(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 24/44 20110101AFI20250304BHJP
【FI】
H01R24/44
(21)【出願番号】P 2022195792
(22)【出願日】2022-12-07
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 勲
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 淳仁
(72)【発明者】
【氏名】大竹 拓也
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-297493(JP,A)
【文献】特開2000-323246(JP,A)
【文献】特開2002-270305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0194944(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側導体と、前記内側導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体を覆う外部導体と、を有するケーブルの端末に取り付けられるコネクタであって、
前記内側導体に取り付けられるインナー端子と、
前記インナー端子を覆う絶縁部材と、
前記絶縁部材を収容可能な収容室を有し、前記外部導体に接続されるアウター端子と、
を備え、
前記絶縁部材は、前記収容室に収容された状態で、前記収容室の内壁に接触する凸部が設けら
れ、
前記凸部は、前記インナー端子の挿入方向と逆方向に向かうにつれて厚みが増している凸条のリブである、
コネクタ。
【請求項2】
前記凸部は、前記絶縁部材の外周において、互いに離間し
て複数設けられた、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記収容室は、前記アウター端子の中心軸に沿って配置され、
前記凸部は、前記絶縁部材が、前記収容室内において前記中心軸に沿って保持されるように構成された、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
内側導体と、前記内側導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体を覆う外部導体と、を有するケーブルの端末に取り付けられるコネクタであって、
前記内側導体に取り付けられるインナー端子と、
前記インナー端子を覆う絶縁部材と、
前記絶縁部材を収容可能な収容室を有し、前記外部導体に接続されるアウター端子と、
を備え、
前記絶縁部材は、前記収容室に収容された状態で、前記収容室の内壁に接触する凸部が設けられ、
前記インナー端子は、相手側端子と嵌合可能な嵌合接続部と、前記
内側導体を加締める電線接続部と、を有し、
前記絶縁部材は、前記嵌合接続部を覆う第1部分と、前記電線接続部を覆う第2部分と、
を有し、
前記凸部は、前記第2部分の外周に設けられた、
コネクタ。
【請求項5】
前記絶縁部材は、前記絶縁体を挟み込む少なくとも一対の可撓片を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタにおいて、ケーブルを保持する際、コネクタのインナー端子及びケーブルの芯線を安定的に保持するための種々の技術が提案されている。特許文献1は、伝送特性の劣化を抑制し、材料ロスが少ないシールド端子の接続方法を開示している。この接続方法は、絶縁電線の端部の導体にインナー端子を接続するインナー端子接続工程と、金属シート層と絶縁フィルム層を有する長尺状の電磁シールドシートの長手方向端部を絶縁フィルム層同士が向き合うように折り重ねて折り返し部を形成するシート折り返し工程と、を含む。また、この接続方法は、金属シート層を内側にして縦添えした電磁シールドシートにより、絶縁体の端部が所定長さ露出するように折り返し部を配置して絶縁電線を覆うシート巻き工程と、絶縁電線の絶縁フィルム層上にシース材を巻きつけるシース巻き工程と、を含む。さらにこの接続方法は、インナー端子を覆う筒状のアウター端子を折り返し部に圧着するアウター端子接続工程を含む。
【0003】
特許文献2は、組立工程の自動化を容易に行うことができるシールドコネクタを開示している。このシールドコネクタは、端末部にインナー端子が取り付けられた複数の電線をシールド材および絶縁材を含む被覆材で外周を覆うことによって束ねられてなるシールド電線のインナー端子のそれぞれを収容する複数の端子収容室が設けられたインナーハウジングと、インナーハウジングが内部に組み込まれるシールド端子と、を有する。インナーハウジングは、複数の端子収容室が上下2段に設けられ、上段の端子収容室の上面に、下段の端子収容室のインナー端子の端子挿入口側となる一端面から対向する他端面を構成する壁まで内部にインナー端子を収容可能に開放された上段側端子収容用開口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-195034号公報
【文献】特開2017-228447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術においては、インナー端子及び芯線が、傾いた状態でアウター端子に収容されるため、インピーダンスの乱れにつながるおそれがあった。また、芯線が変形したままでは、車両走行時の振動によりインピーダンスが安定しないおそれがあった。
【0006】
本発明は、インナー端子及び芯線を安定的に保持することの可能なコネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記を特徴としている。
内側導体と、前記内側導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体を覆う外部導体と、を有するケーブルの端末に取り付けられるコネクタであって、
前記内側導体に取り付けられるインナー端子と、
前記インナー端子を覆う絶縁部材と、
前記絶縁部材を収容可能な収容室を有し、前記外部導体に接続されるアウター端子と、を備え、
前記絶縁部材は、前記収容室に収容された状態で、前記収容室の内壁に接触する凸部が設けられ、
前記凸部は、前記インナー端子の挿入方向と逆方向に向かうにつれて厚みが増している凸条のリブである、
コネクタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絶縁部材が、アウター端子の収容室の内壁に接触する凸部を有するため、アウター端子内におけるインナー端子及び内側導体の傾きを抑制できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るメスコネクタとオスコネクタが嵌合した状態の縦断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るメスコネクタの縦断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るメスコネクタの分解斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第1工程である。
【
図4B】
図4Bは、 第1の実施形態に係る メスコネクタの組立方法における第2工程である。
【
図4C】
図4Cは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第3工程である。
【
図4D】
図4Dは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第4工程である。
【
図4E】
図4Eは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第5工程である。
【
図4F】
図4Fは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第6工程である。
【
図4G】
図4Gは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第7工程である。
【
図4H】
図4Hは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第8工程である。
【
図4I】
図4Iは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第9工程である。
【
図4J】
図4Jは、第1の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第10工程である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係るメスコネクタとオスコネクタが嵌合した状態の縦断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係るメスコネクタの縦断面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るメスコネクタの分解斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、第2の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第6工程である。
【
図8B】
図8Bは、第2の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第7工程である。
【
図8C】
図8Cは、第2の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第8工程である。
【
図8D】
図8Dは、第2の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第9工程である。
【
図8E】
図8Eは、第2の実施形態に係るメスコネクタの組立方法における第10工程である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係るメスコネクタ(単に「コネクタ」とも呼ぶ)10について説明する。
図1に示すように、本実施形態のメスコネクタ10は同軸ケーブル100の先端に接続され、相手側コネクタであるオスコネクタ200と嵌合する。オスコネクタ200は同軸ケーブル300の先端に接続され、メスコネクタ10と嵌合する。この嵌合により、メスコネクタ10の同軸ケーブル100と、オスコネクタ200の同軸ケーブル300が、電気的に接続される。また、メスコネクタ10及びオスコネクタ200は、同軸ケーブル100、300を介して外部から侵入する電磁波のノイズを抑制するためのシールド機能を有している。なお、メスコネクタ10及びオスコネクタ200は、例えば高周波の信号を伝送可能な高周波コネクタとして機能する。
【0012】
まず、相手側コネクタであるオスコネクタ200と、電気信号を伝送する同軸ケーブル300について説明する。オスコネクタ200は、オスアウターハウジング201と、オスアウター端子202と、オスインナーハウジング203と、オスインナー端子204と、を備える。
【0013】
樹脂製のオスアウターハウジング201は、オスコネクタ200の外装部を構成しており、フード部201a、ロック穴201bを有している。フード部201aは、オスアウターハウジング201の中で一回り大きな径を有する部分であり、その上面には、矩形状に開口したロック穴201bが形成されている。フード部201a、ロック穴201bは、後述する様に、メスコネクタ10との嵌合を担う部分である。
【0014】
オスアウターハウジング201の内面には、オスコネクタ200の長手方向に直交する径方向の外側から中心に向かって、オスアウター端子202、オスインナーハウジング203、オスインナー端子204が、順に配置されている。金属製のオスアウター端子202は、後述するように、同軸ケーブル300を介して外部から侵入する電磁波のノイズをアースする役割を担う。樹脂製のオスインナーハウジング203は、金属製のオスアウター端子202と金属製のオスインナー端子204とを電気的に絶縁する絶縁部材の役割を果たす。
【0015】
金属製のオスインナー端子204は、オスコネクタ200の径方向中心に配置され、同軸ケーブル300の内側導体である芯線301に取り付けられる。オスインナー端子204は、後述する様に、芯線301からの電気信号をメスコネクタ10に伝送する。
【0016】
第1の実施形態のメスコネクタ10は、
図1~
図3に示すように、メスアウターハウジング11と、メスアウター端子(単に「アウター端子」とも呼ぶ)40と、メスインナーハウジング(「絶縁部材」とも呼ぶ)30と、メスインナー端子(単に「インナー端子」とも呼ぶ)20と、を備える。
【0017】
図1に示すように、樹脂製のメスアウターハウジング11は、メスコネクタ10の外装部を構成しており、オスコネクタ200との嵌合を担うロックアーム11a、ロック突起11bを有している。ロックアーム11aは片持ち梁の形状を有し、その上にロック突起11bが形成されている。ユーザが、ロックアーム11aの端部を押しながらロックアーム11aを下げ、オスコネクタ200のフード部201a内にメスコネクタ10を挿入する。挿入後、ユーザが、ロックアーム11aを元の位置に戻すと、ロック突起11bがロック穴201bに係合し、メスコネクタ10とオスコネクタ200が互いに嵌合する。
【0018】
また、スペーサ12がメスアウターハウジング11の下側に取り付けられており、組立工程において、スペーサ12をメスアウターハウジング11の下側から係止することにより、メスアウターハウジング11の内部のメスアウター端子40等を係止することができる。
【0019】
図2は、メスアウターハウジング11を取り除いた状態のメスコネクタ10の断面を示しており、この状態での組立体を「メスコネクタ」または「コネクタ」と呼ぶ場合がある。メスコネクタ10は、同軸ケーブル100の端末に取り付けられるコネクタである。同軸ケーブル100は、内側導体である芯線101と、芯線101を覆う絶縁体102と、絶縁体102を覆う外部導体である編組103と、最外層のシース104とを有するケーブルである。編組103は、例えば図示しないアース線に接続されて、グランドとして機能する。なお、
図1の同軸ケーブル300も、同軸ケーブル100と同様に、芯線301と、絶縁体302と、編組303と、シース304とを備えている。
【0020】
メスコネクタ10は、
図1のみに示したメスアウターハウジング11に加えて、
図2に示す構成を備える。すなわちメスコネクタ10は、同軸ケーブル100の芯線101に取り付けられるメスインナー端子20と、メスインナー端子20を覆うメスインナーハウジング30と、メスインナーハウジング30を覆うメスアウター端子40と、を備える。メスアウターハウジング11の内面に、メスコネクタ10の径方向の外側から中心に向かって、メスアウター端子40、メスインナーハウジング30、 メスインナー端子20が、順に配置されている。
【0021】
金属製のメスインナー端子20は、メスコネクタ10の径方向中心に配置され、メスコネクタ10とオスコネクタ200との嵌合時に、オスコネクタ200のオスインナー端子204と接続する。これにより、同軸ケーブル300の芯線301からの電気信号が、オスインナー端子204、メスインナー端子20を伝って、同軸ケーブル100の芯線101に伝送される。
【0022】
樹脂製で中空筒状のメスインナーハウジング30は、メスインナー端子20を径方向にて覆うように配置されるとともに、メスインナー端子20と外側のメスアウター端子40とを電気的に絶縁する絶縁部材の役割を果たす。金属製のメスアウター端子40は、メスインナーハウジング30を全周に亘って覆うように配置されるとともに、同軸ケーブル100の編組103に加締められ、編組103と電気的に接続している。メスアウター端子40は、接触ばね41を先端に備える。接触ばね41は、メスコネクタ10とオスコネクタ200との嵌合時に、オスアウター端子202の内面に接触し、オスアウター端子202と電気的に接続する。これにより、同軸ケーブル300の編組303、オスアウター端子202、メスアウター端子40、及び同軸ケーブル100の編組103は電気的に接続されてグランドとして機能し、同軸ケーブル300を介して外部から侵入する電磁波のノイズを遮蔽できる。
【0023】
次にメスアウター端子40の詳細について説明する。メスアウター端子40は、例えば、金属板に打ち抜き加工や曲げ加工等を施すことにより、略円筒状に形成される。メスアウター端子40は、円筒状の筒状部45と、編組加締め片(単に「加締め片」とも呼ぶ)43と、シース加締め片42と、備えている。筒状部45は、内部にメスインナーハウジング30を収容可能な収容室であるインナーハウジング収容室48を備えており、メスインナーハウジング30を収容する。編組加締め片43は、同軸ケーブル100の編組103に加締められる金属片であり、加締めの方法は後述する。シース加締め片42は、メスアウター端子40の長手方向において、切欠き部44を隔てて、編組加締め片43に隣接するように形成された金属片である。加締めの方法は後述する。
【0024】
また、同軸ケーブル100のシース104は、編組103の先端部105を除く部分を覆っている。そして、編組103の先端部105の一部であって、同軸ケーブル100において先端部105が絶縁体102上に折り返された編組折り返し(単に「折り返し部」とも呼ぶ)103aが形成されている。なお、編組折り返し103aは、後述する組立方法において説明するように、同軸ケーブル100に取り付けられるスリーブ106上に折り返されている(
図4C~
図4G参照)。
【0025】
次にメスインナーハウジング30の詳細について説明する。本実施形態においてメスインナーハウジング30は、メスアウター端子40のインナーハウジング収容室48に収容された状態で、インナーハウジング収容室48の内壁に接触する凸部により構成される圧入リブ33が設けられている。圧入リブ33は、メスインナーハウジング30の外周において、メスインナーハウジング30の長手方向に沿って延び、外周から突出するリブが、互いに間隔をあけて複数個設けられている。
【0026】
これにより、メスインナー端子20を覆うメスインナーハウジング30がメスアウター端子40のインナーハウジング収容室48に収容された状態で、圧入リブ33がインナーハウジング収容室48の内壁に接触する。したがって、メスアウター端子40内におけるメスインナー端子20及び芯線101の傾きを抑制できる。よって、メスインナー端子20とメスアウター端子40との間のインピーダンスを安定させることができる。インピーダンスの安定化により、メスコネクタ10の伝送性能を向上できる。
【0027】
また、圧入リブ33は、メスインナーハウジング30の外周において、互いに離間して設けられた複数のリブ(圧入リブ)を含む。
【0028】
これにより、圧入リブ33を構成する複数のリブが、メスインナーハウジング30の外周に設けられるので、メスインナー端子20及び芯線101の傾きを確実に抑制できる。本例においては、メスインナーハウジング30の外周において、圧入リブ33を構成する4つのリブが、等間隔を空けて設けられている。これにより、メスインナー端子20を確実にインナーハウジング収容室48内に保持できるので、メスインナー端子20及び芯線101の傾きを、一層確実に抑制できる。
【0029】
インナーハウジング収容室48は、メスアウター端子40の中心軸(径方向における中心の軸)に沿って配置され、圧入リブ33は、メスインナーハウジング30が、インナーハウジング収容室48内において、この中心軸に沿って保持されるように構成されている。
【0030】
これにより、圧入リブ33によって、メスインナーハウジング30がメスアウター端子40の中心軸に沿って保持されるので、車両搭載時の振動等に左右されることなく、インピーダンスを安定化できる。
【0031】
図2及び
図3に示すように、メスインナー端子20は、相手側端子であるオスインナー端子204と嵌合可能な嵌合接続部21と、同軸ケーブル100の絶縁体102に加締められる電線接続部22と、を有する。また、メスインナーハウジング30は、嵌合接続部21を覆う第1部分31と、電線接続部22を覆う第2部分32と、を有する。この構成において、圧入リブ33は、第2部分32の外周に設けられている。
【0032】
これにより、メスインナーハウジング30は、メスインナー端子20の電線接続部22を覆う第2部分32の外周に圧入リブ33を有するので、変形しやすい電線接続部22の変形を防止し、インピーダンスをより安定化できる。
【0033】
さらにメスインナーハウジング30は、同軸ケーブル100の絶縁体102を挟み込む少なくとも一対の可撓片34を備えている。可撓片34は、メスインナーハウジング30の後端であって、メスインナーハウジング30をアウター端子40の内壁に係止するための係止突起の後方に設けられる。本例では、メスインナーハウジング30は、二対の可撓片34を備えている。可撓片34は、円環状部材を円周方向に4等分した形状を有する。可撓片34が絶縁体102を挟み込むことにより、メスインナーハウジング30の中心にメスインナー端子20が配置されるよう芯線101が矯正される。よって、メスインナーハウジング30と同軸ケーブル100の絶縁体層及び空気層が全周で均一となるため、誘電率が安定し、インピーダンスが調整される。
【0034】
次にメスコネクタ10の組立方法について説明する。
図4A~
図4Jは、組立方法の第1工程~第10工程を示している。
図4Aの第1工程においては、同軸ケーブル100を所定の長さにカットする。
図4Bの第2工程においては、シース104を剥き、編組103を露出させる。
図4Cの第3工程においては、編組103の上にスリーブ106を被せるとともに、スリーブ106を編組103に加締める。
【0035】
図4Dの第4工程においては、編組103の先端をスリーブ106の側に折り返し、スリーブ106に被せる。スリーブ106に被せられた部分が、編組折り返し103aになる。折り返し後、露出した絶縁体102の一部を取り除くことにより、芯線101を露出させる。
【0036】
図4Eの第5工程においては、メスインナー端子20を芯線101に取り付ける(圧着)。
図4Fの第6工程においては、メスインナー端子20をメスインナーハウジング30の内部に挿入する。この時、メスインナーハウジング30の一対の可撓片34が、同軸ケーブル100の絶縁体102を挟み込むことにより、メスインナーハウジング30の中心にメスインナー端子20が配置されるよう芯線101が矯正される。メスインナー端子20は、外周面に係止突起を有し、メスインナーハウジング30の内周に設けられた凹部に係止突起を係合させることで、メスインナーハウジング30に対して位置規制される。したがって、メスインナー端子20は、芯線101の傾きが矯正された状態で、メスインナーハウジング30に収容される。
【0037】
図4Gの第7工程においては、メスインナーハウジング30及びその内部のメスインナー端子20を、メスアウター端子40のインナーハウジング収容室48に挿入する。この時、メスインナーハウジング30の圧入リブ33が、インナーハウジング収容室48の内壁に接触する。したがって、メスアウター端子40内におけるメスインナー端子20及び芯線101の傾きを抑制できる。
【0038】
図4Hの第8工程においては、シース加締め片42及び編組加締め片43を同軸ケーブル100に加締めることにより、
図2の状態が達成される。
図4Iの第9工程においては、
図4Hまでに組み立てた組立体(メスコネクタ10)をメスアウターハウジング11に挿入する。この組立体は、メスアウターハウジング11に設けられたランスが、メスアウター端子40の筒状部45に係止されることで、メスアウターハウジング11に保持される。
図4Jの第10工程においては、スペーサ12をメスアウターハウジング11の下側から装着することにより、ランスの変位が防止され、メスコネクタ10が完成する。
【0039】
(第2の実施形態)
図5~
図7は、第2の実施形態のメスコネクタ10を示し、
図5は第1実施形態の
図1に対応し、
図6は
図2に対応し、
図7は
図3に対応する。本実施形態においては、上述の可撓片34がメスインナーハウジング30に設けられていない。このような形態であっても、メスインナー端子20を覆うメスインナーハウジング30がメスアウター端子40のインナーハウジング収容室48に収容された状態で、圧入リブ33がインナーハウジング収容室48の内壁に接触する。したがって、メスアウター端子40内におけるメスインナー端子20及び芯線101の傾きを抑制できる。よって、メスインナー端子20とメスアウター端子40との間のインピーダンスを安定させることができる。インピーダンスの安定化により、メスコネクタ10の伝送性能を向上できる。
【0040】
第2の実施形態のメスコネクタ10の組立方法の第1工程~第5工程は、第1の実施形態と共通である(
図4A~
図4E)。
図8A~
図8Eは、第2の実施形態の組立方法の第6工程~第10工程を示している。これらの工程も第1の実施形態とほぼ共通であるが、
図8Aの第6工程においては、
図4Fと異なり、可撓片34による絶縁体102の挟み込みがない。他の工程は第1の実施形態と共通である。
【0041】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、上記各実施形態では、メスインナーハウジング30に圧入リブ33が設けられたが、オスインナーハウジングに圧入リブを設けてもよい。
【0042】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
【0043】
[1]内側導体(芯線101)と、前記内側導体を覆う絶縁体(102)と、前記絶縁体を覆う外部導体(編組103)と、を有するケーブル(同軸ケーブル100)の端末に取り付けられるコネクタ(メスコネクタ10)であって、
前記内側導体に取り付けられるインナー端子(メスインナー端子20)と、
前記インナー端子を覆う絶縁部材(メスインナーハウジング30)と、
前記絶縁部材を収容可能な収容室(インナーハウジング収容室48)を有し、前記外部導体に接続されるアウター端子(メスアウター端子40)と、を備え、
前記絶縁部材は、前記収容室に収容された状態で、前記収容室の内壁に接触する凸部(圧入リブ33)が設けられた、
コネクタ。
【0044】
上記[1]の構成のコネクタによれば、インナー端子を覆う絶縁部材がアウター端子の収容室に収容された状態で、凸部が収容室の内壁に接触するので、アウター端子内におけるインナー端子及び内側導体の傾きを抑制できる。よって、インナー端子とアウター端子との間のインピーダンスを安定させることができる。インピーダンスの安定化により、コネクタの伝送性能を向上できる。
【0045】
[2]前記凸部は、前記絶縁部材の外周において、互いに離間して設けられた複数のリブ(圧入リブ33)を含む、
上記[1]に記載のコネクタ。
【0046】
上記[2]の構成のコネクタによれば、複数のリブが絶縁部材の外周において互いに離間して設けられるので、インナー端子及び内側導体の傾きを確実に抑制できる。
【0047】
[3]前記収容室は、前記アウター端子の中心軸に沿って配置され、
前記凸部は、前記絶縁部材が、前記収容室内において前記中心軸に沿って保持されるように構成された、
上記[1]に記載のコネクタ。
【0048】
上記[3]の構成のコネクタによれば、凸部によって、絶縁部材がアウター端子の中心軸に沿って保持されるので、車両搭載時の振動等に左右されることなく、インピーダンスを安定化できる。
【0049】
[4]前記インナー端子は、相手側端子と嵌合可能な嵌合接続部(21)と、前記絶縁体に加締められる電線接続部(22)と、を有し、
前記絶縁部材は、前記嵌合接続部を覆う第1部分(31)と、前記電線接続部を覆う第2部分(32)と、を有し、
前記凸部は、前記第2部分の外周に設けられた、
上記[1]に記載のコネクタ。
【0050】
上記[4]の構成のコネクタによれば、絶縁部材は、インナー端子の電線接続部を覆う第2部分の外周に凸部を有するので、変形しやすい電線接続部の変形を防止し、インピーダンスをより安定化できる。
【0051】
[5]前記絶縁部材は、前記絶縁体を挟み込む少なくとも一対の可撓片(可撓片34)を有する、
上記[1]から[4]のいずれか一に記載のコネクタ。
【0052】
上記[5]の構成のコネクタによれば、可撓片が絶縁体を挟み込むことにより、絶縁部材(インナーハウジング)の中心にインナー端子が配置されるよう内側導体が矯正される。よって、絶縁部材とケーブルの絶縁体層及び空気層が全周で均一となるため、誘電率が安定し、インピーダンスが調整される。
【符号の説明】
【0053】
10 メスコネクタ(コネクタ)
11 メスアウターハウジング(アウターハウジング)
12 スペーサ
20 メスインナー端子(インナー端子)
21 嵌合接続部
22 電線接続部
30 メスインナーハウジング(絶縁部材)
31 第1部分
32 第2部分
33 圧入リブ(凸部)
34 可撓片
40 メスアウター端子(アウター端子)
41 接触ばね
42 シース加締め片
43 編組加締め片(加締め片)
44 切欠き部
45 筒状部
48 インナーハウジング収容室(収容室)
100 同軸ケーブル(ケーブル)
101 芯線(内側導体)
102 絶縁体
103 編組(外部導体)
103a 編組折り返し(折り返し部)
104 シース
105 先端部
106 スリーブ
200 オスコネクタ(相手側コネクタ)
201 オスアウターハウジング
202 オスアウター端子
203 オスインナーハウジング
204 オスインナー端子
300 同軸ケーブル(ケーブル)
301 芯線(内側導体)