(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】原子層堆積によって改質された活性炭およびその方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/354 20170101AFI20250304BHJP
B01J 21/18 20060101ALI20250304BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20250304BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20250304BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20250304BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250304BHJP
C07C 1/24 20060101ALN20250304BHJP
C07C 11/06 20060101ALN20250304BHJP
C07C 45/29 20060101ALN20250304BHJP
C07C 49/08 20060101ALN20250304BHJP
C07C 51/36 20060101ALN20250304BHJP
C07C 51/377 20060101ALN20250304BHJP
C07C 61/29 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
C01B32/354
B01J21/18 Z
B01J23/44 Z
B01J35/60 G
B01J37/02 301P
C07B61/00 300
C07C1/24
C07C11/06
C07C45/29
C07C49/08 A
C07C51/36
C07C51/377
C07C61/29
(21)【出願番号】P 2022574585
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 US2021036004
(87)【国際公開番号】W WO2021248069
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-31
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516107826
【氏名又は名称】インジェヴィティ・サウス・カロライナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ペピン
(72)【発明者】
【氏名】カービー・エスリッジ
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン・トムソン
(72)【発明者】
【氏名】ビリー-ポール・ホルブルック
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-506548(JP,A)
【文献】特表2019-529702(JP,A)
【文献】特表2019-505361(JP,A)
【文献】特表2016-530908(JP,A)
【文献】特表2009-508700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
C07C 1/24
C07C 11/06
C07C 45/29
C07C 49/08
C07C 51/36
C07C 51/377
C07C 61/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
600m
2/g~2500m
2/gのブルナウアー‐エメット‐テラー(BET)表面積及び表面炭素の総数に基づいて1以下の表面酸素対炭素比を有する活性炭吸着材料基材と、その上に堆積した金属
含有材料と、を含む構造であって、
前記金属
含有材料が、金属、金属酸化物
、またはそれらの組み合わせを含む、構造。
【請求項2】
その上に堆積された前記金属
含有材料が、フィルム、層、またはコーティングである、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
活性化以外に、前記活性炭吸着材料が追加的に改質されていない、請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
前記活性炭吸着材料が、粉末、顆粒、ペレット、モノリス、またはハニカム形態の活性炭を含む、請求項1~3のいずれかに記載の構造。
【請求項5】
前記活性炭が、木材、木材ダスト、木粉、コットンリンター、泥炭、石炭、ココナツ、亜炭、炭水化物、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、フルーツピット、フルーツストーン、ナッツシェル、ナッツピット、おがくず、ヤシ、野菜、合成ポリマー、天然ポリマー、リグノセルロース材料、またはそれらの組み合わせ、のうちの少なくとも1つに由来する、請求項4に記載の構造。
【請求項6】
前記活性炭が、リン酸、硫酸、ホウ酸、硝酸、酸素化酸、蒸気、空気、過酸化物、アルカリ水酸化物、金属塩化物、アンモニア、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む活性化を使用して活性化される、請求項4または5に記載の構造。
【請求項7】
前記活性吸着材料が、メソ多孔性の細孔サイズ、マクロ多孔性の細孔サイズ、またはそれらの組み合わせによって特徴付けられる、請求項1~6のいずれかに記載の構造。
【請求項8】
前記活性吸着材料が、1グラムあたり800~1800、または1000~1600平方メートルの窒素B.E.T.表面積によって特徴付けられる、請求項1~7のいずれかに記載の構造。
【請求項9】
前記活性炭が、5nm未満の深さにおいて0.25以下のバルクの酸素対炭素比を有する、請求項4~8のいずれかに記載の構造。
【請求項10】
前記活性炭が、5nm未満の深さにおいて0.10以下のバルクのリン対炭素比を有する、請求項4~9のいずれかに記載の構造。
【請求項11】
前記活性炭が、5nm未満の深さにおいて0.15以下のバルクの窒素対炭素比を有する、請求項4~10のいずれかに記載の構造。
【請求項12】
前記活性炭が、表面炭素の総数に基づいて、0.33以下の表面リン対炭素比を有する、請求項4~11のいずれかに記載の構造。
【請求項13】
前記活性炭が、表面炭素の総数に基づいて、0.5以下の表面窒素対炭素比を有する、請求項4~12のいずれかに記載の構造。
【請求項14】
前記活性炭が、表面リン原子の総数に基づいて、1.0以下の酸化されたリンの表面酸素対リンの比を有する、請求項4~13のいずれかに記載の構造。
【請求項15】
前記金属
含有材料が、少なくとも1つの金属および少なくとも1つのリガンドを含む金属
含有材料前駆体に由来する、請求項1または14に記載の構造。
【請求項16】
前記金属
含有材料が酸化チタンを含む、請求項1に記載の構造。
【請求項17】
前記金属
含有材料がパラジウムを含む、請求項1に記載の構造。
【請求項18】
前記構造が、前記構造の合計重量に基づいて、0.5~50重量%の前記金属
含有材料を含む、請求項1、16、または17に記載の構造。
【請求項19】
a.反応器内に活性吸着材料を提供する工程と、
b.少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行って金属
含有材料を堆積させる工程であって、前記少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行う工程が、
i.第1の前駆体ガスを前記反応器の中へと導入して、前記活性吸着材料の表面上に堆積された金属
含有材料前駆体を提供することと、
ii.第2の前駆体ガスを前記反応器の中へと導入して、前記構造を提供することと、を含む工程と、を含む工程に従って構造を調製するための方法であって、
請求項1に記載の構造を製造する、方法。
【請求項20】
工程bが2~10回実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)(i)、工程(b)(ii)、またはそれらの組み合わせの後の前記反応器をパージすることを含む工程をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の前駆体ガスが、少なくとも1つの金属および少なくとも1つのリガンドを含む、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第1の前駆体ガスが、金属ハロゲン化物、金属オキシハロゲン化物、有機金属化合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項19~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第2の前駆体ガスが、前記活性吸着材料の表面上に堆積された前記金属
含有材料前駆体のリガンドを置き換える能力を有する、請求項19~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記第2の前駆体ガスが、H
2O、H
2O
2、O
2、O
3、N
2O、NO、NO
2、NH
3、アンモニア、1,1-ジメチルヒドラジン、tert-ブチルアミン、またはアリルアミン、アルコール、PH
3、P(O)OMe
3、硫化水素、H
2、周囲空気、ホルマリン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項19~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記活性吸着材料が、木材、木材ダスト、木粉、コットンリンター、泥炭、石炭、ココナツ、亜炭、炭水化物、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、フルーツピット、フルーツストーン、ナッツシェル、ナッツピット、おがくず、ヤシ、野菜、合成ポリマー、天然ポリマー、リグノセルロース材料、またはそれらの組み合わせ、のうちの少なくとも1つに由来する、請求項19~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記吸着材料が、粉末、顆粒、ペレット、モノリス、またはハニカム形態にある活性炭を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記活性炭が、5nm未満の深さにおいて0.25以下のバルクの酸素対炭素比を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記活性炭が、5nm未満の深さにおいて0.10以下のバルクのリン対炭素比を有する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記活性炭が、5nm未満の深さにおいて0.15以下のバルクの窒素対炭素比を有する、請求項27~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記活性炭が、表面炭素の総数に基づいて、0.33以下の表面リン対炭素比を有する、請求項27~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記活性炭が、表面炭素の総数に基づいて、0.5以下の表面窒素対炭素比を有する、請求項27~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記活性炭が、表面リン原子の総数に基づいて、1.0以下の酸化されたリンの表面酸素対リンの比を有する、請求項27~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
a.反応器内に活性炭粉末を提供する工程と、
b.少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行って酸化チタンを含む金属
含有材料を堆積させる工程であって、前記少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行うことが、
i.前記反応器の中へとTiCl
4ガスを導入して前記活性炭粉末の表面上に堆積された塩化チタンを提供することと、
ii.前記反応器の中へと水蒸気または周囲空気を導入して前記活性炭粉末の前記表面上に堆積された前記酸化チタンを提供することと、を含む、工程とを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
a.前記金属
含有材料がパラジウムを含む、
b.前記第1の前駆体ガスが、パラジウムヘキサフルオロ-アセチルアセトンである、
c.前記第2の前駆体ガスが、ホルマリンまたは周囲空気である、または
d.それらの組み合わせ、のうちの少なくとも1つである、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
a.反応器内に活性炭粉末を提供する工程と、
b.少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行ってパラジウムを含む金属
含有材料を堆積させる工程であって、前記少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行う工程が、
i.前記反応器の中へとビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)パラジウム(II)を導入して、前記活性炭粉末の表面上に堆積されたパラジウム中間体を提供することと、
ii.周囲空気を反応器の中へと導入して前記活性炭粉末の前記表面上に堆積された前記パラジウムを提供することと、を含む工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年6月5日に出願された米国特許出願第63/035,224号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、様々な態様および実施形態において、改質された、例えば、原子層堆積方法によって改質された活性吸着材料、および方法、およびそれらを含むシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
触媒駆動型のプロセスでは、反応速度は、しばしば触媒基材上の使用可能な活性部位の数によって制限される。結果として、表面積の最大化は、多くの不均一系触媒システムの重要な設計の側面である。高表面積を達成するために頻繁に使用される1つの方法は、触媒活性材料(例えば、TiO2、SiO2、またはAl2O3)を、活性炭などの高表面積支持材料の上へと分散させることである。例えば、TiO2は、いくつか例を挙げると、光触媒、定置型電力用途のための選択的触媒還元(SCR)を介したNOx低減のための触媒、様々な活性金属、顔料およびコーティング、セラミック、ならびに様々な消費者製品用の触媒担体を含む、幅広い用途を有する産業関連の酸化物である。
【0004】
触媒活性材料を担体材料の上へと分散させるための一般に採用される技法の1つは溶液滴下含浸法であり、それによって最初に活性材料は溶液中に、多くの場合、硝酸塩(例えば、Ce(NO3)3)として溶解され、そしてその後、多孔質担体へと添加され、そこで毛細管作用が溶液を多孔質構造の中へと引き込む。担体の細孔が溶液で充填されると、飽和した担体は乾燥され、そして焼成されて揮発性の種を追い出し、活性金属を担体の壁の上へと堆積させる。この技法は、活性材料を担体構造の上へと分散させるのに比較的効果的であるが、この技法はいくつかの顕著な欠点を提示する。第一に、粒子サイズはうまく制御されず、その結果、活性材料の利用することができない部分が生じる。加えて、堆積された活性材料と担体材料との間にしばしば接触の不良があり、これは一般に、活性相の結晶化および凝集をもたらし、表面積および活性材料利用のさらなる損失につながる。同様に、活性金属粒子を加熱すると、焼結はより大きい粒子を生じさせ、原子効率を低下させる。さらに、担体面の一部分のみが、この技法によって活性材料で覆われる。
【0005】
金属粒子を酸化物担体の上へと分散させるために最近探索された代替的な技法は、原子層堆積(ALD)である。従来の活性金属材料の担体の上への触媒装填と比較して、ALDを使用する利点は、ALDが高度に分散した様態で金属または金属酸化物を堆積させることを可能にし、それ故に触媒活性金属材料の原子効率および表面積を改善することである。ALD中に、活性金属材料は、蒸気として担体の上へと導入される。十分な蒸気圧を提供するために、活性金属材料は典型的に、有機金属形態で準備される。担体材料を有機金属蒸気に曝露すると、担体の表面は、飽和するまで有機金属前駆体でコーティングされる。理想的には、有機金属前駆体が表面の上へと吸着される条件は、第1の層が部分的に酸化され、かつ表面に強く吸着される結果をもたらす。有機金属前駆体への曝露の後、担体は不活性種でパージされるか、または一定期間真空に曝露されて、吸着された多層種を除去する。この時点で、活性金属コーティングされた担体は、オゾンなどの酸化剤、水に曝露され、または空気中で焼成されて、吸着された有機金属種を完全に酸化する。前駆体を導入するこの段階的なシーケンスに続く酸化は、単一ALDサイクルと称される。各サイクルが、単層のみの前駆体材料の吸着からなると仮定すると、プロセスは本質的に自己限定的であり、最大でもサイクル当たり単一の原子層しかもたらさない。
【0006】
ALDは、半導体デバイス製造に一般に使用され、また最近では、触媒活性材料の合成のために探索されている。これらの用途の両方において、ALDは、表面に結合された官能基(例えば、酸素含有官能基)を有する担体材料または基材材料上で実施され、酸素原子は、吸着された有機金属種を部分的に酸化することによってALD成長機構を開始する。従来の方法は、前駆体ガスを基材に送達するためにヘリウムなどのキャリアガスを使用し、これは、例えば、不均一系触媒などのための担体として使用される高度に多孔質の表面ではなく、比較的平坦な表面上に堆積させるために半導体産業によって開発されたものである。半導体製造のために従来の方法で使用される基材は、一般的に平坦な表面を有し、したがって、表面積がより少ないため、前駆体ガスへの基材の曝露時間は非常に短く、急速なサイクルを可能にするが、サイクル当たりに堆積される活性金属材料がより少ないため、しばしばいくつものサイクルが必要になる。同様の装填を達成するためには、多孔質(すなわち、比較的に高表面積)材料の表面を改質するために必要とされるサイクルの数は、平面状の半導体材料よりはるかに少ないが、多孔質材料を通した前駆体および酸化剤の拡散は、サイクルを実施することができる速度を制限する。
【0007】
多孔質基材材料の細孔の内外での前駆体ガスの拡散は遅いため、従来の方法で使用されるようなキャリアガスの使用は、前駆体ガスがシステムを通して吹き込まれ、回収されないため、現実的ではなく、コストの増加につながる。したがって、当技術分野では、触媒的に活性な多孔質材料およびその製造方法の改善に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0008】
多孔質構造およびその作製方法がここに記述される。驚くべきことに、また予想外にも、多孔質材料、例えば、活性炭などの活性吸着材料が、ALD用の基材として機能することができることが発見された。
【0009】
それ故に、一態様では、本明細書は、活性吸着材料、例えば、多孔質活性吸着材料、およびその上に堆積された金属種を含む構造を提供する。ある特定の態様では、本明細書はまた、活性吸着材料およびその上に堆積された金属種を含む基材を備える構造も提供する。
【0010】
追加的な態様では、本明細書は、(a)反応器内に、活性吸着材料、例えば、多孔質活性吸着材料(例えば、活性炭)を提供する工程と、(b)金属種、例えば、金属酸化物を堆積させるために、少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行う、または実施する工程であって、少なくとも1つの原子層堆積サイクルが、(i)第1の前駆体ガスを反応器の中へと導入して、金属種前駆体を提供することと、(ii)第2の前駆体ガスを反応器の中へと導入して、構造を提供することと、を含むサイクルである、工程と、を含む工程による構造を調製する方法を提供する。任意の態様または実施形態では、工程(b)は、2~約10回繰り返される。
【0011】
追加の態様では、本明細書は、(a)反応器内に、活性吸着材料、例えば、多孔質活性吸着材料(例えば、活性炭)を提供する工程と、(b)金属種、例えば、金属酸化物を堆積させるために、少なくとも1つの原子層堆積(ALD)サイクルを行う工程であって、少なくとも1つの原子層堆積サイクルが、(i)第1の前駆体ガスを反応器の中へと導入して、金属種前駆体を提供することと、(ii)第2の前駆体ガスを反応器の中へと導入して、構造を提供することと、を含むサイクルである、工程と、を含む工程による原子層堆積(ALD)によって調製される構造を提供する。
【0012】
本明細書に記述される任意の態様または実施形態では、原子層堆積(ALD)によって調製される構造は、多孔質の金属コーティングされた構造である。
【0013】
本明細書に記述される任意の態様または実施形態では、活性吸着材料は、多孔質活性吸着材料である。本明細書に記述される任意の態様または実施形態では、多孔質活性吸着材料は、活性炭、例えば、多孔質活性炭を含む。本明細書に記述される任意の態様または実施形態では、活性炭は、活性炭粉末、顆粒、ペレット、モノリス、またはハニカム形態を含む。
【0014】
本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、金属種は、少なくとも1つの金属を含む。金属種は、少なくとも1つの金属および少なくとも1つのリガンドを有する金属種前駆体に由来してもよく、これはその後、金属種を提供するために合成的に改質(例えば、酸化または還元)されてもよい。
【0015】
有用性に関する前述の全般的な記載は、例としてのみ与えられるものであり、本開示の範囲および添付の特許請求の範囲を限定することを意図しない。本発明の組成物、方法、およびプロセスに関連付けられた追加的な目的および利点は、本発明の特許請求の範囲、記述、および実施例の観点から当業者には理解されるであろう。例えば、本発明の様々な態様および実施形態は数多くの組み合わせで利用されてもよく、それらすべてが本明細書によって明示的に企図される。これらの追加的な利点、目的および実施形態は、本発明の範囲内に明示的に含まれる。本発明の背景を解説するため、および特定の事例では実施に関する追加的な詳細を提供するために使用される出版物および他の試料は参照により組み込まれる。
【0016】
本明細書の中へと組み込まれ、かつその一部を形成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を図示するものであり、また記述とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。図面は、本発明の一実施形態の例示の目的のためのみのものであり、本発明を限定するものと解釈されるものではない。この発明の例示的な実施形態を示す添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態から、本発明のさらなる目的、特徴、および利点は明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、ALD方法のために使用される装置の例示的な実施形態を示す。
【
図2】
図2は、1~4サイクルのALD後に酸化チタンで改質された活性炭粉末の重量分析の結果を示す。
【
図3】
図3A~
図3Dは、酸化チタンで改質された活性炭粉末に対するTiO
2の、0サイクルのALD後(
図3A)、1サイクルのALD後(
図3B)、2サイクルのALD後(
図3C)、および4サイクルのALD後(
図3D)の重量%を示す。
【
図4】
図4A~
図4Dは、酸化チタンで改質された活性炭粉末の、0サイクルのALD後(
図4A)、1サイクルのALD後(
図4B)、2サイクルのALD後(
図4C)、および4サイクルのALD後(
図4D)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図5】
図5は、酸化チタンで改質された活性炭粉末に対する、4回のALDサイクルを通したTiO
2成長速度を示す。
【
図6】
図6A~
図6Cは、非改質活性炭粉末(
図6A)、酸化チタンで改質された活性炭粉末(
図6B)、およびP25 TiO
2(
図6C)の2-プロパノール昇温脱離(TPD)スペクトルを示す。
【
図7】
図7A~
図7Bは、酸化チタンおよびP25 TiO
2で改質された活性炭粉末の2-プロパノールTPDからのアセトン(
図7A)、およびプロペン(
図7B)の生成物スペクトル比較を示す。
【
図8】
図8は、ALD方法のために使用される装置の例示的な実施形態を示す。
【
図10】
図10は、AG(AQUAGUARD)、酸化RGC、酸化グラファイト、グラファイト、RGC、WV-A1100、およびBAX 1500炭素のXPSスペクトルの比較を示す。
【
図11】
図11は、ココナツ、酸化RGC、RGC、WV-A1100、AG(AQUAGUARD)、およびグラファイトの推定表面被覆率の比較を示す。この図は、TiO
2 ALDの速度がココナツに対して最も大きく、またココナツ>酸化RGC>Aquaguard>WV-A1100>RGC>グラファイトの順序に従うことを示している。
【
図12】
図12A~
図12Cは、上部パネルに2サイクルのTiO
2ALDの後の酸化RGC、AG、およびグラファイトのSEM画像を示し、また下部パネルに対応するXRDスペクトルおよびEDSマップを示す。
【
図13】
図13は、TiO
2 ALDの前後での、WV-A 1100のXPSスペクトルを示す。未使用の材料は一番下のトレースであり、1サイクルのALD後の材料は中間のトレースであり、そして2サイクルのALD後の材料は一番上のトレースである。
【
図14】
図14は、2サイクルのTiO
2 ALD後の、ココナツ、WV-A 1100、およびRGCの各々のXPSスペクトルを示す。2サイクルのALD後のRGCは一番下のトレースであり、2サイクルのALD後の1100が次に高いトレースであり、そして2サイクルのALD後のココナツが一番上のトレースである。
【
図15】
図15は、TiO
2 ALDの前後でのWV-A1100の細孔サイズ分布(PSD)を示す。未使用の材料は一番上のトレースであり、1サイクルのALD後の材料は中間のトレースであり、そして2サイクルのALD後の材料は一番下のトレースである。
【
図16】
図16A~
図16Bは、それぞれWV-A1100およびRGCについての、2サイクルのTiO
2-ALD後のTPDスペクトルを示す。
図16A~
図16Bの各々について、ALD改質された材料のスペクトルは、未使用の材料のスペクトルと重ね合わされる。2-プロパノール、アセトン、およびプロペンに対する下側の曲線は、未使用の材料に対するものであり、また2-プロパノール、アセトン、およびプロペンの各々に対する上側の曲線は、2サイクルのALD後のものである。
【
図17】
図17は、TiO
2改質されたグラファイトのTPDスペクトルを示す。
【
図18】
図18は、TiO
2改質されたAQUAGUARDのTPDスペクトルを示す。
【
図19】
図19は、TiO
2改質された酸化RGCのTPDスペクトルを示す。
【
図21】
図21は、1、2、および4サイクルのALD後の、WV-A 1100のPd改質された試料のXPSを示す。一番下のトレースは、未使用の材料であり、上方の次のトレースは1サイクルのALD後のものであり、上方の次のトレースは2サイクルのALD後のものであり、そして一番上のトレースは、4サイクルのALD後のものである。335.8におけるピークは、Pd(0)に対応する。
【
図22】
図22は、1サイクル(1.29重量%)、2サイクル(2.84重量%)、および4サイクル(5.21重量%)のALD後に、WV-A1100上に堆積されたPdの重量%を示す。
【
図23】
図23は、アビエチン酸が不均化反応に供された時の、経時的なアビエチン酸の消失を示す。重なっている2つの曲線は、触媒なしの反応、および未使用の材料との反応である。一番下の曲線は、1サイクルおよび2サイクルのALD後に得られたPd改質された材料(すなわち、触媒)の存在下でのアビエチン酸の反応に対応する。Pd改質された材料(すなわち、触媒)の存在下でのアビエチン酸の反応に対応する上方の曲線は、1サイクルのALD後に得られた。
【
図24】
図24Aは、WV-A 1100触媒上に堆積されたPdの存在下での2-プロパノールのアルコール脱水素反応からの生成物の空気およびN2を使用するTGAスペクトルを示す。
図24Bは、反応による発生ガスのTPDスペクトルを示す。
【
図25】
図25Aは、10,000×の倍率での2サイクルのPd ALD後のグラファイトのSEM画像を示す。
図25Bは、100,000×の倍率での2サイクルのPd ALD後のグラファイトのSEM写真を示す。
【
図26】
図26Aは、10,000×の倍率での2サイクルのPd ALD後の酸化グラファイトのSEM画像を示す。
図26Bは、100,000×の倍率での2サイクルのPd ALD後のグラファイトのSEM画像を示す。
【
図27】
図27A~
図27Bは、2サイクルのALDの前後のグラファイトおよび酸化グラファイトのXPSを示す。
図27Aでは、一番下のトレースは未使用のグラファイトであり、また上方のトレースはALDの第2のサイクル後であり、その上方のトレースは、未使用の酸化グラファイトであり、また上方のトレースはALDの第2のサイクル後である。
図27Bは、Pdに対応する領域にピークがないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、以下に本開示をより完全に記述するが、本開示のすべての実施形態が示されるわけではない。本開示を例示的な実施形態を参照しながら記述してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてもよく、またその要素を均等物で置き換えてもよいことを当業者は理解するであろう。加えて、本開示の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の構造または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの修正がなされてもよい。
【0019】
本出願に添付の図面は、例示のみを目的としている。それらは、本出願の実施形態を限定することを意図していない。加えて、図面は実寸に比例して描かれてはいない。図の間で共通の要素は、同じ数字による指定を保持する場合がある。
【0020】
値の範囲が提供される場合、その範囲および他の記載された範囲の上限と下限の間にある各値、またはその記載された範囲内に介在する値は本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は独立してより小さい範囲に含まれてもよく、これも本発明内に包含され、記載された範囲中の任意の具体的に除外される境界値となる。記載された範囲が境界値の一方または両方を含む場合、それらのうちの含まれる境界値のいずれか、両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0021】
以下の用語が、本発明を記述するために使用される。本明細書で用語が具体的に定義されていない場合、その用語は、本発明の記述においてその使用の状況において当該用語を適用する当業者によって当分野において認識されている意味が与えられる。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」および「an」という冠詞は、文脈により明確に別段の表示がない限り、当該冠詞の文法的客体のうちの1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を指すように本明細書において使用される。例として、「要素」は1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、「および/または」という語句は、そのように結合される要素のうちの「いずれか、または両方」を意味すると理解されるべきである。すなわち、一部の事例では要素は結合して存在し、他の事例では結合せずに存在する。「および/または」を用いてリストされた複数の要素は、同じ様式で解釈されるべきである。すなわち、要素のうちの「1つ以上」がそのように結合されている。「および/または」項によって具体的に特定された要素以外の他の要素が、それらの具体的に特定された要素との関連性の有無に関係なく、任意選択的に存在してもよい。それ故に、非限定的な例として、例えば、「含む」などのオープンエンド型の文言と併せて使用される場合、「Aおよび/またはB」に対する言及は、1つの実施形態では、Aのみを指す可能性があり(任意選択的に、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみを指す可能性があり(任意選択的に、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AとBとの両方を指す可能性がある(任意選択的に、他の要素を含む)、などである。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、「または」は、上記に定義される「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内のアイテムを分離するときに、「または」または「および/または」は包括的なものとして解釈されるものとする。すなわち、多くの要素、または要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、そして任意選択的にリストされていない追加のアイテムも含む。例えば「~のうちの1つのみ」、または「~のうちの正確に1つ」、または特許請求の範囲において使用される場合には「~からなる」など、反対を明確に表示する用語のみが、多くの要素、または要素のリストのうちの正確に1つの要素の含有を指す。一般的に本明細書で使用される場合、「または」という用語は、例えば「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、または「~のうちの正確に1つ」などの排他的な用語が先行する場合にのみ排他的な代替案(すなわち「1方またはもう一方であるが、両方ではない」)を示すものと解釈されるものとする。
【0025】
特許請求の範囲だけでなく、上記の明細書においても、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」「含有する(containing)」、「関与する(involving)」、「保持する(holding)」、「構成される(composed of)」、およびこれに類するものなどのすべての移行句は、オープンエンド型である、すなわちそれらを含むが限定されないことを意味すると理解されたい。「~からなる(consisting of)」および「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という移行句のみについては、米国特許審査便覧第10版(the 10 United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)のセクション2111.03に記載されているように、それぞれ、クローズドの移行句、またはセミクローズドの移行句であるものとする。
【0026】
明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関し、「少なくとも1つ」という語句は、要素リスト中の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的にリストされるありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むものではなく、また要素リスト中の要素の任意の組み合わせを除外するものでもない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外にも、具体的に特定されたそれらの要素の関連性の有無にかかわらず、任意選択的にその要素が存在してもよいことも許容する。それ故に、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ(または同等に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、もしくは同等に、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)とは、1つの実施形態では、Bが存在しないで(また任意選択的にB以外の要素を含んで)、任意選択的に2つ以上のAを含む、少なくとも1つ、別の実施形態では、Aが存在しないで(また任意選択的にA以外の要素を含んで)、任意選択的に2つ以上のBを含む、少なくとも1つ、さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のAを含み、かつ少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のBを含む、(および任意選択的に他の要素を含む)、などを指すことができる。明確にこれに反することが示されない限り、2つ以上の工程または動作を含む本明細書で特許請求するあらゆる方法において、その方法の工程または動作の順序は、列挙されているその方法の工程または動作の順序に必ずしも限定されないということも理解するべきである。
【0027】
本明細書で使用する場合、「流体」、「ガス」または「ガス状の」、および「蒸気」または「蒸気状の」という用語は、一般的な意味で使用され、文脈がそうではないことを示さない限り、交換可能であることが意図される。
【0028】
前駆体ガスが基材の表面の上へと化学吸着されるALD方法は、基材の表面上に、前駆体ガスと反応して、前駆体ガスのリガンドを置き換える能力を有する官能基(例えば、酸化物種)の存在を必要とする。典型的に、基材の均一な単層被覆を提供するために、基材の表面上に十分な吸着部位密度(単位面積当たりの表面官能基の数)を有することが望ましい。例えば、半導体製造において一般に使用されるシリコンウエハは、表面を均一に覆うシラノール基を有し、これにより、ALDが金属酸化物コーティングを適用するために使用される時、表面シラノール基の数が多いため、シリコンウエハ基材の表面のALD層による飽和が予想される。
【0029】
活性炭などの多孔質炭素系基材の場合、表面は不均一であり、またこれらの官能基の部位密度は不均一であり、かつシリコンウエハなどの一般に使用される基材の吸着部位密度より小さいことが予想され、その結果、ALD成長のための前駆体化学吸着および部分酸化が予想外になる。それ故に、多くの炭素系材料上でALDを達成するために、炭素系材料の表面は、その界面化学を改質するためにまず前処理されなければならない。例えば、ALDを使用してカーボンナノチューブ(CNT)をコーティングすることができることが実証されているが、炭素材料には、ALDプロセスの前に表面改質が必要とされる。CNTの表面機能化は、隣接するCNT間の立体障害を増加させて、剥離を容易にし、かつ溶解性を改善するためにしばしば採用される。表面機能化はまた、潜在的にALDのための部位も提供する。CNT表面改質の従来の例としては、表面酸化のための化学物質、プラズマを用いたアニーリング、または非共有結合基(界面活性剤、ポリマー、もしくはDNAなど)が含まれる。表面改質の別の従来の方法は、物理蒸着によって表面上に金属シードを堆積させることを含む。CNTの表面改質のために使用されるさらに別の従来の方法は、アリール基または脂肪族基をその表面に添加するためにジアゾニウム塩を用いた処理である。ジアゾニウム塩はまた、多孔質炭素材料、例えば、活性炭を機能化するためにも使用されている。米国特許第7,698,191号は、有機官能基を提供するために、炭素材料に対するジアゾニウム塩化学反応の使用を教示する。表面結合有機官能基は、ALDプロセスを介した炭素材料上の金属堆積を可能にする。ジアゾニウム塩の使用は、表面機能性の範囲および性質を制御する効果的な手段である。しかしながら、この技法によって追加することができる機能性は、主に有機種に限定される。ジアゾニウム塩処理などの官能基の追加は、CNTの剥離のために有益であり、またALDに対する機能性も提供する場合があるが、多孔質基材上に官能基を追加することによってもたらされる追加的な立体障害は、ALDの前であっても細孔体積の喪失につながる可能性がある。この追加的な処理工程はまた、基材の調製において、追加的な複雑さおよび原子効率の低下をもたらすだけでなく、多くのジアゾニウム塩によってもたらされる、追加的なプロセス安全性リスクももたらす。したがって、界面化学を改質する、または表面官能基を追加するために表面前処理を使用することなく、ALD方法を使用して、例えば、活性炭などの不均一な多孔質活性吸着材料を、金属酸化物で改質することが可能であることが、驚くべきことに、そして予想外にも発見された。したがって、態様または実施形態のいずれかでは、本明細書は、活性化とは別に、界面化学を改質する、または表面官能基を追加するために、活性吸着材料を含む基材を処理する任意の追加の工程を除外するプロセスおよび方法を提供する。
【0030】
驚くべきことに、かつ予想外にも、活性炭などの活性吸着材料がALDのための基材として機能することが可能であることを実証する構造がここに記述される。前駆体ガスが基材の表面の上へと化学吸着されるALD方法は、基材の表面上に、前駆体ガスと反応して、前駆体ガスのリガンドを置き換える能力を有する基板の表面上に官能基(すなわち、酸化物種)の存在を必要とする。典型的に、基材の均一な単層被覆を提供するために、基材の表面上に十分な吸着部位密度を有することが望ましい。しかしながら、活性炭などの吸着材料の事例では、吸着部位密度は、半導体産業のALD方法で使用されるシリコンウエハなどの一般に使用される基材の吸着部位密度より低くてもよい。吸着部位密度は、活性炭に対してはより低くてもよいため、金属種を有する基材表面は飽和されない場合があり、層は均一ではない場合がある。したがって、ALD方法を使用して、活性炭などの吸着材料を、金属酸化物などの金属種で改質することが可能であることが、驚くべきことに、かつ予想外にも発見された。
【0031】
それ故に、任意の態様または実施形態では、本明細書は、活性吸着材料、例えば、多孔質活性吸着材料、およびその上に堆積された金属種を含む構造を提供する。ある特定の態様または実施形態では、本明細書は、活性吸着材料、例えば、多孔質活性吸着材料、およびその上に堆積された金属種を含む基材を含む構造も提供する。
【0032】
本明細書で使用される場合、文脈がそうではないと示さない限り、「活性吸着材料を含む(comprising)(または含む(including))基材(または材料)」という用語は、1~100重量%(例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100重量%、すべての範囲およびその間のサブ範囲を含む)の活性吸着材料、例えば、本明細書に記述されるような多孔質活性吸着材料を含む基材または材料を意味することができる。例えば、基材または材料が、100重量%未満の活性吸着材料を含む場合、最大100重量%の残部は、非限定的な例、結合剤、加工助剤、またはこれに類するものによって、当技術分野で知られている1つ以上の添加剤を含むことができる。
【0033】
金属種が酸化チタンを含む場合、構造は、驚くべきことにかつ予想外にも、一般に使用される酸化チタンナノ粒子(例えば、P25 TiO2(Evonik)として市販されているもの)と比較して、優れた触媒活性を実証する。
【0034】
本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、この構造の基材は、活性吸着材料を含む。活性吸着材料としては、活性炭、炭化木炭、ゼオライト、粘土、多孔質ポリマー、発泡体、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、分子ふるい、カオリン、チタニア、セリア、またはそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、活性吸着材料は、活性炭である。活性吸着材料は、活性吸着材料前駆体に由来することができる。非限定的な例として、活性吸着材料前駆体は木材、木材ダスト、木粉、コットンリンター、泥炭、石炭、ココナツ、亜炭、炭水化物、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、フルーツピット、フルーツストーン、ナッツシェル、ナッツピット、おがくず、ヤシ、野菜(もみ殻またはわらなど)、合成ポリマー、天然ポリマー、リグノセルロース材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。さらに、活性吸着材料は、化学活性化、熱活性化、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々なプロセスを使用して生成されてもよい。
【0035】
本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、活性吸着材料は、活性炭粉末を含む。活性炭は、高度に多孔質となる(すなわち、単位体積当たり多数の細孔を有する)ように加工されており、これは高表面積を付与する。本明細書に記述される態様または実施形態のいずれかにおいて、基材の活性吸着材料の表面は、例えば、ALDを使用した金属種の堆積前には改質されていない。本明細書で使用される場合、活性吸着材料の表面の「改質」は、活性化プロセスを除外する。活性吸着材料は、活性化プロセスを使用して調製することができる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、活性吸着材料は、活性炭である。天然炭素(非活性炭素)は、リン酸、硫酸、ホウ酸、硝酸、酸素化酸、蒸気、空気、過酸化物、アルカリ水酸化物、金属塩化物、アンモニア、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む活性化剤を使用して活性化することができる。温度および圧力を含む活性化条件は、当業者の技能の範囲内である。本明細書で使用される場合、「改質」は、官能基で置換された表面にアリール基または脂肪族基リンカーを加えるためのジアゾニウム塩との反応を含む。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、活性吸着材料の表面は、表面に結合された官能基化アリールまたは脂肪族基リンカー基を添加するように、ジアゾニウム塩との反応によって改質されていない。
【0036】
本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、活性炭は、活性炭前駆体から誘導することができる。活性炭は様々な材料から生成されてもよいが、市販のほとんどの活性炭は、泥炭、石炭、亜炭、木材、およびココナツの殻から作製される。原料に基づいて、炭素は、異なる細孔サイズ、灰分含有量、表面秩序、および/または不純物プロファイルを有することができる。ココナツの殻ベースの炭素は、大部分がミクロ多孔性の細孔サイズを有するが、木材ベースの化学的活性炭は多くがメソ多孔性またはマクロ多孔性の細孔サイズを有する。好ましい実施形態では、活性炭は、活性炭粉末を含む。非限定的な例として、活性炭前駆体は木材、木材ダスト、木粉、コットンリンター、泥炭、石炭、ココナツ、亜炭、炭水化物、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、フルーツピット、フルーツストーン、ナッツシェル、ナッツピット、おがくず、ヤシ、野菜(もみ殻またはわらなど)、合成ポリマー、天然ポリマー、リグノセルロース材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。さらに、活性炭は、化学的活性化、熱的活性化、またはそれらの組み合わせを含む様々なプロセスを用いて製造されてもよいが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、活性炭前駆体は、木材である。活性炭前駆体は、活性炭前駆体を加熱し、そして外因的に添加された活性化剤(すなわち、酸化)などの添加された酸化剤(二酸化炭素、酸素、酸、または過熱蒸気など)を用いて処理することによって、活性化することができる。例示的な活性炭としては、木材に由来し、かつリン酸で活性化された、化学活性化炭素である、NUCHAR(登録商標)(Ingevity South Carolina,LLC、米国サウスカロライナ州)が挙げられる。
【0038】
一般的に、活性炭の表面積が大きいほど、その吸着能力は大きくなる。例えば、活性炭の使用可能な表面積は、その細孔体積に依存する。個々の細孔サイズが大きくなるにつれて単位体積あたりの表面積は減少するので、一般的に、非常に小さい寸法の細孔の数を最大化すること、および/または非常に大きい寸法の細孔の数を最小化することによって、大きい表面積は最大化される。細孔サイズは、本明細書では、ミクロ細孔(細孔幅<2.0nm)、メソ細孔(細孔幅=2.0~50nm)、およびマクロ細孔(細孔幅>50nm、かつ公称50nm~100マイクロメートル)として定義される。メソ細孔はさらに、小さいメソ細孔(細孔幅=2.0~5nm)と大きいメソ細孔(細孔幅=5~50nm)との間で分割されてもよい。
【0039】
ブルナウアー‐エメット‐テラー(B.E.T.)表面は、材料の特定の表面積を特徴付けることができる。活性吸着材料(例えば、活性炭)は、約600~約2300、約800~約1800、または約1000~約1600m2/グラムの窒素B.E.T.表面積を有することが好ましい。表面積は、Micromeritics ASAP 2420(米国ジョージア州Norcross)で、ISO 9277:2010に従って、ブルナウアー‐エメット‐テラー(BET)法を使用する窒素物理吸着によって測定された。細孔体積は、Micromeritics ASAP 2420(米国ジョージア州Norcross)を使用する窒素吸着ポロシメトリーによって決定された。簡潔に述べると、実施例/試料は、105~110℃に事前設定されたオーブン内で一晩乾燥される。試料は、取り出され、そして温度が実験室と平衡になるまで閉鎖系内に収容される。試料を機器の試料チューブの中へと挿入し、そしてMicromeritics ASAP 2420機器上に定置する。試料は、試験の開始前にその場で脱気される。試料の脱気は、250℃および2μmHgの真空において行われる。細孔体積は、SAIEUSプログラムを使用して、P/Po等温曲線から計算される。非理想係数は0.0000620であった。密度変換係数は0.0015468であった。剛体球直径は3.860Åであった。分子断面積は0.162nm2であった。等温に対する標的相対圧力(単位mmHg)は、0.002、0.005、0.01、0.0125、0.0250、0.050、0.075、0.1、0.1125、0.125、0.150、0.175、0.20、0.25、0.30、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、および0.95であった。低圧では、機器は「低圧増分用量モード」に設定され、これは、20.000cm3/gのSTPの量の漸増用量に基づいてデータを記録するよう機器に指示する。実際の点は、それぞれ5mmHgまたは5%のいずれかより厳密な方の絶対圧力公差または相対圧力公差内で記録された。平衡化中の連続する圧力読み取り値の間の時間は20秒であった。読み取り値間のΔPが<0.001%である場合、データを取り、Pを次の設定点に設定した。データ記録間の最小遅延時間は600秒であった。窒素吸着等温データを、SAIEUSプログラムによって分析した。細孔サイズ範囲の「Max」フィールドを500に変更した。L字曲線チャートでは、ラムダ値はバーをスクロールして曲線上の接点を見つけることによって設定された。Micromeritics機器によって蓄積された等温データを処理して細孔サイズ分布を決定する数学モデルは、非局在密度汎関数理論(NLDFT)として記述される。このモデルは、低圧範囲において関連付けられた誤差を最小化する(小さい細孔と等化する)ように思われ、J. Phys. Chem., 2009, 113, 19382-19385(J. JagielloおよびJ. P. Olivierによる)に述べられている。
【0040】
以前に考察したように、本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、活性化以外に、活性吸着材料は、追加的に改質されない。基材表面の改質は、吸着材料に共有結合され、かつ金属種を結合する能力を有する官能基の数が増加するように、追加的な表面官能基を導入することができる。別の方法として、基材表面の改質は、金属種を結合する能力を有する材料(例えば、界面活性剤)のコーティングを含むことができる。したがって、基材表面の改質は、表面の吸着部位密度を増加させることができる。活性化後に表面がさらに改質されていない、活性吸着材料の表面は、活性化後にさらなる表面改質を受けた活性吸着材料の表面より低い吸着部位密度を有することができる。酸素、窒素、およびリンなどのヘテロ原子と炭素との比は、活性吸着材料の表面の吸着部位密度に比例することができる。
【0041】
吸着部位密度を測定する1つの方法は、表面元素分析である。表面分析技法は、使用される分析方法に依存して、材料表面の化学組成についての情報を提供することができる。元素の密度(例えば、O、N、およびP)は、例えば、ベーム滴定法またはオージェ電子分光法(AE)を使用して測定されてもよい。
【0042】
吸着部位密度を測定する別のやり方は、表面からの特定されたサンプリング深さ内のバルク元素分析である。X線光電子分光法(XPS)は、約5nm以下の、または約4nm以下の、または約3nm以下の、または約2nm以下の、または約1nm以下のサンプリング深さで使用することができる。XPSは、試料粉末を両面接着テープの上へと振りかけ、そして真空チャンバへと導入する前に過剰分を取り除くことによって、炭素、塩素、フッ素、ナトリウム、窒素、酸素、リン、チタン、およびパラジウムの濃度を得るために行われる。データは、単色Al Kα X線源および65°の取り出し角を使用して、およそ1mmの直径を有する分析されるエリアから取得された。低エネルギー分解能サーベイスキャンを各試料から得て、どの元素が存在していたかを決定した。これらの元素の原子濃度およびそれらの局所化学は、より高エネルギー分解能の多重スキャンから決定された。
【0043】
本明細書に記述される態様または実施形態のいずれかでは、約5nm以下のサンプリング深さにおけるバルクの酸素対炭素比は、約0.25以下、約0.20以下。約0.15以下、約0.10以下、約0.09以下、約0.08以下、約0.07以下、約0.06以下、約0.05以下、約0.01~約0.25、約0.01~約0.25、約0.01~約0.20、約0.01~約0.15、または約0.01~約0.10であり、すべての重複する範囲、包摂する範囲、およびその間の値を含む。
【0044】
本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、約5nm以下のサンプリング深さにおけるバルクのリン対炭素比は、約0.10、約0.09、約0.08、約0.07、約0.06、約0.05以下であり、すべての重複する範囲、包摂する範囲、およびその間の値を含む。
【0045】
本明細書に記述される態様または実施形態のいずれかでは、約5nm以下のサンプリング深さにおけるバルクの窒素対炭素比は、約0.10、約0.09、約0.08、約0.07、約0.06、または約0.05以下であり、すべての重複する範囲、包摂する範囲、およびその間の値を含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「表面酸素対炭素比」は、表面炭素の総数に対する酸素に結合した表面炭素の比を指す。表面炭素の総数は、非結合表面炭素、酸素に結合した炭素、および他の元素または基に結合した炭素を含む。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、表面酸素対炭素比は、約1.0未満、約0.95未満、約0.90未満、約0.85未満、約0.80未満、約0.75未満、約0.70未満、約0.65未満、約0.60未満、約0.55未満、約0.50未満、約0.45未満、約0.40未満、約0.35未満、約0.30未満、約0.25未満、約0.20未満、約0.15未満、約0.10未満、約0.01から約1.0未満、約0.10から約1.0未満、約0.05から約1.0未満、約0.01から約0.95未満、約0.01から約0.90未満、約0.01から約0.85未満、約0.01から約0.80未満、約0.01から約0.75未満、約0.01から約0.70未満、約0.01から約0.65未満、約0.01から約0.60未満、約0.01から約0.55未満、約0.01から約0.50未満、約0.01から約0.45未満、約0.01から約0.40未満、約0.01から約0.35未満、約0.01から約0.30未満、約0.01から約0.25未満、約0.01から約0.20未満、であり、すべての重複する範囲、包摂する範囲、およびその間の値を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「表面リン対炭素比」は、表面炭素の総数に対するリンに結合した表面炭素の比を指す。表面炭素の総数は、非結合表面炭素、リンに結合した炭素、および他の元素または基に結合した炭素を含む。表面リンは、ヘテロ原子リンカー(例えば、酸素)を介して表面炭素に結合することができることが理解される。表面リンは、酸化状態または非酸化状態において存在することができる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、表面リン対炭素比は、約0.33、約0.30、約0.25、約0.20、約0.15、約0.10以下であり、すべての重複する範囲、包摂する範囲、およびその間の値を含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、「表面窒素対炭素比」は、表面炭素の総数に対する窒素に結合した表面炭素の比を指す。表面炭素の総数は、非結合表面炭素、窒素に結合した炭素、および他の元素または基に結合した炭素を含む。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、表面窒素対炭素比は、約0.50、約0.45、約0.40、約0.35、約0.30、約0.25、約0.20、約0.10以下であり、すべての重複する範囲、包摂する範囲、およびその間の値を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「酸化されたリンの表面酸素対リンの比」は、表面リン原子の総数に対する酸化されている表面リン原子の比を指す。表面リン原子の総数は、酸化されたリン原子および酸化されていないリン原子を含む。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、酸化されたリンの表面酸素対リンの比は、約1.0未満、約0.95未満、約0.90未満、約0.85未満、約0.80未満、約0.75未満、約0.70未満、約0.65未満、約0.60未満、約0.55未満、約0.50未満、約0.45未満、約0.40未満、約0.35未満、約0.30未満、約0.25未満、約0.20未満、約0.15未満、約0.10未満、約0.01から約1.0未満、約0.10から約1.0未満、約0.05から約1.0未満、約0.01から約0.95未満、約0.01から約0.90未満、約0.01から約0.85未満、約0.01から約0.80未満、約0.01から約0.75未満、約0.01から約0.70未満、約0.01から約0.65未満、約0.01から約0.60未満、約0.01から約0.55未満、約0.01から約0.50未満、約0.01から約0.45未満、約0.01から約0.40未満、約0.01から約0.35未満、約0.01から約0.30未満、約0.01から約0.25未満、約0.01から約0.20未満、であり、すべての重複する範囲、包摂する範囲、およびその間の値を含む。
【0050】
構造は、活性吸着材料を含む基材上に堆積された金属種を含む。金属種は、金属種前駆体に由来することができる。金属種前駆体は、少なくとも1つの金属および少なくとも1つのリガンドを含むことができる。金属種前駆体は、置き換えられる能力を有する少なくとも1つの金属および少なくとも1つのリガンドを含むことができ、金属は、活性吸着材料の表面上で官能基と結合を形成することができる。金属種は、単一の金属または複数の金属を含むことができる。金属種は、Li、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Ce、V、Nb、Ta、Pr、Cr、Mo、W、Nd、Mn、Fe、Ru、Sm、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Gd、Cu、Ag、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Si、Sn、Pb、P、Sb、およびBiなどの金属;酸化チタン、酸化銅、酸化セリウム、酸化リン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化タングステン、および酸化バナジウムなどの金属酸化物;例えば、ABO3の式(CaTiO3など)を有するペロブスカイト;酸化バナジウムリン(VPO)、FePO4、およびシリカリン酸などの金属酸化物リン酸塩または金属リン酸塩;モリブデン酸塩、タングステン酸塩、アンチモン酸塩、およびバナジウム酸塩などの多金属酸化物;貴金属、およびRu、Pt、Pd、PdOなどの貴金属化合物;金属硫化物、金属窒化物、金属リン化物、金属アルキル化合物などの有機金属化合物、シクロペンタジエニル化合物、およびメタロセン(例えば、Al(CH3)3、MeCpPtMe3、フェロセン)、またはそれらの任意の組み合わせ、を含むことができる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、金属前駆体は、パラジウムヘキサフルオロ-アセチルアセトナートまたはビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)パラジウム(II)を含む。
【0051】
活性吸着材料の表面上に堆積された金属種は、層またはコーティングの形態とすることができる。本明細書で使用される場合、「フィルム」、「層」、および「コーティング」という用語は、完全なフィルム、層、またはコーティング(すなわち、連続的な)だけでなく、部分的なフィルム、層、またはコーティング(すなわち、不完全、または連続的もしくは均一ではない)も含む。金属種を含む層は、介在する層なしで基材の表面上に直接的に配置することができる。構造は、単一の層または複数の層を含むことができる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、構造は、0~10層、1~10層、0~5層、1~5層、2~10層、2~8層、2~5層、または2~4層を含む。
【0052】
構造は、構造の合計重量に基づいて、金属種の金属の約0.1~約50重量%、または約0.5~約50重量%を含むことができる。構造は、構造の合計重量に基づいて、約0.5~約45重量%、約0.5~約40重量%、約0.5~約35重量%、約0.5~約30重量%、約0.5~約25重量%、約0.5~約20重量%、約0.5~約15重量%、約0.5~約10重量%、約0.5~約5重量%の金属種の金属を含むことができる。本明細書に記述される態様または実施形態のいずれかでは、構造が金属種として酸化チタン(IV)を含む場合、構造は、構造の合計重量に基づいて、約0.5~約50重量%のチタンを含む。
【0053】
構造は、いかなる用途にも限定されない。本明細書に開示される構造の用途の非限定的な例としては、触媒、濾過、抗菌、抗真菌、光起電性、抗真菌、化学吸着、抗ウイルス性、織物、セラミックス、バイオテクノロジー、生物医学、燃料電池システム、半導体、マイクロエレクトロニクス、光学、およびガス貯蔵の用途が挙げられる。
【0054】
追加の態様では、本明細書は、(a)反応器内に、活性吸着材料、例えば、多孔質活性吸着材料(例えば、活性炭)を含む基材を提供する工程と、(b)金属種、例えば、金属酸化物を堆積させるために、少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行う、または実施する工程であって、少なくとも1つの原子層堆積サイクルが、(i)第1の前駆体ガスを反応器の中へと導入して、活性吸着材料の表面上に堆積される金属種前駆体を提供することと、(ii)第2の前駆体ガスを反応器の中へと導入して、構造を提供することと、を含むサイクルである、工程と、を含む工程による構造を調製する方法を提供する。任意の態様または実施形態では、工程(b)は、2~約10回繰り返される。
【0055】
本明細書に記述される任意の態様または実施形態では、原子層堆積(ALD)によって調製される構造は、多孔質の金属コーティングされた構造である。
【0056】
第1の前駆体ガスは、少なくとも1つの金属および少なくとも1つのリガンドを含むことができる。少なくとも1つのリガンドは、活性吸着材料の表面官能基によって置き換えられる能力を有することができる。少なくとも1つのリガンドは、第2の前駆体ガス(例えば、O、H)によって提供される原子によって置き換えられる能力を有することができる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、第1の前駆体ガスは、金属ハロゲン化物、金属オキシハロゲン化物、金属アルコキシド、金属アルキル化合物(例えば、Al(CH3)3)などの有機金属化合物、金属アルケン化合物、金属アルキン化合物、シクロペンタジエニル化合物(例えば、MeCpPtMe3)、およびメタロセン(例えば、フェロセン)、ヘキサフルオロ-アセチルアセトナート、またはそれらの組み合わせを含む。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、第1の前駆体ガスは、塩化チタン、オキシ塩化チタン、チタンアルコキシド、またはそれらの組み合わせを含む。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、第1の前駆体ガスはヘキサフルオロ-アセチルアセトンを含む。
【0057】
第2の前駆体ガスは、活性吸着材料の表面上に堆積された金属種前駆体の少なくとも1つのリガンドを置き換えることができる(例えば、酸化、還元)。第2の前駆体ガスは、窒素含有前駆体ガス(アンモニア、1,1-ジメチルヒドラジン、tert-ブチルアミン、またはアリルアミンなど)、硫黄含有前駆体ガス(硫化水素など)、酸素含有前駆体ガス(H2O、H2O2、O2、O3、またはアルコールなど)、リン含有前駆体ガス(ホスフィンガスまたはP(O)OMe3など)、水素含有ガス(水素ガスなど)、ホルマリン、またはそれらの組み合わせを含むことができる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、第2の前駆体ガスは、金属ハロゲン化物、金属オキシハロゲン化物、金属アルコキシド、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つのリガンドを置き換えることができる。例示的な実施形態では、第2の前駆体は、金属ハロゲン化物のうちの少なくとも1つのハロゲンを置き換えることができる。第2の前駆体ガスは酸化剤を含むことができる。第2の前駆体ガスは還元剤を含むことができる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、第2の前駆体ガスは、H2O、H2O2、O2、O3、N2O、NO、NO2、NH3、アンモニア、1,1-ジメチルヒドラジン、tert-ブチルアミン、またはアリルアミン、アルコール、PH3、P(O)OMe3、硫化水素、H2、周囲空気、ホルマリン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0058】
本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、第1の前駆体ガスはパラジウムヘキサフルオロ-アセチルアセトナートを含み、また第2の前駆体ガスはホルマリンを含む。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、第1の前駆体ガスは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)パラジウム(II)を含み、また第2の前駆体ガスは、周囲空気を含む。
【0059】
本開示の方法では、工程bは、少なくとも2回、または2~4回実施することができる。
【0060】
方法は、概して真空圧下で実施される。真空圧は、第1の前駆体ガスが、室温において固体または液体である(かつ実質的に気化しない)ように選択される。第1の前駆体を加熱して、第1の前駆体ガスを生成することができる。第2の前駆体を加熱して、第2の前駆体ガスを生成することができる。代替的な実施形態では、第2の前駆体ガスは周囲空気である。反応器を大気に開放して、反応器内の金属種前駆体を周囲空気に曝露させて、金属種前駆体を金属種へと酸化させることができる。方法は、前述の組み合わせを含むことができる。
【0061】
方法は、本開示の方法の工程(b)(ii)で導入された第2の前駆体ガスとは異なる、追加的な第2の前駆体ガスを導入することを含むことができる。追加的な第2の前駆体ガスを使用して、金属種の金属に結合された官能基を異なる官能基へと変換することができる。
【0062】
方法はまた、第1の前駆体ガスが導入される工程(b)(i)、第2のガスが導入される工程(b)(ii)、またはそれらの組み合わせに続くパージする工程も含むことができる。パージは、真空を使用して、不活性ガスを使用して、またはそれらの組み合わせで実施することができる。パージ工程は、活性吸着材料との第1の前駆体ガスの反応、および/または活性吸着材料の表面上に堆積された金属種前駆体との第2の前駆体ガスの反応から、未反応の前駆体ガスおよび副生成物を除去することができる。
【0063】
本明細書に記述される任意の態様または実施形態では、改質された活性吸着材料を調製するための方法は、(a)反応器内に活性炭を提供する工程と、(b)少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行う工程であって、少なくとも1つの原子層堆積サイクルを行う工程が、(i)TiCl4ガスを反応器の中へと導入することと、(ii)反応器の中へと水蒸気を導入して、酸化チタン改質活性炭を提供することと、を含む工程と、を含む。
【0064】
酸化チタンで改質された活性炭粉末は、2-プロパノール昇温脱離(TPD)スペクトルに従って決定されるように、AEROXIDE(登録商標)P25 TiO2(Evonik(ドイツ国Hanau-Wolfgang)から市販されている)と比較して、優れた触媒活性を有する。より詳細な記述については、参照により組み込まれる、Yi Y. Wu, Harold H. Kung, Probing properties of the interfacial perimeter sites in TiOx/Au/SiO2 with 2-propanol decomposition, Applied Catalysis A: General, Volume 548, 2017, Pages 150-163を参照のこと。
【0065】
2-プロパノールのTPDは、酸化物表面を特徴付けるために広く使用されている。2-プロパノールは、アセトンへと脱水素化することと、プロペンへと脱水することとの両方で、酸化物表面上で不均化することが広く観察されている。堆積したTiO2の触媒活性は、アセトンおよびプロペンの収率をP25からの収率と比較することによって特徴付けされた。
【0066】
記述された態様または実施形態のうちのいずれかでは、原子層堆積装置は、真空マニホールドと、第1の前駆体、第2の前駆体、および活性炭の各々のための容器と、真空ポンプと、コールドトラップと、少なくとも1つの熱源と、加熱コントローラと、を備える。真空マニホールドは、第1の前駆体ガス、第2の前駆体ガス、および活性炭基材のためのマニホールドへと接続された弁を有するラインと;各々がマニホールドのそれぞれのラインへと接続されている、第1の前駆体、第2の前駆体、および活性炭基体のそれぞれのための容器と、を含む。マニホールドおよび容器は、前駆体ガスの活性炭への効率的な移送のために加熱することができる。
【0067】
記述された態様または実施形態のうちのいずれかでは、原子層堆積方法は、バッチモード、半連続モード、連続モード、またはそれらの組み合わせのために好適な装置で実行することができる。本明細書に記述される態様または実施形態のうちのいずれかでは、装置は流動床反応器を含む。当然のことながら、構造は、当業者に知られている装置のうちのいずれかを使用して形成することができる。
【実施例】
【0068】
別途具体的に示さない限り、各構成成分の量は、組成物の総重量に基づく重量パーセント(重量%)である。
【0069】
基材のバルク窒素対炭素比、リン対炭素比、および酸素対炭素比は、エネルギー分散分光法(EDS)を使用して測定されてもよい。EDS Spectraは、Electral Analysis, Inc(米国ケンタッキー州レキシントン)によって提供された。各試料をカーボンテープに貼り付けた。分析した各試料について、3つの異なる部位において、Oxford X-Max 80エネルギー分散分光計を使用してスペクトルを得た。スペクトルを、30kVの励起電圧で500×および1,000×で取得した。表面酸素密度は、ベーム滴定法、オージェ電子分光法(AE)、X線光電子分光法(XPS)、または低エネルギーイオン散乱法(LEIS)を使用して測定されてもよい。金属充填は、オージェ電子分光法(AE)、原子吸収分光法(AAS)、エネルギー分散分光法(EDS)、誘導結合プラズマ分光法(ICP)、LEIS、またはXPSを使用して測定されてもよい。
【0070】
[実施例1]活性炭粉末のTiO
2のALDおよび触媒特徴付け
実施例1は、活性炭粉末上のTiO
2のALDを記述し、そしてその性能をTiO
2粉末と比較する。活性炭粉末は、NUCHAR(登録商標)RGC(Ingevity South Carolina,LLC、米国サウスカロライナ州ノースチャールストン)であり、また18.3ミクロンのd50を有した。TiO
2粉末は、AEROXIDE(登録商標)P25(Evonik、ドイツ、Hanau-Wolfgang)であり、また2.95のd50を有した。ALD装置は、
図1と整合して構築された。装置は、真空マニホールドと、コールドトラップ(104)と、真空ポンプ(105)と、弁制御(107、108、109)を有する3本の原料ラインを含む。3本の原料ラインは、反応前駆体:活性炭、TiCl
4(塩化チタン(IV)99.9%、Sigma Aldrichから入手)、および酸化剤(水)のためのフラスコ(101、102、および103)に接続された。マニホールドを、マニホールド温度が200℃となるように加熱テープで被覆した。活性炭(2g)をフラスコに装填し、フラスコを真空マニホールドに接続し、そしてTiCl
4の堆積および活性部位での部分酸化が制約なく進行するように、活性炭を150℃で2時間の間、約10
-3Torrの真空圧で空にして、汚染物質を除去した。例えば、H
2Oが表面上に留まった場合、TiCl
4は、過剰に酸化/堆積(CVD)される加工性が高く、また表面に固定されない可能性も高いことになる。フラスコは室温まで冷まされ、真空から取り外され、そして秤量されて、重量の減少を記録した。フラスコをマニホールドに取り付け、そして室温で夜通し空にした。TiCl
4(5mL)を、真空マニホールドに接続されたバイアルに添加した。バイアル内の蒸気空間を3回空にして、バイアルの内容物を真空パルス間に平衡化させた。TiCl
4蒸気(80℃に加熱)を、弁108、109、および110を開放することによって、150℃で活性炭を含有する反応フラスコに導入し、これにより真空は50mTorr未満になった。弁110は5秒後に閉鎖された。2時間後、弁108を閉鎖し、そして弁110をゆっくりと再開放した。反応フラスコを2時間空にした。マニホールドを、空気に開放されるように真空から外した。水を収容するバイアルを60℃に加熱し、そして弁107、109、および110を開放して、湿った空気が反応フラスコ全体に、または反応フラスコを通して流れることを可能にした。2時間後、加熱を除去し、そしてマニホールドを空気に対して夜通し開放したままにした。プロセスをさらに3回繰り返した。
【0071】
図2は、1~4サイクルのALD後に酸化チタンで改質された活性炭粉末の重量分析の結果を示す。
【0072】
図3A~
図3Dは、0~4サイクルのALD後の酸化チタンで改質された活性炭粉末についてのTiO
2の重量%を示す。
【0073】
図4A~
図4Dは、0~4サイクルのALD後の酸化チタンで改質された活性炭粉末のSEM画像である。
【0074】
図5は、酸化チタンで改質された活性炭粉末に対する、4回のALDサイクルを通したTiO
2成長速度を示す。
【0075】
昇温脱離を使用するTiO2改質RGCの特徴付け方法。
【0076】
TiO2修飾RGC炭素試料の触媒活性を特徴付けるために、内部昇温脱離セットアップおよび技法が開発された。TPDセットアップは、熱重量分析器(Perkin Elmer TGA 8000)の排気ポートに接続されたGC-MS(Shimadzu GCMS-QP2010S)からなる。GC-MS内のカラムをバイパスして、TGA生成物のリアルタイム分析のために、GC-MSの中へと直接的に排気ガスを注入した。試料をTGAの中へと装填し、そして2-プロパノールで飽和させた。2-プロパノール飽和試料を、20ml/分N2内に25℃で30分間維持して、過剰な2-プロパノールを除去した。試料を10℃/分で加熱し、同時にGC-MSを用いて脱離生成物をモニタリングした。
【0077】
TiO
2改質RGCおよび市販のP25 TiO
2を、上述の特徴付け方法を使用して試験した。各々の2-プロパノール昇温脱離スペクトル(TPDスペクトル)を、
図6A~
図6Cに示す。脱離ピークを積分して、生成物収率を定量した。脱離生成物は、それらの特徴的な断片化パターンによって特定された。計算された質量分析計感度係数を使用して、生成物収率を定量した。2-プロパノールTPDからの生成物を定量するために使用した特性質量(m/z)は、45(2-プロパノール)、18(H
2O)、および41(プロペン)であった。2-プロパノールTPDからの生成物スペクトルの比較を
図7A~
図7Bに示す。TPD方法からのアセトン収率およびプロペン収率を表1に要約し、そして4ラウンドのALD後のTiO
2改質RGCの優れた性能を示す。
【0078】
【0079】
[実施例2]粒状活性炭上のTiO
2のALD
実施例2は、いくつかの活性炭およびグラファイト上のTiO
2のALDを記述する。活性炭およびグラファイトはすべて、20×60メッシュの粒子サイズまでスクリーニングされた。活性炭には、NUCHAR(登録商標)(Ingevity South Carolina LLC、米国サウスカロライナ州ノースチャールストン)の化学活性化、木材ベース炭素が含まれた。これらの炭素は、NUCHAR(登録商標)RGC、NUCHAR(登録商標)AquaGuard(AG)、NUCHAR(登録商標)BAX 1500、およびNUCHAR(登録商標)WV-A 1100であった。熱活性化、ココナツベースの炭素(20×50メッシュ、酸洗浄済み、85~90 CTC(Carbon Activated Corp、米国カリフォルニア州コンプトン)、およびグラファイト(SAG20(MTI Corporation、米国カリフォルニア州リッチモンド))も使用した。酸化した試料を用いた試験については、グラファイトおよびRGCは両方とも、70%の硝酸(Sigma-Aldrich)を収容するビーカー内にそれぞれの炭素を定置することによって酸化した。炭素対硝酸の比は1:10であった。酸および炭素を収容するビーカーを80℃に加熱し、次いで3時間攪拌した。次いで、真空濾過を使用して、炭素を酸から除去した。濾過された炭素を、pHが>5になるまで蒸留水を使用して洗浄した。次いで、炭素を110℃のオーブン内に一晩定置した。表2は、これらの炭素の各々に対するBET表面積および細孔体積を示す。炭素をALDに供する前に、炭素をC、O、N、およびP含有量についてXPSによって分析し、そして結果を
図10に示し、表3に要約した。
図9A~
図9Cは、未使用のWV-A1100(
図9A)、BAX1500(
図9B)、およびグラファイト(
図9C)のSEM写真を示す。
【0080】
【0081】
【0082】
ALD装置は、
図8と整合して構築された。装置は、真空ポンプと直列の弁制御を有する加熱された原料ラインを含む。湿った空気を生成するために、原料ラインを、水で充填されたシリンジに接続された蒸気発生器に接続した。空気を加熱トレースラインの中へと導入した。
図8に示すように、TiCl
4は、1つのカラム内に存在し、また炭素は第2のカラム内に存在した。堆積前に、装置は、弁906を閉鎖し、弁908および909を開放することによって、室温で約10
-3Torrの真空圧下で夜通し空にした。トレースされたラインを200℃に加熱し、そしてTiCl
4を収容するカラムおよび炭素を収容するカラムをそれぞれ80℃および150℃に加熱した。TiCl
4を炭素上に堆積させるために、弁909を閉鎖し、また弁907および908を2時間にわたり開放した。2時間後、弁907を閉鎖し、そして弁909をゆっくりと再開放した。装置を2時間にわたり空にした。その後、弁906は、湿った空気が炭素カラムを通して流れることを可能にするように開放した。2時間後、加熱を除去し、そしてマニホールドを空気に対して一晩開放したままにした。プロセスを、もう1回繰り返したが、2~4回繰り返すことができる。
【0083】
TiO
2を用いた2サイクルのALD後、推定表面被覆率を、以下の式に従って単層被覆を仮定して計算した。(例えば、ローおよびa)。
【数1】
【0084】
式中、ρTiO2がTiO2のバルク密度(m3/g)である場合、炭素S.A.はBET表面積(m2/g)であり、αはTiO2の単位セルの特性長(格子パラメータ、m)である。
【0085】
図11は、変化するALDサイクル後の、ココナツ、酸化RGC、RGC、WVA1100、AquaGuard(AG)、およびグラファイトの推定表面被覆率の比較を示す。この図に提示された推定については、TiO
2がルチル相として堆積されると仮定される。この図は、TiO
2 ALDの速度がココナツに対して最大であり、またココナツ>酸化RGC、Aquaguard、WV-A 1100 RGC>グラファイトという順序に従っていることを示す。加えて、表面酸化は、TiO
2の堆積速度を強化した(酸化RGCをRGCと比較)。
【0086】
図12A~
図12Cは、2サイクルのTiO
2 ALD後の酸化RGC、AG、およびグラファイトのSEM写真およびXRDを示す。酸化RGCは、AG(非酸化)と比較して、高いTiO
2の組み込みを有した。グラファイトは、TiO
2の組み込みが非常に不良であった。
【0087】
図13は、TiO
2 ALDの前後での、WV-A 1100のXPSスペクトルを示す。未使用の材料は一番下のトレースであり、1サイクルのALD後の材料は中間のトレースであり、そして2サイクルのALD後の材料は一番上のトレースである。
【0088】
図14は、2サイクルのTiO
2 ALD後の、ココナツ、1100、およびRGCの各々のXPSスペクトルを示す。2サイクルのALD後のRGCは一番下のトレースであり、2サイクルのALD後の1100が次に高いトレースであり、そして2サイクルのALD後のココナツが一番上のトレースである。O1sピークは、金属酸化物に対応する。2p3/2および2p1/2におけるTi(2p)ピークは、十分に酸化されたTi原子(TiO
2形成)に対応する。
【0089】
図15は、TiO
2 ALDの前後でのWVA1100に対するブタン等温線の結果を示す。
図15Aは、試料の合計重量に基づく等温結果を示す。未使用の材料は一番上のトレースであり、1サイクルのALD後の材料は中間のトレースであり、そして2サイクルのALD後の材料は一番下のトレースである。炭素の重量基準で正規化した後、
図15Bに示すように、未使用の材料、1サイクル材料、および2サイクル材料のプロットの実質的な重複がある。
【0090】
[実施例3]昇温脱離(TPD)を使用するTiO2改質粒状炭素の触媒的特徴付け
TiO2改質炭素試料の触媒活性を試験するために、内部の脱離セットアップおよび技法が開発された。TPDセットアップは、熱重量分析器(PERKIN ELMER TGA 8000)の排気ポートに接続されたGC-MS(SHIMADZU GCMS-QP2010S)を含む。GC-MS内のカラムをバイパスして、TGA生成物のリアルタイム分析のために、質量分析計の中へと直接的に排気ガスを注入した。試料をTGAの中へと装填し、そして2-プロパノールで飽和させた。窒素(g)を、25℃で30分間の間20mL/分で通して、過剰な2-プロパノールを除去し、そして同時に質量分析計で脱離生成物をモニタリングしながら、10℃/分で加熱した。脱離生成物は、それらの特徴的な断片化パターンによって特定された。生成物信号を、その感度係数によって修正した。2-プロパノールからの生成物を定量するために使用した特性質量(m/z)は、45(2-プロパノール)、18(H2O)、および41(プロペン)であった。
【0091】
図16A~
図16Bは、それぞれWV-A1100およびRGCについての、2サイクルのTiO
2-ALD後のTPDスペクトルを示す。
図16A~
図16Bの各々について、ALD改質された材料のスペクトルは、未使用の材料のスペクトルと重ね合わされる。アセトン、CO
2、およびプロペンに対する下側の曲線は、1サイクルのALDに供された材料に対するものであり、また上側の曲線は、第2のサイクルのALD後のアセトン、CO
2、およびプロペンの各々に対するものである。
【0092】
図17は、TiO
2改質されたグラファイトのTPDスペクトルを示す。いかなる反応生成物も検出されず、また材料の多孔質の欠如に起因して、急速な脱離が観察された。
【0093】
図18は、TiO
2改質されたAQUAGUARDのTPDスペクトルを示す。120におけるピークは、反応性中間体を示し、2-プロパノールの酸素はチタンに結合される。
【0094】
図19は、TiO
2改質された酸化RGCのTPDスペクトルを示す。アセトンおよびプロペン反応生成物が検出された。
【0095】
[実施例4]WV-A 1100上のパラジウム堆積
Pd堆積が、第1の前駆体ガスとしてヘキサフルオロ-アセチルアセトン酸パラジウムを使用して実施された。試料オーブンを110℃に設定して、試料カラム内に炭素試料を定置し、またラインヒーターを180℃に設定し、そして2時間にわたり空にした。試料オーブンおよびラインヒーターを70℃に冷ました。パラジウムヘキサフルオロ-アセチルアセトナートを試料カラムに添加した。真空圧は、弁909を開放することによって、2分間の間再確立された。この時点で、弁909を閉鎖し、そして前駆体堆積を30分間行わせた。堆積後、弁909を再開放し、そして試料を、以下の温度範囲および時間を使用して空にした:(1)70℃で30分間堆積、(2)70℃で30分間、110℃で30分間、180℃で2時間にわたり空にする。ラインヒーターを180℃に加熱し、また試料オーブンは180℃のままにした。次いで、試料カラムを、弁906および908を開放することによって大気に開放し、500sccmに設定された窒素流を使用して、37%のホルマリン(第2の前駆体ガス)を蒸気発生器を通してポンプ注入した。このホルマリンをシステムを通して1時間の間ポンプ注入した。完了したら、試料を取り出し、そして110℃のオーブン内に一晩定置した。
【0096】
【0097】
図21は、1、2、および4サイクルのALD後の、WV-A 1100のPd改質された試料のXPSを示す。一番下のトレースは、未使用の材料であり、上方の次のトレースは1サイクルのALD後のものであり、上方の次のトレースは2サイクルのALD後のものであり、そして一番上のトレースは、4サイクルのALD後のものである。339.8におけるピークは、Pdに対応する。ALDサイクルの数とともに、335.8eVにおけるピークが増加することは明らかである。
【0098】
図22は、1サイクル(1.29重量%)、2(2.84重量%)、および4サイクル(5.21重量%)のALD後に、WV-A1100上に堆積されたPdの重量%を示す。
【0099】
触媒の活性を、アビエチン酸との反応で試験した。アビエチン酸は、従来のPd触媒の存在下で、デヒドロアビエチン酸へと容易に変換することが示されている(Linlin Wang,Xiaopeng Chen,Wenjing Sun,Jiezhen Liang,Xu, Zhangfa Tong,Kinetic model for the catalytic disproportionation of pine oleoresin over Pd/C catalyst,Industrial Crops and Products,Volume 49,2013,pp.1-9)。堆積されたPdの触媒活性は、アビエチン酸の消失の速度および対応するデヒドロアビエチン酸の形成の速度を評価することによって特徴付けられ、
図23は、経時的なアビエチン酸の消失を示す。2つの重なっている曲線は、触媒なしの反応、および未使用の材料の反応である。一番下の曲線は、2サイクルのALD後に得られたPd改質された材料(すなわち、触媒)の存在下でのアビエチン酸の反応に対応する。Pd改質された材料(すなわち、触媒)の存在下でのアビエチン酸の反応に対応する上方の曲線は、1サイクルのALD後に得られた。
【0100】
触媒の活性(すなわち、WV-A 1100に堆積されたPd)は、2-プロパノールとのアルコール脱水素反応で試験された。
図24Aは、空気およびN2を使用するTGAスペクトルを示す。
図24Bは、放出ガススペクトルを示す。
【0101】
[実施例5]他の炭素へのパラジウム堆積
Pd堆積を、実施例4に記述されるように行った。
【0102】
図25Aは、10,000×の倍率での2サイクルのPd ALD後のグラファイトのSEM写真を示す。
図25Bは、100,000×の倍率での2サイクルのPd ALD後のグラファイトのSEM写真を示す。
【0103】
図26Aは、10,000×の倍率での2サイクルのPd ALD後の酸化グラファイトのSEM写真を示す。
図26Bは、100,000×の倍率での2サイクルのPd ALD後のグラファイトのSEM写真を示す。
【0104】
図27A~
図27Bは、2サイクルのALDの前後のグラファイトおよび酸化グラファイトのXPSを示す。一番下のトレースは未使用のグラファイトであり、また上方のトレースはALDの第2のサイクル後である(
図27A)。同様に、その上方のトレースは、未使用の酸化グラファイトであり、また上方のトレースはALDの第2のサイクル後である(
図27A)。
図27Bは、Pdに対応する領域にピークがないことを示す。検出されたPdピークの欠如は、酸化グラファイト上およびグラファイト上の両方でのALDを介したPdの堆積が失敗したことを示す。
【0105】
Pd改質炭素試料のPIXE分析を、下記の表4に要約する。
【0106】