(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】高磁界マグネットにおいて力を分散する技法、ならびに関連するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20250304BHJP
H01F 6/04 20060101ALI20250304BHJP
H10N 60/81 20230101ALI20250304BHJP
【FI】
H01F6/06 140
H01F6/06 130
H01F6/04
H01F6/06 150
H10N60/81
(21)【出願番号】P 2022570130
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 US2021033349
(87)【国際公開番号】W WO2021236901
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2024-04-23
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】521259219
【氏名又は名称】コモンウェルス・フュージョン・システムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】ラドビンスキー,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュコフスキー,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ケルトン,ニコラス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クズネトソフ,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】サナブリア,チャーリー
(72)【発明者】
【氏名】ラボンバード,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ブルンナー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフェク,グラント・ウィリアム
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175031(JP,A)
【文献】特開2006-196720(JP,A)
【文献】特開2011-228065(JP,A)
【文献】実開昭57-108314(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0312999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01F 6/04
H10N 60/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温超伝導体(HTS)マグネットであって、
HTS材料を含むコイルと、
少なくとも第1の隔壁を備えるハウジングと
を備え、
前記コイルは、前記ハウジング内に配置され、
前記コイルの第1の部分の巻回が前記第1の隔壁内に全体的に配置され、前記コイルの第2の部分の巻回が前記第1の隔壁の外側に全体的に配置されるように、前記ハウジングの前記第1の隔壁が、前記コイルの前記第1の部分を、前記コイルの前記第2の部分から分離するように配置され、
前記第1の隔壁は、前記コイルが貫通するスリットを備
え、
前記コイルが巻かれる前には、前記第1の隔壁は前記ハウジング内で自由に移動できる、
高温超伝導体(HTS)マグネット。
【請求項2】
前記ハウジングは、第1の構造板と、第2の構造板とを備えており、前記コイルは前記第1の構造板と前記第2の構造板との間に配置され、前記第1の隔壁は、前記第1の構造板と前記第2の構造板との間に延在する壁を備える、請求項1に記載のマグネット。
【請求項3】
前記第1の構造板は第1の円形スロットを含み、前記第1の隔壁は前記第1の円形スロット内に配置される、請求項2に記載のマグネット。
【請求項4】
前記第1の隔壁は前記第1の円形スロット内に挿抜可能に挿入され、前記第1の隔壁は前記第1の円形スロット内で自由に回転できる、請求項3に記載のマグネット。
【請求項5】
前記スリットは、前記第1の隔壁の高さに至るまで延在する、請求項1に記載のマグネット。
【請求項6】
前記第1の隔壁の外側形状は、らせん形状であり、前記第1の隔壁の前記スリットは、前記第1の隔壁の前記らせん形状の隣り合った巻回間の間隙である、請求項1に記載のマグネット。
【請求項7】
前記HTS材料はHTSテープである、請求項1に記載のマグネット。
【請求項8】
前記コイルの少なくともいくつかの巻回間に配置される導電材料をさらに備える、請求項7に記載のマグネット。
【請求項9】
前記コイルは、複数の巻回となるように巻かれたHTSテープの複数の層および前記導電材料の層から形成される、請求項8に記載のマグネット。
【請求項10】
前記コイルは、前記HTSテープの巻回が隣り合った巻回における前記HTSテープの面と接触するように配置された前記HTSテープの巻回を含む、請求項7に記載のマグネット。
【請求項11】
前記コイルの内側端部に結合された第1の伝導性リングと、前記コイルの外側端部に結合された第2の伝導性リングとをさらに備える、請求項1に記載のマグネット。
【請求項12】
前記ハウジングは、前記第1の隔壁の外部に配置され前記コイルが貫通するスリットを備える第2の隔壁を備えており、前記コイルの前記第1の部分の巻回と、前記コイルの前記第2の部分の少なくともいくつかの巻回は、前記コイルの前記第2の隔壁の内部に全体的に配置される、請求項1に記載のマグネット。
【請求項13】
前記ハウジングおよび前記第1の隔壁のそれぞれは、鋼、オーステナイト系ニッケルクロム合金、および/または窒素強化オーステナイト系ステンレス鋼を含む、請求項1に記載のマグネット。
【請求項14】
請求項1に記載のマグネッ
トを複数備えるマグネットアセンブリ。
【請求項15】
複数のパンケーキであり、前記パンケーキのそれぞれは、電流が印加されると磁界を発生させる高温超伝導体(HTS)テープの1つまたは複数の巻回を有し、前記パンケーキのそれぞれは、さらに、電気回路の一部としてそのHTSテープの前記1つまたは複数の巻回を電気的に結合するための1つまたは複数の接合体を有する、複数のパンケーキと、
複数の冷却板であり、前記冷却板のそれぞれは前記冷却板を冷却装置に熱的に結合するための端子を有する、複数の冷却板と
を備えるマグネットアセンブリであって、
前記複数のパンケーキおよび前記複数の冷却板が交互に積み重ねられ、前記パンケーキのそれぞれは、1つまたは2つのいずれかの近くのパンケーキの前記接合体に対してその1つまたは複数の接合体によって電気的に結合され、それにより、前記パンケーキのそれぞれにおいて前記HTSテープを含む動作電流路を形成し、前記パンケーキのそれぞれは、前記冷却装置への熱伝導によって前記パンケーキから熱を除去するための前記冷却板のうちの1つまたは2つのいずれかと隣り合ってい
て、
前記パンケーキのうちの少なくとも1つは、第1の隔壁を備えるハウジングを備え、
前記HTSテープを含むコイルが巻かれる前には、前記第1の隔壁は前記ハウジング内で自由に移動できる、
マグネットアセンブリ。
【請求項16】
前記パンケーキのそれぞれは、鋼、またはオーステナイト系ニッケルクロム合金、または窒素強化オーステナイト系ステンレス鋼を含む、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項17】
前記パンケーキの少なくとも1つの前記HTSテープは、希土類酸化銅を含む、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項18】
前記パンケーキの少なくとも1つの前記1つまたは複数の接合体は、銅を含む、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項19】
前記パンケーキのそれぞれの前記1つまたは複数の接合体は、前記パンケーキの内径の少なくとも一部、またはその外径の一部、または前記内径および前記外径の両方の一部に位置する、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項20】
前記パンケーキのうちの第1のパンケーキが、その外径上に接合体を有する第1の面と、その内径に接合体を有する第2の平行面とを備える、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項21】
前記パンケーキのうちの前記第1のパンケーキは、前記パンケーキのうちの第2のパンケーキの前記外径上の接合体に対して、その外径上の前記接合体によって電気的に結合され、前記パンケーキのうちの前記第1のパンケーキは、前記パンケーキのうちの第3のパンケーキの前記内径上の接合体に対して、その内径上の前記接合体によって電気的に結合される、請求項20に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項22】
積み重ねられた前記板の最上部の各パンケーキと、積み重ねられた前記板の最下部の各パンケーキは、他のパンケーキの接合体に電気的に結合されるその外径またはその内径のいずれかに接合体を有する内面と、接合体を有さない平行な外面を有する、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項23】
前記パンケーキのうちの少なくとも1つは、半径方向荷重に耐えるための1つまたは複数の取り外し可能な隔壁によって分離された複数のチャネルを備えており、各チャネルは、前記HTSテープの1つまたは複数の巻回を有し、それぞれの取り外し可能な隔壁は、近くのチャネルにおいて前記HTSテープの前記巻回を接続する貫通接続を有する、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項24】
前記パンケーキのうちの前記少なくとも1つの前記HTSテープは、前記複数のチャネルのうちの少なくとも1つにはんだ付けされ、または前記1つまたは複数の接合体にはんだ付けされ、またはその両方にはんだ付けされる、請求項23に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項25】
前記チャネルのそれぞれにおけるHTSテープの前記1つまたは複数の巻回は、前記チャネルの容積をほぼ埋める、請求項23に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項26】
2つの隣り合って積み重ねられたパンケーキのそれぞれの前記接合体の間に導電性のガスケットをさらに備える、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項27】
前記パンケーキのうちの1つと、隣り合って積み重ねられた冷却板との間に熱伝導性フォイル、またはグリース、または金網をさらに備える、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項28】
前記複数のパンケーキおよび前記複数の冷却板は、前記スタックの前記内径および前記外径の両方においてボルトによって連結される、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項29】
積み重ねられ互いにボルト留めされた前記板の最上部および最下部に追加構造板をさらに備えており、積み重ねられた前記板は、前記追加構造板によってともに押される、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項30】
前記パンケーキの少なくとも1つにおける前記HTSテープは、銅、鋼、または銅および鋼の両方と共巻きされる、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項31】
前記パンケーキの少なくとも2つは、異なるサイズまたは異なる形状を有する、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項32】
前記冷却装置は、極低温液体および/またはガスの連続流を利用するクライオクーラ、またはクライオ冷蔵庫、または熱交換器を備える、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項33】
熱輻射シールドをさらに備える、請求項15に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項34】
前記熱輻射シールドは、銅および/またはアルミニウムを含む、請求項33に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項35】
前記銅は、渦電流を制限するために、さらにマグネットクエンチ中にローレンツ力を制限するために切断される、請求項34に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項36】
前記熱輻射シールドは、多層断熱材で包まれる、請求項33に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項37】
前記多層断熱材は、スペーサ材料と、遮断物を有するアルミニウムコーティングが堆積された基板との交互の層を含む、請求項36に記載のマグネットアセンブリ。
【請求項38】
複数のパンケーキを備えるマグネットアセンブリであって、前記パンケーキのそれぞれは、
第1の隔壁を備えるハウジングと、
前記ハウジング内に配置された高温超伝導体(HTS)テープの複数の巻回と、
前記HTSテープに結合され、前記ハウジングの外部に配置された1つまたは複数の伝導性接合体と、
複数の冷却板であり、前記冷却板のそれぞれは前記冷却板を冷却装置に熱的に結合するための端子を有する、複数の冷却板とを備えており、
前記複数のパンケーキおよび前記複数の冷却板が交互にスタックに配置され、前記スタックにおける前記パンケーキのそれぞれは、前記スタックにおける1つまたは2つのいずれかの近くのパンケーキの前記接合体に対してその1つまたは複数の伝導性接合体によって電気的に結合され、それにより、前記パンケーキのそれぞれにおいて前記HTSテープを含む前記スタックを通る動作電流路を形成し、前記パンケーキのそれぞれは、前記冷却板のうちの1つまたは2つのいずれかと隣り合って熱的に結合さ
れ、
前記HTSテープを含むコイルが巻かれる前には、前記第1の隔壁は前記ハウジング内で自由に移動できる、
マグネットアセンブリ。
【請求項39】
磁界を発生させるために巻かれたテープを保持するハウジングであって、前記ハウジングは、
1つまたは複数の第1の円形スロットを有する第1の構造板と、
1つまたは複数の隔壁であり、それぞれの隔壁が前記隔壁の内径から前記隔壁の外径へ前記テープを巻くための貫通接続を有し、各隔壁が前記第1の円形スロットのうちの対応スロットに挿抜可能かつ回転可能に挿入される、1つまたは複数の隔壁と、
1つまたは複数の第2のスロットを有する第2の構造板であり、各隔壁が前記第2のスロットのうちの対応スロットに挿抜可能に挿入される、第2の構造板と
を備えるハウジング。
【請求項40】
前記隔壁の1つは、前記隔壁の全高さにわたって延在しない貫通接続スリットを備える、請求項39に記載のハウジング。
【請求項41】
前記隔壁の1つは、前記隔壁の全高さにわたって延在する貫通接続スリットを備える、請求項39に記載のハウジング。
【請求項42】
前記隔壁の1つは、半径方向に均一な厚さを有するらせんを備える、請求項39に記載のハウジング。
【請求項43】
それぞれの隔壁は、銅、または鋼、または銅および鋼の両方と共巻きされる、磁界を発生させるために巻かれたテープを保持するための貫通接続を有する、請求項39に記載のハウジング。
【請求項44】
HTSマグネットを形成するために
高温超伝導体HTS伝導性テープを巻く方法であって、前記方法は、
(a
)第1の電気的接合体を有する第1の構造板を設けるステップと、
(b)前記第1の電気的接合体に前記
HTS伝導性テープを物理的および電気的に結合するステップと、
(c
)前記第1の構造板の前記表面上に前記伝導性テープを円状に巻くステップと、
(d)
前記第1の構造板に、貫通接続を有する隔壁を挿抜可能に挿入するステップであり、前記隔壁は、
前記第1の構造板の内部で
移動し、それによってその貫通接続が巻かれた前記伝導性テープの方位角位置と整列する、ステップと、
(e)前記第1の構造板の前記表面上に、前記貫通接続を通って前記隔壁の外径の周りに前記伝導性テープを巻くことにより、前記
HTS伝導性テープと前記隔壁との間の間隙を最小限にするステップと
を含む方法。
【請求項45】
貫通接続を有する隔壁の各追加スロットに対して、ステップ(c)から(e)を繰り返すステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の構造板は、1つまたは複数の円形スロットを有する表面を有し、前記第1の構造板は、その外径に第2の電気的接合体を有し、前記方法は、前記伝導性テープを前記第2の電気的接合体に物理的および電気的に結合するステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
巻かれた前記伝導性テープに隣り合ってインジウムの層を追加するステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
第2の円形スロットを有する表面を有する第2の構造板を設けるステップと、
巻かれた前記伝導性テープと同一平面に前記第2の構造板を配置することによって、前記隔壁が前記第2の円形スロットに挿抜可能に挿入されるステップと
をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記伝導性テープは、銅、鋼、または銅および鋼の両方と共巻きされる、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般に超伝導マグネットコイルに関し、より詳しくは高温超伝導体(HTS)マグネットアセンブリの作製および冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]超伝導体は、何らかの臨界温度未満において電流に対して電気抵抗がない(「超伝導」)材料である。多くの超伝導体に関して、超伝導状態のそれらの材料の動作が液体または冷気体ヘリウムまたは他のクライオジェンなどによる大幅な冷却を必要とするように、臨界温度は30K未満である。
【0003】
[0003]抵抗なく大電流を運ぶ超伝導体の機能のため、高磁界マグネットは、超伝導体で作製されることが多い。そのようなマグネットは、例えば、5kAを上回る電流を運び得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]いくつかの態様によれば、高温超伝導体(HTS)材料を含むコイルと、少なくとも第1の隔壁を備えるハウジングとを備えるHTSマグネットが提供され、コイルは、ハウジング内に配置され、コイルの第1の部分の巻回が第1の隔壁内に全体的に配置され、コイルの第2の部分の巻回が第1の隔壁の外側に全体的に配置されるように、ハウジングの第1の隔壁が、コイルの第1の部分を、コイルの第2の部分から分離するように配置され、第1の隔壁は、コイルが貫通するスリットを備える。
【0005】
[0005]いくつかの態様によれば、複数のパンケーキであり、パンケーキのそれぞれが電流が印加されると磁界を発生させる高温超伝導体(HTS)テープの1つまたは複数の巻回を有し、パンケーキのそれぞれは、さらに、電気回路の一部としてそのHTSテープの1つまたは複数の巻回を電気的に結合するための1つまたは複数の接合体を有する、複数のパンケーキと、複数の冷却板であり、冷却板のそれぞれは冷却板を冷却装置に熱的に結合するための端子を有する、複数の冷却板とを備えるマグネットアセンブリが提供され、複数のパンケーキおよび複数の冷却板が交互に積み重ねられ、パンケーキのそれぞれは、1つまたは2つのいずれかの近くのパンケーキの接合体に対してその1つまたは複数の接合体によって電気的に結合され、それにより、パンケーキのそれぞれにおいてHTSテープを含む動作電流路を形成し、パンケーキのそれぞれは、冷却装置への熱伝導によってパンケーキから熱を除去するための冷却板のうちの1つまたは2つのいずれかと隣り合っている。
【0006】
[0006]いくつかの態様によれば、複数のパンケーキを備えるマグネットアセンブリが提供され、パンケーキのそれぞれは、ハウジングと、ハウジング内に配置された高温超伝導体(HTS)テープの複数の巻回と、HTSテープに結合され、ハウジングの外部に配置された1つまたは複数の伝導性接合体と、複数の冷却であって、冷却板のそれぞれは冷却板を冷却装置に熱的に結合するための端子を有する複数の冷却板とを備えており、複数のパンケーキおよび複数の冷却板が交互にスタックに配置され、スタックにおけるパンケーキのそれぞれは、スタックにおける1つまたは2つのいずれかの近くのパンケーキの接合体に対してその1つまたは複数の伝導性接合体によって電気的に結合され、それにより、パンケーキのそれぞれにおいてHTSテープを含むスタックを通る動作電流路を形成し、パンケーキのそれぞれは、冷却板のうちの1つまたは2つのいずれかと隣り合って熱的に結合される。
【0007】
[0007]いくつかの態様によれば、磁界を発生させるために巻かれたテープを保持するハウジングが提供され、ハウジングは、1つまたは複数の第1の円形スロットを有する第1の構造板と、1つまたは複数の隔壁であり、それぞれの隔壁が隔壁の内径から隔壁の外径へテープを巻くための貫通接続を有し、各隔壁が第1の円形スロットのうちの対応スロットに挿抜可能かつ回転可能に挿入される、1つまたは複数の隔壁と、1つまたは複数の第2のスロットを有する第2の構造板であり、各隔壁が第2のスロットのうちの対応スロットに挿抜可能に挿入される、第2の構造板とを備える。
【0008】
[0008]いくつかの態様によれば、マグネットを形成するために伝導性テープを巻く方法が提供され、この方法は、(a)1つまたは複数の円形スロットを有する表面を有し、その内径に第1の電気的接合体を有する第1の構造板を設けるステップと、(b)第1の電気的接合体に伝導性テープを物理的および電気的に結合するステップと、(c)伝導性テープが円形スロットのうちの1つに到達するまで、第1の構造板の表面上に伝導性テープを円状に巻くステップと、(d)円形スロットの1つに、貫通接続を有する隔壁を挿抜可能に挿入するステップであり、隔壁は、円形スロットの1つの内部で回転され、それによってその貫通接続が巻かれた伝導性テープの方位角位置と整列する、ステップと、(e)第1の構造板の表面上に、貫通接続を通って隔壁の外径の周りに伝導性テープを巻くことにより、伝導性テープと隔壁との間の間隙を最小限にするステップとを含む。
【0009】
[0009]上記の装置および方法の実施形態は、上述および下記で詳述される態様、特徴、および動作の任意の適切な組み合わせにより、実施され得る。本教示の上記および他の態様、実施形態、および特徴は、添付図面と併せて以下の説明により、より十分に理解され得る。
【0010】
[0010]様々な態様および実施形態が以下の図面を参照して説明される。なお、図面は必ずしも同一の縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。図面において、様々な図に示されたそれぞれの同一またはほぼ同一の構成要素は、同様の番号で表される。明確性を目的として、全ての構成要素が各図に示されていない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】[0011]いくつかの実施形態による、構造隔壁を備えた超伝導マグネットの断面図である。
【
図2A】[0012]いくつかの実施形態による、溝に配置された構造隔壁を備えた超伝導マグネットの断面図である。
【
図2B】[0013]いくつかの実施形態による、例示的なハウジングの断面斜視図である。
【
図2C】いくつかの実施形態による、例示的なハウジングの断面斜視図である。
【
図2D】[0014]いくつかの実施形態による、隔壁およびHTSテープを備えるマグネットの写真である。
【
図3A】[0015]いくつかの実施形態による、構造隔壁の貫通接続スリットの様々な構成を示す図である。
【
図3B】いくつかの実施形態による、構造隔壁の貫通接続スリットの様々な構成を示す図である。
【
図3C】いくつかの実施形態による、構造隔壁の貫通接続スリットの様々な構成を示す図である。
【
図4A】[0016]いくつかの実施形態による、マグネットアセンブリの断面図である。
【
図4B】[0017]いくつかの実施形態による、
図4Aの断面図の拡大部分を示す図である。
【
図5】[0018]いくつかの実施形態による、HTSテープに加えて、シムを備える貫通接続スリットの写真である。
【
図6】[0019]いくつかの実施形態による、マグネットを組み立てる方法のフローチャートである。
【
図7】[0020]いくつかの実施形態による、完成した定型パンケーキにおける構造的および電気的構成要素の分解組立図である。
【
図8】[0021]マグネットアセンブリにおいて積み重ねるための第2の種類のパンケーキの斜視図である。
【
図9】[0022]それらの内径に沿って電気的に接合された2つのパンケーキ間のマグネットアセンブリにおける第1の冷却板の一部を示す図である。
【
図10】[0023]それらの外径に沿って電気的に接合された2つのパンケーキ間のマグネットアセンブリにおける第2の冷却板の一部を示す図である。
【
図11A】[0024]冷却装置に結合されたマグネットアセンブリの破断図である。
【
図11B】[0025]マグネットアセンブリを囲む熱保護輻射シールドおよび多層断熱材を強調した冷却装置の一部を示す図である。
【
図12】[0026]いくつかの実施形態による、例示的な被覆導体HTSテープの層の断面図である。
【
図13】[0027]いくつかの実施形態による、核融合動力プラントの様々な構成要素を示す破断部分を有する動力プラントの三次元グラフィックである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0028]上述したように、抵抗なく大電流を運ぶ超伝導体の機能のため、高磁界マグネットは、超伝導材料で作製されることが多い。超伝導材料がその臨界温度未満になる程度に十分に低温(それ未満では材料の電気抵抗率が零にまで降下する温度)の場合、マグネットは、電流が損失なく超伝導路を通過できるようにする。
【0013】
[0029]高温超伝導体(HTS)は、高磁界超伝導マグネットを作製するための特に望ましい自由度を提供する。低温度超伝導体(LTS)と比較した場合のHTSおよびHTS希土類バリウム銅酸化物(REBCO)超伝導体の重要な特徴は、以下を含む。第1に、HTSは、動作温度に対してより小さい臨界電流感度を呈し、より大きな動作温度マージンを可能にする。第2に、HTSは、LTSよりも高い動作温度を有し、HTS動作温度において、超伝導マグネット内の材料の熱容量は、LTS動作温度よりも大幅に高くなり得る。その結果、HTSマグネットは、局所加熱に対するより小さい感度を有し得る。第3に、HTSは、詳細に後述されるように、HTSの束ねられた部分間での良好な電流共有に起因し、電気的に非絶縁設計の原理と親和性を有する。第4に、非絶縁超伝導マグネットにおいて、小電圧(例えば、約1V未満)がマグネットにおいて発生する場合があるが、LTSマグネットとは異なり、HTS超伝導マグネットにおいて、それらの電圧が高電圧電気絶縁を必要としない場合がある。そして最後に、HTSマグネットは、さらにより高い磁界で動作可能であり、LTSマグネットよりも磁界の強度に対して低感度を示し得る。
【0014】
[0030]超伝導マグネットがLTS材料またはHTS材料を含むかにかかわらず、一般に、超伝導マグネットは、高磁界も発生させながら、比較的高い電流密度(例えば、超伝導材料の単位容積当たりまたは単位断面積当たりの大電流量)を有することができる。ただし、大電流密度および高磁界は、結果として、顕著なローレンツ負荷(磁界を流れる電流の結果として生じるローレンツ力)が超伝導体の様々な領域に印加される。そのようなローレンツ負荷の増加は、マグネットの構造的整合性の低減につながり得る。例えば、高磁界マグネットにおいて、ローレンツ負荷によって超伝導材料に印加にされた歪みは、材料を破損させるのに十分な場合があり、電流を運ぶ機能を低減または妨げ得る。
【0015】
[0031]発明者は、歪みを遮断してマグネットのハウジングなどの機械的により強い構造に伝達する超伝導材料の巻回間に構造隔壁を配置することによって、超伝導マグネットにおける超伝導材料へ印加される歪みを低減するための技法を認識および理解している。構造隔壁は、貫通接続スリットを有して形成されてもよく、それによって超伝導材料が隔壁を容易に貫通できる。多数の構造隔壁がマグネットにおける超伝導材料の巻回のグループ間に挿入されてもよく、それによってマグネット全体を通して隔壁によって力が十分に分散可能となる。同時に、構造隔壁の数は、隔壁によって占有される、または導電性の超伝導材料によって他のやり方で占有され得るマグネット内の空間量を最小限に抑えるために選択され得る。
【0016】
[0032]いくつかの実施形態によれば、構造隔壁は、マグネットのハウジングまたは他の支持構造から取り外し可能でもよい。取り外し可能な隔壁は、隔壁がない場合にマグネットの巻回が巻かれることを可能とし、その後、マグネットが隔壁の貫通接続スリットを貫通する程度に十分に巻かれると、隔壁がマグネットに追加され得る。このプロセスは、マグネットが単一面において巻かれることを可能とし、それにより、組立プロセスを単純化し、同一面において構造(隔壁またはハウジングの中心構造)の周りで巻き線が行われ得るため、巻き線のサイズが大きくなると、必要に応じて隔壁が追加される。
【0017】
[0033]いくつかの実施形態によれば、貫通接続スリットの位置が巻き線中に調節可能なように、構造隔壁は、マグネットのハウジングまたは他の支持構造内で移動可能でもよい。いくつかの場合において、構造隔壁は、マグネット内の溝、スロットおよび/または他の保持機構内に配置されてもよく、それによって、構造隔壁が回転されることが可能であり、または、その位置が保持機構によってある程度限定されるが、他のやり方で位置が調節され得る。例えば、構造隔壁は円形でもよく、円形の溝内で回転可能でもよい。いくつかの場合において、構造隔壁は円形以外でもよく(例えば、長方形)、マグネット内で回転可能でなくてもよい。ただし、そのような場合、小さい保持機構は、巻き線および隔壁の設置中の隔壁の動きを減らすために、マグネットのハウジングまたは他の支持構造に含まれ得る。あるいは、構造隔壁は、マグネット構造内で自由に動き得るが、隔壁の内部をほぼ埋めるマグネットの巻回の周りに隔壁を配置することによって、巻いている間にある程度適切な位置に保持され得る。いくつかの場合、構造隔壁は、他の部品への結合によって制約を受けながらも独立して移動できる複数の接合部品を含み得る。例えば、構造隔壁は、回転可能に互いに結合された隣り合った部分とのループに配置された複数の部分を含み得る(例えば、自転車のチェーンに相当する)。
【0018】
[0034]いくつかの実施形態によれば、超伝導マグネットは、上述したように巻かれていて1つまたは複数の構造隔壁を貫通するHTS材料を含み得る。いくつかの場合、HTS材料は、他の層に加えて、多結晶HTSの層を含む、長く平坦な要素であるHTSテープを含み得る。本明細書で使用される場合、HTS「テープ」は、
図12に示すようなテープ1200など、希土類銅塩HTS(例えば、REBCO)などのHTSの層を含む任意の構造を指す場合があり、1つまたは複数のバッファ層、安定化層、基板、オーバーレイ層および/またはクラッド層などの1つまたは複数の他の層も含み得る。
【0019】
[0035]いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような1つまたは複数の構造隔壁を備える超伝導マグネットは、HTS材料の少なくともいくつかの隣り合った巻回間に絶縁材料なしで巻かれるHTS材料を含み得る。本明細書で非絶縁(NI)マグネット(または絶縁無しマグネット)と呼ばれるそのようなマグネットでは、マグネットの隣り合った超伝導巻回は、互いに絶縁されず、代わりに従来の導体によって分離される(すなわち超伝導体ではない)。マグネットが超伝導体の臨界温度未満で動作している時、巻回間に存在する導体の有限抵抗と比較すると超伝導体が零の抵抗を有するため、電流は超伝導体を通って流れ、巻回を横切らない。
【0020】
[0036]いくつかの実施形態では、超伝導マグネットは、
図12に示すようなテープのx軸が巻軸と並列に整列されるように、巻軸の周りに巻かれるHTSテープを備え得る。したがって、非絶縁マグネット設計の場合、例えば、各HTSテープは、隣り合ったテープの面(
図12のxy面)と接触し得る。いくつかの実施形態では、超伝導マグネットは、鋼などの非超伝導材料とともにHTSテープのスタックの巻き線を含み得る。例えば、HTSテープと同一の幅(
図12のx方向の大きさ)を有する単一の鋼テープの最上部に向き合って積み重ねられる10~20個のHTSテープのスタックは、マグネットを作製するために、中心構造の周りにともに巻かれてもよく、そのスタックは、巻き線に沿って1つまたは複数の構造隔壁を貫通する。
【0021】
[0037]いくつかの実施形態では、超伝導マグネットは、レーストラック形状のらせんに配置されたHTSテープ(またはHTSテープのスタック)を備えてもよく、そのらせんは、巻き線に沿って1つまたは複数の構造隔壁を貫通する。
【0022】
[0038]いくつかの実施形態では、超伝導マグネットのハウジングは、ハウジング内の超伝導材料をハウジングの外面に結合するように構成された導電性の接合体構造を含み得る。巻き線中に、超伝導材料は、そのような接合体構造に電気的に結合(例えば、はんだ付け)され得る。いくつかの場合では、ハウジングは、超伝導材料の巻き線の内部と、超伝導材料の巻き線の外部とにおける接合体など、複数の接合体を含み得る。
【0023】
[0039]いくつかの実施形態では、超伝導マグネットは、ともに結合された超伝導材料の複数の個別の巻き線を含み得る。いくつかの場合、各巻き線のハウジングは、各ハウジング上に巻き線間に電気的結合を実現する導電性の接合体とともに積み重ねられ、または他のやり方で組み立てられ得る。その結果、伝導性経路が、巻き線を通って、例えば、第1のハウジングの巻き線の内側から外側へ、接合体を介して第2のハウジングにおける巻き線の外側へ、第2のハウジングの巻き線の外側から内側へなどのように形成され得る。少なくともいくつかのユースケースに対して、そのようなアセンブリにおけるハウジングは、それらの全体的に円形で平坦な形状を参考にして、本明細書において「パンケーキ」と呼ばれる場合がある。
【0024】
[0040]いくつかの実施形態では、上述したように個別に収納された巻き線のスタックは、1つまたは複数の冷却板に結合され得る。冷却板は、伝導冷却を実現可能であり、銅などの熱伝導性の材料を含み得る。いくつかの実施形態では、冷却板は、隣り合ったハウジングの間に挿入されてもよく、この冷却板は、隣り合ったハウジングの間で接合体から電気絶縁される。
【0025】
[0041]以下は、超伝導マグネットにおいて超伝導材料に印加される歪みを低減するための技法に関連する様々な概念またはその実施形態の詳細な説明である。なお、本明細書に記載される様々な態様は、多くのやり方のうちのいずれかで実施され得ることを理解されたい。特定の実施の例は、例示目的でのみ本明細書において提供される。さらに、以下の実施形態に記載される様々な態様は、単独または任意の組み合わせで使用されてもよく、本明細書で明示的に記載された組み合わせに限定されない。
【0026】
[0042]
図1は、いくつかの実施形態による、構造隔壁を備えた超伝導マグネットの断面図である。マグネット100は、上板111と、下板112と、内径の電気的接合体を含み得る中心構造113とを備えるハウジング110を含む。HTSテープ115の単一の連続した部品は、中心構造113の周りに巻かれる。あるいは、HTSテープのいくつかの結合された切片は、単一の巻き線としてともに巻かれ得る。
図1に示す断面図のため、同一のHTSテープが、中心構造とは異なる半径位置の連続した巻き線で示される。マグネット100は、さらに、中心構造の周りに巻かれるときにHTSテープ115が貫通する構造隔壁(以下「隔壁」)121および122を含む。HTSテープ115が隔壁を貫通する位置は、明確性のために
図1では示されないが、隔壁121および122は、上述したようにHTSテープ115が貫通する貫通接続スリットを含み得る。
【0027】
[0043]いくつかの実施形態では、隔壁121および122は、ハウジング110内で移動可能でもよく、それによって隔壁内の貫通接続スリットが、HTSテープが隔壁内を埋める点においてHTSテープと整列し得る。例示的な貫通接続スリットが
図3A~
図3Cに示され、以下で詳細に説明される。テープが隔壁を貫通する必要がある方位角位置が不明な場合があるため、巻いている間に移動可能な隔壁は有益な場合があり、それによって、テープが隔壁内部の空間を全て埋めた時に必要な方位角位置に、隔壁の貫通接続スリットが配置される。いくつかの場合、隔壁を所望の方位角位置に依然として正しく動かすことができるが、隔壁は、スロット内に配置されているため、または他のやり方で動きがある程度制限されているため、限定されて移動可能でもよい。
【0028】
[0044]いくつかの実施形態によれば、隔壁121および122は円形の場合があり、したがって
図1の同断面図が、マグネット100の中心を通る、任意の選択断面に適用可能である(スリットを含み
図1とは異なって見える隔壁を貫通するスリットを含む断面を除く)。いくつかの実施形態では、隔壁121および122は、円形以外でもよく、その代わりに、長方形、または角が丸い長方形(例えば、レーストラック形状)、楕円、または任意の他の適切な形状などの形状を有してもよい。
【0029】
[0045]いくつかの実施形態によれば、上板111および下板112は、鋼、インコネル(登録商標)、ナイトロニック(登録商標)40、ナイトロニック(登録商標)50、インコロイ(登録商標)、またはそれらの組み合わせなどであるがそれに限定されない高機械的強度材料を含み得る、またはそれから成ることが可能である。いくつかの実施形態では、隔壁121および122は、鋼、インコネル(登録商標)、ナイトロニック(登録商標)40、ナイトロニック(登録商標)50、インコロイ(登録商標)、高エントロピー合金、高強度複合材料、セラミックス、またはそれらの組み合わせなどであるが、それに限定されない高機械的強度材料を含み得る、またはそれから成ることが可能である。
【0030】
[0046]いくつかの実施形態によれば、HTSテープ115は、イットリウム系バリウム銅酸化物(YBCO)などの希土類バリウム銅酸化物超伝導体(REBCO)を含み得る。いくつかの実施形態では、HTSテープは、約0.001mmから約0.1mmの範囲の厚さ(または高さ)と約1mmから約12mmの範囲の幅の断面寸法を有する、HTS材料から成る長尺で薄いストランドを備え得る。いくつかの実施形態によれば、HTSテープの各ストランドは、導電性材料に加えてREBCOなどのHTS材料を含み得る。いくつかの実施形態では、導電性の材料は、REBCO上に配置され得る。いくつかの実施形態では、導電性材料は、銅などのクラッド材料でもよい。いくつかの実施形態では、HTSテープは、多結晶HTSを含んでもよく、および/または高い粒度のアライメントを有してもよい。
【0031】
[0047]いくつかの実施形態では、HTSテープ115は、鋼または銅などの非超伝導性材料とともに共巻きされ得る。HTSテープのスタックは、共巻き材料の1つまたは複数の層とともに共巻きされ得る。いくつかの実施形態では、構成要素間の潜在的な間隙を埋めるために、追加の伝導性材料がマグネット100に含まれ得る。例えば、インジウムなどの軟金属は、上板111または下板112のいずれかとHTSテープとの間に配置され得る。
【0032】
[0048]中心構造113は、全体として一体化しているとして
図1で示されるが、図に示されるような構造は、マグネット100の必須構成要素ではなく、一般に、マグネットがハウジング中に任意の中心構造を含み得ることが理解されるであろう。例えば、中心構造113は、代わりに、壁の内側が空いた円筒形でもよく、その壁の周りにHTSテープが巻かれることが可能である。
【0033】
[0049]
図2Aは、いくつかの実施形態による、溝に配置された構造隔壁を備えた超伝導マグネットの断面図である。マグネット250は、上板261と、下板262と、内径の電気的接合体278を含み得る中心構造263とを備えるハウジング260を含む。HTSテープ265の単一の連続した部品は、内径の電気的接合体278から巻かれる。あるいは、HTSテープのいくつかの結合された切片は、単一の巻き線としてともに巻かれ得る。
図2Aに示す断面図のため、同一のHTSテープは、中心構造から異なる半径位置の連続した巻き線で示される。マグネット250は、中心構造の周りに巻かれるときにHTSテープ265が貫通する隔壁271および272をさらに含む。HTSテープ265が隔壁を貫通する位置は、明確性のために
図2Aでは示されないが、隔壁271および272は、上述したようにHTSテープ265が貫通する貫通接続スリットを含み得る。
【0034】
[0050]
図2Aの例では、隔壁271および272は、上板261および下板262に形成された溝に配置される。この溝は、組み立て中に隔壁を適切な位置に保持する保持機構の役割を果たすことが可能であり、および/またはマグネットに追加の構造的強度を提供して、隔壁に印加された力が板261および262により容易に伝達されることを可能としてもよい。いくつかの実施形態では、上板261および下板262の面に形成されたこの溝は、円形状を有してもよい。他の場合では、板の面に形成された溝は、長方形、または角が丸い長方形など、異なる形状を有してもよい。
【0035】
[0051]
図2Aの例では、マグネット260は、上述したようにマグネット内のHTSテープを外面に結合するように構成された構造である、導電性の接合体構造(以下「接合体」)278および279を含む。巻いている間に、HTSテープ265は、内側接合体278と外側接合体279とに対して電気的に結合(例えば、はんだ付け)され得る。
図2Aの例で、内側接合体278は、HTSテープ265の導電性経路をマグネット250の上面に結合する一方、外側接合体279は、HTSテープ265の導電性経路をマグネットの下面に結合する。
【0036】
[0052]いくつかの実施形態では、内側接合体278は、各断面において、
図2Aに示すようにハウジングの最上部まで延在しなくてもよい。いくつかの場合、内側接合体278は、ハウジングの一側部の周囲など、ハウジングの最上部の一部までしか延在しなくてもよい。同様に、いくつかの実施形態では、外側接合体279は、各断面において、
図2Aに示すようにハウジングの最下部まで延在しなくてもよい。いくつかの場合、外側接合体279は、ハウジングの一側部の周囲など、ハウジングの最下部の一部までしか延在しなくてもよい。これらの構成は、依然として導電性経路が接合体を通ってマグネットを出ることができながら、追加要素がハウジングの次に挿入可能となる利点を有し得る。
【0037】
[0053]中心構造263が
図2Aに示されるが、図に示されるような構造は、マグネット250の必須構成要素ではなく、一般に、マグネットがハウジング中に任意の中心構造を含み得ることが理解されるであろう。例えば、中心構造263は、代わりに、内径電気的接合体278のみから成って、壁の内側が空いた円筒形でもよく、その壁の周りにHTSテープが巻かれることが可能である。
【0038】
[0054]
図2Bおよび
図2Cは、
図2Aのように構成された例示的なハウジング(または「パンケーキ」)の断面斜視図であり、ハウジングは円形で、円形の溝と、その溝内に配置された円形の隔壁とを含む。同一の構造が
図2Bおよび
図2Cの両方に図示されているが、
図2Bは、ハウジングの一側部の詳細を示す。
図2B~
図2Cの例では、マグネット200は、上板203、下板204、および隔壁210、212および214を含むハウジング202を備える。マグネットは、さらに、内側接合体206および外側接合体208を含む。
【0039】
[0055]
図2Bおよび
図2Cの例では、マグネット200は、3つの構造隔壁210、212、および214を備える。いくつかの実施形態によれば、それらの隔壁は、高ローレンツ力にさらされた時に複数の巻回上のHTSテープに蓄積される周歪みを減少させ得る。
図2B~
図2Cに示すように、構造隔壁210、212、および214は、上部構造板203および下部構造板204に形成されたスロットまたは溝に収められる。スロットおよびそれらの関連する構造隔壁210、212、および214の半径方向の位置は、コンピュータ分析によって求められてもよく、それによって蓄積された動作上のテープ歪みが許容範囲を超えない。逆に、隔壁の数は最小限に抑えられることが可能であり、それによってハウジング内の空間が不要な数の隔壁に取られず、そうでない場合は、HTSテープによって占有され得る。HTSテープが配置され得る隔壁間の空間、すなわち、
図2Bおよび
図2Cの例では空間220、222、224、および226は、以下で「チャネル」と呼ばれる場合がある。
【0040】
[0056]
図2Bおよび
図2Cの例で、各構造隔壁210、212、および214は、隔壁の一方の側から他方の側へ半径方向にテープスタックを遷移させるための貫通接続スリットを有する。適切な貫通接続スリット構造の説明上の例を以下に説明する。したがって、
図2Bおよび
図2Cに示すように、マグネットアセンブリにおけるパンケーキのうちの少なくとも1つは、半径方向荷重に耐えるための1つまたは複数の隔壁によって分離された複数のチャネルを備えてもよく、各チャネルは、HTSテープの1つまたは複数の巻回を有し、各隔壁は、近くのチャネルにおいてHTSテープの巻回を接続する貫通接続を有する。この貫通接続スリットを使用して、連続した1本のHTSテープまたはテープスタックは、隔壁を貫通するものの、隔壁によって構造上支持されながら内径から外径へ巻かれることができる。
【0041】
[0057]なお、1つのパンケーキにおける隔壁の数、したがって、そのパンケーキにおけるチャネル数は、調節され得ることが理解され得る。そのような調節の理由は、とりわけ、パンケーキの直径、隔壁自体を含むパンケーキの作製で使用される材料、HTSテープ(またはHTSテープのスタック)で使用される材料、設計材料応力の大きさ、設計動作温度、磁界、および技術的な電流密度(または輸送電流)、および/または他の適切な要素におけるばらつきを吸収することを含む。
【0042】
[0058]
図2Dは、いくつかの実施形態による、隔壁およびHTSテープを備えるマグネットの写真である。マグネット280は、HTSテープを備えるマグネット200の一例であり、上部構造板が取り除かれており、それによってマグネットの内部が見られる。
図2Dに示すように、マグネット280は、3つの隔壁286、287、および288を含む。3つの隔壁のそれぞれは、貫通接続スリット(
図2Dでは明確に示されていない)を含み、HTSテープは、マグネットの内部から中心構造285の周りに巻かれ(テープ領域281を形成)、隔壁286を通って、隔壁286の周りに巻かれ(テープ領域282を形成)、隔壁287を通って、隔壁287の周りに巻かれ(テープ領域283を形成)、隔壁288を通って隔壁288の周りに巻かれる(テープ領域284を形成)。
図2Dの例で、中心構造285は、上述したように、内径電気的接合体のみから成る。
【0043】
[0059]
図3A~
図3Cは、いくつかの実施形態による、構造隔壁の貫通接続スリットの様々な構成を図示する。
図3A~
図3Cのそれぞれは、構造板の円形スロット内に配置された円形隔壁を図示する。なお、例示的な貫通接続スリットが円形隔壁および円形スロットのために図示されるが、同種のスリット設計が他の形状(長方形など)の隔壁においても実現可能であり、および/または構造板内のスロットに配置されない隔壁において実現可能であることが理解され得る。
【0044】
[0060]
図3Aの例で、隔壁は、スリットが隔壁の高さ全体にわたって延在しない部分スリット構成310を含む。
図3Bの例で、隔壁は、スリットが隔壁の高さ全体にわたって延在する全スリット構成320を含む。
図3Cの例で、隔壁は、その外径において加工されたらせんを有する隔壁のための部分スリット構成330を含み、それによって隔壁が純粋な円形ではなく、むしろほぼ1巻き全部のらせんの形状を有する。
図3Cの構成は、全方位角方向において等しく半径方向荷重に耐えることができる半径方向で均一の厚さを有する隔壁を含み得る。
図3Cは、隔壁がその外径において加工されたらせんを有するが内径では円形であることを図示するが、隔壁のために他の適切な構成は、内径および外径の両方でらせんの形状を有する場合がある。なお、他のスリット構成も、本明細書で開示された概念、技法、および構造の実施形態に従って、特に半径方向応力を軽減するために使用され得ることを理解されたい。
【0045】
[0061]上述したように、本明細書の実施形態は円形スロット内に配置された円形隔壁に限定されず、マグネットを巻いている時に隔壁がスロット内で回転可能な構成に対しても利点があり得る。テープが隔壁を貫通する必要がある方位角位置が不明な場合があるため、円形隔壁および円形スロット構成は、巻き線中に隔壁が回転可能とし、それによって、テープが隔壁内部の空間を全て埋めた時に必要な方位角位置に、隔壁の貫通接続スリットが配置される。
【0046】
[0062]上述したように、いくつかの実施形態では、高磁界超伝導マグネットは、平坦な層に配置されたHTS、HTSテープ、またはHTSテープスタックの巻回によって形成されてもよく(例えば、層の接触面が、それを中心として層が配置されるマグネットの中心長手方向軸に直交するように形成されてもよい)、そのような構成は、「パンケーキ状巻」またはより単純に「パンケーキ」と呼ばれ得る。それによって、パンケーキは、HTS部品と、HTSを収容するための構造的部品との両方を含む。マグネットが巻回を有する層によって形成される(例えば層の接触面がそれを中心として層が配置されるマグネットの中心長手方向軸に平行になるように形成する)場合、そのような構成は、「層状巻手法」または単に「層状構成」、さらに単純に「層状」と呼ばれ得る。
【0047】
[0063]
図4Aは、いくつかの実施形態による、マグネットアセンブリ400の断面図であり、
図4Bは、その断面図の拡大部分を示す図である。いくつかの実施形態によれば、マグネットアセンブリ400は、高磁界(例えば、10テスラ以上)での使用のために設計され得る。いくつかの実施形態によれば、マグネットアセンブリ400は、外径(OD)電気的接合体402および内径(ID)電気的接合体404を有する複数のパンケーキの伝導冷却された「コールドマス」から構成され得る。本明細書で詳細に説明される実施形態において、HTSを保持する各パンケーキの機械的構造(以下「ハウジング」)は、米国ニューヨーク州ニューハートフォードのSpecial Metals Corporationによるインコネル(登録商標)合金などのオーステナイト系ニッケルクロム合金、または米国オハイオ州ウエストチェスターのAK Steelによるナイトロニック(登録商標)合金などの窒素強化オーステナイト系ステンレス鋼など、鋼、または他の適切な構造的導電体で形成されてもよく、またはそれを含んでもよい。ただし、他の実施形態において、ハウジングは、導電体の場合がある、または導電体でない場合がある他の構造的材料で形成され得ることを理解されたい。
図4の例で、マグネットアセンブリ400は、電気絶縁体406(高圧ファイバーグラス積層体など)によってマグネットアセンブリから電気的に絶縁された端子408で冷却装置を使用して熱伝導によって熱を伝達または他のやり方で除去するように結合される。
【0048】
[0064]
図4A~
図4Bの例が特定の非絶縁パンケーキ設計を図示したが、本明細書に開示される特徴および製造技法のうちの多くは、全体的または部分的に絶縁されたHTSテープまたはテープスタックによって形成されたマグネットに適用可能であり、当業者は、全体的または部分的に絶縁された設計に対して本明細書で教示された概念、技法、および構造を適応する方法を理解するであろうことを理解されたい。例えば、マグネットアセンブリは、各パンケーキにおいて同数の隔壁を含む必要はなく、
図4A~
図4Bの例で示すように、各パンケーキにおける同一の半径位置にパンケーキを含む必要はない。
【0049】
[0065]
図4Bは、
図4Aの断面図の拡大部分を示す図である。
図4Bの例で、マグネットアセンブリ400は、本明細書で「定型」パンケーキおよび「末端」パンケーキと呼ばれる2種類のパンケーキを含む。定型パンケーキ410、412、414、416、418、420、422、および424はそれぞれ、間に構造隔壁を有する1対の構造板で形成され得る。それらの隔壁は、上述したように、HTSテープまたはテープスタックの1つまたは複数の巻回を保持するための複数のチャネルを画定し、電流が印加されると磁界を発生させる。(HTSテープスタックは、パンケーキ自体の構造をより視覚的に明瞭にするために
図4A~
図4Bでは不図示である。すなわち、ハウジングのみが図示される)。
【0050】
[0066]
図4Bの例で、パンケーキ410は、内径から外向きに3つの隔壁425、426、427を備えており、この隔壁設計は、積み重ねられたマグネットアセンブリ400の他の定型パンケーキにおいて複製される。HTSスタックの巻回は、各パンケーキのチャネルにおいて連続したらせんを形成し、その内径をその外径に電気的に接続する。いくつかの実施形態によれば、パンケーキの少なくとも1つのHTSテープは、REBCOなどの希土類酸化銅を含み得る。なお、本明細書で開示された概念、技法、および構造の実施形態に従って磁界を生成するために、他の超伝導材料がマグネットアセンブリ400内で使用され得ることを理解されたい。
【0051】
[0067]いくつかの実施形態によれば、マグネットアセンブリ400内のHTSテープと、共巻きされる材料とは、パンケーキの構造において自立して密に搭載されることが可能であり、それによって、チャネルのそれぞれにおけるHTSテープスタックの1つまたは複数の巻回がチャネルの容積をほぼ埋める。あるいは、パンケーキのうちの少なくとも1つのHTSテープは、複数のチャネルのうちの少なくとも1つにはんだ付けされ、1つまたは複数の接合体にはんだ付けされる。なお、本明細書で開示された概念、技法、および構造の実施形態により、マグネットアセンブリ400内で超伝導テープまたはテープスタックを固定するために、他の方法が使用され得ることを理解されたい。
【0052】
[0068]いくつかの実施形態によれば、接合体における小さい抵抗加熱、接合体におけるテープの潜在的な過度の歪みおよび/または過度の応力、および各パンケーキ内の構造隔壁を通るチャネル間遷移に起因するクエンチの安定性を高めるために、それらの臨界領域において、銅の共巻きが追加され得る。接合体、電流リードおよびチャネル間遷移における銅成分の誘導ピックアップ渦電流加熱によるクエンチに関係した温度上昇を減少させるため、HTSテープスタックは、より大きな通電容量を実現する直列のHTSテープを追加することによって補強され得る。さらに、接合体、電流リードおよびチャネル間遷移におけるHTSテープスタックの潜在的なよじれを減少させるため、HTSテープスタックは鋼テープの共巻きによって補強され得る。さらなる共巻きが追加されてもよい。例えば、クエンチ中に隔壁を通る常電導伝搬を向上させるため、または他の目的のために、銅の共巻きが追加可能である。
【0053】
[0069]いくつかの実施形態によれば、マグネットアセンブリ400のパンケーキのそれぞれは、電気回路の一部としてHTSテープの1つまたは複数の巻回を電気的に結合するための1つまたは複数の接合体を含み得る。より具体的には、構造板に埋め込まれたリング形状の接合体が各定型パンケーキの内径および外径に位置してもよく、超伝導電気路を終端する。これらの接合体は、銅および/または他の導電性の材料を含んでもよく、またはそれで構成されてもよく、および/または超伝導材料を含んでもよく、またはそれで構成されてもよい。例として、定型パンケーキ422は、内径接合体440と、外径接合体442とを有する。HTSテープスタックのらせんは、それらの接合体の溝へと続く。例示的な実施形態において、らせんは、複数の完全な360度の回転後に終端してもよく、他の実施形態では、溝が1回の完全な回転の前または後に終端してもよい。
【0054】
[0070]いくつかの実施形態によれば、内径接合体440および外径接合体442は、それぞれ、各パンケーキの構造板に埋め込まれてもよく、それによってその対向する側において構造板の平面と同一平面となる、またはわずかにその上に延在する。特に、接合体は、以下に説明するように、冷却板のために隣の空間を提供するため、構造板の上に延在してもよい。本明細書で開示されたモジュラー設計によれば、定型パンケーキの数は、所望の磁界を発生させるために、1以上の任意の数のパンケーキであることが可能である。
【0055】
[0071]
図4Aおよび
図4Bの例では、複数の同一の定型パンケーキが、HTSテープで埋められたチャネルの交互の軸配向でともに積み重ねられ得る。この配置は、最も外側の2つのパンケーキの露出接合体間で、HTSテープのらせんと、マグネットアセンブリ400の全パンケーキの嵌合されたID間およびOD間接合体とを介した連続電気路を提供し得る。詳細には、パンケーキのうちの1つが、パンケーキのうちの第2のパンケーキの外径上の接合体に対して、その外径上の接合体によって電気的に結合され、パンケーキのうちの第1のパンケーキは、パンケーキのうちの第3のパンケーキの内径上の接合体に対して、その内径上の接合体によって電気的に結合される、交互ハウジングのパターンが繰り返され得る。例として、
図4Bでは、第1のパンケーキ412の外径接合体と、第2のパンケーキ414の外径接合体は、電気的結合領域446を介して嵌合され、第1のパンケーキ412の内径接合体と、第3のパンケーキ410の内径接合体は、電気的結合444を介して嵌合される。パンケーキ間の接合体のより良好な電気接触を促進するために、製造時に、2つの隣り合って積み重ねられたパンケーキの接合体のそれぞれの嵌合面間に導電性の(例えば、インジウムの)ガスケットが挿入されてもよい。
【0056】
[0072]なお、
図4Bにおいて、結合領域446は、パンケーキ412および414における接合体間に挿入された冷却板452の一部を含むことに留意されたい。
図4Aおよび
図4Bの例示的なマグネットアセンブリにおいて、板間の外側接合体は、パンケーキの半分でのみ接触し、残りの半分は、パンケーキ間に挿入された冷却板を有する。この違いは、接合体が互いに接触していることを示す
図4Aの左側の接合体領域402と、その間に冷却板を有する接合体を示す
図4Aの右側の接合体領域402を比較すると明らかである。
【0057】
[0073]
図4Aおよび
図4Bの例で、HTSテープの巻き線の電気経路は、最外部の2つの末端パンケーキ430および432によって完成する。末端パンケーキ430、432は、電気接触する定型パンケーキと同一の半径方向位置のIDまたはODのいずれかに位置する唯一のリング形状接合体を有する一体化した構造板を呈する。すなわち、積み重ねられた板の最上部および積み重ねられた板の最下部の各パンケーキは、他の(定型)パンケーキの接合体に電気的に結合されるその外径またはその内径のいずれかに接合体を有する内面と、接合体を有さない平行な外面とを有する。
【0058】
[0074]
図4Aおよび
図4Bの例で、両方の末端パンケーキ430、432は、ODに、ただしそれらの内面のみに、それぞれの接合体434、436を有する。末端パンケーキ430、432のリング形状の接合体434、436は、同一の導体の導電性の板と連続的に接続され、半径方向で外向きに、通常はHTS電流リード(例えば、
図4Aおよび
図4Bに示すような導電体406)の方向に延在している。HTSテープスタックは、接合体のリングの内部から始まり、接合体の溝において360度のループを形成し、その後、拡張板の溝に入って収まる。それによって、パンケーキのそれぞれ(定型と末端の両方)は、その1つまたは複数の接合体によって、1つまたは2つの近くのパンケーキのいずれかの接合体に電気的に結合され、それにより、パンケーキのそれぞれにHTSテープを含む動作電流路を形成する。
【0059】
[0075]いくつかの実施形態によれば、IDおよびODの接合体は、連続した円形リングの形状で実行されると上述したが、接合体は、代替として、不連続の板として構成され、それぞれのパンケーキからの拡張部として形成され、パンケーキを中心として位置決めされてもよく、それによってアセンブリにおいて嵌合し、上述したように、コールドマスアセンブリにおいて個々に、または一度に1つの接合体ずつ、または全てを一緒に加圧され、固定され得る。
【0060】
[0076]いくつかの実施形態によれば、パンケーキは、互いに独立しており、接合体でのみ電気動作のために接続されるため、個々のパンケーキの形状は、隣り合ったパンケーキの接合体が嵌合面を有する限り、異なることが可能である。一般に、コールドマスおよびHTS巻き線は、ソレノイドまたはレーストラックとして成形可能であり、またはそれらのいずれかとトポロジ的に合致する異なる形状を有することが可能である。したがって、パンケーキのうちの少なくとも2つは、異なるサイズまたは異なる形状を有してもよい。なお、当業者は、本明細書で開示された概念および技法から逸脱せずに、他のサイズまたは形状を考え出し得ることが予想される。
【0061】
[0077]いくつかの実施形態によれば、コールドマスは、接合体によってまだ埋められていない空間におけるパンケーキ間に挿入された熱伝導性(例えば、銅、アルミニウム、銀、金、グラファイトなど)の冷却板によって伝導冷却されてもよい。
図4Aおよび
図4Bの例で、銅冷却板450は、隣り合った定型パンケーキ422と424との間に配置され、交互のパンケーキと冷却板のこの設計は、図示するように、マグネットアセンブリ400全体において繰り返される。いくつかの実施形態では、銅冷却板は、パンケーキ間の電気的短絡を防止するように電気絶縁されてもよい。この絶縁は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または類似のものなどの電気絶縁体の層で各面を被覆し、その絶縁体を固化することによって実現され得る。なお、他のコーティングも使用され得ることを理解されたい。
【0062】
[0078]銅冷却板450のそれぞれは、熱伝導性でもよく、冷却板を冷却装置に熱的に結合するために、パンケーキ間から電気絶縁体の層を介して端子へ渡るように配置され得る。
図4Aおよび
図4Bの例で、銅冷却板450は、冷却装置の端子470と熱接触する端子452を有する。このように、パンケーキのそれぞれは、冷却板のうちの1つまたは2つのいずれかと隣り合っており、パンケーキが動作温度まで冷却可能とし、パンケーキがパンケーキで発生した熱を熱伝導によって冷却装置へ伝達可能とする。具体的には、各末端パンケーキは、冷却板のうちの1つと隣り合っており、各定型パンケーキは冷却板のうちの2つと隣り合っている。
【0063】
[0079]いくつかの実施形態によれば、HTSが構造隔壁の貫通接続スリットを貫通している場合、貫通接続におけるあらゆる間隙を埋めるために、HTSテープ以外の追加材料が供給されてもよい。この追加材料は、マグネットの動作中に圧力および/または他の力によって引き起こされた変形に起因するテープの劣化を軽減し得る。スリット中のHTSテープは比較的薄い場合があるため、変形の影響を特に受けやすい場合があり、貫通接続に配置された「シミング」材料を追加することによって、そのような変形を回避し得る。
【0064】
[0080]
図5は、いくつかの実施形態による、HTSテープに加えて、シムを備える貫通接続スリットの写真である。
図5の例で、上板が取り除かれ、上記の様々な実施形態で説明するようにHTSテープが隔壁内部および隔壁間に巻かれた状態のマグネットが示される。
図5の例で、隔壁520は、HTSテープ巻き線の領域512からHTSテープ巻き線の領域511を分離し、このHTSテープは隔壁520のスリットを貫通する。
図5の例で、隔壁520は
図3Cに示すような種類のものであり、この隔壁は、ほぼ1回の全巻回を有するらせんの形状を有する。追加のシミング材料522および523は、HTSテープ518の巻回が隔壁520を通過する時に他のやり方で出現し得る間隙を埋めるために、隔壁のいずれかの側で挿入される。
【0065】
[0081]シミング材料522および523は、HTSテープの追加の小片、および/または導電性の材料の追加のストリップ(例えば、銅のストリップおよび/または鋼のストリップ)を含み得る。各種の材料の複数のストリップが必要に応じて挿入されてもよい(例えば、HTSテープの複数のストリップ、銅テープの複数のストリップ、および鋼テープの複数のストリップが、単一のシムまたは「共巻き」として全てがともに挿入されてもよい)。
【0066】
[0082]
図6は、いくつかの実施形態によるマグネットを組み立てる方法のフローチャートである。例示を目的として、
図7に示すようなマグネットの分解組立図に関連して方法600が説明されるが、方法600は、
図7の特定の部品を用いたマグネットの組立に限定されないことを理解されたい。特に
図7は、円形隔壁と、円形スロットを有する円形構造板とを図示するが、方法600は、任意の適切な形状の隔壁および板(スロットのない板、または円形以外のスロットを含む)を用いて実践され得る。
【0067】
[0083]
図7の要素に関して、図は、
図4Aおよび
図4Bに示されるマグネットアセンブリ400、または
図2Bおよび
図2Cのマグネット200に含まれるパンケーキなど、完全な定型パンケーキ500における構造的および電気的な構成要素の分解組立図を示す。
図7に示される設計は、パンケーキを作製してHTSテープスタックをパンケーキの構造板に巻く便利なプロセスを促進する。HTSテープスタックは、
図4Aおよび
図4Bと関連して上述されたようなテープスタックでもよい。末端パンケーキの製造も同様であり、異なる点は以下で指摘される。
【0068】
[0084]パンケーキは、構造板710の下方において、内径接合体720を最初に設置してボルト留めすることによって組み立てられ得る。HTSスタックは、ID接合体720における溝に前もってはんだ付けされていてもよく、または、任意で、動作602での接合体の設置後に適切な位置にはんだ付けされてもよい。組立プロセスにおけるこの段階で、ID接合体720の外側の半径方向の空間は開放されており、特に、下部構造板710のスロットに設置されている隔壁はない。
【0069】
[0085]動作604で、積み重ねられたHTSテープは、その後、単一の面においてID接合体720から外向きに、すなわちカセットリールにテープが巻かれるのと同様にして巻かれ得る。この「リール間」の手法によって作製されるHTSテープのリールからパンケーキへの巻き線は、巻き線プロセスを大幅に単純化する。巻き線は、堆積された半径方向の構造が第1の隔壁730のスロット712に到達するまで継続する。
【0070】
[0086]任意で、第1の隔壁730は、下部構造板710に固定されるのではなく、巻き線プロセス中に挿入可能でもよい。そのような場合、隔壁は、動作606でID接合体720の周りへのHTSテープの巻き線中の適切なタイミングで第1の隔壁スロット712に挿入されてもよい。そのような場合、隔壁730は、下部構造板710のスロット712に挿入されてもよく、それによってテープと隔壁730との間の間隙は可能な限り小さくなる。円形(管状)の巻き線の場合、これは、上記の間隙を最小限にする最良の方位角位置に、すなわち、動作608でHTSテープの円周方向の巻き線がスロット712にまさに達した位置にその貫通接続を配置するために隔壁730を回転させることによって実現される。
【0071】
[0087]動作610で、上述した任意の局所共巻き材料(例えば、銅、鋼および/またはHTSテープ)が遷移領域におけるキンクの形成を軽減するHTSテープスタックは、隔壁730における間隙を通って隔壁730の外径へ駆動されてもよく、その後、隔壁730は、スロット712内で回転され、隔壁730内部の容積がテープで全体的に埋められるまで、貫通接続を通ってテープを送る。この時、隔壁730は適切な位置に保持され、隔壁730の外側の周りで「リール間」巻き線が継続する。
【0072】
[0088]いくつかの実施形態によれば、第1の隔壁730ならびに他の隔壁740および750は、
図3A、
図3B、または
図3Cのいずれかに示すように、または貫通接続を有する他の構成を使用して、HTSテープスタックが貫通する貫通接続スリットを備える。
【0073】
[0089]動作604と任意で動作606、ならびに動作608および610の処理は、巻き線が外径接合体760の位置に到達するまで各隔壁730、740および750に対して繰り返されてもよい。その設置後、HTSテープスタック(共巻きを有する)は、OD接合体760における間隙に挿入され、はんだ付けされる。巻き線と隔壁730、740、750または接合体720、760との間の潜在的な間隙は、銅または鋼の個体によるシムが入れられてもよく、または1つまたは複数の薄テープシムで構成されてもよい。このように、各定型パンケーキの内部はモノリシックとなってもよく、HTSテープスタックは、半径方向力に対して適切な位置に固定される。
【0074】
[0090]いくつかの実施形態によれば、隔壁730、740、750のそれぞれは、HTSテープ巻き線の最上部の上に延在してもよく、すなわち、隔壁730、740、750は、巻かれたHTSテープをわずかに上回る高さを有し得る。そのような場合、上部構造板で最終的に覆われる前に、巻かれたHTSテープの上方の空間にインジウムの層が追加され得る。最終的に、HTSテープ、隔壁、および接合体の最上部と同一平面で上部構造板770が設置される。設置中に、隔壁730、740、750は、下部構造板710のスロット712、714、716と同一の半径方向位置に存在する、上部構造板770の下側のスロットに挿入され、それにより、動作中に蓄積された半径方向力に対して隔壁への支持を提供する。
【0075】
[0091]末端パンケーキの作製は、OD接合体760および銅拡張板の挿入と、接合体の溝へのHTSテープスタックのはんだ付けとを含み得る。
【0076】
[0092]したがって、磁界を生成するために巻かれたテープを保持するためのハウジングが開示される。このハウジングは、1つまたは複数の第1の円形スロット712、714、716を有する第1の構造板710を備える。ハウジングは、さらに、1つまたは複数の隔壁730、740、750を備えており、そのような隔壁のそれぞれは、隔壁の内径から隔壁の外径へテープを巻くための貫通接続を有する。各隔壁730、740、750は、第1の円形スロットのうちの対応スロットに挿抜可能および回転可能に挿入される。すなわち、スロットが円形であり、隔壁がスロット内に収納されるように設計されているため、隔壁は、有益なことに、各スロット内で回転可能であり、それによってそれらの貫通接続は、所望の方位角位置を有し、巻き線を容易にする、すなわち、スロットにおいて貫通接続を回転させて、隔壁内部の容積全体がテープで確実に埋められるようにする。ハウジングは、さらに、1つまたは複数の第2のスロットを有する第2の構造板770を備えており、各隔壁が第2のスロットのうちの対応スロットに挿抜可能に挿入される。隔壁730、740、750のうちの1つは、
図3A~
図3Cに示される構成310、320、または330のいずれか、または隔壁の一方の側から他方の側へ巻かれたテープを渡すことを容易にする任意の他の構成に従って貫通接続スリットを有し得る。
【0077】
[0093]すなわち、マグネットを形成するために伝導性テープを巻く方法が開示される。方法600は、1つまたは複数の円形スロット712、714、716を有する表面を有し、その内径に第1の電気的接合体720を有する第1の構造板710を設けるステップを含む。この方法は、次に、任意で、第1の電気的接合体720に伝導性テープが物理的および電気的に結合される動作602を含む。方法は、動作604に進み、伝導性テープが円形スロット(例として円形スロット712)のうちの1つに到達するまで、第1の構造板710の表面上に伝導性テープを円状に巻く。次に、方法は、任意で、円形スロット712の1つに、貫通接続スリットを有する隔壁(例として隔壁730)を挿抜可能に挿入される動作606を含み、ここで隔壁730は、円形スロット712の1つの内部で任意で回転されてもよく、それによってその貫通接続が、巻かれた伝導性テープの方位角位置と整列する。方法は動作608に進み、HTSテープは貫通接続スリットと整列され(隔壁を回転させる、または他のやり方による)、その後、動作610で、第1の構造板710の表面上に、貫通接続を通って隔壁730の外径の周りに伝導性テープが巻かれ、それにより伝導性テープと隔壁730との間の間隙を最小限にする。
【0078】
[0094]上記方法は、続けて、1つまたは複数の円形スロットの各追加スロットに対して(例として、隔壁740および750を使用して、それぞれ追加円形スロット714および716に対して)、動作604~610を繰り返してもよい。第1の構造板710がその外径に第2の電気的接合体(例として接合体760)を有する場合、上記方法は、伝導性テープを第2の電気的接合体760に物理的および電気的に結合するステップを含み得る。上記方法は、巻かれた伝導性テープに隣り合ってインジウムの層を追加するステップをさらに含み得る。
【0079】
[0095]方法600は、いくつかの実施形態では、第2の円形スロットを有する表面を有する第2の構造板(例として、板770)をさらに設けて、巻かれた伝導性テープと同一平面に第2の構造板770を配置することによって、隔壁(この場合、隔壁730)が第2の円形スロットに挿抜可能に挿入されることによって、完全な構造的ハウジングと巻かれたテープとを有するパンケーキを作製し得る。なお、第2の構造板が追加隔壁(例として、隔壁740および750)を収容するスロットを有してもよく、第2の構造板770を配置することは、さらに、それらの追加隔壁を第2の構造板の対応スロットに挿抜可能に挿入し得ることを理解されたい。上述したように、伝導性テープは、銅、鋼、または銅および鋼の両方と共巻きされる。
【0080】
[0096]
図8は、
図4A~
図4Bに示されるマグネットアセンブリ400などのマグネットアセンブリで使用され得る末端パンケーキ800の斜視図である。末端パンケーキ800は、構造板802と、導電体806を介してマグネットアセンブリとの間で電流を運ぶために使用される単一の電気的接合体804とを含む。末端パンケーキ800は、その外径に沿った電気的接合体804とともに示される。上述したように、さらに、その内径に沿って、例えば、奇数の定型パンケーキを有するマグネットアセンブリで使用される単一の接合体を有する末端パンケーキを設けることが企図される。そのような代替の末端パンケーキは、外部回路への結合のために、内径から半径方向で外向きに導電体を必要とする場合があり、当業者は、そのような導体を作製する手法を理解すると思われる。
【0081】
[0097]連続したパンケーキ間電気路は、その全長にわたって、スタックの内径と外径との間で交互になるため、それに応じて成形された2種類の銅冷却板が存在する。したがって、
図9は、例えば、
図4Bに示されるような電気結合444におけるパンケーキ410と412との間の接続、ならびにパンケーキ414と416との間、パンケーキ418と420との間、およびパンケーキ422と424との間の同様の接続間など、電気結合界面910によって図示されるようにその内径に沿って嵌合されるパンケーキ間で使用される銅冷却板900を示す。特に、銅冷却板450は、
図9の銅冷却板900として実施され得る。なお、末端パンケーキがその内径に沿ってリング形状の電気的接合体を有し定型パンケーキと嵌合する設計において、銅冷却板900または同様の設計の板は、界面において使用されるべきであることを理解されたい。
【0082】
[0098]同様に、
図10は、例えば、
図4Bに示されるような電気結合446におけるパンケーキ412と414との間の接続、ならびにパンケーキ416と418との間、およびパンケーキ420と422との間の同様の接続など、電気結合界面1010によって図示されるようにその外径に沿って嵌合されるパンケーキ間で使用される銅冷却板1000を示す。特に、銅冷却板454は、
図10の銅冷却板1000として実施され得る。末端パンケーキ430および432のそれぞれが単一のリング形状の接合体を有する
図4Aおよび
図4Bの例示的な設計において、銅冷却板1000は、パンケーキ430と410との間、およびパンケーキ424と432との間の結合のために使用され得る。
【0083】
[0099]なお、奇数の定型パンケーキを有する設計において、一方の末端パンケーキは、その内径に沿って電気的接合体を有し、他方の末端パンケーキは、その外径に沿って電気的接合体を有することを理解されたい。そのような場合、第1の末端パンケーキは、銅冷却板900と隣り合っており、第2の末端パンケーキは、銅冷却板1000と隣り合っている。
【0084】
[00100]いくつかの実施形態によれば、マグネットアセンブリが真空状態の時に熱伝導性を高め、HTSテープが取り入れられたパンケーキの冷却を促進するために、パンケーキのうちの1つと、隣り合って積み重ねられた冷却板との間に、熱伝導性の部材が挿入され得る。例として、その熱伝導性部材は、インジウムフォイルでもよく、または英国マンチェスター州のM&I Materials Limitedによるアピエゾン(登録商標)Nグリースなどの極低温高真空グリース、または導電線のメッシュでもよい。
【0085】
[00101]
図4A~
図4Bに示されるマグネットアセンブリ400の作製を完了するために、動作要件に適切な数を有する定型および末端パンケーキが、上述したように絶縁銅冷却板とともに積み重ねられ、中間冷却板を用いたパンケーキのスタックは、その内径およびその外径の両方においてボルトによってともに連結され得る。任意で、マグネットアセンブリ400は、スタックの最上部および最下部に追加構造板480、482を含み、それらは互いにボルト留めされ、積み重ねられた板は、代わりに(または追加して)それらのさらなる構造板480、482によってともに加圧される。その後の時点で、マグネットアセンブリ400は、締め付けボルトを取り外して個々のパンケーキを分離することによって、分解され得る。その後、必要に応じて、異なる動作磁界を実現するために、コールドマスが、より多いまたはより少ない定型パンケーキを用いて再度組み立てられ得る。したがって、マグネットアセンブリ400の設計は、有益なことに、モジュラーと伝導冷却との両方が可能で、組立および分解が容易になることと、
図4Aおよび
図4Bに示される実施形態において10個のパンケーキと9個の冷却板の使用が例に過ぎないこととを理解されたい。
【0086】
[00102]したがって、複数の冷却板(そのうちの冷却板450および454は例)を含み、冷却板のそれぞれが冷却板を冷却装置470に熱的に結合するための端子(例えば、端子452)を有するマグネットアセンブリ400が開示される。
図4Aおよび
図4Bに示されるように、複数のパンケーキおよび複数の冷却板が交互にスタックに配置され、スタックにおけるパンケーキのそれぞれは、スタックにおける1つまたは2つのいずれかの近くのパンケーキの接合体に対してその1つまたは複数の接合体によって電気的に結合され、それにより、パンケーキのそれぞれにおいてHTSテープを含むスタックを通る動作電流路を形成し、パンケーキのそれぞれは、冷却板のうちの1つまたは2つのいずれかと隣り合って熱的に結合される。
【0087】
[00103]マグネットアセンブリ400の動作に関して、動作電流は、導体における所与の動作温度および最大磁界に特化したHTSテープスタックの通電容量によって定義され得る。ピーク磁界は巻回間で異なるため、任意で、スタックにおけるテープの数を変化させることによって、HTSテープスタックの傾斜をもたらしてもよい。これは、マグネットアセンブリ400におけるテープの総量を減少させる上で役立つ。説明のため、磁界がIDにおいて高くODにおいて低いため、HTSテープの臨界電流は、外径(OD)よりも内径(ID)の法が小さい。その差を補償するために、IDではより多くのテープが必要であり、すなわちHTSテープスタックは「傾斜」がつけられる。これは、最大の必要数のテープを用いてIDにおいて巻き線を開始し、その後、所与の半径方向位置においてテープのいくつかを終端させることによって実現され、これは上述したように巻き線のプロセスにおいて行われ得る。なお、この簡略化した説明はテープ面に対する磁界の方向への臨界電流の依存性の原因を明らかにしていないが、本開示に関しては十分であることに留意されたい。
【0088】
[00104]マグネットアセンブリ400を動作させるために、非制御クエンチとともに、充電、定常状態、低速および高速放電という、いくつかの公称モードが存在する。それらのモードのそれぞれを以下に説明する。
【0089】
[00105]充電および低速放電モードは、外部電源(不図示)によって制御された輸送電流を変化させることによって行われる。絶縁ケーブルが巻かれた従来のマグネットとは異なり、非絶縁マグネットの充電は非常に長くかかり、誘導電圧駆動の巻回間電流共有および結果的な加熱によって駆動される。充電速度dl/dtが速いほど、それらの放射状の電流が強くなり、コールドマス構造およびHTSテープの温度上昇を避けるために、構造内部に蓄積されたより大きな抵抗加熱パワーが伝導冷却によって除去される必要がある。充電を速めるために、このマグネットアセンブリ400では、最も高い許容値で最も温かい位置(すなわち冷却源から最も離れた位置)で測定された温度を維持するために、充電速度が制御されて動的に調整され得る。最も高い許容温度は、ピーク磁界と温度との電流組み合わせに関して、臨界電流に対する輸送電流の近似によって定義される。
【0090】
[00106]所与の定電流での定常状態モード動作における熱損失は、非常に小さく、
図11Aおよび
図11Bと関連して説明した冷却源の利用可能な冷却パワーによって容易に管理される。
【0091】
[00107]高速な放電は、緊急の状況においてマグネットアセンブリ400の電流と磁界を零に駆動するために使用される。これは、電流供給回路を開放することによって実現される。この動作は、軸方向で最も外側のパンケーキの半径方向で最も外側の巻回において強力な誘導渦電流をトリガし、マグネットアセンブリ400における磁束を保護する傾向にある。外径接合体402は、それらの電流の便利な周回経路を形成し、巻き線の縁に沿って実質的に均一な加熱を促進する。この熱線は、マグネットアセンブリ400内に半径方向でより深く伝搬し、パンケーキ全体がクエンチされるまでHTSテープの巻回を1つずつクエンチする。この時、輸送電流の大部分が、その経路を、らせんHTSテープの巻き線に方位的に沿う経路から構造板とHTSテープ自体(例えば、米国インディアナ州ココモのHaynes International,Inc.のハステロイ(登録商標)ニッケル系合金などの耐食合金でもよい)の基板とを含むより高抵抗の経路を半径方向で介する経路へ変化させる。クエンチされたパンケーキの損失磁束は、次のパンケーキによって得られ、それにおいて同様のプロセスをトリガする。このプロセスは、全パンケーキがクエンチされるまで続き、全ての保存された電磁エネルギーが熱の形態でコールドマスに蓄積される。
【0092】
[00108]マグネットをクエンチするこの方法の利点は、クエンチが開始され、予測可能な、非常に均一に伝搬し、局所的な過熱箇所を形成しないことである。これは、基本的に、誘導電流のための経路を形成する接合体に起因して実現される。クエンチ時間は、マグネットアセンブリ400のサイズに応じて決定され、非常に高速で、1秒未満となることが予想される。これは、外部抵抗器を介して電流をダンプすることによってクエンチされる、本発明が属する分野で知られている絶縁マグネットとは異なる。この場合、クエンチ時間は、端子電圧によって定義され、通常非常に長い。非絶縁マグネットにおけるクエンチの顕著な特徴は、マグネットを備える構成要素間で生成される1V以下のオーダの低電圧である。この特徴は、要件を絶縁まで顕著に減少させ、上述した絶縁手法の使用を可能とする。
【0093】
[00109]制御されていないクエンチは、何らかの理由で輸送電流が臨界電流を超える、クエンチ開始帯の局所的な形成によって通常発生する。非絶縁マグネットにおいて、本設計を含めて、この状況は、直列巻き線電流の一部を局所的に放射状に再分散させ、それによって磁束分布を変化させ、制御されたクエンチによる緊急遮断のための上述した条件と同様の条件を創出する。銅接合体の形態における銅クラッディングは、同様の目的を満たし、本設計において、より制御されたクエンチ伝搬に繋がり、結果としてより均一なジュール加熱となる。あるいは、十分な冷却パワーがあれば、常伝導帯は、超伝導状態に戻ることができる。
【0094】
[00110]いくつかの実施形態によれば、マグネットアセンブリのコールドマスは、断熱真空によって囲まれ、クライオスタットに封入されてもよく、熱輻射シールドがクライオスタット壁とコールドマスとの間に挿入される。伝導冷却は、極低温液体の連続流を利用するクライオクーラ、クライオ冷蔵庫、熱交換器によって、または他の従来使用されてきた手法で実現され得る。ただし、一般に、冷却装置は、コールドマスで生成された熱エネルギーのためのヒートシンクとして動作する。さらに、冷却装置は、その断熱とともに、マグネットのコールドマスの動作温度への冷却をもたらし、マグネットアセンブリの充電/放電を促進し、動作中、さらに必要に応じて輸送中にマグネットアセンブリを物理的に支持する。
【0095】
[00111]これに関連して、
図11Aは、冷却装置1110の一部に結合されるマグネットアセンブリ1100の破断図であり、
図11Bは、マグネットアセンブリ1100を囲む異なる熱保護層を強調した部分1110を示す図である。マグネットアセンブリ1100は、例えば、
図4Aおよび
図4Bのマグネットアセンブリ400でもよい。
【0096】
[00112]断熱は、いくつかの形態で実現される。第1の形態は、例えば10
-4トル未満の圧力でもあり得る、クライオスタットを断熱真空へポンプ出力することを含む。第2の形態は、クライオスタット壁温度とコールドマス温度との間の何らかの中間温度まで冷却された熱輻射シールド1120をコールドマスの周りに設置することを含む。第3の形態は、
図11Bでより詳細に示す多層断熱材(MLI)1130で、コールドマスおよび輻射シールド1120を包むことを含む。
【0097】
[00113]マグネットアセンブリ1100および全コールドマスを囲む輻射シールド1120は、冷却の中間温度源と良好な熱接触を有する熱伝導性の金属、通常、銅を含む。この冷却源は、個別のクライオクーラ、またはマグネットを冷却するクライオクーラの第1の段、またはクライオ冷蔵庫からの液体窒素または極低温ガスなどの必要な温度および冷却パワーの任意の他の発生源、またはそれらの任意の組み合わせでもよい。
【0098】
[00114]輻射シールド1120の位置におけるフリンジ磁界と、マグネットクエンチ中の磁界の変化速度とに応じて、輻射シールド1120は、シールド1120の材料における渦電流を制限するため、さらにクエンチしているマグネットとシールド1120との間で相互作用するローレンツ力を制限するために一部1122が電気絶縁のために切断され得る。そのような力は、輻射シールド1120を変形、または破壊までする場合がある。シールド1120の熱伝導性材料は、同様の理由により、強い金属または非金属構造によって補強され得る。
【0099】
[00115]非常に高速で1秒未満のクエンチ発生時間は、本明細書で開示された非絶縁コイルに特化したものである。この時間において、コイル電流と、この電流によって生成される高磁界は、その動作値から零へ変化する。これらの変化は、結果として、輻射シールド1120において強いローレンツ力を発生させる可能性があり、非常に強力なので、上述したものと同様な一般的な手段は、クエンチ中にシールド1120の保全性を保護するのに十分ではない。
【0100】
[00116]ここで
図11Bを参照すると、開示される冷却装置において輻射シールド1120に作用する渦電流と力とを減少および制限するために、輻射シールド1120の伝導性材料(例えば、銅)は、少なくとも一部1122において狭いストリップに切断される。これらのストリップのサイズは、シールド1120の構造に対する許容できる力によって決定される。部分1122におけるストリップは、互いに電気絶縁される。例として、ストリップは、間に0.5~1.0mmの絶縁間隙を有する10mm幅の銅ストリップとして実施され得る。ストリップは、ファイバーグラスG11-CRなどの非導電性材料で形成され得る下に置かれたシールド構造1124に結合される。あるいは、クエンチ中に生成された力が許容する場合、下に置かれたシールド構造1124は、ステンレス鋼などの低導電性であるが強力な金属で形成され得る。
【0101】
[00117]部分1122における銅ストリップの、シールド1120の構造体1124への結合は、接着、リベット締め、またはねじ留めによって実現され得る。電気絶縁膜は、存在する場合にステンレス鋼体から銅ストリップを絶縁するために使用され得る。マグネットアセンブリ1100の最上面および最下面の面に平行に輻射シールド1120へ取り付けられた任意のストリップは、シールド構造の外面に結合される必要がある。クエンチ中に、この位置では、ストリップがシールド構造へ、マグネットアセンブリ1100に向かって押される。
【0102】
[00118]輻射シールド1120の少なくとも一部は、マグネットアセンブリ1100から離れて位置し、磁界のレベルは、シールドの通常の設計を可能とする(すなわち、ストリップによって切断されない)。熱伝導性の銅ストリップは、囲んでいる真空における接合体の熱抵抗を低減するために、インジウムのシムまたアピエゾン(登録商標)Nグリースの適用により、シールドの熱伝導性の部分に結合される。
【0103】
[00119]変形例として、輻射シールド1120は、必要な形状の刷り込み銅ストリップを有するファイバーグラスのダッシュボードとして形成され得る。計装用線を配線するために、同様の回路基板が使用され得る。
【0104】
[00120]いくつかの実施形態では、温度降下と、温かいクライオスタット壁からの伝熱に起因するシールドに対する熱負荷を減少させるために、輻射シールド1120が多層断熱材(MLI)1130で包まれる。MLI1130は、クライオスタットの良好な熱的性能のために10-5から10-7トルの減圧の真空環境での断熱のために使用される。MLI1130は、低放射率の輻射シールドと低熱伝導率のスペーサ材料との交互の層から成る。最も一般的に使用されている低放射率の輻射シールドは、シートの片側または両側に真空蒸着したアルミニウムコーティングを有するマイラー(登録商標)基板である。スペーサ材料は様々に異なることが可能で、最も一般的には、ポリエステルである。MLI1130のブランケットは、例えば32層など、多くの層から成ってもよく、多くの場合、2つのブランケットがシールドのより良好な断熱のために使用される。
【0105】
[00121]蒸着されたアルミニウムの厚さは、例えば350オングストローム、すなわち3.5*10-5mmなど、非常に小さい。この例では、二重のアルミニウム処理された32層を有するブランケットの中のアルミニウムの全体の厚さは、0.00224mmである。同時に、蒸着材料は、およそ1000以上の残留抵抗比(RRR)を有する非常に高純度のアルミニウム(出版物で使用される表現に準じる)でもよい。RRRは、室温と約20Kの極低温度とでの材料の抵抗の比率である。これらの特性は、輻射シールド1120の動作温度60~80Kにおいて、非電気絶縁マグネットのクエンチ中のMLIブランケットにおける渦電流の複合効果が、輻射シールド1120に印加される有意の力を発生させることが可能であり、それをMLI1130のブランケットが包むことを意味する。この力は、輻射シールドを破損させる場合があり、さらにMLI1130も破損させる場合がある。
【0106】
[00122]高磁界、非電気絶縁マグネット冷却装置のために、MLI1130のマイラー膜(または他の材料の膜)へのアルミニウムの堆積は、アルミニウム処理された膜の両側の異なる場所に位置する遮断物を有して行われる。それらの狭い遮断物は、アルミニウム処理された層をストリップに分割する際に必要な電気絶縁をもたらす。マグネットのクエンチ中に、それらの遮断物は、アルミニウム処理された膜における渦電流を制限し、シールド1120に印加されるローレンツ力を許容可能なレベルまで低減する。同時に、MLI1130の熱的性能は、大幅に劣化していない。これは、アルミニウム膜における遮断物の微小な表面面積に起因し、二重のアルミニウム処理された膜において透明な場所がないためである。
【0107】
[00123]上記の説明は、コールドマスがドライの伝導冷却方式を使用して冷却されることを前提とする。あるいは、コールドマスは、クライオジェン貯留方式によって冷却されてもよく、その場合、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、水素などの極低温液体を含む密閉構造ケースによって囲まれる。後者の場合、当業者は、冷却装置設計におけるこの変更を実施するために、上述した特徴のいくつかを修正するやり方を理解するであろう。
【0108】
[00124]例示を目的として、
図12は、いくつかの実施形態による、例示的な被覆導体HTSテープの層の断面図である。以下の説明は、いくつかの実施形態では、マグネットまたはマグネットアセンブリ内に配置された上述のHTSテープに適用可能である。希土類バリウム銅酸化物(「REBCO」)は、セラミック系HTSである。セラミック系HTSは1987年に最初に発見されたが、REBCOのHTS伝導体の大規模製造は、依然として高性能を維持するREBCOの長尺ストランドを製造する際の困難性に起因し比較的最近まで可能でなかった。
【0109】
[00125]
図12は、被覆導体として作製されるHTSテープ1200の一例であり、HTS層1210はREBCOの層である。上述したように、「REBCO」は、「rare-earth barium copper oxide」の頭字語である。本明細書で使用される場合、少なくともいくつかの場合、「REBCO」は、任意の希土類銅塩HTSをより一般的に指すために使用され得る。したがって、明示されない限り、バリウムはREBCOに存在してもよいが、その存在は必須ではない。ただし、
図12の例で、REBCO層はHTS層の一例として提供され、例示されている構造を特定のHTSの使用に限定する意図はない。
【0110】
[00126]
図12の例で、例示的なテープ1200は、さらに、バッファ層1212と、ハステロイ(登録商標)層1214と、それぞれがREBCO層の上下両方に配置される銅層1216および銀層1218とを含む。この銅層は、「安定剤」層と呼ばれる場合がある。テープの例示的な寸法が
図12において示されており、テープは、およそ2~12mmの幅(X方向の大きさ)と、およそ0.1mmの厚さ(Y方向の大きさ)とを有する。
【0111】
[00127]いくつかの実施形態では、HTSテープは、10、20、40、60、80、100、120または150以上であるアスペクト比(厚さに対するテープの幅の比率である)を有し得る。いくつかの実施形態では、HTSテープは、150、120、100、80、60、40、20または10以下であるアスペクト比を有し得る。上記で言及した範囲の任意の適切な組み合わせ(例えば、60以上および100以下のアスペクト比)も可能である。
【0112】
[00128]いくつかの実施形態では、HTSテープは、0.005mm、0.01mm、0.05mm、0.1mm、0.15mm、または0.2mm以上の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、HTSテープは、0.5mm、0.2mm、0.15mm、0.1mm、0.05mm、または0.01mm以下の厚さを有し得る。上記で言及した範囲の任意の適切な組み合わせ(例えば、0.01mm以上および0.1mm以下の厚さ)も可能である。
【0113】
[00129]
図13は、いくつかの実施形態による、核融合動力プラントの様々な構成要素を示す破断部分を有する動力プラントの三次元グラフィックである。核融合動力プラントは、上述したように作製されたマグネットまたはマグネットアセンブリを備え得る。
図13は、動力プラントの断面を示し、マグネットコイル1314と、中性子シールド1312と、中核領域1311とを含む。いくつかの実施形態によれば、マグネットコイル1314は、トロイダル磁場コイルでもよく、またはその一部を形成してもよい。いくつかの実施形態では、マグネットコイル1313は、上記で論じられ、説明されたように作製された超伝導マグネットから作製されてもよく、または他のやり方で含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、マグネットコイル1313は、中心ソレノイドおよび/または他のポロイダル磁界ソレノイド巻きコイルでもよく、またはその一部を形成してもよい。
【0114】
[00130]当業者は、本明細書で開示された概念、結果、および技法の他の実施形態を認識し得る。本明細書で記載される概念および技法もよって構成された超伝導マグネットが幅広い用途のために有益であり得ることが認識される。例えば、そのような一用途は、例えば、個体物理学、生理学、またはたんぱく質に対して核磁気共鳴(NMR)研究を実行することである。他の用途は、小型の高磁界マグネットが必要とされる有機体またはその一部のメディカルスキャニングのために臨床的な磁気共鳴映像法(MRI)を実行することである。さらの他の用途は、大口径ソレノイドが必要とされる高磁界MRIである。さらに他の用途は、物理学、化学、および材料科学において磁気的研究を実行するためである。さらなる用途は、材料加工または調査のための粒子加速器、発電機、一般的に陽子線治療、放射線治療、および放射線発生のための医用加速器、超伝導エネルギー蓄積、磁気流体(MHD)発電機、および採鉱、半導体作製、およびリサイクルなどの材料分離のためのマグネットにある。なお、上記の用途の列挙は徹底的なものではなく、本明細書で開示された概念、プロセス、技法がそれらの範囲から逸脱することなく適用されるさらなる用途が存在することを理解されたい。
【0115】
[00131]本明細書で使用される場合、「HTS材料」または「HTS超伝導体」という表現は、零の自己場において30°Kを上回る臨界温度を有する超伝導材料を指す。
【0116】
[00132]このように、本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明したが、様々な改変、修正、および改善は、当業者が容易に思いつくことを理解されたい。
【0117】
[00133]そのような改変、修正、および改善は、本開示の一部であることが意図され、本発明の趣旨および範囲内にあることが意図される。さらに、本発明の利点が示されるが、本明細書で説明される技術のそれぞれの実施形態が説明されたそれぞれの利点を含むわけではないことを理解されたい。いくつかの実施形態は、本明細書で有益であるとして説明されたいずれかの特徴を実施しない場合があり、いくつかの例で、説明された特徴のうちの1つまたは複数は、さらなる実施形態を実現するために実施され得る。したがって、上述の説明および図面は一例に過ぎない。
【0118】
[00134]上記の詳細な説明において、実施形態の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つまたは複数の個々の実施形態においてともにグループ化される。本開示の方法は、請求項が本明細書で明示した特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているとして解釈されるべきではない。むしろ、新規の態様が、それぞれの開示される実施形態における全特徴よりも少ない特徴に存在する場合がある。
【0119】
[00135]本明細書で説明した技術の上述の実施形態は、多くの手法のうちのいずれかで実施され得る。本発明の様々な態様は、単独、組み合わせ、または上記で説明された実施形態で具体的に説明されていない様々な構成において使用されてもよく、したがって、その用途において上記の説明で記載され、または図面に示された詳細および構成要素の構成に限定されない。例えば、一実施形態で説明された態様は、他の実施形態で説明された態様と、任意のやり方で組み合わされ得る。
【0120】
[00136]また、本発明は、一例が提供された方法として具現化され得る。方法の一部として実行される動作は、任意の適切なやり方で順序が決定されてもよい。それに応じて、動作が図示される順序と異なる順序で実行され、例示的な実施形態における順次の動作として示される場合でも、いくつかの動作を同時に実行することを含み得る実施形態が構築され得る。
【0121】
[00137]さらに、いくつかの行動は、「ユーザ」によって実行されるとして説明される。なお、「ユーザ」は、単一個体である必要はなく、いくつかの実施形態では、「ユーザ」に起因する行動は、個人から成るチームおよび/またはコンピュータ支援ツールまたは他の機構と組み合わせた個人によって実行され得ることを理解されたい。
【0122】
[00138]請求項の要素を修飾するための請求項における「第1」、「第2」、「第3」などの順序を表す用語の使用は、方法の動作が実行される他の順序または時間的な順序に対する、1つの請求項の要素の何らかの優先度、優先順位または順序を単独で暗示するものではなく、請求項の要素を区別するために、特定の名称を有する1つの請求項要素を、(順序を表す用語の使用のために)同一の名称を有する他の要素から区別する表示としてのみ使用される。
【0123】
[00139]「およそ」および「約」という用語は、いくつかの実施形態では目標値の±20%以内、いくつかの実施形態では目標値の±10%以内、いくつかの実施形態では目標値の±5%以内、さらにいくつかの実施形態では目標値の±2%以内を意味するために使用され得る。「およそ」および「約」という用語は、目標値を含み得る。「ほぼ等しい」という用語は、いくつかの実施形態では互いに±20%以内、いくつかの実施形態では互いに±10%以内、いくつかの実施形態では互いに±5%以内、さらにいくつかの実施形態では互いに±2%以内である値を指すために使用され得る。
【0124】
[00140]「ほぼ」という用語は、いくつかの実施形態の比較測定の±20%以内、いくつかの実施形態では±10%以内、いくつかの実施形態では±5%以内、さらにいくつかの実施形態では±2%以内である値を指すために使用され得る。例えば、第2の方向に「ほぼ」垂直な第1の方向は、いくつかの実施形態では第2の方向とともに90°の角度を形成する±20%以内、いくつかの実施形態では第2の方向とともに90°の角度を形成する±10%以内、いくつかの実施形態では第2の方向とともに90°の角度を形成する±5%以内、さらにいくつかの実施形態では第2の方向とともに90°の角度を形成する±2%以内である第1の方向を指し得る。
【0125】
[00141]また、本明細書で使用される語法および用語は説明を目的としたものであり、限定するとしてみなされるべきではない。「含む」、「備える」、または「有する」、「含有する」、「伴う」、および本明細書におけるそれらの変形の使用は、その前に列挙される項目と、その等価物とともに、追加項目を包含することが意図される。