(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】直流遮断器
(51)【国際特許分類】
H02H 3/087 20060101AFI20250305BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20250305BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20250305BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
H02H3/087
H03K17/687 A
H02J1/00 301D
H02J1/00 309Q
H01H33/59 D
(21)【出願番号】P 2022013125
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2024-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521344607
【氏名又は名称】ネクスファイ・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西岡 圭
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝
(72)【発明者】
【氏名】奥田 貴文
(72)【発明者】
【氏名】谷本 智
(72)【発明者】
【氏名】花田 俊雄
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-71239(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150079(WO,A1)
【文献】特開昭61-259416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0222111(US,A1)
【文献】特開2020-177875(JP,A)
【文献】特開2014-235834(JP,A)
【文献】特表2021-520600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/087
H03K 17/687
H02J 1/00
H01H 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から負荷への直流の主電流が通る主電流路に設備側遮断制御装置と共にかつ前記設備側遮断制御装置より負荷側に設けられる直流遮断器であって、
前記主電流路に介在し、機械式スイッチを有する第1電流路と、
前記第1電流路に対して並列に接続され、半導体スイッチを有する第2電流路と、
前記第1電流路及び前記第2電流路の並列接続部の負荷側に直列接続されていて
前記主電流が通る一側主電流路と、
前記一側主電流路における主電流値及び前記主電流値の時間微分値の少なくとも一方が各々について設定されている閾値以上になると、異常事故の発生と判断して、前記半導体スイッチをオフからオンに切り替えてから前記機械式スイッチをオンからオフに切り替える遮断切替作動を実行するスイッチ制御部と、
を備え
、
前記スイッチ制御部は、前記設備側遮断制御装置からの前記主電流の遮断の指令信号の受信を待たずに、前記遮断切替作動を開始することを特徴とする直流遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の直流遮断器において、
前記スイッチ制御部は、前記遮断切替作動の終了後、前記設備側遮断制御装置から通電再開指令信号を受信した時に、該機械式スイッチをオフからオンに切り替えることを特徴とする直流遮断器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の直流遮断器において、
前記スイッチ制御部は、前記遮断切替作動における前記半導体スイッチをオフからオンへの切替後、
前記設備側遮断制御装置からの遮断の指令信号の受信に関係なく、前記半導体スイッチをオンからオフへの切替が可能になっていることを特徴とする直流遮断器。
【請求項4】
請求項3に記載の直流遮断器において、
前記並列接続部と前記一側主電流路との直列接続部から構成される主回路に対して並列に接続され、相互に直列に接続された副スイッチと副抵抗とを有する副回路を備え、
前記スイッチ制御部は、
前記スイッチ制御部が異常事故と判断する前では、前記副スイッチをオフに維持し、
前記スイッチ制御部が異常事故と判断した後では、前記遮断切替作動において前記機械式スイッチ及び前記半導体スイッチを共にオフにしてから前記副スイッチをオンに切り替えることを特徴とする直流遮断器。
【請求項5】
請求項4に記載の直流遮断器において、
前記直列接続部は、前記並列接続部の直流電源側に直列接続されていて
前記主電流が流れかつ内部断路器を有する他側主電流路を有し、
前記スイッチ制御部は、前記副スイッチがオンである期間は前記内部断路器をオフに維持することを特徴とする直流遮断器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の直流遮断器において、
前記スイッチ制御部は、前記遮断切替作動の実施中に、異常事故の発生の判断の基礎となった前記主電流値又は前記時間微分値の少なくとも一方が各々について設定されている閾値を下回ったときは、前記半導体スイッチをオンに維持しつつ、前記機械式スイッチをオフからオンに戻すことを特徴とする直流遮断器。
【請求項7】
請求項6に記載の直流遮断器において、
前記スイッチ制御部は、前記機械式スイッチをオフからオンに戻して前記主電流値が前記主電流値についての前記閾値を下回った時から所定時間以上、前記主電流値及び前記主電流値の
前記時間微分値の少なくとも一方が各々について設定されている前記閾値以上にならなかったときは、前記半導体スイッチをオンからオフに切り替えることを特徴とする直流遮断器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の直流遮断器において、
前記半導体スイッチは、ゲート電圧に基づいてオンオフするゲート付き半導体素子であり、
前記スイッチ制御部は、前記ゲート電圧をアナログに変化させるリニア制御により前記半導体スイッチをオンからオフに切り替えることを特徴とする直流遮断器。
【請求項9】
請求項8に記載の直流遮断器において、
前記スイッチ制御部は、前記リニア制御に代えて、前記ゲート付き半導体素子のゲートに対するPWM制御により、前記半導体スイッチをオンからオフに切り替えることを特徴とする直流遮断器。
【請求項10】
請求項9に記載の直流遮断器において、
前記並列接続部と前記一側主電流路との直列接続部とから構成される主回路が、相互に並列接続されて複数、設けられるとともに、
前記複数の主回路の前記スイッチ制御部同士は、前記半導体スイッチの切替状態の切替作動において、前記半導体スイッチ同士が同時にオフにならないように、前記半導体スイッチを
前記リニア制御又は
前記PWM制御を実施することを特徴とする直流遮断器。
【請求項11】
請求項10に記載の直流遮断器において、
前記スイッチ制御部は、
前記リニア制御又は
前記PWM制御で前記半導体スイッチを制御して直流電源側のエネルギーを負荷側に放出する期間では、最初に全部の主回路の半導体スイッチを介してエネルギーを放出し、放出エネルギーの低下に伴い、各半導体スイッチの温度に基づいてエネルギー放出の半導体スイッチの個数を制御することを特徴とする直流遮断器。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の直流遮断器において、
前記並列接続部と前記一側主電流路との直列接続部から構成される主回路に対して並列に接続されているアレスタを備えることを特徴とする直流遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチと機械式スイッチを使った直流遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1-4は、機械式スイッチと半導体スイッチとの並列回路を備える直流遮断器を開示する。これらの直流遮断器は、設備側遮断制御装置から遮断信号を受信すると、最初に半導体スイッチをオフからオンに切り替え、次に機械式スイッチをオンからオフに切り替えるようになっている。これにより、機械式スイッチは、アーク放電を生じることなく、円滑にオンからオフに切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-259416号公報
【文献】米国特許出願公開2015/0222111A1号公報
【文献】特開2014-562814号公報
【文献】国際公開WO/JP/2017/150079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1-4の直流遮断器は、外部の設備側遮断制御装置からの遮断の指令信号に基づいて遮断作動を実施している。この場合、直流遮断器は、設備側遮断制御装置からの遮断信号を受信してから作動開始するため、事故発生から遮断までに時間がかかり、結果、事故電流が増大する。
【0005】
これに対処するための対策として、例えば、(a)システム各部の定格を大きくするか、(b)設備側遮断制御装置が遮断信号を出力する閾値を下げることが考えられる。しかしながら、(a)は、システムの大型化やコスト増大に繋がり、(b)は、遮断作動が頻繁に生じてしまい、通常の運転に支障が生じてしまう。
【0006】
本発明は、これに鑑み、システムの大型化、コスト増大、及び頻繁な遮断作動を回避しつつ、異常電流の発生時には、機械式スイッチを速やかかつ円滑に作動させることができるようにした直流遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の直流遮断器は、
機械式スイッチを有する第1電流路と、
前記第1電流路に対して並列に接続され、半導体スイッチを有する第2電流路と、
前記第1電流路及び前記第2電流路の並列接続部の一側に直列接続されていて主電流が通る一側主電流路と、
前記一側主電流路における主電流値及び前記主電流値の時間微分値の少なくとも一方が各々について設定されている閾値以上になると、異常事故の発生と判断して、前記半導体スイッチをオフからオンに切り替えてから前記機械式スイッチをオンからオフに切り替える遮断切替作動を実行するスイッチ制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、直流遮断器が備えるスイッチ制御部が、独自に主電流の異常を監視し、直流遮断器内の主電流値及び当該主電流値の時間微分値の少なくとも一方が所定の閾値以上になると、直ちに半導体スイッチをオフからオンに切り替えてから機械式スイッチをオンからオフに切り替える。これにより、直流遮断器は、異常電流の発生時には、早期に遮断作動を開始することができ、システムの大型化、コスト増大、及び頻繁な遮断作動を回避しつつ、機械式スイッチを速やかかつ円滑に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の直流給電システムの模式図である。
【
図4】半導体スイッチの切替位置を徐々に変化させるときに適用するリニア制御及びPWM制御の説明図である。
【
図5】スイッチ制御部が実施する制御態様の一時中断を含む遮断作動の説明グラフである。
【
図6】スイッチ制御部が実施する制御態様の途中終了の遮断作動の説明グラフである。
【
図7】第2実施形態の直流給電システムの模式図である。
【
図8】第3実施形態の直流給電システムの模式図である。
【
図9】第4実施形態の直流給電システムの模式図である。
【
図10】第5実施形態の直流給電システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態について説明する。本発明は、これら実施形態に限定されないことは言うまでもない。なお、複数の実施形態間で共通する構成要素については、同一の符号を使用する。
【0011】
(第1実施形態/構成)
図1は、第1実施形態の直流給電システム10aの模式図である。直流給電システム10aは、主電流路20上に直流電流の流れ方向に順番に直流電源11、設備側遮断制御装置12、外部断路器17、直流遮断器25a及び負荷13を備えている。
【0012】
直流給電システム10aは、例えば、洋上風力発電に利用される。外部断路器17は、省略することができる。
【0013】
直流遮断器25aは、相互に並列に接続されている主回路30と副回路50とを備えている。副回路50は、省略することができる。
【0014】
主回路30は、相互に並列に接続されている第1電流路35及び第2電流路36とから構成される並列接続部と、該並列接続部に対して一側及び他側にそれぞれ一側主電流路31及び他側主電流路32とを有している。一側主電流路31及び他側主電流路32は、直流遮断器25aにおける主電流路20を構成する。
【0015】
スイッチ制御部39は、一側主電流路31に設けられ、一側主電流路31を流れる主電流の電流値(以下、「主電流値i」ともいう。)及び主電流値iの時間微分値(以下、「時間微分値j」ともいう。)を検出する。スイッチ制御部39は、また、設備側遮断制御装置12からの指令信号(図では、矢付き点線で示している。)を受信する。スイッチ制御部39は、主電流値i及び時間微分値j、並びに指令信号に基づいて機械式スイッチ40及び半導体スイッチ44の切替位置としてのオン、オフを切り替える切替信号を生成し、機械式スイッチ40及び半導体スイッチ44に出力する(図では、矢付き一転鎖線で示している。)。
【0016】
機械式スイッチ40等の機械式スイッチは、いわゆる低抵抗スイッチに属する。半導体スイッチ44は、例えば、ソース同士を向き合わせて相互に直列に接続された2つのFET(電界効果トランジスタ)から構成されている。
【0017】
副回路50は、相互に直列に接続されている機械スイッチ51及び抵抗52を有し、両端においてそれぞれ一側主電流路31及び他側主電流路32に接続されている。
【0018】
図2は、スイッチ制御部39のブロック図である。スイッチ制御部39は、一側主電流路31上に配置されて一側主電流路31を通過する主電流を検出するCT(Current Transformer)55と、CT55による検出電流を処理して、機械式スイッチ40及び半導体スイッチ44の切替信号を生成するCPLD(Complex Programmable Logic Device)58とを有している。
【0019】
CPLD58は、サンプリング処理部61、電圧/電流変換部62、時間微分部63、異常判断部64及び切替信号出力部65を備えている。サンプリング処理部61は、CT55からの入力(検出電流)を一定のサンプリング間隔で抽出して、出力する。電圧/電流変換部62は、サンプリング処理部61からの入力を電圧値に変換して、出力する。時間微分部63は、電圧/電流変換部62からの入力を時間微分して、出力する。
【0020】
電圧/電流変換部62及び時間微分部63の出力は、それぞれ主電流値i及び時間微分値jに対応する。異常判断部64は、電圧/電流変換部62及び/又は時間微分部63からの入力と所定の閾値α,β(図示せず)との対比に基づいて直流給電システム10aにおける異常状態の発生の有無を判断する。具体的には、主電流値i≧α及び/又は時間微分値j≧βであるときは、直流給電システム10aに異常状態が発生したと判断する。
【0021】
時間微分部63は、さらに、設備側遮断制御装置12から各種の指令信号を受信する。設備側遮断制御装置12は、スイッチ制御部39とは別に直流給電システム10aにおける異常状態の発生の有無を主電流値iに基づいて判断し、その判断に基づく指令信号を異常判断部64に出力する。異常判断部64は、スイッチ制御部39自身が検出した主電流値i及び/又は時間微分値jと、設備側遮断制御装置12からの指令信号とに基づいて、機械式スイッチ40及び半導体スイッチ44に出力する切替信号を生成する。
【0022】
(第1実施形態/作用)
図3は、直流遮断器25aの作動を説明するグラフである。横軸は、時間を示し、縦軸は、上から順番に半導体スイッチ44の切替位置、機械式スイッチ40の切替位置及び一側主電流路31を流れる主電流の主電流値iを示している。時間順に、t0,t1,t2,t3,t4,t5となっている。時間t=t0で異常状態が発生したことを想定して、説明する。
【0023】
直流給電システム10aの正常運転中は、機械式スイッチ40がオンに維持され、外部断路器17から出力される直流の主電流が第1電流路35を介して負荷13に供給されている。この直流給電システム10aでは、直流給電システム10aの正常運転時の主電流値iとしておおよそ500Aを想定している。直流給電システム10aにおける異常状態の発生に伴い、主電流値iは、急激に上昇する。異常電流の最大上昇値は10kA以上になることがある。
【0024】
直流給電システム10aにおいて、スイッチ制御部39の異常判断部64は、時間t=t1において主電流値i≧α又は時間微分値j≧βであると判断する。なお、直流給電システム10aの説明では、異常状態の発生は、主電流値i≧α又は時間微分値j≧βで判断するが、主電流値i≧α及び時間微分値j≧βで判断することもできる。換言すると、異常状態発生の判断条件は、主電流値i≧α及び時間微分値j≧βの少なくとも一方の条件であればよいということになる。
【0025】
スイッチ制御部39において異常状態の発生が判断されると、スイッチ制御部39の切替信号出力部65は、時間t=t1において半導体スイッチ44がオフからオンに切り替わる切替信号を半導体スイッチ44に出力し、半導体スイッチ44は、オフからオンに切り替わる。この結果、時間t=t1以降、主電流値iは、第1電流路35及び第2電流路36の両方を分流して流れる。
【0026】
異常判断部64は、時間t=t2になると、機械式スイッチ40をオンからオフに切り替える切替信号を、切替信号出力部65を介して機械式スイッチ40に出力する。この時の半導体スイッチ44のオン電圧は、すなわち、時間t=t2における機械式スイッチ40がオンからオフに切り替わる時の機械式スイッチ40の両端電圧は、アーク発生電圧には達していない値にとなっている。この結果、機械式スイッチ40は、アーク放電を起こすことなく、円滑にオフになる。
【0027】
時間t=t3において、異常判断部64は、設備側遮断制御装置12から遮断の指令信号を受信する。受信に伴って、異常判断部64は、半導体スイッチ44をオンからオフに戻す切替信号を、切替信号出力部65を介して半導体スイッチ44に出力する。これにより、半導体スイッチ44は、オフに切り替わり、主電流路20は、遮断状態になる。
【0028】
図3において、Ga,Gb,Gcは、種々のケースにおける主電流値iの減少の態様を示している。Gaは、直流遮断器25aがスイッチ制御部39を装備しているときの変化態様である。Gbは、スイッチ制御部39を装備していない直流遮断器による変化態様である。Gcは、直流遮断器25aが時間t=t3で半導体スイッチ44を瞬間遮断したと想定したときの変化態様である。
【0029】
最初に、Gbについて、説明する。スイッチ制御部39が装備されていない直流遮断器では、半導体スイッチ44のオンからオフへの切替が時間t=t5から開始されることがある。アーク放電は、機械式スイッチ40の両端電圧により発生する。Gbでは、機械式スイッチ40のオンからオフへの切替は、時間t=t5より前に行われるものの、遮断の切替信号の受信の時間t=t3より後になる。この結果、機械式スイッチ40のオンからオフへの切替時の主電流値iは、時間t=t2の時よりも相当に増大している。したがって、耐電流性を保証するために、直流給電システム10aの各部の定格を大きくする必要があり、これは大型化及びコスト増大に繋がる。
【0030】
次に、Gb,Gcについて説明する。直流遮断器25aで異常電流を遮断する場合、直流電源11側の高電圧ケーブル内のPFN(パルス形成回路:LとC)に溜まったエネルギーのために、直流遮断器25aの半導体スイッチ44に急激なサージが発生する。従来は、この放出をアレスタで行っていた。
【0031】
これに対して、直流遮断器25aでは、リニア制御又はPWM制御を用いて、半導体スイッチ44にアレスタの機能を持たせる。半導体スイッチ44によりサージエネルギーを放出するときの主電流値iの減少は、Gb、Gc、又はGbとGcとの間の傾斜線となる。高電圧ケーブル内のPFNに蓄えられたエネルギーが大きいほど、傾斜は緩やかに制御される。
【0032】
図4は、半導体スイッチ44の切替位置を徐々に変化させるときに適用するリニア制御及びPWM制御の説明図である。横軸は時間tであり、縦軸は半導体スイッチ44のFETの抵抗値である。
【0033】
なお、半導体スイッチ44としてFETを使用することを前提にしている。半導体スイッチ44のオン及びオフは、半導体スイッチ44の両端抵抗がそれぞれ0Ω及び∞Ωであることを意味する。半導体スイッチ44の切替位置を徐々に変化させるときは、半導体スイッチ44の両端抵抗を徐々に変化させればよい。
【0034】
リニア制御では、スイッチ制御部39から半導体スイッチ44としてのFETのゲート電圧をアナログに変化させる。FETの両端抵抗とゲート電圧とは対応関係があるので、FETの両端抵抗がリニアに変化するように、スイッチ制御部39は半導体スイッチ44のゲート電圧を制御する。
【0035】
PWM制御では、スイッチ制御部39から半導体スイッチ44としてのFETのゲートに出力するPWMのデューティ比を制御する。すなわち、FETは、デューティ比が増大するに連れて1周期当たりのオン期間が増大して、抵抗が減少する。したがって、FETの両端抵抗がリニアに変化するように、スイッチ制御部39は、半導体スイッチ44のゲートに出力するPWMのデューティ比を制御する。
【0036】
直流電源11側の高電圧ケーブル内のPFNに蓄えられたエネルギーが大きいほど、半導体スイッチ44を瞬時にオン、オフすることが難しくなる。したがって、PFNに蓄えられたエネルギーが大きいと予想される直流給電システム10aほど、
図3のGbのように、主電流値iの減少を緩やかにして、多量のエネルギーが放出されるようにする。
【0037】
図5は、スイッチ制御部39が実施する制御態様の一時中断を含む遮断作動の説明グラフである。横軸及び縦軸は、前述の
図3と同一である。
図5において、時間順に、t10,t11,t12,t13,t14,t15,t16となっている。
【0038】
t10~t12は、
図3のt0~t2と同一であるので、時間t=t13から説明する。時間t=t13では、異常判断部64が時間微分値j<βと判断する。これにより、異常判断部64は、時間t=t11における異常状態の発生判断が誤り又は早計であったと判断する。これに対処して、異常判断部64は、時間t=t13において機械式スイッチ40をオフからオンに戻す。なお、異常判断部64は、半導体スイッチ44については、時間t=t13以降も、オンから電圧/電流変換部62に戻すことなく、オンに維持する。時間t=t13における判断の方が誤り又は早計であることがあるからである。
【0039】
時間t=t14では、主電流値i≦αとなる。しかしながら、異常判断部64は、時間t=t14においても半導体スイッチ44のオフを維持する。直流給電システム10aにおける異常状態は、最初に予兆の主電流値i及び/又は時間微分値jの小さな又は短時間の異常上昇が生じて、その後、元に戻り、その後、間もない期間内に本格的な主電流値i及び/又は時間微分値jの異常上昇が起きることが経験的に知られているからである。
【0040】
時間t=t15では、時間t=t11と同様に、主電流値i≧α及び/又は時間微分値j≧βとなる。これにより、スイッチ制御部39は、時間t=t16で機械式スイッチ40をオンからオフに切り替える。半導体スイッチ44は、時間t=t16を含む、時間t=t11から継続的にオンに保持されているので、機械式スイッチ40は、アーク放電を起こすことなく、速やかにオフに切り替わる。
【0041】
図6は、スイッチ制御部39が実施する制御態様の途中終了の遮断作動の説明グラフである。横軸及び縦軸は、前述の
図5と同一である。
図6において、時間順に、t20,t21,t22,t23,t24,t25,t26となっている。
【0042】
t20~t24は、
図5のt10~14と同一であるので、時間t=t25から説明する。時間t=t25は、時間t=t24から所定時間Taの経過後の時刻を示している。スイッチ制御部39は、主電流値i≦αの期間が時間t=t24から所定時間Ta以上継続したと判断すると、異常判断部64は、時間t=t21における異常状態の発生判断が最終的に誤り又は早計であったと判断する。
【0043】
異常判断部64は、時間t=t26において、半導体スイッチ44をオンからオフに戻す。したがって、時間t=t26以降は、主電流は、第2電流路36に分流することなく、直流給電システム10aの正常運転時と同様に、第1電流路35のみを流れて、負荷13に供給される。
【0044】
機械スイッチ51は、常時は、オフに維持されている。スイッチ制御部39は、設備側遮断制御装置12から遮断の指令信号を受信する前に、異常電流を検出すると、半導体スイッチ44をオフからオンに切り替え、その後、機械式スイッチ40をオンからオフに切り替え、その後、半導体スイッチ44をオンからオフに戻して、一連の遮断作業を終了する。
【0045】
スイッチ制御部39は、その後に、設備側遮断制御装置12から遮断の指令信号を受信する。設備側遮断制御装置12は、遮断の指令信号をスイッチ制御部39に出力してから所定時間後に外部断路器17の切替位置を切り替えて主電流路20を開路する。スイッチ制御部39は、その後、機械スイッチ51をオフからオンに切り替えて、一側主電流路31と他側主電流路32とを導通状態にする。これにより、当該所定時間中に、直流電源11側のエネルギーが副回路50を介して負荷13側に放出される。
【0046】
逆に、直流給電システム10aの通電再開時は、設備側遮断制御装置12は、スイッチ制御部39に通電再開の指令信号をスイッチ制御部39に出力し、その後、所定時間の経過後に
外部断路器17を閉路位置に切り替える。スイッチ制御部39は、通電再開の指令信号を受信してから当該所定時間内に、機械式スイッチ40をオフからオンに切り替え、さらに、その後、機械スイッチ51をオンからオフに切り替える。
【0047】
(その他の実施形態)
図7は、
第2実施形態の直流給電システム10bの模式図である。直流給電システム10aとの相違点について説明する。
【0048】
直流給電システム10bの直流遮断器25bは、複数(この実施形態では2つ)の主回路30a,30bを備える。前述の
図2のGaで説明したように、遮断処理で機械式スイッチ40のオンからオフへの切替が終了した後、半導体スイッチ44をオンからオフに戻す最後の処理が残されている。Gaでは、半導体スイッチ44を瞬時にオンからオフに切り替えるのではなく、リニア制御又はPWM制御で徐々にオンからオフに切り替える方式を説明した。
【0049】
直流給電システム10aのように、直流遮断器25aが1つの主回路30しか装備していない場合に、半導体スイッチ44をPWM制御でオンからオフに徐々に切り替えていくとき、PWM制御は、半導体スイッチ44がオンオフのサイクルを繰り返しつつ、デューティ比が徐々に増大する制御態様になっている。この場合、直流電源11のコイル要素の存在により半導体スイッチ44のオンオフの円滑性が阻害されることがある。
【0050】
これに対処して、直流給電システム10bの直流遮断器25bは、2つの主回路30a,30bのスイッチ制御部39同士が、交信線68を介して相互に交信し、主回路30a,30bの半導体スイッチ44の全部が同時にオフにならないように、すなわち、PWM制御期間にでは、複数のスイッチ制御部39のうち、少なくとも1つがオンになるように、制御される。
【0051】
また、主回路30a,30bの半導体スイッチ44が共にリニア制御でオンからオフに移行させるときは、主回路30a,30bに半導体スイッチ44の温度を検出する温度センサ(図示せず)を内蔵させる。そして、最初は、複数の半導体スイッチ44の全部を完全オン(両端抵抗が0Ωの状態)にさせて、直流電源11側のエネルギーを負荷13側に放出させる。
【0052】
その後、直流電源11側のエネルギーが減少するのに伴い、一方の半導体スイッチ44(主回路が3以上あるときは一部の半導体スイッチ44)のリニア制御を休止させる(オフに維持する。)。そして、他方の半導体スイッチ44のみでエネルギー放出を行う。その後に、その他方の半導体スイッチ44の温度が上昇すれば、再度、両方(主回路が3以上あるときは、2以上)の主回路30a,30bをリニア制御によりエネルギーを放出する。
【0053】
図8は、第3実施形態の直流給電システム10cの模式図である。直流給電システム10aとの相違点について説明する。
【0054】
直流給電システム10cの直流遮断器25cは、内部断路器73が他側主電流路32に追加装備される。
【0055】
内部断路器73は、常時は、オンに維持されている。スイッチ制御部39による遮断作業に伴い、機械式スイッチ40及び半導体スイッチ44が共にオフになる(
図3の時間t=t4より後)。次に、スイッチ制御部39は内部断路器73をオンからオフに切り替える。
【0056】
こうして、万一、半導体スイッチ44が破壊されていたとしても、機械式スイッチ40がオフに維持されている期間に、半導体スイッチ44を介する短絡が発生することを回避することができる。
【0057】
外部断路器17は、設備側遮断制御装置12により切替位置が制御される。異常状態発生時の設備側遮断制御装置12による外部断路器17のオンからオフへの切替は、機械式スイッチ40、半導体スイッチ44及び機械スイッチ51が全部オフになった後、実施される。外部断路器17の開路は、負荷13側への通電停止を保証するものである。
【0058】
図9は、第4実施形態の直流給電システム10dの模式図である。直流給電システム10aとの相違点について説明する。
【0059】
直流給電システム10dの直流遮断器25dは、放電部78を追加装備する。放電部78は、直流遮断器25dの主回路30dにおいて第2電流路36に接続される。詳細には、第2電流路36において半導体スイッチ44より他側主電流路32側の箇所に接続される。
【0060】
放電部78は、第2電流路36への接続点とグランドとを接続する放電電流路79を有する。放電電流路79には、第2電流路36への接続点側から順番に放電半導体スイッチ81及び放電抵抗83が設けられる。放電抵抗83は、スイッチ制御部39からの切替信号により切替位置が制御される。
【0061】
スイッチ制御部39は、設備側遮断制御装置12からの遮断の制御信号の受信前でかつ半導体スイッチ44及び機械式スイッチ40をオフに切り替えた後、外部断路器75をオンにする。これにより、直流電源11側の高電圧ケーブルのPFNエネルギーは、外部断路器17及び放電部78を介してグランドに放出される。
【0062】
図10は、第5実施形態の直流給電システム10eの模式図である。直流給電システム10aとの相違点について説明する。
【0063】
直流給電システム10eの直流遮断器25eは、アレスタ89を追加装備する。アレスタ89により、異常状態発生時の過大電流に因る直流遮断器25e内の素子の損傷が防止される。
【符号の説明】
【0064】
10a~10e・・・直流給電システム、12・・・設備側遮断制御装置、17・・・外部断路器、20・・・主電流路、25・・直流遮断器、30・・・主回路、31・・・一側主電流路、32・・・他側主電流路、35・・・第1電流路、36・・・第2電流路、39・・・スイッチ制御部、40・・・機械式スイッチ、44・・・半導体スイッチ、50・・・副回路、68・・・交信線、73・・・内部断路器、75・・・外部断路器、78・・・放電部、79・・・放電電流路、81・・・放電半導体スイッチ、89・・・アレスタ。