(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】伝動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20250304BHJP
【FI】
F16H57/04 B
(21)【出願番号】P 2024533484
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2022027907
(87)【国際公開番号】W WO2024013993
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2024-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼津 和馬
(72)【発明者】
【氏名】新美 裕基
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-25570(JP,A)
【文献】国際公開第2022/054135(WO,A1)
【文献】特開2020-142774(JP,A)
【文献】特開2015-105730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンギヤと、
前記サンギヤと同心状に配置されるリングギヤと、
前記サンギヤ及び前記リングギヤと噛み合う複数の遊星ギヤと、
前記複数の遊星ギヤを回転可能に支持するデフケースと、
前記デフケースの内部に配置された差動機構と、
前記差動機構に連結された第1出力シャフト及び第2出力シャフトと、
前記デフケースを回転可能に支持するギヤケースと、
を備え、
前記差動機構は、
前記サンギヤの回転軸心と直交する回転軸心を有すると共に、互いに対向する第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤと、
前記サンギヤの回転軸心と一致する回転軸心を有すると共に、互いに対向する第1サイドギヤ及び第2サイドギヤと、
を有し、
前記第1サイドギヤは、前記第1ピニオンギヤ及び前記第2ピニオンギヤに噛み合うと共に前記第1出力シャフトに連結され、
前記第2サイドギヤは、前記第1ピニオンギヤ及び前記第2ピニオンギヤに噛み合うと共に前記第2出力シャフトに連結され、
前記デフケースは、
前記第1ピニオンギヤ、前記第2ピニオンギヤ、前記第1サイドギヤ及び前記第2サイドギヤを収容する収容部と、
前記収容部に連結されると共に前記第1出力シャフトが挿通される第1スリーブと、
前記収容部に連結されると共に前記第2出力シャフトが挿通される第2スリーブと、
前記第1スリーブの内周面に設けられると共に、前記第1スリーブの外端部から前記収容部の内部まで延伸する少なくとも1つのオイル排出溝と、
前記第2スリーブの内周面に設けられると共に、前記第2スリーブの外端部から前記収容部の内部まで延伸する少なくとも1つのオイル導入溝と、
を有し、
前記少なくとも1つのオイル導入溝は、前記第2サイドギヤの軸方向から視て、前記第2サイドギヤよりも前記第2サイドギヤの径方向外側において前記収容部の内部空間に到達すると共に、前記第1ピニオンギヤ及び前記第2ピニオンギヤの双方と重ならないように配置さ
れ、直線状に延伸し、かつ、前記収容部に向かって拡幅する、伝動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伝動装置であって、
前記デフケースは、前記少なくとも1つのオイル導入溝として、前記第2サイドギヤの周方向において前記第1ピニオンギヤと前記第2ピニオンギヤとの間に並んで配置された第1オイル導入溝及び第2オイル導入溝を有し、
前記第2スリーブは、前記外端部において前記第2サイドギヤの軸方向に突出する第1凸部及び第2凸部を有し、
前記第1凸部及び前記第2凸部は、前記第2サイドギヤの周方向において、前記第1オイル導入溝及び前記第2オイル導入溝を挟むように配置される、伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
差動機構を有する伝動装置において、ポンプを用いて差動機構に潤滑用のオイルを供給する構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の伝動装置では、オイル供給用のポンプが必要であるため、装置の構造が複雑化する。また、差動機構を構成するギヤの回転によってオイルの供給が阻害されるおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、ポンプを用いることなく差動機構の潤滑性を高められる伝動装置を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、サンギヤと、サンギヤと同心状に配置されるリングギヤと、サンギヤ及びリングギヤと噛み合う複数の遊星ギヤと、複数の遊星ギヤを回転可能に支持するデフケースと、デフケースの内部に配置された差動機構と、差動機構に連結された第1出力シャフト及び第2出力シャフトと、デフケースを回転可能に支持するギヤケースと、を備える伝動装置である。
【0007】
差動機構は、サンギヤの回転軸心と直交する回転軸心を有すると共に、互いに対向する第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤと、サンギヤの回転軸心と一致する回転軸心を有すると共に、互いに対向する第1サイドギヤ及び第2サイドギヤと、を有する。第1サイドギヤは、第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤに噛み合うと共に第1出力シャフトに連結される。第2サイドギヤは、第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤに噛み合うと共に第2出力シャフトに連結される。
【0008】
デフケースは、第1ピニオンギヤ、第2ピニオンギヤ、第1サイドギヤ及び第2サイドギヤを収容する収容部と、収容部に連結されると共に第1出力シャフトが挿通される第1スリーブと、収容部に連結されると共に第2出力シャフトが挿通される第2スリーブと、第1スリーブの内周面に設けられると共に、第1スリーブの外端部から収容部の内部まで延伸する少なくとも1つのオイル排出溝と、第2スリーブの内周面に設けられると共に、第2スリーブの外端部から収容部の内部まで延伸する少なくとも1つのオイル導入溝と、を有する。
【0009】
少なくとも1つのオイル導入溝は、第2サイドギヤの軸方向から視て、第2サイドギヤよりも第2サイドギヤの径方向外側において収容部の内部空間に到達すると共に、第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤの双方と重ならないように配置される。
【0010】
このような構成によれば、オイル導入溝及びオイル排出溝によって、収容部内で差動機構を潤滑するオイルの循環路が構成される。また、オイル導入溝がピニオンギヤと重ならないように配置されることで、ピニオンギヤの回転によるオイルの収容部への供給の阻害が抑制される。その結果、ポンプを用いることなく差動機構の潤滑性を高められる。
【0011】
本開示の一態様では、デフケースは、少なくとも1つのオイル導入溝として、第2サイドギヤの周方向において第1ピニオンギヤと第2ピニオンギヤとの間に並んで配置された第1オイル導入溝及び第2オイル導入溝を有してもよい。第2スリーブは、外端部において第2サイドギヤの軸方向に突出する第1凸部及び第2凸部を有してもよい。第1凸部及び第2凸部は、第2サイドギヤの周方向において、第1オイル導入溝及び第2オイル導入溝を挟むように配置されてもよい。
【0012】
このような構成によれば、デフケースが第2出力シャフトに対し相対的に第1方向に回転する場合(例えば第2出力シャフトの回転速度がデフケースの回転速度よりも大きい場合)に第1凸部によってオイルが第1オイル導入溝に誘導されると共に、デフケースが第2出力シャフトに対し相対的に第1方向とは反対の第2方向に回転する場合(例えば第2出力シャフトの回転速度がデフケースの回転速度よりも小さい場合)に第2凸部によってオイルが第2オイル導入溝に誘導される。そのため、第2出力シャフトの回転の速度及び方向に係らず、効率よくオイルを差動機構に供給することができる。
【0013】
本開示の一態様では、第1オイル導入溝及び第2オイル導入溝は、直線状に延伸し、かつ、収容部に向かって拡幅してもよい。このような構成によれば、オイル導入溝が直線状であることで、デフケースの回転方向によってオイルの供給効率が変化することが抑制される。また、オイル導入溝が拡幅することで、デフケースの回転に伴う遠心力によって効率よくオイルを差動機構に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態における伝動装置の模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の伝動装置の模式的な部分拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の伝動装置における遊星ギヤ及びデフケースの模式的な斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のデフケースの一部の模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のデフケースの一部の模式的な背面図である。
【
図6】
図6は、
図1の伝動装置におけるギヤケースの一部の模式的な斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1のVII-VII線での模式的な断面図である。
【
図9】
図9Aは、デフケースが第1方向に相対的に回転する状態を示す模式図であり、
図9Bは、デフケースが第2方向に相対的に回転する状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0015】
1…伝動装置、2…サンギヤ、3…リングギヤ、4…遊星ギヤ、
5…遊星ギヤベアリング、6…デフケース、7…差動機構、
8A…第1出力シャフト、8B…第2出力シャフト、9…ギヤケース、
10…モータシャフト、22…拡径部、23…連通孔、61…収容部、
62…キャリア、63…ベアリング保持部、64…第1スリーブ、
65A-65D…オイル排出溝、66…第2スリーブ、
67A-67D…オイル導入溝、71,72…ピニオンギヤ、
73…ピニオンシャフト、74,75…サイドギヤ、631…筒部、
632…脚部、633…ポケット、661,662…凸部、
911…突起部、912…傾斜面、913…凹部。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す伝動装置1は、自動車に設置され、自動車の駆動源の動力を車輪に伝動する装置である。
【0018】
伝動装置1は、サンギヤ2と、リングギヤ3と、複数の遊星ギヤ4と、複数の遊星ギヤベアリング5と、デフケース6と、差動機構7と、第1出力シャフト8Aと、第2出力シャフト8Bと、ギヤケース9と、モータシャフト10とを備える。
【0019】
なお、本実施形態では、サンギヤ2の軸方向をX軸、鉛直方向をZ軸、X軸とZ軸との双方に直交する方向をY軸とする。
【0020】
<モータシャフト>
モータシャフト10は、モータ(図示省略)に駆動連結され、モータの駆動力によって軸回転する。
【0021】
<サンギヤ>
サンギヤ2は、リングギヤ3及び複数の遊星ギヤ4と共に、遊星歯車機構(つまり減速機構)を構成している。サンギヤ2は、デフケース6の外側かつギヤケース9の内部に配置されている。
【0022】
サンギヤ2は、モータシャフト10に駆動連結されることにより、モータの駆動力によって軸回転する。サンギヤ2の回転軸心は、第1出力シャフト8A及び第2出力シャフト8Bの回転軸心と一致する。
【0023】
サンギヤ2には、第1出力シャフト8A及びデフケース6の第1スリーブ64が挿通されている。
図2に示すように、サンギヤ2は、ギヤ部21と、拡径部22と、複数の連通孔23と、連結部24とを有する。なお、
図2は、
図1の上方に位置する遊星ギヤ4が公転により下方に移動した状態を示している。
【0024】
ギヤ部21は、複数の遊星ギヤ4に噛み合う円筒状の外歯歯車である。ギヤ部21の内部には、径方向においてわずかに隙間が設けられるように、デフケース6の第1スリーブ64が挿入されている。つまり、サンギヤ2は、サンギヤ2の径方向において第1スリーブ64と重なっている。ギヤ部21の内径は、第1スリーブ64の外径よりも大きい。
【0025】
拡径部22は、ギヤ部21と連続して設けられた筒状の部位である。拡径部22は、ギヤ部21の差動機構7とは反対側の端部に連結されている。拡径部22の内径D1は、第1スリーブ64の外端部64Aの内径D2よりも大きい。なお、第1スリーブ64は、拡径部22には挿入されていない。また、拡径部22の内径D1は、モータシャフト10のうち連結部24に挿入された部分の外径よりも大きい。
【0026】
複数の連通孔23は、それぞれ第1スリーブ64の外端部64Aにおける開口と、サンギヤ2の外側の空間とを連通している。複数の連通孔23は、拡径部22の周方向に互いに離れて配置されている。本実施形態では、サンギヤ2の周方向に90°ずつ離れて配置された4つの連通孔23が設けられている。ただし、連通孔23の数は4つに限定されない。
【0027】
複数の連通孔23は、重力又は遠心力によって、第1スリーブ64から排出された潤滑オイルをデフケース6とギヤケース9との間の遊星ギヤ収容空間に排出する。本実施形態のサンギヤ2は、遊星歯車機構を構成するギヤと、潤滑オイルの循環路を構成する連通部材とを兼ねている。
【0028】
連結部24は、拡径部22と連続して設けられた筒状の部位である。連結部24は、拡径部22のギヤ部21とは反対側の端部に連結されている。
図1に示すように、連結部24には、モータシャフト10の端部がスプライン嵌合されている。連結部24の内径は、拡径部22の内径よりも小さい。
【0029】
<リングギヤ>
リングギヤ3は、サンギヤ2と同心状に配置されている。リングギヤ3は、ギヤケース9の内面に固定されており、ギヤケース9に対して回転しない。リングギヤ3は、複数の遊星ギヤ4が噛み合う内歯歯車である。
【0030】
<遊星ギヤ>
複数の遊星ギヤ4は、それぞれ、サンギヤ2及びリングギヤ3と噛み合っている。複数の遊星ギヤ4は、サンギヤ2の回転軸心周りに公転する。なお、本実施形態では、3つの遊星ギヤ4が配置されているが、遊星ギヤ4の数は3に限定されない。
【0031】
複数の遊星ギヤ4のそれぞれの回転軸心は、サンギヤ2の回転軸心(つまりX軸)と平行である。複数の遊星ギヤ4は、デフケース6に保持されている。遊星ギヤ4は、第1ギヤ部41と、第2ギヤ部42と、第1軸部43と、第2軸部44とを有する。
【0032】
第1ギヤ部41は、サンギヤ2と噛み合う外歯歯車である。第2ギヤ部42は、リングギヤ3と噛み合う外歯歯車である。第2ギヤ部42の外径は、第1ギヤ部41の外径よりも小さい。また、第2ギヤ部42は、第1ギヤ部41よりもギヤケース9の開口端9Aの近くに配置されている。
【0033】
第1軸部43は、遊星ギヤ4における開口端9Aとは反対側の端部を構成している。第1軸部43は、デフケース6のキャリア62に保持されている。具体的には、第1軸部43は、キャリア62に保持されたボールベアリング5Aに挿通されている。
【0034】
第2軸部44は、遊星ギヤ4における開口端9Aに近い側の端部を構成している。第2軸部44は、デフケース6に保持されている。具体的には、第2軸部44は、デフケース6のベアリング保持部63に保持された遊星ギヤベアリング5に挿通されている。
【0035】
<遊星ギヤベアリング>
複数の遊星ギヤベアリング5には、複数の遊星ギヤ4それぞれの第2軸部44が1つずつ挿通されている。遊星ギヤベアリング5としては、遊星ギヤ4を回転可能に支持できるものであれば特に限定されないが、例えば、公知のニードルベアリングが好適である。
【0036】
<デフケース>
デフケース6は、複数の遊星ギヤ4を回転可能に支持すると共に、差動機構7を収容している。デフケース6は、ギヤケース9によって回転可能に支持されている。デフケース6は、複数の遊星ギヤ4の公転に伴って、サンギヤ2の回転軸心周りに回転する。
【0037】
図2に示すように、デフケース6は、収容部61と、キャリア62と、複数のベアリング保持部63と、第1スリーブ64と、複数のオイル排出溝65A,65B,65C,65Dと、第2スリーブ66と、複数のオイル導入溝67A,67B,67C,67Dとを有する。
【0038】
なお、
図2では、第1オイル排出溝65A及び第3オイル排出溝65Cのみが図示されており、第2オイル排出溝65B及び第4オイル排出溝65Dは、
図4に図示されている。同様に、
図2では、第1オイル導入溝67A及び第3オイル導入溝67Cのみが図示されており、第2オイル導入溝67B及び第4オイル導入溝67Dは、
図5に図示されている。
【0039】
<収容部>
収容部61は、デフケース6の本体部分であり、差動機構7を収容している。
図1に示すように、収容部61は、第1パーツ61Aと第2パーツ61BとがX軸と平行な方向に連結されることで構成されている。
【0040】
<キャリア>
キャリア62は、収容部61をギヤケース9の開口端9Aとは反対側(つまりモータシャフト10側)から覆うように配置されている。キャリア62は、例えばボルト等の締結具によって収容部61に固定されている。
【0041】
<ベアリング保持部>
複数のベアリング保持部63は、複数の遊星ギヤベアリング5をそれぞれ1つずつ保持している。
図3に示すように、複数のベアリング保持部63は、収容部61の外周面に配置されている。
【0042】
複数のベアリング保持部63は、収容部61の周方向に(つまりサンギヤ2の周方向に)互いに離れて配置されている。ベアリング保持部63は、筒部631と、脚部632と、ポケット633とを有する。
【0043】
筒部631は、複数の遊星ギヤベアリング5のいずれか1つを保持している。具体的には、遊星ギヤベアリング5は、筒部631に軸方向に挿入されている。脚部632は、収容部61の外周面から径方向外側に延伸し、収容部61と筒部631とを連結している。
【0044】
ポケット633は、筒部631の遊星ギヤ4とは反対側の端部から突出している。ポケット633は、サンギヤ2の径方向内側から径方向外側に向かって(つまりサンギヤ2の回転軸心から離れる方向に)凹となる内部空間を有すると共に、サンギヤ2の軸方向において遊星ギヤベアリング5と重なっている。
【0045】
つまり、ポケット633は、サンギヤ2の径方向と交差する底壁と、サンギヤ2の周方向と交差する2つの側壁と、X軸と交差する前壁とを有する。前壁は、X軸と平行な方向において遊星ギヤベアリング5の一部及び筒部631の一部を覆っている。ポケット633の内部空間には、サンギヤ2の径方向内側から液体が進入可能である。また、ポケット633の内部空間は、筒部631の中空部と連通している。
【0046】
複数のベアリング保持部63は、第1パーツ61Aの一部として、収容部61と一体化されている。また、筒部631とポケット633とは、一体化されている。ポケット633は、第1パーツ61Aの加工時に、筒部631の孔と同時に形成される。これにより、厚みが小さいために鋳抜きでは形成が難しいポケット633を比較的容易に形成できる。
【0047】
<第1スリーブ>
図1に示す第1スリーブ64は、収容部61に連結されると共に第1出力シャフト8Aが挿通された筒状の部位である。
【0048】
第1スリーブ64は、X軸に沿って、収容部61からモータシャフト10に向かって延伸している。第1スリーブ64は、収容部61の内部空間と、収容部61の外部(具体的にはサンギヤ2の内部空間)とを連通している。
【0049】
第1スリーブ64の一部は、サンギヤ2に挿入されている。第1スリーブ64の中心軸は、サンギヤ2の回転軸心と一致する。また、第1スリーブ64の内径は、収容部61の最大内径よりも小さい。
【0050】
<オイル排出溝>
図4に示すように、第1オイル排出溝65A、第2オイル排出溝65B、第3オイル排出溝65C及び第4オイル排出溝65Dは、第1スリーブ64の内周面に設けられると共に、第1スリーブ64の外端部64Aから収容部61の内部まで延伸している。
【0051】
第1オイル排出溝65A、第2オイル排出溝65B、第3オイル排出溝65C及び第4オイル排出溝65Dは、第1スリーブ64の周方向に互いに離れて配置されている。オイル排出溝65A-65Dの形状の詳細については後述する。
【0052】
<第2スリーブ>
図1に示す第2スリーブ66は、収容部61に連結されると共に第2出力シャフト8Bが挿通された筒状の部位である。
【0053】
第2スリーブ66は、X軸に沿って、収容部61からギヤケース9の開口端9Aに向かって延伸している。第2スリーブ66は、収容部61の内部空間と、収容部61の外部(具体的にはギヤケース9の内部空間)とを連通している。
【0054】
第2スリーブ66は、デフケースベアリング93に挿入されている。第2スリーブ66の中心軸は、サンギヤ2の回転軸心と一致する。また、第2スリーブ66の内径は、収容部61の最大内径よりも小さい。
【0055】
図3に示すように、第2スリーブ66は、第1凸部661と、第2凸部662とを有する。第1凸部661及び第2凸部662は、それぞれ、第2スリーブ66の外端部66Aにおいて、他の部位よりも第2サイドギヤ75の軸方向に(つまりX軸に沿って)突出している。
【0056】
第1凸部661の第2スリーブ66の周方向における一方の端部は、第1オイル導入溝67Aと連続する位置に設けられ、他方の端部は、第3オイル導入溝67Cと連続する位置に設けられている。
【0057】
つまり、第1凸部661は、第2スリーブ66の外端部66Aのうち、第1オイル導入溝67Aの端部と、第3オイル導入溝67Cの端部との間の領域に設けられている。第1凸部661は、第1オイル導入溝67A及び第3オイル導入溝67Cへオイルを誘導するガイドを構成している。
【0058】
第2凸部662は、デフケース6の回転軸心周りに第1凸部661を180°回転させた形状を有する。第2凸部662の第2スリーブ66の周方向における一方の端部は、第2オイル導入溝67B(
図5参照)と連続する位置に設けられ、他方の端部は、第4オイル導入溝67D(
図5参照)と連続する位置に設けられている。
【0059】
つまり、第2凸部662は、第2スリーブ66の外端部66Aのうち、第2オイル導入溝67Bの端部と、第4オイル導入溝67Dの端部との間の領域に設けられている。第2凸部662は、第2オイル導入溝67B及び第4オイル導入溝67Dへオイルを誘導するガイドを構成している。
【0060】
<オイル導入溝>
図5に示すように、第1オイル導入溝67A、第2オイル導入溝67B、第3オイル導入溝67C及び第4オイル導入溝67Dは、第2スリーブ66の内周面に設けられると共に、第2スリーブ66の外端部66Aから収容部61の内部まで延伸している。
【0061】
第1オイル導入溝67A、第2オイル導入溝67B、第3オイル導入溝67C及び第4オイル導入溝67Dは、第2スリーブ66の周方向に互いに離れて配置されている。オイル導入溝67A-67Dの形状の詳細については後述する。
【0062】
<差動機構>
図1に示す差動機構7は、第1出力シャフト8A及び第2出力シャフト8Bを差動回転させつつ、デフケース6の回転を第1出力シャフト8A及び第2出力シャフト8Bに分配伝達する公知の機構である。
【0063】
差動機構7は、第1ピニオンギヤ71と、第2ピニオンギヤ72(
図5参照)と、ピニオンシャフト73と、第1サイドギヤ74と、第2サイドギヤ75とを有する。差動機構7は、デフケース6の内部に配置されている。具体的には、第1ピニオンギヤ71、第2ピニオンギヤ72、ピニオンシャフト73、第1サイドギヤ74及び第2サイドギヤ75は、デフケース6の収容部61に収容されている。
【0064】
<ピニオンギヤ及びピニオンシャフト>
図5に示すように、第1ピニオンギヤ71及び第2ピニオンギヤ72は、それぞれ、サンギヤ2の回転軸心(つまりX軸)と直交する回転軸心を有するベベルギヤである。
【0065】
第1ピニオンギヤ71の回転軸心と第2ピニオンギヤ72の回転軸心とは一致している。また、第1ピニオンギヤ71及び第2ピニオンギヤ72は、互いに対向するように配置されている。第1ピニオンギヤ71と第2ピニオンギヤ72とは同一の形状を有し、互いに鏡像関係にある。
【0066】
ピニオンシャフト73は、第1ピニオンギヤ71及び第2ピニオンギヤ72をそれぞれ回転可能に支持している。ピニオンシャフト73の中心軸(つまり長手方向)は、X軸と直交する。ピニオンシャフト73は、収容部61に固定されており、デフケース6に対して回転しない。つまり、ピニオンシャフト73は、収容部61と共にサンギヤ2の回転軸心周りに回転する。
【0067】
<サイドギヤ>
図1に示すように、第1サイドギヤ74及び第2サイドギヤ75は、それぞれ、サンギヤ2の回転軸心(つまりX軸)と一致する回転軸心を有するベベルギヤである。
【0068】
第1サイドギヤ74の回転軸心と第2サイドギヤ75の回転軸心とは一致している。また、第1サイドギヤ74及び第2サイドギヤ75は、互いに対向するように配置されている。
【0069】
第1サイドギヤ74は、X軸に沿って、第2サイドギヤ75よりもモータシャフト10の近くに配置されている。第1サイドギヤ74と第2サイドギヤ75とは同一の形状を有し、互いに鏡像関係にある。
【0070】
第1サイドギヤ74及び第2サイドギヤ75はそれぞれ、収容部61によって回転可能に保持されている。第1サイドギヤ74は、第1ピニオンギヤ71及び第2ピニオンギヤ72に噛み合うと共に第1出力シャフト8Aに連結されている。第2サイドギヤ75は、第1ピニオンギヤ71及び第2ピニオンギヤ72に噛み合うと共に第2出力シャフト8Bに連結されている。
【0071】
第1サイドギヤ74及び第2サイドギヤ75は、デフケース6と共に回転すると同時に、第1ピニオンギヤ71及び第2ピニオンギヤ72から伝達される回転によって、デフケース6に対し相対的に回転する。
【0072】
<出力シャフト>
第1出力シャフト8A及び第2出力シャフト8Bは、それぞれ、第1サイドギヤ74又は第2サイドギヤ75にスプライン嵌合されている。
【0073】
第1出力シャフト8A及び第2出力シャフト8Bは、それぞれ、自動車の車輪に回転を出力する。第1出力シャフト8A及び第2出力シャフト8Bは、連結された差動機構7によって差動回転しつつ、モータシャフト10の回転方向(つまりデフケース6の回転方向)に応じて回転する。
【0074】
<ギヤケース>
ギヤケース9は、サンギヤ2、リングギヤ3及び複数の遊星ギヤ4を収容すると共に、デフケース6を回転可能に支持している。
【0075】
ギヤケース9は、第1本体91と、第2本体92と、デフケースベアリング93と、オイルガイド94とを有する。第1本体91及び第2本体92は、互いに連結されることで、各ギヤ及びデフケース6を収容する遊星ギヤ収容空間を構成している。なお、第2本体92の内部には、駆動源であるモータ(図示省略)が配置されている。
【0076】
第1本体91は、第2出力シャフト8Bが挿通される開口端9Aを有する。ギヤケース9の遊星ギヤ収容空間には、ギヤ及びシャフトを潤滑するための潤滑用オイルが貯留されている。遊星ギヤ収容空間は、シール部材等によって密閉されている。
【0077】
デフケースベアリング93は、デフケース6を回転可能に支持している。具体的には、デフケースベアリング93には、デフケース6の第2スリーブ66が挿通されている。デフケースベアリング93は、第1本体91に保持されている。デフケースベアリング93は、オイルガイド94から供給される潤滑用オイルが通過可能なシールドベアリングである。
【0078】
図6及び
図7に示すオイルガイド94は、遊星ギヤ収容空間に配置された樋状の流路である。オイルガイド94の入口941は、サンギヤ2の回転軸心よりも上方、かつ複数の遊星ギヤ4の公転軌道の径方向外側に配置されている。また、入口941は、複数の遊星ギヤ4の第1ギヤ部41に対し、サンギヤ2の径方向に重なる位置に配置されている。
【0079】
なお、
図7において、自動車の前進時にサンギヤ2及びデフケース6は時計回りに自転し、複数の遊星ギヤ4はそれぞれ反時計回りに自転しつつ時計回りに公転する。自動車の後進時の各部材の回転方向はこれらと逆方向となる。
【0080】
遊星ギヤ収容空間の下方に貯留された潤滑用オイルは、公転する遊星ギヤ4に汲み上げられ、入口941に滴下される。これにより、潤滑用オイルがオイルガイド94内に供給される。
【0081】
オイルガイド94の出口942は、入口941よりも下方、かつデフケース6の第2スリーブ66の外端部66Aの上端近傍に配置されている(
図1参照)。入口941からオイルガイド94に供給された潤滑用オイルは、オイルガイド94内を滑り落ちて、第2スリーブ66の近傍に供給される。
【0082】
図2に矢印で示すように、第2スリーブ66の近傍に供給された潤滑用オイルは、第2スリーブ66を通過して収容部61の内部に供給される。これにより差動機構7が潤滑される。差動機構7内の潤滑用オイルは、第1スリーブ64を通過してサンギヤ2(つまり連結部材)の内部に排出される。
【0083】
サンギヤ2の内部に排出された潤滑用オイルは、連通孔23から遊星ギヤ収容空間に排出され、遊星ギヤ収容空間の下部に再び貯留される。遊星ギヤ収容空間に貯留された潤滑用オイルは、上述のように遊星ギヤ4によってオイルガイド94に供給される。潤滑用オイルは、このようにギヤケース9内で循環する。
【0084】
また、第2スリーブ66の近傍に供給された潤滑用オイルの一部は、収容部61に供給されることなく、デフケースベアリング93のシールドを通過して、第2スリーブ66及び収容部61の下方に滑り落ちて遊星ギヤ収容空間の下部に貯留される。
【0085】
<遊星ギヤベアリングへの潤滑用オイルの供給>
図8に示すように、潤滑用オイルの一部は、ギヤケース9の第1本体91の内周面を伝って遊星ギヤベアリング5に供給される。この潤滑用オイルの流れについて、以下詳説する。
【0086】
ギヤケース9の第1本体91は、突起部911と、傾斜面912と、凹部913とを有する。突起部911は、サンギヤ2の径方向内側から複数のベアリング保持部63それぞれのポケット633と重なると共に、サンギヤ2の軸方向において複数の遊星ギヤベアリング5に向かって突出している。
【0087】
つまり、突起部911は、ポケット633の開口の一部を覆うように、第1本体91の内面から突出した部位である。突起部911は、遊星ギヤ4の回転軸心L(つまり遊星ギヤベアリング5の中心軸)よりもサンギヤ2の径方向内側に位置する。
【0088】
本実施形態では、突起部911は、サンギヤ2の軸方向から視て円環状に形成されている。つまり、突起部911は、第1本体91の周方向全体に設けられている。ただし、突起部911は、第1本体91の下部(例えばサンギヤ2の回転軸心よりも下方の部分)のみに設けられていてもよい。
【0089】
傾斜面912は、サンギヤ2の軸方向において突起部911よりも遊星ギヤベアリング5から遠い側かつサンギヤ2の径方向において突起部911よりも内側から、突起部911に向かって傾斜している。
【0090】
つまり、傾斜面912は、第1本体91の内面のうち、突起部911から開口端9Aに向かって延伸する部分で構成されている。なお、傾斜面912は、平坦面で構成されてもよいし、湾曲又は屈曲していてもよい。
【0091】
凹部913は、突起部911のサンギヤ2の径方向外側の裏面(つまり傾斜面912とは反対側の面)に配置されると共に、サンギヤ2の径方向内側に向かって凹んだ部位である。凹部913は、サンギヤ2の周方向に沿って延伸する溝である。凹部913は、第1本体91の周方向全体に設けられてもよいし、第1本体91の下部(例えば凹部913に進入した潤滑用オイルが落下する部分)のみに設けられていてもよい。
【0092】
オイルガイド94を経由して、デフケースベアリング93のシールドを通過して第2スリーブ66の下方に流れ落ちた潤滑用オイル、あるいはオイルガイド94を経由せずに、ギヤケース9内での飛散によって傾斜面912に直接到達した潤滑用オイルは、
図8に矢印で示すように、傾斜面912を伝って突起部911に向かう。突起部911に到達した潤滑用オイルは、突起部911の先端から下方に落下し、ポケット633の内部に捕集される。
【0093】
また、突起部911の先端から突起部911の裏面に回り込んだ潤滑用オイルは、凹部913によって突起部911の裏面から離脱される。そのため、潤滑用オイルが第1本体91の内面を伝ってポケット633の下方に流れることが抑制される。
【0094】
<オイル供給溝及びオイル排出溝の形状>
図5に示すように、オイル導入溝67A-67Dは、それぞれ、第2サイドギヤ75の軸方向(つまりX軸と平行な方向)から視て、第2サイドギヤ75よりも第2サイドギヤ75の径方向外側において収容部61の内部空間に到達している。オイル導入溝67A-67Dの出口端はそれぞれ、回転する第2サイドギヤ75と重ならない部分を有する。
【0095】
また、オイル導入溝67A-67Dは、それぞれ、第2サイドギヤ75の軸方向から視て、第1ピニオンギヤ71及び第2ピニオンギヤ72の双方と重ならないように配置されている。
【0096】
第1オイル導入溝67A及び第2オイル導入溝67Bは、第2サイドギヤ75の周方向において第1ピニオンギヤ71と第2ピニオンギヤ72との間に並んで配置されている。第2オイル導入溝67Bの形状は、Y軸と直交する仮想面に対して第1オイル導入溝67Aと対象形状である。
【0097】
第3オイル導入溝67C及び第4オイル導入溝67Dそれぞれの形状は、Z軸と直交する仮想面に対して第1オイル導入溝67A又は第2オイル導入溝67Bと対象形状である。すなわち、第3オイル導入溝67C及び第4オイル導入溝67Dは、ピニオンシャフト73を挟んで第1オイル導入溝67A及び第2オイル導入溝67Bの反対側に配置されると共に、第2サイドギヤ75の周方向において第1ピニオンギヤ71と第2ピニオンギヤ72との間に並んで配置されている。
【0098】
オイル導入溝67A-67Dは、それぞれ直線状に延伸している。つまり、オイル導入溝67A-67Dは、溝の幅方向における中心点を結んだ線が直線である。また、オイル導入溝67A-67Dは、それぞれ収容部61に向かって拡幅している。つまり、オイル導入溝67A-67Dの幅は、第2スリーブ66の外端部66Aにおいて最小となり、収容部61の内部において最大となる。
【0099】
図9A及び
図9Bに示すように、第2スリーブ66の第1凸部661及び第2凸部662は、第2サイドギヤ75の周方向(つまり第2スリーブ66の周方向)において、第1オイル導入溝67A及び第2オイル導入溝67Bを挟むと共に、別の領域にて第3オイル導入溝67C及び第4オイル導入溝67Dを挟んでいる。
【0100】
具体的には、第1オイル導入溝67A及び第2オイル導入溝67Bそれぞれの端部は、第1凸部661の第1端部661Aと第2凸部662の第1端部662Aとに挟まれる領域に配置されている。第3オイル導入溝67C及び第4オイル導入溝67Dそれぞれの端部は、第1凸部661の第2端部661Bと第2凸部662の第2端部662Bとに挟まれる領域に配置されている。
【0101】
図9Aに示すように、デフケース6が第2出力シャフト8Bに対し相対的に第1方向R1に回転するときは、第1凸部661の第1端部661Aに遊星ギヤ収容空間内の潤滑用オイルOが衝突して、第1オイル導入溝67Aに潤滑用オイルOが誘導される。又は、第2凸部662の第2端部662Bに潤滑用オイルOが衝突して、第4オイル導入溝67Dに潤滑用オイルOが誘導される。
【0102】
図9Bに示すように、デフケース6が第2出力シャフト8Bに対し相対的に第1方向R1とは逆の第2方向R2に回転するときは、第1凸部661の第2端部661Bに遊星ギヤ収容空間内の潤滑用オイルOが衝突して、第3オイル導入溝67Cに潤滑用オイルOが誘導される。又は、第2凸部662の第1端部662Aに潤滑用オイルOが衝突して、第2オイル導入溝67Bに潤滑用オイルOが誘導される。
【0103】
図10に示すように、オイル排出溝65A-65Dは、それぞれ、第1サイドギヤ74の軸方向(つまりX軸と平行な方向)から視て、第1サイドギヤ74よりも第1サイドギヤ74の径方向外側において収容部61の内部空間に到達している。オイル排出溝65A-65Dの出口端はそれぞれ、回転する第1サイドギヤ74と重ならない部分を有する。
【0104】
なお、
図10は、収容部61の内部を第2スリーブ66側から視た図であり、第1ピニオンギヤ71、第2ピニオンギヤ72、ピニオンシャフト73及び第2サイドギヤ75は図示を省略している。
【0105】
オイル排出溝65A-65Dは、それぞれ、第1サイドギヤ74の軸方向から視て、第1ピニオンギヤ71又は第2ピニオンギヤ72と重なる位置に配置されている。また、オイル排出溝65A-65Dは、それぞれ、第1サイドギヤ74の軸方向から視て、第1サイドギヤ74の周方向においてオイル導入溝67A-67Dのいずれか2つの間に配置されている。
【0106】
図4に示すように、オイル排出溝65A-65Dは、それぞれ直線状に延伸している。また、オイル排出溝65A-65Dは、それぞれ第1スリーブ64の外端部64Aに向かって拡幅している。つまり、オイル導入溝67A-67Dの幅は、収容部61において最小となり、第1スリーブ64の外端部64Aの内部において最大となる。
【0107】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0108】
(1a)オイル導入溝67A-67D及びオイル排出溝65A-65Dによって、収容部61内で差動機構7を潤滑するオイルの循環路が構成される。また、オイル導入溝67A-67Dがピニオンギヤ71,72と重ならないように配置されることで、ピニオンギヤ71,72の回転によるオイルの収容部61への供給の阻害が抑制される。その結果、ポンプを用いることなく差動機構7の潤滑性を高められる。
【0109】
(1b)デフケース6が第2出力シャフト8Bに対し相対的に第1方向R1に回転する場合(例えば第2出力シャフト8Bの回転速度がデフケース6の回転速度よりも大きい場合)に第1凸部661によってオイルが第1オイル導入溝67Aに誘導されると共に、デフケース6が第2出力シャフト8Bに対し相対的に第2方向R2に回転する場合(例えば第2出力シャフト8Bの回転速度がデフケース6の回転速度よりも小さい場合)に第2凸部662によってオイルが第2オイル導入溝67Bに誘導される。そのため、第2出力シャフト8Bの回転の速度及び方向に係らず、効率よくオイルを差動機構7に供給することができる。
【0110】
(1c)オイル導入溝67A-67Dが直線状であることで、デフケース6の回転方向によってオイルの供給効率が変化することが抑制される。また、オイル導入溝67A-67Dが拡幅することで、デフケース6の回転に伴う遠心力によって効率よくオイルを差動機構7に供給することができる。
【0111】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0112】
(2a)上記実施形態の伝動装置において、第2スリーブは、必ずしも第1凸部及び第2凸部を有しなくてもよい。
【0113】
(2b)上記実施形態の伝動装置において、オイル導入溝は、必ずしも直線状でなくてもよい。例えば、オイル導入溝は、螺旋状であってもよい。また、オイル導入溝は、必ずしも収容部に向かって拡幅しなくてもよい。例えば、オイル導入溝は、長手方向に沿って幅が一定であってもよい。
【0114】
(2c)上記実施形態の伝動装置において、オイル導入溝及びオイル排出溝の数は4に限定されない。例えば、オイル導入溝及びオイル排出溝の数はそれぞれ3以下(1を含む)であってもよい。
【0115】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。