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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】高電圧複合正極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20250304BHJP
   C01G 53/54 20250101ALI20250304BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250304BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250304BHJP
【FI】
H01M4/505
C01G53/54
H01M4/36 C
H01M4/525
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023086548
(22)【出願日】2023-05-25
(65)【公開番号】P2024115493
(43)【公開日】2024-08-26
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】112105075
(32)【優先日】2023-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517232729
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 2-1, Singhua Rd., Taoyuan Dist., Taoyuan City,330,Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】何定徳
(72)【発明者】
【氏名】謝瀚緯
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-131938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムニッケルマンガン酸化物粉末と、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末とを含む高電圧複合正極材料であって、
前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、第1の平均粒子径を有し、
前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対する前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.1~0.5の範囲であり、前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、第2の平均粒子径を有し、前記第2の平均粒子径は前記第1の平均粒子径の10分の1未満であり、
前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末と前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末を機械的方法で混合することにより、前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させて、前記高電圧複合正極材料を形成する、高電圧複合正極材料。
【請求項2】
前記第1の平均粒子径は10μm~20μmの範囲である、請求項1に記載の高電圧複合正極材料。
【請求項3】
前記第2の平均粒子径は0.2μm~2μmの範囲である、請求項1に記載の高電圧複合正極材料。
【請求項4】
前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、スピネル結晶相構造(spinel crystal structure)を有し、化学式LiNiMn(2-x)を有し、ここで、x≧0.5である、請求項1に記載の高電圧複合正極材料。
【請求項5】
前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、ヒドロキシリン酸鉄リチウム構造(tavorite-type structure)を有し、化学式LiVPOFを有する、請求項1に記載の高電圧複合正極材料。
【請求項6】
前記機械的方法はメカノフュージョン法(mechanofusion method)である、請求項1に記載の高電圧複合正極材料。
【請求項7】
前記機械的方法の動作温度は25℃~45℃の範囲である、請求項に記載の高電圧複合正極材料。
【請求項8】
前記機械的方法の回転速度は700rpm~3500rpmの範囲であり、混合時間は5分~10分である、請求項に記載の高電圧複合正極材料。
【請求項9】
リチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をそれぞれ提供し、前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対する前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.1~0.5の範囲であり、前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、第1の平均粒子径を有し、前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、第2の平均粒子径を有し、前記第2の平均粒子径は第1の平均粒子径の10分の1未満である、工程(a)と、
前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末と前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末を機械的方法で混合することにより、前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させて、高電圧複合正極材料を形成する、工程(b)と、
を含む、高電圧複合正極材料の製造方法。
【請求項10】
前記第1の平均粒子径は10μm~20μmの範囲である、請求項に記載の高電圧複合正極材料の製造方法。
【請求項11】
前記第2の平均粒子径は0.2μm~2μmの範囲である、請求項に記載の高電圧複合正極材料の製造方法。
【請求項12】
前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、スピネル結晶相構造(spinel crystal structure)を有し、化学式LiNiMn(2-x)を有し、ここで、x≧0.5である、請求項に記載の高電圧複合正極材料の製造方法。
【請求項13】
前記リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、ヒドロキシリン酸鉄リチウム構造(tavorite-type structure)を有し、化学式LiVPOFを有する、請求項に記載の高電圧複合正極材料の製造方法。
【請求項14】
前記機械的方法はメカノフュージョン法(mechanofusion method)である、請求項に記載の高電圧複合正極材料の製造方法。
【請求項15】
前記機械的方法の動作温度は25℃~45℃の範囲である、請求項14に記載の高電圧複合正極材料の製造方法。
【請求項16】
前記機械的方法の回転速度は700rpm~3500rpmの範囲であり、混合時間は5分~10分である、請求項14に記載の高電圧複合正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極材料に関し、特に高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面に適量のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩を被覆させることにより、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の電気特性とサイクル寿命を効果的に向上させることができる、高電圧複合正極材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電動キャリアの航続距離の継続的な向上に伴い、三元系酸化物正極材料の需要も増加し続けている。しかし、三元系酸化物正極材料に使用される原料のコバルト元素は、希少で戦略的貴金属であり、大量生産・使用には適していない。また、リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料は、コバルト元素を含まない高電圧正極材料である。リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料は酸化還元電位が高いため、そのエネルギー密度が三元系酸化物正極材料とリン酸鉄リチウムとの間にある。また、リチウムニッケルマンガン酸化物はコバルト元素を含まず、ニッケルの含有量が少ないため、三元系酸化物よりも価格が安いため、次世代電動キャリアや3C製品の応用でよく研究され、使用されている。
【0003】
しかし、従来のリチウムニッケルマンガン酸化物正極材料は高電位で充放電すると、電解液中のLiPFとHOによって生成されるHF(LiPF+HO2HF+LiF+PFO)により、正極材料の表面で他の副反応を起こし、容量発揮、レート性能、及びサイクル寿命が低下するなどの影響を及ぼす。
【0004】
そこで、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面改質により、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の電気特性とサイクル寿命を効果的に向上させる、高電圧複合正極材料及びその製造方法をどのように開発するかが、この技術分野で早急に解決すべき重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高電圧複合正極材料及びその製造方法を提供することである。高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物(lithium nickel manganese oxide、LNMO)粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩(lithium vanadium fluorophosphate、LVPF)粉末を特定の粒径と配合比で混合することで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆した高電圧複合正極材料を形成し、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の電気特性とサイクル寿命を効果的に向上させることができる。リチウムバナジウムフルオロリン酸塩は、優れた導電性能、高電圧プラットフォーム、優れたレート性能及びサイクル寿命を備えているため、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩と高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料を乾式メカノフュージョン法(mechanofusion)により特定の割合で混合し、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩を高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面に被覆させることで、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の導電性能を効果的に向上させることができることに加えて、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩は、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面に保護作用を提供して、電解液による材料表面の破壊の影響を緩和する。
【0006】
本発明の別の目的は、高電圧複合正極材料及びその製造方法を提供することである。最適な配合比のリチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を乾式メカノフュージョン法により混合することで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末の平径粒子径がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の平均粒子径の10分の1よりも小さいため、700rpm~3500rpmで5分~10分間混合した後、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させて、高電圧複合正極材料を形成することができる。一方、乾式メカノフュージョン法により表面被覆を行う場合、反応チャンバ内の温度が25℃~45℃に維持され、反応チャンバで高温が発生して材料や被覆物質に影響を与えないようにする。上記のように形成された高電圧複合正極材料は、製造プロセスが簡単で制御が容易であり、高い充放電レート(C-rate)で高静電容量を維持しつつ、優れた急速充電性能を維持する。リチウムバナジウムフルオロリン酸塩で被覆していない高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料と比較して、本発明のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩で被覆した高電圧複合正極材料は、1C充電レートでサイクル維持率が約10%向上する。言い換えると、ヒドロキシリン酸鉄リチウム構造(tavorite-type structure)のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩を利用して、スピネル結晶相構造のリチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面を改質することで、リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料のレート性能とサイクル寿命をさらに向上させることができ、より多くの応用で広く使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を含む高電圧複合正極材料を提供する。リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、第1の平均粒子径を有する。リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.5以下であり、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、第2の平均粒子径を有し、第2の平均粒子径は第1の平均粒子径の10分の1未満であり、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末とリチウムニッケルマンガン酸化物粉末を機械的方法で混合することにより、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させて、高電圧複合正極材料を形成する。
【0008】
一実施形態では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.2以下である。
【0009】
一実施形態では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.1以下である。
【0010】
一実施形態では、第1の平均粒子径は10μm~20μmの範囲である。
【0011】
一実施形態では、第2の平均粒子径は0.2μm~2μmの範囲である。
【0012】
一実施形態では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、スピネル結晶相構造(spinel crystal structure)を有し、化学式LiNiMn(2-x)を有し、ここで、x≧0.5である。
【0013】
一実施形態では、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、ヒドロキシリン酸鉄リチウム構造(tavorite-type structure)を有し、化学式LiVPOFを有する。
【0014】
一実施形態では、機械的方法はメカノフュージョン法(mechanofusion method)である。
【0015】
一実施形態では、機械的方法の動作温度は25℃~45℃の範囲である。
【0016】
一実施形態では、機械的方法の回転速度は700rpm~3500rpmの範囲であり、混合時間は5分~10分である。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をそれぞれ提供し、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.5以下であり、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、第1の平均粒子径を有し、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、第2の平均粒子径を有し、第2の平均粒子径は第1の平均粒子径の10分の1未満である、工程(a)と、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末とリチウムニッケルマンガン酸化物粉末を機械的方法で混合することにより、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させて、高電圧複合正極材料を形成する、工程(b)とを含む、高電圧複合正極材料の製造方法を提供する。
【0018】
一実施形態では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.2以下である。
【0019】
一実施形態では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.1以下である。
【0020】
一実施形態では、第1の平均粒子径は10μm~20μmの範囲である。
【0021】
一実施形態では、第2の平均粒子径は0.2μm~2μmの範囲である。
【0022】
一実施形態では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、スピネル結晶相構造(spinel crystal structure)を有し、化学式LiNiMn(2-x)を有し、ここで、x≧0.5である。
【0023】
一実施形態では、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、ヒドロキシリン酸鉄リチウム構造(tavorite-type structure)を有し、化学式LiVPOFを有する。
【0024】
一実施形態では、機械的方法はメカノフュージョン法(mechanofusion method)である。
【0025】
一実施形態では、機械的方法の動作温度は25℃~45℃の範囲である。
【0026】
一実施形態では、機械的方法の回転速度は700rpm~3500rpmの範囲であり、混合時間は5分~10分である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の高電圧複合正極材料の製造フローチャートを示す。
図2A】本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物粉末のSEM画像を示す。
図2B】本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物粉末のXRD図を示す。
図3A】本発明のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のSEM画像を示す。
図3B】本発明のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のXRD図を示す。
図4】本発明のメカノフュージョン法により高電圧複合正極材料を混合することを示す模式図である。
図5A】本発明の対照群の高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図5B】本発明の対照群の高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図5C】本発明の対照群の高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図5D】本発明の対照群の高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図6A】本発明の第1の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図6B】本発明の第1の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図6C】本発明の第1の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図6D】本発明の第1の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図7A】本発明の第2の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図7B】本発明の第2の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図7C】本発明の第2の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図7D】本発明の第2の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図8A】本発明の第3の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図8B】本発明の第3の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図8C】本発明の第3の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図8D】本発明の第3の実施例の高電圧複合正極材料の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図9】本発明の対照群と実施例1~実施例3のそれぞれ0.1Cの充放電レート(C-rate)での充放電試験曲線を示す。
図10】本発明の対照群と実施例1~実施例3のそれぞれ室温、1Cサイクルにおける静電容量変化を示す。
図11】本発明の対照群と実施例1~実施例3のそれぞれ室温、1Cサイクルにおける電力量維持率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の特徴と利点を示すいくつかの典型的な実施形態について、後述の説明において詳細に記述する。本発明は異なる態様において様々な変化を有することができ、いずれも本発明の範囲から逸脱することなく、かつその説明及び図面は本質的に例示するために用いられものであり、本発明を限定する意図はないことを理解されたい。例えば、本開示の以下の内容において、第1の特徴を第2の特徴の上または上方に設置することが記述される場合、設置された上記第1の特徴が上記第2の特徴と直接接触している実施形態を含み、追加の特徴を上記第1の特徴と上記第2の特徴との間に設置することで、上記第1の特徴が上記第2の特徴と直接接触していない実施形態も含むことを示す。さらに、本開示の異なる実施形態において、重複する参照符号及び/または記号を使用可能である。これらの重複は簡潔化と明確化の目的で、各実施形態及び/または前記外観構造間の関係を制限するために使用されるものではない。また、本開示の広範な範囲の数値範囲とパラメータは近似値であるが、具体的な例においてできる限り正確に数値を記述する。さらに、「第1」、「第2」などの用語は、特許請求の範囲において異なる構成要素を記述するために用いられることができるが、これらの構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではなく、実施形態において記述されたこれらの構成要素は異なる構成要素記号によって示されることを理解されたい。これらの用語は、異なる構成要素を区別するためのものである。例えば、第1のコンポーネントは第2のコンポーネントと称されることができ、同様に、第2のコンポーネントも第1のコンポーネントと称されることができ、実施形態の範囲から逸脱することがない。このように使用される用語「及び/または」には、一つまたは複数の列挙された項目のいずれかまたはすべての組み合わせが含まれている。作動例/作業例中以外に、または明示的に規定されない限り、本明細書で開示されるすべての数値範囲、量、値、及びパーセンテージ(例えば、角度、持続時間、温度、作動条件、量比、及び類似するものパーセンテージなど)は、すべての実施形態において用語の「約」または「実質的に」によって修飾されるものと理解されるべきである。それに応じて、反対の指示がない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲に記述される数値パラメータは、必要に応じて変更できる近似値である。例えば、各数値パラメータは、少なくとも記述される有効桁数の数字に基づいて、通常の丸めの原則を適用することによって解釈されるべきである。本明細書において、範囲は一つのエンドポイントからもう一つのエンドポイントまで、または二つのエンドポイント間として表現することができる。本明細書に開示されるすべての範囲は、特に規定がない限り、エンドポイントを含む。
【0029】
図1は、本発明の高電圧複合正極材料の製造フローチャートを示す。図2Aは、本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物粉末のSEM画像を示す。図2Bは、本発明のリチウムニッケルマンガン酸化物粉末のXRD図を示す。図3Aは、本発明のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のSEM画像を示す。図3Bは、本発明のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のXRD図を示す。本実施形態では、高電圧複合正極材料の製造方法は、まず、工程S1及び工程S2において、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をそれぞれ提供する。図2A及び図2Bに示すように、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、平均粒子径が15.13μm、比表面積BET=0.31(m/g)であり、スピネル結晶相構造(spinel crystal structure)を有し、化学式LiNiMn(2-x)を有し、ここで、x=0.5である。また、図3A及び図3Bに示すように、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、平均粒子径が0.78μm、比表面積BET=5.39(m/g)であり、ヒドロキシリン酸鉄リチウム構造(tavorite-type structure)を有し、化学式LiVPOFを有する。リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、例えば、自動粉砕機による粉砕や気流粉砕により製造することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.5以下である。他の実施形態では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、化学式LiNiMn(2-x)を有し、ここで、2>X>0.5であり、第1の平均粒子径を有し、第1の平均粒子径は10μm~20μmの範囲である。また、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、第2の平均粒子径を有し、第2の平均粒子径は0.2μm~2μmの範囲である。リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比が0.5以下であることに加えて、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末の第2の平均粒子径は、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末の第1の平均粒子径の10分の1よりも小さい。その後、工程S3において、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末とリチウムニッケルマンガン酸化物粉末を機械的方法で混合する。最後に、工程S4に示すように、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させて、高電圧複合正極材料を形成することができる。
【0030】
図4は、本発明のメカノフュージョン法により高電圧複合正極材料を混合することを示す模式図である。本実施形態では、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末とリチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、乾式機械的方法により混合し、さらに具体的には、メカノフュージョン法(mechanofusion method)により混合する。本発明では、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末とリチウムニッケルマンガン酸化物粉末をメカノフュージョン混合機(mechanofusion mixer)のチャンバ(Chamber)C内に特定の配合比で充填すると、機械エネルギーと熱エネルギーを同時に増加させることにより混合することができる。メカノフュージョン法では、チャンバCは回転速度Rで回転し、プレスヘッド(Press-head)Hが粒子に高い衝撃エネルギーを与えると、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末の粒子は、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末で完全にコーティングされ、取り囲まれて、高電圧複合正極材料の粉末Pを得ることができる。チャンバCを回転速度Rで回転させることにより発生する遠心力により、2種類の粒子をチャンバCの内部に固定する。中心軸に固定された内部プレスヘッドHによって、粉末を一時的に締め付け圧縮する。混合された粉末をスクレーパ(scraper)Sで高速で掻き取る。締め付け圧縮/掻き取り(せん断、shearing)操作を繰り返し、メカノフュージョン操作によりリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末とリチウムニッケルマンガン酸化物粉末を熱付着させることにより、粒子を混合して高電圧複合正極材料の粉末Pを得る。従って、本発明では、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末とリチウムニッケルマンガン酸化物粉末を機械的方法で混合することにより、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に均一に被覆させ、高電圧複合正極材料を形成することが可能である。
【0031】
なお、本実施形態では、メカノフュージョン法で使用される回転速度Rは、700rpm~3500rpmの範囲である。一例では、メカノフュージョン法で使用される回転速度Rは、700rpmに設定され(パワーはモータの総出力パワーの10%に設定され)、混合時間は5分に設定されることで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に均一に被覆した高電圧複合正極材料を得ることができる。一例では、メカノフュージョン法で使用される回転速度Rは1400rpmに設定され(パワーはモータの総出力パワーの20%に設定され)、混合時間は5分に設定されることで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に均一に被覆した高電圧複合正極材料を得ることができる。一例では、メカノフュージョン法で使用される回転速度Rは2100rpmに設定され(パワーはモータの総出力パワーの30%に設定され)、混合時間は5分に設定されることで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に均一に被覆した高電圧複合正極材料を得ることができる。一例では、メカノフュージョン法で使用される回転速度Rは2800rpmに設定され(パワーはモータの総出力パワーの40%に設定され)、混合時間は10分に設定されることで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に均一に被覆した高電圧複合正極材料を得ることができる。一例では、メカノフュージョン法で使用される回転速度Rは3500rpmに設定され(パワーはモータの総出力パワーの50%に設定され)、混合時間は10分に設定されることで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に均一に被覆した高電圧複合正極材料を得ることができる。もちろん、メカノフュージョン法で使用される回転速度Rと混合時間は、実際の応用要求に応じて調整できる。
【0032】
一方、機械力を用いてリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させると、チャンバCの内部に高温が発生する。高温によるリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末、及び高電圧複合正極材料の粉末Pへの影響を避けるために、機械的混合中にチャンバC内の動作温度は25℃~45℃の範囲に維持される。上記のように形成された高電圧複合正極材料は、製造プロセスが簡単で制御が容易であり、高い充放電レート(C-rate)で高静電容量を維持しつつ、優れた急速充電性能を維持する。
【0033】
本発明の高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の製造プロセスと効果について、実施例により以下に詳細に説明する。
【0034】
対照群
【0035】
改質用のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を添加せずに、すなわち、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末のみで形成されたリチウムニッケルマンガン酸化物正極材料(LNMO Blank)粒子を図5A図5Dに示す。
【0036】
実施例1
【0037】
平均粒子径15.13μm、比表面積BET=0.31(m/g)、重量1000gのリチウムニッケルマンガン酸化物粉末(LiNi0.5Mn1.5、LNMO)、及び平均粒子径0.78μm、比表面積BET=5.39(m/g)、重量95gのリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末LiVPOF(LVPF)をそれぞれ提供する。リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.1である。
【0038】
前記リチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を機械的方法で混合し、高電圧複合正極材料を形成する。高電圧複合正極材料は、25℃~45℃の動作温度範囲において、メカノフュージョン法(mechanofusion method)により700rpmの回転速度で5分間混合することによって製造される。得られた高電圧複合正極材料を図6A図6Dに示す。
【0039】
実施例2
【0040】
実施例2の製造工程は実施例1とほぼ同様であるが、実施例2の高電圧複合正極材料では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.25である。すなわち、高電圧複合正極材料は、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末:リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末=1:0.2375(重量パーセント)を、25℃~45℃の動作温度範囲において、メカノフュージョン法(mechanofusion method)により700rpmの回転速度で5分間混合することによって製造される。得られた高電圧複合正極材料を図7A図7Dに示す。
【0041】
実施例3
【0042】
実施例3の製造工程は実施例1とほぼ同様であるが、実施例3の高電圧複合正極材料では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は0.5である。すなわち、高電圧複合正極材料は、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末:リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末=1:0.475(重量パーセント)を、25℃~45℃の動作温度範囲において、メカノフュージョン法(mechanofusion method)により700rpmの回転速度で5分間混合することによって製造される。得られた高電圧複合正極材料を図8A図8Dに示す。
【0043】
前記実施例1~実施例3における高電圧複合正極材料の電気特性を試験するために、それぞれ前記実施例1~実施例3の高電圧複合正極材料、導電助剤(アセチレンブラック-Li400)、接着剤ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride、PVDF)、及び溶剤を混合し、基板上に塗布し、乾燥して正極板を形成する。高電圧複合正極材料、導電助剤、及びポリフッ化ビニリデンの重量比は94:4:2である。負極板はリチウム金属で構成されている。正極板と負極板の間の電解液は、1.0MのLiPF、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)/プロピレンカーボネート(ethyl methyl carbonate、EMC)(3/7)で構成されている。このようにして、実施例1~実施例3の試験サンプルの作製が完了する。他の実施例では、前記正極板と負極板の間の電解液は、1.150M LiPF、EC/ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)/EMC(3/3/4)、5%フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)で構成することができる。本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
また、対照群では、改質用のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を添加していないリチウムニッケルマンガン酸化物粉末(LNMO Blank)を用いて、実施例1と同様の製造工程で試験サンプルを形成する。
【0045】
対照群と実施例1~実施例3の試験サンプルを、それぞれ0.1C、1C、2C、3C、及び5Cの充放電レート(C-rate)で充放電試験を行う。図9は、本発明の対照群と実施例1~実施例3のそれぞれ0.1Cの充放電レート(C-rate)での充放電試験曲線を示す。以下の表1は、対照群、実施例1、実施例2及び実施例3の0.1Cの充放電レート(C-rate)での充放電試験結果を比較するものである。表1に示すように、対照群と比較して、実施例1~実施例3の静電容量はいずれもわずかに向上し、放電効率(C.E.)は90%以上を維持する。高電圧複合正極材料の静電容量向上効果は、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末:リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末=1:0.1(モル比)の実施例1が最適である。このことから、本発明では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を特定の粒径及び配合比で機械的方法により混合することで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に均一に被覆させて、最適化された高電圧複合正極材料を形成し、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の電気特性とサイクル寿命を効果的に向上させ、良好な充放電性能を有することが分かる。
【0046】
また、以下の表2は、1C/2C/3C/5C充放電レート(C-rate)での対照群、実施例1、実施例2、実施例3のレート性能試験結果を比較するものである。表2に示すように、対照群と比較して、実施例1は、1C/2C/3C/5C充放電レート(C-rate)で静電容量をさらに増加できる。このことから、本発明では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を特定の粒径及び配合比で機械的方法により混合することで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩を高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面に被覆させ、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の電気特性とサイクル寿命を維持することが分かる。これにより、リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の静電容量が向上し、良好な充放電性能を有する。特に、より高い充放電レート(C-rate)の条件下では、実施例1の静電容量は、対照群と比較して大幅に向上し、良好な急速充電性能を有する。リチウムバナジウムフルオロリン酸塩は、優れた導電性能、高電圧プラットフォーム、優れたレート性能及びサイクル寿命を備えているため、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩と高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料を特定の割合で乾式メカノフュージョン法により混合し、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩を高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面に被覆させることで、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の導電性能を効果的に向上させることができることに加えて、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩は、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面に保護作用を提供して、電解液による材料表面の破壊の影響を緩和する。言い換えると、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比が0.2以下である場合、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末に被覆させることによる効果が比較的良いとともに、過剰な被覆を避けることができる。特に、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比が0.1である場合に形成された高電圧複合正極材料がより好ましい。もちろん、高電圧複合正極材料では、リチウムニッケルマンガン酸化物粉末に対するリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末のモル比は、両者の平均粒子径の差に関係しており、実際の応用要求に応じて調整でき、ここでは繰り返さない。
【0047】
図10は、本発明の対照群と実施例1~実施例3のそれぞれ室温、1Cサイクルにおける静電容量変化を示す。図11は、本発明の対照群と実施例1~実施例3のそれぞれ室温、1Cサイクルにおける電力量維持率を示す。対照群、実施例1、実施例2、及び実施例3について、それぞれ室温、1Cの充放電レート(C-rate)で複数サイクルの静電容量試験を行った。図に示すように、1Cの充放電レート(C-rate)において、本発明の実施例1の静電容量は、対照群に比べて著しく高く、300サイクルの試験後、維持率は約10%向上した。このことから、本発明では、ヒドロキシリン酸鉄リチウム構造(tavorite-type structure)のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩を利用して、スピネル結晶相構造のリチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面を改質することで、リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料のレート性能とサイクル寿命をさらに向上させることができ、より多くの応用で広く使用できる。
【0048】
さらに、本実施形態では、高電圧複合正極材料に使用されるリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末は、微量の炭素、例えば、1.65wt.%の炭素を含有してもよく、自動粉砕機による粉砕や気流粉砕時に添加すると、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末の表面は導電性炭素コーティング層で被覆することで、良好な導電性能を提供するとともに、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させて、高電圧複合正極材料を形成する場合、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末の炭素コーティング層も、保護作用を提供して、電解液による高電圧複合正極材料表面の破壊の影響を緩和することができる。もちろん、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
上記のように、本発明は、高電圧複合正極材料及びその製造方法を提供する。高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩(LVPF)粉末を特定の粒径と配合比で混合することで、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆した高電圧複合正極材料を形成し、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の電気特性とサイクル寿命を効果的に向上させる。リチウムバナジウムフルオロリン酸塩は、優れた導電性能、高電圧プラットフォーム、優れたレート性能及びサイクル寿命を備えているため、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩と高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料を特定の割合で乾式メカノフュージョン法により混合し、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩を高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面に被覆させることで、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の導電性能を効果的に向上させることができることに加えて、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩は、高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面に保護作用を提供して、電解液による材料表面の破壊の影響を緩和する。最適な配合比のリチウムニッケルマンガン酸化物粉末とリチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末を乾式メカノフュージョン法により混合し、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末の平径粒子径がリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の平均粒子径の10分の1よりも小さいため、700rpm~3500rpmで5分~10分間混合した後、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩粉末をリチウムニッケルマンガン酸化物粉末の表面に被覆させて、高電圧複合正極材料を形成することができる。一方、乾式メカノフュージョン法により表面被覆を行う場合、反応チャンバ内の温度が25℃~45℃に維持され、反応チャンバで高温が発生して材料や被覆物質に影響を与えないようにする。上記のように形成された高電圧複合正極材料は、製造プロセスが簡単で制御が容易であり、高い充放電レート(C-rate)で高静電容量を維持しつつ、優れた急速充電性能を維持する。リチウムバナジウムフルオロリン酸塩で被覆していない高電圧リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料と比較して、本発明のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩で被覆した高電圧複合正極材料は、1C充電レートでサイクル維持率が約10%向上する。言い換えると、ヒドロキシリン酸鉄リチウム構造のリチウムバナジウムフルオロリン酸塩を利用して、スピネル結晶相構造のリチウムニッケルマンガン酸化物正極材料の表面を改質することで、リチウムニッケルマンガン酸化物正極材料のレート性能とサイクル寿命をさらに向上させることができ、より多くの応用で広く使用できる。
【0050】
本発明は、当業者なら様々な修正を加えることができるが、特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することはない。
【符号の説明】
【0051】
C:チャンバ
H:第2の導電性炭素
P:粉末
R:回転速度
S:スクレーパ
S1、S2、S3、S4:工程
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11