(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】給与支払システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/08 20120101AFI20250305BHJP
G06Q 40/12 20230101ALI20250305BHJP
【FI】
G06Q20/08
G06Q40/12 420
(21)【出願番号】P 2024175966
(22)【出願日】2024-10-07
【審査請求日】2024-10-07
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】524370317
【氏名又は名称】柴田 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀樹
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-043873(JP,A)
【文献】解禁・給与デジタル払い 資金移動業口座への賃金支給が可能に 企業/労働者双方のメリット・課題は!?,CardWave,日本,株式会社インフキュリオンコンサルティング,2023年06月25日,第36巻, 第3号,第26-27ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -G06Q 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織のシステムの制御手段から送付された、前記組織に所属する複数の構成員のそれぞれの給与金額をそれぞれ記憶する給与情報記憶手段と、
前記構成員がそれぞれ登録した振分先の口座情報と振分金額と振分実行日とを含む給与の振分情報をそれぞれ記憶する給与振分情報記憶手段と、
前記給与情報記憶手段で記憶された複数の前記構成員のそれぞれの給与金額を合算した合計額の資金を、前記組織の口座から給与支払システムを構成する給与支払装置が管理する給与振分用の法定通貨の特定口座にまとめて移動させる一括資金移動手段と、
前記一括資金移動手段で資金を移動させた前記特定口座から、前記給与情報記憶手段に記憶された複数の前記構成員の給与を、複数の前記構成員が前記給与支払装置に予め開設したそれぞれの給与を受け取るための電子マネー口座である給与振込口座に移動させる個別資金移動手段と、
前記構成員の給与が前記給与振込口座に移動された後に、前記給与振分情報記憶手段で記憶された前記構成員の前記振分情報を読み出して、設定された前記振分実行日に、設定された前記口座情報の銀行口座、電子マネーの支払い管理に使用する前記給与支払装置内の一般口座、他の種類の電子マネーの口座、電子決済手段口座、暗号資産口座、証券会社の口座、FX口座の何れか又は複数に、前記振分金額に設定された金額を前記給与振込口座から自動的に振分処理を行う振分実行手段と、
を有することを特徴とする給与支払システム。
【請求項2】
組織のシステムの制御手段から送付された、前記組織に所属する複数の構成員のそれぞれの給与金額をそれぞれ記憶する給与情報記憶手段と、
前記構成員がそれぞれ登録した振分先の口座情報と振分金額と振分実行日とを含む給与の振分情報をそれぞれ記憶する給与振分情報記憶手段と、
前記給与情報記憶手段で記憶された複数の前記構成員のそれぞれの給与金額を合算した合計額の資金を、前記組織の口座から給与支払システムを構成する給与支払装置が管理する給与振分用の電子マネーの特定口座にまとめて移動させる一括資金移動手段と、
前記一括資金移動手段で資金を移動させた前記特定口座から、前記給与情報記憶手段に記憶された複数の前記構成員の給与を、複数の前記構成員が前記給与支払装置に予め開設したそれぞれの給与を受け取るための電子マネー口座である給与振込口座に移動させる個別資金移動手段と、
前記構成員の給与が前記給与振込口座に移動された後に、前記給与振分情報記憶手段で記憶された前記構成員の前記振分情報を読み出して、設定された前記振分実行日に、設定された前記口座情報の銀行口座、電子マネーの支払い管理に使用する前記給与支払装置内の一般口座、他の種類の電子マネーの口座、電子決済手段口座、暗号資産口座、証券会社の口座、FX口座の何れか又は複数に、前記振分金額に設定された金額を前記給与振込口座から自動的に振分処理を行う振分実行手段と、
を有することを特徴とする給与支払システム。
【請求項3】
前記個別資金移動手段によって前記構成員の給与が前記給与振込口座に入金された後、前記給与振込口座に予め定められた金額より多い残高があり、かつ、入金から一定時間が経過したとき又は予め定められた時刻となったときに、予め登録された電子マネー又は法定通貨の前記構成員の超過時移動用口座に、予め定められた金額に対する超過分の金額を自動的に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の給与支払システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給与支払システムに関し、特に給与を電子マネー等の法定通貨以外の手段で受け取る処理を含む給与支払システム、給与支払装置及び登録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給与を電子マネーで受け取ることができる制度が提案され、さらに受け取った(又はこれから受け取る)給与を必要な振込先に自動的に振り分けるシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、給与を支払う企業(組織)側としては、給与を従来の銀行振込で支払っても電子マネーの口座への振込で支払っても、要する手間や費用に変わりはなく、メリットの感じられないものであった。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、給与を支払う企業(組織)側も給与を受け取る従業員(構成員)側もメリットが感じられる給与支払システム、給与支払装置及び登録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成するために、本発明は、組織に所属する複数の構成員の給与金額を記憶する給与情報記憶手段と、複数の前記構成員が登録装置で登録した給与の振分情報を記憶する給与振分情報記憶手段と、前記給与情報記憶手段で記憶された複数の前記構成員の給与金額の合計額の資金を、前記組織の口座から特定口座にまとめて移動させる一括資金移動手段と、前記一括資金移動手段で資金を移動させた前記特定口座から、前記給与情報記憶手段に記憶された複数の前記構成員の給与を、複数の前記構成員が予め開設したそれぞれの決済口座に移動させる個別資金移動手段と、前記給与振分情報記憶手段で記憶された前記振分情報に基づき、自動的に前記構成員それぞれの前記決済口座から他の口座への振分処理を行う振分実行手段と、を有する給与支払システムとしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記記載の構成に加えて、法定通貨と電子マネー、電子決済手段、暗号資産を含む他の決済手段の何れかを相互に交換可能な交換手段を有しており、前記法定通貨を扱う法定通貨口座から前記他の決済手段の前記決済口座への入金時と、前記決済口座から前記法定通貨口座への入金時に、前記交換手段を介して前記法定通貨と前記他の決済手段の交換を行うように構成されている給与支払システムとしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記記載の構成に加えて、前記特定口座が、電子マネー、電子決済手段、暗号資産を含む法定通貨とは異なる他の決済手段の何れかの口座で構成されており、前記一括資金移動手段は、前記組織の口座から前記法定通貨の所定口座に資金をまとめて一旦移動させ、その後に前記他の決済手段の口座である前記特定口座に資金をまとめて移動させるように構成されている給与支払システムとしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記記載の構成に加えて、前記構成員が法定通貨とは異なる電子マネー、電子決済手段、暗号資産を含む他の決済手段の何れかの前記決済口座を開設すると、自動的に前記構成員の前記決済口座として前記他の決済手段の給与振込口座と前記他の決済手段の一般口座が開設されるように構成されており、前記個別資金移動手段は、前記構成員の給与を前記給与振込口座に移動させるようになっており、前記振分実行手段が前記給与振込口座から前記一般口座に入金させる、又は、前記構成員が手動で前記給与振込口座から前記一般口座に入金させて、前記一般口座に残高を有する状態にすることで、前記構成員の前記他の決済手段が使用可能となるように構成されている給与支払システムとしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記記載の構成に加えて、前記個別資金移動手段によって前記構成員の給与が前記決済口座に入金された後、前記決済口座に予め定められた金額より多い残高があり、かつ、入金から一定時間が経過したとき又は予め定められた時刻となったときに、登録された前記構成員の超過時移動用口座に、予め定められた金額に対する超過分の金額を自動的に移動させるように構成されている給与支払システムとしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記記載の構成に加えて、前記個別資金移動手段が前記特定口座から前記構成員の前記決済口座に給与を移動させる際に、前記給与振分情報記憶手段の前記振分情報を参照し、前記振分情報に沿って前記振分実行手段に前記特定口座から他の口座への振分処理を実行させ、振分後の残高を前記決済口座に移動させるように構成されている給与支払システムとしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、組織に所属する複数の構成員の給与金額を記憶する給与情報記憶手段と、複数の前記構成員が登録した給与の振分情報を記憶する給与振分情報記憶手段と、前記給与情報記憶手段で記憶された複数の前記構成員の給与金額の合計額の資金が前記組織の口座からまとめて移動された特定口座から、前記給与情報記憶手段に記憶された複数の前記構成員の給与を、複数の前記構成員が予め開設したそれぞれの決済口座に移動させる個別資金移動手段と、前記給与振分情報記憶手段で記憶された前記振分情報に基づき、自動的に前記構成員それぞれの前記決済口座から他の口座への振分処理を行う振分実行手段と、を有する給与支払システムとしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、組織に所属する複数の構成員の給与金額を記憶する給与情報記憶手段と、複数の前記構成員が登録した給与の振分情報を記憶する給与振分情報記憶手段と、前記給与情報記憶手段で記憶された複数の前記構成員の給与金額の合計額の資金が前記組織の口座からまとめて移動された特定口座から、前記給与情報記憶手段に記憶された複数の前記構成員の給与を、複数の前記構成員が予め開設したそれぞれの決済口座に移動させる個別資金移動手段と、前記給与振分情報記憶手段で記憶された前記振分情報に基づき、自動的に前記構成員それぞれの前記決済口座から他の口座への振分処理を行う振分実行手段と、を有する給与支払装置としたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、組織に所属する複数の構成員の給与金額の合計額の資金が前記組織の口座からまとめて移動された特定口座から、予め定められた給与を前記構成員が予め開設した決済口座に移動させ、登録された振分情報に基づき、自動的に前記構成員の前記決済口座から他の口座への振分処理を行うシステムにおいて、前記システムに対して、前記給与を他の口座に振り分けるための口座情報、振分金額、振分実行日を含む振分情報を予め登録しておく手段を有する登録装置としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、組織の口座から複数の構成員の給与金額の合計額がまとめて移動された特定口座から、自動的に各構成員の決済口座にそれぞれの給与を振り分けて移動させ、さらに各構成員が登録した振分情報に基づいて自動的に構成員毎の振分処理を実行するようになっているため、組織の手間や振込手数料を削減することができると共に、構成員の手間も削減することができ、組織と構成員の双方の利便性、利益を向上させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、法定通貨と他の決済手段の交換処理もシステム内で行うことができるため、より利便性が高く、迅速に処理することができる。
【0017】
また、本発明によれば、特定口座が他の決済手段の口座で構成されていることで、法定通貨と他の決済手段の交換処理を予め行っておくことができ、給与の支払時の処理をより簡略化することができる。
【0018】
また、本発明によれば、構成員の決済口座を他の決済手段の給与振込口座と他の決済手段の一般口座に分けておくことで、給与が支給されたときのお金の流れと、その後の電子マネーとしての使用履歴を分けて管理することができ、構成員にとってお金の流れを分かり易く管理することができるものである。
【0019】
また、本発明によれば、決済口座に所定金額を超過する金額の残高があるときに、自動的に予め登録された超過時移動用口座に移動させることで、より構成員の利便性を向上させることができる。さらに、入金から一定時間の経過を待ってから又は予め定められた時刻となったときに超過分の金額を移動させるため、手動で資金移動させたい場合にも配慮したサービスとすることができるようになっている。
【0020】
また、本発明によれば、構成員による振分設定がなされていることが予め判明している場合には、特定口座からすぐに振分処理を行うようにすることができるため、より迅速に給与の振分処理を完了することができる。
【0021】
また、本発明によれば、手軽に振分情報を登録しておくことで、簡単確実に構成員の希望の振分処理を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る給与支払システムを説明するシステム構成図である。
【
図2】同実施の形態に係る給与支払システムのメインフローを説明するフローチャートである。
【
図3】同実施の形態に係る給与支払システムの残高超過時対応フローを説明するフローチャートである。
【
図4】同実施の形態に係る給与支払システムの別例を説明するシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0024】
本実施の形態の給与支払システム1は、
図1に示すように、給与支払装置10と特定口座20、企業(組織)のシステム30、当該企業(組織)の従業員(構成員)の登録装置としての端末A,B、振分処理で振り込まれる先である銀行口座A3,A4,B3,B4、後述する超過時移動用口座(指定代替口座)A5,B5を有している。以下、各構成について説明する。なお、
図1,
図4における実線はお金の流れを、点線は情報の流れを示している。
【0025】
給与支払装置10は、サーバ等のコンピュータで構成されており、給与支払システム1の全体を制御する制御手段11を有し、さらに、各従業員(各構成員)が開設した決済口座(ここでは、電子マネーの口座)A1,A2,B1,B2が設けられている。なお、ここではコンピュータと一括りで記載したが、給与支払装置10は、1台のコンピュータで構成されている場合もあるが、複数のコンピュータが連携して給与支払装置10として構成されている場合もある。
【0026】
また、本実施の形態では、給与支払装置10に法定通貨と電子マネーとを相互に交換処理する交換手段14,15を備えている。なお、ここでは、法定通貨から電子マネーへの交換処理を行う交換手段14と、電子マネーから法定通貨への交換処理を行う交換手段15とが別の構成として記載されているが、これに限るものではなく、1つの交換手段で法定通貨から電子マネーへの交換処理と電子マネーから法定通貨への交換処理の双方の処理を行うような構成となっていても良い。また、交換手段が給与支払装置10の中に設けられていない場合もあり得る。法定通貨から電子マネーへの交換、及び、電子マネーから法定通貨への交換時に、外部の交換手段を経由して交換を行ってから、電子マネー口座や外部の銀行口座等に入金するようになっていても良い。
【0027】
制御手段11は、前記したように給与支払システム1の全体を制御するようにプログラムされており、企業のシステム30の制御手段31から送付された当該企業に所属する複数の従業員それぞれの給与金額とその合計金額を含む給与情報を記憶するデータベースとしての給与情報記憶手段12と、複数の従業員それぞれが登録装置としての端末(携帯電話、タブレット、PC等の適宜の端末)A,Bで予め登録した給与の振分情報(給与を他の口座に振り分けるための口座情報、振分金額、振分実行日を含む適宜の情報)をそれぞれ記憶するデータベースとしての給与振分情報記憶手段13とを有している。なお、端末A,Bには、例えば専用アプリを介して給与支払装置10に接続するようになっていても良いし、ブラウザ経由で接続するようになっていても良く、適宜の手段で接続されるようになっていれば良い。
【0028】
また、制御手段11は、給与情報記憶手段12で記憶された複数の従業員の給与金額の合計額の資金を、企業のシステム30の制御手段31を介して、企業が管理する企業口座32から給与支払装置10が管理する特定口座20にまとめて一括で移動させる実行手段としての一括資金移動手段17を有している。さらに、この一括資金移動手段17で資金を移動させた特定口座20から、給与情報記憶手段12に記憶された複数の従業員の給与を、当該複数の従業員が予め開設したそれぞれの電子マネー口座A1,B1に移動させる実行手段としての個別資金移動手段18を有している。またさらに、給与振分情報記憶手段13で記憶された振分情報に基づき、自動的に従業員それぞれの電子マネー口座A1,B1から他の口座A2,A3,A4,B2,B3,B4への振分処理を行う実行手段としての振分実行手段19を有している。
【0029】
また、本実施の形態では、従業員が給与支払システム1を利用するための電子マネー口座を開設すると、自動的に従業員の電子マネー口座として電子マネーの給与振込口座A1,B1と電子マネーの支払い管理等に使用する一般口座A2,B2が開設されるように構成されている。給与振込口座A1,B1は文字通り企業からの給与を振り込むための口座であり、ここから、振分実行手段19によって、一般口座A2,B2を含む他の口座A3,A4,B3,B4への振込処理を行うように構成されている。また、一般口座A2,B2は、電子マネーとして支払いを行う際にその使用に応じて金額が引き落とされる口座である。なお、従業員が手動で給与振込口座A1,B1から一般口座A2,B2に資金を移動させても良い。このように一般口座A2,B2に残高を有する状態にすることで、従業員の電子マネーが使用可能となるように構成されている。
【0030】
なお、従業員が決済口座としての電子マネー口座を開設した際に、自動的には給与振込口座と一般口座が開設されることがないパターンもあっても良い。例えば、従業員が電子マネー口座を開設すると、まず一般口座が開設され、その後、従業員の手動操作にて、給与振込口座を開設させるようになっていても良い。また逆に、電子マネー口座の開設時には給与振込口座が開設され、その後、手動操作で一般口座が開設されるようになっていても良い。
【0031】
また、電子マネー口座である給与振込口座A1,B1には、一定金額を超える金額を預入しておくことができない場合(法律、規定等により)がある。本実施の形態では、給与振分情報記憶手段13に、予め給与振込口座A1,B1の残高が一定金額(例えば、10万円、80万円、100万円等)を超えた場合に、強制的に資金を移動させる超過時移動用口座(指定代替口座ともいう)A5,B5を設定しておくようになっている。そして、例えば、給与振込のあった日について、給与振込から一定時間経過後(例えば、4時間後、12時間後、1日後等)又は予め定められた時刻(例えば、14:00、15:30等)に残高が一定金額を超えているかどうかを確認し、超えている場合には、振分実行手段19によって、当該超えた分の金額を超過時移動用口座A5,B5に強制移動させるように構成されている。
【0032】
ここでは、個別資金移動手段18に、従業員が設定した振分設定と共に超過時の振分設定がプログラムされており、従業員の給与が給与振込口座A1,B1に入金された後、当該給与振込口座A1,B1に予め定められた金額より多い残高があり、かつ、入金から一定時間が経過したとき又は予め定められた時刻(定時)となったときに、登録された超過時移動用口座A5,B5に、予め定められた金額に対する超過分の金額を自動的に移動させるように構成されている。なお、ここでは、給与振分情報記憶手段13に設定が記憶され、個別資金移動手段18で実行処理するようになっていたが、これに限るものではなく、これらとは別の手段で記憶、実行するようにプログラムされていても良い。
【0033】
次に、上記した構成による各処理について、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0034】
まず、給与情報記憶手段12、給与振分情報記憶手段13の情報に基づき、一括資金移動手段17、個別資金移動手段18、振分実行手段19による実行処理を行うメイン処理について、
図2を用いて説明する。
【0035】
まず、給料日前又は給料日当日の予め定められた日時に、給与情報記憶手段12に基づき、一括資金移動手段17によって企業の制御手段31に資金移動依頼がなされ、これにより、企業口座32から複数の従業員の給与金額の合計金額を特定口座20に一括移動させる一括資金移動指示を行う(ステップS1)。なお、この一括資金移動手段17を本発明のシステム1が有しておらず、企業側が企業の制御手段31によって直接、一括資金移動操作を行うようになっていても良い。この場合は、本発明のシステム1は、企業側からの一括資金移動を待って、以下のステップ2以降の処理を行うように構成される。
【0036】
次に、給料日当日、給与情報記憶手段12に基づき、個別資金移動手段18によって特定口座20から各従業員の電子マネー口座の給与振込口座A1,B1に給与全額を移動させる個別資金移動指示を行う(ステップS2)。
【0037】
その後、給与振分情報記憶手段13に振分設定の情報があるかどうかの確認を行い(ステップS3)、振分設定の情報がない場合はそのままメイン処理を終了する。また、振分設定の情報がある場合には、次に給与振分情報記憶手段13に基づき、振分実行手段19によって各従業員の給与振込口座A1,B1から各口座A2,A3,A4,B2,B3,B4等に振分処理を行い(ステップS4)、メイン処理を終了する。
【0038】
次に、給与振込口座A1,B1の金額が一定金額を超えているかどうかを確認して超過分を強制的に移動させる残高超過時対応処理について、
図3を用いて説明する。
【0039】
まず、上記した給与振込口座A1,B1に給与振込があったかどうかの判定を行う(ステップS11)。ここで、給与振込がまだ行われていない場合には、給与振込が行われるまで待機する。
【0040】
また、給与振込が行われている場合には、次に、給与振込から一定時間(例えば、4時間、8時間、1日等の予め定められた時間)が経過したかどうかの判定を行う(ステップS12)。ここで、一定時間経過前の場合は、経過するまで待機する。なお、一定時間の経過を判定する場合の他に、予め定められた時刻(例えば、14:00、15:30等)になったかどうかを判定する場合もあり得る。
【0041】
また、一定時間が経過した場合又は予め定められた時刻(定時)となったときには、次に、給与振込口座A1,B1の残高が一定金額を超過しているかどうかの判定を行う(ステップS13)。ここで、一定金額を超えていない場合には、そのまま処理を終了する。
【0042】
また、残高が一定金額を超えている場合には、予め設定された超過時移動用口座A5,B5に超過分の金額を強制的に移動させ(ステップS14)、処理を終了する。
【0043】
以上のように、本実施の形態の給与支払システム1によれば、企業口座32から複数の従業員の給与金額の合計額がまとめて移動された特定口座20から、自動的に各従業員の電子マネー口座(決済口座)A1,B1にそれぞれの給与を振り分けて移動させ、さらに各従業員が登録した振分情報に基づいて自動的に従業員毎の振分処理を実行するようになっているため、企業の手間や振込手数料を削減することができると共に、従業員の手間も削減することができ、企業と従業員の双方の利便性、利益を向上させることができる。
【0044】
また、本実施の形態の給与支払システム1によれば、法定通貨と電子マネー(他の決済手段)の交換処理もシステム内で行うことができるため、より利便性が高く、迅速に処理することができる。
【0045】
また、本実施の形態の給与支払システム1によれば、従業員の電子マネー(他の決済手段)の口座(決済口座)を電子マネー(他の決済手段)の給与振込口座A1,B1と電子マネー(他の決済手段)の一般口座A2,B2に分けておくことで、給与が支給されたときのお金の流れと、その後の電子マネー(他の決済手段)としての使用履歴を分けて管理することができ、従業員にとってお金の流れを分かり易く管理することができるものである。
【0046】
また、本実施の形態の給与支払システム1によれば、電子マネー口座A1,B1に所定金額を超過する金額の残高があるときに、自動的に予め登録された超過時移動用口座(指定代替口座)A5,B5に移動させることで、より従業員の利便性を向上させることができる。さらに、入金から一定時間の経過を待ってから又は予め定められた時刻(定時)となったときに超過分の金額を移動させるため、手動で資金移動させたい場合にも配慮したサービスとすることができるようになっている。
【0047】
また、本実施の形態の端末(登録装置)A,Bによれば、手軽に振分情報を登録しておくことで、簡単確実に従業員の希望の振分処理を実行させることができる。
【0048】
なお、本発明について前記した実施の形態を用いて説明したが、前記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0049】
例えば、前記した実施の形態の給与支払システム1、給与支払装置10では、特定口座20として法定通貨の口座を用いており、給与の支払い時に交換手段14で電子マネーに交換して各従業員の電子マネー口座A1,B1に資金移動させるようになっていたが、これに限るものではなく、例えば、
図4に示す給与支払システム101、給与支払装置110のように、企業口座32から法定通貨口座120に資金が入金されたらすぐに交換手段14を経て特定口座としての特定電子マネー口座116に資金がまとめて入金され、そこから給与支払時に各従業員の決済口座としての電子マネー口座A1,B1に資金移動させるようになっていても良い。
【0050】
このように、特定口座116が電子マネーの口座で構成されていることで、法定通貨と電子マネーの交換処理を予め行っておくことができ、給与の支払時の処理をより簡略化することができる。
【0051】
また、前記した実施の形態では、各従業員の給与を一旦全額各従業員の電子マネー口座(決済口座)A1,B1に移動させてから、予め登録された他の口座A2,A3,A4,B2,B3,B4に振分処理するようになっていたが、これに限るものではなく、例えば、
図1の特定口座20に給与振分情報記憶手段13の振分情報を与えておき、これにより、始めから振分処理を行いながら給与振込を行うようになっていても良い。すなわち、振分設定に応じて各従業員の給与を振分先に移動させ、残った金額を各従業員の電子マネー口座A1,B1に入金するような処理を行うものである。
【0052】
このように、従業員による振分設定がなされていることが予め判明している場合には、特定口座20からすぐに振分処理を行うようにすることができるため、より迅速に給与の振分処理を完了することができる。
【0053】
また、前記した実施の形態では、各従業員の電子マネー口座(決済口座)を給与振込口座A1と一般口座A2に分けていたが、これに限るものではなく、給与振込口座と一般口座が1つの口座で構成されていても良い。
【0054】
この場合には、資金移動を最低限で済ますことができ、迅速で利便性の高い構成とすることができる。
【0055】
また、前記した実施の形態では、残高が一定金額を超過しているかどうかを給与振込口座A1,B1に対してのみ確認するように記載していたが、これに限るものではなく、一般口座A2,B2についても、同様に確認するようになっていても良い。
【0056】
また、一般口座A2,B2については、給与振込口座A1,B1から振分処理を行う際に、一定金額を超過しないかどうか確認するように構成されていても良い。
【0057】
また、前記した給与振分情報記憶手段13で記憶される振分情報には、振分先として、法定通貨の銀行口座と給与支払装置10内の電子マネー口座が設定されるようになっていたが、これに限るものではなく、例えば、法定通貨の銀行口座、給与支払装置10内の電子マネー口座の他に、他の種類の電子マネーの口座、ステーブルコイン等の電子決済手段口座、ビットコイン等の仮想通貨(暗号資産)口座、証券会社の口座、FX口座等の適宜の口座を設定できるようになっていても良い。また、このような振分情報に基づき、振分実行手段19が自動的に従業員それぞれの決済口座A1,B1から他の口座に振分処理を行うようになっていても良い。
【0058】
また、前記した実施の形態では、決済口座A1,B1は電子マネーの口座で構成させていたが、これに限るものではなく、決済口座がステーブルコイン等の電子決済手段口座、ビットコイン等の仮想通貨(暗号資産)口座、証券会社の口座、FX口座等の適宜の口座で構成されている場合もあり得る。
【0059】
また、特定口座20,116についても、法定通貨の口座や電子マネーの口座以外に、ステーブルコイン等の電子決済手段口座、ビットコイン等の仮想通貨(暗号資産)口座、証券会社の口座、FX口座等の適宜の口座で構成されている場合もあり得る。
【0060】
また、給与振込情報記憶手段13に記憶された情報と振分実行手段19により、決済口座A1,B1の残高が一定金額を超えた場合に強制的に資金を移動させる超過時移動用口座(指定代替口座)A5,B5についても、前記した実施の形態のような法定通貨の口座に限るものではなく、電子マネーの口座、ステーブルコイン等の電子決済手段口座、ビットコイン等の仮想通貨(暗号資産)口座、証券会社の口座、FX口座等の適宜の口座(他人名義の口座でも良い)を指定可能となっている場合もあり得る。
【0061】
また、交換手段について、前記した実施の形態では、交換手段を介して種類の異なる通貨同士(法定通貨と電子マネー等)のやり取りを行うようになっていたが、これに限るものではなく、特にレートが変化するようなものでない場合には、交換手段のような特別な手段を介さずに通貨のやり取りを行うシステムとなっていても良い。
【符号の説明】
【0062】
1,101 給与支払システム
10,110 給与支払装置
11 給与支払装置の制御手段
12 給与情報記憶手段
13 給与振分情報記憶手段
14,15 交換手段
17 一括資金移動手段
18 個別資金移動手段
19 振分実行手段
20 特定口座
30 企業のシステム
31 企業の制御手段
32 企業口座(組織の口座)
116 特定電子マネー口座(特定口座)
120 法定通貨口座
A,B 端末(登録装置)
A1,B1 給与振込口座(決済口座、電子マネー口座)
A2,B2 一般口座(決済口座、電子マネー口座)
A3,A4,B3,B4 銀行口座
A5,B5 超過時移動用口座(指定代替口座)
【要約】
【課題】給与を支払う組織側も給与を受け取る構成員側もメリットが感じられる給与支払システム、給与支払装置及び登録装置を提供する。
【解決手段】所属する構成員の給与金額を記憶する給与情報記憶手段12と、構成員が登録装置Aで登録した給与の振分情報を記憶する給与振分情報記憶手段13と、給与情報記憶手段12で記憶された構成員の給与金額の合計額の資金を組織の口座32から特定口座20にまとめて移動させる一括資金移動手段17と、特定口座20から給与情報記憶手段12に記憶された構成員の給与を構成員が予め開設したそれぞれの決済口座A1に移動させる個別資金移動手段18と、給与振分情報記憶手段13で記憶された振分情報に基づき自動的に構成員それぞれの決済口座A1から他の口座A2,A3,A4への振分処理を行う振分実行手段19とを有する給与支払システム1とした。
【選択図】
図1