(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物、その成形品および樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 81/02 20060101AFI20250305BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20250305BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20250305BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20250305BHJP
C08J 5/08 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C08L81/02
C08K3/04
C08K3/26
C08K3/40
C08J5/08 CEZ
(21)【出願番号】P 2021064628
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 惟允
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088984(JP,A)
【文献】特開2020-079412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)
熱膨張処理をした黒鉛(B成分)5~50重量部、(C)タルク(C成分)5~80重量部および(D)ガラス繊維(D成分)5~80重量部を含有する樹脂組成物であって、レーザー回折法によるC成分の粒子径が10μm未満であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の樹脂組成物よりなる成形品。
【請求項3】
(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)
熱膨張処理をした黒鉛(B成分)5~50重量部、(C)タルク(C成分)5~80重量部および(D)ガラス繊維(D成分)5~80重量部を含有する樹脂組成物であって、レーザー回折法によるC成分の粒子径が10μm未満であることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂、黒鉛、タルクおよびガラス繊維よりなる樹脂組成物であって、優れた強度を維持しつつ、熱伝導性および電気絶縁性に優れる樹脂組成物、その成形品および樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐薬品性、耐熱性、機械的特性などに優れるエンジニアリングプラスチックである。このため、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、優れた特性を活かして、電気電子、車両関連、航空機、住設などの用途に広く利用されている。近年、LSIの高集積化に伴い、消費電力が増大しており、発熱によって電子部品が誤作動を引き起こしたり、電子部品自体が破損することが問題となっている。そこで放熱対策としてヒートシンクを設置し、発生する熱を逃がすための対策が行われている。従来、ヒートシンクには高い放熱性と電気絶縁性を有するセラミックスが用いられることが一般的だったが、セラミックスは一つずつ切削する必要があるため、加工の手間がかかることからコストが課題となっていた。そこで成形加工性の観点から、ポリアリーレンスルフィド樹脂をはじめとした熱可塑性樹脂に放熱フィラーを配合することで、熱伝導性を高める試みがなされている。ポリアリーレンスルフィド樹脂の熱伝導性を向上させる試みとしては、例えばポリアリーレンスルフィド樹脂にアルミナ及び無機充填剤を混合して熱伝導性を高めた樹脂組成物(特許文献1)やポリアリーレンスルフィド樹脂にアルミナ、ガラス繊維およびタルクを混合して熱伝導性を高めた樹脂組成物(特許文献2)が提案されている。しかしながら、熱伝導性は十分なものではなく、フィラーの高充填による物性の低下も課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-256147号公報
【文献】特開2013-75996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れた強度を維持しつつ、熱伝導性および電気絶縁性に優れる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂、黒鉛、タルクおよびガラス繊維よりなる樹脂組成物が、優れた強度を維持しつつ、熱伝導性および電気絶縁性に優れる樹脂組成物であることを見出し本発明に至った。
【0006】
具体的には、上記課題は、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)黒鉛(B成分)5~50重量部、(C)タルク(C成分)5~80重量部および(D)ガラス繊維(D成分)5~80重量部を含有する樹脂組成物であって、レーザー回折法によるC成分の粒子径が10μm未満であることを特徴とする樹脂組成物により達成される。
【0007】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0008】
(A成分:ポリアリーレンスルフィド樹脂)
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。
【0009】
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp-フェニレンスルフィド単位、m-フェニレンスルフィド単位、o-フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができ、その中でも、p-フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらに、ポリ(p-フェニレンスルフィド)がより好ましい。
【0010】
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される分散度(Mw/Mn)は好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上、さらに好ましくは2.9以上である。分散度が2.7未満の場合は、成形時のバリ発生が多くなる場合がある。なお、分散度(Mw/Mn)の上限は特に規定されないが、10以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出された値である。なお、溶媒には1-クロロナフタレンを使用し、カラム温度は210℃とした。
【0011】
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、既知の方法で重合される。例えば米国登録特許第4,746,758号、第4,786,713号、特表2013-522385、特開2012-233210および特許5167276等に記載された製造方法が挙げられる。これらの製造方法は、ジヨードアリール化合物と固体硫黄を、極性溶媒なしに直接加熱して重合させる方法である。
【0012】
前記製造方法はヨウ化工程および重合工程を含む。該ヨウ化工程ではアリール化合物をヨードと反応させて、ジヨードアリール化合物を得る。続く重合工程で、重合停止剤を用いてジヨードアリール化合物を固体硫黄と重合反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する。ヨードはこの工程で気体状で発生し、これを回収して再びヨウ化工程に用いられる。実質的にヨードは触媒である。
【0013】
前記製造方法で用いられる代表的な固体硫黄としては、室温で8個の原子が連結されたシクロオクタ硫黄形態(S8)が挙げられる。しかしながら重合反応に用いられる硫黄化合物は限定されるものではなく、常温で固体または液体であればいずれの形態でも使用し得る。
【0014】
前記製造方法で用いられる代表的なジヨードアリール化合物としては、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、ジヨードビフェニル、ジヨードビスフェノールおよびジヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、またアルキル基やスルホン基が結合していたり、酸素や窒素が導入されたりしているヨードアリール化合物の誘導体も使用される。ヨードアリール化合物はそのヨード原子の結合位置によって異なる異性体に分類され、これらの異性体のうち好ましい例は、p-ジヨードベンゼン、2,6-ジヨードナフタレン、及びp,p’-ジヨードビフェニルのようにヨードがアリール化合物の分子両端に対称的に位置する化合物である。該ヨードアリール化合物の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し500~10,000重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0015】
前記製造方法で用いられる代表的な重合停止剤としては、モノヨードアリール化合物、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバ
メート類、芳香族スルフィド化合物などが挙げられる。モノヨードアリール化合物のうち好ましい例としては、ヨードビフェニル、ヨードフェノール、ヨードアニリン、ヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾール類のうち好ましい例としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビスベンゾチアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾールスルフェンアミド類のうち好ましい例としては、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール2-スルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-モルホリノチオベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジベンゾチアゾールジスルファイド、N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2-スルフェンアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。チウラム類のうち好ましい例としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ジチオカルバメート類のうち好ましい例としては、ジメチルジチオカルバメート酸亜鉛、ジエチルジチオカルバメート酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。芳香族スルフィド化合物のうち好ましい例としては、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルエーテル、ビフェニル、ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、いずれの重合停止剤においても、共役芳香環骨格上に一つまたは複数の官能基が置換されていてもよい。前記官能基の例としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、スルホ基、ニトロ基などが挙げられ、好ましい例としてはカルボキシ基、アミノ基が挙げられ、さらに好ましい例としてはFT-IRスペクトル上で、1600~1800cm-1または3300~3500cm-1のピークを示すカルボキシ基、アミノ基が挙げられる。重合停止剤の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し1~30重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0016】
前記製造方法では重合反応触媒を使用しても良く、代表的な重合反応触媒としては、ニトロベンゼン系触媒が上げられる。ニトロベンゼン系触媒のうち好ましい例としては、1,3-ジヨード-4-ニトロベンゼン、1-ヨード-4-ニトロベンゼン、2,6-ジヨード-4-ニトロフェノール、ヨードニトロベンゼン、2,6-ジヨード-4-ニトロアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。重合反応触媒の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し0.01~20重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0017】
この重合方法を使うことにより、実質的に塩素含有量およびナトリウム含有量を低減させる必要が無く、コストパフォーマンスに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることができる。
【0018】
また本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂は、その他の重合方法によって得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を含んでいてもよい。
【0019】
(B成分:黒鉛)
本発明のB成分として使用される黒鉛は一般的に黒鉛と称されるものであればいかなるものを用いてもよい。鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、膨張黒鉛および人造黒鉛などの黒鉛の種類を特に限定するものではない。ただし、熱伝導性の観点から熱膨張処理をした膨張黒鉛が特に好ましい。膨張黒鉛は一般的に鉱物として天然に産出される天然黒鉛、石油コークス、石油ピッチ、無定形炭素等を2000℃以上で熱処理し不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせた人造黒鉛を、濃硫酸、濃硝酸等に浸漬し、さらに過酸化水素、塩酸等の酸化剤を添加して処理することにより黒鉛層間化合物を生成させ、次いで水洗した後800~1000℃で急速加熱して、原料黒鉛のC軸方向に膨張させた黒鉛であるが、熱処理温度や酸処理成分等についても特に限定されるものではない。黒鉛の粒子径は1~1000μmが好ましく、10~500μmがより好ましい。粒子径が1μm未満であると熱伝導性に劣る場合があり、1000μmを超えると成形品の外観が悪くなる場合がある。
【0020】
本発明における黒鉛の表面は、本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいてポリアリーレンスルフィド樹脂との親和性を増すために、表面処理が施されていてもよい。さらに、黒鉛を2種類以上混合したものを用いても良い。
【0021】
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、5~50重量部であり、好ましくは10~40重量部、より好ましくは20~30重量部である。B成分の含有量が5重量部未満では十分な熱伝導性が得られず、50重量部を超えると生産加工性に劣る。
【0022】
(C成分:タルク)
タルクとは化学式Mg3Si4О10(ОH)2で表される鉱物の一種である。本発明のC成分として使用されるタルクとしては一般的にタルクと称されるものであればいかなるタルクを用いることが可能であり、不純物の種類や量、産地によって制限されるものではない。また、本発明におけるタルクの表面は、本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいてポリアリーレンスルフィド樹脂との親和性を増すために、エポキシ系、アミノ系、シラン系、脂肪酸系等の表面処理が施されていてもよい。さらに、タルクを2種類以上混合したものを用いても良い。
【0023】
タルクの粒子径は10μm未満であり、0.5~8μmが好ましく、1~7μmがより好ましい。粒子径が10μm以上であると電気絶縁性に劣る。なお、該粒子径は、HRA9320-X100(マイクロトラック社製)を用いてレーザー回折・散乱法により測定した。
【0024】
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、5~80重量部であり、好ましくは10~60重量部、より好ましくは20~40重量部である。C成分の含有量が5重量部未満では熱伝導性および電気絶縁性に劣り、80重量部を超えると生産加工性に劣る。
【0025】
(D成分:ガラス繊維)
本発明のD成分として使用されるガラス繊維としては一般的にガラス繊維と称されるものであればいかなるガラス繊維でもよい。Aガラス、Cガラス、Eガラス等のガラス組成を特に限定するものではなく、場合によりTiO2、SO3、P2O5等の成分を含有するものであっても良い。但し、Eガラス(無アルカリガラス)がポリアリーレンスルフィド樹脂に配合する場合により好ましい。ガラス繊維は溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定の繊維状にしたものである。かかる場合の急冷および延伸条件についても特に限定されるものではない。また断面の形状は真円状の他に、楕円状、マユ型、三つ葉型などの真円以外の形状ものを使用しても良い。更に真円状ガラス繊維と真円以外の形状のガラス繊維が混合したものでもよい。ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体やポリウレタンおよびエポキシ樹脂などの樹脂で被覆または集束処理されていてもよい。
【0026】
D成分の含有量は、A成分100重量部に対し、5~80重量部であり、好ましくは10~70重量部、より好ましくは20~60重量部である。含有量が5重量部未満では十分な強度が得られず、80重量部を超えると生産加工性に劣る。
【0027】
本発明における樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲でさらにB成分およびC成分を除く非繊維充填剤を併用することができる。非繊維状充填剤は特に限定されないが、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸
化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ-ズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウムおよびシリカなどが挙げられる。
【0028】
本発明における樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマー成分を含むことができる。好適なエラストマー成分としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)およびシリコーン・アクリル複合ゴム系グラフト共重合体などのコア-シェルグラフト共重合体樹脂、あるいはシリコーン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0029】
本発明における樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、難燃剤(赤燐、リン酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)および他の重合体を添加することができる。
【0030】
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物は上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは2軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1~5mm、より好ましくは1.5~4mm、さらに好ましくは2~3.5mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1~30mm、より好ましくは2~5mm、さらに好ましくは2.5~4mmである。
【0031】
(成形品について)
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また押出成形では、各種異形押出成形品、シート、フィルム等が得られる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により成形品とすることも可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の樹脂組成物は、優れた強度を維持しつつ、優れた熱伝導性および電気絶縁性を有することからセンサー、LEDランプ、コネクター、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、ハードディスクドライブ部品(ハードディスクドライブハブ、アクチュエーター、ハードディスク基板など)、DVD部品(光ピックアップなど)、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;ランプリフレクター、ランプハウジング、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、オートモバイルコンピューター部品などの車両用部品などの各種用途にも適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
[樹脂組成物の評価]
(1)引張破断強度
ISO527(測定条件23℃)に準拠して測定した。なお、試験片は、下記の方法で成形した。この数値が大きいほど樹脂組成物の強度が優れていることを意味する。
(2)熱伝導性
角板(50mm×100mm×4mmt)を下記の条件で成形し、サンプルの流動方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法にて測定した。この数値が大きいほど樹脂組成物の熱伝導性が優れていることを意味する。
(3)電気絶縁性
角板(150mm×150mm×3mmt)を下記の条件で成形し、中心部の50mm×50mm×3mmtを切り出した。切り出した角板について、超絶縁計(HIOKI社製)を用いて体積抵抗率の測定を行った。
【0035】
[実施例1~8、比較例1~7]
ポリアリーレンスルフィド樹脂、黒鉛、タルクおよびガラス繊維を表1に記載の各配合量で、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。ベント式二軸押出機は日本製鋼所(株)製:TEX30α‐38(完全かみ合い、同方向回転)を使用した。押出条件は吐出量20kg/h、スクリュー回転数200rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第一供給口からダイス部分まで320℃とした。なお、ガラス繊維および黒鉛は上記押出機のサイドフィーダーを使用し第二供給口から供給し、ポリアリーレンスルフィド樹脂およびタルクは第一供給口から押出機に供給した。ここでいう第一供給口とはダイスから最も離れた供給口であり、第二供給口とは押出機のダイスと第一供給口の間に位置する供給口である。得られたペレットを130℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)製 EC160NII-4Y)によりシリンダー温度320℃、金型温度140℃で評価用の試験片を成形した。
【0036】
表1中の記号表記の各成分は下記の通りである。
<A成分>
A-1:以下の製造方法で得られたポリフェニレンスルフィド樹脂
[製造方法]
パラジヨードベンゼン300.00g及び硫黄27.00gに、重合停止剤としてジフェニルジスルフィド0.60g(最終的に重合されたポリフェニレンスルフィド樹脂の重量に基づいて0.65重量%の含量)を投入して180℃に加熱して完全にそれらを溶融及び混合した後、温度を220℃に昇温し、且つ、圧力を200Torrに降圧した。得られた混合物を、最終温度及び圧力が夫々320℃及び1Torrとなるように温度及び圧力を段階的に変化させつつ、8時間重合反応させてポリフェニレンスルフィド樹脂を製造した。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される分散度(Mw/Mn)は4.3であった。
【0037】
<B成分>
B-1:膨張黒鉛(西村黒鉛(株)製 E-40 平均粒子径:250μm)
<C成分>
C-1:タルク(IMI FABI社製 ultra‐5L 平均粒子径:2μm)
C-2:タルク((株)勝光山鉱業所製 ビクトリライトTK‐RC 平均粒子径:5μm)
C-3:タルク((株)勝光山鉱業所製 ビクトリライトSG‐A 平均粒子径:20μm)
<D成分>
D-1:円形断面チョップドガラス繊維(日本電気硝子(株)製 T-732H 直径:10.5μm、カット長:3mm、ウレタン・エポキシ系集束剤)
【0038】