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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】ドーピングシステム及び電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/50 20130101AFI20250304BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20250304BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20250304BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20250304BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20250304BHJP
【FI】
H01G11/50
H01G11/06
H01G11/86
H01M4/04 Z
H01M4/139
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021575622
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2020042756
(87)【国際公開番号】W WO2021157157
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2020017198
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】直井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友哉
(72)【発明者】
【氏名】野田 晃史
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-021699(JP,A)
【文献】特開平08-111222(JP,A)
【文献】特開2010-149011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/50
H01G 11/06
H01G 11/86
H01M 4/04
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極に含まれる活物質にアルカリ金属をドープするように構成されたドーピングシステムであって、
アルカリ金属のイオンを含む溶液及び対極ユニットを収容するように構成されたドープ槽と、
前記電極を、前記ドープ槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された搬送ユニットと、
前記電極と接触する導電性の給電ローラを有し、前記電極と前記対極ユニットとを電気的に接続するように構成された接続ユニットと、
前記ドープ槽内を通過し前記給電ローラのうち前記ドープ槽通過直後の前記給電ローラへ搬送されている前記電極にガスを吹きつけるように構成された乾燥ユニットと、
を備えるドーピングシステム。
【請求項2】
アルカリ金属がドープされた活物質を含む電極の製造方法であって、
アルカリ金属のイオンを含む溶液及び対極ユニットを収容するドープ槽内を通過する経路に沿って、活物質を含む電極を搬送し、
前記ドープ槽内を通過した前記電極であって、前記電極を搬送する給電ローラのうち前記ドープ槽通過直後の給電ローラへ搬送されている前記電極を乾燥させ、
乾燥後の前記電極と前記対極ユニットとを電気的に接続する、
電極の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電極の製造方法であって、
前記電極にガスを吹きつけるブロアを用いて、前記電極を乾燥させる、
電極の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電極の製造方法あって、
乾燥後の前記電極と前記対極ユニットとを電気的に接続するとき、前記電極と接触する導電性の給電ローラを使用し、
前記ブロアは、前記電極の表面のうち、前記給電ローラと接触する表面に前記ガスを吹きつけるように配置された、
電極の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電極の製造方法であって、
前記電極を挟むように配置された2以上の前記ブロアを用いて、前記電極を乾燥させる、
電極の製造方法。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の電極の製造方法であって、
前記ブロアは、前記電極に前記ガスを吹きつけるスリット状の開口部を有する、
電極の製造方法。
【請求項7】
請求項3~5のいずれか1項に記載の電極の製造方法であって、
前記ブロアは、前記電極に前記ガスを吹きつける2以上の開口部を有する、
電極の製造方法。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか1項に記載の電極の製造方法であって、
前記ガスは、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、窒素ガス、炭酸ガス、及び、水分が除去された除湿空気から成る群より選択される少なくとも1種を含む、
電極の製造方法。
【請求項9】
請求項3~8のいずれか1項に記載の電極の製造方法であって、
前記ブロアの材質は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びフッ素系樹脂から成る群より選択される少なくとも1種を含む、
電極の製造方法。
【請求項10】
請求項3~8のいずれか1項に記載の電極の製造方法であって、
前記ブロアの材質は、金属、2種以上の金属の合金、前記金属又は前記合金の酸化物、並びに、前記金属又は前記合金の窒化物から成る群より選択される少なくとも1種を含む、
電極の製造方法。
【請求項11】
電極に含まれる活物質にアルカリ金属をドープするように構成されたドーピングシステムであって、
アルカリ金属のイオンを含む溶液及び対極ユニットを収容するように構成されたドープ槽と、
前記電極を、前記ドープ槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された搬送ユニットと、
前記電極と接触する導電性の給電ローラを有し、前記電極と前記対極ユニットとを電気的に接続するように構成された接続ユニットと、
前記ドープ槽内を通過し前記給電ローラのうち前記ドープ槽通過直後の前記給電ローラへ搬送されている前記電極にガスを吹きつけるように構成された乾燥ユニットと、
前記ドープ槽と絶縁している前記ドーピングシステムの本体、及び、前記給電ローラに接続するように構成された電源と、
を備え、
前記電源における前記給電ローラに接続する端子の電位は、前記電源における前記本体に接続する端子の電位よりも低い、
ドーピングシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2020年2月4日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2020-017198号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2020-017198号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ドーピングシステム及び電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましく、それに伴い、当該電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
【0004】
このような小型化・軽量化の要求を満足するために、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が開発されている。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。更に、リチウムより低コストで資源的に豊富なナトリウムを用いたナトリウムイオン型の電池やキャパシタも知られている。
【0005】
このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、予めアルカリ金属を電極にドープするプロセス(一般にプレドープと呼ばれている)が採用されている。アルカリ金属を電極にプレドープする方法としては様々な方法が知られているが、例えば、特許文献1、2では、切り取られた電極板とアルカリ金属板とを、セパレータを介して電解液中に配置した状態でプレドープを行う、所謂枚葉式の方法が開示されている。一方、特許文献3~6では、帯状の電極板を電解液中で移送させながらプレドープを行う、所謂連続式の方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-293499号公報
【文献】特開2012-69894号公報
【文献】特開平10-308212号公報
【文献】特開2008-77963号公報
【文献】特開2012-49543号公報
【文献】特開2012-49544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3~6に記載の方法でプレドープを行う場合、電極と給電ローラとを接触させ、さらに、給電ローラと対極ユニットとを電気的に接続することが考えられる。
【0008】
ドープ槽内を通過した電極にはドープ溶液が付着している。ドープ溶液が付着している電極が給電ローラと接触すると、給電ローラ上で反応が生じ、給電ローラの表面にアルカリ金属が析出する。表面にアルカリ金属が析出した給電ローラと電極との間の抵抗は高い。そのため、表面にアルカリ金属が析出した給電ローラを用いてプレドープを続けると、電極の品質が低下するおそれがある。
【0009】
電極の搬送速度が速い場合、電極にドープ溶液が多く付着し易い。そのため、給電ローラの表面へのアルカリ金属の析出は、電極の搬送速度が速い場合に発生し易い。表面にアルカリ金属が析出した給電ローラを交換する作業の頻度が多くなると、電極の生産性が低下するおそれがある。
【0010】
本開示の1つの局面では、給電ローラの表面にアルカリ金属が析出することを抑制できるドーピングシステム及び電極の製造方法を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の1つの局面は、電極に含まれる活物質にアルカリ金属をドープするように構成されたドーピングシステムである。ドーピングシステムは、アルカリ金属のイオンを含む溶液及び対極ユニットを収容するように構成されたドープ槽と、前記電極を、前記ドープ槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された搬送ユニットと、前記電極と接触する導電性の給電ローラを有し、前記電極と前記対極ユニットとを電気的に接続するように構成された接続ユニットと、前記ドープ槽内を通過し、前記給電ローラへ搬送されている前記電極にガスを吹きつけるように構成された乾燥ユニットと、を備える。
【0012】
本開示の1つの局面であるドーピングシステムは、ドープ槽内を通過し、給電ローラへ搬送されている電極にガスを吹きつけ、乾燥させることができる。そのため、給電ローラの表面でアルカリ金属が析出することを抑制できる。
【0013】
本開示の別の局面は、アルカリ金属がドープされた活物質を含む電極の製造方法である。本開示の別の局面である電極の製造方法では、アルカリ金属のイオンを含む溶液及び対極ユニットを収容するドープ槽内を通過する経路に沿って、活物質を含む電極を搬送し、前記ドープ槽内を通過した前記電極を乾燥させ、乾燥後の前記電極と前記対極ユニットとを電気的に接続する。
【0014】
本開示の別の局面である電極の製造方法によれば、ドープ溶液が付着した電極が、対極ユニットと電気的に接続することを抑制できる。そのため、電極と接触する部材の表面でアルカリ金属が析出することを抑制できる。
【0015】
本開示の別の局面は、電極に含まれる活物質にアルカリ金属をドープするように構成されたドーピングシステムである。ドーピングシステムは、アルカリ金属のイオンを含む溶液及び対極ユニットを収容するように構成されたドープ槽と、前記電極を、前記ドープ槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された搬送ユニットと、前記電極と接触する導電性の給電ローラを有し、前記電極と前記対極ユニットとを電気的に接続するように構成された接続ユニットと、前記ドープ槽と絶縁している前記ドーピングシステムの本体、及び、前記給電ローラに接続するように構成された電源と、を備える。前記電源における前記給電ローラに接続する端子の電位は、前記電源における前記本体に接続する端子の電位よりも低い。
【0016】
本開示の別の局面であるドーピングシステムは、ドープ槽の表面へのアルカリ金属の析出を抑制できる。ドープ槽の表面へのアルカリ金属の析出が抑制されると、プレドープが安定し易くなり、高品質の電極を製造し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ドーピングシステムの構成を表す説明図である。
図2】ドーピングシステムが第1の電気的構成を備える場合のドープ槽の構成を表す説明図である。
図3】ドーピングシステムが第2の電気的構成を備える場合のドープ槽の構成を表す説明図である。
図4】ドーピングシステムが第3の電気的構成を備える場合のドープ槽の構成を表す説明図である。
図5】対極ユニットの構成を表す説明図である。
図6】上方の視点から見たときの乾燥システムの構成を表す説明図である。
図7図1における正面側の視点から見たときの乾燥システムの構成を表す説明図である。
図8図1における右側の視点から見たときの乾燥システムの構成を表す説明図である。
図9図1における背面側の視点から見たときの乾燥システムの構成を表す説明図である。
図10】一直線上に並ぶ複数の開口部を備える第1ブロアの構成を表す説明図である。
図11図10におけるXI-XI断面での断面図である。
図12】スリット状の開口部を備える第1ブロアの構成を表す説明図である。
図13図12におけるXIII-XIII断面での断面図である。
図14】周方向における位置が交互に異なる複数の開口部を備える第1ブロアの構成を表す説明図である。
図15図14におけるXV-XV断面での断面図である。
図16】電極の構成を表す平面図である。
図17図16におけるXVII-XVII断面での断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1…電極、1A…ドープ電極、11…ドーピングシステム、15、17、19…ドープ槽、21、23…洗浄槽、25、27、29、31、33、65、67、69、70、35、37、39、40、41、43、45、46、47、49、51、52、53、55、57、58、59、61、64、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93…搬送ローラ、94…活物質層未形成部、96…中央部、101…供給ロール、103…巻取ロール、105…支持台、107…循環濾過ユニット、109、110、111、112、113、114…電源、109A…第1端子、109B…第2端子、110A…第1端子、110B…第2端子、117…タブクリーナー、119…回収ユニット、121…端部センサ、123、135…仕切り板、125、127、145、147…支持棒、131…上流槽、133…下流槽、137、139、141、143…対極ユニット、149、151…空間、153…導電性基材、155…アルカリ金属含有板、157…多孔質絶縁部材、161…フィルタ、163…ポンプ、165…配管、193…集電体、195…活物質層、201A~F…乾燥ユニット、203…装置筐体、205…絶縁板、207…小型電源、209…抵抗、210…ダイオード、211…基体部、213…第1ブロア、215…第2ブロア、217…接続部、219…第1表面、221…第2表面、223…開口部、225…ガス
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.ドーピングシステム11の構成
ドーピングシステム11は、後述する電極1に含まれる活物質にアルカリ金属をドーピングする。 ドーピングシステム11の構成を、図1図5に基づき説明する。図1に示すように、ドーピングシステム11は、ドープ槽15、17、19と、洗浄槽21、23と、搬送ローラ25、27、29、31、33、65、67、69、70、35、37、39、40、41、43、45、46、47、49、51、52、53、55、57、58、59、61、64、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール101と、巻取ロール103と、支持台105と、循環濾過ユニット107と、6つの電源109、110、111、112、113、114と、タブクリーナー117と、回収ユニット119と、乾燥ユニット201A~Fと、端部センサ121と、装置筐体203と、を備える。搬送ローラ群は搬送ユニットに対応する。
【0020】
ドープ槽17の構成を図2図4に基づき説明する。ドープ槽17は、上流槽131と下流槽133とから構成される。上流槽131は供給ロール101の側(以下では上流側とする)に配置され、下流槽133は巻取ロール103の側(以下では下流側とする)に配置されている。
【0021】
まず、上流槽131の構成を説明する。上流槽131は上方が開口した角型の槽である。上流槽131の底面は、略U字型の断面形状を有する。上流槽131は、仕切り板135を備える。また、上流槽131は、4個の対極ユニット137、139、141、143を収容している。
【0022】
仕切り板135は、その上端を貫く支持棒145により支持されている。支持棒145は図示しない壁等に固定されている。仕切り板135は上下方向に延び、上流槽131の内部を2つの空間に分割している。仕切り板135の下端に、搬送ローラ40が取り付けられている。仕切り板135と搬送ローラ40とは、それらを貫く支持棒147により支持されている。なお、仕切り板135の下端付近は、搬送ローラ40と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ40と、上流槽131の底面との間には空間が存在する。
【0023】
対極ユニット137は、上流槽131のうち、上流側に収容されている。対極ユニット139、141は、仕切り板135を両側から挟むように配置されている。対極ユニット143は、上流槽131のうち、下流側に収容されている。
【0024】
対極ユニット137と対極ユニット139との間には空間149が存在する。対極ユニット141と対極ユニット143との間には空間151が存在する。対極ユニット137、139、141、143は同様の構成を有する。ここでは、図5に基づき、対極ユニット137、139の構成を説明する。
【0025】
対極ユニット137、139は、導電性基材153と、アルカリ金属含有板155と、多孔質絶縁部材157とを積層した構成を有する。導電性基材153の材質として、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板155の形態は特に限定されず、例えば、アルカリ金属板、アルカリ金属の合金板等が挙げられる。アルカリ金属含有板155の厚さは、例えば、0.03~6mmである。
【0026】
多孔質絶縁部材157は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材157は、アルカリ金属含有板155の上に積層されている。多孔質絶縁部材157が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材157がアルカリ金属含有板155の上に積層されている際の形状である。多孔質絶縁部材157は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0027】
多孔質絶縁部材157は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材157を通過することができる。そのことにより、アルカリ金属含有板155は、ドープ溶液に接触することができる。
【0028】
多孔質絶縁部材157として、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。メッシュの目開きは適宜設定できる。メッシュの目開きは、例えば、0.1μm~10mmであり、0.1~5mmであることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定できる。メッシュの厚みは、例えば、1μm~10mmであり、30μm~1mmであることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定できる。メッシュの目開き率は、例えば、5~98%であり、5~95%であることが好ましく、50~95%であることがさらに好ましい。
【0029】
多孔質絶縁部材157は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
【0030】
下流槽133は、基本的には上流槽131とは同様の構成を有する。ただし、下流槽133の内部には、搬送ローラ40ではなく、搬送ローラ46が存在する。
【0031】
ドープ槽17及びその周囲は、例えば、図2に示す電気的構成(以下では第1の電気的構成とする)を有する。電源109、110は、それぞれバイポーラ電源である。電源109の第1端子109Aは、搬送ローラ37、41、43、47に、ケーブルを介して接続している。搬送ローラ37、41、43、47は、ドープ槽17の上方に位置する。搬送ローラ37、41、43、47は、後述するように、導電性の材料から成る給電ローラである。
【0032】
電源109の第2端子109Bは、上流槽131に収容された対極ユニット139、141と、下流槽133に収容された対極ユニット139、141とに、ケーブルを介して接続している。
【0033】
電源110の第1端子110Aは、搬送ローラ37、41、43、47に、ケーブルを介して接続している。電源110の第2端子110Bは、上流槽131に収容された対極ユニット137、143と、下流槽133に収容された対極ユニット137、143とに、ケーブルを介して接続している。
【0034】
第1端子109A、及び第1端子110Aの電位は、それぞれ0Vである。また、第2端子109B、及び第2端子110Bの電位は、それぞれ、正の電位である。正の電位は、例えば、+3Vである。
【0035】
電源109、110のうち、電位が0Vである部分は、装置筐体203に接続して第1の電気的構成における基準電位を作っている。図2図4において、「FG」は装置筐体203を意味する。ドープ槽17は、絶縁板205を介して、装置筐体203に接続している。ドープ槽17と装置本体203とは絶縁している。装置本体203はドーピングシステム11の本体に対応する。
【0036】
ドープ槽17及びその周囲の電気的構成は、図3に示す電気的構成(以下では第2の電気的構成とする)であってもよい。第2の電気的構成は、基本的には、第1の電気的構成と同様である。ただし、第2の電気的構成では、第1端子109A、及び第1端子110Aの電位は、それぞれ負の電位である。負の電位は、例えば、-3Vである。また、第2端子109B、及び第2端子110Bの電位は、それぞれ0Vである。
【0037】
ここで、電源109、電源110はバイポーラ電源であるため、電流の向きを逆にすることが可能である。第2の電気的構成では、バイポーラ電源のプラス側に接続した端子からマイナスの電流を流し、マイナス側の電位を0Vとした。よって、プラス側の端子の電圧の符号はマイナスとなる。なお、図3では、バイポーラ電源の極性を明らかにするために、直流電源の記号の向きを、バイポーラ電源のプラス端子の向きに合わせて記載している。
【0038】
このような第2の電気的構成においては、電源109、電源110のうち、装置筐体203に接続する端子の電位よりも、第1端子109A及び第1端子110Aの電位が低くなる。そのため、給電ローラである搬送ローラ37、41、43、47の電位は0Vよりも低くなる。また、給電ローラに接している電極1の電位も、ドープ槽17と比較して低くなる。対極ユニット137、139、141、143から溶解するリチウムはプラスに帯電しているため、電位の低い電極1へ選択的に移動し易くなる。その結果、0V近辺の電位を持つドープ槽17の表面へのリチウムの析出が抑制される。ドープ槽17の表面へのリチウムの析出が抑制されるため、プレドープが安定し易くなり、高品質の電極1を製造し易くなる。
【0039】
ドープ槽17及びその周囲の電気的構成は、図4に示す電気的構成(以下では第3の電気的構成とする)であってもよい。第3の電気的構成は、基本的には、第1の電気的構成と同様である。ただし、第3の電気的構成では、ドープ槽17の電位は正の電位である。正の電位は、例えば、+4Vである。ドープ槽17の電位を正の電位にする方法として、例えば、小型電源207と抵抗209とを使用する方法がある。
【0040】
このような第3の電気的構成においては、電源109、電源110のうち、装置筐体203に接続する部分の電位と、第1端子109A及び第1端子110Aの電位とが同一である。上記のようにドープ槽17は、例えば、+4Vの正の電位になっている。そのため、対極ユニット137、139、141、143から溶解しているリチウムは、正の電位に帯電して陽イオンとなっており、0V近辺の電位になっている電極1へ移動し易くなる。その結果、例えば、+4Vの正の電位になっているドープ槽17の表面へのリチウムの析出は抑制され、高品質の電極1を製造し易くなる。
【0041】
なお、搬送ローラ37、41、43、47から、電源109又は電源110を経て、ドープ槽17に収容された対極ユニット137、139、141、143に至る電気的な接続経路は、接続ユニットに対応する。
【0042】
ドープ槽15は、基本的にはドープ槽17と同様の構成を備える。ただし、ドープ槽15の内部には、搬送ローラ40、46ではなく、搬送ローラ33、70が存在する。また、ドープ槽15が収容している対極ユニット137、139、141、143は、電源109、110ではなく、電源113、114と接続している。電源113、114はバイポーラ電源である。また、電源113、114は、搬送ローラ37、41、43、47ではなく、搬送ローラ29、65、67、35と接続している。搬送ローラ29、65、67、35は、ドープ槽15の上方に位置する。搬送ローラ29、65、67、35は、後述するように、導電性の材料から成る給電ローラである。
【0043】
なお、搬送ローラ29、65、67、35から、電源113又は電源114を経て、ドープ槽15に収容された対極ユニット137、139、141、143に至る電気的な接続経路は、接続ユニットに対応する。
【0044】
ドープ槽19は、基本的にはドープ槽17と同様の構成を備える。ただし、ドープ槽19の内部には、搬送ローラ40、46ではなく、搬送ローラ52、58が存在する。また、ドープ槽19が収容している対極ユニット137、139、141、143は、電源109、110ではなく、電源111、112と接続している。電源111、112はバイポーラ電源である。また、電源111、112は、搬送ローラ37、41、43、47ではなく、搬送ローラ49、53、55、59と接続している。搬送ローラ49、53、55、59は、ドープ槽19の上方に位置する。搬送ローラ49、53、55、59は、後述するように、導電性の材料から成る給電ローラである。
【0045】
なお、搬送ローラ49、53、55、59から、電源111又は電源112を経て、ドープ槽19に収容された対極ユニット137、139、141、143に至る電気的な接続経路は、接続ユニットに対応する。
【0046】
洗浄槽21は、上方が開口した角型の槽である。洗浄槽21の底面は、略U字型の断面形状を有する。洗浄槽21は、仕切り板123を備える。仕切り板123は、その上端を貫く支持棒125により支持されている。支持棒125は図示しない壁等に固定されている。仕切り板123は上下方向に延び、洗浄槽21の内部を2つの空間に分割している。
【0047】
仕切り板123の下端に、搬送ローラ64が取り付けられている。仕切り板123と搬送ローラ64とは、それらを貫く支持棒127により支持されている。なお、仕切り板123の下端付近は、搬送ローラ64と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ64と、洗浄槽21の底面との間には空間が存在する。
【0048】
洗浄槽23は、基本的には洗浄槽21と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽23の内部には、搬送ローラ33ではなく、搬送ローラ75が存在する。洗浄槽21、23は洗浄ユニットに対応する。
【0049】
搬送ローラ群のうち、搬送ローラ29、31、67、69、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59は、導電性の材料から成る。搬送ローラ29、31、67、69、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59は、導電性の給電ローラに対応する。
【0050】
搬送ローラ群のうち、その他の搬送ローラは、軸受部分を除き、エラストマーから成る。搬送ローラ群は、電極1を一定の経路に沿って搬送する。搬送ローラ群が電極1を搬送する経路は、供給ロール101から、ドープ槽15の中、ドープ槽17の中、ドープ槽19の中、洗浄槽21の中、洗浄槽23の中、タブクリーナー117の中を順次通り、巻取ロール103に至る経路である。
【0051】
その経路のうち、ドープ槽15の中を通る部分は、以下のとおりである。まず、搬送ローラ29、31により下向きに送りだされ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ33により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ65、67により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ70により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ35により移動方向を水平方向に変えられ、ドープ槽17に向かう。
【0052】
また、上記の経路のうち、ドープ槽17の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ37により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ40により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ41、43により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ46により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ47により移動方向を水平方向に変えられ、ドープ槽19に向かう。
【0053】
また、上記の経路のうち、ドープ槽19の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ49により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ52により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ53、55により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ58により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ59により移動方向を水平方向に変えられ、洗浄槽21に向かう。
【0054】
また、上記の経路のうち、洗浄槽21の中を通る部分は、まず、搬送ローラ61により移動方向を下向きに変えられて下方に移動し、次に、搬送ローラ64により移動方向を上向きに変えられるという経路である。
【0055】
また、上記の経路のうち、洗浄槽23の中を通る部分は、まず、搬送ローラ73により移動方向を下向きに変えられて下方に移動し、次に、搬送ローラ75により移動方向を上向きに変えられるという経路である。
【0056】
供給ロール101は、電極1を巻き回している。すなわち、供給ロール101は、巻き取られた状態の電極1を保持している。供給ロール101に保持されている電極1における活物質には、未だアルカリ金属がドープされていない。
【0057】
搬送ローラ群は、供給ロール101に保持された電極1を引き出し、搬送する。巻取ロール103は、搬送ローラ群により搬送されてきた電極1を巻き取り、保管する。なお、巻取ロール103に保管されている電極1は、ドープ槽15、17、19において、プレドープの処理を受けている。そのため、巻取ロール103に保管されている電極1における活物質には、アルカリ金属がドープされている。巻取ロール103に保管されている電極1はドープ電極1Aである。
【0058】
支持台105は、ドープ槽15、17、19、及び洗浄槽21、23を下方から支持する。支持台105は、その高さを変えることができる。循環濾過ユニット107は、ドープ槽15、17、19にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット107は、フィルタ161と、ポンプ163と、配管165と、を備える。
【0059】
ドープ槽17に設けられた循環濾過ユニット107において、配管165は、ドープ槽17から出て、ポンプ163、及びフィルタ161を順次通り、ドープ槽17に戻る循環配管である。ドープ槽17内ドープ溶液は、ポンプ163の駆動力により、配管165、及びフィルタ161内を循環し、再びドープ槽17に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ161により濾過される。異物として、ドープ溶液から析出した異物や、電極1から発生する異物等が挙げられる。フィルタ161の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂である。フィルタ161の孔径は適宜設定できる。フィルタ161の孔径は、例えば、0.2μm以上50μm以下である。
【0060】
ドープ槽15、19に設けられた循環濾過ユニット107も、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。なお、図1図4において、ドープ溶液の記載は便宜上省略している。
【0061】
タブクリーナー117は、後述する電極1の活物質層未形成部94を洗浄する。回収ユニット119は、ドープ槽15、17、19、及び洗浄槽21、23のそれぞれに配置されている。回収ユニット119は、電極1が槽から持ち出す液を回収し、槽に戻す。
【0062】
回収ユニット119は、例えば、電極1を両側から挟み加圧するリムーバーロール、及び液滴ガイドを有する。液滴ガイドは、リムーバーロールが吸収したドープ溶液又は洗浄液をドープ槽15、17、19又は洗浄槽21、23に戻す。
【0063】
ドープ槽15に配置された回収ユニット119の位置は、電極1のうち、ドープ槽15の上流槽131内を通過し、搬送ローラ65へ搬送されている部分の近傍と、電極1のうち、ドープ槽15の下流槽133内を通過し、搬送ローラ35へ搬送されている部分の近傍と、である。
【0064】
ドープ槽17に配置された回収ユニット119の位置は、電極1のうち、ドープ槽17の上流槽131内を通過し、搬送ローラ41へ搬送されている部分の近傍と、電極1のうち、ドープ槽17の下流槽133内を通過し、搬送ローラ47へ搬送されている部分の近傍と、である。
【0065】
ドープ槽19に配置された回収ユニット119の位置は、電極1のうち、ドープ槽19の上流槽131内を通過し、搬送ローラ53へ搬送されている部分の近傍と、電極1のうち、ドープ槽19の下流槽133内を通過し、搬送ローラ59へ搬送されている部分の近傍と、である。
【0066】
端部センサ121は、電極1の幅方向Wにおける端部の位置を検出する。ドーピングシステム11は、端部センサ121の検出結果に基づき、供給ロール101及び巻取ロール103の幅方向Wにおける位置を調整する。装置筐体203は、ドーピングシステム11における他の構成を収容している。
【0067】
なお、本実施形態では、ドーピングシステム11は、2個の洗浄槽21、23を備える。洗浄槽の数は、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。洗浄槽の数が2個以上である場合、使用する洗浄液の量をトータルで抑制できるので好ましい。
【0068】
本実施形態では、洗浄槽21、23における電極1の搬送経路は、上下方向に1往復させる搬送経路である。洗浄槽21、23における電極1の搬送経路は、ドープ槽15、17、19と同様に、上下方向に2往復させる搬送経路であってもよい。
【0069】
2.乾燥ユニット201A~Fの構成
図1に示すように、乾燥ユニット201Aは、電極1のうち、ドープ槽15の上流槽131内を通過し、搬送ローラ65へ搬送されている部分の近傍に配置されている。乾燥ユニット201Aは、隣接する回収ユニット119よりも、搬送ローラ65の側にある。乾燥ユニット201Aが回収ユニット119よりも搬送ローラ65の側にあることで、給電ローラの表面でアルカリ金属が析出することを一層抑制できる。
【0070】
また、乾燥ユニット201Bは、電極1のうち、ドープ槽15の下流槽133内を通過し、搬送ローラ35へ搬送されている部分の近傍に配置されている。乾燥ユニット201Bは、隣接する回収ユニット119よりも、搬送ローラ35の側にある。
【0071】
また、乾燥ユニット201Cは、電極1のうち、ドープ槽17の上流槽131内を通過し、搬送ローラ41へ搬送されている部分の近傍に配置されている。乾燥ユニット201Cは、隣接する回収ユニット119よりも、搬送ローラ41の側にある。
【0072】
また、乾燥ユニット201Dは、電極1のうち、ドープ槽17の下流槽133内を通過し、搬送ローラ47へ搬送されている部分の近傍に配置されている。乾燥ユニット201Dは、隣接する回収ユニット119よりも、搬送ローラ47の側にある。
【0073】
また、乾燥ユニット201Eは、電極1のうち、ドープ槽19の上流槽131内を通過し、搬送ローラ53へ搬送されている部分の近傍に配置されている。乾燥ユニット201Eは、隣接する回収ユニット119よりも、搬送ローラ53の側にある。
【0074】
また、乾燥ユニット201Fは、電極1のうち、ドープ槽19の下流槽133内を通過し、搬送ローラ59へ搬送されている部分の近傍に配置されている。乾燥ユニット201Fは、隣接する回収ユニット119よりも、搬送ローラ59の側にある。
【0075】
乾燥ユニット201A~Fは同様の構成を有する。ここでは、図2図4図6図15に基づき、乾燥ユニット201Cの構成を説明する。図6図9に示すように、乾燥ユニット201Cは、基体部211と、第1ブロア213と、第2ブロア215と、を備える。
【0076】
基体部211は箱状の基本形態を有する。基体部211は、接続部217を備える。乾燥ユニット201Cは、接続部217を介して、図示しない支持部に固定される。乾燥ユニット201Cは、接続部217を除き、他の部材に接触しない。支持部と乾燥ユニット201Cとは、接続部217により、電気的に絶縁されている。接続部217を備えることにより、第1ブロア213又は第2ブロア215が電極1と接触した場合でも、電極1と、支持部とがショートすることを抑制できる。接続部217の材質は、支持部と乾燥ユニット201Cとを絶縁できる材質であれば特に限定されない。接続部217の材質として、例えば、エポキシガラス等が挙げられる。
【0077】
第1ブロア213及び第2ブロア215は、それぞれ、円筒状の基本形態を有する。第1ブロア213及び第2ブロア215は、それぞれ、基体部211における一方の面に取り付けられている。第1ブロア213の軸方向と、第2ブロア215の軸方向とは平行である。図6図9に示すように、第1ブロア213と、第2ブロア215との間には隙間が存在する。
【0078】
図6図9に示すように、乾燥ユニット201Cは、第1ブロア213と第2ブロア215とが、電極1を両側から挟むように配置されている。第1ブロア213は、電極1の表面のうち、後に、搬送ローラ45と接する表面(以下では第1表面219とする)に対向している。第1ブロア213と第1表面219との間には隙間が存在する。第1ブロア213の軸方向と、電極1の幅方向Wとは平行である。
【0079】
第2ブロア215は、電極1の表面のうち、後に、搬送ローラ41、43、47と接する表面(以下では第2表面221とする)に対向している。第2ブロア215と第2表面221との間には隙間が存在する。第2ブロア215の軸方向と、電極1の幅方向Wとは平行である。
【0080】
第1ブロア213は開口部を有する。開口部は、第1ブロア213の内部と外部とを連通する。開口部の形態として、例えば、図10図11に示す形態がある。第1ブロア213は、複数の開口部223を備える。それぞれの開口部223は丸穴である。複数の開口部223は、第1ブロア213の軸方向に平行な直線上に、等間隔で並んでいる。複数の開口部223の、周方向Cにおける位置は同一である。図11に示すように、複数の開口部223は、電極1と対向する。
【0081】
開口部の形態として、例えば、図12図13に示す形態がある。第1ブロア213は、1つのスリット状の開口部223を備える。スリット状の開口部223は、第1ブロア213の軸方向に沿って延びている。図13に示すように、スリット状の開口部223は、電極1と対向する。
【0082】
開口部の形態として、例えば、図14図15に示す形態がある。第1ブロア213は、複数の開口部223を備える。それぞれの開口部223は丸穴である。複数の開口部223は、第1ブロア213の軸方向に沿って、等間隔で並んでいる。複数の開口部223の、周方向Cにおける位置は2種類存在する。任意の開口部223の周方向Cにおける位置は、隣接する開口部223の周方向Cにおける位置とは異なる。図15に示すように、複数の開口部223は、電極1と対向する。
【0083】
第2ブロア215も、第1ブロア213と同様の形態を有する。第1ブロア213及び第2ブロア215の材質として、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂として、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びフッ素系樹脂から成る群より選択される少なくとも1種が挙げられる。第1ブロア213及び第2ブロア215の材質が樹脂である場合、第1ブロア213又は第2ブロア215と電極1とがショートすることを抑制できる。第1ブロア213及び第2ブロア215の表面材質が樹脂である場合、第1ブロア213又は第2ブロア215と電極1とがショートすることを一層抑制できる。
【0084】
第1ブロア213及び第2ブロア215の材質として、例えば、金属、2種以上の金属の合金、金属又は合金の酸化物、並びに、金属又は合金の窒化物から成る群より選択される少なくとも1種が挙げられる。第1ブロア213及び第2ブロア215の材質が上記の材質である場合、加工性及び強度の点で優れる。
【0085】
図示しないガス供給源から、基体部211の内部を通り、第1ブロア213及び第2ブロア215の内部に至るガス供給経路が設けられている。図11図13図15に示すように、第1ブロア213は、ガス供給経路により供給されたガス225を、開口部223から吹き出し、第1表面219に吹きつける。
【0086】
また、第2ブロア215は、ガス供給経路により供給されたガスを、開口部223から吹き出し、第2表面221に吹きつける。よって、乾燥ユニット201Cは、ドープ槽17内を通過し、搬送ローラ41へ搬送されている電極1に対し、第1ブロア213及び第2ブロア215を用いて、ガスを吹きつける。
【0087】
第1ブロア213及び第2ブロア215が電極1の表面にガスを吹きつけるため、例えば、電極1が搬送ローラ41へ到達したとき、電極1は乾燥している。その結果、搬送ローラ41の表面でアルカリ金属が析出することを抑制できる。
【0088】
第1ブロア213及び第2ブロア215が複数の開口部223を備える場合、複数の開口部223の間でのガス流量のばらつきが少ないことが好ましい。特に、第1ブロア213及び第2ブロア215における根元側の開口部223と、先端側の開口部223との間で、ガス流量の差が小さいことが好ましい。
【0089】
第1ブロア213及び第2ブロア215がスリット状の開口部223を備える場合、開口部223の根元側と先端側との間で、ガス流量の差が小さいことが好ましい。
【0090】
ガスとして、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、窒素ガス、炭酸ガス、及び、水分が除去された除湿空気から成る群より選択される少なくとも1種が挙げられる。上記のガスを使用する場合、ガスと活物質とが反応することを抑制できる。また、上記のガスを使用する場合、装置筐体203内部の酸素濃度を低下させることができるため、防爆性の点で優れる。
【0091】
図1図4に示す例では、ドーピングシステム11は、1個の乾燥ユニット201Cを備える。ドーピングシステム11は、例えば、複数の乾燥ユニット201Cを備えていてもよい。複数の乾燥ユニット201Cはそれぞれ、電極1のうち、ドープ槽17の上流槽131内を通過し、搬送ローラ41へ搬送されている部分の近傍に位置する。複数の乾燥ユニット201Cは、電極1の長手方向に沿って配列されている。
【0092】
乾燥ユニット201A、B、D~Fも、乾燥ユニット201Cと同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。ただし、乾燥ユニット201A、B、D~Fは、電極1のうち、それぞれの近傍にある部分にガスを吹きつけ、乾燥させる。
【0093】
例えば、乾燥ユニット201A~Fの近くに排気ノズルを設置することができる。排気ノズルを設置した場合、電極1を一層効率的に乾燥させることができる。
【0094】
3.電極1の構成
電極1の構成を図16及び図17に基づき説明する。電極1は、図16に示すように、帯状の形状を有する。電極1は、図17に示すように、帯状の集電体193と、その両側に形成された活物質層195とを備える。
【0095】
電極1の幅方向Wにおける両端には、活物質層未形成部94が存在する。活物質層未形成部94は、集電体193上に活物質層195が形成されず、集電体193が露出している部分である。図16に示すように、活物質層未形成部94は電極1の長手方向に沿って、一定の幅で連続して存在する。活物質層未形成部94は電極1の両面に存在する。電極1のうち、活物質層195が形成されている部分を、中央部96とする。中央部96は、電極1の幅方向における中央に位置する。また、中央部96は、電極1の長手方向に沿って、一定の幅で連続して存在する。なお、電極1は、活物質層未形成部94を幅方向における片端にのみ有する形態であってもよい。
【0096】
集電体193としては、正極集電体である場合、アルミニウム、ステンレス等が好ましい。集電体193としては、負極集電体である場合、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体193は、金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体193の厚みは、例えば、5~50μmである。
【0097】
活物質層195は、例えば、アルカリ金属をドープする前の活物質及びバインダー等を含有するスラリーを調製し、このスラリーを集電体193上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。
【0098】
バインダーとして、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、特開2009-246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダー等が挙げられる。
【0099】
スラリーは、活物質及びバインダーに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、例えば、導電剤、増粘剤等が挙げられる。導電剤として、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等が挙げられる。増粘剤として、例えば、カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。
【0100】
活物質層195の厚さは特に限定されない。活物質層195の厚さは、例えば、5~500μmであり、好ましくは10~200μmであり、特に好ましくは10~100μmである。
【0101】
活物質層195に含まれる活物質は、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池又はキャパシタに適用可能な電極活物質であれば特に限定されるものではなく、負極活物質であってもよいし、正極活物質であってもよい。
【0102】
負極活物質は特に限定されない。負極活物質として、例えば、炭素材料等が挙げられる。また、負極活物質として、例えば、リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。炭素材料として、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、複合炭素材料等が挙げられる。複合炭素材料は、例えば、黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した材料である。炭素材料の具体例として、特開2013-258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料の具体例として、特開2005-123175号公報、特開2006-107795号公報に記載の材料が挙げられる。
【0103】
正極活物質として、例えば、遷移金属酸化物、硫黄系活物質が挙げられる。遷移金属酸化物として、例えば、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等が挙げられる。硫黄系活物質として、例えば、硫黄単体、金属硫化物等が挙げられる。正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。本開示のドーピングシステム11は、負極活物質にアルカリ金属をドープする場合に適しており、特に、負極活物質が炭素材料又はSi若しくはその酸化物を含む材料であることが好ましい。
【0104】
活物質にドープするアルカリ金属としては、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。
【0105】
電極1を、リチウムイオン二次電池の製造に用いる場合、活物質層195の密度は、好ましくは1.50~2.00g/ccであり、特に好ましくは1.60~1.90g/ccである。一方、電極1をリチウムイオンキャパシタの製造に用いる場合、活物質層195の密度は、好ましくは0.50~1.50g/ccであり、特に好ましくは0.70~1.20g/ccである。
【0106】
後述する電極の製造方法を実施していないとき、活物質には、アルカリ金属がドープされていない。後述する電極の製造方法を実施することにより、活物質にアルカリ金属がドープされる。活物質にアルカリ金属がドープされた電極1はドープ電極1Aである。ドープ電極1Aは、アルカリ金属がドープされた活物質を含む電極に対応する。
【0107】
4.ドープ溶液の組成
ドーピングシステム11を使用するとき、ドープ槽15、17、19にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、アルカリ金属塩と、第1の非プロトン性溶剤とを含む。ドープ溶液においてアルカリ金属塩の一部は電離してアルカリイオンを生じさせる。ドープ溶液は、アルカリ金属のイオンを含む溶液に対応する。第1の非プロトン性溶剤として、1気圧での沸点が150℃を超える有機溶剤が好ましく、1気圧での沸点が200℃を超える有機溶剤が特に好ましい。
【0108】
第1の非プロトン性溶剤として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0109】
また、第1の非プロトン性溶剤として、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等のイオン液体を使用することもできる。第1の非プロトン性溶剤は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶剤であってもよい。
【0110】
第1の非プロトン性溶剤が、1気圧での沸点が150℃を超える有機溶剤である場合、ドープ溶液には、1気圧での沸点が150℃以下の溶剤が含まれていてもよい。1気圧での沸点が150℃以下の溶剤としては、非プロトン性の有機溶剤が好ましく、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン等が挙げられる。
【0111】
これらの中でも、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましく、特にジメチルカーボネートが好ましい。1気圧での沸点が150℃以下の溶剤の含有割合は、ドープ溶液に含まれる溶剤中、好ましくは50~90体積%、特に好ましくは65~75体積%である。
【0112】
ドープ溶液に含まれるアルカリ金属塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩である。アルカリ金属塩を構成するアニオン部として、例えば、PF 、PF(C 、PF(CF 、等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF 、BF(CF) 、BF(CF、B(CN) 等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO 、N(CFSO 、N(CSO 等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CFSO 等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。アルカリ金属塩は、含フッ素化合物であることが好ましい。
【0113】
ドープ溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。ドープ溶液におけるアルカリ金属塩の濃度がこの範囲内である場合、アルカリ金属のドープが効率良く進行する。
【0114】
ドープ溶液は、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0115】
5.電極の製造方法
ドーピングシステム11を使用してドープ電極1Aを製造する場合、まず、ドープ電極1Aを製造するための準備として、以下のことを行う。未だアルカリ金属を活物質にドープしていない電極1を供給ロール101に巻き回す。ドープ槽15、17、19にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、上記「4.ドープ溶液の組成」で述べたものである。
【0116】
次に、搬送ローラ群により、供給ロール101から巻取ロール103まで、上述した経路に沿って電極1を搬送する。電極1を搬送する経路は、ドープ槽15、17、19内を通過する経路である。電極1がドープ槽15、17、19内を通過するとき、活物質層195に含まれる活物質にアルカリ金属がドープされる。その結果、電極1はドープ電極1Aとなる。
【0117】
さらに、搬送ローラ群は、ドープ電極1Aを洗浄槽21、23に搬送する。ドープ電極1Aは、搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽21、23で洗浄される。
【0118】
さらに、搬送ローラ群は、ドープ電極1Aをタブクリーナー117に連続的に搬送する。タブクリーナー117は、ドープ電極1Aのうち、活物質層未形成部94をクリーニングする。
【0119】
電極1は、ドープ槽15の上流槽131内を通過し、搬送ローラ65へ搬送されるとき、まず、回収ユニット119により、電極1に付着しているドープ溶液の一部を回収される。次に、電極1は、乾燥ユニット201Aによりガスを吹きつけられ、乾燥する。電極1は、搬送ローラ65へ到達したときは、乾燥した状態である。
【0120】
電極1は、ドープ槽15の下流槽133内を通過し、搬送ローラ35へ搬送されるとき、まず、回収ユニット119により、電極1に付着しているドープ溶液の一部を回収される。次に、電極1は、乾燥ユニット201Bによりガスを吹きつけられ、乾燥する。電極1は、搬送ローラ35へ到達したときは、乾燥した状態である。
【0121】
電極1は、ドープ槽17の上流槽131内を通過し、搬送ローラ41へ搬送されるとき、まず、回収ユニット119により、電極1に付着しているドープ溶液の一部を回収される。次に、電極1は、乾燥ユニット201Cによりガスを吹きつけられ、乾燥する。電極1は、搬送ローラ41へ到達したときは、乾燥した状態である。
【0122】
電極1は、ドープ槽17の下流槽133内を通過し、搬送ローラ47へ搬送されるとき、まず、回収ユニット119により、電極1に付着しているドープ溶液の一部を回収される。次に、電極1は、乾燥ユニット201Dによりガスを吹きつけられ、乾燥する。電極1は、搬送ローラ47へ到達したときは、乾燥した状態である。
【0123】
電極1は、ドープ槽19の上流槽131内を通過し、搬送ローラ53へ搬送されるとき、まず、回収ユニット119により、電極1に付着しているドープ溶液の一部を回収される。次に、電極1は、乾燥ユニット201Eによりガスを吹きつけられ、乾燥する。電極1は、搬送ローラ53へ到達したときは、乾燥した状態である。
【0124】
電極1は、ドープ槽19の下流槽133内を通過し、搬送ローラ59へ搬送されるとき、まず、回収ユニット119により、電極1に付着しているドープ溶液の一部を回収される。次に、電極1は、乾燥ユニット201Fによりガスを吹きつけられ、乾燥する。電極1は、搬送ローラ59へ到達したときは、乾燥した状態である。
【0125】
ガスの流量は特に限定されない。ガスの流量が多いほど、電極1を容易に乾燥させることができる。ガスの温度が高いほど、電極1を容易に乾燥させることができる。ただし、窒素ガスや炭酸ガスのように、ドープ電極1Aと反応することがあるガスの場合、ガスの温度は40℃以下であることが好ましい。
【0126】
上記のように、本開示の電極の製造方法では、乾燥後の電極1と、給電ローラとを接触させる。そのため、給電ローラの表面でアルカリ金属が析出することを抑制できる。
【0127】
本開示の電極の製造方法では、電極1にガスを吹きつける第1ブロア213及び第2ブロア215を用いて電極1を乾燥させる。そのため、電極1を乾燥させることが一層容易である。
【0128】
本開示の電極の製造方法では、第2ブロア215は、電極1の表面のうち、後に給電ローラと接触する表面にガスを吹きつけ、乾燥させる。その結果、本開示の電極の製造方法によれば、給電ローラの表面でアルカリ金属が析出することを一層抑制できる。
【0129】
第1ブロア213及び第2ブロア215は、電極1を挟むように配置されている。そのため、第1ブロア213及び第2ブロア215は、電極1の両面にガスを吹きつけ、電極1の両面を乾燥させることができる。
【0130】
第1ブロア213及び第2ブロア215は、例えば、図12に示すスリット状の開口部223を備える。この場合、第1ブロア213及び第2ブロア215が電極1の表面を乾燥させる効果が一層高い。
【0131】
第1ブロア213及び第2ブロア215は、例えば、図10又は図14に示す、2以上の開口部223を備える。この場合、第1ブロア213及び第2ブロア215が電極1の表面を乾燥させる効果が一層高い。
【0132】
特に、図14図15に示すように、第1ブロア213及び第2ブロア215の軸方向から見て、ガスを2方向以上に吹き出す場合、第1ブロア213及び第2ブロア215が電極1の表面を乾燥させる効果が一層高い。
【0133】
ドーピングシステム11は、アルカリイオン型のキャパシタ又は電池が備える負極の製造に適しており、アルカリイオン型のキャパシタ又は二次電池が備える負極の製造により適しており、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池が備える負極の製造に特に適している。
【0134】
アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオンキャパシタの負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは70~95%である。アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオン二次電池の負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは10~30%である。
【0135】
6.蓄電デバイスの製造方法
本開示の蓄電デバイスの製造方法は、正極、負極及び電解質を備える蓄電デバイスの製造方法である。本開示の蓄電デバイスの製造方法では、上記「5.電極の製造方法」により負極を製造する。
【0136】
蓄電デバイスとして、例えば、キャパシタ、電池等が挙げられる。キャパシタは、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用するキャパシタであれば特に限定されない。キャパシタとして、例えば、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウムイオンキャパシタ等が挙げられる。その中でもリチウムイオンキャパシタが好ましい。
【0137】
キャパシタを構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質としては活性炭を使用することが好ましい。
【0138】
キャパシタを構成する電解質の形態は、通常、液状の電解液である。電解液の基本的な構成は、上述したドープ溶液の構成と同様である。また、電解質におけるアルカリ金属イオンの濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。電解質は、漏液を防止する目的で、ゲル状又は固体状の形態を有していてもよい。
【0139】
キャパシタは、正極と負極との間に、それらの物理的な接触を抑制するためのセパレータを備えることができる。セパレータとして、例えば、セルロースレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムが挙げられる。
【0140】
キャパシタの構造として、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る板状の構成単位が、3単位以上積層されて積層体を形成し、その積層体が外装フィルム内に封入された積層型セルが挙げられる。
【0141】
また、キャパシタの構造として、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る帯状の構成単位が捲回されて積層体を形成し、その積層体が角型又は円筒型の容器に収納された捲回型セル等が挙げられる。
【0142】
キャパシタは、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
【0143】
リチウムイオンキャパシタの場合、活物質層195の密度は、好ましくは0.50~1.50g/ccであり、特に好ましくは0.70~1.20g/ccである。
【0144】
電池として、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池であれば特に限定されない。電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよい。電池として、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、空気電池等が挙げられる。その中でもリチウムイオン二次電池が好ましい。
【0145】
電池を構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質として、既に例示したものの他、ニトロキシラジカル化合物等の有機活物質や酸素を使用することもできる。
【0146】
電池を構成する電解質の構成、電池自体の構成は、キャパシタの場合と同様である。電池は、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
<実施例>
1.実施例1
(1)負極の製造
長尺の帯状の集電体193を用意した。集電体193は負極集電体として使用した。集電体193のサイズは、幅132mm、厚さ8μmであった。集電体193の表面粗さRaは0.1μmであった。集電体193は銅箔から成っていた。集電体193の両面に、それぞれ活物質層195を形成した。活物質層195は負極活物質層であった。活物質層195の厚みは65μmであった。
【0147】
集電体193の片側に形成された活物質層195の塗工量は50g/mであった。活物質層195は、集電体193の長手方向に沿って形成された。活物質層195は、集電体193の幅方向Wにおける端部から幅120mmにわたって形成された。集電体193の幅方向Wにおけるもう一方の端部での活物質層未形成部94の幅は12mmであった。その後、乾燥、及びプレスを行うことにより、電極1を得た。
【0148】
活物質層195は、負極活物質、カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック及びバインダーを、質量比で88:4:5:3の比率で含んでいた。負極活物質は、黒鉛系活物質であった。バインダーはフッ素アクリル系樹脂であった。黒鉛系活物質のD50は5μmであった。黒鉛系活物質のBET比表面積は10m/gであった。
【0149】
図1に示すドーピングシステム11を用意し、電極1をセッティングした。また、ドープ槽15、17、19のそれぞれに対極ユニット137、139、141、143を収容した。次に、ドープ槽15、17、19内にドープ溶液を供給した。ドープ溶液は、1.2MのLiPFを含む溶液であった。ドープ溶液の溶媒は、EC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とを、3:7の体積比で含む混合液であった。
【0150】
ドーピングシステム11における電気的構成は、図2に示す第1の電気的構成とした。第1端子109A、及び第1端子110Aの電位は、それぞれ0Vであった。また、第2端子109B、及び第2端子110Bの電位は、それぞれ、+3Vであった。
【0151】
次に、電極1を2m/分の速度で搬送しながら、50Aの電流を通電した。このとき、電極1が備える活物質層195の幅方向Wにおける中心と、対極ユニット51が備えるリチウム金属板の幅方向Wにおける中心とが一致していた。ドープ槽15、17、19を通過するとき、活物質層195中の負極活物質にリチウムが理論容量に対して約80%ドープされた。その結果、電極1はドープ電極1Aとなった。
【0152】
搬送されている電極1を、乾燥ユニット201A~Fを用いて、上述した方法で乾燥させた。乾燥ユニット201A~Fが備える第1ブロア213及び第2ブロア215は、それぞれ、直径10mm、長さ184mmのパイプであった。第1ブロア213及び第2ブロア215の材質は、それぞれ、SUSであった。SUSは金属に対応する。
【0153】
第1ブロア213及び第2ブロア215は、それぞれ、図10及び図11に示す複数の開口部223を備えていた。開口部223の直径は1mmであった。開口部223の数は20個であった。開口部223のピッチは8mmであった。
【0154】
第1ブロア213はガスを吹き出さず、第2ブロア215のみがガスを吹き出した。第2ブロア215により、第2表面221にガスが吹きつけられた。第2ブロア215が電極1に吹きつけたガスは窒素ガスであった。窒素ガスの流量は、第2ブロア215の全体で、5L/mimであった。電極1の第2表面221は、乾燥ユニット201A~Fにより乾燥させられたため、電極1が搬送ローラ65、35、41、47、53、59と接するとき、電極1は乾燥した状態であった。
【0155】
ドープ電極1Aを、ドープ槽15、17、19を通過させた後、さらに洗浄槽21、23を通過させ、アルゴンを吹きつけ乾燥させた後、巻き取った。洗浄槽21、23には、25℃のDMCを収容しておいた。以上のようにして、ドープ電極1Aを製造した。
【0156】
(2)ドープ評価
プレドープを行っているとき、ドープ評価を行った。ドープ評価とは、プレドープを行っているときの電圧の上昇しやすさに関する評価である。ドープ評価の基準は以下のとおりである。
【0157】
AA:プレドープをした際の安定電圧の絶対値が3.0V未満である。
【0158】
A:安定電圧の絶対値が3.0V以上、3.3V未満である。
【0159】
B:安定電圧の絶対値が3.3V以上、3.6V未満である。
【0160】
C:プレドープした際の電圧が安定するかどうかに関わらず、電圧は3.6V以上である。
【0161】
なお、安定電圧とは、プレドープを開始してから電圧変化が±0.05V以下となった時の電圧を意味する。実施例1では、ドープ評価の評価結果はAであり、安定電圧は3.05Vであった。また、実施例1では、プレドープのとき、電圧が継続して上昇することはなかった。ドープ評価の結果を表1に示す。
【0162】
【表1】
なお、表1における「丸穴タイプ」とは、図10及び図11に示す複数の開口部223を意味する。「スリット状」とは、図12図13に示すスリット状の開口部223を意味する。「二方向タイプ」とは、図14及び図15に示す複数の開口部223を意味する。
【0163】
「材質」とは、第1ブロア213及び第2ブロア215の材質を意味する。「ガス吹きつけ面」とは、電極1の両面のうち、ガスを吹きつけた面を意味する。「給電ローラ接触面」は、第2表面221である。「エポキシガラス設置」とは、乾燥ユニット201A~Fが、エポキシガラス製の接続部217を備えることを意味する。
【0164】
「電源接続方法」とは、ドーピングシステム11における電気的構成を意味する。「-アース」とは、図2に示す第1の電気的構成を意味する。「+アース」とは、図3に示す第2の電気的構成を意味する。
【0165】
(3)Li析出評価
プレドープを行っているとき、Li析出評価を行った。Li析出評価とは、帯状の電極1を連続してドープした際の、給電ローラの表面におけるLiの析出しやすさに関する評価である。Li析出評価の基準は以下のとおりである。
【0166】
AA:7500m以上の電極1をドープした際に、はじめてLi析出が見られた。
【0167】
A:3000m以上7500m未満の電極1をドープした際に、はじめてLi析出が見られた。
【0168】
B:1000m以上3000m未満の電極1をドープした際に、はじめてLi析出が見られた。
【0169】
C:1000mの電極1をドープする以前にLi析出が見られた。
【0170】
Li析出評価の結果を表1に示す。
【0171】
2.実施例2
基本的には実施例1と同様にして、負極の製造を行った。ただし、乾燥ユニット201A~Fが備える第1ブロア213及び第2ブロア215は、それぞれ、図14及び図15に示す複数の開口部223を備えていた。図15に示すように、第1ブロア213及び第2ブロア215の軸方向から見たとき、一部の開口部223が吹き出すガス225の方向と、残りの開口部223が吹き出すガス225の方向とが成す角度は45度であった。
【0172】
第1ブロア213及び第2ブロア215のサイズ及び材質、開口部223の直径、開口部223のピッチ、並びに、開口部223の数は、実施例1と同様であった。
【0173】
実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。7000mの電極1をドープした際に、はじめて給電ローラにLi析出が見られた。プレドープのとき、電圧が継続して上昇することはなかった。安定電圧は3.07Vであった。評価結果を表1に示す。
【0174】
3.実施例3
基本的には実施例1と同様にして、負極の製造を行った。ただし、乾燥ユニット201A~Fが備える第1ブロア213及び第2ブロア215は、それぞれ、図12及び図13に示すスリット状の開口部223を備えていた。開口部223の幅は1mmであった。開口部223の長さは150mmであった。第1ブロア213及び第2ブロア215のサイズ及び材質は、実施例1と同様であった。
【0175】
実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。10000mの電極1をドープしても、給電ローラにLi析出は見られなかった。プレドープのとき、電圧が継続して上昇することはなかった。安定電圧は3.04Vであった。評価結果を表1に示す。
【0176】
4.実施例4
基本的には実施例1と同様にして、負極の製造を行った。ただし、第1ブロア213及び第2ブロア215は、ポリプロピレン(PP)製のパイプであった。また、乾燥ユニット201A~Fは、接続部217を備えていなかった。
【0177】
実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。5000mの電極1をドープした際に、はじめて給電ローラにLi析出が見られた。プレドープのとき、電圧が継続して上昇することはなかった。安定電圧は3.06Vであった。評価結果を表1に示す。
【0178】
5.実施例5
基本的には実施例1と同様にして、負極の製造を行った。ただし、第2ブロア215に加えて第1ブロア213も、電極1にガスを吹きつけた。電極1が給電ローラに到達したとき、第2表面221に加えて、第1表面219も乾燥した状態であった。
【0179】
実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。8000mの電極1をドープした際に、はじめて給電ローラにLi析出が見られた。プレドープのとき、電圧が継続して上昇することはなかった。安定電圧は3.05Vであった。評価結果を表1に示す。
【0180】
6.実施例6
基本的には実施例1と同様にして、負極の製造を行った。ただし、電極1の搬送速度を、4m/分とした。実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。2500mの電極1をドープした際に、はじめて給電ローラにLi析出が見られた。プレドープのとき、電圧が継続して上昇することはなかった。安定電圧は3.08Vであった。評価結果を表1に示す。
【0181】
7.実施例7
基本的には実施例6と同様にして、負極の製造を行った。ただし、窒素ガスの流量を、10L/minとした。実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。5000mの電極1をドープした際に、はじめて給電ローラにLi析出が見られた。プレドープのとき、電圧が継続して上昇することはなかった。安定電圧は3.05Vであった。評価結果を表1に示す。
【0182】
8.実施例8
基本的には実施例1と同様にして、負極の製造を行った。ただし、ドーピングシステム11における電気的構成は、図3に示す第2の電気的構成とした。第1端子109A及び第1端子110Aの電位は、それぞれ-3Vであった。また、第2端子109B及び第2端子110Bの電位は、それぞれ0Vであった。
【0183】
実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。5000mの電極1をドープした際に、はじめて給電ローラにLi析出が見られた。プレドープのとき、電圧は負の値であり、電圧の絶対値が継続してさらに増加することはなかった。安定電圧は負の値であり、安定電圧の絶対値は3.0V未満であった。評価結果を表1に示す。
【0184】
9.比較例1
基本的には実施例1と同様にして、負極の製造を行った。ただし、ドーピングシステム11は、乾燥ユニット201A~Fを備えていなかった。電極1が給電ローラに到達したとき、電極1の第1表面219及び第2表面221は、ドープ溶液で濡れた状態であった。
【0185】
実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。500mの電極1をドープした際に、給電ローラにLiが大量に析出した。プレドープのとき、電圧が3.6V以上に上昇し、プレドープができない状態となった。評価結果を表1に示す。
【0186】
10.比較例2
基本的には比較例1と同様にして、負極の製造を行った。ただし、電極1の搬送速度を、4m/分とした。実施例1と同様に、ドープ評価及びLi析出評価を行った。250mの電極1をドープした際に、給電ローラにLiが大量に析出した。プレドープのとき、電圧が3.6V以上に上昇し、プレドープができない状態となった。評価結果を表1に示す。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0187】
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0188】
(2)上述したドーピングシステムの他、当該ドーピングシステムを構成要素とする上位のシステム、ドーピングシステムの制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、ドーピング方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17