(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】疾患におけるECMのナノボディに基づく画像化および標的化ならびに開発
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20250305BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250305BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250305BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20250305BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20250305BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250305BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20250305BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250305BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250305BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20250305BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20250305BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12N5/10
C07K14/705
C07K19/00
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K39/00 H
A61K35/17
A61P37/02
A61P35/00
C12N15/62 Z
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2020540721
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 US2019015290
(87)【国際公開番号】W WO2019148037
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-25
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】500482810
【氏名又は名称】ホワイトヘッド・インスティテュート・フォー・バイオメディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイネス,リチャード,オー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャイルカーニ,ノーア
(72)【発明者】
【氏名】プロ―,ヒド エル.
(72)【発明者】
【氏名】シィエ,ユシュ ジョイ
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/194782(WO,A1)
【文献】PETERSON, Alexis W.,Generating single-domain antibodies against fibronectin splice variants,DSpace@MIT [online],2017年,[retrieved on 2022-12-06], Retrieved from the Internet: <URL: http://hdl.handle.net/1721.1/108893>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに特異的であり、および、これに直接結合するナノボディを含む組成物であって、
病的な状態のECMエピトープは、(i)フィブロネクチンのEIIIBドメインのエピトープ、あるいは、(ii)テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープであり、ナノボディは、nM~pM以下の範囲の結合親和性で、病的な状態のECMエピトープに特異的に結合し、および、ナノボディは、活性剤に接合されており、任意に、活性剤が、(i)ナノボディのN末端または(ii)ナノボディのC末端に連結されており、
ナノボディが、CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、CDR1、CDR2、およびCDR3が、夫々、
a)配列番号19、配列番号36、および配列番号53;
b)配列番号25、配列番号42、および配列番号59;
c)配列番号26、配列番号43、および配列番号60;または
d)配列番号28、配列番号45、および配列番号62を含む、前記組成物。
【請求項2】
活性剤が、
(i)画像化プローブであり、任意に、画像化プローブが、フルオロフォア、免疫組織化学的トレーサー、PETトレーサー、NIRプローブ、SPECT、磁気粒子画像化、および放射性同位体から選択される、あるいは、
(ii)標的化治療のために、薬物、毒素、siRNA、shRNA、サイトカイン、ECMリモデリング酵素、CAR-T細胞および放射性同位体から選択される、または、選択的送達のためにナノボディと接合されたナノ粒子に組み込まれ得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
結合親和性が、バイオレイヤー干渉法(BLI)によって測定される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ナノボディが、配列番号1~4のいずれか1つで表される配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
配列番号1~4のいずれか1つで表される配列を含むペプチド、または、その抗原結合フラグメント、および、薬学的に許容し得る担体を含む組成物であって、任意に、ペプチドが、活性剤に接合されており、さらに任意に、ペプチドが、ナノ抗
体または抗体フラグメントであり、抗原が、(i)フィブロネクチンのEIIIBドメインのエピトープ、または、(ii)テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープである、前記組成物。
【請求項6】
腫瘍または他の病的な状態を有する対象に、活性剤を腫瘍に送達するのに有効な量で、組成物を投与することを含む方法において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物であって、任意に、方法が、(i)フィブロネクチンのEIIIBドメインのエピトープ、または、(ii)テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープの存在または非存在を決定すること、ならびに、対象が、疾患を有するかどうかを決定することを含み、さらに任意に、病的な状態は、がん、アテローム硬化症、心筋梗塞、線維症、慢性炎症、または創傷である、前記組成物。
【請求項7】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)を作製するための方法であって、
病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに特異的であり、および、これに直接結合するナノボディから構成される外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および内部ドメインを有する、キメラ抗原受容体(CAR)構築物を作製すること、ここで、病的な状態のECMエピトープは、(i)フィブロネクチンのEIIIBドメインのエピトープ、または、(ii)テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープであり、ナノボディは、nM~pM以下の範囲の結合親和性で、病的な状態のECMエピトープに特異的に結合する、
対象の血液から取り出されたT細胞をトランスフェクトすること、ならびに、
CAR構築物を発現させて、CAR T細胞を産生するために、T細胞中に機能的CARを産生すること、
を含み、
ナノボディが、CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、CDR1、CDR2、およびCDR3が、夫々、
a)配列番号19、配列番号36、および配列番号53;
b)配列番号25、配列番号42、および配列番号59;
c)配列番号26、配列番号43、および配列番号60;または
d)配列番号28、配列番号45、および配列番号62を含む、前記方法。
【請求項8】
(i)フィブロネクチンのEIIIBドメインのエピトープ、または、(ii)テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープに特異的である、および、これに直接結合する、配列番号1~4のいずれか1つで表される配列を含むペプチドまたはそのフラグメントから構成される外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および、内部ドメインを有する、CARをコードする核酸を含むキメラ抗原受容体(CAR)構築物であって、任意に、ペプチドが、ナノ抗
体または抗体フラグメントである、キメラ抗原受容体構築物。
【請求項9】
固形腫瘍を有する対象を処置するための、または、対象における固形腫瘍に免疫細胞を動員するための方法における使用のためのキメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)またはキメラ抗原受容体NK細胞(CAR NK細胞)であって、
方法は、CAR T細胞またはCAR NK細胞を、固形腫瘍を有する対象を処置するのに、または、固形腫瘍に免疫細胞を動員するのに有効な量で、対象に投与することを含み、
CAR T細胞またはCAR NK細胞は、(i)フィブロネクチンのEIIIBドメインのエピトープ、または、(ii)テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープに特異的であり、および、これに直接結合する、配列番号1~4のいずれか1つで表される配列を含むナノボディペプチドまたはその抗原結合フラグメントから構成される外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および内部ドメインを有するCAR構築物を有するT細胞またはNK細胞を含む、前記CAR T細胞またはCAR NK細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法§119の下で、2018年1月25日に出願の米国仮出願第62/621,811号の出願日の利益を主張し、その全体の内容は、本明細書に参照によって組み込まれる。
発明の分野
【0002】
本発明は、いくつかの側面において、病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質に特異的なナノボディの生成および同定、および診断、予後、および治療の目的のためのかかるナノボディの使用、ならびに関連する試薬、製品、およびキットに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
他のプロセスの中で、細胞外マトリックス(ECM)およびECMタンパク質は、増殖、創傷治癒、細胞移動、および分化において重要な生理的役割を果たす。さらにその上、病的な状態で、ECMの組成は変化し、そして、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質におけるこれらの変化が、がんの進行および転移において、心血管疾患において、そして、線維症において有意な役割を果たすことができることを、従来の所見は指し示す。プロテオミクスの分野は、複雑な生理的システムにおけるタンパク質およびこれらのシステムにおけるそれらの役割の検討に、関わる。大きいデータセットは、ゲノムおよびプロテオミクス法を使用して発生されたが、しかし、疾患の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の役割を同定するその情報の使用は、限定された。これは、ECMが不溶性でありおよび架橋されており、そして、その組成が、ECMタンパク質に特異的に標的とされるプロテオミクスの最近の適用まで、決定するのが困難だったという理由である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、病状の画像化および標的化における使用のためのECMタンパク質へのナノ抗体(すなわち、アルパカからの単一ドメイン抗体)の開発、単離、および使用のための方法を網羅する。目的のECMエピトープは、がん、転移、および他の病状において、特異的に発現される。これらのナノボディは、様々な目的のために、たとえば、腫瘍、転移または他の疾患遺伝子座のECMを標的とするために、そして、以下:〔1〕画像化剤;〔2〕多様なタイプの治療剤;〔3〕免疫調節剤(改変されたT細胞を含む)を送達するためのナノボディの特異性を用いて、使用されてもよいし;または、〔4〕病状に影響を及ぼすためのナノボディそれ自体の機能特性を使用してもよい。
【0005】
本発明は、腫瘍および転移の従来のプロテオミクス分析によって定義された、腫瘍に豊富なECMタンパク質および/またはドメイン(まとめると、ECMエピトープ)によりラクダ科の動物を免疫化することによってナノボディを産生するための方法に、関わる。これらの方法を用いて発生するライブラリは、転移および他の病的な状態を標的とする追加の腫瘍選択的抗ECMナノボディの発生のための他の腫瘍に増強されたECMエピトープに、抗ECM抗体の再生可能な供給源を、提供する。
【0006】
本開示の側面は、直接病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに特異的であり、および直接結合するナノボディを備える組成物に関し、ここで、病的な状態のECMエピトープは、正常組織中よりも病的な組織中により大量に存在し、そしてここで、該ナノボディは、1以上の活性剤に接合される。
【0007】
いくつかの態様において、活性剤は、ナノボディのN末端に連結する。他の実施形態において、活性剤は、ナノボディのC末端に連結する。一態様において、活性剤は、画像化プローブである。いくつかの態様において、画像化プローブは、フルオロフォア、PETトレーサー、SPECT、NIR、磁性粒子画像化、または放射性同位体から選択される。他の態様において、活性剤は、標的治療のための薬物、毒素、サイトカイン、免疫モジュレーター、ECMリモデリング酵素、siRNA、shRNA、ナノ粒子、CAR-T細胞、または放射性同位体から選択される。
【0008】
いくつかの態様において、一旦対象に投与されたナノボディは、疾患部位でのレベルが、体内の他の部分のそれよりかなり高いように、ナノボディ、および腫瘍または他の疾患遺伝子座領域中に付着したいずれかの活性剤を濃縮するのに十分な結合親和性を有する、病的な状態のECMタンパク質エピトープに、特異的に結合する。ナノボディの親和性は、nM~pM以下の範囲(すなわち、例においてテストされた抗体の中で、NJB2は、BLIにより~4nMの親和性を有し、そして、NJT3、NJT4、およびNJT6は、BLIに基づくpM以下の親和性を有する)にあり、それは、この目的を達成するのに明白に十分であり、治療用の普通抗体(例として、リツキサン、ハーセプチン)の親和性と類似している。ナノボディの親和性は、実験的に決定されることができる。
【0009】
いくつかの態様において、病的な状態のECMエピトープは、フィブロネクチンのEIIIAまたはEIIIBドメインにおけるエピトープである。他の態様において、病的な状態のECMエピトープは、テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープである。一態様において、ナノボディは、配列番号1~4に規定される配列、またはそれらの親和性または効力を改善するため、かかる配列へとほどこされた改変を備える。
【0010】
本開示の他の側面は、配列番号1~4に規定される配列の1つを備えるナノボディを備える組成物、または薬学的に許容し得る担体中に製剤化される、配列中に軽微な違いを有する誘導体に関する。いくつかの態様において、ナノボディは、活性剤に接合される。他の態様において、ナノボディは、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、または抗体フラグメントまたは追加のエピトープの標的化を許すキメラ抗原受容体などの別のタンパク質中に、組み込まれるかまたはそれによって接合される。
本開示の別の側面は、活性剤を腫瘍/疾患部位に送達するために有効な量で、本明細書中に記載される組成物を、腫瘍または他の病状を有する対象に投与することを備える方法を含む。
【0011】
いくつかの態様において、該方法は、対象における病的な状態に特徴的な1以上のECMタンパク質またはエピトープの存在または非存在を決定し、および、該対象が、身体において疾患を有するかどうか、またはどこに有するかを決定することに関わる。かかる態様において、1以上のECMタンパク質またはエピトープの存在または非存在は、免疫-PET/CTなどの、非侵襲的in vivo画像化モダリティーなどの、免疫組織化学または免疫蛍光法または他の画像化モダリティーによって、決定される。
【0012】
別の態様において、該方法は、経時的に、病的な状態に特徴的な1以上のECMタンパク質またはエピトープの存在、量、または非存在を評価することによって、進行ステージまでの疾患の進行を追う、方法である。一態様において、該方法は、第1および第2の時点に、対象から単離された組織試料における病的な状態と関連した1以上のECMタンパク質またはエピトープの存在、量、または非存在を測定し、第1および第2の時点に、病的な状態と関連する1以上のECMエピトープの存在、量、または非存在における変化に基づいた、より高度なステージへの疾患の進行を、決定するための方法である。いくつかの態様において、病的な状態は、がん、アテローム硬化症、心筋梗塞、線維症、慢性炎症、または創傷である。一態様において、がんは、転移性がんである。
【0013】
いくつかの態様において、病的な状態と関連するECMエピトープが、第2の時点から、単離された組織試料においてより高いレベルで存在する場合に、該疾患はより高度なステージに進行した。別の態様において、病的な状態と関連するECMエピトープが、第2の時点から、単離された組織試料においてより低いレベルで存在する場合に、該疾患はより低度なステージに、退行した。いくつかの態様において、病的な状態と関連するECMエピトープが、第2の時点から、単離された組織試料においてより高いレベルで存在する場合に、該がんは、転移性がんへと進行するか、または成長した。
他の態様において、病的な状態と関連するECMエピトープが、第2の時点から、単離された組織試料において低いレベルで存在する場合に、がんは、より低度の悪性状態に退行した。
【0014】
いくつかの態様において、ECMエピトープは、ECMエピトープに特異的に結合する1以上のナノボディを使用して、検出される。一態様において、ECMタンパク質またはエピトープは、定量的ELISAまたはウエスタンブロットを使用して、分析される。いくつかの態様において、ECMエピトープは、質量分析法および/またはクロマトグラフィー法を使用して、検出される。
【0015】
本開示の別の側面は、ECMタンパク質およびそれらのエピトープに関して特異的なナノボディの多様なライブラリを発生させる方法を含み、ここで、ECM調製物は、転移関連タンパク質中に豊富な、1以上のヒトがん転移からのECMである。かかるライブラリは、複合のECMが豊富な調製物によって免疫化されたラクダ科の動物から収集された血液からリンパ球を単離し、リンパ球RNAを抽出し、そしてリンパ球RNAからM13ファージディスプレイに基づくナノボディライブラリを構築することによって、引き出され、ここで、該ライブラリは、必要に応じて、多数の特異的な抗ECMナノボディを単離することができる、多様なおよび再生可能なECM特異的ナノボディのライブラリである。
【0016】
いくつかの態様において、ラクダ科の動物は、アルパカである。別の態様において、ナノボディは、ライブラリから単離され、そしてECMエピトープに結合することをさらに最適化するために、in vitroの親和性成熟のための足場として使用される。
【0017】
本開示のさらなる側面は、複数個のベクターを備え、それぞれのベクターが該ベクターの中で別個のDNA配列を有する、核酸ベクターのライブラリを提供し、ここで、それぞれのDNA配列は、該ベクターの中で1以上の他のDNA配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、ここで、該ライブラリは、105~106cfu/mlの多様性を有し、そしてここで、それぞれのDNA配列は、病状と関連するECMタンパク質エピトープに結合する能力を有するナノボディを、コードする。
いくつかの態様において、ECMエピトープは、病的な状態のECMエピトープである。
【0018】
別の態様において、病的な状態のECMエピトープは、フィブロネクチンのEIIIAまたはEIIIBドメインである。他の態様において、病的な状態のECMエピトープは、テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープである。一態様において、ナノボディは、配列番号1-4の配列と、少なくとも70%の配列同一性を有する配列を、備える。
【0019】
いくつかの側面において、本開示は、病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに特異的であり、および直接結合するナノボディを備える外部ドメイン、膜貫通ドメインおよび内部ドメインを有するキメラ抗原受容体(CAR)構造物を発生させることに関わる、キメラ抗原受容体T-細胞(CART細胞)を発生させるための方法であり、ここで、該病的な状態のECM(ECM)エピトープは、正常な組織より病的な組織においてより大量に存在し、そして、対象の血液から取り出されたT細胞をトランスフェクトして、CAR構築物を発現し、T細胞中で機能的なCARを産生し、CART細胞を産生する。
【0020】
他の側面において、本開示は、病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに関して特異的であり、直接結合するナノボディを備える外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および内部ドメインを有するキメラ抗原受容体T細胞(CART細胞)を提供し、ここで、病的な状態のECMエピトープは、正常組織より大量に病的な組織に存在する。
【0021】
別の側面において、本開示は、病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに関して特異的であり、直接結合するナノボディを備える外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および内部ドメインを有するCARをコードする核酸を含む、キメラ抗原受容体(CAR)構築物を提供し、ここで、病的な状態のECMエピトープは、正常組織より大量に病的な組織に存在する。
【0022】
いくつかの態様において、ナノボディは、Bilayer Interferometry(BLI)または他の方法で測定される場合、nM~pM以下の範囲の結合親和性を伴う、病的な状態のECMエピトープを、特異的に結合する。
【0023】
いくつかの態様において、病的な状態のECMエピトープは、フィブロネクチンのEIIIAまたはEIIIBドメインにおけるエピトープである。他の態様において、病的な状態のECMタンパク質は、テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープである。
【0024】
他の態様において、ナノボディは、配列番号1~4に規定される配列、またはそれらの親和性または効力を改善するため、かかる配列へとほどこされた改変を備える。他の側面において、本開示は、病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに関して特異的であり、および直接結合する配列番号1~4に規定される配列またはそれらのフラグメントを備えるペプチドから構成される外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および内部ドメインを有するCARをコードする核酸を含むキメラ抗原受容体(CAR)構築物を、提供し、ここで、病的な状態のECMエピトープが、正常組織より大量に病的な組織に存在する。
いくつかの態様において、ペプチドは、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、または抗体フラグメントである。別の態様において、フラグメントは、CDRである。
【0025】
いくつかの態様において、ペプチドは、Bilayer Interferometry(BLI)または他の方法で測定される場合、nM~pM以下の範囲の結合親和性を伴う、病的な状態のECMエピトープを、特異的に結合する。いくつかの態様において、病的な状態のECMエピトープは、フィブロネクチンのEIIIAまたはEIIIBドメインにおけるエピトープである。他の態様において、病的な状態のECMタンパク質は、テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープである。別の態様において、ペプチドは、不定にスプライシングされたECMタンパク質内で、病的な状態のエキソンによって発現されるエピトープを、標的とする。
【0026】
本開示のさらなる側面は、固形腫瘍を有する対象を処置するための有効量において、キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)を、固形腫瘍を有する対象に投与することを含む、固形腫瘍を有する対象を処置するための方法を提供し、ここで、該CAR T細胞が、病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに関して特異的であり、および直接結合する配列番号1~4に規定される配列またはそれらのフラグメントを備えるナノボディペプチドから構成される外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および内部ドメインを有する、キメラ抗原受容体(CAR)構築物を有するT細胞を備え、ここで、該病的な状態のECMエピトープが、正常組織よりより大量に病的な組織中に存在する。
【0027】
いくつかの態様において、ペプチドは、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、または抗体フラグメントである。いくつかの態様において、ペプチドは、ナノボディである。別の態様において、フラグメントは、CDRである。
【0028】
いくつかの態様において、ペプチドは、Bilayer Interferometry(BLI)または他の方法で測定される場合、nM~pM以下の範囲の結合親和性を伴う、病的な状態のECMエピトープを、特異的に結合する。いくつかの態様において、病的な状態のECMエピトープは、フィブロネクチンのEIIIAまたはEIIIBドメインにおけるエピトープである。他の態様において、病的な状態のECMタンパク質は、テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープである。別の態様において、ペプチドは、不定にスプライシングされたECMタンパク質内で、病的な状態のエキソンによって発現されるエピトープを、標的とする。
いくつかの態様において、CARは、T細胞において発現される。別の態様において、CARは、NK細胞において発現される。
【0029】
開示のさらなる側面は、固形腫瘍に免疫細胞を補充するための有効量において、固形腫瘍に有する対象にキメラ抗原受容体T細胞(CART細胞)またはキメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)を投与することに関わる、対象における固形腫瘍に免疫細胞を補充するための方法を提供し、ここで、CARTまたはCAR-NK細胞が、病的な状態の細胞外マトリックス(ECM)エピトープに関して特異的であり、および直接結合する配列番号1~4に規定される配列またはそれらのフラグメントを備えるナノボディペプチドを備える外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および内部ドメインを有する、キメラ抗原受容体(CAR)構築物を有するT細胞またはNK細胞を備え、ここで、該病的な状態のECMエピトープが、正常組織よりより大量に病的な組織中に存在する。
いくつかの態様において、ペプチドは、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、または抗体フラグメントである。
いくつかの態様において、ペプチドは、ナノボディである。別の態様において、フラグメントは、CDRである。
【0030】
いくつかの態様において、ペプチドは、Bilayer Interferometry(BLI)または他の方法で測定される場合、nM~pM以下の範囲の結合親和性を伴う、病的な状態のECMエピトープを、特異的に結合する。いくつかの態様において、病的な状態のECMエピトープは、フィブロネクチンのEIIIAまたはEIIIBドメインにおけるエピトープである。他の態様において、病的な状態のECMタンパク質は、テネイシンCまたはテネイシンCのエピトープである。別の態様において、ペプチドは、不定にスプライシングされたECMタンパク質内で、病的な状態のエキソンによって発現されるエピトープを、標的とする。
本発明は、以下の記載に規定されるかまたは図面に図示される構築物の詳細および構成要素の配置に、その適用において限定されない。本発明は、他の実施形態で、および種々の方法で実施されるかまたは実行されることができる。また、本明細書に使用される語法および専門用語は、記載の目的のためにあって、限定するとみなされるべきではない。本明細書における「含む」、「備える」、または「有する」、「含有する」、「関わる」及びそれらの変形の使用は、以降にリストされる項目及びその均等物並びに追加の項目を包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】
図1A~1Bは、2ラウンドのバイオ-パニングからそれぞれ単離された、αEIIIB VHH配列(
図1A)およびαTNC VHH配列(
図1B)のClustalWに基づくアライメントを示す。相補性決定領域、CDR3、またはナノボディ中の他の場所の違いは、種々のナノボディの中で区別する。CDRは、相補性決定領域である。上から下へ、左から右へ、
図1Aにおいて、配列は、配列番号5、1、6、7、8、および9に対応する。上段から下段へ、左から右へ、
図1Bにおいて、配列は、配列番号10、12、11、16、3、13、14、17、15、2、4に対応する。
【
図1B】
図1A~1Bは、2ラウンドのバイオ-パニングからそれぞれ単離された、αEIIIB VHH配列(
図1A)およびαTNC VHH配列(
図1B)のClustalWに基づくアライメントを示す。
【
図2】
図2は、ナノボディNJB2が、フィブロネクチン(FN)のEIIIBドメインのエピトープに特異的に結合することを、示す。NJB2は、部位特異的にソータギングを介してビオチンで標識されて、ストレプトアビジン-Alexa488によって検出された。右のパネルは、VHH NJB2が、コントロール/野生型マウスに由来する大動脈内皮細胞のECM中のFNのEIIIBドメインのエピトープを、特異的に認識することを、示す。しかしながら、左のパネルに示されるように、NJB2は、FNのEIIIAおよびEIIIBドメインを欠いているマウス(ABヌルマウス)に由来する内皮細胞のECMのFNを、認識しなかった。αEIIIBの対照は、FNのEIIIBドメインのエピトープに特異的なマウスモノクローナルIgGで染色される細胞だった。陰性対照Cは、染色されない細胞だった。
【
図3】
図3は、VHH NJB2が、腫瘍のECMを特異的に認識することを、示す。NJB2は、部位特異的にソータギングを介してTexas Redで標識され、マウスに導入されて、腫瘍のECMを標識した。画像は、解剖された腫瘍のex vivoでの2-光子顕微鏡を用いて取得され、種々のチャネルのオーバレイを示す。細胞(オリジナルの緑)は、丸い白体として現れ;該ECM(Texas Red染色された)は、フィブリルとして現れる。左のパネルは、画像化より120分先立ち、NJB2-Texas redの20μgを続いて注入されたNOD-SCID Gamma(NSG)マウスにおいて増殖された、オルト局所的に移植されたLM2-Zs-Green-Luciferase腫瘍の画像を示す。右のパネルは、画像化より120分先立ち、NJB2-Texas redの20μgを注入されたNSGマウスにおいて視覚化された、LM2-Zs-Green-ルシフェラーゼ腫瘍の肺転移の画像を、示す。いずれの場合においても、ナノボディによって結合されたECM繊維(矢印)は、腫瘍細胞を取り巻いて明確に見られることができる。
【
図4A】
図4A~4Cは、
64Cu-NJB2が、LM2 TNBCヒト細胞株に由来する同所性の原発腫瘍および肺転移を検出することを示す。VHH-NJB2は、ソータギングを使用して、部位特異的に
64Cuで標識された。マウスは、
64Cu-NJB2の注入2h後に画像化された。
図4Aは、対照のNSGマウス(腫瘍でない)のPET-CT画像を示す;PETシグナルは、循環するナノボディのクリアランスにより、腎臓および膀胱において、検出された。
【
図4B】
図4Bは、同所性に(乳房脂肪体)LM2-TNBC細胞を注入された、NSGマウスを示す。標識は、腎臓、膀胱、および左下乳房脂肪体中の原発腫瘍において検出された。
【
図4C】
図4Cは、LM2-TNBC細胞を尾静脈(肺転移モデル)を介して注入された、NSGマウスを示す。PETシグナルは、腎臓、膀胱、および肺中の転移において検出された。これらおよびすべてのこれに続くPET/CT画像において、PETシグナル(
64Cu共役ナノボディ)は、CT画像と同じ色のようにみえる;本来のカラーフォトで、そして、さらにいっそうそのように、3次元再構築の動画で、別個の画像は、明確に識別可能で、PET画像化から、極めて低いバックグラウンドシグナルを示す(腎臓および膀胱シグナルから離れて)。
【
図5A】
図5A~5Bは、
64Cu-NJB2が、原発腫瘍、および肝臓、およびLM2 TNBCヒト乳癌細胞によって乳腺中に同所性に播種されたマウスのリンパ節への転移を検出することを示す。VHH-NJB2は、ソータギングを使用して、部位特異的に
64Cuで標識された。
64Cu-NJB2免疫PET/CT画像は、同じマウスの
18F-FDG画像と比較された。LM2-ZsGreen-ルシフェラーゼTNBC細胞に由来する同所性の(乳房脂肪体)腫瘍をもつNSGマウスは、
18F-FDG(
図5A)を、または、
64Cu-NJB2(
図5B)を注入されて、注入2h後に、PET/CTによって画像化された。LN Mets:リンパ節転移。Liver Mets:肝臓 転移。
【
図5B】
図5A~5Bは、
64Cu-NJB2が、原発腫瘍、および肝臓、およびLM2 TNBCヒト乳癌細胞によって乳腺中に同所性に播種されたマウスのリンパ節への転移を検出することを示す。
【
図6】
図6は、
18F-FDG(
図6A、C)または
64Cu-NJB2(
図6B、D)によって画像化された、膵管腺癌すなわちPDAC(上段)および膵上皮内腫瘍性病変すなわちPanINs(下段)を伴うマウスの、代表的なPET-CT画像を示す。腎臓および膀胱のクリアランス臓器からのシグナルに加えて、ナノボディシグナルは、PDAC腫瘍(
図6B)およびPanINs(
図6D正面および側面図)からも見られた。
【
図7A】
図7Aは、対照のBALB/cマウス、および4T1トリプルネガティブ乳癌細胞に由来する原発腫瘍および肺転移を伴うマウスを示す。
【
図7B】
図7Bは、対照のC57Bl/6マウス、およびB16F10黒色腫細胞に由来する皮下腫瘍または肺転移を伴うマウスを示す。代表的なPET/CT画像は、原発腫瘍「T」、肺転移「LM」、腎臓「K」、および膀胱「B」からのPETシグナルを示す。
【
図8】
図8は、C57BL/6マウス中へのブレオマイシンスルファートの0.035Uの単回気管内投与によって誘発される肺線維症を、示す。シャム(生理食塩水)およびブレオマイシン処置マウス(ブレオマイシン投与後7および14日)は、
64Cu-NJB2 PET/CTによって画像化された。ブレオマイシン処置の7日後およびブレオマイシン処置の14日後の、シャム処置されたマウスの代表的なPET/CT画像。線維性病変(矢印)は、ブレオマイシン投与後7および14日のマウスにおいて目に見えた。
【
図9】
図9は、6、8、10、12および13週齢での、
64Cu-NJB2 PET/CTによって画像化されたMMTV-PyMTマウス(n=7)の上体の、代表的なPET/CT画像を示す。特発性乳房脂肪体腫瘍からのPET/CTシグナルは、10週以降、目に見えた(矢印先端)。多数の乳房腫瘍の腫瘍の進行は、すべてのマウスにおいて明らかだった。上段のパネルは、最大強度プロジェクション(MIP)を示し、そして、下段のパネルは、横断切片を示す。
【
図10】
図10は、多器官に由来する104人の患者からの生検試料(2生検/患者)による転移性組織アレイ上のビオチン化されたNJB2による免疫組織化学からの結果を、示す。図は、患者の44%が、間質FN-EIIIBに関して陽性だった転移を有することを示す。これは、両方の生検が陽性だった(29%)患者、および片方の生検が陽性だった者(15%)を、含む。腫瘍不均一性が、小さい生検において完全には捕獲されないので、これは、陽性転移の数の過小評価である。表4は、原発腫瘍の供給源およびスコア化した転移の部位を、リストする。
【
図11A】
図11A~11Bは、αTNCナノボディNJT3、NJT4、およびNJT6による、ELISAアッセイの結果を示す。ELISAプレートは、精製されたヒトTNCタンパク質の3μg/mlでコートされ、そして、VHH NJT4(
図6A)およびNJT3およびNJT6(
図6B)の濃度増大は、TNCへの結合および結合親和性の決定に関して、テストされた。
【
図11B】
図11A~11Bは、αTNCナノボディNJT3、NJT4、およびNJT6による、ELISAアッセイの結果を示す。
【
図12】
図12は、αTNCナノボディNJT3、NJT4、およびNJT6が、腫瘍ECMに特異的に結合することを示す。NSGマウスにおいて進展したLM2-ZsGreen-ルシフェラーゼ細胞の肺転移の免疫組織化学は、ナノボディが、転移性ECMのTNCを特異的に認識することを、明らかにした。
【
図13】
図13は、3つの異なる抗TNC VHHが、腫瘍ECMを特異的に認識することを示す。VHHは、部位特異的にソルターゼによって媒介されるタグ付けを介して、Texas Redによって標識され、腫瘍を担持するマウスに注入された。画像は、ex vivo 2光子顕微鏡を用いて取得され、緑および赤チャネルのオーバレイを示す;腫瘍細胞(本来は緑)は、Texas-Red標識化ECMによって取り巻かれる(矢印)。画像化に120分先立って、指し示されたTexas red標識化VHHの20μgを注入されたNSGマウスに由来する同所性のLM2-Zs-Green-ルシフェラーゼ腫瘍の画像。
【
図14】
図14は、
64Cu-NJT6抗テネイシンナノボディが、LM2 TNBCヒト細胞株に由来する同所性の原発腫瘍および肺転移を検出することを示す:VHH-NJT6は、ソータギングを使用して
64Cuで標識された。マウスは、同所性に(乳房脂肪体)LM2-ZsGreen-ルシフェラーゼTNBC細胞を注入されたNSGマウスの
64Cu-NJT6(A)PET-CT画像を、注入2h後に画像化された。LM2-ZsGreen-ルシフェラーゼTNBCを尾静脈を介して注入された、左下の乳房脂肪体(B)NSGマウス(肺転移モデル)中の腎臓、膀胱、および原発腫瘍において検出された標識。腎臓、膀胱、および肺において検出されたシグナル(矢印で示された転移)。
【
図15A】
図15Aは、フィブロネクチン(B2)のEIIIBドメインを認識し、B16F10細胞が皮下にC57BL/6の免疫能力のあるマウスに移植され、未処置のままか(None)またはCAR-T細胞で4および11日に処置されたあとの腫瘍サイズを、示す。抗-EIIIB-FN CAR-T細胞で処置された腫瘍は、著しく減弱した成長速度を示した。免疫不全RAG2ノックアウトマウスにおいて執行された平行実験は、腫瘍成長のきわめて小さい抑制を示し、そして、宿主免疫細胞が、抑制に寄与することを指し示した。
【
図15B】
図15Bは、脈管構造(CD31)および処置された腫瘍へのT細胞の著しく増強された動員を示す、未処置の腫瘍(C)またはCAR-T処置腫瘍の免疫組織化学;総T細胞(CD3)およびCD4+およびCD8+T細胞。
【
図15C】
図15Cは、T細胞浸潤の定量化は、CAR-T細胞腫瘍中のT細胞数を大いに増強したことを、示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な記載
細胞によって分泌される細胞外分子を含む、細胞外マトリックス(ECM)は、細胞を取り巻くために、構造上および生化学的支持体を提供する。それは、創傷治癒、血管新生、および成長などの、生理的プロセスにおいて関わることに加えて、組織を相互に分離すること、細胞間通信を制御すること、生体力学的および生化学的支持体を細胞に提供して、成長因子を封鎖することを含む、様々な追加の目的にかなう。該ECMは、腫瘍浸潤および転移およびECMリモデリングに関連する他の疾患を含む、病態生理学的プロセスにも関わる。ECMの組成、剛性、および弾性は、遺伝子発現、細胞生存、増殖および分化、およびがん進行に関する衝撃につながることが、示された。
【0033】
がんは、典型的に原発腫瘍の過剰な成長につながる1以上の突然変異の事象を経た、原発腫瘍のイニシエーションから進行する、複合の疾患である。原発腫瘍が、起源のその部位に限定されたままである限り、外科的にそれを切除することはしばしば可能であり、そして、それは、良性腫瘍としてしばしば称される。しかしながら、腫瘍細胞自体に固有の、そして、腫瘍細胞と相互作用する非腫瘍細胞(しばしば間質細胞と称される)の動員によっての両方のさらなる変化は、最終的に下層の組織への浸潤に結果としてなる、腫瘍の状態の進行につながる。かかる腫瘍は、それらが浸潤し、広がるのですべての腫瘍細胞の除去を確保することが困難であるので、浸潤性または悪性として称される。この問題は、転移のプロセスによって悪化され、そのなかで、腫瘍細胞が、原発腫瘍からはずれ、それから離れて移動し、最終的に脈管構造および/またはリンパ管に深く入りこんで、遠位部位で二次腫瘍または転移を播種し、広範囲にわたって体に広がる。
【0034】
いくつかの転移が、外科的に取り除かれることができるにもかかわらず、それらは、頻繁に無数であり、小さくおよび検出するのが難しいかもしれず、手術によって取り除くのがそれゆえ不可能である。処置は、放射線治療または化学治療を次いで必要とし、そして、数十年の努力にもかかわらず、これらの方法は、効果がないままであり、そして、転移性がんは、がん死の90%の原因である。それゆえ、転移の機構のより良好な理解、および転移を検出して根絶するため方法の開発のための緊急の必要性が、ある。
【0035】
本明細書に記載の発明は、いくつかの側面において、数ある中で、腫瘍、線維性組織、およびアテロームなどの病的な組織の細胞外マトリックス(ECM)に存在するタンパク質に特異的なナノボディを開発する方法を、含む。これらのタンパク質は、ECMリモデリングによって特徴づけられる腫瘍、転移部位、線維症、アテローム、炎症性障害、動脈瘤、および他の疾患において発現され、重要なことに、正常な成人ヒト組織からは、ほとんどない。たとえば、フィブロネクチン(FN)のEIIIBドメインのエピトープに、そして、テネイシンC(TNC)(病的な組織のECMにおいて存在するが、正常な、健康な成人組織には存在しない)に高度に特異的なナノボディが、開発された。それゆえ、発生されたナノボディは、in vivoおよびin vitro画像診断(これに限定されないがIF、IHC、PET/CTなど)のために、そして、疾患の広域スペクトラムにわたる多様な標的治療のために使用されてもよい。
【0036】
本明細書に使用される細胞外マトリックス(ECM)タンパク質は、ECMの一部であると認められるいずれかのタンパク質を、指す。ECMは、構造上の支持体および足場を細胞に提供する、後生動物有機体の基本的なおよび重要な構成要素である。ECMは、高度に架橋したタンパク質の複合の網目構造からなり、器官内で間質型として、そして、基底膜下層の上皮、脈管内皮、および一定の他の組織および細胞型(例として、ニューロン、筋)などを取り巻く特殊な型として、存在する。細胞は、膜貫通受容体を介してECMに付着し、それら膜貫通受容体の中で、インテグリンは、最も顕著である。これらの細胞-マトリックス相互作用は、増殖および生存、分化、遊走等々を制御している様々なシグナリング経路の刺激に、結果としてなる。ECMの組成およびECM受容体のレパートリは、細胞の応答を決定する。ECMの生物物理学的な特性(変形性または剛性)も、これらの細胞の機能を調節することが、示された。コアのECM構成要素(フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン等々)に加えて、ECMは、成長因子およびサイトカインのための、そして、細胞にシグナルを送るECMタンパク質と共同するECM-リモデリング酵素のリザーバとして、役立つ。
【0037】
とりわけ、がんおよび転移、例えば、フィブロネクチン(FN)のEIIIAおよび/またはEIIIBドメインおよびテネイシンC(TNC))などの病状においてそれらの増強された存在によって特徴づけられるECMタンパク質は、ナノボディを結合するための標的として、使用されてもよい。FNおよびTNCのEIIIAおよびEIIIBドメインが、腫瘍、転移部位、線維症、アテローム、炎症性障害、動脈瘤、および他の疾患などの病的な状態中において発現され、一方、健康な(発症していない)成人組織においては、ほとんど無かったことが分かった。それゆえ、ナノボディの開発は、これらの選択されたドメインにとって、病的な組織(そして、対象の病的な状態)を同定し、ならびに該領域に治療法または他の荷を送達するために、有用でありえる。他のECMタンパク質、またはそれらのエピトープは、腫瘍または転移において選択的に発現されるのが示され、そして、同様に、特異的なナノボディを使用して検出されることができた。
【0038】
下の例に示すように、ECMタンパク質に対するナノボディライブラリが、発生され、スクリーニングされ、疾患特異的なECMエピトープ(例えば、NJB2、NJT3、NJT4、およびNJT6)に対して新規および特異的なナノボディの発見に、結果としてなった。とりわけ、例として、NJB2ナノボディは、フィブロネクチンのEIIIBドメインのエピトープに特異的であり、そして、NJT3、NJT4、およびNJT6ナノボディは、ヒトテネイシンCタンパク質に特異的である。腫瘍または転移において選択的に発現した、他の腫瘍および/または転移のECMタンパク質およびドメイン(まとめると、ECMエピトープとしてここに称される)は、同じプロテオミクス方法を使用して記載され、そして、それらは、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して検出されてもよく、モニターされてもよい。
【0039】
本発明に従って使用される方法は、ECMの選択的濃縮、ゲノムにおいてコードされるECMタンパク質の完全な目録の生物情報科学定義、および質量分析の適用を組み合わせる技術の、きわめて最近の進歩を利用する。これらの方法は、組織の小さい試料からのいかなる組織も、ECM補完の決定を可能にした。このアプローチは、一定のECMタンパク質、そして、ドメイン(ECMエピトープ)が、健康な組織においてよりも、高い濃度で病的な組織に存在することを、確認した。
【0040】
病的な組織に選択的に存在するECMエピトープに特異的に結合するナノボディを回収するための方法は、本明細書に記載される。これらのナノボディの適用および活用に基づく数個の方法は、本明細書に記載される。患者試料からこれらのECMエピトープの存在を決定して、したがって対象が、特定の疾患および/または疾患の進行または退行を有するかどうかに関して証拠を提供するための方法も、提供される。対象の状態は、免疫組織化学、免疫蛍光法、ELISA、ウエスタンブロット、タンパク質アレイ、免疫-PET/CTなどの非侵襲的画像化方法および類似の方法を含む標準免疫学的な方法を使用して、活性剤に連結された特異的なナノボディを使用して、決定されることができる。かかる方法の使用は、診断、予後、およびモニタリングの情報を提供し、患者の看護および治療の改善された管理を許す。
【0041】
疾患、例として原発腫瘍および/または転移の、場所、範囲、および進行を検出するための、病的な状態の細胞外マトリックスの範囲内で個々のECMエピトープに特異的に造影剤(例として、PET画像化またはその他の画像化モダリティの使用のための放射性核種、蛍光レポーター、または他の検出可能な試薬等々)などの活性剤を標的とするため方法も、発明の中に包含される。
【0042】
病的な組織、例として、原発腫瘍および/または転移に対するかかる治療剤を濃縮し、したがって治療の指標を改善するために、個々のECMエピトープに特異的な治療剤(例として、放射性核種、化学療法剤、毒素、サイトカイン、siRNA、shRNA、ナノ粒子、CAR-T細胞等々)などの活性剤を標的とするための方法も、発明の側面である。治療剤の標的化は、上で記載の側面において定義されるECMエピトープに対して特異的なナノボディに付着することによって、達成されてもよい。
【0043】
本発明は、下記のように、抱合体の形において任意にECMエピトープと相互作用することができる、ナノボディなどの結合ペプチドまたはポリペプチドも包含する。本発明の結合ペプチドまたはポリペプチドは、好ましくは選択的やり方で、ECMエピトープに結合する。本明細書に使用される「ECMエピトープ」は、ナノボディまたはペプチドと相互作用する一部の病的な状態のECMを、指す。エピトープは、ECMタンパク質のドメイン、ECMタンパク質の一部のドメイン、特異的な翻訳後修飾を備えてもよいか、またはECMタンパク質の複数のドメインからの領域に関わってもよい。本明細書に使用されているように、用語「選択的結合」および「特異的な結合」は、非ECMタンパク質または他のECM構成要素に対するより、特異的なECMタンパク質およびそれらのフラグメントに対してより大きな親和性によって結合するための結合ペプチドまたはポリペプチドの能力を指すための結合ペプチドまたはポリペプチドに関して、交換可能に使用される。すなわち、ECMエピトープに選択的に結合する結合ペプチドまたはポリペプチドは、それらが特定のECMエピトープに結合するのと同じ範囲で、そして、同じ親和性では、非ECMタンパク質に、または、他のECMタンパク質に結合しないだろう。いくつかの態様において、本発明の結合ペプチドまたはポリペプチドは、特異的なECMエピトープにもっぱら結合する。本明細書に使用されるように、特異的なECMエピトープに選択的に、または、特異的に結合する結合ペプチドまたはポリペプチドは、より小さい親和性(たとえあったとしても)によって、非ECMタンパク質または他の種々のECMタンパク質に結合する。より小さい親和性は、少なくとも10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、または95%未満、を含んでもよい。
【0044】
好ましくは、ECM結合ペプチドまたはポリペプチドは、ナノボディである。本明細書に記載のナノボディは、がんなどの、病的な組織において特異的に発現されるECMエピトープに選択的で、正常な成人ヒト組織中にほとんど無いか、名目上の濃度で存在する。ナノボディは、in vivoの診断画像化および標的化送達に関して、他の抗体プラットホームと比較して有利な多数の重要な特性を、有する。抗体と比較して、ナノボディは、より小さく(おおよそ15kDa)、糸球体ろ過のための腎臓のカットオフが、60kDaであるので、それは、より速いクリアランス速度を許す(De Vos et al., Expert Opin Biol Ther. 13(8): 1149-60 (2013))。ナノボディは、フルサイズの抗体と比較すると、より良好な組織浸透およびより短い循環半減期も有する。さらにその上、ナノボディは、scFvsまたは人工足場と異なってin vivoで親和性が成熟し、それは、高機能(すなわち高親和性)結合剤の単離を許す。ナノボディは、酵素の触媒部位などの、抗原の表面上の溝と相互作用することに関して、scFvsより好適でもある(Hassanzadeh-Ghassabeh et al., Nanomed. 8(6): 1013-26 (2013))。
ラクダ科の動物の単一ドメイン抗体(VHH)が、高度な配列同一性をヒトVHと共有し、マウスにおける免疫原性応答を起動させることは見出されていない。
【0045】
同じく、ヒトの有害な免疫原性応答は、現在の臨床試験において報告されてなかった。ナノボディは、プローブを画像化することなどの、ヒト化されることができて(Rashidian et al., PNAS, 112(19): 6146-6151 (2015))、再生可能な供給源であり、そして、活性剤の添加後に、一般に安定である。安定な接合されたナノボディが、発生することができ、急速に、そして、再現的に精製されることができる。
【0046】
いくつかの態様において、ナノボディは、すなわち、天然に存在するVHH配列のアミノ酸配列の(そして、特に、フレームワーク配列の)1以上のアミノ酸残基アミノ酸配列を、ヒトからの従来の4鎖抗体からのVHドメインにおける対応する位置で生じる1以上のアミノ酸残基で置き換えることによって、天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化された」アミノ酸配列を有する。ヒト化のための方法は、周知である。ヒト化ナノボディは、対応する天然に存在するVHHドメインと比較して、低下された免疫原性などのいくつかの利点があってもよい。「ヒト化」は、天然に存在するVHHドメインをコードするヌクレオチド配列を提供することによって、および次いで、新しいヌクレオチド配列が「ヒト化」ナノボディをコードするかかる方法においてヌクレオチド配列の1以上のコドンを変化させることによって、遂行されることができる。この核酸は、ナノボディを提供するために、次いで発現されることができる。あるいは、ヒト化ナノボディのアミノ酸配列は、天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列に基づいて、設計され、そして、ペプチド合成のための技法を使用して、デノボ合成されることができる。当業者は、ナノボディまたはこれをコードする核酸配列または核酸を提供するように、好適なやり方において、1以上の天然に存在するVHH配列(1以上のFR配列またはCDR配列など)の1以上の部分、および/または、1以上の合成または半合成配列も、組み合わせてもよい。
【0047】
いくつかの態様において、用語ナノボディは、本明細書に記載のナノボディの類似体、変異体、バリアント、アレル、ホモログ、およびオルトログを、指す。
一般に、かかる類似体において、1以上のアミノ酸残基は、本明細書に開示のナノボディと比較して、置き換えられ、削除され、および/または、付加されてもよかった。かかる置換、挿入、欠失または付加は、1以上のフレームワーク領域および/または1以上のCDR、および、特に、配列番号1~4を含む本明細書に開示の配列のナノボディのCDRの類似物において、なされてもよい。例示的なCDRは、表3において提示される。
【0048】
いくつかの態様において、ナノボディは、本明細書に提供のアミノ酸配列のいずれかと、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%98%、または99%の同一性を共有するアミノ酸配列を、備える。いくつかの態様において、ナノボディのアミノ酸配列は、本明細書に提供されるアミノ酸配列を備える。
【0049】
あるいは、本明細書に記載のナノボディは、本明細書に例示の抗体のうちの1つの、1以上のCDR領域において、最高5(例として、4、3、2、または1)のアミノ酸残基のバリエーションを備えてもよく、実質的に類似の親和性(例として、同じオーダーのKD値を有する)を有する抗原の同じエピトープを結合する。一つの実施例において、アミノ酸残基のバリエーションは、保存的なアミノ酸残基置換である。本明細書に使用のように、「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸置換が作られるタンパク質の相対的な電荷またはサイズの特徴を変えないアミノ酸置換基を、指す。
【0050】
本明細書に使用される場合、「類似体」は、各々またはいずれかのフレームワーク領域、および、各々またはいずれかの相補性決定領域が、BLASTpアライメントにおいて測定された場合に、参照配列における対応する領域と(すなわち、FR1類似体対FR1参照、CDR1類似体対CDR1参照、FR2類似体対FR2参照、CDR2類似体対CDR2参照、FR3類似体対FR3参照、CDR3類似体対CDR3参照、FR4類似体対FR4参照)、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは90%の同一性、さらにいっそう好ましくは95%の同一性を示す、配列である。
【0051】
置換は、たとえば、保存的置換でもよく、および/または、アミノ酸残基は、別のVHHドメインの同じ位置で天然に存在する別のアミノ酸残基と、置き換えられてもよい。欠失および/または置換は、翻訳後修飾の1以上の部位(1以上の部位1以上のグリコシル化部位など)が取り除かれるなどの方法で、または、官能基の付着のために1以上の部位を導入するように、例えば、部位特異的なペグ化を許すように設計されてもよい。
【0052】
ナノボディのアミノ酸残基は、すなわち、タンパク質の主鎖に、または、側鎖に修飾されることができる。修飾は、ナノボディの中への、またはその上への、1以上の官能基、残基、または部分の導入を含む。官能基は、直接ナノボディに、または、間接的にリンカーまたはスペーサーを通して、連結されてもよい。半減期を増大させ、および/または、医薬タンパク質の免疫原性を低下させるための方法は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはそれらの誘導体など(メトキシポリ(エチレングリコール)またはmPEGなど)のポリマーを、付着させることに関わる。たとえば、PEGは、ナノボディにおいて天然に出現するか、または末端、または、ナノボディの中で、ナノボディに合成的に付加されるシステイン残基に、付着されてもよい。いくつかの態様において、PEGは、5000より大きく100,000未満、または10,000より大きく200,000未満の分子量を、有する。他の修飾は、ナノボディを発現するために使用される宿主細胞に応じて、通常共翻訳および/または翻訳後の修飾の部分として、Nにリンクされたか、Oにリンクされたグリコシル化を含む。ナノボディは、かかるVHHドメイン、例として、ファージライブラリのライブラリからの選択から、得られてもよい。ファージライブラリは、免疫化された動物のB細胞からの抗体VHHドメインを含有するポリヌクレオチドのライブラリを挿入することによって、作成されることができる。ファージミドライブラリの多様性は、追加の、所望の、分子特性およびそれらをコードするポリヌクレオチドを産生して、続いて確認するために、ライブラリのポリペプチドの特異性を増加させておよび/または変えるために、操作されることができる。ライブラリは、あらゆる位置および20全てのアミノ酸の32の種々のコドンのうちの1を導入することが可能であるので、多様性の高いレベルに関わる。かかるライブラリは、理論上は、残基の数nごとに32n増殖する。一定の位置の選択されたヌクレオチドの「縮退」を伴うオリゴヌクレオチドの合成は、その技術分野において公知である。ファージディスプレイライブラリは、典型的には109~1010の「エントリ」を有する。
【0053】
一般にナノボディライブラリを作成する方法は、すなわち病的な組織の調製物に対して免疫化されるための材料による、ラクダ科の動物(例として、ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ、ビクーナ、ラマ等々)の免疫化に、関わる。たとえば、例部分に記載のように、アルパカは、ヒトがん患者からの特異的なECM調製物によって免疫化されて、疾患と関連するECMタンパク質エピトープに特異的なアルパカ誘導ナノボディを、発生させてもよい。リンパ球は、血液試料から次いで単離されることができ、そして、リンパ球RNAは、次いでファージ提示に基づくナノボディライブラリを構築するために、たとえばM13ファージを使用して、用いられることができる。ライブラリは、次いで疾患に関わるECMおよびECM関連抗原の多様なセットに対する新規なナノボディのために、スクリーニングされることができる。該方法は、核酸が単離されることができる末梢血リンパ球を、収穫することに関わる。VHドメイン配列が由来する核酸は、総RNAでもよく、または、より具体的に言うと宿主からとられた試料の中で細胞から単離されるメッセンジャーRNAであってもよい。発現ベクターは、ライブラリ構築物のために使用されるいかなる好適なベクターでもあってもよく、そして、好ましくはファージ提示に基づく選択方法を使用する標的特異的な抗体フラグメントの選択を許すファージまたはファージミドベクターである。
【0054】
これらのライブラリから単離された抗体配列は、次いで標的抗原への結合をさらに改善するために、in vitroでの親和性成熟のための足場として、使用されてもよい。使用される免疫原は、ヒトがん転移試料の病的なECMに直接由来するか、または免疫化のためのカクテルを調製するために個別に混合される、疾患部位に存在する一組のECMタンパク質である。ライブラリは、この病的なECMの多様な構成要素を結合するVHHの配列を、含有する。ナノボディは、それらのN末端またはC末端で、種々の活性剤によって容易に部位特異的にタグ付けされることができ、画像化および/または治療の適用において、のそれらの使用を促進する。
【0055】
本発明は、ハイスループットなやり方で、ECMエピトープに対してナノボディを発生させる方法を、包含する。非限定的な例として、方法は、病状と関連するECMタンパク質のエピトープに特異的に結合する、ナノボディなどのECMタンパク質結合剤を発生させることで提供され、そして好ましくは、(i)病的な組織からのECMタンパク質試料によって動物を免疫化することによって、および(ii)病的な組織からのECMタンパク質のエピトープに特異的に結合するナノボディに関するスクリーニングによって、病的な組織から単離される。
【0056】
いくつかの態様において、本明細書に記載のナノボディまたは他のペプチドは、対応する標的エピトープに、特異的に結合する。エピトープに「特異的に結合する」抗体などのナノボディまたはペプチドは、当該技術分野において十分理解されている用語である。分子は、それが、代替の標的によってより、特定の標的抗原によって、より長い期間におよび/またはより大きな親和性で、より頻繁に、より急速に、反応する場合、「特異的な結合」を呈すると言われる。ナノボディは、それが、他の物質に結合するより、より大きな親和性、結合力で、より容易におよび/またはより長い期間に結合する場合、標的抗原またはエピトープに、「特異的に結合する」。たとえば、抗原またはその中の抗原エピトープに特異的に(または優先的に)結合するナノボディは、それが、他の抗原または同じ抗原の中の他のエピトープに結合するより、より大きな親和性、結合力で、より容易におよび/またはより長い期間で、この標的抗原に結合するナノボディである。たとえば、第1の標的抗原に特異的に結合するナノボディが、第2の標的抗原に特異的に、または、優先的に結合してもよいかまたは結合しなくてもよいことも、この定義によってよく理解される。そのため、「特異的な結合」または「優先的な結合」が、(それが含むことができるにもかかわらず)独占的な結合を、必ずしも要求するというわけではない。いくつかの例において、標的抗原またはそれらのエピトープに「特異的に結合する」ナノボディは、他の抗原または同じ抗原の中の他のエピトープに、結合しなくてもよい。
【0057】
いくつかの態様において、本明細書に記載のナノボディは、標的抗原またはそれらの抗原エピトープのための好適な結合親和性を、有する。本明細書に使用のように、「結合親和性」は、見かけの会合定数すなわちKAを、指す。KAは、解離定数(KD)の逆数である。本明細書に記載のナノボディは、標的抗原または抗原エピトープに関して少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M、またはそれより低い結合親和性(KD)を有してもよい。増大した結合親和性は、減少したKDに対応する。第2の抗原と比べた第1の抗原に関するナノボディのより高い親和性結合は、第2の抗原への結合に関するKA(またはKDの数値)より、第1の抗原への結合に関するより高いKA(またはよりKDのより小さい数値)によって、指し示されることができる。
【0058】
かかるケースにおいて、ナノボディは、第2の抗原(例として、それらの第2の立体配座または模倣体における同じ第1のタンパク質;または第2のタンパク質)と比べて、第1の抗原(例として、それらの第1の立体配座または模倣体の第1のタンパク質)に関して特異性を有する。
【0059】
たとえば、いくつかの態様において、本明細書に記載の抗ECMナノボディは、第2のECMエピトープへの結合親和性と比較して、第1のECMエピトープにより高い結合親和性(より高いKAまたはより小さいKD)を、有する。
【0060】
結合親和性の違い(例として、特異性または他の比較に関して)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000、または105倍であることができる。
【0061】
結合アフィニティー(または結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲルろ過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または(例として、蛍光アッセイを使用する)分光法を含む様々な方法によって、決定されることができる。結合親和性を評価するための例示的な条件は、HBS-P緩衝液(10 mM HEPES pH7.4, 150 mM NaCl, 0.005% (v/v) Surfactant P20)においてある。これらの技法は、標的タンパク質濃度の関数として、結合した結合タンパク質の濃度を測定するために、用いられることができる。結合した結合タンパク質の濃度([結合])は、一般に、以下の等式によって、遊離標的タンパク質の濃度([遊離])に、関連付けられる:
[結合]=[遊離]/(Kd+[遊離])
【0062】
しかし、時々、それは、例として、ELISAまたはFACS分析などの方法を使用して決定される親和性の定量的測定を得るのに十分で、KAまたはKDと比例していて、したがって、より高い親和性が、例として、2倍より高いかどうかを決定することなどの比較のために、親和性の定性的な測定を得るために、または、例として、in vitroまたはin vivoアッセイにおける、例として機能的なアッセイにおける活性によって、親和性の推論を得るために、使用されることができるので、KAまたはKDの正確な決定を作成することは、必ずしも必要でない。
【0063】
さらなるステップは、たとえば、そして、限定されずに、親和性成熟のステップ、所望のアミノ酸配列を発現しておよび/または修飾するステップ、所望された抗原(ECMエピトープ)に対する結合のためのおよび/または活性のためのスクリーニングのステップ、所望されたアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を決定するステップ、1以上のヒト化置換を導入するステップ、好適な多価および/または多特異的なフォーマットをフォーマットするステップ、特異的な所望の生物学的および/または生理的特性のためのスクリーニングのステップを、含んでもよい。
【0064】
ECMリモデリングは、多数の疾患で典型的であり、そして、少なくともいくつかのECM生物マーカーエピトープは、これらの疾患で共有される。下の例に記載のように、バイオパニングされるナノボディは、ECMリモデリングによって特徴づけられる広範な疾患に、それゆえ適用できる。
【0065】
いくつかの態様における本発明に従う有用な結合試薬は、単離されたVHH抗体フラグメント、いわゆるナノボディである。本明細書に使用の「単離されたナノボディ」は、他の細胞の材料(例として、ナノボディを産生する細胞から分離された)から、または、本発明の診断または治療方法において、それらの使用を妨げる他の材料から、実質的に物理的に切り離されたポリペプチドを、指す。
【0066】
とりわけ、ペプチドは、たとえば、医薬調製物を産生し、またはシークエンシングすることにおいて有用であるように、十分に純粋であり、それらの宿主細胞の他の生物学的構成成分が、十分に存在していない。本発明の単離されたナノボディは、医薬調製物中の薬学的に許容し得る担体と混ぜられてもよいので、それらは、該調製物のほんの小さい重量%を備えてもよい。ナノボディは、それにもかかわらず、生体系に関連してもよい物質から実質的に分離されたという点で、実質的に純粋である。
【0067】
いくつかの態様において、本明細書に開示されるナノボディのCDRまたは他の部分は、ナノボディ以外の構造に組み込まれる。例えば、本明細書に開示のナノボディの1以上のCDRを備えるヒト化抗体またはそれらの類似体は、本発明に従って産生されても、使用されてもよい。したがって、ペプチドは、抗体でもよい。他の態様において、本明細書に記載のナノボディのペプチドは、他の分子に接合されて、例えば、送達を増強してもよい。ペプチドまたはナノボディは、いくつかの実施形態において、抗体に接合されてもよい。
【0068】
本明細書の用語「抗体」は、それらが所望された生物活性を呈する限り、最も幅広い意味において使用され、無傷のモノクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、抗体フラグメント、およびscFvなどの抗体様の分子を、具体的に網羅する。天然の抗体は、通常2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖で構成されるヘテロテトラマーの糖タンパク質を、指す。それぞれの重および軽鎖は、鎖の間のジスルフィド架橋に規則的に間隔をあけた。それぞれの重鎖は、多数の定常ドメインがそれに続く可変ドメイン(VH)を、一端で有する。それぞれの軽鎖は、一端(VL)に可変ドメインおよびその他端に不変ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと一列に並べられ、そして、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと一列に並べられる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖の可変ドメインの間に接点を形成すると考えられている。
【0069】
画像化プローブ(蛍光体、PETトレーサー、放射性同位体等々)などの活性剤、サイトカイン、ECMリモデリング酵素、毒素、siRNA、shRNA、ナノ粒子、CAR-T細胞、薬物、または他の形態は、病的な部位に標的化された送達のためのナノボディに、きわめて容易に部位特異的に、付着されることができる。たとえば、ナノボディは、ソルターゼ媒介反応(「ソータギング」)を介してそれらのNまたはC末端で部位特異的にタグ付けされてもよい(Guimaraes et al-Site-specific C-terminal and internal loop labeling of proteins using sortase-mediated reactions.)。この付着は、病的なECMエピトープへのナノボディに付着されるいずれかの荷の標的化送達を、大いに促進する。
【0070】
この標的化されたアプローチは、それが、腫瘍および疾患ECM中に選択的蓄積ができるようにするので、検出および/または処置の増大した特異性および感度ならびに背景およびオフターゲット毒性の軽減に結果としてなる、従来の全身治療に勝る無数の利点を与える。さらにその上、その一方で、他の標的治療は、標的とされたタンパク質のより広い発現に起因して、全身性の毒性によってしばしば曝露される(Hansel et al., Nat Rev Drug Discov, 9(4): 325-338 (2010));FNのEIIIBドメインおよび病的な部位におけるTNCの(または他の腫瘍特異的ECMエピトープの)選択的遺伝子発現、およびそれらのそれぞれの標的タンパク質に対するナノボディの特異的な結合は、他の標的治療が直面する全身性の毒性を回避する。ナノボディはサイズにおいて小さく(おおよそ15kDa)、それゆえ対象からも急速に消去され、全身性の影響の低下に結果としてなる。
【0071】
他の標的治療、たとえば胸部および卵巣の癌に関するHER2特異的なナノボディおよびリンパ球様腫瘍のためのリツキシマブとは異なり、本明細書に記載のナノボディは、それらが、もっぱら特異的ながん型に限定されずに、病的なECMと関連する抗原を認識するので、広く治療/標的化剤であることができる。加えて、本明細書に開示のナノボディのいくつかは、ECMリモデリングによって特徴づけられる他の病状において発現される標的抗原を、認識することができる。かかる病状は、アテローム、動脈瘤、および心筋梗塞、線維症、および炎症性障害などの、心血管障害を含むが、これに限定されるものではない。腫瘍細胞不均一性および腫瘍細胞のゲノム不安定性に起因して限定された有効性を有してもよかった、抗CD30および抗CD20などの、腫瘍細胞標的化治療と比較して、本明細書に記載のナノボディは、特異的なECMタンパク質エピトープ(それはより不均一でなくおよびより安定である)を標的とする。
【0072】
腫瘍細胞標的化治療は、減少したか不均一な標的発現、受容体内部移行および薬物流出に起因して、有効性を欠いている。対照的に、ECMタンパク質は、がんの突然変異をめったに有さず、そして、該ECMは、豊富であり、およびアクセス可能である。提示された特定の例において、フィブロネクチンおよびテネイシンCは、腫瘍ECMの主な構成成分である。本明細書および他の場所に記載のプロテオミクスデータを使用して、追加の腫瘍および/または転移特異的なECMタンパク質および関連するナノボディは、M13ファージライブラリから同様に単離され、確認されることができる。
【0073】
局所投与治療は、種々の欠点を被る:それらは、転移を処置することに効率的でなく、それは典型的には、多数で、広く分配される。しかしながら、ナノボディの全身性の投与は、体の全体にわたって、原発腫瘍および転移部位の両方を含む、すべての病的な組織にアクセスして、腫瘍および/または病的なECMに選択的に結合することを、それらに許す。
【0074】
本明細書に使用のように、単離された組織試料は、医療技術に関連する当業者に周知の方法を使用して、体から取り出された組織生検、外科的に切除された腫瘍、または他のいずれかの腫瘍塊から得られた組織である。該組織は、病的なことが知られ、または、病的なことが疑われてもよく、たとえば、該組織は、がん性であることが知られ、または、がん性であると疑われてもよい。「がん性であると疑われる」という本明細書に使用の句は、医療技術の当業者によってがん性の細胞を含有すると考えられているがん組織試料を、意味する。生検から試料を得るための方法は、塊の粗分割、顕微解剖、レーザーに基づく顕微解剖、または他の公知技術の細胞分離方法を、含む。組織は、組織切片でもよい。
【0075】
病的な組織生検材料における細胞型の多様性および使用される予測方法の感度の多様性のため、分析のために要求される試料サイズは、組織の5mg、10mg、15mg、25mg、30mg、または50mg以上でもよい。あるいは、それは、生検サイズの組織試料の部分または切片でもよい。適切な試料サイズは、細胞の組成および生検の条件に基づいて決定されてもよく、そして、この決定のための標準分取ステップ、および本発明における使用のためのタンパク質のこれに続く単離は、当業者に周知である。
【0076】
あるいは、ECMタンパク質は、体において直接分析されてもよい。実例として、1以上または病的なECMタンパク質エピトープを認識することができる、ナノボディなどの1以上の結合ペプチドまたはポリペプチドは、直接対象に投与されてもよい。結合ペプチドまたはポリペプチドは、ECMの可視化によって支援するために、たとえば蛍光、NIR、ルミネセンス、またはPETプローブで標識されてもよい。あるいは、他の結合ペプチドまたはポリペプチドは、ECMの可視化を提供するために、用いられてもよい。他の実施形態において、組織は、結合ペプチドまたはポリペプチドへ曝露の前の対象から、取り出されてもよい。
【0077】
本発明は、対象の病的な状態の変化を調査するために、使用されてもよい。病的な状態は、対象中の生化学物質の過少または過剰産生、外来有機体、すなわち宿主に有毒である物質を産生する有機体による対象への浸潤、または対象の一部の異常な増殖によって引き起こされる対象中の、いずれかの生理的条件である。たとえば、病的な状態は、感染症、がん、転移、等々と関連する状態を含み、およびこれらの病状の多数は、ECMの過度の生成および変性に関連し、それは、本発明のナノボディによって、標的とされることができる。腫瘍の転移の状態における変化は、経時的におよび/または治療の介入に応答して調査されることができる。これらの方法を達成するために、組織試料は、種々の時間に、および/または薬物処置の有無にかかわらず、対象から単離されてもよい。種々の組織試料が、病的な状態のECMエピトープの存在のために、分析されることができる。次いで、2以上の試料間のECMエピトープ発現の違いが、評価されることができる。該違いは、存在する種々のタンパク質の評価を通して定性的に(例として、免疫組織化学(IHC)によって)、または、タンパク質発現の測定値レベルまたは近似のレベルによって定量的に(例として、ELISAによって)、分析されることができる。あるいは、本発明の方法は、組織試料を取り出すことなく、in vivoにおいて遂行されてもよい。
本発明の方法は、がん、転移、および他の病状において特異的に発現されるECMエピトープに高度に特異的なナノボディの由来、検証、および展開に関わる。
【0078】
これらのユニークな、高度に有効な抗体は、病的な組織のアクセス可能な、行き渡った、安定な細胞外構成要素への画像化プローブ(蛍光、放射能、PET等々)および、医薬、毒素、抗体、免疫調節剤、siRNA、shRNA、ナノ粒子、CAR-T細胞を含むがこれに限らない他の剤の送達の、高度に選択的な手段(低い全身性の背景によって)を可能にするために、接合されたナノボディとして使用されてもよい。接合技法、造影剤、活性剤、これらのユニークな抗体を調製および画像化する方法は、当該技術分野において公知であり、そして、これらの摘要は、本明細書に含まれる。
【0079】
組織試料中のタンパク質の存在または組織試料のタンパク質のレベルは、当該技術分野においていかなる公知の方法を使用して、評価されてもよい。かかる方法論は、周知である。臨床的および病理的評価において一般的に用いられる方法は、免疫組織化学または免疫蛍光法であり、それは、組織試料中の特定のタンパク質の存在またはタンパク質のセットの決定を、許す。免疫組織化学および免疫蛍光法の方法は、周知であり、広く実践される。タンパク質レベルの定量的評価がなされる場合に、タンパク質のレベルは、参照または閾値量によって、または、他の試料で見られる量によって、比較されてもよい。実例として、タンパク質の存在またはレベルが、原発腫瘍およびその転移または対応する正常な組織において測定される場合、それらは、腫瘍またはその転移の進行の相対的な評価を提供するために、比較されることができる。あるいは、該レベルは、腫瘍が通常タンパク質を発現する量が公知である(または、示される)量と、上であるか下であるか比較されてもよい。比較において使用される値は、参照または閾値レベルと称される。
【0080】
限界値の特定の決定における実数値は、発現を決定するアッセイの状態などの、種々の腫瘍に関して、または、種々の状況の下で変化してもよい。しかしながら、当業者は、状況に基づいて正しい限界値を確認することが可能である。
たとえば、限界値は、類似の状況の下で正常な非がん性の組織を使用して、容易に発生されることができた。
【0081】
参照試料は、診断評価がなされてもよい様々な生体試料のいずれかであることが、できる。参照試料の例は、対照集団または対照試料からの生体試料を、含む。参照試料は、試験試料と平行してテストするために供給される製造をとおして、発生してもよく、例として、参照試料が、診断キット中に供給されてもよい。適切な参照試料は、当業者に明白である。
【0082】
他の態様において、試験試料中のタンパク質の発現レベルは、絶対値の参照レベルとの直接比較に基づいて、決定されてもよい。実例として、参照試料のタンパク質中の発現レベルより、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%以上高い。他の態様において、試験試料中のタンパク質の発現レベルは、参照試料中のタンパク質の発現レベルより、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%以上低い。
【0083】
さらなる実施形態において、対象中の1以上のECMエピトープの発現レベルは、第1の時点に、そして、その後の第2の時点に決定される。1以上のECMエピトープの発現レベルは、さらなるこれに続く時間に、追加で測定されていてもよく、その結果、測定の総数は、3、4、5、6、7、8、9、10以上でもよい。いかなる2つの測定の間の時間内の分離も、日の問題でもよく、または、それはより長くてもよい(例として、週、月、または年)。たとえば、得る試料間の時は、6ヵ月、8ヵ月、10ヵ月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、4.5年、または5年である。対象中の第1の(またはより初期の)試料を得ることと、これに続くまたは連続した試料を得ることとの間の時は、変化する病状が起こるのに十分でありうる。疾患の進行または退行は、2以上の時点の間に単離された組織試料におけるECMエピトープ発現レベルを比較することによって、決定されてもよい。たとえば、連続した時点間の1以上のECMエピトープまたはそれらの発現レベルの存在または非存在における変化は、疾患の進行ステージなどの、疾患の進行を、指し示してもよい。とりわけ、後の時点にとられた試料中の1以上のECMエピトープのより高い発現レベルおよび/または存在は、疾患が、進行ステージに進行したことを、指し示してもよい。いくつかの場合において、疾患は、がんでもよく、そして、後の時点にとられる試料の病的な状態と関連するECMエピトープのより高い発現レベルまたはより広い分布は、転移性がんが進行したことを、指し示してもよい。反対に、第2の時点からの単離された組織試料が、第1の時点から単離された組織試料と比較して、病的な状態と関連するECMエピトープのより低い発現レベルを有する場合、疾患は、より進行していないステージに退行した。たとえば、連続したより低い発現レベル測定は、がんがより転移でない状態に退行したことを、指し示すことができた。
病的な状態は、がん、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞、線維症または創傷などの、いかなる非生理的状態でもあってもよい。いくつかの場合において、がんは、転移性がんである。
【0084】
タンパク質またはマーカーの存在/非存在またはレベルは、タンパク質分析、例として、直接物理測定(例えば、質量分析)、または結合アッセイ(例として、免疫組織化学、免疫アッセイ、凝集アッセイ、および免疫クロマトグラフィアッセイ)等々に関して、当業者に利用可能な多数の技法のいずれかを使用して、決定されてもよい。該方法は、化学反応、例として、光学吸光度における変化、蛍光における変化、ケミルミネッセンスまたは電気化学ルミネセンスの発生、反射率、屈折率または光散乱における変化、表面から検出可能な標識の蓄積または放出、酸化または還元または酸化還元種、電流または電位、磁場における変化、等々)から結果として起こるシグナルを測定することを、備えてもよい。好適な検出技法は、それらのフォトルミネセンス(例として、蛍光、時間分解蛍光、エバネッセント波蛍光、アップコンバートリン光体、多光子蛍光等々の測定を経る)、ケミルミネッセンス、電気化学ルミネセンス、光散乱、光学吸光度、放射活性、磁場、酵素活性(例として、光学吸光度または蛍光における変化を引き起こすかまたはケミルミネッセンスの発光を引き起こす酵素反応を通した酵素活性を測定することによる)を介する標識の測定を通した標識された結合ドメインの関与を測定することによって、結合事象を検出してもよい。あるいは、検出技法は、標識の使用、例として、塊測定に基づく技法(例として、表面音響波測定)、屈折率(例として、表面プラズモン共鳴測定)、またはアナライトの固有の発光を要求しないで使用されてもよい。
【0085】
タンパク質エピトープレベルの測定ための結合アッセイは、固体相または均一なフォーマットを、使用してもよい。好適なアッセイ方法は、サンドイッチまたは競合結合測定を含む。サンドイッチ免役アッセイの例は、Grubbらに対する米国特許第4,168,146号およびTomらに対する米国特許第4,366,241号に記載され、その両方は、参照によって本明細書に組み込まれる。競争免疫アッセイの例は、Deutschらに対する米国特許第4,235,601号、Liottaに対する米国特許第4,442,204号、およびBuechlerらに対する米国特許第5,208,535号に開示されたものを含み、その全てが、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0086】
複数のECMエピトープは、多重化されたアッセイフォーマット、例として、ナノボディアレイの使用をとおして多重化、標識のスペクトル識別を使用する多重化、粒子に実行される結合アッセイのフローサイトメトリー解析による多重化を使用して、測定されてもよい。
【0087】
試験試料中のタンパク質エピトープの検出は、ルーチンの方法に関わる。当業者は、周知の方法を使用して、タンパク質の存在または非存在を検出することができる。かかる方法は、多様な免疫アッセイを含む。一般に、免疫アッセイは、組織学的切片などの試料中のタンパク質に対する抗体または類似のプローブの結合、またはプラスチック表面などの固体相支持体に対する試料中のタンパク質の結合に、関わる。目的のタンパク質に選択的に結合する検出可能な抗体が、次いで加えられる。抗体の検出は、タンパク質の存在を指し示す。検出可能な抗体は、標識されたまたは標識されていない抗体でもよい。標識されていない抗体は、第2の、第1の抗体に特異的に結合する標識されていない抗体、または、第2の、標識されていないプロテインA、抗体とともに複合体となるタンパク質を使用して検出されることができる標識されていない抗体を使用して、検出されてもよい。様々な免役アッセイ手順は、Immunoassays for the 80's, A. Voller et al., Eds., University Park, 1981中に記載され、それは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0088】
ドットブロットおよびウエスタンブロットなどの単純な免疫アッセイは、試験試料によって接触される固体相支持体の使用に、関わる。試験試料中に存在するいかなるタンパク質も、固体相支持体を結合して、特異的な、検出可能な抗体調製物によって、検出されることができる。シグナルの強度は、例えばELISAによって、定量的読み取りを得るために、測定されていることができる。他のより多くの複合体免疫アッセイは、その中で固体相支持体に結合された第1の抗タンパク質抗体が、試験試料によって接触されるところのタンパク質の検出のための、進んだアッセイを、含む。好適なインキュベーション期間の後、固体相支持体は、非結合タンパク質を取り除くために、洗浄される。第1の抗体によって認識されない一部の特異的なタンパク質に特異的である、第2の、別個の抗タンパク質抗体が、次いで加えられる。第2抗体は、好ましくは検出可能である。検出可能な抗体が、第1の抗体をとおして固体相支持体に結合された特異的なタンパク質と複合体となることができるようにするための第2のインキュベーション期間の後に、固体相支持体は、非結合の検出可能な抗体を取り除くために、二度目に洗浄される。あるいは、フォワードサンドイッチアッセイにおいて、第3の検出可能な抗体は、第2の抗体の結合し、システムに加えられる。他の型の免疫測定法は、同時およびリバースアッセイを含む。同時アッセイは、単一のインキュベーション・ステップに、関わり、ここで、固体相支持体に結合される第1の抗体、第2の、検出可能な抗体、および試験試料が、同時に加えられる。インキュベーションが完了されたあと、固体相支持体は、結合されていないタンパク質を取り除くために、洗浄される。固体支持体と関連する検出可能な抗体の存在は、それが、従来のアッセイにおけるように、次いで決定される。リバースアッセイは、インキュベーション期間の後の試験試料に対する検出可能な抗体の溶液の段階的添加、および、追加のインキュベーション期間の後の固体相支持体に結合される抗体の添加に関わる。固体相支持体は、従来の様式で洗われて、結合されていないタンパク質/抗体複合体、および反応していない検出可能な抗体を取り除く。
【0089】
多数の方法が、抗体の検出および定量化に関して周知である。実例として、抗体は、該抗体を酵素に結合し、続いてキャプチャーELISAなどの、酵素免疫アッセイ(EIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の抗体を使用することによって、検出可能に標識されることができる。酵素は、続いてその基質に暴露される場合に、基質と反応し、たとえば、分光光度的、蛍光定量的、または視覚的手段によって検出されることができる化学成分を発生させる。抗体を検出可能的に標識するために使用されることができる酵素は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースホスファートイソメラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼを含むが、これに限定されるものではない。
【0090】
本発明の方法は、検出可能標識を有するナノボディを使用する、in vivo画像化のための方法を、含む。実例として、in vivo画像化方法は、PET(ポジトロン放出断層撮影)画像化を、含んでもよい。PET画像化技術は、リアルタイムに分子レベルで、生理的プロセスの高品質可視化を、可能にする。PETは、臨床的な診断法および薬剤開発において、それゆえ高度に有用である。PET技術における多数の技術的な改善は、トレーサー開発の分野において、生理学的および病態生理学的プロセスにおいて関わられる分子標的を視覚化する能力を伴う選択的分子プローブの、標識化戦略およびインテリジェント設計における両方の進展を含んで、開発されてきたが、しかしながら、いくつかの腫瘍および微小転移の検出は、課題を残している。本出願人は、本発明に従って開発されたユニークなナノボディを使用する免疫-PET/CTが、本技術において予想外の改善を提供し、そして、FDG-PET/CTの従来の画像化モダリティーと比較して、著しく初期のステージがんおよび小さな転移の可視化を改善するということを、発見した。
図4に示されるとおり、本発明のナノボディを用いて発生する画像は、かかる従来の方法より、著しく上質である。
【0091】
検出可能な標識は、部分であり、そして、その存在は、直接、または、間接的に確認されることができる。一般に、標識の検出は、標識によってエネルギーの発光に関わる。標識は、特定の波長の光子または他の素粒子を発しておよび/または吸収するその能力によって、直接検出されることができる(例として、放射活性、発光、光学、または電子密度等々)。標識は、特定の波長の光をそれ自体発してもまたは吸収してもよい別の部分を結合し、補充し、場合によっては、切断するその能力によって、間接的に検出されることができる(例として、FLAGエピトープなどのエピトープ標識、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素タグ等々)。間接的な検出の例は、目に見える製品に基質を切断する第1の酵素標識の、使用である。標識は、それがそれほど限定されないにもかかわらず、化学物質、ペプチド、または核酸分子本来の姿のものでもよい。標識は、PET同位体、シンチグラフィ、NMR等々などの、画像化技法によって使用されることができる、いかなる公知の標識も含む。他の検出可能標識は、P32またはH3などの放射性同位体、蛍光色素などのルミネセンスマーカー、光学または電子密度マーカー等々、または、FLAGエピトープまたはHAエピトープなどのエピトープ、ビオチン、アビジン、およびホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素タグ、β-ガラクトシダーゼ、ならびにはナノ粒子等々を、含む。
【0092】
標識は、その合成の間、または、それの後、試薬に結合されてもよい。当業者に公知の標識化という多くの種々の標識および方法が、ある。本発明において使用されることができる標識の型の例は、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド状金属、化学発光化合物、および生物発光化合物を含む。当業者は、ルーチンの実験法を使用して、本明細書に記載の試薬のためのその他の好適な標識を知るだろう、または、それを確認することが可能である。さらにその上、発明の試薬に対するこれらの標識のカップリングまたは接合は、当業者に共通の標準技法を使用して、遂行されることができる。治療剤は、単独で送達されることができ、そして様々な型のナノ粒子によって組み合わせてもでき、そして、これらは、疾患部位における濃縮を許すナノ粒子との接合によって、疾患特異的なECMに標的とされることができる。
【0093】
より大きな感度に結果としてなってもよい別の標識化技法は、本明細書に記載の分子を低い分子量のハプテンにカップリングすることから成る。これらのハプテンは、次いで第2の反応によって特異的に変化させられることができる。たとえば、アビジンと反応するビオチン、またはジニトロフェニル、ピリドキサル、またはフルオレセインなどの特異的抗ハプテン抗体と反応することができるハプテンを使用するのが、一般的である。
【0094】
ここで記載のナノボディなどの抗体またはそれらのフラグメントを含む結合ペプチドまたはポリペプチドの、検出可能な標識への接合は、とりわけ、診断検査法のかかる剤の使用を、促進する。検出可能標識の別のカテゴリは、たとえば磁気共鳴画像法(MRI):Gd(DOTA);核医学に関して:201Tl、ガンマ放出放射性核種99mTc;ポジトロン放射形断層撮影(PET)に関して:ポジトロン放出同位体、18F-フッ化デオキシグルコース(18FDG)、18F-フッ化物、銅64、ガドジアミド、および203PbなどのPb(II)の放射性同位体;111Inなどの、診断および画像化標識(in vivo検出可能標識と一般に称される)を、含む。
【0095】
本明細書に使用のように、「接合された」は、いかなる生理化学的な手段によっても互いに安定して結合される、2つの実体を、意味する。付着の本来の姿が、それが、実質的にはどちらの実体の有効性も損なわないようであることは、重要である。これらのパラメーターに注意して、当業者に公知のいかなる共有結合性または非共有的結合が、用いられてもよい。いくつかの態様において、共有結合が、好ましい。非共有の接合は、疎水性相互作用、イオン性相互作用、ビオチンアビジンとビオチンストレプトアビジンとの複合体形成などの高親和性相互作用、および他の親和性相互作用を、含む。かかる付着の手段および方法は、当業者に周知である。
【0096】
したがって、本発明は、本発明の方法に用いられる検出可能な標識などの、活性剤に任意に接合されていてもよいナノボディなどの、ECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドを、意図する。活性剤は、ナノボディのN末端またはC末端または内部アミノ酸に接合されてもよい。他の側面において、本発明は、活性剤に直接接合されたECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチド(例として、ナノボディ)を、意図する。活性剤が、ECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸(すなわち、N末端アミノ酸、C末端アミノ酸、または内部アミノ酸)に直接連結される(例として、ペプチド結合を介して)場合、ECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドは、活性剤に直接接合される。あるいは、リンカーが、活性剤をECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドに接続するために使用される、または、2つの構成要素が、共通の担体分子への連結によって、互いに間接的に連結されてもよい場合、ECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドは、活性剤に間接的に接合されてもよい。
【0097】
したがって、リンカー分子(「リンカー」)は、ECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドを別の分子(例として、多重-または二重特異的抗体における)に連結するために、任意に用いられてもよい。リンカーはペプチドでもよく、それは、1から複数のアミノ酸または非ペプチド分子から成る。本発明において有用なペプチドリンカー分子の例は、グリシンが豊かなペプチドリンカーを含み(例として、US5,908,626を参照)、ここで、アミノ酸残基の半数より多くは、グリシンである。好ましくは、かかるグリシンが豊かなペプチドリンカーは、約20またはより少ないアミノ酸から成る。ナノボディの特異的な利点は、VHHドメインナノボディをコードするクローニングされたDNA配列の単離、サブクローニング、および発現の間、短いペプチドタグが、他の実体にこれらのタグを介して安易な接合を遂行するソルターゼ酵素によって認識され、組み込まれるということである(Guimaresら)。
担体分子は、実例として、PEGまたはTEG分子を含んでもよい。PEGまたはTEG担体改変ペプチドは、PEG化またはTEG化ペプチドとして、称されるだろう。
【0098】
リンカー分子は、非ペプチドまたは部分ペプチド分子を、含んでもよい。実例として、ECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドは、グルタルアルデヒドまたはEDCなどの周知の架橋分子を使用して、他の分子に連結されてもよい(Pierce、Rockford、Illinois)。二官能基架橋分子は、2つの別個の反応部位を所有する、リンカー分子である。たとえば、二官能基リンカー分子の反応部位の1つは、ペプチド上の官能基と反応して、共有結合を形成してもよく、そして他の反応部位は、別の分子上の官能基と反応して、共有結合を形成してもよい。
【0099】
ホモ二官能基クロスリンカー分子は、化学的に同一である2つの反応部位を有する。ホモ二官能基クロスリンカー分子の例としては、グルタルアルデヒド;N,N'-ビス(3-マレイミド-プロピオニル-2-ヒドロキシ-1,3-プロパンジオール(スルフヒドリル特異的なホモ二官能基クロスリンカー);一定のN-スクシンイミドエステル、(例として、スクシンイミジルスベラート、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオナート)、および可溶性のビススルホン酸およびそれらの塩を含むが、これに限定されない。
【0100】
好ましくは、二官能基クロスリンカー分子は、ヘテロ二官能基リンカー分子であり、リンカーが、少なくとも2つの異なる反応部位を有し、それぞれが、ペプチドまたは他の分子に個別に連結されることができることを、意味する。かかるヘテロ二官能基リンカーの使用は、選択されたペプチド配列への、それぞれの各反応部位の化学的な分離および段階的添加(ベクトル性接合)を許す。本発明において有用なヘテロ二官能基リンカーは、限定されず、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル;m-マレイミド-ベンゾイルスルホスクシンイミドエステル;γ-マレインイミド酪酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル;および、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナートを、含む。
【0101】
本明細書に記載のECMタンパク質結合ペプチドはまたポリペプチドのカルボキシル末端のアミノ酸残基は、遊離の末端のカルボン酸基の反応性をブロックまたは低減するために、例として、エステルの形成、ペプチド結合、および他の反応を妨げるために、改変されてもよい。かかるブロッキング基は、カルボン酸基のアミドを形成することを包含する。かかるブロッキングが望ましくない免疫反応を誘発せず、または、有意にECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドの特異的に機能する能力を変更しないという条件で、ポリペプチド中に存在し得る他のカルボン酸基はまた、ブロックされてもよい。
【0102】
ネイティブなまたは天然に存在するECMタンパク質結合ペプチドまたはポリペプチドの好適な生物学的に活性なバリアントは、その結合ペプチドまたはポリペプチドのフラグメント、類似体、および誘導体であり得る。「類似体」は、ネイティブなポリペプチドの類似体、または、ネイティブなポリペプチドのフラグメントの類似体のいずれかであり、類似体は、ネイティブなポリペプチド配列および1以上のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有する構造を含む。ECMタンパク質ナノボディまたは抗体フラグメントは、本明細書でナノボディまたは抗体の一部として称される、完全長未満のECMタンパク質結合ナノボディまたは抗体に同一であるか、または、少なくとも90%相同である、ペプチドである。ナノボディまたは抗体の一部は、完全長ナノボディまたは抗体ポリペプチドを代表する。フラグメントは、もし、それが、ナノボディまたは抗体の少なくとも2個のアミノ酸(連続したまたは非連続した)を包含し、ECMタンパク質に結合する場合、完全長ナノボディまたは抗体を代表する。
【0103】
いくつかの態様において、部分は、ナイティブなナノボディまたは抗体の全体の90%未満である。他の態様において、部分は、ネイティブなナノボディまたは抗体の全体の50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%未満である。「誘導体」は、ナノボディまたは抗体の所望される生物活性が保持される限り、目的のポリペプチド、ポリペプチドのフラグメント、またはそれらの夫々の類似体の何れかの好適な改変(グリコシル化、リン酸化、ポリマー接合(ポリエチレングルコールとなど)、または、外来の部分の他の付加など)を意図する。ポリペプチドフラグメント、類似体、および誘導体を作成するための方法は、当該技術分野において一般に利用可能である。
【0104】
活性剤は、上に記載のとおりの、検出可能な標識であり得る。かかる化合物は、腫瘍細胞の検出および特徴づけのために、in vitroおよびin vivoで有用である。
結合ペプチドまたはポリペプチドは、抗がん薬物などの、薬物または治療薬(therapeutic)である活性剤に接合される。かかる化合物は、疾患および腫瘍を処置するために、治療用抱合体として使用され得る。
【0105】
治療用抱合体は、化学治療剤、毒素(例として、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそのフラグメント、または低分子毒素)、または、放射性同位体(すなわち、放射性抱合体)またはCAR-T細胞などの細胞傷害性薬物に接合された、本明細書に記載されたナノボディなどの結合ペプチドまたはポリペプチドを包含する。本発明の結合ペプチドまたはポリペプチドに接合され得る他の抗腫瘍剤は、BCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチンおよび5-フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号、同第5,770,710号に記載のLL-E33288複合体としてまとめて公知の薬剤ファミリー、ならびにエスペラミシン(米国特許第5,877,296号)を包含する。抱合体において使用され得る、酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)からの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca Americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)インヒビター、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンを包含する。
【0106】
細胞の選択的な破壊のために、抗体は、高度に放射性の原子を接合され得る。様々な放射性同位体は、放射性接合された抗体の産生に利用可能である。例は、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212PbおよびLuの放射性同位体を包含する。抱合体は、検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子(例えば99mTcまたは123I)、または核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、mriとしても知られる)のためのスピン標識(123I、131I、111In、19F、13C、15N、17O、ガドリニウム、マンガンまたは鉄など)を含み得る。
【0107】
放射性または他の標識は、公知の方法で、抱合体中に取り込まれ得る。例えば、結合ペプチドまたはポリペプチドは、生合成されてもよいし、例えば、水素のかわりにフッ素19を包含する好適なアミノ酸前駆体を使用する化学的アミノ酸合成によって合成されてもよい。99mTcまたは123I、186Re、188Reおよび111Inなどの標識は、ペプチド中のシステイン残基を介して結合され得る。イットリウム90は、リジン残基を介して付着され得る。ヨードゲン法(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)は、ヨウ素123を取り込むために使用することができる。"Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy" (Chatal, CRC Press 1989)は、他の方法を詳細に記載する。
【0108】
他の側面において、細胞の選択的な破壊は、キメラ抗原受容体を有するCAR-T細胞によって媒介され得る。CAR-T細胞は、本明細書に使用されるとき、えり抜きの抗原に対してそれらの特異性を再指向する(redirect)ようにキメラ受容体が導入されたT細胞を指す。かかる受容体は、細胞質シグナリングドメインと組み合わせて、MHC制限と独立して抗原を認識する外部ドメインを含む。多くの異なるペプチドは、キメラ抗原受容体の外部ドメインとして、T細胞に導入され得る。例は、ナノボディ、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、または抗体フラグメントを包含する。一態様において、ペプチドは、ナノボディである。
【0109】
一態様において、本開示は、CARを発現するように改変された細胞(例として、T細胞)を提供し、ここで、CAR-T細胞は、抗腫瘍特性を示す。CARは、T細胞抗原受容体複合体ゼータ鎖(例として、CD3ゼータ)の細胞内シグナリングドメインに融合された外部ドメインペプチドを含むように改変され得る。CARは、T細胞中で発現される場合、抗原結合特異性に基づく抗原認識を再指向することができる。例示の抗原は、正常な組織よりも、疾患組織において、多くの量で存在する病的な状態のECMエピトープである。
【0110】
本発明は、何れかの抗原結合ペプチドを包含し、その同族抗原は、正常組織よりも疾患組織において、多い量で存在し、これは、その同族抗原に結合されると、腫瘍細胞が増速しないように、死滅が促進されるように腫瘍細胞に影響するか、または、患者中の腫瘍負荷が減少または除去されるように影響される。抗原結合ペプチドは、好ましくは、同時刺激性分子およびゼータ鎖の1以上からの細胞内ドメインと融合されている。いくつかの態様において、抗原結合ペプチドは、CD137(4-1BB)シグナリングドメイン、CD28シグナリングドメイン、CD3ゼータシグナルドメイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の細胞内ドメインと融合される。
【0111】
いくつかの態様において、抗原結合ペプチドは、ナノボディである。いくつかの態様において、ナノボディは、病的な状態のECMエピトープに特異的であり、および、これに直接結合する。一態様において、病的な状態のECMエピトープは、フィブロネクチンのEIIIAまたはEIIIBドメインである。別の態様において、病的な状態のECMエピトープは、テネイシンCまたはテネイシンのエピトープである。
【0112】
いくつかの側面において、本開示は、キメラ抗原受容体構築物を作製することによって、CAR-T細胞を作製するための方法を提供する。キメラ抗原受容体は、本明細書で使用されるときは、ペプチドの外部ドメイン、ヒンジおよび膜貫通ドメイン、および細胞内シグナリングドメイン(ヒト4-1BBおよびCD3ゼータのものなど)を包含する、所望されるCARをコードする核酸を含むベクターを指す。かかるベクターは、細胞に所望されるCARを導入することができる。
【0113】
いくつかの場合において、ベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの側面において、CARの外部ドメインは、ナノボディである。他の側面において、CARの外部ドメインは、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、または抗体フラグメントである。いくつかの態様において、本発明のCARは、抗EIIIBナノボディ、ヒトCD8ヒンジおよび膜貫通ドメイン、および細胞内シグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、本発明のCARは、配列番号1~4で表される核酸配列を含む。
【0114】
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、先天性免疫機能において役割を果たす末梢血リンパ球である。NK細胞は、健常細胞と、ウイルス感染細胞またはがん性細胞との間を区別することを担う、様々な活性化および阻害性受容体を発現する。T細胞とは違って、NK細胞は、抗原と独立したやり方で、標的細胞に対してそれらの細胞毒性効果を発揮する。結果として、NK細胞は、抗原プライミングを必要とせず、および、特定の抗原の非存在下で、強力な細胞傷害性を表示し得る。
【0115】
CARは、NK細胞などの免疫エフェクター細胞に、ある抗原特異性を導入することができる。よって、本発明の組成物は、初代細胞および少なくとも1つのキメラ抗原受容体で改変された細胞株の両方である、NK細胞を含む医薬組成物を包含する。
【0116】
ある態様において、改変されたNK細胞は、本明細書に記載のナノボディによって結合されるECMタンパク質について25%を超えて陽性である複数の細胞を含む。ある態様において、CARは、配列番号1~4のいずれか1つで表される配列に少なくとも80%同一である標的化ドメインアミノ酸配列を含む。ある態様において、CARは、配列番号1~4のいずれか1つで表される配列に少なくとも90%同一である標的化ドメインアミノ酸配列を含む。ある態様において、CARは、配列番号1~4のいずれか1つで表される配列に少なくとも95%同一である標的化ドメインアミノ酸配列を含む。ある態様において、CARは、配列番号1~4のいずれか1つで表される配列に少なくとも98%同一である標的化ドメインアミノ酸配列を含む。ある態様において、CARは、配列番号1~4のいずれか1つで表される配列と同一である標的化ドメインアミノ酸配列を含む。
【0117】
好ましくは、ECM特異的CAR発現T細胞およびNK細胞は、がんに関連するECMについてのそれらの親和性と比較して、ECMタンパク質に関連する正常(非悪性)組織のECMについて、より低い親和性を有する。このことが生じ得るのは、例えば、がん細胞が、正常細胞よりも高いレベルの特異的標的化ECMタンパク質に関連するからである、および/または、CARの細胞外ドメインが、がん細胞に関連するECMの特定の形態についてより高い親和性、および/または、正常細胞に関連するECMの特定の形態についてより低い親和性、を有するからである。
【0118】
がんECMについてのCAR-TまたはNK細胞のより高い親和性は、正常ECMについてのCAR-TまたはNK細胞の親和性と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%であることが好ましい。正常なECMについてのCAR-TまたはNK細胞の親和性の減少は、がんECMについてのCAR-TまたはNK細胞の親和性と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%であることが好ましい。がんECMについてのACR-TまたはNK細胞の親和性の減少は、正常ECMについてのCAR-TまたはNK細胞の親和性の、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも1000倍であることが好ましい。
【0119】
膜貫通ドメインは、細胞外ドメインおよび細胞内シグナルドメインを連結する。膜貫通ドメインの例は、これらに限定されないが、CD28、CD3-イプシロン、CD8-アルファ、CD3、CD4、および4-1BBを包含する。代替的に、人工ポリペプチドから構成される膜貫通ドメインは、使用され得る。
【0120】
細胞内シグナルドメインは、T細胞またはNK細胞のエフェクター機能の発揮のために必要なシグナルを伝達する。より具体的に言うと、細胞外ドメインが標的ECMペプチドに結合すると、細胞内シグナルドメインは、細胞の活性化に必要なシグナルを伝達する。細胞内シグナルドメインは、実例として、TCR複合体を通してシグナルを伝達するためのドメイン、および、同時刺激性シグナルを伝達するためのドメインを包含する。同時刺激性分子の例は、CD28、4-1BB(CD137)、CD2、CD4、CD5、CD134、OX-40、およびICOSを包含する。
【0121】
リーダー配列またはシグナルペプチドはまた、CAR分泌を促進するために使用され得る。例えば、GM-CSFレセプターのリーダー配列が、使用され得る。加えて、構造は、好ましくは、スペーサードメインを通して一緒に連結された、細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインから構成される。より具体的に言うと、好ましい態様に従うCARは、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサードメインを含有する。スペーサードメインは、CARと標的ECMとの間の連結を促進するために使用される。
【0122】
改変されたT細胞またはNK細胞は、二重特異的であってもよく、すなわち、二重特異的CARまたは複数の異なるCARを発現してもよく、ここで、それらの親和性は、2つの別個のリガンド/抗原についてである。二重特異的CAR-TまたはNKは、がん細胞上の潜在的な結合部位の数を増大させるためか、または、代替的に、TまたはNK-CARに特異的なリガンドを発現する他の免疫エフェクター細胞へ、がん細胞を局在化させるため、のいずれかのために使用され得る。がん治療における使用のために、二重特異的CARは、標的腫瘍細胞または腫瘍ECMに、および、エフェクター細胞(例としてT細胞、NK細胞またはマクロファージ)に結合しても良い。本開示の改変されたT細胞またはNK細胞は、同じT細胞またはNK細胞によって発現される二重特異的CARまたは複数のCARを含んでいてもよい。これは、T細胞またはNK細胞が、2つの異なる抗原を同時に標的化することを可能にする。
【0123】
抗体および細胞傷害性薬物の抱合体は、N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシニミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジプイミデートHClなど)、活性エステル(ジスクシニミジルスベラートなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トルエン2,6-ジイソシアナートなど)、およびビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの種々の二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製することができる。
【0124】
例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987)において記載されるように調製することができる。炭素14標識した1-イソチオシアネートベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドの接合のための例示のキレート剤である。WO94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞における細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定なリンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィドを含有するリンカー(Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0125】
加えて、サイトカインおよび抗体サイトカイン抱合体は、治療的に使用することができる。ECMタンパク質に対する抗体は、がん性組織に対する免疫応答を強化することを包含する、数多の機能を有し得るサイトカインを送達するために使用され得る。サイトカインは、これらに限定されないが、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-18、TNF、IFN-γ、IFN-β、ケモカイン、およびIFN-αを包含する。一態様において、ナノボディは、キメラ抗原受容体に組み込まれて、および次いで、T細胞の表面で発現されて(所謂CAR-T細胞)、これらの細胞を疾患組織のECMへ標的化することができ、それにより、標的化される腫瘍細胞の近傍にそれらを濃縮させる。
【0126】
一側面において、本発明は、あるECMタンパク質エピトープの正常でない発現に関連する他の障害または疾患の処置のための方法を提供する。ECMエピトープの正常でない発現に関連する障害または疾患の例は、これらに限定されないが、がん、線維症、アテローム、炎症性障害、および動脈瘤を包含する。
【0127】
一側面において、本発明は、がんの処置のための方法を提供する。用語「腫瘍」、「がん」、「がん性組織」および「癌」は、本明細書で互換的に使用され、および各々は、身体器官および系の正常な機能に干渉する細胞の制御されていない増殖を指す。それらの本来の場所およびシードの欠かせない器官(seed vital organ)から転移するがんを包含するがんは、罹患器官の機能的な悪化を通して、対象の死亡を最終的に導き得る。がんは、癌、肉腫、および造血性がんを包含する、様々なカテゴリーに分類され得る。癌は、上皮細胞から生じる悪性がんであり、腺癌および扁平上皮細胞癌を包含する。
【0128】
本明細書に使用されるとき、対象は、ヒト、非ヒトの霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、または齧歯類の動物である。すべての態様において、ヒト対象が好ましい。がんにおける予測的治療に関する本発明の側面において、対象は、がんを有すると疑われるか、または、癌を有すると診断されたかのいずれかのヒトである。がんを有すると疑われる対象を同定する方法は、身体的な調査、対象の家族の病歴、対象の病歴、生検、または数多の画像化技術(超音波検査、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴画像法、磁気共鳴分光法、またはポジトロン断層撮影など)を包含し得る。がんのための診断方法およびがん診断の臨床の描写は、医学分野の当業者に周知である。
【0129】
がん治療およびそれらの投薬量、投与のルートおよび推奨される用法は、当該技術分野において知られている。いくつかの態様において、本発明の治療用化合物は、1以上の追加の抗がん剤をさらに含む医薬組成物に製剤化される。
【0130】
本発明の活性剤は、対象を処置するのに有効な量で、対象に投与される。「有効(な)量」は、実例としては、所望される生物学的効果を実現するのに必要または充分な量である。実例として、有効量は、がん細胞成長または増殖を予防または阻害するのに充分な量であるか、または代替的に、がん細胞のアポトーシスを誘導するかまたは腫瘍退縮を誘導するのに充分な量である。いくつかの好ましい態様において、有効量は、転移性のがんの発生を低減するために有用な量である。
【0131】
対象の処置における、本発明の化合物の有効量は、使用する特定の化合物、化合物の送達の様式、およびそれが単独でまたは組み合わせて使用されるか、に依存して変化し得る。何れかの具体的な適用のための有効量もまた、対象におけるがんのタイプおよび/または程度、処置のために投与される具体的な化合物、対象のサイズ、または、障害の重症度などの因子に依存して変化し得る。
【0132】
当業者は、過度な実験を必要とすることなく、本発明の具体的な分子の有効量を経験的に決定することができる。本明細書に提供される教示と組み合わせて、様々な活性化合物の中で選択することにより、および、効能、相対的なバイオアベイラビリティ、患者の体重、副作用の重症度および好ましい投与様式などの因子を秤にかけることにより、それ自体においておよびそれ自体の実質的な毒性を引き起さず、および、さらに具体的な対象を処置するのに全面的に有効である、有効な予防的または治療的な処置計画を計画することができる。
【0133】
本発明のプロトコルの毒性および有効性は、細胞培養または実験動物における標準的な医薬手順によって決定することができる(例として、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために)。毒性影響と治療効果との間の用量比率は、治療上の指標であり、比率LD50/ED50として表され得る。大きい治療的な指標を示す、予防剤および/または治療剤が好ましい。毒性の副作用を示す、予防剤および/または治療剤は使用され得るが、未感染細胞への潜在的な損傷を最小化し、それにより、副作用を最小化するために、罹患組織の部位にかかる薬剤を標的化する送達系を設計するように、注意しなければならない。
【0134】
細胞培養アッセイ、動物研究、およびヒト研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲の予防剤および/または治療剤を製剤化する際に使用され得る。かかる薬剤の投薬量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性がない、ED50を包含する循環濃度の範囲内である。投薬量は、使用される剤形および利用される投与のルートに依存して、この範囲内で変化し得る。
【0135】
本発明の方法において使用される何れかの薬剤について、治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定され得る。用量は、細胞培養において決定される場合、IC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を包含する循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方され得る。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿におけるレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0136】
本明細書に使用されるとき、用語「処置(する)」、「処置された」、または「処置する(こと)」は、障害に関して使用される場合、疾患の発症に対する対象の耐性を増大させる、または、換言すれば、対象が疾患を発症する可能性を減少させる、予防的処置、並びに、疾患と闘い、疾患が悪化するのを防ぎ、または、治療の非存在下と比較して疾患の進行を遅らせるための、対象が疾患を発症した後の処置を指す。
【0137】
本明細書に記載の診断用および治療用化合物は、他の治療剤と組み合わせて投与され得、および、かかる投与は、同時または逐次的である。他の治療剤が同時に投与される場合、これらは、同じまたは別々の製剤で投与され得るが、同時に投与される。化学療法剤を包含する他の治療剤の投与はまた、時間的に別々であってもよく、治療剤が、本明細書に記載の治療薬の投与の前または後のいずれかに、異なる時間で投与されることを意味する。これらの化合物の投与の間の時間の分離は、分の問題であってもよいし、それより長くても良い。本発明の治療薬と組み合わせて使用される場合、公知の治療薬の投与量は、副作用を避けるために、いくつかの場合において、低減され得る。
【0138】
よって、いくつかの場合において、本発明はまた、対象に別のがん処置(例として、放射線治療、化学治療または外科手術)を投与することを包含する。従来のがん治療の例は、オールトランス型レチノイン酸、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アナストロゾール、アザシチジン、アザチオプリン、アルケラン、Ara-C、三酸化ヒ素(トリセノックス)、BiCNU ブレオマイシン、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、シトキサン、DTIC、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、エキセメスタン、エルロチニブ、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ハーセプチン、ハイドレア、イホスファミド、イリノテカン、イダルビシン、イマチニブ、レトロゾール、ラパチニブ、ロイスタチン、6-MP、ミスラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、メクロレタミン、メゲストロール、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ナベルビン、ナイトロジェンマスタード、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペメトレキセド、リツキサン、6-TG、タキソール、トポテカン、タモキシフェン、タキソテール、テニポシド、チオグアニン、トレミフェン、トリメトレキサート、トラスツズマブ、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ベルバン(Velban)、VP-16、およびゼローダなどの薬剤を用いるがんの処置を包含する。
【0139】
本発明の分子の複数回用量もまた、企図される。いくつかの場合において、本発明の分子が、別の治療薬(実例として、化学治療剤)とともに投与される場合、治療投薬量以下の分子のいずれかまたは両方が使用され得る。「治療用量以下」は、本明細書に使用されるときは、他の薬剤の非存在下で投与される場合、対象において治療結果を生じるであろう投薬量未満である投薬量を指す。
【0140】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体中に溶解または分散された、有効量の1以上の薬剤を含む。句「薬学的にまたは薬理学的に許容し得る」は、必要に応じて、動物(例えば、ヒトなど)に投与される場合、有害な、アレルギー性のまたは他の有害な反応を生じない、分子実態および組成物を指す。その上、動物(例として、ヒト)投与のために、調製は、FDAの生物学的標準事務局(Office of Biological Standard)によって要求される、無菌、発熱性、一般的な安全性および純度標準を満たさなければならないことが理解される。化合物は、ヒトへの投与に一般に好適である。この用語は、化合物または組成物が、ヒトへの投与に先立ち、化合物または組成物のさらなる操作が必要でないように、非毒性および充分に純粋であることを要求する。
【0141】
本明細書に使用されるとき、「薬学的に許容し得る担体」は、当業者に公知であろう、ありとあらゆる溶媒、分散培地、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例として、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩類、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素、それらの材料および組み合わせなどを包含する(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences (1990)を参照のこと)。何れかの従来の担体が活性成分と非適合性である場合を除き、治療用組成物または医薬組成物におけるその使用が、企図される。化合物は、滅菌されていても、滅菌されていなくてもよい。
【0142】
本明細書に記載の化合物は、固体、液体またはエアロゾル形態で投与されるかに応じて、および、注射などの投与のルートのために滅菌する必要があるかに応じて、異なるタイプの担体を含んでいても良い。本発明は、静脈内に、皮内に、動脈内に、病巣内に、腫瘍内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に(intraprostaticaly)、胸膜内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、結膜下に、血管内に、粘膜に、心膜内に、臍部内に(intraumbilically)、眼内に、経口的に、局所的に、局部的に、吸入(例として、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続的な注入、細胞を直接標的化する局部の灌流バス(localized perfusion bathing target cells directly)、カテーテルを介して、洗浄を介して、クリームで、脂質組成物で(例として、リポソーム)、または当業者に公知であろう他の方法または上記のいずれかの組み合わせで投与され得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences (1990)を参照のこと)。具体的な態様において、腹腔内注射が、企図される。
【0143】
いずれのケースにおいても、組成物は、1以上の構成要素の酸化を遅延させる様々な抗酸化剤を含み得る。加えて、微生物の作用の防止は、これらに限定されないが、パラベン(例として、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組み合わせを包含する、様々な抗細菌剤および抗真菌剤などの防腐剤によってもたらされ得る。
【0144】
薬剤は、遊離塩基、中性または塩の形態で組成物に製剤化され得る。薬学的に許容し得る塩は、酸付加塩、例として、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成されるもの、または、例えば、塩化水素またはリン酸などの無機酸と形成されるもの、または酢酸、シュウ酸、酒石酸またはマンデル酸などの有機酸と形成されるものを包含する。遊離カルボキシル基と形成される塩もまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインなどの有機塩基に由来し得る。
【0145】
組成物が液体形態である態様において、担体は、これらに限定されないが、水、エタノール、ポリオール(例として、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等々)、脂質(例として、トリグリセリド、植物油、リポソーム)およびそれらの組み合わせを含む、溶媒または分散媒であり得る。正しい流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、例えば、液体ポリオールまたは脂質などの担体中に分散させることによる必要な粒子サイズの維持によって、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤の使用によって、または、かかる方法の組み合わせによって、維持することができる。多くの場合において、例えば、糖、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせなどの等張剤を包含することが好ましい。
【0146】
本発明の化合物は、組織に直接投与され得る。直接組織投与は、直接的な注射によって達成され得る。化合物は、一回で投与されても良いし、または代替的に、これらは、複数の投与によって投与されても良い。複数回投与される場合、化合物は、異なるルートを介して投与されてもよい。例えば、初回(または最初の2,3回)投与は、後の投与が全身性である限り、罹患組織に直接行われ得る。
【0147】
本発明の製剤は、薬学的に許容し得る溶液で投与され、これは、慣用的に、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、相溶性のある担体、アジュバント、および任意に他の治療用成分を含有し得る。一般に、医薬組成物は、本発明の化合物および薬学的に許容し得る担体を含む。核酸、小分子、ペプチド、モノクローナル抗体、および抗体フラグメントについての、薬学的に許容し得る担体は、当業者に周知である。本明細書に使用されるとき、薬学的に許容し得る担体は、活性成分の生物活性の有効性に干渉しない、非毒性の材料を意味する。
【0148】
薬学的に許容し得る担体は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤および当該技術分野において周知である他の材料を包含する。ペプチドのための、例示の薬学的に許容し得る担体は、とりわけ、米国特許第5,211,657号に記載されている。かかる調製物は、ルーチン的に、塩、緩衝剤、防腐剤、相溶性のある担体、および任意に他の治療剤を含有し得る。医薬において使用される場合、塩は、薬学的に許容し得るべきであるが、非薬学的に許容し得る塩は、便宜上、その薬学的に許容し得る塩を調製するために使用されてもよく、および、本発明の範囲から除外されない。かかる薬理学的および薬学的に許容し得る塩は、これらに限定されないが、以下の酸から調製されるものを包含する:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。また、薬学的に許容し得る塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩(ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩など)として調製され得る。
【0149】
本発明の化合物は、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒剤、軟膏、溶液、保管所(depositories)、吸入剤および注射剤、ならびに、経口、非経口または外科的投与のための通常の様式などの、固体、半固体、液体またはガス状形態で、調製物に製剤化され得る。本発明は、徐放性放出または制御放出のために設計されるものを包含する、移植片などの、局所投与のために製剤化される医薬組成物を包含する。
【0150】
経口投与のための好適な組成物は、カプセル剤、錠剤、トローチ剤などの不連続単位として提示されてもよく、各々は、活性剤の予め決められた量を含有する。他の組成物は、水性液体または非水性液体の懸濁液(シロップ剤、エリキシル剤またはエマルジョンなど)を包含する。
【0151】
経口投与のために、化合物は、活性化合物を、当該技術分野において周知である薬学的に許容し得る担体と組み合わせることによって、容易に製剤化され得る。かかる担体は、本発明の化合物を、処置される対象による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁液等として製剤化することを可能にする。経口用途のための医薬調製物は、任意に得られた混合物を粉砕し、および、所望される場合、錠剤または糖衣錠コアを得るために、適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理し、固体賦形剤として得ることができる。
【0152】
好適な賦形剤は、とりわけ、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを包含する糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ガムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物を包含する。所望される場合、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天(agar)、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤が添加されてもよい。任意に、経口製剤は、内部の酸条件を中和するための生理食塩水または緩衝液中に製剤化されてもよいし、何れの担体なしで投与されてもよい。
【0153】
糖衣錠コアは、適切なコーティングとともに提供される。このために、濃縮された糖溶液が使用され得、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素(Dyestuff)または色素(pigment)が、同定のため、または、異なる組み合わせの活性化合物用量を特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0154】
経口的に使用され得る医薬調製物は、ゼラチンから作製されるプッシュ-フィットカプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(グリセロールおよびソルビトールなど)から作製される軟性密封カプセルを包含する。プッシュ-フィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および、任意に、安定剤と混合して、活性成分を含有し得る。軟性カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの、好適な液体に熔解されても良いし、懸濁されても良い。加えて、安定剤が添加されても良い。経口投与のために製剤化されたマイクロスフェアもまた使用され得る。かかるマイクロスフェアは、当該技術分野において充分に定義されている。経口投与のための全ての製剤は、かかる投与のための好適な投薬量で存在すべきである。
頬側投与のために、組成物は、従来のやり方で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態を採用し得る。
【0155】
吸入による投与のために、本発明に従う使用のための化合物は、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾル噴霧提示の形態で、適切な噴霧剤、例として、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適な気体を使用して、都合良く送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投薬量ユニットは、定量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。化合物およびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末塩基の粉末混合物を含有する、例として吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)における使用のためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、製剤化され得る。エアロゾル送達系を調製するための技法は、当業者に周知である。一般に、かかる系は、活性剤の生物学的特性を有意に損なわない構成要素を利用すべきである(例えば、参照により援用されるSciarra and Cutie, "Aerosols," in Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, 1990, pp 1694-1712を参照のこと)。当業者は、過度な実験に頼ることなく、エアロゾルを産生するための様々なパラメータおよび条件を容易に決定することができる。
【0156】
化合物は、それらを全身的に送達することが所望される場合、例として、ボーラス注射による、注射によって、または連続的な注入によって、非経口投与のために製剤化され得る。注射のための製剤は、防腐剤を添加して、単位剤形、例として、アンプルでまたは複数用量容器で、提示され得る。組成物は、懸濁液、溶液、または油状もしくは性ビヒクル中のエマルジョンなどの形態を採用し得、および、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有し得る。
【0157】
非経口投与のための調製物は、滅菌された水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルションを包含する。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性の担体は、水、アルコール/水性溶液、エマルションまたは懸濁液(生理食塩水および緩衝媒体を包含する)を包含する。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、デキストロース添加リンゲル液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または固定油を包含する。静脈内ビヒクルは、流体および栄養素補充薬(replenisher)、電解質補充薬 (デキストロース添加リンゲル液に基づくものなど)等を包含する。
【0158】
防腐剤および他の添加剤はまた、例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス等として存在し得る。低用量は、静脈内投与などの他の形態の投与から生じるだろう。対象における応答が、適用される初回用量において不充分である場合、高用量(または、異なる、より局在化した送達ルートによる、有効により高用量)が、患者の寛容性が許容する程度まで、使用され得る。一日あたりの複数回用量は、適切な全身性レベルの化合物を達成するために企図される。
【0159】
非生物分解性および生物分解性ポリマーのマトリックスが、本発明の薬剤の対象への送達のために使用され得る。生物分解性マトリックスが好ましい。かかるポリマーは、天然ポリマーであってもよいし、合成ポリマーであってもよい。合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、一般に、数時間~1年またはそれ以上のオーダーで、放出が所望される時間の期間に基づいて選択される。典型的には、数時間と3~12ヶ月との間の範囲の期間にわたる放出が最も所望される。ポリマーは、任意には、その重量の約90%まで水を吸収することができるヒドロゲルの形態であり、および、さらに任意には、多価イオンまたは他のポリマーで架橋されている。
【0160】
一態様において、本開示は、CARを発現するCAR-T細胞を投与することによって、固形腫瘍を有する患者を処置する方法を提供する。別の態様において、本開示は、CARを発現するCAR-T細胞を投与することによって、患者における固形腫瘍に免疫細胞を動員する方法を提供する。いくつかの場合において、CAR-T細胞は、リンパ球注入を使用して投与することができる。好ましくは、自家リンパ球注入が、処置において使用される。自家PBMCは、処置が必要な患者から回収され、および、T細胞は活性化され、および、本明細書に記載のおよび当該分野で公知の方法を使用して拡大され、および次いで、患者に注入して戻される。別の態様において、本開示は、サイトカインまたは免疫細胞を動員する他の結合剤にカップリングされた抗ECMナノボディを投与することによって、患者における固形腫瘍に、免疫細胞を動員する方法を提供する。
【0161】
本発明はまた、本発明の方法を達成するためにアセンブリされた、本明細書に記載の様々な試薬から作製されるキットを包含する。キットは、実例として、FNおよび/またはTNCのEIIIBドメインなどの、1以上のECMタンパク質エピトープを検出するための1以上の試薬を包含し得る。キットはさらに、アッセイ希釈液、標準、対照、および/または検出可能標識を含み得る。アッセイ希釈液、標準および/または対照は、具体的な試料のために最適化されてもよい。結合ペプチドまたはポリペプチドは、実例として、ナノボディ、抗体、核酸、標識された二次薬剤を包含する。当業者は容易に、本発明の試薬が、当該技術分野で周知である確立されたキットフォーマットの1つに容易に組み込まれ得ることを理解するだろう。
【0162】
本明細書に使用されるとき、「促進された」は、がんの処置または特徴付けに関連する本発明の組成物と関連する、教育の方法を包含するビジネスを行う全ての方法、病院および他の臨床指示、医薬の販売を包含する医薬産業活動、および、何れかの形態の書面、口頭および電子コミュニケーションを包含する何れかの広告または他の宣伝活動を包含する。
「指示」は、促進の構成要素を定義し得、および、典型的には、本発明の組成物のパッケージングに関するまたはこれに関連する書面の指示を包含し得る。指示はまた、何れかの様式で提供されるいずれかの口頭または電子の指示を包含し得る。
【0163】
よって、本明細書に記載の薬剤は、いくつかの態様において、治療、診断または調査用途におけるそれらの使用を容易にするために、医薬または診断または調査キットにアセンブリされ得る。キットは、本発明の構成要素および使用のための指示を収容する1以上の容器を包含し得る。具体的に言うと、かかるキットは、意図される治療用途およびこれらの薬剤の適切な投与を記載する指示とともに、本明細書に記載の1以上の薬剤を包含し得る。ある態様において、キット中の薬剤は、具体的な適用および薬剤の投与の方法に好適な医薬製剤および投薬量であり得る。
【0164】
キットは、医師による本明細書に記載の方法の使用を容易にするように設計されてもよく、多数の形態をとり得る。キットの組成物の各々は、適用可能な場合、液体形態で(例として、溶液で)、または固体形態で(例として、乾燥粉末で)提供され得る。あるケースにおいて、組成物のいくつかは、キットとともに提供されてもよいし、されなくてもよく、例えば、好適な溶媒または他の種(例えば、水または細胞培養培地)の添加によって、構成可能または他に加工可能(例として、活性形態に)であり得る。本明細書に使用されるとき、「指示」は、指示の構成要素および/または促進を定義し得、および典型的には、本発明のパッケージングに関するまたはこれに関連する書面の指示を包含し得る。指示はまた、指示がキットに関連することを使用者が明確に理解する様式で、提供されるいずれかの口頭または電子指示を包含し得る(例えば、視聴覚(例として、ビデオテープ、DVD等々)、インターネット、および/またはウェブベースのコミュニケーション等々)。書面の指示は、医薬または生物学的な製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって説明された形態で存在し得、この指示はまた、ヒト投与のための製造、使用または販売の政府機関による承認を反映し得る。
【0165】
キットは、1以上の容器中に、本明細書に記載の構成要素のいずれか1以上を含有し得る。例としては、一態様において、キットは、キットの1以上の構成要素を混合するための、および/または、試料を単離および混合し、および対象に適用するための指示を包含し得る。キットは、本明細書に記載の薬剤を収容する容器を包含し得る。薬剤は、滅菌して調製され、シリンジにパッケージングされ、および、凍結して輸送されてもよい。代替的には、それは、貯蔵のための、バイアルまたは他の容器中に収容されても良い。第二の容器は、滅菌調製された他の薬剤を有しても良い。代替的には、キットは、予め混合された活性剤を包含し、シリンジ、バイアル、管、または他の容器で輸送されてもよい。
【0166】
以下の例は、本発明の実施の特定の場合を説明するために提供されており、本発明の範囲を制限することは意図されない。当業者に明らかなように、本発明は、様々な組成物および方法において適用を見出す。
【実施例】
【0167】
例1:細胞外マトリックス濃縮およびLC/MS
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を有する患者の肺および肝臓転移、ならびに、結腸直腸がんを有する患者からの肝臓転移を得た。これまでに記載される方法を使用して、試料を、これらの組織のECMについて濃縮した(Naba et al., Mol Cell Proteomics. 11:M111 014647 (2012))。ECM調製物の一部を、LC-MS/MS分析に供し、および残りを、確立された方法を使用するナノボディライブラリ生成のために、アルパカを免疫化するために使用した(Pardon et al., Nat Protoc. 9(3): 674-93 (2014))。
【0168】
例2:アルパカ免疫化
疾患組織の細胞外マトリックスは、正常組織のそれとは別個であることが知られており、およびしばしば、疾患部位に排他的にまたは選択的に存在するECMタンパク質およびECMタンパク質のエピトープを含有する(LC/MS/MSによって示されるように、および、免疫組織化学によって確認されるように)。がんのような疾患組織に関連するECMタンパク質エピトープに特異的なアルパカ由来のナノボディを開発するために、4匹の異なるアルパカを、以下を用いて免疫化した:(a)ECMタンパク質および疾患ECMに関連するタンパク質由来の合成ペプチドのカクテル;(b)肝臓への結腸がん転移のヒト患者からのECM調製物;(c)肝臓へのトリプルネガティブ乳がん転移のヒト患者からのECM調製物;および(d)肺へのトリプルネガティブ乳がん転移のヒト患者からのECM調製物。
【0169】
例3:ナノボディライブラリ構築
アルパカなどのラクダ科動物は、従来の免疫グロブリンを作製することに加えて、それらのVHH(重鎖のみの抗体の重鎖の可変領域)ドメインを通してそれらの抗原に結合する重鎖のみの抗体を作製する。組み換えVHHドメインは、ナノボディと呼ばれており、これは、15kDaの単一タンパク質ドメインで、無傷の抗体の全体の特異性を含有する単一ドメイン抗体である。リンパ球は、免疫化されたアルパカから回収された血液から単離され、ECM調製物でブーストされる。リンパ球RNAを抽出し、VHHドメインをコードするcDNAを、PCRによって増幅し、M13ファージディスプレイをベースとしたナノボディライブラリの構築のために使用した。4つのM13ライブラリを、上記の細胞外マトリックスタンパク質調製物に対して作製した。ライブラリを、表1に示す。これらのライブラリは、105~106cfu/mlの多様性を有していた。
【0170】
【0171】
例4:フィブロネクチンのEIIIBドメインに対するナノボディの開発および適用
4.1 フィブロネクチンのEIIIBドメインに対するナノボディのパニング
フィブロネクチン(FN)は、組織の細胞外マトリックス(ECM)の主要な構成要素を形成する、大きな多機能性糖タンパク質である(Hynes, Annu Rev Cell Biol. 1: 67-90 (1985;Hynes 1990)。FNは、胚発生、創傷治癒、組織修復、線維症、心血管疾患、血管新生および腫瘍形成の間に、選択的スプライシングを経験する。この選択的スプライシングは、正常なECMではなく、疾患ECMにおいてEIIIAおよびEIIIBドメインの包含を生じる(White and Muro, JUBMB Life, 63(7): 538-46 (2011))。疾患ECMにおけるこれらのドメインの発現、および、正常組織および血漿からのこれらの非存在は、これらを、ナノボディをベースとした画像化および治療法についての有望な標的とする。
【0172】
ライブラリを使用して、確立されたファージディスプレーパニング方法を使用して、組み換え発現されたFNのEIIIBドメインに特異的なナノボディをパニングした。CDR3(相補性決定領域3)における配列多様性に基づいて、6つのユニークなクローンを、パニングから単離し、それらの配列を
図1Aおよび表2に示す。CDRは、表3に提示する。これらのクローンは、コードされるVHHナノボディを発現するようにプロセシングされ、および、免疫ブロッティング、ELISA、免疫蛍光および免疫組織化学を包含する様々なin vitroアッセイを使用して、EIIIBドメイン中のエピトープについてのそれらの特異性について試験した。
図2は、EIIIBドメイン中のエピトープについてのクローンNJB2の特異性を示す。
【0173】
腫瘍および転移部位において発現されるEIIIBへのNJB2の特異性および結合をさらに試験するために、2光子顕微鏡法を使用するex vivoの蛍光画像化を実施して、NJB2が腫瘍ECMに特異的に局在化することを見出した(
図3)。in vivo結合を、担腫瘍マウスに注射した
64Cu標識NJB2を用いて免疫PET/CTによってさらに試験した。NJB2ナノボディは、高いシグナル対背景比率で腫瘍ECMに特異的に局在化した(
図4A~4C)。腫瘍ECMへの結合の特異性および小さい転移を検出する感受性を比較するために、NJB2免疫PET画像を、同じマウスの
18F-FDG画像と比較した。NJB2免疫PETは、肝臓およびリンパ節への同所性転移(直径2~4mm)を首尾良く検出でき(
図5B)、これらのいずれも、
18F-FDG PETにより明確に検出できなかった(
図5A)。この例およびこれに続く例および図面における腫瘍および転移は、これらの図面が由来する本来の着色画像および動画においてはるかに容易に観察されることに留意する。
【0174】
4.2:膵管腺癌の早期検出における
64
Cu-NJB2ナノボディ
膵管腺癌(PDAC)は、明確に定義された新生物段階を通って発生しおよび、増大する線維増生および顕著なECM沈着によって特徴付けられる。開始から転移性疾患へのPDACの進行は、大体二十年かかり得、初期検出の幅広い機会が示唆される。我々は、初期検出およびPDAC進行のトラッキングのためにNJB2が使用できるかどうかを試験することに興味があった。我々は、膵上皮内腫瘍(PanIN)(これは後にPDACに進行する前駆病変である)を包含する異なる段階のPDAC進行を再現するPDACのKPCマウスモデルを使用した。PDAC進行の間のEIIIBの発現を試験するために、我々は、PanIN病変の間質におけるEIIIB発現を観察し、正常の膵臓においてEIIIBは観察されなかったが、PDAC間質において極めて強いEIIIB染色が検出された。これらの結果は、マウスにおけるPDAC進行の間、EIIIBを含有するFNの増大する包含/発現を指し示す。
【0175】
さらにまた、ヒトPDAC患者試料の組織切片に対するNJB2-ビオチンを用いるIHCは、ナノボディがヒトPDAC間質において発現されるEIIIBに結合することを示した。in vivoで、NJB2のPDAC腫瘍への結合を試験するために、2~8ヶ月齢のKPCマウスに、
64Cu-NJB2を尾の静脈を介して注射し、および、2時間後にPET/CTで画像化した。
64Cu-NJB2 PET/CTを用いて画像化したPDACを有するマウスにおいて、ナノボディは、大きい膵臓腫瘍に特異的に結合した(
図6B)。
64Cu-NJB2 PET/CTを用いて画像化したPanINを有するマウスにおいて、別個のPETシグナルが、膵臓の領域において明らかであった(
図6D)。これは、着色において、および、3D再構成ビデオにおいてはるかにより明確である画像の具体的な例である。同じマウスをまた、比較のために、
18F-FDGを用いて画像化した。大きい膵臓腫瘍が、
18F-FDGによって検出されたが(
図6A)、PanIN病変は、
18F-FDG PET/CT画像化を用いて明確に可視ではなかった(
図6C)。よって、NJB2は、PDACの非侵襲性早期検出およびスクリーニングのために、および、高い特異性および感受性を有するPDAC進行モニタリングのために、使用することができる。
【0176】
4.3:
64Cu-NJB2は、黒色腫およびトリプルネガティブ乳がんの同一遺伝子モデルにおいて、腫瘍および転移を検出する
我々は、次に、NJB2ナノボディが乳がんおよび黒色腫の免疫適格性同一遺伝子モデルにおける腫瘍(BALB/cにおける4T1)および転移(C57BL/6におけるB16F10)を標的化および検出できるかどうか調査した。4T1腫瘍は、トリプルネガティブ乳がんのモデルであり、これは、肺、肝臓、およびリンパ節を包含する遠位部位へ自発的に転移することができる。同一遺伝子のt腫瘍または肺転移を保有するマウスをさらに、
64Cu-NJB2 PET/CTで画像化し、これは、両方のモデルで高い特異性で、腫瘍および肺転移を検出した(
図7Aおよび7B、着色にて容易により可視化された)。
【0177】
4.4:
64
Cu-NJB2を用いる肺線維症の非侵襲性検出およびトラッキング
線維症は、ECM含有フィブロネクチンの過度の沈着によって特徴付けられる。EIIIB/EIIIA含有FNの発現は、正常組織において低い/非存在であるが、線維症の部位において高い。ブレオマイシンは、臨床上の肺線維症の多数の側面を模倣する実験的な肺線維症を誘導するために、幅広く使用されている。ブレオマイシン処理およびシャム処理のマウスを、
64Cu-NJB2免疫PET/CTを用いて画像化した。ナノボディは、線維性肺の領域に結合し、ブレオマイシン処理後の7日目および14日目の両方で肺における明確なシグナルを示す(
図8)。我々は、
64Cu-NJB2が、優れた特異性および高いシグナル対ノイズ比で、非侵襲的に肺線維症を検出すると結論づける。
【0178】
4.5:
64
Cu-NJB2は、乳がんにおいて腫瘍進行を検出する
疾患進行の非侵襲性モニタリング(治療に応答する際のような)は、in vivo画像化の重要な用途である。
64Cu-NJB2が本願において有用なツールであり得るかを査定するために、我々は、乳がん進行のMMTV-PyMTモデル(これにおいて、マウスは、自発的な自発性(spontaneous autochthonous)腫瘍を発生する)を選択した。このモデルは、ヒト乳がん進行の多数の側面を再現する。腫瘍進行は、4つの別個の段階を介して生じる;過形成(4~6週齢)、前悪性腺腫(8~9週齢)、初期癌(8~12週齢の悪性移行)(これは次いで進行癌に進行する)。我々は、長期免疫PET/CT画像化を使用して、腫瘍進行をモニタリングした。MMTV-PyMT雌性(n=7)を、6週~13週、
64Cu-NJB2 PET/CTを用いて画像化した。乳房脂肪パット腫瘍からのPETシグナルを、10週齢マウスで検出した。10週から13週に腫瘍成長が進行するにつれて、PETシグナルは、全てのマウスにおいて複数の巨視的腫瘍小結節から観察された(
図9)。免疫組織学に基づいて、このモデルは、試験された他の乳がんモデルと比較して、低いレベルのEIIIBを発現する。よって、NJB2は、低いレベルのEIIIBを発現するマウスモデルにおいてさえも、腫瘍進行を標的化およびモニタリングするために使用することができる。
【0179】
4.6:FN-EIIIBは、複数のがんタイプに由来する転移において幅広く発現される
ナノボディが小さい転移を検出できること(これは、
18F-FDG PET/CTなどの従来の画像化を使用して技術的に困難なままである)を実証したので、我々は、NJB2がどれだけ広く、転移の検出および標的化に使用され得るかを査定することを望んだ。複数の患者からの転移試料におけるEIIIBの発現を調査するために、我々は、NJB2-ビオチンを有する104人の患者に由来する様々な転移性部位からの試料の複数器官組織アレイを染色した。組織は、ECMにおけるEIIIBシグナルについてスコア付し、および、我々は、NJB2-ビオチンで染色した組織アレイにおいて、~44%の患者が、彼らの転移部位においてFN-EIIIBを発現したことを見出した(
図10)。並行して、同様の結果が、モノクローナル抗EIIIB抗体を用いて得られた(AM3、データは示さず)。複数器官(21の別個の部位)へのこれらの転移は、数ある中でも直腸、膵臓、肺、卵巣、胃および甲状腺を包含する、17の異なる原発性部位に由来した(表4)。EIIIB陽性生検の中で、~32%が、転移部位においてリンパ節に転移した(表4)。複数の器官における転移部位でのEIIIBの広い発現および複数のタイプの原発腫瘍からの由来はさらに、NJB2をベースとして画像化および治療用途の潜在的な適用を広げる。
【0180】
【0181】
例5:ヒトテネイシンCに対するナノボディについてのパニング
テネイシンC(TNC)は、成人ヒト組織においてほとんど非存在の巨大なECMタンパク質である(腱および靱帯ならびにCNSの脳室下帯における低レベルの発現を除く)(Giblin and Midwood, Cell Adh Migr. 9: 48-82 (2015))。しかしながら、このタンパク質は、炎症およびがんの部位などのECMリモデリングに関連する疾患組織において、特異的に再発現される。活性化間質/疾患関連ECMにおけるその制限された発現パターンは、ナノボディをベースとした画像化および治療的アプローチについての魅力的な標的とする(Giblin and Midwood, Cell Adh Migr. 9: 48-82 (2015);Gocheva et al, 2017))。
【0182】
表1に記載したライブラリBおよびCを、ヒトテネイシンCに特異的なナノボディについてパニングするために使用した。11のユニークなクローン(全体の配列多様性に基づく)を単離し、その中の8つが、CDR3領域に基づいてユニークであり、その配列を
図1Bおよび表2に示す。CDRは表3に提示する。これらのクローンを発現し、および、続いて、免疫ブロッティング、ELISAおよび免疫組織化学を包含する様々なin vitroアッセイを使用して、テネイシンCについてのそれらの特異性について試験した。
図11は、ELISAアッセイにおけるヒトテネイシンCタンパク質に特異的な3つのナノボディ(NJT3、NJT4およびNJT6)を記載する。これらのナノボディは、腫瘍ECMにおいてテネイシンCに特異的に結合することが見出された(
図12)。
【0183】
腫瘍において発現されるテネイシンCへのVHHの特異性および結合をさらに試験するために、NJT3、NJT4およびNJT6を、ソルターゼ媒介タギングを介して、テキサスレッドで部位特異的に標識した。2光子顕微鏡法を使用するex vivo蛍光画像化を実施し、および、テネイシンCに対するVHHは、腫瘍ECMに特異的に局在化することが見出された(
図13)。in vivo結合をさらに、担腫瘍NGSマウスに注射された
64Cu標識NJT6を用いる免疫PET/CTによって試験し、LM2 TNBC細胞に由来する転移を試験した。NJT6ナノボディは、高いシグナル対背景比で、腫瘍および肺転移に具体的に局在化した(
図14A,B)。
【0184】
例6:ナノボディをベースとしたCAR-T細胞は腫瘍成長を抑制し、および、T細胞を動員する
血液学的ながんを処置する際の成功にもかかわらず、固形腫瘍は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療によって容易に除去されない。固形腫瘍は一般に、高度に免疫抑制性の環境で発生し、および、腫瘍特異的抗原発現の欠如に主に起因して、標的化するのが困難であるが、他の因子も同様に寄与する。これらのマーカーを認識する単一ドメイン抗体(VHH)をベースとしたCAR-T細胞の使用は、がん細胞自体に対する腫瘍特異的標的の必要性を回避する。間質を通して腫瘍微小環境を標的化するVHHをベースとしたCAR-T細胞、および、ECMマーカーは、同一遺伝子免疫適格性動物モデルにおける固形腫瘍に対して有効である。
【0185】
この研究で作製されたVHHをベースとしたCART細胞は、scFvをベースとしたCAR-T細胞の原則的な設計に従い、ここで、T細胞は、膜貫通ドメインおよびシグナリングドメインを有するキメラにおける認識モジュールをコードするレンチウイルスベクターによって形質導入される。このケースにおいて、VHHは、認識モジュールとして、scFvを取り換えた。我々は、この分野において使用される標準的な方法によってCAR構築物を作製するために、フィブロネクチンのEIIIBスプライシングバリアント(NJB2)に特異的なVHHを使用した。CAR構築物をコードするマウス幹細胞ウイルス由来のレンチウイルスベクター主鎖を、形質転換効率を測定するためのIRES駆動蛍光マーカーカセットに加えて、腫瘍微小環境に特異的なCAR-T細胞を産生するように、マウスT細胞がそれらの表面でNJB2 CARを発現するように、マウスT細胞を形質導入するために使用した(以降、B2 CAR-T細胞)。
【0186】
B2 CAR-T細胞のEIIIBへの結合特異性を確認した後、我々は、B16F10黒色腫モデルを、B2 CAR-T細胞での処置が腫瘍成長を遅延させることを示すために使用した。マウスに、1x10
5 B16F10黒色腫細胞を皮下注射し、およびB2 CAR-T細胞注射(1×10
7~1.5×10
7細胞)を、B16F10細胞注射の4日後および11日後に与えた。腫瘍を、16日目に収穫し、および、腫瘍サイズを測定し、腫瘍面積をグラフ化した。B2 CAR-T細胞は、腫瘍成長を首尾良く遅延させた(
図15A)。B2 CAR-T細胞処置をまた、免疫無防備状態のRAG-/-マウスのB16モデルで試験し、処置の有効性における内在性適応免疫系の貢献を決定した。我々は、B2 CAR-T細胞の効率的な拡大にかかわらず、適応免疫を欠く担腫瘍マウスがB2 CAR-T細胞で処理される場合、腫瘍成長における生存または遅延の有意な増加を観察しなかった。このことは、CAR処置が、内在性適応免疫系と協力し、これらの免疫適格性腫瘍モデルにおいて有効性を示すことを指し示す(データは示さず)。これらの結果は、CAR-T細胞を腫瘍ECMおよび血管新生(neovasculature)に選択的に標的化することは、腫瘍成長の抑制に極めて有効であり得ることを示す。我々は、完全に免疫適格性のマウスにおいて、腫瘍微小環境における標的に対してin vivoで有効なCAR-T細胞を産生するのにVHHを提供できると、我々は結論づける。
【0187】
B2 CAR-T細胞処置の機構をより密接に分析するために、我々は、処置を経験する間に、切除された腫瘍に対する免疫組織化学(IHC)を実施した。野生型C57BL/6マウスに、B16F10腫瘍を接種して、および、マウスを、B2 CAR-T細胞で処理するかまたは左側を未処理のいずれかとした。処理群と対照群との間で腫瘍サイズの有意な差異が存在する16日目に(
図15A)、腫瘍を切除、固定し、およびIHCに供した。次いで、腫瘍試料を、CD31、CD3、CD4およびCD8について染色し、どのくらいの脈管構造および免疫細胞集団が、B2 CAR-T細胞処置によって影響されるのかを決定した。未処理腫瘍の構造は、健康的および無傷であるようにみえたが、処理された腫瘍は、崩壊の明確な兆候を示した。処置された試料は、対照と比較して、CD31陽性脈管構造のレベルの減少を示した。B2 CAR-T細胞は、EIIIB(これは、腫瘍間質中および新生血管上に発現される)に標的化されるので、処理された試料における壊死性質およびCD31発現の非存在が、おそらく予測される。
【0188】
全ての腫瘍全体を平均すると、B2 CAR-T細胞で処理した腫瘍は、未処理の腫瘍と比較してCD3、CD4およびCD8の染色の増加によって証明されるように、T細胞のレベルが上昇していた(
図15B)。浸潤したT細胞を、
図15Cにおいて定量した。合理的な解釈は、B2 CAR-T細胞は、腫瘍に浸潤し、および、またおそらく、追加の免疫細胞を動員する。これらのデータはさらに、EIIIB発現腫瘍に浸潤し、これを損傷するB2-CAR-T細胞の能力を実証する。腫瘍は、それらの間質および脈管構造によって送達される支持体および栄養素に依存し、および、これらの相互作用を損なうことによって、B2 CAR-T細胞は、腫瘍成長を著しく遅延させる。
【0189】
【0190】
【0191】
これらの例は、腫瘍および転移の先のプロテオミクス解析によって規定された腫瘍濃縮ECMタンパク質エピトープを標的化する腫瘍選択的抗ECMナノボディを単離するアプローチの有効性を実証する。作製されたライブラリは、他の腫瘍増強ECMエピトープに対する複数の他の抗ECM抗体の再生可能な供給源であろう(アルパカを免疫化するために使用したECM濃縮調製物は、質量分析によって分析されているので、我々は構成物質ECM構成要素を知っていることに留意する)。
よって、本発明の態様のいくつかの側面を記載したので、様々な変更、改変および改善が当業者に容易に思い浮かぶことが理解されるべきである。かかる変更、改変、および改善は、本開示の一部であることが意図され、および、本発明の精神および範囲内であることが意図される。結果的に、上記の記載および図面は、一例である。
【配列表】