(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】酸および/または塩基を含む化学反応用デバイス、ならびに関連システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/38 20060101AFI20250306BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20250306BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20250306BHJP
C25B 15/031 20210101ALI20250306BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
C04B7/38 ZAB
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/031
C25B1/26 A
(21)【出願番号】P 2021554694
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 US2020022672
(87)【国際公開番号】W WO2020186178
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン, イェット-ミン
(72)【発明者】
【氏名】エリス, リア
(72)【発明者】
【氏名】バデル, アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】メトカーフ, アイザック ダブリュー.
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020296(JP,A)
【文献】特開2001-058170(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153692(WO,A1)
【文献】特開2002-018395(JP,A)
【文献】特開2002-018396(JP,A)
【文献】米国特許第09718731(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00- 1/55
C25B 9/00- 9/77
C25B 15/00-15/08
C04B 7/00- 7/60
C04B 2/00- 2/12
B09B 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解により酸および塩基を生成するステップ、
6以下のpHを有する反応器の領域において、材料を前記酸に溶解して、カルシウムイオンを含む溶解した1つまたはこれより多くの元素を生成するステップであって、前記材料がカルシウムおよびシリケートを含む、ステップ、
10以上のpHを有する反応器の領域において、前記溶解した1つまたはこれより多くの元素の1つまたはこれより多くから水酸化カルシウムを含む少なくとも1つの沈殿物
および副生成物を形成するステップ
、
前記副生成物を収集するステップ、および
前記少なくとも1つの沈殿物を反応性シリケートと混合して、セメントを形成するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記酸および塩基が、溶解および/または沈殿反応に使用される前に貯蔵される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸および塩基が反応器のシステムで生成され、一方で前記溶解および沈殿が別の反応器または反応器のシステムで起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記材料を前記酸および塩基に溶解して、溶解した1つまたはこれより多くの元素を生成するステップが、前記酸中の炭酸塩の溶解からCO
2を回収するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶解した1つまたはこれより多くの元素の1つまたはこれより多くから少なくとも1つの沈殿物を形成するステップが、前記溶解した1つまたはこれより多くの元素
の1つまたはこれより多くとの沈殿反応において前記塩基を使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸および塩基を、少なくとも部分的に
第1の反応器において二ハロゲン化物を形成すること(好ましくは、前記二ハロゲン化物がCl
2である);および
第2の反応器において前記二ハロゲン化物を反応させること
によって生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の反応器において前記二ハロゲン化物を形成することが、少なくとも部分的に、前記二ハロゲン化物および水素ガスを電気分解により形成することを含み、
前記第2の反応器において前記二ハロゲン化物を反応させることが、少なくとも部分的に、前記二ハロゲン化物を前記水素ガスと反応させてハロゲン化水素を形成することを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を行うためのシステム。
【請求項9】
前記セメントを含む建築材料を形成するステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下、2019年3月14日出願の米国仮特許出願第62/818,604号、2019年8月15日出願の米国仮特許出願第62/887,143号および2020年1月16日出願の米国仮特許出願第62/962,061号への優先権を主張し、これらのすべてはその全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
酸および/または塩基を含む化学反応用デバイス、ならびに関連システムおよび方法が概して記載される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
酸および/または塩基を含む化学反応用デバイス、ならびに関連システムおよび方法が概して記載される。一部の実施形態では、方法は、第1の電極(例えば、カソード)の近傍に塩基を、および第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極(例えば、アノード)の近傍に酸を生成するステップを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、酸および/または塩基を収集するステップを含む。一部の例では、本方法は、酸および/または塩基を貯蔵するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、酸および/または塩基を化学的溶解で反応させるステップ(例えば、酸をCaCO3などの金属炭酸塩と反応させて、カルシウムイオンなどの金属イオン、および/または炭酸イオンを生成するステップ)を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、酸および/または塩基を沈殿反応で反応させるステップ(例えば、塩基をカルシウムイオンなどの金属イオンと反応させて、Ca(OH)2などの金属水酸化物を生成するステップ)を含む。一部の実施形態では、金属水酸化物は、セメント製造プロセスに使用することができる。
【0004】
一部の場合、第2の電極の近傍における酸の生成および/または第1の電極の近傍における塩基の生成により、ガス(例えば、CO2、H2および/またはO2)が生成する。ある特定の場合、ガスの1つまたはこれより多くを収集する、販売する、下流のプロセスにおいて使用する、および/または本システムに供給して戻すことができる。一部の例では、生成するガスのいずれも本システムによって使用される(例えば、両電極間でのpH勾配を増大させる)ので、第2の電極の近傍における酸の生成および/または第1の電極における近傍の塩基の生成により、ガス量の減少がもたらされる、ガスが生成しない、および/または正味の量のガスが生成しない。ある特定の実施形態では、例えば、電気コストの低い期間には、第2の電極の近傍で生成する酸および/または第1の電極の近傍で生成する塩基は、例えば、電気コストの高い期間に、水素ガスおよび/または酸素ガスを生成するために使用することができる。
【0005】
空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)における、沈殿物の形成に関する本発明のシステムおよび方法もまた、記載される。空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)における沈殿物の形成は、例えば、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)に化学化合物(例えば、金属塩)を溶解し、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に化学化合物(例えば、金属塩)から1つまたはこれより多くの元素(例えば、金属)を含む沈殿物を収集することにより実現することができる。ある特定の実施形態では、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)は、電気化学セル内に存在し、電気分解(例えば、水の電気分解)によって確立および/または維持される。一部の実施形態によれば、沈殿物が収集された後に、この沈殿物を窯内で加熱して、ポルトランドセメントなどのセメントを製造する。本発明の主題は、一部の場合、相互関連生成物、特定の課題に対する代替的解決法、ならびに/または1つもしくは1つより多くのシステムおよび/もしくは物品の複数の様々な使用を含む。
【0006】
ある特定の態様は方法に関する。一部の実施形態では、本方法は、反応器を第1のモードで稼働するステップを含み、第1のモードは、第1の電極から塩基を生成すること、反応器において第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極から酸を生成すること、ならびに酸および/または塩基を収集することを含む。
【0007】
ある特定の実施形態では、本方法は、反応器を第1のモードで稼働するステップを含み、第1のモードは、第1の電極から塩基を生成すること、反応器において第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極から酸を生成すること、酸および/または塩基を収集すること、ならびに収集した酸および/または塩基を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させることを含む。
【0008】
一部の実施形態では、本方法は、反応器を第1のモードで稼働するステップを含み、第1のモードが、第1の電極から塩基および水素ガスを生成すること、反応器において第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極から酸および酸素ガスを生成すること、ならびに酸素ガスが第1の電極まで拡散すること、ならびに/もしくは輸送されることが可能となることおよび/または水素ガスが第2の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となることを含むステップ、ならびに酸素ガスが第1の電極によって還元されることが可能となるステップおよび/または水素ガスが第2の電極によって酸化されることが可能となるステップを含む。
【0009】
一部の実施形態では、本方法は、第1の反応器において塩基および二ハロゲン化物(dihalide)を生成するステップ、第2の反応器において酸を生成するステップ、酸を収集するステップ、塩基を収集するステップ、酸および/または塩基を用いて化学的溶解を行うステップ、ならびに酸および/または塩基を用いて沈殿反応を行うステップを含む。
【0010】
ある特定の態様はシステムに関する。ある特定の実施形態では、本システムは、第1の電極;第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極;ならびに第2の電極の近傍の酸性産出物および/または第1の電極の近傍の塩基性産出物を収集するよう構成されている装置を備える。
【0011】
一部の実施形態では、本システムは、第1の電極、第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極、第2の電極の近傍の酸性産出物および/または第1の電極の近傍の塩基性産出物を収集するよう構成されている第1の装置、ならびに収集した酸性産出物および/もしくは収集した塩基性産出物を反応させるよう構成されている第2の装置を備える。
【0012】
ある特定の実施形態では、本システムは、塩基および水素ガスを生成するよう構成されている第1の電極、ならびに第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極であって、酸および酸素ガスを生成するよう構成されている第2の電極を備え、該システムは、酸素ガスが第1の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となるよう、ならびに/または水素ガスが第2の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となるよう構成されており、該システムは、酸素ガスが第1の電極によって還元されることが可能となるよう、および/または水素ガスが第2の電極によって酸化されることが可能となるよう構成されている。
【0013】
一部の実施形態では、本システムは、塩基、二ハロゲン化物および水素ガスを生成するよう構成されている第1の反応器、酸を生成するよう構成されている第2の反応器、第2の反応器の近傍の酸を収集し、酸を用いて化学的溶解および/または沈殿反応を行うよう構成されている第1の装置、ならびに第1の反応器の近傍の塩基を収集し、塩基を用いて化学的溶解および/または沈殿反応を行うよう構成されている第2の装置を備える。
【0014】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付図面と連携させて考慮すると、本発明の様々な非限定的な実施形態の以下の詳細説明から明白となろう。参照により組み込まれている本明細書および書類が、本開示との矛盾および/または不一致を含む場合、本明細書が優先するものとする。
【0015】
図面の簡単な説明
本発明の非限定的な実施形態は、例として、添付の図面を参照して記載されており、これらの図面は、概略図であり、縮尺通りに図示することを意図するものではない。図面において、例示されている同一またはほぼ同一の構成要素はそれぞれ、単一の数字によって通常、表されている。明確にするため、すべての構成要素がすべての図面で標識されているわけではなく、当業者が本発明を理解することができるために図示が必要ではない場合、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極および装置を備えるシステムの概略図である。
【0017】
【
図1B】
図1Bは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極および2つの装置を備えるシステムの概略図である。
【0018】
【
図1C】
図1Cは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極、装置およびセパレータを備えるシステムの概略図である。
【0019】
【
図1D】
図1Dは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極および3つの装置を備えるシステムの概略図である。
【0020】
【
図1E】
図1Eは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極および6つの装置を備えるシステムの概略図である。
【0021】
【
図1F】
図1Fは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極、装置および窯を備えるシステムの概略図である。
【0022】
【
図2A】
図2Aは、ある特定の実施形態による、第1の電極および第2の電極を備えており、水素ガスおよび酸素ガスを生成するシステムの断面概略図である。
【0023】
【
図2B】
図2Bは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極およびセパレータを備えており、水素ガスおよび酸素ガスを生成するシステムの断面概略図である。
【0024】
【
図2C】
図2Cは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極、セパレータおよび2つの装置を備えており、水素ガスおよび酸素ガスを生成するシステムの断面概略図である。
【0025】
【
図2D】
図2Dは、ある特定の実施形態による、第1の電極、第2の電極、セパレータ、2つの装置および窯を備えており、水素ガスおよび酸素ガスを生成するシステムの概略図である。
【0026】
【
図3A】
図3Aは、ある特定の実施形態による、2つの反応器を備えるシステムの概略図である。
【0027】
【
図3B】
図3Bは、ある特定の実施形態による、2つの反応器を備えるシステムであって、第1の反応器が第1の電極および第2の電極を備える、システムの概略図である。
【0028】
【
図4A】
図4Aは、ある特定の実施形態による、2つのチャンバを備えるシステムの概略図である。
【0029】
【
図4B】
図4Bは、ある特定の実施形態による、2つのチャンバを備えるシステムであって、CaCO
3が1つのチャンバ内で溶解され、Ca(OH)
2が、他のチャンバ内で沈殿する、システムの概略図である。
【0030】
【
図5A】
図5Aは、ある特定の実施形態による、反応器の高電圧モードでの操作の概略図である。
【0031】
【
図5B】
図5Bは、高電圧モードを例示するプールベダイアグラムである。
【0032】
【
図6A】
図6Aは、ある特定の実施形態による、反応器の低電圧モードでの操作の概略図である。
【0033】
【
図6B】
図6Bは、低電圧モードを例示するプールベダイアグラムである。
【0034】
【
図7】
図7は、1.2Vで操作した1kWアルカリ電解槽の場合(実線)、および電気コストが>0.05$/kWhである場合に2Vにおいて、および電気コストが<0.05$/kWhである場合に0.4Vにおいて操作した同じ量の電流を消費する電解槽の場合(点線)の時間に対する電気コストのプロットである。
【0035】
【
図8A】
図8Aは、ある特定の実施形態による、反応器の低電圧モードAでの操作の概略図である。
【0036】
【
図8B】
図8Bは、低電圧モードAを例示するプールベダイアグラムである。
【0037】
【
図9A】
図9Aは、ある特定の実施形態による、反応器の低電圧モードBでの操作の概略図である。
【0038】
【
図9B】
図9Bは、低電圧モードBを例示するプールベダイアグラムである。
【0039】
【
図10A】
図10Aは、ある特定の実施形態による、反応器の燃料電池モードでの操作の概略図である。
【0040】
【0041】
【
図11】
図11は、ある特定の実施形態による、一部の実施形態に準拠して沈殿した水酸化物を製造するための酸/塩基を製造するための中性pHの水の電気分解を示すフローチャートである。
【0042】
【
図12】
図12は、ある特定の実施形態による、ある特定の実施形態に準拠して沈殿した水酸化物を製造するための酸/塩基を製造するためのアルカリハロゲン化物の電解質の電気分解を示すフローチャートである。
【0043】
【
図13A】
図13A~13Bは、ある特定の実施形態による、OH
-が、隔膜または膜を通過する、電解質中の陽イオンによって電荷のバランスがとられることを示す図である。
図13Aは、ある特定の実施形態による、反応器1の第1の電極(例えば、カソード)では、水が還元されて、OH
-(アルカリ性溶液)およびH
2(g)をもたらすことを示す例示である。
図13Bは、ある特定の実施形態による、反応器1の第1の電極(例えば、カソード)では、O
2が還元されて、OH
-(アルカリ性溶液)をもたらすことを示す例示である。
【
図13B】
図13A~13Bは、ある特定の実施形態による、OH
-が、隔膜または膜を通過する、電解質中の陽イオンによって電荷のバランスがとられることを示す図である。
図13Aは、ある特定の実施形態による、反応器1の第1の電極(例えば、カソード)では、水が還元されて、OH
-(アルカリ性溶液)およびH
2(g)をもたらすことを示す例示である。
図13Bは、ある特定の実施形態による、反応器1の第1の電極(例えば、カソード)では、O
2が還元されて、OH
-(アルカリ性溶液)をもたらすことを示す例示である。
【0044】
【
図14A】
図14A~14Bは、ある特定の実施形態による、化学的溶解および沈殿反応を示す図である。
図14Aは、ある特定の実施形態による、二ハロゲン化物が水素ガスと反応して、所望の酸を生成することを示す概略図である。
図14Bは、ある特定の実施形態による、二ハロゲン化物が水と反応して、所望の酸、および副生成物として酸素を生成することを示す概略図である。
【
図14B】
図14A~14Bは、ある特定の実施形態による、化学的溶解および沈殿反応を示す図である。
図14Aは、ある特定の実施形態による、二ハロゲン化物が水素ガスと反応して、所望の酸を生成することを示す概略図である。
図14Bは、ある特定の実施形態による、二ハロゲン化物が水と反応して、所望の酸、および副生成物として酸素を生成することを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
酸および/または塩基を含む化学反応用デバイス、ならびに関連システムおよび方法が概して記載される。一部の実施形態では、方法は、第1の電極(例えば、カソード)の近傍に塩基を、および第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極(例えば、アノード)の近傍に酸を生成するステップを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、酸および/または塩基を収集するステップを含む。一部の例では、本方法は、酸および/または塩基を貯蔵するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、酸および/または塩基を化学的溶解で反応させるステップ(例えば、酸をCaCO3などの金属炭酸塩と反応させて、カルシウムイオンなどの金属イオン、および/または炭酸イオンを生成するステップ)を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、酸および/または塩基を沈殿反応で反応させるステップ(例えば、塩基をカルシウムイオンなどの金属イオンと反応させて、Ca(OH)2などの金属水酸化物を生成するステップ)を含む。一部の実施形態では、金属水酸化物は、セメント製造プロセスに使用され得る。
【0046】
一部の場合、第2の電極の近傍における酸の生成および/または第1の電極の近傍における塩基の生成により、ガス(例えば、CO2、H2および/またはO2)が生成する。ある特定の場合、1つまたはこれより多くのガスを収集する、販売する、下流のプロセスにおいて使用する、および/または本システムに供給して戻すことができる。一部の例では、生成するガスのいずれも本システムによって使用される(例えば、両電極間でのpH勾配を増大させる)ので、第2の電極の近傍における酸の生成および/または第1の電極の近傍における塩基の生成は、減少したガス量を生成する、ガスを生成しない、および/または正味の量のガスを生成しない。ある特定の実施形態では、例えば、電気コストの低い期間には、第2の電極の近傍で生成する酸および/または第1の電極の近傍で生成する塩基は、例えば、電気コストの高い期間に、水素ガスおよび/または酸素ガスを生成するために使用することができる。
【0047】
空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む反応器、ならびに関連するシステムおよび方法もまた記載される。一部の実施形態では、電気化学反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む。ある特定の実施形態では、沈殿物は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を使用して形成される。一部の実施形態では、化学化合物(例えば、金属塩)は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)に溶解し、化学化合物(例えば、金属塩)に由来する1つまたはこれより多くの元素(例えば、金属)を含む沈殿物が、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に形成する。
【0048】
一部の実施形態は、電解反応を使用して、電気化学セルの正極と負極との間に化学組成勾配が生じる、組成、方法および反応器設計に関する。一部の実施形態では、次に、前記電気分解により生じた組成勾配を使用し、一方の電極の近傍の化学環境に反応物を供給し、電気分解により生じる化学勾配を使用して、反応物またはその構成成分がもう一方の電極の方に拡散するにつれて、前記反応物からの生成物を生成することによって所望の化学反応を行う。一部の実施形態では、所望の化学反応は、電気分解により生成する様々な組成からなる溶液または懸濁液を収集して前記溶液または懸濁液を使用して、反応器の一部または個々の装置において前記反応剤から生成物を生成することによって行われる。一実施形態では、このような反応器は、電気化学的手段および化学的手段による、分解した無機塩または金属塩の生成を対象とする。一実施形態では、無機塩または金属塩を加熱してこれらを分解することを含む、従来的な熱焼成の代わりにこのような反応器を使用することにより、熱エネルギーの生成のための化石燃料の使用、ならびにそれに伴う温室効果ガスまたは大気汚染物質であるガスの生成が、低減または回避される。一部の実施形態では、無機塩または金属塩は、金属炭酸塩を含み、生成した温室効果ガスは、少なくとも一部が、二酸化炭素である。別の実施形態では、電気分解により推進される化学反応器は、光起電力または風力エネルギーなどの再生可能な資源からの電気によって電力供給され、それにより、焼成または分解反応を行う際に、温室効果ガスを生成するエネルギー源の使用が低減される。
【0049】
一部の実施形態は、ポルトランドセメントなどのセメントの生産方法に関連する。コンクリートは、現在では、世界中で最も広範囲に使用されている人工材料である。セメント生産はまた、世界中でCO2の2番目に大きな工業的排出者であり、全CO2排出量の約8%を占める。セメントの工業的生産の伝統的な方法は、熱的手段によるCaCO3の焼成を含む。セメントの現在の製造では、CO2排出量の約60%が、CaCO3の焼成に起因しており、CO2排出量の約40%が、焼成および焼結過程を実施するための化石燃料の燃焼に起因している。したがって、CO2排出量がより少ないセメント生産プロセスが非常に必要とされている。一部の実施形態は、生産されるセメントの量あたりのCO2が現在の製造法よりも少なく生成する、本明細書において記載されている電気化学的プロセスにより熱焼成を置き換えた、セメント生産プロセスに関連する。
【0050】
電気化学反応器および関連する方法を含む、セメント生産システムも記載される。ある特定の実施形態は、電気化学反応器および窯を備える、セメントを生産するための本発明のシステムに関する。ある特定の実施形態では、電気化学反応器は、CaCO3を受け入れるよう構成されている。一部の実施形態では、電気化学反応器は、Ca(OH)2および/または石灰(CaO)を取り出すよう構成されている第1の出口を備える。ある特定の場合、電気化学反応器は、CO2、O2および/またはH2ガスを取り出すよう構成されている第2の出口を備える。ある特定の実施形態によれば、窯は、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2および/または石灰(および/またはその反応生成物)を加熱するよう構成されている。
【0051】
一部の実施形態では、本システムは、再生可能電気(例えば、太陽エネルギーおよび/または風力エネルギー)によって、少なくとも一部(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%または100%)が電力供給される。ある特定の場合、本システムは、電気化学反応器の代わりとなる、伝統的な熱焼成を使用する実質的に類似のシステムよりも、正味の炭素排出量はより少ない(例えば、少なくとも10%少ない、少なくとも25%少ない、少なくとも50%少ない、少なくとも75%少ないまたは少なくとも90%少ない)。一部の例では、本システムは、正味ゼロの炭素排出量を有する。
【0052】
ある特定の実施形態は、Ca(OH)2および/または石灰(CaO)が電気化学反応器において生産される、本発明の方法に関する。一部の実施形態では、電気化学反応器に由来するCa(OH)2および/または石灰は、次に、窯に輸送され、この窯は、セメント製造プロセスの一部として、Ca(OH)2および/または石灰(および/またはそれらの反応生成物)を加熱する。一部の実施形態では、電気化学反応器はまた、CO2、O2および/またはH2ガスを生成する。ある特定の実施形態によれば、CO2は隔離される、液体燃料で使用される、オキシ燃料で使用される、原油増進回収に使用される、ドライアイスを生産するために使用される、および/または飲料における成分として使用される。一部の場合、O2は、隔離され得る、オキシ燃料に使用され得る、CCS用途に使用され得る、および/または原油増進回収に使用され得る。ある特定の例では、H2は、隔離され得る、および/または燃料(例えば、燃料電池においておよび/またはシステムを加熱するため)として使用され得る。一部の実施形態では、本システムから取り出される少なくとも一部分(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%またはすべて)のCO2、O2および/またはH2が窯に供給される。
【0053】
上記の通り、ある特定の態様は、システムに関する。そのようなシステムの非限定例は、
図1A~3Bに示されている。
【0054】
一部の実施形態では、本システムは、第1の電極を備える。一部の実施形態では、第1の電極は、カソードを含む。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、システム100は、第1の電極104(例えば、カソード)を備える。同様に、
図2Aを参照すると、一部の実施形態では、システム200は、第1の電極104(例えば、カソード)を備える。ある特定の実施形態では、第1の電極は、比較的アルカリ性の条件(例えば、本明細書に記載されているアルカリ性領域および/または塩基中)下で安定な電子伝導体となるよう選択される。
【0055】
ある特定の実施形態では、第1の電極は、金属製電極(白金、金、ニッケル、イリジウム、銅、鉄、鋼、ステンレス鋼、マンガンおよび/または亜鉛など)、炭素(グラファイトまたは不規則炭素など)、または金属炭化物(炭化ケイ素、炭化チタンおよび/または炭化タングステンなど)を含む。ある特定の実施形態では、第1の電極は、金属合金(例えば、ニッケル-クロム-鉄合金、ニッケル-モリブデン-カドミウム合金)、金属酸化物(例えば、酸化イリジウム、ニッケル鉄コバルト酸化物、ニッケルコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、ランタンストロンチウムコバルト酸化物、バリウムストロンチウム酸化鉄、マンガンモリブデン酸化物、二酸化ルテニウム、イリジウムルテニウムタンタル酸化物)、金属有機フレームワークまたは金属硫化物(例えば、硫化モリブデン)を含む。ある特定の実施形態では、電極触媒または電極材料は分散されて、導電性支持体表面にコーティングされる。
【0056】
一部の実施形態では、本システムは、第2の電極を備える。一部の実施形態では、第2の電極は、アノードを含む。例えば、
図1Aに戻って参照すると、一部の実施形態では、システム100は、第2の電極105(例えば、アノード)を備える。同様に、
図2Aに戻って参照すると、一部の実施形態では、システム200は、第2の電極105(例えば、アノード)を備える。一部の実施形態では、第2の電極は、第1の電極に電気化学的に接続されている。すなわち、電極は、電気化学プロセスに関与することが可能となるよう構成され得る。電気化学カップリングは、例えば、第1および第2の電極をこの2本の電極間でのイオンの輸送を促進する電解質に曝露することによって実現することができる。
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の電極104は、第2の電極105に電気化学的に接続されている。同様に、
図2Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の電極104は、第2の電極105に電気化学的に接続されている。
【0057】
ある特定の実施形態では、第2の電極には、相対的に酸性な条件下(例えば、本明細書において記載されている酸性領域および/または酸中)で安定な、電子伝導体が選択される。ある特定の実施形態では、第2の電極は、金属製電極(白金、パラジウム、鉛および/またはスズなど)、または金属酸化物(遷移金属酸化物など)を含む。
【0058】
ある特定の実施形態では、第1の電極および/または第2の電極は、触媒を含む。一部の実施形態では、カソード触媒は、アルカリ性条件下で安定となるように選択される。カソード触媒は、一部の実施形態では、ニッケル、鉄、遷移金属スルフィド(硫化モリブデンなど)、および/または遷移金属酸化物(MnO2、Mn2O3、Mn3O4、ニッケル酸化物、水酸化ニッケル、酸化鉄、水酸化鉄、酸化コバルトなど)、複合遷移金属スピネル酸化物(MnCo2O4、CoMn2O4、MnFe2O4、ZnCoMnO4など)を含んでもよい。一部の実施形態では、アノード触媒は、酸性条件下で安定となるよう選択される。一部の実施形態では、アノード触媒は、白金、イリジウムまたはそれらの酸化物を含む。
【0059】
一部の実施形態では、本システムは、反応器(例えば、電気化学用反応器)を備える。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、システム100は反応器を備える。同様に、
図2Aを参照すると、ある特定の場合、システム200は反応器を備える。一部の実施形態では、反応器は、第1の電極および第2の電極を備える。例えば、一部の実施形態では、第1の電極は、反応器において第2の電極に電気化学的に接続されている。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の電極104は、反応器において第2の電極105に電気化学的に接続されている。同様に、
図2Aを参照すると、ある特定の場合、第1の電極104は、反応器において第2の電極105に電気化学的に接続されている。
【0060】
ある特定の態様は、
図1A~3Bに関して理解され得る方法に関する。一部の実施形態では、本方法は、反応器(例えば、本明細書に記載されている任意の反応器)を稼働するステップを含む。ある特定の場合、反応器を稼働するステップは、反応器の電極に電流を印加するステップを含む。一部の実施形態では、反応器を稼働するステップは、反応器内で起こる少なくとも1つの化学反応をもたらす。
【0061】
ある特定の実施形態では、本方法は、反応器を第1のモードで稼働するステップを含む。一部の実施形態では、第1のモードは、第1の電極の近傍に塩基を生成するステップを含む(例えば、塩基は、第1の電極における、電気化学反応の結果として生成する)。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、第1のモードは、第1の電極104の近傍に塩基を生成するステップを含む。同様に、
図2Aを参照すると、ある特定の場合、第1のモードは、第1の電極104の近傍に塩基を生成するステップを含む。
【0062】
ある特定の実施形態では、第1の電極(例えば、第1のモードにある)は、塩基性産出物(例えば、本明細書に記載されている塩基のいずれか)を生成するよう構成されている。一部の実施形態では、塩基性産出物は、第1の電極における電気化学反応の結果として生成する。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の電極104は、塩基を生成するよう構成されている。同様に、
図2Aを参照すると、一部の例では、第1の電極104は、塩基を生成するよう構成されている。
【0063】
塩基は、様々な好適な濃度のいずれかを有することができる。一部の実施形態では、塩基は、0.000001Mより高いもしくはこれに等しい、0.00001Mより高いもしくはこれに等しい、0.0001Mより高いもしくはこれに等しい、0.001Mより高いもしくはこれに等しい、0.01Mより高いもしくはこれに等しい、0.1Mより高いもしくはこれに等しい、0.5Mより高いもしくはこれに等しい、1Mより高いもしくはこれに等しい、3Mより高いもしくはこれに等しい、5Mより高いもしくはこれに等しい、7Mより高いもしくはこれに等しい、10Mより高いもしくはこれに等しい、15Mより高いもしくはこれに等しい、または20Mより高いもしくはこれに等しい濃度を有する。ある特定の実施形態では、塩基は、25Mより低いもしくはこれに等しい、20Mより低いもしくはこれに等しい、15Mより低いもしくはこれに等しい、10Mより低いもしくはこれに等しい、7Mより低いもしくはこれに等しい、5Mより低いもしくはこれに等しい、または3Mより低いもしくはこれに等しい濃度を有する。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、0.1Mより高いもしくはこれに等しく、25Mより低いもしくはこれに等しい、または0.1Mより高いもしくはこれに等しく、10Mより低いもしくはこれに等しい)。
【0064】
一部の実施形態によれば、第1の電極による塩基の生成は、第1の電極の近傍(例えば、第1の電極に最も近い反応器のコンパートメントの半分以内)にアルカリ性領域(例えば、本明細書に記載されているアルカリ性領域のいずれか)をもたらす。例えば、一部の例では、第1の電極に隣接する(例えば、アルカリ性領域)流体は、第1の電極からさらに離れた液体よりも高いpHを有する。一例として、
図2Aを参照すると、一部の場合、本システムは、第1の電極104の近傍にアルカリ性領域106を含む。同様に、
図1Aを参照すると、ある特定の例では、本システムは、第1の電極104の近傍にアルカリ性領域を含む。
【0065】
一部の実施形態では、第1の電極の近傍(例えば、隣接)のpHは、8より高いもしくはこれに等しい、9より高いもしくはこれに等しい、10より高いもしくはこれに等しい、11より高いもしくはこれに等しい、12より高いもしくはこれに等しい、または13より高いもしくはこれに等しい。一部の実施形態によれば、第1の電極の近傍のpHは、14より低いもしくはこれに等しい、13より低いもしくはこれに等しい、12より低いもしくはこれに等しい、11より低いもしくはこれに等しい、または10より低いもしくはこれに等しい。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、8より高いまたはこれに等しく、14より低いまたはこれに等しい)。
【0066】
一部の実施形態では、第2の電極は、酸性産出物(例えば、本明細書に記載されている酸のいずれか)を生成するよう構成されている。ある特定の実施形態では、酸性産出物は、第2の電極における電気化学反応の結果として生成する。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、第2の電極105は、酸を生成するよう構成されている。同様に、
図2Aを参照すると、ある特定の場合、第2の電極105は、酸を生成するよう構成されている。一部の実施形態では、反応器の第1のモードは、第2の電極の近傍に酸を生成するステップを含む(例えば、酸は、第2の電極における、電気化学反応の結果として生成する)。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、第1のモードは、第2の電極105の近傍に酸を生成するステップを含む。同様に、
図2Aを参照すると、ある特定の実施形態では、第1のモードは、第2の電極105の近傍に酸を生成するステップを含む。
【0067】
酸は、様々な好適な濃度のいずれかを有することができる。一部の実施形態では、酸は、0.000001Mより高いもしくはこれに等しい、0.00001Mより高いもしくはこれに等しい、0.0001Mより高いもしくはこれに等しい、0.001Mより高いもしくはこれに等しい、0.01Mより高いもしくはこれに等しい、0.1Mより高いもしくはこれに等しい、0.5Mより高いもしくはこれに等しい、1Mより高いもしくはこれに等しい、3Mより高いもしくはこれに等しい、5Mより高いもしくはこれに等しい、7Mより高いもしくはこれに等しい、または10Mより高いもしくはこれに等しい濃度を有する。ある特定の実施形態では、酸は、12Mより低いもしくはこれに等しい、10Mより低いもしくはこれに等しい、7Mより低いもしくはこれに等しい、5Mより低いもしくはこれに等しい、3Mより低いもしくはこれに等しい、または1Mより低いもしくはこれに等しい濃度を有する。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、0.000001Mより高いまたはこれに等しく、12Mより低いまたはこれに等しい、または0.1Mより高いまたはこれに等しく、10Mより低いまたはこれに等しい)。
【0068】
一部の実施形態によれば、第2の電極による酸の生成は、第2の電極の近傍(例えば、第2の電極に最も近い反応器のコンパートメントの半分以内)に、酸性領域(例えば、本明細書に記載されているいずれかの酸性領域)をもたらす。例えば、一部の例では、第2の電極に隣接(例えば、酸性領域)する流体は、第2の電極からさらに離れた液体よりも低いpHを有する。一例として、
図2Aを参照すると、一部の場合、本システムは、第2の電極105の近傍に酸性領域107を含む。同様に、
図1Aを参照すると、ある特定の例では、本システムは、第2の電極105の近傍に酸性領域107を含む。
【0069】
ある特定の実施形態によれば、第2の電極の近傍(例えば、これに隣接)のpHは、6より低いもしくはこれに等しい、5より低いもしくはこれに等しい、4より低いもしくはこれに等しい、3より低いもしくはこれに等しい、2より低いもしくはこれに等しい、または1より低いもしくはこれに等しいpHを有する。一部の実施形態では、第2の電極の近傍のpHは、0より高いもしくはこれに等しい、1より高いもしくはこれに等しい、2より高いもしくはこれに等しい、3より高いもしくはこれに等しい、4より高いもしくはこれに等しい、または5より高いもしくはこれに等しいpHを有する。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、0より高いまたはこれに等しく、6より低いまたはこれに等しい)。
【0070】
ある特定の実施形態では、第1の電極(例えば、カソード)は、水素ガスが第1の電極の近傍で生成することができるように、水素ガスを生成するよう構成されている(例えば、水素ガスは、第1の電極における電気化学反応の結果として生成する)。例えば、
図2Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の電極104は、水素ガス108を生成するよう構成されている。同様に、
図1Aを参照すると、ある特定の例では、第1の電極104は、水素ガスを生成するよう構成されている。一部の例では、反応器を第1のモードで稼働するステップは、第1の電極の近傍で水素ガス(例えば、水素ガスおよび塩基)を生成するステップを含む(例えば、水素ガスは、第1の電極における、電気化学反応の結果として生成する)。一部の例では、水素ガスおよび/または塩基は、第1の電極の近傍に、第1の電極の近傍における水の還元によって生成する。
【0071】
ある特定の実施形態では、第2の電極(例えば、アノード)は、酸素ガスが第2の電極の近傍で生成することができるように、酸素を生成するよう構成されている(例えば、酸素ガスは、第2の電極における電気化学反応の結果として生成する)。例えば、
図2Aを参照すると、一部の実施形態では、第2の電極105は、酸素ガス109を生成するよう構成されている。同様に、
図1Aを参照すると、ある特定の実施形態では、第2の電極105は、酸素ガスを生成するよう構成されている。ある特定の場合、反応器を第1のモードで稼働するステップは、第2の電極の近傍で酸素ガス(例えば、酸素ガスおよび酸)を生成するステップを含む(例えば、酸素ガスは、第2の電極における、電気化学反応の結果として生成する)。一部の例では、酸素ガスおよび/または酸は、第2の電極の近傍で、第2の電極の近傍における水の酸化によって生成する。
【0072】
一部の実施形態では、本システムは、酸素ガスが、第1の電極の近傍の位置まで(例えば、第2の電極の近傍の位置から)拡散することおよび/または輸送されることが可能となるよう構成されている。例えば、一部の場合、酸素ガスが第2の電極において電気化学反応の結果として生成した後に、第2の電極の近傍の流体に由来する酸素ガスが第1の電極における電気化学反応に関与することができるよう、本システムは、酸素ガスが、第1の電極の近傍の流体まで拡散することおよび/または輸送されることが可能となるよう構成されている。例えば、
図2Aを参照すると、一部の実施形態では、システム200は、酸素ガス109が、第2の電極105から第1の電極104まで、拡散することおよび/または輸送されることが可能となるよう構成されている。同様に、
図1Aを参照すると、ある特定の実施形態では、システム100は、酸素ガスが、第2の電極105から第1の電極104まで、拡散することおよび/または輸送されることが可能となるよう構成されている。
【0073】
ある特定の実施形態によれば、本システムは、酸素ガスが、第1の電極の近傍で還元されることが可能となるよう構成されている(例えば、酸素ガスは、第1の電極において、電気化学反応の結果として還元される)。例えば、
図2Aを参照すると、ある特定の実施形態では、システム200は、酸素ガス109が、第1の電極104の近傍で還元されることが可能となるよう構成されている。同様に、
図1Aを参照すると、一部の例では、システム100は、酸素ガスが、第1の電極104の近傍で還元されることが可能となるよう構成されている。一部の実施形態では、第1の電極の近傍で酸素ガスを還元するステップは、塩基の生成を含む。ある特定の実施形態では、塩基の生成は、第1の電極において生成した塩基の総量を増加させるので、利点がある。
【0074】
一部の実施形態では、本システムは、水素ガスが、第2の電極の近傍の位置まで(例えば、第1の電極の近傍の位置から)拡散することおよび/または輸送されることが可能となるよう構成されている。例えば、一部の場合、水素ガスが第1の電極において電気化学反応の結果として生成した後に、第1の電極の近傍の流体に由来する水素ガスが第2の電極における電気化学反応に関与され得るように、本システムは、水素ガスが第2の電極の近傍の流体まで拡散することおよび/または輸送されることが可能となるよう構成されている。例えば、
図2Aを参照すると、ある特定の場合、システム200は、水素ガス108が、第1の電極104から第2の電極105まで、拡散することおよび/または輸送されることが可能となるよう構成されている。同様に、
図1Aを参照すると、一部の例では、システム100は、水素ガスが、第1の電極104から第2の電極105まで拡散することおよび/または輸送されることが可能となるよう構成されている。
【0075】
ある特定の実施形態によれば、本システムは、水素ガスが、第2の電極の近傍で酸化されることが可能となるよう構成されている(例えば、水素ガスは、第2の電極において、電気化学反応の結果として酸化される)。例えば、
図2Aを参照すると、一部の実施形態では、システム200は、水素ガス108が、第2の電極105の近傍で酸化されることが可能となるよう構成されている。同様に、
図1Aを参照すると、ある特定の実施形態では、システム100は、水素ガスが、第2の電極の近傍で酸化されることが可能となるよう構成されている。一部の実施形態では、第2の電極の近傍で水素ガスを酸化するステップは、酸の生成を含む。ある特定の実施形態では、酸の生成は、第2の電極において生成した酸の総量を増加させるので、利点がある。
【0076】
一部の実施形態では、本システムは、セパレータを備える。例えば、
図1Cを参照すると、一部の実施形態では、システム100は、セパレータ124を備える。同様に、
図2Bを参照すると、ある特定の実施形態では、システム200は、セパレータ124を備える。ある特定の実施形態では、セパレータは、第2の電極において生成した酸素ガスが第1の電極まで拡散することが可能となるよう、および/または第1の電極において生成した水素ガスが第2の電極まで拡散することが可能となるよう構成されている。例えば、一部の実施形態では、セパレータは、酸素ガスおよび/または水素ガスに対して透過性がある。例えば、
図1Cを参照すると、一部の実施形態では、セパレータ124は、第2の電極において生成した酸素ガスが第1の電極まで拡散することが可能となるよう、および/または第1の電極において生成した水素ガスが第2の電極まで拡散することが可能となるよう構成されている。同様に、
図2Bを参照すると、ある特定の実施形態では、セパレータ124は、第2の電極において生成した酸素ガスが第1の電極まで拡散することが可能となるよう、および/または第1の電極において生成した水素ガスが第2の電極まで拡散することが可能となるよう構成されている。
【0077】
水素ガスおよび/または酸素ガスを電極の一方から他方に輸送する多数の好適な方法が存在し得る。例えば、一部の実施形態では、水素ガスおよび/または酸素ガスは、シリンジを用いて輸送され得る(例えば、反応器が、電極の一方の近傍に、シリンジ用の入口、および他方の電極の近傍にシリンジ用の出口を有する場合、ガスは、一方の電極からもう一方の電極まで、シリンジにより輸送され得る)。ある特定の実施形態では、水素ガスおよび/または酸素ガスは、導管(例えば、パイプ、チャネル、ニードルまたは管)を介して輸送され得る。一部の場合、水素ガスおよび/または酸素ガスは、一方の電極から別の電極に直接輸送され得るか、または水素ガスおよび/または酸素ガスは、反応器から取り出した後に、反応器に添加して戻されるまで貯蔵され得る。一部の実施形態では、水素ガスおよび/または酸素ガスは、連続的にまたは回分で輸送される。ある特定の実施形態では、水素ガスおよび/または酸素ガスは、自動的にまたは手作業で輸送される。
【0078】
一部の実施形態では、加水分解によって生成した水素ガスは、1つの水素分子が反応して、2個のプロトンおよび2個の電子を形成する、水素酸化反応(hydrogen oxidation reaction:HOR)を使用して電気化学的に酸化され得る。他の実施形態では、加水分解によって生成した酸素ガスは、1つの酸素分子が2つの水分子および4個の電子と反応して、4つのヒドロキシルイオンを形成する酸素還元反応(oxygen reduction reaction:ORR)において、電気化学的に還元され得る。一部の実施形態では、HOR反応を使用して、反応器により生じる酸性溶液のpHを低下させるか、またはそのプロトン濃度を向上させる。一部の実施形態では、ORR反応を使用して、反応器により生じる塩基性溶液のpHを向上させるか、またはそのヒドロキシル濃度を向上させる。本明細書において記載されているHORおよびORR反応は、一部の場合、反応器の電気分解反応に使用されるものに由来する個別の電極を使用して行うことができる。ある特定の実施形態では、これらの電極は、例えば、水素と酸素の燃焼反応が反応器内に留まる水を生成する燃焼電極として、電気分解用反応内に置かれてもよい。燃焼、またはHORもしくはORRに使用される電極は、一部の例では、個別の容器または反応器にも置かれてもよく、これらの容器または反応器に水素ガスまたは酸素ガスがそれぞれ、送り込まれる。一部の実施形態では、電気分解用反応器のカソードにおいて生成した水素は、反応器のアノード側に接続されているHOR電極に送られ、ここで、HORが行われて、それによって生成したプロトンは、反応器によって生成した酸性溶液の酸濃度を向上させる(pHが低下する)。ある特定の実施形態では、電気分解用反応器のアノードにおいて生成した酸素は、反応器のカソード側に接続されているORR電極に送られ、ここで、ORRが行われて、それによって生成したヒドロキシルイオンは、反応器によって生成したアルカリ性溶液のヒドロキシル濃度を向上させる(pHが向上する)。一部の例では、HOR反応は、外部環境に対して反応性がより低い酸素に比べると、ORR反応よりも優先的に行われて、水素の放出量が低下する。水素-酸素燃焼またはHORまたはORRに使用される電極は、一部の場合、電気触媒として機能する化合物を含んでもよい。水素-酸素燃焼触媒は、例えば、参照により組み込まれている、M Haruta and H Sanoによる"Catalytic Combustion of Hydrogen - Its Role in Hydrogen Utilization," International Journal of Hydrogen Energy, Vol. 6, No. 6, pp. 601-608, 1981に記載されている。HORおよびORRのための電気触媒の例には、Pt、Pd、Ru、Rh、OsおよびIrなどの白金族金属、個々にまたは合金もしくは混合物として使用されるMo、Fe、Ti、W、Cr、Co、Cu、Ag、AuおよびReなどの非白金族金属、必要に応じてコーティングされているか、もしくは他の触媒がドープされているラネーニッケルとして知られている高表面積ニッケル-アルミニウム合金が含まれる。ORRに選択的な電気触媒の例には、金属鉄、酸化鉄、鉄スルフィドおよび水酸化鉄、銀合金、酸化銀および硝酸銀、ならびにカーボン紙、炭素フェルト、グラファイト、カーボンブラックおよびナノスケールカーボンを含めた様々な形態の炭素が含まれる。
【0079】
本明細書に記載されているある特定の実施形態では、電気分解により生成するガス状副生成物(例えば、CO2、H2および/またはO2)は、価値があることがあり、電力を含めたエネルギーおよび力を発生させる目的のため、燃料電池またはガスタービンまたは内燃エンジンにおける燃焼を含めた、他の用途およびプロセスに使用するために販売されてもよい。しかし、一部の例では、このようなガスの生成を低減するか、またはなくすことが望ましいことがある。したがって、一部の実施形態では、反応器によって生成するガスの1つまたはこれより多くが再度一緒にされる。本明細書で使用する場合、再度一緒にすることとは、生成したガスの1つまたはこれより多くを消費する化学反応または電気化学反応を指す。
【0080】
一部の実施形態では、加水分解によって生成した水素および酸を再度一緒にし、水素-酸素燃焼を使用して水を形成する。例えば、
図2Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の電極104によって生成した水素ガス108は、
図6Aに示されている通り、酸素ガス109と再度一緒にされて、水を形成することができる。同様に、
図1Aを参照すると、ある特定の実施形態では、第1の電極104によって生成した水素ガスは、酸素ガスと再度一緒にされて、水を形成することができる。ある特定の実施形態によれば、水素-酸素を再度一緒にすることは、反応器内部または外部で行われてもよく、一部の場合、当業者に周知の電極材料、および設計、および必要に応じて触媒を使用してもよい。ある特定の実施形態では、本方法は、水素ガスを正味生成しない(または、生成する水素ガスの正味の量は、反応器に供給される電流の5%未満(例えば、2%未満、または1%未満)である)。例えば、一部の実施形態では、生成した水素ガスが酸素と再度一緒にされて水を形成するので、本方法は、水素ガスを何ら放出しない(または、放出される水素ガスの量は、反応器に供給される電流の5%未満(例えば、2%未満、または1%未満)である)。同様に、一部の場合、本方法は、酸素ガスを正味生成しない(または、生成する酸素ガスの正味の量は、反応器に供給される電流の5%未満(例えば、2%未満、または1%未満)である)。例えば、ある特定の例では、生成した酸素ガスが水素と再度一緒にされて水を形成するので、本方法は、酸素ガスを何ら放出しない(または、放出される酸素ガスの正味の量は、反応器に供給される電流の5%未満(例えば、2%未満、または1%未満)である)。
【0081】
一部の実施形態では、加水分解は、それぞれ、水素ガスまたは酸素ガスを遊離することなく(または、遊離する水素ガスまたは酸素ガスの量が、5%未満(例えば、2%未満または1%未満)である)、第1の電極(例えば、カソード)の近傍で塩基性pHを生じ、第2の電極(例えば、アノード)の近傍で酸性pHを生じる条件下で行われる。例えば、一部の実施形態では、O
2は、酸およびO
2が生成する第2の電極(例えば、アノード)から、塩基が生成して、O
2が還元されてOH
-を形成する(1/2O
2+H
2O+2e
-→2OH
-)第1の電極(例えば、カソード)まで拡散する(例えば、
図2Aの電解質235を通る、および/または電解質の上の空気中を通る)ことができる。ある特定の実施形態では、この反応は、pH>7、および標準水素電極に対して0.8V未満の電極電位において起こり得る。同様に、一部の場合、H
2は、塩基が生成する第1の電極(例えば、カソード)から、酸が生成し、H
2が酸化されてH
+を形成する(H
2→2H
++2e
-)第2の電極(例えば、アノード)まで拡散することができる。ある特定の例では、これは、pHが<7であり、電極電位が、標準水素電極に対して-0.41Vより高い場合に起こり得る。アルカリ電解槽などの他の電解槽では、この反応は、2本の電極間のガスの交差を防止するセパレータによって妨害される。しかし、本明細書に開示されている一部の実施形態では、反応器は、H
2および/またはO
2が消費されて、pH勾配を増大することができるよう、それらの交差を可能にするおよび/または促進するセパレータを備える。
【0082】
一部の実施形態では、酸性溶液(pH7未満)は、標準水素電極に対して0.8Vより高い電極電位において、中性pHの電解質から生じる。例えば、ある特定の実施形態では、pH0の酸性溶液を作製するための電極の最低電位は、標準水素電極に対して1.23Vとなると思われる。一部の場合、塩基性溶液(pH7より高い)は、標準水素電極に対して-0.4Vより低い電極電位において、中性pHの電解質から生成する。例えば、pH14のアルカリ性溶液を作製するための電極の最大電位は、標準水素電極に対して-0.83Vとなる。
【0083】
第2の電極におけるネルンスト電位(例えば、第2の電極に最も近い流体におけるネルンスト電位)は、様々な好適な値のいずれかとすることができる。一部の実施形態では、第2の電極(例えば、アノード)におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、-0.4Vより高いもしくはこれに等しい、-0.2Vより高いもしくはこれに等しい、0Vより高いもしくはこれに等しい、0.5Vより高いもしくはこれに等しい、0.8Vより高いもしくはこれに等しい、0.9Vより高いもしくはこれに等しい、1Vより高いもしくはこれに等しい、1.1Vより高いもしくはこれに等しい、1.2Vより高いもしくはこれに等しい、1.4Vより高いもしくはこれに等しい、または1.6Vより高いもしくはこれに等しい。ある特定の実施形態では、第2の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、2Vより低いもしくはこれに等しい、1.7Vより低いもしくはこれに等しい、1.5Vより低いもしくはこれに等しい、1.4Vより低いもしくはこれに等しい、1.3Vより低いもしくはこれに等しい、1.2Vより低いもしくはこれに等しい、1.1Vより低いもしくはこれに等しい、1Vより低いもしくはこれに等しい、0.9Vより低いもしくはこれに等しい、0.8Vより低いもしくはこれに等しい、0.5Vより低いもしくはこれに等しい、0Vより低いもしくはこれに等しい、または-0.2Vより低いもしくはこれに等しい。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、0.8Vより高いもしくはこれに等しく、2Vより低いもしくはこれに等しい、1.2Vより高いもしくはこれに等しく、2Vより低いもしくはこれに等しい、-0.4Vより高いもしくはこれに等しく、0.5Vより低いもしくはこれに等しい、または0Vより高いもしくはこれに等しく、0.5Vより低いもしくはこれに等しい)。
【0084】
ある特定の実施形態では、第2の電極における好適なネルンスト電位は、電極における反応のタイプに依存する。例えば、一部の場合、水素ガスが酸に酸化される際の第2の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、-0.4Vより高いまたはこれに等しい(例えば、-0.4Vより高いもしくはこれに等しく、0.5Vより低いもしくはこれに等しい、または0Vより高いもしくはこれに等しく、0.5Vより低いもしくはこれに等しい)。別の例として、ある特定の例では、水が酸および酸素ガスに酸化される際の第2の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、0.8Vより高いまたはこれに等しい(例えば、0.8Vより高いもしくはこれに等しく、2Vより低いもしくはこれに等しい、または1.2Vより高いもしくはこれに等しく、2Vより低いもしくはこれに等しい)。
【0085】
第1の電極におけるネルンスト電位(例えば、第1の電極に最も近い流体におけるネルンスト電位)は、様々な好適な値のいずれかとすることができる。ある特定の実施形態では、第1の電極(例えば、カソード)におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、0.8Vより低いもしくはこれに等しい、0.6Vより低いもしくはこれに等しい、0.4Vより低いもしくはこれに等しい、0Vより低いもしくはこれに等しい、-0.4Vより低いもしくはこれに等しい、-0.5Vより低いもしくはこれに等しい、-0.6Vより低いもしくはこれに等しい、-0.7Vより低いもしくはこれに等しい、-0.8Vより低いもしくはこれに等しい、-0.9Vより低いもしくはこれに等しい、-1Vより低いもしくはこれに等しい、-1.2Vより低いもしくはこれに等しい、または-1.4Vより低いもしくはこれに等しい。一部の実施形態では、第1の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、-2Vより高いもしくはこれに等しい、-1.7Vより高いもしくはこれに等しい、-1.5Vより高いもしくはこれに等しい、-1.2Vより高いもしくはこれに等しい、-1Vより高いもしくはこれに等しい、-0.9Vより高いもしくはこれに等しい、-0.8Vより高いもしくはこれに等しい、-0.7Vより高いもしくはこれに等しい、-0.6Vより高いもしくはこれに等しい、-0.5Vより高いもしくはこれに等しい、-0.4Vより高いもしくはこれに等しい、0Vより高いもしくはこれに等しい、0.4Vより高いもしくはこれに等しい、または0.6Vより高いもしくはこれに等しい。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、-1.5Vより高いもしくはこれに等しく、-0.4Vより低いまたはこれに等しい、-1.5Vより高いもしくはこれに等しく、-0.8Vより低いもしくはこれに等しい、-0.4Vより高いもしくはこれに等しく、0.8Vより低いもしくはこれに等しい、または-0.4Vより高いもしくはこれに等しく、0.4Vより低いまたはこれに等しい)。
【0086】
ある特定の実施形態では、第1の電極における好適なネルンスト電位は、電極における反応のタイプに依存する。例えば、一部の場合、酸素ガスが塩基に還元される際の第1の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、0.8Vより低いまたはこれに等しい(例えば、0.8Vより低いもしくはこれに等しく、-0.4Vより高いもしくはこれに等しい、または0.4Vより低いもしくはこれに等しく、-0.4Vより高いもしくはこれに等しい)。別の例として、ある特定の例では、水が塩基および水素ガスに還元される際の第1の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、-0.4Vより低いまたはこれに等しい(例えば、-0.4Vより低いもしくはこれに等しく、-1.5Vより高いもしくはこれに等しい、または-0.8Vより低いもしくはこれに等しく、-1.5Vより高いもしくはこれに等しい)。
【0087】
ある特定の実施形態では、セル電圧(例えばセルに印加される電圧、例えば酸および/または塩基の生成中に)は、標準水素電極に対して、0Vより高いもしくはこれに等しい、0.5Vより高いもしくはこれに等しい、1Vより高いもしくはこれに等しい、1.23Vより高いもしくはこれに等しい、1.5Vより高いもしくはこれに等しい、2Vより高いもしくはこれに等しい、2.06Vより高いもしくはこれに等しい、または2.5Vより高いもしくはこれに等しい。一部の実施形態では、セル電圧は、標準水素電極に対して、5Vより低いもしくはこれに等しい、4Vより低いもしくはこれに等しい、3Vより低いもしくはこれに等しい、2.5Vより低いもしくはこれに等しい、2.25Vより低いもしくはこれに等しい、2Vより低いもしくはこれに等しい、1.5Vより低いもしくはこれに等しい、1Vより低いもしくはこれに等しい、または0.5Vより低いもしくはこれに等しい。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、0~5Vまたは0~2.5V)。
【0088】
一部の実施形態では、本システムは、濃酸および濃塩基を生産するための反応器システムを備える。一部の実施形態によれば、本システムは、第1の反応器(例えば、本明細書に記載されている任意の反応器)を備える。例えば、
図3Aを参照すると、一部の実施形態では、システム300は、第1の反応器320を備える。一部の実施形態によれば、本システムは、第2の反応器(例えば、本明細書に記載されている任意の反応器)を備える。例えば、
図3Aを参照すると、一部の実施形態では、システム300は、第2の反応器301を備える。ある特定の場合、第1の反応器および第2の反応器は、流体連結している。例えば、
図3Aを参照すると、一部の実施形態によれば、第1の反応器320は、導管330を介して第2の反応器301に流体連結されている。例えば、一部の場合、第1の反応器において生成した流体(例えば、液体またはガス)は第2の反応器に、拡散することができる、および/またはここに輸送され得る。非限定例として、ある特定の実施形態では、本方法は、第1の反応器から第2の反応器まで、水素ガスおよび/または二ハロゲン化物を拡散することおよび/または輸送することを含む。
【0089】
一部の実施形態では、第1の反応器は、電気化学用反応器を備える。ある特定の場合、第1の反応器は、第1の電極(例えば、本明細書に記載されている任意の第1の電極)を備える。例えば、
図3Bを参照すると、一部の場合、第1の反応器320は、第1の電極104を備える。一部の例では、第1の反応器は、第2の電極(例えば、本明細書に記載されている任意の第2の電極)を備える。例えば、
図3Bを参照すると、一部の場合、第1の反応器320は、第2の電極105を備える。一部の実施形態では、第2の電極は、第1の電極に電気化学的に接続されている(例えば、電極は、電流が一方の電極からもう一方の電極に流れることができるよう構成されている)。すなわち、電極は、電気化学プロセスに関与することが可能となるよう構成され得る。電気化学カップリングは、例えば、第1および第2の電極を2本の電極間でのイオンの輸送を促進する電解質に曝露することによって実現することができる。例えば、
図3Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の電極104は、第2の電極105に電気化学的に接続されている。
【0090】
ある特定の例では、第2の反応器は、燃料電池(例えば、H
2/Cl
2燃料電池)を備える。一部の実施形態では、本方法は、第2の反応器において酸を生成するステップを含む。例えば、ある特定の場合、
図3Aにおける第2の反応器301は、酸を生成するよう構成されている(例えば、本明細書に記載されている任意の酸)。
【0091】
ある特定の実施形態では、本方法は、第1の反応器において、塩基(例えば、本明細書に記載されている任意の塩基)、二ハロゲン化物および/または水素ガスを生成するステップを含む。例えば、
図3Aを参照すると、一部の場合、第1の反応器320は、塩基、二ハロゲン化物および/または水素ガスを生成するよう構成されている。一部の例では、二ハロゲン化物は、第1の反応器の第2の電極の近傍で生成する(例えば、二ハロゲン化物は、第1の反応器の第2の電極において、電気化学反応の結果として生成する)。例えば、
図3Bを参照すると、ある特定の場合、二ハロゲン化物は、第1の反応器320の第2の電極105の近傍で生成する。一部の実施形態では、塩基および/または水素ガスは、第1の電極の近傍で生成する(例えば、塩基および/または水素ガスは、第1の電極における、電気化学反応の結果として生成する)。例えば、
図3Bを参照すると、ある特定の場合、塩基は、第1の電極104の近傍で生成する。
【0092】
第1の反応器の第2の電極におけるネルンスト電位(例えば、第2の電極に最も近い流体におけるネルンスト電位)は、様々な好適な値のいずれかとすることができる。一部の実施形態では、第1の反応器の第2の電極(例えば、アノード)におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、1.3Vより高いもしくはこれに等しい、1.5Vより高いもしくはこれに等しい、1.7Vより高いもしくはこれに等しい、1.9Vより高いもしくはこれに等しい、2.1Vより高いもしくはこれに等しい、または2.3Vより高いもしくはこれに等しい。ある特定の実施形態では、第1の反応器の第2の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、2.5Vより低いもしくはこれに等しい、2.3Vより低いもしくはこれに等しい、2.1Vより低いもしくはこれに等しい、1.9Vより低いもしくはこれに等しい、1.7Vより低いもしくはこれに等しい、または1.5Vより低いもしくはこれに等しい。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、1.3Vより高いまたはこれに等しく、2.5Vより低いまたはこれに等しい)。
【0093】
ある特定の実施形態では、第1の反応器の第2の電極における好適なネルンスト電位は、電極における反応のタイプに依存する。例えば、一部の場合、二ハロゲン化物が生成する際(例えば、塩化物イオンは酸化されて、Cl2を形成する)の第2の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して1.3Vより高いまたはこれに等しい(例えば、1.3Vより高いまたはこれに等しく、2.5Vより低いまたはこれに等しい)。
【0094】
一部の実施形態では、Cl2は、標準水素電極に対して、1.36Vより高いネルンスト電位(例えば、標準水素電極に対して、1.4Vより高いもしくはこれに等しい、1.5Vより高いもしくはこれに等しい、1.7Vより高いもしくはこれに等しい、または2Vより高いもしくはこれに等しい;5Vより低いもしくはこれに等しい、3Vより低いもしくはこれに等しい、2Vより低いもしくはこれに等しい、または1.5Vより低いもしくはこれに等しい;組合せもまた考えられる)において、Cl-から生成する。
【0095】
ある特定の実施形態では、Br2は、標準水素電極に対して、1.06Vより高いネルンスト電位(例えば、1.1Vより高いもしくはこれに等しい、1.2Vより高いもしくはこれに等しい、1.3Vより高いもしくはこれに等しい、1.5Vより高いもしくはこれに等しい、または1.8Vより高いもしくはこれに等しい;4Vより低いもしくはこれに等しい、3Vより低いもしくはこれに等しい、2Vより低いもしくはこれに等しい、または1.5Vより低いもしくはこれに等しい;組合せも考えられる)において、Br-から生成する。
【0096】
一部の場合、I2は、標準水素電極に対して、0.54Vより高いネルンスト電位(例えば、0.6Vより高いもしくはこれに等しい、0.7Vより高いもしくはこれに等しい、0.8Vより高いもしくはこれに等しい、0.9Vより高いもしくはこれに等しい、1Vより高いもしくはこれに等しい、または1.2Vより高いもしくはこれに等しい;3Vより低いもしくはこれに等しい、2Vより低いもしくはこれに等しい、1.5Vより低いもしくはこれに等しい、1.3Vより低いもしくはこれに等しい、または1Vより低いもしくはこれに等しい;組合せもまた考えられる)において、I-から生成する。
【0097】
第1の反応器の第1の電極におけるネルンスト電位(例えば、第1の電極に最も近い流体におけるネルンスト電位)は、様々な好適な値のいずれかとすることができる。一部の実施形態では、第1の反応器の第1の電極(例えば、カソード)におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、-2Vより高いもしくはこれに等しい、-1.8Vより高いもしくはこれに等しい、-1.6Vより高いもしくはこれに等しい、-1.4Vより高いもしくはこれに等しい、-1.2Vより高いもしくはこれに等しい、-1.0Vより高いもしくはこれに等しい、-0.8Vより高いもしくはこれに等しい、-0.6Vより高いもしくはこれに等しい、-0.4Vより高いもしくはこれに等しい、-0.2Vより高いもしくはこれに等しい、0Vより高いもしくはこれに等しい、0.2Vより高いもしくはこれに等しい、0.4Vより高いもしくはこれに等しい、または0.6Vより高いもしくはこれに等しい。ある特定の実施形態では、第1の反応器の第1の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、0.8Vより低いもしくはこれに等しい、0.6Vより低いもしくはこれに等しい、0.4Vより低いもしくはこれに等しい、0.2Vより低いもしくはこれに等しい、0Vより低いもしくはこれに等しい、-0.2Vより低いもしくはこれに等しい、-0.4Vより低いもしくはこれに等しい、-0.6Vより低いもしくはこれに等しい、-0.8Vより低いもしくはこれに等しい、-1.0Vより低いもしくはこれに等しい、-1.2Vより低いもしくはこれに等しい、-1.4Vより低いもしくはこれに等しい、または-1.6Vより低いもしくはこれに等しい。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、-2Vより高いもしくはこれに等しく、0.8Vより低いもしくはこれに等しい、-1.4Vより高いもしくはこれに等しく、0.4Vより低いもしくはこれに等しい、-2Vより高いもしくはこれに等しく、-0.4Vより低いもしくはこれに等しい、または-2Vより高いもしくはこれに等しく、-0.8Vより低いもしくはこれに等しい)。
【0098】
ある特定の実施形態では、第1の反応器の第1の電極における好適なネルンスト電位は、電極における反応のタイプに依存する。例えば、一部の場合、酸素が還元されて塩基を形成する際の第1の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、0.8Vより低いまたはこれに等しい(例えば、-2Vより高いもしくはこれに等しく、0.8Vより低いもしくはこれに等しい、または-1.4Vより高いもしくはこれに等しく、0.4Vより低いもしくはこれに等しい)。別の例として、ある特定の例では、水が水素ガスに還元される際の第1の電極におけるネルンスト電位は、標準水素電極に対して、-0.4Vより低いまたはこれに等しい(例えば、-2Vより高いもしくはこれに等しく、-0.4Vより低いもしくはこれに等しい、または-2Vより高いもしくはこれに等しく、-0.8Vより低いもしくはこれに等しい)。
【0099】
ある特定の実施形態では、第1の反応器は、ハロゲン化物の塩を含有する電解質から、塩基/アルカリ性溶液、二ハロゲン化物および水素ガスを生成する。
図11は、ある特定の実施形態による、本明細書において開示されている中性の水の電解槽をベースとする反応器を示しており、これにより、電気分解または加水分解は、酸性溶液およびアルカリ性溶液を生成し、次に、酸性溶液を使用して、出発金属炭酸塩を脱炭酸し、次に、アルカリ性溶液を使用して、出発金属炭酸塩の溶解している金属イオンから金属水酸化物を沈殿させる。一部の実施形態では、このような反応器が動作する反応剤の体積濃度は、電解槽により生じるpHの値によって決定される。
【0100】
ある特定の実施形態による、代替反応器の概念が、
図12に示されている。一部の実施形態によれば、この反応器は、
図11における反応器よりも、高い濃度の酸および塩基を生成することが可能である。一部の実施形態では、本システムは、溶解している金属塩のほぼ中性の溶液を電気分解により酸化して、アルカリ性溶液、水素および金属塩の陰イオンに富む化合物を生成する、第1の反応器を備える。一部の実施形態では、金属塩は、アルカリハロゲン化物の塩またはアルカリ土類ハロゲン化物の塩であり、生成する前記化合物は二ハロゲン化物である。第2の反応器は、ある特定の実施形態によれば、前記化合物および水素を水と反応させることによって、酸性溶液を生成する。一部の実施形態では、次に、第2の反応器によって生成する前記酸性溶液、および第1の反応器によって生成する前記アルカリ性溶液をそれぞれ使用して、CO
2を放出する前記金属炭酸塩を溶解して、前記金属水酸化物を沈殿させる。ある特定の実施形態では、
図11の反応器とは異なり、約1モル濃度より高いH
+およびOH
-絶対濃度に到達することが困難となり得る場合、
図12の反応器は3モル濃度、5モル濃度、またはさらに高い濃度に到達することができる。
【0101】
ある特定の実施形態では、第1の反応器は、第2の電極(例えば、アノード)、第1の電極(例えば、カソード)、2本の電極の間に半透明膜、電解質用の入口および電気分解の生成物(H2、二ハロゲン化物およびアルカリ性溶液)のための出口を備える。一部の実施形態では、第1の電極の近傍における追加の入口は、O2を導入する。一部の場合、電解質は、金属塩が溶解する、ほぼ中性の水溶液である。ある特定の場合、水溶液は、ハロゲン化物の陰イオン(例えば、F-、Cl-、Br-
、I-)、およびその対応する陽イオン(例えば、Li+、Na+、K+、NH4
+、Mg2+、Ca2+)を含む。ある特定の実施形態では、電解質中のハロゲン化物の塩の濃度は、0.01~50重量%のいずれかとすることができる。一部の実施形態では、電解質は、入口によって第2の電極(例えば、アノード)に導入される。ある特定の場合、第2の電極の表面の活性材料は、白金、グラファイト、白金化チタン、混合金属酸化物、混合金属酸化物被覆チタン、白金化金属酸化物(例えば、白金化酸化鉛、二酸化マンガン)、白金化フェロシリコン、白金-イリジウム合金、酸化ルテニウム、酸化チタン、ルテニウムおよび/またはチタン混合金属酸化物を含むことができる。
【0102】
一部の場合、反応器1における第2の電極において、ハロゲン化物陰イオンは酸化されて、二ハロゲン化物(例えば、Cl2、Br2、I2)を生成する。例えば、ある特定の例では、溶解したCl-の酸化により、Cl2ガスが得られる。
【0103】
2Cl-
(aq)→Cl2(g)+2e-
【0104】
ある特定の実施形態では、室温において、Br
-の酸化により発煙液体であるBr
2が得られ、I
-の酸化により、固体のI
2が得られる。二ハロゲン化物を、一部の場合、出口を介して電解槽から収集し、これを以下に記載されている後のステップにおいて使用して酸を製造する。ある特定の例では、陽イオン(例えば、Li
+、Na
+、K
+
、NH
4
+)を含有する電解質は、半透性膜(隔膜またはイオン-交換膜)を通り、第1の電極(例えば、カソード)まで移動する。一部の場合、隔膜または膜は、第1の電極において生成したアルカリ性溶液が、第2の電極においてpHを向上するのを防止する。ある特定の実施形態では、第1の電極の表面は、電気触媒化合物を含んでもよい。電気触媒化合物の例には、白金、白金化チタン、混合金属酸化物被覆チタン、白金化金属酸化物(例えば、白金化酸化鉛、二酸化マンガン)、白金化フェロシリコン、白金-イリジウム合金、ステンレス鋼、グラファイト、非合金チタン、ステンレス鋼、ニッケル、酸化ニッケルが含まれる。ある特定の実施形態では、第2の電極は、白金、金、ニッケル、イリジウム、銅、鉄、鋼、ステンレス鋼、マンガンおよび亜鉛などの金属製電極、またはグラファイトもしくは不規則炭素などの炭素、または炭化ケイ素、炭化チタンもしくは炭化タングステンなどの金属炭化物を含む。ある特定の実施形態では、第2の電極は、金属合金(例えば、ニッケル-クロム-鉄合金、ニッケル-モリブデン-カドミウム合金)、金属酸化物(例えば、酸化イリジウム、ニッケル鉄コバルト酸化物、コバルト酸ニッケル、コバルト酸リチウム、ランタンストロンチウムコバルト酸化物、バリウムストロンチウム鉄酸化物、モリブデン酸マンガン、二酸化ルテニウム、イリジウムルテニウムタンタル酸化物)、金属有機フレームワークまたは金属スルフィド(例えば、硫化モリブデン)を含む。ある特定の実施形態では、電気触媒または電極材料は、導電性支持体表面に分散またはコーティングされている。一部の実施形態では、
図13Aに示されている通り、反応器1の第1の電極(例えば、カソード)では、水が還元されて、OH
-(アルカリ性溶液)およびH
2(g)をもたらす。
【0105】
H2O+2e-→H2+2OH-
【0106】
別の実施形態では、反応器1の第1の電極(例えば、カソード)では、O
2が還元されて、OH
-(アルカリ性溶液)が得られる。
図13Aを参照されたい。
【0107】
1/2O2+H2O+2e-→2OH-
【0108】
一部の実施形態では、OH
-が、例えば、
図13に示されている通り、隔膜または膜を通過する、電解質中の陽イオンによって電荷のバランスをとる。ある特定の場合、0.01mol/Lまたはそれより高いアルカリ濃度を有する、7より高いpHを有するアルカリ水酸化物溶液(例えば、NaOH、KOH)を反応器の出口から収集する。ある特定の例では、H
2は、反応器の異なる出口から収集される。一部の場合、反応器1は、1つの電極において、アルカリ性溶液を、および他の電極において、水素および二ハロゲン化物(金属塩が金属ハロゲン化物である場合)を生成する。
【0109】
一部の実施形態によれば、
図12において、反応器2は、反応器1のアノードにおいて生成する水素ガスおよび二ハロゲン化物を反応させることによってまたは二ハロゲン化物を水と反応させることによって、酸を生成する反応器である。以下の例によって限定されないが、この反応器の2つの実施形態が、
図14A~14Bに示されている。ある特定の実施形態によれば、
図14Aでは、反応器は、第1のチャンバ、H
2を第1のチャンバに導入する入口、二ハロゲン化物を第1のチャンバに導入する第2の入口、およびハロゲン化水素(例えば、HCl、HBr、HI)を第1のチャンバから取り出す出口、ハロゲン化水素を第2のチャンバに導入する入口、水を第2のチャンバに導入する入口、およびハロゲン化水素の酸性水溶液を第2のチャンバから取り出す出口を備える。一部の実施形態では、第1のチャンバでは、二ハロゲン化物は、H
2と反応して、ハロゲン化水素を形成する。ある特定の実施形態では、H
2と二ハロゲン化物との間の反応は、加熱によって、または電磁波による照射によって支援されてもよい。例えば、一部の実施形態では、二ハロゲン化物がCl
2である場合、反応器2において、以下の反応が起こる:
Cl
2+H
2→2HCl
【0110】
一部の場合、第2のチャンバでは、ハロゲン化水素を水に溶解して、酸性溶液を作製する。例えば、HClを水に溶解して、プロトンを作製することができる。
【0111】
ある特定の実施形態によれば、
図14Bでは、二ハロゲン化物が水を反応して、所望の酸、および副生成物として酸素を生成する。一部の場合、例示的な反応器は、第1のチャンバ、H
2Oを第1のチャンバに導入する入口、および二ハロゲン化物を第1のチャンバに導入する第2の入口を備える。ある特定の例では、反応器はまた、ハロゲン化水素(例えば、HCl、HBr、HI)を第1のチャンバから取り出す出口、およびO
2を第1のチャンバから取り出す出口を備える。一部の場合、例示的な二ハロゲン化物としての塩素と水との反応は、以下である:
【0112】
Cl2+H2O→2HCl+1/2O2.
【0113】
一部の実施形態では、二ハロゲン化物および水の相対量により、純粋なハロゲン化水素、または例えばハロゲン化水素の水溶液を含めたハロゲン化水素と水との混合物が生成されるかどうかが決まる。必要に応じて、ある特定の実施形態では、
図14Bに示されている通り、反応器は、ハロゲン化水素を水に溶解して酸性溶液を作製する第2のチャンバであって、ハロゲン化水素を導入する入口、水を第2のチャンバに導入する入口およびハロゲン化水素の酸性水溶液を反応器から取り出す出口を有する、上記の第2のチャンバを備えてもよい。
【0114】
一部の実施形態では、本システムは、装置を備える。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、本システムは、第1の装置118を備える。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の場合、本システムは、第1の装置118を備える。同様に、
図3Aを参照すると、一部の例では、本システムは、第1の装置118を備える。ある特定の例では、装置は、容器(例えば、大気に開放されていない容器)である。ある特定の実施形態によれば、装置は、反応器の1つもしくはこれより多くの生成物または副生成物(例えば、酸、塩基、水素ガス、酸素ガスおよび/または二酸化炭素ガスなど)を収集し、1つもしくはこれより多くの生成物または副生成物のうちの1つまたはこれより多くを貯蔵し、および/あるいは1つまたはこれより多くの生成物もしくは副生成物(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)のうちの1つまたはこれより多くを反応させるよう構成されている。
【0115】
ある特定の実施形態では、本システムは、複数の装置を備える。一部の実施形態では、本システムは、1つより多いもしくはこれと等しい数の、2つより多いもしくはこれと等しい数の、3つより多いもしくはこれと等しい数の、4つより多いもしくはこれと等しい数の、または5つより多いもしくはこれと等しい数の装置を備える。一部の場合、本システムは、6つより少ないもしくはこれと等しい数の、5つより少ないもしくはこれと等しい数の、4つより少ないもしくはこれと等しい数の、3つより少ないもしくはこれと等しい数の、または2つより少ないもしくはこれと等しい数の装置を備える。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、1~6つの装置)。一部の実施形態では、本システムは、第1の装置および第2の装置を備える。例えば、
図1Bでは、一部の実施形態では、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備える。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備える。同様に、
図3Aを参照すると、一部の場合、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備える。各装置は、1つまたはこれより多くの機能を独立して有することができる。本明細書において開示されている任意の装置または装置の立体構成を本明細書において開示されている任意のシステムと使用されてもよい。
【0116】
ある特定の実施形態では、装置は、反応器に流体連結している。例えば、一部の例では、装置は、流体が流れることができる、導管(例えば、パイプ、チャネル、ニードルまたは管)によって反応器に連結されている。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、装置118は、導管によって反応器に流体連結している。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、装置118は、導管によって反応器に流体連結している。同様に、
図3Aを参照すると、一部の例では、装置118は、導管によって反応器に流体連結している。
【0117】
ある特定の場合、装置は、1つまたはこれより多くの他の装置(例えば、パイプ、チャネル、ニードルまたは管などの導管による)に流体連結している。例えば、
図1Dを参照すると、第1の装置118は、導管によって第3の装置120に流体連結している。同様に、
図2Cを参照すると、一部の実施形態では、第1の装置118は、第3の装置に流体連結され得る(例えば、導管によって)。同様に、
図3Aを参照すると、一部の場合、第1の装置118は、第3の装置に流体連結され得る(例えば、導管によって)。別の例として、
図1Eを参照すると、一部の実施形態では、第1の装置118は、第3の装置120に流体連結しており(例えば、導管によって)、この装置は、第5の装置122に流体連結している(例えば、導管によって)一方、第2の装置119は、第4の装置121に流体連結しており(例えば、導管によって)、この装置は、第6の装置123に流体連結している(例えば、導管によって)。
【0118】
一部の実施形態によれば、本方法は、酸および/または塩基を収集するステップを含む。例えば、一部の実施形態では、本方法は、酸および/または塩基が生成する容器(例えば、反応器)からそれらを取り出すステップを含む。酸および/または塩基を収集する好適な方法の非限定例は、個別の容器への導管(例えば、パイプ、チャネル、ニードルまたは管)を通って、酸および/または塩基を移動させるステップを含む。酸および/または塩基を収集する他の好適な例には、酸および/または塩基を個別の容器(例えば、流体の拡散を遮断または可能にするよう移動されることができるパネルによって、反応器に連結されている容器)に直接、移動させることを含む。一部の実施形態では、酸および/または塩基は、連続的にまたは回分で収集される。ある特定の実施形態では、酸および/または塩基は、自動的にまたは手作業により収集される。
【0119】
一部の実施形態では、装置は、第2の電極(および/または第2の反応器)の近傍の酸、および/または第1の電極(および/または第1の反応器)の近傍の塩基を収集する(例えば、酸性領域から酸を収集し、および/またはアルカリ性領域から塩基を収集する)よう構成されている。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、本システムは、第1の装置118を備え、この装置は、第1の電極104の近傍の塩基を収集するよう構成されている。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、本システムは、第1の装置118を備え、この装置は、第1の電極104の近傍の塩基を収集するよう構成されている。同様に、
図3Aを参照すると、システム300は、第1の装置118を備え、この装置は、第1の反応器320の近傍(例えば、第1の反応器320の第1の電極104の近傍)の塩基を収集するよう構成されている。一部の実施形態では、第1の装置118は、第1の電極(および/または第1の反応器)の近傍の塩基を収集することに加え、またはこの代わりに、第2の電極(および/または第2の反応器)の近傍の酸を収集するよう構成され得る。
【0120】
ある特定の実施形態では、第2の装置は、第2の電極(および/または第2の反応器)の近傍の酸、および/または第1の電極(および/または第1の反応器)の近傍の塩基を収集するよう構成されている。第1の装置が第1の電極の近傍の塩基を収集する一部の実施形態では、第2の装置は、第2の電極の近傍の酸を収集するよう構成されている。例えば、
図1Bを参照すると、一部の実施形態では、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は、第1の電極104の近傍の塩基を収集するよう構成されており、第2の装置119は、第2の電極105の近傍の酸を収集するよう構成されている。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は、第1の電極104の近傍の塩基を収集するよう構成されており、第2の装置119は、第2の電極105の近傍の酸を収集するよう構成されている。同様に、
図3Aでは、一部の例では、システム300は、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は、第1の反応器320(例えば、第1の電極104)の近傍の塩基を収集するよう構成されており、装置119は、第2の反応器301の近傍の酸を収集するよう構成されている。代替的に、第1の装置が第2の電極(および/または第2の反応器)の近傍の酸を収集するよう構成されている実施形態では、第2の装置は、第1の電極(および/または第1の反応器)の近傍の塩基を収集するよう構成され得る。
【0121】
ある特定の実施形態では、酸を収集するステップは、酸がかなり希釈されていないおよび/または反応していない電極に十分に近い近傍(例えば、収集した酸のpHは、反応器中の最低のpHを有する酸の1pH単位の範囲内にある)から、電極によって生成した酸を収集するステップを含む。同様に、一部の実施形態では、塩基を収集するステップは、塩がかなり希釈されていないおよび/または反応していない電極に十分に近い近傍(例えば、収集した塩基のpHは、反応器中の最高のpHを有する塩基の1pH単位の範囲内にある)から、電極によって生成した塩基を収集するステップを含む。
【0122】
一部の実施形態によれば、本方法は、酸および/または塩基を貯蔵するステップを含む。例えば、ある特定の実施形態では、酸および/または塩基が、個別の容器に一旦、収集されると、本方法は、少なくともある程度の期間、個別の容器中で酸および/または塩基を維持するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、5分間より長いもしくはこれに等しい間、15分間より長いもしくはこれに等しい間、30分間より長いもしくはこれに等しい間、1時間より長いもしくはこれに等しい間、5時間より長いもしくはこれに等しい間、12時間より長いもしくはこれに等しい間、1日間より長いもしくはこれに等しい間、2日間より長いもしくはこれに等しい間、3日間より長いもしくはこれに等しい間、1週間より長いもしくはこれに等しい間、2週間より長いもしくはこれに等しい間、または1か月間より長いもしくはこれに等しい間、酸および/または塩基を貯蔵するステップを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、1年間より短いもしくはこれに等しい間、6か月より短いもしくはこれに等しい間、3か月より短いもしくはこれに等しい間、2か月より短いもしくはこれに等しい間、1か月より短いもしくはこれに等しい間、2週間より短いもしくはこれに等しい間、1週間より短いもしくはこれに等しい間、3日間より短いもしくはこれに等しい間、2日間より短いもしくはこれに等しい間、1日間より短いもしくはこれに等しい間、または12時間より短いもしくはこれに等しい間、酸および/または塩基を貯蔵するステップを含む。これらの範囲の組合せも考えられる(例えば、5分間より長いもしくはこれに等しい間であり1年間より短いもしくはこれに等しい間、5時間より長いもしくはこれに等しい間であり1日間より短いもしくはこれに等しい間であるか、または1週間より長いもしくはこれに等しい間であり1年間より短いまたはこれに等しい間)。
【0123】
ある特定の実施形態では、装置(例えば、第1の装置および/または第2の装置)は、酸および/または塩基を貯蔵するよう構成されている。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の装置118は、塩基を貯蔵するよう構成されている。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、第1の装置118は、塩基を貯蔵するよう構成されている。同様に、
図3Aを参照すると、一部の場合、第1の装置118は、塩基を貯蔵するよう構成されている。
【0124】
別の例として、
図1Bを参照すると、一部の実施形態では、第2の装置119は、塩基を貯蔵するよう構成されている。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の場合、第2の装置119は、酸を貯蔵するよう構成されている。同様に、
図3Aを参照すると、一部の例では、第2の装置119は、酸を貯蔵するよう構成されている。
【0125】
一部の実施形態では、第1の装置が塩基を貯蔵するよう構成されている場合、第2の装置は酸を貯蔵するよう構成されている。例えば、
図1Bを参照すると、一部の実施形態では、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は塩基を貯蔵するよう構成されており、第2の装置119は酸を貯蔵するよう構成されている。同様に、
図2Cを参照すると、一部の例では、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は塩基を貯蔵するよう構成されており、第2の装置119は酸を貯蔵するよう構成されている。同様に、
図3Aを参照すると、ある特定の実施形態によれば、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は塩基を貯蔵するよう構成されており、第2の装置119は酸を貯蔵するよう構成されている。代替的に、第1の装置が酸を貯蔵するよう構成されている実施形態では、第2の装置は塩基を貯蔵するよう構成され得る。
【0126】
一部の実施形態によれば、本方法は、酸および/または塩基を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させるステップを含む。ある特定の実施形態では、化学的溶解は、沈殿反応の前である(例えば、化学的溶解の生成物は、沈殿反応に使用される)。一部の場合、沈殿反応は、化学的溶解の前である(例えば、沈殿反応の生成物は、化学的溶解に使用される)。ある特定の例では、化学的溶解および沈殿反応は同時であり、および/または無関係である(例えば、1つの生成物は他に使用されず、その反対でもある)。
【0127】
一部の実施形態では、装置(例えば、第1の装置および/または第2の装置)は、酸を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させるよう構成されている。例えば、
図1Bを参照すると、一部の実施形態では、第2の装置119は、酸を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、第2の装置119は、酸を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。同様に、
図3Aを参照すると、ある特定の実施形態によれば、第2の装置119は、酸を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。
【0128】
ある特定の実施形態では、装置(例えば、第1の装置および/または第2の装置)は、塩基を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させるよう構成されている。別の例として、
図1Aを参照すると、ある特定の実施形態では、第1の装置118は、塩基を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。同様に、
図2Cを参照すると、一部の実施形態では、第1の装置118は、塩基を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。同様に、
図3Aを参照すると、一部の実施形態によれば、第1の装置118は、塩基を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。
【0129】
一部の実施形態では、第1の装置が塩基を反応させるよう構成されている場合(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)、第2の装置は、酸を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。例えば、
図1Bを参照すると、一部の実施形態では、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は、塩基を反応させるよう構成されており(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)、第2の装置119は、酸を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は、塩基を反応させるよう構成されており(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)、第2の装置119は、酸を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。同様に、
図3Aを参照すると、ある特定の実施形態によれば、本システムは、第1の装置118および第2の装置119を備え、ある特定の場合、第1の装置118は、塩基を反応させるよう構成されており(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)、第2の装置119は、酸を反応させるよう構成されている(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)。代替的に、第1の装置が酸を反応させるよう構成されている実施形態では、第2の装置は塩基を反応させるよう構成され得る。
【0130】
ある特定の実施形態によれば、装置(例えば、第1の装置および/または第2の装置)は、(i)第2の電極の近傍の酸および/もしくは第1の電極の近傍の塩基を収集するよう、(ii)酸および/もしくは塩基を貯蔵するよう、ならびに/または酸および/もしくは塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成され得る。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、第1の装置118は、(i)第1の電極の近傍の塩基を収集するよう、(ii)塩基を貯蔵するよう、および(iii)塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、第1の装置118は、(i)第1の電極の近傍の塩基を収集するよう、(ii)塩基を貯蔵するよう、および(iii)塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。同様に、
図3Aを参照すると、一部の場合、第1の装置118は、(i)第1の電極の近傍の塩基を収集するよう、(ii)塩基を貯蔵するよう、および(iii)塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。
【0131】
別の例として、
図1Bを参照すると、一部の実施形態では、第2の装置119は、(i)第2の電極の近傍の酸を収集するよう、(ii)酸を貯蔵するよう、および(iii)酸を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。同様に、
図2Cを参照すると、ある特定の実施形態では、第2の装置119は、(i)第2の電極の近傍の酸を収集するよう、(ii)酸を貯蔵するよう、および(iii)酸を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。同様に、
図3Aを参照すると、第2の装置119は、(i)第2の電極の近傍の酸を収集するよう、(ii)酸を貯蔵するよう、および(iii)酸を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。
【0132】
一部の実施形態によれば、各装置は、1つの機能しか有していなくてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、第1の装置は、第1の電極の近傍の塩基を収集するよう構成されており、第2の装置は、第2の電極の近傍の酸を収集するよう構成されており、第3の装置は、塩基および/または酸を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。例えば、
図1Dでは、ある特定の実施形態では、第1の装置118は、第1の電極104の近傍の塩基を収集するよう構成されており、第2の装置119は、第2の電極105の近傍の酸を収集するよう構成されており、第3の装置120は、塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。別の非限定例として、一部の実施形態では、第1の装置は、第1の電極の近傍の塩基を収集して該塩基を貯蔵するよう構成されており、第2の装置は、第2の電極の近傍の酸を収集して該酸を貯蔵し、該酸を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されており、第3の装置は、塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。例えば、
図1Dでは、一部の実施形態では、第1の装置118は、第1の電極104の近傍の塩基を収集して該塩基を貯蔵するよう構成されており、第2の装置119は、第2の電極105の近傍の酸を収集して該酸を貯蔵し、該酸を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されており、第3の装置120は、塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。
【0133】
さらに別の例において、一部の実施形態では、第1の装置は、第1の電極の近傍の塩基を収集するよう構成されており、第2の装置は、第2の電極の近傍の酸を収集するよう構成されており、第3の装置は、塩基を貯蔵するよう構成されており、第4の装置は、酸を貯蔵するよう構成されており、第5の装置は、塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されており、第6の装置は、酸を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。例えば、
図1Eでは、一部の例では、第1の装置118は、第1の電極104の近傍の塩基を収集するよう構成されており、第2の装置119は、第2の電極105の近傍の酸を収集するよう構成されており、第3の装置120は、塩基を貯蔵するよう構成されており、第4の装置121は、酸を貯蔵するよう構成されており、第5の装置122は、塩基を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されており、第6の装置123は、酸を反応させる(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応で)よう構成されている。
【0134】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている酸および/または塩基は、化学的溶解および/または沈殿反応で反応させる。ある特定の場合、酸および/または塩基は、化学的溶解で反応させる。一部の実施形態では、化学的溶解は、固体を溶解して、2つの安定なイオンを形成することを含む。一部の実施形態では、固体は、金属、金属合金、メタロイド、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物および/またはシリケートを含む。ある特定の実施形態では、固体は、結晶、アモルファス、ナノ結晶および/またはそれらの混合物である。一部の実施形態では、固体は、Ag、Al、As、Au、Ba、Ca、Cd、Cl、Co、Cr、Cu、Fe、Hg、K、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、P、Pb、S、Sb、Se、Si、Sn、Ti、Tl、V、Wおよび/またはZn(例えば、元素形態で、または塩として)を含む。
【0135】
一部の実施形態では、金属および/または金属合金は、鉄、鉄合金、ステンレス鋼、非鉄金属、非鉄合金、アルミニウム、黄銅、青銅、銅、亜鉛、スズおよび/またはコイン合金を含む。
【0136】
金属塩、金属酸化物および金属水酸化物の例には、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、カドミウム、鉛および/またはニッケルの塩、酸化物および水酸化物を含む。例えば、一部の実施形態では、金属塩は金属炭酸塩を含む。好適な金属炭酸塩の例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸マンガン、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸亜鉛、炭酸カドミウム、炭酸鉛および/または炭酸ニッケルが含まれる。
【0137】
好適な金属酸化物の例には、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化鉛、二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムが含まれる。
【0138】
好適な金属水酸化物の例には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化マンガン、酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化亜鉛、水酸化カドミウム、水酸化鉛、水酸化ケイ素および/または水酸化アルミニウムが含まれる。
【0139】
一部の実施形態では、酸は、金属、金属合金、メタロイド、金属塩、金属酸化物および/または金属水酸化物の化学的溶解で反応させる。ある特定の実施形態では、塩基は、金属酸化物(例えば、二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウム)および/または金属水酸化物(例えば、水酸化ケイ素および/または水酸化アルミニウム)の化学的溶解で反応させる。
【0140】
一部の例では、酸および/または塩基は、沈殿反応で反応させる。ある特定の実施形態では、沈殿反応は、2つの安定したイオンが一緒になって、固体沈殿物を形成することを含む。一部の実施形態では、固体沈殿物は、金属水酸化物を含む。好適な金属水酸化物の例には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化亜鉛、水酸化カドミウム、水酸化鉛および/または水酸化ニッケルが含まれる。
【0141】
一部の実施形態によれば、塩基を沈殿反応で反応させて、金属水酸化物を形成する。ある特定の実施形態では、酸を沈殿反応で反応させて、金属水酸化物を形成する。
【0142】
ある特定の実施形態では、反応器は、第1のモード(例えば、上記の通り)にある場合に、断続的に稼働される。一部の場合、反応器は、第1のモードで連続的に稼働される。ある特定の例では、収集された酸およびまたは塩基との反応(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応)が連続的に実施されると同時に、反応器が第1のモードで断続的に稼働される。例えば、一部の実施形態では、反応器は、反応(例えば、化学的溶解および/または沈殿反応)を連続的に行うのに十分な酸および/または塩基を生成するよう断続的に稼働させる必要がある場合だけ第1のモードで稼働した場合に、十分な酸および/または塩基を生成する。
【0143】
一部の実施形態では、所望の化学反応は、電気分解により生成する様々な組成からなる溶液または懸濁液を収集して前記溶液(単数または複数)を使用して、反応器の一部または個々の装置において前記反応剤から生成物を生成することによって行われる。例えば、
図4A~4Bは、ある特定の実施形態によれば、反応器であって、電解槽が、反応器の個々の区域を隔離するよう、または反応器を隔離するように指向されている低pHおよび高pHの溶液を生成する、反応器を示している。一部の実施形態によれば、このプロセスでは、第1のチャンバにおいて、酸性溶液が、CaCO
3を溶解してCO
2ガスを放出するために使用される(
図4Bを参照されたい)。第2のチャンバでは、一部の実施形態では、溶解した溶液は、電解槽によって生成したアルカリ性溶液と反応して、Ca(OH)
2を生成する(
図4Bを参照されたい)。一部の実施形態では、2つのチャンバは、酸性溶液用およびアルカリ性溶液用の貯蔵槽となる。ある特定の実施形態では、酸用貯蔵槽は、ポリマー物質またはガラスの内張りを含む。ある特定の実施形態では、アルカリ用貯蔵槽は、ポリマー物質または金属を含む。一部の実施形態では、金属槽は、鉄または鋼を含む。
【0144】
ある特定の場合、沈殿反応の副生成物は、システムに供給して戻される(例えば、第1の反応器)。一部の例では、本システムは、システムに沈殿反応に由来する副生成物を供給するよう構成されている(例えば、第1の反応器)。一部の実施形態では、副生成物は、中性pHを有する。例えば、ある特定の場合、副生成物は、6より高い、6.25より高いもしくはこれに等しい、6.5より高いもしくはこれに等しい、6.75より高いもしくはこれに等しい、または6.9より高いもしくはこれに等しいpHを有する。一部の例では、副生成物は、8未満、7.75より低いもしくはこれに等しい、7.5より低いもしくはこれに等しい、7.25より低いもしくはこれに等しい、または7.1より低いもしくはこれに等しいpHを有する。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、6より高く8未満である、または6.9より高いもしくはこれに等しく、7.1より低いもしくはこれに等しい)。一部の実施形態では、副生成物はpH7を有する。
【0145】
一部の例では、副生成物は、アルカリハロゲン化物(例えば、アルカリ水酸化物の沈殿中の副生成物)(例えば、NaCl)を含む。ある特定の場合、副生成物は、アルカリ塩(例えば、NaClO4、NaNO3、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムおよび/または酢酸ナトリウム)を含む。
【0146】
一部の実施形態では、本方法は、反応器を第2のモードで稼働するステップを含む。ある特定の場合、反応器の極性は、第1のモードにおける反応器の極性に比べて、第2のモードでは反対になっている。一部の実施形態によれば、反応器を第1のモードで稼働することは、反応器を第2のモードで稼働するよりも多くの電気を使用する。例えば、ある特定の実施形態では、反応器を第1のモードで稼働することは、反応器を第2のモードで稼働するよりも、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%多くの電気を使用する。一部の場合、反応器を第1のモードで稼働することは、反応器を第2のモードで稼働するよりも、50%より低いもしくはこれに等しい分、40%より低いもしくはこれに等しい分、30%より低いもしくはこれに等しい分、または20%より低いもしくはこれに等しい分、多くの電気を使用する。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば少なくとも(at elast)10%であり50%より低いまたはこれに等しい)。第2のモードに関連する任意の実施形態を本明細書に記載されているシステムのいずれかに適用することができる。
【0147】
一部の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、第2の電極の近傍の反応器に塩基を添加することを含む。例えば、ある特定の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、塩基を第2の電極において電気化学反応に使用することができるように、反応器に塩基を添加することを含む。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、第2の電極105の近傍に塩基を添加することを含む。同様に、
図2Aを参照すると、ある特定の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、第2の電極105の近傍に塩基を添加することを含む。一部の実施形態によれば、反応器が第1のモードで稼働された場合、反応器に添加される塩基は第1の電極の近傍から収集されて、反応器が第2のモードで稼働されるまで貯蔵された。ある特定の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、第2の電極の近傍に添加された塩基(例えば、貯蔵されていた塩基)を酸化して、酸素ガスを生成することを含む。例えば、一部の場合、反応器を第2のモードで稼働することは、添加された塩基を、第2の電極によって酸素ガスに酸化することを含む。
【0148】
ある特定の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、第1の電極の近傍の反応器に酸を添加することを含む。例えば、ある特定の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、酸を第1の電極において電気化学反応に使用することができるように、反応器に酸を添加することを含む。例えば、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、第1の電極104の近傍に酸を添加することを含む。同様に、
図2Aを参照すると、ある特定の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、第1の電極104の近傍に酸を添加することを含む。一部の実施形態によれば、反応器に添加される酸は、反応器が第1のモードで稼働された場合、第2の電極の近傍から収集され、反応器が第2のモードで稼働されるまで貯蔵した。ある特定の実施形態では、反応器を第2のモードで稼働することは、第1の電極の近傍に添加された酸(例えば、貯蔵されていた酸)を還元して、水素ガスを生成することを含む。例えば、一部の場合、反応器を第2のモードで稼働することは、添加された酸を、第1の電極によって水素ガスに還元することを含む。
【0149】
対照的に、一部の実施形態では、反応器を第1のモードで稼働することは、反応器にほぼ中性の投入溶液を添加することを含む。ある特定の場合、ほぼ中性の投入溶液は、6より高い、6.25より高いもしくはこれに等しい、6.5より高いもしくはこれに等しい、6.75より高いもしくはこれに等しい、または6.9より高いもしくはこれに等しいpHを有する。一部の例では、ほぼ中性の投入溶液は、8未満、7.75より低いもしくはこれに等しい、7.5より低いもしくはこれに等しい、7.25より低いもしくはこれに等しい、または7.1より低いもしくはこれに等しいpHを有する。これらの範囲の組合せもまた考えられる(例えば、6より高く8未満である、または6.9より高いもしくはこれに等しく、7.1より低いもしくはこれに等しい)。一部の実施形態では、ほぼ中性の投入溶液は、pH7を有する。ある特定の実施形態では、ほぼ中性の投入溶液は塩を含む。好適な塩の例には、アルカリ硫酸塩、アルカリ塩素酸塩、アルカリハロゲン化物、アルカリ硝酸塩、アルカリ過塩素酸塩、アルカリ酢酸塩、アルカリ亜硝酸塩および/またはアルカリトリフルオロメタンスルホン酸塩が含まれる。
【0150】
一部の実施形態では、電気コストが高い場合、および/または電気が不足している場合、反応器を、第1のモードよりもむしろ第2のモードで稼働することが有利となり得る。例えば、ある特定の実施形態では、電気が電力供給業者から購入されている場合、電力供給業者からの電気のコストおよび/または利用可能度に変動があることがあり、電気コストが低い場合、および/または電気の利用可能度が高い場合、反応器を第1のモードで稼働することが有利となり得、次に、電気コストが高い、および/または電気の利用可能度が低い場合、反応器を第2のモードで稼働することが有利となり得る。別の例として、電気が太陽エネルギーまたは風力エネルギーなどの再生可能源に由来する場合、ある特定の実施形態では、電気の利用可能度に変動がある恐れがあり、こうして、電気の利用可能度が高い場合(例えば、太陽エネルギーの場合、日中および/もしくは夏季の間、または風力エネルギーの場合、風の強い期間)、反応器を第1のモードで稼働することが有利となり得、電気の利用可能度が低い場合(例えば、太陽エネルギーの場合、夜間および/もしくは冬季、または大きな風のない期間)、反応器を第2のモードで稼働するのが有利となり得る。一部の場合、電気コストが第1のコストであり、電気の利用可能度が第1の利用可能度である場合、反応器は第1のモードで稼働され、電気コストが第2のコストであり、電気の利用可能度が第2の利用可能度である場合、反応器は第2のモードで稼働され、この場合、第2のコストは第1のコストより高い(例えば、少なくとも、10%、25%、50%または100%高い)、および/または第1の利用可能度は第2の利用可能度より高い(例えば、少なくとも、10%、25%、50%または100%高い)。
【0151】
一部の実施形態では、電気利用可能度が高い期間および/もしくは電気コストが低い間、電気分解反応器によって生成する酸性溶液および/または塩基性溶液は少なくとも一部が収集される、および/または貯蔵され、酸中で化学的溶解反応によりCO2を生成させて、電解槽操作もしくは電気利用可能度が少ないまたは低い期間、および/あるいは電気コストが高い期間に、塩基中で起こる化学沈殿反応を行わせる。一部の実施形態では、酸性溶液および塩基性溶液の貯蔵は化学的貯蔵として機能し、一般に固体、液体または気体であってもよい化学的に反応した生成物の産出を、電解槽の産出物の速度に比べて、それほど変動しないようにまたは円滑にすることを可能にする。一部の実施形態では、貯蔵された酸性溶液または塩基性溶液は、電解槽の操作もしくは電気利用可能度が少ないまたは低い期間の間、および/あるいは電気コストが高い期間の間、貯蔵された酸性溶液または塩基性溶液を完全に枯渇させない速度で、化学的に反応した生成物を生成することが可能なサイズまたは体積のものである。一部の実施形態では、システムは、可変電気源、前記電解槽および前記化学的貯蔵用槽および化学反応器を備える。一部の実施形態では、方法は、さらに可変性のまたは断続的な電気源からの化学反応生成物の、それほど変動しない、または一定のまたは比較的一定の流れが生じるよう、このようなシステムを操作することを含む。
【0152】
ある特定の実施形態では、本方法は、低電圧モード(例えば、本明細書に記載されている高電圧モードよりも低い電圧)で酸および塩基を生成するステップを含む。低電圧モードに関連するいずれの実施形態も、本明細書に開示されている任意のシステムの場合に使用することができる。一部の実施形態では、本方法は、酸素ガスおよび/または水素ガスを生成しない。例えば、ある特定の実施形態では、低電圧モードで行われる電解反応は、第2の電極における水素の酸化(H2→2H++2e-)、および第1の電極における水の還元(2H2O+2e-→H2+2OH-)とすることができ、こうして酸素ガスが生成しない。別の例において、ある特定の実施形態では、低電圧モードで行われる電解反応は、第1の電極における水の酸化(2H2O→O2+4H++4e-)、および第2の電極における酸素の還元(O2+2H2O+4e-→4OH-)とすることができ、こうして水素ガスが生成しない。
【0153】
例示するため、いくつかの例示的なシステムを以下に記載する。
システム1:断続的な再生可能エネルギーを使用した、一定速度での低コストH2を生成するための例示的なシステム
【0154】
一部の実施形態によれば、本システムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む領域を含む反応器を備えることができる。一部の実施形態では、反応器は、第1の電極および第2の電極、電解反応(単数または複数)を受ける液体および/もしくはガスを供給する1つまたはこれより多くの入口、ならびに電解反応を受けた後に溶液を貯蔵する反応器の一部分または個々の装置を備えることができる。
【0155】
ある特定の実施形態では、本方法は、第1のモード(例えば、
図5A~5Bに示されている高電圧モード)で反応器を稼働するステップを含み、第1のモードは、第1の電極の近傍に塩基を生成するステップ、反応器において第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極の近傍に酸を生成するステップ、酸および/または塩基を収集するステップ、ならびに収集した酸および/または塩基を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させるステップを含む。
【0156】
ある特定の実施形態では、電解反応により、H
2、O
2、酸性溶液および塩基性溶液を生成することができる。これは、低電圧モードよりも高い電圧を必要とする、高電圧モードの例である。高電圧モードで行われる電解反応の非限定例は、第2の電極における水の酸化(2H
2O→O
2+4H
++4e
-)および第1の電極における水の還元(2H
2O+2e
-→H
2+2OH
-)である。この反応は、第2の電極におけるpHが0であり、第1の電極におけるpHが14である場合、2Vとなる最小電圧を必要とする(
図5A~5Bを参照されたい)。ある特定の実施形態では、電極において生成した酸性溶液および塩基性溶液を個別に収集して貯蔵することができる。
【0157】
ある特定の実施形態では、本方法は、反応器を第2のモードで稼働するステップを含む(例えば、
図6A~6Bに示されている、低電圧モード)。一部の実施形態では、反応器の極性は、第1のモードにおける反応器の極性に比べて、第2のモードでは反対になっている。一部の実施形態では、第2のモードは、収集したおよび/または貯蔵した塩基を第2の電極の近傍の反応器に添加することを含む。ある特定の実施形態では、第2のモードは、第2の電極の近傍に添加した塩基を酸化して、酸素ガスを生成することを含む。一部の実施形態では、第2のモードは、収集したおよび/または貯蔵した酸を、第1の電極の近傍の反応器に添加することを含む。ある特定の実施形態では、第2のモードは、第1の電極の近傍に添加した酸を還元して、水素ガスを生成することを含む。
【0158】
ある特定の実施形態では、電解反応は、H
2およびO
2の生成と同時に、酸性溶液および塩基性溶液を中和してもよい。これは、上述の高電圧モードよりも低い電圧を必要とする、低電圧モードの例である。低電圧モードで行われる電解反応の非限定例は、第2の電極(例えば、アノード)における水酸化物イオンの酸化(4OH
-→O
2+2H
2O+4e
-)および第1の電極(例えば、カソード)におけるプロトンの還元(2H
++2e
-→H
2)である。この反応は、第2の電極におけるpHが14であり、第1の電極におけるpHが0である場合、0.4Vとなる最小電圧を必要とする(
図6A~6Bを参照されたい)。ある特定の実施形態では、反応器の入口は、第2の電極に8を超えるpHの溶液を供給し、第1の電極に6未満のpHの溶液を供給することができる。
【0159】
ある特定の実施形態では、異なる反応器が、高電圧モードおよび低電圧モードで操作されてもよい。別の実施形態では、単一反応器は、高電圧モードまたは低電圧モードで操作することができるよう構成されてもよい。一部の実施形態では、反応器は、電極の方向に流れる液体のpHを変えることによって、高電圧モードから低電圧モードに切り替えることができる。例えば、高電圧モードから低電圧モードに切り替えるために、酸性溶液を第1の電極に導入することができると同時に、アルカリ性溶液を第2の電極に導入することができる。
【0160】
一部の実施形態では、高電圧モード(例えば、酸/塩基を生成しながら、H2/O2を生成する)と低電圧モード(例えば、酸/塩基を中和しながらH2/O2を生成する)との間の切り替えの判断は、1日間、1か月間または1年間全体にわたり変動する可能性のある、電気コストまたは電気の利用可能度に基づくことができる。ある特定の実施形態では、電気コストがある特定の値未満となる場合、反応器は、高電圧モードで稼働され得る(例えば、H2、O2、酸および塩基を生成しながら、より多くの電力を消費する)。電気コストがある特定の値を超える場合、反応器は、低電圧モードで稼働され得る(例えば、酸性溶液および塩基性溶液を使用してH2およびO2を生成しながら、より少ない電力しか消費しない)。一部の実施形態では、本システムは、H2を生成する電気コストを効果的に裁定取引することができる:電気が安価である場合、本システムは、安価な電気エネルギーの一部が物理的に貯蔵可能(例えば、酸性溶液および塩基性溶液の形態で)な化学エネルギーへと変換される、高電圧モードで操作することによって電気をより多量に使用する。電気が高価な場合、本システムは、貯蔵された化学エネルギー(例えば、酸性溶液および塩基性溶液)を使用して、H2およびO2を生成するためのエネルギー要求量を低下させることができる低電圧モードで操作することによって、より少ない電気しか使用しないことができる。一部の実施形態では、本システムは、H2およびO2を生成する電気コストを削減するように働き得る。一部の実施形態では、本システムは、価格または利用可能度が変動する電気を使用して、一定速度で水素および酸素を生成するよう働くことができる。
【0161】
図7は、断続的な再生可能電気を20%まで使用して、システムが、H
2を生成するエネルギーコスト削減する非限定例を例示している。この例では、再生可能エネルギーのコストは、0.02$/kWh~0.07$/kWhの間で変動する(典型的な日における、典型的なウインドタービンのエネルギー生産率に準拠する)。固定電圧(1.2V、32kWh/kg H
2)で操作した1kWのアルカリまたはPEM電解槽の場合の電気コスト対時間が、
図7に示されている。
図7はまた、一部の実施形態による、電気コストが平均未満(0.05$/kWh)である場合、高電圧モード(2V、54kWh/kg H
2)で、および電気コストが平均を超える場合、低電圧モード(0.4V、10kWh/kg H
2)で操作する、可変電圧式電解槽のエネルギーコストを示している。この例では、どちらの電解槽も、同じ速度でH
2を生成し、平均で同じ量のエネルギー(32kWh/kg H
2)を使用するが、2つのセルを稼働するエネルギーコストは異なる。この例では、可変電圧式電解槽は、高価な電気をより少なく使用し(低電圧モードでの操作による)、安価な電気をより多く使用する(高電圧モードでの操作による)。この例では、固定電圧式電解槽の平均エネルギーコストは、0.05$/kWhであり、可変電圧式電解槽の平均エネルギーコストは、0.04$/kWh(20%少ない)である。一部の実施形態によれば、可変電圧式電解槽の場合に可能なコスト削減量は、コストの変動の大きさに比例することが留意される:電気コストの変動が大きいほど、コスト削減量が大きくなる。
システム2:断続的な再生可能電気を使用する、低コストの水素および酸性溶液/塩基性溶液を同時生成するための例示的なシステム
【0162】
一部の実施形態によれば、本システムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む領域を含む反応器を備えることができる。一部の実施形態では、反応器は、第1の電極および第2の電極、電解反応(単数または複数)を受ける液体および/もしくはガスを供給する1つまたはこれより多くの入口、ならびに電解反応を受けた後に溶液を貯蔵する反応器の一部分または個々の装置を備えることができる。一部の実施形態では、この電解反応は、第2の電極の近傍に約6未満のpHを生じ、第1の電極の近傍に約8より高いpHを生じることができる。高pHおよび低pHの溶液を収集し、個別に貯蔵することができる。一部の実施形態では、電極は、電解反応の1つまたはこれより多くを行い、高pH溶液または低pH溶液を生成するよう構成されてもよい。
【0163】
ある特定の実施形態では、電解反応により、H
2、O
2、酸性溶液および塩基性溶液を生成することができる。これは、低電圧モードよりも高い電圧を必要とする、高電圧モードの例である。高電圧モードで行われる電解反応の非限定例は、第2の電極(例えば、アノード)における水の酸化(2H
2O→O
2+4H
++4e
-)および第1の電極(例えば、カソード)における水の還元(2H
2O+2e
-→H
2+2OH
-)である。この反応は、第2の電極におけるpHが0であり、第1の電極におけるpHが14である場合、2Vとなる最小電圧を必要とする(
図5A~5Bを参照されたい)。ある特定の実施形態では、電極において生成した酸性溶液および塩基性溶液を個別に収集して貯蔵することができる。
【0164】
ある特定の実施形態では、反応器は、時として、高電圧モードよりも低い電圧を必要とする低電圧モードで酸性溶液および塩基性溶液を生成することができる。低電圧モードで酸性溶液および塩基性溶液を生成する電解反応の非限定例は、以下を含む。
【0165】
ある特定の実施形態では、低電圧モードで行われる電解反応は、第2の電極(例えば、アノード)における水素の酸化(H
2→2H
++2e
-)および第1の電極(例えば、カソード)における水の還元(2H
2O+2e
-→H
2+2OH
-)とすることができる(例えば、HRR/HER反応)。この反応は、第2の電極におけるpHが0であり、第1の電極におけるpHが14である場合、0.8Vとなる最小電圧を必要とする(
図8A~8Bを参照されたい)。
【0166】
ある特定の実施形態では、低電圧モードで行われる電解反応は、第2の電極(例えば、アノード)における水の酸化(2H
2O→O
2+4H
++4e
-)および第1の電極(例えば、カソード)における酸素の還元(O
2+2H
2O+4e
-→4OH
-)とすることができる(例えば、OER/ORR反応)。この反応は、第2の電極におけるpHが0であり、第1の電極におけるpHが14である場合、0.8Vとなる最小電圧を必要とする(
図9A~9Bを参照されたい)。
【0167】
一部の実施形態では、高電圧モード(例えば、H2/O2の同時生成を伴う酸/塩基の生成)または低電圧モード(例えば、正味の量のガスの生成を伴わない酸/塩基の生成)の間を切り替える判断は、1日間、1か月間または1年間全体にわたり変動する可能性のある、電気コストまたは電気の利用可能度に基づくことができる。ある特定の実施形態では、電気コストがある特定の値未満である場合、反応器は、高電圧モードで稼働され得る(例えば、H2、O2、酸および塩基を生成しながら、より多くの電力を消費する)。ある特定の実施形態では、電気コストがある特定の値を超える場合、反応器は、低電圧モードで稼働され得る(例えば、酸および塩基だけを生成する、より少ない電力しか消費しない)。
【0168】
一部の実施形態では、本システムは、酸性溶液および塩基性溶液と共に、H2およびO2を同時生成することによって安い電気価格と言う利点をとることができる:電気が安価な場合、本システムは、酸、塩基、H2およびO2を生成する高電圧モードで操作することによって、より多くの電気を使用することができる。電気が高価な場合、本システムは、酸および塩基を生成するが、正味の量のH2またはO2を生成しない低電圧モードで操作することによってより少ない電気しか使用しないことができる。一部の実施形態では、本システムは、H2およびO2を生成する電気コストを低減するように働く。
システム3:断続的な再生可能エネルギーを使用した、一定速度での低コストで酸/塩基を生成するための例示的なシステム
【0169】
一部の実施形態によれば、本システムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む領域を含む反応器を備えることができる。一部の実施形態では、反応器は、第1の電極および第2の電極、電解反応(単数または複数)を受ける液体および/もしくはガスを供給する1つまたはこれより多くの入口、ならびに電解反応を受けた後に溶液を貯蔵する反応器の一部分または個々の装置を備えることができる。一部の実施形態では、この電解反応は、第2の電極の近傍に約6未満のpHを生じ、第1の電極の近傍に約8より高いpHを生じることができる。高pHおよび低pHの溶液を収集し、個別に貯蔵することができる。一部の実施形態では、電極は、電解反応の1つまたはこれより多くを行い、高pH溶液または低pH溶液を生成するよう構成されてもよい。
【0170】
ある特定の実施形態では、電解反応により、H
2、O
2、酸性溶液および塩基性溶液を生成することができる。この電解モードは、後で記載する燃料電池モードよりも高い電圧を必要とするので、電解モードの一例となる。電解モードで行われる電解反応の非限定例は、第2の電極(例えば、アノード)における水の酸化(2H
2O→O
2+4H
++4e
-)および第1の電極(例えば、カソード)における水の還元(2H
2O+2e
-→H
2+2OH
-)である。この反応は、第2の電極におけるpHが0であり、第1の電極におけるpHが14である場合、2Vとなる最小電圧を必要とする(
図5A~5Bを参照されたい)。ある特定の実施形態では、電極において生成した酸性溶液および塩基性溶液を個別に収集して貯蔵することができる。
【0171】
ある特定の実施形態では、燃料電池モードで行われる反応は、第2の電極(例えば、アノード)における水素の酸化(H
2→2H
++2e
-)および第1の電極(例えば、カソード)における酸素の還元(O
2+2H
2O+4e
-→4OH
-)とすることができる(例えば、HRR/ORR反応)。この反応は、エネルギーを生成する自発的な反応をもたらす(
図10A~10Bを参照されたい)。
【0172】
一部の実施形態では、本システムは、酸性溶液および塩基性溶液を生成する電気コストを効果的に裁定取引することができる:電気が安価である場合、本システムは、安価な電気エネルギーの一部を、物理的に貯蔵可能(H2およびO2ガスの形態で)な化学エネルギーへと変換される、電解モードで操作することによって電気をより多量に使用する。電気が高価な場合、本システムは、貯蔵した化学エネルギー(H2およびO2ガス)が、酸、塩基および電気を生成するために使用することができる燃料電池モードで操作することによって、より少ない電気しか使用しないことができる。一部の実施形態では、本システムは、酸および塩基の溶液を生成する電気コストを低減するように働く。一部の実施形態では、本システムは、価格または利用可能度の変動する電気を使用して、一定速度で酸性溶液および塩基性溶液を生成するよう働く。
【0173】
一部の実施形態では、化学的溶解および/または沈殿反応は、反応器内部で行われる。
【0174】
ある特定の実施形態によれば、反応器は、第1の電極と第2の電極との間に空間的に変化する化学組成勾配を含む。一部の実施形態では、空間的に変化する化学組成勾配は、空間的に変化するpH勾配を含む。例えば、
図2Bを参照すると、一部の場合、システム200は、第1の電極104の近傍にアルカリ性領域106および第2の電極105の近傍に酸性領域107を含む。したがって、システム200は、第1の電極と第2の電極との間に空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む。一部の実施形態では、第1の領域は酸性領域を含む。ある特定の実施形態では、第2の領域はアルカリ性領域を含む。他の実施形態では、第1の領域はアルカリ性領域を含み、第2の領域は酸性領域を含む。
【0175】
一部の実施形態では、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)が、電気分解によって、少なくとも一部が確立および/または維持されるよう構成されている。例えば、
図2Bを参照すると、ある特定の例では、システム200は、アルカリ性領域106および酸性領域107を備える空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を含む。一部のこのような実施形態では、この空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)は、電気分解によって確立および/または維持される。一部の実施形態によれば、中性電解質の電気分解は、第1の電極104および第2の電極105などの電極間に空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)を生じることができる。一部の実施形態では、電気分解反応を使用して、電気化学セルの正極と負極の間に、化学組成勾配を生じさせる。
【0176】
ある特定の実施形態によれば、電気分解により生じた化学組成勾配を使用して、一方の電極の近傍の化学環境に反応物を供給し、電気分解により生じる化学組成勾配を使用して、反応物またはその構成成分がもう一方の電極の方に拡散するにつれて、前記反応物からの生成物を生成することによって、所望の化学反応を行うことができる。
【0177】
一部の実施形態では、電気分解は加水分解を含む。本明細書で使用する場合、加水分解とは、水の電気分解を指す。例えば、一部の実施形態では、カソードにおいて起こる反応は、2つのH2O分子および2個の電子をH2および2つのOH-に変換する一方、アノードで起こる反応は、2つのH2O分子を4個の電子、O2および4つのプロトンに変換する。一部の実施形態では、第1の電極104の近傍での水酸化物イオンの生成は、第1の電極104の近傍で、アルカリ性pHを確立および/または維持して、アルカリ性領域106を確立および/または維持する一方、第2の電極105の近傍でのプロトンの生成は、第2の電極105の近傍において、酸性pHを確立し、酸性領域107を確立および/または維持する。したがって、ある特定の実施形態では、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)が、加水分解によって、少なくとも一部が確立および/または維持されるよう構成されている。
【0178】
ある特定の実施形態によれば、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)に連結された入口を備える。ある特定の実施形態では、電気化学用反応器および/または入口は、固体(例えば、CaCO3)を受け入れるよう構成されている。
【0179】
一部の実施形態では、反応器は、反応器の出口を備える。一部の実施形態では、反応器の出口は、Ca(OH)2(例えば、固体水酸化カルシウム)および/または石灰(CaO)を取り出すよう構成されている。一部の実施形態では、反応器は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に連結された出口を備える。ある特定の実施形態では、出口は、固体を反応器から抜き出すことができるよう構成されている。一部の実施形態では、反応器は、出口と連携されており、および反応器から固体を取り除くよう構成されている、固体取り扱い装置を備える。例えば、一部の実施形態では、固体取り扱い装置は、反応器から固体(固体の水酸化ニッケル、固体の水酸化カルシウムまたは固体の水酸化マグネシウムなどの固体の金属水酸化物)を除去するよう構成されている。固体取り扱い装置の例には、以下に限定されないが、コンベヤーベルト、オーガ、ポンプ、シュート、または反応器から固体を取り出して輸送することが可能な任意の他のデバイスが含まれる。一部の実施形態では、固体取り扱い装置は、流体流、濾過、沈殿、遠心力、電気泳動、誘電泳動または磁気分離のうちの1つまたは組合せを使用して、固体と液体とを分離する。
【0180】
一部の実施形態では、反応器は、1つより多い反応器出口(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、5つ未満もしくは5つに等しい、4つ未満もしくは4つに等しい、3つ未満もしくは3つに等しい、または2つ未満もしくは2つに等しい;これらの範囲の組合せもまた可能である)を備える。ある特定の実施形態では、反応器は、第2の出口を備える。
【0181】
ある特定の実施形態では、第2の出口は、気体(CO2、O2および/またはH2など)を取り出すよう構成されている。一部の例では、CO2は隔離されることになる、液体燃料で使用されることになる、オキシ燃料で使用されることになる、原油増進回収に使用されることになる、ドライアイスを生産するために使用されることになる、および/または飲料における成分として使用されることになる。一部の実施形態では、O2は、隔離されることになる、オキシ燃料として使用されることになる、CCS用途に使用されることになる、および/または原油増進回収に使用されることになる。ある特定の場合、H2は、隔離されることになる、および/または燃料(例えば、燃料電池においておよび/またはシステムを加熱するため)として使用されることになる。一部の実施形態では、本システムから取り出される少なくとも一部(例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%またはすべて)のCO2、O2および/またはH2が、窯に供給される。
【0182】
一部の実施形態では、反応器は、第3の出口および/または第4の出口を備える。一部の場合、第2の出口、第3の出口および/または第4の出口は、CO2、O2および/またはH2を取り出すよう構成されている。例えば、一部の場合、第2の出口は、CO2およびO2を取り出すよう構成されている一方、第3の出口は、H2を取り出すよう構成されている。ある特定の例では、第2の出口は、CO2を取り出すよう構成されており、第3の出口は、O2を取り出すよう構成されており、第4の出口は、H2を取り出すよう構成されている。
【0183】
一部の実施形態によれば、反応器は、第1の電極と第2の電極との間に、イオンに対して選択的透過性の1つまたはこれより多くの膜をさらに備える。ある特定の実施形態では、イオンに対して選択的透過性である1つまたはこれより多くの膜は、イオンに対して選択的透過性の2つの膜を含む。ある特定の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の2つの膜は、互いに異なる。
【0184】
一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の1つまたはこれより多くの膜は、第1の電極上に固体が析出するのを防止するよう、固体が第1の電極を不動態化するのを防止するよう、および/または異なる2種の固体が互いに混入するのを防止するよう構成されている。ある特定の実施形態によれば、イオンに対して選択的透過性の膜により、固体の通過を制限する(またはなくす)と同時に、イオンの通過が可能になる。例えば、一部の実施形態では、金属イオン(例えば、Ca2+)は通過することができる一方、固体の金属塩(例えば、固体CaCO3などの固体の金属炭酸塩)または沈殿物(例えば、固体Ca(OH)2などの固体金属水酸化物)は、制限される(または、全く通過しない)。
【0185】
一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、イオンの通過が可能になるが、非イオン性化合物の通過を制限する(またはなくす)。ある特定の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、イオンは、第1の速度で通過することが可能になり、非イオン性化合物は、第1の速度よりも遅い第2の速度で通過することが可能になる。一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、あるイオンの通過が可能になるが、他のイオンの通過が制限される(またはなくなる)。ある特定の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、あるイオンは、第1の速度で通過することが可能になり、他のイオンは、第1の速度よりも遅い第2の速度で通過することが可能になる。一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の膜により、ある金属イオンの通過が可能になり得るが、他の通過が制限される(またはなくなる)(または、ある金属イオンは、他よりも速く通過することが可能となる)、H+の通過が可能になり得るが、OH-の通過が制限される(またはなくなる)(または、H+は、OH-よりも速く通過することが可能となる)、OH-の通過が可能になり得るが、H+の通過が制限される(またはなくなる)(または、OH-は、H+よりも速く通過することが可能となる)、金属イオンの通過が可能になり得るが、H+および/またはOH-の通過が制限される(またはなくなる)(または、金属イオンは、H+および/またはOH-よりも速く通過することが可能となる)、および/またはH+および/またはOH-イオンの通過が可能になり得るが、金属イオンの通過が制限される(またはなくなる)(または、H+および/またはOH-イオンは、金属イオンよりも速く通過することが可能である)。
【0186】
例えば、一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性である膜は、OH-イオンに対して透過性であるが、Ca2+イオンに対する透過性は相対的に低い。一方、イオンに対して選択的透過性である膜は、Ca2+イオンに対して透過性であるが、OH-イオンに対して透過性は相対的に低い。この例では、第1の領域(例えば、酸性領域)からのCa2+は、イオンに対して選択的透過性である膜を通って分離チャンバへ拡散することができるが、イオンに対して選択的透過性である膜を通って第2の領域(例えば、アルカリ性領域)へ拡散することができない。さらに、この例では、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)からのOH-イオンは、イオンに対して選択的透過性である膜を通って分離チャンバへ拡散することができるが、イオンに対して選択的透過性である膜を通って拡散することができない。したがって、この例では、Ca2+およびOH-は、分離チャンバにおいて、反応して固体のCa(OH)2を形成し、固体のCa(OH)2がカソードまたはアノードの表面に形成するのを防止することしかできないと思われる。したがって、一部の実施形態では、イオンに対して選択的透過性の1つまたはこれより多くの膜は、固体(例えば、固体のCa(OH)2などの固体の金属水酸化物)が、第1の電極(例えば、カソード)に析出するのを防止することができる、固体(例えば、固体のCa(OH)2などの固体の金属水酸化物)が、第1の電極(例えば、カソード)を不動態化するのを防止することができる、および/または2種の異なる固体、すなわち化学化合物(例えば、固体の炭酸カルシウムなどの固体の金属炭酸塩などの金属塩)および沈殿物(例えば、固体のCa(OH)2などの固体の金属水酸化物などの固体の水酸化物)が互いに混入するのを防止することができる。
【0187】
ある特定の実施形態では、反応器は、電気化学的手段および化学的手段により、焼成もしくは分解した無機塩または金属塩(例えば、金属炭酸塩)の生産を対象とする。一部の実施形態では、無機塩または金属塩を加熱してこれらを分解することを含む、従来的な熱焼成の代わりにこのような反応器を使用することにより、熱エネルギーの生成のための化石燃料の使用、ならびにそれに伴う温室効果ガス(例えば、CO2)または大気汚染物質であるガスの生成が、低減または回避される。
【0188】
ある特定の態様は、セメントを生産するためのシステムに関する。一部の実施形態では、本システムは、反応器を備える。ある特定の実施形態では、反応器は、上もしくは本明細書のいずれかで開示されている反応器の実施形態のいずれか、またはそれらの組合せを含む。
【0189】
ある特定の実施形態では、本システム(例えば、本明細書に記載されている任意のシステム)は窯を備える。例えば、
図1Fを参照すると、一部の実施形態では、本システムは、電気化学用反応器および窯150を備える。同様に、
図2Dを参照すると、ある特定の実施形態では、本システムは、電気化学用反応器および窯150を備える。一部の実施形態では、窯は、窯の入口を備える。一部の実施形態によれば、窯は、反応器および/または装置(例えば、酸および/または塩基を沈殿反応で反応させるよう構成されている装置)に直接、取り付けられている。窯(例えば、本明細書に記載されている任意の窯)が、本明細書に記載されている任意のシステムに使用され得る。
【0190】
一部の実施形態によれば、窯は、反応器、反応器の出口および/または1つもしくはこれより多くの装置より下流に存在する。ある特定の実施形態によれば、本システムは、反応器、反応器の出口および/または1つもしくはこれより多くの装置、および窯の入口の間にヒータをさらに備える。ヒータの例には、その内部に置かれた物質を加熱する、または脱水するデバイスを含む。一部の実施形態では、反応器の出口は、窯の入口に直接、取り付けられている。
【0191】
本明細書で使用する場合、第1のユニットおよび第2のユニットが、互いに連結されており、第1の単位から第2の単位に輸送された時に、両ユニット間で移送される材料の組成物が、実質的に変化しない場合(すなわち、構成成分の相対存在量が、5%を超えて変化しない)、それらのユニット間に直接的な取り付けが存在する(および、2つのユニットが、互いに「直接、取り付けられている」と述べられる)。例示的な例として、第1のユニットおよび第2のユニットを連結している導管であって、導管の内容物の圧力および温度が調節されるが、その内容物の組成は変わらない導管は、第1のユニットおよび第2のユニットを直接、取り付けていると言う。一方、分離工程が行われる、および/または第1のユニットから第2のユニットへの流れる間に導管の内容物の組成を実質的に変化させる化学反応が行われる場合、この導管は、第1のユニットと第2のユニットを直接、連結しているとは言わない。一部の実施形態では、互いに直接取り付けられている2つのユニットは、第1のユニットから第2のユニットまで輸送されると、物質の相変化が存在しないよう構成されている。
【0192】
ある特定の実施形態では、窯の入口は、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部に由来する固体の酸化カルシウムの少なくとも一部を受け入れるよう構成されている。例えば、一部の実施形態では、水酸化カルシウムは、反応器、反応器出口および/またはより多くの装置から収集され、反応器、反応器出口および/またはより多くの装置は、窯の入口に直接、取り付けられており、こうして、窯の入口は、固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部を受け入れるよう構成されている。ある特定の実施形態では、水酸化カルシウムは、反応器、反応器出口および/またはより多くの装置から収集され、ヒータに輸送される。一部の実施形態では、ヒータ103は、水酸化カルシウムを、完全にまたは一部、酸化カルシウムに変換する。一部の実施形態では、窯の入口は、ヒータから、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の水酸化カルシウムの少なくとも一部に由来する固体の酸化カルシウムの少なくとも一部を受け入れるよう構成されている。
【0193】
一部の実施形態によれば、セメント製造プロセスの一部として、窯は、Ca(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応生成物を加熱するよう構成されている。一部の実施形態では、セメント製造プロセスの一部としての、Ca(OH)2および/または石灰を加熱するステップは、窯中でのCa(OH)2および/または石灰と他の化合物とを加熱するステップを含む。例えば、Ca(OH)2および/または石灰は、窯中で、SiO2または他の鉱物と共に加熱され得る。
【0194】
ある特定の場合、本システムは、電気化学反応器の代わりとなる、従来的な熱焼成を使用する実質的に類似のシステムよりも、正味の炭素排出量はより少ない(例えば、少なくとも10%少ない、少なくとも25%少ない、少なくとも50%少ない、少なくとも75%少ない、または少なくとも90%少ない)。一部の例では、本システムは、正味ゼロの炭素排出量を有する。
【0195】
ある特定の態様は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)において、沈殿物を形成する方法に関する。一部の実施形態によれば、本方法は、上もしくは本明細書のいずれかで開示されている実施形態のいずれかと関係付けて記載されている反応器および/またはシステム、またはそれらの組合せにおいて行われる。
【0196】
一部の実施形態によれば、本方法は、化学化合物(例えば、金属塩)を、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第1の領域(例えば、酸性領域)に輸送するステップを含む。ある特定の実施形態では、金属塩は、金属炭酸塩を含む。一部の実施形態によれば、金属炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび/または炭酸ニッケルを含む。例えば、一部の実施形態によれば、本方法は、炭酸カルシウムを、空間的に変化するpH勾配の第1の領域(例えば、酸性領域)に輸送するステップを含む。
【0197】
ある特定の実施形態によれば、化学化合物(例えば、金属塩)は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内の液体に溶解する、および/またはこの中で反応する。液体の非限定例としては、非水溶液または水溶液が含まれる。非水溶液の例には、非水性溶媒および電解質塩を含む溶液、および/またはイオン性液体を含む溶液を含む。水溶液の例は、水および電解質塩を含む溶液を含む。電解質塩の例には、NaSO4およびNaClO4が含まれる。一部の実施形態では、化学化合物(例えば、金属塩)は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内の液体に溶解して反応する。例えば、一部の実施形態では、炭酸カルシウムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内の液体に溶解する、および/またはこの中で反応する。一部の実施形態では、炭酸カルシウムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内の液体に溶解して反応する。例えば、化学化合物(例えば、金属塩)(例えば、炭酸カルシウム)は、第1の領域(例えば、酸性領域)に添加され、化学化合物(例えば、金属塩)(例えば、炭酸カルシウム)は、化学化合物(例えば、金属塩)(例えば、炭酸カルシウム)が溶解して、金属などの1つまたはこれより多くの元素を形成する(例えば、Ca2+およびHCO3
-またはCa2+およびH2CO3を形成する)よう、第1の領域(例えば、酸性領域)におけるプロトンと反応する。一部の実施形態では、1つまたはこれより多くの元素(例えば、Ca2+などの金属)は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に移動し、ここで、この元素は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)における水酸化物イオンと反応して、沈殿物(例えば、Ca(OH)2などの金属沈殿物)を形成する。
【0198】
一部の実施形態では、第1の領域は、酸性領域を含む。ある特定の実施形態では、第2の領域はアルカリ性領域を含む。一部の実施形態によれば、化学化合物(例えば、金属塩)は、酸性領域に溶解し、1つまたはこれより多くの元素(例えば、Ca2+などの金属)は、アルカリ性領域で反応する。他の実施形態では、第1の領域は、アルカリ性領域を含む。一部の実施形態では、第2の領域は、酸性領域を含む。ある特定の実施形態によれば、化学化合物(例えば、金属塩)は、アルカリ性領域に溶解し、1つまたはこれより多くの元素(例えば、Ca2+などの金属)は、酸性領域で反応する。
【0199】
一部の実施形態によれば、本方法は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)の第2の領域(例えば、アルカリ性領域)から沈殿物を収集するステップを含む。ある特定の実施形態では、沈殿物は、金属水酸化物などの金属沈殿物を含む。金属水酸化物の非限定例には、水酸化ニッケル、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムが含まれる。例えば、上で示されている例では、1つまたはこれより多くの元素(例えば、Ca2+などの金属)は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に移動し、ここで、この元素は、第2の領域(例えば、アルカリ性領域)において水酸化物イオンと反応して、沈殿物(例えば、Ca(OH)2などの金属沈殿物)を形成する。したがって、一部の実施形態では、本方法は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)のアルカリ性領域から固体の水酸化カルシウムを収集するステップを含む。1つまたはこれより多くの元素(例えば、金属)が第2の領域(例えば、アルカリ性領域)に移動することができる方法の非限定例は、拡散、対流による輸送、および/または流れによる輸送を含む。
【0200】
ある特定の実施形態によれば、沈殿物は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内に溶解および/またはこの中で反応した化学化合物(例えば、金属塩)に由来する1つまたはこれより多くの元素(例えば、金属)を含む。一部の実施形態では、1つまたはこれより多くの元素は、金属元素を含む。金属は、本明細書で使用される場合、金属それ自体(metallic metal)または金属イオンを指す。一部の実施形態では、沈殿物は、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内で溶解したおよび/またはここで反応した金属塩に由来する金属カチオンを含み、この金属カチオンが沈殿物内のアニオンにイオン結合する。例えば、ある特定の実施形態では、固体の水酸化カルシウムは、空間的に変化する化学組成勾配(例えば、空間的に変化するpH勾配)内で溶解した、および/または反応した炭酸カルシウムに由来するカルシウムを含む。
【0201】
ある特定の実施形態によれば、本方法はセメントを製造する方法である。
【0202】
ある特定の実施形態によれば、本方法は、Ca(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物を窯内で加熱してセメントを製造するステップを含む。一部の実施形態では、これは、反応器から水酸化カルシウムを取り出し、窯に直接入れるステップを含む。代替的に、ある特定の実施形態では、水酸化カルシウムを収集するステップと窯内で加熱するステップとの間にステップが存在する。一部の実施形態では、ヒータは、水酸化カルシウムをその酸化カルシウムへと変換し、次に、水酸化カルシウムおよび/または酸化物である酸化カルシウムが、窯内で加熱される。一部の実施形態では、ヒータは、水酸化カルシウムをその酸化カルシウムへと100%(重量基準)変換し、酸化カルシウムだけが、窯内で加熱される。他の実施形態では、ヒータは、水酸化カルシウムから酸化カルシウムへと、10%もしくは10%より高く、20%もしくは20%より高く、30%もしくは30%より高く、40%もしくは40%より高く、50%もしくは50%より高く、最大で90%まで、最大で95%まで、または最大で99%まで変換する。これらの範囲の組合せもまた可能である(例えば、10%~100%(重量基準)(端点を含む))。一部の実施形態では、水酸化カルシウムと酸化カルシウムの両方が、窯内で加熱される。ヒータの例は、その内部に置かれた物質を加熱または脱水するデバイスを含む。
【0203】
一部の実施形態では、窯内でCa(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物を加熱してセメントを製造するステップは、窯内でCa(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物を他の化合物と加熱するステップを含む。例えば、Ca(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物は、窯中で、SiO2または他の鉱物と共に加熱され得る。
【0204】
ある特定の実施形態では、セメントを製造する前に、Ca(OH)2(例えば、固体の水酸化カルシウム)および/もしくは石灰(例えば、固体の酸化カルシウム)ならびに/またはそれらの反応物生成物を窯内で加熱するステップの後に次のステップが存在する。例えば、ある特定の実施形態では、窯の後に冷却ステップが存在する。
【0205】
一部の実施形態によれば、本方法は、バッチプロセスの部分である。ある特定の実施形態では、沈殿物(例えば、Ca(OH)2などの金属水酸化物)は、反応器から定期的に収集される。ある特定の実施形態によれば、この方法は連続的に行われる。一部の実施形態では、化学化合物(例えば、CaCO3などの金属炭酸塩などの金属塩)は、アノードおよび/または第1の領域(例えば、酸性領域)において、連続的にまたは定期的に添加される。ある特定の実施形態では、沈殿物(例えば、Ca(OH)2などの金属水酸化物)は、連続的にまたは定期的に収集される。沈殿物(例えば、Ca(OH)2などの金属水酸化物)を収集するステップの非限定例は、沈殿物を流れストリームにより収集するステップ、および/または沈殿物が連続的にまたは定期的に収集される表面への堆積を可能にするステップを含む。
【0206】
一部の実施形態によれば、本方法は、沈殿物とは異なる副生成物を生成する。例えば、一部の実施形態では、本方法は、固体の水酸化カルシウムおよび/または固体の酸化カルシウムとは異なる副生成物を生成する。一部の実施形態では、副生成物は、CO2、O2および/またはH2を含む。例えば、一部の実施形態では、加水分解は反応器において行われ、カソードにおいて起こる反応は、2つのH2O分子および2個の電子をH2(g)および2つのOH-に変換する一方、アノードで起こる反応は、2つのH2O分子をO2(g)、4個の電子および4つのプロトンに変換する。ある特定の実施形態では、化学化合物(例えば、金属塩)(例えば、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩)は、第1の領域(例えば、酸性領域)に加えられ、化学化合物(例えば、金属塩)(例えば、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩)は、第1の領域(例えば、酸性領域)におけるプロトンと反応し、こうして化学化合物(例えば、金属塩)(例えば、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩)が溶解して、1つまたはこれより多くの元素(例えば、金属)が形成する。一部の実施形態では、CaCO3と2つのプロトンとの間の正味の反応は、H2O、Ca2+およびCO2(g)の形成をもたらす。
【0207】
ある特定の実施形態によれば、本方法は、副生成物を収集するステップをさらに含む。例えば、一部の実施形態では、副生成物は、CO2、O2およびH2を含む。ある特定の実施形態では、副生成物を収集するステップは、CO2、O2およびH2のそれぞれを収集するステップ:CO2だけを収集するステップ;O2だけを収集するステップ;H2だけを収集するステップ;CO2およびO2を収集するステップ;CO2およびH2を収集するステップ;またはO2およびH2を収集するステップを含む。例えば、ある特定の実施形態では、副生成物はCO2を含み、副生成物を回収するステップは、CO2を隔離するステップを含む。
【0208】
一部の実施形態によれば、副生成物は燃料として使用される。一部の実施形態では、H2は燃料として使用することができる。非限定例には、H2を直接、燃焼させること、またはH2を天然ガスなどの燃料と共に使用することを含む。一部の実施形態では、O2およびCO2を使用して、化石燃料などの燃料の燃焼を支持する。一部の実施形態では、副生成物は、窯用の燃料として使用される。例えば、一部の実施形態では、O2およびCO2は窯に供給されて、化石燃料などの燃料の燃焼を支持する。ある特定の実施形態では、H2、O2およびCO2は、固体酸化物の燃料電池などの燃料電池中で反応させる。ある特定の実施形態では、H2およびO2は、燃料電池中で反応させて、電力を発生させる。
【0209】
一部の実施形態によれば、本明細書に記載されている反応器、システムおよび方法は、1つまたはこれより多くの有益な特性を示し、1つまたはこれより多くの用途を有する。例えば、本明細書に記載されている反応器、システムおよび方法の一部の実施形態は、セメント(例えば、ポルトランドセメント)を生産するために使用することができる。例えば、一部の実施形態では、反応器は、従来のセメント製造プロセスにおける焼成の代わりに使用される。
【0210】
さらに、本明細書に記載されている反応器、システムおよび方法のある特定の実施形態は、大気汚染物質またはCO2などの温室効果ガスの生成が従来のセメント生産プロセスよりも少ない、セメント生産に使用することができる。従来のセメント生産プロセスは、熱的手段によるCaCO3の焼成を含んでおり、これは、CO2排出量の約60%を占める一方、CO2排出量の約40%は、焼成プロセスおよび焼結プロセスを行うために化石燃料を燃焼することに起因する。
【0211】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法、反応器および/またはシステムにより生産されるCa(OH)2は、CaCO3からCaOへの従来の焼成の代わりに、セメント製造のためのCaOを生産するために使用することができる。Ca(OH)2のCaOへの熱的脱水は、CaCO3のCaOへの熱焼成(97.0kJ/mol)よりも、25%低い最低エネルギーの必要量(71.2kJ/mol)を有する。
【0212】
ある特定の実施形態によれば、反応器および/またはシステムは、再生可能電気(例えば、太陽エネルギー、風力エネルギーおよび/または水力発電)によって、一部または全体が、電力供給される。
【0213】
ある特定の実施形態によれば、オキシ燃焼、窯効率の改善、NOx排出量の低減、および/または炭素回収および隔離(CCS)に好適な煙道ガスを含めた、多数の使用可能性を有する、CO2、H2および/またはO2などの副生成物が生成する。したがって、一部の実施形態では、副生成物は、販売または使用され得る。
【0214】
一実施形態では、電気分解により推進される化学反応器は、水の電気分解のための電気分解セルを備える。一部の実施形態では、このようなセルは、電気分解を行うと、カソードにおいて高いpHを生じ、ここで水素発生反応(HER)が起こり、OH-が生成し、アノードにおいて低いpHを生じ、ここで酸素発生反応(OER)が起こり、H+を生成する。したがって、ある特定の実施形態によれば、pHの勾配が、カソードとアノードとの間に発生する。このような他の電気分解用セルにおいて、他の化学種の勾配が、電気分解反応の性質に応じて発生し得る。
【0215】
一実施形態では、前記pH勾配を使用して、アノードの近傍の低いpHで金属炭酸塩を溶解し、カソードにおけるより高いpH環境の方向に金属イオンが拡散するにつれて、金属水酸化物が沈殿する。一部のこのような実施形態では、金属炭酸塩がアノード近傍で溶解するにつれて、CO2ガスが生成して、炭酸塩の金属カチオンが溶液中で生成する。次に、一部のこのような実施形態によれば、これらは拡散するか、または対流もしくは流れによって、カソードにおけるHERによって発生した高いpH環境の方向に、必要に応じて輸送される。一部の実施形態によれば、金属イオンとカソードにおいて生成したOH-イオンとの反応は、金属水酸化物の沈殿をもたらす。一部の実施形態によれば、各電極において起こる電気化学反応および化学反応、ならびに総合的な反応。大部分の任意の金属炭酸塩または金属炭酸塩の混合物は、このようなプロセスにより、その水酸化物(単数または複数)に変換され得、金属炭酸塩の非限定例は、CaCO3、MgCO3およびNiCO3を含む。一部のこのような実施形態では、開始金属炭酸塩からの金属水酸化物の生成と同時に、水素ガスがカソードにおいて遊離し、酸素ガスと二酸化炭素ガスとの混合物が、アノードで遊離する。
【0216】
1つまたはこれより多くの実施形態では、反応器は、バッチで稼働され、これにより、生成物である金属水酸化物が定期的に収集される。1つまたはこれより多くの実施形態では、反応器は、追加の金属炭酸塩が、アノードにおいて連続的にまたは定期的に添加され、沈殿した金属水酸化物が、この反応ゾーンから連続的にまたは定期的に取り除かれるような連続法で稼働される。例えば、沈殿した金属水酸化物は、流れストリームを使用して反応ゾーンから取り除かれて、収集されてもよく、または沈殿物は、反応器が連続的に稼働している間に連続的にまたは定期的に取り除かれる表面に堆積することが可能となり得る。
【0217】
一部の実施形態では、電気化学反応器によって生成する水素ガスおよび/または酸素ガスは、有利なことに、使用または販売される。一部の実施形態では、水素および酸素は、燃料電池中で反応させて、電力を発生させる。一部の実施形態では、水素は、反応器または窯または炉を加熱する目的で、燃料としてまたは燃料の構成成分として燃焼される。
【0218】
一部の実施形態では、前記電気分解により推進される化学反応器を実施するための電力は、以下に限定されないが、太陽エネルギー、風力エネルギーまたは水力発電を含めた、再生可能資源から発生される。
【0219】
一実施形態では、前記電気化学により推進される化学反応器を使用して、CaCO3を脱炭酸化し、ポルトランドセメントを含めた、セメント生産の前駆体としてCa(OH)2を生成する。両者の総エネルギー消費量を比較し、消費されるエネルギーおよびその炭素強度の形態を考慮することが有用である。単純にするため、CaOをアルミノシリケートおよび他の構成成分と反応させて、ポルトランドセメントを形成させる高温での加熱処理は、2つのプロセスで同一であると仮定する。CaCO3の熱焼成により生成するCaOを導くためのエネルギー消費量、および電気化学による脱炭酸とその後の900Cという同じ開始温度までのCa(OH)2の熱的脱水によるエネルギー消費量を考察する。反応物または生成物を所与の温度まで加熱するために投入されるモルあたりのエネルギーは、その熱容量から算出する。分解反応を行うためのモルあたりのエネルギーは、反応の標準自由エネルギーとして与えられる(すなわち、ガス分圧は、1atmである)。
【0220】
この例では、CaCO3の熱焼成の場合の1モルあたりのエネルギーと、Ca(OH)2の熱的脱水の場合の1モルあたりのエネルギーとを比較すると、後者は、97.0kJ/モルに対して72.1kJ/モルという25%少ない最小エネルギー必要量を有する。この例では、電気化学的プロセスは、74.3kJ/モルという標準自由エネルギーで、CaCO3がCa(OH)2に変換される脱炭酸反応をやはり含む。これは、電気化学的プロセスの場合、追加的なエネルギー消費となる。しかし、この例示的なプロセスおよび電気分解反応は、ほぼゼロとなる電気の限界コストで、低炭素またはゼロ炭素再生可能資源に由来する電気によって電力供給され得る。
【0221】
この例示的なプロセスでは、反応器を稼働させるために必要な電気分解反応は、237.1kJ/モルを必要とする。しかし、このエネルギーは、やはり低炭素源によって最初に発生されて、次に付加価値製品として離れて使用することができるか、または例えば、燃料電池を使用して電源を供給することによって、セメント生産プロセスに電力供給するために使用することができるか、または燃焼プロセスにより反応熱を供給する水素および酸素を生じる。発生したエネルギーを使用して、電解槽を稼働するか、または高温窯を加熱することができる。
【0222】
一部の実施形態では、本明細書で(例えば、沈殿反応から)生成される、消石灰としても知られている水酸化カルシウム、および/または水と反応して消石灰を生成する酸化カルシウムは、以下に限定されないが、製紙、煙道ガス処理炭素回収、しっくいミックスと石工(ポゾランセメントを含む)、土壌安定化、pH調節、水処理、廃棄物処理および製糖を含めた、用途に使用され得る。以下は、水酸化カルシウム(消石灰としても知られている)および/または酸化カルシウム(石灰としても知られている)の使用の非限定例である。
【0223】
1.冶金用途
【0224】
a)鉄系金属
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、鉄および/または鋼の製造に使用される。例えば、鉄および/または鋼の製造では、石灰をフラックスとして使用し、鉄および/または鋼が酸化するのを防止するスラグを形成し、シリカ、ホスフェート、マンガンおよび硫黄などの不純物を除去することができる。一部の場合、消石灰(乾燥体、またはスラリーとして)は、鉄および/または鋼の製造時にダイからワイヤまたはロッドを引き抜くための潤滑体として、付着を防止するためのキャスト成形用金型へのコーティング剤として、および/または腐食を防止するための鋼製品へのコーティング剤として使用される。一部の例では、石灰または消石灰は、酸性廃棄物を中和するためにも使用される。
【0225】
b)非鉄金属
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、以下に限定されないが、銅、水銀、銀、金、亜鉛、ニッケル、鉛、アルミニウム、ウラン、マグネシウムおよび/またはカルシウムを含めた、非鉄金属の製造に使用される。石灰は、一部の場合、融剤として使用されて、鉱石に由来する不純物(シリカ、アルミナ、ホスフェート、カーボネート、硫黄、サルフェート)を除去することができる。例えば、石灰および消石灰は、非鉄鉱石の浮選または回収に使用することができる。ある特定の場合、石灰は、沈殿助剤として作用し、適切なアルカリ性を維持し、および/または不純物(硫黄および/またはケイ素など)を除去する。一部の例では、銅、亜鉛、鉛および/または他の非鉄鉱石の溶練および精錬では、硫黄ガスを中和するため、および/または硫酸の形成を予防するために消石灰が使用される。ある特定の例では、石灰および/または消石灰はまた、金属表面へのコーティング剤として、硫黄化学種との反応を防止するために使用される。ある特定の場合、アルミニウムの生産では、石灰および/または消石灰は、ボーキサイト鉱石から不純物(シリカおよび/またはカーボネートなど)を除去するために使用される、および/またはpHを調節するために使用される。一部の例では、石灰は、シアン化物の抽出において、金、銀および/またはニッケルを溶出するためのアルカリ性pHを維持するために使用される。亜鉛の生産では、石灰は、ある特定の場合、還元剤として使用される。一部の場合、カルシウム金属および/またはマグネシウム金属の生産では、酸化マグネシウムおよび/または酸化カルシウムは、高温で還元されて、マグネシウム金属および/またはカルシウム金属を形成する。
【0226】
2.建築
【0227】
a)石工(ポルトランドセメント以外)
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、石工モルタル、しっくい、スタッコ、水しっくい、グラウト、レンガ、ボードおよび/または非ポルトランドセメントの製造に使用される。これらの用途では、ある特定の実施形態では、石灰および/または消石灰は、他の添加物と混合されて、二酸化炭素に曝露され、炭酸カルシウムを生産することができ、石灰および/または消石灰は、他の添加物(アルミノシリケートなど)と反応させて、セメント系材料を形成することができる、ならびに/または石灰および/もしくは消石灰はカルシウム源として使用することができる。モルタル、しっくい、スタッコおよび水しっくいの例では、一部の場合、石灰および/または消石灰は、添加物および/または凝集物(砂など)と混合されて、水が蒸発すると、ならびに石灰および/または消石灰が大気の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを形成すると硬化するペースト/スラリーを形成する。水硬性ポゾランセメントの場合、ある特定の場合、石灰および/または消石灰は、アルミネート、シリケートおよび/または他のポゾラン系材料(例えば、粉燃料灰、火山灰、高炉スラグおよび/または焼成粘土)と反応させて、不溶性カルシウムアルミノシリケートが形成されると硬化する水をベースとするペースト/スラリーを形成する。他の水硬性セメントの場合、一部の例では、石灰および/または消石灰は、ケイ酸二カルシウム、アルミン酸カルシウム、ケイ酸三カルシウムおよび/またはケイ酸一カルシウムを含めた、セメント系化合物が形成されるよう、シリカ源、アルミナ源および/または他の添加物と高温で反応させる。一部の場合、灰砂レンガは、消石灰をシリカ源(例えば、砂、粉砕珪質石および/またはフリント)および/または他の添加物を、ケイ酸カルシウムおよび/またはケイ酸カルシウム水和物を形成するために必要な温度で反応させることによって製造される。一部の場合、軽量コンクリート(例えば、エアクリート)は、石灰および/または消石灰を、反応性シリカ、アルミニウム粉末、水および/または他の添加物と反応させることにより製造される。消石灰とシリケート/アルミネートとの間の反応は、ケイ酸カルシウム/アルミン酸カルシウムおよび/またはケイ酸カルシウム水和物の形成を引き起こす一方、水、消石灰およびアルミニウムとの間の反応は、硬化ペースト内に水素気泡を形成させる。水しっくいは、消石灰の懸濁液から製造される白色コーティング剤であり、これは、消石灰が大気からの二酸化炭素と反応するにつれて、硬化して固まる。一部の場合、ケイ酸カルシウム形成材料(例えば、石灰、消石灰、シリカおよび/またはセメント)および添加物(例えば、セルロース繊維および/または難燃剤)および水が一緒に混合されて、形状にキャストまたは圧縮されると、ケイ酸カルシウム板、コンクリートおよび他のキャストしたケイ酸カルシウム製品が形成される。一部の場合、高温を使用して、石灰、消石灰および/もしくはシリカを反応させる、ならびに/またはセメントを水和させる。
【0228】
b)土壌安定化
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、土壌を安定化するため、硬化するためおよび/または乾燥するために使用される。例えば、石灰および/または消石灰は、道路、滑走路および/または線路の建設前に、緩いまたは微粉砕した土壌に適用されてもよく、および/または土手および/もしくは斜面を安定化するために適用されてもよい。一部の場合、石灰が粘土土壌に適用される場合、ポゾラン反応が粘土と石灰との間に起こり、ケイ酸カルシウム水和物、および/またはアルミン酸カルシウム水和物を生産することができ、これらは、土壌を強化および/または硬化する。ある特定の例では、土壌に施用される石灰および/または消石灰はまた、二酸化炭素と反応して、固体の炭酸カルシウムを生成し、これはまた、土壌を強化および/または硬化することができる。一部の場合、石灰は水と容易に反応して、消石灰を形成するので、石灰はまた、建設現場における湿った土壌を乾燥するためにも使用することができる。
【0229】
c)アスファルト添加物およびアスファルトの再利用
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、アスファルトを製造するため、および/または再利用するために使用される。例えば、一部の場合、消石灰は、無機充填剤および/または抗酸化剤として、および/または水のストリッピングに対する耐性を向上させるためにホットミックスアスファルトに添加される。ある特定の場合、消石灰は、アルミノシリケートおよび/または二酸化炭素と反応して、アスファルトにおける結合剤と凝集物との間の結合を改善する固体生成物を作製することができる。無機充填剤として、一部の例では、石灰は、結合剤の粘度、アスファルトの剛性、アスファルトの引張強度および/またはアスファルトの圧縮強度を向上することができる。ある特定の例では、道路の水硬性結合剤として、石灰は、水分感度および/またはストリッピングを低下させて結合剤を硬化し、その結果、石灰は、ラッティング(rutting)に耐性を示す、ならびに/または低温での破壊に対する靭性および/もしくは耐性を改善することができる。一部の例では、再利用アスファルトに添加される石灰および/または消石灰は、一層大きな早期強度および/または水分損傷に対する耐性をもたらす。
【0230】
3.廃棄物処理、水処理、ガス処理
【0231】
a)ガス処理
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、酸性ガス(塩化水素、二酸化硫黄、三酸化硫黄および/またはフッ化水素など)の除去、および/またはガス混合物(例えば、煙道ガス、大気、保管室の空気、および/または潜水艦などの密閉呼吸環境中の空気)からの二酸化炭素の除去に使用される。例えば、一部の場合、石灰および/または消石灰は、煙道ガスに曝露され、石灰および/または消石灰と煙道ガス(塩化水素、二酸化硫黄および/または二酸化炭素を含む酸性ガスなど)の構成成分との反応を引き起こし、非ガス状カルシウム化合物(塩化カルシウム、亜硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムなど)の形成をもたらす。ある特定の実施形態では、ガスの消石灰への曝露は、消石灰の溶液および/またはスラリーをガスに噴霧することによって、および/またはガスストリームを乾燥石灰および/または消石灰と反応させることによって行われる。ある特定の実施形態では、酸性ガス(単数または複数)を含有するガスストリームは、最初に、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム)の溶液と反応させて、可溶性中間化学種(炭酸カリウムなど)を形成し、この化学種は、続いて、石灰および/または消石灰と反応させて、固体のカルシウム種(炭酸カルシウムなど)を生成して元のアルカリ金属水酸化物溶液を再生する。一部の実施形態では、石灰および/または消石灰と二酸化炭素またはアルカリ炭酸塩との反応から形成される炭酸カルシウムは、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法に戻され、その結果、石灰および/または消石灰は再生成することができる、および/または二酸化炭素は隔離され得る。
【0232】
b)非ガス状廃棄物処理
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、生物学的廃棄物、産業廃棄物、廃水および/またはスラッジなどの廃棄物を処理するために使用される。一部の場合、石灰および/または消石灰は廃棄物に適用されて、アルカリ性環境を造りだし、これは、酸性廃棄物を中和する、病原体を阻害する、ハエまたはげっ歯類を防ぐ、臭気を制御する、漏れを防止する、ならびに/または汚染物質(重金属、クロム、銅および/または懸濁固体/溶解固体など)および/もしくはスケーリングを引き起こす溶解イオン(カルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオン)を安定化するおよび/もしくは沈殿させるよう働く。ある特定の例では、石灰は、油性廃棄物を脱水するために使用されてもよい。一部の場合、消石灰は、ホスフェート、ニトレートおよび/または硫黄化合物などのある特定の化学種を沈殿させるため、ならびに/または漏出を予防するために使用されてもよい。ある特定の例では、石灰および/または消石灰は、加水分解に都合のよいアルカリ性条件を維持することによって、有機物質の分解を早めるために使用することができる。
【0233】
c)水処理
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、水を処理するために使用される。例えば、石灰および/または消石灰は、一部の場合、アルカリ性環境を生成するために使用することができ、これは、殺菌するよう、懸濁材料および/またはコロイド状材料を除去するよう、硬度を低下させるよう、pHを調節するよう、水硬度に寄与するイオンを沈殿させるよう、溶解金属(鉄、アルミニウム、マンガン、バリウム、カドミウム、クロム、鉛、銅および/またはニッケルなど)を沈殿させるよう、および/または他のイオン(フッ化物イオン、硫酸アニオン、亜硫酸アニオン、リン酸アニオンおよび/または硝酸アニオンなど)を沈殿させるよう働く。
【0234】
4.農業および食物
【0235】
- 農業
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は農業に使用される。例えば、石灰および/または消石灰は、一部の場合、単独で、または肥料中の添加物として使用されて、土壌および/または肥料混合物のpHを調節して最適生育条件をもたらす、および/または収穫量を改善することができる。
【0236】
- 糖
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、糖を精製するために使用される。例えば、一部の場合、石灰および/または消石灰は、生砂糖ジュースのpHを向上するため、生砂糖ジュースの酵素を破壊するため、ならびに/または無機化学種および/もしくは有機化学種と反応させて沈殿物を形成するために使用される。過剰のカルシウムは、ある特定の例では、二酸化炭素を用いて沈殿させることができる。ある特定の場合、生じる沈降炭酸カルシウムは、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法に戻されて、消石灰を再生成することができる。
【0237】
- 革
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、革および/またはパーチメントを製造するために使用される。革製造プロセスでは、一部の場合、石灰は、皮膚から毛髪および/またはケラチンを除去する、ファイバを裂く、および/または脂肪を除去するために使用される。
【0238】
- 接着剤、ゼラチン
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、接着剤および/またはゼラチンを製造するために使用される。接着剤および/またはゼラチンの製造プロセスでは、一部の場合、動物の骨および/または皮膚は、消石灰に浸漬され、コラーゲンおよび他のタンパク質を加水分解し、様々な分子量のタンパク質断片の混合物を形成させる。
【0239】
- 乳製品
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、乳製品を生産するために使用される。一部の場合、消石灰は、低温殺菌の前に、クリームの酸性を中和するために使用される。ある特定の場合、消石灰は、カゼインの酸性溶液からカゼインカルシウムを沈殿させるために使用される。一部の例では、消石灰は、発酵済み脱脂粉乳に添加されて、乳酸カルシウムを生産する。
【0240】
- 果物産業
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、果物産業に使用される。例えば、消石灰および/または石灰は、一部の場合、果実の保管時に空気から二酸化炭素を除去するために使用される。一部の例では、消石灰は、廃棄物のクエン酸を中和するため、および果実液のpHを向上させるために使用される。
【0241】
- 殺虫剤/殺真菌剤
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、殺真菌剤および/または殺虫剤における添加物として使用される。例えば、消石灰は、硫酸銅と混合されて、殺有害生物剤である四銅硫酸塩を形成することができる。一部の場合、石灰はまた、その炭酸塩として葉面にフィルムを形成して、葉面に殺虫剤を保持するので、他の種類の殺有害生物剤の担体として使用することもできる。一部の例では、消石灰は、カキ養殖場における、ヒトデの侵襲防除に使用される。
【0242】
- 食品添加物
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、食品添加物として使用される。一部の場合、石灰および/または消石灰は、酸性度の調節剤として、酸洗剤として使用されて、セルロース(例えば、トウモロコシなどの穀粒から)を除去するため、および/またはブラインからある特定のアニオン(炭酸アニオンなど)を沈殿させることができる。
【0243】
5.化学品
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、化学品を製造するために使用される。例えば、石灰および/または消石灰は、数あるものの中でも、カルシウム源および/またはマグネシウム源、アルカリ、乾燥剤、苛性化剤、けん化剤、結合剤、凝集剤および/または沈殿剤、融剤、ガラス形成剤、有機物質の分解剤、滑沢剤、充填剤および/または加水分解剤として使用されてもよい。
【0244】
a)無機カルシウム化合物
【0245】
- 沈降炭酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、沈降炭酸カルシウムを製造するために使用される。一部の例では、消石灰の溶液および/もしくはスラリー、ならびに/またはカルシウムイオンの溶液を二酸化炭素および/またはアルカリ炭酸塩と反応させ、その結果、炭酸カルシウムおよび/および炭酸マグネシウムの沈殿物を形成させる。ある特定の例では、沈殿した炭酸アルカリ金属塩は、充填剤として使用され、収縮を軽減する、粘着性を改善する、密度を向上させる、レオロジーを改変する、および/またはプラスチック(PVCおよびラテックスなど)、ゴム、紙、ペンキ、インク、化粧品および/または他のコーティング剤を白くする/明るくすることができる。沈殿した炭酸塩は、一部の場合、難燃剤または粉剤として使用することができる。ある特定の場合、沈降炭酸カルシウムは、農業用アルカリ化剤として、防腐剤、小麦粉添加物、醸造添加物、消化補助剤、および/または瀝青製品用添加物、研磨剤(クリーナー、洗剤、磨き粉および/または歯磨き粉中)、殺有害生物剤中の分散剤、および/または乾燥剤として使用することができる。
【0246】
- 次亜塩素酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、塩素を石灰および/または消石灰と反応させることによって、次亜塩素酸カルシウム、漂白剤を製造するために使用される。
【0247】
- 炭化カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、高温で石灰を炭素物質(例えば、コークス)と反応させることによって、アセチレンの前駆体である炭化カルシウムを製造するために使用される。
【0248】
- リン酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、適切な比率でリン酸を消石灰および/または水性カルシウムイオンと反応させることによって、リン酸カルシウム(リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウムおよび/またはリン酸三カルシウム)を製造するために使用される。一部の場合、リン酸一カルシウムは、セルフライジングフラワー、ミネラル強化食品中の添加物として、ミルク製品の安定剤として、および/または飼料添加物として使用されてもよい。一部の例では、リン酸二カルシウム二水和物は、歯磨き粉中で、軽度の研磨剤として、食料品のミネラル強化のため、ペレット化助剤として、および/または増粘剤として使用される。ある特定の例では、リン酸三カルシウムは、歯磨き粉中で、ならびに/または食料品および/もしくは肥料中の固結防止剤として使用される。
【0249】
- 臭化カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、臭化カルシウムを製造するために使用される。これは、一部の場合、石灰および/または消石灰を臭化水素酸および/または臭素、ならびに還元剤(例えば、ギ酸および/またはホルムアルデヒド)と反応させることによって行われる。
【0250】
- ヘキサシアノ鉄酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、塩化第一鉄の水溶液中、石灰および/または消石灰をシアン化水素と反応させることによって、ヘキサシアノ鉄酸カルシウムを製造するために使用される。次に、ヘキサシアノ鉄酸カルシウムは、アルカリ金属塩またはヘキサシアノ鉄酸塩に変換することができる。これらは、顔料および固結防止剤として使用される。
【0251】
- カルシウムシリコン
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、高温で石灰、石英および/または炭素系材料を反応させることによって、カルシウムシリコンを製造するために使用される。一部の場合、カルシウムシリコンは、脱酸素剤として、脱硫黄剤として、および/または鉄系金属における非金属含有物を改変するために使用される。
【0252】
- 二クロム酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、クロム酸塩鉱石を石灰と共に焙焼することによって、二クロム酸カルシウムを製造するために使用される。
【0253】
- タングステン酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、石灰および/または消石灰をタングステン酸ナトリウムと反応させることによって、レーザー、蛍光灯および/もしくはオシロスコープなどの物品のためのフェロタングステンおよび/またはリン光体の生産に使用される、タングステン酸カルシウムを製造するために使用される。
【0254】
b)有機カルシウム化合物
【0255】
- クエン酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、石灰および/または消石灰をクエン酸と反応させることによって、クエン酸カルシウムを製造するために使用される。一部の場合、クエン酸カルシウムは、硫酸と反応させて、純粋なクエン酸を再生成することができる。
【0256】
- カルシウム石鹸
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、消石灰を脂肪族酸、ワックス酸、不飽和カルボン酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、エチルヘキサン酸)、ナフテン酸および/または樹脂酸と反応させることによって、カルシウム石鹸を製造するために使用される。一部の場合、カルシウム石鹸は、滑沢剤、安定剤、離型剤、防水剤、コーティング剤および/または印刷インク中の添加物として使用される。
【0257】
- 乳酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、消石灰を乳酸と反応させることによって、乳酸カルシウムを製造するために使用される。ある特定の例では、乳酸は、第2のステップにおいて、硫酸と反応させて、純粋な乳酸を生産することができる。一部の例では、これらの化学品は、凝固剤および発泡剤として作用する。一部の場合、乳酸カルシウムは、医薬剤および/もしくは食料品におけるカルシウム源として、ならびに/または緩衝剤として使用される。
【0258】
- 酒石酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、消石灰をアルカリ酒石酸水素塩と反応させることによって、酒石酸カルシウムを製造するために使用される。一部の場合、酒石酸水素カルシウムは、第2のステップにおいて、硫酸と反応させて、純粋な酒石酸を生産することができる。ある特定の例では、酒石酸は、食料品、医薬調製物において、ならびに/またはしっくいおよび/もしくは金属研磨剤における添加物として使用される。
【0259】
c)無機化学品
【0260】
- 酸化アルミニウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、酸化アルミニウムを製造するために使用される。石灰は、酸化アルミニウムの調製における、加工したボーキサイト鉱石から、不純物(例えば、シリケート、カーボネートおよび/またはホスフェート)を沈殿させるために使用される。
【0261】
- アルカリ炭酸塩および炭酸水素塩
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、アンモニア-ソーダ法における、アルカリ塩化物からアルカリ炭酸塩および/または炭酸水素塩を製造するために使用される。このプロセスでは、一部の場合、石灰および/または消石灰は、塩化アンモニウム(および/または塩化イソプロピルアンモニウムなどの塩化アンモニウム)と反応させて、アンモニア(および/またはアミン)とアルカリ塩化物との反応後に、アンモニア(および/またはイソプロピルアミンなどのアミン)を再生成させる。一部の場合、得られた塩化カルシウムは、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法からのアルカリ性ストリームと反応させて、消石灰を再生することができる。
【0262】
- 炭酸ストロンチウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、炭酸ストロンチウムを製造するために使用される。一部の例では、石灰および/または消石灰は、アンモニアを炭酸化して、硫酸ストロンチウムと反応させた後に形成される硫酸アンモニウムからアンモニアを再生成するために使用される。
【0263】
- ジルコン酸カルシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、ジルコン酸カルシウムを製造するために使用される。一部の場合、石灰および/または消石灰は、ジルコンであるZrSiO4と反応させて、ケイ酸カルシウムおよびジルコン酸カルシウムを生産し、ジルコン酸カルシウムをさらに精製する。
【0264】
- アルカリ水酸化物
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、苛性化または再苛性化と多くの場合に呼ばれるプロセスにおいて、アルカリ炭酸塩からアルカリ水酸化物を製造するために使用される。一部の場合、消石灰はアルカリ炭酸塩と反応させて、アルカリ水酸化物および炭酸カルシウムを生産する。アルカリ炭酸塩を苛性化するプロセスは、一部の例では、ボーキサイト鉱石の精製、炭酸油の処理およびクラフト液サイクル(この場合、炭酸ナトリウムを含む「緑液」が消石灰と反応して水酸化ナトリウムを含む「白液」を形成する)を含めた、他のいくつかのプロセスの特徴的なものである。
【0265】
- 水酸化マグネシウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、水酸化マグネシウムを製造するために使用される。一部の場合、マグネシウムイオン(例えば海水および/またはブライン溶液)を含む溶液に消石灰を添加すると、水酸化マグネシウムが溶液から沈殿する。
【0266】
d)有機化学品
【0267】
- アルケン酸化物
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、アルケン酸化物を作製するために使用される。一部の例では、石灰は、プロピレンクロロヒドリンおよび/またはブテンクロロヒドリンをけん化または脱塩化水素化し、対応する酸化物を生産するために使用される。次に、この酸化物は、一部の例では、酸加水分解によってグリコールに変換することができる。
【0268】
- ジアセトンアルコール
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、ジアセトンアルコールを製造するために使用される。一部の場合、消石灰は、アルカリ触媒として使用され、アセトンの自己縮合を促進し、ジアセトンアルコールを形成し、これは、樹脂の溶媒として、および/またはメシチルオキシド、メチルイソブチルケトンおよび/またはヘキシレングリコールの生成における中間体におけるものとして使用される。
【0269】
- ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリスリトール
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、塩基性触媒として、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステルおよび/またはペンタエリスリトールを作製するために使用される。
【0270】
- アントラキノン染料および中間体
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、アントラキノン染料および/または中間体の製造において、塩基性試薬として、スルホン酸基を水酸化物で置き換えるために使用される。
【0271】
- トリクロロエチレン
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、テトラクロロエタンから塩素を除去して、トリクロロエチレンを形成するために使用される。
【0272】
6.多岐にわたる用途
【0273】
- シリカ、炭化ケイ素およびジルコニア耐火物
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、シリカ、炭化ケイ素および/またはジルコニア耐火物の製造における、結合剤、接合剤および/または安定化剤として使用される。
【0274】
- 石灰グラス
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、ソーダ石灰ガラスの製造における、石灰源として使用される。一部の例では、石灰および/または消石灰は、シリカ、炭酸ナトリウム、ならびに/またはアルミナおよび/もしくは酸化マグネシウムなどの添加物を含めた、他の原料と共に高温に加熱される。一部の例では、溶融混合物は、冷却時にガラスを形成する。
【0275】
- 白陶器およびガラス質エナメル
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、白陶器および/またはガラス質エナメルを製造するために使用される。ある特定の場合、消石灰は粘土とブレンドされて、フラックス、ガラス形成体として作用する、物質を結合する一助となる、および/または最終製品の白さを増強する。
【0276】
- キャスト成形および引き抜きのための潤滑剤
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、材料のキャスト成形および/または引き抜き(鉄、アルミニウム、銅、鋼および/または貴金属など)ための潤滑剤として使用される。一部の例では、カルシウムをベースとする潤滑剤は、高温で使用されて、金属が金型に付着するのを防止する。ある特定の場合、潤滑剤は、カルシウム石鹸、石灰のブレンドおよび他の物質とすることができる(ケイ酸、アルミナ、炭素、ならびに/または蛍石および/もしくはアルカリ酸化物などのフラックス剤を含む)。消石灰は、一部の場合、潤滑剤担体として使用される。ある特定の例では、消石灰は、ワイヤの表面に接合し、表面粗さを増大させる、および/または引き抜き化合物の粘着性を改善する。
【0277】
- 掘削泥水
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、掘削泥水の配合物において、高いアルカリ性を維持する、および/または非プラスチック状態の粘土を維持するために使用される。掘削泥水は、一部の場合、石油およびガスを求めて岩を掘削する際に、中空のドリルチューブから汲み上げることができる。ある特定の例では、掘削泥水は、表面へのドリル用ビットによって生じた岩の断片を運ぶ。
【0278】
- 油添加物および潤滑油
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、油添加物および/または潤滑油として使用される。一部の例では、石灰は、アルキルフェネートおよび/または有機スルホネートと反応させて、カルシウム石鹸を製造し、この石鹸は、他の添加物とブレンドして、油添加物および/または潤滑油を製造する。一部の場合、石灰をベースとする添加物は、スラッジの蓄積を防止し、とりわけ高温での燃焼生成物に起因する酸性度を低下させる。
【0279】
- パルプおよび紙
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、パルプおよび/または製紙産業に使用される。例えば、消石灰は、クラフト法に使用されて、炭酸ナトリウムを水酸化ナトリウムに再苛性化される。一部の場合、この反応から形成する炭酸カルシウムは、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法に戻されて、消石灰を再生成することができる。ある特定の例では、消石灰はまた、パルプ化のスルファイトプロセスにおいてアルカリ源として使用されて、液を調製することができる。ある特定の場合、消石灰は、硫酸の溶液に添加されて、亜硫酸水素塩を形成する。一部の場合、硫酸およびビスルファイトの混合物を使用して、パルプを消化する。消石灰はまた、ある特定の例では、使用済みスルファイト液からリグノスルホン酸カルシウムを沈殿させるためにも使用することができる。
【0280】
- アクアリウム
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、海のアクアリウムおよび/またはサンゴ礁の成長のための、カルシウム源および/アルカリ源として使用される。
【0281】
- 蓄熱法
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、熱化学エネルギー貯蔵のため(例えば、自己発熱食品容器および/またはソーラー蓄熱のため)に使用される。
【0282】
- 難燃剤
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される水酸化カルシウムおよび/または水酸化マグネシウムは、絶縁ケーブルおよび/またはプラスチックの絶縁体への添加物である難燃剤として使用される。
【0283】
- 抗微生物剤
一部の実施形態では、本明細書において開示されている反応器、システムおよび/または方法によって生産される消石灰および/または石灰は、抗微生物剤として使用される。例えば、一部の例では、石灰および/または消石灰は、壁、床、寝わらおよび/または動物舎などの、疾患により汚染された区域を処置するために使用される。
【0284】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を例示することが意図されているが、本発明の全範囲を例示しているわけではない。
【実施例】
【0285】
(実施例1)
この実施例は、生成した酸および塩基を収集した第1のモードでのシステムの稼働を記載する。
【0286】
ほぼ中性の1M Na2SO4の溶液を1分あたり10mLの速度で、フローセルのアノード(炭素フェルトから作製)およびカソード(同じく炭素フェルト)に供給し、溶液をアノードおよびカソードから抜き取る。2.5Vの電圧をセルに印加すると、アノードに由来する溶液のpHは1.5となり、カソードに由来する溶液のpHは、12.5となった。
【0287】
(実施例2)
この実施例は、生成した酸および塩基を収集して、反応させる、第1のモードでのシステムの稼働を記載する。
【0288】
塩基および水素ガスが第1の電極(カソード)において生成し、酸および酸素ガスが第2の電極(アノード)において生成するよう、加水分解反応を第1の電極および第2の電極を備える電気化学セルで稼働させる。反応器と流体連結している第1の装置への導管を介して反応器から塩基を収集し、この塩基を装置中で貯蔵する。反応器と流体連結している第2の装置への導管を介して反応器から酸を収集し、この酸をその装置中で貯蔵する。
【0289】
所望の場合、塩基は、第1の装置と流体連結している第3の装置に移送され、酸は、第2の装置と流体連結している第4の装置に移送される。次に、第4の装置中、酸を使用して化学的溶解でCaCO3を溶解し、Ca2+イオンおよびCO3
2-イオンを形成する。次に、Ca2+イオンを第3の装置(この装置は、第4の装置と流体連結している)に移送し、ここで、塩基をCa2+イオンとの沈殿反応に使用して、Ca(OH)2を形成する。例えば窯および/またはヒータを用いて、Ca(OH)2を必要に応じてセメント製造プロセスに使用することができる。
【0290】
(実施例3)
この実施例は、生成した酸素ガスおよび水素ガスを輸送して、それぞれ、還元および酸化する、第1のモードでのシステムの稼働を記載する。
【0291】
塩基および水素ガスが第1の電極(カソード)において生成し、酸および酸素ガスが第2の電極(アノード)において生成するよう、加水分解反応を第1の電極および第2の電極を備える電気化学セルで稼働させる。水素ガスは、導管を介してカソードからアノードまで輸送され、ここで、酸化されて酸を生成する。酸の生成により、アノードのpHがさらに低下する。酸素ガスは、導管を介してアノードからカソードまで輸送され、ここで、還元されて塩基を生成する。塩基の生成により、カソードのpHがさらに向上する。
【0292】
一部のこのようなシステムまたは方法では、酸および塩基を、実施例1に記載されている通りに必要に応じて収集する、および/または反応させる。
【0293】
(実施例4)
この実施例は、生成した酸素およびガスを収集して、販売する、または使用する、または再度一緒にして水を形成することができる、第1のモードでのシステムの稼働を記載する。
【0294】
塩基および水素ガスが第1の電極(カソード)において生成し、酸および酸素ガスが第2の電極(アノード)において生成するよう、加水分解反応を第1の電極および第2の電極を備える電気化学セルで稼働させる。ガスの生成が望ましくない場合、水素ガスおよび酸素ガスを収集し、販売する、または使用する、または再度一緒にして水を形成することができる。
【0295】
(実施例5)
この実施例は、代替として、第1のモードおよび第2のモードでのシステムの稼働を記載する。
【0296】
実施例1のシステムまたは方法は、安価な電気コストおよび/または電気利用性が高い時に使用されるが、酸および塩基の一部またはすべてを、化学的溶解および/または沈殿反応に使用するよりもむしろ貯蔵する。電気コストが高くなる、および/または利用可能度が低くなると、本システムを、電極の極性が実施例1の極性とは反対となる第2のモードに切り替える。次に、実施例1からの貯蔵した塩基を、塩基を酸化して酸素ガスを形成させるアノードに添加する。次に、酸を還元して水素ガスを生成させるカソードに、貯蔵した酸を添加する。水素ガスおよび酸素ガスを、必要に応じて収集し、販売または使用することができる。
【0297】
(実施例6)
この実施例は、化学的溶解および/または沈殿反応に使用することができる、酸および塩基を生成する2つの反応器を備えるシステムの稼働を記載する。
【0298】
流体連結している2つの反応器を備えるシステムを稼働する。第1の反応器は、塩基、二ハロゲン化物(例えば、Cl2)および水素ガスを生成する。第1の反応器および第2の反応器は、流体連結状態にあり、第1の反応器において生成した水素ガスおよび二ハロゲン化物を、第2の反応器に輸送する。水も第2の反応器に添加し、第2の反応器は、酸(例えば、HCl)を生成する。
【0299】
第1の装置を備える第1の反応器から塩基を収集し、第2の装置を備える第2の反応器から酸を収集する。第2の装置において、固体のCaCO3からCa2+およびCO3
2-イオンへの化学的溶解などの化学的溶解に酸を使用する。第2の装置は第1の装置と流体連結しており、第2の装置に由来するCa2+イオンを第1の装置に輸送し、ここで、Ca2+イオンは沈殿反応で塩基と反応し、Ca(OH)2を形成する。例えば窯および/またはヒータを用いて、Ca(OH)2を必要に応じて、セメント製造プロセスに使用することができる。
【0300】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書に記載および例示されているが、当業者は、機能を実行するため、ならびに/または結果および/もしくは本明細書に記載されている1つもしくは1つより多くの利点を取得するための様々な他の手段および/または構造を容易に想定し、このような変形および/または改変のそれぞれが、本発明の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメーター、寸法、物質および立体構成が例示的なものであることが意図されていること、ならびに実際のパラメーター、寸法、物質および/または立体構成が、特定の用途、または本発明の教示に使用される用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、常套的な実験のみを使用して、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を理解するか、または解明することができる。したがって、前述の実施形態は単なる例として提示されているに過ぎないこと、ならびに添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本発明は、具体的に記載および特許請求されているもの以外の方法で実施されてもよいことを理解すべきである。本発明は、本明細書に記載されている個々の特徴、システム、物品、物質および/または方法のそれぞれを対象とする。さらに、2つまたはこれより多いこのような特徴、システム、物品、物質および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、物品、物質および/または方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0301】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」および「an」は、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0302】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または」という言い回しは、そのように結合された要素、すなわち、一部の場合、結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか一方または両方」を意味すると理解されるべきである。明確に反対に示されない限り、「および/または」という節によって具体的に特定されている要素以外の他の要素は、具体的に特定されている要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、必要に応じて存在し得る。したがって、非限定例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンドな言語と連携して使用される場合、一実施形態では、BのないA(必要に応じて、B以外の要素を含む);別の実施形態では、AのないB(必要に応じて、A以外の要素を含む):さらに別の実施形態では、AとBの両方(必要に応じて、他の要素を含む)などを指すことができる。
【0303】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、「または」は、上で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は包括的として、すなわち、少なくとも1つを含むが、1つより多い要素の数またはリスト、および必要に応じて追加の列挙されていない項目も含むとして解釈されるものとする。「のうちの1つだけ」または「のうちの正確に1つ」などの反対に明確に示される用語だけが、または特許請求の範囲において使用される場合は「からなる」が、要素の数またはリストの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、用語「または」は、本明細書で使用する場合、「どちらか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つだけ」または「のうちの正確に1つ」などの、排他性の用語が後ろに付く場合のみ、排他的な選択肢(すなわち、「一方またはもう一方であるが、両方ではない」)を示すと解釈されるものとする。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0304】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、1つまたはこれより多くの要素のリストを参照する「少なくとも1つ」という言い回しは、要素のリスト中の要素のいずれか1つまたはこれより多くから選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしもではないが、要素のリスト内に具体的に列挙されているあらゆる要素の少なくとも1つを含み、要素のリスト中の要素の任意の組合せを排除しないことが理解されるべきである。この定義により、「少なくとも1つの」との言い回しが指す要素のリスト中で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定されたそれらの要素に関係しているかまたは関連していないかにかかわらず、必要に応じて存在してもよいことも可能となる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも一方」(または、同等に「AまたはBの少なくとも一方」、または、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも一方」)は、一実施形態では、必要に応じて2つ以上を含めて少なくとも1つのAであって、Bが存在しない(および、必要に応じてB以外の要素を含む)少なくとも1つのA、別の実施形態では、必要に応じて2つ以上を含めて少なくとも1つのBであって、Aが存在しない(および、必要に応じてA以外の要素を含む)少なくとも1つのB、さらに別の実施形態では、必要に応じて2つ以上を含めて少なくとも1つのAおよび必要に応じて2つ以上を含めて少なくとも1つのB(および、必要に応じて他の要素を含む)を指す。
【0305】
特許請求の範囲において、および上記の明細書において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などのすべての移行句は、オープンエンドであること、すなわち含むがそれに限定されないことを意味すると理解すべきである。米国特許庁特許審査手続便覧の第2111.03項に記載されている通り、「~からなる」および「~から本質的になる」という移行句だけが、それぞれ、クローズド移行句またはセミクローズド移行句であるものとする。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
反応器を第1のモードで稼働するステップ
を含む方法であって、
前記第1のモードが、
第1の電極から塩基を生成すること、
前記反応器において、前記第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極から酸を生成すること、ならびに
前記酸および/または塩基を収集すること
を含む、方法。
(項目2)
収集した前記酸および/または塩基を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させるステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
反応器を第1のモードで稼働するステップ
を含む方法であって、
前記第1のモードが、
第1の電極から塩基を生成すること、
前記反応器において、前記第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極から酸を生成すること、
前記酸および/または塩基を収集すること、ならびに
収集した前記酸および/または塩基を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させること
を含む、方法。
(項目4)
前記第1のモードが、前記第2の電極から酸素ガスを生成することを含む、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記第1のモードが、前記第1の電極から水素ガスを生成することを含む、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
反応器を第1のモードで稼働するステップ
を含む方法であって、
前記第1のモードが、
第1の電極から塩基および水素ガスを生成すること、
前記反応器において、前記第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極から酸および酸素ガスを生成すること、ならびに
前記酸素ガスが前記第1の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となること、ならびに/または前記水素ガスが前記第2の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となること、ならびに
前記酸素ガスが前記第1の電極によって還元されることが可能となるステップ、および/または前記水素ガスが前記第2の電極によって酸化されることが可能となるステップ
を含む、方法。
(項目7)
前記酸および/または塩基を収集するステップをさらに含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
収集した前記酸および/または塩基を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させるステップをさらに含む、項目6から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記第2の電極から酸を前記生成すること、および前記第2の電極から酸素ガスを生成することが、前記第2の電極により水を酸化して、酸素ガスおよび酸を生成することを含む、項目4から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記第1の電極から塩基を前記生成すること、および前記第1の電極から水素ガスを生成することが、前記第1の電極により水を還元して、水素ガスおよび塩基を生成することを含む、項目5から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記酸を収集するステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記塩基を収集するステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
収集した前記酸を化学的溶解で反応させるステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
収集した前記塩基を沈殿反応で反応させるステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記酸および/または塩基を貯蔵するステップをさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記酸を貯蔵するステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記塩基を貯蔵するステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
第2のモードで前記反応器を稼働するステップをさらに含み、前記反応器の極性が、前記第1のモードにおける前記反応器の極性に比べて、前記第2のモードでは反対になっている、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記第1のモードで前記反応器を稼働する電気コストが第1のコストであり、前記第1のモードで前記反応器を稼働する電気の利用可能度が第1の利用可能度であり、前記第2のモードで前記反応器を稼働する電気コストが第2のコストであり、前記第2のモードで前記反応器を稼働する電気の利用可能度が第2の利用可能度であり、そして前記第2のコストが前記第1のコストより高い、および/または前記第1の利用可能度が前記第2の利用可能度よりも高い、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記第2のモードが、貯蔵した前記塩基を前記第2の電極の近傍の前記反応器に添加することを含む、項目18から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記第2のモードが、貯蔵した前記塩基を前記第2の電極の近傍で酸化して、酸素ガスを生成することを含む、項目18から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記第2のモードが、貯蔵した前記酸を前記第1の電極の近傍の前記反応器に添加することを含む、項目18から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記第2のモードが、貯蔵した前記酸を前記第1の電極の近傍で還元して、水素ガスを生成することを含む、項目18から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記第2の電極によって前記水素ガスを酸化させるステップを含む、項目5から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記第2の電極によって前記水素ガスを酸化させて、酸を生成するステップを含む、項目5から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記水素ガスが、前記第1の電極の近傍から前記第2の電極の近傍まで拡散することが可能となる、項目5から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記水素ガスが、前記第1の電極の近傍から前記第2の電極の近傍まで輸送される、項目5から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記方法が、酸素ガスを生成しない、項目1から3、5および9から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記方法が、正味の水素ガスを生成しない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記第1の電極によって前記酸素ガスを還元するステップを含む、項目4から27および29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記第1の電極によって前記酸素ガスを還元して、塩基を生成するステップを含む、項目4から27および29から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記酸素ガスが、前記第2の電極の近傍から前記第1の電極の近傍まで拡散することが可能となる、項目4から27および29から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記酸素ガスが、前記第2の電極の近傍から前記第1の電極の近傍まで輸送される、項目4から27および29から32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記方法が、水素ガスを生成しない、項目1から4および9から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記方法が、正味の酸素ガスを生成しない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記化学的溶解が、金属、金属合金、メタロイド、金属塩、金属酸化物および/またはシリケートの化学的溶解を含む、項目2から5および8から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記金属および/または金属合金が、鉄、鉄合金、ステンレス鋼、非鉄金属、非鉄合金、アルミニウム、黄銅、青銅、銅、亜鉛、スズおよび/またはコイン合金を含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記金属酸化物が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化鉛、二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムを含む、項目36から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記金属塩が金属炭酸塩を含む、項目36から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸マンガン、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸亜鉛、炭酸カドミウム、炭酸鉛および/または炭酸ニッケルを含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記沈殿反応が、金属水酸化物を沈殿させることを含む、項目2から5および8から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記金属水酸化物が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化亜鉛、水酸化カドミウム、水酸化鉛および/または水酸化ニッケルを含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記酸が、0.00001Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記酸が、1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記酸が、10Mより低いまたはこれに等しい濃度を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記塩基が、0.00001Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記塩基が、1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記塩基が、10Mより低いまたはこれに等しい濃度を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記第2の電極の近傍のpHが、6より低いまたはこれに等しい、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記第1の電極の近傍のpHが、8より高いまたはこれに等しい、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記第2の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して-0.4Vより高いまたはこれに等しい、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記第2の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して0.8Vより高いまたはこれに等しい、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記第1の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して0.8Vより低いまたはこれに等しい、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記第1の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して-0.4Vより低いまたはこれに等しい、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
収集した前記酸および/または塩基を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させる前記ステップが連続的である間、第1のモードでの前記反応器の前記稼働するステップが断続的である、項目2から5および8から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
ほぼ中性の投入溶液を前記反応器に添加するステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記ほぼ中性の投入溶液が塩を含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記塩が、アルカリ硫酸塩、アルカリ塩素酸塩、アルカリハロゲン化物、アルカリ硝酸塩、アルカリ過塩素酸塩、アルカリ酢酸塩、アルカリ亜硝酸塩および/またはアルカリトリフルオロメタンスルホン酸塩を含む、項目57に記載の方法。
(項目59)
収集した前記塩基を化学的溶解で反応させるステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
収集した前記酸を沈殿反応で反応させるステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
第1の電極、
前記第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極、および
前記第2の電極の近傍の酸性産出物および/または前記第1の電極の近傍の塩基性産出物を収集するよう構成されている装置
を備える、システム。
(項目62)
第1の電極、
前記第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極、
前記第2の電極の近傍の酸性産出物および/または前記第1の電極の近傍の塩基性産出物を収集するよう構成されている第1の装置、ならびに
収集した前記酸性産出物および/または収集した前記塩基性産出物を反応させるよう構成されている第2の装置
を備える、システム。
(項目63)
前記第1の電極が、塩基および/または水素ガスを生成するよう構成されている、項目61から62のいずれか一項に記載のシステム。
(項目64)
前記第2の電極が、酸および/または酸素ガスを生成するよう構成されている、項目61から63のいずれか一項に記載のシステム。
(項目65)
前記システムが、酸素ガスが前記第1の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となるよう、および/または水素ガスが前記第2の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となるよう構成されている、項目61から64のいずれか一項に記載のシステム。
(項目66)
前記システムが、前記酸素ガスが前記第1の電極によって還元されることが可能となるよう、および/または前記水素ガスが前記第2の電極によって酸化されることが可能となるよう構成されている、項目61から65のいずれか一項に記載のシステム。
(項目67)
塩基および水素ガスを生成するよう構成されている第1の電極、ならびに
前記第1の電極に電気化学的に接続されている第2の電極であって、酸および酸素ガスを生成するよう構成されている第2の電極
を備えるシステムであって、
前記システムが、酸素ガスが前記第1の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となるよう、ならびに/または水素ガスが前記第2の電極まで拡散することおよび/もしくは輸送されることが可能となるよう構成されており、そして
前記システムが、前記酸素ガスが前記第1の電極によって還元されることが可能となるよう、および/または前記水素ガスが前記第2の電極によって酸化されることが可能となるよう構成されている、
システム。
(項目68)
前記第2の電極の近傍の酸性産出物および/または前記第1の電極の近傍の塩基性産出物を収集するよう構成されている装置をさらに備える、項目67に記載のシステム。
(項目69)
前記第2の電極において生成した酸素ガスが前記第1の電極まで拡散することが可能となるよう、および/または前記第1の電極において生成した水素ガスが前記第2の電極まで拡散することが可能となるよう構成されているセパレータをさらに備える、項目61から68のいずれか一項に記載のシステム。
(項目70)
収集した前記酸性産出物および/または収集した前記塩基性産出物を化学的溶解および/または沈殿反応で反応させるよう構成されている第2の装置をさらに備える、項目61、63から66および68から69のいずれか一項に記載のシステム。
(項目71)
前記第2の装置が、収集した前記酸性産出物および/または収集した前記塩基性産出物を化学的溶解で反応させるよう構成されている、項目62から66および70のいずれか一項に記載のシステム。
(項目72)
前記第2の装置が、収集した前記酸性産出物および/または収集した前記塩基性産出物を沈殿反応で反応させるよう構成されている、項目62から66および70から71のいずれか一項に記載のシステム。
(項目73)
前記第2の電極が酸を生成するよう構成されている、項目61から66および69から72のいずれか一項に記載のシステム。
(項目74)
前記第2の電極が酸素ガスを生成するよう構成されている、項目61から66および69から73のいずれか一項に記載のシステム。
(項目75)
前記第1の電極が塩基を生成するよう構成されている、項目61から66および69から74のいずれか一項に記載のシステム。
(項目76)
前記第1の電極が水素ガスを生成するよう構成されている、項目61から66および69から75のいずれか一項に記載のシステム。
(項目77)
前記システムが、酸素ガスが前記第1の電極まで拡散することが可能となるよう構成されている、項目64から76のいずれか一項に記載のシステム。
(項目78)
前記システムが、水素ガスが前記第2の電極まで拡散することが可能となるよう構成されている、項目63から77のいずれか一項に記載のシステム。
(項目79)
前記システムが、前記酸素ガスが前記第1の電極によって還元されることが可能となるよう構成されている、項目64から78のいずれか一項に記載のシステム。
(項目80)
前記システムが、前記水素ガスが前記第2の電極によって酸化されることが可能となるよう構成されている、項目63から79のいずれか一項に記載のシステム。
(項目81)
前記装置が、前記第2の電極の近傍の前記酸性産出物を収集するよう構成されている、項目61から80のいずれか一項に記載のシステム。
(項目82)
前記装置が、前記第1の電極の近傍の前記塩基性産出物を収集するよう構成されている、項目61から81のいずれか一項に記載のシステム。
(項目83)
前記酸および/または塩基を貯蔵するよう構成されている装置を備える、項目61から82のいずれか一項に記載のシステム。
(項目84)
前記酸を貯蔵するよう構成されている装置を備える、項目61から83のいずれか一項に記載のシステム。
(項目85)
前記塩基を貯蔵するよう構成されている装置を備える、項目61から84のいずれか一項に記載のシステム。
(項目86)
塩基が前記第2の電極の近傍に添加され得るよう構成されている、項目61から85のいずれか一項に記載のシステム。
(項目87)
前記システムが、前記第2の電極により塩基を酸化して、酸素ガスを生成するよう構成されている、項目61から86のいずれか一項に記載のシステム。
(項目88)
前記システムが、酸が前記第1の電極の近傍に添加され得るよう構成されている、項目61から87のいずれか一項に記載のシステム。
(項目89)
前記システムが、前記第2の電極により酸を還元して水素ガスを生成するよう構成されている、項目61から88のいずれか一項に記載のシステム。
(項目90)
前記システムが、前記第2の電極により前記水素ガスを酸化して酸を生成するよう構成されている、項目63から89のいずれか一項に記載のシステム。
(項目91)
前記システムが、前記第1の電極の近傍から前記第2の電極の近傍への前記水素ガスの輸送が可能となるよう構成されている、項目63から90のいずれか一項に記載のシステム。
(項目92)
前記システムが、酸素ガスを生成しないよう構成されている、項目61から66、69から73、75から86および88から91のいずれか一項に記載のシステム。
(項目93)
前記システムが、正味の水素ガスを生成しないよう構成されている、項目61から92のいずれか一項に記載のシステム。
(項目94)
前記システムが、前記第1の電極により前記酸素ガスを還元して、塩基を生成するよう構成されている、項目64から91および93のいずれか一項に記載のシステム。
(項目95)
前記システムが、前記第2の電極の近傍から前記第1の電極の近傍への前記酸素ガスの輸送が可能となるよう構成されている、項目64から91および93から94のいずれか一項に記載のシステム。
(項目96)
前記システムが、水素ガスを生成しないよう構成されている、項目61から66、69から75、77から88および90から95のいずれか一項に記載のシステム。
(項目97)
前記システムが、正味の酸素ガスを生成しないよう構成されている、項目61から96のいずれか一項に記載のシステム。
(項目98)
第1の反応器において塩基および二ハロゲン化物を生成するステップ、
第2の反応器において酸を生成するステップ、
前記酸を収集するステップ、
前記塩基を収集するステップ、
前記酸および/または塩基を用いて化学的溶解を行うステップ、ならびに
前記酸および/または塩基を用いて沈殿反応を行うステップ
を含む方法。
(項目99)
前記第1の反応器において水素ガスを生成するステップを含む、項目98に記載の方法。
(項目100)
前記沈殿反応に由来する中性のpHのアルカリハロゲン化物副生成物を前記第1の反応器に供給するステップを含む、項目98から99のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記酸および/または前記塩基を貯蔵するステップを含む、項目98から100のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記化学的溶解が、金属、金属合金、メタロイド、金属塩、金属酸化物および/またはシリケートの化学的溶解を含む、項目98から101のいずれか一項に記載の方法。
(項目103)
前記金属および/または金属合金が、鉄、鉄合金、ステンレス鋼、非鉄金属、非鉄合金、アルミニウム、黄銅、青銅、銅、亜鉛、スズおよび/またはコイン合金を含む、項目102に記載の方法。
(項目104)
前記金属酸化物が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化鉛、二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムを含む、項目102から103のいずれか一項に記載の方法。
(項目105)
前記金属塩が金属炭酸塩を含む、項目102から104のいずれか一項に記載の方法。
(項目106)
前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸マンガン、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸亜鉛、炭酸カドミウム、炭酸鉛および/または炭酸ニッケルを含む、項目105に記載の方法。
(項目107)
前記沈殿反応が、金属水酸化物を沈殿させることを含む、項目98から106のいずれか一項に記載の方法。
(項目108)
前記金属水酸化物が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化亜鉛、水酸化カドミウム、水酸化鉛および/または水酸化ニッケルを含む、項目107に記載の方法。
(項目109)
前記酸が、0.1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、項目98から108のいずれか一項に記載の方法。
(項目110)
前記酸が、1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、項目98から109のいずれか一項に記載の方法。
(項目111)
前記酸が、12Mより低いまたはこれに等しい濃度を有する、項目98から110のいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
前記塩基が、0.1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、項目98から111のいずれか一項に記載の方法。
(項目113)
前記塩基が、1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、項目98から112のいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記塩基が、25Mより低いまたはこれに等しい濃度を有する、項目98から113のいずれか一項に記載の方法。
(項目115)
前記第2の反応器の近傍のpHが、6より低いまたはこれに等しい、項目98から114のいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
前記第1の反応器の近傍のpHが、8より高いまたはこれに等しい、項目98から115のいずれか一項に記載の方法。
(項目117)
前記第1の反応器が第2の電極を備え、前記第2の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して1.36Vより高いまたはこれに等しい、項目98から116のいずれか一項に記載の方法。
(項目118)
前記第1の反応器が第2の電極を備え、前記二ハロゲン化物が前記第2の電極により生成する、項目98から117のいずれか一項に記載の方法。
(項目119)
前記第1の反応器が第1の電極を備え、前記第1の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して0.8Vより低いまたはこれに等しい、項目98から118のいずれか一項に記載の方法。
(項目120)
前記第1の反応器が第1の電極を備え、前記第1の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して0.4Vより低いまたはこれに等しい、項目98から118のいずれか一項に記載の方法。
(項目121)
前記第1の反応器が第1の電極を備え、前記第1の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して-0.41Vより低いまたはこれに等しい、項目98から118のいずれか一項に記載の方法。
(項目122)
前記第1の反応器が第1の電極を備え、前記第1の電極におけるネルンスト電位が、標準水素電極に対して-0.82Vより低いまたはこれに等しい、項目98から118のいずれか一項に記載の方法。
(項目123)
前記第1の反応器が第1の電極を備え、前記塩基が前記第1の電極から生成する、項目98から122のいずれか一項に記載の方法。
(項目124)
前記第2の反応器が、化学反応器または燃料電池である、項目98から123のいずれか一項に記載の方法。
(項目125)
前記第2の反応器がH
2
/Cl
2
燃料電池である、項目98から124のいずれか一項に記載の方法。
(項目126)
前記酸を用いて前記化学的溶解を行うステップを含む、項目98から125のいずれか一項に記載の方法。
(項目127)
前記塩基を用いて前記化学的溶解を行うステップを含む、項目98から126のいずれか一項に記載の方法。
(項目128)
前記酸を用いて前記沈殿反応を行うステップを含む、項目98から127のいずれか一項に記載の方法。
(項目129)
前記塩基を用いて前記沈殿反応を行うステップを含む、項目98から128のいずれか一項に記載の方法。
(項目130)
塩基、二ハロゲン化物および水素ガスを生成するよう構成されている第1の反応器、
酸を生成するよう構成されている第2の反応器、
前記第2の反応器の近傍の前記酸を収集し、前記酸を用いて化学的溶解および/または沈殿反応を行うよう構成されている第1の装置、ならびに
前記第1の反応器の近傍の前記塩基を収集し、前記塩基を用いて化学的溶解および/または沈殿反応を行うよう構成されている第2の装置
を備える、システム。
(項目131)
前記システムが、前記沈殿反応に由来する中性のpHのアルカリハロゲン化物副生成物を前記第1の反応器に供給するよう構成されている、項目130に記載のシステム。
(項目132)
前記システムが、前記酸および/または前記塩基を貯蔵するよう構成されている、項目130から131のいずれか一項に記載のシステム。
(項目133)
前記化学的溶解が、金属、金属合金、メタロイド、金属塩、金属酸化物および/またはシリケートの化学的溶解を含む、項目130から132のいずれか一項に記載のシステム。
(項目134)
前記金属および/または金属合金が、鉄、鉄合金、ステンレス鋼、非鉄金属、非鉄合金、アルミニウム、黄銅、青銅、銅、亜鉛、スズおよび/またはコイン合金を含む、項目133に記載の方法。
(項目135)
前記金属酸化物が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化鉛、二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムを含む、項目133から134のいずれか一項に記載の方法。
(項目136)
前記金属塩が金属炭酸塩を含む、項目133から135のいずれか一項に記載の方法。
(項目137)
前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸マンガン、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸亜鉛、炭酸カドミウム、炭酸鉛および/または炭酸ニッケルを含む、項目136に記載のシステム。
(項目138)
前記沈殿反応が、金属水酸化物を沈殿させることを含む、項目130から137のいずれか一項に記載のシステム。
(項目139)
前記金属水酸化物が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化亜鉛、水酸化カドミウム、水酸化鉛および/または水酸化ニッケルを含む、項目138に記載のシステム。
(項目140)
前記酸が、0.1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、項目130から139のいずれか一項に記載のシステム。
(項目141)
前記酸が、1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、項目130から140のいずれか一項に記載のシステム。
(項目142)
前記酸が、12Mより低いまたはこれに等しい濃度を有する、項目130から141のいずれか一項に記載のシステム。
(項目143)
前記塩基が、0.1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、項目130から142のいずれか一項に記載のシステム。
(項目144)
前記塩基が、1Mより高いまたはこれに等しい濃度を有する、項目130から143のいずれか一項に記載のシステム。
(項目145)
前記塩基が、25Mより低いまたはこれに等しい濃度を有する、項目130から144のいずれか一項に記載のシステム。
(項目146)
前記第1の装置が、前記酸を用いて前記化学的溶解を行うよう構成されている、項目130から145のいずれか一項に記載のシステム。
(項目147)
前記第1の装置が、前記酸を用いて前記沈殿反応を行うよう構成されている、項目130から146のいずれか一項に記載のシステム。
(項目148)
前記第2の装置が、前記塩基を用いて前記化学的溶解を行うよう構成されている、項目130から147のいずれか一項に記載のシステム。
(項目149)
前記第2の装置が、前記塩基を用いて前記沈殿反応を行うよう構成されている、項目130から148のいずれか一項に記載のシステム。