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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】水中機器の放熱装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/00 20130101AFI20250305BHJP
   H02G 9/02 20060101ALI20250305BHJP
   H02G 1/10 20060101ALI20250305BHJP
   H04B 10/29 20130101ALN20250305BHJP
【FI】
H04B10/00
H02G9/02
H02G1/10
H04B10/29
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024009182
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】202311566507.9
(32)【優先日】2023-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521037097
【氏名又は名称】エイチエムエヌ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,リン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジェンピン
(72)【発明者】
【氏名】ニン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ダオファン
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-336309(JP,A)
【文献】特開昭57-25117(JP,A)
【文献】特開昭56-141716(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181763(WO,A1)
【文献】特開2012-88831(JP,A)
【文献】特表2021-521674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00
H02G 9/02
H02G 1/10
H04B 10/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中通信システムにおける水中機器に適用される、水中機器の放熱装置であって、
前記放熱装置は、放熱シェルと、滲水コンポーネントとを含み、
前記放熱シェルは前記水中機器の外側に嵌設され、前記放熱シェルは外壁ケーシングを含み、前記外壁ケーシングは円筒状構造であり、前記外壁ケーシングの断面直径は前記水中機器のシェルの断面直径よりも大きく、前記外壁ケーシングと前記水中機器とは同軸に設置され、
前記滲水コンポーネントは円錐状構造であり、前記滲水コンポーネントに複数の第1注水孔がアレイ状に設けられ、前記滲水コンポーネントは前記放熱シェルの両端に設置され、且つ前記滲水コンポーネント、前記外壁ケーシング、及び前記水中機器のシェルによって囲まれて放熱チャンバーが形成されるように、前記滲水コンポーネントが前記外壁ケーシングに接続される、ことを特徴とする水中機器の放熱装置。
【請求項2】
前記放熱シェルは、前記水中機器のシェルと前記外壁ケーシングとの間に設置され、前記放熱チャンバーを支持するように構成される固定ブラケットをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項3】
前記固定ブラケットは、前記外壁ケーシングと同軸に設置される少なくとも1つの環状シートを含み、前記環状シートは、前記水中機器のシェルに嵌合する環状内面と、前記外壁ケーシングに嵌合する環状外面と、を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項4】
前記固定ブラケットは、前記水中機器のシェルと前記外壁ケーシングとの間にアレイ状に設置される3つの前記環状シートを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項5】
前記環状シートに複数の透水孔がアレイ状に設けられ、前記透水孔の直径が前記第1注水孔の孔径以下である、ことを特徴とする請求項3に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項6】
前記環状シートには、前記環状内面と前記水中機器のシェルとの間に設置される摩擦材が設けられ、前記摩擦材は、前記環状シートと前記水中機器との間の摩擦力を向上させるために用いられる、ことを特徴とする請求項3に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項7】
前記外壁ケーシングには、前記環状シートを前記外壁ケーシングに設置するために、前記環状シートと締まり嵌めする固定溝が設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項8】
前記固定ブラケットは、アレイ状に設置される複数の支持柱を含み、隣接する2つの前記支持柱の間に隙間が設けられ、前記支持柱の一端が前記外壁ケーシングに接合し、前記支持柱の他端が前記水中機器のシェルに接触する、ことを特徴とする請求項2に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項9】
前記放熱シェル及び前記滲水コンポーネントは、いずれも金属で構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項10】
前記放熱シェルに複数の第2注水孔がアレイ状に設けられ、前記第2注水孔の孔径が前記第1注水孔の孔径以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の水中機器の放熱装置。
【請求項11】
前記第1注水孔の孔径は、5mm未満且つ1mmよりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の水中機器の放熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、放熱技術分野に関し、特に水中機器の放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中通信システムは、遠距離通信を実現する過程で、異なる領域の水中地形の影響を受け、異なる領域で光電ケーブル及び水中機器の敷設方式が異なる。例えば、浅水域に位置する光電ケーブル及び水中機器は、ケーブル、機器に対する人間活動及び環境生物の影響を減らすために、海底3m以下の位置に埋設する必要があるが、深水域は人間活動及び環境生物がいずれも少ないため、深水域に位置する光電ケーブル及び水中機器は、深水の海底表面に直接敷設することができる。
【0003】
水中通信システムの精密性及び設計寿命の制限のため、水中機器は稼動温度範囲の要求が比較的厳しく、常に0~35℃の間である。深水域の水温は通常4℃程度であり、水中機器の稼動中に熱が発生しても、海水によって水中機器の稼動温度を低下させることができる。
【0004】
しかし浅水域では、水中機器が土砂に埋設され、土砂の包み込みにより水中機器の放熱効率が低下し、且つ季節によって表層海水の温度が変化し、海水温度が高い場合にはさらに水中機器の放熱効率に影響を与え、水中機器の正常運転に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、水中通信システムにおいて浅水域に位置する水中機器(水面下機器)の放熱効率が低く、水中機器の正常稼動に影響を与えるという問題を解決するための水中機器の放熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の実施例において水中機器の放熱装置を提供し、水中通信システムにおける水中機器に適用され、放熱装置は、放熱シェル(shell)と、滲水コンポーネントとを含み、放熱シェルは水中機器の外側に嵌設され、放熱シェルは外壁ケーシングを含み、外壁ケーシングは円筒状構造であり、外壁ケーシングの断面直径が水中機器のシェルの断面直径よりも大きく、外壁ケーシングと水中機器とは同軸に設置され、滲水コンポーネントは円錐状構造であり、滲水コンポーネントに複数の第1注水孔がアレイ状に設けられ、滲水コンポーネントは放熱シェルの両端に設置され、且つ滲水コンポーネント、外壁ケーシング、及び水中機器のシェルによって囲まれて放熱チャンバーが形成されるように、滲水コンポーネントが外壁ケーシングに接続される。
【0007】
このように、水中機器の外側に放熱シェル及び滲水コンポーネントを嵌設することにより、水中機器は施工中に放熱シェル内に液体を充填することができ、さらに液体とケーシングとの協力により、水中機器の放熱面積を増大させて熱の伝導効率を向上させ、水中機器の稼働時の放熱効率を向上させ、水中通信システムの運転安定性を向上させる。
【0008】
1つの可能な実施形態で、放熱シェルは、水中機器のシェルと外壁ケーシングとの間に設置され、放熱チャンバーを支持するように構成される固定ブラケットをさらに含む。このように、固定ブラケットは、放熱チャンバーを支持し、放熱シェルの構造強度を向上させ、それにより、構造変形による放熱効率の低下の問題を避けることができる。
【0009】
1つの可能な実施形態で、固定ブラケットは、外壁ケーシングと同軸に設置される少なくとも1つの環状シートを含み、環状シートは、水中機器のシェルに嵌合する環状内面と、外壁ケーシングに嵌合する環状外面と、を含む。このように、水中機器のシェルと外壁ケーシングとの間に環状シートを設置することにより、放熱シェルと滲水コンポーネントとで形成される放熱チャンバーを支持し、構造変形のリスクを低減する。
【0010】
1つの可能な実施形態で、固定ブラケットは、水中機器のシェルと外壁ケーシングとの間にアレイ状に設置される3つの環状シートを含む。このように、複数の環状シートを設置することにより、放熱シェルを支持し、構造が圧力を受けて変形するリスクを低減する。
【0011】
1つの可能な実施形態で、環状シートに複数の透水孔がアレイ状に設けられ、透水孔の直径が第1注水孔の孔径以下である。このように、放熱チャンバーが複数の環状シートによって多段のチャンバーに分割された後、透水孔を介して液体の流れを実現し、さらに水中機器の放熱装置による水中機器の放熱効率を増加することができる。
【0012】
1つの可能な実施形態で、環状シートには、環状内面と水中機器のシェルとの間に設置される摩擦材(摩擦部品)が設けられ、前記摩擦材は、環状シートと水中機器との間の摩擦力を向上させるために用いられる。摩擦材を設置することにより、環状シートと水中機器との間の摩擦力を向上させ、それにより放熱シェルの滑り又は脱落を避ける。
【0013】
1つの可能な実施形態で、外壁ケーシングには、環状シートを外壁ケーシングに設置するために、環状シートと締まり嵌めする固定溝が設けられている。このように、外壁ケーシングとの嵌合により、環状シートを固定し、環状シートの固定強度を増加し、さらに水中機器の放熱装置の構造強度を向上させることができる。
【0014】
1つの可能な実施形態で、固定ブラケットは、アレイ状に設置された複数の支持柱を含み、隣接する2つの支持柱の間に隙間が設けられ、支持柱の一端が前記ケーシングに接合し、支持柱の他端が水中機器のシェルに接触する。このように、複数の支持柱によって放熱チャンバーを支持する機能を実現し、それにより、構造変形のリスクを低減することができる。
【0015】
1つの可能な実施形態で、放熱シェル及び滲水コンポーネントは、いずれも金属で構成される。金属で構成される放熱シェル及び滲水コンポーネントは、水中機器の放熱装置の構造強度を増加することができるとともに、金属が高い熱伝導性を有し、水中機器への放熱効率を向上させる。
【0016】
1つの可能な実施形態で、放熱シェルに複数の第2注水孔がアレイ状に設けられ、第2注水孔の孔径が第1注水孔の孔径以下である。放熱シェルに第2注水孔を増設することにより、放熱チャンバーの水充填速度を向上させ、放熱チャンバー内の水充填不足の問題を避ける。
【0017】
1つの可能な実施形態で、第1注水孔の孔径は、5mm未満且つ1mmよりも大きい。このように、水中機器の施工中に、放熱チャンバー内に大量の土砂が入る状況の発生を減らし、水中機器の放熱効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記解決手段から分かるように、本願は、水中機器の放熱装置を提供し、水中通信システムにおける水中機器に適用され、放熱装置は、放熱シェルと、滲水コンポーネントとを含み、放熱シェルは水中機器の外側に嵌設され、外壁ケーシングを含み、外壁ケーシング
は円筒状構造であり、外壁ケーシングの断面直径は水中機器の断面直径よりも大きく、外壁ケーシングと水中機器とが同軸に設置され、滲水コンポーネントは円錐状構造であり、滲水コンポーネントに複数の第1注水孔がアレイ状に設けられ、滲水コンポーネントは放熱シェルの両端に設置され、且つ滲水コンポーネント、水中機器のシェル及び外壁ケーシングによって囲まれて放熱チャンバーが形成されるように、滲水コンポーネントが外壁ケーシングに接続される。上記構造により、水中機器の埋設後に、放熱チャンバー内部の液体及び放熱シェルを介して水中機器の稼動により発生した熱を放散し、浅水域の土砂中に埋設された水中機器の放熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本願の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例において必要とされる図面について簡単に紹介するが、当業者にとっては、創造的な労力を払うことなく、これらの図面から他の図面を得ることができることは明らかである。
【0020】
図1】水中通信システムの概略構造図である。
図2】本願の実施例における水中機器の放熱装置の概略断面構造図である。
図3】本願の実施例における滲水コンポーネントの概略構造図である。
図4】本願の実施例における滲水コンポーネントの概略断面図である。
図5】本願の実施例における水中機器の放熱装置の概略構造図である。
図6】本願の実施例における別の水中機器の放熱装置の概略構造図である。
図7】本願の実施例におけるさらに別の水中機器の放熱装置の概略構造図である。
図8】本願の実施例におけるさらに別の水中機器の放熱装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を参照して本発明の技術的手段を明確且つ完全に説明するが、明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を払わないことを前提として取得した他の全ての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。
【0022】
「第1」、「第2」という用語は、単に説明の目的のためのものであり、相対的な重要性を示したり暗示したり、示された技術的特徴の数を暗黙的に示したりするものとして理解されることができない。したがって、「第1」、「第2」に限定される特徴は、明示的又は暗黙的に、前記特徴の1つ又は複数が含まれてもよい。本発明の説明において、「複数」とは、特に明示的に限定しない限り、2つ以上を意味する。また、「取り付け」、「連結」、「接続」という用語は、広い意味で理解されるべきであり、例えば、固定接続、取り外し可能な接続、又は一体接続であってもよいし、機械的接続でも電気的接続でもよく、直接連結でも仲介物を介する間接連結でもよく、2つのコンポーネント間の内部連通でもよい。当業者にとって、本発明における上記の用語の具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解できるであろう。
【0023】
水中通信システムは、海底や湖底などの環境に敷設され、長距離のデータ通信を実現するためのシステムである。例示的に、水中通信システムは、海底ケーブル通信システムを含んでもよい。
【0024】
しかし、水中通信システムは、遠距離通信を実現する過程で、異なる領域の水中地形の影響を受けるため、異なる領域で光電ケーブル及び水中機器の敷設方式が異なる。図1に示すように、浅水域に位置する光電ケーブル及び水中機器は、ケーブル、機器に対する人間活動及び環境生物の影響を減らすために、海底3m以下の位置に埋設する必要があるが、深水域に位置する光電ケーブル及び水中機器は、人間活動及び環境生物の影響がいずれも少ないため、深水の海底表面に直接敷設することができる。
【0025】
水中通信システムの精密性及び設計寿命の制限のため、水中機器は稼動温度範囲の要求が比較的厳しく、一部の実施例では、水中機器の稼動温度は0~35℃の間である必要がある。深水域の水温は通常4℃程度であるため、水中機器の稼動中に熱が発生しても、海水が水中機器の熱を放散し、水中機器の稼動温度を低下させる。
【0026】
しかし浅水域では、水中機器が土砂に埋設され、土砂の包み込みにより水中機器の放熱効率が低下し、且つ季節によって表層海水の温度が変化し、海水温度が高い場合にはさらに水中機器の放熱効率に影響を与え、水中機器の正常稼動に影響を与える。
【0027】
水中通信システムにおいて浅水域に配置された水中機器の放熱効率が低く、水中機器の正常稼動に影響を与えるという問題を解決するために、本願の実施例において水中機器の放熱装置を提供し、水中通信システムにおける水中機器に適用され、図2に示すように、放熱装置は、放熱シェル100と、滲水コンポーネント200と、を含み、ここで放熱シェル100は水中機器の外側に嵌設される。
【0028】
放熱シェル100は、外壁ケーシング110を含み、外壁ケーシング110はいずれも円筒状構造であり、外壁ケーシング110の断面直径が放熱シェル100に包み込まれた水中機器の断面直径よりも大きく、外壁ケーシング110と水中機器とは同軸に設置され、さらに水中機器は放熱シェル及び放熱シェル内の媒体を介して、水中機器の稼動により発生した熱を放散することができる。
【0029】
なお、本願の実施例における水中機器は、光中継器RPT(repeater)などの機器であってもよく、遠距離通信伝送中、信号がケーブルで損失するため、一定距離離れたケーブルごとに信号中継増幅機能を有するRPTを設置し、それにより信号を遠距離伝送でき、2つのRPT間のケーブル長は50km、70km、100kmなどであってもよく、本願において2つのRPT間のケーブル長に特に制限はない。水中通信システムの構築中、水中機器は、通常、ケーブルに直接設置され、且つ巻き付けられ、ケーブルとともに水中に下ろされる。
【0030】
放熱装置における滲水コンポーネント200は円錐状構造であり、滲水コンポーネント200は放熱シェル100の両端に設置され、それにより滲水コンポーネント200、外壁ケーシング110、及び水中機器のシェルによって囲まれて放熱チャンバー120が形成されるように、滲水コンポーネント200が外壁ケーシング110に接続される。例示的に、放熱装置に2つの滲水コンポーネント200が設けられ、2つの滲水コンポーネント200がそれぞれ放熱シェル100の両端に設置される。
【0031】
本願の一部の実施例では、外壁ケーシング110の両端に雌ねじが設けられ、滲水コンポーネント200に雄ねじが設けられてもよく、外壁ケーシング110と滲水コンポーネント200とは、ネジ接続により放熱チャンバー120の囲みを実現することができる。なお、上記接続方式は、外壁ケーシング110と滲水コンポーネント200との間の可能な接続方式に過ぎず、本願において外壁ケーシング110と滲水コンポーネント200との接続方式に制限はない。
【0032】
同時に水を通して放熱を行うために、図3に示すように、滲水コンポーネント200に複数の第1注水孔201がアレイ状に設けられ、それにより水中機器がケーブルとともに水中に入ると、放熱シェル100の両端に位置する滲水コンポーネント200は、第1注水孔201を通して水圧で水を入れることができ、放熱チャンバー120が徐々に水で満たされ、さらに水中機器が水底の土砂に埋設された後も放熱装置及びその内部の水を通して放熱を行うことができる。
【0033】
一部の実施例では、第1注水孔201の直径は、5mm未満且つ1mmよりも大きくてもよい。このように、水中機器の埋設中に、放熱チャンバー120内に大量の土砂が入る状況の発生を減らし、水中機器の放熱効率を向上させることができる。同時に第1注水孔201の直径が小さすぎることを避け、施工中に、水が第1注水孔201を介して放熱チャンバー120に流入することができ、放熱チャンバー120内の液体の不足により、放熱効率に影響を与える状況の発生を減らす。
【0034】
例示的に、滲水コンポーネント200内に孔径が第1注水孔201の直径よりも小さいメッシュを設置することにより、流入する小粒子の土砂を阻止し、土砂による放熱効率への影響を減らすこともできる。
【0035】
なお、第1注水孔201の直径は、より大きくてもより小さくてもよく、本願で示した数値は可能な実施形態に過ぎず、第1注水孔201の具体的な直径は本願では制限されないが、大粒子の土砂を阻止し且つ水をタイムリーに流入させることができることを保証するために、第1注水孔201の直径は、ミリメートルオーダーであるべきである。
【0036】
本願の一部の実施例で、図4に示すように、滲水コンポーネント200のケーシングは一定の厚さを有することができ、且つ第1注水孔201に凹溝を設けることにより、水中の土砂をある程度滞留させて、放熱チャンバー120内に土砂が入る状況の発生を減らすことができる。取り付け及び使用中に、滲水コンポーネント200は、一定の角度で回転する可能性があるため、当該凹溝は各第1注水孔201の対向する上下方向にいずれも1つ設けることができ、それにより各第1注水孔201に一定の土砂の濾過機能を持たせることが理解されるべきである。
【0037】
なお、第1注水孔201中に凹溝を設置して、土砂の入りを減らすことは、可能な実施形態に過ぎず、具体的な実施過程において、第1注水孔201の流路形状を限定することにより、土砂を減らすこともでき、例えば第1注水孔201の流路形状をV字状やS字状の経路とすることで土砂の流入を減らす。本願において第1注水孔201の流路形状には特に制限はない。
【0038】
水中機器に当該放熱装置を設置していない場合、水中機器の放熱効果は、Q1=K1×S1であってもよく、ここでQ1は、シェル増加前の放熱量であり、K1は、シェル増加前の放熱係数であり、S1は、シェル増加前の放熱面積である。水中機器に当該放熱装置を設置した後、水中機器の放熱効果は、Q2=K2×S2であってもよく、ここでQ2は、シェル増加後の放熱量であり、K2は、シェル増加後の放熱係数であり、S2は、シェル増加後の放熱面積である。
【0039】
水の放熱係数が水中機器自体及び土砂の放熱係数よりも大きく、且つ水中機器外に当該放熱装置を嵌設した後、水中機器の放熱面積が当該放熱装置の表面積に増大するので、水中機器が同じ熱を発生する条件下では、当該放熱装置を増加した後の放熱量が当該放熱装置を増加する前の放熱量よりも大きく、水中機器の放熱面積を増大させて熱の伝導効率を向上させ、水中機器の稼動時の放熱効率を向上させ、水中通信システムの稼動安定性を向上させる。
【0040】
本願の一部の実施例では、外壁ケーシング110及び滲水コンポーネント200は、いずれも金属で構成され、金属が良好な熱伝導性を有するため、放熱チャンバー120内に位置する水の放熱を補助し、放熱効率を向上させることができる。
【0041】
例示的に、外壁ケーシング110及び滲水コンポーネント200は、銅、アルミニウム
、又は鉄などの金属から構成されてもよい。金属で構成される外壁ケーシング110及び滲水コンポーネント200は、水中機器の放熱装置の構造強度を増加することができるとともに、金属が高い熱伝導性を有し、水中機器の放熱効率をさらに向上させることができる。
【0042】
浅水域の水中機器は水底の地面下に埋設される必要があるため、放熱装置は、ケーブル及び水中機器が水中に下ろされる前に、水中機器に嵌設され、且つ水中機器とともにケーブルと一緒に建設船の機器、例えばケーブルガイドレール及びハブに巻き付けられる必要があり、したがって放熱シェル100における外壁ケーシング110の直径は、ケーブルガイドレール及びハブの制約を満たす必要があり、ケーブルガイドレール及びハブに巻き付けられるとき、放熱装置が設けられた水中機器がケーブルガイドレール及びハブから外れ、又はそれらに接続されたケーブルを損傷することを避けることが理解されるべきである。
【0043】
水中通信システムは施工中に、ケーブルとともに水中機器が施工される必要があるため、水中機器の外側に嵌設されている放熱装置は、水中機器とともに水中に下ろされて水底に埋設される必要がある。施工中、ケーブル及び水中機器は、建設船のケーブルガイドレール及びハブに巻き付けられ、それによりハブの回転によって、ケーブル及び水中機器を水中に下ろす。且つ、水中通信システムは、浅水域の施工時、ケーブル及び水中機器を水底の土砂内に埋設する必要があり、埋設深さが少なくとも3mである必要があり、そのため放熱装置は一定の構造強度を有する必要があり、それにより巻き付け及び埋設深さが大きい場合の放熱装置の構造の損傷を避け、外壁ケーシング110の変形、放熱チャンバー120の減少などの問題の発生を減らす。
【0044】
一部の実施例では、放熱シェル100内に固定ブラケット130がさらに設置される。具体的には、固定ブラケット130は、水中機器のシェルと外壁ケーシング110との間に設置され、固定ブラケット130は、放熱チャンバー120を支持することができ、放熱シェル100の構造強度を向上させ、それにより放熱シェル100の施工中の変形を減らし、装置の信頼性を向上させ、構造変形による放熱効率の低下の問題を避ける。
【0045】
放熱シェル100を支持するために、図5に示すように、固定ブラケット130は、少なくとも1つの環状シート131を含むことができる。環状シート131は、一定の厚さを有する環状のシート状構造であるため、環状シート131は、2つの同軸の円筒円弧面、即ち環状内面及び環状外面を含み、且つ環状内面の断面直径が環状外面の断面直径よりも小さいことが理解されるべきである。
【0046】
環状内面の断面直径は、水中機器のシェルの断面直径と同じであり、環状外面の断面直径は、外壁ケーシング110の断面直径と同じである。例示的に、環状シート131は、環状内面が水中機器のシェルに嵌合し、環状外面が外壁ケーシング110に嵌合するように、水中機器及び外壁ケーシング110と同軸に設置される必要がある。
【0047】
このように、水中機器と外壁ケーシング110との間に環状シートを設置し、放熱シェル100と滲水コンポーネント200とで形成される放熱チャンバー120を支持することにより、外壁ケーシング110が外力を受けて押圧されるとき、環状シート131を介して外力の一部を水中機器に伝達することができ、放熱装置の全体的構造変形のリスクを減らすことができる。
【0048】
本願の実施例では、図5に示すように、環状シート131の数は、1つであってもよい。具体的には、環状シート131は、放熱チャンバー120の中央位置に設置されてもよく、即ち環状シート131の両側に位置する空間の大きさが同じであり、それにより外壁
ケーシング110の支持強度を均一にし、それにより放熱装置の構造強度を向上させる。
【0049】
例示的に、図6に示すように、固定ブラケット130は、水中機器と外壁ケーシング110との間にアレイ状に設置された3つの環状シート131を含むことができる。具体的には、第1環状シート131aは、放熱チャンバー120の中央位置に設置され、第2環状シート131b及び第3環状シート131cは、それぞれ第1環状シート131aの両側に設置され、且つ第2環状シート131b及び第3環状シート131cは第1環状シート131aとの間隔が同じである。複数の環状シート131を設置することにより、外壁ケーシング110の支持強度を向上させ、さらに放熱装置の構造強度を向上させ、放熱装置の全体的構造が圧力を受けて変形するリスクを減らすことができる。
【0050】
環状シート131の数は、1つであっても複数であってもよく、本願の実施例では環状シート131の数に制限はなく、前述1つ又は3つの環状シート131の設置方式は、本願の一例に過ぎず、本願では環状シート131の具体的な数に制限はないことが理解されるべきである。
【0051】
さらに、放熱シェル100の水中機器への取り付けを容易にするために、外壁ケーシング110は、2つの半円筒形の構造とすることができ、且つ両者はヒンジを介して接続され、さらに、使用中にヒンジを介して外壁ケーシング110の開閉を制御でき、水中機器を外壁ケーシング110内に配置することができる。取り付けを容易にするために、外壁ケーシング110が2つの半円筒形の構造である場合、環状シート131は、半円環構造であってもよく、それにより環状シート131は、外壁ケーシング110の開閉に連動して開閉することができ、外壁ケーシング110への水中機器の取り付けの困難性を減らすことができる。
【0052】
図6に示すように、固定ブラケット130が複数の環状シート131を含む場合、環状シート131は放熱チャンバー120内の水の流れを阻止する。したがって一部の実施例では、環状シート131に複数の透水孔1311がアレイ状に設けられ、同時に透水孔1311の直径が第1注水孔201の直径以下である。このように、放熱チャンバー120が複数の環状シート131によって多段のチャンバーに分割された後、透水孔1311を介して液体の流れを実現し、さらに水中機器の放熱装置による水中機器の放熱効率を増加することができる。
【0053】
本願の一部の実施例では、放熱装置の取り付け安定性を向上させるために、図6に示すように、環状シート131に摩擦材1312がさらに設けられてもよい。例示的に、摩擦材1312は、環状内面と水中機器のシェルとの間に設置され、摩擦材1312は環状シート131と水中機器との間の摩擦力を向上させることができ、それにより水中機器に対する放熱シェル100の滑りを減らし、放熱シェル100と水中機器との構造安定性を向上させる。
【0054】
さらに、放熱シェル100に対する環状シート131の支持強度を向上させるために、図6に示すように、外壁ケーシング110に固定溝140が設けられ、環状シート131が固定溝140内に設置され、且つ固定溝140と環状シート131とが締まり嵌めすることにより、固定溝140が環状シート131を挟持することができ、それにより環状シート131が水中機器のシェルと外壁ケーシング110との間に設置される。このように、外壁ケーシング110により、環状シート131を固定し、放熱チャンバー120に対する環状シート131の支持強度を増加し、さらに水中機器の放熱装置の構造強度を向上させることができる。
【0055】
一部の実施例では、環状シート131が外壁ケーシング110に設置される方式は、溶
接、係着、接着などの方式であってもよく、本願では環状シート131の具体的な設置方式には制限はない。
【0056】
本願の一部の実施例では、放熱シェル100の水充填速度を向上させ、埋設時の放熱チャンバー120内の水充填不足を避けるために、図7に示すように、放熱シェル100に複数の第2注水孔111がアレイ状に設けられてもよく、第2注水孔111の孔径が第1注水孔201の孔径以下である。
【0057】
例示的に、土砂の入りを減らすために、第2注水孔111を外壁ケーシング110の対向する両側に設置し、且つ放熱シェル100を埋設するとき、第2注水孔111を水中機器に対してできるだけ両側方向に向けるようにして、埋設後の上下方向の土砂の押圧による土砂の放熱シェル内への流入を避けることができる。
【0058】
放熱シェル100に第2注水孔111を増設することにより、放熱チャンバー120の水充填速度を向上させ、放熱チャンバー120内の水充填不足の問題を避ける。
【0059】
本願の他の一部の実施例では、図8に示すように、固定ブラケット130は、複数の支持柱132を含むことができ、支持柱132がアレイ状に設置され、1つ又は複数の環状構造を構成し、外壁ケーシング110に支持を提供する。例えば、複数の支持柱132は、スポーク状の環状構造を構成して外壁ケーシング110に支持を提供することができる。一方、隣接する2つの支持柱132間には、水が流れるように隙間が設けられている。このように、複数の支持柱132によって支持の機能を実現し、構造変形のリスクを減らすことができる。
【0060】
例示的に、支持柱132に透水孔1321を設置し、透水孔1321を介して水が流れるようにしてもよい。且つ一部の実施例では、固定ブラケット130が複数の支持柱132を含む場合、外壁ケーシング110に支持柱132の一端形状に対応する固定溝140を設置し、支持柱132を水中機器と外壁ケーシング110との間に設置するように嵌合させることができる。
【0061】
支持柱132が外壁ケーシング110に設置される方式は、溶接、係着、接着などの方式であってもよく、本願では支持柱132の具体的な設置方式には制限はないことが理解されるべきである。
【0062】
構造強度を向上させるために、固定ブラケット130は金属材料で構成されてもよく、本願の一部の実施例では、固定ブラケット130の材質は、外壁ケーシング110及び滲水コンポーネント200の材質と同じであってもよい。
【0063】
上記解決手段から分かるように、本願は、水中機器の放熱装置を提供し、水中通信システムにおける水中機器に適用され、放熱装置は、放熱シェル100と、滲水コンポーネント200とを含み、放熱シェル100は水中機器の外側に嵌設され、放熱シェル100は外壁ケーシング110を含み、外壁ケーシング110は円筒状構造であり、外壁ケーシング110の断面直径が水中機器の断面直径よりも大きく、水中機器と外壁ケーシング110とが同軸に設置され、滲水コンポーネント200は円錐状構造であり、滲水コンポーネント200に複数の第1注水孔201がアレイ状に設けられ、滲水コンポーネント200は放熱シェル100の両端に設置され、且つ滲水コンポーネント200、水中機器のシェル及び外壁ケーシング110によって囲まれて放熱チャンバー120が形成されるように、滲水コンポーネント200が外壁ケーシング110に接続される。上記構造により、水中機器の埋設後に、放熱チャンバー120内部の液体及び放熱シェルを介して水中機器の稼動により発生した熱を放散し、浅水域の土砂中に埋設された水中機器の放熱効率を向上
させることができる。
【0064】
本願で提供された実施例の類似部分は相互に参照すればよく、上記で提供された具体的な実施形態は、本願の全体的な構想の下でのいくつかの例に過ぎず、本願の保護範囲の限定を構成するものではない。当業者にとっては、創造的な労力を払わずに本願の態様に基づいて拡張されたいかなる他の実施形態は、本願の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0065】
100 放熱シェル、200 滲水コンポーネント、110 外壁ケーシング、111
第2注水孔、120 放熱チャンバー、130 固定ブラケット、131 環状シート、131a 第1環状シート、131b 第2環状シート、131c 第3環状シート、1311 透水孔、1312 摩擦材、132 支持柱、1321 透水孔、140 固定溝、201 第1注水孔。
【要約】
【課題】本願は、水中通信システムにおける水中機器に適用される水中機器の放熱装置を提供する。
【解決手段】放熱装置は、放熱シェルと滲水コンポーネントとを含み、放熱シェルは水中機器外側に嵌設され、外壁ケーシングを含み、外壁ケーシングは円筒状構造であり、外壁ケーシングの断面直径が水中機器の断面直径よりも大きく、水中機器と外壁ケーシングとが同軸に設置され、滲水コンポーネントは円錐状構造であり、滲水コンポーネントに複数の第1注水孔がアレイ状に設けられ、滲水コンポーネントは放熱シェルの両端に設置され、滲水コンポーネント、水中機器のシェル及び外壁ケーシングによって囲まれて放熱チャンバーが形成されるように、滲水コンポーネントが外壁ケーシングに接続される。上記構造により、放熱チャンバー内部の液体及び放熱シェルを介して、浅水域の土砂中に埋設された水中機器の放熱効率を向上させることができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8