(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】液体洗浄剤
(51)【国際特許分類】
C11D 17/08 20060101AFI20250306BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20250306BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20250306BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20250306BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20250306BHJP
C11D 9/02 20060101ALI20250306BHJP
C11D 9/12 20060101ALI20250306BHJP
C11D 9/26 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
C11D17/08
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/36
A61Q19/10
C11D9/02
C11D9/12
C11D9/26
(21)【出願番号】P 2024068676
(22)【出願日】2024-04-04
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524147694
【氏名又は名称】有限会社エフ・アールエム
(72)【発明者】
【氏名】深谷 美香
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103710175(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105687002(CN,A)
【文献】特開2011-051983(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0099068(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0034738(KR,A)
【文献】特開2013-018940(JP,A)
【文献】特開平04-091198(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106281807(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0074808(KR,A)
【文献】特開2000-239146(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113481070(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
A61Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物油脂を60℃~85℃の温度になるように加熱し、加熱植物油脂を得るステップ(I)と、
前記加熱植物油脂の温度を維持したまま、前記加熱植物油脂に、硫化水素イオン、チオ硫酸イオン及び遊離硫化水素の合計重量が2mg/kg以下の温泉水及びアルカリ原料を添加し、混合するステップ(II)と、
前記ステップ(II)で得られた混合物において鹸化反応が維持されるように保温し、粘性の高い液体を得るステップ(III)と、
ステップ(III)で得られる粘性の高い液体に、硫化水素イオン、チオ硫酸イオン及び遊離硫化水素の合計重量が2mg/kg以下の温泉水を液体洗浄剤中10~85質量%になるように添加及び混合し、液体洗浄剤を得るステップ(IV)とを含む、液体洗浄剤の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(II)において、アルコールを添加する、請求項1に記載の液体洗浄剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の製造方法により、製造された液体洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肌に優しい液体洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、モノを洗浄する洗浄剤として洗浄力が高い液体洗浄剤が用いられている。
【0003】
一方で、洗浄力は劣るが手肌に優しい液体洗浄剤も用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】https://www.coopclean.co.jp/qa/kitchen_02/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、モノを洗浄する市販の液体洗浄剤は洗浄力が高く泡立ちが良い液体洗浄剤が主流であり、モノを洗浄するには良いが肌が弱い人が素手で使用する際には洗浄成分が強過ぎて手荒れを招くことがある。
【0006】
肌に刺激が少ないとされる液体洗浄剤があるものの、洗浄力と泡立ちが劣るため油分が落ち辛く液体洗浄剤の機能を感じないことがある。更に洗浄力が高い液体洗浄剤に比べると肌刺激は少ないが、手荒れを招くこともあるため、ゴム手袋を着用して洗浄力の高い液体洗浄剤を使用することがある。
【0007】
液体洗浄剤の中で肌刺激が少ないとされる液体石けんがあるが、例えば台所用合成洗剤と同じ洗浄力を出すためには非特許文献1のように多量の液体石けんが必要とされており環境面で問題がある。更に使用後に肌の乾燥を招くことがある。
【0008】
従来から、温泉水が皮膚の水分を保持して、皮膚を保湿する効果があると考えられ美容目的としての温泉水を原料とした固形石けんがある。これらの石けんは身体用の美容石けんであるため油汚れなどモノを洗浄できるほどの洗浄力が無い。更に液体でないためモノを洗浄する作業時においては利便性が悪い。
【0009】
本発明の課題は、手肌に優しいと言われている合成洗浄剤と同量で洗浄力や泡立ち、泡切れが良く、肌にも優しい液体洗浄剤を提供することにある。本発明でいう液体洗浄剤とは流動性を有する洗浄剤のことである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0011】
このためになされた本発明は、以下の手段により課題を解決することができた。
(1)脂肪酸塩と温泉水とを含む石けん成分を含有する液体洗浄剤。
【0012】
(2)油脂と温泉水を用いる液体洗浄剤の製造方法。
【0013】
(3)温泉水中で油脂とアルカリ成分を反応させて得た石けん成分を含有する液体洗浄剤。
【0014】
(4)温泉水中で油脂とアルカリ成分を反応させて得た石けん成分を用いることを特徴とする液体洗浄剤の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は液体洗浄剤に関し、手肌に優しいと言われている合成洗浄剤と同量で洗浄力や泡立ち、泡切れが良く、肌にも優しい液体洗浄剤である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】タッパー内に実施例1の液体洗浄剤と比較例2の液体洗浄剤、スポンジ、水をそれぞれ入れた状態。
【
図6】実施例1の液体洗浄剤と比較例2の液体洗浄剤の泡立ちを比較。
【
図7】実施例1の液体洗浄剤と比較例2の液体洗浄剤のタッパー内での洗浄力比較。
【
図8】実施例1の液体洗浄剤と比較例2の液体洗浄剤のスポンジでの洗浄力比較。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を以下で説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。また、以下の実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0018】
本発明に係る液体洗浄剤は、脂肪酸塩と温泉水を主成分として形成される。液体洗浄剤を形成するための原料について以下で詳述する。
【0019】
(A)脂肪酸塩
本発明に係る脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムなどが挙げられる。脂肪酸塩としては、2種以上を含有してもよい。脂肪酸塩の含有量は、液体洗浄剤の全質量に対して10~65質量%であることが好ましい。扱い易い流動性を保持するためには脂肪酸塩の含有量は、液体洗浄剤の全質量に対して60質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明に係る脂肪酸塩の原料としては油脂が用いられる。油脂には動物由来油脂と植物由来油脂があるが植物由来油脂のものがより望ましい。さらにその植物油脂は、単結合のみの飽和脂肪酸、または二重結合が1箇所の一価不飽和脂肪酸を主成分とすることが好ましい。単結合のみの飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸などが挙げられる。不飽和脂肪酸には二重結合が1箇所の一価不飽和脂肪酸と二重結合が2箇所以上の多価不飽和脂肪酸がある。一価不飽和脂肪酸にはパルミトレイン酸、オレイン酸などが挙げられ、多価不飽和脂肪酸にはリノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
【0021】
このような飽和脂肪酸、または一価不飽和脂肪酸を主成分とする植物油脂としては、例えば椿油、オリーブ油、ハイオレイックひまわり油、ハイオレイック紅花油、茶油、アーモンド油、マカデミアナッツ油、杏仁油、パーム核油、パーム油、ココヤシ油、アボカド油、菜種油、シア脂などが挙げられる。
【0022】
植物油脂を用いる場合には、2種以上を混合して用いることが好ましい。少なくとも1種は、単結合のみの飽和脂肪酸、または二重結合が1箇所の一価不飽和脂肪酸を主成分とすることが好ましい。更には、少なくとも1種は、主としてオレイン酸を含有する植物油脂が好ましい。
【0023】
脂肪酸塩の脂肪酸の含有割合は、脂肪酸の総質量に対して、オレイン酸を全体の20%以上、ラウリン酸を全体の3%以上、ミリスチン酸を全体の3%以上にすることが好ましい。このような所定の脂肪酸に対して所定の含有量の範囲内に調整することで、高密度で豊かな細かい泡を提供することができ、洗浄力と泡立ちを高めることができる。
【0024】
植物油脂の鹸化、すなわち脂肪酸塩の生成には、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ原料が使用される。アルカリ原料は植物油脂の総質量に対してその全てが鹸化され鹸化後のpH値が9以上11未満の範囲に保てる必要な量を添加されることが好ましい。また、脂肪酸塩と温泉水の合計は、液体洗浄剤の全体質量に対して、60質量%以上であることが望ましい。
【0025】
(B)温泉水
本発明に係る液体洗浄剤を構成する温泉水とは、地中から湧出した時の泉温が摂氏25度以上のもの、又は環境省指定の19の特定成分を一つでも有するものをいう。環境省より提示されている19の特定成分表を表1に示す。
【0026】
【0027】
本発明に係る液体洗浄剤を形成するための原料である温泉水は、温泉法が定める温泉の一部である鉱泉も含んでいてもよい。鉱泉とは,環境省の鉱泉分析指針の定義より地中から湧出する温水および鉱水の泉水で,多量の固形物質,またはガス状物質、もしくは特殊な物質を含むか,あるいは泉温が,源泉周囲の年平均気温より常に著しく高いものをいう。
【0028】
本発明の原料に用いる温泉水は温泉分析書には記載されていない成分もあり、各地で一つとして同一温泉水は無いと考えられ、発揮する効果の強弱はあると思われるが、概ね肌には有効である。しかし、液体洗浄剤は鼻からの距離が近いところで使用することが主なるところである。このため、匂いにおいて温泉水成分の「硫化水素イオン」、「チオ硫酸イオン」、「遊離硫化水素」の合計重量が2mg/kg以下の温泉水を用いるのが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る液体洗浄剤を形成するための温泉水は、温泉分析書には記載されていない成分もあり、各地で一つとして同一温泉水は無いと考えられる。各温泉水が発揮する効果の強弱はあると思われるが、概ね肌には有効である。しかし、一成分のみの含有量が突出していると、肌刺激を起こす可能性がある。このため、20mval%以上の成分が陰イオンと陽イオン中に合わせて2種類以上含まれている温泉水を用いることが好ましく、3種類以上含まれている温泉水を用いるのがより好ましい。
【0030】
本発明に係る液体洗浄剤を形成するための温泉水の割合は、液体洗浄剤の全質量に対して10~85質量%であることが好ましい。温泉水の割合を10~40質量%にすれば、粘性の高い液体洗浄剤になり、斜面箇所の汚れ落としや省スペースでの保管、頑固な汚れに対して高濃度での洗浄が可能になるなどの効果が期待でき、十分に本実施例の効果を発揮することができる。水分量の少ない粘性の高い液体洗浄剤から水分量の多い液体洗浄剤まで用途に合わせた水分割合にすることにより、洗浄効果に優れた肌に優しい液体洗浄剤を得ることが期待できる。本発明の液体洗浄剤は気温の低下により粘性が高まったり固化する場合があるが容器ごと温水で温めることにより液状に戻すことが出来る。
【0031】
温泉水の中には、メタケイ酸を含んでいるものがある。メタケイ酸はセラミドの生成を促す働きがあると考えられており、乾燥から肌を守る効果が期待できる。セラミドは角層細胞の隙間を埋める細胞間脂質の約50%を占めており、油分と水分の両方を繋ぐ性質を有する。角質層ではセラミド同士が繋がりつつ、水分の層と交互に重なり合うような構造(ラメラ構造)をとりながら、細胞間脂質が角層細胞の間を埋めている。セラミドが減少してその構造が乱れてしまうと、肌のバリア機能が低下して、外部からの刺激に弱くなり、肌トラブルが起こりやすくなる。
【0032】
従来の液体洗浄剤を使用するとこの構造が乱れてしまうことが多く、肌トラブルが起きやすくなると考えられている。メタケイ酸は全ての温泉水に含有されていない。そのため、メタケイ酸を補う役割を担うとともに、植物性セラミドの原料となる一例として、米ぬかなどを副原料として用いてもよい。米ぬかを用いることで、他の温泉成分との相乗効果により、更に手肌のトラブルを軽減できる効果が期待できる。
【0033】
肌バリア機能を高めるための副原料の一例として、前述の米ぬかなどの他に、皮脂膜を保護する蜜蝋などや、人間の肌に含まれる天然保湿因子中に最も多いアミノ酸のセリンを含んでいる繭玉などを用いることができる。上記の他にも小麦、こんにゃく芋、大豆、とうもろこし、麹、粕、ひじき、栗、柚子、みかん、桃、りんご、すっぽん、鳥、魚、牛、豚、はちみつなどを副材料に用いることが出来る。これらを副材料に用いることで、更に手肌のトラブルを軽減する効果が期待できる。
【0034】
バリア機能を向上させるために含有し得る副原料の含有量は、原料の全質量に対して、30質量%以下が好ましい。
【0035】
鹸化を更に促進する必要がある場合、必要に応じて無水エタノールを用いてもよい。無水エタノールの含有比は植物油脂の合計質量に対して40質量%以下であればよい。
【0036】
本発明に係る液体洗浄剤は、必要に応じ香りづけに精油を用いることができる。精油にはフローラル系、カンキツ系、ハーブ系、樹木系、スパイス系、樹脂系、エキゾチック系などがあり用途に合わせて使用することが望ましい。これらを混合してもよい。フローラル系としては、例えばラベンダー、ゼラニウム、ネロリ、パルマローザ、カモミールローマン、ミモザなどがある。カンキツ系としては、例えばレモン、メリッサ、シトロネラ、レモングラス、オレンジスウィート、マンダリン、ベルガモット、グレープフルーツ、ユズ、ライム、ビターオレンジなどがある。ハーブ系としては、例えばクラリセージ、マジョラムスウィート、フェンネル、スペアミント、ペパーミント、レモンティートリー、バジル、薄荷、ローズマリーなどがある。樹木系としては、例えばクロモジ、トドマツ、ひのき、すぎ、ひば、ユーカリ・ラディアータ、ユーカリ・シトリオドラ、ユーカリ・グロブルス、サイブレス、ジュニパーベリー、シダーウッド、ティートリー、プチグレン、パインニードル、ホーウッドなどがある。スパイス系としては、例えばカルダモン、コリアンダー、シナモンリーフ、ジンジャー、ブラックペッパーなどがある。樹脂系としては、例えばエレミ、フランキンセンス、ベンゾイン、ミルラなどがある。エキゾチック系としては、例えばイランイラン、サンダルウッド、パチュリ、パルマローザ、ペチパーなどがある。精油は液体洗浄剤の総質量に対して5質量%以下であることが望ましい。
【0037】
・液体洗浄剤の製造方法
本実施形態に係る液体洗浄剤は、例えば以下の手順で製造することができる。ただし製造方法はこれに限定されるものではない。
まず、手順1として、植物油脂を温める。加熱温度は、60℃~85℃の温度域であればよい。次に、手順2として、予め準備しておいた所定の成分を有する温泉水にアルカリ原料を添加し、十分に攪拌することによって、温泉水にアルカリ原料を溶解させる。そして、手順3として、上記「手順1」のように加熱した植物油脂にアルコールを均一に混合する。最後に、手順4として、上記「手順3.」の混合液と上記「手順2.」の混合液とを混ぜ、鹸化(塩基を用いて油脂を脂肪酸塩とグリセリンに加水分解)が維持されるように保温する。例えば、これらの手順によって、液体洗浄剤を製造することができる。
【実施例】
【0038】
本実施例を以下で詳述する。本発明は以下に限定されるものではない。
・実施例1
実施例1の液体洗浄剤は以下の原料を用いて製造された。
植物油脂:オリーブオイル 135g
パーム核油 50g
パーム油 15g
水分 :常温の温泉水A(アルカリ性単純温泉) 100g
温泉水Aの主な成分(20mval%以上のみを示す。)
(陽イオン)ナトリウムイオン 68.86mval%
カルシウムイオン 29.99mval%
(陰イオン)硫酸イオン 72.56mval%
無水エタノール 60g
水酸化ナトリウム 29g
【0039】
これらの原料を用いて、以下のような手順で液体洗浄剤を製造した。
手順1.植物油脂を75℃~85℃に温める。
手順2.温泉水に水酸化ナトリウムを溶かす。
手順3.上記「手順1.」の植物油脂に無水エタノールを混ぜる。
手順4.上記「手順3.」の混合液と上記「手順2.」の混合液を混ぜ、鹸化(塩基を用いて油脂を脂肪酸塩とグリセリンに加水分解)させる。
手順5.上記「手順4.」の混合物の化学反応が維持されるように、混合物が導入された容器を、24時間以上保温する。この後、概ね380gの粘性の高い液体洗浄剤を得た。
手順6.上記「手順5.」で得られた液体洗浄剤に、760gの温泉水Aを加えた。
これらの手順により、実施例1の液体洗浄剤を製造した。
【0040】
・実施例2
実施例2は、実施例1において、温泉水Aの代わりに、下記温泉水Bを原料として用いたことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
温泉水B:ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
(陽イオン)ナトリウムイオン 92.40mval%
(陰イオン)塩化物イオン 66.61mval%
炭酸水素イオン 33.11mval%
【0041】
・実施例3
実施例3は、実施例1において、温泉水Aの代わりに、下記温泉水Cを原料として用いたことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
温泉水C:ナトリウム-硫酸塩・塩化物冷鉱泉
(陽イオン)ナトリウムイオン 92.41mval%
(陰イオン)硫酸イオン 50.09mval%
塩化物イオン 32.78mval%
【0042】
・実施例4
実施例4は、実施例1において、温泉水Aの代わりに、下記温泉水Dを原料として用いたことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
温泉水D:ナトリウム-塩化物泉
(陽イオン)ナトリウムイオン 96.11mval%
(陰イオン)塩化物イオン 76.89mval%
【0043】
・実施例5
実施例5は、実施例1において、温泉水Aの代わりに、下記温泉水Eを原料として用いたことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
温泉水E:単純二酸化炭素冷泉
(陽イオン)カルシウムイオン 48.53mval%
ナトリウムイオン 42.05mval%
(陰イオン)炭酸水素イオン 61.32mval%
硫酸イオン 22.92mval%
【0044】
・実施例6
実施例6は、実施例1において、温泉水Aの代わりに、下記温泉水Fを原料として用いたことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
温泉水F:アルカリ性単純温泉
(陽イオン)ナトリウムイオン 95.39mval%
(陰イオン)炭酸水素イオン 22.61mval%
硫酸イオン 46.94mval%
【0045】
・実施例7
実施例7は、実施例1において、温泉水Aの代わりに、下記温泉水Gを原料として用いたことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
温泉水G:アルカリ性単純温泉
(陽イオン)ナトリウムイオン 88.54mval%
(陰イオン)硫酸イオン 63.93mval%
塩化物イオン 27.14mval%
【0046】
・実施例8
実施例8は、実施例1において、無水エタノールを添加しなかったことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
【0047】
・実施例9
実施例9は、実施例1の「手順1.」に蜜蝋1gを溶かし、「手順2.」に米ぬか:1.0g、および繭玉:1.0gを溶かしたことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
【0048】
・比較例1
比較例1は、実施例1において、温泉水Aの代わりに水道水を原料として用いたことを除いて、実施例1と同様に液体洗浄剤を製造した。
【0049】
ここで温泉成分の組成を表す「ミリバル(mval)」とは、イオンの電気量を表す単位で、温泉1kg中に含まれているイオン当量数バル(val)の千分の1の単位である。
【0050】
ミリバルの数値は具体的に次のような式で表されている。
ミリバル=
温泉水1kg中に含まれる成分量(mg)÷原子量(または分子量)×イオン価数
【0051】
また、「ミリバル%」は、温泉水成分を構成する一種の陽イオンのミリバル値を、陽イオンの合計ミリバル値で除して100を乗じた値を表す。陰イオンの場合も同様である。
【0052】
実施例1~9、および比較例1について、1.洗浄力、2.泡立ち、3.手の潤いを評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0053】
1.洗浄力、2.泡立ち
実施例1~9の其々と比較例1の洗浄力を以下のように評価した。
まず、実施例1~9と比較例1を其々のタッパーに、其々小さじ2杯のラー油を満遍なく塗った。次に、新品のスポンジを其々のタッパーに入れ、スポンジの上に其々大さじ1杯の水と其々小さじ1杯の実施例1~9および比較例1を垂らした。
【0054】
「2.泡立ち」を以下のように評価した。実施例1~9および比較例1では、タッパー内で其々30回ずつ揉む予定であったが、いずれも20回揉んだ後に泡がタッパーより溢れ出してしまった。このため、揉む回数を22回で止めた。したがって、いずれも「2.泡立ち」は優れており、差は見られなかった。
【0055】
タッパーに残ったラー油の残り具合により「1.洗浄力」を評価した。其々のタッパーからスポンジを取り出し、タッパー内に残存した泡を流水で洗い流すことにより、洗浄力を確認した。実施例1~9および比較例1のいずれも、タッパーの四隅にもラー油が残っておらず全体がキュッキュとした感触であった。したがって、いずれも「1.洗浄力」は優れており、差は見られなかった。
【0056】
スポンジに付着したラー油の付着具合により「1.洗浄力」を評価した。実施例1~9および比較例1により泡立てた後のスポンジの状態を観察した。いずれも、スポンジにラー油がほとんど付着していなかった。タッパー内の泡を流水で落とした後も其々のタッパーにラー油がほとんど残っていなかった。これは、ラー油が泡に吸収されたためであると思われる。したがって、いずれも「1.洗浄力」は優れており、差は見られなかった。
【0057】
3.手の潤い
実施例1~9の液体洗浄剤と比較例1の液体洗浄剤を用い、素手で食器洗いを行い、食器洗い前と食器洗い20分後における手の水分を測定した。測定個所を同一にするために右掌の労官で行った。水分の測定には、株式会社ビューティフルエンジェル社製のbelulu Skin Checker を用いた。なお、被験者は、冬場に手にあかぎれが発生する程度に肌が弱い者とした。
【0058】
比較例1と比較して変わらない場合には「△」と評価し、比較例より良い場合には「○」と評価した。結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
表2から明らかなように、実施例1~9は、比較例1と比較して、洗浄力と泡立ちは同程度であったが、手の潤いが大きく改善されることがわかった。詳細には、比較例1は、食器洗い前と比較して、食器洗い後では、水分が5%減少した。一方、実施例1~9は、いずれも、食器洗い前と比較して、食器洗い後では、いずれも水分が3~10%増加した。
【0061】
次に、上記実施例1、市販の手肌に優しいと言われている比較例2の洗浄剤(温泉水不使用)、および市販の洗浄力の高いと言われている比較例3の洗浄剤(温泉水不使用)を比較するため、其々の洗浄剤にて素手で食器洗いを行い、食器洗い前と食器洗い20分後における手の水分と脂分を測定した。測定個所を同一にするために右掌の労官で行った。
【0062】
また其々の洗浄力、泡立ち、泡切れ、すすぎ時の排水口泡残量を、其々下記表3に示す。また、実施例1を使用した後の手の状態を
図1に、比較例2を使用した後の手の状態を
図2に、比較例3を使用した後の手の状態を
図3に示す。
【0063】
【0064】
実施例1の液体洗浄剤を使用した後の手の感触を100人にアンケート調査を行った。比較例2および3より「しっとり感がある」との回答が100%であった。
【0065】
実施例1と比較例2を洗浄力、泡立ち、泡の状態の比較を示す。
図4~8には、比較した写真を示す。
【0066】
図4は、上記それぞれのタッパーに小さじ2杯のラー油を満遍なく塗った後の写真である。
【0067】
図5は、新品のスポンジの上に大さじ1杯の水と小さじ1杯の実施例1と比較例2の液体洗浄剤を垂らした後の写真である。
【0068】
図6は、タッパー内で30回ずつ揉む予定であったが、実施例1は20回揉んだころから泡がタッパーより溢れ出してしまい揉む回数を22回で止めた後の写真を示す。比較例2は20回揉んでも泡がタッパーより溢れ出ることが無かったので予定通り30回揉んだ後の写真を示す。比較例2の泡を触ってみると弾力性が無く水っぽかった。実施例1の泡を触ってみると弾力性があり触った指を泡が跳ね返す力が強かった。
【0069】
図7は、実施例1と比較例2のタッパーをスポンジで擦らず、流水で泡を落とすのみを行い洗浄力を確認した写真である。比較例2のタッパーは見た目もラー油が残っており、手触りも全体にラー油が残ってヌルヌルした感触であった。実施例1は四隅にもラー油が残っておらず全体がキュッキュとした感触であった。
【0070】
図8は、実施例1と比較例2の泡立て後のスポンジの状態の写真を示す。比較例2は、スポンジに多量のラー油が付いている。実施例1は、比較例2と比べるとスポンジにラー油が付いてなかった。実施例1は、タッパー内の泡を流水で落とした後もタッパーにラー油が残っていなかったので、泡に多量にラー油が吸収されたと思われる。
【0071】
市販の液体洗浄剤は台所用を例にすると食器洗い用は中性洗剤、コンロ汚れや焦げ付きなどにはアルカリ性液体洗浄剤と区別されていることが多いが、本発明は食器洗いにもコンロ汚れや焦げ付きなどを落とす際にも区別なく使用できる。表4に文部科学省スポーツ・青少年虚構学校健康教育課より中性洗剤とアルカリ性液体洗浄剤の使用目的を示す。
【0072】
【0073】
市販の食器洗い液体洗浄剤は手荒れの懸念から液性が中性の液体洗浄剤が主流であり、コンロの油汚れや茶渋などを落とすにはアルカリ性の洗剤を手袋着用で用いることが多い。本発明の液体洗浄剤の液性は弱アルカリ性ではあるが特徴として洗浄成分が肌に残りにくい性質があり、更に温泉水には温泉成分や組成により保湿効果やコラーゲン生成サポート効果、血の巡りをよくする効果、肌の乾燥を防ぐ効果、肌のキメを整える効果、皮膚の進展性が高まり肌が柔らかくなる効果、肌に水分を補給させ肌に張りと潤いを与えるアンチ・エイジング作用が期待できる効果などがあるといわれており、それらの効果と相まって手荒れを起こしにくいと考えられる。それぞれの温泉水が具体的にいかなる成分又は組成、化学成分の種類とその含有量にそのような働きがあるのか一つとして同一の温泉水が存在せず、調べるには膨大であり現時点での言及は困難である。
【0074】
本液体洗浄剤は手肌に優しいため、食器洗いかつ家庭内の汚れの80%前後を占める酸性汚れ落としでもゴム手袋を用いずとも使用することが期待できる。
【0075】
本液体洗浄剤は肌に優しいため台所用や浴室用などモノの洗浄に留まらず身体用にも使用することが期待できる。
【0076】
本発明は石油系合成界面活性剤を配合していないため、配合されている洗浄剤に比べて洗浄力が劣ると思われるが、石油系合成界面活性剤を配合すること無く、脂肪酸と温泉水とを用いて高密度で豊かな細かい泡を形成させたために洗浄力が向上し、さらには、泡立ちをも高めることができた。
【0077】
前述の高密度で豊かな細かい泡により油分を吸収する量が増え洗浄力を高めた。
【0078】
洗浄力の高い市販の洗浄剤は、排水口にも泡が残るほど泡の分解が悪く泡を切る時に大量の水を使用し作業時間がかかる。しかし、本発明の液体洗浄剤は化学結合が弱いため、水道水に含まれているカルシウムイオンやマグネシウムイオンに触れると速やかに界面活性作用を失う。このため、すすぎ時に泡切れが良く速やかに泡が消え、作業時間が短く済み水の使用量も少なく出来るため、環境にも優しい洗浄剤を提供できる。また、本発明は分析センターでの検査にて微生物での分解が易生分解で生分解性においても環境に優しい発明である。
【0079】
市販の洗浄剤は石油系合成界面活性剤が多く含まれており、石油系合成界面活性剤は手肌に残りやすく、「保湿」と「バリア」の役割を担う角質に侵入し角層を膨潤させてしまう(界面活性剤の溶液が浸透することで角層の体積が増加)。ラメラ構造(角質層ではセラミドetc.同士が繋がりつつ、水分の層と交互に重なり合うような構造をとりながら、細胞間脂質が角層細胞の間を埋めている。)が乱れてしまい、肌のバリア機能が低下して、外部のからの刺激に弱くなり、肌トラブルが起こりやすくなる。すると潤いを保持する天然の保湿成分の流出を招き、外界からの影響を受け易くなるとともに水分が過剰に蒸発してしまう。結果的にはターンオーバー(角層の生まれ変わりに)にも影響を及ぼす。
【0080】
特に冬場になるとお湯で食器などを洗うことが多くなる。お湯は皮脂を溶かしてしまうため食器の汚れだけでなく、皮脂も一緒に洗い落としてしまい石油系界面活性剤と相まって酷い手肌のトラブルを起こすことが多くなる。更に手肌を守る常在菌の拮抗状態を崩し、肌のバリア機能などが落ちて皮膚トラブルを起こしやすくなる。常在菌については、https://www.jstage.jst.go.jp/article/bopiph/47/0/47_47/_pdfを参照する。
【0081】
しかし、本発明は泡切れが良く手肌に界面活性剤が残りにくく、更に本発明の原料に温泉水を用いているため温泉水の肌に良い効能も相まって使用後は手肌しっとりした状態になると考えられる。
【0082】
本発明の原料に温泉水を使用するため、前述で示した温泉水の肌に良い効能で本発明を使うたびに手肌のバリア機能が高まる。
【0083】
本発明の液体洗浄剤は化学結合が弱いため、水道水に含まれているカルシウムイオンやマグネシウムイオンに触れると速やかに界面活性作用を失うという特徴がある。このような特徴を持つため泡切れが良く肌には界面活性剤が残りにくく肌への負担は比較的少ないというメリットがある。石油系合成界面活性剤は、水で薄まっても界面活性作用は失われにくく、しっかり流さなければ洗浄成分が肌に残る。界面活性剤が残された状態が続くと肌のバリア機能の働きが低下し、肌トラブルの原因になることがある。一般的な石油家合成界面活性剤は排水口に流した後でもその効果が持続し、自然環境では分解しにくいものも中にはあるが、本発明の液体洗浄剤は水に薄まると界面活性作用が弱まる。また、有機物であるため自然環境下で分解されやすくなる。本発明は植物油と温泉水で作る脂肪酸塩のため石油系合成界面活性剤に比べ肌のバリア機能に必要な細胞間脂質まで洗い流すことは少ない。更に本発明の原料に温泉水を用いているため温泉水の肌に良い効能も相まって使用後は手肌しっとりした状態になる。脂肪酸塩の液体洗浄剤は多量に使用しないと洗浄力が弱いとされているが、本発明は高密度で豊富な泡を提供できたことで洗浄力は高く、弱アルカリであることから食器洗いや酸性である「焦げや茶渋」までも落とす力がある。家の中の80%が酸性の汚れであるといわれているので用途は広い。
【産業上の利用可能性】
【0084】
・台所 食器洗い、換気扇やコンロ・グリル・壁の油汚れ、コンロやグリルの焦げ、シンクや排水口のぬめり落とし など
・風呂 ぬめり、鏡の汚れ、皮脂の汚れ、湯垢落とし など
・洗濯 しみ、皮脂やタンパク質の汚れ、洗濯槽のカビ落とし など
・居間 手垢、ガラス汚れ、たばこのヤニ落とし など
・頭皮を含む身体洗い
【要約】
【課題】液体洗浄剤に関し、手肌に優しいと言われている合成洗浄剤と同量で洗浄力や泡立ち、泡切れが良く、肌にも優しい液体洗浄剤を提供する。
【解決手段】本発明の液体洗浄剤は、脂肪酸塩と温泉水とを含む石けん成分を含有する液体洗浄剤。
【選択図】
図1