IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グライドウェイズ、インコーポレイテッドの特許一覧

特許7644913自律車両システムのための制動および信号伝達方式
<>
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図1
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図2A
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図2B
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図3A
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図3B
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図3C
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図4
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図5
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図6
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図7A
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図7B
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図8A
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図8B
  • 特許-自律車両システムのための制動および信号伝達方式 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】自律車両システムのための制動および信号伝達方式
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20250306BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20250306BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20250306BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20250306BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/16 A
G08G1/00 X
B60W30/09
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022578579
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021037702
(87)【国際公開番号】W WO2021257747
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】63/041,513
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522008344
【氏名又は名称】グライドウェイズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー, パトリック
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/100725(WO,A1)
【文献】特開2020-091692(JP,A)
【文献】特開2009-151562(JP,A)
【文献】特開2020-046900(JP,A)
【文献】特表2018-509706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に沿って複数の車両を減速する方法であって、
第1の車両で、
近傍の下流車両から
制動指示信号、及び、
前記近傍の下流車両の減速レートを示す第1の減速値、
を受信すること、
前記近傍の下流車両に対する第1の距離を決定すること、
前記第1の距離に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の車両の前記近傍の下流車両との衝突を防止するように設定された第2の減速値を決定すること、
前記第2の減速値が、前記第1の車両が横滑りせずに耐えることのできる最大の減速レートに対応する上側減速値以上であるという判定に従い、前記上側減速値で減速すること、
前記第2の減速値が前記上側減速値より小さくかつ予め選択された減速レートに対応する下側減速目標値より大きいという判定に従い、前記第2の減速値で減速すること、
前記第2の減速値が前記下側減速目標値以下であるという判定に従い、
前記第1の車両のスピードを維持すること、及び、
前記第1の車両の前記スピードを一定時間維持した後、前記下側減速目標値で減速すること、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記制動指示信号は、第1の制動指示信号であること、及び、
前記方法は、前記第2の減速値が前記上側減速値以上であるという判定に従い、
近傍の上流車両に、
第2の制動指示信号、および、
前記上側減速値、
を送信することを、さらに含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記第2の減速値が前記上側減速値よりも小さく、且つ、前記下側減速目標値よりも大きいという判定に従って、前記近傍の上流車両に、
前記第2の制動指示信号、および、
前記第2の減速値、
を送信すること、を更に含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記第2の減速値は、さらに、少なくとも部分的に、
前記第1の車両の速度、
前記近傍の下流車両の速度、および、
前記第1の減速値、
に基づく、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記近傍の下流車両は、情報を送信するように構成された光学出力システムを備え、また、
前記第1の車両は、前記光学出力システムによって送信された情報を受信するように構成された光学センシングシステムを備える、
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記制動指示信号が、前記近傍の下流車両の前記光学出力システムを介して送信され、また、前記第1の車両の前記光学センシングシステムによって受信される、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記第1の減速値が、前記近傍の下流車両の前記光学出力システムを介して、符号化信号として送信される、方法。
【請求項8】
車両であって、
前記車両を進ませるように構成された駆動システムを含み、
前記車両を減速させるように構成されたブレーキシステムを含み、
前記車両を操縦するように構成された操縦システムを含み、そして、
車両制御部を含み、前記車両制御部が、
近傍の下流車両から、
第1の制動指示信号、及び、
前記近傍の下流車両の減速レートを示す第1の減速値、
を受信するように、
前記近傍の下流車両までの第1の距離を決定するように、
少なくとも部分的に、前記第1の距離に基づいて、前記車両の前記近傍の下流車両との衝突を防止するように設定された第2の減速値を決定するように、
前記第2の減速値が、前記車両が横滑りせずに耐えることのできる最大の減速レートに対応する上側減速値以上であるという判定に従い、前記ブレーキシステムに、前記上側減速値で前記車両を減速させるように、
前記第2の減速値が前記上側減速値未満であって、予め選択された減速レートに対応する下側減速目標値より大きいという判定に従い、前記ブレーキシステムに、前記第2の減速値で前記車両を減速させるように、
前記第2の減速値が前記下側減速目標値以下であるという判定に従い、
前記車両のスピードを維持し、そして、
一定時間前記車両の前記スピードを維持した後、前記下側減速目標値で減速するように、
構成されている、
車両。
【請求項9】
請求項8に記載の車両であって、前記車両制御部は、前記第2の減速値を、さらに少なくとも部分的に、前記車両の速度及び前記近傍の下流車両の速度、に基づいて、決定するように、さらに構成されている、車両。
【請求項10】
請求項9に記載の車両であって、前記車両制御部は、前記第2の減速値が前記上側減速値以上であるという判定に応じて、近傍の上流車両に減速情報を送信するように、さらに構成されており、前記減速情報が、
第2の制動指示信号、および、
前記上側減速値、
を含む、車両。
【請求項11】
請求項10に記載の車両であって、
前記減速情報は第1の減速情報であり、そして、
前記車両制御部は、前記第2の減速値が前記上側減速値未満であるという判定に応じて、前記近傍の上流車両に第2の減速情報を送信するように、さらに構成されており、前記第2の減速情報が、
前記第2の制動指示信号、および、
前記第2の減速値、
を含む、車両。
【請求項12】
請求項11に記載の車両であって、前記車両は、さらに、
前記近傍の上流車両に前記第1の減速情報及び前記第2の減速情報を送信するように構成された光学出力システムと、
前記第1の制動指示信号および前記第1の減速値を受信するように構成された光学センシングシステムと、
を備える、車両。
【請求項13】
道路に沿って複数の車両を減速する方法であって、
第1の車両にて、
近傍の下流車両ビークルから、
第1の制動指示信号と、
前記近傍の下流車両の減速レートを示す第1の減速値と、
を受信すること、
前記第1の車両が前記近傍の下流車両と衝突するのを防止するように構成される第2の減速値を決定すること、
前記第2の減速値が、前記第1の車両が横滑りせずに耐えることのできる最大の減速レートに対応する上側減速値以上であるという判断に従って、
第2の車両へ、
第2の制動指示信号と、
前記上側減速値と、
を送信すること、
前記上側減速値で減速すること、
前記第2の車両にて、
前記第1の車両から、
前記第2の制動指示信号と、
前記上側減速値と、
を受信すること、
前記第2の車両が前記第1の車両に衝突するのを防止するように構成される第3の減速値を決定すること、
前記第3の減速値が、前記上側減速値よりも小さく、且つ、予め選択された減速レートに対応する下側減速目標値よりも大きい、という判断に従って、
近傍の上流車両ビークルに、
第3の制動指示信号と、
前記第3の減速値と、
を送信すること、及び、
前記第3の減速値で減速すること、
前記第3の減速値が前記下側減速目標値以下であるという判定に従い、
前記第2の車両のスピードを維持すること、及び、
一定時間前記第2の車両の前記スピードを維持した後、前記下側減速目標値で減速すること、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記第2の車両にて、
前記第3の減速値が前記上側減速値以上であるという判断に従って、
前記近傍の上流車両へ、
前記第3の制動指示信号と、
前記上側減速値と、
を送信すること、及び、
前記上側減速値で減速すること、
をさらに含む、方法。
【請求項15】
車両の集団内の車両の減速レートを決定する方法であって、
前記集団内の各車両にて、
それぞれの近傍の上流車両までのそれぞれの距離を決定すること、及び、
前記それぞれの距離の少なくとも一部に基づいて、それぞれの減速値を決定すること、及び、
第1の減速値に関連し、スピードで走行する、前記集団内の車両にて、
近傍の上流車両から、
制動指示信号と、
前記近傍の上流車両の次の制動イベントの第2の減速値と、
を受信すること、
前記第1の減速値が、前記車両が横滑りせずに耐えることのできる最大の減速レートに対応する上側減速値以上であるという判定に従い、前記上側減速値で減速すること、
前記第1の減速値が、前記上側減速値未満であり、且つ、予め選択された減速レートに対応する下側減速目標値より大きいという判定に従い、前記第1の減速値で減速すること、
前記第1の減速値が前記下側減速目標値以下であるという判定に従い、前記車両を前記スピードで維持すること、及び、
前記車両を一定時間前記スピードで維持した後、前記下側減速目標値で減速すること、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記集団内の各車両にて、それぞれの前記近傍の上流車両の速度を決定すること、さらに含み、
前記それぞれの減速値は、前記それぞれの近傍の上流車両の前記速度に少なくとも部分的に基づいて、決定される、
方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記車両にて、
前記車両を前記スピードで維持した後に、
前記近傍の上流車両の減速度を検出すること、及び、
前記下側減速目標値で減速すること、
を、さらに含む、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、
前記下側減速目標値は、2.0m/s以下である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許協力条約特許出願は、2020年6月19日出願の米国仮特許出願第63/041,513号「Braking and Signaling Schemes for Autonomous Vehicle System」に対する優先権を主張するものであり、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
説明される実施形態は、概して車両に関するものであり、より詳細には、自律車両システムにおける自律車両のための制動及び信号伝達方式に関するものである。
【背景技術】
【0003】
自動車、トラック、バン、バス、路面電車などの車両は、現代社会において各所に存在する。自動車、トラック、及び、バンは、往々にして、比較的少数の乗客を輸送する個人輸送のために使用され、一方、バス、路面電車、および他の大型車両は、往々にして、公共輸送のために使用される。車両は、荷物の搬送または他の目的のために使用することもできる。このような車両は、道路で運転されることがあり、当該道路は、路面道路、橋、高速道路、オーバーパス、または他のタイプの車両通行権を含んでもよい。運転手のいないまたは自動運転の車両は、個人に対して、自らの輸送ニーズのために車両を手動で操作する必要性を、緩和し得る。
【発明の概要】
【0004】
道路に沿って複数の車両を減速させる方法は、第1の車両にて、近傍の下流車両から、第1の制動開始信号及び近傍の下流車両の減速レートを示す第1の減速値を受信すること、近傍の下流車両に対する第1の距離を決定すること、第1の距離に少なくとも部分的に基づいて、第1の車両の近傍の下流車両との衝突を防止するように設定された第2の減速値を決定すること、を含むことができる。本方法はさらに、第2の減速値が上側減速値以上であるという判定に従い、上側減速値で減速すること、及び、第2の減速値が上側減速値未満であり、かつ、下側減速目標値より大きいという判定に従い、第2の減速値で減速すること、をさらに含むことができる。第2の減速値は、さらに、第1の車両の速度、近傍の下流車両の速度、及び、第1の減速値に、少なくとも部分的に、基づいてもよい。上側減速値は、第1の車両が横滑り(英:skidding)なしで、耐えることができる最大減速値に対応することができる。
【0005】
本方法は、さらに、第2の減速値が上側減速値以上であるという判断に従って、近傍の上流車両に、第2の制動開始信号と上側減速値とを送信することを、含むことができる。本方法は、さらに、第2の減速値が上側減速値よりも小さく、且つ、下側減速目標値より大きいという判断に従って、近傍の上流車両に、第2の制動開始信号と第2の減速値とを送信することを、含むことができる。
【0006】
本方法は、さらに、第1の減速値が下側減速目標値以下であるという判定に従って、車両の速度を維持すること、および、車両の速度を一定時間にわたって維持した後に、近傍の下流側車両の減速度を検出すること、および、近傍の下流側車両の減速度を検出したことに応答して、下側減速目標で減速することを、含むことができる。
【0007】
近傍の下流車両は、情報を送信するように構成された光学入出力システムを含んでもよく、第1の車両は、光学入出力システムによって送信された情報を受信するように構成された光学センシングシステムを含んでもよい。第1の制動開始信号は、近傍の下流車両の光学出力システムを介して送信されてもよく、また、第1の車両の光学センシングシステムによって受信されてもよい。第1の減速値は、近傍の下流ビークルの光学出力システムを介して、符号化信号として、送信されてもよい。
【0008】
車両は、車両を進ませるように構成された駆動システムと、車両を減速させるように構成されたブレーキシステムと、車両を操縦するように構成された操縦システムと、車両制御部とを含み、当該車両制御部は、近傍の下流車両から、第1の制動開始信号と、近傍の下流車両の減速レートを示す第1の減速値とを受信するように、近傍の下流車両までの第1の距離を決定するように、少なくとも部分的に、第1の距離に基づいて、車両の近傍の下流車両との衝突を防止するように設定された第2の減速値を決定するように、構成されている。第2の減速値が上側減速値以上であるという判断に従い、車両制御部は、ブレーキシステムに、上側減速値で車両を減速させることができ、また、第2の減速値が上側減速値未満であって下側減速目標値より大きいという判断に従い、車両制御部は、ブレーキシステムに、第2の減速値で車両を減速させることができる。車両は、さらに、減速情報を近傍の上流車両に送信するように構成された光学出力システムと、第1の制動開始信号及び第1の減速値を受信するように構成された光学センシングシステムと、を含むことができる。
【0009】
車両制御部は、更に、少なくとも部分的に、車両の速度及び近傍の下流車両の速度に基づいて、第2の減速値を決定するように構成されていてもよい。車両制御部はさらに、第2の減速値が上側減速値以上であるという判定に従い、減速情報を近傍の上流車両に送信するように、構成されていてもよく、減速情報は第2の制動開始信号及び上側減速値を含む。車両制御装置はさらに、第2減速値が上位減速値未満であるという判定に応じて、近傍の上流車両に減速情報を送信するように構成されてもよく、減速情報は第2制動開始信号と第2減速値とを含む。
【0010】
道路に沿って複数の車両を減速させる方法は、第1の車両で、近傍の下流車両から、第1の制動開始信号と、近傍の下流車両の減速レートを示す第1の減速値とを受信すること、及び、第1の車両が近傍の下流車両と衝突するのを防止するように設定された第2の減速値を決定すること、を含むことができる。本方法は、第2の減速値が上側減速値以上であるという判断に従って、第2の車両に、第2の制動開始信号と上側減速値とを送信すること、及び、上側減速値で減速すること、を含むことができる。本方法はさらに、第2の車両で、第1の車両から、第2の制動開始信号及び上側減速値を受信すること、第2の車両が第1の車両に衝突するのを防止するように構成された第3の減速値を決定すること、を含むことができる。本方法はさらに、第3の減速値が上側減速値未満であり、かつ、下側減速目標値より大きいという判断に従って、近傍の上流車両に、第3の制動開始信号と第3の減速値とを送信すること、及び、第3の減速値で減速すること、を含むことができる。
【0011】
本方法は、さらに、第2の車両にて、第3の減速値が上側減速値以上であるという判定に従って、近傍の前記車両へ、第3の制動開始信号と上側減速値と、を送信すること、及び、上側減速値で減速すること、を含んでもよい。
【0012】
車両の集団内の車両の減速レートを決定する方法は、集団内の各車両にて、それぞれの近傍の上流車両までのそれぞれの距離を決定すること、それぞれの距離の少なくとも一部に基づいて、それぞれの減速値を決定すること、及び、第1の減速値に関連し、ある速度で走行する集団内の車両にて、近傍の上流車両から、近傍の上流車両の制動指示と、近傍の上流車両の次の制動イベントの第2の減速値と、を受信することと、を含んでもよい。本方法は、さらに、第1の減速値が上側減速値以上であるという判定に従い、上側減速値で減速すること、第1の減速値が、上側減速値未満でかつ前記下側減速目標値より大きいという判定に従い、第1の減速値で減速すること、第1の減速値が下側減速目標値以下であるという判定に従い、車両をその速度で維持すること、を含むことができる。
【0013】
本方法は、さらに、集団内のそれぞれの車両にて、それぞれの近傍の上流車両の速度を決定すること、を含んでもよく、それぞれの減速値は、それぞれの近傍の上流車両の速度に少なくとも部分的に基づいて、決定されてもよい。
【0014】
本方法は、さらに、車両にて、車両を速度に維持した後に、近傍の上流車両の減速度を検出すること、及び、下側減速目標で減速すること、を含んでもよい。上側減速値は、車両が横滑りなしで耐えられる最大減速値に対応し、且つ、下側減速目標値は、2.0m/s以下とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示は、添付図面と併せて以下の詳細な説明によって容易に理解されるであろう。ここで、同様の参照番号は同様の構造要素を示す。
【0016】
図1図1(FIG.1)は、例示的な道路の一部を示す。
【0017】
図2図2(FIG.2A~2B)は、車両の一例を示す。
【0018】
図3図3(FIG.3A~3C)は、道路の上面図を、制動制御方式を採用した車両とともに、示す。
【0019】
図4図4(FIG.4)は、2つの例示的な車両を示す。
【0020】
図5図5(FIG.5)は、グループ内を走行するいくつかの車両の減速レートのプロットを示す。
【0021】
図6図6(FIG.6)は、制動制御方式に従って減速する複数の車両を示す。
【0022】
図7図7(FIG.7A~7B)は、例示的な車両を示す。
【0023】
図8図8(FIG.8A~8B)は、ドアが開いた状態の図7のFIG.7A~7Bの車両を示す。
【0024】
図9図9(FIG.9)は、例示的な車両の部分分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
以下、添付図面に図示された代表的な実施形態について詳細に説明する。以下の説明は、実施例を1つの好ましい実施例に限定することを意図するものではないことを、理解すべきである。反対に、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、説明される実施形態の思想および範囲内に含まれ得るような代替、修正、および等価物をカバーすることが意図されている。
【0026】
本明細書の実施形態は、概して、輸送システムを対象としており、当該輸送システムでは、多数の車両が、乗客および/または貨物を道路に沿って輸送するために、自律的に動作されてもよい。例えば、輸送システムまたは輸送サービスは、車両の一群を提供することができ、当該車両は、あらかじめ設定された位置または停留所のいずれかで、または、動的に選択される(例えば、スマートフォンを介して人により選択される)位置で、乗客を乗せたり、降ろしたりするために、道路に沿って動作する。本明細書で使用する「道路」という用語は、移動する車両を支持する構造体を指すことができる。
【0027】
しかしながら、車両の自律動作は複雑な作業であり、道路上の車両によって採用される特定の技法または方式は、車両内の乗客および/または貨物の快適さおよび安全性と同様に、システム全体の動作にも、劇的な影響を与える可能性がある。輸送システムの安全運行のための一つの重要な側面は制動(ブレーキング)である。例えば、輸送システムの効率とスループットを最大化するためには、車両間の距離を最小化することが有利である。しかしながら、車両同士が接近するほど、先行車両が道路の障害物を避けるなど、予期せずに減速する必要がある場合に、後続車両が安全に停止できることがより重要になる。従って、輸送システムの安全性及び効率は、以下のようなロバストな制動システムを提供することによって、高めることができる、すなわち、先行車両が、それらの、近いうち起こる(英:upcoming)ブレーキイベントについての情報を迅速に発信することができ、後続車両が先行車両から受信した情報に迅速に反応しつつ、他方で、近いうちに起こるブレーキイベントについての情報を更なる後続車両に伝播する制動システムを提供することによって、高めることができる。
【0028】
ここで説明するのは、輸送システムにおける自律車両のためのロバストで安全な制動操作を提供するための様々な技術およびシステムである。そのような技術及びシステムの1つの側面は、光学通信システムに関しており、当該光学通信システムは、車両が高速で信頼性のある方法で互いに通信することを可能にする。例えば、図2のFIG.A、FIG.2Bに関して本明細書に記載されるように、車両は、それぞれ、光学出力システムおよび光学入力システムを含んでもよく、当該光学出力システムおよび当該光学入力システムは、制動指示(例えば、差し迫ったまたはアクティブな制動イベントを示す警告)、ならびに制動イベントに関する情報(例えば、差し迫ったまたはアクティブな制動イベント中の車両の減速レート)などの、制動情報の送信および受信を容易にする。そのようなシステムは、制動イベント情報が車両の集団を素早く通過することを可能にし、その結果、各車両は、下流の車両の減速が検出される前でも、適切な速度で減速を開始することができる。本明細書で使用される場合、減速は速度の減少を意味する。減速レート又は減速値は、負の加速レート又は負の加速値としても特徴付けられることが理解されよう。ここで説明される計算又は評価の目的のために、どちらの符号規約を用いてもよい。
【0029】
車両は、制動制御スキーム(英:braking control scheme)に従って動作することができ、当該制動制御スキームは、集団内の車両が制動イベントに対してどのように反応するかを定義したり、乗客にとって不快であるかもしれない高い減速値を実施しなければならない車両の数を最小限に抑えようとしたりする。例えば、図4図5に関して本明細書に記載するように、車両は、それぞれ、近傍の上流車両(例えば、直前の車両)の速度および距離を監視し、近傍の上流車両との衝突を防止するために必要となる減速率を継続的に決定するように、構成することができる。近傍の上流車両が、道路内の物体または他の障害物との衝突を回避するために、緊急事態で減速しなければならない場合、近傍の上流車両は、計画された減速レートのような、次に来るブレーキイベントについての情報、を後流車両に送信することができる。後続車両は、その後、上流車両の計画された減速レートならびにそれ自体の安全な減速レートに基づいて、どのように反応すべきかを、決定することができる。後続車両はまた、更なる上流(例えば、後続)車両へ情報を提供してもよく、その結果、それらは、それぞれに、下流車両の計画された減速レートとそれら自体のそれぞれの安全な減速レートに基づいて、どのように反応するかを、決定することができる。本明細書に記載されるように、このシステムは、車両が、下流車両の検出された減速に対して単純に反応した場合に可能であるよりも、より早く減速を開始することを可能にし、快適なレベルを超えて減速しなければならない、集団内の(または他の方法では互いに近接している)車両数を、減らすこともできる。
【0030】
本明細書で使用されるように、「下流」とは、特定の車両または走行方向における位置よりも前方にある物体(例えば車両)を指し、「上流」とは、特定の車両または走行方向における位置よりも後方にある物体(例えば車両)を指す。したがって、例えば、西から東へ移動する車両の集団内では、集団内の最東端の車両は、集団内の他のすべての車両の、下流であると考えられる。同様に、集団内の最西端の車両は、集団内の他のすべての車両の上流にあると考えられる。さらに、特に言及しない限り、「先行」および「後続」という用語は、絶対位置ではなく、相対位置を示すために使用される。従って、先行車両は、別の車両に先行している又は別の車両の下流に位置する任意の車両とすることができ、後続車両は、別の車両に後続している又は別の車両の上流に位置する任意の車両とすることができる。
【0031】
システム内の車両は、光学通信技術及び/又は光学通信システムを用いて、制動情報及び/又は減速情報を共有することができる。例えば、各車両は、光学センシングシステム及び光学出力システムを含むことができる。光学出力システムは、制動開始信号(例えば、制動イベントが差し迫っている、またはアクティブであるという指示)、計画された減速値などの、情報を送信または出力するように、構成することができる。光学出力システムは、情報を伝えるために選択的に光らされる複数のライトを含んでもよい。1つの車両からの光学出力は、他の車両の(複数の)光学センシングシステムによって検出することができる。
【0032】
図1は、明細書に記載される実施形態に従った、自律走行車両108用の道路100の一部分を図示する。図1に示されている道路の一部分は、一般的な都市または郊外環境での、地上レベルで示されているが、これは限定的なものではない。実際、道路は、任意の環境または場所に配備されてもよく、それには、農村地域の場所、全体的または部分的に建物の内部、道路から離れた場所、高架構造物、地下等、が含まれる。道路100は、道路100に沿ってナビゲーションする複数の四輪の車両108とともに示されている。車両108は、特には道路100と共に使用するように設計された、自律型車両または半自律型車両であってもよい。道路100と共に使用する車両のタイプの一例は、図7図9に関連して記載されているが、他の種類車両が、本明細書に記載する車両に代えて、または加えて、道路100に沿って駆動されてもよい。図1に示されるその一区分がわずかな部分に過ぎえない道路100は、直進路、ターン、交差点、橋、トンネル、搭乗ゾーン、駐車施設等を含む複数の区分を、含むことができる。安全かつ効率的な車両動作を容易にするために、道路100上の車両108は、制動制御スキーム(ブレーキング制御スキーム)を使用することができ、それによって、制動イベント(ブレーキングイベント)に関する情報が、車両間で急速に伝播され、車両は、安全性と快適性の両方を維持するためにそれらが減速することができる、及び、減速するべき、割合についてのインテリジェントな決定を行う。
【0033】
図2のFIG.AおよびFIG.2Bは、例示的な車両108を示す。本明細書に記載するように、車両108は、双方向動作のために構成することができる。したがって、車両108は、車両の各端部に光学通信システム200(例えば光学通信システム200-1、200-2)を含むことができる。各光学通信システムは、他の車両に情報を送信するように構成された光学出力システム201(例えば、光学出力システム201-1、201-2)、及び、他の車両から(例えば、他の車両の光学出力システムから)情報を検出および/または受信するように構成された光学センシングシステム204(例えば、光学センシングシステム204-1、204-1)、を含んでもよい。この構成は、いくつかの利点をもたらす。例えば、車両は、車両のどの端部が車両の「前方」として作用しているかに関係なく、先行車両から情報を受信すること、及び、後続車両に情報を送信することができる。また、車両の両端に、光学出力システムと光学センシングシステムの双方を、有することにより、双方向通信が可能となる(例えば、車両は、上流側と下流側の双方の車両と、通信可能となる)。
【0034】
光学出力システム201は、複数の光源202を含むことができる。光学出力システム201は、符号化方式に従って、光源を選択的に照明させることによって、光源202を介して、情報を送信することができる。例えば減速情報を含む様々な種類の情報を、光学出力システム201は他の車両に送信するように(および対応する光学センシングシステムは受信するように)、構成されてもよい。減速情報は、制動開始信号及び/又は減速値を含むことができる。本明細書で使用されるように、減速値は、減速レートを指すことができ、特に言及のない限り、これらの用語は、交換可能に使用することができる。光学通信システム200によって送受信されうる他の種類の情報には、集団内の前方にある車両の数、予定されたまたは近いうちに起こる加速イベントおよび/または減速イベント、近いうち起こる操縦(例えば、右折、左折、予定された停止)に関する情報、車両内のペイロードのそれらの数または種類(例えば、人間または貨物)、などが含まれうるが、これらに限定されない。
【0035】
制動開始信号は、信号伝達する車両が減速イベントまたは制動イベント下にあることを示すことができ、減速値は、車両が減速しているか、または減速しようとしている割合を示すことができる。他の情報、例えば、近いうちに起こる減速イベントが予想または予測される時間、近いうちに起こるステアリングイベント(例えば、先行車両がいつ、どれくらい旋回するか)、近いうちに起こる加速、などを送信することもできる。
【0036】
後続車両は、先行車両の光学出力システム201から(例えば、本明細書に記載する後続車両の光学センシングシステム204を介して)情報を受信し、制動制御スキームに従って、反応することができる。例えば、先行車両からの減速情報を受信すると、後続車両は、減速を開始すべきか、その減速にどの減速レートを使用すべきか、さらに後続する車両にどのような情報を送信すべきか、を決定することができる。
【0037】
一方の車両からの光学出力は、他方の車両の光学センシングシステム204によって、検出および/または受信され得る。光学センシングシステム204は、レンズ、画像センサ、プロセッサ、メモリ、イメージングソフトウェア及び/又はファームウェアのような構成要素、及び/又は、画像のキャプチャ及び/又は分析、及び、任意にキャプチャされた情報の復号化、を容易にする、他の適切な構成要素、を含むことができる。光学センシングシステム204は、光学的特性(例えば、焦点距離、視野、解像度)を有し、近傍の車両の光学出力システム201が光学センシングシステム204によって光学的に検知可能となるように設計され得る。
【0038】
上述したように、光学通信システム200によって送信される情報は、符号化フォーマット(英:encoded format)であってもよい。例えば、光学出力システム201が、図2のFIG.A、FIG.2Bに示されるような複数の光源を含む場合、各光源は、1ビットの情報を伝えることができる(例えば、オフである光源は、値0を伝え、点灯される光源は、値1を伝える)。したがって、例えば、8個の光源202を含む光学出力システム201は、8ビットの情報チャネルを容易にすることができる。より多くの、またはより少ない光源が、使用して、車両間の適切な量の情報伝達を提供するために使用され得る。
【0039】
場合によっては、光源のいくつかは、バイナリ通信または他の符号化通信のために使用されるの対し、他の光源は、専用の単一ビットチャネルの情報を伝えるために使用される。例えば、図2のFIG.A、FIG.2Bに示す光学出力システム201では、1つの光源は、制動開始信号を伝える制動インジケータとして確保され得る(例えば、光源がオンであり、従って制動とそれによる減速が現在アクティブである場合、光源がオフであり、制動がアクティブでない場合)のに対し、残りの7つの光源は、7ビットチャネルとして使用され得て、制動イベント(又は近いうちに起こる制動イベント)に関連する減速値等の情報を伝える。7ビットチャネルはまた、車両速度、近いうちに起こる操縦(例えば、ターン、加速、減速)、車両内の貨物の種類(例えば、パッケージ、乗客)等のような、他の情報を伝えるために使用されてもよい。
【0040】
光学通信システム200が、車両間での、より詳細には上流の車両への、迅速な減速情報の伝播のために、使用され得る。上述のように、情報は、先行車両がアクティブに制動しているという事実だけでなく、先行車両が制動している実際の減速値または制動することになるであろう実際の減速値、を含むことができる。さらに、光学通信の使用は、より上流にある車両が、ブレーキ操作を準備する(または開始する)ことを、それらの車両が、直ぐ近傍の下流の車両の実際の減速を検出できるようになる前でさえ、可能にし得る。
【0041】
図3のFIG.A~FIG.3Cは、複数の車両300(300-1から300-7)が走行方向301に道路302に沿って走行する道路302の上面図を示す。図3のFIG.A~FIG.3Cは、減速値のような減速情報が、どのように車両の集団または他のグループを介して、上流に伝播され得るか、を示している。より詳細には、図3のFIG.A~FIG.3Cは、どのように、減速情報が車両300のグループを通って物理的な制動イベントよりも速く移動するかを、示している。
【0042】
図3のFIG.Aは、時点tでの道路を示す。この時点では、車両300-1は、道路の障害物を検知したり、さもなければ制動イベントを開始する必要があったりする。車両300-1が制動イベントを開始すると(またはオプションとして、制動イベントを開始する前に)、車両300-1は、(囲まれたx記号によって示されるように)制動を開始し、近傍の上流車両300-2に、車両300-1の減速レートを示す減速値305を送信することができる。車両300-1はまた、(例えば、制動が発生していることを示す)制動開始信号を送信してもよい。図3のFIG.Aに示される時点t0では、減速値305の波面および実際のブレーキ操作の波面は、両方とも位置304にある。
【0043】
光学通信の速度のため、減速値情報の波面は、車両300のグループを速やかに伝播することがある。例えば、図3のFIG.Bは、時点t1での道路を示している。この時点では、車両300-2、300-3、300-4は、車両300-1、300-2のみが実際に減速を開始したにもかかわらず、上流車両から減速値を受信した状態にある。したがって、減速値の波面は、(例えば、位置306までの)物理的な制動操作の波面よりも、さらに上流へ(例えば、位置308まで)、移動した。
【0044】
図3のFIG.Cは、時点t2における道路302を示す。この時点では、車両300-2、300-3、および300-4、300-5、300-6、および300-7は、車両300-1、300-2、300-3、および300-4のみが実際に減速を開始したにもかかわらず、上流車両から減速値を受信している。したがって、減速値の波面は、(例えば、位置312までの)物理的な制動操作の波面よりも、さらに上流(例えば、位置314まで)、移動した。
【0045】
図3のFIG.A~FIG.3Cは、どのように、差し迫った制動イベントに関する情報が、車両のグループを通って、車両が直ぐ近傍の上流車両の実際の物理的な減速度の検出に単に反応している場合に可能であるよりも、より早く伝わることができるか、を示している。上流車両はすぐ近傍の下流車両がどのように減速する予定であるかについての情報を有しているので、上流車両は、それらが実際に減速操作を開始しなければならなくなる前に、それら自らの制動パラメータについての決定を行うことができる可能性がある。
【0046】
複数の車両が集団内やグループ内で走行しており、(例えば、道路に現れる予期しない障害物や危険により、)先行車両が減速操作を実行しなければならない場合、先行車両は、障害物や危険物との衝突を回避するために、かなり急速に減速しなければならない可能性がある。場合によっては、先行車両は、車両が横滑りなしで(例えば、車輪がロックアップすることなく、車両のタイヤと道路との間に持続的なスライド又はスキッドを生じさせることなく)耐えられる最大減速値に対応し得る上側減速値で、減速する必要がある。しかしながら、このような急激な減速は、乗員にとって不快であり、また、機械的な磨耗及び車両へのストレスを増大させる可能性がある。従って、車両のグループ内で、その速度で減速する必要がある車両の数を減らすことは、有利である。例えば、各車両が同じ最大レートで減速する代わりに、以下のようにすることが安全である場合には、上流車両では下流車両よりも遅いレート(例えば、低い減速値)で減速する結果となるスキームに従って、各車両は、自らの減速速度に関して独立した判定を行うことができる。車両の光学通信システムは、そのようなスキームを容易にするのに役立つが、その理由は、各車両が、その前の車両の実際の減速レートを考慮して、それ自体の減速要求を評価することができるからである。
【0047】
1つの例の制動制御スキームでは、各車両は、最小減速レートを連続的に(例えば、周期的に)決定すし、これは、(本明細書では、車両のベース減速レートと呼ぶことがある、)直ぐ近傍の上流車両との衝突を防止するために必要となるであろうものである。次に、車両が、すぐ近傍の上流車両が制動を開始する予定であるという情報を受信すると、それは、そのベース減速レートを、すぐ近傍の上流車両により通知される減速レートを用いて、評価し、どの減速レートを自らの制動イベントに使用すべきであるか、また、減速レートをそれが後続車両に通知または送信すべきか、決定することができる。この制動制御スキームは、以下のようにすることが安全である場合には、上流車両が下流車両よりも低いレートで減速するように構成されていてもよい。図4から図6は、制動制御スキームの例を示しており、当該制動制御スキームの例は、更なる上流車両が下流の車両よりも低い減速値で減速する結果となっており、それにより制動イベント(特に緊急制動イベント)が道路上の他の車両に及ぼす全体的な影響を減少させる結果となっている。
【0048】
上述したように、輸送システム内の各車両は、直ぐ近傍の上流車両との衝突を防止するために必要となる最小減速レートを、連続的に又は周期的に決定するように、構成されていてもよい。図4は、同じ方向(例えば、右側)に走行する2つの例示的な車両である、車両A 400および車両B 402を示す。車両A 400は、速度VAで走行していてもよく、車両B 402は、速度VBで走行していてもよく、車両Bは、車両Aの後方で距離dだけ離れている。各車両は、これらの値を車両が決定することができるにするセンサを、含んでいてもよい。例えば、各車両は、速度計を有していてもよく、その結果、それ自体の速度を決定することができる、また、追加のセンサシステムを有していてもよく、当該追加のセンサシステムは、すぐ近傍の下流車両の距離dおよび速度を決定することを可能にする。そのようなセンサシステムは、(例えば、光学的な、超音波的な)近接センサ、レーダ(無線検出および測距)、ライダ(Light Detection and Ranging)、イメージングシステム、または任意の他の適切なタイプのセンシングシステム、ならびに、センシング機能を容易にする任意の関連する、回路、プロセッサ、メモリ、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなど、を含み得る。ある場合では、後続の車両(例えば、車両B 402)は、近傍の車両(例えば、車両A 400)の速度を、(例えば、速度計、GPS、または他のシステムによって測定される)それ自身の速度と、もしあれば距離dの変化、とに基づいて決定してもよい。
【0049】
これらの値が与えられると、
上述のように、各車両は、そのベース減速値を、連続的に又は周期的に計算することができ、その結果、予期しないブレーキ事象が発生した場合に、正確なベース減速値を維持する。
【0050】
車両B 402が、直ぐ近傍の上流車両(例えば、車両A 400)の光学通信システムから、制動開始信号、および、近く発生する制動イベント中に直ぐ近傍の上流車両(例えば、車両A 400)によって使用される減速値、を受信すると、車両B 402は、受信した車両A 400の減速値に対するそのベース減速レートを評価し、その評価に基づいて、1つまたは複数の動作をとることができる。例えば、車両B 402は、そのベース減速レートが上側減速値(例えば、車両B 402が横滑りせずに耐えることのできる最大の減速値)以上であるかどうか、を判断することができる。ベース減速レートが上側減速値以上であるという判定に応じて、車両B 402は、(例えば、車両のブレーキシステムに車両を減速させることによって、)上側減速値で減速する。この判定および対応する動作は、車両B 402が車両A 400との衝突を回避しようとする場合、最大安全レートで減速しなければならない、という事実を反映している。
【0051】
他方、車両B 402が、そのベース減速レートが上側減速値よりも小さく、下側減速目標値よりも大きいと判断する場合、車両Bは、(例えば、車両のブレーキシステムに車両を減速させることによって、)そのベース減速レートで減速してもよい。下側減速目標値は、車両の乗員にとって快適であるか、さもなければ、安全性、快適性、乗員の好み、または他の任意の適切なファクタに基づいて選択された、減速レートに対応し得る。例えば、下側減速目標値は、約1.5m/s、2.0m/s、2.5m/s、3.0m/s、又は他の任意の適切な値とすることができる。
【0052】
車両B 402が、そのベース減速レートが下側減速目標値以下であると判断する場合、車両B 402は、少なくとも、減速を開始する前の継続時間に対して、その速度を維持してもよい。この動作は、(例えば、下側減速目標値を超える)緊急レベルのブレーキング、および、(例えば、近傍の下流車両の実際の減速を検出する前の)即時のブレーキング応答が、衝突を回避するために、必要ではないという事実によるものでありえる。むしろ、車両B 402は、通常の動作モードに従って駆動することができ、当該通常の動作モートでは、それが近傍の下流の車両の実際の減速度を検出する場合、それは下側減速度目標値にある。したがって、例えば、その継続時間の間その速度を維持した後に、車両B 402は、車両間の距離の減少を判断することなどによって、すぐに近傍の下流車両(車両A 400)の実際の減速度を検出してもよく、また、近傍の下流車両の減速度の検出に応答して、(例えば、車両のブレーキシステムに車両を減速させることによって、)下側減速度目標で減速を開始してもよい。
【0053】
車両のグループを通じた情報の伝播を継続するために、車両B 402はまた、近傍の上流車両に情報を送信してもよく、送信される特定の情報は、少なくとも部分的には、下流車両からの情報に基づいて選択された減速値に基づいていてもよい。例えば、ベース減速レートが上側減速値以上であるという判定に応じて、車両Bは、近傍の上流側車両に、制動開始信号と上側減速値とを、送信してもよい。他方で、ベース減速レートが上側減速値未満かつ下側減速目標値より大きいという判断に応じて、車両B 402は、近傍の上流側車両に、第2の制動開始信号とベース減速レートとを、送信してもよい。
【0054】
車両B 402から上流側車両によって送信された情報は、上流車両に、車両B 402がそのブレーキングイベントを開始していることを、知らせ、また、車両B 402が使用する予定の減速値を、示す。したがって、直ぐ近傍の上流車両は、車両B 402に関して説明したものと同じ又は同様の動作を適用することによって、どの減速レートを使用すべきかの独自の判断を下すことができる。このスキームは、ブレーキ情報の急速な伝達を容易にし、また、車両のグループを通して、制動強さ(braking aggressiveness)の自然な減衰をもたらし、任意の所与の車両が、快適性および/または安全性のために必要であるよりも、より大きな減速レートを使用する必要がない。別の言い方をすれば、各車両は、その速度、下流車両までの距離、下流車両の差し迫っている減速レートなどの与えられた因子を、下流の車両よりも緩やかなレートで減速することが可能かどうかを決定する。下側減速レートで減速することが可能且つ安全であれば、そのレートで減速することになり、当該レートは、更に上流の車両が更に低いレートで減速することを可能にする結果となる。
【0055】
図5図6は、上記の制動及び通信スキームが、車両のグループ内の上流車両に向かって、どのように減速レートの減衰又は減少をもたらすかを示している。例えば、図5は、6つの例示的な車両(x軸のVEHICLE)に対する、減速レート(y軸のDECLERATION RATE)を用いた、プロット500を示す。車両1は、障害物に遭遇したり、あるいは緊急ブレーキ操作を実行する必要性を有したりする、グループ内の最初の車両、でありえる。この例では、車両1は、衝突または他の問題を回避する(または回避する機会を増やす)ために、上側減速レート502(例えば、車両1が横滑りせずに耐えることができる最大減速値)、で減速しなければならないと判断する。上述したように、車両1は、直ぐ近傍の上流車両(車両2)に、制動開始信号とその減速レート(例えば、最大値)を、送信することになる。
【0056】
プロット500では、車両2は、どのように減速するか(および車両3にどのような情報を提供するか)を決定するために、車両1から受信した減速レートに対するそれ自体の(例えば、式1によって計算される)減速レートを評価することができる。図5に示す例では、車両2自体の(式1から)計算した減速レートは、上側減速レートを下回っているが、下側減速目標値504を上回っている。上述のように、この状況では、車両2は、自ら計算した減速レートで減速することになる。
【0057】
今度は、車両3が、それ自体の減速レートを(例えば、式1によって計算されるように)決定し、車両2から、制動開始信号と車両2の減速レートとを受信し、どのように減速するか(および車両4にどのような情報を提供するか)を決定するために、車両2から受信した減速レートに対するそれ自体の減速レートを評価する。図示の例では、車両3自体の(式1から)計算した減速レートも、上側減速レート502をより低いが、下側減速目標値504を上回っている。上述のように、この状況では、車両3は、上側減速レート502又は下側減速目標値504よりもむしろ、それ自体の計算した減速レートで、減速することになる。
【0058】
図5の例では、車両4は、下側減速目標値504で、安全に減速することができる最初の車両である。特に、車両4は、(例えば、式1で計算されるような)それ自体の減速レートを決定し、車両3から、制動開始信号及び車両3の減速レートを受信し、どのように減速するか(および車両5にどのような情報を提供するか)を決定するために、車両3から受信した減速レートに対するそれ自体の減速レートを評価する。車両4自体の(数式1から)算出した減速レートは、下側減速目標値504以下であるため、車両4は、それが車両3の減速を検出するまで、減速を遅らせ、その時点で、下側減速目標値504で減速を開始してもよい。
【0059】
車両4はまた、車両4の実際の減速レート(ここでは、下側減速目標値504)及び制動開始信号を、車両5に、送信する。したがって、車両5は、それ自体の減速レートもまた、下側減速目標値504以下であると、判断することができる。このように、車両5は、それが実際に減速している車両4を一旦検知すると、下側減速目標値504で、減速し得る。車両6は、車両5と同じように、動作し得る。
【0060】
図5のプロット500は、本願明細書に記載されるブレーキ制御スキームが、車両にグループを通じて減速レートの減衰をもたらす結果となることを示している。より詳細には、各車両がそれ自体の安全な減速レートを決定するので、また、そのことが安全である場合には各車両がそれ自体の減速レートを選択する権限が与えられているので、システムは、安全性と快適性の両方を優先しつつ、他方では、交通フローの混乱を最小化または低減することができる。
【0061】
上流車両が下流車両よりも低い減速レートで減速できる理由の1つは、車両が、車両間で、固定の(または少なくとも所定の)時間間隔を維持するように構成され得ることである。別の言い方をすれば、車両は、速度に関係なく、例えば、互いに2秒離れたところにとどまることができる。これらの条件下では、車間距離は、速度が増すにつれて増加し、速度が減るにつれて減少する、ことになる。車両間の物理的距離を減少させる車両の能力は、図5に関して説明したように、車両のグループ内の上流車両が、徐々に低い減速値を使用することを、可能にする。
【0062】
図6はさらに、(固定又は所定の距離間隔ではなく、)車両間の時間間隔を維持することが、車両のグループにおける次第に減少する減速値をどのように容易にするか、を示す。特に、図6は、第1の車両602、第2の車両604、及び第3の車両606を示しており、それらは全てページの右側面に向かって走行している。時点t0では、近傍の車両間のギャップ608は、等しい時間間隔(例えば、2秒、3秒、4秒、または任意の他の好適な時間)を表してもよく、それぞれの車両は、同じまたは近いスピードで、移動し得る。
【0063】
時点t0では、第1の車両602は、制動操作を実行しなければならないと判断し得る。例えば、第1の車両602は、道路にある、あるいは、第1の車両602の経路にある、物体600(例えば、障害物)を検出し、その結果として、それが減速をする必要がある、と判断し得る。物体600は単純な正方形として示されているが、これは、車両が遭遇する可能性がありかつ回避されるべきである、任意の妨害物、位置、物体、または実際には任意のもの、を単に代表するものである。それは、穴、ポットホール、縁石、動物、他の車両、路上の化学物質または他の漏出物、照明柱、交差点、停車標識、赤信号、岩石、水たまり、識別不能な物体、道路破片、建設標識、ボラード(英:bollard)、建物などを含むが、これらに限定されない。
【0064】
第1の車両602は、物体600と衝突するか又は他の方法で相互作用するのを回避するために必要な減速値を、決定することができる。減速値は、少なくとも部分的に、第1の車両602の速度、物体600までの距離、物体600の運動特性(例えば、速度、運動方向、加速度など)、上側減速値(例えば、第1の車両602が横滑りなしで耐えられる最大の減速値)、既存の道路状況、現在のタイヤ状況に、基づくことができる。第1の車両602の減速値を決定するために、他の要因を使用してもよい。
【0065】
時刻t1は、第1の車両602が制動を開始したときに開始される制動イベント中の車両602、604、606の相対位置の例を示している。t1に示すように、第1の車両602は、減速強度インジケータ(例えば、減速強度インジケータ618)によって図示されるように、比較的高いレートで減速している。減速強度インジケータの太さは、その車両によって採用されている減速値の相対的な強度を表すことおよび/または示すことができる。図に示すように、t0からt1まで、第1の車両602は、距離612にわたって減速している。一方、第2の車両604は、距離612よりも大きい距離614にわたって、減速することができた。第2の車両604が利用可能なより大きな距離614は、目標時間間隔を維持しながら、より遅い速度で、車両間の物理的な距離を減らすことができるという事実に、少なくとも部分的に起因し得る。例えば、ギャップ608、610の物理的な距離が異なっていても(例えば、ギャップ610は、ギャップ608より小さい)、時点t0および時点t1における車両間の時間間隔は、同じであり得る。第2の車両604に戻り、それは距離612よりも大きい距離614にわたって減速することができたので、より細い減速強度インジケータ620で示すように、より低い減速値を使用することができた。同様に、第3の車両606は、(ギャップ608及びギャップ610によって表される同じ安全な時間間隔を維持しながら、)ブレーキ中の第2の車両604へのその距離を減少させることができるので、第3の車両606は、距離614よりも大きい距離616にわたって減速することができる。したがって、第3の車両606は、最も細い減速強度インジケータ622で示すように、さらに低い減速値を適用することができる。
【0066】
図6の車両は、上述したように、減速値および制動開始信号を提供するために、互いに通信してもよい。例えば、後続車両はそれぞれ、直ぐ近傍の下流車両の減速値を受け取り、これにより、後続車両は、(例えば、上記の式1を用いて)自らの減速値を計算し、それらの計算した減速値を、上側減速値および下側減速目標値と比較し、比較の結果に基づいてどのように減速するかを決定することができる。
【0067】
本出願において、制動(英:braking)という用語は、車両の減速をもたらす任意の動作を指すことができ、車両を減速するための特定の機構又は技術に限定されるものではない。例えば、制動は、車輪の運きに抵抗するために機械的摩擦を使用する制動システム(例えば、ディスクブレーキ、ドラムブレーキ等)、車輪に運きに対抗するトルクを車輪に加える(例えば、電気的、内燃的等の)モータ、空力制動システム(例えば、パラシュート、可動フィン、ウィング、または他の物体)、外部摩擦ベースのシステム(例えば、バー、ボード、または地面、レール、または他の物体に、強制的に接触させる他の物体)、強制空気システム(例えば、ロケット、タービン、ファン等)、または他の任意の適切なシステム(または前記のシステムまたは他のシステムの組合せ)、を用いて達成されてもよい。
【0068】
本願明細書に記載された制動制御スキームは、多数の車両を自律的に運転して乗員及び/又は貨物を道路に沿って輸送する輸送システムと共に、又は、それにより、使用されてもよい。例えば、輸送システムまたはサービスは、道路に沿って動作する車両群を提供してもよい。このような輸送システム内の車両は、1つ以上の車両制御スキームに従って、自律的に動作するように構成されていてもよい。本明細書で用いるように、「自律」という用語は、車両が人間のオペレータによる連続的な手動制御なしに作動することができるモードまたはスキーム、を指すことができる。例えば、ドライバレス車両は、車両の速度及び方向を制御する、自動駆動のシステム及びステアリングシステムを使用して、道路に沿ってナビゲーションすることができる。場合によっては、車両は、乗員からの操舵、速度、方向制御を必要としなくてもよく、また、乗員がアクセス可能なアクセル及びブレーキペダル、ステアリングホイール、及び他の手動制御装置などの、制御装置を除外してもよい。場合によっては、車両は、メンテナンス、緊急オーバライド等に使用され得る手動駆動制御装置を、含んでもよい。このような制御装置は、隠されていたり、収納されていたり、またはその他の方法で、通常の車両の動作中にユーザが直接アクセスできないようにされていたり、してもよい。例えば、それらは、訓練を受けたオペレータ、保守要員などによってのみアクセスできるように、設計されていてもよい。
【0069】
自律動作は、車両または輸送システム全体の人間のまたは手動の全ての動作を除外する必要はない。例えば、人間のオペレータは、安全性、利便性、テスト、またはその他、の目的のために、車両の操作に介入することができてもよい。このような介入は、人間の運転者が車両の制御を取る場合のように、車両に対して局所的であってもよいし、オペレータが遠隔制御システムを介して車両にコマンドを送信する場合のように、遠隔的であってもよい。同様に、車両のいくつかの態様は、車両の乗員によって制御されてもよい。例えば、車両の乗員は、目標の目的地を選択すること、経路を選択すること、速度を選択すること、ドア及び/又は窓の動作を制御すること、等ができるとよい。従って、「自律」及び「自律動作」という用語は、個々の車両又は全体的な輸送システムの全ての人間の介在又は動作を、必ずしも排除するものではないことが理解されよう。
【0070】
輸送システム内の車両は、自律動作を容易にするのに役立つ種々の、センサ、カメラ、通信システム、プロセッサ、および/または、他の構成要素またはシステム、を含んでもよい。例えば、車両は、センサアレイを含んでいてもよく、当該センサアレイは道路に埋め込まれた磁石または他のマーカーを検出する、また、当該センサアレイは、車両がその道路上での、場所、位置、および/または、方向を決定することを支援する。車両は同様に、光学通信システム(例えば、光学通信システム200、図2のFIG.A、FIG.2B)などの無線車両対車両通信システムを含んでもよく、当該無線車両対車両通信システムは、車両が、減速情報(例えば、制動開始信号、減速値など)、集団内の前方の車両の数、加速状態、それらの近く発生する操縦(例えば、右折、左折、計画した停止)、それらのペイロード(例えば、人や積荷)の数や種類などの動作パラメータを、互いに通知することを可能にする。車両は同様に、(例えば、セルラー、Wi-Fi(登録商標)、または他の適切な無線通信技術を使用する)輸送システム上の監視コマンドおよび制御権限を有する輸送システム制御部との通信を容易にするために、無線通信システムを含んでもよい。
【0071】
輸送システム内の車両は、輸送システムの運用及び利便性を高めるように設計されていてもよい。例えば、輸送システムの主要な目的は、快適で、便利で、迅速かつ効率的な、個人輸送を提供することであり得る。個人の快適さを提供するために、車両は乗客が容易に出入りできるように設計され得て、また、十分な脚部空間と頭部空間を備えた快適な座席配置を有し得る。また、車両は、精巧なサスペンションシステムを有していてもよく、当該サスペンションシステムは、快適な乗り心地と、動的に調節可能なパラメータとを提供し、便利な高さに位置決めした車両レベルを維持することを補助し、可変負荷重量の範囲全体にわたって、快適な乗り心地を確保する。
【0072】
従来の個人用自動車は、主に一方向のみの操作用に、設計されている。これは、部分的には以下のような事実によるものである、すなわち、ドライバが前方を向いており、長距離の間、逆方向に動作することは、一般に安全でないか、または必要でないという事実によるものである。しかしながら、人間がリアルタイムで車両の動作を直接制御していない自律車両においては、車両を双方向に動作できることが有利である場合がある。例えば、本明細書に記載する輸送システム内の車両は、車両が視覚的または機械的に明確な前面または背面を欠くように、実質的に対称であってもよい。更に、車輪は、車両のどの端部が進行方向を向いていても、車両が実質的に同一に作動するように、十分に独立に制御され得る。この対称的な設計は、いくつかの利点を提供する。例えば、車両は、移動を開始する前に、車両が「前方」を向くように方向を変えるためにUターンまたは他の操縦を行う必要性を、潜在的に排除することによって、より小さな空間で操縦され得る。
【0073】
図7のFIG.7A、FIG.7Bは、本明細書に記載する輸送システムに使用することができる例示的な四輪の道路車両700(ここでは単に「車両」と呼ぶ)の斜視図である。車両700は、車両108(図1図2)の実施例であっても、または本明細書に記載する任意の他の車両であってもよい。図7のFIG.7A、FIG.7Bは、車両700の対称性および双方向性を示す。特に、車両700は、図7のFIG.7Aに前面に示されている第1の端部702と、図7のFIG.7Bに前面に示されている第2の端部704とを画定している。いくつかの例では、および、図示するように、第1の端部702および第2の端部704は、実質的に同一である。また、車両700は、いずれかの端部を進行方向に向けても走行できるように、構成されていてもよい。例えば、車両700が矢印714で示す方向に走行しているとき、第1の端部702が車両700の先頭部分であり、一方、車両700が矢印712で示す方向に走行しているとき、第2の端部704が車両700の先頭部分である。
【0074】
車両700はまた、車輪706(例えば、車輪706-1~706-4)を含んでいてもよい。車輪706は、車両の端部への接近に応じて対にされていてもよい。したがって、車輪706-1、706-3は、車両の第1の端部702の近くに配置することができ、車輪706の第1の対と呼ぶことができ、車輪706-2、706-4は、車両の第2の端部704の近くに配置することができ、車輪706の第2の対と呼ぶことができる。車輪は、駆動システムによって駆動されてもよく、当該駆動システムは、モータ、エンジン、モータ制御部、速度制御部、コンピュータ、プロセッサ、及び、車両の推進(及び任意選択的には制動又は減速)を容易にする任意の他の適切な構成要素、システム、サブシステム等、を含んでいてもよい。車輪の各対は、少なくとも1つのモータ(例えば、電気モータ)によって、駆動され得て、車輪の各対は、車両を操縦することができる。各対の車輪は、車両を操舵するためにターンすることができるので、車両は、進行方向に関係なく、同様の運転およびハンドリング特性を有し得る。場合によっては、車両は、2輪操舵モードで運転されてもよく、この場合、1対の車輪のみが所定の時間に車両700を操舵する。このような場合、走行方向が変わると、車両700を操縦する特定の車輪対は、変更し得る。他の場合には、車両は4輪操舵モードで操作されてもよく、この場合、車輪は車両を操縦するために協調して操作される。四輪操舵モードでは、車輪の対は、実行される操舵操作及び/又は車両の速度に応じて、同じ方向又は反対方向にターンすることができる。
【0075】
車両700はまた、ドア708、710を含んでいてもよく、当該ドア708、710は、乗員および他のペイロード(例えば、パッケージ、荷物、貨物)を車両700の内部に配置できるように開く。ここでより詳細に説明するドア708、710は、各々が2つの向かい合う側のセグメントを画定するように、車両の上部に延在してもよい。例えば、各ドアは、車両の第1の側面で側方セグメントを画定し、車両の第2の両側で別の側面セグメントを画定する。また、ドアは、それぞれ、側面セグメント間に延在するルーフセグメントを画定し、車両のルーフ(または上部側)の一部を画定する。場合によっては、ドア708、710は、横断面において上下逆「U」に似ており、キャノピードアと称されてもよい。ドアの側面セグメントおよび上部セグメントは、ドアの構成要素(例えば、側面セグメントおよび上部セグメント)のすべてが互いに協調して移動するように、剛性の構造ユニットとして形成されていてもよい。場合によっては、ドア708、710は、モノリシック構造から形成された一体のシェルまたはドアシャーシを、含む。一体のシェルまたはドアシャーシは、例えば、ガラス繊維、炭素複合材、および/または、他の軽量複合材、を含む複合シートまたは複合構造から形成されていてもよい。
【0076】
車両700は、車両700の動作及び車両のシステム及び/又はサブシステムを制御する車両制御部を含んでもよい。例えば、車両制御部は、車両の駆動システム、制動システム、操舵システム、サスペンションシステム、ドア等を制御して、1以上の車両制御スキームに従って道路に沿って車両をナビゲートすることを含む、車両動作を容易にし、また、ここに記載した1以上の制動制御スキームに従って制動システムの動作を制御する。車両制御装置はまた、(例えば、光学通信システム200を介して、)他の車両、輸送システム制御部、及び/又は、輸送システムの他の構成要素、と通信するように、構成されていてもよい。例えば、車両制御装置は、他の車両から、集団内でのそれらの車両の位置、速度、近く発生する速度または方向の変化、近く発生するブレーキイベントなどに関する情報を、受信するように構成されていてもよい。車両制御部は、コンピュータ、プロセッサ、メモリ、回路、または任意の他の適切なハードウェア構成部品を、含んでもいてもよく、また、他の車両動作と同様に、本明細書で説明する動作を容易にするために、車両の他のシステムと相互接続されていてもよい。
【0077】
図8Aおよび図8Bは、ドア708、710が開状態にある、車両700の側面図および斜視図である。ドア708、710は、それぞれ、2つの向かい合う側のセグメント、および、ルーフセグメント、を画定しているので、ドア708、710が開放されると、中断されていない内部空間802が明らかになり得る。図8Aおよび図8Bに描かれた例においては、ドア708、710が開かれている場合、ドア708、710の間に、車両700の一方の側面から他方の側面に延在する開区間を、画定することができる。これは、車両700の両側の乗客による、車両700への妨害されない進入及び退出を、可能にすることができる。ドア708、710が開かれたときに頭上の構造が欠如していることは、乗客に、頭上クリアランスに制限なく、車両700を横切って歩くことを可能にし得る。
【0078】
車両700はまた、座席804を含んでもよく、当該シートは車両700の両端に配置され得て、互いに向かい合っていてもよい。図示のように、車両は2つの座席804を含むが、他の数の座席および他の座席の配列も、可能である(例えば、0座席、1座席、3座席等)。場合によっては、座席804は、取り外したり、倒したり、または格納したりされ得るとよく、その結果、車椅子、ベビーカー、自転車、または荷物が、車両700内により容易に配置できる。
【0079】
車両700などの本明細書に記載の輸送システムで使用する車両は、安全かつ快適な操作のほか、製造およびメンテナンスの容易さを考慮して設計され得る。これらの利点を達成するために、車両は、車両の構造的および動作的な構成要素(例えば、モータ、サスペンション、バッテリなど)の多くを含むフレーム構造であって、地面に対して低い位置にあるフレーム構造を、有するように設計されてもよい。本体構造は、フレーム構造に取り付けられていても、固定されていてもよい。図9は、車両の部分分解図を示しており、当該車両は、車両108、700(又は本明細書に記載する任意の他の車両)の実施形態であり得て、フレーム構造及び車体構造の構成の例を示している。後述するように、フレーム構造の低い位置と比較的軽量な車体構造との組み合わせによって、重心が非常に低い車両が製造され、その結果、車両の安全性およびハンドリング性が高まる。例えば、低重心は、車両が傾斜した路面、風の負荷、鋭いターン等に遭遇した場合の車両の横転リスクを減少させ、また、ターン又は他の操縦中の車両のボディロールを減少させる。さらに、車両の動作的な構成要素の多く、例えば、モータ、バッテリ、車両制御部、センサ(例えば、道路に設置された磁石又は他のマーカーを検出するセンサ)等をフレーム構造(例えば、フレーム構造904、図9)上に位置決めすることによって、製造及び修理が簡略化され得る。
【0080】
図9は、車両700の実施形態であり得る、車両900の部分分解図である。車両700の詳細は、車両900に同様に適用可能であり、ここでは繰り返さない。車両900は、ドア(例えば、前述のドア708、710)および他の車体構成要素を含み得る車体構造902と、車体構造902が取り付けられているフレーム構造904と、を含むことができる。
【0081】
フレーム構造904は、車両の駆動部品、サスペンション部品、ステアリング部品を含んでいてもよい。例えば、フレーム構造904は、(ホイールマウント、車軸、又はハブを規定するか、又は含むことができ、図9では点912として表されている)ホイールサスペンションシステム、ステアリングシステム、駆動システム(例えばモータ、エンジン等)、ブレーキシステム(例えばディスクブレーキ、ドラムブレーキ等)、及び、オプションでモータ制御部、を含むことができる。ホイールは、ホイールマウント、車軸、ハブ等を介して、ホイールサスペンションシステムに取り付けられていてもよい。駆動モータは、独立に又は互いに協調して車輪を駆動する1つ又はそれ以上の駆動モータを含んでいてもよい。駆動モータは、フレーム構造904上に取り付けられている電源(例えば、バッテリ)から電力を受け取ってもよい。駆動モータ用のモータ制御部もまた、フレーム構造904に取り付けられていてもよい。
【0082】
サスペンションシステムは、任意の適切なタイプのサスペンションシステムであってよい。場合によっては、サスペンションシステムは、各車輪に対して独立のサスペンションシステムを含む。例えば、サスペンションシステムは、ダブルウィッシュボーン・トーションバー・サスペンションシステム(英:double-wishbone torsion-bar suspension systems)であってもよい。また、サスペンションシステムは、車両が静止している間、または車両が移動している間に、ライド高さ、サスペンションプリロード、ダンピング、または他のサスペンションパラメータを制御するように、動的に調整可能であってもよい。スイングアクスルサスペンション(英:swing axle suspension)、スライディングピラーサスペンション(英:sliding pillar suspension)、マクファーソンストラットサスペンション(英:MacPherson strut suspension)等の他のサスペンションシステムも考えられる。更に、スプリング機能及び減衰機能は、コイルスプリング、板スプリング、空圧スプリング(英:pneumatic springs)、流空圧スプリング(英:hydropneumatic springs)、磁気レオロジーショックダンパ(英:magneto-rheological shock absorbers)等の、任意の適当な構成要素又は装置によって、提供され得る。サスペンションシステムは、(例えば、上述したような道路の)路面の輪郭と連動して作動し、乗員の所望の体験を維持するように、構成されていてもよい。
【0083】
フレーム構造904は、車両を操舵することために車輪をターンさせることを可能にするステアリングシステムを含んでもよい。場合によっては、車輪は独立して操舵可能であってもよく、または、それらは、車両の通常の作動中にそれらが常にほぼ同じ方向を向くように(例えばステアリングラックを介して)連結されていてもよい。さらに、これは、車両に、四輪操舵スキームを使用できるようにする、また、二輪操舵スキームと四輪操舵スキームとを交互に行うことができるようにする。
【0084】
フレーム構造904は、バッテリ、モータ、車両のドアを開閉する機構、(コンピュータまたは他の処理ユニットを含む)制御システムなどの、構成要素を含むことができる。
【0085】
図9は、車両およびフレーム構造の例示的な構成を示す。しかし、他の構成も可能である。さらに、図9に示されるフレーム構造および本体構造は、これらの構成要素を概略的に表すことを意図しており、これらの構成要素は、明確さのために、図9から省略された他の構造を含んでもよい。図9に明示的に表されるものよりも、追加の構造的な接続および一体化が、本体構造とフレーム構造との間に形成されていてもよい。例えば、本体構造のドアを開閉するドア機構の構成要素は、ドアとフレーム構造の両方に接続されていてもよい。
【0086】
前述の説明は、説明の目的のために、説明される実施形態を完全に理解するために、特定の用語を使用した。しかしながら、説明される実施例を実施するために、特定の詳細が必要とされないことは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本明細書に記載する特定の実施の前述の説明は、実例および説明の目的で提示されている。それらは、網羅的であること、または実施形態を開示される正確な形態に限定すること、を目的とするものではない。上記の教示を鑑みれば、多くの修正および変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。例えば、本明細書に開示の方法又はプロセスは、特定の順序で実行される特定の操作を参照して説明し、示したが、これらの操作は、本開示の教示からの逸脱なしに、組み合わせる、細分化する、又は、同等の方法又はプロセスを形成するように再順序付けする、ことができる。さらに、一実施形態に関して本明細書に記載されている、構造、特徴、構成要素、材料、ステップ、プロセスなどは、その実施形態から省略するか、または他の実施形態に組み込むことができる。さらに、本明細書では「道路」という用語は、移動する車両を支持する構造物を指すために使用されるが、本明細書で説明される道路は、法律、規則、輸送コードなどで使用され得るような、「道路」という用語に関連し得るいかなる定義、規格、または要件に、必ずしも適合しない。このように、本明細書に記載された道路は、従来の「道路」と同じ特徴及び/又は同じ構造を必ずしも(そして実際に)提供する必要はない。もちろん、本明細書に記載された道路は、乗員、傍観者、運転者、建設者、保守員等の安全のための、任意の又は全ての、適用可能な法規、安全規則、又は他の規則に、適合することができる。

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9