(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】ウエハ層を製造するための方法及び支持要素
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20250305BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/02 B
(21)【出願番号】P 2022527805
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2020079032
(87)【国際公開番号】W WO2021094052
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】102019130745.7
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518140298
【氏名又は名称】ネックスヴァーフェ・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】NEXWAFE GMBH
【住所又は居所原語表記】HANS‐BUNTE‐STRASSE 19, 79108 FREIBURG, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】レーバー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ミレンコヴィッチ,ネーナ
(72)【発明者】
【氏名】シルリンガー,カイ
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0137244(US,A1)
【文献】特開2001-089291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20-21/208
H01L 21/02
H10F 71/00-71/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ層(5)の製造方法であって、以下の方法ステップ、
A 支持要素(1)の用意、
B 少なくとも1つの表面で分離層(4)を作製するための前記支持要素(1)の多孔質化、
C 前記支持要素(1)の前記分離層(4)上に、エピタキシー法を使用したウエハ層(5)の成膜、及び
D 前記支持要素(1)からの前記ウエハ層(5)の剥離、その際方法ステップB~Dを少なくとも1
回、前記支持要素(1)を使用して繰り返し、
を含む製造方法において、
方法ステップAが
A1 支持基板(2)の用意、及び
A2 前記支持要素(1)を製造するために、シード層(3)を前記支持基板(2)の少なくとも1つの表面及び少なくとも1つの側面に、エピタキシー法を使用して成膜、
の方法ステップを含
み、
前記シード層(3)が、層厚(8)より大きい層幅(9)で成膜されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
方法ステップB~Dを複数回、前記支持要素(1)を使用して繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シード層(3)が、前記支持基板(2)の1つの表面及び全ての側面を被覆して成膜されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持基板(2)及び前記シード層(3)が、シリコン、ゲルマニウム又はガリウム砒素で形成されているか、又は形成されることを特徴とする、請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持基板(2)がnドープ又はpドープされ、その際にドーピング濃度は5×10
19cm
-3未満の範
囲にあることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シード層(3)が、前記支持基板(2)の少なくとも1つの表面上に、10μm~250μ
mの範囲の層厚(8)で成膜され、及び/又は前記シード層(3)が、前記支持基板(2)の少なくとも1つの側面に、10μm~600μ
mの範囲
の層幅(9)で成膜さ
れることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シード層(3)が、前記支持基板(2)の少なくとも1つの表面上に、40μm~80μmの範囲の層厚(8)で成膜されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シード層(3)が、前記支持基板(2)の少なくとも1つの側面に、50μm~250μmの範囲の層幅(9)で成膜されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記シード層(3)が、成膜中
に1×10
16cm
-3~5×10
19cm
-3の範
囲のドーピング濃度
でドープされることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シード層(3)が、成膜中にpドープされることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記支持基板(2)の
前記シード層(3)の反対側の表面に、前記シード層(3)の成膜前、成膜中又は成膜後に、接触層(6)が成膜、形成又は配置されることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記接触層(6)が、多結晶の半導体物質か
ら形成されているか又は形成され、及び/又は前記接触層(6)が前記支持基板(2)より突出して形成又は配置されることを特徴とする、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記接触層(6)が、ポリシリコンから形成されているか又は形成されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記接触層(6)が、0.1~20μmの範
囲の厚さを有することを特徴とする、請求項
11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記接触層(6)が
、前記支持基板(2)の前記シード層(3)の反対側の表面上で、
拡散層から、拡散によって、前記支持基板(2)内に形成さ
れることを特徴とする、請求項
11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記拡散層が、方法ステップA2中に前記支持基板(2)を保持するための保持要素によって形成されるか、又は方法ステップA2前に前記支持基板(2)の前記シード層(3)の反対側の表面に成膜されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シード層(3)が、不均一な層厚(8)で前記支持基板(2)上に成膜さ
れることを特徴とする、請求項1から1
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
支持基板(2)と、
前記支持基板(2)の少なくとも1つの表面及び少なくとも1つの側面に成膜されているエピタキシャルシード層(3)とを含み
、及び
前記エピタキシャルシード層(3)の少なくとも1つの表面の多孔質化によって形成される分離層(4)とを含んで
おり、
前記シード層(3)が、層厚(8)より大きい層幅(9)を有する、ウエハ層(5)を製造するための支持要素(1)。
【請求項19】
前記支持基板(2)がシリコン、ゲルマニウム又はガリウム砒素からなり、かつ、
前記エピタキシャルシード層(3)が前記支持基板(2)の1つの表面及び全ての側面に成膜されている、
請求項18に記載の支持要素(1)。
【請求項20】
前記シード層(3)が、前記支持基板(2)の少なくとも1つの表面上に、10μm~250μmの範
囲の層厚(8)を有し、及び/又は前記シード層(3)が、上記支持基板(2)の少なくとも1つの側面上に、10μm~600μmの範
囲の層幅(9)を有することを特徴とする、請求項1
8又は19に記載の支持要素(1)。
【請求項21】
前記シード層(3)が、前記支持基板(2)の少なくとも1つの表面上に、40μm~80μmの範囲の層厚(8)を有し、及び/又は前記シード層(3)が、上記支持基板(2)の少なくとも1つの側面上に、50μm~250μmの範囲の層幅(9)を有することを特徴とする、請求項20に記載の支持要素(1)。
【請求項22】
前記支持基板(2)
の前記シード層(3)の反対側の表面に
、接触層(6)が配置されていることを特徴とする、請求項
18~
21のいずれか一項に記載の支持要素(1)。
【請求項23】
前記接触層(6)はポリシリコンからなる、請求項22に記載の支持要素(1)。
【請求項24】
請求項1
8~
23のいずれか一項に記載の支持要素(1)と、前記分離層(4)に配置されている
、エピタキシャルウエハ層(5)とを含む、中間産物(10)。
【請求項25】
前記エピタキシャルウエハ層(5)はシリコンからなる、請求項24に記載の中間産物(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブル記載のウエハ層の製造方法及び請求項12に記載のウエハ層を製造するための支持要素に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大面積発光素子又は大面積太陽光電池のような大面積電子コンポーネント、あるいは例えば半導体ダイオードのような量産品には、電子的に高品質かつ低コストの半導体ウエハが求められる。なぜならこれらのデバイスにおいて、上記半導体ウエハの材料コストが製品全体のコストに占める割合が大きいからである。半導体ウエハ製造では、シリコンブロック(「インゴット」)からソーイング法で半導体ウエハを製造する方法が公知である。これにより、高価値の、特に単結晶の半導体ウエハが製造される。しかし上記製造コストが高い上に、シリコンブロックをソーイング処理する際には材料ロスが生じる。
【0003】
そのため、ウエハ層を支持要素上に析出させた後に支持要素から剥離させるという、別の方法が開発された。剥離したウエハ層は、電子デバイスを製造するための半導体ウエハとなる。
【0004】
従来技術では、支持基板の部分表面に多孔質の分離層を形成し、その後エピタキシャルプロセスでウエハ層を上記支持基板に析出する方法が公知である。上記ウエハ層を上記支持基板から剥離するために、レーザー光線を使用して分離切断する。この切断は半導体層を完全に貫通し、少なくとも部分的に上記分離層又は上記支持基板にまで達する。
【0005】
しかし、上記支持基板の端縁領域で上記ウエハ層の一部が上記支持基板に残り、取り除くのが困難であるという欠点が判明している。さらに、上記分離切断によって上記支持基板又は上記分離層も損傷するため、多くの場合、上記支持基板が別のウエハ層の製造に再使用できなくなるか、又は多額の費用をかけて調整が必要になるにもかかわらず再利用可能性が限定的になる。
【0006】
半導体層の公知の製造方法の最適化は、例えば独国特許出願公開第102015118042号明細書で公知である。この場合、支持基板にウエハ層を成膜する前に、上記支持基板の少なくとも1つの加工面の全面に分離層を形成し、及びウエハ層を加工面上に及び上記支持基板の少なくとも1つの端縁側に重複して成膜し、上記ウエハ層を上記支持基板から分離する際に上記ウエハ層の重複した範囲が除去される。
【0007】
上記重複成膜により、上記ウエハ層は完全に上記分離層又は上記支持基板から剥離される。上記支持基板の再利用可能性を高めるためには、剥離後に上記ウエハ層の残留物が上記支持基板上にないことが重要である。そのためには、上記支持基板における上記重複範囲の分離時にトリミングも行い、数マイクロメーター削り取る必要があり、その結果使用するたびに上記支持基板の横方向寸法が縮小する。上記支持基板が最小寸法を下回ると、支持基板としてさらなるウエハ層の製造に使用できなくなる。
【0008】
工業用途では、ウエハ層製造時のコスト削減、特に支持基板の再利用可能性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第102015118042号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、支持基板の再利用可能性を高め、ウエハ層の製造コストを削減することである。
【0011】
本発明の課題はさらに、ウエハ層の製造における品質をさらに改善し、特に支持基板又は分離層に起因するエラーを低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本課題及びさらなる課題は、請求項1に記載のウエハ層の製造方法、請求項12に記載のウエハ層を製造するための支持要素、及び請求項16に記載の中間産物により解決される。本方法の有利な実施形態は、請求項2から11に記載したとおりである。ウエハ層を製造するための上記支持要素の有利な実施形態は、請求項13から15に記載したとおりである。
【0013】
本発明による半導体層の製造方法は、以下の方法ステップを有する。
【0014】
最初の方法ステップAは、支持要素を用意することを含む。方法ステップBは、分離層を形成するために、上記支持要素の少なくとも1つの表面における、上記支持要素の多孔質化を含む。特に、上記多孔質化によって、上記分離層は少なくとも部分的に、上記支持要素の1つ又は複数の側面に沿っても形成され得る。方法ステップCでは、エピタキシー法により上記支持要素の上記分離層にウエハ層を成膜する。さらなる方法ステップDでは、上記ウエハ層を上記支持要素から剥離する。本方法のさらなる特徴は、方法ステップBからDを、少なくとも1回、好ましくは数回、上記支持要素で繰り返すことである。
【0015】
この方法ステップは、従来技術で公知である。剥離した上記ウエハ層は、電子デバイスの製造に使用され、及び特に太陽光電池の製造に使用される。
【0016】
本発明による方法の特徴は、方法ステップAがさらなる方法ステップA1及びA2を含み、方法ステップA1では支持基板が用意され、及び方法ステップA2では上記支持要素を製造するために上記支持基板の少なくとも1つの表面及び少なくとも1つの側面にエピタキシー法によりシード層を成膜することである。
【0017】
特に、本発明による方法では、ウエハ層の品質を損なうことなく、上記支持要素がウエハ層製造のために複数回使用され得る。
【0018】
特に、本発明による方法は、従来技術と比べ、上記支持基板の、より高頻度な使用が可能になる。なぜなら、上記支持基板上に上記エピタキシャルシード層及び上記分離層を再生可能だからである。上記支持要素が最低寸法に達すると、ここで上記支持要素の最低寸法とは少なくとも上記支持基板の寸法に相当するが、上記シード層が再度エピタキシー法で上記支持基板上に成膜され、及び上記支持要素が再調整され得る。これは、特に上記支持基板の品質及び特性、特に寸法が、方法全体にわたって全く変化しないか又はわずかな範囲しか変化しないことで可能になる。
【0019】
さらに、本発明による方法は、上記支持要素、特に上記エピタキシャルシード層を、多孔質化のような後続の方法ステップのために必要な特性に適合させることを可能にする。これにより、特別で高価であることの多い上に、特殊な性質のためにしばしば品質の低い支持基板は不要になる。
【0020】
特に上記エピタキシャルシード層は、ゾーンメルティング法や結晶成長法で製造される支持基板と比べて、特に結晶構造及び電子特性に関して高い品質と均質性を備えている。
【0021】
多数のウエハ層を製造するために支持基板を高頻度で使用することで、特に結晶品質及び表面に関して、特に非常に価値の高い支持基板が使用され得る。結晶構造及び/又は支持基板表面にエラーがあると、エピタキシャルシード層及びウエハ層の品質に直接影響する。特に、結晶構造及び/又は支持基板の表面にエラーがあると、シード層及びウエハ層の結晶構造にさらなるエラーが誘発され得る。
【0022】
このため、高価な支持基板を使用すると、エピタキシー法を使用してさらなる層を成膜する際に、高い品質と製造工程における高い歩留まりとが得られる。特に、高価な支持基板の高いコストは、ウエハ層の製造のために支持基板を高頻度で使用することにより、及び上記支持基板をベースにした支持要素を再調整することにより償却され、その結果ウエハ層の製造におけるコスト低減が全体として達成可能である。
【0023】
有利には、方法ステップB~Dは、1つの支持要素を使って、少なくとも10回、好ましくは少なくとも20回、特に好ましくは少なくとも30回実施される。
【0024】
特に1つの支持要素は、1つの支持基板及び1つのエピタキシャルシード層を含み、あらかじめ決められた支持要素の最低寸法に達するまで、あるいはわずかに下回るまで、特に好ましくは10μm未満、特に好ましくは5μm未満、最高に好ましくは3μm未満で、ウエハ層の製造に使用される。
【0025】
最低寸法とは、上記支持要素の横方向の寸法であり、及び特に好ましくは垂直方向も含む。
【0026】
特に、上記支持基板の寸法は、横方向の、及び特に好ましくは垂直方向の、上記支持要素の最低寸法を示し得る。
【0027】
有利には、上記支持要素が最低寸法に達するか又は下回ると、再調整され得、その後、引き続き支持要素としてウエハ層製造に使用され得る。
【0028】
好ましくは、上記支持要素の再調整は、その前に使用された支持基板に方法ステップA2を実施することによって行われる。
【0029】
すでに使用された支持要素に対して、再度方法ステップA2を実施する前に、この支持要素又は前記支持基板に最初の調整が実施され、その結果すでに使用された支持要素上に品質的に高価値のシード層を再び形成することが可能になり得る。
【0030】
特に、再使用のために用意された支持要素又は支持基板は、研磨又は研削のような機械処理、又はエッチングのような化学処理、又は化学処理と機械処理の組み合わせで、方法ステップA2の前に調整され得、その結果その上にシード層が成膜される、特に高価値の表面を有する。
【0031】
支持要素の再調整によって、ウエハ層の製造のために、元の支持基板が何倍も高頻度で使用できる。特に何倍も高頻度な使用によって、品質的に高価値の支持基板が使用され得、それによって同時にウエハ層の品質も高められ得る。たとえ品質的に高価値の支持基板が高コストであっても、個々のウエハ層の製造コストは、何倍も高頻度で支持基板を使用することで、特に支持基板を含む支持要素を再調整することで、低減される。
【0032】
上記シード層及び上記ウエハ層のエピタキシーは、好ましくは同じエピタキシー装置で実施される。別法として、上記シード層及び上記ウエハ層は異なるエピタキシー装置で実施されてもよい。
【0033】
好ましくは、支持基板は支持要素内で、少なくとも50の、好ましくは少なくとも100の、特に好ましくは少なくとも150のウエハ層を製造するために使用される。
【0034】
特に、上記支持基板は滑らかに研削又は研磨された表面を有し得る。上記エピタキシャルシード層及び上記ウエハ層の品質は、したがってさらに改善され得る。
【0035】
全体として、本発明による方法により、上記ウエハ層の品質は、特に結晶構造及び電子特性に関して改善され得ると同時に、製造時に上記支持要素の再利用可能性及び再生可能性によってコストを削減し得る。
【0036】
上記エピタキシャルシード層及び上記エピタキシャルウエハ層は化学気相反応法又は物理気相反応法又はこれらの混合法により成膜される。特に、上記シード層及び上記ウエハ層の成膜は、化学化学気相エピタキシー法により行われる。エピタキシー法は、特に結晶構造に関して及び異物混入の少ない、品質的に高価値の層の製造を可能にする。
【0037】
上記分離層は、好ましくはそれ自体周知の方法で、多孔層として形成される。特に上記分離層を形成するために、有利には、上記支持基板がそれ自体周知の方法で、特に例えば独国特許出願公開第102013219839号明細書に記述されているようなエッチング工程により多孔質化される。
【0038】
好ましい一実施形態では、シード層が上記支持基板の1つの表面及び全ての側面を被覆して成膜される。
【0039】
したがって、1つの材料からなる均一な、特に均質な面が、核形成層として上記ウエハ層の製造のために用意され得、及びエラー原因となる箇所が上記シード層の外側、特に上記支持基板で、回避され得る。
【0040】
さらに、上記支持基板の被覆により、少なくとも1つの表面及び全ての側面で、方法ステップBの多孔質化中の不均等性が回避され得る。
【0041】
特に上記シード層は上記支持基板の全ての表面及び全ての側面に成膜されて上記支持基板が完全に被覆され得る。これにより、上記支持基板は完全にシード層に囲まれている。
【0042】
また、有利には、上記支持基板を被覆することにより、少なくとも1つの表面及び全ての側面で支持基板が損傷から保護され得、及びこれによって再利用可能性がさらに上昇し得る。
【0043】
本方法の有利な実施形態は、上記支持基板及び上記シード層がシリコン、ゲルマニウム又はガリウム砒素で形成されているか又は形成されることが特徴である。
【0044】
シリコンは高品質で大量且つ大面積での使用にも利用できるため、上記支持基板へのシリコン使用は特に適している。好ましくはシリコン製支持材上の上記シード層も、支持要素を1つの材料で形成するためにシリコンで形成されている。
【0045】
好ましくは上記支持基板のドープは低濃度である。
【0046】
低濃度でドープされた支持基板は、高品質で製造され得る。なぜなら低濃度のドーピングによって本来のドーパントのほかに微量の不純物が混入し、それによって特に支持基板の格子構造にエラーが生じ、及びエピタキシャルシード層の構造にさらなるエラーを誘発し得るからである。
【0047】
本方法の別法の一実施形態では、上記支持基板はnドープ又はpドープされ、その際にドーピング濃度は5×1019cm-3未満の範囲、好ましくは1×1018cm-3未満の範囲、特に好ましくは1×1017cm-3未満の範囲、最も好ましくは5×1015cm-3の範囲にある。
【0048】
上記支持基板のドーピング濃度が上述の範囲で低い場合、特に上記シード層がより高いドーピング濃度の同じドーパントでドープされる場合、シード層の特性に好影響が与えられる。
【0049】
好ましくは、上記支持基板は、ドーピング濃度が低いことでその他の不純物の濃度も低いため、上記シード層及び上記ウエハ層でも不純物濃度が低く、それによって層品質が高まる。
【0050】
有利には、シリコン製又はゲルマニウム製の支持基板のドーピングのために、ドーパントにはボロン、燐、ガリウム又は砒素が使用される。
【0051】
上記支持基板の電導度は、特に10Ohmcmの値を下回る。好ましくは、支持基板の電導度は、望ましくは2mOhmcm~3000mOhmcmの範囲、好ましくは10mOhmcm~200mOhmcmの範囲、特に100mOhmcm前後である。
【0052】
本方法の好ましい一実施形態の特徴は、上記シード層が上記支持基板の少なくとも1つの表面に、10μm~250μmの範囲、好ましくは25μm~100μmの範囲、特に好ましくは40μm~80μmの範囲の層厚で成膜されることである。
【0053】
代替又は追加の方法として、10μm~600μmの範囲、好ましくは25μm~400μmの範囲、特に好ましくは50μm~250μmの層幅でシード層が支持基板の少なくとも1つの側面に成膜される。
【0054】
上記ウエハ層を上記支持要素から剥離する際、特に剥離するウエハ層をトリミングし、上記支持要素を多孔質化することにより、層厚及び層幅を削減し得る。適切な層厚又は層の厚さであることで、同じ支持要素でウエハ層を製造するために、支持要素の最低寸法に達するまで、方法ステップB~Dのサイクルを何度も繰り返し実行できる。
【0055】
特に上記シード層は、層厚より層幅が大きくなるよう成膜される。
【0056】
上記支持要素を再利用するために、別のウエハ層を形成する前に、先に成膜されたウエハ層を完全に剥離しておくことが必要である。上記ウエハ層を上記支持要素から完全に剥離するためには、通常、ウエハ層を剥離するたびに、上記支持要素もわずかに、特に2μm~20μmの範囲でトリミングすることが必要である。
【0057】
ウエハ層を上記支持要素から剥離する際、上記支持要素はその寸法がわずかに、特に2μm~20μmの範囲で縮小する。しかし、通常、ウエハ層の剥離の際、層幅は層厚より多く縮小される。したがって層幅を大きくすることで、層幅だけでなく層厚の最低寸法に達するまで、方法ステップB~Dのサイクルは、より多くの回数実行できる。
【0058】
層幅が層厚よりも大きいことで、ウエハ層を剥離する前にも支持要素からはみだした材料を相応に切断するため、より大きな許容範囲で及び相応して低コストの装置で、ウエハ層エッジのトリミングが実施できる。
【0059】
本方法の別法の一実施形態では、上記シード層が1×1016cm-3~5×1019cm-3の範囲、好ましくは1×1017cm-3~3×1019cm-3の範囲、特に1×1018cm-3~1×1019cm-3の範囲のドーピング濃度で、成膜中にnドープ又はpドープされる。
【0060】
エピタキシー中のシード層にドーピングすることにより、シード層はドーパントの高純度化によって品質を向上させ得る。特に、ゾーンメルティング法又はチョクラルスキー法のような結晶成長法を使用して製造されたブロックから切り出された支持要素と比べて、不純物、特に金属の侵入は、10倍を上回って、特に50倍を上回って削減し得る。不純物の侵入量が削減されると、シード層の品質が、ひいてはウエハ層の品質も向上する。
【0061】
さらに、不純物は分離層の形成及び多孔質化のプロセスにも影響し得るため、不純物の侵入が少なくなると、ここでも、特に表面上で分離層が均質に形成されることに好影響を与える。
【0062】
さらに、シード層のドーピングにより、多孔質化中に支持要素のシード層の電気接触が良好になり、エッチング工程に有利な効果をもたらす。
【0063】
有利には、シリコン製又はゲルマニウム製のシード層にドーピングするために、ドーパントのボロン、燐、ガリウム又は砒素が使用される。
【0064】
上記シード層の電導度は、望ましくは2mOhmcm~500mOhmcmの範囲、好ましくは、5mOhmcm~25mOhmcmの範囲、特に15mOhmcm前後である。
【0065】
好ましくは、上記シード層と反対側の支持基板の表面上に、上記シード層の成膜前、成膜中又は成膜後に、接触層が成膜、形成、又は配置される。
【0066】
上記接触層は、特に多孔質化プロセスに重要な、支持要素との良好な接触、特にドライ接触を可能にする。上記接触層の特性は、ここでは、支持要素、支持基板及び/又はシード層の特性とは無関係に、それぞれの状態に合わせて適合され得る。好ましくは、上記接触層は金属又は金属に類似した電気的特性を有している。
【0067】
本方法の有利な一実施形態は、拡散層からシード層と反対側の支持基板の表面上に拡散することで、上記接触層が上記支持基板内へ形成され、上記拡散層は、特に、方法ステップA2中に上記支持基板を保持するための保持要素によって形成されるか、又は方法ステップA2の前に上記シード層と反対側の支持基板の表面上に成膜されることを特徴とする。
【0068】
固体拡散によって、上記シード層の製造中にすでに接触層を低コストで形成し得る。そのため、接触層を独立して配置したり成膜したりするような、さらなる方法ステップは不要である。
【0069】
本方法の別の有利な一実施形態は、上記接触層が多結晶半導体物質、特にポリシリコンで形成されているか形成されることを特徴とする。
【0070】
多結晶物質には、低コストで、上記支持要素のドライ接触が良好であるという利点がある。
【0071】
好ましくは、多結晶の又は高濃度ドープされた、特にドーパントとして燐をドープされた接触層によって、汚染物質が特に支持基板から、ゲッターで除去されるか、又は固定化され得る。これにより、上記シード層の品質はさらに改善される。
【0072】
代替又は追加の方法として、上記接触層は上記支持基板の上に突出するように形成されるか又は配置される。
【0073】
好ましくは、上記接触層は0.1~20μmの範囲、特に1~12μmの範囲の厚さを有する。上記接触層の厚さは、特にその役割と特性に合わせられ、特に、接触層の好ましい厚さが、支持要素の良好な接触と十分な安定性を実現する。
【0074】
本方法の別法の一実施形態は、上記シード層が不均一な層厚で上記支持基板上に成膜され、特に好ましくは上記層厚が、少なくとも1つの、好ましくは上記支持基板の向かい合っている2つの側面に向かって、増大するか又は減少することが特徴である。
【0075】
さらに好ましくは、シード層の中心から側面への層厚の変化が、特に連続的であり得る。
【0076】
不均一な層厚を形成することで、多孔質化プロセス中の不均一性が、特に印加電流及び電界に関して、緩和される。
【0077】
本発明はさらに、請求項12に記載のウエハ層を製造するための支持要素に関するものである。
【0078】
上記支持要素は、特にシリコン、ゲルマニウム又はガリウム砒素から形成された支持基板と、上記支持基板の少なくとも1つの表面及び少なくとも1つの側面に成膜されたエピタキシャルシード層と、エピタキシャルシード層の少なくとも1つの表面の多孔質化によって形成された分離層とを備えている。
【0079】
好ましくは、上記シード層は上記支持基板の1つの表面及び全ての側面を被覆する。
【0080】
特に上記シード層は上記支持基板の全ての表面及び全ての側面に成膜されていて、上記支持基板は完全に被覆され得る。
【0081】
そのため上記支持基板は、上記支持基板の再利用可能性に影響する外的影響から保護され得る。
【0082】
上記支持要素の有利な一実施形態の特徴は、上記シード層が上記支持基板の少なくとも1つの表面上で、10μm~250μmの範囲、好ましくは25μm~100μmの範囲、特に好ましくは40μm~80μmの範囲の層厚を有していることである。
【0083】
代替又は追加の方法として、上記シード層は上記支持基板の少なくとも1つの側面上で、10μm~600μmの範囲、好ましくは25μm~400μmの範囲、より好ましくは50μm~250μmの範囲の層幅を有している。
【0084】
ウエハ層を上記支持要素から剥離する際、特に剥離するウエハ層をトリミングし、上記支持要素を多孔質化することにより、層厚及び層幅を削減し得る。適切な層厚又は層の厚さであることで、同じ支持要素でウエハ層を製造するために、上記支持要素の最低寸法に達するまで、方法ステップB~Dサイクルを何度も繰り返し実行できる。
【0085】
有利には、上記シード層と反対側の支持基板表面上に、好ましくは多結晶の半導体物質製の、特にポリシリコンの接触層が配置されている。
【0086】
上記接触層は、上記支持要素を上記シード層の製造中に保持する保持要素から、又は上記シード層と反対向きの上記支持基板表面上に成膜されたドーパント含有層から、上記支持基板へ特に固体拡散によって形成し得る。これにより、上記接触層を上記支持要素に成膜又は配列するための独立した方法ステップなしで、上記接触層を低コストで製造できる。
【0087】
上記接触層により、特に多孔質化中に上記支持要素との接触が良好になる。
【0088】
本発明による支持要素は、好ましくは本発明による方法、特にその有利な一実施形態による半導体層の製造に使用される。
【0089】
本発明はさらに、請求項16に記載のウエハ層の製造過程における中間産物に関するものである。
【0090】
上記中間産物は、上述のような本発明による支持要素、特に上記支持要素の有利な実施形態と、上記分離層に配置されているエピタキシャルウエハ層を含んでいる。
【0091】
上記中間産物は、好ましくは本発明による方法、特にその有利な一実施形態による半導体層の製造に使用される。
【0092】
さらなる有利な特徴及び実施形態は、実施例及び図を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1a】本発明によるウエハ層の製造方法の一実施例を示す図である。
【
図1b】本発明によるウエハ層の製造方法の一実施例を示す図である。
【
図1c】本発明によるウエハ層の製造方法の一実施例を示す図である。
【
図1d】本発明によるウエハ層の製造方法の一実施例を示す図である。
【
図2】本発明による支持要素の一実施例を示す図である。
【
図3a】本発明による支持要素のさらなる一実施例を示す図である。
【
図3b】本発明による支持要素のさらなる一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
すべての図は概略図であって、正確に縮尺された図ではない。図中において、同一もしくは機能的に同一の要素には同一の符号が付されている。
図1~
図3は、その上にシード層3が成膜される支持基板2の表面又は支持要素1の表面であり、常に上側にある。
【0095】
図1のa)~
図1のd)には、本発明によるウエハ層の製造方法が示されている。
【0096】
図1のa)に示すように、方法ステップA1で用意された支持基板2に、方法ステップA2でエピタキシー法によりシード層3を析出し、支持要素1を形成し、当該支持要素を使用してウエハ層5が製造された。上記シード層3は、上記支持基板2の上側表面及び側面を完全に被覆している。上記上側表面反対側にある上記支持基板2の下側面は上記シード層3によって覆われていない。
【0097】
上記支持基板2は、ゾーンメルティング法又は結晶成長法によって製造された、特にシリコン製の半導体である。上記支持基板2の厚さは250μm~1000μmの範囲にある。上記支持基板2は基本形状が正方形であり、当該支持基板の側縁の長さは100mm~300mm、特に140~170mmである。上記支持基板2は、正方形の基本形状のほかに、角を面取りした/丸角の疑似正方形形状又は円形、楕円形、長方形の形状を有することも可能である。
【0098】
上記支持基板2は、横方向の寸法12を有し、当該寸法に、上記支持基板2の側面で上記シード層3の層幅9が接続しているために、上記支持要素1は全体で横方向の寸法11を有している。
【0099】
上記支持基板2の表面上には、層厚8を有するシード層3が成膜されている。
図1のa)に示すように、上記層厚8は、上記層幅9と実質的に同じである。
【0100】
上記シード層3は、エピタキシー法により、特に化学気相反応法により、上記支持基板2上に成膜されている。エピタキシー法により品質的に高価値の層が形成され、当該層は、相応して品質的に高価値のシード層3を製造するための、重要な出発点である。特に、エピタキシー法により、上記シード層3は必要な要件に、特に結晶品質及び電気特性に関して、後続のプロセスで適合され得る。
【0101】
上記支持要素1の製造に続く方法ステップBにおいて、
図1b)に示したように上記支持要素1の表面上に、及び少なくとも部分的に側縁に、したがって表面及び少なくとも部分的には上記シード層3の表面上に、及び少なくとも部分的に側縁に、多孔質の分離層4が形成される。上記分離層4は、最大3μm、この場合、約2μmの厚さ又は厚みを有する。上記分離層4はエッチング、特に多孔質化によって上記支持要素1上に形成され、及び例えば独国特許出願公開第102013219886号明細書に記載されているように実施され得る。上述された方法により、上記支持要素1の表面上に上記分離層4が全面に形成され得る。
【0102】
さらなる方法ステップCでは、上記支持要素1の上記分離層4上にエピタキシャルウエハ層5が析出される。上記ウエハ層5上記支持要素1の側面と部分的に重なっており、さらに上記支持要素1の側面の一部にわたって延びていてよい。上記ウエハ層5が広範囲に形成されることで、上記ウエハ層5の端縁領域まで、高い品質を確保できる。このことは、
図1c)に示されている。
【0103】
上記支持要素1及び上記ウエハ層5を含む産物は、中間産物10とも呼ばれる。
【0104】
さらなる方法ステップでは、このように製造された、上記支持要素1及び上記ウエハ層5を含む上記中間産物10が上記支持要素1の側面でトリミングされる。トリミングにより、上記支持要素1を超えて突出した上記ウエハ層5部分7が、場合により上記支持要素1の側面に付着したウエハ層5の別の部分も、
図1d)に示されたように、除去される。
【0105】
このトリミングはレーザー光線によって行われる。別法として、トリミングは、ソーイング又は研削のような機械加工によっても行われ得る。特に、トリミングによって、上記支持要素1に付着した上記ウエハ層5の一部を除去できるため、上記支持要素1の再使用が可能になる。しかしながら、通常は、そのために上記支持要素1の側面から最小限の材料を除去することも必要であるため、方法ステップAにおける横方向寸法11よりも小さい横方向寸法11’が得られる。
【0106】
上記中間産物10のトリミング後、方法ステップDにおいて上記ウエハ層5を上記支持要素1から剥離する。
【0107】
上記支持要素1では、上記ウエハ層5の剥離後に、
図1b)~
図1d)に示されたように再び方法ステップB~Dが進行し、さらなるウエハ層5が作製される。
【0108】
上記支持要素1の横方向寸法11’がより小さいことは、上記支持要素1に以前に成膜されたウエハ層5の残留物がなく、及び上記支持要素1の横方向寸法11’がより小さく、特に好ましくは上記支持要素の厚さ11が最低寸法を下回らない限りにおいて、上記ウエハ層5の製造に悪影響は及ぼさない。したがって、上記方法ステップB~Dのサイクルは、上記支持要素1が最低寸法に達するか、又はわずかに下回るまで、任意の回数繰り返される。
【0109】
最小寸法の下限は、横方向寸法12と、上記支持基板2の厚さである。上記横方向寸法11’が上記横方向寸法12に、又は上記支持要素1の対応する厚さが上記支持基板2の厚さに近づくと、上記支持要素1は、上記方法ステップA2が実施され及びその結果新たにシード層3が上記支持要素1又は上記支持基板2上に成膜されることで、調整される。
【0110】
上記方法ステップA2を新たに実施する前に、すでに使用された支持要素1の上に、この支持要素1又は上記支持基板2で最初の調整が行われ、その結果、品質的に高価値のシード層3が、すでに使用した上記支持要素1の上に再び形成され得る。そのために、再使用のために用意された上記支持要素1又は上記支持基板2は、研磨又は研削のような機械処理、又はエッチングのような化学処理、又は化学処理と機械処理の組み合わせで、上記方法ステップA2の前に調整され得、その結果その上に上記シード層3が成膜される、特に高価値の表面を有する。
【0111】
上記支持要素1の寸法11’が上記支持基板2の寸法12と実質的に等しい場合、上記支持要素1を再調整するために、以前に使用した上記支持基板2の上にあらたにシード層3が形成され、その結果
図1a)に示すように、これが元の横方向寸法11の支持要素1に再調整される。この再調整された支持要素1は、ここで再びウエハ層5の製造のために使用され、その際に新しい支持基板2を使用する必要はない。上記支持要素1を再調整することで、
図1b)~
図1d)に示すように、支持基板2は少なくとも50回、ウエハ層5の製造に使用され得る。
【0112】
上記シード層3の層厚8も層幅9も、10μm~250μmの範囲にあり、好ましくは25μm~100μmの範囲にあり、特に好ましくは40μm~80μmの範囲にある。上記シード層3の層厚8も層幅9も、上述のように、品質的に高価値のシード層3を製造できる利点があり、当該シード層を相応のプロセスで許容される時間で製造可能である。
【0113】
ウエハ層5製造のための品質のような、所与のパラメータに応じて、上記支持基板2だけでなく上記シード層3も、ドーピングあり又はなしですませることができる。
【0114】
特に、上記支持基板2は、5×1019cm-3未満の範囲、好ましくは1×1018cm-3未満の範囲、特に好ましくは1×1017cm-3未満の範囲、最も好ましくは5×1015cm-3の範囲のドーピング濃度でnドープ又はpドープされており、この場合は1.5×1016cm-3のドーピング濃度、ドーパントとしてボロンを使用したpドープである。ゾーンメルティング法又は結晶成長法を使用した、ドープされた支持基板2の製造においては、結晶構造への不純物混入、特に金属、酸化物、窒化物又は炭化物のような不純物の混入、及びアグロメレートの形成が生じ、それによって最終的に、不純物及びドーパントの不均等な分布によって上記支持基板2の全体的な品質と価値が低下する。
【0115】
品質的に高価値の層の出発点は、すでに品質的に高価値である支持基板2及びシード層3である。したがって、品質的に高価値の、ひいては通常やはり高価格の基板を、支持基板2として使用する必要がある。なぜなら支持基板2の品質は、結局のところウエハ層5の品質にも決定的に影響するからである。そのため、ドーピング濃度が低い支持基板2を使用することが好ましい。支持基板2は、ドープされている場合、pドープされ、特に元素ボロンを有している。
【0116】
支持基板2を最大150回以上繰り返し使用して多数のウエハ層5を製造することで、高価値の支持基板2の高い初期費用は問題ではなくなるため、ウエハ層5の品質を高めながらさらなるコスト低減が達成される。
【0117】
しかし、特に方法ステップBにおいて、支持要素1がドープされていると、分離層4の形成には有利である。
【0118】
このことは、ここでは、分離層4が多孔質化によって形成されているシード層3のドープにより、特にpドープにより、可能になる。シード層は、ここでは、1×1016cm-3~5×1019cm-3の範囲、好ましくは1×1017cm-3~3×1019cm-3の範囲、特に1×1018cm-3~1×1019cm-3の範囲のドーピング濃度を有し、ここでは、ドーパントとして元素ボロンを濃度5×1018cm-3で使用したpドープを提示する。
【0119】
シード層3のエピタキシャル形成により、ドーパント元素を使ったシード層のドーピングよりも均一に、最大で100倍、不純物の混入が軽減される。なぜならエピタキシー法ではドーパント元素又はドーパント物質が特別高純度で存在するからである。さらに、ウエハ層5で誘発される積層エラーの一因である酸素の混入は、エピタキシー法による結晶構造内よりも最大で20倍低減される。均一なドーピングにより、シード層3上での分離層4の形成も、より均一になり、それによって、その上に製造されるウエハ層5の品質にも好影響を与える。
【0120】
図2は、支持要素1の特別な実施形態である。上記支持要素1は、同様に、支持基板2及びシード層3を有し、上記シード層3は上記支持基板2上に、層厚8より大きい層幅9で成膜されている。
【0121】
ウエハ層5の各製造工程の後、方法ステップB~Dでは、上記支持要素1の横方向寸法11だけでなく、上記シード層の層厚8も減少する。上記支持要素1の横方向寸法11’は、上記ウエハ層5をさらなるウエハ層5の製造前に完全に除去するために、特に上記ウエハ層5又は上記支持要素1のトリミングによって減少する。上記シード層3の層厚8も、方法ステップBにおける各エッチング工程で減少する。
【0122】
トリミングにより、上記支持要素1の横方向寸法11は、多孔質化による上記シード層3の層厚8よりも、各ウエハ層5で著しく減少する。特に、上記支持要素の側面のトリミングはより大きい変動を受けし、対応するトリミング装置にも依存する。ウエハ層5の製造コストを低減するために、特に、上記支持要素1の側面の除去に関して許容範囲がより大きいトリミング装置も使用され、当該許容範囲は2μm~20μmの範囲にあり、ここでは約5μmである。ただ1つの支持要素1を使用したウエハ層5製造サイクルの最大可能回数を、当該支持要素1の調整前に実現にするため、上記シード層3の層幅9を、上記シード層3の層厚8と比べてより厚く形成すると有利である。
【0123】
図3a)及び
図3b)では、それぞれ1つの支持要素1が示されており、上記シード層3の反対側の上記支持基板1の表面に、接触層6を有している。
【0124】
上記接触層6は、すでに上記シード層3の成膜前に、気相反応法又は拡散によって上記支持基板2上に成膜されるか又は当該支持基板と接続されている。しかし、上記シード層3の成膜中又は成膜後に上記接触層6を成膜することも、本発明の範疇である。上記接触層6の成膜は、方法ステップBの前に行われる。なぜなら、方法ステップBにおける多孔質化のプロセスには、上記支持要素1との良好な接触が重要だからである。
【0125】
上記接触層6は、多結晶の半導体物質、特にポリシリコンで形成されており、これらの材料は、良好なドライ接触性を、上記支持要素1の多孔質化中に可能にする。上記接触層6の良好な接触性、特に良好なドライ接触性のために、これらの材料は、少なくとも金属の電気的特性に類似する電気的特性を有している。
【0126】
上記接触層6の横方向寸法は、上記支持基板2の横方向寸法12とほぼ等しいか、又は上記支持基板2の横方向寸法12を超えている。特に、上記接触層6の横方向寸法は、上記支持要素1の横方向寸法11よりも小さくし得る。上記接触層6の厚さは、0.1~20μmの範囲、ここでは約10μmであり、したがって上記支持基板2の厚さを著しく下回り、また上記層厚8よりも小さい。
【0127】
図3a)に示すように、上記接触層6は、上記支持基板2よりも大きい横方向寸法を有しており、当該寸法は上記支持要素1の横方向寸法11と同じである。このため、上記層厚8に比べて上記層幅9が著しく大きい。方法ステップB~Dのサイクル中、上記支持要素1のトリミング及びそれに続く上記ウエハ層5の剥離による横方向の減少は、層厚8の減少よりも大きい。したがって、上記支持要素1が、層厚8と比べてより大きい層幅9を、上記支持基板1上に成膜すると有利である。
【0128】
上記接触層6が全面に形成されているために、上記ウエハ層5の剥離後の、上記支持要素1の横方向寸法11の減少とは無関係に、常に良好な、特にドライ接触が確保される。
【符号の説明】
【0129】
1 支持要素
2 支持基板
3 シード層
4 分離層
5 ウエハ層
6 接触層
7 部分
8 層厚
9 層幅
10 中間産物
11 支持要素寸法
11’ 支持要素寸法
12 支持基板寸法