(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】熔融塩原子炉用減速材、及び熔融塩原子炉
(51)【国際特許分類】
G21C 5/14 20060101AFI20250305BHJP
G21C 5/00 20060101ALI20250305BHJP
G21C 1/22 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
G21C5/14
G21C5/00 A
G21C1/22
(21)【出願番号】P 2021085986
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】523020534
【氏名又は名称】株式会社TEIRY
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】阿蘇 伸生
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-269093(JP,A)
【文献】特開2012-047531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0083878(US,A1)
【文献】特表2020-524289(JP,A)
【文献】特開平07-191171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 5/14
G21C 5/00
G21C 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熔融塩原子炉における原子炉容器内の炉心に複数設けられる熔融塩原子炉用減速材であって、且つ、当該炉心の炉心軸に沿って減速材軸がのびると共に、当該減速材軸を中心とした軸周りに複数の側面及び複数の角部が存在する本体側部を有した柱形状に形成される熔融塩原子炉用減速材において、
前記複数の側面は、前記減速材軸に近づく側に凸となるような曲面形状に夫々形成され
、
前記複数の側面の夫々の側面全体は、隣り合う前記熔融塩原子炉用減速材に対し接触しない曲面形状に夫々形成されると共に、当該複数の側面の夫々の前記減速材軸を中心とした周方向の側面長さが燃料塩に対する濡れぶち長さとなり、負の温度反応度係数向上に寄与する曲面形状に夫々形成される、熔融塩原子炉用減速材。
【請求項2】
前記複数の角部は、前記減速材軸から離れる側に凸となるような曲面形状に夫々形成される、
請求項1に記載の熔融塩原子炉用減速材。
【請求項3】
前記減速材軸に直交する方向に切って見た減速材断面形状は、前記本体側部の配置領域や隣り合う当該本体側部の境界を仮想的に示すため当該減速材軸を中心に描いた正n角形(nは3以上の整数)に囲まれるような形状、且つ、当該正n角形のn個の角及びn個の辺に対し夫々内接しない円弧を有する形状に形成される、
請求項2に記載の熔融塩原子炉用減速材。
【請求項4】
前記減速材軸がのびる方向に沿った、少なくとも前記本体側部が存在する範囲は、内部に空間が存在しない構造に形成される、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の熔融塩原子炉用減速材。
【請求項5】
原子炉容器内の炉心に請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の熔融塩原子炉用減速材が複数設けられる、熔融塩原子炉。
【請求項6】
前記複数の熔融塩原子炉用減速材は、前記炉心の炉心軸を中心に環状且つ複数の層状に配置され、
前記炉心は、前記複数の層状に配置された前記複数の熔融塩原子炉用減速材の所望の層数で燃料塩体積率を異ならせて領域を分割する、
請求項5に記載の熔融塩原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熔融塩原子炉用減速材、及び熔融塩原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示されるような熔融塩原子炉(単に原子炉と呼ぶこともある)が知られる。一般に熔融塩原子炉は、炉心内に減速材(熔融塩原子炉用減速材)を備えており、液体核燃料(熔融塩燃料。以下では単に燃料塩や熔融塩と呼ぶ)が減速材の中を流れる際に、核分裂反応を起こしてエネルギーを発生させるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術を含む従来技術にあっては、熔融塩の異常な温度上昇の抑制及び炉停止のためのブレーキの効きを良くし、コアの熔融塩の上限温度を低くするためとして、大きな負の温度反応度係数を獲得する必要があった。しかしながら、減速材はこの形状面で、濡れぶち長さを十分に確保することができていなかった。
この他、従来技術にあっては、隣り合う減速材同士が接触し合うような配置であると、接触に起因して摩擦等の応力が発生し、例えば破損に繋がってしまうという恐れがあった。また、従来技術にあっては、減速材の内部に燃料塩が流れる穴があり、この穴が内部にあることによって、コーティング加工がし難くなっていた。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、大きな負の温度反応度係数を獲得するため、濡れぶち長さを十分に確保することが可能な、熔融塩原子炉用減速材及び熔融塩原子炉の提供を目的とする。また、隣り合う同士の接触を避けて破損を防止することが可能であり、更にはコーティング加工をし易くすることも可能な、熔融塩原子炉用減速材及び熔融塩原子炉の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の熔融塩原子炉用減速材は、
熔融塩原子炉における原子炉容器内の炉心に複数設けられる熔融塩原子炉用減速材であって、且つ、当該炉心の炉心軸に沿って減速材軸がのびると共に、当該減速材軸を中心とした軸周りに複数の側面及び複数の角部が存在する本体側部を有した柱形状に形成される熔融塩原子炉用減速材において、
前記複数の側面は、前記減速材軸に近づく側に凸となるような(前記本体側部を凹ませるような)曲面形状に夫々形成される。
また、本発明の一態様の熔融塩原子炉は、
原子炉容器内の炉心に上述の熔融塩原子炉用減速材が複数設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大きな負の温度反応度係数を確保するため、濡れぶち長さを十分に確保することができる。また、本発明によれば、隣り合う同士の接触を避けて破損を防止することができ、更には、コーティング加工をし易くすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る熔融塩原子炉が存する建屋の断面図である。
【
図2】本実施形態に係る熔融塩原子炉の外観斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る熔融塩原子炉の垂直断面図(
図2のA-A線断面図)である。
【
図4】本実施形態に係る熔融塩原子炉の水平断面図を含む斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る熔融塩原子炉の水平断面図であり
図4の矢印B方向から見た断面図である。
【
図6】本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材の断面形状に関する説明図である。
【
図7】本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材の配置に関する説明図(平面図)である。
【
図8】本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材の配置に関する説明図(斜視図)である。
【
図9】本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材の形状に関する説明図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は垂直断面図である。
【
図10】本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材を採用した時の炉心のコア領域の検討に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下で説明するのは、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲がこれに限られるものでないのは勿論である。
図1は、本実施形態に係る熔融塩原子炉が存する建屋の断面図である。
【0010】
<建屋1について>
熔融塩原子炉プラントの建屋1は、熔融塩原子炉が配置された建造物である。建屋1は、
図1に示すような平屋で建設されるものや、特に図示しないが、複数階となるような積層状態で建設されるものがある。ここでは、説明を簡素化するため、また、例えば建設費を抑えるために、平屋で建設される建屋1が採用される。建屋1の所定位置には、熔融塩原子炉2(単に原子炉と呼ぶこともある。詳細については後述する)が存在する。
【0011】
建屋1には、複数の部屋(室)やエリアが存在する。
図1の建屋1の断面図においては、代表的な部屋(室)やエリアのみ符号を付すものとする。建屋1には、原子炉室11、計装室12、燃料タンク室13、再処理済タンク置場14、ヘリウムガス加熱エリア15が設けられる。
【0012】
原子炉室11は、他の部屋(室)やエリアよりも天井が高くなるように形成される。このような原子炉室11には、熔融塩原子炉2が設置される。原子炉室11の隣には、排気筒16が設けられる。原子炉室11の地下には、機器保管室17が複数設けられる。機器保管室17は、廃炉した熔融塩原子炉及びドレインタンクを収容することができるような底が深い部屋(室)に形成される。機器保管室17に、廃炉した熔融塩原子炉及びドレインタンクを収容した場合には、機器保管室17の上部(収容のために開口した部分)が蓋で覆われるようになる。本実施形態では、廃炉及び高レベル核廃棄物が地下に埋設・封印されて最終処分されることを想定している。計装室12は、計装のための部屋であって、
図1の場合、原子炉室11の左隣に設けられる。計装室12の隣の燃料タンク室13は、燃料タンクが置かれる。燃料タンク室13の隣の再処理済タンク置場14は、再処理済タンクが置かれる。一方、原子炉室11の右隣のヘリウムガス加熱エリア15は、ヘリウムガス加熱器等が設置される。
【0013】
建屋1には、上述以外に、制御室、燃料塩装荷・脱水還元室、燃料塩保管室、事務室、会議室、トイレ、受変電設備、バックアップ電源、熱除去エリア、オフガス処理エリア、タービン・発電機、冷却塩ドレインタンクエリア、荷下ろしヤード、消防設備等が存在する。荷下ろしヤードには、例えば大型トラック(符号省略)が出入り可能になる。
【0014】
建屋1は、本実施形態において、熔融塩原子炉2を2回交換して使用するため、耐用年数が約百年となるように想定したものになる。
【0015】
原子炉室11に設置された熔融塩原子炉2は、ドレインタンク3と共に格納容器4内に格納(収容)される。ドレインタンク3の下側には、各種配管やタンク(符号省略)も設置される。格納容器4は、地上及び地下にかけて設置される。
なお、全体を詳細に説明することは省略するが、原子炉室11に設置された熔融塩原子炉2の炉心内を燃料塩が流れる際に核分裂反応が起こり、この核分裂反応によって発生した熱エネルギーを、一次熱交換器ユニット等を介して取り出した後、この取り出した熱エネルギーを回転エネルギーに変換し、更に発電機によって電気エネルギー変換することによって発電するような発電システムが建屋1に備えられているものとする。
以下、熔融塩原子炉2について説明する。
【0016】
図2は、本実施形態に係る熔融塩原子炉の外観斜視図である。
【0017】
<熔融塩原子炉2の構成について>
図2において、熔融塩原子炉2は、原子炉容器21と、この原子炉容器21内に設けられる炉心22と、炉心22の上部に配置される一次熱交換器ユニット23と、2本の制御棒24と、配管類25とを備えて構成される(この構成は一例であるものとする)。熔融塩原子炉2は、本実施形態において、熱出力56MWt、電気出力約25MWeとなるものになる。
【0018】
なお、
図2の紙面上側を鉛直方向の「上」、紙面下側を鉛直方向の「下」と定義して説明を続けるものとする。熔融塩原子炉2の下側には、所定の間隔をあけてドレインタンク3が配置される。熔融塩原子炉2は、
図2から分かるように、また、この後の説明からも分かるようになるが、一次熱交換器ユニット23における一次熱交換器231(後述する)を原子炉容器21内に収容した一体型炉が採用される(一次熱交換器231の配置は一例であり、
図2の配置に限定されないものとする)。
【0019】
図3は、本実施形態に係る熔融塩原子炉の垂直断面図(
図2のA-A線断面図)である。以下、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0020】
<原子炉容器21について>
原子炉容器21は、上壁211及び下壁212(天井及び底)を有し、側壁213が円筒形状の密閉容器に形成される。原子炉容器21は、ハステロイ(登録商標)Nが材料として採用される。なお、ハステロイ(登録商標)Nは一例であって、このような高ニッケル合金等であれば特に限定されないものとする。具体的には、ハステロイ(登録商標)N、高ニッケル合金の他、モリブデン合金TZM(チタン・ジルコニウム・モリブデン合金)であれば特に限定されないものとする。ハステロイ(登録商標)Nを材料とした原子炉容器21は、例えば20mmの厚さを有するように形成される(寸法は一例であるものとする)。
【0021】
原子炉容器21の下壁212(底)は、周縁が円形でこの周縁の内側が平ら又は若干勾配のついた形状に形成される。下壁212の中央には、下方に凸となるカップ形状の下部燃料塩プレナム214が設けられる。下部燃料塩プレナム214には、後述する配管類25が接続される。下部燃料塩プレナム214は、後述する上部燃料塩プレナム215よりも小型に形成される。下部燃料塩プレナム214は、例えば500mmの高さ(上下方向の長さ)を有するように形成される(寸法は一例であるものとする)。下壁212は、例えば3220mmの直径を有するように形成される(寸法は一例であるものとする)。下壁212の周縁は、側壁213の下端を曲面で滑らかに繋ぐように形成される。
【0022】
原子炉容器21の側壁213は、後述する炉心22の炉心軸CL1を中心に円筒状に形成される(
図4及び
図5参照)。側壁213は、例えば高さが4200mmを有するように形成される(寸法は一例であるものとする)。なお、4200mmのうち、3030mmが炉心22に対応する高さに設定される(寸法は一例であるものとする)。4200mmのうち残りは、後述する一次熱交換器231に対応する高さに設定される(寸法は一例であるものとする)。側壁213の上端は、上壁211の周縁と滑らかな曲面で繋がれる。
【0023】
原子炉容器21の上壁211(天井)は、下壁212と例えば平行に配置される。上壁211には、上部燃料塩プレナム215が設けられる。また、上壁211には、一次熱交換器ユニット23を構成する4つのポンプ232が設けられる。上部燃料塩プレナム215は、上壁211の中央に配置される。上部燃料塩プレナム215は、上方に凸となる逆カップ形状に形成される。上部燃料塩プレナム215は、例えば800mmの高さ(上下方向の長さ)を有するように形成される(寸法は一例であるものとする)。上部燃料塩プレナム215は、この上部が円形で平らに形成される。
【0024】
上部燃料塩プレナム215の上部には、2本の案内筒216が設けられる。この2本の案内筒216は、上部燃料塩プレナム215の上部を貫通するように設けられる。2本の案内筒216は、制御棒24を上下方向に夫々案内することができるように形成される。4つのポンプ232は、上部燃料塩プレナム215の周囲に配置される。4つのポンプ232は、炉心軸CL1を中心に90度間隔で配置される。なお、上部燃料塩プレナム215からのびる配管は、オーバーフローパス253(後述する)を示すものである。
【0025】
<一次熱交換器ユニット23について>
一次熱交換器ユニット23は、上述の核分裂反応によって発生した熱エネルギー(熱)を、原子炉容器21内で二次系ループの冷却塩に伝えるために備えられる。一次熱交換器ユニット23は、本実施形態において、4つの一次熱交換器231と、上述の4つのポンプ232とを備えて構成される。4つのポンプ232には、ポンプシャフト232a及びポンプフィン232bが夫々設けられる。4つのポンプ232は、4つの一次熱交換器231の配置に合わせて設けられる。4つのポンプ232は、後述する燃料塩を強制的に対流させるために設けられる。4つの一次熱交換器231は、本実施形態において、後述する炉心22の上に配置される。4つの一次熱交換器231には、4つのポンプ232のポンプシャフト232a及びポンプフィン232bの駆動によって移動する燃料塩が提供される。4つの一次熱交換器231には、特に図示しないが、冷却塩が流れる二次系ループの配管が接続される。
【0026】
<配管類25について>
配管類25としては、一次系ループの配管が含まれる(一次系ループは、燃料塩が循環するシステムである)。この一次系ループの配管の一つとして、4つの一次熱交換器231には、燃料塩戻りパス251が夫々接続される。4つの燃料塩戻りパス251は、この上側の端部が4つの一次熱交換器231の下側に夫々接続される。また、4つの燃料塩戻りパス251の下側の端部は、下部燃料塩プレナム214に接続される。4つの燃料塩戻りパス251は、原子炉容器21の側壁213に添わせた部分が半円形の断面形状や例えば三日月のような断面形状に形成される。また、4つの燃料塩戻りパス251は、原子炉容器21の下壁212の側に配置された部分が円形の断面形状に形成される。
【0027】
配管類25としては、下部燃料塩プレナム214とドレインタンク3とを繋ぐ排出パイプ252や、ドレインタンク3に繋がるオーバーフローパス253も含まれる。なお、ここでのオーバーフローパス253は、上述の上部燃料塩プレナム215に繋がるものである。この他の配管類25としては、下部燃料塩プレナム214から図示しない燃料塩貯蔵タンクに繋がるパイプ254も含まれる。
【0028】
<炉心22及び黒鉛反射材221について>
図3において、炉心22は、原子炉容器21の内部に設けられる。炉心22は、核分裂が行われる所謂コアであって、黒鉛製の黒鉛反射材221により囲まれる。この黒鉛反射材221は、上部黒鉛反射材221aと、下部黒鉛反射材221bと、側部黒鉛反射材221cとを有して構成される。黒鉛反射材221は、上部黒鉛反射材221aと、下部黒鉛反射材221bと、側部黒鉛反射材221cとにより容器形状に形成される。黒鉛反射材221は、中性子照射から原子炉容器21を保護するために設けられる。
【0029】
上部黒鉛反射材221aは、例えば250mmの厚さを有するように形成される(寸法は一例であるものとする)。また、下部黒鉛反射材221bも例えば250mmの厚さを有するように形成される(寸法は一例であるものとする)。側部黒鉛反射材221cは、例えば250mm以上の厚さを有するように形成される(寸法は一例であるものとする)。黒鉛反射材221の厚さは、炉心22(コア)の形状を考える上で重要な要素の一つである。
【0030】
本実施形態において、側部黒鉛反射材221cの内周面は、後述する減速材222の存在や配置、形状によって凹凸するように形成される(凹凸の形状は
図4及び
図5を参照)。
【0031】
図4は、本実施形態に係る熔融塩原子炉の水平断面図を含む斜視図である。また、
図5は、本実施形態に係る熔融塩原子炉の水平断面図であり
図4の矢印B方向から見た断面図である。なお、
図3も参照するものとする。
【0032】
<炉心22、減速材222、及び燃料塩について>
図3乃至
図5において、炉心22は、上述の黒鉛反射材221の他に、複数の減速材222を備えて構成される。別な言い方をすれば、炉心22は、黒鉛反射材221に取り囲まれるように、この内側に配置される複数の減速材222を備えて構成される。炉心22は、複数の減速材222同士の間を燃料塩が流れるように形成される。また、炉心22は、黒鉛反射材221の内周面と、複数の減速材222との間を燃料塩が流れるように形成される。即ち、複数の減速材222のうち、隣り合う同士の間には、燃料塩が通過する燃料塩通路223が形成される。この燃料塩通路223は、減速材222の周囲に存在するように形成される。燃料塩通路223は、隣り合う減速材222同士の隙間として形成される。なお、減速材222の詳細については、後述するものとする。
【0033】
燃料塩は、この他に液体核燃料や熔融塩燃料と呼ばれるものであって、核分裂物質のウランと親物質のトリウムとを熔融塩フリーべに混合させてなるもの(例えばLiF-BeF2-ThF4-UF4)が採用される(特に限定されないものとする)。燃料塩は、複数の減速材222との間を流れた後、上部黒鉛反射材221aの開口部を介して更に上方へ流れる(ポンプ232のポンプシャフト232a及びポンプフィン232bの駆動によって燃料塩は上方に移動する。ポンプ232が停止した状態では、自然対流により上方に移動する)。上方に移動した燃料塩は、一次熱交換器231で熱交換が行われた後に、一次熱交換器231の下部から燃料塩戻りパス251、下部燃料塩プレナム214、及び下部黒鉛反射材221bの開口部を介して炉心22に戻る。
【0034】
なお、本実施形態においては、ポンプ232の停止時に燃料塩が対流によって自然循環を起こすように一次熱交換器231及びポンプ232が配置されている。
【0035】
<減速材222の種類や配置について>
減速材222は、黒鉛製のものであって、核分裂により放出される中性子(高速中性子)の速度を落とし、この速度を落とした中性子によって核分裂を起こさせるために用いられる。減速材222は、
図5からも分かるように、数十本となるような数で用いられる。複数の減速材222は、図示の集合体になるような状態で炉心22に配設される。
【0036】
複数の減速材222は、本実施形態において、複数種のものが採用される。この種類とは、燃料塩体積率で種類分けされる(燃料体積率での種類分けについては
図10を参照しながら後述する)。なお、ここでは、種類に関し、断面を示すハッチングの向きで分けるものとする(
図5参照。
図5では複数の種類があることをハッチングで示すものであり、種類の数は図に限定されないものとする。
図10で説明するが、2種類による2領域が好ましい結果となった)。複数の減速材222は、本実施形態において、炉心22の炉心軸CL1を中心に環状且つ複数の層状に配置される。なお、
図5に示す2つの穴224は、2本の制御棒24に対する穴として形成される。
【0037】
図6は本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材の断面形状に関する説明図である。また、
図7は、本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材の配置に関する説明図(平面図)である。また、
図8は本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材の配置に関する説明図(斜視図)である。また、
図9は本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材の形状に関する説明図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は垂直断面図である。
【0038】
<減速材222の具体的な形状について>
複数の減速材222は、
図3及び
図9から分かるように、柱形状に夫々形成される。なお、減速材222は、上述のように複数の種類(燃料塩体積率によって分けられる)のものがあり、また、
図3から分かるように若干長さが異なるものがある。しかしながら、ここでは、説明の簡素化のために符号を一種類に統一して説明するものとする。また、減速材222は、この主要な部分の外形形状が同じになるため、形状も一種類に統一して説明するものとする。
【0039】
柱形状の減速材222は、
図6の断面に示すような形状に特徴を有する。この形状に特徴のある減速材222は、
図7及び
図8に示すように集合配置されて、隣り合う減速材222同士の間の燃料塩通路223に燃料塩が流れるようになる。減速材222は、
図9に示すように、減速材本体222aと、この減速材本体222aの上下の端部に夫々連続する減速材端部222bとを有して、減速材軸CL2に沿って長くのびる柱形状に形成される。なお、減速材軸CL2は、減速材222が炉心22に配置された状態において、炉心軸CL1に対し平行になるものとする。
【0040】
図6及び
図9において、減速材本体222aは、減速材軸CL2を中心とした軸周りの外周として、本体側部222a1を有する。なお、
図6における減速材軸CL2は、図の中央の仮想的な点の位置で紙面垂直方向にのびる軸になるものとする。本体側部222a1は、nを3以上の整数と定義すると、
図6の断面形状では、n個の角部222a2及びn個の側面222a3を有する。また、
図9に示す外観形状では、n個の角部222a2及びn個の側面222a3を有する。
図6及び
図9においては、nをn=6にして示しているが、これに限定されるものではない。
【0041】
図6において、減速材222(減速材本体222a)の配置領域、隣り合う減速材222(減速材本体222a)同士の境界、を仮想的に示すため、減速材軸CL2を中心に正六角形222a4を描いた場合、この正六角形222a4に囲まれるように本体側部222a1が形成される。具体的には、正六角形222a4の六つの角222a5の内側に角部222a2が位置するように本体側部222a1が形成される。また、正六角形222a4の六つの辺222a6の内側に側面222a3が位置するように本体側部222a1が形成される。
【0042】
本体側部222a1は、角部222a2が減速材軸CL2から離れる側に凸となるような曲面形状に夫々形成される。別な言い方をすれば、角部222a2は、本体側部222a1の外側に向けて凸となるような曲面形状に夫々形成される。また、本体側部222a1は、側面222a3が減速材軸CL2に近づく側に凸となるような曲面形状に夫々形成される。別な言い方をすれば、側面222a3は、これを凹ますような曲面形状に夫々形成される。なお、図示の曲面形状は、真円の円弧を描くような状態に形成されるが、これに限定されないものとする。即ち、例えば楕円の弧を描くような状態の曲面に形成されてもよいものとする。
【0043】
本体側部222a1は、
図6に示す場合、正六角形222a4の角222a5及びこれを挟む辺222a6に対し、角部222a2が内接しないような曲面形状に夫々形成される。
図9に示す場合は、角部222a2が図示しない六角柱枠に対し内接しないような曲面形状に夫々形成される。また、本体側部222a1は、
図6に示す場合、正六角形222a4の辺222a6に対し、側面222a3が内接しないような曲面形状に夫々形成される。
図9に示す場合は、側面222a3が図示しない六角柱枠に対し内接しないような曲面形状に夫々形成される。なお、角部222a2の曲面形状となる円弧は、側面222a3の円弧よりも小さな曲率半径の円弧になるものとする。
【0044】
本体側部222a1は、角部222a2が曲面形状(円弧)に形成されることから、また、上述のような内接が生じない形状であることから、隣り合う減速材222同士の接触が起こらないのは勿論である。従って、隣り合う減速材222同士の接触に起因した摩擦等の応力発生を防止し、以て破損を防止することもできる。
【0045】
図6に示す場合、正六角形222a4の角222a5及び辺222a6と、本体側部222a1の角部222a2及び側面222a3との間が空間になり、この空間は、燃料塩が流れる燃料塩通路223になる。
図9に示す場合は、図示しない六角柱枠と、本体側部222a1の角部222a2及び側面222a3との間が空間になり、この空間は、燃料塩が流れる燃料塩通路223になる。曲面形状の側面222a3は、これが例えば直線(
図9では垂直面)になる場合と比べて、燃料塩との接触面積が多くなるのは勿論である。従って、燃料塩との接触面積が多くなる結果、濡れぶち長さを十分に確保することができると言う、形状面での効果を得ることができる。なお、濡れぶち長さを長くする目的としては、大きな負の温度反応度係数を獲得して、熔融塩の異常な温度上昇の抑制及び炉停止のためのブレーキの効きを良くし、コアの熔融塩の上限温度を低くすることにある。濡れぶち長さは、減速材軸CL2を中心とした周方向の長さであり、燃料塩との接触の長さとも言える。
【0046】
図5、
図6、及び
図9において、減速材本体222aは、減速材軸CL2がのびる方向に沿った範囲の全体が、中空の存在しない中実となる形状に形成される。別な言い方をすれば、減速材本体222aは、減速材軸CL2の方向にのびる、例えば貫通孔が存在しない形状に形成される。なお、本明細書では、「中空」を内部に穴(孔)や空間が存在する構造のことを言うものとする。また、「中実」とは、上述の穴(孔)や空間がない(詰まった)構造のことを言うものとする。減速材本体222aは、上述のような中実の形状であることから、構造がシンプルである。また、中実の形状であることから、製造し易くなるのは勿論のこと、強度も高めることができる。
【0047】
減速材本体222aは、上述の正六角形や六角柱枠に合わせた形状に形成される。もう少し具体的に説明すれば、断面が、上述の中空を設けない「ヒトデ型」の形状に形成される。このような「ヒトデ型」の断面形状の場合、シンプルなデザインであるのは勿論であるが、大きな負の温度反応度係数を獲得することができるようになる。即ち、負の温度反応度係数が-4.0×10-5と言う大きな数値を得ることができるようになる。この負の温度反応度係数-4.0×10-5は、公知のトリウム熔融塩増殖炉(MSBR)と比べて約5倍となる大きな数値に該当する。また、公知のFUJIと比べては、約1.5倍となる大きな数値に該当する。なお、連続エネルギーモンテカルロ法MVPを使用して数値の計算を行った結果である。
【0048】
断面形状を上述のような中空なしの「ヒトデ型」(
図6参照)にすることにより、複数の減速材222の配置を、
図5、
図7、及び
図8に示すような環状で且つ複数の層状にすることができる。なお、複数の減速材222の上述の配置や、この複数の減速材222を囲う所定厚さの黒鉛反射材221は、大きな負の温度反応度係数の獲得に有効である。また、断面形状を「ヒトデ型」にすることにより(六角形、六角柱枠に囲まれるような形状にすることにより)、制御棒24の配置等の選択に係る柔軟性を向上させることに有効である。
【0049】
図9において、減速材端部222bは、上述の如く、減速材本体222aの上下の端部に連続するように夫々形成される。減速材端部222bは、減速材本体222aを小径化し且つ短くしたような突起形状に形成される。減速材端部222bは、黒鉛反射材221の上部黒鉛反射材221a及び下部黒鉛反射材221bにより保持される形状になる。減速材端部222bの先端部は、上部黒鉛反射材221a及び下部黒鉛反射材221bに対し挿入し易くなるような形状に形成される。
【0050】
減速材端部222bは、減速材本体222aに中空の部分がないことから、シンプルな形状に形成される(公知のFUJIの場合、中空の部分があって、この中空の部分に燃料塩が流れることから、燃料塩を抜くための端末処理が必要であった。しかしながら、本実施形態のように中空の部分はないので、減速材端部222bを極めてシンプルな形状に形成することができる)。
【0051】
図10は、本実施形態に係る熔融塩原子炉用減速材を採用した時の炉心のコア領域の検討に関する説明図である。
図10では、燃料塩体積率Frに基づく熔融塩原子炉用減速材(減速材)の構成を「コア構成」と呼ぶことにする共に、コア構成によって領域化されるコアの領域をコア領域と呼ぶことにする。例えば、燃料塩体積率Frの数値が一種となるコア構成であれば、コア構成は単一であり、この単一のコア構成でコアが領域化されるので、コア領域は単一領域となる。また、例えば、燃料塩体積率Frの数値が二種となるコア構成であれば、コア構成は2つであり、この2つのコア構成でコアが領域化されるので、コア領域は2領域となる。また、例えば、燃料塩体積率Frの数値が三種となるコア構成であれば、コア構成は3つであり、この3つのコア構成でコアが領域化されるので、コア領域は3領域となる。
【0052】
図10では、上述のようなコア領域毎の中性子フルエンス(>53KeV)分布により、炉心の最適なコア領域を検討した。
【0053】
コア領域毎の中性子フルエンス(>53KeV)分布により、炉心のコア領域を検討することに至った背景としては、単一領域コアのフルエンス分布(燃料塩体積率Fr=36%、30年間連続運転の場合)を求めてみたら、フルエンスの分布がコアの中央に偏っていることが分かった。これは、コア中央の減速材へのフルエンスが高く、コア全体の寿命を左右してしまうことを意味する。そのため、コア構成を工夫してフルエンス分布を均質化すべきと言う結論になった。コア領域の検討にあたっては、コア構成を上述のような(1)単一領域、(2)2領域、(3)3領域として、これら領域の夫々で分析する。分析によって、最適の領域及び減速材断面を追求することができる。
図10に分析結果を示す。
【0054】
図10において、燃料濃度効果(0.33mol%Fuel)の記載の下にある表の縦方向(図の上下方向)には、コア構成が並んで示される。また、表の横方向(図の左右方向)には、燃料層番号が順に並んで示されると共に、増倍率も示される。なお、燃料層番号は、
図5の中央の減速材222を燃料層番号1(
図4の炉心軸CL1の位置に配置される減速材222を燃料層番号1)にし、ここから外側の減速材222の層を燃料層番号2、3、4~と定義するものとする。燃料層番号は、減速材222が配置される「層」の数に一致するものとする。以下、具体的に数値で示す。
【0055】
コア構成が「単一領域(燃料塩体積率Fr=39%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.772×10
22(
図10では2.772E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフaに対応する(ここでのフルエンスがグラフaにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.903×10
22(
図10では2.903E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が3.033×10
22(
図10では3.033E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.916×10
22(
図10では2.916E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.585×10
22(
図10では2.585E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.147×10
22(
図10では2.147E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が1.552×10
22(
図10では1.552E+22で記載)となる。
【0056】
コア構成が「単一領域(燃料塩体積率Fr=40%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.782×10
22(
図10では2.782E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフbに対応する(ここでのフルエンスがグラフbにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.878×10
22(
図10では2.878E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.991×10
22(
図10では2.991E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.868×10
22(
図10では2.868E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.534×10
22(
図10では2.534E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.141×10
22(
図10では2.141E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が1.54×10
22(
図10では1,54E+22で記載)となる。
増倍率は、0.9405となる。
【0057】
コア構成が「2領域(燃料塩体積率Fr=39%/27%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.467×10
22(
図10では2.467E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフcに対応する(ここでのフルエンスがグラフcにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.604×10
22(
図10では2.604E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.841×10
22(
図10では2.841E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.985×10
22(
図10では2.985E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.701×10
22(
図10では2.701E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.361×10
22(
図10では2.361E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が1.65×10
22(
図10では1.65E+22で記載)となる。
【0058】
コア構成が「2領域(燃料塩体積率Fr=40%/26%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.381×10
22(
図10では2.381E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフdに対応する(ここでのフルエンスがグラフdにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.518×10
22(
図10では2.518E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.705×10
22(
図10では2.705E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.82×10
22(
図10では2.82E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.65×10
22(
図10では2.65E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.329×10
22(
図10では2.329E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が1.643×10
22(
図10では1.643E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「8」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.784×10
22(
図10では2.784E+22で記載)となる。
増倍率は、1.0151となる。
【0059】
コア構成が「3領域(燃料塩体積率Fr=39%/27%/45%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.558×10
22(
図10では2.558E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフeに対応する(ここでのフルエンスがグラフeにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.702×10
22(
図10では2.702E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.855×10
22(
図10では2.855E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.898×10
22(
図10では2.898E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.673×10
22(
図10では2.673E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.252×10
22(
図10では2.252E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が1.661×10
22(
図10では1.661E+22で記載)となる。
【0060】
コア構成が「3領域(燃料塩体積率Fr=39%/27%/39%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.39×10
22(
図10では2.39E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフfに対応する(ここでのフルエンスがグラフfにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.522×10
22(
図10では2.522E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.752×10
22(
図10では2.752E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.892×10
22(
図10では2.892E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.775×10
22(
図10では2.775E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.42×10
22(
図10では2.42E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.083×10
22(
図10では2.083E+22で記載)となる。
【0061】
コア構成が「3領域(燃料塩体積率Fr=40%/26%/45%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.517×10
22(
図10では2.517E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフgに対応する(ここでのフルエンスがグラフgにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.637×10
22(
図10では2.637E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.829×10
22(
図10では2.829E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.882×10
22(
図10では2.882E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.583×10
22(
図10では2.583E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.169×10
22(
図10では2.169E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が1.674×10
22(
図10では1.674E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「8」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.801×10
22(
図10では2.801E+22で記載)となる。
増倍率は、1.00142となる。
【0062】
コア構成が「3領域(燃料塩体積率Fr=40%/26%/40%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.528×10
22(
図10では2.528E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフhに対応する(ここでのフルエンスがグラフhにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.64×10
22(
図10では2.64E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.796×10
22(
図10では2.796E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.86×10
22(
図10では2.86E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.606×10
22(
図10では2.606E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.256×10
22(
図10では2.256E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が1.364×10
22(
図10では1.364E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「8」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.857×10
22(
図10では2.857E+22で記載)となる。
増倍率は、1.0069となる。
【0063】
コア構成が「3領域(燃料塩体積率Fr=40%/27%/40%)」であり、燃料層番号が「1」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.436×10
22(
図10では2.436E+22で記載)となる。なお、ここでのコア構成は、後述するグラフのグラフiに対応する(ここでのフルエンスがグラフiにプロットされる)。
また、燃料層番号が「2」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.582×10
22(
図10では2.582E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「3」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.785×10
22(
図10では2.785E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「4」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.863×10
22(
図10では2.863E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「5」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.658×10
22(
図10では2.658E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「6」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.298×10
22(
図10では2.298E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「7」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が1.283×10
22(
図10では1.283E+22で記載)となる。
また、燃料層番号が「8」の場合は、フルエンス(中性子/cm
2)が2.717×10
22(
図10では2.717E+22で記載)となる。
増倍率は、1.0094となる。
【0064】
上述のような(1)単一領域、(2)2領域、(3)3領域となるコア構成でのフルエンス(中性子/cm
2)をグラフ化すると、
図10に示すグラフの通りになる。グラフの縦軸はフルエンス(中性子/cm
2)であり、横軸は燃料層番号である。判断基準となる黒鉛の許容フルエンス・レベルが3×10
22(
図10では3E+22で記載)であり、この許容フルエンス・レベルに対してグラフのピーク(山型のグラフの頂)が一番離れているのは、グラフdで示す「2領域(燃料塩体積率Fr=40%/26%)」である。グラフdは、許容フルエンス・レベルに対してグラフのピークが一番離れているので、最大フルエンスが最も低いと言える。
【0065】
検討結果としては、1層~5層を燃料塩体積率Fr=40%とし、6層~8層を燃料塩体積率Fr=26%とする、2領域のコア構成が最適解になると言える。
【0066】
検討結果からは、炉心22内を燃料塩の体積率により2つの領域に分割して累積の中性子束量の分布を均一化し、その最大値をできるだけ小さくすることが可能であることを見いだせたので、結果、30年以上のコア寿命を実現することができる。従って、廃炉まで炉心22(コア)の交換をする必要がなくなったと言える。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0068】
即ち、
図1乃至
図10の説明に係る熔融塩原子炉2及び減速材222の構成は例示に過ぎず、特に限定されないものとする。即ち、上述した一連の構成の一部又は全部が熔融塩原子炉2及び減速材222に備えられていれば足り、この構成を実現するために例えば減速材222の最適な形状を、n=6の正六角形及び六角柱枠を用いて説明したが、これに限定されないものとする。即ち、n=3、4、5、7~に基づく正n角形の形状にしてもよいものとする。
【0069】
上述の本発明の一実施形態によれば、減速材222及び熔融塩原子炉2により、応力の発生防止、濡れぶち長さの確保、制御棒24の配置等の選択柔軟性の向上、加工性の向上等を図ることができる。即ち、隣り合う減速材222同士とは接触せず、隣り合う減速材222同士の間で摩擦等の応力の発生を防止し、以て破損等も防止することができる。また、曲面形状となる周囲の凹みにより、濡れぶち長さを確保することができる。また、減速材222(減速材本体222a)の配置領域、隣り合う減速材222(減速材本体222a)同士の境界、を仮想的に示すため、減速材軸CL2を中心に正六角形、六角柱枠の形状になることから、この形状であれば、制御棒24の位置及び本数を比較的柔軟に選ぶことができる。また、コアエリアでは鋭利な角がなく、中空もないので、黒鉛のコーティング加工を有利にすることができる。また、上述の「ヒトデ型」の断面形状にすることにより、2種類の燃料塩体積率の減速材222を提供し、2領域コアを実現することができる。また、減速材222は中空がない形状であるので、燃料塩を抜くための端末処理を不要にすることができ、極めてシンプルな形状にすることもできる。この他、減速材222及び熔融塩原子炉2により、大きな負の温度係数を実現することができる。
【0070】
以上をまとめると、本発明が適用される熔融塩原子炉2及び減速材222は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態をとることができる。
【0071】
即ち、本発明が適用される熔融塩原子炉用減速材(例えば
図9の減速材222)は、
熔融塩原子炉(例えば
図3の熔融塩原子炉2)における原子炉容器(例えば
図3の原子炉容器21)内の炉心(例えば
図3の炉心22)に複数設けられる熔融塩原子炉用減速材であって、且つ、当該炉心の炉心軸(例えば
図3の炉心軸CL1)に沿って減速材軸(例えば
図9の減速材軸CL2)がのびると共に、当該減速材軸を中心とした軸周りに複数の側面(例えば
図9の側面222a3)及び複数の角部(例えば
図9の角部222a2)が存在する本体側部(例えば
図9の本体側部222a1)を有した柱形状に形成される熔融塩原子炉用減速材において、
前記複数の側面は、前記減速材軸に近づく側に凸となるような(前記本体側部を凹ませるような)曲面形状に夫々形成される。
【0072】
本発明が適用される熔融塩原子炉用減速材によれば、本体側部における複数の側面が減速材軸に近づく側に凸となるような(本体側部を凹ませるような)曲面形状に夫々形成されることから、仮に側面が真っ直ぐな平面と比べて十分な濡れぶち長さを確保することができる。これにより、大きな負の温度反応度係数を確保して、熔融塩の異常な温度上昇の抑制及び炉停止のためのブレーキの効きを良くし、コアの熔融塩の上限温度を低くすることができる。換言すれば、大きな負の温度反応度係数を確保するために、十分な濡れぶち長さを確保した熔融塩原子炉用減速材を提供することができる。また、本発明が適用される熔融塩原子炉用減速材によれば、隣り合う本体側部同士の接触を避けて破損を防止することができ、更には、コーティング加工をし易くすることもできる。
【0073】
また、熔融塩原子炉用減速材によれば、前記複数の角部は、前記減速材軸から離れる側に凸となるような(前記本体側部の外側に向けて凸となるような)曲面形状に夫々形成される。
【0074】
本発明が適用される熔融塩原子炉用減速材によれば、複数の角部が曲面形状に夫々形成されることから、エッジになる場合と比べて破損し難くすることができる。熔融塩原子炉用減速材によれば、コアエリアにおいて鋭利な角がないことから、黒鉛のコーティング加工を有利にすることができる。
【0075】
また、熔融塩原子炉用減速材によれば、前記減速材軸に直交する方向に切って見た減速材断面形状は、前記本体側部の配置領域や隣り合う当該本体側部の境界を仮想的に示すため当該減速材軸を中心に描いた正n角形(nは3以上の整数)に囲まれるような形状、且つ、当該正n角形のn個の角及びn個の辺に対し夫々内接しない円弧を有する形状に形成される。
【0076】
本発明が適用される熔融塩原子炉用減速材によれば、減速材断面形状が減速材軸を中心に仮想的に描いた正n角形(nは3以上の整数)に囲まれるような形状、且つ、正n角形のn個の角及びn個の辺に対し夫々内接しない円弧を有する形状に形成されることから、隣り合う減速材同士の接触を防止することができる。即ち、隣り合う減速材同士の接触がなければ、摩擦等の応力の発生を防止することができる。熔融塩原子炉用減速材によれば、正n角形に囲まれるような形状に形成されることから、nを適宜選ぶことにより、制御棒の配置等の選択に係る柔軟性を向上させることができる。
【0077】
また、熔融塩原子炉用減速材によれば、前記減速材軸がのびる方向に沿った、少なくとも前記本体側部が存在する範囲は、内部に空間が存在しない構造に形成される。
【0078】
本発明が適用される熔融塩原子炉用減速材によれば、少なくとも本体側部が存在する範囲は、内部に空間が存在しない構造に形成されることから形状がシンプルになり、加工性の向上等を図ることができる。従って、形状がシンプルな熔融塩原子炉用減速材であることから、黒鉛のコーティング加工を有利にすることができる。
【0079】
本発明が適用される熔融塩原子炉によれば、原子炉容器内の炉心に上述の熔融塩原子炉用減速材が複数設けられる。
【0080】
本発明が適用される熔融塩原子炉によれば、上述の熔融塩原子炉用減速材が複数設けられることから、よりよい熔融塩原子炉を提供することができる。
【0081】
また、熔融塩原子炉によれば、前記複数の熔融塩原子炉用減速材は、前記炉心の炉心軸を中心に環状且つ複数の層状に配置され、前記炉心は、前記複数の層状に配置された前記複数の熔融塩原子炉用減速材の所望の層数で燃料塩体積率を異ならせて領域を分割する。
【0082】
本発明が適用される熔融塩原子炉によれば、複数種類の燃料塩体積率の熔融塩原子炉用減速材を提供し、複数領域コアを実現することができる。これにより、累積の中性子束量の分布を均一化し、その最大値をできるだけ小さくすることができる。換言すれば、コア寿命の長期化を実現することが可能な熔融塩原子炉を提供することができる。
【0083】
以上は、熔融塩原子炉用減速材の外観形状をもとに特徴をまとめたが、次の形状をもとに特徴をまとめてもよい。
即ち、熔融塩原子炉用減速材(例えば
図9の減速材222)は、
熔融塩原子炉(例えば
図3の熔融塩原子炉2)における原子炉容器(例えば
図3の原子炉容器21)内の炉心(例えば
図3の炉心22)に複数設けられる熔融塩原子炉用減速材であって、且つ、当該炉心の炉心軸(例えば
図3の炉心軸CL1)に沿って減速材軸(例えば
図9の減速材軸CL2)がのびると共に、当該減速材軸がのびる方向に長い本体側部(例えば
図9の本体側部222a1)を有する柱形状の熔融塩原子炉用減速材において、
前記減速材軸がのびる方向に沿った、少なくとも前記本体側部が存在する範囲は、内部に当該減速材軸がのびる方向に沿った中空が存在しない中実に形成される。
【0084】
熔融塩原子炉用減速材によれば、少なくとも本体側部が存在する範囲は中実に形成されることから中空がなく、従って形状がシンプルになることから、加工性の向上等を図ることができる。換言すれば、中空がなく形状がシンプルな熔融塩原子炉用減速材であることから、黒鉛のコーティング加工を有利にすることができる。
【0085】
また、熔融塩原子炉用減速材によれば、前記本体側部は、前記減速材軸を中心とした軸周りに複数の側面(例えば
図9の側面222a3)及び複数の角部(例えば
図9の角部222a2)を有し、当該複数の側面は、当該減速材軸に近づく側に凸となるような曲面形状に夫々形成される。
【0086】
熔融塩原子炉用減速材によれば、本体側部における複数の側面が減速材軸に近づく側に凸となるような(本体側部を凹ませるような)曲面形状に夫々形成されることから、仮に側面が真っ直ぐな平面と比べて十分な濡れぶち長さを確保することができる。これにより、大きな負の温度反応度係数を確保して、熔融塩の異常な温度上昇の抑制及び炉停止のためのブレーキの効きを良くし、コアの熔融塩の上限温度を低くすることができる。換言すれば、大きな負の温度反応度係数を確保するために、十分な濡れぶち長さを確保した熔融塩原子炉用減速材を提供することができる。
【符号の説明】
【0087】
1・・・建屋
2・・・熔融塩原子炉
21・・・原子炉容器
22・・・炉心
23・・・一次熱交換器ユニット
24・・・制御棒
221・・・黒鉛反射材
222・・・減速材(熔融塩原子炉用減速材)
222a・・・減速材本体
222a1・・・本体側部
222a2・・・角部
222a3・・・側面