(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】加工食品及びそれを用いた複合食品
(51)【国際特許分類】
A23L 11/45 20210101AFI20250304BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20250304BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20250304BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20250304BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20250304BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20250304BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20250304BHJP
【FI】
A23L11/45 Z
A23L23/00
A23J3/16 501
A23J3/16 502
A23L35/00
A23L27/00 Z
A23L27/10 C
A23L5/00 J
(21)【出願番号】P 2023140500
(22)【出願日】2023-08-30
【審査請求日】2024-07-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 優佳
(72)【発明者】
【氏名】村上 葉月
(72)【発明者】
【氏名】石打 麻里子
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-277454(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114617187(CN,A)
【文献】特開2019-122347(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158562(WO,A1)
【文献】青梗菜のチーズ腐乳ソース掛け,cookpad [online],2014年11月26日,[令和6年7月16日検索], retrieved from the internet <https://cookpad.com/recipe/2900526>
【文献】ベーコンとチンゲン菜の豆乳パスタ,cookpad [online],2022年04月20日,[令和6年7月16日検索], retrieved from the internet <https://cookpad.com/recipe/7179236>
【文献】夏野菜のパスタ 豆腐よう クリームソース,coolpad,2011年05月05日,[令和6年7月16日検索], retrieved from the internet <https://cookpad.com/recipe/1430290>
【文献】豆腐ようの濃厚ミートソースパスタ,楽天レシピ,2020年02月13日,[令和6年7月16日検索], retrieved from the internet <https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1850013301/>
【文献】豆腐ようと腐乳,醸協,2014年,Vol.109, No.11,p.785-790
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状大豆たん白、繊維状大豆たん白又は豆乳と、
腐乳とを含有し、
腐乳の含有量が0.
05~
0.107質量%である、加工食品。
【請求項2】
動物性蛋白質の含有量が10質量%以下である、請求項1に記載の加工食品。
【請求項3】
液状又はペースト状である、請求項1又は2に記載の加工食品。
【請求項4】
グラタン類のソースである、請求項1又は2に記載の加工食品。
【請求項5】
ソース類又はペースト類を含む食品である、請求項1又は2に記載の加工食品。
【請求項6】
粒状大豆たん白、繊維状大豆たん白又は豆乳と、
腐乳とを含有し、
腐乳の含有量が0.05~0.107質量%である、ソース類又はペースト類を含み、食品全体として、腐乳の含有量が0.02584~0.107質量%である、食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白及び/又は豆乳と、豆腐の麹菌発酵物とを含む加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向やビーガンやベジタリアン等の増加、環境負荷への配慮やコスト的な観点から、動物肉や乳製品を用いない、或いはその使用量を制限した加工食品の需要が高まっている。
【0003】
動物肉の代替の一つとして大豆ミート等の粒状大豆たん白や繊維状大豆たん白が用いられており、また乳製品の代替の一つとして、豆乳製品が用いられている。
【0004】
一方、豆腐の麹菌発酵物としては、腐乳や豆腐ようが知られている。近年、豆腐の麹菌発酵物をシチューやグラタン等の加工食品に用いるレシピが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://cookpad.com/recipe/1444368、2023年8月16日検索
【文献】https://cookpad.com/recipe/6491082?view=single、2023年8月16日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粒状大豆たん白、繊維状大豆たん白及び豆乳は、大豆特有の青臭さ(「大豆臭」と呼ばれることもがある)が強いという問題がある。また、粒状大豆たん白、繊維状大豆たん白及び豆乳はそれら自体、牛乳様のコクや香り、味といった牛乳様風味を有さないため、これらを用いた加工食品、特に、グラタンやドリア、クリームコロッケ、ホワイトシチューといった、従来乳製品が用いられてきた加工食品においては、消費者に物足りなさを感じさせてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る加工食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、粒状大豆たん白や繊維状大豆たん白又は豆乳と豆腐の麹菌発酵物とを所定条件で組み合わせることで、大豆臭を低減するとともに、牛乳様風味を優れたものとできることを知見した。
【0009】
具体的には、本発明は、粒状大豆たん白及び/又は豆乳と、豆腐の麹菌発酵物とを含有し、豆腐の麹菌発酵物の含有量が0.005~4.0質量%である、加工食品を提供するものである。
【0010】
また本発明は前記加工食品を2種以上複合させてなる複合加工食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、粒状大豆たん白や豆乳の大豆臭を抑制し、且つ牛乳様風味を効果的に増強させた加工食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0013】
以下、本発明は粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白及び/又は豆乳を用いる。
粒状大豆たん白は、組織状大豆蛋白とも呼ばれる。粒状大豆たん白は、例えば、大豆蛋白質原料に水を加え、エクストルーダー等の押し出し加工機械を用いて混煉・加熱・加圧した生地を、ダイと呼ばれるノズルから大気圧下への放出と同時に膨化組織加工されたものである。大豆蛋白質原料としては、脱脂大豆や大豆粉または粉末状(分離または濃縮)大豆蛋白質などが挙げられる。また、粒状大豆たん白には、前記と同様に製造されるが、組織を膨化させずに冷却ダイを装着して押出す高水分タイプの製品も存在する。膨化タイプは乾燥させて製品とされることが一般的であり、膨化させないタイプは乾燥させずに冷凍・包装工程を経て製品となることが一般的である。
【0014】
粒状大豆たん白には、ミンチタイプ、ミートタイプやパフタイプ(大豆の特長成分を生かしたシリアル用素材)など用途に応じて様々な形状・食感のものがある。蛋白質以外の原料としては、でんぷん、食物繊維、食用油脂、調味料及び色素などが一般的に用いられる。ミンチタイプは、フレーク製品と顆粒製品に分れ、挽肉の代替素材として用いられる。これらは水戻しして用いられる。ミートタイプは、スライス製品とブロック製品に分かれており、これらはエクストルーダーの出口のダイ形状を加工して製造できる。粒状大豆たん白は味付けされていないものであってもよく、味付け調理加工されたものであってもよい。粒状大豆たん白の中には、代替肉・肉様製品を意味する「大豆ミート」として販売されているものがある。
【0015】
また、大豆蛋白原料の水性スラリー又はペーストを加熱下に流動させながら、小径の背圧オリフィスから放出させ、繊維化することによって得られる微細な糸状の形状のものであり、上述の粒状あるいは挽肉状の組織状大豆蛋白とは製法や形状において区別される。
【0016】
本発明では、粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白の中でも、粒状大豆たん白を用いることが好ましい。この理由としては、粒状大豆たん白は一般に大豆臭が強く、豆腐の麹菌発酵物を用いることによる効果が高いためである。また、粒状大豆たん白は、大豆ミートの素材として広く知られているところ、本発明では、大豆ミートの肉様食感に、豆腐の麹菌発酵物に起因した牛乳様風味のコクや香りを組み合わせることで、大豆ミートの風味を効果的に改善でき、経済的、或いは環境的な観点から着目されている大豆ミートの活用方法を広げられるためである。
【0017】
特に粒状大豆たん白の中でも、ミンチタイプの製品を用いることが、好ましい。これは、ミンチタイプの製品は、その表面積が大きく、大豆臭が比較的強いため豆腐の麹菌発酵物を用いることによる風味の改善効果が高いためである。ミンチタイプの製品の例としては、通常、大きさが2mm~15mmの物が好ましく挙げられる。この大きさが15mm以下であることで、見た目のミンチらしさが良好となるほか、風味の改善効果の向上のため好ましい。また大きさが2mm以上であることで、食感が良好となるため好ましい。ここでいう大きさは乾燥状態で測定できる。粒状大豆たん白を任意の状態で平面に静置させ、平面と直交する上方(真上)から撮影する。投影像を横断する最大の線分の長さについて、20粒以上の平均値を測定し、粒状大豆たん白の大きさとする。
【0018】
なお、粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白としては、乾燥された製品であっても、乾燥されていない製品のいずれを用いてもよいが、乾燥され、水戻しして用いる製品であることが好ましい。これは、乾燥製品では一般に大豆臭が強く、豆腐の麹菌発酵物を用いることによる大豆臭のマスキング効果が高いためである。また乾燥品は一般に冷凍品よりも汎用であるため、本発明の経済的な価値が高いためである。
【0019】
なお、本発明においては、粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白の製造過程において、豆腐の麹菌発酵物がこれらの蛋白質の製造原料(例えばエクストルーダの混練に供する製造原料)として使用されているだけでは、加工食品が粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白と豆腐の麹菌発酵物とを含有することに該当しないものとする。加工食品において大豆臭の低減効果及び牛乳様風味の向上の効果を得る点から、粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白と豆腐の麹菌発酵物とが分離可能に混合されていることが好ましい。ここでいう分離可能に混合されているとは、加工食品において粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白を取り出した残部(例えば残部の液状又はペースト状部分)に豆腐の麹菌発酵物が残留する場合を指す。
【0020】
本発明では、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白として、その乾燥質量中、大豆由来蛋白質含量が例えば35質量%以上であるものが、これらの大豆蛋白質に対して豆腐の麹菌発酵物を組み合わせることによる大豆臭の抑制効果が高いため好ましい。粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白は、その乾燥質量中、大豆由来蛋白質含量が45質量%以上であるものが特に好ましい。なお、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白における大豆由来蛋白質含量の上限としては、65質量%以下であることが好ましい。なお、乾燥質量とは、水分を除く合計質量をいう。
【0021】
本発明では、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白を加工食品中、乾燥質量として、
0.1質量%以上55質量%以下含有することが好ましい。加工食品において、乾燥質量としてこの量にて含有させることで、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白に対し豆腐の麹菌発酵物を用いることによる大豆臭の抑制効果や牛乳様風味の付与効果を一層優れたものとすることができる。この観点から、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白を加工食品中、乾燥質量として、0.2質量%以上50質量%以下含有させることがより好ましく、0.3質量%以上47質量%以下含有させることが特に好ましく、1質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよい。
【0022】
特に、加工食品がソース類又はペースト類である場合、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白の含有量が前記範囲内であることが好ましい。ここで、ソース類又はペースト類とは、液状又はペースト状の製品を指す。これらは多くの場合、流動物である。ソース類としては、麺類のスープなどのスープ類や、シチュー、ソース等が挙げられる。ペースト類としては、コロッケの具やメンチカツの具、ハンバーグの具やこれらと同程度の粘性を有する食品等が挙げられる。このようなソース類又はペースト類では、一定量の水分を有しており、このような水分の多い条件にて粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と豆腐の麹菌発酵物とを混在させることで、大豆臭のマスキング効果を良好なものとしやすいほか、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白の全体に牛乳様風味を付与することができる。なおソース類やペースト類としては、製造過程において混合を行ったものを指す。このため、後述するソース類やペースト類中の所定成分の量を考慮する場合、これらとともに容器に別途充填する穀類や麺類、野菜類、トッピング等や、表面に付着させる衣等は分母に含めないものとする。
【0023】
ソースとしては、ミートソース(ボロネーズソースを含む)、デミグラスソース、カレーソース、ハヤシライスソース、ホワイトソース(クリームソース、ベシャメルソースなどを含む)、中華ソース及び麻婆ソース等が挙げられる。とりわけ、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白を含む加工食品がソースである場合、ミートソース、デミグラスソース、カレーソース、ハヤシライスソース、麻婆ソースから選ばれる少なくとも一種であることが、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白の風味を一層良好とする点で好ましく、ミートソース、カレーソース、デミグラスソースから選ばれる少なくとも一種であることが特に好ましい。
【0024】
本発明で用いる豆乳としては、特に限定されず、従来公知の豆乳を用いることができる。豆乳とは大豆または大豆破砕物に加水し、必要により湿式にて摩砕を行い、好ましくは不溶性画分を低減または除去したものである。本発明では、豆乳として、一般に販売されている無調整豆乳、調製豆乳などを使用することができるが、後述する豆乳クリームを使用すると、特に豆腐の麹菌発酵物の牛乳様風味の付与効果と組み合わさり、加工食品に優れた香りやコクを付与できる点で好ましい。
【0025】
豆乳クリームは豆乳よりも脂質含量の高いものであり、「大豆乳化組成物」と称することもができる。一般に生クリームは牛乳から遠心分離機で分離して製造されるが、それと同様に豆乳クリームも例えば、丸大豆から得た豆乳をさらに遠心分離することにより生成する低比重の油分に富むクリーム層を回収して得たものを使用することができる。豆乳クリームの脂質含量は3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましい。また上限が20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また豆乳クリームの蛋白質含量は1質量%以上が好ましく3質量%以上がより好ましい。また上限が20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。豆乳クリームの脂質含量は乾燥質量中15質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また上限が95質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。また豆乳クリームの蛋白質含量は乾燥質量中5質量%以上が好ましく15質量%以上がより好ましい。また上限が75質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。更に、豆乳クリームの蛋白質/脂質の質量比は0.33~0.75であることが好ましく、0.4~0.6であることがより好ましい。
【0026】
なお、本発明では、豆乳として、豆乳発酵物を用いてもよい。しかしながら、豆乳発酵物を用いると、特定の発酵風味に起因して多量に使用することができなかったり、用途が限定されるという問題が生じる。これに対し、本発明では、豆腐の麹菌発酵物を特定量用いることで、このような問題を生じさせることなしに、大豆臭の抑制や牛乳様風味の改善を効果的に図ることができる。仮に加工食品が豆乳発酵物を用いる場合には、豆腐の麹菌発酵物100質量部に対し、豆乳発酵物の含有量が50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に一層好ましく、他に豆乳を用いれば、0質量部であってもよい。
【0027】
本発明では、豆乳を加工食品中、乾燥質量として、1質量%以上50質量%以下含有することが好ましい。加工食品において、乾燥質量としてこの量にて含有させることで、豆乳に対し豆腐の麹菌発酵物を用いることによる大豆臭の抑制効果や牛乳様風味の付与効果を一層優れたものとすることができる。この観点から、豆乳を加工食品中、乾燥質量として、3質量%以上25質量%以下含有させることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下含有させることが特に好ましい。
特に、加工食品がソース類又はペースト類である場合、豆乳の含有量が前記範囲内であることが好ましい。加工食品が豆乳を含有するソースである場合、とりわけ、豆乳の風味を生かす点から、ホワイトソースであることが好ましい。
【0028】
豆腐の麹菌発酵物としては、腐乳と豆腐ようが挙げられる。本明細書において、腐乳は、豆腐に麹をつけ、塩水中で発酵させた食品であり中国で用いられる調味料である。豆腐乳、乳腐、南乳とも呼ばれる。
腐乳は例えば、塩と麹、酒や必要に応じて他の調味料をつけ汁に漬けて発酵させて得られる。この工程の前に、ケカビ(Mucor)、クモノスカビ(Rhizopus)、Micrococcus、枯草菌(Bacillus subtilis)等を豆腐に接種して前培養を行うこともある。
【0029】
また、豆腐ようは、沖縄の発酵食品であり島豆腐を、麹菌と泡盛によって発酵させたものである。
【0030】
本発明では、豆腐の麹菌発酵物として、腐乳を用いることが、大豆臭の抑制効果に優れる点、及び、牛乳様風味の付与効果に優れる点で好ましい。
【0031】
豆腐の麹菌発酵物としては、瓶詰等の形態で、豆腐成分が溶解ないし分散されて液状になっているか、或いは、豆腐が漬け液に漬けられて固液分離可能な状態であるものが好適に挙げられる。本発明では、いずれを採用してもよい。
【0032】
豆腐の麹菌発酵物は、加工食品中、0.005~4.0質量%であることが好ましく、とりわけ、0.01~3.0質量%であることが大豆臭のマスキングと乳風味の付与の効果が効果的に向上する点で好ましく、中でも0.05~2.5質量%であることが好ましい。特に、加工食品がソース類又はペースト類である場合に、当該範囲であることが好ましい。なお、本明細書でいう豆腐の麹菌発酵物の量としては、豆腐の麹菌発酵物が液状又は上記の固液分離な状態の場合には、当該状態における量である。
【0033】
本発明の加工食品が粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白を含有する場合、その乾燥質量100質量部に対し、豆腐の麹菌発酵物が0.001~40質量部であることが好ましく、0.005~20質量部であることがより好ましく、0.01~10質量部であることが特に好ましい。豆腐の麹菌発酵物がこの範囲の量であることで、大豆臭が効果的に抑制され、また牛乳様風味が良好となる。
【0034】
本発明の加工食品が豆乳を含有する場合、その乾燥質量100質量部に対し、豆腐の麹菌発酵物が0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~50質量部がより好ましく、0.2~40質量部であることが更に好ましく、0.3~30質量部であることが更に一層好ましく、0.5~20質量部であることが特に好ましい。豆腐の麹菌発酵物がこの範囲の量であることで、大豆臭が効果的に抑制され、また牛乳様風味が良好となる。
【0035】
本発明の加工食品は、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白、豆乳及び豆腐の麹菌発酵物以外の成分を含有していてもよい。その様な成分としては、例えば水、肉類、野菜、魚介類などの具材、油脂、乳製品や各種添加剤(乳化剤、澱粉・デキストリン類、増粘多糖類、糖類、糖類以外の調味料)を挙げることができる。例えば、本発明の加工食品がソース類である場合にはソース類における水の含有量は10~85質量%が好ましく、15~80質量%が特に好ましく、30質量%以上である場合もあり、40質量%以上である場合もある。ここでいう水の含有量には、水を含む原料中の水の量も含まれる。なお、ペースト類である場合には、水の含有量は10~50質量%が好ましく、15~40質量%が特に好ましい。
【0036】
また、本発明の加工食品において、動物性蛋白質の量は10質量%以下であることが、牛乳様風味が得られる技術的意義が高い点で好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
同様の観点から、本発明の加工食品において、乳製品、つまり牛乳由来の製品の含有量は、乾燥質量にて、10質量%以下であることが、本発明にて牛乳様風味が得られる技術的意義が高い点で好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。ここでいう加工食品における量としては、本発明の加工食品がソース類又はペースト類である場合、ソース類又はペースト類を100質量%とした場合の量をいう。
【0037】
次に、本発明の加工食品の好適な製造方法について説明する。本発明の加工食品の好適な製造方法では、製造工程中に粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白若しくは豆乳と、豆腐の麹菌発酵物とを混合する工程を有していればよい。ここでいう混合は、水の存在下で行うことが、大豆臭の抑制効果が高い点や牛乳様風味の発現が良好である点で好ましい。
【0038】
粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と、豆腐の麹菌発酵物との混合のタイミングには特に限定されない。粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と、豆腐の麹菌発酵物との混合は、例えば10~120℃にて行うことが好ましく、20~100℃にて行うことがより好ましい。また粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と、豆腐の麹菌発酵物と混合状態で50~120℃に加熱することが好ましく、加熱した状態が5~90分間継続されていることが好ましく、1510~70分間継続されていることがより好ましい。例えば混合に用いる加熱用容器への粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白若しくは豆乳の投入と、豆腐の麹菌発酵物の投入とはいずれが先であってもよく、同時であってもよい。
【0039】
豆乳と、豆腐の麹菌発酵物との混合のタイミングには特に限定されない。これにより、豆乳における大豆臭を一層効果的に抑制することができる。粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と、豆腐の麹菌発酵物との混合は、例えば10~120℃にて行うことが好ましく、20~100℃にて行うことがより好ましい。また豆乳と、豆腐の麹菌発酵物と混合状態で50~120℃に加熱することが好ましく、加熱した状態が5~90分間継続されていることが好ましく、10~70分間継続されていることがより好ましい。例えば混合に用いる加熱用容器への粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白若しくは豆乳の投入と、豆腐の麹菌発酵物の投入とはいずれが先であってもよく、同時であってもよい。
【0040】
上述した通り、本発明の加工食品はソース類又はペースト類とすることが好ましいところ、ソース類又はペースト類を用いた食品の具体例としては、麺類、コロッケ、メンチカツなどの油調食品、グラタン、ドリア等のグラタン類、スープ類、シチュー類等が挙げられる。
例えば、麺類のスープ類;コロッケ又はメンチカツ等の油調食品における具材の中身やこれらに掛けるソース;ハンバーグなどの惣菜に掛けるソース;グラタン類等の惣菜におけるホワイトソースやミートソース、カレーソースといったソース類;麺類以外のスープ類;シチュー類等の液状又はペースト状の流動性のある部分が本発明の加工食品として、所定の量の豆腐の麹菌発酵物を含有することが好ましい。
特に、グラタンやドリア等のグラタン類;クリームコロッケ;ホワイトシチューといった、従来乳製品が用いられてきた加工食品において本発明を適用すると、その牛乳様風味付与効果の技術的意義が高いため好ましく、中でも、グラタン類であることが、豆腐の麹菌発酵物のホワイトソースとともに、大豆ミートの風味も改善できる効果を発揮しやすい点で好ましい。
【0041】
本発明は、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と豆乳とを含有する食品であることが好ましい。
従来は、大豆臭のしやすい粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と豆乳とを複合することで、喫食しにくさが増してしまう恐れがある。しかし、上記本発明の複合食品では、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と、豆乳とについて、同じ素材により大豆臭を抑制できるため、風味がまとまりやすい。また、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と、豆乳とについて、それぞれ牛乳様のコク、牛乳様の香り等の風味を付与できるため、嗜好性の高いものとなる。粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白に対し、大豆臭のマスキングを行い、牛乳様の風味として乳様のコクを与えることで、動物肉に近い風味が得やすくなる。また豆乳に対し、大豆臭のマスキングを行い、牛乳様のコク、香りを付与することで、動物乳に近い風味が得やすくなる。
粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と豆乳とを組み合わせる場合、両者の乾燥質量比を100:30~200とすることが好ましく、100:40~150とすることがより好ましい。
とりわけ、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と豆乳とを含有する食品が、豆腐の麹菌発酵物を粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白と豆乳とに接触状態で含有させる形態の食品であることが、牛乳様風味を付与しながら、大豆臭のマスキング効果を高めるため好ましい。
【0042】
更に、加工食品が、複数のソース類又はペースト類を組み合わせた複合食品であり、複数のソース類又はペースト類におけるそれぞれに粒状大豆たん白、繊維状大豆たん白又は豆乳を含有し、それぞれに豆腐の麹菌発酵物を含有する場合、各ソース類又はペースト類ごとに、大豆臭のマスキングを効果的に行えるとともに、乳様風味の付与が良好になされる点で好ましい。豆腐の麹菌発酵物を含有する2種以上のソース類又はペースト類を組み合わせる場合、いずれか一種において、豆腐の麹菌発酵物の所定量の含有量が満たされればよいが、各ソース類又はペースト類にて満たされていることが、とりわけ喫食性に優れる点で好ましい。粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白を含むソースと、豆乳を含むソースを用いる場合、一方のみに添加しても乳風味及び大豆臭のマスキング効果が得られるものとなる。
豆乳と豆腐の麹菌発酵物とを含有する第一のソース類又はペースト類と、
粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白と豆腐の麹菌発酵物とを含有する第二のソース類又はペースト類とを組み合わせる場合、第一のソース類又はペースト類と第二のソース類又はペースト類との質量比は100:10~90とすることが好ましく、100:20~80とすることがより好ましい。
また、第一のソース類又はペースト類における豆腐の麹菌発酵物の含有量をA(質量%)、第二のソース類又はペースト類における豆腐の麹菌発酵物の含有量をB(質量%)、とすると、優れた風味改善効果を得る観点から、A:Bは、100:3~120が好適であり、100:5~100がより好適であり、100:10~85が特に好適である。
【0043】
前記の複合食品として複数のソース類又はペースト類を用いる場合、複数のソース類又はペースト類とを接触状態に積層させて製造させたものであってもよく、複数のソース類又はペースト類を分離状態で一つの容器に収納し、喫食時に混合させるものであってもよい。
【0044】
複合食品には、複数のソース類又はペースト類のほかに、別成分を含有していてもよい。当該別成分としては、野菜類や穀類、別種のソース類又はペースト類等が挙げられる。
【0045】
以上、本発明をその好ましい態様に基づき適宜説明したが、本発明は上記記載に限定されない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0047】
(比較例1)
表1に記載の配合にてミートソースを調製した。
粒状大豆たん白(大豆ミート、日清オイリオ社製、商品名「ニューソイミーF2010」、乾燥質量100質量%、大きさ5mm、乾燥質量中、大豆由来蛋白質含量が50質量%)を戻し用水で戻した。
玉ねぎをみじん切りしてにんにくペーストととともにキャノーラ油で炒めた。ここに戻し用水とともに粒状大豆たん白を加え、コンソメを溶かし、塩、ケチャップ、ウスターソースを加えて80℃で10分間煮込み、ボロネーゼ風の大豆ミートソースを得た。
【0048】
(実施例1-1~1-4)
腐乳(富士食品工業社製商品名「豆腐乳FS」)を表1に記載の量で使用した。腐乳はソースの中に分散するようにして、粒状大豆たん白と混合した。腐乳と、粒状大豆蛋白質とを混合状態で加熱する時間は10分であった。その点以外は比較例1と同様にして大豆ミートソースを得た。
【0049】
【0050】
(比較例2)
表2に記載の配合にてホワイトソースを調製した。
鍋にバターを入れ、小麦粉を投入して炒めた。ここに水、コンソメを入れてコンソメを溶かし、豆乳クリーム(不二製油社製「コクリーム」、乾燥質量(水分以外の質量)19質量%、蛋白質5.6質量%、脂質12.3g、乾燥質量当たりの蛋白質量29.5質量%、乾燥質量当たりの脂質量64.7質量%、蛋白質/脂質の質量比率が0.45)を投入して、90℃にて加熱して30分間煮て、ホワイトソースを得た。
【0051】
(実施例2-1~2-4)
腐乳(富士食品工業社製商品名「豆腐乳FS」)を表2に記載の量で用いた。腐乳は、ソースの中に分散するようにして、豆乳クリームと混合した。豆腐乳と、豆乳クリームとを混合状態で加熱する時間は10分であった。その点以外は比較例2と同様にしてホワイトソースを得た。
【0052】
【0053】
得られたミートソースとホワイトソースについて、それぞれパネラー5名(男性3名、女性2名)に喫食させ、下記評価基準にて評価した。平均点を表3及び表4に示す。
(大豆臭のマスキング効果)
5:大豆臭が感じられない。
4:大豆臭がほぼ感じられない。
3:大豆臭を少し感じる。
2:大豆臭を感じる。
1:大豆臭を強く感じる。
【0054】
(乳風味)
5:牛乳様風味を強く感じる。
4:牛乳様風味を感じる。
3:牛乳様風味を少し感じる。
2:牛乳様風味をほぼ感じない。
1:牛乳様風味を感じない。
【0055】
【0056】
【0057】
表3及び表4に示す通り、粒状大豆たん白及び豆乳のいずれに豆腐の麹菌発酵物を組み合わせた場合であっても、大豆臭が抑制され、牛乳様風味が高まることが判る。また各実施例では、粒状大豆たん白に粒状大豆たん白及び豆乳にて、豆由来の独特な風味が軽減され、動物由来を感じさせるコク、香りを有し、おいしく喫食できるものとなった。
【0058】
(実施例3-1)
耐熱容器に茹でたマカロニ10質量部を入れ、実施例1-2で得たミートソース部34部を敷き、その上に実施例2-2で得たホワイトソース51部を積層させた。加熱して溶けるタイプのチーズ5質量部を散らして、オーブンに入れて5分間、200℃で焼き、グラタンを得た。得られたグラタンは、大豆臭が効果的に抑制され、牛乳様の風味に優れていた。
【0059】
(実施例3-2)
実施例1-2で得たミートソースを、同量の比較例1で得られたミートソースに変更した。その点以外は実施例3-1と同様とした。
【0060】
(実施例3-3)
実施例2-2で得たホワイトソースを、同量の比較例2で得られたホワイトソースに変更した。その点以外は実施例3-1と同様とした。
【0061】
(比較例3)
実施例1-2で得たミートソースを、同量の比較例1で得られたミートソースに変更し、実施例2-2で得たホワイトソースを、同量の比較例2で得られたホワイトソースに変更した。それらの点以外は実施例3-1と同様とした。
【0062】
下記評価基準で評価した。結果を表5に示す。
(評価)
5:大豆臭がせず、牛乳様の風味が十分感じられて、とてもおいしい。
4:大豆臭がごく弱く、また、牛乳様の風味が感じられて、おいしい。
3:大豆臭が若干感じられ、また、牛乳様の風味が若干感じられ、許容範囲。
2:大豆臭が感じられ、また、牛乳様の風味がほぼ感じられず、若干食べにくさを感じる。
1:大豆臭が強く感じられ、牛乳様の風味が全く感じられず、食べにくさを感じる。
【0063】
【0064】
上記表5の通り、粒状大豆蛋白質を含むソースと、豆乳を含むソースを組み合わせた複合食品において、何れか一方に麹菌発酵物を添加することで、乳風味増強及び大豆臭の抑制効果が高まり、両方に添加することで当該効果が顕著に優れることが判る。
【要約】
【課題】乳風味及び大豆臭のマスキング効果に優れた加工食品を提供する。
【解決手段】粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白及び/又は豆乳と、豆腐の麹菌発酵物とを含有し、豆腐の麹菌発酵物の含有量が0.005~4.0質量%である、加工食品。動物性蛋白質の含有量が10質量%以下である、ことが好ましい。液状又はペースト状であることも好ましい。また、豆腐の麹菌発酵物が腐乳であることも好ましい。加工食品がグラタン類のソースであることも好ましい。本発明の複合食品は、粒状大豆たん白若しくは繊維状大豆たん白と、豆乳とをそれぞれ別のソース類若しくはペースト類中に含有し、それらのうち少なくとも一種のソース類若しくはペースト類において、豆腐の麹菌発酵物の含有量が0.005~4.0質量%である。
【選択図】なし