(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】着地予想値管理装置、着地予想値管理方法、及び、着地予想値管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20250304BHJP
G06Q 40/12 20230101ALI20250304BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q40/12
(21)【出願番号】P 2022018212
(22)【出願日】2022-02-08
【審査請求日】2024-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 晶浩
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-021081(JP,A)
【文献】特開平11-259562(JP,A)
【文献】特開2002-215865(JP,A)
【文献】特開2007-257145(JP,A)
【文献】特開2008-158600(JP,A)
【文献】特開2001-109834(JP,A)
【文献】国際公開第2021/132603(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
案件に対する所定期間の
費用として業務オペレータにより入力された費用の、未アサイン原価加算前における予定値である仮予定値を生成する仮予定値生成部と、
前記所定期間における予定人工数を減算処理した値である未アサイン人工に月平均予定時間を乗算処理した乗算処理結果に時間単価を乗算処理することで、前記案件に対する費用としてアサインされていない費用である未アサイン原価を算出する未アサイン原価算出部と、
前記仮予定値及び前記未アサイン原価を加算処理した値を、前記案件の所定期間における費用の予定値として生成する予定値生成部と、
前記所定期間において確定した費用の実績値、及び、前記実績値が確定した時点以降の前記予定値の合計値を、通期における費用の予定値に対応する着地予想値として算出する着地予想値算出部と、
費用の予定値に対応する前記着地予想値を出力する出力制御部と、
を有する着地予想値管理装置。
【請求項2】
前記着地予想値算出部は、記憶部に記憶されている各所定期間の費用の計画値の合計値であり、前記実績値が発生する前の、通期における費用の計画値に対応する着地予想値として算出し、
前記出力制御部は、費用の予定値に対応する前記着地予想値、及び、費用の計画値に対応する前記着地予想値を出力すること、
を特徴とする請求項1に記載の着地予想値管理装置。
【請求項3】
前記着地予想値算出部は、前記案件を担当するグループ単位で前記着地予想値を算出すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着地予想値管理装置。
【請求項4】
前記着地予想値算出部は、前記案件の売上、直接費、間接費、販売管理費、及び、営業利益にそれぞれ対応する前記着地予想値を算出し、
前記仮予定値生成部は、前記業務オペレータによる前記間接費の入力に基づいて前記仮予定値を生成し、
前記未アサイン原価算出部は、前記所定期間における予定人工数を減算処理した値である未アサイン人工に月平均予定時間を乗算処理した乗算処理結果に時間単価を乗算処理することで、前記間接費に対応する未アサイン原価を算出し、
前記予定値生成部は、前記間接費の仮予定値及び前記間接費の未アサイン原価を加算処理した値を、前記間接費の予定値として生成すること、
を特徴する請求項1から請求項3のうち、いずれか一項に記載の着地予想値管理装置。
【請求項5】
前記着地予想値算出部は、前記未アサイン原価の加算処理を行った前記着地予想値、及び、前記未アサイン原価の加算処理を行わない着地予想値をそれぞれ算出し、
前記出力制御部は、前記未アサイン原価の加算処理を行った前記着地予想値、及び、前記未アサイン原価の加算処理を行わない着地予想値のうち、選択された方の前記着地予想値を出力すること、
を特徴とする請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の着地予想値管理装置。
【請求項6】
仮予定値生成部が
、案件に対する所定期間の
費用として業務オペレータにより入力された費用の、未アサイン原価加算前における予定値である仮予定値を生成する仮予定値生成ステップと、
未アサイン原価算出部が、前記所定期間における予定人工数を減算処理した値である未アサイン人工に月平均予定時間を乗算処理した乗算処理結果に時間単価を乗算処理することで、前記案件に対する費用としてアサインされていない費用である未アサイン原価を算出する未アサイン原価算出ステップと、
予定値生成部が、前記仮予定値及び前記未アサイン原価を加算処理した値を、前記案件の所定期間における費用の予定値として生成する予定値生成ステップと、
着地予想値算出部が、前記所定期間において確定した費用の実績値、及び、前記実績値が確定した時点以降の前記予定値の合計値を、通期における費用の予定値に対応する着地予想値として算出する着地予想値算出ステップと、
出力制御部が、費用の予定値に対応する前記着地予想値を出力する出力制御ステップと、
を有する着地予想値管理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
案件に対する所定期間の
費用として業務オペレータにより入力された費用の、未アサイン原価加算前における予定値である仮予定値を生成する仮予定値生成部と
前記所定期間における予定人工数を減算処理した値である未アサイン人工に月平均予定時間を乗算処理した乗算処理結果に時間単価を乗算処理することで、前記案件に対する費用としてアサインされていない費用である未アサイン原価を算出する未アサイン原価算出部と、
前記仮予定値及び前記未アサイン原価を加算処理した値を、前記案件の所定期間における費用の予定値として生成する予定値生成部と、
前記所定期間において確定した費用の実績値、及び、前記実績値が確定した時点以降の前記予定値の合計値を、通期における費用の予定値に対応する着地予想値として算出する着地予想値算出部と、
費用の予定値に対応する前記着地予想値を出力する出力制御部として機能させること、
を特徴とする着地予想値管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着地予想値管理装置、着地予想値管理方法、及び、着地予想値管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、ソフトウェア又はシステムの開発、保守、運用における委託契約の一種であり、特定の業務に対して技術者の労働を提供するSES(システムエンジニアリングサービス)が知られている。
【0003】
また、特許文献1(特開2020-013600号公報)には、経営分析におけるユーザの手間を軽減し且つ経営改善に十分に資することを目的とした経営管理補助システムが開示されている。この経営管理補助システムの場合、複数のユーザが利用する複数のユーザ端末と、複数のユーザ端末と通信する中継サーバと、複数のユーザ端末及び中継サーバと通信する解析サーバとを備える。
【0004】
ユーザ端末は、ユーザの店舗における営業実績に関する情報及びユーザの店舗におけるコスト管理に関する情報を含むユーザ情報を中継サーバへ送信する。中継サーバは、ユーザ情報のうち特定のユーザ情報を解析サーバへ送信する。また、解析サーバは、特定のユーザ情報を所定の分析ルールに基づいて分析することにより、ユーザの店舗に関する経営管理情報を取得して複数のユーザ端末へ送信する。そして、ユーザ端末は、ユーザの指示に基づいて経営管理情報を階層的に表示する。
【0005】
また、この特許文献1の経営管理補助システムは、タイルは、解析サーバにおいて所定のルールに沿って算出された当月末時点での売上累計、原価率、及び人件費率の予測値(着地予想)を示し、それらの下方に、タイルに表示された当月の売上目標(売上計画)の日推移に対する当日までの売上実績の日推移を示す折れ線面グラフの拡大図を表示する。
【0006】
ここで、ERP(Enterprise Resources Planning)等により、受注確度に応じた引合案件、又は、正式に契約が締結した受注案件等の情報は、担当する技術者のアサイン情報を関連付けて管理できる。また、引合又は受注の各予算に基づいて、案件の収支を積算することで、着地予想値を算出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、引合にも満たない将来発生する受注案件、及び、必要となる労務費等のコスト(=未アサイン原価)は、発生が予想されるにも関わらず、着地予想値に反映させることは困難であった。このため、算出される着地予想値が不正確な値となり、正確な案件管理に支障を来す問題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、未アサイン原価を反映させた着地予想値を算出して、正確な案件管理を可能とした着地予想値管理装置、着地予想値管理方法、及び、着地予想値管理プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る着地予想値管理装置は、案件に対する所定期間の費用として業務オペレータにより入力された費用の、未アサイン原価加算前における予定値である仮予定値を生成する仮予定値生成部と、所定期間における予定人工数を減算処理した値である未アサイン人工に月平均予定時間を乗算処理した乗算処理結果に時間単価を乗算処理することで、案件に対する費用としてアサインされていない費用である未アサイン原価を算出する未アサイン原価算出部と、仮予定値及び未アサイン原価を加算処理した値を、案件の所定期間における費用の予定値として生成する予定値生成部と、所定期間において確定した費用の実績値、及び、実績値が確定した時点以降の予定値の合計値を、通期における費用の予定値に対応する着地予想値として算出する着地予想値算出部と、費用の予定値に対応する着地予想値を出力する出力制御部と、を有する。
【0011】
また、上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る着地予想値管理方法は、仮予定値生成部が、案件に対する所定期間の費用として業務オペレータにより入力された費用の、未アサイン原価加算前における予定値である仮予定値を生成する仮予定値生成ステップと、未アサイン原価算出部が、所定期間における予定人工数を減算処理した値である未アサイン人工に月平均予定時間を乗算処理した乗算処理結果に時間単価を乗算処理することで、案件に対する費用としてアサインされていない費用である未アサイン原価を算出する未アサイン原価算出ステップと、予定値生成部が、仮予定値及び未アサイン原価を加算処理した値を、案件の所定期間における費用の予定値として生成する予定値生成ステップと、着地予想値算出部が、所定期間において確定した費用の実績値、及び、実績値が確定した時点以降の予定値の合計値を、通期における費用の予定値に対応する着地予想値として算出する着地予想値算出ステップと、出力制御部が、費用の予定値に対応する着地予想値を出力する出力制御ステップと、を有する。
【0012】
また、上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る着地予想値管理プログラムは、コンピュータを、案件に対する所定期間の費用として業務オペレータにより入力された費用の、未アサイン原価加算前における予定値である仮予定値を生成する仮予定値生成部と、所定期間における予定人工数を減算処理した値である未アサイン人工に月平均予定時間を乗算処理した乗算処理結果に時間単価を乗算処理することで、案件に対する費用としてアサインされていない費用である未アサイン原価を算出する未アサイン原価算出部と、仮予定値及び未アサイン原価を加算処理した値を、案件の所定期間における費用の予定値として生成する予定値生成部と、所定期間において確定した費用の実績値、及び、実績値が確定した時点以降の予定値の合計値を、通期における費用の予定値に対応する着地予想値として算出する着地予想値算出部と、費用の予定値に対応する着地予想値を出力する出力制御部として機能させること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、未アサイン原価を反映させた着地予想値を算出して、正確な案件管理を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態の業務管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、着地予想値の概要を説明するための図である。
【
図3】
図3は、間接費の通期の予定値に対して未アサイン原価を反映させた組織別着地予想表の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、各種マスタに対して設定されるデータを説明するための図である。
【
図5】
図5は、仮想PJに対する計画予算の登録動作の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、仮想PJデータの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、仮想PJに登録された計画予算の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、仮想PJに直接PJを関連付ける仮想PJの更新処理を示す図である。
【
図9】
図9は、計下値の着地予想値の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、仮想PJの形成後に受注された直接プロジェクトの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、要員管理登録処理を説明するための図である。
【
図13】
図13は、直接PJテーブルに対する予算情報の登録動作を説明するための図である。
【
図14】
図14は、仮想PJテーブルに対して直接PJテーブルを関連付ける仮想PJの構成処理を説明するための図である。
【
図15】
図15は、未アサイン原価を含めない状態で表示した組織別着地予想表の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、未アサイン原価の算出動作を説明するための図である。
【
図17】
図17は、未アサイン原価を含めた状態で表示した組織別着地予想表の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、直接PJに対する売上の登録処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、プロジェクトの売上入力処理を説明するための図である。
【
図20】
図20は、売上が発生した月における直接費、間接費及び販管費の入力処理を説明するための図である。
【
図21】
図21は、売上データ及び経費データを反映させた組織別着地予想表の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、新規プロジェクトを新たに受注した際における、業務支援装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、新規に受注したプロジェクトの直接PJデータの一例を示す図である。
【
図24】
図24は、新規プロジェクトの受注時における要員管理登録処理を説明するための図である。
【
図25】
図25は、直接PJの予算情報の登録処理を説明するための図である。
【
図26】
図26は、プロジェクト別の予算の登録処理を説明するための図である。
【
図27】
図27は、「P001」のプロジェクト番号の直接PJ、及び、「P002」のプロジェクト番号の直接PJに対応する、未アサイン原価を反映させない状態の組織別着地予想表の生成動作を説明するための図である。
【
図28】
図28は、組織別着地予想表に対して未アサイン原価を反映させるか否かを選択する抽出画面の一例を示す図である。
【
図29】
図29は、新たに受注したプロジェクトに対応する未アサイン原価の算出の仕方を説明するための図である。
【
図30】
図30は、「P001」のプロジェクト番号の直接PJ、及び、「P002」のプロジェクト番号の直接PJに対応する、未アサイン原価を反映させた状態の組織別着地予想表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した実施の形態となる業務管理装置を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
(ハードウェア構成)
図1は、実施の形態の業務管理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図1に示すように、業務管理装置1は、記憶部2、制御部3、通信インターフェース部4及び入出力インターフェース部5を備えている。
【0017】
入出力インターフェース部5には、入力装置6及び出力装置7が接続されている。出力装置7としては、モニタ装置(家庭用テレビを含む)等の表示部を用いることができる。
【0018】
入力装置6としては、キーボード装置及びマウス装置、及びマイクロホン装置の他、マウス装置と協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタ装置を用いることができる。
【0019】
記憶部2としては、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置を用いることができる。記憶部2には、それぞれ記憶領域である、原価要素マスタ11、予定単価マスタ12、部署マスタ13、及び、社員マスタ14が形成されている。また、記憶部2には、それぞれ記憶領域である、原価要素テーブル15、予定単価テーブル16、部署テーブル17、社員テーブル18、直接プロジェクトテーブル(直接PJテーブル)19、予算テーブル20、及び、仮想PJテーブル21が形成されている。また、記憶部2には、それぞれ記憶領域である組織別着地予想テーブル22、要員管理テーブル23、未アサインテーブル24、売上テーブル25、及び、経費テーブル26が形成されている。
【0020】
(業務管理装置の機能構成)
また、記憶部2には、業務管理プログラムが記憶されている。制御部3は、この業務管理プログラムを実行することで、マスタ設定部31、入力処理部32、データ生成部33、記憶制御部34、演算部35、及び、表示制御部36として機能する。データ生成部33は、仮予定値生成部、予定値生成部及び計画値生成部の一例である。また、演算部35は、未アサイン原価算出部、及び、着地予想値算出部の一例である。また、表示制御部36は、出力制御部の一例である。
【0021】
マスタ設定部31は、原価要素マスタ11、予定単価マスタ12、部署マスタ13、及び、社員マスタの設定を行う。入力処理部32は、マスタ設定時等に業務オペレータの入力操作に対応するコマンド等を取得する。データ生成部33は、プロジェクト(案件)に対する収支の計画値又は予定値等を生成する。記憶制御部34は、各種マスタ11~14及び各種テーブル15~26に対する各種データの記憶及び読み出し制御を行う。演算部35は、未アサイン原価を反映させた予定値、及び、着地予想値等を算出する。表示制御部36は、着地予想値等を表示部の一例である出力装置7を介して表示する。
【0022】
(用語の定義)
次に、以下の各用語は、主に、以下に示す意味で用いることとする。
【0023】
・計画値:期首等に計画される組織別の目標値等の売上、原価の計画数値、
・予定値:各案件の実行予算等の積み上げから算出される売上、原価の予定数値、
・実績値:実際に売上検収又は稼働時間等の発生原価により発生する売上、原価の実績数値。
【0024】
・要員管理登録:受注等の案件に技術者をアサインして、予定されている1人月等の人工を登録すること、
・アサイン労務費:受注などの案件にアサインされている人毎の労務費原価。ランク又は契約形態によって金額が決まる、
・未アサイン原価:案件にアサインされていないが、将来的に発生が見込まれている人毎の労務費原価。自社社員及び協力会社社員共に発生する。ランク又は契約形態によって金額が決まる。
【0025】
・実行予算:案件毎に引合又は受注のタイミングで見積られる売上、原価予定の収支計画、
・着地予想値:実績値が確定した当月までの実績値、及び、翌月以降の予定値の合計値で示される、通期の予想収支の値、
・直接プロジェクト(直接PJ):引合又は受注案件等のように、実際に売上又は費用が発生する案件、
・仮想プロジェクト(仮想PJ):組織別に集計した仮想的な案件。
【0026】
(着地予想値の概要)
図2は、着地予想値の概要を示す図である。この
図2に示すように着地予想値としては、プロジェクトの「売上」の着地予想値、「直接費」の着地予想値、「間接費」の着地予想値、「販売管理費(販管費)」の着地予想値が算出される。
【0027】
例えば、「売上」における計画値の着地予想値は、期首~基準年月(=過去)における計画値の合計額と、基準年月の翌月~期末(=未来)における計画値の合計額とを加算処理して算出される。また、「売上」における予定値の着地予想値は、期首~基準年月(=過去)における実際の売上額の合計額と、基準年月の翌月~期末(=未来)における予定値の合計額とを加算処理して算出される。
【0028】
また、詳しくは後述するが、実施の形態の業務管理装置1の場合、未アサイン原価は、間接費に対して加算するようになっている。このため、「間接費」における予定値の着地予想値は、「期首~基準年月(=過去)における実際の売上額の合計額と未アサイン原価を加算処理した額」と、「基準年月の翌月~期末(=未来)における予定値の合計額と未アサイン原価を加算処理した額」との合計額として算出される。
【0029】
一例ではあるが、労務費に関して、要員管理で登録されていない未アサイン担当者の予定原価を含めて見込み原価の出力が可能となっている(抽出条件の期首会計年月から1年分)。すなわち、基準年月の月末日で社員マスタ14を参照することで、未アサイン担当者として、例えば「田中さん」を検出する。また、社員マスタ14から、例えば「システム1部」等の所属部署の部署コードを取得する。また、社員マスタ14から、田中さんの予定単価コード、及び、例えば「160時間」等の、田中さんの月平均労働時間を取得する。また、社員マスタ14から取得した田中さんの予定単価コードに基づいて、予定単価マスタを参照し、例えば「5000円」等の時間単価を検出する。
【0030】
そして、田中さんの時間単価に、田中さんの月平均労働時間を乗算処理することで、田中さんの労務費が算出される(5000円×160時間=労務費80万円)。
【0031】
次に、基準年月翌月~期末の月毎に、要員管理の未割当工数(1-割当工数)から未割当工数金額(未アサイン原価)を算出する。例えば基準年月が12月の場合において、1月の割当工数が「0.7」の場合、「労務費80万円×(1-0.7)=未アサイン原価24万円」となる。同様に、2月の割当工数が「0」の場合、「労務費80万円×(1-0)=未アサイン原価80万円」となる。同様に、3月の割当工数が「0」の場合、「労務費80万円×(1-0)=未アサイン原価80万円」となる。
【0032】
次に、基準年月翌月~期末までの労務費見込みに未アサイン原価を加算処理し、社員原価(見込み)を算出する。例えば、基準年月が12月の場合において、1月の直接PJの予算(労務費)が120万円の場合、この120万円に、1月の未アサイン原価である24万円を加算処理することで、1月の社員原価(見込み)として144万円を算出する。同様に、2月の直接PJの予算(労務費)が140万円の場合、この140万円に、2月の未アサイン原価である80万円を加算処理することで、2月の社員原価(見込み)として220万円を算出する。同様に、3月の直接PJの予算(労務費)が30万円の場合、この30万円に、3月の未アサイン原価である80万円を加算処理することで、3月の社員原価(見込み)として110万円を算出する。
【0033】
図3は、間接費の通期の予定値に対して未アサイン原価を反映させた組織別着地予想表の一例を示す図である。この
図3の例では、一見、売上見通しが、計画よりも+60万となっており、直接費の見通しも+15万なので、順調そうに見える。しかしながら、実際は、未アサイン技術者のコスト増加が見込まれており、それに伴い間接費及び販管費が増加して、営業利益は-90万の着地予想となる。
【0034】
もし、未アサイン原価を含めずに着地予想値を算出すると、間接費の着地予想値が少なくなる(予定間接費30万→20万)。この結果、利益が出るように誤った判断が行われる(営業利益150万→240万)。実施の形態の業務支援装置1は、未アサイン原価を加算処理して着地予想値を算出しているため、このような誤った判断を防止して、プロジェクトの正確な管理が可能となっている。
【0035】
(各種マスタに対する設定動作)
図4は、各種マスタに対して設定されるデータを説明するための図である。このうち、
図4(a)は、原価要素マスタ11に対して設定されるデータを示す図である。この
図4(a)に示すように、原価要素マスタ11には、例えば「G01:直接費」、「G02:間接費」、「G90:販管費」等の原価要素コード及び原価要素名が設定(登録)される。なお、原価要素マスタ11の代わりに原価要素テーブル15を設け、この原価要素テーブル15に、上述の原価要素コード及び原価要素名を設定してもよい。
【0036】
図4(b)は、予定単価マスタ12に対して設定されるデータを示す図である。この
図4(b)に示すように、予定単価マスタ12には、例えば「YT01」、「YT02」等の予定単価コード、「部長単価」、「課長単価」等の予定単価名、「G01」等の原価要素コード、及び、「5000円」、「4000円」等の時間単価が設定(登録)される。なお、予定単価マスタ12の代わりに予定単価テーブル16を設け、この予定単価テーブル16に、上述の予定単価コード及び時間単価等を設定してもよい。
【0037】
図4(c)は、部署マスタ13に対して設定されるデータを示す図である。この
図4(c)に示すように、部署マスタ13には、例えば「S01:システム1部」、「S02:システム2部」等の部署コード及び部署名が設定(登録)される。なお、部署マスタ13の代わりに部署テーブル17を設け、この部署テーブル17に、上述の部署コード及び部署名を設定してもよい。
【0038】
図4(d)は、社員マスタ14に対して設定されるデータを示す図である。この
図4(d)に示すように、社員マスタ14には、例えば「SH01」、「SH02」等の社員コード、「田中」、「鈴木」等の社員名、「S01」等の部署コード、「YT01」、「YT02」等の予定単価コード、及び、「160時間」等の月平均予定時間が設定(登録)される。なお、社員マスタ14の代わりに社員テーブル18を設け、この社員テーブル14に、上述の社員コード及び月平均予定時間を設定してもよい。
【0039】
(着地予想管理動作)
以下、実施の形態の業務支援装置1における着地予想管理動作を説明する。
【0040】
(期首時点での組織別計画予算の登録)
まず、例えば2021年4月等の期首時点において、組織別(部署毎)に形成される仮想的な案件である仮想PJに対して計画予算の登録を行う。
図5は、この仮想PJに対する計画予算の登録動作の流れを示すフローチャートである。
【0041】
仮想PJの形成時となると、業務オペレータは、仮想PJを担当する部署の部署コード、部署名、及び、期間を入力する。入力処理部32は、このような入力データを取得し、データ生成部33は、取得された入力データに基づいて、
図6に例示する「KP001」等の仮想プロジェクト番号、「S01」等の部署コード、「システム1部」等の部署名、及び、「2021年4月~2022年3月」等の期間を含む仮想PJデータを生成する。このうち、仮想プロジェクト番号は、業務管理装置1側で自動採番される。記憶制御部34は、生成された仮想PJデータを、仮想PJテーブル21に記憶する(ステップS1)。
【0042】
次に、業務オペレータは、仮想プロジェクト番号に関連付けて、要素、及び、期首である4月から、期末である翌年3月の間の予算をそれぞれ入力する。具体的には、予算データとしては、上述の期間の月毎に、売上、直接費、間接費、販管費及び営業利益の各予算が入力される。入力処理部32は、このような入力データを取得し、データ生成部33は、取得された入力データに基づいて、
図7に例示する予算データを生成する。記憶制御部34は、生成された予算データを予算テーブル20に記憶する(ステップS2)。
【0043】
次に、データ生成部33は、
図8に例示するように、仮想PJテーブル21に記憶された仮想PJデータに対して、上述の期間内における引合又は受注案件等の、実際に売上又は費用が発生した直接PJの直接プロジェクト番号を関連付けする(ステップS3:仮想プロジェクトの更新処理)。この期首の時点では、直接PJは発生していないため、この時点では、データ生成部33は、仮想プロジェクトの更新処理は行わない。
【0044】
次に、業務オペレータにより仮想PJの着地予想確認が指定されると、演算部35は、売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の各計画値の各月の予算の合計額を算出する。データ生成部33は、演算部35により算出された、売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の各計画値の各月の予算の合計額を、売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の各計画値の着地予想値として、組織別予想テーブル22に記憶する。また、表示制御部36は、
図9に示すように、売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の計画値の着地予想値、各月の計画値及び合計額を反映させた組織別着地予想表を、出力装置7に表示する(ステップS5)。
【0045】
なお、この期首の時点では、引合又は受注案件等は発生していないため、予定値の着地予想値及び実績値の着地予想値は算出されず、また、組織別着地予想表には表示されない。
【0046】
(直接PJの受注処理)
次に、
図10は、仮想PJの形成後に、実際に受注された直接プロジェクトの処理の流れを示すフローチャートである。この場合、受注された直接プロジェクトの登録処理がデータ生成部33により行われる(ステップS11)。具体的には、例えば
図11に示すように「600万円」のプロジェクトを受注したとすると、業務オペレータの入力に基づいて、データ生成部33により、例えば「P001」等のプロジェクト番号、「システム1部」等の部署名、「600万円」等の契約金額、「受注」等の受注区分、及び、4月~6月分としてそれぞれ「200万円」が割り当てられた売上予定金額を含む直接PJデータが生成される。記憶制御部34は、この直接PJデータを、直接PJテーブル19に記憶する。
【0047】
次に、4月~6月のプロジェクトを担当する社員の割り当て処理である要員管理登録処理が行われる(ステップS12)。具体的には、業務オペレータは、
図12に示すように社員マスタ14及び予定単価マスタ12を参照することで、4月~6月のプロジェクトを担当する社員を選択する。
図12の例は、4月~6月のプロジェクトの担当者として、「田中さん」が選択された例である。また、業務オペレータは、社員マスタ14に記憶されている田中さんの月平均予定時間に基づいて、4月~6月の予定人工を入力する。
図12の例は、田中さんの4月の人工として「0.7人月」が入力され、5月及び6月の人工としてそれぞれ「1人月」が入力された例である。
【0048】
データ生成部33は、業務オペレータの入力に基づいて、
図12に示すように「P001」等のプロジェクト番号、「田中」等の社員名、「4月」等の月、及び、「0.7人月」又は「1人月」等の予定人工を含む要員管理データを生成する。
【0049】
また、演算部35は、
図12に示すように、田中さんの月平均予定時間(=160時間)を社員マスタ14から検出すると共に、田中さんの時間単価(=5000円)を検出する。そして、演算部35は、以下の演算を行うことで、4月~6月の直接費を算出する。
【0050】
4月分→160時間×0.7人月×5000円=560000円
5月分→160時間×1.0人月×5000円=800000円
6月分→160時間×1.0人月×5000円=800000円
【0051】
記憶制御部34は、このように算出された4月~6月の直接費を、要員管理データに関連付けて要員管理テーブル23に記憶する。
【0052】
次に、
図13に示すように、業務オペレータにより、案件別予算登録画面を介して、直接PJの予算情報の登録処理が行われる(ステップS13)。具体的には、業務オペレータは、この案件別予算登録画面に対して、上述の「600万円」の直接プロジェクトに対応する、4月~6月の各月の売上予定金額として「200万円」の売上予定金額を入力する。また、業務オペレータは、案件別予算登録画面に対して、4月~6月の月毎の間接費としてそれぞれ「20万円」を入力すると共に、間接費の合計額である「60万円」を入力する。また、業務オペレータは、案件別予算登録画面に対して、4月の販管費として「14万円」を入力し、5月及び6月の販管費としてそれぞれ「20万円」を入力する。
【0053】
なお、
図12を用いて説明したように、「56万円」、「80万円」及び「80万円」の、4月~6月の月毎の直接費及び各月の合計額(216万円)は、記憶制御部34により、要員管理テーブル23から読み出され、案件別予算登録画面に自動的に入力される。
【0054】
また、演算部35は、月毎に「売上-(直接費+間接費+販管費)」の演算を行うことで、4月分は「110万円」、5月分は「80万円」及び6月分は「80万円」の営業利益を算出する。また、演算部35は、4月~6月の営業利益を加算処理することで、「270万円」の営業利益の合計額を算出する。表示制御部34は、演算部35により算出された各月の営業利益及び合計額を案件別予算登録画面に表示する。
【0055】
記憶制御部34は、このような売上、直接費、間接費、販管費及び営業利益の予算データを、案件別予算データとして予算テーブル20に記憶する。
【0056】
このように、受注したプロジェクトに対応する直接PJデータ及び案件別予算データの登録処理が行われると、データ生成部33は、
図14に示すように、仮想PJテーブル21に記憶されている仮想PJデータに対して、
図11を用いて説明した直接PJデータのプロジェクト番号(P001)を登録する(ステップS14:仮想PJの更新処理)。これにより、仮想PJと直接PJとが関連付けされる。
【0057】
次に、実施の形態の業務管理装置1は、プロジェクトに対してアサインされていないが、将来的に発生が見込まれている人毎の労務費原価である未アサイン原価を反映させない状態の組織別着地予想表、又は、未アサイン原価を反映させた状態の組織別着地予想表を選択して表示可能となっている。
【0058】
すなわち、業務オペレータにより、未アサイン原価を反映させない状態の組織別着地予想表の表示が選択されると、
図10のフローチャートのステップS15(Yes)及びステップS16(No)を介して処理がステップS18に進む。そして、表示制御部36により、未アサイン原価を反映させない状態の組織別着地予想表が生成されて表示される。
【0059】
具体的には、
図15は、未アサイン原価を反映させずに生成した組織別着地予想表の一例を示す図である。この場合、記憶制御部34は、
図9を用いて説明した売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の計画値の着地予想値が記憶されている組織別着地予想テーブル22に、予算テーブル20に記憶されている案件別予算データ(
図13参照)で示される、4月~6月の、売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の予定値、予定値の合計値、及び、予定値の合計額に相当する着地予想値を登録する。
【0060】
図15の例は、
図9を用いて説明した売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の計画値の着地予想値が記憶されている組織別着地予想テーブル22に、4月~6月の売上の予定値としてそれぞれ「200万円」が登録された例である。また、
図15の例は、上述の組織別着地予想テーブル22に、4月~6月の直接費の予定値としてそれぞれ「56万円」、「80万円」、「80万円」が登録された例である。
【0061】
また、
図15の例は、上述の組織別着地予想テーブル22に、4月~6月の間接費の予定値としてそれぞれ「20万円」、「20万円」、「20万円」が登録され、販管費の予定値として「14万円」、「20万円」、「20万円」が登録された例である。また、
図15の例は、4月~6月の営業利益の予定値として、演算部35により「110万円」、「80万円」、「80万円」が算出され、記憶制御部34により、上述の組織別着地予想テーブル22に登録された例である。
【0062】
表示制御部36は、このように組織別着地予想テーブル22に登録されている売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の各着地予想値を読み出して、未アサイン原価を反映させない状態の組織別着地予想表を生成し、出力装置7に表示する。
【0063】
一方、業務オペレータにより、未アサイン原価を反映させた状態の組織別着地予想表の表示が選択されると、
図10のフローチャートのステップS15(Yes)及びステップS16(Yes)を介して処理がステップS17に進む。そして、表示制御部36により、未アサイン原価を反映させた状態の組織別着地予想表が表示される。
【0064】
具体的には、演算部35は、
図16に示すように社員マスタ14を参照し、社員マスタ14に登録されている各社員である、例えば田中さん、鈴木さん、及び、佐藤さんの月平均予定時間を検出する。また、演算部35は、予定単価マスタ12を参照し、田中さん、鈴木さん、及び、佐藤さんの時間単価を検出する。そして、演算部35は、「未アサイン人工×月平均予定時間×時間単価」の演算を行うことで「未アサイン労務費原価(未アサイン原価)」を算出する。
【0065】
具体的には、
図12に示したように、田中さんの4月における予定人工は「0.7人月」である。このため、田中さんの4月における未アサイン人工は、
図16に示すように「0.3人月」となる。この場合、演算部35は、「0.3人月×160時間×5000円=24万円」の演算を行うことで、4月における田中さんの未アサイン原価を算出する。また、
図12に示したように、田中さんの5月及び6月における予定人工は「1人月」である。このため、田中さんの5月及び6月における未アサイン人工は、
図16に示すように「0人月」となる。この場合、演算部35は、「0人月×160時間×5000円=0万円」の演算を行うことで、5月及び6月における田中さんの未アサイン原価を算出する。
【0066】
また、この時点で受注している直接PJは、
図11に示したように4月~6月分として受注した「P001」のプロジェクトである。このため、田中さんの7月~翌年3月までの間の予定人工は「0人月」となる。このため、演算部35は、「1人月×160時間×5000円=80万円」の演算を行うことで、7月~翌年3月における田中さんの未アサイン原価を算出する。
【0067】
これに対して、鈴木さんの時間単価は「4000円」である。このため、演算部35は、「1人月×160時間×4000円=64万円」の演算を行うことで、4月~翌年3月における鈴木さんの未アサイン原価を算出する。同様に、佐藤さんの時間単価は「3000円」である。このため、演算部35は、「1人月×160時間×3000円=48万円」の演算を行うことで、4月~翌年3月における佐藤さんの未アサイン原価を算出する。
【0068】
次に、演算部35は、
図16に示すように田中さん、鈴木さん及び佐藤さんの月毎の未アサイン原価を加算処理し、各月の未アサイン原価の合計額を算出する。例えば、4月における田中さん、鈴木さん及び佐藤さんの未アサイン原価は、それぞれ「24万円」、「64万円」及び「48万円」である。このため、演算部35は、「24万円+64万円+48万円」の演算を行うことで「計136万円」を、4月分の未アサイン原価として算出する。
【0069】
また、5月分の及び6月分は、田中さんの未アサイン原価が「0万円」であるため、演算部35は、「0万円+64万円+48万円」の演算を行うことで「計112万円」を、5月分及び6月分の未アサイン原価として算出する。また、7月~翌年3月は、この時点では直接PJ受注していないため、演算部35は、「80万円+64万円+48万円」の演算を行うことで「計192万円」を、7月~翌年3月の各月の未アサイン原価として算出する。
【0070】
ここで、プロジェクトの受注が無く、未アサインの状態でその月を終えた場合、プロジェクトに関連する直接原価ではなく、間接原価として計上されるため、演算部35は、未アサイン原価を、
図17の矢印に示すように、その所属組織の間接労務費(間接費)の予定値に加算する。
【0071】
すなわち、未アサイン原価を反映させない場合、
図15に示すように4月~6月における間接費の予定値は、それぞれ「20万円」、「20万円」及び「20万円」であり、合計額は「60万円」であった。未アサイン原価を反映させる場合、演算部35は、「20万円」、「20万円」及び「20万円」の間接費の予定値に、上述のように算出した4月分~6月分の未アサイン原価である「136万円」、「112万円」及び「112万円」を加算処理する。
【0072】
これにより、
図17に示すように、4月~6月に対する、未アサイン原価を含めた間接費の予定値として、「20万円+136万円=156万円」、「20万円+112万円=132万円」、「20万円+112万円=132万円」の予定値を得ることができる。また、プロジェクトが受注されていない7月~翌年3月に対する、未アサイン原価を含めた間接費の予定値としては、「0万円+192万円=192万円」の予定値とすることができる。
【0073】
演算部35は、4月~翌年3月までの、未アサイン原価を含めた間接費の予定値の合計額(
図17の例の場合は、2148万円)を算出し、この合計額を、未アサイン原価を含めた間接費の予定値の着地予想値とする。また、演算部35は、売上、直接費、間接費、販管費の予定値をそれぞれ加算処理することで、営業利益の予定値を算出する。具体的には、4月分の営業利益の予定値は、「200万円+56万円+(-156万円)+14万円=-26万円」とのように算出され、5月分及び6月分の営業利益の予定値は、「200万円+80万円+(-132万円)+20万円=-32万円」とのように算出される。そして、演算部35は、4月~6月の営業利益の予定値を加算処理することで「-192万円」の営業利益の予定値の合計額を算出し、この「-192万円」を営業利益の予定値の着地予想値とする。
【0074】
記憶制御部34は、このような未アサイン原価を含めたかたちの着地予想値を組織別着地予想テーブル22に記憶する。表示制御部36は、組織別着地予想テーブル22に登録されている売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の各着地予想値を読み出して、
図17に示すように、未アサイン原価を含めた状態の組織別着地予想表を出力装置7に表示する。
【0075】
このように、未アサイン原価を組織別の将来原価に組み込んで表示することで、将来の未アサイン原価を、事務コストを掛けずに把握することができる(事務労力の軽減)。これにより組織別の事業計画において、日々変動する着地予想数字の正確性を向上させることができる。
【0076】
また、プロジェクトの受注が無く、未アサインの状態でその月を終えた場合、プロジェクトに関連する費用は、直接原価ではなく、間接原価として計上される。このため、実施の形態の業務管理装置1では、未アサイン原価を、その所属組織の間接労務費(間接費)の予定値に加算している。これにより、組織別の直接費/間接費の比率等も容易に把握可能とすることができ、単なる組織別の事業計画に対する達成/未達との評価だけでなく、同じ売上額、営業利益の組織であっても、各プロジェクトの直接原価が高く、売上利益率が悪い(=利益の低い労働集約型のプロジェクトが多い)のか、間接原価が高く、各プロジェクトの利益は高いが、アサインが適切に行われていないため、営業利益を効率的に得られない等の分析を可能とすることができる。
【0077】
図3の例を用いて、再度説明すると、
図3の例の場合、4月~6月の売上の実績値が「90万円+90万円+90万円=270万円」である。この実績値に、7月~翌年3月の売上の予定値である「110万円×9か月分=990万円」を加算処理すると、合計額及び着地予想値が「1260万円」となる。この「1260万円」という着地予想値は、当初の売上の計画値が「100万円×12か月で「1200万円」であったため、6月の時点で売上の着地予想値が「+60万円」となり、売上は順調である。また、直接費の費用も、当初計画した「600万円」に対して、6月の時点で「(40万円×3か月)+(55万円×9か月)=615万円」の着地予想値であり、当初の予定よりも「15万円」分、多くの経費が発生しているが、こちらも略順調であると言える。
【0078】
しかし、間接費の当初の計画値は、「20万円×12か月=240万円」であったが、「10万円×3か月=30万円」の実績値に、未アサイン原価を加算した予定値である「30万円×9か月=270万円」を加算処理すると、実績値の着地予想値が「300万円」となる。これは、当初の計画よりも「60万円」分、多い額の間接費を要することを意味しており、プロジェクトは計画通りに順調に進んでいるとは言えないことが分かる。
【0079】
また、このような間接費の増加に伴い、販管費も、当初の計画よりも「75万円」分の増加となっている((10万円×12か月)-(20万円×3か月)+(15万円×9か月))。
【0080】
そして、このようなことから未アサイン原価を含めると、6月時点での営業利益の着地予想値は「150万円」となり、当初の計画であった「240万円」よりも、「90万円」分、少ないことが分かる。
【0081】
もし、未アサイン原価を含めなかった場合、
図15に示したように、間接費の予定値が「20万円」となり、未アサイン原価を含めた間接費の予定値である「30万円」よりも少ない金額となる。このため、未アサイン原価を含めなかった場合、営業利益の着地予想値が「240万円」となる。従って、未アサイン原価を含めなかった場合には、当初の計画どおりの利益が得られるとの、誤った認識がされる。
【0082】
しかし、未アサイン原価を含めた場合には、上述のように、将来的に発生する間接費及びそれに伴い発生する販管費等を反映させることができるため、正確な着地予想値を得ることができ、プロジェクトの計画の見直し及び経費削減等の修正措置を取ることができる。
【0083】
(プロジェクトの売上の計上動作)
次に、
図18は、上述の直接PJに対する売上の登録処理の流れを示すフローチャートである。例えば、
図19に示すように、上述の受注した直接プロジェクトの4月分の売上として、当初予定していた200万円の売上予定金額に対して、250万円の売上金額が得られたとする。この場合、業務オペレータは、250万円の売上入力を行う。データ生成部33は、売上月が4月分で250万円の売上の売上データを生成する。記憶制御部34は、この売上データを、売上テーブル25に記憶する(ステップS21)。
【0084】
次に、業務オペレータは、
図20に示すように、4月に、実際に発生した直接費、間接費及び販管費の入力を行う。この
図20の例は、4月において、「60万円」の直接費が発生し、「130万円」の間接費が発生し、「20万円」の販管費が発生した例である。データ生成部33は、このような4月に発生した直接費、間接費及び販管費の経費データを生成する。記憶制御部34は、この経費データを経費テーブル26に記憶する(ステップS22)。
【0085】
次に、経費データが経費テーブル26に記憶された後に組織別着地予想表の表示が指定されると(ステップS23:Yes)、表示制御部36は、ステップS24において、売上テーブル25に記憶されている上述の売上データ、及び、経費テーブル26に記憶されている上述の経費データを反映させた、
図21に例示する組織別着地予想表を表示する。この
図21の例の場合、4月の売上の実績値に対して、上述の「250万円」が反映され、4月の直接費、間接費、及び、販管費に、それぞれ「60万円」、「130万円」、及び、「20万円」が反映された例である。表示制御部36は、4月の売上が計上された時点における売上、直接費、間接費、及び、販管費の実績値の合計額である「250万円」、「60万円」、「130万円」、及び、「20万円」を組織別着地予想表に反映させる。
【0086】
また、演算部35は。売上における「250万円」の実績値に、「200万円×11か月=2200万円」の予定値を加算処理することで「2450万円」の着地予想値を算出する。表示制御部36は、この「2450万円」の売上の着地予想値を、組織別着地予想表に反映させる。
【0087】
また、演算部35は、4月分の間接費の実績値である「130万円」に、5月分の未アサイン原価を反映させた間接費の予定値である「132万円」、及び、6月分の未アサイン原価を反映させた間接費の予定値である「132万円」を加算処理することで「394万円」を算出する。また、演算部35は、7月~翌年3月の未アサイン原価を反映させた間接費の予定値の合計額(192万円×9か月=1728万円)を算出する。そして、「394万円+1728万円」の演算を行うことで「2122万円」を算出する。表示制御部36は、この「2122万円」を、間接費の実績値の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0088】
また、演算部35は、4月分の販管費の実績値である「20万円」に、5月分の販管費の予定値である「20万円」、及び、6月分の販管費の予定値である「20万円」を加算処理して「60万円」を算出する。表示制御部36は、この「60万円」を、販管費の実績値の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0089】
また、この例の場合、演算部35は、4月分の売上、直接費、間接費、及び、販管費の実績値に基づいて、「250万円-60万円-130万円-20万円」の演算を行うことで、4月分の営業利益の実績値として「-40万円」を算出する。表示制御部36は、この「-40万円」を、4月分の営業利益の実績値の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0090】
また、この例の場合、演算部35は、売上、直接費、間接費、及び、販管費の各実績値の着地予想値に基づいて「2450万円-220万円-2122万円-60万円」の演算を行うことで、「48万円」の営業利益の着地予想値を算出する。表示制御部36は、この「40万円」を、営業利益の実績値の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0091】
(新たな新規プロジェクト受注時の動作)
次に、新規プロジェクトを新たに受注した際における、実施の形態の業務管理装置1の動作を、
図22のフローチャートを用いて説明する。一例ではあるが、例えば
図23に示すように、契約金額が「800万円」で、受注区分が「引合」の新規プロジェクトを新たに受注すると、
図22のフローチャートのステップS31からステップS32に処理が進む。このような新規プロジェクトを新たに受注すると、業務オペレータは、
図23に示すように「システム1部」等の部署、「800万円」等の契約金額、及び、「引合」等の受注区分を入力操作する。なお、「P002」等のプロジェクト番号は、業務支援装置1により自動採番される。
【0092】
また、業務オペレータは、
図23に示すように、受注した新規プロジェクトの売上予定月、及び、売上予定金額を入力操作する。
図23の例は、「800万円」の契約金額のうち、5月に「400万円」を売り上げ、残り「400万円」を6月に売り上げる予定とした例である。
【0093】
データ生成部33は、このような業務オペレータの入力操作に対応して、
図23に示した内容の直接PJデータを生成する。記憶制御部34は、この直接PJデータを、直接PJテーブル19に記憶する(ステップS32)。
【0094】
次に、5月及び6月のプロジェクトを担当する社員の割り当て処理である要員管理登録処理が行われる(ステップS33)。具体的には、業務オペレータは、
図24に示すように社員マスタ14及び予定単価マスタ12を参照することで、5月及び6月のプロジェクトを担当する社員を選択する。
図24の例は、5月及び6月のプロジェクトの担当者として、「鈴木さん」が選択された例である。また、業務オペレータは、社員マスタ14に記憶されている鈴木さんの月平均予定時間に基づいて、5月及び6月の予定人工を入力する。
図24の例は、鈴木さんの5月及び6月の予定人工として「0.8人月」がそれぞれ入力された例である。
【0095】
データ生成部33は、業務オペレータの入力に基づいて、
図24に示すように「P002」等のプロジェクト番号、「鈴木」等の社員名、「5月」等の月、及び、「0.8人月」等の予定人工を含む要員管理データを生成する。
【0096】
また、演算部35は、
図24に示すように、鈴木さんの月平均予定時間(=160時間)を社員マスタ14から検出すると共に、鈴木さんの時間単価(=4000円)を検出する。そして、演算部35は、以下の演算を行うことで、4月及び6月の直接費を算出する。
【0097】
5月分→160時間×0.8人月×4000円=512000円
6月分→160時間×0.8人月×4000円=512000円
【0098】
記憶制御部34は、このように算出された5月及び6月の直接費を、要員管理データに関連付けて要員管理テーブル23に記憶する。
【0099】
次に、
図25に示すように、業務オペレータにより、案件別予算登録画面を介して、直接PJの予算情報の登録処理が行われる(ステップS34)。具体的には、業務オペレータは、この案件別予算登録画面に対して、上述の「800万円」の直接プロジェクトに対応する5月及び6月の売上予定金額として、「400万円」の売上予定金額をそれぞれ入力する。また、業務オペレータは、案件別予算登録画面に対して、5月及び6月の月毎の間接費として、それぞれ「20万円」を入力すると共に、間接費の合計額である「40万円」を入力する。また、業務オペレータは、案件別予算登録画面に対して、5月及び6月の販管費として、それぞれ「20万円」を入力する。
【0100】
なお、
図24を用いて説明したように、それぞれ「512000円」である、5月及び6月の月毎の直接費及び各月の合計額(1024000円)は、記憶制御部34により、要員管理テーブル23から読み出され、案件別予算登録画面に自動的に入力される。
【0101】
また、演算部35は、月毎に「売上-(直接費+間接費+販管費)」の演算を行うことで、5月分は「296万円」及び6月分も「296万円」の営業利益を算出する。また、演算部35は、5月及び6月の営業利益を加算処理することで、「592万円」の営業利益の合計額を算出する。表示制御部34は、演算部35により算出された各月の営業利益及び合計額を案件別予算登録画面に表示する。
【0102】
記憶制御部34は、このような売上、直接費、間接費、販管費及び営業利益の予算データを、案件別予算データとして予算テーブル20に記憶する。
【0103】
このように、受注したプロジェクトに対応する直接PJデータ及び案件別予算データの登録処理が行われると、データ生成部33は、
図26に示すように、仮想PJテーブル21に記憶されている仮想PJデータに対して、
図23を用いて説明した直接PJデータのプロジェクト番号(P002)を登録する(ステップS35:仮想PJへの自動反映処理)。これにより、仮想PJに対して、前回受注した「P001」のプロジェクト番号の直接PJ、及び、今回受注した「P002」のプロジェクト番号の直接PJが、それぞれ関連付けされる。
【0104】
次に、実施の形態の業務管理装置1は、プロジェクトに対してアサインされていないが、将来的に発生が見込まれている人毎の労務費原価である未アサイン原価を反映させない状態の組織別着地予想表、又は、未アサイン原価を反映させた状態の組織別着地予想表を選択して表示可能となっている。
【0105】
すなわち、業務オペレータにより、未アサイン原価を反映させない状態の組織別着地予想表の表示が選択されると、
図22のフローチャートのステップS36(Yes)及びステップS37(No)を介して処理がステップS39に進む。そして、表示制御部36により、
図27に模式的に示すように、予算テーブル20aに記憶されている「P001」のプロジェクト番号の直接PJ、及び、予算テーブル20bに記憶されている「P002」のプロジェクト番号の直接PJに対応する、未アサイン原価を反映させない状態の組織別着地予想表が生成されて表示される。
【0106】
具体的には、組織別着地予想表に対して未アサイン原価を反映させるか否かは、
図28に示す抽出画面で選択可能となっている。実施の形態の業務管理装置1の場合、この抽出画面において、所望の基準年月及び部門コードを指定し、受注(含む/含まない)、引合(含む/含まない)及び未アサイン原価(含む/含まない)を選択可能となっている。
図28の抽出画面の例は、受注を「含む」、引合を「含む」、未アサイン原価を「含まない」として選択した例である。
【0107】
このように未アサイン原価を含まない場合、表示制御部36は、
図27に示す4月分の売上、直接費、間接費、販管費及び営業利益は、上述の「P001」のプロジェクト番号の直接PJの4月分の売上、直接費、間接費、販管費及び営業利益を、組織別着地予想表にそのまま反映させる。これにより、組織別着地予想表の4月分の売上の計画値、予定値及び実績値は、それぞれ「300万円」、「200万円」及び「250万円」のように表示される。また、4月分の直接費の計画値、予定値及び実績値は、それぞれ「150万円」、「56万円」及び「60万円」のように表示される。4月分の間接費の計画値、予定値及び実績値は、それぞれ「50万円」、「136万円」及び「130万円」のように表示される。また、4月分の販管費の計画値、予定値及び実績値は、それぞれ「50万円」、「14万円」及び「20万円」のように表示される。4月分の営業利益の計画値、予定値及び実績値は、それぞれ「50万円」、「-26万円」及び「40万円」のように表示される。
【0108】
また、演算部35は、
図27に示す「P001」のプロジェクト番号の直接PJの5月分の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益と、「P002」のプロジェクト番号の直接PJの5月分の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益とを加算処理する。表示制御部36は、このように算出された5月分の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益の加算金額を、
図28に示すように組織別着地予想表の5月の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益の予定値として表示する。これにより、組織別着地予想表の5月の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益の予定値として、それぞれ「600万円」、「131.2万円」、「40万円」、「40万円」、「476万円」がそれぞれ表示される。
【0109】
同様に、演算部35は、
図27に示す「P001」のプロジェクト番号の直接PJの6月分の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益と、「P002」のプロジェクト番号の直接PJの6月分の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益とを加算処理する。表示制御部36は、このように算出された6月分の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益の加算金額を、
図28に示すように組織別着地予想表の5月の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益の予定値として表示する。これにより、組織別着地予想表の6月の売上、直接費、間接費、販管費、営業利益の予定値として、それぞれ「600万円」、「131.2万円」、「40万円」、「40万円」、「476万円」がそれぞれ表示される。
【0110】
また、演算部35は、4月分の売上の実績値である「250万円」に、5月の売上の予定値である「600万円」及び6月の売上の予定値である「600万円」を加算処理することで「1450万円」の着地予想値を算出する。表示制御部36は、この「1450万円」の着地予想値を、売上の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0111】
また、演算部35は、4月分の直接費の実績値である「60万円」に、5月の直接費の予定値である「131.2万円」及び6月の直接費の予定値である「131.2万円」を加算処理することで「322.4万円」の着地予想値を算出する。表示制御部36は、この「322.4万円」の着地予想値を、直接費の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0112】
また、演算部35は、4月分の間接費の実績値である「130万円」に、5月の間接費の予定値である「40万円」及び6月の間接費の予定値である「40万円」を加算処理することで「210万円」の着地予想値を算出する。表示制御部36は、この「210万円」の着地予想値を、間接費の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0113】
また、演算部35は、4月分の販管費の実績値である「20万円」に、5月の販管費の予定値である「40万円」及び6月の販管費の予定値である「40万円」を加算処理することで「100万円」の着地予想値を算出する。表示制御部36は、この「100万円」の着地予想値を、販管費の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0114】
また、演算部35は、売上の実績値の着地予想値から、直接費、間接費及び販管費の実績値の着地予想値を減算処理することで(1450万円-322.4万円-210万円-100万円)、「817.6万円」の着地予想値を算出する。表示制御部36は、この「817.6万円」の着地予想値を、営業利益の実績値の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0115】
一方、業務オペレータにより、未アサイン原価を反映させた状態の組織別着地予想表の表示が選択されると、
図22のフローチャートのステップS36(Yes)及びステップS37(Yes)を介して処理がステップS38に進む。そして、表示制御部36により、未アサイン原価を反映させた状態の組織別着地予想表が表示される。
【0116】
具体的には、演算部35は、
図29に示すように社員マスタ14を参照し、社員マスタ14に登録されている各社員である、例えば田中さん、鈴木さん、及び、佐藤さんの月平均予定時間を検出する。また、演算部35は、予定単価マスタ12を参照し、田中さん、鈴木さん、及び、佐藤さんの時間単価を検出する。そして、演算部35は、「未アサイン人工×月平均予定時間×時間単価」の演算を行うことで、5月分及び6月分の「未アサイン労務費原価(未アサイン原価)」を算出する。なお、4月分及び7月分~翌年3月分の未アサイン原価は、「P001」のプロジェクト番号の直接プロジェクトを受注した際に、計算済みである(
図16参照)。
【0117】
田中さんの5月及び6月の未アサイン人工は、上述のようにそれぞれ「0人月」であるため、演算部35は、5月及び6月の未アサイン原価として、それぞれ「0万円」を算出する。
【0118】
鈴木さんの5月及び6月の予定人工は、
図24に示したように「0.8人月」であるため、未アサイン人工は「0.2人月」となる。このため、演算部35は、「0.2人月×160時間×4000円」の演算を行うことで、鈴木さんの5月及び6月の未アサイン原価として「12.8万円」を算出する。また、鈴木さんの7月以降の予定人工は「0人月」であるため、未アサイン人工は「1人月」となる。このため、演算部35は、「1人月×160時間×4000円」の演算を行うことで、鈴木さんの7月以降の未アサイン原価として「64万円」を算出する。
【0119】
佐藤さんの5月及び6月の予定人工は、「0人月」であるため、未アサイン人工は「1人月」となる。このため、演算部35は、「1人月×160時間×3000円」の演算を行うことで、佐藤さんの5月及び6月の未アサイン原価として「48万円」を算出する。また、鈴木さんの7月以降の予定人工も「0人月」であるため、未アサイン人工は「1人月」となる。このため、演算部35は、「1人月×160時間×3000円」の演算を行うことで、鈴木さんの7月以降の未アサイン原価として「48万円」を算出する。
【0120】
次に、演算部35は、
図29に示すように田中さん、鈴木さん及び佐藤さんの未アサイン原価を、月毎に加算処理することで、未アサイン原価の月毎の合計額を算出する。
図29の例の場合、田中さん、鈴木さん及び佐藤さんの5月分の未アサイン原価は、それぞれ「0万円」、「12.8万円」、「48万円」であるため、演算部35は、これらを加算処理し、5月分の未アサイン原価として「60.8万円」を算出する。同様に、田中さん、鈴木さん及び佐藤さんの6月分の未アサイン原価は、それぞれ「0万円」、「12.8万円」、「48万円」であるため、演算部35は、これらを加算処理し、6月分の未アサイン原価として「60.8万円」を算出する。なお、この時点でプロジェクト受注されていない7月以降の未アサイン原価の月毎の合計額は、上述のように「192万円」となる。
【0121】
次に、
図30は、未アサイン原価を含む組織別着地予想表の表示を指定した上述の抽出画面の一例、及び、未アサイン原価を反映させた組織別着地予想表の一例を示す図である。記憶制御部34は、上述の未アサイン原価を含めた状態の着地予想値を組織別着地予想テーブル22に記憶する。表示制御部36は、組織別着地予想テーブル22に登録されている売上、直接費、間接費、販管費、及び、営業利益の各着地予想値を読み出して、
図30に示すように、未アサイン原価を含めた状態の組織別着地予想表を出力装置7に表示する。
【0122】
具体的には、演算部35は、5月分の間接費の予定値である「40万円(
図28参照)」に、
図29を用いて説明した5月分の「60.8万円」の未アサイン原価を加算処理することで、5月分の間接費の予定値として「100.8万円」を算出する。同様に、演算部35は、6月分の間接費の予定値である「40万円(
図28参照)」に、
図29を用いて説明した6月分の「60.8万円」の未アサイン原価を加算処理することで、6月分の間接費の予定値として「100.8万円」を算出する。
【0123】
表示制御部36は、
図30に示すように、組織別着地予想表の5月分及び6月分の間接費の予定値として、それぞれ未アサイン原価を反映させた「100.8万円」を表示する。また、表示制御部36は、組織別着地予想表の7月以降の間接費の予定値としては、未アサイン原価を反映させて算出した「192万円(
図29参照)」を表示する。
【0124】
また、演算部35は、間接費の実績値である「130万円」に、5月分の間接費の予定値である「100.8万円」、6月分の間接費の予定値である「100.8万円」を加算処理する。また、演算部35は、7月~翌年3月の計9か月分の間接費の予定値である「192万円×9=1728万円」を算出する。そして、「130万円+100.8万円+100.8万円+1728万円」の演算を行うことで、間接値の実績値の着地予想値として「2059.6万円」を算出する。表示制御部36は、この「2059.6万円」を、未アサイン原価が反映された間接値の実績値の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0125】
また、演算部35は、売上の実績値である「1450万円」から、直接費の実績値である「348万円」を減算処理し、間接費の実績値である「2059.6万円」を減算処理し、販管費の実績値である「100万円」を減算処理することで、「-1057.6万円」の営業利益の着地予想値を算出する。表示制御部36は、この「-1057.6万円」を、未アサイン原価が反映された営業利益の実績値の着地予想値として組織別着地予想表に表示する。
【0126】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、実施の形態の業務管理装置1は、未アサイン原価を組織別の将来原価に組み込んで表示することで、将来の未アサイン原価を、事務コストを掛けずに把握することができる(事務労力の軽減)。これにより組織別の事業計画において、日々変動する着地予想数字の正確性を向上させることができる。
【0127】
また、プロジェクトの受注が無く、未アサインの状態でその月を終えた場合、プロジェクトに関連する直接原価ではなく、間接原価として計上される。このため、未アサイン原価を、その所属組織の間接労務費(間接費)の予定値に加算する。これにより、組織別の直接費/間接費の比率等も容易に把握可能とすることができ、単なる組織別の事業計画に対する達成/未達との評価だけでなく、同じ売上額、営業利益の組織であっても、各プロジェクトの直接原価が高く、売上利益率が悪い(=利益の低い労働集約型のプロジェクトが多い)のか、間接原価が高く、各プロジェクトの利益は高いが、アサインが適切に行われていないため、営業利益を効率的に得られない等の分析を可能とすることができる。
【0128】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び目標9に貢献することが可能となる。
【0129】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、目標13及び目標15に貢献することが可能となる。
【0130】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0131】
[他の実施の形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0132】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0133】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0134】
また、業務管理装置1に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも図示の如く物理的に構成されていることを要しない。
【0135】
例えば、業務管理装置1が備える処理機能、特に制御部3及び制御部3にて行われる各処理機能については、その全部又は任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて業務管理装置1に機械的に読み取られる。すなわち、ROM又はHDD等の記憶部等には、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部3を構成する。
【0136】
また、この業務管理装置1の業務管理プログラムは、業務管理装置1に対して任意のネットワークを介して接続された他のサーバ装置に記憶されていてもよく、必要に応じてその全部又は一部をダウンロードすることも可能である。
【0137】
また、本実施形態で説明した処理を実行するための業務管理プログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及び、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0138】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコード又はバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した業務管理装置1において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0139】
記憶部2は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、及び、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0140】
また、業務管理装置1は、既知のパーソナルコンピュータ装置又はワークステーション等の情報処理装置で構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された情報処理装置で構成してもよい。また、情報処理装置は、本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラム又はデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0141】
さらに、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部又は一部を、各種の付加等に応じて又は機能付加に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、例えばシステムエンジニアリングサービスを行うIT(Information Technology)メディア業界の業務等に有用である。
【符号の説明】
【0143】
1 業務管理装置
2 記憶部
3 制御部
4 通信インターフェース部
5 入出力インターフェース部
6 入力装置
7 出力装置
11 原価要素マスタ
12 予定単価マスタ
13 部署マスタ
14 社員マスタ
15 原価要素テーブル
16 予定単価テーブル
17 部署テーブル
18 社員テーブル
19 直接PJテーブル
20 予算テーブル
21 仮想PJテーブル
22 組織別着地予想テーブル
23 要員管理テーブル
24 未アサインテーブル
25 売上テーブル
26 経費テーブル
31 マスタ設定部
32 入力処理部
33 データ生成部
34 記憶制御部
35 演算部
36 表示制御部