが含まれる(これらに限定されない):ペイント及びその他のコーティング(コーティングされる基材とは無関係)、膜、フィルムコーティング、接着剤、にかわ、シーラント、コーキング剤、及びいくつかのインキ。「水性ポリマー系」及び「水性ポリマー成膜材」又は「水性ポリマー成膜性組成物」は、本明細書においては、相互に言い換え可能として使用される。疑念を避けるために言えば、「水性コーティング」は、「水性ポリマー成膜性組成物」とも考えられる。使用又は用途に応じて、「水性コーティング」又は「ペイント」又は「ペイント配合物」という文言は、「水性ポリマー成膜性組成物」に代えて使用してよい。
【0051】
「多機能添加剤」又は「多機能添加剤ブレンド物」又は「低VOC多機能添加剤」又は「低VOC多機能添加剤ブレンド物」は、本発明の組成物を記述するのに、相互に言い換え可能として使用される。「多機能」は、本発明の低VOC多機能添加剤によって与えられる各種の機能を意味し、及び含むものとするが、たとえば、コアレセンスに加えて、とりわけ、改良された硬度、硬度の発現速度、スクラブ抵抗性、ブロック抵抗性、吸塵抵抗性、湿時接着性、及び腐食(フラッシュ錆)抵抗性が挙げられる。
【0052】
具体的には、本発明は、公知の低揮発性(VOC)コアレシング成分及び高揮発性(VOC)成分の混合物を含む低VOC多機能添加剤ブレンド物を目的としているが、それらの内のいくつかは、従来からは、知られても認識されてもおらず、或いは今日まで、コアレセント剤としては使用されたことがないものである。本発明の多機能添加剤には、場合によっては、水性ポリマー系におけるフラッシュ錆抵抗性を向上させる目的で、ある種の有機酸たとえば、安息香酸が含まれていてもよい。有機酸の塩もまた、フラッシュ錆抵抗性を向上させる目的で、本発明の低VOC多機能添加剤を含む水性コーティングに添加してもよい。
【0053】
本発明の多機能添加剤において使用するための、低VOCのコアレセント成分としては可塑剤が挙げられる。好適なジベンゾエート可塑剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ジエチレングリコールジベンゾエート(DEGDB)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)、1,2-プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、たとえばDEGDB及びDPGDBのジベンゾエートのブレンド物、又はDEGDB、DPGDB、及びPGDBの3種ブレンド物、並びにそれらの混合物。好適なモノベンゾエート可塑剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:2-エチルヘキシルベンゾエート、3-フェニルプロピルベンゾエート、2-メチル-3-フェニルプロピルベンゾエート、イソデシルベンゾエート、イソノニルベンゾエート及びそれらの混合物。その他のベンゾエートエステル及びそれらのブレンド物もまた、本発明においては好適である。好適なフタレート可塑剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ジ-n-ブチルフタレート(DBP)、ジイソブチルフタレート(DIBP)、又はブチルベンジルフタレート(BBP)。好適なテレフタレート可塑剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート(DOTP)、ジブチルテレフタレート(DBT)、又はジイソペンチルテレフタレート(DPT)。好適なサイトレート可塑剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アセチルトリブチルサイトレート、トリ-n-ブチルサイトレートなど。選択されたポリマー系と共に使用することが可能な、好適な1,2-シクロヘキサンジカルボキシレートエステル可塑剤としては、ジイソノニル-1、2-シクロヘキサンジカルボキシレート(Hexamoll(登録商標)DINCH(登録商標)、BASF製)が挙げられる。その他の、より低いVOC含量の可塑剤は、本明細書の開示に基づけば、当業者には公知であろう。
【0054】
本発明の低VOC多機能添加剤の中で使用するのに好適な、非可塑剤で、低VOCのコアレセント剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:トリエチレングリコールジオクタノエート(TEGDO)、Optifilm(商標)Enhancer 400(OE-400)(トリエチレングリコールビス(エチルヘキサノエート-2)、Eastman Chemicalから入手可能)、並びにアジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸の精製されたジイソブチルエステルの混合物(Coasol(商標)及びCoasol(商標)290 Plus、DOWから市販)。その他の、非可塑剤で、低VOCのコアレセント剤又は成膜剤は、本明細書の開示に基づけば、当業者には公知であろう。
【0055】
本発明の低VOC多機能添加剤の中で使用される、より高いVOCの成分としては、公知の高揮発性コアレセント剤、さらには、公知ではなく、及び今日までコアレシング剤としては使用されたことがない、その他の高揮発性成分が挙げられる。本発明のブレンド物で使用するのに好適な、より高いVOCの成分としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:コアレセント剤として使用されるグリコールエーテル、たとえば、ブチルセルソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)、butyl Carbitol(商標)(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGME)、及びジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(DPnB)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(TXMB)、ベンジルアミン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、3-フェニルプロパノール、2-メチル-3-フェニルプロパノール、バニリン、β-メチルシンナミルアルコール(シプリオール)。これらの内では、コストを低減させ、より低いVOCの化合物を達成させようとの努力において、歴史的には、TXMBが、OE-400(低VOCのコアレセント剤)と組み合わせられた高VOCのコアレセント剤である。この従来から知られている組合せの、本発明のコアレセント剤に対する比較評価を、実施例に示している。TXMBを、ジベンゾエートとブレンドしたときに、相乗効果を有しているとは、これまで知られておらず、予想されることすらなかった。驚くべきことには、TXMB:ジベンゾエートのブレンド物が、これまでに知られていたTXMB:OE-400のブレンド物よりも、はるかに良好な作用を有しているという結果が示された。
【0056】
コアレセント剤としては、これまで未知であるか、認識されていないか、又は使用されたことがない、より高いVOCの成分、たとえば、ベンジルアミン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、3-フェニルプロパノール、2-メチル-3-フェニルプロパノール、バニリン、又はβ-メチルシンナミルアルコール(シプリオール)に関しては、先に挙げたような、より低いVOCのコアレセント剤とブレンドしたときに、予想もされなかったような結果が起きた。単独で使用した場合、これらの成分のいくつかのものは、評価したときに、典型的なコーティングポリマーとは相溶性がなく、実際に、それらを不安定化させると考えられていた。しかしながら、本明細書に開示されているような、より低いVOCのコアレセント成分と組み合わせると、驚くべきことには、それらのポリマーが不安定化されることがなかった。これらのより高いVOCの成分を、低VOCのコアレセント剤とブレンドすると、予想もしなかったことであるが、改良された実施性能が得られる一方で、コーティング及びその他の水性ポリマー系に対して、依然としてVOC含量が低いままである。ここで一例を挙げれば、ベンジルアルコール:850Sのブレンド物が、ポリマーエマルションの中へのベンジルアルコールの取込みを改良し、より安定な製品を得ることが可能となった。そのような結果は、全体としては、予想されなかったが、その理由は、ベンジルアルコールは、たとえ低レベルでの添加であってさえも、アクリルバインダー及びスチレン-アクリルバインダーとは相溶性がないということが知られていたからである。
【0057】
その他の、より高いVOC含量の成分は、本明細書の開示に基づけば、当業者には公知であろう。
【0058】
本発明の低VOC多機能添加剤の中に含まれていてもよい他の成分としては、腐食を防ぐ成分、特にはフラッシュ錆防止剤が挙げられる。フラッシュ錆抵抗性は、各種の用途の内でも、金属への直接水性コーティング物において、特に重要である。有機酸、たとえば安息香酸、フタル酸、コハク酸は、ある種のコーティングのフラッシュ錆抵抗性を向上させる。しかしながら、有機酸たとえば、安息香酸は、水に対する溶解度が極めて低いことが知られており、そのことは、水性ポリマー成膜性組成物の中にそれらを組み入れようとすると、難題となる。
【0059】
本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物は、有機酸たとえば、安息香酸を、水性ポリマー成膜性組成物の中に組み入れるための新規な方法を提供する。1つの方法においては、最初に、ジベンゾエートを合成する際に、その反応において安息香酸を1%~30%過剰モルで使用することにより、安息香酸を低揮発性ジベンゾエート成分の中に組み入れる。そのようにして得られた、過剰の酸を含有する、低揮発性ジベンゾエートエステルを、次いで、高揮発性成分と組み合わせて、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を形成させる。
【0060】
別な方法として、安息香酸を、低揮発性成分及び高揮発性成分と共に、同時に全部混合して、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を形成させる。或いは、安息香酸を、前もって形成された本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物に対して添加し、次いでそれを、水性コーティングに添加して、そのコーティングの湿時接着性、硬度の発現の初速度、及びフラッシュ錆抵抗性を改良することも可能である。
【0061】
さらにまた別の方法においては、最初に安息香酸を、あらかじめ合成されたジベンゾエートの中に、金属への直接水性コーティング配合に添加したときにフラッシュ錆抵抗性を改良するに十分な濃度で溶解させ、次いで、高揮発性成分を添加して、低VOC多機能添加剤ブレンド物を形成させる。
【0062】
フラッシュ錆抵抗性を向上させるための好ましい実施態様には、安息香酸、ジベンゾエート、及びベンジルアルコールが含まれるが、他の有機酸を、本発明の多機能添加剤の高揮発性成分及び低揮発性成分の中に、本明細書に記載された方法で、組み入れてもよい。
【0063】
有機酸の塩、たとえば安息香酸ナトリウムも、一般的には、上述の方法の目的では不溶性ではあるが、それらは水に可溶性であり、後ほど、本発明の低VOC多機能添加剤を含む水性コーティングに添加して、フラッシュ錆抵抗性を向上させ、湿時接着性及び硬度の発現の初速度を改良させることも可能である。一例として安息香酸ナトリウムを、高揮発性成分としてのベンジルアルコール、及び低揮発性成分としてのプロピレングリコールジベンゾエートを含む水性コーティングに添加してもよい。
【0064】
したがって、本発明の低VOC多機能添加剤のブレンド物には、少なくとも1種の高揮発性成分及び少なくとも1種の低揮発性成分が含まれる。そのブレンド物の少なくとも1種の成分が、芳香族環を含む分子構造を有しているのが好ましいが、本発明が、それに限定されない。用途/使用に応じて、先に述べたようにして、有機酸を、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物に組み入れるか、又はそれに添加してもよい。或いは、有機酸の塩を、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、水性ポリマー成膜性組成物に添加してもよい。
【0065】
本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物は、広く各種の水性コーティング、又はその他の水性ポリマー成膜性組成物において使用することができる。本発明は、何か特定のポリマーに限定されない。一般的に、ペイント又はコーティングの中に配合することが可能な、いかなる公知のポリマーも、本発明に従えば、新規な低VOC多機能添加剤ブレンド物と組み合わせて使用して、実施性能を犠牲にすることなく、VOC含量が低いペイント又はコーティングを調製することができる。それに加えて、その低VOC多機能添加剤ブレンド物は、接着剤、にかわ、シーラント、コーキング剤、及びいくつかのインキの組成物などを含めて(これらに限定されない)、部分的又は全面的に、膜の形成に依存するポリマー組成物と共に使用することができる。
【0066】
水性ポリマー成膜性組成物には、各種のポリマーが含まれていてよい。好適なポリマーとしては、以下のものが挙げられる(これらに限定されない):各種のラテックス及びビニルポリマー、たとえば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、又はポリビニルブチラール;各種のポリウレタン及びそれらのコポリマー;ポリアミド、各種のポリスルフィド;ニトロセルロース、及びその他のセルロース系ポリマー;ポリ酢酸ビニル及びそれらのコポリマー、エチレン酢酸ビニル、及び酢酸ビニル-エチレン;及び各種のポリアクリレート、並びにそれらのコポリマー。
【0067】
特にアクリレートは、本発明の多機能添加剤ブレンド物と共に使用して各種の硬度のポリマーの大きな群を構成し、たとえば以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:各種のメタクリル酸ポリアルキル、たとえばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、又はメタクリル酸アリル;各種の芳香族メタクリレートたとえば、メタクリル酸ベンジル;各種のアクリル酸アルキル、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、又はアクリル酸2-エチルヘキシル。
【0068】
アクリル樹脂(acrylics)もまた有用なポリマーであり、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:100%アクリル樹脂、アクリル系コポリマー、アクリルたとえば、メタクリル酸;ビニルアクリル樹脂;スチレン化アクリル樹脂、及びアクリル-エポキシハイブリッド。
【0069】
その他のポリマーとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アルキド、エポキシ、フェノール-ホルムアルデヒドタイプ;メラミン;バーサチック酸のビニルエステルなど。いくつかのポリマー、たとえばアルキドは、典型的には、コアレセント剤を必要としないが、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物からは、硬度の早期発現、又は硬度発現の初速度の点で、メリットが得られる可能性がある。それらはさらに、本明細書で説明した、その他の性能の改良でも、メリットが得られる可能性がある。水性コーティング又はその他の水性ポリマー成膜性組成物において有用なその他のポリマーは、本明細書の開示に基づけば、当業者には公知であろう。
【0070】
本発明の多機能添加剤ブレンド物における、高揮発性(VOC)成分の、低揮発性(VOC)成分に対する比率は、約10:1から約1:10までの間で変えられる。比率は、多機能添加剤ブレンド物の特定の成分、コーティングの配合、及び/又は想定される用途又は使用に合わせて、変化させることができる。
【0071】
一般的に、コーティング配合物の中で使用される本発明の多機能添加剤ブレンド物の量は、32゜F~40゜F(約0゜~4.4℃)のMFFT(最低成膜温度=minimum film forming temperature)を達成させあるのに必要な量で決まってくるが、それは、ペイント又はコーティングが、寒冷な気候でも塗布可能であるかどうかを決めるのに使用される基準の温度である。本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物の量は、そのコーティング配合物中のバインダー(ポリマー又は樹脂)の100グラムを基準にした、バインダーに対するパーセント(バインダー(ポリマー)に対する重量%)、又は、配合物中の全部の成分の合計重量を基準にした配合のパーセント(重量%)として表される。コーティングにおいては、顔料の容積濃度が高くなるにつれて、配合物中の本発明の多機能添加剤ブレンド物のパーセントは小さくなるが、バインダーに対するパーセントは一定に保たれる。
【0072】
バインダー(ポリマー)に対するパーセント、又は配合物の中のパーセントを基準にした、本発明の多機能添加剤ブレンド物の量の例は、実施例に記載されている。バインダー量に対する好適パーセントは、100グラムのバインダーを基準にして、約0.1%~約15%の範囲であるが、その量は、特定のバインダーや使用される他の成分に応じて、変更されるであろう。(全成分の合計重量を基準とした)配合物における好適なパーセントは、その配合の成分の合計重量を基準にして、約0.8重量%~約5重量%の範囲である。
【0073】
本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を使用するための用途としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:建築用コーティング、産業用コーティング、OEMコーティング、内装用及び外装用ペイント、金属コーティング(金属への直接コーティングを含む)、海洋用コーティング、フィルムコーティング、ビニルフィルム組成物、プラスチック用コーティング、木材用コーティング及び処理、紙用コーティング、布用コーティング、織物用コーティング、壁紙用コーティング、装飾コーティング、構造物用コーティング、セメントコーティング、コンクリートコーティング、フロアコーティング、ワニス、及びインキ。その他の有用な用途としては、以下における使用が挙げられる:接着性組成物、にかわ、又はその他のコアレセント剤又は膜の形成を必要とする水性ポリマー成膜性組成物、たとえばシーラント及びコーキング剤。さらに他の有用な用途は、当業者には公知であろう。
【0074】
本発明の低VOC多機能添加剤はさらに、すでに調製された水性ポリマー系に添加される、顔料又は着色剤(色材、染料)のための展色剤又はキャリヤーとしての用途がある。この用途において使用される低VOC多機能添加剤ブレンド物の量は、その特定の水性ポリマー系、顔料又は着色剤の素性及びタイプ、及びその水性ポリマー系で必要とされる色の量に応じて、変化されるであろう。
【0075】
低VOC多機能添加剤ブレンド物のある種の成分は、缶内(in-can)貯蔵に関連して配合物の堅牢性を向上させる効果を示し、そのため、潜在的に、配合及びプロセスに応じて、従来必要とされていた缶内抗菌剤成分を顕著に低下させるという、さらなるメリットも与える。
【0076】
以下の非限定的な実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0077】
実施例
試験物質
<高揮発度成分>:
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(TXMB又はTMPDMIB)(Eastmanから、Texanol(商標)として市販)
ベンジルアルコール
3-フェニルプロパノール(3PP)
2-メチル-3-フェニルプロパノール(2M3PP)
バニリン
β-メチルシンナミルアルコール(Cypriol)
【0078】
<より低いVOCの可塑剤/コアレセント剤/成膜剤>:
K-FLEX(登録商標)PG(プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB))
K-FLEX(登録商標)500(DEGDB/DPGDBブレンド物)
K-FLEX(登録商標)850S、又は850S(新規なグレードのDEGDB/DPGDBブレンド物)
K-FLEX(登録商標)975P、又は975P(DEGDB/DPGDB/1,2-PGDBを含む、新規なジベンゾエートトリブレンド物)
トリエチレングリコールジオクタノエート(TEGDO)、複数の供給源
Optifilm(商標)Enhancer 400、又はOE-400(Safety Data Sheetによれば、トリエチレングリコールビス(エチルヘキサノエート-2)、Eastman Chemicalから市販)
【0079】
<本発明のVOCが低い多機能添加剤ブレンド物の例>:
X-3411、1:1の、ベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S
X-3412、1:2の、ベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S
X-3413、1:3の、ベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S
TXMB:K-FLEX(登録商標)ジベンゾエート(10:1から1:10までの間の各種の比率の、TXMB:K-FLEX(登録商標)850S若しくは975P)
ベンジルアルコール:OE-400、1:1(特に断らない限り)
Cypriol:K-FLEX(登録商標)850S、1:1
3-PP:K-FLEX(登録商標)850S、1:1
2M3PP:K-FLEX(登録商標)850S、1:1
注:上記の比率は、実施例で試験した物質のものであり、本発明の多機能添加剤ブレンド物における高VOC成分対低VOC成分との比率の範囲が、10:1から1:10の間で変化する可能性はあるが、それでも本発明の範囲の内である。
【0080】
<報告される比較例のコアレセント剤ブレンド物>:
TXMB:OE-400(すべての例で、比率が1:1)
<コーティング>:
コーティング材料のための従来からのバインダーが、コアレセンス及び改良された性質を与える、本発明の多機能添加剤ブレンド物の能力を評価するために選択された。各種のバインダーを用い、各種のガラス転移温度及び最低成膜温度を有する、実験的なコーティングが使用された。本発明が、評価されたコーティングの中で使用されたものに限定されない。以下のバインダー(ポリマー、樹脂)が評価にかけられた。
スチレン-アクリル樹脂(ArkemaからEncor(登録商標)471として市販、Tg約44℃)
スチレン-アクリル樹脂(EPS MaterialsからEPS(登録商標)2533として市販、Tg:N/A)
アクリル樹脂100%(ArkemaからEncor(登録商標)626として市販、Tg約29℃)
アクリル樹脂100%(Dow ChemicalからRhoplex(商標)VSR 1050として市販、Tg約17℃)
スチレン-アクリル樹脂(BASFからAcronal(登録商標)296Dとして市販、Tg約22℃)
スチレン-アクリル樹脂(ArkemaからEncor(登録商標)379Gとして市販、Tg約19℃)
アクリル樹脂100%(Specialty Polymers Inc.からRayCryl 1207として市販(缶内抗菌剤なしで提供される特別グレード)Tg約19℃)
【0081】
〔試験方法〕:
pH:ASTM E70
コーティングのpHは、汎用電極を備えたBeckman 310pH計を用いて測定した。水酸化アンモニウム(28%)を使用して、コーティングのpHを、8.5~9.5の範囲のpHに調節した。
【0082】
Stormer粘度:ASTM D562
初期Stormer粘度はパドル形式を備えた、Brookfield KU-2粘度計を用いて測定した。レオロジー調節剤を添加して、初期粘度が、90~110KUの範囲に入るように調節した。
【0083】
MFFT:ASTM D2354
最低膜形成温度は、Gardco MFFT Bar 90装置を用いて評価した。ノニオン性界面活性剤及びコアレセント剤を用いてブレンドしたポリマーラテックスエマルションを、MFFTドローダウンアプリケーターを用いてドローダウンし、膜の形成を、1時間後に評価した。その装置の上で設定した温度勾配は、-5℃~13℃であった。肉眼で、膜形成温度を評価し、温度は、別の温度プローブを用いて測定した。
【0084】
低温コアレセンス(LTC):ASTM D7306
ペイント及び装置を、40゜Fで4時間かけてコンディショニングした。Leneta Form HK上で、ペイントをドローダウンし、湿時10ミルとした。水平状態でその膜を、40゜Fで18時間かけて乾燥させ、等級付けをした(実験室等級、10=優れている、0=極めて不十分)。
【0085】
スクラビング性:ASTM D2486
7ミルのDowアプリケーターバーを使用して、Leneta F121-10Nチャートにコーティングを塗布し、23℃、50%RHで7日間かけて乾燥させた。スクラビング性は、Gardco D10 Washability and Weartesterを用いて測定した。研磨媒体(SC-2)を備えた、10ミルのシム(shim)を採用した。初期の損傷を記録し、完全な損傷は、シムを横切った連続の細い線として、定義した。
【0086】
ブロック抵抗性:ASTM D4946
コーティングを、3ミルのバードフィルムアプリケーター(bird film applicator)を使用して、Leneta型式WBチャートに塗布し、環境制御室内で、23℃、50%相対湿度で7日間かけて乾燥させた。1.5インチ平方のサンプルを作製し、No.8ストッパーの上に置いた1kgの重しを用い、周囲温度又は120゜Fで30分かけて、コーティング表面をコーティング表面に配向させた。次いで、それらのサンプルを、室温で30分かけて平衡に達しさせ、次いで予断を避ける目的で、「ブラインド」試験により評価した。
【0087】
光沢:ASTM D523
コーティングを、3ミルのバードフィルムアプリケーターを使用して、Leneta型式WBチャートに塗布し、環境制御室内で、23℃、50%相対湿度で7日間かけて乾燥させた。光沢測定は、Gardco micro-Tri-gloss meter model4446を使用して、3回繰り返して実施した。
【0088】
熱安定性:ASTM D1849
120゜F、2週間で試験した。初期粘度及び最終粘度を測定した。
【0089】
流動性及びレベリング性:ASTM D4062
Lenetaのテストブレードを使用して、ペイントを塗布した。次いで、乾燥させたペイントについて、等級付けを行った。
【0090】
硬度/硬度の発現:ASTM D4366A
コーティングを、3ミルのバードフィルムアプリケーターを使用して、アルミニウム A36Qパネルに塗布し、環境制御室中、23℃、50%相対湿度で乾燥させた。硬度は、Gardco Koenig及び/又はPersoz Hardness Rockerを使用し、それぞれの試験で、相当するペンデュラムを用いて測定した。硬度の値は、3回の測定の平均値として報告した。
【0091】
冷凍/解凍安定性:ASTM D2243
0℃で冷凍、周囲温度で解凍させた。3サイクルを使用した。
耐水洗性:
ペイントサンプルは、7ミルのDowブレードを用いて、Leneta P-121-10Nスクラブチャート上にドローダウンした。次いでそれらのパネルを、水平位置で、7日間かけて自然乾燥させた。それぞれのパネルに対して、汚れ物質を、幅1インチの領域で塗布したが、汚れ物質の間には0.25インチの間隔を設けた。試験した汚れ物質は、以下のものである:口紅(Rimmel、Rosseto #510、赤)、クレヨン(Crayola、赤)、ケチャップ(Hunts Tomato Ketchup、保存剤なし)、カラシ(French’s Classic Yellow調製済みカラシパケット)、鉛筆(Papermate Micrado Classic、HB#2)、コーヒー(Safeway Signature Select:sun Kissed Blonde)、食用色素(McCormick Food Color & Egg Dye、緑)、ワイン(Gnarly Head Wines、old vine zinfandel、2016、Lodi zinfandel)、油性マーカー(Sharpie Magnum、黒)、ボールペン(Papermate Flexgrip Ultra 0.8F、黒)、及び水性マーカー(Mr.Sketch、青)。Kim wipeを使用して、コーヒー、ワイン、及び食用色素を塗布したが、それには、パネルの上に乾燥させたKim wipeを置き、汚れ物質でそれを飽和させた。汚れ物質を1時間放置し、その後、過剰な分は、すべて除去した。10gのFormula409 multipurpose-lemon硬質表面洗浄剤を付けたC-31スポンジを使用して、それぞれのパネルを、50サイクル洗浄した。油性マーカー、水性マーカー、及びボールペンの汚れ物質は、ブリードを避けるために、別途に洗浄した。次いで、パネルを水洗し、吸い取り紙で乾かし、水平位置で一夜かけて、完全に乾燥させた。比色計を用いて、汚染領域対白色非洗浄領域のΔ(デルタ)Eを測定した。肉眼での評価も実施した。
【0092】
吸塵性:
ペイントサンプルを、アルミニウムQ36パネルの上に、3ミルのドローダウンにより塗布した。そのパネルを、水平位置で、7日間かけて自然乾燥させた。パネルの上半分を覆い、被覆されていない部分全体に均等に、合成の塵を散布した。そのパネルを、50℃のオーブンに30分間入れておいた。オーブンからパネルを取り出し、パネルを軽く叩いて、付着していない塵を落とした。パネルの上部の覆いを取った。試験部分と非試験部分の%Y反射率を読み取った。
【0093】
磨き抵抗性:ASTM D6736
【0094】
冷凍・解凍:ASTM D2243
冷凍-解凍サイクルを始める前に、配合されたコーティングを、環境制御室の中、23℃、50%相対湿度で7日間かけて、平衡に達しさせた。サンプルを、3回の冷凍サイクルにかけた。それぞれの冷凍-解凍サイクルは、サンプルを、-18℃のフリーザーの中に17時間入れておき、次いで、室温で7時間かけて平衡化させ、次いで粘度を測定し、次いで直ちに冷凍-解凍サイクルを繰り返すことからなっていた。粘度は、パドルタイプのローターを備えたStormer粘度計を使用して測定した。
【0095】
フラッシュ錆:
ドローダウンの前に、配合されたコーティングを、環境制御室の中、23℃、50%相対湿度で7日間かけて、平衡に達しさせた。シールしたポリカーボネートの箱を、水を満たしたトレーと共に、50℃に設定したオーブンの中に入れ、一夜かけて平衡に達しさせた。0.025gの合成の汚れを、冷間圧延スチールパネルの上に、30秒間擦りつけた。圧縮空気を使用して、過剰の汚れを表面から取り除いた。3ミルのバードフィルムアプリケーターを使用して、それぞれのパネルの上にコーティングをドローダウンし、次いで直ちに、パネルの上に水のミストをスプレーした。次いでそのパネルを直ちに、オーブンの中の平衡化させたポリカーボネートチャンバーの中に入れた。90分後に、その試験パネルを取り出し、錆の形成を、0~4の等級で評価した。等級0は、錆の形成がまったくないことに相当し、等級4は、激しいフラッシュ錆に相当するであろう。それぞれの試験は、2回重複して実施し、未実施の(negative)対照パネルと並べて展示した。
【0096】
湿時接着性:ASTM D3359方法B:
コーティングを、清浄化した冷間圧延スチールパネル上で、6ミル(湿時)でドローダウンし、ASTMの標準条件で21日間かけて乾燥させた。それらのパネルを、脱イオン水の中に60分間、完全に浸漬させた。パネルを、1分間、穏やかに叩いて水を切った。三つの試験片で、5本歯を有する5mmのブレード(PA-2253)を使用して、同一のパネルの上に碁盤目をつけた。Intertape 51596を3インチの長さに切断し、触れていない中央部を、その碁盤目の上に置いた。人差し指を用いて、一度だけ、テープを強くこすりつけた。60秒経過後に、そのテープをすばやく引き離し、ASTM法を使用して、等級付けをした。
【0097】
使用したその他の試験法を、次の表に示す。
【0098】
【0099】
実施例において使用された塗料
コーティングは、一般的には、顔料、バインダー、溶媒、及びその他の添加剤たとえば、コアレセント剤又は成膜助剤との組合せ物である。そのバインダー(すなわち樹脂又はポリマー)は、通常、コーティングのネーミング通りの、たとえば、アクリル樹脂、ポリウレタン、スチレン-アクリル樹脂などである。バインダーは、そのコーティング組成物の、接着性、耐久性、可撓性、光沢、及びその他の物理的性質に関係している。実施例において使用される典型的なコーティング組成物は、以下の表1、2、3、及び4に示されたものであるが、本発明が、それらに限定されない。フラットコーティングは45%のPVCを含み、セミグロスは、14%のPVCを含み、全部のコーティングが、コアレセント剤の添加を考慮に入れずに、基材として、40%固形分であった。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
高揮発性化合物たとえば、TXMB、ベンジルアミン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、3-フェニルプロパノール(3-PP)、2-メチル-3-フェニルプロパノール、バニリン、又はβ-メチルシンナミルアルコール(シプリオール)を含む低VOC多機能添加剤ブレンド物を、従来からの低VOCのコアレセント剤又は成膜材たとえば(これらに限定されない)、ジベンゾエートエステル、モノベンゾエート、フタレート、テレフタレート、1,2-シクロヘキサンジカルボキシレートエステル、サイトレート、OE-400、TEGDOなどと組み合わせて使用したコーティングを配合することによって、VOC含量をより低いレベルに維持しながらも、業界標準の高VOCコアレセント剤の2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(TXMB)を単独、又はOE-400/TEGDOと組み合わせて含む、従来からの高VOCコーティング配合物に比較して、実施性能において予想もされなかった改良が達成されることが見出された。本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物もまた、従来からの低VOCのコアレセント化合物を単独で使用したのと比較して、VOC含量の最小限の増加を伴うが、実施性能において予想もされなかった改良を示した。改良は、配合の特定の成分の使用又は用途に依存して、変化する可能性がある。
【0106】
典型的には、コアレセント剤の担持レベルは、40゜F(約4.4℃)未満の最低膜形成温度(MFFT)を達成するために、各バインダーで必要とされる量を求めることによって決められる。本明細書における実施例においては、低VOC多機能添加剤についての担持レベルは、特に断らない限り、100グラムのバインダーを基準にして、バインダーに対する添加剤のパーセント(%)で表される。低VOC多機能添加剤のレベルは、時には、配合物の合計重量を基準にした、重量%で表すことも可能である。それぞれの配合物におけるVOC含量は、EPA Method 24に従って、TXMBを100%と仮定している。K-FLEX(登録商標)850SについてのVOC含量は、過去に公表されており(ASTM D2369に従って、2.2重量%)、それを使用してVOCを評価した。
【0107】
〔実施例1:スクラブ抵抗性の評価〕
ジベンゾエートコアレセント剤は、コアレセンスに加えて、TXMB単独で達成されるのと比較して、コーティングにおけるスクラブ抵抗性能の面でのメリットを与える。しかしながら、結果は、使用した特定のジベンゾエート及び、バインダー又は配合物の性質に依存して、変化する可能性がある。
【0108】
図1~6は、TXMB(高揮発性成分)と低揮発性成分(ジベンゾエートエステル)との各種の比率でのブレンド物を使用した本発明の低VOC多機能添加剤を、それらの成分のそれぞれを単独で用いて作製したペイントと対比させた、向上されたスクラブ抵抗性能を示している。実験サンプルにおいては、高揮発性成分のTXMBを、より低いVOCのジベンゾエートと組み合わせて、より低いVOCの多機能添加剤を形成させる。
図1に、TXMB単独、K-FLEX(登録商標)975P単独、及びTXMB対975Pの70:30ブレンド物を使用して、より硬いスチレン-アクリル樹脂(Encor 471)で達成されたスクラブ抵抗性の結果を示す。ブレンドされた低VOC多機能添加剤は、従来からの高揮発性成分のTXMB(それでも、市販のジベンゾエートよりは高い)よりも低いVOC、並びにTXMB対照及び市販のジベンゾエート単独と比較して、相乗的に改良されたスクラブ抵抗性を有していた。
【0109】
図2には、TXMB単独、K-FLEX(登録商標)975P単独、及びTXMB対975Pの70:30ブレンド物を比較した、また別のスチレン-アクリル樹脂(EPS 2533)を使用して達成された、同様のスクラブ抵抗性の結果を示した。
図3には、また別のスチレンアクリル樹脂(Acronal 296D)を使用した場合の、TXMB:975Pが10:90でブレンドされた低VOC多機能添加剤で達成された同様のスクラブ抵抗性の結果を示しているが、この樹脂においては、他のスチレン-アクリル樹脂に比較して、VOCがはるかに低かった。
【0110】
TXMB及びK-FLEX(登録商標)850Sを含む、ブレンドされた低VOC多機能添加剤を使用した場合でも、同様のスクラブ抵抗性の結果が得られた。
図4にも、100%アクリル樹脂(Encor 626)を使用し、低いVOCを有している場合の、TXMB:K-FLEX(登録商標)850Sを10:90で含む多機能添加剤で達成された、同様のスクラブ抵抗性の結果を示している。
図5にもさらに、また別の100%アクリル樹脂(VSR 1050)で使用した場合の、同一の多機能添加剤(10:90のTXMB:850S)で達成された同様の結果を示している。
図6にも、80:20の(TXMB:850Sを含む多機能添加剤を使用した、ビニルアクリル樹脂(Encor379G)で達成された同様の結果を示している。この多機能添加剤ブレンド物もまた、低いVOCを有していた。(TXMB:850S)及び(TXMB:975P)の各種の多機能添加剤ブレンド物でのさらに他のスクラブ抵抗性のデータは、実施例21で説明する。
【0111】
ASTM D2486を使用して、さらなるスクラブ抵抗性を、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて求め、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、及びX-3413のジベンゾエートをベースとする3種の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物、TXMB:OE-400(比率1:1)、及びまた別の本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物である、ベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)を比較した。結果を、
図21(a)(初期)及び21(b)(最終)に示す。本発明の多機能添加剤であるX-3413は、Encor 626セミグロスサンプルにおいては、TXMBに比較すると改良されたスクラブ抵抗性を、そしてOE-400及びK-FLEX(登録商標)850Sと同等のスクラブ抵抗性を示した。フラットサンプル及びEncor 471セミグロスにおいては、X-3411、X-3412、及びX-3413は、他のコアレセント剤及びブレンド物と同等の性能を示した。
【0112】
そのようにして得られた結果は、従来からの高揮発性TXMBコアレセント剤及び、より低いVOCのジベンゾエートコアレセント剤単独で達成されるのと比較して、本発明のブレンドされた多機能添加剤での、スクラブ抵抗性における顕著な改良を示していた。より低いVOCのジベンゾエートコアレセント剤が、最低のVOCを有していたものの、ジベンゾエート及びTXMBを含むブレンドされた多機能添加剤はやはり、従来からの高VOCコアレセント剤であるTXMB単独に比較して、顕著に、より低いVOCを有していた。
【0113】
〔実施例2:Koenig硬度〕
ASTM D4366Aの方法を使用した硬度試験を、以下のものについて実施した:Encor 471のフラット及びセミグロスのサンプル並びにEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びに3種の本発明の多機能添加剤ブレンド物(X-3411、(1:1)のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S;X-3412、(1:2)のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S;X-3413、(1:3)のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S)。フラットのサンプル(Encor 626及びEncor 471)での結果を、
図9(a)及び9(b)に示しているが、その両方で、未コアレス化サンプルとの比較も示している。
【0114】
Encor 471及びEncor 626についての硬度の結果を、TXMB、OE-400、K-FLEX 850S、3種の本発明の多機能添加剤ブレンド物であるX-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400のブレンド物(比率1:1)、並びに2種のまた別の本発明の多機能添加剤ブレンド物である、ベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)、β-メチルシンナミルアルコール(CYP又はシプリオール):850S(比率1:1)、並びに未コアレス化サンプルを比較して、
図9(c)、9(d)、及び9(e)に示している。
図9(e)に、K-FLEX(登録商標)850Sを、揮発性成分のβ-メチルシンナミルアルコールすなわちCypriol(CYP)、3-フェニルプロパノール(3PP)、2-メチル-3-フェニルプロパノール(2M3PP)と組み合わせた場合の硬度の発現を示しているが、すべての組合せで、1:1の比率である。これらのブレンド物のそれぞれが、
図9(c)に示した、より高いVOCのTXMB対照のそれよりも改良された硬度の発現を示している。
【0115】
TXMBとOE-400とのブレンド物は公知であり、コスト及び揮発度を低減させる目的で、業界において実施されているとの報告がある。それでもなお、本発明の多機能添加剤ブレンド物と比較すると、本発明の多機能添加剤のブレンド物を使用することにより達成される、予想外の硬度は、業界で実施されているTXMB:OE-400のブレンド物では、示されなかった。
【0116】
それらの結果は、本発明の多機能添加剤のブレンド物が、コアレセンスを達成しながらも、顕著に、より良好な性能を有していることを示した。硬度は、低VOCのコアレセント剤のOE-400及びK-FLEX(登録商標)850S単独、又は業界で実施されているTXMB:OE-400のブレンド物を用いて達成される硬度よりは、はるかに改良された。本発明の多機能添加剤ブレンド物での結果は、業界標準の高揮発性コアレセント剤であるTXMBと比較すると、顕著に改良されたが、OE-400及びK-FLEX(登録商標)850Sと比較できる程度ではない。驚くべきことには、高揮発性成分(TXMB)と低揮発性成分(OE-400)とのブレンド物が、過去に使用されたことがあるが、この特定のブレンド物の性能は、本発明の多機能添加剤ブレンド物に比較すると、極めて低いものであった。
【0117】
〔実施例3:ブロック性の等級付け〕
ASTM D4946を使用し、周囲温度及び50℃でのブロック抵抗性試験を、TXMB、K-FLEX(登録商標)850S、及び3種の本発明の多機能添加剤ブレンド物(X-3411、1:1のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S;X-3412、1:2のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S;X-3413、1:3のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S)、TXMB:OE-400(比率1:1)、並びに本発明の多機能添加剤ブレンド物であるベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)を含む、Encor 471のフラット及びセミグロスのサンプル並びにEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて実施した。歴史的に見て、高VOCのコアレセント剤は、ブロック抵抗性試験において、極めて良好に性能発揮している。
【0118】
結果を
図10及び11に示す。すべてのコアレセント剤及び多機能添加剤ブレンド物が、フラットのサンプルでは、周囲温度又は50℃で、同等の性能を示した。セミグロスのサンプルで、周囲温度の場合、本発明の多機能添加剤ブレンド物は、TXMB単独とは同等、そしてOE-400、及びK-FLEX(登録商標)850S単独とは、同等若しくは優った性能を示した。50℃では、本発明の多機能添加剤ブレンド物は、Encor 471のサンプルにおいて、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びに業界で実施されているTXMB:OE-400のブレンド物よりも良好な性能を示した。X-3411、及びベンジルアルコール:OE-400のブレンド物は、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、並びに業界で実施されているTXMB:OE-400のブレンド物より良好な性質を示したが、X-3412及びX-3413は、他のコアレセント剤及びブレンド物と同等の性能を示した。
【0119】
〔実施例4:MFFT試験、及び配合へのVOC添加の計算値〕
TXMB、K-FLEX(登録商標)850S、並びに3種のベンジルアルコール対K-FLEX(登録商標)850Sの比率のもの(本発明の多機能添加剤である、X-3411、X-3412、及びX-3413)の量を評価して、2種のバインダー、すなわち、Encor 626のアクリル樹脂(Tg、約29℃)及びEncor 471のスチレン-アクリル樹脂(Tg、約44℃)で、4.4℃のMFFT(最低成膜温度)を達成させるのに必要とされるコアレセント剤の量を求めた。湿時のペイント(水を含む)及び乾時のペイント(水を除去)へ寄与する、VOCの量(g/L)を計算した。Encor 626アクリル樹脂での結果は、4.4℃のMFFTを達成するために必要とされる本発明の多機能添加剤の量が、ジベンゾエートのK-FLEX(登録商標)850S単独の場合に必要とされる量よりは少なく、及び、TXMB単独で必要とされる量とは、ベンジルアルコール対K-FLEX(登録商標)850Sの比率に依存して、同等又はわずかに少ないということを示している。計算されたVOCの寄与は、K-FLEX(登録商標)850S単独に比較して、本発明のベンジルアルコール/K-FLEX(登録商標)850Sの組合せの全部の方が、より高かったが、高揮発性のTXMB単独で計算したものよりは、顕著に低かった。Encor 471での結果は、4.4℃のMFFTを達成するために必要とされる本発明の多機能添加剤の量が、ジベンゾエートのK-FLEX(登録商標)850S単独の場合に必要とされる量よりは少なく、及び、TXMB単独で必要とされる量とは、ベンジルアルコール対K-FLEX(登録商標)850Sの比率に依存して、同等又はわずかに少ない、ということを示している。必要量と、VOCの計算を、以下の表に示す。
【0120】
【0121】
【0122】
〔実施例5:流動性及びレベリング性〕
ASTM D4062の方法を用いて、Encor 471(フラット)、Encor 471(セミグロス)、Encor 626(フラット)、及びEncor 626(セミグロス)のサンプルについて、流動性及びレベリング性を評価し、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411(1:1のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S)、X-3412(1:2のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S)、及びX-3413(1:3のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S)を比較した。流動性及びレベリング性は、粘度の影響を極めて受けやすく、粘度が高いほど、流動性が損なわれる。粘度(Stormer)が似ているにも関わらず、本発明の多機能添加剤ブレンド物のX-3413は、両方のEncor 471サンプル(フラット及びセミグロス)で、試験した他のいずれのコアレセント剤又はブレンド物よりも、高い流動性とレベリング性の等級を達成した。Encor 471のセミグロスサンプルにおいては、X-3411及びX-3412は、OE-400及びK-FLEX(登録商標)850Sと同等、及びTXMBよりは良好な性能を示した。Encor 626セミグロスのサンプルにおいては、本発明の多機能添加剤ブレンド物の全部(X-3411、X-3412、及びX-3413)が、試験した他のコアレセント剤と少なくとも同等の性能を示した。達成された結果を
図7(a)に示し、そして未コアレス化サンプル、並びにTXMB:OE-400(比率1:1)及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物の比較を
図7(b)に示す。
【0123】
〔実施例6:磨き抵抗性〕
Encor 471フラット及びEncor 626フラットのサンプルで、未コアレス化サンプル、並びにTXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、及びX-3413を含むサンプルでの磨き抵抗性を評価した。磨き抵抗性は、フラットの配合物だけで試験した。チーズクロスを用いて20回の磨きをかけた後での光沢(%)におけるパーセント増大が少ないほど、等級が良好である。X-3413の本発明の多機能添加剤ブレンド物は、Encor 626のサンプルで評価したすべてのコアレセント剤又はブレンド物の中では、最小の数値を有しており、X3411及びX3412の多機能添加剤ブレンド物は、従来からの他のコアレセント剤よりわずかに良いか、又は同等の性能を示した。
図8に示したようにして、達成された結果が、未コアレス化サンプルと対比される。
【0124】
〔実施例7:低温コアレセンス〕
Encor 471フラットの配合物(10ミル)で、低温コアレセンスを評価した。評価したコアレセント剤及びブレンド物は、以下のものであった:TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411(1:1のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S)、X-3412(1:2のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S)、及びX-3413(1:3のベンジルアルコール:K-FLEX(登録商標)850S)。達成された結果を、写真(
図12(a))に示す。それらの結果は、4.4℃のMFFTが達成できるように最適化された、個々のコアレセント剤又はブレンド物をそれぞれ有するバインダー全部の内でも、低温コアレセンスにおいて、本発明の多機能添加剤ブレンド物が、他のコアレセント剤よりも良好な性能を示したということを示している。
【0125】
ASTM D7306の方法を使用し、厚み10ミルでの追加の低温コアレセンスでは、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルで、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX 850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)のブレンド物及びベンジルアルコール:OE-400(1:1)のブレンド物の比較を実施した。結果を、
図12(b)に示す。
【0126】
〔実施例8:抗菌効果〕
揮発度がより高い成分の、3-フェニルプロパノールの、低濃度での抗菌効果を、USP 51(United States Pharmocopeia)試験方法を使用して評価した。ダイズブロスに、pH8.0で、以下の菌株を播種した:A.ブラジリエンシス(A.Brasiliensis)(糸状菌)、P.エルジノーサ(P.aeruginosa)(グラム陰性菌)、E・コリ(E.coli)(グラム陰性菌)、S.アウレウス(S.aureus)(グラム陽性菌)、及びC.アルビカンス(C.albicans)(酵母)。
図13(a)、13(b)、13(c)、13(d)、及び13(e)は、0.25重量%から2.5重量%の範囲の3-フェニルプロパノール濃度の場合の経時的な対数減少率を示す等高線図である。グラム陰性菌及び酵母に対しては、特に良好な有効性を示したものの、試験した全部の生物体では、より高い濃度で、経時的な対数減少率が達成された。
【0127】
ASTM D2574試験法を、P.エルジノーサ(P.aeruginosa)及びK.エロゲネス(K.aerogenes)に対する、本発明の多機能添加剤ブレンド物の抗菌的性能を求めるために使用した。コーティングに、それぞれの生物体で、107cfu/gの缶内濃度で播種した。コーティングが、第7日に、完全には殺せなくなるまで、7日毎に、播種を続けた。それぞれの7日の期間を、「ラウンド」と呼ぶ。下記の結果からわかるように、ベンジルアルコール/ジベンゾエート(K-FLEX(登録商標)850S)多機能添加剤ブレンド物(X-3411)が、ネガティブコントロールで達成される抗菌的有効性よりは、はるかに優っており、後者は、K.エロゲネス(K.aerogenes)に対しては、3ラウンド後には効果がなくなっていた。
【0128】
【0129】
【0130】
配合物全体で1重量%のコアレセント剤を担持させれば、チャレンジテストの8回の播種で満足のいくレベルで合格し、それぞれの、第7日の時点で、菌のリカバリーはなかった。
【0131】
本発明の多機能添加剤ブレンド物の抗菌効果によって、微生物に抵抗性を有するコーティングが必要とされる用途において、配合業者に潜在的なメリットを与え、及び、従来からの抗菌剤の添加で必要とされた配合物への濃度を低減させることが可能となる。
【0132】
上述の結果は、本発明の多機能添加剤ブレンド物が、次のような点で、真に多機能性であることを示している:それらが、従来からの高VOC及び低VOCのコアレセント剤単独と比較したときに、より低いか又は同等の担持レベルで、改良された膜形成性(コアレセンス)を与え、単独で使用された従来からの高VOCのコアレセント剤と比較して、より低いVOC含量を与え、従来からの高及び低VOCのコアレセント剤単独と比較して、改良された硬度及びスクラブ抵抗性を与え、及び従来からのコアレセント剤と比較して、同等又はより良好なブロック抵抗性及び流動性及びレベリング性を与えるだけではなく、さらには、標準のプロトコールに従って試験をしたときに、抗菌的有効性の可能性も有している。
【0133】
〔実施例9:粘度〕
ASTM D562を使用して、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて粘度(Stormer)を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図14に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0134】
〔実施例10:明度比〕
ASTM D2805を使用して、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて明度比を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図15に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0135】
〔実施例11:光沢〕
Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて、ASTM D523を使用し、20度、60度、及び85度の角度での光沢を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を、
図16、17、及び18に示す。本発明の多機能添加剤ブレンド物は、Encor 471のセミグロス配合物以外では、それぞれのコーティングにおいて、高VOCのTXMBと同等の性能を示した。
【0136】
〔実施例12:吸塵抵抗性〕
上述の方法を使用して、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて吸塵抵抗性を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図19に示す。本発明の多機能添加剤ブレンド物は、セミグロス配合物において、従来からの低VOCのコアレセント剤、OE-400からは、顕著な性能の改良を示した。
【0137】
〔実施例13:印刷抵抗性〕
ASTM D2064を使用して、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて印刷抵抗性を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図20に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0138】
〔実施例14:乾時接着性〕
ASTM D3359Bを使用して、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて乾時接着性を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図22に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0139】
〔実施例15:乾燥時間〕
ASTM D1640を使用して、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて乾燥時間を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図23に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0140】
〔実施例16:マッドクラッキング〕
Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて、周囲温度及び40゜Fでの、14~60ミルからのマッドクラッキングを測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を、
図24及び25に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0141】
〔実施例17:オープンタイム〕
Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについてオープンタイムを測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図26に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0142】
〔実施例18:ウェットエッジ〕
Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについてウェットエッジを測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図27に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0143】
〔実施例19:サグ抵抗性〕
ASTM D4400(4~24ミル)を使用して、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについてサグ抵抗性を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。結果を
図28に示すが、それらは、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0144】
〔実施例20:耐水洗性〕
上述の方法を使用して、Encor 471及びEncor 626のフラット及びセミグロスのサンプルについて耐水洗性を測定し、未コアレス化サンプル、TXMB、OE-400、K-FLEX 850S、X-3411、X-3412、X-3413、TXMB:OE-400(比率1:1)ブレンド物、及びベンジルアルコール:OE-400(比率1:1)ブレンド物を比較した。水性ベース及び油性ベース両方の各種の汚れ物質について評価した。結果を、
図29(a)~(h)に示す。油性マーカーについての耐水洗性の結果を
図30に示す。結果は、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0145】
〔実施例21:(TXMB:ジベンゾエート)のペイントの評価/試験〕
各種のバインダー、すなわち、Encor 471、EPS 2533、Acronal 296D(すべてスチレンアクリル樹脂)、並びにVSR 1050及びEncor 626(両方とも100%のアクリル樹脂)、並びにEncor379G(ビニルアクリル樹脂)の中で、各種の比率の、TXMB:K-FLEX(登録商標)850S、及びTXMB:K-FLEX(登録商標)975Pを使用した追加の試験を、以下において述べるペイント配合の中で実施した。それぞれのペイントサンプルで選択されたK-FLEX(登録商標)コアレセント剤は、バインダーのタイプ(100%アクリル樹脂では、850S、及びビニルアクリル樹脂、及びスチレン-アクリルバインダーでは、975P)を基準にして選択した。
【0146】
【0147】
[VOCの寄与]
VOCの計算を実施し、先に論じたようにバインダーに依存しての、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S、又は975P(単独)での、各種のペイント配合物に対するVOCの寄与を示したが、(K-FLEX:TXMB)ブレンド物1、及び(K-FLEX:TXMB)ブレンド物2を
図31に示す。単独で使用されるか、或いはブレンド物の中で使用されたとは無関係に、それぞれのペイントサンプルについて選択された、特定のK-FLEX(登録商標)コアレセント剤を、バインダーのタイプを基準に選択した(100%アクリル樹脂及びビニルアクリルバインダーには、850S、及びスチレン-アクリルバインダーには、975P)。
【0148】
それらの結果は、配合物は、5g/LVOCまで下げて配合することが可能であり、それでもなお、本発明の多機能添加剤ブレンド物を用いれば、良好な性能を達成することができるということを示している。これは驚くべきことであり、そして、実施性能を維持するためには.コアレセント剤は、高いVOCを有していなければならないという従来からの見解とは、逆である。
【0149】
[スクラブ抵抗性]
スクラブ抵抗性を、TXMB、OE-400、K-FLEX(登録商標)850S又は975P単独、並びに下に示すような、TXMBと975P又は850Sとの本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む、3種のスチレン-アクリルバインダー(Encor 471、EPS 2533、及びAcronal 296D)、2種の100%アクリルバインダー(Encor 626及びVSR 1050)、並びに1種のビニルアクリルバインダー(Encor379G)について評価した。
Encor 471:30:70のTXMB:975P、70:30のTXMB:975P
EPS 2533:30:70のTXMB:975P、55:45のTXMB:975P
Acronal 296D:10:90のTXMB:975P、90:10のTXMB:975P
Encor 626:10:90のTXMB:850S、90:10のTXMB:850S
VSR 1050:40:60のTXMB:850S、90:10のTXMB:850S
Encor379G:50:50のTXMB:850S、80:20のTXMB:850S
【0150】
スクラブ抵抗性の結果を、
図32~37に示す。それぞれ、より高いVOCの成分と、より低いVOCのジベンゾエート(それぞれ、先に挙げたような、TXMB、及びジベンゾエート)を組み入れることによって、TXMB又はジベンゾエートを単独で使用したときよりは、コーティングのスクラブ抵抗性が高いという結果が得られた。
【0151】
[ブロック抵抗性]
先にスクラブ抵抗性の評価で使用したような、同一のバインダー及びコアレセント剤、及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物について、第1日及び第7日に、ブロック抵抗性を測定した。結果を
図38~43に示す。試験したコーティングのほとんどで、高VOCと低VOCのブレンド物(上で列記したように、それぞれ、TXMB及びジベンゾエート)は、高VOCのコントロールのブロック抵抗性と等しく、そしてまさにジベンゾエート単独でのブロック性能を越えることが可能となった。
【0152】
[光沢]
光沢は、同一の、バインダー及びコアレセント剤及び、先に示したような、TXMBとK-FLEX(登録商標)850S及びK-FLEX(登録商標)975Pとの本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物について測定した。結果を、光沢単位として
図44~49に示すが、試験したすべてのコアレセント剤及びブレンド物と同等である。
【0153】
[吸塵性:]
吸塵抵抗性を、先にスクラブ抵抗性試験で示したようなものと同じ、バインダー、コアレセント剤、及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物について測定したが、ただし、Acronal 296Dは例外で、そこでは、90:10のTXMB:975Pのブレンド物のみを評価した。結果を
図50~55に示すが、Δ%Y反射率が低いほど、吸塵抵抗性が大きいことを表している。
【0154】
[低温コアレセンス]
低温コアレセンスを、先にスクラブ抵抗性試験で示したようなのと同じ、バインダー、コアレセント剤、及び本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物について測定した。結果を、
図56~61に示す。評価した多機能添加剤ブレンド物で得られた結果は、TXMB、OE-400、及びK-FLEX(登録商標)850S又は975P単独と同等であった。
【0155】
〔実施例22:金属への直接コーティング物-湿時接着試験〕
コアレセント溶媒としてのプロピレングリコールジベンゾエートとジプロピレングリコールn-ブチルエーテルとのブレンド物、又はコアレセント溶媒としてのプロピレングリコールジベンゾエートとベンジルアルコールとの本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物を含む表5の金属への直接水性コーティングを使用して、ASTM D3359を使用した湿時接着試験を、コーティングされたスチールパネル上で実施した。
図62の左の画像は、ジベンゾエート/エーテルの組合せでの、湿時接着試験(ASTM D3359)の結果を示している。
図62の右側の画像は、同じ配合で、エーテルをベンジルアルコールに置き換えた、本発明のジベンゾエート/ベンジルアルコールの組合せでの、湿時接着試験の結果を示している。
図62は、ジベンゾエートと組み合わさったベンジルアルコールでは、典型的には金属への直接コーティング物で使用される、ジベンゾエート/グリコールエーテルの組合せよりも、湿時接着性が大いに改良されているということを示している。
【0156】
〔実施例23:金属への直接コーティング物-Koenig硬度〕
図63は、表5からの金属への直接水性コーティングについての経時的なKoenig硬度の測定を示しており、プロピレングリコールジベンゾエートとジプロピレングリコールn-ブチルエーテルとの典型的なブレンド物;プロピレングリコールジベンゾエートとベンジルアルコールとの本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物:及びブチルベンジルフタレートとジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(DPnB)とのブレンド物を比較している(比率は、すべて1:1)。それらの結果は、金属への直接コーティング物において、ベンジルアルコールをジベンゾエートと組み合わせた本発明の多機能添加剤が、従来からの、ジベンゾエート又はフタレートと共に使用したグリコールエーテルよりは、優れた初期硬度測定値を与えていることを示している。
【0157】
〔実施例24:金属への直接コーティング-フラッシュ錆〕
表6に、先に説明したフラッシュ錆試験法を使用したフラッシュ錆についての、目視による等級を示している。それらの結果は、安息香酸ナトリウム(NaB)が、金属への直接コーティング(表5)におけるプロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)及びベンジルアルコールとの相溶性を示し、その結果、フラッシュ錆の生成を排除したということを反映している。3者全部を組み合わせることで、湿時接着性、初期硬度、及びフラッシュ錆抵抗性における改良が得られた(全部の結果は示されていない)。
【0158】
【0159】
〔実施例25:追加試験-金属への直接コーティング〕
以下で説明する40 PVC white金属への直接プライマー配合について追加試験を実施したが、このものは、表5のものと同様ではあるが、ただし、腐食(フラッシュ錆)抵抗性のために、安息香酸ではなくて、安息香酸ナトリウムを組み入れた。試験では、PGDB及びK-FLEX(登録商標)850Sそれぞれをベンジルアルコール(比率1:1)と組み合わせたものを含む本発明の多機能添加剤ブレンド物と、K-FLEX(登録商標)PG(PGDB)及びブチルベンジルフタレート(BBP)それぞれをDPnB(比率1:1)と組み合わせたものを含むブレンド物と、の使用を比較した。
【0160】
【0161】
それらの結果は、
図64に見られるように、ベンジルアルコールを含む本発明のブレンド物を含むサンプルは、DPnBを含むブレンド物を含むサンプルよりも、より大きい初期硬度の発現を達成したことを示している。それに加えて、18時間の乾燥の後では、ベンジルアルコールを含む本発明の多機能添加剤ブレンド物を含むサンプルは、室温(23℃)では、他のサンプルよりも高いブロック等級を有していた(
図65)。7日後では、すべてのサンプルが、優れたブロック等級を有していた。50℃でのブロック抵抗性では、ベンジルアルコールを含む本発明の多機能添加剤ブレンド物を含むサンプルが、第7日及び第14日の両方で、より高いブロック等級を有していた(
図66)。
【0162】
同一のサンプルについて、乾時及び湿時接着性も評価した。ペイント塗膜を、スチールパネル上で21日かけて乾燥させ、水の中に1時間浸漬させて、その直後に試験した。ベンジルアルコールを含む本発明の多機能添加剤ブレンド物を含むサンプルは、BBP:DPnBと比較して、同様の湿時及び乾時接着性を有していた。K-FLEX(登録商標)PG:DPnBのサンプルは、極めて貧弱な湿時接着性を有していた。結果を
図67に示す。
【0163】
〔実施例26:冷凍-解凍試験〕
冷凍-解凍試験を、スチレンアクリルバインダー及び全アクリルバインダーについて実施し、TXMB、TEGDO、K-FLEX(登録商標)850S、X-3411、及びX-3413を比較した。スチレン-アクリルバインダーベースのコーティングについての結果を
図68に示す。TXMBについての結果が示してないが、その理由は、冷凍-解凍サイクルの間にそれが、ゲル化してしまったからである。他のコアレセント剤は、3回の冷凍-解凍サイクルの後では、同様の性能を示し、粘度においてTEGDOが、6KU上昇したのに対して、X-3413では4KUの上昇であった。全アクリルバインダー配合物では、850S、TEGDO、及びTXMBを用いたコーティングでは、最初の3回の冷凍-解凍サイクルの後では、5KUを越える粘度上昇があった(
図69)。850Sのサンプルで、粘度でのほぼ30KUの増加と、最大の増加が観察され、それに続くのが、TEGDOで、12.5KUの増加であった。明らかに、異なったバインダーのそれぞれにおいて、X-3411又はX-3413を用いたコーティングが、粘度においては、最小の変化を有していた。さらに、ベンジルアルコール又は高VOC成分(X-3411及びX-3413)を混在させると、850S単独の場合に比べて、安定性が劇的に改良されるが、これについては、実施例27においてさらに論ずる。
【0164】
〔実施例27:多機能添加剤ブレンド物における、より高いVOCの成分の有効性/ポリマーの安定性〕
数グラムのベンジルアルコールを、単独で、Encor 471のスチレン-アクリル樹脂ポリマーに添加した。そのポリマーが、完全に不安定化するのが観察された。その添加量は、先に試験したベンジルアルコール:850S(X-3411)ブレンド物でのベンジルアルコールの割合よりは、はるかに少なかった。上の実施例においては、ベンジルアルコール:850Sのブレンド物(比率1:1)を添加したが、ポリマーを不安定化させることはなかった。単独で添加すると、ベンジルアルコールは、顕著なポリマー不安定化効果を有していた。Encor 626アクリルバインダーの場合においても同様に、同じ影響が観察された。たとえ少量でも、ベンジルアルコールを単独で添加すると、バインダーからポリマーフレークが析出して、不安定化されたことを示す。ベンジルアルコール:850Sのブレンド物を添加する場合には、そのような現象は起きなかった。そのバインダー(ポリマー)は、安定なままであった。その多機能添加剤ブレンド物のベンジルアルコール部分のパーセントは、バインダーに対して1.25重量%であった。対照的に、ベンジルアルコールを単独で使用すると、1.1重量%、或いはさらには0.5重量%のような低い量であっても、そのバインダーが不安定化された。
【0165】
ベンジルアルコール:ジベンゾエート(850S)の本発明の多機能添加剤ブレンド物は、ポリマーエマルションの中へのベンジルアルコールの取込みを改良し、安定度がはるかに高い製品を可能とした。OE-400とブレンドしたベンジルアルコールでも、同様のことが観察された。
【0166】
図70~73に、観察された結果のいくつかを、提示している。
図70は、バインダーに対して、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物のX-3411を2.5重量%でブレンドした、Encor 626バインダーの画像を示している。その画像は、その低VOC多機能添加剤を取り込んで得られた、安定なポリマーエマルションを映している。
図71は、バインダーに対して1.1重量%のベンジルアルコールをブレンドした、Encor 626のバインダーの画像を示す。その画像は、不安定なポリマーエマルションを映していて、アグリゲート/フロキュラントが、そのガラスジャーの底部に観察される。
図72は、セミグロスのEncor 471の完全に配合されたコーティングに対して、バインダーに対して3.95重量%でベンジルアルコールを後添加した画像を映している。その画像に見られるように、アグリゲート及びフロキュラントが観察された。X-3411をバインダーに対して7.9重量%を使用した場合、同一のレベルのベンジルアルコール(バインダーに対して3.95重量%)が達成されるが、驚くべきことには、
図73の右側のドローダウンに示されているように、安定で、フロキュレートしていないコーティングが得られた。
【0167】
〔実施例28:低VOC多機能添加剤ブレンド物-比率〕
前述の実施例では、低揮発性成分及び高揮発性成分を各種の比率で含む、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物の有効性を示した。本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物には、少なくとも1種の低揮発性成分と少なくとも1種の揮発性成分とが含まれ、及び低揮発性成分対高揮発性成分の比率が、約1:10から約10:1までとなるように組み合わされた。その低揮発性成分は、以下のものである:ジベンゾエート、ジベンゾエートのブレンド物、モノベンゾエート、フタレート、テレフタレート、1,2-シクロヘキサンジカルボキシレートエステル、サイトレート、アジペート、トリエチレングリコールジオクタノエート(TEGDO)、Optifilm(商標)Enhancer 400、又はアジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸の精製ジイソブチルエステルの混合物(Coasol)。その高揮発性成分は、以下のものである:ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(TXMB)、ベンジルアミン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、ブチルベンゾエート、3-フェニルプロパノール、2-メチル-3-フェニルプロパノール、β-メチルシンナミルアルコール、又はバニリン。先に報告されている、TXMBとTEGDO、又はTXMBとOE-400との組合せは、本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物には含まれない。
【0168】
低揮発性成分と高揮発性成分とが、1:10~10:1の比率でブレンドされて、本発明の低VOC多機能添加剤を形成し、及び、コアレセンスに加えて、硬度、硬度の発現性、スクラブ抵抗性、ブロック抵抗性、吸塵抵抗性、湿時接着性、及び場合によってはフラッシュ錆抵抗性(本明細書で言及した方法に従って安息香酸と組み合わせた場合)における改良が得られる。本発明の低VOC多機能添加剤は、これまで使用されてきた、従来からの、より高いVOCのコアレセント剤の代替物であり、コーティング及びその他の水性ポリマー成膜性組成物のVOC含量を低下させながらも、性能の改良を達成するための方法である。
【0169】
〔実施例29:顔料及び着色剤のためのキャリヤー〕
本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物は、水性又は溶媒性の顔料又は着色剤(色材、染料)のための有用なキャリヤーである。X-3411を使用する水性着色剤及び溶媒性着色剤のための典型的な配合を下に示すが、この用途における低VOC多機能添加剤ブレンド物の量は、水性ポリマー系、顔料及び着色剤の性質とタイプ、必要とされる色の強さ、他の成分の存在、並びに水に対する他の溶媒の存在に依存して、変化する。
【0170】
【0171】
【0172】
上の実施例は、低VOCのコーティングを、揮発度のより低いコアレセント成分(非限定的にたとえば、ジベンゾエートグリコールエステル、モノベンゾエート、フタレート、及びその他の低VOCのコアレセント剤)と共に配合して、本発明に従って、低揮発性成分を高揮発性成分とブレンドすることによって、コアレセンスに加えて、各種の性質の中でも、高い、硬度、ブロック抵抗性、光沢性、吸塵抵抗性、スクラブ抵抗性、湿時接着性、及び腐食抵抗性を有するようにすることができるということを示している。VOC含量の増大を最小限に留めながら、各種の性能の顕著な改良が達成される。本発明の高揮発性成分と共に組み合わせて、公知の低揮発性のコアレセント剤又は成膜材を使用することによって、配合業者に、彼らのコーティングにおいて、より高いVOCの成分を含むような設計をする自由が与えられて、配合物のVOC含量を必要以上に高めることなく、特定の用途で極めて重要な各種の性能を達成することが可能となる。本発明は、公知の低VOCのコアレセント剤又は成膜剤を、より高いVOCの成分(それらの内のいくつかは、未知であるか、又はこれまでコアレシング剤として認識されたり、使用されたりしたことがない)と組み合わせて使用することで、過去においては、より低いVOCのコアレセント成分を使用することによって妥協せざるを得なかった性質を改良することができるということを示している。驚くべきことには、本発明の多機能添加剤ブレンド物は、コアレセンスだけではなく、単独で使用される高VOCコアレセント剤で達成されるのに優る、実施性能の改良も与える。
【0173】
実施例は、コアレセントポリマーの性質を説明する目的で、入手可能なより低いVOCのコアレセント成分のいくつか、及び基本的なバインダー(コーティング組成物)のいくつかにだけ焦点を絞ったが、そのようにして達成された改良は、各種の低VOCのコアレセント成分、ポリマー(バインダー)、及び顔料体積濃縮物への適用も期待される。予想もしなかったことであるが、本明細書において特定された、高揮発性成分(コアレセント剤としてこれまで知られてなく、使用されたことないものであってもよい)、及びより低いVOCの成分を用いた配合物が、評価されたコーティングの中で、各種の性質の中でも、硬度、硬度の発現性、ブロック抵抗性、スクラブ抵抗性、吸塵抵抗性、湿時接着性、腐食抵抗性、ポリマー安定化の改良を達成した。
【0174】
本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物は、VOC含量が低いことが望まれるような、コーティング又はその他の水性ポリマー系で使用するための、実施可能な代替物である。本発明の低VOC多機能添加剤ブレンド物は、低VOC含量を与える一方で、実際には、コーティング及びその他の水性系の重要な性質を向上させる。その低VOC多機能添加剤ブレンド物はさらに、水性ポリマー系に添加する前に、着色剤を分散させるのにも有用である。
【0175】
特許法に従って、ベストモード及び好ましい実施態様を述べてきたが、本発明の範囲は、それらに限定されなく、むしろ添付の請求項の範囲によって限定される。