(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】高炉の融着帯スラグ量の推定方法および操業方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20250305BHJP
【FI】
C21B5/00 324
C21B5/00 301
(21)【出願番号】P 2021122562
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】樋口 謙一
(72)【発明者】
【氏名】西村 恒久
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓史
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152989(JP,A)
【文献】特開2015-086461(JP,A)
【文献】特開昭56-098407(JP,A)
【文献】特開平03-170607(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104611484(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有装入物と炭素質装入物を高炉に交互に装入し、前記鉄含有装入物を加熱、還元して銑鉄を製造する高炉操業において、前記鉄含有装入物が溶融することで形成される融着帯の上面に存在する融液量である融着帯スラグ量:CSV(kg/tp)を、前記鉄含有装入物の前記融着帯の上面における残存FeO量(kg/tp)と前記鉄含有装入物の脈石量(kg/tp)との和として推定することを特徴とする融着帯スラグ量の推定方法。
【請求項2】
前記鉄含有装入物に対する荷重軟化試験を行って、温度上昇に伴う圧力損失上昇の割合が10(mmAQ/℃)以上となるときの前記鉄含有装入物の還元率:Rsを求め、前記残存FeO量(kg/tp)を下記式(Ix)で算出することを特徴とする請求項1に記載の融着帯スラグ量の推定方法。
残存FeO量(kg/tp)=(1833.236-202.842×FeO[%]/T.Fe[%])×(1-Rs/100)・・・(Ix)
T.Fe:鉄含有装入物中の全鉄分量(%)
FeO:鉄含有装入物中のFeO量(%)
Rs:鉄含有装入物に係る荷重軟化試験で測定した圧力損失上昇時の還元率(%)
【請求項3】
複数の鉄含有装入物からなる装入物全体のCSV
T(kg/tp)を下記式(II)で算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の融着帯スラグ量の推定方法。
CSV
T(kg/tp)=Σ(CSV
i・w
i・T.Fe
i)/Σ(w
i・T.Fe
i)・・・(II)
CSV
i:鉄含有装入物iのスラグ量(kg/tp)
W
i:鉄含有装入物iの配合率(%)(配合率に代えて配合原単位(kg/tp)を用いてもよい。ただし、計算の際はどちらかに統一する。)
T.Fe
i:鉄含有装入物iの全鉄分量(%)
【請求項4】
融着帯スラグ量の目標値を定め、前記請求項1~3のいずれか1項に記載の融着帯スラグ量の推定方法を用いた融着帯スラグ量の推定値が前記目標値以下となるように、(a)~(d)の少なくとも1つを行うことを特徴とする高炉操業方法。
(a)高炉に装入する鉄含有装入物の配合率の調整
(b)高炉に装入する鉄含有装入物のCaO、SiO
2、Al
2O
3、MgO、CaO/SiO
2、及び、FeOの1つ又は2つ以上の含有量の調整
(c)高炉に装入する鉄含有装入物の粒度の調整
(d)鉄含有装入物層に混合する炭素質装入物の量の調整
【請求項5】
前記融着帯スラグ量の目標値が920~980kg/tpであることを特徴とする請求項4に記載の高炉操業方法。
【請求項6】
前記融着帯スラグ量の目標値が830~890kg/tpであることを特徴とする請求項4に記載の高炉操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉炉下部の炉況を適確に表す指標となる融着帯スラグ量の推定方法およびその指標を活用した高炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高炉操業において、鉄含有装入物として、焼結鉱、ペレット、塊鉱石などが使用されている。そして、これまで、高炉操業の安定化を図るため、これら装入物の粒度分布、冷間強度、還元特性などを改善するとともに、性状の良好な自溶性焼結鉱の使用量を増加してきた。特に、鉄含有装入物の還元性は、反応効率、通気安定性、熱的安定性などに影響を及ぼすので、これら影響要因の改善や適正化が、これまで、鋭意なされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、微粉炭吹込量が150kg/tp(銑鉄1トン当たりの吹込量。「/tp」は銑鉄1トン当たりを意味する。)以上の高炉操業において、SiO2:3.9~4.9質量%、MgO:0.5~1.2質量%未満、Al2O3:1.8~2.5質量%を含有し、CaO/SiO2(質量比):1.9~2.5の高アルミナ焼結鉱の割合を、装入物の50~80質量%とし、高アルミナ焼結鉱の多量使用や、高炉スラグ量の低減を図ることが開示されている。特許文献1の高炉操業によれば、スラグ比を290kg/tp以下に低減することが可能である。
【0004】
なお、スラグ比(スラグ量)は、銑鉄1トン当たりに発生するスラグ量を意味する。スラグは、高炉装入物や、吹込み微粉炭に含有されている、鉄及び炭素以外の脈石成分(CaO、SiO2、Al2O3、MgO)で構成され、その量は、概ね250~320kg/tpである。スラグ比(量)は、高炉炉下部の通気性を支配する支配因子のひとつである。
【0005】
特許文献2には、微粉炭吹込量が170kg/tp以上の高炉操業において、還元粉化指数RDIが40%以上の焼結鉱(SiO2:4.0~4.6質量%、MgO:1.0~1.4質量%、FeO:4.0~7.0質量%、塩基度(CaO/SiO2)(質量比):2.0~2.3)を用いることが開示されている。特許文献2の高炉操業によれば、スラグ比を280kg/tp以下に低減することが可能である。
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載のスラグ比(量)は、還元が完了した後の排出スラグの比(量)であり、高炉内で、未還元状態で生成する融液(未還元のFeOも含まれている)の量を正確に表示しているわけではない。
【0007】
高炉内、特に融着帯における実際の融液量は、高炉の通気性に大きく依存する。そこで、装入物の成分組成をスラグ比が低下するように設計しても、装入物の還元性が悪いと、融着帯での融液量が増大することがある。このため、高炉操業においては、スラグ比(量)と炉内通気性指標が一致しない場合が多い。それ故、高炉内の通気性を適確に表示できる精緻な指標を見いだし、操業を管理することが求められている。
【0008】
高炉には、焼結鉱の他、ペレット、塊鉱石など、通常、数種の鉄含有装入物が、任意の配合率で配合されて装入される。これらを一括して、高炉装入物の特性として指数化し、高炉操業を管理することが提案されている。
【0009】
特許文献3には、焼結鉱の高温部での通気性指数を計算式で求め、算出値から焼結鉱の高温性状を推定し、管理することを特徴とする焼結鉱の高温性状管理方法が開示されている。特許文献3の方法によれば、焼結鉱の高温性状を、RDI(還元粉化指数)、及び、RI(被還元性)などの、通常用いる管理指標から推定することができ、迅速な装入物の配合設計が可能となる。しかし、特許文献3の方法は、焼結鉱にのみ適用されるもので、他の装入物を含めた装入物の配合設計には適用できない。
【0010】
特許文献4には、高炉装入用含鉄原料の1000℃以上の高温性状に関する加重平均通気抵抗指数が5.7以下となるように、高炉装入用含鉄原料を配合することを特徴とする高炉装入用含鉄原料の配合調整方法が開示されている。この方法により、溶銑中Si量が低い、安定した高炉操業を行うことが可能である。
【0011】
しかし、特許文献4の方法は、塊鉱石の選定や、配合・調整には有効であるが、該方法を全ての装入物に適用することは難しい。現に、装入物の平均通気抵抗指数が5.7以下であっても、高炉操業が悪化する例がある。
【0012】
装入物の高温性状の測定において、通気抵抗指数は、充填構造(空隙率など)の影響を大きく受けるから、単味銘柄の通気抵抗指数を加重平均することは、幾つかの装入物を配合して装入する際に生じる充填構造の変化を考慮しないということである。それ故、特許文献4の方法は、適用範囲が限定されるという問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平11-43710号公報
【文献】特開2002-256312号公報
【文献】特開昭60-89525号公報
【文献】特開昭59-38308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
焼結鉱、ペレット、塊鉱石など、通常、数種の鉄含有装入物を、任意の配合率で配合して装入して行う高炉操業において、炉況、特に通気性の良否を評価する指標は提案されていない。高炉操業において、炉内通気性の良否は、鉄含有装入物が溶融して形成する融着帯に存在する融液量(スラグ量)に依存するが、高炉装入物全体のスラグ成分を総括的に把握しても、融着帯に存在する融液量(スラグ量)を正確に予測し得ない。
【0015】
そこで、本発明は、焼結鉱、ペレット、塊鉱石など、通常、数種の鉄含有装入物を、任意の配合率で配合して装入する高炉操業において、鉄含有装入物が溶融して形成する融着帯に存在する融液量を正確に推定する方法を提供すること、およびその推定値を活用した高炉操業方法を提供すること、を目的とする。
【0016】
以下、融着帯の上面部分に存在する融液量を「融着帯スラグ量」と呼び、「CSV」と略記する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、高炉融着帯上面に存在する融液量である融着帯スラグ量を式(1)で推定できること、融着帯スラグ量を指標として、高炉炉下部の炉況、特に、通気性の適否を適正に評価できることを見いだした。
融着帯スラグ量=融着帯上面での残存FeO量+鉄含有装入物の脈石量・・・(1)
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、以下の通りである。
【0018】
本発明のある観点によれば、鉄含有装入物と炭素質装入物を高炉に交互に装入し、鉄含有装入物を加熱、還元して銑鉄を製造する高炉操業において、鉄含有装入物が溶融することで形成される融着帯の上面に存在する融液量である融着帯スラグ量:CSV(kg/tp)を、鉄含有装入物の融着帯の上面における残存FeO量(kg/tp)と鉄含有装入物の脈石量(kg/tp)との和として推定することを特徴とする融着帯スラグ量の推定方法が提供される。
【0019】
ここに、鉄含有装入物に対する荷重軟化試験を行って圧力損失が上昇を開始する時点の鉄含有装入物の還元率:Rsを求め、残存FeO量(kg/tp)を下記式(Ix)で算出してもよい。
残存FeO量(kg/tp)=(1833.236-202.842×FeO[%]/T.Fe[%])×(1-Rs/100)・・・(Ix)
T.Fe:鉄含有装入物中の全鉄分量(%)
FeO:鉄含有装入物中のFeO量(%)
Rs:鉄含有装入物に係る荷重軟化試験で測定した圧力損失上昇時の還元率(%)
【0020】
また、複数の鉄含有装入物からなる装入物全体のCSVT(kg/tp)を下記式(II)で算出してもよい。
CSVT(kg/tp)=Σ(CSVi・wi・T.Fei)/Σ(wi・T.Fei)・・・(II)
CSVi:鉄含有装入物iのスラグ量(kg/tp)
Wi:鉄含有装入物iの配合率(%)、又は、配合原単位(kg/tp)
T.Fei:鉄含有装入物iのT.Fe(%)
【0021】
また、融着帯スラグ量の目標値を定め、上記の融着帯スラグ量の推定方法を用いた融着帯スラグ量の推定値が目標値以下となるように、(a)~(d)の少なくとも1つを行ってもよい。
(a)高炉に装入する鉄含有装入物の配合率の調整
(b)高炉に装入する鉄含有装入物のCaO、SiO2、Al2O3、MgO、CaO/SiO2、及び、FeOの1つ又は2つ以上の含有量の調整
(c)高炉に装入する鉄含有装入物の粒度の調整
(d)鉄含有装入物層に混合する炭素質装入物の量の調整
【0022】
また、融着帯スラグ量の目標値が920~980kg/tpであってもよい。
【0023】
また、融着帯スラグ量の目標値が830~890kg/tpであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、焼結鉱、ペレット、塊鉱石などの鉄含有装入物を配合して装入する高炉操業において、融着帯の融液量を推定できる。その結果、高炉炉下部の炉況、特に、通気性の適否を正確に評価することが可能となる。また、高炉操業管理指標の一つとして融着帯スラグ量を用いることで、高炉炉下部における温度低下を抑制して、操業を安定化することができる。さらに、還元材比を低減して、省エネルギー化、低CO2化も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】焼結機で製造した焼結鉱を10~15mmに整粒して作製した試料を用いて加熱還元試験を行った結果と、その解析結果を示す。(a)は、還元率(%)の推移と圧力損失(mmAQ)の変化を示し、(b)は、加熱還元試験結果を本発明指標で解析した結果を示す。
【
図2】融着帯の態様と、本発明指標と従来指標を対比して示す図である。
【
図3】高炉操業における下部K値の解析結果を示す。(a)は、SVと下部K値の関係を示し、(b)は、CSVと下部K値の関係を示す。
【
図4】高炉の操業でデータを解析し、指標“CSV
T”が管理指標として有効に機能することを示す図である。左図は、下部K値と融着帯スラグ量CSVの関係を示し、右図は、出銑比と融着帯スラグ量CSVの関係を示す。
【
図5】焼結鉱と塊鉱石のCSVの粒度依存性を示す図である。
【
図6】焼結鉱単味層に炭素含有物を混合して測定したCSVを示す図である。
【
図7】実施例1の操業結果を示す図である。(a)は、本発明の“融着帯スラグ量”で評価した場合の操業結果を示し、(b)は、従来の“スラグ量”で評価した場合の操業結果を示す。
【
図8】実施例2の操業結果を示す図である。(a)は、本発明の“融着帯スラグ量”で評価した場合の操業結果を示し、(b)は、従来の“スラグ量”で評価した場合の操業結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<本発明の経緯>
まず、本発明に至る経緯について説明する。
(融着帯と通気性)
高炉の炉頂部から装入した鉄含有装入物(焼結鉱、ペレット、塊鉱石など)は、炉内を降下しながら、羽口から吹き込まれた熱風とコークスが反応して生成した還元ガス(CO、H
2)によって加熱、還元され、高炉シャフト部で融着帯を形成する。炉内通気性は、この融着帯の通気性に影響を受ける。そして、融着帯の通気性は融着帯に存在する融液量(スラグ量)に依存する。(
図2、融着帯の図)
【0027】
(荷重軟化試験)
融着帯の生成挙動を調査する目的で、荷重軟化試験装置を用いた荷重軟化試験(高温性状試験)を行った。荷重軟化試験は、鉄含有装入物の上下をコークス層で挟んだ充填層を電気炉内で還元する試験であって、高炉内での荷重、温度上昇および還元ガスの濃度変化を模擬した条件を鉄含有装入物に付与することで鉄含有装入物の還元、軟化・融着挙動を再現した試験である。排ガスの分析から鉄含有装入物の還元率の変化を、充填層を通過する還元ガスの圧力変化から充填層の通気抵抗変化を計測する。荷重軟化試験方法は、非特許文献:鉄と鋼83(1997)97に記載された方法に従って行った。
【0028】
(焼結鉱の荷重軟化挙動)
図1に、焼結機で製造した焼結鉱を10~15mmに整粒して作製した試料を用いて荷重軟化試験を行った結果と、その解析結果を示す。
図1(a)は、還元率(%)と圧力損失(mmAQ)の変化を示す。ここに、還元率は、被還元酸素量に対する、還元で除去された酸素量の割合で定義される。
図1(b)は、加熱還元試験結果を解析した結果を示す。
図1(a)、(b)の横軸は共通で鉄含有装入物(ここでは焼結鉱)の温度(℃)である。
図1(b)の縦軸のFeO+脈石(kg/tp)の計算方法については後述する。
【0029】
図1(a)から加熱温度の上昇に伴い還元率が上昇すること、
図1(b)から還元率の上昇に従い融液(残存FeO+脈石)量が減少し、最終的には脈石量だけとなることが解る。また、脈石量に比べ、残存FeO量の存在が大きく、融着帯内部で共存する融液量を算出する場合、残存FeO量を考慮することが不可欠であることも解る。
【0030】
また、1250℃付近で、通気抵抗が急上昇し、圧力損失が急増する。これは、試料を構成する焼結鉱粒子間の間隙が、融液(厳密には、固体が懸濁した融液)で、ほぼ完全に埋まるからである。ここに、圧力損失が急上昇(温度上昇に伴う圧力損失上昇の割合が10(mmAQ/℃)以上となる)する点を“軟化融着点”と定義し、圧力損失が急上昇するときの還元率を“Rs”と定義する(
図1(a)、参照)。軟化融着点は、本質的には、間接還元帯と溶融還元帯を区分する閾値であり、高炉では、融着帯上面(における還元率及び温度)に相当する。
【0031】
この加熱温度が1250℃超の温度域では、ガス還元は進行せず、融液と炭素の接触による溶融還元が主体的に進行する。このとき、融液の成分は、脈石成分(CaO+SiO2+Al2O3+MgO)と未還元FeO(ウスタイト相)である。
【0032】
そこで、本発明者らは、高炉の操業において、炉下部の通気抵抗を支配する因子は、全装入物のCaO、SiO2、Al2O3およびMgO成分の和とする従来のスラグ量ではなく、本質的には、圧力損失が上昇し始める温度、すなわち融着帯上面において存在する融液量であると考えた。しかし、この融液量を、直接測定する手段、又は、間接的にも評価する手段は、これまで提案されていない。
【0033】
<融着帯スラグ量の推定方法>
本発明者らは、融着帯スラグ量(CSV)を残存FeO(ウスタイト相)量と鉄含有装入物の脈石量との和(式(1))として推定することを着想した。融着帯スラグ量は、高炉の炉況、特に、炉内通気性を適正に維持するために、本発明者らが定義した新規な指標であり、本発明の基礎をなす特徴である。
【0034】
融着帯スラグ量=融着帯上面での残存FeO量+鉄含有装入物の脈石量・・・(1)
図2に、本発明者らの考えによる指標と、従来指標を対比して示し、
図2に基づいて、融着帯に存在する融液量の推定方法について説明する。
【0035】
(鉄含有装入物の脈石量)
鉄含有装入物の脈石量は、鉄含有装入物の鉄以外の成分の合計量である(
図2、参照)。脈石量は、装入物の化学成分としてのT.Fe、FeOおよびFe
2O
3質量%を用いて、式(2)で算出できる。式中、「950」は、銑鉄がCを5質量%含有するとして定めた、溶銑1トン当たりの鉄分原単位(kg/tp)である。以下「%」は「質量%」を意味する。
脈石量(kg/tp)={(100-Fe
2O
3[%]-FeO[%])/T.Fe[%]}・950・・・(2)
【0036】
Fe2O3[%]は、T.Fe[%]とFeO[%]から、式(3)で求めることができる。
【0037】
Fe2O3[%]={(55.85×2+16×3)/55.85×2}×{T.Fe[%]-55.85/(55.85+16)×FeO[%] } ・・・(3)
式(2)と式(3)から、脈石量を求める式(4)が得られる。
【0038】
脈石量(kg/tp)={100-{(55.85×2+16×3)/55.85×2}×{T.Fe[%]-55.85/(55.85+16)×FeO[%] }-FeO[%] }/T.Fe[%]・950
=(100-1.4297×T.Fe[%]+0.1113×FeO[%])/T.Fe[%]・950・・・(4)
【0039】
脈石量は、装入物の化学分析から決定されるT.Fe(質量%)とFeO(質量%)から一義的に定まり、還元の進行によらず、一定である(
図2中、「脈石」、参照)。
【0040】
(装入物原単位(鉱石比OR))
鉱石比OR(鉄含有装入物の質量(kg)/銑鉄の質量(t))が判明している場合は、鉄含有装入物の化学分析から式(4)に代えて、式(5)で脈石量を推定してもよい。
脈石量(kg/tp)=OR(kg/tp)/0.95-1000 ・・・(5)
【0041】
(残存FeO量)
次に、圧力損失が上昇し始める時点、すなわち融着帯上面において残存するウスタイト相量である残存FeO量の算出について説明する。
【0042】
還元率は、被還元酸素量に対する、還元で除去された酸素量の割合で定義される。圧力損失が上昇し始める時点での還元率Rsを用いると式(6)となる。
Rs(%)={(Oi-Or)/Oi}・100・・・(6)
式(6)から、式(7)を得る。
Or(kg/tp)=(1-Rs/100)・Oi・・・(7)
【0043】
ここで、Oiは、装入物の還元前の被還元酸素量(kg/tp)、Orは、還元率Rsのときに残存している残存酸素量である(
図2中、装入物中のOと、還元途中の残存O、参照)。
【0044】
Oiは、式(8)で算出される。
Oi(kg/tp)={16×1.5/55.85×{T.Fe[%]-55.85/(55.85+16)×FeO[%]}+16/55.85×FeO[%]}/T.Fe[%]・950 ・・・(8)
【0045】
よって、式(7)から、式(9)が得られる。
Or(kg/tp)={16×1.5/55.85×{T.Fe[%]-55.85/(55.85+16)×FeO[%]}+16/55.85×FeO[%]}/T.Fe[%]・950×(1-Rs/100)・・・(9)
【0046】
残存酸素量Orは、1000℃以上の炉内で、ウスタイト(FeO)として存在しているので、残存FeO量は、式(10)で表すことができる。即ち、残存FeO量は、還元の進行とともに線形的に減少する(
図2、参照)。
【0047】
残存FeO量(kg/tp)={16×1.5/55.85×{T.Fe[%]-55.85/(55.85+16)×FeO[%]}+16/55.85×FeO[%]}/T.Fe[%]・950×(1-Rs/100)×{(55.85+16)/16}
= (1833.236-202.842×FeO[%]/T.Fe[%])×(1-Rs/100) ・・・(10)
【0048】
(融着帯スラグ量CSV)
式(4)と式(10)から、融着帯スラグ量は、式(11)で表すことができる。
融着帯スラグ量(kg/tp)=残存FeO量(kg/tp)+脈石量(kg/tp)
=(1833.236-202.842×FeO[%]/T.Fe[%])×(1-Rs/100)+(100-1.4297×T.Fe[%]+0.1113×FeO[%] }/T.Fe[%]・950・・・(11)
【0049】
実際には、炉内の圧力損失が急上昇する時点で、融着帯内のスラグが、全て液相になっているわけではなく、その時点以降の高温領域で、順次、液相化する。したがって、本発明者らが新規に定義した指標の“融着帯スラグ量”(CSV)は、正確には、融着帯の内部に存在する“液相化し得るスラグ量”を意味している。
【0050】
(Rsの決定方法)
残存FeO量を推定するのに必要なRsは、前述の荷重軟化試験を当該鉄含有装入物について実施し、軟化融着点(圧力損失が上昇し始める時点)での還元率として求めることができる。
【0051】
また、高炉の数学モデルを用いて、計算機シミュレーションで推定してもよい。
【0052】
なお、荷重軟化試験においては、同一試料を用いても、還元条件や装置特性により、Rsに変化が生じる場合があるが、本発明は、炉況の適否を相対的に評価することを主眼としているので、Rsが変化しても問題はない。
【0053】
(鉄含有装入物が複数の原料から構成される場合)
焼結鉱、塊鉱石、及び、ペレットなどの各種の鉄含有装入物から構成される装入物全体のCSV(以下「CSVT」という。)は、個々の鉄含有装入物のCSV(CSVi)の質量加重算術平均として求めることができる。即ち、CSVTは、式(12)で求めることができる。
【0054】
CSVT(kg/tp)=Σ(CSVi・wi・T.Fei)/Σ(wi・T.Fei)・・・(12)
【0055】
ここで、CSVi:装入物iのCSV(kg/tp)
Wi:装入物iの配合率(質量%)(配合率に代えて配合原単位(kg/tp)を用いてもよい。ただし、計算の際はどちらかに統一する。)
T.Fei:装入物iのT.Fe(質量%)
【0056】
指標“CSVT”は、各種の鉄含有装入物から構成される装入物の特性を総括的に示す指標である。そして、指標“CSVT”は、特性の異なる複数の焼結鉱等を使用する場合にも同様に適用することができる。
(従来指標との比較:CSV)
【0057】
【0058】
表1に、粒径10~15mmの各種の鉄含有装入物につき、化学分析で求めたT.Fe(%)とFeO(%)と脈石量(SV)及び荷重軟化試験で測定した軟化融着点での還元率Rs(%)と式(11)を用いて算出したCSV(kg/tp)と通気抵抗の温度積分であるS値を示す。ここに、塊鉱石のT.Fe量は、仮焼後の値である。なお、通常操業管理に用いられている炉床スラグ量(SV)は、鉄含有装入物に由来する脈石に加え、成分組成調整用の副原料、コークス及び微粉炭中のアッシュを含むので、鉄含有装入物に由来する脈石量より約50kg/tpほど多い。
【0059】
表1に示すように、高炉の炉内通気性を模擬したS値は、鉄含有装入物の脈石量とは対応せず、本発明のCSVとよく対応することが判る。このことは、本発明のCSVは、脈石量に加えて、還元の進行によって変化する未還元FeO量を考慮しているからである。
【0060】
(従来指標との比較:CSVT)
実際の高炉操業では複数の鉄含有装入物を混合して使用する。その場合は、融着帯スラグ量としてCSVTを用いる。次に、SVとCSVTとを比較した例を示す。
【0061】
出銑量を一定として、焼結鉱をぺレットに15%置換していった際の下部K値の変化を
図3に示す。下部K値とは、高炉炉下部の通気抵抗を評価する指標であり、下記式で算出される。
羽口から所定の高さに対し
K=(P1
2-P2
2)/G
1.7
ただし、P1:送風圧力(MPa)
P2:高炉所定部の圧力(MPa)
G:高炉のボッシュガス量(Nm
3/min)
この場合、コークス性状、含鉄装入物の性状、その他の操業影響因子で補正した値である。焼結鉱からペレットへの置き換えによって、炉床スラグ量(SV)は290から265kg/tpへと低減したものの、下部K値は逆傾向を示し、1.8から1.9へ悪化した(
図3(a))。一方、ペレットの高温被還元性を考慮したCSV
Tでこの時の変化を示すと、装入物の平均CSV
Tは910から895kg/tpまで低減しており、高炉の通気性変化を合理的に説明可能であった(
図3(b))。
【0062】
(出銑比との対応)
出銑比が1.9~2.2の間で変化した高炉の1年間の操業につき、出銑量との対応を確認した例を
図4に示す。
図4(a)は下部K値と融着帯スラグ量(CSV
T)の関係を示し、
図4(b)は出銑比と融着帯スラグ量(CSV
T)の関係を示す。
図5に示すように、下部K値と融着帯スラグ量(CSV
T)との相関、及び、出銑比と融着帯スラグ量(CSV
T)との相関は極めて良好である。
【0063】
以上のことより、本発明で新規に定義した指標“融着帯スラグ量”、“CSV”又は“CSVT”を用いれば、従来指標(SV)よりも、精度良く、炉下部の炉況、特に、通気性の良否を適確に評価できることが解る。さらに、“CSV”又は“CSVT”は、融着帯上面でのFeO含有融液量を直接的に評価する指標であり、指標の大小が、炉下部の熱条件に影響を及ぼすので、結果的に、還元材比にも影響を及ぼし、炉内通気性との関係と相俟って、出銑比とも良好な相関を示すことが解る。
【0064】
<高炉の操業方法>
本発明の高炉の操業方法は、操業管理指標の一つとして融着帯スラグ量(CSVT)を使用するものである。具体的には、CSVTの目標値を定め、上述の推定方法に基づいて推定されるCSVTの推定値が前記目標値以下となるように、(a)~(d) の少なくとも1つを行うことを特徴とする高炉操業方法である。
【0065】
(a)高炉に装入する鉄含有装入物の配合率の調整
(b)高炉に装入する鉄含有装入物のCaO、SiO2、Al2O3、MgO、CaO/SiO2、及び、FeOの1つ又は2つ以上の含有量の調整
(c)高炉に装入する鉄含有装入物の粒度の調整
(d)鉄含有装入物層に混合する炭素質装入物の量の調整
【0066】
ここに、CSVTの目標値を920~980kg/tpとしてもよい。実施例1で後述するように、CSVTを920~980kg/tpの範囲とすることで、高炉の通気性が顕著に改善される。
さらに、CSVTの目標値を830~890kg/tpとするのが好ましい。実施例2で後述するように、CSVTを830~890kg/tpの範囲とすることで、通気性の改善だけでなく、還元材比の低減も図れる。以下、順に(a)~(d) の調整の内容を説明する。
【0067】
(高炉に装入する鉄含有装入物の配合率の調整)
表2を用いて、鉄含有装入物の配合率を調整する方法を説明する。ここに、焼結鉱A、塊鉱石B、ペレットCの諸元は表1に示している。
焼結鉱比70%、塊鉱比15%、ペレット比15%で操業しており、この時のCSVTは1035kg/tpであったとする(操業1)。このとき、何らかの原因で通気が不安定になったとき、例えばCSVT目標値を30kg低減する。その目標値を達成するために、例えば、塊鉱10%を焼結鉱10%に置き換えればよい。これによって、CSVTが1035kg/tpから1004kg/tpへ低減する(操業2)。
【0068】
さらに下部K値は、
図3(b)で得られた相関式(K値=0.0031×CSV
T-0.9)に基づけば、2.3から2.2に低下することが期待できる。
【0069】
【0070】
(高炉に装入する鉄含有装入物の化学成分の調整)
表2を用いて、鉄含有装入物の化学成分を調整する方法を説明する。ここに、焼結鉱Bの諸元は表1に示している。
【0071】
前記操業1に対して、焼結鉱Aに代えてT.Feの高い焼結鉱Bとする操業3に移行することもできる。このとき、CSVTが1035kg/tpから958kg/tpへ低減し、下部K値は2.3から2.1に低下することが期待できる(操業3)
【0072】
(装入物の粒度制御による調整)
高炉装入物の反応特性は、固気反応を主体として決定されるので、粒度の依存性が高い。従って、指標“CSV”又は“CSVT”も次に説明する装入物粒度の影響を考慮したCSV’’を用いるのがよい。
【0073】
図5に、焼結鉱と塊鉱石のCSVの粒度依存性を調査した結果を示す。ここに、平均粒径MS(mm)は、以下の式から求める重量基準平均径である。
MS=Σ(Wi・Di)/ΣWi
Wi 粒度区分iの重量 (g)
Di 粒度区分iの中央値 (mm)
図5に示すように、いずれの鉄含有装入物も、平均粒径(MS)の増加に伴ってCSVは上昇したが、影響係数は、鉄含有装入物の種類に依らず、+28(kg/tp)/(MS+1mm)であった。
【0074】
この影響係数を用いて、粒径を考慮した鉄含有装入物のCSV’を、式(13)で定義することができる。
CSV’(kg/tp)=Σ(CSV’’i・wi・T.Fei)/Σ(wi・T.Fei)・・・(13)
【0075】
CSV’’iは、(粒径を考慮した鉄含有装入物のCSV)であり、下式で表すことができる。
【0076】
CSV’’i(kg/tp)=CSVi+28×(MS-12.5)
MS(mm):装入物の平均粒径(mm)
Wi:装入物iの配合率(質量%)、又は、配合原単位(kg/tp)
T.Fei:装入物iのT.Fe(質量%)
【0077】
逆に、装入物の粒度を制御することでCSV’’を調整できることになる。表2にペレットCを粒度が5mm小さいペレットC’’に全量振り代えた例を操業4として示す。ペレットC’’のCSV’’はペレットCの901から28×5=140小さい761となる。装入物のCSVは1014kg/tpとなり、下部K値は2.3から2.2に改善することが期待できる。
【0078】
(炭材混合による調整)
図6に、焼結鉱単味の層に炭素含有物を混合し、荷重軟化試験装置を用いて測定したCSVを示す。粒径10~15mmの焼結鉱、粒径15~20mmの塊コークス、粒径10~15mmの小塊コークス、及び、炭素を20%含有する非焼成含炭ペレット(含炭塊成鉱)を使用した。炭素含有物の種類によって程度は異なるが、混合量の増加に伴い、CSVは低下する。これは、混合層内で、炭素のガス化反応(CO生成)が起こり、還元ガスの還元ポテンシャルが再生された結果である。なお、含有する炭素の粒度が細かいほど、CSVが低下する程度は大きい。
【0079】
このとき、CSVの低下係数、“CSVの変化(kg/tp)/(+1kg/tp)”は、
図6から概ね以下のようになる。
塊コークス(粒径:15~20mm) :-1.0
小塊コークス(粒径:10~15mm):-2.0
含炭塊成鉱(粒径:10~15mm) :-3.3
したがって、各種の炭素含有物を鉄含有装入物に混合することでCSV値を制御できる。
【実施例】
【0080】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0081】
(実施例1)
焼結面積が600m2の焼結機で、T.Fe量の異なる焼結鉱を製造した。このとき、配合条件や、焼成条件(主に、焼成熱レベル)を変えて、焼結鉱の組織構造を変化させた。焼結鉱を荷重軟化試験に供して、軟化融着点還元率Rsを測定し、それぞれの焼結鉱のCSVを算出した。
【0082】
5000m3の高炉の操業において、製造した焼結鉱を80%使用した。風圧変動が43hPa以下を維持し、ガス利用率ηCOが50.0%以上、溶銑温度が1500℃以上を満たす操業を行うことができた。
【0083】
操業結果を
図7に示す。
図7(a)に、本発明の“融着帯スラグ量”で評価した場合の操業結果を示し、
図7(b)に、従来の“スラグ量”で評価した場合の操業結果を示す。
図7(a)に示すように、T.Fe量が異なっても、CSVが950kg/tp以下を満たす焼結鉱を用いれば、操業は良好である。具体的には、大きな通気変動を発生させずに、低い還元材比で操業が可能であった。
【0084】
ただし、T.Fe量が60%の脈石分が少ない焼結鉱でも、熱過剰の製造条件などにより気孔量が著しく低くて、Rsが低い場合は、CSVが950kg/tpを超えてしまい、操業は悪化する。
【0085】
一方、T.Feが54.0%の脈石分の多い焼結鉱でも、装入物配合条件や焼成条件を最適化して、Rsが高い場合は、CSVTを950kg/tp以下とすることができ、操業は良好である。
【0086】
これに対し、従来指標の“スラグ量”を用いる場合は、
図7(b)に示すように、上記焼結鉱を使用する高炉操業を一元的に評価することはできない。
【0087】
(実施例2)
SiO2含有量が4.2~5.1質量%の範囲で異なる焼結鉱を用いて、荷重軟化試験とBIS炉評価試験を実施した。BIS試験条件は、実高炉内のアルカリ循環によるコークスの反応性向上を模擬するため、コークスのアルカリあり条件(KOHを3g/チャージ添加)で、還元材比が481kg/tp、微粉炭吹き込みが132kg/tpの条件を付与した(O/C 4.63、焼結鉱比100%、ボッシュガス1343Nm3/tp。
【0088】
なお、BIS炉は、高炉シャフト部の向流反応を模擬した試験方法である。予め固定した反応管内に焼結鉱とコークスを層状に装入し、加熱用電気炉を反応管の上部から下部へと移動させる。その間の還元ガスを反応管の上部から下部へ流通させることによって、高炉内の向流反応を模擬する。得られた排ガス(炉頂ガス)の成分値から反応効率(シャフト効率)を評価する。試験装置の詳細は実用新案JPU:S59-191597に、試験方法は非特許文献:鉄と鋼(1986)1529に記載があるので省略する。
【0089】
試験結果を
図8に示す。荷重軟化試験でのS値(圧損の時間積分値)がCSVの低下に伴い低下する(
図8b)とともに、BIS試験でのシャフト効率も改善した(
図8a)。特にCSVが860kg/tp以下の焼結鉱は、BIS炉で97%以上の高いシャフト効率を示した。
【0090】
(実施例3)
表3に示すCSVが異なる2種の焼結鉱1および焼結鉱2を用いて高炉操業試験を実施した。
【0091】
【0092】
CSVが860kg/tpであった焼結鉱2の使用期間の高炉操業の還元材比は、CSVが995kg/tpの焼結鉱1の使用期間の還元材比に比べて、溶銑1トン当たり5kg低下した。
【0093】
この結果から、CSVが860kg/tp以下とすることにより、通気性の改善だけでなく、還元材比も低減できることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0094】
前述のように、本発明によれば、焼結鉱、ペレット、塊鉱石などの装入物を配合して装入する高炉操業において、炉内通気性を改善し得る適適切な装入物の配合設計を行うことが可能となり、その結果、高炉炉下部における温度低下を抑制して、操業を安定化することができる。さらに、本発明によれば、高炉操業において、還元材比を低減して、省エネルギー化、低CO2化が可能となる。
【0095】
よって、本発明は、工業的及び社会的な貢献が多大なものであり、産業上の利用可能性が高いものである。