(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】BCMA抗原に特異的な免疫原性ペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20250304BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20250304BHJP
A61K 38/03 20060101ALI20250304BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20250304BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250304BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250304BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250304BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250304BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250304BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250304BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20250304BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20250304BHJP
A61P 37/04 20060101ALN20250304BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C07K7/06
A61K38/03
A61K38/02
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
A61P35/00
A61P37/04
(21)【出願番号】P 2023192306
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2020512512の分割
【原出願日】2018-08-31
【審査請求日】2023-11-10
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョーウン ベ
(72)【発明者】
【氏名】ニクヒル シー. ムンシ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス シー. アンダーソン
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-513876(JP,A)
【文献】特表2004-535182(JP,A)
【文献】特表2005-510208(JP,A)
【文献】特表2001-518080(JP,A)
【文献】特表2003-522800(JP,A)
【文献】特表2016-532692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0067933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C07K、C12N、A61K
DB名 JSTPlus/JMEDPlus
/JST7580(JDreamIII),
BIOSIS/MEDLINE
/CAplus/EMBASE(STN)
GeneSeq/UniProt
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号15~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と同一であ
るアミノ酸配列を含むペプチドであって
、前記ペプチドが、膜貫通アクチベーター及びCAML相互作用物質(TACI)に特異的である応答を増強
し、前記ペプチドが9~30アミノ酸長である、ペプチド。
【請求項2】
配列番
号15~17のいずれか1つ
に示されるアミノ酸配列からなる第1のアミノ酸配列と、前記第1のアミノ酸配列に対して異種である第2のアミノ酸配列とを含むペプチドであって、前記ペプチドが、膜貫通アクチベーター及びCAML相互作用物質(TACI)に特異的である応答を増強する、ペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが、主要組織適合複合体(MHC)分子と結合する、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターを含む培養細胞。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸を含むウイルス。
【請求項9】
ナノ粒子と、請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドとを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年9月1日に出願された米国特許仮出願第62/553,669号の利益を主張する。前記のものの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号P50-100007、P01-78378およびR01-50947に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、B細胞成熟抗原(BCMA)および膜貫通アクチベーターおよびCAML相互作用物質(TACI)に特異的である免疫原性ペプチド並びにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは、現在、最も高いヒト死亡率を有する疾患の1つである。世界保健機構統計データによれば、2012年には、全世界のがん発生数および死亡症例数は、それぞれ1400万および820万に達した。米国では、がんは、すべての死亡の少なくとも25%の原因である。
【0005】
近年、種々の種類のがんを処置するために新規療法が開発されてきた。がんに罹患している患者は、例えば、手術、化学療法および/または免疫療法を使用することによって処置されることが多い。これらの患者の予後は、依然として満足のいくものではないことがある。したがって、がんを処置するための効率的な療法および/または予防的レジメンは、緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、幾分か、B細胞成熟抗原(BCMA)または膜貫通アクチベーターおよびCAML相互作用物質(TACI)に特異的であるペプチドを封入する、免疫原性ペプチド、T細胞(例えば、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)および/またはCD4+ヘルパーT細胞)およびナノ粒子(例えば、ポリマーナノキャリアまたはリポソームナノ粒子)およびそれを使用する方法に関する。
【0007】
一態様では、本開示は、配列番号13~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と同一である、または1~6個のアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるペプチドに関する。いくつかの実施形態では、配列番号13~17の1位のアミノ酸が変更されない。いくつかの実施形態では、配列番号13~17の1、2または9位のうち1つまたは複数位のアミノ酸が、別のアミノ酸で置換されている。例えば、1、2もしくは9位が置換されている、1および2位が置換されている、2および9位が置換されている、1および9位が置換されている、または1、2および9位が置換されている。特定の実施形態では、ペプチドは、9~30アミノ酸長(すなわち、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸長)である。
【0008】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16または配列番号17である。
【0009】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列のN-および/またはC末端に1~15個(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個)のアミノ酸を含む、配列番号13~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
別の態様では、本開示は、配列番号1~17のいずれか1つに対して少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列からなる第1のアミノ酸配列と、第1のアミノ酸配列に対して異種である第2のアミノ酸配列とを含む、それから本質的になる、またはそれからなるペプチドに関する。いくつかの実施形態では、配列番号1~17の1、2または9位のうち1つまたは複数位のアミノ酸が、別のアミノ酸で置換されている。例えば、1、2または9位が置換されている、1および2位が置換されている、2および9位が置換されている、1および9位が置換されている、または1、2および9位が置換されている。特定の実施形態では、ペプチドは、9~30アミノ酸長(すなわち、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸長)である。
【0011】
別の態様では、本開示は、配列番号1~17のいずれか1つに対して少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるペプチドに関する。いくつかの実施形態では、配列番号1~17の3、4、5、6、7または8位のうち1つまたは複数位のアミノ酸が、別のアミノ酸で置換されている。例えば、3、4、5、6、7または8位が置換されている、3および4位が置換されている、3および5位が置換されている、3および6位が置換されている、3および7位が置換されている、3および8位が置換されている、4および5位が置換されている、4および6位が置換されている、4および7位が置換されている、4および8位が置換されている、5および6位が置換されている、5および7位が置換されている、5および8位が置換されている、6および7位が置換されている、6および8位が置換されている、7および8位が置換されている、3、4、5、6、7および8位の群からの、3つの異なる、4つの異なる、5つの異なる、または6つの異なる位置の任意の組合せが置換されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、主要組織適合複合体(MHC)分子と結合する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、MHC分子と会合した状態で、T細胞上の抗原特異的T細胞受容体によって認識される。いくつかの実施形態では、MHC分子は、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子である。いくつかの実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A(例えば、HLA-A2、HLA-A24、HLA-A1、HLA-A3、HLA-A30、HLA-A26、HLA-A68またはHLA-A11)、HLA-BまたはHLA-Cである。いくつかの実施形態では、MHC分子は、HLA-A2分子またはHLA-A24分子である。
【0013】
本開示はまた、本明細書において記載されるようなペプチドおよび第2の薬剤を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗CD28、抗CD40L(CD154)、抗41BB(CD137)、抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬、(6)ペプチドベースのワクチン、異なる種類のワクチン(RNAワクチン、DNAワクチン)、細胞療法、特異的モジュレーターおよび/または特異的阻害剤を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を変更する治療薬ならびに(7)生物学的および非生物学的アプローチを含む、疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、免疫刺激性作用物質(例えば、サイトカインまたはヘルパーTエピトープ)である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、ヘルパーTエピトープである。いくつかの実施形態では、ヘルパーTエピトープは、PADRE配列またはユニバーサル破傷風トキソイドヘルパーT(TT Th)エピトープである。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、アジュバントである。アジュバントは、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Toll受容体のリガンド、QS21、RIBI、コレラ毒素(CT)、E.coli熱不安定性毒素(LT)、変異体CT(MCT)および変異体E.coli熱不安定性毒素(MLT)からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、toll様受容体-3リガンド(例えば、ポリICLC)、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンガンマ(IFNγ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、抗インターロイキン6(IL-6)、IL-6阻害剤、抗OX40抗体、抗GITR抗体である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーターである。
【0014】
一態様では、本開示はまた、本明細書において記載されるようなペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗CD28、抗CD40L(CD154)、抗41BB(CD137)、抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬ならびに(6)疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤を含む。いくつかの例では、医薬組成物は、アジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Toll受容体のリガンド、QS21、RIBI、コレラ毒素(CT)、E.coli熱不安定性毒素(LT)、変異体CT(MCT)および変異体E.coli熱不安定性毒素(MLT))、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)または免疫モジュレーター(例えば、単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241))のうち1種または複数を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、チェックポイント阻害剤をさらに含む。一実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗LAG3抗体である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、レナリドミドをさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)をさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、BCMAに特異的なT細胞(例えば、CTL)をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、TACIに特異的なT細胞(例えば、CTL)をさらに含む。特定の例では、CTLは、配列番号13または14のうち1つまたは複数を含む、またはそれからなるペプチドへの曝露によって得られたCTLである。その他の例では、CTLは、配列番号15~17のうちいずれか1つまたは複数を含む、またはそれからなるペプチドへの曝露によって得られたCTLである。いくつかの例では、CTLは、メモリーCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、メモリーCD8+CD45RO+CTLである。いくつかの例では、CTLは、非メモリーCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、エフェクターCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、活性化CD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、四量体陽性CD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、共刺激分子発現を上方制御したCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、チェックポイント分子発現を上方制御したCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、サイトカインを産生する、および/または上方制御された決定的な細胞溶解性マーカー(例えば、CD107、Granzyme、パーフォリン)発現および/または産生を有するCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、腫瘍またはその他の標的に対する活性を有するCD8+CTLである。
【0017】
一態様では、本開示は、本明細書において記載されるようなペプチドをコードする核酸に関する。特定の例では、核酸は、RNA(例えば、mRNA)である。その他の実施形態では、核酸は、DNAである。いくつかの例では、RNAまたはDNAは、ナノキャリア(例えば、PLGAなどのポリマーまたはリポソーム)中に封入される。RNAおよびDNAは、その他の調節配列(例えば、開始コドン、停止コドン、ポリAテール)を含み得る。
【0018】
一態様では、本開示はまた、本明細書において記載されるようなペプチドをコードする核酸を含むベクターに関する。いくつかの実施形態では、核酸の配列は、プロモーター、調節エレメントまたは発現制御配列に作動可能に連結される。
【0019】
別の態様では、本開示はまた、本明細書において記載されるようなベクターを含む培養細胞に関する。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞、ヒト細胞または免疫細胞である。
【0020】
別の態様では、本開示は、本明細書において記載されるようなペプチドをコードする核酸を含むウイルスを提供する。いくつかの実施形態では、ウイルスは、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヒト泡沫状ウイルス、パルボウイルス、粘液腫ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルパスウイルスまたは水疱性口内炎ウイルスである。
【0021】
一態様では、本開示は、少なくとも2種の異なるペプチドの組合せに関し、少なくとも2種の異なるペプチドは、配列番号13~17に示されるアミノ酸配列を有するペプチドの群から選択される。組合せは、配列番号13~17のうち1つまたは複数に1~4つの置換を有するペプチドを含み得る。いくつかの例では、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの例では、1位は変更されていない。いくつかの例では、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、組合せは、配列番号13~17に示されるアミノ酸配列を有する少なくとも2種、3種、4種、または5種すべてのペプチドを含む。いくつかの例では、組合せは、配列番号13~17に示される2つまたはそれより多くのペプチドを含み、2つまたはそれより多くのペプチドは、アミノ酸配列のN-および/またはC末端に1~15個(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個)のアミノ酸を有する。
【0022】
一態様では、本開示はまた、本明細書において記載されるようなペプチドの組合せおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬、ならびに(6)疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤を含む。いくつかの例では、医薬組成物は、アジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Toll受容体のリガンド、QS21、RIBI、コレラ毒素(CT)、E.coli熱不安定性毒素(LT)、変異体CT(MCT)および変異体E.coli熱不安定性毒素(MLT))、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)ならびに/または単剤としての、および/もしくはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)のうち1種または複数を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、免疫アゴニストをさらに含む。いくつかの例では、免疫アゴニストは、抗OX40抗体または抗GITR抗体であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、チェックポイント阻害剤をさらに含む。一例では、チェックポイント阻害剤は、抗LAG3抗体である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)をさらに含む。一態様では、本開示はまた、単離された樹状細胞を含む組成物を提供し、樹状細胞は、その表面にペプチド配列を提示し、ペプチド配列は、BCMA抗原(配列番号18)およびTACI抗原(配列番号19)のうち一方または両方の少なくとも1種の主要組織適合複合体(MHC)クラスIペプチドエピトープを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、MHCクラスIペプチドエピトープは、HLA-A2ペプチドエピトープである。
【0025】
いくつかの実施形態では、MHCクラスIペプチドエピトープは、HLA-A24ペプチドエピトープである。
【0026】
いくつかの実施形態では、樹状細胞は、ペプチド配列を含むペプチドへの曝露によってin vitroでペプチド配列を獲得する。
【0027】
いくつかの実施形態では、ペプチド配列は、合成ペプチド配列である。いくつかの実施形態では、ペプチド配列は、配列番号1~12および配列番号13~17のいずれか1つに示される配列である。いくつかの例では、ペプチド配列は、配列番号13~17に示されるが、1~4つのアミノ酸置換を有する配列である。特定の場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。1つの特別の実施形態では、ペプチド配列は、配列番号13である。別の実施形態では、ペプチドは、配列番号13であるが、1~4つのアミノ酸置換を有する。特定の場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。別の特別の実施形態では、ペプチド配列は、配列番号16である。別の実施形態では、ペプチドは、配列番号16であるが、1~4つのアミノ酸置換を有する。特定の場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、105~108個の間の樹状細胞を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号1~12および配列番号13~17のいずれか1つに示されるペプチドをさらに含む。1つの特別の実施形態では、ペプチド配列は、配列番号13である。別の特別の実施形態では、ペプチド配列は、配列番号16である。いくつかの実施形態では、組成物は、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗CD28、抗CD40L(CD154)、抗41BB(CD137)、抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬、(6)ペプチドベースのワクチン、異なる種類のワクチン(RNAワクチン、DNAワクチン)、細胞療法、特異的モジュレーターおよび/または特異的阻害剤を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を変更する治療薬ならびに(7)生物学的および非生物学的アプローチを含む、疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)をさらに含む。
【0030】
一態様では、本開示は、それを必要とするヒト被験体において、BCMAおよび/またはTACIを発現する細胞(例えば、がん細胞)に対する免疫応答を誘導する方法であって、ヒト被験体に、本明細書において記載されるようなペプチド(例えば、配列番号13~17を含む、またはそれからなるペプチド)または本明細書において記載されるような組成物(例えば、医薬組成物)を投与することを含む方法に関する。別の実施形態では、ペプチドは、配列番号13であるが、1~4つのアミノ酸置換を有する。特定の場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。別の特別の実施形態では、ペプチド配列は、配列番号16である。別の実施形態では、ペプチドは、配列番号16であるが、1~4つのアミノ酸置換を有する。特定の場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。
【0031】
いくつかの実施形態では、被験体は、BCMAおよび/またはTACIを発現するがんを有し、免疫応答は、このようながん細胞に対するものである。
【0032】
いくつかの実施形態では、被験体は、BCMAおよび/またはTACIを発現する非がん細胞を有し、免疫応答は、このような非がん細胞に対するものである。
【0033】
いくつかの実施形態では、がんは、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)である。いくつかの実施形態では、がん細胞は、形質細胞(例えば、がん性形質細胞)である。いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、難治性多発性骨髄腫を有する。いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、同種移植後に再発する難治性多発性骨髄腫を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、がん細胞は、BCMAを発現し、がん細胞におけるBCMAのレベルは、健常なヒト被験体における形質細胞よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%多い。
【0035】
いくつかの実施形態では、がん細胞は、TACIを発現し、がん細胞におけるTACIのレベルは、健常なヒト被験体における形質細胞よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%多い。
【0036】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、BCMAに特異的なCTLを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、TACIに特異的なCTLを投与することをさらに含む。特定の例では、CTLは、配列番号13または14のうち1つまたは複数を含む、またはそれからなるペプチドへの曝露によって得られたCTLである。いくつかの場合には、CTLは、配列番号13または14であるが、1~4つの置換を有するペプチドに曝露される。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの場合には、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。その他の例では、CTLは、配列番号15~17のうちいずれか1つまたは複数を含む、またはそれからなるペプチドへの曝露によって得られたCTLである。いくつかの場合には、CTLは、配列番号15、16または17であるが、1~4つの置換を有するペプチドに曝露される。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの場合には、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。いくつかの例では、CTLは、メモリーCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、メモリーCD8+CD45RO+CTLである。いくつかの例では、CTLは、エフェクターCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、活性化CD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、四量体陽性CD8+CTLである。いくつかの例では、CD8+CTLは、本明細書において記載されたペプチドを用いて刺激されると、共刺激分子発現を上方制御するCTLである。いくつかの例では、CD8+CTLは、本明細書において記載されたペプチドを用いて刺激されると、チェックポイント分子発現を上方制御するCTLである。いくつかの例では、CTLは、サイトカインを産生する、および/または上方制御された決定的な細胞溶解性マーカー(例えば、CD107、Granzyme、パーフォリン)発現および/または産生を有するCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、腫瘍またはその他の標的に対する活性を有するCD8+CTLである。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、抗CD28、抗CD40L(CD154)、抗41BB(CD137)、抗OX40および抗GITRである。
【0038】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、レナリドミドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)または免疫モジュレーターのうち1つまたは複数を投与することをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、ペプチドまたは組成物を投与した後に、ヒト被験体において、BCMAおよび/またはTACIを発現するがんに対する免疫応答が生じたか否かを決定することをさらに含む。
【0040】
一態様では、本開示は、がんまたは前悪性疾患を有するヒト被験体を処置する方法であって、ヒト被験体に、本明細書において記載されるようなペプチドまたは本明細書において記載されるような組成物を投与することを含む方法に関する。
【0041】
いくつかの実施形態では、がんは、血液がんである。いくつかの実施形態では、がんは、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫または任意のB細胞または形質細胞悪性疾患である。
【0042】
いくつかの実施形態では、前悪性疾患は、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)またはくすぶり型多発性骨髄腫である。
【0043】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つまたは複数のがん細胞が、ヒト被験体において、BCMAおよび/またはTACIを発現または過剰発現することを検出することをさらに含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、BCMAおよび/またはTACIを過剰発現する1つまたは複数のがん細胞を有し、がん細胞におけるBCMAおよび/またはTACIのレベルは、正常細胞(例えば、健常な被験体における形質細胞)よりも少なくとも20%多い。
【0045】
いくつかの実施形態では、被験体は、MHC分子を発現する1つまたは複数のがん細胞を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、BCMAに特異的なCTLを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、TACIに特異的なCTLを投与することをさらに含む。特定の例では、CTLは、配列番号13または14のうち1つまたは複数を含む、またはそれからなるペプチドへの曝露によって得られたCTLである。いくつかの場合には、CTLは、配列番号13または14であるが、1~4つの置換を有するペプチドに曝露される。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの場合には、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。その他の例では、CTLは、配列番号15~17のうちいずれか1つまたは複数を含む、またはそれからなるペプチドへの曝露によって得られたCTLである。いくつかの場合には、CTLは、配列番号15、16または17であるが、1~4つの置換を有するペプチドに曝露される。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの場合には、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。いくつかの例では、CTLは、メモリーCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、メモリーCD8+CD45RO+CTLである。いくつかの例では、CTLは、エフェクターCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、活性化CD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、四量体陽性CD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、共刺激分子発現を上方制御したCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、チェックポイント分子発現を上方制御したCD8+CTLである。
【0047】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)レナリドミド、ポマリドミド、HDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬ならびに(6)疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、抗OX40抗体または抗GITR抗体である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、レナリドミドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)または免疫モジュレーターのうち1つまたは複数を投与することをさらに含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に化学療法または放射線療法を施すことをさらに含む。
【0050】
一態様では、本開示は、BCMA特異的細胞傷害性T細胞を作製する、および/または増殖させる方法であって、1つまたは複数の細胞傷害性T細胞を、配列番号13および配列番号14から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドをパルスした1つまたは複数の抗原提示細胞と接触させることを含む方法に関する。いくつかの場合には、CTLは、配列番号13または14であるが、1~4つの置換を有するペプチドに曝露される。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの場合には、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性T細胞は、メモリー細胞傷害性T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性T細胞は、エフェクター細胞傷害性T細胞である。いくつかの例では、CD8+CTLは、本明細書において記載されたペプチドを用いて刺激されると、共刺激分子発現を上方制御するCTLである。いくつかの例では、CD8+CTLは、本明細書において記載されたペプチドを用いて刺激されると、チェックポイント分子発現を上方制御するCTLである。いくつかの例では、CTLは、サイトカインを産生する、および/または上方制御された決定的な細胞溶解性マーカー(例えば、CD107、Granzyme、パーフォリン)発現および/または産生を有するCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、腫瘍またはその他の標的に対する活性を有するCD8+CTLである。
【0052】
いくつかの実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞(DC)である。1つの特別の実施形態では、ペプチドは、配列番号13を含む、またはそれからなる。別の態様では、本開示は、TACI特異的細胞傷害性T細胞を作製する方法であって、1つまたは複数の細胞傷害性T細胞を、配列番号15~17から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドをパルスした1つまたは複数の抗原提示細胞と接触させることを含む方法に関する。いくつかの場合には、CTLは、配列番号15、16または17であるが、1~4つの置換を有するペプチドに曝露される。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの場合には、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。
【0053】
1つの特別の実施形態では、ペプチドは、配列番号16を含む、またはそれからなる。
【0054】
一態様では、本開示はまた、標的細胞を死滅させる方法であって、標的細胞を、1つまたは複数のBCMA特異的細胞傷害性T細胞と接触させることを含む方法に関し、標的細胞は、BCMAを発現または過剰発現する。いくつかの実施形態では、標的細胞は、HLA-Aを発現する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つまたは複数のBCMA特異的細胞傷害性T細胞を、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)単剤としての、および/またはデキサメタゾンと組み合わせたレナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド類似体、IMiDS化合物および/またはHDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬ならびに(6)疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤と接触させることをさらに含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つまたは複数のBCMA特異的細胞傷害性T細胞を、免疫アゴニストと接触させることをさらに含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、本方法は、配列番号13または14に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドを投与することをさらに含む。いくつかの場合には、ペプチドは、配列番号13または14のアミノ酸配列のN-および/またはC末端に付加された1~15個(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個)のアミノ酸を有し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、免疫アゴニストはOX40アゴニストまたはGITRアゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、抗OX40抗体または抗GITR抗体である。
【0059】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、レナリドミドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)またはレナリドミドのうち1つまたは複数を投与することをさらに含む。
【0060】
別の態様では、本開示は、標的細胞を死滅させる方法であって、標的細胞を、1つまたは複数のTACI特異的細胞傷害性T細胞と接触させることを含む方法に関し、標的細胞は、TACIを発現または過剰発現する。いくつかの実施形態では、標的細胞は、HLA-Aを発現する。
【0061】
いくつかの実施形態では、本方法は、配列番号15~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドを投与することをさらに含む。いくつかの場合には、ペプチドは、配列番号15~17のアミノ酸配列のN-および/またはC末端に付加された1~15個(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個)のアミノ酸を有し得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つまたは複数のTACI特異的細胞傷害性T細胞を、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)レナリドミド、ポマリドミド、HDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬ならびに(6)疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤と接触させることをさらに含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つまたは複数のTACI特異的細胞傷害性T細胞を、免疫アゴニストと接触させることをさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、免疫アゴニストはOX40アゴニストまたはGITRアゴニストである。
【0065】
いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、抗OX40抗体または抗GITR抗体である。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、レナリドミドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)またはレナリドミドのうち1つまたは複数を投与することをさらに含む。
【0066】
一態様では、本開示は、BCMAまたはTACIを発現する疾患またはがんを有するヒト被験体を処置する方法であって、ヒト被験体に、複数のBCMA特異的細胞傷害性T細胞またはTACI特異的細胞傷害性T細胞を投与することを含む方法に関する。
【0067】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、配列番号13~17のいずれか1つに示される配列を含む、またはそれからなるペプチドを投与することをさらに含む。いくつかの例では、ペプチドは、1~4つの置換を有する点を除いて配列番号13~17のうちの1つに示される配列を有する。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてであり得る。いくつかの例では、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)レナリドミド、ポマリドミド、HDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬ならびに(6)疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤を投与することをさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、本方法は、被験体に免疫アゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストはOX40アゴニストまたはGITRアゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、抗OX40抗体または抗GITR抗体である。
【0070】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、レナリドミドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)またはレナリドミドのうち1つまたは複数を投与することをさらに含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性T細胞は、ヒト被験体の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性T細胞は、誘導多能性幹細胞に由来する。
【0072】
いくつかの実施形態では、がんは、BCMAおよび/またはTACIを発現する。いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、多発性骨髄腫を有する。
【0073】
一態様では、本開示は、
(a)被験体から骨髄由来単核細胞を得ることと、
(b)単核細胞を、単核細胞が培養容器に接着するようになる条件下で、in vitroで培養することと、
(c)接着単核細胞を選択することと、
(d)接着単核細胞を、細胞が抗原提示細胞に分化する条件下で、1種または複数のサイトカインの存在下で培養することと、
(e)抗原提示細胞を、本明細書において記載されるようなペプチド(例えば、配列番号13~17)と接触させ、それによって、主要組織適合複合体(MHC)分子上にペプチドを提示する抗原提示細胞を作製することと
を含むプロセスに関する。
【0074】
いくつかの実施形態では、主要組織適合複合体分子は、MHCクラスI分子である。
【0075】
いくつかの実施形態では、1種または複数のサイトカインは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン-4(IL-4)を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、1種または複数のサイトカインは、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、骨髄由来細胞は、多発性骨髄腫を有すると診断された被験体から得られる。
【0078】
一態様では、本開示は、BCMAのT細胞抗原受容体配列を同定する方法であって、
(a)本明細書において記載されるような方法によって、BCMA特異的細胞傷害性T細胞を作製する、および/または増殖させることと、
(b)BCMA特異的細胞傷害性T細胞において、BCMAのT細胞抗原受容体配列を決定することと
を含む方法に関する。
【0079】
別の態様では、本開示は、BCMAを発現する疾患またはがんを有するヒト被験体を処置するための方法であって、ヒト被験体に、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)を含む組成物を投与することを含む方法に関し、CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体を発現し、キメラ抗原受容体は、BCMAと結合する。
【0080】
いくつかの実施形態では、がんは、BCMAを発現する。いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、多発性骨髄腫を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、配列番号13または14のいずれか一方に示される配列を含む、またはそれからなるペプチドを投与することをさらに含む。いくつかの場合には、ペプチドは、1~4つのアミノ酸置換を有する点を除いて配列番号13または14に示される配列を有する。いくつかの例では、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの例では、ペプチドは、9~30アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)レナリドミド、ポマリドミド、HDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬ならびに(6)疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤を投与することをさらに含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、本方法は、被験体に免疫アゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストはOX40アゴニストまたはGITRアゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、抗OX40抗体または抗GITR抗体である。
【0083】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、レナリドミドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)またはレナリドミドのうち1つまたは複数を投与することをさらに含む。
【0084】
一態様では、本開示は、TACIのT細胞抗原受容体配列を同定する方法であって、
(a)本明細書において記載されるような方法によって、TACI特異的細胞傷害性T細胞を作製する、および/または増殖させることと、
(b)TACI特異的細胞傷害性T細胞において、TACIのT細胞抗原受容体配列を決定することと
を含む方法に関する。
【0085】
別の態様では、本開示は、TACIを発現する疾患またはがんを有するヒト被験体を処置するための方法であって、ヒト被験体に、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)を含む組成物を投与することを含む方法に関し、CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体を発現し、キメラ抗原受容体は、TACIと結合する。
【0086】
いくつかの実施形態では、がんは、TACIを発現する。いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、多発性骨髄腫を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、配列番号15~17のいずれか1つに示される配列を含む、またはそれからなるペプチドを投与することをさらに含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および抗TIM3を含むチェックポイント阻害剤、(2)抗OX40および抗GITRを含む免疫アゴニスト、(3)レナリドミド、ポマリドミド、HDAC阻害剤(例えば、ACY241)を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバントなどのBCMAおよびTACI特異的応答を増強する化合物、(5)ワクチン、細胞療法および/または抗体を含む、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬ならびに(6)疾患に対する免疫応答を広く網羅するBCMAおよびTACIを標的化する療法とは独立したアプローチを有する治療薬からなる群より選択される薬剤を投与することをさらに含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、本方法は、被験体に免疫アゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストはOX40アゴニストまたはGITRアゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、抗OX40抗体または抗GITR抗体である。
【0090】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、レナリドミドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)またはレナリドミドのうち1つまたは複数を投与することをさらに含む。
【0091】
一態様では、本開示は、ナノ粒子と、配列番号1~17のいずれか1つに対して少なくとも60%同一である配列を含むペプチドとを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号13の配列を含む、またはそれからなる。特定の例では、ペプチドは、配列番号13であるが、1~4つのアミノ酸置換を有する配列を有する。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。ペプチドは、9~30アミノ酸長であり得る。その他の実施形態では、配列は、配列番号16の配列を含む、またはそれからなる。特定の例では、ペプチドは、配列番号16であるが、1~4つのアミノ酸置換を有する配列を有する。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。ペプチドは、9~30アミノ酸長であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、ナノ粒子中に封入される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、リポソームである。
【0093】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)(PLGA-PEG)コポリマーを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号13である。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号14である。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号15である。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号16である。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号17である。特定の例では、ペプチドは、配列番号13~17のいずれか1つであるが、1~4つのアミノ酸置換を有する配列を有する。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。ペプチドは、9~30アミノ酸長であり得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、Toll様受容体アゴニスト(例えば、R848または非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド)を含む。
【0096】
一態様では、本開示は、がんを有するヒト被験体を処置するための方法を提供する。本方法は、ヒト被験体に、本明細書において記載されるような組成物(例えば、ナノ粒子)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、多発性骨髄腫を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、がんは、BCMAを発現する。その他の実施形態では、がんは、TACIを発現する。
【0098】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、配列番号15~17のいずれか1つに示される配列を含む、またはそれからなるペプチドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、1~4つのアミノ酸置換を有することを除いて、配列番号15~17のうちの1つに示される配列を有する。置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてであり得る。ペプチドは、9~30アミノ酸長であり得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、BCMAに特異的なCTLを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、TACIに特異的なCTLを投与することをさらに含む。特定の例では、CTLは、配列番号13または14のうち1つまたは複数を含む、またはそれからなるペプチドへの曝露によって得られたCTLである。その他の例では、CTLは、配列番号15~17のうちいずれか1つまたは複数を含む、またはそれからなるペプチドへの曝露によって得られたCTLである。いくつかの例では、CTLは、メモリーCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、メモリーCD8+CD45RO+CTLである。いくつかの例では、CTLは、エフェクターCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、活性化CD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、四量体陽性CD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、共刺激分子発現を上方制御したCD8+CTLである。いくつかの例では、CTLは、チェックポイント分子発現を上方制御したCD8+CTLである。いくつかの実施形態では、本方法は、被験体に免疫アゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、OX40アゴニストまたはGITRアゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫アゴニストは、抗OX40抗体または抗GITR抗体である。
【0100】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、レナリドミドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)またはレナリドミドのうち1つまたは複数を投与することをさらに含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号13~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と同一である、または1~4個のアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を含むペプチドであって、配列番号13~17の1位のアミノ酸が変更されない、ペプチド。
(項目2)
前記アミノ酸配列が、配列番号13である、項目1に記載のペプチド。
(項目3)
前記アミノ酸配列が、配列番号14である、項目1に記載のペプチド。
(項目4)
前記アミノ酸配列が、配列番号15である、項目1に記載のペプチド。
(項目5)
前記アミノ酸配列が、配列番号16である、項目1に記載のペプチド。
(項目6)
前記アミノ酸配列が、配列番号17である、項目1に記載のペプチド。
(項目7)
配列番号1~17のいずれか1つに対して少なくとも60%同一であるアミノ酸配列からなる第1のアミノ酸配列と、前記第1のアミノ酸配列に対して異種である第2のアミノ酸配列とを含む、ペプチド。
(項目8)
主要組織適合複合体(MHC)分子と結合する、項目1から7のいずれか一項に記載のペプチド。
(項目9)
MHC分子と会合した状態で、T細胞上の抗原特異的T細胞受容体によって認識される、項目1から7のいずれか一項に記載のペプチド。
(項目10)
前記MHC分子が、MHCクラスI分子である、項目8または9に記載のペプチド。
(項目11)
前記MHC分子が、MHCクラスII分子である、項目8または9に記載のペプチド。
(項目12)
前記MHC分子が、HLA-A2分子またはHLA-A24分子である、項目8または9に記載のペプチド。
(項目13)
項目1から12のいずれか一項に記載のペプチドおよび第2の薬剤を含む組成物。
(項目14)
前記第2の薬剤が、免疫刺激剤である、項目13に記載の組成物。
(項目15)
前記第2の薬剤が、ヘルパーTエピトープである、項目13に記載の組成物。
(項目16)
前記ヘルパーTエピトープが、PADRE配列またはユニバーサル破傷風トキソイドヘルパーT(TT Th)エピトープである、項目15に記載の組成物。
(項目17)
前記第2の薬剤が、アジュバントである、項目13に記載の組成物。
(項目18)
前記アジュバントが、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Toll受容体のリガンド、QS21、RIBI、コレラ毒素(CT)、E.coli熱不安定性毒素(LT)、変異体CT(MCT)および変異体E.coli熱不安定性毒素(MLT)からなる群より選択される、項目17に記載の組成物。
(項目19)
前記第2の薬剤が、toll様受容体-3リガンド(例えば、ポリICLC)、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンガンマ(IFNγ)、抗OX40抗体、抗GITR抗体または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である、項目13に記載の組成物。
(項目20)
項目1から12のいずれか一項に記載のペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
(項目21)
項目1から12のいずれか一項に記載のペプチドをコードする核酸。
(項目22)
項目1から12のいずれか一項に記載のペプチドをコードする核酸を含むベクター。
(項目23)
前記核酸の配列が、プロモーター、調節エレメントまたは発現制御配列に作動可能に連結される、項目22に記載のベクター。
(項目24)
項目23に記載のベクターを含む培養細胞。
(項目25)
哺乳動物細胞である、項目24に記載の培養細胞。
(項目26)
ヒト細胞である、項目24に記載の培養細胞。
(項目27)
免疫細胞である、項目24に記載の培養細胞。
(項目28)
項目1から12のいずれか一項に記載のペプチドをコードする核酸を含むウイルス。
(項目29)
レンチウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスである、項目28に記載のウイルス。
(項目30)
配列番号13~17に示されるアミノ酸配列を有するペプチドの群から選択される少なくとも2種の異なるペプチドの組合せ。
(項目31)
配列番号13~17に示されるアミノ酸配列を有する少なくとも3種、4種、または5種すべてのペプチドを含む、項目30に記載の組合せ。
(項目32)
項目30または31に記載の組合せと、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
(項目33)
免疫アゴニストをさらに含む、項目32に記載の医薬組成物。
(項目34)
前記免疫アゴニストが、抗OX40抗体または抗GITR抗体である、項目33に記載の医薬組成物。
(項目35)
単離された樹状細胞を含む組成物であって、前記樹状細胞は、その表面にペプチド配列を提示し、前記ペプチド配列は、BCMA抗原(配列番号18)およびTACI抗原(配列番号19)のうち一方または両方の少なくとも1種の主要組織適合複合体(MHC)クラスIペプチドエピトープを含む、組成物。
(項目36)
前記MHCクラスIペプチドエピトープが、HLA-A2ペプチドエピトープである、項目35に記載の組成物。
(項目37)
前記樹状細胞が、前記ペプチド配列を含む合成ペプチドへの曝露によってin vitroで前記ペプチド配列を獲得する、項目35に記載の組成物。
(項目38)
前記ペプチド配列が、合成ペプチド配列である、項目35に記載の組成物。
(項目39)
前記ペプチド配列が、配列番号1~12および配列番号13~17のいずれか1つに示される、項目35に記載の組成物。
(項目40)
105~108個の間の樹状細胞を含む、項目35に記載の組成物。
(項目41)
BCMAおよび/またはTACIを発現するがん細胞に対する免疫応答を、それを必要とするヒト被験体において誘導する方法であって、前記ヒト被験体に項目1から12のいずれか一項に記載のペプチドまたは項目13から20のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
(項目42)
前記被験体ががんを有し、前記免疫応答が、がん細胞に対するものである、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記がんが血液がんである、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記がんが多発性骨髄腫である、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記がん細胞が、がん性形質細胞である、項目42に記載の方法。
(項目46)
前記がん細胞が、BCMAを発現し、前記がん細胞におけるBCMAのレベルが、健常なヒト被験体における形質細胞よりも少なくとも20%多い、項目42に記載の方法。
(項目47)
前記がん細胞が、TACIを発現し、前記がん細胞におけるTACIのレベルが、健常なヒト被験体における形質細胞よりも少なくとも20%多い、項目42に記載の方法。
(項目48)
前記ヒト被験体に免疫アゴニストを投与することをさらに含む、項目41に記載の方法。
(項目49)
前記免疫アゴニストが、抗OX40抗体または抗GITR抗体である、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記ヒト被験体に、前記ペプチドまたは前記組成物を投与した後に、前記ヒト被験体において、BCMAおよび/またはTACIを発現するがんに対する免疫応答が生じたか否かを決定することをさらに含む、項目41に記載の方法。
(項目51)
がんまたは前悪性疾患を有するヒト被験体を処置する方法であって、前記ヒト被験体に、項目1から12のいずれか一項に記載のペプチドまたは項目13から20のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
(項目52)
前記がんが血液がんである、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記がんが、多発性骨髄腫、白血病またはリンパ腫である、項目51に記載の方法。
(項目54)
前記前悪性疾患が、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)またはくすぶり型多発性骨髄腫である、項目51に記載の方法。
(項目55)
1つまたは複数のがん細胞が、前記ヒト被験体において、BCMAおよび/またはTACIを発現または過剰発現することを検出することをさらに含む、項目51に記載の方法。
(項目56)
前記ヒト被験体が、BCMAおよび/またはTACIを過剰発現する1つまたは複数のがん細胞を有し、前記がん細胞におけるBCMAおよび/またはTACIのレベルが、正常細胞よりも少なくとも20%多い、項目51に記載の方法。
(項目57)
前記被験体が、MHC分子を発現する1つまたは複数のがん細胞を有する、項目51に記載の方法。
(項目58)
前記ヒト被験体に、免疫アゴニストを投与することをさらに含む、項目51に記載の方法。
(項目59)
前記免疫アゴニストが、抗OX40抗体または抗GITR抗体である、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記ヒト被験体に化学療法または放射線療法を施すことをさらに含む、項目51に記載の方法。
(項目61)
BCMA特異的細胞傷害性T細胞を作製する、および/または増殖させる方法であって、
1つまたは複数の細胞傷害性T細胞を、配列番号13および配列番号14から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドでパルスした1つまたは複数の抗原提示細胞と接触させること
を含む、方法。
(項目62)
前記細胞傷害性T細胞が、メモリー細胞傷害性T細胞である、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記細胞傷害性T細胞が、エフェクター細胞傷害性T細胞である、項目61に記載の方法。
(項目64)
前記抗原提示細胞が、樹状細胞である、項目61に記載の方法。
(項目65)
TACI特異的細胞傷害性T細胞を作製する方法であって、1つまたは複数の細胞傷害性T細胞を、配列番号15~17から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドでパルスした1つまたは複数の抗原提示細胞と接触させることを含む、方法。
(項目66)
前記細胞傷害性T細胞が、メモリー細胞傷害性T細胞である、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記細胞傷害性T細胞が、エフェクター細胞傷害性T細胞である、項目65に記載の方法。
(項目68)
前記抗原提示細胞が、樹状細胞である、項目65に記載の方法。
(項目69)
標的細胞を死滅させる方法であって、
前記標的細胞を、1つまたは複数のBCMA特異的細胞傷害性T細胞と接触させることを含み、前記標的細胞が、BCMAを発現または過剰発現し、HLA-Aを発現する、方法。
(項目70)
前記1つまたは複数のBCMA特異的細胞傷害性T細胞を、免疫アゴニストと接触させることをさらに含む、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記免疫アゴニストが、OX40アゴニストまたはGITRアゴニストである、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記免疫アゴニストが、抗OX40抗体または抗GITR抗体である、項目70に記載の方法。
(項目73)
標的細胞を死滅させる方法であって、
前記標的細胞を、1つまたは複数のTACI特異的細胞傷害性T細胞と接触させることを含み、前記標的細胞が、TACIを発現または過剰発現し、HLA-Aを発現する、方法。
(項目74)
前記1つまたは複数のTACI特異的細胞傷害性T細胞を、免疫アゴニストと接触させることをさらに含む、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記免疫アゴニストが、OX40アゴニストまたはGITRアゴニストである、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記免疫アゴニストが、抗OX40抗体または抗GITR抗体である、項目74に記載の方法。
(項目77)
がんを有するヒト被験体を処置する方法であって、前記ヒト被験体に、複数のBCMA特異的細胞傷害性T細胞またはTACI特異的細胞傷害性T細胞を投与することを含む、方法。
(項目78)
前記被験体に免疫アゴニストを投与することをさらに含む、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記免疫アゴニストが、OX40アゴニストまたはGITRアゴニストである、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記免疫アゴニストが、抗OX40抗体または抗GITR抗体である、項目78に記載の方法。
(項目81)
前記細胞傷害性T細胞が、前記ヒト被験体の細胞に由来する、項目77に記載の方法。
(項目82)
前記細胞傷害性T細胞が、誘導多能性幹細胞に由来する、項目77に記載の方法。
(項目83)
(a)被験体から骨髄由来単核細胞を得ることと、
(b)前記単核細胞を、単核細胞が培養容器に接着するようになる条件下で、in vitroで培養することと、
(c)接着単核細胞を選択することと、
(d)前記接着単核細胞を、前記細胞が抗原提示細胞に分化する条件下で、1種または複数のサイトカインの存在下で培養することと、
(e)前記抗原提示細胞を、項目1から12のいずれか一項に記載のペプチドと接触させ、それによって、主要組織適合複合体(MHC)分子上に前記ペプチドを提示する抗原提示細胞を作製することと
を含む、方法。
(項目84)
前記主要組織適合複合体分子が、MHCクラスI分子である、項目83に記載の方法。
(項目85)
前記1種または複数のサイトカインが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン-4(IL-4)を含む、項目83に記載の方法。
(項目86)
前記1種または複数のサイトカインが、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を含む、項目83に記載の方法。
(項目87)
前記骨髄由来細胞が、多発性骨髄腫を有すると診断された被験体から得られる、項目83に記載の方法。
(項目88)
BCMAのT細胞抗原受容体配列を同定する方法であって、
(a)項目61に記載の方法によって、BCMA特異的細胞傷害性T細胞を作製する、および/または増殖させることと、
(b)前記BCMA特異的細胞傷害性T細胞において、BCMAのT細胞抗原受容体配列を決定することと
を含む、方法。
(項目89)
がんを有するヒト被験体を処置するための方法であって、
前記ヒト被験体に、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)を含む組成物を投与することを含み、前記CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体を発現し、前記キメラ抗原受容体は、BCMAと結合する、方法。
(項目90)
TACIのT細胞抗原受容体配列を同定する方法であって、
(a)項目65に記載の方法によって、TACI特異的細胞傷害性T細胞を作製する、および/または増殖させることと、
(b)前記TACI特異的細胞傷害性T細胞において、TACIのT細胞抗原受容体配列を決定することと
を含む方法。
(項目91)
がんを有するヒト被験体を処置するための方法であって、
前記ヒト被験体に、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)を含む組成物を投与することを含み、前記CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体を発現し、前記キメラ抗原受容体は、TACIと結合する、方法。
(項目92)
ナノ粒子と、配列番号1~17のいずれか1つに対して少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含むペプチドとを含む、組成物。
(項目93)
前記ペプチドが、前記ナノ粒子に封入される、項目92に記載の組成物。
(項目94)
前記ナノ粒子が生分解性ポリマーを含む、項目92に記載の組成物。
(項目95)
前記ナノ粒子が、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)を含む、項目92に記載の組成物。
(項目96)
前記ナノ粒子が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)(PLGA-PEG)コポリマーを含む、項目92に記載の組成物。
(項目97)
前記ナノ粒子がリポソームである、項目92に記載の組成物。
(項目98)
前記アミノ酸配列が配列番号13である、項目92から97のいずれか一項に記載の組成物。
(項目99)
前記アミノ酸配列が配列番号14である、項目92から97のいずれか一項に記載の組成物。
(項目100)
前記アミノ酸配列が配列番号15である、項目92から97のいずれか一項に記載の組成物。
(項目101)
前記アミノ酸配列が配列番号16である、項目92から97のいずれか一項に記載の組成物。
(項目102)
前記アミノ酸配列が配列番号17である、項目92から97のいずれか一項に記載の組成物。
(項目103)
前記ナノ粒子が、アジュバントを含む、項目92から102のいずれか一項に記載の組成物。
(項目104)
前記ナノ粒子が、Toll様受容体アゴニスト(例えば、R848または非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド)を含む、項目95から103のいずれか一項に記載の組成物。
(項目105)
アジュバント、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)、レナリドミドまたはそれらの任意の組合せをさらに含む、項目92から104のいずれか一項に記載の組成物。
(項目106)
がんを有するヒト被験体を処置するための方法であって、前記ヒト被験体に、項目95から105のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
(項目107)
前記ヒト被験体が、多発性骨髄腫を有する、項目106に記載の方法。
(項目108)
前記ヒト被験体が、BCMAおよび/またはTACIを発現するがんを有する、項目106に記載の方法。
(項目109)
前記ヒト被験体に、配列番号13~17の群より選択されるペプチド、BCMA特異的CTLまたはTACI特異的CTLのうちの1つまたはそれより多くを投与することをさらに含む、項目106から108のいずれか一項に記載の方法。
(項目110)
前記ヒト被験体に、配列番号13または16に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドを投与することをさらに含む、項目106から108のいずれか一項に記載の方法。
(項目111)
前記ヒト被験体に、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドでのCTLの刺激によって生成されたBCMA特異的CTLを投与することをさらに含む、項目106から108のいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
前記ヒト被験体に、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドでのCTLの刺激によって生成されたTACI特異的CTLを投与することをさらに含む、項目106から108のいずれか一項に記載の方法。
【0101】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明で使用するための方法および材料は本明細書に記載されており、当技術分野で公知のその他の適した方法および材料も使用できる。材料、方法および例は、単に例示であり、限定することを意図したものではない。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリおよび他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。
【0102】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1A-C】
図1A~1Iは、多発性骨髄腫細胞系でのBCMA発現を示す。
【
図1D-F】
図1A~1Iは、多発性骨髄腫細胞系でのBCMA発現を示す。
【
図1G-I】
図1A~1Iは、多発性骨髄腫細胞系でのBCMA発現を示す。
【0104】
【
図2】
図2は、HLA-A2に対する天然BCMAペプチドの結合親和性を示す。
【0105】
【
図3】
図3は、HLA-A2に対する天然TACIペプチドの結合親和性を示す。
【0106】
【
図4】
図4は、HLA-A2に対するBCMAペプチド:天然ペプチド対ヘテロクリティックペプチドの結合親和性を示す。
【0107】
【
図5】
図5は、HLA-A2に対するTACIペプチド:天然ペプチド対ヘテロクリティックペプチドの結合親和性を示す。
【0108】
【
図6】
図6は、BCMA4番および5番ペプチド:天然ペプチド対ヘテロクリティックペプチド(50ug/ml)のHLA-A2安定性を示す。
【0109】
【
図7】
図7は、TACI1番、3番および4番ペプチド:天然ペプチド対ヘテロクリティックペプチド(50ug/ml)のHLA-A2安定性を示す。
【0110】
【
図8】
図8A~8Cは、ヘテロクリティックBCMA4番ペプチド刺激を用いて増大されたCD8
+細胞傷害性T細胞(CTL)を示す。
【0111】
【
図9】
図9A~9Cは、ヘテロクリティックBCMA4番ペプチド刺激を用いて減少したナイーブCTLを示す。
【0112】
【
図10】
図10A~10Cは、ヘテロクリティックBCMA4番ペプチド刺激を用いて増大されたメモリーCTLを示す。
【0113】
【
図11】
図11A~11Cは、ヘテロクリティックBCMA4番ペプチド刺激を用いたCM対エフェクター細胞の動態を示す。
【0114】
【
図12】
図12は、ヘテロクリティックBCMA4番ペプチドによるメモリーCD8+CTLの誘導を示す。
【0115】
【
図13】
図13は、ヘテロクリティックTACI3番ペプチドによるメモリーCD8+CTLの誘導を示す。
【0116】
【
図14】
図14は、ヘテロクリティックBCMA4番ペプチド-CTLの抗腫瘍活性を示す(N=5)。
【0117】
【
図15】
図15は、ヘテロクリティックTACI3番ペプチド-CTLの抗腫瘍活性を示す(n=4)。
【0118】
【
図16】
図16は、ヘテロクリティックBCMA4番ペプチド-CTLのHLA-A2特異的増殖を示す。
【0119】
【
図17】
図17は、α-OX40またはα-GITRを用いて処置されたBCMA特異的CTLのセントラルメモリー細胞によって増強されたα-腫瘍活性を示す。
【0120】
【
図18A】
図18A~18Cは、ヘテロクリティックBCMAペプチドを用いて刺激されたBCMAペプチド特異的CTLでの決定的なT細胞マーカーの上方制御を示す。
【
図18B】
図18A~18Cは、ヘテロクリティックBCMAペプチドを用いて刺激されたBCMAペプチド特異的CTLでの決定的なT細胞マーカーの上方制御を示す。
【
図18C】
図18A~18Cは、ヘテロクリティックBCMAペプチドを用いて刺激されたBCMAペプチド特異的CTLでの決定的なT細胞マーカーの上方制御を示す。
【0121】
【
図19A-E】
図19A~19Fは、HLA-A2
+MM細胞系に対するヘテロクリティックBCMA
72~80特異的CTLによるHLA-A2拘束かつ抗原特異的免疫応答を示す。
【
図19F】
図19A~19Fは、HLA-A2
+MM細胞系に対するヘテロクリティックBCMA
72~80特異的CTLによるHLA-A2拘束かつ抗原特異的免疫応答を示す。
【0122】
【
図20A】
図20A~20Hは、患者のMM細胞に対するヘテロクリティックBCMA
54~62特異的CTLまたはヘテロクリティックBCMA
72~80特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【
図20B-1】
図20A~20Hは、患者のMM細胞に対するヘテロクリティックBCMA
54~62特異的CTLまたはヘテロクリティックBCMA
72~80特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【
図20B-2】
図20A~20Hは、患者のMM細胞に対するヘテロクリティックBCMA
54~62特異的CTLまたはヘテロクリティックBCMA
72~80特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【
図20C-H】
図20A~20Hは、患者のMM細胞に対するヘテロクリティックBCMA
54~62特異的CTLまたはヘテロクリティックBCMA
72~80特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【0123】
【
図21A】
図21A~21Cは、別個の表現型およびMM細胞に対する高レベルの抗腫瘍活性を提示するBCMA
72~80特異的四量体
+CTLである。
【
図21B】
図21A~21Cは、別個の表現型およびMM細胞に対する高レベルの抗腫瘍活性を提示するBCMA
72~80特異的四量体
+CTLである。
【
図21C】
図21A~21Cは、別個の表現型およびMM細胞に対する高レベルの抗腫瘍活性を提示するBCMA
72~80特異的四量体
+CTLである。
【0124】
【
図22A】
図22A~22Eは、ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチドを用いる刺激の際のBCMA特異的CTLのメモリーCD8
+T細胞の分化である。
【
図22B-C】
図22A~22Eは、ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチドを用いる刺激の際のBCMA特異的CTLのメモリーCD8
+T細胞の分化である。
【
図22D-E】
図22A~22Eは、ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチドを用いる刺激の際のBCMA特異的CTLのメモリーCD8
+T細胞の分化である。
【0125】
【0126】
【
図24A】
図24Aは、25 U266細胞と同時培養された(7日)BCMAペプチド特異的CTLの結果である。
【0127】
【
図24B】
図24B~24Cは、抗LAG3または抗OX40を用いて処置したヘテロクリティックBCMA72~80CTL[1つのHLA-A2+個体から作製した]のメモリーCD8+T細胞の増強された抗骨髄腫活性である。
【
図24C】
図24B~24Cは、抗LAG3または抗OX40を用いて処置したヘテロクリティックBCMA72~80CTL[1つのHLA-A2+個体から作製した]のメモリーCD8+T細胞の増強された抗骨髄腫活性である。
【0128】
【
図24D】
図24Dは、HLA-A2拘束様式で骨髄腫細胞に対して抗OX40を用いて処置したヘテロクリティックBCMA
72~80CTL[HLA-A2
+ドナー1、ドナー2またはドナー3から作製された]の増強された抗腫瘍活性である。
【0129】
【
図25】
図25A~25Bは、ヘテロクリティックBCMA
72~80を用いるペプチド刺激後のCD3+CD8+T細胞のパーセンテージである。
【0130】
【
図26】
図26A~26Bは、ヘテロクリティックBCMA
72~80を用いるペプチド刺激後のCD3+CD4+T細胞のパーセンテージである。
【0131】
【
図27】
図27A~27Cは、H929、MMIS、U266およびOPM1細胞系での高いBCMA発現を示すが、乳がん細胞系(MDA-MB231)ではそうではないことを示す。
【0132】
【
図28】
図28A~28Bは、ヘテロクリティックBCMA
72~80を用いるペプチド刺激後のPD-1およびLAG-3を発現するCD3+CD8+T細胞のパーセンテージを示す。
【0133】
【
図29A】
図29A~29Cは、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドを用いる刺激の際のナイーブ細胞のメモリーCTLへの分化を示す。
【
図29B】
図29A~29Cは、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドを用いる刺激の際のナイーブ細胞のメモリーCTLへの分化を示す。
【
図29C】
図29A~29Cは、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドを用いる刺激の際のナイーブ細胞のメモリーCTLへの分化を示す。
【0134】
【
図30A】
図30A~30Fは、HLA-A2+多発性骨髄腫細胞(McCAR)に対するヘテロクリティックTACI
154~162特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【
図30B】
図30A~30Fは、HLA-A2+多発性骨髄腫細胞(McCAR)に対するヘテロクリティックTACI
154~162特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【
図30C-F】
図30A~30Fは、HLA-A2+多発性骨髄腫細胞(McCAR)に対するヘテロクリティックTACI
154~162特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【0135】
【
図31A】
図31A~31Eは、HLA-A2+多発性骨髄腫細胞に対するへテロクリティックTACI
154~162特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【
図31B-E】
図31A~31Eは、HLA-A2+多発性骨髄腫細胞に対するへテロクリティックTACI
154~162特異的CTLの抗腫瘍活性を示す。
【0136】
【
図31F】
図31Fは、HLA-A2+多発性骨髄腫細胞への、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドによるペプチド特異的四量体+CTLおよび抗腫瘍活性および増殖の誘導を示す。
【0137】
【
図32A】
図32Aは、BCMAペプチドが負荷されたPLGAナノ粒子の形態学を示す。
【0138】
【
図32B】
図32Bは、BCMAペプチドが負荷されたリポソームナノ粒子の形態学を示す。
【0139】
【0140】
【
図33A】
図33Aは、時間依存的な、ナノ粒子(PLGA、リポソーム)に封入する際の樹状細胞でのBCMAペプチドのより高い負荷効率を示す。
【0141】
【
図33B】
図33Bは、時間依存的な、ナノ粒子(PLGA、リポソーム)に封入する際の樹状細胞でのBCMAペプチド-FITCのより高い負荷効率を示す。
【0142】
【
図33C】
図33Cは、樹状細胞によるより高いPLGA/ペプチド取り込みを示す。
【0143】
【
図33D】
図33Dは、時間依存的な、PLGAに封入する際の樹状細胞によるBCMAペプチド-FITCのより高い取り込みを示す。
【0144】
【
図33E】
図33Eは、時間依存的な、PLGAに封入する際のT2細胞によるBCMAペプチド-FITCのより高い取り込みを示す。
【0145】
【
図34A】
図34Aは、HLA-A2拘束様式でMM細胞系に対するPLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる最高の抗MM活性を示す。
【0146】
【
図34B】
図34Bは、HLA-A2拘束様式でMM細胞系に対するPLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる最高のIFN-γ産生を示す。
【0147】
【
図34C】
図34Cは、HLA-A2拘束様式でMM細胞系に対するPLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる最高のIL-2産生を示す。
【0148】
【
図34D】
図34Dは、HLA-A2拘束様式でMM細胞系に対するPLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる最高のTNF-α産生を示す。
【0149】
【
図34E】
図34Eは、HLA-A2拘束様式でMM細胞系に対するPLGA/BCMAペプチドを用いて異なるHLA-A2
+個体(N=3)から作製されたBCMA-CTLによる最高の抗MM活性およびTh1型サイトカイン(IFN-γ、IL-2、TNF-α)産生を示す。
【0150】
【
図35A】
図35Aは、腫瘍細胞の非存在下で、BCMAペプチド自体、PLGA/BCMAペプチドまたはリポソーム/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA特異的CTLのベースライン活性を示す。
【0151】
【
図35B】
図35Bは、HLA-A2
+骨髄腫患者1番から得た初代HLA-A2
+CD138
+腫瘍細胞に応答したPLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる最高の抗MM活性を示す。
【0152】
【
図35C】
図35Cは、HLA-A2
+骨髄腫患者2番から得た初代HLA-A2
+CD138
+腫瘍細胞に応答したPLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる最高の抗MM活性を示す。
【0153】
【
図35D】
図35Dは、HLA-A2拘束様式で骨髄腫患者の腫瘍細胞に対するPLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる最高の抗MM活性およびTh1型サイトカイン(IFN-γ、IL-2、TNF-α)産生を示す。
【0154】
【
図36A-1】
図36Aは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる四量体
+CD8
+T細胞および共刺激分子を発現する(CD28
+)CD8
+T細胞のより高い頻度を示す。
【
図36A-2】
図36Aは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる四量体
+CD8
+T細胞および共刺激分子を発現する(CD28
+)CD8
+T細胞のより高い頻度を示す。
【0155】
【
図36B】
図36Bは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによるペプチド特異的CD8
+T細胞増殖のより高い増大を示す。
【0156】
【
図36C】
図36Cは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによるペプチド特異的IFN-γ産生のより高い増大を示す。
【0157】
【
図37A】
図37Aは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる骨髄腫特異的CD8
+T細胞増殖の最も高い誘導を示す。
【0158】
【
図37B-1】
図37Bは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いる反復刺激の際のBCMA-CTL[代表的な結果]におけるCD45RO+メモリー/CD3
+CD8
+T細胞サブセットのより高い増大を示す。
【
図37B-2】
図37Bは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いる反復刺激の際のBCMA-CTL[代表的な結果]におけるCD45RO+メモリー/CD3
+CD8
+T細胞サブセットのより高い増大を示す。
【0159】
【
図37C】
図37Cは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いる反復刺激の際のBCMA-CTL[N=3結果]におけるCD45RO+メモリー/CD3
+CD8
+T細胞サブセットのより高い増大を示す。
【0160】
【
図37D】
図37Dは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いる反復刺激の際のBCMA-CTLにおけるセントラルメモリー/CD3
+CD8
+T細胞サブセットのより高い誘導および維持を示す。
【0161】
【
図38A】
図38Aは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる、HLA-A2拘束様式での、骨髄腫細胞に対するセントラルメモリーおよびエフェクターメモリーCTLおよびその抗MM活性のより高い誘導を示す。
【0162】
【
図38B】
図38Bは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる、HLA-A2拘束様式での、骨髄腫細胞に対するセントラルメモリーおよびエフェクターメモリーCTLおよびそのIFN-γ産生のより高い誘導を示す。
【0163】
【
図38C】
図38Cは、BCMAペプチド自体を用いた場合よりも、PLGA/BCMAペプチドを用いて作製されたBCMA-CTLによる、HLA-A2拘束様式での、骨髄腫細胞に対するセントラルメモリーおよびエフェクターメモリーCTLおよびその抗MM活性およびIFN-γ、IL-2、TNF-α産生のより高い誘導を示す。
【発明を実施するための形態】
【0164】
B細胞成熟抗原(BCMA)および膜貫通アクチベーターおよびCAML相互作用物質(TACI)は、例えば、多発性骨髄腫およびその他の血液学的悪性疾患を含む多数のがんに対して特異的かつ決定的な抗原である。本開示は、少なくとも幾分かは、BCMAおよびTACI抗原に由来するHLA-A2特異的免疫原性ペプチドの同定に基づき、これは、例えば、多発性骨髄腫(MM)特異的T細胞免疫応答をもたらすために使用できる。したがって、本開示は、BCMA由来ペプチドおよびTACI由来ペプチド(およびその医薬組成物)に関し、これは、例えば、被験体において、腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導する(例えば、細胞傷害性T細胞(CTL)応答を刺激する)ために、またはサイトカインもしくは抗体の産生を刺激するために使用できる。ペプチドは、免疫応答を誘導する方法、抗体を産生する方法、抗腫瘍免疫応答に関与するサイトカインを製造する方法およびがん(例えば、多発性骨髄腫など)を処置する方法などの種々の適用において使用できる。ペプチドはまた、MHC分子多量体組成物に含まれることもあり、例えば、細胞の集団においてT細胞(例えば、抗原特異的T細胞)を検出する方法において使用できる。
【0165】
本開示はまた、多発性骨髄腫、その前悪性疾患もしくはその他のがんを含むがん患者、またはBCMAおよびTACI抗原を独特に発現および/もしくは過剰発現する任意の疾患における、本明細書において記載される単剤療法または併用療法としての、操作された技術(CAR-TCR療法ベースのものおよび誘導多能性幹細胞ベースのものを含む)またはペプチドがパルスされた樹状細胞の注入を用いる、ペプチドベースのワクチン接種、ワクチン(ナノ粒子ベースのものおよびウイルスベースのものを含む)の種々のアプローチを構成するペプチド、ex vivoで作製されたBCMA特異的T細胞またはTACI特異的T細胞および抗原特異的T細胞の養子移入を含む種々の種類の治療適用についての情報を提供する。
【0166】
BCMA由来ペプチドおよびTACI由来ペプチド
B細胞成熟抗原(BCMA)(NM_001192.2→NP_001183.2)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17)としても公知であり、ヒトでは、TNFRSF17遺伝子によってコードされるタンパク質である。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF)を認識するTNF受容体スーパーファミリーの細胞表面受容体である。BCMAは、成熟Bリンパ球において発現される。この受容体は、腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー13b(TNFSF13B/TALL-1/BAFF)と特異的に結合し、NF-カッパBおよびMAPK8/JNK活性化につながると示されている。この受容体はまた、種々のTRAFファミリーメンバーと結合し、したがって、細胞生存および増殖のためのシグナルを伝達し得る。BCMAは、種々のがん細胞において、例えば、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫を有する被験体において過剰発現されることが多い。
【0167】
膜貫通アクチベーターおよびCAML相互作用物質(TACI)(NM_012452.2→NP_036584.1)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13B(TNFRSF13B)としても公知であり、ヒトでは、TNFRSF13B遺伝子によってコードされるタンパク質である。TACIは、B細胞の表面で主に見られるTNF受容体スーパーファミリーの膜貫通タンパク質である。TACIは、3種のリガンド:APRIL、BAFFおよびCAMLを認識する。TACIはまた、同様に種々のがん細胞において、例えば、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫を有する被験体において過剰発現されることが多い。
【0168】
ヒトBCMAおよびヒトTACIのアミノ酸配列は以下に示される。
【化1】
【0169】
本開示は、BCMAまたはTACI抗原に由来するペプチド(例えば、ナイーブペプチド)およびペプチド(ナイーブペプチド)に由来するヘテロクリティックペプチドを提供する。これらのペプチドは、BCMAまたはTACIペプチドの任意の部分または断片であり得る。いくつかの実施形態では、これらのペプチドは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸残基より大きい長さを有する。いくつかの実施形態では、これらのペプチドは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸残基より小さい長さを有する。いくつかの実施形態では、これらのペプチドは、8~12アミノ酸残基、8~15アミノ酸残基、9~13アミノ酸残基、9~12アミノ酸残基または11~30アミノ酸残基の長さを有する。いくつかの実施形態では、ペプチドの長さは、9、10、11または12アミノ酸残基(例えば、9アミノ酸残基)である。
【0170】
いくつかの実施形態では、BCMAまたはTACIに由来するペプチドは、以下を含む:
【化2】
【0171】
これらのペプチドは、主要組織適合複合体(MHC)分子と結合し得る。MHCは、免疫系、自己免疫および生殖において重要な役割を有する大きな遺伝子ファミリーである。MHC分子は、T細胞に対してその表面で自己および非自己(抗原性)を含むペプチドの提示において役割を担う。MHCクラスI分子は、短いペプチドと結合し、そのNおよびC末端は、ペプチド結合溝の末端に位置するポケット中に固定されている。これらのペプチドの多数が、長さ9のものであるが、中心部分の膨隆によってより長いペプチドも収容されることができ、その結果、例えば、8~15の長さのペプチドを結合する。クラスIIタンパク質と結合するペプチドは、大きさにおいて制約されず、例えば、11~30アミノ酸長で変わり得る。MHCクラスII分子におけるペプチド結合溝は、両端で開放しており、これによって比較的長い長さを有するペプチドの結合が可能となる。「コア」の9残基長のセグメントは、ペプチドの認識に最も寄与するが、隣接する領域もまた、クラスII対立遺伝子に対するペプチドの特異性にとって重要である。
【0172】
したがって、本開示はまた、本開示において記載される任意の配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる配列を有するペプチドも提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、MHCクラスI分子および/またはMHCクラスII分子と結合し得る。いくつかの実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A(例えば、HLA-A2、HLA-A24、HLA-A1、HLA-A3、HLA-A30、HLA-A26、HLA-A68またはHLA-A11)、HLA-BまたはHLA-Cである。
【0173】
MHC分子(例えば、MHCクラスI分子、HLA-A2)分子と結合するペプチドの安定性を改善する、免疫原性を増大する、および/または免疫応答を増大するために、ペプチドに種々の修飾を行うことができる。例えば、免疫原性を増大するために、例えば、本明細書において記載される任意のペプチド(例えば、配列番号1~17)の3、4、5、6、7および/または8位においてTCR相互作用部位を変更することによって、T細胞受容体(TCR)に対する親和性を増強することによって、アミノ酸残基を修飾することができる。
【0174】
ペプチドのNおよびC末端に、二塩基アミノ酸残基(例えば、Arg-Arg、Arg-Lys、Lys-ArgまたはLys-Lys)も付加できる。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アンカー残基(「固定されたアンカーエピトープ」)を修飾することによって主要組織適合複合体(MHC)結合を増強するために、またはTCR相互作用部位(例えば、配列番号1~17の1、2および/または9位)を修飾することによってT細胞受容体(TCR)との結合を増強するために置換される。いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるエピトープは、任意の位置(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの位置)で修飾され得る。ペプチドはまた、それらをT細胞刺激の「超抗原」または「超アゴニスト」にする内部変異を含み得る。超抗原ペプチドは、Pinilla et al, Biotechniques, 13(6): 901-5, 1992;Borras et al, J. Immunol. Methods, 267(l): 79-97, 2002;米国特許出願公開第2004/0072246号およびLustgarten et al.., J. Immun. 176: 1796-1805, 2006に記載されるようなポジショナルスキャニング合成ペプチドコンビナトリアルライブラリー(PS-CSL)を用いてT細胞をスクリーニングすることによって作製できる。いくつかの実施形態では、超アゴニストペプチドは、ペプチドをより強力な免疫原にする1つ、2つ、3つまたは4つのアミノ酸置換を有する本明細書において記載されるようなペプチドである。いくつかの実施形態では、BCMAまたはTACIに由来するペプチドの最初のアミノ酸残基は、チロシンに変更され得る。
【0175】
BCMAまたはTACIに由来するいくつかのヘテロクリティックペプチドとして以下が挙げられる:
【化3】
【0176】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロクリティック」(例えば、ヘテロクリティックペプチド)とは、野生型配列または元の配列を有する対応するペプチドよりも免疫原性であるペプチドを製造するために、1個または複数のアミノ酸残基が、野生型または元の配列から修飾されているペプチドの形態を指す。
【0177】
本開示は、本明細書において記載されるようなペプチド(例えば、配列番号1~17)の改変体をさらに提供する。本明細書において記載されるペプチドの改変体は、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下のアミノ酸置換(例えば、5、4、3、2または1つのアミノ酸置換)を有するペプチドの形態を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるペプチドの改変体は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの置換を有するペプチドの形態を含み得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、配列番号1~17の1、2および/または9位のアミノ酸は、HLA結合親和性に寄与し、したがって、ペプチド特異的T細胞応答に影響を及ぼすことなく置換され得る。したがって、ペプチドの免疫原性は、配列番号1~17の1、2および/または9位の置換を有する場合も依然として維持され得る。いくつかの実施形態では、配列番号1~17(例えば、配列番号13または配列番号16)の1位のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、配列番号1~17(例えば、配列番号13または配列番号16)の2位のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、配列番号1~17(例えば、配列番号13または配列番号16)の9位のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、配列番号1~17の1および2位、1および9位、2および9位または1、2および9位のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書において記載されるような配列(例えば、本明細書において記載されるような置換を有するまたは有さない配列番号1~17のうち1つ)を含み、最大9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40個のアミノ酸を有するペプチドを提供する。したがって、いくつかの実施形態では、ペプチドの長さは、9から20個の間のアミノ酸、9から30個の間のアミノ酸または9から40個の間のアミノ酸であり得る。
【0179】
置換は、任意の種類のアミノ酸置換、例えば、保存的または非保存的であり得る。保存的置換は、以下の群内の置換を含む:(1)バリン、アラニンおよびグリシン;ロイシン、バリンおよびイソロイシン、(2)アスパラギン酸およびグルタミン酸、(3)アスパラギンおよびグルタミン、(4)セリン、システインおよびトレオニン;リジンおよびアルギニンならびに(5)フェニルアラニンおよびチロシン。非極性疎水性アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸として、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。上記の極性、塩基性または酸性基のあるメンバーの、同一群の別のメンバーによる任意の置換は、保存的置換とみなされ得る。対照的に、非保存的置換は、あるアミノ酸による、異なる特徴を有する別のものの置換、例えば、1つのアミノ酸の、別の群内の別のアミノ酸との置換である。
【0180】
いくつかの実施形態では、ペプチドのいずれかの3、4、5、6、7および8位のうち1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つすべて)が置換されていない。いくつかの実施形態では、ペプチドの3、4、5、6、7および8位のうち1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つすべて)が、配列番号1~17から選択される配列と同一である。本明細書で使用される場合、用語位置とは、ペプチドのN末端から始まる位置を指す。例えば、ペプチドの3位とは、ペプチドのN末端から始まる3番目のアミノ酸残基を指す。いくつかの実施形態では、配列番号1~17の3、4、5、6、7および8位の残基は、ペプチドの認識に最も寄与する。
【0181】
本開示は、本開示に記載されるような任意の配列、例えば、配列番号1~17、配列番号18および19ならびに配列番号1~17をコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも50%(例えば、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)同一である配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列をさらに提供する。
【0182】
2つのアミノ酸配列の、または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、最適比較目的で配列を整列させる(例えば、最適アラインメントのために第1および第2のアミノ酸もしくは核酸配列の一方または両方にギャップを導入してもよく、また比較目的のために非相同配列を無視してもよい)。比較目的のために整列される参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも80%であり、いくつかの実施形態では、少なくとも90%、95%または100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同一アミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合に、分子はその位置で同一である(本明細書で使用される場合、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と同等である)。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適アラインメントのために導入されることが必要であるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した配列によって共有される同一位置の数の関数である。本開示の目的のために、2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、12のギャップペナルティー、4のギャップ伸長ペナルティーおよび5のフレームシフトギャップペナルティーを有するBlossum 62スコアリングマトリクスを使用して達成することができる。
【0183】
また、第1のアミノ酸配列および第1のアミノ酸配列に対して異種である第2のアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドも本明細書において提供される。第1のアミノ酸配列に対して「異種である」アミノ酸配列または用語「異種アミノ酸配列」は、第1のアミノ酸配列に隣接するアミノ酸配列であり、隣接する配列は、天然には生じない(例えば、隣接する配列は、天然で第1のアミノ酸配列に連結されていない)。第1のアミノ酸配列は、本明細書において記載されるような任意の配列、例えば、配列番号1~17または配列番号1~17に由来する任意の配列(例えば、配列番号1~17の4つ以下の置換を有する配列)を含み得る、それから本質的になり得る、またはそれからなり得る。異種の隣接するアミノ酸配列を有するペプチドは、一般に、配列番号1~17の免疫原性ペプチドの細胞における生成に悪影響を及ぼさない(そうしないように選択される)。細胞機構は、ペプチド中の任意の追加の配列を除去して、配列番号1~17の免疫原性ペプチドをもたらすと予測され、このペプチドは、BCMAまたはTACIを発現するがん細胞に対する免疫応答を刺激するようにクラスIまたはクラスII MHC分子によって提示される。
【0184】
異種の隣接する配列は、例えば、組換えタンパク質の精製に使用される配列(例えば、FLAG、ポリヒスチジン(例えば、ヘキサヒスチジン)、ヘマグルチニン(hemagluttanin)(HA)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはマルトース結合タンパク質(MBP))であり得る。異種配列はまた、診断または検出マーカーとして有用であるタンパク質、例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、免疫グロブリン分子のすべてまたは一部(例えば、免疫グロブリン重鎖定常領域のすべてまたは一部)を含有し得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、異種配列は、治療薬または免疫刺激性ポリペプチド配列(例えば、ヘルパーTエピトープ(例えば、PADREエピトープまたは破傷風トキソイドユニバーサルヘルパーT細胞エピトープ)またはサイトカインもしくはケモカインのすべてもしくは一部)および/または例えば、免疫応答(例えば、抗体作製のための)を誘発するのに有用な担体(例えば、KLH)を含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、1種または複数のリンカーペプチド配列を含有し得る。ペプチドはまた、標的化ポリペプチドを含有し得る。異種配列は、変動する長さのものであってよく、いくつかの場合には、異種アミノ酸配列が付着される第1のアミノ酸配列よりも長い配列であり得る。第1のアミノ酸配列および第1のものに対して異種である第2のアミノ酸配列を含有するペプチドは、配列で天然に存在するタンパク質に対応しないということが理解される。
【0186】
標的化ポリペプチドとは、本明細書で使用される場合、特定の組織(例えば、リンパ節)または細胞(例えば、抗原提示細胞またはその他の免疫細胞)またはin vitroでは、特定の単離された分子もしくは分子複合体に付着している部分(または複数の部分)(例えば、第1のアミノ酸配列)を標的化するポリペプチドである。標的化ポリペプチドは、例えば、抗体(免疫グロブリン)またはその抗原結合断片または細胞表面受容体のリガンドであり得る。抗体(またはその抗原結合性断片)は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、キメラ抗体または抗体のFab断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片またはscFv断片であり得る。Fc領域(抗原結合領域を有するまたは有さない)を含む、またはそれである抗体断片はまた、Fc受容体を発現する細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞、マクロファージ、単球またはB細胞などの抗原提示細胞)に試薬を標的化するために使用できる。細胞表面受容体のリガンドは、例えば、ケモカイン、サイトカイン(例えば、インターロイキン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16)または細胞死受容体リガンド(例えば、FasLまたはTNFα)であり得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、異種配列は、例えば、ペプチドの細胞への、または細胞の特定の区画(例えば、小胞体またはゴルジ体)への送達を補助する「輸送配列」を含み得る。輸送配列として、例えば、膜トランスロケーション配列、トランスポータン配列、アンテナペディア配列、環状インテグリン結合ペプチドおよびTat媒介性ペプチドまたはそれらの修飾されたバージョンを挙げることができる。
【0188】
リンカーペプチドは、第1のアミノ酸配列を、1種または複数の異種アミノ酸配列と接続できる。例えば、リンカーペプチドは、第1のアミノ酸配列を、第2のアミノ酸配列と接続できる。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、配列番号1~17のいずれか1種のペプチドを、配列番号1~17から選択される第2のペプチドと連結/接続できる。リンカーペプチドは、例えば、少なくとも4~6個のアミノ酸がグリシンであるアミノ酸のストレッチであり得る、または含有し得る(例えば、Mancebo et al. (1990) MoI. Cell. Biol. 10: 2492-2502を参照のこと)。リンカーは、6個またはそれより多い(例えば、7、8、9、10、11または12個またはそれより多い)ヒスチジン残基であり得る、または含有し得る。リンカーペプチドは、少なくとも1つの(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8つまたはそれより多い)プロテアーゼ切断部位を含有し得る、またはそれであり得る。プロテアーゼ部位は、例えば、トリプシン、キモトリプシンまたは第Xa因子切断部位であり得る。このようなプロテアーゼ部位は、例えば、異種配列から第1のアミノ酸配列を分離するのに有用であり得る。例えば、トリプシンプロテアーゼ切断部位によって(例えば、精製のために)ポリヒスチジン配列につながっている第1のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現および精製後に、ペプチドをトリプシンと接触させることによって、第1のアミノ酸配列からポリヒスチジン配列を除去することができる。
【0189】
いくつかの実施形態では、本開示は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端に、異種である、または天然タンパク質中に存在する最大200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200)個のアミノ酸を有し得るペプチド(例えば、配列番号1~17のうち任意の1種)を提供する。
【0190】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、本明細書において記載されるような任意の配列(例えば、配列番号1~17のうち任意の1種)に対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含み得る。いくつかの実施形態では、配列は、本明細書において記載されるような任意の配列(例えば、配列番号1~17のうち任意の1種)と同等のものまたはそれから選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸を有し得る。いくつかの実施形態では、配列は、配列番号13である。いくつかの実施形態では、配列は、配列番号14である。いくつかの実施形態では、配列は、配列番号16である。
【0191】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、追加の配列を有し得る。追加の配列は、ペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に位置し得る。いくつかの実施形態では、追加の配列は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200個のアミノ酸を有し得る。いくつかの実施形態では、追加の配列は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200個のアミノ酸を有し得る。
【0192】
特定の例では、本開示は、配列番号13~17から選択される2つまたはそれより多いペプチドの任意の組合せを包含する。
【0193】
本明細書において記載されるペプチドは、主要組織適合複合体(MHC)分子(例えば、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子)と結合し得る。ヒトでは、MHCは、HLA複合体として公知である。「HLAスーパータイプまたはファミリー」とは、本明細書で使用される場合、共有されるペプチド結合特異性に基づいてグループ化されたHLA分子のセットを指す。ある特定のアミノ酸モチーフを有するペプチドに対して幾分か同様の結合親和性を共有するHLAクラスI分子は、HLAスーパータイプにグループ化される。用語HLAスーパーファミリー、HLAスーパータイプファミリー、HLAファミリーおよびHLAxx様分子(ここで、xxは、特定のHLA型を意味する)は、同義語である。HLAクラスI分子の型として、例えば、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A24、HLA-B7、HLA-B27、HLA-B44、HLA-B58またはHLA-B62が挙げられる。このようなHLA分子は、その全開示内容が全文で参照により組み込まれる米国特許第7,026,443号に詳細に記載されている。
【0194】
ペプチドは、MHC分子と、高親和性または中程度の親和性で結合し得る。本明細書で使用される場合、ペプチドのHLAクラスI分子との「高親和性」結合は、50nM未満(例えば、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.5、0.1または0.05nM未満)の解離定数(KD)を有する結合として定義される。「中程度の親和性」は、約50nMから約500nMの間(例えば、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、115、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490または500nM)のKDを有する、ペプチドのHLAクラスI分子との結合である。ペプチドのHLAクラスII分子との「高親和性」結合は、100nM未満(例えば、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.5、0.1または0.05nM未満)のKDを有する結合として定義される。ペプチドのHLAクラスII分子に対する「中程度の親和性」は、約100から約1000nMの間(例えば、100、110、115、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990または1000nM)のKDを有する結合である。ペプチドおよびMHC分子の結合親和性を決定する方法は、当技術分野で公知である。適した方法はまた、例えば、米国特許第7,026,443号に記載されている。
【0195】
本明細書において記載されるペプチドはまた、MHC分子と関連して、T細胞上の抗原特異的T細胞受容体によって認識され得る。種々の適した方法を使用して、ペプチドが、MHC分子と関連して、T細胞上のT細胞受容体によって認識されるか否かを決定できる。例えば、正常な被験体から得た末梢血リンパ球(PBL)を、試験ペプチドとともに、抗原提示細胞の存在下in vitroで数週間の期間にわたって培養してもよい。ペプチドに特異的なT細胞は、この時間の間に活性化され、例えば、増殖アッセイ(H-チミジンアッセイのカルボキシフルオロセインスクシンイミジルエステル(CFSE)アッセイ)、限界希釈アッセイ、細胞毒性アッセイ(例えば、カルセイン放出アッセイ)またはサイトカイン-(例えば、IFNγ)、リンホカイン-もしくは51Cr-放出アッセイ(例えば、各々の開示内容が、その全文で参照により組み込まれるWentworth,
P. A. et al., MoI. Immunol. 32: 603, 1995; Celis, E. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 : 2105, 1994; Tsai, V. et al., J. Immunol. 158: 1796, 1997; Kawashima, I. et al., Human Immunol. 59: 1, 1998を参照のこと)を使用して検出され得る。適したin vivo法は、HLAトランスジェニックマウスを免疫化することを含み、これでは、アジュバント中のペプチドをHLAトランスジェニックマウスに皮下投与し、免疫化の数週間後、脾細胞を取り出し、in vitroで試験ペプチドの存在下、およそ1週間培養し、ペプチド特異的T細胞を、例えば、51Cr-放出アッセイ(例えば、各々の開示内容がその全文で参照により組み込まれる、Wentworth, P. A. et al., J. Immunol. 26: 97, 1996; Wentworth, P. A. et al., Int. Immunol. 8: 651, 1996; Alexander, J.
et al., J. Immunol. 159: 4753, 1997を参照のこと)を使用して検出する。
【0196】
さらに、抗原特異的T細胞の直接定量化は、T細胞を、検出可能に標識された、本明細書において記載されるMHC分子多量体組成物のいずれかなどのMHC複合体またはHLA-I四量体を用いて染色することによって実施できる(例えば、各々の開示内容がその全文で参照により組み込まれる、Altman, J. D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10330, 1993およびAltman, J. D. et al., Science 274: 94,
1996に記載されるように)。
【0197】
いくつかの実施形態では、ペプチドの1つまたは複数の特性を調節する(例えば、増大または減少させる)ために、ペプチドをさらに修飾してもよい(例えば、ペプチドのアミノ酸を置換してもよい)。例えば、ペプチドのMHC分子に対する親和性を増大するために、本明細書において記載されるペプチドのうち1種の1個または複数の(例えば、2、3または4個の)アミノ酸を置換してもよい。いくつかの実施形態では、T細胞受容体とペプチド間の結合相互作用を増強するために(MHC分子との関連で)、本明細書において記載されるペプチドのうち1種のアミノ酸(例えば、ペプチドのT細胞受容体と接触しているアミノ酸残基)を修飾してもよい。このような修飾されたペプチドは、「変更されたペプチドリガンド」と呼ばれることが多い(例えば、各々の開示内容がその全文で参照により組み込まれるKalergis et al. (2000) J Immunol. 165(l): 280; Conlon et al. (2002) Science 1801および国際公開番号WO02070003を参照のこと)。ペプチドを修飾する、ならびに修飾の効果を決定する適した方法は、例えば、その開示内容がその全文で参照により組み込まれるCollins et al. (Immunlogical Reviews (1998) 163: 151-160)に記載されている。
【0198】
本開示は、本明細書において記載されるような任意のペプチドを含む組成物をさらに提供する。さらに、それに対して向けられた療法を逃れる腫瘍の能力に対抗するために、組成物は、免疫応答を誘導する種々の特異的ペプチドを含むことができる。例えば、組成物中に同一タンパク質に由来する2種以上のエピトープが含まれ得る、例えば、組成物は、BCMAまたはTACIに由来する少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種または少なくとも7種の異なるペプチドを含有することができる。さらに、BCMAに由来する少なくとも1種(例えば、少なくとも2、3、4、5種)のペプチドおよびTACIに由来する少なくとも1種(例えば、少なくとも2、3、4、5種)のペプチドの組合せまたは混合物も使用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも2、3、4、5、6、7または8種のBCMA由来ペプチド(例えば、例えば、配列番号1~6および13~14から選択される少なくとも2種のBCMA由来ペプチド)を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも2、3、4、5、6、7または8種のTACI由来ペプチド(例えば、例えば、配列番号7~12および16~17から選択される少なくとも2種のTACI由来ペプチド)を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1種(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7または8種)のBCMA由来ペプチドおよび少なくとも1種(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7または8種)のTACI由来ペプチドを含む組成物を提供する。
【0199】
いくつかの実施形態では、組成物は、免疫刺激性作用物質(例えば、サイトカインまたはヘルパーTエピトープ)をさらに含む。ヘルパーTエピトープは、PADRE配列またはユニバーサル破傷風トキソイドヘルパーT(TT Th)エピトープであり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Toll受容体のリガンド、QS21、RIBIまたは同様の免疫賦活剤などのアジュバントを含む。アジュバントとしてまた、例えば、コレラ毒素(CT)、E.coli熱不安定性毒素(LT)、変異体CT(MCT)(Yamamoto et al. (1997) J. Exp. Med. 185: 1203-1210)および変異体E.coli熱不安定性毒素(MLT)(Di Tommaso et
al. (1996) Infect. Immunity 64: 974-979)が挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、toll様受容体-3リガンド(例えば、ポリICLC)、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンガンマ(IFNγ)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、免疫アゴニスト、例えば、抗OX40抗体または抗GITR抗体をさらに含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、組成物は、化学療法剤(例えば、レナリドミド)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤(例えば、ACY241;Niesvizky, et al. ”ACY-241, a novel, HDAC6 selective inhibitor: synergy with immunomodulatory (IMiD(登録商標)) drugs in multiple myeloma (MM) cells and early clinical results (ACE-MM-200 Study).” (2015): 3040-3040; Bae et al. ”Histone
deacetylase (HDAC) inhibitor ACY241 enhances anti-tumor activities of antigen-specific central memory cytotoxic T lymphocytes against multiple myeloma and solid tumors.” Leukemia (2018): 1を参照のこと)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)または免疫アゴニスト(例えば、抗OX40)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、PD-1、CTLA-4、LAG-3、BTLA、PD-L1、CD27、CD28、CD40、CD47、4-1BB(CD137)、CD154、TIGIT、TIM-3、GITR(CD357)、OX40、CD20、EGFRまたはCD319と特異的に結合する抗体(例えば、ヒト抗体)を含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号13、配列番号14または配列番号16に示される配列を含むペプチドおよびレナリドミドを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号13、配列番号14または配列番号16に示される配列を含むペプチドならびに抗OX40抗体、抗LAG3抗体および/または抗GITR抗体を含む。
【0202】
ペプチドを製造するための核酸および方法
本開示はまた、本明細書において記載されるペプチドのいずれかのうち1種または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14種)をコードする核酸配列(ならびに核酸配列を含有する核酸ベクター)ならびに本明細書において記載されるペプチドのいずれかのうち1種または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14種)を製造する方法を特徴とする。このような方法は、必要に応じて、本明細書において記載されるペプチドのいずれかのうち1種または複数をコードする核酸配列であって、発現制御配列に作動可能に連結している核酸配列を含有する核酸ベクターを含む細胞(または細胞の群)を提供するステップおよび細胞をペプチドの発現を可能にする条件下で培養するステップを含み得る。方法はまた、1種または複数のペプチドを細胞から、または細胞が培養された培地から単離するステップを含み得る。したがって、一態様では、本開示は、例えば、がんワクチンを含む、RNAベースの治療薬およびDNAベースの治療薬を提供する。いくつかの実施形態では、がんワクチンは、本明細書において記載されるようなポリヌクレオチド(例えば、配列番号1~17をコードするポリヌクレオチド)を有し得る。いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、1~4つのアミノ酸置換を有する点を除いて配列番号1~17のうち1種と同一であるペプチドをコードする。いくつかの場合には、置換は、1、2または9位のうち1つまたは複数においてである。いくつかの場合には、ペプチドは、2~30アミノ酸長である。いくつかの場合には、核酸は、調節配列(例えば、開始コドン、停止コドン、ポリAテール)を含み得る。いくつかの実施形態では、RNA/DNAがんワクチンは、ポリマーまたはリポソームナノキャリア(例えば、ナノ粒子)内で製剤化され得る。
【0203】
本明細書において記載されるペプチドのうち1種または複数の組換え発現のための核酸配列およびベクター(例えば、発現ベクター)を構築するための適した方法は、当業者に周知であり、例えば、その開示内容がその全文で参照により組み込まれるSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Edition vol. 1, 2 and 3.
Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, New York, USA, Nov. 1989に記載されている。核酸およびベクターを、例えば、細菌、酵母または哺乳動物細胞を含むさまざまな宿主細胞において、例えば、ペプチドを発現するために使用できる。核酸およびベクターをまた、例えば、以下に記載されるようなin vivoおよびex vivo法において使用できる。ペプチドをコードする配列は、プロモーター、調節エレメントまたは発現制御配列に作動可能に連結され得る。プロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントは、核酸によってコードされるペプチドの発現を指示し得る。エンハンサーは、時間、位置およびレベルの点で発現特異性を提供する。プロモーターとは異なり、エンハンサーは、プロモーターが存在するという条件で転写開始部位から可変距離に位置する場合に機能し得る。エンハンサーはまた、転写開始部位の下流に、または関連遺伝子のエクソン中に位置し得る。コード配列をプロモーターの制御下にもたらすために、ペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位を、プロモーターの下流(3’)1から約50ヌクレオチドの間に配置することが必要である。目的のプロモーターとして、これらに限定されないが、サイトメガロウイルスhCMV前初期遺伝子、SV40アデノウイルスの初期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーターおよび酵母α接合因子のプロモーター、アデノウイルスEIb最小プロモーターまたはチミジンキナーゼ最小プロモーターが挙げられる。
【0204】
ペプチドをコードする配列またはペプチドをコードする配列を含有するベクターは、シグナルペプチドをコードするリーダー配列を含有し得る。リーダー配列は、本明細書において記載されるペプチドのうち1種または複数をコードする配列の5’末端にあり得る。シグナルペプチドは、所与のペプチドのすぐN末端である場合も、リーダー配列が、ペプチドをコードする核酸配列とインフレームにあるという条件で1個または複数(例えば、2、3、4、6、8、10、15または20個)のアミノ酸によってそれから隔てられている場合もある。一般に、分泌に先立ってペプチドから切断される(もちろん、シグナルペプチドが、膜貫通タンパク質の挿入を指示する場合を除く)シグナルペプチドは、付着しているペプチドを、翻訳の間に宿主細胞小胞体(ER)の内腔中に入るように指示し、次いで、ペプチドが分泌小胞を介して宿主細胞の環境中に分泌される。有用なシグナルペプチドとして、例えば、サイトカインまたは増殖因子の天然リーダー配列、KDEL(Lys-Asp-Glu-Leu)または例えば、その開示内容が全文で参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,827,516号に記載される任意のシグナル配列が挙げられる。
【0205】
いくつかの実施形態では、ペプチドをコードする配列の5’末端は、非天然ATG「出発配列」を含み得る。すなわち、例えば、ATG配列は、ペプチドが適切に転写され、翻訳されることを確実にするように、ペプチドをコードする核酸に付加され得る。リーダー配列は、一般に、ATG出発配列を含むが、そうではない実施形態では、ATG配列がリーダー配列をコードする核酸の5’末端に付加され得る。
【0206】
ペプチドをコードする配列および発現ベクターを構築する適した方法は、当業者に周知であり、例えば、その開示内容が全文で参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Edition vol. 1, 2 and 3. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, New York, USA, Nov. 1989に記載されている。
【0207】
組換えベクターは、種々の方法を使用して細胞に導入でき、その方法は、少なくとも幾分かは、核酸が導入される細胞の種類に応じて変わり得る。例えば、細菌細胞を、電気穿孔または熱ショックなどの方法を使用して形質転換することができる。酵母細胞をトランスフェクトする方法として、例えば、スフェロプラスト技術または全細胞塩化リチウム酵母形質転換法(例えば、各々の開示内容がその全文で参照により本明細書において組み込まれる、米国特許第4,929,555号;Hinnen et al. (1978)
Proc. Nat. Acad. Sci. USA 75: 1929; Ito
et al. (1983) J. Bacteriol. 153: 163;米国特許第4,879,231号;およびSreekrishna et al. (1987) Gene 59: 115を参照のこと)が挙げられる。動物細胞のトランスフェクションは、例えば、リン酸カルシウム、電気穿孔、熱ショック、リポソームまたはFUGENE(登録商標)もしくはLIPOFECT AMINE(登録商標)などのトランスフェクション試薬を使用する、または溶液中で裸の核酸ベクターを細胞と接触させることによる(例えば、Sambrook et al.、前掲を参照のこと)ベクターの細胞への導入を特徴とし得る。
【0208】
本明細書において記載されるペプチドの小規模または大規模製造のために使用できる発現系として、これらに限定されないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E.coliおよびB.subtilis)、組換え酵母発現ベクターで形質転換された真菌(例えば、酵母(例えば、SaccharomycesおよびPichia)などの微生物、組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)が感染した昆虫細胞系、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)およびタバコモザイクウイルス(TMV))が感染した、もしくは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系または哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーターまたはワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、VERO、HeLa、MDCK、WI38およびNIH 3T3細胞)が挙げられる。また、宿主細胞として有用であるのは、プラスミドベクターでトランスフェクトされた、またはウイルスベクター(例えば、中でも、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、弱毒化ワクシニアウイルス、カナリアポックスウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクター)を用いて感染された、哺乳動物から直接得られた初代細胞または二次細胞である。
【0209】
本明細書において記載されるペプチドのいずれかの発現後、ペプチドを、培養細胞から、または細胞が培養された培地から、標準技術を使用して単離できる。タンパク質を単離する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、液体クロマトグラフィー(例えば、HPLC)、親和性クロマトグラフィー(例えば、金属キレート化またはイムノアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、沈殿または差次的可溶化が挙げられる。
【0210】
より小さいペプチド(例えば、200個未満(例えば、175個未満、150個未満、125個未満、100個未満、90個未満、80個未満、70個未満または60個未満)のアミノ酸を有するペプチド)は、FMOC固相合成などの標準的な化学的手段によって化学的に合成できる。
【0211】
本明細書において記載されるペプチドは、単離できるが、単離する必要はない。本明細書において記載されるペプチドのいずれかに適用されるような用語「単離された」とは、それに天然に付随する構成成分(例えば、タンパク質またはその他の天然に存在する生物学的分子もしくは有機分子)から分離または精製されているペプチド、その断片(または組成物については、高分子複合体)を指す。組換え分子(例えば、組換えペプチド)は常に「単離される」ということが理解される。通常、ペプチド(または断片または高分子複合体)は、調製物中の同一種類の全分子の、重量で少なくとも60%、70%、80%または90%、例えば、試料中の同一種類の全分子の少なくとも60%、70%、80%または90%を構成する場合に、単離される。例えば、本明細書において記載されたペプチドは、調製物または試料中の全タンパク質の、重量で少なくとも60%、70%、80%または90%を構成する場合に単離されていると考えられる。いくつかの実施形態では、調製物中の分子は、調製物中の同一種類の全分子の、重量で少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも99%からなる。
【0212】
同様に、本明細書において記載されるペプチドをコードする配列またはペプチドをコードする配列を含有するベクターもまた、単離できる。本明細書において記載されるペプチドをコードする配列またはベクターのいずれかに適用されるような用語「単離された」とは、それに天然に付随する構成成分(例えば、核酸、タンパク質またはその他の天然に存在する生物学的分子もしくは有機分子)から分離または精製されているペプチドをコードする配列またはベクター、その断片を指す。組換え分子(例えば、組換えベクターまたはペプチドをコードする配列)は常に、「単離される」ということが理解される。通常、ペプチドをコードする配列またはベクター(またはその断片)は、調製物中の同一種類の全分子の、重量で少なくとも60%、70%、80%または90%、例えば、試料中の同一種類の全分子の少なくとも60%、70%、80%または90%を構成する場合に、単離される。例えば、本明細書において記載されるペプチドをコードする配列またはベクターは、調製物または試料中の全核酸の、重量で、少なくとも60%、70%、80%または90%を構成する場合に単離されていると考えられる。いくつかの実施形態では、調製物中の分子は、調製物中の同一種類の全分子の、重量で少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも99%からなる。
【0213】
いくつかの実施形態では、単離されたペプチド、ペプチドをコードする配列またはベクターは、分子が活性(例えば、ペプチドのMHCクラスI分子またはMHCクラスII分子などのMHC分子と結合する能力またはベクターの細胞におけるペプチドの発現を支持する能力)を保持することを可能にする適当な条件下で凍結、凍結乾燥または固定化および保存できる。
【0214】
ペプチドの加工処理
本明細書において記載されるペプチドのいずれかの発現または合成後、ペプチドをさらに加工処理できる。さらなる加工処理は、ペプチドへの化学的もしくは酵素的修飾を含むことがあり、またはペプチドが修飾される場合には、加工処理は、既存の修飾の酵素的もしくは化学的変更もしくは両方を含み得る。ペプチドのさらなる加工処理は、これらに限定されないが、本明細書において記載される異種アミノ酸配列のいずれかなどの異種アミノ酸配列の付加(共有結合的または非共有結合的連結)を含み得る。酵素的処理は、ペプチドが修飾されることを可能にする条件下で、ペプチドを、例えば、1種または複数のプロテアーゼ、ホスファターゼまたはキナーゼと接触させることを含み得る。酵素的処理は、ペプチドを、ペプチドのグリコシル化可能な、またはグリコシル化を修飾可能な1種または複数の酵素(例えば、オリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはマンノシダーゼ)と接触させることを含み得る。
【0215】
加工処理は、例えば、ペプチドへの検出可能な標識の付加を含み得る。例えば、ペプチドは、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼ)、蛍光物質(例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン、フルオレセイン、ダンシルクロリド、アロフィコシアニン(APC)またはフィコエリトリン)、発光物質(例えば、ランタニドまたはそのキレート)、生物発光物質(例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリンまたはエクオリン)または放射性核種(例えば、3H、32P、33P、125Iまたは35S)を用いて検出可能に標識できる。
【0216】
加工処理はまた、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール部分などのポリアルキレングリコール部分)またはナノ粒子とのペプチドのカップリングを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、N末端であるペプチド上の部位でポリペプチドにカップリングされる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ポリマーがコンジュゲートされ得る内部ポリマーコンジュゲーション部位を提供する1個または複数の内部アミノ酸挿入を含有し得る。
【0217】
免疫応答を誘導する方法
本開示はまた、被験体において免疫応答を誘導するための種々の方法(例えば、ペプチドベースのワクチン接種、ナノ粒子ベースの免疫療法、APCベースの免疫療法、T細胞ベースの免疫療法、CART細胞ベースの免疫療法または誘導多能性幹細胞アプローチ)を提供する。被験体において免疫応答を誘導する方法は、例えば、被験体に、本明細書において記載される組成物のうち1種または複数(例えば、本明細書において記載されるペプチド(またはペプチドをコードする核酸配列を含有する発現ベクター)のいずれか(または本明細書において記載される1種または複数のペプチド(またはベクター)を含有する医薬組成物のいずれか))を投与するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書において記載される組成物は、ワクチンとして使用される。
【0218】
本明細書において記載されるペプチドのいずれかを使用して、本明細書において記載されるペプチドのうち1種または複数をコードする核酸発現系の使用によって免疫応答を刺激できる。すなわち、被験体において免疫応答を誘導する方法は、被験体に、本明細書において記載されるペプチドのうち1種または複数をコードする核酸配列を含有する発現ベクター(または発現ベクターを含有する医薬組成物)を投与するステップを含み得る。免疫応答は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、TH1応答、TH2応答または両方の種類の応答の組合せであり得る。
【0219】
上記の方法のいずれも、例えば、被験体においてがん(例えば、多発性骨髄腫などの形質細胞障害、またはBCMAおよび/もしくはTACIを発現する任意のその他のがん)を処置または予防する方法(それに対する予防法)であり得る。用語「予防する」、「予防すること」または「予防」が、所与の状態の所与の処置とともに本明細書において使用される場合、それらは、処置された被験体が、臨床上観察可能なレベルの状態を全く発生しない(例えば、被験体が、状態の1つまたは複数の症状を示さない、またはがんの場合には、被験体が検出可能なレベルのがんを発生しない)、または状態が、処置の非存在下で有すると予想されるものよりも、被験体においてより遅くおよび/もしくはより低い程度で(例えば、被験体におけるより少ない症状もしくはより少ない数のがん細胞)発生することを意味する。これらの用語は、被験体がどのような状態の態様も全く経験しない状況のみに限定されない。例えば、処置は、期間、例えば、状態の所与の症状発現(進行がん)をもたらすと予測されるがんの早期診断(例えば、被験体から得た試料における少ないがん細胞の検出)の期間にそれが施され、そうでなければ予測されるものよりも少ないおよび/または穏やかな症状の状態を被験体が経験することをもたらす場合に、状態を「予防した」と言われる。処置は、被験体ががんの軽度の顕性の症状のみを示す場合に、がん(例えば、多発性骨髄腫などの形質細胞障害)を「予防」し得る。「予防」は、そのように処置された被験体によって単一のがん細胞でさえ発生しなかったはずであるということは暗示しない。
【0220】
一般に、被験体に送達されるペプチドは、薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水)に懸濁され、経口的に、直腸に、または非経口的に、例えば、静脈内に、皮下に、筋肉内に、髄腔内に、腹腔内に、直腸内に、膣内に、鼻腔内に、胃内に、気管内に、または肺内に注射されて投与される。
【0221】
投与は、医薬組成物のボーラスの周期的注射によってである場合も、外部(例えば、IVバッグ)または内部(例えば、生体内分解性(bioerodable)インプラント、バイオ人工臓器または埋め込まれた試薬製造細胞のコロニー)であるリザーバーからの静脈内もしくは腹腔内投与による中断されていない、もしくは連続である場合もある。例えば、各々その全文が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,407,957号、同第5,798,113号および同第5,800,828号を参照のこと。
【0222】
治療用核酸の従来のおよび薬学的に許容される投与経路として、必ずしもこれらに限定されないが、筋肉内、皮下、皮内、経皮、静脈内、経直腸(例えば、浣腸、坐剤)、経口、胃内、鼻腔内(経鼻)および有効な吸入経路のその他の経路および投与のその他の非経口経路が挙げられる。投与の経路は、組み合わせてもよく、望ましい場合には、核酸分子および/または免疫応答に対する所望の効果に応じて調整してもよい。核酸を被験体に投与する方法は、ベクター媒介性遺伝子移入(例えば、ウイルス感染/トランスフェクションまたは種々のその他のタンパク質ベースのもしくは脂質ベースの遺伝子送達複合体)などの種々の周知の技術ならびに「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技術(電気穿孔、「遺伝子銃」送達および被験体または被験体の細胞へのポリヌクレオチドの導入に使用される種々のその他の技術など)を含み得る。
【0223】
一般に、必要なペプチドまたは核酸の投与量は、投与経路の選択、製剤の性質、被験体の病気の性質または重症度、被験体の免疫状態、被験体の大きさ、体重、表面積、年齢および性別、投与されているその他の薬物ならびに主治医である医療従事者の判断に応じて変わる。
【0224】
免疫応答を誘導するためのペプチドの適した投与量は、被験体の1kgあたり0.000001~10mgの試薬または抗原性/免疫原性組成物の範囲である。試薬の多様性および種々の投与経路の異なる効率を考慮して、必要とされる投与量の幅広い変動が予測されるべきである。例えば、鼻または直腸投与は、静脈内注射による投与よりも高い投与量を必要とし得る。これらの投与量レベルの変動は、当技術分野で十分に理解されるような最適化のための標準的な経験的なルーチンを使用して調整できる。投与は、単回である場合も複数回(例えば、2-、3-、4-、6-、8-、10-、20-、50-、100-、150-倍またはそれより多く)である場合もある。例えば、ペプチドを最初の免疫化として投与し、次いで、追加免疫化として続いて1回または複数回投与することができる。
【0225】
本明細書において記載される方法に関連して、被験体に投与される核酸の用量は、被験体において経時的に有益な治療応答を達成するのに、または症状を軽減するのに十分でなくてはならない。ただし、使用される投与量は、例えば、被験体または達成されるべき臨床目標に応じて変わる。適した投与量範囲は、単回投与量において担体1mlあたり最大約1μg、約1,000μg、約5,000μg、約10,000μg、約25,000μgまたは約50,000μgの核酸を提供するものである。
【0226】
治療有効性(例えば、被験体において免疫応答を誘導するための、1種もしくは複数のペプチドまたはペプチドをコードする核酸の有効性)を最適化するために、ペプチドまたは核酸を含有する組成物を、異なる投与レジメンでまず投与することができる。単位用量およびレジメンは、例えば、哺乳動物の種、その免疫状態、哺乳動物の体重を含む因子に応じて変わる。医薬組成物(例えば、1種もしくは複数のペプチドまたは本明細書において記載される1種もしくは複数のペプチドをコードする1種もしくは複数の核酸配列を含有する医薬組成物)の投薬の頻度は、医療従事者(例えば、医師または看護師)の技量および臨床判断の範囲内である。通常、投与レジメンは、最適投与パラメータを確立し得る臨床試験によって確立される。しかし、医療従事者は、被験体の年齢、健康、体重、性別および医学的状態に従ってこのような投与レジメンを変更し得る。
【0227】
いくつかの実施形態では、医薬組成物を被験体に、少なくとも2回(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15または20回またはそれより多く)投与できる。例えば、医薬組成物を被験体に、月に1回3ヶ月間、週に1回1ヶ月間、年に1回3年間、年に1回5年間、5年ごとに1回、10年ごとに1回または生涯にわたって3年ごとに1回投与できる。
【0228】
本明細書において定義されるように、ペプチドまたはペプチドをコードする核酸の「治療有効量」とは、処置された被験体において免疫応答をもたらすことが可能であるペプチドまたは核酸の量である。ペプチドの治療有効量(すなわち、有効投与量)は、被験体または試料重量1キログラムあたりミリグラム、マイクログラム、ナノグラムまたはピコグラム量の薬剤(例えば、1キログラムあたり約1ナノグラム~1キログラムあたり約500マイクログラム、1キログラムあたり約1マイクログラム~1キログラムあたり約500ミリグラム、1キログラムあたり約100マイクログラム~1キログラムあたり約5ミリグラムまたは1キログラムあたり約1マイクログラム~1キログラムあたり約50マイクログラム)を含む。核酸の治療有効量はまた、被験体または試料重量1キログラムあたりマイクログラム、ナノグラムまたはピコグラム量の薬剤(例えば、1キログラムあたり約1ナノグラム~1キログラムあたり約500マイクログラム、1キログラムあたり約1マイクログラム~1キログラムあたり約500マイクログラム、1キログラムあたり約100マイクログラム~1キログラムあたり約500マイクログラムまたは1キログラムあたり約1マイクログラム~1キログラムあたり約50マイクログラム)を含む。
【0229】
本明細書において定義されるように、ペプチドまたはペプチドをコードする核酸の「予防有効量」は、処置された被験体においてがん細胞(例えば、多発性骨髄腫)に対する免疫応答をもたらすことが可能であるペプチドまたは核酸の量であり、この免疫応答は、被験体においてがんの発生を防ぐことが可能である、またはがんを発生するもしくはがんを発生し続ける被験体の機会を実質的に低減できる。ペプチドの予防有効量(すなわち、有効投与量)は、被験体または試料重量1キログラムあたりミリグラム、マイクログラム、ナノグラムまたはピコグラム量の薬剤(例えば、1キログラムあたり約1ナノグラム~1キログラムあたり約500マイクログラム、1キログラムあたり約1マイクログラム~1キログラムあたり約500ミリグラム、1キログラムあたり約100マイクログラム~1キログラムあたり約5ミリグラムまたは1キログラムあたり約1マイクログラム~1キログラムあたり約50マイクログラム)を含む。核酸の予防有効量はまた、被験体または試料重量1キログラムあたりマイクログラム、ナノグラムまたはピコグラム量の薬剤(例えば、1キログラムあたり約1ナノグラム~1キログラムあたり約500マイクログラム、1キログラムあたり約1マイクログラム~1キログラムあたり約500マイクログラム、1キログラムあたり約100マイクログラム~1キログラムあたり約500マイクログラムまたは1キログラムあたり約1マイクログラム~1キログラムあたり約50マイクログラム)を含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、本方法はまた、組成物を被験体に投与した後に被験体において免疫応答が生じたか否かを決定することを含み得る。被験体において免疫応答が生じたか否かを決定する適した方法は、例えば被験体から得た生体試料におけるペプチドに特異的な抗体の存在を検出するための免疫アッセイの使用を含む。例えば、ペプチドを被験体に投与した後に、被験体から生体試料(例えば、血液試料)を得、ペプチドに特異的な抗体の存在について試験することができる。免疫応答はまた、試料における活性化されたT細胞の存在または量についてアッセイすることによって検出できる。このようなアッセイとして、例えば、増殖アッセイ、限界希釈アッセイ、細胞毒性アッセイ(例えば、リンホカイン-または51Cr-放出アッセイ)が挙げられる。
【0231】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載される方法(例えば、BCMAおよびTACI特異的応答を増大する治療薬、ワクチン、細胞療法、抗体ならびに/またはBCMAおよびTACI以外のいくつかの標的を標的化する治療アプローチ)はまた、被験体に、BCMAおよびTACI特異的応答を増強する種々の種類の化合物(例えば、サイトカインおよびケモカイン)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および/または抗TIM3抗体)、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40または抗GITR抗体)、免疫モジュレーター(例えば、レナリドミド、ポマリドミド、HDAC阻害剤、例えば、ACY241)および/またはアジュバントを投与することを含み得る。
【0232】
本方法はまた、被験体に、1種もしくは複数の化学療法剤、1つもしくは複数の形態の電離放射線または1種もしくは複数の免疫調節剤を投与するステップを含む。1つまたは複数の形態の電離放射線は、ガンマ照射、X照射またはベータ照射であり得る。1種または複数の化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、アドリアマイシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン(bisulfan)、ニトロソウレア(nitrosurea)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド、ベラムピル(verampil)、ポドフィロトキシン、タモキシフェン、タキソール、サリドマイド、レナリドミド、プロテオソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、hsp90阻害剤(例えば、テネスピンマイシン(tenespinmycin))、トランスプラチナム(transplatinum)、5-フルオロウラシル(flurouracil)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキサートまたは上記のもののいずれかの類似体からなる群より選択され得る。免疫調節剤として、例えば、種々のケモカインおよびサイトカイン、例えば、インターロイキン2(IL-2)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン12(IL-12)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはペプチドをコードする核酸を、免疫モジュレーター、例えば、Toll受容体リガンドまたはアジュバントとともに投与できる。
【0233】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤(例えば、ACY241)である。
【0234】
いくつかの実施形態では、1種または複数の追加の治療剤は、免疫調節剤、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)または免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)であり得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、B-Rafの阻害剤、EGFR阻害剤、MEKの阻害剤、ERKの阻害剤、K-Rasの阻害剤、c-Metの阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤、Aktの阻害剤、mTORの阻害剤、二重PI3K/mTOR阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)の阻害剤からなる群より選択される1種または複数の阻害剤を含み得る。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1)(IDO1)(例えば、エパカドスタット)の阻害剤である。
【0236】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、HER3の阻害剤、LSD1の阻害剤、MDM2の阻害剤、BCL2の阻害剤、CHK1の阻害剤、活性化ヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害剤およびエストロゲン受容体を選択的に分解する薬剤からなる群より選択される1種または複数の阻害剤を含み得る。
【0237】
いくつかの実施形態では、併用療法は、以下のうち1種または複数を含む:
(A)BCMAおよびTACI特異的応答を増強し得る化合物、例えば(1)サイトカインおよびケモカイン、(2)例えば、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3および/または抗TIM3抗体を含むチェックポイント阻害剤、(2)例えば、抗OX40および/または抗GITR抗体を含む免疫アゴニスト、(3)例えば、レナリドミド、ポマリドミド、HDAC阻害剤、例えば、ACY241を含む免疫モジュレーター、(4)アジュバント、
(B)本明細書において記載されるような任意の治療薬(例えば、ワクチン、細胞療法および/または抗体)を含むBCMAおよびTACI特異的応答を増大し得る治療薬またはその他の標的を標的化する独立したアプローチ(例えば、非BCMAまたは非TACIを標的化する療法)ならびに
(C)B-Rafの阻害剤、EGFR阻害剤、MEKの阻害剤、ERKの阻害剤、K-Rasの阻害剤、c-Metの阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤、Aktの阻害剤、mTORの阻害剤、二重PI3K/mTOR阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤ならびにイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)の阻害剤ならびに/またはインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1)(IDO1)(例えば、エパカドスタット)の阻害剤からなる群より選択される1種または複数の阻害剤などの追加の化合物。
【0238】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、トラベクテジン、nab-パクリタキセル、トレバナニブ、パゾパニブ、セジラニブ、パルボシクリブ、エベロリムス、フルオロピリミジン、IFL、レゴラフェニブ、レオリシン(Reolysin)、アリムタ、ジカディア、スーテント、テムシロリムス、アキシチニブ、エベロリムス、ソラフェニブ、ヴォトリエント、パゾパニブ、IMA-901、AGS-003、カボザンチニブ、ビンフルニン、Hsp90阻害剤、Ad-GM-CSF、テモゾロミド(Temazolomide)、IL-2、IFNa、ビンブラスチン、サロミド(Thalomid)、ダカルバジン、シクロホスファミド、レナリドミド、アザシチジン、レナリドミド、ボルテゾミド(bortezomid)、アムルビシン、カルフィルゾミブ、プララトレキサートおよびエンザスタウリンからなる群より選択される1種または複数の治療剤を含み得る。
【0239】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、アジュバント、TLRアゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)アルファ、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、CX3CL1を標的化する処置、CXCL9を標的化する処置、CXCL10を標的化する処置、CCL5を標的化する処置、LFA-1アゴニスト、ICAM1アゴニストおよびセレクチンアゴニストからなる群より選択される1種または複数の治療剤を含み得る。
【0240】
いくつかの実施形態では、カルボプラチン、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、ペメトレキセド、ゲムシタビン、FOLFOX、またはFOLFIRIが被験体に投与される。
【0241】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、PD-1、CTLA-4、LAG-3、BTLA、PD-L1、CD27、CD28、CD40、CD47、4-1BB(CD137)、CD154、TIGIT、TIM-3、GITR(CD357)、OX40、CD20、EGFRまたはCD319と特異的に結合する抗体(例えば、ヒト抗体)である。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗OX40抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体または抗GITR抗体である。
【0242】
本開示はまた、本明細書において記載されるような1種もしくは複数のペプチドをコードする核酸を含むウイルスまたは本明細書において記載されるような1種もしくは複数のペプチドを含むウイルス粒子を提供する。種々のウイルス、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルスなどを使用できる。これらのウイルスを使用して、ペプチドまたはそのペプチドをコードする核酸を被験体に送達して、免疫応答を誘導できる。同様に、本明細書において記載されるような1種もしくは複数のペプチドおよび/またはそのペプチドをコードする核酸を含むリポソームを使用して、ペプチドまたは核酸をそれを必要とする被験体に送達して、免疫応答を誘導することもできる。
【0243】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載される方法は、免疫応答、活性(例えば、サイトカイン、IFN-γ、IL-2またはTNF-αを産生する)または免疫細胞(例えば、T細胞、CD8+T細胞、細胞傷害性T細胞および/またはCD4+T細胞)の数を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍または50倍増大できる。いくつかの実施形態では、本明細書において記載される方法は、CD107a脱顆粒を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍または50倍増大できる。いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるような方法は、がん細胞を特異的に標的化する、または本明細書において記載されるペプチドを認識する、CD8+エフェクターT細胞の数(例えば、CD8+エフェクターT細胞の総数または例えば、CD45+細胞中のCD8+のパーセンテージ)を少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍または50倍増大できる。
【0244】
ナノ粒子
本開示は、本明細書において記載されるような1種もしくは複数のペプチド(例えば、配列番号1~17)または本明細書において記載されるような1種もしくは複数のポリヌクレオチド(例えば、配列番号1~17をコードする配列)を含むナノ粒子またはナノキャリアをさらに提供する。いくつかの場合には、ナノキャリアは、配列番号1~17のアミノ酸配列と同一であるが、1~4つのアミノ酸置換を有するペプチドを含む。いくつかの例では、置換は、1、2および9位のうち1つまたは複数においてである。このようなペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、mRNA、DNA)もまた、ナノキャリアに封入され得る。ナノ粒子またはナノキャリアを、それを必要とする被験体に投与して、免疫応答を誘導できる。
【0245】
ペプチドは、種々の付着機序を介してナノ粒子またはナノキャリアに付着され得る。この付着機序は、静電引力、共有結合カップリングまたは疎水性相互作用であり得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントとともに負荷され得る。アジュバントは、樹状細胞標的化分子、例えば、Toll様受容体アゴニスト、例えば、TLR7/TLR8の強力な合成アゴニストとして認識されるR-848またはTLR-9の免疫賦活性アゴニストである非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチドまたはTLR-4の免疫賦活性アゴニストであるモノホスホリル脂質Aまたはエンドソーム膜標的化剤、例えば、Endo-Porterペプチドであり得る。
【0246】
ナノ粒子を形成するポリマーは、任意の生分解性または非生分解性合成または天然ポリマーであり得る。好ましくは、ポリマーは、生分解性ポリマーである。有用な生分解性ポリマーの例として、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)が挙げられる。これらのポリマーは、確立された安全記録を有しており、ヒト被験体において使用できる(Jiang, et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 57(3): 391-410,
2005; Aguado and Lambert, Immunobiology, 184(2-3): 113-25, 1992; Bramwell, et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 57(9): 1247-65, 2005)。その他の両親媒性ポリ(アミノ酸)ナノ粒子、両親媒性多糖ナノ粒子またはポリイオンナノ粒子を、本明細書において開示されるワクチン組成物において使用できる(Akagi et al., Adv Polym Sci. 247: 31-64, 2012を参照のこと)。前記のポリマーは、単独で、物理的混合物として、またはコポリマーを形成することによって使用できる。特定の実施形態では、ナノ粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)-ブロック-ポリ(L-ヒスチジン)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(PLGA-PLH-PEG)トリブロックコポリマー、PLGA-PEGジブロックコポリマーおよびPLAの混合物によって形成される。これらのコポリマーは、標準技術を使用して合成され得る。例えば、コポリマーPLGA-PLH-PEGは、ブロックエンドグラフティング戦略を使用して合成され得る。
【0247】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」は、500nmから0.5nmの間の範囲の、例えば、50から500nmの間の直径を有する、100から400nmの間である直径を有する、または200から400nmの間である直径を有する粒子である。
【0248】
ナノ粒子ならびにナノ粒子を作製および使用する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、各々その全文で参照により本明細書に組み込まれる、US2016/0008451、US2010/0129439、US2018/0021258に記載されている。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、リポソームである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリマー粒子である。
【0249】
ナノ粒子を形成するポリマーは、任意の生分解性または非生分解性合成または天然ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、生分解性ポリマーである。有用な生分解性ポリマーの例として、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)が挙げられる。これらのポリマーは、確立された安全記録を有しており、ヒト被験体において使用できる(Jiang, et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 57(3): 391-410, 2005; Aguado and Lambert, Immunobiology, 184(2-3): 113-25, 1992; Bramwell, et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 57(9): 1247-65, 2005)。その他の両親媒性ポリ(アミノ酸)ナノ粒子、両親媒性多糖ナノ粒子またはポリイオンナノ粒子を、本明細書において開示される組成物において使用できる(Akagi et al., Adv Polym Sci. 247: 31-64, 2012を参照のこと)。
【0250】
ポリマーは、単独で、物理的混合物として、またはコポリマーを形成することによって使用できる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)-ブロック-ポリ(L-ヒスチジン)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(PLGA-PLH-PEG)トリブロックコポリマー、PLGA-PEGジブロックコポリマーおよびPLAの混合物によって形成される。これらのコポリマーは、標準技術を使用して合成され得る。例えば、コポリマーPLGA-PLH-PEGは、ブロックエンドグラフティング戦略を使用して合成され得る。線形構造(例えば、PLGA-PLH-PEG)は、ナノ粒子に、循環の延長および電荷媒介性標的化と適合するいくつかの特徴を提供し得る。
【0251】
いくつかの実施形態では、天然ポリマーを使用できる。天然ポリマーの例として、アルギネートおよびその他の多糖、コラーゲン、アルブミンおよびその他の親水性タンパク質、ゼインおよびその他のプロラミンおよび疎水性タンパク質、それらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。一般に、これらの材料は、in vivoにおける酵素的加水分解または水への曝露のいずれかによって、表面またはバルク侵食によって分解する。
【0252】
その他の適した生分解性ポリマーとして、これらに限定されないが、ポリ(ヒドロキシ酸)、例えば、乳酸およびグリコール酸のポリマーおよびコポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)およびポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)が挙げられる。
【0253】
ポリマーは、親水性または疎水性である生体接着性ポリマーであり得る。親水性ポリマーとして、CARBOPOL(商標)(Noveonによって製造された、高分子量、架橋、アクリル酸ベースのポリマー)、ポリカルボフィル、セルロースエステルおよびデキストランが挙げられる。
【0254】
これらのポリマーは、Sigma Chemical Co.、St. Louis、Mo.、Polysciences、Warrenton、Pa.、Aldrich、Milwaukee、Wis.、Fluka、Ronkonkoma、N.Y.およびBioRad、Richmond、Califなどの供給源から得ることができる、またはこれらもしくはその他の供給業者から得られたモノマーから標準技術を使用して合成できる。
【0255】
さまざまなポリマーおよびそれからポリマーマトリクスを形成する方法は、従来公知である。一般に、ポリマーマトリクスは、1種または複数のポリマーを含む。ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであり得る。ポリマーは、2つまたはそれより多くのモノマーを含むホモポリマーまたはコポリマーであり得る。配列の点で、コポリマーは、ランダム、ブロックであってもよく、またはランダムおよびブロック配列の組合せを含む。通常、本発明に従うポリマーは、有機ポリマーである。
【0256】
本明細書に記載される組成物において使用するのに適したポリマーの例として、これらに限定されないが、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えば、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフマレート、ポリアミド(例えば、ポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド-co-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例えば、ポリ(-ヒドロキシアルカノエート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレア、ポリスチレンおよびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEGコポリマーおよびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEGコポリマーが挙げられる。
【0257】
いくつかの実施形態では、本発明に従うポリマーとして、これらに限定されないが、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン));ポリ無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリレート;ポリアクリレート;およびポリシアノアクリレートを含む、21C.F.R.§177.2600のもと、米国食品医薬品局(FDA)によってヒトにおける使用のために承認されているポリマーが挙げられる。
【0258】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、親水性であり得る。例えば、ポリマーは、アニオン基(例えば、リン酸基、硫酸基、カルボン酸基)、カチオン基(例えば、第四級アミン基)または極性基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは疎水性であり得る。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノ粒子内に組み込まれる(例えば、カップリングされる)材料の性質に影響を有し得る。
【0259】
いくつかの実施形態では、ポリマーを、1つもしくは複数の部分および/または官能基を用いて修飾できる。本発明に従って、種々の部分または官能基を使用できる。いくつかの実施形態では、ポリマーを、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて、炭水化物を用いて、および/または多糖由来の非環式ポリアセタールを用いて修飾できる(Papisov, 2001, ACS Symposium Series, 786:301)。特定の実施形態は、Grefらの米国特許第5,543,158号またはVon Andrianらによる国際公開公報WO2009/051837の一般的な教示を使用して行うことができる。
【0260】
いくつかの実施形態では、ポリマーを、脂質または脂肪酸基を用いて修飾できる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸のうち1種または複数であり得る。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファリノール酸、ガンマリノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルカ酸のうち1種または複数であり得る。
【0261】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー、例えば、本明細書において「PLGA」とまとめて呼ばれる、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)ならびに「PGA」と本明細書において呼ばれるグリコール酸単位ならびに本明細書において「PLA」とまとめて呼ばれる乳酸単位、例えば、ポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチドおよびポリ-D,L-ラクチドを含むホモポリマーを含むポリエステルであり得る。いくつかの実施形態では、例示的ポリエステルとして、例えば、ポリヒドロキシ酸、PEGコポリマーならびにラクチドおよびグリコリドのコポリマー(例えば、PLA-PEGコポリマー、PGA-PEGコポリマー、PLGA-PEGコポリマーおよびそれらの誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリエステルとして、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)-PEGコポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[a-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]およびそれらの誘導体が挙げられる。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸比を変更することによって調整できる。いくつかの実施形態では、本発明に従って使用されるべきPLGAは、およそ85:15、およそ75:25、およそ60:40、およそ50:50、およそ40:60、およそ25:75またはおよそ15:85の乳酸:グリコール酸比を特徴とする。
【0262】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、1種または複数のアクリルポリマーであり得る。特定の実施形態では、アクリルポリマーとして、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレートおよび前記のポリマーのうち1種または複数を含む組合せが挙げられる。アクリルポリマーは、低含量の第四級アンモニウム基を有するアクリルおよびメタクリル酸エステルの十分に重合されたコポリマーを含み得る。
【0263】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオンポリマーであり得る。一般に、カチオンポリマーは、核酸(例えば、DNAまたはその誘導体)の負に荷電した鎖を縮合および/または保護できる。アミンを含有するポリマー、例えば、ポリ(リジン)(Zauner et al., 1998, Adv. Drug Del. Rev., 30:97; and Kabanov et al, 1995, Bioconjugate Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI; Boussif et al, 1995, Proc. Natl. Acad. Sci., USA,
1995, 92:7297)およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:4897;Tang et al., 1996, Bioconjugate Chem., 7:703; and Haensler et al, 1993, Bioconjugate Chem., 4:372)は、生理学的pHで正に荷電し、核酸とともにイオン対を形成し、種々の細胞系においてトランスフェクションを媒介する。
【0264】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオン側鎖を有する分解可能なポリエステルであり得る(Putnam et al, 1999, Macromolecules, 32:3658;Barrera et al, 1993, J. Am. Chem. Soc, 115: 11010;Kwon et al, 1989, Macromolecules, 22:3250;Lim et al, 1999, J. Am. Chem. Soc, 121:5633およびZhou et al.,
1990, Macromolecules, 23:3399)。これらのポリエステルの例として、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)(Barrera et al, 1993, J. Am. Chem. Soc, 115: 11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al, 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al, 1999, Macromolecules, 32:3658;およびLim et al, 1999, J. Am. Chem. Soc, 121 :5633)ならびにポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al, 1999, Macromolecules, 32:3658;およびLim et al, 1999, J. Am. Chem. Soc, 121 :5633)が挙げられる。
【0265】
これらのおよびその他のポリマーの特性ならびにそれらを調製する方法は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,123,727号、同5,804,178号、同5,770,417号、同5,736,372号、同5,716,404号、同6,095,148号、同5,837,752号、同5,902,599号、同5,696,175号、同5,514,378号、同5,512,600号、同5,399,665号、同5,019,379号、同5,010,167号、同4,806,621号、同4,638,045号および同4,946,929号、Wang et al, 2001, J. Am. Chem. Soc, 123:9480;Lim et al, 2001, J. Am. Chem. Soc, 123:2460; Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94;Langer, 1999, J. Control. Release, 62:7;およびUhrich et
al, 1999, Chem. Rev., 99:3181を参照のこと)。より一般的には、特定の適したポリマーを合成するための種々の方法は、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts, Ed. by Goethals, Pergamon Press, 1980;Principles
of Polymerization by Odian, John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2004;Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al, Prentice-Hall, 1981;Deming et al., 1997, Nature, 390:386に、ならびに米国特許第6,506,577号、同6,632,922号、同6,686,446号および同6,818,732号に記載されている。前記のものの各々は、その全文で参照により本明細書に組み込まれる。
【0266】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、線形または分岐ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、デンドリマーであり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、互いに実質的に架橋され得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、架橋を実質的に含まないものであり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーを、架橋ステップを起こすことなく本発明に従って使用できる。本発明の合成ナノ粒子は、前記のもののいずれかおよびその他のポリマーのブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ブレンド、混合物および/または付加物を含み得るということはさらに理解されるべきである。当業者ならば、本明細書において列挙されたポリマーは、本発明に従って使用できる例示的であるが包括的ではないポリマーの一覧を表すことを認識していると予想される。
【0267】
いくつかの実施形態では、合成ナノ粒子は、必要に応じて1種または複数の両親媒性実体を含み得る。いくつかの実施形態では、両親媒性実体は、安定性が増大した、均一性が改善された、または粘性が増大した合成ナノ粒子の製造を促進し得る。いくつかの実施形態では、両親媒性実体は、脂質膜(例えば、脂質二重層、脂質単層など)の内表面と会合している場合がある。当技術分野で公知の多数の両親媒性実体が、本発明に従う合成ナノ粒子の製造において使用するのに適している。このような両親媒性実体として、これらに限定されないが、ホスホグリセリド、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルコリン、コレステロール、コレステロールエステル、ジアシルグリセロール、ジアシルグリセロールスクシネート、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、ヘキサンデカノール、ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、表面活性脂肪酸、例えば、パルミチン酸またはオレイン酸、脂肪酸、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸アミド、ソルビタントリオレエート(Span(登録商標)85)グリココレート、ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20)、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、ポリソルベート60(Tween(登録商標)60)、ポリソルベート65(Tween(登録商標)65)、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、ポリソルベート85(Tween(登録商標)85)、ポリオキシエチレンモノステアレート、サーファクチン、ポロキサマー、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ソルビタントリオレエート、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシル-アミン、アセチルパルミテート、グリセロールリシノレート、ヘキサデシルステアレート、イソプロピルミリステート、チロキサポール、ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン、ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート、リン脂質、高い界面活性剤特性を有する合成および/または天然洗浄剤、デオキシコレート、シクロデキストリン、カオトロピック塩、イオン対合剤およびそれらの組合せが挙げられる。両親媒性実体構成成分は、種々の両親媒性実体の混合物であり得る。当業者ならば、これは、例示的であるが包括的ではない界面活性剤活性を有する物質の一覧であることを認識すると予想される。任意の両親媒性実体を、本発明に従って使用されるべき合成ナノ粒子の製造において使用できる。
【0268】
いくつかの実施形態では、合成ナノ粒子は、必要に応じて1種または複数の炭水化物を含み得る。炭水化物は、天然であっても、合成であってもよい。炭水化物は、誘導体化された天然炭水化物であり得る。特定の実施形態では、炭水化物は、これらに限定されないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セルビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸(glucoronic acid)、ガラクツロン酸(galactoronic acid)、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン(galatosamine)およびノイラミン酸(neuramic acid)を含む単糖または二糖を含む。特定の実施形態では、炭水化物は、これらに限定されないが、プルラン、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、グリコン(glycon)、アミロース、キトサン、Ν,Ο-カルボキシルメチルキトサン、アルギン(algin)およびアルギン酸、デンプン、キチン、イヌリン、コンミャク、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードランおよびキサンタンを含む多糖である。実施形態では、本発明の合成ナノ粒子は、炭水化物、例えば、多糖を含まない(または具体的に排除する)。特定の実施形態では、炭水化物は、炭水化物誘導体、例えば、これらに限定されないがマンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびラクチトールを含む糖アルコールを含み得る。
【0269】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、配列番号13、配列番号14または配列番号16に示される配列を含むペプチド(例えば、配列番号13)を含む。特定の例では、本明細書において開示されるナノ粒子を、以下に記載される別の療法(例えば、APCベースの療法、CTLベースの療法、ペプチドワクチン療法)と組み合わせて投与できる。いくつかの例では、本明細書において開示されるナノ粒子を、ヒト被験体に、免疫アゴニスト(例えば、抗OX40抗体、抗GITR抗体)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)および/またはレナリドミドと組み合わせて投与できる。
【0270】
抗原提示細胞(APC)ベースの免疫療法
被験体において免疫応答を誘導するためのex vivo戦略は、被験体から得られた適した抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、単球またはマクロファージ)を、本明細書において記載されるペプチドのいずれかと接触させることを含み得る。あるいは、細胞をペプチドのうち1種または複数をコードする核酸(例えば、発現ベクター)を用いてトランスフェクトし、必要に応じて、一定期間、ペプチドの発現を可能にする条件下で培養できる。トランスフェクション法は、細胞の種類および細胞にトランスフェクトされている核酸に応じて変わる。接触させ、トランスフェクションした後、細胞を被験体に戻す。
【0271】
細胞は、MHCクラスIまたはII分子を発現する様々な種類のいずれかであり得る。例えば、細胞は、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞(例えば、ヘルパーT細胞、CD4+細胞、CD8+細胞または細胞傷害性T細胞)またはB細胞を含み得る。
【0272】
したがって、本開示は、APC(例えば、樹状細胞)を含む組成物を提供し、APCは、その表面にペプチド配列を提示し、ペプチド配列は、BCMA抗原(配列番号18)およびTACI抗原(配列番号19)の一方または両方の少なくとも1種の主要組織適合複合体(MHC)クラスIまたはクラスIIペプチドエピトープを含む。いくつかの実施形態では、APCは樹状細胞である。いくつかの実施形態では、MHCペプチドエピトープは、MHCクラスIペプチドエピトープ(例えば、HLA-A2またはHLA-A24ペプチドエピトープ)である。いくつかの実施形態では、APCは、ペプチド配列を含む合成ペプチドへの曝露によってin vitroでペプチド配列を獲得する。
【0273】
ex vivo法のいずれかのいくつかの実施形態では、被験体から、またはこの被験体以外の同一種の(同種異系の)被験体から得られる細胞を、試薬(または免疫原性/抗原性組成物)と接触させ、被験体に投与することができる。
【0274】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも104、105、106、107、108または109個のAPC(例えば、樹状細胞)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、105、106、107、108、109または1010個未満のAPC(例えば、樹状細胞)を含む。
【0275】
a.抗原提示細胞の調製
被験体(例えば、多発性骨髄腫患者)への投与に適した抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞(DC)を、このような細胞が見られる任意の組織から単離できる、もしくは得ることができる、またはそうでなければ培養し、提供できる。APC(例えば、DC)は、例として、哺乳動物の骨髄または末梢血単核細胞(PBMC)において、哺乳動物の脾臓において、または哺乳動物の皮膚において見ることができる(すなわち、DCのものと同様の特定の品質を有するランゲルハンス細胞は、皮膚において見ることができる)。例えば、骨髄を哺乳動物から回収し、DCの成長を促進する培地で培養できる。この培地に、GM-CSF、IL-4および/またはその他のサイトカイン(例えば、TNF-α)、増殖因子および補充物質(supplement)が含まれてもよい。適当なサイトカインを含有する培地中で適した時間量(例えば、DCを拡大増殖させ、成熟DCに分化させるのに適した、例えば、4、6、8、10、12または14日)培養した後、DCのクラスターを、目的の抗原の存在下で(例えば、BCMAまたはTACIの1種もしくは複数のペプチドエピトープまたは配列番号13~17の少なくとも2種のペプチドの組合せの存在下で)培養し、標準技術を使用してがんワクチンにおいて使用するために回収する。抗原(例えば、単離されたまたは精製されたペプチド、または合成ペプチド)を培養物に、抗原あたり1μg/ml~50μg/mlの濃度、例えば、抗原あたり2、5、10、20、30または40μg/mlで添加できる。
【0276】
いくつかの実施形態では、被験体(例えば、ヒト)からAPCを単離する。白血球アフェレーシス(例えば、COBE Spectraアフェレーシスシステムを使用する)を使用して血液から単核細胞を単離する。組織培養フラスコにおいて、37℃で2時間インキュベートすることによって単核細胞が接着するようになることを可能にする。洗浄によって非接着細胞を除去する。接着細胞を、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(800ユニット/ml、臨床等級、Immunex、Seattle、Wash.)およびインターロイキン-4(IL-4)(500ユニット/ml、R&D Systems、Minneapolis、Minn.)を追加補充した培地で5日間培養する。5日目に、TNF-αをさらに3~4日間培養培地に添加する。8または9日目に、細胞を回収し、洗浄し、組織ローテーター上でペプチド抗原とともに16~20時間インキュベートする。ペプチド抗原は、培養物に約10μg/ml(抗原あたり)の濃度で添加する。
【0277】
当業者によって認識されるように、種々のその他の方法を使用してAPCを単離できる。DCは、それらが存在するすべての組織において少数で生じる、このため、DCの単離および濃縮が必要となる。反復密度勾配分離、蛍光活性化細胞選別技術、陽性選択、陰性選択またはそれらの組合せを必要とするいくつかの手順のいずれも、単離されたDCの濃縮集団を得るために日常的に使用される。DCを単離するためのこのような方法に関するガイダンスは、O’Doherty, U. et al., J. Exp. Med., 178: 1067-1078, 1993;Young and Steinman, J. Exp. Med., 171: 1315-1332, 1990;Freudenthal and Steinman, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 57: 7698-7702, 1990;Macatonia et al., Immunol., 67: 285-289, 1989;Markowicz and Engleman, J. Clin. Invest., 85: 955-961, 1990;Mehta-Damani et al., J. Immunol., 153: 996-1003, 1994;およびThomas et al., J. Immunol., 151: 6840-6852, 1993に見ることができる。ヒト末梢血からDCを単離するための1つの方法は、米国特許第5,643,786号に記載されている。
【0278】
本明細書に記載される方法に従って調製された樹状細胞は、抗原に対応するエピトープを腫瘍溶解物(例えば、神経腫瘍溶解物)に曝露された樹状細胞上に存在するエピトープよりも高い平均密度で提示する。抗原提示細胞上の1種または複数の抗原の相対密度は、間接的および直接的両方の手段によって決定できる。ナイーブ動物の一次免疫応答は、抗原提示細胞の抗原密度にだいたい比例する(Bullock et al., J. Immunol., 170: 1822-1829, 2003)。したがって、抗原提示細胞の2つの集団間の相対抗原密度は、動物を各集団を用いて免疫化し、BまたはT細胞を単離することおよび例えば、四量体アッセイ、ELISPOTまたは定量的PCRによって特異的抗原に対する特異的免疫応答をモニタリングすることによって推定できる。
【0279】
相対抗原密度はまた、直接的に測定できる。1つの方法では、抗原提示細胞を、MHC-抗原複合体と特異的に結合する抗体を用いて染色し、次いで、各細胞との抗体結合の相対量を決定するために細胞を解析する(例えば、Gonzalez et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102: 4824-4829, 2005を参照のこと)。抗体結合を解析するための例示的方法として、フローサイトメトリーおよび蛍光活性化細胞選別が挙げられる。解析の結果は、例えば、個々のMHC-抗原複合体についての染色について陽性である細胞の割合または細胞あたりの染色の平均相対量として報告され得る。いくつかの実施形態では、細胞あたりの染色の相対量のヒストグラムが作製され得る。
【0280】
いくつかの実施形態では、抗原密度は、例えば、質量分析によるMHCと結合しているペプチドの直接解析によって直接的に測定できる(例えば、Purcell and Gorman, Mol. Cell. Proteomics, 3: 193-208, 2004を参照のこと)。通常、MHCと結合しているペプチドは、いくつかの方法のうち1種によって単離する。1つの方法では、しばしば小型ペプチドについて濃縮するための限外濾過後に、抗原提示細胞の細胞溶解物を解析する(例えば、Falk et al., J. Exp. Med., 174: 425-434, 1991; Rotzxhke et al., Nature, 348: 252-254, 1990を参照のこと)。別の方法では、MHCと結合しているペプチドを、例えば、酸性溶出によって細胞表面から直接的に単離する(例えば、Storkus et al., J. Immunother., 14: 94-103, 1993; Storkus et al., J. Immunol., 151: 3719-27, 1993を参照のこと)。別の方法では、MHC-ペプチド複合体を、抗原提示細胞溶解物から免疫アフィニティー精製し、次いで、MHCと結合しているペプチドを酸処理によって溶出する(例えば、Falk et al., Nature, 351: 290-296を参照のこと)。MHCと結合しているペプチドの単離後、ペプチドを、しばしば分離ステップ(例えば、液体クロマトグラフィー、キャピラリーゲル電気泳動または二次元ゲル電気泳動)後に質量分析によって解析する。個々のペプチド抗原を、質量分析を使用して同定および定量化し、抗原提示細胞の集団中の各抗原の相対平均割合を決定できる。いくつかの方法では、抗原提示細胞の2つの集団中のペプチドの相対量を、1つの集団の安定なアイソトープ標識と、それに続く質量分析を使用して比較する(Lemmel et
al., Nat. Biotechnol., 22: 450-454, 2004を参照のこと)。
【0281】
b.抗原提示細胞の投与
APCベースのがんワクチンは、注射、注入、接種、直接外科的送達またはそれらの任意の組合せを含み得る任意の適した送達経路によって患者または試験動物に送達してもよい。いくつかの実施形態では、がんワクチンを三角筋領域または腋窩領域においてヒトに投与する。例えば、ワクチンを腋窩領域中に皮内注射として投与する。いくつかの実施形態では、ワクチンを静脈内に投与する。
【0282】
細胞を投与するための適当な担体は、慣用的な技術によって当業者によって選択され得る。例えば、薬学的担体は、緩衝食塩水溶液、例えば、細胞培養培地であってもよく、細胞生存度を保存するためのDMSOを含み得る。
【0283】
本発明の方法を達成するためにがんワクチンとして患者に投与するのに適当なAPCの量およびこのような投与の最も好都合な経路は、ワクチン自体の製剤化と同様に種々の因子に基づいたものであり得る。これらの因子の一部として、患者の身体的特徴(例えば、年齢、体重および性別)、腫瘍の物理的特徴(例えば、位置、大きさ、成長の速度および到達可能性)およびその他の治療方法論(例えば、化学療法およびビーム照射療法)が、処置レジメン全体と関連して実施されている程度が挙げられる。疾患状態を処置するために本発明の方法を実施することにおいて考慮すべき種々の因子にもかかわらず、哺乳動物は、単回投与で約0.05mL~約2mLの溶液(例えば、生理食塩水)中で約105~約108個のAPC(例えば、107個のAPC)を用いて投与され得る。上記のおよびその他の因子、例えば、腫瘍病理の重症度に応じて、さらなる投与を実施できる。一実施形態では、約106個のAPCの約1~約5回の投与が2週間間隔で実施される。
【0284】
DCワクチン接種に、その他の処置が付随する場合がある。例えば、DCワクチン接種を受けている患者はまた、化学療法、照射および/または外科的療法を同時に受けている場合がある。化学療法とともにDCワクチン接種を使用してがんを処置する方法は、Wheelerら、米国特許公開第2007/0020297号に記載されている。いくつかの実施形態では、DCワクチン接種を受けている患者は、がんのための化学療法、照射および/または外科的処置を既に受けていた。一実施形態では、YuおよびAkasaki、WO2005/037995に記載されるように、DCワクチン接種を受けている患者は、COX-2阻害剤を用いて処置される。
【0285】
T細胞ベースの免疫療法
免疫応答を刺激するためのex vivo法はまた、in vitroでT細胞(例えば、被験体から得られたリンパ球の集団中の)を、本明細書において記載されるペプチドのうち1種と結合しているMHC分子を発現する抗原提示細胞(APC)と、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞および/またはCD4+ヘルパーT細胞)を活性化するのに十分である時間量の間(かつ条件下で)接触させることを含み得る。したがって、本開示は、BCMA特異的および/またはTACI特異的T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞および/またはCD4+ヘルパーT細胞)を作製する、および/または増殖させる方法を提供する。本方法は、1種または複数のT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞および/またはCD4+ヘルパーT細胞)を、1種または複数の、本明細書において記載されるようなペプチドをパルスした抗原提示細胞と接触させることを含む。これらのT細胞は、細胞傷害性T細胞、例えば、メモリー細胞傷害性T細胞、エフェクター細胞傷害性T細胞またはCD4+ヘルパーT細胞であり得る。
【0286】
活性化T細胞を使用して、標的細胞を死滅させることができる。いくつかの実施形態では、本方法は、標的細胞を、1種または複数のBCMA特異的細胞傷害性T細胞と接触させることを含み、標的細胞は、BCMAを発現または過剰発現し、HLA-Aを発現する。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞を、1種または複数のTACI特異的細胞傷害性T細胞と接触させることを含み、標的細胞は、TACIを発現または過剰発現し、HLA-Aを発現する。
【0287】
いくつかの実施形態では、BCMAまたはTACI特異的T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞および/またはCD4+ヘルパーT細胞)を、本明細書において開示されるペプチド(例えば、配列番号13~17のうち1つまたは複数)、BCMA(例えば、配列番号13または14)またはTACI(配列番号16)ペプチドを提示するAPC、レナリドミド、免疫調節剤、チェックポイント阻害剤(例えば、抗LAG3抗体)または免疫アゴニスト(例えば、抗OX40、抗GITR)と組み合わせて投与する。いくつかの実施形態では、BCMAまたはTACI特異的CTLT細胞とともに投与される追加の治療剤は、PD-1、CTLA-4、LAG-3、BTLA、PD-L1、CD27、CD28、CD40、CD47、4-1BB(CD137)、CD154、TIGIT、TIM-3、GITR(CD357)、OX40、CD20、EGFRまたはCD319と特異的に結合する抗体(例えば、ヒト抗体)である。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗OX40抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体または抗GITR抗体である。いくつかの実施形態では、T細胞を、免疫アゴニスト、例えば、抗OX40または抗GITR抗体と組み合わせて投与する。
【0288】
活性化T細胞をまた、細胞が得られた被験体に再導入できる。いくつかの実施形態では、T細胞を、この被験体以外の同一種の(同種異系の)被験体から得ることができ、試薬(または免疫原性/抗原性組成物)と接触させ、この被験体に投与することができる。
【0289】
いくつかの実施形態では、T細胞は、患者由来末梢血単核細胞(PBMC)におけるin vitro誘導に由来する。以下のプロトコールを使用して、抗原特異的CTLをin vitroで患者由来PBMCから製造できる。樹状細胞を作製するために、PBMCから得たプラスチック接着細胞を、組換えヒトGM-CSFおよび組換えヒトIL-4を追加補充したAIM-V培地で加湿CO2(5%)インキュベーター中37℃で培養する。6日後、培養物中の未熟樹状細胞を、成熟のために組換えヒトTNF-αを用いて刺激する。次いで、8日目に成熟樹状細胞を回収し、PBSに、ペプチド(2μg/mL)とともに1mLあたり1×106個で再懸濁し、37℃で2時間インキュベートする。自己CD8+T細胞を磁性マイクロビーズ(Miltenyi Biotech、Auburn、Calif.)を使用してPBMCから濃縮する。CD8+T細胞(ウェルあたり2×106個)を、24ウェル組織培養プレートの各ウェルにおいて、2mL/ウェルの、5%ヒトAB血清および10ユニット/mLのrhIL-7(Cell Sciences)を追加補充したAIM-V培地中でウェルあたり2×105のペプチドがパルスされた樹状細胞と同時培養する。各再刺激の2日後、一定間隔で24時間後に約20U/mlのIL-2を添加する。7日目に、5%ヒトAB血清、rhIL-2およびrhIL-7(各10ユニット/mL)を追加補充したAIM-V培地中でリンパ球をペプチドをパルスした自己樹状細胞を用いて再刺激する。各再刺激の2日後、一定間隔で24時間後に約20U/mlのIL-2を添加する。3ラウンドの再刺激後、7日目に、細胞を回収し、CTLの活性を試験する。刺激されたCD8+培養細胞(CTL)を、2μg/ml Her-2、gp100、AIM-2、MAGE-1またはIL13受容体α2ペプチドを用いてパルスしたT2細胞(ヒトTAP欠損細胞系)とともに同時培養する。24時間インキュベートした後、培地中のIFN-γをELISAアッセイによって測定する。
【0290】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞ベースの免疫療法
本開示は、がんを処置するためのキメラ抗原受容体を発現するT細胞の養子移入のための方法をさらに提供する。CAR修飾されたT細胞を、任意の腫瘍関連抗原(例えば、BCMAおよび/またはTACI)を実質的に標的化するように操作できる。普通、T細胞を、患者の腫瘍細胞上の抗原に特異的に向けられたCARを発現するように遺伝子操作し、次いで、患者に、注入して戻す。
【0291】
CARの一般的な形態は、CD3-ゼータ膜貫通およびエンドドメインに融合された単鎖可変断片(scFv)の融合体である。scFVは、T細胞(例えば、BCMA特異的細胞傷害性T細胞またはTACI特異的細胞傷害性T細胞)の抗原特異的受容体または抗原と特異的に結合する抗体から導くことができる。
【0292】
いくつかの実施形態では、BCMA特異的細胞傷害性T細胞またはTACI特異的細胞傷害性T細胞中のT細胞受容体の配列を、例えば、配列決定によって決定する。BCMA特異的細胞傷害性T細胞および/またはTACI特異的細胞傷害性T細胞中のT細胞受容体の配列を使用して、CARを作製できる。
【0293】
いくつかの実施形態では、これらのT細胞を患者から集める。いくつかの実施形態では、これらのT細胞を誘導多能性幹細胞(iPSC)から得る。
【0294】
レトロウイルス、レンチウイルスまたはトランスポゾンなどのウイルスベクターを使用して、導入遺伝子(例えば、CAR)を宿主細胞ゲノムに組み込むことが多い。あるいは、プラスミドまたはmRNAなどの非組込みベクターを使用して、CAR遺伝子をT細胞に移入し、T細胞を適当な条件下でCARを発現するようにすることができる。
【0295】
誘導多能性幹細胞アプローチ
腫瘍特異的抗原を標的化する、多数のex vivo拡大増殖された活性化抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の投与を用いる養子T細胞療法は、選択された悪性疾患において耐久性のある寛解を誘導してきた。MHC分子とのペプチド複合体としてすでにプロセシングされ、提示されている(Johnson et al. 2009; Morgan et al. 2006)細胞内抗原を主に認識するTCRを利用することは、腫瘍選択性をさらに増強し得るが、外因性TCR遺伝子の導入は、移入された、ならびに内因性αおよびβ鎖のミスマッチをもたらし、重篤な自己免疫有害事象をもたらし得る(Bendle et al. 2010, Hinrichs et al. 2013)。対照的に、CAR-Tは、MHCに拘束されない様式で細胞表面上で発現された抗原を認識する。今日までに、B細胞抗原CD19を標的化する最も成功したCAR-T療法は、再発および化学療法抵抗性B細胞悪性疾患を有する患者において微小残存病変陰性完全奏効を達成している(Kochenderfer et al. 2010, Grupp et al. 2013)。それにもかかわらず、サイトカイン放出症候群を含む有害効果を最小化し、応答の耐久性を改善するように進行中の努力が向けられている(Brentjens et al. 2011, Kalos et al. 2011, Kochenderfer et al. 2012, Porter et al. 2011)。重要なことに、TCRベースのまたはCARベースの療法のために使用される長期拡大増殖の間継続的に腫瘍抗原に曝露されたCTLは、その増殖能を失い(「疲弊する」)、最終分化に伴いその機能活性を失う場合がある。
【0296】
これらの制限を克服するために、現在開発されている技術は、「誘導多能性幹細胞(iPSC)」からの十分に若返らされたCTLの利用である。これらのiPSCは、規定の転写因子の組の異所発現の際に成体体細胞に由来する特別な種類の多能性細胞である。重要なことに、腫瘍抗原特異的CTLは、抗原特異的CTLからのiPSC技術によって再プログラミングできる(Vizcardo et al. 2013, Ando et
al. 2015, Timmermans et al. 2009, Kennedy et al. 2012)。これらのiPSC-CTLは、機能的に若返らされており、それが由来する元のCTLよりも長いテロメア(1.5倍増大)およびより高い増殖能(5~50倍増大)を実証する(Nishimura et al. 2013)。この強力な再プログラミング治療アプローチは、抗原特異的がん免疫療法の有効性および耐久性を著しく増大する可能性を有する。したがって、本開示は、細胞傷害性T細胞を若返らせる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、増殖能を少なくとも5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90または100倍増大できる。
【0297】
腫瘍特異的CTLの活性化は、多数のがん免疫療法の主な目的である。がん患者からの腫瘍特異的T細胞の単離、in vitro調製(活性化および拡大増殖)およびこれらのT細胞の患者への輸注は、T細胞を用いる適応免疫療法の基本的なステップである。iPSC技術を使用して、養子細胞移入免疫療法(ACT)の有効性を改善できる。
【0298】
iPSCは、山中因子(Oct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycの組合せ)のレトロウイルストランスフェクションによって誘導された分化細胞(例えば、線維芽細胞、免疫細胞、T細胞、B細胞)から得ることができ、Flt-3リガンドおよびIL-7に加えて単層OP9-DL1細胞系でそれを培養することによってT細胞系統へ分化される。
【0299】
いくつかの実施形態では、iPSCをT細胞から作製できる。これらの細胞は、拡大増殖後、T細胞に再度分化される。ヒトTリンパ球は、iPSC作製のための細胞供給源として働き得る。末梢血単核細胞(PBMC)は、白血球アフェレーシスまたは静脈穿刺によって全血から分けることができ、次にIL-2および抗CD3抗体を用いる刺激によってCD3+T細胞を拡大増殖することができる。T細胞由来iPSC(TiPS)は、再プログラミング因子のレトロウイルス形質導入に曝露されると、活性化T細胞から作製できる。これらのT-iPSCは、その元のT細胞受容体(TCR)遺伝子再配列を保存し、そのため、それらをがんACT療法のための内因性腫瘍特異的TCR遺伝子を有する造血幹細胞の制限されない供給源として使用できる。
【0300】
したがって、いくつかの実施形態では、iPSCを抗原特異的細胞傷害性T細胞から作製する。これらの抗原特異的T細胞は、本明細書に記載されるような方法によって、例えば、1種または複数のT細胞を、1種または複数の、本明細書に記載されるようなアミノ酸配列(例えば、配列番号1~17)を含むペプチドをパルスした抗原提示細胞と接触させることによって作製する。T-iPSCは、その元のT細胞受容体(TCR)遺伝子再配列を保存するので、これらのT-iPSCがT細胞に分化した後、これらのT細胞は、がん細胞上のBCMAおよび/またはTACIを認識できる。
【0301】
いくつかの実施形態では、BCMAおよび/またはTACIを特異的に認識するCARをコードする核酸を、T-iPSCに導入できる。これらのT-iPSCがT細胞に分化した後、これらのT細胞は、がん細胞上のBCMAおよび/またはTACIを認識できる。
【0302】
いくつかの実施形態では、分化したT細胞を被験体に投与する。いくつかの実施形態では、T-iPSCを被験体に投与し、次いで、これらの細胞が被験体の身体中で細胞傷害性T細胞に分化する。
【0303】
被験体
被験体は、抗原に対して免疫応答が可能である任意の動物であり得る。用語「被験体」および「患者」は、本明細書を通じて同義的に使用され、本開示の方法に従う処置が提供される動物、ヒトまたは非ヒトを説明する。本発明によって獣医学的および非獣医学的適用が考慮される。ヒト患者は、成人ヒトまたは若年のヒト(例えば、18歳の年齢未満のヒト)であり得る。ヒトに加えて、被験体は、これらに限定されないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、フェレット、ネコ、イヌおよび霊長類を含む。例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、ウサギ類、ブタ(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ、イヌ、ネコ、ウシおよびその他の飼育動物、家畜および動物園の動物が含まれる。
【0304】
被験体は、がんを有するもの、がんを有すると疑われるもの、またはがんを発生するリスクにあるものであり得る。本明細書で使用される場合、用語「がん」とは、自律成長、すなわち、迅速に増殖する細胞成長を特徴とする異常な状態(state)または状態(condition)の能力を有する細胞を指す。この用語は、侵襲性の病理組織学的種類または段階に関わらず、すべての種類のがん性増殖または発がん性プロセス、転移組織または悪性に形質転換された細胞、組織もしくは臓器を含むものとする。用語「腫瘍」とは、本明細書で使用される場合、がん性細胞、例えば、がん性細胞の塊を指す。本明細書に記載される方法を使用して処置または診断され得るがんとして、例えば、肺、乳房、甲状腺、リンパ系、胃腸および泌尿生殖器に影響を及ぼす種々の臓器系の悪性疾患ならびにほとんどの結腸がん、腎細胞癌腫、前立腺がんおよび/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌腫、小腸のがんおよび食道のがんなどの悪性疾患を含む腺癌が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬剤は、被験体において癌腫を処置または診断するために設計される。用語「癌腫」は、技術分野で認識され、呼吸系癌腫、胃腸系癌腫、泌尿生殖器系癌腫、精巣癌腫、乳癌、前立腺癌腫、内分泌系癌腫および黒色腫を含む上皮または内分泌組織の悪性疾患を指す。いくつかの実施形態では、がんは、腎癌腫または黒色腫である。例示的癌腫として、子宮頸部(cervix)、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸および卵巣の組織から形成するものが挙げられる。この用語はまた、例えば、癌性および肉腫性組織から構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫も含む。「腺癌」とは、腺組織に由来する、または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫を指す。用語「肉腫」は、技術分野で認識され、間葉系派生物の悪性腫瘍を指す。いくつかの実施形態では、被験体は、血液がん、例えば、多発性骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫またはホジキンリンパ腫を有する。
【0305】
いくつかの実施形態では、被験体は、例えば、多発性骨髄腫、B細胞関連悪性疾患、形質細胞関連悪性疾患、前悪性疾患(例えば、MM、例えば、SMMまたはMGUSの前悪性疾患)を含む、BCMAを発現する/過剰発現する疾患またはTACIを発現する/過剰発現する疾患を有する。
【0306】
いくつかの実施形態では、被験体は、形質細胞障害を有する、それを有すると疑われる、またはそれを発生するリスクにあるものであり得る。本明細書で使用される場合、用語「形質細胞障害」とは、クローン性形質細胞(PC)増殖およびパラプロテイン(例えば、モノクローナル免疫グロブリンおよび/または遊離軽鎖(FLC))の過剰分泌を特徴とする疾患または障害の群を指す。
【0307】
形質細胞障害の限定されない例として、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫(MM)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、軽鎖アミロイドーシス(AL)、単発性形質細胞腫(例えば、骨の単発性形質細胞腫または髄外形質細胞腫)、多発ニューロパチー、臓器肥大、内分泌疾患単クローン性高ガンマグロブリン血症および皮膚変化症候群(POEMS)および重鎖病が挙げられる。その他の形質細胞障害として、例えば、腎意義の単クローン性高ガンマグロブリン血症(Monoclonal Gammopathy of Renal Significance)(MGRS)、MGUS関連神経障害およびその他の異常タンパク質性神経障害が挙げられる。
【0308】
MGUS、くすぶり型MM(SMM)および症候性MMは、同一疾患のスペクトラムを表す。症候性または活性多発性骨髄腫は、任意のレベルの単クローン性タンパク質およびCRAB基準(形質細胞クローンと関連すると思われる高カルシウム血症、腎不全、貧血または骨病変)のいずれかの形態の骨髄腫を決定づける(defyning)事象からなる末端臓器損傷の存在または悪性疾患の新規バイオマーカーのいずれか(60%と等しいまたはそれより多いクローン性形質細胞によるBM関与;100と等しいまたはそれを超える未関与のFLCに対する関与のFLCの割合および/またはMRIでの2つ以上の骨病変の存在(Kyle R.A. et al., Leukemia, 23: 3-9 (2009); Rajkumar V.S. et al, Lancet Oncology, 15: 12, 2014)に加えて、クローン性形質細胞による10%より多いBM浸潤および/または生検によって証明された形質細胞腫を特徴とする。MMは、骨髄(BM)の過度の浸潤および場合により、BM空間の内側または外側の悪性形質細胞の別個のクラスターとしての形質細胞腫の形成を特徴的に含む形質細胞悪性疾患である(Kyle R.A. et al., N. Engl. J. Med., 351: 1860-73 (2004))。この疾患の結果は、多数であり、複数の臓器系が関与する。BMおよび正常な形質細胞機能の破壊は、貧血、白血球減少症、低ガンマグロブリン血症および血小板減少症につながり、これは、さまざまに疲労、感染に対する感受性の増大、および一般的ではないが、出血への傾向の増大をもたらす。骨における疾患関与は、溶骨性病変を作出し、骨疼痛をもたらし、高カルシウム血症と関連し得る(Kyle R.A. et al., Blood, 111: 2962-72 (2008))。
【0309】
くすぶり型MM(SMM)は、骨髄中に30g/Lもしくはそれより高い血清免疫グロブリン(Ig)GもしくはIgAモノクローナルタンパク質および/または10%もしくはそれより多い形質細胞を有するが、末端臓器損傷または悪性疾患を決定づける(defynying)バイオマーカーの証拠がないことを特徴とする(Rajkumar et
al、Lancet、2014)。SMMの自然経過の研究は、2種の異なる種類:進化性くすぶり型MMおよび非進化性くすぶり型MMがあることを示唆する(Dimopoulos M. et al., Leukemia, 23(9): 1545-56
(2009))。進化性SMMは、Mタンパク質の進行性の増大および1.3年という活性多発性骨髄腫への無増悪期間(TTP)のより短いメジアンを特徴とする。非進化性SMMは、3.9年のメジアンTTPを有する活性多発性骨髄腫への進行の時間で急激に変化し得るより安定なMタンパク質を有する。
【0310】
意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)は、標準実験室血液検査の際に異常な免疫グロブリンタンパク質(パラプロテインとして公知)が血液中で見られる状態である。MGUSは、多発性骨髄腫および同様の疾患と似ているが、抗体のレベルはより低く、骨髄中の形質細胞(抗体を分泌する白血球)の数は少なく、症状または大きな問題がない。
【0311】
いくつかの実施形態では、被験体は、多発性骨髄腫、SMMまたはMGUSを有する。いくつかの実施形態では、被験体は、多発性骨髄腫からの寛解にあるものであり得る。いくつかの実施形態では、被験体は、前悪性疾患(例えば、MM、例えば、SMMまたはMGUSの前悪性疾患)を有する。
【0312】
いくつかの実施形態では、被験体は、BCMAまたはTACIを発現または過剰発現するがんの種類を有し得る。したがって、本方法は、1種または複数のペプチド(または核酸)を被験体に投与する前に、被験体のがん(例えば、多発性骨髄腫)の1個または複数のがん細胞がBCMAまたはTACIを発現または過剰発現するか否かを決定するステップを含み得る。これらのタンパク質の発現は、mRNAおよびタンパク質発現の両方を含む。細胞においてタンパク質およびmRNA発現を検出する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、タンパク質を検出するための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンおよびドットブロッティング技術または免疫組織化学技術およびmRNAを検出するための逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)またはノーザンブロッティング技術を含む。いくつかの実施形態では、がん細胞におけるBCMAまたはTACIの発現の平均レベルは、正常な細胞(例えば、同一被験体における正常な組織細胞、同一被験体における正常な形質細胞または健常な被験体における組織細胞もしくは形質細胞)におけるBCMAまたはTACIの発現の平均レベルよりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%高い。いくつかの実施形態では、がん細胞におけるBCMAまたはTACIの発現の平均レベルは、正常な細胞(例えば、同一被験体における正常な組織細胞、同一被験体における正常な形質細胞または健常な被験体における組織細胞もしくは形質細胞)におけるBCMAまたはTACIの発現の平均レベルよりも少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、20倍または50倍高い。
【0313】
被験体は、がん(例えば、多発性骨髄腫)を有し得る、有すると疑われ得る、または発生するリスクにあり得る。「がんを有すると疑われる」被験体は、がんの1つまたは複数の症状を有するものである。がんの症状は、当業者には周知であり、一般的に、制限するものではないが、疼痛、体重減少、脱力、過度の疲労、摂食困難、食欲喪失、慢性の咳、息切れの悪化、喀血、血尿、血便、悪心、嘔吐、腹部膨満(abdominal fullness)、鼓脹、腹腔中の流体、膣出血、便秘、腹部膨隆(abdominal distension)、結腸穿孔、急性腹膜炎(感染、発熱、疼痛)、疼痛、吐血、大量の発汗、発熱、高血圧、貧血、下痢、黄疸、めまい、悪寒、筋痙攣、嚥下困難などを含む。多発性骨髄腫の症状として、具体的に、例えば、骨疼痛(例えば、背中または肋骨における)、血液中の高レベルのカルシウム、過度のかわきまたは排尿、便秘、悪心、食欲喪失、錯乱、脚の脱力またはしびれ、体重減少または反復感染を含む。
【0314】
本明細書で使用される場合、「がんを発生するリスクにある」被験体は、がんを発生する素因、すなわち、がんを発生する遺伝的素因、例えば、腫瘍抑制遺伝子における変異(例えば、BRCAl、p53、RBまたはAPCにおける変異)を有する、がんをもたらし得る条件に曝露されている、または条件によって現在影響を受けている被験体である。したがって、被験体はまた、被験体が変異原性または発がん性レベルの特定の化合物(例えば、タバコ煙中の発がん性化合物、例えば、アクロレイン、4-アミノビフェニル、芳香族アミン、ベンゼン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、ポロニウム-210(ラドン)、ウレタンまたは塩化ビニル)に曝露されている場合に「がんを発生するリスクにある」ものであり得る。被験体は、被験体が、例えば、高線量の紫外線またはX照射に曝露されている、または腫瘍を引き起こす/腫瘍と関連するウイルス、例えば、パピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、B型肝炎ウイルスもしくはヒトT細胞白血病リンパ腫ウイルスに曝露される(例えば、感染する)場合に、「がんを発生するリスクに」あり得る。さらに、被験体は、被験体が炎症(例えば、慢性炎症)に罹患している場合に、「がんを発生するリスクに」あり得る。被験体は、例えば、被験体が意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)を有する場合に多発性骨髄腫を発生するリスクにあり得る。したがって、「がんを有すると疑われる」または「がんを発生するリスクにある」被験体は、目的の種内のすべての被験体ではないということが理解される。
【0315】
いくつかの実施形態では、本方法はまた、被験体ががんを有するか否かを決定するステップを含み得る。このような決定のための適した方法は、被験体において検出されるべきがんの種類に応じて変わるが、当技術分野で公知である。このような方法は、定性的または定量的であり得る。例えば、医療従事者は、被験体が、多発性骨髄腫の2種またはそれより多く(例えば、3、4、5または6種またはそれより多い)症状、例えば、本明細書に記載されるもののいずれかを示す場合に、多発性骨髄腫を有すると被験体を診断できる。被験体はまた、血液カルシウムレベル、白血球または赤血球細胞カウントまたは被験体の尿中のタンパク質の量を測定することによって多発性骨髄腫を有すると決定され得る。
【0316】
MHC分子多量体
本開示はまた、(i)本明細書において記載されるペプチドのいずれかのうち1種または複数および(ii)主要組織適合複合体(MHC)分子多量体を含む組成物を特徴とする。多量体は、2つまたはそれより多く(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多く)のMHC分子全体またはMHC分子のペプチド結合領域を含有する。1つまたは複数のペプチドが、MHC分子多量体と会合している(例えば、共有結合によって、または非共有結合によって結合している)場合がある。
【0317】
多量体のMHC分子は、MHCクラスI分子(例えば、HLA-A2分子)またはMHCクラスII分子であり得る。MHC分子は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、非ヒト霊長類、ヒトまたは本明細書に記載される任意のその他の哺乳動物)MHC分子であり得る。
【0318】
多量体中の2つまたはそれより多くのMHC分子(またはMHC分子のペプチド結合領域)は、同一のMHC分子に由来するものであっても、異なるMHC分子に由来するものであってもよい。例えば、MHC分子多量体は、5つのMHC分子を含有することができ、そのうち3つは、同一MHC分子であり、そのうち2つは、最初の3つとは異なっている。別の例では、多量体の各MHC分子は異なっている。MHC分子の少なくとも1つは、ペプチドのうち少なくとも1つと結合し得る。
【0319】
いくつかの実施形態では、上記の組成物は、本明細書において記載されるペプチドのいずれかのうち少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または15またはそれより多い)を含有し得る。
【0320】
組成物はまた、検出可能な標識と会合している場合がある。例えば、多量体のMHC分子のうち1つまたは複数は、検出可能な標識と共有結合によって、または非共有結合によって結合している場合がある。適した検出可能な標識(例えば、酵素、蛍光物質、発光物質、生体発光物質または放射性核種)ならびに検出可能な標識をペプチドまたはMHC分子とつなげる方法も提供される。
【0321】
MHC多量体組成物は、以下のように本明細書において記載されたペプチドを使用して作製できる:HLA分子と結合するペプチドを、対応するHLA重鎖およびβ2ミクログロブリンの存在下で再フォールディングして、三分子複合体を作製する。次いで、複合体を以前に重鎖に操作された部位で重鎖のカルボキシル末端でビオチン化する。次いで、ストレプトアビジンの添加によって多量体形成を誘導する。
【0322】
T細胞受容体は、さまざまなその他のペプチド-MHC複合体の中でも標的細胞上の特異的ペプチド-MHC複合体を認識可能であるので、本明細書に記載されるMHC多量体組成物を使用して、例えば、無関係のT細胞の集団において抗原特異的T細胞を検出できる。このようなアッセイのために、多量体は、一般に検出可能に標識される。
【0323】
例えば、免疫原への曝露後に抗原特異的CTLの存在について末梢血単核細胞を評価するアッセイにおいて、多量体MHC分子/ペプチド複合体を使用できる。MHC多量体複合体を使用して、抗原特異的CTLを直接的に可視化し(例えば、Ogg et al., Science 279: 2103-2106, 1998; and Altman et al., Science 174: 94-96, 1996を参照のこと)、末梢血単核細胞の試料中の抗原特異的CTL集団の頻度を決定できる。いくつかの実施形態では、MHC多量体を多量体化するために使用される検出可能に標識されたストレプトアビジンを使用して、多量体のMHC分子/ペプチド複合体と結合するT細胞を標識できる。これを行うために、多量体を用いて処理された細胞を、例えば、標識(例えば、ビオチンにコンジュゲートしているフルオロフォア)に曝露する。次いで、例えば、フローサイトメトリーを使用して細胞を容易に単離または検出できる。
【0324】
本明細書に記載されるペプチド(およびその医薬組成物)、組成物を含有するMHC多量体、キットおよび製造品を、種々の方法で使用できる。例えば、ペプチドを使用して、(i)被験体(例えば、がんを有する被験体)において免疫応答を誘導できる、(ii)培養においてT細胞を活性化できる、および/または(iii)多発性骨髄腫などのがんを処置もしくはイベント予防(event prevent)できる。本明細書において記載されるように、組成物を含有するMHC多量体を使用して、例えば、無関係のT細胞集団において抗原特異的T細胞を検出できる。
【0325】
被験体において抗体を製造する方法
免疫原(例えば、本明細書において記載されるペプチドのいずれかのうち1つまたは複数)に対して特異的な抗体を製造する方法は、当技術分野で公知である。例えば、本明細書において記載されたペプチドに対して特異的な抗体または抗体断片は、例えば、動物を使用する免疫化によって、またはファージディスプレイなどのin vitro法によって作製できる。本明細書において記載されたペプチドのすべてまたは一部を使用して、抗体または抗体断片を作製できる。
【0326】
ペプチドを使用して、適した被験体、(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたはヒトなどのその他の哺乳動物)をペプチドを用いて免疫化することによって抗体を調製できる。適当な免疫原性調製物は、例えば、本明細書に記載される組成物のいずれかを含有し得る。調製物は、アジュバント、例えば、フロイント完全または不完全アジュバント、ミョウバン、RIBIまたは同様の免疫賦活剤をさらに含み得る。アジュバントとしてまた、例えば、コレラ毒素(CT)、E.coli熱不安定性毒素(LT)、変異体CT(MCT)(Yamamoto et al. (1997) J. Exp. Med. 185: 1203-1210)および変異体E.coli熱不安定性毒素(MLT)(Di Tommaso et al. (1996) Infect. Immunity 64: 974-979)が挙げられる。MCTおよびMLTは、親分子のものに対して、アジュバント活性を実質的に損なうことなく毒性を実質的に減少させる点変異を含有する。免疫原性ペプチド調製物(例えば、本明細書に記載される組成物のいずれか)を用いる適した被験体の免疫化は、ポリクローナル抗ペプチド抗体応答を誘導する。いくつかの実施形態では、toll様受容体-3リガンド(例えば、ポリICLC)、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンガンマ(IFNγ)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を、被験体に投与して、例えば、免疫応答をブーストできる。
【0327】
用語抗体とは、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、ペプチド(例えば、本明細書において記載されたペプチド)と特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子)を指す。本明細書において記載されたペプチドと特異的に結合する抗体は、ペプチドと結合するが、試料中のその他の分子とは実質的に結合しない抗体である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例として、例えば、F(ab)断片、F(ab’)2断片または本明細書に記載される任意のその他の抗体断片が挙げられる。
【0328】
本明細書に記載される方法によって製造された単離された抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1~17のいずれかのアミノ酸配列内の、またはそれと重複するエピトープと選択的に結合できる。抗体はまた、配列番号1~17のいずれかのアミノ酸配列内の、またはそれと重複するエピトープと結合する抗体の結合を交差遮断するものであり得る。通常、抗体のエピトープとの結合は、抗体が10-6M未満のKDで結合する場合に選択的と考えられる。必要に応じて、結合条件を変更することによって、選択的結合に実質的に影響を及ぼすことなく非特異的結合を低減できる。「交差遮断する」抗体または「交差遮断抗体」とは、エピトープ(例えば、配列番号1~17のいずれか内に含有される、またはそれと重複するもの)に結合されると、第2の抗体の、ペプチドと結合する能力を低減する、または排除する(第2の抗体の、第1の抗体の非存在下で生じるペプチドとの結合に対して)第1の抗体を指す。本明細書に記載される方法によって製造される抗体(例えば、本明細書において記載されるペプチドのうち1種または複数に対して特異的な抗体)を使用して、例えば、BCMAまたはTACIを発現するがん細胞を検出でき、したがって、本明細書に記載される多数の例示的方法において有用であるということが理解される。
【0329】
免疫学的試験
ワクチン接種された被験体の抗原特異的細胞性免疫応答を、いくつかの異なるアッセイ、例えば、四量体アッセイ、ELISPOTおよび定量的PCRによってモニタリングできる。これらの方法およびプロトコールは、例えば、Current Protocols in Immunology, Coligan, J. et al., Eds., (John Wiley & Sons, Inc.; New York, N.Y.)に記載されている。
【0330】
四量体アッセイを使用して、血液試料内の所与の抗原に対して特異的であるT細胞を検出および定量化できる。ペプチドと複合体形成された組換えMHC分子から構成される四量体を使用して、抗原特異的T細胞の集団を同定できる。抗原に対して特異的なT細胞を検出するために、これらの抗原から得たペプチドを含有する、蛍光色素で標識された特異的ペプチド四量体複合体(例えば、フィコエリトリン(PE)-tHLA)は、Beckman Coulter(San Diego、Calif.)によって合成され、提供されている。特異的CTLクローンCD8細胞を、105個細胞/50μl FACS緩衝液(リン酸緩衝液および1%不活性化FCS緩衝液)で再懸濁する。細胞を1μl tHLAとともに室温で30分間インキュベートし、インキュベーションを10μlの抗CD8 mAb(Becton Dickinson、San Jose、Calif.)とともに4℃で30分間継続する。細胞を2mlの冷FACS緩衝液で2回洗浄し、その後、FACS(Becton Dickinson)によって解析する。
【0331】
例えば、ワクチン接種された患者中の細胞が、抗原に応じてサイトカインを分泌するか否かを決定し、それによって、抗原特異的応答が誘発されているか否かを実証するために、ELISPOTアッセイを使用して、サイトカイン分泌細胞を検出できる。ELISPOTアッセイキットは、R & D Systems(Minneapolis、Minn.)から供給されており、製造業者の指示に記載されたように実施される。ワクチン接種の前後で得たレスポンダー(R)の1×105個の患者のPBMC細胞を、捕獲Abでコーティングされたニトロセルロース膜インサートを備えた96ウェルプレートにプレーティングする。スティミュレーター(S)細胞(抗原がパルスされたTAP欠損T2細胞)を、1:1のR:S比で添加する。24時間インキュベートした後、プレートを4回洗浄することによって、細胞を除去する。検出Abを各ウェルに添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、洗浄ステップを反復する。ストレプトアビジン-APとともに2時間インキュベートした後、プレートを洗浄する。BCIP/NBT色素原のアリコート(100μl)を各ウェルに添加して、スポットを発色させる。60分後、水で洗浄することによって反応を停止する。コンピュータ支援画像解析(Cellular Technology Ltd、Cleveland、Ohio)を用いて、スポットをスキャンし、カウントする。実験値が、両側ウィルコクソン順位和検定によって決定されるような非パルスT2細胞に対するスポットの平均数(バックグラウンド値)から有意に異なる場合には、実験値からバックグラウンド値を差し引く。
【0332】
定量的PCRは、免疫応答を評価するための別の手段である。定量的PCRによって患者におけるIFN-γ産生を調べるために、患者のワクチン接種前およびワクチン接種後試料から得た低温保存PBMCおよび自己樹状細胞を10%患者血清を有するRPMI DC培養培地中で解凍し、洗浄し、カウントする。PBMCを、24ウェルプレートにおいて2mlの培地中3×106個PBMCでプレーティングし、樹状細胞を1×106個/mlでプレーティングし、24ウェルプレート中の各ウェルにおいて2ml中の10μg/ml腫瘍ペプチドを用いて24時間パルスする。樹状細胞を集め、洗浄し、カウントし、1×106個/mlに希釈し、PBMCとともにウェルに3×105個(すなわち、300μlの溶液)(DC:PBMC=1:10)を添加する。3~4日毎に2.3μlのIL-2(300IU/mL)を添加し、培養の開始後10日目から13日目の間に細胞を回収する。次いで、回収した細胞を、腫瘍細胞または10μg/mlの腫瘍ペプチドでパルスした自己PBMCを用いて、37℃で4時間刺激する。11~13日目に、培養物を回収し、2回洗浄し、次いで、4つの異なるウェルにわけ、対照(標的を伴わない)のために使用する2つのウェルおよび別の2つのウェルのCTLを、腫瘍細胞が入手可能である場合には腫瘍細胞とともに(1:1)同時培養する。腫瘍細胞が入手可能ではない場合には、CTLに10μg/mlの腫瘍溶解物を添加する。4時間刺激した後、細胞を集め、RNAを抽出し、サーモサイクラー/蛍光カメラシステムを用いてIFN-γおよびCD8 mRNA発現を評価する。PCR増幅効率は、自然対数進行をたどり、線形回帰解析によって、0.99超の相関係数が実証される。実験的解析に基づいて、1サイクルの相違は、mRNA量で2倍の相違であると解釈され、CD8によって正規化されたIFN-γ量が決定される。ワクチン前IFN-γに対するワクチン後における>1.5倍の増大は、陽性I型ワクチン応答性の確立された標準である。
【0333】
療法を選択する方法
がん(例えば、多発性骨髄腫などの形質細胞障害またはBCMAもしくはTACIが発現もしくは過剰発現される任意のがん)を有する被験体のために療法を選択する方法は、必要に応じて、被験体の1個または複数のがん細胞が、BCMAまたはTACIを発現または過剰発現するか否かを決定するステップ、ならびに1つまたは複数の細胞が、BCMAまたはTACIを発現する場合には、被験体のための療法として、アミノ酸配列が、(i)被験体において免疫応答を誘導可能である、(ii)MHC分子と結合可能である、および(iii)T細胞上のT細胞受容体によってMHC分子に関連して認識されることが可能であるという条件で、本明細書において記載されるような少なくとも1種のペプチド(配列番号1~17のうち任意の1種のアミノ酸配列を含むペプチド、配列番号1~17に対して少なくとも50%、60%、70%、80%または90%同一である、または配列番号1~17のいずれかのアミノ酸配列の4つ以下の置換を有するアミノ酸配列を含むペプチド)を含有する組成物を選択するステップを含む。
【0334】
いくつかの実施形態では、本方法は、被験体の1個または複数のがん細胞が、MHC分子、例えば、MHCクラスI分子(例えば、HLA-A2)またはMHCクラスII分子を発現するか否かを決定するステップをさらに含む。
【0335】
被験体のがんの1個または複数の細胞(例えば、形質細胞)が、BCMAおよびTACIの両方を発現または過剰発現する場合に、適したペプチドの組合せを被験体に送達できるということが理解される。例えば、被験体のがんの1個または複数の細胞(例えば、形質細胞)が、BCMAおよびTACIの両方を発現または過剰発現すると決定される場合には、療法を選択する方法は、被験体のための療法として、配列番号1~6および13~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1種のペプチドを含有する組成物および配列番号7~12および15~17のいずれか1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1種のペプチドを含有する組成物の組合せを選択することを含み得る。
【0336】
1個または複数の細胞が、BCMA、TACIおよび/またはMHC分子を発現するか否かを決定する方法は、当技術分野で公知である。例えば、被験体から得られた生体試料(例えば、血液試料またはリンパ節組織試料)を、本明細書に記載される方法によって作製されたBCMAおよび/またはTACI特異的抗体を使用して試験して、細胞(または細胞溶解物)によって発現されたBCMAおよびTACIポリペプチドの存在または量を検出できる。ポリペプチドの存在または量について生体試料をアッセイする方法として、例えば、ELISA、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティングまたはドットブロッティングアッセイが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかはまた、被験体から得た生体試料を提供するステップおよび/または被験体から生体試料を得るステップを含み得る。本明細書に記載される方法に適した生体試料として、目的の分析物タンパク質を含む、任意の生物学的流体、細胞、組織またはその画分が挙げられる。生体試料は、例えば、被験体から得られた検体であり得る、またはこのような被験体から導くことができる。例えば、試料は、生検によって得られた組織切片、または組織培養中に配置された、もしくは組織培養に適合された細胞であり得る。生体試料はまた、細胞を含有する生物学的流体、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、痰、脳脊髄液、涙、粘液または吸引液(例えば、肺または乳房乳頭吸引液)または紙もしくはポリマーの基材上に吸収されたこのような試料であり得る。生体試料は、必要に応じて、特定の細胞種を含有する画分にさらに分画できる。例えば、血液試料を、血清に、または特定の種類の血液細胞、例えば、赤血球または白血球(白血球細胞)を含有する画分に分画できる。必要に応じて、試料は、被験体から得た試料の種類の組合せ、例えば、組織および生物学的流体の組合せであり得る。
【0337】
生体試料は、被験体、例えば、がん(例えば、多発性骨髄腫)を有する、それを有すると疑われる、またはそれを発生するリスクにある被験体から得ることができる。生体試料を得るための任意の適した方法を使用できるが、例示的方法として、例えば、静脈切開、スワブ(例えば、頬側スワブ)、吸引または細針吸引生検手順が挙げられる。細針吸引に感受性の組織の限定されない例として、リンパ節、肺、甲状腺、乳房および肝臓が挙げられる。試料はまた、例えば、顕微解剖(例えば、レーザー捕獲顕微解剖(LCM)またはレーザー顕微解剖(LMD))、膀胱洗浄、スメア(PAPスメア)または管洗浄によって集めることができる。
【0338】
医療従事者はまた、がんを処置する1種もしくは複数の追加の治療剤または抗がん剤の副作用を処置するための1種もしくは複数の医薬を選択、処方および/または投与できる。多発性骨髄腫を処置するための適した化学療法剤として、例えば、メルファラン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、プレドニゾン、デキサメタゾン、プロテオソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、サリドマイドまたはレナリドミドが挙げられる。抗がん剤の副作用として、例えば、貧血、胃腸症状(例えば、悪心、嘔吐、下痢)、白血球減少症(感染を引き起こし得る、白血球数の減少)、一時的な脱毛または血小板減少症(出血を引き起こし得る血小板数の減少)が挙げられる。したがって、医療従事者は、被験体に、ビンクリスチンなどの化学療法剤を、エポエチンアルファ(例えば、Procrit(登録商標)またはEpogen(登録商標))などの抗貧血医薬とともに処方または投与できる。
【0339】
核酸ワクチン
本開示は、本明細書において記載されるような1種または複数のポリペプチドをコードする、1種または複数のポリヌクレオチド、例えば、ポリヌクレオチド構築物を含む核酸ワクチン(NAV)を提供する。例示的ポリヌクレオチドとして、例えば、DNA、RNA、抗原をコードするRNAポリヌクレオチド、例えば、mRNAを含むポリヌクレオチド構築物が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、例えば、抗原をコードするRNAポリヌクレオチドは、少なくとも1つの化学修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸ワクチンは、ポリマーまたはリポソームナノキャリア(例えば、ナノ粒子)内で製剤化できる。
【0340】
いくつかの実施形態では、アジュバントまたは免疫増強物質はまた、1種または複数のNAVとともに、またはそれと組み合わせて投与できる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、共シグナルとして作用して、T細胞および/またはB細胞および/またはNK細胞をプライムする。
【0341】
NAVは、その結合価が変わり得る。結合価とは、NAVまたはNAVポリヌクレオチド(例えば、RNAポリヌクレオチド)またはポリペプチド中の抗原性構成成分の数を指す。いくつかの実施形態では、NAVは、一価である。いくつかの実施形態では、NAVは二価である。いくつかの実施形態では、NAVは三価である。いくつかの実施形態では、NAVは、多価である。多価ワクチンは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多い抗原または抗原性部分(例えば、抗原性ペプチドなど)を含み得る。NAVの抗原性構成成分は、単一ポリヌクレオチド上である場合も、別個のポリヌクレオチド上である場合もある。
【0342】
NAVは、治療剤または予防剤として使用できる。それらは、医薬において使用するために、および/または免疫エフェクター細胞のプライミング、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)をex vivoで刺激/トランスフェクトし、活性化細胞を再注入するために提供される。例えば、本明細書に記載されるNAVは、被験体に投与でき、in vivoでポリヌクレオチドが翻訳され、抗原を生成する。ヒトおよびその他の哺乳動物における疾患または状態の診断、処置または予防のための組成物、方法、キットおよび試薬が提供される。活性治療剤は、NAV、NAVを含有する細胞または前記NAV中に含有されるポリヌクレオチドから翻訳されたポリペプチドを含み得る。
【0343】
本明細書に記載されるNAVのポリヌクレオチドを使用して細胞、組織または生物においてポリペプチド(例えば、抗原または免疫原)の翻訳を誘導する方法が、本明細書において提供される。このような翻訳は、in vivo、ex vivo、培養において、またはin vitroであり得る。細胞、組織または生物を、目的のポリペプチド(例えば、抗原または免疫原)をコードする少なくとも1つの翻訳可能な領域を有するポリヌクレオチドを含有するNAVを含有する有効量の組成物と接触させる。
【0344】
NAV組成物の「有効量」は、少なくとも幾分かは、標的組織、標的細胞種、投与手段、ポリヌクレオチドの物理的特徴(例えば、大きさおよび修飾されたヌクレオシドの程度)およびNAVのその他の構成成分ならびにその他の決定因子に基づいて提供される。一般に、NAV組成物の有効量は、好ましくは、同一抗原をコードする対応する未修飾のポリヌクレオチドを含有する組成物よりも効率的な、細胞における抗原産生の機能として誘導された、またはブーストされた免疫応答を提供する。抗原産生の増大は、細胞トランスフェクション(すなわち、NAVでトランスフェクトされた細胞のパーセンテージ)の増大、ポリヌクレオチドからのタンパク質翻訳の増大、核酸分解の減少(例えば、修飾されたポリヌクレオチドからのタンパク質翻訳の期間の増大によって実証されるような)または宿主細胞の先天性免疫応答の変更によって実証され得る。
【0345】
本開示はまた、それを必要とする哺乳動物被験体においてポリペプチド抗原のin vivo翻訳を誘導する方法を提供する。その中で、少なくとも1つの構造的または化学的修飾およびポリペプチドをコードする翻訳可能な領域(例えば、抗原または免疫原)を有するポリヌクレオチドを含有する有効量のNAV組成物を、本明細書に記載される送達方法を使用して被験体に投与する。ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが細胞において翻訳されるような量およびその他の条件下で提供される。ポリヌクレオチドが局在している細胞または細胞が存在する組織を、1回または1回を超えるラウンドのNAV投与を用いて標的化できる。
【0346】
本明細書に記載されるタンパク質を、細胞内、潜在的に、細胞質もしくは核などの特定のコンパートメント内での局在のために操作できる、または細胞からの分泌もしくは細胞の原形質膜へのトランスロケーションのために操作する。
【0347】
いくつかの実施形態では、核酸(例えば、DNA、RNA)は、1つまたは複数の修飾を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような核酸分子(例えば、RNA分子)は、ヌクレオチド類似体/修飾、例えば、骨格修飾、糖修飾または塩基修飾を含有し得る。本発明に関連して骨格修飾は、本明細書において定義されるような核酸分子中に含有されるヌクレオチドの骨格のホスフェートが化学修飾される修飾である。本発明に関連して糖修飾とは、本明細書において定義されるような核酸分子のヌクレオチドの糖の化学修飾である。さらに、本発明に関連した塩基修飾とは、核酸分子の核酸分子のヌクレオチドの塩基部分の化学修飾である。この関連で、ヌクレオチド類似体または修飾は、転写および/または翻訳に適用可能であるヌクレオチド類似体から選択されることが好ましい。
【0348】
核酸分子に組み込まれ得る修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドを、糖部分において修飾できる。例えば、RNA分子の2’ヒドロキシル基(OH)を、いくつかの異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾し、置き換えることができる。「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾の例として、これらに限定されないが、アルコキシまたはアリールオキシ(-OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖);ポリエチレングリコール(PEG)、-O(CH2CH2O)nCH2CH2OR;2’ヒドロキシルが、例えば、メチレン橋によって、同一リボース糖の4’炭素に接続される「ロックド」核酸(LNA);およびアミノ基(-O-アミノ、ここで、アミノ基(例えば、NRR)は、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノまたはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノであり得る)またはアミノアルコキシが挙げられる。
【0349】
糖基はまた、リボース中の対応する炭素のものとは反対の立体化学的立体配置を有する1個または複数の炭素を含有し得る。したがって、修飾された核酸分子は、例えば、糖としてアラビノースを含有するヌクレオチドを含み得る。
【0350】
本明細書に記載されるような核酸分子(例えば、RNA)中に組み込まれ得る修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドにおいて、ホスフェート骨格をさらに修飾できる。骨格のホスフェート基を、酸素原子のうち1個または複数を、異なる置換基で置き換えることによって修飾できる。さらに、修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドは、未修飾ホスフェート部分の、本明細書に記載されるような修飾されたホスフェートでの完全な置き換えを含み得る。修飾されたホスフェート基の例として、これらに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、水素ホスホネート(hydrogen phosphonate)、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネートおよびホスホトリエステルが挙げられる。ホスホロジチオエートは、両方の非連結酸素が硫黄によって置き換えられている。ホスフェートリンカーをまた、連結酸素の窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)および炭素(架橋メチレン-ホスホネート)での置き換えによって修飾できる。
【0351】
本明細書に記載されるような核酸分子(例えば、RNA分子)に組み込まれ得る修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドを、核酸塩基部分においてさらに修飾できる。RNA中に見られる核酸塩基の例として、これらに限定されないが、アデニン、グアニン、シトシンおよびウラシルが挙げられる。例えば、本明細書に記載されるヌクレオシドおよびヌクレオチドを、主溝(major groove)面で化学修飾できる。いくつかの実施形態では、主溝化学修飾は、アミノ基、チオール基、アルキル基またはハロ基を含み得る。
【0352】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド類似体/修飾は、例えば、2-アミノ-6-クロロプリンリボシド-5’-トリホスフェート、2-アミノプリン-リボシド-5’-トリホスフェート、2-アミノアデノシン-5’-トリホスフェート、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン-トリホスフェート、2-チオシチジン-5’-トリホスフェート、2-チオウリジン-5’-トリホスフェート、2’-フルオロチミジン-5’-トリホスフェート、2’-O-メチルイノシン-5’-トリホスフェート4-チオウリジン-5’-トリホスフェート、5-アミノアリルシチジン-5’-トリホスフェート、5-アミノアリルウリジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモシチジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモウリジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモ-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモ-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、5-ヨードシチジン-5’-トリホスフェート、5-ヨード-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-ヨードウリジン-5’-トリホスフェート、5-ヨード-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、5-メチルシチジン-5’-トリホスフェート、5-メチルウリジン-5’-トリホスフェート、5-プロピニル-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-プロピニル-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、6-アザシチジン-5’-トリホスフェート、6-アザウリジン-5’-トリホスフェート、6-クロロプリンリボシド-5’-トリホスフェート、7-デアザアデノシン-5’-トリホスフェート、7-デアザグアノシン-5’-トリホスフェート、8-アザアデノシン-5’-トリホスフェート、8-アジドアデノシン-5’-トリホスフェート、ベンズイミダゾール-リボシド-5’-トリホスフェート、N1-メチルアデノシン-5’-トリホスフェート、N1-メチルグアノシン-5’-トリホスフェート、N6-メチルアデノシン-5’-トリホスフェート、O6-メチルグアノシン-5’-トリホスフェート、シュードウリジン-5’-トリホスフェートまたはピューロマイシン-5’-トリホスフェート、キサントシン-5’-トリホスフェートから選択され得る塩基修飾から選択される。5-メチルシチジン-5’-トリホスフェート、7-デアザグアノシン-5’-トリホスフェート、5-ブロモシチジン-5’-トリホスフェートおよびシュードウリジン-5’-トリホスフェートからなる塩基修飾されたヌクレオチドの群から選択される塩基修飾のヌクレオチドが特に好ましい。
【0353】
いくつかの実施形態では、核酸分子を、いわゆる「5’キャップ」構造の付加によって修飾できる。5’-キャップは、一般に、成熟mRNAの5’末端を「キャップする」実体、通常、修飾されたヌクレオチド実体である。5’-キャップは、通常、修飾されたヌクレオチドによって、特に、グアニンヌクレオチドの誘導体によって形成され得る。好ましくは、5’-キャップは、5’-5’-トリホスフェート連結を介して5’末端に連結される。5’-キャップは、メチル化されてもよい、例えば、m7GpppN(式中、Nは、5’-キャップを保持する核酸の末端5’ヌクレオチド、通常、RNAの5’末端である)。m7GpppNは、ポリメラーゼIIによって転写されるmRNA中に天然に存在する5’キャップ構造であり、したがって、本発明に従う修飾されたRNA中に含まれる修飾と考えられない。
【0354】
核酸ワクチンを作製し、使用する方法は、例えば、各々、その全文で参照により本明細書に組み込まれる、US20070269451、US20160317647、US9872900およびUS2017002984に記載されている。
【0355】
医薬組成物
本明細書において記載されるペプチド、ペプチドをコードする核酸、ナノ粒子および細胞のいずれも、医薬組成物に組み込まれ得る。組成物は、ペプチド(および/またはペプチドをコードする核酸)のうち1種または複数および薬学的に許容される担体を含み得る。本明細書で使用される場合、言語「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与と適合する溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤(isotonic agent)および吸収遅延剤などを含む。1種または複数のペプチドは、シロップ、エリキシル剤、懸濁物、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、トローチ、水溶液、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、エマルジョンなどの形態で医薬組成物として製剤化できる。補足的に活性な化合物(例えば、1種または複数の化学療法剤)もまた、組成物に組み込むことができる。
【0356】
医薬組成物は、一般に、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例として、経口、直腸および非経口、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、吸入、経皮または経粘膜が挙げられる。非経口適用に使用される溶液または懸濁物は、以下の構成成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、硬化油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化物質、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液などの緩衝液および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度の調整のための作用物質。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調整できる。組成物は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量のバイアルに封入できる。
【0357】
注射可能な使用に適した医薬組成物として、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散物および滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための滅菌散剤が挙げられる。静脈内投与のために、適した担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、NJ.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、医薬組成物は、滅菌でなくてはならず、易注射可能性が存在する程度に流体であるべきである。製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物によるあらゆる汚染に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適した混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。微生物による汚染の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成できる。多数の場合には、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール(manitol)、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが望ましいと予想される。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延する作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによって容易にできる。
【0358】
滅菌注射用溶液は、適当な溶媒中、必要な量で、ペプチドのうち1種または複数(またはペプチドをコードする1種もしくは複数の核酸)を、必要に応じて、1種の成分または成分の組合せとともに組み込み、続いて、濾過滅菌することによって調製できる。一般に、分散物は、ペプチド(またはペプチドをコードする核酸)を、基本分散媒および上記で列挙されたものに由来する必要なその他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製する。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌散剤の場合には、調製方法は、真空乾燥または凍結乾燥を含み得、その事前に滅菌濾過した溶液から有効成分および任意の追加の所望の成分の散剤を得る。
【0359】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療投与の目的で、1種または複数のペプチドを、賦形剤とともに組み込み、錠剤、トローチまたはカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。マウスウォッシュとして使用するために、経口組成物をまた、流体担体を使用して調製できる。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチなどは、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれも含有することができる:微結晶性セルロース、トラガントガムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogelもしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料などの矯味矯臭剤。
【0360】
散剤および錠剤は、1%~95%(w/w)の個々のペプチドまたは2種もしくはそれより多くのペプチドの混合物を含有し得る。特定の実施形態では、ペプチドは、約5%~70%(w/w)の範囲であり得る。適した担体として、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどがある。用語「調製物」は、その他の担体を伴うまたは伴わないペプチドが、担体によって囲まれており、したがって、それと関連しているカプセル剤を提供する担体として、封入材料を有するペプチド(または核酸)の製剤を含むものとする。同様に、カシェおよびロゼンジも含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェおよびロゼンジは、経口投与に適した固体剤形として使用され得る。
【0361】
経口使用に適した水溶液は、活性成分を水に溶解することおよび必要に応じて適した着色料、矯味矯臭剤、安定化剤および増粘剤を添加することによって調製できる。経口使用に適した水性懸濁物は、微細に分割された活性成分を、粘性材料、例えば、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびその他の周知の懸濁剤とともに水に分散することによって製造できる。
【0362】
吸入による投与のために、ペプチドまたは核酸を、適した噴霧体、例えば、二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサーまたはネブライザーからエアゾールスプレーの形態で送達できる。
【0363】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によってであり得る。経粘膜または経皮投与のために、製剤に透過されるべきバリアにとって適当な浸透剤が使用される。このような浸透剤は、一般に当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与には、洗浄剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用によって達成できる。経皮投与には、ペプチドまたは核酸を、一般に当技術分野で公知のように、軟膏、膏薬(salve)、ゲルまたはクリームに製剤化できる。
【0364】
ペプチドまたは核酸はまた、直腸送達のために坐剤(例えば、ココアバターおよびその他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて)または保留浣腸の形態で調製できる。
【0365】
いくつかの実施形態では、ペプチドまたは核酸を、ペプチドを身体からの迅速な排出から保護する担体、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤を用いて調製できる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用できる。このような製剤を調製する方法は、当業者に明らかと予想される。材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することができる。リポソーム懸濁物(例えば、APC特異的抗原に対するモノクローナル抗体を用いてAPCに標的化されるリポソームを含む)はまた、薬学的に許容される担体として使用できる。これらは、当業者に公知の、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるような方法に従って調製できる。
【0366】
投与の容易性および投与量の均一性のために投与量単位形態で経口または非経口組成物を製剤化することは、有利であり得る。投与量単位形態とは、本明細書で使用される場合、処置されるべき被験体のための単位投与量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすように算出された所定量のペプチド(または核酸)を含有する。投与量単位はまた、使用のための指示が付随し得る。
【0367】
ペプチドをコードする核酸分子を、ベクターに挿入し、遺伝子療法ベクターとして使用できる。遺伝子療法ベクターを、例えば、静脈内注射、局所投与によって(例えば、米国特許第5,328,470号を参照のこと)または定位注射によって(例えば、Chen, et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 3054- 3057を参照のこと)被験体に送達できる。遺伝子療法ベクターの薬学的調製物は、許容される希釈剤中に遺伝子療法ベクターを含み得る、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている遅延放出マトリクスを含み得る。あるいは、完全遺伝子送達ベクター、例えば、レトロウイルスベクターが組換え細胞から無傷で産生され得る場合には、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1つまたは複数の細胞を含み得る。
【0368】
遺伝子送達ビヒクルの追加の例として、これらに限定されないが、リポソーム、天然ポリマーおよび合成ポリマーを含む生体適合性ポリマー、リポタンパク質、ポリペプチド、多糖、リポ多糖、人工ウイルスエンベロープ、金属粒子、細菌、バキュロウイルス、アデノウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクターならびに種々の真核生物および原核生物宿主における発現のために記載されてきた当技術分野で通常使用され、遺伝子療法のために、ならびに簡単なタンパク質発現のために使用され得るその他の組換えビヒクルが挙げられる。
【0369】
ウイルスベクターの例として、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクターなどが挙げられる。標的化部分、例えば、抗体またはその断片を含むリポソームもまた、使用して、被験体に送達するための核酸の医薬組成物を調製できる。
【0370】
本明細書に記載される医薬組成物のいずれも、以下に記載されるような投与のための指示と一緒に、容器、パックまたはディスペンサー中に含めることができる。
【0371】
キットおよび製造品
本開示はまた、種々のキットを特徴とする。キットは、例えば、本明細書に記載されるペプチド(または1種または複数のペプチドをコードする核酸配列を含有する発現ベクター)のいずれかのうち1種または複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10種またはそれより多く)およびペプチドを被験体に投与するための指示を含み得る。キットは、1種または複数の薬学的に許容される担体および/または1種または複数の免疫刺激剤を含み得る。免疫刺激剤は、例えば、ヘルパーTエピトープ、変更されたペプチドリガンドまたはアジュバントであり得る。キットはまた、1種または複数の治療剤、診断剤または予防剤を含有し得る。1種または複数の治療剤、診断剤または予防剤として、これらに限定されないが、(i)炎症反応を調節する薬剤(例えば、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ステロイド、クロモリンナトリウムまたはテオフィリン)、(ii)腎および/または心血管機能に影響を及ぼす薬剤(例えば、フロセミド、チアジド、アミロライド、スピロノラクトン、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、ジゴキシン、イソルジル、ドブタミン、リドカイン、キニジン、アデノシン、ジギタリス、メバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチンまたはメバロネート)、(iii)胃腸機能に影響を及ぼす薬物(例えば、オメプラゾールまたはスクラルファート)、(iv)抗生物質(例えば、テトラサイクリン、クリンダマイシン、アンホテリシンB、キニーネ、メチシリン、バンコマイシン、ペニシリンG、アモキシシリン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、クロラムフェニコール、イソニアジド、フルコナゾールまたはアマンタジン)、(v)抗がん剤(例えば、シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、メルカプトプリン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ヒドロキシ尿素、プレドニゾン、タモキシフェン、シスプラチンまたはデカルバジン)、(vi)免疫調節剤(例えば、インターロイキン、インターフェロン(例えば、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、腫瘍壊死因子ベータ(TNFβ)、シクロスポリン、FK506、アザチオプリン、ステロイド)、(ix)血液および/または血液形成臓器に作用する薬物(例えば、インターロイキン、G-CSF、GM-CSF、エリスロポエチン、ヘパリン、ワルファリンまたはクマリン)または(vii)ホルモン(例えば、成長ホルモン(GH)、プロラクチン、黄体形成ホルモン、TSH、ACTH、インスリン、FSH、CG、ソマトスタチン、エストロゲン、アンドロゲン、プロゲステロン、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、チロキシン、トリヨードチロニン)、ホルモンアンタゴニスト、カルシウム沈着および骨代謝回転に影響を及ぼす薬剤(例えば、カルシウム、ホスフェート、副甲状腺ホルモン(PTH)、ビタミンD、ビスホスホネート、カルシトニン、フッ化物)が挙げられる。
【0372】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載されるBCMAおよび/またはTACI抗体のいずれかのうち1種または複数(例えば、1、2または3種またはそれより多く)を含有し得る。いくつかの実施形態では、キットは、各々異なるタンパク質に対して特異的な2種の抗体を含み得る。例えば、キットは、1種のBCMA特異的抗体(本明細書に記載される)および1種のTACI特異的抗体(本明細書に記載される)を含有し得る。キットは、必要に応じて、BCMAおよび/またはTACIタンパク質のうち1種または複数の存在または量について生体試料をアッセイするための指示を含み得る。また、容器および容器内に含有される組成物を含む製造品も特徴とし、組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)において免疫応答を誘導するための有効成分を含み、有効成分は、本明細書において記載されるペプチドのいずれかのうち1種または複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10種またはそれより多く)を含み、容器は、組成物が、哺乳動物(例えば、本明細書に記載される哺乳動物のいずれか)において免疫応答を誘導することにおいて使用するためのものであることを示すラベルを有する。ラベルは、組成物が、多発性骨髄腫を有する、それを有すると疑われる、またはそれを発生するリスクにある哺乳動物に投与されるべきであることをさらに示し得る。製造品の組成物は、乾燥または凍結乾燥され得、例えば、乾燥または凍結乾燥した組成物を可溶化するための1種または複数の溶液(および/または指示)を含み得る。
【0373】
製造品はまた、哺乳動物に組成物を投与するための指示を含み得る。
【実施例】
【0374】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明するが、これは特許請求の範囲において記載される本発明の範囲を制限するものではない。
【0375】
(実施例1 多発性骨髄腫細胞系でのBCMA発現)
11種のMM細胞系および1種の乳がん細胞系(MDA-MB231)を含む合計12種のがん細胞系を、以下のクローン各々に対して特異的な抗体を用いて染色することによって、そのBCMA抗原の発現レベルについて評価した;1番.ANC3B1(LifeSpan Biosciences、カタログ番号LS-C357630)、2番.VICKY1(LifeSpan Biosciences、カタログ番号LS-C18662)および3番.19F2(BioLegend、カタログ番号357506)。細胞系の中でも、H929(MM細胞系)が、最高レベルのBCMA発現を示し、MDA-MB231(乳がん細胞系;BCMA陰性)は、最小レベルのBCMA発現を示した。(
図1A~1I)
【0376】
(実施例2 HLA-A2に対して特異的なBCMAおよびTACI天然ペプチドの選択)
それぞれ、BCMAまたはTACI抗原に由来する6種の天然ペプチドを以下のように同定した:
【化4】
【0377】
(実施例3 HLA-A2分子に対するBCMAまたはTACI天然ペプチドの結合親和性)
列挙されたBCMAペプチドを、HLA-A2特異的結合能についてT2細胞系を使用して評価した。アッセイでは、T2細胞を洗浄し、血清不含AIM-V培地に1×10
6個細胞/mlの最終濃度に再懸濁し、24ウェル組織培養プレートのウェルに移した。細胞を種々の濃度のそれぞれのBCMAペプチド(0~200μg/ml)および3μg/mlヒトβ2-ミクログロブリン(Sigma)を用いてパルスし、加湿空気中37℃、5%CO
2でインキュベートした。一晩インキュベートした後、細胞を洗浄し、マウス抗ヒトHLA-A2-FITC mAbを用いて4℃で15分間染色し、洗浄し、CellQuest(商標)v2.1ソフトウェア(Becton Dickinson、San
Jose、CA)を備えたFACSort(商標)フローサイトメーターを使用して解析した。HLA-A2とのペプチド結合を、HLA-A2特異的ペプチド結合によって引き起こされるT2細胞でのHLA-A2分子の上方制御によって決定し、フローサイトメトリー解析によって平均蛍光強度(MFI)を測定することによって実証した。評価したBCMAペプチドの中で、「4番.BCMA
72~80(VLMFLLRKI(配列番号4))」が、最高レベルのHLA-A2特異性を示し、「5番.BCMA
54~62(AILWTCLGL(配列番号5))」が、2番目に高いレベルの特異性を示した(
図2)。評価したTACIペプチドの中で、TACI5番を除くすべてのペプチドが、HLA-A2特異性を示したが、最高レベルは、4番.TACI
166~174(TLGLCLCAV(配列番号10))によって測定された(
図3)。
【0378】
(実施例4 HLA-A2分子に対するBCMAまたはTACI天然ペプチドの安定性)
HLA-A2分子に対するペプチド結合の安定性を改善するために、以下のヘテロクリティックBCMAまたはTACIペプチドを設計した:
【化5】
【0379】
天然およびヘテロクリティックBCMAおよびTACIペプチドを、HLA-A2結合安定性についてT2細胞系を使用して調べた。T2細胞をそれぞれのペプチドを用いてパルスした。一晩インキュベートした後、細胞を洗浄して、結合していないペプチドを除去し、それらを上記で示されるように結合親和性について、および以下のように安定性について評価した。細胞を10μg/mlのブレフェルジンA(Sigma)とともに37℃および5%CO
2で1時間インキュベートして、新規に合成されたHLA-A2分子の細胞表面発現をブロックした。ブレフェルジンA処置の0、2、4、6および18時間後にペプチド/HLA-A2結合安定性を評価した。インキュベーション期間後、細胞を回収し、洗浄し、マウス抗ヒトHLA-A2-FITC mAbを用いて染色し、フローサイトメトリーによって解析した。「ヘテロクリティック4番BCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))」、「ヘテロクリティック5番BCMA
54~62(YILWTCLGL(配列番号14))」および「ヘテロクリティック3番TACI
154~162(YLSADQVAL(配列番号16))」のHLA-A2結合親和性は、その天然ペプチドから増大された(
図4および5)。結合安定性の点で、「ヘテロクリティック4番BCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))」および「ヘテロクリティック3番TACI
154~162(YLSADQVAL(配列番号16))」ペプチドは、天然ペプチドと比較して、0、2、4、6および18時間を含む評価されたすべての時点でそのHLA-A2親和性の大幅な改善を示した(
図6および7)。したがって、MM特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を作製するその免疫原性の可能性のさらなる評価のために、ヘテロクリティック4番BCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))およびヘテロクリティック3番.TACI
154~162(YLSADQVAL(配列番号16)ペプチドを選択した。
【0380】
(実施例5 BCMAまたはTACIペプチド特異的CD3
+CD8
+CTLの誘導)
MM細胞系を標的化する機能的活性の評価のために、種々のHLA-A2
+正常ドナーからペプチド特異的CTLを作製した。ペプチド特異的CTLを作製するために、同一ドナーから作製した成熟樹状細胞(mDC)を、血清不含AIM-V培地に再懸濁し、50μg/mlのヘテロクリティック4番BCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドまたは「ヘテロクリティック3番TACI
154~162(YLSADQVAL(配列番号16))」ペプチドを用いて、加湿空気中37℃、5%CO
2で一晩パルスした。ペプチドでパルスしたmDCを洗浄し、カウントし、10Gyで照射し、これを使用して、10%ヒトAB血清を追加補充したAIM-V培地中、1:20の抗原提示細胞/ペプチド対CD3
+T細胞比でCD3
+T細胞をプライムした。培養物をペプチドでパルスした照射したT2細胞を用いて7日間毎に合計4サイクルの間再刺激した。T細胞をex vivoで維持するために、第2の刺激の2日後に培養物にIL-2(50U/ml)を添加した。対照T細胞培養物は、IL-2(50U/ml)の存在下、同一培養条件下で維持したが、ペプチド刺激は伴わなかった。得られたCTLの表現型は、ペプチド刺激の各サイクルの1週間後に評価した。フローサイトメトリー解析によって、ヘテロクリティック4番BCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))を用いて刺激されたCD3
+CD8
+T細胞サブセットの表現型において明確な変化が示され、集団において徐々に増大した。ヘテロクリティックBCMAペプチドによるCD3
+CD8
+T細胞増大は、免疫原性ペプチドとしてこれまでに同定された免疫原性CD138
260~268(GLVGLIFAV(配列番号20))を用いたものと同様であり、これは、BCMAペプチドの潜在的な免疫原性を示唆する。BCMAペプチド特異的CTL培養物は、非ペプチド刺激対照T細胞(約20%)と比較して、4サイクルのペプチド刺激の際に、より高いパーセンテージのCD8
+T細胞(約80%)を含有していた(
図8A~8C)。
【0381】
(実施例6 ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチド刺激によるナイーブCD3
+CD8
+CTLの減少およびメモリーCD3
+CD8
+CTLの増大)
抗原特異的CTLは、その別個の細胞表面抗原の発現によってナイーブT細胞からの活性化/メモリーT細胞として表現型によって同定され得る。BCMA-CTLの表現型を、ナイーブおよびメモリー細胞の表現型を解析することによって潜在的なエフェクター細胞として調べた。BCMAペプチド特異的CTLは、50μg/mlのヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))を用いてパルスされた抗原提示細胞を用いる毎週のHLA-A2
+正常ドナーのCD3
+T細胞の反復刺激によって作製した。各ペプチド刺激の1週間後、得られたCTLを、フローサイトメトリーによってその表現型プロファイルについて評価した。BCMA-CTLは、対照T細胞と比較したナイーブCD3
+CD8
+T細胞の頻度の減少を示した(ドナー1:80%未刺激対2% 4サイクルの刺激時、ドナー2:83%未刺激対2% 4サイクルの刺激時)。ヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドを用いた場合に、メモリーCD3
+CD8
+T細胞の頻度において対応する増大が観察された(ドナー1:18%未刺激対86% 4サイクルの刺激時;ドナー2:10%未刺激対92% 4サイクルの刺激時)。これらの表現型変化は、ヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))を用いるCD3
+T細胞の反復刺激が、メモリー細胞の表現型を有するCD8
+CTLの拡大増殖をもたらすことを実証し、BCMAペプチドの免疫原性を示す(
図9および10)。
【0382】
(実施例7 ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチド刺激によるセントラルメモリーおよびエフェクターCD3
+CD8
+CTLの頻度の変化)
ヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドを用いるT細胞の刺激時の、セントラルメモリーおよびエフェクター細胞のさらなる評価を実施した。3サイクルの刺激後、BCMAペプチドによるセントラルメモリーCTLの拡大増殖が検出され、これはエフェクターCTLの減少と一致した。4サイクルのペプチド刺激の際、セントラルメモリーCTLの減少およびエフェクターメモリー細胞を含むエフェクターCTLの増大も検出された。ヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドを用いた場合のCD8+T細胞におけるこの表現型の変化のパターンは、CD138
260~268(GLVGLIFAV(配列番号20))を用いて刺激された細胞と同様であった(
図11A~11C)。
【0383】
(実施例8 ヘテロクリティックBCMA72~80(YLMFLLRKI-配列番号13)ペプチドまたはヘテロクリティックTACI154~162(YLSADQVAL-配列番号16)ペプチドを用いて刺激された特異的CTLは、特異的T細胞サブタイプを表す別個の表現型を示す)
【0384】
本発明者らはまた、ペプチドを用いて刺激されたCD3
+T細胞培養物中のCD8
+T細胞サブセット内のナイーブ(CD45RO
-/CCR7
+)、セントラルメモリー(CD45RO
+/CCR7
+)、エフェクターメモリー(CD45RO
+/CCR7
-)および末端エフェクター(CD45RO
-/CCR7
-)細胞の頻度における、ヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドまたはヘテロクリティックTACI
154~162(YLSADQVAL(配列番号16))ペプチドを用いて刺激されたCTL内のCD3
+CD8
+T細胞サブセットにおける別個の表現型の変化を観察した。4サイクルのペプチド刺激後、エフェクターメモリーCD3
+CD8
+T細胞の頻度が増大され、ナイーブT細胞(CD45RO
-CCR7
+/CD3
+CD8
+)およびセントラルメモリーT細胞(CD45RO
+CCR7
+/CD3
+CD8
+)における対応する減少を伴った。したがって、これらの結果は、選択されたヘテロクリティックBCMAまたはTACIペプチドを用いるCD3
+T細胞の反復刺激が、抗原特異的CTLに特徴的なCD3
+CD8
+T細胞サブセットの別個の表現型変化および拡大増殖をもたらすことを実証する(
図12および
図13)。
【0385】
(実施例9 BCMA特異的CTLおよびTACI特異的CTLは、細胞傷害活性を誘導し、Th1型のサイトカイン(IFN-γ、IL-2、TNF-α)を産生し、HLA-A2拘束様式でMM細胞に対する41BB発現を上方制御する)
【0386】
ヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドまたはヘテロクリティックTACI
154~162(YLSADQVAL(配列番号16))を用いて刺激されたペプチド特異的CTLを、フローサイトメトリーによって、骨髄腫細胞を溶解し、抗腫瘍活性に関与する決定的なサイトカインを産生するその能力について分析した。BCMA-CTLおよびTACI特異的CTLは、HLA-A2
+U266細胞の認識の際に、CD107a脱顆粒マーカー、細胞傷害活性の尺度を発現する細胞の頻度の大幅な増大を実証し、これは、HLA-A2
-OPM2細胞よりも高かった。HLA-A2
+ MM細胞に対するBCMA特異的CTLおよびTACI特異的CTLにおいてIFN-γ、IL-2およびTNF-α産生のレベルの増大が検出されたが、HLA-A2
-MM細胞に対しては検出されず、これは、免疫応答が、HLA-A2拘束様式にあることを実証する(
図14および
図15)。
【0387】
(実施例10 BCMA特異的CTLは、HLA-A2拘束かつ抗原特異的な様式でMM細胞に応じて増殖する)
【0388】
ヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))を用いて刺激されたペプチド特異的CTLの機能活性を、CFSE-増殖アッセイを使用してさらに解析した。HLA-A2
+MM(U266)、HLA-A2
+乳がん(MDA-MB231)またはHLA-A2
-MM(MM1S)細胞を用いる刺激後、BCMAペプチド特異的CTLにおけるCD8
+T細胞の増殖を4日目に測定し、CFSE標識されたCTLの蛍光の減少によって証明された(CFSE低をゲートした)。BCMA-CTLは、HLA-A2
+U266 MM細胞系に応じて大幅なCD8
+T細胞増殖を誘導した(増殖細胞:46%)。しかし、CD8
+T細胞増殖は、MDA-MB231またはMM1Sに応じて誘導されず、培地単独において培養された細胞(10%)と同様に低レベルに留まった(11%~14%)。総合すると、これらの結果は、BCMA-CTLは、骨髄腫細胞に特異的に応答し、そのCD8+T細胞増殖は、HLA-A2によって拘束され、抗原特異的であるということを示唆する(
図16)。
【0389】
(実施例11 免疫アゴニストと組み合わせたBCMA特異的CTLによるより高いレベルの細胞毒性)
ヘテロクリティックBCMA
72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))を用いて刺激されたペプチド特異的CTLの活性を、48時間の抗OX40または抗GITRを用いる細胞の処置において測定した。細胞毒性のレベルを、ゲートされたCD3
+CD8
+T細胞におけるCD107a脱顆粒によって測定した。未処置群(43%)と比較して、抗OX40(92%)または抗GITR(55%)を用いるBCMAペプチド特異的CTLの処置の際に、CD107a脱顆粒が増大されることが観察され、これは、免疫アゴニストを用いる組合せ処置は、BCMA-CTLの抗腫瘍活性を誘導するのに役立つことを示唆する(
図17)。
【0390】
(実施例12 BCMA特異的セントラルメモリーCD8+細胞傷害性Tリンパ球による多発性骨髄腫の選択的標的化)
幹細胞移植パラダイムに新規療法を組み込む多発性骨髄腫(MM)の処置における最近の進歩にもかかわらず、進行中のDNA損傷およびゲノム進化が、多数の患者における再発の根底にある。したがって、別個の作用機序を有する新規治療アプローチが必要である。構成的または進化性の遺伝子複雑性は、B細胞悪性疾患の免疫応答性と相まって、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、免疫毒素およびCART細胞を含むMMにおける免疫療法の選択肢の開発を刺激してきた。MM患者特異的CART細胞療法は著しく深い応答を達成したが、応答の耐久性は確立されておらず、それらは、労働集約的であり、時間のかかるものであり、高価である。これらの制限を克服するために、この実施例は、患者をより広く、効率的に処置するための既製の免疫療法として免疫原性ペプチドベースのがんワクチンを提供する。ペプチドベースの治療アプローチは、適した翻訳(mRNAのために)または転写(DNAのために)に必要なさらなるステップとともに、タンパク質の内部移行、HLAに対する最適免疫原性ペプチドへの分解のプロセスを必要とする組換えタンパク質、mRNAまたはDNAベースのワクチンの制限を有さない。MHC拘束を克服し、免疫原性エピトープワクチンアプローチを使用してより多様な患者集団を処置するために、主要HLAサブタイプを含むようにペプチドカクテルをプールした。さらに、レナリドミドは、ペプチドワクチン特異的免疫応答およびメモリー細胞傷害性T細胞(CTL)活性を増強し、チェックポイント阻害剤および/または免疫アゴニストを用いる組合せアプローチの段階を設定できる。さらに、免疫原性ペプチドによって誘発される抗腫瘍有効性は、エフェクター細胞の生成の際に「エピトープ拡散(epitope spreading)」を誘導するその能力によって増強されることができ、それによって、標的化された溶解したがん細胞は、新規抗原性エピトープを放出し、それが、続いて、取り込まれ、プロセシングされ、CTLの新規レパートリーに対して抗原提示細胞によって提示される。
【0391】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、TNF受容体スーパーファミリー17(TNFRSF17)のメンバーであり、B細胞成熟および形質細胞への分化の調節において中心的な役割を有するシステインリッチ細胞外ドメインを含有するIII型膜貫通タンパク質として特徴付けられている。MM細胞成長および生存因子B細胞活性化因子(BAFF)および増殖誘導性リガンド(APRIL)の受容体として、BCMAがMM細胞の生存に必要であり、それを有望な治療薬標的とする。ほぼすべてのMM腫瘍細胞は、BCMAを発現し、腫瘍細胞の同定のためのマーカーとして提案されている。成熟Bおよび長期生存形質細胞のサブセットでのその選択的発現は、BCMA指向性処置アプローチの好都合な治療指数をさらに示唆する。現在、BCMAは、抗体(裸の抗体、抗体-薬物コンジュゲートおよび二重特異性抗体)および細胞療法(キメラ抗原受容体T細胞)を含むいくつかの免疫療法戦略によって標的化されており、再発難治性MMにおいてでさえ有望な臨床結果を有している。さらに、血清可溶性BCMAは、MMおよび慢性リンパ性白血病を有する患者の中では上昇しており、予後マーカーおよび応答のモニターとして役立ち得る。最後に、最近の研究によって、BCMAは、非造血組織において発現され、BCMAは、非小細胞肺がん細胞系において異常に発現され、ERK1/2シグナル伝達経路によって腫瘍において役割を果たし得ることが示される。これらのデータは、MMおよび同様に潜在的にBCMAを発現する固形腫瘍において免疫療法戦略でのBCMAを標的化することを支持する。
【0392】
この実施例は、MM細胞に対して有効な長期持続性免疫を有する抗原特異的CD8+CTLを作製することによる、BCMAを標的化するペプチドベースの免疫療法アプローチを提供する。高度に有効な抗腫瘍活性を有するMM特異的応答を誘発可能である新規免疫原性天然およびヘテロクリティックHLA-A2特異的BCMAペプチドを同定した。重要なことに、ヘテロクリティックBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドは、HLA-A2分子に対する最大の親和性/安定性とともに、最高レベルの免疫原性、ならびにHLA-A2+患者のMM細胞およびMM細胞系に対する多機能性活性を有するBCMA特異的メモリーCTLの頑強な誘導を実証した。実験は、がんワクチンおよび養子免疫療法プロトコールにおける、この新規の操作された免疫原性BCMA72~80ペプチドの臨床適用のための枠組みを示し、MMまたはBCMAを発現するがんを有する患者において長期持続性メモリー抗腫瘍免疫を提供する。
【0393】
特に、この結果は、新規に診断されたMM患者(N=616)から得たCD138+腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原を使用して、現在の多発性骨髄腫(MM)特異的免疫療法の幅および程度を拡大できることを示す。これらの実験は、MM細胞に対する有効な長期持続する免疫応答を媒介するBCMA特異的メモリーCD8+CTLを作製することによって、MM細胞成長および生存を促進するB細胞成熟抗原(BCMA)を標的化するように設計されている。これでは、実験は、BCMA、BCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))およびBCMA54~62(YILWTCLGL(配列番号14))に対して特異的な新規の操作されたペプチドが、その天然ペプチドと比較して、HLA-A2に対して改善された親和性/安定性を示し、活性化が増大した(CD38、CD69)および共刺激性(CD40L、OX40、GITR)分子発現を有するBCMA特異的CTLを誘導することを示す。重要なことに、ヘテロクリティックBCMA72~80特異的CTLは、MMに対する多機能Th1特異的免疫活性[IFN-γ/IL-2/TNF-α産生、増殖、細胞毒性]を実証し、これは、四量体+およびメモリーCD8+CTL集団の拡大増殖と直接的に相関していた。抗OX40または抗LAG3と組み合わせた場合、ヘテロクリティックBCMA72~80特異的CTLは、特に、セントラルメモリーCTLによるMMに対する細胞毒性の増大を示した。これらの結果は、ワクチン接種および養子免疫療法戦略における、単独でのおよび抗LAG3および/または抗OX40と組み合わせた、ヘテロクリティックBCMA72~80ペプチドの臨床適用の枠組みを提供し、MMおよびその他のBCMAを発現する腫瘍を有する患者において長期持続する自己抗腫瘍免疫を作製する。
【0394】
この実施例において、以下の材料および方法を使用した。
【0395】
材料および方法
細胞系
MM細胞系、MM1S、OPM2、OPM1、H929、OCIMY5、RPMI、U266、KMS1、HSB2、McCARおよびANBL6ならびに乳がん細胞系MDA-MB-231を、ATCC(Manassas、VA)から入手した。T2細胞系、HLA-A2分子を発現するヒトBおよびT細胞ハイブリッドは、Dr. J. Molldrem (University of Texas M. D. Anderson
Cancer Center、Houston、TX)によって提供された。細胞系を、10%ウシ胎児血清(FCS;BioWhittaker、Walkersville、MD)、100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Gibco-Life Technologies)を追加補充した、DMEM(MMおよびT2細胞用;Gibco-Life Technologies、Rockville、MD)またはLeibovitz’s L-15(MDA-MB231用;ATCC、Manassas、VA)培地で培養した。
【0396】
試薬
蛍光色素がコンジュゲートしている抗ヒトBCMA、HLA-A2、CD3、CD8、CD38、CD40L、CD69、41BB、CCR7、CD45RO、CD107a、IFN-γ、IL-2、TNF-α、PD1、LAG3、OX40およびGITRモノクローナル抗体(mAb)は、Becton Dickinson(BD)(San Diego、CA)、LifeSpan Bioscience(Seattle、WA)またはBioLegend(San Diego、CA)から購入した。Live/Dead Aqua染色キットは、Molecular Probes(Grand Island、NY)から購入した。組換えヒトGM-CSFは、Immunex(Seattle、WA)から入手し、ヒトIL-2、IL-4、IFN-αおよびTNF-αは、R&D Systems(Minneapolis、MN)から購入した。BCMAペプチド特異的四量体-PEは、MBL International Corporation(Woburn、MA)によって合成された。LAG3またはOX40に対する臨床等級mAbは、Bristol-Myers Squibb(New York、NY)によって提供された。
【0397】
合成ペプチド
天然BCMAペプチド[BCMA64~72(LIISLAVFV(配列番号1))、BCMA69~77(AVFVLMFLL(配列番号2))、BCMA9~17(SQNEYFDSL(配列番号3))、BCMA72~80(VLMFLLRKI(配列番号4))、BCMA54~62(AILWTCLGL(配列番号5))、BCMA114~120(ILPRGLEYT(配列番号6))]、ヘテロクリティックBCMAペプチド[hBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))、hBCMA54~62(YILWTCLGL(配列番号14))、hBCMA9~17(YQNEYFDSL(配列番号22))]およびHIV-Gag77~85(SLYNTVATL(配列番号21))は、標準fmoc(9-フルオレニルメチル-オキシカルボニル)化学によって合成され、逆相クロマトグラフィーを使用して>95%に精製され、分子量の質量分析によって検証された(Biosynthesis、Lewisville、TX)。
【0398】
HLA-A2親和性および安定性アッセイ
T2細胞を、種々の用量のペプチドおよびβ2-ミクログロブリン(3μg/ml)(Sigma、St Louis、MO)を用いて一晩パルスした。一晩インキュベートした後、細胞をHLA-A2-PE mAbを用いて染色し、FACSCanto(商標)フローサイトメーター(BD)を使用して解析した。ペプチド/HLA-A2複合体安定性は、ブレフェルジンA処置の0、2、4、6および14時間後、HLA-A2-PE mAbを用いる染色およびフローサイトメトリー解析によってペプチドが負荷されたT2細胞で測定した。
【0399】
樹状細胞の作製
末梢血単核細胞(PBMC)から単離された単球を、10% FCSを追加補充したRPMI-1640培地(Gibco-Life Technologies)中、1,000ユニット/mlのGM-CSFおよび1,000ユニット/mlのIL-4の存在下で7日間培養した。培養物に新鮮培地およびGM-CSFおよびIL-4を1日おきに添加した。成熟DC(mDC)は、7日目に得られ、1,000ユニット/mlのIFN-αおよび10ng/mlのTNF-αとともにさらに3日インキュベートを続けた。
【0400】
BCMAペプチド特異的CTLの誘導
BCMAペプチド特異的CTL(BCMA-CTL)を、ペプチドがパルスされた抗原提示細胞(APC)を用いてHLA-A2+ドナーから得られたCD3+T細胞の反復刺激によってex vivoで作製した。手短には、ペプチド(50μg/ml)がパルスされたAPCを照射し(10Gy)、これを使用して、1APC/ペプチド:20T細胞比でT細胞を刺激した。T細胞培養物を7日毎に再刺激し、IL-2(50ユニット/ml)の存在下、10%ヒトAB血清(BioWhittaker)を追加補充したAIM-V培地中で維持した。
【0401】
BCMAペプチド特異的CTLまたは腫瘍細胞の表現型解析
Live/Dead Aqua染色キットおよび蛍光色素がコンジュゲートしている抗ヒトmAbおよび四量体-PEを用いる染色後に、BCMA-CTLで表現型特徴付けを実施した。あるいは、MMおよび乳がん細胞系を、蛍光色素がコンジュゲートしているBCMAまたはHLA-A2 mAbを用いて染色した。染色後、細胞を洗浄し、2%パラホルムアルデヒド中で固定し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0402】
カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)トラッキングによる細胞増殖
BCMA-CTLを、CFSE(Molecular Probes)を用いて標識し、IL-2(10ユニット/ml)の存在下で照射された(10Gy)腫瘍細胞またはペプチドがパルスされたAPCとともに同時インキュベートした。同時培養の4、5、6または8日目に、細胞を回収し、Live/Dead Aqua染色キットおよびCD3/CD8/CD45RO/CCR7 mAbを用いて染色した。CD3+CD8+CTL増殖のレベルは、フローサイトメトリーによって測定されるようなCFSE蛍光強度の低減として決定した。
【0403】
CD107a脱顆粒および細胞内IFN-γ/IL-2/TNF-αサイトカイン産生
BCMA-CTLの機能的細胞溶解活性は、フローサイトメトリーによってCD107a脱顆粒およびTh1サイトカイン産生によって測定した。手短には、BCMA-CTLを、CD107a mAbの存在下で腫瘍細胞またはT2/ペプチドとともに同時インキュベートした。1時間インキュベートした後、CD28/CD49d mAb、ブレフェルジンAおよびMonensin(BD)をさらに5時間添加した。細胞を回収し、PBSで洗浄し、T細胞抗原に対して特異的なmAbとともにインキュベートした。表面染色後、細胞を固定し/透過処理し、抗IFN-γ/IL-2/TNF-α mAbを用いて染色し、Perm/Wash溶液(BD)を用いて洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0404】
統計解析
結果を平均±SEとして示す。群を、独立スチューデントt検定を使用して比較した。相違は、p<0.05である場合に有意と考えた。
【0405】
HLA-A2分子に対するBCMAペプチド結合親和性および安定性。
【0406】
BIMASおよびNetCTLを含む種々の検索ソフトウェアプログラムを使用して、全長BCMAタンパク質配列を評価して、HLA-A2親和性、延長された半減時間解離速度、プロテアソームC末端切断およびTAP輸送を有するエピトープを予測した。選択された6種の天然ペプチド[BCMA64~72(LIISLAVFV)、BCMA69~77(AVFVLMFLL)、BCMA9~17(SQNEYFDSL)、BCMA72~80(VLMFLLRKI)、BCMA54~62(AILWTCLGL)、BCMA114~120(ILPRGLEYT)]の中で、BCMA72~80(VLMFLLRKI)およびBCMA54~62(AILWTCLGL)が、最高のHLA-A2結合親和性を用量依存的に示した。設計されたヘテロクリティックペプチドの中で、ヘテロクリティックBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))およびヘテロクリティックhBCMA54~62(YILWTCLGL(配列番号14))が、その天然ペプチド(n=3、p<0.05)と比較して、HLA-A2結合親和性の最高の増大を示した。対照的に、非HLA-A2特異的BCMA9~17(SQNEYFDSL)中のアンカーモチーフをヘテロクライト(heteroclite)BCMA9~17(YQNEYFDSL(配列番号22))に置き換えることは、そのHLA-A2親和性状態を変更せず、HLA-A2特異的ペプチド内の修飾のみによる改善されるHLA-A2親和性を示した。
【0407】
ペプチドがパルスされたT2細胞のブレフェルジンA処置後のBCMA72~80およびBCMA54~62HLA-A2特異的ペプチドのHLA-A2安定性を評価した。天然BCMA72~80およびBCMA54~62ペプチドは、6時間より長い拡張されたHLA-A2安定性を示し、これを、ヘテロクリティックBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))およびBCMA54~62(YILWTCLGL(配列番号14))に操作することによってさらに増強した。全体的に、試験した各時点でBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))を用いて最高レベルのHLA-A2親和性および安定性が検出され、これは、HLA-A2陽性対照HIV-Gag77~85ペプチドよりも高かった。
【0408】
ヘテロクリティックBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))またはBCMA54~62(YILWTCLGL(配列番号14))を用いて作製したBCMA特異的CTLは、T細胞活性化および共刺激分子発現の増大を示す。
【0409】
フローサイトメトリーを使用して、ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチド特異的CTL(hBCMA
72~80CTL)またはヘテロクリティックhBCMA
54~62ペプチド特異的CTL(hBCMA
54~62CTL)の表現型特徴付けを、第4ラウンドのペプチド刺激後に実施した。両CTL集団が、活性化マーカー(CD69、CD38)発現の増大を示し、hBCMA
72~80CTLで最高の上方制御が検出された:CD38はベースライン23%から80%に増大し、CD69は、ベースライン7%から38%に増大した(
図18A)。さらに、hBCMA
72~80CTLは、hBCMA
54~62CTLよりも高い、41BB、CD40L、OX30およびGITR共刺激分子の発現を示した(
図18Bおよび18C)。
【0410】
図18A~18Cでは、HLA-A2+個体から得たCD3+T細胞を、それぞれのヘテロクリティックBCMAペプチド、BCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))またはBCMA54~62(YILWTCLGL(配列番号14))のいずれかを用いてパルスされた照射されたAPCを用いて毎週刺激した。第4サイクルの刺激の1週間後、CD3+CD8+T細胞をフローサイトメトリーによって解析した。T細胞活性化マーカー(CD69、CD38)および共刺激分子(41BB、CD40L、OX30、GITR)の発現を、CD8+T細胞で評価した。結果は、代表的なもの(
図18Aおよび18B)または異なる個体(N=3)から作製したBCMA-CTLを使用する3つの独立実験のまとめ(
図18C)として実証されている。
【0411】
ヘテロクリティックBCMA72~80特異的CTLは、MM細胞系に応じて抗原特異的抗腫瘍活性を示す。
【0412】
各ラウンドのペプチド刺激後にhBCMA
72~80CTLの表現型および活性を評価した。作製された特異的CTL(n=3)において、ヘテロクリティックBCMA
72~80(
YLMFLLRKI(配列番号13))を用いる刺激の際に、CD3
+CD8
+T細胞%の漸増(
図25A~25B)およびCD3
+CD4
+T細胞%の対応する減少(
図26A~26B)が観察された。並行して、BCMA mAbクローン(ANC3B1、VICKY1、19F2)を用いて染色された標的細胞の表現型解析は、H929、MMIS、U266およびOPM1細胞系で高いBCMA発現を示したが、乳がん細胞系(MDA-MB231)(
図27A~27C)では示さなかった。機能活性の評価では、hBCMA
72~80CTLは、HLA-A2
-BCMA
+MM1S(7%)、HLA-A2
+BCMA
-MDA-MB231(9%)または培地単独(6%)と比較してHLA-A2
+BCMA
+U266(49%)に応じて有意に(
*p<0.05)より高いCD3
+CD8
+T細胞増殖を示した(
図19A~19D、ヒストグラム)。このHLA-A2拘束かつMM特異的CD8
+CTL増殖は、3つのHLA-A2
+個体から作製されたhBCMA
72~80CTLにおいて一貫して観察された(
図19E;棒グラフ)。さらに、hBCMA
72~80CTLは、HLA-A2
+ U266に応答したCD107a脱顆粒マーカー(47.1%)を発現する、ならびにGranzyme B(32.6%)およびパーフォリン(29.9%)を産生するCD8
+T細胞の増大を実証したが、HLA-A2
+ MDA-MB231細胞は応答しなかった(
図19F)。抗腫瘍活性における一致した結果が、BCMA
+MM細胞に対するIFN-γ/IL-2/TNF-α産生、41BB上方制御およびCD107a脱顆粒によって測定されるように、HLA-A2拘束様式で、その他のHLA-A2
+個体(N=5)から作製されたhBCMA
72~80CTLにおいて観察された。これらのデータは、ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチドによるMM特異的免疫応答の誘導をさらに実証する。
【0413】
図19A~9Fでは、ヘテロクリティックBCMA
72~80(
YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドを用いる反復刺激によって作製されたBCMA特異的CTLを、BCMA
+MM細胞またはBCMA
-乳がん細胞に応答した増殖、CD107a脱顆粒、Granzyme B/パーフォリン産生、IFN-γ/IL-2/TNF-α産生および41BB上方制御によるその抗原特異的な、HLA-A2拘束のCD8
+T細胞応答について調べた。結果は、代表的なもの(
図19A~19F)または異なる個体(N=3)から作製したBCMA-CTLを使用する3つの独立実験のまとめとして実証されている。
【0414】
HLA-A2+患者MM細胞に対するヘテロクリティックBCMA72~80CTL機能的免疫応答
【0415】
MM患者のCD138
+腫瘍細胞を、標的細胞として利用して、それぞれのヘテロクリティックペプチドを用いて作製されたBCMA特異的CTLを評価した。ヘテロクリティックBCMA
54~62と比較して、BCMA
72~80ペプチドは、CD107a脱顆粒(hBCMA
54~62CTL 13.8%対hBCMA
72~80CTL 21.5%)およびIL-2産生(それぞれ、4.4%対16.3%)(
図20A)によって測定されるように、患者MM細胞に対するより頑強な抗原特異的CTLおよび抗腫瘍活性を惹起した。hBCMA
72~80CTLは、HLA-A2拘束様式での、CD107a脱顆粒、Granzyme B/IFN-γ/TNF-α上方制御(
図20B)およびパーフォリン/IL-2産生(n=3)(
図20C~20H)を含め、患者細胞に対するより高い抗MM活性を一貫して実証した。したがって、hBCMA
72~80CTLにおいて検出された抗MM応答は、より高い活性化(CD69、CD38)および共刺激分子発現(41BB、CD40L、OX40、GITR)(
図18A~18C)と一致した。これらのデータは、ヘテロクリティックBCMA
72~80の免疫原性に関するさらなる証拠を提供し、新規MM処置におけるその潜在的な臨床適用を支持する。
【0416】
図20A~20Hでは、ヘテロクリティックBCMAペプチド特異的CTLを、患者のMM細胞に対するその機能活性について評価した。ベースライン応答(腫瘍細胞で刺激されていない)に対するHLA-A2陰性またはHLA-A2陽性MM患者から得たCD138
+腫瘍細胞に応答したBCMA-CTLの特異的活性を測定した。結果は、代表的なもの(
図20A、
図20B)または異なる個体(N=3)から作製したBCMA特異的CTLを使用する3つの独立実験のまとめ(
図20C~20H)として実証されている。
【0417】
ヘテロクリティックBCMA72~80特異的CTLは、頑強な抗MM活性を有するCD8+四量体+T細胞について濃縮される。
【0418】
hBCMA
72~80CTLを、四量体陽性集団内でその表現型および抗腫瘍活性についてさらに特徴付けた。四量体陽性CTLは、有意に増大したCD8
+T細胞を示し、活性化(CD38
+:四量体
+対四量体
-:49.4%対3.2%)および共刺激分子発現(CD40L
+:38.0%対1.2%、41BB:24.7%対1.9%、OX40:46.2%対1.7%およびGITR:34.9%対1.5%)(
図21A)を伴った。いくつかのHLA-A2
+個体(n=3)から作製したhBCMA
72~80CTLは、四量体陰性細胞(6%、18%、13%;ドナーA、BまたはC BCMA-CTL)と比較して、四量体陽性細胞(83%、97%、97%;ドナーA、BまたはC BCMA-CTL)によってU266 MM細胞に対してより高いレベルの抗MM活性を一貫して実証した(
図21B)。CD107a陽性またはCD107a陰性CD8
+CTLのいずれか内の四量体陽性細胞の頻度をさらに評価した。CD107a陰性CTL(1%、2%、1%;ドナーA、BまたはC BCMA-CTL)と比較して、脱顆粒CD107a陽性CTL内の四量体
+細胞の有意に高い頻度(82%、98%、98%;ドナーA、BまたはC)が観察された(
図21C)。したがって、これらの結果によって、hBCMA
72~80CTLの特異的抗MM活性が、CTL活性化および共刺激分子の上方制御を示す、BCMAペプチド特異的四量体陽性細胞内に含有されることが確認される。
【0419】
図21A~21Cでは、ヘテロクリティックBCMA
72~80認識性四量体陽性CTLまたは非認識性四量体陰性CTLを、CD8
+T細胞でのCD38、CD40L、41BB、OX40およびGITRの発現について解析した(
図21A)。ヘテロクリティックBCMA
72~80特異的CTL(N=3)の抗腫瘍活性を、四量体陽性CTLまたは四量体陰性CTLサブセット内のCD107上方制御を測定することによって(
図21B)、およびCD107a陽性CTLまたはCD107a陰性CTL内の四量体陽性の状態を評価することによって(
図21C)さらに特徴付けた。
【0420】
ヘテロクリティックBCMA72~80ペプチドは、MM特異的メモリーCD8+CTLを誘導する。
【0421】
BCMA特異的CTL活性を特徴付けるために、実験を実施して、ベースラインと比較した、2サイクルのペプチド刺激後および4サイクルのペプチド刺激後のナイーブ:メモリーCTLサブセットの組成を評価した。ベースラインでのナイーブ(CD45RO
-CCR7
+[ドナー1-ナイーブ:83.0%、CM:0.4%、ドナー2-ナイーブ:84.1%]から2サイクルのペプチド刺激後のセントラルメモリー(CM;CD45RO
+CCR7
+)[ドナー1-ナイーブ:37.4%、CM:32.1%、ドナー2-ナイーブ:19.0%、CM:49.6%]へ、次いで、4サイクルの刺激後のエフェクターメモリー(EM;CD45RO
+CCR7
-)CTL(ドナー1-CM:44.2%、EM:54.6%、ドナー2-CM:18.3%、EM:77.6%)へ進行する徐々に進行する表現型の変化を、CD8
+T細胞内で検出した(
図22A)。全体的に、メモリーCD8
+CTL発生は、各ラウンド(1、2、3、4サイクル後)のヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチド刺激後に漸増し(
図22B~22C)、ナイーブT細胞の対応する減少を伴った(
図22D~22E)。したがって、これらの結果は、ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチドを用いるT細胞の刺激の際のメモリーCTLの誘導および漸進的発生を実証する。
【0422】
図22A~22Eでは、ヘテロクリティックBCMA
72~80CTL(ドナー1、ドナー2)のナイーブ:メモリー表現型を、ベースライン(ペプチド刺激なし)またはペプチド刺激の各サイクルの1週間後に解析した。表現型変化、ナイーブからメモリーCD8
+T細胞への分化およびメモリーCTLの拡大増殖のパターンを、BCMAペプチド刺激の各サイクル後にドットプロット(
図22A)および棒グラフ(
図22B~22E)で実証した。
【0423】
セントラルメモリーhBCMA
72~80CTLは、最大の抗MM活性を実証する
8人(N=8)の異なるHLA-A2
+個体から作製したBCMA特異的CTL内の特異的メモリーT細胞サブセットを、次いで、その抗MM活性について特徴付けた。CD45RO
-非メモリーCTLと比較して、CD45RO
+メモリーCTLは、HLA-A2
+ U266 MM細胞に応じて増大したCD107a脱顆粒(非メモリー対メモリー:7.25%対28.2%)およびHLA-A2
+ McCAR MM細胞(非メモリー対メモリー:4.14%対13.2%)を実証した(
図23A;ドナーA BCMA-CTL)。hBCMA
72~80特異的四量体
+細胞は、異なる個体から作製したBCMA-CTLにおいてCM表現型を主に、一貫して示した(四量体
+細胞内のCM%-ドナーB:88.2%、ドナーC:97.4%、ドナーD:100%)(
図23B)。CM CTLもU266 MM細胞に対するその機能活性について評価した。重要なことに、CD107a脱顆粒のレベルは、CM細胞の頻度と直接的に関連していた(CD107a
+細胞内のCM%-ドナーE:81.0%、ドナーF:82.6%、ドナーG:67.0%、ドナーH:41.5%)(
図23C)。さらに、より高い抗MM活性を示す高レスポンダー(ドナーE、ドナーF)は、中レベルレスポンダー(ドナーG)または低レベルレスポンダー(ドナーH)と比較して、BCMAペプチド特異的CM CTLの頻度の増大を示した。したがって、これらの結果は、ヘテロクリティックBCMA
72~80ペプチドによって作製されたCMサブセットによって誘導された別個のペプチド特異性および抗MM活性をさらに示す。
【0424】
図23A~23Cでは、ヘテロクリティックBCMA
72~80CTLの抗MM活性を、HLA-A2
+MM細胞(U266、McCAR;
図23A)に応じたナイーブ:メモリーCD3
+CD8
+T細胞サブセット内で評価した。セントラルメモリーCD8
+T細胞の頻度を、ヘテロクリティックBCMA
72~80CTL(N=3)の異なるCTLサブセットにおいて、四量体陽性または四量体陰性CTLサブセット内で(
図23B)およびCD107a陽性またはCD107a陰性CTLサブセット内で(
図23C)解析した。
【0425】
LAG3の阻害またはOX40の刺激は、hBCMA
72~80CTLの増殖および抗MM活性を増強する
最後に、実験を実施して、MM細胞に対して高度に応答性であるBCMA-CTLの特異的T細胞サブセットを特徴付けた。CD8
+T細胞サブセットをゲートし、HLA-A2拘束かつMM特異的CTL増殖を実証し、そのナイーブ:メモリーサブセットを特徴付けた。U266 MM細胞に対する最も頑強な応答性および最も増殖するhBCMA
72~80CTLは、主にCMサブセット内であり(ドナー1:97.4%、ドナー2:100%)(
図24A)、これによって、抗MM活性におけるBCMA抗原特異的CTL内のCMサブセットの主要な役割が確認された。次いで、実験を実施して、これらのメモリーT細胞に対するチェックポイント阻害剤(抗LAG3)または免疫アゴニスト(抗OX40)の影響を調べた。抗LAG3または抗OX40のいずれかを用いて処置されたhBCMA
72~80CTLは、特に、HLA-A2
+ U266 MM細胞に対する(未処置28.2%対抗LAG3処置35.8%対抗OX40処置39.5%)、およびHLA-A2
+ McCAR MM細胞に対する(未処置13.2%対抗LAG3処置14.5%対抗OX40処置20.0%)メモリーCTLによる細胞傷害活性の増強を実証した(
図24B)。興味深いことに、チェックポイント阻害剤および免疫アゴニストは、BCMA-CTL内の非メモリー細胞の抗MM応答の増強を誘導しなかった。最後に、抗LAG3および抗OX40の有益な効果を、hBCMA
72~80CTLのCMおよびEMサブセット内でさらに調べた。いずれの処置も、EM細胞と比較して、抗LAG3または抗OX40処置に応じたより高いCD107a脱顆粒によって証明される、BCMA特異的CM細胞に対してより大きな影響を誘導した(
図24C)。したがって、これらの結果は、BCMA特異的CMサブセット内の抗MM活性をさらに増強する、hBCMA
72~80ペプチドによって誘導されたCTLと組み合わせた抗LAG3または抗OX40抗体の有用性を支持する。
【0426】
図24A~24Cでは、U266細胞に応じてヘテロクリティックBCMA
72~80特異的CTL内でMM特異的CD8
+T細胞増殖を誘導する特異的サブセットを同定した(
図24A)。さらに、ヘテロクリティックBCMA
72~80CTLを、メモリーT細胞(
図24B)またはセントラルメモリーT細胞サブセット(
図24C)による抗骨髄腫活性のその修飾について抗LAG3または抗OX40と組み合わせて評価した。
【0427】
考察
同種移植後に再発している難治性MMを有する患者においてでさえ、ドナーリンパ球(DLI)の注入を用いて長く持続する応答が達成されている。DLIのこれらの早期の有望な結果は、MMを処置するための能動特異的免疫療法アプローチの評価の枠組みを提供してきた。がんを標的化するワクチン、このような能動特異的免疫療法アプローチのものは、抗腫瘍活性を有する高度に有効なCD8+CTLを誘導する能力を実証した。ワクチン接種の成功は、適当な患者集団の選択、腫瘍で選択的に発現された抗原を標的化することおよび抗原特異的メモリー抗腫瘍免疫応答を有効に誘導し、維持する組合せアプローチを利用することに応じて変わる。本開示は、MMならびに乳がん、膵臓がんおよび結腸がんを含む固形腫瘍において高度に過剰発現されるXBP1、CD138およびCS1抗原に由来する免疫原性HLA-A2およびHLA-A24特異的ペプチドを提供し、前臨床および臨床研究の両方においてHLA-A2+またはHLA-A24+腫瘍細胞に対する抗腫瘍活性を有するペプチド特異的CD8+CTLを誘導するその能力を実証した。さらに、レナリドミドなどの免疫調節薬を用いる、またはヒストンデアセチラーゼ6阻害剤ACY241を用いるペプチド刺激/ワクチン接種の組合せ研究は、腫瘍細胞に対するペプチド特異的CTL活性を増強した。実験は、レナリドミドまたはACY241のいずれかを用いるペプチド刺激の組合せが、抗原特異的CD8+T細胞活性を増大し、T-bet/Eomesなどの転写調節因子の上方制御および抗原特異的CTL分化を、FOXO、mTORおよびWnt/β-カテニンシグナル伝達経路と連結するAKTの活性化を伴うことを実証した。重要なことに、これらの効果は主に、抗原特異的CD45RO+メモリーCTLに限定され、腫瘍細胞に応答したIFN-γおよびgranzyme B産生およびCD8+T細胞増殖の最も頑強な増大は、主に特異的CMサブセット内で観察された。
【0428】
有望な前臨床結果のために、XBP1/CD138/CS1マルチペプチドワクチンは、くすぶり型MM(SMM)を有する患者を処置する臨床試験において、単独およびレナリドミドと組み合わせて、ならびにトリプルネガティブ乳がんを有する患者を処置する臨床試験において抗PD1と組み合わせて評価された。SMMを有する患者では、マルチペプチドワクチンは、十分に耐容され、単剤療法として免疫原性であり、IFN-γ産生とともに四量体+CD8+CTLの増強された頻度によって証明され、さらに、レナリドミドとの組合せは、四量体陽性およびIFN-γ産生を伴うCD8+T細胞のより高い平均倍数の増大を誘発した。重要なことに、ペプチドワクチンによって、XBP1/CD138/CS1ペプチドに対して特異的なCD45RO+メモリーCTLが誘導され、レナリドミドとの組合せでさらに増強された。SMMにおいて安定疾患および応答が観察されているが、ペプチドワクチン接種によってSMMから活性疾患までの無増悪期間が延長され得るか否かを評価するには無作為化試験が必要である。
【0429】
MM特異的免疫療法を、XBP1/CD138/CS1抗原を超えて拡大するために、本開示はまた、新たに診断されたMM患者(N=616)からCD138+腫瘍細胞上のさらなる腫瘍関連抗原を同定した。ここで、本開示は、正常および悪性形質細胞上で選択的に発現されたBCMAおよびMMにおけるいくつかの現在の免疫処置の標的を標的化する免疫療法戦略の同定および特徴付けを提供する。実施例は、高度に免疫原性の操作されたBCMA特異的ナノペプチド、その天然BCMAペプチドから高度に改善されたHLA-A2親和性/安定性を有するヘテロクリティックBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))およびBCMA54~62(YILWTCLGL(配列番号14))を提供する。これらのペプチドは、BCMA特異的CTL、BCMA特異的四量体+細胞の増大、CD107脱顆粒の増強、Th1型サイトカイン(IFN-γ/IL-2/TNF-α)産生およびMM細胞への増殖をHLA-A2拘束様式で惹起する。最も重要なことに、BCMA特異的メモリーCD8+CTL、CMおよびEM細胞の両方の増大は、自己再生およびMM細胞に対する応答の能力とともに、MMにおける新規ワクチン接種および/または免疫療法アプローチにおけるヘテロクリティックBCMAペプチドの可能性を強力に支持する。実際、本開示は、ヘテロクリティックBCMA72~80ペプチドワクチン接種、BCMA特異的CM細胞のex vivoでの回収および拡大増殖、これらのCM細胞の養子免疫療法としての再注入、次いで、MM患者を有効に処置するためのその持続性を保証するためにその後に必要とされるようなBCMAペプチドを用いるワクチン接種を有する臨床プロトコールを提供する。
【0430】
BCMA特異的メモリーCD8+CTLは、共刺激および免疫抑制の両方のためのT細胞機能を調節する重要な分子を発現することが観察されている。共刺激性および免疫チェックポイント分子の最高の誘導が、MMに対する高度に有効な多機能活性を実証した集団である、hBCMA72~80ペプチド特異的CTL内のCMサブセットで検出された。重要なことに、これらの知見は、BCMA-CTLのチェックポイント阻害剤または免疫アゴニストとの併用療法の、その機能的抗MM活性を増強する可能性を示した。PD-1チェックポイント阻害剤を免疫調節薬レナリドミドもしくはポマリドミドと、または毒性が研究を短縮させたAbダラツムマブと組み合わせる場合の最近の関心事を考えると、これは、特に関連性があり得る。ここで、実施例は、代替阻害性受容体およびMM腫瘍微小環境内の抑制機序を標的化するように試みた。特に、LAG3(CD223)は、CTLAおよびPD1/PD-L1後に臨床において標的化されるべき第3の阻害性受容体であり、BCMA特異的CM CTLで発現された。並行して、免疫アゴニスト、特に、OX40(CD134)、41BB(CD137)およびGITR(CD357)を標的化する共刺激性腫瘍壊死因子受容体が、抗腫瘍免疫応答の増強におけるその治療有用性についてかなり注目されおり、これらの中でも、抗OX40 mAbが、いくつかの前臨床研究においてエフェクターT細胞拡大増殖および機能的抗腫瘍活性をブーストすることによる腫瘍退縮の誘導において有望な有効性を最近実証した。重要なことに、臨床等級抗LAG3および抗OX40(Bristol-Myers Squibb;New York、NYによって提供された)を使用して、MM細胞に対するヘテロクリティックBCMA72~80特異的CTLの機能活性を評価した。ex vivo実験によって、抗LAG3および抗OX40の両方とも、非メモリーCTLの活性に影響を及ぼすことなく、MM細胞に対するBCMA-CTL内のメモリーCTLの機能活性を特異的に増大することが実証された。複数のHLA-A2+個体のT細胞から作製されたBCMA-CTLに対する影響は、抗OX40を用いる処置後に、抗LAG3よりも大きく、BCMA特異的CTL内のEMサブセットに対してCMで大きかった。これらの研究は、BCMAペプチド特異的免疫療法の、免疫アゴニストまたはチェックポイント阻害剤との科学的情報に基づいた組合せ臨床試験の枠組みを提供する。
【0431】
要約すると、これらの実験は、MM細胞に対する機能的抗腫瘍活性を有する抗原特異的CD8+CTLを誘導可能である、新規免疫原性HLA-A2特異的操作BCMAペプチドを同定し、検証した。これらの結果は、ワクチンとしての、および/または自己抗原特異的メモリーCTLの拡大増殖のための刺激としてのMM患者におけるこれらの高度に免疫原性のヘテロクリティックBCMAペプチドの治療適用の枠組みを提供する。それらは、BCMA誘導性抗MM応答を増強するための、BCMAペプチドワクチンまたはBCMA特異的養子T細胞免疫療法を、抗OX40および/または抗LAG3とともに組み込む組合せの潜在的有用性をさらに支持する。
【0432】
(実施例13 TACI特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球を誘発するためのHLA-A2特異的免疫原性TACIペプチド)
実験を実施して、新規免疫原性操作ヘテロクリティック(heteroclictic)TACI154~162(YLSADQVAL(配列番号16))ペプチドが、MMに対する頑強な多機能性免疫応答を有する抗原特異的メモリーCD8+CTLを誘導できることを実証した。この実施例におけるこれらの結果は、MM患者におけるヘテロクリティックTACIペプチドの治療適用の枠組みを提供し、骨髄腫またはTACIを発現するその他の疾患を有する患者を処置するための、TACIペプチド特異的ワクチンまたはTACIペプチド特異的養子T細胞免疫療法の治療適用を支持する。
【0433】
実施例において以下の材料および方法を使用した。
【0434】
材料および方法
細胞系
HLA-A2+(U266およびMcCAR)およびHLA-A2-(OPM2およびRPMI)MM細胞系は、ATCC(Manassas、VA)から入手した。T2細胞系、HLA-A2を発現するヒトBおよびT細胞ハイブリッドは、Dr. J. Molldrem(University of Texas M. D. Anderson
Cancer Center、Houston、TX)によって提供された。細胞系を、10%ウシ胎児血清(FCS;BioWhittaker、Walkersville、MD)、100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Gibco-Life Technologies)を追加補充した、DMEM(MMおよびT2細胞用;Gibco-Life Technologies、Rockville、MD)培地で培養した。
【0435】
試薬
蛍光色素がコンジュゲートしている抗ヒトモノクローナル抗体(mAb)は、Becton Dickinson(BD)(San Diego、CA)、LifeSpan Bioscience(Seattle、WA)またはBioLegend(San Diego、CA)から購入した。Live/Dead Aqua染色キットは、Molecular Probes(Grand Island、NY)から購入した。組換えヒトGM-CSFは、Immunex(Seattle、WA)から入手し、ヒトIL-2、IL-4、IFN-αおよびTNF-αは、R&D Systems(Minneapolis、MN)から購入した。TACIペプチド特異的四量体-PEは、MBL International Corporation(Woburn、MA)によって合成された。
【0436】
合成ペプチド
天然TACIペプチド[TACI178~186(FLVAVACFL(配列番号7))、TACI174~182(VLCCFLVAV(配列番号8))、TACI154~162(KLSADQVAL(配列番号9))、TACI166~174(TLGLCLCAV(配列番号10))、TACI161~169(ALVYSTLGL(配列番号11))、TACI155~163(LSADQVALV(配列番号12))]、ヘテロクリティックTACIペプチド[TACI178~186(YLVAVACFL(配列番号15))、TACI154~162(YLSADQVAL(配列番号16))、TACI166~174(YLGLCLCAV(配列番号17))]およびHIV-Gag77~85(SLYNTVATL(配列番号21))ペプチド(HLA-A2特異的陽性対照ペプチド)は、標準fmoc(9-フルオレニルメチル-オキシカルボニル)化学によって合成され、逆相クロマトグラフィーを使用して>95%に精製され、分子量の質量分析によって検証された(Biosynthesis、Lewisville、TX)。
【0437】
HLA-A2親和性および安定性アッセイ
T2細胞を、種々の濃度のペプチドおよびβ2-ミクログロブリン(3μg/ml)(Sigma、St Louis、MO)を用いて一晩パルスした。一晩インキュベートした後、細胞をHLA-A2-PE mAbを用いて染色し、FACSCanto(商標)フローサイトメーター(BD)を使用して解析した。ペプチド/HLA-A2複合体結合の安定性は、ブレフェルジンA処置の0、2、4、6および14時間後、それに続くHLA-A2-PE mAbを用いる染色およびフローサイトメトリー解析により、ペプチドが負荷されたT2細胞で測定した。
【0438】
樹状細胞の作製
末梢血単核細胞(PBMC)から単離された単球を、10% FCSを追加補充したRPMI-1640培地(Gibco-Life Technologies)中、1,000ユニット/mlのGM-CSFおよび1,000ユニット/mlのIL-4の存在下で7日間培養した。培養物に新鮮培地およびGM-CSFおよびIL-4を1日おきに添加した。成熟DC(mDC)は、7日目に得られ、1,000ユニット/mlのIFN-αおよび10ng/mlのTNF-αとともにさらに3日インキュベートを続けた。
【0439】
TACIペプチド特異的CTLの誘導
TACIペプチド特異的CTL(TACI-CTL)を、ペプチドがパルスされた抗原提示細胞(APC)を有するHLA-A2+ドナーから得られた濃縮CD3+T細胞の反復刺激によってex vivoで作製した。手短には、ペプチド(50μg/ml)がパルスされたAPCを照射し(10Gy)、これを使用して、1:20のAPC/ペプチド対T細胞比でT細胞を刺激した。T細胞培養物を7日毎に再刺激し、IL-2(50ユニット/ml)の存在下、10%ヒトAB血清(BioWhittaker)を追加補充したAIM-V培地中で維持した。
【0440】
TACIペプチド特異的CTLまたは刺激性腫瘍細胞の表現型解析
MM標的細胞で表現型特徴付けを実施して、TACI発現を適合させた。Live/Dead Aqua染色キットおよび蛍光色素がコンジュゲートしている抗ヒトmAbを用いる染色後に、TACI-CTLで表現型特徴付けを実施した。染色後、細胞を洗浄し、2%パラホルムアルデヒド中で固定し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0441】
カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)トラッキングによる細胞増殖
TACI-CTLを、CFSE(Molecular Probes)を用いて標識し、IL-2(10ユニット/ml)の存在下で照射された(10Gy)MM細胞またはペプチドがパルスされたAPCとともに同時インキュベートした。同時培養の4、5、6または8日目に、細胞を回収し、Live/Dead Aqua染色キットならびにCD3、CD8、CD45ROおよびCCR7に対して特異的な蛍光色素がコンジュゲートしている抗ヒトmAbを用いて染色した。CD3+CD8+CTL増殖のレベルは、フローサイトメトリーによって測定されるようなCFSE蛍光強度の低減として決定した。
【0442】
CD107a脱顆粒および細胞内IFN-γ/IL-2/TNF-αサイトカイン産生
TACI-CTLの機能的細胞溶解活性は、フローサイトメトリーによってCD107a脱顆粒(細胞毒性)およびTh1サイトカインの産生によって測定した。手短には、TACI-CTLを、CD107a mAbの存在下で腫瘍細胞またはT2/ペプチドとともに同時インキュベートした。1時間後、CD28/CD49d mAb、ブレフェルジンAおよびMonensin(BD)をさらに5時間のインキュベーションの間、添加した。細胞を回収し、PBSで洗浄し、重要なT細胞マーカーに対する、蛍光色素がコンジュゲートしているmAbとともにインキュベートした。表面染色後、細胞を固定し/透過処理し、抗IFN-γ/IL-2/TNF-α mAbを用いて染色し、Perm/Wash溶液(BD)を用いて洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーによって解析した。
【0443】
統計解析
結果を平均±SEとして示す。群を、独立スチューデントt検定を使用して比較した。相違は、p<0.05である場合に有意と考えた。
【0444】
結果
HLA-A2分子に対する最高の結合親和性および安定性を有するヘテロクリティックTACI154~162ペプチドの同定
BIMASおよびNetCTLを含む種々の検索ソフトウェアプログラムを使用して、全長TACIタンパク質配列を評価して、HLA-A2親和性、延長された半減時間解離速度、プロテアソームC末端切断およびTAP輸送を有するエピトープを予測した。選択された6種の天然ペプチド[TACI178~186(FLVAVACFL(配列番号7))、TACI174~182(VLCCFLVAV(配列番号8))、TACI154~162(KLSADQVAL(配列番号9))、TACI166~174(TLGLCLCAV(配列番号10))、TACI161~169(ALVYSTLGL(配列番号11))、TACI155~163(LSADQVALV(配列番号12))]の中で、TACI161~169を除くすべてのペプチドが、HLA-A2特異性を示したが、最高レベルの親和性は、TACI166~174によって検出された。HLA-A2分子に対するペプチドの結合および安定性を改善するために、TACI178~186(YLVAVACFL(配列番号15))、TACI154~162(YLSADQVAL(配列番号16))およびTACI166~174(YLGLCLCAV(配列番号17))ペプチドを含む3種のヘテロクリティックペプチドを設計し、合成し、そのHLA-A2親和性を評価した。ヘテロクリティックTACI154~162ペプチドは、50μg/mlおよび100μg/mlのペプチド用量で、その天然形態から大きく増強された親和性を示した。ヘテロクリティックTACI154~162ペプチドのHLA-A2親和性は、HLA-A2特異的陽性対照ペプチドとして働くHIV-Gag77~85(SLYNTVATL(配列番号21))の親和性と同様であった。しかし、操作されたヘテロクリティックTACI178~186およびTACI166~174ペプチドは、その天然ペプチドと比較してHLA-A2親和性において有意な改善を示さなかった。選択されたTACIペプチド(50μg/ml)を、HLA-A2分子に対するその親和性および安定性についてさらに評価した。その天然ペプチドと比較して、ヘテロクリティックTACI154~162を用いた場合に、最高のHLA-A2結合親和性(時間=0)および安定性(2、4、6および18時間)が見られた。全体的に、ヘテロクリティックTACI154~162のHLA-A2親和性安定性は、種々の時点でHLA-A2陽性対照HIV-Gag77~85ペプチドと同様であった。調べたTACIペプチドの間での最高レベルのHLA-A2親和性および安定性に基づいて、MMに対する抗原特異的エフェクターT細胞を誘導するその免疫原性の可能性のさらなる評価のために、ヘテロクリティックTACI154~162を選択した。
【0445】
ナイーブCD8+細胞から分化した抗原特異的メモリーCD8+細胞の発生および拡大増殖による、ヘテロクリティックTACI154~162ペプチド特異的CTLの抗腫瘍活性。
【0446】
ヘテロクリティックTACI
154~162(
YLSADQVAL(配列番号16))を用いる、HLA-A2
+ドナーから得た濃縮CD3
+T細胞の毎週刺激後、CD8
+T細胞の表現型変化を、ナイーブ:メモリーサブセット内で評価した。ベースライン[ペプチド刺激の前]で、CD8
+T細胞の大部分(84.1%)は、ナイーブ(CD45RO
-CCR7
+)細胞サブセットと見られた。ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドを用いる刺激の際、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチド特異的CTL(hTACI
154~162CTL)内でのナイーブCTLのセントラルメモリーCTL(CM;CD45RO
+CCR7
+/CD3
+CD8
+)への、次いで、エフェクターメモリーCTL(EM;CD45RO
+CCR7
-/CD3
+CD8
+)への漸進的分化が観察された。メモリーCTLの発生は、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドを用いる3サイクルのペプチド刺激後[ナイーブ:2.2%、CM:47.8%、EM:52.4%]に検出された。さらなる分化は、ナイーブCTLからメモリーCTLサブセットへ4サイクルのペプチド刺激後に[ナイーブ:0.72%、CM:24.4%、EM:74.1%]および5サイクルの刺激後に[ナイーブ:0.57%、CM:7.36%、EM:69.7%]観察され(
図29A)、ペプチドのメモリーT細胞を発生させる可能性を支持した。さらなるHLA-A2
+ドナー(N=3)から得たT細胞において、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドの免疫原性をさらに評価した(
図29B)。ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドを用いる刺激後に、ナイーブCD8
+CTLの漸減およびメモリーCD8
+CTL(セントラルメモリーおよびエフェクターメモリーCTLの両方)の増大が、試験したすべての個体のT細胞において検証された。したがって、これらの結果から、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドの、メモリーCD8
+T細胞を発生させる能力が確認される。
【0447】
次いで、実験を実施して、骨髄腫細胞に応答したヘテロクリティックTACI
154~162特異的CTLの免疫機能能力を評価した。HLA-A2
+ U266 MM細胞との同時培養の際のヘテロクリティックTACI
154~162ペプチド特異的CTLにおいて、特に、セントラルメモリーおよびエフェクターメモリーCTLサブセットを含むメモリーCTLにおいて、CD8
+CTLの増殖を検出した。より多くのサイクルのTACI
154~162ペプチド刺激後に、TACI-CTLの増殖能は、増大し続けた[第2の刺激:増殖CM-38.1%、増殖EM-19.2%;第3の刺激:増殖CM-54.4%、増殖EM-85.2%;第4の刺激:増殖CM-64.4%、増殖EM-86.9%](
図29C)。したがって、これらの結果は、骨髄腫細胞に応答したメモリーCD8
+T細胞の発生および持続的拡大増殖によってヘテロクリティックTACI
154~162ペプチド特異的CTLの免疫機能をさらに支持する。
【0448】
HLA-A2拘束様式での多機能性およびTh1特異的抗骨髄腫活性を実証する、ヘテロクリティックTACI154~162特異的CTLにおけるTACI特異的四量体+CTLの増殖。
【0449】
骨髄腫細胞に対するその多機能免疫応答についてhTACI
154~162CTLの機能活性を調べた。hTACI
154~162CTLは、HLA-A2
+ McCAR MM細胞に対するHLA-A2拘束の脱顆粒(CD107a上方制御)を実証し、これは、HLA-A2
-RPMI(8.24%)または培地単独(5.03%)と比較して、腫瘍細胞に対する細胞傷害活性と直接的に関連している(
図30A)。さらに、hTACI
154~162CTLは、HLA-A2
-RPMI(IFN-γ 8.26%、TNF-α 7.80%、IL-2 6.42%)または培地単独(IFN-γ 5.76%、TNF-α 5.52%、IL-2 6.24%)と比較して、HLA-A2
+ McCARに応じたTh1型のサイトカイン、IFN-γ(15.0%)、TNF-α(17.5%)およびIL-2(14.9%)のより高い産生を実証した。MHCミスマッチHLA-A2
-MM細胞(RPMI)と比較して、CD107a脱顆粒およびIFN-γ産生によって測定されるような特異的抗MM活性が、HLA-A2
+ MM細胞(McCAR)に対して異なるHLA-A2
+個体(N=5)から作製されたhTACI
154~162CTLにおいて一貫して観察された(
図30B、3C)。ヘテロクリティックhTACI
154~162CTLのHLA-A2特異的抗MM活性を確認するために、実験を実施して、HLA-A2
+U266およびHLA-2
-OPM2細胞を含むさらなる骨髄腫細胞系に対するその免疫機能活性を評価した。HLA-A2
+ドナー1(
図31A)ならびに合計5人の異なるHLA-A2
+個体(
図31B~31E)から作製されたhTACI
154~162-CTLにおいて、骨髄腫細胞に対して同一パターンのHLA-A2拘束の機能的抗腫瘍活性が観察された。さらに、TACI
154~162ペプチド特異的四量体
+CTLについて陽性染色されたhTACI
154~162CTLおよびこれらの四量体
+細胞は、HLA-A2
+U266骨髄腫細胞に応答した高レベルのCD107a脱顆粒および増殖を実証した(
図31F)。したがって、これらの結果は、MM細胞に対して多機能活性(細胞毒性、Th-1型サイトカイン産生)を有する抗原特異的CTLを惹起する、ヘテロクリティックTACI
154~162ペプチドのHLA-A2拘束の免疫原性を実証し、これは、骨髄腫患者における免疫原性ヘテロクリティックTACI
154~162(
YLSADQVAL(配列番号16))ペプチドの潜在的治療適用を支持する。
【0450】
(実施例14 BCMAヘテロクリティックペプチドが封入されたナノ粒子は、多発性骨髄腫に対する抗原刺激能および腫瘍特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球を増強する)
【0451】
B細胞成熟抗原(BCMA)、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのメンバーおよびB細胞活性化因子(BAFF)の結合のための受容体および増殖誘導性リガンド(APRIL)は、MMの有望な治療標的である。BCMAはMM細胞および形質細胞上で制限された発現パターンを有し、MM細胞成長、生存および薬物耐性の促進において役割を有している。
【0452】
本開示は、MM患者において抗腫瘍応答を有効に惹起し、増大するトランスレーショナルリサーチの有望な領域として、BCMAを標的化するナノ医療ベースの治療薬を同定した。いくつかのナノ医療が利用可能であり、より進歩したナノ粒子構築物が抗原封入の開発下にある。この目的のために、この実施例は、BCMAに対して特異的な新規操作ペプチドを提供し、不十分なペプチド安定性、酵素分解に対する感受性ならびに低い抗原取り込みおよび送達を含む、遊離ペプチドワクチンの制限を克服するために、ヘテロクリティックBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドが封入されたナノ粒子をベースとするがんワクチンを使用した。さらに、より持続した抗原放出および増大したバイオアベイラビリティおよび免疫原性ペプチドの提示を有する、MM患者においてより頑強なBCMA特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を誘導するために、ナノ技術をベースとするがんワクチンを開発した。ここで、実験を実施して、MMを有する患者を処置するための、BCMA抗原に対して特異的な新規ナノ医療ベースの治療的送達系の可能性を調べた。この実施例の目的は、機能的抗骨髄腫活性を有するBCMA特異的CD8+CTLを効率的に惹起する、最適なナノ粒子によって封入されたBCMA抗原構築物を設計することであった。
【0453】
結果は、種々の抗原放出動態を有するナノ粒子[リポソームまたはポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)]が、ヘテロクリティックBCMAペプチドを抗原提示細胞に効果的に送達し、抗MM活性を有するBCMA抗原特異的CTLを惹起するその能力を実証したことを示す。ヘテロクリティックBCMAペプチドが封入されたナノ粒子は、遊離ペプチドよりも、ヒト樹状細胞によるより高い取り込みを実証し、最高の取り込みは、リポソームをベースとするナノ粒子を用いて媒介された。対照的に、PLGAベースのナノ粒子を用いて誘導されたBCMA特異的CTLは、MM細胞に対して最高の機能活性および特異的免疫応答を実証した。重要なことに、PLGA/BCMAペプチドナノ粒子によって誘導されたBCMA特異的CTLは、遊離BCMAペプチドまたはリポソーム/BCMAペプチドナノ粒子を用いて作製されたBCMA-CTLよりも、MM患者の腫瘍細胞およびMM細胞系に応じたより大きなCD107a脱顆粒、抗原特異的CD8+CTL増殖およびTh-1型サイトカイン(IFN-γ、IL-2、TNF-α)産生を示した。PLGA/BCMAナノ粒子によって作製されたBCMA-CTL内のCD28共刺激分子上方制御、四量体+CTL産生およびペプチド特異的応答もまた、遊離BCMAペプチドまたはリポソーム/BCMAペプチドナノ粒子を用いて作製されたBCMA-CTLよりも大きかった。さらに、PLGA/BCMAナノ粒子は、抗原特異的メモリーCD8+T細胞のより頑強な誘導を引き起こし、これは、BCMA-CTL内の非メモリーCD8+T細胞よりも、CD107a脱顆粒およびIFN-γ産生によって証明される有意に高い抗腫瘍活性を実証した。PLGA/BCMAペプチドによる抗腫瘍活性を有するセントラルメモリーCTLの誘導は、最適ペプチド放出動態および増強された免疫原性と関連していた。
【0454】
したがって、これらの結果は、ヘテロクリティックBCMAペプチドが封入されたナノ粒子戦略が、樹状細胞への、続いて、T細胞へのペプチド送達を増強し、それによって、MMに対して多機能活性を有するBCMA特異的セントラルメモリーCTLを誘導することを実証する。
【0455】
これらの結果はまた、MMに対するBCMAペプチド特異的治療薬の免疫原性を増強する封入されたヘテロクリティックBCMAペプチドを使用するナノ技術の有用性を実証する。重要なことに、観察結果は、BCMA特異的メモリーT細胞免疫応答を増強し、現在のペプチドベースのがんワクチンおよび養子免疫療法の制限を克服し、MMにおける患者の転帰を改善するためのPLGAナノ粒子ベースのヘテロクリティックBCMAペプチド送達の治療適用の枠組みを提供する。
【0456】
この実施例において、以下の方法および材料を使用した。
【0457】
材料および方法
材料
ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA、分子量23,000、コポリマー比50:50)は、Birmingham Polymers(Birmingham、AL)から購入した。ポリビニルアルコール(PVA、平均分子量30,000~70,000)、トリフルオロ酢酸、アセトニトリル、リポ多糖類およびL-15(Leibovitz)培地は、Sigma-Aldrich(St Louis、MO)から購入した。
【0458】
BCMAペプチドが負荷されたPLGA-NPの製剤化および特徴付け。
【0459】
免疫原性ヘテロクリティックhBCMA72~80(YLMFLLRKI(配列番号13))ペプチドを使用して、BCMA特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の作製のためのBCMA抗原特異的ナノ粒子調製物を製造した。二重エマルジョン溶媒技術を使用して、PLGA-NPを有するhBCMA72~80ペプチドを製剤化し、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)とともにエマルジョンを安定化した。PLGA-NPを有するヘテロクリティックhBCMA72~80ペプチドを、実質的にこれまでに記載されたように製剤化した(Sahoo SK, et al. 2004)。手短には、PLGA(50:50ラクチド対グリコリド比)およびペプチドまたはブランクPLGA自体をジクロロメタン(DCM)中で乳化し、混合物を2%PVAに再懸濁して、油および水エマルジョンを形成した。乳化プロセスは、アイスバケット中、55ワットで10分間マイクロチッププローブ超音波装置を使用して完了した。エマルジョンを室温で3時間撹拌して、DCMの蒸発およびPLGA-NPの形成を可能にした。4℃で30分間の30,000rpmでの超遠心分離によってペプチドが負荷されたPLGA-NPを回収して、PVAおよび遊離ペプチドを枯渇させ、洗浄し、PBSに再懸濁した。PLGA-NP構造を評価するために、ナノ粒子製剤を24時間凍結乾燥し、走査型電子顕微鏡(Hitachi S-4800 microscope、Schaumburg、IL)を使用して可視化した。
【0460】
BCMAペプチドが負荷されたリポソーム-NPの製剤化および特徴付け
【0461】
薄膜湿潤化法(thin film hydration method)を使用して、BCMAペプチドが負荷されたリポソーム-NPを合成した。コレステロール(MW=386.654)、DOPC(MW=786.113)およびDOTAP(MW=698.542)(Avanti Polar、Alabaster、AL)の混合物を用いてリポソーム脂質二重層を製造した。手短には、3mMコレステロール、5mM DOPCおよび5mM DOTAPの混合物から1mlのストック溶液を、クロロホルム中で調製した。ロータリーエバポレーター(RV 10、IKA、Wilmington、NC)を使用して溶媒を蒸発させると、フラスコの底に薄い脂質膜が得られた。脂質膜を一晩真空乾燥に付して、あらゆる残存する有機溶媒を除去した。翌日、リン酸ナトリウム(二塩基性;pH11)緩衝液および1% DMSOに溶解したhBCMA72~80ペプチドを使用して脂質膜を湿潤化させ、10回の凍結-解凍サイクル(-80℃および37℃)と、それに続く氷上での1分間のプローブ音波処理を使用して、所望の範囲に粒径を低減した。超遠心分離によってペプチドが負荷されたリポソーム-NPを回収し、PBSに再懸濁した。湿潤化ステップを除く同一手順に従ってブランクリポソームを調製し、これでは、いかなるペプチドも伴わない1%DMSOを含む二塩基緩衝液を使用した。透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、BCMAペプチドが負荷されたリポソーム-NPの表面形態学を特徴付けた。陰性染色として酢酸ウラニル(2%)を使用し、TEM(JEM-1000、JEOL、東京、日本)を使用してBCMAペプチドが負荷されたリポソーム-NPを可視化した。
【0462】
PLGA-NPまたはリポソーム-NPにおけるBCMAペプチド封入
【0463】
PLGA-NPまたはリポソーム-NPでのペプチド封入のレベルを、製造業者によって示唆されたプロトコールによって定量的蛍光定量的ペプチドアッセイキット(Thermo Fisher)を使用して測定した。手短には、等量の、懸濁物のBCMAペプチド、PLGA-NPに負荷されたBCMAペプチド(10μl)またはリポソーム-NPに負荷されたBCMAペプチド(10μl)を、96ウェルの蛍光に適合するマイクロプレートに3連でロードした。陰性対照としてブランクPLGAまたはブランクリポソームを使用した。次いで、各ウェルに1:1アセトニトリル:DMSOの溶液(70μl)およびFluoroBrite(商標)DMEM(20μl)を添加し、暗所、室温で5分間インキュベートした。アセトニトリル:DMSO溶液を対照として使用し、バックグラウンド蛍光を測定した。インキュベーション後、390nm/475nmでEx/Emで分光光度計を使用して蛍光を測定した。線形フィットで作製された標準曲線(0~1,000μg/ml)に基づいてペプチド濃度を決定した。
【0464】
単球由来樹状細胞の作製
単球由来樹状細胞(DC)を実質的にこれまでに記載されたように作製した(Bae et al. 2011, Bae et al. 2012)。手短には、HLA-A2+正常ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から単離された単球を、10%FCSを追加補充したRPMI-1640培地(Gibco-Life Technologies)中、1,000U/mlのGM-CSFおよび1,000U/mlのIL-4の存在下で7日間培養した。サイトカインを含有する新鮮培地を1日おきに置き換える。未熟樹状細胞を、取り込み研究のために7日目に培養物から集めた。成熟DCは、7日目に未熟樹状細胞作製の際に、10%FCS-RPMI中の新鮮なGM-CSFおよびIL-4とともに、1,000U/mlのIFN-αおよび10ng/mlのTNF-αを添加し、次いで、さらに3日間インキュベートすることによって得た。未熟または成熟DCのいずれかを抗原提示細胞(APC)として使用した。
【0465】
樹状細胞によるBCMAペプチドが封入されたナノ粒子の結合および取り込み
未熟ヒト樹状細胞(immDC)を回収し、洗浄し、血清不含培地に再懸濁し(1×106個細胞/ml)、最終で5×105個細胞/ウェルの濃度で48ウェルTCプレートのウェルに分注した。細胞を、3μg/mlのヒトβ2ミクログロブリンの存在下で50ug/mlのBCMAペプチド-FITCペプチドまたはBCMAペプチド-FITCが封入されたナノ粒子を用いてパルスし、次いで、37℃でインキュベートした。immDCのペプチド負荷を、フローサイトメトリーによって時間依存的に評価した(0、30分、1時間、2時間、6時間、18時間)。さらに、BCMAペプチド-FITC取り込みを、2時間のペプチドパルス後に樹状細胞上で共焦点顕微鏡法(Nikon widefield Microscope;東京、日本)によって画像化した。インキュベーション後、ImmDCを洗浄し、2%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences、Hatfield、PA)を用いて固定し、300nMのDAPI(Sigma)を用いて染色して、細胞核を同定した。
【0466】
新規に診断された多発性骨髄腫患者からの初代CD138+腫瘍細胞の単離。
【0467】
適当なインフォームドコンセント後に、RoboSep(登録商標)CD138陽性免疫磁気選択技術(StemCell Technologies)を使用して、初代CD138+細胞を、HLA-A2+およびHLA-A2-両方の新規に診断された多発性骨髄腫患者から得た骨髄単核細胞(BMMC)から単離した。
【0468】
BCMAペプチド特異的CTLの作製。
【0469】
BCMAペプチド特異的CTL(BCMA-CTL)を、(1)HLA-A2特異的BCMA免疫原性ペプチド(50ug/ml)、(2)ペプチドを含まないブランクナノ粒子(PLGAまたはリポソーム)または(3)BCMAペプチド(50ug/ml)が封入されたナノ粒子(PLGA/ペプチドまたはリポソーム/ペプチド)を用いる、HLA-A2+正常ドナーから単離された末梢血単核細胞の反復刺激によってex vivoで作製した。PBMCを10%ヒトAB血清(BioWhittaker)を追加補充したDMEM培地中で培養し、合計4または5サイクルの間適当なBCMAペプチドを用いて毎週パルスした。第2の刺激の2日後にT細胞培養物にIL-2(50U/ml)を添加した。
【0470】
BCMAペプチドが封入されたナノ粒子刺激によって作製されたBCMA-CTLの表現型特徴付け。
【0471】
BCMAペプチド特異的CD8+CTLを、ナイーブ:メモリー細胞発生およびCD28共刺激分子の発現についてフローサイトメトリーによって評価した。さらに、BCMAペプチド特異的CD8+CTLをBCMAペプチド特異的四量体-PEを用いて染色することによって培養物内で評価した。37℃で30分間の四量体染色後、細胞を洗浄し、CD8-FITCおよびCD28-APC mAbを用いて染色した。染色後、細胞を洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、LSRII Fortessa(商標)フローサイトメーターを使用して獲得し、FACS DIVA(商標)v8.0(BD)またはFlowJo v10.0.7(Tree star、Ashland、OR)ソフトウェアを使用して解析した。BCMA-CTLをゲート化された総CD3+CD8+T細胞集団内の特異的メモリー(セントラルメモリー、エフェクターメモリー)/非メモリー集団の存在/頻度について解析した。
【0472】
BCMAペプチドが封入されたナノ粒子を用いて作製されたBCMA-CTLの抗骨髄腫特異的機能活性の評価。
【0473】
(1)BCMA免疫原性ペプチド(50μg/ml)、(2)ペプチドを含まないブランクナノ粒子または(3)BCMAペプチド(50μg/ml)PGLA/ペプチドまたはリポソーム/ペプチドナノ粒子を用いて作製されたBCMA特異的CTL(N=3)を、HLA-A2+およびHLA-A2-骨髄腫細胞系の両方または初代CD138+腫瘍細胞に対するその増殖応答および抗腫瘍活性について評価した。手短には、BCMA抗原特異的CTL(5×105個細胞)増殖を、CFSE(Molecular Probes)標識されたCTLの、照射された(10Gy)骨髄腫細胞との同時培養によって測定した。CFSEアッセイの3、4、5または6日目に、細胞を回収し、live/dead-aquaおよび蛍光色素がコンジュゲートしている抗CD3および抗CD8 mAbを用いて染色し、フローサイトメトリーによって解析した。骨髄腫細胞系または初代CD138+腫瘍細胞に応答した、BCMA-CTL機能的CD107a脱顆粒(細胞毒性)およびTh1 IFN-γ/IL-2/TNF-αサイトカイン産生を解析した。手短には、それぞれのBCMA-CTL(5×105個細胞)を、蛍光色素がコンジュゲートしている抗CD107a mAbの存在下で標的細胞とともに同時インキュベートした。1時間同時培養した後、ブレフェルジンAおよびMonensin(BD)のカクテルを添加し、さらに5時間インキュベートした。次いで、live/dead-aquaおよび種々の細胞表面抗原に対して特異的な蛍光色素がコンジュゲートしているmAbを用いて細胞を染色し、固定し、透過処理し、IFN-γ、IL-2またはTNF-αに対して特異的なmAbを用いて細胞内染色した。最後に、細胞を洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、LSRII Fortessa(商標)フローサイトメーターを使用して獲得し、FACS DIVA(商標)v8.0またはFlowJo v10.0.7ソフトウェアを使用して解析した。
【0474】
結果
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄における悪性形質細胞のクローン性増殖および蓄積、血清および/または尿における単クローン性タンパク質ならびに骨溶性骨病変の発生を特徴とするB細胞悪性疾患である。新規治療薬を使用する処置における最近の進歩にもかかわらず、MMは不治のままである。前臨床研究は、抗骨髄腫CD8+CTLは、XBP1、CD138およびCS1を含む種々の腫瘍関連抗原(TAA)を標的化する免疫原性HLA-A2またはHLA-A24ペプチドを用いて作製され得ることを示している。さらに、これらのペプチドを用いるワクチン接種は、臨床試験に検出されたように、MM特異的免疫応答を生成できる。これらの抗原を超えて骨髄腫において抗原特異的免疫療法および養子免疫療法の幅および程度を拡大するために、本開示は、新規に診断されたMM患者(N=616)から得た腫瘍細胞上のさらなるTAAを提供する。ここで、本開示は、BCMAに特異的な新規ヘテロクリティックペプチド、B細胞活性化因子(BAFF)および増殖誘導性リガンド(APRIL)の結合のための受容体を提供する。BCMA抗原は、MM細胞成長の促進、生存および薬物耐性におけるその決定的な役割とともに、MM細胞および形質細胞上でのその制限された発現パターンのために、現在、抗体、免疫毒素およびCAR Tを用いて標的化されているが、好都合な治療指数を有するより有効な骨髄腫特異的エフェクター細胞を誘導可能な新規送達系を設計する必要が依然として大いにある。患者において骨髄微小環境へのBCMAペプチド送達を促進し、抗腫瘍免疫応答を増大するために、ペプチド安定性、取り込みおよび送達を増大することによって酵素分解からのBCMAペプチドの潜在的な保護を提供し、遊離ペプチドワクチンの制限を克服するナノ粒子を使用するアプローチを設計した。ナノ技術をベースとするがんワクチンの目的は、持続する抗原放出および免疫原性ペプチドの提示による、より長いより良好なT細胞刺激によって、MM患者においてより頑強なBCMA特異的CD8+CTL免疫応答および抗腫瘍活性を誘発することであった。実験を実施して、BCMAペプチドを封入している2種の異なる種類のナノ粒子、PLGAおよびリポソームを評価した。ペプチド単独またはリポソーム/ペプチドと比較して、PLGA/ペプチドは、抗原特異的メモリーCTL誘導と関連している最大の抗腫瘍活性を有するBCMA特異的CD8+T細胞を惹起する。これらの結果は、骨髄腫においてBCMAペプチド特異的抗腫瘍活性を効率的に誘導し、患者の転帰を改善するために、生物分解性および生体適合性を有する、米国食品医薬品局(FDA)によって認められたヒト使用のために承認されているPLGAナノビヒクルを使用する治療用ワクチン接種および/または養子免疫療法戦略の枠組みを提供する。
【0475】
BCMAペプチドが封入されたナノ粒子の特徴付けおよび定量化
【0476】
二重エマルジョン溶媒技術は、PLGA NPを製剤化し、エマルジョンを安定化するために最もよく使用される方法である。動的光散乱を使用する大きさおよびゼータ電位測定のために、凍結乾燥粒子を蒸留水に再懸濁した。ブランクPLGAは、309.0±4.0nm(n=3)の大きさを示し、一方で、ペプチドが負荷されたPLGA-NPは大きさはより小さく(257.7±11.5nm、n=3)、これは、PLGAポリマーおよびペプチド間の相互作用に起因し得る。ブランクおよびPLGA-NP両方のゼータ電位は、-0.06~-1.1mVであった。PLGA-NPの多分散指数(PDI)は≦0.2であり、均一な大きさ分布を示す。ブランクPLGAまたはBCMAペプチドが封入されたPLGA-NPを、金/パラジウムを用いてスパッタコーティングし、50×で20kV未満で走査型電子顕微鏡を使用して画像化して、均一な大きさ分布をさらに示した(
図32A)。並行して、脂質DOTAPを使用してリポソーム製剤を合成し、BCMAペプチドとの相互作用を可能にした。リポソームに負荷されたBCMAペプチドナノ粒子は、大きさがおよそ172±0.7d.nm(直径、ナノメートル)(n=3)であり、0.2のPDIを示し、均一な大きさ分布を示した(
図32B)。酢酸ウラシルを用いる陰性染色を使用して、TEMを使用してペプチドが負荷されたリポソームを可視化し、これもまた、均一な大きさ分布を示した。両NP調製物のペプチド負荷および封入効率を、390nm/475nmでEx/Emで測定した蛍光に基づいて定量的蛍光定量的ペプチドアッセイを使用して評価した。負荷されたペプチドの初期量を上回る、PLGA-NPまたはリポソーム-NP中に負荷されたペプチドのパーセンテージを示すペプチド封入効率(%)は、PLGAを用いた場合51%±1.15%(n=3)またはリポソームを用いた場合49%±1.32%(n=3)であった(
図32C)。ブランクPLGAおよびブランクリポソームは、予測されたようにゼロペプチド負荷を有していた。ペプチド封入の確認/正規化後、PLGA/ペプチドおよびリポソーム/ペプチドNPを、BCMA抗原供給源として使用して抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を作製した。
【0477】
樹状細胞によるBCMAが封入されたナノ粒子の取り込み。
【0478】
BCMAペプチド取り込みを、HLA-A2
+ドナーの単球から作製したImmDCを使用して評価した。各BCMA-ナノ粒子の種類またはペプチド単独によるImmDCに対するペプチド負荷効率を、フローサイトメトリーによって経時的に測定した。ペプチド単独と比較して、BCMAが封入されたナノ粒子を用いた場合に、より高い効率のImmDCペプチド負荷が検出された。評価された2種のナノ粒子の中で、リポソーム/ペプチドは、PLGA/ペプチドと比較して、高レベルのペプチド負荷(100%取り込み、30分)をより迅速に示し、継時的に維持した(
図33A)。対照的に、PLGA/ペプチドは、経時的にペプチド負荷の漸増を示し、1時間で検出され(担体なし/ペプチド、PLGA/ペプチド対リポソーム/ペプチド:10±4%、22±4%対100±0%)、6時間で増大し(担体なし/ペプチド、PLGA/ペプチド対リポソーム/ペプチド:42±4%、59±2%対100±0%)、18時間でピークに達した(担体なし/ペプチド、PLGA/ペプチド対リポソーム/ペプチド:55±8%、83±5%対100±0%)(
図33B)。18時間パルス後に、ImmDCによるPLGA/ペプチドの負荷効率を、共焦点顕微鏡によってさらに評価した。ペプチド単独と比較して、PLGA/ペプチドを用いた場合により高いImmDC BCMAペプチド負荷が見られ(
図33C)、PLGA/ペプチド製剤が、BCMAペプチド送達を増強することが確認された。さらなる評価は、フローサイトメトリーによって測定されるように、時間依存的なPLGA/ペプチドによるImmDCペプチド負荷の改善を実証した(担体なし/ペプチド対PLGA/ペプチド:0時間パルス(ベースライン)-4%対3%、2時間パルス-22%対36%、4時間パルス-28%対46%、6時間パルス-43%対62%)(
図33D)。さらに、抗原提示細胞としてT2細胞を使用して、同一パターンの時間依存的なAPCペプチド負荷の改善が検出された(担体なし/ペプチド対PLGA/ペプチド:30分パルス-1%対4%、2時間パルス-8%対11%、24時間パルス-13%対41%)(
図33E)。2種の抗原提示細胞の種類の間で、初代ImmDCは、T2細胞よりも高い効率のペプチド取り込みを示した。したがって、これらの結果は、抗原提示細胞によるBCMAペプチド負荷を増強するPGLA/ペプチドまたはリポソーム/ペプチド両方の有益な効果を実証する。
【0479】
PLGA/ペプチドCTLは、多発性骨髄腫細胞に対して最高の機能的免疫応答を示す。
【0480】
BCMA特異的CTLを、第4の刺激の1週間後にその腫瘍特異的活性について、HLA-A2
+BCMA
+(U266、McCAR)またはHLA-A2
-BCMA
+(RPMI)骨髄腫細胞のいずれかとのインキュベーション後に評価した。(1)BCMAペプチド自体、(2)PLGA/ペプチドまたは(3)リポソーム/ペプチドによって作製されたBCMA-CTLの代表的なフローサイトメトリー解析は、HLA-A2
+U266骨髄腫細胞に対して、CD107a脱顆粒(
図34A)、IFN-γ産生(
図34B)、IL-2産生(
図34C)およびTNF-α産生(
図34D)を含むHLA-A2拘束の抗骨髄腫活性を実証したが、HLA-A2
-RPMI骨髄腫細胞に対しては実証しなかった。ナノ粒子によって作製されたBCMA-CTLの中で、PLGA/ペプチドは、リポソーム/BCMAペプチドによって誘導されたCTLよりも高いレベルの抗腫瘍活性[CD107a上方制御およびIFN-γ/IL-2/TNF-α産生]によって証明される優れた抗原特異的CTLを誘導した。さらなる解析によって、さらなるHLA-A2
+ドナー(n=3)から作製されたPLGA/ペプチド-CTLは、HLA-A2
+BCMA
+U266およびHLA-A2
+BCMA
+(low)McCARに応じて最高の抗骨髄腫活性を示すが、MHCミスマッチHLA-A2
-BCMA
+RPMI骨髄腫細胞にはそうではないことが確認された(
図34E)。比較して、リポソーム/ペプチド-CTLは、BCMAペプチド-CTLと比較してわずかに高いレベルの抗MM活性を有していたが、両方ともPLGA/ペプチド-CTLよりも低かった。したがって、これらの結果は、HLA-A2拘束様式での多発性骨髄腫細胞に対する多機能CTLの効率的な誘導をもたらす、PLGA封入の際のBCMAペプチドの免疫原性の増強を示す。
【0481】
骨髄腫患者から得た初代CD138+腫瘍細胞に対するPLGAによって封入されたBCMAペプチド刺激を用いて作製されたBCMA-CTLによる最高の抗MM活性。
【0482】
NP封入を伴って、または伴わずに作製されたBCMA特異的CTLの骨髄腫特異的機能活性を、HLA-A2
+またはHLA-A2
-骨髄腫患者から得た初代CD138
+腫瘍細胞に対してさらに評価した。BCMAペプチド単独、PLGA/BCMAペプチドまたはリポソーム/BCMAペプチドを用いる刺激によって作製した3種の異なるエフェクター細胞は、エフェクター細胞の間で最小バックグラウンドレベルの(pf)CD107a脱顆粒およびIFN-γ/IL-2/TNF-α産生をすべて示した(
図35A)。エフェクターCTLの中では、PLGA/ペプチド-CTLが、初代HLA-A2
+CD138
+(MM患者1)腫瘍細胞に対して最高の抗MM活性を実証した[BCMAペプチド-CTL対PLGA/ペプチド-CTL対リポソーム/ペプチド-CTL:CD107a
+CTL-15.0%対31.7%対16.2%、IFN-γ
+CTL-1.9%対7.4%対3.7%、IL-2
+CTL-14.3%対32.3%対17.9%、TNF-α
+CTL-16.4%対36.8%対19.1%](
図35B)。DCによる最高のペプチド取り込みを有するにもかかわらず、リポソーム/ペプチド-CTLの抗MM活性は、初代HLA-A2
+CD138
+腫瘍細胞に対するPLGA/ペプチド-CTLよりも小さかった。同様のパターンの機能的抗MM活性が、HLA-A2
+MM患者2番から得た初代CD138
+腫瘍細胞に対するエフェクターCTLにおいて検出され、PLGA/ペプチド-CTLが最高の活性を有していた(
図35C)。対照的に、種々のBCMA-CTLのうち、HLA-A2
-CD138
+腫瘍細胞に対する抗腫瘍活性を有していたものはなく、それによって、HLA-A2拘束の免疫応答が実証された(
図35D)。総合すると、これらの結果は、初代CD138
+MM細胞に対してPLGA/BCMAペプチド-CTLを用いた場合に、HLA-A2拘束様式で最高レベルの抗骨髄腫活性が見られることを示す。結果はまた、PLGA中のペプチド封入の際のBCMA特異的CTLの作製による抗腫瘍活性の増大の可能性を強調する。
【0483】
PLGA封入を用いて作製されたBCMA-CTLによる、CD28共刺激分子発現およびペプチド特異的T細胞増殖の増大。
【0484】
PLGAによって媒介されるBCMA特異的CTLにおける高い抗腫瘍活性の機序をより良好に理解するために、実験を実施して、CD8
+T細胞での共刺激分子の発現およびBCMAペプチド特異的四量体
+CTLを評価した。BCMAペプチド-CTLと比較して、PLGA/ペプチドCTLは、CD8
+T細胞での上方制御されたCD28
++発現を有する細胞の独特のサブセットを実証した(ペプチド-CTL対PLGA/ペプチド-CTL:15.6%対32.0%;
図36A上のパネル)。さらに、PLGA/ペプチドCTLは、BCMAペプチドCTLと比較して、BCMA四量体
+ペプチド特異的CTLについてより高い割合を含有していた(ペプチド-CTL対PLGA/ペプチド-CTL:16.5%対35.0%;
図36A下のパネル)。さらに、四量体陰性CD8
+T細胞と比較して、四量体陽性内でより高い頻度の明るいCD28
++細胞が検出された。PLGA/ペプチド四量体
+CTLは、BCMAペプチド四量体
+CTLよりも高い頻度のCD28
++の明るい細胞を示した(51.8%対30.3%)。したがって、これらの結果は、PLGA/ペプチドによって誘導されたCTLが、明るいCD28
++BCMA特異的CTLの独特の集団を有するBCMA特異的四量体
+細胞のより大きな割合を有することを実証する。次いで、実験を実施して、APCによって提示されたその同族BMCAペプチドの認識の際の、BCMAペプチドCTLおよびPLGA/ペプチドCTLの増殖を実証した。BCMAペプチドCTLおよびPLGA/ペプチドCTLの両方とも、非BCMA特異的CD8
+T細胞のベースライン増殖(3日目、4日目対5日目:0%、1%対4%)と比較して、その同族BCMAペプチドの認識の際の、時間依存的な増殖の増大を実証した(3日目、4日目対5日目:11%、18%対33%)。重要なことに、すべての時点でPLGA/ペプチド-CTLにおいて早期に増殖が生じ(3日目、4日目対5日目:25%、45%対69%)(
図36B)、同族BCMAペプチドを認識し、それに応答する能力の増大を示した。最後に、同族BCMAペプチドに応じて生じたTh1サイトカイン産生を、各エフェクター細胞集団において測定した。PLGA/ペプチドCTLは、BCMAペプチドCTL(2日間のインキュベーション-31.5%、4日間のインキュベーション-42.1%)と比較して、より高いレベルのIFN-γ産生を有していた(2日間のインキュベーション-33.8%、4日間のインキュベーション-60.6%)(
図36C)。したがって、これらの結果は、PLGA/ペプチド-CTLに応じたペプチド特異的CD8
+T細胞免疫応答、増殖およびIFN-γ産生の増強を実証し、PLGA/ペプチド封入が、より高い抗腫瘍活性を有するCTLを作製するBCMAペプチドの免疫原性を増大し得ることを示す。
【0485】
PLGA/BCMAペプチドを用いる刺激に応じた抗骨髄腫活性の増強と関連する、メモリーCD8+CTLの有効な作製。
【0486】
実験をさらに実施して、PLGA/ペプチド、ブランクPLGA(対照)およびペプチド単独によって誘導されたCTLのメモリー細胞発生および免疫機能活性を特徴付け、比較した。CFSEアッセイでは、PLGA/ペプチドCTLは、評価したすべての時点で、BCMAペプチド-CTL(4日目:12.20%、6日目:29.20%)よりも(4日目:28.90%、6日目:44.70%)によってHLA-A2
+U266細胞に応じてより高い増殖を示した(
図37A)。ビヒクルとしてPLGA自体を用いて刺激したエフェクター細胞は、4日間および6回の同時培養で最小増殖(7%未満)を示した。さらに、培地対照では増殖は見られず、CTL増殖が、骨髄腫細胞に対して特異的であったという証拠を提供する。次いで、実験を実施して、BCMAペプチドCTLおよびPLGA/ペプチドCTL内でのメモリー細胞発生を特徴付けた。全体として、各ラウンドのペプチド刺激後にCTLメモリー細胞発生の漸増が観察された:総CD45RO
+メモリーCTLは、BCMAペプチド(第3の刺激:15.3%、第4の刺激:19.5%、第5の刺激:79.0%)と比較して、PLGA/BCMAペプチド刺激後に高かった(第3の刺激:20.7%、第4の刺激:32.8%、第5の刺激:93.5%)(
図37B)。PLGA/ペプチドCTLおよびBCMAペプチドCTLにおけるこのパターンのメモリー細胞発生は、2サイクルのペプチド刺激後または4サイクルのペプチド刺激後に残っていた(
図37C)。実験を同様に実施し、PLGA/ペプチドCTLおよびBCMAペプチドCTLにおいて特異的セントラルおよびエフェクターメモリーサブセット発生を特徴付けた。総CD45RO
+メモリー発生と一致して、セントラルメモリー(CM)およびエフェクターメモリー(EM)両方のCD8+T細胞サブセットは、1サイクルの刺激後に漸増し(PLGA/ペプチド-CM5.3%、EM8.1%、ペプチド-CM2.9%、EM5.7%)、3サイクルの刺激後にさらに増大した(PLGA/ペプチド-CM14.8%、EM13.2%、ペプチド-CM12.4%、EM11.0%)。5サイクルのペプチド刺激後に、セントラルメモリーおよびエフェクターメモリー細胞の集団の発生において大きな相違が観察された(PLGA/ペプチド-CM42.4%、EM32.6%、ペプチド-CM3.5%、EM95.4%)。さらに、PLGA/ペプチドCTLは、最高の抗腫瘍活性を有する、エフェクターメモリー細胞へのさらなる分化を伴わないより高い割合のセントラルメモリーT細胞を維持した(
図37D)。
【0487】
PLGA/BCMAペプチドによる有効な抗骨髄腫活性と関連する、セントラルメモリーCD8+CTLの維持。
【0488】
各メモリーCTLサブセット内で特異的抗MM活性をさらに調べた。ここで、PLGA/ペプチドまたはBCMAペプチドを用いる刺激によって異なるHLA-A2+個体から作製されたBCMA特異的CTLのHLA-A2拘束の抗骨髄腫活性が確認された。PLGA/ペプチドによって誘導されたCTLにおいて、HLA-A2
+U266骨髄腫細胞に応答した最高の免疫機能活性(CD107a上方制御およびTh1型サイトカイン産生)が一貫して見られた(
図38A、38B、38C)。重要なことに、CD107a脱顆粒(
図38A、38C)、IFN-γ産生(
図38B、38C)およびIL-2/TNF-α産生(
図38C)によって示されるように、エフェクターメモリーサブセットと比較して、最高の抗MM活性がセントラルメモリー内で見られた。したがって、これらは、PLGAによって封入されたBCMAペプチドは、PLGA/ペプチドBCMA抗原特異的CTL内でのセントラルメモリー細胞の発生および維持によって証明される、BCMAペプチドよりも頑強な腫瘍特異的CTL応答を誘導することを示す。
【0489】
これらの結果は、骨髄腫において新規ワクチン接種および/または養子免疫療法処置プロトコールにおいて抗腫瘍活性を有する有効なBCMA CTLを誘導するための、PLGA/BCMAペプチドの使用を支持する。
【0490】
その他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、前記の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するものであって、制限するものではないことが理解されるべきである。その他の態様、利点および改変は、以下の特許請求の範囲内である。
【配列表】