(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】デュアルカチオン金属電池およびその充放電方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20250304BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20250304BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20250304BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20250304BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250304BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250304BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20250304BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250304BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20250304BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0566
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/134
H01M10/44 A
H01M4/136
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076925
(22)【出願日】2023-05-08
【審査請求日】2023-06-13
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517232729
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 2-1, Singhua Rd., Taoyuan Dist., Taoyuan City,330,Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】謝瀚緯
(72)【発明者】
【氏名】李宜庭
(72)【発明者】
【氏名】黄安鋒
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-266821(JP,A)
【文献】特表2019-506707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0403234(US,A1)
【文献】米国特許第04027076(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107785576(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102709534(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113299897(CN,A)
【文献】中国特許第101043093(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 10/44
H01M 10/052
H01M 10/054
H01M 10/0566
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極と電解質溶液とセパレータとを備えるデュアルカチオン金属電池であって、
前記正極は、正極材料を含有し、前記正極材料は、リン酸鉄、リン酸鉄リチウムおよびLi
xNa
1-xFePO
4からなる群から選択された1つであり、ここでは、0<x<1を満たし、
前記負極は、金属混合物を含有し、前記金属混合物は、リチウム金属とナトリウム金属とで構成され、前記リチウム金属と前記ナトリウム金属との重量比が1:3であり、
前記電解質溶液は、前記正極と前記負極との間に配置され、
前記セパレータは、前記電解質溶液内に配置され、前記正極と前記負極は、前記セパレータによって互いに分離する、ことを特徴とするデュアルカチオン金属電池。
【請求項2】
前記デュアルカチオン金属電池は、定電流-定電圧モードで充電および放電
され、前記定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードである、ことを特徴とする請求項1に記載のデュアルカチオン金属電池。
【請求項3】
前記デュアルカチオン金属電池は、定電流-定電圧モードとランプ電圧モードとの混合モードで充電および放電
され、前記定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードであり、前記ランプ電圧モードは、充放電区間範囲が2.0 V~4.0 Vであり、充放電レートが±0.2 mV/sである、ことを特徴とする請求項1に記載のデュアルカチオン金属電池。
【請求項4】
前記正極材料がLi
xNa
1-xFePO
4である場合、前記デュアルカチオン金属電池は、定電流-定電圧モードで充電
され、且つランプ電圧モードで放電
され、前記定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードであり、前記ランプ電圧モードは、放電区間範囲が4.0 V~2.0 Vであり、放電レートが-0.2 mV/sである、ことを特徴とする請求項1に記載のデュアルカチオン金属電池。
【請求項5】
前記ランプ電圧モードは、前記放電区間範囲が2.8 V~カットオフ電圧2.0 Vである、ことを特徴とする請求項4に記載のデュアルカチオン金属電池。
【請求項6】
デュアルカチオン金属電池の充放電方法であって、
デュアルカチオン金属電池を提供し、前記デュアルカチオン金属電池は、正極と負極と電解質溶液とセパレータとを備え、前記正極は正極材料を含み、前記正極材料は、リン酸鉄、リン酸鉄リチウムおよびLi
xNa
1-xFePO
4からなる群から選択された1つであり、且つ0<x<1であり、前記負極は金属混合物を含み、前記金属混合物は、リチウム金属とナトリウム金属とで構成され、前記リチウム金属と前記ナトリウム金属の重量比が1:3であり、前記電解質溶液が前記正極と前記負極との間に設置され、前記セパレータが前記電解質溶液内に設置され、前記正極と前記負極は前記セパレータを介して互いに分離するステップ(a)と、
定電流-定電圧モードまたはランプ電圧モードを選択して前記デュアルカチオン金属電池に対する充電または放電を行うステップ(b)とを含むことを特徴とするデュアルカチオン金属電池の充放電方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)では、前記定電流-定電圧モードで充放電し、前記定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードである、ことを特徴とする請求項6に記載のデュアルカチオン金属電池の充放電方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)では、前記定電流-定電圧モードと前記ランプ電圧モードとの混合モードで充電および放電を行い、前記定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードであり、前記ランプ電圧モードは、充放電区間範囲が2.0 V~4.0 Vであり、充放電レートが±0.2 mV/sである、ことを特徴とする請求項6に記載のデュアルカチオン金属電池の充放電方法。
【請求項9】
前記正極材料がLi
xNa
1-xFePO
4である場合、前記ステップ(b)では、前記定電流-定電圧モードで充電し、前記ランプ電圧モードで放電し、前記定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードであり、前記ランプ電圧モードは、放電区間範囲が4.0 V~2.0 Vであり、放電レートが-0.2 mV/sである、ことを特徴とする請求項6に記載のデュアルカチオン金属電池の充放電方法。
【請求項10】
前記ランプ電圧モードは、前記放電区間範囲が2.8 V~カットオフ電圧2.0 Vである、ことを特徴とする請求項9に記載のデュアルカチオン金属電池の充放電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関し、特に、材料コストを削減し長い耐用年数を維持でき且つ複数の用途変更が可能なデュアルカチオン金属電池およびその充放電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(Lithium-ion battery)は、繰り返し充放電可能な二次電池であり、リチウムイオンが正極と負極との間に移動することによって充放電を実現する。したがって、リチウムイオン電池は、リチウム化合物を電極材料として使用する必要がある。従来のリチウムイオン電池に使用される正極材料は、主にコバルト酸化リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)およびリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などが挙げられる。そのうち、リン酸鉄リチウム電池は、良好な安全性、比容量が大きく、サイクル寿命が長く、高温耐性があり、且つコストが低いため、電気自動車やエネルギー貯蔵装置に広く使用されている。
【0003】
近年、電気自動車やエネルギー貯蔵装置へのリチウムイオン電池の適用に伴い、関連原材料の価格が大幅に変動している。将来の需要が増加し続けることを考慮すると、リチウムイオンの代替品を見つけることが重要である。この場合、リチウムイオン電池中のリチウムイオンに代わる代替品を探す時、プラトー電圧の差異の使いやすさ、製品寿命、電池の安定性に与える影響を考慮する必要がある。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、従来技術が直面する問題を解決するために、材料コストを削減し長い耐用年数を維持でき且つ複数の用途変更が可能なデュアルカチオン金属電池およびその充放電方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、材料コストを削減し長い耐用年数を維持でき且つ複数の用途変更が可能なデュアルカチオン金属電池およびその充放電方法を提供することである。オリビン構造のリン酸鉄リチウム、リン酸鉄は、リチウムイオンおよびナトリウムイオンが構造内に同時に貯蔵および移出し、オリビン構造のLixNa1-xFePO4デュアルカチオン正極材料を形成することができる。これにより、金属電池がLiFePO4およびNaFePO4の2つの異なるプラトー電圧を提供することができる。本発明は、ナトリウムイオンを用いて一部のリチウムイオンを置換することによってLixNa1-xFePO4デュアルカチオン正極材料を形成しており、従来のリチウムイオン正極材料およびナトリウムイオン正極材料のような単一のカチオン正極材料と異なる。また、本発明のデュアルカチオン金属電池は、地殻中の含有量がより豊富なナトリウムイオンを使用して一部のリチウムイオンを置換しており、二次電池材料をより持続可能にするほか、リン酸鉄ナトリウム正極材料よりも高いプラトー電圧、電容量および多様な用途を提供することができる。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、デュアルカチオン金属電池およびその充放電方法を提供することである。デュアルカチオン金属電池では、リチウム金属とナトリウム金属とを混合して複合負極として使用する。リチウム金属(リチウム金属のグラム当たりの理論電容量が3840 mAh/gである)とナトリウム金属(ナトリウム金属のグラム当たりの理論電容量が1166 mAh/gである)は、高いグラムあたりの電容量を有するため、負極の厚さを減らして、電池のエネルギー密度を増加させるのに役立つことができる。
【0007】
本発明のもう一つ目的は、デュアルカチオン金属電池およびその充放電方法を提供することである。リン酸鉄(heterosite,FePO4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)またはLixNa1-xFePO4などの正極材料と、リチウム金属およびナトリウム金属混合物とで構成されたデュアルカチオン金属電池は、充放電過程において、LiFePO4およびNaFePO4の2つの異なるプラトー電圧を有する。LixNa1-xFePO4デュアルカチオン正極材料は、リチウム-ナトリウム金属負極と適合する場合に、異なる充放電モードを使用することで、異なる電気特性を発揮することができる。デュアルカチオン金属電池は、ランプ電圧モードで放電する場合、電圧降下速度を制御することによって、リチウムイオンとナトリウムイオンが構造内に貯蔵される比率を制御することができる。また、デュアルイオン正極金属電池は、大倍率の放電電流出力を必要としないエネルギー貯蔵用途に使用する場合、例えば、太陽光発電システムに使用される場合、日中に太陽光で太陽光発電を行う場合、ソーラーパネルからの電流でゆっくりと電池を充電し、夜間に放電する場合、より大きな電力が必要な場合は、定電流-定電圧の放電モードを使用して放電することができる。つまり、LiFePO4プラトー電圧によって放電する。一方で、デュアルカチオン金属電池は、大きな電力出力が必要でない場合、ランプ電圧の放電モードを使用して放電し、NaFePO4プラトー電圧によって放出される電力を使用することができる。これによって、実際の需要に応じて、ランプ電圧モードまたは定電流-定電圧モードを選択することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明は、正極と負極と電解質溶液とセパレータとを備えるデュアルカチオン金属電池を提供する。正極は、正極材料を含み、正極材料は、リン酸鉄(heterosite,FePO4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)およびLixNa1-xFePO4からなる群から選択された1つであり、且つ0<x<1である。負極は、金属混合物を含み、金属混合物は、リチウム金属とナトリウム金属とで構成され、リチウム金属とナトリウム金属との重量比が1:3である。電解質溶液が正極と負極との間に設置される。セパレータは電解質溶液内に設置され、正極と負極とはセパレータを介して互いに分離する。異なる充放電モードを選択することによって、デュアルカチオン金属電池は異なる電気的特性を具有する(異なる電気的特性の結果を示す)。
好ましくは、デュアルカチオン金属電池は、定電流-定電圧モードで充電および放電し、定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードである。
好ましくは、デュアルカチオン金属電池は、定電流-定電圧モードとランプ電圧モードとの混合モードで充電および放電し、定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードであり、ランプ電圧モードは、充放電区間範囲が2.0 V~4.0 Vであり、充放電レートが±0.2 mV/sである。
好ましくは、正極材料がLixNa1-xFePO4である場合、デュアルカチオン金属電池は、定電流-定電圧モードで充電し、且つランプ電圧モードで放電し、定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードであり、ランプ電圧モードは、放電区間範囲が4.0 V~2.0 Vであり、放電レートが-0.2 mV/sである。
好ましくは、ランプ電圧モードは、放電区間範囲が2.8 V~カットオフ電圧2.0 Vである。
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明は、デュアルカチオン金属電池を提供し、デュアルカチオン金属電池は、正極と負極と電解質溶液とセパレータとを備え、正極は正極材料を含み、正極材料は、リン酸鉄、リン酸鉄リチウムおよびLixNa1-xFePO4からなる群から選択された1つであり、且つ0<x<1であり、負極は金属混合物を含み、金属混合物は、リチウム金属とナトリウム金属とで構成され、リチウム金属とナトリウム金属の重量比が1:3であり、電解質溶液が正極と前記負極との間に設置され、セパレータが電解質溶液内に設置され、正極と負極はセパレータを介して互いに分離するステップ(a)と、定電流-定電圧モードまたはランプ電圧モードを選択してデュアルカチオン金属電池に対する充電または放電を行うステップ(b)とを含むデュアルカチオン金属電池の充放電方法を提供する。
好ましくは、ステップ(b)では、定電流-定電圧モードで充放電し、定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードである。
好ましくは、ステップ(b)では、定電流-定電圧モードとランプ電圧モードとの混合モードで充電および放電を行い、定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードであり、ランプ電圧モードは、充放電区間範囲が2.0 V~4.0 Vであり、充放電レートが±0.2 mV/sである。
好ましくは、正極材料がLixNa1-xFePO4である場合、ステップ(b)では、定電流-定電圧モードで充電し、ランプ電圧モードで放電し、定電流-定電圧モードが0.1C定電流-定電圧モードであり、ランプ電圧モードは、放電区間範囲が4.0 V~2.0 Vであり、放電レートが-0.2 mV/sである。
好ましくは、ランプ電圧モードは、放電区間範囲が2.8 V~カットオフ電圧2.0 Vである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の好ましい実施形態におけるデュアルカチオン金属電池の構造概念図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態におけるデュアルカチオン金属電池中のデュアルカチオン正極材料、LiFePO
4およびNaFePO
4がサイクリックボルタンメトリーで走査されて得られた比較結果を示している。
【
図3】本発明の好ましい実施形態におけるLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池の異なるカットオフ電圧を用いたサイクリックボルタンメトリーの走査結果を示している。
【
図4】本発明の好ましい実施形態における、Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池の0.1 C定電流-定電圧(CC-CV)モードでの充放電の測定結果を示している。
【
図5】本発明の好ましい実施形態におけるLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池のランプ電圧モードでの充放電の測定結果を示している。
【
図6】リン酸鉄/ナトリウム金属負極のボタン電池のランプ電圧モードでの充放電の結果を示している。
【
図7】定電流-定電圧モードとランプ電圧モードとの混合モードを用いて本発明の好ましい実施形態におけるLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池を充放電して得られた測定結果を示している。
【
図8】本発明の好ましい実施形態におけるLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池は、定電流-定電圧モードで充電し、ランプ電圧モードで放電することで測定された結果を示している。
【
図9】本発明の好ましい実施形態におけるリン酸鉄正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池は、定電流-定電圧モードとランプ電圧モードとの混合モードで充放電を行った測定結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴及び利点を具体化するいくつかの典型的な実施形態は、以下の内容において詳細に説明する。本発明は、範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、以下の説明及び図面は、本発明を説明するために使用されており、本発明を限定するためのものではない。また、本発明の詳細な説明において、第1特徴が第2特徴の上又は上方に配置されることとは、配置された前記第1特徴と前記第2特徴が直接に接続されている実施形態と、前記第1特徴と前記第2特徴との間に他の構造を介し前記第1特徴と前記第2特徴が直接に接続されていない実施形態とを含む。さらに、本明細書の異なる実施形態に関する説明では、符号および/または記号を繰り返し使用することができる。これらの繰り返しは、簡略化および明確化を目的としており、さまざまな実施形態および/または説明される外観構造の間の関係を限定することを意図したものではない。なお、図中では、1つの構成要素または特徴部分と他の(複数)の構成要素または(複数)の特徴部分との関係を説明しやすくするために、「内」、「外」、「高い」、「低い」などの空間に示す用語を記載している。これらの記載は、空間相対的な用語であり、概略的に示された向きに加えて、使用中または動作中の装置の異なる向きを包含することを意図している。また、その装置は他の配置(例えば、90度回転または他の方向)に配置されてもよく、使用される場面に応じて解釈されることができる。また、構成要素が別の構成要素に「接続されている」または「結合されている」と記載される場合、他の構成要素に直接接続または結合されていても良く、他の構成要素を介して接続または結合されても良い。また、本明細書の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示す数値は可能な限り正確に記載されている。また、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、特許請求の範囲に記載された異なる構成を説明するために使用されており、これらの構成は当該用語に限定されず、実施形態に関する内容では、該当構成は異なる符号で表示さているが、第1構成は第2構成と表示され、また、第2構成は第1構成と表示されることも可能であり、本発明の実施形態から逸脱しない。また、「及び/又は」という用語は、一つおよび複数の関連要素またはその全部の組合せを意味する。操作/動作に関する実施形態において明確に定義しない限り、本明細書に記載されているすべての数値範囲、量、数値およびパーセントなど(例えば、角度、維持時間、温度、操作条件、割合及びそれに相当するパーセントなど)はいずれも、すべての実施形態において用語の「約」または「実質的に」に理解すべきである。また、内容に記載されない限り、本発明及び特許請求の範囲の数値はいずれも、必要に応じて変化しえる近似値に取ることができる。例えば、各パラメーターは、少なくとも記載されている有効桁数に照らして、通常の丸めの原則を適用して解釈しても良い。また、本明細書での数値範囲は、一方の端点から他方の端点まで、または2つの端点の間の範囲として表することができる。本明細書に記載されているすべての範囲は、特に定義されていない限り、端点を含むことを留意されたい。
【0012】
図1は、本発明の好ましい実施形態のデュアルカチオン金属電池の構造概念図である。本実施形態では、本発明によって提供されるデュアルカチオン金属電池(以下、金属電池と呼ばれる)1は、正極10と、負極20と、電解質溶液30と、セパレータ40とを備える。正極10は、正極材料11を備え、正極材料11は、リン酸鉄(heterosite,FePO
4)、リン酸鉄リチウム(リン酸鉄リチウムイオン、LiFePO
4)およびLi
xNa
1-xFePO
4からなる群から選択された1つであり、0<x<1である。負極20は、金属混合物21を含み、金属混合物21は、リチウム金属とナトリウム金属とで構成され、リチウム金属とナトリウム金属との重量比が1:3である。電解質溶液30は、例えば、1.0 M ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)/ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF
6)のプロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)溶液が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。また、電解質溶液30が正極10と負極20との間に設置される。別の実施形態では、電解質溶液30の選択は、実際の用途要件に従って調整することができ、本発明はこれに限定されない。セパレータ40は、例えば、ガラス繊維濾紙が挙げられるが、これに限定されない。また、セパレータ40は電解質溶液30内に設置され、セパレータ40を介して正極10と負極20とを互いに分離する。これによって、金属電池1は、LiFePO
4およびNaFePO
4の2つのプラトー電圧(Voltage Plateau)を提供し、材料コストを削減し、長い耐用年数を維持し、複数の用途変更を提供するという目的を達成することができる。
【0013】
なお、本実施形態では、正極材料11に含有するLixNa1-xFePO4デュアルカチオン正極材料は、充放電の過程において、リン酸鉄の構造中にLi+イオンまたはNa+イオンが同時に貯蔵でき、同じ正極10上にLiFePO4およびオリビン(Olivine)NaFePO4の2種類の正極材料を具有させることを意味している。オリビン構造のリン酸鉄リチウムは、その構造からリチウムイオンが除去されると、リン酸鉄(heterosite FePO4)構造に変化し、リン酸鉄の構造は大気環境中では安定に存在できるので、カチオンの除去による構造破壊が生じない。ある実施形態では、リン酸鉄が金属電池1の正極材料11に適用される場合、リチウムカチオンまたはナトリウムカチオンは、例えば、負極20の金属混合物21によって提供され得る。なお、本発明はこれに限定されない。
【0014】
本実施形態では、正極10は、例えば、正極材料11:炭素導電助材:接着剤=8:1:1の割合で正極シートを形成する。電解液30は、1.0 M ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)/ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)のプロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)溶液である。セパレータ40としてガラス繊維濾紙を使用する。リチウムおよびナトリウムを含む金属混合物21の負極20の製造方法は、例えば、重量比1:3のリチウム金属とナトリウム金属とを混合した後、リチウム-ナトリウム混合金属を厚さ200 μmに圧延し、直径が12 mmの円形のリチウム-ナトリウム金属負極シートを作製する方法を採用し、測定用の負極20として使用する。なお、ある実施形態では、正極材料11の正極10としてLi0.25Na0.75FePO4が使用され、その作製方法は、LiFePO4の正極シート、リチウム箔、セパレータおよび1.0 M LiPF6エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)電解液をスウェージロック(Swagelok)タイプの3極電池に組み込んで、0.1 Cのゆっくりとした充電と充電時間を制御することで75 %のリチウムイオンを除去した後、スウェージロック(Swagelok)タイプの電池から25%のリチウムイオンを含有する正極シートを取り出し、その後、ジメチルカーボネート(DMC)溶媒で2回洗浄して過剰な電解液を除去することで、Li0.25FePO4材料を得ることができ、前処理して正極材料11の正極10を形成することができる。その後、リンス洗浄処理後の正極10、1.0 M LiPF6/NaPF6のプロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)溶液の電解質溶液30、ガラス繊維セパレータ40およびリチウム-ナトリウム金属負極20をボタン電池に組み込み、デュアルカチオン正極材料11の測定用金属電池1とする。本実施形態では、ナトリウムイオンが正極材料11の構造中に確実に貯蔵(埋め込む)することができるように、前述した測定用半電池を、例えば、まず、ランプ電圧(Vramp)モードで、すなわち、-0.2 mV/secのレートで2.8 Vからカットオフ電圧2.0 Vまでに放電し、ナトリウムイオンが正極材料11構造中に貯蔵されてLi0.25Na0.75FePO4が形成できるように制御する。なお、別の実施形態では、リン酸鉄(heterosite,FePO4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)またはLixNa1-xFePO4で構成された正極材料11は、実際の用途の要件に応じて調整することができ、本発明はこれに限定されない。
【0015】
本実施形態では、金属電池1内のデュアルカチオン正極材料11は、サイクリックボルタンメトリーによって電気化学的特性についてさらに分析することができる。前述したLi
0.25Na
0.75FePO
4で構成されたデュアルカチオン正極材料11の測定用金属電池1を例として、サイクリックボルタンメトリーにより走査速度0.1 mV/sのスロー走査を行った後に得られたデュアルカチオン正極材料11の酸化ピークおよび還元ピークは、
図2に示されている。Li
0.25Na
0.75FePO
4で構成された正極材料11の酸化ピークは、最大値が3.7 Vであり、LiFePO
4およびNaFePO
4の酸化ピークよりも高い。なお、本実施形態では、測定用金属電池1に使用されている電解液溶媒がPCであり、LiFePO
4およびNaFePO
4の測定に使用された電解液溶媒の電解液抵抗とは異なり、本発明の電解質溶液30中の電解液の抵抗は比較的に高いため、酸化ピークの遅延現象が生じた。電解液の最適化により、高抵抗による酸化ピークの遅延現象が生じることを減らすことができ、その詳細は省略する。還元ピークの領域では、LiFePO
4の3.3 VからNaFePO
4 2.6 Vまでの範囲内において、Li
0.25Na
0.75FePO
4で構成された正極材料11はいずれも還元ピークを有する。これにより、本発明のLi
xNa
1-xFePO
4が構成する正極材料11中のリチウムイオンとナトリウムイオンが同時に存在していることが分かる。なお、リチウムイオンのイオン半径が0.76 Åであり、ナトリウムイオンのイオン半径が1.02 Åであり、ナトリウムイオンの体積はリチウムイオンより34 %大きく、さらに、ナトリウムイオンの拡散速度がリチウムイオンの拡散速度1/10であるため、金属電池1は、で季節な充放電モードを選択することにより、正極材料11へのリチウムイオンおよびナトリウムイオンの貯蔵結果を変化させることができる。
【0016】
図3は、本発明の好ましい実施形態におけるLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池の異なるカットオフ電圧を用いたサイクリックボルタンメトリーの走査結果を示している。本実施形態では、Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1を、3.6 V、3.8 V、4.0 Vおよび4.2 Vの4つの酸化反応のカットオフ電圧および走査速度0.2 mV/sで計測された。異なるカットオフ電圧を用いたサイクリックボルタンメトリーの計測結果は
図3に示されている。
図3に示すように、酸化ピークの領域では、カットオフ電圧を3.6 Vと3.8 Vに設定した場合、酸化ピークの最大値が近く(凡そ一致する)、カットオフ電圧を4.0 Vと4.2 Vに設定した場合、2つの酸化ピークの最大値も近い(凡そ一致する)。カットオフ電圧を高く設定するほど、酸化ピークの面積は増加し、酸化ピークの面積が大きくなるほど、より多くのリチウムイオンまたはナトリウムイオンが正極材料11の構造外に移動する傾向がある。また、還元ピークの領域では、充電カットオフ電圧の違いにより、LiFePO
4プラトー電圧およびNaFePO
4プラトー電圧に反映された還元反応電位に、異なる程度の応答電流が現れる。酸化反応のカットオフ電圧が3.6 Vである場合、酸化ピークの面積の大きさから判断すると、正極材料11構造外に移動したカチオンが少なく、構造中の空いた位置(箇所)も比較的に少ないため、還元反応が行われる場合、LiFePO
4の還元電圧(3.2~3.5 V)区間では、リチウムイオンが先に構造内に貯蔵され、この区間において比較的に高い応答電流が形成する。酸化反応のカットオフ電圧を3.8 V、4.0 Vおよび4.2 Vに設定した場合、酸化ピークの面積が徐々に増加し、つまり、正極材料11構造から外に移動するカチオンの量が徐々に多くなり、還元反応走査が行われる場合、LiFePO
4プラトー電圧およびNaFePO
4プラトー電圧の還元反応電位で生成された応答電流の変化が異なる。これにより、本発明の金属電池1は、異なる酸化反応の走査カットオフ電圧および走査速度によって、正極材料11構造へのリチウムイオンまたはナトリウムイオンの量を調整することができる。なお、本発明はこれに限定されない。
【0017】
図4は、本発明の好ましい実施形態における、Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池の0.1 C定電流-定電圧(CC-CV)モードでの充放電の測定結果を示している。Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1が定電流-定電圧モードで充放電を行うと、第1サイクルの充電では、NaFePO
4の2つの充電プラトーが観測され、第1サイクルの放電では、LiFePO
4およびNaFePO
4の放電プラトーが観測され、NaFePO
4の放電容量が比較的高い割合を占めているため、Li
0.25Na
0.75FePO
4の第1サイクルの充放電では、ナトリウムイオンの割合が比較的高く、放電時に放出された電量が主にNaFePO
4によって放出される電量であることが分かる。第2サイクルの充電では、NaFePO
4の充電プラトー電圧の割合が減少し、第2サイクルの放電では、NaFePO
4の放電プラトー電圧も減少する傾向がある。一方で、LiFePO
4の放電プラトー電圧が徐々に増加し、第3サイクル~第5サイクルの充放電が行われると、NaFePO
4の放電プラトー電圧および放電電圧が徐々に消失している。第1サイクル~第5サイクルの充放電容量は表1に表示されており、充放電容量表より、NaFePO
4の0.1 C放電容量は約120~125 mAh/gであり、構造内の25 %のナトリウムイオンがリチウムイオンに置き換えられてLi
0.25Na
0.75FePO
4を生成すると、0.1 Cの放電容量は、NaFePO
4の0.1 C放電容量よりも高い。また、Li
xNa
1-xFePO
4は、NaFePO
4よりも高い放電容量を提供できるほか、Li
xNa
1-xFePO
4がLiFePO
4およびNaFePO
4の2つの放電プラトー電圧を有するため、NaFePO
4の単一の放電プラトーよりも高い放電効率を提供することができる。なお、充放電プラトー電圧および容量変化の傾向の観点から、定電流-定電圧モードを使用する場合、Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1は、比較的に高いLiFePO
4の放電容量および比較的に高い放電電力を必要とする場合に適応できる。ナトリウムイオンの拡散速度がリチウムイオンの拡散速度の1/10であるため、定電流放電時に、NaFePO
4の放電電圧は比較的に低いため、リチウムイオンは、比較的に高い電圧下で正極材料11の構造内に貯蔵する。なお、本発明の金属電池1の充放電モードはこれに限定されない。
【0018】
図5は、本発明の好ましい実施形態におけるLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池のランプ電圧モードでの充放電の測定結果を示している。Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1がランプ電圧(Vramp)モードで充放電動作における電圧上昇および降下の速度を制御し、ランプ電圧充放電の区間が2.0 V~4.0 Vに設定され、ランプ電圧充放電速度が±0.2 mV/sに設定される。得られた結果は
図5に示されており、ランプ電圧モードで充電が行われると、3.2 V~3.8 Vの電圧区間では比較的大きい応答電流ピークが現れ、応答電流の最大値が約0.7mAであることから、充電は約0.6 Cで行う。ランプ電圧モードで放電が行われると、応答電流の最大値が約0.75 mAであることから、放電は約0.7 Cで行う。なお、ランプ電圧モードで放電する場合、放電電圧2.7V付近に転換点があるため、ランプ電圧モードを使用することで放電することができる。換言すれば、放電条件が適切に設定されると、Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1は、NaFePO
4の放電プラトー電圧を提供でき、その放電容量も提供できる。
【0019】
表2は、ランプ電圧モードを用いて、Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1を充放電して得られた充放電容量を示している。表2のデータに示すように、充放電容量および応答電流に対応する電圧区間は、LiFePO
4の充放電容量および充放電プラトー電圧と近かったため、ランプ電圧の充放電モードを用いてLi
0.25Na
0.75FePO
4を充放電して得られた充放電容量は、主にLiFePO
4によって提供される充放電容量であることが分かる。
【0020】
ランプ電圧モードを用いて前述したLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1を充放電して得られた結果より、リチウムイオンとナトリウムイオンは同一放電過程において正極材料11構造中に貯蔵することが分かる。
図6は、リン酸鉄/ナトリウム金属負極のボタン電池のランプ電圧モードでの充放電の結果を示している。ランプ電圧を用いて充放電を行う時のナトリウムイオンがリン酸鉄(heterosite,FePO
4)構造中の貯蔵および移出する時の対応する電圧と電流との関係をより明確に分かるために、リン酸鉄(heterosite,FePO
4)を正極とし、ナトリウム金属を負極とした比較例のボタン電池をランプ電圧モードで充放電して測定することで、電圧と電流との相対関係を評価する。測定中の充放電の区間が2.0 V~3.6 Vに設定され、ランプ電圧充放電速度が±0.2 mV/sに設定され、充電過程では、2つの比較的大きい応答電流ピークが現れ、これは、定電流-定電圧モードを用いて充放電を行う時に2つのプラトー電圧が現れたことと同じであり、つまり、オリビン(Olivine)NaFePO
4の構造には、2つの相転移(phase transition)点があることが分かる。換言すれば、オリビン(Olivine)NaFePO
4の酸化還元過程中に現れた相(phase)はそれぞれFePO
4、Na
0.7FePO
4、NaFePO
4などの3つの相であるため、充電過程中に2つのプラトー電圧が現れる。放電の場合、放電電圧範囲が3.0 V~2.6 Vである時に最大の応答電流が現れ、これは、定電流-定電圧モードを使用して充放電を行うときのオリビン(Olivine) NaFePO
4の放電電圧の2.75 Vに近い。
【0021】
図7は、定電流-定電圧モードとランプ電圧モードとの混合モードを用いて本発明の好ましい実施形態におけるLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料を含有するデュアルカチオン金属電池を充放電して得られた測定結果である。本実施形態では、Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1は、定電流-定電圧モードとランプ電圧モードとの混合モードで充放電してもよい。金属電池1は、充電段階でランプ電圧充電モードを使用し、充電電圧区間が2.0 V~4.2 Vに設定され、充電速度が0.2 mV/sに設定され、放電段階で0.1 Cの定電流放電のモードで放電し、電流、電圧および充放電容量の対応関係を計測する。計測結果は
図7に示されている。計測結果より、充電電圧が3.4 V~3.8 Vになると、応答電流が現れ、この時、正極材料11構造中のナトリウムイオンおよびリチウムイオンは構造外へ移出し始まる。放電が開始すると、実験中の放電に使用されたのは定電流放電のモードであるため、比較的に高い放電電圧3.4 Vである電圧区間において定電流放電が開始すると、正極材料11に貯蔵されるのはリチウムイオンであり、図示のように、放電プラトーが3.3~3.4 Vに維持され、この放電電圧区間はLiFePO
4プラトー電圧の放電電圧である。
【0022】
表4は、定電流-定電圧モードとランプ電圧モード充放電モードとの混合モードを用いてLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1を充放電して得られた充放電容量を示している。表4に示すように、充電容量、放電容量および電流電圧関係図により判断し、測定後に得られた充放電容量は、Li
xNa
1-xFePO
4のLiFePO
4プラトー電圧によって提供される充放電容量となるはずである。
【0023】
以上から分かるように、Li
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1は、充電過程において、正極材料11構造中からナトリウムイオンまたはリチウムイオンが移出され、放電過程において、ナトリウムイオンまたはリチウムイオンが負極20から正極10に移動して正極材料11構造中に貯蔵される。ナトリウムイオンまたはリチウムイオンが正極材料11の構造中に順次貯蔵されて放電動作が完了できるために、前述した内容より、ナトリウムイオンまたはリチウムイオンが正極材料11構造に貯蔵する電圧が異なり、電圧制御は重要な要因であることが分かる。ある実施形態では、充電過程において定電流-定電圧モードで充電し、放電段階においてランプ電圧モードで放電し、その結果は
図8に示されている。図示のように、ランプ電圧放電モードを用いて放電すると、LiFePO
4およびNaFePO
4の放電区間で2つの異なる応答電流ピークがそれぞれ検出されるため、充電過程において定電流-定電圧モードで充電し、放電段階においてランプ電圧放電モードで放電するという混合モードでは、Li
xNa
1-xFePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1に適用する。
【0024】
表5は、充電および放電時に、定電流-定電圧モードおよびランプ電圧放電モードを別々に使用してLi
0.25Na
0.75FePO
4正極材料11を含有するデュアルカチオン金属電池1を充放電して得られた充放電容量を示している。表5に示すように、充電容量、放電容量、および測定して得られた電流および電圧の図より、測定後に得られた放電容量は、Li
0.25Na
0.75FePO
4におけるLiFePO
4プラトー電圧およびNaFePO
4プラトー電圧の放電電圧の異なる段階において放電によって提供される放電容量の合計であることが分かる。
【0025】
上述した内容より、本発明のリチウム-ナトリウムデュアルカチオン正極材料11の正極10は、リチウム-ナトリウム金属混合物21の負極20と一緒に金属電池1に適用でき、異なる使用状況に応じて異なる放電モードを選択して使用することによって、金属電池1の異なる特性を発揮することができる。
【0026】
ある実施形態では、リン酸鉄(heterosite FePO
4)を正極10の正極材料と、リチウム-ナトリウム金属混合物21の負極20とで構成された金属電池1は、混合充放電モードで測定され、その測定結果は
図9に示されている。第1サイクルは、0.1 C 定電流-定電圧モードで充放電し、図示の充放電プラトー電圧により判断する。定電流-定電圧モードを用いてデュアルカチオン正極材料11を含有する金属電池を充放電し、得られた充放電容量は、デュアルカチオン正極材料11におけるLiFePO
4プラトー電圧によって提供され、グラムあたりの放電電容量は138.9 mAh/gである。第2サイクルは、0.1 C 定電流-定電圧モードで充電し、放電時は、ランプ電圧モードで放電し、図示のように、放電段階において、LiFePO
4プラトー電圧およびNaFePO
4プラトー電圧の還元ピークが順次現れ、この現象は、放電時に電圧に応じて変化することを意味している。リチウムイオンおよびナトリウムイオンは、正極10の構造中に順次貯蔵され、グラム当たりの放電電容量は121.8 mAh/gであり、放電電圧が3.44 V~3.0 VであるLiFePO
4プラトー電圧の放電電圧区間において放出された電量は42.7 mAh/gであり、放電電圧が2.99 V~2.0 VであるNaFePO
4プラトー電圧の放電電圧区間において放出された電量は79.1 mAh/gである。LiFePO
4プラトー電圧とNaFePO
4プラトー電圧の放電容量は約1:2であるため、この時のLi
xNa
1-xFePO
4正極材料11構造中のLi:Naが1:2であることを推測でき、この時の正極材料11の構造式はLi
0.33Na
0.66FePO
4と書くことができる。
【0027】
本実施形態では、ランプ電圧の放電モードは、電圧降下速度を制御することによって放電の目的を達成するため、電圧降下速度の制御は、リチウムイオンおよびナトリウムイオンが構造に貯蔵される比率を調整することができる。デュアルイオン正極金属電池は、大倍率の放電電流出力を必要としないエネルギー貯蔵用途に使用する場合、例えば、太陽光発電システムに使用される場合、日中に太陽光で太陽光発電を行う場合、ソーラーパネルからの電流でゆっくりと電池を充電し、夜間に放電する場合、より大きな電力が必要な場合は、定電流-定電圧の放電モードを使用して放電することができる。つまり、LiFePO4プラトー電圧によって放出される電力を使用する。大きな電力出力が必要でない場合、ランプ電圧の放電モードを使用して放電することができる。すなわち、より多くのNaFePO4プラトー電圧によって放出される電力を使用することができる。これによって、実際の需要に応じて、2つのモードを選択することができる。なお、本発明はこれに限定されず、その詳細は省略する。
【0028】
上述したように、本発明は、材料コストを削減し長い耐用年数を維持でき、かつ複数の用途変更が可能なデュアルカチオン金属電池およびその充放電方法を提供する。オリビン構造リン酸鉄リチウム、リン酸鉄は、リチウムイオンおよびナトリウムイオンが構造内に同時に貯蔵および移出し、オリビン構造のLixNa1-xFePO4デュアルカチオン正極材料を形成することができる。これにより、金属電池がLiFePO4およびNaFePO4の2つの異なるプラトー電圧を提供することができる。本発明は、ナトリウムイオンを用いて一部のリチウムイオンを置換することによりLixNa1-xFePO4デュアルカチオン正極材料を形成しており、従来のリチウムイオン正極材料およびナトリウムイオン正極材料のような単一のカチオン正極材料と異なる。また、本発明のデュアルカチオン金属電池は、地殻中の含有量がより豊富なナトリウムイオンを使用して一部のリチウムイオンを置換しており、二次電池材料をより持続可能にするほか、リン酸鉄ナトリウム正極材料よりも高いプラトー電圧、電容量および多様な用途を提供することができる。本発明のデュアルカチオン金属電池では、複合負極としてリチウム金属とナトリウム金属とが混合されている。リチウム金属(リチウム金属のグラム当たりの理論電容量が3840 mAh/gである)とナトリウム金属(ナトリウム金属のグラム当たりの理論電容量が1166 mAh/gである)は、高いグラムあたりの電容量を有するため、負極の厚さを減らして、電池のエネルギー密度を増加させるのに役立つことができる。また、リン酸鉄(heterosite,FePO4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)またはLixNa1-xFePO4などの正極材料と、リチウム金属およびナトリウム金属混合物とで構成されたデュアルカチオン金属電池は、充放電過程において、LiFePO4およびNaFePO4の2つの異なるプラトー電圧を有する。LixNa1-xFePO4デュアルカチオン正極材料は、リチウム-ナトリウム金属負極と適合する場合に、異なる充放電モードを使用することで、異なる電気特性を発揮することができる。デュアルカチオン金属電池は、ランプ電圧モードで放電する場合、電圧降下速度を制御することによって、リチウムイオンとナトリウムイオンが構造内に貯蔵される比率を制御することができる。また、デュアルイオン正極金属電池は、大倍率の放電電流出力を必要としないエネルギー貯蔵用途に使用する場合、例えば、太陽光発電システムに使用される場合、日中に太陽光で太陽光発電を行う場合、ソーラーパネルからの電流でゆっくりと電池を充電し、夜間に放電する場合、より大きな電力が必要な場合は、定電流-定電圧の放電モードを使用して放電することができる。つまり、LiFePO4プラトー電圧によって放電する。一方で、デュアルカチオン金属電池は、大きな電力出力が必要でない場合、ランプ電圧の放電モードを使用して放電し、NaFePO4プラトー電圧によって放出される電力を使用することができる。これによって、実際の需要に応じて、ランプ電圧モードまたは定電流-定電圧モードを選択することができる。
【0029】
本発明は、当該技術分野における技術者によって様々な方法で修正または変更することができるが、その修正および変更はいずれも本発明の技術的思想から逸脱しなく本発明の特許請求の範囲に含まれている。
【符号の説明】
【0030】
1:デュアルカチオン金属電池
10:正極
11:正極材料
20:負極
21:金属混合物
30:電解質溶液(電解液)
40:セパレータ