(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 89/60 20250101AFI20250305BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250305BHJP
H03K 19/003 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
H10D89/60
H10D84/80 101A
H10D84/80 102B
H10D84/80 102A
H03K19/003 230
(21)【出願番号】P 2021177319
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 幸輝
【審査官】石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-033873(JP,A)
【文献】特開2007-067095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0047162(US,A1)
【文献】国際公開第2020/080304(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0107345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 89/60
H10D 84/80
H03K 19/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号パッドと、
GNDパッドと、
電源線及びGND線の間に、前記信号パッドと電気的に接続された信号ノードを介して電気的に接続される複数の駆動トランジスタと、
前記信号パッドへ電気信号が印加された際に、前記信号パッドから前記GNDパッドへの放電経路を形成するための静電保護機構とを備え、
前記複数の駆動トランジスタは、
前記信号パッドと電気的に接続されたドレインを有する保護対象トランジスタを含み、
前記静電保護機構は、
前記電気信号の印加時における前記保護対象トランジスタのゲートの電気的な接続先を制御するゲートスイッチ回路を含み、
前記ゲートスイッチ回路は、前記電気信号の印加時において、前記放電経路の形成時に前記GND線よりも電位が高くなる第1のノードに前記ゲートを電気的に接続する、半導体装置。
【請求項2】
前記電源線には、各前記駆動トランジスタの動作電圧よりも高い第1の電源電圧が供給され、
前記半導体装置は、
前記第1の電源電圧を抵抗分圧して、前記動作電圧と同等の第2の電源電圧を参照電圧線に出力するための分圧回路を更に備え、
前記第1のノードは、前記参照電圧線を含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電源線には、各前記駆動トランジスタの動作電圧と同等の電源電圧が供給され、
前記第1のノードは、前記電源線を含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のノードは、前記信号ノード、又は、抵抗素子或いは導通状態のダイオードを経由して前記信号ノードと電気的に接続されるノードを含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記静電保護機構は、
前記放電経路の形成に応答して予め定められた電圧を前記ゲートスイッチ回路に対して出力するためのスイッチ制御機構を含み、
前記ゲートスイッチ回路は、前記予め定められた電圧が入力されたときに前記保護対象トランジスタの前記ゲートを前記第1のノードに電気的に接続する様に動作する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記スイッチ制御機構は、
前記放電経路に電流が発生したときに導通する様に配置された電流検知ダイオードと、
前記電流検知ダイオードの導通に応じてオンすることで前記予め定められた電圧を前記ゲートスイッチ回路へ伝達する様に配置された制御トランジスタとを含む、請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記予め定められた電圧は、接地電圧である、請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記予め定められた電圧は、各前記駆動トランジスタの動作電圧と同等以上の電源電圧である、請求項6記載の半導体装置。
【請求項9】
前記複数の駆動トランジスタは、
前記電源線及び前記信号ノードの間に電気的に直列接続された複数の第1のトランジスタと、
前記信号ノード及び前記GND線の間に電気的に直列接続された複数の第2のトランジスタとを含み、
前記ゲートスイッチ回路は、前記半導体装置の動作時には、前記保護対象トランジスタをオン状態とするためのゲート電圧を供給する第2のノードに前記ゲートを電気的に接続する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲートスイッチ回路は、前記複数の第1のトランジスタのうちの、前記信号パッドと電気的に接続されたドレインを有する第1の保護対象トランジスタと、前記複数の第2のトランジスタのうちの、前記信号パッドと電気的に接続されたドレインを有する第2の保護対象トランジスタとの各々に対応して配置される、請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体装置は、
複数の入出力回路を備え、
前記複数の入出力回路の各々は、前記複数の駆動トランジスタ及び前記信号パッドの組を含み、
前記ゲートスイッチ回路は、前記複数の入出力回路のうちのN個(N:2以上の整数)の入出力回路の間で共有され、
前記N個の入出力回路において、前記ゲートスイッチ回路を共有するN個の前記保護対象トランジスタの前記ゲートは互いに電気的に接続される、請求項9記載の半導体装置。
【請求項12】
前記放電経路の形成に応答して予め定められた電圧を前記ゲートスイッチ回路に対して出力するためのスイッチ制御機構を更に備え、
前記ゲートスイッチ回路は、前記予め定められた電圧が入力されたときに前記保護対象トランジスタの前記ゲートを前記第1のノードに電気的に接続する様に動作し、
前記ゲートスイッチ回路及び前記スイッチ制御機構は、前記N個の入出力回路の間で共有される、請求項11記載の半導体装置。
【請求項13】
前記複数の駆動トランジスタは、
前記電源線及び前記信号ノードの間に電気的に接続された第1のトランジスタと、
前記信号ノード及び前記GND線の間に電気的に接続された第2のトランジスタとを含み、
前記半導体装置は、
前記半導体装置の動作時に前記信号パッドからの出力信号を生成する出力バッファを更に備え、
前記ゲートスイッチ回路は、前記半導体装置の動作時には、前記出力バッファの出力ノードを前記ゲートに電気的に接続する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ゲートスイッチ回路は、前記第1及び第2のトランジスタの各々に対応して配置される、請求項13記載の半導体装置。
【請求項15】
前記電気信号は、電気的外乱ノイズである、請求項1記載の半導体装置。
【請求項16】
前記電気的外乱ノイズは、静電気放電であり、
前記静電気放電は、前記静電気放電を模擬した試験電気信号を含む、請求項15記載の半導体装置。
【請求項17】
前記放電経路は、前記電源線及び前記GND線を含む、請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、より特定的には、ESD(Electro Static Discharge:静電気放電)に対する保護機能を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置には、外部からの入出力端子に対する静電気放電から内部回路を保護するための静電保護回路が搭載される。例えば、特開2009-99641号公報(特許文献1)には、入出力端子に接続される入出力線と、電源線及びグラウンド線との間に、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタで構成された静電保護回路が接続される回路構成が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の動作確認試験の一環として、上記ESD保護機能が正常に動作することを確認するための静電破壊試験(以下、「ESD試験」と称する)が実行される。ESD試験では、電源端子、GND端子、及び、信号入出力(I/O)端子等の外部端子に対してESDを模擬した電気ストレスが印加されたときの半導体装置の破壊耐性が評価される。
【0005】
一方で、近年では、半導体装置の製造プロセスの微細化が進んでいるため、トランジスタの耐圧低下、及び、配線寄生抵抗の増大が進んでいる。ESD試験時、或いは、半導体の組立工程や電子機器への実装工程等における静電気放電暴露(以下、「ESD印加」と称する)の際に、外部端子から半導体内部へ流れ込む電流(以下、「ESD電流」と称する)は、静電保護回路の動作によって、ESD印加時に基準電位を持つ他の外部端子へ導かれる。この際に、ESD電流経路の寄生配線抵抗が増大していると、ESD電流が流れた際に発生する電圧降下量が大きくなる。この結果、ESD印加時において、ESD電流経路に接続された内部素子(トランジスタ)に対して、耐圧を超えた電位差が印加されることが懸念される。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためのものであって、ESD印加時における内部素子の破壊を抑制することが可能な半導体装置を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、半導体装置は、信号パッドと、GNDパッドと、複数の駆動トランジスタと、静電保護機構とを備える。複数の駆動トランジスタは、電源線及びGND線の間に、信号パッドと電気的に接続された信号ノードを介して電気的に接続される。複数の駆動トランジスタは、信号パッドと電気的に接続されたドレインを有する保護対象トランジスタを含む。GNDパッドが基準電位を持った状態で信号パッドへ電気信号(例えば、静電気)が印加された際、静電保護機構は、信号パッドからGNDパッドへの放電経路を形成する。静電保護機構は、ゲートスイッチ回路を含む。ゲートスイッチ回路は、電気信号の印加時における保護対象トランジスタのゲートの電気的な接続先を制御する。ゲートスイッチ回路は、電気信号(静電気)の印加時において、放電経路の形成時にGND線よりも電位が高くなる第1のノードにゲートを電気的に接続する。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によれば、ESD印加時における内部素子の破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る半導体装置の全体構成を説明する概略図である。
【
図2】比較例に係る静電保護機構におけるESD印加時の問題点を説明する回路図である。
【
図3】半導体装置の出力回路の多段縦積み構成を説明する回路図である。
【
図4】
図3に示された出力回路に対して比較例に係る静電保護機構を適用した場合のESD印加時の問題点を説明する回路図である。
【
図5】実施形態1に係る半導体装置の静電保護機構を説明する回路図である。
【
図6】
図5に示された半導体装置のESD印加時における各部位の電位を比較する図表である。
【
図7】実施形態1に係る半導体装置の静電保護機構の動作特性図である。
【
図8】実施形態2に係る半導体装置の静電保護機構を説明する回路図である。
【
図9】実施形態3に係る半導体装置のI/O回路のレイアウトの一例を説明する概念図である。
【
図10】実施形態3に係る半導体装置における静電保護機構の配置レイアウトの一例を説明する回路図である。
【
図11】実施形態4に係る半導体装置の静電保護機構を説明する回路図である。
【
図12】実施形態5に係る半導体装置の静電保護機構を説明する回路図である。
【
図13】
図12に示された半導体装置のESD印加時における各部位の電位を比較する図表である。
【
図14】実施形態5に係る半導体装置の静電保護機構の動作特性図である。
【
図15】実施形態6に係る半導体装置の静電保護機構を説明する回路図である。
【
図16】
図15に示された半導体装置のESD印加時における各部位の電位を比較する図表である。
【
図17】実施形態6に係る半導体装置の静電保護機構の動作特性図である。
【
図18】本実施の形態に係る半導体装置の静電保護機構の包括的な概念を説明する回路図である。
【
図19】本実施の形態の変形例に係る半導体装置の静電保護機構の包括的な概念を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。又、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0012】
[実施形態1]
図1に示される様に、本実施の形態に係る半導体装置10は、コア領域20と、外周領域に設けられるI/O領域30とを備える。コア領域20には、例えば、所定の機能を有するASIC(application specific integrated circuit)として構成されるコアロジック、及び、アナログ回路等が配置される。尚、
図1では、外周の全域にI/O領域30が設けられるとともに、コア領域20がI/O領域30の内周側に配置されているが、外周領域の一部をコア領域20に含めることも可能である。
【0013】
I/O領域30には、信号の入出力インターフェイスとなるI/Oセル100と、I/O電源用の電源セル200と、I/OGND用の電源セル200Gと、コア電源用の電源セル206と、コアGND用の電源セル206Gとが設けられる。I/Oセル100は、信号入出力用のパッドSPと電気的に接続される。電源セル200は、I/O電源用のパッドVPと電気的に接続され、電源セル200Gは、I/OGND用のパッドVGと電気的に接続される。更に、電源セル206は、コア電源用のパッドVPCと電気的に接続され、電源セル206Gは、コアGND用のパッドVGCと電気的に接続される。
【0014】
パッドVPに入力されたI/O用電源電圧は、電源セル200を経由して電源線PLに伝達される。パッドVPに入力されたI/O用接地電圧(GND)は、電源セル200Gを経由してGND線GLに伝達される。パッドVPCに入力されたコア用電源電圧は、電源セル206を経由して電源線PLCに伝達される。パッドVGCに入力されたコア用接地電圧(GND)は、電源セル206Gを経由してGND線GLCに伝達される。
【0015】
電源線PLC,PL、及び、GND線GLC,GLは、外周領域に配置されて、半導体装置10の内部の各回路に当該電源電圧及び接地電圧(GND)を供給する。コア用の電源電圧及びGNDは、コア領域20へ供給される。一方で、I/O用の電源電圧及び接地電圧(GND)は、コア領域20へは供給されない。
【0016】
尚、半導体装置10には、異なる電圧レベルの複数の電源電圧が入力されることがある。この場合には、電源線PL,PLCは、異なるパッドVP,VPCとそれぞれ電気的に接続される複数本が設けられる。例えば、I/Oセル専用電源のパッド及び電源線と、コア領域に供給される電源のパッド及び電源セルは異なるものとして設けられる。更に、電源セル200には、後述する静電保護回路の一部が配置される。又、ノイズ伝搬防止の観点から、I/0セル200に接地電圧(GND)を供給するGNDパッドVG及びGND線GLと、コア領域20に接地電圧(GND)を供給するGNDパッドVGC及びGND線GLCは、電気的に分離される場合がある。
【0017】
半導体装置10のESD試験時には、I/OGND用のパッドVG、I/O電源用のパッドVP、コア電源用のパッドVPC、及び、コアGND用のパッドVGCのうちの一部のパッドが試験時の基準電位を持つ基準端子として接地される。更に、この状態において、半導体装置10の外部の試験装置からパッドSP、又は、I/OGND用のパッドVG、I/O電源用のパッドVP、コア電源用のパッドVPC、及び、コアGND用のパッドVGCのうちの基準端子に設定していない残りのパッドに対して、ESDを模擬した電気信号の印加が行われて、半導体装置10の破壊耐性が評価される。
【0018】
尚、上述の様に、本開示におけるESD印加時は、ESD試験においてESDを模擬した電気信号が意図的にパッドに印加される場合の他、半導体の組立工程や電子機器への実装工程等において、意図しないESDが電気信号としてパッドに印加される場合を含むものである。この様な静電気による電気信号の印加、即ち、ESD印加に対して、以下で詳細に説明する静電保護機構を適切に作動させることで、内部素子(代表的には、トランジスタ)の破壊が抑制される。
【0019】
<静電保護機構の比較例>
次に、静電保護機構の比較例の説明を通じて、微細加工プロセスが適用された半導体装置10でのESD印加時の問題点を説明する。
【0020】
図2に示される様に、半導体装置10のI/Oセル100には、出力回路を構成するP型のトランジスタ101と、N型のトランジスタ102とが配置される。トランジスタ101は、電源線PLと、I/O信号パッド205と電気的に接続された信号ノードNioとの間に電気的に接続される。トランジスタ102は、信号ノードNioとI/O用のGND線GL(以下、I/OGND線GLとも称する)との間に電気的に接続される。
【0021】
尚、本開示において、「電気的に接続される」との文言は、配線による直接的な接続に限定されず、抵抗素子等の図示しない他の要素を介して電流経路が形成可能となる電気的な接続についても含むものである。例えば
図2において、トランジスタ102のドレイン及びソースと、信号ノードNio及びI/O用GND線GLとの電気的な接続は、ソース及びドレインと信号ノードNio及びI/O用GND線GLとを配線で直接接続することで実現される態様が示されている。しかしながら、トランジスタ102のドレイン及びソースは、図示しない抵抗素子等を介して、信号ノードNio及びI/O用GND線GLと接続されてもよい。
【0022】
電源線PLは電源パッド202と電気的に接続され、I/OGND線GLは、GNDパッド201と電気的に接続される。GNDパッド201及び電源パッド202は、
図1に示した、I/OGND用のパッドVG及びI/O電源用のパッドVPとそれぞれ等価である。I/O信号パッド205は、
図1に示した、パッドSPと等価である。
【0023】
トランジスタ101及び102のゲートには、出力バッファ21の出力信号が入力される。半導体装置10の動作時には、出力バッファ21の出力信号によって、トランジスタ101又は102がオンされる。これにより、I/O信号パッド205には、H(ハイ)レベルの電圧(VDD)、及び、L(ロー)レベルの電圧(GND)の一方が選択的に出力される。
【0024】
比較例に係る静電保護機構は、I/Oセル100に配置された保護ダイオード105,106と、電源セル200に配置されたESD回路210とによって実現される。保護ダイオード105は、信号ノードNioから電源線PLへ向かう方向を順方向として、信号ノードNio及び電源線PLの間に電気的に接続される。保護ダイオード106は、I/OGND線GLから信号ノードNioへ向かう方向を順方向として、信号ノードNio及びI/OGND線GLの間に電気的に接続される。
【0025】
ESD回路210は、電源パッド201と電気的に接続される電源線PLと、I/OGND線GLの間に配置される。ESD回路210は、公知の任意の構成を包括的に表記するものであるが、代表的には、ESD電流の発生に応じて自律的にオン状態となるN型のトランジスタを含んで構成される。
【0026】
I/O用のGNDパッド201が基準電位を持った状態で、I/O信号パッド205にESD印加されると、これに応じて保護ダイオード105及びESD回路210が作動し、半導体装置10の内部には、印加されたESDの放電経路50が形成される。放電経路50では、I/O信号パッド205-保護ダイオード105-電源線PL-ESD回路210-I/OGND線GL-GNDパッド201の経路に、ESD電流Iesdが流れる。
【0027】
ESD印加時において、放電経路50にESD電流Iesdが流れることにより、信号ノードNio及び電源線PLの間に電位差Vdioが発生するとともに、電源線PL及びI/OGND線GLの間に電位差Vesdが発生する。
【0028】
電位差Vdioは、保護ダイオード105の順方向電圧と、信号ノードNio及び電源線PLの間に保護ダイオード105を電気的に接続するための配線寄生抵抗によって生じる電圧降下量との和によって示される。
【0029】
同様に、電位差Vesdは、ESD回路210の作動時に生じる電圧降下量と、電源線PL及びI/OGND線GLの間にESD回路210を電気的に接続するための配線寄生抵抗によって生じる電圧降下量との和によって示される。
【0030】
この結果、ESD印加時における、信号ノードNioの電圧Vioは、上述の電位差Vesd及びVdioの和によって示される(Vio=Vdio+Vesd)。一方で、トランジスタ102のソースは、ESD印加時に基準電位を持つGNDパッド201と電気的に接続されているI/OGND線GLと電気的に接続されるので、電位は0[V]である。
【0031】
この結果、ESD印加時において、トランジスタ102のドレイン・ソース間に印加される電位差Vstd2は、信号ノードNioの電圧Vioと同等となる。又、トランジスタ102のゲート・ドレイン間に印加される電位差Vsdt1についても、ESD印加時にトランジスタ102のゲートの電位が0[V]となる場合は、信号ノードNioの電圧Vioと同等となる。一方で、微細化が進む先端プロセスでは、上述の様に、ESD印加時に形成される放電経路50内の配線寄生抵抗の増大によって上述の電圧Vioが上昇するとともに、各トランジスタの耐圧も低下する。これらの理由から、ESD印加時において、トランジスタ102のゲート・ドレイン間及びドレイン・ソース間に、耐圧を超えた電位差が印加されることが懸念される。
【0032】
トランジスタ102のドレイン・ソース間の耐圧を確保するためには、複数のトランジスタを電気的に直列接続する多段縦積み構成を採用することが考えられる。
【0033】
図3には、半導体装置の出力回路の多段縦積み構成を説明する回路図が示される。
図3に示される様に、多段縦積み構成の出力回路では、電源線PL及び信号ノードNioの間に複数のP型のトランジスタ101x及び101yが電気的に直列接続される。同様に、信号ノードNio及びI/OGND線GLの間には、複数のN型のトランジスタ102x及び102yが、電気的に直列接続される。
【0034】
例えば、各トランジスタの動作電圧が1.8[V]である一方で、電源線PLに供給される電源電圧VDD1が3.3[V]であるときに、
図3の例の様に、2個のトランジスタによる多段縦積み構成を出力回路に適用することができる。これによって、トランジスタ1段に加わる電位差をその動作電圧程度まで緩和することが可能となる。
【0035】
多段縦積み構成の出力回路では、電気的に直列接続された複数のトランジスタの一部はオン状態に固定される一方で、残りのトランジスタのオンオフは出力バッファ21(
図2)からの出力信号に従って制御される。これにより、I/O信号パッド205から、Hレベル(VDD1)、及び、Lレベル(GND)の一方を選択的に出力することができる。
【0036】
図3の例では、ドレインが信号ノードNioと電気的に接続されるトランジスタ101x及び102xがオン固定される。このため、トランジスタ101xのゲートは固定的に接地電圧GNDに設定されるとともに、トランジスタ102xのゲートは固定的に電源電圧VDD2(1.8[V])に設定される必要がある。
【0037】
従って、半導体装置10の起動時(電源投入時)において、トランジスタ102xを安定的にオン固定するためには、電源電圧VDD2をゲートに速やかに供給する必要がある。この際に、半導体装置10に対して、電源電圧VDD1の方が電源電圧VDD2よりも先に入力される使用態様に対応するために、電源電圧VDD1から電源電圧VDD2を生成することが考えられる。
【0038】
例えば、
図3の例では、抵抗素子R1及びR2によって電源電圧VDD1(3.3[V])を分圧することで電源電圧VDD2(1.8[V])相当の参照電圧VREFが生成される。更に、トランジスタ102xのゲートに対して、ゲートスイッチ回路110が配置される。ゲートスイッチ回路110は、制御信号SLに応じて、半導体装置10の外部から供給される電源電圧VDD2と、分圧によって生成された参照電圧VREFとの一方を、トランジスタ102xのゲートに選択的に供給する。
【0039】
これにより、電源電圧VDD2が電源電圧VDD1よりも遅れて供給される電源起動シーケンスにおいても、半導体装置10の起動時における出力回路の動作を安定化することができる。即ち、半導体装置10に対する電源起動シーケンスの自由度が向上する。
【0040】
図4には、
図3に示された多段縦積み構成の出力回路に対して、
図2と同様の静電保護機構を適用した場合のESD印加時の問題点を説明する回路図が示される。
【0041】
図4において、電源電圧VDD1は電源線PL1によって供給される一方で、電源電圧VDD2は電源線PL2によって供給される。電源線PL1,PL2は、I/O用の電源パッド202及び電源パッド203とそれぞれ電気的に接続される。VDD1を入力される電源パッド202と、VDD2を入力される電源パッド203とは、
図1におけるI/O用電源パッドSPに含まれる。更に、抵抗素子R1,R2によって電源電圧VDD1を分圧することで得られる参照電圧VREFは、参照電圧線PLrによって供給される。
【0042】
図4に示される様に、
図2と同様の保護ダイオード105,106と、ESD回路210とが、電源線PL1、信号ノードNio、及び、I/OGND線GLに対して電気的に接続される。
図4の構成においても、GNDパッド201が基準電位を持つ端子となり、信号パッド205へESDが印加されてESD電流が生じた場合には、信号ノードNioには、
図2と同様の電圧Vio(Vio=Vesd+Vdio)が生じる。但し、ESD回路210についても、出力回路と同様に、多段縦積み構成されたトランジスタで構成されるため、ESD電流が流れた際に電位差を抑制する能力が低く、ESD回路210で生じる電位差Vesdが
図2の構成よりも大きくなる。
【0043】
この際に、トランジスタ102xでは、ドレイン・ソース間に印加される電位差は、電圧Vioをトランジスタ102x及び102yで分担したものとなるので、
図2でのトランジスタ102と比較すると半分に緩和される。即ち、出力回路を多段縦積み構成とすることで、ESD印加時における各トランジスタのドレイン・ソース間に印加される電位差は緩和される。
【0044】
I/O用のGNDパッド201Gが基準電位を持つ状態で、信号パッド205へESDが印加された場合、電源線PL2は、ESD印加に伴うESD放電経路50には関与しない。従って、電源線PL2には、電源線PL2とI/OGND線GLとの間に電気的に接続されたESD回路211を介して、I/OGND線GLの電位である0[V]が伝達される。このため、ESD印加時に、ゲートスイッチ回路110が、トランジスタ102xのゲートを電源線PL2と電気的に接続すると、トランジスタ102xのドレイン・ゲート間には、信号ノードNioの電圧Vio相当の電位差が印加されることが懸念される。この様に、出力回路を多段縦積み構成としても、I/O信号パッド205と電気的に接続されるドレインを有するトランジスタでは、ESD印加時にドレイン・ゲート間に印加される電位差は緩和されない。即ち、微細加工プロセスの適用により、半導体装置10ではトランジスタ102xのゲート酸化膜の破壊リスクが増大してしまうことが理解される。
【0045】
<実施形態1に係る静電保護機構の説明>
図5に示される様に、実施形態1に係る半導体装置10の出力回路は、
図4と同様に構成されており、P型のトランジスタ101x,101yと、N型のトランジスタ102x,102yとを含む。即ち、トランジスタ101x,101y,102x,102yは、電源線PL1及びI/OGND線GLの間に信号ノードNioを介して電気的に直列接続されており、「複数の駆動トランジスタ」の一実施例に対応する。
【0046】
特に、P型のトランジスタ101x,101yは「複数の第1のトランジスタ」に対応し、N型のトランジスタ102x,102yは「複数の第2のトランジスタ」に対応する。又、トランジスタ101x,101y,102x,102yのうちの、信号ノードNioと接続されたドレインを有するトランジスタ101x,102xは「保護対象トランジスタ」の一実施例に対応する。特に、トランジスタ101xは「第1の保護対象トランジスタ」に対応し,トランジスタ102xは「第2の保護対象トランジスタ」に対応する。
【0047】
実施形態1に係る半導体装置10は、I/O用のGNDパッド201と、コア用のGNDパッド201G(以下、単に「コアGNDパッド201G」と表記)と、電源電圧VDD1を供給される電源パッド202と、電源電圧VDD2を供給される電源パッド203とを備える。電源電圧VDD2は、各トランジスタの動作電圧VDDと同等である。例えば、電源電圧VDD1は、電源電圧VDD2の2倍である。コアGNDパッド201Gは、
図1に示した、コアGND用のパッドVGCと等価であり、コア領域20用のコアGND線GLCと電気的に接続される。I/OGND線GLと、コアGND線GLCとは、GND間のノイズ伝搬防止のため、ダイオード107,108を介して電気的に接続される。当該ダイオードは、後述するように静電保護機構としても機能する。
【0048】
電源線PL1は、電源パッド202と電気的に接続されて、電源電圧VDD1を伝達する。電源線PL2は、電源パッド203と電気的に接続されて、電源電圧VDD2を伝達する。
図4と同様に、抵抗素子R1,R2は、電源電圧VDD1を分圧することにより、電源電圧VDD2と同等の参照電圧VREFを生成する。この様に、抵抗素子R1,R2によって「分圧回路」の一実施例を構成することができる。
【0049】
抵抗素子R1,R2による分圧比r(r<1)は、r=VDD2/VDD1で示される(VDD1=2・VDD2のとき、r=0.5)。参照電圧線PLrは、参照電圧VREFを伝達する。
【0050】
P型のトランジスタ101xのゲートは、例えば、I/OGND線GLと電気的に接続されることで、接地電圧GNDに固定される。一方で、N型のトランジスタ102xに対応してゲートスイッチ回路110nが設けられる。ゲートスイッチ回路110nは、トランジスタ102xのゲートに相当するゲートノードNgnの電気的な接続先(以下、単に「ゲート接続先」とも称する)を制御する。具体的には、ゲートスイッチ回路110nは、制御信号SLの電圧レベル(H/L)に応じて、電源線PL2(電源電圧VDD1)、及び、参照電圧線PLr(参照電圧VREF)の一方を選択的に、ゲートノードNgnと電気的に接続する。
【0051】
スイッチ制御回路130は、半導体装置10の動作時に、ゲートスイッチ回路110nを制御するための制御信号SLを生成する。例えば、電源電圧VDD2よりも先に電源電圧VDD1が供給される電源起動シーケンスの下では、半導体装置10の起動時には、参照電圧線PLrをゲートノードNgnと電気的に接続する様に、スイッチ制御回路130は、制御信号SLを設定する(例えば、Hレベル)。その後、電源電圧VDD2が供給されるタイミング以降では、スイッチ制御回路130は、電源線PL2をゲートノードNgnと電気的に接続する様に、制御信号SLを反転させる(例えば、Lレベル)。以下、本実施の形態において、半導体装置10の動作時は、電源起動シーケンスの実行期間を含んで、電源線(PL1,PL2)に所定の電源電圧が供給されている状態を意味するものとする。
【0052】
実施形態1に係る半導体装置10では、静電保護機構300は、保護ダイオード105,106と、ESD回路210,211と、ダイオード107,108と、N型のトランジスタ115nとを含む。更に、半導体装置10の動作時に用いられるゲートスイッチ回路110は、ESD印加時において上述の様に動作させることで、静電保護機構300の一部要素として機能する。
【0053】
図5は、コアGNDパッド201Gが基準電位を持った状態で、I/O信号パッド205に対して、ESDが印加された場合を示している。即ち、I/O信号パッド205は「信号パッド」の一実施例に対応する。更に、コアGNDパッド201Gは「GNDパッド」の一実施例に対応する。又、電源線PL1及びI/OGND線GLは、「電源線」及び「GND線」の一実施例に対応する。
【0054】
保護ダイオード105及び106は、
図4と同様に、I/O信号パッド205と電気的に接続される信号ノードNioと、電源線PL1及びI/OGND線GLとの間にそれぞれ電気的に接続される。ESD回路210は、
図4と同様に、電源線PL1及びI/OGND線GLの間に電気的に接続される。ESD回路211は、
図4と同様に、I/O用の電源線PL2及びI/OGND線GLの間に配置される。
【0055】
ESD印加時には、保護ダイオード105及びESD回路210が作動することで、半導体装置10の内部には、印加されたESDの放電経路50が形成される。放電経路50では、I/O信号パッド205-保護ダイオード105-電源線PL1-ESD回路210-I/OGND線GL-コアGND線GLC-コアGNDパッド201Gの経路をESD電流Iesdが流れる。ESD電流Iesdにより、信号ノードNio及び電源線PLの間に電位差Vdio1が発生するとともに、電源線PL及びI/OGND線GLの間に電位差Vesdが発生する。
【0056】
ダイオード108は、I/OGND線GL及びコアGND線GLCの間に電気的に介挿接続される。ダイオード107は、ダイオード108と逆並列接続される。ダイオード108は、ESD印加時のESD電流を通過させる様に、カソード側がコアGNDパッド201Gと電気的に接続される。これにより、放電経路50にESD電流が発生すると、ダイオード107,108のアノード及びカソード間において、電位差Vdio2が生じる。
【0057】
この結果、実施形態1に係る半導体装置10のESD印加時には、各部位に
図6に示される電位が生じる。
【0058】
まず、I/OGND線GLの電位は、ESD印加時の基準端子となったコアGNDパッド201Gの基準電位(0[V])に対して、ダイオード108の導通によって生じた電位差Vdio2だけ上昇する。更に、電源線PL1の電位は、I/OGND線GLの電位よりも、ESD回路210の動作に応じて発生する電位差Vesdだけ高くなる。
【0059】
更に、I/O信号パッド205と電気的に接続された信号ノードNioの電位は、電源線PL1の電位に対して、保護ダイオード105の導通によって生じる電位差Vdio1だけ高くなる。
【0060】
これに対して、フローティング状態である電源線PL2の電位は、I/OGND線GLとほぼ同等(Vdio2)となる。これは、ESD回路211を介して、I/OGND線GLの電位であるVdio2が電源線PL2に伝わるためである。一方で、参照電圧線PLrの電位は、ダイオード108の導通によって生じた電位差Vdio2と、電源線PL1及びI/OGND線GLの間の電位差Vesd及び分圧比r(r<1)の積(r・Vesd)との和で示される。
【0061】
トランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1は、ゲート接続先によって変化する。具体的には、ESD印加時において、ゲートノードNgnが電源線PL2と電気的に接続されると、Vstd1は、信号ノードNio及びI/O用のGNDパッド201の間の電位差と同等になる(Vstd1=Vdio1+Vesd)。これに対して、Vstd1は、ゲートノードNgnが参照電圧線PLrと電気的に接続されると、Vstd1=Vdio1+(1-r)・Vesdとなり、電源線PL2に接続された場合に比べてr・Vesdだけ低下する。
【0062】
再び、
図5を参照して、トランジスタ115nは、制御信号SLの伝送ノードと電気的に接続されるドレインと、ダイオード108のカソードと電気的に接続されるソースとを有する。トランジスタ115nのゲートは、ダイオード108のアノードと電気的に接続される。トランジスタ115n及びダイオード107,108は、ダイオード108で生じる電位差Vio2が、トランジスタ115nの閾値電圧Vthより大きくなるように設計される。
【0063】
これにより、放電経路50にESD電流が発生すると、ダイオード108の導通に連動してトランジスタ115nがオンすることによって、制御信号SLを強制的にLレベルに設定することができる。即ち、ダイオード108は「電流検知ダイオード」の一実施例に対応し、トランジスタ115nは「制御トランジスタ」の一実施例に対応する。ゲートスイッチ回路110nは、制御信号SLがLレベルのときに、トランジスタ102xのゲートを参照電圧線PLrと電気的に接続する様に構成される。
【0064】
図7には、実施形態1に係る半導体装置の静電保護機構300の動作特性図が示される。
図7の縦軸は、ESD電流Iesdの大きさが示され、横軸には、トランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1が示される。
【0065】
ESD印加時において、ゲートノードNgnが電源線PL2と電気的に接続されたときのVstd1-Iesdの間の関係は、点線で表記された特性線CL1で示される。一方で、ゲートノードNgnが参照電圧線PLrと電気的に接続されたときのVstd1-Iesdの間の関係は、実線で表記された特性線CL2で示される。
【0066】
図6で説明した様に、ESD電流Iesdが生じる領域において、特性線CL1では、Vstd1=Vesd+Vdio1となる一方で、特性線CL2では、Vstd1=r・Vesd+Vdio1となる(r<0)。従って、特性線CL1及びCL2の間では、同一のESD電流Iesdに対して、電位差Vstd1は、ESD電流による電圧降下量である電位差Vesdのr倍(r・Vesd)だけ低減されることが理解される。
【0067】
この様に、実施形態1に係る半導体装置10では、ESD印加時における多段縦積み構成の出力回路内のN型のトランジスタ102x(保護対象トランジスタ)のゲート接続先を、ゲートスイッチ回路110nによって適切に制御することができる。これにより、N型のトランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1を安定的に低減することができるので、ESD印加時におけるトランジスタ102xの破壊を抑制することができる。
【0068】
更に、ESD印加時におけるゲートスイッチ回路110nの制御信号SL(Lレベル)を、ESD電流の発生に応じた、ダイオード108及びトランジスタ115nの導通によって発生することができる。これにより、ESD印加時において、制御信号SLを半導体装置10の外部から入力するための構成を新たに設けることなく、トランジスタ102xでの電位差Vstd1を低減することができる。
【0069】
[実施形態2]
実施形態2では、半導体装置10の出力回路を構成するP型のトランジスタに対しても、実施形態1と同様に、ESD印加時におけるゲート・ドレイン間に印加される電位差を低減するための静電保護構成を説明する。
【0070】
図8に示される様に、実施形態2に係る半導体装置10の静電保護機構301は、実施形態1に係る静電保護機構300(
図5)と比較して、ゲートスイッチ回路110pを更に含む。ゲートスイッチ回路110pは、信号ノードNioと電気的に接続されたドレインを有するP型のトランジスタ101xに設けられる。
【0071】
ゲートスイッチ回路110pは、トランジスタ101xのゲートと電気的に接続されたゲートノードNgpと、I/OGND線GL及び参照電圧線PLrpとの間に電気的に接続される。ゲートスイッチ回路110pは、ゲートスイッチ回路110nと共通の制御信号SLの電圧レベル(H/L)に応じて、ゲート接続先を切り替える。
【0072】
ゲートスイッチ回路110pは、制御信号SLがHレベルのときには、ゲートノードNgpをI/OGND線GL(接地電圧GND)と電気的に接続する様に構成される。これにより、半導体装置10の動作時には、トランジスタ101xをオンに固定することができる。ゲートスイッチ回路110pは、N型のトランジスタ102xに設けられるゲートスイッチ回路110nとは異なり、ESD印加用に追加配置される。
【0073】
これに対して、実施形態1で説明した様にESD電流の発生に応じて制御信号SLが強制的にLレベルに設定されるときには、ゲートノードNgpを参照電圧線PLrpと電気的に接続する様に構成される。参照電圧線PLrpには、電源線PL1の電源電圧VDD1を抵抗素子R3,R4で分圧した参照電圧VREFpが伝達される。即ち、抵抗素子R3,R4によって「分圧回路」の一実施例を構成することができる。
図8中のこれ以外の構成は、
図5と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
【0074】
半導体装置10の出力回路を構成する複数のP型のトランジスタのうちのトランジスタ101xのドレインは、I/O信号パッド205と電気的に接続された信号ノードNioと接続される。従って、ゲートノードNgpがI/OGND線GLと電気的に接続された状態でESDが印加されると、トランジスタ101xのゲート・ドレイン間には、トランジスタ102xと同等の電位差(Vdio1+Vesd)が印加されてしまう。
【0075】
これに対して、ESD印加時において、ゲートノードNgpを参照電圧線PLrpと電気的に接続することで、P型のトランジスタ101xのゲート・ドレイン間の電位差を、実施形態1でのトランジスタ102xと同様に低減することができる。更に、ゲートスイッチ回路110pの動作を上述の様に制御することで、ESD電流の発生に応じて強制的にLレベル(GND)に設定される制御信号SLを、ゲートスイッチ回路110n及び110pで共有することができる。
【0076】
この様に、実施形態2に係る半導体装置では、多段縦積み構成の出力回路内のP型のトランジスタ101xに対して、ESD印加用にゲートスイッチ回路110pが追加配置される。そして、ゲートスイッチ回路110pによって、ESD印加時のトランジスタ101xのゲート接続先を適切に制御して、トランジスタ101xのゲート・ドレイン間に印加される電位差を安定的に低減することができる。これにより、ESD印加時におけるトランジスタ101xの破壊を抑制することができる。
【0077】
又、参照電圧VREFpは、参照電圧VREFと同等であってもよい。この場合には、ゲートスイッチ回路110pは、制御信号SLがLレベルのときに、実施形態1での参照電圧線PLrと、ゲートノードNgpとを電気的に接続するように構成される。そして、
図8に示された抵抗素子R3,R4及び参照電圧線PLrpの配置は省略することができる。
【0078】
[実施形態3]
実施形態3では、実施形態1又は2に係る静電保護機構の、複数の出力回路に対する配置レイアウトの例を説明する。
【0079】
図9は、実施形態3に係る半導体装置10のI/O回路のレイアウトの一例を説明する概念図である。
【0080】
図9に示される様に、半導体装置10の外周領域の少なくとも一部を用いて、複数のI/Oブロック15が設けられる。
図9の例では、4個のI/Oブロック15a~15dが設けられる構成例が示されるが、I/Oブロック15の個数は任意である。又、I/Oブロック15間の領域17x~17zには、アナログ回路ブロックを配置することができる。
【0081】
各I/Oブロック15には、I/O信号パッド205が複数個ずつ設けられる。更に、各I/O信号パッド205に対応して、当該I/O信号パッドにデジタル信号(Hレベル/Lレベル)を入出力するためのI/O回路が配置される。当該I/O回路は、実施形態1及び2で説明した、トランジスタ101x,101y,102x,102yによって構成される出力回路を含む。
【0082】
スイッチ制御回路130は、複数のI/Oブロック15a~15dの間で共有される。即ち、各I/Oブロック15において、ゲートスイッチ回路110n,110pは、共通の制御信号SLによって制御される。制御信号SLは、偶数個のインバータ16によって構成されたリピータによる増幅を伴って、スイッチ制御回路130から離れたI/Oブロック15へ伝送されてもよい。
【0083】
図10には、各I/Oブロック15での静電保護機構の配置レイアウトの一例が示される。
【0084】
図10に示される様に、1個のI/Oブロック15には、N個(N:2以上の整数)の回路ブロック150と、M個(M:自然数)の回路ブロック160が配置される。
【0085】
回路ブロック150には、上述のI/O回路に相当する構成が更に配置される。このため、回路ブロック150には、実施形態1及び2で説明した構成のうち、I/O信号パッド205と、出力回路を構成するトランジスタ101x,101y,102x,102yと、保護ダイオード105,106とが配置される。
【0086】
回路ブロック160は、異なる電源電圧のレベル毎に配置される。
図10の例では、電源電圧VDD1及びVDD2の2種類が半導体装置10に供給されるので、M=2であり、2個の回路ブロック160が配置される。2個の回路ブロック160には、電源線PL1(電源電圧VDD1)及びI/OGND線GLの間に電気的に接続されるESD回路210、及び、電源線PL2(電源電圧VDD2)及びI/OGND線GLの間に電気的に接続されるESD回路211がそれぞれ配置される。回路ブロック160は、
図1に示された、I/O用の電源セル200に対応する。
【0087】
更に、各回路ブロック160には、I/OGND線GLからコアGND線GLCへESD電流を通過させるダイオード108と、ダイオード108と逆並列接続されるダイオード107とが配置される。
【0088】
回路ブロック170は、1つのI/Oブロック15に1個配置される。回路ブロック170には、ゲートスイッチ回路110p,110n及びトランジスタ115nが配置される。即ち、ゲートスイッチ回路110p,110n及びトランジスタ115nは、同じI/Oブロック15内のN個の回路ブロック150間で共有される。即ち、各回路ブロック150は「入出力回路」の一実施例に対応し、回路ブロック170を共有するN個の回路ブロック150は「複数個の回路ブロック」の一実施例に対応する。
【0089】
ゲートスイッチ回路110p,110nの制御信号SLは、上述の様に、複数のI/Oブロック15a~15dの間で共通である。従って、各I/Oブロック15において、M個の回路ブロック150中のトランジスタ102xのゲートと電気的に接続されるゲートノードNgnについても、複数のI/Oブロック15a~15dの間で共通化される。同様に、M個の回路ブロック150中のトランジスタ101xのゲートと電気的に接続されるゲートノードNgpについても、複数のI/Oブロック15a~15dの間で共通化される。
【0090】
この様に、ESD印加時におけるトランジスタ101x,102xのゲート・ドレイン間電位差を低減するための要素によって構成される回路ブロック170は、各I/Oブロック15に1個配置するだけでよい。即ち、ゲートスイッチ回路110p,110n及びトランジスタ115nは、複数(N個)のI/O信号パッド205毎に配置が必要となるN個の回路ブロック150の間で共有することができる。又、ESD電流の発生に応じて制御信号SLの発生ノードをコアGNDパッド201Gと電気的に接続するためのトランジスタ115nは、比較的小さいトランジスタサイズで構成することができる。例えば、トランジスタ115nは、ゲート幅が数(μm)~十数(μm)程度で構成することができる。
【0091】
この様に、実施形態3に係る半導体装置の配置レイアウトによれば、実施形態1及び2で説明した、ESD印加時のトランジスタ101x,102xの破壊を抑制するために追加配置される回路要素の占有面積を抑制することができる。
【0092】
[実施形態4]
実施形態4では、ESD電流の発生に応じたゲートスイッチ回路の制御信号の強制的な設定の変形例を説明する。
【0093】
図11に示される様に、実施形態4に係る半導体装置の静電保護機構302は、実施形態1に係る静電保護機構300(
図5)と比較して、N型のトランジスタ115nに代えて、P型のトランジスタ115pを含む点で異なる。
【0094】
トランジスタ115pは、制御信号SLの伝送ノードと電気的に接続されるドレインと、参照電圧線PLr(参照電圧VREF)と電気的に接続されるソースとを有する。トランジスタ115pのゲートは、電源線PL2と電気的に接続される。
図8中のこれ以外の構成は、
図5と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
【0095】
図5及び
図6で説明した様に、コアGNDパッド201Gを基準端子に設定して信号パッド205にESD印加した場合には、電源線PL2は、フローティング状態であるため、I/OGND線GLの電位がESD回路211(
図4)を介して伝わることにより、その電位はVdio2になる。一方で、ESD電流Iesdの発生に応じて、ダイオード108が導通するとともに、参照電圧線PLrの電位がVdio2+r・Vesdに上昇する。これに応じて、トランジスタ115pが、ソースに対してゲートが低電位になることでオン状態となることにより、制御信号SLが、強制的にHレベル(Vdio2+r・Vesd)に設定される。即ち、実施形態4では、トランジスタ115pが「制御トランジスタ」の一実施例に対応する。即ち、トランジスタ115pからゲートスイッチ回路110nには、トランジスタ101x,101,102x,102yの動作電圧である電源電圧VDDと同等以上の電圧(Hレベル)が伝達される。
【0096】
従って、実施形態4では、ゲートスイッチ回路110nは、実施形態1とは反対に、制御信号SLがHレベルのときに、トランジスタ102xのゲートを参照電圧線PLrと電気的に接続する様に構成される。又、ゲートスイッチ回路110nは、実施形態1とは反対に、制御信号SLがLレベルのときに、トランジスタ102xのゲートを電源線PL2と電気的に接続する様に構成される。
【0097】
半導体装置10の動作時には、電源線PL2には電源電圧VDD2が供給されるとともに、参照電圧線PLrにも電源電圧VDD2相当の参照電圧VREFが供給される。従って、トランジスタ115pは、ゲート及びソースがほぼ同電位となるのでオフ状態となる。これにより、ゲートスイッチ回路110nは、スイッチ制御回路130からの制御信号SLに従って、トランジスタ102xのゲート接続先を切り替える。実施形態4では、スイッチ制御回路130についても、ゲートノードNgnを電源線PL2に電気的に接続すべき期間では制御信号SLをLレベルに設定する様に構成される。反対に、スイッチ制御回路130は、ゲートノードNgnを参照電圧線PLrに電気的に接続すべき期間では制御信号SLをHレベルに設定する。
【0098】
この様に、実施形態4に係る半導体装置では、P型のトランジスタを用いて、ESD電流の発生に応じてゲートスイッチ回路110nの制御信号SLの電圧レベルを強制的に設定することで、実施形態1と同様の効果を奏することができる。即ち、ESD印加時のトランジスタ102xのゲート接続先を適切に制御して、ESD印加時におけるトランジスタ102xの破壊を抑制することができる。
【0099】
尚、
図11の構成において、
図8に示されたゲートスイッチ回路110pを更に配置して、実施形態4を実施形態2と組み合わせることも可能である。この場合には、ゲートスイッチ回路110pについても、実施形態2とは反対に、制御信号SLがHレベルのときに、ゲートノードNgpを参照電圧線PLrp又はPLrと電気的に接続する様に構成される。即ち、ゲートスイッチ回路110pは、実施形態2及び4を組み合わせる場合には、制御信号SLがLレベルのときに、ゲートノードNgpをI/OGNDGLと電気的に接続する様に構成される。
【0100】
又、実施形態4、又は、実施形態2及び4の組み合わせに対して、実施形態3の配置レイアウトを適用することも可能である。この場合には、
図10の回路ブロック170において、N型のトランジスタ115nに代えて、P型のトランジスタ115pを配置することができる。
【0101】
[実施形態5]
実施形態5では、電源電圧が1種類の半導体装置における多段縦積み構成の出力回路の静電保護機構について説明する。
【0102】
図12に示される様に、実施形態5に係る半導体装置10において、出力回路は、実施形態1(
図5)と同様の、P型のトランジスタ101x,101y及びN型のトランジスタ102x,102yを含む。
【0103】
実施形態4に係る半導体装置の静電保護機構303は、実施形態1(
図5)と同様に配置された、保護ダイオード105,106,ESD回路210、N型のトランジスタ115n、及び、ダイオード107,108を含む。
【0104】
一方で、実施形態4に係る半導体装置では、電源線PL1には、トランジスタ101x、101y、102x、102yの動作電圧VDD(例えば、1.8[V])相当の電源電圧VDD1が、電源パッド202を介して供給される。従って、信号ノードNioと電気的に接続されたドレインを有するN型のトランジスタ102xは、ゲート(ゲートノードNgn)を電源線PL1と電気的に接続することで、オン状態に固定される。
【0105】
更に、静電保護機構303は、インバータ117によって構成されるゲートスイッチ回路110pを有する。ゲートスイッチ回路110p(インバータ117)は、信号ノードNioと電気的に接続されたドレインを有するP型のトランジスタ101xのゲート接続先を、電源線PL1及びI/OGND線GLの間で切替える。
【0106】
インバータ117の入力ノードNcntは、トランジスタ115nのドレインと電気的に接続されるとともに、プルアップ抵抗Rplを介して電源線PL1と電気的に接続される。トランジスタ115nは、実施形態1(
図5)と同様に、ESD電流の発生によるダイオード108の導通に連動してオンする。
【0107】
半導体装置の動作時を含む、ESD印加時以外では、トランジスタ115nがオフされるので、インバータ117には、Hレベル(電源電圧VDD1)の電圧が入力される。従って、インバータ117は、ゲートノードNgpをI/OGND線GLと電気的に接続する。これにより、P型のトランジスタ101xは、オン状態に固定される。
【0108】
これに対して、コアGNDパッド201Gが基準電位を持った状態でのESD印加時には、放電経路50をESD電流が流れるのに応じて、トランジスタ115nのオンにより、インバータ117には、Lレベル(接地電圧GND)の電圧が入力される。これにより、インバータ117は、ゲートノードNgpを電源線PL1と電気的に接続する。この様に、実施形態4の静電保護機構303では、ESD印加時において、P型のトランジスタ101xのゲート接続先が、I/OGND線GLから電源線PL1に切り替えられる。
【0109】
又、コアGNDパッド201Gが基準電位を持った状態でのESD印加時には、ESD電流の放電経路50において、実施形態1(
図5)と同様の電位差Vdio2、Vesd、及び、Vdioが発生する。この結果、実施形態5に係る半導体装置10のESD印加時には、各部位に
図13に示される電位が生じる。
【0110】
図13に示される様に、I/OGND線GLの電位は、コアGNDパッド201Gの基準電位(0[V])に対して、ダイオード108の導通によって生じた電位差Vdio2だけ上昇する。更に、電源線PL1の電位は、I/OGND線GLの電位よりも、ESD回路210の動作に応じて発生する電位差Vesdだけ高くなる。
【0111】
更に、トランジスタ101xのドレインと電気的に接続された信号ノードNio(I/O信号パッド205)の電位は、電源線PL1の電位に対して、保護ダイオード105の導通によって生じる電位差Vdio1だけ高くなる。
【0112】
従って、仮に、ESD印加時において、ゲートノードNgpがI/OGND線GLに電気的に接続されたままだと、ESD電流の発生時に、トランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1は、(Vesd+Vdio1)となる。
【0113】
これに対して、インバータ117によってゲートノードNgpが電源線PL1と電気的に接続されることにより、ESD電流の発生時に、トランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1は、Vdio1に低減される。
【0114】
図14には、実施形態5に係る半導体装置の静電保護機構303の動作特性図が示される。
図14の縦軸及び横軸には、
図7と同様に、ESD電流Iesdの大きさ、及び、トランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1がそれぞれ示される。
【0115】
ESD印加時において、ゲートノードNgpがI/OGND線GLと電気的に接続されたときのVstd1-Iesdの間の関係は、点線で表記された特性線CL3で示される。一方で、ゲートノードNgnが電源線PL1と電気的に接続されたときのVstd1-Iesdの間の関係は、実線で表記された特性線CL4で示される。
【0116】
図13で説明した様に、ESD電流Iesdが生じる領域において、特性線CL3では、Vstd1=Vesd+Vdio1となる一方で、特性線CL4では、Vstd1=Vesdとなる。従って、特性線CL3及びCL4の間では、同一のESD電流Iesdに対して、電位差Vstd1は、ESD電流による電圧降下量である電位差Vesdだけ低減されることが理解される。
【0117】
この様に、実施形態4に係る半導体装置10では、ESD印加用のゲートスイッチ回路110pを配置することにより、ESD印加時の多段縦積み構成の出力回路内のP型のトランジスタ101xのゲート接続先を制御することができる。これにより、P型のトランジスタ101xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1を安定的に低減することができるので、ESD印加時におけるトランジスタ101xの破壊を抑制することができる。
【0118】
又、実施形態5に対して、実施形態3の配置レイアウトを適用することも可能である。この場合には、
図10の回路ブロック170において、ゲートスイッチ回路110pとして、
図12に示したインバータ117が配置されるとともに、ゲートスイッチ回路110nの配置は省略される。
【0119】
[実施形態6]
実施形態6では、実施形態1~4でのゲートスイッチ回路110nによるゲート接続先の変形例を説明する。
【0120】
図15に示される様に、実施形態6に係る半導体装置の静電保護機構304は、実施形態1に係る静電保護機構300(
図5)と比較して、ゲートスイッチ回路110nに代えて、ゲートスイッチ回路111nを含む点で異なる。
【0121】
ゲートスイッチ回路111nは、制御信号SLに応じたゲートスイッチ回路110nの機能に加えて、ESD制御信号SLesdに応じて、ゲートノードNgnを信号ノードNio(I/O信号パッド205)と電気的に接続する機能を更に有する。
【0122】
ESD制御信号SLesdは、放電経路50におけるESD電流の発生によりトランジスタ115nがオンするのに応じて、ゲートスイッチ回路111nに入力される。即ち、ESD制御信号SLesdがLレベル(接地電圧GND)に設定されると、ゲートスイッチ回路111nは、ゲートノードNgnを信号ノードNioと電気的に接続する。一方で、トランジスタ115nのオフ時には、ESD制御信号SLesdは、プルアップ抵抗Rplによって、Hレベル(電源電圧VDD2)に固定される。
【0123】
ゲートスイッチ回路111nは、ESD制御信号SLesdがHレベルに設定されると、ゲートスイッチ回路110nと同様に、スイッチ制御回路130からの制御信号SLに応じて、電源線PL1及び参照電圧線PLrの一方を選択的に、ゲートノードNgnと電気的に接続する。これにより、半導体装置10の動作時において、トランジスタ102xをオン状態に固定することができる。
【0124】
図15中のこれ以外の構成は、
図5と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。即ち、実施形態6に係る静電保護機構304においても、保護ダイオード105,106,ESD回路210、N型のトランジスタ115n、及び、ダイオード107,108は、実施形態1(
図5)と同様に配置される。
【0125】
従って、ESD印加時には、ESD電流の放電経路50において、実施形態1(
図5)と同様の電位差Vdio2、Vesd、及び、Vdioが発生する。この結果、実施形態6に係る半導体装置10のESD印加時には、各部位に
図16に示される電位が生じる。
【0126】
まず、I/OGND線GLの電位は、ESD印加時に基準となったコアGNDパッド201Gの基準電位(0[V])に対して、ダイオード108の導通によって生じた電位差Vdio2だけ上昇する。更に、電源線PL1の電位は、I/OGND線GLの電位よりも、ESD回路210の動作に応じて発生する電位差Vesdだけ高くなる。
【0127】
更に、トランジスタ101xのドレインと電気的に接続された信号ノードNio(I/O信号パッド205)の電位は、電源線PL1の電位に対して、保護ダイオード105の導通によって生じる電位差Vdio1だけ高くなる(Vesd+Vdio1+Vdio2)。
【0128】
一方で、ゲートノードNgnは、ゲートスイッチ回路111nによって信号ノードNioと電気的に接続されるため、信号ノードNioと同電位となる。この結果、トランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1=0とすることができる。
【0129】
図17には、実施形態6に係る半導体装置の静電保護機構304の動作特性図が示される。
図17の縦軸及び横軸には、
図7と同様に、ESD電流Iesdの大きさ、及び、トランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1がそれぞれ示される。
【0130】
ESD印加時において、ゲートノードNgpが、ESD電流の経路外の電源線PL2と電気的に接続されたときのVstd1-Iesdの間の関係は、
図7と同様の特性線CL1(点線)で示される。一方で、ゲートノードNgnが信号ノードNio(I/O信号パッド205)と電気的に接続されたときのVstd1-Iesdの間の関係は、実線で表記された特性線CL5で示される。
【0131】
ESD電流Iesdが生じる領域において、特性線CL1では、実施形態1で説明した様に、Vstd1=Vesd+Vdio1となる一方で、特性線CL5では、Vstd1=0となる。
【0132】
この様に、実施形態6に係る半導体装置10では、ゲートスイッチ回路111nの配置により、ESD印加時のゲート接続先を信号ノードNioに制御することができる。これにより、多段縦積み構成を有する出力回路内のトランジスタ102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差Vstd1を安定的に低減することができるので、ESD印加時におけるトランジスタ102xの破壊を抑制することができる。
【0133】
尚、実施形態6において、ゲートスイッチ回路111nによる信号ノードNio及びゲートノードNgnの接続経路に、抵抗素子又はダイオードを介挿接続することも可能である。この場合には、当該ダイオードは、アノードが信号ノードNioと電気的に接続されるように配置される。即ち、信号ノードNio、又は、抵抗素子或いは導通状態のダイオードを介して信号ノードNioと結合されるノードが、ESD印加時におけるゲート接続先とされる。
【0134】
又、実施形態6に対して、実施形態2を組み合わせることも可能である。即ち、ESD印加時にゲートノードNgpを信号ノードNioと電気的に接続するためのゲートスイッチ回路111p(図示せず)を
図15の構成に追加配置することも可能である。
【0135】
或いは、実施形態4と同様に、N型のトランジスタ115nに代えて、
図11と同様のP型のトランジスタ115pを配置して、ESD制御信号SLesdを発生することも可能である。この場合には、ゲートスイッチ回路111n及び111pは、ESD制御信号SLesdがHレベル(電源電圧VDD2)のときに、ゲートノードNgn,Ngpを信号ノードNioと電気的に接続する様に構成される。更に、
図15のプルアップ抵抗Rplに代えて、トランジスタ115pのオフ時にESD制御信号SLesdをLレベルに固定するためのプルダウン抵抗(図示せず)が配置される。
【0136】
又、実施形態6に係る半導体装置に対して、実施形態3の配置レイアウトを適用することも可能である。この場合には、
図10の回路ブロック170において、ゲートスイッチ回路111n,111p、及び、プルアップ抵抗Rpl(又は、プルダウン抵抗)を配置することができる。
【0137】
以上で説明した本実施の形態に係る半導体装置の静電保護機構の包括的な概念は、
図18に示された回路図によって示される。
【0138】
図18に示される様に、本実施の形態に係る半導体装置の静電保護機構は、保護ダイオード105,106と、ESD回路210と、ESD印加時に保護対象トランジスタのゲート接続先を制御するゲートスイッチ回路110と、ゲートスイッチ回路110を制御するスイッチ制御機構120とを備えることが理解される。
【0139】
ゲートスイッチ回路110は、実施形態1~6で説明したゲートスイッチ回路110n,110p,111n,111pを包括するものである。ゲートスイッチ回路110は、半導体装置の出力回路を構成する複数のトランジスタのうちの、I/O信号パッド205(信号ノードNio)と電気的に接続されたドレインを有するトランジスタ101x及び102xの少なくとも一方に対応して設けられる。
【0140】
図18では、トランジスタ102xのみに対してゲートスイッチ回路110が配置された構成が一例として示されている。或いは、
図18とは異なり、トランジスタ101xのみに対して、又は、トランジスタ101x及び102xの各々に対して、ゲートスイッチ回路110が配置された構成とすることも可能である。尚、上述した様に、N型のトランジスタ101xに対しては半導体装置10の動作時にゲートスイッチ回路110が用いられるので、ESD印加時のためにゲートスイッチ回路110を追加配置する必要は無い。
【0141】
ゲートスイッチ回路110は、ゲートノードNgn又はNgpを、第1のノードNP1と電気的に接続することで、ESD印加時にトランジスタ101x又は102xのゲート・ドレイン間に印加される電位差を低減する。第1のノードNP1は、実施形態1~4における参照電圧線PLr,PLrp、実施形態5における電源線PL1,及び、実施形態6における、信号ノードNio、又は、抵抗素子又は導通状態のダイオードを介して信号ノードNioと結合されるノードを含む。即ち、第1のノードNP1は、放電経路50におけるESD電流の発生に応じてI/OGND線GLよりも高電位となるノードを包括的に示すものである。
【0142】
実施形態1~6では、微細化されたトランジスタに好適な多段縦積み構成の出力回路を構成する複数のトランジスタに対する静電保護機構を説明した。このため、ゲートスイッチ回路110は、半導体装置の動作時には、ゲートノードNgn(Ngp)を、トランジスタ101x.102xをオン状態とするためのゲート電圧を供給する第2のノードNP2と電気的に接続する。第2のノードNP2は、トランジスタ102xに対する電源線PL2(実施形態1~4)、及び、トランジスタ101xに対するI/OGND線GL(実施形態2,5)を含む。上述の様に、電源線PL2は、トランジスタ101x,101y,102x,102yの動作電圧VDDを供給する。これまでの説明より、第2のノードNP2は、必ずしも、ESD電流の経路(放電経路50)には含まれないことが理解される。
【0143】
スイッチ制御機構120は、N型のトランジスタ115n(
図5等)、又は、P型のトランジスタ115p(
図11)と、ダイオード108とによって構成することができる。尚、スイッチ制御機構120については、ゲートスイッチ回路110(110n,110p,111n,111p)を実施の形態1~6で説明したのと同様に制御可能であれば、例示した構成に限定されず、任意の構成を採用することができる。この様に構成することで、ESD印加時において、半導体装置10の外部から信号を入力することなく、ゲートスイッチ回路110を制御することができる。
【0144】
以上、本実施の形態では、2個ずつのP型及びN型のトランジスタ(駆動トランジスタ)の直列接続によって構成された出力回路に対する静電保護機構の適用を説明した。但し、本実施の形態に係る静電保護機構は、3個以上ずつのP型及びN型のトランジスタ(駆動トランジスタ)の直列接続によって構成された出力回路に対しても適用可能である。この様な構成においても、信号ノードNioと接続されたドレインを有するトランジスタ(保護対象トランジスタ)において、ESD印加時にドレイン・ゲート間の電位差が最大となる。従って、少なくとも、当該保護トランジスタの一部又は全部に対して、ゲートスイッチ回路110を配置することで、ESD印加時におけるトランジスタの破壊を抑制することができる。
【0145】
更に、本実施の形態に係る半導体装置の静電保護機構は、1個ずつのP型及びN型のトランジスタによって構成された、単段構成の出力回路を有する半導体装置にも適用することができる。
【0146】
図19に示される様に、単段構成の出力回路は、
図2と同様の、P型のトランジスタ101及びN型のトランジスタ102を含む。即ち、
図19の変形例では、トランジスタ101及び102は「複数の駆動トランジスタ」の一実施例に対応する。特に、P型のトランジスタ101は「第1のトランジスタ」及び「保護対象トランジスタ」に対応する。同様に、N型のトランジスタ102は、「第2のトランジスタ」及び「保護対象トランジスタ」に対応する。
【0147】
図19の変形例においても、本実施の形態に係る半導体装置の静電保護機構は、保護ダイオード105,106と、ESD回路210と、ESD印加時に保護対象トランジスタのゲート接続先を制御するゲートスイッチ回路110と、
図18と同様のスイッチ制御機構120とを備える。
【0148】
図19の変形例では、トランジスタ101及び102の各々は、I/O信号パッド205(信号ノードNio)と電気的に接続されたドレインを有する。従って、ゲートスイッチ回路110は、トランジスタ101及び102の少なくとも一方に対応して設けられる。
図19においても、トランジスタ102のみに対してゲートスイッチ回路110が配置された構成が一例として示される。或いは、トランジスタ101のみ、又は、トランジスタ101及び102の各々に対して、ゲートスイッチ回路110が配置されてもよい。
【0149】
ゲートスイッチ回路110は、ゲートノードNgn又はNgpを、第1のノードNP1と電気的に接続することで、ESD印加時にトランジスタ101又は102のゲート・ドレイン間に印加される電位差を低減する。
図19の変形例では、第1のノードNP1は、電源線PL1(実施形態4)、及び、実施形態6における、信号ノードNio、又は、抵抗素子又は導通状態のダイオードを介して信号ノードNioと結合されるノードを含む。
【0150】
一方で、
図19のゲートスイッチ回路110は、半導体装置の動作時を含むESD印加時以外では、ゲートノードNgn(Ngp)を、出力バッファ21(
図1)の出力ノードと電気的に接続する様に制御される。これにより、半導体装置10の動作時には、出力バッファ21の出力信号に応じて、Hレベルの電圧、及び、Lレベルの電圧の一方を選択的に、I/O信号パッド205に出力することができる。
【0151】
出力バッファ21の出力ノードは、通常、ESD電流の経路(放電経路50)には含まれない。このため、ゲートスイッチ回路110によってESD印加時のゲートノードNgn(Ngp)の出力先を制御することで、ESD印加時に、トランジスタ101又は102のゲート・ドレイン間に印加される電位差を低減することができる。これにより、単段構成の出力回路に構成するトランジスタ101,102についても、本実施の形態に係る静電保護機構の適用により、ESD印加時における破壊を抑制することができる。
【0152】
以上で説明した複数の実施形態について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不整合や矛盾が生じない範囲内で、各実施形態で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている点についても、確認的に記載する。
【0153】
以上、本開示を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本開示は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0154】
10 半導体装置、15,15a~15d I/Oブロック、16 リピータ、17x~17z 領域、20 コア領域、21 出力バッファ、30 I/O領域、50 放電経路、100 I/Oセル、101,101x,101y,102,102x,102y トランジスタ(駆動トランジスタ)、 115n,115p トランジスタ(制御トランジスタ)、105,106 保護ダイオード、107,108 ダイオード、110,110n,110p,111n,111p ゲートスイッチ回路、117 インバータ、120 スイッチ制御機構、130 スイッチ制御回路、150,160,170 回路ブロック、200,200G 電源セル(I/O用)、201 GNDパッド(I/O用)、201G GNDパッド(コア用)、202,203 電源パッド、205 信号パッド、206,206G 電源セル(コア用)、210,211 ESD回路、300~304 静電保護機構、GL I/OGND線、GLC コアGND線、Ngn,Ngp ゲートノード、Nio 信号ノード、PL,PL1,PL2 電源線(I/O用)、PLC 電源線(コア用)、PLr,PLrp 参照電圧線、R1~R4 抵抗素子、Rpl プルアップ抵抗、SL,SLesd 制御信号(ゲートスイッチ回路)、VDD1,VDD2 電源電圧、VP,VPC パッド(電源電圧)、VG,VGC パッド(GND)、VREF,VREFp 参照電圧。