(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】解析装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2023144619
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2019181189の分割
【原出願日】2019-10-01
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018188529
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】本庄 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】川岸 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正毅
【審査官】清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-158360(JP,A)
【文献】特開2015-177883(JP,A)
【文献】特開2011-045457(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150355(WO,A1)
【文献】特開2015-100613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列の複数の超音波画像を取得する画像取得部と、
一の時相における前記超音波画像内の第1の位置における信号値と、他の時相における前記超音波画像内の前記第1の位置に対応する第2の位置における信号値との相関関係を示す指標値を複数の時相で取得し、前記複数の時相で取得された前記指標値に基づいて、前記相関関係の時間軸方向の変化に応じた画素値が各位置に割り当てられた指標画像を生成する画像生成部と、
を備えた解析装置。
【請求項2】
時系列の複数の超音波画像を取得する画像取得部と、
一の時相における前記超音波画像内の第1の位置と、他の時相における前記超音波画像内の前記第1の位置に対応する第2の位置との信号強度の変化の相関関係を示す指標値を
複数の時相で取得し、前記複数の時相で取得された前記指標値に基づいて、前記相関関係の時間軸方向の変化を表す指標画像を生成する画像生成部と、
を備えた解析装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、前記指標画像を前記超音波画像に重畳する、
請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、
前記超音波画像に関心領域を設定し、
前記関心領域内の複数の位置それぞれについて前記指標値を取得する、
請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項5】
前記画像生成部は、前記第1の位置及び前記第2の位置における画像信号間の相関係数、1-相関係数、絶対係数、1-絶対係数、差分の絶対値の総和、差分の二乗和、差分の絶対値の総和を正規化した値、又は差分の二乗和を正規化した値、を前記指標値として計算する、
請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項6】
前記画像生成部は、複数の時相で取得された前記指標値の時間軸方向の変化として、標準偏差、分散、平均値、中央値、相関係数、又は絶対係数を計算する、
請求項5に記載の解析装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、
前記複数の超音波画像のうち計算対象とするフレームを指定する旨の入力を受け付け、
前記計算対象とするフレームの前記指標値を計算する、
請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項8】
前記画像生成部は、前記複数の超音波画像として、
前記超音波画像に対応するスキャン可能領域に含まれる各位置の信号値が、前記スキャン可能領域ごとに収集された情報、
前記スキャン可能領域に含まれる各位置の信号値が、前記スキャン可能領域のスキャンラインごとに収集された情報、又は、
前記スキャン可能領域に含まれる各位置の信号値が、プッシュパルス又は外部加振の後に前記スキャンラインごとに収集された情報を取得する、
請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項9】
前記超音波画像は、Bモード画像である、
請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項10】
前記画像生成部は、
前記複数の超音波画像に対して、画像間の動きを補正する動き補正処理を行い、
前記動き補正処理後の複数の超音波画像を用いて、前記指標値を計算する、
請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項11】
前記動き補正処理は、モーショントラッキング処理及びモーションスタビライザ処理を行う、
請求項10に記載の解析装置。
【請求項12】
コンピュータを、
時系列の複数の超音波画像を取得する画像取得部、
一の時相における前記超音波画像内の第1の位置における信号値と、他の時相における前記超音波画像内の前記第1の位置に対応する第2の位置における信号値との相関関係を示す指標値を複数の時相で取得し、前記複数の時相で取得された前記指標値に基づいて、前記相関関係の時間軸方向の変化に応じた画素値が各位置に割り当てられた指標画像を生成する画像生成部、
として機能させる、プログラム。
【請求項13】
コンピュータを、
時系列の複数の超音波画像を取得する画像取得部、
一の時相における前記超音波画像内の第1の位置と、他の時相における前記超音波画像内の前記第1の位置に対応する第2の位置との信号強度の変化の相関関係を示す指標値を複数の時相で取得し、前記複数の時相で取得された前記指標値に基づいて、前記相関関係の時間軸方向の変化を表す指標画像を生成する画像生成部、
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、解析装置及び解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管腫の鑑別診断には超音波造影が利用されている。しかし、超音波造影は、被検体の負担や手間がかかるので、ルーチン検査などに導入することは難しい。ルーチン検査などで血管腫の鑑別診断を行うには、Bモード撮像やドプラモード撮像のように、造影剤を用いない撮像法により鑑別可能な技術が必要である。
【0003】
血管腫の特徴的な所見として、時間ごとにエコー強度が変化する(揺らぐ)ことが知られており、糸ミミズサイン或いはwax and wane sign等と呼ばれている。この所見を捉えることで、血管腫の鑑別の一助になり得る可能性がある。また、上記の所見は血管腫のみならず、例えば嚢胞内に溜まった膿等、他の病態においても認められるため、この所見を捉える技術は他の病態の診断にも応用出来る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、時間ごとの信号強度の変化を評価することができる解析装置及び解析プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る解析装置は、画像取得部と、指標値取得部と、出力部とを備える。画像取得部は、時系列の複数の超音波画像を取得する。指標値取得部は、一の時相における前記超音波画像内の第1の位置と、他の時相における前記超音波画像内の前記第1の位置に対応する第2の位置との相関を示す指標値を複数の時相で取得する。出力部は、前記複数の時相で取得された前記指標値に基づいて、組織の揺らぎの程度を識別する識別情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る着目点について説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る着目点について説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る指標値計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るモーションスタビライザ処理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る第1指標値を計算する処理を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る第2指標値を計算する処理を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係るパラメトリック画像の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、残存性組織運動が含まれる場合のパラメトリック画像の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る指標値計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る参照領域を設定する処理を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態に係る第3指標値の時系列変化の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態の変形例に係る計算機能の処理を説明するための図である。
【
図16】
図16は、第3の実施形態に係る指標値計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第3の実施形態に係る2次元相関係数分布を生成する処理を説明するための図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態に係る2次元相関係数分布を生成する処理を説明するための図である。
【
図19】
図19は、第3の実施形態に係る2次元相関係数分布の相関係数を計算する処理を説明するための図である。
【
図20】
図20は、第3の実施形態に係る2次元相関係数分布の相関係数を計算する処理を説明するための図である。
【
図21】
図21は、その他の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態に係る解析装置及び解析プログラムを説明する。なお、以下の実施形態は、以下の説明に限定されるものではない。また、実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。
【0009】
解析装置は、例えば、医用診断装置及び医用情報処理装置を含む。ここで、医用診断装置は、例えば、超音波診断装置、光超音波診断装置(光音響イメージング装置)、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT-CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET-CT装置、又はこれらの装置群等を含む。また、医用情報処理装置は、例えば、ワークステーションやPACS(Picture Archiving Communication System)ビューワ等を含む。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力インタフェース102と、ディスプレイ103とを有する。超音波プローブ101、入力インタフェース102、及びディスプレイ103は、装置本体100に通信可能に接続される。なお、被検体Pは、超音波診断装置1の構成に含まれない。また、超音波診断装置1は、解析装置の一例である。
【0011】
超音波プローブ101は、複数の振動子(例えば、圧電振動子)を有し、これら複数の振動子は、後述する装置本体100が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101が有する複数の振動子は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、振動子に設けられる整合層と、振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。
【0012】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号(エコー信号)として超音波プローブ101が有する複数の振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
なお、第1の実施形態は、
図1に示す超音波プローブ101が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである場合や、一列に配置された複数の圧電振動子が機械的に揺動される1次元超音波プローブである場合、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合のいずれであっても適用可能である。
【0014】
入力インタフェース102は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等に対応する。例えば、入力インタフェース102は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体100に対して転送する。
【0015】
ディスプレイ103は、超音波診断装置1の操作者が入力インタフェース102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
【0016】
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置であり、
図1に示すように、送受信回路110と、信号処理回路120と、画像処理回路130と、画像メモリ140と、記憶回路150と、処理回路160とを有する。送受信回路110、信号処理回路120、画像処理回路130、画像メモリ140、記憶回路150、及び処理回路160は、相互に通信可能に接続される。
【0017】
送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0018】
なお、送受信回路110は、後述する処理回路160の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0019】
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行って反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0020】
送受信回路110は、被検体Pの2次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から2次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信回路110は、被検体Pの3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0021】
信号処理回路120は、例えば、送受信回路110から受信した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、サンプル点ごとの信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。信号処理回路120により生成されたBモードデータは、画像処理回路130に出力される。
【0022】
また、信号処理回路120は、例えば、送受信回路110から受信した反射波データより、移動体のドプラ効果に基づく運動情報を、走査領域内の各サンプル点で抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、信号処理回路120は、反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。信号処理回路120により得られた運動情報(血流情報)は、画像処理回路130に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、若しくはこれらの組み合わせ画像としてディスプレイ103にカラー表示される。
【0023】
画像処理回路130は、信号処理回路120により生成されたデータから超音波画像データを生成する。画像処理回路130は、信号処理回路120が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度で表したBモード画像データを生成する。また、画像処理回路130は、信号処理回路120が生成したドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
【0024】
ここで、画像処理回路130は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像処理回路130は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像処理回路130は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像処理回路130は、超音波画像データに、付帯情報(種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等)を合成する。
【0025】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像処理回路130が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、画像処理回路130は、信号処理回路120が3次元のデータ(3次元Bモードデータ及び3次元ドプラデータ)を生成した場合、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、ボリュームデータを生成する。そして、画像処理回路130は、ボリュームデータに対して、各種レンダリング処理を行って、表示用の2次元画像データを生成する。
【0026】
画像メモリ140は、画像処理回路130が生成した表示用の画像を記憶するメモリである。また、画像メモリ140は、信号処理回路120が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ140が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像処理回路130を経由して表示用の超音波画像データとなる。なお、本実施形態において単に「画像」と記載する場合、各画素に対してカラーが割り当てられた表示用の画像のみならず、各画素の座標と画素値(信号値)とが対応づけられたデータ列(「画像データ」とも称する)も含むものとする。
【0027】
記憶回路150は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路150は、必要に応じて、画像メモリ140が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、記憶回路150が記憶するデータは、図示しない通信用インタフェースを介して、外部装置へ転送することができる。
【0028】
処理回路160は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路160は、入力インタフェース102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路150から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、信号処理回路120、及び画像処理回路130の処理を制御する。また、処理回路160は、画像メモリ140が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ103にて表示するように制御する。
【0029】
また、処理回路160は、
図1に示すように、取得機能161と、計算機能162と、生成機能163と、出力制御機能164とを実行する。ここで、計算機能162は、計算部の一例である。また、生成機能163は、生成部の一例である。また、出力制御機能164は、出力制御部の一例である。
【0030】
ここで、例えば、
図1に示す処理回路160の構成要素である取得機能161、計算機能162、生成機能163、及び出力制御機能164が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で超音波診断装置1の記憶装置(例えば、記憶回路150)に記録されている。処理回路160は、各プログラムを記憶装置から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路160は、
図1の処理回路160内に示された各機能を有することとなる。なお、取得機能161、計算機能162、生成機能163、及び出力制御機能164が実行する各処理機能については、後述する。
【0031】
ここで、血管腫の特徴的な所見として知られている「時間ごとの信号強度の変化(揺らぎ)」を、例えば、フレーム方向(時間方向)における信号強度のバラつき(標準偏差)として表すことが考えられる。この場合、信号強度が大きいほどバラつきも大きくなるため、信号強度自体で正規化する必要がある。しかしながら、正規化する(すなわち、変化率にする)と、低輝度の方が信号強度の変化が大きく、バラつき易くなる。つまり、標準偏差では、信号強度に依存した値となってしまう。このため、信号強度に依存せずに、時間ごとの信号強度の変化を表す指標値を定義することが重要であると考えられる。
【0032】
そこで、本実施形態では、時間ごとの信号強度の変化を表す指標値を定義するにあたり、「フレーム間の相関関係の強弱」及び「相関関係のフレーム方向での関係性」の2点に着目した。
【0033】
図2及び
図3を用いて、第1の実施形態に係る着目点について説明する。
図2及び
図3は、第1の実施形態に係る着目点について説明するための図である。
図2及び
図3は、時系列に並ぶ複数の医用画像について、隣り合うフレーム間における画素値の分布の相関関係を示したものである。なお、
図2及び
図3では、各医用画像間における組織の全体的な運動(位置ずれ)は無い、若しくは補正されているものとする。
【0034】
図2には、時間ごとの信号強度(画素値)の変化が有る場合の相関関係を例示する。
図2に示す散布
図SP11,SP12,SP13は、フレーム方向の揺らぎが有る領域R11に設定されたカーネル(解析窓)について、カーネル内の各画素位置に対応する点をプロットしたものである。具体的には、散布
図SP11の横軸はnフレーム目の画素値に対応し、縦軸はn+1フレーム目の画素値に対応する。また、散布
図SP12の横軸はn+1フレーム目の画素値に対応し、縦軸はn+2フレーム目の画素値に対応する。また、散布
図SP13の横軸はn+2フレーム目の画素値に対応し、縦軸はn+3フレーム目の画素値に対応する。
【0035】
また、
図3には、時間ごとの信号強度の変化が無い場合の相関関係を例示する。
図3に示す散布
図SP21,SP22,SP23は、フレーム方向の揺らぎが無い領域R12に設定されたカーネルについて、カーネル内の各画素位置に対応する点をプロットしたものである。具体的には、散布
図SP21の横軸はnフレーム目の画素値に対応し、縦軸はn+1フレーム目の画素値に対応する。また、散布
図SP22の横軸はn+1フレーム目の画素値に対応し、縦軸はn+2フレーム目の画素値に対応する。また、散布
図SP23の横軸はn+2フレーム目の画素値に対応し、縦軸はn+3フレーム目の画素値に対応する。
【0036】
例えば、血管腫が存在する領域では、時間ごとの信号強度の変化が有るため、
図2に示すような相関関係が認められる。同一の画素位置であっても隣り合うフレーム間で画素値が変化するため、
図2の散布
図SP11,SP12,SP13は、
図3の散布
図SP21,SP22,SP23と比較して広い領域(真円に近い形状の領域)に分散している。つまり、血管腫が存在する領域では、「フレーム間の相関関係が弱い」と言える。また、画素値の変化の度合いによっては、フレーム間の相関関係が一時的に強くなる場合がある。例えば、散布
図SP13は、散布
図SP12と比較して狭い領域(細長い楕円形の領域)に集中しているため、相関関係が強くなっている。つまり、血管腫が存在する領域では、「相関関係がフレーム方向で変化する」と言える。
【0037】
一方、血管腫が存在しない領域、つまり背景肝や血管腫以外の腫瘍が存在する領域では、時間ごとの信号強度の変化が無いため、
図3に示すような相関関係が認められる。同一の画素位置であれば隣り合うフレーム間での画素値の変化は少ないため、
図3の散布
図SP21,SP22,SP23は、
図2の散布
図SP11,SP12,SP13と比較して狭い領域(細長い楕円形の領域)に集中している。つまり、血管腫が存在しない領域では、「フレーム間の相関関係が強い」と言える。また、
図3の散布
図SP21,SP22,SP23は、いずれも相関関係が強いままである。つまり、血管腫が存在しない領域では、「相関関係がフレーム方向で一定である」と言える。
【0038】
上述した2つの着目点について纏めると、血管腫の存在の有無に応じて次の特徴が有ると言える。すなわち、血管腫が存在する領域は、「フレーム間の相関関係が弱い」かつ「相関関係がフレーム方向で変化する」という特徴を有する。また、血管腫が存在しない領域は、「フレーム間の相関関係が強い」かつ「相関関係がフレーム方向で一定である」という特徴を有する。
【0039】
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、これら2つの着目点を用いて指標値を出力するために、以下の処理機能を実行する。
【0040】
なお、以下の実施形態では、Bモード画像中に描出された血管腫の揺らぎを評価する場合を説明するが、これに限定されるものではない。例えば、開示の技術は、血管腫に限らず、画像中でフレーム方向の揺らぎを呈する組織の変化であれば定量的に評価することが可能である。また、開示の技術は、Bモード画像に限らず、ドプラ画像等の他の超音波画像、或いは他の医用画像診断装置により撮像された医用画像における揺らぎについても評価することが可能である。
【0041】
図4及び
図5を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を説明する。
図4は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を示すフローチャートである。
図5は、第1の実施形態に係る指標値計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示す処理手順は、例えば、パラメトリック画像を表示する旨の指示を操作者から受け付けた場合に開始される。なお、
図5に示す処理手順は、
図4に示すステップS104の処理内容に対応する。
【0042】
また、以下の説明では、
図6から
図9を参照して説明する。
図6は、第1の実施形態に係るモーションスタビライザ処理を説明するための図である。
図7は、第1の実施形態に係る第1指標値を計算する処理を説明するための図である。
図8は、第1の実施形態に係る第2指標値を計算する処理を説明するための図である。
図9は、第1の実施形態に係るパラメトリック画像の一例を示す図である。
【0043】
ステップS101において、処理回路160は、処理を開始するか否かを判定する。例えば、処理回路160は、パラメトリック画像を表示する旨の指示を操作者から受け付けた場合に、処理を開始すると判定し(ステップS101肯定)、ステップS102以降の処理を開始する。なお、処理を開始しない場合(ステップS101否定)、ステップS102以降の処理は開始されず、各処理機能は待機状態である。
【0044】
ステップS101が肯定されると、ステップS102において、取得機能161は、時系列の複数の医用画像を取得する。例えば、取得機能161は、時系列に並んだ複数時相のBモード画像データを画像メモリ140から読み出す。具体例を挙げると、取得機能161は、1フレーム目からNフレーム目までのN枚のBモード画像データを画像メモリ140から読み出す。そして、取得機能161は、読み出したN枚のBモード画像データを計算機能162に送る。なお、Nは、自然数である。また、以下の処理では、超音波走査が行われた走査範囲全体に対応するBモード画像データが処理対象となっても良いし、関心領域内の画像データのみが処理対象となっても良い。
【0045】
なお、ここでは、N枚のBモード画像データが撮像済みであり、予め画像メモリ140に記憶されている場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得機能161は、リアルタイムに生成されるN枚のBモード画像データを取得してもよい。この場合、例えば、操作者は、ステップS101の後に超音波プローブ101を用いてNフレーム分の超音波走査を行う。そして、画像処理回路130は、この超音波走査により収集されるNフレーム分のBモードデータに基づいて、Nフレーム分のBモード画像データを生成する。取得機能161は、生成されたNフレーム分のBモード画像データを画像処理回路130から取得する。
【0046】
ステップS103において、計算機能162は、複数の医用画像に対して、モーショントラッキング処理を実行する。例えば、読み出されたN枚のBモード画像データは、手ぶれや体動(心臓の拍動など)に起因する画像間の動き(位置ずれ)を含む。このため、計算機能162は、N枚のBモード画像データに対してモーショントラッキング処理を行い、各医用画像間の位置ずれを特定する。そして、計算機能162は、特定した各医用画像間の位置ずれを補正することで、フレーム方向の位置ずれを含まない一連のBモード画像データを生成する。なお、モーショントラッキング処理としては、公知のモーショントラッキング処理を適宜適用可能である。
【0047】
ステップS104において、計算機能162は、指標値計算処理を実行する。
図5を用いて、指標値計算処理として実行されるステップS201~ステップS208の処理を説明する。
【0048】
ステップS201において、計算機能162は、複数の医用画像に対して、空間方向及び時間方向への平滑化処理を実行する。例えば、計算機能162は、N枚のBモード画像に対して空間方向にローパスフィルタ(Low-pass filter:LPF)処理を行う。ここで、LPF処理は、例えば、移動平均フィルタやメディアンフィルタ等が適用可能である。これにより、計算機能162は、空間方向のスパイクノイズやスペックルノイズを低減することができる。
【0049】
また、計算機能162は、N枚のBモード画像の各画素において時間方向に並ぶN個の画素値に対して、LPF処理を行う。これにより、計算機能162は、時間方向の画像信号強度から、時間方向のスパイクノイズ等の高周波ノイズを低減することができる。なお、計算機能162は、空間方向へのLPF処理及び時間方向へのLPF処理のいずれを先に実行しても良いし、いずれか一方のみを実行しても良い。
【0050】
ステップS202において、計算機能162は、関心領域(Region Of Interest:ROI)を設定する。例えば、計算機能162は、平滑化処理後のN枚のBモード画像のうち1枚のBモード画像(代表的には1フレーム目の画像)をディスプレイ103に表示させる。操作者は、表示されたBモード画像上で任意の位置及び大きさの領域を指定する。計算機能162は、Bモード画像上で操作者により指定された領域をROIとして設定する。また、計算機能162は、残りのBモード画像(例えば、2~Nフレーム目までの画像)についても、1フレーム目のROIと同一の位置及び大きさの領域をROIとして設定する。
【0051】
なお、ここでは、ROIが手動で設定される場合を説明したが、自動的に設定されても良い。例えば、計算機能162は、公知のセグメンテーション処理により画像内の構造物の輪郭を抽出し、抽出した輪郭の位置や形状に基づいて、画像内にROIを設定することができる。
【0052】
ステップS203において、計算機能162は、モーションスタビライザ処理を実行する。例えば、ステップS103の処理により位置ずれが補正されたBモード画像であっても、位置ずれが残存している場合がある。それは、ステップS103とステップS203では、モーションスタビライザ処理を行う上で、着目する領域が異なる場合に起こる。例えば、ステップS103では、全体的な動きの補正のために、背景肝および腫瘍の位置関係については任意の領域を着目する領域とする。それに対して、ステップS203では、取り除いた全体的な動きの中に残存する拍動などの動きを補正、検出するためであり、背景肝側だけに着目することを推奨している。両者の着目領域が異なった場合は、位置補正結果に差分(位置ずれ)が生じる。そこで、計算機能162は、平滑化処理後のN枚のBモード画像に対してモーションスタビライザ処理を行い、各画像間の残存している位置ずれを補正又は検出する。なお、上述したステップS103およびステップS203で着目する領域は、あくまで一例であり、任意に選択することを可能とする。
【0053】
図6を用いて、ステップS203の処理を説明する。
図6には、nフレーム目、n+1フレーム目、及びn+2フレーム目のBモード画像からROIの位置ずれを検出する場合の処理を例示する。
図6において、領域R20は、ROIを示す。また、破線の矩形領域は、前のフレームにおける領域R20の位置を示す。また、n、n+1、及びn+2は、いずれも1~Nに含まれる数である。
【0054】
図6に示すように、例えば、計算機能162は、領域R20に対するパターンマッチングを含む追跡処理を行うことで、各Bモード画像における領域R20の位置を特定する。
そして、計算機能162は、隣り合うフレームにおける領域R20の位置の差分に基づいて、位置ずれを検出する。例えば、計算機能162は、nフレーム目とn+1フレーム目の画像間の水平方向の位置ずれx
1と、鉛直方向の位置ずれy
1とを検出する。また、計算機能162は、n+1フレーム目とn+2フレーム目の画像間の水平方向の位置ずれx
2と、鉛直方向の位置ずれy
2とを検出する。
【0055】
このように、計算機能162は、N枚のBモード画像における画像間の位置ずれを検出する。なお、モーションスタビライザ処理は、画像間の動きを補正する動き補正処理の一例であり、公知のモーションスタビライザ処理を適宜適用可能である。また、モーションスタビライザ処理は、上述したモーショントラッキング処理と同一の処理が適用されても良い。
【0056】
ステップS204において、計算機能162は、処理対象となる画像ペアを選択する。例えば、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち処理対象となる画像ペアとして、nフレーム目とn+1フレーム目の2枚のBモード画像を選択する。
【0057】
ステップS205において、計算機能162は、画像ペアの動きを補正する。例えば、計算機能162は、モーションスタビライザ処理により検出された位置ずれに基づいて、画像ペアに含まれる2枚の医用画像の間の動き(位置ずれ)を補正する。
【0058】
ステップS206において、計算機能162は、各画素位置について、画像信号間の類似性を示す第1指標値を計算する。例えば、計算機能162は、複数の医用画像に含まれる2つの医用画像で構成される画像ペアについて、2つの医用画像における画像信号間の類似性を示す第1指標値を計算する。
【0059】
ステップS207において、計算機能162は、処理対象となる画像ペアが残っているか否かを判定する。例えば、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち未処理のBモード画像が存在する場合には、処理対象となる画像ペアが残っていると判定し(ステップS207肯定)、ステップS204の処理へ移行する。一方、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち未処理のBモード画像が存在しない場合には、処理対象となる画像ペアが残っていないと判定し(ステップS207否定)、ステップS208の処理へ移行する。
【0060】
つまり、計算機能162は、処理対象となる画像ペアを変更しながら、ステップS204~ステップS207の処理を繰り返し実行する。そして、計算機能162は、複数の画像ペアを順番に選択するとともに、各画像ペアに基づく第1指標値を順番に計算する。
【0061】
図7を用いて、ステップS204~ステップS207の処理を説明する。
図7には、nフレーム目、n+1フレーム目、及びn+2フレーム目のBモード画像から、nフレーム目及びn+1フレーム目の第1指標値を計算する場合の処理を例示する。
図7において、領域R21、領域R22、及び領域R23は、nフレーム目、n+1フレーム目、及びn+2フレーム目のBモード画像にそれぞれ設定されたカーネル(解析窓)を示す。
【0062】
まず、処理対象となる画像ペアとしてnフレーム目とn+1フレーム目のBモード画像が選択されている場合を説明する。この場合、計算機能162は、nフレーム目及びn+1フレーム目の2枚のBモード画像それぞれに対してカーネルを設定する。例えば、計算機能162は、nフレーム目のBモード画像において、ROI(領域R20)に含まれる画素位置(xk,yk)を中心とするカーネル(領域R21)を設定する。ここで、nフレーム目及びn+1フレーム目の画像間の位置ずれは(x1,y1)である。このため、計算機能162は、n+1フレーム目のBモード画像の画素位置(xk+x1,yk+y1)を中心として、カーネル(領域R22)を設定する。
【0063】
そして、計算機能162は、nフレーム目のカーネル内の画像信号と、n+1フレーム目のカーネル内の画像信号と間の相関係数に基づいて、nフレーム目の第1指標値を計算する。例えば、カーネル内の各画素位置には、画素位置を識別するためのピクセルインデックスが割り当てられている。そこで、計算機能162は、領域R21内のピクセルインデックスごとの画素値と、領域R22内のピクセルインデックスごとの画素値とを2変数データとして、相関係数を計算する。そして、計算機能162は、計算した相関係数を「1」から減算することで、nフレーム目の第1指標値を計算する。
【0064】
次に、処理対象となる画像ペアとしてn+1フレーム目とn+2フレーム目のBモード画像が選択されている場合を説明する。ここで、n+1フレーム目のBモード画像については、前回の計算処理においてカーネル(領域R22)が設定済みである。そこで、計算機能162は、n+2フレーム目のBモード画像に対して、領域R22に対応するカーネル(領域R23)を設定する。例えば、n+1フレーム目のカーネル(領域R22)の中心位置は(xk+x1,yk+y1)であり、n+1フレーム目及びn+2フレーム目の画像間の位置ずれは(x2,y2)である。このため、計算機能162は、n+2フレーム目のBモード画像の画素位置(xk+x1+x2,yk+y1+y2)を中心として、カーネル(領域R23)を設定する。
【0065】
そして、計算機能162は、n+1フレーム目のカーネル内の画像信号と、n+2フレーム目のカーネル内の画像信号と間の相関係数に基づいて、n+1フレーム目の第1指標値を計算する。例えば、計算機能162は、領域R22内のピクセルインデックスごとの画素値と、領域R23内のピクセルインデックスごとの画素値とを2変数データとして、相関係数を計算する。そして、計算機能162は、計算した相関係数を「1」から減算することで、n+1フレーム目の第1指標値を計算する。
【0066】
このように、計算機能162は、ROI内の画素位置(xk,yk)について、nフレーム目及びn+1フレーム目の第1指標値を計算する。また、計算機能162は、ROI内の他の画素位置についても同様の処理を行うことにより、ROI内の全ての画素位置について、第1指標値を計算する。そして、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち残りのBモード画像に対しても同様の処理を行うことにより、時系列に並ぶ複数の第1指標値を計算する。計算された複数の第1指標値は、フレーム数(時相)や画素位置と関連づけられて記憶回路150や図示しないメモリに格納される。
【0067】
なお、
図7において、「1-相関係数」を第1指標値と定義したのは、揺らぎが大きいほど大きくなる指標値を定義するためである。この定義により、第1指標値の大小関係と、揺らぎの大小関係とが連動するので、後述のパラメトリック画像として出力した場合に揺らぎが大きい領域(画素)を高輝度で描出することができる。ただし、第1指標値は、必ずしも「1-相関係数」に限定されるものではない。例えば、計算機能162は、相関係数の値をそのまま第1指標値として出力することも可能である。この場合、第1指標値の大小関係と揺らぎの大小関係とが逆の関係になるものの、揺らぎの程度を表す指標値として利用可能である。また、計算機能162は、画像信号間の類似性(相違性)を示す統計値を用いて、第1指標値を定義しても良い。例えば、計算機能162は、第1指標値として、2つの医用画像における画像信号間の相関係数、1-相関係数、絶対係数、1-絶対係数、差分の絶対値の総和(Sum of Abusolute Difference:SAD)、又は差分の二乗和(Sum of Squared Difference:SSD)を計算することができる。つまり、本実施形態において、類似性を示す第1指標値は、類似しているほど高くなる値(類似度)であっても良いし、相違しているほど高くなる値(非類似度)であっても良い。ただし、血管腫と背景肝のように、信号強度が異なる領域の類似性を数値化する場合には、信号強度に依存しにくい計算手法として相関係数を利用するのが好適である。また、相関係数は、ゼロ平均正規化相互相関に基づいて計算されても良い。
【0068】
また、
図7では一例として、隣り合うフレーム(つまり1フレーム間隔)の2枚のBモード画像を用いて第1指標値を計算する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、計算機能162は、2フレーム間隔、3フレーム間隔等、任意のフレーム間隔の2枚のBモード画像を画像ペアとして選択し、この画像ペアを用いて第1指標値を計算しても良い。
【0069】
また、
図7では一例として、3×3の9画素により構成されるカーネルを用いて第1指標値を計算する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。カーネルに含まれる画素数は任意に設定可能である。例えば、計算機能162は、最小単位のカーネルとして1×1の1画素分のカーネルを用いて第1指標値を計算することも可能である。
【0070】
ステップS208において、計算機能162は、各画素位置における複数の第1指標値に基づいて、第2指標値を計算する。例えば、計算機能162は、複数の画像ペアそれぞれについて計算した第1指標値に基づいて、第1指標値の時間方向の統計値に対応する第2指標値を計算する。具体的には、計算機能162は、関心領域内の複数の位置それぞれに対応する第1指標値を用いて、複数の位置それぞれの第2指標値を計算する。
【0071】
図8を用いて、ステップS208の処理を説明する。
図8には、ROI(領域R20)内の各画素位置における時系列の第1指標値に基づいて第2指標値を計算する場合の処理を例示する。
図8に示す2つのグラフは、ROI(領域R20)内の代表点における第1指標値の時系列変化を示す。これらのグラフにおいて、横軸は時間(フレーム)に対応し、縦軸は第1指標値(1-相関係数)に対応する。
【0072】
図8に示すように、背景肝の代表点では、いずれのフレームにおいても相関係数が比較的高い(1に近い)ため、第1指標値はいずれのフレームにおいても低くなる。一方、血管腫の代表点では、背景肝と比較して相関係数が低くなることが多いため、第1指標値は背景肝より概ね高くなる。そこで、計算機能162は、第1指標値の時間方向の統計値を第2指標値として計算する。すなわち、第2指標値は、血管腫の状態に係る指標値であると言える。
【0073】
例えば、計算機能162は、第2指標値として、第1指標値の時間方向の標準偏差を計算する。これにより、計算機能162は、ROI(領域R20)内の各画素位置について、一つの第2指標値を計算する。計算された第2指標値は、画素位置と関連づけられて記憶回路150や図示しないメモリに格納される。
【0074】
なお、
図8では、第2指標値として標準偏差を計算する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、計算機能162は、第2指標値として、第1指標値の時間方向の分散、平均値、中央値、相関係数、絶対係数、又は移動平均値を計算しても良い。なお、移動平均値を計算する場合には、時間方向に複数計算される移動平均値の最大値又は最小値をホールドして出力するのが好適である。また、計算機能162は、必ずしも第1指標値の時間方向の統計値を第2指標値として計算しなくとも良い。例えば、計算機能162は、第1指標値間の差(例えば、時間方向において隣り合う第1指標値間の差)を第2指標値として計算することも可能である。
【0075】
図4の説明に戻る。ステップS105において、生成機能163は、パラメトリック画像を生成する。例えば、生成機能163は、第2指標値の空間分布を示すパラメトリック画像を生成する。なお、パラメトリック画像は、指標画像の一例である。
【0076】
図9を用いて、ステップS105の処理を説明する。
図9には、生成機能163により生成されるパラメトリック画像の一例を例示する。
図9では、
図8のROI(領域R20)について計算された第2指標値に基づいて、パラメトリック画像I10を生成する場合を説明する。
【0077】
図9に示すように、生成機能163は、ROI(領域R20)に含まれる各画素位置の第2指標値の大きさに応じた画素値(カラー)を、ROI内の各画素位置に割り当てることにより、パラメトリック画像I10を生成する。つまり、パラメトリック画像I10のうち高輝度の領域R24は、血管腫の存在を示唆するものである。
【0078】
なお、パラメトリック画像I10は、背景画像としてのBモード画像I20上に重畳表示されるのが好適である。Bモード画像I20としては、N枚のBモード画像のうちの任意のフレームの画像を適宜選択可能である。
【0079】
ステップS106において、出力制御機能164は、パラメトリック画像を表示する。例えば、出力制御機能164は、生成機能163により生成されたパラメトリック画像I10を、ディスプレイ103に表示させる。そして、処理回路160は、処理を終了する。
【0080】
なお、
図4及び
図5に示した処理手順はあくまで一例であり、図示の処理手順に限定されるものではない。例えば、ステップS201の平滑化処理は、必ずしも実行されなくてもよい。
【0081】
また、例えば、
図4では、出力形態の一例として、パラメトリック画像が表示される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力制御機能164は、第2指標値の代表値を出力してもよい。この場合、計算機能162は、ROI内の少なくとも一部に対応する計測領域内の各位置の第2指標値に基づいて、計測領域の代表値を算出する。例えば、操作者が
図9の領域R24を計測領域として設定すると、計算機能162は、領域R24内の各画素の第2指標値を用いて、代表値を算出する。ここで、代表値とは、例えば、平均値、中央値、最大値、最小値等の統計値である。そして、出力制御機能164は、計算機能162により算出された領域R24の代表値をディスプレイ103に表示させる。
【0082】
また、例えば、出力制御機能164は、第2指標値のヒストグラムを表示してもよい。このヒストグラムは、例えば、縦軸に頻度(ピクセル数)、横軸に第2指標値の大きさをとったグラフである。
【0083】
つまり、出力制御機能164は、パラメトリック画像、代表値、ヒストグラム等の中から適宜選択された出力形態で出力可能である。また、出力制御機能164により出力される出力先はディスプレイ103に限定されるものではない。例えば、出力制御機能164は、出力対象の情報を記憶回路150に格納しても良いし、外部装置に送信しても良い。
【0084】
上述してきたように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、取得機能161は、時系列の複数の医用画像を取得する。計算機能162は、複数の医用画像に含まれる2つの医用画像で構成される各画像ペアについて、2つの医用画像における画像信号間の類似性を示す第1指標値を計算する。また、計算機能162は、複数の画像ペアそれぞれについて計算した第1指標値に基づいて、第2指標値を計算する。これにより、超音波診断装置1は、時間ごとの信号強度の変化を評価することができる。
【0085】
例えば、超音波診断装置1は、「フレーム間の相関関係(類似性)の強弱」に基づいて、第1指標値を計算する。また、超音波診断装置1は、「相関関係のフレーム方向での関係性」に基づいて、第2指標値を計算する。これにより、超音波診断装置1は、時間ごとの信号強度の変化を定量的に評価することができる。
【0086】
一例として、操作者(医師)は、Bモード画像内に血管腫の疑いのある領域(陰影)を発見する場合がある。このような場合、操作者は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1を用いて、パラメトリック画像をディスプレイ103上に表示させる。ここで、
図9の領域R24に示したように、所定以上の輝度値で領域が強調された場合には、操作者は、当該領域に時間ごとの信号強度の変化が認められると判断できる。この結果、操作者は、Bモード画像内の陰影が血管腫であると判別可能となる。これにより、操作者は、超音波造影を用いた鑑別を行うことなく、Bモード画像の超音波走査により簡便に血管腫を判別することが可能となる。したがって、超音波診断装置1によれば、ルーチン検査においても血管腫の判別を行うことができる。
【0087】
(第1の実施形態の変形例1)
例えば、
図9では、第2指標値に基づいてパラメトリック画像I10を生成する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、生成機能163は、第1指標値の空間分布を示すパラメトリック画像を複数生成することができる。ここで、このパラメトリック画像は、フレーム間の類似性(相関関係)を示す画像(類似性のパラメトリック画像)である。また、出力制御機能164は、生成した複数の類似性のパラメトリック画像を並べて、又は、時系列順に表示させることができる。
【0088】
例えば、生成機能163は、第1指標値の大きさに応じた画素値を各画素位置に割り当てることにより、類似性のパラメトリック画像を生成する。ここで、第1指標値は時系列の情報であるので、類似性のパラメトリック画像は、時系列に並ぶ複数の画像(動画)となる。類似性のパラメトリック画像では、血管腫が存在する領域が比較的高輝度に描出される。また、類似性のパラメトリック画像の動画を再生すると、血管腫が存在する領域では輝度値が高くなったり低くなったりする変化が認められる。
【0089】
なお、第1指標値は、類似性のパラメトリック画像に限らず、グラフとしても出力可能である。例えば、出力制御機能164は、操作者により指定された任意の位置における第1指標値の時系列変化を示すグラフ(
図8と同様のグラフ)をディスプレイ103に表示させる。
【0090】
また、第1指標値は、類似性のパラメトリック画像やグラフに限らず、代表値やヒストグラムといった出力形態で出力可能である。代表値やヒストグラムの出力形態は、上述した第2指標値の代表値やヒストグラムの出力形態と同様であるので、説明を省略する。
【0091】
(第1の実施形態の変形例2)
また、例えば、出力制御機能164は、
図2及び
図3に示した散布図を表示させても良い。
【0092】
例えば、操作者がBモード画像上の点を指定すると、生成機能163は、指定された点を中心とするカーネルを設定する。そして、生成機能163は、隣り合うフレーム間において、カーネル内の各画素位置に対応する点をプロットすることで、時系列に並ぶ複数の散布図を生成する。N枚のBモード画像が存在する場合、N-1個の散布図が生成される。そして、出力制御機能164は、生成された複数の散布図を並べて、又は、時系列順に表示させる。例えば、血管腫が存在する位置(点)では、SP11~SP13のような散布図が表示される。一方、血管腫が存在しない位置では、SP21~SP23のような散布図が表示される。
【0093】
これにより、操作者は、散布図上で相関関係の強弱を確認することができる。また、操作者は、散布図をフレーム方向に閲覧することで、各散布図での相関関係がフレーム方向で変化するか否かを確認することができる。この結果、操作者は、指定した位置に血管腫が存在するか否かを判断することができる。
【0094】
(第1の実施形態の変形例3)
また、例えば、第2指標値の計算に用いるBモード画像のフレーム数を十分確保するために、Bモード画像の撮像時に最小限のスキャン時間を示すインジケータを表示することができる。
【0095】
例えば、操作者が超音波プローブ101を被検体Pの体表に当接させ、超音波走査を開始すると、インジケータが表示される。このインジケータは、例えば、最小限のスキャン時間に応じたカウントダウンを行う形態であっても良いし、最小限のスキャン時間が経過した時点で通知を行う形態であっても良い。
【0096】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、第2指標値の計算対象として、全てのフレームの第1指標値を用いる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、N枚のBモード画像データのうち、計算対象として指定されたフレームの第1指標値を用いて、第2指標値を計算することができる。例えば、モーションスタビライザ処理で補正しきれない性質の運動が存在する場合には、計算対象となるフレームを指定することが好適である。
【0097】
例えば、画像内に描出される組織全体が均一に並進運動をしている場合には、モーションスタビライザ処理により組織の運動を位置ずれとして検出し、補正することが可能である。しかしながら、生体組織は必ずしも均一な並進運動をするとは限らない。例えば、画像内の組織が拍動の影響を受ける場合にも、拍動の影響を受けやすい領域と受けにくい領域が存在する場合がある。このような場合には、画像内の組織が均一な並進運動を行わないため、モーションスタビライザ処理を行っても補正しきれず、残存してしまう。このように、モーションスタビライザ処理を行っても残存してしまう組織の運動(以下、「残存性組織運動」と表記する)が存在する場合には、血管腫が存在する領域の判別が難しくなる。
【0098】
図10を用いて、残存性組織運動が含まれる場合のパラメトリック画像について説明する。
図10は、残存性組織運動が含まれる場合のパラメトリック画像の一例を示す図である。パラメトリック画像I30は、背景画像としてのBモード画像I40上に重畳表示される。
【0099】
図10に示すように、残存性組織運動が含まれる場合には、パラメトリック画像I30は、血管腫が存在する領域R30以外の領域においても高輝度の領域を含むことがある。これは、残存性組織運動により第1指標値(1-相関係数)の値が大きくなるためと考えられる。
【0100】
そこで、第2の実施形態では、N枚のBモード画像データのうち、残存性組織運動の影響が大きいフレームを除外して第2指標値を計算する場合を説明する。なお、N枚のBモード画像データのうち除外するフレーム(リジェクトフレーム)を指定することは、計算対象とするフレームを指定することと実質的に同義である。
【0101】
第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、
図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、
図4に示した指標値計算処理の一部が相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成については説明を省略する。
【0102】
図11を用いて、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を説明する。
図11は、第2の実施形態に係る指標値計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
図11に示す処理手順は、
図4に示すステップS104の処理内容に対応する。
【0103】
また、以下の説明では、
図12から
図14を参照して説明する。
図12は、第2の実施形態に係る参照領域を設定する処理を説明するための図である。
図13は、第2の実施形態に係る第3指標値の時系列変化の一例を示す図である。
【0104】
ステップS301において、計算機能162は、複数の医用画像に対して、空間方向及び時間方向への平滑化処理を実行する。なお、ステップS301の処理は、
図5に示したステップS201の処理と同様であるので説明を省略する。
【0105】
ステップS302において、計算機能162は、ROI及び参照領域を設定する。例えば、
図12に示すように、計算機能162は、平滑化処理後のN枚のBモード画像のうち1枚のBモード画像(代表的には1フレーム目の画像)をディスプレイ103に表示させる。操作者は、表示されたBモード画像上で血管腫の疑いのある領域と疑いのない領域(背景肝)を含む領域を、ROI(領域R40)として指定する。また、操作者は、背景肝の領域を、参照領域(領域R50)として指定する。計算機能162は、Bモード画像上で操作者により指定された領域を、ROI及び参照領域として設定する。また、計算機能162は、1フレーム目のROI及び参照領域に基づいて、残りのBモード画像(例えば、2~Nフレーム目までの画像)におけるROI及び参照領域を設定する。なお、参照領域としては、スペックルの大きさに対して数倍程度の大きさの領域を設定するのが好適である。
【0106】
なお、ここでは、ROI及び参照領域が手動で設定される場合を説明したが、自動的に設定されても良い。例えば、計算機能162は、公知のセグメンテーション処理により画像内の構造物の輪郭を抽出し、抽出した輪郭の位置や形状に基づいて、画像内にROI及び参照領域を設定することができる。
【0107】
ステップS303において、計算機能162は、モーションスタビライザ処理を実行する。なお、ステップS303の処理は、
図5に示したステップS203の処理と同様であるので説明を省略する。
【0108】
そして、計算機能162は、ステップS303が終了すると、ステップS304~ステップS307の処理と平行して、ステップS308~ステップS311の処理を実行する。なお、ステップS308~ステップS311の処理は、画像信号間の類似性を示す第3指標値を計算する処理である。また、ステップS304~ステップS307の処理は、
図5に示したステップS204~ステップS207の処理と同様であるので説明を省略する。
【0109】
ステップS308において、計算機能162は、処理対象となる画像ペアを選択する。この処理は、
図5に示したステップS104の処理と同様であるので説明を省略する。
【0110】
ステップS309において、計算機能162は、画像ペアの動きを補正する。この処理は、
図5に示したステップS105の処理と同様であるので説明を省略する。
【0111】
ステップS310において、計算機能162は、参照領域について、画像信号間の類似性を示す第3指標値を計算する。
【0112】
例えば、処理対象となる画像ペアとしてnフレーム目とn+1フレーム目のBモード画像が選択されている場合を説明する。この場合、計算機能162は、nフレーム目の参照領域内の画像信号と、n+1フレーム目の参照領域内の画像信号と間の相関係数に基づいて、nフレーム目の第3指標値を計算する。
【0113】
例えば、参照領域内の各画素位置には、画素位置を識別するためのピクセルインデックスが割り当てられている。そこで、計算機能162は、nフレーム目の参照領域内のピクセルインデックスごとの画素値と、n+1フレーム目の参照領域内のピクセルインデックスごとの画素値とを2変数データとして、相関係数を計算する。そして、計算機能162は、計算した相関係数を「1」から減算することで、nフレーム目の第3指標値を計算する。
【0114】
ステップS311において、計算機能162は、処理対象となる画像ペアが残っているか否かを判定する。例えば、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち未処理のBモード画像が存在する場合には、処理対象となる画像ペアが残っていると判定し(ステップS311肯定)、ステップS308の処理へ移行する。一方、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち未処理のBモード画像が存在しない場合には、処理対象となる画像ペアが残っていないと判定し(ステップS311否定)、ステップS312の処理へ移行する。
【0115】
つまり、計算機能162は、処理対象となる画像ペアを変更しながら、ステップS308~ステップS311の処理を繰り返し実行することで、各画像ペアに基づく第3指標値を順次計算する。
【0116】
このように、計算機能162は、N枚のBモード画像それぞれの参照領域に基づいて、時系列に並ぶ複数の第3指標値を計算する。計算された複数の第3指標値は、フレーム数(時相)と関連づけられて記憶回路150や図示しないメモリに格納される。
【0117】
なお、
図11において、「1-相関係数」を第3指標値と定義したが、これに限定されるものではない。例えば、計算機能162は、第3指標値として、2つの医用画像における画像信号間の相関係数、1-相関係数、絶対係数、1-絶対係数、SAD、又はSSDを計算しても良い。ただし、第3指標値の定義は、第1指標値の定義と同様の定義を用いるのが好適である。
【0118】
ステップS312において、出力制御機能164は、第3指標値の時系列変化を表示させる。例えば、出力制御機能164は、計算機能162により計算された時系列に並ぶ複数の第3指標値を記憶回路150から読み出す。そして、出力制御機能164は、読み出した時系列に並ぶ複数の第3指標値に基づいて、第3指標値の時系列変化を示すグラフを生成し、ディスプレイ103に表示させる。
【0119】
ステップS313において、計算機能162は、計算対象とするフレームの指定を受け付ける。例えば、操作者は、ディスプレイ103に表示された第3指標値の時系列変化を示すグラフを閲覧し、計算対象から除外するフレーム(リジェクトフレーム)を指定する旨の入力を行う。計算機能162は、リジェクトフレームを指定する旨の入力を受け付ける。
【0120】
図13を用いて、第2の実施形態に係る計算対象とするフレームの選択について説明する。
図13の上段には、参照領域における第3指標値の時系列変化を示すグラフを例示する。
図13の中段には、血管腫の代表点における第1指標値の時系列変化を示すグラフを例示する。
図13の下段には、背景肝の代表点における第1指標値の時系列変化を示すグラフを例示する。
図13のグラフにおいて、横軸は時間に対応し、縦軸は第1指標値又は第3指標値(つまり「1-相関係数」の値)に対応する。
【0121】
図13の上段に示すように、参照領域における第3指標値の時系列変化は、背景肝を含む組織全体の動きを表す。つまり、第3指標値が大きいフレームでは、組織全体の動きが大きく、第3指標値が小さいフレームでは、組織全体の動きが小さいことを示す。
【0122】
ここで、上記の残存性組織運動が小さい場合(モーションスタビライザ処理により組織全体の動きを概ね補正できる場合)には、参照領域の第3指標値は小さくなるはずである。しかしながら、参照領域の第3指標値が大きいフレームがある場合には、そのフレームには残存性組織運動が存在することがわかる。例えば、期間T10、期間T11、及び期間T12における第3指標値が大きいので、残存性組織運動が存在すると考えられる(
図13の上段)。
【0123】
また、残存性組織運動は、その付近の血管腫や背景肝の信号強度にも影響を与える可能性がある。例えば、血管腫の代表点や背景肝の代表点における第1指標値は、期間T10、期間T11、及び期間T12で概ね大きくなっている(
図13の中段及び下段)。また、期間T10、期間T11、及び期間T12に含まれる第1指標値の曲線は、同じ期間における第3指標値の曲線形状と類似している。このため、血管腫や背景肝が存在する領域は、残存性組織運動の影響を受けていることが示唆される。したがって、残存性組織運動を含むフレームは、計算対象として望ましくないフレームであると言える。
【0124】
そこで、出力制御機能164は、第3指標値の時系列変化を示すグラフ(
図13の上段のグラフ)をディスプレイに表示させる。なお、出力制御機能164は、第3指標値の時系列変化を示すグラフのみならず、操作者に指定された位置の第1指標値の時系列変化を示すグラフを生成して表示しても良い。この場合、操作者は、血管腫が存在すると思われる位置や、存在しないと思われる位置を任意に指定することができる。
【0125】
そして、操作者は、期間T10、期間T11、及び期間T12に含まれるフレームをリジェクトフレームとして指定する旨の入力を行う。これにより、計算機能162は、期間T10、期間T11、及び期間T12に含まれるフレームをリジェクトフレームとする旨の入力を受け付ける。なお、ここでは、操作者がリジェクトフレームを指定する場合を説明したが、計算対象とするフレームを指定することも可能である。
【0126】
ステップS314において、計算機能162は、計算対象とするフレームの第1指標値を用いて、第2指標値を計算する。例えば、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち、期間T10、期間T11、及び期間T12に含まれるフレームの第1指標値を「null」とする。そして、計算機能162は、期間T10、期間T11、及び期間T12以外のフレームの第1指標値を用いて、第2指標値を計算する。
【0127】
このように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、N枚のBモード画像データのうち、残存性組織運動の影響が大きいフレームの第1指標値を計算対象から除外して、第2指標値を計算する。これにより、超音波診断装置1は、より正確に第2指標値を計算することができる。
【0128】
図14を用いて、第2の実施形態に係る表示画像の一例を説明する。
図14は、第2の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。
図14には、残存性組織運動が含まれる場合の表示画像を例示する。
図14において、領域R31は、Bモード画像をシネ表示するための領域である。また、領域R32は、パラメトリック画像を表示するための領域であり、パラメトリック画像の背景画像として任意の時相のBモード画像が表示される。また、領域R33は、シネメモリを示すバーを表示するための領域である。
【0129】
図14に示すように、出力制御機能164は、パラメトリック画像I31をディスプレイ103に表示させる。パラメトリック画像I31のうち領域R34は、高輝度の画素が多いため、血管腫が存在していることが示唆される。また、領域R34の外側は、血管腫が存在しないため低輝度に描出される。
【0130】
このように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、残存性組織運動が存在する場合にも、血管腫が存在する領域R34と、血管腫が存在しない領域(領域R34の外側)を明確に区別して表示することができる。
【0131】
また、出力制御機能164は、リジェクトフレームを示す情報を表示させる。例えば、出力制御機能164は、領域R33のシネメモリを示すバーのうち、リジェクトフレームに対応する位置を黒い領域で表示させる。この黒い領域は、
図13の期間T10、期間T11、及び期間T12に対応するフレームを示す。これにより、操作者は、シネメモリを示すバー上でリジェクトフレームを把握することができる。
【0132】
なお、リジェクトフレームを示す黒い領域は、必ずしも黒でなくても良い。他の領域と区別可能な色やハッチングにより表示可能である。また、リジェクトフレームを示す情報は、必ずしもシネメモリを示すバー上に示されなくても良い。例えば、撮像時間やフレーム数などを示す数値としてディスプレイ103に表示されても良い。
【0133】
また、リジェクトフレームを表示するのではなく、計算対象としたフレームを表示しても良い。計算対象としたフレームを示す情報は、リジェクトフレームを示す情報と同様の表示形態により表示可能である。
【0134】
なお、第2の実施形態では、第1指標値を計算する処理(ステップS304~ステップS307)と、第3指標値を計算する処理(ステップS308~ステップS311)とを平行して処理する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、第1指標値を計算する処理を実行した後に第3指標値を計算する処理を実行しても良いし、第3指標値を計算する処理を実行した後に第1指標値を計算する処理を実行しても良い。
【0135】
また、第3指標値を計算する処理を実行した後に第1指標値を計算する処理を実行する場合には、リジェクトフレームが除外されたBモード画像群を処理対象として第1指標値を計算することも可能である。この場合、計算機能162は、リジェクトフレームが除外されたBモード画像群の中から、処理対象となる画像ペアを選択する(ステップS304の処理)。そして、計算機能162は、選択した画像ペアに対してステップS305及びステップS306の処理を実行し、処理対象となる画像ペアが残っているか判定する(ステップS307の処理)。ステップS307の処理において、計算機能162は、リジェクトフレームが除外されたBモード画像群の中に未処理のBモード画像が存在する場合に、処理対象となる画像ペアが残っていると判定する。一方、計算機能162は、リジェクトフレームが除外されたBモード画像群の中に未処理のBモード画像が存在しない場合には、処理対象となる画像ペアが残っていないと判定する。これにより、超音波診断装置1は、計算対象とならないフレームについては第1指標値を計算する処理を実行しないので、第1指標値を計算する処理の負荷を軽減することができる。
【0136】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態では、操作者が手動でリジェクトフレームを指定する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、リジェクトフレームを自動的に決定することも可能である。
【0137】
すなわち、第2の実施形態の変形例に係る超音波診断装置1において、計算機能162は、2つの医用画像それぞれに参照領域を設定する。そして、計算機能162は、参照領域について、2つの医用画像における画像信号間の類似性を示す第3指標値を計算する。そして、計算機能162は、第3指標値に基づいて、複数の医用画像のうち計算対象とするフレームを決定する。そして、計算機能162は、計算対象とするフレームの第1指標値を用いて、第2指標値を計算する。
【0138】
例えば、第2の実施形態の変形例に係る計算機能162は、
図11のステップS313の処理に代えて、第3指標値に基づいて計算対象とするフレームを決定する処理を実行する。なお、計算機能162は、第3指標値の時系列変化を表示する処理(ステップS312の処理)を必ずしも実行しなくても良いが、操作者にリジェクトフレームの決定根拠を提示するために、第3指標値の時系列変化を表示するのが好適である。
【0139】
ここで、組織全体の運動が適正に補正されていれば、第3指標値は以下の2つの特徴を有すると考えられる。
【0140】
第1の特徴は、「第3指標値は一定以上に高くならない亅というものである。これは、組織全体の運動が補正されていた場合には、ある一定の違いはあり得るものの、一定以上の違いは存在しないだろうとの推論に基づく。そこで、第3指標値がその平均値以上に大きいフレームを除外する。
【0141】
また、第2の特徴は、「第3指標値はバラつかない」というものである。つまり、第3指標値の標準偏差は、ある一定以内に収まるはずである。そこで、第3指標値の標準偏差が、その標準偏差の平均値以上に大きいフレームを除外する。
【0142】
そこで、計算機能162は、第1の特徴と第2の特徴の双方を満たすフレームを、計算対象として決定する。例えば、計算機能162は、第1の特徴「第3指標値は一定以上に高くならない亅に基づいて、第1閾値を設定する。また、計算機能162は、第2の特徴「第3指標値はバラつかない」に基づいて、第2閾値を設定する。そして、計算機能162は、第3指標値と、第1閾値及び第2閾値それぞれとの比較に基づいて、計算対象とするフレームを決定する。
【0143】
図15を用いて、第2の実施形態の変形例に係る計算機能162の処理を説明する。
図15は、第2の実施形態の変形例に係る計算機能162の処理を説明するための図である。グラフG10は、第3指標値の時系列変化を示すグラフである。このグラフを生成する処理は、上述した第2の実施形態の処理と同様であるので説明を省略する。
【0144】
例えば、計算機能162は、第1の特徴に基づいて、全てのフレームの第3指標値の平均値を第1閾値として計算する。そして、計算機能162は、第3指標値と第1閾値とを比較する。例えば、計算機能162は、グラフG10における各フレームの第3指標値から第1閾値の値をそれぞれ減算することで、グラフG11を生成する。グラフG11において、横軸は時間に対応し、縦軸は減算値に対応する。また、縦軸の「0(ゼロ)」の位置は、第1閾値に対応する。
【0145】
そして、計算機能162は、第1閾値よりも大きい値を有するフレームを除外する。つまり、計算機能162は、グラフG11の「0」より大きい値を有するフレームを除外し、期間T20、期間T21、及び期間T22に含まれるフレームを残す。
【0146】
また、計算機能162は、第2の特徴に基づいて、全てのフレームの第3指標値の標準偏差の平均値を第2閾値として計算する。そして、計算機能162は、第3指標値と第2閾値とを比較する。例えば、計算機能162は、各フレームの第3指標値の標準偏差から、第2閾値の値をそれぞれ減算することで、グラフG12を生成する。ここで、各フレームの第3指標値の標準偏差は、各フレームの前後数フレーム分の第3指標値の標準偏差として計算される。グラフG12において、横軸は時間に対応し、縦軸は減算値に対応する。また、縦軸の「0(ゼロ)」の位置は、第2閾値に対応する。
【0147】
そして、計算機能162は、第2閾値よりも大きい値を有するフレームを除外する。つまり、計算機能162は、グラフG12の「0」より大きい値を有するフレームを除外し、期間T23に含まれるフレームを残す。
【0148】
ここで、第1の特徴と第2の特徴の双方を満たすフレームは、グラフG11とグラフG12の双方において残ったフレームである。期間T23は期間T21に含まれるので、
図15において第1の特徴と第2の特徴の双方を満たすフレームは、期間T23に含まれるフレームである。例えば、第1の特徴と第2の特徴の双方を満たすフレームを「1」で、満たさないフレームを「0」で示すと、
図15のグラフG13が得られる。つまり、計算機能162は、期間T23に含まれるフレームを計算対象として決定する。
【0149】
このように、第2の実施形態に係る変形例に係る超音波診断装置1は、計算対象とするフレームを自動的に決定することができる。なお、上記の説明では、第1の特徴と第2の特徴の双方を満たすフレームを計算対象とする場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、計算機能162は、第1の特徴と第2の特徴の少なくとも一方を満たすフレームを計算対象としても良い。また、上述した第1閾値及び第2閾値はあくまで一例であり、任意の閾値を設定可能である。ただし、閾値は、第3指標値の時間方向の統計値に基づく値であることが好適である。
【0150】
(第3の実施形態)
上述した第1及び第2の実施形態では、カーネル内の画像信号に基づいて1点(中心位置)の類似性(第1指標値)を計算し、類似性のフレーム方向への変動に着目する場合を説明した。しかしながら、相関係数分布の半値幅は、映像系の点広がり関数(Point Spread Function:PSF)に依存する。例えば、PSFが広い場合には、フレーム方向の揺らぎによる変動があったとしても相関係数分布の幅が広いため、想定よりも相関係数の低下が起こらず、揺らぎの識別能が低下する可能性がある。
【0151】
そこで、第3の実施形態では、1点の相関係数に着目するのではなく、探索領域を設けて2次元空間の相関係数分布(類似性の分布)のフレーム方向への変動に着目することで、フレーム方向の揺らぎの識別能を向上させる場合を説明する。
【0152】
第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、
図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、
図5に示した指標値計算処理の一部が相違する。そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成については説明を省略する。
【0153】
図16を用いて、第3の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を説明する。
図16は、第3の実施形態に係る指標値計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
図16に示す処理手順は、
図4に示したステップS104の処理内容(つまり、
図5の処理内容)に対応する。
【0154】
また、以下の説明では、
図17から
図20を参照して説明する。
図17及び
図18は、第3の実施形態に係る2次元相関係数分布を生成する処理を説明するための図である。
図19及び
図20は、第3の実施形態に係る2次元相関係数分布の相関係数を計算する処理を説明するための図である。
【0155】
ステップS401~ステップS405において、計算機能162は、各処理を実行する。なお、ステップS401~ステップS405の処理は、
図5に示したステップS201~ステップS205の処理と同様であるので説明を省略する。
【0156】
ステップS406において、計算機能162は、各画素位置について、2次元相関係数分布を生成する。つまり、計算機能162は、複数の医用画像に含まれる2つの医用画像で構成される各画像ペアについて、一方の医用画像の各位置における画像信号と、他方の画像における複数の位置それぞれの画像信号との間の類似性を示す指標値群(第4指標値群)を計算する。なお、2次元相関係数分布は、指標値群の一例である。
【0157】
ステップS407において、計算機能162は、2次元相関係数分布のうち最も相関係数が高い画素位置に、次のカーネルの中心位置を移動させる。
【0158】
ステップS408において、計算機能162は、処理対象となる画像ペアが残っているか否かを判定する。例えば、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち未処理のBモード画像が存在する場合には、処理対象となる画像ペアが残っていると判定し(ステップS408肯定)、ステップS404の処理へ移行する。一方、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち未処理のBモード画像が存在しない場合には、処理対象となる画像ペアが残っていないと判定し(ステップS408否定)、ステップS409の処理へ移行する。
【0159】
つまり、計算機能162は、処理対象となる画像ペアを変更しながら、ステップS404~ステップS408の処理を繰り返し実行する。そして、計算機能162は、複数の画像ペアを順番に選択するとともに、各画像ペアに基づく第1指標値を順番に計算する。
【0160】
図17及び
図18を用いて、ステップS404~ステップS408の処理を説明する。
図17には、nフレーム目及びn+1フレーム目のBモード画像から、nフレーム目の2次元相関係数分布を生成する場合の処理を例示する。
図17において、領域R40は、nフレーム目のBモード画像に設定されたカーネルを示す。また、領域R41は、n+1フレーム目のBモード画像に設定された探索領域を示す。また、領域R42は、n+1フレーム目のBモード画像に設定されたカーネルを示す。
図18には、n+1フレーム目及びn+2フレーム目のBモード画像から、n+1フレーム目の2次元相関係数分布を生成する場合の処理を例示する。
図18において、領域R43は、n+1フレーム目のBモード画像に設定されたカーネルを示す。また、領域R44は、n+2フレーム目のBモード画像に設定された探索領域を示す。また、領域R45は、n+2フレーム目のBモード画像に設定されたカーネルを示す。
【0161】
まず、
図17を用いて、処理対象となる画像ペアとしてnフレーム目とn+1フレーム目のBモード画像が選択されている場合を説明する。この場合、計算機能162は、nフレーム目のBモード画像において、ROIに含まれる画素位置(x
p,y
p)を中心とするカーネル(領域R40)を設定する。
【0162】
そして、計算機能162は、n+1フレーム目のBモード画像において、画素位置(xp,yp)に対応する画素位置を中心として探索領域(領域R41)を設定する。ここで、nフレーム目及びn+1フレーム目の画像間の位置ずれが(x1,y1)である場合には、計算機能162は、n+1フレーム目のBモード画像の画素位置(xp+x1,yp+y1)を中心として、探索領域(領域R41)を設定する。
【0163】
そして、計算機能162は、nフレーム目のBモード画像における画素位置(xp,yp)の画像信号と、n+1フレーム目のBモード画像における探索領域内の各画素位置の画像信号との間の2次元相関係数分布を生成する。例えば、計算機能162は、探索領域(領域R41)内の画素位置(xq,yq)を中心としてカーネル(領域R42)を設定する。そして、計算機能162は、カーネル(領域R40)内の画像信号と、カーネル(領域R42)内の画像信号とに基づいて、画素位置(xq,yq)に対応する相関係数を計算する。例えば、計算機能162は、領域R40内のピクセルインデックスごとの画素値と、領域R42内のピクセルインデックスごとの画素値とを2変数データとして、相関係数を計算する。
【0164】
そして、計算機能162は、探索領域(領域R41)内の画素位置(x
q,y
q)を変更しつつ、変更した各画素位置の画像信号と、画素位置(x
p,y
p)の画像信号との相関係数を計算する。これにより、計算機能162は、探索領域(領域R41)内の各画素位置の画像信号と、画素位置(x
p,y
p)の画像信号との相関係数の分布情報を、nフレーム目の2次元相関係数分布として生成する。なお、
図17に図示した2次元相関係数分布は、探索領域(領域R41)内の各画素位置に、各画素位置の相関係数の大きさに応じた輝度値を割り当てて示したものである。
【0165】
そして、計算機能162は、2次元相関係数分布のうち最も相関係数が高い画素位置に、次のフレームにおけるカーネルの中心位置を移動させる。例えば、計算機能162は、
図17の2次元相関係数分布のうち最も高輝度の画素位置P11(x
r,y
r)に、次のフレームにおけるカーネルの中心位置を移動させる。ここで、2次元相関係数分布における座標系は、n+1フレーム目のBモード画像における座標系と対応している。このため、画素位置P11(x
r,y
r)は、n+1フレーム目のBモード画像における画素位置(x
r,y
r)に対応する。これにより、計算機能162は、nフレーム目の画素位置(x
p,y
p)を、n+1フレーム目の探索領域内で最も類似性が高い位置に移動(追跡)させることができる。
【0166】
次に、
図18を用いて、処理対象となる画像ペアとしてn+1フレーム目とn+2フレーム目のBモード画像が選択されている場合を説明する。ここで、n+1フレーム目のBモード画像については、
図17の処理においてカーネルの中心位置(x
r,y
r)が設定済みである。そこで、計算機能162は、n+1フレーム目のBモード画像において、画素位置(x
r,y
r)を中心とするカーネル(領域R43)を設定する。
【0167】
そして、計算機能162は、n+2フレーム目のBモード画像において、画素位置(xr,yr)に対応する画素位置を中心として探索領域(領域R44)を設定する。ここで、n+1フレーム目及びn+2フレーム目の画像間の位置ずれが(x2,y2)である場合には、計算機能162は、n+2フレーム目のBモード画像の画素位置(xr+x2,yr+y2)を中心として、探索領域(領域R44)を設定する。
【0168】
そして、計算機能162は、n+1フレーム目のBモード画像における画素位置(xr,yr)の画像信号と、n+2フレーム目のBモード画像における探索領域内の各画素位置の画像信号との間の2次元相関係数分布を生成する。例えば、計算機能162は、探索領域(領域R44)内の画素位置(xs,ys)を中心としてカーネル(領域R45)を設定する。そして、計算機能162は、カーネル(領域R43)内の画像信号と、カーネル(領域R45)内の画像信号とに基づいて、画素位置(xs,ys)に対応する相関係数を計算する。例えば、計算機能162は、領域R43内のピクセルインデックスごとの画素値と、領域R45内のピクセルインデックスごとの画素値とを2変数データとして、相関係数を計算する。
【0169】
そして、計算機能162は、探索領域(領域R44)内の画素位置(x
s,y
s)を変更しつつ、変更した各画素位置の画像信号と、画素位置(x
r,y
r)の画像信号との相関係数を計算する。これにより、計算機能162は、探索領域(領域R44)内の各画素位置の画像信号と、画素位置(x
r,y
r)の画像信号との相関係数の分布情報を、n+1フレーム目の2次元相関係数分布として生成する。なお、
図18に図示した2次元相関係数分布は、探索領域(領域R44)内の各画素位置に、各画素位置の相関係数の大きさに応じた輝度値を割り当てて示したものである。
【0170】
そして、計算機能162は、2次元相関係数分布のうち最も相関係数が高い画素位置に、次のフレームにおけるカーネルの中心位置を移動させる。例えば、計算機能162は、
図18の2次元相関係数分布のうち最も高輝度の画素位置P12(x
t,y
t)に、次のフレームにおけるカーネルの中心位置を移動させる。ここで、2次元相関係数分布における座標系は、n+2フレーム目のBモード画像における座標系と対応している。このため、画素位置P12(x
t,y
t)は、n+2フレーム目のBモード画像における画素位置(x
t,y
t)に対応する。
【0171】
このように、計算機能162は、ROI内の画素位置(xp,yp)を追跡しつつ、nフレーム目及びn+1フレーム目の2次元相関係数分布を生成する。また、計算機能162は、ROI内の他の画素位置についても同様の処理を行うことにより、ROI内の全ての画素位置について、2次元相関係数分布を生成する。そして、計算機能162は、N枚のBモード画像のうち残りのBモード画像に対しても同様の処理を行うことにより、時系列に並ぶ複数の2次元相関係数分布を生成する。生成された複数の2次元相関係数分布は、フレーム数(時相)や画素位置と関連づけられて記憶回路150や図示しないメモリに格納される。
【0172】
ステップS409において、計算機能162は、対応する各画素位置について、2次元相関係数分布の相関係数を計算する。つまり、計算機能162は、2つの画像ペアについて計算した2つの指標値群の間の類似性を示す値を、第1指標値として計算する。
【0173】
図19及び
図20を用いて、2次元相関係数分布の相関係数を計算する処理を説明する。
図19には、背景肝の代表点における時系列の2次元相関係数分布を用いて、相関係数を計算する場合の処理を例示する。また、
図20には、血管腫の代表点における時系列の2次元相関係数分布を用いて、相関係数を計算する場合の処理を例示する。
【0174】
図19及び
図20に示すように、各画素位置について、nフレーム目、n+1フレーム目、及びn+2フレーム目の2次元相関係数分布が生成されている。ここで、計算機能162は、nフレーム目の2次元相関係数分布内の相関係数と、n+1フレーム目の2次元相関係数分布内の相関係数と間の相関係数を計算する。例えば、計算機能162は、nフレーム目の2次元相関係数分布内のピクセルインデックスごとの相関係数と、n+1フレーム目の2次元相関係数分布内のピクセルインデックスごとの相関係数とを2変数データとして、nフレーム目の相関係数を計算する。
【0175】
また、計算機能162は、n+1フレーム目の2次元相関係数分布内の相関係数と、n+2フレーム目の2次元相関係数分布内の相関係数と間の相関係数を計算する。例えば、計算機能162は、n+1フレーム目の2次元相関係数分布内のピクセルインデックスごとの相関係数と、n+2フレーム目の2次元相関係数分布内のピクセルインデックスごとの相関係数とを2変数データとして、n+1フレーム目の相関係数を計算する。
【0176】
このように、計算機能162は、処理対象とする2次元相関係数分布のペアを変更しながら、ペア間の相関係数を計算する。これにより、計算機能162は、各画素位置について、相関係数の時系列情報を生成する。
【0177】
例えば、
図19には、背景肝の代表点について相関係数の時系列情報を生成した場合を例示する。この場合、背景肝の代表点を含んだ周辺の領域では揺らぎが小さいため、nフレーム目、n+1フレーム目、及びn+2フレーム目の2次元相関係数分布は、互いに類似している。このため、グラフG20に示すように、背景肝の代表点における相関係数は、比較的高い値で一定となる。
【0178】
一方、
図20には、血管腫の代表点について相関係数の時系列情報を生成した場合を例示する。この場合、血管腫の代表点を含んだ周辺の領域では揺らぎが大きいため、nフレーム目、n+1フレーム目、及びn+2フレーム目の2次元相関係数分布は、互いに異なる場合が多い。このため、グラフG21に示すように、血管腫の代表点における相関係数は、背景肝と比較して低い値になりやすく、フレーム方向で変化する。
【0179】
このように、計算機能162は、ROI内の全ての画素位置について、時系列に並ぶ複数の相関係数を計算する。なお、
図19では、説明の明瞭化のため、nフレーム目、n+1フレーム目、及びn+2フレーム目の2次元相関係数分布として同一の分布(画像)を例示しているが、同一の分布が並ぶことは実際には稀である。
【0180】
また、
図19及び
図20では、相関係数を計算する場合を説明したが、これに限定されるものではない。ステップS409の処理で計算される相関係数は、第1の実施形態において説明した「2つの医用画像における画像信号間の類似性を示す第1指標値」に相当する。このため、計算機能162は、相関係数に代えて、1-相関係数、絶対係数、1-絶対係数、SAD、又はSSDを計算することができる。
【0181】
ステップS410において、計算機能162は、フレーム方向の標準偏差を計算する。例えば、計算機能162は、ROI内の各画素位置について計算された時系列に並ぶ複数の相関係数を用いて、フレーム方向の標準偏差を計算する。
【0182】
なお、ステップS410の処理で計算される標準偏差は、第1の実施形態において説明した「第1指標値(類似性)の時間方向の統計値に対応する第2指標値」に相当する。このため、計算機能162は、標準偏差に代えて、分散、平均値、中央値、相関係数、絶対係数、又は移動平均値を計算することができる。
【0183】
このように、第3の実施形態に係る超音波診断装置1において、計算機能162は、ROI内の各画素位置について、2次元相関係数分布を生成する。そして、計算機能162は、2次元相関係数分布の間の類似性を示す第1指標値を計算する。そして、計算機能162は、時系列に並ぶ複数の第1指標値を用いて、フレーム方向の第2指標値を計算する。これにより、超音波診断装置1は、フレーム方向の揺らぎの識別能を向上させることができる。
【0184】
(第3の実施形態の変形例)
例えば、出力制御機能164は、更に、2次元相関係数分布を表示させても良い。
【0185】
例えば、操作者がBモード画像上の点を指定すると、計算機能162は、指定された点について、時系列に並ぶ複数の2次元相関係数分布を生成する。そして、出力制御機能164は、生成された複数の2次元相関係数分布を並べて、又は、時系列順に表示させる。例えば、血管腫が存在する位置(点)では、
図20に示した2次元相関係数分布が表示される。一方、血管腫が存在しない位置では、
図19に示した2次元相関係数分布が表示される。
【0186】
これにより、操作者は、2次元相関係数分布をフレーム方向に閲覧することで、各2次元相関係数分布での相関関係がフレーム方向で変化するか否かを確認することができる。この結果、操作者は、指定した位置に血管腫が存在するか否かを判断することができる。
【0187】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0188】
(Bモード画像以外の信号の利用)
例えば、上述した実施形態では、時系列の複数の医用画像を用いて第1指標値及び第2指標値を計算する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医用画像として生成される前の信号群を用いて第1指標値及び第2指標値を計算することも可能である。
【0189】
すなわち、取得機能161は、時系列の複数の信号群を取得する。また、計算機能162は、複数の信号群に含まれる2つの信号群で構成される各信号群ペアについて、2つの信号群における信号間の類似性を示す第1指標値を計算する。また、計算機能162は、複数の信号群ペアそれぞれについて計算した第1指標値に基づいて、第1指標値の時間方向の統計値に対応する第2指標値を計算する。
【0190】
例えば、取得機能161は、医用画像として、Bモード画像に変換される前のBモードデータを取得しても良い。つまり、医用画像は、医用画像に対応するスキャン可能領域に含まれる各位置の信号値が、スキャン可能領域ごとに収集された情報であっても良い。
【0191】
また、例えば、Bモードのような、開口中心を1回の超音波送受信ごとにラテラル方向にスライドさせながら行う超音波走査に限定されるものではない。例えば、開口中心を、あるパケット間は固定させ、同一の領域を複数回送受信した後に、ラテラル方向にスライドさせる超音波走査であっても良い。なお、この超音波走査は、カラードプラにおける超音波走査と同様であるが、利用する信号情報は周波数ではなく振幅である。つまり、医用画像は、スキャン可能領域に含まれる各位置の信号値が、スキャン可能領域のスキャンラインごとに収集された情報であっても良い。この場合、分割領域ごとに信号値が取得されるため、第1指標値を計算する際のフレーム間隔をPRF(Pulse Repetition Frequency)間隔まで狭めることができる。このため、第1指標値の計算処理が非常に高時間分解能になるため、高流速における信号強度の変化の相関関係を解析する際に有用である。
【0192】
また、例えば、上述した超音波走査の前に、プッシュパルス(音響放射力)や外部加振を行い、その外力自体による組織の応答を解析しても良い。また、その外力によって発生したせん断波によって発生した応答を解析しても良い。つまり、医用画像は、スキャン可能領域に含まれる各位置の信号値が、プッシュパルス又は外部加振の後にスキャンラインごとに収集された情報であっても良い。
【0193】
(グラフ表示)
また、例えば、超音波診断装置1は、上述した実施形態にて説明したグラフのうち任意のグラフをディスプレイ103に表示可能である。例えば、生成機能163は、所定の位置又は領域における第1指標値又は第2指標値に基づくグラフを生成する。ここで、位置又は領域は、操作者により指定される。そして、出力制御機能164は、生成されたグラフを表示させる。
【0194】
(医用情報処理装置)
例えば、上述した実施形態では、開示の技術が超音波診断装置1に適用される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、開示の技術は、医用情報処理装置200に適用されても良い。医用情報処理装置200は、例えば、ワークステーションやPACS(Picture Archiving Communication System)ビューワ等に対応する。
【0195】
図21は、その他の実施形態に係る医用情報処理装置200の構成例を示すブロック図である。
図21に示すように、医用情報処理装置200は、入力インタフェース201、ディスプレイ202、記憶回路210、及び処理回路220を備える。入力インタフェース201、ディスプレイ202、記憶回路210、及び処理回路220は、相互に通信可能に接続される。
【0196】
入力インタフェース201は、マウス、キーボード、タッチパネル等、操作者からの各種の指示や設定要求を受け付けるための入力装置である。ディスプレイ202は、医用画像を表示したり、操作者が入力インタフェース201を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したりする表示装置である。
【0197】
記憶回路210は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、医用画像データやGUIを表示するための各種のプログラムや、当該プログラムによって用いられる情報を記憶する。
【0198】
処理回路220は、医用情報処理装置200における処理全体を制御する電子機器(プロセッサ)である。処理回路220は、取得機能221、計算機能222、生成機能223、及び出力制御機能224を実行する。取得機能221、計算機能222、生成機能223、及び出力制御機能224は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路210内に記録されている。処理回路220は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能(取得機能221、計算機能222、生成機能223、及び出力制御機能224)を実現する。
【0199】
取得機能221は、
図1に示した取得機能161と基本的に同様の処理を実行可能である。また、計算機能222は、
図1に示した計算機能162と基本的に同様の処理を実行可能である。また、生成機能223は、
図1に示した生成機能163と基本的に同様の処理を実行可能である。また、出力制御機能224は、
図1に示した出力制御機能164と基本的に同様の処理を実行可能である。
【0200】
これにより、例えば、医用情報処理装置200において、取得機能221は、時系列の複数の医用画像を取得する。計算機能222は、複数の医用画像に含まれる2つの医用画像で構成される各画像ペアについて、2つの医用画像における画像信号間の類似性を示す第1指標値を計算する。また、計算機能222は、複数の画像ペアそれぞれについて計算した第1指標値に基づいて、第2指標値を計算する。これにより、医用情報処理装置200は、時間ごとの信号強度の変化を評価することができる。
【0201】
(3次元画像への適用)
また、例えば、上述した実施形態では、2次元画像を用いた場合の処理を説明したが、これに限らず、3次元画像(ボリュームデータ)を用いた場合にも適用可能である。
【0202】
(正規化したSAD又は正規化したSSDの利用)
また、第1指標値としては、上述した相関係数、1-相関係数、絶対係数、1-絶対係数、SAD、又はSSDが適用可能である旨を述べてが、これに限定されるものではない。例えば、第1指標値としては、更に、正規化したSAD、又は正規化したSSDが適用可能である。
【0203】
例えば、計算機能162は、下記の式(1)を用いて、正規化したSAD「S1」を計算する。式(1)において、「Amp
(n)(x
i,y
j)」は、nフレーム目のカーネル内の各画素位置における画像信号の振幅(画素値に相当)を表す。また、「Amp
(n+1)(x
i,y
j)」は、n+1フレーム目のカーネル内の各画素位置における画像信号の振幅を表す。また、「i」は、1~kまでの整数を表す。また、「j」は、1~lまでの整数を表す。例えば、
図7の例では、「k」及び「l」は、いずれも「3」である。
【0204】
【0205】
また、計算機能162は、下記の式(2)を用いて、正規化したSSD「S2」を計算する。式(2)における「Amp(n)(xi,yj)」、「Amp(n+1)(xi,yj)」、「i」「j」、「k」、及び「l」は、式(1)と同様であるので説明を省略する。
【0206】
【0207】
このように、計算機能162は、第1指標値として、2つの医用画像における画像信号間の差分の絶対値の総和を正規化した値、又は、2つの医用画像における画像信号間の差分の二乗和を正規化した値、を計算することができる。なお、第1指標値を計算した後の処理は、上述した実施形態と同様である。また、上記の「S1」及び「S2」は、相対誤差とも呼ばれる。
【0208】
また、上記の「S1」及び「S2」は、第2の実施形態で説明した第3指標値としても適用可能である。つまり、計算機能162は、第3指標値として、2つの医用画像における画像信号間の差分の絶対値の総和を正規化した値、又は、2つの医用画像における画像信号間の差分の二乗和を正規化した値、を計算することができる。
【0209】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ(回路)」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路150に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路150にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0210】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、画像処理回路130の機能は、処理回路160に統合されても良い。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0211】
また、上述した実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0212】
また、上述した実施形態で説明した画像処理方法は、予め用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0213】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、時間ごとの信号強度の変化を評価することができる。
【0214】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0215】
1 超音波診断装置
160 処理回路
161 取得機能
162 計算機能
163 生成機能
164 出力制御機能