(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】単一分子量ポリサルコシンを含むリガンド-薬物-複合体
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20250304BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20250304BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20250304BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20250304BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20250304BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/00
A61K47/55
A61K47/62
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2023101557
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2020543704の分割
【原出願日】2018-10-23
【審査請求日】2023-06-27
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520144853
【氏名又は名称】マブリンク ビオシオンス
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリセル,ワラン
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/050617(WO,A1)
【文献】特表2016-534990(JP,A)
【文献】Nature biotechnology,2015年,vol.33, no.7,pp733-736
【文献】Polysarcosine - a true alternative to PEG,Iris Biotech HP,2017年02月07日,[検索日:2022年7月11日], インターネット:<URL:https://www.iris-biotech.de/en/kbase/articel/view/id/31/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(XV)を有するリガンド-薬物-複合体化合物(LDC):
【化1】
式中、Lは、(HP
SMW)が(X-D)に対して直交の向きにあることを可能にする直交コネクタであり、
Lは、天然又は非天然のアミノ酸、アミノアルコール、アミノアルデヒド、ポリアミン、及びそれらの組み合わせから選択され;
HP
SMWは、ポリサルコシンホモポリマーの、前記直交コネクタLへの共有結合から生じ、
HP
SMWは、以下を表し
【化2】
(式中、波形結合は、存在する場合には、L又はスペーサZへの結合点を表し、
kは6以上であ
り、
R
4は、-R’、-O
-、-OR’、-SR’、-S
-、-NR’
2、-NR’
3
+、=NR’、-CX
3、-CN、-NRC(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’
2、-SO
3
-、-SO
3H、-S(=O)
2R’、-OS(=O)
2OR’、-S(=O)
2NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)
2、-P(=O)(OR’)
2、-PO
3
-、-PO
3H
2、-C(=O)X、-C(=S)R’、-CO
2R’、-CO
2、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’
2、C(=S)NR’
2、又はC(=NR’)NR’
2から選択されるキャッピング基を表し、
ここで、各Xは独立して、ハロゲン:-F、-CI、-Br、又は-Iであり、
各R’は独立して、-H、-C
1-C
20アルキル、-C
6-C
20アリール、又は-C
3-C
14複素環である);
Dは、細胞傷害性薬物であり;
Xは、Dを放出するための切断可能な部分であり、Dを放出するための切断可能な結合を形成することができ;
Zは、スペーサであり;
aは1以上であり、bは1以上であり、且つmは1以上であり;且つ
リガンドは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド及びアプタマーから選択される。
【請求項2】
Lは、1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸である、請求項1に記載のLDC化合物。
【請求項3】
Lは、グルタミン酸、リジン及びグリシンから選択される、請求項1から2のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項4】
Xは、
- 1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸、
- 酸素グリコシド結合を介して自壊性基に結合した糖部分、
- ジスルフィドリンカー、及び
- リソソーム中で加水分解可能な、酸に不安定なリンカー
から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項5】
Zは、アルキレン、ヘテロアルキレン;アルコキシ;ポリエーテル;1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸;C
3-C
8ヘテロシクロ;C
3-C
8カルボシクロ;アリーレン;及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項6】
Zは、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)、式(XX)、式(XXI)又は式(XXII)である、請求項1から5のいずれか1項に記載のLDC化合物:
【化3】
式中、波形結合は結合点を表し、且つ
R
6は、-C
1-C
10アルキレン-、-C
1-C
10ヘテロアルキレン-、-C
1-C
10アルキレン-C(=O)-、-C
1-C
10ヘテロアルキレン-C(=O)-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-C(=O)-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-O-C(=O)-であり、R
6基のいずれかは1つ以上の=Oで随意的に置換される。
【請求項7】
式(XVI)を有する中間体化合物:
【化4】
式中、Lは、直交コネクタであり、
Lは、アミノアルコール、アミノアルデヒド、ポリアミン、及びそれらの組み合わせから選択され;
HP
SMWは、ポリサルコシンホモポリマーの、前記直交コネクタLへの共有結合から生じ、
前記HP
SMWは、以下を表し
【化5】
(式中、波形結合は、存在する場合には、L又はスペーサZへの結合点を表し、
kは6以上であ
り、
R
4は、-R’、-O
-、-OR’、-SR’、-S
-、-NR’
2、-NR’
3
+、=NR’、-CX
3、-CN、-NRC(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’
2、-SO
3
-、-SO
3H、-S(=O)
2R’、-OS(=O)
2OR’、-S(=O)
2NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)
2、-P(=O)(OR’)
2、-PO
3
-、-PO
3H
2、-C(=O)X、-C(=S)R’、-CO
2R’、-CO
2、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’
2、C(=S)NR’
2、又はC(=NR’)NR’
2から選択されるキャッピング基を表し、
ここで、各Xは独立して、ハロゲン:-F、-CI、-Br、又は-Iであり、
各R’は独立して、-H、-C
1-C
20アルキル、-C
6-C
20アリール、又は-C
3-C
14複素環である);
Dは、細胞傷害性薬物であり;
Xは、Dを放出するための切断可能な部分であり、Dを放出するための切断可能な結合を形成することができ;
Zは、スペーサであり;且つ
aは1以上であり、且つbは1以上である。
【請求項8】
薬剤として使用するための、請求項1から6のいずれか1項に記載のLDC。
【請求項9】
式(XXIII)を有する化合物:
【化6】
式中、R
6は、-C
1-C
10アルキレン-、-C
1-C
10ヘテロアルキレン-、-C
3-C
8カルボシクロ-、-O-(C
1-C
8アルキル)-、-アリーレン-、-C
1-C
10アルキレン-アリーレン-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8カルボシクロ)-、-(C
3-C
8カルボシクロ)-C
1-C
10アルキレン-、-C
3-C
8ヘテロシクロ-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-、-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-C
1-C
10アルキレン-、-C
1-C
10アルキレン-C(=O)-、-C
1-C
10ヘテロアルキレン-C(=O)-、-C
3-C
8カルボシクロ-C(=O)-、-O-(C
1-C
8アルキル)-C(=O)-、-アリーレン-C(=O)-、-C
1-C
10アルキレン-アリーレン-C(=O)-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-C(=O)-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8カルボシクロ)-C(=O)-、-(C
3-C
8カルボシロ)-C
1-C
10アルキレン-C(=O)-、-C
3-C
8ヘテロシクロ-C(=O)-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-C(=O)-、-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-C
1-C
10アルキレン-C(=O)-、-C
1-C
10アルキレン-NH-、-C
1-C
10ヘテロアルキレン-NH-、-C
3-C
8カルボシクロ-NH-、-O-(C
1-C
8アルキル)-NH-、-アリーレン-NH-、-C
1-C
10アルキレン-アリーレン-NH-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-NH-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8カルボシクロ)-NH-、-(C
3-C
8カルボシクロ)-C
1-C
10アルキレン-NH-、-C
3-C
8ヘテロシクロ-NH-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-NH-、-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-C
1-C
10アルキレン-NH-、-C
1-C
10アルキレン-S-、-C
1-C
10ヘテロアルキレン-S-、-C
3-C
8カルボシクロ-S-、-O-(C
1-C
8アルキル)-)-S-、-アリーレン-S-、-C
1-C
10アルキレン-アリーレン-S-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-S-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8カルボシクロ)-S-、-(C
3-C
8カルボシクロ)-C
1-C
10アルキレン-S-、-C
3-C
8ヘテロシクロ-S-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-S-、-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-C
1-C
10アルキレン-S-、-C
1-C
10アルキレン-O-C(=O)-、-C
3-C
8カルボシクロ-O-C(=O)-、-O-(C
1-C
8アルキル)-O-C(=O)-、-アリーレン-O-C(=O)-、-C
1-C
10アルキレン-アリーレン-O-C(=O)-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-O-C(=O)-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8カルボシクロ)-O-C(=O)-、-(C
3-C
8カルボシクロ)-C
1-C
10アルキレン-O-C(=O)-、-C
3-C
8ヘテロシクロ-O-C(=O)-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-O-C(=O)-、-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-C
1-C
10アルキレン-O-C(=O)-であり;
R
6基のいずれかは、-X、-R’、-O
-、-OR’、=O、-SR’、-S
-、-NR’
2、-NR’
3
+、=NR’、-CX
3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO
2、=N
2、-N
3、-NR’C(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’
2、-SO
3
-、-SO
3H、-S(=O)
2R’、-OS(=O)
2OR’、-S(=O)
2NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)
2、-P(=O)(OR’)
2、-PO
3
-、-PO
3H
2、-C(=O)X、-C(=S)R’、-CO
2R’、-CO
2、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’
2、C(=S)NR’
2、及びC(=NR’)NR’
2から選択された1つ以上の置換基で随意的に置換され(ここで、各Xは、独立してハロゲン:-F、-CI、-Br、又は-Iであり、且つ各R’は、独立して-H、-C
1-C
20アルキル、-C
6-C
20アリール、又は-C
3-C
14複素環である);
Zは、スペーサであり;
Lは、直交コネクタであり、
Lは、アミノアルコール、アミノアルデヒド、ポリアミン、及びそれらの組み合わせから選択され;
Xは、Dを放出するための切断可能な部分であり、Dを放出するための切断可能な結合を形成することができ;
Dは、細胞傷害性薬物であり;
aは1以上であり、且つbは1以上であり;且つ
HP
SMWは、ポリサルコシンホモポリマーの、前記直交コネクタLへの共有結合から生じ、
前記HP
SMWは、以下を表す。
【化7】
(式中、波形結合は、存在する場合には、L又はスペーサZへの結合点を表し、
kは6以上であ
り、
R
4は、-R’、-O
-、-OR’、-SR’、-S
-、-NR’
2、-NR’
3
+、=NR’、-CX
3、-CN、-NRC(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’
2、-SO
3
-、-SO
3H、-S(=O)
2R’、-OS(=O)
2OR’、-S(=O)
2NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)
2、-P(=O)(OR’)
2、-PO
3
-、-PO
3H
2、-C(=O)X、-C(=S)R’、-CO
2R’、-CO
2、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’
2、C(=S)NR’
2、又はC(=NR’)NR’
2から選択されるキャッピング基を表し、
ここで、各Xは独立して、ハロゲン:-F、-CI、-Br、又は-Iであり、
各R’は独立して、-H、-C
1-C
20アルキル、-C
6-C
20アリール、又は-C
3-C
14複素環である)
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、単一分子量ホモポリマー、そのようなホモポリマーを調製するための方法、及び特に複合体技術におけるその使用に関する。
【0002】
本発明はまた、単一分子量ホモポリマー、特に単一分子量ポリサルコシンを含む、リガンド-薬物-複合体(LDC:Ligand-Drug-Conjugate)に関する。
【0003】
リガンド-薬物-複合体(LDC)は、少なくとも1つのリガンドユニットを含み、当該リガンドユニットは、合成リンカーを介して少なくとも1つの治療分子、診断分子又は標識分子(以下、薬物又はDと呼ぶ)に共有結合的に連結されている、ポリペプチド又はタンパク質である。この合成リンカーは、リガンドユニットと薬物ユニットとを連結するための1つ又は数個の二価アームを含み得、これはスペーサ、コネクタ及び切断可能な部分から選択され得る。前記リンカーはまた、貯蔵安定性、血漿安定性又は薬物動態特性等のLDC性能を向上させることができる任意の一価部分を有してもよい。タンパク質又はポリペプチドは通常、ターゲティングユニットであるが、固有の治療学的特性を有し得る。複合体のリガンドユニットが抗体又は抗体断片であり、細胞傷害性薬物又は化学療法薬物と関連する場合、用語「抗体-薬物-複合体(ADC)」が一般に使用される。
【0004】
ADC(antibody-drug-conjugate)の設計は、多数の多様な因子:(i)リガンド上での結合に使用される合成リンカーの性質、数、全体的な疎水性及び位置;(ii)薬物の作用の性質及び機構;(iii)細胞内在化後及び細胞内輸送中の薬物放出に関与する構造要素;(iv)モノクローナル抗体(mAb)及び選択された抗原標的の特性;の考察を含む。最近の方法論は、利用可能なADCの欠点のいくつか、例えば、不均一な薬物積載量(異なる薬理学的特性を有するADC亜種)、限られたmAb-リンカー安定性又は薬物-リンカー安定性、及び次善の薬物動態特性、に取り組んでいる(Beck et al. Nat. Rev. Drug. Disco., 2017, 16(5), 315-337)。
【0005】
複合体を設計する際に考慮すべき別の重要な因子は、薬物比率(又はADCについての薬物-抗体-比率(DAR:drug-antibody-ratio))であり、これは、抗体に結合された薬物ユニットの平均数である。最近の研究結果として、ADC分野における実際の傾向は、低~中程度のDAR(通常2~4)を有する均質な複合体を生み出し、臨床にもたらすことである。それにもかかわらず、より最近になって、高積載したADCの欠点(凝集体を形成し、従って複合体製剤を複雑にする、好ましくない薬物動態特性及び傾向)を克服することを目的とする、新しいリンカー-薬物技術が出現した。そのような技術は、有効性が改善され、薬物動態特性が改善され、治療学的指数が改善された次世代ADCを臨床にもたらす可能性を有し、低い標的発現、遅い内在化又は非効率的な細胞内プロセシングを有する腫瘍を標的とすることができる。薬物動態特性及び製剤安定性を犠牲にすることなく、そのような高いペイロード積載量を達成するために、細胞傷害性ペイロードの見かけの疎水性をマスクすることを目的とする新しいリンカー-薬物設計アプローチを開発することが必要である。
【0006】
WO2014/093394A1では、高い薬物積載量及び標的抗原への強い結合を示すタンパク質-ポリマー-薬物複合体が報告されている。この複合体は、生分解性で生体適合性のポリ-[1-ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシルメチルホルマル]高分子エンティティを含み、これは、良好な薬物動態特性を有する、mAb当たり約12~25個の細胞傷害性分子の複合体を可能にする。このアプローチの主な欠点は、(i)リンカーの多分散性、(ii)高分子アーム当たりの細胞傷害性分子の不均一な数、及び(iii)mAb当たりのグラフトされた高分子アームの不均一な数、から生じる、最終複合体の極端な多分散性である。
【0007】
WO2015/057699A2及びWO2016/059377A1では、リンカー設計に直交のポリエチレングリコール(PEG)部分を含めることによって、8~36個の薬物積載ADCの製剤化が報告されている。PEGは、その親水性、生体適合性及び高い水和殻のために、小さい薬物、タンパク質、生体複合体及びナノ粒子の親水性、安定性及び循環時間を改善することが周知である。しかし、PEGは、いくつかの健康な個体によって発現される抗PEG抗体が原因で、非生分解性、過敏症に至る起こり得る補体活性化及び不明瞭な薬物動態等の欠点を免れない。
【0008】
(i)好ましい薬物動態特性及び安定性を維持しつつ高い薬物積載量、(ii)薬物-リンカーレベル(化学的に単分散の薬物-リンカー)及び複合体レベル(均質に積載された複合体)での、複合体の完全な均質性、並びに(iii)疎水性のマスキング部分として作用する生分解性の親水性ホモポリマーに基づく、を組み合わせるリガンド-薬物-複合体が必要とされている。
【0009】
ポリサルコシン(ポリ-N-メチルグリシン又はPSAR)は、PEGの代替物であり得、そして改善された特性を有する新規のタンパク質複合体を設計するために使用され得る。PSARは、高親水性で、生分解性で、非免疫原性で、水溶性の高分子であり、薬物のためのいくつかの輸送システム又は診断において使用されている。今まで、PSARは、サルコシンN-カルボキシ無水物(NCA)又はサルコシンN-チオカルボキシ無水物(NTA)の縮合性の開環重合反応を介して入手されるので、多分散形態としてのみ利用可能である。許容できる分散性(多分散性指数>1を有する、分子量のガウス分布)で比較的明確に規定されているが、一定の長さ(唯一且つ特有の分子量)を有し、従って絶対的な均質性を有している、より短いホモポリマー化合物の使用を必要とする特定の適用分野では、これらの多分散PSARは使用することができない。
【0010】
巨大分子修飾のために離散した単分散PSARを使用することは、絶対的な化学的均質性を有する複合体を開発するための必要条件である。そのような均質な複合体は、全く同じ薬理学的特性(薬物動態及び効能)を共有するという利点を有し、特性を決定することがより容易であり、製造プロセスの再現性のより大きな制御を可能にし、そしてバイオ複合体についてのますます厳しい規制上の要件の要求を満たす。
【0011】
本発明によれば、段階的な樹脂上サブモノマーアプローチを用いて、規定された鎖長を有する離散した単分散PSARホモポリマーが得られた。この方法は安価であり、容易に拡張することができ、許容できる収率及び優れたモノマー純度を有する最終生成物を与える。これらの単分散PSARホモポリマーは、改善された薬物積載能、薬物動態及び治療効果を有するリガンド-薬物-複合体(LDC)を提供するために、タンパク質結合技術において使用された。
【0012】
従って、本発明は、複合体技術、特にLDCにおいて使用される前記要件を満たす単一分子量単官能性ホモポリマーを提供する。
【0013】
このホモポリマーは、以下の式(I)を有している:
【0014】
【0015】
式中、R1とR2とは異なり、
R1及びR2の一方はH又は不活性基であり、R1及びR2の他方が官能化反応性基であり、前記基は、前記不活性基が反応しない反応条件において、結合可能な基と共有結合するために反応性であり、
Z1及びZ2は、同一に又は別々に、任意のスペーサであり、
nは1以上であり、kは2以上である。
【0016】
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用される用語の定義を以下に示す。
【0017】
〔定義〕
本発明によれば、反応物、生成物、モノマー、ホモポリマー、ユニット等の任意の化合物は、酸付加塩と、塩基付加塩と、金属塩と、アンモニウム及びアルキル化アンモニウム塩とを含む、塩の形態であってもよい。そのような塩は、当業者に周知である。本発明のホモポリマーの意図された使用を考慮すると、それらは、好ましくは薬学的に受容可能な塩の形態である。
【0018】
単一分子量ホモポリマーは、同じ性質であるがサイズ分布及び平均分子量を中心とした分子量分布を有するホモポリマーの混合物とは対照的に、唯一且つ特有の分子量を有するホモポリマーをいう。単一分子量ホモポリマーは、原子の絶対数を有する1つの絶対的な分子式で定義付けられ得る。
【0019】
ワンポット重合プロセスによって伝統的に得られ且つPDI>1を有する多分散ホモポリマーとは対照的に、単一分子量ホモポリマーはまた、1に等しい多分散指数(PDI: polydispersity index)を有する「単分散」と呼ばれ得る。用語「単分散」は生成物の製造手順を正確には反映しないという事実にもかかわらず、唯一且つ絶対的な分子量、分子式及び分子構造を有するホモポリマーを規定している、用語「単分散」及び「離散した」の両方が交換可能であることが、本明細書において概して認められる。
【0020】
不活性基又はキャッピング基は、ホモポリマーの一方の末端を終端させる任意の化学的非反応性基をいい、前記基は、所定の反応条件においてホモポリマーの他方の末端を終端させる官能化反応性基と比較したときに、非反応性である。結果として生じるホモポリマーは、見方によれば、この不活性基によって末端キャップされており、具体的にはLDC技術において使用される場合に、共有結合されることを目的としていない。一実施形態において、前記基は、ホモポリマーの一方の末端への共有結合後に不活性化されるだけでもよい。
【0021】
不活性基の非網羅的なリストは、アシル基、特にアセチル基、アミド基、アルキル基、特にC1-20アルキル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルオルトエステル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールエステル基、三級アミン基、水酸基、アルデヒド基を含む。前記不活性基はまた、官能化反応性基を規定する基の同じリストから選択されてもよい(以下の官能化反応性基の定義を参照されたい)。
【0022】
官能化反応性基は、結合可能な基と共有結合するために反応性である任意の化学部分をいい、所定の反応条件において不活性基と比較したときに反応性である。特に、それは、以下の基に結合し得る:カルボン酸;一級アミン;二級アミン;三級アミン;ヒドロキシル;ハロゲン;N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペルフルオロエステル、ニトロフェニルエステル、アザ-ベンゾトリアゾール及びベンゾトリアゾール活性化エステル、アシル尿素等の活性化エステル;アルキニル;アルケニル;アジド;イソシアネート;イソチオシアネート;アルデヒド;マレイミド、ハロマレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド等のチオール反応性部分;チオール;アクリレート;メシレート;トシレート;トリフラート、ヒドロキシルアミン;クロロスルホニル;ボロン酸-B(OR’)2誘導体(ここで、R’は水素又はアルキル基である)。
【0023】
官能化反応性基の非網羅的なリストは、以下を含んでいる:カルボン酸;一級アミン;二級アミン;三級アミン;ヒドロキシル;ハロゲン;N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペルフルオロエステル、ニトロフェニルエステル、アザ-ベンゾトリアゾール及びベンゾトリアゾール活性化エステル、アシル尿素等の活性化エステル;アルキニル;アルケニル;アジド;イソシアネート;イソチオシアネート;アルデヒド;マレイミド、ハロマレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド等のチオール反応性部分;チオール;アクリレート;メシレート;トシレート;トリフラート、ヒドロキシルアミン;クロロスルホニル;ボロン酸-B(OR’)2誘導体(ここで、R’は水素又はアルキル基である)。
【0024】
不活性基及び官能化反応性基についての用語「不活性」及び「官能化反応性」は、それぞれ、相互依存性であることに言及すべきである。これは、式(I)、(II)及び(III)のいずれか1つに規定される本発明のホモポリマーの所定の反応条件において、不活性基は反応せず、官能化反応性基は反応物と共有結合するように反応することを意味する。従って、式(I)、(II)及び(III)のいずれか1つのホモポリマー中の前記不活性基及び前記官能化反応性基は異なるが、それらは基の同じリストから全体的に選択されてもよい。
【0025】
本発明による官能化反応性基又は不活性基における用語「基」は、所定の反応条件において、それぞれ、反応物と共有結合することができるか又は不活性である以外のいかなる機能も示さない基として理解されるべきである。
【0026】
アルキルは、単独で又はアルキルエーテル若しくはアルキルエステルの一部として使用され、例えば、1~20個の炭素原子、好ましくは1~12個、より好ましくは1~6個、特に1~4個を有する、飽和の直鎖又は分枝の炭化水素基をいう。
【0027】
アルケニル及びアルキニルは、2~20個の炭素原子、好ましくは2~12個、より好ましくは2~6個、特に2~4個を有する、少なくとも部分的に不飽和の直鎖又は分枝の炭化水素基をいう。
【0028】
アリールは、単独で又はアリールエステルの一部として使用され、例えば、6~14個の環炭素原子、好ましくは6~10個、特に6個を含む、1個以上の環を有する芳香族基をいう。
【0029】
アルキレンは、単独で又はアルキレングリコールの一部として使用され、例えば、1~20個の炭素原子、好ましくは1~12個、より好ましくは1~6個、特に1~4個を有する、二価の飽和の直鎖又は分枝の炭化水素基をいう。
【0030】
アリーレンは、上で規定した二価のアリール基をいう。
【0031】
ヘテロアルキルは、1~20個又は1~10個の炭素原子と、O、N、Si及びSから成る群から選択された1~10個、好ましくは1~3個のヘテロ原子とから成る直鎖又は分枝の炭化水素鎖をいい、ここで、窒素及び硫黄原子は随意的に酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は随意的に四級化されてもよい。ヘテロ原子O、N及びSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、又はアルキル基が前記分子の残りの部分に結合する位置に、配置されてもよい。
【0032】
ヘテロアルキレンは、上で規定した二価のヘテロアルキルをいう。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子はまた、鎖の末端のいずれか又は両方を占め得る。
【0033】
C3-C8炭素環は、3員、4員、5員、6員、7員又は8員の一価の、置換又は非置換の、飽和又は不飽和の非芳香族の単環式又は二環式の炭素環をいう。
【0034】
C3-C8カルボシクロは、上で規定した二価のC3-C8炭素環をいう。
【0035】
C3-C8複素環とは、3~8個の炭素原子(環員とも呼ばれる)と、N、O、P又はSから独立して選択された1~4個のヘテロ原子環員とを有する、一価の置換又は非置換の芳香族又は非芳香族の単環式又は二環式の環系をいう。前記複素環における1つ以上のN、C又はS原子は、酸化され得る。ヘテロ原子を含む前記環は、芳香族又は非芳香族であり得る。特に明記しない限り、前記複素環は、安定な構造を生じる任意のヘテロ原子又は炭素原子でそのペンダント基に結合している。
【0036】
C3-C8ヘテロシクロとは、上で規定した二価のC3-C8複素環をいう。
【0037】
さらに、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキル、ヘテロアルキレン、C3-C8炭素環、C3-C8カルボシクロ、C3-C8複素環、C3-C8ヘテロシクロという用語は、-X、-R’、-O-、-OR’、=O、-SR’、-S-、-NR’2、-NR’3、=NR’、-CX3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N2、-N3、-NRC(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’2、-SO3
-、-SO3H、-S(=O)2R’、-OS(=O)2OR’、-S(=O)2NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)2、-P(=O)(OR’)2、-PO3
-、-PO3H2、-C(=O)R’、-C(=O)X、-C(=S)R’、-CO2R’、-CO2、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’2、C(=S)NR’2、及びC(=NR’)NR’2から選択された置換基のうちの1つ以上で、随意的に置換された基をいい、ここで、各Xは独立してハロゲン:-F、-CI、-Br、又は-Iであり、各R’は独立して-H、-C1-C20アルキル、-C6-C20アリール、又は-C3-C14複素環である。
【0038】
アシル基は、-CO-アルキルをいい、アルキルは上で規定されている。
【0039】
単官能性ホモポリマーは、単一タイプのモノマー(例えば、ポリサルコシンのためのN-メチルグリシンモノマー)を含み、当該単一タイプのモノマーは、上で規定した官能化反応性基を有している1つの末端と、H又は上で規定した不活性基を有しているもう1つの末端とを有している。
【0040】
固相ペプチド合成のための担体(SPPS:Support for solid-phase peptide synthesis)は、周知のプロセスであるSPPSにおいて通常使用される担体をいい、SPPSにおいては、担体に固定されたペプチド、不溶性ポリマーは、脱保護-洗浄-カップリン
グ-洗浄の繰返しサイクルを介して、Fmoc保護アミノ酸又はBoc保護アミノ酸の連続的な付加によって組み立てられる。それぞれのアミノ酸付加は、(i)Nα-保護基の切断、(ii)洗浄ステップ、(iii)カップリング試薬及び非求核性塩基を用いる、フルロエニルメトキシカルボニル-(Fmoc)保護アミノ酸又はtert-ブチルオキシカルボニル-(Boc)保護アミノ酸のカップリング、(iv)洗浄ステップ、のサイクルと呼ばれる。伸長鎖は前記担体に結合しているので、余剰の試薬及び可溶性の副生成物は、単純な濾過によって除去することができる。ヒンダードFmoc保護N-メチル化アミノ酸又はヒンダードBoc保護N-メチル化アミノ酸との反復カップリング反応は困難であり、しばしば次善であるため、この技術では、低い粗純度、困難な精製及び低い収率が予想される。前記担体の例は、Wang樹脂、Rinkアミド樹脂、トリチル-及び2-クロロトリチル樹脂、PAM樹脂、PAL樹脂、Sieberアミド樹脂、MBHA樹脂、HMPB樹脂、HMBA樹脂であり、これらは市販されており、これらにはペプチドが直接的又は間接的に結合される。
【0041】
直交コネクタという用語は、分枝したリンカーユニット構成要素をいい、当該分枝したリンカーユニット構成要素は、リガンドをホモポリマーユニットと薬物ユニットとに結合させ、その結果、ホモポリマーユニットは、薬物ユニットに対して(直列配置とは対照的に)並列配置になる。直交コネクタは、リガンド-薬物-複合体の成分、すなわちリガンド、ホモポリマー及び薬物ユニットのための連結部位を有する足場である。用語「並列」は、リガンド-薬物-複合体(LDC)の2つの構成要素の分枝を示すために使用されるが、前記2つの構成要素が必ず空間において極めて接近している、又はそれらの間に同じ距離を有することを示すためには使用されない。
【0042】
薬物ユニットに対して並列の(すなわち、分岐した)向きにあるホモポリマー(例えば、ポリサルコシン)ユニットを有するLDCの例示的な図式提示は、以下の通りである:
【0043】
【0044】
式中、(L)は直交コネクタユニットであり、wは1以上、典型的には1~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらには1~2である。この直交構造は、直線構造と混同されるべきではない。薬物ユニットに対して直列の(すなわち、直線の)向きにあるホモポリマー(例えば、ポリサルコシン)ユニットを有するLDCの例示的な図式提示は、以下の通りである:
【0045】
【0046】
直交コネクタの非網羅的なリストは、天然又は非天然のアミノ酸、例えば、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、チロシン、システイン、セレノシステイン、グリシン、ホモアラニン;アミノアルコール;アミノアルデヒド;ポリアミン、又はそれらの任意の組み合わせを含む。彼の知識から、当業者は、期待されるLDC化合物に適切な直交コネクタを選択することができる。有利には、Lは1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸である。一実施形態において、Lは、グルタミン酸、リジン及びグリシンから選択される。
【0047】
スペーサは、以下のようなリガンド-薬物-複合体の2つの成分と共有結合する二価の直線アームである:
- リガンドユニット及び直交コネクタユニット、
- 直交コネクタユニット及びホモポリマーユニット、
- 直交コネクタ及び切断可能な部分、
- 切断可能な部分及び薬物、又は
- 直交コネクタ及び薬剤。
【0048】
例えば、スペーサは、二価の直線状アルキレン基、好ましくは(CH2)4である。
【0049】
スペーサユニットの非網羅的なリストは、アルキレン、ヘテロアルキレン(Si、N、O及びSから選択された少なくとも1つのヘテロ原子によって割り込まれたアルキレン);アルコキシ;ポリアルキレングリコール及び典型的にはポリエチレングリコール等のポリエーテル;グリシン、アラニン、プロリン、バリン、N-メチルグリシン等の1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸;C3-C8ヘテロシクロ;C3-C8カルボシクロ;アリーレン、及びそれらの任意の組み合わせを含む。スペーサは、切断可能な部分と薬物ユニットとの間、又は直交コネクタと薬物ユニットとの間に存在するとき、1つ以上の薬物ユニットに連結され得る。例えば、スペーサは、1~4個の薬物ユニット、好ましくは1~2個の薬物ユニットに連結され得る。一実施形態において、切断可能な部分と薬物ユニットとの間のスペーサは、(4-アミノ-1,3-フェニレン)ジメタノールである。
【0050】
一実施形態において、スペーサユニットは、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)、式(XX)、式(XXI)又は式(XXII)のものである:
【0051】
【0052】
波形結合は結合点を表し、R6は、-C1-C10アルキレン-、-C1-C10ヘテロアルキレン-、-C3-C8カルボシクロ-、-O-(C1-C8アルキル)-、-アリーレン-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-、-C3-C8ヘテロシクロ-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-、-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C1-C10ヘテロアルキレン-C(=O)-、-C3-C8カルボシクロ-C(=O)-、-O-(C1-C8アルキル)-C(=O)-、-アリーレン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-C(=O)-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-C(=O)-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C3-C8ヘテロシクロ-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-C(=O)-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-NH-、-C1-C10ヘテロアルキレン-NH-、-C3-C8カルボシクロ-NH-、-O-(C1-C8アルキル)-NH-、-アリーレン-NH-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-NH-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-NH-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-NH-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-NH-、-C3-C8ヘテロシクロ-NH-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-NH-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-NH-、-C1-C10アルキレン-S-、-C1-C10ヘテロアルキレン-S-、-C3-C8カルボシクロ-S-、-O-(C1-C8アルキル)-)-S-、-アリーレン-S-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-S-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-S-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-S-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-S-、-C3-C8ヘテロシクロ-S-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-S-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-S-、-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C3-C8カルボシクロ-O-C(=O)-、-O-(C1-C8アルキル)-O-C(=O)-、-アリーレン-O-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-O-C(=O)-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-O-C(=O)-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C3-C8ヘテロシクロ-O-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-O-C(=O)-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-である。
【0053】
R6基のいずれかは、-X、-R’、-O-、-OR’、=O、-SR’、-S-、-NR’2、-NR’3
+、=NR’、-CX3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N2、-N3、-NR’C(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’2、-SO3
-、-SO3H、-S(=O)2R’、-OS(=O)2OR’、-S(=O)2NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)2、-P(=O)(OR’)2、-PO3
-、-PO3H2、-C(=O)X、-C(=S)R’、-CO2R’、-CO2、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’2、C(=S)NR’2、及びC(=NR’)NR’2から選ばれる1つ以上の置換基によって随意的に置換され、ここで、各Xは独立してハロゲン:-F、-CI、-Br、又は-Iであり;各R’は独立して-H、-C1-C20アルキル、-C6-C20アリール、又は-C3-C14複素環である。
【0054】
有利には、スペーサユニットは、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)、式(XX)、式(XXI)又は式(XXII)のものである:
【0055】
【0056】
波形結合は結合点を表し、R6は、-C1-C10アルキレン-、-C1-C10ヘテロアルキレン-、-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C1-C10ヘテロアルキレン-C(=O)-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-である。
【0057】
R6基のいずれかは、1つ以上の=Oで随意的に置換される。
【0058】
リガンドは、LDC(例えば、抗体薬物複合体)技術において通常使用されるような任意の巨大分子(ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、典型的には抗体)、又は葉酸若しくはアプタマーのような小分子をいい、バイオ複合体技術を使用して、本研究の合成リンカー又は薬物リンカーと共有結合されてもよい(Greg T. Hermanson, Bioconjugate Techniques, 3rd Edition, 2013, Academic Pressを参照)。リガンドは、伝統的に、その標的指向化能力のために選択される化合物である。リガンドの非網羅的なリストは、タンパ
ク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、完全長抗体及びその抗原結合断片、インターフェロン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、ビタミン、トランスフェリン、又は任意の他の細胞結合分子若しくは物質を含む。複合体を調製するために使用されるリガンドの主な分類は抗体である。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、改変モノクローナル抗体及び改変ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体等の多特異性抗体、抗体断片、並びに抗体模倣物(Affibody(登録商標)、Affilin(登録商標)、Affimer(登録商標)、Nanofitin(登録商標)、Cell Penetrating Alphabody(登録商標)、Anticalin(登録商標)、Avimer(登録商標)、Fynomer(登録商標)、Monobodies又はnanoCLAMP(登録商標))。抗体の例は、トラスツズマブである。タンパク質の例は、ヒト血清アルブミンである。
【0059】
本明細書中で言及される場合、用語「抗体」は、全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)、又はその単鎖を含む。
【0060】
天然に生じる「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中ではVHと略される)と重鎖定常領域とから構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中ではVLと略される)と軽鎖定常領域とから構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と名付けられたより保存された領域が点在している、相補性決定領域(CDR)と名付けられた超可変領域に細分化されることができる。各VH及びVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配列された3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の構成要素(Clq)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介してもよい。
【0061】
抗体の用語「抗原結合部分」(又は、単に「抗原部分」)は、本明細書中で使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の完全長又は1つ以上の断片をいう。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実施され得ることが示されている。抗体の用語「抗原結合部分」に包含される結合断片の例は、VL、VH、CL及びCH1ドメインから成る一価の断片である、Fab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片である、F(ab)2断片;VH及びCH1ドメインから成るFd断片;抗体の単一アームのVL及びVHドメインから成るFv断片;VHドメインから成るdAb断片(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);及び単離された相補性決定領域(CDR)、又はそのような抗原結合部分を含む任意の融合タンパク質を含む。
【0062】
さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、一本鎖タンパク質として作製されることを可能にする合成リンカーによって、組換え方法を使用して連結され得、当該一本鎖タンパク質において、VL及びVH領域が対になって一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426;及びHuston et al., 1988 Proc Natl Acad. Sci. 85:5879-5883を参照のこと)を形成する。そのような一本鎖抗体もまた、抗体の用語「抗原結合部分」に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の
従来の技術を使用して得られ、そして断片は、完全な抗体であるのと同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0063】
特定の実施形態において、LDCのリガンドは、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0064】
用語「ヒト抗体」は、本明細書中で使用される場合、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もまた、そのようなヒト配列、例えばヒト生殖系列配列、又はヒト生殖系列配列の変異体版、又はヒトフレームワーク配列分析(例えば、Knappikら(2000. J Mol Biol 296, 57-86)に記載)に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含む抗体に由来する。
【0065】
ヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム若しくは部位特異的な突然変異によって、又はin vivoでの体細胞突然変異によって、導入された突然変異)を含んでいてもよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0066】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体をいう。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によって提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG1又はIgG4等のIgG)をいう。
【0068】
語句「抗原を認識する抗体」及び語句「抗原に特異的な抗体」は、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と、本明細書において、言い換え可能に使用される。
【0069】
切断可能な基(X)(「放出可能なアセンブリユニット」とも呼ばれる)は、薬物ユニットをリガンド-薬物-複合体の残りの部分に連結する。切断可能な基の機能は、リガンドが標的とする部位で薬物を放出することである。このユニットは、従って、例えば酵素処理又はジスルフィド除去機構による薬物ユニット放出のための、切断可能な結合を形成することができる。酵素処理のための認識部位は通常、ジペプチド切断部位(例えば、Val-Cit、Val-Ala、又はPhe-Lys)、又は糖切断部位(例えば、グルクロニド切断部位)である。例えば、切断可能な基は、グルクロニド基である。この技術は当業者に周知であり、そして彼の知識から、彼はLDC(例えば、ADC)化合物の薬物に適切な切断可能な基を選択することができる。例えば、切断可能な基は、ジスルフィド交換によって切断可能なジスルフィド含有リンカー、酸性pHで切断可能な酸に不安定なリンカー、及び加水分解酵素(例えば、ペプチダーゼ、エステラーゼ、及びグルクロニダーゼ)によって切断可能なリンカーを含む。切断可能な基は、以下から選択された形態であり得る:
- 1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸、例えば、2~12個のアミノ酸を含む切断可能なペプチド、
- 酸素グリコシド結合を介して自壊性基に連結した糖部分、
- ジスルフィドリンカー、及び
- リソソーム中で加水分解可能な、酸に不安定なリンカー。
【0070】
有利には、切断可能な基は、以下から選択された形態であり得る:
- 1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸、例えば、2~12個のアミノ酸を含む切断可能なペプチド、及び
- 酸素グリコシド結合を介して自壊性基に連結した糖部分。
【0071】
糖部分が使用されるとき、自壊性基は、切断可能な基の一部であると考えられる。「自壊性基」は、三官能性の化学部分であり、当該三官能性の化学部分は、3つの離間した化学部分、すなわち糖部分(グリコシド結合を介して)、薬物D(スペーサZを介して直接的又は間接的に)、及び直交コネクタL(スペーサZを介して直接的又は間接的に)を一緒に共有結合的に連結することができる。グリコシド結合は、薬物の放出をもたらす自壊反応配列を開始するために標的部位で切断され得るものであり得る。
【0072】
ジスルフィドリンカーが使用されるとき、切断は、ジスルフィドの2つの硫黄原子の間で起こる。種々のジスルフィドリンカーが当技術分野で公知であり、本開示における使用に適合させることができ、例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)、SMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、及びSPP(N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート)を使用して形成され得るものを含む。例えば、米国特許第4,880,935号を参照されたい。
【0073】
いくつかの実施形態において、切断可能なユニットは、pH感応性であり、例えば、リソソーム中で加水分解可能な酸に不安定なリンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス-アコニットアミド(cis-aconitic amide)、オルトエステル、アセタール、又はケタール基)を含み得るものが使用され得る(例えば、米国特許第5,122,368号;第5,824,805号;第5,622,929号を参照のこと)。そのようなリンカーは、中性のpH条件(例えば、血液中のpH条件)の下で比較的安定であるが、pH5.5又は5.0(リソソームの凡そのpH)では不安定である。
【0074】
リガンド薬物複合体(LDC)は、上で規定したようなリガンド及び薬物に結合し、上で規定したような任意の平均値(mean)を含み、本明細書の実施例において説明される、任意の複合体を指す。リガンドが抗体であるとき、本開示の好ましい実施形態である抗体薬物複合体(ADC)を指してもよい。
【0075】
結合可能な基は、官能化反応性基と反応して共有結合を形成することができる基をいう。結合可能な基は、従って、所定の反応条件において官能化反応性基と反応する反応性基を含む。具体的には、結合可能な基は、以下の基のうちの1つを含むことができる:カルボン酸;一級アミン;二級アミン;三級アミン;ヒドロキシル;ハロゲン;N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペルフルオロエステル、ニトロフェニルエステル、アザ-ベンゾトリアゾール及びベンゾトリアゾール活性化エステル、アシル尿素等の活性化エステル;アルキニル;アルケニル;アジド;イソシアネート;イソチオシアネート;アルデヒド;マレイミド、ハロマレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド等のチオール反応性部分;チオール;アクリレート;メシレート;トシレート;トリフラート、ヒドロキシルアミン;クロロスルホニル;ボロン酸-B(OR’)2誘導体(ここで、R’は水素又はアルキル基である)。
【0076】
薬物は、任意の種類の薬物又は化合物、例えば、細胞傷害性、細胞増殖抑制性、免疫抑制性、抗炎症性若しくは抗感染性の化合物をいう。細胞傷害性化合物のうち、カリケアマイシン;ウンシアラマイシン;アウリスタチン(MMAEとして公知のモノメチルアウリスタチンE等);チューブリシン類似体;メイタンシン;クリプトフィジン;ベンゾジアゼピン二量体(PDB’sとして公知の、ピロール[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを含む);インドリノベンゾジアゼピン疑似二量体(IGNs);デュオカルマイシン;アンスラサイクリン(ドキソルビシン又はPNU159682等);カンプトテシン類似体(SN38又はエキサテカンとして公知の7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン等);Bcl2及びBcl-xl阻害剤;タイランスタチン;アマトキシン(α-アマニチンを含む);キネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤;ビノレルビン;サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤;ブレオマイシン;ダクチノマイシン又は放射性核種及びそれらの錯化剤(DOTA/177Lu等)を挙げることができる。抗炎症薬のうち、デキサメタゾン又はフルチカゾン等のコルチコステロイドを挙げることができる。抗感染症薬のうち、リファンピシン又はバンコマイシン等の抗生物質を挙げることができる。
【0077】
次に、本発明をより詳細に説明する。それはポリサルコシンホモポリマーの単一分子量に関してより具体的に記載されるが、その範囲は、前記式(I)内に包含される任意の単一分子量に及ぶことが認められるべきである。さらに、本発明の利益は、LDC技術において具体的に証明される。もちろん、その利点は、そのような技術に限定されず、単一分子量の、生体適合性の、生分解性のホモポリマーが必要とされるあらゆる領域において、同様の又はより良好な性能を示すことができる。
【0078】
従って、本発明は、より詳細には、式(II)を有するサルコシンの単一分子量ホモポリマーに関する:
【0079】
【0080】
(式中、R1とR2とは異なり、
R1及びR2の一方はH又は不活性基であり、R1及びR2の他方は官能化反応性基であり、当該基は、前記不活性基が反応しない反応条件において、結合可能な基と共有結合するために反応性であり、
Z1及びZ2は、同一に又は別々に、任意のスペーサであり、
kは2以上である)。
【0081】
式(I)のホモポリマー、特に式(II)のホモポリマーのさらなる特徴は、単独又は任意の組み合わせで、以下に与えられる。
【0082】
kは少なくとも2である整数であり、好ましくは最大でも100であり、より好ましくは最大でも50であり、具体的には2~30、より具体的には2~24、6~24、又は12~24である。
【0083】
式(I)又は式(II)のいずれかにおいて、前記官能化反応性基R1又はR2は、以下の群から選択されてもよい:
- カルボン酸基、
- アミノ基NRR''
(ここで、R及びR''は、独立して、Hと、O、N及びSの中から選択される少なくとも1つのヘテロ原子によって随意的に割り込まれた(C1-C6)アルキルとから選択される)、
- 水酸基、
- ハロゲン原子、
- ヒドラジン(-NH2-NH2)基、
- ニトロ基、
- ヒドロキシルアミン基、
- アジド基、
- (C2-C6)アルキニル基、
- (C2-C6)アルケニル基、
- チオール基、
- N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペルフルオロエステル、ニトロフェニルエステル、アザ-ベンゾトリアゾール及びベンゾトリアゾール活性化エステル、アシル尿素等の活性化エステル基、
- ボロン酸-B(OR'''')2基
(ここで、R''''は、水素原子又はC1-C6アルキル基である)、
- マレイミド、ハロマレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド等のチオール反応性基、
- メシレート基、
- トシレート基、
- トリフレート基、
- アルデヒド基、
- イソシアネート基又はイソチオシアネート基、
- クロロスルホニル基、
- アクリレート基。
【0084】
上述したように、スペーサZは任意であり、Z1及びZ2の両方が存在してもよく、Z1及びZ2の一方のみが存在してもよく、それらはまた存在しなくてもよい。この後者の場合において、及び本発明のホモポリマーがサルコシンのホモポリマーであるとき、それは式(III)を有する:
【0085】
【0086】
(式中、R1、R2及びkは、上で規定した通りである)。
【0087】
式(I)、式(II)又は式(III)において、R1はH又は不活性基であり、R2は官能化反応性基であってもよく、或いはR1は官能化反応性基であり、R2はH又は不活性基であってもよい。
【0088】
好ましい実施形態によれば、官能化反応性基R1又はR2は二級アミンであり、不活性基R1又はR2は、未反応のままで最終的なLDC構造上に結合されないままのカルボン酸である。
【0089】
好ましい実施形態において、式(I)、式(II)又は式(III)において、R1はOH及びNH2から選択され、
R1がOHのとき、R2はCOCH3であり、
R1がNH2のとき、R2はCO-G-COOHであり、Gは、CH2CH2、CH2CH2CH2、CH2CH2CH2CH2、CH2OCH2、CH2SCH2、CH2CH(CH3)CH2、CH2C(CH3)2CH2又はCH2N(CH3)CH2である。
【0090】
本発明はまた、式(I)、式(II)又は式(III)のいずれかの単一分子量ホモポリマーを調製するための方法に関連する。一般に、各N-メチルグリシンモノマーは、2つのサブモノマー、すなわちハロ酢酸及びメチルアミン、から固相担体上に組み立てられる。各モノマー付加は、(i)ハロ酢酸及びカルボジイミドを用いた樹脂結合二級アミンのアシル化、又は他の適切なカルボン酸塩活性化方法によるアシル化、(ii)洗浄ステップ、(iii)メチルアミンを用いた樹脂結合ハロゲンの求核置換、(iv)洗浄ステップ、のサイクルと呼ばれる。
【0091】
以下のステップを含む、本発明による方法:
a)式(IV)
【0092】
【0093】
(式中、R3はペプチド合成固相担体であり、mは1以上であり且つk未満である)の化合物を、式(V)
【0094】
【0095】
(式中、Halはハロゲンである)
の酸と反応させて、式(VI)
【0096】
【0097】
(式中、R3、m及びHalは、上で規定した通りである)
の化合物を得ること、
b)前記式(VI)の化合物をメチルアミンと反応させて、式(VII)
【0098】
【0099】
(式中、R3及びmは、上で規定した通りである)
の化合物を得ること、
c)式(VIII)
【0100】
【0101】
(式中、R3は上で規定され、kは上で規定した通りである)
の化合物が得られるまで、ステップa)及びステップb)を繰り返すこと、
d)前記化合物(VIII)を反応させて、式(IX)
【0102】
【0103】
(式中、R2は不活性基であり、R3は上で規定され、kは上で規定した通りである)
の化合物を得ること、
e)上で規定した式(III)の単一分子量ホモポリマーを得るための開裂反応。
【0104】
この方法の実施形態によれば、ステップa)において、式(IV)(式中、R3はペプチド合成固相担体であり、mは3である)の化合物を反応させることを含み、前記化合物は、Fmoc-固相ペプチド合成方法によって得られる。それらは当業者に周知であり、彼の知識から、彼は任意の適切なカップリング試薬、例えばN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)、を選択することができる。
【0105】
本発明の方法の代替的な実施形態において、単一分子量ホモポリマーを調製することは、以下のステップを含む:
a)式(X)
【0106】
【0107】
(式中、R3はペプチド合成固相であり、mは1以上であり、且つk未満である)
の化合物を、式(V)
【0108】
【0109】
(式中、Halはハロゲンである)
の酸と反応させて、式(XI)
【0110】
【0111】
(式中、R3、m及びHalは、上で規定した通りである)
の化合物を得ること、
b)前記式(XI)の化合物をメチルアミンと反応させて、式(XII)
【0112】
【0113】
(式中、R3及びmは、上で規定した通りである)
の化合物を得ること、
c)式(XIII)
【0114】
【0115】
(式中、R3及びkは、上で規定した通りである)
の化合物が得られるまで、ステップa)及びステップb)を繰り返すこと、
d)式(XIV)
【0116】
【0117】
(式中、kは上で規定した通りである)
の化合物を得るための開裂反応、
e)前記化合物(XIV)を、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物、ジグリコール酸無水物、チオジグリコール酸無水物、3-メチルグルタル酸無水物、3-3-ジメチルグルタル酸無水物又は4-メチルモルホリン-2,6-ジオンの少なくとも1つと反応させて、上で規定したような式(III)の単一分子量ホモポリマーを得る。
【0118】
前述のように、本発明のホモポリマーは、この技術に限定されることなく、LDC技術に有用である。
【0119】
従って、本発明はまた、以下の式(XV)を有するリガンド-薬物-複合体化合物(LDC)に関する:
【0120】
【0121】
(式中、Lは、(HPSMW)が(X-D)に対して直交の向きにあることを可能にする直交コネクタであり、
HPSMWは、前述のような本発明の単一分子量ホモポリマーの、前記直交コネクタLへの共有結合から生じ、
Dは薬物であり、特に、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)又はSN38等の細胞傷害性薬物であり、
Xは、Dを放出するための任意の切断可能な部分であり、
Zは任意のスペーサであり、
aは1以上であり、bは1以上であり、且つmは1以上である)。
【0122】
単一分子量ホモポリマー、特に単一分子量ポリサルコシンは、薬物ユニットに対して並列の(すなわち、直交)向きに移植されたとき、並列に移植された単一分子量ホモポリマーを含まないリガンド-薬物-複合体と比較して、複合体の効率的な疎水性マスキング特性、減少した見かけの疎水性、より良好な薬物動態特性、及び改善されたin vivo活性をもたらす。
【0123】
代替的な実施形態において、Dは、生物活性分子、抗癌剤等の治療用分子、造影剤、及びフルオロフォアから成る群から選択される。
【0124】
本発明の代替実施形態によれば、
aは整数であり、少なくとも1、好ましくは最大でも6、より好ましくは最大でも3、特に2、より特には1である、及び/又は、
bは整数であり、少なくとも1、好ましくは最大でも6、より好ましくは最大でも3、特に2、より特には1である、及び/又は、
mは整数であり、少なくとも1、好ましくは最大でも30、より好ましくは最大でも15、特に8、より特には4である。
【0125】
有利には、単一分子量ホモポリマーはポリサルコシンである。
【0126】
一実施形態において、Lとリガンドとの間、及び/又はLとHPSMWとの間及び/又はLとXとの間、及び/又はXとDとの間に、スペーサZがある。
【0127】
典型的には、(X-D)又は(D)ユニットがホモポリマーユニットに対して(直列構成ではなく)並列構成になるように、直交コネクタは、1つ以上のリンカーユニット構成要素を介して、放出可能なアセンブリ-薬物ユニット(X-D)又は薬物ユニット(D)を接続する。
【0128】
本発明はまた、式(XVI)を有する中間体化合物に関連する:
【0129】
【0130】
(式中、Lは、直交コネクタであり、
HPSMWは、本発明の単一分子量ホモポリマーの、前記直交コネクタLへの共有結合から生じ、
Dは、細胞傷害性薬物であり、
Xは、Dを放出するための任意の切断可能な部分であり、
Zは任意のスペーサであり、当該スペーサはリガンドに結合することができ、
aは1以上であり、且つbは0又は1以上である)。
【0131】
本開示はまた、式(XXIII)を有する化合物に関する:
【0132】
【0133】
式中、R6は、-C1-C10アルキレン-、-C1-C10ヘテロアルキレン-、-C3-C8カルボシクロ-、-O-(C1-C8アルキル)-、-アリーレン-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-、-C3-C8ヘテロシクロ-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-、-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C1-C10ヘテロアルキレン-C(=O)-、-C3-C8カルボシクロ-C(=O)-、-O-(C1-C8アルキル)-C(=O)-、-アリーレン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-C(=O)-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-C(=O)-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C3-C8ヘテロシクロ-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-C(=O)-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-NH-、-C1-C10ヘテロアルキレン-NH-、-C3-C8カルボシクロ-NH-、-O-(C1-C8アルキル)-NH-、-アリーレン-NH-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-NH-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-NH-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-NH-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-NH-、-C3-C8ヘテロシクロ-NH-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-NH-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-NH-、-C1-C10アルキレン-S-、-C1-C10ヘテロアルキレン-S-、-C3-C8カルボシクロ-S-、-O-(C1-C8アルキル)-)-S-、-アリーレン-S-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-S-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-S-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-S-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-S-、-C3-C8ヘテロシクロ-S-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-S-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-S-、-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C3-C8カルボシクロ-O-C(=O)-、-O-(C1-C8アルキル)-O-C(=O)-、-アリーレン-O-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-アリーレン-O-C(=O)-、-アリーレン-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8カルボシクロ)-O-C(=O)-、-(C3-C8カルボシクロ)-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C3-C8ヘテロシクロ-O-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-(C3-C8ヘテロシクロ)-O-C(=O)-、-(C3-C8ヘテロシクロ)-C1-C10アルキレン-O-C(=O)-であり、
R6基のいずれかは、-X、-R’、-O-、-OR’、=O、-SR’、-S-、-NR’2、-NR’3
+、=NR’、-CX3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N2、-N3、-NR’C(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’2、-SO3
-、-SO3H、-S(=O)2R’、-OS(=O)2OR’、-S(=O)2NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)2、-P(=O)(OR’)2、-PO3
-、-PO3H2、-C(=O)X、-C(=S)R’、-CO2R’、-CO2、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’2、C(=S)NR’2、及びC(=NR’)NR’2から選択される1つ以上の置換基で随意的に置換され、ここで、各Xは、独立してハロゲン(-F、-CI、-Br、又は-I)であり、各R’は、独立して-H、-C1-C20アルキル、-C6-C20アリール、又は-C3-C14複素環であり、
Zは、任意のスペーサであり、
Lは、直交コネクタであり、
Xは、Dを放出するための任意の切断可能な部分であり、
Dは、細胞傷害性薬物であり、
aは1以上であり、bは0又は1以上であり;
HPSMWは、本発明の単一分子量ホモポリマーの、上で規定したような前記直交コネクタLへの共有結合から生じる。
【0134】
好ましい実施形態によれば、HPSMWは、本発明のポリサルコシンホモポリマーの、前記直交コネクタLへの共有結合から生じる。この場合、式(XV)、式(XVI)及び式(XXIII)において、HPSMWは以下を表す:
【0135】
【0136】
(式中、波形結合は、存在する場合には、L又はスペーサZへの結合点を表し、
kは2以上であり、好ましくは、kは2~50であり、
R4はキャッピング基を表す)。
【0137】
有利には、R4が-R’、-O-、-OR’、-SR’、-S-、-NR’2、-NR’3
+、=NR’、-CX3、-CN、-NRC(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’2、-SO3
-、-SO3H、-S(=O)2R’、-OS(=O)2OR’、-S(=O)2NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)2、-P(=O)(OR’)2、-PO3
-、-PO3H2、-C(=O)X、-C(=S)R’、-CO2R’、-CO2、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’2、C(=S)NR’2、又はC(=NR’)NR’2を表し、ここで、各Xは独立してハロゲン:-F、-CI、-Br、又は-Iであり、各R’は独立して、-H、-C1-C20アルキル、-C6-C20アリール、又は-C3-C14複素環である。典型的には、R4は、-OR’、-NR’2、又は-C(=O)R’である。
【0138】
一実施形態において、本開示はまた、以下の式(XV)を有するリガンド-薬物-複合体化合物(LDC)に関する:
【0139】
【0140】
式中、リガンドは抗体であり、
Lは、HPSMWが(X-D)に対して直交の向きにあることを可能にする直交コネクタであり、天然又は非天然のアミノ酸、アミノアルコール、アミノアルデヒド、ポリアミン、及びそれらの組み合わせから選択され、
HPSMWは、以下を表し、
【0141】
【0142】
(式中、波形結合は、存在する場合には、L又はスペーサZへの結合点を表し、
kは2以上であり、好ましくは、kは2~50であり、
R4はキャッピング基を表す)、
Dは、薬物であり、特に、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)又はSN38等の細胞傷害性薬物であり、
Xは、Dを放出するための任意の切断可能な部分であり、
・ 1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸、例えば、2~12個のアミノ酸を含む、切断可能なペプチド、
・ 酸素グリコシド結合を介して自壊性基に結合した糖部分、
・ ジスルフィドリンカー、及び
・ リソソーム中で加水分解可能な、酸に不安定なリンカー
から選択された形態であり、
Zは任意のスペーサであり、LとXとの間、及び/又はXとDとの間、及び/又はLとHPSMWとの間、に存在することができ、アルキレン、ヘテロアルキレン;アルコキシ;ポリエーテル;1つ以上の天然又は非天然のアミノ酸;C3-C8ヘテロシクロ;C3-C8カルボシクロ;アリーレン、及びそれらの任意の組み合わせ、から選択され、
aは1以上であり、bは1以上であり、且つmは1以上である。
【0143】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つのLDC化合物及び薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物に関する。
【0144】
本開示はまた、薬剤として使用するための、前述のようなLDC化合物に関する。
【0145】
式(XXIII)の化合物は、マレイミド部分が、in vivoで、血清アルブミンのようなタンパク質と反応し得て、次いでリガンドとなるので、リガンドなしでそのまま使用することができる。従って、本開示はまた、薬剤として使用するための、前述のような式(XXIII)の化合物に関する。
【0146】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例12による疎水性相互作用クロマトグラムを表す。
【0147】
図2は、実施例13による疎水性相互作用クロマトグラムを表す。
【0148】
図3は、実施例14によるマウスにおける薬物動態特性を表す。
【0149】
図4Aは、実施例15による腫瘍体積を時間の関数で表す。
図4Bは、実施例15によるマウスの生存率を表す。
【0150】
図5は、実施例16によるマウスにおける薬物動態特性を表す。
【0151】
図6は、実施例17による腫瘍体積を時間の関数で表す。
【0152】
〔実施例〕
(材料及び全般的な方法)
全ての溶媒及び試薬は、市販の供給元(Sigma-Aldrich, Alfa Aesar, Fluorochem, Thermo Fisher, Carbosynth)から入手し、特に断らない限り、さらに精製することなく使用
した。無水DMF及びDCMは、Sigma-Aldrichから購入した。Fmoc-アミノ酸、2-クロロトリチル及びRinkアミド樹脂は、Novabiochemから購入した。モノメチルアウリスタチンE(MMAE)及び7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン(SN38)は、DCChemicalsから購入した。PNU159682は、Kerui Biotechnology Co.Ltd.から購入し、エキサテカンメシレートは、Angene Chemicalから購入した。ヒトアルブミン(cat# A3782)は、Sigma-Aldrichから購入した。抗CD19及び抗CD22抗体は、Euromedexから購入した。トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))はRocheから購入した。20μmポリエチレンフリット(Sigma-Aldrich)を備えた空のSPEプ
ラスチックチューブ中で、樹脂上での合成を行った。Titramax 101プラットフォームシェーカー(Heidolph)を撹拌に用いた。特に断らない限り、全ての化学反応は、不活性アルゴン雰囲気下、室温で行った。
【0153】
液体核磁気共鳴スペクトルを、較正のために残留溶媒ピークを使用して、Bruker Fourier 300HD分光計で記録した。質量分析は、University Claude Bernard Lyon 1のUMR5246 CNRS研究所のCentre Commun de Spectrometrie de Masse(CCSM)によって行われた。
【0154】
順相フラッシュクロマトグラフィーは、Teledyne Isco CombiFlash(登録商標)Companion(登録商標)装置又はTeledyne Isco CombiFlash(登録商標)Rf200装置上で、Int
erchim(球状HP 50μm)又はBiotage(登録商標)ZIP(登録商標)(50μm)シリカカートリッジのいずれかを用いて行った。逆相クロマトグラフィーは、Biotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ又はInterchim PuriFlash RP-AQ(30μm)カートリッジを用いて行った。化学反応及び化合物の特徴付けは
、それぞれ、プレコートされた40~63μmシリカゲル(Macherey-Nagel)、HPLC-UV(Agilent 1050)又はUHPLC-UV/MS(Bruker Impact II(商標)Q-ToF質量分析計を備えたThermo UltiMate 3000 UHPLCシステム、又はBruker MicrOTOF-QII質量分析計を備えたAgilent 1260 HPLCシステム)を用いた薄層クロマトグラフィーによってモニターし、分析した。
【0155】
HPLC法1:DAD検出を備えたAgilent 1050。移動相Aは水であり、移動相Bはアセトニトリルであった。カラムは、Agilent Zorbax SB-Aq 4.6×150mm 5μm(室温)であった。勾配は20分で5%B~95%Bであり、続いて95%Bで5分間保持した。流速は1.5mL/分であった。UV検出を214nmでモニターした。
【0156】
HPLC方法2:DAD検出を備えたAgilent 1050。移動相Aは水であり、移動相Bはアセトニトリルであった。カラムは、Agilent Zorbax SB-Aq 4.6×150mm 5μm(室温)であった。勾配は30分で0%B~50%Bであり、続いて50%Bで5分間保持した。流速は1.0mL/分であった。UV検出を214nmでモニターした。
【0157】
HPLC法3:HPLC法1と同じであるが、移動相A中に0.1%のTFAを含有する。
【0158】
HPLC法4:HPLC法2と同じであるが、移動相A中に0.1%のTFAを含有する。
【0159】
UHPLC方法5:Thermo UltiMate 3000 UHPLCシステム+Bruker impact II(商標)Q-ToF質量分析計。移動相Aは水+0.1%ギ酸であり、移動相Bはアセトニトリル+0.1%ギ酸であった。カラムは、Agilent PLRP-S 1000Å 2.1×150mm 8μm(80℃)であった。勾配は25分で10%B~50%Bであった。流速は0.4mL/分であった。UV検出を280nmでモニターした。Q-ToF質量分析計を、m/z範囲500~3500(ESI+)で使用した。Bruker Compass(登録商標)ソフトウェアに含まれるMaxEntアルゴリズムを用いてデータをデコンボリュートした。
【0160】
HPLC方法6:DAD検出を備えたAgilent 1050。移動相Aは水+5mMギ酸アンモニウムであり、移動相Bはアセトニトリルであった。カラムは、Agilent Poroshell 120EC-C18 3.0×50mm 2.7μm(室温)であった。勾配は10分間で5%B~90%Bであり、続いて90%Bで2分間保持した。流速は0.8mL/分であった。UV検出を214nmでモニターした。
【0161】
以下の実施例1~4は、本発明の単一分子量ポリサルコシンの合成を例示し、この合成は、種々の固相合成方法を含む本発明の一部である。
【0162】
実施例1:ポリサルコシン化合物の合成(樹脂上合成法1)
反応スキームを以下に記載する。
【0163】
【0164】
1.1)全般的な方法
20μmポリエチレンフリット(Sigma-Aldrich)を備えた空のSPEプラスチックチューブ中で樹脂上合成を行った。Titramax 101プラットフォームシェーカー(Heidolph)を撹拌に用いた。報告された全ての合成収率は、0.63mmol/g(製造業者によって示された標識の程度)の最初の理論上の樹脂ローディングに基づく。特に明記しない限り、全ての反応は室温で行った。
【0165】
1.2)樹脂ローディング
典型的には、500mgのNovaGEL(商標)Rinkアミドビーズ(0.63mmol/g、Novabiochem)を5mLのDMF中で15分間膨潤させた。最初のモノマーは、10当量ブロモ酢酸と13当量のジイソプロピルカルボジイミド(Sigma-Aldrich)を5mLのDMF中において室温で60分間反応させて加えた後、DMFで十分に洗浄した(5回5mL)。ブロモアセチル化された樹脂を、シェーカープラットフォーム上で、40%(wt)メチルアミン水溶液(Sigma-Aldrich)5mLと共に30分間インキュベートし、続いてDMF(5回5mL)及びDCM(5回5mL)で十分に洗浄した。得られた樹脂は、伸長の準備ができていた。
【0166】
1.3)ポリサルコシン化合物の伸長
所望の長さが得られるまで、ブロモアセチル化工程とアミン置換段階工程とを交互に行うことにより、ポリサルコシンオリゴマーの伸長を行った。ブロモアセチル化工程は、5mLのDMF中に10当量のブロモ酢酸及び13当量のジイソプロピルカルボジイミドを加えることによって行った。混合物を30分間撹拌し、排水し、DMF(4回5mL)で洗浄した。アミン置換工程のために、40%(重量)メチルアミン(Sigma-Aldrich)水溶液5mLを加え、容器を30分間振盪し、排出し、DMF(4回5mL)及びDCM(4回5mL)で洗浄した。
【0167】
1.4)樹脂からの切断
ポリサルコシンオリゴマーの切断は、5mLのTFA/トリイソプロピルシラン(95:5)溶液を用いて、室温において撹拌下で行った。樹脂を濾過し、得られた溶液を減圧下で蒸発させて、油状透明物質を得た。
【0168】
この段階で、PSARn-N(CH3)Hを精製のために水中に溶解するか(下記参照)、又は最終的な官能基化に関与させた。
【0169】
1.5)最終的な官能基化
PSARn-CH2-CH2-COOH化合物を得るために、オリゴマーのN端末を、無水アセトニトリル中の、2.5当量の無水コハク酸及び10当量のDIPEAを用いて官能化した。混合物を室温で1時間撹拌し、揮発性物質を減圧下で除去した。
【0170】
1.6)精製
PSAR化合物を、Interchim(登録商標)RP-AQ(30μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。勾配は0~30%Bの範囲であった。
【0171】
1.7)単一分子量ポリサルコシン化合物
以下の表1に、得られたPSAR化合物を列挙する。
【0172】
【0173】
実施例2:ポリサルコシン化合物の合成(樹脂上合成法2)
反応スキームを以下に記載する。
【0174】
【0175】
2.1)全般的な方法
20μmポリエチレンフリット(Sigma-Aldrich)を備えた空のSPEプラスチックチューブ中で樹脂上合成を行った。Titramax 101プラットフォームシェーカー(Heidolph)を撹拌に使用した。報告された全ての合成収率は、1.1mmol/g(製造業者によって示される標識の程度)の最初の樹脂ローディングに基づく。特に明記しない限り、全ての反応は室温で行った。
【0176】
2.2)Fmoc-Sar-Sar-OHの合成
【0177】
【0178】
2.2.1)Fmoc-Sar-Sar-OtBuの合成
Fmoc-Sar-OH(2000mg/6.42mmol)及びHATU(2443mg/6.42mmol)を丸底フラスコ中の無水DMF28mLに溶解した。DIPEA(2491mg/19.27mmol)を加え、混合物を室温で3分間撹拌した。次いで、塩酸サルコシンtert-ブチルエステル(1167mg/6.42mmol)を加え、反応混合物を室温で90分間撹拌した。揮発性物質を真空下で除去し、残渣を水で希釈し、EtOAcで3回抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させて、固形の粗生成物を得た。粗生成物をEtOAc/DCM80:20(v/v)に溶解し、白色不溶性物質を濾過により除去した。濾液をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、勾配60:40~20:80)により精製して、Fmoc-Sar-Sar-OtBu(2310mg/82%)を白色固体として得た。HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=439.2227;Exp[M+H]+=439.2234;Error=-1.5ppm。HPLC法1保持時間=13.3分。100%EtOAcで溶出したTLC:Rf=0.8。
【0179】
2.2.2)tert-ブチルエステル除去
Fmoc-Sar-Sar-OtBu(2310mg/5.27mmol)を20mLのDCMに溶解し、8.5mLのTFAをゆっくりと加えた。水溶液を、完全なtert-ブチルエステル脱保護がHPLCによって観察されるまで(約2時間)、室温で撹拌した。次いで、揮発性物質を真空下で除去し、残渣をジエチルエーテルと共に粉砕して、Fmoc-Sar-Sar-OH(1690mg/84%)を白色固体として得た。1H NMR(500MHz、DMSO-d6、100℃)δ(ppm)2.84(s、3H)、2.93(s、3H)、4.01(s、2H)、4.05(s、2H)、4.25(t、J=4.3Hz、1H)、4.34(d、J=6.4Hz、2H)、7.33(t、J=7.4Hz、2H)、7.41(t、J=7.4Hz、2H)、7.63(d、J=7.4Hz、2H)、7.85(d、J=7.5Hz、2H)。HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=383.1601;Exp[M+H]+=383.1602;Error=0.0ppm。HPLC法1保持時間=6.2分。DCM/MeOH 85:15(v/v)で溶出したTLC:Rf=0.65。
【0180】
2.3)樹脂ローディング
典型的には、1000mgの2-クロロトリチルクロライド樹脂ビーズ(100~200メッシュ、1%DVB、1.1mmol/g、Novabiochem)を10mLのDCM中で10分間膨潤させた。予め乾燥DCM10m中に溶解したFmoc-Sar-OH(1.2当量)を樹脂上に加えた。DIPEA(5当量)を加え、反応容器を室温で2時間撹拌した。排出後、樹脂をDCM(3回)、DMF(2回)、DCM(3回)、及びMeOH(2回)で洗浄した。樹脂を高真空下で一晩乾燥させた。置換レベルを、樹脂の重量増加及び/又はFmoc切断試験(301nmでの吸光度測定)から評価し、準定量的(通常、0.95~1.1mmol/g)であることが見出された。樹脂はさらに使用するまで-20℃で保存した。
【0181】
2.4)Fmoc-Sar-Sar-OHカップリング法
樹脂をDMF中、20%ピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)で、室温で15分間、2回処理した。次いで、樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。樹脂にDMF中、Fmoc-Sar-Sar-OH(3当量)、HATU(2.85当量)、及びDIPEA(6当量)の溶液を加えた(樹脂100mg当たり1mL)。反応容器を2時間撹拌し、樹脂をDMF(5回)及びDCM(5回)で十分に洗浄した。樹脂を真空下で乾燥させ、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0182】
2.5)ポリサルコシン化合物の伸長
樹脂をDMF中、20%ピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)で、室温で15分間、2回処理した。次いで、樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0183】
所望の長さが得られるまで、ブロモアセチル化工程とアミン置換工程とを交互に行うことにより、ポリサルコシンオリゴマーの伸長を行った。ブロモアセチル化工程は、10当量のブロモ酢酸及び13当量のジイソプロピルカルボジイミドをDMF(樹脂100mg当たり2mL)中に添加することによって行った。混合物を30分間撹拌し、排出し、DMFで洗浄した(4回)。アミン置換工程のために、40%(重量)メチルアミン水溶液を加え(樹脂100mg当たり1.5mL)、容器を30分間振盪し、排出し、DMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0184】
2.6)最終的なアセチル化
所望のオリゴマーの長さが得られたときに、無水酢酸/DIPEA/DMF(1:2:3v/v)から成るキャッピング溶液を用いてN端末をアセチル化した(容器を30分間振盪した)。溶液を排出し、新しいキャッピング溶液で反応を1回繰り返した。樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0185】
2.7)樹脂切断
樹脂からのポリサルコシンオリゴマーの切断は、HFIP/DCM(20:80v/v)溶液を用いて30分間撹拌下で行った。樹脂を濾過し、揮発性物質を減圧下で除去して、固体の粗生成物を得た。
【0186】
2.8)精製
PSAR化合物を、Interchim(登録商標)RP-AQ(30μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.1%TFAであった。
【0187】
2.9)単一分子量ポリサルコシン化合物
以下の表2に、得られたPSAR化合物を列挙する。
【0188】
【0189】
実施例3:1つ又はいくつかのアジド官能化直交コネクタを有するポリサルコシン化合物の合成(樹脂上合成法3)
反応スキームを以下に記載する。
【0190】
【0191】
3.1)全般的な方法
20μmポリエチレンフリット(Sigma-Aldrich)を備えた空のSPEプラスチックチューブ中で樹脂上合成を行った。Titramax 101プラットフォームシェーカー(Heidolph)を撹拌に使用した。報告された全ての合成収率は、1.1mmol/g(製造業者によって示される標識の程度)の最初の樹脂ローディングに基づく。特に明記しない限り、全ての反応は室温で行った。出発物質を前記実施例2に記載したようにして得た。
【0192】
3.2)工程(1)
DMF中の3Mの2-アジドエタン-1-アミン溶液を加え(樹脂100mg当たり1mL)、容器を45分間振盪し、排出し、DMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0193】
3.3)工程(2)
樹脂に、DMF中、市販の2-[4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル]酢酸(5当量)、COMU(4.9当量)、及びDIPEA(4.9当量)の溶液を加えた(樹脂100mg当たり1mL)。反応容器を90分間撹拌し、樹脂をDMF(3回)及びDCM(3回)で洗浄した。
【0194】
3.4)工程(3)
樹脂からの目的の化合物の切断を、DCM(v/v)溶液中の1%TFAを用いて、撹拌下で5分間行った(2回繰り返した)。樹脂を濾過し、揮発性物質を減圧下で除去して固体粗生成物を得て、これを前記実施例2に記載のプロトコルを用いて精製した。
【0195】
3.5)工程(4)
ブロモアセチル化工程は、10当量のブロモ酢酸及び13当量のジイソプロピルカルボジイミドをDMF(樹脂100mg当たり2mL)中に加えることによって行った。混合物を30分間撹拌し、排出し、DMFで洗浄した(4回)。アミン置換工程のために、30%(wt)アンモニア水溶液を添加し(樹脂100mg当たり2mL)、容器を30分間振盪し、排出し、DMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。この段階で、化合物を樹脂から切断し(工程(3)に記載のように)、前記実施例2に記載のプロトコルを用いて精製した。
【0196】
3.6)工程(5)
最終的なブロモアセチル化工程は、DMF中、10当量のブロモ酢酸及び13当量のジイソプロピルカルボジイミドを加えることによって行った(樹脂100mg当たり2mL)。混合物を30分間撹拌し、排出し、DMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。この段階で、化合物を樹脂から切断し(工程(3)に記載のように)、前記実施例2に記載のプロトコルを用いて精製した。
【0197】
3.7)工程(6)
ブロモアセチル化工程は、10当量のブロモ酢酸及び13当量のジイソプロピルカルボジイミドをDMF(樹脂100mg当たり2mL)中に加えることによって行った。混合物を30分間撹拌し、排出し、DMFで洗浄した(4回)。アミン置換工程のために、40%(重量)メチルアミン水溶液を加え(樹脂100mg当たり1.5mL)、容器を30分間振盪し、排出し、DMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0198】
3.8)工程(7)
ブロモアセチル化工程は、DMF中、10当量のブロモ酢酸及び13当量のジイソプロピルカルボジイミドを加えることによって行った(樹脂100mg当たり2mL)。混合物を30分間撹拌し、排出し、DMFで洗浄した(4回)。アミン置換工程のために、DMF中、3Mの2-アジドエタン-1-アミン溶液を加え(樹脂100mg当たり1mL)、容器を45分間振盪し、排出し、DMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0199】
3.9)工程(8)
樹脂に、DMF中、市販の2-[4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル]酢酸(5当量)、COMU(4.9当量)、及びDIPEA(4.9当量)の溶液を加えた(樹脂100mg当たり1mL)。反応容器を90分間撹拌し、樹脂をDMF(3回)及びDCM(3回)で洗浄した。この段階で、化合物を樹脂から切断し(工程(3)に記載のように)、前記実施例2に記載のプロトコルを用いて精製した。
【0200】
3.10)単一分子量ポリサルコシン化合物
以下の表3に、得られたPSAR化合物を列挙する。
【0201】
【0202】
実施例4:末端非直交アジド官能化コネクタを有するポリサルコシン化合物の合成(樹脂上合成方法4)
反応スキームを以下に記載する。
【0203】
【0204】
4.1)全般的な方法
20μmポリエチレンフリット(Sigma-Aldrich)を備えた空のSPEプラスチックチューブ中で樹脂上合成を行った。Titramax 101プラットフォームシェーカー(Heidolph)を撹拌に使用した。報告された全ての合成収率は、0.47mmol/g(製造業者によって示された標識の程度)の最初の理論樹脂ローディングに基づく。特に明記しない限り、全ての反応は室温で行った。
【0205】
4.2)樹脂ローディング
典型的には、500mgのRamage ChemMatrix(登録商標)ビーズ(0.47mmol/g、Sigma-Aldrich)を5mLのDCM中で15分間膨潤させた。樹脂をDMF中、20%ピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)で、室温で15分間2回処理した。次いで、樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。樹脂に、DMF中、Fmoc-L-γ-アジドホモアラニンOH(3当量)、HATU(2.9当量)、及びDIPEA(6当量)の溶液を加えた(樹脂100mg当たり1ml)。反応容器を1.5時間撹拌し、樹脂をDMF(5回)及びDCM(5回)で十分に洗浄した。未反応部位を、無水酢酸/DIPEA/DMF(1:2:3v/v)から成るキャッピング溶液を用いてアセチル化した(容器を30分間振盪した)。溶液を排出し、樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。樹脂をDMF中、20%ピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)で、室温で15分間2回処理した。次いで、樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0206】
4.3)Fmoc-Sar-Sar-OHカップリング法
樹脂にDMF中、Fmoc-Sar-Sar-OH(4当量)、HATU(3.9当量)、及びDIPEA(8当量)の溶液を加えた(樹脂100mg当たり1ml)。反応容器を2時間撹拌し、樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で十分に洗浄した。樹脂をDMF中、20%ピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)で、室温で15分間2回処理した。次いで、樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0207】
4.4)ポリサルコシン化合物の伸長
所望の長さが得られるまで、ブロモアセチル化工程とアミン置換工程とを交互に行うことにより、ポリサルコシンオリゴマーの伸長を行った。ブロモアセチル化工程は、DMF中、10当量のブロモ酢酸及び13当量のジイソプロピルカルボジイミドを加えることによって行った(樹脂100mg当たり2mL)。混合物を30分間撹拌し、排出し、DMFで洗浄した(4回)。アミン置換工程のために、水溶液中40%(重量)メチルアミンを添加し(樹脂100mg当たり1.5mL)、容器を30分間振盪し、排出し、DMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0208】
4.5)工程(6)
樹脂に、DMF中、市販の2-[4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル]酢酸(5当量)、COMU(4.9当量)及びDIPEA(4.9当量)の溶液を加えた(樹脂100mg当たり1mL)。反応容器を90分間撹拌し、樹脂をDMF(3回)及びDCM(3回)で洗浄した。
【0209】
4.5)樹脂からの切断及び精製
樹脂からのオリゴマーの切断は、5mLのTFA/DCM(50:50)溶液を用いて、室温、撹拌下で30分間行った。この工程を1回繰り返し、プールした濾液を減圧下で蒸発させて固体粗生成物を得て、これを前記実施例2に記載したように精製した。
【0210】
4.6)単一分子量ポリサルコシン化合物
以下の表4に、得られたPSAR化合物を列挙する。
【0211】
【0212】
実施例5:アジド官能化直交コネクタを有するポリエチレングリコール(PEG)化合物の合成(樹脂上合成方法5)
反応スキームを以下に記載する。
【0213】
【0214】
5.1)全般的な方法
20μmポリエチレンフリット(Sigma-Aldrich)を備えた空のSPEプラスチックチューブ中で樹脂上合成を行った。Titramax 101プラットフォームシェーカー(Heidolph)を撹拌に用いた。報告された全ての合成収率は、1.1mmol/g(製造業者によって示される標識の程度)の最初の樹脂ローディングに基づく。特に明記しない限り、全ての反応は室温で行った。
【0215】
5.2)樹脂ローディング
典型的には、200mgの2-クロロトリチルクロリド樹脂ビーズ(100~200メッシュ、1%DVB、1.1mmol/g、Novabiochem)を4mLのDCM中で10分間膨潤させた。Fmoc-PEG12-CH2CH2COOH(PurePEG(商標)、1.2当量)を、あらかじめ2mLの乾燥DCMに予め溶解して、樹脂に加えた。DIPEA(3当量)を加え、反応容器を室温で1時間撹拌した。300μLのMeOHを加え、未反応樹脂をクエンチした。10分間振盪した後、溶液を排出し、樹脂をDMF(3回)及びDCM(3回)で洗浄した。樹脂を高真空下で乾燥させた。
【0216】
5.2)工程(1)
樹脂をDMF中、20%ピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)で、室温で15分間2回処理した。次いで、樹脂をDMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。ブロモアセチル化工程は、DMF中、10当量のブロモ酢酸及び13当量のジイソプロピルカルボジイミドを加えることによって行った(樹脂100mg当たり2mL)。混合物を30分間撹拌し、排出し、DMFで洗浄した(4回)。アミン置換工程のために、DMF中、3Mの2-アジドエタン-1-アミンの溶液を加え(樹脂100mg当たり1mL)、容器を45分間振盪し、排出し、DMF(4回)及びDCM(4回)で洗浄した。
【0217】
5.3)ステップ(2)
2-[4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル]酢酸カップリング法及び樹脂からの切断を前記実施例3に記載したように行い、化合物の精製を前記実施例2に記載したように行った。
【0218】
5.4)単一分子量PEG化合物
以下の表5に、得られたPEG化合物を列挙する。
【0219】
【0220】
実施例6:MMAE、SN38、エキサテカン及びPNU159682ベースの中間体化合物の合成
6.1)化合物アルキン-グルクロニド-MMAEの合成
【0221】
【0222】
出発物質110.8mg(0.087mmol)(Renoux et al., Chem. Sci., 2017,
8(5), 3427-3433に記載されるように合成)を0℃でMeOH(10mL)に溶解した。LiOH一水和物(36.7mg/0.87mmol)を水(1mL)に溶解し、反応容器にゆっくりと加えた。0℃で70分間撹拌した後、混合物を酢酸(68.2mg/1.14mmol)で中和し、減圧下で濃縮した。得られた物質を水/MeOH/DMF水溶液(1:1:1v/v)に溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。勾配は10~60%Bの範囲であった。
【0223】
化合物アルキン-グルクロニド-MMAE(2つのジアステレオ異性体の混合物)を白色固体として得た(95mg/96%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=1127.5758;Exp[M+H]+=1127.5757;Error=0.1ppm。HPLC法3保持時間=10.3分。
【0224】
6.2)化合物アルキンr-グルクロニド-b(MMAE)2の合成
【0225】
【0226】
6.2.1)化合物アルキン-グルクロニド-(PNP)2の合成
165mg(0.240mmol)の出発物質(Renoux et al., Chem. Sci., 2017, 8 (5), 3427-3433)、64.2mg(0.419mmol)の市販の4-アミノ-3-(ヒ
ドロキシメチル)フェニルメタノール及び40.7mg(0.300mmol)のHOBtを無水DMFに溶解した。50℃で3時間撹拌した後、揮発性物質を蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、勾配40:60~0:100)によって精製して、中間体ジオール化合物を黄色の泡状物質として得た。
【0227】
無水ピリジン(4モル当量)を、無水DCM中クロロギ酸4-ニトロフェニル(4モル当量)の冷却溶液(0℃)に滴下した。混合物を0℃で15分間撹拌した。DCM中の先の中間体ジオール化合物(1モル当量)の水溶液を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。反応をNaClの飽和溶液でクエンチし、DCMで3回抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて固体粗生成物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、勾配60:40~30:70)で精製して、化合物アルキン-グルクロニド-(PNP)2(52mg/21%、2工程で)を白色固体として得た。1H NMR(300MHz、CDCl3)δ(ppm)2.04(s、3H)、2.06(s、3H)、2.11(d、J=2.0Hz、3H)、2.71-2.92(m、2H)、3.72(s、3H)、4.11(q、J=7.1Hz、1H)、4.22(d、J=8.6Hz、1H)、5.18-5.41(m、8H)、5.87(t、J=6.5Hz、1H)、7.31-7.41(m、5H)、7.45-7.55(m、2H)、7.56-7.71(m、2H)、7.83(d、J=8.2Hz、1H)、7.89(s、1H)、8.21-8.32(m、4H)。HRMS m/z(ESI+):Calc[M+Na]+=1055.1925;Exp[M+Na]+=1055.1955;Error=-2.9ppm。
【0228】
6.2.2)化合物アルキン-グルクロニド-(MMAE)2の合成
52mg(0.050mmol)の先の化合物アルキン-グルクロニド-(PNP)2、13.7mg(0.100mmol)のHOBt及び74.1mg(0.103mmol)のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を、無水DMF/ピリジンの8:2(v/v)の混合物1mLに溶解した。反応物を室温で24時間撹拌し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗生成物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH勾配97:3~90:10)により精製して、77mg(70%)の中間体化合物を得て、これを広範な特徴付けなしに脱保護工程に直接関与させた。この化合物77mg(0.035mmol)を0℃でMeOH(7mL)に溶解した。LiOH一水和物(14.7mg/0.350mmol)を水(0.7mL)に溶解し、反応容器にゆっくりと加えた。0℃で60分間撹拌した後、混合物を酢酸(27.4mg/0.457mmol)で中和し、減圧下で濃縮した。得られた物質を水/MeOH/DMF溶液(1:1:1v/v)に溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。
【0229】
化合物アルキン-グルクロニド-(MMAE)2(2つのジアステレオ異性体の混合物)を白色固体として得た(40mg/56%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1025.5623;Exp[M+2H]2+=1025.5599;Error=2.4ppm。HPLC法3保持時間=13.0分。
【0230】
6.3)化合物アルキン-val-cit-PAB-MMAEの合成
【0231】
【0232】
58mg(0.052mmol)の出発物質(Tang et al., Org. Biomol. Chem., 2016, 14(40), 9501-9518に記載されるように合成される)及び15mg(0.077mmo
l)の4-ペンチン酸スクシンイミジルエステルを3mLの無水DCMに溶解した。16.7mg(0.129mmol)のDIPEAを添加し、反応物を室温で、アルゴン雰囲気下で16時間撹拌した。次いで、揮発性物質を減圧下で除去し、得られた物質をDMF溶液に溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.1%TFAであった。勾配は25~70%Bの範囲であった。
【0233】
化合物アルキン-val-cit-PAB-MMAEを白色固体として得た(21mg/34%)。ESI+[M+Na]+=1225.7。HPLC法3保持時間=9.0分。
【0234】
6.4)化合物アルキン-SN38の合成
【0235】
【0236】
156mg(0.308mmol)の出発物質TBDMS-SN38(Moon et al., JMed. Chem., 2008, 51(21), 6916-6926に記載されるように合成)、113mg(0.924mmol)の4-(ジメチルアミノ)ピリジン、及び75mg(0.369mmol
)のクロロギ酸4-ニトロフェニルを8mLの無水DCMに溶解した。溶液を室温で90分間撹拌し、水中5%酢酸で希釈し、DCMで3回抽出した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて黄色固形物を得て、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0237】
この黄色固体175mg(0.261mmol)を無水DMF4mLに溶解し、プロパルギルアミン43mg(0.782mmol)をゆっくりと加えた。反応物をアルゴン雰囲気下、室温で16時間撹拌した。揮発性物質を真空下で除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、勾配40:60~0:100)により精製して、化合物アルキン-SN38(71mg/56%)を明黄色固体として得た。HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=474.1660;Exp[M+H]+=474.1664;Error=-0.9ppm。HPLC法3保持時間=9.7分。100%EtOAcで溶出したTLC:Rf=0.15。
【0238】
6.5)化合物アルキングルクロニド-SN38の合成
【0239】
【0240】
50mg(0.074mmol)の出発物質TBDMS-SN38-OPNP(先のセクション6.4に記載されるように合成)及び5mg(0.037mmol)のHOBtを反応容器中で秤量した。予め無水DMF/ピリジンの8:2(v/v)の混合物1mLに溶解したtert-ブチル(2-((2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)アミノ)エチル)(メチル)カルバメート(WO2011/133039に記載のように合成)58.5(0.223mmol)を反応容器に加えた。反応物を室温で16時間撹拌し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗生成物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH勾配98:2~90:10)により精製して、48mg(95%)の中間体化合物(黄色固体)を得て、これを脱保護工程に直接使用した。HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=681.3130;Exp[M+H]+=681.3113;Error=2.5ppm。
【0241】
48mg(0.071mmol)のこの化合物を2mLのDCMに溶解し、500μLのTFAを加えた。溶液を室温で90分間撹拌し、揮発性物質を減圧下で除去した。粗生成物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH勾配94:6~80:20)により精製して、39.8mg(96%)の化合物SN38-メチルアミンを黄色固体として得た。HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=581.2606;Exp[M+H]+=581.2601;Error=0.8ppm。HPLC法3保持時間=7.7分。
【0242】
48mg(0.069mmol)の出発物質(Renoux et al., Chem. Sci., 2017, 8(5), 3427-3433に記載されるように合成)、39.8mg(0.069mmol)の先の化
合物SN38-メチルアミン及び9.3mg(0.069mmol)のHOBtを、1.5mLの無水DMF/ピリジンの8:2(v/v)の混合物に溶解した。反応物を室温で16時間撹拌し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗生成物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH勾配98:2~95:5)によって精製して、57mg(74%)の中間体化合物(黄色固体)を得て、これを脱保護工程に直接使用した。ESI+[M+H]+=1130.4。
【0243】
この化合物57mg(0.050mmol)を0℃でMeOH(6mL)に溶解した。LiOH一水和物(21.2mg/0.504mmol)を水(0.6mL)に溶解し、反応容器にゆっくりと加えた。0℃で70分間撹拌した後、混合物を酢酸(39.4mg/0.656mmol)で中和し、減圧下で濃縮した。得られた物質を水/MeOH/DMF溶液(1:1:1v/v)に溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。勾配は10~60%Bの範囲であった。
【0244】
化合物アルキン-グルクロニド-SN38を黄色固体として得た(20.5mg/42%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=990.3251;Exp[M+H]+=990.3210;Error=4.1ppm。HPLC法3保持時間=8.2分。
【0245】
6.6)化合物アルキン-グルクロニド-エキサテカンの合成
【0246】
【0247】
132.1mg(0.192mmol)の出発物質(Renoux et al., Chem. Sci., 2017, 8(5), 3427-3433に記載されるように合成)、102mg(0.192mmol)のエ
キサテカンメシレート及び26mg(0.192mmol)のHOBtを、無水DMF/ピリジンの8:2(v/v)の混合物1mLに溶解した。反応物を室温で16時間撹拌し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗生成物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH勾配98:2~90:10)により精製して、165mg(87%)の中間体化合物(黄色固体)を得て、これを脱保護工程に直接使用した。ESI+[M+H]+=985.3。
【0248】
この化合物165mg(0.168mmol)を0℃でMeOH/THF 1:1v/v(16mL)に溶解した。LiOH一水和物(70.3mg/1.675mmol)を水(1.6mL)に溶解し、反応容器にゆっくりと加えた。0℃で70分間撹拌した後、混合物を酢酸(131mg/2.18mmol)で中和し、減圧下で濃縮した。得られた物質を水/MeOH/DMF溶液(1:1:1v/v)に溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。勾配は10~50%Bの範囲であった。
【0249】
化合物アルキン-グルクロニド-エキサテカンを黄色固体として得た(98mg/69%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=845.2312;Exp[M+H]+=845.2360;Error=-4.8ppm。HPLC法3保持時間=8.0分。
【0250】
6.7)化合物アルキン-PNU159682の合成
【0251】
【0252】
6.7.1)N-(2-((2-アミノエチル)アミノ)-2-オキソエチル)プロピオールアミドの合成
762mg(4.54mmol)のグリシンtert-ブチルエステル塩酸塩、318.3mg(4.54mmol)のプロピオール酸、及び61.4mg(0.454mmol)のHOBtを5mLの無水DMFに溶解した。1103mg(10.9mmol)のDIPEAを加え、溶液を氷上(0℃)で撹拌した。871mg(4.54mmol)のEDC塩酸塩を無水DMF12mLで懸濁し、反応容器に加えた。混合物を暗所で、室温で16時間撹拌した。次いで、揮発性物質を減圧下で除去した。NH4Clの飽和溶液を加え、DCMで3回抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗生成物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc勾配80:20~50:50)によって精製して、255mg(31%)のtert-ブチルプロピオロイルグリシネートを透明な油として得た。MS(ESI+):[M+H]+=184.0;石油エーテル/EtOAc(40:60v/v)で溶出し、KMnO4で染色した:Rf=0.75。
【0253】
255mg(1.39mmol)のtert-ブチルプロピオロイルグリシネートを5mLのDCM/TFA(1:1v/v)溶液に溶解した。脱保護反応はTLC分析によって評価されるように、室温で1時間撹拌した後に完了した。揮発性物質を減圧下で除去して、油状残渣として188mg(105%)のプロピオロイルグリシンを得て、これを精製せずに次の工程に使用した。
【0254】
178mg(1.40mmol)のプロピオロイルグリシン及び504.8mg(1.33mmol)のHATUを3mLの無水DMFに溶解した。180.6mg(1.40mmol)のDIPEAを加え、反応物を室温で5分間撹拌した。次いで、先に無水DMF1mに溶解した291mg(1.82mmol)のN-Boc-エチレンジアミンを加え、反応混合物を暗所で、室温で30分間撹拌した。次いで、揮発性物質を減圧下で除去した。NH4Clの飽和溶液を加え、DCMで3回抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗生成物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc勾配20:80~0:100)によって精製して、204mg(54%)のtert-ブチル(2-(2-プロピオールアミドアセトアミド)エチル)カルバメートをわずかに黄色の油として得た。MS(ESI+):[M+H]+=270.1、100%EtOAcで溶出し、KMnO4で染色したTLC:Rf=0.35。
【0255】
204mg(0.758mmol)のtert-ブチル(2-(2-プロピオールアミドアセトアミド)エチル)カルバメートを5mLのDCM/TFA(7:3v/v)溶液に溶解した。脱保護反応はTLC分析によって評価されるように、室温で45分間撹拌した後に完了した。揮発性物質を高真空下で一晩除去して、196mg(92%)のN-(2-((2-アミノエチル)アミノ)-2-オキソエチル)プロピオールアミドTFA塩をわずかに黄色の濃いワックスとして得た。1H NMR(300MHz、DMSO-d6)δ(ppm)2.84(q、J=6.2Hz、2H)、3.29(q、J=6.3Hz、2H)、3.72(d、J=6.0Hz、2H)、4.20(s、1H)、7.78(br.s、3H)、8.12(t、J=5.6Hz、1H)、8.94(t、J=5.9Hz、1H)。MS(ESI+):[M+H]+=170.0。
【0256】
6.7.2)アルキン-PNU159682の合成
25mg(0.040mmol)のPNU159692カルボン酸誘導体(WO/2016/040825に記載されるように合成された紫色固体、前記化学構造を参照のこと)及び15.1mg(0.040mmol)のHATUを、丸底フラスコ中の1mLの無水DMFに溶解した。10.2mg(0.080mmol)のDIPEAを加え、混合物を室温で2分間撹拌した。13.4mg(0.047mmol)のN-(2-((2-アミノエチル)アミノ)-2-オキソエチル)プロピオールアミドTFA塩(予め500μLの無水DMFに溶解した)を加え、反応混合物を室温で5分間撹拌した。高真空下で揮発性物質を除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH、勾配99:1~90:10)によって精製して、14.7mg(49%)のアルキン-PNU159682を赤色固体として得た。HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=779.2770;Exp[M+H]+=779.2758;Error=1.5ppm。HPLC法6保持時間=5.4分。
【0257】
実施例7:直交部分としてグルタミン酸を用いたポリサルコシンベースの薬物複合体リンカーの合成
反応スキームを以下に記載する。
【0258】
【0259】
7.1)エチレンジアミンの樹脂ローディング
500mgの2-クロロトリチルクロリド樹脂ビーズ(100~200メッシュ、1%DVB、1.1mmol/g、0.55mmolスケール、Novabiochem)を5mLのDCM中で10分間膨潤させ、5当量(2.75mmol、165.3mg)のエチレンジアミン(Sigma-Aldrich)を加え、混合物を室温で4時間振盪し、続いてDCMで十分に洗浄した(5回5mL)。樹脂上の未反応部位を、DCM/MeOH/DIPEA(17:2:1v/v)溶液を用いてキャップした(20分間処理)。樹脂をDCM(5回5mL)及びMeOH(5回5mL)で十分に洗浄し、真空下で乾燥させ、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0260】
7.2)Fmoc-Glu(OAll)-OHカップリング
脱保護されたN末端(1当量)を含有する樹脂に、DMF中、Fmoc-Glu(OAll)-OH(3当量)、HATU(2.85当量)、及びDIPEA(6当量)の溶液を加えた(樹脂100mg当たり1mL)。反応容器を2時間撹拌し、樹脂をDMF(5回3mL)及びDCM(5回3mL)で十分に洗浄した。反応の完全性は、陰性Kaiserテストによって確認した。樹脂を真空下で乾燥させ、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0261】
7.3)アロック保護基除去
樹脂をDCMに懸濁し(樹脂100mg当たり4mL)、混合物を、フリットディスクの下から導入したアルゴン流によって穏やかに撹拌した。フェニルシラン(20当量)を加え、撹拌を5分間続けた後、Pd(PPh3)4(0.25当量)を加えた。アルゴン流下、室温での混合物の撹拌を、光からの保護下、30分間続けた後、溶液を排出した。フェニルシラン及びPd(PPh3)4での処理を1回繰り返し、樹脂をDCM(5回5mL)、DMF(5回5mL)、及びMeOH(5回5mL)で十分に洗浄した。樹脂を真空下で乾燥させ、さらに使用するまで-20℃で保存した。樹脂ローディングを評価し(Fmoc切断テスト、301nmでの吸光度測定)、通常0.70~0.80mmol/gであった。
【0262】
7.4)(2R,3R,4R,5S,6R)-6-(2-(3-アミノプロパンアミド)-4-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-(2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(NH2-グルクロニド-MMAE)結合法
脱保護されたカルボン酸基(1当量)を含有する樹脂に、DMF中、HATU(4当量)及びDIPEA(4.2当量)の溶液を添加した。反応容器を25分間撹拌し、排出し、樹脂をDMFで洗浄した(4回5mL)。次いで、樹脂にDMF中、1.5当量の化合物(2R,3R,4R,5S,6R)-6-(2-(3-アミノプロパンアミド)-4-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-(2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(「NH2-グルクロニド-MMAE」;Jeffrey SC et al., Bioconjug. Chem., 2006, 17(3), 831-840に記載されているように合成した)及びDIPEA(3.2当量)を加えた。反応容器を3時間撹拌し、排出し、DMF(5回3mL)及びDCM(5回3mL)で洗浄した。樹脂を真空下で乾燥させ、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0263】
7.5)Fmoc脱保護法
Fmoc保護されたアミノ酸を含有する樹脂を、DMF中、20%ピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)で、室温で2回15分間処理した。次いで、樹脂をDMF(5回5mL)及びDCM(5回5mL)で洗浄した。樹脂を真空下で乾燥させ、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0264】
7.6)ポリサルコシンカップリング法
脱保護された第一級アミン基(1当量)を含む樹脂に、DMF中、ポリサルコシン-CH2-CH2-COOH(2.2当量)、HATU(2当量)、及びDIPEA(6当量)の溶液を加えた。反応容器を2.5時間撹拌し、排出し、樹脂をDMF(3回5mL)及びDCM(3回5mL)で洗浄した。樹脂を真空下で乾燥させ、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0265】
7.7)樹脂からの切断
DCM溶液中の20%(v/v)HFIP(樹脂100mg当たり2mL)を用いて、撹拌下、室温で、2-クロロトリチル樹脂からの最終的な切断を行った。反応時間は60分であった。樹脂を濾過し、得られた溶液をアルゴンガス流下で蒸発させた。最終的な残渣を高真空下で乾燥させ、以下の工程でそのまま使用した。
【0266】
7.8)3-(マレイミド)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルカップリング法
無水DMFに溶解した残渣に、3-(マレイミド)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(8当量)を加えた。DIPEA(10当量)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物を水/TFA(99.5:0.5v/v)でクエンチし、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。勾配は10~60%Bの範囲であった。
【0267】
化合物MAL-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR6は透明な油として得られた(5.8mg/最初の樹脂ローディングに基づく収率は14%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=989.5064;Exp[M+2H]2+989.5023;Error=4.2ppm。HPLC法1保持時間=6.7分。
【0268】
化合物MAL-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR12は透明な油として得られた(4.6mg/最初の樹脂ローディングに基づく収率20%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1202.6178;Exp[M+2H]2+1202.6178;Error=0.0ppm。HPLC法1保持時間=6.9分。
【0269】
化合物MAL-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR18は透明な油として得られた(2.4mg/最初の樹脂ローディングに基づく収率は14%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1415.7291;Exp[M+2H]2+1415.7282;Error=0.7ppm。HPLC法1保持時間=6.8分。
【0270】
実施例8:直交部分としてリジンを用いたポリサルコシンベースの薬物複合体リンカーの合成
反応スキームを以下に記載する。
【0271】
【0272】
8.1)Fmoc-D-Lys(グルクロニドMMAE)-NH2の合成
【0273】
【0274】
化合物(2R,3R,4R,5S,6R)-6-(2-(3-アミノプロパンアミド)-4-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-(2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(「NH2-グルクロニド-MMAE」;Jeffrey SC et al., Bioconjug. Chem., 2006, 17(3), 831-840に記載されているように合成した)(69.9mg/0.062mmol)及びFmoc-D-Lys(Boc)-OSu(35mg/0.062mmol)を1.2mLの無水DMFに溶解した。DIPEA(24.0mg/0.186mmol)を加え、混合物を室温で20時間撹拌した。揮発性物質を真空下で除去した。わずかに黄色の粗生成物を含むフラスコを氷浴(0℃)上に置き、7mLのDCM/TFA(7:3v/v)溶液をゆっくりと加えた。全Boc脱保護がHPLCによって観察されるまで(約2時間)、溶液を氷上で撹拌した。次いで、揮発性物質を減圧下で除去し、残渣を30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上での精製のためにDMF中に溶解した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。勾配は10~60%Bで、化合物Fmoc-D-Lys(グルクロニドMMAE)-NH2は白色固体(59mg/65%)として得られた。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=1480.7862;Exp[M+H]+=1480.7890;Error=-1.9ppm。HPLC法1保持時間=10.5分。
【0275】
8.2)Fmoc-D-Lys(グルクロニドMMAE)-PSARnの合成
【0276】
【0277】
化合物PSARn-COOH(2当量;実施例2に記載されるように得て、無水DMF中の0.15Mストック溶液として予め溶解した)を、バイアル中のHATU(1.8当量)に加えた。DIPEA(5当量)を加え、混合物を室温で3分間撹拌した。次いで、化合物Fmoc-D-Lys(グルクロニドMMAE)-NH2(1当量;無水DMF中に0.05Mストック液として予め溶解した)を加えた。室温で1時間撹拌し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジに注入して精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。勾配は10~60%Bの範囲であった。
【0278】
化合物Fmoc-D-Lys(グルクロニドMMAE)-PSAR6を白色固体として得た(9.8mg/38%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=975.0133;Exp[M+2H]2+=975.0088;Error=4.6ppm。HPLC法1保持時間=7.5分。
【0279】
化合物Fmoc-D-Lys(グルクロニドMMAE)-PSAR12を白色固体として得た(3.6mg/28%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1188.1247;Exp[M+2H]2+=1188.1233;Error=1.1ppm。HPLC法1保持時間=7.6分。
【0280】
8.3)6-(マレイミド)ヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルカップリング法
前工程からの化合物Fmoc-D-Lys(グルクロニドMMAE)-PSARnを、DMF中の20%ピペリジンで、室温で5分間処理した。揮発性物質を高真空下で除去し、乾燥残渣を無水DMFに溶解した。次いで、6-(マレイミド)ヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(8当量)及びDIPEA(10当量)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。水/TFA(99.5:0.5v/v)でクエンチし、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。10分間のアイソクラティック保持(5%B)後、目的の化合物を40%Bでアイソクラティックに溶出した。
【0281】
【0282】
化合物MAL-Lys(グルクロニドMMAE)-PSAR6を透明な油として得た(5.0mg/52%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=960.5163;Exp[M+2H]2+=960.5167;Error=-0.5ppm。HPLC法1保持時間=7.1分。
【0283】
化合物MAL-Lys(グルクロニドMMAE)-PSAR12を透明な油として得た(1.8mg/51%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1173.6276;Exp[M+2H]2+1173.6229;Error=4.0ppm。HPLC法1保持時間=7.0分。
【0284】
実施例9:直交部分としてグリシンを用いたポリアルコシンベース又はポリエチレングリコールベースの薬物複合体リンカーの合成
9.1)化合物ブロモアセトアミド-Ngly(トリアゾール-)グルクロニドMMAE)-PSARn
【0285】
【0286】
アルキン-グルクロニド-MMAE(1当量;実施例6に記載のようにして得た)、PSARn-N3-ブロモアセトアミド(1.1当量;実施例3に記載のようにして得た)、及びテトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(3当量)を反応容器中で合わせた。DCM/アセトニトリル1:1(v/v)溶液を加えて、12μmol/mLの最終的なアルキン-グルクロニド-MMAE濃度に到達させた。反応物を暗所でアルゴン下、室温で16~20時間撹拌した。揮発性物質の減圧下での除去後、残渣をDMFに溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.1%TFAであった。勾配は10~50%Bの範囲であった。
【0287】
化合物ブロモアセトアミド-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR12を白色固体として得た(8.5mg/51%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1151.0179;Exp[M+2H]2+=1151.0188;Error=-0.8ppm。HPLC法3保持時間=8.5分。
【0288】
9.2)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSARn
【0289】
【0290】
アルキン-グルクロニド-MMAE(実施例6に記載されるように得た)及びPSARn-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)を、反応溶媒としてDCMを用いて、セクション9.1に上述したように反応させ、精製した。
【0291】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR6を白色固体として得た(3.3mg/20%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=955.9566;Exp[M+2H]2+=955.9533;Error=3.4ppm。HPLC法3保持時間=9.2分。
【0292】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR12を白色固体として得た(9.0mg/33%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1169.0679;Exp[M+2H]2+=1169.0621;Error=4.9ppm。HPLC法3保持時間=8.7分。
【0293】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR18を白色固体として得た(11.5mg/40%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1382.1792;Exp[M+2H]2+=1382.1803;Error=-0.7ppm。HPLC法3保持時間=8.6分。
【0294】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24を白色固体として得た(15mg/44%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+4Na]4+=820.1309;Exp[M+4Na]4+=820.1324;Error=-1.8ppm。HPLC法3保持時間=8.4分。
【0295】
9.3)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PEGn
【0296】
【0297】
アルキン-グルクロニド-MMAE(実施例6に記載のように得た)及びPEGn-N3-フェニル-MAL(実施例5に記載のように得た)を、反応溶媒としてNMP/DCM2:1(v/v)を用いて、セクション9.1に上述したように反応させ、精製した。
【0298】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PEG12を、わずかに黄色の油として得た(10.4mg/45%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1042.5211;Exp[M+2H]2+=1042.5218;Error=-0.7ppm。HPLC法3保持時間=8.0分。
【0299】
9.4)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSARn
【0300】
【0301】
アルキン-グルクロニド-MMAE(3当量;実施例6に記載のように得た)、PSARn-N3-N3-フェニル-MAL(1当量;実施例3に記載のように得た)、及びテトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(5当量)を反応容器中で合わせた。DCMを加え、反応物を暗所でアルゴン下、室温で16~20時間撹拌した。揮発性物質の減圧下での除去後、残渣をDMFに溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.1%TFAであった。勾配は10~50%Bの範囲であった。
【0302】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR18を白色固体として得た(10.1mg/44%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+4H]4+=1022.5082;Exp[M+4H]4+=1022.5093;Error=-1.0ppm。HPLC法3保持時間=9.5分。
【0303】
9.5)化合物MAL-フェニル-Ngly[トリアゾール-グルクロニド(MMAE)2]-PSARn
【0304】
【0305】
アルキン-グルクロニド-(MMAE)2(実施例6に記載されるように得た)及びPSARn-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)を、反応溶媒としてDCMを用いて、セクション9.1に上述したように反応させ、精製した。
【0306】
化合物MAL-フェニル-Ngly[トリアゾール-グルクロニド(MMAE)2]-PSAR24を白色固体として得た(12.5mg/39%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+3H]3+=1371.3767;Exp[M+3H]3+=1371.3818;Error=-3.8ppm。HPLC法3保持時間=10.0分。
【0307】
9.6)化合物MAL-フェニル-Ngly[トリアゾール-ガラクトシド(MMAE)2]-PSARn
【0308】
【0309】
アルキン-ガラクトシド-(MMAE)2(Alsarraf et al., Chem. Commun., 2015, 51(87), 15792-15795に記載されているように合成した)及びPSARn-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)を、反応溶媒としてDCMを用いて、セクション9.1に記載されているように反応させ、精製した。
【0310】
化合物MAL-フェニル-Ngly[トリアゾール-ガラクトシド(MMAE)2]-PSAR24を白色固体として得た(6.5mg/55%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+4H]4+=1022.7895;Exp[M+4H]4+=1022.7903;Error=0.8ppm。HPLC法3保持時間=9.2分。
【0311】
9.7)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-val-cit-PAB-MMAE)-PSARn
【0312】
【0313】
アルキン-val-cit-PAB-MMAE(実施例6に記載されるように得た)及びPSARn-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)は、セクション9.1で上述したように反応溶媒としてNMPを用いて反応させ、精製した。
【0314】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-val-cit-PAB-MMAE)-PSAR12を白色固体として得た(4.5mg/12%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1207.1494;Exp[M+2H]2+=1207.1535;Error=-3.5ppm。HPLC法3保持時間=8.6分。
【0315】
9.8)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-SN38)-PSARn
【0316】
【0317】
アルキン-SN38(実施例6に記載されるように得た)及びPSARn-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)を、反応溶媒としてDCM/DMF2:1(v/v)を用いて、セクション9.1に記載されるように反応させ、精製した。
【0318】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-SN38)-PSAR18を明黄色固体として得た(4.0mg/20%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2Na]2+=1077.4562;Exp[M+2Na]2+=1077.4588;Error=-2.4ppm。HPLC法3保持時間=7.5分。
【0319】
9.9)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-SN38)-Ngly(トリアゾール-SN38)-PSARn
【0320】
【0321】
アルキン-SN38(実施例6に記載されるように得た)及びPSARn-N3-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)を、セクション9.4に上述したように反応させ、精製した。
【0322】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-SN38)-Ngly(トリアゾール-SN38)-PSAR18を黄色固体として得た(5.1mg/43%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2Na]2+=1412.5812;Exp[M+2Na]2+=1412.5852;Error=-3.8ppm。HPLC法3保持時間=8.4分。
【0323】
9.10)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドSN38)-Ngly(トリアゾール-グルクロニドSN38)-PSARn
【0324】
【0325】
アルキン-グルクロニド-SN38(実施例6に記載されるように得た)及びPSARn-N3-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)を、反応溶媒としてDCM/MeOH8:2(v/v)を使用して、セクション9.4に上述したように反応させ、精製した。
【0326】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドSN38)-Ngly(トリアゾール-グルクロニドSN38)-PSAR18を黄色固体として得た(7.0mg/30%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1271.5080;Exp[M+2H]2+=1271.5103;Error=-1.8ppm。HPLC法3保持時間=7.8分。
【0327】
9.11)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニド-エキサテカン)-PSARn
【0328】
【0329】
アルキン-グルクロニド-エキサテカン(実施例6に記載されるように得た)及びPSARn-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)を、反応溶媒としてDCMを用いて、セクション9.1に上述したように反応させ、精製した。
【0330】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニド-エキサテカン)-PSAR18を黄色固体として得た(13.2mg/64%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1241.0069;Exp[M+2H]2+=1241.0088;Error=-1.1ppm。HPLC法3保持時間=7.1分。
【0331】
9.12)化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-PNU159682)-PSARn
【0332】
【0333】
アルキン-PNU159682(実施例6に記載されるように得た)及びPSARn-N3-フェニル-MAL(実施例3に記載されるように得た)を、反応溶媒としてDCMを用いて、逆相精製の間、移動相中の0.1%TFA添加剤を0.1%ギ酸で置き換えて、セクション9.1に上述したように反応させ、精製した。
【0334】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-PNU159682)-PSAR12を赤色固体として得た(4.8mg/40%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=994.9185;Exp[M+2H]2+=994.9184;Error=0.1ppm。HPLC法6保持時間=5.0分。
【0335】
化合物MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-PNU159682)-PSAR18を赤色固体として得た(7.2mg/33%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1208.0298;Exp[M+2H]2+=1208.0295;Error=0.3ppm。HPLC法6保持時間=4.9分。
【0336】
実施例10:陰性対照薬物複合体リンカーMAL-グルクロニドMMAE、MAL-フェニル-トリアゾール-グルクロニドMMAE、及びMAL-フェニル-PSARn-トリアゾール-グルクロニドMMAEの合成
10.1)化合物MAL-グルクロニドMMAEの合成
【0337】
【0338】
出発化合物(2R,3R,4R,5S,6R)-6-(2-(3-アミノプロパンアミド)-4-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-(2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(「NH2-グルクロニド-MMAE」;Jeffrey SC et al., Bioconjug. Chem., 2006, 17(3), 831-840に記載されているように合成した)(6.2mg/5μmol)及び3-(マレイミド)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(14.6mg/55μmol)を秤量して、200μLの無水DMFに溶解した。DIPEA(8.5mg/66μmol)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。1.5mLの水/TFA(99:1v/v)でクエンチし、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.05%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.05%TFAであった。勾配は10~70%Bの範囲であった。
【0339】
表題の化合物MAL-グルクロニドMMAEを白色固体として得た(4.1mg/59%)。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=1281.6501;Exp[M+H]+=1281.6489;Error=0.9ppm。HPLC法1保持時間=7.1分。
【0340】
10.2)化合物MAL-フェニル-トリアゾール-グルクロニドMMAEの合成
10.2.1)ペルフルオロフェニル2-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル)アセテートの合成
【0341】
【0342】
市販の2-[4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル]酢酸(299mg/1.29mmol)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(267mg/1.29mmol)及びペンタフルオロフェノール(238mg/1.29mmol)を反応容器中の無水1,2-ジメトキシエタン15mLに溶解した。室温で2時間撹拌した後、不溶性物質を濾過により除去し、濾液をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、勾配80:20~20:80)によって精製して、表題の化合物(400mg/78%)を白色固体として得た。1H NMR(300MHz、CDCl3)δ(ppm)4.01(s、2H)、6.87(s、2H)、7.40(d、J=8.7Hz、2H)、7.47(d、J=8.7Hz、2H)。HRMS m/z(ESI+):Calc[M+H]+=398.0446;Exp[M+H]+=398.0448;Error=-0.4ppm。
【0343】
10.2.2)N-(2-アジドエチル)-2-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル)アセトアミドの合成
【0344】
【0345】
先の化合物ペルフルオロフェニル2-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル)アセテート(78mg/0.20mmol)を、反応容器中の1mLの無水DCMに溶解した。2-アジドエタン-1-アミン(33.8mg/0.40mmol)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。次いで、1N HCl溶液を加え、混合物をDCMで3回抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて固体粗生成物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、勾配60:40~0:100)で精製して、表題の化合物(18mg/31%)を白色固体として得た。MS(ESI+):[M+H]+=300.1;HPLC法1保持時間=8.4分。100%EtOAcで溶出したTLC:Rf=0.65。
【0346】
10.2.3)化合物MAL-フェニル-トリアゾール-グルクロニドMMAEの合成
【0347】
【0348】
実施例6からの化合物アルキン-グルクロニドMMAE(17mg/15.1μmol)、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(11.2mg/30μmol)、及び前工程からのN-(2-アジドエチル)-2-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル)アセトアミド(6.3mg/21μmol)をHPLCバイアル中で合わせた。800μLの無水DCM/アセトニトリル/NMP1:1:1(v/v/v)溶液を加え、反応物をアルゴン下、室温で16時間撹拌した。揮発性物質の減圧下での除去後、残渣をDMFに溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.1%TFAであった。勾配は10~60%Bの範囲であった。
【0349】
表題の化合物MAL-フェニル-トリアゾール-グルクロニドMMAEをオフホワイトの固体(10.3mg/48%)として得た。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=713.8425;Exp[M+2H]2+=713.8415;Error=1.3ppm。HPLC法3保持時間=10.2分。
【0350】
10.3)化合物MAL-フェニル-PSARn-トリアゾール-グルクロニドMMAEの合成
【0351】
【0352】
実施例6からの化合物アルキン-グルクロニドMMAE(20mg/17.7μmol)、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(13.2mg/35μmol)、及び実施例4からのN3-PSARn-フェニル-MAL(34.3mg/28μmol)をHPLCバイアル中で合わせた。900μLのNMP/DCM2:1(v/v)溶液を加え、反応物をアルゴン下、室温で16時間撹拌した。揮発性物質の減圧下での除去後、残渣をDMFに溶解し、30gBiotage(登録商標)SNAP Ultra C18(25μm)カートリッジ上で精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル+0.1%TFAであった。勾配は10~60%Bの範囲であった。
【0353】
白色固体(16.0mg/39%)として、表題の化合物MAL-フェニル-PSARn-トリアゾール-グルクロニドMMAEを得た。LC-HRMS m/z(ESI+):Calc[M+2H]2+=1168.5759;Exp[M+2H]2+=1168.5792;Error=-2.8ppm。HPLC法3保持時間=6.8分。
【0354】
実施例11:本発明のLDC化合物の調製
以下のLDC化合物を調製し、特徴付けした:
トラスツズマブ-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR6
トラスツズマブ-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR12
トラスツズマブ-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR18
トラスツズマブ-Lys(グルクロニドMMAE)-PSAR6
トラスツズマブ-Lys(グルクロニドMMAE)-PSAR12
トラスツズマブ-BAC-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR12
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR6
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR12
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-val-cit-PAB-MMAE)-PSAR12
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR18
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-SN38)-PSAR18
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニド-エキサテカン)-PSAR18
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-PNU159682)-PSAR12
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-PNU159682)-PSAR18
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24
CD19-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24
CD22-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR18
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly[トリアゾール-グルクロニド(MMAE)2]-PSAR24
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly[トリアゾール-ガラクトシド(MMAE)2]-PSAR24
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-SN38)-Ngly(トリアゾール-SN38)-PSAR18
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドSN38)-Ngly(トリアゾール-グルクロニドSN38)-PSAR18
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PEG12
トラスツズマブ-グルクロニドMMAE
トラスツズマブ-MAL-フェニル-トリアゾール-グルクロニドMMAE
トラスツズマブ-MAL-フェニル-PSAR12-トリアゾール-グルクロニドMMAE
ヒトアルブミン-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24
それらの構造を以下の表6に記載する。
【0355】
【0356】
11.1)複合体の調製
11.1.1)抗体-薬物-複合体の調製
抗体の溶液(PBS7.4+1mM EDTA中10mg/mL)を、14モル当量のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で、37℃で2時間処理した。マレイミドベースのカップリングについては、完全に還元された抗体を、Amicon 30K遠心フィルターデバイス(Merck Millipore)を用いた3ラウンドの希釈/遠心分離によって、リン酸カリウム100mM pH7.4+1mM EDTAとバッファー交換した。10~12当量の薬物リンカー(12mM DMSOストック溶液から)を抗体に加えた(残留DMSO<10%v/v)。溶液を室温で30分間インキュベートした。ブロモアセトアミドベースのカップリングについては、完全に還元された抗体をホウ酸バッファー50mM pH8.1+1mM EDTAでバッファー交換し、16モル当量の薬物-リンカーを用いて、暗所で、37℃で24時間コンジュゲーションを実行した。Amicon 30K遠心フィルターデバイスを用いた4ラウンドの希釈/遠心分離により、複合体をPBS7.4でバッファー交換/精製した。あるいは、PD MiniTrap G-25カラム(GE Healthcare)を用いて複合体をバッファー交換/精製し、滅菌濾過した(0.20μmPESフィルター)。自己加水分解性マレイミド(MAL-フェニル)基を組み込んだ複合体を、PBS7.4中、37℃で48時間、5mg/mLでインキュベートして、スクシンイミジル部位の完全な加水分解を確実にした。最終的なタンパク質濃度を、Colibriマイクロボリューム分光計装置(Titertek Berthold)を用いて280nmで分光光度的に評価した。
【0357】
11.1.2)ヒトアルブミン-薬物-複合体の調製
ヒトアルブミンの溶液(リン酸カリウム100mM pH7.4+1mM EDTA中10mg/mL)に、2モル当量の薬物-リンカー(12mM DMSOストック水溶液から)を加えた。残留DMSOは<10%(v/v)であった。溶液を室温で4時間インキュベートした。Amicon 30K遠心フィルターデバイスを用いた4ラウンドの希釈/遠心分離により、複合体をPBS7.4でバッファー交換/精製した。あるいは、PD MiniTrap G-25カラム(GE Healthcare)を用いて複合体をバッファー交換/精製し、滅菌濾過した(0.20μmPESフィルター)。複合体を、PBS7.4中、37℃で48時間、5mg/mLでインキュベートして、スクシンイミジル部位の完全な加水分解を確実にした。最終的なタンパク質濃度を、Colibriマイクロボリューム分光計デバイス(Titertek Berthold)を用いて280nmで分光光度的に評価した。
【0358】
11.2)複合体の特徴付け
得られた複合体を以下のように特徴付けた:
逆相液体クロマトグラフィー-質量分析(RPLC-MS):
変性RPLC-QToF分析を、上述したUHPLC法5を用いて行った。簡単に述べると、複合体を、水/アセトニトリル+0.1%ギ酸(0.4mL/分)の移動相の勾配を用いて、Agilent PLRP-S 1000Å 2.1×150mm 8μm(80℃)で溶出し、500~3500m/z範囲(ESI+)をスキャンするBruker Impact II(商標)Q-ToF質量分析計を用いて検出した。Bruker Compass(登録商標)ソフトウェアに含まれるMaxEntアルゴリズムを用いてデータをデコンボリュートした。
【0359】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):
SECは、15μL未満のカラム外容量を有するAgilent1050HPLCシステム(内径0.12mmのpeekチューブの短い切片及びマイクロボリュームUVフローセルを備える)で行った。カラムは、Waters Acquity UPLC(登録商標)Protein BEH SEC 200Å 4.6×150mm 1.7μm(室温で維持)又はAgilent AdvanceBio SEC 300Å 4.6×150mm 2.7μm(室温で維持)であった。移動相は、100mMリン酸ナトリウム及び200mM塩化ナトリウム(pH6.8)であった。10%アセトニトリル(v/v)を移動相に加えて、固定相との二次疎水性相互作用を最小限にし、細菌増殖を防止した。流速は0.35mL/分であった。UV検出を280nmでモニターした。
【0360】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC):
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)をAgilent 1050 HPLCシステムで行った。カラムは、Tosoh TSK-GEL BUTYL-NPR 4.6×35mm 2.5μm(25℃)であった。移動相Aは、1.5M(NH4)2SO4+25mMリン酸カリウムpH7.0であった。移動相Bは、25mMリン酸カリウムpH7.0+15%イソプロパノール(v/v)であった。線形勾配は10分で0%B~100%Bであり、続いて100%Bで3分間保持した。流速は0.75mL/分であった。UV検出を220及び280nmでモニターした。
【0361】
11.3)複合体の特徴付けの概要
複合体は、それらの変性RPLCクロマトグラム(DAR8複合体)上に1つのLC-1d(1つの薬物リンカーが付着した軽鎖)及び1つのHC-3d(3つの薬物-リンカーが付着した重鎖)吸光度ピークを示した。重鎖の質量分析については、主要なグリコフォームが報告された(トラスツズマブについてのG0F)。複合体は、それらのHICクロマトグラム上に単一の吸光度ピークを示した。
【0362】
トラスツズマブ-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR6(DAR8):
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25416;Obs:25417/デコンボリュートされたHC-3d Calc:56529;Obs:56528
モノマー純度:97.2%
HIC保持時間:8.8分
トラスツズマブ-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR12(DAR8):
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25844;Obs:25844/デコンボリュートされたHC-3d Calc:57805;Obs:57805
モノマー純度:99.0%
HIC保持時間:8.8分
トラスツズマブ-Glu(グルクロニドMMAE)-CH2-CH2-PSAR18(DAR8):
デコンボリュートされたLC-1d Calc:26270;Obs:26270/デコンボリュートされたHC-3d Calc:59086;Obs:59086
モノマー純度:96.5%
HIC保持時間:8.8分
トラスツズマブ-Lys(グルクロニドMMAE)-PSAR6(DAR8):
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25360;Obs:25360/デコンボリュートされたHC-3d Calc:56352;Obs:56353
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:7.6分
トラスツズマブ-Lys(グルクロニドMMAE)-PSAR12(DAR8):
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25786;Obs:25786/デコンボリュートされたHC-3d Calc:57634;Obs:57632
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:7.5分
トラスツズマブ-BAC-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR12(DAR8)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25661;Obs:25662/デコンボリュートされたHC-3d Calc:57264;Obs:57262
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:7.0分(DAR8複合体)。このADCはHICクロマトグラムで観察されたように、~20%のDAR6;~20%のDAR7、及び~60%のDAR8複合体を含有する不均質な混合物である。
【0363】
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR6(DAR8)(=ADC-PSAR6)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25368;Obs:25368/デコンボリュートされたHC-3d Calc:56382;Obs:56380
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:7.5分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR12(DAR8)(=ADC-PSAR12)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25794;Obs:25794/デコンボリュートされたHC-3d Calc:57660;Obs:57660
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:7.1分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-val-cit-PAB-MMAE)-PSAR12(DAR8)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25871;Obs:25870/デコンボリュートされたHC-3d Calc:57889;Obs:57888
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:9.2分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR18(DAR8)(=ADC-PSAR18)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:26221;Obs:26221/デコンボリュートされたHC-3d Calc:58939;Obs:58939
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:6.8分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-SN38)-PSAR18(DAR8)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25567;Obs:25567/デコンボリュートされたHC-3d Calc:56979;Obs:56977
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:5.1分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニド-エキサテカン)-PSAR18(DAR8)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25938;Obs:25937/デコンボリュートされたHC-3d Calc:58092;Obs:58089
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:5.7分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-PNU159682)-PSAR12(DAR8)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25446;Obs:25446/デコンボリュートされたHC-3d Calc:56614;Obs:56612
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:5.2分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-PNU159682)-PSAR18(DAR8)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25872;Obs:25872/デコンボリュートされたHC-3d Calc:57894;Obs:57892
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:5.1分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24(DAR8)(=ADC-PSAR24)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:26647;Obs:26674/デコンボリュートされたHC-3d Calc:60218;Obs:60218
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:6.7分
CD19-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24(DAR8)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:27347;Obs:27347/デコンボリュートされたHC-3d Calc:60137;Obs:60132
モノマー純度:92.6%
HIC保持時間:6.8分
CD22-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24(DAR8)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:27341;Obs:27341/デコンボリュートされたHC-3d Calc:60314;Obs:60311
モノマー純度:97.4%
HIC保持時間:6.8分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR18(DAR16)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:27544;Obs:27545/デコンボリュートされたHC-3d Calc:62910;Obs:62907
モノマー純度:98.5%
HIC保持時間:8.7分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly[トリアゾール-グルクロニド(MMAE)2]-PSAR24(DAR16)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:27569;Obs:27570/デコンボリュートされたHC-3d Calc:62985;Obs:62983
モノマー純度:98.2%
HIC保持時間:9.9分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly[トリアゾール-ガラクトシド(MMAE)2]-PSAR24(DAR16)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:27555;Obs:27554/デコンボリュートされたHC-3d Calc:62943;Obs:62940
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:10.2分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-SN38)-Ngly(トリアゾール-SN38)-PSAR18(DAR16)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:26237;Obs:26237/デコンボリュートされたHC-3d Calc:58989;Obs:58987
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:6.6分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドSN38)-Ngly(トリアゾール-グルクロニドSN38)-PSAR18(DAR16)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:27270;Obs:27270/デコンボリュートされたHC-3d Calc:62086;Obs:62087
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:5.7分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PEG12(DAR8)(=ADC-PEG12)
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25541;Obs:25541/デコンボリュートされたHC-3d Calc:56901;Obs:56900
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:7.4分
トラスツズマブ-グルクロニドMMAE(DAR8):
デコンボリュートされたLC-1d Calc:24721;Obs:24720/デコンボリュートされたHC-3d Calc:54439;Obs:54438
モノマー純度:95.2%
HIC保持時間:9.2分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-トリアゾール-グルクロニドMMAE(DAR8)(=ADC-PSAR0):
デコンボリュートされたLC-1d Calc:24884;Obs:24884/デコンボリュートされたHC-3d Calc:54926;Obs:54926
モノマー純度:98.5%
HIC保持時間:8.4分
トラスツズマブ-MAL-フェニル-PSAR12-トリアゾール-グルクロニドMMAE(DAR8)(=ADC-PSAR12L):
デコンボリュートされたLC-1d Calc:25793;Obs:25793/デコンボリュートされたHC-3d Calc:57657;Obs:57657
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:8.5分
ヒトアルブミン-MAL-フェニル-Ngly(トリアゾール-グルクロニドMMAE)-PSAR24(DAR1):
デコンボリュートされたCalc:69765;Obs:69645
モノマー純度:90.8%
HIC保持時間:3.9分
トラスツズマブ:
デコンボリュートされたLC Obs:23439/デコンボリュートされたHC Obs:50595
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:4.7分
抗CD19抗体:
デコンボリュートされたLC Obs:24139/デコンボリュートされたHC Obs:50517
モノマー純度:93.2%
HIC保持時間:4.7分
抗CD22抗体:
デコンボリュートされたLC Obs:24133/デコンボリュートされたHC Obs:50692
モノマー純度:99+%
HIC保持時間:4.8分
ヒトアルブミン:
デコンボリュートされたObs:66556
モノマー純度:92.4%
HIC保持時間:2.5分。
【0364】
実施例12:非ポリサルコシンベースの抗体-薬物-複合体(ADC-PSAR0)、直交配置を有するポリサルコシンベースの抗体-薬物-複合体(ADC-PSAR12)、及び線形配置を有するポリサルコシンベースの抗体-薬物-複合体(ADC-PSAR12L)の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)特性
バルク溶媒への結合されたペイロードの相対露出及びトラスツズマブベースのDAR8 ADCの見かけの疎水性を、実施例11に記載の方法に従って、Tosoh TSK-GEL BUTYL-NPRカラム上の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって評価した。その結果を
図1に示す。ポリサルコシンは、薬物ユニットとの関係で並列の(すなわち直交の)向きにグラフトすると、効率的な疎水性マスキング特性が得られ、複合体(ADC-PSAR12)の見かけの疎水性が低下する。しかしながら、ポリサルコシンが直線状の(すなわち、連続の)配置にある場合、複合体の見かけの疎水性の減少は観察されない(ADC-PSAR12L)。
【0365】
実施例13:ポリサルコシン及びポリエチレングリコールベースの抗体-薬物-複合体の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)特性
バルク溶媒への結合されたペイロードの相対露出及びトラスツズマブベースのDAR8 ADCの見かけの疎水性を、実施例11に記載の方法に従って、Tosoh TSK-GEL BUTYL-NPRカラム上の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって評価した。結果を
図2に示す。等しい長さ(n=12モノマー単位)で、ポリサルコシンは、ポリエチレングリコール(より低い保持時間)よりも良好な疎水性マスキング特性を与える。
【0366】
実施例14:3mg/kg容量の非ポリサルコシンベースの抗体-薬物-複合体(ADC-PSAR0)及びポリサルコシンベースの抗体-薬物-複合体(ADC-PSAR12)の単回静脈内投与後のマウスにおける薬物動態特性(時間総抗体濃度)
雄のSCIDマウス(4~6週齢)にADCを3mg/kgで尾静脈(各投与群5匹、無作為に割り当て)を介して注射した。血液を、種々の時点で後眼窩出血を介してクエン酸チューブに採取し、血漿に処理した。ヒトIgG ELISAキット(Stemcell(商標)Technologies)を用いて、製造者のプロトコルに従って全ADC濃度を評価した。トラスツズマブの標準曲線を定量に用いた。薬物動態パラメーター(クリアランス及びAUC)は、PK機能を組み込んだMicrosoft(登録商標)Excel(登録商標)ソフトウェア(Usansky et al., Department of Pharmacokinetics and Drug Metabolism, Allergan, Irvine, USAによって開発されたアドイン)を用いた非コンパートメント解析によって計算した。結果を
図3に示す。ポリサルコシンを含むADCは、ポリサルコシン
を含まないADCと比較した場合、好ましい薬物動態を示す。
【0367】
実施例15:3mg/kgの非ポリサルコシンベースのADC(ADC-PSAR0)及びポリサルコシンベースのADC(ADC-PSAR12)を1回静脈内投与したBT-474乳癌異種移植片モデルにおける腫瘍体積(mm
3)及び生存曲線
BT-474乳癌細胞を雌のSCIDマウス(4週齢)に皮下移植した。前記実施例14からのADCは腫瘍が約150mm
3まで増殖したとき、3mg/kgの用量で静脈内に1回投与した(20日目、1群当たり5匹の動物、群間の最初の腫瘍体積の差を最小限にするように割り当てた)。結果を
図4A及び4Bに示す。腫瘍体積をカリパス装置により3~5日毎に測定し、式(L×W
2)/2を用いて計算した。腫瘍体積が1000mm
3を超えた場合、マウスを屠殺した。ポリサルコシンを含むADCは、ポリサルコシンを含まないADCと比較した場合、インビボ活性が改善されている。処置したマウスにおいて有意な体重変化は観察されなかった。
【0368】
実施例16:3mg/kg用量のポリサルコシンベースの抗体-薬物-複合体(ADC-PSAR12)及びポリ(エチレングリコール)ベースの抗体-薬物-複合体(ADC-PEG12)の単回静脈内投与後のマウスにおける薬物動態特性(時間に対する全抗体濃度)
実験は、雄のCD-1マウス(4~6週齢)において、実施例14に記載の手順に従って行った。結果を
図5に示す。ポリサルコシンを含むADCは、ポリ(エチレングリコール)を含むADCと比較した場合、薬物動態パラメータが改善されている。
【0369】
実施例17:直交の向きで異なるPSAR長さを有する2.5mg/kgのポリサルコシンベースの抗体-薬物複合体(ADC-PSAR6、ADC-PSAR12、ADC-PSAR18、ADC-PSAR24);直交ポリ(エチレングリコール)ベースの抗体-薬物複合体(ADC-PEG12)及び直線状のポリサルコシンベースの抗体-薬物複合体(ADC-PSAR12L)を1回静脈内投与した、BT-474乳癌異種移植片モデルにおける腫瘍体積(mm
3)
実験は、実施例15に記載したように行った。BT-474乳癌細胞を雌のSCIDマウス(4週齢)に皮下移植した。腫瘍が約150mm
3まで増殖したとき、ADCを2.5mg/kgの用量で静脈内に1回投与した(13日目、1群当たり6匹の動物、群間の最初の腫瘍体積の差を最小限にするように割り当てた)。結果を
図6に示す。処置したマウスにおいて有意な体重変化は観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0370】
【
図1】
図1は、実施例12による疎水性相互作用クロマトグラムを表す。
【
図2】
図2は、実施例13による疎水性相互作用クロマトグラムを表す。
【
図3】
図3は、実施例14によるマウスにおける薬物動態特性を表す。
【
図4A】
図4Aは、実施例15による腫瘍体積を時間の関数で表す。
【
図5】
図5は、実施例16によるマウスにおける薬物動態特性を表す。
【
図6】
図6は、実施例17による腫瘍体積を時間の関数で表す。