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特許7644454原核細胞溶解物におけるバイオコンジュゲートワクチンの合成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】原核細胞溶解物におけるバイオコンジュゲートワクチンの合成
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/00 20060101AFI20250305BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20250305BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20250305BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20250305BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C12P21/00 C
C12N15/31
A61K39/00 H ZNA
A61K39/39
A61P31/04
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021540255
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020013207
(87)【国際公開番号】W WO2020146814
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】62/791,425
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】508057896
【氏名又は名称】コーネル・ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クリストファー ジェウェット
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ キャロル スターク
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ピー.デリサ
(72)【発明者】
【氏名】タパコーン ジャローエントミーチャイ
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0016612(US,A1)
【文献】特表2002-540075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12P 21/00-21/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロにおける協調した転写、翻訳、及びN-グリコシル化によるポリサッカライドのN-グリコシル化担体タンパク質を合成する方法であって、以下:
(i) 無細胞タンパク質合成反応において、担体タンパク質を転写及び翻訳し、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含み;
(ii) 少なくとも1つのポリサッカライドを用いた無細胞タンパク質合成反応で担体タンパク質をグリコシル化すること、ここで、該少なくとも1つのポリサッカライドは少なくとも1つの細菌性O-抗原であり、前記グリコシル化ステップでは、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を利用する、
を含み、
ここで、該無細胞タンパク質合成反応は、1若しくは複数の遺伝子組み換えエシェリキア・コリ(E. coli)株に由来する溶解物によるものであり、ここで、該1若しくは複数の遺伝子組み換えE.コリ株は、(a) lpxM遺伝子生成物を欠いており、及び(b) 該遺伝子組み換えE.コリ株で発現し、該溶解物中に存在する、直交性又は異種LpxE遺伝子を含む、
方法。
【請求項2】
前記担体タンパク質が、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)、ネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、及びその変異体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細菌性O-抗原が、E.コリ由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細菌性O-抗原が、フランシセラ・ツラレンシス由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記N-グリコシル化担体タンパク質を含むワクチン組成物としてN-グリコシル化担体タンパク質を製剤化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ワクチン組成物が、アジュバントをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記OSTは、天然に存在する又は改変された細菌性OSTでる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記OSTは、天然に存在する又は改変された古細菌OSTでる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記OSTは、C.ジェジュニPglBの天然に存在する細菌性ホモログである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記OSTは、C.ジェジュニPglBの改変変異体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記OSTは、天然に存在する単一サブユニット真核性OSTである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ワクチン組成物が、それを必要としている対象に投与するためのものである、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
インビトロにおけるN-グリコシル化担体タンパク質を合成するためのキットであって、以下:
(i) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を含む細胞溶解物を含む第一の成分;
(ii) O-抗原を含む細胞溶解物を含む第二の成分;
(iii) 担体タンパク質をコードする転写鋳型及び担体タンパク質をコードする転写鋳型からmRNAを合成するためのポリメラーゼを含む第三の成分、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含む、
を含み、
ここで、(i)及び/又は(ii)の細胞溶解物は、1若しくは複数の遺伝子組み換えエシェリキア・コリ(E. coli)株に由来し、ここで、該遺伝子組み換えE.コリ株は、(a) lpxM遺伝子生成物を欠いており、及び(b) 該遺伝子組み換えE.コリ株で発現し、該溶解物中に存在する、直交性又は異種LpxE遺伝子を含む、
キット。
【請求項14】
インビトロにおけるN-グリコシル化担体タンパク質を合成するためのキットであって、以下:
(i) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)及びO-抗原を含む細胞溶解物を含む第一の成分;
(ii) 担体タンパク質をコードする転写鋳型及び担体タンパク質をコードする転写鋳型からmRNAを合成するためのポリメラーゼを含む第二の成分、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含む、
を含み、
ここで、(i)及び/又は(ii)の細胞溶解物は、1若しくは複数の遺伝子組み換えエシェリキア・コリ(E. coli)株に由来し、ここで、前記遺伝子組み換えE.コリ株は、(a) lpxM遺伝子生成物を欠いており、及び(b) 該遺伝子組み換えE.コリ株で発現し、該溶解物中に存在する、直交性又は異種LpxE遺伝子を含む、
キット。
【請求項15】
前記第一の成分、前記第二の成分、及び存在する場合には、前記第三の成分のうちの1若しくは複数が凍結乾燥される、請求項13又は14に記載のキット。
【請求項16】
前記第一の成分である細胞溶解物が、直交性OSTをコードする遺伝子を過剰発現する起源株から製造される、請求項13に記載のキット。
【請求項17】
前記第二の成分である細胞溶解物が、合成グリコシルトランスフェラーゼ経路を過剰発現する起源株から製造される、請求項13に記載のキット。
【請求項18】
前記第一の成分である細胞溶解物が、(a)直交性OSTをコードする遺伝子、及び(b)合成グリコシルトランスフェラーゼ経路のうちの一方又は両方を過剰発現する起源株から製造される、請求項14に記載のキット。
【請求項19】
前記第二の成分である細胞溶解物又は前記第一の成分である細胞溶解物が、F.ツラレンシスSchu S4脂質結合オリゴ糖(FtLLO)からのO-抗原又は腸内毒素原性E.コリO78脂質結合オリゴ糖(EcO78LLO)からのO-抗原を含む、請求項13又は14に記載のキット。
【請求項20】
糖タンパク質の無細胞製造のための方法であって、以下:
(a) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を含む第一の細胞溶解物とO-抗原を含む第二の細胞溶解物を混合して、無細胞タンパク質合成反応を調製し;
(b) 無細胞タンパク質合成反応において、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)、ネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、及びその変異体から選択される担体タンパク質を転写及び翻訳し、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含み;そして
(c) 細菌性O-抗原を用いた無細胞タンパク質合成反応で担体タンパク質をグリコシル化すること、
を含み、
ここで、該第一の細胞溶解物及び/又は該第二の細胞溶解物は、1若しくは複数の遺伝子組み換えエシェリキア・コリ(E. coli)株に由来し、ここで、該遺伝子組み換えE.コリ株は、(a) lpxM遺伝子生成物を欠いており、及び(b) 該遺伝子組み換えE.コリ株で発現し、該溶解物中に存在する、直交性又は異種LpxE遺伝子を含む、
方法。
【請求項21】
糖タンパク質の無細胞製造のための方法であって、以下:
(a) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を含む第一の細胞溶解物とO-抗原とを混合して、無細胞タンパク質合成反応を調製し;
(b) 無細胞タンパク質合成反応において、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)、ネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、及びその変異体から選択される担体タンパク質を転写及び翻訳し、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含み;そして
(c) 細菌性O-抗原を用いた無細胞タンパク質合成反応で担体タンパク質をグリコシル化すること、
を含み、
ここで、該第一の細胞溶解物は、1若しくは複数の遺伝子組み換えエシェリキア・コリ(E. coli)株に由来し、ここで、該遺伝子組み換えE.コリ株は、(a) lpxM遺伝子生成物を欠いており、及び(b) 該遺伝子組み換えE.コリ株で発現し、該溶解物中に存在する、直交性又は異種LpxE遺伝子を含む、
方法。
【請求項22】
前記O-抗原が、脂質結合オリゴ糖(LLO)の一部である、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
ワクチン組成物として前記糖タンパク質を製剤化することをさらに含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
前記ワクチン組成物が、それを必要としている対象に投与するためのものである、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府によって支援された研究又は開発に関する声明
本願発明は、全米科学財団によって授与されたMCB1413563の下で米国政府支援により成された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
【0002】
本願は、2019年1月11日に出願された米国特許仮出願第62/791,425号に対して米国特許法119条(e)項に基づく優先権の利益を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
本発明の分野は、原核細胞溶解物におけるN-グリコシル化タンパク質のインビトロ合成に関する。特に、本発明の分野は、細菌などの病原菌に対するワクチンコンジュゲートとしての、原核細胞溶解物においてインビトロ合成されたN-グリコシル化タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
コンジュゲートワクチンは、命にかかわる細菌感染の予防のための最も安全で最も効果的な方法の一つである。バイオコンジュゲートワクチンは、生きたエシェリキア・コリ(Escherichia coli)細胞の細菌オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を使用してポリサッカライド抗原をN-グリコシル化によって遺伝子組み換え担体タンパク質に結合される、タンパク質グリカン結合技術(PGCT)によって製造される一種のコンジュゲートワクチンである。バイオコンジュゲートワクチンは、抗細菌性ワクチンを製造するのに必要とされる時間とコストを大幅に削減する可能性を有する。しかしながら、PGCTは:i) インビボプロセス開発スケジュールの長さ;及びii) クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)とコリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diptheriae)からの毒素などのFDAによって承認された担体タンパク質が生きたE.コリ(E. coli)におけるN-結合型グリコシル化に適合できることがまだ実証されていないという事実、によって制限される。ここで、我々は、20時間が続く反応でエシェリキア・コリとフランシセラ・ツラレンシス(Franscicella tularensis)の病原性株に対するバイオコンジュゲートワクチンの迅速なインビトロ製造を可能にする無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)技術を適用した。CFGpSシステムのモジュール性質のため、この無細胞ストラテジーは、FDAによって承認された担体タンパク質又はその表面抗原遺伝子群が知られている病原性細菌に対する追加ワクチンを使用してバイオコンジュゲートを製造するのに容易に適用されることもあり得る。我々は、このシステムが凍結乾燥でき、かつ、バイオコンジュゲート合成能を維持することを示し、そして、オンデマンドワクチン製造と資源に乏しい環境における開発の可能性を実証した。この作業は、E.コリ溶解物におけるバイオコンジュゲートワクチン製造の最初の実証を表し、及び抗細菌性ワクチン候補のための携帯型の試作又は製造プラットホームとして有望な適用を有する。
【発明の概要】
【0005】
概要
グリコシル化タンパク質の無細胞合成の方法、システム、成分、及び組成物が開示される。グリコシル化タンパク質は、抗細菌性ワクチンを含めたワクチンで利用され得る。グリコシル化タンパク質としては、担体に結合させた細菌ポリサッカライドが挙げられ、そしてそれは、その担体に結合させたポリサッカライドに対して免疫された宿主における免疫応答を生じるために利用され得る。好適な担体としては、これだけに限定されるものではないが、ヘモフィラス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)タンパク質D(PD)、ネイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)ポリンタンパク質(PorA)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diptheriae)毒素(CRM197)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)毒素(TT)、及びエシェリキア・コリマルトース結合タンパク質、又はその変異体が挙げられる。グリコシル化タンパク質は、細菌のO-抗原の合成に関連しているOSTとLLOを含めたオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)と脂質結合オリゴ糖(LLO)などの糖タンパク質合成のための成分が濃縮されている原核生物細胞溶解物を使用した無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)システムで合成されてもよい。このように、原核生物細胞溶解物は、異種OSTを発現するように改変された、及び/又はLLOの製造のための異種グリカン合成経路を発現するように改変された遺伝子組み換え原核生物から調製されてもよい。開示された溶解物は、モジュール式として記述されても、及び開示されたCFGpSシステムでグリコシル化タンパク質を調製するために組み合わせられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】出典Guarino C., and DeLisa M.P., Glycobiology, 2012 May 22(5):596-601のE.コリで発現されるC.ジェジュニ(C. jejuni)のN結合型グリコシル化経路の相関関係を示す図解であって、その内容を全体として参照により本明細書に援用する。
【0007】
図2】出典Ihssen et al., Microb. Cell. Fact. 2010 9:61, pages 1-13のコンジュゲート及びバイオコンジュゲートワクチンの製造のためのストラテジーであって、その内容と全体として参照により本明細書に援用する。その概略図はフランシセラ・ツラレンシス(Franciscella tularensis)に対するワクチン例の製造を例示する。
【0008】
図3】バイオコンジュゲートワクチンのインビトロ製造のためのCFGpS技術の適用。抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートの製造のためのインビボ及びインビトロワークフローの例。インビトロにおいてバイオコンジュゲートを製造する能力は新規ワクチン候補の迅速な試作を可能にする。
【0009】
図4】混合溶解物CFGpSにおける様々な細菌性O-抗原を担持する糖タンパク質の迅速合成。S30溶解物は、C.ジェジュニOST(CjOST溶解物)を発現するCLM24細胞、フランシセラ・ツラレンシス(Franciscella tularensis)O-抗原(FtO-PS)生合成経路(FtLLO溶解物)、又はエシェリキア・コリO78抗原(EcO78-PS)生合成経路(EcO78LLO溶解物)から調製された。(A) FtLLO溶解物は、sfGFP21-DQNAT-6xHis又はMBP-4xDQNAT-6xHisのいずれかのDNA鋳型を含むCFGpS反応物中でCjOST溶解物と混合された。CcOST及びFtLLO溶解物の両方がCFGpS反応物中に存在するとき、FtO-PSはR4-DQNAT及びMBP-4xDQNATに共有結合され、ウェスタンブロットアッセイ(レーン2、4)で観察されるラダー様のパターンによって示される。(B) EcO78LLO溶解物は、sfGFP21-DQNAT-6xHis又はMBP-4xDQNAT-6xHisのいずれかのDNA鋳型を含むCFGpS反応物中でCjOST溶解物と混合された。CjOST及びEcO78LLO溶解物の両方がCFGpS反応物中に存在するとき、EcO78-PSはsfGFP-21-DQNAT及びMBP-4xDQNATに共有結合され、ウェスタンブロットアッセイ(レーン2、4)で観察されるラダー様のパターンによって示される。バイオコンジュゲートはまた、E.コリO78株に対する市販の抗血清と交差反応性でもあった(データ未掲載)。これらの結果は、混合溶解物CFGpS中のLLOのモジュール性、及び抗細菌性ワクチンの迅速合成のためのCFGpS技術の可能性を実証する。略語:CLM24 pSF CjOST;FtLLO溶解物:CLM24 pGAB2;α-FtO-抗原:F.ツラレンシスO-抗原グリカンに特異的なFB11 mAb。
【0010】
図5】ユースポイントワクチン製造のための凍結乾燥CFGpS反応物。(A) 資源が限られた環境における携帯型バイオコンジュゲート製造及び流通のスキーム。(B) 凍結乾燥CFGpS反応物はバイオコンジュゲート合成活性を維持している。CFGpS反応物は調製され、そしてCjOST溶解物若しくはFtLLO溶解物単体、又はCjOSTとFtLLO溶解物の両方の混合物のいずれかを含んでいる。次に、これらの反応は、凍結乾燥され、そして15μLのヌクレアーゼフリー水で再構成された。プレミックス反応物(レーン1、2、5、6)は、再構成後にそのまま泳動され、その一方で、CjOST溶解物又はFtLLO溶解物を単独で含む反応物は、再構成後に混合された(レーン3、4、7)。DQNATシークオンが合成され、かつ、CjOST溶解物又はFtLLO溶解物の両方が反応物中に存在するとき、FtO-PSが標的タンパク質に取り付けられる(レーン2、4、6、7)。バイオコンジュゲート合成能は凍結乾燥後でも保存され、そして資源に乏しい地域における、携帯型バイオコンジュゲート製造及び流通のためのCFGpSの可能性を実証した。略語:CjOST溶解物:CLM24 pSF CjOST;FtLLO溶解物:CLM24 pGAB2;α-FtO-抗原:F.ツラレンシスO-抗原グリカンに特異的なFB11 mAb。赤色(例えば、レーン1、3及び5):αHis。
【0011】
図6】選択的濃縮S30溶解物において製造されたO-抗原の構造。(A) F.ツラレンシスSchu S4O-抗原の構造。(B) 腸内毒素原性E.コリO78抗原の構造。
【0012】
図7】E.コリ溶解物の混合物は様々なOST酵素の迅速試作を可能にする。(A) それによってグリカン生合成経路を発現する細胞由来のCjLLO溶解物が、CjPglBを発現する細胞由来のCjPglB溶解物と混合され、そして得られた溶解物混合物がscFv13-R4DQNAT又はsfGFP217-DQNATのいずれかをコードするプラスミドDNAを用いて準備される、溶解物混合ストラテジーを使用して実施される無細胞糖タンパク質合成反応のイムノブロット分析。(B) 以下のOST:CjPglB、CcPglB、DdPglB、DgPglB、又はDvPglBのうちの1つを発現する細胞由来の抽出物と混合されたCjLLO溶解物を使用して実施される反応のイムノブロット分析。混合溶解物は、sfGFP217-DQNAT(D)又はsfGFP217-AQNAT(A)のいずれかをコードするプラスミドDNAを用いて準備された。ブロットは、アクセプタタンパク質(上部のパネル)とC.ジェジュニグリカンに対するhR6血清(下部のパネル)を検出するために、抗His抗体でプローブされた。矢印は、アクセプタタンパク質のアグリコシル化(g0)及び単独グリコシル化(g1)形態を意味する。分子量(MW)マーカーは左側に示されている。結果は、少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。doi.org/10.1038/s41467-018-05110-xから得られた図面。
【0013】
図8】E.コリ溶解物の混合は、コンジュゲートワクチンを合成するのに使用できる。それによってE.コリO78ポリサッカライド抗原(EcO78-PS)生合成経路を発現する細胞由来のLLO溶解物が、C.ジェジュニ又はC.コリからのPglBのいずれかを発現する細胞由来のOST溶解物と混合される、溶解物混合ストラテジーを使用して実施された無細胞反応。得られた溶解物混合物は、sfGFP217-DQNATのいずれかをコードするプラスミドDNAを用いて準備される。ブロットは、アクセプタタンパク質(左側)と抗EcO78-PS抗血清(右側)を検出するために、抗His抗体でプローブされた。我々は、EcO78-PSをsfGFP217-DQNATに首尾よく結合したCjPglB又はCcPglBのいずれかを観察した。分子量(MW)マーカーは左側に示されている。アスタリスク(*)はEcO78-PS抗血清の非特異的結合を示す。結果は、少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。
【0014】
図9】様々なオリゴ糖構造を用いた無細胞グリコシル化反応の拡大。精製scFv13-R4DQNATアクセプタタンパク質、精製CjPglB、及び以下のグリカン:a. 天然C.ラリ(C. lari)ヘキササッカライドN-グリカン;b. 改変C.ラリヘキササッカライドN-グリカン;c. 天然W.サクシノゲネス(W.succinogenes)ヘキササッカライドN-グリカン;d. E.コリO9「プライマーアダプター」Man3GlcNAc構造;e. F.ツラレンシスO-PS Qui4NFm-(GalNAcAN)2-QuiNAc構造;及びf. 真核性Man3GlcNAc2N-グリカン構造、の生合成経路を発現する細胞からの有機溶媒抽出LLOを用いて作り出されたインビトログリコシル化反応生成物のイムノブロット分析。ブロットは、アクセプタタンパク質、並びに以下の:天然及び改変C.ラリグリカンと交差反応するhR6血清、又はMan3GlcNAc及びMan3GlcNAc2グリカンの内部及び非還元末端α-マンノシル基に結合するConAレクチン、のうちの1つを検出するために、抗His抗体を用いてプローブされた。Ft-OPS構造と特異的に反応するFB11抗体。W.サクシノゲネスのN-グリカンの構造決定が現在、不完全であり、かつ、利用可能な抗体が存在しないので、このN-グリカンを担持するタンパク質生成物は、抗His抗体を用いてプローブされただけである。矢印は、scFv13-R4DQNATタンパク質のアグリコシル化(g0)及び単独グリコシル化(g1)形態を意味する。分子量(MW)マーカーは左側に示されている。結果は、少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。doi.org/10.1038/s41467-018-05110-xから編集された図面。
【0015】
図10】無細胞糖タンパク質合成プラットフォームはモジュール式であり、そして様々な細菌性O-ポリサッカライドを使用したバイオコンジュゲートを合成するのに使用できる。E.コリ溶解物は、CjPglBを発現する細胞、及び(A) F.ツラレンシスSchuS4O-抗原、(B) E.コリO78抗原、又は(C)E.コリO7抗原のいずれかの生合成経路から調製され、そしてsfGFP217-DQNATバイオコンジュゲートを合成するのに使用した。(A)では、抗Hisシグナルは赤色で示され、及び抗F.ツラレンシスO-抗原シグナルは緑色で示されている。(B)及び(C)では、ブロット画像は抗Hisである。画像は、少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。破線は、同じ露出を用いた同じブロットからであることを示す。
【0016】
図11】OST及びLLOを選択的に濃縮した抽出物を使用したワンポット無細胞タンパク質合成。(a) CjPglB及びCjLLOが選択的に濃縮された無細胞グリコシル化反応溶解物によって製造されたscFv13-R4DQNAT又はsfGFP217-DQNATのウェスタンブロット分析。(b) 上部-それぞれ赤色と緑色で着色したα-ヘリックスとフレキシブルループを有するヒトエリトロポイエチン(PDBコード1BUY)のリボン表示。青色で着色したそれぞれのシークオンにおいてアスパラギン残基で、DQNATに対してN24(22-AENIT-26)、N38(36-NENIT-40)、又はN83(81-LVNSS-85)にて天然シークオンを変異させることによってモデル化されたグリコシル化部位。N24(22-AENIT-26)、N38(36-NENIT-40)、又はN83(81-LVNSS-85)の天然シークオンを最適な細菌性シークオン、DQNAT(青色で示す)に個別に変異させた糖改変hEPO変異体。下部-無細胞グリコシル化反応溶解物によって製造されたhEPO糖変異体のウェスタンブロット分析。反応物は、示されているようにプラスミドpJL1-hEPO22-DQNAT-26(N24)、pJL1-hEPO36-DQNAT-40(N38)、又はpJL1-hEPO81-DQNAT-85(N83)を用いて準備された。すべての対照反応(それぞれのパネルのレーン1)が、CjPglBを欠いたCjLLO濃縮溶解物を使用して実施された。ブロットは、アクセプタタンパク質を検出するために抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(抗His)を用いて、又はN-グリカンを検出するためにhR6血清(抗グリカン)を用いてプローブされた。矢印は、タンパク質標的のアグリコシル化(g0)及び単独グリコシル化(g1)形態を意味する。アスタリスクは、非特異的血清抗体結合に対応するバンドを意味する。分子量(MW)マーカーは左側に示されている。Jaroentomeechai et al., Nat. Comm., July 12, 2018, doi.org/10.1038/s41467-018-05110-xから得られた図面であって、その内容を全体として参照により本明細書に援用する。
【0017】
図12】無細胞糖タンパク質合成溶解物を使用したF.ツラレンシスに対するバイオコンジュゲートのオンデマンド及び再現性の高い製造。(a) FtO-PSを用いたsfGFP217-DQNATのグリコシル化反応は、CjPglB、FtO-PS、及び好ましいシークオンが反応中に存在したときにだけ観察された(レーン3)。プラスミドDNAが除かれたとき、sfGFP217-DQNAT合成は観察されなかった。(b) 認可されたワクチンで使用される担体を含めた免疫賦活担体を用いたバイオコンジュゲートワクチンのオンデマンド合成。バイオコンジュゲートは、30℃にて~1時間の持続した1mLの無細胞糖タンパク質合成反応からのNi-NTAアガロースを使用して精製された。破線は、サンプルが同じ露出を用いた同じブロットからのものであることを示す。分子量のラダーは各画像の左側に示されている。図面はJaroentomeechai et al., Nat. Comm., July 12, 2018, doi.org/10.1038/s41467-018-05110-xからの出典であって、その内容を全体として参照により本明細書に援用する。
【0018】
図13】様々なE.コリ株から調製された粗溶解物が、インビトロタンパク質グリコシル化に適している。rE.コリ705、BL21(DE3)、及びCLM24を含めた数種類のシャシー株から調製された溶解物が、精製CjPglB、有機溶媒抽出CjLLOを補った反応に使用され、そしてプラスミドpJL1-scFv13-R4DQNATを用いて準備された。効果的なグリコシル化反応は16時間継続した反応で観察された。ブロットは、アクセプタタンパク質を検出するために抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(抗His)でプローブされ、又はN-グリカンを検出するためにhR6血清(抗グリカン)でプローブされた。矢印は、scFv13-R4DQNATのアグリコシル化(g0)及び単独グリコシル化(g1)形態を意味する。分子量(MW)マーカーは左側に示されている。
【0019】
図14】無毒化無細胞反応物はバイオコンジュゲートを生じる。リピドA再形成は無細胞糖タンパク質合成反応におけるグリコシル化反応活性に影響しない。溶解物は、野生型CLM24、CLM24 ΔlpxM、又はCjPglBとFtO-PSもまた発現するCLM24ΔlpxM発現FtLpxE細胞のいずれかから調製された。ほとんど同一のグリコシル化反応活性が、改変株由来の溶解物のそれぞれについて観察された。画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。図面はStark et al., bioRxiv, Jun. 24, 2019, doi.org/10.1101/681841からの出典であって、その内容を全体として参照により本明細書に援用する。
【0020】
図15】抗細菌性ワクチンのオンデマンド及び携帯型製造を可能にするiVAXプラットフォームのある実施形態を示す図解。インビトロバイオコンジュゲートワクチン発現(iVAX)プラットフォームは、細菌性病原体に対するワクチンを開発及び流通させる迅速手段を提供する。無毒化リピドAを有する改変非病原性E.コリにおける病原菌特異的ポリサッカライド(例えば、CPS、O-PS)及び細菌性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素の発現は、バイオコンジュゲートワクチンの合成に必要である機構のすべてを含む低エンドトキシン溶解物をもたらす。iVAX溶解物によって触媒された反応は、認可された担体タンパク質を含有するバイオコンジュゲートを製造するのに使用でき、かつ、無冷凍輸送及び保管に関して活性喪失なしで凍結乾燥できる。凍結乾燥反応は、単純な再水和によって治療現場にて活性化でき、そして、~1時間以内に免疫的活性バイオコンジュゲートを再現性高く合成するのに使用される。
【0021】
図16】認可されたコンジュゲートワクチン担体タンパク質のインビトロ合成。(a) FDA承認コンジュゲートワクチンで使用される4つの担体タンパク質のすべてが、14C-ロイシン取り込みによって計測されるように、インビトロにおいて可溶状態で合成された。これらとしては、H.インフルエンザタンパク質D(PD)、N.メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、並びにC.ジフテリア毒素(CRM197)及びC.テタニ毒素(TT)の遺伝的に無毒化変異体が挙げられる。E.コリマルトース結合タンパク質(MBP)、並びにTTのフラグメントC(TTc)及び軽鎖(TTlight)ドメインを含めた追加の免疫賦活担体もまた、可溶状態で合成された。値は平均を表し、そしてエラーバーは生物学的な反復(n=3)の標準偏差を表す。(b) 完全長生成物が、ウエスタンブロットを介して試験されたすべてのタンパク質について観察された。異なった露出は実線で示されている。分子量ラダーは左側に示されている。図21もまた参照のこと。
【0022】
図17】iVAX溶解物中のFtO-PSを用いた、再現性の高いタンパク質のグリコシル化反応。(a) iVAX溶解物は、CjPglBを発現する細胞とFtO-PSをコードする生合成経路から調製された。(b) FtO-PSを用いたsfGFP217-DQNATのグリコシル化反応は、CjPglB、FtO-PS、及び好ましいシークオンが反応中に存在するときにだけ観察された(レーン3)。プラスミドDNAが除かれたとき、sfGFP217-DQNAT合成は観察されなかった。(c) 同じロット(左側)又は異なるロット(右側)のiVAX溶解物を使用したsfGFP217-DQNATを製造するiVAX反応の生物学的な反復は、反応と溶解物調製の再現性を実証した。上部のパネルは、担体タンパク質を検出するための抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(αHis)を用いたプロービングからのシグナルを示し、及び中央のパネルは、市販の抗FtO-PS抗体(αFtO-PS)を用いたプロービングからのシグナルを示し、及び下部のパネルは、αHisとαFtO-PSシグナルとを組み合わせたものを示す。反復が明らかに示されていない限り、画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。破線は、サンプルが同じ露出を用いた同じブロットからのものであることを示す。分子量ラダーは、各画像の左側に示されている。図22もまた参照のこと。
【0023】
図18】iVAXを使用したF.ツラレンシスに対するバイオコンジュゲートのオンデマンド製造。(a) iVAX反応物は、CjPglBとFtO-PSを含む溶解物から調製され、そして認可されたワクチンで使用されるものを含めた、免疫賦活担体をコードするプラスミドを用いて準備された。(b) 試験されたすべての担体タンパク質に関する抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートワクチンのオンデマンド合成が観察された。バイオコンジュゲートは、~1時間持続する1mLのiVAX反応物からNi NTAアガロースを使用して精製された。上部のパネルは、担体タンパク質を検出するための抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(αHis)を用いたプロービングからのシグナルを示し、及び中央のパネルは、市販の抗FtO-PS抗体(αFtO-PS)を用いたプロービングからのシグナルを示し、及び下部のパネルは、αHisとαFtO-PSシグナルとを組み合わせたものを示す。画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。破線は、サンプルが同じ露出を用いた同じブロットからのものであることを示す。分子量ラダーは、各画像の左側に示されている。図23及び24もまた参照のこと。
【0024】
図19】無毒化、凍結乾燥iVAX反応物はバイオコンジュゲートを生じる。(a) iVAX溶解物は、lpxMと溶解物製造のための起源株(source strain)におけるF.ツラレンシスLpxEの発現の欠失によって無毒化した。(b) 得られた溶解物は有意に減少したエンドトキシン活性を示した。両側t-検定によって測定した場合、*p=0.019と**p=0.003。(c) sfGFP217-DQNATを製造するiVAX反応は、すぐに又は凍結乾燥、そして再水和後に稼働させた。(d) グリコシル化反応活性は凍結乾燥後にも保存され、そしてバイオコンジュゲートワクチンの携帯型生合成のためのiVAX反応物の可能性を実証した。上部のパネルは、担体タンパク質を検出するための抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(αHis)を用いたプロービングからのシグナルを示し、及び中央のパネルは、市販の抗FtO-PS抗体(αFtO-PS)を用いたプロービングからのシグナルを示し、及び下部のパネルは、αHisとαFtO-PSシグナルとを組み合わせものを示す。画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。分子量ラダーは、各画像の左側に示されている。図25もまた参照のこと。
【0025】
図20】iVAX誘導バイオコンジュゲートは、マウスにおいてFtLPS-特異的抗体を生じさせる。(a) 無毒化溶解物を使用して組み立てられた凍結乾燥iVAX反応物は、免疫化試験のための抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートを合成するのに使用された。(b) BALB/cマウスの6つの群が、PBS又は7.5μgの精製、無細胞合成アグリコシル化MBP4xDQNAT、FtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT、アグリコシル化PD4xDQNAT、又はFtO-PS-コンジュゲートPD4xDQNATを用いて皮下的に免疫された。PCGTを使用した生きたE.コリ細胞で調製されたFtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNATは、正の対照として使用された。5匹のマウスで構成されたPBS対照群を除いて、各群は6匹のマウスで構成された。マウスは、21及び42日目に同一の用量の抗原を用いて免疫賦活された。FtLPS特異的IgG力価は、抗原として固定されたF.ツラレンシスLPSを用いて、個々のマウスの血清(黒点)に関して終点(70日目)でのELISAによって計測された。各群の平均力価もまた示されている(赤線)。iVAX誘導バイオコンジュゲートは、他のすべての群と比較してFtLPS特異的IgGの有意に高いレベルを生じさせた(**p<0.01、Tukey-Kramer HSD)。(c) 終点の血清からELISAによって計測されたIgG1及びIgG2aサブタイプ力価は、試験した他のすべての群と比較して、iVAX誘導バイオコンジュゲートがFtO-PS特異的IgG1の製造を賦活することを明らかにした(**p<0.01、Tukey-Kramer HSD)。これらの結果は、iVAXバイオコンジュゲートがほとんどのコンジュゲートワクチンに特有であるTh2バイアス免疫応答を生じさせたことを示す。値は平均を表し、そしてエラーバーはELISAによって検出されたFtLPS特異的IgGsの標準誤差を表す。図26もまた参照のこと。
【0026】
図21】認可されたコンジュゲートワクチン担体タンパク質のインビトロ合成は、様々な温度の範囲を上回って可能であるので、容易に最適化できる。図16もまた参照のこと。(a) CRM197を除いて、類似の可溶性を伴って発現されたすべての担体が、14C-ロイシン取り込みによって計測されるように、25℃、30℃、及び37℃にて得られた。値は平均を表し、そしてエラーバーは生物学的な反復(n=3)の標準偏差を表す。(b) PorAの可溶性発現は、反応への脂質ナノディスクの添加で改善された。(c) 完全長のTTの発現は、(i) 完全長TT内のジスルフィド結合重鎖及び軽鎖の組み立てを改善するために酸化条件でインビトロタンパク質合成を実施し、かつ、(ii) プロテアーゼ分解を最小にするために反応を2時間だけ稼働させること、によって高められた。CFPS反応で生じる(d) CRM197及び(e) TTは、それぞれα-DT及びαTT抗体で検出され、市販の精製DT及びTTタンパク質基準(50ngの基準が添加された)とサイズが比較される。画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。破線は、サンプルが同じ露出を用いた同じブロットからのものであることを示す。分子量ラダーは、各画像の左側に示されている。
【0027】
図22】iVAX反応におけるグリコシル化反応は、様々な温度を通じて1時間以内に現れる。図17もまた参照のこと。30℃(左側)、37℃、25℃、及び室温(~21℃)(右側)におけるFtO-PSグリコシル化反応の動態が比較され、そしてiVAX反応の最初の1時間のうちにタンパク質合成とグリコシル化反応が起こることを示した。これらの結果は、iVAXプラットフォームが様々な許容温度にわたりバイオコンジュゲートを合成することを実証している。上部のパネルは、担体タンパク質を検出するために抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(αHis)でのプロービングからのシグナルを示し、及び中央のパネルは市販の抗FtO-PS抗体(αFtO-PS)でのプロービングからのシグナルを示し、及び下部のパネルは、αHisとαFtO-PSシグナルとの組み合わせを示す。画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。分子量ラダーは、各画像の左側に示されている。
【0028】
図23】生きたE.コリのPGCTを使用したF.ツラレンシスに対するバイオコンジュゲートの製造。図18もまた参照のこと。(a) バイオコンジュゲートは、CjPglBを発現するCLM24細胞におけるPGCT、FtO-PSの生合成経路、及び認可されたワクチンで使用されるものを含めた免疫賦活担体のパネルによって製造された。(b) 我々は、iVAX誘導サンプルと比較して、すべての担体でPorA、膜タンパク質、並びに還元グリカン添加及び高分子量FtO-PS種のコンジュゲーションの低レベル発現を観察した。上部のパネルは、担体タンパク質を検出するための抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(αHis)でのプロービングからのシグナルを示し、及び中央のパネルは、市販の抗FtO-PS抗体(αFtO-PS)でのプロービングからのシグナルを示し、及び下部のパネルは、αHisとαFtO-PSシグナルとを組み合わせたものを示す。画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。分子量ラダーは、各画像の左側に示されている。
【0029】
図24】iVAXプラットフォームはモジュール式であり、そして、様々なバイオコンジュゲートの臨床的に関連する産出物を合成するのに使用できる。図18もまた参照のこと。(a) FtO-PSを用いたタンパク質合成とグリコシル化反応は、MBP4xDQNATとPD4xDQNATを生じるiVAX反応で計測された。~1時間後に、14C-ロイシン取り込みによって計測されるように、反応は~40μg mL-1のタンパク質を生じ、そしてデンシトメトリーによって測定されるように、そのうちの~20μg mL-1がFtO-PSでグリコシル化された。値は平均を表し、そしてエラーバーは生物学的な反復(n=2)の標準誤差を表す。モジュール性を実証するために、iVAX溶解物が、CjPglBを発現する細胞、及び(b) E.コリO78抗原又は(c) E.コリO7抗原のいずれかの生合成経路から調製され、そしてPD4xDQNAT(左側)又はsfGFP217-DQNAT(右側)のバイオコンジュゲートを合成するのに使用された。各抗原の反復単量体単位の構造及び組成が示されている。両方のポリサッカライド抗原は、F.ツラレンシスO-抗原と比較して、組成的に、及びO7抗原の場合では、構造的に異なっている。ブロットは、担体タンパク質を検出するための抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(αHis)でのプロービングからのシグナルを示す。市販の抗O-PS血清又は抗体が利用可能である場合、それを使用して、コンジュゲートO-抗原(α-EcO78ブロット、パネルb)の同一性を確認した。アスタリスクは、非特異的血清抗体結合から生じるバンドを意味する。画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。破線は、サンプルが同じ露出を用いた同じブロットからのものであることを示す。分子量ラダーは、各画像の左側に示されている。
【0030】
図25】無毒化iVAX溶解物は、バイオコンジュゲート及び両溶解物製造、並びに凍結乾燥反応物スケールを再現性よく合成する。図19もまた参照のこと。(a) CjPglBとFtO-PSを含むiVAX溶解物は、野生型CLM24、CLM24 ΔlpxM、又はFtLpxEを発現するCLM24 ΔlpxM細胞から調製された。ほとんど同一のsfGFP217-DQNATグリコシル化が、改変株由来の溶解物のそれぞれについて観察された。(b) 免疫化のために材料を作り出すために、エンドトキシンが編集されたiVAX溶解物を製造するための発酵が0.5L~10Lに計量された。我々は、0.5L~10Lの培養物由来の溶解物に関して、かつ、10Lの発酵から生じた溶解物の異なったバッチを越えて、同じようなレベルのsfGFP217-DQNATグリコシル化を観察した。(c) 免疫化のために、我々は、5mLの凍結乾燥iVAX反応物から2ロットのFtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT及びPD4xDQNATを調製した。我々は、担体及び多くの材料の両方を越えて、同じ水準の精製タンパク質(~200μg)とFtO-PS修飾(>50%、デンシトメトリーによって計測)を観察した。上部のパネルは、担体タンパク質を検出するための抗ヘキサ-ヒスチジン抗体(αHis)でのプロービングからのシグナルを示し、及び中央のパネルは、市販の抗FtO-PS抗体(αFtO-PS)でのプロービングからのシグナルを示し、及び下部のパネルは、αHisとαFtO-PSシグナルとを組み合わせたものを示す。画像は少なくとも三連の生物学的な反復を代表するものである。分子量ラダーは左側に示されている。
【0031】
図26】経時的なワクチン接種マウスにおけるFtLPS特異的抗体の力価。図20もまた参照のこと。BALB/cマウスの6つの群が、PBS又は7.5μgの精製、無細胞合成アグリコシル化MBP4xDQNAT、FtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT、アグリコシル化PD4xDQNAT、若しくはFtO-PS-コンジュゲートPD4xDQNATを用いて皮下免疫された。PCGTを使用した生きたE.コリ細胞で調製されたFtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNATが、正の対照として使用された。5匹のマウスで構成された対照群を除いて、各群は6匹のマウスで構成された。マウスは、21及び42日目に同一の用量の抗原を用いて免疫賦活された。FtLPS特異的IgG力価は、初期の免疫化後の-1、35、49、63、及び70日目に回収された血清におけるELISAによって計測された。iVAX誘導バイオコンジュゲートは、試験の35、49、及び70日目に回収された血清のPBS対照群と比較して、有意に高いレベルのFtLPS特異的IgGを生じさせた(**p<0.01、Tukey-Kramer HSD)。値は平均を表し、そしてエラーバーはELISAによって検出されたFtLPS特異的IgGsの標準誤差を表す。
【0032】
図27】表1は、iVAX反応に関するコスト分析を示す。1mLのiVAX反応物は、2つの10μg ワクチン投与量を生じさせ、そして$11.75で組み立てることができる。表1では、アミノ酸コストは、Sigmaから個別に購入された20種類の標準アミノ酸のそれぞれ2mMを構成する。溶解物コストは、1年あたり30溶解物バッチと5年の装置寿命を仮定した、10Lの発酵から50mLの溶解物を作り出す一人の従業員に基づいている。供給業者から直接購入することが可能である場合、成分供給源もまた表中に含まれている。自家製成分は、直接購入できないので、方法の項に記載の手順に従って調製しなければならない。
【0033】
図28】表2は、CLM24 ΔlpxM株を構成及び検証するのに使用したプライマーを示す。lpxMに対して相同性を有するpKD4からのカナマイシン耐性カセットの増幅にはKOプライマーが使用された。ノックアウト株のコロニーPCR及び配列決定確認のためにSeqプライマーが使用された。
【0034】
図29】表3は、実施例に使用したプラスミドを一覧表にしている。
【0035】
図30】表4は、実施例に使用した抗体と抗血清を一覧表にしている。
【0036】
図31】iVAX誘導ワクチンは致死性F.ツラレンシスのチャレンジ(challenge)に効く。(a) 5匹のBALB/cマウスの群は、PBS、或いは7.5μgの精製、無細胞合成アグリコシル化MBP4xDQNAT、PD4xDQNAT、EPADNNNS-DQNRT、又はFtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT、PD4xDQNAT、又はEPADNNNS-DQNRTを用いて腹腔内的に免疫された。PCGTを使用して生きたE.コリ細胞で調製されたFtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT、PD4xDQNAT、及びEPADNNNS-DQNRTは正の対照として使用された。マウスは、21及び42日目に同一の用量の抗原で免疫賦活された。66日目に、マウスに、6000cfu(鼻腔内LD50の50倍)のF.ツラレンシス亜属ホラークティカ(holarctica)生ワクチン株Rocky Mountain Laboratoriesを用いて鼻腔内的にチャレンジし、そして追加の25日間にわたり生存率について観察した。担体タンパク質として(b)MBP4xDQNAT、(c)PD4xDQNAT及び(d)EPADNNNS-DQNRTを用いた免疫化に関するカプラン-マイヤーカーブが示されている。これらの結果は、iVAX誘導ワクチンが最先端のPGCTアプローチを使用して合成されたワクチンと同じくらい効果的に致死性の病原体のチャレンジからマウスを保護することを示す(*p=0.0476、**p=0.0079、Fisherの直接確率検定;ns:有意性なし)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
本発明は、以下に及び当該出願を通して説明される、いくつかの定義を使用して本明細書中に記載される。
【0038】
定義
【0039】
開示された内容は、次のような定義及び専門用語を使用してさらに記載されてもよい。本明細書中に使用される定義及び専門用語は、特定の実施形態を説明することを目的とするだけであって、限定することを意図していない。
【0040】
この明細書及び請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が別の方法で明確に指示されない限り、複数形を含む。例えば、「遺伝子」又は「オリゴ糖」という用語は、その内容が別の方法で明確に指示されない限り、それぞれ「1若しくは複数の遺伝子」及び「1若しくは複数のオリゴ糖」を意味すると解釈されなければならない。本明細書中に使用される場合、「複数」という用語は「2つ以上」を意味する。
【0041】
本明細書で用いられている「約」、「ほぼ」、「実質的に」、及び「有意に」という用語は、当業者によって理解され、これが用いられている文脈に応じて或る程度のばらつきがある。当業者には明確ではない用語の使用が存在している場合であって、これが用いられている文脈が与えられている場合、「約」及び「ほぼ」は、特定の用語の±10%以下を意味し、「実質的に」及び「有意に」は、特定の用語の±10%を超えることを意味している。
【0042】
英文明細書において用いられている「挙げられる(include)及び(including)」は、「含む(comprise)及び(comprising)」と同じ意味を有する。「含む(comprise)及び(comprising)」という用語は、特許請求の範囲に記載されたコンポーネントへの追加のコンポーネントの追加を可能にする「非限定的な(open)」移行句であると解されるべきである。「~から成る(consist)及び(consisting of)」という用語は、特許請求の範囲に記載されたコンポーネント以外の追加のコンポーネントを含むのを許容しない「限定的(closed)」移行句として解されるべきである。「本質的に~から成る(consisting essentially of)」は部分的に非限定的であり、特許請求の範囲に記載された本発明の内容の性質を根本的には変えない追加のコンポーネントのみを含むことを許容するものと解されるべきである。
【0043】
「~など(such as)」という語句は「例えば~を含む」と解釈されなければならない。そのうえ、これだけに限定されるものではないが、「such as」などを含めたありとあらゆる例示的な言語の使用は、本発明をより十分な理解を容易にすることのみを意図しており、別の方法での主張がない限り、本発明の範囲に対する制限を課すものではない。
【0044】
さらに、「A、B及びCの少なくとも1つ、など」に類似した慣例が使用される例において、一般にこうした構文は、当業者が慣例を理解するという意味において意図される(例えば、「A、B及びCの少なくとも1つを有するシステム」は、これらに限定されないが、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B及びCを一緒に有するシステムを含む。)。2つ以上の代替の用語を表す実質的に任意の離接語及び/又は成句は、記載中又は図中であろうと、用語の1つ、用語のいずれか又は両方の用語を含むという可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者によってさらに理解される。例えば、「A又はB」という成句は、「A又はB」或いは「A及びB」の可能性を含むと理解される。
【0045】
「最大~まで」、「少なくとも」、「超」及び「未満」などの全ての言語は、列挙されている数を含め、上記で考察されている通り下位範囲に引き続いて分けられ得る範囲を指す。範囲は、各個別メンバーを含む。したがって、例えば、1~3つのメンバーを有する群は、1つ、2つ又は3つのメンバーを有する群を指す。同様に、6つのメンバーを有する群は、1つ、2つ、3つ、4つ又は6つのメンバーを有する群、その他を指す。
【0046】
「あり得る(may)」という法動詞は、1つ以上の選択肢の好ましい使用もしくは選択、又は同一内に含有されているいくつかの記載の実施形態もしくは特色の中での選択を指す。同一に含有されている特別な実施形態又は特色に関して、選択肢又は選択が開示されていない場合、「あり得る」という法動詞は、同一に含有されている記載の実施形態もしくは特色の態様をどのように作製もしくは使用するのかに関する肯定的行為、又は同一に含有されている記載の実施形態もしくは特色に関する特異的技術を使用するという確定的決定を指す。この後者の文脈において、「あり得る」という法動詞は、「できる(can)」という助動詞と同じ意味及び含意を有する。
【0047】
本明細書中に使用される場合、「結合する(bind)及び(binding)」、「相互作用する(interact)及び(interacting)」、並びに「使用する(occupy)及び(occupying)」という用語は、共有結合相互作用、非共有結合相互作用、及び立体相互作用を指す。共有結合相互作用は、電子対(単結合)、2組の電子対(二重結合)又は3組の電子対(三重結合)の共有によって形成された2つの原子又はラジカルの間の化学結合である。共有結合相互作用はまた、当該技術分野で電子対相互作用又は電子対結合としても知られている。非共有結合相互作用としては、これだけに限定されるものではないが、ファンデルワールス相互作用、水素結合、弱い化学結合(短距離の非共有結合力による)、疎水性相互作用、イオン結合などが挙げられる。結合相互作用の総説は、Alberts et al., in Molecular Biology of the Cell, 3d edition, Garland Publishing, 1994に見ることができる。立体相互作用は、化合物とその部位との間のいずれかの引力に対立するものとして、化合物の構造が、その三次元構造によって部位を使用できるようなものを含むと一般的に理解される。
【0048】
ポリヌクレオチドと合成法
【0049】
用語「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用するとき、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)を指し、プリン又はピリミジン塩基のNグリコシドであるポリヌクレオチドの任意の他のタイプを指す。用語「核酸」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」間の長さにおける区別は意図されない。これらの用語は互換的に使用される。これらの用語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、これらの用語には、二本鎖DNA及び一本鎖DNA、並びに二本鎖RNA及び一本鎖RNAが含まれる。本発明における使用に関して、オリゴヌクレオチドはまた、塩基、糖又はリン酸骨格が修飾されたヌクレオチド類似体、並びに非プリン又は非ピリミジンヌクレオチド類似体を含み得る。
【0050】
オリゴヌクレオチドは、それぞれが参照により本明細書に組み込まれるNarang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90-99のホスホトリエステル法;Brown et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:109-151のホスホジエステル法;Beaucage et al., 1981, Tetrahedron Letters 22:1859-1862のジエチルホスホラミダイト法;米国特許第4,458,066号の固体支持体法などの方法による直接的な化学合成を含む任意の適切な方法によって調製することができる。オリゴヌクレオチド及び修飾されたヌクレオチドのコンジュゲートの合成方法の総説は、参照により本明細書に組み込まれるGoodchild, 1990, Bioconjugate Chemistry 1(3): 165-187に記載されている。
【0051】
用語「増幅反応」は、鋳型核酸配列のより多いコピーをもたらす、又は鋳型核酸の転写をもたらす酵素反応を含む任意の化学反応を指す。増殖反応には、逆転写、リアルタイムPCR(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号を参照のこと;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis et al., eds, 1990)を参照のこと)を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR)(Baranyら,米国特許第5,494,810号を参照のこと)が含まれる。例示的な「増幅反応条件」又は「増幅条件」は、典型的には、2ステップ又は3ステップサイクルのいずれかを含む。2ステップサイクルは、高温変性ステップ、続くハイブリダイゼーション/伸長(又はライゲーション)ステップを含む。3ステップサイクルは、変性ステップ、続くハイブリダイゼーションステップ、その後の別々の伸長ステップ又はライゲーションステップを含む。
【0052】
用語「標的」、「標的配列」、「標的領域」及び「標的核酸」は、本明細書で使用するとき、同義であり、増幅され、配列決定され又は検出されるべきである核酸の領域又は配列を指す。
【0053】
用語「ハイブリダイゼーション」とは、本明細書で使用するとき、相補的塩基対形成のために2つの一本鎖核酸による二重鎖構造の形成を指す。ハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸鎖間又はミスマッチのマイナー領域を含有する「実質的に相補的な」核酸鎖間で起こり得る。完全に相補的な核酸鎖のハイブリダイゼーションが非常に好ましい条件を「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」又は「配列特異的ハイブリダイゼーション条件」と称する。実質的に相補的な配列の安定な二重鎖は、さほどストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件下で達成され得る;許容されるミスマッチの程度はハイブリダイゼーション条件を適当に調整することによりコントロールされ得る。核酸技術の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ及び塩基対組成、イオン強度及びミスマッチ塩基対の頻度を含むいくつかの変数を考慮して、当該技術分野によって提供されているガイドライン(例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al., 1989, Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York; Wetmur, 1991, Critical Review in Biochem. and Mol. Biol. 26(3/4):227-259; and Owczarzy et al., 2008, Biochemistry, 47: 5336-5353を参照のこと)に従って二重鎖安定性を経験的に決定することができる。
【0054】
用語「プライマー」は、本明細書で使用するとき、適切な条件下でDNA合成の開始ポイントとして作用し得るオリゴヌクレオチドを指す。このような条件には、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成を4つの異なるヌクレオシド三リン酸及び伸長するための薬剤(例えば、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素)の存在下、適した緩衝液中、適切な温度で誘導させる条件が含まれる。
【0055】
プライマーは、好ましくは一本鎖DNAである。プライマーの適した長さは、プライマーの意図される使用に依存するが、典型的には、例えば15~35ヌクレオチド、18~75ヌクレオチド及び25~150ヌクレオチドなどの中間領域を含めた、約6~約225ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー分子は、一般的に、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためにより低い温度を必要とする。プライマーは、鋳型核酸の正確な配列を反映させる必要はないが、鋳型とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。所望の標的配列の増殖のために適切なプライマーの設計は、当該技術分野において周知であり、本明細書において引用されている文献に記載されている。
【0056】
プライマーは、プライマーの検出又は固定化を可能にするが、DNA合成の開始ポイントとして作用するプライマーの基本的な特性を変化させない追加の特徴を組み込み得る。例えば、プライマーは、標的核酸にハイブリダイズしないが、増幅産物のクローニング若しくは検出を容易にする、又は(例えばプロモーターの包含によって)RNAの転写又は(例えばInternal Ribosome Entry Site(IRES)など5’-UTR又はpoly(A)n配列(ここで、nは約20~約200の範囲内にある)などの3’-UTR要素の包含によって)タンパク質の翻訳を可能にする、追加の核酸配列を5’末端に含んでもよい。ハイブリダイズする鋳型に十分に相補的であるプライマーの領域は、本明細書においてハイブリダイジング領域と称される。
【0057】
本明細書で使用するとき、十分にストリンジェントな条件下で増幅反応において使用されるとき、プライマーが標的核酸に主としてハイブリダイズすれば、プライマーは標的配列に対して「特異的」である。典型的には、プライマー標的二重鎖の安定性がプライマーと試料中に見出されるいずれかの他の配列間で形成される二重鎖の安定性より大きい場合、プライマーは標的配列に対して特異的である。当業者は、塩条件並びにプライマーの塩基組成およびミスマッチ位置などの様々な要因がプライマーの特異性に影響を及ぼし、プライマー特異性の定型的な実験的確認が多くの事例で必要とされることを認識する。プライマーが標的配列のみと安定な二重鎖を形成することができるハイブリダイゼーション条件を選択することができる。したがって、適切にストリンジェントな増幅条件下での標的特異的プライマーの使用は、標的プライマー結合部位を含有する標的配列の選択的増幅を可能にする。
【0058】
本明細書で使用するとき、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドの重合を触媒する酵素を指す。「DNAポリメラーゼ」は、デオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。公知のDNAポリメラーゼとしては、中でも、例えばパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ、E.コリDNAポリメラーゼ、T7DNAポリメラーゼ及びサーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼが挙げられる。「RNAポリメラーゼ」はリボヌクレオチドの重合を触媒する。DNAポリメラーゼの上記の例は、DNA依存型DNAポリメラーゼとしても知られている。RNA依存型DNAポリメラーゼもまたDNAポリメラーゼの範囲内にある。逆転写酵素(レトロウイルスによってコードされたウイルス性ポリメラーゼを含む)はRNA依存型DNAポリメラーゼの例である。RNAポリメラーゼ(「RNAP」)の既知の例としては、中でも、例えばT3 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ及びE.コリRNAポリメラーゼが挙げられる。RNAポリメラーゼの上記の例はまた、DNA依存型RNAポリメラーゼとしても知られている。任意の上記酵素のポリメラーゼ活性は、当該技術分野で周知の手段によって測定できる。
【0059】
「プロモーター」という用語は、シス作用DNA配列を含むDNA鋳型からRNA転写を開始するようにRNAポリメラーゼ及び他のトランス作用性転写因子に指示するシス作用性DNA配列を指す。
【0060】
本明細書中に使用される場合、「配列で定義された生体高分子」という用語は特定の一次配列を有する生体高分子を指す。配列で定義された生体高分子は、遺伝子が特定の一次配列を有する生体高分子をコードする場合に遺伝的コードで定義された生体高分子に相当し得る。
【0061】
本明細書で使用する場合、「発現鋳型」または「核酸鋳型」とは、ポリペプチドまたはタンパク質へと翻訳され得る少なくとも1つのRNAを転写するための基質として機能する核酸を指す。発現鋳型には、DNAまたはRNAから構成される核酸が含まれる。発現鋳型のための核酸として使用するためのDNAの適切な供給源には、ゲノムDNA、cDNA、およびcDNAへと変換され得るRNAが含まれる。ゲノムDNA、cDNAおよびRNAは、任意の生物学的供給源、例えば、とりわけ、組織サンプル、生検、スワブ、痰、血液サンプル、便サンプル、尿サンプル、剥離物由来であり得る。ゲノムDNA、cDNAおよびRNAは、宿主細胞またはウイルス起源由来であり得、現存生物および絶滅生物を含む任意の種由来であり得る。本明細書で使用する場合、「発現鋳型」、「核酸鋳型」および「転写鋳型」は、同じ意味を有し、相互交換可能に使用される。
【0062】
特定の例示的な実施形態において、例えば、本明細書中に記載した1若しくは複数のrRNA若しくはレポーターポリペプチド及び/又はタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターなどのベクターが提供される。本明細書中に使用される場合、「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送できる核酸分子を指す。1つのタイプのベクターは、その中に追加DNA切片が接続され得る環状の二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。斯かるベクターは、本明細書中で「発現ベクター」とも呼ばれる。一般に、組み換えDNA技術における発現ベクターの有用性は、プラスミドの形態であることが多い。当該明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用できる。しかしながら、開示された方法及び組成物は、同等な機能に役立つウイルスベクターなどのその他の形態の発現ベクター(例えば、反復欠損性レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ衛星ウイルス)を含むことが意図される。
【0063】
特定の例示的な実施形態において、遺伝子組み換え発現ベクターは、本明細書中に記載した方法のうちの1若しくは複数における核酸配列の発現に好適な形態で核酸配列(例えば、1若しくは複数のrRNA若しくはレポーターポリペプチド及び/又は本明細書中に記載したタンパク質をコードする核酸配列)を含み、そしてそれは、該遺伝子組み換え発現ベクターが発現されるべき核酸配列に作動可能に連結された1若しくは複数の調節配列を含むことを意味する。遺伝子組み換え発現ベクターの範疇において、「作動可能に連結された」とは、本明細書中に記載した1若しくは複数のrRNA若しくはレポーターポリペプチド及び/又はタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写及び/又は翻訳系において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で調節配列に連結されることを意味することを意図する。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。斯かる調節配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。
【0064】
オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドとしては、任意選択で1若しくは複数の非標準ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、及び/又は修飾ヌクレオチドが挙げられる。修飾ヌクレオチドの例としては、これだけに限定されるものではないが、ジアミノプリン、S2T、5-フルオロウラシル、5-ブロムウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエノシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエノシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-D46-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、クエノシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3‐(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6-ジアミノプリンなどが挙げられる。核酸分子はまた、塩基部分(例えば、相補的なヌクレオチドと水素結合を形成することができる通常入手可能な1若しくは複数の原子にて、及び/又は相補的なヌクレオチドと通常水素結合を形成することができない1若しくは複数の原子にて)、糖部分又はリン酸骨格で修飾されてもよい。
【0065】
本明細書中に利用される場合、「欠失」とは、天然ポリヌクレオチド配列に対する1若しくは複数のヌクレオチドの除去を意味する。本明細書中に開示される改変株は、1若しくは複数の遺伝子における欠失(例えば、gmdにおける欠失及び/又はwaaLにおける欠失)を含んでもよい。好ましくは、欠失は無機能性遺伝子生成物をもたらす。本明細書中に利用される場合、「挿入」とは、天然ポリヌクレオチド配列に対する1若しくは複数のヌクレオチドの付加を意味する。本明細書中に開示される改変株は、1若しくは複数の遺伝子における挿入(例えば、gmdにおける挿入及び/又はwaaLにおける挿入)を含んでもよい。好ましくは、欠失は無機能性遺伝子生成物をもたらす。本明細書中に利用される場合、「置換」とは、ポリヌクレオチド配列に対して天然でないヌクレオチドを用いた天然ポリヌクレオチド配列のヌクレオチドの置換を意味する。本明細書中に開示される改変株は、1若しくは複数の遺伝子における置換(例えば、gmdにおける置換及び/又はwaaLにおける置換)を含んでもよい。好ましくは、例えば、置換が遺伝子生成物のコード配列の未成熟終止コドン(例えば、TAA、TAG、又はTGA)を導入する場合、置換は無機能性遺伝子生成物をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される改変株は、置換が複数の未成熟終止コドン(例えば、TAATAA、TAGTAG、又はTGATGA)を導入する場合、2以上の置換を含んでもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示された改変株は、1若しくは複数の異種遺伝子を含み、発現するように改変されてもよい。当該技術分野で理解されるとおり、異種遺伝子は、その株が天然に存在する場合、改変株に天然には存在しない遺伝子である。E.コリに対して異種である遺伝子は、E.コリに生じない遺伝子であり、かつ、別の微生物で天然に存在する遺伝子(例えば、C.ジェジュニからの遺伝子)又はその他の既知の微生物(すなわち、人工遺伝子)において天然に生じない遺伝子であってもよい。
【0067】
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び合成法
【0068】
本明細書中に使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミド連鎖によって繋がれたアミノ酸残基の高分子の鎖を含む分子を指す。「アミノ酸残基」という用語としては、これだけに限定されるものではないが、アラニン(Ala又はA)、システイン(Cys又はC)、アスパラギン酸(Asp又はD)、グルタミン酸(Glu又はE)、フェニルアラニン(Phe又はF)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、リジン(Lys又はK)、ロイシン(Leu又はL)、メチオニン(Met又はM)、アスパラギン(Asn又はN)、プロリン(Pro又はP)、グルタミン(Gln又はQ)、アルギニン(Arg又はR)、セリン(Ser又はS)、トレオニン(Thr又はT)、バリン(Val又はV)、トリプトファン(Trp又はW)、及びチロシン(Tyr又はY)残基から成る群に含まれるアミノ酸残基が挙げられる。「アミノ酸残基」という用語はまた、標準的ではないか又は非天然のアミノ酸を含んでもよい。「アミノ酸残基」という用語は、α-、β-、γ-、及びδ-アミノ酸を含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、「アミノ酸残基」という用語は、ホモシステイン、2-アミノアジピン酸、N-エチルアスパラギン、3-アミノアジピン酸、オキシリジン、β-アラニン、β-アミノ-プロピオン酸、アロ-オキシリジン酸、2-アミノ酪酸、3-ヒドロキシプロリン、4-アミノ酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、イソデスモシン、2-アミノヘプタン酸、アロ-イソロイシン、2-アミノイソブチル酸、N-メチルグリシン、サルコシン、3-アミノイソブチル酸、N-メチルイソロイシン、2-アミノピメリン酸、6-N-メチルリシン、2,4-ジアミノブチル酸、N-メチルバリン、デスモシン、ノルバリン、2,2’-ジアミノピメリン酸、ノルロイシン、2,3-ジアミノプロピオン酸、オルニチン、及びN-エチルグリシンから成る群に含まれる標準的ではないか又は非天然のアミノ酸残基を含んでもよい。「アミノ酸残基」という用語は、任意の前述のアミノ酸のL異性体又はD異性体を含んでもよい。
【0070】
標準的ではない又は非天然のアミノ酸の他の例としては、これだけに限定されるものではないが、p-アセチル-L-フェニルアラニン、p-ヨード-L-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、p-プロパルギルオキシフェニルアラニン、p-プロパルギル-フェニルアラニン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcpβ-セリン、L-Dopa、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、チロシンアミノ酸の非天然の類似体;グルタミンアミノ酸の非天然の類似体;フェニルアラニンアミノ酸の非天然の類似体;セリンアミノ酸の非天然の類似体;トレオニンアミノ酸の非天然の類似体;メチオニンアミノ酸の非天然の類似体;ロイシンアミノ酸の非天然の類似体;イソロイシンアミノ酸の非天然の類似体;アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボラート、ボロナート、ホスホノ、ホスフィン、複素環式、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケト、若しくはアミノ置換アミノ酸、又はそれらの組み合わせ;光励起性架橋剤を伴ったアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;金属結合性アミノ酸;含金属アミノ酸;放射性アミノ酸;光ケージ化及び/又は光異性化可能アミノ酸;ビオチン又はビオチン類似体含有アミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコール又はポリエーテル含有アミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学的切断性又は光開裂性アミノ酸;長い側鎖を有するアミノ酸;毒性基を含むアミノ酸;糖置換されたアミノ酸;炭素連結含糖アミノ酸;酸化還元活性アミノ酸;α-ヒドロキシ含有酸;アミノチオ酸;α,α二置換アミノ酸;β-アミノ酸;γ-アミノ酸、プロリン若しくはヒスチジン以外の環状アミノ酸、並びにフェニルアラニン、チロシン若しくはトリプトファン以外の芳香族アミノ酸が挙げられる。
【0071】
本明細書中に使用される場合、「ペプチド」は、典型的には20アミノ酸以下、かつ、より典型的には12アミノ酸以下の長さの、短い高分子のアミノ酸と定義される、(Garrett & Grisham, Biochemistry, 2nd edition, 1999, Brooks/Cole, 110)。いくつかの実施形態において、本明細書中に企図されるペプチドは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個以下のアミノ酸を含んでもよい。タンパク質とも呼ばれる、ポリペプチドはまた、典型的には≧100アミノ酸の長さのものである(Garrett & Grisham, Biochemistry, 2nd edition, 1999, Brooks/Cole, 110)。本明細書中に企図されるポリペプチドは、これだけに限定されるものではないが、100、101、102、103、104、105、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約275、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、約500、約525、約550、約575、約600、約625、約650、約675、約700、約725、約750、約775、約800、約825、約850、約875、約900、約925、約950、約975、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、約1750、約2000、約2250、約2500又はそれ以上のアミノ酸残基を含んでもよい。
【0072】
本明細書中に企図されるペプチドは、非アミノ酸部分を含むようにさらに修飾されてもよい。修飾は、これだけに限定されるものではないが、アシル化(例えば、アシル化-O(エステル)、N-アシル化(アミド)、S-アシル化(チオエステル))、アセチル化(例えば、タンパク質のN末端又はリジン残基におけるアセチル基の付加)、ホルミル化リポイル化(例えば、リポ酸、C8官能基の付加)、ミリストイル化(例えば、ミリステートの付加、C14飽和酸)、パルミトイル化(例えば、パルミチン酸塩の付加、C16飽和酸)、アルキル化(例えば、リジン又はアルギニン残基にてメチルなどのアルキル基の付加)、イソプレニル化又はプレニル化(例えば、ファルネソール又はゲラニルゲラニオールなどのイソプレノイド基の付加)、C末端のアミド化、グリコシル化(例えば、糖タンパク質をもたらす、アスパラギン、ヒドロキシリシン、セリン、又はトレオニンへのグリコシル基の付加)を含んでもよい。糖化と異なり、糖の非酵素的な付加、ポリシアル化(例えば、ポリシアル酸の付加)、グリピエーション(例えば、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化(例えば、甲状腺ホルモンの)、及びリン酸化(例えば、通常セリン、チロシン、トレオニン又はヒスチジンへのリン酸基の付加)と見なされる。修飾は、グリコシル化タグ(例えば、任意選択でC末端における4xDQNAT)及び/又はヒスチジンタグ(例えば、6xHis)の付加を含んでもよい。
【0073】
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及びその変異体への言及が本明細書中で成され得る。基準アミノ酸配列としては、これだけに限定されるものではないが、配列番号:1~10のいずれかのアミノ酸配列が挙げられ得る。本明細書中に企図される変異体は、基準アミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を有してもよい。例えば、本明細書中に企図される変異ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、基準ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に対して保存的なアミノ酸置換及び/又は非保存的アミノ酸置換を含んでもよい。「保存的なアミノ酸置換」とは、基準ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の特性を最小限しか妨げないと予測されるそれらの置換であり、及び「非保存的アミノ酸置換」は、基準ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の特性に最も干渉すると予測されるそれらの置換である。言い換えれば、保存的なアミノ酸置換は、実質的に基準ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の構造と機能を保存する。以下の表は、例示的な保存的アミノ酸置換の一覧を提供する。
【0074】
表1
【表1】
【0075】
保存的アミノ酸置換は、一般的に:(a) 例えばβシート又はαヘリカル構造としての、置換領域内のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質骨格の構造、(b) 置換の部位における分子の荷電又は疎水度、及び/又は(c) 側鎖のバルク、を維持する。非保存的アミノ酸置換は、一般的に:(a) 例えばβシート又はαヘリカル構造としての、置換領域内のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質骨格の構造、(b) 置換の部位における分子の荷電又は疎水度、及び/又は(c) 側鎖のバルク、を乱す。
【0076】
ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の基準アミノ酸配列に対して欠失を含む変異体が、本明細書で企図される。「欠失」は、基準配列に対して1若しくは複数のアミノ酸残基又はヌクレオチドの不存在をもたらすアミノ酸又はヌクレオチド配列における変化を指す。欠失は、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、50、100、又は200個のアミノ酸残基又はヌクレオチドを取り除く。欠失は、内部欠失又は末端欠失(例えば、基準ポリヌクレオチドのN末端切断又はC末端切断、基準ポリペプチドの5’-末端又は3’-末端切断)を含んでもよい。
【0077】
ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の基準アミノ酸配列の断片を含む変異体が、本明細書で企図される。「断片」は、基準配列に対して配列が同一であるが、長さが短いアミノ酸配列の一部である。断片は、少なくとも1つのアミノ酸残基を引いた、基準配列の全長を含んでもよい。例えば、断片は、それぞれ基準ポリペプチドの5~1000個の隣接アミノ酸残基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、断片は、基準ポリペプチドの少なくとも5、10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、150、250、又は500個の隣接アミノ酸残基を含んでもよい。断片は、分子の特定の領域から優先的に選択され得る。「少なくとも一断片」という用語は、完全長のポリペプチドを包含する。
【0078】
ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の基準アミノ酸配列に対して挿入又は付加を含む変異体が、本明細書で企図される。「挿入」及び「付加」という単語は、1若しくは複数のアミノ酸残基の付加をもたらすアミノ酸又は配列における変化を指す。挿入又は付加は、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、又は200個のアミノ酸残基を指し得る。
【0079】
融合タンパク質も本明細書で企図される。「融合タンパク質」は、少なくとも1つの異種タンパク質ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質(又は断片若しくはその変異体)への、本明細書中に開示される少なくとも1つのペプチド、ポリペプチド、タンパク質又はその変異体の融合で形成されたタンパク質を指す。(単数若しくは複数の)異種タンパク質は、そのペプチド又は変異体のN末端、C末端、又は両方の末端にて融合されてもよい。
【0080】
「相同性」は、2以上のポリペプチド配列の間の配列類似性、又は互換的に、配列同一性を指す。相同性、配列類似性、及びパーセンテージ配列同一性は、当該技術分野の又は本明細書中に記載される方法を使用して測定され得る。
【0081】
「パーセント同一性」及び「%同一性」という語句は、ポリペプチド配列に適用される場合、標準化アルゴリズムを使用してアラインされた少なくとも2つのポリペプチド配列の間の残基一致のパーセンテージを指す。ポリペプチド配列アラインメントの方法は周知されている。いくつかのアラインメント手法は保存的なアミノ酸置換が考慮されている。先により詳細に説明されている、斯かる保存的置換は、一般に、置換位置における荷電と疎水度を保持し、これにより、ポリペプチドの構造(及びそのため機能)を保存する。アミノ酸配列のパーセント同一性は、当該技術分野で理解されるように測定され得る(例えば、米国特許第7,396,664号、全体として参照により本明細書に援用する)。一般的に使用され、かつ、自由に入手可能な配列比較アルゴリズム一式がNational Center for Biotechnology Information(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)によって提供されており(Altschul, S. F. et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403 410)、そしてそれは、そのウェブサイトにてNCBI, Bethesda, Md.を含めたいくつかの供給源から入手可能である。BLASTソフトウェア一式は、「blastp」を含めた様々な配列分析プログラムを含んでおり、そしてそれは、既知のアミノ酸配列を様々なデータベースからの他のアミノ酸配列とアラインするのに使用される。
【0082】
パーセント同一性は、例えば、特定の配列番号(例えば、配列番号:1~10のどれか)によって定義される、定義されたポリペプチド配列の全長にわたり計測されても、又は例えばより大きな、定義されたポリペプチド配列から得られた断片の長さ上の、より短い長さ、例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70又は少なくとも150個の隣接残基の断片、にわたり計測されてもよい。斯かる長さは例示的なだけであるので、表、図面又は配列表で、本明細書中に示された配列によって裏付けされた任意の断片長が、パーセンテージ同一性が計測され得る長さを記載するのに使用され得ることが理解される。
【0083】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、National Center for Biotechnology Information’sウェブサイトで入手可能な「BLAST2配列」ツールを用いてblastpを使用した、ポリペプチド配列のうちの1つの特定の長さにわたって特定のポリペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチド配列と定義され得る(Tatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden (1999), “Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences”, FEMS Microbiol Lett. 174:247-250を参照のこと)。斯かる1組のポリペプチドは、ポリペプチドのうちの1つの特定の定義された長さにわたり、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%又はそれを超える配列同一性を示し得る。「変異体」は、実質的に、基準ポリペプチドと同じ機能的活性(例えば、グリコシラーゼ活性又は他の活性)を有し得る。「実質的に単離されたか又は精製された」アミノ酸配列が本明細書に企図される。「実質的に単離されたか又は精製された」という用語は、それらの自然環境から取り出され、それらが天然に同伴している他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは少なくとも75%含まない、より好ましくは少なくとも90%含まない、より一層好ましくは少なくとも95%含まないアミノ酸配列を指す。本明細書中に企図される変異体ポリペプチドとしては、配列番号:1~10のいずれかの変異ポリペプチドが挙げられる。
【0084】
本明細書中に使用される「翻訳鋳型」とは、ポリペプチド又はタンパク質を合成するためにリボソームによって使用されることができる発現鋳型からの転写のRNA生成物を指す。
【0085】
「反応混合物」という用語は、本明細書中に使用される場合、所定の反応を実施するのに必要とされる試薬を含有する溶液を指す。反応混合物は、それが反応を実施するのに必要なすべての試薬を含んでいる場合には一式とも呼ばれる。反応混合物の成分は、すべての成分のうちの1若しくは複数をそれぞれ含む、別々のコンテナに別々に保存されてもよい。成分は商業化のために別々にパッケージされてもよく、そして、有用な市販キットは反応混合物のための反応成分の1若しくは複数を含んでもよい。
【0086】
本明細書中に記載した方法のステップは、本明細書に別段の記載がない限り又は文脈上明確に矛盾しない限り、あらゆる好適な順序で実施できる。ステップは、本明細書に別段の記載がない限り又は文脈上明確に矛盾しない限り、所望の目標を達成するために任意の回数で反復されても又は繰り返されてもよい。
【0087】
本発明を実施するために本発明者らに知られたベストモードなど、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。前記記載を読めば、好ましい実施形態の変形は当業者にとって自明となり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適宜使用することを想定し、本発明者らは、本発明が本明細書中に具体的に記載されているものとは異なって実施されることを予定する。従って、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に表記されている主題のあらゆる改変及び均等物を含む。さらに、本明細書に別段の記載がない限り又は文脈上明確に矛盾しない限り、その全ての可能な変形における上記要素のあらゆる組み合わせが本発明によって包含される。
【0088】
無細胞タンパク質合成(CFPS)
【0089】
本明細書中に開示された株及びシステムは、当該技術分野で知られている無細胞タンパク質合成法に適用され得る。例えば米国特許第4,496,538号;同第4,727,136号;同第5,478,730号;同第5,556,769号;同第5,623,057号;同第5,665,563号;同第5,679,352号;同第6,168,931号;同第6,248,334号;同第6,531,131号;同第6,869,774号;同第6,994,986号;同第7,118,883号;同第7,189,528号;同第7,338,789号;同第7,387,884号;同第7,399,610号;同第8,703,471号;同第8,999,668号を参照のこと。また、米国特許出願公開公報第2015-0259757号、同第2014-0295492号、同第2014-0255987号、同第2014-0045267号、同第2012-0171720号、同第2008-0138857号、同第2007-0154983号、同第2005-0054044号及び同第2004-0209321号を参照のこと。また、米国特許出願公開公報第2005-0170452号;同第006-0211085号;同第2006-0234345号;同第2006-0252672号;同第2006-0257399号;同第2006-0286637号;同第2007-0026485号;同第2007-0178551号を参照のこと。また、PCT国際出願公開公報第2003/056914号;同第2004/013151号;同第2004/035605号;同第2006/102652号;同第2006/119987号;同第2007/120932号を参照のこと。また、Jewett, M.C., Hong, S.H., Kwon, Y.C., Martin, R.W., and Des Soye, B.J. 2014, “Methods for improved in vitro protein synthesis with proteins containing non standard amino acids,” 米国特許出願シリアル番号第62/044,221号; Jewett, M.C., Hodgman, C.E., and Gan, R. 2013, “Methods for yeast cell-free protein synthesis,” 米国特許出願シリアル番号第61/792,290号; Jewett, M.C., J.A. Schoborg, and C.E. Hodgman. 2014, “Substrate Replenishment and Byproduct Removal Improve Yeast Cell-Free Protein Synthesis,” 米国特許出願シリアル番号第61/953,275号;及びJewett, M.C., Anderson, M.J., Stark, J.C., Hodgman, C.E. 2015, “Methods for activating natural energy metabolism for improved yeast cell-free protein synthesis,” 米国特許出願シリアル番号第62/098,578号を参照のこと。また、Guarino, C., & DeLisa, M. P. (2012) A prokaryote-based cell-free translation system that efficiently synthesizes glycoproteins. Glycobiology, 22(5), 596-601を参照のこと。これらの参考文献を全体として参照により本願に援用する。
【0090】
特定の例示的な実施形態において、本明細書中に記載した方法のうちの1若しくは複数が容器内、例えば1つの容器内、で実施される。「容器」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載した(例えば、1若しくは複数の転写、翻訳、及び/又はグリコシル化ステップにおける使用のための)1若しくは複数の反応物を保持するのに好適な任意のコンテナを指す。容器の例としては、これだけに限定されるものではないが、マイクロタイタプレート、試験管、マイクロフュージチューブ、ビーカー、フラスコ、マルチウェルプレート、キュベット、流動系、マイクロファイバー、顕微鏡スライドなどが挙げられる。
【0091】
特定の例示的な実施形態において、生理的適合(しかし、必ずしも天然型ではない)イオン及びバッファーは、例えば、グルタミン酸カリウム、塩化アンモニウムなど、転写、翻訳、及び/又はグリコシル化に利用される。生理学的細胞質塩は、当業者にとって周知である。
【0092】
本明細書中に開示された株及びシステムは、グリコシル化巨大分子(例えば、グリコシル化ペプチド、グリコシル化タンパク質、及びグリコシル化脂質)を調製するために無細胞タンパク質方法に適用されてもよい。開示された株及びシステムを使用して調製され得るグリコシル化タンパク質としては、N-結合型グリコシル化(すなわち、アスパラギン及び/又はアルギニン側鎖の窒素に取り付けられたグリカン)及び/又はO-結合型グリコシル化(すなわち、セリン、トレオニン、チロシン、ヒドロキシリシン及び/又はヒドロキシプロリンのヒドロキシル酸素に取り付けられたグリカン)を有するタンパク質を挙げてもよい。グリコシル化脂質としては、セラミドなどの酸素原子を介したO-結合ポリサッカライドを挙げてもよい。
【0093】
本明細書中に開示されたグリコシル化巨大分子としては、これだけに限定されるものではないが、グルコース(例えば、β-D-グルコース)、ガラクトース(例えば、β-D-ガラクトース)、マンノース(例えば、β-D-マンノース)、フコース(例えば、α-Lフコース)、N-アセチル-グルコサミン(GlcNAc)、N-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)、ノイラミン酸、N-アセチルノイラミン酸(すなわち、シアル酸)、及びキシロースなどの当該技術分野で知られている単量体で構成された非分枝及び/又は分岐糖鎖を挙げてもよく、そしてそれは、グリコシル化巨大分子に取り付けられてもよく、そしてそれぞれのグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、GlcNAcトランスフェラーゼ、GalNAcトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びシアリルトランスフェラーゼ)によってグリカン鎖又はドナー分子(例えば、ドナー脂質及び/又はドナーヌクレオチド)に成長し得る。本明細書中に開示されたグリコシル化巨大分子としては、当該技術分野で知られているグリカンを挙げてもよい。
【0094】
開示された無細胞タンパク合成システムは、未精製である、及び/又は少なくとも部分的に単離された、及び/又は精製された成分を利用してもよい。本明細書中に使用される場合、「未精製」という用語は、細胞を破砕し、溶解することによって、せいぜい、例えば、破砕し、溶解した細胞を遠心分離し、そして遠心分離後の上清及び/又はペレットから未精製の成分を回収することによって、破砕し、溶解した細胞からの未精製の成分を最小限精製することによって、得られた成分を意味し得る。「単離されたか又は精製された」という用語は、それらの自然環境から取り出された成分を指し、それらが天然に同伴している他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは少なくとも75%含まない、より好ましくは少なくとも90%含まない、より一層好ましくは少なくとも95%含まない。
【0095】
グリコシル化のための成分を濃縮した原核細胞溶解物における無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)
【0096】
無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)を実施するための組成物と方法が開示される。いくつかの実施形態において、組成物と方法は、グリコシル化のために成分を濃縮し、原核生物の遺伝子組み換え株から調製された原核細胞溶解物を含むか又は利用する。
【0097】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え原核生物は、遺伝子を組み換えたエシェリキア・コリ株又はCFGpSのための溶解物を調製するのに好適なその他の原核生物である。任意選択で、エシェリキア・コリの修飾株はrEc.C321由来である。好ましくは、修飾株としては、好ましくは多収無細胞タンパク質合成が可能な溶解物をもたらすゲノム修飾(例えば、改変不能な遺伝子をレンダリングする遺伝子の欠失)が挙げられる。また、好ましくは、修飾株としては、好ましくは(例えば、ゲノム修飾を有しない株と比較して)比較的高濃度でグリコシル化のための糖前駆体を含む溶解物をもたらすゲノム修飾(例えば、改変不能な遺伝子をレンダリングする遺伝子の欠失)が挙げられる。いくつかの実施形態において、修飾された株から調製された溶解物は、修飾されていない株から調製された溶解物より少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、又はそれより高い濃度にて糖前駆体を含む。例としてであって、制限としてではなく、当該方法、キット、及びシステムで有用な細菌起源の株としては、E.コリの組み換え株、例えばprfA、endA、gor、rne、及びlpxMから選択される1若しくは複数の遺伝子生成物が欠けているE.コリ組み換え株などが挙げられる。開示される方法、キット、及びシステムのための好適な組み換え株としては、これだけに限定されるものではないが、rE.コリΔprfA ΔendA Δgor Δrne(705)、E.コリBL21(DE3)、E.コリ CLM24、E.コリ CLM24 ΔlpxM、E.コリ CLM24 ΔlpxM CH-IpxE、E.コリ CLM24 ΔlpxM CH-IpxE TT-IpxE、E.コリ CLM24 ΔlpxM CH-IpxE TT-IpxE KL-IpxE、及びE.コリ CLM24 ΔlpxM CH-IpxE TT-IpxE KL-IpxE KO-IpxEが挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態において、修飾株としては、グリコシル化に利用される単糖(例えば、グルコース、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、ガラクトース、シアル酸、ノイラミン酸、フコース)の濃度の増大をもたらす修飾が挙げられる。このように、修飾は、グリコシル化で利用される単糖又はポリサッカライドを代謝する酵素が不活化であってもよい。いくつかの実施形態において、修飾は、(例えば、その酵素をコードする遺伝子の少なくとも一部の欠失を介して)デヒドラターゼ又は炭素-酸素リアーゼ酵素(EC4.2)を不活化する。特に、修飾は、GDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(EC4.2.1.47)を不活化し得る。修飾株がE.コリであるときに、修飾は、(例えば、gmdの遺伝子の少なくとも一部の欠失を介した)gmdの遺伝子の不活性化修飾を含んでもよい。E.コリgmd遺伝子の配列は、配列番号:1として本明細書中に提供され、E.コリGDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼのアミノ酸配列は、配列番号:2として提供される。
【0099】
いくつかの実施形態において、修飾株は、グリコシルトランスフェラーゼ経路で利用される酵素を不活化する修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、(例えば、酵素をコードする遺伝子の少なくとも一部の欠失を介して)オリゴ糖リガーゼ酵素を不活化する。特に、修飾は、任意選択でリピドAコアオリゴ糖にO-抗原をコンジュゲートするO-抗原リガーゼを不活化し得る。修飾は、(例えば、waaLの遺伝子の少なくとも一部の欠失を介した)waaL遺伝子の不活性化修飾を含んでもよい。E.コリwaaL遺伝子の配列は、配列番号:3として本明細書中に提供され、E.コリO-抗原リガーゼのアミノ酸配列は、配列番号:4として提供される。
【0100】
いくつかの実施形態において、修飾株は、(例えば、酵素をコードする遺伝子の少なくとも一部の欠失を介して)デヒドラターゼ又は炭素-酸素リアーゼ酵素を不活化する修飾を含み、また、修飾株は、(例えば、酵素をコードする遺伝子の少なくとも一部の欠失を介して)オリゴ糖リガーゼ酵素を不活化する修飾を含む。修飾株は、gmd及びwaaLの両方の不活性化又は欠失を含んでもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、修飾株は、1若しくは複数の直交性(orthogonal)又は異種遺伝子を発現するために修飾されてもよい。特に、修飾株は、例えば脂質結合オリゴ糖(LLO)経路にかかわるグリコシルトランスフェラーゼ(GT)などの糖タンパク質合成に関連している直交性又は異種遺伝子を発現するように遺伝子が組み換えられてもよい。いくつかの実施形態において、修飾株は、直交性又は異種オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.119)(OST)を発現するように修飾されてもよい。オリゴサッカリルトランスフェラーゼ又はOSTは、脂質からタンパク質にオリゴ糖を移動させる酵素である。
【0102】
特に、修飾株は、グリコシル化システム(例えば、N-結合型グリコシル化システム及び/又はO-結合型グリコシル化システム)の直交性又は異種遺伝子を発現するように遺伝子が組み換えられてもよい。カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)のN-結合型グリコシル化システムをE.コリに移動させた(Wacker et al., “N-linked glycosylation in Campylobacter jejuni and its functional transfer into E. coli,” Science 2002, Nov 29; 298(5599):1790-3、その内容を全体として参照により本明細書に援用する)。特に、修飾株は、C.ジェジュニのpgl遺伝子座の1若しくは複数の遺伝子又は相同pgl遺伝子座の1若しくは複数の遺伝子を発現するように修飾されてもよい。pgl遺伝子座の遺伝子としては、pglG、pglF、pglE、wlaJ、pglD、pglC、pglA、pglB、pglJ、pglI、pglH、pglK、及びgneが挙げられ、脂質結合オリゴ糖(LLO)を合成するために使用され、及びオリゴサッカリルトランスフェラーゼを介してLLOのオリゴ糖部分をタンパク質に移動させる。
【0103】
遺伝子を組み換えた株で発現され得る好適な直交性又は異種オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)としては、カンピロバクター・ジェジュニオリゴサッカリルトランスフェラーゼがPglBを挙げることができる。C.ジェジュニOSTの遺伝子は、pglBとも呼ばれ、そしてその配列は配列番号:5として提供され、及びC.ジェジュニPglBのアミノ酸配列は配列番号:6として提供される。PglBは、タンパク質上に存在するD/E-Y-N-X-S/Tモチーフ(Y、X≠P)へのオリゴ糖の移動を触媒する。本明細書中に開示される方法、キット、及びシステムで有用なOST酵素の追加の制限されることのない例としては、これだけに限定されるものではないが、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)PglB、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)PglB、デスルホビブリオ・デスルフリカンス(Desulfovibrio desulfuricans)PglB、、デスルホビブリオ・ギガス(Desulfovibrio gigas)PglB、及びデスルホビブリオ・ブルガリス(Desulfovibrio vulgaris)PglBが挙げられる。
【0104】
未精製の細胞溶解物は、本明細書中に開示される修飾株から調製されてもよい。未精製の細胞溶解物は、本明細書中に開示される様々な修飾株から調製されてもよく、かつ、未精製の細胞溶解物は、混合未精製細胞溶解物を調製するために組み合わせられてもよい。いくつかの実施形態において、1若しくは複数の未精製細胞溶解物は、好ましくは(例えば、ゲノム修飾を有しない株との比較において)比較的高濃度にてグリコシル化のための糖前駆体を含む溶解物をもたらすゲノム修飾(例えば、改変不能な遺伝子をレンダリングする遺伝子の欠失)を含む1若しくは複数の修飾株から調製されてもよい。いくつかの実施形態において、1若しくは複数の未精製細胞溶解物は、糖タンパク質合成に関連する1若しくは複数の直交性又は異種遺伝子又は遺伝子クラスターを発現するように修飾された1若しくは複数の修飾株から調製されてもよい。好ましくは、未精製細胞溶解物又は混合未精製細胞溶解物では、例えば脂質結合オリゴ糖(LLO)、グリコシルトランスフェラーゼ(GT)、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)、又は任意のその組み合わせなどのグリコシル化成分が濃縮されている。より好ましくは、未精製細胞溶解物又は混合未精製細胞溶解物は、コア真核生物グリカンを表すMan3GlcNAc2 LLO及び/又は完全にシアル化されたヒトグリカンを表すMan3GlcNAc4Gal2Neu5Ac2 LLOで濃縮されている。例としてであって、制限としてではなく、開示される方法、キット、及びシステムで有用なグリカン構造としては、これだけに限定されるものではないが、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)SchuS4 O-ポリサッカライド、エシェリキア・コリO78O-ポリサッカライド、エシェリキア・コリO-7O-ポリサッカライド、エシェリキア・コリO-9O-ポリサッカライドプライマー、カンピロバクター・ジェジュニヘプタサッカライドN-グリカン、カンピロバクター・ラリPglBヘキササッカライドN-グリカン、改変カンピロバクター・ラリPglBヘキササッカライドN-グリカン、ウォリネラ・サクシノゲネス(Wolinella succinogenes)ヘキササッカライドN-グリカン、及び真核性Man3GlcNac2N-グリカン構造が挙げられる。
【0105】
開示される未精製細胞溶解物は、様々な糖タンパク質を合成するために無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)システムで使用され得る。CFGpSシステムで合成される糖タンパク質としては、原核生物糖タンパク質と、ヒトタンパク質を含めた真核生物タンパク質を挙げることができる。CFGpSシステムは、本明細書中に開示される未精製細胞溶解物又は未精製細胞溶解物の混合物を使用する以下のステップ:(a) 標的糖タンパク質の遺伝子の無細胞転写を実施し;(b) 無細胞翻訳を実施し;そして(c) 無細胞グリコシル化を実施すること、を実施することによってインビトロにおける糖タンパク質の合成方法で利用されてもよい。その方法は、単独の容器で実施されても、又は複数の容器で実施されてもよい。好ましくは、合成法のステップは、単独の反応容器を使用して実施されてもよい。開示される方法は、原核生物の糖タンパク質及び真核性の糖タンパク質を含めた、様々な糖タンパク質を合成するのに使用されてもよい。
【0106】
バイオコンジュゲートワクチンの製造
【0107】
タンパク質-グリカンカップリング技術(PGCT)はバイオコンジュゲートワクチン製造のための簡易化された及び費用対効果に優れたストラテジーを表すが、それには3つの主な制限がある。一つ目に、プロセス開発スケジュール、グリコシル化経路の設計-組み立て-試験(DBT)サイクル、及びバイオコンジュゲート製造は、細胞増殖によってすべて制限される。二つ目に、例えばクロストリジウム・テタニとコリネバクテリウム・ジフテリアからの毒素などのFDAによって承認された担体タンパク質が、生きたE.コリのN-結合型グリコシル化に適合できることが実証されていないかどうかが、まだ示されていない。三つ目に、選択された非天然グリカンは、C.ジェジュニオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)、PglBによって低効率で移動させることが知られている。
【0108】
バイオコンジュゲートの製造のためのモジュール式の、インビトロプラットフォームには、これらの制限のすべてに対して対処する可能性がある。ここで、我々は、フランシセラ・ツラレンシスとエシェリキア・コリの病原性株に対するバイオコンジュゲートが、ちょうど20時間続く無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)反応における協調した(coordinated)インビトロ転写、翻訳、及びN-グリコシル化によって製造できることを実証する。このシステムには、新規抗細菌性ワクチンのプロセス開発と流通のスケジュールを数週間~数日短縮する可能性がある。さらに、CFGpSプラットフォームのモジュール性質と、生細胞と比較して、無細胞システムが膜タンパク質の製造のための利点を実証したという事実のため、この方法は、膜に局在する、クロストリジウム・テタニやコリネバクテリウム・ジフテリア毒素などのFDAに承認された担体タンパク質を使用してバイオコンジュゲートを製造するために容易に適用される場合がある。CFGpS反応にこれらの担体タンパク質をコードするプラスミドを供給することによって、これは簡単に達成される場合がある。さらに、CFGpSのモジュール性質のため、インビトロアプローチは、着目のO-抗原LLOの移動に関して改善された効率を有する候補OSTを同定するために、原型C.ジェジュニOSTの他の天然型又は改変ホモログを試作するのに使用される場合がある。これは、我々が以前に記載したとおり、着目のOSTを溶解物で濃縮し、そして混合溶解物CFGpS反応物中でLLO溶解物とそれらを混ぜることによって達成できる(WO2017/117539を参照のこと、その内容を全体として参照により本明細書に援用する)。最後に、我々は、無細胞バイオコンジュゲート合成反応物が凍結乾燥され、かつ、バイオコンジュゲート合成能を維持し得ることを実証し、そして新規ワクチンのオンデマンド、携帯型、及び低コスト製造又は開発成果に関するCFGpSシステムの可能性を実証した。インビトロバイオコンジュゲートワクチン製造のためのこの新規方法は、既存の方法と比較して、迅速な、モジュール式、及び携帯型のワクチンの試作及び製造に関する利点を実証した。我々の技術は、治療用開発又は基礎研究のためのユーザー指定細菌性標的に対して向けられたバイオコンジュゲートワクチンの迅速な製造を可能にする。
【0109】
本発明者らは、糖タンパク質又はバイオコンジュゲートワクチンを製造する能力を有する任意の原核生物の無細胞システムを知らない。無細胞糖タンパク質製造のための市販の真核細胞溶解物システム(Promega、ThermoFisher)は存在するが、これらのシステムは、直交性グリコシル化機構の過剰発現に関与しないので、我々のシステムが可能な方法でモジュール式、ユーザー指定グリコシル化を可能にすることはない。こうした理由から、我々は、我々の発明について実質的な市販の見込みがまだあると感じている。
【0110】
インビトロバイオコンジュゲートワクチン製造のための当該開示される方法は、既存の方法と比較して、迅速な、モジュール式、及び携帯型ワクチンの試作及び製造に関する利点を実証した。このシステムは、既存の製造アプローチの制限に対処し、そしてそれを抗細菌性ワクチン製造のための魅力的な代替の又は相補的なストラテジーにした。抗生物質耐性細菌感染によって引き起こされる高まるヘルスケア不安の観点から、この方法には、様々な病原性菌株に対する新規ワクチンの開発、製造、及び流通に関して非常に有益なものになる可能性がある。開示される方法の利点としては:バイオコンジュゲートワクチンのオンデマンド発現;新規バイオコンジュゲートワクチン候補の試作;新規バイオコンジュゲートワクチン製造経路の試作;資源の乏しい環境へのバイオコンジュゲートワクチンの流通、が挙げられる。
【0111】
概要では、我々は、糖タンパク質ワクチンの協調した、無細胞転写、翻訳、及びグリコシル化が可能な第一の原核生物無細胞システムを開示する。開示されるシステムは、20時間でバイオコンジュゲートワクチンの製造を可能にする。システムのモジュール性は、新規グリコシル化経路及び様々な担体タンパク質を有するワクチン候補の迅速な試作を可能にする。好適な担体としては、これだけに限定されるものではないが、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)(配列番号7)、ネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)(配列番号8)、コリネバクテリウム・ジフテリア毒素(CRM197)(配列番号9)、クロストリジウム・テタニ毒素(TT)(配列番号10)、TTのフラグメントC(TTc)、TTの軽鎖ドメイン(TTlight)、エシェリキア・コリマルトース結合タンパク質、MBPと融合したヒトグルカゴンペプチド、Superfolder Green Fluorescent Protein(GFP)、一本鎖可変抗体断片(scFv)、ヒトエリスロポエチン変異体、カンピロバクター・ジェジュニAcrA、及びシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A(EPA)、又はその変異体が挙げられる。システムの成分と生成物は凍結乾燥されてもよく、そしてそれは、ワクチン製造技術の幅広く、迅速な流通の可能性を有効にする。開示されるシステムは、原核細胞溶解物におけるバイオコンジュゲートを製造するのに必要とされる時間を数週間~数日短縮し、そしてそれは、その技術の製品化における競争力の利点を提供し得る。
【0112】
開示されるバイオコンジュゲートは、アジュバントなどの免疫応答を引き起こす及び/又は可能にするために任意選択で追加の剤を含み得るワクチンとして処方されてもよい(formulated)。「アジュバント」という用語は、免疫応答を高める化合物又は混合物を指す。アジュバントは、抗原をゆっくり放出する組織デポー剤として、及びまた、免疫応答を非特異的に促進するリンパ系活性化因子としても役立つ。開示される組成物で利用され得るアジュバントの例としては、これだけに限定されるものではないが、コポリマーアジュバント(例えば、Pluronic L121(登録商標)ブランドポロキサマー401、CRL1005、又は低分子量コポリマーアジュバント、例えばPolygen(登録商標)アジュバントなど)、ポリ(I:C)、R-848(Th1様アジュバント)、レシキモド、イミキモド、PAM3CYS、リン酸アルミニウム(例えば、AlPO4)、ロキソリビン、BCG(Bacille Calmette-Guerin)及びコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有効なヒトアジュバント、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、コレラトキシン誘導抗原(例えば、CTA1-DD)、リポポリサッカライドアジュバント、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン(例えば、Quil-A)、例えば水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチン、プルロニック・ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイル又は水中の炭化水素乳濁液(例えば、Novartis Vaccinesから入手可能なMF59又はMontanide ISA720)などの界面活性物質、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、及びジニトロフェノールが挙げられる。
説明に役立つ実施形態
【0113】
以下の実施形態は、説明に役立つものであり、主張している内容の範囲を限定することを意図するものでない。
【0114】
実施形態1
任意選択でバイオコンジュゲート免疫原又はワクチンとして利用され得るN-グリコシル化遺伝子組み換えタンパク質担体を合成する方法であって、その方法は、それによって、バイオコンジュゲート免疫原又はワクチンとして利用され得るN-グリコシル化遺伝子組み換えタンパク質担体を提供する、遺伝子組み換えタンパク質担体の協調した転写、翻訳、及びN-グリコシル化を実施することを含み、ここで、N-グリコシル化遺伝子組み換えタンパク質担体は以下のものを含む:(i) (任意選択でタンパク質担体に挿入される)コンセンサス配列、N-X-S/T、ここで、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得;及び(ii) 遺伝子組み換えタンパク質担体にN結合した少なくとも1つの細菌からの少なくとも1つの抗原性ポリサッカライド、ここで、少なくとも1つの抗原性ポリサッカライドは、任意選択でE.コリ又はフランシセラ・ツラレンシスのうちの1若しくは複数の株からの、任意選択で少なくとも1つの細菌性O-抗原であり;さらに、バイオコンジュゲートワクチンは、任意選択でアジュバントを含んでもよい。
【0115】
実施形態2
前記担体タンパク質がE.コリマルトース結合タンパク質(MBP)の改変変異体である、実施形態1に記載の方法。
【0116】
実施形態3
前記担体タンパク質が、クロストリジウム・テタニからの毒素の無毒化変異体及びコリネバクテリウム・ジフテリアからの毒素の無毒化変異体から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0117】
実施形態4
前記担体タンパク質が、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)及びネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、並びにその変異体から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0118】
実施形態5
前記方法が、C.ジェジュニPglBの天然に存在する細菌性ホモログであるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を利用する、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
実施形態6
前記方法が、C.ジェジュニPglBの改変変異体であるOSTを利用する、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
実施形態7
前記方法が、天然に存在する古細菌OSTであるOSTを利用する、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
実施形態8
前記方法が、例えばトリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma bruceii)に見られるものなどである、天然に存在する単一サブユニット真核性OSTであるOSTを利用する、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
実施形態9
直交性遺伝子又は遺伝子クラスターが未精製細胞溶解物のための起源株で発現される未精製細胞溶解物調製のための方法であって、そしてそれは、グリコシル化成分(脂質結合オリゴ糖(LLO)、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)、及びLLOとOSTの両方)が濃縮された溶解物をもたらし、及び任意選択で、LLO(例えば、O-抗原に関連するLLO)が濃縮された別々の溶解物及びOST(例えば、それに関してLLOが基質である)が濃縮された別々の溶解物をもたらし、そして任意選択で、別々の溶解物を組み合わせて、OSTの酵素活性によってLLOのグリカン成分でグリコシル化される担体タンパク質の無細胞タンパク質合成を実施し、そしてさらに任意選択で、グリコシル化担体タンパク質を精製し、そして任意選択で、免疫原としてグリコシル化担体タンパク質を投与する。
【0123】
実施形態10
前記起源株が、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)をコードする遺伝子を過剰発現する、実施形態9に記載の方法。
【0124】
実施形態11
前記起源株が、O-抗原、任意選択でF.ツラレンシスSchu S4脂質結合オリゴ糖(FtLLO)からのO-抗原の製造をもたらす、合成グリコシルトランスフェラーゼ経路を過剰発現する、実施形態9又は10に記載の方法。
【0125】
実施形態12
前記起源株が、O-抗原、任意選択で腸内毒素原性E.コリO78脂質結合オリゴ糖(EcO78LLO)からのO-抗原の製造をもたらす、合成グリコシルトランスフェラーゼ経路を過剰発現する、実施形態9又は10に記載の方法。
【0126】
実施形態13
前記起源株が、LLOとOSTの製造をもたらす、グリコシルトランスフェラーゼ経路及びOSTを過剰発現する、実施形態9~12のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
実施形態14
前記起源株が、O-抗原脂質結合オリゴ糖(LLO)の製造をもたらす、病原性菌株からO-抗原グリコシルトランスフェラーゼ経路を過剰発現する、実施形態9又は10に記載の方法。
【0128】
実施形態15
1若しくは複数のステップとして、未精製細胞溶解物(例えば、実施形態9~14のいずれか一項に記載の任意の未精製細胞溶解物)を混合することを伴う、バイオコンジュゲート免疫原又はワクチンの無細胞製造のための方法。
【0129】
実施形態16
前記バイオコンジュゲート免疫原又はワクチンが、タンパク質又はペプチドである免疫原性担体を含む、実施形態15に記載の方法。
【0130】
実施形態17
前記バイオコンジュゲート免疫原又はワクチンが、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)、ネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、コリネバクテリウム・ジフテリア毒素(CRM197)、クロストリジウム・テタニ毒素(TT)、エシェリキア・コリマルトース結合タンパク質、及びその変異体から選択されるタンパク質又はそのペプチドを含むタンパク質又はペプチドである免疫原性担体を含む、実施形態15に記載の方法。
【0131】
実施形態18
前記方法の成分が、凍結乾燥され、そして再水和されたときに、バイオコンジュゲート合成能を維持し得る、実施形態1~17のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
実施形態19
目標が、オンデマンドワクチン製造である、実施形態15~18のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
実施形態20
目標が、資源が限られた環境におけるワクチン製造である、実施形態15~19のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
実施形態21
インビトロにおけるN-グリコシル化担体タンパク質を合成するためのキットであって、該キットは、以下の成分:(i) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を含む細胞溶解物を含む第一の成分;(ii) O-抗原を含む細胞溶解物を含む第二の成分(例えば、O-抗原を含む脂質結合オリゴ糖(LLO));(iii) 転写鋳型及び任意選択で、担体タンパク質(該担体タンパク質は、挿入された及び/又は天然に存在するコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含む)をコードする転写鋳型からmRNAを合成するためのポリメラーゼを含む第三の成分、のうちの1若しくは複数を含む。
【0135】
実施形態22
前記第一の成分、前記第二の成分、及び前記第三の成分の1若しくは複数が、凍結乾燥され、そして再水和されたときに、生物学的活性を維持している、実施形態21に記載のキット。
【0136】
実施形態23
前記第一の成分である細胞溶解物が、直交性OST(例えば、C.ジェジュニPglB)をコードする遺伝子を過剰発現する起源株(例えば、E.コリ)から製造される、実施形態21又は22に記載のキット。
【0137】
実施形態24
前記第二の成分である細胞溶解物が、合成グリコシルトランスフェラーゼ経路(例えば、フランシセラ・ツラレンシスSchu S4 O-抗原を製造するための生合成機構(FtLLO溶解物)又は腸内毒素原性E.コリO78脂質結合オリゴ糖を製造するための生合成機構(EcO78LLO溶解物))を過剰発現する起源株から製造される、実施形態21~23のいずれか一項に記載のキット。
【0138】
実施形態25
任意選択で、バイオコンジュゲート免疫原又はワクチンとして使用するのに好適なバイオコンジュゲートであってもよい糖タンパク質の無細胞製造のための方法であって、該方法は以下の:(a) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を含む第一の細胞溶解物とO-抗原(例えば、脂質結合オリゴ糖(LLO))を含む第二の細胞溶解物を混合して、無細胞タンパク質合成反応を調製し;(b) (例えば、任意選択で、該無細胞タンパク質合成反応に担体タンパク質及び/又はポリメラーゼの転写鋳型を加えることによって)無細胞タンパク質合成反応において担体タンパク質(該担体タンパク質は、挿入及び/又は天然に存在するコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含む)を転写及び翻訳し;そして(c) 細菌性O-抗原を用いた無細胞タンパク質合成反応で担体タンパク質をグリコシル化すること、を含む。
【0139】
実施形態25
前記第二の細胞溶解物が、脂質結合オリゴ糖(LLO)の一部として前記O-抗原を含む、実施形態24に記載の方法。
【0140】
実施形態26
任意選択でアジュバントを含むワクチン組成物として糖タンパク質を処方することをさらに含む、実施形態24又は25に記載の方法。
【0141】
実施形態27
前記方法及び/又はキットのいずれかによって調製されるバイオコンジュゲート免疫原又はワクチン。
【0142】
実施形態28
実施形態27に記載のワクチンを、それを必要としている対象に投与することを含む予防接種方法。
【実施例
【0143】
以下の実施例は、説明に役立つものであって、主張している内容の範囲を限定することを意図するものでない。
【0144】
実施例1-原核細胞溶解物におけるN-グリコシル化タンパク質の遺伝子組み換え製造によるバイオコンジュゲートワクチンの迅速なインビトロ合成のための方法
【0145】
要約
【0146】
コンジュゲートワクチンは、命にかかわる細菌感染の予防のための最も安全で最も効果的な方法の一つである[1-10]。バイオコンジュゲートワクチンは、生きたエシェリキア・コリ細胞[11]の細菌オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を使用してポリサッカライド抗原をN-グリコシル化によって遺伝子組み換え担体タンパク質に結合される、タンパク質グリカン結合技術(PGCT)によって製造される一種のコンジュゲートワクチンである。バイオコンジュゲートワクチンは、抗細菌性ワクチンを製造するのに必要とされる時間とコストを大幅に削減する可能性を有する。しかしながら、PGCTは:i) インビボプロセス開発スケジュールの長さ;及びii) クロストリジウム・テタニとコリネバクテリウム・ジフテリアからの毒素などのFDAによって承認された担体タンパク質が生きたE.コリににおけるN-結合型グリコシル化に適合できることがまだ実証されていないという事実、によって制限される。ここで、我々は、20時間が続く反応でエシェリキア・コリとフランシセラ・ツラレンシスの病原性株に対するバイオコンジュゲートワクチンの迅速なインビトロ製造を可能にする無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)技術を適用した。CFGpSシステムのモジュール性質のため、この無細胞ストラテジーは、FDAによって承認された担体タンパク質又はその表面抗原遺伝子群が知られている病原性細菌に対する追加ワクチンを使用してバイオコンジュゲートを製造するのに容易に適用されることもあり得る[11][9][7、10][3、5、6、8]。我々は、このシステムが凍結乾燥でき、かつ、バイオコンジュゲート合成能を維持することを示し、そして、オンデマンドワクチン製造と資源に乏しい環境における開発の可能性を実証した。この作業は、E.コリ溶解物におけるバイオコンジュゲートワクチン製造の最初の実証を表し、及び抗細菌性ワクチン候補のための携帯型の試作又は製造プラットホームとして有望な適用を有する。
【0147】
背景と有意性
【0148】
グリコシル化、又はタンパク質へのグリカン(糖)の付加は、現実に最も数多い翻訳後修飾であり、タンパク質折り畳みと活性において極めて重要な役割を担っている[1-4]。1930年代にそれが最初に発見されたとき[12]、グリコシル化は真核生物に限られると考えられた。しかしながら、グリコシル化もまた、1970年代に古細菌[13、14]で、及び1990年代後半と2000年代前半に細菌[15、16]で発見され、寿命のすべての領域での主要な翻訳後修飾として糖タンパク質を構築する。直鎖及び高分岐ポリサッカライド鎖の両方を含めた、グリカン構造の幅広い多様性が記載され[17]、そして他のポリペプチド修飾と比較して、情報量が指数関数的に増強された[18]。
【0149】
タンパク質構造及び情報蓄積におけるその役割の結果として、グリコシル化は様々な生物学的過程にかかわっている。真核生物では、糖タンパク質は、免疫認識と応答、細胞内輸送、及び細胞間情報伝達にかかわる[19-22]。さらに、グリコシル化の変化は、癌[23-25]、炎症[26-29]、及びアルツハイマー病[30]を含めた病状と相関することが示されている。原核生物では、グリコシル化は、病原力と宿主侵入における重要な役割を果たすことが知られている[31-33]。多数の生物学的過程におけるグリコシル化の重大な役割に基づいて、生物学のセントラルドグマが、中心的要素[34]としてグリカンを含むように構成されることが提案されている。
【0150】
グリコシル化の最も一般的な形態は、アスパラギン結合(N-結合型)及びセリン結合(Ser)又はトレオニン(Thr) 結合(O-結合型)である[35]。N-結合型グリコシル化は、コンセンサス配列Asn-X-Ser/Thr{式中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である}を認識するオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)によるアスパラギン(Asn)残基の側鎖窒素へのグリカン部分の付加を特徴とする[36、37]。このプロセスは、小胞体で起こり、タンパク質の折り畳み、品質管理、及び輸送を助ける[38]。O-結合型グリコシル化は、N-グリカンの付加に続いて、ゴルジ体に起こる。N-結合型グリコシル化と異なって、O-結合型グリコシル化のためのコンセンサス配列は知られていない[39、40]。生物学におけるグリカンの重要性にもかかわらず、糖鎖科学は最近、研究が進んでいない分野と見なされる。2012年の米国学術研究会議の米国アカデミー報告では、糖鎖科学に転機をもたらす変化の大いなる必要性が強調された[41]。細菌でのグリコシル化経路の発見は、この重要な翻訳後修飾に関して新しい発見を可能にするが[42、43]、該分野を進歩させるには、新しい合成及び分析ツールが必要である。
【0151】
細菌性グリコシル化の最近の発見以来、N-及びO-結合型グリカンを担持するタンパク質は、多くの菌数で見つかっている[44、45]。最もよく試験された細菌性グリコシル化システムは、カンピロバクター・ジェジュニからのpgl経路であって、そしてそれは、エシェリキア・コリで機能的に発現することが示されている(図1)[46]。C.ジェジュニでは、タンパク質は1.406kDaのGlcGalNAc5Bacヘプタサッカライド(Glc:グルコース、GalNAc:N-アセチルガラクトサミン、Bac:バシロサミン)を用いてN-グリコシル化される。GTは、脂質アンカーウンデカプレノールピロホスファート(Und-PP)上にヘプタサッカライドを組み立て、そしてそれは、次に、N-結合型グリコシル化のためのOST(PglB)に基質として使用される[47-49]。この経路は、真核性グリコシル化経路よりかなり簡単であり、N-結合型グリコシル化の機構に関する我々の理解を高めるのに利用されている[42、43]。
【0152】
すべての細菌が糖タンパク質を合成するというわけではないが、グリコシル化は細菌の細胞壁の合成にかかわることが多い。リポポリサッカライド(LPS)分子は、多くのグラム陰性細菌の外膜の主部分であり、脂質アンカー、オリゴ糖コア、及びO-抗原として知られている可変ポリサッカライド領域で構成されている[32]。莢膜ポリサッカライド(CPS)は、この場合、ポリサッカライド領域がリピドA又はリン脂質アンカーに直接連結されることを除いて、構造がLPSに類似している別のタイプの表面ポリサッカライドである[31]。LPS O-抗原(OPS)及びCPSは、敵対的な宿主環境における生存と宿主侵入のために細菌性病原体によって使用される主要なツールのうちの1つである[50-53]。その結果、CPS及びO-PS生合成機構の解明は、抗生物質ワクチン及び抗細菌性ワクチン開発のために着目されるものである。
【0153】
抗生物質抵抗性菌株の出現は、生命にかかわる細菌感染の治療と予防のための新規戦略の開発を余儀なくさせる。2013年に、米国疾病管理予防センターは、米国の最も重大な健康に対する脅威の1つとして抗生物質抵抗性を引用した報告を発表した。担体タンパク質に共有結合で連結されたCPS又はO-PS抗原から成るコンジュゲートワクチンが、細菌感染に対する最も安全で最も効果的な予防措置であって、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)、ネイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitides)及びヘモフィラス・インフルエンザ感染症の発生を低減するのに使用される[1-10]。ポリサッカライド抗原は無感作T細胞を直接活性化することができないので、持続的な免疫学的記憶を引き起こすために、それらは担体タンパク質に結合される必要がある[54]。しかしながら、コンジュゲートワクチンを製造するための既存の技術は複雑であり、多重処理と精製ステップがかかわり、さらに、得られた生成物が明確に定義されていない(図2、上部)[2]。さらに、これらのプロセスは、手間がかかって、病原性細菌の大規模な発酵を必要とする可能性があり、そして、発展途上国におけるワクチン接種キャンペーンのためのコンジュゲートワクチンを法外に高価なものにする。
【0154】
生きたE.コリ細胞における遺伝子組み換えO抗原タンパク質コンジュゲートの製造は、最近、細菌性N-グリコシル化機構を使用して実施される(図2、下部)[11]。これらのいわゆるバイオコンジュゲートワクチンは、抗細菌性ワクチン製造に必要な費用と時間を削減する可能性がある。バイオコンジュゲートは、フランシセラ・ツラレンシス[4]、シュードモナス・エルギノーサ[11]、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)[9]、シゲラ・ディセンテリエ(dynsenteriae)[7、10]、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)[8]、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)[5]、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)[3]、及びバークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)[6]を含めた数種類の細菌標的に対して開発された。バイオコンジュゲート製造のためのインビトロ法は、新規抗細菌性ワクチンのプロセス開発スケジュールを数カ月~数週間短縮する可能性がある[55]。
【0155】
無細胞タンパク質合成(CFPS)は、未精製の細胞溶解物におけるタンパク質の製造を可能にする新たな分野である[55、56]。CFPS技術は、遺伝コードを解読するためにNirenbergとMatthaeiによって50年前に最初に使用された[57]。1960年代後半及び1970年代前半に、CFPSは、E.コリ乳糖[58]及びトリプトファン[59]オペロンの調節機序を解明するのを援助するのに用いられた。ここ20年間で、CFPSプラットフォームは、遺伝子組み換えタンパク質発現技術に対する需要拡大を満たすような開発の高まりを経験した[55]。
【0156】
CFPSは、遺伝子組み換えタンパク質発現のためのいくつかの利点を提供する。特に、オープン反応環境は、タンパク質合成の基質の添加又は除去、並びに正確な、オンライン反応モニタリングを可能にする。さらに、CFPS反応環境は、着目のタンパク質生成物の製造のために全て向けられ、そして最適化され得る。CFPSは、技術者の目的(タンパク質の過剰発現と簡単な生成物精製)から細胞の目的(成長と再生)の効果的な分離し、そしてそれは、膜タンパク質[60-63]、二重特異性抗体[64]、抗体-薬剤コンジュゲート[65]、及びウイルス様粒子ワクチン[66-68]を含めた、複合タンパク質及びタンパク質集合体の製造に有利であると判明した。全体的に見て、CFPS技術は、インビボアプローチと比較して、短縮されたタンパク質合成スケジュール、及び基質の添加又は除去の柔軟性の増強を可能にする。特に、E.コリCFPSシステムは、i) 報告された[69]緑色蛍光タンパク質(GFP)の最大2.3g/Lの、その高いバッチ収率、ii) 安価な必要な基質[70-72]、及びiii) 106Lを超える反応容量を直線的に拡大する能力[73]のため、広く採用された。
【0157】
グリコシル化は、ICE、CHO抽出物、及びヒト白血病細胞株抽出物を含めたいくつかの真核性CFPSシステムで可能である[74-77]。しかしながら、これらのプラットフォームは、グリコシル化を実施するための内因性機構を利用し、そしてi) 可能なグリカン構造が宿主細胞によって天然に合成されるものに制限されること及びii) グリコシル化プロセスが「ブラックボックス」で実施され、これにより、改変又は制御することが難しいこと、を意味している。高活性なE.コリCFPSプラットフォームの開発は、直交性グリコシル化成分の添加によってE.コリ溶解物における糖タンパク質製造を可能にする最近の取り組みを促進した。一つの試験で、GuarinoとDeLisaは、精製した脂質結合オリゴ糖(LLO)及びC.ジェジュニOSTをCFPS反応に添加することによってE.コリCFPSで糖タンパク質を製造することが可能であることを実証した。50~100μg/mLのAcrA、C.ジェジュニ糖タンパク質の収率が達成された[78]。これらの最近の進歩にもかかわらず、細菌性無細胞グリコシル化システムは、効果的なタンパク質合成とグリコシル化を同時活性化することができないことによって制限された。我々は、グリコシル化酵素が選択的に濃縮されているE.コリ溶解物においてタンパク質のモジュール式の、協調した転写、翻訳、及びN-グリコシル化を可能にすることによって、この制限に対処する無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)システムを最近開発した(WO2017/117539を参照のこと、その内容を全体として参照により本明細書に援用する)。ここで、我々は、この技術基盤をバイオコンジュゲートワクチンの製造に適用して、バイオコンジュゲートの迅速な、モジュール式のインビトロ発現の方法論を得た。
【0158】
結果と考察
【0159】
バイオコンジュゲートワクチン製造のための無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)。タンパク質-グリカンカップリング技術(PGCT)はバイオコンジュゲートワクチン製造のための簡易化された及び費用対効果に優れたストラテジーを表すが、それには3つの主な制限がある。一つ目に、プロセス開発スケジュール、グリコシル化経路の設計-組み立て-試験(DBT)サイクル、及びバイオコンジュゲート製造は、細胞増殖によってすべて制限される。二つ目に、例えばクロストリジウム・テタニとコリネバクテリウム・ジフテリアからの毒素などのFDAによって承認された担体タンパク質が、生きたE.コリのN-結合型グリコシル化に適合できることが実証されていないかどうかが、まだ示されていない。三つ目に、選択された非天然グリカンは、C.ジェジュニOST、PglBによって低効率で移動させることが知られている[9]。
【0160】
バイオコンジュゲートの製造のためのモジュール式の、インビトロプラットフォームには、これらの制限のすべてに対して対処する可能性がある。ここで、我々は、フランシセラ・ツラレンシスとエシェリキア・コリの病原性株に対するバイオコンジュゲートが、ちょうど20時間続く無細胞糖タンパク質合成(CFGpS)反応における協調したインビトロ転写、翻訳、及びN-グリコシル化によって製造できることを実証する。このシステムには、新規抗細菌性ワクチンのプロセス開発と流通のスケジュールを数週間~数日短縮する可能性がある。さらに、CFGpSプラットフォームのモジュール性質と、生細胞[60-63]と比較して、無細胞システムが膜タンパク質の製造のための利点を実証したという事実のため、この方法は、膜に局在する、クロストリジウム・テタニやコリネバクテリウム・ジフテリア毒素などのFDAに承認された担体タンパク質を使用してバイオコンジュゲートを製造するために容易に適用される場合がある。CFGpS反応にこれらの担体タンパク質をコードするプラスミドを供給することによって、これは簡単に達成される場合がある。さらに、CFGpSのモジュール性質のため、インビトロアプローチは、着目のO-抗原LLOの移動に関して改善された効率を有する候補OSTを同定するために、原型C.ジェジュニOST、例えば最近になって記載されたものなど[9、79、80]、の他の天然型又は改変ホモログを試作するのに使用される場合がある。これは、我々が以前に記載したとおり、着目のOSTを溶解物で濃縮し、そして混合溶解物CFGpS反応物中でLLO溶解物とそれらを混ぜることによって達成できる(Jewett lab、未公開データ、米国特許仮出願第62273124号)。最後に、我々は、無細胞バイオコンジュゲート合成反応物が凍結乾燥され、かつ、バイオコンジュゲート合成能を維持し得ることを実証し、そして新規ワクチンのオンデマンド、携帯型、及び低コスト製造又は開発成果に関するCFGpSシステムの可能性を実証した。インビトロバイオコンジュゲートワクチン製造のためのこの新規方法は、既存の方法と比較して、迅速な、モジュール式、及び携帯型のワクチンの試作及び製造に関する利点を実証した。
【0161】
F.ツラレンシスに対するバイオコンジュゲートワクチンはCFGpSを介してインビトロで合成される。フランシセラ・ツラレンシスは、野兎病を引き起こすグラム陰性菌である。F.ツラレンシスは、人々に知られている最も感染性細菌のうちの1つと考えられる:単独の空気感染バチルスは、最大30%の死亡率を有する、個人の40~50%の感染症をもたらす[81]。O-抗原生合成のための遺伝子部位は、最近特徴づけされ[82]、生きたE.コリ細胞においてバイオコンジュゲートワクチンを作製するのに使用される[4]。我々は、CFGpSを使用した抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートワクチンを製造するためのこの経路を使用すると決めた。我々は、抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートワクチンがCFGpS技術を使用したインビトロ合成できると仮定した(図3)。
【0162】
我々は、WaaL O-抗原リガーゼを欠くE.コリCFGpSシャシー株における直交性グリコシル化機構の過剰発現を介してS30溶解物において、Und-PP結合ポリサッカライド抗原が濃縮されていると仮定した。この仮説を試験するために、我々は、C.ジェジュニOST、PglB(CjOST溶解物)及びフランシセラ・ツラレンシスSchu S4O-抗原を産生するための生合成機構(FtLLO溶解物)を過剰発現するCLM24細胞からの溶解物を製造した。F.ツラレンシスSchu S4からのこの17kb遺伝子クラスターは、15個の予測されるオープンリーディングフレーム(ORFs)を含み、そして反復単位GalNAcAN2QuiNAcQui4NFm(GalNAcAN:2-アセトアミド-2-デオキシ-D-ガラクツロンアミド、QuiNAc:2-アセトアミド-2,6-ジデオキシ-D-グルコース、Qui4NFm:4,6-ジデオキシ-4-ホルムアミド-D-グルコース)(図6A)[82]を含むオリゴ糖を製造する。粗溶解物中にFtLLOやCjOSTなどの膜結合型成分を担持する、可溶性の反転した膜小胞の形成を奨励するために、溶解物は高圧均質化処理によって調製された。
【0163】
我々は、抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートワクチンがCFGpS技術を使用してインビトロ合成されると仮定した。F.ツラレンシスOポリサッカライド(FtO-PS)を担持するバイオコンジュゲートを製造するために、CjPglB溶解物をCFGpS反応物中でFtLLO溶解物と混合して、30℃にて20時間続けた。これらの反応は、i) 残基T216にて挿入されたフレキシブルリンカー内のDQNATシークオン及びC末端Hisタグを含むように改変されたスーパーフォルダー緑色蛍光タンパク質(sfGFP-21-DQNAT-6xHis)又はii) DQNATシークオンの4つのC末端反復とC末端Hisタグを伴った、改変されたマルトース結合タンパク質構築物(MBP-4xDQNAT-6xHis)のいずれかをコードするプラスミドを含んだ。MBP-4xDQNAT-6xHisに結合されたE.コリO-抗原で構成されるバイオコンジュゲートは、最近、マウス[83]において液性及び細胞性免疫能を生じさせることが示された。CFGpS反応物の最初の1時間以内に、反応混合物に、25mMのMnCl2、0.1% w/vのDDMの終濃度で塩化マンガン(MnCl2)とn-ドデシル-β-D-マルトピラノシド(DDM)界面活性剤を加えて、CjPglB活性を最適化した(Jewett lab、未公開データ)。CFGpS反応を30℃にて合計20時間続けた後に、グリコシル化活性を、抗His抗体及びFtO-PSに特異的な市販のモノクローナル抗体を用いた免疫ブロッティングによってアッセイした。FtLLOとCjPglB溶解物を混合したときに観察されたラダー様のパターンは、FtLLO付加の示唆と、Wzyポリメラーゼの作用によるO-PS鎖長の可変性の結果である(図4A型)[4、11]。これらの結果は、最初に、協調した無細胞担体タンパク質合成とO-抗原付加の組み込みを実証する。さらに、我々は、無細胞バイオコンジュゲート合成がちょうど20時間以内に起こり、この無細胞プラットフォームをバイオコンジュゲートワクチン候補の迅速な製造及び試作のための魅力的な選択肢にしていることを示した。
【0164】
E.コリO78及び他の病原性株に対するバイオコンジュゲートワクチンは、CFGpSプラットフォームのモジュール性質のため容易に合成できる。バイオコンジュゲート製造のためのCFGpSアプローチの一般性及びモジュール性を実証するために、我々は、追加の病原菌に対するバイオコンジュゲートを製造しよう試みた。我々は、その生合成経路が以前に記載されており[84]、かつ、この株に対して特異的な市販の抗血清が存在したので、腸内毒素原性E. コリ株O78に対してバイオコンジュゲートを合成することを決めた。E.コリO78遺伝子クラスターを、クローン化し、そしてプラスミドpMW07-O78内にコードした。E.コリO78遺伝子クラスター結果の発現は、反復単位GlcNAc2Man2(GlcNAC:N-アセチルグルコサミン;Man:マンノース)を有するO-抗原の製造をもたらした(図6B)。
【0165】
我々は、先に記載したのと同じ方法を使用してpMW07-O78を発現するCLM24細胞からE.コリO78抗原LLOを濃縮した溶解物(EcO78LLO溶解物)を調製した。次に、我々は、sfGFP21-DQNAT-6xHis又はMBP-4xDQNAT-6xHisのいずれかをコードするプラスミドを含むCFGpS反応物中でEcO78LLO溶解物をCjOST溶解物に混ぜた。CFGpS反応を先に記載したように実施した。グリコシル化活性を、抗His抗体とE.コリO78株に対する市販の抗血清を用いた免疫ブロッティングによってアッセイした。この場合も同様に、EcO78LLO溶解物とCjOST溶解物の両方が反応で存在するときに、ラダー様のパターンが観察されて、EcO78-PSの良好なコンジュゲーションを示した(図4B)。バイオコンジュゲートはまた、抗EcO78血清と交差反応性であった(データ未掲載)。これらの結果は、インビトロアプローチのモジュール性質を実証し、そしてCFGpSプラットフォームが多くの様々な病害性菌株を標的化するバイオコンジュゲートワクチンを製造するのに使用できる証拠を提供する。魅力的な候補としては、その表面抗原遺伝子クラスターが知られている病原細菌:シュードモナス・エルギノーサ[11]、サルモネラ・エンテリカ[9]、シゲラ・ディセンテリエ[7、10]、シゲラ・フレクスネリ[8]、スタフィロコッカス・アウレウス[5]、ブルセラ・アボルタス[3]、及びバークホルデリア・シュードマレイ[6]が挙げられる。これらの結果は、様々な病原細菌に対するワクチン候補の迅速な製造又は試作のためのインビトロシステムの可能性を実証する。そのうえ、合成が様々なO-PS抗原を用いてちょうど20時間以内に達成できるので、この無細胞プラットフォームは新規バイオコンジュゲートワクチン候補の迅速な製造及び試作のための魅力的な選択肢を示す。
【0166】
凍結乾燥CFGpS反応物はバイオコンジュゲート合成能を維持する。従来のコンジュゲートワクチンの主要な限界は、それらの時間がかかった製造工程のため、それらの高コストである。比較により、バイオコンジュゲートワクチンは製造するのにそれほど高価ではないが、しかしながら、製造時間は、生細胞からタンパク質を発酵及び精製するのに必要とされる時間に影響される。我々は、インビボアプローチと比較して、より速い製造及びより幅広いワクチン接種キャンペーン、並びに開発成果を可能にするために、我々のCFGpS反応物は将来の室温保存及び流通のために凍結乾燥され得るかどうか試験することが望ましかった。これが可能か否か試験するために、CjOST溶解物のみ又はFtLLO溶解物のみのいずれか、或いはCjOST及びFtLLO溶解物の両方の混合物を含むCFGpS反応物を調製した。次に、これらの反応物を凍結乾燥し、15μLのヌクレアーゼ不含水で再構成した。反応物は、Hisタグ(scFv13-R4-DQNAT-6xHis)又はMBP-4xDQNAT-6xHisが続くC-末端DQNATシークオンを伴った短鎖抗体フラグメントのいずれかコードするプラスミドを含んだ。プレミックス反応物(レーン1、2、5、6)を再構成後にそのまま稼働させ、その一方で、CjOST溶解物又はFtLLO溶解物を単独で含む反応物を再構成に続いて混合した(レーン3、4、7)。DQNATシークオンが合成され、かつ、CjOST溶解物又はFtLLO溶解物の両方が反応物中に存在するとき、FtO-PSが標的タンパク質に取り付けられる(レーン2、4、6、7)。これらの結果は、CFGpS反応物混合物がバイオコンジュゲート合成能の損失なしで凍結乾燥できることを確認し、携帯型、オンデマンドワクチン製造、及び長期、無冷蔵保存に関する我々の技術の可能性を強調した。
【0167】
結論
【0168】
我々は、協調したインビトロ転写、翻訳、及び担体タンパク質へのワクチン抗原のコンジュゲーションのための新規方法を本明細書に記載する。このインビトロアプローチは、一意的に、(i) グリコシル化活性から細胞生存率を非干渉化し、グリコシル化成分のインビトロ再構成によって細胞代謝負担の低減を可能にし、(ii) 個々のグリコシル化成分に対してデザイン-ビルド-試験(DBT)反復法を可能にし、及び(iii) 細胞では不可能な化学的及び物理的処置を含む明確な実験条件の範囲内でグリコシル化経路の構築を可能にする。さらに、システムは、クロストリジウム・テタニとコリネバクテリウム・ジフテリアからの毒素などのFDAによって承認された担体タンパク質を使用したバイオコンジュゲートを製造するための明白かつ商業的に魅力的な適用を有する。インビトロバイオコンジュゲートワクチン製造のためのこの新規方法は、既存の方法と比較して、迅速な、モジュール式の、及び携帯型のワクチン試作及び製造に関する利点を実証した。
【0169】
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【0260】
実施例2-無細胞糖タンパク質合成プラットフォームの幅広い適用性
【0261】
細菌性糖鎖工学の新しく現れた学問領域が、ワクチン及び治療薬としての使用のためのデザイナーグリカン及び糖コンジュゲートを製造することを可能にした。本明細書中、我々は、アスパラギン結合型タンパク質グリコシル化とタンパク質生合成をシームレスに組み合わせた新規無細胞糖タンパク質合成技術を記載する。この技術は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼが(OST)や脂質結合オリゴ糖(LLO)を含めたグリコシル化成分を選択的に濃縮した起源細胞溶解物にいくつかのエシェリキア・コリ株を利用する。得られた抽出物は、標的タンパク質の効果的な、及び部位選択的なグリコシル化のためのワンポット反応スキームを可能にする。プラットフォームは、高度にモジュール式であり、そして、複数の個別OSTの使用が、多くの糖タンパク質治療薬及び糖コンジュゲートワクチン担体に、いくつかの細菌性O-ポリサッカライドを含めた構造的に多様なグリカンを付け加えることを可能にする。以下の表には、開示した無細胞糖タンパク質合成システムで特徴づけられた独特なグリコシル化成分、すなわち、E.コリ起源株、OST、及びLLO、並びに糖タンパク質アクセプタをまとめる。
【0262】
【表2-1】
【表2-2】
【0263】
複数の個別オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)は、無細胞タンパク質グリコシル化を活性化するためにE.コリ溶解物中で濃縮され得る。我々の無細胞糖タンパク質合成技術の初期開発のために、我々は、我々のモデルグリコシル化システムとしてグラム陰性菌カンピロバクター・ジェジュニから十分に試験された細菌性タンパク質グリコシル化遺伝子座(pgl)を選択した[1]。この遺伝子クラスターは、アクセプタタンパク質内の保存モチーフ(D/X-X-1-N-X+1-S/T、式中、X+1及びX-1はプロリン以外の任意の残基である)内のアスパラギン残基上への[3]、脂質担体ウンデカプレニルピロホスファート(Und-PP)からの組み立て済みGlcGalNAc5Bacヘプタサッカライド(ここで、Bacはバシロサミンである)のブロック内転送を触媒する、単一サブユニットOST、CjPglBに関与する、真核生物及び古細菌のものに機能的に類似したアスパラギン結合型(N-結合型)グリコシル化経路をコードする[2]。
【0264】
無細胞の分かりやすい性質を考慮して、機能的に入れ替え及び代替生化学反応成分を試作することが可能である。これが達成できる1つの簡単な方法は、そのそれぞれが所定の酵素が選択的に濃縮された別々に調製された溶解物を組み合わせることによる[4、5]。この概念の証拠として、別々に調製したCjLLO及びCjPglB溶解物を混合し、次に、scFv13-R4DQNAT、単独のDQNATモチーフでC末端を修飾された抗-β-ガラクトシダーゼ(βgal)一本鎖可変フラグメント(scFv)抗体[6]、アクセプタをコードするDNAを用いて準備した。得られた混合物は、抗His抗体と、C.ジェジュニグリカンを検出するhR6血清を用いてプローブした免疫ブロットで観察したとおり、scFv13-R4DQNATの効果的なグリコシル化を促進した(図7a)。scFv13-R4DQNATに加えて、我々はまた、C.ジェジュニ糖タンパク質AcrAからの21個のアミノ酸配列をグラフトすることによって作成した様々なモデルアクセプタタンパク質も発現し、そしてそれは、スーパーフォルダーGFP(sfGFP217-DQNAT)のフレキシブルループ内に最適化したDQNATグリコシル化部位でさらに修飾された。混合溶解物反応スキームは、100%の転換でsfGFP217-DQNATアクセプタタンパク質をグリコシル化できた(図7a)。
【0265】
次に、我々は、混合溶解物アプローチが4つの追加の細菌性OSTの活性を迅速に試作するのに使用できることを実証しようとした。以下の細菌性OSTのうちの1つを異種過剰発現するE.コリCLM24起源株から、粗溶解物を別々に調製した:カンピロバクター・コリPglB(CcPglB)、デスルホビブリオ・デスルフリカンスPglB(DdPglB)、デスルホビブリオ・ギガスPglB(DgPglB)、又はデスルホビブリオ・ブルガリスPglB(DvPglB)。それぞれのOST溶解物をCjLLOを濃縮した溶解物と混合し、次に、sfGFP217-DQNAT又はこの標的タンパク質sfGFP217-AQNATの修飾バージョンをコードするプラスミドDNAを補った。無細胞糖タンパク質合成反応の完了時に、両sfGFPsの発現とグリコシル化状態を、イムノブロット分析によって追跡し、そしてそれは、これらの相同酵素のシークオン優先傾向に関する情報を明らかにした。例えば、CcPglBを含有する混合溶解物は、sfGFP217-AQNATではなく、sfGFP217-DQNATを効率的にグリコシル化することが観察された(図7b)。CcPglBに関するこの活性プロフィルは、CjPglBに関して観察されたものと同一であり、そしてそれは、CjPglBに対するその高い配列類似性(~81%)に基づいて驚くべきものでなかった[7]。対照的に、CjPglBに対して低い配列同一性(~15-20%)を有するデスルホビブリオ属からのOSTを含有する溶解物混合物は、より緩やかなシークオン優先傾向を示した(図7b)。具体的には、(D/A)QNATモチーフの両方を修飾したDgPglB濃縮抽出物混合物がほぼ同じ効率を有するのに対して、DdOSTとDvOSTを含有する混合溶解物は、AQNATシークオンを優先的にグリコシル化した。総合すれば、これらの結果は、様々なオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素(OST)が我々の無細胞溶解物において機能的に濃縮されて、標的化した糖タンパク質を製造することを示唆している。我々は、我々の無細胞システムで使用されるOSTの範囲が、原生動物、酵母、及び哺乳動物などの生物体を起源とするものを含むまで広げられ得ることを前提とする。
【0266】
最後に、我々は、臨床的に関連するワクチン抗原に相当するO-抗原ポリサッカライドが、複数のOST酵素を用いた我々の溶解物混合アプローチを使用してタンパク質に移され得ることを示した。ここで、我々は、O78株が開発途上地域の旅行者下痢症の主な原因であったので、抗細菌性ワクチンの開発を知らせるためのE.コリO78ポリサッカライド抗原(EcO78-PS)のコンジュゲーションに注目した。先に記載したCjPglB又はCcPglBを濃縮した粗溶解物を、EcO78-PSの合成のための生合成経路を発現する細胞から調製したLLO溶解物に混合した。次に、これらの溶解物混合物に、sfGFP217-DQNATをコードするプラスミドDNAを補った。イムノブロット分析は、CjPglBとCcPglBの両方がタンパク質にEcO78-PSを移すことを明らかにした(図8)。これらのデータは、様々なオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素(OST)が、我々の無細胞プラットフォームにおいてコンジュゲートワクチン候補を合成するのに使用できることを示す。我々は、以下に記載の、オンデマンド及び分散型のコンジュゲートワクチンの製造を可能にするために、このプラットフォームをさらに開発した。
【0267】
これまで、C.ジェジュニグリコシル化経路だけがインビトロにおいて再構成され[8、9]、そして、それは我々のシステムが様々なLLOを用いて再構成され得るかどうかという未解決の問題を残していた。そのため、C.ジェジュニヘプタサッカライドを超えてグリカン構造の範囲を拡大すべく、我々は代替グリカン生合成経路を担持するE.コリ細胞から抽出した脂質結合オリゴ糖ドナーを使用したインビトログリコシル化を実施した。これらは、以下のグリカン構造を担持するLLOを含んだ:(i) 天然C.ラリヘキササッカライドN-グリカン[10];(ii) C.ラリヘキササッカライドN-グリカンに基づく改変GalNAc5GlcNAc[11];(iii) 天然ウォリネラ・サクシノゲネスヘキササッカライドN-グリカン[12];(iv) 改変E.コリO9プライマー-アダプターO-PSグリカン、Man3GlcNAc;(v) F.ツラレンシスO-PS、Qui4NFm-(GalNAcAN)2-QuiNAc構造[13]、及び(vi) 真核性トリマンノシルコアN-グリカン、Man3GlcNAc2[6]。それぞれのこれらの様々なグリカンを有するscFv13-R4DQNATのグリコシル化は、CjPglBの存在下でのみ起こることが観察された(図9)。総合すれば、これらの結果は、真核性構造及びO-抗原ポリサッカライドに類似しているものを含めた構造的に多様なグリカンが、無細胞グリコシル化反応物においてモジュール式に交換され得ることを実証する。
【0268】
無細胞糖タンパク質合成プラットフォーム内にいくつかのグリカン構造の良好な導入による構築により、グリカンの特定の基、細菌性O-ポリサッカライドに我々は関心を向けた。抗菌耐性が世界中で深刻さを増す問題なので、新しい抗生物質及びワクチンの製造を加速するストラテジーが必要になる。特に、免疫原性担体タンパク質にコンジュゲートした細菌性O-ポリサッカライド抗原で構成されるコンジュゲートワクチンは、非常に稀な抵抗性の例を有する細菌感染の予防において90%超有効である。我々が、病原菌特異的ポリサッカライドとの関連においてバイオコンジュゲートワクチン候補を調製するのに我々の無細胞糖タンパク質合成技術を使用できると、我々は仮定した。概念検証として、我々は、グラム陰性の病原菌フランシセラ・ツラレンシス亜属ツラレンシス(タイプA) 株Schu S4、任意の球桿菌及び野兎病の起因菌からのO-PS構造を有するsfGFP-DQNATの発現及び部位特異的グリコシル化を試みた。グリコシル化活性を、抗His抗体及びFtO-PSに特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫ブロッティングによりアッセイした(図10A)。FtLLO及びCjPglB溶解物を混合したときに観察されるラダー様のパターンは、FtLLO付加の指標であり、Wzyポリメラーゼの作用によるO-PS鎖長の可変性からもたらされる。
【0269】
様々なコンジュゲートワクチンの製造のための我々の無細胞アプローチの一般性とモジュール性を実証するために、我々は、E.コリの2つの病原性株、すなわち、腸内毒素原性E.コリ株O7及びO78に対するワクチンを製造しようとした。E.コリ株O7は尿路感染の主な原因であり、並びに株O78は旅行者の下痢症状の主な原因であり、及び低所得国の下痢性疾患の主な原因である。ワンポット溶解物を、CjPglB及びE.コリO78抗原又はO7抗原のいずれかに関する生合成経路を発現する細胞から調製した。これらの溶解物を含む無細胞反応が、抗His抗体(図10B、C)及びE.コリO78とO7抗原に対する抗血清(データ未掲載)を用いた免疫ブロッティングによって我々のsfGFP変異体のラダー様のグリコシル化をもたらした。重要なことには、これらの結果は、協調した担体タンパク質合成及び病原菌特異的O-抗原付加のための我々の統合技術の可能性を実証する。そのうえ、我々の無細胞プラットフォームは、細菌性O-ポリサッカライドの様々な構造からの新規コンジュゲートワクチン候補の迅速な製造及び試作のために魅力的な選択肢を示す。
【0270】
我々の完全に統合された無細胞糖タンパク質合成プラットフォームは、様々なN-糖タンパク質のワンポット合成を可能にすることを実証した。このシステムを使用して、反応物をscFv13-R4DQNAT又はsfGFP217-DQNATのいずれかをコードするプラスミドDNAを用いて準備し、100%のタンパク質グリコシル化を有する標的タンパク質の製造に至った(図11a)。重要なことには、インビトロ合成scFv13-R4DQNAT及びsfGFP217-DQNATタンパク質は、N-グリカン付加によって影響されなかった(データ未掲載)、scFvのELISA形式で抗原基質を結合する能力によって及びsfGFPの蛍光シグナルによって計測される、生物学的活性を維持した。より重要なことには、我々のワンポットの無細胞グリコシル化システムを、残基N24(22-AENIT-26)、N38(36-NENIT-40)又はN83(81-LVNSS-85)にて天然シークオンを最適な細菌性シークオン、DQNATに個別に変異させたものを含めたいくつかのヒトエリスロポエチン(hEPO)糖変異体をコードするプラスミドDNAを用いて準備した反応物で同様に実施した(図11b)。ウェスタンブロット分析は、N24及びN38部位に関して100%のグリコシル化生成物、並びにN83部位に関して~30-40%を有するそれぞれのhEPO糖変異体の検出可能なグリコシル化を明確明らかにした(図11b)。3つのグリコシル化hEPO変異体のすべてが、対応するアグリコシル化対応物について計測される活性から区別がつかない生物学的活性を維持した(データ未掲載)。まとめると、これらの知見は、ワンポット溶解物がヒト起源のものを含めたグリコシル化タンパク質を効率的にもたらす様式でタンパク質合成とN-グリコシル化を同時活性化できることを確立する。
【0271】
次に、我々は、モデル標的様sfGFP又は例えばhEPOなどの小分子サイトカイン糖タンパク質を超えて本物の糖タンパク質アクセプタを合成する我々の無細胞システムの能力を拡大しようとした。具体的には、我々は、糖コンジュゲートワクチン担体の発現に向けて我々の取り組みを変えた。E.コリにおいてインビボでコンジュゲートワクチンを発現することは、コンジュゲートワクチンとの関連においてタンパク質アジュバントとしての使用に関してFDAによってまだ承認されていない担体タンパク質の使用によって制限された。FDAに承認された担体タンパク質、例えば破傷風又はジフテリア毒素タンパク質などは、生きたE.コリ細胞の周辺質におけるN-結合型グリコシル化で適合できることがまだ実証されていない。実際には、これらのFDAに承認された担体は、E.コリにおいてインビボで発現するのが難しいと判明し、封入体からの不溶性生成物の精製と再折り畳み、溶性発現を増強するための発現パートナーの融合、又は完全長タンパク質に有利になるタンパク質断片の発現が必要とされることが多い。対照的に、無細胞タンパク質合成アプローチは最近、発現するのが難しいタンパク質に有望であることを示した[14]。我々が注目した担体タンパク質は、ここでは、非アシル化H.インフルエンザタンパク質D(PD)、N.メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、及びコリネバクテリウム・ジフテリア毒素(CRM197)とクロストリジウム・テタニ毒素(TT)の遺伝的に無毒化した変異体を含む。我々はまた、TTのフラグメントC(TTc)及び軽鎖(TTlight)ドメイン、並びにE.コリMBPの発現を試験した。グリコシル化を可能にするために、すべての担体を、最適な細菌性グリコシル化モチーフ、DQNAT[15]、の4つの縦列反復を用いてそのC末端で修飾した。内部DQNATグリコシル化部位(sfGFP217-DQNAT)[16]を含んだ「スーパーフォルダー」緑色蛍光タンパク質の変異体をシステムの開発を容易にするためのモデルタンパク質として使用した。8つの担体すべてを、14C-ロイシン取り込みによって決定される~50-650μg mL-1の可溶性収率でインビトロ合成した(データ未掲載)。
【0272】
我々は次に、ワンポット、無細胞グリコシル化を用いてそれらのインビトロ発現を組み合わせることによってこれらの担体タンパク質のコンジュゲートバージョンを合成しようとした。ワクチン標的に関して、我々は高度に有毒なフランシセラ・ツラレンシス株Schu S4に注目した。FtO-PSを用いてタンパク質をグリコシル化するために、我々はFtO-PS生合成経路とCjPglB酵素を発現する糖改変E.コリ細胞からワンポット溶解物を製造した。脂質結合FtO-PSと触媒的に活性なCjPglBを含んだこの溶解物は、sfGFP217-DQNATをコードするプラスミドDNAを用いて準備した反応を触媒するのに使用した。FtO-PSで修飾したグリコシル化sfGFP217-DQNATの効率的な合成を、抗His抗体又はFtO-PSに対して特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫ブロッティングによって観察した(図12a)。sfGFP217-DQNATのグリコシル化は、完全なグリコシル化経路及び好ましいDQNATグリコシル化配列を含む反応においてのみ観察された(図12a)。
【0273】
次に、我々は、FDAによって承認された担体が我々の無細胞反応において同様にFtO-PSと結合できるかどうか調査した。MBP4xDQNAT、PD4xDQNAT、PorA4xDQNAT、TTc4xDQNAT、TTlight4xDQNAT、及びCRM1974xDQNATをコードするプラスミドDNAの付加に続いて、FtO-PSを用いたそれぞれのグリコシル化を、脂質結合FtO-PS及びCjPglBを濃縮した反応に関して観察したが、CjPglBを欠く対照反応を用いて観察しなかった(図12b)。我々は、試験したすべてのタンパク質担体に対する高分子量FtO-PS種(~10-20kDa程度)のコンジュゲーションを観察し、そしてそれは、より長いグリカン鎖長がF.ツラレンシスに対するコンジュゲートワクチンの有効性を増強することが示されたので、重要である[17]。まとめると、これらのデータは、無細胞糖タンパク質合成プラットフォームが様々な糖タンパク質治療薬及びFDAによって承認されたものを含めた糖コンジュゲート担体を効率的に合成及びN-グリコシル化できることを示す。
【0274】
原核生物の無細胞タンパク質合成が、遺伝子組み換えタンパク質製造のための有望なツールとして出現した[18、19]。中でも、S30溶解物と呼ばれるエシェリキア・コリベースの溶解物は、最も一般的に使用され、かつ、十分に試験された溶解物の起源のうちの1つである[20]。これまで、しかしながら、限られた数のE.コリ株だけが効果的な無細胞タンパク質合成に適していることを示し、さらに少数がタンパク質の翻訳後修飾に結びつけられた無細胞タンパク質合成との関連において調査された[8、21]。i) rE.コリ705、ii) BL21(DE3)、及びiii) CLM24を含めた様々な一般的な研究室E.コリ株が、我々の統合無細胞タンパク質合成及びグリコシル化を支えるためのシャシー株として使用できるか否か決定するために、我々はまず、超音波処理に基づくロバスト手順を用いて、これらの株から未精製S30溶解物を調製した[22]。次に、修飾PANOx-SPシステム[23]、及びグリコシル化[9]を使用した、小規模回分様式の、連続した無細胞タンパク質合成を、以下の:(i) 精製CjPglB触媒;(ii) オリゴ糖ドナーCjLLO[24];及び(iii) モデルアクセプタタンパク質scFv13-R4DQNAT[6]をコードするプラスミドDNAを補ったこれらの溶解物を使用して実施した。一晩の反応後に、高度に能率的なグリコシル化は、抗His免疫ブロットにおけるモノグリコシル化(g1)形態及びhR6血清(図13)によるscFv13-R4DQNATに結合したC.ジェジュニグリカンの検出に対して完全に、標的タンパク質の移動度シフトによって証明されるように、すべての反応で達成された。
【0275】
E.コリベースの生物学的治療薬製造システムを使用する際の1つの主要な課題が、リピドA又はエンドトキシン汚染に対する懸念である。リピドA毒素は、トール様受容体4(TLR4)によって認識され、感染症と戦うのに必要であるが、高レベルで致死性の敗血症ショックを引き起こす[26]腫瘍壊死因子αやインターロイキン1β[25]などの炎症誘発性サイトカインの産生をもたらす。無細胞糖タンパク質合成反応はOSTやLLOを含めた脂質関連成分に依存しているので、リピドAの除去を伴う標準的な毒性除去アプローチ[27]が我々のグリコシル化成分の活性又は濃度を低下させる場合がある。この問題に対処するために、我々は、株改変によってリピドA分子の毒性除去のためのストラテジーを適用した[28、29]。特に、アシル転位酵素遺伝子lpxMの欠失とE.コリにおけるF.ツラレンシスホスファターゼLpxEの過剰発現は、有意に低下した毒性を有するが、アジュバントとして活性を維持しているほとんど同様のペンタアシル化、モノホスホリル化リピドAの産生をもたらすことを示した[28]。iVAXとの関連において無毒化リピドA構造を作り出すために、我々はFtLpxE及びFtO-PSグリコシル化経路を同時発現するCLM24の ΔlpxM誘導体から溶解物を製造した。この株から得られた溶解物は、HEK-Blue hTLR4レポーター細胞におけるヒトTLR4活性化によって計測されるように[29]、CjPglBを発現する野性型CLM24溶解物とFtO-PSと比較して、有意に減少したレベルの毒性を示した(データ未掲載)。起源株上に記録されるゲノムがタンパク質合成及びグリコシル化効率に対して負の影響を与えるかどうか証明するために、我々は、FtO-PSを用いて修飾されたグリコシル化sfGFPDQNATを産生するためのこれらの修飾株から調製したS30溶解物を使用した。効果的なタンパク質合成及びN-グリコシル化をすべての反応で観察した。これらのデータは、起源株に対する、リピドAのゲノム改変、特異的な構造編集が、我々の無細胞グリコシル化反応の膜結合型CjPglB及びFtO-PS成分の活性に影響しないことを示す(図14)。全体的に見て、ここでの結果は、数種類の一般的な研究室E.コリ及びゲノム改変E.コリ株を含めた、様々な原核性溶解物が、我々の無細胞のタンパク質合成及びN-グリコシル化を機能的に再構成するために利用できることを立証する。
【0276】
実施例2の参考文献
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【0306】
実施例3-治療現場におけるコンジュゲートワクチンのオンデマンド、無細胞での生物学的製造
【0307】
概要
【0308】
コンジュゲートワクチンは、細菌感染を予防するための最も効果的な方法の中にあり、薬剤耐性病原菌と闘うために有望なストラテジーを表している。しかしながら、先に言及したとおり、既存の製造アプローチは、集中した製造及びコールドチェーン流通要件のためコンジュゲートワクチンへのアクセスを制限する。これらの制限に対処するために、インビトロバイオコンジュゲートワクチン発現(iVAX)のためのモジュール式技術を以下に記載する。iVAXとしては、無毒化した、非病原性エシェリキア・コリからの可搬性、凍結乾燥溶解物が挙げられる。再水和によって、iVAX反応は、一時間以内に様々な細菌性病原体に対して臨床的に関連する用量のバイオコンジュゲートワクチンを合成する。この実施例は、驚いたことに及び予想外に、iVAXが、改変細菌を使用して製造するワクチンと比較して、有意に高いレベルにてマウスにおいて病原菌特異的な抗体を誘発する、非常に有毒な病原菌フランシセラ・ツラレンシス亜属ツラレンシス(タイプA)株Schu S4に対するワクチンを合成することを示した。iVAXプラットフォームは、冷蔵を必要としない流通及び治療現場での製造によって増強されたアクセスを有する新しいバイオコンジュゲートワクチンの開発を加速する見込みがある。
【0309】
序論
【0310】
薬剤耐性菌は2050年までに年間最大1000万人の命を脅かすと予測されているので(Review on Antimicrobial Resistance, 2014)、抗生物質やワクチンを開発及び流通する新しいストラテジーを必要としている。典型的に免疫賦活タンパク質担体に関連した病原菌特異的莢膜(CPS)又はO-抗原ポリサッカライド(OPS)で構成されるコンジュゲートワクチンは、命にかかわる細菌感染を予防するための最も安全で最も効果的な方法の中にある(Jin et al., 2017; Trotter et al., 2008; Weintraub, 2003)。特に、メニンゴコッカル及びニューモコッカルコンジュゲートワクチンの実現は、標的株の抗生物質抵抗性の削減に加えて(Roush et al., 2008)、世界中で細菌性髄膜炎及び肺炎を有意に削減した(Novak et al., 2012; Poehling et al., 2006)。しかしながら、その安全と有効性にもかかわらず、コンジュゲートワクチンに関する世界的な幼児期ワクチン接種率は、~30%程度に低いまま維持されており、アクセスの欠如又は狭い予防接種範囲が、疾患の負担を残している主な原因の大部分を占めている(Wahl et al., 2018)。加えて、2018年には腸チフスを予防するためのTyphbar-TCV(登録商標)のWHO事前資格審査が、およそ10年以内に最初のコンジュゲートワクチンを承認する。薬剤耐性病原菌の出現に対処するために、コンジュゲートワクチンの開発と地球規模の流通を加速する新技術が必要である。
【0311】
コンジュゲートワクチンの開発及び流通の遅いペースの一因となるのは、これらの分子は特に製造が困難であり、かつ、高価であるという事実である。コンジュゲートワクチンを製造するための従来のプロセスは、病原性細菌の大量培養から精製したポリサッカライド抗原と担体タンパク質の化学的コンジュゲーションを伴う。病原菌の大規模な発酵は、関連生物学的安全性の障害とプロセス開発の課題に起因する高い製造コストをもたらす。加えて、化学的コンジュゲーションはポリサッカライドの構造を変更でき、保護的なエピトープの欠失をもたらした(Bhushan et al., 1998)。これらの課題に対処するために、ポリサッカライドタンパク質「バイオコンジュゲート」は、タンパク質-グリカンカップリング技術(PGCT)を使用したエシェリキア・コリで作製できることを実証した(Feldman et al., 2005)。このアプローチでは、改変E.コリ細胞には、カンピロバクター・ジェジュニオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素PglB(CjPglB)によって触媒されるアスパラギン結合型グリコシル化反応を介して担体タンパク質に、異種発現CPS又はO-PS抗原を共有結合させる(Cuccui et al., 2013; Garcia-Quintanilla et al., 2014; Ihssen et al., 2010; Ma et al., 2014; Marshall et al., 2018; Wacker et al., 2014; Wetter et al., 2013)。この進歩にもかかわらず、化学的コンジュゲーションとPGCTアプローチの両方が生きた細菌細胞に依存し、集中した製造設備を必要とし、そしてそこからワクチンが冷蔵サプライチェーンを介して流通される。冷蔵は、沈殿に起因するコンジュゲートワクチンの損傷、並びに加熱及び冷凍の両方による病原菌特異的ポリサッカライドの重大な損失を避けるために重要である(Frasch, 2009; WHO, 2014)。1種類のコンジュゲートワクチン、MenAfriVac(商標)、だけが最長4日間にわたりコールドチェーンの外側で活性を維持することが知られており、そしてそれは、サハラ以南のアフリカの髄膜炎ベルトにおけるワクチン接種の間の高いワクチン普及率と約50%のコストダウンを可能にした(Lydon et al., 2014)。しかしながら、これは、熱安定性ワクチンの開発及びバリデーションにおける大幅な投資を必要とした。大まかに言えば、コールドチェーン冷蔵の必要性は、特に開発途上地域における、ワクチン接種キャンペーンの範囲及び疾患の根絶に対するバリアの提供を制限する、経済及びロジスティクスの課題を生じる(Ashok et al., 2017; Wahl et al., 2018)。
【0312】
無細胞タンパク質合成(CFPS)は、インビトロタンパク質を合成するために、ワクチン開発を加速する、並びに生細胞よりむしろ細胞溶解物を使用することによって非集中の、コールドチェーンから独立した生物学的製造を可能にするための機会を提供する(Carlson et al., 2012)。重要なことには、CFPSプラットフォームは、(i) 関連量のタンパク質がわずか数時間以内にインビトロ合成できるので、治療現場でのタンパク質製造を可能にする、(ii) 周囲温度での流通のために凍結乾燥でき、及び水を加えるだけで再構成できる(Adiga et al., 2018; Pardee et al., 2016)、及び(iii) 制御された実験環境の外側の生きた生細胞の使用に関連する生物学的安全性の懸念を回避する。CFPSは、最近、アグリコシル化タンパク質ワクチンのオンデマンド及び携帯型の製造を可能にするために使用した(Adiga et al., 2018; Pardee et al., 2016)。そのうえ、我々は、最近、ヒト糖タンパク質及び真核性グリカンを含めたグリコシル化タンパク質のワンポット製造を可能にする無細胞糖タンパク質合成技術を記載した(Jaroentomeechai et al., 2018)。これらの進歩にもかかわらず、無細胞システム及び非集中型製造システムでさえ、関連力価にて及びバイオコンジュゲートワクチン製造に必要であるポリサッカライド抗原などの様々なグリカン構造を担持するグリコシル化タンパク質を合成できないそれらの能力によって歴史的に制限される(Perez et al., 2016)。
【0313】
これらの制限に対処するために、無細胞反応におけるコンジュゲートワクチンの生合成の迅速な開発及びコールドチェーンからの独立を可能にするiVAX(インビトロバイオコンジュゲートワクチン発現)プラットフォームを以下で記載する(図15)。iVAXを、以下の特徴を有するように改変した。第一に、iVAXは速く、1時間以内に、バイオコンジュゲートの複数の個別用量を製造する能力を有した。第二に、iVAXはロバストであり、運転温度の範囲にわたり当量のバイオコンジュゲートを得た。第三に、iVAXはモジュール式であり、認可されたコンジュゲートワクチンで使用される、並びにポリサッカライド抗原をコンジュゲートしたものを含めた、担体タンパク質を迅速に交換する能力を提供した。この実施例に記載のとおり、このモジュール性を、非常に有毒なフランシセラ・ツラレンシス亜属ツラレンシス(タイプA) 株Schu S4、腸内毒素原性(ETEC)E.コリO78、及び尿路感染性(UPEC)E.コリO7を含めた、様々な細菌性病原体に対して標的化したワクチン候補のアレイを作成するために利用した。第四に、水を加えるだけのストラテジーで作動する凍結乾燥無細胞反応から得られるiVAXは、保存安定性である。第五に、iVAXは安全であり、非改変E.コリ製造プラットフォームに存在する高レベルのエンドトキシンを効果的に回避するリピドA改造を利用した。これらの結果は、凍結乾燥、低エンドトキシンiVAX反応由来の抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートが、マウスにおいて病原菌特異的抗体応答を誘発し、かつ、生細胞において確立されたPGCTアプローチを使用して製造したバイオコンジュゲートより優れていたことを実証する。全体的に見て、iVAXプラットフォームは、先進国及び開発途上国の両方に対する抗細菌性ワクチンの重要なクラスの保護的な利益を送達する新しい方法を提供する。
【0314】
結果
【0315】
認可されたワクチン担体タンパク質のインビトロ合成
【0316】
無細胞バイオコンジュゲートワクチン製造の原理証明を実証するために、FDAによって承認されたコンジュゲートワクチンで現在使用されている1セットの担体タンパク質をインビトロで発現した。インビトロにおける可溶性の立体構造でのこれらの担体タンパク質の製造は、生きたE.コリにおけるそれらの発現が魅力的であると判明したので、封入体からの不溶性生成物の精製及び再折り畳み必要とすることが多いので(Haghi et al., 2011; Stefan et al., 2011)、可溶性発現を増強するためにマルトース結合タンパク質(MBP)などの発現パートナーの融合のため(Figueiredo et al., 1995; Stefan et al., 2011)、又は完全長のタンパク質に有利になる短縮タンパク質変異体の発現(Figueiredo et al., 1995)のため、重要なベンチマークを表した。対照的に、無細胞タンパク質合成アプローチは最近、発現するのが難しいタンパク質の見込みを示した(Perez et al., 2016)。本明細書中に記載したインビトロシステムで発現される担体タンパク質としては、非アシル化H.インフルエンザタンパク質D(PD)、N.メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、並びにコリネバクテリウム・ジフテリア毒素(CRM197)とクロストリジウム・テタニ毒素(TT)の遺伝的無毒化変異体が挙げられる。また、TTのフラグメントC(TTc)と軽鎖(TTlight)ドメイン、並びにE.コリMBPの発現も試験した。MBPは認可された担体でないが、それは免疫賦活特性を実証し(Fernandez et al., 2007)、そしてO-PSに連結したとき、マウスにおいてポリサッカライド特異的な液性及び細胞性免疫反応を生じさせることが分かった(Ma et al., 2014)。同様に、TTドメイン、TTlight及びTTcは、認可されたワクチンで使用されていないが、マウスにおけるC.テタニのチャレンジに対する保護に関して免疫賦活及び個別に十分である(Figueiredo et al., 1995)。グリコシル化を可能にするために、すべての担体を、最適な細菌性グリコシル化モチーフ、DQNATの4つの縦列反復を用いてそのC末端で修飾した(Chen et al., 2007)。C末端6xHisタグもまた、ウエスタンブロット分析を介した精製及び検出を可能にするために含まれた。内部DQNATグリコシル化部位(sfGFP217-DQNAT)(Jaroentomeechai et al., 2018)を含んだ「スーパー-フォルダー」緑色蛍光タンパク質の変異体をシステムの開発を容易にするためのモデルタンパク質として使用した。
【0317】
8つの担体すべてを、14C-ロイシン取り込みによって決定される~50-650μg mL-1の可溶性収率でインビトロ合成した(図16a)。特に、MBP4xDQNAT及びPD4xDQNAT変異体は、それぞれ500μg mL-1及び200μg mL-1の収率でほぼ100%可溶性であり、ウエスタンブロット分析によると排他的に完全長生成物として発現された(図16b)。類似した可溶性収率を、CRM1974xDQNATを除いて(図21a)、25℃、30℃、及び37℃にてすべての担体に関して観察し、そしてそれは、熱感応性であることが知られている(WHO、2014)。これらの結果は、無細胞担体生合成の記載した方法が、温度の13℃の範囲にわたってロバストであり、正確な温度制御が実現可能でない環境で使用できることを示す。
【0318】
これらの無細胞反応の限定されない反応環境は、より複雑な担体の製造を改善するための化学的及び反応環境の操作を可能にした。例えば、膜タンパク質PorA4xDQNATの場合に、脂質ナノディスクは、可溶性発現を増強するために加えられた(図21b)。ナノディスクは、膜タンパク質の同時翻訳的な安定化疎水領域に対する細胞膜模倣体を提供する(Bayburt and Sligar, 2010)。分子間ジスルフィド結合を含むTTの発現のために、発現を酸化条件下で2時間実施し(Knapp et al., 2007)、そしてそれは、完全長の生成物への重鎖及び軽鎖の組み立てを改善し、完全長TTのプロテアーゼ分解を最小限にした(図21c)。インビトロ合成したCRM1974xDQNAT及びTT4xDQNATは、市販の精製ジフテリア毒素(DT)及びTTタンパク質標準とサイズが匹敵し、及びそれぞれα-DT及びαTT抗体と反応性であり(図21d、e)、両方が免疫学的に関連した立体構造で製造されたことを示した。コンジュゲートされたポリサッカライドなしでそれらを投与するとき、これはCRM197として有名であり、及びTTは、それぞれジフテリアと破傷風のためのFDAによって承認されたワクチン抗原である。同様に、これらの結果は、様々な温度範囲にわたり可溶性立体構造で認可されたコンジュゲートワクチン担体タンパク質を発現するCFPSの能力を目立たせる。
【0319】
バイオコンジュゲートワクチンのオンデマンド合成
【0320】
次に、これらの担体タンパク質のポリサッカライドコンジュゲートバージョンを、ワンポット、無細胞グリコシル化を用いたそれらのインビトロ発現を組み合わせることによって合成した。モデルワクチン標的、非常に有毒なフランシセラ・ツラレンシス亜属ツラレンシス(タイプA) 株Schu S4、グラム陰性として、任意の球桿菌及び野兎病の原因菌を使用した。この細菌は、その高い死亡率、低用量での感染、及びエアロゾル化される能力によりクラスAバイオテロ剤として分類された(Oyston et al., 2004)。F.ツラレンシスに対して現在認可されていないワクチンが存在するが、いくつかの試験が独立に、Schu S4株に対する保護を提供する際に、F.ツラレンシスLPS、具体的には、O-PS反復単位、に対して向けられる抗体の重要な役割を確認した(Fulop et al., 2001; Lu et al., 2012)。より最近になって、PGCT(Cuccui et al., 2013; Marshall et al., 2018)を使用して製造されたシュードモナス・エルギノーサ外毒素A(EPADNNNS-DQNRT)担体タンパク質にF.ツラレンシスSchu S4 O-PS(FtO-PS)コンジュゲートを含むバイオコンジュゲートワクチンは、野兎病のラット吸入モデルにおけるSchu S4株を伴った課題に対して保護的になることを示した(Marshall et al., 2018)。これらのより以前の知見についての観点から、インビトロにおいて様々な担体タンパク質にFtO-PS構造を結合することによって、オンデマンドでの、抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートワクチン候補を製造するためのiVAXプラットフォームの能力を試験した。
【0321】
FtO-PSは、826Daの反復四糖ユニットQui4NFm-(GalNAcAN)2-QuiNAc(Qui4NFm: 4,6-ジデオキシ-4-ホルムアミド-D-グルコース;GalNAcAN: 2-アセトアミド-2-デオキシ-D-ガラクツロンアミド;QuiNAc: 2-アセトアミド-2,6-ジデオキシ-D-グルコース)で構成される(Prior et al., 2003)。FtO-PSでタンパク質をグリコシル化するために、FtO-PS生合成経路及びオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素CjPglBを発現する糖改変E.コリ細胞からのiVAX溶解物を製造した(図17a)。脂質結合FtO-PSと活性CjPglBを含むこの溶解物を、sfGFP217-DQNATをコードするプラスミドDNAを用いて準備したiVAX反応を触媒するのに使用した。FtO-PSの付加が予想されなかった対照反応を、FtO-PS経路又はCjPglB酵素ののいずれかを欠いた細胞からの溶解物を用いて実施した。CjPglB(Kowarik et al., 2006)によって修飾されていない突然変異グリコシル化部位(AQNAT)を含む、標的タンパク質sfGFP217-DQNATをコードするプラスミドを欠いたか又はsfGFP217-AQNATをコードするプラスミドを用いて用意した反応もまた試験した。iVAX溶解物を含み、かつ、sfGFP217-DQNATをコードするプラスミドを用いて用意した反応では、抗His抗体又はFtO-PSに対して特異的な市販のモノクローナル抗体を用いた免疫ブロッティングは、ラダー様のバンドパターンを明らかにした(図17b)。このラダーは、FtO-PS付加の特徴であり、Wzyポリメラーゼの作用によるO-PS鎖長の可変性の結果である(Cuccui et al., 2013; Feldman et al., 2005; Prior et al., 2003)。sfGFP217-DQNATのグリコシル化は、完全なグリコシル化経路と好ましいDQNATグリコシル化配列を含む反応だけで観察された(図17b)。このグリコシル化プロファイルは、同じロットの溶解物(図17c、右側)からの生物学的な反復を越えても、及び異なったロットの溶解物(図17c、左側)を使用しても再現性が高かった。インビトロタンパク質合成とグリコシル化は1時間後に観察され、コンジュゲートポリサッカライドの量は0.75~1.25時間で最大値に達した(図22)。類似のグリコシル化反応動力学を、37℃、30℃、25℃、及び室温(~21℃)で観察し、iVAX反応が、温度範囲にわたってロバストであることを示した(図22)。
【0322】
次に、FDAによって承認された担体が、iVAX反応中でFtO-PSと同様にコンジュゲートし得る否か調査した。MBP4xDQNAT、PD4xDQNAT、PorA4xDQNAT、TTc4xDQNAT、TTlight4xDQNAT、及びCRM1974xDQNATをコードするプラスミドDNAの付加に続いて、FtO-PSを用いたそれぞれのグリコシル化を、CjPglBを欠く対照反応ではなく、脂質結合FtO-PS及びCjPglBを濃縮したiVAX反応に関して観察した(図18)。試験したすべてのタンパク質担体への高分子量FtO-PS種(~10-20kDa程度)のコンジュゲーションを観察し、そしてそれは、より長いグリカン鎖長がF.ツラレンシスに対するコンジュゲートワクチンの有効性を増強することが示されたので、重要である(Stefanetti et al., 2019)。特に、生きたE.コリで確立されたPGCTアプローチを使用したバイオコンジュゲートの同じパネルを合成する試みは、それほど有望でない結果をもたらした。具体的には、それらのiVAX誘導対応物と比較したすべてのPGCT由来バイオコンジュゲートに関して、低レベルのFtO-PSグリコシル化及び低分子量のFtO-PS種を観察した(図23)。同じ傾向を、最も一般的なPGCT担体タンパク質、EPADNNNS-DQNRTを伴ったPGCT-対iVAX誘導バイオコンジュゲートに関して観察した(Cuccui et al., 2013; Ihssen et al., 2010; Marshall et al., 2018; Wacker et al., 2014; Wetter et al., 2013) (図18; 図23)。加えて、PorA膜タンパク質の限定発現だけがインビボで達成された(図23)。まとめてると、これらのデータは、iVAXが多様な及び潜在的な膜結合型担体タンパク質に効率的に結合した高分子量O-PS抗原を用いたバイオコンジュゲートワクチン候補の製造に関してPGCTを超える利点を提供することを示す。
【0323】
次に、iVAXを使用して製造するバイオコンジュゲートの収率が関連ワクチン用量の製造を可能にするか否か決定した。1~10μgの用量のバイオコンジュゲートワクチン候補を示す最近の臨床上のデータは、良好な耐容性を示し、抗細菌性IgGの製造を刺激するのに有効である(Hatz et al., 2015; Huttner et al., 2017; Riddle et al., 2016)。発現力価を評価するために、及びさらなる実験に関して、MBP4xDQNAT及びPD4xDQNATを作製し、これらの担体が、高い可溶性力価を有し、及び生成物の切断なしのため、インビトロで発現された(図16)。14C-ロイシン取り込みと濃度測定分析によって測定されるように、~1時間持続する反応が、~20μg mL-1のグリコシル化MBP4xDQNAT及びPD4xDQNATを製造することがわかった(図24a)。ワクチンは現在、廃棄を最小限にするために1~20用量のワクチンを含むバイアルにより流通されていることに注意しなければならない(Humphreys, 2011)。よって、これらの収率の結果は、1mLあたりの反復投与は、iVAXプラットフォームを使用して1時間後に合成され得ることを示す。
【0324】
バイオコンジュゲート製造のためのiVAXアプローチのモジュール性を実証するために、ETEC E.コリ株O78とUPEC E.コリ株O7を含む追加の病原菌からのO-PS抗原を担持するバイオコンジュゲートを製造した。E.コリO78は、発展途上国における、特に小児の、下痢性疾患の主な原因であり、及び旅行者下痢症の主な原因であり(Qadri et al., 2005)、それに対して、O7株は、尿路感染の共通原因である(Johnson, 1991)。FtO-PSのように、EcO78-PS及びEcO7-PSの生合成経路は先に記載されており、そして反復単位GlcNAc2Man2(Jansson et al., 1987)及びQui4NAcMan(Rha)GalGlcNAc(L’vov et al., 1984)を有するO-PS抗原を製造するために確認した(GlcNAc: N-アセチルグルコサミン;Man: マンノース;Qui4NAc: 4-アセトアミド-4,6-ジデオキシ-D-グルコピラノース;Rha: ラムノース;Gal: ガラクトース)、それぞれ。PD4xDQNAT又はsfGFP217-DQNATプラスミドを用いて準備された反応におけるCjPglB及びEcO78-PSとEcO7-PS経路のいずれかを発現する細胞からのiVAX溶解物の使用は、脂質結合O-PSとCjPglBの両方がその反応中に存在したときにのみ、担体グリコシル化を観察した(図24b、c)。これらの結果は、インビトロ担体タンパク質合成とグリコシル化を伴った複数の異種O-PS経路の適合性によって可能になった、複数の細菌性病原体に対するバイオコンジュゲートのモジュラー製造を実証する。
【0325】
エンドトキシン編集及び凍結乾燥は、安全かつ携帯型であるiVAX反応をもたらす
【0326】
生物薬剤学的な製造のための任意のE.コリベースのシステムの使用に固有の主要な課題は、リピドA又はエンドトキシンの存在であり、そしてそれは、タンパク質生成物の混入であり、かつ、高レベルで致死性の敗血症ショックを引き起こすことが知られている(Russell, 2006)。その結果、処方された生物薬剤中のエンドトキシンの量は米国薬局方(USP)、US食品医薬品局(FDA)、及び欧州医薬品審査庁(EMEA)によって調整される(Brito and Singh, 2011)。iVAX反応はCjPglBやFtO-PSなどの脂質関連成分に依存しているので、リピドAの除去を伴う標準的な毒性除去アプローチは(Petsch and Anspach, 2000)、増加したコスト及び加工の複雑さに加えて、グリコシル化成分の活性又は濃度を落とす可能性がある。
【0327】
この問題に対処するために、株工学によってリピドA分子を毒性除去するための以前に報告したストラテジーを試験した(Chen et al., 2016; Needham et al., 2013)。特に、アシル転位酵素の遺伝子lpxMの欠失とE.コリにおけるF.ツラレンシスホスファターゼLpxEの過剰発現は、大きく減少した毒性を有する、ほとんど同種のペンタアシル化、モノホスホリル化リピドAの製造をもたらすが、アジュバントとして活性を維持することが示された(Chen et al., 2016)。このペンタアシル化、モノホスホリル化リピドAは、モノホスホリル化脂質の混合物で構成される承認されたアジュバントである、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)R595からのモノホスホリルリピドA(MPL)の主成分と構造的に同一であった(Casella and Mitchell, 2008)。iVAXとの関連において無毒化リピドA構造を製造するために、FtLpxE及びFtO-PSグリコシル化経路を同時発現するCLM24の ΔlpxM誘導体からの溶解物を製造した(図19a)。この株から得られた溶解物は、HEK-Blue hTLR4レポーター細胞のヒトTLR4活性化によって計測した場合、CjPglBとFtO-PSを発現する野性型CLM24溶解物と比較して(図19b)、有意な毒性レベルの低下を示した(Needham et al., 2013)。重要なことには、リピドAの構造的な改造は、iVAX反応の膜結合型CjPglB及びFtO-PS成分の活性に影響しなかった(図25a)。溶解物製造のためのシャシー株を改変することによって、市販のタンパク質ベースのワクチン製品について報告された値の範囲内である、<1,000EU mL-1のエンドトキシン濃度を有するiVAX溶解物を製造した(0.288~180,000 EU mL-1)( Brito and Singh, 2011)。
【0328】
従来のコンジュゲートワクチンの主要な限界は、それらが冷蔵されなければならないということであり、これらのワクチンが遠隔又は資源が限られた環境に流通されることをを難しくしている(WHO, 2014)。周囲温度での保存及び流通のためにiVAX反応を凍結乾燥する能力は、従来型ワクチンに必要である冷蔵サプライチェーンに関連するロジスティクスの課題を緩和する可能性がある。この可能性を調査するために、無毒化iVAX溶解物を、2つの異なった方法:sfGFP217-DQNAT標的タンパク質をコードするプラスミドを用いて準備した直後に反応を実施するか、又は同じ反応混合物を凍結乾燥し、再水和した後に実施するかのいずれか、によってFtO-PSバイオコンジュゲートを製造するのに使用した(図19c)。どちらの場合も、sfGFP217-DQNATへのFtO-PSのコンジュゲーションが、CjPglBが存在したときに、ほとんど同一の修飾レベルで観察された(図19d)。加えて、無毒化、凍結乾燥iVAX反応を、凍結乾燥せずに製造から区別がつかないロットからロットへの再現性が良好である様式でのFtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT及びPD4xDQNATの製造のために5mLに合わせて調整した(図25b、c)。iVAX反応物を凍結乾燥し、及び専用化した装置を用いないでバイオコンジュゲートを製造する能力は、携帯型、オンデマンドワクチン製造の可能性を強調した。
【0329】
インビトロ合成バイオコンジュゲートは、マウスにおいて病原菌特異的抗体を生じさせる。
【0330】
iVAXプラットフォームを使用して製造したバイオコンジュゲートの有効性を正当であると確認するために、マウスにおいて抗FtLPS抗体を生じさせるiVAX誘導バイオコンジュゲートの能力を試験した(図20a)。iVAX誘導FtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT又はPD4xDQNATを与えたBALB/cマウスが、高力価のFtLPS特異的IgG抗体を産生し、そしてそれは、PBSを与えた対照マウスの血清又はそれぞれの担体タンパク質のアグリコシル化バージョンで計測した力価と比較して、有意に上昇したことが分かった(図20b図26)。PGCT由来のグリコシル化MBP4xDQNATを与えたマウスからの血清で計測したIgG力価は、対照群で観察された力価に類似しており(図20b図26)、そのiVAX誘導対応物に対するこの候補の非常により弱いグリコシル化と合致した(図23)。iVAXを使用して製造したMBP4xDQNAT及びPD4xDQNATバイオコンジュゲートの両方が、同じ水準のIgG産生を生じ、及びどちらもマウスにおいて観察可能な有害事象をもたらすことなく、バイオコンジュゲートワクチン候補の製造のための技術のモジュール性及び安全性を確認した。
【0331】
IgG力価をIgG1及びIgG2aサブタイプの分析によって特徴づけし、そしてiVAX誘導FtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT及びPD4xDQNATの両方が、すべての対照群、並びにPGCT由来のグリコシル化MBP4xDQNATにに対して>2桁程度までIgG1抗体の産生を高めたことがわかった(図20c)。この分析はまた、両方のiVAX誘導バイオコンジュゲートが強力にTh2バイアス(IgG1>>IgG2a)応答を生じ、そしてそれが、ほとんどのコンジュゲートワクチンに特徴的であることを明らかにした(Bogaert et al., 2004)。総合すれば、これらの結果は、iVAXプラットフォームが、強力な、病原菌特異的体液性免疫反応を生じさせることができるワクチン候補を供給する証拠を提供し、そして認可されたコンジュゲートワクチンの特徴であるTh2バイアスを要約する。
【0332】
考察
【0333】
この実施例では、バイオコンジュゲートワクチンの携帯型、オンデマンド製造のための無細胞プラットフォームであるiVAXが確立された。iVAX反応は、コールドチェーンから独立した流通のために凍結乾燥され、かつ、単に水を加えることによって多収バイオコンジュゲート製造のために再活性化される、バイオコンジュゲートワクチン生成物の安全性を確保するまで無毒化できることを示した。モデルワクチン候補として、凍結乾燥、エンドトキシン編集iVAX反応由来の抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートが、認可されたコンジュゲートワクチンの特徴であるTh2バイアス免疫応答の一部としてマウスで病原菌特異的IgG抗体を生じたことを示した。
【0334】
iVAXプラットフォームはいくつかの新規特徴を含む。第一に、iVAXはモジュール式であり、そしてそれを、(i) 認可されたコンジュゲートワクチンで使用されるものを含めた担体タンパク質、及び(ii) F.ツラレンシス亜属ツラレンシス(タイプA)Schu S4、ETEC E.コリO78、及びUPEC E.コリO7からの細菌性O-PS抗原、の互換性を通して本明細書で実証した。これは、生きたE.コリにおける認可された担体の発現に関連した歴史的な課題に起因しそうな、本物のFDA承認担体タンパク質へのオリゴサッカリルトランスフェラーゼ媒介O-PSコンジュゲーションの最初の実証を表す(Figueiredo et al., 1995; Haghi et al., 2011; Stefan et al., 2011)。iVAXで使用されるO-PS経路のさらなる展開は、病原細菌のゲノム内のポリサッカライド生合成遺伝子の一般的に観察されたクラスタリングを提供できなければならなかった(Raetz and Whitfield, 2002)。この特徴は、iVAXを、病気の大流行に対応した又は出現した薬剤耐性菌に対するバイオコンジュゲートワクチン候補の迅速なデノボ開発のための魅力的な選択肢にする可能性がある。
【0335】
第二に、iVAX反応は安価であり、一時間で~20μgバイオコンジュゲートmL-1を合成する能力を有し(図24a)、~12ドルmL-1かかる(図27、表1)。用量が10μgのサイズであると仮定して、iVAX反応は~$6でワクチン用量を製造できる。比較のために、コンジュゲートワクチンの用量あたりのCDCコストは、H.インフルエンザワクチンActHIB(登録商標)の~9.50ドルから、メニンゴコッカルワクチンMenactra(登録商標)及びニューモコッカルワクチンPrevnar 13(登録商標)のそれぞれ~75ドル及び~118ドルまでの範囲に及ぶ(CDC, 2019)。
【0336】
第三に、iVAX誘導バイオコンジュゲートは、FtLPS特異的IgGsを生じさせることにおいて、PGCTを使用した生きたE.コリ細胞由来のバイオコンジュゲートに比べて、より効果的であることを示した(図20)。いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、この増強された有効性の考えられる説明の一つが、それらのPGCT誘導対応物と比較して、より大きい糖質負荷とより大分子量のFtO-PS種を用いた修飾を伴った、インビトロ発現バイオコンジュゲートに関して観察されたより大規模なグリコシル化である。PGCTを使用した製造されたバイオコンジュゲートで観察された高分子量O-PS種の存在の減少は、インビボにおけるO-抗原ポリメラーゼWzyとPglBとの間の競合に起因する可能性がある。対照的に、本開示のインビトロアプローチは、(iVAX反応の一部としてインビトロで起こる)グリコシル化から(溶解物製造前にインビボで起こる)O-PS合成を分離する。これらの結果は、バイオコンジュゲートにおけるコンジュゲートFtO-PS対タンパク質の比の上昇が、野兎病のラット吸入モデルにおける高いF.ツラレンシスSchu S4に対する保護をもたらすことを示すPGCT誘導抗F.ツラレンシスバイオコンジュゲートに関する予報と一致している(Marshall et al., 2018)。加えて、最近の試験は、TTに連結した高分子量(80kDa)FtO-PSで作られたコンジュゲートワクチンが、低分子量(25kDa)ポリサッカライドで作られたコンジュゲートと比較して、F.ツラレンシス生ワクチン株を用いた鼻腔内のチャレンジに対してより良好な保護を示した(Stefanettiら、2019)。
【0337】
バイオコンジュゲートワクチンの見込まれる携帯型製造によって、iVAXは、無細胞及び非集中型生物学的製造技術の両方の主要なギャップに対処する。グリコシル化誘導体の製造は、細胞ベースの非集中型生物学的製造プラットフォームでまだ実証されていないので(Crowell et al., 2018; Perez-Pinera et al., 2016)、E.コリ溶解物を使用した既存の無細胞プラットフォームは、糖タンパク質を合成する能力を欠いている(Boles et al., 2017; Murphy et al., 2019; Pardee et al., 2016; Salehi et al., 2016)。グリコシル化ヒトエリスロポイエチンが、凍結乾燥チャイニーズハムスター卵巣細胞溶解物(Adiga et al., 2018)ベースの無細胞生物学的製造プラットフォームで製造されたのに対して、この、並びに他の真核性無細胞及び細胞ベースのシステムの大部分は、内因性タンパク質グリコシル化機構に依存している。その結果、これらの発現プラットフォームは、製造されたグリカン構造又は基本的なグリコシル化反応に関してほとんど管理されず、顕著な最適化が、許容されるグリコシル化プロファイルを達成するの必要とされることが多い(Adiga et al., 2018)。対照的に、iVAXプラットフォームは、内因性タンパク質グリコシル化経路を欠くE.コリ由来の溶解物によって可能になり、所望のグリコシル化活性のボトムアップ操作を可能にする(Jaroentomeechai et al., 2018)。iVAXの所望のグリコシル化活性を改変する能力は、重要なクラスの抗細菌性ワクチンの治療現場での製造を可能にする。
【0338】
iVAXは、バイオコンジュゲートワクチンの迅速な開発及び携帯型、オンデマンド生物学的製造のための新しいアプローチを提供する。iVAXプラットフォームは、コールドチェーン要件を緩和し、そしてそれは、限られたインフラストラクチャの地域への医薬品の送出を促進し、かつ、損傷に起因するワクチンの損失を最小限にする可能性がある。加えて、インビトロにおいてワクチン候補を迅速に製造する能力は、病原菌の大流行及び緊急の脅威に対して迅速に対応するための独特な手段を提供する。
【0339】
実験モデルと対象の詳細
【0340】
細菌
【0341】
E.コリ株を、以下のMethod Detailsの項に指定したとおり、振盪インキュベーター内で30~37℃にてLuria Bertani (LB)、LB-Lennox、又は2xYTP培地中で培養した。E.コリNEB 5-alpha(NEB)を、プラスミドクローニング及び精製に使用した。E.コリCLM24又はCLM24 ΔlpxM株を、無細胞溶解物を調製するのに使用した。E.コリCLM24を、PGCTを使用したインビボにおけるバイオコンジュゲートの発現のためのシャシーとして使用した。CLM24は、WaaLリガーゼをコードする遺伝子内に欠失を担持するW3110の糖最適化誘導体であり、ウンデカプレニル二リン酸により組み立て前グリカンの蓄積を容易にする(Feldman et al., 2005)。CLM24 ΔlpxMは内因性アシル転位酵素欠失を有し、無毒化無細胞溶解物の製造のためのシャシー株としての役割を果たす。
【0342】
ヒト細胞培養
【0343】
HEK-Blue hTLR4細胞(Invivogen)を、製造者の仕様書に示されたとおり、5%のCO2を伴った37℃の加湿インキュベータ内で、10%のウシ胎仔血清、50U mL-1のペニシリン、50mg mL-1のストレプトマイシン、及び100μg mL-1のNormacin(商標)を補ったDMEM培地高グルコース/L-グルタミン中で培養した。
【0344】
マウス
【0345】
Harlan Sprague Dawleyから入手した6週齢の雌BALB/cマウスを、無作為に実験群に割り付けた。マウスを、3~5匹の動物から成る群で収容し、そして毎週ケージを変更した。すべての動物を、傷害及び異常な身づくろい行動習慣の目に見える兆候としてなどの行動及び身体の健康に関して毎日観察した。マウスはまた、各注射の24及び48時間後にも観察したが、いずれの異常応答も報告されなかった。この試験は、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care Internationalによって信任された施設のCornell Universityで実施した。すべての手順を、Animal Welfare Act, Public Health Service Policy on Humane Care and Use of Laboratory Animals, New York State Health Law Article 5, Section 504, and Cornell University Policy 1.4を含めた関連大学、州、及び連邦規定の下でthe Cornell University Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコル2012-0132に従って実施した。
【0346】
方法の詳細
【0347】
CLM24 ΔlpxM株の構造
【0348】
E.コリCLM24 ΔlpxMを、Datsenko-Wanner遺伝子ノックアウト方法(Datsenko and Wanner, 2000)を使用した作り出した。簡単に言えば、CLM24細胞を、λレッドシステムをコードするpKD46プラスミドを用いて形質転換した。形質転換体を、30℃にて50μg mL-1のカルベニシリンを含む25mLのLB-Lennox培地(10g L-1のトリプトン、5g L-1の酵母抽出物、及び5g L-1のNaCl)中で0.5~0.7のOD600まで培養し、集菌し、25mLの氷冷10%グリセロールで3回洗浄して、それらをエレクトロコンピテントにし、そして100μLの10%グリセロールの終量で再懸濁した。並行して、lpxMノックアウトカセットを、lpxMに相同性を有するフォワード及びリバースプライマーを用いたpKD4からのカナマイシン耐性カセットのPCR増幅によって作り出した。エレクトロコンピテント細胞を、400ngのlpxMノックアウトカセットを用いて形質転換し、耐性コロニーの選択のための30μg mL-1のカナマイシンを伴ったLB寒天培地上で平板培養した。プレートを37℃にて培養して、pKD46プラスミドの細胞を回復させた。カナマイシン上で増殖したコロニーは、コロニーPCR及びDNA配列決定によってノックアウトカセットを獲得したことを確認した。次に、これらの確認済みコロニーを、pCP20を用いて形質転換して、Flp-FRT組み換えによってカナマイシン耐性遺伝子を取り除いた。形質転換体を、50μg mL-1のカルベニシリンをもなったLB寒天上で平板培養した。選択に続いて、コロニーを42℃にて液中培養で培養して、pCP20プラスミドの細胞を回復させた。コロニーは、コロニーPCRとDNA配列決定によってlpxM及びノックアウトカセットの両方の欠失があることを確認し、及び50μg mL-1のカルベニシリン又はカナマイシンを伴ったLB寒天平板におけるレプリカ平板培養によってカナマイシン及びカルベニシリン耐性の両方を失ったことを確認した。この株の構造及びバリデーションに使用したすべてのプライマーを、図28、表2で列挙した。
【0349】
試験に使用したすべてのプラスミドを図29、表3で列挙した。プラスミドpJL1-MBP4xDQNAT、pJL1-PD4xDQNAT、pJL1-PorA4xDQNAT、pJL1-TTc4xDQNAT、pJL1-TTlight4xDQNAT、pJL1-CRM1974xDQNAT、及びpJL1-TT4xDQNATを、pJL1ベクター内のNdeIとSalI制限部位の間にC末端4xDQNAT-6xHisタグ(Fisher et al., 2011)を有する、IDTから購入したコドン最適化遺伝子構成物のPCR増幅とそれに続く、Gibson Assemblyによって作り出した。プラスミドpJL1-EPADNNNS-DQNRTを、同じアプローチを使用して組み立てたが、C末端4xDQNAT-6xHisタグの付加はなかった。プラスミドpTrc99s-ssDsbA-MBP4xDQNAT、pTrc99s-ssDsbA-PD4xDQNAT、pTrc99s-ssDsbA-PorA4xDQNAT、pTrc99s-ssDsbA-TTc4xDQNAT、pTrc99s-ssDsbA-TTlight4xDQNAT、及びpTrc99s-ssDsbA-EPADNNNS-DQNRTを、それぞれの担体タンパク質遺伝子のPCR増幅と、Gibson AssemblyによるNcoIとHindIII制限部位の間のpTrc99sベクター内への挿入によって作成した。プラスミドpSF-CjPglB-LpxEを、類似のアプローチであるが、pSFベクター内のNdeIとNsiI制限部位の間のpE(Needham et al., 2013)からのlpxE遺伝子の挿入により組み立てた。挿入物を、NEBuilder(登録商標) Assembly Tool(nebuilder.neb.com)を使用して設計した及びIDTから購入したフォワード及びリバースプライマーを用いたPhusion(登録商標) High-Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB)を使用したPCR増幅によって増幅した。pJL1 ベクター(Addgene69496)を制限酵素NdeI及びSalI-HF(登録商標)(NEB)を使用して消化した。pSFベクターを制限酵素NdeI及びNotI(NEB)を使用して消化した。PCR生成物を、EZNA Gel Extraction Kit(Omega Bio-Tek)を使用してゲル抽出し、Gibson組み立て試薬と混合し、そして50℃にて1時間インキュベートした。Gibson組み立て反応からのプラスミドDNAを、E.コリNEB 5-α細胞に形質転換し、そして環状構築物を50μg ml-1(Sigma)にてカナマイシンを使用して選択した。配列検証済みクローンを、CFPS及びiVAX反応における使用のために、EZNA Plasmid Midi Kit(Omega Bio-Tek)を使用して精製した。
【0350】
無細胞溶解物の調製
【0351】
E.コリCLM24起源株を、37℃にて振盪フラスコ(1Lスケール)又はSartorius Stedim BIOSTAT Cplusバイオリアクター(10Lスケール)内の2xYTP培地(10g/Lの酵母抽出物、16g/Lのトリプトン、5g/LのNaCl、7g/LのK2HPO4、3g/L KH2PO4、pH7.2)中で培養した。タンパク質合成の収率及びグリコシル化反応活性は、小規模及び大規模の両方にて異なるバッチの溶解物を通して再現性が良好であった。CjPglB濃縮溶解物を製造するために、プラスミドpSF-CjPglB(Ollis et al., 2015)を担持するCLM24細胞を起源株として使用した。FtO-PS濃縮溶解物を製造するために、プラスミドpGAB2(Cuccui et al., 2013)を担持するCLM24を起源株として使用した。CjPglB及びFtO-PS、EcO78-PS、又はEcO7-PSの両方を含むワンポット溶解物を製造するために、pSF-CjPglBを担持するCLM24及び以下の細菌性O-PS生合成経路プラスミド:pGAB2(FtO-PS)、pMW07-O78(EcO78-PS)、及びpJHCV32(EcO7-PS)のうちの1つを起源株として使用した。CjPglB発現を、0.02%(w/v)のL-アラビノースを用いて0.8~1.0のOD600にて誘発し、そして培養物を30℃に移した。細胞を、~3.0の最終的なOD600まで培養し、そしてその時点で、細胞を5,000xg、4℃にて15分間の遠心分離によってペレット化した。次に、細胞ペレットを、冷S30バッファー(10mMのTris-アセタートpH8.2、14mMの酢酸マグネシウム、60mMの酢酸カリウム)で3回洗浄し、そして5000xg、4℃にて10分間ペレット化した。最後の洗浄後に、細胞を7000xg、4℃にて10分間ペレット化し、計量し、液体窒素で急冷し、-80℃にて保存した。細胞溶解物を作製するために、細胞ペレットを1gの湿細胞質量あたり1mLのS30バッファー中に均質に再懸濁した。細胞を、20,000~25,000psiにてAvestin EmulsiFlex-B15(1Lスケール)又はEmulsiFlex-C3(10Lスケール)の高圧ホモジナイザを一回通過させることによって破砕した。次に、溶解物を、30,000×gにて30分間で2回遠心分離して、細胞破片を取り除いた。上清を、透明な微小遠心管に移し、250rpmにて振盪しながら37℃にて60分間インキュベートした。4℃にて15分間の遠心分離(15,000xg)に続いて、上清を回収し、等分し、液体窒素中で急冷し、そして-80℃にて保存した。S30溶解物は、約3回の冷凍-解凍サイクルにわたり活性であり、及びブラッドフォードアッセイによって計測した場合、~40g/Lの総タンパク質を含んでいた。
【0352】
無細胞タンパク質合成
【0353】
CFPS反応を、変法PANOx-SPシステム(Jewett and Swartz, 2004)を用いて1.5mLの微小遠心管(15μLスケール)、15mLのコニカルチューブ(1mLスケール)、又は50mLのコニカルチューブ(5mLスケール)内で実施した。CFPS反応混合物は、以下の成分:1.2mMのATP;それぞれ0.85mMのGTP、UTP、及びCTP;34.0μg mL-1のL-5-ホルミル-5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸(フォリン酸);170.0μg mL-1のE.コリtRNA混合物;130mMのグルタミン酸カリウム;10mMのグルタミン酸アンモニウム;12mMのグルタミン酸マグネシウム;それぞれ2mMの20種類のアミノ酸;0.4mMのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD);0.27mMのコエンザイムA(CoA);1.5mMのスペルミジン;1mMのプトレッシン;4mMのシュウ酸ナトリウム;33mMのホスホエノールピルベート(PEP);57mMのHEPES;13.3μg mL-1のプラスミド;及び27% v/vの細胞溶解物、から成る。≧1mLの反応容量に関しては、この低プラスミド濃度がタンパク質合成の収率又は動態に対して影響を及ぼさずに試薬を保存したので、プラスミドを6.67μg mL-1にて加えた。PorAの発現において、反応物に1μg mL-1のナノディスクを補い、そしてそれを、以前に記載したとおり調製したか(Schoborg et al., 2017)、又は購入した(Cube Biotech)。CRM1974xDQNATの発現において、別の方法で注意されない限り、CFPSを25℃にて20時間実施した。他のすべての担体タンパク質に関しては、別の方法で注意されない限り、CFPSを30℃にて20時間実施した。
【0354】
分子間ジスルフィド結合を含むTT4xDQNATの発現において、CFPSを酸化条件下で実施した。酸化条件に関しては、溶解物を、室温にて30分間、750μMのヨードアセトアミドで事前調整して、遊離スルフヒドリル基(-SH)を共有結合し、そして反応混合物に、酸化型と還元型の4:1比で200mMのグルタチオン及び10μMの遺伝子組み換えE.コリ DsbC(Knapp et al., 2007)を補った。
【0355】
インビトロバイオコンジュゲートワクチン発現(iVAX)
【0356】
粗溶解物における担体タンパク質のインビトロ発現及びグリコシル化のために、二相スキームを実装した。第一相では、CFPSを、先に記載したように25~30℃にて15分間実施した。第二相では、タンパク質グリコシル化を、それぞれ25mM及び0.1%(w/v)の終濃度にてMnCl2及びDDMの添加によって開始し、30℃にて1時間の総反応時間にわたり継続した。タンパク質合成の収率及びグリコシル化活性は、小規模及び大規模の両方にてiVAX反応の生物学的な反復を通して再現性が良好であった。次に、反応物を、20,000xgにて10分間遠心分離して、不溶性又は凝集タンパク質生成物を取り出し、そして上清をSDS-PAGE及びウェスタンブロット法で分析した。
【0357】
iVAX反応からのアグリコシル化及びグリコシル化担体の精製を、製造業者のプロトコールに従ってNi-NTAアガロース(Qiagen)を使用して実施した。簡単に言えば、1mLの無細胞反応混合物あたり0.5mLのNi NTAアガロースを、10mMのイミダゾールを伴ったバッファー1(300mMのNaCl、50mMのNaH2PO4)によって平衡化した。iVAX反応からの可溶性画分を、Ni-NTAアガロース上に添加し、そして6xHis-タグタンパク質を結合させるために4℃にて2~4時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、無細胞反応/アガロース混合物を、ポリプロピレンカラム(BioRad)上に添加し、そして20mMのイミダゾールを伴った6カラム体積のバッファー1で2回洗浄した。タンパク質を、それぞれ1mLの無細胞反応混合物あたりの300mMのイミダゾールを伴った0.3mLのバッファー1を用いた4つの画分で溶出した。すべてのバッファーを4℃にて使用し、そして保存した。タンパク質を、4℃にて滅菌1xPBS(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、10mMのNa2HPO4、1.8mMのKH2PO4、pH7.4)中に1~2mg mL-1の終濃度にて保存した。
【0358】
タンパク質グリカン結合技術(PGCT)をインビボにおいて使用したバイオコンジュゲートの発現
【0359】
周辺質への転移のためのDsbAリーダー配列によって先行したバイオコンジュゲート担体タンパク質遺伝子をコードするプラスミドを、pGAB2及びpSF-CjPglBを担持するCLM24細胞に形質転換した。pGAB2だけを担持するCLM24を陰性対照として使用した。形質転換細胞を、5mLのLB培地(10g L-1の酵母抽出物、5g L-1のトリプトン、5g L-1のNaCl)中で37℃にて一晩培養した。翌日、細胞を、100mLのLB中に二次培養し、37℃にて6時間増殖させ、その後、培養物に0.2%のアラビノースと0.5mMのIPTGを補って、それぞれCjPglBとバイオコンジュゲート担体タンパク質の発現を誘発した。次に、タンパク質発現を、30℃にて16時間実施し、そしてその時点で、細胞を集菌した。細胞ペレットを、1mLの滅菌PBS(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、10mMのNa2HPO4、1.8mMのKH2PO4、pH7.4)で再懸濁し、そして、合計5分間にわたる10秒のオン/10秒のオフのサイクルで40%の振幅にてQ125 Sonicator(Qsonica, Newtown, CT)を使用して溶菌した。可溶性画分を、15,000rpm、4℃にて30分間の遠心分離に続いて単離した。タンパク質を、製造業者のプロトコールに従って、Ni-NTAスピンカラム(Qiagen)を使用して可溶性画分から精製した。
【0360】
ウェスタンブロット分析
【0361】
サンプルを、4~12%のBis Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動した。電気泳動分離に続いて、タンパク質を、製造業者のプロトコールに従って、ゲルからイモビロンPポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(0.45μm)に移し取った。膜をPBS(80g L-1のNaCl、0.2gのL-1のKCl、1.44g L-1のNa2HPO4、0.24g L-1のKH2PO4、pH7.4)で洗浄し、続いて、Odyssey(登録商標) Blocking Buffer(LI-COR)中で1時間インキュベートした。ブロッキング後に、膜を、各洗浄の間に5分間のインキュベーションを伴って、PBST(80g L-1のNaCl、0.2g L-1のKCl、1.44g L-1のNa2HPO4、0.24g L-1のKH2PO4、1mL L-1のTween-20、pH7.4)で6回洗浄した。iVAXのサンプルに関して、膜を、市販の場合、抗-6xHisタグ抗体と抗-O-PS-抗体又は着目のO-抗原に対して特異的な抗血清の両方を用いて調べた。膜のプロービングを、振盪しながら室温にて少なくとも1時間実施し、そしてその後、膜を先に記載したのと同じ様式でPBSTを用いて洗浄し、そして蛍光標識した二次抗体を用いて調べた。膜を、Odyssey(登録商標) Fc画像システム(LI-COR)を使用して画像化した。CRM197及びTT製造を、市販のDT及びTT標準(Sigma)と比較し、そして、同一のSDS-PAGE手順とそれに続く、それぞれジフテリア又は破傷風毒素を認識するポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット分析によって直交的に検出した。使用したすべての抗体及び希釈液を図30、表4で列挙した。
【0362】
TLR4活性化アッセイ
【0363】
HEK-Blue hTLR4細胞(Invivogen)を、5%のCO2を含有する加湿インキュベータ内、37℃にて、10%のウシ胎仔血清、50U mL-1のペニシリン、50mg mL-1のストレプトマイシン、及び100μg mL-1のNormacin(商標)を補ったDMEM培地高グルコース/L-グルタミン中で維持した。~50-80%の集密度に達した後に、細胞を、HEK-Blue検出培地(Invivogen)中に1mLあたり1.4×105細胞の密度にて96ウェルプレート内で平板培養した。抗原を以下の濃度にて添加した:100ng μL-1の精製タンパク質;溶解物中に100ng μL-1の総タンパク質量。精製E.コリO55:B5 LPS(Sigma-Aldrich)と無毒化E.コリO55:B5(Sigma-Aldrich)を1.0ng mL-1にて加え、それぞれ正及び負の対照としての役割を担った。平板培養物を37℃、5%のCO2にて10~16時間インキュベートし、その後、620nmにて吸光度を計測した。統計的有意性を、対応のあるt-検定を使用して決定した。
【0364】
マウスの免疫化
【0365】
6週齢の雌BALB/cマウス(Harlan Sprague Dawley)の6つの群に、先に記載のとおり、100μLのPBS(pH7.4)単独、或いは精製アグリコシル化MBP、FtO-PS-コンジュゲートMBP、アグリコシル化PD、又はFtO-PS-コンジュゲートPDを含むものを皮下に注射した(Chen et al., 2010)。群は、5匹のマウスで構成されたPBS対照群を除いて、6匹のマウスで構成された。各調製物中の抗原の量を7.5μgに標準化して、等量のアグリコシル化タンパク質又はバイオコンジュゲートがその都度投与されることを保証した。PBS中に処方した精製タンパク質群を、注射前に等量の不完全フロイントアジュバント(Sigma-Aldrich)と混合した。免疫化前に、各群の材料(5μL)をLB寒天平板上に画線接種し、37℃にて一晩培養して、無菌状態を確認し、及びTLR4活性化アッセイによってエンドトキシン活性を計測した。各群のマウスを、最初の免疫化の21日及び42日後に、同一投薬量の抗原を用いて賦活した。血液を、-1、21、35、49、及び63日目の下顎採血によって、並びに70日目の試験終了時に心臓穿刺によって得た。マウスを、各注射の24及び48時間後に挙動の変化や身体の健康に関して観察したが、いずれの異常応答も報告されなかった。この試験及びすべての手順を、Cornell University Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコル2012-0132に従っておこなった。
【0366】
酵素結合免疫吸着測定法
【0367】
免疫化マウスによって産生されたF.ツラレンシスLPS特異的抗体を、先に記載したプロトコール(Chen et al., 2010)の修飾を使用した間接的ELISAによって計測した。簡単に言えば、血清を、5000xgにて10分間の遠心分離後に採収した採血から単離し、そして-20℃にて保存した;96ウェルプレート(Maxisorp;Nunc Nalgene)を、PBS中、5μg mL-1の濃度にてF.ツラレンシスLPS(BEI resources)を用いて被覆し、そして4℃にて一晩インキュベートした。翌日、プレートを、PBST(PBS、0.05%のTween-20、0.3%のBSA)を用いて3回洗浄し、そしてPBS中の5%の脱脂粉乳(Carnation)を用いて4℃にて一晩ブロッキングした。サンプルを、ブロッキングバッファー中に1:100~1:12,800,000の範囲で三連で連続的に2倍希釈し、そして37℃にて2時間にわたりプレートに添加した。プレートをPBSTで3回洗浄し、そして以下のHRP-コンジュゲート抗体(すべてAbcam製、1:25,000希釈にて使用):ヤギ抗マウスIgG、抗マウスIgG1、及び抗マウスIgG2a、のうちの1つの存在下、37℃にて1時間インキュベートした。PBSTを用いた3回の追加の洗浄後に、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン基質(1-Step Ultra TMB-ELISA;Thermo-Fisher)を加え、そして、そのプレートを暗所内、室温で30分間インキュベートした。反応を2MのH2SO4で止め、そして、450nmの波長にてマイクロプレート分光光度計(Tecan)によって吸光度を定量化した。血清抗体価を、無血清バックグラウンド対照を超えるシグナル3SDsをもたらす最低希釈率を測定することによって決定した。統計的有意性を、一元配置ANOVA及びTukey-Kramer事後正当有意差検定を使用したRStudio1.1.463により決定した。
【0368】
定量化と統計解析
【0369】
無細胞タンパク質合成収率の定量化
【0370】
iVAX反応で合成されたタンパク質の量を定量化するために、2つのアプローチを使用した。sfGFPの蛍光ユニットを、先に報告した検量線(Hong et al., 2014)を使用して濃度に変換した。他のすべてのタンパク質の収率を、先に記載した液体シンチレーションカウンタを使用して計測されるトリクロロ酢酸不溶性放射能(キムとシュオーツ、2001)を得るために、CFPS混合物への10μM L-14C-ロイシン(11.1GBq mmol-1、PerkinElmer)の添加により評価した。
【0371】
統計解析
【0372】
定義、nの値、p値、標準偏差、及び標準誤差を含めた統計パラメータを、図及び対応する図面の凡例に報告した。解析技術を、対応する方法の詳細の項に記載する。
【0373】
データとソフトウェアの利用可能性
【0374】
完全なDNA配列を含めたこの試験に使用したすべてのプラスミド構築物を、Addgene(構築物128389-128404)により寄託する。
【0375】
実施例3の参考文献
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【0450】
実施例3- iVAX誘導ワクチンは、致死性F.ツラレンシスのチャレンジに対する保護機能を有する
【0451】
5匹のBALB/cマウスの群を、PBS、或いは7.5μgの精製、無細胞合成アグリコシル化MBP4xDQNAT、PD4xDQNAT、EPADNNNS-DQNRT、又はFtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT、PD4xDQNAT、又はEPADNNNS-DQNRTを用いて腹腔内的に免疫した。PCGTを使用して生きたE.コリ細胞で調製されたFtO-PS-コンジュゲートMBP4xDQNAT、PD4xDQNAT、及びEPADNNNS-DQNRTを正の対照として使用した。マウスを、21及び42日目に同一の用量の抗原で免疫賦活した。66日目に、マウスに、6000cfu(鼻腔内LD50の50倍)のF.ツラレンシス亜属ホラークティカ(holarctica)生ワクチン株Rocky Mountain Laboratoriesを用いて鼻腔内的にチャレンジし、そして追加の25日間にわたり生存率について観察した(図31a)。担体タンパク質として(図31b)MBP4xDQNAT、(Figiure31c)PD4xDQNAT及び(図31d)EPADNNNS-DQNRTを用いた免疫化に関するカプラン-マイヤーカーブを示す。これらの結果は、iVAX誘導ワクチンが最先端のPGCTアプローチを使用して合成されたワクチンと同じくらい効果的に致死性の病原体の抗原投与からマウスを保護することを示す(*p=0.0476、**p=0.0079、Fisherの直接確率検定;ns:有意性なし)。
【0452】
上記の説明において、当業者には容易に明らかなように、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書において開示した本発明に対して様々な置換及び修飾を想到することができる。本明細書において例示的に説明した本発明は、本明細書において具体的には開示されていない或る1つの要素又は複数の要素、或る1つの制限又は複数の制限なしで実施できる。採用された用語及び表現は、本発明を限定するものではなく説明の用語として用いられており、斯かる用語及び表現の使用において、説明すると共に図示した特徴又はその部分の任意の均等例を排除することを意図しておらず、種々の修飾は、本発明の範囲に含まれることが可能であることが認識される。かくして、理解されるべきこととして、本発明を特定の実施形態及びオプションとしての特徴によって説明したが、本明細書において開示した技術的思想の修飾及び/又は変形は、当業者によって想到でき、斯かる修飾及び変形は、本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0453】
多くの特許文献及び非特許文献の引用が本明細書において行われている。引用した文献を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。引用した文献中の用語の定義と比較して本明細書における用語の定義に不一致がある場合、斯かる用語は、本明細書の定義に基づいて解されるべきである。
本発明の態様の一部を以下に記載する。
1.インビトロにおける協調した転写、翻訳、及びN-グリコシル化によるポリサッカライドのN-グリコシル化担体タンパク質を合成する方法であって、以下:
(i) 無細胞タンパク質合成反応において、担体タンパク質を転写及び翻訳し、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含み;
(ii) 少なくとも1つのポリサッカライドを用いた無細胞タンパク質合成反応で担体タンパク質をグリコシル化すること、ここで、該少なくとも1つのポリサッカライドは少なくとも1つの細菌性O-抗原である、
を含む方法。
2.前記担体タンパク質が、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)、ネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、及びその変異体から選択される、項目1に記載の方法。
3.前記細菌性O-抗原が、E.コリ由来である、項目1に記載の方法。
4.前記細菌性O-抗原が、フランシセラ・ツラレンシス由来である、項目1に記載の方法。
5.前記N-グリコシル化担体タンパク質を含むワクチン組成物としてN-グリコシル化担体タンパク質を製剤化することをさらに含む、項目1に記載の方法。
6.前記ワクチン組成物が、アジュバントをさらに含む、項目1に記載の方法。
7.前記グリコシル化ステップでは、天然に存在する又は改変された細菌性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)であるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を利用する、項目1に記載の方法。
8.前記グリコシル化ステップでは、天然に存在する又は改変された古細菌オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)であるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を利用する、項目1に記載の方法。
9.前記グリコシル化ステップでは、C.ジェジュニPglBの天然に存在する細菌性ホモログであるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を利用する、項目1に記載の方法。
10.前記グリコシル化ステップでは、C.ジェジュニPglBの改変変異体であるOSTを利用する、項目1に記載の方法。
11.前記グリコシル化ステップでは、天然に存在する単一サブユニット真核性OSTであるOSTを利用する、項目1に記載の方法。
12.前記ワクチン組成物を、それを必要としている対象に投与することをさらに含む、項目5に記載の方法。
13.インビトロにおけるN-グリコシル化担体タンパク質を合成するためのキットであって、以下:
(i) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を含む細胞溶解物を含む第一の成分;
(ii) O-抗原を含む細胞溶解物を含む第二の成分;
(iii) 転写鋳型及び担体タンパク質をコードする転写鋳型からmRNAを合成するためのポリメラーゼを含む第三の成分、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含む、
を含むキット。
14.インビトロにおけるN-グリコシル化担体タンパク質を合成するためのキットであって、以下:
(i) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)及びO-抗原を含む細胞溶解物を含む第一の成分;
(ii) 転写鋳型及び担体タンパク質をコードする転写鋳型からmRNAを合成するためのポリメラーゼを含む第二の成分、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含む、
を含むキット。
15.前記第一の成分、前記第二の成分、及び存在する場合には、前記第三の成分のうちの1若しくは複数が凍結乾燥される、項目13又は14に記載のキット。
16.前記第一の成分である細胞溶解物が、直交性OSTをコードする遺伝子を過剰発現する起源株から製造される、項目13に記載のキット。
17.前記第二の成分である細胞溶解物が、合成グリコシルトランスフェラーゼ経路を過剰発現する起源株から製造される、項目13に記載のキット。
18.前記第一の成分である細胞溶解物が、(a)直交性OSTをコードする遺伝子、及び(b)合成グリコシルトランスフェラーゼ経路のうちの一方又は両方を過剰発現する起源株から製造される、項目14に記載のキット。
19.前記第二の成分である細胞溶解物又は前記第一の成分である細胞溶解物が、F.ツラレンシスSchu S4脂質結合オリゴ糖(FtLLO)からのO-抗原又は腸内毒素原性E.コリO78脂質結合オリゴ糖(EcO78LLO)からのO-抗原を含む、項目13又は14に記載のキット。
20.糖タンパク質の無細胞製造のための方法であって、以下:
(a) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を含む第一の細胞溶解物とO-抗原を含む第二の細胞溶解物を混合して、無細胞タンパク質合成反応を調製し;
(b) 無細胞タンパク質合成反応において、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)、ネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、及びその変異体から選択される担体タンパク質を転写及び翻訳し、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含み;そして
(c) 細菌性O-抗原を用いた無細胞タンパク質合成反応で担体タンパク質をグリコシル化すること、
を含む方法。
21.糖タンパク質の無細胞製造のための方法であって、以下:
(a) 直交性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を含む第一の細胞溶解物とO-抗原とを混合して、無細胞タンパク質合成反応を調製し;
(b) 無細胞タンパク質合成反応において、ヘモフィラス・インフルエンザタンパク質D(PD)、ネイセリア・メニンギチジスポリンタンパク質(PorA)、及びその変異体から選択される担体タンパク質を転写及び翻訳し、ここで、該担体タンパク質は、挿入されたコンセンサス配列、N-X-S/T{式中、Xはプロリン以外の任意の天然型又は非天然型アミノ酸であり得る}を含み;そして
(c) 細菌性O-抗原を用いた無細胞タンパク質合成反応で担体タンパク質をグリコシル化すること、
を含む方法。
22.前記第二の細胞溶解物又は前記第一の細胞溶解物が、脂質結合オリゴ糖(LLO)の一部として前記O-抗原を含む、項目20又は21に記載の方法。
23.ワクチン組成物として前記糖タンパク質を製剤化することをさらに含む、項目20又は21に記載の方法。
24.前記ワクチン組成物を、それを必要としている対象に投与することをさらに含む、項目22に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A)】
図6B)】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19-1】
図19-2】
図20
図21-1】
図21-2】
図22
図23
図24
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図29-1】
図29-2】
図29-3】
図30
図31
【配列表】
0007644454000001.app