(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20250305BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20250305BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
H04R1/00 317
H04R25/00 F
(21)【出願番号】P 2024196916
(22)【出願日】2024-11-11
【審査請求日】2024-11-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520470981
【氏名又は名称】ソリッドソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴弘
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特許第7462894(JP,B1)
【文献】特表2021-527364(JP,A)
【文献】特開2020-161984(JP,A)
【文献】特表2018-530205(JP,A)
【文献】特開2024-147069(JP,A)
【文献】特開2024-014568(JP,A)
【文献】特開2020-174294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/10
H04R 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2以上の振動発生源を有する骨伝導イヤホンであって、
外部音声を集めて、当該外部音声に対応する入力音声信号に変換する集音部と、
ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入可能なサイズを有する耳挿入部と、
前記耳挿入部の内部に設けられ、前記変換された入力音声信号を受信する信号受信部と、
前記耳挿入部の内部に設けられ、所定の周波数帯の入力音声信号に対して、振幅が、所定の第一の周波数でピークを示す振動特性を有する第一の振動発生源と、
前記耳挿入部を前記耳甲介腔に圧接した場合に、前記第一の振動発生源よりも前記耳甲介腔の周辺に存在する軟骨に近接するように、前記耳挿入部の内部に設けられ、前記周波数帯の入力音声信号に対して、振幅が、前記第一の周波数よりも高い所定の第二の周波数でピークを示す振動特性を有し、前記第一の振動発生源と独立して振動可能な第二の振動発生源と、
前記受信された入力音声信号を、前記第一の振動発生源と前記第二の振動発生源とに同時に入力する振動制御部と、
を備え、
前記耳挿入部の一端部を、ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入して、当該耳挿入部を前記ユーザの耳珠と対珠との間で耳甲介腔に圧接し、前記外部音声に基づいて、前記第一の振動発生源と前記第二の振動発生源とを同時に振動させ
て、当該第一の振動発生源の振動と当該第二の振動発生源の振動とのそれぞれを前記ユーザの外耳道と周辺の軟骨に独立に伝達する
骨伝導イヤホン。
【請求項2】
前記第二の振動発生源の最大振幅は、前記第一の振動発生源の最大振幅以上に設計される、
請求項1に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項3】
少なくとも2以上の振動発生源を有する骨伝導イヤホンであって、
外部音声を集めて、当該外部音声に対応する入力音声信号に変換する集音部と、
ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入可能なサイズを有する耳挿入部と、
前記耳挿入部の内部に設けられ、前記変換された入力音声信号を受信する信号受信部と、
前記耳挿入部の内部に設けられ、所定の周波数帯の入力音声信号に対して、振幅が、所定の第一の周波数でピークを示す振動特性を有する第一の振動発生源と、
前記耳挿入部を前記耳甲介腔に圧接した場合に、前記第一の振動発生源よりも前記耳甲介腔の周辺に存在する軟骨に近接するように、前記耳挿入部の内部に設けられ、前記周波数帯の入力音声信号に対して、振幅が、前記第一の周波数よりも高い所定の第二の周波数でピークを示す振動特性を有し、前記第一の振動発生源と独立して振動可能な第二の振動発生源と、
前記受信された入力音声信号を、前記第一の振動発生源と前記第二の振動発生源とに同時に入力する振動制御部と、
を備える骨伝導イヤホンの使用方法であって、
前記耳挿入部の一端部を、ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入して、当該耳挿入部を前記ユーザの耳珠と対珠との間で耳甲介腔に圧接する圧接工程と、
前記外部音声に基づいて、前記第一の振動発生源と前記第二の振動発生源とを同時に振動させ
て、当該第一の振動発生源の振動と当該第二の振動発生源の振動とのそれぞれを前記ユーザの外耳道と周辺の軟骨に独立に伝達する振動工程と、
を有する骨伝導イヤホンの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音質を高めるイヤホン(耳挿入具、圧電振動装置等ともいう)に関する技術が多種存在する。例えば、特開2012-222682号公報(特許文献1)には、骨伝導振動部と、正面側凸部と、背面側凸部と、を備える骨伝導イヤホンが開示されている。骨伝導振動部は、楕円体上に形成され、且つ、音声振動を発生させる。正面側凸部は、骨伝導振動部の長さ方向の一端部側、且つ、厚さ方向の正面側に突設される。背面側凸部は骨伝導振動部の長さ方向の一端部側、且つ、厚さ方向の背面側に突設される。骨伝導振動部の長さ方向の一端部側を、耳甲介腔の窪みに挿入し、骨伝導振動部の幅方向の下部が耳甲介腔の窪みの底部に密着するように回転させて装着すると、骨伝導イヤホンは、耳珠と、耳甲介腔と、対珠と、外耳道の入口周辺に圧接する。ここで、骨伝導振動部は、圧電セラミック振動子で構成される。これにより、音声情報の再現性に優れると共に、耳甲介腔の窪みに挿入し易くかつ装着後の支持安定性に優れるとしている。
【0003】
又、特開2018-191140号公報(特許文献2)には、複数の圧電振動子と、支持部と、振動伝達部とを備える圧電振動装置が開示されている。複数の圧電振動子は、板状の振動体と、振動体の表面に設けられた板状の圧電体とを有する。支持部は、複数の圧電振動子のそれぞれを支持する。振動伝達部は、可撓性を有し、複数の圧電振動子のそれぞれの振動を伝達する。次に、複数の圧電振動子のそれぞれは、振動体および圧電体を厚さ方向に貫通する貫通孔を有しており、かつ、厚さ方向に間隔を隔てて互いに平行に設けられている。支持部は、複数の圧電振動子のそれぞれの貫通孔に挿通される棒状の支柱を有している。振動伝達部は、複数の圧電振動子のうちの互いに隣接する圧電振動子のそれぞれに接触してこれらの間に配置されている。これにより、複数の圧電振動子のそれぞれの振動を同期させることが出来るとしている。
【0004】
又、特開2017-076919号公報(特許文献3)には、同一の電磁型振動子において互いに相対移動する二つの部分を弾性体を介在させて支持するよう構成されたイヤホンが開示されている。このイヤホンは、二つの部分の少なくとも一つから軟骨伝導のための振動を取り出すよう構成している。これにより、骨伝導スピーカの使用方法として耳珠に当接される振動面を耳珠と当接する圧力を手動操作により調節することが出来るとしている。又、外部騒音の大きさに合わせて、軟骨導経由の音声情報と気導経由の音声情報の伝達比率を変更することも出来るとしている。
【0005】
一方、イヤホンの技術分野ではないが、複数の振動子を用いた装置として、特開2020-141354号公報(特許文献4)には、送受波器に用いられる水中超音波用振動子が開示されている。この水中超音波用振動子は、低周波数用圧電振動子と、フロントマス及びリアマスと、音響整合層と、コンポジット振動子と、バッキング材とを含む積層型振動子である。ここで、低周波数用圧電振動子は、低周波数の音響信号の送受波を行うためのものであり、フロントマス及びリアマスは、低周波数用圧電振動子の共振系を形成し、かつ、低周波数用圧電振動子を相互間で挾持するためのものである。音響整合層は、フロントマスの音響放射面側に配設されており、コンポジット振動子は、音響整合層とフロントマスとの間に配設され、かつ、高周波数の音響信号の送受波を行う。バッキング材は、コンポジット振動子とフロントマスとの間に配設されて、コンポジット振動子を固着する。これにより、送波電圧感度について、所望の可動域帯を確保することが出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2012-222682号公報
【文献】特開2018-191140号公報
【文献】特表2017-076919号公報
【文献】特開2020-141354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
骨伝導イヤホンには、音声信号に対応する振幅で振動する振動発生源が使用されている。この振動発生源とは、振動を発生させる要素を意味し、振動板や振動子、振動素子等に対応し、具体的には、圧電セラミック振動子や電磁型振動子、超磁歪振動子等を挙げることが出来る。
【0008】
ここで、振動発生源には、一般的に、所定の周波数で振幅(出力)が大きくなるピークを示す振動特性が存在しており、この振動特性は、振動発生源の材質や構造、種類によって大きく異なっている。例えば、振動特性のピークが、低周波数側に存在する場合、入力される音声信号が低周波数側であると、この振動発生源は、大きな振幅で振動するため、ユーザにとって聞き取り易くなる。一方、入力される音声信号が高周波数側であると、この振動発生源は、小さな振幅で振動するため、ユーザにとって聞き取り難くなる。つまり、骨伝導イヤホンでは、振動発生源の振動特性によって、ユーザが聞き取ることが可能な音声の質(音質)が変動するという課題がある。
【0009】
特に、振動発生源の振動特性は、通常、低周波数側でピークとなることが多いことから、入力される高周波数側の音声信号では、振動発生源の振幅が小さくなり、ユーザが聞き取り難いことが多い。例えば、言語を構成する文字には、一般的に、母音と子音があり、日本語の母音は、「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」の文字であり、日本語の子音は、日本語の母音以外の文字である。又、英語の母音は、「a」、「e」、「i」、「o」、「u」の文字であり、英語の子音は、英語の母音以外の文字である。ここで、一般的に、他の言語において、母音は、低周波数側であり、子音は、高周波数側であることから、通常の骨伝導イヤホンは、高周波数帯域の子音の振動を再現し難く、ユーザは子音を聞き取り難いという課題がある。そのため、どのような周波数帯域の音声でも、振幅が大きく、ユーザが聞き取り易い骨伝導イヤホンが求められていた。
【0010】
特に、ユーザが、聴覚障害者や難聴者の場合、高周波数の音声でも低周波数の音声でも正確に伝えることが重要である。又、高周波数側の子音が明確に聞き取ることが出来るだけでも、聴覚障害者や難聴者が理解出来る音声の幅が広がり、外界の音声の理解度を向上させることが出来る。
【0011】
ここで、特許文献1に記載の技術では、骨伝導振動部が、単一の圧電セラミックスである。又、特許文献2に記載の技術では、複数の圧電振動子を接続(接触)させることで、全体の振動を同期させて、音声となる出力を大きくしている。又、特許文献3に記載の技術では、同一の電磁型振動子を用いることで、振動の取り出しを容易としている。又、特許文献4に記載の技術では、低周波数用圧電振動子とコンポジット振動子とを積層させることで、所望の可動域帯を確保することが出来る。しかしながら、特許文献1-3に記載の技術では、単一の振動子を用いていたり、複数の同一の振動子を用いていたりすることから、全体として、一つの振動特性が現れている可能性が高く、上述した課題を解決することが出来ない。又、特許文献4に記載の技術では、複数の異なる振動子を積層させることで、一体として振動の強度を高めていることから、単一の振動子の振動特性と変わらないため、上述した課題を解決することが出来ない。
【0012】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、どのような周波数帯域の音声でも正確に再現することが可能であり、音質を向上させることが可能な骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る骨伝導イヤホンは、集音部と、耳挿入部と、信号受信部と、第一の振動発生源と、第二の振動発生源と、振動制御部と、を備える。集音部は、外部音声を集めて、当該外部音声に対応する入力音声信号に変換する。耳挿入部は、ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入可能なサイズを有する。信号受信部は、前記耳挿入部の内部に設けられ、前記変換された入力音声信号を受信する。第一の振動発生源は、前記耳挿入部の内部に設けられ、所定の周波数帯の入力音声信号に対して、振幅が、所定の第一の周波数でピークを示す振動特性を有する。第二の振動発生源は、前記耳挿入部の内部に設けられ、前記周波数帯の入力音声信号に対して、振幅が、前記第一の周波数よりも高い所定の第二の周波数でピークを示す振動特性を有し、前記第一の振動発生源と独立して振動可能である。振動制御部は、前記受信された入力音声信号を、前記第一の振動発生源と前記第二の振動発生源とに同時に入力する。本発明に係る骨伝導イヤホンは、前記耳挿入部の一端部を、ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入して、当該耳挿入部を前記ユーザの耳珠と対珠との間で耳甲介腔に圧接し、前記外部音声に基づいて、前記第一の振動発生源と前記第二の振動発生源とを同時に振動させる。
【0014】
又、本発明に係る骨伝導イヤホンの使用方法は、骨伝導イヤホンの使用方法であって、圧接工程と、振動工程と、を有する。圧接工程は、前記耳挿入部の一端部を、ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入して、当該耳挿入部を前記ユーザの耳珠と対珠との間で耳甲介腔に圧接する。振動工程は、前記外部音声に基づいて、前記第一の振動発生源と前記第二の振動発生源とを同時に振動させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、どのような周波数帯域の音声でも正確に再現することが可能であり、音質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホンの一例を示す平面視断面図と正面視断面図とである。
【
図2】入力音声信号に対する従来技術の出力音声振幅と本発明の出力音声振幅の一例を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホンをユーザの耳甲介腔の窪みに挿入する前後の一例を示す正面図である。
【
図4】低周波と高周波の音声を含む入力音声信号に対する従来技術の出力音声振幅の一例を示す概略図である。
【
図5】低周波と高周波の音声を含む入力音声信号に対する本発明の出力音声振幅の一例を示す概略図である。
【
図6】第一の振動発生源と第二の振動発生源とが配置変更された構成の一例を示す平面視断面図と正面視断面図とである。
【
図7】第一の振動発生源と第二の振動発生源との配置を変更した場合の一例を示す正面視断面図(
図7A)と、第一の振動発生源と第二の振動発生源とのサイズを変更した場合の一例を示す正面視断面図(
図7B)とである。
【
図8】第一の振動発生源と第二の振動発生源とのサイズを変更した場合の配置変更された構成の一例を示す平面視断面図と正面視断面図とである。
【
図9】第三の振動発生源を更に備えた場合の一例を示す平面視断面図と正面視断面図と出力音声振幅のグラフと、第三の振動発生源と第四の振動発生源を更に備えた場合の一例を示す平面視断面図と正面視断面図と出力音声振幅のグラフとである。
【
図10】仮想的な骨伝導イヤホンの実施例1と実験状況を示す概要図である。
【
図11】第一の振動発生源の振動特性と、第二の振動発生源の振動特性と、理論的に合成した理論的振動特性と、解析によって得られた実験的振動特性との一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0018】
本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホン1は、
図1に示すように、集音部10と、耳挿入部11と、信号受信部12と、第一の振動発生源13と、第二の振動発生源14と、振動制御部15と、を備える。
【0019】
ここで、集音部10は、外部音声を集めて、当該外部音声に対応する入力音声信号に変換する。集音部10は、例えば、マイクロフォン等を挙げることが出来る。
【0020】
又、耳挿入部11は、ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入可能なサイズを有する。ここで、耳挿入部11は、例えば、
図1に示すように、楕円盤状に構成される。又、楕円盤状とは、楕円形で、一定の厚みを有する形状を意味し、ユーザの耳甲介腔に窪みに入れることが可能である。
【0021】
又、信号受信部12は、耳挿入部11の内部に設けられ、変換された入力音声信号を受信する。ここで、信号受信部12は、例えば、
図1に示すように、集音部10と無線通信で接続されている場合は、信号受信部12は、無線通信を介して、集音部10からの入力音声信号を受信することが出来る。ここで、無線通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)等を挙げることが出来る。又、信号受信部12は、集音部10と有線通信で接続されている場合は、信号受信部12は、電気線を介して、集音部10からの入力音声信号を受信することが出来る。
【0022】
又、第一の振動発生源13は、耳挿入部11の内部に設けられ、所定の周波数帯fの入力音声信号に対して、振幅(出力)Amplitude(mm)が、所定の第一の周波数f1(Hz)でピークを示す振動特性V1を有する。ここで、振動発生源とは、振動を発生させる要素を意味し、振動板や振動子、振動素子等に対応する。又、入力音声信号が、例えば、
図2に示すように、所定の周波数fの領域(例えば、10Hz~6000Hz)において、振幅Amplitude(mm)が一定である場合、第一の振動発生源13は、入力音声信号を受信して、第一の周波数f1(Hz)でピークを示す振幅Amplitude(mm)の振動を出力することになる。
【0023】
尚、
図2では、第一の振動発生源13の振動面は、耳挿入部11の上方に向けて配置される。ここで、振動面とは、振動を出力する面であり、通常、振動発生源では、一方向に向けて振動を発生させる振動面を有する。
【0024】
又、第二の振動発生源14は、耳挿入部11の内部に設けられ、周波数帯の入力音声信号に対して、振幅Amplitude(mm)が、第一の周波数f1(Hz)よりも高い所定の第二の周波数f2(Hz)でピークを示す振動特性V2を有し、第一の振動発生源13と独立して振動可能である。ここで、入力音声信号が、上述の同様に、所定の周波数fの領域(10Hz~6000Hz)において、振幅Amplitude(mm)が一定である場合、第二の振動発生源14は、入力音声信号を受信して、第二の周波数f2(Hz)でピークを示す振幅Amplitude(mm)の振動を出力する。又、
図2では、第二の振動発生源14の振動面は、第一の振動発生源13の振動面と同じ方向を向けて配置される。
【0025】
ここで、第二の振動発生源14が、第一の振動発生源13と独立して振動するとは、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とが、それぞれ接触せずに、別個に振動することを意味する。尚、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とが接近して存在する場合、第一の振動発生源13の振動と、第一の振動発生源14の振動とが、一部干渉して、打ち消し合う可能性があるが、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とが、それぞれ異なる特異な周波数帯域で振動することから、全体として出力される振動は、周波数帯域を広げることになる。
【0026】
そして、
図2に示すように、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とが同時に振動すると、第一の振動発生源13の振動特性V1と第二の振動発生源14の振動特性V2が、相互に重複して、合成波を形成し、全体として、周波数帯が広くなった振動特性V12が形成される。
【0027】
これは、電子回路の分野では、スタガ同調と呼ばれる。スタガ同調とは、周波数帯の異なる複数の同調回路を連結することで、周波数帯を広げて、必要な周波数帯域を得ることを意味する。本発明では、電子回路の分野と異なる音響分野において、このような現象を、骨伝導イヤホンにも適用したのである。
【0028】
これにより、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とが、同時に振動した場合は、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とがそれぞれ単体で振動した場合と比較して、振幅Amplitude(mm)が存在する周波数帯が広がり、どのような周波数帯域の音声でも、振幅Amplitude(mm)を高めて振動させることが出来るのである。
【0029】
又、振動制御部15は、受信された入力音声信号を、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とに同時に入力する。これにより、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と同時に振動させることが可能となる。
【0030】
そして、本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホン1は、
図3に示すように、耳挿入部11の一端部11aを、ユーザの耳甲介腔CC(Concha cavity)の窪みに挿入して、当該耳挿入部11をユーザの耳珠T(Tragus)と対珠A(Antitragus)との間で耳甲介腔CCに圧接し、外部音声に基づいて、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とを同時に振動させる。耳甲介腔CCの窪みの奥には、外耳道EC(Ear Canal)が存在する。外耳道ECから、聴覚を司る感覚器官の蝸牛(Cochlea)に繋がっており、外耳道ECの周辺には、耳珠軟骨や耳介軟骨等の軟骨Ca(Cartilage)が存在し、振動は、外耳道ECから軟骨Caに伝達され、蝸牛へ伝達される。
【0031】
これにより、どのような周波数帯域の音声でも正確に再現することが可能であり、音質を向上させることが可能となる。即ち、
図2で説明したように、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とが同時に振動すると、周波数帯が広くなった振動特性V12が形成される。この振動特性V12が重要である。
【0032】
例えば、
図4に示すように、従来技術では、様々な周波数帯を有する入力音声信号を、第一の振動発生源13だけで振動させるとすると、第一の振動発生源13の振動特性V1における第一の周波数f1(Hz)のピークが、低周波数側に偏っていることから、第一の振動発生源13の出力音声振幅は、低周波数側だけ大きくなる。つまり、出力音声振幅は、入力音声信号と比較して、高周波数側の振幅が急激に低下する。例えば、耳挿入部11の第一の振動発生源13が、耳甲介腔CCに圧接した状態で振動すると、その振動は、外耳道ECや周辺の軟骨Caに伝達するが、高周波数側の振動の振幅が急激に低下し、低周波数側の振動の振幅だけが残る。そのため、これをユーザが聞いた場合は、例えば、低周波数側の音声だけ大きな音となり、具体的には、母音の音声だけ大きな音となる。これでは、ユーザは、母音だけ大きく認識することになり、子音を含む音声は、理解しにくくなる。
【0033】
又、従来技術において、様々な周波数帯を有する入力音声信号を、第二の振動発生源14だけで振動させるとすると、第二の振動発生源14の振動特性V2における第二の周波数f2(Hz)のピークが、高周波数側に偏っていることから、第二の振動発生源14の出力音声振幅は、高周波数側だけ大きくなる。つまり、出力音声振幅は、入力音声信号と比較して、低周波数側の振幅が急激に低下する。例えば、耳挿入部11の第二の振動発生源14が、耳甲介腔CCに圧接した状態で振動すると、その振動は、外耳道ECや周辺の軟骨Caに伝達するが、低周波数側の振動の振幅が急激に低下し、高周波数側の振動の振幅だけが残る。そのため、これをユーザが聞いた場合は、例えば、高周波数側の音声だけ大きな音となり、今度は、子音の音声だけ大きな音となる。これでは、ユーザは、子音だけ大きく認識することになり、母音を含む音声は、理解しにくくなる。
【0034】
そこで、
図5に示すように、本発明において、様々な周波数帯を有する入力音声信号を、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とで同時に振動させると、全体としての振動特性V12は、広い周波数の領域で大きく振幅を有することから、全体の出力音声振幅は、低周波数でも高周波数でも大きくなる。つまり、出力音声振幅は、入力音声信号と比較して、低周波数側でも高周波数側でも振幅が低下することなく、入力音声信号と同等の波形に再現される。例えば、耳挿入部11の第一の振動発生源13と第二の振動発生源14が、耳甲介腔CCに圧接した状態で振動すると、その振動は、外耳道ECや周辺の軟骨Caに伝達するが、第一の振動発生源13は、低周波数側の振動を得意とし、第二の振動発生源14は、高周波数側の振動を得意とすることから、低周波数側の振動も高周波数側の振動も低下することが無い。そのため、これをユーザが聞いた場合は、例えば、低周波数でも高周波数でも大きな音として聞こえるため、母音でも子音でも明確に聞き取ることが出来る。これにより、どのような周波数帯域の音声でも正確に再現することが可能であり、音質を向上させることが可能となるのである。
【0035】
ここで、本発明において、第二の振動発生源14が、第一の振動発生源13と独立して振動する構成であれば、特に限定する必要はなく、多種多様な構成や配置を実現することが出来る。
【0036】
例えば、
図1では、第一の振動発生源13と、第二の振動発生源14とが、振動面と直角方向に並べて配置するように構成しているが、これに限らず、例えば、
図6に示すように、耳挿入部11の内部において、第一の振動発生源13と、第二の振動発生源14とが、相互に接触せずに、それぞれの振動面が水平方向に並べて配置されていても良いし、第一の振動発生源13と、第二の振動発生源14とが、上下の空間で一部重複して配置されても構わない。
【0037】
又、
図6に示すように、耳挿入部11の内部において、第一の振動発生源13と、第二の振動発生源14とが、それぞれの振動面を外部に向けて所定の傾斜角度α(度)で傾斜して配置するように構成されても構わない。尚、第一の振動発生源13の振動面と第二の振動発生源14の振動面との間で形成される傾斜角度αに特に限定は無く、例えば、0度~180度の範囲内で設定される。
【0038】
ここで、傾斜角度αが、180度であれば、第一の振動発生源13の振動面と第二の振動発生源14の振動面とが、水平方向に並んで、同一の方向を向いて配置される。又、傾斜角度αが、90度であれば、第一の振動発生源13の振動面が、第二の振動発生源14の振動面に対して直角方向に並んで配置される。又、傾斜角度αが、0度であれば、第一の振動発生源13の振動面が、第二の振動発生源14の振動面に対して水平方向に並んで、異なる方向を向いて配置される。
【0039】
又、
図6に示すように、耳挿入部11の内部において、第一の振動発生源13と、第二の振動発生源14とが、それぞれの振動面を外部に向けて平行に並べて配置するように構成されても構わない。又、
図6に示すように、耳挿入部11の内部において、第一の振動発生源13と、第二の振動発生源14とが、それぞれの振動面を直角方向に並べて配置するように構成されても構わない。ここで、
図6では、第二の振動発生源14の振動面の中央部の下方付近に、第一の振動発生源13の振動面を第二の振動発生源14の振動面と直角方向に並べて配置しているが、これに限定されない。
【0040】
又、集音部10に特に限定は無いが、例えば、マイクロフォンの他に、音楽プレイヤーやラジオ等の音楽や音声を集音する集音装置であっても構わない。
【0041】
又、耳挿入部11の形状は、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14との構成や配置に応じて適宜設計変更されるが、
図1に示すように、楕円盤状であっても良いし、
図5に示すように、円柱形であったり、半球形であったりしても良い。
【0042】
又、耳挿入部11のサイズに特に限定は無いが、例えば、長さが、1.0cm-3.0cmの範囲内とされ、幅が、0.5cm-2.0cmの範囲内とされ、厚みが、0.5cm-2.0cmの範囲内とされると好ましい。
【0043】
又、信号受信部12の構成に特に限定は無いが、例えば、入力音声信号を受信する電気回路でも良いし、その他に、入力音声信号の大小を調整する調整回路や電源の入り切りを制御するスイッチ回路、入力音声信号に含まれるノイズ信号を遮断するフィルタ回路のいずれか、又はこれらの組み合わせを更に備えても構わない。
【0044】
又、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14との種類に特に限定は無いが、例えば、圧電セラミック振動子や電磁型振動子、超磁歪振動子等を挙げることが出来る。又、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とは、同等の種類であっても異なる種類であっても構わない。
【0045】
又、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14との構成に特に限定は無い。例えば、第一の振動発生源13が第一の振動板であり、第二の振動発生源14が第二の振動板である場合、第一の振動板で振動可能な第一の装置と、第二の振動板で振動可能な第二の装置とを組み合わせることで、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とを構成しても良い。又、第一の振動板と第二の振動板とを一つの装置として内蔵して、第一の振動板と第二の振動板とを独立に振動させるように構成することで、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とを構成しても良い。
【0046】
又、耳挿入部11の内部に配置される第一の振動発生源13と第二の振動発生源14との位置関係に特に限定は無いが、例えば、
図7Aに示すように、第二の振動発生源14は、耳挿入部11を耳甲介腔CCに圧接した場合に、第一の振動発生源13よりも耳甲介腔CCの周辺に存在する軟骨Caに近接するように、耳挿入部11の内部に設けられると好ましい。これにより、高周波数側の振動の減衰を抑えて、音声の再現性を高めることが可能となる。
【0047】
即ち、通常、高周波数側の振動は、低周波数側の振動と比較して、伝達物質の存在が多い程、減衰し易い。そこで、耳挿入部11の内部において、ユーザの耳甲介腔CCへの装着の状態で、高周波数側の振動を担う第二の振動発生源14を、低周波数側の振動を担う第一の振動発生源13よりも軟骨Caに近接するように配置する。これにより、第二の振動発生源14の振動を、第一の振動発生源13の振動よりも先に軟骨Caに伝えることで、第二の振動発生源14の振動の減衰を出来るだけ抑えて、再現性の良い音声をユーザに届けることが出来るのである。又、第二の振動発生源14を軟骨Caに近接させることで、高周波数側の振動を出来るだけ蝸牛へ伝えることが可能となる。
【0048】
又、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14との振動能力に特に限定は無く、振動発生源の種類に応じて適宜選択される。ここで、例えば、
図7Bに示すように、第二の振動発生源14の最大振幅は、第一の振動発生源13の最大振幅以上に設計されると好ましい。ここで、振動発生源の最大振幅とは、振動発生源の振動の振幅のうち、変位量の最大値を意味する。これにより、高周波数側の振動の減衰を抑えて、音声の再現性を高めることが可能となる。
【0049】
即ち、上述のように、高周波数側の振動は、低周波数側の振動と比較して減衰し易いことから、高周波数側の振動を担う第二の振動発生源14の最大振幅を、低周波数側の振動を担う第一の振動発生源13の最大振幅以上とすることで、高周波数側の振動を予め強化させておく。これにより、第二の振動発生源14と第一の振動発生源13との振動を耳甲介腔CCの外耳道ECに伝えた場合、第二の振動発生源14の振動が減衰したとしても、第一の振動発生源13の振動と同じぐらいにして、再現性の良い音声をユーザに届けることが出来るのである。
【0050】
ここで、本発明において、第二の振動発生源14の最大振幅は、第一の振動発生源13の最大振幅以上に設計された場合、第二の振動発生源14と第一の振動発生源13との配置は、特に限定する必要はなく、多種多様な構成や配置を実現することが出来る。
【0051】
例えば、
図8に示すように、耳挿入部11の内部において、第二の振動発生源14が、第一の振動発生源13よりも上方に配置され、第二の振動発生源14の振動面が、第一の振動発生源13の振動面と平行方向に並べて配置されても構わない。
【0052】
ここで、第一の振動発生源13が、第二の振動発生源14に対して上下の空間で重複して配置されても良いし、第一の振動発生源13が、第二の振動発生源14に対して上下の空間で一部だけ重複して配置されても良いし、第二の振動発生源14に対して上下の空間で重複せずに隣接して配置されても良い。
【0053】
又、
図8に示すように、耳挿入部11の内部において、第二の振動発生源14が、第一の振動発生源13よりも上方に配置され、第一の振動発生源13と、第二の振動発生源14とが、それぞれの振動面を直角方向に並べて配置されても良い。
【0054】
又、
図8に示すように、耳挿入部11の内部において、第二の振動発生源14が、第一の振動発生源13に対して上方で所定の傾斜角度αで傾斜して配置され、第一の振動発生源13の振動面と、第二の振動発生源14の振動面との間の傾斜角度αが、鋭角となるように、第一の振動発生源13の振動面と第二の振動発生源14の振動面とを、同等の方向に並べて配置されても良い。
【0055】
又、振動制御部15の構成に特に限定は無いが、例えば、信号受信部12の設けられていない調整回路やスイッチ回路、フィルタ回路等を更に備えても構わない。又、振動制御部15は、第二の振動発生源14の振動と第一の振動発生源13の振動とを調整するために、イコライザを更に備えても良い。例えば、振動制御部15は、イコライザを用いて、高周波数側の第二の振動発生源14への入力音声信号を強め、低周波数側の第一の振動発生源13への入力音声信号を弱めることで、高周波数側の振動と低周波数側の振動とを調整することが出来る。
【0056】
又、本発明では、周波数帯域が異なる第一の振動発生源13と第二の振動発生源14との2つの振動発生源を備えるように構成したが、これに限らず、3つ以上の異なる振動発生源を備えるように構成しても良い。
【0057】
例えば、
図9に示すように、第三の振動発生源16は、耳挿入部11の内部に設けられ、周波数帯の入力音声信号に対して、振幅Amplitude(mm)が、第二の周波数f2(Hz)よりも高い所定の第三の周波数f3(Hz)でピークを示す振動特性V3を有し、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と独立して振動可能である。
【0058】
これにより、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と第三の振動発生源16とが同時に振動すると、第一の振動発生源13の振動特性V1と第二の振動発生源14の振動特性V2と第三の振動発生源16の振動特性V3が、相互に重複して、合成波を形成し、全体として、周波数帯が更に広くなった振動特性V123が形成される。これにより、再現出来る周波数帯域を広げて、音質を向上させることが可能となる。
【0059】
ここで、第三の振動発生源16が、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と独立して振動する構成であれば、特に限定する必要はなく、多種多様な構成や配置を実現することが出来る。例えば、第三の振動発生源16は、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14との位置関係について、上述のように、多種多様に配置することが可能である。例えば、第三の振動発生源16の振動面が、第一の振動発生源13の振動面に対して所定の傾斜角度α(度)で傾斜して配置されるように構成しても良く、この傾斜角度αは、上述のように、0度~180度の範囲内に設定される。同様に、第三の振動発生源16の振動面が、第二の振動発生源14の振動面に対して所定の傾斜角度α(度)で傾斜して配置されるように構成しても良い。
【0060】
又、
図9に示すように、更に、第四の振動発生源17を用意し、第四の振動発生源17は、耳挿入部11の内部に設けられ、周波数帯の入力音声信号に対して、振幅Amplitude(mm)が、第三の周波数f3(Hz)よりも高い所定の第四の周波数f4(Hz)でピークを示す振動特性V4を有し、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と第三の振動発生源16と独立して振動可能である。
【0061】
これにより、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と第三の振動発生源16と第四の振動発生源17とが同時に振動すると、第一の振動発生源13の振動特性V1と第二の振動発生源14の振動特性V2と第三の振動発生源16の振動特性V3と第四の振動発生源17の振動特性V4が、相互に重複して、合成波を形成し、全体として、周波数帯が更に広くなった振動特性V1234が形成される。これにより、更に、再現出来る周波数帯域を広げて、音質を向上させることが可能となる。
【0062】
ここで、第四の振動発生源17が、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と第三の振動発生源16と独立して振動する構成であれば、特に限定する必要はなく、多種多様な構成や配置を実現することが出来る。例えば、第四の振動発生源17は、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と第三の振動発生源16との位置関係について、上述のように、多種多様に配置することが可能である。例えば、第四の振動発生源17の振動面が、第一の振動発生源13の振動面に対して所定の傾斜角度α(度)で傾斜して配置されるように構成しても良く、この傾斜角度αは、上述のように、0度~180度の範囲内に設定される。同様に、第四の振動発生源17の振動面が、第二の振動発生源14の振動面に対して所定の傾斜角度α(度)で傾斜して配置されるように構成しても良い。又、第四の振動発生源17の振動面が、第三の振動発生源16の振動面に対して所定の傾斜角度α(度)で傾斜して配置されるように構成しても良い。
【0063】
尚、上述では、第三の振動発生源16と第四の振動発生源17を追加した場合を説明したが、これに限らず、更に、振動発生源の数を追加する場合であっても、同様である。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明における実施例、比較例等を具体的に説明するが、本発明の適用が本実施例などに限定されるものではない。
【0065】
音響分野において、二つの異なる周波数帯域の振動発生源を同時に振動させることで、スタガ同調が生じ、周波数帯域を広げることを確認した。先ず、
図10に示すように、二つの振動発生源13、14を用意し、二つの振動発生源13、14のそれぞれに振動制御部15を接続し、二つの振動発生源13、14のそれぞれの周波数帯域を設定した。即ち、第一の振動発生源13では、第一のピークf1が低周波数側になるように、第一の振動発生源13に接続する振動制御部15を調整し、第二の振動発生源14では、第二のピークf2が高周波数側になるように、第二の振動発生源14に接続する振動制御部15を調整した。次に、二つの振動発生源13、14のそれぞれの振動制御部15にオシロスコープ100を接続し、二つの振動発生源13、14のそれぞれの振幅を、オシロスコープ100で確認しながら調節した。又、オシロスコープ100を目視で確認しながら、二つの振動発生源13、14の同期をとった。つまり、仮想的に、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14と振動制御部15とを備える骨伝導イヤホン1を実施例1として作成した。
【0066】
次に、二つの振動発生源13、14に対して所定の距離を空けて、音声を録音可能な測定装置101を設置し、二つの振動発生源13、14の振幅を調整し、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14とを同時に振動・発振させて、測定装置101で音声を測定した。そして、測定装置101が受信した音声を解析して、第一の振動発生源13と第二の振動発生源14との同時の振動に対する出力音声振幅を算出した。
【0067】
図11は、第一の振動発生源13の振動特性V1と、第二の振動発生源14の振動特性V2と、理論的に合成した理論的振動特性V12tと、解析によって得られた実験的振動特性V12eとの一例を示すグラフである。尚、第一の振動発生源13の振動特性V1と、第二の振動発生源14の振動特性V2と、理論的振動特性V12tと、実験的振動特性V12eとは、周波数に対する利得のグラフで示しているが、利得は、実質的に振動を意味し、理論的振動特性V12tと実験的振動特性V12eとは、利得の単位が異なるため、第一の振動発生源13の振動特性V1と、第二の振動発生源14の振動特性V2と、理論的振動特性V12tとの利得は、グラフの左側の軸で示し、実験的振動特性V12eの利得は、グラフの右側の軸で示した。実験的振動特性V12eの利得は、各周波数毎にプロットし、近似曲線を描いた。
図11に示すように、実験的振動特性V12eの曲線は、理論的振動特性V12tの曲線とほぼ一致していた。これにより、スタガ同調の発生や周波数帯域の拡大を確認することが出来た。
【0068】
実施例1は、空気振動においての作用効果であるが、これに限らず、耳甲介腔CCや外耳道ECでの振動でも、同様の作用効果があると推察される。このように、周波数帯域が異なる二つの振動発生源を同時に振動させることで、どのような周波数帯域の音声でも正確に再現することが可能であり、音質を向上させることが可能となるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明に係る骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法は、一般的な骨伝導イヤホンに限らず、聴覚障害者や難聴者向けの骨伝導イヤホンの分野において有用であり、どのような周波数帯域の音声でも正確に聞き取ることが可能であり、音質を向上させることが可能な骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法として有効である。
【符号の説明】
【0070】
1 骨伝導イヤホン
10 集音部
11 耳挿入部
12 信号受信部
13 第一の振動発生源
14 第二の振動発生源
15 振動制御部
【要約】 (修正有)
【課題】音質を向上させることが可能な骨伝導イヤホンを提供する。
【解決手段】骨伝導イヤホン1において、集音部10は、外部音声を集めて、当該外部音声に対応する入力音声信号に変換する。耳挿入部11は、ユーザの耳甲介腔の窪みに挿入可能なサイズを有する。信号受信部12は、耳挿入部の内部に設けられ、変換された入力音声信号を受信する。第一の振動発生源13は、耳挿入部の内部に設けられ、所定の周波数帯の入力音声信号に対して、振幅が、所定の第一の周波数でピークを示す振動特性を有する。第二の振動発生源14は、耳挿入部の内部に設けられ、周波数帯の入力音声信号に対して、振幅が、第一の周波数よりも高い所定の第二の周波数でピークを示す振動特性を有し、第一の振動発生源と独立して振動可能である。振動制御部15は、受信した入力音声信号を、第一の振動発生源と第二の振動発生源とに同時に入力する。
【選択図】
図1