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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】打抜機のバランス補正シートの作成方法
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/00 20060101AFI20250305BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20250305BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
B26F1/00 A
B26F1/40 Z
B26F1/00 Z
B26D7/26
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024097419
(22)【出願日】2024-06-17
【審査請求日】2024-06-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521500443
【氏名又は名称】株式会社カウンタープレートジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】浅井 和明
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-202617(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118692(WO,A1)
【文献】特開平01-103298(JP,A)
【文献】特開平09-201799(JP,A)
【文献】実開昭53-042292(JP,U)
【文献】特開2022-122719(JP,A)
【文献】中国特許第102166761(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/00
B26F 1/40 - 1/42
B26D 7/26
G01N 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打抜型と前記打抜型に設けられた打抜刃の刃先を受けるカッティングプレートが対向配置され、用紙を打抜いてブランクを形成する打抜機の個体固有の押圧力のムラを解消し均一な押圧力を付与するためのバランス補正シートの作成方法であって、
打抜機に規則性を持って配された複数の打抜き刃のみで構成されたバランス補正用型を取り付けて、カッティングプレートに押圧力のムラを把握するためのテスト用板紙を配するとともに、前記テスト用板紙と略同一の外周形状で剥離可能に積層された積層シートをバランス補正用型、又は、カッティングプレートの裏面に配し、
前記テスト用板紙に部分的に打抜かれた箇所ができるまで打抜機の押圧力をわずかに昇圧するステップと、
テスト用板紙の部分的に打抜かれた箇所に対応する前記積層シートの範囲を、同じ押圧力でテスト用板紙に打抜かれる箇所がなくなるまで一枚ずつ剥がし取るとともに、前記積層シートを一枚剥がし取る毎にカッティングプレート上に新たなテスト用板紙を配するステップを、
前記バランス補正用型のすべての打抜刃が一度にテスト用板紙を打抜くまで繰り返して、当該打抜機の押圧力のムラに対応して厚みが異なる積層シートであるバランス補正シートを得ることを特徴とするバランス補正シートの作成方法。
【請求項2】
前記テスト用板紙と略同一の外周形状で剥離可能に積層された積層シートを、バランス補正用型が固定されるチェースの裏板上に配された保護板上に、樹脂フィルムや薄金属板であるカバーシートで挟むように設置することを特徴とする請求項1に記載のバランス補正シートの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙器・ダンボール等の外形となるよう用紙を打ち抜きや樹脂板や樹脂フィルムを打抜き為の打抜機に使用される打抜機のバランス補正シートの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包装容器や紙箱とも呼称される紙器・ダンボール等は、紙、ダンボール、コーティング紙、樹脂に加えて、複数の紙類や紙類と樹脂や金属との複合材料等からなる用紙を打ち抜いて折り曲げて貼り合わすことで形成される。紙器は、軽量で持ち運びに便利であり、多くの産業分野で普及している。
【0003】
既知の打抜機において、用紙の打抜き加工に使用される打抜型は、紙器となる外形形状や折り曲げ用の罫線に従ってベニヤ板にレーザー加工を施して、紙器となる外形形状に対応した打抜刃用の貫通溝と押罫部材用の貫通溝とを形成し、それぞれの貫通溝に打抜刃と押罫部材とを埋め込んで製作される。
押罫部材は、その高さ寸法が打抜刃よりも小さく設定されており、押罫部材の下方への突出量が打抜刃よりも少ない突出量となっている。
用紙を紙器となる外形ラインで打ち抜くとともに折り筋を付与する際には、打抜型に配されたゴム部材によ
って用紙を動かないように押さえながら、切断しつつ、折り筋を付与する。
面版は、カウンタープレートとも呼ばれ、その材質は金属、ABS、PBT、PPS、フェノール樹脂等の合成樹脂製で、板状やシート状やフィルム状の基板からなり、打抜型を製作する為のCADデータからNC加工機により打抜型の押罫部材に対応する位置に溝を削り加工し、打抜刃が当接する部位が外周となるよう切除して製作される(図1参照)。また、直接に溝などが施されていない平面状カッティングプレートに押し当てる場合もある。
【0004】
図1では、前記打抜型は、打抜機の上定盤側に取付けられ、前記面版は、カッティングプレートに貼り付けられて用紙を受ける。そして、カッティングプレートは、図示しないチェース(枠体)に装着されるなどして、打抜機の下定盤側に取付けられて、打抜型に配された打抜刃の刃先を受ける。
そして、打抜機の上定盤に取付けた打抜型の刃先と、打抜機の下定盤に取付けたカッティングプレート上の面版との間に用紙を挿入し、下定盤を上昇させて次に降下させ、打抜き加工する。
つまり、用紙を打抜刃で所定の形状に裁断するとともに、押罫部材と面版の溝部とで所要部に折り筋を複数刻設し、ブランク(打ち抜いた用紙)を形成する。そして、ブランクをその折り筋に沿って谷折りし糊代を貼り合わせることで紙器を組み立てる。
その他、上記以外にも、図示しないが、打抜型に設けた刻切刃によって、ジッパーとなるミシン目が形成された用紙を打ち抜くとともに折り筋とミシン目を付与する構成もある。
なお、図1では、打抜型が上で、カッティングプレートが下の配置構成となっているが、カッティングプレートが上で、打抜型が下の配置構成となっている場合も想定される。
【0005】
上記の打抜き加工においては、1回の動作で1つのブランク(打ち抜いた用紙)を形成する場合もあるが、生産性を高めるためには、同時に複数のブランクを形成することが好ましく、例えば、1回の動作で同時に4つのブランクを形成する。
【0006】
特に複数の前記ブランクを、各々均一に打ち抜き加工するためには、打抜型の押圧力が用紙に対して均等に加わるように設定する必要がある。
しかし、メンテナンス上の問題や、経年変化等によって、打抜型の押圧力にムラが生じる原因となっている。そこで、前記ブランクを各々均一に打ち抜き加工するために、前記打ち抜き型の押圧力のムラを低減する各種取り組みがなされている。
【0007】
特に、本願発明者は特許文献1において、打抜機の駆動部分や駆動連結部分に歪みが生じたり摩耗したりするなどして全体の押圧力バランスが崩れ、打ち抜き圧力の弱い個所と打ち抜き圧力の強い個所が出来てしまった打抜機に対して、打抜型を取付ける前段階での全体の圧力バランスを補正することを課題として、剥離可能なシートが積層された積層シートからなるバランス補正シートを開示した。
当該バランス補正シートは、打抜機における打抜き圧力の弱い個所では前記切り込みが浅く形成され、打抜き圧力の強い個所では前記切り込みが深く形成されている構成とされ、前記切り込みの深さに応じて部分的に切除されている。
すなわち、前記バランス補正シートの厚みは、前記打抜機における打ち抜き圧力の弱い個所では前記厚みが大きくなっており、打ち抜き圧力の強い個所では前記厚みが小さくなっている。この構成によって、前記打抜機における打ち抜き圧力の弱い個所の圧力を増大させ、打ち抜き圧力の強い個所の圧力を減少させる働きをさせる新規の技術を提示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5197870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記バランス補正シートは、積層されたシートをハーフカットして打抜き圧力の強弱に応じて部分的に切除する枚数を異ならせる作業が煩雑であり、導入に困難性が生じていた。
そこで、本発明の目的は、打抜機に生じる押圧力のムラを解消するための容易なバランス補正シートの作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の打抜機のバランス補正シートの作成方法は、打抜型と前記打抜型に設けられた打抜刃の刃先を受けるカッティングプレートが対向配置され、用紙を打抜いてブランクを形成する打抜機の個体固有の押圧力のムラを解消し均一な押圧力を付与するためのバランス補正シートの作成方法であって、打抜機に複数の打抜刃が規則性を持って配されたバランス補正用型を取り付けて、カッティングプレートに押圧力のムラを把握するためのテスト用板紙を配するとともに、前記テスト用板紙と略同一の外周形状で剥離可能に積層された積層シートをバランス補正用型、又は、カッティングプレートの裏面に配し、前記テスト用板紙に部分的に打抜かれた箇所ができるまで打抜機の押圧力をわずかに昇圧するステップと、テスト用板紙の部分的に打抜かれた箇所に対応する前記積層シートの範囲を、同じ押圧力でテスト用板紙に打抜かれる箇所がなくなるまで一枚ずつ剥がし取るとともに、前記前記積層シートを一枚剥がし取る毎にカッティングプレート上に新たなテスト用板紙を配するステップを、前記バランス補正用型のすべての打抜刃が一度にテスト用板紙を打抜くまで繰り返して、当該打抜機の押圧力のムラに対応して厚みが異なる積層シートであるバランス補正シートを得ることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明の打抜機のバランス補正シートの作成方法は、積層シートが打抜機の上定盤側に配する場合、前記バランス補正用型が固定されるチェースの裏板上に配する保護板と樹脂フィルムや薄金属板であるカバーシートで前記積層シートを挟むことを特徴とする。
本発明によれば、積層シートFのズレや損傷を防止するとともに、積層シートを覆うように配したカバーシートは取り外しが容易で、打抜機の時間経過により、改めてバランス補正が必要になった際のメンテナンスをスムーズに行うことが可能となる。
【0012】
また、テスト用板紙の打抜かれた箇所に対応する前記積層シートの範囲を失念なく剥がし取るために、前記テスト用板紙の打抜かれた箇所に対応する前記積層シートの範囲の外周にマーキングするとともに、前記テスト用板紙の打抜かれた箇所に対応する前記積層シートの範囲を他の部分と区別するための識別子を付与することを特徴とし、積層シートを構成するそれぞれのシートに着色などの判別可能な識別子を付与してもよい。
【0013】
さらに本発明のバランス補正シートの作成方法は、上述のように作成されたバランス補正シートが配された打抜機に時間の経過等により押圧力のムラが生じた場面で、前記打抜機に配されたバランス補正シートに積層シートを構成するシートを任意の枚数剥離可能に重ね合わせることで、当該打抜機の従前の押圧力のムラが反映した状態の積層シートを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来技術に開示されたバランス補正シートの作成方法とは異なり、積層シートの最上面を基準とするので、切り込みの深さに応じた積層シートを切除が不要で、テスト用板紙の打抜かれた箇所に対応した積層シートの部分を一枚剥離するという単純な作業の繰り返しにより、短時間で打抜機に生じる押圧力のムラを解消するためのバランス補正シートを作成することが可能となる。
また、積層シートに剥離箇所とそれ以外を区別する識別子を付与することや、積層シートの各層のシートに判別可能な識別子を付与することにより、剥離の失念防止や、押圧力のムラを視覚的に把握できる効果を有する。
そして、本発明のように剥離可能なシートを積層させた積層シートによりバランス補正シートを作成することによって、バランス補正シートが配された打抜機が所定期間使用されて経年変化等により押圧力のムラが生じた場合を想定すると、使用されているバランス補正シートに新たな積層シートを重ね合わせること(継ぎ足すこと)が容易で、当該打抜機の従前の押圧力を反映した積層シートを得ることができるので、メンテナンスを行う時点で、新規に積層シートからバランス補正シートを作成するよりも、バランス補正シートの作成工程、作成時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態を含む一般的な打抜機を模式的に示した図である。
図2】本実施の形態の積層シートを示した図である。
図3】本実施の形態のバランス補正用型を示した図である。
図4】本実施の形態のバランス補正シート作成準備時の打抜機の構成を示す模式図である。
図5】本実施の形態のバランス補正シート作成準備完了時の打抜機を示す模式図である。
図6】本実施の形態のバランス補正シート作成ステップの一部を示す図である。
図7】本実施の形態のテスト用板紙を示す図である。
図8】本実施の形態のテスト用板紙を示す図である。
図9(a)】本実施の形態のバランス補正シート作成ステップにおける積層シートとテスト用板紙の対応状態を示す図である。
図9(b)】本実施の形態のバランス補正シート作成ステップにおける積層シートを示す図である。
図10】本実施の形態のバランス補正シート作成ステップにおける積層シートを示す図である。
図11】本実施の形態のバランス補正シートの作成ステップを示す画像である。
図12】本実施の形態のバランス補正シートの作成完了時のテスト用板紙の状態を示す画像である。
図13】上記実施の形態とは別の形態のバランス補正用型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための具体的な形態について図面を用いて説明する。
(打抜機について)
図1は、本実施の形態におけるバランス補正シートSが導入される既知の打抜機1を示す概略図であり、打抜型11、(打抜かれて紙器となる)用紙P、カッティングプレート21の関係を模式的に示した断面図である。
【0017】
打抜型11は、ブランクの外形形状や折り曲げ用の罫線に従ってベニヤ板にレーザー加工やルーター加工を施して、ブランクの外形形状に対応した打抜刃101用の貫通溝と押罫部材102用の貫通溝とを形成し、それぞれの貫通溝に打抜刃101と押罫部材102とを埋め込んで、打抜型11が製作される。
本実施の形態では打抜型11はチェース(枠体)に装着されるなどして打抜機1の上定盤10側に取り付けられるが、その態様は適宜選択可能である。
なお、押罫部材102は、その高さ寸法が打抜刃101よりも小さく設定されており、押罫部材102の下方への突出量が打抜刃101よりも少ない突出量となっている。
また用紙Pをブランクの外形ラインで打ち抜くとともに折り筋を付与する際には、打抜型11に配されたゴム部材103によって用紙Pを動かないように押さえながら、切断及び折り筋付与を行う。
【0018】
打抜型11に対向する位置には、打抜き時に打抜刃101を受けるカッティングプレート21が配されている。カッティングプレート21も上記打抜型同様にチェース(枠体)に装着されるなどして、打抜機1の下定盤20に取り付けられている。
そして、カッティングプレート21に貼り付けられる面版22(カウンタープレート)は、その材質はABS、PBT、PPS、フェノール樹脂等の合成樹脂製で、板状やシート状やフィルム状の基板からなり、打抜型11を製作する為のCADデータからNC加工機により打抜型11の押罫部材102に対応する位置に溝を削り加工し、打抜刃101が当接する部位が外周となるよう切除して製作される。
【0019】
そして、上記のような構成の打抜機1の打抜型11と、カッティングプレート21に貼り付けられた面版22の間に用紙Pを挿入し、下定盤20を上昇させた後に下降させて打抜き加工を行う。
【0020】
(バランス補正シートの作成方法)
上記のような打抜き加工において、どうしても生じてしまう用紙を打抜く力(押圧力)のムラを均一にするための本実施の形態における本発明のバランス補正シートSは、打抜型11の上定盤側(図1のおけるXの位置)に配される。
以下に本発明のバランス補正シートSの作成方法について説明する。
【0021】
本発明のバランス補正シートSを作成するためには、積層シートFとバランス補正シート作成用の打抜型(バランス補正用型D)が必要となる。
図2は本実施の形態における積層シートFを模式的に示したものであり、図3は本実施の形態におけるバランス補正用型Dを示したものである。
【0022】
(積層シートについて)
積層シートFは、図2(b)における複数の剥離可能なシートFaが積層された矩形を呈している。
積層シートFは、その素材が紙や樹脂や金属、これらの複合材料等からなり、剥離可能に貼着・積層されている。より具体的には、紙、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、アセテート、アクリル、エポキシ、アルミニウム、鉄、ステンレス等や、これらの複合材料等の各種薄板が適用可能である。
当該剥離可能な機能をもたせた積層シートFとしては、例えば、少なくともその片面に粘着剤による粘着層が形成された粘着剤付きのシートがある。前記粘着剤としては、ゴム系やアクリル系等の既知の粘着剤が適用される。
また例えば、その表面形状等によって吸着性質を備えた素材からなるシートや、静電気によって吸着する素材からなるシートとしても良い。
そして、シートFaの厚みは10μm以上100μm以下で、積層枚数は5層以上25層以下に設定する。
例えば5層や10層の積層シートからスタートして、数年後、改めてバランス補正を行う際に、新たに5層や10層を上から貼り付けるけることで継続的で恒久的なメンテナンスが可能と成る。
【0023】
(バランス補正用型について)
バランス補正用型Dは、基板Daと、打抜刃Db(Db1,Db2)とからなる(図3)。基板Daは、四角形状で厚手のベニヤ板や樹脂ブロックからなり、所定間隔で規則性を持って縦横に描画された線に沿ってベニヤ板にレーザー加工を施して貫通溝を形成し、それぞれの溝に打抜刃Db1(横刃),Db2(縦刃)を埋め込んだ構成となっている。
図3(a)は、バランス補正用型Dの打抜刃側(表側)から見た図であり、基板Daに帯状の横刃Db1が平行に複数埋め込まれるとともに、これら横刃Db1の間を横断する方向に所定間隔で複数の縦刃Db2が埋め込まれており、横刃Db1と縦刃Db2は格子状に交わるように直角に交わるように形成されている。
ここで、基板Daの面積は積層シートFの面積と略同一であるか、または積層シートFの面積よりもやや大きく設定されていることが好ましい。
なお、図3(b)はバランス補正用型を打抜刃が突出している側を正面としたときの左側面図である。
【0024】
(バランス補正用型シート作成準備について)
図4は、バランス補正シートSを作成するための打抜機の構成を模式的に示した斜視図であり、以下の手順によりバランス補正シートの作成準備を行った状態を模式的に示したのが図5である。
(1)まず、バランス補正用型Dを打抜刃Dbが下定盤側に突出するようにチェースを介して上定盤側に配する。
(2)次に、バランス補正用型Dの打抜刃Dbが突出していない側(裏側)にはバランス補正用型Dを固定するチェースの裏板Wが存在し、その上面に保護板Bを介在させて積層シートFを配する。
また本実施の形態では、積層シートF上に樹脂シートや薄金属板によって構成されたカバーシートAを配する。
保護板BとカバーシートAで積層シートF挟むように配置するのは、積層シートのズレや損傷を防止するとともに、積層シートを固定するための接着剤がチェースの裏板Wや上定盤10に付着するのを防止するためである。
また、積層シートFを覆うように配したカバーシートAは取り外しが容易で、打抜機1の経年変化により、改めてバランス補正が必要になった際のメンテナンスをスムーズに行うことが可能となるという作用効果を有する。
(3)一方、カッティングプレート21を、チェース等を介して下定盤20に取り付け、
(4)カッティングプレート21上にバランス補正用型Dの打抜刃Dbを保護するためのシート(刃保護シートC)を張り付け、
(5)刃保護シートC上に打抜機の押圧力のムラを把握するための厚さ0.2mm程度で外周形状(面積)が積層シートFと略同一のテスト用板紙Tをセットする。
ここで、本実施の形態では、積層シートFの上に保護板Bを乗せたが、その態様に制限はなく、作業効率等を鑑み、適宜選択可能である。
また、バランス補正用型Dの打抜刃Dbの先端を保護するための刃保護シートCは、本実施の形態において、厚さ約0.2mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂製のフィルムを採用しているが、その厚さや素材といった仕様は刃の先端保護に資すれば特に限定されるものではない。
【0025】
(バランス補正シートの作成ステップについて)
図5に示したように、バランス補正シートの作成準備が整った打抜機を使用して以下のステップを進めていく。
【0026】
(ステップ1)バランス補正用型シート作成準備完了後、バランス補正用型Dに配された打抜刃Dbとテスト用板紙Tを接近・接触させるように打抜機1を操作する(図6参照)。
(ステップ2)ここから、少しずつ打抜機1の押圧力を上昇(昇圧)させていき、テスト用板紙Tをハーフカット(紙の厚さの半分程度に打抜刃が差し込まれた状態)にする。図7は、テスト用板紙Tの平面図であり、破線で示した部分が打抜刃Dbによってハーフカットされた状態を示している。
(ステップ3)さらにテスト用板紙Tに打抜かれた箇所が形成されていないかを確認しながら、打抜機1の押圧力をわずかに上昇させていき、テスト用板紙Tに打抜かれた箇所ができたところで押圧力の付与を停止し、押圧力を記録する。
図8は、テスト用板紙Tの平面図であり、図面上右上の実線で表された部分が打抜かれた部分であり、破線で示した打抜かれていない部分と共存していることを示している。
(ステップ4)そして、テスト用板紙Tを、バランス補正用型Dの裏面に配された積層シートF上に端部を揃えるように重ねて(図9(a)参照)、テスト用板紙Tの打抜かれた箇所に対応した積層シートFの部分を囲むようにマーキングする(図9(b)参照)。
上記のように積層シートF(最上層のシートFa)のマーキングされた範囲Mは、押圧力が他の部分よりも強く付与されている部分であることがわかる。
(ステップ5)積層シートFのマーキングされた範囲Mの外周にカッターでなぞって切り込みを入れて積層シートFを構成するシートFaを一枚剥がし取る。
ここで、積層シートFのマーキングされた範囲Mの剥がし取り失念を防止するために、図10に示すように、マーキングされた範囲Mに斜線を入れるなどしてマーキングと同時に識別子を付与することが好ましい。識別子は色、模様、線分、数字、文字等、適宜選択可能である。
また、積層シートFを構成するシートFa1枚ごとに異なる色を着色するなどして識別子を付与してもよい。
図11は実際に積層シートFのマーキングされた範囲Mを剥がし取る作業時の画像である。
【0027】
(ステップ6)上記のように積層シートFからマーキングされた範囲Mを一枚剥がし取った状態で、カッティングプレート21上(刃保護シートC上)に新たなテスト用板紙Tを配して前回テスト用板紙Tに打抜かれた箇所が生じた押圧力と同じ押圧力を付与して、打抜き箇所の有無を確認する。
【0028】
(ステップ7A)ステップ6の結果、打抜き箇所がある場合には、ステップ4から6を打抜き箇所がなくなるまで繰り返し、以下に記載するステップ7Bへ進む。
【0029】
(ステップ7B)ステップ6の結果、打抜き箇所がない場合には、押圧力をわずかに高める(昇圧する)。
本実施の形態では、前回の押圧力からテスト用板紙Tに0.03mm~0.05mm深くバランス補正用型Dの打抜刃Dbが差し込まれる押圧力を付与する。
【0030】
(ステップ8)ステップ7Bの結果、打抜き箇所がある場合には、押圧力を記録し、ステップ4、5と同様に、テスト用板紙Tの打抜き箇所に対応した積層シートFの範囲をマーキングして、積層シートFのマーキングした範囲Mを一枚剥がし取り、カッティングプレート21上(刃保護シートC上)に新たなテスト用板紙Tを配して前回テスト用板紙Tに打抜かれた箇所が生じた押圧力と同じ押圧力を付与して、打抜き箇所の有無を確認する。
(ステップ9A)ステップ8の結果、打抜き箇所がある場合には、打抜き箇所がなくなるまでステップ8を繰り返し、以下に記載するステップ9Bに進む。
(ステップ9B)ステップ8の結果、打抜き箇所がない場合には、押圧力を少し高める。
ここでも、本実施の形態では、前回の押圧力からテスト用板紙Tに0.03mm~0.05mm深くバランス補正用型Dの打抜刃Dbが差し込まれる押圧力を付与する。
【0031】
上記のように、ステップ7Aから9Bまでを数回繰り返し、当該打抜機固有の押圧力のムラに応じて厚みを異ならせた積層シートFを介在させて打抜機1の押圧力を高めていくと、最終的にテスト用板紙Tが打抜刃Dbによりすべて打抜かれる状態となる(図12参照)。
この状態の積層シートFが打抜機1に対応したバランス補正シートSであり、付与される押圧力が均一になった打抜機1となる。
【0032】
(その他の実施の形態)
上記実施の形態において、バランス補正用型Dは打抜刃Dbを格子状に配した構成となっているが、格子状に配される構成に限定されるものでなく、図13に示すように打抜かれた箇所と打抜かれない箇所の判別ができるように配されていれば他の形状でもよく、適宜選択可能である。
【0033】
ここで図13(b)に示すように、打抜刃Dbが複数の三角形を形成するように配されるが、完全な三角形の打抜きができないように、刃と刃の交差(接触)部の一部に間隔Yが設けられている。これは、打抜刃でテスト用板紙Tに切れ目を入れるが分断せずに一繋がりとすることで、積層シートFと揃えて、打抜かれた部分に対応した位置を囲むように積層シートFにマーキングするステップにおいて、テスト用板紙がバラバラにならず作業がスムーズなる効果を有する。
図13(b)では打抜刃Dbの刃と刃の交差部の一部に間隔Yが設けられているが、すべての刃が交差(接触)しないように間隔Yを設けられていてもよい。
【0034】
また、本実施の形態において、バランス補正用型Dが上定盤10側、カッティングプレート21が下定盤20側に配された構成で説明したが、カッティングプレートが上定盤側、バランス補正用型Dが下定盤側に配されている構成でもよく、その場合、積層シートはカッティングプレートの裏面側に配される構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
このように開示された発明は、バランス補正用型Dと積層シートF、テスト用板紙Tを準備すれば、容易な作業の繰り返しにより、特別な技能を有しなくてもスムーズにバランス補正シートSを作成することができ、押圧力にムラの無い均一な打抜機1に調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 打抜機、
10 上定盤、
11 打抜型、
101 打抜刃、
102 罫部材、
103 ゴム部材、
20 下定盤、
21 カッティングプレート、
22 面版(カウンタープレート)、
A (積層シート)カバーシート、
B 保護板、
C 刃保護シート、
D バランス補正用型、
Da 基板、
Db (バランス補正用型の)打抜刃、
Db1 (バランス補正用型の)縦刃、
Db2 (バランス補正用型の)横刃、
F 積層シート、
Fa 積層シートを構成するシート、
M テスト用板紙の打抜かれた箇所に対応した積層シートの範囲、
P 用紙、
S バランス補正シート、
T テスト用板紙、
W チェース(枠体)の裏板、
Y バランス補正用型の打抜刃の交差部に設けられた間隔

【要約】      (修正有)
【課題】打抜機個体固有の押圧力のムラを解消することが容易なバランス補正シートの作成方法を提供する。
【解決手段】規則的に配された複数の打抜刃を備えたバランス補正用型Dを打抜機に取り付けて、カッティングプレート21上にテスト用板紙Tを配し、テスト用板紙Tと略同一外周形状を有して剥離可能に積層された積層シートFをバランス補正用型、又は、カッティングプレートの裏面に配し、テスト用板紙Tに打抜かれた箇所ができるまで打抜機の押圧力をわずかに昇圧させるステップと、テスト用板紙Tの打抜かれた箇所に対応する積層シートの範囲を、同じ押圧力でテスト用板紙Tに打抜かれる箇所がなくなるまで一枚ずつ剥がし取るステップをすべての打抜刃が一度にテスト用板紙Tを打抜くまで繰り返す。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10
図11
図12
図13