(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】細胞透過性トランスポザーゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20250305BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20250305BHJP
C12N 9/00 20060101ALN20250305BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20250305BHJP
【FI】
C12N15/87
C12N15/52 Z ZNA
C12N9/00
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2021548222
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2020054371
(87)【国際公開番号】W WO2020169673
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-10
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】301076083
【氏名又は名称】ヨーロピアン モレキュラー バイオロジー ラボラトリー
【氏名又は名称原語表記】European Molecular Biology Laboratory
(73)【特許権者】
【識別番号】506261534
【氏名又は名称】ユリウス-マクシミリアンズ-ウニヴェルジテート ウュルツブルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】ハウデケック,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】マデス,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】バラバス,オルソリャ
(72)【発明者】
【氏名】ズリアーニ,セシリア,イネス
(72)【発明者】
【氏名】クエルクス,イルマ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】Int J Pept Res Ther,2008年,Vol.14,pp.58-63,DOI 10.1007/s10989-007-9114-z
【文献】NATURE GENETICS,2009年,Vol.41, No.6,pp.753-761,doi:10.1038/ng.343
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/10
C12N 5/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞を遺伝子操作する方法であって、該方法は(a)標的細胞のゲノムに挿入される対象となる配列に隣接する逆方向末端反復(ITR)または直接末端反復(DTR)を含むトランスポゾンユニット、及び(b)タンパク質形態の「変異型Sleeping Beauty(SB)トランスポザーゼ(以下、変異型トランスポザーゼともいう。)」と、該標的細胞を接触させる工程を含むものであって、該変異型トランスポザーゼは、配列番号2と比較して変異型トランスポザーゼの溶解性を増大させる複数の変異を有するが、トランスポザーゼ活性を保持し、配列番号2と少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を含
み、
および、C176S及びI212Sの変異を含むものであり、それにより、単独のトランスフェクション剤として使用される場合、タンパク質形態で標的細胞に前記対象となる配列の組換え型の組み込みを促進するように前記変異型トランスポザーゼを適合させるものであり、該遺伝子操作はタンパク質トランスフェクション手順又は試薬を使用せずに行われる、方法。
【請求項2】
カーゴ化合物を標的細胞内に送達する方法であって、該方法は、カーゴ化合物をシャトルタンパク質に取り付けてカーゴ-シャトル複合体を得ることと、標的細胞を該カーゴ-シャトル複合体と接触させることとを含むものであって、該シャトルタンパク質は、変異型トランスポザーゼを含み、該変異型トランスポザーゼは、配列番号2のアミノ酸150~250の間に少なくとも2つの変異アミノ酸を有し、配列番号2と少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を含
み、C176S及びI212Sの変異を含むものであって、前記変異は配列番号2と比較して変異型トランスポザーゼの溶解性を増大させるものであり、それにより、標的細胞へカーゴ化合物をシャトルするように前記変異型トランスポザーゼを適合させる、方法。
【請求項3】
シャトルタンパク質は、リンカー部分を介してカーゴ化合物に結合する、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
リンカー部分は、ソルターゼのドナー部位-アクセプター部位の組合せ、又はビオチンタンパク質-ストレプトアビジンタンパク質の組合せである、請求項
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
Sleeping Beauty(SB)トランスポゾンは、導入遺伝子を細胞に挿入するのに効率的な非ウイルス性ツールである。その遺伝子療法における幅広い利用は、トランスポザーゼ遺伝子活性が制御されないこと、及びトランスポザーゼタンパク質を直接使用することができないことによって妨げられてきた。本発明は、SBトランスポザーゼが哺乳動物細胞を自発的に透過し、トランスポゾンDNAとともに送達されて、様々な細胞系統、胚性幹細胞、造血幹細胞、及び人工多能性幹細胞を遺伝子改変することができるという知見に関係している。本発明は、細胞を遺伝子操作する方法においてトランスポザーゼの細胞透過機能を適用する方法及び化合物、並びに標的細胞内又はそれどころか標的細胞小器官内にさえカーゴを送達するシャトルとしてトランスポザーゼを使用する方法及び化合物を提供する。本発明の技術を使用して、ゲノム組み込み頻度を調整することができ、これにより安全性の追加の階層が加わることから、遺伝子操作及び遺伝子療法における高度な利用の機会が開かれる。
【背景技術】
【0002】
遺伝子操作は、研究、生物工学、及び療法において極めて重要な技術になっている。遺伝子カーゴの効率的な挿入のために、ウイルスベクターが広く使用されている。しかしながら、ウイルスによる遺伝子送達は、煩雑で費用がかかり、ベクターにコードされるエピトープに対する炎症応答(非特許文献1)、及び転写領域への優先的な組み込みによる不利なゲノム変化(非特許文献2)についてのリスクを抱えている。非ウイルス性のゲノム編集ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、又はCRISPR/Cas9)は、標的細胞ゲノムにおいてDNA修復を介した変化を惹起することにより、プログラムされたノックアウト及び小さな編集を可能にする。しかしながら、それらの宿主修復への依存は、特に医学的に関連する初代細胞では、大きな導入遺伝子の挿入のためにそれらを利用することを危うくする。固有のDNA破壊の変異原性潜在力はまた、最近ではゲノム再配列(非特許文献3)及び悪性形質転換(非特許文献4、5)のリスクを生むことも分かっている。
【0003】
トランスポゾンは、効率的な遺伝子送達のための非ウイルス性の代替手段を与え、研究及び臨床試験でそれらを使用することが急速に増加している。トランスポゾンは、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターに匹敵する遺伝子導入率を引き出すが、低減された免疫原性、無制限のカーゴサイズ、及び偏りのないゲノム分布を伴い(非特許文献6~8)、臨床実施についての複雑さ及びコストに関して有利な属性を有する。
【0004】
脊椎動物での遺伝子操作へのトランスポゾンの適用は、Sleeping Beauty(SB)と呼ばれる魚のゲノム内の不活性コピーから活性トランスポゾンを再構築することで初めて実現された(非特許文献9)。従来では、SB系は、プラスミドDNAベクターとして提供される2つの構成要素を含む:1つはトランスポザーゼをコードし、もう1つはトランスポゾン末端DNA配列に隣接する遺伝子カーゴを含む。遺伝子移入を実現するには、両方のベクターをトランスフェクションしなければならず、トランスポザーゼ遺伝子を標的細胞内で発現させなければならない。発現後に、SBトランスポザーゼタンパク質はカーゴベクターのトランスポゾン末端に特異的に結合し、導入遺伝子を切り出し、標的細胞のゲノム内の任意のTAジヌクレオチド部位にそれを組み込む(転移)(
図1A)。ゲノム編集ヌクレアーゼとは対照的に、SBは、二本鎖DNA破壊及び宿主細胞のDNA修復メカニズムに依存することなく、直接的なエステル交換反応を介してその遺伝子カーゴを挿入する。脊椎動物におけるその高い挿入効率のため(非特許文献10)、SBは、癌遺伝子の発見、遺伝子導入、及び遺伝子療法という用途に有益なツールである(最近では、他でレビューされている(非特許文献7、11~13)。実際、SBは、治療用細胞のex vivo操作のための臨床第I/II相試験で既に使用されている最も高度なウイルス不含の遺伝子送達ツールである(非特許文献6、7、11、13)。
【0005】
これらの試験の大部分は、キメラ抗原受容体(CAR)に関する遺伝情報を導入することによってT細胞を再プログラムすることを目的としている。CARは、悪性腫瘍関連抗原に対する新しい特異性をT細胞に与える人工受容体であり、CAR T細胞は、白血病及びリンパ腫の治療に前例のないほどの奏効率を示している(非特許文献14、15)。CAR遺伝子挿入にSBを使用した最初の2つの完了した臨床試験により、既に臨床的概念実証がもたらされている(非特許文献16、17)。ウイルスベースの遺伝子移入に依存する承認されたCAR T細胞製品と比較して、SBの使用は同等の有効性をもたらし、製造の複雑さ及びコストの削減という追加の利点を伴い、これは技術の利用可能性を高めるのに極めて重要である。
【0006】
しかしながら、現在のSB系は、トランスポザーゼをコードするDNAの使用がタンパク質発現の増大を引き起こし(非特許文献17)、標的細胞においてトランスポザーゼ遺伝子の獲得さえもたらし得るという重要な欠陥を有する。SBトランスポザーゼの曝露のタイミング及び動態に対するこの制御の欠如は、進行中の制御されない転移のリスクを負い(非特許文献18~20)、治療用細胞製品の不利な形質転換に関する安全上の懸念を起こす。トランスポザーゼのクリアランスを保証し、異常な又は不安定な細胞製品の注入を避けるために、進行中の試験の操作されたT細胞はCAR遺伝子送達後に2週間~4週間培養され、それにより細胞の適性及び治療効力が低下する(非特許文献16、17)。したがって、SBの制御及び安全性を改善する差し迫った要求があり、これはまた一般的に細胞療法及び遺伝子療法にとっての重要な要件でもある。
【0007】
トランスポザーゼ曝露を制御する以前の試みは、mRNAベースのアプローチに焦点を合わせており、それによりタンパク質発現の時間は短縮され(非特許文献18、21、22)、造血幹細胞及び前駆細胞(HSPCs)における細胞傷害性が低減された(非特許文献23)。しかしながら、活性の最大限の制御を達成するには、タンパク質を直接使用することが望ましいが、これは組換えタンパク質生産における問題によって禁じられている(非特許文献24)。実際、ゲノム編集ヌクレアーゼの直接的な送達は、それらの精度及び制御を改善することが実証されている(非特許文献25、26)。一方で、トランスポザーゼは一般に組換えにより産生することが困難であり、生理学的条件での低い溶解性を特徴とすることから、効率的なタンパク質送達が妨げられる。最近の報告では、Mos1トランスポザーゼ、Mboumar-9トランスポザーゼ、及びMuトランスポザーゼ-DNA複合体のトランスフェクションについて記載されているが(非特許文献27~29)、哺乳動物細胞においてこれらの酵素の効率が低いことにより、これらの治療的使用は限定される。医学的に関連する状況で、ウイルスキャプシドに融合されたpiggyBacトランスポザーゼの送達が達成され、中程度の効率が示されたが、ウイルス性の送達構成要素を保持するという不利点を有していた(非特許文献30、31)。SBについては、タンパク質の凝集、低い安定性、及び溶解性が、今日まで依然としてタンパク質の生産及び送達にとっての主要なボトルネックとなっている(非特許文献24)。
【0008】
特許文献1は、高められた溶解性を有する改善されたSBトランスポザーゼ(hsSB)の開発に関するものである。この文献には、他のSBトランスポザーゼと比較して改善されたhsSBの特質、及び例えば治療アプローチの状況での遺伝子送達用ツールとしてのその使用が開示されている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、転移因子、特にSBコンストラクトに基づく遺伝子操作アプローチを改善することであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際出願PCT/EP2018/072320号
【非特許文献】
【0011】
【文献】C. H. Lamers et al., Immune responses to transgene and retroviral vector in patients treated with ex vivo-engineered T cells. Blood 117, 72-82 (2011).
【文献】F. Bushman et al., Genome-wide analysis of retroviral DNA integration. Nat Rev Microbiol 3, 848-858 (2005).
【文献】M. Kosicki, K. Tomberg, A. Bradley, Repair of double-strand breaks induced by CRISPR-Cas9 leads to large deletions and complex rearrangements. Nat Biotechnol 36, 765-771 (2018).
【文献】E. Haapaniemi, S. Botla, J. Persson, B. Schmierer, J. Taipale, CRISPR-Cas9 genome editing induces a p53-mediated DNA damage response. Nat Med 24, 927-930 (2018).
【文献】R. J. Ihry et al., p53 inhibits CRISPR-Cas9 engineering in human pluripotent stem cells. Nat Med 24, 939-946 (2018).
【文献】R. Monjezi et al., Enhanced CAR T-cell engineering using non-viral Sleeping Beauty transposition from minicircle vectors. Leukemia 31, 186-194 (2017).
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【文献】M. Holstein et al., Efficient Non-viral Gene Delivery into Human Hematopoietic Stem Cells by Minicircle Sleeping Beauty Transposon Vectors. Molecular therapy : the journal of the American Society of Gene Therapy 26, 1137-1153 (2018).
【文献】H. Zayed, Z. Izsvak, D. Khare, U. Heinemann, Z. Ivics, The DNA-bending protein HMGB1 is a cellular cofactor of Sleeping Beauty transposition. Nucleic acids research 31, 2313-2322 (2003).
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【文献】T. Gaj, J. Guo, Y. Kato, S. J. Sirk, C. F. Barbas, 3rd, Targeted gene knockout by direct delivery of zinc-finger nuclease proteins. Nature methods 9, 805-807 (2012).
【文献】M. Trubitsyna et al., Use of mariner transposases for one-step delivery and integration of DNA in prokaryotes and eukaryotes by transfection. Nucleic acids research 45, e89 (2017).
【文献】A. O. Paatero et al., Bacteriophage Mu integration in yeast and mammalian genomes. Nucleic acids research 36, e148 (2008).
【文献】T. S. Rasila et al., Mu transpososome activity-profiling yields hyperactive MuA variants for highly efficient genetic and genome engineering. Nucleic acids research 46, 4649-4661 (2018).
【文献】Y. Cai et al., DNA transposition by protein transduction of the piggyBac transposase from lentiviral Gag precursors. Nucleic acids research 42, e28 (2014).
【文献】K. A. Skipper et al., Time-Restricted PiggyBac DNA Transposition by Transposase Protein Delivery Using Lentivirus-Derived Nanoparticles. Molecular Therapy - Nucleic Acids 11, 253-262 (2018).
【発明の概要】
【0012】
概して、簡単な説明により、本発明の主な態様は以下のように説明することができる。
【0013】
第1の態様において、本発明は、標的生物細胞を遺伝子操作する方法であって、任意の順序で(i)トランスポゾンコンストラクトを生物細胞内に導入する及び/又はトランスポゾンコンストラクトを含む生物細胞を準備する工程と、(ii)タンパク質トランスフェクション手順又はタンパク質トランスフェクション試薬の不存在下で又はこれらを使用せずに、標的生物細胞をトランスポザーゼタンパク質と接触させる工程とを含む、方法に関する。
【0014】
第2の態様において、本発明は、共有結合で又は非共有結合で、かつ直接的に又は間接的にカーゴ化合物をシャトルタンパク質に取り付けてカーゴ-シャトル複合体を得ることと、生物細胞をカーゴ-シャトル複合体と接触させることとを含む、カーゴ化合物を生物細胞内に送達する方法であって、シャトルタンパク質は、トランスポザーゼタンパク質配列を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0015】
第3の態様において、本発明は、生物細胞内へのカーゴ化合物の送達におけるトランスポザーゼタンパク質の使用であって、トランスポザーゼタンパク質は、細胞シャトルタンパク質として使用され、共有結合で又は非共有結合で、かつ直接的に又は間接的にカーゴ化合物に取り付けられている、使用に関する。
【0016】
第4の態様において、本発明は、細胞シャトルであって、カーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質、又は、リンカー化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質であって、リンカー化合物が、細胞シャトルをカーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングするのに適している、トランスポザーゼタンパク質、又は、リンカー化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質であって、リンカー化合物が更に、カーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされている、トランスポザーゼタンパク質を含む、細胞シャトルに関する。
【0017】
第5の態様において、本発明は、カーゴ化合物の細胞内への送達に使用されるキットであって、本発明の第2の態様の方法に関連して又は第4の態様によるシャトルに関連して規定されたシャトルタンパク質を含む、キットに関する。
【0018】
第6の態様において、本発明は、トランスポザーゼタンパク質を生物細胞内に導入する方法であって、タンパク質トランスフェクション剤の不存在下で、又はエレクトロポレーション等のタンパク質トランスフェクション手順を使用せずに、細胞をトランスポザーゼタンパク質と接触させることを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】SBトランスポザーゼによるゲノム操作の概略図を示す図である。LE及びREは、それぞれ左側のトランスポゾン末端配列及び右側のトランスポゾン末端配列を表している。標的ゲノムにおけるカーゴ遺伝子移入は、標的細胞においてプラスミドベクター(曲がった矢印)から発現されるトランスポザーゼによって実行される。
【
図2】直接的なhsSB送達により、多様な哺乳動物細胞及び幹細胞において効率的な遺伝子導入が可能となることを示す図である。Venus保有トランスポゾンプラスミドがトランスフェクションされ、かつhsSBトランスポザーゼがエレクトロポレーションされたHeLa細胞(上のパネル)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(中央のパネル)、及びマウス胚性幹細胞(mESCs;下のパネル)の代表的なフローサイトメトリー分析。トランスフェクションの3週間後に、組み込まれたVenus遺伝子を安定的に発現する細胞が特定された。エレクトロポレーションされたhsSBタンパク質の量が上方に示されている。y軸:死細胞を除外するためのヨウ化プロピジウム(PI)染色;x軸:Venusからの緑色蛍光;NT、トランスフェクションされていない。
【
図3】フローサイトメトリーによって定量化された、様々な細胞系統における任意の導入遺伝子ベクターとともに組換え発現されるSBタンパク質を含む系(SBprotAct)の遺伝子導入効率を示す図である。エラーバーは標準偏差を示す(n=2)。
【
図4】自発的なhsSB透過を使用する、本発明の細胞操作手順の概略図を示す図である。
【
図5】DAPI染色された核(左)、hsSB染色(中央)、及びマージ(右)を示している、hsSB処理(上)及び未処理(下)のHeLa細胞の免疫蛍光イメージングを示す図である。矢印は、核内にhsSBを有する細胞を示している。
【
図6】培養培地に添加した際のHeLa細胞におけるhsSBの細胞取り込み及び保持を示すウェスタンブロット分析を示す図である。内部ローディングコントロールとして抗SB抗体又は抗GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ)のいずれかを用いて、試料をブロッティングした。
【
図7】VenusをコードするトランスポゾンMCがトランスフェクションされ、かつ培養培地中でhsSBとともにインキュベートされたHeLa細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。Venus陽性細胞を2日後にソーティングし、送達後3週間で分析した。y軸:死細胞を除外するための4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)染色;x軸:Venusからの緑色蛍光。培養培地中のhsSBタンパク質濃度が各プロットの上方に示されている。NT、トランスフェクションされていない。
【
図8】培養培地からのhsSBの透過後の、抗SB抗体を用いた人工多能性幹細胞(iPSCs)のウェスタンブロット分析を示す図である。
【
図9】VenusトランスポゾンMCによるトランスフェクション及びhsSBとのインキュベーションの3週間後のiPSCsの代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図10】自発的なhsSB透過を使用するT細胞操作手順の概略図を示す図である。
【
図11】DAPI染色された核(左)、hsSB染色(中央)、及びマージ(右)を示している、T細胞の免疫蛍光イメージングを示す図である。一次SB抗体の不存在下で染色された細胞が下方に示されている(IFコントロール)。
【
図12】トランスポゾンミニサークル(MC)がトランスフェクションされ、かつhsSBとともにインキュベートされたCD8+T細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。健康なドナーからのCD8+T細胞にCD19 CAR MCをトランスフェクションし、磁気関連細胞選別(MACS)によってCAR陽性細胞(マーカーとしてEGFRtを使用)について濃縮した。3つの実験(3つの異なるT細胞ドナーから)の1つからの代表的なFACSプロットとともに、プロットされたCD8特異的抗体及びEGFRt特異的抗体(それぞれCD8-VioBlue及びEGFRt-AF647)からの蛍光が示されている。培養培地中のhsSBタンパク質濃度が各プロットの上方に示されている。NT、トランスフェクションされていない。
【
図13】hsSBの透過によって作製されたCD19 CAR T細胞又はMC-MCコントロールの細胞溶解活性を示す図である。細胞溶解は、過剰なルシフェリンの存在下での5時間の共培養アッセイにおけるffLucを発現する標的細胞の発光シグナルから計算された。NT、トランスフェクションされていない。E:T比、エフェクター対標的比。
【
図14】CAR T細胞のゲノムDNAの液滴デジタルPCR(ddPCR)によって測定されたCAR導入遺伝子挿入の平均数を示す図である。エラーバーは、95%の信頼区間での2つの独立したddPCRアッセイ(同じゲノムDNA試料に対して実施)のコピー数の推定値を示している。
【
図15】hsSB-GFP融合タンパク質の透過を示す図である。(A)タンパク質との1時間のインキュベーション後のhsSB-GFP(左)及びDAPI染色された核(右)を示しているHeLa細胞の蛍光イメージング。スケールバー20 μm。(B)は24時間後のhsSB-GFP(左)及びDAPI染色された核(右)を示しているHeLa細胞の蛍光イメージングを示す。スケールバー20 μm。
【
図16】GFPのN末端に融合されたhsSBの触媒的に不活性な突然変異体の透過を示す図である。(A)タンパク質との1時間のインキュベーション後のhsSB-D153N-D244N-GFP(左)及びDAPI染色された核(右)を示しているHeLa細胞の蛍光イメージング。スケールバー20 μm。(B)24時間後のhsSB-D153N-D244N-GFP(左)及びDAPI染色された核(右)を示しているHeLa細胞の蛍光イメージング。スケールバー20 μm。
【
図17】GFP-hsSB融合タンパク質の透過を示す図である。(A)タンパク質との1時間のインキュベーション後のGFP-hsSB(左)及びDAPI染色された核(右)を示しているHeLa細胞の蛍光イメージング。スケールバー20 μm。(B)は24時間後のGFP-hsSB(左)及びDAPI染色された核(右)を示しているHeLa細胞の蛍光イメージングを示す。スケールバー20 μm。
【
図18】hsSBのN末端DNA結合ドメイン(DBD)がHeLa細胞内に効率的に透過することを示す図である。(A)タンパク質との3時間のインキュベーション後のSB染色(左)及びDAPI染色された核(右)を示しているHeLa細胞の免疫蛍光イメージング。スケールバー20 μm。コンストラクトhsSB-1-123の概略図が下方に示されている。(B)24時間後のSB染色(左)及びDAPI染色された核(右)を示しているHeLa細胞の免疫蛍光イメージング。スケールバー20 μm。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記で本発明の要素を記載する。これらの要素は特定の実施形態とともに挙げられているが、更なる実施形態を作成するのに、これらの要素をどのような方法及びどのような数でも組み合わせることができることを理解されたい。多様に記載された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を例示的に記載された実施形態のみに限定するものとは解釈されない。本明細書は2つ以上の例示的に記載された実施形態又は1つ以上の例示的に記載された実施形態と、あらゆる数の開示された及び/又は好ましい要素とを組み合わせた実施形態を支持及び包含するものであると理解されたい。さらに文脈上他に指定のない限り、本出願において記載された全ての要素のあらゆる並び替え(permutations)及び組合せが本出願の明細書により開示されていると見なされる。
【0021】
第1の態様において、本発明は、標的生物細胞を遺伝子操作する方法であって、任意の順序で(i)トランスポゾンコンストラクトを生物細胞内に導入する及び/又はトランスポゾンコンストラクトを含む生物細胞を準備する工程と、(ii)タンパク質トランスフェクション手順又はタンパク質トランスフェクション試薬の不存在下で又はこれらを使用せずに、標的生物細胞をトランスポザーゼタンパク質と接触させる工程とを含む、方法に関する。
【0022】
第1の態様によれば、標的細胞は、標的ゲノムとの転移反応を行うことによって遺伝子操作される。このような転移反応は、転移因子(トランスポゾンコンストラクト又はトランスポゾンユニット)及び転移反応を触媒するトランスポザーゼタンパク質の存在下で自動的に起こる。
【0023】
本発明は、トランスポザーゼ、好ましくはhsSBが自動的に細胞膜を通過して細胞核に入り、それによって転移によるゲノム改変を媒介し得るという知見に何よりも関係している。従来技術の方法において、トランスポザーゼは、例えばタンパク質トランスフェクション試薬又はエレクトロポレーション等の手順を使用して細胞内への能動的トランスフェクションを必要としていたため、そのような活性はトランスポザーゼタンパク質等の巨大分子にとっては珍しい。本発明の文脈においては、目下、タンパク質トランスフェクションの工程を含まない細胞の遺伝子操作方法が提供され、特に、この方法は、タンパク質トランスフェクション試薬又はトランスポザーゼタンパク質を細胞内に導入する手順の使用を含まないことが好ましい。言い換えれば、本発明の方法は、細胞膜を通過するタンパク質の透過を変化させる担体、試薬、又は方法を一切使用せずに、トランスポザーゼタンパク質を導入する工程を含む。しかしながら、この方法が無関係の理由で、遺伝子操作に必要とされるトランスポザーゼではない別のタンパク質を細胞内に導入する工程を含み、かつそのような別のタンパク質のそのような導入がタンパク質トランスフェクションを使用することにより行われる場合には、このような工程はトランスポザーゼタンパク質のトランスフェクション(送達)に関する本発明とは相違するものではない。したがって、遺伝子操作に必要とされるトランスポザーゼタンパク質以外のタンパク質を導入することを目的とするのであれば、そのような追加の工程を含めることができる。また、トランスポザーゼタンパク質をコードする遺伝子発現コンストラクトを導入し、上記コンストラクトを標的細胞内で発現させることにより、トランスポザーゼタンパク質が細胞内に間接的に導入されない本発明の方法も好ましい。
【0024】
本発明の文脈における「タンパク質トランスフェクション」という用語は、そうでなければ上記標的細胞に効率的に入ることはないタンパク質を標的細胞内に導入するのに十分なあらゆる方法又は試薬に広く関係すると理解されるものとする。一般的なタンパク質トランスフェクション系及びタンパク質トランスフェクション試薬としては、PULSin(商標)、ProteoJuice(商標)、Xfect(商標)、及びBioPorter(商標)、Pierce(商標)タンパク質トランスフェクション試薬(ThermoFisher)、TransPass(商標)等の市販のタンパク質トランスフェクション試薬、並びにタンパク質のエレクトロポレーション等の方法が挙げられる。
【0025】
したがって、本発明の文脈においては、遺伝子操作方法のために、トランスポザーゼタンパク質を上記生物細胞が含まれる培地、好ましくは標的生物細胞の細胞培養培地に直接添加することによって、トランスポザーゼタンパク質を提供する(細胞内に導入する)ことが好ましい。したがって、細胞膜を通過するタンパク質の透過を変化させる担体又は方法を一切使用することなく、本発明によるトランスポザーゼタンパク質を標的細胞と直接接触させる。
【0026】
本明細書で使用される「トランスポザーゼ」という用語は、転移が可能であり、かつ転移を媒介する機能的な核酸-タンパク質複合体の構成要素である酵素を指す。「トランスポザーゼ」という用語はまた、レトロトランスポゾン由来の又はレトロウイルス起源のインテグラーゼを指す。本明細書で使用される「転移反応」は、トランスポゾンが標的核酸に挿入される反応を指す。転移反応の主要な構成要素は、トランスポゾン及びトランスポザーゼ又はインテグラーゼの酵素である。例えば、本発明によるトランスポザーゼ系は、好ましくは、いわゆる「Sleeping Beauty(SB)」トランスポザーゼである。或る特定の態様において、トランスポザーゼは、酵素機能の増加等の特質の改善を伴う操作された酵素である。操作されたSBトランスポザーゼの幾つかの特定の例としては、限定されるものではないが、SB10、SB11、又はSB100XのSBトランスポザーゼが挙げられる(例えば、Mates et al., Nat. Gen. 2009を参照、これは引用することにより本明細書の一部をなす)。他の転移系、例えばTy1(Devine and Boeke, 1994、及び国際公開第95/23875号)、Tn7(Craig, 1996)、Tn 10、及びIS 10(Kleckner et al. 1996)、Himar1 marinerトランスポザーゼ(Lampe et al., 1996)、Mos1(Tosi and Beverley, 2000)、Tc1(Vos et al., 1996)、Tn5(Park et al., 1992)、P因子(Kaufman and Rio, 1992)、及びTn3(Ichikawa and Ohtsubo, 1990)、細菌性挿入配列(Ohtsubo and Sekine, 1996)、レトロウイルス(Varmus and Brown 1989)、並びに酵母のレトロトランスポゾン(Boeke, 1989)を使用することができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、トランスポザーゼは、Sleeping Beauty(SB)トランスポザーゼであり、好ましくはSB100X(配列番号2)である、又はSB100Xから誘導される酵素である。
【0028】
したがって、本発明によるトランスポザーゼポリペプチドは、トランスポザーゼ活性を有するポリペプチドであって、少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基が、SBトランスポザーゼ、好ましくはSB100Xトランスポザーゼのアミノ酸150からアミノ酸250の間に位置する残基である、ポリペプチドである。
【0029】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、少なくとも2つの突然変異アミノ酸残基、又は少なくとも3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸であることが好ましい。本発明のトランスポザーゼポリペプチドは、その配列をSBトランスポザーゼ、好ましくはSB100Xの配列とアラインメントさせた場合に、アミノ酸170~アミノ酸180及び/又はアミノ酸207~アミノ酸217のいずれか1つで突然変異されていることが好ましい。より好ましくは、少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、SBトランスポザーゼ、好ましくはSB100Xのアミノ酸176及び/又はアミノ酸212から選択される。最も好ましくは、少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基はセリン残基に突然変異され、好ましくは、C176S又はC176S及びI212Sである。
【0030】
他の実施形態において、本発明のトランスポザーゼポリペプチドは、配列番号1(hsSB)に示される残基150から残基250の間のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を更に含む。トランスポザーゼポリペプチドは、配列番号2の配列と比較して、少なくともC176の突然変異、好ましくはC176Sを含むことが好ましい。更により好ましくは、トランスポザーゼポリペプチドは、位置I212での突然変異、好ましくはI212Sを更に含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、本発明のトランスポザーゼポリペプチドは、配列番号1又は配列番号3(hsSB)に示される全長アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、配列同一性の程度は、幾つかの実施形態において100%を下回るが、上記の少なくとも1つの突然変異が本発明のトランスポザーゼポリペプチドに存在するものとする。
【0032】
別の実施形態において、本発明の自己透過性トランスポザーゼタンパク質は、トランスポザーゼの断片である。好ましくは、この断片はhsSBのDNA結合ドメインを含む(
図18)。好ましくは、トランスポザーゼのDNA結合ドメインは、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個以上等のN末端及び/又はC末端の追加のアミノ酸を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合に、「同一」又はパーセント「同一性」という用語は、本明細書の他の場所で2つ以上の核酸配列又はタンパク質/ポリペプチド配列の文脈において使用される場合に、配列比較アルゴリズムを使用して又は手動のアラインメント及び目視検査(例えば、NCBIウェブサイトを参照)によって測定されて、同じである2つ以上の配列若しくは部分配列、又は同じである(すなわち、比較ウィンドウ又は指定された領域にわたる最大の一致で比較及びアラインメントした場合に、特定された領域にわたって、好ましくはそれらの全長配列にわたって、約60%の同一性又は少なくともその同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%若しくは94%の同一性又は少なくともそれらの同一性、より好ましくは約95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性又は少なくともそれらの同一性で)アミノ酸残基若しくはヌクレオチドの特定されたパーセンテージを有する(又は少なくとも有する)2つ以上の配列若しくは部分配列を指す。特定の実施形態において、例えば、本発明のトランスポザーゼのタンパク質配列又は核酸配列を、例えば参照(非突然変異トランスポザーゼ)と比較する場合に、パーセンテージ同一性は、NCBIで提供されるBlast検索によって決定され、特にアミノ酸の同一性については、BLASTP 2.2.28+を使用した以下のパラメーター:行列:BLOSUM62;ギャップペナルティ:存在:11、伸長:1;隣接するワードの閾値:11;多重ヒットのウィンドウ:40でのBlast検索によって決定され得る。
【0034】
さらに、幾つかの実施形態において、本発明のトランスポザーゼポリペプチドは、参照の非突然変異トランスポザーゼポリペプチドと比較して高められた溶解性を有し、好ましくは、参照の非突然変異トランスポザーゼポリペプチドは、好ましくは配列番号2(非突然変異SB100X)に示されるSB100Xトランスポザーゼである。
【0035】
幾つかの態様及び実施形態において、トランスポゾンタンパク質は、任意の示されるトランスポザーゼタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。そのようなトランスポザーゼタンパク質は、配列番号1~配列番号3のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなり、又は実質的に該アミノ酸配列からなり、任意に、これらの配列と比較して50個以下、20個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下のアミノ酸の置換、付加、挿入、欠失、又は逆位を伴う。しかしながら、そのような変異体トランスポザーゼタンパク質は、本発明によるそのトランスポザーゼ活性及び/又はその細胞透過活性を依然として保持している。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、トランスポゾンコンストラクトは、標的ゲノムに遺伝的に導入される遺伝子配列を含む。トランスポゾンコンストラクト又はトランスポゾンユニットは、本明細書に開示される本発明の文脈において、トランスポザーゼタンパク質によって媒介される該ユニットの転移の成功に必要なトランスポゾン遺伝子要素へと作動可能に連結した転移の対象であることが意図される標的配列を含む核酸(すなわち遺伝子)コンストラクトに関係するものとする。特に好ましい実施形態において、トランスポゾンコンストラクトは、トランスポザーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含まない。したがって、本発明のトランスポゾンコンストラクト又はトランスポゾンユニットは、好ましくは、標的細胞のゲノムに挿入される対象となる配列(転移される標的配列)に隣接する逆方向末端反復(ITRs)又は直接末端反復(DTRs)を含む。通常、トランスポゾンユニットは核酸であり、転移に適したあらゆる形のベクターであり得る。
【0037】
本発明の或る特定の実施形態において、転移因子又はトランスポゾンコンストラクト若しくはトランスポゾンユニットは、例えば、既知の核酸トランスフェクション系を使用することによって標的細胞内に導入される。しかしながら、本発明の方法を、トランスポゾンコンストラクト又はトランスポゾンユニットを既に含む標的細胞において実施することもでき、したがって、本発明によるトランスポザーゼタンパク質を標的細胞内に導入することによって、転移反応が開始される。
【0038】
本明細書で使用される場合に、「逆方向末端反復」という用語は、トランスポゾンユニットの一方の末端に位置する配列であって、ベクター又はトランスポゾンユニットの反対側の末端に位置する相補配列と組み合わせて使用される場合にトランスポザーゼポリペプチドによって切断され得る、配列を指す。逆方向末端反復の対は、本開示のトランスポゾンユニットのトランスポゾンの転移活性に関与し、特に、DNAの付加又は除去及び切除並びに対象となるDNAの組み込みに関与する。一例では、逆方向末端反復の少なくとも1つの対が、転移活性に必要とされる最小配列であると思われる。別の例では、本開示のトランスポゾンユニットは、少なくとも2対、3対、又は4対の逆方向末端反復を含み得る。当業者によって理解されるように、クローニングを容易にするには、必要な末端配列は、可能な限り短くされ得るため、可能な限り少ない逆方向反復を含み得る。したがって、一例では、本開示のトランスポゾンユニットは、1対以下、2対以下、3対以下、又は4対以下の逆方向末端反復を含み得る。一例では、本開示のトランスポゾンユニットは、1対のみの逆方向末端反復を含み得る。理論に縛られることを望むものではないが、2対以上の逆方向末端反復を有することは不利であり得ると考えられる。それというのも、複数の逆方向末端反復への非特異的なトランスポザーゼの結合がもたらされることで、所望の配列の除去又は不所望な配列の挿入が引き起こされる可能性があるからである。本開示の逆方向末端反復は、完全な逆方向末端反復(又は区別なく「完全な逆方向反復」と呼称される)又は不完全な逆方向末端反復(又は区別なく「不完全な逆方向反復」と呼称される)のいずれかを形成し得る。本明細書で使用される場合に、「完全な逆方向反復」という用語は、反対方向で配置された2つの同一のDNA配列を指す。ITRを備えたトランスポゾンユニットについての上記の説明は、DTRsを含むトランスポゾンユニットにも当てはまる。
【0039】
本発明の系及び本発明の構成要素とともに使用され得るトランスポゾン系(又はユニット)は、例えば、国際公開第2017/050448号に開示されており、これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0040】
上記トランスポゾンユニットがミニサークルの形で提供される本発明によるトランスポゾンコンストラクトが好ましい。しかしながら、該トランスポゾンユニットは他の核酸系であってもよい。しかしながら、T細胞操作の文脈において、例えば、CARをT細胞に導入するには、ミニサークルが好ましい。
【0041】
本発明の好ましい態様及び実施形態において、転移によって標的細胞のゲノムに導入される標的配列は、CAR、抗体、若しくはT細胞受容体、又はそのような分子のあらゆる変異体をコードする配列である。したがって、幾つかの実施形態において、本発明の方法及び化合物は、好ましくは、T細胞を遺伝子操作して、CAR T細胞を作製するのに使用される。本明細書で使用される場合に、CAR T細胞とも呼称される「キメラ抗原受容体T細胞」という用語は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するリンパ球を指す。したがって、本発明の方法は、標的細胞におけるCARの発現に必要な全ての遺伝子要素を導入することを含む。「キメラ抗原受容体」すなわち「CAR」という用語は、当該技術分野でのその一般的な意味を有し、T細胞シグナル伝達ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメインを含む人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はハイブリッドポリペプチド(例えば、scFv)を指す。CARの特質としては、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、T細胞特異性及びT細胞反応性を選択された標的に対して非MHC拘束的にリダイレクトするそれらの能力が挙げられる。非MHC拘束性の抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングとは無関係に抗原を認識するため、腫瘍エスケープの主要な機構を回避する能力を与える。さらに、T細胞で発現される場合に、CARは、有利には、内因性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量体化しない。そのようなCARを設計及び産生する戦略は、当該技術分野で既知であり、例えばBonini and Mondino, Eur. J. Immunol. 2015(19)、Srivastava and Riddell, Trends Immunol. 2015(20)、Jensen and Riddell, Curr. Opin. Immunol. 2015(21)、Gill and June, Immunol. Rev. 2015(22)に参照を見出すことができる。
【0042】
好ましい実施形態における本発明のトランスポゾン系は、SBトランスポゾン系である。
【0043】
本発明による標的細胞は、好ましくは哺乳動物細胞から選択され、好ましくは造血幹細胞、胚性幹細胞等の幹細胞、自発的不死化細胞、人工的不死化細胞、初代細胞(ニューロン、休止T細胞)、形質細胞等のB細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、人工多能性幹細胞(iPSCs)に由来する細胞から選択され、又はTリンパ球等の免疫細胞、好ましくはCD4陽性T細胞若しくはCD8陽性T細胞であり、又はナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、若しくはB細胞である。
【0044】
第2の態様において、本発明は、共有結合で又は非共有結合で、かつ直接的に又は間接的にカーゴ化合物をシャトルタンパク質に取り付けてカーゴ-シャトル複合体を得ることと、生物細胞をカーゴ-シャトル複合体と接触させることとを含む、カーゴ化合物を生物細胞内に送達する方法であって、シャトルタンパク質は、トランスポザーゼタンパク質配列を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0045】
本発明の第2の態様において、トランスポザーゼタンパク質の細胞透過活性の使用は、あらゆる種類のカーゴを標的細胞内に輸送する細胞シャトルとして使用される。そのようなカーゴを単に本発明のトランスポザーゼタンパク質に取り付けることによって、あらゆる化合物を効率的に細胞内に輸送することができる。したがって、本発明によるトランスポザーゼタンパク質は、細胞トランスフェクション担体として使用される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、カーゴ化合物は、生物細胞内及び生物細胞の細胞核内に送達される。しかしながら、代替的に、トランスポザーゼにおける細胞小器官標的化配列を変化させることによって、例えば、核局在化シグナルを異なる細胞小器官のシグナルペプチドと交換することによって、カーゴ-シャトル複合体をミトコンドリア、小胞体、ゴルジ等のような異なる細胞小器官に標的化することが可能である。したがって、或る特定の実施形態において、シャトルタンパク質は、核局在化シグナルの欠失若しくは突然変異を含む、又は核局在化シグナルを含まず、任意に、細胞核以外の細胞小器官への細胞内送達のためのシグナル配列を含む。
【0047】
この態様で使用されるトランスポザーゼは、好ましくは、他の態様及び実施形態について本明細書に記載されるトランスポザーゼである。
【0048】
特定の実施形態における本発明の細胞シャトルは、リンカー化合物に共有結合で又は非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質を含み、好ましくは、該リンカー化合物は、カーゴ化合物をシャトルタンパク質に共有結合で又は非共有結合でカップリングするのに適している。リンカーは、単純なペプチドリンカーであり得る、又はカーゴをシャトルタンパク質にコンジュゲートするのを容易にする任意の機能を含み得る。例えば、リンカー化合物は、ソルターゼのドナー部位若しくはアクセプター部位、ビオチンタンパク質若しくはストレプトアビジンタンパク質、又はタンパク質カップリング系を機能的に代替する構成要素から選択され得る。そのような系の多くは当業者に知られており、システイン残基、インテイン、又は非天然アミノ酸等の化学的架橋のための特定の機能の導入を含むものとする。代替的には、それはまた、カーゴ化合物を非共有結合で取り付けるのに適した特定のペプチド(すなわち、DNA/RNA/化学物質/脂質等に特異的な結合ドメイン)であり得る。
【0049】
原則として、本発明のトランスポザーゼの細胞透過活性は、細胞膜を通過して任意のタンパク質を輸送するのに使用され得る。そのようなカーゴ化合物は、小分子、巨大分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNA、DNA、RNA-DNAハイブリッド、PNA等の核酸から選択される、又は糖化合物、脂肪酸含有化合物である。
【0050】
本発明の第1の態様の上記の実施形態と同様に、第2の態様の方法もまた、好ましくはタンパク質トランスフェクション剤又はタンパク質トランスフェクション手順の追加を必要としない方法であり、好ましくは、この方法は、タンパク質トランスフェクション試薬又はエレクトロポレーション等のタンパク質トランスフェクション手順の使用を含まない。
【0051】
第3の態様において、本発明は、生物細胞内へのカーゴ化合物の送達におけるトランスポザーゼタンパク質の使用であって、トランスポザーゼタンパク質は、細胞シャトルタンパク質として使用され、共有結合で又は非共有結合で、かつ直接的に又は間接的にカーゴ化合物に取り付けられている、使用に関する。
【0052】
好ましくは、送達のために、タンパク質トランスフェクション試薬又はエレクトロポレーション等のタンパク質トランスフェクション手順は必要とされない又は含まれない。この文脈において、本発明の第1の態様及び第2の態様に関する上記の説明、並びにトランスポザーゼタンパク質を細胞内又は細胞小器官内に導入するのにタンパク質トランスフェクションが必要とされない実施形態が本明細書で参照される。
【0053】
第4の態様において、本発明は、細胞シャトルであって、カーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質、又は、リンカー化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質であって、リンカー化合物が、細胞シャトルをカーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングするのに適している、トランスポザーゼタンパク質、又は、リンカー化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質であって、リンカー化合物が更に、カーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされている、トランスポザーゼタンパク質を含む、細胞シャトルに関する。
【0054】
第5の態様において、本発明は、カーゴ化合物の細胞内への送達に使用されるキットであって、本発明の第2の態様の方法に関連して又は第4の態様によるシャトルに関連して規定されたシャトルタンパク質を含む、キットに関する。
【0055】
第6の態様において、本発明は、トランスポザーゼタンパク質を生物細胞内に導入する方法であって、タンパク質トランスフェクション剤の不存在下で、又はエレクトロポレーション等のタンパク質トランスフェクション手順を使用せずに、細胞をトランスポザーゼタンパク質と接触させることを含む、方法に関する。
【0056】
上記の態様及び実施形態に加えて、本発明は更に、以下の一連の項目に関する:
【0057】
項目1:標的生物細胞を遺伝子操作する方法であって、任意の順序で(i)トランスポゾンコンストラクトを生物細胞内に導入する及び/又はトランスポゾンコンストラクトを含む生物細胞を準備する工程と、(ii)タンパク質トランスフェクション手順又はタンパク質トランスフェクション試薬の不存在下で又はこれらを使用せずに、標的生物細胞をトランスポザーゼタンパク質と接触させる工程とを含む、方法。
【0058】
項目2:トランスポゾンコンストラクトは、標的ゲノムに遺伝的に導入される遺伝子配列を含む、項目1に記載の方法。
【0059】
項目3:トランスポザーゼタンパク質は、Sleeping Beauty(SB)トランスポザーゼである、又はSleeping Beauty(SB)トランスポザーゼから誘導される、項目1又は2に記載の方法。
【0060】
項目4:SBトランスポザーゼは、SB100X、好ましくは配列番号2に示されるアミノ酸配列によるSB100Xである、項目3に記載の方法。
【0061】
項目5:SBトランスポザーゼは、参照の非突然変異SBトランスポザーゼのアミノ酸150からアミノ酸250の間のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基を含む高溶解性のSB100X(hsSB)であり、例えば、参照の非突然変異SBトランスポザーゼは、配列番号2に示される配列を含む、項目3に記載の方法。
【0062】
項目6:少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、少なくとも2つの突然変異アミノ酸残基である、項目5に記載の方法。
【0063】
項目7:少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、SBトランスポザーゼ、好ましくはSB100X(配列番号2)のアミノ酸170~アミノ酸180及び/又はアミノ酸207~アミノ酸217のいずれか1つの突然変異である、項目5又は6に記載の方法。
【0064】
項目8:少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、SBトランスポザーゼ、好ましくはSB100X(配列番号2)のアミノ酸176及び/又はアミノ酸212から選択される、項目5~7のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
項目9:少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、セリン残基へと突然変異され、好ましくはC176S及びI212Sである、項目5~8のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
項目10:トランスポザーゼタンパク質は、配列番号1又は配列番号3に示される、残基150から残基250の間のアミノ酸配列、好ましくは全長配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を更に含む、項目5~9のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
項目11:シャトルタンパク質は、トランスポザーゼタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
項目12:シャトルタンパク質は、配列番号1~配列番号3のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなり、又は実質的に該アミノ酸配列からなり、任意に、これらの配列と比較して20個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下のアミノ酸の置換、付加、挿入、欠失、又は逆位を伴う、項目1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
項目13:トランスポザーゼタンパク質は、上記生物細胞が含まれる培地、好ましくは標的生物細胞の細胞培養培地にトランスポザーゼタンパク質を添加することによって提供される、項目1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
項目14:標的生物細胞は、好ましくは造血幹細胞、胚性幹細胞等の幹細胞、自発的不死化細胞、人工的不死化細胞、初代細胞(ニューロン、休止T細胞)、形質細胞等のB細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、人工多能性幹細胞(iPSCs)に由来する細胞から選択される哺乳動物細胞である、又はTリンパ球等の免疫細胞、好ましくはCD4陽性T細胞若しくはCD8陽性T細胞である、又はナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、若しくはB細胞である、項目1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
項目15:トランスポゾンは、抗体、T細胞受容体、又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードする配列等のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
項目16:共有結合で又は非共有結合で、かつ直接的に又は間接的にカーゴ化合物をシャトルタンパク質に取り付けてカーゴ-シャトル複合体を得ることと、生物細胞をカーゴ-シャトル複合体と接触させることとを含む、カーゴ化合物を生物細胞内に送達する方法であって、シャトルタンパク質は、トランスポザーゼタンパク質配列を含むことを特徴とする、方法。
【0073】
項目17:カーゴ化合物は、生物細胞内及び生物細胞の細胞核内に送達される、項目16に記載の方法。
【0074】
項目18:トランスポザーゼタンパク質配列は、Sleeping Beauty(SB)トランスポザーゼから誘導される、項目16又は17に記載の方法。
【0075】
項目19:SBトランスポザーゼは、SB100X、好ましくは配列番号2に示されるアミノ酸配列によるSB100Xである、項目18に記載の方法。
【0076】
項目20:SBトランスポザーゼは、配列番号2に示される配列等の、参照の非突然変異SBトランスポザーゼのアミノ酸150からアミノ酸250の間のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つの突然変異アミノ酸を含む高溶解性のSB100X(hsSB)である、項目18に記載の方法。
【0077】
項目21:少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、少なくとも2つの突然変異アミノ酸残基である、項目20に記載の方法。
【0078】
項目22:少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、SBトランスポザーゼ、好ましくはSB100X(配列番号2)のアミノ酸170~アミノ酸180及び/又はアミノ酸207~アミノ酸217のいずれか1つの突然変異である、項目20又は21に記載の方法。
【0079】
項目23:少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、SBトランスポザーゼ、好ましくはSB100X(配列番号2)のアミノ酸176及び/又はアミノ酸212から選択される、項目20~22のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
項目24:少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基は、セリン残基へと突然変異され、好ましくはC176S及びI212Sである、項目20~23のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
項目25:シャトルタンパク質は、配列番号1又は配列番号3に示される、残基150から残基250の間のアミノ酸配列、好ましくは全長配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を更に含む、項目20~24のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
項目26:シャトルタンパク質は、トランスポザーゼタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目16~25のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
項目27:シャトルタンパク質は、トランスポザーゼタンパク質の少なくとも50個、好ましくは100個、150個、200個、好ましくは少なくとも300個の連続的アミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目16~20のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
項目28:シャトルタンパク質は、配列番号1~配列番号3のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなり、又は実質的に該アミノ酸配列からなり、任意に、これらの配列と比較して20個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下のアミノ酸の置換、付加、挿入、欠失、又は逆位を伴う、項目16~27のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
項目29:シャトルタンパク質は、リンカー化合物に共有結合で又は非共有結合でカップリングされており、好ましくは、リンカー化合物は、カーゴ化合物をシャトルタンパク質に共有結合で又は非共有結合でカップリングするのに適している、項目16~28のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
項目30:リンカー化合物は、ソルターゼのドナー部位若しくはアクセプター部位、ビオチンタンパク質若しくはストレプトアビジンタンパク質、又はタンパク質カップリング系を機能的に代替する構成要素から選択される、項目29に記載の方法。
【0087】
項目31:カーゴ化合物は、小分子、巨大分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNA、DNA、RNA-DNAハイブリッド、PNA等の核酸から選択される、又は糖化合物、脂肪酸含有化合物である、項目16~30のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
項目32:シャトルタンパク質は、核局在化シグナルの欠失若しくは突然変異を含む、又は核局在化シグナルを含まず、任意に、細胞核以外の細胞小器官内への細胞内送達のためのシグナル配列を含む、上記項目のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
項目33:上記方法は、タンパク質トランスフェクション剤又はタンパク質トランスフェクション手順の追加を必要とせず、好ましくは、上記方法は、タンパク質トランスフェクション試薬又はエレクトロポレーション等のタンパク質トランスフェクション手順の使用を含まない、上記項目のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
項目34:生物細胞は、哺乳動物細胞である、上記項目のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
項目35:生物細胞内へのカーゴ化合物の送達におけるトランスポザーゼタンパク質の使用であって、トランスポザーゼタンパク質は、細胞シャトルタンパク質として使用され、共有結合で又は非共有結合で、かつ直接的に又は間接的にカーゴ化合物に取り付けられている、使用。
【0092】
項目36:送達のために、タンパク質トランスフェクション試薬又はエレクトロポレーション等のタンパク質トランスフェクション手順は必要とされない又は含まれない、項目35に記載の使用。
【0093】
項目37:トランスポザーゼタンパク質は、方法の項目16~34のいずれか1つに規定されるシャトルタンパク質である、項目35又は36に記載の使用。
【0094】
項目38:細胞シャトルであって、
(i)カーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質、又は、
(ii)リンカー化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質であって、リンカー化合物が、細胞シャトルをカーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングするのに適している、トランスポザーゼタンパク質、又は、
(iii)リンカー化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされたトランスポザーゼタンパク質であって、リンカー化合物が更に、カーゴ化合物に共有結合で若しくは非共有結合でカップリングされている、トランスポザーゼタンパク質、
を含む、細胞シャトル。
【0095】
項目39:トランスポザーゼタンパク質は、項目16~34のいずれか1つに規定されるシャトルタンパク質である、項目16に記載の細胞シャトル。
【0096】
項目40:カーゴ化合物は、小分子、巨大分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNA、DNA、RNA-DNAハイブリッド、PNA等の核酸から選択される、又は糖化合物、脂肪酸含有化合物である、項目38又は39に記載の細胞シャトル。
【0097】
項目41:カーゴ化合物の細胞内への送達に使用されるキットであって、項目16~34のいずれか1つに規定されるシャトルタンパク質、又は項目38~40のいずれか1つに記載の細胞シャトルを含む、キット。
【0098】
項目42:トランスポザーゼタンパク質を生物細胞内に導入する方法であって、タンパク質トランスフェクション剤の不存在下で、又はエレクトロポレーション等のタンパク質トランスフェクション手順を使用せずに、細胞をトランスポザーゼタンパク質と接触させることを含む、方法。
【0099】
項目43:トランスポザーゼタンパク質は、項目16~34のいずれか1つに規定されるトランスポザーゼタンパク質である、項目42に記載の方法。
【0100】
項目44:トランスポザーゼタンパク質は、組換え発現されたタンパク質であり、生物細胞の細胞培養培地に添加される、項目42又は43に記載の方法。
【0101】
本明細書で使用される場合に、「(本)発明の」、「本発明による」、「本発明によれば(よる)」等の用語は、本明細書に記載される及び/又は特許請求の範囲に記載される本発明の全ての態様及び実施形態を指すことを意図する。
【0102】
本明細書で使用される場合に、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」及び「からなる(consisting of)」の両方を包含すると解釈すべきであり、どちらも具体的に意図され、ひいては個別に開示される、本発明に従う実施形態を意味する。本明細書で使用される場合に、「及び/又は」は、他方を含む又は含まない、2つの指定の特徴又は構成要素の各々の具体的な開示とみなすべきである。例えば、「A及び/又はB」は、各々が本明細書に個別に提示されるかのような、(i)A、(ii)B及び(iii)A及びBの各々の具体的な開示とみなすべきである。本発明の文脈において、「約」及び「およそ」という用語は、問題となる特徴の技術的効果が依然として確実であると当業者に理解される正確さの区間を表す。この用語は通例、指定の数値からの±20%、±15%、±10%、例えば±5%の偏差を示す。当業者に理解されるように、所与の技術的効果についてのこのような具体的な数値の偏差は、技術的効果の性質に左右される。例えば、自然の又は生物学的な技術的効果は概して、人為的又は工学的な技術的効果についての偏差よりも大きなかかる偏差を有し得る。当業者に理解されるように、所与の技術的効果についてのこのような具体的な数値の偏差は、技術的効果の性質に左右される。例えば、自然の又は生物学的な技術的効果は概して、人為的又は工学的な技術的効果についての偏差よりも大きなかかる偏差を有し得る。単数名詞に言及する際に不定冠詞又は定冠詞、例えば「a」、「an」又は「the」が用いられる場合、何か他の具体的な指定がない限り、複数のその名詞も含まれる。
【0103】
特定の問題又は環境への本発明の教示の適用、及び本発明の変形形態又はその付加的な特徴(更なる態様及び実施形態等)の包含は、本明細書に含まれる教示を考慮すれば、当業者の能力の範囲内であることを理解すべきである。
【0104】
文脈上他に指示がない限り、上記に提示される特徴の説明及び定義は、発明の任意の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載される全ての態様及び実施形態に等しく当てはまる。
【0105】
本明細書に引用される全ての参照文献、特許及び刊行物は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0106】
配列は以下のものを示す:
【0107】
配列番号1はhsSBを示す。
MGKSKEISQDLRKRIVDLHKSGSSLGAISKRLAVPRSSVQTIVRKYKHHGTTQPSYRSGRRRVLSPRDERTLVRKVQINPRTTAKDLVKMLEETGTKVSISTVKRVLYRHNLKGHSARKKPLLQNRHKKARLRFATAHGDKDRTFWRNVLWSDETKIELFGHNDHRYVWRKKGEASKPKNTIPTVKHGGGSIMLWGCFAAGGTGALHKIDGSMDAVQYVDILKQHLKTSVRKLKLGRKWVFQHDNDPKHTSKVVAKWLKDNKVKVLEWPSQSPDLNPIENLWAELKKRVRARRPTNLTQLHQLCQEEWAKIHPNYCGKLVEGYPKRLTQVKQFKGNATKY
【0108】
配列番号2(非突然変異SB100X)
MGKSKEISQDLRKRIVDLHKSGSSLGAISKRLAVPRSSVQTIVRKYKHHGTTQPSYRSGRRRVLSPRDERTLVRKVQINPRTTAKDLVKMLEETGTKVSISTVKRVLYRHNLKGHSARKKPLLQNRHKKARLRFATAHGDKDRTFWRNVLWSDETKIELFGHNDHRYVWRKKGEACKPKNTIPTVKHGGGSIMLWGCFAAGGTGALHKIDGIMDAVQYVDILKQHLKTSVRKLKLGRKWVFQHDNDPKHTSKVVAKWLKDNKVKVLEWPSQSPDLNPIENLWAELKKRVRARRPTNLTQLHQLCQEEWAKIHPNYCGKLVEGYPKRLTQVKQFKGNATKY
【0109】
配列番号3(組換え発現用のhsSB)
GPMMGKSKEISQDLRKRIVDLHKSGSSLGAISKRLAVPRSSVQTIVRKYKHHGTTQPSYRSGRRRVLSPRDERTLVRKVQINPRTTAKDLVKMLEETGTKVSISTVKRVLYRHNLKGHSARKKPLLQNRHKKARLRFATAHGDKDRTFWRNVLWSDETKIELFGHNDHRYVWRKKGEASKPKNTIPTVKHGGGSIMLWGCFAAGGTGALHKIDGSMDAVQYVDILKQHLKTSVRKLKLGRKWVFQHDNDPKHTSKVVAKWLKDNKVKVLEWPSQSPDLNPIENLWAELKKRVRARRPTNLTQLHQLCQEEWAKIHPNYCGKLVEGYPKRLTQVKQFKGNATKY
(下線は突然変異された残基又は突然変異予定の残基である。太字及び斜体(配列番号3の最初のGPM)は組換えタンパク質発現のために導入された残基である)。
【0110】
ここで、本発明の或る特定の態様及び実施形態を例として、本明細書に提示される説明、図面及び表を参照して説明する。本発明の方法、使用及び他の態様のかかる例は、単に代表的なものであり、本発明の範囲をかかる代表的な例にのみ限定するとみなすべきではない。
【実施例】
【0111】
実施例は以下を示す。
【0112】
例1(比較):hsSBトランスポザーゼを使用した哺乳動物細胞における効率的な遺伝子導入
本発明者らによって開発された高溶解性のSleeping Beauty(hsSB)トランスポザーゼを、様々な哺乳動物細胞系統において、細胞を遺伝子操作するその能力について試験した。改善されたhsSBトランスポザーゼのアミノ酸配列は、配列番号3に示されている。hsSBに媒介される転移をより良く定量化するのに、本発明者らは、蛍光レポーター系を適用し、HeLa細胞にVenus遺伝子を有するトランスポゾンプラスミドをトランスフェクションし、続いてタンパク質エレクトロポレーションによってhsSBタンパク質送達を行った。トランスポゾンプラスミドを獲得した細胞をトランスフェクションの2日後に蛍光活性化細胞選別によって選択した。次いで、hsSBによるゲノム挿入の結果としてVenusレポーター遺伝子を安定的に発現する緑色蛍光細胞のフローサイトメトリー分析によって、3週間後に転移効率を定量化した(
図2)。蛍光細胞のパーセンテージの明確な用量依存的な増加が検出され、20 μgのhsSBタンパク質(
図2、上のパネル、及び
図3)で最大効率(42%)が達成された。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びマウス胚性幹細胞にも本発明のhsSBトランスポザーゼを効率的にトランスフェクションすることができた(
図2及び
図3)。
【0113】
実施例2:トランスポザーゼは固有の細胞透過特性を有する
哺乳動物細胞を遺伝子操作する方法を更に発展させるために、本発明者らは、トランスポザーゼ送達をより単純かつより優しくするよう探求した。注目すべきことに、本発明者らは、培養培地にただ添加しただけで、トランスポザーゼタンパク質が自律的にHeLa細胞を透過し、核に入ることを観察した(
図4及び
図5)。こうして送達された場合にhsSBが転移を媒介し得るかどうかを試験するために、本発明者らは、HeLa細胞にVenus遺伝子を含むMCをトランスフェクションし、次いで、更なるパルスもなく又はトランスフェクション試薬も使用せずにhsSBを培養培地に添加した(
図4)。縦型ウェスタンブロット分析(Longitudinal Western blot analysis)により、4時間以内にhsSBの取り込みが示され、続いて、送達後24時間で既にクリアランスが示された(
図6)。トランスフェクションの3週間後の蛍光細胞選別により、最大12%のVenus陽性細胞が現れたことから(
図7)、hsSBが効率的な導入遺伝子の組み込みを媒介することが裏付けられた。
【0114】
次に、ヒトiPSCsを遺伝子操作する同様の手順を試験した。iPSCsは再生医療に大きな可能性をもたらすが、これらはトランスフェクション手順に敏感であるため、操作が最も難しい細胞の中の1つである。本発明者らは、最初に幹細胞特異的トランスフェクション試薬を使用してVenus保有MCをiPSCsにトランスフェクションし、次いでこれらをhsSBタンパク質含有培地とともにインキュベートして、細胞内のタンパク質透過を可能にした。hsSBはiPSCsを効率的に透過し(
図8)、処理された細胞の3週間後のフローサイトメトリーにより、最大3.31%の顕著な遺伝子導入効率が明らかになった(トランスフェクションされた全ての細胞に対する3週間での安定的な組み込み体のパーセンテージとして計算される、
図9)。これは、hsSBの非侵襲的な細胞透過がiPSCsの改変に役立つことを示している。
【0115】
実施例3:新規の遺伝子操作方法を使用してCAR-T細胞を作製することができる
最後に、hsSBの固有の細胞透過特性をCAR T細胞の製造に利用することができるかどうかを試験した(
図10)。エレクトロポレーションはT細胞にとってのストレス要因であるため、hsSBの透過は下流の臨床使用へのそれらの適合性を維持するのに役立ち得る。本発明者らは、最初に免疫蛍光イメージングによって初代T細胞におけるhsSB透過を分析したところ、3時間以内に刺激された細胞及び刺激されていない細胞の両方で効率的なタンパク質取り込みが示された(
図11)。hsSBは非分裂細胞においても効率的に核に入ることから、その固有の核局在化シグナルを使用した能動輸送と一致している。転移を探るために、T細胞にCD19 CAR MCをエレクトロポレーションし、hsSBを細胞培養培地に添加した。これにより、5%~7%の全体的な遺伝子導入頻度でヒトCD8+CD19 CAR T細胞の作製に成功した(
図12)。次いで、CAR T細胞をMACS(44)によって90%の純度まで濃縮したところ、CD19+標的細胞の強力な溶解だけでなく、高レベルのエフェクターサイトカイン分泌も示された(
図12及び
図13)。この手順で産生された細胞は、CAR MC-SB MC DNAベースのプロトコル(6個~8個の挿入;
図14)と比較して少ない平均4個の挿入を示した。
【0116】
実施例4:細胞内へのカーゴシャトルとして自己透過性トランスポザーゼタンパク質を使用する
HeLa細胞をNunc(商標)Lab-Tek(商標)II 8ウェルChamber Slides(商標)(Thermo Fisher)上に播種した(10%(容量/容量)のヒト血清及び2 mMのL-グルタミンが補充された500 μLのDMEM中で1ウェル当たり2×104個の細胞)。翌日に、細胞を0.5 μMの濃度のhsSB-GFPとともに1ウェル当たり250 μLの容量の無血清DMEM中で1時間インキュベートした。次いで、培地を除去し、細胞をPBS中のPFA(4%)で固定し、DAPIとともに30分間インキュベートして核を可視化した。EMBL HeidelbergのALMFコア施設においてZeiss LSM 780共焦点顕微鏡(63倍の油浸対物レンズを使用して)で細胞をイメージングした。イメージングのために、核の中央部分に焦点を合わせて、hsSBの核局在化を検出した。
【0117】
図15は、GFP蛍光イメージングによって観察されるように、hsSB-GFP融合タンパク質(GFPのN末端に融合されたhsSB)が1時間以内に細胞の核に入り(A)、少なくとも次の24時間は保持される(B)ことを示している。
図16A及び
図16Bは、HeLa細胞におけるhsSBの触媒的に不活性な突然変異体についての同じ効果を示している。さらに、hsSBをGFPのC末端に融合させると、HeLa細胞内への透過が同様に促進される(
図17)。
【0118】
別の実験で、HeLa細胞においてhsSBの短縮版、つまりそのタンパク質のDNA結合ドメインからなる短縮版(
図18Aの下方)を調べる。結果は、培養培地からの自律的な細胞透過にはhsSBのDNA結合ドメインで十分であることを示している。SB特異的抗体を使用した免疫蛍光イメージングを用いて、hsSB DBDが細胞内で検出される。このタンパク質(ペプチド)は3時間以内に細胞に入り(
図18A)、少なくとも次の24時間は保持される(
図18B)。
【配列表】