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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023533013
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2021025957
(87)【国際公開番号】W WO2023281732
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上野 智史
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167979(JP,A)
【文献】特開2012-089057(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029154(WO,A1)
【文献】特開2019-016209(JP,A)
【文献】特開2019-036186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 -23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用機械から収集したデータの分析を支援する分析装置であって、
前記産業用機械で検出された前記データを取得するデータ取得部と、
前記データから前記産業用機械が稼働中であるときに検出されたデータを抽出する稼働状態抽出部と、
前記抽出した稼働中のデータから所定の基準で複数のデータセットを切り出して、切り出した複数の該データセットに対して、所定の基準で前記産業用機械の動作状態を示す注釈を付与したデータセット群を複数作成するアノテーション部と、
前記データセットのそれぞれに含まれるデータの特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
複数の前記データセット群のそれぞれについて、前記特徴量を独立変数、前記産業用機械の動作状態を示す前記注釈を従属変数として決定木モデルを生成する学習部と、
複数の前記決定木モデルについて、所定の訓練データに基づく前記注釈の予測に係る正答率を元に順位付けして表示する表示部と、
を備えた分析装置。
【請求項2】
前記抽出した稼働中のデータから前記データセットを切り出す所定の基準は、前記産業用機械の稼働回数又は時間である、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記データ取得部が取得したデータから前記産業用機械の動作の変化点を検知する変化点検出部をさらに備え、
前記抽出した稼働中のデータから前記データセットを切り出す所定の基準は、前記変化点検出部が検出した変化点である、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
複数の前記データセット群のそれぞれは、異なるタイミングで前記産業用機械の動作状態が変化したと注釈されたものである、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記決定木モデルと、前記訓練データに基づく正解率を、該決定木モデルの末端ノードごとに表示する、
請求項1記載の分析装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記決定木モデルの末端ノードを選択した際に、該末端ノードに分類された訓練データを表示する、
請求項1記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の製造現場では、製造ラインに設置されるロボットや工作機械等の産業用機械の稼働状態を監視し、産業用機械の稼働状態を管理する装置が導入されている。
【0003】
産業用機械の稼働状態を管理する装置として、例えば特許文献1には、製品を生産する際に、製品を正常に生産した正常時、及び生産した製品に異常が生じた異常時それぞれのデータを取得し、取得したデータに基づいて、生産される製品に生じる異常とデータとの関連度を特定し、異常の予測に有効なデータを選択する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-116545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造現場では、異常が発生する前に収集したデータにどのような兆候が表れるのかを知りたいという要望がある。異常発生前の兆候を見つけるためには、データを収集した際に、正常時に収集しているデータと、異常発生前(加工不良、アラームの発生前)に収集しているデータとを比較して、異常が発生する前にデータに発生している兆候を発見する必要がある。
【0006】
しかしながら、このような異常発生前にデータに発生する兆候は、異常発生の直前にだけ発生する場合もあるが、数日前から発生している場合もある。そのため、正常時のデータと異常発生前のデータとを見比べようとしても、膨大なデータの中からどの部分のデータ見比べる必要があるため、ユーザにとって過大な負荷となる。また、そのような膨大なデータを比較して異常発生前のデータの兆候を発見すること自体が困難である。このような作業は、正常/異常のデータの分析だけでなく、製造現場でのさまざまな事象発生においてデータに表れる兆候の分析に必要となる。
そのため、製造現場で発生する事象の兆しとなるデータの兆候を発見する分析作業を支援する技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による稼働データ分析装置は、産業用機械から取得した稼働データから特徴量を抽出する。そして、抽出した特徴量の違いを決定木で表示することでユーザによるデータの分析作業を支援することで、上記課題を解決する。
【0008】
そして、本開示の一態様は、産業用機械から収集したデータの分析を支援する分析装置であって、前記産業用機械で検出された前記データを取得するデータ取得部と、前記データから前記産業用機械が稼働中であるときに検出されたデータを抽出する稼働状態抽出部と、前記抽出した稼働中のデータから所定の基準で複数のデータセットを切り出して、切り出した複数の該データセットに対して、所定の基準で前記産業用機械の動作状態を示す注釈を付与したデータセット群を複数作成するアノテーション部と、前記データセットのそれぞれに含まれるデータの特徴量を抽出する特徴量抽出部と、複数の前記データセット群のそれぞれについて、前記特徴量を独立変数、前記産業用機械の動作状態を示す前記注釈を従属変数として決定木モデルを生成する学習部と、複数の前記決定木モデルについて、所定の訓練データに基づく前記注釈の予測に係る正答率を元に順位付けして表示する表示部と、を備えた分析装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様により、収集しているデータが検出されたときの産業用機械の状態(正常動作、異常発生前など)の違いとなる条件を決定木モデルとして見える化することが可能となり、データに表れる状態変化の兆候を把握しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による分析装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】本発明の一実施形態による分析装置の概略的な機能を示すブロック図である。
図3】データセットの切り出し方と産業用機械の動作状態を示す注釈の付与の仕方について説明する図である。
図4】表示部による表示例を示す図である。
図5】表示部による他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の一実施形態による分析装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本発明の分析装置1は、例えば産業用機械3を制御する制御装置上に実装することができる。また、本発明の分析装置1は、産業用機械3に併設されたパソコンや、有線/無線のネットワークを介して産業用機械3と接続されたパソコン、セルコンピュータ、フォグコンピュータ6、クラウドサーバ7などのコンピュータ上に実装することができる。本実施形態では、分析装置1を、ネットワーク介して産業用機械3と接続されたパソコンの上に実装した例を示す。
【0012】
本実施形態による分析装置1が備えるCPU11は、分析装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス22を介してROM12に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従って分析装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、及び外部から入力された各種データなどが一時的に格納される。
【0013】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)などで構成され、分析装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15を介して外部機器72から読み込まれたデータ、入力装置71を介して入力されたデータ、産業用機械3から取得されたデータなどが記憶される。不揮発性メモリ14に記憶されたデータは、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、公知の解析プログラムなどの各種システム・プログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0014】
インタフェース15は、分析装置1のCPU11とUSB装置などの外部機器72と接続するためのインタフェースである。外部機器72側からは、例えば予め記憶されているワークの画像データなどを読み込むことができる。また、分析装置1内で編集した設定データなどは、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させることができる。
【0015】
インタフェース20は、分析装置1のCPU11と有線乃至無線のネットワーク5とを接続するためのインタフェースである。ネットワーク5には、産業用機械3やフォグコンピュータ6、クラウドサーバ7などが接続され、分析装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。
【0016】
産業用機械3は、製造現場などに設置される旋削機械、放電加工機、ロボット、搬送機械などを含む。分析装置1のCPU11は、産業用機械3がワークの製造作業などを行った際に検出されたモータの電流/電圧、稼働部分の位置や速度、加速度、加工状況を示す映像や音声、機械周辺や機械各部の温度、各部の信号の状態、産業用機械3の各部の設定状態、作業者が入力した産業用機械3の動作の良否、製品の加工結果、段取り情報などの各種データをネットワーク5や、外部機器72を介して取得する。
【0017】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、プログラムなどが実行された結果として得られたデータなどがインタフェース17を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイスなどから構成される入力装置71は、作業者による操作に基づく指令,データなどをCPU11にインタフェース18を介して渡す。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態による分析装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態による分析装置1が備える各機能は、図1に示した分析装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、分析装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0019】
本実施形態の分析装置1は、データ取得部110、稼働状態抽出部120、変化点検知部125、アノテーション部130、特徴量抽出部135、学習部145、表示部155を備える。また、分析装置1のRAM13乃至不揮発性メモリ14上には、産業用機械3で検出されたデータを記憶するための領域である稼働データ記憶部115、特徴量を抽出するために用いられる特徴量抽出パターンが予め記憶されている領域であるが特徴量抽出パターン記憶部140、学習した結果として生成されたモデルを記憶するための領域であるモデル記憶部150、作成したモデルの訓練に用いる訓練データを記憶するための領域である訓練データ記憶部160が予め用意されている。
【0020】
データ取得部110は、産業用機械3で検出されたデータを取得する。産業用機械3で検出されるデータには、例えば産業用機械3の稼働時に検出されたモータの電流/電圧、稼働部分の位置や速度、加速度、加工状況を示す映像や音声、機械周辺や機械各部の温度、各部の信号の状態、産業用機械3の各部の設定状態、作業者が入力した産業用機械3の動作の良否、製品の加工結果、段取り情報などを含む。データ取得部110は、例えばネットワーク5を介して産業用機械3からデータを取得してもよい。また、外部機器72から事前に記録された産業用機械3で検出されたデータを取得するようにしてもよい。データ取得部110は、取得したデータを稼働データ記憶部115に記憶する。
【0021】
稼働状態抽出部120は、稼働データ記憶部115に記憶された産業用機械3で検出されたデータから、産業用機械3が稼働中であるか否かを示す信号データを抽出し、産業用機械3が稼働中に検出されたデータの部分を特定する。一般に、産業用機械3の稼働中には、所定の稼働中を示す信号がONの状態になっている。稼働状態抽出部120は、当該信号がONになっている範囲のデータを、産業用機械3が稼働中に検出されたデータのセットとして抽出する。
【0022】
変化点検知部125は、稼働データ記憶部115に記憶された産業用機械3で検出されたデータの中から、データの動きの傾向に変化が現れる変化点を検知する。変化点の例としては、加工プログラムの変更や、工具の変更、オフセット値の変更などのように、データの中から抽出できる変化点や、温度の急激な変化や、産業用機械3のモータのトルクの低下などのような、信号データから抽出される変化点、段取りの時間の変化、加工プログラムの実行時間の変化などのような人の作業の変化点を含む。変化点の前と後では、検出されるデータの動きに類似した傾向がみられないことが多い。そのため、変化点検知部125は、データの分析を行う際の1つの基準として変化点の検知を行う。多くの場合、変化点の間で検出されたデータ群をセットにして分析を行う。
【0023】
アノテーション部130は、稼働状態抽出部120が抽出した産業用機械3が稼働中に検出されたデータに対して、そのデータが検出された際の産業用機械3の動作状態を注釈として付与するアノテーションを行う。アノテーション部130が付与する動作状態の注釈の例としては、例えば「正常動作」の注釈、及び「異常発生前」の注釈であってよい。アノテーション部130が付与する動作状態の注釈の他の例としては、例えば「加工不良発生前」などのように産業用機械3の動作の結果に対して作業者が入力した内容に基づくものであってよい。また、産業用機械3の異常について、工具関連アラーム発生前、主軸関連アラーム発生前などのような、検出されたアラーム信号に基づいてより詳細にアノテーションを付与するようにしてもよいし、加工不良についても、ワークの欠け発生前、切削面の粗さ大発生前などのように、その不良内容に応じたより詳細な注釈を付与するようにしてもよい。これらの注釈は、稼働データの内容に応じて自動的に付与するものであってもよいし、ユーザが手作業で指定して付与するようにしてもよい。
【0024】
所定の事象が検出された場合、その兆候がいつ頃から検出されたデータに表れているのかはそのままではわからない。そのため、アノテーション部130は、例えば1回の稼働毎にデータセットを切り出した上で、所定の事象が検出された時点から遡って稼働1回分のデータセットに対して当該事象の発生前という注釈を付与したデータセット群を作成する。また、これとは別に、所定の事象が検出された時点から遡って稼働2回分のデータセットに対して当該事象の発生前という注釈を付与したデータセット群を作成する。更に、所定の事象が検出された時点から遡って稼働3回分のデータセットに対して当該事象の発生前という注釈を付与したデータセット群を作成する。このようにして、アノテーション部130は、予め定めた所定のn個のデータセット群を作成する。作成するデータセット群の個数については、予めユーザの指定に基づいて設定できるようにしておくとよい。このデータセットを切り出す範囲は、稼働の回数を基準として切り出すことに限定されない。例えば、所定の事象が検出された時点から遡って、30分前、1時間前、…などのように、時間を基準として切り出すようにしてもよい。また、データセットの切り出しの範囲として、変化点検知部125が検知した変化点を用いるようにしてもよい。このデータセットの切り出しの範囲は、ユーザの指定に基づいて設定するようにしてよい。
【0025】
図3を用いて、稼働状態抽出部120及びアノテーション部130の動作例を説明する。図3は、ワークの加工不良が検出された際に産業用機械3から検出されたデータの例を示す図である。なお、この例では、産業用機械3の稼働回数ごとにデータセットを切り出すようにしている。図3に例示されるデータが検出されると、稼働状態抽出部120は検出されたデータの内の稼働中信号を参照し、稼働中信号がONになっている区間のデータ群を稼働中に検出されたデータセットとして抽出する。図3の例では、少なくとも3つのデータセット311,312,313が抽出される。これらのデータセットの内、データセット311が検出された際に加工されたワークに加工不良が発生したことが作業者から報告されているとする。この場合、アノテーション部130は、稼働状態抽出部120が抽出したデータセット311に対して「加工不良発生前」という注釈を付与し、データセット312,313のそれぞれに対して「正常動作」という注釈を付与したデータセット群を作成する。また、アノテーション部130は、稼働状態抽出部120が抽出したデータセット311,312のそれぞれに対して「加工不良発生前」という注釈を付与し、データセット313に対して「正常動作」という注釈を付与したデータセット群を作成する。このように、アノテーション部130は、複数のデータセット群を作成する。
【0026】
特徴量抽出部135は、アノテーションを行ったデータセットに含まれる各データについて、所定の特徴量を抽出する。所定の特徴量としては、例えば平均値や変化の傾き、分散値、最大変化量、フーリエ変換後の値、異常度などが例示される。特徴量抽出部135は、1つのデータから複数の特徴量を抽出してよい。特徴量抽出パターン記憶部140には、データセットに含まれるデータ毎に予め抽出する対象となる特徴量が記憶されている。特徴量抽出部135は、特徴量抽出パターン記憶部140を参照して、それぞれのデータについて抽出する特徴量を決定する。
【0027】
学習部145は、特徴量抽出部135が抽出したそれぞれのデータの特徴量を独立変数とし、アノテーション部130が付与した産業用機械3の動作状態の注釈を従属変数とした決定木モデルを、アノテーション部130が作成したデータセット群毎に生成する。学習部145が用いる決定木学習アルゴリズムは、公知のID3やCART、C4.5などであってよい。決定木のハイパーパラメータ(木の深さ、ノード数など)は、事前に設定しておくようにしてよい。なお、決定木モデル作成のアルゴリズムについては既に十分に公知となっているので、本明細書における生成処理の詳細な説明については省略する。学習部145が生成したそれぞれの決定木モデルは、モデル記憶部150に記憶される。
【0028】
表示部155は、学習部145が生成した決定木モデルを訓練データを用いて評価し、その評価結果を表示装置70に表示する。訓練データ記憶部160には、例えばユーザなどにより事前に作成された複数の訓練データが記憶していてもよい。この場合、訓練データは、ユーザが所定のデータセットに対して正しい注釈を付与したデータである。また、訓練データとしては、上記したアノテーション部130が注釈を付与したデータセットを用いるようにしてもよい。表示部155は、訓練データ記憶部160に記憶されるそれぞれの訓練データについて、学習部145により生成されたそれぞれの決定木モデルを用いて産業用機械3の動作状態の注釈を予測する。次に、予測した注釈が、訓練データに付与されている注釈と一致する場合には正解、異なる場合には不正解として、訓練データ全体に対する、決定木モデルの正答率を算出する。そして、その結果を評価結果として表示装置70に表示する。
【0029】
表示部155は、学習部145が生成したそれぞれの決定木モデルについて、その正答率と、データセットの切り出し方などのパラメータを併せて表示装置70に表示するようにしてよい。図4は、表示部155によるモデル毎の正答率の表示例を示している。図4に例示されるように、表示部155は、モデル毎にどのようにデータセットを切り出して、どのように注釈を付与したのかが把握できる表示と、訓練データに対して予測を行った場合の正答率とを対応関係が把握できるように表示する。このような表示をすることで、どのようなデータの切り出し方をして、どのように注釈を付与した場合に、より正解に近い決定木モデルを生成できるのかを一見して把握することができる。
【0030】
また、表示部155は、ユーザの指定に基づいて、または、正答率が高い決定木モデルについて自動的に、決定木モデルと正答率の詳細を評価結果として表示するようにしてもよい。図5は、表示部155による決定木モデルの評価結果の表示例である。図5に例示されるのは、各データセットに対して正常動作及び異常発生前状態という注釈が付与されたデータの集合について決定木モデルを作成したものである。決定木学習アルゴリズムにより、主軸トルクの最大値とサーボモータ温度の平均値とが予測の結果に影響する独立変数として扱われ、それぞれの独立変数に対する判定により、各データセットが正常動作または異常発生前のいずれかの状態であると予測される。表示部155は、予め用意されている訓練データについて、この決定木モデルを用いて状態の予測を行う。予測の結果は図5中の円グラフで示されている。図5に例示される決定木モデルでは、主軸トルクの最大値が100N・m未満であり、且つ、サーボモータ温度が29℃以上である場合の正答率が悪いことが一見して把握できる。また、主軸トルクの最大値が100N・m以上であり、サーボモータ温度の平均値が26℃未満である場合についても、やはり正答率が悪いことがわかる。
【0031】
また、図5の表示において決定木モデルの各ノードを選択した際に、そのノードに分類されたデータセットを併せて表示するようにしてもよい。このような表示を並列して行うことにより、ユーザは、それぞれの決定木モデルにおける分類ルールを解釈し易くなる。
【0032】
このように、表示部155により表示された決定木モデルと、訓練データに対する予測の結果を見ながら、ユーザはデータセットの切り出し方を変更したり、特徴量抽出パターン記憶部140に記憶される抽出対象とする特徴量を追加/削除したりする。これを繰り返すことで、訓練データに対してより適切な予測をする決定木モデルを求めることができる。適切な予測をする決定木モデルについて、どのように注釈を付与したのかを確認することで、ユーザは、どのようなタイミングで状態変化の兆候が表れているのかを容易に判断することができる。
【0033】
上記構成を備えた本実施形態による分析装置1は、産業用機械3の状態(正常動作、異常発生前など)が変化する兆候となるデータの条件を決定木モデルとして見える化することが可能となる。ユーザは、この決定木モデルを参照することで、データに表れる状態変化の兆候を把握しやすくなる。データセットの切り出し方のそれぞれに対して生成した決定木モデルを見える化することで、データに表れるそれぞれの状態の変化の兆候がいつから表れているのかを把握できるようになる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 分析装置
3 産業用機械
5 ネットワーク
6 フォグコンピュータ
7 クラウドサーバ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15,17,18,20 インタフェース
22 バス
70 表示装置
71 入力装置
72 外部機器
110 データ取得部
115 稼働データ記憶部
120 稼働状態抽出部
125 変化点検知部
130 アノテーション部
135 特徴量抽出部
140 特徴量抽出パターン記憶部
145 学習部
150 モデル記憶部
155 表示部
160 訓練データ記憶部
311~313 データセット
図1
図2
図3
図4
図5