(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】カルボン酸塩系化合物の二酸化炭素捕捉用吸収剤としての使用
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20250305BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20250305BHJP
C07C 53/126 20060101ALN20250305BHJP
C07C 211/63 20060101ALN20250305BHJP
C07F 9/54 20060101ALN20250305BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
C01B32/50
C07C53/126
C07C211/63
C07F9/54
(21)【出願番号】P 2023528494
(86)(22)【出願日】2021-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2021120628
(87)【国際公開番号】W WO2022111026
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】202011359524.1
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523173519
【氏名又は名称】北京▲馭▼▲炭▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 兆富
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 布▲興▼
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-083623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0204717(US,A1)
【文献】特表2012-506306(JP,A)
【文献】特開2016-013551(JP,A)
【文献】Green Chemistry,2015年,vol.17,p.4340-4354,DOI:10.1039/c5gc00720h
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
C01B 32/50
C07C 1/00-409/44
C07F 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸塩系化合物の二酸化炭素捕捉用吸収剤としての、及び/又は二酸化炭素捕捉用吸収剤の調製における使用であって、
前記カルボン酸塩系化合物中のカルボン酸アニオンが、炭素数3超の炭素鎖を有するカルボキシラートラジカルであり、カチオンが置換の第4級アンモニウムイオン及び/又は第4級ホスホニウムイオンであり、
前記炭素数3超の炭素鎖を有するカルボキシラートラジカルは、2,2-ジメチルブチラートラジカル、2,2-ジメチルヘキサノアートラジカル、2-エチルヘキサノアートラジカル、2-エチルヘプタノアートラジカル、2-プロピルペンタノアートラジカル、2-プロピルヘキサノアートラジカル、シクロヘキシルホルマートラジカル、及びn-オクタノアートラジカルのうちの少なくとも1種であり、
前記置換の第4級アンモニウムイオンは、トリエチルブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム及びトリブチルヘキシルアンモニウムから選択される少なくとも1種であり、
前記置換の第4級ホスホニウムイオンは、テトラブチルホスホニウム、トリブチルヘキシルホスホニウム、トリブチルオクチルホスホニウム、トリブチルデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルテトラデシルホスホニウム、及びトリブチルヘキサデシルホスホニウムから選択される少なくとも1種である使用。
【請求項2】
カルボン酸塩系化合物の二酸化炭素捕捉用吸収剤としての、及び/又は二酸化炭素捕捉用吸収剤の調製における使用であって、
前記カルボン酸塩系化合物中のカルボン酸アニオンが、総炭素数7~20の分岐カルボキシラートラジカルであり、カチオンが置換の第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン、ピリジンイオン、ピロリジンイオン、ピペリジンイオン、イミダゾールイオン及び金属イオンのうちの少なくとも1種であり、
前記置換の第4級アンモニウムイオン及び第4級ホスホニウムイオンの構造式は下記式I-1、式II-1で表され、
(式I-1、式II-1において、nはすべて1~4、mはすべて1~16であり、かつ、置換基は同一又は異なる。)
金属イオンはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびセシウムイオンの少なくとも1つから選択される使用。
【請求項3】
前
記分岐カルボキシラートラジカルの炭素数が8~16であることを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前
記分岐カルボキシラートラジカルは、2,2-ジメチルヘキサノアートラジカル、2-エチルヘキサノアートラジカル、2-エチルヘプタノアートラジカル、2-プロピルペンタノアートラジカル、2-プロピルヘキサノアートラジカル、2-プロピルノナノアートラジカル、2-ブチルオクタノアートラジカル及び2-ヘキシルデカノアートラジカルから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2又は3に記載の使用。
【請求項5】
前記置換の第4級アンモニウムイオンは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びトリブチルメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種であり、
前記置換の第4級ホスホニウムイオンは、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2又は3に記載の使用。
【請求項6】
前記ピリジンイオンはN置換のピリジンカチオンであり、構造式が下記式IIIで表され、
前記ピロリジンイオンはN置換のピロリジンカチオンであり、構造式が下記式IVで表され、
前記ピペリジンイオンはN置換のピペリジンカチオンであり、構造式が下記式Vで表され、
前記イミダゾールイオンは二置換及び/又は三置換のイミダゾールカチオンであり、構造式が下記式VIで表されることを特徴とする請求項2又は3に記載の使用。
(式III、式IV、式V、式VIにおいて、R
1、R
2はいずれも炭素数1以上の直鎖脂肪鎖であり、R
3はH又はCH
3であり、かつ、R
1とR
2は同一又は異なる。)
【請求項7】
前記式III、式IV、式V、式VIにおいて、R
1、R
2はいずれも炭素数1~10の直鎖脂肪鎖であることを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
カルボン酸塩系化合物を用いて水に安定的で効率的かつ省エネで二酸化炭素を捕捉する方法であって、
請求項1に記載カルボン酸塩系化合物の水溶液又は請求項2~7のいずれか1項に記載のカルボン酸塩系化合物の水溶液を二酸化炭素雰囲気に置いて、二酸化炭素を吸収するステップを含む方法。
【請求項9】
請求項1に記載のカルボン酸塩系化合物と水とのモル比が1:0.5~300であり、
前記二酸化炭素を吸収する条件として、二酸化炭素分圧が0.01~2MPa、温度が25~80℃であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項2~7のいずれか1項に記載のカルボン酸塩系化合物と水とのモル比が1:0.5~100であり、
二酸化炭素を吸収する条件として、二酸化炭素分圧が0.00004~0.5MPaであり、温度が5~80℃であることを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載のカルボン酸塩系化合物1モルあたりの二酸化炭素吸収量は0.1~1.2モルであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項2~7のいずれか1項に記載のカルボン酸塩系化合物1モルあたりの二酸化炭素吸収量は0.1~1.1モルであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
二酸化炭素の吸収が終了した後、前記カルボン酸塩系化合物を再生するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
再生過程において、減圧条件下で、圧力は0.01~1気圧、温度は10~120℃、時間は1min~10hであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボン酸塩系化合物の使用に関し、具体的には、カルボン酸塩系化合物の二酸化炭素捕捉用吸収剤としての、及び/又は二酸化炭素捕捉用吸収剤の調製における使用に関し、二酸化炭素捕捉及び炭素排出削減の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
産業革命が到来し、人類は化石燃料を大量に使ってエネルギーを供給する一方で、大量の二酸化炭素を排出している。二酸化炭素の排出速度は自然界の吸収・利用能力を大幅に上回り、これにより大気中の二酸化炭素濃度が絶えずに上昇している。一方、二酸化炭素は温室効果ガスであり、その大量排出によって世界の平均気温が高くなり、異常気象や極端な気象が増加しているため、人類が排出する二酸化炭素を捕捉して封じ込めること(CCS)が社会の共通認識となっている。
【0003】
現在、工業では、主にアルコールアミン水溶液吸収法を採用している。アルコールアミン水溶液は吸収量が多く、粘度が低いが、アミンの分解、揮発、腐食、再生エネルギー消費量が大きいなどの問題がある(Riemer, P. W., Ormerod, W. G. Energy Convers. Manag. 1995, 36, 813-818)。室温イオン液体は室温で完全にイオンで構成された液体で、多くの独特な性質を持って、例えば揮発性が低い、溶解能力が強い、電気化学的窓が広い、デザイン性などの多くの利点を持っている(Wilkes, J. S. & Zaworotko, M. J., J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1992, 965;Wang, Y. L., Chem. Rev. 2020, 120, 5798)。Brenneckeらはイオン液体を二酸化炭素の物理吸着に用いており、吸収は高圧及び無水条件下で行う必要がある(Blanchard, L. A., Hancu, D., Beckman, E. J. & Brennecke, J. F., Nature 1999, 399, 28)。Davisらはアミノをイオン液体のカチオンに結合させ、二酸化炭素の化学吸着を実現した(Bates, E. D., Mayton, R. D., Ntai, I. & Davis, J. H. Jr., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 926)。中国国内外の多くの研究者が各種のアルカリイオン液体を用いて二酸化炭素の化学吸収を実現した(Zhang, J. M., et al, Chem. Eur. J., 2006, 12, 4021; Huang, Y., et al, Angew. Chem. Int. Ed., 2017, 56, 13293; Aghaie, M., Rezaei, N. & Zendehboudi, S., Renewable and Sustainable Energy Reviews 2018, 96, 502)。少数のイミダゾール酢酸塩系イオン液体が二酸化炭素を吸収して新しいC-C結合を形成する確証があるほか(Holbrey, J. D., et al, Chem. Commun. 2003, 28)、他の研究者もカルバミン酸又はカルボキサミドを形成すると主張している。しかし、Jairton Dupontらは、イオン液体中に水が不可避に存在するため、ほとんどの吸収にはビカルボナートラジカル及びカルボナートラジカルが形成されるとし、これらの作用における核磁気データを証拠としている(Zanatta, M., Simon, N. M. & Dupont, J., Chem Sus Chem 2020, 13, 3101)。イオン液体は無溶媒条件下では粘度が大きいので、吸収を困難にする。超強アルカリイオン液体は二酸化炭素との作用が強く、脱着には高いエネルギー消費が必要である。そのため、より適切な二酸化炭素吸収剤を探すことは依然として科学者が直面する挑戦の1つである。
【0004】
第4級アンモニウム/第4級ホスホニウムのカルボン酸塩も二酸化炭素の吸収に用いる。Quinnらは第四級アミンの酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩を用いて、等モル水の条件下で高い吸収量を得た(Quinn, R., Appleby, J. B. and Pez, G. P., J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 329; Quinn, R., Synth. React. Inorg. Met. - Org. Chem. 2001, 31(3), 359)。しかし、二酸化炭素の吸収量は含水量の増加に伴って著しく減少し、例えばプロピオン酸テトラエチルアンモニウムの場合、水とのモル比が1:4のとき、二酸化炭素の吸収量は0.155モル/モルのカルボン酸塩でしかなかった。南京大学の張志炳らは、トリエチルブチルアンモニウム酢酸塩の二酸化炭素吸収を研究した結果、塩と水のモル比が1:1で最も効果が高く、常温及び1気圧では二酸化炭素のモル百分率が0.386に達することを明らかにした(Wang, G. N., et al, J. Chem. Eng. Data 2011, 56, 1125)。しかし、吸収量は水量の増加とともに急激に低下し、塩と水のモル比を1:5とした場合、同じ条件下で二酸化炭素のモル百分率は0.054しかなかった。Andersonらは、5気圧で複数の第4級アンモニウム/第4級ホスホニウムカルボン酸塩の二酸化炭素吸収を調べたが、これらの塩の一水和物は比較的大きな吸収量を示した(Anderson, K., et al. Green Chem., 2015, 17, 4340)。彼らは5気圧での水含有量がテトラブチルギ酸塩の二酸化炭素吸収に与える影響を研究した結果、塩と水のモル比が1:1を超えると、吸収量が大幅に低下することを明らかにした。Yasakaらはテトラブチルホスホニウムギ酸塩を研究した結果、その一水和物は二酸化炭素を効率的に吸収するが、水分量が多くなるにつれて吸収量が急激に減少することを明らかにした(Yasaka, Y., Ueno, M. & Kimura, Y., Chem. Lett. 2014, 43, 626; Yasaka, Y. & Kimura, Y., J. Chem. Eng. Data 2016, 61, 837; Yasaka, Y., Saito, Y. & Kimura, Y., Chem Phys Chem 2018, 19, 1674)。これらの研究は主にギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩に集中している。Andersonらは多くのカルボン酸塩を研究しているが、これらのカルボン酸塩はほとんどが直鎖カルボン酸塩(分岐しているのはトリヘキシルテトラデシルホスホニウム2-メチルプロピオン酸塩のみ)で、主に、これらのカルボン酸塩の一水和物が5気圧で二酸化炭素を吸収することを検討し、テトラブチルホスホニウムギ酸塩と疎水性のトリヘキシルテトラデシルホスホニウムギ酸塩のみが5気圧で二酸化炭素中の水を吸収することの影響を検討した。これらの研究は比較的良好な成果を得ているが、二酸化炭素吸収に対する水の削減効果は解決されておらず、その実用性の向上が必要である。水が大量に存在する条件下で、水溶液中であっても二酸化炭素を吸収するとともに、脱着工程の温度が低く、速度が速く、エネルギー消費量が少ないことを確保する二酸化炭素吸収はまだ検討されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、カルボン酸塩系化合物の二酸化炭素捕捉用吸収剤としての使用を提供することである。本発明は、吸収剤の原料が低コストで入手されやすく、合成されやすく、捕捉量が高く、捕捉量が水に安定的であり、脱着に必要な温度が低く、脱着速度が速く、エネルギー消費量が低いなどの利点があり、適用の将来性が期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供されるカルボン酸塩系化合物の二酸化炭素捕捉用吸収剤としての、及び/又は二酸化炭素捕捉用吸収剤の調製における使用であって、
前記カルボン酸塩系化合物中のカルボン酸アニオンが、炭素数3超の炭素鎖を有するカルボキシラートラジカルであり、カチオンが置換の第4級アンモニウムイオン及び/又は第4級ホスホニウムイオンである。
【0007】
上記の使用において、前記カルボン酸塩系化合物は、適切な親水性を有し、常温で水に可溶であり、二酸化炭素を吸収した後に水中から析出することができ、前記カルボン酸塩系化合物が二酸化炭素を吸収すると、水に安定的な結合物が形成され得る。
【0008】
上記の使用において、前記炭素数3超の炭素鎖を有するカルボキシラートラジカルは分岐カルボキシラートラジカルである。
【0009】
上記の使用において、前記炭素数3超の炭素鎖を有するカルボン酸の炭素数が4~20であってもよい。
【0010】
上記の使用において、前記炭素数3超の炭素鎖を有するカルボン酸の炭素数が4~10、よりも具体的には、6~9であってもよい。
【0011】
上記の使用において、前記炭素数3超の炭素鎖を有するカルボキシラートラジカルは、具体的には、2,2-ジメチルブチラートラジカル、2,2-ジメチルヘキサノアートラジカル、2-エチルヘキサノアートラジカル、2-エチルヘプタノアートラジカル、2-プロピルペンタノアートラジカル、2-プロピルヘキサノアートラジカル、シクロヘキシルホルマートラジカル、及びn-オクタノアートラジカルのうちの少なくとも1種である。
【0012】
上記の使用において、前記置換の第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオンの構造式は下記式I、式IIで表される。
(式I、式IIにおいて、nはすべて2~4、mはすべて4~16であり、かつ、置換基は同一又は異なる。)
【0013】
本発明では、式I、式IIにおいて、nはすべて2又は4、mはすべて4、6、8、10、12、14又は16であり、より具体的には、式Iで表される置換の第4級アンモニウムイオンでは、nは2又は4であり、mは4又は6であり、式IIで表される第4級ホスホニウムイオンでは、nは4であり、mは4、6、8、10、12、14又は16である。
【0014】
上記の使用において、前記置換の第4級アンモニウムイオンは、トリエチルブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム及びトリブチルヘキシルアンモニウムから選択される少なくとも1種であり、
前記置換の第4級ホスホニウムイオンは、テトラブチルホスホニウム、トリブチルヘキシルホスホニウム、トリブチルオクチルホスホニウム、トリブチルデシルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルテトラデシルホスホニウム、及びトリブチルヘキサデシルホスホニウムから選択される少なくとも1種である。
【0015】
本発明はまた、前記カルボン酸塩系化合物であるか、又は前記カルボン酸塩系化合物を含有してなる二酸化炭素捕捉用吸収剤を提供する。
【0016】
本発明はさらに、カルボン酸塩系化合物を用いて水に安定的で効率的かつ省エネで二酸化炭素を捕捉する方法であって、上記のカルボン酸塩系化合物の水溶液を二酸化炭素雰囲気に置いて、二酸化炭素を吸収し、水から析出されたカルボン酸塩と二酸化炭素との結合物を得るステップを含む方法を提供する。
【0017】
上記の方法において、前記カルボン酸塩系化合物と水とのモル比が、1:0.5~300、具体的には、1:0.5、1:1、1:10、1:20、1:300、1:0.5~20、1:0.5~100又は1:1~200であってもよい。
【0018】
上記の方法において、前記二酸化炭素を吸収する条件として、二酸化炭素分圧が0.01~2MPa、具体的には、0.01MPa、0.1MPa、2MPa、温度が25~80℃、具体的には、25℃、80℃であってもよい。
【0019】
上記の方法において、前記カルボン酸塩系化合物1モルあたりの二酸化炭素吸収量は0.1~1.2モル、具体的には、0.12~1.1モルであってもよい。
【0020】
上記の方法において、前記方法は、二酸化炭素吸収終了後、前記カルボン酸塩系化合物を再生するステップをさらに含む。
【0021】
上記の方法において、前記再生において、減圧条件下では、圧力は0.01~1気圧、温度は10~120℃(すなわち、室温~120℃、前記室温は本分野に公知の常識で、具体的には、10~30℃)、時間は1min~10h、具体的には、3min、30min、1h、3h、3min~3h又は1min~5hであってもよい。温度は、具体的には、室温~80℃、具体的には、25~80℃であってもよい。
【0022】
本発明はまた、別のカルボン酸塩系化合物の二酸化炭素捕捉用吸収剤としての、及び/又は二酸化炭素捕捉用吸収剤の調製における使用であって、
前記カルボン酸塩系化合物中のカルボン酸アニオンは総炭素数6超の分岐カルボキシラートラジカルであり、カチオンは置換の第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン、ピリジンイオン、ピロリジンイオン、ピペリジンイオン、イミダゾールイオン及び金属イオンのうちの少なくとも1種であり、
前記置換の第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオンの構造式は下記式I-1、式II-1で表される使用を提供する。
(式I-1、式II-1において、nはすべて1~4、mはすべて1~16であり、置換基は同一又は異なる。)
【0023】
上記の使用において、前記総炭素数6超の分岐カルボキシラートラジカルの炭素数が7~20であってもよい。
【0024】
上記の使用において、前記総炭素数6超の分岐カルボキシラートラジカルの炭素数が8~16であってもよい。
【0025】
上記の使用において、前記総炭素数6超の分岐カルボキシラートラジカルは、2,2-ジメチルヘキサノアートラジカル、2-エチルヘキサノアートラジカル、2-エチルヘプタノアートラジカル、2-プロピルペンタノアートラジカル、2-プロピルヘキサノアートラジカル、2-プロピルノナアートラジカル、2-ブチルオクタノアートラジカル、及び2-ヘキシルデカノアートラジカルから選択される少なくとも1種である。
【0026】
上記の使用において、前記置換の第4級アンモニウムイオンは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、及びトリブチルメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種であり、
前記置換の第4級ホスホニウムイオンは、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウムから選択される少なくとも1種である。
【0027】
上記の使用において、前記ピリジンイオンはN置換のピリジンカチオンであり、構造式が下記式IIIで表され、
前記ピロリジンイオンはN置換のピロールカチオンであり、構造式が下記式IVで表され、
前記ピペリジンイオンはN置換のピペリジンカチオンであり、構造式が下記式Vで表され、
前記イミダゾールイオンは二置換及び/又は三置換のイミダゾールカチオンであり、構造式が下記式VIで表され、
前記金属イオンはリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムから選択される少なくとも1種である。
(式III、式IV、式V、式VIにおいて、R
1、R
2はいずれも炭素数1以上の直鎖脂肪鎖であり、R
3はH又はCH
3であり、かつ、R
1とR
2は同一又は異なる。)
【0028】
上記の使用において、前記式III、式IV、式V、式VIにおいて、R1、R2はいずれも、具体的には、炭素数1~10の直鎖脂肪鎖であってもよい。
【0029】
本発明はまた、前記カルボン酸塩系化合物を活性成分とする二酸化炭素捕捉用吸収剤を提供する。
【0030】
本発明はさらに、カルボン酸塩系化合物を用いて水に安定的で効率的かつ省エネで二酸化炭素を捕捉する方法であって、上記カルボン酸塩系化合物の水溶液を二酸化炭素雰囲気に置いて、二酸化炭素を吸収し、水から析出されたカルボン酸塩と二酸化炭素との結合物を得るステップを含む方法を提供する。
【0031】
上記の方法において、前記カルボン酸塩系化合物と水とのモル比が1:0.5~100、具体的には、1:0.5、1:1、1:20、1:100、1:1~100、1:20~100又は1:0.5~20であってもよい。
【0032】
上記の方法において、前記二酸化炭素を吸収する条件として、二酸化炭素分圧が0.00004~0.5MPa、具体的には、0.01MPa、0.1MPa、0.5Mpa、0.01~0.1MPa、0.1~0.5MPa、及び大気から捕捉されること(二酸化炭素の分圧は約0.00004MPa)、温度は、5~80℃、具体的には、5℃、25℃、80℃、5~25℃、25~80℃であってもよい。
【0033】
上記の方法において、前記カルボン酸塩系化合物1モルあたりの二酸化炭素吸収量は、0.4~1.1モル、具体的には、0.49、0.5、0.6、1.0、1.05モル、0.49~0.525モル又は0.49~1.05モルであってもよい。
【0034】
上記の方法において、前記方法は、二酸化炭素吸収終了後、前記カルボン酸塩系化合物を再生するステップをさらに含む。
【0035】
上記の方法において、前記再生において、減圧条件下で、圧力は0.01~1気圧、温度は10~120℃(すなわち、室温~120℃、前記室温は本分野に公知の常識で、具体的には、10~30℃)、具体的には、25℃、120℃又は25~120℃、時間は1min~10h、具体的には、1h、3h又は1~3hであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
下記実施例における実験方法は、特に断らない限り、全て通常の方法である。
【0037】
下記実施例では、カルボン酸塩は成熟した技術により合成される(Suarez,P.A.Z.;Dullius,J.E.L.;Einloft,S.;DE Souza R.F.and Dupont,J.,Polyhedron,1996,15,1217-1219)。
【0038】
以下の実施例は本発明を説明するためであって、本発明の使用範囲を限定するものではない。
【0039】
実施例1
トリブチルヘキシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩(0.86g)2ミリモルに水40ミリモル(0.72g)を加えたものをガラス瓶に入れて、二酸化炭素バルーンを接続し、溶液が1気圧の二酸化炭素にあるようにし、25℃で12時間撹拌し、系を有機相と水相に分離した。バルーンを取り外し、瓶中の溶液の上部にある二酸化炭素ガスを空気で置換した後、水酸化ナトリウム溶液(0.2w%)で滴定し、フェノールフタレインを指示薬として用いた結果、二酸化炭素吸収量は0.98ミリモルであった。
【0040】
同じ条件で、トリブチルヘキシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩を以下の試薬に変更し、テトラブチルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルオクチルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルデシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルドデシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルテトラデシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルヘキサデシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、テトラブチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリエチルブチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルヘキシルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルヘキシルホスホニウム2,2-ジメチル酪酸塩、トリブチルヘキシルホスホニウム2-プロピル吉草酸塩、トリブチルヘキシルホスホニウム2,2-ジメチルヘキサン酸塩、トリブチルヘキシルホスホニウム2-プロピルヘキサン酸塩、トリブチルヘキシルホスホニウム2-エチルヘプタン酸塩、トリブチルヘキシルホスホニウムシクロヘキシルカルボン酸塩、トリブチルヘキシルホスホニウムn-オクタン酸塩それぞれの2ミリモル(それぞれ水40ミリモルを加えた)の、二酸化炭素に対する吸収をそれぞれ測定し、これらは、二酸化炭素を吸収すると、新しい液相又は固相を形成し、これらの吸収量はそれぞれ0.87、2.2、1.8、1.6、1.6、1.7、0.86、0.24、0.96、0.22、1.02、0.53、1.0、0.99、0.71、0.36ミリモルであった。
【0041】
実施例2
トリブチルヘキシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩2ミリモル(0.86g)に水1ミリモルを加える以外、残りは本発明の実施例1と同様に行った結果、二酸化炭素吸収量は1.0ミリモルであった。このことから明らかに、上記カルボン酸塩と水とのモル比が1:0.5である場合、吸収量については、実施例1と比べて、その二酸化炭素吸収量が水に安定的であった。
【0042】
実施例3
水2ミリモルを加える以外、残りは実施例2と同様に行った結果、二酸化炭素吸収量は1.0ミリモルであった。このことから明らかに、上記カルボン酸塩と水とのモル比が1:1である場合、吸収量については、実施例1と比べて、二酸化炭素吸収量が水に安定的で、水の増加に応じて変化しなかった。
【0043】
実施例4
トリブチルヘキシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩の場合、温度が80℃である以外、残りは実施例1と同様に行い、二酸化炭素を吸収すると、新しい有機相が形成され、得られた二酸化炭素吸収量は0.62ミリモルであった。このことから明らかに、上記カルボン酸塩水溶液の各温度での吸収量については、本発明の実施例1と比べて、高温でも、二酸化炭素捕捉容量が高かった。
【0044】
実施例5
トリブチルヘキシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩の場合、雰囲気が二酸化炭素分圧0.01MPa、窒素ガス0.09MPaである以外、残りは実施例1と同様に行った結果、二酸化炭素吸収量は0.40ミリモルであった。このことから明らかに、上記カルボン酸塩水溶液の低い二酸化炭素分圧の場合の吸収量については、本発明の実施例1と比べて、二酸化炭素分圧が低圧である場合においても、二酸化炭素捕捉容量が高かった。
【0045】
実施例6
トリブチルオクチルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩2ミリモル(0.92g)に水40ミリモル(0.72g)を加えたものを圧力釜に入れて、2MPa二酸化炭素を導入し、25℃で12時間撹拌した。減圧後、釜中の溶液の上部の二酸化炭素ガスを空気で置換した後、水酸化ナトリウム溶液(0.2w%)で滴定し、フェノールフタレインを指示薬として用いたところ、二酸化炭素吸収量は1.2ミリモルであった。このことから明らかに、上記カルボン酸塩水溶液の高い二酸化炭素圧力の場合の吸収量については、本発明の実施例1と比べて、二酸化炭素分圧が高圧である場合においても、二酸化炭素捕捉容量が高かった。
【0046】
実施例7
トリブチルヘキシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩の場合、二酸化炭素雰囲気を二酸化炭素バブリング(20ミリリットル/分)に変更し、30分間吸収する以外、残りは実施例1と同様に行った結果、二酸化炭素吸収量は0.98ミリモルであった。実施例1及び7の比較から、吸収方式が二酸化炭素吸収に与える影響が小さく、本発明の二酸化炭素吸収量が吸収方式により影響されないことが分かった。
【0047】
実施例8
トリブチルヘキシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩の場合、二酸化炭素の吸収は本発明の実施例1と同様であり、吸収完了後、空気に曝し、室温(25℃)で3時間持続して撹拌して、テストした結果、二酸化炭素は完全に放出された。このことから明らかなように、上記カルボン酸塩水溶液は二酸化炭素を吸収した後に再生可能であった。
【0048】
実施例9
放出において80℃で30分間撹拌する以外、残りは実施例8と同様であり、測定した結果、二酸化炭素は完全に放出された。本発明の実施例8及び9の比較から、いずれの温度でもカルボン酸塩系化合物が再生可能であることが分かった。
【0049】
実施例10
放出において水ポンプによる減圧下(0.01気圧)で1時間持続して撹拌する以外、残りは実施例8と同様であり、測定した結果、二酸化炭素は完全に放出された。実施例8及び10の比較から、いずれの圧力でもカルボン酸塩系化合物が再生可能であることが分かった。
【0050】
実施例11
トリブチルヘキサデシルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩1ミリモル(57mg)を水5.4g(0.3モル)に加えて溶解した後、室温で二酸化炭素泡をバブリングし(20ミリリットル/分)、3分間後、溶液が濁ると、カルボン酸塩はこの濃度で二酸化炭素を効果的に吸収し、吸収後に析出されることを示した。二酸化炭素の導入を停止し、溶液を空気に曝し、室温(25℃)で持続的に撹拌し、3分間後、溶液が澄むと、この溶液は二酸化炭素を迅速に放出できることを示した。本発明の実施例1及び11の比較から、濃度や吸収方式に関わらず、カルボン酸塩系化合物の吸収や再生が可能であることが分かった。
【0051】
実施例12
テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩2ミリモル(0.434g)に水2ミリモル(0.036g)を加えたものをガラス瓶に入れて、二酸化炭素バルーンを接続し、溶液が0.1MPa二酸化炭素雰囲気にあるようにし、25℃で12時間撹拌した。バルーンを取り外し、瓶中の溶液の上部の二酸化炭素ガスを空気で置換した後、水酸化ナトリウム溶液(0.2w%)で滴定し、フェノールフタレインを指示薬として用いたところ、二酸化炭素吸収量は1.0ミリモルであった。
【0052】
同じ条件で、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩を以下の試薬に変更し、テトラエチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、テトラメチルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、テトラエチルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルメチルホスホニウム2-エチルヘキサン酸塩、トリブチルメチルアンモニウム2,2-ジメチルヘキサン酸塩、トリブチルメチルアンモニウム2-エチルヘプタン酸塩、トリブチルメチルアンモニウム2-プロピル吉草酸塩、トリブチルメチルアンモニウム2-プロピルヘキサン酸塩、テトラメチルアンモニウム2-プロピルノナン酸塩、テトラメチルアンモニウム2-ブチルオクタン酸塩、テトラメチルアンモニウム2-ヘキシルデカン酸塩、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、2,2-ジメチルヘキサン酸カリウム、2-エチルヘプタン酸リチウム、2-プロピル吉草酸セシウム、N-ブチルピリジン2-エチルヘキサン酸塩、N-ブチル-N-メチルピロリジン2-エチルヘキサン酸塩、N-ブチル-N-メチルピペリジン2-エチルヘキサン酸塩、1-ブチル-2,3ジメチルイミダゾール2-エチルヘキサン酸塩それぞれの2ミリモル(それぞれ水2ミリモルを加える)の、二酸化炭素に対する吸収をそれぞれ測定した結果、これらの吸収量はそれぞれ1.03、0.99、1.02、0.98、1.03、1.01、0.99、1.00、1.01、1.01、1.03、1.05、0.99、0.97、0.98、0.95、1.00、1.02、0.99、1.02ミリモルであり、すべての吸収は0.95~1.05ミリモルの範囲内である。
【0053】
このことから明らかに、上記の各物質は二酸化炭素を効果的に吸収できる。
【0054】
実施例13
トリブチルメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩2ミリモル(0.86g)に水1ミリモル(0.018g)を加える以外、残りは実施例12と同様に行った結果、二酸化炭素吸収量は1.0ミリモルであった。このことから明らかに、上記カルボン酸塩と水とのモル比が1:0.5である場合、吸収量については、実施例12と比べて、二酸化炭素吸収量は所定の範囲では水に安定的であった。
【0055】
実施例14
2-ヘキシルデカン酸ナトリウム2ミリモル(0.56g)に200ミリモル(水3.6g)を加える以外、残りは実施例12と同様に行った結果、二酸化炭素吸収量は2.05ミリモルであった。このことから明らかに、上記カルボン酸塩の二酸化炭素吸収量は広い範囲内で水に安定的であった。
【0056】
吸収後、溶液を120℃で3時間加熱し測定した結果、二酸化炭素は完全に放出された。このことから明らかに、上記カルボン酸塩水溶液は二酸化炭素を吸収した後に再生可能であった。
【0057】
実施例15
吸収温度が80℃である以外、残りは実施例3と同様に行った結果、二酸化炭素吸収量は2.0ミリモルであった。実施例14と比べて、上記カルボン酸塩の二酸化炭素吸収量は広い範囲で温度に安定的であることが示された。
【0058】
実施例16
トリブチルメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩2ミリモル(0.69g)に水0.7gを加えたものをガラス瓶に入れて、二酸化炭素バルーンを接続し、溶液が1気圧の二酸化炭素にあるようにし、5℃で12時間撹拌した。バルーンを取り外し、瓶中の溶液の上部の二酸化炭素ガスを空気で置換した後、水酸化ナトリウム溶液(0.2w%)で滴定し、フェノールフタレインを指示薬として用いたところ、二酸化炭素吸収量は1.2ミリモルであった。実施例12と比べて、吸収温度を下げることは吸収量向上に有利であることが示された。
【0059】
吸収完了後、溶液を空気に曝し、室温(25℃)で3時間持続して撹拌し測定した結果、二酸化炭素は完全に放出された。上記カルボン酸塩水溶液は二酸化炭素を吸収した後に再生可能であることが示された。
【0060】
実施例17
トリブチルメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩の場合、雰囲気が二酸化炭素分圧0.01MPa、窒素ガス0.09MPaである以外、残りは実施例12と同様に行った結果、二酸化炭素吸収量は0.98ミリモルであった。
2-ヘキシルデカン酸ナトリウム0.278g(1ミリモル)を水1gに溶解し、空気ポンプを利用して空気を提供しバブリングし(大気中の二酸化炭素分圧は約0.00004MPa)、空気流量を1分あたり10ミリリットルとし、12時間後、水酸化ナトリウム溶液(0.2w%)で澄明となるまで滴定したところ、二酸化炭素吸収量は0.10ミリモルであった。
【0061】
このことから明らかに、上記カルボン酸塩水溶液の低い二酸化炭素分圧の場合の吸収量については、本発明の実施例12と比べて、二酸化炭素分圧が低圧である場合においても、二酸化炭素捕捉容量が高く、大気からも一定量の二酸化炭素を吸収することができた。
【0062】
実施例18
トリブチルメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩2ミリモル(0.69g)に水2ミリモル(0.036g)を加えたものを圧力釜に入れて、0.5MPa二酸化炭素を導入し、25℃で12時間撹拌した。減圧後、釜中の溶液の上部の二酸化炭素ガスを空気で置換した後、実施例12の方法により測定した結果、二酸化炭素吸収量は1.5ミリモルであった。このことから明らかなように、上記カルボン酸塩水溶液の高い二酸化炭素圧力の場合の吸収量については、本発明の実施例12と比べて、二酸化炭素分圧が高圧である場合においても、二酸化炭素捕捉容量が高かった。
【0063】
上記結果から以下のことが分かった。
【0064】
1)本発明では、各有機カチオンのハロゲン塩がバルク化学品であり、価格がトンあたり数千元であり、一方、比較例では、トリブチルヘキシルホスホニウム、トリブチルオクチルホスホニウムのハライドの現在の市販価格が(キログラムあたり数千元)であり、明らかに、本発明の原料の価格が低い。
【0065】
2)本発明の実施例1、3、4では、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、2,2-ジメチルヘキサン酸カリウム、2-エチルヘプタン酸リチウム、2-プロピル吉草酸セシウム、2-ヘキシルデカン酸ナトリウムを用いて二酸化炭素吸収実験を行い、使用される無機塩である金属イオンリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムは安定性がより高い。
【0066】
3)本発明では、水含有量が適切である場合、より高い二酸化炭素吸収量(吸収剤の質量に対して)が得られ、例えば、2-エチルヘキサン酸テトラメチルアンモニウム(分子量217.3)、2-エチルヘキサン酸トリメチルヘキシルホスホニウム(分子量430.7)1モルに対して、塩と水とのモル比が1:1である場合、1気圧の二酸化炭素では、1キログラムあたりの吸収剤が吸収し得る二酸化炭素量はそれぞれ2.12、1.11モルである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
1、本発明は、従来の系では腐食性があり、揮発しやすく、エネルギー消費量が高いなどの問題を解決し、高温、二酸化炭素分圧の低圧及び高圧のいずれにおいても、二酸化炭素捕捉容量が高い。
【0068】
2、使用されるカルボン酸塩水溶液が二酸化炭素を吸収するときに、当該カルボン酸塩水溶液と二酸化炭素との結合物が液体又は固体の形態で水から析出され、このことから、使用されるカルボン酸塩と二酸化炭素との結合物は水に安定的であることが示された。
【0069】
3、カルボン酸塩は再生可能であり、その再生は室温での減圧により実現され、条件によって、吸収時間は数分間から数時間であり、二酸化炭素が放出されたカルボン酸塩は水に可溶である。温度を高めると、再生速度が速まる。
【0070】
4、本発明で使用されるカルボン酸塩系化合物では、カチオンは置換の第4級アンモニウムイオン、置換の第4級ホスホニウムイオン、ピリジンイオン、ピロールイオン、ピペリジンイオン、イミダゾールイオン又は金属イオンであり、コストの高いテトラアルキル置換ホスホニウム/アンモニウムのオニウムイオンと比べて、これらは低価であるので、二酸化炭素の捕捉コストが大幅に低下する。