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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】仮想観光システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20250305BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021157480
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048271
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】521058874
【氏名又は名称】株式会社石井兄弟社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】石井 至
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-115478(JP,A)
【文献】特開2008-242775(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075835(WO,A1)
【文献】特開2014-020877(JP,A)
【文献】特開2020-173807(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175599(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1932799(CN,A)
【文献】特開2014-089491(JP,A)
【文献】特開2005-149430(JP,A)
【文献】特開2021-009713(JP,A)
【文献】特開2020-006793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実在観光地の住所情報とともに前記実在観光地における撮像画像から構成される空間データを取得し、前記住所情報に基づいて実在観光地に対応する仮想観光地を地図データに登録する観光地登録部と、
複数の仮想観光地の位置を地図データ上に表示させる地図表示部と、
ユーザから前記地図データ上の仮想観光地の選択を受け付ける観光地選択部と、
実在観光地の空間データに基づいて、ユーザにより選択された仮想観光地に対応する仮想空間を表示させることにより、ユーザに仮想観光体験を提供する観光体験提供部と、
仮想観光地への訪問後、ユーザから訪問希望地としての登録要求を受け付ける訪問希望受付部と、
前記登録要求が受け付けられたとき、訪問先の仮想観光地と前記ユーザのユーザIDを対応づけて訪問リストに登録する訪問希望登録部と、
前記ユーザの居住地から、前記訪問リストに登録される1以上の仮想観光地それぞれに対応する1以上の実在観光地を経由する旅行プランを生成する旅行プラン提案部と、を備える仮想観光システム。
【請求項2】
前記旅行プランに基づく実在旅行の手配を、外部の旅行会社に指示する旅行手配部、を更に備える、請求項1に記載の仮想観光システム。
【請求項3】
仮想店舗の所在地となる仮想観光地の指定とともに前記仮想店舗の登録を受け付け、前記仮想店舗と仮想観光地を対応づけて登録する店舗登録部と、
前記仮想店舗に対応づけられる仮想観光地において、前記仮想店舗からの商品の購入指示がユーザから受け付けられたとき、前記商品の決済処理を実行する決済処理部と、
前記仮想店舗に対応づけられる店舗端末に、前記商品を購入したユーザに対する前記商品の配送を指示する配送指示部と、を備える請求項1に記載の仮想観光システム。
【請求項4】
前記地図データに登録される複数の仮想観光地のいずれかを選んで、ユーザに推薦観光地を提案する観光提案部、を更に備える請求項1に記載の仮想観光システム。
【請求項5】
前記観光提案部は、ユーザの仮想観光地における観光履歴に基づいて、推薦観光地を提案する、請求項4に記載の仮想観光システム。
【請求項6】
前記観光地登録部は、1つの実在観光地について、日時に応じた複数種類の撮像画像に基づく複数種類の空間データを登録し、
前記観光体験提供部は、ユーザから選択された仮想観光地に対応する複数種類の空間データのいずれかに基づく仮想空間を表示させる、請求項1に記載の仮想観光システム。
【請求項7】
前記観光体験提供部は、ユーザが仮想観光地を選択した日時に基づいて、複数種類の空間データのいずれかを選択し、選択した空間データに基づく仮想空間を表示させる、請求項6に記載の仮想観光システム。
【請求項8】
前記観光地登録部は、更に、実在観光地で採取した音データを取得し、
前記観光体験提供部は、ユーザに仮想観光体験を提供するとき、前記音データを出力する、請求項1に記載の仮想観光システム。
【請求項9】
前記観光地登録部は、1つの実在観光地について、地上で撮像した撮像画像に基づく空間データと、空中で撮像した撮像画像に基づく空間データを取得し、
前記観光体験提供部は、ユーザから選択された仮想観光地に対応する複数種類の空間データのいずれかに基づく仮想空間を表示させる、請求項1に記載の仮想観光システム。
【請求項10】
前記観光地登録部は、1つの実在観光地について、天候に応じた複数種類の撮像画像に基づく複数種類の空間データを取得し、
前記観光体験提供部は、ユーザが仮想観光地を選択した時点における実在観光地の天候に基づいて、複数種類の空間データのいずれかを選択し、選択した空間データに基づく仮想空間を表示させる、請求項1に記載の仮想観光システム。
【請求項11】
仮想観光地を訪問したユーザに対して、前記仮想観光地に対応する商品の発送を指示する配送指示部と、を備える請求項1に記載の仮想観光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想現実感技術、特に、仮想の旅行体験を提供するための技術、に関する。
【背景技術】
【0002】
旅行の楽しみは、日常とは違う経験を得られることにある。旅行客は、自分で旅行プランを立てることで、あるいは、旅行会社が主催するツアーに参加することで、旅行を楽しむ。旅行は経済効果が高いため、国あるいは地方自治体にとって旅行需要をいかに取り込むかは重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-155887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現実には、観光客は一部の有名地域に集中しやすいのが実情である。たとえば、2019年の日本人国内旅行客数は、1位の東京都は約9000万人に達するが、最下位の高知県は420万人しかいない(観光庁調査による)。魅力的な観光資源を有しながら、知名度が低いために十分な旅行需要を取り込めていない地域は多い。
【0005】
本発明は、上記背景に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、仮想現実感技術による旅行体験を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様における仮想観光システムは、実在観光地の住所情報とともに実在観光地における撮像画像から構成される空間データを取得し、住所情報に基づいて実在観光地に対応する仮想観光地を地図データに登録する観光地登録部と、複数の仮想観光地の位置を地図データ上に表示させる地図表示部と、ユーザから地図データ上の仮想観光地の選択を受け付ける観光地選択部と、実在観光地の空間データに基づいて、ユーザにより選択された仮想観光地に対応する仮想空間を表示させることにより、ユーザに仮想観光体験を提供する観光体験提供部、を備える。
【0007】
本発明のある態様における通信端末は、地図データ上に表示される複数の仮想観光地から、仮想観光地の選択を受け付ける観光地選択部と、選択された仮想観光地に対応する仮想空間を表示させる仮想空間表示部と、仮想観光地の訪問リストへの登録を受け付ける訪問希望受付部と、訪問リストに基づく実在観光地の旅行プランを表示させる旅行プラン表示部、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、仮想現実感技術により、実際の旅行に類似した体験をユーザに提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】仮想観光システムのハードウェア構成図である。
図2】観光サーバおよびユーザ端末の機能ブロック図である。
図3】第1地図画面の画面図である。
図4】第2地図画面の画面図である。
図5】仮想観光画面の画面図である。
図6】仮想観光地情報のデータ構造図である。
図7】本実施形態における観光地と環境データの関係を示す模式図である。
図8】仮想店舗情報のデータ構造図である。
図9】仮想店舗付近を示す画面図である。
図10】観光履歴情報のデータ構造図である。
図11】旅行プラン画面の画面図である。
図12】変形例における観光地と環境データの関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[概要]
本実施形態においては、仮想現実感技術を応用した観光体験をユーザに提供する。具体的には、実在の観光地を模した仮想空間を三次元のコンピュータグラフィックスにより生成する。以下、特に断らない限り、実在の観光地のことを「実在観光地」とよび、仮想空間内に構成される観光地のことを「仮想観光地」とよぶ。仮想空間内には店舗(以下、「仮想店舗」とよぶ)も設けられる。
【0011】
ユーザは、自分の分身となるキャラクタ(以下、「アバター」とよぶ)をゲームと同様の操作感にて仮想空間内で移動させることにより、仮想観光地を散策する。以下、アバターを通した仮想観光地における観光体験のことを「仮想観光」「仮想観光体験」または「仮想旅行」とよぶ。
【0012】
詳細は後述するが、ユーザはデスクトップPC等の通信端末から、観光サーバにアクセスし、観光サーバから仮想観光体験を提供される。ユーザは、アバターを操作して仮想観光地に出店される仮想店舗で買い物を楽しむこともできる。
【0013】
本実施形態における仮想観光地は、いずれも実在観光地に対応している。仮想観光地の画像は、実在観光地(現地)における全天球カメラの撮像画像に基づいて構成される。たとえば、富良野(北海道に実在する観光地)の市役所職員による実際の富良野の撮像画像により、富良野に対応する仮想空間(仮想観光地)が構成される。
【0014】
仮想観光客としてのユーザは、地図画面(後述)から行きたい仮想観光地を選び、仮想観光を楽しむ。本システムには、仮想観光を楽しむユーザ、仮想観光地を登録する観光運営者、仮想店舗を運営する店舗運営者および実在旅行の手配を行う旅行業者が関わることが想定される。観光運営者としては、たとえば、地方自治体における観光客誘致の担当者などが想定される。
【0015】
図1は、仮想観光システム100のハードウェア構成図である。
仮想観光システム100は、観光サーバ200、ユーザ端末300、決済システム108、旅行会社104、実在観光地102および店舗端末110を含む。観光サーバ200、ユーザ端末300、決済システム108、旅行会社104、実在観光地102および店舗端末110は、インターネット106を介して相互に接続される。ユーザ端末300は、仮想観光サービスを受けるユーザにより使用される通信端末であり、スマートフォン、タブレットコンピュータ、デスクトップPC、ラップトップPC、VR(Virtual Reality)ゴーグルなど通信機能と表示機能を有する任意のコンピュータであればよい。また、ユーザ端末300は、ゲームセンダーなどに設置される専用装置であってもよい。
【0016】
観光サーバ200は、ユーザ端末300に対して仮想観光サービスを提供する。ユーザは観光サーバ200に対してあらかじめユーザ登録をしておく。このとき、ユーザは、氏名、住所、銀行口座情報、クレジットカード番号等を観光サーバ200に登録し、観光サーバ200はユーザIDを各ユーザに付与する。
【0017】
決済システム108は、金融機関が運営するサーバである。観光サーバ200は、ユーザが仮想店舗で買い物をしたときに決済システム108に決済指示を送信し、決済システム108は料金の決済を行う。
【0018】
旅行会社104(旅行会社104の通信端末)は、実在旅行を手配する。ユーザは、仮想旅行のあと、実際に訪れてみたい観光地(以下、「訪問希望地」とよぶ)を選ぶことができる。観光サーバ200は、訪問希望地を含む旅行プランを作成することもできる(後述)。旅行会社104は、観光サーバ200が作成した旅行プランに基づいて、実在観光地を対象とした旅行を手配する。
【0019】
実在観光地102(実在観光地102の通信端末)は、撮像画像を観光サーバ200に送信する。観光サーバ200はこの撮像画像に基づいて仮想観光地の画像を生成する。
【0020】
店舗端末110は、店舗運営者により利用される通信端末である。店舗運営者は、店舗端末110から、仮想店舗の出店希望地域、商品リスト、店舗運営者の情報を送信する。観光サーバ200は、指定された仮想店舗において商品リストに対応する商品オブジェクト(仮想物体)を設置する。なお、店舗運営者は、仮想店舗の一部のスペースについて商品出品権を買ってもよいし、仮想店舗全体をまるごと買い取ってもよい。
【0021】
ユーザは、仮想店舗において商品オブジェクトを選択し、購入を指示する。観光サーバ200は、ユーザの銀行口座から商品代金を引き落とすとともに、店舗運営者の銀行口座に商品代金を入金する。同時に、観光サーバ200は店舗運営者にユーザの住所および購入商品名を通知し、店舗運営者はユーザの住所に実際の商品を配送する。すなわち、ユーザは、仮想店舗で買い物を楽しみ、実際の商品は数日後に自宅に届く。なお、商品配送は、観光サーバ200の運営者がエスクローとなり、店舗運営者に購入者の個人情報を通知しない匿名配送方式であってもよい。
【0022】
図2は、観光サーバ200およびユーザ端末300の機能ブロック図である。
観光サーバ200およびユーザ端末300の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(co-processor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。
以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0023】
(観光サーバ200)
観光サーバ200は、通信部202、データ処理部204およびデータ格納部206を含む。
通信部202は、ユーザ端末300、決済システム108、旅行会社104、実在観光地102および店舗端末110との通信処理を担当する。データ格納部206は、仮想空間の画像データ、キャラクタ、ユーザに関する情報、実在観光地に関する情報、店舗運営者に関する情報など各種のデータを格納する。データ処理部204は、通信部202により取得されるデータおよびデータ格納部206に格納されるデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部204は、通信部202およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。
【0024】
通信部202は、ユーザ端末300等の外部装置に各種情報を送信する送信部208、外部装置から各種情報を受信する受信部210を含む。
【0025】
データ処理部204は、観光地登録部216、店舗登録部218、会話処理部220、観光提案部222、観光体験提供部224、配送指示部226、決済処理部228、訪問希望登録部230、旅行プラン提案部232および旅行手配部234を含む。
観光地登録部216は、実在観光地102からの登録要求により、仮想観光地を登録する。仮想観光地の登録に際しては、実在観光地の住所情報と撮像画像がデータ格納部206に登録される。店舗登録部218は、店舗端末110からの要求により、仮想店舗を登録する。仮想店舗の登録に際しては、仮想店舗の位置、店舗運営者、商品リストなどが206に登録される。
【0026】
会話処理部220は、ユーザ間での会話処理を行う。本実施形態においては、仮想空間内において複数のユーザはチャット方式にて会話できる。会話処理部220は、発話者から入力されるテキストメッセージを、発話者のアバターから所定範囲内にいるアバター(他のユーザ)の会話画面(不図示)に転送することで会話を中継する。ユーザはマイクおよびイヤホン等の入出力デバイスを介して音声により他のユーザと会話してもよい。観光提案部222は、複数の仮想観光地から、ユーザに推薦対象となる仮想観光地(以下、「推薦観光地」とよぶ)を提案する。観光体験提供部224は、ユーザに仮想観光体験を提供する。
【0027】
配送指示部226は、ユーザが仮想店舗で買い物をしたとき、あるいは、ユーザが仮想観光地を訪れたときに、実在商品をユーザに配送するよう店舗端末110または物流会社に指示する。決済処理部228は、決済システム108に指示を出すことにより決済処理を実行する。決済処理部228は、ユーザが仮想店舗で商品を購入したときに決済処理を実行する。
【0028】
訪問希望登録部230は、ユーザからの指示にしたがって訪問希望地を登録する。旅行プラン提案部232は、訪問希望地に基づいて実在旅行についての旅行プランを生成する。旅行手配部234は、旅行プランに基づいて旅行会社104に実在旅行の手配を指示する。
【0029】
(ユーザ端末300)
ユーザ端末300は、ユーザインタフェース処理部302、通信部304、データ処理部306およびデータ格納部308を含む。
ユーザインタフェース処理部302は、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチパネル等の入力デバイスを介してユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。通信部304は、観光サーバ200との通信処理を担当する。データ格納部308は各種データを格納する。データ処理部306は、ユーザインタフェース処理部302からの入力、通信部304の受信データおよびデータ格納部308に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部306は、通信部304、ユーザインタフェース処理部302およびデータ格納部308のインタフェースとしても機能する。
【0030】
通信部304は、データを送信する送信部314と、データを受信する受信部316を含む。
【0031】
ユーザインタフェース処理部302は、入力部310および出力部312を含む。
入力部310は、ユーザからの各種入力を受け付ける。ユーザは、入力デバイスにより、コンピュータゲームと同様のユーザインタフェースを介して、仮想空間中にいるアバターを操作する。
【0032】
入力部310は、観光地選択部320および訪問希望受付部322を含む。観光地選択部320は、後述する地図画面からユーザにより仮想観光地の選択を受け付ける。訪問希望受付部322は、ユーザから訪問希望地の指定を受け付ける。
【0033】
出力部312は、ユーザに対して各種情報を出力する。出力部312は、モニタに各種情報を表示するとともに、各種音声を出力する。
出力部312は、地図表示部324、仮想空間表示部326および旅行プラン表示部328を含む。地図表示部324は、後述の地図画面を表示させる。仮想空間表示部326は、観光提案部222が提供する画像にしたがって、仮想観光地(仮想空間)を画面表示させる。旅行プラン表示部328は、旅行プラン提案部232が提案する旅行プランを画面表示させる。
【0034】
図3は、第1地図画面240の画面図である。
ユーザが、ユーザ端末300から観光サーバ200にアクセスしたとき、地図表示部324は図3に示す第1地図画面240を画面表示させる。第1地図画面240には、地球を俯瞰する映像が表示される。図3の第1地図画面240には、北海道に対応する領域が表示されている。ユーザは、マウス、カーソルキーなどの操作デバイスを通して、視点位置を自由に動かすことができる。
【0035】
地図上には、複数の観光球体242a~242jが浮遊している(以下、まとめていうときには「観光球体242」とよぶ)。観光球体242は、実在観光地に対応する仮想観光地を示すシンボルである。たとえば、観光球体242aは「江差」に対応する仮想観光地であり、実際の江差と同じく、北海道の渡島半島東部に配置される。
【0036】
ユーザは、視点を動かしながら、行きたい仮想観光地(観光球体242)を選ぶ。仮想観光地の選び方については次の図4図5に関連して詳述する。観光提案部222は、複数の仮想観光地(観光球体242)から後述の方法により推薦観光地を選択し、メッセージ領域244において推薦観光地を提案するメッセージを表示させる。図3においては「江差」が「天気がよい」という理由で推薦されている。仮想観光地の天候についても後述する。
【0037】
図4は、第2地図画面250の画面図である。
ユーザが、第1地図画面240(図3)において視点位置を観光球体242aに近づけるにつれて、地図表示部324は観光球体242a(江差)を拡大表示させる。観光球体242a内には、江差(実在観光地)の撮像画像が映る。図4においては、江差にある公園の風景が観光球体242a内に魚眼レンズのように曲がって映り込んでいる。
【0038】
図5は、仮想観光画面260の画面図である。
ユーザが、第2地図画面250において更に視点位置を移動させ、視点を観光球体242a内に突入させたとき、仮想空間表示部326は仮想観光画面260を表示する。観光地選択部320は、視点位置が観光球体242aに突入したとき、仮想観光地(江差)が選択されたと判定し、観光サーバ200に選択結果を通知する。仮想観光画面260の画像は、観光体験提供部224により生成される。観光体験提供部224は、仮想観光地の画像を生成し、送信部208は生成された画像をユーザ端末300に送信する。
【0039】
仮想観光地を登録する前に、江差の観光運営者は、全天球カメラをもって歩きながら実在観光地(江差)を撮像する。これらの撮像画像はつなぎあわされて仮想空間を構成するための「空間データ」が形成される。全天球カメラによる撮像画像から、空間データを構成する技術は既知である。仮想空間表示部326は、観光サーバ200から受信した空間データにより仮想空間を表示させる。ユーザは、観光球体242aの内部に入り込むことで江差の現地風景の中を散策するという仮想観光体験を楽しむことができる。特に、ユーザ端末300がVRゴーグルの場合には、実際に実在観光地を散策しているかのような没入感の高い仮想観光体験を味わうことができる。
【0040】
観光運営者は、撮像画像を取得するだけでなく、実在観光地の音声(環境音)も採取する。観光体験に際しては実在観光地で採取された音声が再生される。採取された音データからは、たとえば、小鳥の鳴き声、喧騒、風の音、波濤の音などが環境音として再生される。なお、仮想観光地を構成する空間データは動画像であってもよい。たとえば、木々の揺れ、小川のせせらぎ、雲の動きなどが画像再生されてもよい。
【0041】
図6は、仮想観光地情報270のデータ構造図である。
観光運営者は、実在観光地の住所情報(緯度と経度)、撮像画像および音データを観光サーバ200に送信する。観光地登録部216は、撮像画像を取得したときには空間データを形成する。観光運営者自身が撮像画像から空間データを生成し、観光サーバ200に送信してもよい。観光地登録部216は、実在観光地に対応する仮想観光地を仮想観光地情報270に登録し、仮想観光地に観光地ID(以下、「VID」ともよぶ)を付与する。仮想観光地情報270は、観光サーバ200に登録された仮想観光地のリストである。
【0042】
たとえば、VID=V01の仮想観光地(以下、「仮想観光地(V01)」のように表記する)は「富良野(実在観光地)」に対応する。富良野の住所情報は「北緯43度、東経142度」である。観光地登録部216は、仮想観光地(V01)に対応する観光球体242を生成し、住所情報に基づいて、あらかじめ登録されている地図データに観光球体242を設定する。観光球体242を追加された地図データは、観光サーバ200から仮想観光システム100にダウンロードされる。
【0043】
仮想観光地情報270によれば、仮想観光地(V01)への1日あたりの訪問人数は1520人であり、平均滞在時間は1時間20分である。観光提案部222は、ユーザが仮想観光地を訪問するごとに仮想観光地情報270を更新する。
【0044】
配送指示部226は、仮想観光地(V01)を訪問したユーザのうち、毎日、先着30名に富良野にちなんだ「プリン」をお土産(以下、「特典商品」とよぶ)として発送する。より具体的には、ユーザが仮想観光地(V01)に入ったとき、配送指示部226は当日の訪問人数が30名以下であれば、このユーザの住所に「プリン」を発送するように、特典商品を提供する店舗(スポンサー)に配送指示を出す。
【0045】
同様にして、仮想観光地(V02)は「網走」に対応し、訪問者全員に網走にちなんだ「アメ」が特典商品としてプレゼントされる。観光地(V03)は「八戸」に対応し、配送指示部226は1日ごとに抽選を実行して、50名の訪問者に八戸にちなんだ「さば水煮」を特典商品として発送する。このように、ユーザは仮想観光地を訪れれば、各地の特典商品をもらえる可能性がある。
【0046】
図7は、本実施形態における観光地と環境データの関係を示す模式図である。
仮想観光地に対応する空間データおよび環境音に対応する音データは1種類でもよいし、複数種類が用意されてもよい。図7に示す仮想観光地Aには、空間データB1~Bn、音データC1~Cnが対応づけられている。
【0047】
空間データおよび音データ(以下、まとめていうときは「環境データ」とよぶ)は、時間、時期、天候などの環境条件に応じて複数を用意することができる。「時間」は、朝、昼、夕、夜でもよいし、午前と午後でもよい。「時期」は、1月、2月などの月でもよいし、春、夏、秋、冬などの季節でもよい。「天候」は、雨、晴れ、曇り、雪などが想定される。
【0048】
観光運営者は、実在観光地において、時間、時期、天候等の環境条件に応じて多種類の環境データを取得しておく。これら多種類の環境データは、環境条件とともに仮想観光地に対応づけて登録される。観光体験提供部224は、ユーザの状況、実在観光地の状況等に応じて、複数の環境データからいずれかを選んでユーザに仮想観光体験を提供する。環境データの選び方については後述する。
【0049】
図8は、仮想店舗情報280のデータ構造図である。
仮想観光地で物品販売ビジネスをしたい店舗運営者は、商品リストおよび希望出店地(仮想観光地)を指定した登録要求を店舗端末110から観光サーバ200に送信する。商品リストは、店舗運営者が提供可能な商品のリストであり、種類、価格、在庫量等の情報を含む。店舗登録部218は、仮想店舗を仮想店舗情報280に登録し、仮想店舗に店舗ID(以下、「TID」とよぶ)を付与し、店舗運営者に店主ID(以下、「MID」とよぶ)を付与する。仮想店舗情報280は、観光サーバ200に登録された仮想店舗のリストである。
【0050】
たとえば、仮想店舗(T01)は、店舗運営者(M01)により運営されており、仮想観光地(V01:富良野)に出店されている。仮想観光地にはあらかじめいくつか店舗スペースが設定されており、店舗登録部218は店舗登録時に空きスペースに仮想店舗を設定する。上述したように、仮想店舗には商品リスト(在庫リスト)が対応づけられる。店舗運営者は、適宜、最新の商品リストを観光サーバ200に送信する。
【0051】
図9は、仮想店舗付近を示す画面図である。
ユーザは、アバターを操作して仮想観光地内を移動し、興味のある仮想店舗に入る。仮想店舗には、多数の商品オブジェクトがある。商品オブジェクトとは、実際の商品と同一の形状を有し、実際の商品と同様のデザイン画像を貼付された三次元仮想物体である。商品オブジェクトにはあらかじめ商品説明情報が対応づけられている。商品説明情報には、商品名、メーカー名、内容物、内容量、価格、など商品に関する任意の情報が含まれる。アバターが商品オブジェクトを選択したとき、観光サーバ200の送信部208は商品説明情報をユーザ端末300に送信する。
【0052】
ユーザは、購入したい商品オブジェクトを仮想店舗内に設置される精算領域にもっていく。精算領域にアバターが移動すると、決済処理部228は、まず、ユーザIDおよび商品オブジェクトに対応づけられている商品IDと、店舗運営者を特定する。次に、決済処理部228は、決済システム108に指示して、ユーザ(購入者)の銀行口座から、店舗運営者の銀行口座に商品代金を振り込むように指示する。決済システム108は、振り込みの完了後、観光サーバ200に決済完了通知を送信する。
【0053】
配送指示部226は、決済完了通知を受信したとき、店舗端末110に実在商品の配送指示を送信する。配送指示には、ユーザ(購入者)の住所と商品IDが含まれる。店舗運営者は、店舗端末110において配送指示を受信したとき、自社倉庫から該当商品を取り出し、梱包し、ユーザの住所に商品を郵送する。
【0054】
このように、ユーザは仮想店舗において、商品オブジェクトを選んで精算領域に持ち込むことにより、いいかえれば、購入意思を示すことにより、観光サーバ200により商品代金の決済が行われるとともに、商品オブジェクトに対応する実在の商品を配送してもらうことができる。ユーザは、仮想観光地を散策しながら、ショッピングを楽しむこともできる。
【0055】
図10は、観光履歴情報290のデータ構造図である。
観光履歴情報290は、観光サーバ200のデータ格納部206に格納される。観光履歴情報290は、ユーザが訪問したことのある仮想観光地を示す。図10はユーザ(P01)の観光履歴情報290である。観光履歴情報290によると、ユーザ(P01)は、9月15日に仮想観光地(V09:江差)と仮想観光地(V04:恐山)を訪れている。観光提案部222は、ユーザの訪問日時に応じて、仮想観光地の環境データを選択する。
【0056】
ユーザ(P01)が昼(たとえば、11時から16時)に仮想観光地(V09:江差)を訪問したときには、観光提案部222は仮想観光地(V09:江差)に対応する複数の環境データのうち、「昼・9月」という環境条件に合う環境データを選択する。このような制御方法により、ユーザは自分が仮想観光地を訪れた時間・時期と同一の時間・時期に対応する仮想観光地を体験できる。
【0057】
観光提案部222は、また、外部サイトから、実在観光地(江差)の天気情報を取得する。9月15日の江差(実在観光地)が晴れているときには、観光提案部222は「晴れ」という環境条件に合う環境データを選択する。このような制御方法により、ユーザは実在観光地と同じ天候を仮想観光地でも体験できる。ユーザは、実際の環境条件に合致した仮想観光体験を堪能できるので、仮想観光地を体験するときに実在観光地の実際の様子に思いを馳せることができる。
【0058】
ユーザは、仮想観光地を訪問することで、実在観光地も訪問したくなる場合がある。このような場合、ユーザは訪問希望を入力する。たとえば、ユーザが仮想観光地(V09:江差)を訪問しているとき、訪問希望受付部322はユーザから江差(実在観光地)をいつか訪問したいという訪問希望の入力を受け付ける。ユーザ端末300の送信部314は、江差を訪問希望地とする情報をユーザIDとともに観光サーバ200に送信する。
【0059】
観光サーバ200の訪問希望登録部230は、訪問希望をユーザ端末300から受信し、観光履歴情報290の「希望欄」に「江差への訪問希望」がある旨を追記する。図10においては、ユーザ(P01)は江差と札幌に訪問希望を設定している。訪問希望登録部230は、ユーザごとに、訪問希望地を訪問リスト(図示せず)に登録する。旅行プラン提案部232は、訪問リストに基づいて旅行プランを作成する(後述)。
【0060】
観光提案部222は、観光履歴情報290を参照して、図3に示したように推薦観光地を提案する。一例として、観光提案部222は、ユーザが行ったことのない仮想観光地を推薦観光地として選んでもよい。具体的には、観光提案部222は、ユーザが行ったことのない仮想観光地からランダムにいずれか1つの仮想観光地を選択し、選択した仮想観光地を推薦観光地として提案してもよい。ユーザ(P01)が「名護」に行ったことがなければ、観光提案部222は「まだ未体験のようですが、名護はおすすめですよ」というメッセージをメッセージ領域244に表示させてもよい。
【0061】
別の例として、観光提案部222は、環境条件に基づいて推薦観光地を提案してもよい。具体的には、富良野(実在観光地)に雪が降っているときには、観光提案部222は「今日は、富良野は雪が降っているのできれいですよ」というメッセージをメッセージ領域244に表示させてもよい。実際に富良野に降雪があるときには、観光体験提供部224は「雪」という環境条件に対応する富良野の環境データに基づいて、雪の富良野に対応する仮想空間を構成する。
【0062】
観光提案部222は、ユーザの仮想観光地への訪問回数および訪問状況に基づいて推薦観光地を選択してもよい。たとえば、ユーザ(P02)は仮想観光地(V05:立石寺)を所定回数以上訪問していたとする。訪問時の環境条件は「昼・9月・晴れ」「昼・12月・曇」などであったとき、観光提案部222は「夜」の立石寺、「雪」の立石寺など、ユーザ(P02)が未体験の立石寺を推薦観光地として提案してもよい。立石寺を所定回数以上訪問しているユーザは、立石寺を気に入っていると考えられる。立石寺(実在観光地)に雪が降っているときには、観光提案部222はこのユーザに「今なら、雪景色の立石寺を見ることができますよ」というメッセージをメッセージ領域244に表示させてもよい。
【0063】
観光提案部222は、ユーザが所定回数以上訪問したことのある仮想観光地と共通点を有する仮想観光地を推薦観光地として提案してもよい。たとえば、仮想観光地(V01:富良野)には「北海道」「自然」「ラベンダー」などの観光属性が付与されている。一方、仮想観光地(V02:根室)には「北海道」「自然」「流氷」などの観光属性が付与されている。ユーザ(P03)が仮想観光地(V01:富良野)を単位期間内に所定回数以上訪問しているとき、ユーザ(P03)は「北海道」「自然」「ラベンダー」といった観光属性に興味を持っている可能性がある。このとき、観光提案部222は富良野と共通の観光属性を有する仮想観光地(V2:根室)を推薦観光地として提案してもよい。この場合、観光提案部222はユーザ(P03)に「富良野がお好きなら、根室もきっと楽しいと思いますよ」というメッセージをメッセージ領域244に表示させてもよい。
【0064】
図11は、旅行プラン画面340の画面図である。
旅行プラン提案部232は、訪問リスト、すなわち、訪問希望地のリストに基づいて、実在旅行のための旅行プランを作成する。具体的には、旅行プラン提案部232は既存の乗換案内サービスを活用しながら、ユーザの居住地から訪問希望地を経由する旅行プランを自動的に作成する。旅行プラン提案部232は、あらかじめ契約しているホテルあるいは旅館を旅行プランに含めてもよい。
【0065】
図11の旅行プラン画面340では、東京から「札幌」と「江差」を1泊2日で訪問し、札幌のホテルで一泊する旅行プランが提案されている。旅行プラン提案部232は、旅行プラン画面340をユーザ端末300に送信し、ユーザ端末300の旅行プラン表示部328は旅行プラン画面340を画面表示させる。
【0066】
旅行プラン画面340は、修正ボタン342および申込ボタン344を含む。ユーザは修正ボタン342をタッチすることにより、旅行プランの修正画面(不図示)を表示させることができる。修正画面においては、ユーザは出発希望日、宿泊数、ホテル、交通機関などを自由に変更できる。旅行プラン提案部232は、ユーザ端末300に対して、想定される旅行代金を通知してもよい。ユーザが申込ボタン344をタッチしたとき、旅行プランが確定し、旅行手配部234は旅行プランを観光サーバ200に返信する。旅行プラン提案部232は、旅行プランを旅行会社104に送信する。
【0067】
旅行業者は、指定された旅行プランにしたがって、交通機関および宿泊施設の手配を行う。旅行会社104は、手配前に正式な旅行代金をユーザ端末300に通知して、ユーザの承認を得ておく。承認を得たあと、旅行業者は手配したチケット等をユーザに送付する。決済処理部228は旅行代金の決済を実行する。ユーザの銀行口座から旅行代金が引き落とされ、旅行業者の銀行口座に旅行代金が振込まれる。このように、ユーザは仮想観光地を体験したあと、訪問希望地を設定しておけば、気に入った仮想観光地に対応する実在観光地を対象として実在旅行を手配してもらうことができる。
【0068】
[総括]
以上、実施形態に基づいて仮想観光システム100を説明した。
本実施形態によれば、観光サーバ200が提供する三次元の仮想観光地をユーザはアバターを介して散策できる。観光サーバ200は、仮想観光地の画像を立体画像として提供してもよい。
【0069】
ユーザは、まず、地図データを見ながら、訪問したい仮想観光地を選ぶ。地図データ上の実在観光地の住所に対応する位置に各観光球体242が表示されるので、ユーザは各仮想観光地がどこにあるのかを直観的に理解しやすい。たとえば、ユーザは北海道に浮かぶ多数の観光球体242を順番に訪れることで、北海道の名所を巡ることもできる。この場合、ユーザは、仮想の北海道ツアーを楽しむこともできる。
【0070】
地図データ上で視点を移動させながら、観光球体242に突入することで、ユーザの眼前には仮想観光地の光景が広がる。第1地図画面240、第2地図画面250と仮想観光画面260(仮想観光地)をシームレスにつなぐことで、ユーザは空中から鳥のように仮想観光地の中に入り込んでいくかのような感覚を味わうことができる。また、観光球体242に突入するだけで仮想観光地に入り込むことができるので、ユーザは、短時間に気軽に、多数の仮想観光地を訪れることができる。
【0071】
観光運営者は、実在観光地に基づく環境データを提供することで、ユーザに実在観光地の魅力を知ってもらうことができる。たとえば、能登半島先端は交通不便の地であるが、能登半島先端を仮想観光地として体験してもらうことで、ユーザは能登半島に興味を持つかもしれない。ユーザは仮想の能登半島を体験することで、たとえ交通不便であっても、実在の能登半島を訪ねてみたいと考える可能性がある。仮想観光地を体験してもらうことで、観光運営者は地元の観光資源をユーザに効果的にアピールできる。ユーザも、仮想観光地として体験していれば、初めての能登半島(実在観光地)であっても不安なく訪れることができる。
【0072】
ユーザは、仮想観光地を訪問することで、観光運営者が提供する特典商品をもらうことができる。観光運営者は特典商品を提供することにより、ユーザを仮想観光地に誘引しやすくなる。また、特典商品でユーザを仮想観光地に誘引できれば、観光運営者は、仮想観光地内に設置される仮想店舗での購買行動をユーザに促すことができる。
【0073】
ユーザは、仮想観光地の訪問予定日時を予約してもよい。この場合、配送指示部226は仮想観光地に対応する特典商品をユーザに事前配送するように店舗端末110に指示してもよい。たとえば、ユーザが丹波を仮想観光するとき、予約日までに丹波の地酒がユーザの手元に届けられれば、ユーザは丹波の地酒を楽しみながら丹波を仮想観光できる。
【0074】
ユーザは、仮想観光地に設置される仮想店舗で買い物を楽しむことができる。仮想店舗により、店舗運営者は収益機会を拡大できる。いわゆるネットショッピングは、コンピュータに慣れていない高齢者にとっては敷居が高い。本実施形態においては、アバターを動かしながら実際の買い物と同じような感覚で商品を選んで買うことができる。
【0075】
実在店舗に比べると、仮想店舗は運営コストが低いため、出店料を低額化あるいは無料化できる可能性もある。仮想店舗の出店者は、地元の店舗運営者に限定してもよい。たとえば、仮想観光地(札幌)に仮想店舗を出店できるのは、札幌に実在店舗を有する店舗運営者に限定してもよい。仮想空間内において店舗運営者ごとに出店可能地域を限定することで、商品のブランド価値を守りやすくなる。
【0076】
観光運営者は、仮想観光システム100に環境データを登録することで、実在観光地を知ってもらうことができる。仮想観光システム100の運営者は、各地から環境データを登録してもらうことで、サービスを無限に充実させることができる。仮想観光地の登録が増えるほど、ユーザは仮想観光サービスに飽きることなく継続的に楽しむことができる。また、仮想観光地が増えるほど、特典商品の提供も活発化すると考えられる。
【0077】
観光提案部222は、ユーザの観光履歴情報290に基づいて推薦観光地を提案できる。推薦観光地を提案することにより、仮想観光地の登録数が増えたときでも、ユーザが行き先に迷いにくくなる。
【0078】
観光体験提供部224は、仮想観光地を訪問したときの時間・時期、実在観光地の現在の天候に基づいて環境データを選ぶ。このため、ユーザは実在感・現実感をもって仮想観光を楽しむことができる。また、1つの仮想観光地について複数の環境データを用意しておくことは、ユーザを飽きさせない効果がある。たとえば、冬の富良野と、夏の富良野では異なる仮想観光体験が提供されるので、仮想観光地の再訪率を高めることができる。
【0079】
天候に限らず、特別なイベントに対応した環境データを用意してもよい。たとえば、根室では流氷を見ることができる。観光体験提供部224は、根室市から提供される情報に基づいて、根室で流氷が発生している時期に限って、流氷を見ることのできる環境データによって根室の仮想観光体験を提供してもよい。
【0080】
具体的には、3月10日に実在の根室に流氷が接岸したとき、観光体験提供部224は同日に「流氷接岸」という環境データに基づく根室の仮想観光体験を提供する。ユーザは、3月10日に仮想の根室を訪れれば、流氷接岸を仮想空間で楽しむことができる。ユーザは流氷接岸という特別なイベントが発生している3月10日に実在の根室を訪問できなくても、実在の根室の様子を想像しながら仮想の根室で流氷観察を楽しむことができる。このような制御方法によれば、ユーザは、流氷を観察できる季節の訪れを期待しつつ、実際に流氷が現われたときの仮想観光体験を期待できる。特別なイベントとしては、流氷以外にも、流星、オーロラ、ラベンダーや桜などの開花、台風、ウミガメの産卵など、さまざまなものが考えられる。
【0081】
ユーザは、仮想観光地を気に入ったときには訪問希望地として登録することにより、観光サーバ200に実在旅行の手配をしてもらうこともできる。ユーザは仮想体験を通して、実在旅行で行きたいこと、やりたいことのイメージに合う旅行プランを提案してもらえる。また、旅行会社104にとっても仮想旅行を通して実在の旅行需要を喚起できるというメリットがある。
【0082】
旅行の醍醐味は観光と購買である。楽しい仮想観光を提供できれば、実在観光も体験してみたいとユーザに思わせることができる。仮想観光は実在観光地にユーザを誘引する契機になる。また、仮想観光は実在観光の予行演習にもなるので、ユーザは実際には初めて訪れる実在観光地であっても、初めてではないかのような感覚を味わうことができる。たとえば、仮想の札幌を歩き回ることにより、札幌に行ったことがなくても札幌の土地勘をつくることができるので、実際に札幌に行ったときにも効率的な観光が可能になると考えられる。このように、初めての観光地であっても、旅の新鮮さとともに、まったく初めてではないという安心感を与えることができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0084】
複数のユーザ端末300と1つの観光サーバ200により仮想観光システム100が構成されるとして説明したが、ユーザ端末300の機能の一部は観光サーバ200により実現されてもよいし、観光サーバ200の機能の一部がユーザ端末300に割り当てられてもよい。また、ユーザ端末300や観光サーバ200以外の第3の装置が、ユーザ端末300または観光サーバ200の機能の一部を担ってもよい。図2において説明したユーザ端末300の各機能と観光サーバ200の各機能の集合体は大局的には1つの「仮想観光システム」として把握することも可能である。1つまたは複数のハードウェアに対して、本発明を実現するために必要な複数の機能をどのように配分するかは、各ハードウェアの処理能力や仮想観光システム100に求められる仕様等に鑑みて決定されればよい。
【0085】
[変形例]
ユーザ端末300は、百貨店、インターネットカフェ、ゲームセンターなどに設置される専用装置であってもよい。この装置は、コックピットのようにユーザを完全に遮蔽するとともに、座席を傾けることで仮想観光体験における身体感覚を表現してもよい。
【0086】
本実施形態においては、国内旅行を対象として説明したが、海外旅行にも応用可能である。たとえば、ダブリンやアムステルダムなどの都市を仮想空間で再現することにより、仮想の海外旅行を実現してもよい。
【0087】
図12は、変形例における観光地と環境データの関係を示す模式図である。
1つの仮想観光地に対して、複数の仮想地点を対応づけてもよい。たとえば、図12に示す仮想の観光地Aには、公園A1、繁華街A2、港A3・・・古墳Anのように複数の仮想地点が対応づけられている。そして、仮想地点ごとに環境データ(空間データおよび音データ)を対応づけてもよい。
【0088】
複数の仮想地点に対応して複数の観光球体242を用意してもよい。たとえば、仮想の観光地Aについて、公園A1に対応する観光球体242、繁華街A2に対応する観光球体242などを用意しておく。ユーザは地図画面において観光地Aに接近し、観光地Aに配置される複数の観光球体242から観光球体242を選んで突入すればよい。
【0089】
1つの仮想観光地について、複数の仮想地点を包含する広大な仮想空間を提供してもよい。この場合には、ユーザは広大な仮想観光地Aを歩き回りながら、公園A1や繁華街A2などを自分(アバター)の「足」で訪れる楽しみを味わうことができる。一方、図12に示すように仮想地点ごとに仮想空間を分割してもよい。この場合には、ユーザは観光地Aの公園A1、観光地Aの繁華街A2のように観光地点を選ぶことができるので、広大な仮想空間で迷う不安がなくなる。
【0090】
本実施形態においては、ユーザは仮想観光地を巡りながら訪問希望地を登録するとして説明した。変形例として、訪問希望登録部230は観光履歴情報290をユーザ端末300に表示させ、ユーザは観光履歴情報290を参照して訪問希望地を、たとえば、チェックボックス方式にて選択してもよい。
【0091】
観光サーバ200の運営者は、観光運営者から仮想観光地の登録料を徴収してもよい。また、観光提案部222は、推薦観光地をランダムに選んでユーザに提案してもよい。観光提案部222は、登録料の有無あるいは登録料の金額に応じて、推薦観光地の選択確率を変更してもよい。具体的には、観光提案部222は各仮想観光地の選択確率を登録料が高いほど大きくなるように調整することで、ランダムを基本としつつも登録料の高額な仮想観光地が推薦されやすくなるように制御してもよい。
【0092】
観光提案部222は、コンシェルジュ機能を有してもよい。観光提案部222は、「海と山のどちらが好きですか?」「北海道には行ったことがありますか?」「流氷に興味はありますか?」などの質問をユーザに提示し、ユーザは観光提案部222からの質問に回答する。観光提案部222は、ユーザからの回答結果に基づいて推薦観光地を決定してもよい。たとえば、ユーザが「自然」「山」という観光属性に肯定的に反応したときには、これらの観光属性を有する仮想観光地を推薦観光地として提案してもよい。
【0093】
観光運営者は、時期に応じて特典商品を変更してもよい。冬季訪問時の特典商品と夏期訪問時の特典商品を異ならせることにより、ユーザの再訪率を向上させることができる。
【0094】
ユーザは、環境データを自由に選ぶことができてもよい。たとえば、「夏の朝の富良野」を体験したいとき、ユーザは仮想観光地(富良野)の観光球体242に突入したあと「夏」「朝」などの環境条件を入力する。このとき、観光体験提供部224は「夏」「朝」という環境条件に合致する富良野の環境データに基づいて仮想観光体験をユーザに提供してもよい。
【0095】
空間データは、観光運営者が地上を歩行しながら、あるいは、自動車で走行するときの撮像画像に基づいて構成される。変形例として、空間データの視点(撮像位置)は地上以外に設定されてもよい。たとえば、空中ドローンあるいは水中ドローンに全天球カメラを搭載することで、地上とは異なる視点からの空間データを構成してもよい。
【0096】
ユーザは、仮想観光をするとき、地上撮像による仮想空間、空中撮像による仮想空間あるいは水中撮像による仮想空間を選ぶことができてもよい。
【0097】
ユーザは、観光サーバ200に有料会員または無料会員としてユーザ登録してもよい。観光体験提供部224は、有料会員に限って空中の空間データに基づく仮想観光体験を提供するとしてもよい。
【0098】
複数の環境データのうち、所定の資格条件を満たしたユーザにのみが体験できる特別な環境データを用意してもよい。たとえば、観光体験提供部224は、有料会員に限って、根室の砕氷船によるクルージング体験を提供してもよい。あるいは、観光体験提供部224は根室の仮想店舗で商品を購入したユーザに限って砕氷船体験を提供してもよいし、砕氷船の舟券を購入したユーザに限って砕氷船体験を提供するとしてもよい。このほか、観光体験提供部224は仮想根室に所定回数、たとえば、5回以上訪問したユーザだけに砕氷船体験を提供してもよい。
【0099】
本実施形態においては、ユーザはアバターを通して自由に仮想空間内を歩き回るとして説明した。変形例として、ユーザのアバターは仮想観光地においてあらかじめ決められた順路を自動移動するとしてもよい。自動移動の場合には、映画を楽しむように仮想観光地を自動巡回できる。観光体験提供部224は、スキーヤに全天球カメラで撮像画像を取得して得た空間データをつかって、スキーヤの視点で滑降する仮想体験をユーザに提供してもよい。
【0100】
音データは、環境音であってもよいし、音楽(BGM:Background Music)であってもよい。たとえば、観光体験提供部224は、民謡などの地元の音楽を音データとして再生してもよい。あるいは、観光体験提供部224は、観光地Aを散策するときには、観光地Aを出身地とするミュージシャンの音楽を再生してもよい。このほか、ユーザは自由に仮想観光体験時に流す音楽を選んでもよい。
【0101】
本実施形態においては、観光サーバ200はあらかじめ環境データを用意し、ユーザからアクセスがあったときに環境データに基づいて仮想観光体験を提供するとして説明した。変形例として、全天球カメラを搭載した無人走行車あるいはドローンをユーザは遠隔制御してもよい。たとえば、ユーザが仮想観光地(V02:網走)を選んだときには、網走に待機させているドローンを起動してもよい。ユーザはユーザ端末300を通して網走にあるドローンを遠隔制御する。そして、ドローンが搭載する全天球カメラによる撮像画像は観光サーバ200に送信され、観光体験提供部224は撮像画像をユーザ端末300に送信すれば、ユーザに現地体験に近い仮想観光体験を楽しむことができる。
【0102】
仮想観光地には、多数のアバターが同時に存在する。ユーザ(P01)とユーザ(P02)が同一時刻に、同一の観光球体242に入ったとする。このとき、ユーザ(P01)のアバター(以下、「アバター(P01)」のように表記する)は、他のアバター(P02)と仮想観光地で出会うことができる。上述したように、会話処理部220はユーザ(P01)とユーザ(P02)との間の会話を中継する。
【0103】
ユーザ(P01)とユーザ(P03)が友人あるいは家族であるとき、ユーザ(P01)とユーザ(P03)は同一時刻に同一の観光球体242に待ち合わせをしてもよい。複数のユーザは同じ仮想観光地を同じ時間に散策することで、仮想観光体験を共有できる。また、旅行会社104は、仮想観光地を対象としたツアー旅行を企画してもよい。実在観光と同様、催行日時と最少催行人数を決めて、ツアーガイド(アバター)が複数のユーザ(アバター)を案内することで、仮想のツアー旅行を開催できる。
【0104】
仮想観光地に対応する観光球体242だけではなく、イベント会場に対応する仮想球体(以下、「イベント球体」とよぶ)を地図データ上に表示させてもよい。ユーザは、観光球体242への突入と同様のユーザインタフェースにて、地図上に点在するイベント球体に突入する。イベント球体には、仮想観光地と同様、仮想イベント会場が対応づけられている。仮想イベント会場においては、たとえば、コンサート、株主総会、会社説明会、新商品説明会、国際会議、見本市・展示会などが開催される。
【0105】
複数のユーザはアバターを通してイベント球体内で交流できる。たとえば、会話処理部220は、アバター(P01)を中心として仮想空間内に会話範囲を設定する。ユーザ(P01)が発話したとき、会話処理部220はアバター(P01)についての会話範囲内にいる他のアバターに対応するユーザ端末300に発話音声を送信する。ユーザ端末300の出力部312は発話音声を出力する。一方、会話範囲外にいるアバターに対応するユーザ端末300には発話音声は送信されない。
【0106】
このように、ユーザ(P01)の発言は、近隣のアバターに対応するユーザにのみ伝わる。したがって、仮想イベント会場においても、ユーザ(P01)は自分のアバター(P01)の近くにいる他人のアバターと会話できる。
【0107】
実在集会と仮想集会を連動させてもよい。実在集会は、実在の人間が実在の会場に集合して開催される通常の集会である。実在集会の会場には、巨大なモニタ、スピーカおよび集音マイクが設置される。仮想集会においてアバターが発話したときには、会話処理部220は発話音声を実在集会のスピーカから出力させる。一方、実在集会の音声は集音マイクによって集音され、会話処理部220は実在集会の音声を仮想集会に参加している各ユーザ端末300に送信する。また、仮想集会の画像は実在空間のモニタに表示され、実在集会の映像を仮想集会に参加しているユーザ端末に表示させてもよい。このような制御方法によれば、実在集会に参加できないユーザであっても仮想集会を通して集会に参加できる。
【0108】
訪問希望地を対象として、旅行プラン提案部232は旅行プランを作成するとして説明した。変形例として、旅行プラン提案部232は訪問希望地への航空チケットを旅行会社104等に発注してもよい。同様にして、旅行プラン提案部232は、MaaS(Mobility as a Service)サービスを提供する業者のサーバにアクセスすることで、旅行チケット、ホテル予約、お土産の購入などを指示してもよい。
【0109】
観光球体242と同様、ショッピングモール、市場に対応する仮想球体(以下、「市場球体」とよぶ)を地図データ上に表示させてもよい。ユーザは、観光球体242への突入と同様のユーザインタフェースにて、地図上に点在する市場球体に突入する。市場球体には、仮想観光地と同様、さまざまな商品を購買可能な空間が対応づけられている。仮想市場空間は、たとえば、釧路の和商市場、高知のひろめ市場など、実在の市場に対応する仮想空間として構成されてもよい。ユーザは、仮想市場において、図9に関連して説明した方法と同様のユーザインタフェースにてさまざまな商品オブジェクトを購入することができる。
【符号の説明】
【0110】
100 仮想観光システム、102 実在観光地、104 旅行会社、106 インターネット、108 決済システム、110 店舗端末、200 観光サーバ、202 通信部、204 データ処理部、206 データ格納部、208 送信部、210 受信部、216 観光地登録部、218 店舗登録部、220 会話処理部、222 観光提案部、224 観光体験提供部、226 配送指示部、228 決済処理部、230 訪問希望登録部、232 旅行プラン提案部、234 旅行手配部、240 第1地図画面、242 観光球体、244 メッセージ領域、250 第2地図画面、260 仮想観光画面、270 仮想観光地情報、280 仮想店舗情報、290 観光履歴情報、300 ユーザ端末、302 ユーザインタフェース処理部、304 通信部、306 データ処理部、308 データ格納部、310 入力部、312 出力部、314 送信部、316 受信部、320 観光地選択部、322 訪問希望受付部、324 地図表示部、326 仮想空間表示部、328 旅行プラン表示部、340 旅行プラン画面、342 修正ボタン、344 申込ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12