(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】がんを治療するための腫瘍内及び/または静脈内投与用組み換えMVAウイルス
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20250304BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20250304BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20250304BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250304BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250304BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250304BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250304BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250304BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250304BHJP
C12N 15/48 20060101ALI20250304BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250304BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20250304BHJP
C07K 14/15 20060101ALN20250304BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20250304BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20250304BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K39/21 ZNA
A61K39/00 H
A61K38/17
A61K39/395 T
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/12
C12N15/48
C12N15/62 Z
C12N7/01
C07K14/15
C07K14/47
C07K14/705
C07K19/00
(21)【出願番号】P 2022528248
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2020082926
(87)【国際公開番号】W WO2021099586
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-10-26
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】ECACC 00083008
(73)【特許権者】
【識別番号】509296443
【氏名又は名称】バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ラウターバッハ・ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ヒンターベルガー・マリア
(72)【発明者】
【氏名】メディナ・エチェベルス・ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ハビャン・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】カッラ・マルクス
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/038388(WO,A1)
【文献】特表2022-507744(JP,A)
【文献】Alexandra J. SPENCER et al.,“4-1BBL Enhances CD8+ T Cell Responses Induced by Vectored Vaccines in Mice but Fails to Improve Immunogenicity in Rhesus Macaques”,PLoS ONE,2014年08月20日,Vol. 9, No. 8,p.e105520,DOI: 10.1371/JOURNAL.PONE.0105520
【文献】Benjamin KRAUS et al.,“Vaccination Directed against the Human Endogenous Retrovirus-K Envelope Protein Inhibits Tumor Growth in a Murine Model System”,PLoS ONE,2013年08月30日,Vol. 8, No. 8,p.e72756,DOI: 10.1371/journal.pone.0072756
【文献】BENJAMIN KRAUS; ET AL,“Vaccination directed against the human endogenous retrovirus-K (HERV-K) gag protein slows HERV-K gag expressing cell growth in a murine model system”,VIROLOGY JOURNAL,2014年03月26日,VOL:11, NO:1,PAGE(S):58(1-7),DOI: 10.1186/1743-422X-11-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00ー35/768
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
A61K 48/00
A61P 35/00
A61P 43/00
C12N 15/09-15/90
C07K 14/00-14/825
C07K 19/00
C12N 7/01
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)HERV-K-env/MELをコードする核酸と、
(ii)HERV-K gagをコードする核酸と、
(iii)FOLR1及びPRAMEをコード
する核酸と、
(iv)4-1BBLをコードする核酸と、
を含む、組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)。
【請求項2】
前記のFOLR1及びPRAMEをコードする核酸が、融合タンパク質として発現される、請求項1に記載の組み換えMVA。
【請求項3】
(v)CD40Lをコードする核酸をさらに含む、請求項
1または2に記載の組み換えMVA。
【請求項4】
前記組み換えMVAが
、European Collection of Cell Cultures(ECACC)にV00083008という番号で寄託されたものと同じMVA-BNに由来する、請求項
1~3のいずれかに記載の組み換えMVA。
【請求項5】
請求項
4に記載の組み換えMVAを含む、医薬調製物または医薬組成物。
【請求項6】
腫瘍内及び/または静脈内の投与
に適応している、請求項
5に記載の医薬調製物または医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~3
のいずれかに記載の組み換えMVAを含む、医薬品またはワクチン。
【請求項8】
がん
の治療のための、請求項
5または
6に記載の医薬調製物または医薬組成物、あるいは請求項
7に記載の医薬品またはワクチン。
【請求項9】
がん性腫瘍での炎症応答の増強、がん性腫瘍のサイズの縮小、がん性腫瘍の増殖の遅延もしくは停止、及び/または対象
の全生存率の上昇のための、請求項
5または
6に記載の医薬調製物または医薬組成物、あるいは請求項
7に記載の医薬品またはワクチン。
【請求項10】
腫瘍内及び/または静脈内
に投与される、請求項
7に記載の医薬品またはワクチン。
【請求項11】
腫瘍関連抗原(TAA)特異的抗体と組み合わせて用いられる、請求項
7に記載の医薬品またはワクチン。
【請求項12】
免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストのいずれかと組み合わせて用いられる、請求項
7に記載の医薬品またはワクチン。
【請求項13】
前記のHERV-K-env/MELをコードする核酸が、配列番号12に記載される配列を有するか、または配列番号11に記載されるタンパク質配列をコードする、請求項1~4のいずれか1つに記載の組み換えMVA。
【請求項14】
前記核酸が、FOLR1及びPRAMEを、配列番号9に記載される配列を有する融合タンパク質としてコードする、請求項1~3または13のいずれか1つに記載の組み換えMVA。
【請求項15】
請求項14に記載の組み換えMVAを含む、医薬調製物または医薬組成物。
【請求項16】
腫瘍内及び/または静脈内の投与に適応している、請求項15に記載の医薬調製物または医薬組成物。
【請求項17】
請求項13または14に記載の組み換えMVAを含む、医薬品またはワクチン。
【請求項18】
がん性腫瘍での炎症応答の増強、がん性腫瘍のサイズの縮小、がん性腫瘍の増殖の遅延もしくは停止、及び/または対象の全生存率の上昇のための、請求項15または16に記載の医薬調製物または医薬組成物、あるいは請求項17に記載の医薬品またはワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを治療するための治療法に関し、その治療は、静脈内または腫瘍内に投与される、4-1BBL(CD137L)をコードする核酸を含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスを含む。組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス(組み換えMVA」または「rMVA」ともいう)は、本明細書で使用する場合、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むMVAを指す。より具体的な態様では、本発明は、静脈内または腫瘍内に投与される、TAAをコードする核酸と、4-1BBLをコードする核酸とを含む組み換えMVAを含む。追加の態様では、本発明は、静脈内または腫瘍内に投与される、TAAをコードする核酸と、CD40Lをコードする核酸とを含む組み換えMVAを含む。追加の態様では、本発明は、静脈内及び/または腫瘍内に投与される、TAA、4-1BBL(CD137L)、及びCD40Lをコードする核酸を含む組み換えMVAを含む。
【背景技術】
【0002】
組み換えポックスウイルスは、感染性生物に対する免疫療法ワクチンとして、さらに最近では、腫瘍に対する免疫療法ワクチンとして使用されてきた(Mastrangelo et al.(2000)J Clin Invest.105(8):1031-1034)。
【0003】
感染症及びがんに対する免疫療法ワクチンとして有用であることが証明されているポックスウイルス株の1つは、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス(単に「MVA」と称する場合もある)である。MVAは、ニワトリ胚線維芽細胞で、ワクシニアウイルスのアンカラ株(CVA)を516代連続継代することによって作製された(概説については、Mayr et al.(1975)Infection 3:6-14を参照のこと)。これらの長期継代の結果、得られたMVAウイルスのゲノムは、その約31キロベースのゲノム配列が欠失しており、そのため、トリ細胞での複製に関して、宿主細胞が非常に限られているものとして説明された(Meyer et al.(1991)J.Gen.Virol.72:1031-1038)。この得られたMVAが大いに非病原性であることが様々な動物モデルにおいて示された(Mayr & Danner(1978)Dev.Biol.Stand.41:225-34)。より安全な製品(ワクチンまたは医薬等)の開発用に、安全性プロファイルが向上されたMVA株が報告されてきている(国際PCT公開第WO2002042480号を参照のこと。また、例えば、米国特許第6,761,893号及び同第6,913,752号も参照のこと。なお、これらのいずれも、参照により本明細書に組み込まれる)。そのような変異株は、非ヒト細胞及び非ヒト細胞株、特にニワトリ胚線維芽細胞(CEF)では増殖的複製能があるが、ヒト細胞株(特にHeLa細胞株、HaCat細胞株及び143B細胞株を含む)では複製能がない。そのような株はまた、インビボにおいて、例えば、重度の免疫不全にあり、複製型ウイルスに対する感受性が高いトランスジェニックマウスモデルAGR129等の特定のマウス株においても、増殖的複製能がない(米国特許第6,761,893号を参照のこと)。組み換え体を含め、そのようなMVA変異株及びその誘導体(「MVA-BN」と称される)が報告されている(国際PCT公開第WO2002/042480号を参照のこと。また、例えば、米国特許第6,761,893号及び同第6,913,752号も参照のこと)。
【0004】
腫瘍関連抗原(TAA)をコードするポックスウイルスベクターの使用では、がん患者の腫瘍サイズが首尾よく縮小され、全生存率が向上することが示されている(例えば、WO2014/062778を参照のこと)。がん患者に、HER2、CEA、MUC1及び/またはBrachyury等のTAAをコードするポックスウイルスベクターを投与すると、がんと闘うために強い特異的なT細胞応答が患者で生じることが示されている(上記文献を参照のこと。また、Guardino et al.((2009)Cancer Res.69(24),doi 10.1158/0008-5472.SABCS-09-5089)、Heery et al.(2015)JAMA Oncol.1:1087-95も参照のこと)。
【0005】
多くのがん細胞及び腫瘍細胞に発現することが見出されたTAAの一種は、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質である。ERVは、以前は外来性であったレトロウイルスの残骸であって、宿主の生殖系列に侵入して、それ以降、遺伝的集団にわたり垂直伝播されてきたものである(Bannert et al.(2018)Frontiers in Microbiology,Volume 9,Article 178を参照のこと)。ERVに誘導されるゲノムの組み換えイベント及び正常細胞遺伝子の調節異常には、腫瘍の形成に寄与する作用があることが立証されている(上記文献を参照のこと)。さらに、特定のERVタンパク質に発がん特性があるという証拠がある(上記文献を参照のこと)。ERVは、例えば乳癌、卵巣癌、メラノーマ、前立腺癌、膵臓癌及びリンパ腫を含む多種多様ながんで発現することが分かっている。(例えば、Bannert et al.(2018)Front.Microbiol.9:178、Cegolon et al.(2013)BMC Cancer 13:4、Wang-Johanning et al.(2003)Oncogene 22:1528-35、Wang-Johanning et al.(2007)Int.J.Cancer 120:81-90、Wang-Johanning et al.(2008)Cancer Res.68:5869-77、Wang-Johanning et al.(2018)Cancer Res.78(13 Suppl.),AACR Annual Meeting April 2018,Abstract 1257、Contreras-Galindo et al.(2008)J.Virol.82:9329-36、Schiavetti et al.(2002)Cancer Res.62:5510-16、Maliniemi et al.(2013)PLoS One 8:e76281、Fava et al.(2017)Genes Dev.31:34-45、Muster et al.(2003)Cancer Res.63:8735-41、Buscher et al.(2005)Cancer Res.65:4172-80、Serafino et al.(2009)Expt’l.Cell Res.315:849-62、Iramaneerat et al.(2011)Int.J.Gynecol.Cancer 21:51-7、Ishida et al.(2006)Cancer Sci.97:1139-46、Goering et al.(2011)Carcinogenesis 32:1484-92、Agoni et al.(2013)Front.Oncol.9:180、Li et al.(2017)J.Mol.Diagn.19:4-23を参照のこと)。
【0006】
MVA等のポックスウイルスは、TAAを用いた場合のそれらの有効性に加えて、CD40リガンド(CD40L)等のCD40アゴニスト(WO2014/037124を参照のこと)、または4-1BBリガンド(4-1BBL)等の4-1BBアゴニスト(Spencer et al.(2014)PLoS One 9:e105520)と組み合わせた場合に有効性が増強されることが示されている。
【0007】
CD40/CD40Lは、腫瘍壊死因子受容体/腫瘍壊死因子(「TNFR/TNF」)スーパーファミリーのメンバーである。CD40が、B細胞、マクロファージ及びDC等の多くの細胞種で構成的に発現するのに対して、そのリガンドであるCD40Lは、活性化CD4+ T細胞上に発現する(Lee et al.(2002)J.Immunol.171(11):5707-5717、Ma and Clark(2009)Semin.Immunol.21(5):265-272)。感染または免疫後早期のDCとCD4+ T細胞との同族相互作用により、DCは、CD8+ T細胞応答を刺激するための「ライセンスを付与」される(Ridge et al.(1998)Nature 393:474-478)。DCへのライセンシングにより、共刺激分子のアップレギュレーション、DCの生存率上昇及びより良好な交差提示能がもたらされる。この過程は主に、CD40/CD40L相互作用によって媒介されるが(Bennet et al.(1998)Nature 393:478-480、Schoenberger et al.(1998)Nature 393:480-483)、CD40/CD40L非依存的な機序も存在する(CD70、LT.ベータ.R)。興味深いことに、DCに発現したCD40Lと、CD8+ T細胞に発現したCD40との直接的相互作用も示唆されており、ヘルパー非依存的なCTL応答の発生について考えられ得る説明が提示されている(Johnson et al.(2009)Immunity 30:218-227)。
【0008】
4-1BB/4-1BBLは、TNFR/TNFスーパーファミリーのメンバーである。4-1BBLは、活性化B細胞、単球及びDCで発現する共刺激リガンドである。4-1BBは、ナチュラルキラー(NK)細胞及びナチュラルキラーT(NKT)細胞、Treg、ならびにDC、単球及び好中球を含むいくつかの自然免疫細胞集団によって構成的に発現される。興味深いことに、4-1BBは、活性化T細胞に発現するが、休止T細胞には発現しない(Wang et al.(2009)Immunol.Rev.229:192-215)。4-1BBの結合により、インターフェロンガンマ(IFN-γ)及びインターロイキン2(IL-2)の増殖及び産生が誘導され、また、Bcl-xL等の抗アポトーシス分子のアップレギュレーションを介してT細胞の生存が増強される(Snell et al.(2011)Immunol.Rev.244:197-217)。重要なことには、4-1BBの刺激により、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を介した、NK細胞増殖、IFN-γ産生及び細胞溶解活性が増強される(Kohrt et al.(2011)Blood 117:2423-32)。
【0009】
4-1BB/4-1BBLの免疫軸は現在、様々な免疫療法策によって探求されている。例として、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の自家移植では、大細胞型B細胞リンパ腫において臨床効果が見られ、2017年にFDAにより認可されている。腫瘍特異的抗体に由来する細胞外ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメインCD3ζ、及び4-1BBの共刺激モチーフを組み合わせたCARを患者の自家T細胞に導入する。4-1BBの付加は、CAR T細胞のインビボ持続性及び抗腫瘍傷害性に不可欠である(Song et al.(2011)Cancer Res.71:4617e27)。4-1BBを標的とする抗体が現在研究されている。
【0010】
いくつかの研究で、4-1BB/4-1BBL経路を標的とするアゴニスト抗体は、単剤療法として使用した場合に抗腫瘍活性を示すことが示されている(Palazon et al.(2012)Cancer Discovery 2:608-23)。4-1BBを標的とするアゴニスト抗体(BMSのウレルマブ、Pfizerのウトミルマブ)は現在、臨床開発段階にある。近年、4-1BBLを他の療法と組み合わせた研究では様々な成果が示されている。例えば、MC38(マウス腺癌)腫瘍を以前から有するが、B16メラノーマ腫瘍を有しないマウスに、CTLA-4に対する抗体及び抗4-1BBを投与した場合、CD8+ T細胞依存性の顕著な腫瘍退縮が観察され、これらの腫瘍に対する免疫が長期に持続した。別の例では、抗4-1BB(Bristol-Myers Squibb(BMS)-469492)による処置では、M109腫瘍のわずかな退縮しかもたらされなかったが、EMT6腫瘍の増殖を大幅に遅延させた。
【0011】
腫瘍微小環境は、浸潤免疫細胞から、がん細胞、細胞外マトリックス、内皮細胞、及び腫瘍の進行に影響を及ぼす他の関与細胞まで、様々な種類の細胞で構成されている。この複雑に絡み合った平衡状態は、患者ごとに変化するのみならず、同じ対象の病変内でも変化する(Jimenez-Sanchez et al.(2017)Cell 170(5):927-938)。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現に基づく腫瘍の層別化は、がんに対する客観的奏効を得るための炎症環境の重要性を強調している(Teng et al.(2015)Cancer Res.75(11):2139-45)。Cancer Genome Atlas(TCGA)の遺伝子発現プロファイルの汎がん解析により、腫瘍炎症シグネチャーが、免疫療法に対する客観的奏効と相関することが裏付けられている(Danaher et al.(2018)J.Immunother.Cancer 6(1):63)。
【0012】
近年、がん療法でのワクチン投与経路を改善する試みは、皮下注射から静脈内投与経路まで拡大されてきている。例えば、異種抗原をコードするMVAワクチンの静脈内投与が、その抗原に対する強力な特異的免疫応答を誘導できたことが示された(WO2014/037124を参照のこと)。さらに、MVAワクチンにCD40Lを含めた場合、免疫応答増強が生じた。
【0013】
腫瘍病変への細菌由来物質(コーリートキシン)の接種が治癒応答をもたらすことが長きにわたり報告されており、抗腫瘍応答を促す際の局所感染の役割を強調している(Coley(1906)Proc.R.Soc.Med.3(Surg Sect):1-48)。病原体関連分子パターン(PAMP)、細菌産物及びウイルスの腫瘍病変への局所投与により、i)I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン及び腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)等の炎症誘発性サイトカインの分泌、ii)アラーミン及び熱ショックタンパク質等の危険シグナル、ならびにiii)腫瘍抗原放出を含む、投与後の一連のイベントを起こす抗微生物プログラムが誘導される(Aznar et al.(2017)J.Immunol.198:31-39)。腫瘍内への免疫療法剤の局所投与は全身性免疫応答を誘導し、退縮は未処置の腫瘍病変で評価されてきた((2018)Cancer Discov. 8(6):67)。
【0014】
ここ数年、MVAワクチンの腫瘍内投与が報告されている。GM-CSFを発現するMVAの腫瘍内注射、及びDNAワクチンによる免疫が、HPV16 E7腫瘍担持マウスの生存期間を延長することが見出された(Nemeckova et al.(2007)Neoplasma 54:4)。MVAの腫瘍内注射に関する他の研究では、膵臓腫瘍の増殖阻害を示すことはできなかった(White et al.(2018)PLoS One 13(2):e0193131)。熱非働化MVAの腫瘍内注射では、危険シグナル、I型インターフェロン、樹状細胞による抗原交差提示の生成において依存的な抗腫瘍免疫応答が誘導された(Dai et al.(2017)Sci.Immunol.2(11):eaal1713)。
【0015】
多くのがんワクチンの活性には、腫瘍に対する適応免疫応答の誘導が伴う。腫瘍特異的T細胞の効果的な活性化には以下を含む。第1に、寛容誘導を最小限に抑え、コンピテントなT細胞レパートリーを促進するため、健全な組織ではなく腫瘍内での排他的かつ高い抗原発現。第2に、細胞内部での効果的な腫瘍抗原プロセシング及びHLA分子への結合。最後に、細胞表面での免疫原性HLA/ペプチド複合体の提示及び腫瘍特異的T細胞によるそれらの認識である。
【0016】
能動免疫療法及びがんワクチンを含め、さらなるがん治療に対する実質的に満たされていない医療ニーズが明らかに存在する。加えて、患者の免疫応答の複数の領域で免疫応答増強を誘導することができる療法に対するニーズが存在する。多くの態様では、本開示の実施形態は、現在利用可能ながん治療を増加及び改善させる、ワクチン、療法及び併用療法を提供することによって、これらのニーズに対応する。
【発明の概要】
【0017】
腫瘍関連抗原(TAA)と4-1BBリガンド(本明細書では、41BBL、4-1BBLまたはCD137Lともいう)とをコードする組み換えMVAは、腫瘍内または静脈内に投与した場合に、がん患者の治療の効果を高めること、及び/またはその治療を増強することが本発明の様々な実施形態において確認された。より具体的には、本開示の様々な実施形態により、組み換えMVA単独での投与と比較して、腫瘍での炎症増大、腫瘍における制御性T細胞(Treg)及びT細胞の疲弊の減少、腫瘍特異的T細胞の増殖及びNK細胞活性化、腫瘍体積縮小の増大、及び/またはがんである対象の生存率上昇がもたらされることが確認された。
【0018】
本発明の様々な実施形態では、腫瘍関連抗原(TAA)とCD40リガンド(CD40L)とをコードする組み換えMVAは、腫瘍内または静脈内に投与した場合に、がん患者の治療を増強することが確認された。より具体的には、本開示の様々な実施形態により、組み換えMVA単独での投与と比較して、腫瘍での炎症増大、腫瘍における制御性T細胞(Treg)及びT細胞の疲弊の減少、腫瘍特異的T細胞の増殖及びNK細胞活性化、腫瘍体積縮小の増大、及び/またはがんである対象の生存率上昇がもたらされることが確認された。
【0019】
追加の実施形態では、本発明は、静脈内及び/または腫瘍内に投与した場合にがん患者の治療を増強する、4-1BBL(CD137L)をコードする核酸とCD40Lをコードする核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスを含む。
【0020】
したがって、一実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法を含み、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、その組み換えMVAの腫瘍内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射と比較して、その対象のがん性腫瘍での炎症応答が増強され、腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する。
【0021】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法を含み、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、その組み換えMVAの腫瘍内投与により、TAA及びCD40L抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射と比較して、その対象のがん性腫瘍での炎症応答が増強され、腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する。
【0022】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法を含み、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸と、4-1BBL(CD137L)をコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内及び/または静脈内に投与することを含み、その組み換えMVAの投与により、TAA、CD40L抗原及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの、異なる注射経路による注射(すなわち、非腫瘍内または非静脈内の注射)と比較して、その対象のがん性腫瘍での炎症応答が増強され、腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する。
【0023】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法を含み、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し静脈内に投与することを含み、その組み換えMVAの静脈内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内注射と比較して、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、TAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される。
【0024】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法を含み、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し静脈内に投与することを含み、その組み換えMVAの静脈内投与により、TAA及びCD40L抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内注射と比較して、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、TAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される。
【0025】
追加の実施形態では、本発明は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法を含み、その方法が、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸と、4-1BBLをコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し静脈内投与及び/または腫瘍内に投与することを含み、その組み換えMVAの静脈内及び/または腫瘍内投与により、TAAをコードする第1の核酸と、CD40L抗原をコードする第2の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非静脈内または非腫瘍内の注射と比較して、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、TAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される。
【0026】
さらに別の実施形態では、本発明は、対象のがん性腫瘍での炎症応答増強を誘導する方法を含み、その方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、その組み換えMVAの腫瘍内投与により、異種の腫瘍関連抗原及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比較して、腫瘍での炎症応答増強を生じさせる。
【0027】
さらに別の実施形態では、本発明は、対象のがん性腫瘍での炎症応答増強を誘導する方法を含み、その方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40L抗原をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、その組み換えMVAの腫瘍内投与により、異種の腫瘍関連抗原及びCD40L抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比較して、腫瘍での炎症応答増強を生じさせる。
【0028】
さらに別の実施形態では、本発明は、対象のがん性腫瘍での炎症応答増強を誘導する方法を含み、その方法が、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40L抗原をコードする第2の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内及び/または静脈内に投与することを含み、その組み換えMVAの腫瘍内投与及び/または静脈内投与により、異種の腫瘍関連抗原をコードする第1の核酸と、CD40L抗原をコードする第2の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内または非静脈内の注射によって生じる炎症応答と比較して、腫瘍での炎症応答増強を生じさせる。
【0029】
様々な追加の実施形態では、本発明は、がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAを提供する。
【0030】
様々な追加の実施形態では、本発明は、がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAを含む。
【0031】
様々な追加の実施形態では、本発明は、がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)CD40Lをコードする第2の核酸と、c)4-1BBLをコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAを含む。
【0032】
さらに別の実施形態では、4-1BBL抗原をコードする組み換えMVAは、チェックポイント阻害剤アンタゴニストの投与と組み合わせて患者に腫瘍内投与された場合、がん患者の治療を増強し、より具体的には、腫瘍体積の縮小を増大させ、及び/またはがん患者の生存率を上昇させる。
【0033】
さらに別の実施形態では、CD40L抗原をコードする組み換えMVAは、チェックポイント阻害剤アンタゴニストの投与と組み合わせて患者に腫瘍内投与された場合、がん患者の治療を増強し、より具体的には、腫瘍体積の縮小を増大させ、及び/またはがん患者の生存率を上昇させる。
【0034】
さらに別の実施形態では、CD40L及び4-1BBL抗原をコードする組み換えMVAは、チェックポイント阻害剤アンタゴニストの投与と組み合わせて患者に腫瘍内及び/または静脈内投与された場合、がん患者の治療を増強し、より具体的には、腫瘍体積の縮小を増大させ、及び/またはがん患者の生存率を上昇させる。
【0035】
別の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、抗体の投与と同時または抗体の投与の後に投与される。より好ましい実施形態では、組み換えMVAは、抗体の後に投与される。
【0036】
別の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、同じ投与経路(複数可)によって、抗体の投与と同時または抗体の投与の後に投与される。別の実施形態では、組み換えMVAは、1つもしくは複数の異なる投与経路によって、または抗体の投与の後に投与される。
【0037】
さらに別の実施形態では、本発明は、がん患者における抗体療法を増強させるための方法を含み、その方法が、本発明の医薬組み合わせをがん患者に投与することを含み、その医薬組み合わせを投与することにより、抗体療法を単独で行う場合と比較して、抗体療法によって誘導される抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)が増強される。
【0038】
好ましい実施形態では、第1の核酸は、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質であるTAAをコードする。より好ましい実施形態では、ERVタンパク質は、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリーに由来する。より好ましい実施形態では、ERVタンパク質は、HERV-Kエンベロープ及びHERV-K gagタンパク質から選択される。
【0039】
好ましい実施形態では、第1の核酸は、内在性レトロウイルス(ERV)ペプチドであるTAAをコードする。より好ましい実施形態では、ERVペプチドは、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリーに由来する。より好ましい実施形態では、ERVペプチドは、HERV-Kエンベロープタンパク質(HERV-K-MEL)の偽遺伝子から選択される。
【0040】
他の好ましい実施形態では、第1の核酸は、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、葉酸受容体1(FOLR1)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるTAAをコードする。
【0041】
1つ以上の好ましい実施形態では、組み換えMVAは、MVA-BNまたはその誘導体である。
【0042】
様々な追加の実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストのいずれかと組み合わせて、がんである対象に投与が行われる。さらなる実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、がんである対象を治療するため、TAAに特異的な抗体と組み合わせて、がんである対象に投与が行われる。より好ましい実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、及びICOSから選択される免疫チェックポイント分子のアンタゴニストまたはアゴニストと組み合わせて投与が行われる。最も好ましい実施形態では、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、抗体を含む。最も好ましい実施形態では、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、PD-1抗体またはPD-L1抗体を含む。
【0043】
本発明のさらなる目的及び利点は、一部が下記の説明に示されており、一部は、その説明から明らかとなるか、または本発明を実施することにより認識され得る。本発明の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘されている要素及び組み合わせによって認識及び実現されることになる。
【0044】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成すが、本発明の1つ以上の実施形態を例示すると共に、その記載と併せて、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】MVA-OVA-4-1BBLに感染した腫瘍細胞によって、CD8 T細胞を4-1BBLの媒介により共刺激すると、DCを必要とすることなく、サイトカインの産生に影響が及ぶことを示している。これに対して、MVA-OVA-CD40Lでは、DCの存在下でのみ、サイトカインの産生が増強される。実施例2に記載されているように、樹状細胞(DC)は、C57BL/6マウス由来骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後に生成された。B16.F10細胞に、MVA-OVA、MVA-OVA-CD40LまたはMVA-OVA-4-1BBLを感染させ、感染した腫瘍細胞を採取し、指示されている場合には、DCの存在下で共培養した。ナイーブOVA(257-264)特異的CD8+ T細胞をOT-Iマウスから磁気精製し、上記の共培養物に加えた。細胞を培養し、その上清を、Luminexによるサイトカイン濃度分析用に採取した。IL-6(A)、GM-CSF(B)、IL-2(C)及びIFN-γ(D)の上清濃度が示されている。データは、平均±SEMとして示されている。
【
図2】MVA-OVA-4-1BBLに感染した腫瘍細胞は直接、すなわち、DCを必要とすることなく、抗原特異的CD8 T細胞の活性化エフェクターT細胞への分化を促すが、MVA-OVA-CD40Lに感染した腫瘍細胞のCD40L媒介による共刺激は、DCの存在に依存することを示している。実施例3に記載されているように、樹状細胞(DC)は、C57BL/6マウス由来骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後に生成された。B16.F10(メラノーマモデル)細胞に、MVA-OVA、MVA-OVA-CD40LまたはMVA-OVA-4-1BBLを感染させた。その翌日、感染した腫瘍細胞を採取し、(指示されている場合に)DCの存在下で共培養した。ナイーブOVA(257-264)特異的CD8+ T細胞をOT-Iマウスから磁気精製し、1:5の比率で共培養物に加えた。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養した。その後、細胞を染色し、フローサイトメトリーによって解析した。Aは、OT-I CD8+ T細胞(図では「CD8+」として示されている)上のT-betのGMFIを示しており、Bは、OT-I CD8+ T細胞のCD44+ グランザイムB+ IFNγ+ TNFα+のパーセンテージを示している。データは、平均±SEMとして示されている。
【
図3】CD40Lまたは4-1BBLのいずれかをコードするMVAに感染させると、腫瘍細胞株及びマクロファージにおける腫瘍細胞死が誘導されることを示している。実施例4に記載されているように、腫瘍細胞株B16.OVA(A及びB)、MC38(C)ならびにB16.F10(D)にベクターを、示されているMOIで20時間感染させた。細胞を、その生存率についてフローサイトメトリーにより解析した。A、C、D及びEは、死細胞のパーセンテージ(「Live/Dead+」)を示している。B:Aの上清中のHMGB1をELISAによって定量した。E:骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、示されているMOIで20時間感染させた。細胞を、その生存率についてフローサイトメトリーにより解析した。データは、平均±SEMとして示されている。
【
図4】rMVA-4-1BBLがインビボで、NK細胞の活性化を誘導することを示している。実施例5に記載されているように、C57BL/6マウス(n=5匹/群)を、生理食塩水、または5×10
7 TCID50の「rMVA」(=MVA-OVA)、「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)もしくは200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせた5×10
7 TCID50のrMVAのいずれかにより静脈内免疫した。24時間後、マウスを屠殺し、脾臓をフローサイトメトリー解析用に処理した。CD69(A)及びCD70(B)の幾何平均蛍光強度(GMFI)が示されている。データは、平均±SEMとして示されている。
【
図5】rMVA-4-1BBLによる静脈内免疫によって、インビボにおいて、血清IFN-γの分泌が促進されることを示している。実施例6に記載されているように、C57BL/6マウス(n=5匹/群)を、生理食塩水、または5×10
7 TCID50の「rMVA」(=MVA-OVA)、「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)、もしくは200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせた5×10
7 TCID50のrMVAのいずれかにより静脈内免疫した。A:6時間後、マウスから採血し、全血から血清を分離して、血清中のIFN-γ濃度をLuminexによって測定した。B:3時間後、21時間後及び45時間後に、マウスに、ブレフェルジンAを静脈内注射して、タンパク質の分泌を停止した。免疫から6時間後、24時間後、及び48時間後にマウスを屠殺し、脾細胞をフローサイトメトリーによって解析した。データは、平均±SEMとして示されている。
【
図6】B16.OVA腫瘍担持マウスにおいて、「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)で静脈内免疫すると、血清IFN-γの分泌が促進されることを示している。実施例7に記載されているように、B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目に、PBS、または5×10
7 TCID50のrMVA(=MVA-OVA)もしくはrMVA-4-1BBLをi.v.(静脈内)投与した。6時間後、マウスから採血し、全血から血清を分離して、血清中のIFN-γ濃度をLuminexによって測定した。データは、平均±SEMとして示されている。
【
図7】「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)で静脈内プライム免疫及び静脈内ブースト免疫を行った後、抗原特異的CD8+ T細胞及びベクター特異的CD8+ T細胞が増加することを示している。実施例8に記載されているように、C57BL/6マウス(n=4匹/群)に、生理食塩水、または5×10
7 TCID50の「rMVA」(=MVA-OVA)、rMVA-4-1BBLもしくは200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせた5×10
7 TCID50のrMVAのいずれかにより静脈内プライム免疫を0日目に行い、ブースト免疫を41日目に行った。プライム免疫から6日目、21日目、35日目、48日目及び64日目に、マウスから採血し、末梢血のフローサイトメトリー解析を行った。Aは、末梢血白血球(PBL)のうちの抗原(OVA)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示しており、Bは、PBLのうちのベクター(B8R)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。プライム免疫後、70日目に、マウスを屠殺した。脾臓を採取し、フローサイトメトリー解析を行った。Cは、生細胞のうちの抗原(OVA)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示しており、Dは、生細胞のうちのベクター(B8R)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。データは、平均±SEMとして示されている。
【
図8】4-1BBLをコードするMVAウイルスを静脈内注射すると、4-1BBLを含まない組み換えMVAと比較して、抗腫瘍効果が増大することを示している。実施例9に記載されているように、B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(図では「rMVA」)もしくはMVA-OVA-4-1BBL(図では「rMVA-4-1BBL」)を静脈内投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。
【
図9】4-1BBLまたはCD40LをコードするMVAウイルスの腫瘍内注射の抗腫瘍効果増強を示している。実施例10に記載されているように、B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=4~5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)、12日目及び15日目(灰色の破線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(図では「rMVA」として示されている)、MVA-OVA-CD40L(図では「rMVA-CD40L」として示されている)もしくはMVA-OVA-4-1BBL(図では「rMVA-4-1BBL」として示されている)を腫瘍内投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。
【
図10】確立された大腸癌に対して、CD40Lを用いてコードさせたMVAウイルスを腫瘍内注射することによる抗腫瘍効果を示している。実施例11に記載されているように、MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から14日目(黒い点線)、19日目及び22日目(黒い破線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-TAA(図では「rMVA」として示されている)もしくはMVA-TAA-CD40L(図では「rMVA-CD40L」として示されている)を腫瘍内(i.t.)投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。これらの実験では、組み換えMVAによってコードされるTAAは、抗原AH1A5、p15E及びTRP2を含んだ。
【
図11】チェックポイント阻害と腫瘍標的化抗体とが、rMVA-4-1BBL(本明細書では「MVA-OVA-4-1BBL」ともいう)の腫瘍内(i.t.)投与と相乗作用することを示している。実施例12に記載されているように、B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、指示されている場合(チェック印)には、200μgのIgG2a、抗TRP-1または抗PD-1抗体を腹腔内投与した。腫瘍の接種から13日目(黒い点線)、18日目及び21日目(灰色の破線)に、マウスをPBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBLのいずれかで腫瘍内(i.t.)免疫した。腫瘍増殖を定期的に測定した。
【
図12】MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射が、抗CD137抗体治療と比較して、より優れた抗腫瘍効果をもたらすことを示している。実施例13に記載されているように、C57BL/6マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞をs.c.(皮下)投与した。7日後、腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBLまたは10μgの抗4-1BB(3H3)抗体のいずれかを腫瘍内注射した。腫瘍増殖を定期的に測定した。Aには、腫瘍平均体積が示されている。B:プライミングから12日目に、末梢血リンパ球をOVAデキストラマーで染色し、FACSによって解析した。CD8+ T細胞のうちのOVAデキストラマー+ CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図13】内在性レトロウイルス抗原Gp70をコードするMVAウイルスの静脈内注射の抗腫瘍効果を示している。実施例14に記載されているように、Balb/cマウスに、5×10
5個のCT26.wt細胞をs.c.(皮下)投与した。腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、CT26.wt腫瘍担持マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から12日目に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA、rMVA-Gp70もしくはrMVA-Gp70-CD40Lをi.v.(静脈内)投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。示されているのは、腫瘍平均径(A)及び腫瘍平均体積(B)である。C:免疫から7日後に、血液細胞を再刺激したものであり、刺激後の血液中のCD8+ CD44+ IFN-γ+ 細胞のパーセンテージが示されている。
【
図14】内在性レトロウイルス抗原Gp70及びCD40LをコードするMVAウイルスの静脈内注射の抗腫瘍効果を示している。実施例15に記載されているように、C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞をs.c.(皮下)投与した。7日後、腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、B16.F10腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA、rMVA-Gp70もしくはrMVA-Gp70-CD40Lをi.v.(静脈内)投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。示されているのは、腫瘍平均体積(A)と、免疫から7日後に、p15eペプチドで刺激した後の血液中のCD8+ CD44+ IFN-γ+ 細胞のパーセンテージである(B)。
【
図15】IT免疫に対するサイトカイン/ケモカインMVA-BN骨格応答は、4-1BBLのアジュバント作用によって増大し得る。本明細書では、「アジュバント作用」とは、組み換えMVAの特定のコードされたタンパク質または成分によって、その組み換えMVAの他のコードされているタンパク質(複数可)または成分(複数可)により生じる免疫応答が増大することが意図されている。この図においては、5×10
5のB16.OVA細胞をC57BL/6マウスに皮下(s.c.)移植した(実施例23を参照のこと)。10日目に、マウスをPBS、または2×10
8 TCID50のMVA-BN、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した(n=6匹のマウス/群)。6時間後、腫瘍を摘出し、腫瘍溶解液を処理した。サイトカイン/ケモカインプロファイルをLuminexによって解析した。
図15には、免疫マウスにおいて、サイトカイン/ケモカインがアップレギュレートされたことが示されている。
【
図16】MVA-OVA-4-1BBLによって、腫瘍内(i.t.)免疫に対するサイトカイン/ケモカインの炎症誘発性応答が増大する。5×10
5のB16.OVA細胞をC57BL/6マウスに皮下(s.c.)移植した(実施例23及び24を参照のこと)。10日目に、マウスをPBS、または2×10
8 TCID50のMVA-BN、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した(n=6匹のマウス/群)。6時間後、腫瘍を摘出し、腫瘍溶解液を処理した。サイトカイン/ケモカインプロファイルをLuminexによって解析した。
図16は、MVA-OVA-4-1BBLで免疫したマウスにおいて、MVA-BNの場合と比べてアップレギュレートするサイトカイン/ケモカインを示している。
【
図17】MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した後の腫瘍微小環境(TME)及び腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)のT細胞の定量解析及び定性解析である。C57BL/6マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。9~13日後、腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、2×10
8 TCID50のMVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを腫瘍内注射した(実施例25を参照のこと)。免疫から1日後、3日後及び7日後に、マウスを屠殺し、腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)をコラゲナーゼ/DNaseで消化し、フローサイトメトリーによって解析した。腫瘍1mg当たり及びTdLN当たりのCD45+ 細胞、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞及びOVA特異的CD8+ T細胞の数が示されている。
【
図18】MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した後のTME及び流入領域LNのT細胞の定量解析及び定性解析である。C57BL/6マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。9~13日後、腫瘍の測定値が5.5×5.5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを腫瘍内注射した(実施例26を参照のこと)。免疫から1日後、3日後及び7日後に、マウスを屠殺し、腫瘍及びTdLN(腫瘍流入領域リンパ節)をコラゲナーゼ/DNaseで消化し、フローサイトメトリーによって解析した。A:腫瘍(左パネル)及びTdLN(右パネル)におけるOVA特異的CD8+ T細胞のうちのKi67+ 細胞のパーセンテージが示されている。B:i.t.免疫から7日後の腫瘍におけるOVA特異的CD8+ T細胞のうちのPD1のGMFIが示されている。C:i.t.免疫から7日後の腫瘍におけるOVA特異的Teff/Tregの比率が示されている。
【
図19】MVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した後のTME及び腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)のNK細胞の定量解析及び定性解析である。C57BL/6マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。9~13日後、腫瘍の測定値が5.5×5.5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを腫瘍内注射した(実施例27を参照のこと)。免疫から1日後、3日後及び7日後に、マウスを屠殺し、腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)をコラゲナーゼ/DNaseで消化し、フローサイトメトリーによって解析した。腫瘍1mg当たり及びTdLN当たりのNK細胞数、ならびに腫瘍及びTdLN内のNK細胞のCD69、グランザイムB及びKi67表面マーカーのGMFIが示されている。
【
図20】MVA-OVA-4-1BBLに媒介される抗腫瘍効果のCD8 T細胞依存性である。C57BL/6マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBSまたは2×10
8 TCID
50のMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例28を参照のこと)。この1回目の注射から5日目及び8日目に、これらの腫瘍内(i.t.)注射を繰り返した(縦の破線)。加えて、初回免疫の1日前、1日後、4日後、7日後、11日後に、コントロール抗体であるIgG2bアイソタイプ(左及び中央のパネル)、または抗CD8抗体(2.43、右パネル)を腹腔内(i.p.)注射した(100μg/マウス)。腫瘍増殖を定期的に測定したものであり、腫瘍平均径が示されている。
【
図21A】MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの媒介による抗腫瘍効果のBatf3+ DC依存性である。C57BL/6マウスまたはBatf3-/-マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後(縦の破線)、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例29を参照のこと)。1回目の腫瘍内注射から5日目及び8日目に、このi.t.注射を繰り返した(縦の破線)。腫瘍増殖を定期的に測定した。腫瘍平均径が示されている。
【
図21B】MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの媒介による抗腫瘍効果のBatf3+ DC依存性である。C57BL/6マウスまたはBatf3-/-マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後(縦の破線)、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例29を参照のこと)。1回目の腫瘍内注射から5日目及び8日目に、このi.t.注射を繰り返した(縦の破線)。腫瘍増殖を定期的に測定した。初回免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞(すなわちOVA
257-264特異的T細胞)の存在について解析した。CD8+ T細胞におけるOVA特異的T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図22A】B16.OVAメラノーマ担持マウスにおける、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与におけるNK細胞の役割である。C57BL/6マウスまたはIL15Rα-/-マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例30を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。腫瘍平均径が示されている。
【
図22B】B16.OVAメラノーマ担持マウスにおける、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与におけるNK細胞の役割である。C57BL/6マウスまたはIL15Rα-/-マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例30を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。生存率(%)が示されている。
【
図22C】B16.OVAメラノーマ担持マウスにおける、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与におけるNK細胞の役割である。C57BL/6マウスまたはIL15Rα-/-マウスに、5×10
5のB16.OVA細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内注射した(実施例30を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。初回免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞の存在について解析した。CD8+ T細胞におけるOVA
257-264デキストラマー+(SIINFEKL+)CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図23】MVA-OVA-4-1BBLによるIT免疫に応答した、NK細胞依存性サイトカイン/ケモカインプロファイルを示している。5×10
5のB16.OVA細胞をC57BL/6マウス及びIL15Rα-/-マウスに皮下(s.c.)移植した(実施例31を参照のこと)。7日目に、マウスをPBS、または2×10
8 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した(n=2~3匹のマウス/群)。6時間後、腫瘍を摘出し、腫瘍溶解液を処理した。サイトカイン/ケモカインプロファイルをLuminexによって解析した。
図23には、MVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した後、IL15Rαの非存在下で減少するサイトカイン/ケモカインが示されている。
【
図24A】B16.F10メラノーマ担持マウスにおいて、MVA-gp70-CD40Lによる腫瘍内免疫の抗腫瘍効果をMVA-gp70-4-1BBLの場合と比較したものを示している。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-4-1BBLもしくはMVA-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例32を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。腫瘍平均径を示している。
【
図24B】B16.F10メラノーマ担持マウスにおいて、MVA-gp70-CD40Lによる腫瘍内免疫の抗腫瘍効果をMVA-gp70-4-1BBLの場合と比較したものを示している。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-4-1BBLもしくはMVA-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例32を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。MVA-gp70-4-1BBLで処置したマウスの白斑の外観を示している。
【
図24C】B16.F10メラノーマ担持マウスにおいて、MVA-gp70-CD40Lによる腫瘍内免疫の抗腫瘍効果をMVA-gp70-4-1BBLの場合と比較したものを示している。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-4-1BBLもしくはMVA-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例32を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。初回免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞の存在について解析した。p15Eで再刺激後のCD8+ T細胞におけるIFNγ産生CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図25A】B16.F10メラノーマ担持マウスにおけるMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lの腫瘍内投与の抗腫瘍効果である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40LもしくはMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例33を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。腫瘍平均径が示されている。
【
図25B】B16.F10メラノーマ担持マウスにおけるMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lの腫瘍内投与の抗腫瘍効果である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。7日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40LもしくはMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例33を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。初回免疫から11日後、血液を採取し、p15eペプチドで再刺激した。CD8+ T細胞におけるIFNγ+ CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図26A】CT26腫瘍担持マウスにおける、CD40Lまたは4-1BBLでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCt26wt細胞を皮下(s.c.)投与した。13日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例34を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。腫瘍平均径を示している。
【
図26B】CT26腫瘍担持マウスにおける、CD40Lまたは4-1BBLでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCt26wt細胞を皮下(s.c.)投与した。13日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例34を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。生存率(%)を示している。
【
図26C】CT26腫瘍担持マウスにおける、CD40Lまたは4-1BBLでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCt26wt細胞を皮下(s.c.)投与した。13日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、MVA-4-1BBL、MVA-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを腫瘍内注射した(実施例34を参照のこと)。1回目の注射から5日目及び8日目に、処置を繰り返した。腫瘍増殖を定期的に測定した。初回免疫から11日後、血液を採取し、AH1ペプチドで再刺激したものである。CD8+ T細胞におけるIFNγ+ CD44+ T細胞のパーセンテージが示されている。
【
図27】4-1BBL及び/またはCD40Lをさらに含むMVA-gp70を腫瘍内注射した後の腫瘍微小環境(TME)及び腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)のT細胞の定量解析及び定性解析である。C57BL/6マウスに、5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した。9日後、腫瘍の測定値が5×5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40LもしくはMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lのいずれかを腫瘍内注射した(実施例35を参照のこと)。免疫から3日後、マウスを屠殺し、腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)を採取し、コラゲナーゼ/DNaseで消化し、フローサイトメトリーによって解析した。腫瘍1mg当たり及びTdLN当たりのCD8
+T細胞、p15E特異的CD8
+T細胞及びKi67
+p15E特異的CD8
+T細胞の数を示している。データは、平均±SEMを表す。
【
図28】4-1BBL及び/またはCD40Lをさらに発現するMVA-gp70を腫瘍内注射した後の腫瘍微小環境(TME)及び腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)のT細胞の定量解析及び定性解析を示している。C57BL/6マウスに5×10
5個のB16.F10細胞を皮下(s.c.)投与した(実施例36を参照のこと)。9日後、腫瘍の測定値が5.5×5.5mmを上回ったら、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-Gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L及びMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lのいずれかを腫瘍内内注射した。免疫から3日後、マウスを屠殺し、腫瘍及びTdLNを採取し、コラゲナーゼ/DNaseで消化し、得られた個々の細胞をフローサイトメトリーによって解析した。腫瘍1mg当たり及びTdLN当たりのNK細胞、Ki67
+NK細胞及びグランザイムB
+NK細胞の数が示されている。データは、平均±SEMとして示されている。
【
図29A】CT26.WT腫瘍担持マウスにおける、4-1BBL及び/またはCD40Lでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の静脈内投与の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCT26.WT細胞を皮下(s.c.)投与した。12日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID
50のMVA-Gp70、MVA-Gp70-4-1BBL、MVA-Gp70-CD40L、MVA-Gp70-4-1BBL-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを静脈内注射した(実施例37を参照のこと)。腫瘍平均径を示している。
【
図29B】CT26.WT腫瘍担持マウスにおける、4-1BBL及び/またはCD40Lでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の静脈内投与の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCT26.WT細胞を皮下(s.c.)投与した。12日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID
50のMVA-Gp70、MVA-Gp70-4-1BBL、MVA-Gp70-CD40L、MVA-Gp70-4-1BBL-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを静脈内注射した(実施例37を参照のこと)。生存率(%)を示している。初回免疫から7日後、血液を採取し、AH1ペプチドで再刺激した。
【
図29C】CT26.WT腫瘍担持マウスにおける、4-1BBL及び/またはCD40Lでアジュバント添加を行ったMVA-gp70の静脈内投与の抗腫瘍効果である。Balb/cマウスに、5×10
5個のCT26.WT細胞を皮下(s.c.)投与した。12日後、マウスを群分けし、PBS、または5×10
7 TCID
50のMVA-Gp70、MVA-Gp70-4-1BBL、MVA-Gp70-CD40L、MVA-Gp70-4-1BBL-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40Lを静脈内注射した(実施例37を参照のこと)。CD8
+T細胞におけるIFNγ
+CD44
+T細胞のパーセンテージを平均±SEMとして示している。
【
図30A】MVA系ベクターMVA-HERV-FOLR1-PRAME-h4-1-BBL(「MVA-mBN494」または「MVA-BN-4IT」)を示す。詳細については、実施例38及び39を参照のこと。
【
図30B】感染細胞のHLA内にTAAを取り込ませベクターの能力を示す。詳細については、実施例38及び39を参照のこと。
【
図30C】h4-1-BBLを機能的形態、すなわち、h4-1-BB受容体結合性形態で発現させるベクターの能力を示す。詳細については、実施例38及び39を参照のこと。
【
図31】MVAに基づくベクター「MVA-mBN502」を示し(C)、さらに、ERVK-env/MEL(A;MVA-mBN494で使用する場合)及びERVK-env/MEL_03(B;MVA-mBN502で使用する場合)の概略マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
上記の概要及び下記の詳細な説明のいずれも、例示及び説明のためのものに過ぎず、特許請求されているような本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0047】
本願で説明及び例示されているように、本発明の組み換えMVA及び方法は、がん患者の免疫応答の複数局面を増強する。様々な態様では、本発明により、腫瘍関連抗原(TAA)と4-1BBL抗原とを含む組み換えMVAを、がんである対象に腫瘍内または静脈内に投与した場合に、対象において抗腫瘍効果が増大することが示されている。本明細書でさらに詳細に説明されているように、この抗腫瘍効果の増大には、腫瘍体積の縮小の増大、全生存率の上昇、TAAに対するCD8 T細胞応答の増強、及び炎症応答の増強(NK細胞活性の増大、サイトカインの産生の増加等)が含まれる。
【0048】
本願で説明及び例示されているように、本発明の組み換えMVA及び方法は、がん患者の免疫応答の複数局面を増強する。様々な態様では、本発明により、腫瘍関連抗原(TAA)とCD40L抗原とを含む組み換えMVAを、がんである対象に腫瘍内または静脈内に投与した場合に、対象において抗腫瘍効果が増大することが示されている。本明細書でさらに詳細に説明されているように、この抗腫瘍効果の増大には、腫瘍体積の縮小の増大、全生存率の上昇、TAAに対するCD8 T細胞応答の増強、及び炎症応答の増強(NK細胞活性の増大、サイトカインの産生の増加等)が含まれる。
【0049】
追加の態様では、本発明の様々な実施形態によって、腫瘍関連抗原(TAA)と4-1BBL抗原とを含む組み換えMVAを、少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニスト/アゴニストと組み合わせて腫瘍内に投与すると、がんである対象において、腫瘍縮小が増大し、全生存率が上昇することが示されている。
【0050】
さらなる態様では、本発明の様々な実施形態によって、腫瘍関連抗原(TAA)と4-1BBL抗原とを含む組み換えMVAを、腫瘍特異的抗体と組み合わせて腫瘍内に投与すると、がんである対象において、腫瘍縮小が増大し、全生存率が上昇することが示されている。
【0051】
これまで、組み換えMVAウイルスにより4-1BBL抗原がコードされているが、4-1BBLをコードするMVAの免疫原性の有益性は不明であった(例えば、Spencer et al.(2014)PLoS One 9(8):e105520を参照のこと)。Spencerの文献では、MVAベクターまたはアデノウイルスベクターのいずれかで、4-1BBLとトランスジェニック抗原を共発現させることにより、マウスでのCD8 T細胞応答の増大がもたらされたが、4-1BBLをコードするアデノウイルスベクターの筋肉内投与の後には、非ヒト霊長類でのIFN-γ応答の増大はまったく見られなかった(上記文献、2ページ、6ページ)。さらに、がんを治療すること、ならびに腫瘍及び/または腫瘍細胞を破壊することの一環として、4-1BBLをコードするMVAを用いる免疫原性の有益性は不明であった。
【0052】
本開示の様々な実施形態により、4-1BBLとTAAをコードするMVA(本明細書では、MVA-TAA-4-1BBLという)は、ヒト等の対象のがんを治療するのに有効であり得ることが示されている。本明細書に示され、説明されているように、MVA-TAA-4-1BBLを投与すると、がんである対象の免疫応答の複数局面を増強でき、腫瘍細胞を効果的に低減及び殺傷することができる。本開示の様々な実施形態の抗腫瘍効果の増強のうちの1つ以上が、以下で概説されている。
【0053】
4-1BBLをコードする組み換えMVAの静脈内投与により、抗腫瘍効果の増強が生じる。少なくとも1つの態様では、本発明は、静脈内に投与される、TAA及び4-1BBL抗原をコードする組み換えMVA(rMVA-TAA-4-1BBL)を含み、静脈内投与により、4-1BBLを含まない組み換えMVAの静脈内投与と比較して、または4-1BBLをコードする組み換えMVAの非静脈内投与(例えば、4-1BBLをコードする組み換えMVAの皮下投与等)と比較して、抗腫瘍効果が増強される。これらの抗腫瘍効果の増強には、NK細胞応答の増強(
図4に示されている)、IFN-γの分泌増加によって示される炎症応答の増強(
図5及び
図6に示されている)、抗原及びベクターに特異的なCD8 T細胞増殖の増大(
図7に示されている)、ならびに腫瘍縮小の増大(
図8に示されている)が含まれる。
【0054】
4-1BBLをコードする組み換えMVAの腫瘍内投与により、腫瘍での炎症が増強される。本発明の別の態様では、腫瘍細胞をMVA-OVA-4-1BBLには感染させるが、MVA-OVA-CD40Lには感染させない場合、抗原を交差提示するDCの非存在下で、抗原特異的CD8+ T細胞が活性化されて、T細胞由来のサイトカイン(GM-CSF、IL-2及びIFN-γ等)が産生されることが確認された(
図1A~1D)。活性化時にナイーブT細胞によって産生され、樹状細胞及び骨髄系細胞サブセットの成熟を誘導する成長因子であるGM-CSFのケースでは、これは予想外であった(Min et al.(2010)J.Immunol.184:4625-4629)。抗原を交差提示するDCの存在下では、rMVA-CD40Lに感染させた腫瘍細胞によって刺激された抗原特異的CD8+ T細胞は、IFN-γを産生したが、rMVA-4-1BBLのようにIL-2またはGM-CSFを産生することはなかった(
図1A~1D)。興味深いことに、DCによって産生される重要なサイトカインであるIL-6が大量に検出された(
図1A)。
【0055】
有益な一態様では、腫瘍での炎症増強は、腫瘍部位で腫瘍細胞を殺傷するTIL(腫瘍浸潤リンパ球)を多数生じさせることができる(例えば、Lanitis et al.(2017)Annals Oncol.28(suppl 12):xii18-xii32を参照のこと)。「ホット」腫瘍としても知られるこれらの炎症腫瘍により、TIL、サイトカイン、及び他の炎症分子の数の増加を考えると、腫瘍細胞破壊の増強が可能になる。
【0056】
4-1BBLをコードする組み換えMVAの腫瘍内投与により、腫瘍体積が縮小し、全生存率が上昇する。一態様では、本発明は、腫瘍内に投与される、4-1BBL抗原をコードする組み換えMVA(MVA-4-1BBL)を含み、腫瘍内投与により、4-1BBLを含まない組み換えMVAの腫瘍内投与と比較して、がんである対象における抗腫瘍効果が増強される。
【0057】
これまで、組み換えMVAウイルスが腫瘍内に投与されたことはあるが(例えば、White et al.(2018)PLoS One 13:e0193131及びNemeckova et al.(2007)Neoplasma 54:326-33を参照のこと)、それらの研究は、結果が様々である。例えば、Nemeckovaの研究では、GM-CSFを発現するワクシニアウイルスMVAの腫瘍内注射及びDNAワクチンによる免疫が、HPV16誘発性腫瘍を有するマウスの生存期間を延長することが見出された(Nemeckovaの文献のアブストラクトを参照のこと)。別法として、Whiteらの研究では、MVAの腫瘍内注射後、膵臓腫瘍の増殖阻害を示すことはできなかった(Whiteの文献のアブストラクトを参照のこと)。
【0058】
本開示の一環で、TAAと4-1BBLとをコードする1つ以上の核酸を含む組み換えMVAを対象に腫瘍内投与した。
図9に示されているように、MVA-TAA-4-1BBLの腫瘍内注射では、組み換えMVA TAAの場合と比較して腫瘍体積の顕著な減少が示された。
【0059】
免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストと組み合わせた4-1BBLをコードする組み換えMVAの腫瘍内投与により、抗腫瘍効果が増大する。様々な実施形態では、本発明は、MVA-TAA-4-1BBLを、免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストと組み合わせて投与することを含む。好ましくは、MVA-TAA-4-1BBLの投与は、静脈内投与または腫瘍内投与である。免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストと組み合わされる本発明のMVAは、組み合わせでさらに有効ながん治療が得られることから、有益である。例えば、本発明の組み合わせ及び/または併用療法は、がん患者の免疫応答の複数局面を増強する。少なくとも1つの態様では、組み合わせにより、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方が相乗的に増強され、免疫チェックポイント分子のアンタゴニストまたはアゴニストと組み合わせた場合に、がん患者の腫瘍体積が縮小し、生存率が上昇する。
【0060】
本願に提示されているデータは、MVA-TAA-4-1BBLが、免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストと組み合わせた場合に抗腫瘍効果増大を生じさせることを示している。事実、
図11に示されているように、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与をPD-1抗体の腹腔内投与と組み合わせた場合、PD-1単独と比較して腫瘍体積の減少があった。
【0061】
腫瘍関連抗原(TAA)に特異的な抗体と組み合わせて投与される、4-1BBLをコードする組み換えMVAの腫瘍内投与により、抗腫瘍効果が増大する。様々な実施形態では、本発明は、TAAに特異的な抗体と組み合わせたMVA-TAA-4-1BBLの投与を含む。好ましくは、MVA-TAA-4-1BBLの投与は、静脈内投与または腫瘍内投与である。本発明のMVAを、TAA特異的抗体と組み合わせることは有益であり、これらは協働して、より有効ながん治療をもたらすことができる。
【0062】
例示的な一態様では、MVA-TAA-4-1BBLの投与によって誘導される、NK細胞応答の増強は、TAA特異的抗体と相乗的に作用して、対象の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を増強する。がんである対象におけるADCCがこのように増強されると、腫瘍細胞の殺傷及び腫瘍の破壊が増加する。
【0063】
本願に提示されているデータは、MVA-TAA-4-1BBLが、TAA特異的抗体と組み合わせた場合に抗腫瘍効果増大を生じさせることを示している。事実、
図11に示されているように、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与をTRP-1抗体の腹腔内投与と組み合わせた場合、TRP-1抗体単独と比較して腫瘍体積の減少があった。
【0064】
本発明による、プライム免疫及びブースト免疫の一環としてのMVA-TAA-4-1BBLの投与では、抗原及びベクターに特異的なCD8+ T細胞の増加が増大する。別の態様では、本発明は、同種及び/または異種でのプライム-ブーストレジメンの一環として、MVA-TAA-4-1BBLを投与する方法を提供する。好ましくは、MVA-TAA-4-1BBLの投与は、静脈内投与または腫瘍内投与である。
図7に示されているように、抗原及びベクターに特異的なCD8+ T細胞の増加は、MVA-TAA-4-1BBLの静脈内投与によるプライミング及びブースティングの際に増大した。
【0065】
定義
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈上明らかに別段に示されていない限り、複数形の言及が含まれる。したがって、例えば、「核酸」という場合には、その核酸が1つ以上含まれ、「その方法」という場合には、当業者に知られている同等の工程及び方法であって、修正可能であるか、または本明細書に記載されている方法と置き換え可能である工程及び方法への言及が含まれる。
【0066】
別段に示されていない限り、一連の要素の前に付された「少なくとも」という用語は、その一連の要素のあらゆる要素を指すと理解されたい。当業者は、慣用的に過ぎない実験を用いて、本明細書に記載されている発明の具体的実施形態の均等物を数多く認識するか、または確認できるであろう。そのような均等物は、本発明に含まれるように意図されている。
【0067】
本明細書及び下記の特許請求の範囲の全体を通じて、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」のような変形語は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、示されている整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群を含むことを示唆しているが、いずれかの他の整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群を除外しないことを理解されたい。本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(containing)」もしくは「含む(including)」という用語、または場合によっては、本明細書で使用する場合、「有する」という用語に置き換えることができる。あまり好ましくはないが、上記の用語(含む(comprising)、含む(containing)、含む(including)、有する)のいずれも、本明細書において、本発明の態様または実施形態の関連で使用する場合にはいずれも、「~からなる」という用語に置き換えることができる。本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の要素で指定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。本明細書で使用する場合、「~から本質的になる」という場合には、特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を及ぼさない材料または工程は除外されない。
【0068】
本明細書で使用する場合、示されている複数の要素間に置かれた「及び/または」という接続語は、個々の選択肢、及び選択肢の組み合わせの両方を含むものとして理解する。例えば、2つの要素が、「及び/または」によって接続されている場合、第1の選択肢では、第1の要素が第2の要素を用いずに適用可能であることを指す。第2の選択肢では、第2の要素が第1の要素を用いずに適用可能であることを指す。第3の選択肢では、第1の要素及び第2の要素を併せて適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つが、意味の範囲内に入り、したがって、本明細書で使用する場合の「及び/または」という用語の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上を同時に適用することもまた、意味の範囲内に入り、したがって、「及び/または」という用語の要件を満たすことが理解される。
【0069】
本明細書に記載されているような「変異」または「改変」タンパク質または抗原は、本明細書では、欠失、付加、挿入及び/または置換等のいずれかの改変を核酸またはアミノ酸に加えたものとして定義する。
【0070】
本明細書に記載されている核酸配列に関する「配列相同性パーセント(%)または配列同一性パーセント(%)」は、候補配列と参照配列をアラインメントし、必要に応じて、配列同一性パーセントが最大になるように、ギャップを導入した後、いずれの保存的置換も配列同一性の一部としてみなさない場合に、候補配列内のヌクレオチドのうち、参照配列(すなわち、由来元の核酸配列)内のヌクレオチドと同一であるヌクレオチドのパーセンテージとして定義する。ヌクレオチドの配列同一性パーセントまたは配列相同性パーセントを求めるためのアラインメントは、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)というソフトウェア等の公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、当該技術分野の技術の範囲内である様々な方法で行うことができる。当業者は、比較する配列の完全長にわたって、アラインメントを最大限にするのに必要ないずれかのアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを定めることができる。
【0071】
例えば、核酸配列の適切なアラインメントは、Smith and Waterman,(1981),Advances in Applied Mathematics 2:482-489の局所相同性アルゴリズムによって得られる。このアルゴリズムは、Dayhoff(Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353-358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USA)によって開発され、Gribskov((1986),Nucl.Acids Res.14(6):6745-6763)によって標準化されたスコアリングマトリックスを用いることによって、アミノ酸配列に適用できる。配列の同一性パーセントを求めるための、このアルゴリズムの例示的なインプリメンテーションは、Genetics Computer Group(Madison,Wisconsin,USA)によって、「BestFit」というユーティリティアプリケーション内に供給されている。この方法のためのデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Manual,Version 8(1995)(Genetics Computer Group(Madison,Wisconsin,USA)から入手可能)に記述されている。本発明の関連において、同一性パーセントを求めるための好ましい方法は、University of Edinburghが著作権を有し、Collins及びSturrokが開発し、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,California,USA)が流通させているプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一連のパッケージから、Smith-Watermanのアルゴリズムを用いることができ、その際、デフォルトパラメーターをスコア表に使用する(例えば、ギャップオープンペナルティー:12、ギャップエクステンションペナルティー:1、ギャップ:6)。生成されたデータから、「マッチ」値に「配列同一性」が反映される。配列間の同一性パーセントまたは類似性パーセントを算出するための他の好適なプログラムは概して、当該技術分野において知られており、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターで使用するBLASTである。例えば、BLASTN及びBLASTPは、genetic code=standard、filter=none、strand=both、cutoff=60、expect=10、Matrix=BLOSUM62、Descriptions=50 sequences、sort by=HIGH SCORE、Databases=non-redundant、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIRというデフォルトパラメーターを用いて使用できる。これらのプログラムの詳細は、blast.ncbi.nlm.nih.gov/というインターネットアドレスで見ることができる。
【0072】
「プライム-ブーストワクチン接種」または「プライム-ブーストレジメン」という用語は、特定の抗原を標的とするワクチンの1回目のプライミング注射を行ってから、間隔を空けて、同じワクチンのブースティング注射を1回以上行うことを用いるワクチン接種の戦略またはレジメンを指す。プライム-ブーストワクチン接種は、同種であっても異種であってもよい。同種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射と1回以上のブースティング注射の両方に、同じ抗原及び同じベクターを含むワクチンを使用する。異種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射と1回以上のブースティング注射の両方で、同じ抗原を含むが、プライミング注射と1回以上のブースティング注射で、異なるベクターを含むワクチンを使用する。例えば、同種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射で、1つ以上の抗原を発現する核酸を含む組み換えポックスウイルスを使用し、1回以上のブースティング注射で、1つ以上の抗原を発現する同じ組み換えポックスウイルスを使用してよい。これに対して、異種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射で、1つ以上の抗原を発現する核酸を含む組み換えポックスウイルスを使用し、1回以上のブースティング注射で、1つ以上の抗原を発現する異なる組み換えポックスウイルスを使用してよい。
【0073】
「組み換え」という用語は、天然では見られないか、または天然では見られない構成で、別のポリヌクレオチドに連結されている、半合成または合成の供給源のポリヌクレオチド、ウイルスまたはベクターを意味する。「組み換えMVA」または「rMVA」とは、本明細書で使用する場合、概して、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む改変ワクシニアアンカラ(MVA)が意図されている。
【0074】
本明細書で使用する場合、腫瘍体積を縮小することまたは腫瘍体積の縮小は、腫瘍の体積及び/またはサイズの縮小として特徴付けることができるが、当該技術分野において理解されている臨床試験エンドポイントの観点で特徴付けることもできる。腫瘍の体積及び/またはサイズの縮小と関連するいくつかの例示的な臨床試験エンドポイントとしては、奏効率(RR)、客観的奏効率(ORR)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書で使用する場合、生存率の上昇は、がん患者の生存率の上昇として特徴付けることができるが、当該技術分野において理解される臨床試験エンドポイントの観点で特徴付けることもできる。生存率の上昇と関連付けられた例示的ないくつかの臨床試験エンドポイントとしては、全生存率(OS)、無増悪生存率(PFS)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用する場合、「導入遺伝子」または「異種」遺伝子は、野生型ポックスウイルスゲノム(例えば、ワクシニア、鶏痘ウイルスまたはMVA)に存在しない核酸配列またはアミノ酸配列であると理解されたい。当業者は、「導入遺伝子」または「異種遺伝子」は、ワクシニアウイルス等のポックスウイルスに存在する場合、宿主細胞への組み換えポックスウイルスの投与後に、その遺伝子が、対応する異種遺伝子産物として、すなわち「異種抗原」及び/または「異種タンパク質」として発現するような方法でポックスウイルスゲノムに組み込まれるべきであると理解する。発現は通常、ポックスウイルス感染細胞での発現を可能にする調節エレメントに、異種遺伝子を機能的に連結することによって行われる。好ましくは、調節エレメントは、天然または合成のポックスウイルスプロモーターを含む。
【0077】
「ベクター」とは、異種のポリヌクレオチドを含むことができる組み換えDNAプラスミド、組み換えRNAプラスミド、または組み換えウイルスを指す。異種のポリヌクレオチドは、予防または療法を目的として、対象とする配列を含んでよく、任意に、発現カセットの形態であってよい。本明細書で使用する場合、ベクターは、最終標的の細胞または対象において複製能がある必要はない。この用語には、クローニングベクター及びウイルスベクターが含まれる。
【0078】
組み合わせ及び方法
様々な実施形態では、本発明は、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAであって、腫瘍内に投与した場合に、TAAをコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内投与によって誘導される炎症応答及びT細胞応答と比較して、炎症応答及びT細胞応答の増強の両方が誘導される組み換えMVAを含む。
【0079】
様々な追加の実施形態では、本発明は、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸であって、腫瘍内に投与した場合に、TAAをコードする第1の核酸を含む組み換えMVAウイルスの腫瘍内投与によって誘導される腫瘍内炎症応答及びT細胞応答と比較して、腫瘍内炎症応答の増強及びT細胞応答の増強の両方が誘導される核酸を含む。
【0080】
腫瘍での炎症応答増強.
本開示の様々な態様では、TAAと4-1BBLとをコードする組み換えMVAの腫瘍内投与により、組み換えMVA単独での投与と比較して、腫瘍での炎症応答の増強が誘導されることが確認された。少なくとも1つの態様では、本開示による、腫瘍における「炎症応答の増強」は、腫瘍及び/または腫瘍細胞における、1)IFN-γの発現の増加、及び/または2)グランザイムB(GraB)の発現の増加のうちの1つ以上によって特徴付けられる。したがって、本開示に従って、腫瘍及び/または腫瘍細胞において炎症応答が増強されたか否かは、当該技術分野において知られているように、ケモカイン及びサイトカインの分泌を含め、炎症応答の増大を示す1つ以上の分子の発現が増加したか判断するために測定することによって判断できる。例示的な炎症応答マーカーには、NK細胞の出現頻度及び/または活性を測定するのに有用であるマーカーのうちの1つ以上が含まれ、IFN-γ及び/またはグランザイムB(GraB)のうちの1つ以上が含まれる。これらの分子及びその測定は、当該技術分野において理解されている実証済みのアッセイであり、既知の技法に従って行うことができる。例えば、Borrego et al.((1999) Immunology 7(1):159-165)を参照のこと。
【0081】
NK細胞応答の増強.
本開示の様々な追加の態様では、TAAと4-1BBLとをコードする組み換えMVAの腫瘍内投与または静脈内投与により、組み換えMVA単独での投与と比較して、腫瘍または腫瘍環境におけるNK細胞応答の増強が誘導されることが確認された。一態様では、本開示による「NK細胞応答の増強」は、1)NK細胞出現頻度の上昇、2)NK細胞の活性化の増大、及び/または3)NK細胞の増殖の増加のうちの1つ以上によって特徴付けられる。したがって、本開示に従って、NK細胞応答が増強されたか否かは、NK細胞出現頻度の上昇、NK細胞の活性化の増大、及び/またはNK細胞の増殖の増加を示す1つ以上の分子の発現を測定することによって判断できる。NK細胞の出現頻度及び/または活性を測定するのに有用である例示的なマーカーには、NKp46、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB、CD56及び/またはBcl-XLのうちの1つ以上が含まれる。NK細胞の活性化を測定するのに有用である例示的なマーカーには、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB及び/またはBcl-XLのうちの1つ以上が含まれる。NK細胞の増殖を測定するのに有用である例示的なマーカーには、Ki67が含まれる。これらの分子及びその測定は、当該技術分野において理解されている実証済みのアッセイであり、既知の技法に従って行うことができる(例えば、Borrego et al.(1999)Immunology 7(1):159-165を参照のこと)。加えて、それらの分子を測定するためのアッセイは、本開示の実施例5及び6に見ることができる。少なくとも一態様では、1)NK細胞出現頻度の上昇は、CD3-NKp46+細胞が、治療前/ベースラインと比較して、少なくとも2倍増加することとして定義でき、2)NK細胞の活性化の増大は、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB及び/またはBcl-XLの発現が、治療前/ベースラインの発現と比較して、少なくとも2倍増加することとして定義でき、及び/または3)NK細胞の増殖の増加は、Ki67の発現が、治療前/ベースラインの発現と比較して、少なくとも1.5倍増加することとして定義する。
【0082】
T細胞応答の増強.
本願によれば、「T細胞応答の増強」は、1)CD8 T細胞の出現頻度の上昇、2)CD8 T細胞の活性化の増大、及び/または3)CD8 T細胞の増殖の増加のうちの1つ以上によって特徴付けられる。したがって、本願に従って、T細胞応答が増強されたか否かは、1)CD8 T細胞出現頻度の上昇、2)CD8 T細胞活性化の増大、及び/または3)CD8 T細胞の増殖の増加を示す1つ以上の分子の発現を測定することによって判断できる。CD8 T細胞の出現頻度、活性化及び増殖を測定するのに有用である例示的なマーカーにはそれぞれ、CD3、CD8、IFN-γ、TNF-α、IL-2、CD69及び/またはCD44、ならびにKi67が含まれる。抗原特異的T細胞の出現頻度は、MHCマルチマー(ペンタマー、もしくは本願によって示されているようデキストラマー等)によって測定することができる。そのような測定及びアッセイ、ならびに本発明の方法及び組成物を評価するのに好適な他の測定及びアッセイは、当該技術分野において、確立及び理解されている。
【0083】
一態様では、CD8 T細胞出現頻度の上昇は、IFN-γ及び/またはデキストラマー+CD8 T細胞が、治療前/ベースラインと比較して、少なくとも2倍増加することによって特徴付けられる。CD8 T細胞の活性化の増大は、CD69及び/またはCD44の発現が、治療前/ベースラインの発現と比較して、少なくとも2倍増大することとして特徴付けられる。CD8 T細胞の増殖の増加は、Ki67の発現が、治療前/ベースラインの発現と比較して、少なくとも2倍増加することとして特徴付けられる。
【0084】
代替的な態様では、T細胞応答の増強は、CD8 T細胞のエフェクターサイトカインの発現の増加、及び/または細胞傷害性エフェクター機能の増加によって特徴付けられる。エフェクターサイトカインの発現の増加は、治療前/ベースラインと比較した、IFN-γ、TNF-α及び/またはIL-2のうちの1つ以上の発現によって測定できる。細胞傷害性エフェクター機能の増加は、CD107a、グランザイムB及び/またはパーフォリンのうちの1つ以上の発現、及び/または標的細胞の抗原特異的な殺傷によって測定できる。
【0085】
本明細書に記載されているアッセイ、サイトカイン、マーカー及び分子、ならびにその測定は、当該技術分野において確立及び理解されており、既知の技法に従って行うことができる。加えて、T細胞応答を測定するためのアッセイは、T細胞応答を解析した実施例に見ることができ、その実施例としては、実施例2、3、8、13及び14が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明によって実現されるT細胞応答の増強は、NK細胞応答の増強及び炎症応答の増強と組み合わさると、増強されたT細胞が、がん患者の初期自然免疫応答を回避し、及び/または生き延びた腫瘍細胞を効果的に標的として殺傷するため特に有益である。
【0087】
さらに追加の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ及び方法は、ヒトがん患者の治療に用いるものである。好ましい実施形態では、がん患者は、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、尿路上皮、子宮頸部または結腸直腸の癌からなる群から選択されるがんに、罹患している、及び/またはそれであると診断されている。さらに追加の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ及び方法は、乳癌、結腸直腸癌またはメラノーマ、好ましくはメラノーマ、より好ましくは結腸直腸癌、最も好ましくは結腸直腸癌に、罹患している、及び/またはそれであると診断されている、ヒトがん患者の治療に用いるものである。
【0088】
特定の例示的な腫瘍関連抗原.
特定の実施形態では、免疫応答は、対象において、細胞関連ポリペプチド抗原に対して起きるものである。特定のそのような実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)である。
【0089】
「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸が、ペプチド結合または改変ペプチド結合によって互いに連結したポリマーを指す。アミノ酸は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、または天然アミノ酸の化学的類似体であってよい。この用語は、タンパク質、すなわち、少なくとも1つのポリペプチドを含む機能性生体分子も指し、少なくとも2つのポリペプチドを含むときには、それらのポリペプチドは、複合体を形成するか、共有結合されているか、または非共有結合されていてよい。タンパク質におけるポリペプチド(複数可)は、糖化及び/または脂質化されていることができ、及び/または補欠分子族を含むことができる。
【0090】
内在性レトロウイルスタンパク質(ERV).
好ましくは、本発明のTAAは、内在性レトロウイルスタンパク質(ERV)に含まれる。より好ましくは、ERVは、ヒトHERV-Kタンパク質ファミリーのERVである。最も好ましくは、HERV-Kタンパク質は、HERV-Kエンベロープ(env)タンパク質、HERV-K群特異抗原(gag)タンパク質及びHERV-K「メラノーマリスクマーカー」(mel)タンパク質から選択される(例えば、Cegolon et al.(2013)BMC Cancer 13:4を参照のこと)。
【0091】
ERVは、ヒトゲノムの8%を占め、数百年前における生殖細胞系列への感染に由来する。ヒトゲノムに挿入されたこれらのエレメントの大半は、大きく変異しているので、転写または翻訳は行われない。しかしながら、わりと最近獲得したほんの一部のERVは依然として機能しており、翻訳されて、場合によっては、ウイルス粒子を産生さえする。ERVの転写は、その座位が通常、高度にメチル化されており、その結果、体細胞では転写されないため、非常に制限されている。(Kassiotis(2016)Nat.Rev.Immunol.16:207-19)。細胞ストレス(化学物質、UV照射、ホルモン、サイトカイン)のような一部の状況下でのみ、ERVは再活性化し得る。重要なことには、ERVは、多種多様ながんでも発現するが、正常組織では発現しない(Cegolon et al.(2013)BMC Cancer 13:4、Wang-Johanning et al.(2003)Oncogene 22:1528-35)。この非常に制限された発現パターンにより、ERVは、免疫寛容機序に暴露されないか、またはまれにしか暴露されないようになり、おそらく、その結果、コンピテントなERV特異的T細胞レパートリーが得られる。このように、ERVは、MVAで腫瘍抗原(「TAA」)として用いることができる。
【0092】
様々な追加の実施形態では、TAAには、HER2、PSA、PAP、CEA、MUC-1、FOLR1、PRAME、サバイビン、TRP1、TRP2もしくはBrachyuryが単独で含まれるか、またはこれらを組み合わせたものが含まれるが、これらに限定されない。そのような例示的な組み合わせとしては、例えばMVAにおけるCEA及びMUC-1(CV301としても知られる)を挙げてよい。他の例示的な組み合わせとしては、PAP及びPSAを挙げてよい。
【0093】
さらなる実施形態では、追加のTAAとしては、5アルファレダクターゼ、アルファ-フェトプロテイン、AM-1、APC、April、BAGE、ベータ-カテニン、Bcl12、bcr-abl、CA-125、CASP-8/FLICE、カテプシン、CD19、CD20、CD21、CD23、CD22、CD33 CD35、CD44、CD45、CD46、CD5、CD52、CD55、CD59、CDC27、CDK4、CEA、c-myc、Cox-2、DCC、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、FGF8b、FGF8a、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、GAGEファミリー、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、GD2/GD3/GM2、GnRH、GnTV、GP1、gp100/Pmel17、gp-100-in4、gp15、gp75/TRP1、hCG、ヘパラナーゼ、Her2/neu、HMTV、Hsp70、hTERT、IGFR1、IL-13R、iNOS、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、MAGE-ファミリー、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/MART-1、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、PDGF、uPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、PSA、PSM、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、TGF-アルファ、TGF-ベータ、サイモシン-ベータ-15、TNF-アルファ、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、VEGF、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼを挙げてよいが、これらに限定されない。
【0094】
好ましいPSA抗原は、155位におけるイソロイシンのロイシンへのアミノ酸変化を含む(米国特許第7,247,615号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0095】
本発明の1つ以上の好ましい実施形態では、異種TAAは、HER2及び/またはBrachyuryから選択される。
【0096】
それを含有するMVAの投与後に、本発明の少なくとも1つの目的または所望の結果(例えば免疫応答の刺激等)が達成されるならば、いずれのTAAを用いてもよい。本明細書で言及されているTAAを含むTAAの例示的な配列は、当該技術分野において知られており、本発明の組成物及び方法での使用に好適である。本発明の組成物及び方法で用いるTAAの配列は、当該技術分野において知られているかまたは本明細書に開示されている配列と同一であってよく、あるいは、当該技術分野において知られているかまたは本明細書に開示されているヌクレオチド配列またはアミノ酸配列のいずれかとの配列同一性が100%未満(少なくとも90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%またはそれを超える値等)であってもよい。すなわち、本発明の少なくとも1つの目的または所望の結果が達成されるならば、本発明の組成物または方法で用いるTAAの配列は、当該技術分野において知られており、及び/または本明細書に開示されている参照配列と、ヌクレオチドまたはアミノ酸が20個未満、または19個未満、18個未満、15個未満、14個未満、13個未満、12個未満、11個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満異なっていてよい。当業者は、本発明のMVAまたは方法で用いる際のTAAの適合性を確保するために、TAAを評価する技法及びアッセイに精通している。
【0097】
改変腫瘍関連抗原.
特定の実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原は、ポリペプチド抗原に由来するエピトープが、APC表面にMHCクラスI分子と会合した状態で提示されると、そのエピトープをその表面に提示する細胞に対して、CTL応答が誘導されるように改変されている。特定のそのような実施形態では、少なくとも1つの第1の外来THエピトープは、提示される際、APCの表面上のMHCクラスII分子と会合している。特定のそのような実施形態では、細胞関連抗原は、腫瘍関連抗原である。
【0098】
エピトープを提示できる例示的なAPCとしては、樹状細胞及びマクロファージが挙げられる。追加の例示的なAPCとしては、1)MHCクラスI分子に結合したCTLエピトープ、及び2)MHCクラスII分子に結合したTHエピトープを同時に提示できるいずれかの飲作用APCまたは食作用APCが挙げられる。
【0099】
特定の実施形態では、HERV-K env、HERV-K gag、HERV-K mel、CEA、MUC-1、PAP、PSA、PRAME、FOLR1、HER2、サバイビン、TRP1、TRP2またはBrachyury等(これらに限らない)のTAAのうちの1つ以上に対する改変は、本明細書に記載されているTAAのうちの1つ以上と主に反応するポリクローナル抗体が、対象への投与後に誘発されるように行われている。そのような抗体は、腫瘍細胞を攻撃及び排除することができると共に、転移性細胞が発現して転移に至るのを防ぐことができる。この抗腫瘍効果のエフェクター機構は、補体依存性及び抗体依存性の細胞傷害によって媒介されることになる。加えて、誘導された抗体は、成長因子依存性のオリゴ二量化と、受容体のインターナリゼーションの阻害を通じて、がん細胞の成長を阻害することもできる。特定の実施形態では、そのような改変TAAは、腫瘍細胞によって提示される既知のTAAエピトープ及び/または推定TAAエピトープに対するCTL応答を誘導できる。
【0100】
特定の実施形態では、改変TAAポリペプチド抗原は、細胞関連ポリペプチド抗原のCTLエピトープ及び変異型を含み、変異型は、CTLエピトープまたは外来THエピトープを少なくとも1つ含む。特定のそのような改変TAAは、1つの非限定的な例では、CTLエピトープを少なくとも1つ含む1つ以上のポリペプチド抗原HER2と、外来のTHエピトープのCTLエピトープを少なくとも1つ含む変異型を含むことができ、このTAAの作製方法は、米国特許第7,005,498号、ならびに米国特許出願公開第2004/0141958号及び同第2006/0008465号に記載されている。
【0101】
特定のそのような改変TAAは、1つの非限定的な例では、CTLエピトープを少なくとも1つ含む1つ以上のポリペプチド抗原MUC-1と、外来のエピトープのCTLエピトープを少なくとも1つ含む変異型を含むことができ、このTAAの作製方法は、米国特許出願公開第2014/0363495号に記載されている。
【0102】
追加のプロミスキャスなT細胞エピトープは、様々なHLA-DRによってコードされる大部分のHLA-DR分子と結合できるペプチドを含む。例えば、WO98/23635(Frazer IH et al.、The University of Queenslandに譲渡)、Southwood et al.(1998)J.Immunol.160:3363 3373、Sinigaglia et al.(1988)Nature 336:778 780、Rammensee et al.(1995)Immunogenetics 41:178 228、Chicz et al.(1993)J.Exp.Med.178:27 47、Hammer et al.(1993)Cell 74:197 203、及びFalk et al.(1994)Immunogenetics 39:230 242を参照のこと。この最後の参考文献では、HLA-DQリガンド及びHLA-DPリガンドについても論じられている。これらの参考文献に列挙されているすべてのエピトープは、本明細書に記載されているような天然エピトープの候補として関連がある。これらのエピトープ候補と共通のモチーフを共有するエピトープであるからである。
【0103】
特定の他の実施形態では、プロミスキャスなT細胞エピトープは、ハプロタイプの大部分と結合できる人工のT細胞エピトープである。特定のそのような実施形態では、人工のT細胞エピトープは、WO95/07707及び対応する論文Alexander et al.(1994)Immunity 1:751 761に記載されているようなpan DRエピトープペプチド(「PADRE」)である。
【0104】
4-1BBL(本明細書では、「41BBL」または「4-1BBリガンド」ともいう).
本開示によって例示されているように、組み換えMVA及び関連する方法の一部として、4-1BBLを含めると、がんである対象において、腫瘍内投与または静脈内投与の際に、抗腫瘍効果の増大及び増強が誘導される。したがって、様々な実施形態では、TAAをコードすることに加えて、4-1BBL抗原をコードする組み換えMVAが存在する。
【0105】
4-1BB/4-1BBLは、TNFR/TNFスーパーファミリーのメンバーである。4-1BBLは、活性化B細胞、単球及びDCで発現する共刺激リガンドである。4-1BBは、ナチュラルキラー(NK)細胞及びナチュラルキラーT(NKT)細胞、Treg、ならびにDC、単球及び好中球を含むいくつかの自然免疫細胞集団によって構成的に発現される。興味深いことに、4-1BBは、活性化T細胞に発現するが、休止T細胞には発現しない(Wang et al.(2009)Immunol.Rev.229:192-215)。4-1BBの結合により、インターフェロンガンマ(IFN-γ)及びインターロイキン2(IL-2)の増殖及び産生が誘導され、また、Bcl-xL等の抗アポトーシス分子のアップレギュレーションを介してT細胞の生存が増強される(Snell et al.(2011)Immunol.Rev.244:197-217)。重要なことには、4-1BBの刺激により、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を介した、NK細胞増殖、IFN-γ産生及び細胞溶解活性が増強される(Kohrt et al.(2011)Blood 117:2423-32)。
【0106】
1つ以上の好ましい実施形態では、4-1BBLは、本発明のMVAによってコードされる。1つ以上の他の好ましい実施形態では、4-1BBLは、ヒト4-1BBLである。さらに好ましい実施形態では、4-1BBLは、配列番号3との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である配列、すなわち、配列番号3に示されているアミノ酸配列と異なるアミノ酸が10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個未満である配列を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。さらに好ましい実施形態では、4-1BBLは、配列番号3を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む。追加の実施形態では、4-1BBLをコードする核酸は、配列番号4との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列、すなわち、その配列において、配列番号4に示されている核酸配列と異なる核酸が20個未満、10個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個未満である核酸配列を含む。より好ましい実施形態では、4-1BBLは、配列番号4を含む核酸を含む。
【0107】
CD40L.
本開示によって示されているように、組み合わせ及び関連方法の一部としてCD40Lを含めることによってさらに、腫瘍体積減少が増大し、無増悪生存期間が延長し、本発明により実現される生存率が上昇する。したがって、様々な実施形態では、組み合わせは、CD40Lをがん患者に投与することをさらに含む。好ましい実施形態では、CD40Lは、本明細書に記載されているような組み換えMVAの一部としてコードされる。
【0108】
CD40は、B細胞、マクロファージ及び樹状細胞を含む多くの種類の細胞上に構成的に発現するが、そのリガンドCD40Lは、主に活性化ヘルパーT細胞上に発現する。感染または免疫後早期の、樹状細胞とヘルパーT細胞との同族相互作用により、樹状細胞に、CTL応答を刺激するための「ライセンスを付与」される。樹状細胞へのライセンシングにより、共刺激分子のアップレギュレーション、生存率上昇及びより良好な交差提示能がもたらされる。この過程は主に、CD40/CD40L相互作用によって媒介される。しかしながら、CD40Lでは、多様な刺激を誘導する、膜結合型の構成から、可溶性(単量体または三量体)の構成まで、様々な構成が説明されており、APCの活性化、増殖及び分化を誘導または抑制する。
【0109】
1つ以上の好ましい実施形態では、CD40Lは、本発明のMVAによってコードされる。1つ以上の他の好ましい実施形態では、CD40Lは、ヒトCD40Lである。さらに好ましい実施形態では、CD40Lは、配列番号1との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である配列、すなわち、配列番号1に示されているアミノ酸配列と異なるアミノ酸が10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個未満である配列を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。さらに好ましい実施形態では、CD40Lは、配列番号1を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む。追加の実施形態では、CD40Lをコードする核酸は、配列番号2との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸配列、すなわち、その配列において、配列番号2に示されている核酸配列と異なる核酸が20個未満、10個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個未満である核酸配列を含む。より好ましい実施形態では、CD40Lは、配列番号2を含む核酸を含む。
【0110】
免疫チェックポイント分子アンタゴニスト.
本明細書に記載されているように、少なくとも一態様では、本発明は、免疫チェックポイントアンタゴニストの使用を含む。そのような免疫チェックポイントアンタゴニストは、免疫チェックポイント分子の機能を妨げるよう、及び/またはブロックするように機能する。いくつかの好ましい免疫チェックポイントアンタゴニストとしては、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム死リガンド1(PD-L1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、ならびにT細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(TIM-3)のアンタゴニストが挙げられる。
【0111】
加えて、例示的な免疫チェックポイントアンタゴニストとしては、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、Igドメイン及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、ならびにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0112】
そのような免疫チェックポイント分子アンタゴニストとしては、免疫チェックポイント分子に特異的に結合して、その免疫チェックポイント分子の生物学的な活性及び機能を阻害及び/またはブロックする抗体を挙げることができる。
【0113】
他の免疫チェックポイント分子アンタゴニストとしては、免疫チェックポイント分子の発現に干渉するアンチセンス核酸RNA、及び免疫チェックポイント分子の発現に干渉する低分子干渉RNAを挙げることができる。
【0114】
加えて、アンタゴニストは、免疫チェックポイントの機能を阻害またはブロックする低分子の形態であり得る。これらの低分子のいくつかの非限定的な例としては、NP12(Aurigene)、Tsinghua Univによる(D)PPA-1、高親和性PD-1(Stanford)、BMS-202及びBMS-8(Bristol Myers Squibb(BMS))、CA170/CA327(Curis/Aurigene)、ならびにCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3及びTIM-3の低分子阻害剤が挙げられる。
【0115】
加えて、アンタゴニストは、免疫チェックポイント分子の機能を阻害またはブロックするAnticalin(登録商標)の形態であり得る。例えば、Rothe et al.((2018)BioDrugs 32(3):233-243)を参照のこと。
【0116】
加えて、アンタゴニストは、Affimer(登録商標)の形態であり得ることが想定されている。Affimerは、免疫チェックポイント分子の機能を阻害またはブロックするFc融合タンパク質である。免疫チェックポイントアンタゴニストとして機能できる他の融合タンパク質は、免疫チェックポイント融合タンパク質(例えば、抗PD-1タンパク質AMP-224)、及びUS2017/0189476に記載されているような抗PD-L1タンパク質である。
【0117】
免疫チェックポイント分子アンタゴニスト候補は、当該技術分野において知られている様々な技法及び/または本願で開示されている様々な技法によって、インビトロまたはマウスモデルで、機能(免疫チェックポイント分子の機能に干渉する能力等)に関してスクリーニングできる。
【0118】
ICOSアゴニスト.
本発明は、ICOSアゴニストをさらに含む。ICOSアゴニストは、ICOSを活性化する。ICOSは、活性化T細胞上に発現する正の共刺激分子であり、そのリガンドに結合すると、活性化T細胞の増殖を促す(Dong(2001)Nature 409:97-101)。
【0119】
一実施形態では、アゴニストは、ICOSの天然のリガンドであるICOS-Lである。アゴニストは、結合特性及び活性化特性を保持する変異形態のICOS-Lであり得る。変異形態のICOS-Lは、インビトロで、ICOSを刺激する活性についてスクリーニングできる。
【0120】
免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストの抗体.
好ましい実施形態では、免疫チェックポイント分子アンタゴニスト及び/または免疫チェックポイント分子アゴニストはそれぞれ、抗体を含む。本明細書に記載されているように、様々な実施形態では、抗体は、合成のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることができ、当該技術分野において周知の技法によって作製できる。そのような抗体は、抗体の抗原結合部位を介して免疫チェックポイント分子に(非特異的結合とは対照的に)特異的に結合する。免疫原と免疫反応する抗体を作製する際には、免疫チェックポイントのペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質等をその免疫原として用いることができる。より具体的には、ポリペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質等は、抗体の形成を誘発する抗原決定基、すなわちエピトープを含有する。
【0121】
より好ましい実施形態では、本発明の抗体は、ヒトがん患者の治療用として、主権国家の政府から認可されている抗体、または認可過程にある抗体である。すでに認可済みであるか、または認可過程にあるこれらの抗体のいくつかの非限定的な例としては、CTLA-4(イピリムマブ(登録商標)及びトレメリムマブ)、PD-1(ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ、アンプリミューン-224(AMP-224))、アンプリミューン-514(AMP-514)、ニボルマブ、MK-3475(Merck)、BI754091(Boehringer Ingelheim))、PD-L1(アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MPDL3280A(Roche)、MED14736(AZN)、MSB0010718C(Merck))、LAG-3(IMP321、BMS-986016、BI754111(Boehringer Ingelheim)、LAG525(Novartis)、MK-4289(Merck)、TSR-033(Tesaro))に対する抗体が挙げられる。
【0122】
例示的な一態様では、免疫チェックポイント分子CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOS、ならびにCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアミノ酸配列ベースのペプチドを用いて、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3またはICOSに特異的に結合する抗体を調製できる。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、その断片(F(ab’)2断片及びFab断片、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体断片(VHHまたはナノボディ)、二価抗体断片(ダイアボディ)等)、ならびに組み換え及び合成によって作製したいずれかの結合パートナーが含まれるように意図されている。
【0123】
腫瘍関連抗原(TAA)に特異的な抗体.
本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、TAAに特異的な抗体と組み合わせるか、またはその抗体と組み合わせて投与が行われる。より具体的な実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する抗原に特異的な抗体と組み合わせるか、またはその抗体と組み合わせて投与が行われる。当該技術分野では、多くのがんにおいて、1つ以上の抗原が腫瘍細胞膜に発現または過剰発現すると理解されている。例えば、Durig et al.(2002)Leukemia 16:30-5、Mocellin et al.(2013)Biochim.Biophys.Acta 1836:187-96、Arteaga(2011)Nat.Rev.Clin.Oncol.,doi:10.1038/nrclinonc.2011.177;Finn(2017)Cancer Immunol.Res.5:347-54、Ginaldi et al.(1998)J.Clin.Pathol.51:364-9を参照のこと。抗原が腫瘍細胞上に発現または過剰発現しているか判断するアッセイは、特定の抗原に対する抗体の作製方法と共に、当該技術分野において容易に理解される(上記文献を参照のこと)。
【0124】
より具体的な実施形態では、本発明の医薬組み合わせ及び関連する方法には、抗体が含まれ、抗体は、a)腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的であり、b)Fcドメインを含む。少なくとも1つの態様では、抗体の特徴(例えばa)及びb))によって、その抗体が、NK細胞、マクロファージ、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マスト細胞及び/または樹状細胞等のエフェクター細胞に結合して、それと相互作用できるようになり、また、抗体が、腫瘍細胞上に発現している腫瘍抗原に結合できるようになる。好ましい実施形態では、抗体は、Fcドメインを含む。追加の好ましい実施形態では、抗体は、NK細胞に結合して、それと相互作用することができる。
【0125】
腫瘍細胞上に発現する抗原に対するいくつかの例示的な抗体であって、本開示によって想定されている抗体としては、抗CD20(例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、トシツモマブ)、抗CD52(例えばアレムツズマブ Campath(登録商標))、抗EGFR(例えば、セツキシマブ Erbitux(登録商標)、パニツムマブ)、抗CD2(例えばシプリズマブ)、抗CD37(例えばBI836826)、抗CD123(例えばJNJ-56022473)、抗CD30(例えばXmAb2513)、抗CD38(例えばダラツムマブ Darzalex(登録商標))、抗PDL1(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ)、抗GD2(例えば、3F8、ch14.18、KW-2871、ジヌツキシマブ)、抗CEA、抗MUC1、抗FLT3、抗CD19、抗CD40、抗SLAMF7、抗CCR4、抗B7-H3、抗ICAM1、抗CSF1R、抗CA125(例えば、オレゴボマブ)、抗FRα(例えば、MOv18-IgG1、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、MORAb-202)、抗メソセリン(例えば、MORAb-009)、抗TRP2、ならびに抗HER2(例えば、トラスツズマブ、ハジュマ、ABP980及び/またはペルツズマブ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
より好ましい実施形態では、本発明の一部として含まれる抗体には、患者に投与すると、腫瘍細胞上の対応する抗原に結合して、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導する抗体が含まれる。さらに好ましい実施形態では、抗体は、がんの治療用として認可済みまたは認可前の状態である抗体を含む。
【0127】
さらに好ましい実施形態では、抗体は、抗HER2抗体、抗EGFR抗体及び/または抗CD20抗体である。
【0128】
最も好ましい実施形態では、抗HER2抗体は、ペルツズマブ、トラスツズマブ、ハジュマ、ABP980及びアド-トラスツズマブエムタンシンから選択される。
【0129】
最も好ましい実施形態では、抗EGFR抗体はセツキシマブであり、抗CD20はリツキシマブである。
【0130】
本明細書に記載されているように、様々な実施形態では、抗体は、合成のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることができ、当該技術分野において周知の技法によって作製できる。そのような抗体は、抗体の抗原結合部位を介してTAAに(非特異的結合とは対照的に)特異的に結合する。免疫原と免疫反応する抗体を作製する際には、TAAのペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質等をその免疫原として用いることができる。より具体的には、ポリペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質等は、抗体の形成を誘発する抗原決定基、すなわちエピトープを含有する。
【0131】
抗体.
本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載されている組み換えMVA及び方法は、1)免疫チェックポイントのアンタゴニストもしくはアゴニストである抗体、または2)TAA特異的抗体のいずれかと、組み合わされる、及び/または組み合わせて投与が行われる。
【0132】
抗体が、合成のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり得ること、及び当該技術分野において周知の技法によって作製され得ることが想定されている。そのような抗体は、抗体の抗原結合部位を介して、免疫チェックポイント分子またはTAAに(非特異的結合とは対照的に)特異的に結合する。免疫原と免疫反応する抗体を作製する際には、免疫チェックポイント及び/またはTAAのペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質等をその免疫原として用いることができる。より具体的には、ポリペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質等は、抗体の形成を誘発する抗原決定基、すなわちエピトープを含有する。
【0133】
これらの抗原決定基、すなわちエピトープは、線状エピトープまたは立体構造(不連続)エピトープのいずれであることもできる。線状エピトープは、ポリペプチドのうちの単一のアミノ酸セクションで構成され、立体構造エピトープ、すなわち不連続エピトープは、ポリペプチド鎖の異なる領域からの複数のアミノ酸セクションであって、タンパク質フォールディングにより、近接するようになるアミノ酸セクションで構成される(Janeway,Jr.and Travers,Immuno Biology 3:9(Garland Publishing Inc.,2nd ed.1996))。折り畳まれたタンパク質は、複雑な表面を有するので、利用可能なエピトープの数は非常に多いが、タンパク質の立体構造及び立体障害性により、それらのエピトープに実際に結合する抗体の数は、利用可能なエピトープの数よりも少ない(Janeway,Jr. and Travers,Immuno Biology 2:14(Garland Publishing Inc.,2nd ed.1996))。エピトープは、当該技術分野において知られている方法のいずれかによって特定できる。
【0134】
TAA、またはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3もしくはICOS等の免疫チェックポイント分子に特異的に結合し、その機能をブロックする抗体(「アンタゴニスト抗体」)またはその機能を増強/活性化する抗体(「アゴニスト抗体」)が、scFV断片を含め、本発明に含まれる。そのような抗体は、従来の手段によって作製できる。
【0135】
一実施形態では、本発明には、TAAまたは免疫チェックポイント分子に対するモノクローナル抗体であって、そのTAAもしくは免疫チェックポイント分子の機能を、ブロックする抗体(「アンタゴニスト抗体」)かまたは増強/活性化する抗体(「アゴニスト抗体」)が含まれる。
【0136】
抗体は、その標的に、高いアビディティかつ高い特異性で結合できる。それらは比較的大きい分子(約150kDa)であり、抗体結合部位が、2つのタンパク質(例えば、PD-1とその標的リガンド)間の相互作用部位の近傍となる場合、それらのタンパク質間の相互作用を立体的に阻害できる。本発明にはさらに、免疫チェックポイント分子リガンド結合部位に近接するエピトープに結合する抗体が含まれる。
【0137】
様々な実施形態では、本発明には、分子間相互作用(例えばタンパク質間相互作用)に干渉する抗体、及び分子内相互作用(例えば、分子内の立体構造の変化)を妨げる抗体が含まれる。抗体は、免疫チェックポイント分子の生物学的な活性をブロックするか、または増強/活性化する能力についてスクリーニングできる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれも、従来の技法によって調製できる。
【0138】
例示的な一態様では、TAAまたは免疫チェックポイント分子CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOS、ならびにTAAまたはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアミノ酸配列ベースのペプチドを用いて、TAA、またはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3もしくはICOSに特異的に結合する抗体を調製できる。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、その断片(F(ab’)2断片及びFab断片、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体断片(VHHまたはナノボディ)、二価抗体断片(ダイアボディ)等)、ならびに組み換え及び合成によって作製したいずれかの結合パートナーが含まれるように意図されている。別の例示的な態様では、抗体は、免疫チェックポイント分子に、Kd約107M-1以上で結合する場合には、免疫チェックポイント分子に特異的に結合するものと定義する。結合パートナーまたは抗体の親和性は、従来の技法、例えばScatchardらにより記載されている技法((1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660)を用いて、容易に決定することができる。
【0139】
ポリクローナル抗体は、様々な供給源、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウスまたはラットから、当該技術分野において周知である手順を用いて、容易に作製できる。概して、精製したTTAもしくはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOS、またはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアミノ酸配列ベースのペプチドであって、適切にコンジュゲートされているペプチドを宿主動物に、典型的には非経口注射によって投与する。ブースター免疫後、少量の血清試料を採取し、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのポリペプチドに対する反応性について試験する。そのような測定に有用である各種アッセイの例としては、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載されているアッセイ、ならびに、向流免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降法、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ドットプロットアッセイ及びサンドイッチアッセイのような手順が挙げられる。米国特許第4,376,110号及び同第4,486,530号を参照のこと。
【0140】
モノクローナル抗体は、周知の手順を用いて容易に調製できる。例えば、米国特許再発行特許第32,011号、米国特許第4,902,614号、同第4,543,439号、同第4,411,993号、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett,McKeam,and Bechtol(eds.)(1980)に記載されている手順を参照のこと。
【0141】
例えば、マウス等の宿主動物に、単離及び精製した免疫チェックポイント分子を少なくとも1回、好ましくは、約3週間の間隔で少なくとも2回、腹腔内注射できる。その後、従来のドットプロット法または抗体捕捉(ABC)によって、マウス血清をアッセイして、融合するにはどのマウスが最良かを判断する。約2~3週間後、マウスに、免疫チェックポイント分子の静脈内ブーストを行う。その後、マウスを屠殺し、確立されたプロトコールに従って、脾臓細胞を市販のミエローマ細胞(Ag8.653(ATCC)等)と融合する。簡潔に述べると、ミエローマ細胞を培地中で数回洗浄し、1つのミエローマ細胞に対して約3個の脾臓細胞という比率で、マウス脾臓細胞に融合する。融合剤は、当該技術分野において用いられているいずれかの好適な融合剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)であり得る。融合細胞を選択的に増殖させる培地を含有するプレートに、融合細胞を播種する。その後、融合細胞を約8日間成長させることができる。得られたハイブリドーマの上清を回収し、最初にヤギ抗マウスIgでコーティングしたプレートに加える。洗浄後、標識免疫チェックポイント分子ポリペプチド等の標識を各ウェルに加えてから、インキュベートする。その後、陽性のウェルを検出することができる。陽性のクローンをバルク培養で増殖させることができ、その後、上清をプロテインAカラム(Pharmacia)で精製する。
【0142】
本発明のモノクローナル抗体は、Alting-Mees et al.((1990)Strategies in Mol.Biol.3:1-9,“Monoclonal Antibody Expression Libraries:A Rapid Alternative to Hybridomas”)に記載されているような代替的な技法を用いて作製でき、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。同様に、結合パートナーは、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域を導入するための組み換えDNA技法を用いて構築できる。そのような技法は、Larrick et al.((1989)Biotechnology 7:394)に記載されている。
【0143】
従来の技法によって作製できる、そのような抗体の抗原結合断片も、本発明に含まれる。そのような断片の例としては、Fab断片及びF(ab’)2断片が挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子操作技法によって作製される抗体断片及び誘導体も提供する。
【0144】
本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、例えば、ヒト化型のマウスモノクローナル抗体が含まれる。そのようなヒト化抗体は、既知の技法によって調製でき、その抗体をヒトに投与した際に、免疫原性が低下するという利点をもたらすことができる。一実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体の可変領域(またはその抗原結合部位のみ)と、ヒト抗体に由来する定常領域を含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位、及びヒト抗体に由来する可変領域断片(抗原結合部位が欠如している)を含むことができる。キメラ抗体、及びさらに操作されたモノクローナル抗体の作製手順としては、Riechmann et al.((1988)Nature 332:323)、Liu et al.((1987)Proc.Nat’l.Acad.Sci.84:3439)、Larrick et al.((1989)Bio/Technology 7:934)、ならびにWinter及びHarris ((1993)TIPS 14:139)に記載されている手順が挙げられる。抗体を遺伝子導入で作製する手順は、GB2,272,440、ならびに米国特許第5,569,825号及び同第5,545,806号に見ることができ、これらの特許はいずれも、参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
遺伝子操作法によって作製した抗体(ヒト部分及び非ヒト部分の両方を含むキメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体等)であって、標準的な組み換えDNA技法を用いて作製できる抗体を使用できる。そのようなキメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野において知られている標準的なDNA技法を用いる遺伝子操作によって、例えば、Robinsonらの国際公開第WO87/02671号、Akiraらの欧州特許出願公開第0184187号、Taniguchi,M.の欧州特許出願公開第0171496号、Morrisonらの欧州特許出願公開第0173494号、NeubergerらのPCT国際公開第WO86/01533号、Cabillyらの米国特許第4,816,567号、Cabillyらの欧州特許出願公開第0125023号、Better et al.,(1988)Science 240:1041-1043、Liu et al.(1987)Proc.Nat’l.Acad.Sci.84:3439-3443、Liu et al.(1987)J.Immunol.139:3521-3526、Sun et al.(1987)Proc.Nat’l.Acad.Sci.84:214-218、Nishimura et al.(1987)Cancer Res.47:999-1005、Wood et al.(1985)Nature 314:446-449、Shaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559)、Morrison(1985)Science 229:1202-1207、Oi et al.(1986)BioTechniques 4:214、Winterの米国特許第5,225,539号、Jones et al.(1986)Nature 321:552 525、Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534、及びBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053-4060に記載されている方法を用いて作製できる。
【0146】
合成及び半合成の抗体に関しては、そのような用語は、抗体断片、アイソタイプスイッチ抗体、ヒト化抗体(例えば、マウス-ヒト抗体、ヒト-マウス抗体)、ハイブリッド、複数の特異性を有する抗体、及び完全合成の抗体様分子(ただし、これらに限らない)を網羅するように意図されている。
【0147】
治療用途では、患者の、抗体に対する免疫応答を最小限にするために、ヒトの定常領域及び可変領域を有する「ヒト」モノクローナル抗体が好ましい場合が多い。そのような抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニック動物を免疫することよって作製できる。Jakobovits et al.Ann NY Acad Sci 764:525-535(1995)を参照のこと。
【0148】
TAAまたは免疫チェックポイント分子に対するヒトモノクローナル抗体は、対象のリンパ球に由来するmRNAから調製した、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のcDNAを用いて、FabファージディスプレイライブラリーまたはscFvファージディスプレイライブラリー等のコンビナトリアルな免疫グロブリンライブラリーを構築することによって調製することもできる。例えば、McCaffertyらのPCT公開第WO92/01047号、Marks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581-597、及びGriffths et al.(1993)EMBO J.12:725-734を参照のこと。加えて、抗体可変領域のコンビナトリアルなライブラリーは、既知のヒト抗体を変異させることによって作製できる。例えば、ランダムに改変された変異誘発済みオリゴヌクレオチドを例えば用いることによって、免疫チェックポイント分子と結合することが知られているヒト抗体の可変領域を変異させて、変異可変領域のライブラリーを作製することができ、次いで、それを、免疫チェックポイント分子に結合するようにスクリーニングできる。免疫グロブリンの重鎖及び/または軽鎖のCDR領域内でランダム変異誘発を誘導する方法、ランダム化した重鎖及び軽鎖を掛け合わせて、対を形成する方法、ならびにスクリーニング方法は、例えば、BarbasらのPCT公開第WO96/07754号、Barbas et al.(1992)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4457-4461に見ることができる。
【0149】
免疫グロブリンライブラリーは、ディスプレイパッケージの集団、好ましくは、繊維状ファージに由来するディスプレイパッケージの集団によって発現させて、抗体ディスプレイライブラリーを形成することができる。抗体ディスプレイライブラリーを作製する際に用いるのに特に適している方法及び試薬の例は、例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、KangらのPCT公開第WO92/18619号、DowerらのPCT公開第WO91/17271号、WinterらのPCT公開第WO92/20791号、MarklandらのPCT公開第WO92/15679号、BreitlingらのPCT公開第WO93/01288号、McCaffertyらのPCT公開第WO92/01047号、GarrardらのPCT公開第WO92/09690号、LadnerらのPCT公開第WO90/02809号、Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370 1372、Hay et al.(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81-85、Huse et al.(1989)Science 246:1275-1281、Griffths et al.(1993)supra、Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889-896、Clackson et al.(1991)Nature 352:624-628、Gram et al.(1992)Proc.Nat’l.Acad.Sci.89:3576-3580、Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373-1377、Hoogenboom et al.(1991)Nucl.Acid Res.19:4133-4137及びBarbas et al.(1991)Proc.Nat’l.Acad.Sci.88:7978-7982に見ることができる。ディスプレイパッケージ(例えば繊維状ファージ)の表面に提示させたら、その抗体ライブラリーをスクリーニングして、TAAまたは免疫チェックポイント分子と結合する抗体を発現するパッケージを特定及び単離する。
【0150】
組み換えMVA.
本発明のより好ましい実施形態では、本発明で開示されている1つ以上のタンパク質及びヌクレオチドは、組み換えMVAに含まれている。本開示によって説明及び例示されているように、様々な態様において、本開示の組み換えMVAの静脈内投与により、がん患者における免疫応答の増強が誘導される。したがって、1つ以上の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているTAAのうちの1つ以上をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAを含む。
【0151】
本発明を実施する際に有用であると共に、ブダペスト条約の規定下で寄託されているMVAウイルス株の例は、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC)、Vaccine Research and Production Laboratory,Public Health Laboratory Service,Centre for Applied Microbiology and Research(Porton Down,Salisbury,Wiltshire SP4 0JG,United Kingdom)に、寄託番号ECACC94012707で、1994年1月27日に寄託されたMVA572株、及びECACC00120707で、2000年12月7日に寄託されたMVA575株であり、2000年8月30日に、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に、V00083008という番号で寄託されたMVA-BN株及びその誘導体が、追加の例示的な株である。
【0152】
MVA-BNの「誘導体」とは、本明細書に記載されているようなMVA-BNと本質的に同じ複製特性を示すが、それらのゲノムの1つ以上の部分に差異を示すウイルスを指す。MVA-BN及びその誘導体は、複製能力がなく、複製能力がないとは、インビボ及びインビトロで、生殖複製できないことを意味する。より具体的には、インビトロのMVA-BNまたはその誘導体は、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)で生殖複製できるが、ヒトケラチノサイト細胞株HaCat(Boukamp et al.(1988)J.Cell Biol.106:761-771)、ヒト骨肉腫細胞株143B(ECACC受託番号91112502)、ヒト胎児腎細胞株293(ECACC受託番号85120602)及びヒト子宮頸部腺癌細胞株HeLa(ATCC受託番号CCL-2)では増殖的に複製できないものとして説明されている。加えて、MVA-BNまたはその誘導体は、Hela細胞及びHaCaT細胞株において、ウイルス増幅率が、MVA-575の少なくとも2分の1、より好ましくは3分の1である。MVA-BN及びその誘導体のこれらの特性に関する試験及びアッセイは、WO02/42480(米国特許出願公開第2003/0206926号)及びWO03/048184(米国特許出願公開第2006/0159699号)に記載されている。
【0153】
前の段落で説明したように、インビトロでのヒト細胞株における「生殖複製不能である」または「生殖複製能力がない」という用語は、例えば、WO02/42480に記載されており、これはまた、上記のような望ましい特性を有するMVAを得る方法も教示する。この用語は、WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイを使用して、感染後4日でインビトロでウイルス増幅率が1未満であるウイルスに当てはまる。
【0154】
「生殖複製の失敗」という用語は、感染後4日で1未満という、前段落に記載されているような、インビトロでのヒト細胞株におけるウイルス増幅率を有するウイルスを指す。WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイは、ウイルス増幅率の決定に適用可能である。
【0155】
前の段落で説明したように、インビトロでのヒト細胞株におけるウイルスの増幅または複製は、通常、「増幅率」と呼ばれる、感染細胞から産生されたウイルス(出力)と、最初の段階で細胞に感染するために最初に使用された量(投入量)との比率として表される。増幅率「1」は、感染細胞から産生されるウイルスの量が、細胞に感染するために最初に使用された量と同じである増幅状態を定義し、すなわち、感染細胞がウイルスの感染及び増殖を許容することを意味する。これに対して、増幅率が1未満である、すなわち、投入量と比べた出力の減少は、増殖的複製の欠如、したがってウイルスの減弱を示す。
【0156】
本明細書では、「アジュバント作用」とは、組み換えMVAの特定のコードされたタンパク質または成分によって、その組み換えMVAの他のコードされているタンパク質(複数可)または成分(複数可)により生じる免疫応答が増大することが意図されている。
【0157】
発現カセット/制御配列.
様々な態様では、本明細書に記載されている1つ以上の核酸は、1つ以上の発現カセット内に組み込まれており、このカセットでは、その1つ以上の核酸が、発現制御配列に機能的に連結されている。「機能的に連結された」とは、記載されている構成要素が、意図した形式で機能可能になる関係にあること、例えば、プロモーターに、核酸を転写させて発現させるような関係にあることを意味する。コード配列に機能的に連結された発現制御配列は、そのコード配列の発現が、その発現制御配列と適合する条件下で行われるように連結されている。発現制御配列としては、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの初めにある開始コドン、イントロンのスプライシングシグナル、及びフレーム内終止コドンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、レトロウイルスLTR、アデノウイルス主要後期プロモーター、ヒトCMV前初期Iプロモーター、ならびに各種ポックスウイルスプロモーター(30Kプロモーター、I3プロモーター、PrSプロモーター、PrS5Eプロモーター、Pr7.5K、PrHybプロモーター、Pr13.5ロングプロモーター、40Kプロモーター、MVA-40Kプロモーター、FPV 40Kプロモーター、30kプロモーター、PrSynIImプロモーター、PrLE1プロモーター及びPR1238プロモーターといったワクシニアウイルスまたはMVA由来のプロモーター及びFPV由来のプロモーターが挙げられるが、これらに限らない)が挙げられるが、これらに限定されない。追加のプロモーターは、WO2010/060632、WO2010/102822、WO2013/189611、WO2014/063832及びWO2017/021776にさらに記載されており、これらの特許は、参照により、本明細書に全体が組み込まれる。
【0158】
追加の発現制御配列としては、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、ならびに所望の宿主系において、所望の組み換えタンパク質(例えば、HER2、Brachyury及び/またはCD40L)をコードする核酸配列の適切な転写及びその後の翻訳に必要ないずれかの他の配列が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポックスウイルスベクターは、所望の宿主系において、核酸配列を含有する発現ベクターの移入及びその後の複製に必要な追加のエレメントも含有してよい。当業者はさらに、そのようなベクターが、従来の方法(Ausubel et al.(1987)in“Current Protocols in Molecular Biology,”John Wiley and Sons,New York,N.Y.)を用いて容易に構築されると共に、市販されていることを理解するであろう。
【0159】
本発明の組み合わせの投与を行うための方法及び投与レジメン.
1つ以上の態様では、本発明の組み合わせは、同種及び/または異種でのプライム-ブーストレジメンの一部として投与できる。
図7に示されているデータによって部分的に示されているように、同種でのプライムブーストレジメンは、対象の特異的なCD8 T細胞応答及びCD4 T細胞応答を増大させる。したがって、1つ以上の実施形態では、本開示の組み合わせをがん患者に投与することを含む、がん患者での腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための組み合わせ及び/または方法が存在し、その組み合わせは、同種または異種でのプライム-ブーストレジメンの一部として投与される。
【0160】
導入遺伝子を含む組み換えMVAウイルスの作製
本発明で提供する組み換えMVAウイルスは、当該技術分野において知られている常法によって作製できる。組み換えポックスウイルスを得るか、または外来のコード配列をポックスウイルスゲノムに挿入するための方法は、当業者に周知である。例えば、DNAのクローニング、DNAの単離、RNAの単離、ウエスタンブロット解析、RT-PCR及びPCR増幅技法のような標準的な分子生物学的技法の方法は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd ed.,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))に記載されており、ウイルスの取扱い及び操作の技法は、Virology Methods Manual(Mahy et al.(eds.),Academic Press(1996))に記載されている。同様に、MVAの取扱い、操作及び遺伝子組み換えの技法及びノウハウは、Molecular Virology:A Practical Approach(Davison & Elliott(eds.),The Practical Approach Series,IRL Press at Oxford University Press,Oxford,UK(1993)(例えば、“Chapter 9:Expression of genes by Vaccinia virus vectors”を参照のこと)及びCurrent Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Son,Inc.(1998)(例えば、Chapter 16,Section IV:“Expression of proteins in mammalian cells using vaccinia viral vector”を参照のこと))に記載されている。
【0161】
本発明で開示されている様々な組み換えMVAウイルスの作製には、様々な方法を適用可能である場合がある。ウイルスに挿入されるDNA配列は、ポックスウイルスのDNAのセクションに相同なDNAが挿入されているE.coliプラスミドコンストラクトに配置されてもよい。これとは別に、挿入するDNA配列は、プロモーターにライゲーションできる。このプロモーター-遺伝子連結体は、そのプロモーター-遺伝子連結体が両端で、非必須の座位を含有するポックスウイルスDNA領域に隣接しているDNA配列と相同なDNAと隣接するよう、プラスミドコンストラクト内に配置することができる。得られたプラスミドコンストラクトは、E.coli菌内での増殖により増幅させ、単離することができる。挿入されるDNA遺伝子配列を含有する単離されたプラスミドは、例えばニワトリ胚線維芽細胞(CEF)等の細胞培養物に、培養物がMVAウイルスに感染すると同時にトランスフェクトすることができる。プラスミド内の相同MVAウイルスDNAとウイルスゲノムとの間の組換えは、それぞれ、外来DNA配列の存在によって改変されたポックスウイルスを生成し得る。
【0162】
好ましい実施形態によれば、細胞培養に好適な細胞、例えばCEF細胞に、MVAウイルスを感染させることができる。続いて、感染した細胞に、本開示で提供される核酸のうちの1つ以上のような、外来または異種の遺伝子(複数可)を含む第1のプラスミドベクターを、好ましくはポックスウイルス発現制御エレメントの転写制御下で、トランスフェクトすることができる。上で説明したように、プラスミドベクターは、MVAウイルスゲノムの所定部分への外来配列の挿入を誘導できる配列も含む。任意に、プラスミドベクターは、ポックスウイルスプロモーターに機能的に連結されたマーカー遺伝子及び/または選択遺伝子を含有するカセットも含む。好適なマーカー遺伝子または選択遺伝子は、例えば、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ネオマイシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼまたは他のマーカーをコードする遺伝子である。選択カセットまたはマーカーカセットの使用により、作製した組み換えポックスウイルスの特定及び単離が簡略になる。ただし、組み換えポックスウイルスは、PCR技術によっても同定され得る。その後、上記のようにして得た組み換えポックスウイルスを、さらなる細胞に感染させて、その細胞に、第2の外来または異種の遺伝子(複数可)を含む第2のベクターをトランスフェクトすることができる。念のため、この遺伝子は、ポックスウイルスゲノムの異なる挿入部位に導入するべきであり、第2のベクターにおいても、ポックスウイルスと相同な配列であって、ポックスウイルスのゲノムへの第2の外来遺伝子(複数可)の組み込みを誘導する配列が異なる。相同組み換えが行われた後、外来遺伝子または異種遺伝子を2つ以上含む組み換えウイルスを単離できる。追加の外来遺伝子を組み換えウイルスに導入するには、前の感染工程で単離した組み換えウイルスを用いることによって、かつトランスフェクション用のさらなる外来遺伝子を1つまたは複数含むさらなるベクターを用いることによって、感染及びトランスフェクションの工程を繰り返すことができる。
【0163】
あるいは、上記のような感染及びトランスフェクションの工程は置き換えることが可能であり、すなわち、好適な細胞に、外来遺伝子を含むプラスミドベクターによって最初にトランスフェクションし、その次に、ポックスウイルスを感染させることができる。さらなる代替策として、各外来遺伝子を異なるウイルスに導入し、得られたすべての組み換えウイルスを細胞に共感染させ、すべての外来遺伝子を含む組み換え体についてスクリーニングすることも可能である。第3の代替策は、DNAゲノムと外来配列をインビトロでライゲーションし、ヘルパーウイルスを用いて、組み換えワクシニアウイルスDNAゲノムを再構築することである。第4の代替策は、E.coliまたは別の細菌種において、細菌人工染色体(BAC)としてクローニングしたMVAウイルスゲノムと、そのMVAウイルスゲノム内の所望の組み込み部位に隣接する配列と相同なDNA配列に挟まれた線状外来配列との間で相同組み換えを起こすことである。
【0164】
本開示の核酸の1つ以上は、MVAウイルスまたはMVAウイルスベクターの好適ないずれかの部分に挿入し得る。MVAウイルスの好適な部分は、MVAゲノムの非必須部分である。MVAゲノムの非必須部分は、MVAゲノムの遺伝子間領域または既知の欠失部位1~6であってよい。この代わりに、またはこれに加えて、組み換えMVAの非必須部分は、MVAゲノムのコード領域のうち、ウイルスの成長には必須ではないコード領域であり得る。ただし、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF細胞)等の少なくとも1つの細胞培養系において増幅及び増殖できる組み換え体を得ることが可能な限りは、ウイルスゲノムのいずれの位置にも、本発明の核酸(例えば、HER2、Brachyury、HERV-K-env、HERV-K-gag、PRAME、FOLR1、CD40L及び/または4-1BBL)、ならびに本明細書に記載されているようないずれかの付随のプロモーターを挿入し得ることは、本発明の範囲内であるため、挿入部位は、MVAゲノム内の上記の好ましい挿入部位に限定されない。
【0165】
好ましくは、本発明の核酸は、MVAウイルスの遺伝子間領域(IGR)の1つ以上に挿入してよい。「遺伝子間領域」という用語は好ましくは、MVAウイルスゲノムの隣接する2つのオープンリーディングフレーム(ORF)の間、好ましくは、MVAウイルスゲノムの2つの必須ORFの間に位置するウイルスゲノム部分を指す。MVAにおいては、特定の実施形態では、IGRは、IGR07/08、IGR44/45、IGR64/65、IGR88/89、IGR136/137及びIGR148/149から選択される。
【0166】
これに加えてまたはこの代わりに、MVAウイルスでは、ヌクレオチド配列は、MVAゲノムの既知の欠失部位、すなわち、欠失部位I、II、III、IV、VまたはVIのうちの1つ以上に挿入し得る。「既知の欠失部位」という用語は、CEF細胞での連続継代を通じて欠失したMVAゲノム部分を指し、この部分は、516代目の継代時に、そのMVAの由来元である親ウイルス、特には、例えばMeisinger-Henschel et al.((2007)J.Gen.Virol.88:3249~3259)に記載されているような親漿尿膜ワクシニアウイルスアンカラ(CVA)のゲノムと比べて特徴付けられたものである。
【0167】
ワクチン
特定の実施形態では、本開示の組み換えMVAは、ワクチンの一部として配合できる。ワクチンの調製の際には、MVAウイルスを生理学的に許容可能な形態に変換できる。
【0168】
例示的な調製法は、以下のとおりである。精製ウイルスを5×108 TCID50/mlの力価で、10mMのトリス、140mMのNaCl(pH7.4)に配合した状態で、-80℃で保存する。ワクチン注射剤の調製の際には、例えば、1×108~1×109個のウイルス粒子をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、2%のペプトン及び1%のヒトアルブミンの存在下で、アンプル、好ましくはガラスアンプル内で凍結乾燥できる。あるいは、ワクチン注射剤は、ウイルスを製剤中で段階凍結乾燥することによって調製できる。特定の実施形態では、製剤は、マンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトース、ポリビニルピロリドン等の追加の添加剤、またはインビボ投与に好適な抗酸化剤、不活性ガス、安定剤、もしくは組み換えタンパク質(例えばヒト血清アルブミン)を含む(ただし、これらに限らない)他の添加剤を含有する。その後、アンプルを密閉し、好適な温度、例えば4℃~室温で、数カ月保存することができる。しかしながら、必要がない限りは、そのアンプルは、好ましくは-20℃未満、最も好ましくは約-80℃の温度で保存する。
【0169】
ワクチン接種または療法を伴う様々な実施形態では、凍結乾燥体は、0.1~0.5mlの水溶液、好ましくは、生理食塩水、または10mMのトリス、140mMのNaCl(pH7.7)のようなトリス緩衝液に溶解する。本開示の組み換えMVA、ワクチンまたは医薬組成物は、溶液において、104~1010 TCID50/ml、105~5×109 TCID50/ml、106~5×109 TCID50/mlまたは107~5×109 TCID50/mlの濃度範囲で配合できることが想定されている。ヒトに対して好ましい用量には、106~1010 TCID50が含まれ、106 TCID50、107 TCID50、108 TCID50、5×108 TCID50、109 TCID50、5×109 TCID50または1010 TCID50という用量が含まれる。投与用量及び投与数の最適化は、当業者の技術及び知識の範囲内である。
【0170】
1つ以上の好ましい実施形態では、本明細書に定められているように、本発明の組み換えMVAは、がん患者に静脈内投与する。他の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、がん患者に腫瘍内投与する。他の実施形態では、本発明の組み換えMVAは、がん患者に静脈内投与及び腫瘍内投与の両方を同時または異なる時間に行う。
【0171】
いくつかの実施形態では、MVAは、TAAと共刺激分子の両方を含有するよう設計されており、静脈内または腫瘍内のいずれかへの投与、または両方の投与経路に好適であることが意図されている。そのようなMVAは、例えば、HERV-K-env、HERV-K-gag、またはHERV-K-mel等のヒト内在性レトロウイルスKスーパーファミリー(HERV-K)タンパク質を含む1つ以上のTAA、または実施例38に記載されているようなその合成バリアントを発現することができる。
【0172】
追加の実施形態では、組み換えMVAは患者に投与され、また、免疫チェックポインアンタゴニストもしくは免疫チェックポイントアゴニスト、または好ましくは抗体は、全身投与または局所投与、すなわち、腹腔内経路、非経口経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、皮内経路または熟練施術者に知られているいずれかの他の投与経路によって投与できる。
【0173】
キット、組成物、及び使用方法.
様々な実施形態では、本発明には、a)本明細書に記載されている核酸を含む組み換えMVA、及び/またはb)本明細書に記載されている1つ以上の抗体を含む、キット、医薬組み合わせ、医薬組成物及び/または免疫原性の組み合わせが含まれる。
【0174】
キット及び/または組成物は、本開示の組み換えポックスウイルスの入った1つまたは複数の容器またはバイアル、本開示の抗体の入った1つ以上の容器またはバイアルを、その組み換えMVA及び抗体の投与に関する説明と共に含むことができることが想定されている。より具体的な実施形態では、キットは、最初のプライミング投与で組み換えMVA及び抗体を投与し、その後、組み換えMVA及び抗体の後続ブースティング投与を1回以上行うことについての説明を含むことができることが想定されている。
【0175】
本発明で提供するキット及び/または組成物は概して、薬学的に許容される、及び/または認可されている、担体、添加剤、抗生物質、保存剤、希釈剤及び/または安定剤を1つ以上含んでよい。そのような補助物質は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質等であり得る。好適な担体は典型的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質集合体等のような緩徐に代謝される大きな分子である。
【0176】
特定の例示的な実施形態
実施形態1は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、その組み換えMVAの腫瘍内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射と比較して、その対象のがん性腫瘍での炎症応答が増強され、腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、方法である。
【0177】
実施形態2は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し静脈内に投与することを含み、その組み換えMVAの静脈内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内注射と比較して、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、TAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される、方法である。
【0178】
実施形態3は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に投与することを含み、その組み換えMVAの投与により、組み換えMVA及び4-1BBL抗原の単独での投与と比較して、その対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、方法である。
【0179】
実施形態4は、対象のがん性腫瘍での炎症応答増強を誘導する方法であって、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、その組み換えMVAの腫瘍内投与により、異種の腫瘍関連抗原及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比較して、腫瘍での炎症応答増強を生じさせる、方法である。そのような炎症応答の増強は、本明細書の別の箇所で考察されており、増強としては例えば、NK細胞及びT細胞の誘導を挙げることができる。
【0180】
実施形態5は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、内在性レトロウイルス抗原(ERV)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に投与することを含み、その組み換えMVAの投与により、組み換えMVA及び4-1BBL抗原の単独での投与と比較して、その対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、方法である。
【0181】
実施形態6は、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法であって、その対象がヒトである、方法である。
【0182】
実施形態7は、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質である、方法である。
【0183】
実施形態8は、実施形態7に記載の方法であって、そのERVが、腫瘍細胞で発現するERVタンパク質である、方法である。
【0184】
実施形態9は、実施形態7~8のいずれか1つに記載の方法であって、そのERVが、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリーに由来する、方法である。
【0185】
実施形態10は、実施形態9に記載の方法であって、そのHERV-Kタンパク質が、HERV-Kエンベロープタンパク質、HERV-K gagタンパク質及びHERV-K melタンパク質から選択される、方法である。
【0186】
実施形態11は、実施形態9に記載の方法であって、そのHERV-Kタンパク質が、HERV-Kエンベロープタンパク質、HERV-K gagタンパク質、HERV-K melペプチド及びそれらの免疫原性断片から選択される、方法である。
【0187】
実施形態12は、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、FOLR1、PRAME、p15及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択される、方法である。
【0188】
実施形態13は、実施形態1~6及び12のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、がん胎児性抗原(CEA)及びムチン1細胞表面関連(MUC-1)からなる群から選択されるか、または、例えば、実施例1に記載されているような、AH1A5、p15E、及びTRP2の、混成もしくは組み合わせであるTAAである、方法である。
【0189】
実施形態14は、実施形態1~6、及び12のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、PAPまたはPSAからなる群から選択される、方法である。
【0190】
実施形態15は、実施形態1~6、12及び14のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、PSAである、方法である。
【0191】
実施形態16は、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法であって、そのTAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(CASP-8、FLICEとしても知られている)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(CR1)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(「LCA」)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、がん胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(cox-2)、結腸直腸癌欠失遺伝子(「DCC」)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞成長因子-8a(FGF8a)、線維芽細胞成長因子-8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGE-ファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(「GM2」)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R1Man(α1-6)R2[GlcNAc→Man(α1-6)]β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT V)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP-1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳房腫瘍ウイルス(HMTV)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン-13受容体(IL-13R)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(MAGE-1)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(MAGE-2)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(MAGE-3)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(MAGE-4)、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(MART-1)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来成長因子(PDGF)、μPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング増殖因子-アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-β)、サイモシン-ベータ-15、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、TP1、TRP-2、チロシナーゼ、血管内皮増殖因子(VEGF)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)からなる群、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyuryからなる群、ならびにこれらを組み合わせたものから選択される、方法である。
【0192】
実施形態17は、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法であって、その組み換えMVAが、CD40L抗原をコードする第3の核酸をさらに含む、方法である。
【0193】
実施形態18は、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法であって、少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストをその対象に投与することをさらに含む、方法である。
【0194】
実施形態19は、実施形態18に記載の方法であって、その免疫チェックポイント分子が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSから選択される、方法である。
【0195】
実施形態20は、実施形態18~19のいずれか1つに記載の方法であって、その免疫チェックポイント分子が、PD-1及び/またはPD-L1である、方法である。
【0196】
実施形態21は、実施形態20に記載の方法であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、LAG-3のアンタゴニストをさらに含む、方法である。
【0197】
実施形態22は、実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、抗体を含む、方法である。
【0198】
実施形態23は、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法であって、第2のTAAに特異的な抗体をその対象に投与することをさらに含む、方法である。
【0199】
実施形態24は、実施形態23に記載の方法であって、その第2のTAAに特異的な抗体が、腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的である、方法である。
【0200】
実施形態25は、実施形態23に記載の方法であって、その第2のTAAに特異的な抗体が、a)腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的であり、b)Fcドメインを含む、方法である。
【0201】
実施形態26は、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法で用いる医薬組成物である。
【0202】
実施形態27は、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法で用いるワクチンである。
【0203】
実施形態28は、がんである対象を治療するための組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)であって、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、b)4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む、組み換えMVAである。
【0204】
実施形態29は、実施形態28に記載の組み換えMVAであって、そのTAAが、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質である、組み換えMVAである。
【0205】
実施形態30は、実施形態29に記載の組み換えMVAであって、そのERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスタンパク質K(HERV-K)ファミリーに由来する、組み換えMVAである。
【0206】
実施形態31は、実施形態30に記載の組み換えMVAであって、そのレトロウイルスタンパク質Kが、HERV-Kエンベロープタンパク質、HERV-K gagタンパク質及びHERV-K melタンパク質から選択される、組み換えMVAである。
【0207】
実施形態32は、実施形態28~31のいずれか1つに記載の組み換えMVAであって、CD40Lをコードする第3の核酸をさらに含む、組み換えMVAである。
【0208】
実施形態33は、a)実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVAと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストとを含む医薬組み合わせである。
【0209】
実施形態34は、実施形態33に記載の医薬組み合わせであって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアンタゴニストまたはアゴニストから選択される、医薬組み合わせである。
【0210】
実施形態35は、実施形態34に記載の医薬組み合わせであって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、PD-1及び/またはPD-L1のアンタゴニストである、医薬組み合わせである。
【0211】
実施形態36は、実施形態35に記載の医薬組み合わせであって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、LAG-3のアンタゴニストをさらに含む、医薬組み合わせである。
【0212】
実施形態37は、実施形態33~36のいずれか1つに記載の医薬組み合わせであって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストが、抗体を含む、医薬組み合わせである。
【0213】
実施形態38は、a)実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVAと、b)第2のTAAに特異的な抗体と、を含む、医薬組み合わせである。
【0214】
実施形態39は、実施形態38に記載の医薬組み合わせであって、その第2のTAAに特異的な抗体が、腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的である、医薬組み合わせである。
【0215】
実施形態40は、実施形態39に記載の医薬組み合わせであって、その第2のTAAに特異的な抗体が、a)腫瘍の細胞膜上に発現する抗原に特異的であり、b)Fcドメインを含む、医薬組み合わせである。
【0216】
実施形態41は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させる、及び/または生存率を上昇させるのに用いるための、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせである。
【0217】
実施形態42は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法で用いるための、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせであって、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせをその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、腫瘍内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射と比較して、その対象のがん性腫瘍での炎症応答が増強され、腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇するものである。
【0218】
実施形態43は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法で用いるための、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせであって、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせをその対象に対し静脈内に投与することを含み、静脈内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与と比較して、その対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇するものである。
【0219】
実施形態44は、がんである対象のがん性腫瘍での炎症応答増強を誘導する方法で用いるための、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせであって、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせをその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、腫瘍内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射と比較して、その対象のがん性腫瘍での炎症応答が増強されるものである。
【0220】
実施形態45は、対象のがんを治療する方法で用いるための、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせである。
【0221】
実施形態46は、がんを治療するための方法で用いるための、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせであって、そのがんが、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、尿路上皮、子宮頸部または結腸直腸の癌からなる群から選択されるものである。
【0222】
実施形態47は、実施形態44に記載の組み換えMVAであって、その炎症応答の増強が、その腫瘍に局在化する、組み換えMVAである。
【0223】
実施形態48は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し腫瘍内に投与することを含み、その組み換えMVAの腫瘍内投与により、TAA及びCD40Lをコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスを非腫瘍内注射する場合と比較して、その対象のがん性腫瘍での炎症応答が増強され、腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、方法である。
【0224】
実施形態49は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に対し静脈内に投与することを含み、その組み換えMVAの静脈内投与により、TAA及びCD40L抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内注射と比較して、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、TAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される、方法である。
【0225】
実施形態50は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)をその対象に投与することを含み、その組み換えMVAの投与により、組み換えMVA単独及びCD40L抗原単独での投与と比較して、その対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、方法である。
【0226】
実施形態51は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法で用いるための、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせであって、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせをその対象に対し静脈内及び/または腫瘍内に投与することを含み、前記静脈内投与及び/または腫瘍内投与により、1)TAAをコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス、2)TAAをコードする第1の核酸と、CD40L抗原をコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス、または3)TAAをコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸と、CD40L抗原をコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの群から選択されるいずれかのMVAを非静脈内または非腫瘍内投与する場合と比較して、その対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇するものである。
【0227】
実施形態52は、がん性腫瘍を有する対象において、腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法で用いるための、実施形態28~32のいずれか1つに記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせであって、その方法が、実施形態28~32に記載の組み換えMVA、実施形態27に記載のワクチン、実施形態26に記載の医薬組成物、または実施形態33~40のいずれか1つに記載の医薬組み合わせをその対象に対し静脈内及び腫瘍内に投与することを含み、前記静脈内投与及び腫瘍内投与により、1)TAAをコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス、2)TAAをコードする第1の核酸と、CD40L抗原をコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス、または3)TAAをコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸と、CD40L抗原をコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの群から選択されるいずれかのMVAの非静脈内または非腫瘍内の投与と比較して、その対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇するものである。前記静脈内投与及び腫瘍内投与は、当業者には明らかなように、同時または異なる時間に行うことができる。
【0228】
なおさらなる実施形態
一態様では、本発明は、
(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、
(b)4-1BBリガンド(4-1BBL)をコードする第2の核酸と、
(c)TAAをコードする少なくとも1つのさらなる核酸と、を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)を提供する。
【0229】
一実施形態では、組み換えMVAはさらに、
(d)CD40リガンド(CD40L)をコードする核酸、を含む。
【0230】
一実施形態では、組み換えMVAは、それぞれが異なるTAAをコードする2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の核酸を含む。
【0231】
組み換えMVAの一実施形態では、TAAは、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質、内在性レトロウイルス(ERV)ペプチド、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、p15、AH1A5、葉酸受容体アルファ(FOLR1)、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、及びMEL、ならびにそれらを組み合わせたものからなる群から選択される。
【0232】
組み換えMVAの一実施形態では、ERVタンパク質は、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、好ましくは、HERV-Kエンベロープ(HERV-K-env)タンパク質及びHERV-K gagタンパク質から選択される。
【0233】
組み換えMVAの一実施形態では、ERVペプチドは、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、好ましくは、HERV-Kエンベロープタンパク質(HERV-K-env/MEL)の偽遺伝子から選択される。
【0234】
別の態様では、本発明は、
(i)HERV-K-env/MELをコードする核酸と、
(ii)HERV-K gagをコードする核酸と、
(iii)FOLR1及びPRAMEをコードし、好ましくは、融合タンパク質として発現される核酸と、
(iv)4-1BBLをコードする核酸と、を含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)を提供する。
【0235】
一実施形態では、組み換えMVAはさらに、
(v)CD40Lをコードする核酸を含む。
【0236】
一実施形態では、(i)の核酸は、HERV-K-env表面(SU)及び膜貫通(TM)ユニットを含むHERV-K-env/MELをコードし、TMユニットは、変異しており、好ましくは、TMユニットは、免疫抑制ドメインが不活性化されるよう変異している。好ましくは、HERVK-MELは、変異TMユニット内に挿入される。より好ましくは、HERVK-MELが、TMユニットの免疫抑制ドメインの一部に取って代わる。
【0237】
一実施形態では、(i)の核酸配列は、配列番号7に示されているようなアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列をコードする。
【0238】
一実施形態では、(i)の核酸配列は、配列番号8に示されているような核酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0239】
一実施形態では、(i)の核酸は、HERV-K-env表面(SU)及び膜貫通(TM)ユニットを含むHERVK-env/MELをコードし、TMユニットは、20アミノ酸未満、好ましくは10アミノ酸未満、より好ましくは8アミノ酸未満、最も好ましくは6アミノ酸に短縮される。
【0240】
一実施形態では、(i)の核酸は、HERV-K-env表面(SU)ユニットを含むHERVK-env/MELをコードし、HERV-K-env SUユニットのRSKRフューリン切断部位が欠失している。好ましくは、HERVK-MELは、HERV-Kenv SUユニットのC末端に結合している。
【0241】
一実施形態では、(i)の核酸は、異種膜アンカー、好ましくは、ヒトPDGF(血小板由来増殖因子)受容体に由来するものを含むHERVK-env/MELをコードする。
【0242】
一実施形態では、(i)の核酸配列は、配列番号11に示されているようなアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列をコードする。
【0243】
一実施形態では、(i)の核酸配列は、配列番号12に示されているような核酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0244】
一実施形態では、組み換えMVAは、MVA-BNに由来する。
【0245】
別の態様では、本発明は、本発明の組み換えMVAを含む、医薬調製物または医薬組成物を提供する。
【0246】
一実施形態では、医薬調製物または医薬組成物は、腫瘍内及び/または静脈内の投与、好ましくは腫瘍内投与に適応している。
【0247】
別の態様では、本発明は、医薬品またはワクチンとしての使用のための組み換えMVAを提供する。
【0248】
別の態様では、本発明は、がん、好ましくは、メラノーマ、乳癌、結腸癌、または卵巣癌の治療に用いるための組み換えMVAを提供する。
【0249】
別の態様では、本発明は、がん性腫瘍での炎症応答の増強、がん性腫瘍のサイズの縮小、がん性腫瘍の増殖の遅延もしくは停止、及び/または対象、好ましくはヒトの全生存率の上昇に用いるための、本発明の組み換えMVAを提供する。
【0250】
一実施形態では、用いるための組み換えMVAは、腫瘍内及び/または静脈内に、好ましくは腫瘍内に投与される。
【0251】
23.一実施形態では、用いるための組み換えMVAは、TAA特異的抗体と組み合わせて用いられる。
【0252】
24.一実施形態では、用いるための組み換えMVAは、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストのいずれかと組み合わせて用いられる。
【0253】
さらに別の態様では、本発明は、投与される組み換えMVAが、本発明による組み換えMVAである治療方法を提供する。
【実施例】
【0254】
以下の実施例は、本発明を例示してはいるが、いかなる形であっても特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1:組み換えMVA-TAA-4-1BBL及びMVA-TAA-CD40Lの構築
本開示の要素を実現させる組み換えMVAウイルスの作製は、示されている導入遺伝子を、かかる導入遺伝子のプロモーターと共にベクターMVA-BNに挿入することによって行った。導入遺伝子は、導入遺伝子及び選択カセット、ならびにMVA-BN内の標的座位と相同な配列を含有する、組み換えプラスミドを用いて挿入された。ウイルスゲノムと組み換えプラスミド間の相同組み換えは、MVA-BNに感染させたCEF細胞への組み換えプラスミドのトランスフェクションによって達成した。選択カセットをその後、第2の工程中に除去したが、その際、選択カセットを挟んでいるloxP部位を特異的に標的として介在配列を切り出すCREリコンビナーゼを発現しているプラスミドを利用した。別法として、選択カセットの除去を、MVA由来の内部反復配列を用いたMVAを介した組み換えによって達成した。
【0255】
MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの構築の際には、組み換えプラスミドには、導入遺伝子OVAまたはOVA及び4-1BBL(それぞれにプロモーター配列が先行する)、ならびにウイルスゲノムへの相同組み換えを可能にするための、MVA-BN内部の標的挿入部位と同一な配列を含めた。
【0256】
MVA-OVA-CD40Lの構築の際には、組み換えプラスミドには、導入遺伝子OVA及びCD40L(それぞれにプロモーター配列が先行する)、ならびにウイルスゲノムへの相同組み換えを可能にするための、MVA-BN内部の標的挿入部位と同一な配列を含めた。
【0257】
MVA-gp70-4-1BBLの構築の際には、組み換えプラスミドには、2つの導入遺伝子gp70及び4-1BBL(それぞれにプロモーター配列が先行する)、ならびにウイルスゲノムへの相同組み換えを可能にするための、MVA-BN内部の標的挿入部位と同一な配列を含めた。
【0258】
MVA-HERV-K、MVA-HERV-K-4-1BBL及びMVA-HERV-K-4-1BBL-CD40Lの構築の際には、組み換えプラスミドには、それぞれ、HERV-K、HERV-K及び4-1BBL、HERV-K、4-1BBL及びCD40Lの導入遺伝子を含めた。各導入遺伝子または一連の導入遺伝子に先行して、プロモーター配列、ならびにウイルスゲノムへの相同組み換えを可能にするための、MVA-BN内部の標的挿入部位と同一な配列を配した。
【0259】
MVA-AH1A5-p15E-TRP2及びMVA-AH1A5-p15E-TRP2-CD40Lの構築の際には、組み換えプラスミドには、導入遺伝子AH1A5-p15E-TRP2またはAH1A5-p15E-TRP2及びCD40L(それぞれにプロモーター配列が先行する)、ならびにウイルスゲノムへの相同組み換えを可能にするための、MVA-BN内部の標的挿入部位と同一な配列を含めた。
【0260】
上記のmBN MVAの作製の際には、CEF細胞培養物にそれぞれMVA-BNを接種し、それぞれに、対応する組み換えプラスミドをトランスフェクトした。次に、これらの細胞培養物からの試料を、選択圧をかける薬物を含有する培地中のCEF培養物に接種し、蛍光を発現しているウイルスクローンをプラーク精製によって単離した。これらのウイルスクローンからの蛍光タンパク質含有選択カセットの欠失は、第2の工程において、各コンストラクトでの選択カセットを挟んでいる2つのloxP部位を含むCREを介した組み換え、またはMVAを介した内部組み換えによって媒介された。第2の組み換え工程後、MVA-BNの標的座位に挿入された導入遺伝子配列(例えば、OVA、4-1BBL、gp70、HERV-K及び/またはCD40L)及びそのプロモーターのみを保持した。選択カセットを欠くプラーク精製済みウイルスのストックを調製した。
【0261】
同定導入遺伝子の発現は、記載されているコンストラクトを接種した細胞で実証される。
【0262】
本明細書に記載されているコンストラクトの作製は、MVA-BNのクローン型を細菌人工染色体(BAC)で用いることにより行った。組み換えプラスミドは、記載されている導入遺伝子配列をそれぞれプロモーターの下流に含有した。プラスミドには、MVAにも存在し、これにより、組み込み部位の特異的な標的化を可能にする配列を含めた。簡潔に述べると、BAC DNAをBHK-21細胞にトランスフェクトし、それらの細胞に、ヘルパーウイルスとしてのショープ線維腫ウイルスを重感染させることによって、感染性ウイルスをBACから再構築した。CEF細胞培養液で3代追加継代した後、コンストラクトのヘルパーウイルス不含型を得た。例示的なMVA作製法は、Baur et al.((2010) Virol. 84:8743-52,“Immediate-early expression of a recombinant antigen by modified vaccinia virus Ankara breaks the immunodominance of strong vector-specific B8R antigen in acute and memory CD8 T-cell responses”)にも見られる。
【0263】
実施例2:MVA-OVA-4-1BBLに感染した腫瘍細胞によるCD8 T細胞の4-1BBL媒介性共刺激は、DCを必要とせずにサイトカイン産生に影響を及ぼす
樹状細胞(DC)は、C57BL/6マウス由来骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後に生成された。B16.F10(メラノーマモデル)細胞に、MVA-OVA、MVA-OVA-CD40LまたはMVA-OVA-4-1BBLを10のMOIで感染させ、37℃、5%CO2で一晩培養した。その翌日、感染した腫瘍細胞を採取し、指示されている場合には、1:1の比率でのDCの存在下で37℃、5%CO2で4時間共培養した。ナイーブOVA(257-264)特異的CD8+ T細胞をOT-Iマウスから磁気精製し、上記の共培養物に1:5の比率で加えた。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養した。その後、培養上清を、Luminexによるサイトカイン濃度分析用に採取した。結果は、
図1に、IL-6(
図1A)、GM-CSF(
図1B)、IL-2(
図1C)及びIFN-γ(
図1D)の上清濃度として示されている。データは、平均±SEMとして表されている。
【0264】
以前報告された内容と一致して、MVA-OVA-CD40Lは、DCの活性化、及びその抗原提示能に大きな影響を及ぼした。すなわち、MVA-OVA-CD40Lに感染したFLDCによって大量のIL-6が産生された(
図1A)。重要なことには、OVA特異的T細胞応答は、DC存在下でのみ誘導可能であり、MVA-CD40Lに感染させたB16.F10細胞自体が直接誘導することはできなかった(
図1B及び1C)。これらの結果は、MVA-OVA-CD40Lの効果を得るには、DCが明らかに必要であることを示している。これに対して、MVA-OVA-4-1BBLがDCでのIL-6産生を誘導することはなかったが、MVA-OVA-4-1BBLに感染したB16.F10細胞では、T細胞活性化サイトカインIFN-γ、IL-2及びGM-CSFの分泌がDCに依存せずに誘導された(
図1A~1D)。
【0265】
実施例3:MVA-OVA-4-1BBLに感染した腫瘍細胞は、抗原特異的CD8 T細胞の活性化エフェクターT細胞への分化を直接(すなわち、DCを必要とせずに)誘導する
樹状細胞(DC)は、C57BL/6マウス由来骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後に生成された。B16.F10(メラノーマモデル)細胞に、MVA-OVA、MVA-OVA-CD40LまたはMVA-OVA-4-1BBLを10のMOIで感染させ、37℃、5%CO2で一晩培養した。その翌日、感染した腫瘍細胞を採取し、指示されている場合には、1:1の比率でのDCの存在下で37℃、5%CO2で4時間共培養した。その一方で、ナイーブOVA(257-264)特異的CD8+ T細胞をOT-Iマウスから磁気精製し、上記の共培養物に1:5の比率で加えた。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養した。その後、細胞を染色し、フローサイトメトリーによって解析した。結果は、
図2に、OT-I CD8+ T細胞上のT-betのGMFI(
図2A)、及びOT-I CD8+ T細胞のCD44+ グランザイムB+ IFN-γ+ TNFα+のパーセンテージ(
図2B)として示されている。データは、平均±SEMとして示されている。
【0266】
結果から、交差提示するDCの非存在下では、グランザイムB+及びIFNγ+の細胞傷害性エフェクターT細胞の誘導が4-1BBL依存性であったことが示されている(
図2B)。
図1に示されている結果と併せると、これらの所見は、MVAによってコードされる4-1BBLは、MVAによってコードされるCD40L(DCの活性化を介して作用する)とは対照的に、DCに依存せずにT細胞に直接作用することを実証している。
【0267】
実施例4:CD40Lまたは4-1BBLのいずれかをコードするMVAによる感染は、腫瘍細胞株及びマクロファージでの腫瘍細胞死を誘導する
腫瘍細胞株B16.OVA(
図3A及び3B)、MC38(
図3C)ならびにB16.F10(
図3D)を、示されているMOIで20時間感染させた。その後、細胞を、その生存率についてフローサイトメトリーにより解析した。
図3Aからの試料の血清HMGB1をELISAによって定量した(
図3B)。骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、示されているMOIで20時間感染させた。その後、細胞を、その生存率についてフローサイトメトリーにより解析した。結果は、
図3A~3Eに示されている。データは、平均±SEMとして示されている。
【0268】
図3A及び3Bに示されているように、MVA-OVAまたはMVA-OVA-CD40Lによる感染では、PBS処理した腫瘍細胞と比較して、細胞死の軽度な誘導がもたらされた。興味深いことに、MVA-OVA-4-1BBLへの感染では、感染から18時間後、腫瘍細胞死が顕著に増強された。
【0269】
これらの結果を非抗原性細胞株でさらに確認するため、MVA、MVA-CD40L及びMVA-4-1BBL(いずれも、TAAをコードさせなかった)に感染させたMC38腫瘍細胞(
図3C)及びB16.F10腫瘍細胞(
図3D)を用いて、同様のアッセイを行った。一貫して、これらのMVAへの感染では、これらの腫瘍細胞株での細胞死が誘導され、骨髄由来マクロファージ(BMDM)を効率的に死滅させた(
図3E)。勘案すると、これらのデータから、MVAへの感染は、腫瘍細胞及びマクロファージの死をもたらし、これが、組み換えMVAによってCD40Lまたは4-1BBLを発現させた場合に増加することが示された。
【0270】
腫瘍細胞の腫瘍溶解性ウイルス感染により、いわゆる免疫原性細胞死(ICD)が誘導される(Workenhe et al.(2014)Mol.Ther.22:251-56)。ICDは、免疫系に対してアラーミンとして作用して、抗原提示を増強させることによって、抗腫瘍免疫を誘導するカルレティキュリン、ATPまたはHMGB1等の細胞内タンパク質の放出を含む。MVA感染が、分泌HMGB1によるICDの誘導をもたらすかを検討した。予想外にも、MVA-OVA-4-1BBL及びMVA-OVA-CD40Lでは、MVA-OVAと比べてHMGB1の顕著な増加が誘導されたことが見出された(
図3B)。
【0271】
実施例5:4-1BBLをコードするMVAはインビボでNK細胞活性化を誘導する
C57BL/6マウス(n=5匹/群)を、生理食塩水、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(
図4の「rMVA」)、5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBL(
図4の「rMVA-4-1BBL」)、もしくは200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせた5×10
7 TCID50のMVA-OVAのいずれかにより静脈内免疫した。24時間後、マウスを屠殺し、脾臓をフローサイトメトリー解析用に処理した。結果は、
図4A及び
図4Bに示されている。CD69(
図4A)及びCD70(
図4B)の幾何平均蛍光強度(GMFI)が示されている。データは、平均±SEMとして示されており、2回の独立した実験を表すものである。
【0272】
結果から、NK細胞応答の質は、4-1BBLを含まないMVA-OVAのIV投与と比較して、MVA-OVAに4-1BBLを加えることによって増強され、NK細胞活性化マーカーであるCD69及びCD70の両方が、MVA-OVAの場合と比較して著しくアップレギュレートされたことが示された(
図4A及びB)。4-1BBLブロッキング抗体の同時注射では、MVA-OVAにより誘導されるNK細胞活性化は、完全に4-1BBL非依存的であるが、過剰な4-1BBLシグナルがMVA-OVA-4-1BBLによって送達された場合に増強できることが示された。
【0273】
実施例6:4-1BBLをコードするMVAによる静脈内免疫はインビボでの血清IFN-γ分泌を促進する
C57BL/6マウス(n=5匹/群)を、生理食塩水、または5×10
7 TCID50の「rMVA」(=MVA-OVA)、5×10
7 TCID50の「rMVA-4-1BBL」(=MVA-OVA-4-1BBL)、もしくは200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせた5×10
7 TCID50のMVA-OVAのいずれかにより静脈内免疫した。結果は、
図5A及び5Bに示されている。データは、平均±SEMとして示されている。
図5A:6時間後、マウスから採血し、全血から血清を分離して、血清中のIFN-γ濃度をLuminexによって測定した。
図5B:3時間後、21時間後、及び45時間後に、マウスにブレフェルジンAを静脈内注射してタンパク質の分泌を停止させた。免疫から6時間後、24時間後、及び48時間後にマウスを屠殺し、脾細胞をフローサイトメトリーによって解析した。
【0274】
4-1BB媒介性のNK細胞活性化は、NKエフェクターサイトカインIFNγの血清濃度の上昇と一致していた(
図5A)。NK細胞は、活性化すると大量のIFN-γを産生することが知られている。血清中のIFN-γ濃度の上昇がNK細胞に由来した可能性を判断するため、IFN-γ産生NK細胞の割合を、示されている組み換えMVAベクターの静脈内注射後の様々な時点で測定した。注射から6時間後の、血清IFN-γ高値が測定された際、IFN-γ+ NK細胞のパーセンテージが最も高くなり、その後、徐々に低下した(
図5B)。MVA-OVA-4-1BBLを用いた場合にIFN-γ陽性NK細胞の頻度が最も高いことが観察された。勘案すると、これらのデータから、rMVA-4-1BBLの静脈内免疫により、NK細胞の強力な活性化、及びNK細胞エフェクターサイトカインIFN-γの産生増加がもたらされることが示されている。
【0275】
実施例7:静脈内rMVA-4-1BBL免疫はB16.OVA腫瘍担持マウスでの血清IFN-γ分泌を促進する
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(図では「rMVA」)もしくはMVA-OVA-4-1BBL(図では「rMVA-4-1BBL」)をi.v.(静脈内)投与した。6時間後、マウスから採血し、全血から血清を分離して、血清中のIFN-γ濃度をLuminexによって測定した。結果は、
図6に示されている。データは、平均±SEMとして示されている。
【0276】
図6に示されているデータは、他の実験で報告されているNK細胞に対する作用と同様の作用がメラノーマ腫瘍モデルでも得ることができたことを示している。免疫から6時間後、血清IFN-γ濃度は、MVA-OVA-4-1BBLで免疫した腫瘍担持マウスで大きく上昇しており、強力なNK細胞活性化が示された(
図6)。
【0277】
実施例8:静脈内へのrMVA-4-1BBLによるプライム及びブースト免疫は、抗原及びベクターに特異的なCD8+ T細胞の増殖を増強する
図7A~7Dは、静脈内へのrMVA-4-1BBLによるプライム及びブースト免疫後の抗原特異的及びベクター特異的を示す。C57BL/6マウス(n=4匹/群)に、生理食塩水、または5×10
7 TCID50のrMVA(=MVA-OVA)、5×10
7 TCID50のrMVA-4-1BBL(=MVA-OVA-4-1BBL)、もしくは200μgの抗4-1BBL抗体(クローンTKS-1)と組み合わせた5×10
7 TCID50のrMVAのいずれかによる静脈内プライム免疫を0日目に行い、41日目にブースト免疫を行った。プライム免疫後、6日目、21日目、35日目、48日目、及び64日目にマウスから採血し、末梢血のフローサイトメトリー解析を行った。プライム免疫後、70日目に、マウスを屠殺した。脾臓を採取し、フローサイトメトリー解析を行った。
【0278】
結果は、
図7A~7Dに示されている。
図7Aは、末梢血白血球(PBL)のうちの抗原(OVA)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示しており、
図7Bは、PBLのうちのベクター(B8R)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。
図7Cは、生細胞のうちの抗原(OVA)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。
図7Dは、生細胞のうちのベクター(B8R)特異的CD8+ T細胞のパーセンテージを示している。データは、平均±SEMとして示されている。
【0279】
結果は、B8特異的CD8 T細胞及びOVA特異的CD8 T細胞は、初回免疫後7日目に最大に達し、41日目の2回目の免疫後にさらに増殖したことを示している(
図7A及びB)。41日目の時点において、B8及びOVAのいずれについても、rMVAと比較して、抗原特異的T細胞応答という点でrMVA-4-1BBLの明らかな有益性があった。興味深いことに、4-1BBLブロッキング抗体の同時注射では、rMVAにより誘導されるT細胞応答は、完全に4-1BBL非依存的であるが、過剰な4-1BBLシグナルがrMVA-4-1BBLによって送達された場合に増強できることが示された(
図7A及びB)。これらの結果と一致して、rMVA-4-1BBLによるプライム/ブースト免疫はまた、初回免疫から70日後、脾臓でのOVA特異的T細胞応答及びB8特異的なT細胞応答の改善をもたらした(
図7C及びD)。
【0280】
実施例9:TAAと4-1BBLとをコードするMVAウイルスの静脈内注射の抗腫瘍効果増大
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVAもしくは5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBLをi.v.(静脈内)投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。
図8に示されているように、4-1BBLをコードするMVAウイルスの静脈内投与では、腫瘍の増殖遅延の延長による、MVAまたはコントロール(PBS)と比較した場合の腫瘍体積の縮小がもたらされた。
【0281】
実施例10:4-1BBLまたはCD40LをコードするMVAウイルスの腫瘍内注射の抗腫瘍効果増強
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=4~5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)、12日目及び15日目(灰色の破線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA(図では「rMVA」)、MVA-OVA-CD40L(図では「rMVA-CD40L」)もしくはMVA-OVA-4-1BBL(図では「rMVA-4-1BBL」)を腫瘍内(i.t.)投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。
図9A~9Dに示されているように、TAAと、4-1BBLまたはCD40LのいずれかとをコードするMVAウイルスの腫瘍内注射によって、抗腫瘍効果増強が実現された。より具体的には、
図9Dに示されているように、腫瘍増殖の著しく大きな低下が、4-1BBLをコードするMVAウイルスで見られた。本発明は、いかなる特定の機序または作用様式にも拘束されないが、4-1BBLとCD40Lの間で観察された相違についての仮説の1つは、4-1BBLがNK細胞及びT細胞を活性化することを目的とするのに対し、CD40LはDCを活性化することを目的とすることである。B16メラノーマ腫瘍はT細胞による浸潤が多い(Mosely et al.(2016)Cancer Immunol.Res.5(1):29-41)ため、こうした状況では、CD40LをコードするMVAよりも4-1BBLをコードするMVAの方が有効である。
【0282】
4-1BBL及びCD40Lが、腫瘍の増殖または直径に対してその作用を及ぼす正確な機序または経路にかかわらず、
図9のデータから、4-1BBLをコードするMVAの腫瘍内注射が、長期の腫瘍増殖制御、場合によっては、腫瘍の完全拒絶をもたらすことが示された。
【0283】
実施例11:確立された大腸癌に対する、TAA及びCD40Lを用いてコードさせたMVAウイルスの腫瘍内注射の抗腫瘍効果増強
MC38腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から14日目(黒い点線)、19日目及び22日目(黒い破線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-AH1A5-p15E-TRP2(図では「rMVA」と表記)もしくはMVA-AH1A5-p15E-TRP2-CD40L(図では「rMVA-CD40L」と表記)を腫瘍内(i.t.)投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。結果は、
図10に、確立された非抗原性MC38大腸癌について示されている。
【0284】
これらのベクターは、1つのメラノーマ関連TRP2由来エピトープ(SVYDFFVWL、H2-Kb)ならびに2つのマウス白血病ウイルスgp70由来CD8+T細胞エピトープのp15E(KSPWFTTL、H2-Kb)及び改変AH1のAH1A5(SPSYAYHQF、H2-Ld)からなる一連の腫瘍関連エピトープをコードする。これらの結果は、MVA-CD40Lの腫瘍内注射が、MC38結腸癌モデルでの腫瘍増殖を顕著に遅延させることを示している。
【0285】
実施例12:免疫チェックポイント阻害及び腫瘍抗原特異的抗体は、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与と相乗作用する
B16.OVAメラノーマ細胞(5×10
5)をC57BL/6マウスに皮下注射した。腫瘍が直径約5mmに達したら、マウスを群分けし(n=5匹/群)、指示されている場合(チェック印)には、200μgのIgG2a、抗TRP-1または抗PD-1を腹腔内(i.p.)投与した。腫瘍の接種から13日目(黒い点線)、18日目及び21日目(灰色の破線)に、マウスをPBS、または5×10
7 TCID50のMVA-OVA-4-1BBLのいずれかで腫瘍内(i.t.)免疫した。腫瘍増殖を定期的に測定した。結果は、
図11に示されている。腫瘍関連抗原(TAA)Trp1(抗Trp1)に特異的な抗体をMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与と組み合わせた場合に、抗PD-1単独の場合と比較して、腫瘍体積縮小が増大した(
図11、中央の列)。免疫チェックポイント分子PD-1に対する抗体をMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与と組み合わせた場合に、抗PD-1単独の場合と比較して、腫瘍体積縮小が増大した(
図11、下の列)。
【0286】
これらの実験は、抗PD-1抗体及び抗TRP-1抗体が単剤として腫瘍増殖制御を増強させた一方で、いずれかの抗体とMVA-OVA-4-1BBLの組み合わせでは、MVA-OVA-4-1BBLによってもたらされる治療効果が改善されたことを示している。この実施例では、腫瘍内MVA 4-1BBLと、チェックポイント阻害またはTAA標的化抗体のいずれかとの併用療法は、いずれの単剤療法よりも治療活性が大きかった。このデータはまた、相乗作用を得るために、ADCCを誘導する可能性のある腫瘍特異的抗体を、4-1BBLを発現しているMVAの腫瘍内注射と組み合わせてよいことも示している。
【0287】
実施例13:抗CD137アゴニスト抗体治療と比較した腫瘍内へのMVA-OVA-4-1BBL注射の優れた抗腫瘍効果
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目、12日目及び15日目(黒い破線)に、PBS、5×107 TCID50のMVA-OVA-4-1BBL、または10μgの抗4-1BB(3H3、BioXcell)のいずれかを腫瘍内注射した。腫瘍増殖を定期的に測定した。
【0288】
図12Aは、抗4-1BBLアゴニスト抗体(3H3)と比較したMVA-OVA-4-1BBLの優れた抗腫瘍効果を示す。
図12Bは、MVA-OVA-4-1BBLによる腫瘍内免疫の場合にのみ血液中でのOVA特異的T細胞応答が誘導され、抗4-1BBLアゴニスト抗体では、血液中のOVA特異的T細胞がまったく誘導されなかったことを示す。
【0289】
したがって、これらのデータから、MVA-OVA-4-1BBLによる腫瘍内処置は、腫瘍特異的T細胞応答及び腫瘍増殖制御の両方の点で、抗CD137アゴニスト抗体よりも強力であることが示されている。
【0290】
実施例14:CT26腫瘍モデルにおいて、CD40Lを用いてコードさせた内在性レトロウイルス(ERV)抗原Gp70をコードするMVAの静脈内注射の抗腫瘍効果増大
CT26腫瘍担持Balb/cマウス(n=5匹/群)を群分けし、マウスへの腫瘍導入後12日目(黒い点線)に、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-BN、MVA-Gp70もしくはMVA-Gp70-CD40Lを静脈内(i.v.)投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。
図13A及び13Bに示されているように、内在性レトロウイルス抗原Gp70をコードするMVAウイルスの静脈内投与では、MVAまたはコントロール(PBS)の場合と比較して腫瘍体積縮小がもたらされた。加えて、抗腫瘍効果は、MVA-Gp70-CD40LによってCD40Lが追加でコードされた場合にさらに改善された。
【0291】
図13Cには、MVA-Gp70またはMVA-Gp70-CD40Lの静脈内注射の際の、血液中でのGp70特異的CD8 T細胞の誘導が示されている。
【0292】
したがって、これらの実験では、MVAは、マウスタンパク質gp70(マウス白血病ウイルスのエンベロープタンパク質)であるモデルERVをコードするように構築した(「MVA-gp70」)。共刺激分子CD40Lをさらに含むMVAも作製した(「MVA-gp70-CD40L」)。CT26.wt大腸癌モデルを用いて、これらの新規コンストラクトの抗腫瘍能を試験した。CT26.wt細胞は、高レベルのgp70を発現することが示されている(例えば、Scrimieri(2013)Oncoimmunol.2:e26889を参照のこと)。CT26.wt腫瘍担持マウスを作製し、腫瘍が少なくとも5mm×5mmになったら、上記のように、静脈内免疫した。MVA単独での免疫では、軽度の腫瘍増殖遅延が誘導された。これに対して、MVA-gp70による免疫では、5個中3個の腫瘍の完全拒絶が生じた(
図13のA及びB)。さらに顕著な結果がMVA-Gp70-CD40Lによる免疫の場合に得られ、5個中4個の腫瘍で拒絶が生じた(
図13のA及びB)。
【0293】
これらの抗腫瘍応答が、免疫後のgp70特異的T細胞の誘導と相関するか判断するため、H-2Kd拘束性gp70エピトープAH1を用いて、血液の再刺激を行った。これらの結果(
図13C)は、MVA-Gp70処置マウス及びMVA-Gp70-CD40L処置マウスにおける、gp70特異的CD8 T細胞応答の強力な誘導を示している(
図13C)。
【0294】
実施例15:B16.F10腫瘍モデルにおける、CD40Lを用いてコードさせた内在性レトロウイルス抗原Gp70をコードするMVAの静脈内注射の抗腫瘍効果増大
腫瘍接種後、腫瘍測定値が約5×5mmとなった7日目(黒い点線)に、B16.F10腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-BN、MVA-Gp70もしくはMVA-Gp70-CD40Lを静脈内(i.v.)投与した。腫瘍増殖を定期的に測定した。
図14Aに示されているように、内在性レトロウイルス抗原Gp70とCD40LとをコードするMVAウイルスの静脈内投与により、MVAまたはコントロール(PBS)の場合と比較した腫瘍体積縮小がもたらされた。
【0295】
図14Bは、MVA-Gp70またはMVA-Gp70-CD40Lの静脈内注射時の血液中でのGp70特異的CD8 T細胞誘導を示す。
【0296】
したがって、これらの実験で、MVA-Gp70及びMVA-Gp70-CD40Lによる治療の有効性が、追加の独立した腫瘍モデルにおいて示された。B16.F10は、C57BL/6に由来するメラノーマ細胞株であり、高レベルのGp70を発現する(Scrimieri(2013)Oncoimmunol 2:e26889)。MVA単独(「MVA-BN」)による処置では、B16.F10腫瘍の増殖遅延がある程度もたらされ、アジュバント非添加MVA-Gp70の作用に匹敵していた(
図14A)。しかしながら、MVA-Gp70-CD40Lでは、コントロールであるMVA骨格単独の場合よりも強い抗腫瘍効果がもたらされた(
図14A)。追加の実験により、Gp70抗原をコードするMVAの投与を受けた群はいずれも、H-2Kb拘束性gp70エピトープp15eに特異的なCD8 T細胞応答を示したが、MVAによってCD40Lもコードされた場合には、末梢T細胞応答の大幅な増大は示されなかったことが示された(
図14B)。
【0297】
実施例16:gp70及び4-1BBLをコードするMVAウイルスの静脈内注射の抗腫瘍効果増大[仮想実施例]
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)に、PBS、または5×107 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-gp70-4-1BBLを静脈内に投与する。腫瘍増殖を定期的に測定する。ヒト内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質のマウスホモログは、正常マウス組織での高発現も、マウス腫瘍組織での主要発現もしないため、ヒトERVの有効性は、マウスモデルで効果的に研究することはできない。Gp70は、十分に研究されてきたマウスERVタンパク質である(例えば、Bronte et al.(2003)J Immunol.171(12):6396-6405、Bashratyan et al.(2017)Eur.J.Immunol.47:575-584及びNilsson et al.(1999)Virus Genes 18:115-120を参照のこと)。したがって、gp70特異的ながんワクチンのマウスにおける研究は、ヒトにおけるERV特異的ながんワクチンの有効性に関する強力な予測値が得られる可能性が非常に高い。
【0298】
実施例17:gp70と、4-1BBLまたはCD40LのいずれかとをコードするMVAウイルスの腫瘍内注射の抗腫瘍効果増強[仮想実施例]
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=4~5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)、12日目及び15日目(灰色の破線)に、PBS、または5×107 TCID50のMVA-OVA、MVA-OVA-CD40LもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内(i.t.)投与する。腫瘍増殖を定期的に測定した。
【0299】
実施例18:rMVA-HERV-K-4-1BBLを用いた投与は、感染腫瘍細胞の直接抗原提示によりサイトカイン産生に影響を及ぼす[仮想実施例]
樹状細胞(DC)は、C57BL/6マウス由来骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後に生成される。B16.F10細胞に、MVA-HERV-K、MVA-HERV-K-CD40L、MVA-HERV-K-4-1BBLまたはMVA-HERV-K-4-1BBL-CD40Lを10のMOIで感染させ、一晩放置する。その翌日、感染した腫瘍細胞を採取し、指示されている場合には、1:1の比率でのDCの存在下で37℃、5%CO2にて4時間共培養する。HERV-K特異的CD8+ T細胞をHERV-K免疫マウスから磁気精製し、上記の共培養物に1:5の比率で加える。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養する。その後、培養上清を、Luminexによるサイトカイン濃度分析用に採取する。サイトカイン濃度の測定には、(A)IL-6、(B)GM-CSF、(C)IL-2及び(D)IFNγを含める。データは、平均±SEMとして表されている。
【0300】
実施例19:rMVA-HERV-K-4-1BBLを用いた投与は、感染腫瘍細胞の直接抗原提示により、抗原特異的CD8+ T細胞を活性化エフェクターT細胞に誘導する[仮想実施例]
樹状細胞(DC)は、C57BL/6マウス由来骨髄細胞を組み換えFlt3Lの存在下で14日間培養した後に生成される。B16.F10細胞に、MVA-HERV-K、MVA-HERV-K-CD40L、MVA-HERV-K-4-1BBLまたはMVA-HERV-K-4-1BBL-CD40Lを10のMOIで感染させ、一晩放置する。その翌日、感染した腫瘍細胞を採取し、指示されている場合には、1:1の比率でのDCの存在下で37℃、5%CO2にて4時間共培養する。その一方で、HERV-K特異的CD8+ T細胞をHERV-K免疫マウスから磁気精製し、上記の共培養物に1:5の比率で加える。細胞を37℃、5%CO2で48時間培養する。その後、細胞を染色し、フローサイトメトリーによって解析する。サイトカイン解析は、(A)OT-I CD8+ T細胞上のT-betのGMFI、及び(B)OT-I CD8+ T細胞のCD44+ グランザイムB+ IFNγ+ TNFα+のパーセンテージについて行う。データは、平均±SEMとして示されている。
【0301】
実施例20:CD40Lまたは4-1BBLのいずれかを用いてコードさせるrMVA-HERV-Kによる感染は、腫瘍細胞株での腫瘍細胞死及びマクロファージを誘導する[仮想実施例]
腫瘍細胞株B16.OVA(A及びB)、MC38(C)、ならびにB16.F10(D)を、示されているMOIで20時間感染させる。その後、細胞を、その生存率についてフローサイトメトリーによって解析する。(A)からの試料における血清HMGB1をELISAによって定量する。骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、示されているMOIで20時間感染させる。その後、細胞を、その生存率についてフローサイトメトリーによって解析する。データは、平均±SEMとして示されている。
【0302】
実施例21:4-1BBLをコードする組み換えMVAの腫瘍内投与は、腫瘍における、Treg細胞減少及びT細胞疲弊軽減をもたらす[仮想実施例]
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日目(黒い点線)に、PBS、または5×107 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLを腫瘍内(i.t.)投与する。5日後、マウスを屠殺し、脾臓及び腫瘍を採取して染色し、蛍光色素コンジュゲート抗体によってTreg浸潤及びT細胞疲弊を評価する。(A)CD45+ 腫瘍浸潤白血球のうちのCD4+ FoxP3+ T細胞のパーセンテージ、腫瘍内浸潤CD8 T細胞上のPD-1(B)及びLag-3(C)の幾何平均蛍光強度。データは、平均±SEMとして示されている。
【0303】
実施例22:免疫チェックポイント阻害及び腫瘍抗原特異的抗体はrMVA gp-70-4-1BBLの腫瘍内投与と相乗作用する[仮想実施例]
B16.OVA腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5匹/群)を群分けし、指示されている場合(チェック印)には、200μgのIgG2a、抗TRP-1または抗PD-1を投与する。腫瘍の接種から13日目(黒い点線)、18日目及び21日目(灰色の破線)に、マウスをPBS、または5×107 TCID50のMVA-gp70-4-1BBLのいずれかで腫瘍内免疫する。腫瘍増殖を定期的に測定する。
【0304】
実施例23:サイトカイン/ケモカインMVA-BN骨格のIT免疫に対する応答は4-1BBLアジュバント作用により増大され得る
組み換えMVAが、腫瘍微小環境(TME)内部で炎症を誘導する可能性を評価するため、B16.OVA腫瘍からの組織でサイトカイン及びケモカインを分析した。まず、5×105のB16.OVA細胞をC57BL/6マウスに皮下(s.c.)移植した。10日目、マウスをPBS、または2×108 TCID50のMVA-BN、MVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内(i.t.)免疫した(n=5~6匹のマウス/群)。
【0305】
注射から6時間後、サイトカイン及びケモカインの発現を測定した(
図15)。PBSで処理した組織でのサイトカイン/ケモカインの発現は、腫瘍への針の挿入及び生理食塩水のせん断圧力によって誘導される基本炎症プロファイルを表す。IL-6、IFN-α、IL-15及びTNF-αを含むサイトカイン、ならびにCXCL1、CCL2及びMIP2等のケモカインがアップレギュレートされた(
図15)。ヒトにおいて、NF-κβの活性化により誘導され、IL-8の産生を刺激するIL-25(IL-17Eとしても知られる)も検出された(Lee et al.(2001)J.Biol.Chem.276:1660-64)。興味深いことに、MVA-OVA-4-1BBLを注射した腫瘍では、MVA-BNを注射した腫瘍、またはMVA-OVAを注射した腫瘍病変と比較して、IL-6、IFN-αまたはIL-15/IL15Rα等の炎症誘発性サイトカインの顕著な増加が示された。
【0306】
実施例24:腫瘍内(i.t.)免疫に対するサイトカイン/ケモカインの炎症誘発性応答はMVA-OVA-4-1BBLによって増大する
マウス及び腫瘍を実施例23に記載のように処置した。際だったことに、IFN-γ及びGM-CSFを含め、いくつかの炎症誘発性サイトカインは、MVA-OVA-4-1BBLによる腫瘍内免疫後にしか産生されなかった(
図16)。IL-18、CCL5、CCL3及びIL-22を含め、他の炎症誘発性サイトカインの産生は、MVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかによる腫瘍内(i.t.)免疫により増強されたが、MVA-BNまたはPBS単独では増強されなかった。
【0307】
勘案すると、このデータから、腫瘍内(i.t.)へのMVAでの免疫により、腫瘍微小環境(TME)での炎症性サイトカイン/ケモカインシフトが誘導され、それにより、炎症応答が増強され得ることが示される。MVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内免疫した場合に、MVAまたはMVA-OVAと比較して作用増大が観察された。このことから、4-1BBLの追加は、組み換えMVAへの「アジュバント作用」と言うことができる。
【0308】
実施例25:MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射後のTME及び流入領域LNの定量的及び定性的T細胞分析
MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内(i.t.)注射後に炎症により誘導される細胞プロセスをさらに深く理解するため、腫瘍内(i.t.)注射後の様々な時点における自然免疫及び適応免疫の浸潤の詳細な分析を行った。B16.OVA腫瘍担持マウスに、PBS、または2×108 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかを腫瘍内(i.t.)注射した。プライム免疫から1日後、3日後及び7日後にマウスを屠殺した。腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)を切除し、コラゲナーゼ及びDNaseで処理し、単一細胞をフローサイトメトリーによって解析した。免疫細胞集団を分析して、それらのサイズ、増殖挙動及び機能状態を決定した。
【0309】
結果から、MVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかによるB16.OVA腫瘍の注射により、腫瘍内(i.t.)免疫から7日後に、CD45
+白血球の腫瘍内への浸潤が誘導されたことが示された(
図17、最上列左のヒストグラム)。興味深いことに、TdLNにおけるCD45
+白血球数の増加は、すでにi.t.(腫瘍内)免疫後の3日目(
図17、最上列右のヒストグラム)、特に、4-1BBLを発現しているMVAの注射後に観察された。この違いは、腫瘍内(i.t.)免疫から7日後にTdLNでさらに拡大しており、このことから、MVA免疫に媒介される抗腫瘍効果が、TdLNでは、免疫から3日目にすぐに開始されることが示唆された。
【0310】
ワクチン接種に基づく抗腫瘍療法の一態様は、腫瘍特異的なCD8
+T細胞及びCD4
+T細胞の増殖及び再活性化、ならびに腫瘍でのそれらの富化である。CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞のいずれも、免疫から1週間後に腫瘍において増加した(それぞれ、
図17の2列目及び3列目、左側のヒストグラム)。CD4+ T細胞は、MVA-OVA-4-1BBLでのi.t.免疫後、腫瘍内では7日目までに増加し、TdLNでは3日目に増加が開始し、7日目でピークに達した。CD8
+T細胞は主に、7日目までに腫瘍内でのCD45
+細胞の増加に寄与した。MVA-OVA-4-1BBLの注射では、MVA-OVAの注射の場合と比較して、CD8
+T細胞集団が腫瘍(7日目)及びdLN(3日目及び7日目)の両方でさらに増加した。
【0311】
OVA特異的CD8
+T細胞の定量により、特に、MVA-OVA-4-1BBLで処置した群において、腫瘍内(i.t.)免疫から7日後の腫瘍微小環境内部での増加が明らかになった(
図17、左下)。際だったことに、TdLNにおけるOVA特異的CD8
+T細胞の増殖は、免疫から3日目にピークに達し、MVA-OVA-4-1BBL処置群において高かった(
図17、右下)。勘案すると、これらのデータは、MVA-OVA、特にMVA-OVA-4-1BBLでの腫瘍内免疫により、適応免疫応答の発生が増強され(腫瘍流入領域リンパ節では処置後3日目に開始)、7日目までに、腫瘍微小環境での抗原特異的CD8
+T細胞の顕著な増加をもたらすことを示している。
【0312】
実施例26:MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射による抗原特異的CD8+ T細胞の誘導
MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射によって誘導された、腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)内のOVA特異的CD8
+T細胞は、高い増殖能を示した。Ki67(細胞増殖の指標)を発現するOVA特異的CD8
+T細胞のパーセンテージは、PBSの場合と比較してMVA-OVA処置後のTdLNで高く、MVA-OVA-4-1BBLで免疫したマウスでさらに上昇した(
図18A)。さらに、MVA-OVAでの免疫後及びMVA-OVA-4-1BBLでの免疫後の7日目までに、腫瘍内のOVA特異的CD8 T細胞により疲弊マーカーPD-1がダウンレギュレートされたことから、機能性の回復が示唆された(
図18B)。
【0313】
Treg細胞(「制御性T細胞」ともいう)は、抗腫瘍免疫応答の強力な阻害因子である(例えば、Tanaka et al.(2017)Cell Res.27:109-118を参照のこと)。MVA-OVAの腫瘍内注射により、腫瘍におけるOVA特異的Teff/Treg比(すなわち、Treg細胞に対する「Teff」細胞、すなわち、「エフェクターT細胞」の比率)が上昇し、さらなる上昇がMVA-OVA-4-1BBLでの処置後7日目に見られた(
図18C)。したがって、MVA-OVA、特にMVA-OVA-4-1BBLによる腫瘍内処置は、腫瘍内Tregの頻度を低下させてCD8+ Tエフェクター細胞優位にしたため、抗腫瘍免疫応答にとって有益である。
【0314】
実施例27:MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射後のTME及び流入領域LNの定量的及び定性的NK細胞分析
MVA-OVAでのi.t.免疫後のNK細胞の定量では、腫瘍内免疫から1日後、腫瘍におけるNK細胞の減少が見られた(
図19、最上列左のヒストグラム)。これらの変化は、MVA-OVA-4-1BBLを用いた場合に、より顕著であった。同時に、腫瘍流入領域リンパ節(TdLN)内のNK細胞は、MVA-OVAでの免疫及びMVA-OVA-4-1BBLでの免疫のいずれでも免疫から3日後及び7日後に増加したが(
図19、最上列右のヒストグラム)、MVA-OVA-4-1BBLでは、TdLNにおけるNK細胞の最も大きい増加が誘導された。
【0315】
CD69は、NK細胞の初期活性化マーカーである。MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLのいずれのウイルスベクターでも、腫瘍及び流入領域リンパ節(TdLN、
図19、2列目)における活性化マーカーCD69の即時アップレギュレーションがもたらされた。さらに、i.t.免疫により、腫瘍及びTdLNのいずれでも様々な時点においてNK細胞においてグランザイムBの誘導がもたらされ、このことは、細胞傷害性NK細胞の機能増強を示している(
図19、3列目)。
【0316】
最後に、Ki67発現を手段とするNK細胞の増殖能を解析した。3日目、NK細胞上のKi67発現は、MVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかで腫瘍内に処置されたマウスの腫瘍及びTdLNにおいて顕著に増加していた(
図19、最終列)。
【0317】
これらの結果は、4-1BBLアジュバント添加MVA-OVA(すなわちMVA-OVA-4-1BBL)が、MVA-OVAと比較して、腫瘍内注射後にNK細胞上での表面マーカーCD69、グランザイムB及びKi67の発現をさらに増加させたことを示している。これらの実験からはまた、腫瘍内免疫療法後のT細胞及びNK細胞の抗腫瘍応答開始における流入領域リンパ節(TdLN)の重要な役割も明らかなる。
【0318】
本発明は、いかなる特定の作用機序にも拘束されないが、3日目のTdLNでのT細胞増殖、7日目の腫瘍内でのT細胞の浸潤遅延(
図17を参照のこと)は、腫瘍特異的T細胞がTdLNにおいてプライミングされて増殖し、その後、腫瘍に移行して腫瘍細胞を殺傷するというシナリオを支持することを物語っている。ウイルスベクターの腫瘍内注射はまた、TdLNにおいて直接NK細胞活性化をもたらし、それにより、さらになるDC活性化を誘導する可能性もある。
【0319】
実施例28:腫瘍内MVAがん療法におけるCD8 T細胞の役割
腫瘍及びTdLNにおけるT細胞応答の分析(例えば、
図17)により、腫瘍内(i.t.)処置後の両部位における腫瘍特異的T細胞の増殖が示された。MVA-OVA-4-1BBLに媒介された抗腫瘍効果へのT細胞の寄与を調べるために実験を行った。これらの実験では、C57BL/6マウスにB16.OVAメラノーマ細胞(5×10
5細胞)を注射し、数回の処置のうちの1回の後、腫瘍増殖をモニタリングした。処置には、100μgのCD8-T細胞枯渇抗体(「αCD8」、クローン2.43)またはアイソタイプコントロール抗体の存在下または非存在下での、PBSまたはMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内(i.t.)注射を含めた。MVA-OVA-4-1BBLの(i.t.)注射は、腫瘍が直径5mmに達した時点で行われ、1週間以内に2回繰り返した。MVA-OVA-4-BBLの初回注射の前日、マウスに、抗CD8抗体またはIgG2b抗体のいずれかをi.p.注射し、この処置を以降の2週間以内に4回繰り返した。
図20に示されているデータから、CD8 T細胞が、有効なMVA腫瘍療法に不可欠であったことが示される。勘案すると、これらのデータは、腫瘍及びTdLNにおける腫瘍特異的CD8 T細胞のMVA誘導性の活性化及び増殖が、腫瘍増殖制御にとって重要な事象であることを示している。
【0320】
実施例29:MVA-OVA及びMVA-OVA-4-1BBLに媒介される抗腫瘍効果のBatf3+ DC依存性
MVA-OVA-4-1BBLによって誘導される抗腫瘍免疫応答に寄与する基礎となる細胞体及び分子体を解明するため、様々な免疫細胞が果たす役割を調べた。強力に貪食を行って、適応免疫系の細胞に抗原及び共刺激シグナルを提示する能力を持つ樹状細胞(DC)は、抗腫瘍免疫における重要な因子とされている。CD8α+ DC(「cDC1」としても知られる)を含め、DCの様々なサブタイプが、腫瘍に対する強力な免疫応答の活性化に関与することが示唆されている。このDCサブセットには、免疫応答の際に抗原を交差提示する特有の能力があり、CD8α+ DCは、感染(Hochrein et al.(2001)J.Immunol.166:5448-55、Martinez-Lopez et al.(2014)Eur.J.Immunol.45:119-29)及びがん(Broz et al.(2014)Cancer Cell 26:638-52)に応答してIL-12を産生する主要細胞である。CD8α+ DCはまた、腫瘍関連抗原の交差提示により抗腫瘍CD8+ T細胞を強力に誘導する細胞でもある(Sanchez-Paulete et al.,(2015)Cancer Discovery 6:71-79、Salmon et al.(2016)Immunity 44:924-38)。CD8α+ DCの発生は、転写因子Batf3に極めて依存している(Hildner et al.(2008)Science 322:1097-1100)。
【0321】
腫瘍内MVAがん療法にとってのこのDCサブセットの重要性を評価するために、野生型B16.OVA腫瘍担持マウス、及びBatf3欠損(Batf3-/-)B16.OVA腫瘍担持マウスを使用した。
図21Aは、B16.OVA腫瘍が、交差提示するDCの非存在下(Batf3-/-)で劇的に速く増殖したことを示しており、これは、腫瘍に対する免疫応答の誘導における、この抗原提示細胞(APC)サブセットの重要な役割を示している。これまでの実験と一致して、野生型マウスでは、MVA-OVAの腫瘍内注射により腫瘍増殖遅延がもたらされ、症例の1例では、腫瘍の完全消失がもたらされた。この効果は、マウスにMVA-OVA-4-1BBLを注射した場合に改善されており、MVA-OVA-4-1BBLにより処置された5匹中3匹のマウスで腫瘍が拒絶された(
図21A)。興味深いことに、交差提示しているDCの非存在下(Batf3-/-)、腫瘍内MVA免疫療法は、野生型群と比較してまったく損なわれなかった(
図21A)。しかしながら、Batf3-DCは、4-1BBLにより誘導される抗腫瘍応答に関与すると思われる(
図21A、下図)。
【0322】
初回免疫から11日後の末梢血中CD8
+Tリンパ球集団のフローサイトメトリー解析(
図21B)では、MVA-OVA-4-1BBLで免疫したBatf3
-/-腫瘍担持マウスにおけるOVA特異的CD8
+T細胞の出現頻度は、対応する野生型マウスと比較してわずかしか低下しなかったことが示された。本発明は、いかなる特定の作用機序にも拘束または依存しないが、これらのデータは、Batf3依存性DCが、MVAを用いる腫瘍内がん療法に重複した役割を果たすことを示唆している。
【0323】
実施例30:MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内投与に対するNK細胞の役割
NK細胞は、4-1BBを発現することが知られており、NK細胞上での4-1BBの結合は、これらの細胞の増殖及び細胞傷害性の増大をもたらすことが示されている(Muntasell et al.(2017)Curr.Opin.Immunol.45:73-81)。前の実験(
図19を参照のこと)では、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射が、増殖増強と併せて、NK細胞上での活性化マーカーCD69及び細胞傷害性マーカーのグランザイムBを強力にアップレギュレートすることが見出された。
【0324】
4-1BBLにより誘導される抗腫瘍免疫応答におけるNK細胞の役割を調べるために、IL15Rα
-/-マウスを使用した。IL-15受容体アルファサブユニット(IL-15Rα)は、NK細胞の発生に不可欠なことが示されている多機能サイトカインであるIL-15の高親和性結合を媒介する(Lodolce et al.(1998)Immunity 9:669-76)。野生型のB16.OVA腫瘍担持マウスと、IL15Rα欠損(IL15Rα
-/-)B16.OVA腫瘍担持マウスを作製し、MVA-OVAまたはMVA-OVA-4-1BBLのいずれかにより腫瘍内免疫した。MVA-OVAで処置したマウスでは、IL-15Rαの有無にかかわらず同程度の治療効果が示された(
図22A)。興味深いことに、MVA-OVA-4-1BBLを用いた場合に野生型マウスで観察された有益性(5匹中3匹のマウスで腫瘍拒絶)は、MVA-OVA-4-1BBLで処置したIL15Rα欠損腫瘍担持マウスでは完全に失われていた(5匹中1匹のマウスで腫瘍拒絶;
図22Aを参照のこと)。これらの結果は、腫瘍接種後のマウスの生存率にも表れている(
図22B)。
【0325】
IL15Rαの欠損は、マウスにおいて、NK細胞の発生に影響を及ぼすのみならず、T細胞のホメオスタシス及びLNへの移行も低減させ、CD8メモリーT細胞を選択的に減少させることが知られている(Lodolce et al.(1998)Immunity 9:669-76)。したがって、これらの処置に対するT細胞応答も調べた。我々の先のデータと一致して、野生型動物において、MVA-OVAによる腫瘍内(i.t.)免疫時にOVA特異的CD8 T細胞が誘導され、これが、MVA-OVA-4-1BBLによってさらに増大することが観察された(
図22C)。しかしながら、IL15Rα
-/-マウスにおけるOVA特異的T細胞応答は、野生型マウスで見られた応答と同等であった。
【0326】
本発明は、いかなる特定の作用機序または作用経路にも拘束されないが、これらの所見は、IL15Rα-/-腫瘍担持マウスで腫瘍特異的T細胞応答が開始され得ることを示しており、したがって、4-1BBLにより増強される、NK細胞活性化及び機能が、腫瘍内MVA-OVA-4-1BBL処置の治療効果に寄与するという考えが支持される。
【0327】
実施例31:MVA-OVA-4-1BBLによる腫瘍内免疫に応答したNK細胞依存性サイトカイン/ケモカインプロファイル
NK細胞上の4-1BBL-4-1BB相互作用によって選択的に誘導されたサイトカインを特定するため、PBS、または5×107 TCID50のMVA-OVAもしくはMVA-OVA-4-1BBLで腫瘍内処置した野生型またはIL15Rα-/-のB16.OVA腫瘍担持マウスからの腫瘍組織において、サイトカイン及びケモカインを分析した。
【0328】
先の実験では、組み換えMVAの腫瘍内注射から6時間後に、多数のサイトカイン及びケモカインが増加したことが示された(
図15及び
図16)。これらの実験では、MVA-OVA-4-1BBLの腫瘍の注射により、MVA-OVAの注射と比較して、4-1BBLでの刺激時にNK細胞により産生されることが知られているIFN-γ、CCL3及びCCL5等の炎症誘発性のサイトカインまたはケモカインの顕著な産生増加が示された(
図23)。4-1BBLによって誘導されるこの増加は、IL15Rα
-/-マウスでは完全に抑制されていたことから、rMVA-OVA-4-1BBLの腫瘍内注射が、注射から6時間後、NK細胞から発生する、腫瘍微小環境における別個のサイトカインプロファイル及びケモカインプロファイルを誘導することが示された。
【0329】
実施例32:MVA-gp70-4-1BBLと比較したMVA-gp70-CD40Lによる腫瘍内免疫の抗腫瘍効果
Gp70は、間質及び免疫細胞の組成の点で別個の腫瘍微小環境(TME)をそれぞれ示す多くの同系腫瘍モデル(B16.F10、CT26、MC38、4T1、EL4等)で発現する自己腫瘍抗原である。この実施例では、B16.F10腫瘍担持マウスの腫瘍内免疫において、CD40Lまたは4-1BBLのいずれかに加えて腫瘍抗原gp70をコードするMVAの効力を試験した。
【0330】
B16.F10メラノーマ細胞をC57BL/6マウスに皮下注射した。腫瘍が約50mm
3のサイズに達した時点で、マウスをPBS、MVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-4-1BBLまたはMVA-CD40Lにより腫瘍内免疫した。結果は、
図24に示されている。
【0331】
MVA-gp70による免疫では、一過性の軽度の腫瘍増殖制御が誘導された。この抗腫瘍効果は、ウイルスがCD40Lを発現した場合に増強させることができた。しかしながら、MVA-gp70-4-1BBLによる腫瘍内免疫が最も強力な治療効果を生じ、5匹中2匹の処置動物において完全腫瘍消失をもたらした(
図24A)。
【0332】
際だったことに、MVA-gp70-4-1BBLでの処置後に腫瘍が治癒したマウスでは、腫瘍があった局部の色素沈着の消失が示された(
図24B)。この色素脱失は、自己免疫病態の白斑を示すものであり、自己反応性T細胞によるメラニン細胞の破壊の結果である。このメラニン細胞の破壊は、組み換えMVAによる免疫系の活性化が、MVAによりコードされるTAA(この実施例ではgp70)に限定されたものではないことを示唆している。むしろ、免疫系の活性化の他の抗原に対するこうした拡大(エピトープ拡大として知られる現象)は、より広範な免疫応答をもたらし、より優れた治療転帰を提供し得る。
【0333】
免疫によって誘導される抗原特異的T細胞応答を評価するために、初回免疫から11日後、血液を採取し、抗原特異的T細胞の存在について分析した。MVA-gp70及びMVA-gp70-CD40L、ならびにMVA-CD40L及びMVA-4-1BBLのいずれで免疫した場合も、測定可能なp15E特異的T細胞応答が誘導され、その範囲は1~2%であった(
図24C)。重要なことには、この応答は、MVA-gp70-4-1BBLを投与されたマウスにおいて著しく(5倍超)増大した。p15Eペプチドによる再刺激に対するこの抗原特異的T細胞応答は、異なる処置群における治療効果と相関した。
【0334】
実施例33:MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lの腫瘍内免疫の抗腫瘍効果
4-1BBL及びCD40Lと共に腫瘍抗原gp70を発現する組み換えMVAを作製し、B16メラノーマモデルにおいて腫瘍内試験を行った。B16.F10メラノーマ細胞をC57BL/6マウスに皮下注射した。腫瘍が約50mm3に達した時点で、マウスをPBS、MVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L、またはgp70を発現しない対応するMVAコンストラクトにより腫瘍内免疫した。
【0335】
MVA-gp70による免疫では、一過性の顕著な腫瘍増殖制御が誘導された(
図25A)。この抗腫瘍効果は、ウイルスがCD40Lまたは4-1BBLを発現した場合に増強させることができた。しかしながら、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる腫瘍内免疫が、最も強力な治療効果をもたらし、処置マウス5匹中4匹において完全腫瘍消失がもたらされた(
図25A)。際だったことに、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lで処置した治癒マウス4匹中3匹で、腫瘍のあった場所の色素沈着消失が示され、上記実施例32で考察したように、自己免疫病態の白斑を示している。
【0336】
加えて、初回免疫から11日後、gp70特異的T細胞応答を血液中で測定した。MVA-gp70及びMVA-gp70-CD40L、ならびにMVA-CD40L及びMVA-4-1BBLで免疫した場合に、測定可能な腫瘍特異的T細胞応答が誘導され、その範囲は1~2%であった。この応答は、MVA-gp70-4-1BBLを投与されたマウスにおいて劇的に(5倍超)増大した(
図25B)。
【0337】
勘案すると、B16.F10メラノーマモデルでは、抗腫瘍効果は、MVA-gp70にCD40Lまたは4-1BBLのいずれかをアジュバント添加した場合に増強させることができたが、さらに強力な作用が、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lにして4-1BBLとCD40Lとを併せて発現させた場合に観察された。
【0338】
実施例34:CT26.WT腫瘍における、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる腫瘍内免疫療法
その後、コンストラクトを、T細胞及び骨髄系細胞が豊富であることが報告され、免疫原性があるとされているCT26大腸癌モデルを用いて、試験した(例えば、Mosely et al.(2016)Cancer Immunol.Res.5:29-41を参照のこと)。Balb/cマウスにCT26.wt大腸癌細胞を皮下(s.c.)注射した。腫瘍が約60mm3に達した時点で、マウスをPBS、MVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40LまたはMVA-4-1BBL-CD40Lにより腫瘍内免疫した。
【0339】
MVA-gp70によるi.t.免疫では、一過性の顕著な腫瘍増殖制御が誘導された。この抗腫瘍効果は、MVAがCD40Lを発現した場合には増強されなかったが、際だったことに、MVA-gp70-4-1BBLによる免疫では最も強力な治療効果が得られ、全処置動物で完全腫瘍消失がもたらされた(
図26A)。しかしながら、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる処置では、より優れた治療効果は得られなかった。留意すべきことに、共刺激分子のみを含有し、gp70を含有しないウイルスでも、大幅な腫瘍増殖遅延がもたらされたが、MVA-gp70-4-1BBLに匹敵する結果を得ることはできなかった。これらの所見は、処置マウスの全生存率に表れた(
図26B)。
【0340】
H2-Ld CD8+ T細胞エピトープAH-1に対するGp70特異的T細胞応答は、MVA-gp70及びMVA-gp70-CD40Lにより処置された動物の血液において容易に検出された(
図26C)。この応答は、MVA-gp70-4-1BBLを投与されたマウスで劇的に(10倍超)増大し、このことは、
図26A及び26Bに示されている治療効果と相関した。MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる処置ではまた、血液におけるAH-1特異的T細胞応答も増強された(
図26C)。
【0341】
実施例35:B16.F10腫瘍担持マウスへのMVA-gp70-4-1BBL-CD40LのIT注射後の腫瘍微小環境及び腫瘍流入領域LNの包括的分析
上記のデータから、MVA-gp70-4-1BBL-CD40LによるB16.F10腫瘍担持マウスの腫瘍内処置が、処置マウスの80%に腫瘍拒絶をもたらすことが示された(
図26を参照のこと)。この腫瘍モデルの腫瘍微小環境(TME)及びTdLNを調べるため、B16.F10腫瘍担持マウスに、PBS、または5×10
7 TCID50のMVA-gp70、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40LもしくはMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lのいずれかを腫瘍内(i.t.)投与した。プライム免疫から3日後にマウスを屠殺した。3日目という選択は、その時点において自然免疫系成分及び適応免疫系成分の両方で変化が示された、OVA系での先の実験に基づいた(
図17を参照のこと)。腫瘍及びTdLNを切除し、フローサイトメトリーを用いて単一細胞を解析するためにコラゲナーゼ/DNaseで消化した。免疫細胞集団の存在量、ならびにそれらの増殖挙動及び機能状態を評価した。
【0342】
4-1BBLアジュバント添加MVA及びCD40Lアジュバント添加MVAの腫瘍内注射では、ペンタマー染色によって測定した場合、3日目時点で、腫瘍内のCD8 T細胞またはp15E特異的T細胞の数においての有益性は得られなかった。しかしながら、TdLNでは、MVA-gp70及びMVA-gp70-CD40LによりCD8 T細胞の増殖を生じさせ、4-1BBLの付加により、さらに大きい効果を生じさせた(
図27、右上)。4-1BBLの付加により生じた増加は、TdLN内のp15E特異的CD8 T細胞でさらに顕著であり、MVA-gp70-4-1BBLまたはMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lのいずれかによるi.t.免疫では、腫瘍特異的CD8 T細胞が増加した(
図27、右中央)。p15E特異的CD8 T細胞の数は、それらの細胞の増殖状態とも相関し、例えば、4-1BBLをgp70と併せて、また任意でCD40Lを加えてMVAに付加することにより、最多数のKi67+ gp70-p15E CD8 T細胞がTdLNで誘導された(
図27、右下)。
【0343】
これらのデータは、MVA-gp70による腫瘍内(i.t.)免疫では、処置後3日目、腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節における適応免疫応答の生成が増強されるが、4-1BBL、または4-1BBL及びCD40Lによるアジュバント作用は、TdLNにおけるp15E特異的CD8 T細胞応答を特異的に増大させることを示している。
【0344】
実施例36:MVAの腫瘍内注射後の腫瘍及びTdLNにおけるNK細胞の誘導
MVA-OVAの腫瘍内(i.t.)注射により、1日目及び3日目にそれぞれ、NK細胞の活性化及び増殖が生じた(
図19)。次いで、様々なMVAコンストラクトの注射後3日目の、NK細胞の浸潤、活性化及び増殖を調べた。組み換えMVAによるi.t.免疫後のNK細胞の定量から、腫瘍(
図28、左上)及びTdLN(
図28、右上)に浸潤しているNK細胞の増加が示された。MVAが4-1BBLをコードした場合(例えば、MVA-gp70-4-1BBL及びMVA-gp70-4-1BBL-CD40L)に浸潤が増加した。MVA-gp70の腫瘍内(i.t.)注射により、腫瘍(
図28、左中央を参照のこと)及びTdLN(
図28、右中央)においてNK細胞(Ki67+)の増殖が誘導され、4-1BBL、または4-1BBL及びCD40Lによるアジュバント作用により、TdLNにおいてこの作用が増強された。
【0345】
グランザイムBは、NK細胞の細胞傷害性のマーカーである(例えば、Ida et al.(2005)Mod.Rheumatol.15:315-22を参照のこと)。グランザイムB+ NK細胞は、組み換えMVAによる腫瘍内注射に続いて腫瘍及びTdLNにおいて誘導された(
図28、左下)。この実施例でも、組み換えMVAへの4-1BBLまたは4-1BBL-CD40Lの付加は、TdLNにおける細胞傷害性NK細胞の数をわずかに増加させた(
図28、右下)。
【0346】
勘案すると、これらのデータは、腫瘍内(i.t.)免疫療法後のNK細胞及びTAA特異的T細胞の増殖及び機能における、MVAがコードする4-1BBL-CD40Lの重要な役割を強調している。したがって、gp70及び4-1BBL、またはgp70、4-1BBL及びCD40Lをコードする組み換えMVAによる腫瘍内処置により、gp70等の内在性レトロウイルス自己抗原に対するT細胞応答を増強することができる。
【0347】
実施例37:CT26.WT腫瘍担持マウスにおける、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる静脈内免疫療法
上述の実験では、腫瘍抗原gp70を共刺激分子4-1BBL及びCD40Lと共にコードする新規MVAコンストラクトが、腫瘍内に適用した場合に非常に強力であったことが示された(
図25及び26)。加えて、Lauterbach et al.((2013)Front.Immunol.4:251)は、MVAにコードされたCD40Lが、静脈内に投与された場合に自然免疫応答及び適応免疫応答を増強することを見出した。この実施例では、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによる静脈内(i.v.)免疫でも、腫瘍増殖制御が得られるかを問うた。
【0348】
CT26.WT大腸癌細胞をBalb/cマウスに皮下注射した。腫瘍が約60mm3に達した時点で、マウスをPBS、またはMVA-Gp70、MVA-Gp70-4-1BBL、MVA-Gp70-CD40L、MVA-gp70-4-1BBL-CD40L及びMVA-4-1BBL-CD40L(gp70不含)で静脈内免疫した。MVA-gp70によるi.v.免疫では、動物5匹中2匹で腫瘍消失がもたらされた(
図29A)。4-1BBLまたはCD40Lのいずれかを含有するgp70発現ウイルスにより処置したマウスでは、抗腫瘍応答の著しい改善が示され、それぞれ、治癒マウスは5匹中3匹、及び5匹中4匹という結果であった。重要なことには、MVA-gp70-4-1BBL-CD40Lによるi.v.処置により、全処置マウスで腫瘍増殖制御の延長がもたらされ、5匹中3匹のマウスで腫瘍が拒絶された(
図29A)。留意すべきことに、共刺激分子のみを含有し、gp70は含有しない組み換えMVAでも、顕著な腫瘍増殖遅延がもたらされたが、MVA-gp70-4-1BBL、MVA-gp70-CD40LまたはMVA-gp70-4-1BBL-CD40Lの場合に観察されたような腫瘍拒絶には至らなかった(
図29A)。これらの所見は、処置マウスの全生存率に表れた(
図29B)。
【0349】
PBLのペプチド再刺激による、血液中の腫瘍指向性CD8 T細胞応答の解析から、MVA処置全群でのAH1特異的CD8 T細胞の顕著な誘導、それにより、この誘導がCD40Lの存在下(すなわち、MVA-gp70-CD40L及びMVA-gp70-4-1BBL-CD40L)でさらに増大し得ることが明らかになった(
図29C)。
【0350】
実施例38:HERV-K抗原を含む組み換えMVA
ヒト内在性レトロウイルスKスーパーファミリータンパク質(HERV-K)、具体的には、ERV-K-env及びERV-K-gagであるTAAを含む、MVA系ベクター(「MVA-mBN489」、「MVA-HERV-Prame-FOLR1-4-1-BBL-CD40L」ともいう)が設計された。MVAはまた、ヒトのFOLR1及びPRAMEをコードするよう、またh4-1BBL及びhCD40Lを発現するようにも設計された。
【0351】
同様の「MVA-HERV-Prame-FOLR1-4-1-BBL」と呼ばれるMVA系ベクターは、TAA ERV-K-env及びERV-K-gagならびにヒトのFOLR1及びPRAMEを発現するよう、またh4-1BBLを発現するよう設計された。具体的には、ベクター「MVA-BN-4IT」(「MVA-mBN494」または「MVA-HERV-FOLR1-PRAME-h4-1-BBL」)は、
図30Aに概略的に例示されている。エンベロープ(env)タンパク質及び群特異抗原(gag)タンパク質をコードするHERV-K遺伝子は通常、健全なヒト組織では休眠状態であるが、多くの腫瘍で活性化されている。FOLR1及びPRAMEは、乳癌及び卵巣癌の細胞において特異的にアップレギュレートされる遺伝子である。共刺激分子4-1-BBLの追加発現は、TAAに対する免疫応答を増強させることを意図している。
【0352】
「MVA-HERV-Prame-FOLR-CD40Lと呼ばれる別のMVA系ベクターは、TAA ERV-K-env及びERV-K-gagならびにヒトのFOLR1及びPRAMEを発現するよう、またhCD40Lを発現するよう設計された。これらのコンストラクトの各々は、本発明の方法において有用である。
【0353】
例示的配列は当該技術分野で既知であり、また提供されている配列表にも記載されている。関連するMVAに対して必要な機能を提供する限り、どの配列も本発明の組成物及び方法に使用することができる。
【0354】
上記のERV-K env及びgagの配列では、少なくとも10の代表的配列からアミノ酸コンセンサス配列が生成され、以下に示すように、潜在的な免疫抑制ドメインが変異により不活性化され、部分的に免疫優勢T細胞エピトープHERV-K-melに置き換えられた。好適な配列は、配列番号5(ERV-K-gag合成タンパク質コンセンサス配列)、配列番号6(ERV-K-gag合成ヌクレオチド配列)、配列番号7(ERV-K-env/MEL合成タンパク質配列)、及び配列番号8(ERV-K-env/MELヌクレオチド配列)に記載されている。
【化1】
【0355】
これらのMVAのうちいくつかでは、hFOLR1及びPRAMEは、融合タンパク質として産生されるよう設計された。FOLR1(葉酸受容体アルファ)は、葉酸受容体のファミリーに属する。これは、葉酸及びその誘導体に対する高親和性を有し、膜タンパク質として分泌されるかまたは細胞表面に発現される。膜貫通タンパク質は、GPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)アンカーを介して原形質膜に係留されており、タンパク質のC末端領域のセリン(Ser)残基を介して小胞体(ER)内で結合している可能性が高い。GPI-アンカーによるFOLR1の修飾と、ERでのhFOLR1-hPRAME融合タンパク質の完全なプロセシングを回避するため、アミノ酸234~257のC末端領域(Ser残基を含む)を欠失させた。
【0356】
PRAME(メラノーマ優先発現抗原)は、転写調節因子タンパク質である。これは、ヒトメラノーマの抗原として最初に報告され、自己細胞傷害性のT細胞媒介性免疫応答を引き起こし、様々な固形がん及び血液がんで発現する。PRAMEは、レチノイン酸受容体への結合を介してレチノイン酸シグナル伝達を阻害し、それにより、がん細胞に増殖優位性を提供し得る。PRAMEの機能性には核局在化を必要とするため、PRAMEの潜在的な核局在化シグナル(NLS)を、hFOLR1-hPRAME融合タンパク質の標的変異によって改変した。
【0357】
したがって、hFOLR1-hPRAME融合タンパク質のアミノ酸配列では、FOLR1を、C末端のGPIアンカーシグナルを欠失させることにより改変し、PRAMEでは、2つの潜在的な核局在化シグナルをアミノ酸置換により不活性化させた。この融合タンパク質では、hFOLR1のN末端シグナル配列は、PRAMEの核局在化を回避するための追加的保護機構として働くよう、融合タンパク質のER指向性及び不完全プロセシングをもたらすはずである。
【0358】
ヒトFOLR1及びヒトPRAMEのタンパク質配列はそれぞれ、NCBI参照配列NP_000793.1及びNP_001278644.1に基づいた。上記の改変に加え、融合タンパク質のヌクレオチド配列をヒトのコドン使用について最適化し、ポリヌクレオチド区間、反復エレメント、及び負のシス作用エレメントを除去した。なお、ヌクレオチド配列は、配列番号10(「hFOLR1Δ_hPRAMEΔ融合」ヌクレオチド配列)に記載され、融合タンパク質配列は、配列番号9に記載されている。
【化2】
【0359】
このMVAに使用した膜結合型ヒト4-1BBLのタンパク質配列は、NCBI参照配列NP_003802.1と100%の同一性を示し、使用された膜結合型ヒトCD40Lのタンパク質配列は、NCBI参照配列NP_000065.1と100%の同一性を示す。4-1BBL及びCD40Lいずれの場合も、ヌクレオチド配列をヒトのコドン使用について最適化し、ポリヌクレオチド区間、反復エレメント、及び負のシス作用エレメントを除去した。
【0360】
NCBI参照配列NP_000065.1.からのhCD40Lのアミノ酸配列は配列番号1に記載されており、hCD40Lのヌクレオチド配列は配列番号2に記載されている。NCBI参照配列NP_003802.1からのh4-1BBLのアミノ酸配列は配列番号3に記載されており、h4-1BBLのヌクレオチド配列は配列番号4に記載されている。
【0361】
各コード領域は、ERV-K-gag及びh4-1BBLがいずれもPr1328プロモーターの制御下に置かれた以外は、異なるプロモーターの制御下に置かれた。Pr1328プロモーター(100bpの長さ)は、ワクシニアウイルスプロモーターPrB2Rの正確なホモログである。これは、前初期の強い発現及び後期の低レベルでの発現を誘導する。組み換えMVA-mBN489では、Pr13.5長プロモーターがERVK-env/MELの発現を誘導する。このプロモーターは、天然MVA13.5L遺伝子の発現を誘導する014L/13.5L間の124bpの遺伝子間領域を含み、2つの初期プロモーターコア配列によって生じる非常に強い初期発現を示す(Wennier et al.(2013) PLoS One 8(8):e73511を参照のこと)。ここでhCD40Lの発現を誘導するために用いたMVA1-40kプロモーターは、ワクシニアウイルスWyethのHind III H領域から161bpの断片として1986年に最初に単離された。これは、158bpのワクシニアウイルスWyeth、及び後期遺伝子転写因子VLTF-4を誘導する094L/095Rの遺伝子間領域内のMVAゲノムを含む。ここでhFOLR1-hPRAME融合タンパク質の発現を誘導するために用いたプロモーターPrH5mは、ワクシニアウイルスH5遺伝子プロモーターの改変型である。これは、強い初期及び後期エレメントからなり、組み換えMVAの感染の初期及び後期の両段階における発現をもたらす(Wyatt et al.(1996) Vaccine 14:1451-58を参照のこと)。
【0362】
MVA-mBN494に基づいて(上記を参照のこと)、ERVK-env/MELに改変が含有されるよう、さらに別のベクターが設計された。得られたベクターは「MVA-mBN502」と呼ばれ、
図31Cに概略的に例示されている。MVA-mBN502はまた、改変ERVK-env/MELに加え、ERVK-gag、hFOLR1-hPRAME融合タンパク質、及びh4-1BBLもコードする。
【0363】
本来、HERVK-envは、翻訳後に切断されるシグナルペプチド、表面(SU)及び膜貫通ユニット(TM)からなる。2つのドメインへの切断は、細胞のプロテアーゼにより達成される。RSKR切断モチーフは、全長90kDaのタンパク質を切断してSU(およそ60kDa)ドメインとTM(およそ40kDa)ドメインにするのに必要かつ十分である。上記のMVA-mBN494の調製についての記載のように、少なくとも10の代表的配列に由来するenvのアミノ酸コンセンサス配列が生成され、TMの潜在的な免疫抑制ドメインが変異によって不活性化された。導入された変異により、免疫抑制ドメインのかなりの部分が免疫優勢T細胞エピトープHERV-K-melに置き換えられた。この導入遺伝子(MVA-mBN494に使用)をERVK-env/MELと命名した(
図31A)。
MVA-mBN494と比較して、ERVK-env/MELのTMドメインは、MVA-mBN502では欠失している。このERVK-env/MELバリアントを「ERVK-env/MEL_03」と呼ぶことにし、欠失させたRSKRフューリン切断部位を除くSUドメイン全体で構成されている。MELペプチドをC末端に挿入し、続けてTMドメインの6つのアミノ酸(疎水性の強い融合ペプチド配列を除外)を挿入した。さらに、この改変ERVK-env/MELを、ヒトPDGF(血小板由来増殖因子)受容体に由来する膜アンカーを付加することにより原形質膜に指向させた。この膜アンカーを、可動性のグリシン含有リンカーを介してSUドメインに結合させた(
図31B)。得られたERVK-env/MELバリアント、すなわち、ERVK-env/MEL_03は、MVA-mBN502に含有されている(
図31C)。バリアントの好適な配列は、配列番号11(ERV-K-env/MEL_03合成タンパク質配列)及び配列番号12(ERV-K-env/MEL_03ヌクレオチド配列)に記載されている。
【0364】
実施例39:MVA-HERV-FOLR1-PRAME-h4-1-BBL(MVA-BN-4IT)の生物活性
MVA-BN-4IT(すなわち、MVA-HERV-FOLR1-PRAME-h4-1-BBL;上記実施例38も参照のこと)による感染が、ヒト細胞でのHLA分子によるワクチン由来腫瘍抗原の提示をもたらすかどうかを調べた。このために、抗原提示細胞上のHLA-ABCペプチド複合体を免疫沈降させ、質量分析法により同定することができるのはどちらのHLA結合ペプチドなのかを分析した。
【0365】
抗原はHLAクラスIに搭載され得るため(Nyambura L. et al. J.Immunol 2016)、まず、ヒト単核球細胞株THP-1を、抗原提示能を示すマクロファージに分化させた(Daigneault et al. PLoS One,2010)。事実、THP-1細胞は、米国及びヨーロッパで最も頻度が高いハプロタイプの1つである(母集団の約30%)HLA-A*0201
+を発現する。HLA-A*02:01:01Gとは別に、THP-1細胞は、HLA-B*15及びHLA-C*03を発現するという報告があった(Battle R. et al.,Int. J. of Cancer)。ここでは、8×10
5/mlのTHP-1細胞を、200ng/mlのPMA(ホルボール-12-ミリスタート-13-アセタート)の存在下で3日間培養してから培地を交換し、細胞を、PMAの非存在下でさらに2日間培養した。5日目、細胞に、4のInfU(感染単位)のMVA-BN-4ITを12時間感染させた。
図30Bに示されるように、HERVK-env/MEL、HERVK-gag及び融合タンパク質FOLR1-PRAMEは、THP-1細胞のMVA-BN-4IT感染後に発現された(
図30Bの「mBN494」)。対照的に、非感染THP-1細胞では抗原は内因性発現されなかった(
図30Bの「ctr」)。
【0366】
次に、「ProPresent」HLA-ABCリガンドーム分析(ProImmune)を実施した。MVA-BN-4IT感染細胞では、4つの腫瘍抗原由来ペプチド、すなわち、HERV-K envペプチドILTEVLKGV、HERV-K gagペプチドYLSFIKILL及びPRAMEペプチドのALQSLLQHL及びSLLQHLIGLが同定された。同定された2つのPRAMEペプチドは大部分が重複しており、共通のコアエピトープを共有している可能性が高い。どちらのペプチドも、HLA-A*02:01に非常に強く結合することが予測されているため、ALQSLLQHLは、結合順位がHLA-B*15とほぼ同様である。注目すべきことに、PRAMEペプチドSLLQHLIGLは、ヒトにおいて、免疫原性HLA-A*0201に提示される細胞傷害性Tリンパ球エピトープとしてすでに報告されている(Kessler JH. et al.,J Exp Med.,2001)。勘案すると、データから、MVA-BN-4ITにより発現された抗原は、感染細胞のHLAに取り込まれ得ることが示されている。
【0367】
さらに、MVA-BN-4ITが、4-1-BBLを、その受容体である4-1-BBに結合する機能性形態で発現する能力について試験した。その目的のため、市販キット(「4-1BB Bioassay」、Promega)を使用した。アッセイは、h4-1-BBを発現している遺伝子操作されたJurkat T細胞株、及び4-1-BBリガンド刺激に応答することができる応答エレメント(RE)により駆動されるルシフェラーゼレポーターからなる。h4-1-BBがh4-1-BBLによって刺激されると、REは、細胞内部での細胞ルシフェラーゼ産生を活性化させる。細胞を溶解させ、「Bio-Glo」試薬(Promega)を添加した後、ルミノメーターを使用して発光を測定し、定量する。簡潔に述べると、HeLa細胞を播種し(1×10
6)、それぞれに、
図30Cに示すMVAに基づくコンストラクトを感染させ(TCID
50=2)、一晩(37℃、5%CO
2)培養した後、Jurkat-h4-1-BB細胞と共に(HeLa:Jurkat=4:1の比)6時間共培養した。Fcと架橋させたHisタグ付きh4-1BBLを参照(陽性コントロール)として使用し、1μg/mlの架橋h4-1BBlと共に培養したJurkat-h4-1BB細胞によるルシフェラーゼ発現を1に設定した(
図30C、点線)。MVA-BN(すなわち、h4-1-BBLをコードしない)を骨格コントロールとして使用した。
図30Cに示されるように、h4-1-BBLを発現しているMVAに基づくベクターで感染させたHeLa細胞では、参照と比較して(共培養Jurkat-h4-1-BB細胞により)6倍高いルシフェラーゼ産生が誘導された。注目すべきことに、MVA-BN-4ITにより媒介されたルシフェラーゼ産生は、MVAベクターを発現している他の2つのh4-1-BBLにより媒介されたものよりもさらに高かった。したがって、MVA-mBN494は、自身の4-1BB受容体に効果的に結合する機能性h4-1-BBLを発現する。
【0368】
実施例40:brachyury抗原をコードするMVAによる腫瘍内免疫
極めて弱毒化された非複製ワクシニアウイルスMVA-BN-Brachyuryは、様々ながんに対して特異的かつ強い免疫応答を誘発させるために4つのヒト導入遺伝子からなるよう設計されている。ベクターは、brachyuryヒトTAA、ならびに3つのヒト共刺激分子、すなわち、B7.1(CD80としても知られる)、細胞間接着分子-1(ICAM-1、CD54としても知られる)及び白血球機能関連抗原-3(LFA-3、CD58としても知られる)を共発現する。3つの共刺激分子(すなわち、TRIad of COstimulatory Molecules(共刺激分子の三連構造)(TRICOM(商標))は、brachyuryヒトTAAに対する免疫応答を最大限にするために含まれている。
【0369】
Brachyuryは、T-boxファミリー内の転写因子であり、がんの進行と関連する過程であるEMTのドライバーである。正常組織と比較して、がん細胞で過剰発現し、いくつかの治療法に対する、がん細胞の抵抗性、及び転移能と関連付けられている。brachyuryを発現することが知られているがんとしては、肺癌、乳癌、卵巣癌、脊索腫、前立腺癌、結腸直腸癌及び膵臓腺癌が挙げられる。
【0370】
brachyuryをコードするMVAの安全性及び潜在的な治療効果を示すために、インビトロ試験及び臨床試験が行われた。例えば、Hamilton et al.(2013)Oncotarget 4:1777-90(“Immunological targeting of tumor cells undergoing an epithelial-mesenchymal transition via a recombinant brachyury-yeast vaccine”)、Heery et al.(2015a)J.Immunother.Cancer 3:132(“Phase I,dose escalation,clinical trial of MVA-brachyury-TRICOM vaccine demonstrating safety and brachyury-specific T cell responses”)、Heery et al.(2015b)Cancer Immunol.Res.3:1248-56(“Phase I trial of a yeast-based therapeutic cancer vaccine(GI-6301)targeting the transcription factor brachyury”))を参照のこと。
【0371】
GLP準拠の反復投与毒性試験を実施して、第1相臨床開発段階での静脈内経路の使用の裏付けとなる、NHP(カニクイザル)にけるMVA-BN-Brachyury(MVA-mBN240B)の潜在的な毒性を評価する。毒性試験には、NHPにおけるMVA-BN-Brachyuryの空間的及び時間的分布を評価する生体内分布パートが含まれる。
【0372】
MVA-BN-Brachyuryは、第III相試験で使用され、その際、がん患者は、任意に、例えば、放射線及び/またはチェックポイント阻害剤等の別の治療と組み合わせた、MVAの腫瘍内注射により治療される。
【0373】
本明細書に記載されている方法または組成物の正確な詳細は、記載されている発明の趣旨から逸脱せずに変更または修正してよいことは明らかであろう。以下の特許請求の範囲及び趣旨の範囲内となるような修正または変更のすべてを特許請求する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.がん性腫瘍を有する対象において腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に対し腫瘍内に投与することを含み、前記組み換えMVAの前記腫瘍内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射と比較して、前記対象の前記がん性腫瘍での炎症応答が増強され、腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、前記方法。
2.がん性腫瘍を有する対象において腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に対し静脈内に投与することを含み、前記組み換えMVAの前記静脈内投与により、TAA及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非静脈内注射と比較して、ナチュラルキラー(NK)細胞応答が増強され、前記TAAに特異的なCD8 T細胞応答が増強される、前記方法。
3.がん性腫瘍を有する対象において腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に投与することを含み、前記組み換えMVAの前記投与により、組み換えMVA及び4-1BBL抗原の単独での投与と比較して、前記対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、前記方法。
4.対象のがん性腫瘍での炎症応答増強を誘導する方法であって、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に対し腫瘍内に投与することを含み、前記組み換えMVAの前記腫瘍内投与により、異種の腫瘍関連抗原及び4-1BBL抗原をコードする第1及び第2の核酸を含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比較して、前記腫瘍での炎症応答増強を生じさせる、前記方法。
5.がん性腫瘍を有する対象において腫瘍サイズを縮小する、及び/または生存率を上昇させる方法であって、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に投与することを含み、前記組み換えMVAの前記投与により、組み換えMVA及び4-1BBL抗原の単独での投与と比較して、前記対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、前記方法。
6.がん性腫瘍を有する対象において腫瘍サイズを縮小させるため、及び/または生存率を上昇させるための方法であって、腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBLをコードする第2の核酸と、CD40Lをコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に投与することを含み、前記組み換えMVAの前記投与により、組み換えMVA、4-1BBL抗原、及びCD40L抗原の単独での投与と比較して、前記対象の腫瘍縮小が増大し、及び/または全生存率が上昇する、前記方法。
7.対象のがん性腫瘍での炎症応答増強を誘導する方法であって、第1の異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸と、CD40L抗原をコードする第3の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)を前記対象に対し腫瘍内に投与することを含み、前記組み換えMVAの前記腫瘍内投与により、異種の腫瘍関連抗原をコードする第1の核酸と、4-1BBL抗原をコードする第2の核酸と、CD40L抗原をコードする第3の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非腫瘍内注射によって生じる炎症応答と比較して、前記腫瘍での炎症応答増強を生じさせる、前記方法。
8.(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、
(b)4-1BBリガンド(4-1BBL)をコードする第2の核酸と、
(c)TAAをコードする少なくとも1つのさらなる核酸と、
を含む、組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)。
9.(d)CD40リガンド(CD40L)をコードする核酸をさらに含む、前記8に記載の組み換えMVA。
10.それぞれが異なるTAAをコードする2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の核酸を含む、前記8または9に記載の組み換えMVA。
11.前記TAAが、内在性レトロウイルス(ERV)タンパク質、内在性レトロウイルス(ERV)ペプチド、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER-2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質1(TRP2)、Brachyury、p15、AH1A5、葉酸受容体アルファ(FOLR1)、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、及びMEL、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記8~10のいずれかに記載の組み換えMVA。
12.前記ERVタンパク質が、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、好ましくは、HERV-Kエンベロープ(HERV-K-env)タンパク質及びHERV-K gagタンパク質から選択される、前記11に記載の組み換えMVA。
13.前記ERVペプチドが、ヒト内在性レトロウイルスK(HERV-K)ファミリーに由来し、好ましくは、HERV-Kエンベロープタンパク質(HERV-K-env/MEL)の偽遺伝子から選択される、前記12に記載の組み換えMVA。
14.(i)HERV-K-env/MELをコードする核酸と、
(ii)HERV-K gagをコードする核酸と、
(iii)FOLR1及びPRAMEをコードし、好ましくは、融合タンパク質として発現される核酸と、
(iv)4-1BBLをコードする核酸と、
を含む、組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)。
15.(v)CD40Lをコードする核酸をさらに含む、前記14に記載の組み換えMVA。
16.前記組み換えMVAがMVA-BNに由来する、前記8~15のいずれかに記載の組み換えMVA。
17.前記8~16のいずれかに記載の組み換えMVAを含む、医薬調製物または医薬組成物。
18.腫瘍内及び/または静脈内の投与、好ましくは腫瘍内投与に適応している、前記17に記載の医薬調製物または医薬組成物。
19.医薬品またはワクチンとしての使用のための、前記8~16のいずれかに記載の組み換えMVA。
20.がん、好ましくは、メラノーマ、乳癌、結腸癌、または卵巣癌の治療での使用のための、前記8~16のいずれかに記載の組み換えMVA。
21.がん性腫瘍での炎症応答の増強、がん性腫瘍のサイズの縮小、がん性腫瘍の増殖の遅延もしくは停止、及び/または対象、好ましくはヒトの全生存率の上昇に用いるための、前記8~16のいずれかに記載の組み換えMVA。
22.前記組み換えMVAが、腫瘍内及び/または静脈内に、好ましくは腫瘍内に投与される、前記19~21のいずれかに記載の使用のための組み換えMVA。
23.前記組み換えMVAが、TAA特異的抗体と組み合わせて用いられる、前記19~22のいずれかに記載の使用のための組み換えMVA。
24.前記組み換えMVAが、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストのいずれかと組み合わせて用いられる、前記19~22のいずれかに記載の使用のための組み換えMVA。
25.前記組み換えMVAが、前記8~16のいずれかに記載されている、前記1~7のいずれかに記載の方法。
【0374】
配列表
添付の配列表に列挙されている核酸配列及びアミノ酸配列は、米国特許法施行規則1.822に定義されているように、ヌクレオチド塩基については標準的な略号を、またアミノ酸については1文字表記または3文字表記のいずれかを用いて示されている。各核酸配列の1本の鎖のみが示されているが、表示されている鎖へのいかなる言及によっても、その相補鎖が含まれると理解される。
【0375】
配列表中の配列:
配列番号1:NCBI参照配列NP_000065.1からのhCD40Lのアミノ酸配列(261アミノ酸)
配列番号2:NCBI参照配列NP_000065.1からのhCD40L(792ヌクレオチド)
配列番号3:NCBI参照配列NP_003802.1からのh4-1BBL(254アミノ酸)
配列番号4:NCBI参照配列NP_003802.1からのh4-1BBL
配列番号5:ERV-K-gag(666アミノ酸)の合成コンセンサス配列
配列番号6:ERV-K-gag;ヌクレオチド配列
配列番号7:ERV-K-env/MEL(699アミノ酸)の合成配列
配列番号8:ERV-K-env/MELのヌクレオチド配列
配列番号9:hFOLR1Δ_hPRAMEΔ融合体(741アミノ酸)
配列番号10:hFOLR1Δ_hPRAMEΔ融合体(741アミノ酸)のヌクレオチド配列
配列番号11:ERV-K-env/MEL_03(517アミノ酸)の合成配列
配列番号12:ERV-K-env/MEL_03のヌクレオチド配列
【0376】
配列番号1
NCBI参照配列NP_000065.1からのhCD40L(261アミノ酸)
MIETYNQTSPRSAATGLPISMKIFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLHRRLDKIEDERNLHEDFVFMKTIQRCNTGERSLSLLNCEEIKSQFEGFVKDIMLNKEETKKENSFEMQKGDQNPQIAAHVISEASSKTTSVLQWAEKGYYTMSNNLVTLENGKQLTVKRQGLYYIYAQVTFCSNREASSQAPFIASLCLKSPGRFERILLRAANTHSSAKPCGQQSIHLGGVFELQPGASVFVNVTDPSQVSHGTGFTSFGLLKL
【0377】
配列番号2
NCBI参照配列NP_000065.1からのhCD40L(792ヌクレオチド)
ヌクレオチド配列:
atgatcgagacatacaaccagacaagccctagaagcgccgccacaggactgcctatcagcatgaagatcttcatgtacctgctgaccgtgttcctgatcacccagatgatcggcagcgccctgtttgccgtgtacctgcacagacggctggacaagatcgaggacgagagaaacctgcacgaggacttcgtgttcatgaagaccatccagcggtgcaacaccggcgagagaagtctgagcctgctgaactgcgaggaaatcaagagccagttcgagggcttcgtgaaggacatcatgctgaacaaagaggaaacgaagaaagagaactccttcgagatgcagaagggcgaccagaatcctcagatcgccgctcacgtgatcagcgaggccagcagcaagacaacaagcgtgctgcagtgggccgagaagggctactacaccatgagcaacaacctggtcaccctggagaacggcaagcagctgacagtgaagcggcagggcctgtactacatctacgcccaagtgaccttctgcagcaacagagaggccagctctcaggctcctttcatcgccagcctgtgcctgaagtctcctggcagattcgagcggattctgctgagagccgccaacacacacagcagcgccaaaccttgtggccagcagtctattcacctcggcggagtgtttgagctgcagcctggcgcaagcgtgttcgtgaatgtgacagaccctagccaggtgtcccacggcaccggctttacatctttcggactgctgaagctgtgatgatag
【0378】
配列番号3
NCBI参照配列NP_003802.1.からのh4-1BBL(254アミノ酸)
MEYASDASLDPEAPWPPAPRARACRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRQGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGLAGVSLTGGLSYKEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWQLTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
【0379】
配列番号4
NCBI参照配列NP_003802.1.からのh4-1BBL
ヌクレオチド配列:
atggaatacgccagcgacgcctctctggaccctgaagctccttggcctccagctcctagagccagggcttgtagagtgctgccttgggctcttgtggctggacttctgcttctgttgctcctggctgctgcctgcgcagtgtttcttgcttgtccatgggctgtgtcaggagccagagcatctcctggatctgccgcttctcccagactgagagagggacctgaactgagccctgatgatcctgctggactgctcgacctgagacagggcatgtttgcccagctggtggcccagaatgtgctgctgattgatggccctctgagctggtacagcgatcctggacttgctggcgttagcctgactggaggcctgagctacaaggaggacaccaaagaactggtggtggccaaggctggcgtgtactacgtgttctttcagctggaactgcggagagtggtggcaggcgaaggatctggatccgtgtctctggcactgcatctgcagcctctgagatctgctgctggtgcagctgccctggctctgacagttgatctgcctcctgcctccagcgaagccagaaacagcgcctttggcttccaaggcagactgctgcacctgtctgctggccagagactgggagtgcacctccacacagaagcaagagcaagacacgcctggcagcttacacaaggcgctacagtgctgggcctgttcagagtgacacctgagattccagctggcttgccatctcctcgcagcgagtaatga
【0380】
配列番号5
ERV-K-env/MEL(699アミノ酸)
MNPSEMQRKAPPRRRRHRNRAPLTHKMNKMVTSEEQMKLPSTKKAEPPTWAQLKKLTQLATKYLENTKVTQTPESMLLAALMIVSMVVSLPMPAGAAAANYTYWAYVPFPPMIRAVTWMDNPIEVYVNDSVWVPGPIDDRCPAKPEEEGMMINISIGYRYPPICLGRAPGCLMPAVQNWLVEVPTVSPISRFTYHMVSGMSLRPRVNYLQDFSYQRSLKFRPKGKPCPKEIPKESKNTEVLVWEECVANSAVILQNNEFGTIIDWAPRGQFYHNCSGQTQSCPSAQVSPAVDSDLTESLDKHKHKKLQSFYPWEWGEKGISTPRPKIISPVSGPEHPELWRLTVASHHIRIWSGNQTLETRDRKPFYTVDLNSSLTVPLQSCVKPPYMLVVGNIVIKPDSQTITCENCRLLTCIDSTFNWQHRILLVRAREGVWIPVSMDRPWEASPSVHILTEVLKGVLNRSKRFIFTLIAVIMGLIAVTATAAVAGVALHSSVQSVNFVNDWQKNSTRLWNSQSSIDQKMLAVISCAVQTVIWMGDRLMSLEHRFQLQCDWNTSDFCITPQIYNESEHHWDMVRRHLQGREDNLTLDISKLKEQIFEASKAHLNLVPGTEAIAGVADGLANLNPVTWVKTIGSTTIINLILILVCLFCLLLVCRCTQQLRRDSDHRERAMMTMAVLSKRKGGNVGKSKRDQIVTVSV
【0381】
配列番号6
ERV-K-env/MEL
ヌクレオチド配列
atgaaccctagcgagatgcagagaaaggctccacctagacggagaagacacagaaacagggctcctctgacacacaagatgaacaagatggtcaccagcgaggaacagatgaaactgcccagcaccaagaaggccgagcctccaacatgggctcagctgaagaaactgacccagctggccaccaagtacctggagaacaccaaagtgacccagacacctgagagcatgctgctggcagctctgatgatcgtgtccatggtggtgtccctgcctatgcctgctggtgctgccgctgccaactacacatactgggcctacgtgccctttcctcctatgatcagagccgtgacctggatggacaaccctattgaggtgtacgtgaacgacagcgtgtgggtgccaggacctatcgacgatagatgtcctgccaaacctgaggaagagggcatgatgatcaacatcagcatcggctaccggtatcctccaatctgcctgggcagagcacctggctgtcttatgccagctgtgcagaattggctggtggaagtgcctaccgtgtctcccatcagccggttcacctaccacatggtgtccggcatgagcctcagacctagagtgaactacttgcaggacttcagctatcagcggagcctgaagttcagacccaagggaaagccctgtcctaaagagattcccaaagagtccaagaacaccgaggtgctcgtgtgggaagagtgcgtggccaattctgccgtgatcctgcagaacaacgagttcggcaccatcattgactgggctcctagaggccagttctaccacaattgcagcggacagacacagagctgtcctagcgcacaagtgtcaccagccgtggatagcgatctgaccgagagcctggacaagcacaaacacaagaaacttcagagcttctatccctgggagtggggagagaagggcatctctacaccaaggcctaagatcattagccctgtgtctggaccagaacatcccgaactttggagactgacagtggccagccaccacatcagaatctggagcggcaatcagaccctggaaacacgggacagaaagcccttctacaccgtcgatctgaacagcagcctgaccgtgcctctccagagctgtgtgaagcctccttacatgctggtcgtgggcaacattgtgatcaagcccgactcccagaccatcacatgcgagaactgcagactgctgacctgcatcgacagcaccttcaactggcagcaccggatcctgctcgtgcgagctagagaaggcgtgtggatccctgtctctatggacaggccttgggaagccagccctagcgtgcacattctgacagaggtgctgaagggcgtgctcaacagatccaagcggttcatcttcaccctgatcgccgtcatcatgggcctgattgctgtgacagccacagctgctgttgctggcgtggccctgcatagctctgtgcagagcgtgaacttcgtgaacgattggcagaagaacagcacacggctgtggaacagccagagcagcatcgaccagaagatgctggccgtgatctcctgtgccgtgcagacagttatctggatgggcgacagactgatgagcctggaacaccggttccagctgcagtgcgactggaataccagcgacttctgcatcacacctcagatctacaacgagagcgagcaccactgggatatggtccgaaggcatctgcagggcagagaggacaacctgacactggacatcagcaagctgaaagagcagatcttcgaggccagcaaggctcacctgaatctggtgcctggaaccgaagctattgctggagttgcagatggcctggccaatctgaatcctgtgacctgggtcaagaccatcggcagcaccacaatcatcaacctgatcctgatcctcgtgtgcctgttttgcctgctgcttgtgtgcagatgcacccagcagctgagaagagacagcgaccatagagaaagagccatgatgaccatggccgtcctgagcaagagaaagggaggcaacgtgggcaagagcaagcgggatcagatcgtgaccgtgtccgtttgataa
【0382】
配列番号7
ERV-K-gag(666アミノ酸)
MGQTKSKIKSKYASYLSFIKILLKRGGVKVSTKNLIKLFQIIEQFCPWFPEQGTLDLKDWKRIGKELKQAGRKGNIIPLTVWNDWAIIKAALEPFQTEEDSVSVSDAPGSCIIDCNENTRKKSQKETESLHCEYVAEPVMAQSTQNVDYNQLQEVIYPETLKLEGKGPELVGPSESKPRGTSPLPAGQVPVTLQPQKQVKENKTQPPVAYQYWPPAELQYRPPPESQYGYPGMPPAPQGRAPYPQPPTRRLNPTAPPSRQGSELHEIIDKSRKEGDTEAWQFPVTLEPMPPGEGAQEGEPPTVEARYKSFSIKMLKDMKEGVKQYGPNSPYMRTLLDSIAHGHRLIPYDWEILAKSSLSPSQFLQFKTWWIDGVQEQVRRNRAANPPVNIDADQLLGIGQNWSTISQQALMQNEAIEQVRAICLRAWEKIQDPGSTCPSFNTVRQGSKEPYPDFVARLQDVAQKSIADEKARKVIVELMAYENANPECQSAIKPLKGKVPAGSDVISEYVKACDGIGGAMHKAMLMAQAITGVVLGGQVRTFGGKCYNCGQIGHLKKNCPVLNKQNITIQATTTGREPPDLCPRCKKGKHWASQCRSKFDKNGQPLSGNEQRGQPQAPQQTGAFPIQPFVPQGFQGQQPPLSQVFQGISQLPQYNNCPPPQAAVQQ
【0383】
配列番号8
ERV-K-gag
ヌクレオチド配列
atgggacagaccaagagtaagatcaagtctaagtacgccagctacctcagcttcatcaagatcctgctgaagagaggaggcgtgaaagtgtccaccaagaacctgatcaagctgttccagatcatcgagcagttctgtccctggtttcctgagcagggcaccctggatctgaaggactggaagcggatcggcaaagagctgaagcaggctggcagaaagggcaacatcatccctctgaccgtgtggaacgactgggccatcatcaaagcagctctggaacccttccagaccgaagaggatagcgtgtccgtgtctgatgctcctggcagctgcatcatcgactgcaacgagaacacccggaagaagtcccagaaagagacagagagcctgcactgcgagtacgtggccgaacctgtgatggctcagagcacccagaacgtggactacaaccagctccaagaagtgatctatcccgaaacactgaagctggaaggcaagggacctgaactcgtgggtccttctgagtctaagcccagaggcacatctcctctgcctgcaggacaggtgccagtgacactgcagcctcagaaacaagtgaaagagaacaagacccagcctcctgtggcctaccagtattggcctccagccgagctgcagtacagacctcctccagagagccagtacggctaccctggaatgcctcctgctcctcaaggcagagctccttatcctcagcctcctaccagacggctgaaccctacagctcctcctagcagacagggctctgagctgcacgagatcattgacaagagccggaaagagggcgacaccgaggcttggcagtttcccgttacactggaacccatgcctccaggcgaaggcgctcaagaaggcgaacctcctacagtggaagccaggtacaagagcttcagcatcaagatgctgaaggacatgaaggaaggcgtcaagcagtacggacctaacagcccatacatgcggaccctgctggattctattgcccacggccaccggctgatcccttacgattgggagatcctggctaagtcctctctgagccctagccagttcctgcagttcaagacctggtggatcgacggcgtgcaagaacaagtgagacggaacagagctgccaatcctcctgtgaacatcgacgccgaccagctcctcggaatcggccagaattggagcaccatctctcagcaggctctgatgcagaacgaggccattgaacaagtcagagccatctgcctgagagcttgggagaagattcaggacccaggcagcacatgtcccagcttcaataccgttcggcagggcagcaaagagccctatcctgactttgtggctagactgcaggatgtggcccagaagtctattgccgacgagaaggctcggaaagtgatcgtggaactgatggcctacgagaacgctaatccagagtgccagagcgccatcaagcccttgaagggcaaagtgcctgccggatccgatgtgatcagcgagtatgtgaaggcctgcgacggaatcggaggtgccatgcacaaagccatgctgatggcacaggccatcactggcgttgtgctcggaggacaagttcggacctttggaggcaagtgctacaactgtggccagatcggacacctgaagaagaactgccctgtgctgaacaagcagaacatcaccatccaggccaccaccaccggcagagaacctccagatctgtgccctagatgcaagaagggcaagcactgggccagccagtgcagaagcaagttcgacaagaacggccagcctctgagcggcaacgaacaaagaggacagcctcaggctcctcagcagactggcgcatttccaatccagcccttcgtgcctcaaggcttccagggacaacagcctccactgtctcaggtgttccagggcattagccagctccctcagtacaacaactgccctccacctcaggctgctgtgcagcagtgatga
【0384】
配列番号9
hFOLR1Δ_hPRAMEΔ融合体(741アミノ酸)
MAQRMTTQLLLLLVWVAVVGEAQTRIAWARTELLNVCMNAKHHKEKPGPEDKLHEQCRPWRKNACCSTNTSQEAHKDVSYLYRFNWNHCGEMAPACKRHFIQDTCLYECSPNLGPWIQQVDQSWRKERVLNVPLCKEDCEQWWEDCRTSYTCKSNWHKGWNWTSGFNKCAVGAACQPFHFYFPTPTVLCNEIWTHSYKVSNYSRGSGRCIQMWFDPAQGNPNEEVARFYAAAMERRRLWGSIQSRYISMSVWTSPRRLVELAGQSLLKDEALAIAALELLPRELFPPLFMAAFDGRHSQTLKAMVQAWPFTCLPLGVLMKGQHLHLETFKAVLDGLDVLLAQEVRPRRWKLQVLDLRKNSHQDFWTVWSGNRASLYSFPEPEAAQPMTTKAKVDGLSTEAEQPFIPVEVLVDLFLKEGACDELFSYLIEKVAAKKNVLRLCCKKLKIFAMPMQDIKMILKMVQLDSIEDLEVTCTWKLPTLAKFSPYLGQMINLRRLLLSHIHASSYISPEKEEQYIAQFTSQFLSLQCLQALYVDSLFFLRGRLDQLLRHVMNPLETLSITNCRLSEGDVMHLSQSPSVSQLSVLSLSGVMLTDVSPEPLQALLERASATLQDLVFDECGITDDQLLALLPSLSHCSQLTTLSFYGNSISISALQSLLQHLIGLSNLTHVLYPVPLESYEDIHGTLHLERLAYLHARLRELLCELGRPSMVWLSANPCPHCGDRTFYDPEPILCPCFMPN
【0385】
配列番号10
hFOLR1Δ_hPRAMEΔ融合体(741アミノ酸)
ヌクレオチド配列
tggcccagagaatgaccacacaactgctgctgctcctggtgtgggttgccgttgttggagaggcccagaccagaattgcctgggccagaaccgagctgctgaacgtgtgcatgaacgccaagcatcacaaagagaagcctggacctgaagacaagctgcatgaacagtgtcggccttggagaaagaatgcttgctgtagcaccaacaccagccaagaggcccacaaggacgtgtcctacctgtaccggttcaactggaaccactgcggagaaatggctcctgcctgcaagagacacttcatccaggatacctgcctgtacgagtgctctcccaatctcggaccttggatccagcaagtggaccagagctggcggaaagaacgggtgctgaatgtgcccttgtgcaaagaggattgcgagcagtggtgggaagattgccggaccagctacacatgtaagagcaactggcacaaaggctggaactggaccagcggcttcaacaagtgtgccgtgggagctgcctgccagcctttccacttctacttcccaacacctaccgtgctgtgcaacgaaatctggacccacagctacaaggtgtccaactacagcagaggcagcggcaggtgtatccagatgtggttcgatcccgctcagggcaatcccaatgaggaagtggctagattctacgctgctgccatggaaagaagaaggctctggggcagcatccagagccggtacattagcatgagcgtgtggacaagccctagacggctggttgaactggctggacagagcctgctcaaggatgaggccctggccattgctgctctggagctgctgcctagagagctgttccctcctctgttcatggctgccttcgacggcagacacagccagacactgaaagccatggtgcaggcctggcctttcacctgtctgcctctgggagtgctgatgaagggccagcatctgcacctggaaaccttcaaggccgtgctggacggcctggatgttctcctggctcaagaggtgaggcctcggcgttggaaactgcaggttctggatctgcggaagaactctcaccaggatttctggaccgtttggtccggcaacagagccagcctgtacagctttcctgaacctgaggctgcccagcccatgaccacaaaggccaaagtggatggcctgagcacagaggccgagcagcctttcattcccgtcgaagtgctggtggacctgttcctgaaagaaggagcctgcgatgagctgttcagctacctgattgagaaggtggcagccaagaagaacgtgctgcggctgtgctgcaagaagctgaagatctttgccatgcctatgcaggatatcaagatgatcctgaagatggtgcagctggacagcatcgaggacctggaagtgacctgtacctggaagctgcccacactggccaagttcagcccttacctgggacagatgattaacctgcggaggctgctgctgtctcacatccacgccagctcctacatcagccctgagaaagaggaacagtatatcgcccagttcacaagccagtttctgagcctgcagtgtctgcaggccctgtacgtggacagcctgttctttctgagaggcaggctggatcagctgctgcggcacgtgatgaaccctctggaaaccctgagcatcaccaactgtagactgagcgagggcgacgtgatgcacctgtctcagagcccatctgtgtctcagctgagcgtgctgtctctgtctggcgtgatgctgaccgatgtgagccctgaacctctgcaggcactgctggaaagagcctccgctactctgcaggacctggtgttcgatgagtgcggcatcaccgatgaccagctgcttgctctgctgccaagcctgagccactgtagccagctgacaaccctgtccttctacggcaacagcatctccatctctgccctgcagtctctcctgcagcatctgatcggcctgtccaatctgacccacgtgctgtaccctgtgccactggaaagctacgaggacatccacggaaccctgcacctcgagagactggcctatctgcatgctcggctgagagaactgctgtgcgaactgggcagacccagcatggtttggctgagcgccaatccatgtcctcactgtggcgaccggaccttctacgaccctgagcctatcctgtgtccttgcttcatgcccaactaatag
【0386】
配列番号11
ERV-K-env/MEL_03(517アミノ酸)
MNPSEMQRKAPPRRRRHRNRAPLTHKMNKMVTSEEQMKLPSTKKAEPPTWAQLKKLTQLATKYLENTKVTQTPESMLLAALMIVSMVVSLPMPAGAAAANYTYWAYVPFPPMIRAVTWMDNPIEVYVNDSVWVPGPIDDRCPAKPEEEGMMINISIGYRYPPICLGRAPGCLMPAVQNWLVEVPTVSPISRFTYHMVSGMSLRPRVNYLQDFSYQRSLKFRPKGKPCPKEIPKESKNTEVLVWEECVANSAVILQNNEFGTIIDWAPRGQFYHNCSGQTQSCPSAQVSPAVDSDLTESLDKHKHKKLQSFYPWEWGEKGISTPRPKIISPVSGPEHPELWRLTVASHHIRIWSGNQTLETRDRKPFYTVDLNSSLTVPLQSCVKPPYMLVVGNIVIKPDSQTITCENCRLLTCIDSTFNWQHRILLVRAREGVWIPVSMDRPWEASPSVHILTEVLKGVLNMLAVISCAVAGVALHGSAGSAAGSGEFVVISAILALVVLTIISLIILIMLWQKKPR
【0387】
配列番号12
ERV-K-env/MEL_03
ヌクレオチド配列
atgaaccctagcgagatgcagagaaaggctccacctagacggagaagacacagaaacagggctcctctgacacacaagatgaacaagatggtcaccagcgaggaacagatgaaactgcccagcaccaagaaggccgagcctccaacatgggctcagctgaagaaactgacccagctggccaccaagtacctggagaacaccaaagtgacccagacacctgagagcatgctgctggcagctctgatgatcgtgtccatggtggtgtccctgcctatgcctgctggtgctgccgctgccaactacacatactgggcctacgtgccctttcctcctatgatcagagccgtgacctggatggacaaccctattgaggtgtacgtgaacgacagcgtgtgggtgccaggacctatcgacgatagatgtcctgccaaacctgaggaagagggcatgatgatcaacatcagcatcggctaccggtatcctccaatctgcctgggcagagcacctggctgtcttatgccagctgtgcagaattggctggtggaagtgcctaccgtgtctcccatcagccggttcacctaccacatggtgtccggcatgagcctcagacctagagtgaactacttgcaggacttcagctatcagcggagcctgaagttcagacccaagggaaagccctgtcctaaagagattcccaaagagtccaagaacaccgaggtgctcgtgtgggaagagtgcgtggccaattctgccgtgatcctgcagaacaacgagttcggcaccatcattgactgggctcctagaggccagttctaccacaattgcagcggacagacacagagctgtcctagcgcacaagtgtcaccagccgtggatagcgatctgaccgagagcctggacaagcacaaacacaagaaacttcagagcttctatccctgggagtggggagagaagggcatctctacaccaaggcctaagatcattagccctgtgtctggaccagaacatcccgaactttggagactgacagtggccagccaccacatcagaatctggagcggcaatcagaccctggaaacacgggacagaaagcccttctacaccgtcgatctgaacagcagcctgaccgtgcctctccagagctgtgtgaagcctccttacatgctggtcgtgggcaacattgtgatcaagcccgactcccagaccatcacatgcgagaactgcagactgctgacctgcatcgacagcaccttcaactggcagcaccggatcctgctcgtgcgagctagagaaggcgtgtggatccctgtctctatggacaggccttgggaagccagccctagcgtgcacattctgacagaggtgctgaagggcgtgctcaacatgctggccgtgatctcctgtgccgtggctggcgtggccctgcatggctctgctggatctgctgctggaagcggcgagttcgtggtcatctctgccattctggctctggtggtgctgaccatcatcagcctgatcatcctgattatgctgtggcagaagaagccccggtgataa
【配列表】