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特許7644134複数のコア構造物を含む装置及び製造物品、並びに偏光分割器回転器を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】複数のコア構造物を含む装置及び製造物品、並びに偏光分割器回転器を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/14 20060101AFI20250304BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20250304BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
G02B6/14
G02B6/125 301
G02B6/122 311
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022552373
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021030106
(87)【国際公開番号】W WO2021222714
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】63/018,635
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519350591
【氏名又は名称】アナログ フォトニクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ス、 ツァン
(72)【発明者】
【氏名】ティムルドガン、 エルマン
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ、 マイケル ロバート
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-536572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0314005(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0025506(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0033520(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0133034(US,A1)
【文献】国際公開第2015/133140(WO,A1)
【文献】特許第6643437(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
複数の光導波路を含むフォトニック集積回路(PIC)と、
前記PICに集積されて前記複数の光導波路の少なくとも一つに第1端が光学的に結合される偏光回転器構造物と、
前記PICに集積されて前記偏光回転器構造物の第2端に第1端が光学的に結合される光分割器構造物と
を含み、
前記偏光回転器構造物は、
第1層に形成される第1コア構造物と、
前記第1層とは異なる深さに存在する第2層に形成されてかつ前記第1コア構造物に近接するように形成される第2コア構造物と
を含み、
前記第1コア構造物は、前記偏光回転器構造物の第1端から第2端まで延び、
前記第1コア構造物及び前記第2コア構造物は、前記偏光回転器構造物の少なくとも2つの直交偏光導波路モードのモードハイブリダイズを与え、
前記第1層と前記第2層とは、前記第1コア構造物のコア材料とも前記第2コア構造物のコア材料とも屈折率が異なる材料を含む第3層を介して分離され、及び/又は前記第1コア構造物のコア材料は前記第2コア構造物のコア材料とは屈折率が異なり、
前記光分割器構造物は第1コア構造物及び第2コア構造物を含み、
前記光分割器構造物の第1コア構造物は、前記光分割器構造物の第1コア構造物が前記第1層又は前記第2層に形成されるように前記偏光回転器構造物の第1コア構造物又は第2コア構造物の少なくとも一方に連続し、
前記光分割器構造物の第2コア構造物は、前記偏光回転器構造物の第1コア構造物及び第2コア構造物の双方とは別個であり、
前記光分割器構造物の第2コア構造物は、前記偏光回転器構造物の第1コア構造物と同じ層において前記偏光回転器構造物の第1コア構造物から側方に分離される、装置。
【請求項2】
前記偏光回転器構造物の第1コア構造物及び第2コア構造物は、前記第1コア構造物のTM11モードと前記第1コア構造物のTE21モードとのモードハイブリダイズを与える、請求項1の装置。
【請求項3】
前記偏光回転器構造物の第2コア構造物は、前記偏光回転器構造物の第1端と前記偏光回転器構造物の第2端との間の距離の少なくとも一部分にわたって延びるコア材料の少なくとも2つの別個の連続部分を含む、請求項1の装置。
【請求項4】
製造によって得られた物品であって、
複数の光導波路に対してクラッディングを与える少なくとも一つのクラッディング材料と、
前記複数の光導波路のコアを与えるコア材料と、
前記クラッディング材料に形成される少なくとも一つの光導波路に第1端が光学的に結合される第1モード結合構造物と
第2モード結合構造物と
を含み、
前記第2モード結合構造物の第1端が前記第1モード結合構造物の第2端に光学的に結合され、前記第2モード結合構造物の第2端が、前記クラッディング材料に形成される少なくとも2つの光導波路に光学的に結合され、
前記コア材料は、前記クラッディング材料の屈折率よりも高い屈折率を有する少なくとも一つの材料を含み、
前記第1モード結合構造物は
第1層に形成される第1コア構造物と
前記第1層とは異なる深さに存在する第2層に形成されかつ前記第1コア構造物に近接するように形成される第2コア構造物と
を含み、
前記第1コア構造物は、前記第1モード結合構造物の第1端から第2端まで延びる前記コア材料の少なくとも一つの連続部分を含み、
前記第2コア構造物は、前記第1モード結合構造物の第1端と前記第1モード結合構造物の第2端との間の距離の少なくとも一部分にわたって延びるコア材料の少なくとも2つの別個の連続部分を含み、
前記第2コア構造物のコア材料の前記少なくとも2つの別個の連続部分は、前記コア材料とは異なる屈折率を有する材料を介して側方に分離され、
前記第2モード結合構造物は
前記第1コア構造物又は前記第2コア構造物の少なくとも一方のコア材料に連続する前記コア材料の一部分を含む第3コア構造物と
前記第1層又は前記第2層において前記第1コア構造物及び前記第2コア構造物の双方のコア材料から側方に分離された前記コア材料の一部分を含む第4コア構造物と
を含む、物品。
【請求項5】
前記第1コア構造物及び前記第2コア構造物は、第1偏光を有する前記第1コア構造物の基本モードと、前記第1偏光に直交する第2偏光を有する前記第1コア構造物の非基本モードとのモードハイブリダイズを与える、請求項4の物品。
【請求項6】
前記第3コア構造物のコア材料の前記一部分は、前記第1コア構造物のコア材料の前記連続部分に連続する、請求項5の物品。
【請求項7】
前記第2モード結合構造物は、前記第3コア構造物で受信される前記非基本モードと前記第4コア構造物の基本モードとのエバネッセント結合を与える一定距離にわたって互いに近接する前記第3コア構造物及び前記第4コア構造物の一部分を含み、前記第4コア構造物とのエバネッセント結合なしに前記第3コア構造物の基本モードを保持する、請求項6の物品。
【請求項8】
前記第1コア構造物のコア材料の前記連続部分は、前記第1モード結合構造物の前記第1端と前記第1モード結合構造物の前記第2端との間の距離の少なくとも一部分にわたって増加する幅を有する、請求項5の物品。
【請求項9】
前記第2コア構造物のコア材料の前記2つの別個の連続部分は、第1距離にわたって増加して第2距離にわたって減少する実質的に等しい幅を有する、請求項8の物品。
【請求項10】
前記第1コア構造物の前記基本モードはTM11モードを含み、
前記第1コア構造物の前記非基本モードはTE21モードを含む、請求項5の物品。
【請求項11】
前記モードハイブリダイズは、前記第1コア構造物の前記基本モードの有効屈折率と前記第1コア構造物の前記非基本モードの有効屈折率との実質的に等しい大きさに基づく、請求項5の物品。
【請求項12】
前記第1コア構造物及び前記第2コア構造物は、第1偏光を有する前記第1コア構造物の基本モードと、前記第1偏光に直交する第2偏光を有する前記第2コア構造物の非基本モードとのモードハイブリダイズを与える、請求項4の物品。
【請求項13】
前記第3コア構造物のコア材料の前記一部分は、前記第1コア構造物のコア材料の前記連続部分に連続し、かつ、前記第2コア構造物のコア材料の前記2つの別個の連続部分の一方に連続する、請求項12の物品。
【請求項14】
前記第2モード結合構造物は、前記第3コア構造物で受信される前記非基本モードと前記第4コア構造物の基本モードとのエバネッセント結合を与える一定距離にわたって互いに近接する前記第3コア構造物及び前記第4コア構造物の一部分を含み、前記第4コア構造物とのエバネッセント結合なしに前記第3コア構造物の基本モードを保持する、請求項13の物品。
【請求項15】
前記第1コア構造物のコア材料の前記連続部分は、前記第1モード結合構造物の前記第1端と前記第1モード結合構造物の前記第2端との間に実質的に一定の幅を有する、請求項12の物品。
【請求項16】
前記第2コア構造物のコア材料の前記2つの別個の連続部分の一方が、前記第1コア構造物のコア材料の前記連続部分と垂直方向に重なり、前記第2コア構造物のコア材料の前記2つの別個の連続部分の前記一方の一つが、前記第1コア構造物のコア材料の前記連続部分と垂直方向に重ならない、請求項15の物品。
【請求項17】
前記第1コア構造物の前記基本モードはTM11モードを含み、前記第1コア構造物の前記非基本モードはTE21モードを含む、請求項12の物品。
【請求項18】
偏光分割器回転器を製造する方法であって、
複数の光導波路に対してクラッディングを与える少なくとも一つのクラッディング材料を与えることと、
前記クラッディング材料の屈折率よりも高い屈折率を有する少なくとも一つの材料を含むコア材料を使用して前記クラッディング材料の導波路を形成することと、
前記クラッディング材料に形成される少なくとも一つの光導波路に第1端が光学的に結合される第1モード結合構造物を形成することと、
第2モード結合構造物を形成することと
を含み、
前記第1モード結合構造物は
第1層に形成される第1コア構造物と
前記第1層とは異なる深さに存在する第2層に形成されかつ前記第1コア構造物に近接するように形成される第2コア構造物と
を含み、
前記第1コア構造物は、前記第1モード結合構造物の第1端から第2端まで延びる前記コア材料の少なくとも一つの連続部分を含み、
前記第2コア構造物は、前記第1モード結合構造物の第1端と前記第1モード結合構造物の第2端との間の距離の少なくとも一部分にわたって延びるコア材料の少なくとも2つの別個の連続部分を含み、
前記第2コア構造物のコア材料の前記少なくとも2つの別個の連続部分は、前記コア材料とは異なる屈折率を有する材料を介して側方に分離され、
前記第2モード結合構造物の第1端が前記第1モード結合構造物の第2端に光学的に結合され、前記第2モード結合構造物の第2端が、前記クラッディング材料に形成される少なくとも2つの光導波路に光学的に結合され、
前記第2モード結合構造物は、前記第1コア構造物又は前記第2コア構造物の少なくとも一方のコア材料に連続する前記コア材料の一部分を含む第3コア構造物と
前記第1層又は前記第2層において前記第1コア構造物及び前記第2コア構造物の双方のコア材料から側方に分離された前記コア材料の一部分を含む第4コア構造物と
を含む、方法。
【請求項19】
前記第1コア構造物及び前記第2コア構造物は、第1偏光を有する前記第1コア構造物の基本モードと、前記第1偏光に直交する第2偏光を有する前記第1コア構造物の非基本モードとのモードハイブリダイズを与える、請求項18の方法。
【請求項20】
前記第1コア構造物及び前記第2コア構造物は、第1偏光を有する前記第1コア構造物の基本モードと、前記第1偏光に直交する第2偏光を有する前記第2コア構造物の非基本モードとのモードハイブリダイズを与える、請求項18の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年5月1日に出願された「オンチップ偏光分割器回転器の生成についての方法及びアーキテクチャ」との名称の米国仮出願第63/018,635号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本開示は、多数コア構造物間のモードハイブリダイズを使用する偏光の回転及び分割の統合に関する。
【背景技術】
【0003】
偏光分割器回転器(PSR)構造物をフォトニック集積回路(PIC)又は他のフォトニックデバイスの中に統合する技術の中には、PSR構造物における対称性を崩すべくリッジエッチ(ridge etch)構造物を使用するものがある。しかしながら、かかる技術は、シリコンのような相対的に高い屈折率を備える材料として良好に作用し得るのみである。相対的に低い屈折率を備える材料が、2次横電気(TE)モード(例えばTE21モード)をサポートするには、当該モードパワーが異なる箇所に集中するときの2次TEモードと基本横磁気(TM)モード(例えばTM11モード)との相互作用を潜在的に制限するべく、波長の幅を相対的に大きくする必要がある。いくつかの場合において、リッジエッチにより導入される摂動が、TE偏光及びTM偏光の大きな複屈折を崩すには小さすぎることがある。その結果、当該偏光を変換するべく相対的に長い(例えばmmスケールの)遷移が必要とされ、及び/又は、当該変換効率が、商業的使用に実用的でないほどに相対的に低くなり得る。
【発明の概要】
【0004】
一側面において一般に、装置が、複数の光導波路を含むフォトニック集積回路(PIC)と、当該PICに統合されて当該複数の光導波路のうち少なくとも一つに第1端が光学的に結合される偏光回転器構造物とを含む。偏光回転器構造部は、第1層に形成される第1コア構造物と、第1層とは異なる深さに存在する第2層に形成される第2コア構造物とを含み、第1コア構造物は、当該偏光回転器構造物の第1端から第2端まで延び、第2層は第1コア構造物に近接するように形成される。第1コア構造物及び第2コア構造物は、偏光回転器構造物の少なくとも2つの直交偏光導波路モードのモードハイブリダイズを与える。第1層と第2層とは、第1コア構造物のコア材料とも第2コア構造物のコア材料とも異なる材料を含む第3層を介して分離され、及び/又は第1コア構造物のコア材料は第2コア構造物のコア材料とは異なる。装置はまた、PICに統合されて偏光回転器構造物の第1端に光学的に結合されかつ当該光導波路のうち少なくとも2つに第2端において光学的に結合される光分割器構造物を含み、当該光分割器構造物は、当該偏光回転器構造物の第1コア構造物又は第2コア構造物のうち少なくとも一方に連続する第1コア構造物と、当該偏光回転器構造物の第1コア構造物又は第2コア構造物の双方から分離される第2コア構造物とを含む。
【0005】
複数の側面が、以下の特徴の一つ以上を含み得る。
【0006】
偏光回転器構造物の第1コア構造物及び第2コア構造物は、第1コア構造物のTM11モードと第1コア構造物のTE21モードとのモードハイブリダイズを与える。
【0007】
偏光回転器構造物の第2コア構造物は、偏光回転器構造物の第1端と当該偏光回転器構造物の第2端との間の距離の少なくとも一部分にわたって延びるコア材料の少なくとも2つの別個の連続部分を含む。
【0008】
他側面において一般に、製造物品が、複数の光導波路に対してクラッディングを与える少なくとも一つのクラッディング材料と、当該光導波路のコアを与えるコア材料であって、当該クラッディング材料よりも屈折率が高い少なくとも一つの材料を含むコア材料と、第1モード結合構造物と、第2モード結合構造物とを含み、第1モード結合構造物は、当該クラッディング材料に形成される少なくとも一つの光導波路に第1端が光学的に結合され、第1モード結合構造物は、第1層に形成される第1コア構造物と、第1層とは異なる深さに存在する第2層に形成されかつ第1コア構造物に近接するように形成される第2コア構造物とを含み、第1コア構造物は、第1モード結合構造物の第1端から第2端まで延びる当該コア材料の少なくとも一つの連続部分を含み、第2コア構造物は、第1モード結合構造物の第1端と第1モード結合構造物の第2端との間の距離の少なくとも一部分にわたって延びる当該コア材料の少なくとも2つの別個の連続部分を含み、第2モード結合構造物は、第1モード結合構造物の第2端に第1端が光学的に結合されかつ当該クラッディング材料に形成される少なくとも2つの光導波路に第2端が光学的に結合され、第2モード結合構造物は、第1コア構造物又は第2コア構造物の少なくとも一方のコア材料に連続するコア材料の一部分を含む第3コア構造物と、第1コア構造物及び第2コア構造物の双方のコア材料から分離されるコア材料の一部分を含む第4コア構造物とを含む。
【0009】
複数の側面が、以下の特徴の一つ以上を含み得る。
【0010】
第1コア構造物及び第2コア構造物は、第1偏光を有する第1コア構造物の基本モードと、第1偏光に直交する第2偏光を有する第1コア構造物の非基本モードとのモードハイブリダイズを与える。
【0011】
第3コア構造物のコア材料の一部分は、第1コア構造物のコア材料の連続部分に連続する。
【0012】
第2モード結合構造物は、第3コア構造物で受信される非基本モードと第4コア構造物の基本モードとのエバネッセント結合を与える一定距離にわたって互いに近接する第3コア構造物及び第4コア構造物の一部分を含み、第4コア構造物とのエバネッセント結合なしに第3コア構造物の基本モードを保持する。
【0013】
第1コア構造物のコア材料の連続部分は、第1モード結合構造物の第1端と第1モード結合構造物の第2端との間の距離の少なくとも一部分にわたって増加する幅を有する。
【0014】
第2コア構造物のコア材料の2つの離れた連続部分は、第1距離にわたって増加して第2距離にわたって減少する実質的に等しい幅を有する。
【0015】
第1コア構造物の基本モードはTM11モードを含み、第1コア構造物の非基本モードはTE21モードを含む。
【0016】
モードハイブリダイズは、第1コア構造物の基本モードの有効屈折率と第1コア構造物の非基本モードの有効屈折率との実質的に等しい大きさに基づく。
【0017】
第1コア構造物及び第2コア構造物は、第1偏光を有する第1コア構造物の基本モードと、第1偏光に直交する第2偏光を有する第2コア構造物の非基本モードとのモードハイブリダイズを与える。
【0018】
第3コア構造物のコア材料の一部分は、第1コア構造物のコア材料の連続部分に連続し、かつ、第2コア構造物のコア材料の2つの連続部分の一方に連続する。
【0019】
第2モード結合構造物は、第3コア構造物で受信される非基本モードと第4コア構造物の基本モードとのエバネッセント結合を与える一定距離にわたって互いに近接する第3コア構造物及び第4コア構造物の一部分を含み、第4コア構造物とのエバネッセント結合なしに第3コア構造物の基本モードを保持する。
【0020】
第1コア構造物のコア材料の連続部分は、第1モード結合構造物の第1端と第1モード結合構造物の第2端との間に実質的に一定の幅を有する。
【0021】
第2コア構造物のコア材料の2つの分かれた連続部分の一方が、第1コア構造物のコア材料の連続部分と垂直方向に重なり、第2コア構造物のコア材料の2つの別個の連続部分の一方の一つが、第1コア構造物のコア材料の連続部分と垂直方向に重ならない。
【0022】
第1コア構造物の基本モードはTM11モードを含み、第2コア構造物の非基本モードはTE21モードを含む。
【0023】
他側面において、一般に、偏光分割器回転器を製造する方法が、複数の光導波路のための一のクラッディングを与える少なくとも一つのクラッディング材料を与えることと、当該クラッディング材料の屈折率よりも高い屈折率を有する少なくとも一つの材料を含むコア材料を使用して当該クラッディング材料に導波路を形成することと、当該クラッディング材料に形成される少なくとも一つの光導波路の第1端に光学的に結合される第1モード結合構造物を形成することであって、第1モード結合構造物は、第1層に形成される第1コア構造物と、第1層とは異なる深さに存在する第2層に形成されかつ第1コア構造物に近接するように形成される第2コア構造物とを含み、第1コア構造物は、第1モード結合構造物の第1端から第2端まで延びる当該コア材料の少なくとも一つの連続部分を含み、第2コア構造物は、第1モード結合構造物の第1端と第1モード結合構造物の第2端との間の距離の少なくとも一部分にわたって延びるコア材料の少なくとも2つの別個の連続部分を含むことと、第1端が第1モード結合構造物の第2端に光学的に結合されて第2端が当該クラッディング材料に形成される少なくとも2つの光導波路に光学的に結合される第2モード結合構造物を形成することとを含み、第2モード結合構造物は、第1コア構造物又は第2コア構造物の少なくとも一方のコア材料に連続するコア材料の一部分を含む第3コア構造物と、第1コア構造物及び第2コア構造物の双方のコア材料から分離されるコア材料の一部分を含む第4コア構造物とを含む。
【0024】
複数の側面が、以下の特徴の一つ以上を含み得る。
【0025】
第1コア構造物及び第2コア構造物は、第1偏光を有する第1コア構造物の基本モードと、第1偏光に直交する第2偏光を有する第1コア構造物の非基本モードとのモードハイブリダイズを与える。
【0026】
第1コア構造物及び第2コア構造物は、第1偏光を有する第1コア構造物の基本モードと、第1偏光に直交する第2偏光を有する第2コア構造物の非基本モードとのモードハイブリダイズを与える。
【0027】
複数の側面が、以下の利点のうち一つ以上を有し得る。
【0028】
ここに記載される技法は、デバイスの動作波長における相対的に高い屈折率(例えば約3.5の屈折率を備えるシリコン)又は相対的に低い屈折率(例えば約2.0の屈折率を備える窒化シリコン)のいずれかを使用してコンパクトかつ効率的な集積PSR構造物を形成する目的のために使用することができる。いくつかの実装例において、PSR構造物は、基本TMモードと非基本TEモードとのハイブリダイズをもたらすように2層のコア材料を使用して形成される。例えば、構造物の遷移部分が、一つのコアが一方の層に存在して他の2つのコアが他方の層に存在する3つの導波路コアを含んでよい。導波路コアは、「山形配列」(例えば、V字の山形スタイル又は逆V字の逆山形スタイル)で配列され得る。これにより、以下に詳細に説明されるように、基本TMモード(例えばTM11)と非基本TEモード(例えばTE21)とのハイブリダイズを、当該モードの有効屈折率が相対的に近い場合であっても可能にするべく、結合幾何形状の上下対称性を崩すことができる。結合導波路によりサポートされる他のモードが、十分に分離された有効屈折率を有するので、最小限の相互結合によっても当該モードは互いから十分に分離される。いくつかの実装例において、2を超える層を使用することもできる。これも以下に詳述される。
【0029】
以下の記載から、並びに図面及び特許請求の範囲から、他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本開示は、添付図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行により図面の様々な特徴が縮尺通りではないことが強調される。逆に、様々な特徴部の寸法は、わかりやすくするべく任意に拡大又は縮小される。
【0031】
図1A】異なる山形スタイル又は逆山形スタイル導波路の例の断面図である。
図1B】異なる山形スタイル又は逆山形スタイル導波路の例の断面図である。
図1C】異なる山形スタイル又は逆山形スタイル導波路の例の断面図である。
図1D】異なる山形スタイル又は逆山形スタイル導波路の例の断面図である。
図1E】異なる山形スタイル又は逆山形スタイル導波路の例の断面図である。
図1F】異なる山形スタイル又は逆山形スタイル導波路の例の断面図である。
図2A】マルチコアモード結合導波路構造物に沿った異なる位置に対する一セットの導波路断面図である。
図2B】マルチコア導波路構造物の固有モードに対する有効屈折率対位置のプロットである。
図2C】マルチコア導波路構造物に沿った異なる位置に対する電界強度プロファイルの一セットの断面である。
図2D】マルチコア導波路構造物に沿った異なる位置に対する電界強度プロファイルの一セットの断面である。
図2E】マルチコア導波路構造物に沿った異なる位置に対する電界強度プロファイルの一セットの断面である。
図3A】例示的なPSRデバイスの上面図及び代替的な断面図である。
図3B】PSRの回転器の、異なる固有モードのための異なる位置でのモードプロファイルの断面を伴う上面図である。
図3C】PSRの分割器の、異なる固有モードのための異なる位置でのモードプロファイルの断面を伴う上面図である。
図3D】シミュレーションされた導波路構造物に関連付けられる有効屈折率のグラフである。
図4A】例示的なPSRデバイスの上面図及び断面図である。
図4B】第1モード結合構造物の異なる固有モードのための異なる位置でのモードプロファイルの断面を伴う上面図である。
図4C図4Bの構造物のための有効屈折率のグラフである。
図4D】第2モード結合構造物の異なる固有モードのための異なる位置でのモードプロファイルの断面を伴う上面図である。
図4E図4Dの構造物のための有効屈折率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
記載される技法は、偏光分割器回転器(PSR)を製造するべく使用することができる。例えば、PSRは、与えられる偏光回転及び分割/結合機能に依存する偏光ダイバーシティモジュール又は他のフォトニックモジュールにおいて使用することができる。これは、以下に詳細に説明される。いくつかの実装例において、偏光分割器回転器は、半導体基板(例えば基板の上に堆積及びエッチングされる材料の層を使用して製造することができるシリコンオンインシュレータ(SOI)プラットフォーム又は他のプラットフォーム)上に製造され得るフォトニック集積回路(PIC)上のようなオンチップで製造される。いくつかの実装例において、CMOS製造プロセスを使用することができる。加えて、ここに記載される技法により、かかる製造プロセスが、必ずしも高屈折率材料の使用を必要とすることなく、コンパクトなPSR構造物をもたらすことが許容される。低屈折率材料は低い伝搬損失を示す傾向があるので、ここに記載される技法により、高性能デバイスの実装が可能となり、偏光操作のための高屈折率材料の使用に関連するコストが低減される。
【0033】
いくつかの実装例において、相対的に低い屈折率の材料を使用してPSRのコンパクトな設計を容易にするべく使用することができる技法は、山形スタイル導波路の使用を含む。いくつかの実装例において、第1モード結合構造物が、入力ポートの中へと受光した光のモード依存偏光回転器を与えて(例えば一TEモードと一TMモードとの)直交偏光モードを(双方ともTEモードの)共偏光とし、第2モード結合構造物が共偏光モードを分割して異なる出力ポートに与える。同様に、PSRを逆方向に使用して、物理的に分離された共偏光モードを結合して一つの出力ポートの結合偏光モード及び直交偏光モードにすることもできる。山形スタイル導波路は、導波路モードの上下対称性を崩すことができる山形配列に配列される多数の導波路コアを含む。山形スタイル導波路により可能となるこの上下対称性の崩れにより、第1モード結合構造物におけるモードハイブリダイズが容易となる。これにより、基本TM偏光モード(例えばTM11)と高次TE偏光モード(例えばTE21)との間の変換が可能になってモード依存偏光回転が得られる。他のモード結合構造物により、第1コア構造物の中へ受信される生成された高次TE偏光モードと、他のコア構造物の基本TE偏光モード(例えばTE11)との間の変換が可能になって、共偏光モードの異なるコア構造物への分割が得られる。モードハイブリダイズは、変化する結合マルチコア導波路構造物により導波される光の進展光学モードに関連付けられる有効屈折率の大きさの変化に基づく。これは(図2Bを参照して)以下に詳述される。
【0034】
PICの異なる層に異なるコア構造物を含むマルチコア導波路のこのような山形配列の例が、図1A図1Fを参照して示される。図1Aを参照すると、モード結合構造物100Aが、頂部層103Aにおける最上コア102Aと、底部層105Aにおける2つの底部コア104A及び106Aとを含む。この例では、頂部層103Aと底部層105Aとの間にギャップ層107Aが存在する。コア構造物の断面は、(y軸及びz軸101に対する)yz平面で示される。yz平面は、マルチコア導波路により導波される光のx軸に直交する。この配列の目標は、z軸まわりの垂直対称性を崩すことによって2つの光学モード(すなわち、この例ではTM11及びTE21)をハイブリダイズすることである。頂部コア102Aのみを含むシングルコア導波路が存在すれば、当該構造物の上下対称性ゆえに二次TE偏光モードTE21に結合されない基本TM偏光モードTM11が存在することとなる。底部層105Aにおける2つのコア104A及び106Aを、頂部層103Aにおけるコア102Aの近傍に組み入れることにより上下対称性が崩れ、以下に詳述されるように2つのモードTM11及びTE21を互いにハイブリダイズすることができる。例えば、モード結合構造物100Aによって形成されるマルチコア導波路は、図1Aに示されるように、相対的に薄いギャップ層107A、並びにy軸に沿った次元における頂部コア102Aと底部コア104A及び106Aそれぞれとの重なりを含む所定の構造上の特徴に基づいて、ハイブリダイズされたモードプロファイルをサポートする。
【0035】
マルチコア導波路の様々な代替山形配列が形成され得る。いくつかの実装例において、コアは、図1Bにおいてのような逆山形構造物を形成する。図1Bは、底部層105Bにおける底部コア102Bと頂部層103Bにおける2つの頂部コア104B及び106Bとを含むモード結合構造物100Bを示す。この例では、頂部層103Bと底部層105Bとの間にギャップ層107Bが存在する。
【0036】
いくつかの実装例において、周囲のクラッディングを与える低屈折率クラッディング材料の中に高屈折率コア材料の一つの厚い層をパターニングすることによって多層を形成することができる。図1Cは、頂部層103Cにおける頂部コア102Cと底部層105Cにおける2つの底部コア104C及び106Cとを含む山形スタイルのモード結合構造物100Cを示す。図1Dは、底部層105Dにおける底部コア102Dと頂部層103Dにおける2つの頂部コア104D及び106Dとを含む逆山形スタイルのモード結合構造物100Dを示す。図1C及び図1Dのこれらの例においては、対応する頂部層と底部層との間にギャップ層が存在しない。
【0037】
いくつかの実装例において、2つを超える層がマルチコア導波路の拡張山形配列を形成してよい。図1Eは、頂部層103Eにおける頂部コア102Eと、中間層105Eにおける2つの中間コア104E及び106Eと、底部層107Eにおける2つの底部コア108E及び110Eとを含む山形スタイルのモード結合構造物100Eを示す。この例はまた、図示のようにギャップ層109E及び111Eも含む。図1Fは、底部層107Fにおける底部コア102Fと、中間層105Fにおける2つの中間コア104F及び106Fと、頂部層103Fにおける2つの頂部コア108F及び110Fとを含む逆山形スタイルのモード結合構造物100Fを示す。この例はまた、図示のようにギャップ層109F及び111Fも含む。
【0038】
モードハイブリダイズを可能にするマルチコアモード結合構造物の他側面は、異なるコア構造物の幅が、導波される光波が伝搬軸(すなわち、これらの例ではx軸)に沿って伝搬するにつれて変化することである。例えば、導波される光が伝搬するにつれて底部コアの幅を断熱的に増加させることができる。図2Aは、x軸に沿って3つの異なる位置に対する下側コアの幅が増加するマルチコアモード結合構造物の異なる断面の一例を示す。X=-4(任意の距離単位)における断面200Aは、底部コアが狭くなって、頂部コアのエッジまで延びることを示す。さらにX=0における断面200Bは、底部コアが広くなって、頂部コアのエッジを通り過ぎて延びることを示す。さらにX=4における断面200Cは、底部コアが、頂部コアのエッジをさらに通り過ぎても延びることを示す。この底部コアの幅増加により、モードハイブリダイズに基づくモード遷移プロセスが可能となる。
【0039】
図2Bは、伝搬位置がX=-5からX=5へ進行するにつれて底部コアの幅が断熱的に増加するときの、第1の3つの固有モード(モード1、モード2及びモード3として標識)の有効屈折率のプロットをx軸に沿った位置X(任意の距離単位)の関数として示す。基本1次固有モード(モード1)がTE11モードであり、他のモードの有効屈折率から(約1.58~1.60の)大きさで十分に分離されている最大有効屈折率を有する。2次固有モード(モード2)は、ほぼ1.52の有効屈折率を有するTM11モードとして始まり、3次固有モード(モード3)は、ほぼ1.48の有効屈折率を有するTE21モードとして始まる。いくつかの場合、3次モードは相対的に弱くサポートされているので、初期の光エネルギーは最高次のTEモード(モード1)及び最高次のTMモード(モード2)、モード3又は低次の固有モードにおいてエネルギーなしとなる。光が図2Aの構造物を通って伝搬するとき、モード2及びモード3の有効屈折率が互いに近づくモードハイブリダイズ領域202が存在し、モード遷移プロセスにより、ハイブリダイズを介してモード2がTE21モードになり、モード3がTM11モードになる一方、モード1のTE11モードは保持される。
【0040】
図2C図2Eは、光がモード遷移プロセスを介して伝搬するときに図2Aのモード結合構造物から得られる電界強度プロファイルの例を示す。図2Cは、図2Aに示される3つの断面位置のそれぞれにおいてモード1がどのようにして相対的強度プロファイル及び偏光を保持するのかを示す。図2D及び図2Eは、どのようにしてモード2及びモード3に対する強度プロファイル及び偏光モードが変化した結果、モードハイブリダイズを介して漸次的な偏光回転が生じるのかを示す。
【0041】
図3Aは、偏光回転器モード結合構造物301(又は単に「回転器301」)と光分割器モード結合構造物302(又は単に「分割器302」)とを含む例示的なPSRデバイス300を示す。回転器301は、入力ポート303における入力TM11モードをTE21モードに変換するように構成され、一の入力光固有モードが偏光回転を得る一方で他の入力光固有モードの回転なしで入力TE11モードが保持される。分割器302は、以下に詳述されるように、回転器301から与えられる2つの異なる固有モードのTE偏光を保持するが、当該固有モードを分割して異なる対応出力ポート305及び307に与えるように構成される。回転器301のマルチコア構造物は、(1)横平面310における断面308Aに示されるような主要コア構造物の下の層に2つの一時的コア構造物を備える山形スタイル配列、又は代替的に、(2)横平面310における断面308Bに示されるような主要コア構造物の上の層に2つの一時的コア構造物を備える逆山形スタイル配列、を有し得る。
【0042】
図3Bは、回転器301の異なる3つの固有モード(モード1、モード2及びモード3)に対する回転器301に沿った異なる位置でのモードプロファイルの断面を示す。各モードプロファイルの画像は、破線312-Aから312-Hによって示される断面平面にわたっての電界強度を表す。回転器301の左(入力)側において、一次固有モード(モード1)が、図示のように、右側における大きなサイズへと勾配付けされたシングルコアから開始する入力導波路構造物のTE11モードに対応する。回転器301の構造物は、付加的なコアが中に入り込んで重なり合った後、幅が上へ、そして下へと勾配付けられて、その後、当該コアがもはや重なり合わなくなるまで外へと出てゆくにように変化する。モード1は、回転器301の全体長さにわたってTE11モードのままである。回転器301の左側には二次固有モード(モード2)も存在する。これは、TM11モードとして開始して右側でTE21モードに進展する。また、図3Bに示されるのは、PSRデバイス300とともに使用される入力光波に対してエネルギーなしと仮定される三次固有モード(モード3)の理論的なモードプロファイルである。しかしながら、左側でTE21モードとして開始して右側でTM11モードに進展するこの高次固有モードの存在が、モードハイブリダイズに貢献する。
【0043】
主要コア構造物に近接する(断面308Aのような下側の、又は断面308Bのような上側の)他層における一対の一時的コア構造物により導入される摂動が、上下対称性の崩れを引き起こし、TM11モードとTE21モードとのハイブリダイズをもたらす。したがって、断熱遷移のプロセスによって、モード2のTM11モードプロファイルが、ハイブリダイズしたモードプロファイルの漸次的な変化を介してTE21モードプロファイルに進展し得る。固有モードのモード1及びモード2の断面312-C、312-D及び312-Eに対するハイブリダイズしたモードプロファイルの例が、図3Cに示される。これらは、両層のコア構造物に有意なエネルギーを含む。前の断面(312-A及び312B)及び後ろの断面(312-F、312-G及び312-H)はそれぞれ、ハイブリダイズしたモードへの断熱遷移及びハイブリダイズしたモードからの断熱遷移に対応し、主要コア構造物に有意なエネルギーを含む。
【0044】
図3Cは、分割器302の4つの異なる固有モード(モード1、モード2、モード3及びモード4)について、分割器302に沿った異なる位置におけるモードプロファイルの断面を示す。分割器302は、出力ポート307を有する側方コア構造物を、出力ポート305を有する主要コア構造物と同じ層に含む。PSR機能性を達成するべく、側方コア構造物を使用して、回転子301からの主要コア構造物内の2つの固有モードを、出力ポート305及び307において2つの異なる出力導波路へと分離する。回転器301のモード1は、分割器302のモード1に対応し、主要コアの断面312-H及び断面314-Aが一致し、主要コア構造物の出力ポート305へ伝搬する。回転器301のモード2は、分割器302のモード2に対応し、主要コアの断面312-H及び断面314-Aが一致し、側方コア構造物の出力ポート307にエバネッセント結合される。分割器302のモード3(入力光のエネルギーなし)は、断面314-Aでの側方コア構造物の入力におけるモードを表し、主要コア構造物の出力ポート305にエバネッセント結合される。回転器301のモード3は、分割器302のモード4(入力光のエネルギーなし)に対応し、主要コアの断面312-H及び断面314-Aが一致し、出力ポート305へ伝搬する。TE11モードプロファイルを有する基本固有モードであるモード1が、出力ポート305を出ても主要コアにとどまる一方、他の固有モードであるモード2は、主要コアにおけるTE21モードプロファイルから開始して出力ポート307を出る側方コアにおけるTE11モードプロファイルへ断熱的に変換される。分割器302において、他のコアの導入により、導波路構造物の平面内対称性が崩れる。したがって、広い主要コアのTE21モードが、狭い側方コアのTE11モードとハイブリダイズされ、広い主要コアのTE21モードは断熱変化を介して狭い側方コアのTE11モードに変換され、最小限の損失で主要コアから分離される。
【0045】
図3B及び図3Cすべてが、図示の固有モードで開始する光に対する電界強度(すなわち
【数1】
を示す。しかしながら、入力光内に当該固有モードの光が存在しない場合、(図3Bのモード3並びに図3Cのモード3及びモード4について)当該モードに対する電界強度はゼロになる。
【0046】
異なる固有モードにおける異なる横モードプロファイル間の断熱遷移をさらに図示するべく、図3Dは、PSRデバイス300を実装する導波路構造物320のシミュレーション、及びサポートされる固有モードの有効屈折率の進展を示す。モード1は、主要コア(C1)全体にわたってTE11モードのままである。2つのハイブリダイズ領域321及び322は、他の固有モードの有効屈折率と同様の大きさを有する一の固有モードの有効屈折率に関連付けられるモードハイブリダイズの例である。第1ハイブリダイズ領域321により、モード2に対するTM11モードとTE21モードとの間の遷移が可能となる。第2ハイブリダイズ領域322により、上述したように、モード2に対する広い主要コア(C1)のTE21モードと狭い側方コア(C2)のTE11モードとの間の遷移が可能となる。
【0047】
他の技法及びデバイス構造物もまたPSRを製造するべく使用することができる。図4Aは他の例示的PSRデバイス400を示す。PSRデバイス300においてのような一つの構造物における回転(基本TM11モードからTE21モード)及び後続の構造物における分割の代わりに、PSRデバイス400は、マルチコア導波路構造物のTM11モードから異なる構造物のTE21モードへの遷移を可能とし、マルチコア導波路構造物における偏光の回転及び分割が同時に有効に達成される。PSRデバイス400の動作が、横平面406における断面404に示されるように下層に広いコア構造物(C1)を、上層に狭いコア構造物(C2)を含む第1モード結合構造物401及び第2モード結合構造物402と、2つの側方コア構造物(C3、C4)とに関連して記載される。光を受光してコアC3に入れる入力ポート408と、出力光の回転(共偏光)及び分割された部分を与える2つの出力ポート410及び412とが存在する。
【0048】
図4Bは、第1モード結合構造物401におけるモード遷移を示す。コアC1の幅をゆっくりと勾配付けすることにより、側方コアC3のTM11モードは、コアC1及びコアC2を含むマルチコア構造物のTE21モードとのハイブリダイズを開始し、最終的には断熱遷移部を有する側方コアC3のTE21モードへと進展して出力ポート410(図4A)に出力される。断面414-A及び断面414-Bにおけるモードプロファイルが、4つの固有モードすなわちモード1、モード2、モード3及びモード4に対して示される。ここで、出力光は、入力ポート408におけるモード2及びモード4のみがエネルギーを含む。
【0049】
モード結合構造物401の異なる固有モードの有効屈折率(neff)の、対応する進展が図4Cに示される。図4Cには、異なる横モードプロファイル間の遷移が示される。モード2のTE11モードがコアC3において維持される。モード4のTM11モードが、モードハイブリダイズを介してC1/C2のマルチコア構造物のTE21モードへと進展する。
【0050】
図4Dは、第2モード結合構造物402におけるモード遷移を示す。コアC1の幅をさらに勾配付けすることにより、コアC1及びコアC2を含むマルチコア構造物のTE21モードは、側方コアC4のTE11モードとのハイブリダイズを開始し、最終的には断熱遷移部を有する側方コアC4のTE11モードへと進展して出力ポート412に出力される。
【0051】
モード結合構造物402の異なる固有モードの有効屈折率の、対応する進展が図4Eに示される。図4Eには、異なる横モードプロファイル間の遷移が示される。モード3のTE21モードが、モードハイブリダイズを介してコアC4のTE11モードへと進展する。
【0052】
ここに記載される例示的な実施形態のほか、オンチップPSRデバイスにとって、基本モード(例えばTM11モード)と高次TEモード(例えば二次TE21)との結合に基づく様々な配列が可能である。マルチコア導波路構造物は、2つ以上の層を使用して形成することができ、又はマルチコア構造物を形成するべく使用される層の部分エッチングによる一つの層を使用して形成することができる。例えば、一つの層を頂部及び底部からエッチングして、図1C及び図1Cに示されるような隣接するコア構造物を形成することができる。
【0053】
本開示が所定の実施形態に関連して記載されてきたが、本開示は、開示された実施形態に限定されることがないと理解すべきであり、逆に、添付の特許請求の範囲内に含まれる様々な修正例及び同等の配列をカバーすることが意図されており、その範囲には、法律に基づいて許容されるすべての修正例及び同等の構造を包含するように最も広い解釈が与えられるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E