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特許7644536折りたたみ式電池用シート、折りたたみ式電池および折りたたみ式電池の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】折りたたみ式電池用シート、折りたたみ式電池および折りたたみ式電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/06 20060101AFI20250305BHJP
   H01M 8/1006 20160101ALI20250305BHJP
   H01M 6/10 20060101ALI20250305BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALI20250305BHJP
【FI】
H01M12/06 Z
H01M8/1006
H01M6/10 Z
H01M10/0583
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023531397
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009650
(87)【国際公開番号】W WO2023276283
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2021107684
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博弥
(72)【発明者】
【氏名】藪 浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃寿
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-251740(JP,A)
【文献】特開2020-126769(JP,A)
【文献】特開2003-346867(JP,A)
【文献】特開2013-131463(JP,A)
【文献】特表2009-537947(JP,A)
【文献】国際公開第2010/089855(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/00-16/00
H01M50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面及び他面を有し、相互に平行な複数の折り曲げ予定線が設定されたシートと、
前記シート上であって、一対の前記折り曲げ予定線の間に配置された、少なくとも1つの電解質部と、
前記シート上であって、前記折り曲げ予定線を挟んで前記電解質部の隣に配置された複数の電極部と、を有し、
前記電解質部は、
前記シートの一面と他面との間に設けられた貫通孔と、
前記貫通孔を挟んで対向するように前記シートの一面上及び他面上に形成され、前記貫通孔を通じて一体化された電解質層と、を有し、
前記電極部は、
前記シートの一面に設けられた正極層と、
前記シートの他面であって、前記シートを挟んで前記正極層と対向する位置に設けられた負極層と、
前記シートを貫通して前記正極層および前記負極層を導通させる導電体と、を有することを特徴とする、折りたたみ式電池用シート。
【請求項2】
前記電解質部は、前記シートを平面視した際、千鳥状に配列されていることを特徴とする、請求項1に記載の折りたたみ式電池用シート。
【請求項3】
前記正極層は、前記折り曲げ予定線に沿って前記シートが折り曲げられた際に、前記シートの一面側の前記電解質層に接するように配置されていることを特徴とする、請求項に記載の折りたたみ式電池用シート。
【請求項4】
前記負極層は、前記折り曲げ予定線に沿って前記シートが折り曲げられた際に、前記シートの他面側の前記電解質層に接するように配置されていることを特徴とする、請求項1または3に記載の折りたたみ式電池用シート。
【請求項5】
前記電解質層は、ゲル状もしくは固体状であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の折りたたみ式電池用シート。
【請求項6】
前記シートは、疎水性シートからなることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の折りたたみ式電池用シート。
【請求項7】
前記貫通孔内に、セパレータが埋め込まれていることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の折りたたみ式電池用シート。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の折りたたみ式電池用シートからなることを特徴とする、折りたたみ式電池。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の折りたたみ式電池用シートからなる折りたたみ式電池の製造方法であって、
一面及び他面を有する前記シートに、相互に平行な複数の前記折り曲げ予定線を設定し、
前記折り曲げ予定線に沿って前記シートを折り曲げる際、
前記正極層が前記シートの一面側の前記電解質層に接するよう折り曲げ、かつ前記負極層が前記シートの他面側の前記電解質層に接するよう折り曲げることを特徴とする、折りたたみ式電池の製造方法。
【請求項10】
一面及び他面を有し、相互に平行な複数の電極部用折り曲げ予定線が設定された電極部用シートと、
一面及び他面を有し、相互に平行な複数の電解質部用折り曲げ予定線が設定された電解質部用シートと、
前記電解質部用シートの一面上であって、前記電解質部用折り曲げ予定線の両側に配置された複数の電解質部と、
前記電極部用シート上の一面及び他面上であって、前記電極部用折り曲げ予定線同士の間に配置された複数の電極部と、を有し、
前記電解質部は、
前記電解質部用シートの一面上に形成され、かつ、前記電解質部用折り曲げ予定線上で一体化された電解質層と、を有し、
前記電極部は、
前記電極部用シートの両面に、格子状に設けられた複数の正極層および複数の負極層と、
前記電極部用シートを貫通して前記正極層および前記負極層を導通させる導電体と、を有し、
前記複数の正極層は、前記電極部用折り曲げ予定線に沿って配列され、
前記複数の負極層は、前記電極部用折り曲げ予定線を挟んで、複数の前記正極層の列と隣り合うように配列され、
前記正極層と前記負極層は、前記電極部用シートを挟んで互いに対向する位置となるよう、設けられていることを特徴とする、折りたたみ式電池用シート。
【請求項11】
請求項10に記載の折りたたみ式電池用シートからなることを特徴とする、折りたたみ式電池。
【請求項12】
請求項10に記載の折りたたみ式電池用シートからなる折りたたみ式電池の製造方法であって、
前記正極層と前記負極層それぞれと前記電解質部が接するように、前記電極部用シートの両面に、前記電解質部用シートを重ね合わせ、
次いで、前記電極部用シート上の隣り合う前記正極層と前記負極層が、前記電解質部用シート上の前記電解質部を介して対向するよう、前記電極部用折り曲げ予定線および前記電解質部用折り曲げ予定線に沿って各シートを折り曲げることを特徴とする、折りたたみ式電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折りたたみ式電池用シート、折りたたみ式電池および折りたたみ式電池の製造方法に関する。
本願は、2021年6月29日に、日本に出願された特願2021-107684号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
種々の電子機器に用いられる電池として、積層型電池が知られている。
積層型電池は、積層数の変更によって電池の電圧を任意の電圧に設定できることから、大容量化への期待も相まって、近年、広く注目されている。
【0003】
特許文献1には、全固体二次電池を直列結線した積層形全固体二次電池が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、積層型電池に関し、帯状に連続する一対のセパレータ間に帯状の負極体が圧着された負極・セパレータ圧着体と、帯状に連続する正極リードによって複数の正極が互いに連結された正極連結体とからなる電極構造が開示されている。特許文献2に記載の積層型電池においては、負極・セパレータ圧着体は、隣り合う負極間において山折りと谷折りが交互となるように入れられた折り目を有する。一方の正極連結体は、隣り合う正極が、負極・セパレータ圧着体の一面側と他面側に交互に挿入され、セパレータを介して負極リードが形成された負極に対向するように組み付けられ、負極・セパレータ圧着体とともに折り畳まれる構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開平4-65071号公報
【文献】日本国特開2013-222602号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Thomas B. H. Schroeder, Anirvan Guha, Aaron Lamoureux, Gloria VanRenterghem, David Sept, Max Shtein, Jerry Yang, and Michael Mayer, NATURE Volume552 (14 December 2017) p214-218.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2のように、これまで種々の積層型電池が検討されてきた。しかし、近年では、電池のさらなる小型化、高容量化が望まれている。
【0008】
また、非特許文献1には、折りたたみ式の濃淡電池が開示されているものの、1セルあたりの電位は150mV程度で、得られる電流は数μA程度と低い。そのため、非特許文献1に記載の折りたたみ式の濃淡電池の電池性能は、各種電子機器に搭載する水準としては不十分である。また、非特許文献1に記載の濃淡電池は、電極を挟んで隣り合う電解質同士の濃度に差をつける必要があるため、その製造工程は複雑で、かつ工数も増大する。
さらに、前述のように電解質の間で濃度の差を付けなければならないため、必然的に、電池が大型化してしまう。
【0009】
ここで、各種の電池の中でも、比較的小型(軽量)の電池として金属空気電池が知られている。金属空気電池は、小型で、かつ高容量でもあることから、近年、注目を集め始めており、特に、災害用電池や非常用電池などへの適用が検討されている。
【0010】
しかしながら、金属空気電池は、構成要素のうち電解質と金属極(負極)が接触することで金属極の劣化が進行する問題がある。すなわち、金属空気電池を単に積層型としても、高容量を得られる一方、前述の金属極の劣化によって電池性能が低下する問題がある。
【0011】
また、電池を災害時や非常時に用いることを想定した場合、長期間、電池性能を劣化させることなく保管できることが望ましい。しかし、金属空気電池の場合、長期間の保管は、前述の金属極の劣化によって電池性能の経時劣化を招く。そのため、金属空気電池を長期間、電池性能を劣化させることなく保管することは非常に困難であった。
【0012】
以上を鑑み、本発明は、電池性能を劣化させることなく長期間の保管が可能で、かつコンパクトな折りたたみ式電池を簡便に製造することが可能な折りたたみ式電池用シートを提供することを課題とする。さらに本発明は、このような折りたたみ式電池用シートからなる折りたたみ式電池、ならびに折りたたみ式電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、電池を長期間保管する際に生じる電池性能の劣化を抑制する方法ついて検討した。その結果、電池としての構成要素をあらかじめシート上に適切に配置しておき、その後、電池として使用を開始する段階で、当該シートを折りたたんで電池となすことで、使用開始直前まで、電池性能の経時劣化を防止できることを見出した。さらに、シート上に電池の構成要素を配置する際、所定の配置パターンとなるよう適切に配置することで、多層の直列繋ぎを達成することができ、その結果、高電圧の電池を得ることが可能になる。
【0014】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
[1]本発明の一実施形態に係る折りたたみ式電池用シートは、一面及び他面を有し、相互に平行な複数の折り曲げ予定線が設定されたシートと、
前記シート上であって、一対の前記折り曲げ予定線の間に配置された、少なくとも1つの電解質部と、
前記シート上であって、前記折り曲げ予定線を挟んで前記電解質部の隣に配置された複数の電極部と、を有し、
前記電解質部は、
前記シートの一面と他面との間に設けられた貫通孔と、
前記貫通孔を挟んで対向するように前記シートの一面上及び他面上に形成され、前記貫通孔を通じて一体化された電解質層と、を有し、
前記電極部は、
前記シートの一面に設けられた正極層と、
前記シートの他面であって、前記シートを挟んで前記正極層と対向する位置に設けられた負極層と、
前記シートを貫通して前記正極層および前記負極層を導通させる導電体と、を有する。
[2]上記[1]に記載の折りたたみ式電池用シートにおいては、前記電解質部は、前記シートを平面視した際、千鳥状に配列されていてもよい
]上記[]に記載の折りたたみ式電池用シートにおいては、前記正極層は、前記折り曲げ予定線に沿って前記シートが折り曲げられた際に、前記シートの一面側の前記電解質層に接するように配置されていてもよい。
]上記[]または[]に記載の折りたたみ式電池用シートにおいては、前記負極層は、前記折り曲げ予定線に沿って前記シートが折り曲げられた際に、前記シートの他面側の前記電解質層に接するように配置されていてもよい。
]上記[1]~[]の何れか一項に記載の折りたたみ式電池用シートにおいては、前記電解質層は、ゲル状もしくは固体状であってもよい。
]上記[1]~[]の何れか一項に記載の折りたたみ式電池用シートにおいては、前記シートは、疎水性シートからなるものであってもよい。
]上記[1]~[]の何れか一項に記載の折りたたみ式電池用シートにおいては、前記貫通孔内に、セパレータが埋め込まれていてもよい。
【0015】
]本発明の一実施形態に係る折りたたみ式電池は、上記[1]~[]のいずれか一項に記載の折りたたみ式電池用シートからなる。
【0016】
]本発明の一実施形態に係る折りたたみ式電池の製造方法は、上記[1]~[]のいずれか一項に記載の折りたたみ式電池用シートからなる折りたたみ式電池の製造方法であって、
一面及び他面を有する前記シートに、相互に平行な複数の前記折り曲げ予定線を設定し、
前記折り曲げ予定線に沿って前記シートを折り曲げる際、
前記正極層が前記シートの一面側の前記電解質層に接するよう折り曲げ、かつ前記負極層が前記シートの他面側の前記電解質層に接するよう折り曲げる。
【0017】
10]本発明の他の実施形態に係る折りたたみ式電池用シートは、一面及び他面を有し、相互に平行な複数の電極部用折り曲げ予定線が設定された電極部用シートと、
一面及び他面を有し、相互に平行な複数の電解質部用折り曲げ予定線が設定された電解質部用シートと、
前記電解質部用シートの一面上であって、前記電解質部用折り曲げ予定線の両側に配置された複数の電解質部と、
前記電極部用シート上の一面及び他面上であって、前記電極部用折り曲げ予定線同士の間に配置された複数の電極部と、を有し、
前記電解質部は、
前記電解質部用シートの一面上に形成され、かつ、前記電解質部用折り曲げ予定線上で一体化された電解質層と、を有し、
前記電極部は、
前記電極部用シートの両面に、格子状に設けられた複数の正極層および複数の負極層と、
前記電極部用シートを貫通して前記正極層および前記負極層を導通させる導電体と、を有し、
前記複数の正極層は、前記電極部用折り曲げ予定線に沿って配列され、
前記複数の負極層は、前記電極部用折り曲げ予定線を挟んで、複数の前記正極層の列と隣り合うように配列され、
前記正極層と前記負極層は、前記電極部用シートを挟んで互いに対向する位置となるよう、設けられている。
【0018】
11]本発明の他の実施形態に係る折りたたみ式電池は、上記[10]に記載の折りたたみ式電池用シートからなる。
【0019】
12]本発明の他の実施形態に係る折りたたみ式電池の製造方法は、上記[10]に記載の折りたたみ式電池用シートからなる折りたたみ式電池の製造方法であって、
前記正極層と前記負極層それぞれと前記電解質が接するように、前記電極部用シートの両面に、前記電解質部用シートを重ね合わせ、次いで、前記電極部用シート上の隣り合う前記正極層と前記負極層が、前記電解質部用シート上の前記電解質部を介して対向するよう、前記電極部用折り曲げ予定線および前記電解質部用折り曲げ予定線に沿って各シートを折り曲げる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る上記実施形態によれば、電池性能を劣化させることなく長期間の保管が可能で、かつコンパクトな折りたたみ式電池を簡便に製造することが可能な折りたたみ式電池用シートを提供することができる。さらに本発明に係る上記実施形態によれば、このような折りたたみ式電池用シートからなる折りたたみ式電池、ならびに折りたたみ式電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シートを、一面側から見た斜視図である。
図1B図1Bは、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シートを、他面側から見た斜視図である。
図2図2は、図1Aに示す線分X-Xによる断面模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る折りたたみ電池1の模式図である。
図4A図4A(a)は、本実施形態の変形例である折りたたみ式電池用シートを構成する電極部用シートを、一面側から見た斜視図である。図4A(b)は、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シートを構成する電極部用シートを、他面側から見た斜視図である。
図4B図4B(a)は、本実施形態の変形例である折りたたみ式電池用シートを構成する電解質部用シートを、一面側から見た斜視図である。図4B(b)は、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シートを構成する電解質部用シートを、他面側から見た斜視図である。
図4C図4C(a)は、本実施形態の変形例である折りたたみ式電池用シートを構成する電極部用シートと電解質部用シートの重ね合わせの配置例を示す模式図である。図4C(b)は、本実施形態の変形例である折りたたみ式電池1Aの模式図である。
図5A図5Aは、実施例における、各スタックの合計電圧を示すグラフである。
図5B図5Bは、実施例における、各スタックの1セル毎の平均電圧(合計電圧/セル数)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シート、折りたたみ式電池および折りたたみ式電池の製造方法について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本実施形態はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0023】
[折りたたみ式電池用シート]
図1Aは、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シートを、一面側から見た斜視図である。図1Bは、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シートを、他面側から見た斜視図である。また、図2は、図1Aに示す線分X-Xによる断面模式図である。
【0024】
本実施形態の折りたたみ式電池用シート10は、図1A図1Bに示すように、シート11と、シート11上に配置された複数の電解質部12と、シート11上に配置された複数の電極部13とを有する。なお、図1A図1Bでは、複数の電解質部12を設ける例を示しているが、本実施形態ではこれに限らず、電解質部12は1つであってもよい。すなわち、電池として機能させるためには、電極部13が2つと、電解質部12が1つあれば足り得る。以下、説明の便宜上、シート11上に複数の電解質部12を設ける場合について説明する。
【0025】
シート11は、疎水性シートからなるシートである。具体的には、シート11は絶縁体からなるフィルム状のシートであればよく、その素材としては、特に限定しない。シート11としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどを用いることができる。なお、シート11上には、後述する電解質部12および電極部13が配置されるため、シート11の素材としては、耐久性の観点から、ポリエチレンテレフタラートを採用するとよい。
【0026】
また、折りたたみ式電池用シート10を種々の電池に適用する場合は、適用する電池に要求される各特性に応じて、シート11の素材を適宜、決定してもよい。例えば、折りたたみ式電池用シート10を金属空気電池に適用する場合は、シート11として通気性のよい紙製のシートを採用することで、電池性能をより向上させることもできる。
【0027】
シート11は、図1A図1Bに示すように、一面11a及び他面11bを有し、さらに、シート11上には、相互に平行な複数の折り曲げ予定線Lが設定されている。後述するが、折りたたみ式電池用シート10を用いて電池を製造する場合、この折り曲げ予定線Lに沿って折りたたむことで、電池となすことができる。よって、シート11上の折り曲げ予定線Lは、シート11を折り曲げた際に、隣り合う電解質部12と電極部13とが接触できるように設定される。具体的には、複数の折り曲げ予定線Lに沿ってシート11を折りたたんだ場合、山折りと谷折りが交互に出現するよう、折り曲げ予定線Lの配置が設定される。
【0028】
シート11の厚みは、特に限定せず、前述のように、電池を製造する場合にシート11を折り曲げることができる程度とすればよい。また、シート11に用いる素材に応じて、適宜、厚みを設計してよい。なお、シート11の厚みを大きくするほど、反応の寄与する電極部13内の金属粉や触媒などの面積を増大でき、結果、大きな電流値を得ることができる。一方、シート11の厚みが小さくなるほど、得られる電流値が小さくなる。そのため、大きな電流値を確保する観点からは、シート11の厚みを大きくすることが好ましい。ただし、シート11の厚みが過度に大きいと、折りたたみ式電池用シート10を折りたたむ際に、電池としてかさばってしまう。加えて、シート11の厚みが過度に大きいと、正極層13Aと負極層13Bとが電解質層12aを介して重なりあうように折りたたむことが困難となり、シート上の各要素の接触不良を招くおそれもある。また、シート11の厚みが大きいほど電池の内部抵抗が上昇するため出力低下を招く恐れもある。以上のような観点から、シート11の厚みは、例えば、100μm~1000μmとしてよい。
【0029】
電解質部12は、一対の折り曲げ予定線Lの間のシート11上に、複数配置されている。また、図1Aおよび図1Bに示すように、折り曲げ予定線Lを挟んで対向する電解質部12の各列は、折りたたみ式電池用シート10を折りたたんだ際に電解質部12同士が重なり合わないよう配列されている。例えば、複数の電解質部12は、折りたたみ式電池用シート10を平面視した際、千鳥状に配列されていてもよい。つまり、シート上の複数の電解質部12は、折り曲げ予定線Lを軸として、電解質部12同士が隣り合わないようなに配列されている。
【0030】
電解質部12は、図2に示すように、シート11の一面11aと他面11bとの間に設けられた貫通孔Hと、貫通孔Hを挟んで対向するようにシート11の一面11a上及び他面11b上に形成された電解質層12aと、を備える。
【0031】
シート11の一面11a上の電解質層12aと、他面11b上の電解質層12aは、貫通孔Hを通じて一体化されている。この貫通孔Hは、折りたたみ式電池用シート10を折りたたんで電池とした際、イオン伝導を担う要素となる。なお、貫通孔Hの個数は、図2に示すように、電解質部12ひとつにつき1個でもよいが、シート11や電解質部12等の形状や寸法に応じて適宜決定してよく、電解質部12ひとつにつき複数個設けてもよい。
【0032】
電解質層12aは、ゲル状もしくは固体状であることが望ましい。
本実施形態に係る折りたたみ式電池用シート10は、折りたたむことで電池となすことができる。しかし、電池となすまでは、シート11上の各要素同士(電解質部12と電極部13)の接触を回避した状態で、折りたたみ式電池用シート10を保存できることが望ましい。そのためには、電解質層12aの過度の変形や他の要素への漏洩を抑制することが効果的である。よって本実施形態では、電解質部12aの過度の変形や他の要素への漏洩を抑制すべく、電解質層12aは、ゲル状もしくは固体状であることが望ましい。
【0033】
電解質層12aを、ゲル状もしくは固体状とするためには、後述する電解質層12aの材料に対し、例えば、ゲル化剤、増粘剤等を含有させるとよい。ゲル化剤としては、ゼラチン、アガロース、アクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートが例示できる。この中でも、アルカリ性に対して耐性があり、光照射により簡便にゲル化できることから、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート、もしくはポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートを用いることが望ましい。ただし、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラートやポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートの鎖長は、あまりにも短い(例えば、重合度1~3)と固化してしまう。そのため、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート、もしくはポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートを用いる場合には、柔らかいゲル状態を形成するために、ある程度以上の長さ(例えば、重合度5以上)のものを用いることが望ましい。ポリ(エチレングリコール)ジアクリラートやポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートをゲル化剤として使用する際は、アクリル系モノマーをラジカル開始剤と混合し、加熱や光等によりゲル化を進行させることが望ましい。また、電解質層12aとしてゼラチン単体を用いてもよい。
【0034】
電解質層12aの材料としては、例えば、水系電解液を用いることができる。例えば、水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液等の中性水溶液、硫酸水溶液等の酸性水溶液が例示される。水系電解液の合計イオン濃度は1mmоl/L以上であればよく、100mmоl/L以上であればさらに望ましい。本実施形態の折りたたみ式電池用シート10を金属空気電池に適用する場合は、金属空気電池の出力を高くする観点から、この中でも特に、アルカリ水溶液を用いることが望ましい。電解質層12aの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、電解質層12aはこれらの例示に限定されず、例えば、無機電解質であってもよい。
【0035】
電解質層12aの厚みは、特に限定しないが、厚みを過度に小さくすると、電池性能、特に容量の低下を招くおそれがあるため、0.1mm以上とすることが好ましい。一方、厚みを過度に大きくすると、折りたたみ式電池用シート10を、精度良く折りたたむことが困難となる場合がある。また電池のコンパクト化の観点からは、電解質層12aの厚みは、小さい方が好ましい。例えば、電解質層12aの厚みは、3mm以下とすることが好ましい。
【0036】
また、電解質部12の貫通孔H内には、セパレータが埋め込まれていてもよい。
上述したように、電解質部12の貫通孔Hは、折りたたみ式電池用シート10を折りたたんで電池とした際、イオン伝導を担う要素となる。しかし、折りたたみ後に、電解質部12を挟んで両側に配置される電極部13同士(正極層13Aと負極層13B)がより近接しすぎると、電気的短絡を招くおそれもある。このような観点から、貫通孔H内にセパレータを埋め込むことが望ましい。貫通孔H内にセパレータを埋め込むことによって、後述する正極層13Aと負極層13Bとを隔離し、かつ、電解質部12を支持した上で、正極層13Aと負極層13Bとの間のイオン伝導性を十分に確保することができる。
【0037】
セパレータの素材としては、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン、不織布、ポリアミド繊維等を例示できるが、セパレータはこれらの例示に限定されない。
【0038】
電極部13は、折り曲げ予定線Lを挟んで電解質部12の隣に配置されている。これにより、折り曲げ予定線Lに沿って折りたたみ式電池用シート10を折りたたんだ際、電解質部12と電極部13とを重ね合わせることができ、電池を構成できる。
【0039】
電極部13は、図1A図1Bならびに図2に示すように、シート11の一面11aに設けられた正極層13Aと、シート11の他面11bであって、シート11を挟んで正極層13Aと対向する位置に設けられた負極層13Bと、正極層13Aおよび負極層13Bを導通させる導電体14とを備える。
【0040】
シート11の一面11aに設けられた正極層13Aは、折り曲げ予定線Lに沿ってシート11が折り曲げられた際に、シート11の一面11a側の電解質層12aに接するように配置されている。すなわち、シート11の一面11a側から平面視して、シート11の一面11a上において、正極層13Aと電解質層12aが、互い違いとなるよう格子状に設けられている。
【0041】
また、シート11の他面11bに設けられた負極層13Bは、折り曲げ予定線Lに沿ってシート11が折り曲げられた際に、シート11の他面11b側の電解質層12aに接するように配置されている。すなわち、シート11の他面11b側から平面視して、シート11の他面11b上において、負極層13Bと電解質層12aが、互い違いとなるよう格子状に設けられている。
【0042】
正極層13Aは、折りたたみ式電池用シート10を折りたたみ電池となした場合、正極となる要素である。したがって、正極層13Aとしては、一般的な正極材料として用いられているものであれば、いずれも適用可能である。例えば、折りたたみ式電池用シート10を金属空気電池に適用するのであれば、正極層13Aは、空気極(酸素極)となり、その場合の正極層13Aの材料としては、還元反応を促進する白金担持炭素材料(白金担持カーボン)、鉄フタロシアニン担持炭素材料、酸化マンガン担持炭素材料などを例示できる。
【0043】
負極層13Bは、折りたたみ式電池用シート10を折りたたみ電池となした場合、負極となる要素である。したがって、負極層13Bとしては、一般的な負極材料として用いられているものであれば、いずれも適用可能である。例えば、折りたたみ式電池用シート10を金属空気電池に適用するのであれば、負極層13Bとしては、亜鉛、マンガン、リチウムなどの金属単体、これらの合金、もしくはこれらの金属酸化物が例示できる。
【0044】
正極層13Aおよび負極層13Bの形態も特に限定されない。正極層13Aおよび負極層13Bは、ペースト状の正極材料、負極材料をシート11上に塗布して形成されてもよいし、インクジェット塗布装置などを用いて正極材料、負極材料の粒子(金属粒子)を塗布することで形成されてもよい。
【0045】
図2に示すように、正極層13Aおよび負極層13Bを導通させる導電体14がシート11を貫通するように設けられている。すなわち、シート11の一面11aに設けられた正極層13Aと、他面11bに形成された負極層13Bは、シート11に設けられた導電体14を介して、重ね合うよう設けられている。
【0046】
導電体14は、折りたたみ式電池用シート10を折りたたみ電池となした場合、シート11を挟んで重なり合う正極層13Aと負極層13Bを導通させるとともに、両者を支持する要素である。よって、導電体14としては、電子伝導性を有する材料であればいずれでもよく、例えば、カーボン、金属、導電性高分子などを例示できる。
【0047】
また、導電体14の形態は特に限定せず、導電体14やシート11の材質、正極層13Aおよび負極層13Bの形態や材質などに応じて、適宜、決定してよい。例えば、導電体14としてカーボンを用いる場合、導電体14の形態は、インク状(カーボンインク)であってもよいし、プレート状(カーボンプレート)でもよい。導電体14として、カーボンインクを用いる場合は、例えば、キャスト法を用い、カーボンインクをシート11上の両面に貫通するように塗布し、その後、乾燥させることで導電体14を形成することができる。また、導電体14として、カーボンプレートを用いる場合は、例えば、予め所望のサイズに切り出しておいたカーボンプレートを、シート11を貫通するよう配置することで導電体14を形成することができる。
【0048】
[折りたたみ式電池]
図3に、本実施形態に係る折りたたみ電池1を示す。
図3に示すように、折りたたみ電池1は、上述した折りたたみ式電池用シート10からなり、折りたたみ式電池用シート10を折り曲げ予定線Lに沿って折りたたむことで得ることができる。
なお、図3には説明の便宜上、1セル分しか図示していないが、実際には、シート11上には複数の電池要素(電解質部12と電極部13)が配置されている。そのため、折りたたみ式電池用シート10を折り曲げ予定線Lに沿って折りたたむことで、多層の直列繋ぎが実現される。
【0049】
[折りたたみ式電池の製造方法]
本実施形態に係る折りたたみ電池1は、上述した折りたたみ式電池用シート10を用いて、電極部13と電解質部12とが接するよう、折り曲げ予定線Lに沿ってシート11が折り曲げることで得ることができる。
具体的には、まず、折りたたみ式電池用シート10に対し、折り曲げ予定線Lに沿って、山折りと谷折りが交互となるように折り目を入れ、さらに、正極層13Aと負極層13Bが電解質層12aを介して重なりあうように当該折り目に沿ってシート11を折りたたむ。すなわち、折り曲げ予定線Lに沿ってシート11を折り曲げる際、正極層13Aがシート11の一面11a側の電解質層12aに接するよう折り曲げ、かつ負極層13Bがシート11の他面11b側の電解質層12aに接するよう折り曲げることで、図3に示すような折りたたみ電池1を製造することができる。
【0050】
また、折りたたみ式電池用シート10の折りたたみ方として、図1Aおよび図1Bに示すようないわゆる「蛇腹折り」の他に、例えば、いわゆる「ミウラ折り」を適用することも可能である。
【0051】
図1Aに示す蛇腹折りと、ミウラ折りとの違いは、折り曲げ予定線の設定方法にある。
図1Aの蛇腹折りでは、折りたたみ予定線Lが、相互に平行となるように設定され、かつ、折りたたみ予定線Lで囲まれた領域を1マスとすると、各マスが矩形となる。一方、ミウラ折りの場合、折りたたみ予定線は、ジグザグな線であり、各マスが平行四辺形となる。ミウラ折りを適用する場合であっても、電解質部や電極部の構成要素の配置は、図1Aと同様としてよい。
【0052】
このようなミウラ折りは、対角線の部分を押すだけで、折りたたむことできる方法であるため、簡便に折りたたみ電池を製造することができる。
【0053】
[実施形態の変形例]
上述した実施形態では、1枚の折りたたみ式電池用シート10を用いた折りたたみ電池1について説明したが、これに限らず、折りたたみ式電池用シートを2枚以上用いた折りたたみ電池としてもよい。
【0054】
図4A(a)は、本実施形態の変形例である折りたたみ式電池用シート10Aを構成する電極部用シート11Aを、一面側から見た斜視図である。図4A(b)は、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シート10Aを構成する電極部用シート11Aを、他面側から見た斜視図である。図4B(a)は、本実施形態の変形例である折りたたみ式電池用シート10Aを構成する電解質部用シート11Bを、一面側から見た斜視図である。図4B(b)は、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シート10Aを構成する電解質部用シート11Bを、他面側から見た斜視図である。また、図4Cは、電極部用シート11Aと電解質部用シート11Bを重ね合わせた状態の断面模式図である。
なお、図1Aに示す本実施形態の折りたたみ式電池用シート10と共通の構成及び要素については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0055】
本実施形態の変形例である折りたたみ式電池用シート10Aは、図4Aに示すような、一面11Aa及び他面11Abを有し、相互に平行な複数の電極部用折り曲げ予定線Mが設定された電極部用シート11Aと、図4Bに示すような、一面11Ba及び他面11Bbを有し、相互に平行な複数の電解質部用折り曲げ予定線Nが設定された電解質部用シート11Bを有する。
【0056】
また、折りたたみ式電池用シート10Aは、電解質部用シート11Bの一面11Ba上であって、電解質部用折り曲げ予定線Nの両側に配置された複数の電解質部22を有する。電解質部22は、電解質部用シート11Bの一面11Ba上に形成されるとともに、電解質部用折り曲げ予定線N上で一体化された電解質層22aを有する。すなわち、電解質部22は、電解質部用折り曲げ予定線Nを跨ぐように設けられているとともに、電解質部用折り曲げ予定線N上で一体化している。なお、図4B(b)に示すように、電解質部用シート11Bの他面11Bb上には、電解質部22は形成されない。
【0057】
電解質層22aの具体的な材料および形態は、上記本実施形態の折りたたみ式電池用シート10における電解質層12aと同様としてよい。
【0058】
本変形例においても、電解質部22は貫通孔を有してもよい。この場合、貫通孔は、電解質部用シート11Bの一面11Baと他面11Bbとの間に設けられてよい。本変形例において貫通孔を設ける場合、その配置位置は、電解質部用シート11Bの一面11Baと他面11Bbとの間であれば、いずれでもよい。
【0059】
また、折りたたみ式電池用シート10Aは、電極部用シート11Aの一面11Aa及び他面11Ab上であって、電極部用折り曲げ予定線M同士の間に配置された複数の電極部13を有する。
複数の電極部13は、電極部用シート11Aの両面に、平面視で格子状の配列となるように設けられた複数の正極層13Aおよび複数の負極層13Bと、電極部用シート11Aを貫通して正極層13Aおよび負極層13Bを導通させる導電体14と、を有する。
【0060】
図4Aおよび図4Bに示すように、複数の正極層13Aは、電極部用折り曲げ予定線Mに沿って配列されている。複数の負極層13Bは、電極部用折り曲げ予定線Mを挟んで、複数の正極層13Aの列と隣り合うように配列されている。すなわち、正極層13Aの列と、負極層13Bの列が、電極部用折り曲げ予定線Mに直交する方向(図4Aにおいて左右方向)において、交互に配列されている。
【0061】
また、正極層13Aと負極層13Bは、電極部用シート11Aを挟んで互いに対向する位置となるよう、設けられている。例えば、電極部用シート11Aの一面11Aa側の正極層13Aの電極部用シート11Aを挟んだ反対側(他面11Ab側)には、負極層13Bが設けられる。つまり、電極部用シート11Aを挟んで、正極層13Aと負極層13Bが対となるように設けられている。
【0062】
図4C(a)に、本実施形態の変形例である折りたたみ式電池用シート10Aを構成する電極部用シート11Aと電解質部用シート11Bの重ね合わせの配置例を示す。また、図4C(b)に、本実施形態の変形例である折りたたみ式電池1Aの模式図を示す。
図4C(a)、(b)に示すように、折りたたみ電池1Aは、上述した電極部用シート11Aおよび電解質部用シート11Bを有する折りたたみ式電池用シート10Aからなる。すなわち、折りたたみ電池1Aは、少なくとも1枚以上の電極部用シート11Aと2枚以上の電解質部用シート11Bとを重ね合わせ、各折り曲げ予定線M、Nに沿って折りたたむことで得ることができる。
なお、図4C(a)、(b)には説明の便宜上、3セル分しか図示していないが、実際には、各シート上には複数の電池要素が配置されている。そのため、電極部用シート11Aおよび電解質部用シート11B重ね合わせ、さらに折りたたむことで、多層の直列繋ぎが実現される。
【0063】
本実施形態の変形例に係る折りたたみ電池1Aは、図4C(a)に示すように、まず、電極部13と電解質部22が接するように、電極部用シート11Aの両面それぞれに電解質部用シート11Bを重ね合わせる。次いで、電極部用シート11A上の隣り合う電極部13(すなわち正極層13Aと負極層13B)が、電解質部用シート11B上の電解質部22を介して対向するように電極部用折り曲げ予定線Mおよび電解質部用折り曲げ予定線Nに沿って各シートを折り曲げる。こうすることで、折りたたみ電池1Aとなすことができる。
【0064】
以上、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シート10ならびに変形例である折りたたみ式電池用シート10Aの構成を説明したが、これらのような構成によれば、電池としての各要素を非接触状態で保管できる。そのため、電池として使用開始する直前まで電池性能を劣化させることなく、長期間の保管が可能となる。また、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シート10によれば、シート上に電池の各要素が適切に配置されているため、電池として利用する時に折りたたむだけで、電池を簡便に製造することができる。また、シート上の各電池要素を適切な配置パターンとすることで、多層の直列繋ぎを達成することができ、その結果、高電圧の電池を得ることが可能になる。
さらに、本実施形態の折りたたみ式電池用シート10もしくは折りたたみ式電池用シート10Aを用いて電池を形成する場合、少なくとも、1対の電極部と1つの電解質部の合計3要素を重ね合わせることで1セルを形成できる。そのため、従来の積層型電池(例えば、1セルあたり5要素を必要とする濃淡電池)に比べ、1セルあたりの厚みが小さなコンパクトな電池を実現できる。さらに、本実施形態によれば、電解質に濃淡を付与する必要も無いため、より簡易的に折りたたみ式電池を製造できる。
【0065】
また、本実施形態に係る折りたたみ式電池用シート10ならびに変形例である折りたたみ式電池用シート10Aを用いれば、略平面構造であるシートの状態から立体構造の電池を作り出すことができる。すなわち、電池として使用するまでは、シートとして保管しておけばよいため、保管スペースの削減も期待できる。
【0066】
以上説明した本実施形態およびその変形例である折りたたみ式電池用シートは、各種の電池に適用できる。例えば、本実施形態およびその変形例である折りたたみ式電池用シートは、金属空気電池、燃料電池、ボルタ電池、金属イオン電池(リチウムイオン電池等)などに用いることでき、その場合は、シート上に配置する各電池要素の材料を、各種電池に応じて、適宜、選択すればよい。
【0067】
なお、上述した本実施形態およびその変形例においては、電解質部12のシート11上に貫通孔を設けずに、セパレータのみを設ける形態としてもよい。
【実施例
【0068】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0069】
シートとして、厚み100μmのPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムを用い、図1A及び図1Bに示す配置パターンとなるよう、導電体、電解質部、空気極(正極部)および金属極(負極部)を形成し、折りたたみ式電池用シートした。なお、隣り合う折り曲げ予定線Lの間隔は10mmとした。
【0070】
導電体は、カーボンインクをシート両面に、およそφ8mmとなるよう塗布し、その後120℃で1時間加熱乾燥して複数の導電体を形成した。なお、カーボンインクは、シート上に設けられた貫通孔(φ2mm)を挟むよう、シート両面に塗布した。
【0071】
また、水酸化カリウム(濃度:0.1mоl/L)とゲル化剤とラジカル開始剤との混合物(pH13)用い、約φ8mmとなるようシート上に塗布して電解質部を形成した。具体的には、まず、ゲル化剤としては、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(数平均分子量Mn:750、重合度:17、Sigma-Aldrich社製)を用い、当該ゲル化剤と前述の水酸化カリウムの混合物を作製した。次に、ゲル化剤と水酸化カリウムの混合物に対し、1vol%のラジカル開始剤(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Sigma-Aldrich社製))を添加して混合し、さらに、当該混合物に対して365nmの光照射装置(SLUV-4、アズワン株式会社製)を用いて約750μW/cmの光強度で光照射することで硬化させて電解質部を作製した。
また、ペースト状の白金担持炭素材料(白金担持カーボン)と、亜鉛粒子をφ8mmとなるよう塗布し、その後120℃で2時間加熱乾燥させることで空気極および金属極をそれぞれ形成した。
なお、電解質部、空気極および金属極はすべて、厚み100μm~200μmの範囲とした。また、導電体および電解質部内のシート上には、寸法がφ2mmの貫通孔を設けることで、それぞれ電気伝導性・イオン伝導性を確保した。
【0072】
得られた折りたたみ式電池用シートを折り曲げ予定線Lに沿って折りたたみ、計3セルが直列に繋がれた電池(金属空気電池)を製造した。得られた電池の各スタックを評価した。
【0073】
図6Aに、各スタックの合計電圧、図6Bに各スタックの1セル毎の平均電圧(合計電圧/セル数)を示す。図6Aに示すように、セル数(積層数)が増加するほど電圧が増大し、セル数が3の場合(3スタック時)の合計電圧は3.17Vであった。また、図6Bに示すように、セル数が増加しても、1セルあたりの電圧はほぼ一定ものが得られた。また、セル数が3の場合(3スタック時)について、680Ωの抵抗につないで電流を測定したところ、30μAの電流が流れることが確認できた。
【符号の説明】
【0074】
1…折りたたみ電池
10、10A…折りたたみ式電池用シート
11…シート
11A…電極部用シート
11B…電解質部用シート
11a、11Aa、11Ba…一面
11b、11Ab、11Bb…他面
12、22…電解質部
12a、22a…電解質層
13…電極部
13A…正極層
13B…負極層
14…導電体
L…折り曲げ予定線
M…電極部用折り曲げ予定線
N…電解質部用折り曲げ予定
H…貫通孔
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B