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特許7644335柔軟化EVOH系樹脂組成物、冷媒輸送ホースおよびタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】柔軟化EVOH系樹脂組成物、冷媒輸送ホースおよびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20250305BHJP
   C08L 23/26 20250101ALI20250305BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20250305BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20250305BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C08L29/04 S
C08L23/26
C08L67/00
F16L11/04
B60C1/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021031927
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022133078
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】若林 健太
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104819(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116673(WO,A1)
【文献】特開2020-032685(JP,A)
【文献】特開2020-105284(JP,A)
【文献】特開2019-182969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,F16L,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルアルコール共重合体とエラストマーとを含むEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の配合量を減少させ、エチレン-ビニルアルコール共重合体の減少量と同量の配合量の柔軟化成分を混合することにより、EVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の40~80体積%を柔軟化成分で置換した柔軟化EVOH系樹脂組成物であって、エラストマーが無水マレイン酸変性ポリオレフィンであり、柔軟化成分がポリエステル-ポリエステル熱可塑性エラストマーであり、柔軟化EVOH系樹脂組成物中のエラストマーの体積比率は50~90体積%であり、式(1)
柔軟化率(%)={(EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス-柔軟化EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス)/EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス}×100・・・(1)
で算出される柔軟化率が式(2)
20%≦柔軟化率≦100%・・・(2)
を満たし、かつ式(3)
透過性悪化率(%)={(柔軟化EVOH系樹脂組成物の酸素透過度-EVOH系樹脂組成物の酸素透過度)/EVOH系樹脂組成物の酸素透過度}×100・・・(3)
で算出される透過性悪化率が式(4)
0%≦透過性悪化率≦3500%・・・(4)
を満たす、柔軟化EVOH系樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン比率が30モル%以上である、請求項に記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含む冷媒輸送ホース。
【請求項4】
請求項1または2に記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟化EVOH系樹脂組成物、冷媒輸送ホースおよびタイヤに関する。より詳しくは、本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体とエラストマーとを含むEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の一部を柔軟化成分で置換した柔軟化EVOH系樹脂組成物、ならびに前記柔軟化EVOH系樹脂組成物を含む冷媒輸送ホースおよびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-ビニルアルコール共重合体は、ガスバリア性が高いので、ホースの内層材やタイヤのインナーライナーとしての用途が期待されている。
【0003】
たとえば、特開2009-137195号公報(特許文献1)には、エチレン-ビニルアルコール共重合体とエラストマーとを含むEVOH系樹脂組成物を内層に用いたホースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-137195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EVOH系樹脂組成物は、ガスバリア性は高いが、柔軟性がなく、硬いために、ホース内層材等に使う場合、柔軟性が既存のホースよりも悪化するという欠点がある。
本発明は、ガスバリア性を保持した状態で柔軟化された柔軟化EVOH樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、エチレン-ビニルアルコール共重合体とエラストマーとを含むEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の一部を柔軟化成分で置換することにより、ガスバリア性を保持した状態で柔軟化された柔軟化EVOH樹脂組成物を作製することができることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
本発明(I)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体とエラストマーとを含むEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の一部を柔軟化成分で置換した柔軟化EVOH系樹脂組成物であって、式(1)
柔軟化率(%)={(EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス-柔軟化EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス)/EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス}×100・・・(1)
で算出される柔軟化率が式(2)
20%≦柔軟化率≦100%・・・(2)
を満たし、かつ式(3)
透過性悪化率(%)={(柔軟化EVOH系樹脂組成物の酸素透過度-EVOH系樹脂組成物の酸素透過度)/EVOH系樹脂組成物の酸素透過度}×100・・・(3)
で算出される透過性悪化率が式(4)
0%≦透過性悪化率≦3500%・・・(4)
を満たすことを特徴とする。
本発明(II)は、本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含む冷媒輸送ホースである。
本発明(III)は、本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含むタイヤである。
【0008】
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]エチレン-ビニルアルコール共重合体とエラストマーとを含むEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の一部を柔軟化成分で置換した柔軟化EVOH系樹脂組成物であって、式(1)
柔軟化率(%)={(EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス-柔軟化EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス)/EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス}×100・・・(1)
で算出される柔軟化率が式(2)
20%≦柔軟化率≦100%・・・(2)
を満たし、かつ式(3)
透過性悪化率(%)={(柔軟化EVOH系樹脂組成物の酸素透過度-EVOH系樹脂組成物の酸素透過度)/EVOH系樹脂組成物の酸素透過度}×100・・・(3)
で算出される透過性悪化率が式(4)
0%≦透過性悪化率≦3500%・・・(4)
を満たす、柔軟化EVOH系樹脂組成物。
[2]柔軟化成分がポリエステル-ポリエステル熱可塑性エラストマーである、[1]に記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物。
[3]エラストマーが無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、[1]または[2]に記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物。
[4]エラストマーの体積比率が50体積%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物。
[5]EVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の40体積%以上を柔軟化成分で置換した[1]~[4]のいずれかに記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物。
[6]エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン比率が30モル%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含む冷媒輸送ホース。
[8][1]~[6]のいずれかに記載の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含むタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の柔軟化EVOH系樹脂組成物は、ガスバリア性に優れるとともに、柔軟性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、柔軟化EVOH系樹脂組成物に関する。
柔軟化EVOH系樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体とエラストマーとを含むEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の一部を柔軟化成分で置換したものである。すなわち、柔軟化EVOH系樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エラストマーおよび柔軟化成分を含む。
【0011】
柔軟化EVOH系樹脂組成物は、式(1)
柔軟化率(%)={(EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス-柔軟化EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス)/EVOH系樹脂組成物の10%モジュラス}×100・・・(1)
で算出される柔軟化率が、式(2)
20%≦柔軟化率≦100%・・・(2)
を満たし、好ましくは式(2′)
20%≦柔軟化率≦80%・・・・(2′)
を満たし、より好ましくは式(2″)
20%≦柔軟化率≦60%・・・・(2″)
を満たす。
柔軟化率が上記の式を満たすことにより、ホースの柔軟性が向上する。
柔軟化率が上記の式を満たすようにする方法は、EVOHと親和性が高い柔軟化成分をEVOHと置換することである。
ただし、10%モジュラスは、25℃における値であり、JIS K7161に準拠して測定する。
【0012】
柔軟化EVOH系樹脂組成物は、式(3)
透過性悪化率(%)={(柔軟化EVOH系樹脂組成物の酸素透過度-EVOH系樹脂組成物の酸素透過度)/EVOH系樹脂組成物の酸素透過度}×100・・・(3)
で算出される透過性悪化率が式(4)
0%≦透過性悪化率≦3500%・・・(4)
を満たし、好ましくは式(4′)
0%≦透過性悪化率≦3450%・・・(4′)
を満たし、より好ましくは式(4″)
0%≦透過性悪化率≦3400%・・・(4″)
を満たす。
透過性悪化率が上記の式を満たすことにより、EVOHの高いガスバリア性を保持することができるので、ホースの薄肉化による軽量化が期待できる。
透過性悪化率が上記の式を満たすようにする方法は、EVOHと親和性が高い柔軟化成分をEVOHと置換することである。
ただし、酸素透過度は温度21℃および相対湿度50%における値である。
【0013】
柔軟化EVOH系樹脂組成物の10%モジュラスは、好ましくは0.5~10MPaであり、より好ましくは0.5~9.0MPaであり、さらに好ましくは0.5~7.0MPaである。10%モジュラスが小さすぎると、ホース作製時の金具取り付けができない。10%モジュラスが大きすぎると、ホースの柔軟性が悪化する。
【0014】
柔軟化EVOH系樹脂組成物の酸素透過度は、好ましくは0.0001~0.0400cm・mm/(m・day・mmHg)であり、より好ましくは0.0001~0.0300cm・mm/(m・day・mmHg)であり、さらに好ましくは0.0001~0.0200cm・mm/(m・day・mmHg)である。酸素透過度が大きすぎると、ホース作成時に肉厚にする必要があり、ホースの柔軟性が悪化する。
【0015】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」ともいう。)は、エチレン単位(-CHCH-)とビニルアルコール単位(-CH-CH(OH)-)とからなる共重合体であるが、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成単位を含有していてもよい。エチレン-ビニルアルコール共重合体を構成する全構成単位に対するエチレン単位の割合(モル%)を、以下、エチレン-ビニルアルコール共重合体の「エチレン比率」という。エチレン-ビニルアルコール共重合体はエチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物であるが、そのケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは98%以上である。エチレン-ビニルアルコール共重合体のケン化度が小さすぎるとガスバリア性が悪化する。
【0016】
エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン比率は、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは30~90モル%であり、さらに好ましくは30~60モル%である。エチレン比率が少なすぎると、エチレン-ビニルアルコール共重合体の柔軟性が悪化する。逆に、エチレン比率が多すぎると、ガスバリア性が悪化する。
【0017】
エラストマーは、本発明の効果を奏する限り限定されないが、たとえば、好ましくは、ブチル系ゴム、変性ブチル系ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマーなどが挙げられ、なかでもオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン-α-オレフィン共重合体(エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ペンテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体など)、エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体などが挙げられるが、なかでも無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましい。無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体が挙げられる。エラストマーとして無水マレイン酸変性ポリオレフィンを用いることにより、EVOHとの親和性が高くなり、エラストマー成分を体積比率50体積%以上の配合が可能となり、柔軟化効果が大きくなる。
【0018】
柔軟化EVOH系樹脂組成物中のエラストマーの体積比率は、好ましくは50体積%以上であり、より好ましくは50~90体積%であり、さらに好ましくは60~90体積%である。エラストマーの体積比率が少なすぎると、柔軟化効果が小さい。エラストマーの体積比率が多すぎると、ガスバリア性が悪化する。
【0019】
柔軟化成分とは、EVOH系樹脂組成物に含まれているEVOHとエラストマー以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、可塑剤等である。柔軟化成分の具体例としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマーなどが挙げられる。柔軟化成分は、好ましくはポリエステルエラストマーのポリエステル-ポリエステル熱可塑性エラストマーである。ポリエステル-ポリエステル熱可塑性エラストマーとは、結晶性ポリエステルブロックからなるハードセグメントと非結晶性ポリエステルブロックからなるソフトセグメントとから構成される熱可塑性エラストマーをいう。ポリエステル-ポリエステル熱可塑性エラストマーの具体例としては、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートブロックであり、ソフトセグメントがポリ(ε-カプロラクトン)やポリブチレンアジペートのような脂肪族ポリエステルブロックである熱可塑性エラストマーが挙げられる。柔軟化成分としてポリエステル-ポリエステル熱可塑性エラストマーを用いることにより、酸変性ポリオレフィンとEVOHとの親和性があがり、EVOHと40体積%以上置換しても、ガスバリア性が大幅に悪化しない。
【0020】
柔軟化EVOH系樹脂組成物は、好ましくはEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の40体積%以上を柔軟化成分で置換したものであり、より好ましくはEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の40~80体積%を柔軟化成分で置換したものであり、さらに好ましくはEVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体の40~70体積%を柔軟化成分で置換したものである。EVOH系樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体のうち柔軟化成分で置換した割合を、以下、「置換率」ともいう。置換率が少なすぎると、十分な柔軟化効果が得られない。置換率が多すぎると、ガスバリア性が悪化する。
【0021】
柔軟化EVOH系樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エラストマーおよび柔軟化成分を含む。
柔軟化EVOH系樹脂組成物中のエラストマーの体積比率は、好ましくは50体積%以上であり、より好ましくは50~90体積%であり、さらに好ましくは60~90体積%である。エラストマーの体積比率が少なすぎると、柔軟化効果が小さい。エラストマーの体積比率が多すぎると、ガスバリア性が悪化する。
柔軟化EVOH系樹脂組成物中の柔軟化成分の体積比率は、好ましくは10~35体積%であり、より好ましくは10~30体積%であり、さらに好ましくは10~25体積%である。柔軟化成分の含有量が少なすぎると、柔軟化効果が小さい。柔軟化成分の含有量が多すぎると、ガスバリア性が悪化する。
柔軟化EVOH系樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エラストマーおよび柔軟化成分以外の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で、含むことができる。エチレン-ビニルアルコール共重合体、エラストマーおよび柔軟化成分以外の成分としては、加工助剤および架橋剤や、老化防止剤やカラーマスターバッチが挙げられる。
【0022】
柔軟化EVOH系樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、エラストマーと、柔軟化成分と、必要に応じて、その他の成分とを、二軸混練押出機などで混錬することにより、柔軟化EVOH系樹脂組成物を製造することができる。
【0023】
柔軟化EVOH系樹脂組成物は、ホースの内層材またはタイヤのインナーライナーとして好ましく使用される。
【0024】
本発明(II)は、本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含む冷媒輸送ホースである。
冷媒輸送ホースは、好ましくは、内層、補強層および外層を含み、内層が本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含む。冷媒輸送ホースは、内層が本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含むことにより、ホースの柔軟性が良くなる。
補強層は、限定するものではないが、たとえば編組した繊維の層である。
外層は、限定するものではないが、熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性エラストマー組成物、ゴムなどからなる層である。
冷媒輸送ホースの製造方法は、特に限定されないが、たとえば、まず内層を押出成形によりチューブ状に押出し、次いでそのチューブ上に補強層となる繊維を編組し、さらにその繊維上に外層を押出成形によって被覆することにより、冷媒輸送ホースを製造することができる。
本発明(II)の冷媒輸送ホースは、エアコンディショナーなどの冷媒を輸送するためのホースとして用いることができ、特に、自動車のエアコンディショナーの冷媒を輸送するためのホースに好適に用いられる。エアコンディショナーの冷媒としてはハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、炭化水素、二酸化炭素、アンモニア、水などを挙げることができ、HFCとしてはR410A、R32、R404A、R407C、R507A、R134aなどが挙げられ、HFOとしてはR1234yf、R1234ze、1233zd、R1123、R1224yd、R1336mzzなどが挙げられ、炭化水素としてはメタン、エタン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ヘキサフルオロプロパン、ペンタンなどが挙げられる。
【0025】
本発明(III)は、本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含むタイヤである。
タイヤは、好ましくは、空気入りタイヤである。タイヤは、限定するものではないが、たとえば、内側から順に、インナーライナー、カーカス層、ベルト層およびトレッド層を含み、好ましくは、インナーライナーが本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含む。インナーライナーが本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物を含むことにより、エア漏れ率が低減する。
タイヤは、常法により製造することができる。たとえば、本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物をTダイ押出成形法、インフレーション成形法などの成形法によりシート状に成形して、本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物のシートを作製する。タイヤ成形用ドラム上に、本発明(I)の柔軟化EVOH系樹脂組成物のシートを置き、その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層などの通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、成形後、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとし、次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、タイヤを製造することができる。
【実施例
【0026】
[原材料]
以下の実施例および比較例において使用した原材料は次のとおりである。
(エチレン-ビニルアルコール共重合体)
EVOH: 三菱ケミカル株式会社製エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン比率48モル%)「ソアノール」(登録商標)H4815
(エラストマー)
Mah-PO: 三井化学株式会社製無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体「タフマー」(登録商標)MH7020
Br-IPMS: エクソンモービル・ケミカル社製臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体「EXXPRO」(登録商標)3745
(柔軟化成分)
TPEE-1: 東洋紡株式会社製熱可塑性ポリエステルエラストマー「ペルプレン」(登録商標)S-1001
TPEE-2: 東洋紡株式会社製熱可塑性ポリエステルエラストマー「ペルプレン」(登録商標)P-30B
トリアセチン: 大八化学工業株式会社製グリセリルトリアセテート
【0027】
[実施例1~3、比較例1~13]
表1または表2に示す原材料を、表1または表2に示す配合比率で、二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、235℃で3分間混練した。混練物を押出機から連続的にストランド状に押出し、水冷後、カッターで切断することにより、ペレット状のEVOH系樹脂組成物または柔軟化EVOH系樹脂組成物を得た。
得られたEVOH系樹脂組成物または柔軟化EVOH系樹脂組成物について、10%モジュラスおよび酸素透過度を測定し、押出加工性を評価した。測定・評価結果を表1または表2に示す。
なお、各測定・評価項目の測定・評価方法は、以下のとおりである。
【0028】
[10%モジュラスの測定]
EVOH系樹脂組成物または柔軟化EVOH系樹脂組成物の試料を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を試料組成物中の最も融点の高いポリマー成分の融点+10℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚み0.2mmのシートに成形した。
得られたシートをJIS 3号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K7161に準拠して、温度25℃、相対湿度50%、速度500mm/minで引張試験を行った。得られた応力ひずみ曲線から10%伸張時における応力(10%モジュラス)を求めた。
【0029】
[酸素透過度の測定]
10%モジュラスの測定において作製したシートを切り出し、MOCON社製OXTRAN1/50を用いて、温度21℃、相対湿度50%で測定した。
【0030】
[押出加工性の評価]
EVOH系樹脂組成物または柔軟化EVOH系樹脂組成物の試料を、Tダイシート成形装置(トミー機械工業株式会社製)を使用して235℃で押出し、200μmの厚みのフィルムを作製し、問題なく成形できる場合を○、軽微な粒や穴開きやシート端部の切れなどが発生する場合を△、深刻な粒や穴開きやシート端部の切れなどが発生する場合を×として評価した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の柔軟化EVOH系樹脂組成物は、冷媒輸送ホースの内層材として、またはタイヤのインナーライナー用材料として、好適に利用することができる。