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  • 特許-ポリカーボネート樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-03
(45)【発行日】2025-03-11
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20250304BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20250304BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20250304BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20250304BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20250304BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20250304BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250304BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/524
C08K5/10
C08K5/06
C08L67/04
C08G81/00
C08L63/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024550302
(86)(22)【出願日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 JP2024022350
【審査請求日】2024-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2023140032
(32)【優先日】2023-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 渉
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199783(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/034898(WO,A1)
【文献】特開2022-154124(JP,A)
【文献】特開2021-059681(JP,A)
【文献】特開2020-097709(JP,A)
【文献】特開2014-074126(JP,A)
【文献】特開2010-106111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 11/00 -101/14
C08G 63/00 - 64/42
C08G 81/00 - 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)を0.01~4質量部、リン系安定剤(C)を0.005~0.5質量部含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)のポリラクトン単位とポリエーテル単位のモル比が、5:95~95:5である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)が、ポリカプロラクトン-ポリエーテル共重合体である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
ポリカプロラクトン-ポリエーテル共重合体(B)が、下記一般式(I)または(II)で表されるポリカプロラクトン-ポリエーテル共重合体である請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
【化2】
(式(I)、(II)中、R1~R4はそれぞれ直鎖または分岐の炭素数2~20のアリロキシ基またはアルコキシ基で置換されていてもよい炭化水素基を示し、R5はCHCHCH、CHC(CH、またはCHCHC(CHである。aは3以上の整数を、b、cはそれぞれ1以上の整数を、l、m、nはそれぞれ1以上の整数を、o、p、qはそれぞれ1以上の整数を示す。)
【請求項5】
前記一般式(I)および(II)中のR1~R4が、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブチレン基およびテトラメチレン基からなる群から選択されるアルキレン基である請求項4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)の数平均分子量(Mn)が、200~10,000である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)が、10,000~50,000である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
リン系安定剤(C)が、ホスファイト構造を有するリン系化合物である請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
リン系安定剤(C)が、ホスファイト構造を有するリン系化合物を2種類以上含み、その内1種類以上がスピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤である請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.0005~0.2質量部含有する請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、脂肪酸エステル(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対し、0.01~0.5質量部含有する請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物からなるペレット。
【請求項13】
請求項12に記載のペレットを成形してなる成形体。
【請求項14】
光学部品である請求項13に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、良好な色相を有し、透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少ないポリカーボネート樹脂組成物およびそれを成形した成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯電話等に使用される液晶表示装置には、その薄型化、軽量化、省力化、高精細化の要求に対応するために、面状光源装置が組み込まれている。この面状光源装置には、入光する光を液晶表示側に均一かつ効率的に導く役割を果たす目的で、一面が一様な傾斜面を有する楔型断面の導光板や平板形状の導光板が備えられている。また導光板の表面に凹凸パターンを形成して光散乱機能を付与するものもある。
【0003】
このような導光板は、熱可塑性樹脂の射出成形によって得られ、上記の凹凸パターンは入れ子金型の表面に形成された凹凸部の転写によって付与される。導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂材料から成形されてきたが、近年は、より鮮明な画像を映し出す表示装置が求められ、光源近傍で発生する熱によって機器装置内が高温化する傾向にあるため、より耐熱性の高いポリカーボネート樹脂材料に置き換えられつつある。
【0004】
ポリカーボネート樹脂は、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れるが、光線透過率は、PMMA等に比べて低いことから、ポリカーボネート樹脂製の導光板と光源とから面光源体を構成した場合、輝度が低いという問題がある。また最近では導光板の入光部と入光部から離れた場所の色度差を少なくすることが求められているが、ポリカーボネート樹脂はPMMAと比べて黄変しやすいという問題がある。
【0005】
透過率や色相を改良するため、ポリカーボネート樹脂に直鎖アルキル基で構成されるポリアルキレングリコールを配合することが、特許文献1により提案されている。ポリテトラメチレンエーテルグリコールを配合することで透過率や黄変度(イエローインデックス:YI)に改善が見られる。
【0006】
特に最近、スマートフォンやタブレット型端末等のモバイル端末においては、導光板などの光学部品は薄肉化や大型化が著しいスピードで進行しており、導光板の成形には、高温のバレル温度、且つ高速射出が求められている。これに伴い、成形時に発生するガスが増加し、金型汚染が進行しやすいという問題が生じている。そのため、これらの成形に用いられる樹脂組成物には優れた色相(YI)や透明性のみならず、高温での射出成形時のガス発生による金型汚染が少ないこと、耐衝撃性にも優れることが求められる。
さらに、特にエッジライト型導光板においては、モニターの大型化や薄形化、高性能化等が著しく進行しており、導光板の透明性、色相、耐金型汚染性をさらに向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5699188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少なく、耐衝撃性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に、ポリラクトン-ポリエーテル共重合体を特定の量で配合することにより、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少なく、耐衝撃性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及び成形体に関する。
【0010】
1.ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)を0.01~4質量部含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2.ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)のポリラクトン単位とポリエーテル単位のモル比が5:95~95:5である上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3.ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)が、ポリカプロラクトン-ポリエーテル共重合体である上記1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【0011】
4.ポリカプロラクトン-ポリエーテル共重合体(B)が、下記一般式(I)または(II)で表されるポリカプロラクトン-ポリエーテル共重合体である上記1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
【化2】
(式(I)、(II)中、R1~R4はそれぞれ直鎖または分岐の炭素数2~20のアリロキシ基またはアルコキシ基で置換されていてもよい炭化水素基を示し、R5はCHCHCH、CHC(CH、またはCHCHC(CHである。aは3以上の整数を、b、cはそれぞれ1以上の整数を、l、m、nはそれぞれ1以上の整数を、o、p、qはそれぞれ1以上の整数を示す。)
5.前記一般式(I)および(II)中のR1~R4が、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブチレン基およびテトラメチレン基からなる群から選択されるアルキレン基である上記4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【0012】
6.ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)の数平均分子量(Mn)が、200~10,000である上記1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
7.ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)が、10,000~50,000である上記1~6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
8.さらに、リン系安定剤(C)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.005~0.5質量部含有する上記1~7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
9.リン系安定剤(C)が、ホスファイト構造を有するリン系化合物である上記8に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
10.リン系安定剤(C)が、ホスファイト構造を有するリン系化合物を2種類以上含み、その内1種類以上がスピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤である上記8または9に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
11.さらに、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.0005~0.2質量部含有する上記1~10のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
12.さらに、脂肪酸エステル(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対し、0.01~0.5質量部含有する上記1~11のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
13.上記1~12のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなるペレット。
14.上記13に記載のペレットを成形してなる成形体。
15.光学部品である上記14に記載の成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少なく、耐衝撃性にも優れる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体は、YI値が低く優れた色相と透明性の良好であるので、光学部品として、特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例での金型汚染の評価に使用したしずく型金型の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0016】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)を0.01~4質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分、成形体等につき、詳細に説明する。
【0017】
[ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)を含有する。
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)は、ラクトン化合物由来の単位と、エーテル単位又はポリグリコール由来のエーテル単位から構成される共重合体であり、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、好ましくはポリラクトンブロックとポリエーテルブロックからなるブロック共重合体が好ましく、ポリエーテルの末端にポリラクトンが繋がったブロック共重合体が好ましい。
【0018】
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)のポリラクトン単位とポリエーテル単位のモル比は、好ましくは5:95~95:5であり、より好ましくは10:90~90:10であるが、ポリエーテル単位のモル比が50超のポリエーテル単位リッチのものが色相に優れる点でより好ましく、ポリラクトン単位とポリエーテル単位のモル比が、中でも10:90~45:55、10:90~40:60、10:90~35:65、特には10:90~30:70が好ましい。
なお、ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)中の各単位のモル比の測定は、1H-NMR測定装置を用い、1,1,2,2-テトラクロロエチレン-d2を溶媒として測定される。
【0019】
ラクトン化合物としてはε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、β-プロピオラクトン、ピバロラクトン等の環状ラクトン化合物が挙げられ、これらは単独で使用することもできるし併用してもよい。ラクトン化合物としては、ε-カプロラクトンが特に好ましい。
【0020】
エーテル単位は、それを-[R-O]-で示すと、Rは直鎖または分岐の炭素数2~20の、アリロキシ基またはアルコキシ基で置換されていてもよい炭化水素基である。Rはアリロキシ基またはアルコキシ基で置換されていてもよく、例えば、1-フェノキシメチル基のように芳香環を有するものでもよい。
【0021】
は好ましくは炭素数2~6の炭化水素基、特にはアルキレン基である。
直鎖の炭素数2~6の炭化水素基としては、1,2-エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。
分岐の炭素数2~6の炭化水素基としては、1,2-プロピレン基、1,2-ブチレン基、2-メチル(1,2-プロピレン基)、2,2-ジメチル(1,2-プロピレン基)、1,2-ジメチル(1,2-プロピレン基)、1-メチル(1,2-プロピレン基)、1,2,2-トリメチル(1,2-プロピレン基)、2-メチル(1,2-ブチレン基)、1-メチル(1,2-ブチレン基)、1-イソプロピレン(1,2-エチレン基)、2-メチル,1-イソプロピレン(1,2-エチレン基)、1-tert-ブチル(1,2-エチレン基)、2-エチル(1,2-ブチレン基)、1-エチル(1,2-ブチレン基)、1,1-ジメチルトリメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-メチルペンチレン基等が挙げられる。
は、これらの中でも、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブチレン基、テトラメチレン基が好ましく、1,2-プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が特に好ましい。
は同一の炭化水素基であってもよく、異なる炭化水素基で構成されていてもよい。
【0022】
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)の製造方法は、特に限定されることなく、公知の製法で製造でき、例えば、ラクトン化合物を開環重合させて、上記したエーテル単位を有するポリエーテルグリコールまたはアルキレンオキシドとエステル化共重合(ブロック共重合)する方法が望ましい。
【0023】
共重合の際には、ジオール化合物、トリオール化合物等を存在させてもよい。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
トリオール化合物としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、及びオクタントリオール等を挙げることができ、これらのなかでも、グリセリン及びトリメチロールプロパンが好ましい。
トリオール化合物を使用した場合、ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)は、3分岐した重合体となる。
【0024】
ポリカプロラクトン-ポリエーテル共重合体(B)としては、下記一般式(I)または(II)で表されるものが好ましい。
【化3】
【化4】
(式(I)、(II)中、R1~R4はそれぞれ直鎖または分岐の炭素数2~20のアリロキシ基またはアルコキシ基で置換されていてもよい炭化水素基を示し、R5はCHCHCH、CHC(CH、またはCHCHC(CHである。aは3以上の整数を、b、cはそれぞれ1以上の整数を、l、m、nはそれぞれ1以上の整数を、o、p、qはそれぞれ1以上の整数を示す。)
【0025】
一般式(I)、(II)において、l、m、nはそれぞれ1以上の整数であるが、好ましくは1~100であり、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特には10以上が好ましく、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下、中でも70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、特には35以下が好ましい。
また、o、p、qはそれぞれ1以上の整数であるが、好ましくは1~100であり、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特には10以上が好ましく、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下、中でも70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、特には35以下が好ましい。
aは3以上の整数であるが、好ましくは3~~100であり、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特には10以上が好ましく、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下、中でも70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、特には35以下が好ましい。b、cはそれぞれ1以上の整数であるが、好ましくは1~100であり、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特には10以上が好ましく、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下、中でも70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、特には35以下が好ましい。
【0026】
R1~R4は直鎖または分岐の炭素数2~20の炭化水素基であり、アリロキシ基またはアルコキシ基で置換されていてもよい。例えば、1-フェノキシメチル基のように芳香環を有するものでもよい。R1~R4は、前記したエーテル単位における[R-O]のRと同様のものが好ましく挙げられる。R1~R3は、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブチレン基、テトラメチレン基から選ばれるアルキレン基が好ましい。
また、R5は、CHCHCH、CHC(CH、またはCHCHC(CHであるが、CHCHCHが特に好ましい。l、m、nが2以上の場合、R1~R3は同一の炭化水素基であってもよく、異なる炭化水素基であってもよい。
【0027】
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、200~10,000が好ましく、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上であり、5,000以下がより好ましく、さらに好ましくは4,500以下である。数平均分子量がこのような範囲にあることでポリカーボネート樹脂(A)との相溶性が優れ、成形時のガスが発生するようなことがなくなりやすい。数平均分子量が上記上限を超えると、相溶性が低下する傾向があり、数平均分子量が上記下限を下回ると成形時にガスが発生しやすくなる。
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)の数平均分子量(Mn)はJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量(Mn)である。
【0028】
ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01~4質量部である。このような範囲で含有することにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物は、良好な色相を有し、透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少なく、耐衝撃性が低下することがなく優れた耐衝撃性を有する。含有量は好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更には0.3質量部以上であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。ポリエーテル化合物(B)化合物の含有量が上記下限未満であっても、上記上限を超えても、得られる成形体の色相が劣る傾向がある。
【0029】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明において使用するポリカーボネート樹脂(A)は、特に限定されず、種々のものが用いられる。ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。中でも、ポリカーボネート樹脂(A)としては、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0030】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0031】
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0032】
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0033】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0034】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0035】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0036】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0037】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0038】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0039】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0040】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0041】
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。これらの中では、界面重合法、溶融エステル交換法によるものが耐湿熱性の向上効果がより高い点から好ましく、界面重合法が特に好ましい。
【0042】
本発明において使用するポリカーボネート樹脂(A)としては、下記式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂をその一部あるいは全てとして用いてもよい。
【化5】
【0043】
上記式(1)中、nは0もしくは1の整数であり、Rは炭素数4~14のアルキル基である。ポリカーボネート樹脂が、上記式(1)の末端構造を有することにより、強度を維持しながら高度の流動性を可能とし、ポリカーボネート樹脂の分子量を下げることなく所望の分子量を採用しても高度の流動性を達成できるので、高い耐衝撃性並びに低温での高い耐衝撃性を可能とする。
【0044】
のアルキル基の炭素数は、4、または6以上が好ましく、好ましくは12以下であり、10以下であることがより好ましい。Rのアルキル基は、直鎖のものでも分岐していてもよい。
中でも、Rは、t-ブチル基、n-オクチル基、イソ-オクチル基及びt-オクチル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、t-ブチル基、t-オクチル基がより好ましく、一般式(1)における末端構造がt-オクチルフェニル基(即ち、1,1,3,3-テトラメチルブチルフェニル基)であることが好ましい。
【0045】
上記式(1)中、フェニル基に結合する-(O)基の位置は、オルト位でもメタ位でもパラ位でもよいが、下記式(1’)に示すパラ位が望ましい。
【化6】
【0046】
上記式(1)または(1’)で表されるR基の具体例としては、p-t-ブチル基、p-ペンチルフェニル基、p-ヘキシルフェニル基、p-ヘプチルフェニル基、p-n-オクチルフェニル基、p-イソ-オクチルフェニル基、p-t-オクチルフェニル基、p-ドデシルフェニル基及びp-テトラデシルフェニル基、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ミリスチルフェノール等のアルキルフェニル基、p-ヘキシルオキシフェニル基、p-n-オクチルオキシフェニル基、p-イソ-オクチルオキシフェニル基、p-t-オクチルオキシフェニル基、p-ドデシルオキシフェニル基等のアルコキシフェニル基を好ましく挙げることができる。
式(1)または(1’)で表されるR基は、これらの中でも、p-t-ブチル基、n-オクチル基、イソ-オクチル基及びt-オクチル基であることが好ましく、p-t-ブチル基、p-n-オクチル基、p-イソ-オクチル基、p-t-オクチル基がより好ましく、特にp-t-オクチル基が高度の流動性を達成できるので、高い耐衝撃性、低温耐衝撃性を可能とするので好ましい。
【0047】
上記式(1)の末端構造を有するポリカーボネート樹脂を含有する場合の割合は、ポリカーボネート樹脂(A)全体100質量%中、40質量%以上が好ましく、100質量%であることも好ましい。
【0048】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは10,000~50,000であり、より好ましくは10,000~40,000,中でも10,000~30,000、10,000~26,000であり、更には10,500以上、11,000以上、特には11,500以上、最も好ましくは12,000以上であり、さらには24,000以下、特に好ましくは20,000以下である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0049】
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0050】
また、成形体の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0051】
さらにポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよく、バージン原料とリサイクル樹脂の両方を含有することも好ましく、リサイクルポリカーボネート樹脂からなることでもよい。リサイクルポリカーボネート樹脂を使用する場合の割合は、ポリカーボネート樹脂(A)中、5%以上が好ましい。
【0052】
[リン系安定剤(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系安定剤(C)を含有することが好ましい。リン系安定剤を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相がより良好なものとなり、さらに耐熱変色性が向上する。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族又は第2B族金属のリン酸塩;ホスフェート化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物などが挙げられるが、ホスファイト構造を有する化合物が特に好ましい。ホスファイト化合物を選択することで、より高い耐変色性と連続生産性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0053】
ここでホスファイト化合物は、一般式:P(OR)で表される構造を有する3価のリン化合物であり、Rは、1価又は2価の有機基を表す。
このようなホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジホスファイト、6-[3-(3-tert-ブチル-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0054】
このようなホスファイト化合物のなかでも、下記式(1)又は(2)で表される芳香族ホスファイト化合物が、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性が効果的に高まるため、より好ましい。
【0055】
【化7】
[式(1)中、R、R及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。]
【0056】
【化8】
[式(2)中、R及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。]
【0057】
上記式(1)で表されるホスファイト化合物としては、中でもトリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が好ましく、中でもトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、住友化学社製「スミライザーTNP」、城北化学工業社製「JP-351」、ADEKA社製「アデカスタブ2112」、BASF社製「イルガフォス168」、城北化学工業社製「JP-650」等が挙げられる。
【0058】
上記式(2)で表されるホスファイト化合物としては、中でもビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトのようなペンタエリスリトールジホスファイト構造を有するものが特に好ましい。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、ADEKA社製「アデカスタブPEP-36」、「アデカスタブPEP-24G」、Doverchemical社製「Doverphos S-9228」等が好ましく挙げられる。
【0059】
ホスファイト化合物の中でも、上記式(2)で表される芳香族ホスファイト化合物が、色相がより優れるため、より好ましい。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0060】
リン系安定剤(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.005~0.5質量部であり、より好ましくは0.007質量部以上、さらに好ましくは0.008質量部以上、特に好ましくは0.01質量部以上であり、また、より好ましくは0.4質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、中でも好ましくは0.2質量部以下、特には0.1質量部以下である。リン系安定剤(C)の含有量が前記範囲の0.005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となりやすく、リン系安定剤(C)の含有量が0.5質量部を超える場合は、耐熱変色性がかえって悪化しやすく、湿熱安定性も低下しやすい。
【0061】
[エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(D)]
本発明の樹脂組成物は、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(D)を含有することも好ましい。エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物(D)を含有することで耐熱変色性をより向上させることができる。エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であることが好ましい。
【0062】
エポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4-(3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシル)ブチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6’-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール-Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス-エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス-エポキシエチレングリコール、ビス-エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3,5-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3-メチル-5-t-ブチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、オクタデシル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル-2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2-イソプロピル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2-エチルヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6-ジメチル-2,3-エポキシシクロヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3-t-ブチル-4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ-n-ブチル-3-t-ブチル-4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などを好ましく例示することができる。
【0063】
これらのうち、脂環族エポキシ化合物が好ましく用いられ、特に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましい。
【0064】
また、片末端もしくは両末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコール誘導体も好ましく使用することができる。特に、両末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコールが好ましい。
【0065】
構造中にエポキシ基を含有するポリアルキレングリコール誘導体としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(1-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(2-エチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリ(1-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(1-エチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール誘導体が好ましいものとして挙げられる。
【0066】
エポキシ化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
エポキシ化合物の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であるが、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上、特に好ましくは0.005質量部以上であり、また、より好ましくは0.15質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、特に好ましくは0.05質量部以下である。エポキシ化合物の含有量が、0.0005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となりやすく、0.2質量部を超える場合は、耐熱変色性がかえって悪化しやすく、色相や湿熱安定性も低下しやすい。
【0068】
オキセタン化合物としては、分子内に1以上のオキセタン基を有する化合物であればいずれも使用することができ、分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物および分子中にオキセタン基を2個以上有する2官能以上のポリオキセタン化合物のいずれもが使用できる。
オキセタン化合物を含有することによって、良好な色相と高度の耐熱変色性を一層向上させることができる。
【0069】
モノオキセタン化合物としては、下記の一般式(3)、(4)または(5)で表される化合物などを好ましく例示することができる。
【0070】
【化9】
【化10】
[上記式(3)~(5)中、Rはアルキル基、Rはアルキル基またはフェニル基を示し、Rは芳香環を有していてもよい2価の有機基、nは0または1を示す。]
【0071】
上記一般式(3)、(4)及び(5)において、Rはアルキル基であるが、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましく、特に好ましくはエチル基である。
また、Rはアルキル基またはフェニル基であるが、好ましくは炭素数2~10のアルキル基であり、鎖状のアルキル基、分岐したアルキル基または脂環式アルキル基のいずれであってもよく、或いはアルキル鎖の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する鎖状または分岐状のアルキル基であってもよい。Rの具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3-オキシペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などを挙げることができる。そのうちでも、Rは2-エチルヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0072】
上記一般式(3)の化合物の具体例としては、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタンなどを好ましく挙げることができる。そのうちでも、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン等が特に好ましい。
上記一般式(4)の化合物の具体例としては、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等が特に好ましい。
【0073】
上記一般式(5)において、Rは芳香環を有していてもよい2価の有機基であるが、その例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n-ペンタメチレン基、n-ヘキサメチレン基等の炭素数1~12の直鎖状または分岐状のアルキレン基、フェニレン基、式:-CH-Ph-CH-または-CH-Ph-Ph-CH-(ここで、Phはフェニル基を示す)で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基などを挙げることができる。
【0074】
上記一般式(5)の化合物の具体例としては、ビス(3-メチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-プロピル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-ブチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン等を特に好ましく挙げることができる。
【0075】
オキセタン化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0076】
オキセタン化合物を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.0005~0.2質量部であり、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上、特に好ましくは0.005質量部以上であり、また、より好ましくは0.15質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、特に好ましくは0.05質量部以下である。オキセタン化合物の含有量が、0.0005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となりやすく、0.2質量部を超える場合は、耐熱変色性が却って悪化しやすく、成形時のガスが発生しやすい。
【0077】
エポキシ化合物とオキセタン化合物は、両者を併せて含有することも好ましく、両者を含有する場合の合計の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であることが好ましい。
【0078】
[脂肪酸エステル(E)]
本発明の樹脂組成物は脂肪酸エステル(E)を含有することが好ましい。脂肪酸エステル(E)を含有することで、色相が良好となるので好ましい。
脂肪酸エステル(E)は、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルである。
【0079】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0080】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおけるアルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0081】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0082】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0083】
脂肪酸エステル(E)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~0.5質量部である。
【0084】
[添加剤等]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記した以外のその他の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、染料、ポリカーボネート樹脂以外の他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は一種又は二種以上を配合してもよい。
ただし、ポリカーボネート樹脂(A)以外の他のポリマーを含有する場合は、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
【0085】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記した必須成分、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0086】
[ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、色相に優れるのでYI(黄変度)に優れ、300mm光路長における初期YI値が好ましくは23以下であり、より好ましくは22以下、21.5以下、21以下であり、更には20.5以下であることが好ましい。
なお、初期YI値の測定は、樹脂温度340℃、金型温度80℃で長光路成形品(300mm×7mm×4mm)を成形し、300mmの光路長で、C光源、2°視野におけるYI値(初期YI値)を測定する。
【0087】
[光学部品]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して光学部品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して光学部品にすることもできる。
【0088】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性や色相に優れ、成形時のガス発生と金型汚染が極めて少ないことから、射出成形法により、光学部品、特に金型汚染が起こりやすい薄肉の光学部品を成形するのに特に好適に用いられる。射出成形の際の樹脂温度は、特に薄肉の成形体の場合には、一般にポリカーボネート樹脂の射出成形に適用される温度である260~300℃よりも高い樹脂温度にて成形することが好ましく、305~400℃の樹脂温度が好ましい。樹脂温度は310℃以上であるのがより好ましく、315℃以上がさらに好ましく、320℃以上が特に好ましく、390℃以下がより好ましい。従来のポリカーボネート樹脂組成物を用いた場合には、薄肉成形体を成形するために成形時の樹脂温度を高めると、成形体の黄変が生じやすくなるという問題もあったが、本発明の樹脂組成物を使用することで、上記の温度範囲であっても、良好な色相と高い透明性を有する成形体、特に薄肉の光学部品を製造することが可能となる。
なお、樹脂温度とは、直接測定することが困難な場合はバレル設定温度として把握される。
【0089】
ここで、薄肉成形体とは、通常肉厚が1mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下の板状部を有する成形体をいう。ここで、板状部は、平板であっても曲板状になっていてもよく、平坦な表面であっても、表面に凹凸等を有してもよく、また断面は傾斜面を有していたり、楔型断面等であってもよい。
【0090】
光学部品としての形状はフィルムあるいはシートであってもよく、その具体例としては、例えば導光フィルム等が挙げられる。
【0091】
また、光学部品としては、自動車あるいはオートバイ等の車両用前照灯(ヘッドランプ)あるいはリアランプ、フォグランプ等において、LED等の光源からの光を導光するライトガイドやレンズ等も好適であり、これらにも好適に使用することができる。
【0092】
光学部品としては、特にLED、有機EL、白熱電球、蛍光ランプ、陰極管等の光源を直接又は間接に利用する機器・器具の部品が挙げられ、導光板や面発光体用部材等が代表的なものとして例示される。
導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の中で、LED等の光源の光を導光するためのものであり、側面又は裏面等から入れた光を、通常表面に設けられた凹凸により拡散させ、均一の光を出す。その形状は、通常平板状であり、表面には凹凸を有していても有していなくてもよい。
導光板の成形は、通常、好ましくは射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、溶融押出成形法(例えばTダイ成形法)などにより行われる。
本発明の樹脂組成物を用いて成形した導光板は、白濁や透過率の低下がなく、良好な色相と高い透明性を有し且つ金型汚染による成形不良が少ない。
【0093】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いた導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野で好適に使用できる。このような装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の各種携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。これらにおいて、高性能のエッジライト型導光板等として、特に好適に使用できる。
【実施例
【0094】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した原料は、表1の通りである。
【0095】
【表1】
【0096】
(実施例1~15、比較例1~7)
[樹脂組成物ペレットの製造]
上記した各成分を、下記表2、表3に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチック機械社製「VS-40」)により、シリンダー温度を240℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0097】
[樹脂組成物ペレット製造時のストランド透明性]
上述の樹脂組成物ペレットの製造工程において、押出機により、溶融混練され押出されたストランドの透明性を、以下の基準で、目視にて判定した。
A:押出されたストランドは、極めて透明性が高く、ポリカーボネート樹脂(A)とポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)との相溶性は極めて良好である。
B:押出されたストランドは、透明性が高く、ポリカーボネート樹脂(A)とポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)との相溶性は良好である。
C:押出されたストランドは、やや白濁がしており、ポリカーボネート樹脂(A)とポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)との相溶性は不良である。
D:押出されたストランドは、強く白濁がしており、ポリカーボネート樹脂(A)とポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)との相溶性は極めて不良である。
【0098】
[成形時のガス発生(金型汚染性評価)]
射出成形における汚染性評価(金型汚れ)
上記で得られたペレットを、120℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(住友重機械工業社製「SE7M」)を用い、図1に示すようなしずく型金型を用いて、シリンダー温度を340℃、成形サイクル10秒、金型温度40℃の条件にて、200ショット射出成形し、終了後の金型固定側の金属鏡面に発生する白い付着物による汚れの状態を、以下の基準で、目視にて評価判定した。
A:金型付着物は極めて少なく、耐金型汚染性は極めて良好である。
B:金型付着物は少ないが、耐金型汚染性は若干見られる。
C:金型付着物はやや多く金型汚染が見られる。
D:金型付着物が多く、金型汚染が著しく見られる。
【0099】
なお、図1のしずく型金型は、ゲートGから樹脂組成物を導入し、尖端P部分に発生ガスが溜まり易くなるように設計した金型である。ゲートGの幅は1mm、厚みは1mmであり、図1において、幅h1は14.5mm、長さh2は7mm、長さh3は27mmであり、成形部の厚みは3mmである。
【0100】
[色相(YI)]
得られたペレットを120℃で5~7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(Sodick製「HSP100A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で長光路成形品(300mm×7mm×4mm)を成形した。
この長光路成形品について、300mmの光路長でYI(黄変度)の測定を行った。測定には長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA 1」、C光源、2°視野)を使用した。
【0101】
以上の評価結果を、下記の表2-3に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少なく、耐衝撃性に優れるので、各種の成形品、特に光学部品に極めて好適に利用できる。
【要約】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリラクトン-ポリエーテル共重合体(B)を0.01~4質量部含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
図1