(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】環境配慮型防火塗料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20250305BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20250305BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20250305BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20250305BHJP
C09K 21/08 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/18
C09D7/65
C09D5/03
C09K21/08
(21)【出願番号】P 2023549948
(86)(22)【出願日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 CN2023097745
(87)【国際公開番号】W WO2023241370
(87)【国際公開日】2023-12-21
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】202210673741.0
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523311960
【氏名又は名称】浙江銘諾新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】茆涵
(72)【発明者】
【氏名】陳虹
(72)【発明者】
【氏名】呉景遠
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160387(JP,A)
【文献】特開2021-31510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D、A62D1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火塗料であって、
塗料基材と、
75℃以上の温度及び/又は直火環境に曝されると破裂し、消火材料を気化して放出し、
降温及び/又は防火及び/又は消火を行
う消火剤マイクロカプセルと、を含み、
前記消火剤マイクロカプセルは、
熱を受けて放出されると気化して熱を吸収する芯材と、
高分子材料を含有する少なくとも2層の壁材と、を含み、
前記壁材は75℃以上で破裂可能であり、
前記壁材の内層壁材は、重量比が1:2.5~5のナノ酸化ケイ素とナノ金属酸化物を含
み、
前記ナノ酸化ケイ素及びナノ金属酸化物の合計添加量は、
前記内層壁材の乾燥質量に対し
て0.05~0.2%であり、
前記ナノ金属酸化物は、ナノ酸化亜鉛、ナノ酸化チタン、ナノ酸化カルシウム、ナノ二酸
化マンガン、ナノ酸化ニッケル、又はナノ酸化銅から選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする防火塗料。
【請求項2】
塗料組成物であって、
成膜物質と、
溶媒と、
消火剤マイクロカプセルと、を含み、
前記消火剤マイクロカプセルは、少なくとも2層の壁材を有し、
前記消火剤マイクロカプセルの壁材は、75℃以上で破裂可能であり、
前記消火剤マイクロカプセルは、壁材の破裂後に芯材を気化して放出し、
前記壁材の内層壁材は、重量比が1:2.5~5のナノ酸化ケイ素とナノ金属酸化物を含
み、
前記ナノ酸化ケイ素及びナノ金属酸化物の合計添加量は、該
内層壁材の乾燥質量に対して
0.05~0.2%であり、
前記ナノ金属酸化物は、ナノ酸化亜鉛、ナノ酸化チタン、ナノ酸化カルシウム、ナノ二酸
化マンガン、ナノ酸化ニッケル、又はナノ酸化銅から選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする塗料組成物。
【請求項3】
粉体塗料であって、
塗膜形成用樹脂としての成膜成分を含み、消火剤マイクロカプセルをさらに含み、
前記消火剤マイクロカプセルは、少なくとも2層の壁材を有し、
前記消火剤マイクロカプセルの壁材は、100℃以上で破裂し、
前記消火剤マイクロカプセルは、壁材の破裂後にマイクロカプセル芯材を気化して放出
し
、
前記壁材の内層壁材は、重量比が1:2.5~5のナノ酸化ケイ素とナノ金属酸化物を含
み、
前記ナノ酸化ケイ素及びナノ金属酸化物の合計添加量は、該
内層壁材の乾燥質量に対して
0.05~0.2%であり、
前記ナノ金属酸化物は、ナノ酸化亜鉛、ナノ酸化チタン、ナノ酸化カルシウム、ナノ二酸
化マンガン、ナノ酸化ニッケル、又はナノ酸化銅から選択される少なくとも1種である、
粉体塗料。
【請求項4】
降温及び/又は防火及び/又は消火塗膜の製造における請求項3に記載の粉体塗料の使用
。
【請求項5】
塗装物品であって、
基材と、
前記基材の表面に
請求項1に記載の防火塗料で形成された塗膜、及び/又は
請求項2に記載の塗料組成物で形成された塗膜、及び/又は
請求項3に記載の粉体塗料で形成された塗膜を含む、ことを特徴とする塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、防火塗料の技術分野に関し、特に環境配慮型防火塗料及びその製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
防火塗料とは、物体の表面に塗装することで、火災の発生を防止し、延焼・伝播を阻止し
たり、火元を隔離したり、基材の着火時間を延長したり、断熱性能を高めたりして構造破
壊の時間を遅らせることができる塗料であり、鉄骨構造用防火塗料、装飾型防火塗料、ケ
ーブル用防火塗料、プレストレストコンクリート床版用防火塗料などが含まれる。塗料基
材に難燃剤、添加剤などを配合して製造することが一般的であり、難燃剤の不燃性、低熱
伝導性、又は吸熱性により防火保護の役割を果たす。公開番号がCN111073414
Aである中国発明特許のように、塗料基材にポリリン酸アンモニウム、ペンタエリスリト
ール、水酸化アルミニウムなどを含む難燃剤を添加することにより、防火塗料の難燃性と
耐候性を実現する。また、公開番号がCN113480928Aである中国発明特許のよ
うに、低分子類炭素源、炭素生成触媒及び発泡剤で膨張性難燃剤を構成して防火塗料を製
造する。しかし、難燃剤は着火地域の拡大を阻止するだけで、短時間内に自発的に消火す
ることが困難であり、一方、消火効果を備えた消火剤は通常塗料中に安定して存在するこ
とが困難であるため、消火応答時間が短く、消火剤材料と塗料が安定して共存する防火塗
料の開発は重要な現実的意義を持っている。
【0003】
本発明に記載の背景技術は本発明の内容に属しており、前述の背景技術の知識は本発明の
技術案の理解を補助することを目的としており、必ずしも本発明の従来技術に属するわけ
ではなく、上記の内容が本発明の出願日に公開されたことを示す確かな証拠がない場合に
は、前述の背景技術の知識は本願の技術案の進歩性の評価に用いるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防火・消火・難燃性塗料が、単に着火領域の拡大を阻止できるだけで、短時間かつ
高感度で自発的に消火することが困難であるという現状を打破し、降温、防火、消火を自
発的に行うことができ、応答時間が短く、塗料及び/又は塗膜中に消火成分が安定して存
在し、塗膜が消火を複数回繰り返してトリガすることができる、塗料及び/又は塗膜を複
数種提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様によれば、
塗料基材と、75℃以上の温度及び/又は直火環境に曝されると破裂し、消火材料を気化
して放出し、降温及び/又は防火及び/又は消火を行うことができる消火剤マイクロカプ
セルと、を含む、環境配慮型防火塗料が提供される。
【0006】
本発明の第2態様によれば、成膜物質と、溶媒と、消火剤マイクロカプセルと、を含み、
前記消火剤マイクロカプセルは、少なくとも2層の壁材を有し、前記消火剤マイクロカプ
セルの壁材は75℃以上で破裂可能であり、前記消火剤マイクロカプセルは、壁材の破裂
後に芯材を気化して放出する塗料組成物が提供される。
【0007】
本発明の第3態様によれば、塗膜形成用樹脂としての成膜成分を含み、消火剤マイクロカ
プセルをさらに含み、前記消火剤マイクロカプセルは、少なくとも2層の壁材を有し、前
記消火剤マイクロカプセルの壁材は、100℃以上、好ましくは120℃~150℃で破
裂し、前記消火剤マイクロカプセルは、壁材の破壊後にマイクロカプセル芯材消火材料を
気化して放出する、粉体塗料が提供される。
【0008】
塗膜形成用樹脂としての前記成膜成分は、紫外線硬化により塗膜を形成するものである。
【0009】
前記成膜成分は、光硬化性樹脂と光開始剤とを含む。
【0010】
前記光硬化性樹脂は、不飽和ポリアクリレート、メタクリレート変性ポリエステル、不飽
和ポリエステルとアクリレートとの混合物、アクリレートグラフトポリエステル、アクリ
レート化ポリアクリレート、エポキシ樹脂、エポキシアクリル樹脂、ウレタンアクリレー
ト、及びハイパーブランチポリエステルアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種である
。
【0011】
前記塗料粉体は、消火剤マイクロカプセルの壁材の消火応答温度以下で、かつ、成膜成分
の溶融レベリング温度以上の温度で溶融してレベリングされる。
【0012】
本発明の第4態様によれば、降温及び/又は防火及び/又は消火塗膜の製造における第3
態様に記載の粉体塗料の使用が提供される。
【0013】
本発明の第5態様によれば、具体的には、ベースの表面に塗工又は塗工されずに乾燥して
形成される連続的及び/又は非連続的な薄膜である塗膜であって、消火材料が含有されて
いる塗膜が提供される。
【0014】
本発明の第6態様によれば、
基材と、
前記基材の表面に
前記第1態様に記載の環境配慮型防火塗料で形成された塗膜、及び/又は
前記第2態様に記載の塗料組成物で形成された塗膜、及び/又は
前記第3態様に記載の粉体塗料で形成された塗膜、及び/又は
【0015】
前記第5態様に記載の塗膜と、を含む、塗装物品が提供される。
【0016】
当業者の常識に合致した上で、上記の各好ましい条件は、相互に組み合わされて、具体的
な実施形態を得ることができる。
【0017】
本発明に係る原料又は試薬はいずれも一般に市販されている製品であり、特別な説明がな
い限り、関連する操作はいずれも当該分野の通常の操作である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、塗料基材と消火剤マイクロカプセルとが安定して共存し、塗工後の乾燥
塗膜中に消火剤マイクロカプセルが均一に分散し、高温や直火環境で壁材が破裂し、内包
した消火材料を気化して放出し、消火材料が熱を速やかに吸収して降温、消火を自発的に
行うことができる実用性の高い環境配慮型防火塗料を提供することができる。
【0019】
本発明によれば、消火剤マイクロカプセルは、常温常圧で揮発しやすく保存しにくい消火
材料の欠点を克服し、ナノシリカ及びナノ金属酸化物の存在により、マイクロカプセルの
加水分解後の加水分解生成物の吸着が容易になり、フッ化水素酸の残留が減少し、残りの
マイクロカプセルの壁材へのフッ化水素酸による侵食が回避され、マイクロカプセル固有
の形態が維持され、保存安定性及び消火塗料の再利用性が向上する。
【0020】
本発明によれば、消火剤マイクロカプセルと成膜物質、溶媒との相溶性が良好であり、消
火剤マイクロカプセルの芯壁比が高く、消火感受性が高く、降温、防火、消火を自発的に
行うことができる塗料組成物が提供され得る。
【0021】
本発明によれば、消火剤マイクロカプセルの壁材の材料及び製造プロセスを選択して限定
することにより、例えば、適当な高分子材料の選択、高分子材料の架橋度の向上、壁材の
層数の増加等により、消火剤マイクロカプセルの消火応答温度の上昇に寄与し、100℃
以上、より好ましくは120℃~150℃で壁材が破裂する消火剤マイクロカプセルを得
ることができ、これを光硬化性粉体塗料に適用して、消火剤マイクロカプセル壁材の消火
応答温度以下で、かつ、成膜用樹脂の溶融レベリングが可能な温度で前記粉体塗料を溶融
し、光硬化して塗膜を形成することにより、優れた降温及び/又は防火及び/又は消火機
能を発揮することができる粉体塗料が提供され得る。
【0022】
本発明によれば、塗膜の温度が75℃以上に上昇した場合や、直火環境に遭遇した場合、
塗膜中の消火材料が気化して放出され、消火材料が気化して周囲の熱を速やかに吸収し、
周囲の温度を瞬時に低下させて自動降温、自動防火を行うことができる塗膜が提供され得
る。
【0023】
本発明によれば、表面に塗膜を形成することができる任意の基材、好ましくは高い熱及び
/又は直火環境などの不利な環境に曝される可能性がある物品を使用することができ、高
温及び/又は直火環境に曝されると物品の表面に塗装された塗膜は、熱を受けて気化して
消火材料を放出し、熱を速やかに吸収して局所的な温度を低下させ、降温、消火を自発的
に行うことができ、高温又は直炎による基材の侵食に起因する損傷を極めて少なくし、基
材に他の汚染を生じさせず、環境保全のレベルが極めて高く、安全性に優れ、より高い応
用価値を有する塗装物品が提供され得る。
【0024】
本発明は上記の目的を実現するために上記の技術案を採用しており、従来技術の不足を補
い、設計が合理的であり、操作されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の上記及び/又は他の目的、特徴、利点、及び例をより明確にわかりやすくするた
めに、図面を以下のように説明する。
【
図1】実施例1で得られた消火剤マイクロカプセルの顕微鏡像(ハイライトは液状消火材料)である。
【
図2】実施例1で得られた消火剤マイクロカプセルの乾燥後の部分的な破裂の顕微鏡像である。
【
図3】実施例1で得られた防火塗料の顕微鏡像(ハイライトは液状消火材料)である。
【
図4】実施例1で得られた防火塗料の施工乾燥後の形態図である。
【
図6】実施例1で得られた施工しているが乾燥していない防火塗料の形態図である。
【
図7】実施例2で得られた防火塗料の顕微鏡像(ハイライトは液状消火材料)である。
【
図8】実施例1で得られた保護層を塗工していない塗料サンプルの室温環境での重量損失の概略図である。
【
図9】実施例1で得られた消火塗料の乾物の熱重量分析曲線である。
【
図11】消火検証装置の点火状態を示す概略図である。
【
図12】消火検証装置の模擬配置サンプルの状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当業者は、本明細書の内容を参考にして、プロセスパラメータを適切に置換及び/又は変
更して実現することができるが、なお、類似の置換及び/又は変更はすべて当業者にとっ
て自明であり、それらはすべて本発明に含まれるものとみなされる。本発明の前記製品及
び製造方法は、本発明の内容、精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書に記載された
製品及び製造方法を変更したり、適切に変更して組み合わせたりして、本発明の技術を実
施し、適用することができることは明らかである。
【0027】
具体的に示されない限り、本明細書で説明される材料、方法、及び例は例示的なものにす
ぎず、限定的なものではない。本明細書に記載された方法及び材料と類似又は同等の方法
及び材料を使用して本発明の実施又は試験をすることができるが、本明細書には、適切な
方法及び材料が記載されている。
【0028】
量、濃度、他の数値又はパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は一連の好ましい上限値
及び好ましい下限値で与えられる場合、範囲がそれぞれ開示されているか否かにかかわら
ず、任意のより大きい範囲又は好ましい値と任意のより小さい範囲又は好ましい値とのい
ずれかの対の数値によって形成されるすべての範囲を特定的に開示していることが理解さ
れるべきである。例えば、「1から5(1~5)」の範囲を記述する場合、記載される範
囲は、「1から4(1~4)」、「1から3(1~3)」、「1から2(1~2)」、「
1から2(1~2)及び4から5(4~5)」、「1から3(1~3)及び5」等の範囲
を含むものとする。特に断らない限り、本明細書で数値範囲を説明する場合、前記範囲は
、範囲終了値、及びこの範囲内のすべての整数及び分数を含む。
【0029】
特に断らない限り、本願に記載された1つ又は複数の特徴の各項が前述の対応する特徴を
適切に適用するとは、前記特徴の限定が、後に記載される対応する特徴に適切で選択的に
適用されることを意味すること、すなわち、特に断らない限り、本願のある部分における
1つ又は複数の特徴の開示は、本願の他の部分の対応する特徴に適用され、この他の部分
の特徴は、同様に十分に開示されることを意味することを明確にすべきである。
【0030】
特に断らない限り、すべての百分率、部数、割合等は重量で計算する。なお、「wt%」
は重量パーセントを意味し、「mol%」はモルパーセントを意味し、「vol%」は体
積パーセントを意味することを含むが、これに限定されるものではない。
【0031】
特に断らない限り、前記「芯材」、「消火材料」はいずれも消火剤マイクロカプセルの内
部に包まれた消火活性物質を指す。前記「マイクロカプセル破裂温度」、「壁材破裂温度
」、「破裂温度」、「消火応答時間」はいずれも同じ意味であり、消火剤マイクロカプセ
ルの壁材が著しく破裂して内容物を放出する温度を指す。
【0032】
コアシェル型消火剤マイクロカプセルに関する研究が多いので、以下に簡単に紹介する。
【0033】
従来技術として、公開番号CN105218714Aである中国の発明特許は、芯材と芯
材の外側を被覆する被覆層とを含む難燃性マイクロカプセル及びその製造方法と応用を開
示しており、前記芯材は、液状セボフルオロプロパン又は液状ヘキサフルオロプロパンで
あり、前記被覆層は、懸濁重合法により重合されたポリメタクリレート系重合体である。
しかし、その芯材のセボフルオロプロパンの沸点は-16.4℃であり、ヘキサフルオロ
プロパンの沸点は-1.4℃であるため、3~8MPaまで加圧して気状の芯材を液状に
変える必要があり、製造プロセスが複雑で、製造コストが高い。
【0034】
従来技術として、公開番号がCN1126571140Aである中国発明特許は、低融点
共重合体からなる難燃性シェルと降温材料を含む降温コアとを含むマイクロカプセル消火
剤及びその製造方法を開示しており、低融点共重合体は低融点高分子重合体モノマーと難
燃剤とを共重合してなるものであり、低融点共重合体は、スチレン-メチルメタクリレー
ト-メタクリル-2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン四元共重合体であり、降
温材料は、フッ化ケトン類、フルオロプロパン類、グリセリン類、アルコール類の1種又
は複数種を含む。しかし、その製造過程は60~90℃まで加熱し、反応圧力を1.0~
1.5Mpaまで設定する必要があり、その比較的に高い圧力と温度は技術の複雑度を著
しく高め、工業的生産の要件が高い。
【0035】
従来技術として、公開番号がCN113476778Aである中国発明特許は、高安定性
消火マイクロカプセル及びその製造方法を開示しており、この高安定性消火マイクロカプ
セルは、芯材には消火剤を含み、シェルに内層、外層及び気密促進剤を含み、内層はメラ
ミン、メタキシリレンジアミン、尿素及びホルムアルデヒド溶液の反応により生成された
変性メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含み、外層はトリメチロールドデカン-ジイソシ
アネート付加物とゼラチン溶液の反応により生成された変性ポリウレタン樹脂を採用して
おり、有機系消火剤としては、膨張型難燃剤としてペンタエリスリトールリン酸エステル
、ペルフルオロヘキサノン、デカブロモジフェニルエタンを使用する。しかし、この態様
では、製造ステップのステップd)において、反応温度は85℃と高く、ペルフルオロヘ
キサノンの沸点が低いため、マイクロカプセルの形成に不利であり、デカブロモジフェニ
ルエタンの沸点が比較的に高いため、消火応答に不利であり、そのほか、そのシェルは、
破裂温度が180~220℃と高く、着火に対して降温、警報の作用を発揮することがで
きない。
【0036】
従来技術として、公開番号がCN114558268Aである中国発明特許は、ペルフル
オロヘキサノンマイクロカプセルの燃焼抑制媒体及びその製造方法、製品、使用を開示し
ており、この燃焼抑制媒体は、コア材140重量部とシェル材25~28重量部と、を含
み、前記核材はペルフルオロヘキサノンであり、前記シェル材は、高分子カプセル材とポ
リビニルアルコールとを混合してなるものである。その具体的な実施形態は、この態様で
得られたペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの爆発粉砕温度が97℃であり、降温
及び/又は防火の効果を発揮できず、着火に対する警報作用が弱いことを示した。
【0037】
従来技術として、出願番号RU2011125756のロシア特許は、90~270℃の
範囲内で爆発して内容物の消火剤材料を放出して消火することができるマイクロカプセル
消火剤及びその製造方法、消火複合材料及び消火塗料を開示している。
【0038】
従来技術として、公開番号がCN109420281A及びCN109453491Aで
ある中国特許は、主消火材料、マイクロカプセル被覆材料及び補助材料を含み、主消火材
料は被覆材料で被覆されてマイクロカプセルとなり、主消火材料はペルフルオロアセトン
、ペルフルオロブタノン、ペルフルオロペンタノン、ペルフルオロヘキサノン、ペルフル
オロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペ
ルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、テトラフルオロジブロモエタン、トリフル
オロトリクロロエタンの1種又は複数種であり、補助材料は高分子樹脂、繊維、無機充填
材の1種又は複数種であり、無機充填材は炭酸カルシウム、シリカ、チタニア、アルミナ
、水酸化アルミニウムの1種又は複数種であるマイクロカプセル自動消火剤が開示されて
いる。その製造方法により、まず、被覆材料をプレポリマーとし、プレポリマーを主消火
材料と水と乳化したモノマーエマルジョンを40~80℃の温度で反応させて、マイクロ
カプセル懸濁液を得た後、補助材料と混合して成形する。しかし、その主消火材料の中で
、ペルフルオロヘキサノンの沸点は49℃、ペルフルオロヘキサンの沸点は57.8℃、
テトラフルオロジブロモエタンの沸点は49.8℃、トリフルオロトリクロロエタンの沸
点は47.57℃であり、上記の多種の材料の沸点はその反応温度80℃より著しく低く
、この技術案の温度では、主消火材料は大量の逸散が発生し、マイクロカプセルの収率に
不利である。また、マイクロカプセル懸濁液に補助材料を添加して成形し、この補助材料
をマイクロカプセルの周囲に被覆しているので、炭酸カルシウム、シリカ、チタニア、ア
ルミナ、水酸化アルミニウムなどの無機充填材を用いても、マイクロカプセルの破壊や保
護に実質的な作用はない。
【0039】
以下では、本願に係る発明を達成する過程を詳細に説明する。
[環境配慮型防火塗料]
【0040】
塗料基材と、75℃以上の温度及び/又は直火環境に曝されると破裂し、消火材料を気化
して放出し、降温及び/又は防火及び/又は消火を行うことができる消火剤マイクロカプ
セルと、を含む、環境配慮型防火塗料が提供される。
[消火剤マイクロカプセル]
【0041】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルは、
熱を受けて放出されると気化して熱を吸収する芯材と、高分子材料を含有する少なくとも
2層の壁材と、を含み、前記壁材は75℃以上で破裂可能である。
【0042】
様々な実施形態において、前記壁材は、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以
上、100℃以上、120℃以上、150℃以上で破裂可能である。
【0043】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルは、80℃以上、85℃以上、9
0℃以上、95℃以上、100℃以上、120℃以上、150℃以上の環境に曝されると
破裂し、消火材料を気化して放出し、降温及び/又は防火及び/又は消火を行うことがで
きる。
【0044】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルの消火応答時間は25s以下であ
る。
【0045】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルの芯壁比は1:1~9:1である
。
【0046】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルの包埋率は80%以上である。
【0047】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルの粒子径は20~400μmであ
る。
【0048】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルは、熱を受けて破裂するとパチパ
チと音を立てる。
【0049】
成膜物質と消火剤マイクロカプセルを含む環境配慮型防火塗料を提供することを目的とし
、塗料に防火消火機能を付与する消火剤マイクロカプセル材料は、成膜物質の種類にこれ
以上の限定はなく、従来の塗料と安定して共存でき、塗料温度が75℃以上に上昇した場
合や、直火環境に遭遇した場合、消火剤マイクロカプセルは破裂して内容物の消火剤を気
化して放出し、環境の熱を速やかに吸収し、発熱点や着火点の温度や周辺温度を火炎点温
度以下に下げ、自動降温、自動消火機能を実現する。本願による環境配慮型防火塗料は、
通常の防火塗料のように難燃剤の適用により単に着火点の拡大を防止するのではなく、自
発的に降温、消火することができ、温度上昇による着火環境において、その消火作用が予
見性を有し、防火消火の利便性を著しく向上させ、応用範囲を広げるので、より高い利用
価値を有する。
【0050】
様々な実施形態において、消火剤マイクロカプセルは、以下の製造方法によって製造され
る。
1)第1壁材溶液を調製し、第1助剤を加えて均一に混合し、第1壁材に対して100~
900%の消火材料を加えて、撹拌して乳化し、マイクロカプセルエマルジョンを形成す
る。
2)前記マイクロカプセルエマルジョンに架橋剤を加え、架橋した後、ろ過、洗浄、分離
をして、予備硬化消火剤マイクロカプセルを得る。
3)第2壁材溶液を調製し、前記予備硬化消火剤マイクロカプセルを第2壁材溶液中に分
散させ、硬化後、ろ過、洗浄、乾燥をして、消火剤マイクロカプセルを得る。
【0051】
様々な実施形態において、前記第1壁材、第2壁材は、それぞれ独立して、天然高分子、
半合成高分子、及び合成高分子のうちの少なくとも1種を含む。
【0052】
様々な実施形態において、前記第1助剤は、ナノシリカ、ナノ金属酸化物、及び紫外線防
止剤のうちの少なくとも1種を含む。
【0053】
様々な実施形態において、ステップ1)では、第1壁材溶液の濃度は5~30質量%であ
る。
【0054】
様々な実施形態において、ステップ1)では、第1助剤は、重量比が1:2.5~5のナ
ノシリカとナノ金属酸化物である。
【0055】
様々な実施形態において、ステップ1)では、撹拌及び乳化の温度は0~40℃であり、
撹拌速度は30~6000r/minである。
【0056】
様々な実施形態において、ステップ2)では、第2壁材溶液に第2助剤を添加して均一に
混合し、前記第2助剤は、ナノシリカ、ナノ金属酸化物、または紫外線防止剤のうちの少
なくとも1種を含む。
【0057】
様々な実施形態において、ステップ2)では、架橋剤は、硫酸クロムカリウム、酢酸クロ
ム、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドのうちの少なくとも1種であり、架橋剤の添
加量は、壁材の乾燥質量に対して0.1~10%である。
【0058】
様々な実施形態において、ステップ2)では、架橋時間は少なくとも30minである。
【0059】
様々な実施形態において、ステップ3)では、第2壁材溶液が成膜できない場合、壁材高
分子に対応する従来の硬化剤又は架橋剤は、高分子の乾燥質量の0.1~10%の量で添
加される。
【0060】
様々な実施形態において、ステップ3)では、硬化剤又は架橋剤は、好ましくは、硫酸ク
ロムカリウム、酢酸クロム、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドから選ばれる少な
くとも1種である。
【0061】
様々な実施形態において、ステップ3)では、硬化時間は少なくとも30minである。
【0062】
様々な実施形態において、ステップ3)を繰り返すことにより、2層以上の壁材を有する
消火剤マイクロカプセルが得られる。
【0063】
消火剤マイクロカプセルを製造する過程において、単一の壁材を用いて消火剤材料を包む
だけでは安定したコアシェル構造を形成することができず、本発明者らは、大量の実験研
究を通じて、少なくとも2層の壁材で消火剤材料を包むことで、安定して分離できる消火
剤マイクロカプセルを得ることができ、しかも、包む時の反応温度、撹拌速度パラメータ
により、包埋率が80%以上で、芯壁比が9:1から1:1の範囲内で調整でき、粒子径
が20~400μmの範囲にある消火剤マイクロカプセルを得ることができ、しかも、投
入比を変えることで包埋率を調整でき、撹拌速度を変えることで粒子径を調整でき、マイ
クロカプセルに壁材を繰り返して被覆することで2層以上の壁材を持つ消火剤マイクロカ
プセルを得ることを見出した。ナノシリカ、ナノ金属酸化物の存在はマイクロカプセル微
粒子の安定な保存に役立ち、マイクロカプセルの製造過程中に少量の水分がマイクロカプ
セルに入り、消火剤は部分加水分解が発生し、消火及び保存中に消火材料も部分加水分解
が発生し、加水分解生成物であるフッ化水素酸はマイクロカプセル壁材の成分を腐食し、
それによって内容物が漏れてゆっくり揮発し、マイクロカプセルの消火効果を低下させ、
一方、マイクロカプセルの製造過程にナノシリカ、ナノ金属酸化物を添加すると、消火材
料の加水分解生成物が迅速に吸着され、ナノ酸化物とフッ化水素酸が反応してイオン化し
にくいフッ化物が形成され、これにより、フッ化水素酸の残留が減少し、マイクロカプセ
ル壁材への侵食が回避され、未破裂マイクロカプセルの固有の形態が維持され、マイクロ
カプセルの保存安定性が著しく向上する。
芯材
【0064】
様々な実施形態において、前記芯材は、ペルフルオロヘキサノン、ペルフルオロヘキサン
、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、テトラフルオロジブロモエタン、及び
トリフルオロトリクロロエタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0065】
様々な実施形態において、前記芯材はペルフルオロヘキサノンである。
【0066】
ペルフルオロヘキサノンは、環境にやさしい新規な消火剤であり、常温で液体で、蒸発熱
が水の4%だけで、蒸気圧が水の2500%であるため、非常に気化しやすく、そして熱
を速やかに吸収して温度を下げる効果が得られる。ペルフルオロヘキサノンは、オゾン損
失係数が0、地球温暖化係数が1、大気寿命が0.014年(5日)であるため、ハロン
系消火剤の長期耐久性のある代替品として使用可能であるが、残念ながら、その沸点が4
9℃と低いため、消火剤としての用途にはまだ一定の限界がある。出願番号CN2019
213773896の実用新案では、感温ガラスカラムが熱を受けて破裂すると、封止シ
ートが排出口から外れ、タンク内のペルフルオロヘキサノンが火元に噴射される、タンク
を含む吊り下げ式ペルフルオロヘキサノン消火装置が開示されている。このような消火装
置はペルフルオロヘキサノンをタンクに充填する必要があり、その明らかな欠点はタンク
が比較的に大きい体積を占め、精密機器や固体材料に応用することが難しく、移動しにく
く、しかも手動操作がなければ消火を行うことができないことである。また、公開番号が
CN109420281A及びCN109453491Aである中国特許は、メラミン及
び/又は尿素アルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させて形成した樹脂シェルを主消火
材料に被覆してマイクロカプセル自動消火剤を製造した、マイクロカプセル自動消火剤を
開示しているが、主消火材料の質量百分率が35~60%であり、芯壁比が低く、消火効
果が低く、しかも、その製造過程において、プレポリマー、主消火材料及び水を乳化して
モノマーエマルジョンを得て、40~80℃まで昇温し、被覆材料を完全に反応させてマ
イクロカプセル懸濁液を得るが、この温度範囲内では、主消火材料が気化して損失される
ため、マイクロカプセルの最終収率が極めて低く、かつそのトリガ温度が96℃と高いの
で、その態様には、あまり利用価値がない。したがって、消火材料の芯材を、高分子材料
を含有する少なくとも2層の壁材で包む消火剤マイクロカプセルが提供され、この消火剤
マイクロカプセルは、構造的安定性を確保し、従来の使用に常温常圧では消火材料が揮発
しやすく保存しにくいという欠点を克服し、明らかな高温の発熱源や直火のない従来の環
境では、消火剤マイクロカプセルの性状や構造的安定性を維持し、長期間保存しても消火
性能が減衰しない。また、マイクロカプセルの消火応答温度をさらに80℃ないし75℃
まで下げて、熱を受けて消火応答温度に達したとき又は直火に遭遇したとき、消火剤マイ
クロカプセルの壁材が破裂し、消火材料が放出されて気化し、熱を速やかに吸収して空気
をバリアし、温度を火炎点温度以下まで下げて、自発的な消火を実現する。本発明による
消火剤マイクロカプセルは、温度トリガ式降温材料、防火材料、消火材料として有用であ
り、マイクロカプセル壁材を侵食しない種々の材料、界面と複合化して、種々の降温製品
、防火製品、消火製品を製造することができる。
壁材
【0067】
様々な実施形態において、前記高分子材料は、架橋前の軟化点が30~100℃であり、
架橋後の軟化点が75~150℃である。
【0068】
様々な実施形態において、前記架橋後の高分子材料の軟化点は100℃~150℃である
。
【0069】
様々な実施形態において、前記架橋後の高分子材料の軟化点は120℃~150℃である
。
【0070】
様々な実施形態において、前記高分子材料の架橋後の通気性は700mL/(cm2・h
)以下である2・h)。
【0071】
様々な実施形態において、前記高分子材料の架橋後の収縮率は5%以下である。
【0072】
様々な実施形態において、前記高分子材料の架橋後の吸水率は5%以下である。
【0073】
様々な実施形態において、前記高分子材料の架橋後の引張強さは10MPa以上である。
【0074】
開示番号がCN112439154Aである中国発明特許は、カプセル芯が98.2~9
8.8%、カプセルシェルが1.2~1.8%であり、その芯壁比が55:1~82:1
であり、カプセルの大きさが0.3~1.2cm3であるペルフルオロヘキサノン消火カ
プセル及びその製造方法を開示しており、ペルフルオロヘキサノンは気化しやすい液体で
あり、これを用いて、体積が大きく、芯壁比が極めて高いペルフルオロヘキサノンカプセ
ルを得るのが困難である。本願による消火剤マイクロカプセルの粒子径が20~400μ
mであり、マイクロカプセルを製造する際の撹拌速度を調節することにより、さまざまな
粒子径のマイクロカプセルを得ることができ、ミクロンスケールの微粉末構造は塗料、ス
ラリー等に添加して消火製品を製造するのに有利であり、消火剤マイクロカプセルは消火
製品中に均一に分布し、かつ高い芯壁比を併せ持ち、外界温度が消火応答温度より高くな
るか、直火環境に遭遇した後に壁材が破裂し、消火材料を気化して放出し、降温、防火、
消火の目的を達成する。マイクロカプセル壁材中の高分子物性は消火剤マイクロカプセル
の構造安定性及び優れた消火性能に必要であり、高分子材料の架橋後の高強度はマイクロ
カプセルの成形及び構造安定性に有利であり、高分子材料は、架橋固化後に低通気性、低
透湿性及び低収縮率を備えており、架橋前の軟化点もマイクロカプセルの成形に有利であ
り、架橋前の軟化点が高すぎると、製造過程における消火材料の損失を招く可能性があり
、低すぎると、芯壁比の低下、包埋率の低下を招く可能性があり、効率的な消火に不利で
ある。なお、高分子材料の架橋後の軟化点はマイクロカプセルの破裂開始温度の唯一の決
定要素ではなく、マイクロカプセルの破裂は持続的かつ漸進的な過程であり、本願のマイ
クロカプセルは75℃から破裂し、降温及び/又は防火及び/又は消化の作用を発揮し、
つまり、75℃から破裂し、消化剤材料尾の内容物を放出する。同様に、高分子材料の架
橋後の軟化点はマイクロカプセルの消火応答温度に直接関係し、低すぎると、保存に不利
であり、通常の環境下では消火材料の逸散を引き起こす可能性があり、高すぎると、降温
、消火効果が大きく低下する。高分子材料の通気性はマイクロカプセルの壁材の緻密性に
関係し、通気性が高すぎると、壁材の緻密性が低下して、常温環境ではマイクロカプセル
の中の消火材料の気化と散逸を招く可能性があり、長時間の保存に不利で、消火効果が低
下する。高分子材料の収縮率はマイクロカプセルの寸法安定性に関係し、収縮率が大きす
ぎても小さすぎてもマイクロカプセルの構造安定性に不利で、マイクロカプセルの破裂を
招く可能性があり、他の材料との複合化に不利である。高分子材料の吸水率はマイクロカ
プセル壁材の浸透性に関係し、吸水率が高すぎると、保存環境への湿度要求が高くなり、
水環境に侵食されると内容物の漏洩につながる。前記高分子材料の複数の物性は、消火剤
マイクロカプセルの性質に単独で影響を与えるのではなく、複合要素として関与し、最終
的には従来の環境下で高安定性、及び高感度で低い消火応答温度を付与する。なお、上記
の物性の少なくとも1つの変更は、消火剤マイクロカプセルの成形困難、保存安定性の低
下、消火効果の低下を招くことがある。非限定的な例としては、適当な高分子材料の選択
、高分子材料の架橋度の向上、壁材の層数の増加などにより、消火剤マイクロカプセルの
消火応答温度の上昇に役立つことが挙げられる。
【0075】
様々な実施形態において、前記高分子材料は、天然高分子、半合成高分子、及び合成高分
子から選ばれる少なくとも1種である。
【0076】
様々な実施形態において、前記天然高分子は、ゼラチン、アルギン酸塩、アラビアガム、
キトサン、キトオリゴ糖、キサンタンガム、β-シクロデキストリン、ポリグルタミン酸
、及びグアーガム又はカラギーナンから選ばれる少なくとも1種である。
【0077】
様々な実施形態において、前記半合成高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム
、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチ
ルグアーガムナトリウム、オクテニルコハク酸エステル化デンプン、及びローメトキシペ
クチンから選ばれる少なくとも1種である。
【0078】
様々な実施形態において、前記合成高分子は、ポリメタクリレート、エポキシ樹脂、ポリ
ウレタン、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂
、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエ
ステル、メラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー、ポリイミド、及びユリアホルムアル
デヒド樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
【0079】
壁材中の高分子材料は、上記で挙げられた天然高分子のうちの少なくとも1種であり、好
ましくは、天然高分子は、ゼラチン、上記で挙げられた半合成高分子のうちの少なくとも
1種であり、好ましくは、半合成高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、上
記で挙げられた合成高分子のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、合成高分子は、
レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂であり、上記で挙げられた高分子材料又はそれらの組
み合わせは、上記の硬化架橋後の適度な軟化点、低い通気性、収縮率、吸水性、及び優れ
た力学的強度を有するので、壁材を消火材料に包み込むのに使用することができ、また、
上記の高分子材料の成膜性に応じて、壁材の高分子に対応する従来の硬化剤又は架橋剤を
選択的に適用することができ、適用量は、対応する壁材の乾燥質量に対して0.1~10
%である。
【0080】
様々な実施形態において、前記壁材のうち前記芯材と接触する内層壁材の高分子材料は、
ゼラチン、アルギン酸塩、アラビアガム、キトサン、キトサンオリゴ糖、キサンタンガム
、グアービングガム、カラギーナン、ポリグルタミン酸、カルボキシメチルセルロース、
カルボキシメチルグアーガムナトリウム、β-シクロデキストリン、及びオクテニルコハ
ク酸エステル化デンプンから選ばれる少なくとも1種である。
【0081】
様々な実施形態において、前記壁材のうち内層壁材と接触する第2層壁材の高分子材料は
、ポリメタクリレート、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ア
クリル樹脂、フラン樹脂、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデ
ヒド樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー、ポリイミド
、及びユリアホルムアルデヒド樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
【0082】
様々な実施形態において、前記内層壁材及び/又は第2層は、サリチル酸エステル類、ベ
ンゾフェノン類、及びベンゾトリアゾール類のうちの少なくとも1種の紫外線防止剤を含
有する。
【0083】
様々な実施形態において、前記紫外線防止剤の添加量は、前記壁材層の乾燥質量に対して
0.05~0.2%である。
【0084】
様々な実施形態において、前記サリチル酸エステル類は、サリチル酸ベンジル、サリチル
酸ヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サ
リチル酸ジメチルシクロヘキシル、及びサリチル酸イソセチルから選ばれる少なくとも1
種である。
【0085】
様々な実施形態において、前記ベンゾフェノン類は、2-ヒドロキシ-4-メトキシベン
ゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、及び2-ヒドロ
キシ-4-ドデアルコキシベンゾフェノンから選ばれる少なくとも1種である。
【0086】
様々な実施形態において、前記ベンゾトリアゾール類は、UV-326、UV327、U
V328、UV329、UV-P、及びUV5411から選ばれる少なくとも1種である
。
【0087】
様々な実施形態において、前記壁材は、ナノ酸化ケイ素及び/又はナノ金属酸化物を含有
する。
【0088】
様々な実施形態において、前記壁材は、重量比が1:2.5~5のナノ酸化ケイ素とナノ
金属酸化物を含む。
【0089】
様々な実施形態において、前記壁材の内層壁材は、重量比が1:2.5~5のナノ酸化ケ
イ素とナノ金属酸化物を含む。
【0090】
様々な実施形態において、前記ナノシリカ及びナノ金属酸化物の合計添加量は、該層壁材
の乾燥質量に対して0.05~0.2%である。
【0091】
様々な実施形態において、前記ナノ金属酸化物は、ナノ酸化亜鉛、ナノ酸化チタン、ナノ
酸化カルシウム、ナノ二酸化マンガン、ナノ酸化ニッケル、及びナノ酸化銅から選ばれる
少なくとも1種である。
【0092】
様々な実施形態において、前記ナノ酸化ケイ素の粒子径は1~1000nm、好ましくは
20~100nmである。
【0093】
様々な実施形態において、前記ナノ金属酸化物の粒子径は1~1000nm、好ましくは
20~100nmである。
【0094】
消火剤マイクロカプセルの形成、消火及び保管において、高温応答により正常に破裂する
ほかに、壁材が温度・湿度、酸化、光照射、振動などの外界の要素によって破損し、内容
物の消火材料が漏れることもあり、また、マイクロカプセルの製造過程に少量の水分がマ
イクロカプセルに入り、これによりペルフルオロヘキサノンが部分的に加水分解し、加水
分解産物の一つであるフッ化水素酸がマイクロカプセルの壁材成分を腐食し、完全なマイ
クロカプセルの構造を破壊し、壁材が不完全で内容物が漏れてしまうことが発生し、消化
材料がゆっくり揮発し、マイクロカプセルの消火効果が低下する。出願人は多くの試験研
究により、壁材溶液にナノ酸化ケイ素、ナノ金属酸化物を添加することで、消火剤マイク
ロカプセルの保存安定性を著しく向上させることができることを発見した。消火過程にお
いて、消火材料が容易に加水分解することは当業者によく知られており、加水分解により
フッ化水素酸が形成され、さらに壁材が侵食され、さらに消火材料が漏れ、その使用寿命
が短くなり、一方、ナノ金属酸化物は消火材料の加水分解生成物を吸着し、フッ化水素酸
と反応してイオン化しにくいフッ化物を形成し、フッ化水素酸の残留を減少させ、マイク
ロカプセルの壁材に対する侵食を回避し、破裂していないマイクロカプセルの固有の形態
を維持し、マイクロカプセルの保存安定性を著しく高め、完成品の使用寿命を大幅に延長
し、消火回数を増やすことができる。
[塗料基材]
【0095】
様々な実施形態において、前記塗料基材は、一定の強度を有する連続的な膜を形成するこ
とができる。
【0096】
様々な実施形態において、前記塗料基材は、エポキシ樹脂エマルジョン、アルキド樹脂エ
マルジョン、ポリウレタンエマルジョン、酢酸ビニル-エチレン共重合体エマルジョン、
メタクリル樹脂エマルジョン、フッ素樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、及
びスチレン-アクリレートエマルジョンのうちの少なくとも1種を含有する。
【0097】
環境配慮型防火塗料では、塗料基材は消火剤マイクロカプセルに限定されず、従って、一
定の強度を有する連続的な膜を形成できる任意の基材を選択することができ、エポキシ樹
脂エマルジョン、アルキド樹脂エマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、酢酸ビニル-
エチレン共重合体エマルジョン、メタクリル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョ
ン、スチレン-アクリレートエマルジョンなどの従来適用された塗料基材は好ましく使用
され、選択された塗料基材は、従来の環境では前記消火剤マイクロカプセルに悪影響を及
ぼすべきではないとともに、悪影響を及ぼしてはならないことが明らかであり、消火剤マ
イクロカプセルと塗料基材とを配合して適用すると、一定の強度を有する連続的な膜を形
成することができ、消火剤マイクロカプセルは塗料基材の成膜にも悪影響を及ぼさず、前
記環境配慮型防火塗料は、良好で高感度で環境に優しい降温及び/又は防火及び/又は消
火機能を1回以上発揮する。
【0098】
様々な実施形態において、前記環境配慮型防火塗料は、塗工及び乾燥後に、くすぶり時間
が0sであり、延焼時間が0sであり、溶融滴下がない。
【0099】
様々な実施形態において、前記環境配慮型防火塗料は、塗工及び乾燥後に、60℃の送風
乾燥機に8h放置した後の重量損失率が5%以下である。
【0100】
様々な実施形態において、前記環境配慮型防火塗料では、消火マイクロカプセルの質量分
率は40~70%である。
【0101】
環境配慮型防火塗料では、塗料基材と消火剤マイクロカプセルが安定して共存し、塗料を
ブラシ塗布して低温乾燥した後、消火剤マイクロカプセルが塗料中に分散して、一定の温
度(75℃まで低い)又は直火の条件でマイクロカプセル壁材が破裂し、内容した消火材
料を放出し、消火材料が熱を速やかに吸収して気化し、これにより、降温、消火を自発的
に実現することができ、くすぶり、延燃や溶融滴下がなく、良い防火消火機能を持って、
塗料が塗工されたベースの材料を確実に保護することができ、降温、消火時に、他の完全
なマイクロカプセル構造に影響を及ぼさないため、本発明の防火塗料は、通常の環境下で
2年以上の有効期間を有し、優れた実用性を備えている。
【0102】
様々な実施形態において、前記環境配慮型防火塗料は助剤をさらに含む。
【0103】
様々な実施形態において、前記環境配慮型防火塗料では、塗料基材の含有量が25~55
重量%であり、消火剤マイクロカプセルの含有量が40~70重量%であり、助剤の含有
量が5~15重量%である。
【0104】
様々な実施形態において、前記助剤は、硬化剤、老化防止剤、分散剤、可塑剤、増粘剤、
消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、防カビ防藻剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、pH調整
剤、乳化剤、腐食防止剤、乾燥促進剤、皮張り防止剤、顔料、充填剤、酸化防止剤、潤滑
剤、凍結防止剤、色分離防止剤、界面活性剤、緊張防止剤、吸湿剤、消臭剤、シランカッ
プリング剤、帯電防止剤、撥水剤及び撥油剤から選ばれる少なくとも1種である。
【0105】
環境配慮型防火塗料は、前記塗料基材に前記消火剤マイクロカプセルを配合し、60r/
min以下の速度で均一に撹拌することにより得られ得る。
【0106】
環境配慮型防火塗料を使用する際には、塗工後に45℃以下で少なくとも2h乾燥して塗
膜を形成する。
[塗料組成物]
【0107】
成膜物質と、
溶媒と、
消火剤マイクロカプセルと、を含み、
前記消火剤マイクロカプセルは少なくとも2層の壁材を有し、
前記消火剤マイクロカプセルの壁材は75℃以上で破裂可能であり、
前記消火剤マイクロカプセルは、壁材の破裂後に気化して芯材を放出する、塗料組成物が
提供される。
[消火剤マイクロカプセル]
【0108】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルは、水及び/又はエタノール中で
6ヶ月保存した場合後の重量損失が2%以下である。前記消火剤マイクロカプセルは、上
記消火剤マイクロカプセルの各項を好適に適用したものである。
【0109】
様々な実施形態において、前記壁材は、前記芯材と接触する内層壁材と、前記内層壁材と
接触する第2層壁材と、を含む。
【0110】
様々な実施形態において、前記壁材は、壁材の乾燥重量に対して0.05~0.2%の紫
外線防止剤を含む。前記壁材は、内層壁材及び/又は外層壁材であってもよい。前記紫外
線防止剤は、従来塗料分野で使用されており、前記消火剤マイクロカプセル成分に悪影響
を及ぼさない、自身が公知の紫外線防止剤成分を使用することができる。前記紫外線防止
剤の種類は、前記紫外線防止剤の各項を適宜適用する。
【0111】
様々な実施形態において、前記壁材は、壁材の乾燥重量に対して0.05~0.2%のナ
ノ酸化ケイ素及びナノ金属酸化物を含む。前記壁材は、内層壁材及び/又は外層壁材であ
ってもよい。
【0112】
様々な実施形態において、前記ナノ酸化ケイ素とナノ金属酸化物の重量比は1:2.5~
5である。前記ナノ金属酸化物の種類は、前記ナノ金属酸化物の各項を適宜適用する。
【0113】
様々な実施形態において、前記塗料組成物中の前記消火剤マイクロカプセルの質量含有率
は40~70%である。
[成膜物質]
【0114】
様々な実施形態において、前記塗料組成物中の前記成膜物質の質量含有率は10~55%
である。
【0115】
様々な実施形態において、前記成膜物質は、従来の塗料分野で使用されてきた、マトリッ
クス樹脂と、前記マトリックス樹脂に応じて必要とされる硬化剤とを含む、自身が既知の
塗膜形成可能な樹脂成分を適用することができる。前記成膜物質の種類としては、例えば
、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル-エチレン共重合体、メタク
リル樹脂、アクリル樹脂、及びスチレン-アクリレートなどのうちの少なくとも1種が挙
げられる。前記成膜物質の状態は、粉末状態又はエマルジョン状態を含む。
[溶媒]
【0116】
様々な実施形態において、前記溶媒は有機溶媒及び/又は水を含む。
【0117】
様々な実施形態において、前記溶媒は、従来の塗料分野で使用されてきた、前記溶媒が存
在する塗料中の残りの成分と矛盾しない、自体が既知の溶媒成分を適用することができる
。前記溶媒の種類としては、有機溶媒及び/又は水が含まれる。前記有機溶媒の種類とし
ては、例えば、エステル、ケトン、アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが
挙げられる。具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエ
ステル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;メタノール、エタ
ノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノールなどのアルコ
ール;n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n
-ヘプタン、イソヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタンなどの脂肪族炭化水素;ベン
ゼン、トルエン、トルエンなどの二芳香族炭化水素が挙げられる。前記溶媒としては、有
機溶媒及び水が好ましい。
[その他]
【0118】
様々な実施形態において、前記塗料組成物は、前記成膜物質を硬化させる硬化剤をさらに
含む。
【0119】
様々な実施形態において、前記成膜物質は、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、及
びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる硬化剤と共に適用される。前記硬化
剤の種類としては、例えば、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸等
の脂肪族ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の酸無水物、酸基含有アクリル樹脂等の酸硬化
剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソ
シアネート等のイソシアネート化合物のウレア酸エステル化合物をε-カプロラクタム、
メチルエチルケトンオキシム等のブロック剤でブロック化したブロックイソシアネート硬
化剤、分子内にウレトジオン結合を有する自己ブロック型のイソシアネート硬化剤;脂肪
族ポリアミン、ポリアミノアミド、ケチミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、イミダ
ゾール、ジシアンジアミド、ポリアミド、β-ヒドロキシアルキルアミドなどのアミン硬
化剤;フェノール樹脂硬化剤等が挙げられる。
【0120】
様々な実施形態において、前記塗料組成物は助剤をさらに含有する。
【0121】
様々な実施形態において、前記助剤は、従来の塗料分野で使用されてきた、前記助剤が適
用された塗料の残りの成分と矛盾しない補助添加成分を適用することができる。前記助剤
の種類としては、例えば、老化防止剤、分散剤、可塑剤、増粘剤、消泡剤、沈降防止剤、
レベリング剤、防カビ防藻剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、pH調整剤、乳化剤、腐食防止
剤、乾燥剤、皮張り防止剤、顔料、充填剤、酸化防止剤、潤滑剤、凍結防止剤、色分離防
止剤、界面活性剤、緊張防止剤、吸湿剤、消臭剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、
撥水剤及び撥油剤のうちの少なくとも1種が挙げられる。
【0122】
老化防止剤は、塗料の紫外線防止、耐黄変及び抗酸化の特性を向上させるために使用され
、例えば、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、N-フェ
ニル-α-アニリン、N-フェニル-β-ナフチルアミン、N-フェニル-N’-イソプ
ロピル-p-フェニレンジアミン、及びN-N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン
のうちの少なくとも1種が挙げられる。分散剤は、分散効果を発揮させ、塗料の各成分を
十分に分散させるために使用され、例えば、ポリカルボン酸系及びポリアクリル酸系から
選ばれる少なくとも1種が挙げられる。可塑剤は、塗膜の硬度を低下させ、塗膜の延性を
向上させるために使用され、例えば、ワセリン、ポリブテン、シリコーンオイル、エポキ
シ大豆油、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、ヒドロキシ型三元塩化ビニル
・酢酸ビニル共重合体、及び塩素化パラフィンのうちの少なくとも1種が挙げられる。増
粘剤は、塗料の垂れ下がり、飛散等の現象を回避するために使用され、例えば、ポリアク
リル酸系増粘剤、ポリウレタン系増粘剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセル
ロースのうちの少なくとも1種が挙げられる。消泡剤は、動的に発生する泡立ちを解消し
、泡立ちによる外観及び性能への悪影響を回避するために使用され、例えば、ヘキサメタ
リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、及びピロリン酸カ
リウムから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。沈降防止剤は、塗料にチクソトロピー
性を付与し、粘度を向上させるために使用され、例えば、有機ベントナイト、アミド変性
硬化ヒマシ油、アタパルジャイト、ポリアミドワックス粉末、及びヒュームドシリカのう
ちの少なくとも1種が挙げられる。レベリング剤は、成膜時に平滑で均一な塗膜を形成す
るために使用され、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性水酸基含有
シリコーン、イソシアネート変性シリコーン、ポリアクリレート、及びポリメタクリル酸
エステルのうちの少なくとも1種が挙げられる。防カビ防藻剤は、微生物の増殖を抑制す
るために使用され、例えば、ペンタクロロフェノール及びそのナトリウム塩、テトラクロ
ロイソフタロニトリル、o-フェニルフェノール、8-ヒドロキシキノリン、サリチルア
ニリド、及びテトラメチル二硫化チウラムのうちの少なくとも1種が挙げられる。紫外線
吸収剤は、高分子ポリマーに有害な放射光を吸収し遮断し、それによって塗膜の寿命を延
長するために使用され、例えば、本明細書に記載のサリチル酸エステル類、ベンゾフェノ
ン類、及びベンゾトリアゾール類のうちの少なくとも1つが挙げられる。成膜助剤は、低
温条件下で成膜物質の良好な成膜を支援するために使用され、例えば、プロピレングリコ
ール、テレピン油、ポリエチレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタン
ジオールモノイソブチレート、及びジプロピレングリコールブチルエーテルのうちの少な
くとも1種が挙げられる。pH調整剤は、エマルション又は液相塗料のpHを調整するた
めに使用され、例えば、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、N-メチルエタノ
ールアミン、ジメチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、
トリエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
及びアンモニア水のうちの少なくとも1種などのアルカノールアミンが挙げられる。使用
される乳化剤としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリ
ン酸のナトリウム塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキ
シエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエ
チレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ソルビ
タンモノラウレート、及びソルビタンモノステアリン酸エステルのうちの少なくとも1種
が挙げられる。腐食防止剤は、金属と塗料との接触部で発生するさび現象を防止又は緩和
するために使用され、例えば、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、リン酸塩、塩基性ス
ルホン酸塩、有機窒化物亜鉛塩、ジフェニルアミン、ジメチルエタノールアミン、及びト
リエタノールアミンのうちの少なくとも1種が挙げられる。乾燥促進剤は、塗料塗膜の乾
燥時間を短縮し、塗膜強度を向上させるために使用され、例えば、ナフテン酸コバルト、
ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸カルシウム、ナフテン
酸セリウム、及びリシノール酸亜鉛のうちの少なくとも1種が挙げられる。皮張り防止剤
は、塗料が酸化されてゲル化して表皮を形成するのを抑制するために使用され、例えば、
メチルエチルケトンオキシム、ブチルアルデヒドオキシム、及びヘキサノンオキシムのう
ちの少なくとも1種が挙げられる。顔料は、顔料を使用していないプライマー、下塗り層
の上塗り層、上塗り層を区別するために使用され、例えば、チタニア、重晶石、炭酸カル
シウム、CIピグメントイエロー42、CIピグメントブルー15、CIピグメントブル
ー15:1、CIピグメントブルー15:2、CIピグメントブルー15:4、CIピグ
メントレッド49:1、CIピグメントレッド57:1、アイアンレッド、アイアンイエ
ロー、及びカーボンブラックのうちの少なくとも1種が挙げられる。充填材は、コストを
低減し、塗膜の耐摩耗性、耐擦傷性及び防食性を向上させるために使用され、例えば、ア
ルミナ、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、炭酸カルシウム、カオリン、酸化亜鉛及び
タルクのうちの少なくとも1種が挙げられる、また、制限のない他の酸化防止剤、潤滑剤
、凍結防止剤、色分離防止剤、界面活性剤、緊張防止剤、吸湿剤、消臭剤、シランカップ
リング剤、帯電防止剤、撥水剤、及び撥油剤などが使用される。なお、上記の助剤の使用
は、塗料の少なくとも1つの性質を変更することを目的としており、助剤の選択使用及び
使用量は当該分野の公知に従うものであり、かつ消火剤マイクロカプセルに不利な影響を
与えるべきではない。
【0123】
様々な実施形態において、塗料は、成膜物質を溶媒に分散させた後、消火剤マイクロカプ
セルをゆっくりと加え、60r/min以下の速度で均一に撹拌することにより塗工され
得る。塗膜の乾燥温度は45℃以下である。
【0124】
成膜物質と、溶媒と、消火剤マイクロカプセルとを含む塗料組成物であって、消火剤マイ
クロカプセルが成膜物質、溶媒との相溶性が良く、配合後に悪影響を及ぼさず、塗料中に
消火剤マイクロカプセルが均一に分布し、塗工乾燥後に形成される塗膜は、降温及び/又
は防火及び/又は消火効果に優れ、消火剤マイクロカプセルは、芯壁比が高く、消火感受
性が高く、外界温度が消火応答温度よりも高い場合や、直火環境に遭遇した場合に、壁材
が破裂して消火剤を気化して放出し、消火剤マイクロカプセルが熱を速やかに吸収して降
温、防火、消火を行うことができる、塗料組成物が提供される。
[粉体塗料]
【0125】
塗膜形成用樹脂としての成膜成分を含み、消火剤マイクロカプセルをさらに含み、
前記消火剤マイクロカプセルは、少なくとも2層の壁材を有し、
前記消火剤マイクロカプセルの壁材は、100℃以上、好ましくは120℃~150℃で
破裂し、
前記消火剤マイクロカプセルは、壁材の破裂後にマイクロカプセル芯材の消火材料を気化
して放出する、粉体塗料が提供される。
[成膜成分]
【0126】
様々な実施形態にのいて、前記塗膜形成用樹脂としての成膜成分は、紫外線硬化により塗
膜を形成するものである。
【0127】
様々な実施形態において、前記成膜成分は、光硬化性樹脂と光開始剤とを含む。
【0128】
様々な実施形態において、前記光硬化性樹脂は、不飽和ポリアクリレート、メタクリレー
ト変性ポリエステル、不飽和ポリエステルとアクリレートとの混合物、アクリレートグラ
フトポリエステル、アクリレート化ポリアクリレート、エポキシ樹脂、エポキシアクリル
樹脂、ウレタンアクリレート、及びハイパーブランチポリエステルアクリル樹脂から選ば
れる少なくとも1種である。
【0129】
様々な実施形態において、前記光開始剤として、前記光硬化性樹脂の種類に応じて、それ
に適合する光開始剤が選択される。
【0130】
様々な実施形態において、前記光開始剤は、IrgacureTM184、2959(C
IBA)、IrgacureTM819、IrgacureTM651、及びLucer
in TPO3から選ばれる少なくとも1種である。
【0131】
前記光硬化性樹脂の種類としては、Cytec社のUVECOATR1000、UVEC
OATR1016、UVECOATR1043、UVECOATR2100、UVECOA
TR2200、UVECOATR2200、UVECOATR2300、UVECOATR3
000、UVECOATR3001、UVECOATR3002、UVECOATR300
3、UVECOATR3005を90℃以上で溶融してレベリングしたもの、ビニルエー
テルとフマル酸不飽和ポリエステルとを100℃以下で溶融してレベリングしたもの、U
racrossP3125とUracrossP3307との組み合わせを100℃以下
で溶融してレベリングしたもの、UracrossP3125とUracrossP38
98との組み合わせを120℃以下で溶融してレベリングしたもの、デコサイ社のVES
TAGONREP-UV100、VESTAGONREP-UV300、VESTAGON
REP-UV500を115℃以下で溶融してレベリングしたものが挙げられる。
【0132】
様々な実施形態において、前記成膜成分は、前記光硬化性樹脂、光開始剤に適合する助剤
をさらに含む。前記助剤は、前記助剤の各項を適宜使用する。助剤の選択はすべて消火剤
マイクロカプセルの性質に影響しないことを基準とした。
【0133】
様々な実施形態において、前記塗料粉体は、消火剤マイクロカプセル壁材の消火応答温度
以下で、かつ、成膜成分の溶融レベリング温度以上の温度で溶融してレベリングされる。
[消火剤マイクロカプセル]
【0134】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルは、粉末の状態で存在し、及び/
又は貯蔵溶媒中に保存された状態で存在する。
【0135】
様々な実施形態において、前記消火剤マイクロカプセルは、貯蔵溶媒中に保存された状態
で6ヶ月の重量損失が2%以下である。
【0136】
様々な実施形態において、前記貯蔵溶媒は水及び/又はエタノールである。
【0137】
なお、前記消火剤マイクロカプセルの各項及びその製造プロセスの各項はすべて本粉体塗
料に適合し、消火剤マイクロカプセルの壁材の材料及び製造プロセスの選択と限定、例え
ば適当な高分子材料の選択、高分子材料の架橋度の向上、壁材の層数の増加等により消火
剤マイクロカプセルの消火応答温度の上昇に寄与する。これにより、100℃以上、より
好ましくは120℃~150℃で壁材が破裂する消火剤マイクロカプセルを得ることがで
き、成膜用樹脂と消火剤マイクロカプセルとを配合した後、消火剤マイクロカプセル壁材
の消火応答温度以下で溶融流動可能な成膜用樹脂の温度で前記粉体塗料を溶融し、その後
紫外線硬化させて塗膜を形成することができ、得られた塗膜中の消火剤マイクロカプセル
の構造が完全に維持され、内容物の消火材料の漏れがなく、塗膜は、消火剤マイクロカプ
セルの消火応答温度を超える温度又は直火に曝されると、マイクロカプセル壁材が破裂し
、内容物の消火材料を気化して放出し、これにより、降温及び/又は防火及び/又は消火
の機能を発揮する。なお、粉体塗料中の成膜成分の各成分は相互に適合していなければな
らず、光硬化性樹脂は光開始剤と適合していなければならず、光硬化性樹脂又は光開始剤
は本願に記載された例に限定されるものではなく、消火剤マイクロカプセルの破裂温度以
下の温度で塗膜を形成することができる成膜成分であれば、前記粉体塗料に適用すること
ができる。
【使用】
【0138】
降温及び/又は防火及び/又は消火塗膜の製造における前記粉体塗料の使用が提供される
。
【0139】
様々な実施形態において、前記塗料粉体は、消火剤マイクロカプセル壁材の消火応答温度
以下で、成膜成分の溶融温度以上の温度で溶融してレベリングされ、紫外線硬化させて、
降温及び/又は防火及び/又は消火塗膜を製造する。
[塗膜]
【0140】
具体的には、ベースの表面に塗布又は塗布されずに乾燥して形成される連続的及び/又は
非連続的な薄膜である塗膜であって、消火材料が含有されている、塗膜が提供される。
【0141】
様々な実施形態において、前記塗膜は、前記環境配慮型防火塗料で形成され、及び/又は
、前記塗料組成物で形成され、及び/又は前記粉体塗料で形成されている。
【0142】
様々な実施形態において、前記塗膜は、75℃以上の温度及び/又は火気環境に曝される
と、消火材料を気化して放出し、降温及び/又は防火及び/又は消火の目的を達成するこ
とができる。
【0143】
様々な実施形態において、前記消火材料は、ペルフルオロヘキサノン、ペルフルオロヘキ
サン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、テトラフルオロジブロモエタン、
及びトリフルオロトリクロロエタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0144】
様々な実施形態において、前記消火材料はペルフルオロヘキサノンである。
【0145】
様々な実施形態において、前記消火材料は、少なくとも2層の壁材に包まれ、塗膜中に安
定して存在す、また、前記壁材は、75℃以上の温度及び/又は直火環境に曝されると破
裂する。
【0146】
様々な実施形態において、前記壁材は、ナノ酸化ケイ素及び/又はナノ金属酸化物を含有
する。
【0147】
様々な実施形態において、前記壁材は、重量比が1:2.5~5のナノ酸化ケイ素とナノ
金属酸化物を含有する。
【0148】
様々な実施形態において、前記壁材は高分子材料を含有する。
【0149】
様々な実施形態において、前記高分子材料は、天然高分子、半合成高分子、及び合成高分
子から選ばれる少なくとも1種である。前記天然高分子、半合成高分子及び合成高分子の
各項は、前記対応する各項を適宜使用する。
【0150】
様々な実施形態において、前記壁材は、サリチル酸エステル類、ベンゾフェノン類、及び
ベンゾトリアゾール類のうちの少なくとも1種の紫外線防止剤を含有する。前記紫外線防
止剤の各項は、前記紫外線防止剤に対応する各項を適宜使用する。
【0151】
なお、前記消火材料は、消火剤マイクロカプセルの芯材として塗膜中に存在しているので
、前記消火剤マイクロカプセルの各項及びその製造方法の各項は、本塗膜に好適に適用す
ることができる。明らかに、塗膜は75℃と低い消火応答温度を持っていて、塗膜の温度
が75℃以上に上昇した場合や、直火の環境に遭遇した場合、塗膜中の消火材料は気化し
て放出し、環境中の熱を速やかに吸収し、周辺温度を瞬時に下げて、降温、防火を自発的
に行い、発熱点や着火点の温度を火炎点温度以下に下げることによって、自発的な消火機
能を実現する。前記塗膜は、通常の難燃性塗料を硬化させた後の難燃性塗膜と比べて、単
に着火点の拡大を阻止するのではなく、温度上昇による着火環境においてその消火作用が
予見性を有し、防火消火の利便性を著しく向上させ、応用範囲を広げるので、より高い利
用価値を有する点が相違する。
[塗装物品]
【0152】
基材と、
前記基材の表面に
前記環境配慮型防火塗料で形成された塗膜、及び/又は
前記塗料組成物で形成された塗膜、及び/又は
前記粉体塗料で形成された塗膜、及び/又は
前記塗膜と、を含む、塗装物品が提供される。
【0153】
前記塗装物には、前記環境配慮型防火塗料及び/又は塗料組成物、及び/又は粉体塗料及
び/又は塗膜の前記対応する各項が適宜適用される。
[基材]
【0154】
様々な実施形態において、基材として、任意選択で、
木系板材、木系型材、木系器材、木系構造部材などを含む木系基材;
鉄製品、ステンレス製品、アルミ製品、銅製品、金製品、銀製品、亜鉛製品、錫製品など
を含む金属系基材;
セメント、石灰、石膏などを含むセメント系基材;
キャリア、ウエハプレート、ウエハタンク、電池、アンテナ、トランジスタなどを含む電
子デバイス系基材;
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴ
ム、水素化ブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、三元エチレンプロピレンゴム、
シリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、混練ゴムなどを含むゴム系基材;
天然繊維、合成繊維及びそれを含む織布又は不織布、ガラス、セラミック、紙、繊維板、
壁板等;
のうちの少なくとも1種を含む。
【0155】
様々な実施形態において、前記塗膜は、前記基材の表面に連続的又は不連続的に直接形成
される、及び/又は、前記基材の表面に設けられた分離層の表面に連続的又は不連続的に
形成される。
【0156】
様々な実施形態において、前記分離層は、前記基材の表面に連続的又は不連続的に配置さ
れる。
【0157】
様々な実施形態において、前記分離層は、天然高分子、半合成高分子、及び合成高分子の
うちの少なくとも1種で形成された層である。
【0158】
様々な実施形態において、前記天然高分子は、ゼラチン、アルギン酸塩、アラビアガム、
キトサン、キトオリゴ糖、キサンタンガム、β-シクロデキストリン、ポリグルタミン酸
、グアーガム、及びカラギーナンから選ばれる少なくとも1種である。
【0159】
様々な実施形態において、前記半合成高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム
、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチ
ルグアーガムナトリウム、オクテニルコハク酸エステル化デンプン、及びローメトキシペ
クチンから選ばれる少なくとも1種である。
【0160】
様々な実施形態において、前記合成高分子は、ポリメタクリレート、エポキシ樹脂、ポリ
ウレタン、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂
、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエ
ステル、メラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー、ポリイミド、及びユリアホルムアル
デヒド樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
【0161】
塗装物品を提供するための基材であって、本願に記載の環境配慮型防火塗料、塗料組成物
、粉体塗料又は塗膜を適用するための任意の基材は、前記環境配慮型防火塗料、塗料組成
物、粉体塗料又は塗膜の物品、特に好ましくは、高温及び/又は直火環境などの不利な環
境に曝される可能性がある物品に適宜適用されてもよく、塗装物品が高温及び/又は直火
環境に曝されると、塗装物品の塗膜は熱を受けて気化して消火材料を放出し、消火材料は
熱を速やかに吸収して局所的な温度を下げ、それにより、降温、消化を自発的に行い、基
材の高温又は直火による侵食に起因する損傷を極めて少なくすることを目的とし、基材に
他の汚染を生じさせることがなく、環境保全レベルが極めて高く、安全性に優れ、高い応
用価値を有する。
【0162】
様々な実施形態において、基材の表面に塗膜を形成した後、塗膜の表面に高分子物質をス
プレーして保護膜を形成することができる。塗料の塗工終了後、塗料表面に特定の高分子
物質をスプレーして保護膜を形成することで、空気や水分のバリア、老化防止、酸アルカ
リミスト防止、紫外線防止、適度な湿度を維持しながら、一定の条件下で自己修復機能を
有し、高分子溶液の成分と保護膜の厚さを変えることにより、程度が異なるが、塗装物品
の消火応答温度を高めることができ、それにより、塗膜は、様々な使用環境で要求される
降温及び/又は防火及び/又は消火トリガ条件に適用することができ、適用の柔軟性を高
めることができる。
【0163】
前記高分子物質は、通常、疎水性及び成膜性を有し、適切な軟化点及びガラス化温度を有
し、ポリエステル系、ポリウレタン系、フェノール樹脂、ユリアホルムアルデヒド樹脂、
ポリウレア樹脂、高分子ケイ素、天然由来高分子、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などを含
むが、これらに限定されない。保護膜厚は10~500μm、好ましくは50~200μ
mである。
以下、本発明を詳細に説明する。
実施例1
【0164】
環境配慮型防火塗料であって、その製造方法は、以下のステップを含む。
壁材溶液として10%ゼラチン水溶液を100g調製し、ナノシリカ粉末0.002gと
ナノチタニア粉末0.01gを加え、60℃で撹拌して、均一に混合して分散させた。ペ
ルフルオロヘキサノン80gを加え、25℃、450r/minの速度で40min撹拌
し、10質量%のグルタルアルデヒド溶液3mLをゆっくり加え、30min撹拌して架
橋し、濾過して洗浄し、分離して、予備硬化マイクロカプセル約80gを得た。
メラミン-ホルムアルデヒド予備重合溶液60gに予備硬化マイクロカプセル80gを加
え、1h撹拌した後、濾過して洗浄し、低温乾燥して、消火剤マイクロカプセル粉末を得
た。その顕微鏡像を
図1に示し、高温で破裂した後の顕微鏡像を
図2に示す。
消火剤マイクロカプセル粉末70gをポリウレタン溶液20gにゆっくりと加え、30r
/minで撹拌して均一に分散させ、さらに水性ラテックス塗料100gを加え、30r
/minで均一に撹拌し、防火塗料を得た。その顕微鏡像を
図3に示す。
図4~5に示す
ように、上記の防火塗料を施工して乾燥した。また、基材表面に消火塗料を塗工して乾燥
し、次に、
図6に示すように、消火塗膜の表面に50μmのポリ尿素保護層を1層塗工し
て乾燥した。
実施例2
【0165】
防火塗料であって、その製造方法は、以下のステップを含む。
壁材溶液として質量百分率が15%のゼラチン水溶液100gを調製し、ナノシリカ粉末
0.004g、ナノ二酸化カルシウム粉末0.016gを加え、20℃で撹拌して、均一
に混合して分散させた。ペルフルオロヘキサノン75gを加え、15℃、900r/mi
nの速度で1h撹拌して乳化し、マイクロカプセルエマルションを形成し、質量百分率が
10%のグルタルアルデヒド溶液2mLをゆっくりと加え、45min撹拌して架橋し、
濾過して洗浄し、分離して、予備硬化マイクロカプセル約82gを得た。
予備硬化マイクロカプセル80gをメラミン-ホルムアルデヒド予備重合溶液50gにゆ
っくりと加え、1h撹拌し、濾過して洗浄し、低温乾燥して、消火剤マイクロカプセル粉
末を得た。
消火剤マイクロカプセル粉末70gをポリウレタン溶液20gに加え、30r/minで
撹拌して均一に分散させ、さらに水性ラテックス塗料100gを加え、30r/minで
均一に撹拌し、防火塗料を得た。その顕微鏡像を
図7に示す。上記防火塗料を基材表面に
塗工して乾燥した後、塗膜表面に50μmのポリウレア保護層をさらに塗工して乾燥した
。
検証例1
【0166】
実施例1で得られたポリ尿素保護層を塗工していない乾燥塗料サンプルを室温(温度25
℃±2℃、相対湿度60%±5%)で静置し、防火塗料の重量損失を検証した結果、
図8
に示すように、
図8では、前期の質量変化は塗料中のわずかな残留水分の揮発とマイクロ
カプセルの破裂によるものであり、水分の流失に伴い、後期、特に20日後には、重量損
失が緩やかになり、消火剤マイクロカプセルが塗料中に安定して存在することを示し、室
内環境で2ケ月静置後の残部乾燥重量の質量百分率は約95%であり、良い保存安定性を
示し、消火剤マイクロカプセルは静置時間の延長に伴って持続的に破裂しないことを示し
、マイクロカプセル中の消火材料の保持と消火性能の保持に有利であることを示した。
検証例2
【0167】
本発明の実施例1で得られた消火塗料(乾燥)の熱重量分析を行って、
図9に示すような
熱重量分析曲線が得られ、ここでは、消火応答温度は約75℃であるが、80℃を過ぎる
と消火材料の放出が顕著になり、40~75℃の段階ではマイクロカプセルの少量が熱を
受けて破裂し、80℃に達するとマイクロカプセルの壁が著しく破裂し、内容物が著しく
漏れて、消火材料が速やかに気化して放出されることから、塗料中の消火材料の放出が敏
感であることが示された。
図9から、約99℃から約163℃の間で消火塗料の乾燥重量
損失は28.85%であることもわかり、一回の昇温過程で消火剤マイクロカプセルがす
べて破裂していないことが示され、消火塗料の消火性能が再現性を有することが示唆され
た。なお、熱重量分析はプログラム昇温であり、マイクロカプセル全体が破裂することは
ないので、損失質量が実際に含まれるペルフルオロヘキサノン質量と等しくない。
検証例3
【0168】
約800℃の火炎を火元とし、赤外線温度計で温度を測定し、ストップウォッチで消火時
間を測定し、シートをプレス鋼板の表面に固定し、該シートを火炎の外炎から1.5cm
に下を向けて置き、消火時間及び該シートの上部消火前後の温度差を測定し、該消火時間
及び温度差により防火及び/又は消火効果を特徴付ける、防火及び/又は消火シート、例
えば消火コーティングの防火及び/又は消火作用の検証方法を提供した。
上記の方法に基づいて、実施例1及び実施例2で得られた塗膜の消火時間の検証を行い、
着火試験を容易にするために塗膜の裏面に両面粘着テープを貼り付け、塗膜を火炎の外炎
から約1.5cmに置き、試験装置としては、
図10~12に示すように、火炎の大きさ
と温度を一定にし、塗膜をプレス鋼板に貼り付け、火炎の温度を約800℃とした。2~
3つのポイントを選択して消火応答時間をテストし、その結果を表1に示す。
表1 消火時間
注:「/」は、消火が7秒以内に完了していないことを意味する。
表1から分かるように、本願の実施例1及び実施例2で製造された塗料はいずれも3s以
内に消火を完了することができ、かつ塗膜に溶融滴下がなく、同一の試験点で4~5回の
消火が可能であり、直火に遭遇した場合、塗料成分中のマイクロカプセルの表層が軟化し
て破裂し、ペルフルオロヘキサノンが放出され、消火機能が自動的にトリガされ、消火剤
マイクロカプセル中のナノ酸化物の添加は消火材料の加水分解生成物を速やかに吸着し、
加水分解生成物の残留を減少させるのに寄与し、未破裂のマイクロカプセル壁材への加水
分解生成物の侵食を回避し、マイクロカプセル固有の形態を維持し、塗料の再利用性を高
め、消火剤マイクロカプセルの応用分野を大幅に拡大させた。
実施例3
【0169】
環境配慮型防火塗料であって、その製造方法は、以下のステップを含む。
ゼラチン12.5g、サリチル酸ヘキシル0.01g、ナノシリカ粉末0.015g、ナ
ノ酸化亜鉛粉末0.005gを含む壁材溶液100gを調製し、60℃で撹拌して、均一
に混合して分散させた。ペルフルオロヘキサノン90gを加え、35℃、2000r/m
inの速度で60min撹拌し、ゼラチンを壁材、ペルフルオロヘキサノンを包埋したマ
イクロカプセルエマルジョンを形成した。質量百分率が20%のグルタルアルデヒド3m
Lを加え、30min撹拌して架橋した。反応終了後、マイクロカプセルを濾取し、脱イ
オン水で2回洗浄し、マイクロカプセル予備生成物90gを得た。
マイクロカプセル予備生成物90gをレゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー溶
液100gに加え、2h撹拌した後、ろ過して洗浄し、低温乾燥して、消火剤マイクロカ
プセル粉末を得た。消火剤マイクロカプセル粉末は約85gであった。
消火剤マイクロカプセル粉末85gをメラミン-ホルムアルデヒド樹脂エマルジョン90
gに加え、30r/minで10min撹拌し、型に流し込み、40℃で乾燥成形し、表
面に約50μmのポリウレアをブレードコートし、40℃で乾燥し、約1mm厚さの塗膜
を得た。
検証例4
【0170】
検証例3に記載の方法に基づき、実施例3で得られた塗膜の消火時間及び消火前後の温度
変化の検証を行い、着火試験を容易にするために塗膜の裏面に両面粘着テープを貼り付け
、消火前後の塗膜の裏面温度をボッシュ社製の赤外線温度計GIS 500で塗膜から1
0cm離れた位置でテストした。塗膜を火炎の外炎から約1.5cmに置き、サンプルを
プレス鋼板に貼り付け、火炎を火炎の温度約800℃の最小ギアとした。設備は、500
℃以内でしか測定できず、しかもサンプルから一定の距離を必要とするので、サンプル又
は火炎から10cmの所の温度をテストすることしかできず、高温の部分は表示が低くな
る。また、ロシアのPYCINTEX消火ステッカーを使用して比較を行った
本特許のサンプルについて、10個の部位を選択してテストし、その結果を表2に示す。
表2 消防時間及び温度変化
表2から分かるように、本願の塗膜サンプルはいずれも3s以内に消火を実現でき、しか
も消火過程の温度はわずかに上昇し、最高40℃を超えないことはなく、塗膜は火を急速
に消すことができ、消火部位の温度はわずかに上昇し、自発消火性能に優れ、塗膜が塗工
される物品を確実に保護できることが示される。比較分析の結果、ロシアのPYCINT
EX消火ステッカーは自発的な消火ができず、サンプルは7s後に発火し、また、裏部の
温度は130℃まで上昇し、防火、消火の役割を果たせなかった。
実施例4
【0171】
消火剤マイクロカプセルと成膜成分を含む粉体塗料を提供する。
消火剤マイクロカプセル
ゼラチン15g、カルボキシメチルセルロースナトリウム5g、ナノシリカ粉末0.01
5g、及びナノ二酸化カルシウム粉末0.005gを含む壁材水溶液100gを調製し、
30℃で撹拌して、均一に混合して分散させた。ペルフルオロヘキサノン90gを加え、
15℃、2400r/minの速度で撹拌し、1h乳化して、マイクロカプセルエマルシ
ョンを形成し、質量百分率が15%のホルムアルデヒド溶液3mLをゆっくりと加え、6
0min撹拌して架橋し、濾過して洗浄し、分離して、予備硬化マイクロカプセル約10
0gを得た。予備硬化マイクロカプセル100gをレゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂溶
液(10%)40gにゆっくりと加え、さらに質量百分率が15%のホルムアルデヒド溶
液5mLを加え、1h撹拌し、ろ過して洗浄し、低温乾燥して、マイクロカプセル粉末を
得た。マイクロカプセル粉末80gを1%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液6
0gにゆっくりと加え、1h撹拌し、ろ過して洗浄し、低温乾燥し、粒径約50~80μ
mのマイクロカプセル粉末を得た。
成膜成分
70%UracrossP3125、20%UracrossP3307、5%Luce
rin TPO3(Ciba Geigy)、3.5%Irgacure TM651、
1.5%Resiflow P67(Estron)を83℃で溶融押出し、空気冷却後
粉砕し、0.2%アルミナC6を加え、粉砕して150メッシュのふるいにかけた。
消火剤マイクロカプセルと成膜成分とを1:5の割合で混合して粉体塗料を得た。
予熱された基材の表面にコロナ放電ランスで粉体塗料を吹き付け、対流オーブンにて10
0℃で溶融し、95℃で5min溶融してレベリングした後、600WV-ランプ(40
0~420nm)により1cm/sの速度で20sの放射線を照射して硬化させ、厚さ約
0.6mmの塗膜を得た。
検証例5
【0172】
実施例4で得られた塗膜の消火時間及び消火前後の温度変化について、検証例3の方法に
検証を行った。本特許のサンプルについて10個の部位を選択して試験を行い、結果を表
3に示す。
表3 消火時間及び温度変化
表3から分かるように、ペルフルオロヘキサノンを3層の壁材で被覆して消火剤マイクロ
カプセルを形成した後、成膜成分を配合して粉体塗料とすることにより、硬化後の塗膜は
、消火時間が5s以下であり、消火過程に温度が60℃以下にわずかに上昇することから
、光硬化性塗膜は直火を速やかに消火することができ、自発消火性に優れ、塗膜の熱伝達
効率が低く、塗膜が塗工される物物の保護に有利である。ロシアのPYCINTEX消火
ステッカーは、自発的な消火ができず、防火・消火の役割を果たせなかった。
実施例5
【0173】
マイクロカプセルの予備硬化時にナノシリカ粉末を添加せず、ナノ二酸化カルシウム粉末
0.02gを添加した以外、実施例2と実質的に同じ方法に従って、実施例2と同様の他
のパラメータ及びステップで防火塗料塗膜を製造した。
実施例6
【0174】
マイクロカプセルの予備硬化時にナノ二酸化カルシウム粉末を添加せず、ナノ二酸化ケイ
素粉末0.02gを添加した以外、実施例2と実質的に同じ方法に従って、実施例2と同
様の他のパラメータ及びステップで防火塗料塗膜を製造した。
実施例7
【0175】
マイクロカプセルの予備硬化時にナノ二酸化カルシウム粉末及びナノ二酸化ケイ素粉末を
添加しない以外、実施例2と実質的に同じ方法に従って、実施例2と同様の他のパラメー
タ及びステップで防火塗料塗膜を製造した。
実施例8
【0176】
マイクロカプセルの予備硬化時にナノシリカ粉末とナノ二酸化カルシウム粉末との重量配
合比が実施例2と異なる以外、実施例2と実質的に同じにして防火塗料塗膜を製造した。
ナノシリカ粉末とナノ二酸化カルシウム粉末との重量比に基づいて一連の塗膜が得られ、
重量比は、それぞれ、2:1、1:1、1:2、5:1、7:1、9:1である。
検証例6
【0177】
実施例5~8で得られた塗膜(サンプル5、サンプル6、サンプル7、サンプル群8と表
記)の消火時間を検証例3の方法で検証し、サンプルごとに1~3点を選択して、繰り返
し試験を行った。その結果を表4に示す。
表4 消火時間
注:「/」は7秒以内に消火が完了しなかったことを意味し、「//」は前回の結果が「
/」であっても今回は試験が行われなかったことを意味する。
表4では、サンプル5とサンプル6の多くの部位は、4回目の消火時に炎を消すことがで
きないことが存在し、一方、サンプル7は、3回目の消火効果が顕著に低下し、サンプル
2に比べてその消火効果には異なる程度の低下があることが示され、同様に、サンプル群
8の多種のサンプルは、第4回目或いは3回目に消火ができないことが存在し、ナノシリ
カとナノ金属酸化物が同時に添加されない場合は、消火作用の再現性や長期効果の発揮に
不利であることが示され、しかも、サンプル群8の多種のサンプルと実施例1、2のデー
タ及びナノ金属酸化物とナノ金属酸化物の重量比を繰り返して検証した結果、ナノシリカ
とナノ金属酸化物との重量比が1:2.5~5、さらに1:2~5の場合には、的優れた
繰り返し消火作用を発揮することができ、通常の使用環境での保存安定性にも有益である
。
【0178】
上記実施例における従来技術は、当業者に周知の従来技術であるため、ここでは詳細に説
明しない。
【0179】
本明細書に記載された具体的な実施例は、本発明の精神を例示するにすぎない。当業者で
あれば、記載された具体的な実施例を様々な修正、補足、又は同様の方法で代替すること
ができるが、本発明の精神から逸脱したり、特許請求の範囲に定義された範囲を超えたり
することはない。
本発明で詳述しないものはすべて公知の技術である。