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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】粉砕システム
(51)【国際特許分類】
   B02C 23/34 20060101AFI20250305BHJP
   B02C 15/04 20060101ALI20250305BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
B02C23/34
B02C15/04
B02C25/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021071202
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165731
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 文典
(72)【発明者】
【氏名】堀田 滋
(72)【発明者】
【氏名】笠井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮川 伸一
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/000473(WO,A1)
【文献】特開2021-010870(JP,A)
【文献】特開平10-137606(JP,A)
【文献】特開平07-313897(JP,A)
【文献】特開平06-091186(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039576(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C15/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕室に配置された回転テーブル及び前記回転テーブルに周面が圧接された少なくとも1つの粉砕ローラを有し、前記粉砕室に熱風を吹き込みながら、前記回転テーブルに供給された砕料を前記粉砕ローラとの間で噛み込んで粉砕し、粉砕物を排出するとともに、粉砕で生じた微細な粉粒体を気流に乗せて排出するように構成された竪型ローラミルと、
キャリアガスを用いて原料を加熱しながら粗粉と細粉とに一次分級するように構成された一次分級機と、
前記一次分級機から排出された前記粗粉を前記砕料として前記竪型ローラミルへ搬送する第1搬送部と、
前記竪型ローラミルから排出された前記粉砕物を一次分級される前記原料に混入させるように、前記粉砕物を前記一次分級機へ搬送する返送部と、
熱ガス源から熱ガスを前記竪型ローラミルへ前記熱風として供給する第1熱ガス送給部と、
前記熱ガス源から熱ガスを前記竪型ローラミルを介さずに前記一次分級機へ前記キャリアガスとして供給する第2熱ガス送給部と、を備え、
前記キャリアガスの温度が前記原料及び前記原料と前記粉砕物の混合物よりも高温である、
粉砕システム。
【請求項2】
前記細粉を、前記細粉と同じ又はそれ以下の粒径の高細粉と残部粉粒体とに二次分級する二次分級機と、
前記二次分級機から排出された前記高細粉を捕集する捕集機と、
前記二次分級機から排出された前記残部粉粒体を前記砕料として前記竪型ローラミルへ搬送する第2搬送部とを、更に備える、
請求項に記載の粉砕システム。
【請求項3】
前記一次分級機、前記二次分級機、及び前記捕集機を前記キャリアガスが循環するキャリアガス循環路を有する
請求項に記載の粉砕システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型ローラミルを含む粉砕システム及び粉砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント原料や炭酸カルシウム等の各種原料の乾燥及び粉砕を行う粉砕機の一種として、竪型ローラミルが知られている。一般に、竪型ローラミルは、ハウジング内に形成された粉砕室に設けられた回転テーブルと粉砕ローラとを備え、原料を熱風で乾燥させながら回転テーブルと粉砕ローラとの間に噛み込んで粉砕するように構成されている。粉砕された原料は回転テーブルより下方の排出口から排出され、粉砕で生じた微粉を伴うガスは回転テーブルより上方の排気口から排出される。特許文献1、2では、この種の竪型ローラミルを含む粉砕システムが開示されている。
【0003】
特許文献1には、乾燥して微細な粒子を多く含む原料を粉砕する粉砕システムが示されている。この粉砕システムは、原料の一次粉砕が行われる竪型ローラミルと、原料の二次粉砕が行われる二次粉砕機とを備える。原料は予め風力分級装置で分級され、分級後の粗い粒が竪型ローラミルへ供給され、分級後の細かい粒は竪型ローラミルを介さずに直接に二次粉砕機へ供給される。
【0004】
特許文献2には、被粉砕性の低い原料を粉砕する粉砕システムが示されている。この粉砕システムは、原料を予備粉砕する竪型粉砕機(竪型ローラミル)と、予備粉砕された原料を仕上げ粉砕する仕上ミルとを備える。竪型粉砕機の直前に分級シュートが設けられ、この分級シュートで原料が微粒と粗粒とに分級され、微粒は仕上ミルへ先送りされ、粗粒のみが竪型粉砕機で予備粉砕されてから仕上ミルへ送られる。仕上ミルで仕上げ粉砕された粉砕物は、サイクロンセパレータで砕製物が分離され残部粉砕物は仕上ミルへ戻されて再び粉砕される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-848号公報
【文献】特開平7-313897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
竪型ローラミルにおいて、回転テーブルと粉砕ローラとの間に噛み込まれる原料の温度(以下、「粉砕温度」と称する)が好適粉砕温度にあるときに、運転が安定することが知られている。好適粉砕温度は、原料の性状や竪型ローラミルの特性に応じて異なる。竪型ローラミルへ供給される原料の温度が好適粉砕温度よりも低い場合や水分含有量が高い場合には、粉砕室へ導入される熱風の温度や量を調整することにより、粉砕ローラに噛み込まれる原料の温度を好適粉砕温度まで昇温することが行われている。
【0007】
しかし、粉砕室へ導入される熱風は粉砕物の気流搬送にも利用されることから、熱風の風量には制約がある。また、竪型ローラミルには、新たに投入される原料のほかに、竪型ローラミルへ戻される粗粉砕物が投入される。原料と粗粉砕物との温度や水分含有量には差があることから、回転テーブルに供給された原料及び粗粉砕物の混合物の温度にムラが生じるおそれがある。このような事情を鑑みれば、砕料が粉砕ローラに噛み込まれるまでの間に砕料を好適粉砕温度まで昇温するために、原料を竪型ローラミルに投入する前に予熱しておくことが有効であると考えられる。特許文献2では、竪型ローラミルからの排気が分級シュートで利用されることから、竪型ローラミルへ供給される原料は排気との熱交換により幾分かは予熱されると推定される。しかし、特許文献2では竪型ローラミルの粉砕物は当該竪型ローラミルへ戻されないことから、竪型ローラミルの砕料の温度ムラは考慮されていない。更に、竪型ローラミルからの排気がそのまま分級シュートでキャリアガスとして利用されることから、ミル排気量とキャリアガスの流量とを独立して調整することができない。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、循環路で接続された竪型ローラミル及び分級機を備える粉砕システムで原料を粉砕するにあたり、システムの運転安定性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
また、本発明の別の一態様に係る粉砕システムは、
粉砕室に配置された回転テーブル及び前記回転テーブルに周面が圧接された少なくとも1つの粉砕ローラを有し、前記粉砕室に熱風を吹き込みながら、前記回転テーブルに供給された砕料を前記粉砕ローラとの間で噛み込んで粉砕し、粉砕物を排出するとともに、粉砕で生じた微細な粉粒体を気流に乗せて排出するように構成された竪型ローラミルと、
キャリアガスを用いて原料を加熱しながら粗粉と細粉とに一次分級するように構成された一次分級機と、
前記一次分級機から排出された前記粗粉を前記砕料として前記竪型ローラミルへ搬送する第1搬送部と、
前記竪型ローラミルから排出された前記粉砕物を一次分級される前記原料に混入させるように、前記粉砕物を前記一次分級機へ搬送する返送部と、
熱ガス源から熱ガスを前記竪型ローラミルへ前記熱風として供給する第1熱ガス送給部と、
前記熱ガス源から熱ガスを前記竪型ローラミルを介さずに前記一次分級機へ前記キャリアガスとして供給する第2熱ガス送給部と、を備え、
前記キャリアガスの温度が前記原料及び前記原料と前記粉砕物の混合物よりも高温であることを特徴としている。
【0011】
上記粉砕方法及び粉砕システムでは、原料と竪型ローラミルからの返送粉砕物との混合物が一次分級機で粗分級されるとともに加熱される。このように一次分級で粒径と温度とが調整された砕料が、竪型ローラミルへ供給される。よって、粉砕ローラに噛み込まれる砕料の温度ムラが抑えられ、砕料を均一に好適粉砕温度まで昇温させた状態とすることが可能となる。粉砕ローラに噛み込まれる砕料の温度を均一化・安定化させることで、安定した粉砕が維持されて竪型ローラミルの粉砕効率を向上させることができる。そして、竪型ローラミルで良好な粉砕が維持されることによって、粉砕システムの運転安定性を向上させることができる。
【0012】
また、上記粉砕方法及び粉砕システムでは、一次分級において原料及び返送粉砕物の混合物が予熱されることから、返送粉砕物との温度差が比較的大きな原料(例えば、常温の原料)であっても、粉砕ローラに噛み込まれる砕料を好適粉砕温度まで昇温させた状態とすることが可能となる。よって、上記粉砕方法及び粉砕システムは、返送粉砕物との温度差が比較的大きな原料(例えば、常温の原料)を粉砕するために好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、循環路で接続された竪型ローラミル及び分級機を備える粉砕システムで原料を粉砕するにあたり、システムの運転安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る粉砕システムの全体的な構成を示す図である。
図2図2は、静的分級機及び動的分級機の構成を示す図1の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る粉砕システム1の全体的な構成を示す図である。図1に示す粉砕システム1は、竪型ローラミル2と、竪型ローラミル2に粉砕物を循環させる粉砕物循環系統3と、システム内でガスを循環させるガス循環系統4とを備える。
【0016】
〔竪型ローラミル2〕
竪型ローラミル2は、ハウジング21、回転テーブル22、少なくとも1つの粉砕ローラ23、及びモータ24を備える。竪型ローラミル2のハウジング21内には、分級機は備えられていない。
【0017】
ハウジング21内には、粉砕が行われる粉砕室20が形成されている。回転テーブル22及び粉砕ローラ23は粉砕室20内に配置される。回転テーブル22は、垂直な回転軸線まわりに回転可能に構成されている。回転テーブル22には、モータ24の回転動力が減速機構25を介して伝達される。粉砕ローラ23は、図示されない加圧手段によって回転テーブル22に周面が圧接されている。回転テーブル22が回転すると、粉砕ローラ23は従動回転する。
【0018】
ハウジング21の上部には、供給口26(或いは、供給シュート)及び排気口27が設けられている。供給口26を通じて、砕料が回転テーブル22の上面へ供給される。排気口27からは、砕料の粉砕で生じた微細な粉砕物が気流に乗って排出される。
【0019】
回転テーブル22の下方には、排出口28(排出シュート)が設けられている。排出口28からは、回転テーブル22の外周縁から溢れ落ちた粉砕物が竪型ローラミル2の外部へ排出される。また、回転テーブル22の外周周囲には、熱風吹出口29が設けられている。熱風吹出口29は熱風が供給される熱風入口29aと連通されており、熱風吹出口29から粉砕室20内へ上向きに熱風が吹き出す。
【0020】
上記構成の竪型ローラミル2では、熱風吹出口29から吹き上がる熱風によって回転テーブル22や粉砕ローラ23を含む粉砕室20内が予熱されたうえで、回転している回転テーブル22の上に砕料が供給される。砕料は、回転テーブル22と粉砕ローラ23との間に噛み込まれて押しつぶされ、粉砕される。粉砕物(即ち、粉砕された砕料)は、回転テーブル22の周縁から溢れ落ち、排出口28を通じて機外へ排出される。また、粉砕で生じた微細な粉砕物は吹き上がる熱風によって舞い上がり、気流に乗って排気口27から排出される。
【0021】
〔粉砕物循環系統3〕
粉砕物循環系統3は、竪型ローラミル2から排出された粉砕物か砕製物となる高細粉を分離し、高細粉が分離された粉砕物を竪型ローラミル2へ戻すように構成されている。粉砕物循環系統3で分離された高細粉は、砕製物として回収される。
【0022】
粉砕物循環系統3には、竪型ローラミル2の排出口28から排出された粉砕物を、分級機7,8を経て竪型ローラミル2の供給口26へ戻す粉砕物循環路30が形成されている。本実施形態に係る粉砕物循環路30には、一次分級機8と二次分級機7との二段の分級機7,8が設けられている。粉砕物循環路30は、竪型ローラミル2、バケットエレベータ31、一次分級機8、及び二次分級機7と、これらを環状に接続する搬送部32~35等で構成されている。搬送部32~35は、配管やコンベヤなどで形成されてよい。
【0023】
竪型ローラミル2の排出口28は、搬送部34を介してバケットエレベータ31の第1入口31aと接続されている。本実施形態では、竪型ローラミル2の排出口28よりも一次分級機8の原料入口82が高位置であるため、粉砕物循環路30にバケットエレベータ31が設けられている。但し、バケットエレベータ31に代えて垂直コンベヤなどの垂直搬送機が用いられてもよい。バケットエレベータ31は、図示されない複数のバケットを備えており、第1入口31a及び第2入口31bを通じてバケットに投入された粉砕物を上方へ搬送して、出口31cから排出する。バケットエレベータ31の出口31cは、搬送部35を介して一次分級機8の原料入口82と接続されている。搬送部34、バケットエレベータ31、及び搬送部35により、竪型ローラミル2から排出された粉砕物を一次分級機8の原料入口82へ戻す返送部Rが形成されている。
【0024】
一次分級機8の原料入口82には、返送部Rを通じて送られてきた粉砕物と、未粉砕の原料とが投入される。一次分級機8では、原料と粉砕物との混合物(以下、「原料混合物」と称する)が細粉と粗粉とに分級される。粗粉は、一次分級機8の原料出口83と接続された搬送部32を通じて竪型ローラミル2の供給口26へ砕料として送られる。細粉は、一次分級機8を通過するキャリアガスに同伴して、二次分級機7へ流入する。二次分級機7では、キャリアガスに同伴している細粉が、高細粉と残部粉粒体とに分級される。換言すれば、二次分級機7ではキャリアガスに同伴している細粉から高細粉が分離される。高細粉は、キャリアガスに同伴して二次分級機7のガス出口77から排出され、捕集機6で回収される。残部粉粒体(即ち、高細粉が除かれた細粉)は、二次分級機7の原料出口78と接続された搬送部33を通じて竪型ローラミル2の供給口26へ砕料として送られる。
【0025】
上記において、「高細粉」は、砕製物の粒径に応じて定められた粒径範囲の粒子の集合体と規定する。また、「細粉」は、高細粉の粒径範囲と同じ又はそれよりも大きな粒径範囲の粒子の集合体と規定する。即ち、高細粉の粒径は、細粉と同じ又はそれ以下の粒径であって、一次分級機8で分級された細粉には高細粉が含まれる。「粗粉」は、細粉の粒径範囲よりも大きな粒子の集合体と規定する。
【0026】
〔ガス循環系統4〕
ガス循環系統4には、ミル排気循環路40とキャリアガス循環路50とが設けられている。ミル排気循環路40とキャリアガス循環路50とは、接続部53によって接続されている。
【0027】
ミル排気循環路40は、竪型ローラミル2の排気口27から排出された気体(以下、「ミル排気」)を熱風入口29aへ戻すように形成されている。ミル排気循環路40は、竪型ローラミル2、集塵機41、及び第2ファン42と、これらを環状に接続する送気部40a,40b等で構成されている。送気部40a,40bは、配管や弁等で構成されてよい。
【0028】
竪型ローラミル2の排気口27は、送気部40aを介して集塵機41の入口と接続されている。集塵機41の排気口と竪型ローラミル2の熱風入口29aとは、送気部40bで接続されている。送気部40bに第2ファン42が設けられている。集塵機41の粉粒体出口とバケットエレベータ31の第2入口31bは搬送部38で接続されている。
【0029】
竪型ローラミル2の排気口27から出たミル排気は、第2ファン42の誘引作用によって、集塵機41に流入する。集塵機41では、ミル排気に同伴している微細な粉砕物がミル排気から分離される。集塵機41で分離された微細な粉砕物は、搬送部38を通じてバケットエレベータ31の第2入口31bへ送られて、粉砕物循環系統3の粉砕物の流れに合流する。本実施形態では、集塵機41として、第2ファン42の吸引作用を利用したサイクロン式集塵機が採用されている。但し、集塵機41は、ミル排気から微細な粉砕物を分離できるものであれば本実施形態に限定されない。
【0030】
ミル排気循環路40の送気部40bには、熱ガス発生装置43が接続されている。これにより、熱ガス発生装置43と竪型ローラミル2の熱風入口29aとの間に、熱ガス発生装置43から熱ガスを熱風入口29aへ送給する第1熱ガス送給部F1が形成されている。熱ガス発生装置43から竪型ローラミル2へ送給される熱ガスの温度や流量は、竪型ローラミル2のミル内温度に応じて調整されてよい。熱ガス発生装置43は、例えば、所望の温度の熱風を発生させる熱風発生炉である。但し、熱ガス発生装置43は、熱風発生炉に限定されず、例えば、竪型ローラミル2の周辺にキルン(セメント焼成炉)などの高温ガスの発生源が存在する場合には、その高温ガス発生源を熱ガス発生装置43として利用してもよい。熱ガス発生装置43からミル排気循環路40へ供給された熱ガスは、ミル排気とともに竪型ローラミル2の熱風入口29aへ送給される。
【0031】
キャリアガス循環路50は、一次分級機8、二次分級機7、及び捕集機6にキャリアガスを循環させるように形成されている。キャリアガス循環路50は、一次分級機8、二次分級機7、捕集機6、及び第1ファン66と、これらを環状に接続する送気部51,64,65,52等で構成されている。送気部51,64,65,52は、配管や弁等で構成されてよい。
【0032】
一次分級機8のガス入口81には送気部51が接続されている。二次分級機7のガス出口77と捕集機6の入口とは送気部64で接続されている。捕集機6の排気口に接続された送気部65は、送気部52によって送気部51と接続されている。これにより、捕集機6から排出されたキャリアガスの一部又は全部を、送気部65,52,51を通じて一次分級機8のガス入口81へ戻すことができる。送気部65(又は送気部52)には、流量調整弁56が設けられている。流量調整弁56によって、一次分級機8へ戻されるキャリアガスの流量を調整することができる。
【0033】
接続部53は、ミル排気循環路40の第2ファン42より下流側且つ竪型ローラミル2の熱風入口29aより上流側部分と、キャリアガス循環路50の第1ファン66より下流側且つ一次分級機8のガス入口81より上流側部分とを接続している。接続部53には流量調整弁55が設けられている。流量調整弁55によって、ミル排気循環路40から接続部53を通じてキャリアガス循環路50の送気部51へ流入するミル排気の量を調整することにより、ミル排気の循環量を調整することができる。
【0034】
熱ガス発生装置43と一次分級機8のガス入口81との間には、熱ガス発生装置43から直接に(即ち、竪型ローラミル2を介さずに)熱ガスを一次分級機8のガス入口81へ送給する第2熱ガス送給部F2が設けられている。第2熱ガス送給部F2は、主に送気部51で形成される。このようにして、一次分級機8のガス入口81へ流入するキャリアガスは、熱ガス発生装置43から供給された熱ガスと、キャリアガス循環路50を循環するキャリアガスと、ミル排気循環路40からキャリアガス循環路50へ流入したミル排気との混合気となる。
【0035】
送気部40bを通じて熱風入口29aへ流入するガスの温度T1、送気部40aへ竪型ローラミル2から排出されるガスの温度T2、接続部53を流れるガスの温度T3、送気部51を通じて一次分級機8のガス入口81へ流入するガスの温度T4、捕集機6から送気部52へ排出されたガスの温度T5としたときに、T1>T2>T3>T4>T5の関係が成立することが、原料の効率的な昇温・乾燥のためには望ましい。
【0036】
ここで、一次分級機8及び二次分級機7の構成について詳細に説明する。図2は、一次分級機8及び二次分級機7の構成を示す図1の部分拡大図である。
【0037】
〔一次分級機8〕
図2に示すように、一次分級機8は動力を要しない、静的分級機(気流式分級機)である。一次分級機8は、上部にガス入口81、原料入口82、及びガス出口84が形成され、底部に原料出口83が形成されたケーシング80を備える。ケーシング80内には、ガス入口81からガス出口84へ向かってV字状に流れるキャリアガスの流路が形成されている。このキャリアガスの流路には、第1バッフルプレート列89aと、第2バッフルプレート列89bとが設けられている。各バッフルプレート列89a,89bは上下方向に並んだ複数のバッフルプレートで形成されている。原料入口82は、第1バッフルプレート列と89aと第2バッフルプレート列89bとの間の上方に開口している。
【0038】
上記構成の一次分級機8において、ガス入口81からケーシング80内にキャリアガスが導入され、一次分級機8の原料入口82には原料と粉砕物循環路30を通じて運ばれてきた粉砕物とが投入される。原料混合物は重力により第1バッフルプレート列89aと第2バッフルプレート列89bの間を落下する。キャリアガスは、第1バッフルプレート列89aと第2バッフルプレート列89bとを順に通過し、ガス出口84から流れ出る。
【0039】
一次分級機8のガス入口81へ流入するキャリアガスには、熱ガス発生装置43から直接に供給された熱ガスが含まれる。ガス入口81へ流入するキャリアガスの温度(入口温度)は、原料及び原料と粉砕物の混合物(原料混合物)の温度よりも高い。これにより、原料混合物は、キャリアガスと熱交換することによって加熱される。参考までに一例をあげると、原料混合物の水分が約2質量%であり、一次分級機8の原料入口82に投入される原料の温度が約30℃であり、原料入口82に投入される粉砕物の温度が約73℃度である場合に、一次分級機8のガス入口81へ流入するキャリアガスの温度(入口温度)は約85℃である。
【0040】
キャリアガスの流路と原料混合物の流れは交差している。原料混合物は、キャリアガスとの熱交換により加熱される。また、シュート85を移動する原料混合物は、凝集している粒子がキャリアガスで解されて分散される。ケーシング80内を移動する原料混合物は、含まれている細粉がキャリアガスの気流で搬送されて原料混合物から分離され、細粉はキャリアガスに乗せられてガス出口85へ運ばれる。このようにして細粉の除かれた原料混合物(即ち、粗粉)は、原料出口83から排出され、搬送部32によって竪型ローラミル2の供給口26へ送られる。
【0041】
なお、上記粉砕システム1では一次分級機8に直接に原料が投入されることから、一次分級機8の構成要素(例えば、各バッフルプレート列89a,89b)の摩耗が想定されるが、一次分級機8は可動部の無い静的分級機が採用されているので容易にメンテナンス可能である。
【0042】
〔二次分級機7〕
二次分級機7は、動力源としてモータ73を備える動的分級機である。二次分級機7は、ケーシング75と、ケーシング75内に配置されたシュート74と、シュート74の上方に配置された分級ロータ71と、分級ロータ71を回転駆動するモータ73と、分級ロータ71の周囲に配置された分級ベーン72とを備える。ケーシング75の底部にはガス入口76が設けられており、ケーシング75の頂部にはガス出口77が設けられている。本実施形態においては、ガス入口76は一次分級機8のガス出口84と直結されている。シュート74の底部には原料出口78が設けられている。
【0043】
上記構成の二次分級機7のガス入口76には、一次分級機8から細粉を同伴したキャリアガスが流入する。系に投入された原料のうち比較的大きな粒径のものは、粗粉として一次分級機8で分離されて二次分級機7へは流入しない。これにより、二次分級機7で安定して高い分級効率が得られるとともに、モータ73の回転トルクの変動が抑えられ、更に、分級ロータ71の摩耗が抑えられる。
【0044】
二次分級機7のガス入口76から上向きに流入したキャリアガスはケーシング75とシュート74との間を吹き上がり、分級ベーン72の作用によってキャリアガスに同伴する細粉が高細粉とそれ以外の残部粉粒体とに分級される。残部粉粒体(即ち、高細粉が除かれた細粉)は、シュート74を落下して原料出口78から排出され、搬送部33によって竪型ローラミル2の供給口26へ送られる。高細粉は、キャリアガスに随伴してガス出口77から流出し、送気部64を介して捕集機6へ流入する。捕集機6は、二次分級機7から排出されたキャリアガスに同伴している高細粉を捕集して砕製物として回収する。本実施形態に係る捕集機6はバグフィルタであるが、キャリアガスに同伴している高細粉を捕集できるものであれば、捕集機6はバグフィルタに限定されない。
【0045】
以上に説明したように、上記実施形態に係る粉砕システム1は、
粉砕室20に配置された回転テーブル22及び回転テーブル22に周面が圧接された少なくとも1つの粉砕ローラ23を有し、粉砕室20に熱風を吹き込みながら、回転テーブル22に供給された砕料を粉砕ローラ23との間で噛み込んで粉砕し、粉砕物を排出するとともに、粉砕で生じた微細な粉粒体を気流に乗せて排出するように構成された竪型ローラミル2と、
キャリアガスを用いて原料を加熱しながら粗粉と細粉とに一次分級するように構成された一次分級機8と、
一次分級機8から排出された粗粉を砕料として竪型ローラミル2へ搬送する第1搬送部32と、
竪型ローラミル2から排出された粉砕物を一次分級される原料に混入させるように、粉砕物を一次分級機8へ搬送する返送部Rと、備え、
キャリアガスの温度が原料及び原料と粉砕物の混合物よりも高温であることを特徴としている。
【0046】
また、上記実施形態に係る粉砕方法は、
キャリアガスを用いて原料を加熱しながら粗粉と細粉とに一次分級すること、
粗粉を竪型ローラミル2へ供給して粉砕すること、及び、
竪型ローラミル2から排出された粉砕物を一次分級される原料に混入させること、を含み、
キャリアガスの温度が原料及び原料と粉砕物の混合物よりも高温であることを特徴としている。
【0047】
上記粉砕方法及び粉砕システム1では、原料と返送粉砕物とが混合及び分散された原料混合物が一次分級機8で粗分級されるとともに加熱される。このように一次分級で粒径と温度とが調整された砕料が、竪型ローラミル2へ供給される。よって、粉砕ローラ23に噛み込まれる砕料の温度ムラが抑えられ、砕料を均一に好適粉砕温度まで昇温させた状態とすることが可能となる。粉砕ローラ23に噛み込まれる砕料の温度を均一化・安定化させることで、安定した粉砕が維持されて竪型ローラミル2の粉砕効率を向上させることができる。そして、竪型ローラミル2で良好な粉砕が維持されることによって、粉砕システム1の運転安定性を向上させることができる。
【0048】
また、上記粉砕方法及び粉砕システム1では、原料と、一次分級機8へ戻される粉砕物を独立して分級・加熱する場合と比較して、同等の温度へ昇温するための熱量を抑えることができ、燃料コストを削減することができる。
【0049】
更に、上記粉砕方法及び粉砕システム1では、一次分級において原料と返送粉砕物との原料混合物が予熱されることから、返送粉砕物よりも温度の低い原料(例えば、常温の原料)であっても、粉砕ローラ23に噛み込まれる砕料を好適粉砕温度まで昇温させた状態とすることが可能となる。よって、上記粉砕方法及び粉砕システム1は、返送粉砕物よりも温度の低い原料(例えば、常温の原料)を粉砕するために好適である。なお、本明細書において「常温の原料」とは外気に晒された状態で保管されている原料のことであり、外気の気温に応じて氷点下から50℃程度までの範囲の温度の原料が含まれ得る。
【0050】
また、上記実施形態に係る粉砕システム1は、熱ガス源から送られた熱ガスを竪型ローラミル2へ熱風として供給する第1熱ガス送給部F1と、熱ガス源から送られた熱ガスを竪型ローラミル2を介さずに一次分級機8へキャリアガスとして供給する第2熱ガス送給部F2とを、更に備える。上記実施形態に係る粉砕システム1では、熱ガス源として熱ガス発生装置43を備えているが、熱ガス源は熱ガス発生装置43に限定されず粉砕システム1と隣接された設備(例えば、燃焼炉など)であって熱ガスとしてその設備の排ガスが利用されてもよい。
【0051】
このように、熱ガス源から送られた熱ガスは、竪型ローラミル2と一次分級機8とへ夫々送られる。よって、一次分級機8では竪型ローラミル2のミル排気よりも高温のキャリアガスを導入することが可能となる。更に、竪型ローラミル2の熱風の流量と一次分級機8のキャリアガスの流量とを独立して制御することができるので、熱風の流量及びキャリアガスの流量を互いに影響を受けずに各々好適な値とすることができる。これにより、粉砕システム1の運転安定性を向上させることができる。
【0052】
また、上記実施形態に係る粉砕システム1は、一次分級機8で分級された細粉を、細粉と同じ又はそれ以下の粒径の高細粉と残部粉粒体とに二次分級する二次分級機7と、二次分級機7から排出された高細粉を捕集する捕集機6と、二次分級機7から排出された残部粉粒体を砕料として竪型ローラミル2へ搬送する第2搬送部33とを、更に備える。ここで、一次分級機8、二次分級機7、及び捕集機6をキャリアガスが循環するキャリアガス循環路50が形成されていてよい。
【0053】
同様に、上記実施形態に係る粉砕方法は、細粉を当該細粉と同じ又はそれ以下の粒径の高細粉と残部粉粒体とに二次分級すること、残部粉粒体を竪型ローラミル2へ供給して粗粉と供に粉砕すること、及び、高細粉を砕製物として回収すること、を更に含む。
【0054】
一般に、砕製物となる精密分級された粉体を得るためには、回転部を含む動的分級機が用いられる。上記粉砕方法及び粉砕システム1によれば、一次分級で粗粉が除かれた細粉が二次分級機7で二次分級されることから、二次分級機7として動的分級機を用いた場合でも回転部(例えば、分級ロータ71)の摩耗を抑えることができる。更に、一次分級で粗粉が除かれた細粉が二次分級機7で二次分級されることから、二次分級機7では良好な分級性能が得られ、精度の高い砕製物が得られる。
【0055】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0056】
例えば、上記実施形態に係る粉砕システム1は、竪型ローラミル2から返送される粉砕物との温度差が比較的大きな原料(例えば、常温の原料)を粉砕するために好適であるが、原料の温度はこれに限定されない。
【0057】
また、例えば、上記実施形態に係る粉砕システム1では、一つの熱ガス発生装置43から竪型ローラミル2及び一次分級機8の双方へ熱ガスが送られるが、竪型ローラミル2及び一次分級機8の各々に対して熱ガス発生装置43が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :粉砕システム
2 :竪型ローラミル
3 :粉砕物循環系統
30 :粉砕物循環路
4 :ガス循環系統
40 :ミル排気循環路
50 :キャリアガス循環路
6 :捕集機
7 :二次分級機
8 :一次分級機
20 :粉砕室
22 :回転テーブル
23 :粉砕ローラ
32~38 :搬送部
43 :熱ガス発生装置
50 :キャリアガス循環路
R :返送部
F1 :第1熱ガス送給部
F2 :第2熱ガス送給部
図1
図2