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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】リン酸塩化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/30 20060101AFI20250305BHJP
   C01B 25/455 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C07F9/30
C01B25/455
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021032795
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2021147391
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020043717
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162847
【氏名又は名称】ステラケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】江田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】桂 静郁
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良憲
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-134086(JP,A)
【文献】国際公開第2018/040763(WO,A1)
【文献】特開昭64-031794(JP,A)
【文献】Journal of the American Chemical Society,1955年,77,P.5354-5357
【文献】Journal of the American Chemical Society,1997年,119(52),P.12710-12721
【文献】Journal of the American Chemical Society,1995年,117(49),P.12064-12069
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/
C01B 25/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式(A)で表されるリン酸エステルと、以下の化学式(B)で表される原料塩とを反応させて、以下の化学式(C)で表されるリン酸塩化合物を生成する工程(I)を少なくとも含むリン酸塩化合物の製造方法。
【化1】
[式中、前記Zはケイ素原子を表す。前記X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1~10の炭化水素基、炭素数が1~10のアルコキシ基、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子有する炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子有するアルコキシ基を表す。前記X~Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、炭素数が1~10の炭化水素基、炭素数が1~10のアルコキシ基、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子有する炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子有するアルコキシ基を表し、かつ、前記X~Xの少なくとも1つは、前記炭素数1~10の炭化水素基又は前記炭素数1~10のアルコキシ基の何れかである。]
【化2】
[式中、前記Mは、アルカリ金属遷移金属、又はイミダゾリウム類を表す。前記Xは、ハロゲン原子表す。前記nは、1~4の自然数を表す。]
【化3】
[式中、前記Mは、前記化学式(B)と同一である。前記X及びXは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。前記nは、前記化学式(B)と同一の価数を表す。]
【請求項2】
下の化学式(D)で表されるリン酸化合物と、以下の化学式(E)で表されるケイ素化合物とを反応させて、以下の化学式(F)で表されるリン酸シリルエステルを生成する工程(II)を含む請求項1に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【化4】
[式中、前記M’は、水素原子、又はアルカリ金属表す。前記X及びXは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。前記nは、前記化学式(B)と同一の価数を表す。]
【化5】
[式中、前記X~Xは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。前記Xは脱離基であって、ハロゲン原子表す。]
【化6】
[式中、前記X~Xは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。]
【請求項3】
前記化学式(E)で表されるケイ素化合物が、前記工程(I)で副生する副生物である請求項2に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【請求項4】
前記リン酸化合物は、前記化学式(D)に於ける前記X及びXが、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルコキシ基であり、前記Mが水素原子である場合のリン酸ジエステルである請求項2又は3に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【請求項5】
前記リン酸化合物は、前記化学式(D)に於ける前記X及びXの何れか一方がフッ素原子であり、他方が炭素数1~10のアルコキシ基であり、前記M’が水素原子である場合のフルオロホスホリック酸エステルである請求項2又は3に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【請求項6】
前記リン酸化合物は、前記化学式(D)に於ける前記X及びXがフッ素原子であり、前記M’が水素原子である場合のジフルオロホスホリック酸である請求項2又は3に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【請求項7】
前記ケイ素化合物は、前記化学式(E)に於ける前記X~Xが、それぞれ独立して、炭素数1~6の炭化水素基であり、前記Xがハロゲン原子である場合のトリアルキルシリルハロゲン化物である請求項2~6の何れか1項に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【請求項8】
前記化学式(B)に於ける前記Mは、リチウム原子、ナトリウム原子、マグネシウム原子又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムである請求項1~7の何れか1項に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【請求項9】
前記工程(I)及び工程(II)の少なくとも何れか一方を無溶媒下で行う請求項2~8の何れか1項に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【請求項10】
前記工程(I)及び工程(II)の少なくとも何れか一方を非水溶媒中で行う請求項2~8の何れか1項に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【請求項11】
前記非水溶媒が非プロトン性有機溶媒である請求項10に記載のリン酸塩化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸塩化合物の製造方法に関する。より詳細には、リン酸エステルと原料塩との反応により、極めて簡便に、高純度のリン酸塩化合物の生成が可能なリン酸塩化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸塩化合物の利用は、洗浄剤組成物における界面活性剤、医薬品、帯電防止剤、難燃剤、及び二次電池用添加剤など多岐にわたり(特許文献1~4)、各用途に応じて多様なリン酸塩化合物の製造方法が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献5には、リン酸塩化合物としてのリン酸ジエステル塩の製造方法が開示されている。この製造方法によれば、水の存在下でリン酸トリエステルを加水分解してリン酸ジエステルを生成した後、当該リン酸ジエステルと、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水酸化物とを反応させて、リン酸ジエステル塩を生成させている。しかし、この製造方法では、未反応のリン酸トリエステルや、リン酸トリエステルの加水分解の際に副生するアルコール、及びリン酸トリエステルと水酸化物との反応の際に用いる反応溶媒を分離するための煩雑な工程が必要となる。また、出発原料であるリン酸トリエステルは、例えば、モノハロリン酸ジエステル等とヒドロキシ化合物とを、トリエチルアミン等の有機塩基の存在下で反応させることにより得られることが開示されているが、有機塩基の塩が副生するため、当該有機塩基の塩を除去するための工程も必要となる。従って、特許文献5に記載のリン酸ジエステル塩の製造方法では、精製・分離工程や廃棄物処理の観点から工業生産に於ける課題が多い。
【0004】
特許文献6には、モノハロゲノリン酸エステル塩又はリン酸ジエステル塩の製造方法が開示されている。この製造方法によれば、ジハロゲノリン酸塩と、アルコール類等と、アルカリ金属塩基等とを反応させて、モノハロゲノリン酸エステル塩等を生成させている。しかし、反応制御が容易ではない上、生成物としてはリン酸ジエステル塩との混合物が得られる。そのため、モノハロゲノリン酸エステル塩等の単離・精製が必要となるが、これらの工程は極めて困難となる。一方、リン酸ジエステル塩が得られる場合、反応基質によっては生成物にモノハロリン酸エステル塩やアルカリ金属塩を含むことがある。その場合、リン酸ジエステル塩の単離工程が必要になるが、製造プロセスが煩雑になる。また、反応基質及び溶媒として、過剰量のアルコールを用いるため、生成物からリン酸ジエステル塩を分離する際、真空乾燥や加熱乾燥等によって多量のアルコールを留去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-332355号公報
【文献】特開2008-231026号公報
【文献】WO2016/158258号公報
【文献】特開平8-138733号公報
【文献】特開2017-36273号公報
【文献】特開2019-135215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みられたものであり、その目的は、極めて簡便な方法により、高純度のリン酸塩化合物を製造することが可能な新規のリン酸塩化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリン酸塩化合物の製造方法は、前記の課題を解決するために、以下の化学式(A)で表されるリン酸エステルと、以下の化学式(B)で表される原料塩とを反応させて、以下の化学式(C)で表されるリン酸塩化合物を生成する工程(I)を少なくとも含むことを特徴とする。
【0008】
【化1】
[式中、前記Zは、炭素原子又はケイ素原子を表す。前記X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1~10の炭化水素基、炭素数が1~10のアルコキシ基、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基を表す。前記X~Xは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~10の炭化水素基、炭素数が1~10のアルコキシ基、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基を表し、かつ、前記X~Xの少なくとも1つは、前記炭素数1~10の炭化水素基又は前記炭素数1~10のアルコキシ基の何れかである。]
【0009】
【化2】
[式中、前記Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、遷移金属、又はオニウムを表す。前記Xは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基、ハロアシルオキシ基、スルホニルオキシ基(-SOY基:前記Yは、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。)を表す。前記nは、1~4の自然数を表す。]
【0010】
【化3】
[式中、前記Mは、前記化学式(B)と同一のカチオン種を表す。前記X及びXは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。前記nは、前記化学式(B)と同一の価数を表す。]
【0011】
前記の構成に於いては、前記化学式(A)に於ける前記Zがケイ素原子である場合、以下の化学式(D)で表されるリン酸化合物と、以下の化学式(E)で表されるケイ素化合物とを反応させて、以下の化学式(F)で表されるリン酸シリルエステルを生成する工程(II)を含むことが好ましい。
【0012】
【化4】
[式中、前記M’は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、炭素数が1~10の第1級炭化水素基、炭素数が1~10の第2級炭化水素基、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する第1級炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する第2級炭化水素基を表す。前記X及びXは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。前記nは、前記化学式(B)と同一の価数を表す。]
【0013】
【化5】
[式中、前記X~Xは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。前記Xは脱離基であって、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基、ハロアシルオキシ基、又はスルホニルオキシ基(-SOY基:前記Yは、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。)を表す。]
【0014】
【化6】
[式中、前記X~Xは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。]
【0015】
さらに前記の構成に於いては、前記化学式(E)で表されるケイ素化合物が、前記工程(I)で副生する副生物であることが好ましい。
【0016】
前記の構成に於いて、前記リン酸化合物は、前記化学式(D)に於ける前記X及びXが、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルコキシ基であり、前記M’が水素原子である場合のリン酸ジエステルであることが好ましい。
【0017】
また前記の構成に於いて、前記リン酸化合物は、前記化学式(D)に於ける前記X及びXの何れか一方がフッ素原子であり、他方が炭素数1~10のアルコキシ基であり、前記M’が水素原子である場合のフルオロホスホリック酸エステルであることが好ましい。
【0018】
さらに、前記の構成に於いて、前記リン酸化合物は、前記化学式(D)に於ける前記X及びXがフッ素原子であり、前記M’が水素原子である場合のジフルオロホスホリック酸であることが好ましい。
【0019】
前記の構成に於いて、前記ケイ素化合物は、前記化学式(E)に於ける前記X~Xが、それぞれ独立して、炭素数1~6の炭化水素基であり、前記Xがハロゲン原子である場合のトリアルキルシリルハロゲン化物であることが好ましい。
【0020】
また、前記の構成に於いて、前記化学式(B)に於ける前記Mは、リチウム原子、ナトリウム原子、マグネシウム原子、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムであることが好ましい。
【0021】
前記の構成に於いては、前記工程(I)及び工程(II)の少なくとも何れか一方を無溶媒下で行うことができる。
【0022】
また、前記の構成に於いては、前記工程(I)及び工程(II)の少なくとも何れか一方を非水溶媒中で行うこともできる。
【0023】
さらに、前記の構成に於いては、前記非水溶媒が非プロトン性有機溶媒であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、前記化学式(A)で表されるリン酸エステルと、前記化学式(B)で表される原料塩とを反応させることで、前記化学式(C)で表されるリン酸塩化合物を、従来の製造方法よりも極めて簡便に、かつ効率良く、高純度で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(リン酸塩化合物の製造方法)
本実施の形態に係るリン酸塩化合物の製造方法について、以下に説明する。
本実施の形態のリン酸塩化合物の製造方法は、以下に示す化学反応式の通り、化学式(A)で表されるリン酸エステルと、化学式(B)で表される原料塩とを反応させて、化学式(C)で表されるリン酸塩化合物を生成する工程(I)を少なくとも含む。
【0026】
【化7】
【0027】
工程(I)の反応は、リン酸エステルのXZ-基と、原料塩のMとが交換されて、リン酸塩化合物を生成するというものであり、当該リン酸塩化合物と当モル量の副生物(E’)も生成する。
【0028】
<リン酸エステル>
前記リン酸エステルは、以下の化学式(A)で表される。
【0029】
【化8】
【0030】
前記化学式(A)に於いて、前記Zは炭素原子又はケイ素原子を表す。
【0031】
前記化学式(A)に於いて、前記X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1~10の炭化水素基、炭素数が1~10のアルコキシ基、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基(以下、「ハロゲン原子等を有する炭化水素基」という場合がある。)、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という場合がある。)を表す。
【0032】
尚、本明細書に於いて官能基に於ける「炭素数」とは、特記しない限り、官能基の総炭素数を意味する。また本明細書に於いて、例えば、「炭素数が1~10の炭化水素基」とは、炭素数が1、2、3、・・・又は10の炭化水素基の総称を意味しており、このことは炭素数を規定した他の官能基に於いても特記しない限り、同様の意味を有する。
【0033】
前記X及びXに於ける炭素数が1~10の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。さらに、炭素数1~10のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基からなる鎖状アルキル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。前記X及びXに於ける炭素数が1~10の炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6の炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3の炭化水素基がより好ましい。
【0034】
前記X及びXに於ける炭素数が1~10のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基及びヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基、シクロペントキシ基及びシクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基、フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等が挙げられる。前記X及びXに於ける炭素数が1~10のアルコキシ基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1、2及び3のアルコキシ基がより好ましい。
【0035】
前記X及びXに於ける、炭素数が1~10のハロゲン原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。前記ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子を表す。前記X及びXに於ける、炭素数が1~10のハロゲン原子を有する炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のハロゲン原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3のハロゲン原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0036】
前記X及びXに於ける、炭素数が1~10のヘテロ原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素及び炭素の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を表す。前記X及びXに於ける、炭素数が1~10のヘテロ原子を有する炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3のヘテロ原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0037】
前記X及びXに於けるハロゲン原子又はヘテロ原子を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基及びヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲン化アルキル基、2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基及び2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲン化アルキル基、2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,6-ジヨードフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、ペンタヨードフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタクロロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基等の含ハロゲン化アリール基、2-ニトロフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基、2,6-ジニトロフェニル基及び3-アミノ-2-ナフチル基等の含ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0038】
前記X及びXに於ける、炭素数が1~10の範囲であって、不飽和結合を有する炭化水素基とは、例えば、炭素数が1~10の範囲であって、炭素-炭素間に二重結合や三重結合を有する炭化水素基を意味する。さらに、当該不飽和結合を有する炭化水素基としては、不飽和結合数が1、2、3、4及び5の炭化水素基が好ましく、不飽和結合数が1、2及び3の炭化水素基がより好ましい。
【0039】
前記X及びXに於ける、炭素数が1~10の範囲であって、不飽和結合を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、ペンタ-1,4-ジエニル基、ペンタ-2,4-ジエニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、ヘキサ-1,3-ジエニル基、ヘキサ-1,5-ジエニル基、ヘキサ-2,4-ジエニル基、ヘキサ-2,5-ジエニル基、ヘキサ-3,5-ジエニル基及び3-メチル-ヘキサ-2,4-ジエニル基等の鎖状アルケニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、2,4-シクロペンタジエニル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基等のアリール基、エチニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基及び4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基等が挙げられる。
【0040】
前記X及びXに於ける、炭素数が1~10のハロゲン原子を有するアルコキシ基とは、当該アルコキシ基中の水素の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。ここで、ハロゲン原子とは、前述の場合と同様、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子を意味する。前記X及びXに於ける、炭素数が1~10のハロゲン原子を有するアルコキシ基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のハロゲン原子を有するアルコキシ基が好ましく、炭素数1、2及び3のハロゲン原子を有するアルコキシ基がより好ましい。
【0041】
また、前記X及びXに於ける、炭素数が1~10のヘテロ原子を有するアルコキシ基とは、当該アルコキシ基中の水素及び炭素の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。ここで、ヘテロ原子とは、前述の場合と同様、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を意味する。前記X及びXに於ける、炭素数が1~10のヘテロ原子を有するアルコキシ基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のヘテロ原子を有するアルコキシ基が好ましく、炭素数1、2及び3のヘテロ原子を有するアルコキシ基がより好ましい。
【0042】
前記X及びXに於けるハロゲン原子又はヘテロ原子を有するアルコキシ基の具体例としては、例えば、ヨードメトキシ基、ブロモメトキシ基、クロロメトキシ基、フルオロメトキシ基、ジヨードメトキシ基、ジブロモメトキシ基、ジクロロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリヨードメトキシ基、トリブロモメトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2-ヨードエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,2-ジヨードエトキシ基、1,2-ジブロモエトキシ基、1,2-ジクロロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジヨードエトキシ基、2,2-ジブロモエトキシ基、2,2-ジクロロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリブロモエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基及びヘキサフルオロ-2-プロポキシ基等の鎖状含ハロゲン化アルコキシ基、2-ヨードシクロヘキシルオキシ基、2-ブロモシクロヘキシルオキシ基、2-クロロシクロヘキシルオキシ基及び2-フルオロシクロヘキシルオキシ基等の環状含ハロゲン化アルコキシ基、2-ヨードフェノキシ基、2-ブロモフェノキシ基、2-クロロフェノキシ基、2-フルオロフェノキシ基、3-ヨードフェノキシ基、3-ブロモフェノキシ基、3-クロロフェノキシ基、3-フルオロフェノキシ基、4-ヨードフェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-クロロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基、2,6-ジヨードフェノキシ基、2,6-ジブロモフェノキシ基、2,6-ジクロロフェノキシ基、2,6-ジフルオロフェノキシ基、3,5-ジヨードフェノキシ基、3,5-ジブロモフェノキシ基、3,5-ジクロロフェノキシ基、3,5-ジフルオロフェノキシ基、ペンタヨードフェノキシ基、ペンタブロモフェノキシ基、ペンタクロロフェノキシ基及びペンタフルオロフェノキシ基等の含ハロゲン化アリール基、2-ニトロフェノキシ基、4-ニトロフェノキシ基、2,4-ジニトロフェノキシ基、2,6-ジニトロフェノキシ基及び3-アミノ-2-ナフトキシ基等の含ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0043】
前記X及びXに於ける、炭素数が1~10の範囲であって、不飽和結合を有するアルコキシ基とは、例えば、炭素-炭素間に二重結合や三重結合を有するアルコキシ基を意味する。さらに、当該不飽和結合を有するアルコキシ基としては、不飽和結合数が1、2、3、4及び5のアルコキシ基が好ましく、不飽和結合数が1、2及び3のアルコキシ基がより好ましい。
【0044】
前記X及びXに於ける、炭素数が1~10の不飽和結合を有するアルコキシ基の具体例としては、例えば、エテニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2-メチル-2-プロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、3-メチル-2-ブテニルオキシ基、1-ペンテニルオキシ基、2-ペンテニルオキシ基、3-ペンテニルオキシ基、4-ペンテニルオキシ基、ペンタ-1,4-ジエニルオキシ基、ペンタ-2,4-ジエニルオキシ基、1-ヘキセニルオキシ基、2-ヘキセニルオキシ基、3-ヘキセニルオキシ基、4-ヘキセニルオキシ基、5-ヘキセニルオキシ基、ヘキサ-1,3-ジエニルオキシ基、ヘキサ-1,5-ジエニルオキシ基、ヘキサ-2,4-ジエニルオキシ基、ヘキサ-2,5-ジエニルオキシ基、ヘキサ-3,5-ジエニルオキシ基及び3-メチル-ヘキサ-2,4-ジエニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基、1-シクロペンテニルオキシ基、2-シクロペンテニルオキシ基、2,4-シクロペンタジエニルオキシ基、1-シクロヘキセニルオキシ基、2-シクロヘキセニルオキシ基、3-シクロヘキセニルオキシ基等の環状アルケニルオキシ基、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、1-ナフトキシ基及び2-ナフトキシ基等のアリールオキシ基、エチニルオキシ基、2-プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、2-ブチニルオキシ基、3-ブチニルオキシ基、ペンチニルオキシ基、2-ペンチニルオキシ基、3-ペンチニルオキシ基及び4-ペンチニルオキシ基等の鎖状アルキニルオキシ基等が挙げられる。
【0045】
前記X及びXは、同種でもよく相互に異なっていてもよい。また、前記X及びXとして前記に挙げた官能基は単なる例示に過ぎず、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0046】
前記化学式(A)に於けるX~Xは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~10の炭化水素基、炭素数が1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子等を有する炭化水素基、又は、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基を表す。さらに、前記X~Xの少なくとも1つは、前記炭素数1~10の炭化水素基又は前記炭素数1~10のアルコキシ基の何れかである。
【0047】
前記炭素数が1~10の炭化水素基、炭素数が1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子等を有する炭化水素基、及びハロゲン原子等を有するアルコキシ基は、前記X及びXで述べたのと同様である。従って、その詳細については省略する。
【0048】
前記X~Xは、同種でもよく相互に異なっていてもよい。また、前記X~Xとして前記に挙げた官能基は単なる例示に過ぎず、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0049】
前記化学式(A)で表されるリン酸エステルの具体例としては、例えば、トリメチルホスファート、トリエチルホスファート、トリプロピルホスファート、トリブチルホスファート、トリペンチルホスファート、トリヘキシルホスファート、2-エチルヘキシルジフェニルホスファート、トリアリルホスファート、トリプロパルギルホスファート、トリス(2-ブトキシエチル)ホスファート、トリス(2-クロロエチル)ホスファート、エチルビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、ジエチル2,2,2-トリフルオロエチルホスファート、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル)ホスファート、ジメチルフルオロホスファート、ジエチルフルオロホスファート、ジプロピルフルオロホスファート、ジブチルフルオロホスファート、ジペンチルフルオロホスファート、ジヘキシルフルオロホスファート、2-エチルヘキシルフェニルフルオロホスファート、ジアリルフルオロホスファート、ジプロパルギルフルオロホスファート、ビス(2-ブトキシエチル)フルオロホスファート、ビス(2-クロロエチル)フルオロホスファート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)フルオロホスファート、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル)フルオロホスファート、メチルジフルオロホスファート、エチルジフルオロホスファート、プロピルジフルオロホスファート、アリルジフルオロホスファート、プロパルギルジフルオロホスファート、2-ブトキシエチルジフルオロホスファート、2-クロロエチルジフルオロホスファート、2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロホスファート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルジフルオロホスファート、ジメチルトリメチルシリルホスファート、ジエチルトリメチルシリルホスファート、トリメチルシリルジプロピルホスファート、ジブチルトリメチルシリルホスファート、トリメチルシリルジペンチルホスファート、ジヘキシルトリメチルシリルホスファート、トリメチルシリルジフェニルホスファート、ジアリルトリメチルシリルホスファート、トリメチルシリルジプロパルギルホスファート、ビス(2-ブトキシエチル)トリメチルシリルホスファート、ビス(2-クロロエチル)トリメチルシリルホスファート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)トリメチルシリルホスファート、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル)トリメチルシリルホスファート、メチルトリメチルシリルフルオロホスファート、エチルトリメチルシリルフルオロホスファート、トリメチルシリル(プロピル)フルオロホスファート、ブチルトリメチルシリルフルオロホスファート、トリメチルシリル(ペンチル)フルオロホスファート、ヘキシルトリメチルシリルフルオロホスファート、トリメチルシリル(フェニル)フルオロホスファート、アリルトリメチルシリルフルオロホスファート、トリメチルシリル(プロパルギル)フルオロホスファート、2-ブトキシエチルトリメチルシリルフルオロホスファート、2-クロロエチルトリメチルシリルフルオロホスファート、2,2,2-トリフルオロエチルトリメチルシリルフルオロホスファート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルトリメチルシリルフルオロホスファート、トリメチルシリルジフルオロホスファート、ジメチルビニルシリルジフルオロホスファート、ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファート、トリエチルシリルジフルオロホスファート、シクロヘキシルジメチルシリルジフルオロホスファート、トリイソプロピルシリルジフルオロホスファート、メチルジフェニルシリルジフルオロホスファート等が挙げられる。但し、前記化学式(A)で表されるリン酸エステルは、これらの化合物群に限定されない。
【0050】
<原料塩>
前記原料塩は、以下の化学式(B)で表される。
【0051】
【化9】
【0052】
前記化学式(B)に於いて、前記Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、遷移金属、又はオニウムを表す。
【0053】
前記アルカリ金属としては特に限定されず、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。これらのアルカリ金属のうち、入手容易性の観点からは、Li、Na及びKが好ましく、リン酸塩化合物の汎用性の観点からは、Li及びNaがより好ましい。
【0054】
前記アルカリ土類金属としては特に限定されず、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。これらのアルカリ土類金属のうち、入手容易性及び安全性の観点からは、Mg、Ca及びBaが好ましく、リン酸塩化合物の汎用性の観点からは、Mgがより好ましい。
【0055】
前記遷移金属としては特に限定されず、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znが挙げられる。これらの遷移金属のうち、入手容易性の観点から、Ti、Mn、Fe、Co、Ni及びCuが好ましい。
【0056】
前記オニウムとしては特に限定されず、第1級アンモニウム、第2級アンモニウム、第3級アンモニウム、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、スルホニウム等が挙げられる。
【0057】
前記第1級アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0058】
前記第2級アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、エチルメチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、ブチルメチルアンモニウム、ブチルプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム等が挙げられる。
【0059】
前記第3級アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウムアンモニウム、トリブチルアンモニウム、エチルジメチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、トリイソプロピルアンモニウム、ジメチルイソプロピルアンモニウム、ジエチルイソプロピルアンモニウム、ジメチルプロピルアンモニウム、ブチルジメチルアンモニウム、1-メチルピロリジニウム、1-エチルピロリジニウム、1-プロピルピロリジニウム、1-ブチルプロピルピロリジニウム、1-メチルイミダゾリウム、1-エチルイミダゾリウム、1-プロピルイミダゾリウム、1-ブチルイミダゾリウム、ピラゾリウム、1-メチルピラゾリウム、1-エチルピラゾリウム、1-プロピルピラゾリウム、1-ブチルピラゾリウム、ピリジニウム等が挙げられる。
【0060】
前記第4級アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、脂肪族4級アンモニウム類、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、ピラゾリウム類、ピリダジニウム類等が挙げられる。
【0061】
さらに、前記脂肪族4級アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、1-エチル-1-メチル-ピロリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-エチル-1-メチル-ピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム等が挙げられる。
【0062】
前記イミダゾリウム類としては特に限定されず、例えば、1,3-ジメチル-イミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0063】
前記ピリジニウム類としては特に限定されず、例えば、1-メチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-n-プロピルピリジニウム等が挙げられる。
【0064】
前記ピラゾリウム類としては特に限定されず、例えば、1,2-ジメチルピラゾリウム、2-エチル-1-メチルピラゾリウム、2-メチル-1-プロピルピラゾリウム、2-ブチル-1-メチルピラゾリウム、1-メチルピラゾリウム、3-メチルピラゾリウム、4-メチルピラゾリウム、4-ヨードピラゾリウム、4-ブロモピラゾリウム、4-ヨード-3-メチルピラゾリウム、4-ブロモー3-メチルピラゾリウム、3-トリフルオロメチルピラゾリウムが挙げられる。
【0065】
前記ピリダジニウム類としては特に限定されず、例えば、1-メチルピリダジニウム、1-エチルピリダジニウム、1-プロピルピリダジニウム、1-ブチルピリダジニウム、3-メチルピリダジニウム、4-メチルピリダジニウム、3-メトキシピリダジニウム、3,6-ジクロロピリダジニウム、3,6-ジクロロ-4-メチルピリダジニウム、3-クロロ-6-メチルピリダジニウム、3-クロロ-6-メトキシピリダジニウムが挙げられる。
【0066】
例示したオニウムのうち、入手容易性及び汎用性の観点からは、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウム等が好ましい。
【0067】
前記Xに於けるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、脱離能の高さや副生成物の再利用の観点からは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましい。
【0068】
前記Xに於ける炭素数1~10のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基及びヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基、シクロペントキシ基及びシクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基、フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等が挙げられる。前記Xに於ける炭素数1~10のアルコキシ基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1、2及び3のアルコキシ基がより好ましい。
【0069】
前記Xに於けるハロアシルオキシ基としては特に限定されないが、1~7個の何れかの炭素原子を有し、かつ1個又はそれ以上の水素原子がハロゲン原子により置換された官能基が好ましい。具体的には、例えば、ヨードアセチル基、ブロモアセチル基、クロロアセチル基、フルオロアセチル基、ジヨードアセチル基、ジブロモアセチル基、ジクロロアセチル基、ジフルオロアセチル基、トリヨードアセチル基、トリブロモアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、3,3,3-トリヨードプロパノイル基、3,3,3-トリブロモプロパノイル基、3,3,3-トリクロロプロパノイル基、3,3,3-トリフルオロプロパノイル基、ペンタヨードプロパノイル基、ペンタブロモプロパノイル基、ペンタクロロプロパノイル基、ペンタフルオロプロパノイル基、4,4,4-トリヨードブタノイル基、4,4,4-トリブロモブタノイル基、4,4,4-トリクロロブタノイル基、4,4,4-トリフルオロブタノイル基、3,3,4,4,4-ペンタヨードブタノイル基、3,3,4,4,4-ペンタブロモブタノイル基、3,3,4,4,4-ペンタクロロブタノイル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブタノイル基、ヘプタヨードブタノイル基、ヘプタブロモブタノイル基、ヘプタクロロブタノイル基、ヘプタフルオロプブタノイル基、ペンタヨードベンゾイル基、ペンタブロモベンゾイル基、ペンタクロロベンゾイル基及びペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を表す。
【0070】
前記Xに於けるスルホニルオキシ基は、-SOY基で表される。ここで、前記Yは、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。
【0071】
前記Yに於けるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。
【0072】
前記Yに於ける炭素数1~10の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。前記Yに於ける炭素数1~10の炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6の炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3の炭化水素基がより好ましい。
【0073】
前記Yに於ける炭素数が1~10のハロゲン原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。前記ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子を表す。前記Yに於ける炭素数が1~10のハロゲン原子を有する炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のハロゲン原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3のハロゲン原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0074】
前記Yに於ける、炭素数が1~10のヘテロ原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素及び炭素の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を表す。前記Yに於ける、炭素数が1~10のヘテロ原子を有する炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3のヘテロ原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0075】
前記Yに於ける、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子又はヘテロ原子を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基及びヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲン化アルキル基、2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基及び2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲン化アルキル基、2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,6-ジヨードフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、ペンタヨードフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタクロロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基等の含ハロゲン化アリール基、2-ニトロフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基、2,6-ジニトロフェニル基、及び3-アミノ-2-ナフチル基等の含ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0076】
前記Yに於ける、炭素数が1~10の範囲であって、不飽和結合を有する炭化水素基とは、例えば、炭素数が1~10の範囲であって、炭素-炭素間に二重結合や三重結合を有する炭化水素基を意味する。さらに、当該不飽和結合を有する炭化水素基としては、不飽和結合数が1、2、3、4及び5の炭化水素基が好ましく、不飽和結合数が1、2及び3の炭化水素基がより好ましい。
【0077】
前記Yに於ける炭素数が1~10の範囲であって、不飽和結合を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、ペンタ-1,4-ジエニル基、ペンタ-2,4-ジエニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、ヘキサ-1,3-ジエニル基、ヘキサ-1,5-ジエニル基、ヘキサ-2,4-ジエニル基、ヘキサ-2,5-ジエニル基、ヘキサ-3,5-ジエニル基及び3-メチル-ヘキサ-2,4-ジエニル基等の鎖状アルケニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、2,4-シクロペンタジエニル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基等のアリール基、エチニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基及び4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基等が挙げられる。
【0078】
前記化学式(B)で表される原料塩の具体例としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化マンガン(II)、臭化マンガン(II)、ヨウ化マンガン(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ヨウ化ニッケル(II)、塩化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、トリエチルメチルアンモニウムフルオリド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、トリエチルメチルアンモニウムブロミド、トリエチルメチルアンモニウムヨージド、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムフルオリド、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムクロリド、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムブロミド、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムヨージド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムフルオリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド等が挙げられる。但し、前記化学式(B)で表される原料塩は、これらの化合物群に限定されない。
【0079】
前記nは価数であり、1~4の自然数を表す。
【0080】
<リン酸塩化合物>
前記リン酸塩化合物は、以下の化学式(C)で表される。
【0081】
【化10】
【0082】
前記化学式(C)に於いて、前記Mは前記化学式(A)と同一のカチオン種を表す。また、前記X及びXは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。従って、これらの詳細については説明を省略する。
【0083】
前記化学式(C)で表されるリン酸塩化合物の具体例としては、例えば、ジエチルリン酸リチウム、ジエチルリン酸ナトリウム、ジエチルリン酸カリウム、ジエチルリン酸マグネシウム、ジエチルリン酸カルシウム、ジエチルリン酸アルミニウム、ジエチルリン酸マンガン(II)、ジエチルリン酸ニッケル(II)、ジエチルリン酸コバルト(II)、ジエチルリン酸銅(II)、テトラエチルアンモニウムジエチルホスファート、トリエチルメチルアンモニウムジエチルホスファート、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムジエチルホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルホスファート、ジプロピルリン酸リチウム、ジプロピルリン酸ナトリウム、ジプロピルリン酸カリウム、ジプロピルリン酸マグネシウム、ジプロピルリン酸カルシウム、ジプロピルリン酸アルミニウム、ジプロピルリン酸マンガン(II)、ジプロピルリン酸ニッケル(II)、ジプロピルリン酸コバルト(II)、ジプロピルリン酸銅(II)、テトラエチルアンモニウムジプロピルホスファート、トリエチルメチルアンモニウムジプロピルホスファート、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムジプロピルホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジプロピルホスファート、ジブチルリン酸リチウム、ジブチルリン酸ナトリウム、ジブチルリン酸カリウム、ジブチルリン酸マグネシウム、ジブチルリン酸カルシウム、ジブチルリン酸アルミニウム、ジブチルリン酸マンガン(II)、ジブチルリン酸ニッケル(II)、ジブチルリン酸コバルト(II)、ジブチルリン酸銅(II)、テトラエチルアンモニウムジブチルホスファート、トリエチルメチルアンモニウムジブチルホスファート、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムジブチルホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジブチルホスファート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸リチウム、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸ナトリウム、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸カリウム、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸マグネシウム、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸カルシウム、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸アルミニウム、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸マンガン(II)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸ニッケル(II)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸コバルト(II)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸銅(II)、テトラエチルアンモニウムビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、トリエチルメチルアンモニウムビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸リチウム、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸ナトリウム、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸カリウム、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸マグネシウム、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸カルシウム、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸アルミニウム、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸マンガン(II)、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸ニッケル(II)、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸コバルト(II)、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸銅(II)、テトラエチルアンモニウムエチル(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、トリエチルメチルアンモニウムエチル(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムエチル(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチル(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、リチウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、ナトリウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、カリウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、マグネシウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、カルシウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、アルミニウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、マンガン(II)2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、ニッケル(II)2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、コバルト(II)2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、銅(II)2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、テトラエチルアンモニウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、トリエチルメチルアンモニウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、1-プロピル-1-メチルピロリジニウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、リチウムジフルオロホスファート、ナトリウムジフルオロホスファート、カリウムジフルオロホスファート、セシウムジフルオロホスファート、マグネシウムジフルオロホスファート、カルシウムジフルオロホスファート、アルミニウムジフルオロホスファート、マンガン(II)ジフルオロホスファート、ニッケル(II)ジフルオロホスファート、コバルト(II)ジフルオロホスファート、銅(II)ジフルオロホスファート、テトラエチルアンモニウムジフルオロホスファート、トリエチルメチルアンモニウムジフルオロホスファート、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムジフルオロホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジフルオロホスファート等が挙げられる。但し、前記化学式(C)で表されるリン酸塩化合物は、これらの化合物群に限定されない。
【0084】
<工程(I)の反応条件>
前記工程(I)の反応モル比は、特に限定されず、反応種に応じて適宜設定すればよい。リン酸エステルと原料塩の反応モル比に於いて、通常は、リン酸エステルの下限値が、原料塩1モルに対し1モル以上である。また、リン酸エステルの上限値は、通常、2.5モル以下であり、工業生産の観点からは1.5モル以下が好ましい。
【0085】
前記工程(I)の反応開始温度は、当該反応が進行する限りに於いて特に限定されず、反応種に応じて適宜設定すればよい。反応開始温度の下限値は、通常は0℃以上であり、反応性の観点からは20℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、反応開始温度の上限値は、通常は150℃以下であり、反応性の観点からは120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。尚、反応開始温度の下限値を0℃以上にすることにより、反応速度が著しく減衰するのを防止することができる。その一方、反応開始温度の上限値を150℃以下にすることにより、反応に使用する過剰なエネルギーを抑制することができる。
【0086】
反応開始温度の調整手段としては特に限定されない。例えば、反応開始温度を前記温度範囲内となる様に冷却して制御する場合には、リン酸エステルと原料塩が投入される反応容器を氷冷等により行うことができる。また、反応開始温度を前記温度範囲内となる様に加熱して制御する場合には、任意の温度に設定された油浴等により行うことができる。
【0087】
前記工程(I)の反応時間は、特に限定されず、反応種に応じて適宜設定すればよい。反応時間の下限値は、通常は1時間以上である。また、反応時間の上限値は、通常は10時間以下であり、工業生産の観点からは6時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましい。
【0088】
前記工程(I)の反応は、無溶媒下又は非水溶媒中で行うことができる。工程(I)の反応を無溶媒下で行う場合、リン酸エステルが反応溶媒としての機能も果たす。
【0089】
前記非水溶媒としては、他の反応物や生成物と反応するような支障が生じない限り、特に限定されないが、非プロトン性有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0090】
前記非プロトン性有機溶媒としては特に限定されず、例えば、アルコール類、ニトリル類、エステル類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0091】
前記アルコール類としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-ヨードエタノール、2-ブロモエタノール、2-クロロエタノール、2-フルオロエタノール、1,2-ジヨードエタノール、1,2-ジブロモエタノール、1,2-ジクロロエタノール、1,2-ジフルオロエタノール、2,2-ジヨードエタノール、2,2-ジブロモエタノール、2,2-ジクロロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、2,2,2-トリブロモエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロ-2-プロパノール等が挙げられる。これらは、一種単独、又は二種類以上を使用することができる。
【0092】
前記ニトリル類としては特に限定されず、例えば、アセトニトリル、プロパンニトリル等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0093】
前記エステル類としては特に限定されず、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0094】
前記ケトン類としては特に限定されず、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0095】
前記エーテル類としては特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0096】
前記ハロゲン化炭化水素としは特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0097】
また、非水溶媒のその他の例として、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、ニトロエタン等も挙げられる。
【0098】
以上に例示した非水溶媒のうち、本発明に於いては、反応基質の溶解性及び入手容易性の観点から、ニトリル類、エステル類、ケトン類、エーテル類及びハロゲン化炭化水素類が好ましい。
【0099】
前記非水溶媒の使用量に関し、その下限値は、前記リン酸エステル1モルに対し、1モル以上が好ましく、10モル以上がより好ましい。前記非水溶媒の使用量の上限値は、前記リン酸エステル1モルに対し、10000モル以下が好ましく、1000モル以下がより好ましく、100モル以下がさらに好ましい。非水溶媒の使用量の下限値を1モル以上にすることにより、リン酸エステルと原料塩との反応性が低下するのを防止し、リン酸塩化合物の収率やその純度の低下を抑制することができる。その一方、前記非水溶媒の使用量の上限値を10000モル以下にすることにより、これを留去する際のエネルギーを抑制し、工業的生産に於いて不利になるのを防止することができる。
【0100】
前記工程(I)で得られるリン酸塩化合物について、その純度に応じて単離・精製してもよい。その方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、常圧蒸留、減圧蒸留、濾過、濾取、再結晶、昇華精製、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー(PTLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオンクロマトグラフィー(IC)等の方法が挙げられる。
【0101】
(リン酸エステルの製造方法)
前記リン酸エステルは、前記Zがケイ素原子である場合、酸無水物等を原料として利用する公知の製造方法により得ることができる。但し、本実施の形態に於いては、以下に示す化学反応式の通り、化学式(D)で表されるリン酸化合物と、化学式(E)で表されるケイ素化合物とを反応させて、化学式(F)で表されるリン酸シリルエステルを生成する工程(II)を含むのが好ましい。これにより、リン酸エステルを効率的に得ることができる。
【0102】
【化11】
【0103】
工程(II)の反応であると、前記化学式(E)で表されるケイ素化合物として、工程(I)で副生するケイ素化合物の再利用が可能になる。これにより、生産効率が極めて高く、かつ、製造コストを低減してリン酸塩化合物を製造することができる。
【0104】
<リン酸化合物>
前記リン酸化合物は、以下の化学式(D)で表される。
【0105】
【化12】
【0106】
前記化学式(D)に於いて、前記X及びXは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。従って、これらの詳細については説明を省略する。
【0107】
前記化学式(D)に於いて、前記M’は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、炭素数が1~10の第1級炭化水素基、炭素数が1~10の第2級炭化水素基、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する第1級炭化水素基(以下、「ハロゲン原子等を有する第1級炭化水素基」という。)、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する第2級炭化水素基(以下、「ハロゲン原子等を有する第2級炭化水素基」という。)を表す。
【0108】
前記M’に於けるアルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。これらのアルカリ金属のうち、入手容易性の点からは、Li、Na及びKが好ましい。
【0109】
前記M’に於けるアルカリ土類金属としては特に限定されず、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。これらのアルカリ土類金属のうち、入手容易性及び安全性の観点からは、Mg、Ca及びBaが好ましい。
【0110】
前記M’に於ける炭素数1~10の第1級炭化水素基としては特に限定されず、例えば、第1級アルキル基等が挙げられる。また、前記炭素数1~10の第2級炭化水素基としては特に限定されず、例えば、第2級アルキル基等が挙げられる。炭素数1~10の第1級アルキル基及び炭素数1~10の第2級アルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。前記M’に於ける炭素数1~10の第1級炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6の第1級炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3の第1級炭化水素基がより好ましい。また、前記M’に於ける炭素数1~10の第2級炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6の第2級炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3の第2級炭化水素基がより好ましい。
【0111】
前記M’に於ける、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子等を有する第1級炭化水素基、及び炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子等を有する第2級炭化水素基としては特に限定されず、例えば、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基及びヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲン化アルキル基、2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基、2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲン化アルキル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基等が挙げられる。前記M’に於ける、炭素数が1~10の範囲のハロゲン原子等を有する第1級炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のハロゲン原子等を有する第1級炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3のハロゲン原子等を有する第1級炭化水素基がより好ましい。また、前記M’に於ける、炭素数が1~10の範囲のハロゲン原子等を有する第2級炭化水素基としては、炭素数1、2、3、4、5及び6のハロゲン原子等を有する第2級炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3のハロゲン原子等を有する第2級炭化水素基がより好ましい。
【0112】
前記M’に於ける不飽和結合とは、例えば、炭素-炭素間に於ける二重結合、又は三重結合を意味する。
【0113】
前記化学式(D)で表されるリン酸化合物は、より具体的には、前記X及びXが、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルコキシ基であり、前記Mが水素原子である場合のリン酸ジエステル、前記X及びXの何れか一方がフッ素原子であり、他方が炭素数1~10のアルコキシ基であり、前記M’が水素原子である場合のフルオロホスホリック酸エステル、及び、前記X及びXがフッ素原子であり、前記M’が水素原子である場合のジフルオロホスホリック酸であることが好ましい。
【0114】
前記化学式(D)で表されるリン酸化合物の具体例としては、例えば、ジメチルホスファート、ジエチルホスファート、ジプロピルホスファート、ジブチルホスファート、ジペンチルホスファート、ジヘキシルホスファート、ジフェニルホスファート、ジアリルホスファート、ジプロパルギルホスファート、ビス(2-ブトキシエチル)ホスファート、ビス(2-クロロエチル)ホスファート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル)ホスファート、メチルフルオロホスファート、エチルフルオロホスファート、プロピルフルオロホスファート、ブチルフルオロホスファート、ペンチルフルオロホスファート、ヘキシルフルオロホスファート、フェニルフルオロホスファート、アリルフルオロホスファート、プロパルギルフルオロホスファート、2-ブトキシエチルフルオロホスファート、2-クロロエチルフルオロホスファート、2,2,2-トリフルオロエチルフルオロホスファート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルフルオロホスファート、ジフルオロホスホリック酸等が挙げられる。但し、前記化学式(D)で表されるリン酸化合物は、これらの化合物群に限定されない。
【0115】
<ケイ素化合物>
前記ケイ素化合物は、以下の化学式(E)で表される。
【0116】
【化13】
【0117】
前記化学式(E)に於いて、前記X~Xは、前記化学式(A)と同一の官能基を表す。従って、これらの詳細については説明を省略する。
【0118】
前記Xは脱離基であって、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルコキシ基、ハロアシルオキシ基、又はスルホニルオキシ基を表す。
【0119】
前記Xに於けるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、脱離能の高さや副生成物の再利用の観点からは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましい。
【0120】
前記Xにおける炭素数1~10のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基及びヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基、シクロペントキシ基及びシクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基、フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等が挙げられる。前記Xにおける炭素数1~10のアルコキシ基は、炭素数1、2、3、4、5及び6のアルコキシ基が好ましく、1、2及び3のアルコキシ基がより好ましい。
【0121】
前記Xにおけるハロアシルオキシ基としては、特に限定されないが、1~7個の何れかの炭素原子を有し、かつ1個又はそれ以上の水素原子がハロゲン原子により置換された官能基が好ましい。具体的には、例えば、ヨードアセチル基、ブロモアセチル基、クロロアセチル基、フルオロアセチル基、ジヨードアセチル基、ジブロモアセチル基、ジクロロアセチル基、ジフルオロアセチル基、トリヨードアセチル基、トリブロモアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、3,3,3-トリヨードプロパノイル基、3,3,3-トリブロモプロパノイル基、3,3,3-トリクロロプロパノイル基、3,3,3-トリフルオロプロパノイル基、ペンタヨードプロパノイル基、ペンタブロモプロパノイル基、ペンタクロロプロパノイル基、ペンタフルオロプロパノイル基、4,4,4-トリヨードブタノイル基、4,4,4-トリブロモブタノイル基、4,4,4-トリクロロブタノイル基、4,4,4-トリフルオロブタノイル基、3,3,4,4,4-ペンタヨードブタノイル基、3,3,4,4,4-ペンタブロモブタノイル基、3,3,4,4,4-ペンタクロロブタノイル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブタノイル基、ヘプタヨードブタノイル基、ヘプタブロモブタノイル基、ヘプタクロロブタノイル基、ヘプタフルオロブタノイル基、ペンタヨードベンゾイル基、ペンタブロモベンゾイル基、ペンタクロロベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を表す。
【0122】
前記Xに於けるスルホニルオキシ基は、-SOY基で表される。ここで、前記Yは、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、又は、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。
【0123】
前記Yに於けるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。
【0124】
前記Yに於ける炭素数1~10の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。前記Yに於ける炭素数1~10の炭化水素基は、炭素数1、2、3、4、5及び6の炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3の炭化水素基がより好ましい。
【0125】
前記Yに於ける炭素数が1~10のハロゲン原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。前記ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子を表す。前記Yに於ける炭素数が1~10のハロゲン原子を有する炭化水素基は、炭素数1、2、3、4、5及び6のハロゲン原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3のハロゲン原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0126】
前記Yに於ける、炭素数が1~10のヘテロ原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素及び炭素の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を表す。前記Yに於ける、炭素数が1~10のヘテロ原子を有する炭化水素基は、炭素数1、2、3、4、5及び6のヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数1、2及び3のヘテロ原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0127】
前記Yに於ける、炭素数が1~10の範囲であって、不飽和結合を有する炭化水素基とは、例えば、炭素数が1~10の範囲であって、炭素-炭素間に二重結合や三重結合を有する炭化水素基を意味する。さらに、当該不飽和結合を有する炭化水素基としては、不飽和結合数が1、2、3、4及び5の炭化水素基が好ましく、不飽和結合数が1、2及び3の炭化水素基がより好ましい。
【0128】
前記Yに於ける、炭素数が1~10の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基及びヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲン化アルキル基、2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基及び2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲン化アルキル基、エテニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基及び3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、エチニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基及び4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-ニトロフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基及び2,6-ジニトロフェニル基等のアリール基、2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,6-ジヨードフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、ペンタヨードフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタクロロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基等の含ハロゲン化アリール基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基等のナフチル基等が挙げられる。
【0129】
前記化学式(E)で表されるケイ素化合物は、より具体的には、前記X~Xが、それぞれ独立して、炭素数1~6の炭化水素基であり、前記Xがハロゲン原子である場合のトリアルキルシリルハロゲン化物であることが好ましい。
【0130】
前記化学式(E)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、クロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、クロロ(エチル)ジメチルシラン、クロロトリエチルシラン、ジイソプロピルクロロシラン、クロロトリイソプロピルシラン、トリブチルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、クロロジメチルイソプロピルシラン、クロロジメチルビニルシラン、クロロジエチルイソプロピルシラン、クロロジメチルプロピルシラン、アリルクロロジメチルシラン、ブチルクロロジメチルシラン、クロロ(ヘキシル)ジメチルシラン、クロロトリヘキシルシラン、クロロ(シクロヘキシル)ジメチルシラン、クロロジメチルフェニルシラン、ベンジルクロロジメチルシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、クロロトリフェニルシラン、クロロ(メチル)(フェニル)(ビニル)シラン、クロロ(メチル)ジフェニルシラン等が挙げられる。但し、前記化学式(E)で表されるケイ素化合物は、これらの化合物群に限定されない。
【0131】
<工程(II)の反応条件>
前記工程(II)の反応モル比は、特に限定されず、反応種に応じて適宜設定すればよい。リン酸化合物とケイ素化合物の反応モル比に於いて、通常は、ケイ素化合物の下限値が、リン酸化合物1モルに対し1モル以上である。また、リン酸化合物の上限値は5モル以下であり、工業生産の観点からは2.5モル以下が好ましく、1.5モル以下がより好ましい。
【0132】
前記工程(II)の反応開始温度は、当該反応が進行する限りに於いて特に限定されず、反応種に応じて適宜設定すればよい。反応開始温度の下限値は、通常は0℃以上であり、反応性の観点からは20℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。反応開始温度の上限値は、通常は150℃以下であり、反応性の観点からは120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。尚、反応開始温度の下限値を0℃以上にすることにより、反応速度が著しく減衰するのを防止することができる。その一方、反応開始温度の上限値を150℃以下にすることにより、反応に使用する過剰なエネルギーを抑制することができる。
【0133】
反応開始温度の調整手段としては特に限定されない。例えば、反応開始温度を前記温度範囲内となる様に冷却して制御する場合には、リン酸化合物とケイ素化合物が投入される反応容器を氷冷等により行うことができる。また、反応開始温度を前記温度範囲内となる様に加熱して制御する場合には、任意の温度に設定された油浴等により行うことができる。
【0134】
前記工程(II)の反応時間は、特に限定されず、反応種に応じて適宜設定すればよい。反応時間の下限値は、通常は1時間以上である。また、反応時間の上限値は、通常は12時間以下であり、工業生産の観点からは6時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましい。
【0135】
前記工程(II)の反応は、無溶媒下又は非水溶媒中で行うことができる。工程(II)の反応を無溶媒下で行う場合、ケイ素化合物が反応溶媒としての機能も果たす。
【0136】
前記非水溶媒としては、前記工程(I)で述べた非水溶媒と同様のものを用いることができる。従って、その詳細については省略する。
【0137】
前記非水溶媒の使用量に関し、その下限値は、前記リン酸化合物1モルに対し、1モル以上が好ましく、10モル以上がより好ましい。前記非水溶媒の使用量の上限値は、前記リン酸化合物1モルに対し、10000モル以下が好ましく、1000モル以下がより好ましく、100モル以下がさらに好ましい。非水溶媒の使用量の下限値を1モル以上にすることにより、リン酸化合物とケイ素化合物との反応性が低下するのを防止し、リン酸シリルエステルの収率やその純度の低下を抑制することができる。その一方、前記非水溶媒の使用量の上限値を10000モル以下にすることにより、これを留去する際のエネルギーを抑制し、工業的生産に於いて不利になるのを防止することができる。
【0138】
前記工程(II)で得られるリン酸エステルについて、その純度に応じて単離・精製してもよい。その方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、常圧蒸留、減圧蒸留、濾過、濾取、再結晶、昇華精製、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー(PTLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオンクロマトグラフィー(IC)等の方法が挙げられる。
【実施例
【0139】
以下に、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0140】
尚、以下の実施例に於いて、純度の決定や理化学的性質の測定は、以下の装置を用いて行った。
【0141】
(純度)
リン酸塩化合物の純度は、イオンクロマトグラフィーによるアニオン分析から算出した。分析装置及び測定条件は、以下の通りである。
装置:850 Professional IC Anion(Metrohm製)
カラム:Dionex IonPac AS23 2x250mm
(Thermo Fisher Scientific製)
試料:100ppmの試料水溶液
流量:1mL/min
溶離液:4.5mM NaCOのHO-アセトニトリル(7:3)混合溶液
【0142】
(NMR測定)
卓上核磁気共鳴装置:Spinsolve 60 ULTRA Phosphorus
(Magritek製)
【0143】
(実施例1)
<エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸ナトリウム(無溶媒下)>
攪拌子を入れた50mLナス型フラスコに、原料塩としてのヨウ化ナトリウム(630mg、4.20mmol、富士フイルム和光純薬社製)を入れたのち、リン酸エステルとしてのジエチル2,2,2-トリフルオロエチルホスファート(1.18g、5.00mmol)を室温で添加した。この混合溶液を、窒素気流下、120℃で4時間、加熱した。反応混合物を室温まで放冷した後、反応混合物を濾過し、窒素気流下、120℃で終夜、残渣を乾燥することで、リン酸塩化合物として、白色固体のエチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸ナトリウム(930mg、96.1%)を得た。エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸ナトリウムの純度は99.6%であった。
【0144】
(実施例2)
<ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸銅(II)(無溶媒下)>
攪拌子を入れた100mLナス型フラスコに、原料塩としての塩化銅(II)(980mg、7.29mmol、和光純薬社製)を入れたのち、リン酸エステルとしてのトリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート(50.0g、145mmol)を室温で加えた。この混合溶液を、窒素気流下、湯浴温度が155℃で6時間、加熱・還流した。反応混合物を室温まで放冷した後、反応混合物を濾過し、窒素気流下、120℃で終夜、残渣を乾燥することで、リン酸塩化合物として、淡青色固体のビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸銅(II)(4.06g、96.1%)を得た。ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸銅(II)の純度は98.4%であった。
【0145】
(実施例3)
<1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート>
攪拌子を入れた50mLナス型フラスコに、原料塩としての1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(760mg、3.11mmol、TCI社製)を入れたのち、リン酸エステルとしてのエチルビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート(905mg、3.12mmol)を室温で添加した。この混合溶液を、窒素気流下、120℃で4時間、加熱した。反応混合物を室温まで放冷した後、エバポレーターを用いて、反応混合物を濃縮し、引き続き60℃で1時間、液体を乾燥することで、リン酸塩化合物として、無色液体の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート(1.49g、定量的)を得た。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファートの純度は99.1%であった。
【0146】
(実施例4)
<ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸リチウムの合成(非水溶媒利用)>
攪拌子を入れた50mLナス型フラスコに、原料塩としての塩化リチウム(0.634g、15.0mmol)と、非プロトン性有機溶媒としてのアセトニトリル(40.0g、974mmol、キシダ化学社製)を入れたのち、リン酸エステルとしてのビス(2,2,2-トリフルオロエチル)トリメチルシリルホスファート(5.00g、15.0mmol)を室温で添加した。この混合溶液を、窒素気流下、82℃で2時間、加熱・還流した。反応混合物を室温まで放冷した後、さらに0℃で冷却した際の析出物を濾過し、残渣を少量のアセトニトリルで洗浄した。エバポレーターを用いて、45℃で20分間、残渣を乾燥することで、リン酸塩化合物として、白色固体のビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸リチウム(2.28g、56.9%)を得た。ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸リチウムの純度は99.9%であった。
【0147】
(実施例5)
<リチウムジフルオロホスファートの合成1(無溶媒下)>
攪拌子を入れた50mLナス型フラスコに、リン酸エステルとしてのトリメチルシリルジフルオロホスファート(3.50g、20.1mmol)を窒素保護下で加えた後、原料塩としての塩化リチウム(568mg、13.4mmol)を室温で添加した。この混合物を、窒素気流下、80℃で1時間、加熱した。室温まで放冷したのち、反応混合物を濾過し、残渣を少量のDMC(ジメチルカーボネート)で洗浄した。乾燥機を用いて、120℃で15分間、残渣を乾燥することで、リン酸塩化合物として、白色固体のリチウムジフルオロホスファート(920mg、63.6%)を得た。リチウムジフルオロホスファートの純度は99.5%であった。
【0148】
(実施例6)
<リチウムジフルオロホスファートの合成2(非水溶媒利用)>
攪拌子を入れた500mLナス型フラスコに、リン酸エステルとしてのトリメチルシリルジフルオロホスファート(50.0g、287mmol)を窒素保護下で加えた後、非プロトン性有機溶媒としてのアセトニトリル(150g、3.65mol、キシダ化学(株)製)で希釈した。さらに、原料塩としての塩化リチウム(11.8g、278mmol)を室温下で添加した。この混合物を、窒素気流下、82℃で5時間、加熱・還流した。室温まで放冷したのち、エバポレーターを用いて、反応混合物を濃縮し、得られた残渣を濾過し、少量のDMC(ジメチルカーボネート)で洗浄した。乾燥機を用いて、120℃で1時間、残渣を乾燥することで、リン酸塩化合物として、白色固体のリチウムジフルオロホスファート(27.4g、91.4%)を得た。リチウムジフルオロホスファートの純度は99.4%であった。
【0149】
(実施例7)
<ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)トリメチルシリルホスファートの合成(無溶媒下)>
攪拌子を入れた50mLナス型フラスコに、ケイ素化合物としてのクロロトリメチルシラン(16.6g、153mmol、TCI社製)を入れた後、リン酸化合物としてのビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート(20.0g、76.3mmol)を室温で添加した。この混合溶液を、窒素気流下、80℃で6時間、加熱・還流した。エバポレーターによって、反応混合物から過剰のクロロトリメチルシランを除去することで、リン酸エステルとして、無色の液体のビス(2,2,2-トリフルオロエチル)トリメチルシリルホスファート(21.2g、83.1%)を得た。ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)トリメチルシリルホスファートの純度は99.7%であった。
【0150】
得られたビス(2,2,2-トリフルオロエチル)トリメチルシリルホスファートの理化学的性質は以下の通りである。
H-NMR(CDCl、δ ppm):-0.06(s、9H)、4.02(dq、4H、JH-F=JH-P=8.3Hz);
19F-NMR(CDCl、δ ppm):-74.8(t、6F、JH-F=8.3Hz)。
31P-NMR(CDCl、δ ppm):-10.1(tt、1P、JH-P=8.3Hz)。
【0151】
(実施例8)
<トリメチルシリルジフルオロホスファートの合成1(無溶媒下)>
攪拌子を入れた200mLナス型フラスコに、ケイ素化合物としてのクロロトリメチルシラン(48.7g、448mmol、TCI社製)を入れた後、リン酸化合物としてのジフルオロホスホリック酸(45.7g、448mmol)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素気流下、50℃で6時間、撹拌した。反応混合物の常圧蒸留によって、リン酸エステルとして、無色の液体のトリメチルシリルジフルオロホスファート(49.0g、62.7%)を得た。トリメチルシリルジフルオロホスファートの純度は95.6%であった。
【0152】
(実施例9)
<トリメチルシリルジフルオロホスファートの合成2(副生物であるクロロトリメチルシランの再利用、無溶媒下)>
攪拌子を入れた50mLナス型フラスコに、ケイ素化合物としてのクロロトリメチルシラン{7.16g、65.9mmol}を入れた後、リン酸化合物としてのジフルオロホスホリック酸(6.71g、65.8mmol)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素気流下、50℃で3時間、撹拌した。反応混合物の常圧蒸留によって、リン酸エステルとして、無色の液体のトリメチルシリルジフルオロホスファート(7.12g、62.2%)を得た。トリメチルシリルジフルオロホスファートの純度は96.1%であった。尚、クロロトリメチルシランとして、実施例5のリチウムジフルオロホスファートの合成の際に副生した副生物(工程(I)の副生物(E’))を用いた。
【0153】
得られたトリメチルシリルジフルオロホスファートの理化学的性質は以下の通りである。
H-NMR(CDCl、δ ppm):0.33(s、9H);
19F-NMR(CDCl、δ ppm):-80.4(d、2F、J=985.9Hz);
31P-NMR(CDCl、δ ppm):-29.1(dd、1P、J=985.9Hz)。
【0154】
(実施例10)
<ジメチルビニルシリルジフルオロホスファートの合成(無溶媒下)>
攪拌子を入れた100mLナス型フラスコに、ケイ素化合物としてのクロロジメチルビニルシラン(10.1g、83.7mmol、TCI社製)を入れた後、リン酸化合物としてのジフルオロホスホリック酸(8.14g、79.8mmol)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素気流下、60℃で3時間、撹拌した。反応混合物の減圧蒸留によって、リン酸エステルとして、無色の液体のジメチルビニルシリルジフルオロホスファート(2.33g、15.7%)を得た。ジメチルビニルシリルジフルオロホスファートの純度は97.9%であった。
【0155】
得られたジメチルビニルシリルジフルオロホスファートの理化学的性質は以下の通りである。
H-NMR(CDCl、δ ppm):0.44(s、7H)、6.02-6.13(m、2H);
19F-NMR(CDCl、δ ppm):-80.0(d、2F、J=990.3Hz);
31P-NMR(CDCl、δ ppm):-28.4(dd、1P、J=990.3Hz)。
【0156】
(実施例11)
<ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートの合成(無溶媒下)>
攪拌子を入れた100mLナス型フラスコに、ケイ素化合物としてのクロロジメチルフェニルシラン(16.8g、98.4mmol、TCI社製)を入れたのち、リン酸化合物としてのジフルオロホスホリック酸(10.1g、99.0mmol)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素気流下、60℃で3時間、撹拌した。反応混合物の減圧蒸留によって、リン酸エステルとして、無色の液体のジメチルフェニルシリルジフルオロホスファート(10.6g、45.6%)を得た。ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートの純度は97.5%であった。
【0157】
得られたジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートの理化学的性質は以下の通りである。
H-NMR(CDCl、δ ppm):0.37(s、6H)、7.07-7.47(m、5H);
19F-NMR(CDCl、δ ppm):-79.7(d、2F、J=991.4Hz);
31P-NMR(CDCl、δ ppm):-30.0(dd、1P、J=991.4Hz)。
【0158】
(実施例12)
<トリエチルシリルジフルオロホスファートの合成(無溶媒下)>
攪拌子を入れた50mLナス型フラスコに、ケイ素化合物としてのクロロトリエチルシラン(10.0g、66.3mmol、TCI社製)を入れた後、リン酸化合物としてのジフルオロホスホリック酸(6.69g、65.6mmol)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素気流下、60℃で4時間、撹拌した。反応混合物の減圧蒸留によって、リン酸エステルとして、無色の液体のトリエチルシリルジフルオロホスファート(7.29g、51.4%)を得た。トリエチルシリルジフルオロホスファートの純度は98.3%であった。
【0159】
得られたトリエチルシリルジフルオロホスファートの理化学的性質は以下の通りである。
H-NMR(CDCl、δ ppm):0.40-1.11(m、15H);
19F-NMR(CDCl、δ ppm):-80.9(d、2F、J=986.4Hz);
31P-NMR(CDCl、δ ppm):-29.5(dd、1P、J=986.4Hz)。
【0160】
(実施例13)
<シクロヘキシルジメチルシリルジフルオロホスファートの合成(無溶媒下)>
攪拌子を入れた50mLナス型フラスコに、ケイ素化合物としてのクロロ(シクロヘキシル)ジメチルシラン(12.0g、67.9mmol、TCI社製)を入れた後、リン酸化合物としてのジフルオロホスホリック酸(6.83g、67.0mmol)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素気流下、60℃で4時間、撹拌した。反応混合物の減圧蒸留によって、リン酸エステルとして、無色の液体のシクロヘキシルジメチルシリルジフルオロホスファート(9.92g、61.0%)を得た。シクロヘキシルジメチルシリルジフルオロホスファートの純度は93.6%であった。
【0161】
得られたシクロヘキシルジメチルシリルジフルオロホスファートの理化学的性質は以下の通りである。
H-NMR(CDCl、δ ppm):0.29(s、6H)、0.92-1.67(br m、11H);
19F-NMR(CDCl、δ ppm):-79.8(d、2F、J=989.0Hz);
31P-NMR(CDCl、δ ppm):-29.5(dd、1P、J=989.0Hz)。
【0162】
(実施例14)
<ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートの合成(非水溶媒利用)>
攪拌子を入れた50mLスクリューバイアルに、リン酸化合物としてのナトリウムジフルオロホスファート(5.01g、40.4mmol)と、非プロトン性有機溶媒としてのアセトニトリル(20.0g、487mmol、キシダ化学(株)製)を窒素保護下で加えた後、ケイ素化合物としてのクロロジメチルフェニルシラン(6.82g、40.0mmol、TCI社製)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素雰囲気下、60℃で2時間、撹拌した。室温まで放冷した後、0.45μmメンブレンフィルターを用いて反応混合物をろ過した。窒素ガスで12時間、ろ液をバブリングし、アセトニトリルを除去した。0.45μmメンブレンフィルターを用いて残渣をろ過することによって、リン酸エステルとして、無色の液体のジメチルフェニルシリルジフルオロホスファート(7.79g、82.5%)を得た。ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートの純度は95.4%であった。
【0163】
(実施例15)
<トリイソプロピルシリルジフルオロホスファートの合成(非水溶媒利用)>
攪拌子を入れた50mLスクリューバイアルに、リン酸化合物としてのナトリウムジフルオロホスファート(2.02g、16.3mmol)と、非プロトン性有機溶媒としてのアセトニトリル(9.13g、222mmol、キシダ化学(株)製)を窒素保護下で加えた後、ケイ素化合物としてのクロロトリイソプロピルシラン(3.14g、16.3mmol、TCI社製)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素雰囲気下、60℃で2時間、撹拌した。室温まで放冷した後、0.45μmメンブレンフィルターを用いて反応混合物をろ過した。窒素ガスで12時間、ろ液をバブリングし、アセトニトリルを除去した。0.45μmメンブレンフィルターを用いて残渣をろ過することによって、リン酸エステルとして、無色の液体のトリイソプロピルシリルジフルオロホスファート(1.00g、23.7%)を得た。トリイソプロピルシリルジフルオロホスファートの純度は97.4%であった。
【0164】
得られたトリイソプロピルシリルジフルオロホスファートの理化学的性質は以下の通りである。
H-NMR(CDCl、δ ppm):0.98-1.27(m、21H);
19F-NMR(CDCl、δ ppm):-80.4(d、2F、J=983.5Hz);
31P-NMR(CDCl、δ ppm):-29.5(dd、1P、J=989.0Hz)。
【0165】
(実施例16)
<メチルジフェニルシリルジフルオロホスファートの合成(非水溶媒利用)>
攪拌子を入れた50mLスクリューバイアルに、リン酸化合物としてのナトリウムジフルオロホスファート(3.01g、24.3mmol)と、非プロトン性有機溶媒としてのアセトニトリル(10.0g、244mmol、キシダ化学(株)製)を窒素保護下で加えた後、ケイ素化合物としてのクロロ(メチル)ジフェニルシラン(5.36g、23.0mmol、TCI社製)を室温で滴下により加えた。この混合溶液を、窒素雰囲気下、60℃で11時間、撹拌した。室温まで放冷した後、0.45μmメンブレンフィルターを用いて反応混合物をろ過した。窒素ガスで12時間、ろ液をバブリングし、アセトニトリルを除去した。0.45μmメンブレンフィルターを用いて残渣をろ過することによって、リン酸エステルとして、無色の液体のメチルジフェニルシリルジフルオロホスファート(5.22g、76.1%)を得た。メチルジフェニルシリルジフルオロホスファートの純度は88.0%であった。
【0166】
得られたメチルジフェニルシリルジフルオロホスファートの理化学的性質は以下の通りである。
H-NMR(CDCl、δ ppm):0.92(s、3H)、7.29-7.73(m、10H);
19F-NMR(CDCl、δ ppm):-78.8(d、2F、J=995.6Hz);
31P-NMR(CDCl、δ ppm):-30.3(dd、1P、J=995.6Hz)。