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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-04
(45)【発行日】2025-03-12
(54)【発明の名称】空調領域の制御方法及び空調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/80 20180101AFI20250305BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20250305BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20250305BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20250305BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20250305BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F11/74
F24F8/108 120
F24F13/08 A
F24F110:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024015389
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390018474
【氏名又は名称】新日本空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】深谷 良丸
(72)【発明者】
【氏名】岡本 隆太
(72)【発明者】
【氏名】木村 崇
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-21666(JP,A)
【文献】特許第6417458(JP,B1)
【文献】特開2011-220665(JP,A)
【文献】特開2024-119782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
F24F 8/108
F24F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調によって所定温度範囲に維持する必要がある床から所定高さまでを空調対象領域とし、この空調対象領域の床上高さを任意の高さに設定するための空調領域の制御方法であって、
前記空調対象領域の設定温度と空調機の送風温度との差を給気温度差とし、空調機の最大風量に対する送風量の割合を最大風量比とし、空間の床面積に対する空間内に設置された熱負荷の占有面積の割合を負荷面積占有率としたとき、
各給気温度差毎に、前記最大風量比をパラメータとした、前記負荷面積占有率と前記床上高さとの関係を得ておき、
これらの関係から、任意の床上高さを得るための前記給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定することを特徴とする空調領域の制御方法。
【請求項2】
空調によって所定温度範囲に維持する必要がある床から所定高さまでを空調対象領域とし、この空調対象領域の床上高さを任意の高さに設定するための空調領域の制御方法であって、
前記空調対象領域の設定温度と空調機の送風温度との差を給気温度差とし、空調機の最大風量に対する送風量の割合を最大風量比とし、空間の床面積に対する空間内に設置された熱負荷の占有面積の割合を負荷面積占有率としたとき、
各最大風量比毎に、前記給気温度差をパラメータとした、前記負荷面積占有率と前記床上高さとの関係を得ておき、
これらの関係から、任意の床上高さを得るための前記給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定することを特徴とする空調領域の制御方法。
【請求項3】
前記空調機は、空気の温度調整を行う冷却コイル部と、空気を圧送する送風装置部と、空気の浄化を行うフィルタ部とを備え、
空間の側部から空調された空気を横方向に吹き出す横吹出し型の空調機である請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法。
【請求項4】
前記空調機の吹出口には、前方に対するドラフト気流を抑制して下方向に整流するフードが設けられている請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法。
【請求項5】
前記空調対象領域に保証温度範囲が要求される製品が配置される場合において、前記空調対象領域の床上高さを1.5m以下に設定する請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法。
【請求項6】
前記給気温度差の範囲を8~12℃とし、前記最大風量比の範囲を50~100%とし、前記負荷面積占有率の範囲を2~20%としている請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法。
【請求項7】
上記請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法を用いた制御器を有することを特徴とする空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場やクリーンルーム、データセンターなどの大空間内における空調対象領域の床上高さを任意の高さに設定できるようにした空調領域の制御方法及び空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、下記特許文献1、2などにおいて、大空間の空調制御方法として、対象空間の床から2~4m程度までの高さを空調対象領域として所定温度範囲に維持する一方で、この空調対象領域よりも上部の空間(非空調領域)は前記空調対象領域から押し出された高温の空気が介在することにより、空間全体としては高さ方向に水平温度分布が形成されるようにした空調制御方式について、その制御方法や制御装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6417458号公報
【文献】特許第6622857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の温度範囲に制御された空調対象領域の高さは、ユーザーにより異なる高さに設定されるものであり、任意の高さに設定できるようにすることが望ましい。ところが、この空調対象領域の高さは、室内に配置される熱負荷などによって異なるため、これまでは対象となる室毎に高さ方向の温度分布を測定しながら、空調対象領域が所定の温度範囲となるように、風量や送風温度などを試行錯誤しながら調整することにより決定していた。
【0005】
このようにして決定された値は、試行錯誤の結果得られるものであるため、省エネルギー化ということが余り考慮されておらず、未だ改善の余地が残されていた。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、省エネルギー化を図りつつ、空調対象領域の高さを任意に設定できるようにした空調領域の制御方法及び空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、空調によって所定温度範囲に維持する必要がある床から所定高さまでを空調対象領域とし、この空調対象領域の床上高さを任意の高さに設定するための空調領域の制御方法であって、
前記空調対象領域の設定温度と空調機の送風温度との差を給気温度差とし、空調機の最大風量に対する送風量の割合を最大風量比とし、空間の床面積に対する空間内に設置された熱負荷の占有面積の割合を負荷面積占有率としたとき、
各給気温度差毎に、前記最大風量比をパラメータとした、前記負荷面積占有率と前記床上高さとの関係を得ておき、
これらの関係から、任意の床上高さを得るための前記給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定することを特徴とする空調領域の制御方法が提供される。
【0008】
上記請求項1記載の発明では、後述するシミュレーションから、各給気温度差毎に、最大風量比をパラメータとした、負荷面積占有率と床上高さとの関係を得ておき、この関係から、任意の床上高さを得るための給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定している。具体的には、空調対象領域に配置される製品の要求温度と空調機の送風温度とから給気温度差が決定され、この給気温度差において空調機の最大風量比を設定するとともに、熱負荷を所定の面積占有率で配置することにより、空調対象領域の床上高さが求まる。このようにして求めた各値は、試行錯誤の結果得られた値ではなく、予め求めておいた関係から得られるものなので、空調機のエネルギー効率を考慮した値を設定することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0009】
請求項2に係る本発明として、空調によって所定温度範囲に維持する必要がある床から所定高さまでを空調対象領域とし、この空調対象領域の床上高さを任意の高さに設定するための空調領域の制御方法であって、
前記空調対象領域の設定温度と空調機の送風温度との差を給気温度差とし、空調機の最大風量に対する送風量の割合を最大風量比とし、空間の床面積に対する空間内に設置された熱負荷の占有面積の割合を負荷面積占有率としたとき、
各最大風量比毎に、前記給気温度差をパラメータとした、前記負荷面積占有率と前記床上高さとの関係を得ておき、
これらの関係から、任意の床上高さを得るための前記給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定することを特徴とする空調領域の制御方法が提供される。
【0010】
上記請求項2記載の発明では、各最大風量比毎に、給気温度差をパラメータとした、負荷面積占有率と床上高さとの関係を得ておき、これらの関係から、任意の床上高さを得るための給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定している。ここでは、はじめに最大風量比を決めてから、他の条件を決定している。
【0011】
請求項3に係る本発明として、前記空調機は、空気の温度調整を行う冷却コイル部と、空気を圧送する送風装置部と、空気の浄化を行うフィルタ部とを備え、
空間の側部から空調された空気を横方向に吹き出す横吹出し型の空調機である請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法が提供される。
【0012】
上記請求項3記載の発明では、前記冷却コイル部で温度調整され、前記フィルタ部で浄化された空気が、送風装置部で圧送される空調機であって、空間の側部から空調された空気を横方向に吹き出す横吹出し型の空調機を用いているため、空調機から吹き出された空気が空間の下層部に流れ込みやすくなり、空間の下層部から上層部に向けて高さ方向に徐々に温度が上昇する水平温度分布が形成されやすくなる。
【0013】
請求項4に係る本発明として、前記空調機の吹出口には、前方に対するドラフト気流を抑制して下方向に整流するフードが設けられている請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法が提供される。
【0014】
上記請求項4記載の発明では、前記空調機の吹出口に、前方に対するドラフト気流を抑制して下方向に整流するフードを設けているため、空調機から吹き出た空気がより一層空間の下層部に流れ込みやすくなり、空間の下層部から上層部に向けて高さ方向に徐々に温度が上昇する水平温度分布が形成されやすくなる。
【0015】
請求項5に係る本発明として、前記空調対象領域に保証温度範囲が要求される製品が配置される場合において、前記空調対象領域の床上高さを1.5m以下に設定する請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法が提供される。
【0016】
上記請求項5記載の発明では、工場やクリーンルームなどにおいて保証温度範囲が要求される製品が配置される高さ以下の範囲だけを所定温度以下に制御しているため、空調機の消費エネルギーを低減することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0017】
請求項6に係る本発明として、前記給気温度差の範囲を8~12℃とし、前記最大風量比の範囲を50~100%とし、前記負荷面積占有率の範囲を2~20%としている請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法が提供される。
【0018】
上記請求項6記載の発明では、シミュレーションで用いた各パラメータの範囲を示している。
【0019】
請求項7に係る本発明として、上記請求項1、2いずれかに記載の空調領域の制御方法を用いた制御器を有することを特徴とする空調装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、省エネルギー化を図りつつ、空調対象領域の高さを任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】空調機1を設置した空間3の縦断面図である。
図2】空調機1の縦断面図である。
図3】空調機1の横断面図である。
図4】空調用吹出口20を取り付けた空調機1の斜視図である。
図5】空調用吹出口20を示す、正面側の斜視図である。
図6】その裏面側の斜視図である。
図7】空調用吹出口20を示す、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図である。
図8図7のVIII-VIII線矢視図である。
図9図7のIX-IX線矢視図である。
図10】従来の空調用吹出口50の気流を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図11】空調用吹出口20の気流を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図12】各給気温度差毎の、最大風量比をパラメータとした、負荷面積占有率と床上高さとの関係を示すグラフである。
図13】各最大風量比毎の、給気温度差をパラメータとした、負荷面積占有率と床上高さとの関係を示すグラフである。
図14】シミュレーションで用いた空間3の斜視図である。
図15】その平面図である。
図16】評価エリアを示す平面図である。
図17】高さ方向の温度分布を示すグラフの一例である。
図18】最大風量比と空調対象領域4の床上高さとの関係を示すグラフの一例である。
図19】比較例1の結果を示す空間の温度分布図である。
図20】比較例1の結果を示す高さ方向の温度分布図である。
図21】比較例2の開口率の条件を示す空調機の正面図である。
図22】比較例2の結果を示す空間の温度分布図である。
図23】比較例2の結果を示す高さ方向の温度分布図である。
図24】負荷面積占有率の条件を示す空間3の斜視図である。
図25】負荷面積占有率19.2%における空間3の温度分布図である。
図26】負荷面積占有率19.2%における高さ方向の温度分布図である。
図27】負荷面積占有率19.2%における最大風量比と床上高さとの関係を示すグラフである。
図28】負荷面積占有率19.2%における給気温度差と床上高さとの関係を示すグラフである。
図29】負荷面積占有率11.5%分散における空間3の温度分布図である。
図30】負荷面積占有率11.5%分散における高さ方向の温度分布図である。
図31】負荷面積占有率11.5%分散における最大風量比と床上高さとの関係を示すグラフである。
図32】負荷面積占有率11.5%分散における給気温度差と床上高さとの関係を示すグラフである。
図33】負荷面積占有率11.5%集中における空間3の温度分布図である。
図34】負荷面積占有率11.5%集中における高さ方向の温度分布図である。
図35】負荷面積占有率11.5%集中における最大風量比と床上高さとの関係を示すグラフである。
図36】負荷面積占有率11.5%集中における給気温度差と床上高さとの関係を示すグラフである。
図37】負荷面積占有率7.7%における空間3の温度分布図である。
図38】負荷面積占有率7.7%における高さ方向の温度分布図である。
図39】負荷面積占有率7.7%における最大風量比と床上高さとの関係を示すグラフである。
図40】負荷面積占有率7.7%における給気温度差と床上高さとの関係を示すグラフである。
図41】負荷面積占有率3.8%における空間3の温度分布図である。
図42】負荷面積占有率3.8%における高さ方向の温度分布図である。
図43】負荷面積占有率3.8%における最大風量比と床上高さとの関係を示すグラフである。
図44】負荷面積占有率3.8%における給気温度差と床上高さとの関係を示すグラフである。
図45】負荷面積占有率2.6%における空間3の温度分布図である。
図46】負荷面積占有率2.6%における高さ方向の温度分布図である。
図47】負荷面積占有率2.6%における最大風量比と床上高さとの関係を示すグラフである。
図48】負荷面積占有率2.6%における給気温度差と床上高さとの関係を示すグラフである。
図49】各最大風量比毎の、負荷面積占有率をパラメータとした、給気温度差と床上高さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
本発明に係る空調領域の制御方法は、図1に示されるように、工場やクリーンルーム、データセンターなどの大規模な空間3内に製造装置やサーバーなどの熱負荷2が設置された空調領域について、同一の空間3内を、空調機1を用いた空調によって所定温度範囲に維持する必要がある床から所定高さまでの空間である空調対象領域4と、この空調対象領域4の上部の空間である非空調領域5とに設定し、前記空調対象領域4の床上高さHを任意の高さに設定するための方法である。
【0024】
前記空間3は、同一空間内を、床から所定高さまでの空調対象領域4と、その上部の非空調領域5とに設定している。図1では、前記空調対象領域4と非空調領域5とが隣接するように図示されているが、実際にはこれらの間には温度遷移領域が存在しており、空調対象領域4から非空調領域5に行くに従って徐々に層状に温度が高くなっている。これら空調対象領域4と非空調領域5との境界は、空間3に仮想的に存在するものであり、空調設計の当初に設計条件として設定され、この設計条件の下で空調機1の諸条件が設計されることとなる。
【0025】
例えば、工場で生産される製品などに要求される保証温度範囲が23℃±3℃の場合、空調によってこの温度範囲を保証する空調対象領域(タスクゾーン)が床上高さ1.5m以下、好ましくは1.2~1.5m程度までに設定され、その上層に作業者のための対人空調の温度範囲(例えば28℃以下)の領域がワークゾーンとして高さ2m程度までに設定され、それより上層が非空調領域5として設定される。
【0026】
(空調機)
先ずはじめに前記空調機1について説明すると、前記空調機1としては、公知の空調機を制限なく用いることができるが、特に空間3の側部から空調された空気を横方向に吹き出す横吹出し型の空調機を用いるのが好ましい。このような空調機1としては、図示例のように、単体の装置として製造され、空間3内の任意の位置に設置できるようにユニット化されたものが用いられる。
【0027】
具体的には、図1に示されるように、前記非空調領域5の空気を導入する空気導入部11と、この空気導入部11に導入された空気の温度調整を行う冷却コイル部7と、前記冷却コイル部7によって温度調整された空気を圧送する送風装置部8と、空気の浄化を行うフィルタ部9とを備えている。
【0028】
前記非空調領域5内の高温空気の少なくとも一部は、前記空調機1の側面上部に形成された開口部を通って空気導入部11内に横方向に流れ込むようになっている。これによって、空調機1から空間3内に吹き出た空調空気の少なくとも一部は、空調対象領域4から非空調領域5を通って空調機1の空気導入部11に戻る空気の循環経路が形成されている。
【0029】
図2に示されるように、前記空気導入部11に導入された空気は、冷却コイル部7において温度が調整(冷却)された後、空調機1の背面部分に形成されたチャンバ13に供給される。その後、前記チャンバ13内の空気が、送風装置部8(ファン)とフィルタ部9を通過した後、空調機1の吹出口を通って室内に供給される。
【0030】
前記フィルタ部9に備えられる空気の浄化を行うフィルタとしては、対象となる空間3が工場やデータセンターなどとして利用される場合は中性能フィルタ、粗じんフィルタなどを用い、空間3がクリーンルームとして利用される場合は高性能フィルタを用いることができる。
【0031】
前記送風装置部8とフィルタ部9としては、別体に形成されたものをそれぞれ配置することも可能であるが、これらを一体化した汎用のファンフィルタユニット(FFU)を配置するのが好ましい。このファンフィルタユニット8、9は、1台で構成してもよいが、図3に示されるように、複数台を上下方向に並列配置するのが望ましい。
【0032】
(空調用吹出口)
前記空調機1の吹出方式については特に制限がなく、通常の方式で吹き出してもよいが、本発明では特に、空調機1の吹出面に設けられる空調用吹出口として、前方に対するドラフト気流を抑制して下方向に整流するフードが設けられたものを使用するのが好ましい。このような空調用吹出口としては、特開2023-152336号公報に開示されたものが好適である。前記空調用吹出口について、同公報の記載を引用して以下に説明する。
【0033】
前記空調用吹出口20は、図4図9に示されるように、空調機1の外面を覆う平板に、室内に空調空気を吹き出す吹出開口部21、21…が複数備えられたものである。この空調用吹出口20の外縁部には、空調機1の外面に固定するための空調機1側に突出するフランジ部20a(図6参照。)が設けられている。
【0034】
前記空調用吹出口20は、各吹出開口部21に、該吹出開口部21を通過した空調空気を一定の方向に整流するフード22が設けられている。つまり、吹出開口部21を通過して空調機1の前面に対して垂直に前方に向けて直進する方向に吹き出た空調空気は、吹出開口部21の外側に設けられたフード22によって、これまで空調機1の前面に対して垂直に直進していた方向とほぼ直交する下方向に気流が変化され、整流されるようになっている。
【0035】
この気流について、図10及び図11に基づいてより詳細に説明すると、従来の空調用吹出口50では、図10に示されるように、空調機1の前方に、空調機1の前面とほぼ直交する方向に直進する気流が形成されるため、空調機1の前方に存在する装置又は人Xの全体に、ドラフト気流が過度に当たって装置又は人Xに悪影響を与える場合があった。また、空調機1から吹き出されたドラフト気流による空調空気と、空調機1の高さ方向の全長に亘る前方の室内空気とが混合されることにより、空調効率が低下するおそれがあった。
【0036】
これに対して、前記空調用吹出口20では、図11に示されるように、前記フード22によって吹出開口部21を通過した空調空気が下方向に整流され、床面に沿って流れるため、空調機1の前方に存在する装置又は人Xの全体にドラフト気流が当たるのが防止できる。また、空調機1から吹き出されたドラフト気流が空調領域の床面に沿って流れるため、床面から高さ方向に層状の水平温度分布が形成されるようになり、対象空間の所定の床上高さを空調対象領域として所定の温度範囲に維持しやすくなる。
【0037】
前記吹出開口部21を通過した空調空気が下方向に整流される原理は、図11(B)に示されるように、上方側に配置されたフード22から吹き出た下方向の気流が、下方向に隣接するフード22の外面に当接し、その前面側に渦Vを形成することにより、この渦Vによってその外側を流れる気流が吹出口側に誘引され、吹出口前面に沿った下方向の気流が形成されやすくなると考えられる。
【0038】
前記空調用吹出口20の構造について更に詳細に説明すると、前記吹出開口部21の平面形状は、所定の方向に細長い細長形状で形成されており、具体的には、前記フード22によって空調空気が整流される方向と直交する方向に長い長方形状や長円形状、楕円形状等で形成されている。図示例の場合、空調空気が整流される下方向と直交する幅方向に長い長方形状で形成されている。空調機1の前面に形成された複数の吹出開口部21は、全て同じ形状及び寸法で形成されている。
【0039】
前記吹出開口部21は、少なくとも空調空気が整流される上下方向に沿って所定の間隔で複数設けられてればよく、これと直交する幅方向には必ずしも複数設ける必要はない。整流される方向に複数の吹出開口部21が設けられることにより、上述のフード22外面に渦Vが形成され、吹出口前面に沿った気流が形成されやすくなる。図示例の場合、前記吹出開口部21は、空調空気が整流される上下方向に沿って所定の間隔で複数配置されるとともに、これと直交する幅方向にも所定の間隔で複数配置されている。より具体的には、前記吹出開口部21は、上下方向に所定の間隔で8箇所配置されたものを1列として、この列が幅方向に2列並列して配置されることにより、合計16箇所に形成されている。
【0040】
各吹出開口部21の外側を覆う前記フード22は、図7(A)に示される空調用吹出口20の正面視で、該吹出開口部21の全部を覆うように配置されている。つまり、空調用吹出口20の前面を正面から見たとき、吹出開口部21の全部がフード22によって覆われており、吹出開口部21がフード22に隠れて見えないようになっている。これによって、吹出開口部21の開口面に対して垂直に直進する空調空気は、必ず前記フード22に当接し、このフード22によって気流の方向が確実に変化するようになっている。
【0041】
前記フード22は、詳細には図8及び図9に示されるように、吹出開口部21の外縁部又はその近傍から、空調用吹出口20の正面板に対してほぼ垂直に突出する天板23及び側板24、24と、前記吹出開口部21に対して離隔する位置で対向する幕板25とから構成され、吹出開口部21に連通する外側に、上面及び側面がそれぞれ天板23、側板24及び幕板25で囲われるとともに、下面が開放する略直方体の箱形の空間部を形成するものである。これによって、前記吹出開口部21を通過してフード22内に流入した空調空気は、開放する下方側に向けて流れるようになる。
【0042】
前記天板23及び側板24は、吹出開口部21の開口部(空調用吹出口20の正面板)に対してほぼ垂直に突出しており、突出方向の中間で折れ曲がったり傾斜したりせず、垂直方向にほぼ真っ直ぐに延びている。このため、天板23及び側板24によっては、吹出開口部21から吹き出た空調空気の気流の向きが変化せず、吹出開口部21に対向する幕板25まで気流がほぼ直進するようになっている。
【0043】
前記幕板25は、前記天板23及び側板24の突出側端部にほぼ直交して接続され、吹出開口部21の開口面(空調用吹出口20の正面板)に対してほぼ平行して配置される。吹出開口部21から吹き出た空調空気は直進して幕板25に当接することにより、気流が直角方向に変化する。
【0044】
前記幕板25は、図7(A)に示されるように、吹出開口部21の平面形状より大きな形状を有している。また、前記幕板25は、気流を整流する方向に対して、吹出開口部21の寸法より長い寸法で形成されている。つまり、図示例のように気流を下方向に整流する場合、幕板25の下端が吹出開口部21の下端より下側に延びている。これによって、吹出開口部21から開口面に対して垂直に直進する気流がそのまま直進せず、幕板25に確実に当接して気流方向を変化させることができる。また、直ぐ上側に隣接する吹出開口部21から下方向に流れてきた気流が幕板25の外面側で渦Vを形成しやすくなり、その外側を流れる気流を吹出口側に誘引しやすくなるという効果も奏する。幕板25の気流整流方向の長さは、吹出開口部21の気流整流方向の長さに対して、1.2倍以上とするのが好ましく、1.5~3倍がより好ましく、1.5~2倍が特に好ましい。
【0045】
前記天板23と幕板25との隅角部及び側板24と幕板25との隅角部にはそれぞれ、若干のR加工が施されるようにしてもよいが、ほぼ直角に接続しているのが好ましい。これらの隅角部がほぼ直角に形成されることにより、吹出開口部21から直進して幕板25に当接した気流がその後、直角方向に変化しやすくなる。これらの隅角部にRを設ける場合、その半径は、天板23及び側板24が吹出開口部21から突出する長さの1/2以下、好ましくは1/10以下とするのがよい。
【0046】
図5及び図7に示されるように、前記フード22によって整流された方向に隣り合うフード22、22間の両側部に、これらのフード22、22同士を連結するフード間側板26を配置することにより、前記フード22によって整流された気流が隣接するフード22に向けて流れやすくなるので好ましい。図示例の場合、上下方向に隣り合うフード22、22間にそれぞれ前記フード間側板26が設けられている。前記フード間側板26は、隣接するフード22、22の側板24同士を連結するものであり、フード22の側板24とほぼ等幅(空調用吹出口20の正面板からの突出長がほぼ同じ)に形成されている。なお、最下部のフード22から空調用吹出口20の下端部に掛けても同様に前記フード間側板26を設けるのが好ましい。これらフード間側板26、26間の前面側は開放している。
【0047】
(空調領域の制御方法)
次に、本発明に係る空調領域の制御方法について説明する。具体的な制御方法を説明する前に、本発明で使用する用語の定義について説明する。
【0048】
本発明では、空調対象領域4の設定温度Teと空調機1の送風温度Tbとの差を給気温度差T(T=Te-Tb)と定義する。前記空調対象領域4の設定温度Teは、空調対象領域4に置かれた製品などに要求される温度であり、ユーザーが任意に設定する温度である。前記空調機1の送風温度Tbは、空調機1の冷却コイル部7を通過することによって調整された空気の温度であり、空調機1の吹出開口部21から吹き出される空気の温度である。例えば、空調機1の送風温度Tbが16℃の場合、空調対象領域4の設定温度Teが20℃であれば給気温度差Tは4deg(℃)、前記設定温度Teが24℃であれば給気温度差Tは8deg(℃)、前記設定温度Teが26℃であれば給気温度差Tは10deg(℃)、前記設定温度Teが28℃であれば給気温度差Tは12deg(℃)である。
【0049】
本発明では、空調機1の最大風量Wmaxに対する送風量Wbの割合を最大風量比W(W=W/Wmax×100%)と定義する。最大風量Wmaxは空調機1の仕様から得られ、送風量Wbは空調機1に備えられた送風装置部8(ファン)のインバーター制御などにより調整できる。
【0050】
本発明では、空間3の床面積Arに対する空間3内に設置された熱負荷2の占有面積Adの割合を負荷面積占有率A(A=Ad/Ar×100%)と定義する。前記熱負荷2の占有面積Adは、発熱する熱負荷2を平面視したときの面積であり、熱負荷2が複数台存在する場合は全ての合計面積である。
【0051】
本発明に係る制御方法では、図12に示されるように、各給気温度差毎に、最大風量比をパラメータとした、負荷面積占有率と床上高さとの関係を得ておき、これらの関係から、任意の床上高さを得るための前記給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定する。すなわち、空調対象領域4に配置される製品の要求温度と空調機1の送風温度とから給気温度差が決定され、この給気温度差において空調機1の最大風量比を設定するとともに、熱負荷2を所定の負荷面積占有率で配置することにより、空調対象領域4の床上高さが求まる。
【0052】
また、図13に示されるように、各最大風量比毎に、給気温度差をパラメータとした、負荷面積占有率と床上高さとの関係を得ておき、これらの関係から、任意の床上高さを得るための前記給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定するようにしてもよい。図13の関係図では、はじめに最大風量比を決めてから、他の条件を決定している。
【0053】
図12及び図13に示される負荷面積占有率と床上高さとの関係は、後段で詳述するシミュレーションにより得られたものである。
【0054】
図12及び図13に示される関係図では、負荷面積占有率と床上高さとの関係が線形の傾向を示すため、線図から各値が設定しやすいとともに、その傾向が把握しやすくなっている。なお、これらのグラフから各値を決定してもよいし、これらのグラフから得られた近似式から各値を決定してもよい。また、図12の関係図では給気温度差毎に床上高さとの関係が示され、図13の関係図では最大風量比毎に床上高さとの関係が示されているため、空調対象領域4の温度を先行的に決定したとき、及び風量を先行的に決定したときのいずれにも対応可能であり、幅広い空調設計に柔軟に対応できる制御方法となっている。図12及び図13に示される関係図から得られた各値は、試行錯誤の結果得られた値ではなく、予め求めておいた関係図から得られるものなので、空調機1のエネルギー効率を考慮した値を設定することができ、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0055】
本発明に係る空調装置は、上述の空調領域の制御方法を用いた制御器を備えている。この制御器は、前記空調機1に組み込まれていてもよいし、空調機1とは別途設けられるようにしてもよい。
【0056】
(シミュレーション)
以下、図12及び図13の関係図を得るためのシミュレーションの概要について説明する。
【0057】
シミュレーションでは、図14及び図15に示されるように、床面積7.2m×20.8m、高さ8mの空間3に対して、最大風量9000CMHの仕様を有し、吹出面に上記空調用吹出口20が備えられた横吹出し型の空調機1を、一方の短辺中央の壁際に1台設置するとともに、発熱密度が250W/mである複数の熱負荷2を種々のパターンで室中央部に配置したモデルを用い、空調機1の送風量、熱負荷2の配置パターンを変化させたときの床上高さ5mまでの温度分布を求めた。
【0058】
温度の測定地点は、図16に示されるように、両側の長辺の壁から1mの範囲を評価エリアとし、この評価エリアにおける各床上高さでの水平面の平均温度を求めた。その一例を図17に示す。図17は、空調機の送風温度及び送風量を一定とし、熱負荷2の配置パターンを図16及び図17に示されるように配置したときの高さ方向の給気温度差の分布をグラフに表したものである。図17に示されるように、高さ方向の中間領域に、床上高さが大きくなるに連れて給気温度差がほぼ直線的に上昇する遷移領域が存在し、これより上側及び下側の部分では、給気温度差がほぼ一定若しくは変化が緩やかな領域となっている。
【0059】
また、他の例として、図18は、最大風量比を変化させたとき、前記評価エリアの水平面積のうち95%が指定した給気温度差を満たす床上高さを示すグラフである。最大風量比50~90%の範囲では、最大風量比の増加に従って給気温度差の床上高さが直線的に高くなる傾向にある。
【0060】
<比較例1>
比較例1として、当初、上段と下段にそれぞれFFUが配置されるとともに、上段のFFUと下段のFFUで送風量を変化させることができる空調機1を使用し、上段と下段で送風量を変えることで、空調対象領域4の床上高さを任意に変化させることができるのではないかと考え、シミュレーションを行った。このときの空調機1の送風温度と最大風量比の条件を表1に示す。各ケースで空調機全体の合計風量比が140%となるように上下段の風量比を調整した。
【表1】
【0061】
その結果を図19及び図20に示す。図19は、空間3の縦断面視における温度分布を示す線図であり、(A)~(D)において太線が同じ温度を示す等温線である。図20は、各ケースにおける高さ方向の給気温度差を示すグラフである。図19(A)~(D)に示されるように、同じ温度を示す太線が各ケースでほぼ同じ領域に存在するとともに、図20に示されるように、高さ方向の温度分布も各ケースでほぼ同じ分布を示しており、顕著な差が表れていない。
【0062】
したがって、空調機1の上下段の風量を変化させても、空調対象領域4の床上高さを変化させることはできない結果となった。
【0063】
<比較例2>
次に、比較例2として、図21に示されるように、上段と下段のそれぞれに、開閉可能なシャッターを備えた吹出開口部21が8個ずつ配置され、前記シャッターを開け閉めすることにより、上段と下段で吹出口の開口率を変化させることが可能な空調用吹出口20を取り付けた空調機1を用いて、空調対象領域4の床上高さを任意に変化させることができるのではないかと考え、シミュレーションを行った。図21において、黒く塗りつぶされた吹出開口部21がシャッターを閉じた状態、それ以外の吹出開口部21がシャッターを開いた状態である。上段、下段とも風量は同じとしたので、開口率50%のものは、開口率100%のものの約2倍の風速となる。
【0064】
その結果を図22及び図23に示す。図22(A)~(D)に示されるように、同じ温度を示す太線が各ケースでほぼ同じ領域に存在するとともに、図23に示されるように、高さ方向の温度分布も各ケースでほぼ同じ分布を示しており、顕著な差が表れていない。
【0065】
したがって、吹出口の開口率を変化させても、空調対象領域4の床上高さを変化させることはできない結果となった。
【0066】
<実施例>
上記比較例1及び比較例2の結果を踏まえて、上段及び下段の風量を1:1で同じとし、吹出口の開口率も上段及び下段とも100%で全開とした条件の下で、最大風量比を表2に示すように50%~100%の範囲で変化させるとともに、熱負荷2の配置により負荷面積占有率を図24に示すように変化させたとき、空調対象領域4の床上高さに対する温度を求めた。前述の通り、いずれの負荷面積占有率においても発熱密度は250W/mで一定である。つまり、負荷面積占有率が小さいほど、1台あたりの熱負荷2は高温となり、上昇気流が強く発生することとなる。負荷面積占有率11.5%分散と負荷面積占有率11.5%集中とは、全体の熱負荷2の台数は27台で同じだが、その配置形態が異なるものである。「分散」では9台ずつ間隔を空けて配置し、「集中」では27台まとめて配置している。なお、空調機1の送風温度は17℃で一定とした。
【表2】
【0067】
負荷面積占有率19.2%のときの結果を図25図28に示す。図25(A)~(F)において、太線で示された同じ温度(26℃、給気温度差9℃)の等温線に着目すると、最大風量比を100%から徐々に低下させたとき、一定温度以下となる等温線(給気温度差)の高さが徐々に低くなる傾向にある。このことから、最大風量比を調整することによって、空調対象領域4の床上高さを調整できることがわかる。この傾向は、図26に示される温度勾配が比較的直線的に変化する中間領域の温度遷移域(図26中、点線で挟まれた領域)においても同様である。なお、図25(F)の最大風量比100%のときの26℃の等温線は、縦軸上限より上方の欄外に存在している。
【0068】
図27は、水平面積率95%以上で各給気温度差(8、9、10、12deg)を満足する床上高さと最大風量比との関係を示したものである。このグラフから、最大風量比を増加させることにより床上高さが増加し、その関係は線形関係を示すことがわかる。また、給気温度差を調整することによって、空調対象領域4の床上高さを調整できることがわかる。
【0069】
図28は、最大風量比をパラメータとして、給気温度差と床上高さとの関係を示したものである。このグラフから、給気温度差を増加させることによって床上高さが増加し、その関係は線形関係を示すことがわかる。
【0070】
以下、同様にして、負荷面積占有率11.5%分散の結果を図29図32に、負荷面積占有率11.5%集中の結果を図33図36に、負荷面積占有率7.7%の結果を図37図40に、負荷面積占有率3.8%の結果を図41図44に、負荷面積占有率2.6%の結果を図45図48に示す。これらの結果からも、上述と同様の傾向が示されている。
【0071】
以上の結果から、各最大風量比毎に、負荷面積占有率をパラメータとした、給気温度差と床上高さとの関係をまとめると、図49に示される通りとなる。図49(A)~(F)に示されるように、負荷面積占有率を低下させると、一定温度となる床上高さが上昇する傾向にあることがわかる。これは、発熱密度を一定とした本シミュレーションにおいて、負荷面積占有率が低い方が、単位面積あたりの発熱量が大きくなり、強い上昇気流を発生するためと考えられる。したがって、負荷面積占有率を調整することによって、空調対象領域4の床上高さを調整できることがわかる。
【0072】
また、以上の結果から、各給気温度差毎に、最大風量比をパラメータとした、負荷面積占有率と床上高さとの関係を求めると、図12に示される通りとなる。上述の通り、図12に示される関係図から、任意の床上高さを得るための給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定することができる。
【0073】
更に、以上の結果から、各最大風量比毎に、給気温度差をパラメータとした、負荷面積占有率と床上高さとの関係を求めると、図13に示される通りとなる。なお、図13において、負荷面積占有率を示す横軸は、対数目盛りで表している。上述の通り、図13に示される関係図から、任意の床上高さを得るための給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定することができる。
【0074】
〔他の形態例〕
前記空間3を正圧に保つため、外気を空間3内に導く外気導入路(ダクト)を設けてもよい。この外気導入路を通って室内に供給される空気は、外気処理機によって温度、湿度及び清浄度が調整された外気とするのが望ましい。前記外気導入路は、空間3の天井面又は壁面から非空調領域5内の側方(横方向)に向けて空気を吹き出すように構成されている。
【符号の説明】
【0075】
1…空調機、2…熱負荷、3…空間、4…空調対象領域、5…非空調領域、6…外気処理機、7…冷却コイル部、8…送風装置部、9…フィルタ部、11…空気導入部、13…チャンバ、20…空調用吹出口、21…吹出開口部、22…フード
【要約】
【課題】省エネルギー化を図りつつ、空調対象領域の高さを任意に設定できるようにする。
【解決手段】空調によって所定温度範囲に維持する必要がある床から所定高さまでを空調対象領域4とし、この空調対象領域4の床上高さを任意の高さに設定するための空調領域の制御方法である。前記空調対象領域4の設定温度と空調機1の送風温度との差を給気温度差とし、空調機1の最大風量に対する送風量の割合を最大風量比とし、空間3の床面積に対する空間3内に設置された熱負荷2の占有面積の割合を負荷面積占有率としたとき、各給気温度差毎に、前記最大風量比をパラメータとした、前記負荷面積占有率と前記床上高さとの関係を得ておき、これらの関係から、任意の床上高さを得るための前記給気温度差、最大風量比及び負荷面積占有率を決定する。
【選択図】図12
図1
図2
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