(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20250305BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20250305BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 C
B60N2/58
(21)【出願番号】P 2023110759
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2018201225の分割
【原出願日】2018-10-25
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
(72)【発明者】
【氏名】石原 美奈子
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-165325(JP,A)
【文献】特開2009-262393(JP,A)
【文献】特開2006-102329(JP,A)
【文献】特開2017-65638(JP,A)
【文献】特開2016-190620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風装置と連通する通気孔が形成されたパッドと、
前記パッドを覆うよう設けられ、前記パッドの前記通気孔に少なくとも一部が重なるよう配置される複数の貫通孔が形成された表皮と、を備え、
前記複数の貫通孔のうち少なくとも一つ以上の貫通孔が、前記通気孔に重ならない領域に配置されており、
前記パッドの前記通気孔に少なくとも一部が重なるように配置される複数の貫通孔は、
前記表皮の表面に対して垂直方向に切断した前記複数の貫通孔のそれぞれの断面形状において、前記貫通孔の幅が、前記表皮の背面側から表面側に向かうに従って大きくなるよう形成され
、
前記表皮と前記通気孔とが重なる領域における一定面積当たりの前記貫通孔の数は、前記表皮と前記通気孔とが重ならない領域における前記一定面積当たりの前記貫通孔の数以上であることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
送風装置と連通する通気孔が形成されたパッドと、
前記パッドを覆うよう設けられ、前記パッドの前記通気孔に少なくとも一部が重なるよう配置される複数の貫通孔が形成された表皮と、を備え、
前記複数の貫通孔のうち少なくとも一つ以上の貫通孔が、前記通気孔に重ならない領域に配置されており、
前記パッドの前記通気孔に少なくとも一部が重なるように配置される複数の貫通孔は、
前記表皮の表面に対して垂直方向に切断した前記複数の貫通孔のそれぞれの断面形状において、前記貫通孔の幅が、前記表皮の背面側から表面側に向かうに従って大きくなるよう形成され
、
前記表皮が前記通気孔に重なる領域に形成される前記貫通孔の大きさは、前記表皮が前記貫通孔に重ならない領域に形成される前記貫通孔の大きさより大きいことを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
前記表皮が前記通気孔に重なる領域に形成される前記貫通孔の大きさは、前記表皮が前記貫通孔に重ならない領域に形成される前記貫通孔の大きさと等しい、ことを特徴とする請求項
1に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記表皮が前記通気孔に重なる領域に形成される前記貫通孔の大きさは、前記表皮が前記貫通孔に重ならない領域に形成される前記貫通孔の大きさより大きい、ことを特徴とする請求項
1に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記複数の貫通孔の一部が集合した孔集合体を有し、前記孔集合体は特定の形状を形成し、前記特定の形状により囲まれる領域が前記通気孔に重なるよう、前記特定の形状により囲まれる領域が前記表皮に配置される、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記特定の形状の中央部分が前記通気孔の中央部分に重なるよう、前記特定の形状により囲まれる領域が前記表皮に配置される、ことを特徴とする請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記パッドを支持するフレームと、前記送風装置の吹出口又は吸入口と前記通気孔とを連通させるダクトと、を備え、前記送風装置は前記フレームに固定される、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特に、送風装置が取り付けられ乗員に風を送ることが可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートには、シートに着座した乗員に対してシート内部に装着された送風装置から風を送ることが可能なシートが存在する。このような車両用シートでは、送風装置によって生じる風がダクトを経由してシート内のパッドに形成された空気通路及び通気孔を通過し乗員の身体に達する。そのため、このような車両用シートでは、通常、シート構成部品である表皮に貫通孔が穿設される。特許文献1には、空調機能を有する車両用シートにおいて、表皮に多数の孔を形成し通気性を高めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、車両用シートの着座面の領域により通気率が異なるようにするために、空調エリアと非空調エリアとで通気率の異なる裏層材を利用している。しかしながら、裏層材の製造が非常に困難であるため、より簡便な方法で、送風装置からの通気量を確保することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、より簡便な方法で、送風装置からの通気量を確保可能な車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、送風装置と連通する通気孔が形成されたパッドと、前記パッドを覆うよう設けられ、前記パッドの前記通気孔に少なくとも一部が重なるよう配置される複数の貫通孔が形成された表皮と、を備え、前記複数の貫通孔のうち少なくとも一つ以上の貫通孔が、前記通気孔に重ならない領域に配置されており、前記パッドの前記通気孔に少なくとも一部が重なるように配置される複数の貫通孔は、前記表皮の表面に対して垂直方向に切断した前記複数の貫通孔のそれぞれの断面形状において、前記貫通孔の幅が、前記表皮の背面側から表面側に向かうに従って大きくなるよう形成され、前記表皮と前記通気孔とが重なる領域における一定面積当たりの前記貫通孔の数は、前記表皮と前記通気孔とが重ならない領域における前記一定面積当たりの前記貫通孔の数以上である車両用シートにより解決される。
また、前記課題は、送風装置と連通する通気孔が形成されたパッドと、前記パッドを覆うよう設けられ、前記パッドの前記通気孔に少なくとも一部が重なるよう配置される複数の貫通孔が形成された表皮と、を備え、前記複数の貫通孔のうち少なくとも一つ以上の貫通孔が、前記通気孔に重ならない領域に配置されており、前記パッドの前記通気孔に少なくとも一部が重なるように配置される複数の貫通孔は、前記表皮の表面に対して垂直方向に切断した前記複数の貫通孔のそれぞれの断面形状において、前記貫通孔の幅が、前記表皮の背面側から表面側に向かうに従って大きくなるよう形成され、前記表皮と前記通気孔とが重なる領域における一定面積当たりの前記貫通孔の数は、前記表皮が前記通気孔に重なる領域に形成される前記貫通孔の大きさは、前記表皮が前記貫通孔に重ならない領域に形成される前記貫通孔の大きさより大きい車両用シートにより解決される。
この構成により、より簡便な方法で、送風装置からの通気量を確保することが可能になる。
また、この構成により、例えば、貫通孔の背面側の開口が小さくなることでパッドが目立ちにくくなる。
【0007】
また、表皮と通気孔とが重なる領域における一定面積当たりの貫通孔の数を、表皮と通気孔とが重ならない領域における一定面積当たりの貫通孔の数以上とすることで、より簡単な構成で通気量を増大させることが可能になる。
また、通気に使用される貫通孔を大きくすることで送風装置からの通気量を確保することができる。
【0008】
このとき、前記表皮が前記通気孔に重なる領域に形成される前記貫通孔の大きさは、前記表皮が前記貫通孔に重ならない領域に形成される前記貫通孔の大きさと等しくてよい。
貫通孔の大きさを一定にしつつ密度を上げることにより、通気量を確保する。貫通孔の大きさが一定であることから、例えば貫通孔を形成する治具を共通にすることができる。
【0010】
前記表皮が前記通気孔に重なる領域に形成される前記貫通孔の大きさは、前記表皮が前記貫通孔に重ならない領域に形成される前記貫通孔の大きさより大きくてよい。通気に使用される貫通孔を大きくすることで送風装置からの通気量を確保することができる。
【0011】
前記複数の貫通孔の一部が集合した孔集合体を有し、前記孔集合体は特定の形状を形成し、前記特定の形状により囲まれる領域が前記通気孔に重なるよう、前記特定の形状により囲まれる領域が前記表皮に配置されてよい。この構成により、例えば特定の形状からなる模様によりシートの見栄えがよくなると共に、特定の形状の領域に含まれる通気孔により開口率を調整できるため、より簡単な構成により送風装置からの通気量を確保することができる。
【0012】
前記特定の形状の中央部分が前記通気孔の中央部分に重なるよう、前記特定の形状が前記表皮に配置されてよい。特定の形状の中央部分が通気孔の中央部分に重なることにより、通気孔と連通する貫通孔をより多く含めることができ、送風装置からの通気量を確保することができる。
【0015】
前記車両用シートは、前記パッドを支持するフレームと、前記送風装置の吹出口又は吸入口と前記通気孔とを連通させるダクトと、を備え、前記送風装置は前記フレームに固定されてよい。送風装置がフレームに固定されることにより、車両用シートの位置と連動して送風装置が移動する。そのため、例えば車両用シートの位置が変更されても、送風のためのダクトを変形させる必要がなく安定して送風することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表皮が通気孔に重なる領域における第一開口率を、表皮が通気孔に重ならない領域における第二開口率以上になるよう、表皮に複数の貫通孔を配置するため、
簡便な構成により送風機からの通気量を確保することが可能になる。
また、表皮と通気孔とが重なる領域における一定面積当たりの貫通孔の数は、表皮と通気孔とが重ならない領域における一定面積当たりの貫通孔の数以上とすることで、より簡単な構成で通気量を増大させる。
また、貫通孔の大きさを等しくすることにより、貫通孔を形成する治具を共通にすることができる。
また、貫通孔が表皮と通気孔とが重なる領域にのみ形成されることにより、製造コストを抑えることができる。
また、通気に使用される貫通孔を大きくすることで送風装置からの通気量を確保することができる。複数の貫通孔による特定形状を通気口に重なるよう配置することで、特定の形状からなる模様によりシートの見栄えがよくなると共に、特定の形状に含まれる通気孔により開口率を調整できるため、簡単な構成により送風装置からの通気量を確保することができる。
また、特定の形状の中央部分が通気孔の中央部分に重なることにより、通気孔と連通する貫通孔をより多く含めることができ、送風装置からの通気量を確保することができる。
また、貫通孔の幅が同一になるよう形成することで、通気量を落とすことなく送風することができる。
また、貫通孔の幅を表面側に向かうに従って大きくすることで、貫通孔の背面側の開口が小さくなりパッドが目立ちにくくなる。
また、送風装置が車両用シートのフレームに固定されることで、車両用シートの位置が変更されても、送風のためのダクトを変形させる必要がなく安定して送風することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートの外観を示す斜視図である。
【
図2】車両用シートから表皮を取り外した状態を示す図であり、パッドおよびフレームの外観を示す分解斜視図である。
【
図3】通気孔及び空気通路を示すパッドの断面図である。
【
図4】表皮に形成された貫通孔の断面形状を示す部分拡大断面図である。
【
図5A】表皮に形成された貫通孔とパッドに形成された通気孔と位置の関係を示す模式拡大図である。
【
図5B】表皮に形成された貫通孔とパッドに形成された通気孔と位置の関係を示す模式拡大図である。
【
図5C】表皮に形成された貫通孔とパッドに形成された通気孔と位置の関係を示す模式拡大図である。
【
図5D】表皮に形成された貫通孔とパッドに形成された通気孔と位置の関係を示す模式拡大図である。
【
図6】表皮に形成された貫通孔の別の断面形状を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートについて、
図1~
図6を参照しながら説明する。
本実施形態は、送風装置と連通する通気孔が形成されたパッドと、パッドを覆うよう設けられ、パッドの通気孔に少なくとも一部が重なるよう配置される複数の貫通孔が形成された表皮と、を備え、表皮が通気孔に重なる領域における一定面積当たりの複数の貫通孔の開口面積の割合である第一開口率が、表皮が通気孔に重ならない領域における一定面積当たりの複数の貫通孔の開口面積の割合である第二開口率以上になるよう、複数の貫通孔が配置される、ことを特徴とする車両用シートの発明に関するものである。なお、
図1に示す矢印のように車両用シートSに対して乗員が着座する側がシートの前方側となり、その反対側が後方側とする。
【0019】
本実施形態の車両用シートSは、
図1に示すように、シートバック1と、シートバック1の前方側に配置されるシートクッション2と、シートバック1の上方側に配置されるヘッドレスト3とを備えるシート本体とを備える。また、シートバック1は、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であり、
図2に示すように、骨格となるバックフレーム1aにバックパッド1bを載置して表皮10で被覆される。シートクッション2は、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となるクッションフレーム2aにクッションパッド2bを載置して表皮材20で被覆される。ヘッドレスト3は、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、芯材となる不図示のピラーに不図示のクッションパッドを載置し表皮により被覆される。
【0020】
送風装置4は、空調や換気のための公知なブロア装置であって、
図2及び
図3に示すように、クッションパッド2bの下方にクッションフレーム2aに支持される。
図3に示すように、送風装置4から送られる風はダクト6を経由してバックパッド1b及びクッションパッド2bのそれぞれに設けられた複数の通気孔5、空気通路7、及び表皮10、20のそれぞれに設けられた複数の貫通孔11を通過して、着座した乗員に対し排出される(
図3の矢印参照)。
【0021】
なお、送風装置4は、排気式のブロア装置であり、
図3に示すように送風装置4からの送風が乗員に当たるように構成されているが、送風装置4は吸気式のブロア装置であっても良い。吸気式である場合、例えば着座面付近の空気が風となって送風装置4へ吸気される。
【0022】
バックパッド1b及びクッションパッド2bは、それぞれ発泡ウレタン等からなるパッド部材であって、
図2に示すように、バックパッド1b及びクッションパッド2bにおいて着座した乗員と対向する面上には、表皮吊り込み溝1c、2cがそれぞれ形成される。表皮吊り込み溝1cは、表皮10の端部を吊り込むための横断面略U字形状の溝であって、シートバック1の略中央部分を囲むように配置される。表皮吊り込み溝2cは、表皮20の端部を吊り込むための縦断面略U字形状の溝であって、シートクッション2の略中央部分を囲むように配置される。
【0023】
バックパッド1b及びクッションパッド2bには、
図2及び
図3に示すように、バックパッド1b及びクッションパッド2bのそれぞれの厚み方向に延びる複数の通気孔5が所定の配列パターンで形成されている。複数の通気孔5は空気通路7により連結し、ダクト6を経由して送風装置4と連通する。上述したように送風装置4から送風された空気は、ダクト6と空気通路7を経由して複数の通気孔5から排出される。なお、バックパッド1b及びクッションパッド2bは、発泡ウレタン等のパッド部材から形成されているため、通気孔5以外に全体的に空気を通すことが可能である。
【0024】
表皮10は、伸縮性を有する合成皮革材料からなり、
図1に示すように、シートバック1のバックパッド1bを上方から被覆可能な形状に形成される。詳しく言うと、表皮10は複数からなり、表皮吊り込み溝1cに対応する位置で互いに縫製され連結される。なお、シートクッション2の表皮20は、表皮10と同等の構成を備え、複数の表皮20は表皮吊り込み溝2cに対応する位置で互いに縫製され連結される。
【0025】
表皮10は、
図4に示すように、積層構造からなり、具体的には上面から順にトップ層10a、発泡層10b及び基布層10cの3層構造から主に構成される。トップ層10aは、非発泡のポリ塩化ビニル(PVC)製の合成皮革から形成され、発泡層10bは、発泡されたポリ塩化ビニル(PVC)から形成される。基布層10cは、繊維材料を編むことで構成された布材料から形成される。トップ層10aの表面には、耐摩耗性及び保護性を確保すべく、ウレタンコーティングによる不図示のウレタン表面処理層が形成される。
【0026】
また、トップ層10aと発泡層10bは、互いに熱溶着される一方で、発泡層10bと基布層10cは接着剤で接着され、発泡層10bと基布層10cの境界面には、当該接着剤による塗布膜が形成される。また、基布層10cの裏面には、着座感を良好にすべく、伸縮性と通気性を備えたウレタンフォーム材料からなる不図示のワディング材が取り付けられる。
【0027】
表皮10は、
図4に示すように複数の貫通孔11が形成される。貫通孔11は、
図4に示すように表皮10の表面12に対して垂直な方向(以下、厚さ方向T)に、表面12から背面13まで貫通した孔である。貫通孔11のそれぞれは、着座側から(表面12側から)見た場合、略円形状であり、公知のパンチングロール装置やパーフォレーション装置を用いてパンチング加工によって形成される。なお、貫通孔11のそれぞれの形状は特に限定されず、楕円形状又はその他の幾何学形状であってもよく、車両用シートSのデザインに合わせて適宜変更されてよい。
【0028】
表皮10に形成される複数の貫通孔11は、
図1の部分Dを拡大した図及び
図5Aに示すように、少なくとも複数の貫通孔11のうちの一部がバックパッド1bの通気孔5に重なるよう配置される。そして、表皮10が通気孔5に重なる領域8における貫通孔11の開口面積の割合である一定面積当たりの開口率を第一開口率Aとし、表皮10が通気孔5に重ならない領域9における貫通孔11の開口面積の割合である一定面積当たりの開口率を第二開口率Bとする。そして、本実施形態の複数の貫通孔11は、第一開口率Aの値が、第二開口率Bの値以上になるよう配置される。例えば、
図5Aに示すように複数の貫通孔11は、バックパッド1bの通気孔5に対する第一開口率Aの値が最も大きくなるよう表皮10に配置される。
【0029】
図5Aに示す表皮10では、いくつかの貫通孔11が集まることにより、複数の孔集合体30が形成され、それらが所定の間隔をあけて配置される。孔集合体30は特定の形状31を形成する。そして、特定の形状31により囲まれる領域が、通気孔5に重なるよう、特定の形状31により囲まれる領域が、表皮10に配置される。
【0030】
図5Aに示す特定の形状31は矩形状である。特定の形状31は、例えば、円形状、楕円形状、又はその他の幾何学形状等、適宜変更されてよい。また、所定の幅をもつ領域であってもよい。表皮10に貫通孔11が配置される際、通気孔5の中央部分5aと、特定の形状31の中央部分31aとが重なるようにしてよい。このように貫通孔11を配置することにより、送風装置4からの通気量は、貫通孔11の配置が通気孔5に対して考慮されない場合と比較して、より簡便に確保される。また、表皮に通気率の異なる裏層材等を利用する必要もない。
【0031】
図5B~
図5Dに、貫通孔11の配置の別例を示す。
図5Bに示す表皮110は、大きさの異なる貫通孔11a、11b、11cが配置され孔集合体130が形成される。具体的に述べると、表皮10に形成される貫通孔11の孔集合体130は、大きな直径を有する貫通孔11aが等間隔で配置された孔集合体130a、中位の大きさの貫通孔11bが等間隔で配置された孔集合体130b、最も小さい貫通孔11cが等間隔で配置された孔集合体130cにより構成される。この場合、バックパッド1bの通気孔5は、大きな直径を有する貫通孔11aが配置された孔集合体130aの開口率の値が最も高いことから、通気孔5と孔集合体130aとが重なるように貫通孔11が配置される。
【0032】
図5Cに示す表皮210では、形成される貫通孔11のそれぞれの直径は同じであるが、部分的に貫通孔11が配置される間隔が異なっている。具体的には表皮210は、所定の間隔E1で配置された孔集合体230aと、間隔E1より広い間隔E2で配置された孔集合体230bとを備える。この場合、貫通孔11の間隔が最も小さい範囲、すなわち密度が高い範囲である、孔集合体230aが通気孔5に重なるよう、複数の貫通孔11が表皮10に配置される。このような構成により、通気孔5が重なる部分の開口率が最も高くなる。
【0033】
また、例えば
図5Dに示すように、貫通孔11は、通気孔5に重なる表皮310の部分のみに形成されてもよい。
【0034】
また、
図4に示す貫通孔11のそれぞれの、表皮10の表面12に対して垂直な方向(厚さ方向T)の断面形状は、厚さ方向Tに全体に亘って貫通孔11の幅(直径)W0が同じになるよう、所謂ストレート型に形成される。これは一例であり、貫通孔11の厚さ方向Tに切断した断面形状は、
図6に示すように、貫通孔511の幅(直径)が、表皮510の背面513側から表面512側に向かうに従って大きくなるよう形成されてよい。すなわち、表面512における開口の幅W1が、背面513における開口の幅W2より大きくなる。背面513側の開口面積が小さくなることにより、
図4に示すよう貫通孔11をストレートに形成した場合と比較して表面側から見た場合、貫通孔11の奥にあるパッドが目立ち難くなる。
【0035】
上記実施形態において、
図3に示すように、送風装置4は、シートクッション2のクッションフレーム2aに、取り付けられているが、特に限定されることなく、送風装置4はシートバック1のバックフレーム1aに取り付けられてもよいし、ヘッドレスト3の後方部に取り付けられていてもよい。送風装置4は、シートバック1及びシートクッション2の両方に取り付けられてもよい。
【0036】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、特に限定されることなく、電車、バス等の乗り物用シートのほか、飛行機、船等の乗り物用シートとしても利用することができる。
【0037】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートに関して説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。特に、貫通孔の形状、配置及び構成について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0038】
S 車両用シート
1 シートバック
1a バックフレーム
1b バックパッド
1c 表皮吊り込み溝
2 シートクッション
2a クッションフレーム
2b クッションパッド
2c 表皮吊り込み溝
3 ヘッドレスト
4 送風装置
5 通気孔
5a 中央部分
6 ダクト
7 空気通路
8、9 領域
10、20、110、210、310、510 表皮
10a トップ層
10b 発泡層
10c 基布層
11、11a、11b、11c、511 貫通孔
12、512 表面
13、513 背面
30、130、130a、130b、130c、230a、230b 孔集合体
31 特定の形状
31a 中央部分
A 第一開口率
B 第二開口率