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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】ガラスの溶解方法および溶解装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/16 20060101AFI20250305BHJP
   C03B 5/027 20060101ALI20250305BHJP
【FI】
C03B5/16
C03B5/027
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022552824
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2021051118
(87)【国際公開番号】W WO2021175506
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】102020106051.3
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー オームシュテーデ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ヴァイトマン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデガルド レーマー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター フランケ
(72)【発明者】
【氏名】フランク-トーマス レンテス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング シュミートバウアー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー エルヴィン アイヒホルツ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0295734(US,A1)
【文献】特開昭55-079036(JP,A)
【文献】特開昭59-195540(JP,A)
【文献】特開平02-112798(JP,A)
【文献】特開昭60-150829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/16
C03B 5/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスの溶解方法であって、
バッチをガラスメルトに変換するために、溶融に供給されるエネルギーの少なくとも一部にマイクロ波線を使用し、
前記使用されるマイクロ波線が、バッチと初期メルトとの間の移行部の少なくとも一部に作用し、前記マイクロ波線を、バッチ山の直下の上方領域に取り込み、マイクロ波線を使用しないがそれ以外は同一である方法に対して、バッチ山の直下の上方領域温度を高めて融解を促進し、前記ガラスメルトに供給されるバッチ充填物としてのバッチが、前記ガラスメルト上に載っているまとまったバッチ山を形成しており、局所的な過熱を避けるために、ガラスメルトに対してマイクロ波線に関する電力制御も供給され、浸透深さが低減され、電力が数ミリメートルの溶解反応ゾーンの深さで吸収され、マイクロ波線エネルギーの90%超が厚さ4mm内で吸収され、ガラスメルトの加熱用のエネルギーとして供給される、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ガラスメルトの表面が前記マイクロ波線の領域で完全に覆われるように、前記バッチ山が前記ガラスメルトを面状に覆っているか、または
前記バッチ山のうち前記ガラスメルトを覆っている部分が、前記マイクロ波線を入射させる領域を超えて前記ガラスメルトの前記表面上に延在している、請求項記載の方法。
【請求項3】
マイクロ波線を上部炉方向からマイクロ波放射源により入射させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ガラスメルトへの変換のために前記バッチに供給されるエネルギーの少なくとも10%をマイクロ波線が占める、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
ガラスメルトへの変換のために前記バッチに供給される全エネルギーをマイクロ波線が占める、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
記メルトのオーミック電気加熱に加えて、マイクロ波放射源が配置された上部炉からのマイクロ波エネルギーの入射を行い、前記マイクロ波エネルギーを前記バッチと初期メルトとの間のゾーンに入射させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
COニュートラルなガラスの溶解方法を提供し、前記方法では、溶解ゾーンにおけるエネルギー導入を、電気加熱とマイクロ波入射との組み合わせで行い、溶解に使用される電気エネルギーを、少なくともCO収支がゼロである電流により提供する、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロ波線を、溶融槽のある領域において取り込み、前記領域ではバーナーによる上部炉加熱を行わない、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロ波線の発生を、少なくとも1つのマグネトロンによっておよび/または少なくとも1つの半導体ベースのマイクロ波線発生装置によって行う、請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロ波線の発生の際に、500MHzより高く6GHzより低い、または3GHzより低い、または2.45GHz以下、または915MHz以下の周波数のマイクロ波線を提供する、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
溶融ガラスのスループットが、0.5t/dより多いか、または少なくとも0.5t/dである、請求項1または2記載の方法。
【請求項12】
求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するための、ラスの溶解装置であって、前記装置は、壁部を有する溶融槽を含む溶融ユニットを備え、前記壁部の内部には、溶融すべきバッチに加え、ガラスメルトとしての溶融済みのバッチも収容可能であり、前記バッチおよび前記ガラスメルトの上方には、少なくとも1つのマイクロ波放射源が配置されている、装置。
【請求項13】
前記マイクロ波放射源が、前記溶融ユニットの上部炉に配置されている、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記マイクロ波放射源の前記マイクロ波線が、バッチと初期メルトとの間の溶解反応ゾーンに向けられている、請求項12または13記載の装置。
【請求項15】
前記メルトのオーミック電気加熱のための設備を備える、請求項12または13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つのマイクロ波放射源が、前記溶融槽のうち、バーナーによる上部炉加熱が行われないかまたは上部炉加熱用のバーナーが配置されていない領域に取り込まれる、請求項12または13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
前記マイクロ波線の発生を、少なくとも1つのマグネトロンによっておよび/または少なくとも1つの半導体ベースのマイクロ波線発生装置によって行うことができる、請求項12または13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
前記マイクロ波線の発生の際に、500MHzより高く6GHzより低い、または3GHzより低い、または2.45GHz以下、または915MHz以下の周波数のマイクロ波線が提供される、請求項12または13までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波線を使用して特にバッチをガラスメルトに変換するための、ガラスの溶解方法および溶解装置に関する。
【0002】
工業規模でのガラス溶解槽の加熱は、従来はバーナー方式が一般的であった。その場合、燃焼時にそれぞれ相応するバーナーにおいてガスおよび/または油が使用されることにより、COや、さらには空気を使用する場合にはNOxが排ガスとして排出される。
【0003】
いくつかの先行技術で扱われている技術では、不連続な坩堝溶融が記載されており、マイクロ波加熱が扱われている。
【0004】
国際公開第200200063号には、マイクロ波共振器内の坩堝が記載されている。マイクロ波加熱により、ガラスメルトの化学的均質性を向上させることができる。この場合、化学的均質性は、メルトの体積中のホットスポット(熱的不均一性)に起因し得る。
【0005】
国際公開第199700119号では、冷却されたキャビティ内のメルトが、調整可能なマイクロ波線で加熱される。メルトは、「まとまった」スカル内に存在し、その際、プラズマトーチの使用またはグラファイトの添加によりマイクロ波線の取込みを改善することができる。
【0006】
独国特許出願公開第19541133号明細書には、マイクロ波加熱坩堝内でのリン酸塩ガラスの溶融が記載されているが、マイクロ波線の取込みおよびその特性に関する情報は示されていない。
【0007】
他のいくつかの先行技術では、連続溶融プロセスがマイクロ波補助加熱により実施されている。これらは、例えば以下の刊行物に記載されている。
【0008】
独国特許出願公開第200910025905号明細書では、薄膜溶解によるバッチの溶解を必要とする溶融方法が開示されている。薄膜溶解モジュールは二重壁管からなり、この管は、一変形例ではサセプタを介して外部からマイクロ波線で加熱することができる。低融点の共融混合物や特定の原料調合物の溶解が行われる。マイクロ波とバッチとの直接的な結合は開示されていない。マイクロ波線をサセプタに取り込み、このサセプタによりバッチが加熱される。
【0009】
仏国特許出願公開第19960005084号明細書には、マイクロ波線により加熱されるオーバーフロー式坩堝が記載されている。流出式坩堝やV字型またはU字型の管内で、管内部の定在波を発生させる。定在波の変調によりマイクロ波電力が均一化される。この利点は、大きな体積混合効果により、メルトの均質化が良好であることである。
【0010】
独国特許出願公開第102016205845号明細書には、バッチの予備反応について、特にマイクロ波加熱も開示されている。しかしこれには、特にこの温度域ではマイクロ波線がバッチにごく僅かにしか吸収されず、この場合の加熱性能が非常に非効率的であるという欠点がある。
【0011】
特願昭55-125514には、マイクロ波エネルギーが取り込まれる閉鎖型共振器内の流出式坩堝が記載されている。この文献でも、初期溶融領域への着目については言及されておらず、マイクロ波エネルギーがガラスメルトに取り込まれており、その際、溶融すべき粒状成分が分散配置されている。
【0012】
独国特許出願公開第102016200697号明細書では、様々な方法で加熱可能な、特にマイクロ波でも加熱可能な連続運転槽が特許請求されている。マイクロ波エネルギーの局在化への着目は記載されていない。
【0013】
中国実用新案第204224428号明細書には、マイクロ波線が充填物の下方で充填管に取り込まれるガス燃焼式溶融槽が開示されている。
【0014】
米国特許出願公開第20140255417号明細書には、連続炉でのガラス小片の製造方法が記載されている。各種加熱方法に加えて、マイクロ波による加熱も特許請求されている。しかし、これは溶融槽ではない。エネルギーは、プレス加工された素材に取り込まれる。
【0015】
中国実用新案第203128388号明細書および中国特許出願公開第201210552723号明細書には、アーチ部にマイクロ波エミッタを備えたバーナー加熱式ガラス溶解槽が記載されており、該ガラス溶解槽は、気泡の破壊に用いられている。また第二の文書では、マイクロ波が加熱機能を有することも特許請求されている。しかし、純粋なマイクロ波の上部加熱は特許請求されていない。さらに、バッチと初期メルトとの間でのエネルギー放出に関する記述もない。
【0016】
国際公開第2006059576号では、マイクロ波支援型の減圧清澄チャンバが特許請求されている。
【0017】
米国特許出願公開第2004056026号明細書には、複数の坩堝を直列に接続したカスケード槽が記載されており、該坩堝は、直列に接続されたマイクロ波共振器内に配置されており、マイクロ波線により加熱される。
【0018】
GYROTRON TECHNOLOGY INC.では、マイクロ波技術によるガラスの溶融という主題を提供している。主な特徴は、30GHz超~100GHz超の周波数帯域でのジャイロトロンの使用である。ジャイロトロンは、その使用に際してマイクロ波の発生効率が低い管であり、そうしたシステムへの投資額は非常に高い。マグネトロンは経済的な解決策であるが、このような高い周波数には使用できない。
【0019】
このような高周波(30GHz超)は、浸透深さが極端に小さく、過熱のリスクが高すぎるため望ましくない。一方で、2GHz前後の範囲のマイクロ波であれば、そのリスクはかなり低い。現在、プラズマ物理/核融合分野の開発が進んでいるため、ハイパワージャイロトロンの効率は、マグネトロンの効率に匹敵する。
【0020】
これまで知られているすべてのケースで、マイクロ波はメルトの全体積に作用し、基本的に指向性のある加熱は行われていない。重要であるのは、溶融材料に散逸する電力密度(W/m)である。
【0021】
また、オーミック加熱を伴う全電気槽は、電極の最大許容電流密度によって単位溶融面当たりの入力電力が制限されているため、一般にスループットが制限されている。電流密度はガラスの種類に依存するため、いくつかのガラスでは、オーミック加熱の値が全エネルギー需要の10%未満に制限される。本開示の範囲内では、オーミック加熱とは、メルトに通した電流がガラスメルトのオーミック抵抗で発熱し、この熱をガラスメルトに導入して加熱を行う加熱であると理解される。
【0022】
本発明は、ガラスの溶解時に、特にバッチをガラスメルトに変換する際に加熱に使用されるエネルギーの使用においてより高い効率を達成し、好ましくは環境負荷が低減されるように、既存の溶融方法および溶融装置を改良するという課題に基づいている。
【0023】
この課題は、請求項1記載の方法および請求項13記載の装置により解決される。
【0024】
本発明によれば、ガラスの溶解方法において、バッチをガラスメルトに変換するために、溶融に供給されるエネルギーの少なくとも一部にマイクロ波線を使用し、使用されるマイクロ波線が、バッチと初期メルトとの間の移行部の少なくとも一部に作用する。
【0025】
その際、マイクロ波線を、バッチ山の直下の上方領域、したがって溶解反応ゾーンに取り込み、特にマイクロ波線を使用しないがそれ以外は同一である方法に対してまたはそれと比較して、ここで温度を高めて融解を促進する。
【0026】
以下にさらに詳説するように、まさにこの初期の液相の気泡状の初期溶融領域において、マイクロ波エネルギーの大部分が有利に吸収される。
【0027】
したがって、ガラスメルト上のバッチブランケットとも称されるバッチ山とガラスメルトとの間のゾーンが、好ましくは面状に加熱される。
【0028】
ここで、取込みとは、マイクロ波線と初期の融液相との相互作用であると理解され、このことは、これがこの初期の溶融相内でバッチ中に固体として存在する場合にも液状で存在する場合にも該当する。
【0029】
本開示の実施形態のいくつかにおいて、マイクロ波線による加熱を、特にオーミック電気加熱と組み合わせることで、バッチ山と初期メルトとの間のゾーンにおいて、溶解領域内での水平方向の広域の温度勾配を全体的に均一化することができ、したがって流れをより遅くすることができる。より深い溶融浴からのメルトの対流によってもたらされる熱が、バッチ山全体にわたって放散される。
【0030】
放熱部のゾーンではマイクロ波ブースターが直接発熱するため、溶融浴から放散される熱に関して、バッチブランケットの下方での垂直方向の温度勾配が減少または均一化される。
【0031】
これまでは、バッチ山と溶融ガラスとの間に形成された溶解反応ゾーンに向けたマイクロ波線の吸収は行われなかったため、従来の溶融槽でのマイクロ波線の取込みの際には、固体として存在するバッチから融液状態への変換に、このマイクロ波線がさほど効率的には利用されていなかった。
【0032】
ガラスメルトの表面が入射マイクロ波線の領域で完全に覆われるようにバッチ山がガラスメルトを面状に覆っているか、またはバッチ山のうちガラスメルトを覆っている部分が、マイクロ波線を入射させる領域を超えてさらにガラスメルトの表面上に延在している場合に有利である。なぜならば、その場合には、入射マイクロ波電力の大部分、特に90%超を、最初は固体として存在するバッチからその液体状態への変換に確実に使用することができるためであり、特にその際に、マイクロ波電力は、バッチ山に隣接するメルト表面には取り込まれない。
【0033】
供給されたバッチ成分の面状に広がった互いに隣接する粒子状集積体は、まとまったバッチ山とみなされ、これは、メルト上に浮いて、メルトの表面を、特に少なくとも入射マイクロ波線の領域で好ましくは不透明な状態で覆っている。ここで、不透明な状態で覆っているとは、入射マイクロ波線がその入射の各箇所で最初にバッチ成分を通過した後に、特に初期メルトの領域、特に溶解反応ゾーンで完全な吸収がまだ行われていなければ、前述の入射マイクロ波線の残りの部分がガラスメルトに当たるように完全に存在している被覆であるとみなされる。
【0034】
このバッチ山は、バッチの充填時に、融液ガラス上にかかるブランケットのようにバッチブランケットを形成することができ、その際、バッチ山の高さおよび横方向の面状の延在は、単位時間当たりのバッチの供給量およびマイクロ波線の放射出力により決まり得る。
【0035】
供給されるマイクロ波線が一定の出力であって、かつガラスメルトにさらに供給され、例えばオーミック電気加熱により追加的に供給可能であるエネルギーが一定である場合、バッチ供給時にバッチ充填物として生じるバッチブランケットのサイズ、ならびにそれに付随するガラスメルト上の高さおよび横方向の延在を、単位時間当たりのバッチの供給量によって制御し、したがって、それぞれ所望の値に設定することができる。例えばスループットが0.5t/dである場合、バッチ供給量は約20.8kg/hである。
【0036】
形成されるメルトの溶解反応ゾーンから逃げるガスの大半は、冷却によってバッチ充填物のバッチブランケット上で再び凝縮し、したがって再凝縮するため、本開示により運転される溶融槽では、バッチ成分の供給量が、一応は各溶融槽の最終ガラス組成とも一致している。なぜならば、揮発成分の排出が強く抑制されるためである。
【0037】
以下の好ましい実施形態の説明において、これに関するさらなる実施例をより詳細に説明する。
【0038】
マイクロ波線を供給し、かつ流れがより遅いことに基づきバッチから槽出口への流路が速くなるのを避けて、特に横方向で均一な加熱によって対流を静めることが有利である。本発明の利点は、溶解反応が最適化されること、およびメルトがより均質になることである。
【0039】
マイクロ波線を用いてバッチと初期メルトとの境界にエネルギーを提供することにより、まさにバッチと初期メルトとの間の溶解反応ゾーンで温度上昇、ひいては融解速度の向上をもたらすことが、総じて有利である。
【0040】
これは特に、マイクロ波放射源による上部炉方向からのマイクロ波線の取込みにより実現できる。その場合、上部炉自体はガラスメルトよりも低温に保たれ、燃焼ガスを使用しないため、燃焼によるCOの発生がない。
【0041】
また、ガス燃焼式上部炉と比較した場合のもう1つの利点は、この加熱により、メルトに接している領域よりもバッチの上方領域の方が低温であるため、原料の溶解時に放出されたガスを多孔質でガス透過性の比較的低温のバッチ山を通じて非常に効率的に排出できることである。さらなる利点は、ガス速度の高い場所では溶解反応が行われないために溶解時のバッチのダスト発生が少なく、またバッチ山からの易揮発性成分、特にホウケイ酸塩ガラスの場合にはホウ酸塩の直接的な蒸発が抑えられることである。
【0042】
ガス燃焼処理が施される表面とは対照的に、マイクロ波加熱の場合には、バッチ山のガラス化が生じず、したがって放出されたガスが逃げることができ、このガスがメルトに閉じ込められることもなく、その後のエネルギーを消費する清澄工程でこのガスを再び排出させる必要もない。バッチの下面から上方へ向かって上昇する揮発性成分、例えばBまたはCl含有成分は、低温のバッチブランケット内で再凝縮することができるため、環境や上部炉に放出される物質の割合が低く抑えられる。
【0043】
特に全電気式溶融槽においてガラスメルトへの変換のためにバッチに供給される全エネルギーをマイクロ波線が占める場合、メルトからのBまたはCl含有成分の排出を、本開示の実施形態において50%超減少させることができた。
【0044】
バッチブランケットの上側が低温であるため、この面では清澄剤の転化が起こらず、同様の理由から、例えば硝酸塩や炭酸塩などの個々の原料の分解も基本的に起こらない。また、バッチの上側が低温であるため、ホウケイ酸塩ガラスの場合にはホウ酸塩の蒸発が抑えられ、このことは、目標の組成の達成やダスト発生の低減に有利である。
【0045】
マイクロ波で加熱された初期メルトの初期の起泡性は、バーナーで加熱されたバッチメルトの初期の起泡性に比べてはるかに少ない。マイクロ波で加熱された初期メルトのガス負荷は、バーナーで加熱されたバッチメルトのガス負荷に比べてはるかに少ない。
【0046】
溶解のキネティクスは、砂粒の溶解によって決まる。これが終了しない限り、さらに気泡が発生する。溶解時になおも固体と、既に溶融したガラスと、例えばメルトから逃げるガスをも伴う上部炉雰囲気とが存在する領域、したがって、固体成分と液体成分と気体成分とを有する領域は、本開示の範囲内では、砂粒溶解の領域に対応し、下方を流れるガラスメルトと接触している。
【0047】
理想的なケースでは、本溶解方法によって、事後の清澄を省けることさえある。マイクロ波支援型の全電気式溶融槽は、多くの製品要求に対して十分に良好なガラスを提供する。
【0048】
それと同時に、CO収支がゼロである電気を使用することで、「COフリーの溶融方法」という目標も達成することができる。
【0049】
電流密度が比較的高い場合、ガラスの化学的性質によっては、従来の方法では電極で二次的効果が発生することがあり、これにより、特殊ガラスには許容できないメルトへの電極材料の混入が生じ、また電極の使用寿命が制限される。この混入は、μm範囲の微小な粒子が特徴的であり、これは生産に大きな支障をきたし、完全な生産停止につながる可能性もある。この停止の程度は、ガラスの仕様に大きく依存する。モリブデン電極の一般的な汚染レベルは5~100ppmの範囲であり、用途によっては30ppmで既に許容不可能である。しかし、ある種の特殊なガラスでは、10ppmを超える汚染でも既に許容不可能な問題を招く。
【0050】
また、ガラスのオーミック抵抗による従来の純粋な電気加熱槽のもう1つの欠点は、ガラスと壁部の耐火材との接触領域の温度が高すぎるため、電極による電気加熱が制限されかねないことである。マイクロ波線による加熱のもう1つの利点は、非接触での電力の導入を、バッチの直下の領域で、したがって「壁部の耐火材から遠く離れて」行うことができ、この壁部の材料がかなり連続使用に耐えるものとなり得ることである。
【0051】
電極加熱とは異なり、オーミック加熱の場合はバッチ山の下方の温度が低いため、温度の高い領域に電流が流れる。つまり、純粋なオーミック加熱の場合には、バッチゾーンの直下にはエネルギーが届かない。この重大な欠点を、本明細書において開示された従来の溶融に対する技術的進歩によって回避することができる。
【0052】
本開示の範囲内で用いられるマイクロ波またはマイクロ波線という用語は、当初、したがって、さらに定義を明確にすることなく、古い文献で1~300GHzの範囲として示されていた周波数を有する電磁波の慣用名であり、これは真空中で約30cm~1mmの波長に相当するものである。最近の他の参考文献では、文献において、例えば300MHz~約1THzといったさらに広い周波数帯域の限度値が示されている。本開示の範囲内では、マイクロ波とは、定義上、300MHz~約1THzの周波数を有する最近の文献データによる電磁波であると理解される。
【0053】
本開示の範囲内では、マイクロ波線という用語およびマイクロ波という用語は、互換的に用いられ、それぞれ上記で定義された同じ電磁波を指す。
【0054】
通例、バッチとは、ガラスメルトに充填される前に固体として存在する、後続の溶融ガラスの成分であると理解され、初期メルトとは、まださらなる清澄、特に仕上げ清澄に供されていない溶融バッチであると理解される。
【0055】
例示的に、また一般性を制限することなく、バッチは、ガラスセラミックおよび/またはさらにはBSガラスタイプ、特にホウケイ酸塩ガラスタイプ、および20%~50%のカレット含有量を有することができる。
【0056】
初期メルトとは、ガラス技術の専門用語であり、清澄前のメルトを指す。これは、すべての原料が液状に変化したがまだ気泡を含んでいる、初期の融液相である。
【0057】
本開示の範囲内では、総称としての溶融という用語には、融解工程および溶解工程も包含される。
【0058】
融解とは、固体として存在するバッチ体の少なくとも一部を溶融させる工程であると理解され、ここで、以下でより詳細に説明し、本開示の目的のために定義するように、このバッチ体は、その固体凝集体状態から液体凝集体状態へと変化する。
【0059】
溶解とは、最初は固体として存在するバッチ体をその液体状態に完全に変換すること、特にガラスメルトの初期メルトに変換することと理解される。
【0060】
総じて、バッチ充填の領域での加熱にマイクロ波線を使用すると有利であることが判明している。
【0061】
この場合、オーミック電気加熱を行う槽においても、融解速度の向上を生じさせることができる。
【0062】
本開示の範囲内では、溶解反応ゾーンとは、この境界の一方の側ではバッチが依然として固体の形態で存在し、この境界または移行領域の他方の側では既に融解またはメルトオフが起こり、バッチが特に液体状態に変化する空間的境界または移行領域であると理解される。初期の液相は、塩、例えばNaCO、Bがそれぞれの融点で溶融することにより形成され、その中に他のバッチ成分が反応的に溶解されるものである。
【0063】
様々な化学反応が進行し、ケイ酸塩のメルトが生じる。最初の反応は、共融相(例えば、NaO-SiO)が形成される温度に達した際に、パートナー(例えば、NaCOやSiOなどのアルカリ/アルカリ土類金属炭酸塩)間で、固体状態で始まる。最初の低融点アルカリ金属ケイ酸塩化合物が形成される。アルカリおよびアルカリ土類金属炭酸塩または水酸化物の変換と同時にガスが放出され、このガスは、開放されたバッチ山を通ってプロセス外に逃げることができる。さらに温度を上げることで、低融点原料はその融点に達する。液相が出現することにより初めて反応速度が大幅に高められる。そして、いわゆる初期メルトが存在する。この初期メルトでは、残留する石英粒やその他の難溶性成分が残ったまま、溶融したアルカリ金属ケイ酸塩化合物が存在する。残留する石英粒やその他の難溶性成分は、既に存在するケイ酸塩メルトに、より高い温度および相応する滞留時間で徐々に溶解し、最終的なガラス組成が形成される。マイクロ波を使用した場合、このマイクロ波は既に最初の共融相が現れる際に取り込まれ、マイクロ波線がこのアルカリに富む、つまり導電性の高い相に吸収されるため、反応が加速される。残留する石英や残存する難溶性成分が初期メルトに多く溶解しているほど、マイクロ波のエネルギーは吸収されにくくなる。つまり、マイクロ波は、特に初期の融液相における溶解プロセスを狙いどおりに支援する。
【0064】
溶解反応ゾーンの深さは、通常は数ミリメートルであり、ガラスの種類に応じて、好ましくはマイクロ波線の放射方向に約1mm~100mmの範囲に及ぶことが可能である。
【0065】
マイクロ波線は体積中に放射されるため、溶解反応ゾーンは各バッチ体の外側に位置する必要はなく、温度が進むにつれて、最初に固体として存在する各バッチ成分またはバッチ体に完全に作用することも可能であり、これは特に、この全体温度が高まり、したがって、全体的に加熱によって最初に温度Tg-5kから温度Tg+50Kまたは特により高温となる場合に該当する。この場合、バッチ体内にシャープな局所境界が形成されている必要はなく、溶解ゾーンは、バッチ体の温度Tg-5Kでのその局所領域と、温度Tg+50K、特により高温での融解部とが存在する位置全体であると理解される。このケースは、特に溶解反応ゾーンのサイズの範囲でのサイズを有する小粒子状または粉末状のバッチの場合に生じる。
【0066】
好ましくは、マイクロ波線を上部炉方向からマイクロ波放射源により入射させる。MW線は、熱線と異なって拡散せず、保護FF壁部などの適切な措置により、指向的または部分的に指向的に導入することが可能である。指向性放射線は、例えばビバルディアンテナやラッパ型放射体を使用して発生させるのが有利である。放射線は、上部炉のアンテナを経由して、液溜めまたはバッチ表面に向けて導入される。
【0067】
上部炉自体はガラスメルトより低温に保たれ、燃焼ガスを使用しないため、燃焼によるCOの発生はない。
【0068】
好ましくは、本開示の実施形態において、ガラスメルトへの変換のためにバッチに供給されるエネルギーの少なくとも10%をマイクロ波線が占める。
【0069】
ここで、ガラスメルトへの変換のために供給されるエネルギーとは、バッチに供給され、ガラスが融液状となり、特に初期メルトとして存在するまでにガラスの加熱に使用される全エネルギーであり、したがってその清澄または仕上げ清澄の前までの加熱に使用される全エネルギーであると理解される。
【0070】
初期メルトは、ガラスの粘度が10dPas以下でかつ少なくとも10dPasとなるまで全体的に加熱される。この粘度値以上では、また特により小さい粘度値についても、本開示の範囲内では溶融ガラスが融液または液体状態であるとみなされる。
【0071】
しかし、特に好ましい実施形態では、ガラスメルトへの変換のためにバッチに供給される全エネルギーをマイクロ波線が占める。
【0072】
あるいは、特に融解電力または溶解電力を高めるために、メルトのオーミック電気加熱に加えて、マイクロ波放射源、特にマイクロ波放射体が配置された上部炉からのマイクロ波エネルギーの入射を行い、好ましくは、加熱のために、特にマイクロ波線の吸収のために、マイクロ波エネルギーをバッチと初期メルトとの間のゾーンに入射させることもできる。
【0073】
本開示の実施形態では、COニュートラルなガラスの溶解方法であって、溶解ゾーンにおけるエネルギー導入を、電気加熱、特にオーミック加熱とマイクロ波入射との組み合わせで行い、溶解に使用される電気エネルギーを、少なくともCO収支がゼロである電流により提供する方法を提供することが可能である。
【0074】
COニュートラルなガラスの溶解方法とは、COの総存在量が該溶解方法によって増加しない方法を指す。
【0075】
したがって、本開示の範囲内では、CO収支がゼロであるとは、それによりCOの総存在量が増加しない電流の発生であるとみなされる。
【0076】
太陽エネルギー、風力、水力および/または原子力で発生させた電流は、CO収支がゼロである電流であるとみなされる。
【0077】
総称してバイオ燃料とも称される生物学的プロセスによって得られる燃料や、例えばメタノールを得る場合にメタノールソーラー燃料とも呼ばれるメタノールなど、例えば太陽エネルギーの支援を受けて得られる化学反応によって得られる物質も、その生産およびその後の使用の際に全体として大気中のCO含有量を増加させない場合には、CO収支がゼロであるとみなされる。このようなバイオ燃料は、本開示の範囲内では、CO収支がゼロであって、かつ例えば本方法および本明細書に記載の装置において清澄領域で使用可能であるバーナーに使用することができる。
【0078】
本明細書において、マイクロ波線を、溶融槽のある領域において取り込み、該領域ではバーナーによる上部炉加熱を行わない、方法、特に溶解方法が開示されている。
【0079】
本開示の実施形態では、その実現のために真空も負圧も必要とせず、また例えばスカル坩堝で必要とされるような冷却壁部に依存しないことが特に有利である。
【0080】
本開示の実施形態において、もう1つの利点は、マイクロ波線の非常に効率的な取込みによって、既に溶融槽内のバッチブランケットの下方でバッチを融液状態へと完全に変換することができるため、例えばカスケード槽などの必然的に互いに結合した複数の槽を含む必要がないことである。
【0081】
マイクロ波線は、少なくとも1つのマグネトロンおよび/または少なくとも1つの半導体ベースのマイクロ波線発生装置によって発生させることができる。
【0082】
マイクロ波線の発生の際に、本開示の方法および本開示の装置は、好ましくは、500MHzより高く6GHzより低い周波数のマイクロ波線を提供する。
【0083】
また、マイクロ波線を、本開示の方法および本開示の装置において、3GHzより低い、好ましくは2.45GHz以下、または915MHz以下の周波数で提供することもできる。
【0084】
本開示の方法では、溶融ガラスのスループットは、0.5t/dより多いか、または少なくとも0.5t/dである。
【0085】
特に本開示の方法を実施するための、特にバッチをガラスメルトに変換するための、本発明によるガラスの溶解装置において、該装置は、壁部を有する溶融槽を含む溶融ユニットを備え、該壁部の内部には、溶融すべきバッチに加え、ガラスメルトとしての溶融済みのバッチも収容可能であり、バッチおよびガラスメルトの上方には、少なくとも1つのマイクロ波放射源、特に少なくとも1つのマイクロ波放射体が配置されている。
【0086】
好ましくは、少なくとも1つのマイクロ波放射源は、溶融槽の上部炉に配置されている。これにより、バッチブランケットへのマイクロ波線の面状の分配が確保される。
【0087】
本開示の装置の実施形態では、マイクロ波放射源のマイクロ波線は、バッチと初期メルトとの間の溶解反応ゾーンに向けられている。
【0088】
さらに、本開示の装置において、さらなる実施形態では、メルトのオーミック電気加熱のための1つ以上の設備が設けられていてよい。
【0089】
本方法の実施に際して、特にバッチをガラスメルトに変換する際に、溶融のために、したがってバッチの融解および溶解のために、他のエネルギー源からさらなるエネルギーを導入せずにマイクロ波線を単独で使用した場合、使用されるマイクロ波線は、溶解反応ゾーン全体に完全に作用することができ、したがって溶解反応ゾーンの空間体積全体にも完全に作用することができる。
【0090】
あるいはこれは、加熱用のさらなるエネルギー源が溶融工程に提供される場合にも可能であるが、必ずしもそうである必要はない。
【0091】
加熱用のさらなるエネルギー源、例えばオーミック電気エネルギー源が溶融工程に提供される場合、マイクロ波線が作用する局所領域は、溶解反応ゾーンの局所的に作用を受ける空間体積の約10%以下であってもよく、あるいは溶解反応ゾーンの局所的に作用を受ける空間体積の20%、40%または60%とすることも可能である。
【0092】
さらに、その場合、マイクロ波線による狙いどおりの局所的なエネルギー導入によって、例えば溶融工程に有利な局所的な位置に局所的に限定した温度不均一性を導入することで、所定の流れレジームを設定することができ、これは特に、局所的なガス放出/気泡の微小乱流によっても行うことができ、こうした局所的なガス放出/気泡の微小乱流によって既に、その後の清澄工程を予め支援することができる。
【0093】
しかし、好ましい実施形態では、少なくとも1つのマイクロ波放射源は、溶融槽のうち、バーナーによる上部炉加熱が行われないかまたは上部炉加熱用のバーナーが配置されていない領域に取り込まれる。
【0094】
以下、本発明につき、好ましい実施形態をもとに添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】各ガラスの温度に対する各種ガラスの電気伝導度の比較を示す図である。
図2】典型的ないくつかの特定のガラスについて測定した、ガラスへのマイクロ波の取込みを表すtan(δ)を示す図であり、各種ガラスのtan(δ)の値を所与の温度(℃)に対して示したものである。
図3】ガラスAについて、浸透深さD(μm)およびE=10KV/mでの入射電力P(W/cm)を所与の温度(℃)に対して示した図である。
図4】ガラスBについて、浸透深さD(μm)およびE=10KV/mでの入射電力P(W/cm)を所与の温度(℃)に対して示した図である。
図5】各種粉末サイズについてのtan(δ)および誘電率を所与の温度(℃)に対して示した図である。
図6】シミュレーションの範囲で求められた例示的なガラスについてのソースタームp(FlexPDEシミュレーション)を示す図であり、このソースタームpは、20MW/mから、x方向の層厚4mmでほぼ0まで低下することが確認された。
図7】第1の好ましい実施形態の、特にバッチをガラスメルトに変換するためのガラスの溶解装置を示す図である。
図8】第2の好ましい実施形態の、特にバッチをガラスメルトに変換するためのガラスの溶解装置、および本装置において生じる垂直方向の温度推移Tmwを、上部炉加熱を行わない従来の溶融槽の垂直方向の温度推移Thおよび上部炉加熱を行う従来の溶融槽の温度推移Tobと比較して示す図である。
【0096】
本発明およびその実施形態の詳細な説明
以下の説明において、図中の同一の参照符号はそれぞれ、同一または類似の作用をする構成要素または機能要素を示す。ただし、理解を深めるために、各データ量をグラフ化した二次元の図でない限り、図は縮尺どおりに示されていない。
【0097】
先行技術における前述の方法はいずれも、確かに体積中の加熱方法としてマイクロ波線を利用しているが、温度や材料に依存したマイクロ波線の吸収挙動を利用して、マイクロ波線をほとんど吸収のない放射線としてバッチ山の低温領域に通すことができ、次いで、この放射線が高温のガラスメルトに当たると同時に非常に短いゾーン内で完全に吸収されて熱エネルギーに変換されることは、これまで知られていなかった。
【0098】
このゾーンは、例えば、本開示の範囲内で説明される溶解反応ゾーンであることができる。
【0099】
この温度依存性吸収の効果は、多くの文献で問題視されており、その際に相応するホットスポットの形成が起こることも説明されている。しかし、従来は不利や有害であるとされてきたこの効果をバッチ溶解の分野で活用できることは、これまで知られていなかった。
【0100】
本発明において特許請求される方法のように、ガラスメルトを連続的に溶融させ、その際、マイクロ波加熱、したがって加熱に用いられるマイクロ波線が、以下で実質的に溶解反応ゾーンとも称される高温のガラスメルトとの界面でのバッチの融解に利用されるか、あるいは実質的にそれのみに利用され、バッチと初期メルトとの間のこの領域に向けられているということは、これまでいかなる先行技術文献にも記載されていなかった。
【0101】
有利には、さらに、マイクロ波を、バッチの下方で電気的に加熱されたメルトの溶解領域で「上部」からの加熱体として使用することができる。
【0102】
つまり、本開示の特定の実施形態では、マイクロ波線は、工業用の槽で一般的に使用されるバーナーの上部炉での点火の代替となり得る。
【0103】
したがって、VE槽とも称される全電気加熱式溶融槽の品質、スループット制限、および垂直方向の温度勾配による流れの不安定性に関する従来の欠点を、本開示の実施形態によって回避することが可能である。
【0104】
また、マイクロ波線の取込み挙動、したがって吸収によってガラスメルトに取り込まれるマイクロ波エネルギーの取込み挙動は、古典的なマイクロ波の適用においてはホットスポットの形成という否定的で望ましくない効果を招くものであるが、本発明は、こうした取込み挙動を有利に利用するものである。
【0105】
特に図2図8を参照して以下に詳述するように、バッチ温度が低い場合、マイクロ波線は、バッチブランケット内の材料にほとんど取り込まれない。つまり、この温度範囲内の材料はマイクロ波線に対して透明または半透明であり、そのためマイクロ波線に対して低い吸収性しか有しない。
【0106】
マイクロ波線がバッチを透過した後、この放射線は、その経路上にある高温の初期メルトの最初のゾーンに当たる。そこではマイクロ波の吸収が強くなり、全エネルギーが、実質的にこのゾーン(溶解反応ゾーンとも呼ばれる)において、バッチと初期メルトの溶融面との間で、ガラスの合成にもよるが数ミリメートルまたは数センチメートルという非常に短い区間内で吸収されて、熱エネルギーに変換される。
【0107】
図1は、各種ガラスの温度に対する電気伝導度の比較を示す。ここでは、また本開示のさらなる部分においても、ガラスAは無アルカリガラスを示し、ガラスB、CおよびDは、異なるホウ素含有量のホウケイ酸塩ガラスを示し、ガラスE、FおよびGは、異なるアルミノケイ酸塩ガラスを示す。
【0108】
ガラスへのマイクロ波の取込みは、マイクロ波線の吸収、特にその入射電力に比例するtan(δ)で記述することができ、これを典型的ないくつかの特定のガラスについて測定し、図2のグラフに示す。ここで、損失角をδといい、これは複素誘電率とその実数部との間の角度を示す。それにより得られるマイクロ波線のマイクロ波放射場の浸透深さを、例示的に2つのガラスについて以下に算出する。ここで、物質へのマイクロ波エネルギーの浸透深さはDで記述され、これは、マイクロ波線が当たる物質表面の値に対して電力が1/eに減少する区間を示すパラメーターである。
【0109】
400℃以下の温度では、浸透深さDは、ガラスの種類にもよるが0.1m~1mの範囲であり、つまり、上記のマイクロ波は、かなり減衰せずに低温のバッチ/原料混合物を透過する。
【0110】
ガラスの溶融温度範囲では、浸透深さは数センチメートルであり、すなわち一般的な溶融浴深さである50~100cmでは、バッチ山の下方の上部溶融領域で完全に吸収されて、熱エネルギーに変換される。
【0111】
これに関しては、例えば図3および図4も参照のこと。これらの図ではそれぞれ、これらの図に示されるように、浸透深さD(m)およびE=10KV/mでの入射電力密度P(W/cm)が、℃で示される温度に対して示されている。
【0112】
図3は、ガラスAの挙動を説明し、図4は、ガラスBの材料について説明している。ガラスの材料は、例えば、ガラスセラミックに変換できる組成物であってよい。
【0113】
この熱は、好ましくはメルトに面した高温ゾーン、特に溶解反応ゾーンで発生し、そこで少なくとも溶解の促進を生じ、あるいはさらには融解および/または溶解工程全体につながる。
【0114】
したがって、マイクロ波吸収は、材料が固体であるか粉末状であるかにも左右される。本発明における測定により、平均直径50μm未満の粉体または粒子は、ここでは例えば平均直径数mmの固体や粒子に対して、嵩密度や体積係数が低いため、取込みや単位体積当たりの吸収が3分の1であることが明らかになった。ここで、この効果により、エネルギーを適切な箇所に正確に配置することができ、つまり、バッチ山のルーズなバッチ領域ではなく、溶解反応ゾーンの液状になりつつある、あるいは液状で存在する緻密な相にのみ、エネルギーを配置することができる。有利なプロセスパラメータは、バッチの嵩密度、および溶融バッチ中の気泡の割合である。
【0115】
ガラスに典型的な誘電パラメーターの温度挙動も、図5に示す粉末測定ではっきりと確認することができる。誘電率の実数部および虚数部は、所与の周波数および所与の材料についてそれぞれ実験で求めることができ、それによって浸透深さDを算出することができる。これらの値は、バッチやガラスの組成だけでなく、温度やバッチからガラスへの変換の度合いにも依存する。
【0116】
浸透深さがバッチ体や粒子の寸法に比べて小さい場合、MW線で直接加熱できるのは外側のゾーンだけである。しかし、バッチ体の寸法に比べて浸透深さが大きい場合は別である。この場合、MWエネルギーのごく一部のみが本体や粒子に吸収され、残りは、透明なガラスを透過する可視光のようにバッチ体を透過する。
【0117】
ここで、図5において、「固体実数部」という表記はそれぞれ、固体についての規格DKE-IEV 121-12-13による誘電率の実数部を表し、「固体虚数部」という表記はそれぞれ、固体についての規格DKE-IEV 121-12-13による誘電率の虚数部を表す。「固体tan d」という表記は、対応する固体について虚数部および実数部から求めたtan(δ)の値を表す。tan(δ)の値は、それぞれ測定された誘電率の実数部に対する虚数部の比から得られる。
【0118】
好ましくは、マイクロ波線は、粒度分布、すなわち10μm~500μmの範囲の横方向の最大の延在を有するガラス原料の混合物に取り込まれ、その際、このバッチは、最初に低融点の一次相を形成し、次いでその中に高融点の原料粒子が溶解される。これに代えて、またはこれに加えて、より大きく横方向に数mmまで延在したカレットをバッチに加えることも可能である。
【0119】
Tg(ガラス転移温度)まで、誘電損失は着実に増加する。Tgの範囲では、結合が「ゆるみ」、イオンの移動度がはるかに大きくなるため、非常に強い損失増加が観察される。バッチゾーンの領域でマイクロ波が使用されると、「ホットスポット効果」は均等化される。なぜならば、確かに、ガラスが軟化している場合にガラスは溶融時にホットスポットを形成する傾向があるが、吸収は強い温度依存性を失い、熱暴走の効果が実質的に緩和されるためである。
【0120】
有効電気伝導率あるいは誘電率値の虚数部は、教書で詳説されているように、2つの部分から構成されている。
【0121】
約1400℃を超える高温ではオーミック分が優勢となり、典型的なガラスメルトでは2000℃でもまだ飽和に達しない。
【0122】
例:σ=20S/m
【数1】
【0123】
しかし、この範囲では電気伝導による吸収が前面に出て、数ミリメートル以内でマイクロ波線が完全に吸収されるようになる。例えば、図1やこれに関する上記の説明を参照のこと。
【0124】
図1の図示から、オーミック伝導が限界値に近づいていないことがわかる。しかし、局所的な過熱を避けるために、ガラスメルトに対してマイクロ波線に関する電力制御も有利となる場合がある。なぜならばこの場合、浸透深さも同様に減少するためである。
【0125】
初期メルトへの移行領域では、特性データによれば、本明細書に記載の方法の実施形態で、特に本開示の装置を用いた場合、10~100W/cm(10W/cm=10,000,000W/m=10,000kW/m)の入力電力がそれぞれ問題なく可能である。
【0126】
ここで、電力の吸収は、溶解反応ゾーン数ミリメートルの深さで行われる。以下にその例を示す。
【0127】
想定:E=10kV/mで50,000kW/m×0.1m=5000kW/mとなる。
【0128】
例えば、
ν=2.45GHz
【数2】
σ=43S/m
であり、ここで、励起電界強度E=967V/mであり、これは(空気中で)1241W/mの強度に相当する。これに関しては、図6cも参照のこと。
【0129】
図6の図示によれば、シミュレーションの範囲では、算出されたそれぞれ単位体積当たりの吸収電力(W/m)を示すソースタームp(FlexPDEシミュレーション)は、20MW/mから、x方向の層厚4mmでほぼ0まで低下することが確認され、この図にその旨が図示されている。
【0130】
このことから、例えば上記のような厚さ4mmの薄層に既に非常に高い電力密度が提供され、入射マイクロ波線のエネルギーのほぼすべて、すなわち最大90%超が吸収されて加熱用のエネルギーとして利用可能となることも明らかである。
【0131】
マイクロ波線の取込みのための好ましい温度は、50℃~>1400℃の範囲である。
【0132】
以下に、図8および図9を参照して、本装置の実施形態を説明する。
【0133】
溶融ユニットの第1の例示的実施形態
以下では、図7を参照する。図7は、特にバッチをガラスメルトに変換するためのガラスの溶解装置を示し、これには、全体として参照符号1が付されている。
【0134】
本装置は、溶融ガラス2の流れ方向で見て、溶融ユニット3および清澄ユニット4を備えている。
【0135】
溶融ユニット3は、上記に明示されていなくても、ガラスの溶融に必要なすべての供給設備を備えており、特にCO収支ゼロで電流を供給できる電気供給設備も備えている。
【0136】
本装置1は、本明細書に記載された方法の実施、特に本発明による方法の実施に適している。
【0137】
溶融ユニット3は、耐火材からなる壁部6を有する溶融槽5を備え、壁部6の内部には、溶融すべきバッチ7に加え、溶融ガラス2としての、したがってガラスメルト2としての溶融済みのバッチも収容されている。
【0138】
溶融ユニット3の領域では、ガラスはそれぞれ、固体の形態のバッチ7として存在するか、またはその融解後にガラスメルト2に移行してより液状となり、液状で存在する。
【0139】
バッチ7の上方、および溶融槽5内で溶融槽5の底部から高さHgまで融液状で延在するガラスメルト2の上方には、少なくとも1つのマイクロ波放射源8、特に少なくとも1つのマイクロ波放射体9が配置されており、これは、マグネトロンまたは半導体ベースのマイクロ波線発生装置を備えている。
【0140】
溶融槽5の屋根またはアーチ部10を形成するガラスメルト2の上方の領域は、上部炉11と称される。
【0141】
マイクロ波線を上記のように入射させることで、マイクロ波線を溶解反応ゾーン13で吸収させ、すなわち、この溶解反応ゾーン13に取り込み、それによってこの溶解反応ゾーン13を加熱する。
【0142】
図7からわかるように、溶解反応ゾーン13は、バッチ7の充填によって形成されたバッチ山17の直下に配置されており、ガラスメルト2と、まだ固体として存在するバッチ7との間で垂直方向に延在している。
【0143】
垂直方向とは、図8に示されるZ方向であると理解され、水平面、例えば覆われていない流動性のないガラスメルト2の表面に対して垂直に上方に延びている。本開示の範囲内では、空間的な表示である限り、「上部」または「下部」、および「上方」または「下方」という用語も、この垂直方向に適用される。
【0144】
バッチ7の粒子がガラスメルト2に近い位置に配置されているほどその温度は高くなり、また図5および関連する説明からわかるように、tan(δ)に比例する吸収能力も高くなる。そして、このことから実質的に、図3および図4で確認できるバッチ7の粒子の各温度に対する浸透深さDが、負の垂直方向で生じることになる。
【0145】
バッチ7の温度の上昇に伴って、マイクロ波線18の浸透深さDが大幅に減少することがわかる。このことは、マイクロ波放射源8のマイクロ波線18が既に厚さ4mmの領域で非常に高い電力密度を提供し、入射マイクロ波線のエネルギーのほぼすべて、すなわち最大90%超が吸収されて、特にバッチ7の粒子を加熱するためのエネルギーとして利用可能となるように、図8の図示によれば負のZ方向で行われる。マイクロ波線のエネルギーは、まさに、比溶融電力を高くするためにこのエネルギーが必要とされる領域で、つまり溶解反応ゾーン13で変換される。メルト2は、マイクロ波線によって、ほぼこの領域でのみ著しく高温となり、メルト2全体が著しく温度上昇することなく、反応ゾーンにおいて溶解プロセスを著しくより迅速に行うことが可能である。溶融体積全体の温度を著しく上昇させることなく、より高い融解電力を達成することができ、つまり、壁部5や電極14の腐食を増大させない。
【0146】
ここで、マイクロ波線は、例えば、上部炉11内に配置された1つ以上のマグネトロン(915MHzおよび/または2.45GHz)により発生させることができる。
【0147】
上部炉11は、マイクロ波吸収の少ないセラミック材料、例えばSiOからなるかまたはそれを含み、マイクロ波を遮蔽する金属製のカバー12で囲まれている。
【0148】
バッチ7は、当業者に公知のねじインサートを介して、または「マイクロ波を通さない」開口部を通じて挿入され、これらはそれぞれ、外部へのマイクロ波エネルギーの放出を防止できるように設計されている。
【0149】
電力を、1つ以上のマグネトロンによって入射させることができる。ジャイロトロンやマグネトロン、またその他のマイクロ波周波数による加熱も原理的には可能である。
【0150】
給電路は導波管とみなすことができ、バッチ誘電率を考慮して、使用するMW周波数に対してそのカットオフ周波数よりはるかに低い周波数で動作するような寸法にすることができる。したがって、波の伝播は不可能であり、ガラスメルトの上方の領域から外部に出ようとする波は、そこで指数関数的に減衰する。
【0151】
溶融槽5の下方領域を、メルト2のオーミック電気加熱のための電流を供給する電極14、15を備えた電気補助ヒーター(EZH)により加熱することができる。EZHは、例えば50Hzや10kHzで動作させることができる。
【0152】
電極14、15の電極材料としては、白金、タングステン、モリブデン、イリジウムまたは酸化スズなど、一般的に使用されるすべての材料が可能である。
【0153】
溶融ガラス2は、溶解後に清澄ユニット4の清澄領域16に搬送され、その後、成形部へと搬送される。
【0154】
溶融槽5におけるエネルギー導入は、電気抵抗加熱およびマイクロ波エネルギーのみにより行われることが好ましい。
【0155】
マイクロ波の周波数としては915MHzが好ましいが、2.45GHzや5.8GHzも可能である。この周波数範囲において、マグネトロンを100kWまでの電力範囲で標準的に使用することができる。
【0156】
入力電力の例:
【表1】
【0157】
上表において、VEという表記は、オーミック電気加熱を伴う全電気式槽を意味し、VE+マイクロ波という表記は、オーミック電気加熱とマイクロ波線とを伴う全電気式槽を意味する。マイクロ波[kW]は、入射マイクロ波電力(kW)を表し、EW EZH[kW]は、追加の電気加熱の電力(kW)を表す。
【0158】
上表に示すガス消費量は、実質的に清澄槽領域でのガス消費量であり、バイオ燃料を代替的に使用することも可能である。
【0159】
上記で1.3に挙げた溶融槽の入力電力では、全電気式溶融槽5(すなわち、非電気的な出力やエネルギーを投入せずに運転される溶融槽)において、例えば、スループット20t/dで、ガラスメルトを加熱するオーミック電力が800kW、バッチブランケットのバッチ7に上方から入射させるマイクロ波電力が200kWで、ガラスメルト上に載っているバッチ7のバッチブランケットが生じる。この場合、溶融槽5は、単位面積当たりの負荷2t/mで運転され、つまり、溶融槽内でその底部に作用するガラス2およびバッチ7の単位面積当たりの重量は、約2t/mである。
【0160】
他の全電気式溶融槽1.2の場合、例えば、スループット30t/dで、ガラスメルトを加熱するオーミック電力が1000kW、バッチブランケットのバッチに上方から入射させるマイクロ波電力が300kWで、ガラスメルト上に載っているバッチ7のバッチブランケットを提供することができ、その際、提供されたバッチブランケットは同様に、ガラスメルト上に載っている対応するバッチブランケットであった。この場合、溶融槽は単位面積当たりの負荷が約3t/mで運転され、つまり、溶融槽内でその底部に作用する単位面積当たりの重量は、約3t/mであった。
【0161】
ここでそれぞれ、マイクロ波線18がバッチブランケット自体およびその下方に存在する溶解反応ゾーンのみに作用し、バッチブランケットに隣接して自由に横たわるガラスメルトの他の表面には作用しないように、マイクロ波線18を取り込んだ。
【0162】
さらなる実施形態(図8)では、マイクロ波線18は、バッチ山またはバッチブランケット13がガラスメルト2上に面状に特に不透明な状態で延在する領域の半分または1/3のみに作用することもできる。ここで、マイクロ波線の強度がその最大値から1/eの値に低下した面状の領域までが、マイクロ波線の作用を受けているとみなされ、その際、本開示の範囲内での1/eとは、それぞれオイラー数eの逆数を表す。
【0163】
図8の右半分に、本装置において生じるガラス2およびバッチ7内の温度Tmwの垂直方向の推移を示す。ここで、温度Tmwは、電極14および15の高さでは溶融槽5の底部から始まって上方に向かってまずは上昇するが、高さの増加に伴って僅かに低下し、溶解反応ゾーン13の手前で既に再び僅かに上昇し、そして溶解反応ゾーン3において著しく顕著な最大値に変化し、この最大値が、ほぼ溶解反応ゾーン13全体にわたって、したがって、上方から入射されたマイクロ波線18の浸透深さDにほぼ相当するZ方向の区間Seにわたって広がっていることがわかる。
【0164】
また、今度は上方からの温度Tmwの推移について、最初は低温で存在するバッチ7の温度Tmwが、非常に短い区間で非常に著しく上昇し、その際、温度Tmwの最大値は、溶解反応ゾーン13の領域Se内にあることがよくわかる。
【0165】
上記の推移と比較して、上部炉加熱を行わない従来の溶融槽の垂直方向の温度推移Th、および上部炉加熱を行う従来の溶融槽の温度推移Tobも、例示的に示す。
【0166】
これらの高度に単純化された図示において、本開示の実施形態では、上部炉加熱を行わない従来の溶融槽および上部炉加熱を行う従来の溶融槽の双方と比較して、溶融ガラス2の表面19に向かって温度が強く低下せず、したがってガラスメルト2においてもより均一な垂直温度分布が存在することがわかる。上記の各温度推移の記述では、温度Tmwの推移の説明において、ガラスメルトへの変換のためにバッチに供給されるエネルギーの少なくとも10%をマイクロ波線が占めていた。
【0167】
マイクロ波放射体の例示的実施形態
本例示的実施形態では、マイクロ波放射体9、特にマグネトロンまたは半導体ベースのマイクロ波線発生装置に、例えばKraus, J.D. Antennas, McGraw-Hillにホーンアンテナとして供覧されているようなラッパ型放射体が使用される。例えば、https://archive.org/details/Antennas2ndbyjohnD.Kraus1988/page/n677を参照のこと。
【0168】
要求される放射特性によって、構造長R、したがってマイクロ波放射源8のアンテナの側面の長さが決まる。
【0169】
将来的にCOニュートラルな溶融プロセスを実現するためには、炭化水素燃焼による加熱を電気加熱に転換し、この場合特に再生可能エネルギーによる電力を利用することが一般的には有利である。しかし、特に溶解領域においてバーナー技術を電気加熱式エミッタに置き換えることは、そこに存在する条件、すなわち高温で大量のダストが発生する状態で連続使用に耐える材料が現在のところ存在しないため、失敗に終わった。しかし、この技術的課題は、上記の方法および装置により解決された。なぜならば、バッチを溶融、特に融解させ、さらに溶解させて初期メルトとするために熱が必要とされる領域において、マイクロ波放射源、特にマグネトロンまたは半導体ベースのマイクロ波線発生装置を配置し、マイクロ波線を所定の様式で局所的に放射させ、このマイクロ波線が吸収により局所的に所定の様式でバッチおよびバッチの融解物および初期メルトの一部に熱を取り込ませることによって、溶融槽の壁部、特に耐火材からなる壁部との所定の距離を維持することができるためである。
【0170】
上記の装置は、マイクロ波放射源、特にマグネトロンまたは半導体ベースのマイクロ波線発生装置が配置される場所、特に溶融槽の上部炉をマイクロ波線の放射時に加熱する必要がないため、バーナーを使用する場合よりも連続運転に耐えることができる。
【0171】
磁場、ひいては温度のさらなる均一化措置は、MW周波数を固定せず、マイクロ波源から「変調させる」こと、または磁場分布を均一化するためにモードスターラーをメルトの上方に配置すること、またはMW磁場を均一化すると同時にバッチ内の温度も均一化するスターラーをバッチ内に配置することであり得る。
【0172】
さらに、溶解領域での上部炉加熱を僅かにしか、ないしはまったく行わない場合、バッチブランケットの下方のガラス形成領域でエネルギーを狙いどおりに放出させることによって、例えばアルカリ金属ホウ酸塩、ホウ素、フッ素、Clなどの揮発成分の排出を大幅に削減することができる。コールドトップと同様にバッチ内で蒸発-凝縮サイクルが形成される。
【符号の説明】
【0173】
1 ガラス溶解装置
2 溶融ガラス、特にガラスメルト
3 溶融ユニット
4 清澄ユニット
5 溶融槽
6 溶融槽5の壁部
7 バッチ
8 マイクロ波放射源、特にマグネトロンまたは半導体ベースのマイクロ波線発生装置
9 マイクロ波放射体
10 溶融槽5の屋根またはアーチ部
11 溶融槽5の上部炉
12 マイクロ波を遮蔽する金属製のカバー
13 溶解反応ゾーン
14 電極
15 電極
16 清澄領域
17 バッチ山
18 特にマグネトロンまたは半導体ベースのマイクロ波線発生装置のマイクロ波線
19 溶融ガラス2、特にガラスメルト2の表面
Hg 溶融槽5の底部上の、溶融ガラス2、特にガラスメルト2の表面19の高さ
Th 上部炉加熱を行わない従来の溶融槽のガラスメルト2内部の温度
Tob 上部炉加熱を行う従来の溶融槽のガラスメルト2内部の温度
Tmw 本開示の実施形態のうちの1つにおけるガラスメルト2内部の温度
Se 溶解反応ゾーン13の領域における温度推移
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8